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レビー小体型認知症(DLB)、アルツハイマー型(AD)との違いは?

 2014年9月19日、アルツハイマー型認知症(AD)治療薬アリセプト(一般名:ドネペジル)について、レビー小体型認知症(DLB)の効能・効果が承認された。都内で10月8日に開催されたエーザイ株式会社によるプレスセミナーでは、横浜市立大学名誉教授の小阪 憲司氏と、関東中央病院 神経内科部長の織茂 智之氏が講演した。世界で初めてDLB例を報告し、DLB家族を支える会の顧問でもある小阪氏は、「DLBは最もBPSD(行動・心理症状)を起こしやすい認知症であり、患者さんの苦しみも強く介護者の苦労も多い」と述べ、患者さんや介護者のQOLを高めるため、早期診断・早期治療の重要性を強調した。DLBは誤診されやすく、診断にはDLBの特徴を知ることが必要である。本稿では、織茂氏の講演からDLBの特徴を中心に紹介する。レビー小体型認知症とアルツハイマー型認知症の違い 剖検例の検討では、認知症例のうちDLBが12~40%を占める。わが国の久山町研究の剖検例ではDLBが41.4%と報告されており、従来認識されているより患者数は多いと考えられる。 織茂氏はまず、ADとは異なるDLBの特徴として、記憶障害の発症前に多くの身体症状が発現することを挙げた。90例のprobable DLB患者での検討では、記憶障害発症の9.3年前から便秘が、4.8年前からうつが、4.5年前からレム睡眠行動異常症が発現していたと報告されている。 DLBの症状の特徴として、以下の5つが挙げられる。1)幻視を主体とする幻覚2)パーキンソン症状(手足が震える・四肢が硬くなる・動作が遅くなる・歩行障害) ADでは発現しないため、これらの症状が発現すればDLBを疑う。3)認知機能の変動が大きい4)自律神経症状(血圧の変動・排尿障害・消化管運動障害・発汗障害など) ADでは発現しない。起立性低血圧による転倒骨折・頭部外傷、食事性低血圧による誤嚥、臥位高血圧による心臓・腎臓への負担や脳出血の危険がある。消化管運動障害としては、便秘のほか、時にイレウスを起こす危険がある。発汗障害としては、発汗減少や発汗過多が起こり、うつ熱、体温が外気温に左右されやすいなどがある。5)レム睡眠行動異常症 DLBでは病早期からみられるのに対し、ADではまれである。DLBを早期診断する努力の必要性を指摘 織茂氏は、DLBの臨床診断基準(CDLBガイドライン)における重要な点として、まず、必須症状である進行性認知機能障害について、病初期には記憶障害が必ずしも起こらないことを強調した。 DLBの診断基準では、3つの中核症状(認知機能障害の変動・繰り返す幻視・特発性パーキンソン症状)のうち2つあればprobable DLBと診断される。また、中核症状が1つでも、レム睡眠行動異常症、抗精神病薬への重篤な過敏性などの示唆的所見が1つ以上あればprobable DLBと診断される。 画像診断における特徴としては、脳MRI画像においてDLBでの海馬の萎縮はADほどではないという。また、MIBG心筋シンチグラフィにおいては、DLBは心臓が黒く写らないことからADとの鑑別が可能である。脳血流シンチグラフィやドパミントランスポーターシンチグラフィにおいても、ADとの違いが観察される。 小阪氏は、DLBの診断のポイントとして、認知症の存在にとらわれすぎないこと、早期には認知症が目立たないことが多いこと、特有な幻視・レム睡眠行動異常症・パーキンソン症状に注目することを挙げた。そのうえで、軽度認知障害のレベルでDLBを発見する努力の必要性を指摘している。DLBではさまざまな症状に対して適切な治療が必要 DLBでは、認知機能障害のほか、BPSD、パーキンソン症状、血圧変動や排尿障害などの自律神経症状など、さまざまな症状がみられることから、それぞれに対して治療を行う。 そのうち、認知機能障害に対しては、ADと同様、アセチルコリンの減少を防ぐコリンエステラーゼ阻害薬が有効である。DLBでは、中隔核のアセチルコリン系の神経細胞数がADより減少しているという。 織茂氏は、DLBではさまざまな症状に対して適切な治療が必要であるとし、また、薬剤治療を開始するときは、過敏性を考慮して少量から始めるよう注意を促した。

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てんかんに効くサプリメント、低用量EPA+DHAが発作を抑制

 低用量の魚油(EPA+DHA 1,080mg[3カプセル/日])は、てんかん発作を抑制し、その改善効果は薬剤抵抗性てんかん(DRE)における抗てんかん薬に関する最近の試験結果と同程度であったことが示された。米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のChristopher M DeGiorgio氏らによる低用量と高用量をプラセボと比較した第II相無作為化クロスオーバー試験の結果、報告された。高用量魚油に関する試験はこれまでにも行われているが、その効果は示されていなかった。今回の結果を踏まえて著者は、「低用量魚油はてんかん発作を抑制し、てんかん患者の健康を改善することが示された」と述べ、「DREにおける低用量魚油(1,080mg/日未満)の大規模な無作為化試験の実施が正当化された」とまとめている。Journal of Neurol Neurosurg Psychiatry誌オンライン版2014年9月8日号の掲載報告。低用量魚油でてんかん発作頻度が33.6%低下 n-3脂肪酸は、神経興奮性を抑制し、てんかん発作を抑制することが動物モデルにおいて示されている。これまで、高用量魚油投与について、DREにおける2件の無作為化試験が行われたが、いずれもネガティブな結果が示されていた。 本検討で研究グループは、低用量と高用量の魚油の第II相無作為化クロスオーバー試験を行い、低用量または高用量魚油、てんかん発作を抑制もしくは心血管系を改善するかどうかを調べた。 試験は、24例のDRE患者を対象とし、低用量または高用量の魚油vs. プラセボ(コーン油、リノール酸)で検討。クロスオーバー期間は3期を設定し、試験は投与期間3期(各10週間)とウォッシュアウト期間2期(各6週間)の計42週間にわたって行われた。全被験者は、二重盲検下で無作為化され、異なるシーケンスでプラセボ、高用量、低用量の投与を受けた。主要アウトカムは、全てんかん発作頻度の割合変化であった。 低用量または高用量魚油がてんかん発作を抑制するかどうかを調べた主な結果は以下のとおり。・低用量魚油は、プラセボと比較して、てんかん発作頻度を33.6%低下した。・また、低用量魚油は、血圧を緩やかだが有意に低下した。・高用量魚油は、てんかん発作の抑制についてプラセボとの差がみられなかった。心血管リスク因子の改善も認められなかった。関連医療ニュース どの尺度が最適か、てんかん患者のうつ病検出 うつ病補助療法に有効なのは?「EPA vs DHA」 統合失調症の再発予防、ω-3脂肪酸+α-LAは有用か

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ビフィズス菌で不安症状が改善

 最近の研究では、ストレス関連精神疾患に常在菌の摂取が好影響を与える可能性があることが示唆されている。しかし、特定の細菌が不安や抑うつ症状にどのような影響を及ぼすかは不明であった。アイルランド・コーク大学のH M Savignac氏らは、2種類のビフィズス菌の不安・抑うつ症状に対する影響や抗うつ薬との比較を行った。Neurogastroenterology and motility誌オンライン版2014年9月24日号の報告。 先天的不安BALB/cマウスに、ビフィドバクテリウム(B.)ロンガム1714またはB.ブレーベ1205、抗うつ薬エスシタロプラム、溶媒を用いた治療を毎日6週間実施した。行動評価には、ストレス誘発性高体温試験、ガラス玉覆い隠し行動試験、高架式十字迷路試験、オープンフィールド試験、尾懸垂試験、強制水泳試験を用いた。また、急性ストレスに対する生理的反応も評価した。 主な結果は以下のとおり。・両ビフィズス菌治療およびエスシタロプラム治療は、ガラス玉覆い隠し行動試験において不安の軽減が認められた。また一方、B.ロンガム1714治療は、ストレス誘発性高体温を低下させた。・B.ブレーベ1205治療は、高架式十字迷路試験において不安の低下をもたらした。一方、B.ロンガム1714治療は、尾懸垂試験において抗うつ様行動を引き起こした。・しかし、グループ間のコルチコステロンレベルに差はなかった。 以上より、2種類のビフィズス菌が不安マウスの不安を減少させることが示唆された。これらの結果は、各細菌株が内因性の効果を有すること、特定の障害に特異的に有益であることを示している。関連医療ニュース 若年男性のうつ病予防、抗酸化物質が豊富な食事を取るべき 日本人うつ病患者に対するアリピプラゾール補助療法:名古屋大学 効果不十分なうつ病患者、次の一手のタイミングは  担当者へのご意見箱はこちら

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ビタミンB併用で抗うつ効果は増強するか

 うつ病に対する抗うつ薬の有効性は、準至適(suboptimal)である。うつ病では一貫して血漿中ホモシステイン高値が認められ、ある種のビタミンBによる治療は明らかにその値を低下させることは知られていた。西オーストラリア大学のOsvaldo P. Almeida氏らは、大うつ病患者において、ビタミン剤が抗うつ薬の効果増強に有用であるか否かを検討した。その結果、ビタミンB6、B12および葉酸をシタロプラムに併用することにより、1年間(52週間)にわたりシタロプラムの効果が増強、維持され、ビタミンB追加の有用性が示唆された。結果を踏まえて著者は、「今回の所見は、中高年の大うつ病に対して安全かつ安価な追加選択肢として、治療ガイドラインへの適用を促すものであった」とまとめている。British Journal of Psychiatry誌オンライン版2014年9月25日号の掲載報告。ビタミンBは1年間にわたり抗うつ薬の効果を増強 本研究では、ビタミンB6、B12および葉酸が、52週間の抗うつ薬治療の効果を増強するか否かを検討するため、無作為化二重盲検プラセボ対照試験を実施した。シタロプラム(20~40g)とビタミンB12 0.5mg、葉酸2mgおよびビタミンB6 25mgを52週間併用。対象は、50歳以上の地域住民で、DSM-IV-TRにて大うつ病と診断された患者とし、モンゴメリ・アスベルグうつ病評価尺度(MADRS)を用いて症状の重症度を評価した。主要アウトカムは、12、26、52週後のうつエピソードの寛解。副次アウトカムは、12週時のMADRSスコアの低下、回復後の大うつ病再発であった。 ビタミンB6、B12および葉酸が抗うつ薬治療の効果を増強するか否かの主な結果は以下のとおり。・合計153例をプラセボ群76例、ビタミン剤群77例に無作為化した。・12週時の症状寛解率はプラセボ群78.1%、ビタミン剤併用群79.4%(p=0.840)であった。・26週時はそれぞれ76.5%、85.3%、52週時は75.8%、85.5%であった(52週間介入の効果: オッズ比[OR]:2.49、95%信頼区間[CI]:1.12~5.51)。・MADRSスコアにおいて、群間の有意差は認められなかった(p=0.739)。・12週時に寛解を達成した患者の再発リスクは、プラセボ群に比べ、ビタミン剤併用群で低かった(OR:0.33、95%CI:0.12~0.94)。・ビタミンBは、12週時においては抗うつ薬の効果を増加させなかったが、1年間にわたり抗うつ薬の効果を増強、維持した。

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運動認知リスク症候群(MCR)は認知障害の発症リスクを予測した

 運動認知リスク症候群(MCR)とは、遅い歩行速度と軽度の認知異常を特徴とし、各国で新しく説明されている前認知症症候群である。米国・イェシーバー大学のJoe Verghese氏らは、MCRの頻度および認知症との関連を明らかにすることを目的に、17ヵ国の22コホートのデータを基に解析を行った。その結果、MCRは高齢者で頻度が高いこと、MCRは認知機能低下を強力かつ早期に予測しうることを報告した。Neurology誌2014年8月号の掲載報告。MCRとは認知機能低下に対する強力かつ早期のリスクファクター 本研究の目的は、MCRの頻度および認知症リスクとの関連を報告することである。17ヵ国の22コホートから、認知症および認知障害のない60歳以上の成人2万6,802例のデータを収集し、MCRに関する併合解析を行った。また、4件の前向きコホート試験から、ベースラインのMini-Mental State Examination(MMSE)スコアが25以上の、認知症を認めない4,812例のデータを収集し、認知障害(MMSEスコアが4ポイント以上低下)発症リスクおよびMCRに関連する認知症リスクについて、交絡因子補正後Coxモデルを用いて検討した。 MCRに関する併合解析を行った主な結果は以下のとおり。・ベースライン時、2万6,802例中2,808例がMCRと判定された。・MCRの有病率は9.7%(95%信頼区間[CI]:8.2~11.2%)であった。・MCRの有病率は高齢者で高いことが示されたが、性差は認められなかった。・併合サンプルにおいて、MCRは認知障害の発症リスクを予測した(補正後ハザード比[aHR]:2.0、95%CI:1.7~2.4)。個々のコホートにおけるaHRsの範囲は1.5~2.7であった。・併合サンプルにおいて、MCRは認知症の予測因子でもあった(aHR:1.9、95%CI:1.5~2.3)。・早期認知症およびその他の前認知症症候群を併せ持つ者など、認知障害の可能性を有する被験者を除外した後も、この結果は一貫して認められた。・以上より、MCRは高齢者に多くみられ、認知機能低下に対する強力かつ早期のリスクファクターであった。この臨床的アプローチは、ハイリスク高齢者を特定するさまざまな局面において、容易に適用可能と思われる。関連医療ニュース 認知症タイプ別、各認知機能の経過を比較 アルツハイマーの早期発見が可能となるか 治療介入により認知症発症率はどこまで減らせるか?  担当者へのご意見箱はこちら

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産後うつ病への抗うつ薬治療、その課題は

 産後うつ病に対する抗うつ薬治療は安全に行うことができるのか。英国・ロンドン大学のEmma Molyneaux氏らは、産後うつ病の抗うつ薬治療について、複数の抗うつ薬の有効性を評価し、それぞれの有効性についてその他のあらゆる治療、プラセボまたは標準治療と比較した、レビュー論文のアップデート(前回は2001年に実施)を行った。Cochrane Database Systematic Reviewsオンライン版2014年9月11日号の掲載報告。 レビューは2014年7月11日時点で、Cochrane Depression, Anxiety and Neurosis Group's Specialized Register(CCDANCTR)を検索し、分娩後6ヵ月以内にうつ病を呈し、抗うつ薬(単独または複数の組み合わせ)治療と他の治療、プラセボまたは標準治療を受けた女性が参加した無作為化試験(RCT)論文を適格とした。 2名のレビュワーがそれぞれ試験報告からデータを入手。また、不足情報については、可能な限り研究担当者から入手し、intention-to-treat解析が可能となるデータの探索を行った。比較試験であることが特定されたデータをプールし、ランダム効果メタ解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・レビューに組み込んだのは6試験、被験者596例であった。・全試験が、無作為化対照並行群間比較試験で、2件が英国で、3件が米国、1件がイスラエルで行われたものであった。・メタ解析は、抗うつ薬とプラセボを比較した試験から反応率と寛解率のプールデータについて行った。その他の比較は、識別できた試験数が少なくメタ解析はできなかった。・4試験(計233例)が、SSRIとプラセボの比較試験であった(セルトラリン使用が2件、パロキセチン使用1件、フルオキセチン使用1件)。・このうち2試験では、試験薬群、プラセボ群ともに精神療法も受けていた。・3試験(146例)のデータに基づくプールリスク比(RR)は、SSRIはプラセボよりも反応率(RR:1.43、95%信頼区間[CI]:1.01~2.03)、寛解率(同:1.79、1.08~2.98)が高いことを示した。残る1試験は反応率および寛解率のデータが報告されていなかった。・1試験(254例)では、抗うつ薬治療と、標準治療(当初4週間)+その後に聞き取り訪問を行った介入との比較が行われていた。結果、抗うつ薬治療は、標準治療(当初4週間)よりも改善率が有意に高率であった。しかし、その後の聞き取り訪問とでは差は認められなかった。・さらに、セルトラリンと三環系抗うつ薬ノルトリプチリンを比較した1試験(109例)があったが、有効性に差は認められなかった。・副作用は、多くの被験者女性が経験していたが、全試験の治療群間の有害反応数にエビデンスとして意味がある差は認められなかった。また、有害事象について、母乳を与えられた新生児に関するデータは限定的で、長期追跡したものはなかった。・1件を除く全試験で、高率または不確かな漸減バイアスと選択的なアウトカム報告が認められた。また、1件のプラセボ対照試験では途中脱落が50%超であった。 本結果を踏まえ、著者らは「SSRI投与を受けた群の反応率、寛解率がプラセボよりも高率であるとの所見が得られた。しかし、レビュー対象の試験が少なく、重要なアウトカム、とくに子供への影響の可能性に関する情報がほとんどなく、限定的な結論しか得られなかった」とまとめ、さらなる大規模長期の無作為化試験の必要性を提言している。関連医療ニュース 日本語版・産後うつ病予測尺度「PDPI-R-J」を開発 統合失調症女性の妊娠・出産、気をつけるべきポイントは 栄養補助食品は産後のうつ病予防に有用か  担当者へのご意見箱はこちら

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認知症タイプ別、各認知機能の経過を比較

 オランダ・アムステルダム大学医療センターのLL Smits氏らは、認知症のタイプ別に認知機能低下の経過を長期に観察し、コントロールと比較検討した。その結果、認知症のタイプにより記憶、言語、注意、実行機能、視空間機能、全般的認知などの低下において、それぞれ特徴がみられることを報告した。今回の結果について著者は、「アウトカム評価として神経精神学的データを使用するケースが増えているため、認知症自然経過の推定は、臨床試験をデザインするうえで重要な意義がある」と考察している。Psychological Medicine誌オンライン版2014年9月17日号の掲載報告。 研究グループは、認知症の各タイプにおける認知機能低下の経過をコントロールと比較検討する長期観察研究を行った。アルツハイマー病(AD)患者199例、血管性認知症(VaD)患者10例、レビー小体型認知症(DLB)患者26例、前頭側頭型認知症行動バリアント(bvFTD)患者20例、前頭側頭型認知症言語バリアント(lvFTD)患者15例、およびコントロール112例を対象とし、Mini-Mental State Examination(MMSE)を用いて5つの認知ドメイン(記憶、言語、注意、実行機能、視空間機能)と、全般的認知を評価した。すべての被験者に対し、2回以上の神経精神学的評価を行った(中央値2回、範囲:2~7回)。神経精神学的データは、コントロールのベースライン状況をリファレンスとし、zスコアに標準化。年齢、性別、学歴で調整し、線形混合モデル(LMMs)を用いて、各認知症タイプにおけるベースラインの認知機能および経過に伴う認知機能低下を推定した。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時、認知症患者はコントロールに比べ、視空間機能を除くすべての認知ドメインの機能が不良であった(p<0.05)。なお、視空間機能は、AD患者とDLB患者のみで障害がみられた(p<0.001)。・追跡期間中、AD患者ではすべての認知ドメインで機能の低下が認められた(p<0.001)。・ DLB患者では、言語と全般的認知を除くすべてのドメインで機能の低下がみられた。・bvFTD患者では記憶、言語、注意および実行機能において急速な低下がみられた(すべてp<0.01)。一方、視空間機能はほぼ安定していた。・lvFTD患者では、主に注意と実行機能の低下がみられた(p<0.01)。・VaD患者では、注意と実行機能の低下がみられた。関連医療ニュース 認知症、アルツハイマー型とレビー小体型の見分け方:金沢大学 たった2つの質問で認知症ルールアウトが可能 日本人若年性認知症で最も多い原因疾患は:筑波大学  担当者へのご意見箱はこちら

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新規不眠症治療薬は安全に使用できるか

 不眠症治療薬として米国で認可されたオレキシン受容体拮抗薬であるスボレキサント(MK4305、2014年9月26日に国内でも承認、商品名:ベルソムラ)の有効性と安全性を評価するため、米国・ニューヨーク医科大学のL. Citrome氏が、システマティックレビューを行った。その結果、スボレキサントは、ポリソムノグラフィによる客観的評価および患者による主観的評価の両方で、プラセボに比べ入眠時ならびに睡眠維持において優れること、主な有害事象として傾眠に注意が必要であることを報告した。International Journal of Clinical Practice誌オンライン版2014年9月18日号の掲載報告。 検討は、Pub Med、ClinicalTrials.govサイトで、「スボレキサント」「MK4305」を検索用語として論文検索を行い、またFDAのPeripheral & Central Nervous System Drugs Advisory Committeeによる要約のほか、添付文書から追加の情報を得て行われた。また、適用可能な臨床研究の報告を特定し、その他の情報源と合わせ、主要な結果と、代表的な二値アウトカムに対して算出された治療必要数(NNT)および有害事象必要数(NNH)を抽出した。 主な結果は以下のとおり。・スボレキサントは、試験デザインが同じ2件の第III相臨床試験の成績に基づき承認された。それら試験は3ヵ月、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、並行群間試験で、非高齢者(65歳未満)には40および20mgを、高齢者(65歳以上)には30および15mgを投与し、検討が行われた。・スボレキサントは、ポリソムノグラフィによる客観的評価および患者による主観的評価の両方で、プラセボに比べ入眠時において優れる結果が示された。・また、睡眠維持においても優れる結果が示された。・3ヵ月時点で、Insomnia Severity Indexの6ポイント以上の改善を反応ありとした場合のプラセボに対するNNTは、高用量および低用量レジメンともに8(95%信頼区間[CI]:6~14)であった。・添付文書で示されている主な有害事象(発現頻度が5%以上かつプラセボの2倍以上の頻度)は傾眠で、対プラセボのNNHは、スボレキサント40および30mgで13(95%CI:11~18)、同20および15mgで28(同:17~82)であった。・スボレキサントの有効性および忍容性プロファイルは、65歳未満と65歳以上で同様であった。・スボレキサント毎夜使用を中止して3ヵ月後または12ヵ月後、不眠のリバウンドおよび退薬の影響は観察されなかった。・鎮静をはじめとする翌日への持ち越し効果が懸念されるため、用量は10~20mgの範囲が勧められた。 結果を踏まえて、著者は「スボレキサントは、既存の睡眠薬とは異なる作用メカニズム、および潜在的に異なる安全性・忍容性プロファイルを示すことから、不眠症治療の新たな選択肢と言える」とまとめている。関連医療ニュース 期待の新規不眠症治療薬、1年間の有効性・安全性は 不眠の薬物療法を減らすには 睡眠薬、長期使用でも効果は持続  担当者へのご意見箱はこちら

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てんかん発作をじっくり見られるビデオとは?

2014年9月3日、都内にて開催された、大塚製薬株式会社・ユーシービージャパン株式会社主催のてんかんプレスセミナーにおいて、東北大学大学院 医学系研究科てんかん学分野教授 中里 信和氏が「てんかん『発作』を『見て』学ぶ」と題して講演を行った。100人に1人が罹患するといわれている「てんかん」。しかしその多様性については、医療従事者の認識が浅い現状がある。この現状を改善するために中里氏は「てんかん発作ビデオ集」の制作に携わった。この「てんかん発作ビデオ集」はどのように利用され、どう役立つのだろうか。てんかん発作を見ることで学ぶ、てんかんの多様性について紹介していく。てんかんの発作というと、意識喪失、全身硬直、激しいけいれんといったイメージが強いのではないだろうか。しかし中里氏は「そのイメージは間違いであり、大きな偏見のスタートだ」と語る。なかには、意識を失わない発作、匂い、味を感じるだけの発作、何かが見える、音が聞こえる、皮膚がしびれるといった発作など、実に多くの種類が存在している。つまり5感のすべて、脳で起こるすべての感覚がてんかん発作になりうるのだ。さらに第6感ともいうべき精神症状のてんかん発作も存在する。その代表的なものが「恐怖感の発作」であり、この場合しばしば誤診され精神科の強い薬を処方されてしまうこともある。また、てんかんとわかっていても、種類に応じた正しい薬の選び方、手術の有無、生活指導を選択できていない場合もある。このような現状から、精神科患者の中に多くのてんかん患者が埋もれているのではないかと、てんかん専門医は考えている。てんかん発作はその多様性から、「誤診されても仕方がない病気」(中里氏)であるといえる。そこで用いられるのが「長時間ビデオ脳波モニタリング」という診断方法である。この方法は、患者を脳波測定とビデオモニタリングによって長時間観察し、てんかんの診断の精度を上げるものである。この方法であれば脳波測定で異常があった瞬間の症状を見ることができる。このような自然の発作を「見る」ことがてんかんの確実な診断につながるのだ。現在、日本のてんかん患者を100万人と想定すると、ビデオ脳波モニタリングの受診が推奨される患者は少なくとも30万人いると考えられている。しかし診療報酬点数が低いといった医療経済的理由からその1/100程度しか受けられていないのが実際の状況だ。つまり、回復する可能性のある約30万人が、検査の必要性を十分に理解していない世の中のシステムの影に埋もれているのである。「このように埋もれている患者さんをどうにかして引っ張り込み、もっとビデオ脳波モニタリングをしなければと多くの方に思ってもらいたい」(中里氏)との思いで制作されたのが、この「てんかん発作ビデオ集」である。動画で紹介されている症例は代表的な強直間代発作(大発作)をはじめ、小児欠神発作(小発作)、焦点性運動発作、ミオクロニー発作など種類は多彩で、てんかん発作の9割の症例を網羅するのだという。動画は、短いドラマ仕立てのようになっている。動画が開始すると、画面下側には時間のバーが表示され、時間がバーの赤色部に達すると発作がスタートとなる。バーの上にはテロップが表示され、発作の自覚が始まったことや、どの部位に何が起こっているのかがわかりやすく解説されている。動画イメージ画像(クリックできません) 実際の患者の発作ビデオでは、顔(表情)が見せられない、映像が暗い、また視聴者の精神的負担が大きいといった問題があり、てんかん発作の教育ビデオとしては質が悪かった。しかし今回は役者を起用し医師監修の下、撮影を行うことで、それらの問題を克服した。現在、中里氏は講演会などを通し「てんかん発作ビデオ集」の上映を行い、大きな反響を集めている。今後は、てんかんに対する誤解や偏見が生じさせないため、ビデオ利用については、まずてんかんに対してある程度知識を持つ人が教育の目的で使用することから始めていく予定だ。てんかん発作を「見る」ことができるこのビデオは、てんかんの正しい理解に大きく貢献するだろう。

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統合失調症治療、ドパミンD3の可能性は

 ドパミンD3受容体は、統合失調症の治療ターゲットとして有望であり、同受容体と既存の抗精神病薬の結び付きについて知識を改めることは、新薬およびより選択的な治療薬の開発において重要となる。ブラジルのリオグランデ・ド・スル国立大学のGeancarlo Zanatta氏らは、抗精神病薬ハロペリドールと、ヒトのドパミンD3受容体との結合について、改良版量子力学/分子力学(QM/MM)計算法を用いた検討を行った。本報告は、新たな統合失調症の治療薬発見にインパクトをもたらすQM/MM法という、コンピュータ量子生化学的なデザイン手法を用いた第一段階の検討であった。ACS Chemical Neuroscience誌オンライン版2014年9月18日号の掲載報告。 研究グループは、古典的抗精神病薬であるハロペリドールとの結び付きを、D3受容体アンタゴニストのエチクロプリドのX線分析データを予測テンプレートとして用いたドッキングエッセイにより検討した。その後、古典的計算法およびQM/MM法を用いた評価にて、結合予測の質を改善。シミュレーションのQM部分は、密度汎関数理論(DFT)を用いることで完遂させた。 主な所見は以下のとおり。・ドッキング後、算出されたQM改善の総相互作用エネルギーはEQMDI=-170.1kcal/molで、古典的量子力学での改善(ECLDI=-156.3kcal/mol)、粗ドッキング法(ECRDI=-137.6kcal/mol)よりも大きかった。・QM/MM計算法は、D3受容体とハロペリドールの結合においてAsp110アミノ酸残基が重要な役割を果たすことを明らかにした。次いで、Tyr365、Phe345、Ile183、Phe346、Tyr373、Cys114が明らかになった。・そのうえで、ハロペリドール・ヒドロキシル基の関連が強調され、それらは、Tyr365とThr369の残基と相互に作用し、ドパミン受容体との結び付きを強化することが示された。・最後に、4-clorophenylと4-hydroxypiperidin-1-yl fragments(OHまたはCOOHによりC3HおよびC12Hのhydrogen replacementのような)が、明らかなドパミン拮抗作用プロファイルを有するハロペリドール誘導体と結び付く可能性があることが示唆された。関連医療ニュース ドパミンD3受容体拮抗薬、統合失調症治療薬としての可能性は 維持期統合失調症でどの程度のD2ブロックが必要か ドパミンD2受容体占有率が服薬に影響?:慶應義塾大学

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長引くせん妄、その関連因子は

 これまで、せん妄回復例については研究されてきたが、持続するせん妄に関連する因子については十分な研究は行われていなかった。スイス・チューリッヒ大学病院のSoenke Boettger氏らは、せん妄持続例とせん妄回復例の社会人口学的特性および治療法を比較し、せん妄の持続に関連する因子について検討を行った。その結果、「高齢」「認知症の既往」「脳がん」「がん終末期」「感染症」などの存在がせん妄の持続に関連していることを報告した。Palliative and Supportive Care誌オンライン版2014年9月5日号の掲載報告。 研究グループは、Memorial Delirium Assessment Scale(MDAS)を用いてせん妄の回復に関連する因子を、またKarnofsky Performance Status(KPS)を用いて機能改善に関連する因子を明らかにする検討を行った。被験者は、Memorial Sloan Kettering Cancer Center(MSKCC)の精神科から登録、ベースライン時(T1)、2~3日目(T2)、4~7日目(T3)に、MDASおよびKPSの評価を実施。せん妄持続例とせん妄回復例の社会人口学的特性および医学的変数を比較した。 主な結果は以下のとおり。・111例中26例に持続的なせん妄がみられた。患者背景として「高齢」「男性」「認知症併存」の割合が高かった。・せん妄患者のうち、がんと診断された者では、「脳がん」および「終末期」が、せん妄の持続または反応遅延に関連していた。・「消化器がん」については、せん妄回復との関連がみられた。・せん妄の治療において、感染症を有する場合は反応が遅く、通常1週間かかった。・せん妄持続例はベースラインから1週間の重症度がより高かった。・ベースライン時のMDASスコアは、せん妄持続例は20.1、T2およびT3におけるせん妄回復例は17~18.8、治療1週後(T3)のスコアはそれぞれ15.2、4.7~7.4であった。・ 治療1週後、せん妄持続例は意識、認知、臓器、知覚、精神運動行動、睡眠-覚醒サイクルのドメインにおいてより重度の障害がみられ、さらに機能障害も重篤であった。・高齢、認知症の既往、脳がん、がん終末期、感染症は結果に有意差をもたらした。・せん妄の重症度は、せん妄の持続または反応遅延に関連しており、せん妄の経過の延長と難治性を示すとともに、治療1週後の重度の機能障害と関連していた。関連医療ニュース せん妄管理における各抗精神病薬の違いは がん患者のせん妄治療に有効な抗精神病薬は… 定型vs.非定型、せん妄治療における抗精神病薬  担当者へのご意見箱はこちら

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人間失格【傷付きやすい】[改訂版]

今回のキーワード愛着障害境界性パーソナリティ障害空虚感情緒不安定自己愛依存「そんなに傷付く!?」みなさんが患者さんや学生さんと接している時、「そんなに傷付く!?」とびっくりしてしまったことはありませんか?世の中にはいろんな人がいます。気が強い人もいますし、逆に感じやすい人もいます。できることなら誰とでもうまくやっていきたいですよね。でも、うまくいかなくなった時、どう考えたら良いでしょうか? どう接したら良いでしょうか?「大人とは、裏切られた青年の姿である」今回は、この感じやすい心について、2010年の映画「人間失格」を取り上げてみました。原作は、永遠の青年文学と言われる太宰治の代表作であり、また彼の人生そのものであるとも言われています。いまだに多くの人たち、特に迷える若者たちの心をわしづかみにしています。彼の名言の1つに「大人とは、裏切られた青年の姿である」という文があります。この「裏切られた」という感傷的な表現をあえて使い、裏切るか裏切らないか、つまり人を信じることについて敏感になっているのは、そもそも人間不信が根っこにあり、人に対しての信頼感が揺いでいることがうかがえます。主人公はなぜ傷付きやすいのか? なぜ人間不信があるのか? そして、私たちはなぜ彼が気になるのか? これらの疑問も踏まえて、これからストーリーを追って詳しく探っていきましょう。トラウマ―心の傷まずは、冒頭の幼少期のシーンです。主人公の葉蔵が独りつぶやきます。「生まれて、すいません」と。いきなりの謎です。なぜ、子どもがそんなことを言うことができるのでしょうか? その謎の答えは、映画では描かれていません。しかし、原作で告白されています。実は、葉蔵にはトラウマ(心的外傷)があったのです。そのうちの1つは、家の女中や下男から性的虐待を受けていた可能性があることです。原作では「哀しい事を教えられ、犯されていました」という表現だけのため、どの程度なのか、または象徴的な言い回しなのかなどの解釈が分かれるところです。もう1つは、家族のような存在である女中や下男たちがお互いの悪口を陰で言い合っているのを幼少期から聞かされました。一貫して信じたい人を信じられなくさせる矛盾した二重の縛り、ダブルバインドです。さらに、太宰本人は実際に幼少期に、育ての母親とも言える女中と突然別離させられています(喪失体験)。だからでしょうか? 作品中では葉蔵の母親は登場しません。しかし、彼は物分かりが良すぎたのです。そして、それらを全て受け入れたのでした。そして、子ども心ながら「生き残りたい」「これ以上誰にも見捨てられたくない」という思い込みから、その究極の答えとして、自分を抑圧して本心を言えずに言われたままに従う良い子、そしてみんなの気を引く道化役を死に物狂いで演じ始めました。これが、彼の人間不信、自己否定の原点であったようです。だからこそ、生存の謝罪が口から突いて出てきたのでした。代償性過剰発達―研ぎ澄まされた能力生き残るためのサバイバーとしての必死の演技は、葉蔵に特別な能力を開花させました。それは、嫌われないようにそして演技がばれないようにするため、常に彼は相手の顔色を伺い、表情、動作、言動に敏感になっていきました。そして、観察力、感受性が研ぎ澄まされていったのです(代償性過剰発達)。ちょうど視覚障害者の聴覚が敏感になるように、生きづらさを代わりの能力で補いカバーしようとして、その能力が過剰に発達することです。自分の生き死にがかかっていることのない普通の家庭で育った子どもは、このような能力は備わらず、無邪気なままです。数々の太宰作品はなぜ感性が鋭く描かれているのかにも納得がいきます。学校での彼は、笑い者として実に見事に演じ、常にお茶目で人気者でした。ある時、学校の体育の時間にいつものように面白おかしく失敗してクラスメートたちみんなの笑いを誘うことに大成功をおさめます。しかし、その演技はよりによって、あるサエないクラスメートの竹一にだけこっそり見破られるのです。その瞬間、葉蔵は心の底から震え上がります。道化役に全てを捧げていた彼にとっては自分が自分でなくなるような感覚でしょうか。次に彼のとった行動は、竹一を自分の友人として味方につけて、取り込んだのでした。そもそも竹一ももしかしたら「さえない生徒」を演じていたのかもしれません。葉蔵と同じように観察力が鋭いのであれば、演技で人を欺くことができます。二人はそんな同じ匂いに惹き合ったようにも見えます。失体感症―失われる空腹感原作では、幼少期から葉蔵は空腹感を感じない体質であると描かれています。この原因は、トラウマによる不安や葛藤を押し殺す抑圧の心理メカニズムにより、空腹感などの身体的欲求などの感覚までもが押し殺され鈍くなっている状態が考えられます(失体感症)。私たちにも、周りへ気を使い過ぎると(過剰適応)、体の感覚が鈍くなる症状として現れます。さらに、自分の感情そのものにも鈍くなってしまう場合もあります(失感情症)。愛着障害―結べなくなる絆太宰が母親代わりの女中を喪失した外傷体験の代償は、計り知れません。もともと父親は地元の名士で議員でもあり、多忙でほとんど家を空けており、お世話をする女中たちや下男たちや兄姉たちとのかかわりがほとんどで、親からの愛情によるかかわりが乏しかったことが伺えます。そもそも、親、特に母親という特別な存在から無二の愛情を受けることで、子どもは自分が特別な存在であると実感します。自分にとって親が特別であり、同時に親にとっても自分が特別であること、この特別な結びつきの感覚こそ信頼感を育み、愛着という強く固い絆を生み出します。その絆の安心感を基に、やがて成長した青年は、様々な人たちと巡り会い、自分が選び同時に選ばれるというプロセスを経て、親友や恋人などとの新たな絆を作ろうとします。そして、選び取ること、選び取られることの大切さを知り、その特別な絆を深めようとします。葉蔵は、もともとこの愛着という絆がうまく育まれていなかったのでした(愛着障害)。愛着障害により、そもそも相手を信頼する時に安心感がないのです。その代わりに、「いつか捨てられるんじゃないか」「裏切られるんじゃないか」という強い恐れ(見捨てられ不安)が常に彼を支配していました。その後も、多くの女性が彼を求め、その女性たち全てが彼の居場所となりました。しかし、同時に、彼の心そのものはどこにも居場所がありませんでした。なぜなら、彼は、戦場のような場所で過ごした幼少期の体験によって、安心できる「居場所」という感覚そのものがなかったからです。そして、自分が選び抜いた誰か特別な人に愛情(愛着)を持つという発想そのものがなかったからです。空虚感―全てが空しい映画では、原作には登場しない中原中也との出会いが描かれます。最初は、絡み酒です。中原中也は「おまえは何の花が好きだ」「戦争の色は何色だ」と吹っかけてきます。その強がりは、彼の作風に反映されている不安や寂しさの裏返しであることが垣間見えます。見捨てられ不安で蝕まれた心は、世界が広がる青年期の多感な時期を迎えると、空しさで空っぽになってしまいます(空虚感)。自分の弱さや存在の危うさに敏感で繊細な点で、葉蔵と中原中也は似た者同士で、やがて惹き合っていきます。中原中也は、葉蔵にとって憧れであり、唯一の友情らしき感覚を味あわせてくれる存在でした。葉蔵が大切にしていた画集を質入れした直後に、中原中也が買い取り、葉蔵に渡すシーンは印象的です。しかし、葉蔵と中原中也はお互いに通じるものがあったのにもかかわらず、中原中也は自殺してしまいます。この出来事は、葉蔵の空虚感をさらに助長させていきます。操作性―巧みな人使い見捨てられ不安や空虚感があると、人はそれを満たすため、自分から人に働きかけて自分の思い通りにしようとして、人の気を惹くのがうまくなります(操作性)。葉蔵が従姉に優しくする場面が印象的ですが、何をしたら相手が喜ぶか完全に心得ています。その後も、持ち前のルックスに加えて、この操作性で次々と女性と関係を持つようになります。細かいところにも目が行き届くため、キャバレーであえて目立たない女給の常子にさり気なくお礼を言い、惚れられます。原作でも「女は引き寄せて、突っ放す」と語られています。情緒不安定―感受性の鋭さの裏返し子持ちの未亡人の静子と同棲するようになった時です。その娘から「本当のお父ちゃんがほしいの」という何気ない無邪気な言葉に、葉蔵は傷付き、打ちのめされます。彼は、感受性があまりに強くて繊細なため、子どもの言うことだから仕方がないとは思えないです。葉蔵の鋭い感受性は、裏を返せば、傷付きやすさを意味しています(情緒不安定)。その時に「裏切られた」「自分の敵だ」と感じたのでした。その後、静子が娘に「お父ちゃんは好きでお酒を飲んでいるのではないの」「あんまり良い人だから」と葉蔵を幸せそうにかばう会話を盗み聞きして、決意します。そして、そのまま立ち去り、二度と戻って来ることはありませんでした。その真意は、「自分のような馬鹿者は平和な家庭を壊してしまう」という自己否定、この幸せに自分は入れないという疎外感や嫉妬心(人間不信)、そして自分が消え去ることでこの幸せに水を差して懲らしめたいという懲罰欲などの複雑な思いが絡んでいそうです。スプリッティング(分裂)―貫けない愛情葉蔵は、「敵か味方か」「完璧な家庭でなければ別れる」と極端に白黒付けようとする感覚に囚われています(スプリッティング、分裂)。良い感情と悪い感情がバランスよく保てず、その中間のグレーゾーンであるちょうど良い「ほどほど」の関係性やささやかな「ほどほど」の幸せを実感するのでは物足りず、納得いかないのです。彼が求めるのは、究極的な信頼であり、究極的な幸福でした。発想が極端なのです。だからこそ、その後に出会うタバコ屋の良子とあっさり結婚してしまうのもうなずけます。良子は、葉蔵が酔っ払い断酒を破ったと打ち明けているのに、「だめよ、酔ったふりなんかして」「お芝居がうまいのね」といっこうに信じず、葉蔵に「信頼の天才」と言わしめたのでした。しかし、のちに妻の良子が不幸にも顔見知りにレイプされている現場に遭遇しても、彼は何とも声をかけられず、その場を立ち去ってしまいます。その後は、良子とは情緒的な交流なく、表面的に接することしかできません。彼は、完璧な信頼や幸福を失うという凄まじい恐怖におののいているばかりで、けっきょくその現実に向き合えず、良子と辛さを分かち合えず、逃げ出してしまいます。持ち前の意気地のなさとスプリッティングにより、たとえ不幸があっても何とか現状を維持して乗り越えていこうとするバランス感覚が欠けているのでした。パーソナリティの偏り葉蔵は、家財を遊びの軍資金にするため次々と質入れしています。そして、財産を食い潰す放蕩ぶりが仇となり、父親の引退をきっかけに、経済的に困窮し、落ちぶれていきます。現実が行き詰れば、空虚感はやがて自殺衝動を駆り立てます。そして、初めて自分が恋した常子と共に入水自殺を図ります。しかし、常子だけ死なせてしまい、自分は生き延びるのです。実際に、太宰も何度も自殺を企てています。そして、毎回違う女性が一緒でした。彼の自殺衝動は、本気で死を決しているというよりは、「生と死のギリギリの境をさ迷うスリルをあえて味わいたい」「そのスリルを通して生きている実感を噛みしめたい」という無意識の心理が働いているようです。他人を巻き込み、手の込んだことをするのは、逆に、生への執着を確かめたいからとも言えます。この心理は、昨今、話題になるリストカットや過量服薬などの自傷行為につながる心の揺らぎと言えます。葉蔵は、情緒不安定、空虚感、見捨てられ不安、スプリッティング、操作性、自殺衝動などの症状が揃っており、境界性パーソナリティ障害(情緒不安定性パーソナリティ障害)があると言えます。ただ、パーソナリティとは、あくまでその人のものごとの捉え方(認知)や感情の偏りなので、その良し悪しは周りとの相性や見方によって二面性があるとも言えます(表1)。表1 葉蔵の情緒不安定の二面性マイナス面プラス面「情緒不安定」「単純」「短絡的」「愛が重い」「感受性豊か」「観察力が鋭い」「純粋」「繊細(ナイーブ)」「愛が深い」自己愛―何ごとも自分の思いどおりにしたい葉蔵は、幼い頃から召使いを何人も抱えるお屋敷に住み、端正な顔立ちで何人もの幼なじみの女の子たちにチヤホヤされて過ごしてきました。そんな家柄、経済力、容姿に恵まれてしまったら、何ごとも自分の思い通りにしたいという気持ち(自己愛)が強く、思い通りにならなくなった時に、そのギャップで傷付きやすさも強まります。実際に、太宰も名誉欲しさに芥川賞の推薦を選考委員の大御所に懇願したという逸話はあまりにも有名です。葉蔵は、定職に就かず、ヒモのような生活を続け、「きっと偉い絵描きになってみせる」「今が大事なとこなんだ」といつまでも叶わぬ夢を追い、不健康なこだわりを持ち続けて、健康的なあきらめができないのです。幸せの青い鳥を追い続ける「青い鳥症候群」とも呼ばれ、現代でもある程度の年齢を重ねても「いつかビッグになる」と言い続ける男性や「いつか白馬の王子様が迎えに来る」と言い続ける女性が当てはまりそうです。ただ、自己愛のパーソナリティも二面性があり、高過ぎる理想と現実のギャップに苦しむ一方、自分を大切に思う気持ちが向上心として生きる原動力になることもあります(表2)。依存―すがりつき、のめり込み、歯止めが利かない葉蔵の空虚感は、果てしない底なし沼であり、人間関係ではけっきょく満たされません。この満たされない心は、やがてお酒や薬物で満たされるようになります。バーで居候していた時は、いつも酔っ払い、痩せていきます。何かにすがり、のめり込み、歯止めが利かないのです。健康的な人の「もうこれぐらいで止めておこう」という節度、限度の加減がないのです。例えば、「もっと命がけで遊びたい」「生涯に一度のお願い」「そこを何とか頼む」などの葉蔵のセリフが分かりやすいです。このようにある一定の枠組み(決めごと)から外れやすい性格傾向は、依存と呼ばれます。人間関係に溺れるだけでなく、アルコールに溺れ、やがて、睡眠薬、麻薬にも溺れていき、依存の対象が広がっていきます。依存のパーソナリティも二面性があります(表2)。人間関係に溺れるためには、相手をしてくれるだれかがいなければなりません。そのため、とても甘え上手になっていきます。さらに、特にアルコール、薬物などの依存物質を乱用してしまうと、やがて止めることだけで手足が震えたり自律神経が乱れたりする離脱症状(いわゆる禁断症状)と呼ばれる体が欲して言うことを聞かなくなる症状が現れ、アルコール依存症や薬物依存症に陥っていきます。最終的に、アルコールと薬物で体がボロボロになってしまった葉蔵は、後見人の平目の助けにより、入院隔離されます。ようやく、断酒、断薬が強制的ながら徹底されるのです。依存症の患者は、もともと枠組みが外れやすいということがあるので、生活や考え方の枠付けを徹底する治療を行います。例えば、規則正しい生活リズムや「ダメなものはダメ」というルールを守ることです。表2 葉蔵のパーソナリティの偏りの特徴特徴マイナス面プラス面情緒不安定性感じやすく、常に生きるか死ぬかの極限にいる。感受性が豊かで、観察力が鋭く、気配りに長けている。自己愛性高過ぎる理想と現実のギャップに苦しむ。自分を大切に思う気持ちが、向上心として生きる原動力になる。依存性すがりつき、のめり込み、溺れやすい。甘え上手共依存―依存されることに依存する病葉蔵の、美形に加えて、陰のある物憂げな表情や、漂う孤独の匂い、弱弱しくよろめきそうなたたずまいは、女性に助けてあげたいという気にさせる魅力や魔力が潜んでいるようです。これは、実際の太宰のポートレートを見てもそう感じさせます。また、雰囲気だけでなく、「金の切れ目が縁の切れ目ってのはね、解釈が逆なんだ」とさりげなく知性を披露するインテリぶりや、言葉少なげで独特の間があることは、守ってあげたいという女性の母性本能をさらにくすぐるようです。実際に、彼が巡り会う女性は、人一倍世話焼きで母性本能が強いです。「いいわよ、お金なんか」という下宿先の世話焼きな礼子、「うちが稼いであげてもダメなん?」という女給の常子、居候させマンガの仕事の依頼をとってきてあげる静子、「信頼の天才」である良子、キスされて麻薬を渡してしまう寿、そして母性本能に溢れる鉄など強烈なキャラが多いです。彼女たちに共通するのは、特別に華があるわけではなく、どこか訳ありで陰や引け目があり、彼女たちは自分に対する自己評価が低く劣等感がありそうです。このような劣等感のある女性が「この人の苦しみを分かってあげられるのは私だけ」と優越感に浸ることができるからこそ、葉蔵はもてはやされるのです。世話焼きとしてお世話をすることで、「私はこんなにこの人の役に立っている」と、自己評価を保とうとします。葉蔵の方も、そんな劣等感や母性本能の強い匂いのする女性をあえて嗅ぎ分けています。このように、必要とされることを必要とする、言い換えれば、依存されることに依存する状態は、共依存と呼ばれます。ややこしいですが、これも一つの依存の形です。そして、実際に、依存症の人が依存症であり続けることができる大きな原因として、その人のパートナーや家族が共依存であり、依存症の治療の妨げになっていることがよくあります。ただ、この共依存のパーソナリティも二面性があり、その良し悪しは人それぞれとも言えます(表3)。表3 葉蔵を取り巻く女たちの共依存の二面性マイナス面プラス面「お節介」「過保護」「過干渉」「押しつけがましい」「甘やかし」「世話焼き」「母性本能に溢れる」「面倒見がいい」「尽くす」「献身的」「優しい」退行―幼少期の生き直し父親の死に伴い、一切の面倒を見るという兄の働きかけにより、葉蔵は故郷の津軽に帰り、療養生活という名目で、年老い世話係の鉄と二人で暮らすことになります。父親にゆかりのある人ということで、どうやら昔の父親の愛人のようです。もともと子どもに恵まれなかった鉄は、葉蔵に強い母性的な無二の愛情を注ぎます。「こんな僕でも許してくれるのか」と言う葉蔵に対して、鉄は優しくそして力強く言い放ちます。「いいんだ」「神様には私が謝るので」「何があっても私が護(まも)る」と。その後に、駐在とのやり取りで、鉄が葉蔵をかばう様子は母そのものです。母性本能の強い鉄と過ごす日々は、葉蔵に安らぎを与えてくれました。どんどんと子ども返り、赤ちゃん返りしていきます(退行)。童心に返ったように無邪気に海岸ではしゃぎ、子守唄で心地良くなります。胎内回帰の寝像のポーズは、子宮の中にいる心地良さを表しているようです。退行を通して、かつて手に入らなかった愛着を育み、幼少期を生き直そうとしているようです。客観視―自分を俯瞰(ふかん)して見つめ直す視点原作では、鉄との愛着を育む他愛のない日々が綴られ、締めくくられます。そして、葉蔵は最後に語ります。「今の自分には幸福も不幸もありません」「ただ、一切は過ぎていきます」と。最後は、「現実は何も解決してくれない」という受身の虚しさに堕ちていく退廃的な美学を描こうとしているようです。諸行無常の響きさえ聞こえてきそうなエンディングです。実際に、太宰はこの作品の完成後に自殺を遂げています。一方、映画ではもう一つのエンディングが用意されていました。原作とは一味違った展開です。葉蔵は、鉄の愛情に育まれてついに巣立つのです。愛情に満たされた、平穏でのどかな故郷から東京に出発する電車の中では、軍人たちの間で戦争に入っていくという緊張感ある会話がなされ、現実世界に引き戻されています。その後、突然、乗客が過去に出会った全ての人たちに変わり、楽しく騒ぎます。まるで走馬灯のように過去を振り返る幻想的なシーンです。その中には、子ども時代の自分と向き合うシーンがあります。それは、過去から現在に至る自分を俯瞰(ふかん)して見つめ直す視点が身に付いたことを象徴しているようです。そして、葉蔵はつぶやきます。「今の自分には幸福も不幸もありません」「ただ、一切は過ぎていきます」と。そこには、かすかな希望が見えます。スプリッティングという両極端なものごとの捉え方による「阿鼻叫喚」な生き様を乗り越えて、安定した情緒で「現実を見つめ直して受け入れていく」という、淡々として自分を客観視できる能動的な人生へと回復していく可能性をほのめかしているようにも思えます。コミュニケーションのコツ臨床現場などで、患者さんやその家族が私たちに対して「よくしてくれる」とか「ちゃんとしてくれない」とかと感じる(転移)と、それが態度に表れることがあります。そんな態度を見た私たちも彼らを「良い人だ」とか「困った人だ」と感じてしまい(逆転移)、最悪のシナリオは、関係がとても悪くなり、関係を続けることが難しくなることです(巻き込まれ)。これは、教育の現場で、学生が相手でも同じです。もしも患者や学生が、葉蔵のような情緒不安定なパーソナリティの偏りがある人だった時、どうすればいいでしょうか?その人は、相手が良い人と思ったらすぐに大好きになり、いつもべったりになります(理想化)。一方、期待し過ぎるあまりちょっとした行き違いが起こると、すぐに裏切られたと思い込み、大嫌いになって、絶交します(幻滅)。このように、すぐに近付いたり、すぐに遠ざかったりして、安定していないのです。そのような時、私たちがその人の不安定な対人距離をよく理解すると、コミュニケーションのコツが見えてきます。巻き込まれコミュニケーションのコツは、3つあります。まず、相手をよく知ることです。相手の心(認知パターン)をよく理解し、次の動き(行動パターン)を予測することです。「世の中に怖いものはない。怖いものがあるとすれば、それは理解がないことだ」(キュリー夫人)という名言がありますが、ものごとは、得体が知れないと不気味ですが、正体が知れると面白味があるものです。私たちは、むしろ興味を持って、「不思議な人だな」とじっくり観察する心の余裕を持つことが大切です。次に、こちらがどっしりと構え、その人の動きに振り回されないことです。つまり、もともとあるべき一定の心の間合い(心理的距離)をとり続けることです。例えば、その人に好かれているから、または文句を言われるからとの理由で特別扱いをして対応を変えないこと、つまり間合いを詰めないことです。近付きすぎたら一歩退きますが、逆に、遠ざかっても見放さず、温かく見守り続けることです。この間合いが、長い目で見ると本人に安心感を与えます。スタッフで足並みを揃えるのも大事です(標準化)。また、たとえ「傷付いた」と言われても、むやみに動揺せず、「この人はこういう人なんだ」と受け流すことです(客観視)。しかし、だからと言って見限らず、見捨てず、見守ることです。相手を怖がってとにかく距離を置くのと、相手をよく理解して必要だから距離を置くのでは、その心の余裕は全く違います。もう1つは、その人は私たちに何かと期待し過ぎる傾向があるので、私たちが自分にできることとできないことの線引き(限界設定)をして、その人になるべく前もって伝えることです。「言った、言わない」のドツボにはまらないために、誠実に、さりげなく書面にするのも得策です。これらのコツは、「巻き込み」「巻き込まれ」を防ぐために、私たちのためだけでなく、その人のためにもなります。表4 コミュニケーションのコツ相手をよく知る相手の心(認知パターン)をよく理解する。次の動き(行動パターン)を予測する。じっくり観察する心の余裕を持つ。心の間合いどっしりと構えて対応を変えない(心理的距離)。スタッフ同士で足並みを揃える(標準化)。「この人はこういう人なんだ」と受け流す(客観視)線引きできることとできないことを線引きする(限界設定)。前もって伝える。書面にする。「人間失格」を乗り越えて「人間合格」になる私たちは10代から20代の間の多感な青年期に、勉強、部活、仕事、恋愛を通して、人間関係の幅や深みが一気に広がり、世界が開けていきます。そして、気付かないうちに人の心を傷付けたり、逆に傷付けられたりする経験を通して、人をどこまで信じていいのか不安や迷いが生まれます。そんな時期に、その感受性を過激に、そして必死に体現してくれるこの「人間失格」の葉蔵は、さ迷える私たちに衝撃を与え、重なり合い、そして自分の状況を振り返らせ、人を信じることとはどうあるべきかを気付かせてくれます。この作品を足がかりとして、その青年期の信じることの危うさを乗り越えた私たちは、ほどよい信頼感や自信(自己肯定感)を実感できる「大人」に成長しているのではないでしょうか?そんな私たちは「人間合格」と胸を張ることができるのではないでしょうか?1)「人間失格」(集英社文庫) 太宰治2)「愛着障害」(光文社新書) 岡田尊司3)「境界性パーソナリティ障害」(幻冬舎新書) 岡田尊司4)「リストカット」(講談社現代新書) 林直樹

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ベンゾジアゼピン系薬とアルツハイマー病リスク/BMJ

 アルツハイマー病リスクの増大に、ベンゾジアゼピン系薬の使用が関連していることが、フランス・ボルドー大学のSophie Billioti de Gage氏らによるケースコントロール試験の結果、示された。ベンゾジアゼピン系薬は先進諸国では使用の頻度が高く、勧告にもかかわらず高齢者では慢性的に投与されている。ベンゾジアゼピン系薬使用者での認知症リスクの増大は確認されているが、因果関係については明らかになっていない。著者は今回の結果を踏まえて、「保証のないベンゾジアゼピン系薬の長期使用については、公衆衛生問題として検討するべきである」と指摘し、「高齢者におけるベンゾジアゼピン系薬の処方は、診療ガイドラインに準じるべきである(半減期が短い薬を優先して短期的に用いる)」とまとめている。BMJ誌オンライン版2014年9月9日号掲載の報告より。最低5年服用者とアルツハイマー病リスクとの関連をケースコントロール試験 研究グループは、アルツハイマー病リスクとベンゾジアゼピン系薬を最低5年間服用していたこととの関連について調べた。検討では、用量反応性と、治療に関連している可能性がある前駆症状(不安、うつ病、不眠症)についても考慮に入れた。 カナダのケベック州健康保険プログラムのデータベース(RAMQ)から、初めてアルツハイマー病と診断された1,796例(ケース群)を特定して6年間追跡し、性別、年齢群、追跡期間で適合した7,184例(対照群)と比較検討した。両群の被験者とも、2000~2009年に同地に居住していた66歳超の高齢者から無作為にサンプリングされた。 主要評価項目は、アルツハイマー病と、診断の最短5年前からベンゾジアゼピン系薬を服用していたこととの関連で、多変量条件付きロジスティック回帰分析法を用いて評価した。ベンゾジアゼピン系薬の使用について、これまでの曝露を検討し、次いで、処方投与量(1~90日、91~180日、180日超)でみた累積用量および薬物半減期で層別化し評価を行った。使用者の発病リスクは1.5倍、累積用量が多いほどリスクは増大 結果、ベンゾジアゼピン系薬の使用は、アルツハイマー病のリスク増大と関連していた。補正後オッズ比は1.51(95%信頼区間[CI]:1.36~1.69)で、さらに不安・うつ病・不眠症で補正後も、同関連は変わらなかった(補正後オッズ比:1.43、95%CI:1.28~1.60)。 ベンゾジアゼピン系薬使用との関連について、累積用量が処方91日未満では認められなかったが、91~180日(1.32、1.01~1.74)、180日超(1.84、1.62~2.08)と、累積用量が多くなるほど関連は増大することが示された。また、短時間作用薬では1.43(1.27~1.61)、長時間作用薬は1.70(1.46~1.98)で、薬物半減期との関連もみられた。

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統合失調症のQOLに及ぼす副作用の影響度は

 統合失調症における効用値(utility)に治療薬が及ぼす影響を検討した研究の大半は、疾患のさまざまな過程に焦点を当てたものであった。フランス・Creativ-Ceutical社のA Millier氏らは、観察研究のデータを用いて、統合失調症患者の効用値に及ぼす治療関連副作用の影響について評価、定量化した。その結果、統合失調症治療では、抗精神病薬に関連する主な副作用である、錐体外路症状(EPS)、鎮静、体重増加、性機能不全などが、効用値に有意な影響を及ぼしており、とくにEPSの影響が最も大きいことが明らかにされた。2年間にわたる、フランス、英国およびドイツの多施設コホート研究の結果、報告されたもの。Journal of medical economics誌オンライン版2014年9月11日号の掲載報告。 検討には2年間にわたる、フランス、英国およびドイツの多施設コホート研究であるEuropean Schizophrenia Cohort(EuroSC)のデータを使用した。被験者には、6ヵ月ごとにSubjective Side Effect Rating ScaleとEQ-5D質問票に記入してもらい、抗精神病薬の副作用としてEPS、体重増加、鎮静および性機能不全を評価した。解析は、最初に二変量解析を実施し、副作用の有無別に効用値を評価した。次に、効用値のランダム効果回帰解析を実施し、ランダム効果は同一人物の反復測定の結果を交絡因子で調整した。最後に、得られた結果を既報と比較した。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者1,208例を対象に検討を行った。・ベースラインライン時、最も多く報告された副作用はEPS(患者の約60%)で、続いて鎮静、体重増加(それぞれ患者の50%)、性機能不全(患者の約30%)であった。・症状の重症度、機能的能力と効用値との間に、有意な関連がみられた。・副作用の訴えがなかった患者のEQ-5D indexスコアは0.81で、EPS(0.70)、性機能不全(0.67)、鎮静(0.70)または体重増加(0.72)を訴えた患者と比較して高値であった。・ランダム効果モデルにより、EPSでは効用値が0.042減少、体重増加では0.022、性機能不全では0.022、鎮静では0.019の減少がみられた。・今回得られた結果は、試験方法が多岐にわたることや、副作用の定義がさまざまであったこと、また体重増加、鎮静、性機能不全のデータが少なかったことから外的妥当性の検討は困難であったが、既報の結果と異なる点はほぼないと思われた。関連医療ニュース 統合失調症の陰性症状改善は何と相関するか 統合失調症の妄想低減へ、新たな介入方法 日本人統合失調症患者の自殺、そのリスク因子は:札幌医大  担当者へのご意見箱はこちら

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統合失調症と強迫性障害の関連が明らかに

 統合失調症と強迫症/強迫性障害(OCD)が併存していることは少なくないが、これまで両障害の臨床的および病因学的な関連性はほとんど解明されていなかった。統合失調症と強迫性障害が共有する病因学的因子を調べることは、臨床医、研究者および患者に有用な情報の提供に結びつく可能性がある。デンマーク・オーフス大学のSandra M. Meier氏らは、統合失調症のリスク因子としての強迫性障害について、全国的な調査を行い、同国の強迫性障害の診断が統合失調症および統合失調症スペクトラム障害との関連性が高いことを報告した。著者は、「観察されたリスクの増大は、強迫性障害、統合失調症、統合失調症スペクトラム障害がおそらく共通の原因パスウェイ上に位置することを示すものである」と述べている。JAMA Psychiatry誌オンライン版2014年9月3日号の掲載報告。強迫性障害の既往歴が統合失調症のリスク増大と関連 著者らは、強迫性障害患者は統合失調症および統合失調症スペクトラム障害の発症リスクが強いのかを評価し、また、強迫性障害の家族歴が統合失調症と統合失調症スペクトラム障害のリスク因子であるかを調べた。デンマーク全国レジスターからの個人データを追跡し、総計4,500万人年を対象とした前向きコホート研究を行った。全生存解析は、性別、年齢、暦年、両親の年齢、出生地で補正して行った。主要アウトカムは、強迫性障害の既往歴、統合失調症および統合失調症スペクトラム障害の最初の診断(病院、外来クリニック、緊急医療部門での精神科による)のリスクで、発生率比(IRR)と95%信頼区間(CI)を算出して相対リスクを評価した。 統合失調症のリスク因子としての強迫性障害についての調査の主な結果は以下のとおり。・検討は、1955年1月1日~2006年11月30日に生まれた総計300万人を対象に行われ、1995年1月1日~2012年12月31日まで追跡した。・同期間中に、統合失調症または統合失調症スペクトラム障害の発症は、3万556例であった。・強迫性障害の既往歴は、後年の統合失調症(IRR:6.90、95%CI:6.25~7.60)、統合失調症スペクトラム障害(同:5.77、5.33~6.22)の発症リスク増大と関連していた。・同様に、両親に強迫性障害の診断歴があることは、統合失調症(同:4.31、2.72~6.43)、統合失調症スペクトラム障害(同:3.10、2.17~4.27)のリスク増大と関連していた。・これらの結果は、精神疾患の家族歴や本人の病歴で補正後も変わらなかった。

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日本では認知症への抗精神病薬使用が増加

 日本の認知症高齢者に対する向精神薬の使用状況を、医療経済研究機構の奥村 泰之氏らが調査した。その結果、いくつかの国では、認知症高齢者への抗精神病薬使用に対し、安全上の警告が出されているにもかかわらず、日本では適応外の抗精神病薬使用がわずかではあるが増加していた。International psychogeriatrics誌オンライン版2014年9月12日号(2014年11月5日訂正公開)の報告。 2002~2010年の社会医療診療行為別調査(SMCA-PHI、毎年6月審査分の全国代表断面調査)データを利用した。コリンエステラーゼ阻害薬が処方された65歳以上の外来患者1万5,591例における調査月の向精神薬使用を調査した。 主な結果は以下のとおり。・2008~2010年における、認知症高齢者に対する向精神薬は、鎮静薬・睡眠薬(27.3%)、抗精神病薬(21.3%)、抗うつ薬(11.4%)、気分安定薬(2.8%)であった。・2002~2004年と2008~2010年を比較すると、第二世代抗精神病薬の使用が、4.9%から11.2%に増加し、第一世代抗精神病薬の使用は、17.4%から12.1%に減少していた。・全体の抗精神病薬使用の普及率で調整後、抗精神病薬の使用は1.1倍増加していた。・クエチアピンが4.8倍増加、リスペリドンが1.8倍増加していた一方で、ハロペリドールは2.3倍減少した。 本結果を踏まえ著者らは、「認知症に伴う重篤な興奮、攻撃性、精神症状に対する抗精神病薬の有効性について、緊急に評価する必要があることが示された。さらに、抗精神病薬全体の使用を減少させるために、心理社会的介入および抗精神病薬の離脱戦略が必要である」とまとめている。関連医療ニュース 認知症のBPSDに対する抗精神病薬のメリット、デメリット 認知症への新規抗精神病薬、有害事象のモニタリングが不十分 脳血管性認知症患者に非定型抗精神病薬を使用すべきか  担当者へのご意見箱はこちら

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急性期統合失調症、2剤目は併用か 切り換えか:順天堂大学

 順天堂大学の八田 耕太郎氏ら精神科救急医療機関の多施設共同研究グループ(JAST study group)は、統合失調症の急性期患者でリスペリドンまたはオランザピンの早期治療反応不良(ENR)例について、それぞれへの切り替えvs. 追加併用の検討を行った。結果、リスペリドンENR患者でオランザピンへの切り替えは、オランザピン追加併用よりもわずかだが優れる可能性が、一方でオランザピンENR患者ではリスペリドン追加併用がリスペリドン切り替えよりもわずかに優れる可能性が示されたことを報告した。Schizophrenia Research誌2014年9月号の掲載報告。 検討は、精神科救急医療部門で統合失調症の新規入院急性期患者を適格とし、評価者盲検無作為化試験にて行われた。最初に投与した抗精神病薬(リスペリドン[RIS]またはオランザピン[OLZ])について、ENR(Clinical Global Impressions-Improvement[CGI]尺度:2週時点で4以上)であった患者を、もう一方の抗精神病薬を追加併用する群、または切り替える群に無作為に割り付けて検討した(RIS+OLZ vs. RIS-OLZ、OLZ+RIS vs. OLZ-RIS)。 主な結果は以下のとおり。・リスペリドン治療を2週間受けた患者60例のうち、早期治療反応(ER)例は33例、ENRは27例であった。後者の患者のうちRIS+OLZに14例、RIS-OLZに13例が割り付けられた。・あらゆる要因による治療中止までの期間について、RIS+OLZ群(54.1日、95%信頼区間[CI]:41.3~67.0日)は、RIS-ER群(同:68.7日、61.2~76.2日)よりも有意に短かった(p=0.050)。・一方、RIS-OLZ群(同:58.5日、43.1~73.9日)はRIS-ER群と比較し、有意な差はなかった(p=0.19)。・オランザピン治療を2週間受けた患者60例のうち、ER例は36例、ENRは24例であった。後者の患者のうちOLZ+RISに11例、OLZ-RISに13例が割り付けられた。・あらゆる要因による治療中止までの期間について、OLZ-RIS群(56.1日、95%CI:40.7~71.5日)は、OLZ-ER群(同:74.9日、68.5~81.3日)よりも有意に短かった(p=0.008)。・同期間について、OLZ+RIS群(同:64.6日、49.6~79.6日)はOLZ-ER群と比較し、有意な差はなかった(p= 0.20)。 リスペリドンENR患者でオランザピンへの切り替えは、オランザピン追加併用よりもわずかだが優れる可能性が、一方でオランザピンENR患者ではリスペリドン追加併用がリスペリドン切り替えよりもわずかに優れる可能性が示された。結果を踏まえて著者らは、「これら所見のように日常診療を修正することが妥当か、さらなる検討を行う必要がある」とまとめている。関連医療ニュース 統合失調症治療、ベンゾジアゼピン系薬の位置づけは オランザピンによる急性期治療、心血管系に影響 統合失調症の急性増悪期、抗精神病薬の使用状況は?:国立精神・神経医療研究C  担当者へのご意見箱はこちら

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ミノサイクリンの投与は統合失調症に本当に有用か:藤田保健衛生大学

 近年、統合失調症患者にミノサイクリンを投与することで精神症状が改善するといわれている。藤田保健衛生大学の大矢 一登氏らは、抗精神病薬による治療を受けている統合失調症患者に対するミノサイクリン増強療法に関する総合的なメタ解析を行った。Human psychopharmacology誌オンライン版2014年8月4日号の報告。ミノサイクリンは統合失調症の精神病理を改善 PubMed、PsycINFO、Google Scholar、Cochrane Library databasesから、2014年6月2日までに公表されたデータを抽出した。ミノサイクリンとプラセボを比較した無作為化比較試験(RCT)から得られた患者データを用い、系統的レビューおよびメタ解析を行った。相対リスク(RR)、標準化平均差(SMD)、95%信頼区間(95%CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・4件のRCT、330例の患者データが抽出された。・ミノサイクリンはプラセボと比較し、PANSS総スコア(SMD:-0.70)、陰性尺度(SMD:-0.86)、総合精神病理尺度(SMD:-0.50)の減少で優れていた。しかし、陽性尺度(SMD:-0.26)、うつ症状(SMD:-0.28)では差が認められなかった。・ミノサイクリンは、すべての原因による中止(RR:1.10)、効果不十分による中止(RR:0.42)、有害事象による中止(RR:1.56)、死亡による中止(RR:3.18)においてプラセボと同等であった。・ミノサイクリンは、錐体外路系副作用のスコアにおいてプラセボよりも優れていた(SMD:-0.32)。 今回の結果から、ミノサイクリンは統合失調症の精神病理(とくに陰性症状)を改善し、忍容性も良好であることが示唆された。■関連記事統合失調症治療に抗炎症薬は有用かテストステロンは統合失調症治療の標的となるか治療抵抗性統合失調症に対する漢方薬「抑肝散」の有用性:島根大学

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新規抗てんかん薬単剤療法-治療戦略は変わる?-

2014年9月3日(水)、グラクソ・スミスクライン株式会社は「てんかんの薬物療法の課題と今後の展望」をテーマに、都内で第2回てんかんメディアセミナーを開催した。本セミナーでは、大澤 真木子氏(日本てんかん学会理事長)より「学会・医師の立場から見た本邦のてんかん診療における課題・背景」と題した講演、山本 貴道氏(聖隷浜松病院院長補佐/てんかんセンター長)より「本邦におけるてんかん診療の現況と新規抗てんかん薬ラミクタール単剤療法認可の意義」と題した講演が行われた。てんかん治療の現状わが国のてんかん患者の割合は、およそ100人に1人と言われている。てんかんは、子供に多いが、近年高齢者における発症率も上昇傾向にあり1)、幅広い年齢で発症する脳神経の疾患である。てんかんの治療には薬物治療と外科治療があるが、通常は薬物治療が行われ、これは基本的に単剤治療が主である。その理由としては、約6割の患者が1剤で発作をコントロールできていること2)、副作用や薬物間相互作用の軽減による安全性の確保などが挙げられる。新規抗てんかん薬の課題しかしながら、近年相次いで発売されている新規抗てんかん薬は、わが国では併用療法での承認にとどまり、単剤で用いることができていなかった。そのため、いまだに旧来薬中心の治療が行われ、新規抗てんかん薬における単剤療法時の副作用データや、単剤療法の第一選択薬としての治療実績に関するデータが十分に収集できていない現状であった。新規抗てんかん薬単剤治療の利点わが国とは異なり欧米などでは、単剤療法の第一選択薬として新規抗てんかん薬が処方されるケースも少なくない3)。これは、新規抗てんかん薬は、従来の抗てんかん薬よりも、重篤となりやすい晩期型の副作用(脳症、白血球減少、再生不良性貧血など)が現れにくいという特徴があるためである4)。このような状況の中、ようやくわが国でも、先月初めて新規抗てんかん薬ラミクタールの単剤療法が承認された。現時点でラミクタール単剤療法の経験は未だ多くはないが、投与初期の漸増段階から効果が発揮され、患者の約9割が発作の消失ないし減少に至ることが報告されている5)。とくに、全身けいれんを起こすような症例では有効性が高く、第一選択となりうる。また、妊娠を希望している、もしくは将来的に妊娠を視野に入れている女性も、ラミクタール単剤療法が適していると言え、今回の単剤療法の承認によって従来薬からラミクタールへのさらなるシフトが起こる可能性がある。今回の承認により、てんかん患者が受ける身体的負担が軽減し、患者の生活の質をより高く保つことができる可能性が出てきた。さらに、医療者側にとっても、てんかんを治療するうえで薬剤の選択肢が広がったことは喜ばしく、このたびの承認の意義は大きいと言えよう。1)Cloyd J, et al. Epilepsy Res. 2006; 68 suppl 1: S39-S48.2)Kwan P, et al. N Engl J Med. 2000; 342: 314-319.3)Pickrell WO, et al. Seizure. 2014; 23: 77-80.4)Schmidt D, et al. BMJ. 2014; 348: g254.5)Yamamoto T, et al. Brain & Nerve. 2014; 66: 59-69.

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