サイト内検索|page:139

検索結果 合計:5821件 表示位置:2761 - 2780

2761.

統合失調症の日本人高齢者に対するブレクスピプラゾールの長期有効性、安全性

 東京女子医科大学の稲田 健氏らは、統合失調症の日本人高齢者に対するブレクスピプラゾールの長期的な有効性、安全性、忍容性を評価するため、検討を行った。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2020年10月6日号の報告。 4週間の切り替え期間と52週間の非盲検期間の2つのフェーズで構成された56週間にわたるブレクスピプラゾール長期試験の事後分析を行った。陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)合計スコアの平均変化量、治療反応率、治療中に発現した有害事象(TEAE)の数と発生率、その他の安全性パラメータの分析には、年齢層ベース(65歳以上の高齢者と65歳未満の非高齢者)の記述統計学を用いた。 主な結果は以下のとおり。・208例中33例が高齢者であった。・高齢者の治療継続率は54.5%であり、56週目のブレクスピプラゾールの1日投与量および治療期間は、非高齢者と同様であった。・ベースラインから56週目までのPANSS合計スコアの平均変化量は、高齢者で-13.8であり、非盲検期間を通じて改善効果は維持された。・非高齢者のPANSS合計スコアの平均変化量は-9.0であり、高齢者と同等であった。・TEAEの発生率は、高齢者で97.0%、非高齢者で82.3%であった。・高齢者におけるTEAEの重症度は、ほとんどが軽度(75.8%)または中等度(18.2%)であり、治療中止に関連するTEAEの発生率は、非高齢者(13.1%)よりも高齢者(9.1%)のほうが低かった。・高齢者における主な有害事象は、鼻咽頭炎(30.3%)、統合失調症症状の悪化(27.3%)であった。・安全性プロファイルは、高齢者と非高齢者で類似していた。 著者らは「ブレクスピプラゾールは、日本人高齢者の統合失調症治療に対し安全かつ効果的であることが示唆された」としている。

2762.

認知症予防に対するサウナの効果

 サウナのような温熱環境の繰り返しの利用は、認知症発症を予防するうえで、有益である可能性が示唆されている。しかし、疫学的エビデンスはあまり多くない。フィンランド国立保健福祉研究所のPaul Knekt氏らは、サウナによる温熱環境(サウナの利用頻度、セッション回数、滞在時間、温度)とその後の認知症発症リスクとの関連を調査するため、プロスペクティブコホート研究を実施した。Preventive Medicine Reports誌2020年10月2日号の報告。 対象は、Finnish Mobile Clinic Follow-up Surveyにおける認知症でない30~69歳の男女1万3,994例。フォローアップ期間39年の間に、1,805例が認知症と診断された。サウナの利用状況は、アンケートにより収集した。Coxモデルに基づく分析には、サウナ利用変数と潜在的な交絡因子を含めた。 主な結果は以下のとおり。・サウナの利用が4回/月未満または利用していない人と比較した9~12回/月の人の認知症発症ハザード比は、以下のとおりであった。●フォローアップの最初の20年間のハザード比:0.47(95%CI:0.25~0.88)●フォローアップ期間全体(39年間)のハザード比:0.81(95%CI:0.69~0.97) 著者らは「サウナの利用が、認知症の発症に対し保護的に作用するという仮説は支持された。サウナ利用によるベネフィットを検証するためには、さらなる研究が求められる」としている。

2763.

双極性障害の向精神薬多剤併用に影響を及ぼす因子~MUSUBI研究の分析

 北海道・足立医院の足立 直人氏らは、医師が双極性障害に用いる治療薬を選択する際に影響を及ぼす因子を明らかにするため、日本における全国調査のデータを用いて検討を行った。Human Psychopharmacology誌オンライン版2020年10月22日号の報告。 精神科クリニック176施設より、双極性障害外来患者3,130例の臨床データを、連続的に収集した。患者の一般的特性5項目(性別、年齢、教育、職業、社会的適応)、患者の精神疾患特性5項目(発症年齢、併存する精神疾患、ラピッドサイクラー、精神病理学的重症度、フォローアップ期間)、医師特性5項目(性別、年齢、専門医経験年数、開業年数、開業場所)の合計15項目について評価を行った。薬物療法の指標として、向精神薬(気分安定薬、抗うつ薬、抗精神病薬、抗不安薬、催眠鎮静薬)の数を用いた。各クリニックから収集したデータを分析した。 主な結果は以下のとおり。・向精神薬の数と関連が認められた因子は、以下の7項目であった。 ●患者の社会的適応 ●患者の精神病理学的重症度 ●患者の併存する精神疾患 ●患者のフォローアップ期間 ●医師の年齢 ●開業年数 ●患者の教育年数・重回帰分析では、疾患重症度(不十分な社会的適応、併存する精神疾患)および難治性の疾患経過(長期フォローアップ期間)は、向精神薬の数と有意な関連が認められた。 著者らは「双極性障害に対する向精神薬の多剤併用は、医師に関連する因子よりも、患者に関連する因子のほうが、影響力が大きいことが示唆された」としている。

2764.

境界性パーソナリティ障害患者の再入院と抗精神病薬使用量との関係

 国立精神・神経医療研究センターの山田 悠至氏らは、境界性パーソナリティ障害の入院患者における再入院に関連する予測因子を特定するため、検討を行った。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2020年10月10日号の報告。 本観察研究では、2013年1月~2016年1月に国立精神・神経医療研究センター病院に入院した境界性パーソナリティ障害患者83例を対象に評価を行った。データは、電子カルテよりレトロスペクティブに収集した。 主な結果は以下のとおり。・再入院群と非再入院群を比較すると、入院時の抗精神病薬の1日量(クロルプロマジン換算量)および精神疾患の重症度に有意な差は認められなかった。・多変量ロジスティック回帰分析では、退院時にクロルプロマジン換算400mg超の抗精神病薬が使用されていると、1年以内の再入院率の上昇が認められた。 著者らは「境界性パーソナリティ障害患者に対する退院時の高用量抗精神病薬の使用は、再入院のリスク因子である可能性が示唆された」としている。

2765.

双極性うつ病に対する補助的ブライトライト光療法~メタ解析

 双極性障害の効果的な補助療法の1つとして、ブライトライト光療法(BLT)が報告されている。これまでのメタ解析では、光療法による補助療法が、双極性うつ病の重症度を有意に改善させることが示唆されている。しかし、メタ解析に含まれた多くの研究は、ケースコントロール研究であり、不眠症治療と組み合わせたBLTに焦点が当てられていた。大分大学の平川 博文氏らは、双極性うつ病に対する補助的BLTに関するランダム化比較試験(RCT)を抽出し、メタ解析を実施した。Brain and Behavior誌オンライン版2020年10月9日号の報告。 EMBASE、MEDLINE、Scopus、Cochrane Central Register of Controlled Trials、Cumulative Index to Nursing and Allied Health Literature、Clinicaltrials.govの電子データベースより、2019年9月19日までに英語で発表された、薬物治療中の双極性うつ病患者に対する補助的BLTの有効性を検討したRCTを検索した。文献スクリーニング、データ抽出、方法論的質の評価は、独立した2人の研究者により実施された。主要アウトカムは、治療反応率と寛解率とした。メタ解析には、Review Manager 5.3ソフトウェアを用いた。 主な結果は以下のとおり。・4研究より、双極性うつ病患者190例(BLT群:94例、対照群:96例)を評価し、光療法の効果を検証した。・メタ解析では、双極性障害の治療反応率に対する光療法の有意な効果が確認された(リスク比:1.78、95%CI:1.24~2.56、p=0.002、I2=17%)。・しかし、寛解率に対する有意な効果は確認されなかった(リスク比:2.03、95%CI:0.48~8.59、p=0.34、I2=67%)。・重篤な悪影響は報告されていなかった。・躁転率は、BLT群で1.1%、対照群で1.2%であった。 著者らは「BLTは、双極性うつ病患者のうつ症状を軽減するうえで、効果的な治療法である」としている。

2766.

第33回 悪夢払いアプリを米国FDAが承認

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行食い止めのためのロックダウン6週目に4,275人を調べたところ睡眠時間は多くなっていたものの目が覚めてしまうことが増え、4人に1人以上(26%)は悪夢を見ることが多くなっていました1)。コロナ禍の矢面に立って負担を強いられている医療従事者はとくにそうなりがちらしく、スペインでの別の研究によると100人中38人(38%)が悪夢を報告しており、非医療従事者のその割合約21%を有意に上回りました(p=0.02)2)。先週金曜日、そんな安眠さえままならない医療従事者の苦悩を軽減してくれるかもしれないApple Watch(アップルウォッチ)/iPhone(アイフォン)アプリが米国FDAに承認されました3)。Nightwareという商品名のそのアプリは募る負担の現れである悪夢を遮って夜間の休息が続くようにします。NightwareはApple Watchのセンサーを使って睡眠中の体の動きや心拍数を把握し、サーバーにそれらの情報を送ります。サーバーは独自のアルゴリズムを使って患者の睡眠パターンを把握し、おそらく悪夢を見ていると判断したら目を覚まさせない程度にApple Watchを震わせて気を引いて悪夢の解消を目指します。アプリは賢くて学習機能があり、もし振動で目が覚めてしまった場合、次からはそうならないようにより弱く振動させます4)。70人が参加した無作為化比較試験の結果、振動する製品は振動しない模造品に比べて睡眠の質の自己評価指標Pittsburgh Sleep Quality Indexをより改善しました。Nightwareは悪夢障害や心的外傷後ストレス障害(PTSD)による悪夢に苦しむ22歳以上の患者に使うことができます。ただし、PTSD患者には他の治療と一緒に使う必要があり、NightwareだけでPTSDを治療することはできません。また、悪夢の際に眠ったまま歩いたり(sleepwalking)乱暴する人は使うことはできません。参考1)Pesonen AK, et al. Front Psychol. 2020 Oct 1;11:573961. 2)Herrero San Martin A, et al. Sleep Med. 2020 Aug 17;75:388-394.3)FDA Permits Marketing of New Device Designed to Reduce Sleep Disturbance Related to Nightmares in Certain Adults/PR Newswire4)NightWare製品説明

2767.

成人ADHDに対するグアンファシン徐放性製剤の安全性、有効性~第III相延長試験

 昭和大学の岩波 明氏らは、成人の注意欠如多動症(ADHD)に対するグアンファシン徐放性製剤(GXR)の長期における安全性、有効性の評価を行った。BMC Psychiatry誌2020年10月2日号の報告。 本研究は、日本で行われた成人ADHDに対するGXRの非盲検長期第III相延長試験である。対象は、二重盲検試験から延長された成人ADHD患者150例および新規に登録された41例。1日1回のGXR投与を50週間継続した(開始用量:2mg/日、維持用量:4~6mg/日)。主要アウトカムは、治療による有害事象(TEAE)の頻度と種類とした。副次的アウトカムは、成人用ADHD評価尺度ADHD-RS-IV日本語版の合計スコアおよびサブスコア、コナーズの成人期ADHD評価尺度(CAARS)、臨床全般印象度の改善度(CGI-I)、患者による全般印象度の改善度(PGI-I)、QOL、実行機能の0週目からの変化とした。 主な結果は以下のとおり。・191例中180例(94.2%)で1つ以上のTEAEが認められ、38例(19.9%)がTEAEにより治療を中止した。・ほとんどのTEAEの重症度は、軽度から中等度であり、重度のTEAEは2例であった。また、死亡例は認められなかった。・患者の10%以上で認められた主なTEAEは、傾眠、口渇、鼻咽頭炎、血圧低下、頭位性めまい、徐脈、倦怠感、便秘、めまいであった。・ADHD-RS-IV合計スコアおよびサブスコア、CAARSサブスコアの有意な改善が認められた(p<0.0001)。また、CGI-I、PGI-Iスコアが大きく改善した患者の割合は増加した。 著者らは「成人ADHDに対するGXRの長期使用に、重大な安全上の懸念は見当たらなかった。また、GXR長期使用後、患者のADHD症状、QOL、実行機能の有意な改善が認められた」としている。

2768.

双極性障害とうつ病患者の白質異常と認知機能との関係

 近年、うつ病患者と双極性障害患者の白質線維の整合性(white matter integrity)を比較した拡散テンソル画像(DTI)の研究数が増加している。しかし、両疾患の白質異常の違いを調査した研究はあまりない。広島大学の増田 慶一氏らは、白質異常と認知機能との関係を調査するため、全脳トラクトグラフィーを用いて、健常対照者と寛解期うつ病患者および双極性障害患者の白質線維の整合性を包括的に評価した。Brain and Behavior誌オンライン版2020年10月3日号の報告。 健常対照者30例、うつ病患者30例、双極性障害患者30例を対象に、神経認知機能検査とDTIを実施した。3群間の白質線維の整合性と認知機能との関連を評価した。 主な結果は以下のとおり。・双極性障害患者は、うつ病患者や健常対照者と比較し、脳梁体部の異方性(fractional anisotropy:FA)が弱く、持続的注意力およびセットシフティングのスコアが低かった。・脳梁の左体部のFAは、双極性障害患者の持続的注意力と関連が認められた。 著者らは「双極性障害患者の脳梁における白質線維の整合性の有意な低下は、うつ病患者と比較し、持続的注意力低下との関連が認められた」としている。

2769.

COVID-19流行下の仕事再開期におけるメンタルヘルス問題の調査

 中国・大連医科大学のYuan Zhang氏らは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行下の仕事再開期における不安症、うつ病、不眠症に影響を及ぼす因子について調査を行った。Journal of Psychosomatic Research誌2020年11月号の報告。 中国・山東省で2020年3月2日~8日に、割当抽出法(quota sampling)と機縁法(snowball sampling)を組み合わせた多施設横断調査を実施した。不安症、うつ病、不眠症の評価には、それぞれ全般性不安障害尺度(GAD-7)、こころとからだの質問票(PHQ-9)、不眠症重症度指数(ISI)を用いた。影響を及ぼす因子を調査するため、多変量ロジスティック回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・3施設より4,000通のアンケートを送付し、有効な回答3,237件を収集した。・各評価尺度に基づく不安症、うつ病、不眠症の有病率は19.5~21.7%であった。そのうち、2.9~5.6%は重症であった。・複数の症状を合併していた患者は、不安症とうつ病の合併2.4%、不安症と不眠症の合併4.8%、うつ病と不眠症の合併4.5%であった。・不安症と不眠症のスコアおよびうつ病と不眠症のスコアには、正の相関が認められた。・不安症、うつ病、不眠症のリスク因子は、50~64歳、30日以上に1回のみの屋外活動であった。・COVID-19流行期に、心理的介入を受けていた人は17.4%、個別の介入を受けていた人は5.2%であった。 著者らは「COVID-19流行下の仕事再開期には、メンタルヘルス問題の発生率が通常時よりも増加していた。現行の心理的介入は不十分であり、早期に有効な心理的介入を実施すべきである」としている。

2770.

安定期双極性障害患者の再発率に対する継続的な薬物治療の影響~メタ解析

 藤田医科大学の岸 太郎氏らは、双極性障害患者に対し抗精神病薬や気分安定薬を中止した場合と継続した場合の再発率を比較するため、二重盲検ランダム化プラセボ対照試験のランダム効果モデルメタ解析を実施した。Psychological Medicine誌オンライン版2020年10月13日号の報告。 2020年5月22日までに報告された研究を、言語制限なしで、Embase、PubMed、CENTRALデータベースよりシステマティックに検索した。独立した研究者が研究を評価し、データを抽出した。リスク比(RR)と有用性または有害性の治療必要数(NNTB/NNTH)を算出した。主要アウトカムは、6ヵ月時点での気分エピソードの再発率とした。副次的アウトカムは、抑うつエピソードおよび躁状態/軽躁状態/混合性エピソードの再発率、6ヵ月時点でのすべての原因による中止とした。また、これらのアウトカムの評価は、1、3、9、12、18、24ヵ月目に行われた。 主な結果は以下のとおり。・アリピプラゾール、アセナピン、divalproex、アリピプラゾール長時間作用型注射剤(LAI)、リスペリドンLAI、ラモトリギン、リチウム、オランザピン、パリペリドン、クエチアピンを使用した研究22件(5,462例)が抽出された。・平均研究期間は、64.50±69.35週であった。・抗精神病薬を継続した場合、すべての評価時点において、あらゆる気分エピソード、抑うつエピソード、躁状態/軽躁状態/混合性エピソードの再発率が低く、すべての原因による中止率も低下した。・6ヵ月時点での再発率およびすべての原因による中止率のRRは以下のとおりであった。 ●あらゆる気分エピソード:0.61(95%CI:0.54~0.70、NNT:5) ●抑うつエピソード:0.72(95%CI:0.60~0.87、NNT:13) ●躁状態/軽躁状態/混合性エピソード:0.45(95%CI:0.36~0.57、NNT:6) ●すべての原因による中止:0.71(95%CI:0.61~0.82、NNT:6) 著者らは「症状が安定した双極性障害患者に対する薬物療法の継続は、最大24ヵ月間の再発を抑制することが示唆された。1ヵ月以上の薬物治療の中止は、再発リスクを有意に上昇させた。しかし、6ヵ月間薬物療法を中止した患者のうち47.3%は再発しなかった」としている。

2771.

統合失調症患者の自動車運転関連の認知機能に対する抗精神病薬の影響

 韓国・漢陽大学校病院のSeokmin Noh氏らは、統合失調症患者において、自動車運転に関連する認知機能に、使用している抗精神病薬の種類によって違いがあるかについて検討を行った。Journal of Psychiatric Research誌オンライン版2020年8月29日号の報告。 対象は、抗精神病薬の単剤処方を受けていた統合失調症成人患者102例。神経認知機能の評価には、運転に関する認知機能評価(CPAD)、運転能力のための視覚、注意、ワーキングメモリ、反応時間、抑制制御などのコンピュータ化した評価バッテリーを用いた。 主な結果は以下のとおり。・使用されていた抗精神病薬の内訳は、ハロペリドール15例、リスペリドン28例、オランザピン14例、アリピプラゾール28例、パリペリドン17例であった。・102例中64例(63%)は、運転能力があると見なされた。・CPADの合格率は以下のとおりであり、ハロペリドール群とアリピプラゾール群(p=0.005)、ハロペリドール群とパリペリドン群(p=0.001)に有意な差が認められた。 ●ハロペリドール群:33% ●リスペリドン群:57% ●オランザピン群:57% ●アリピプラゾール群:75% ●パリペリドン群:82%・深視力(正解数)、分割的注意、数唱テスト、Trail Making TestパターンBのスコアは、ハロペリドール群とリスペリドン群と比較し、アリピプラゾール群とパリペリドン群において有意に良好であった。 著者らは「アリピプラゾールまたはパリペリドンによる抗精神病薬単剤療法で治療を行っている統合失調症患者の運転関連認知機能は、ハロペリドールまたはリスペリドンの単剤療法で治療している患者と比較し、良好であることが示唆された」としている。

2772.

ペットを飼うことが認知症患者に及ぼす影響

 ペットを飼うことについては、多くの集団において病気に対するポジティブな影響が報告されているが、認知症患者における身体的および心理的ウェルビーイングとの関連はよくわかっていない。英国・マンチェスター・メトロポリタン大学のCarol Opdebeeck氏らは、ペットを飼うことが認知症患者に及ぼす影響について調査を行った。Journal of Applied Gerontology誌オンライン版2020年10月7日号の報告。認知症に対するポジティブな影響はペットを飼うことより世話をしているかと関連 本研究には、Improving the experience of Dementia and Enhancing Active Life(IDEAL)研究より、軽度~中等度の認知症在宅患者1,542例のベースラインデータを使用した。ペットの所有およびその世話と、自己報告による歩行、孤独感、うつ病、QOLとの関連を調査するため、回帰分析を用いた。 ペットを飼うことが認知症患者に及ぼす影響について調査した主な結果は以下のとおり。・共変量で調整後、ペットを飼うことは、前の週に3時間以上歩行した経験と関連が認められた。・犬を飼っていて、その世話をしている患者は、犬を飼っていない患者よりも、孤独を感じることが少なかった。・ペットを飼っているが、その世話をしていない患者は、ペットを飼っていない患者よりも、うつ病の増加およびQOL低下との関連が認められた。 著者らは「認知症患者に対するポジティブな影響は、ペットの世話をしているかどうかと関連していた」としている。

2773.

境界性パーソナリティ障害女性の自分の体の評価と小児期の性的虐待の影響

 自分の体を評価するうえで、精神状態は大きく影響する。精神疾患を有する女性患者の身体評価は、健康な女性と比較し、ネガティブに表れる。とくに、境界性パーソナリティ障害(BPD)を含む児童性的虐待(CSA)に関連する問題によって、ネガティブな評価が増加することが示唆されている。しかし、このネガティブな評価が症状寛解後も持続するのか、体の場所(性的に暗示される場所と中立的な場所)に依存するか、CSAに依存するかについてはよくわかっていない。ドイツ・ハイデルベルク大学のNikolaus Kleindienst氏らは、BPD患者の身体評価とCSA歴の影響について、調査を行った。European Journal of Psychotraumatology誌2020年6月25日号の報告。境界性パーソナリティ障害女性の身体評価は児童性的虐待歴と有意な関連 BPD患者、BPD寛解患者、健康対照者の女性68例を対象に、身体評価を定量的に比較した。次に、CSA歴と性的に暗示される体の場所との関連を調査した。BPDの診断には、国際人格障害診断を用いた。対象者は、身体領域に関する調査を用いて、自分の体の評価を定量化した。CSAの評価には、小児期外傷アンケートを用いた。 境界性パーソナリティ障害の女性患者の身体評価を比較した主な結果は以下のとおり。・BPD患者の身体評価は、一般的にネガティブであったが、BPD寛解患者では、ポジティブであった。・しかし、BPD寛解患者のポジティブな評価は、中立的な体の場所に限定されており、性的に暗示される体の場所に関しては、BPD患者と類似しており、健康対照者の評価とは対照的であった。・BPD寛解患者の性的に暗示される体の場所に対する評価は、CSA歴と有意な関連が認められた。 著者らは「女性BPD患者には、全身のポジティブな評価を得るために、特別な介入が必要となる可能性がある。性的に暗示される体の場所に対する評価は、BPD寛解後も残存する問題であると考えられる」としている。

2774.

双極性障害患者のラピッドサイクラーと寛解に関連する臨床的特徴

 ラピッドサイクラー(RC)では、双極性障害(BD)の重症度リスクが高まるが、1年後に寛解状態を達成した(one-year euthymia:OYE)患者の予後は良好となる。関西医科大学の加藤 正樹氏らは、精神科クリニックにおけるBDの多施設治療研究(MUSUBI)において、大規模サンプル(2,609例)におけるラピッドサイクラーおよび1年後に寛解状態を達成した患者にある患者の臨床的背景、処方特性について調査を行った。Journal of Psychiatric Research誌オンライン版2020年9月30日号の報告。ラピッドサイクラーの抗精神病薬の処方率は1年後に寛解した患者と比べて多い MUSUBIは、外来クリニック176施設にアンケートを配布し、BD連続症例のカルテをレトロスペクティブに調査した横断的研究である。患者背景、現在のエピソード、臨床的特徴、処方状況に関するデータをアンケートで収集した。OYEの定義は、12ヵ月以上の正常状態とした。 双極性障害患者におけるラピッドサイクラーおよび1年後に寛解状態を達成した患者の臨床的背景などを調査した主な結果は以下のとおり。・現在のラピッドサイクラーの割合は9.7%であり、女性で有意に高かった。・ラピッドサイクラー患者は、非ラピッドサイクラー患者と比較し、発症年齢が若く、機能障害を有し、神経発達障害および身体疾患の合併頻度が高かった。・1年後に寛解状態を達成した患者の割合は19.4%であり、女性、高齢、職業的地位の高さ、自殺念慮、精神症状、人格障害、アルコールまたは薬物乱用の低さと関連が認められた。・気分安定薬は80%以上、抗精神病薬は50%の患者に処方されていた。これらの処方率は、ラピッドサイクラーでより多く、1年後に寛解状態を達成した患者でより少なかった。・抗うつ薬の処方率は、ラピッドサイクラーよりも1年後に寛解状態を達成した患者のほうが低かった。 著者らは「RCとOYEは、相反する特性を有するが、パラメータの詳細に特色が認められた。これら相反する臨床的特徴の背景や特性を理解することは、BDの進行を予測するうえで役立つであろう」としている。

2775.

女性のうつ病と肥満、食糧不安との関連

 栄養精神医学は、新たな研究分野として注目されており、脳機能や精神疾患に対する栄養摂取および肥満の影響について調査が行われている。これまでの研究では、女性の肥満や栄養摂取とうつ病との関連が示唆されている。しかし、この関連に食糧不安がどのように影響しているかは、よくわかっていない。米国・イーストテネシー州立大学のManik Ahuja氏らは、女性のうつ病と肥満や食糧不安との関連について調査を行った。Archives of Public Health誌2020年9月17日号の報告。 2001~03年の精神疾患疫学共同調査(Collaborative Psychiatric Epidemiology Surveys:CPES)のデータを用いて検討を行った。肥満、性別、食糧不安と過去1年間のうつ病との関連を調査するため、ロジスティック回帰モデルを用いた。次に、性別で層別化した後、肥満と過去1年間のうつ病との関連に対する食糧不安の影響について調査した。 主な結果は以下のとおり。・女性における肥満は、過去1年間のうつ病リスク増加と関連していた(AOR:1.35、95%CI:1.17~1.55)。一方、男性ではこの関連は認められなかった(AOR:1.07、95%CI:0.86~1.32)。・肥満と食糧不安の両方を報告した女性(AOR:3.16、95%CI:2.36~4.21)では、食糧不安を報告しなかった女性(AOR:1.08、95%CI:1.02~1.38)よりも、過去1年間のうつ病エピソードのオッズ比が高かった。 著者らは「メンタルヘルスの問題を抱える人が増加している現在、女性のメンタルヘルスに影響を及ぼす可能性のある貧しい食生活、食糧不安、肥満について、注意深くモニタリングする必要がある。臨床医および治療提供者が評価を行う際には、患者の食事と栄養価の高い食品摂取を考慮することが推奨される」としている。

2776.

「ハルシオン」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第23回

第23回 「ハルシオン」の名称の由来は?販売名ハルシオン®0.125mg錠ハルシオン®0.25mg錠一般名(和名[命名法])トリアゾラム(JAN)効能又は効果○不眠症○麻酔前投薬用法及び用量○不眠症通常成人には1回トリアゾラムとして0.25mgを就寝前に経口投与する。高度な不眠症には0.5mgを投与することができる。なお、年齢・症状・疾患などを考慮して適宜増減するが、高齢者には1回0.125mg~0.25mgまでとする。○麻酔前投薬手術前夜:通常成人には1回トリアゾラムとして0.25mgを就寝前に経口投与する。なお、年齢・症状・疾患などを考慮し、必要に応じ0.5mgを投与することができる。警告内容とその理由【警告】本剤の服用後に、もうろう状態、睡眠随伴症状(夢遊症状等)があらわれることがある。また、入眠までの、あるいは中途覚醒時の出来事を記憶していないことがあるので注意すること。理由国内において“もうろう状態”“健忘”等の副作用報告があり、このような状態下においては重大な事故につながる危険性があるため【警告】を設け特に注意を喚起した。更に、2007年3月14日に米国食品医薬品局(FDA)は本剤を含む睡眠剤について、十分に覚醒しないまま、車の運転、食事等を行い、その出来事を記憶していないとの報告があることを踏まえて、当該薬剤の米国添付文書の改訂指示を行っていることから、本剤においても注意喚起することとした。禁忌内容とその理由【禁忌(次の患者には投与しないこと)】(1)本剤に対し過敏症の既往歴のある患者(2)急性狭隅角緑内障のある患者(3)重症筋無力症の患者[筋弛緩作用により、症状を悪化させるおそれがある。](4)次の薬剤を投与中の患者:イトラコナゾール、フルコナゾール、ホスフルコナゾール、ボリコナゾール、ミコナゾール、HIVプロテアーゼ阻害剤(インジナビル、リトナビル等)、エファビレンツ、テラプレビル【原則禁忌(次の患者には投与しないことを原則とするが、特に必要とする場合には慎重に投与すること)】肺性心、肺気腫、気管支喘息及び脳血管障害の急性期等で呼吸機能が高度に低下している患者[呼吸抑制により炭酸ガスナルコーシスを起こしやすいので投与しないこと。やむを得ず投与が必要な場合には、少量より投与を開始し、呼吸の状態を見ながら投与量を慎重に調節すること。]※本内容は2020年10月28日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2018 年12月改訂(第11版)医薬品インタビューフォーム「ハルシオン®0.125mg錠/ハルシオン®0.25mg錠」2)Pfizer PROFESSIONALS

2777.

米国におけるCOVID-19パンデミック前後のうつ病有病率の変化

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)およびこれに関連するソーシャルディスタンスやロックダウンといった制限は、実質的かつ永続的なメンタルヘルスへの影響が懸念される。アイルランド・メイノース大学のMichael Daly氏らは、米国におけるCOVID-19パンデミック前後のうつ病有病率の変化について、調査を行った。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2020年9月15日号の報告。 米国成人を対象とした2つの代表的な調査において、うつ病を検出するために、Patient Health Questionnaire-2(PHQ-2)を用いた簡易スクリーニングを実施した。パンデミック前のうつ病レベルは、2017~18年の全国健康栄養調査(NHANES)の成人サンプル5,075例より算出した。米国の代表的なサンプルであるUnderstanding America Studyより、2020年3月(6,819例)および4月(5,428例)のうつ病レベルを評価した。 主な結果は以下のとおり。・米国成人のうつ病有病率は、以下のとおりであった。 ●2017~18年:8.7%、95%CI:7.6~9.8 ●2020年3月:10.6%、95%CI:9.6~11.6 ●2020年4月:14.4%、95%CI:13.1~15.7・65歳以上および黒人を除く調査したすべてのサブグループにおいて、うつ病レベルの統計学的に有意な増加が観察された。・若年成人(18~34歳)は、ほかの年齢層と比較し、うつ病有病率の顕著な増加が認められた。その増加率は、13.4ポイントであった。・2007/08年~2017/18年のNHANESよりうつ病の傾向を追加分析した結果と比較し、2020年4月のうつ病有病率の大幅な増加は、典型的な変動とは異なる可能性が高いことが示唆された。 著者らは「COVID-19パンデミックによりうつ病レベルは大幅に上昇しており、とくに若年成人において、メンタルヘルスへの影響に対する脆弱性が示唆された」としている。

2778.

4割の人はがんより認知症への罹患に不安、期待される予防策とは?

 日本認知症予防学会と食から認知機能について考える会が9月に「食と認知機能に関する意識調査の結果発表」を公開し、食や食成分による認知機能改善効果を期待する人が5割以上にのぼることを明らかにした。この詳細は、浦上 克哉氏(鳥取大学医学部保健学科生体制御学講座環境保健学分野 教授/日本認知症予防学会 理事長)が食から認知機能について考える会発足記者会見で報告した。 この調査は1)認知症の理解、認知症の予防に対する理解レベルの確認、2)とくに食生活が関与する認知症予防への理解と信頼感の確認、3)認知症予防への関心喚起を目的とし、2020年3月にWebを用いて、30代以上の一般男女1,030名と日本認知症予防学会学会員380名(医師:102名、メディカルスタッフ:278名)に行った。一般人より医療者のほうが食事に認知機能改善を期待 本調査では、認知機能の低下へのイメージ、食や食成分・機能性表示食品の認知機能改善の効果への期待度、機能性表示食品等の食成分エビデンスの信頼度やその理由などを設問に設定し、一般結果と医師・メディカルスタッフの回答結果を比較した。たとえば、“食や食成分が認知機能改善に効果があると思いますか”という質問では、一般と医師・メディカルスタッフの回答割合の傾向はほぼ同じであるものの、一般人のほうが食に対する懐疑的な意見が多かった。一方で機能性表示食品について同様の質問をしたところ、医師・メディカルスタッフは、「大いに期待」「やや期待」という声が多かった。ただし、機能性表示食品等のエビデンスへの信頼度については、一般も医師・メディカルスタッフ共に8割近くが「信頼できない」「どちらともいえない」と回答している。これについて浦上氏は「『信頼できる学術誌で発表されていない』『データが不十分』『企業に有利なことしか開示していない』という理由だった。科学的根拠を信頼しているのは約2割にとどまる」とし、「学会として正しい情報提供に努めたい」と説明した。がんより認知症への罹患を不安視 このほか、認知機能の低下に対するイメージや認知症の病態に関する質問から、医師・メディカルスタッフの約8割が“認知症について一般には正しく理解されていない”と感じていたこと、自分が最もなりたくない疾患として認知症ががんを上回っていたことも明らかになった(一般vs.医師・メディカルスタッフで比較、認知症:47.6%vs. 35.0%、がん:38.5%vs. 25.8%、脳血管疾患:4.9%vs. 18.9%)。これを踏まえて浦上氏は「20年前に行われた調査ではがんが最も罹患したくない疾患だったが、現在では40歳を境にがんより認知症になりたくないと考えている人が多い。男女別でみると、女性のほうが認知症に対し不安視しているが、これは罹患しやすさが影響していると考えられる」と調査内容を分析した。食材のエビデンス+食事で脳を生き生きさせる 続いて記者会見で認知機能改善につながる食品成分とエビデンスの重要性について解説した鳥羽 研二氏(東京都健康長寿医療センター 理事長)は、「認知症に対し、一つの食材(オリーブオイル、ワイン、魚など)による効果はエビデンスが不十分だが、現在、日本で実施されている食事と認知症に関する3つの大規模臨床試験(久山町研究、大崎研究、NILS-LSA)に共通するのは、地中海食のようにバランスのとれた栄養素を取っている点。しかし、各地域で食されている一つ一つの食材は異なっており、この点は注目に値する」とコメントした。 また、人間の機能に食が与える影響について、「目で見て楽しむ、鼻で香りを嗅ぐ、口で噛むなどの食行動が感覚情報として大脳皮質に作用することで脳の健康につながるという考えがある。食事の栄養素も重要であるが、運動、栄養、生活習慣病、フレイル、意欲や関心、社会参加が影響している点を踏まえ、『食』を“SHOKU”(Sports、Hobby、Oral Frail、Knot、Unfavorable life style) と捉えて、食の認知機能への影響を考えていくことが大切ではないか」と考えを示した。

2779.

半沢直樹【なんでやられたらやり返すの?逆に手を組むには?(ゲーム理論)】Part 1

今回のキーワード恨みゲーム理論「囚人のジレンマ」しっぺ返し戦略主人と奴隷戦略民主主義的パーソナリティ権威主義的パーソナリティ社会正義皆さんは、ドラマ「半沢直樹」のように、やられたらやり返しますか? なぜやり返すのでしょうか? そもそもなぜやり返したくなる気持ちは「ある」のでしょうか? 逆に、手を組むにはどうすればよいでしょうか?これらの答えを探るために、今回は、主人公の半沢の生き様に触れながらが、恨みの心理を進化心理学的に掘り下げます。そして、ゲーム理論を通して、より良い人付き合いのあり方を一緒に考えていきましょう。なんでやり返すの?―恨みの原因半沢は超有能なバンカー。彼が目指すのは出世して頭取に昇り詰めること。そのため、上司の不正の押し付け、銀行組織の不正、国家的な陰謀まで徹底的に暴き、自分を窮地に追い込む相手を打ち負かしていきます。彼をそこまで突き動かすのには、ある理由がありました。それは、彼の家族への銀行の裏切りです。かつて彼の両親はネジ工場を経営していましたが、経営が傾いたことで銀行から融資を引き揚げられました。そして、父親は追い詰められて自殺したのでした。少年期の半沢は、亡き父親のため、銀行を変えたいという強い信念を持つようになったのです。この信念は、銀行への恨みが昇華された心理とも言えます。なんでやり返したくなる気持ちが「ある」の?―恨みの起源私たちは、半沢ほどではないにしても、やられたらやり返したくなる気持ちがあります。それでは、そもそもなぜそんな気持ちが「ある」のでしょうか? ここから、恨みの心理の起源を、3つの段階に分けて、進化心理学的に探ってみましょう。(1)怒り約5億年前に魚類が誕生し、縄張りに侵入する外敵に対して、瞬時に「戦うか逃げるか」と警戒するようになりました。戦って相手を追い払うのが怒りの起源です。一方、逃げ隠れするのが、不安の起源です。恨みの心理の起源の1つ目の段階は、怒りです。半沢は、だまされたり出し抜かれたりしていることを察知すると、激しく憤っています。これは、彼の権利(縄張り)が侵害されたと言い換えられます。(2)牽制約3億年前に爬虫類が誕生し、外敵を追い払うために力を誇示して戦うふりをするようになりました。なぜなら、実際に戦うと、勝ったとしてもある程度のダメージを負う可能性があるからです。これが、威嚇の起源です。約2,000万年前には類人猿が誕生し、猿同士が力関係(上下関係)によって群れをつくるようになりました(社会性)。当時、お互いの優劣を決めるために、この威嚇を利用するようになりました。約700万年前に人類が誕生し、300~400万年前に血縁の家族同士が協力関係によって部族集団をつくるようになりました(社会脳)。ただ、協力関係とはいえ、常に飢餓と隣り合わせであり、飢餓の時は生き残るために競争関係になります。よって、自分が油断して、食料を部族の仲間の誰かに奪われたら、瞬時にその相手に怒りを感じ、奪い返したでしょう。その時に手出しされたら、手出し仕返したでしょう。こうして、その相手を牽制し、次に同じことをさせないようにすることができます。同時に、見ている周りの人たちにも牽制のメッセージを伝えることができます。もちろん、その後に自分もその相手に警戒するようになるでしょう。こうして、部族内での人間関係を維持したのです。恨みの心理の起源の2つ目の段階は、牽制です。ただし、ここで重要なことは、仕返しをし過ぎないことです。なぜなら、仕返しは、あくまで関係性のバランスを維持するためにやっているからです。仕返しをし過ぎると、さらにその仕返し(逆恨み)を招き、関係性のバランスが維持できなくなります。そうなると、部族内で一緒に生活することが難しくなります。原始の時代、それは死のリスクを高めます。この点で、半沢の「倍返しだ!」というセリフは、あくまで牽制のための感情表現にすぎず、本当にそうしているわけではないことが分かります。発達心理学的にも、幼児(当時の原始の時代の人類の脳の重量に相当)は、お友達からものを取られたら必死で取り返します。叩かれたら叩き返します。ただし、多く取り返したり(さらに相手のものを取ったり)、多く叩き返すことはあまりないです。あくまで「だまってないぞ(もうやらないで)」というメッセージを伝えているだけで、お友達の関係性が破綻するまでやり返していないことが分かります。(3)懲らしめ約20万年前に現生人類(ホモ・サピエンス)が誕生し、言葉を話すようになりました。言葉によって部族内で情報共有ができるようになったことで、自分が仕返しできなくても、代わりの誰かに仕返ししてもらうことができるようになりました。これが、正義感の起源です。こうして、部族内の秩序を維持するようになりました(利他的懲罰)。恨みの心理の起源の3つ目の段階は、懲らしめです。懲らしめて懲りさせることです。見せしめにすれば、さらに部族内の裏切りを抑制することができます。これが、懲罰の起源です。実は、半沢は、「やられたらやり返す」とたびたび啖呵を切っておきながら、そのままの仕返し(復讐)を何1つしていないです。彼がしたことは、相手の不正を暴き、組織の人事や法律に委ねていることです。なお、懲らしめの心理がつい過剰になってしまう場合ももちろんあります。それが怨恨です。怨恨は殺人の動機の1位であることから、私たちは「やられたらやり返す」ことに敏感であることが分かります。 次のページへ >>

2780.

半沢直樹【なんでやられたらやり返すの?逆に手を組むには?(ゲーム理論)】Part 2

手を組むための条件は?-関係が続くこと恨みの原因は、裏切りであることが分かりました。そして、恨みの起源は、怒り、牽制、懲らしめの3つの段階があることが分かりました。恨みは、やり返す、つまり次に自分が裏切ること(非協力)を促進する働きがあることも分かります。逆に言えば、恨まない種(善人)は、裏切られ続けるため、生き残れず、子孫を残していないと言えます。それでは、そんな裏切られるリスクがある中、そして裏切ったら裏切り返えされるリスクがある中、手を組むための条件とは、何でしょうか? ここから、ゲーム理論の「囚人のジレンマ」を用いて、3つの状況に分けて考えてみましょう。なお、ゲーム理論とは、端的に言うと、自分や相手の行動による損得を合理的に考える学問です。ゲーム理論を応用した行動経済学の詳細については、末尾の関連記事1をご覧ください。「囚人のジレンマ」とは、共犯で逮捕された2人の囚人(正確には容疑者)が、お互いに黙秘(協力)したら得することが分かっているのに、お互いに自白(裏切り)をするジレンマに陥るというゲームモデルです。たとえば、表2のように、囚人Aと囚人Bがいます。2人とも黙秘すれば、懲役1年ずつになります。しかし、司法取引によって、自分が自白して相手が黙秘したら、自分は微罪で相手は懲役5年になります。そして、2人とも自白すれば、懲役3年になります。ここで、立場と場合で分けて、合理的に考えてみましょう。まず、囚人Aの立場で、囚人Bが黙秘する場合、囚人Aは懲役1年の黙秘(3点)と微罪の自白(5点)を比べて、自白を選びます。そして、囚人Bが自白する場合、囚人Aは懲役5年の黙秘(0点)と懲役3年の自白(1点)を比べて、やはり自白を選びます。一方、囚人Bの立場でも同じく、囚人Aが黙秘しても自白しても、囚人Bは自白を選びます。結果的に、最適な選択として、2人とも自白してしまうというわけです(ナッシュ均衡)。 (1)関係が1回だけの場合「囚人のジレンマ」ゲームは、1回だけの場合、確実に裏切ることが分かります。言い換えれば、今後に無関係になるのであれば、協力しないのが合理的です。これは、私たちが通りすがりの赤の他人をすぐに信用しないのと同じです。(2)関係がずっと続く場合それでは、このゲームを無期限にやり続けたら、どうなるでしょうか? 答えは、裏切るだけでなく協力もするさまざまな戦略が考えられます。これは、私たちが社会で人間関係が続く場合の行動パターンに通じます。(3)関係がいつ終わるか分かった場合それでは、このゲームを続けている中、いつ終わるか分かった場合、どうなるでしょうか? 答えは、その時点から裏切りが始まります。たとえば、残りn回やるとして、最終回のn回目は、関係が1回だけの場合と同じようにあとがないため、確実に裏切ることが予測できます。すると、n回目に裏切ることが分かってしまったので、n-1回目もあとがなくなり、確実に裏切ることが予測されます。すると、n-2回目も…というように、残りn回のすべてを裏切ることが分かります。いわゆる勝ち逃げです。ちなみに、最初からいつ終わるかが分かっている場合も、すべて裏切ります。言い換えれば、今後に無関係になるのが分かっているのであれば、最初から協力しないのが合理的です。ただし、コンピュータと違って人間の心理には、終わりが分かっていると言っても、遠い先の場合は、裏切りによる利得の重みが目減りするため(割引利得)、すぐに裏切るとは限らないです。つまり、重要なのは、過去にどれだけ長い協力関係があったかではなく、未来にどれだけ長い協力関係が見込めるかということです。この点で、ドラマでの半沢の家族のネジ工場に融資する銀行が、これまでどんなに長く融資していたとしても、経営不振に陥っていることが判明した瞬間に融資を引き揚げたのは、極めて合理的です。また、泥棒の一味が、山分けの段階(関係が終わる段階)で仲間割れするのは必然であることも分かります。半沢のようにより多く手を組むための戦略は?-しっぺ返し戦略手を組むための条件は、関係がずっと続くことであることが分かりました。それでは、このゲームの点数を稼ぐために、より多く手を組むための戦略とは何でしょうか? 実は、それは半沢の生き様にも重なるしっぺ返し戦略です。この戦略は、1980年代に実際に行われた反復「囚人のジレンマ」ゲームのコンピュータプログラミング選手権で優勝しており、最も強い戦略の1つと言われています。なお、この選手権には、先ほどにも触れた恨まない種、つまり毎回協力する戦略(善人戦略)や、対戦相手が前回まで協力と裏切りに対してどちらを選択したかの情報からその回にどちらを選択するかの確率を毎回見積もる戦略(ダウニング戦略)なども出場しました。ここから、半沢のキャラクターをこの戦略の3つの要素に重ね合わせてみましょう。(1)人が良い-最初は協力する銀行という組織は、出世競争のため、足の引っ張り合いが起こり、いつ出し抜かれて足元をすくわれるか分かりません。そんな中、半沢は「俺は基本的に性善説だ」と言います。1つ目の半沢のキャラクターは、人の良さです。これは、しっぺ返し戦略の「最初は協力する」に重なります。ポイントは、自分からは裏切らないことです。(2)気が短い-裏切られたら次に裏切る半沢は、宿敵の大和田常務にたびたび出し抜かれます。実は、大和田は半沢の父親を自殺に追いやった張本人でもあったのです。そんな中、半沢は「やられたらやり返す」と怒鳴ります。2つ目の半沢のキャラクターは、気の短さです。これは、しっぺ返し戦略の「裏切られたら次に裏切る」に重なります。ポイントは裏切りの応酬を必ずやり遂げることです。(3)切り替えが早い-協力が得られたら次に協力する半沢は大和田の悪事を暴き、大和田を役員たちの前で土下座させます。そんな因縁の関係でありながら、その後に半沢は大和田と利害が一致した時、「私を利用しませんか?」と提案します。そして、手を組むようになるのです。半沢は、いつまでも恨んでいないのでした。3つ目の半沢のキャラクターは、切り替えの早さです。これは、しっぺ返し戦略の「協力が得られたら次に協力する」に重なります。ポイントは協力が得られたらすかさず協力に転じることです。決してその前の裏切りを根に持たないことです。これは、先ほどにも触れた仕返しをし過ぎないことにつながります。なお、厳密には、当初に大和田から協力が得られたわけではないですが、土下座による謝罪は「協力」のメッセージを引き出したとも解釈できます。そして、その後に2人は協力行動を積み重ねるようになっています。大和田のように手を組まなくても点数を稼ぐ戦略は?-主人と奴隷戦略半沢のキャラクターである人の良さ、気の短さ、切り替えの早さが、しっぺ返し戦略の3つの要素に重なることが分かりました。これは、単純に多く手を組むことで点数を稼ぐ戦略でした。ところが、2004年に行われた反復「囚人のジレンマ」ゲームの選手権において、しっぺ返し戦略を打ち負かして優勝した戦略が現れます。それは、大和田の生き様にも重なる主人と奴隷戦略です。この戦略は、最初から60個からなるチームで参加します。それらは、主人の役割のプログラムと奴隷の役割のプログラムにそれぞれ分かれます。ゲームの最初に、あらかじめ決められた順序で協力と裏切りを数回出して主人と奴隷がチームであることを認識しします。そして、チーム内では、手を組まなくても点数を稼ぐのです。ここから、大和田のキャラクターをこの戦略の3つのポイントに重ね合わせてみましょう。(1)部下を駒にする-チーム内では主人は奴隷を常に裏切る大和田は、組織の中で派閥をつくり、自分の出世のために、部下を半沢に仕向け、打ち負かされると容赦なく切り捨てています。1つ目の大和田のキャラクターは、部下を駒にすることです。これは、主人と奴隷戦略の「チーム内では主人は奴隷を常に裏切る」に重なります。(2)部下を言いなりにさせる-チーム内では主人は奴隷を常に協力させる大和田は、人事権を悪用し、それを盾に、部下たちに忠誠を誓わせ、逆らわせません。2つ目の大和田のキャラクターは、部下を言いなりにさせることです。これは、主人と奴隷戦略の「チーム内では主人は奴隷を常に協力させる」に重なります。(3)派閥以外の相手は威圧する-チーム外には主人も奴隷も常に裏切る大和田は、部下を従え、派閥以外の相手には威圧して、基本的に協力をしません。3つ目の大和田のキャラクターは、派閥以外の相手は威圧することです。これは、主人と奴隷戦略の「チーム外には主人も奴隷も常に裏切る」に重なります。なお、厳密には、大和田は、途中から、頭取の目指す行内融和に従い、派閥以外の相手には、しっぺ返しに近い戦略を取っています。<< 前のページへ | 次のページへ >>

検索結果 合計:5821件 表示位置:2761 - 2780