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混合症状を伴う双極性障害患者への推奨治療~CANMAT/ISBDガイドライン

 2018年、カナダ気分・不安治療ネットワーク(CANMAT)および国際双極性障害学会(ISBD)のガイドラインでは、双極性障害に対する実臨床における治療に関する推奨事項が示されている。これらのガイドラインにおいて、混合症状が治療選択に及ぼす影響について解説されているが、特定の推奨事項は示されておらず、現時点でアップデートが必要な重大なポイントである。カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のLakshmi N. Yatham氏らは、CANMATおよびISBDガイドラインにおける混合症状を伴う双極性障害患者への推奨治療について解説を行った。Bipolar Disorders誌オンライン版2021年10月2日号の報告。 双極性障害における混合症状に関する研究の概要、改訂されたCANMATおよびISBDの評価方法を用いた推奨治療について解説した。高品質のデータ不足、専門家の意見への依存、制限などについても解説した。 主な結果は以下のとおり。・DSM-Vで定義された混合症状を伴う躁病エピソードまたはうつ病エピソードに対する第1選択治療に関して、水準を持たした薬剤はなかった。・躁病+混合症状の場合には、第2選択治療として、アセナピン、cariprazine、バルプロ酸、アリピプラゾールが挙げられた。・うつ病+混合症状の場合には、第2選択治療として、cariprazine、ルラシドンが挙げられた。・研究の歴史の長いDSM-IVで定義された混合症状に対しては、第1選択治療にアセナピンとアリピプラゾール、第2選択治療にオランザピン(単剤または併用)、カルバマゼピン、バルプロ酸が挙げられている。・DSM-Vでは、混合症状後の維持療法に関する研究は非常に限られており、第3選択治療は、専門家の意見に基づいていた。・DSM-IVでは、混合症状後の維持療法に対し第1選択治療にクエチアピン、第2選択治療にリチウム、オランザピンが挙げられていた。 著者らは「CANMATおよびISBDでは、これらのガイドラインを通じてさまざまな症状を有する患者に対応する臨床医をサポートし、このような一般的かつ複雑な臨床状態の診断・治療を改善するための研究への投資に影響することが望まれる」としている。

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患者が後発品への変更を嫌がる薬剤は?【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第79回

後発医薬品の品質問題や供給停止の影響で、新規採用する薬剤の情報収集に追われている薬局は多いと思います。そのような中、東京都薬剤師会が後発医薬品に変更しにくい薬剤についてのアンケートを実施し、結果を公表しました。東京都薬剤師会は11月5日の定例会見で、後発品の使用実態に関する調査の続報を明らかにした。すでに示した「変更し難い医薬品」について、具体的な品目名を公表。薬局において変更しにくい内服薬は「エディロールカプセル」と後発品の「エルデカルシトールカプセル」が最も多く、次いで「デパス」「マイスリー錠」と続いた。同様に外用薬は「ヒルドイド」と後発品の「ヘパリン類似物質」が最多で、「モーラス」と「ケトプロフェンテープ」、「ロキソニン」と「ロキソプロフェンナトリウム」の順だった。(2021年11月8日付 RISFAX)この調査は2021年9月に実施されたもので、938人の管理薬剤師と薬局開設者が回答しました。後発医薬品に変更しにくい背景には、薬剤師としての視点だけでなく、実際には患者さんや医師からの要望や領域特有の難しさなどさまざまな理由があります。その品目や問題点を明らかにすることで、今後の使用推進につなげたいという目的があるのでしょう。まず、内服薬についてです。後発医薬品に変更しにくいと回答した薬局が30軒を超えたものは以下の17品目でした(カッコ内の数字は回答数)。なお、先発医薬品から後発医薬品への変更だけでなく、後発医薬品から後発医薬品への変更も含みます。1位エディロール(148)2位デパス(119)3位マイスリー(112)4位ロキソニン(100)5位アレロック(80)6位ハルシオン(80)7位メインテート(69)8位オノン(51)9位エルデカルシトール(47)10位レンドルミン(42)11位ビソプロロールフマル酸塩(41)12位サンバルタ(39)13位ノルバスク(38)14位アムロジン(36)15位ユベラ(34)16位アルファカルシドール(33)17位デパケン(30)変更しにくい理由は「患者希望」が41%、「後発医薬品が入手できない」が38%と高い割合でしたが、「医師の指示」も16%ありました。1位や9位など供給停止が原因の品目は今年ならではですが、それ以外では精神科系と循環器系の品目が多いという印象を受けます。精神科系の薬剤を変更した患者さんから効かなくなったと言われた…というのはしばしば耳にしますので、やはりハードルが高いのでしょう。次に、外用薬についてですが、上位10品目は以下のようになりました(カッコ内の数字は回答数)。1位ヒルドイド(669)2位モーラス(551)3位ロキソニンテープ(289)4位アンテベート(84)5位ホクナリンテープ(57)6位ヒアレイン(49)7位リンデロン(46)8位プロトピック(25)9位キサラタン(24)9位シムビコート(24)外用薬の変更しにくい理由は「患者の希望」が約60%を占めました。外用薬は先発医薬品と後発医薬品で使用感が異なることがあり、それを気にする患者さんがいることは知っていましたが、思っていたよりも多いのかなという印象です。ただ、個人的には、患者さんが後発医薬品を実際に使用したうえで先発医薬品を希望しているのか、後発医薬品は未使用だけれども薬価が安いなどの理由で先発医薬品のままでいいと考えているのかが気になります。また、「後発品調剤体制加算を1段階昇格するための重要な品目は何か」という問いに対して、外用薬を挙げる薬局が多くみられました。患者さんがこだわる使用感をどのように説明してフォローするかが1段階昇格の鍵となりそうです。使用感が異なる後発医薬品は同等ではない!?調査を実施した東京都薬剤師会の永田 泰造会長は、外用薬を変更しにくい理由として最も割合が高かった「患者希望」に関し、貼り心地や塗り心地といった使用感に問題があると指摘して「60%の患者がノーと言っている以上、先発とは同等のものではない」「こうした外用薬は後発品カテゴリーから除外すべきではないか」といった内容の発言をしたと報じられています。この発言に関しては、後発医薬品は先発医薬品と有効成分は同じであり、製剤的に改良していることもあるのに、使用感が違うのなら除外しようというのはちょっと乱暴に思います。しかし、患者さんが求める後発医薬品はどうあるべきか考え直すよい機会かもしれません。参考1)【東京都薬剤師会後発薬調査】「変更し難い医薬品」名を公表/内服1位はエディロール/外用薬1位はヒルドイド/永田会長「製剤技術異なる外用薬は単なる後発薬カテゴリーからはずすべき」|ドラビズon-line(dgs-on-line.com)2)後発品に変更できにくい内服薬は「エディロール」 都薬調査、外用薬は「ヒルドイド」と「モーラス」|日刊薬業(jiho.jp)

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日本人アルコール依存症の重症度が治療経過に及ぼす影響

 エビデンスの蓄積によりアルコール依存症の重症度と再発リスクとの関連が示唆されているが、依存症の重症度が疾患経過に及ぼす影響は十分に評価されていない。久里浜医療センターの吉村 淳氏らは、入院治療後の経過に対するいくつかのアルコール依存症重症度指数の影響を調査した。Alcoholism, Clinical and Experimental Research誌オンライン版2021年9月29日号の報告。アルコール依存症の重症度の高さは断酒率低下と関連 本プロスペクティブ研究は、専門病院でのアルコール依存症治療後12ヵ月間にわたり実施した。連続して入院したアルコール依存症患者712例が入院時に登録の対象となり、フォローアップ調査には637例が登録された。患者の特徴および重症度は、入院時に複数の手法を用いて評価し、退院後には飲酒行動に関する質問票を用いて郵送にて継続的にフォローアップを行った。 アルコール依存症の重症度が疾患経過に及ぼす影響を調査した主な結果は以下のとおり。・ICD-10診断基準によって評価したアルコール依存症の重症度の高さは、研究期間中の断酒率低下と関連が認められた(p=0.035)。・ベースライン時の血中γグルタミルトランスフェラーゼ値(p=0.031)およびアルコール依存症尺度(ADS)スコア(p=0.0002)の増加は、断酒率の有意な低下と関連していた。・多変量Cox比例ハザード分析では、ADSスコアが最も悪い群は、最も良い群と比較し、飲酒再発リスクが有意に高かった(HR:2.67、p=0.001)。・アルコール依存症の重症度は、飲酒パターンとも関連しており、制限された飲酒および断酒した群では、飲酒状況が悪い群と比較し、入院時のADSスコアがより低く(p=0.001)、初回飲酒時の年齢がより遅かった(p<0.001)。 著者らは「本研究は、複数の手法による調査結果に反映されているように、より重度のアルコール依存症は、治療後の経過不良を予測していることが示唆された。このことから、治療開始時に依存症の重症度を評価することは、治療アウトカムの予測および追加の支援が必要な患者を顕在化させるために役立つ可能性がある」としている。

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双極性障害患者の躁状態に対するCOVID-19パンデミックの影響

 COVID-19パンデミックは、人々の日常生活に支障を来し、メンタルヘルスに悪影響を及ぼすと考えられる。しかし、双極性障害患者の気分症状への影響およびパンデミック前の症状重症度との関連はよくわかっていない。オランダ・ライデン大学のManja Koenders氏らは、双極性障害患者の症状に対するCOVID-19パンデミックの影響について検討を行った。Brain and Behavior誌オンライン版2021年9月23日号の報告。 2020年4月~9月に双極I型障害および双極II型障害と診断された患者を対象に症状やウェルビーイングを評価したBipolar Netherlands Cohort(BINCO)研究を実施した。質問票には、躁症状および抑うつ症状(YMRS、ASRM、QIDS)、心配性(PSWQ)、ストレス(PSS)、孤独、睡眠、COVID-19への恐怖、積極的な対処、物質使用に関する内容を含めた。躁症状、抑うつ症状、ストレスのレベルは、COVID-19パンデミック前に評価し、ロックダウン中の軌跡は混合モデルを用いて推定した。 主な結果は以下のとおり。・双極性障害患者70例中36例(51%)は、COVID-19評価に1回以上反応が認められた(平均年齢:36.7歳、女性の割合:54%、双極I型障害の割合:31%)。・第1波の間、(軽)躁症状のベースラインからの有意な増加が観察され(χ2:17.60、p=0.004)、その後減少した。・COVID-19への恐怖(χ2:18.01、p=0.003)と積極的な対処(χ2:12.44、p=0.03)は、パンデミックの最初で最も高く、その後減少した。・抑うつ症状やストレスを含む他の尺度は、時間の経過とともに有意な変化は認められなかった。 著者らは「双極性障害患者は、COVID-19パンデミック前から初期段階にかけて躁症状の有意な増加が認められた。これらの症状は、ロックダウンが解除された翌月から、COVID-19への恐怖や積極的な対処とともに減少した」としている。

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抗CGRP抗体中止後の片頭痛の経過

 ドイツ国内および国際的なガイドラインにおいて、抗CGRP(受容体)モノクローナル抗体による6~12ヵ月の治療で片頭痛の予防を達成した後、薬剤の使用中止が推奨されている。ドイツ・シャリテー-ベルリン医科大学のBianca Raffaelli氏らは、抗CGRP(受容体)抗体中止4ヵ月後の片頭痛の経過を分析した。Cephalalgia誌オンライン版2021年9月27日号の報告。 抗CGRP(受容体)抗体を8ヵ月以上使用した後に中止した片頭痛患者を対象に、縦断的コホート研究を実施した。治療開始4週間前(ベースライン)、最終治療の前月、最終治療5~8週間後および13~16週間後の頭痛データを分析した。主要エンドポイントは、最終治療の前月から13~16週間後までの1ヵ月当たりの片頭痛日数の変化とした。副次的エンドポイントは、1ヵ月当たりの片頭痛日数および急性期治療薬使用日数の変化とした。 主な結果は以下のとおり。・対象は、抗CGRP受容体抗体エレヌマブおよび抗CGRP抗体ガルカネズマブまたはフレマネズマブの使用で均等に割り振られた62例。・最終治療の前月の1ヵ月当たりの片頭痛日数は、8.2±6.6日であった。・1ヵ月当たりの片頭痛日数は、最終治療5~8週間後で10.3±6.8日(p=0.001)、13~16週間後で12.5±6.6日(p<0.001)と徐々に増加していた。・最終治療13~16週間後の1ヵ月当たりの片頭痛日数は、ベースライン時と同程度であった(-0.8±5.4日、p>0.999)。・1ヵ月当たりの片頭痛日数および急性期治療薬使用日数の変化においても、同様の結果が認められた。 著者らは「片頭痛予防における抗CGRP(受容体)抗体の中止は、片頭痛の頻度および急性期治療薬の使用を有意に増加させることが示唆された」としている。

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日本人と米国人の認知症リスクを比較

 アルツハイマー病ニューロイメージングイニシアチブでは、一般集団において日本人は米国人よりも脳のAβ負荷が有意に低いことが示唆されている。米国・ピッツバーグ大学のChendi Cui氏らは、認知機能が正常な高齢の日本人と米国人の血管疾患負荷、Aβ負荷、神経変性について比較を行うため、横断的研究を実施した。Brain Sciences誌2021年9月8日号の報告。 日本人と米国人の対象者は、年齢、性別、アポリポ蛋白E(APOE)遺伝子型でマッチさせた。脳血管疾患負荷は白質病変(WML)、脳Aβ負荷は11C-labeled Pittsburgh Compound B(PiB)を用いて評価した。神経変性は、海馬体積と皮質厚で評価した。 主な結果は以下のとおり。・調査対象は、日本人95人と米国人95人(男性の割合:50.5%、平均年齢:82歳)。・日本人は、米国人と比較し、WMLが大きかったが、全体的なAβ standardized uptake value ratio(SUVR)、皮質厚、海馬体積に有意な違いは認められなかった。・日本人は、腹側線条体、後帯状皮質、楔前部における局所のAβ SUVRが有意に低かった。 著者らは「日本人と米国人では、血管疾患やAβ負荷に関して異なるプロファイルを有していることが明らかとなった。このことは、認知症発症には複数のリスク因子が関与している可能性が高いことを示唆している。さらに、日本人は米国人よりもAβ負荷が小さいため、認知症リスクが低い可能性がある。調査結果の予測精度を確認するためにも、これらコホートの長期的なフォローアップが求められる」としている。

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アトピー性皮膚炎の精神面への影響、4歳児でも

 英国の小児1万1千例超を長期10年にわたって追跡したコホート研究で、小児におけるアトピー性皮膚炎(AD)とメンタルヘルスの関連が明らかにされた。重症ADは、小児期のうつ症状および内在化症状を呈する可能性を約2倍増大することが、また、軽症~中等症ADはうつ症状との関連は認められなかったが、4歳という早い時期に内在化問題行動との関連が認められたという。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のChloe Kern氏らが報告した。 先行研究で成人におけるADとメンタルヘルス状態の関連は明らかにされているが、小児に関しては、世界中でADの大きな負荷が問題になっているが、メンタルヘルス併存疾患の発症に関する文献は限られている。JAMA Dermatology誌2021年10月号掲載の報告。 研究グループは、小児および思春期の複数時点で、ADと内在化問題行動およびうつ症状との関連を調べ、また喘息/鼻炎、睡眠、炎症など潜在的な媒介因子を調べる住民ベースの縦断的出生コホート研究を行った。UK Avon Longitudinal Study of Parents and Childrenの登録児について、出生から平均10.0年間(SD 2.9)追跡した児のデータを解析した。データの収集期間は1990年9月6日~2009年12月31日で、解析は2019年8月30日~2020年7月30日に行われた。 屈面性皮膚炎(flexural dermatitis)に関する標準化質問票によって測定した年間AD有病率を、月齢6ヵ月~18歳の11時点で評価。主要評価項目は、うつ病の症状(10~18歳の5時点でShort Moods and Feelings Questionnaireを用いて得た小児からの回答で測定)、内在化問題行動(4~16歳の7時点でEmotional Symptoms subscale of the Strength and Difficulties Questionnaireを用いて得た母親からの回答で測定)であった。 主な結果は以下のとおり。・解析には、1万1,181例の小児が含まれた(男子5,721例[51.2%])。・期間中のうつ症状有病率は、6.0~21.6%、内在化問題行動は10.4~16.0%であった。・軽症~中等症ADは、うつ症状との関連は認められなかったが、内在化問題行動は4歳という早い時期に関連が認められた(補正後モデルにおける小児期全体の平均増大オッズ:29~84%)。・重症ADは、うつ症状(補正後オッズ比:2.38、95%信頼区間[CI]:1.21~4.72)、内在化問題行動(1.90、1.14~3.16)と関連していた。・睡眠の質は、上記の関連の一部を媒介していたが、睡眠時間、喘息/鼻炎、炎症マーカー(IL-6、CRP)値の違いによる関連は認められなかった。

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問診が要の片頭痛、判断基準を整理しよう!【Dr.山中の攻める!問診3step】第8回

第8回 問診が要の片頭痛、判断基準を整理しよう!―Key Point―二次性頭痛の除外が最も大切である二次性頭痛が否定的ならば、片頭痛の特徴的症状がないかを問診で確認する三叉神経・自律神経性頭痛は片頭痛と治療が異なるので鑑別は重要症例:27歳 女性主訴)頭痛現病歴)生来健康な27歳女性。1ヵ月前から毎日1時間続く、ひどい頭痛を主訴に来院。いつも右の頭部に痛みがある。このような頭痛の経験はない。片頭痛の既往はなし。NSAIDs(商品名:ロキソニン)は効かない。2週間前から、頭痛時に頭痛と同じ右側の目から流涙、右鼻から鼻汁あり。ズキズキするひどい痛みが1時間続く。明け方4時30分頃や20時頃に、決まって毎日右側の頭痛あり。20~21時の頭痛は目をえぐられる感じ。頭痛時に落ち着きがなくなり歩き回る。既往歴)特になし薬剤歴)定期服用薬なし経過)症状から群発頭痛を疑った。酸素投与とトリプタン(皮下注)の投与を開始した。◆今回おさえておくべき臨床背景はコチラ!雷鳴頭痛は内科エマージェンシー。くも膜下出血が最多三叉神経・自律神経性頭痛を見逃さない。群発頭痛が最多インドメタシンが著効する頭痛がある【STEP1】患者の症状に関する理解不足を解消させよう【STEP2-1】二次性頭痛を除外し、片頭痛なのか診断しよう■二次性頭痛を疑うred flag1)初めて経験する、または最悪の頭痛突然発症した雷鳴様頭痛増悪する、または今までとはまったく異なるパターンの頭痛脳神経学的異常所見あり50歳以上の新規発症頭痛担がん、凝固異常、免疫抑制状態の患者、妊婦に起こった新規の頭痛意識変容や意識障害を伴う頭痛体位、労作、性行為、バルサルバ法により誘発された頭痛これらがあれば、MRIでの精査が必要となる。■雷鳴頭痛*の鑑別診断1)*1分以内に最高となる突然発症の頭痛くも膜下出血(最多)、脳静脈洞血栓症、内頸動脈解離/椎骨動脈解離、可逆性脳血管攣縮症候群、可逆性後白質脳症症候群、下垂体卒中、緑内障発作、脳梗塞可逆性脳血管攣縮症候群は2番目に多い。入浴やシャワー、性行為、薬剤が誘引となり雷鳴頭痛を繰り返す■片頭痛なのか診断二次性頭痛が否定されれば、医療機関を訪れる患者の90%は片頭痛である片頭痛は軽症から重症までいろいろな表現形を持つ。緊張型頭痛と誤って診断される片頭痛は非常に多い。片頭痛の問診(POUND)2):3つ以上の項目が当てはまるなら、片頭痛と診断できる。PPulsatile quality(拍動性)O4-72 hOurs(4〜72時間続く)UUnilateral location(片側性)NNausea/vomiting(吐き気)DDisabling intensity(日常生活に支障)薬剤乱用頭痛、睡眠時無呼吸症候群、カフェイン中毒を否定することが大切である頭痛ダイアリーは診断に大いに役立つ【STEP2-2】三叉神経・自律神経性頭痛(TACs: trigeminal autonomic cephalalgias)を鑑別のために、次のいずれかの症状の有無を疑う■下記の自律神経症状(頭痛と同側に起こる)の発症、または発作中に興奮し落ち着きがなくウロウロ歩き回る結膜充血または流涙鼻閉または鼻汁眼瞼浮腫前額部と顔の発汗縮瞳または眼瞼下垂■群発頭痛(TACsでは最多)1,3)「キリで眼を突き刺されるような」かなり激しい片側性の頭痛かつては男性にほぼ特有の疾患と考えられていたが、最近の疫学統計では男女比は3~7:1発作の頻度は1日に1~8回、夜間決まった時刻に起こることが多い持続時間は15~180分で、数週〜数ヵ月続くアルコールが誘引となる■インドメタシンが著効する頭痛発作性片側頭痛(頻度:1~40回/日、持続:2~30分)や持続性片側頭痛(頻度:3~200回/日、時々悪化しながら持続する痛み)がある3)【STEP3】治療■片頭痛急性期治療はNSAIDs、トリプタン製剤、制吐薬である。いくつかを組み合わせて使うと効果的である頭痛が起こって1時間以内に薬を使うことが大切である皮膚アロディニア(感覚異常)が起こってからではトリプタン製剤の効果は減る。トリプタン製剤は十分な量を使用し、効果がなければ別のトリプタン製剤を試すと有効なことがある1ヵ月に10日以上、片頭痛発作があるときは、予防治療を考慮する。非薬物的療法として、規則正しい睡眠、分割した少量ずつの食事、十分な水分摂取を指導する。薬物ではプロプラノロール(商品名:インデラル)、トピラマート(商品名:トピナ)を用いる1)■群発頭痛治療は高流量の酸素投与(リザーバーマスクで12L/分、15分間)とスマトリプタン(商品名:イミグランキット)の皮下注を行う。経口トリプタン製剤は効果発現が遅いため役に立たない。群発頭痛の予防はベラパミル(商品名:ワソラン)を用いる。<参考文献・資料>1)ACP MKSAP19 Neurology. P1, 20212)Wilson JF, et al. Ann Intern Med. 2007;147:ITC11-1-ITC11-16.3)Goldman L, et al. Goldman-Cecil Medicine. 26th. Elsevier. 2020.p2316-2323.日本頭痛学会:頭痛ダイアリー日本神経学会、日本頭痛学会、日本神経治療学会:頭痛の診療ガイドライン2021

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抗精神病薬の最小有効維持用量への挑戦~10年間のフォローアップ調査

 初回エピソード精神疾患に対する抗精神病薬による長期治療の必要性については議論の余地がある。台湾・国立台湾大学のChen-Chung Liu氏らは、抗精神病薬治療の継続か、投与中止かの2つの案を超えた代替案があるかを調査した。Frontiers in Psychiatry誌2021年9月7日号の報告。 本レトロスペクティブ観察研究では、2006年スタートの早期精神疾患研究に参加した患者のカルテデータを分析した。低用量の抗精神病薬投与で良好な機能を達成できている患者にとくに注目した。 主な結果は以下のとおり。・初回エピソード精神疾患患者81例のうち、55例(67.9%)は5年以上のフォローアップ期間を有していた。・多くの患者は非情動性精神疾患に罹患していた(46例、83.6%)。・55例中20例(36.4%)は、最終診察時までフルタイムで就業/教育を続けていた。そのうち15例は、最小有効用量以下の抗精神病薬投与を受けていた(クロルプロマジン[CP]換算量:200mg/日)。・また、55例中10例(18.2%)は、維持療法期間中の抗精神病薬の投与量がCP換算量50mg/日未満と非常に少なく、このことが良好な機能と有意に関連していた。・機能低下と関連していた因子は、男性、入院歴、クロザピン治療歴であった。・抗精神病薬治療が行われていなかった患者は、非情動性精神疾患患者の2例のみであった。 著者らは「抗精神病薬の長期使用を完全に中止できなかったとしても、多くの患者では、初回エピソード精神疾患後の維持治療において、抗精神病薬の低用量投与を実現し、良好な機能を達成することができると考えられる。維持療法中、抗精神病薬の用量を微調整することで再発予防と機能維持のバランスを最適に保つ治療を行うことは、臨床的に注目されるべき課題である」としている。

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精神症状に書道が効果的というメタ解析【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第198回

精神症状に書道が効果的というメタ解析いらすとやより使用中国書道療法(Chinese calligraphy therapy)、要は漢字をきれいに毛筆で書く行動療法の1つですが、これまでの研究を集めてメタ解析したものがあります。ちなみに私、書道は大の苦手で、高校のときに真剣に書いた字を笑われたことがあります。Chu K, et al.Does Chinese calligraphy therapy reduce neuropsychiatric symptoms: a systematic review and meta-analysisBMC Psychiatry. 2018 Mar 7;18(1):62.英語および中国語のデータベースを検索し、入手可能な文献(出版年の下限は問わず)から2016年12月までの文献を検索しました。ランダム化比較試験など信頼性の高い文献を集め、21論文を解析しました。ヘテロな集団ではありますが、書道療法は精神症状を有意に改善させました(p<0.01)。また、不安症状(p<0.001)、抑うつ症状(p<0.001)についても、有意な改善をもたらすことが示されました。統合失調症の症状についても、有意に軽減したと報告されています(陽性症状:p=0.003、陰性症状:p<0.001)。メタ解析に含まれた研究は、ほとんどが15~30人という小規模な比較試験であり、統合して解析するにあたり、不均一な集団になってしまう点が懸念です。大規模な比較試験を行うには、少々手間が掛かる行動療法であることから、なかなかレクリエーションの域を出ない治療法に位置付けられたままになるかもしれません。身体を動かすという点では、大きな筆を持ってパフォーマンスをする書道のほうがメンタルにはよさそうですが、ランダム化比較試験を行うには少々大掛かりになってしまいます。

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血中サイトカインによるうつ病と双極性障害の鑑別

 双極性障害は、うつ病と診断されることも少なくない。その結果、治療が奏効せず、臨床アウトカムが不良となってしまうこともある。現在の双極性障害の診断は、臨床症状の評価に依存しており、これは主にレトロスペクティブであり、記憶バイアスの影響を受ける。フランス・コートダジュール大学のEmanuela Martinuzzi氏らは、うつ状態にある双極性障害患者の鑑別において、うつ病と双極性障害を区別する血液バイオマーカーを特定するため、検討を行った。Brain, Behavior, & Immunity - Health誌2021年3月10日号の報告。 双極性障害またはうつ病の包括基準を満たしたうつ病エピソードを有する患者を対象とした2つの独立した自然主義的コホート研究より臨床データおよび血清サンプルデータを収集した。discovery cohortは462例、replication cohortは133例の患者で構成されていた。患者に対し標準的な診断面接により臨床症状を評価し、現在の治療を含む臨床変数を記録した。採取した血液より31種のサイトカインレベルの評価を行うため、高感度マルチプレックスアッセイを用いた。双極性障害に関連するサイトカインを特定するため、ノンパラメトリックブートストラップ法を組み合わせたペナルティ付きロジスティック回帰モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・discovery cohortでは、インターロイキン(IL)-6、IL-10、IL-15、IL-27、C-X-Cリガンドケモカイン(CXCL)-10は、双極性障害と正の相関が認められた。・上記の5つのサイトカインのうち、IL-10、IL-15、IL-27は、replication cohortにおいても双極性障害との関連が認められた。 著者らは「気分障害の病態生理学的メカニズムに関する新たな知見が得られる可能性があるため、本結果については、プロスペクティブコホート研究で検証されるべきであろう」としている。

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妊娠中の抗うつ薬、子供の数学の成績に影響か/JAMA

 妊娠中に抗うつ薬を処方された母親の子供は、処方されなかった母親の子供と比較して、数学のテストの点数は2点低く有意差が認められ、国語のテストの点数には差がなかったことが、デンマーク・オーフス大学のJakob Christensen氏らの調査で示された。結果について著者は、「数学の平均点は曝露群で低かったが、差は小さいことから臨床的な意義は不確実である。この研究結果は、妊娠中の母親にうつ病治療を行うことの利点と比較して検討する必要がある」としている。JAMA誌2021年11月2日号掲載の報告。デンマークの後ろ向きコホート研究 研究グループは、妊娠中の抗うつ薬の処方が、義務教育期の子供の標準化されたテストの成績に影響を及ぼすかを評価する目的で、住民ベースの後ろ向きコホート研究を行った(Central Denmark Regionなどの助成を受けた)。 解析には、1997年1月1日~2009年12月31日の期間にデンマークで出生し、公立の小学校または中学校に通い、2010年1月1日~2018年12月31日の期間に「デンマーク全国テストプログラム」の国語(2、4、6、8年生が対象)または数学(3、6、8年生が対象)のテストを受けた7~17歳の児童生徒が含まれた。「デンマーク処方箋登録」から、妊娠中に抗うつ薬の処方を受けた母親の情報が収集された。 関連する交絡因子を補正した線形回帰モデルを用いて、母親が抗うつ薬を処方された子供と処方されなかった子供で、数学と国語の標準化された点数(1~100点、得点が高いほどテスト成績が良い)の差が推算された。数学:52.1点vs.57.4点、国語:53.4点vs.56.6点 57万5,369例(男児51.1%)の児童生徒が解析に含まれ、このうち1万198例(1.8%)が妊娠中に抗うつ薬を処方された母親の子供(抗うつ薬曝露群)であった。テストを受けた時の児童生徒の平均年齢(SD)は、2年生の8.9(0.4)歳から8年生の14.9(0.4)歳の範囲だった。 数学のテストの平均点は、抗うつ薬曝露群が52.1点(95%信頼区間[CI]:51.7~52.6)と、非曝露群の57.4点(57.3~57.4)に比べて有意に低かったが、群間の差は小さかった(補正後群間差:-2.2点、95%CI:-2.7~-1.6)。 一方、国語のテストの平均点は、曝露群が53.4点(95%CI:53.1~53.7)、非曝露群は56.6点(56.5~56.6)であり、両群間に差は認められなかった(補正後群間差:-0.1[95%CI:-0.6~0.3])。

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うつ病の寛解に対する夜型生活改善の影響

 夜型生活は、うつ病のより悪いアウトカムと関連している。時間生物学的治療による夜型生活の改善の可能性や、その結果がうつ病の長期アウトカムに及ぼす影響については、よくわかっていない。これらの影響を明らかにするため、香港中文大学のJoey Wy Chan氏らは、うつ病治療における夜型生活改善効果について検討を行った。Journal of Clinical Sleep Medicine誌オンライン版2021年9月21日号の報告。 5週間の補助的光療法のランダム化比較試験に参加した非季節性単極性うつ病で夜型生活の成人患者91例を対象とし、そのデータを分析した。夜型生活の定義は、朝型夜型質問票(MEQ)スコア41以下とした。治療5週目でのMEQスコア41超を達成した場合を夜型生活の改善とし、治療後5ヵ月目までMEQスコア41超を維持した場合を夜型生活の持続的な改善と定義した。 主な結果は以下のとおり。・治療5週目に夜型生活の改善が認められた患者は33例(36%)であった。・一般化推定方程式モデルでは、治療5週目の夜型生活の改善は、5ヵ月後のうつ病寛解の2倍増を予測していた(OR:2.61、95%CI:1.20~5.71、p=0.016)。・夜型生活の持続的な改善が認められた患者は25例(75.7%)であり、5ヵ月後のうつ病寛解の可能性が高かった(OR:3.18、95%CI:1.35~7.50、p=0.008)。 著者らは「夜型生活のうつ病患者に対する5週間の時間生物学的治療は、約3分の1の患者で夜型生活を改善し、5ヵ月後の寛解の可能性が高まることが示唆された」としている。

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Webベースの認知症BPSDケアプログラムの普及促進のために

 COVID-19パンデミックとその結果引き起こされたソーシャルディスタンスの順守は、認知症患者の精神神経症状を誘発する可能性があるといわれている。東北大学の中西 三春氏らは、認知症の精神神経症状に対応するためのWebベースの心理社会的介入プログラムの有効性およびWebベースツールを利用する認知症介護者に対するeラーニングトレーニングコースの有用性を評価した。JMIR Medical Education誌2021年10月12日号の報告。 本研究は、東京において準実験的研究として実施された。eラーニングコースは、2020年7月~12月に専門の介護者に対し3回実施した。コースを修了した介護者は、認知症患者の精神神経症状レベルを評価するため、Webベースツールを介したNeuropsychiatric Inventory(NPI)合計スコアを用いた。主要アウトカムは、2021年3月までNPI評価のフォローアップを実施した介護者数およびベースラインから最新の評価までのNPIスコアの変化とした。2019年7月~2020年3月に対面によるトレーニングコースを完了した専門の介護者を対照群とし、情報を入手した。 主な結果は以下のとおり。・2020年にeラーニングコースを完了した介護者は268人であった。・患者268例中63例が認知症患者であり、56例(20.9%)がフォローアップ評価を実施できた。・平均NPIスコアは、ベースライン(20.4±16.2)から最新のフォローアップ評価(14.3±13.4)まで有意な減少が認められた。・エフェクトサイズは、中程度であると推定された(Cohen's drm=0.40)。・対面によるトレーニングコースを完了した介護者(対照群)は252人であった。・患者252例中114例(45.2%)がフォローアップ評価を実施できた。・eラーニングコースを完了した介護者は、対照群と比較し、フォローアップ評価を実施する割合が有意に低かった(χ2=52.0、p<0.001)。・NPIスコアの変化は、トレーニングコースの種類で違いは認められなかった(coefficient=-0.61、p=0.69)。 著者らは「対面トレーニングをeラーニングに変更することで、これまでプログラムに参加できなかった専門の介護者にDEMBASE認知症ケアプログラムへ参加する機会を創出することができた。どちらのトレーニングコースでもプログラムの効果は同等であったが、再現性は最適ではなく、eラーニングコースを受けた介護者の実施レベルは低かった。実現可能性を改善するためには、実施や技術支援の動機付けを提示できる戦略を開発する必要がある。また、オンラインコミュニティを使用したプログラムについても調査する必要がある」としている。

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そして父になる(続編・その1)【英才教育で親がハマる「罠」とは?(教育虐待)】Part 1

今回のキーワード認知能力非認知能力(社会情動的スキル)自信と自尊心レジリエンス敏感期不登校皆さんは、自分の子どもに英才教育を受けさせたいと思いますか? それは、才能を伸ばすため? お受験のため? じゃあ、できるだけ長い時間やるほうが良いでしょうか? できるだけ小さい時からやるほうが良いのでしょうか? 逆に、そうすることのリスクはないでしょうか?これらの答えを探るために、今回は、映画「そして父になる」を再び取り上げます。この映画では、子どもの取り違え(新生児取り違え)に巻き込まれた 2組の夫婦の葛藤と自己成長が描かれています。すでに2021年7月号の記事で、親子の絆をテーマとして詳しく解説しました。今回の続編記事では、映画に登場する2組の家族による対照的な子育ての仕方の違いに焦点を当てます。そこから、英才教育によって特に高まるとされる認知能力とそれ以外の非認知能力の違いについて考えます。そして、その能力の違いから、英才教育で親がハマる、ある「罠」を明らかにします。なお、非認知能力は、2015年にOECD(経済協力開発機構)によって、社会情動的スキルという名で提唱されており、昨今注目されています。認知能力とは?野々宮家の父親は野々宮良多で、東京の大企業のエリートサラリーマン。母親はみどりで、専業主婦。そして、子どもは慶多で、6歳の一人息子。野々宮家は、慶多を有名私立小学校に受験させるため、お受験塾とピアノ教室に通わせます。そして、慶多の認知能力は高まります。ここから、その認知能力の特徴を大きく3つ挙げてみましょう。(1)言われたことを覚えている-記憶力受験での集団の行動観察ではビニールで「生き物作り」の課題が出されますが、慶多は創造的なおばけをつくります。実は、彼は、お受験塾で、似たような課題を繰り返しやっており、「創造的なおばけ」は、採点官に高評価が得られるように仕込まれたものでした。この事実は、映画のノベライズ版で明かされています。対照的に、琉晴は、慶多のようにお受験塾やピアノ教室に通うことはなく、ふざけていたずらばかりをしています。1つ目の認知能力は、言われたことを覚えている、記憶力です。これは、多くの知識や方法を知っていることでもあります。(2)言われた通りにやる-情報処理能力慶多は、家族揃っての面接の時、面接官から「今年の夏には何をしましたか?」と質問されて、「お父さんとキャンプに行って、凧揚げをしました」「(お父さんの凧揚げは)とても上手です」」とそつなく答えます。実は、慶多は父親と一度もキャンプに行ったことはなかったのですが、お受験塾で、聞かれたらそう言うように指導されていたのでした。対照的に、琉晴は、実際に父親と川遊びに行ってはいますが、正直に「お父さんの凧揚げは下手くそ。僕のほうがうまいよ」と言って、面接官から失笑を買いそうです。2つ目の認知能力は、言われた通りにやる、情報処理能力です。これは、質問に対して、望まれる正解を出すことでもあります。(3)言われたことに気を付ける-注意力慶多は、集団での行動観察の時に、あえて人数分用意されていない道具をほかの子と一緒に使い、自分だけで使うことはありません。面接の時は、常に背筋をしっかり伸ばし、はきはきと礼儀正しく質問に答えます。これも、お受験塾で繰り返し訓練されたものであることがノベライズ版で明かされています。対照的に、琉晴は、レストランで食事をするとき、ストローの先を噛んで潰す癖があり、食べこぼしでテーブルを汚しています。何かあると「オーマイガット!」と言う口癖もあります。3つ目の認知能力は、言われたことに気を付ける、注意力です。これは、普段の挨拶、テーブルマナー、落ち着き、立ち振る舞いなどの礼儀作法でもあります。非認知能力とは?斎木家の父親は斎木雄大で、地方(前橋)の町の小さな電気屋の主。母親はゆかりで、町のお弁当屋のパート店員。子どもは、6歳の長男の琉晴をはじめ3人。そして、ゆかりの父親、つまりおじいちゃんが同居しています。琉晴は、2人の妹と弟と一緒に、プールに行ったり家族で川遊びに行き、けんかしながらも仲良く遊び回っています。慶多と琉晴の取り違えが発覚してから、半ば強引に、慶多は斎木家に、琉晴は野々宮家で暮らすようになります。そして、琉晴の非認知能力が発揮されます。ここから、その非認知能力の特徴を大きく3つ挙げてみましょう。(1)自分で考えて行動する力-自発性琉晴は、ずっと野々宮家で暮らすことが分かると、良多に「なんで? パパちゃうやん? パパちゃうよ」と言います。良多から「なんででも」「そのうち分かるようになる」といくら言われても、「なんで」と食い下がります。そして、その数週間後に、みどりの隙を見て、東京から前橋の斎木家まで一人で新幹線に乗って勝手に帰ってしまうのです。対照的に、慶多は、良多から斎木家でずっと暮らすことは「ミッション」だと言われると、それ以上抵抗しません。斎木家で暮らすようになっても、不安そうにしながらも大人しく従っています。1つ目の非認知能力は、自分で考えて行動する力、自発性です。これは、好奇心や積極性であり、医学用語としては、実行機能やコミットメントとも言い換えられます。疑問を持つ、自己主張をする、やり抜くなど自分の力で問題を解決しようとすることでもあります。一方で、慶多は、言われた通りにやることはできますが、言い返したり、自分で考えて行動する様子は見受けられません。(2)自分を落ち着かせる力-セルフコントロール琉晴は一人で新幹線に乗って斎木家に帰りますが、6歳の子どもがすぐに思い付いてできるものではないでしょう。これを実行に移すためには、それまでみどりに悟られないように平然を装い、機をうかがっていたことが考えられます。また、言うことを聞かなかったことで良多から叱られても、顔をしかめるか無表情で毅然としています。対照的に、慶多は、これまで良多に叱られてすぐに泣いていました。斎木家でも、元気がなくなっていくばかりです。2つ目の非認知能力は、自分を落ち着かせる力、セルフコントロールです。これは、我慢強さであり、医学用語としては、抑制、シフティング(切り替え)とも言い換えられます。一方で、慶多は、一見我慢できているように思われますが、我慢強くはないです。なぜなら、元気がなくなっている点で、無理をしており(過剰適応)、その後に限界(適応障害)が来ることが予測されるからです。(3)心を通わせる力-共感性琉晴は、野々宮家で暮らす初日、良多が作った野々宮家のルールのリストを読まされます。「なんで?」とさんざん突っ込んだ直後に、歯磨き粉で洗面台の鏡にいたずら描きをして、お風呂の中で声を出して遊んでいます。さっそく、「お風呂は静かに一人で入る」というルールを破っただけでなく、それを上回ることをしでかしているのでした。家出から連れ戻されたあとも、おもちゃの拳銃で「バババババ!」とみどりと良多に打つまねをして、「拳銃ごっこ」を急に仕掛けています。対照的に、慶多は、お風呂で雄大からおふざけで口の中のお湯をかけられても、作り笑いを浮かべ戸惑うだけでやり返しません。3つ目の非認知能力は、心を通わせる力、共感性です。これは、仲良くなったりうまく人付き合いをしていくためのユーモアやコミュニケーション能力であり、医学用語としては社交性、向社会性とも言い換えられます。一方で、慶多は、礼儀作法などのコミュニケーションの体裁(形式)はかなり心得ていますが、その中身(内容)はあまり育まれていません。次のページへ >>

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そして父になる(続編・その1)【英才教育で親がハマる「罠」とは?(教育虐待)】Part 2

認知能力と非認知能力の違いとは?認知能力とは、主に記憶力、情報処理能力、注意力であることが分かりました。一方、非認知能力とは、主に自発性、セルフコントロール、共感性であることが分かりました。車に例えると、認知能力は、車の備品のそれぞれの細かい性能です。一方、非認知能力は、アクセル(自発性)、ブレーキ(セルフコントロール)、ハンドル(共感性)など運転手がどうしたいかという意思です。それでは、これらの本質的な違いはなんでしょうか? ここから、その違いを大きく3つに分けて考えてみましょう。(1)数値化できるかどうか-測りやすさ慶多が参加したお受験やピアノ演奏会では、合否や優劣をはっきりさせるために、その評価が点数化されたり順位付けされます。一方、慶多と琉晴がそれぞれの新しい家族と一緒に暮らす適応能力については、評価の基準が定まらず、点数化することは難しいです。1つ目の違いは、数値化できるかどうか、つまり測りやすさです。認知能力は、学力(学習能力)、IQ(知能指数)、楽器演奏の技術、工作や絵画の出来栄え、姿勢や立ち振る舞いなどです。つまり、望ましいとされる正解がある点で、点数化できて測りやすいです。一方、非認知能力は、何かを考えたり行動する楽しさや誰かと一緒にいる心地良さを感じる「能力」とも言えます。そこから、不確定な状況(標準化しにくい課題)への適応能力であったり、相手との相互作用から協力関係を築く能力が発揮されます。つまり、正解がなかったり、逆に正解がいくつもあり、必ずしも正解が決まっていない点で、点数化できず測りにくいです。先ほどの車に例えると、車の性能は測りやすいですが、運転手の意思は測りにくいと言えます。なお、お受験では、工作の課題で創造性(自発性)を見たり、集団での行動観察で相手への気配り(セルフコントロールや共感性)を見ており、非認知能力を評価しようとしているように見えます。しかし、すでにお受験対策でその課題のパターンが見抜かれており、望ましいとされる正解を受験生の子どもたちが訓練によって学習できる点で、結果的に非認知能力を評価することは難しいことが分かります。また、子ども同士が仲良くなるためにふざけることも非認知能力としては評価できることですが、面接官が望ましいとしている正解ではない点で、やはり非認知能力を評価することは難しいでしょう。面接でも非認知能力を評価しようとする質問がされていますが、そもそも面接の質問パターンへの模範解答がすでにお受験対策で叩き込まれており、あたかも非認知能力が育まれているように見せかけることができる点で、やはり非認知能力を評価することには限界があるでしょう。なお、測りやすさの視点で、認知能力と非認知能力は、それぞれ自信(自己効力感)と自尊心(特に自己肯定感)に関係が深いと思われます。その訳は、自信は、「自分はできる」という客観的な評価であるのに対して、自尊心は、「自分は大丈夫」という主観的な評価であるからです。つまり、自信は根拠がある(測れる)のに対して、自尊心は根拠がない(測れない)「自信」とも言い換えられます。これらの詳細については、関連記事1をご覧ください。(2)環境変化に適応できるかどうか-心の折れにくさ慶多は、お受験塾でのたゆまぬ訓練によって、見事志望校に合格しました。一方の琉晴は、いきなりお受験で合格することは難しいでしょう。しかし、その後、慶多と琉晴は、それぞれの新しい家族と一緒に暮らすようになってから、慶多は元気がなくなり、心が折れそうになっています。一方で、琉晴は、何とかうまくやって行こうとしており、心は折れていません。2つ目の違いは、環境変化に適応できるかどうか、つまり心の折れにくさです。認知能力は、環境が変化しない状況(標準化された課題)への処理能力と言い換えられます。逆に言えば、環境が変化する状況への適応能力ではないため、そのストレスへの弱さがあり、心が折れやすいと言えます。一方、非認知能力は、まさに環境が変化する状況への適応能力と言い換えられ、そのストレスへの強さがあり、心が折れにくいと言えます。先ほどの車に例えると、一般道(環境変化が少ない状況)では車の性能が発揮されますが、草原(環境変化が大きい状況)では車の性能は当てにできず、運転手の判断(意思)が重要になってくると言えます。さらに踏み込めば、慶多と同じく、実は良多の非認知能力も高くないことが分かります。良多は、子どもの取り違えが発覚(環境が変化)してから、ストレスを抱え込み、これまでのエリート街道から外れ、みどりと夫婦関係の危機に直面しているのでした。なお、心の折れにくさは、医学用語として、心のしなやかさ(レジリエンス)と言い換えられます。この詳細については、関連記事2をご覧ください。(3)癖になるかどうか-幼児期での敏感さ慶多は、ピアノの練習について良多から「1日休むと取り戻すのに3日かかる」とたびたびたしなめられています。慶多と同じように、良多もかつてピアノの習い事をしていましたが、小学生でやめてしまうと、その後は大して弾けなくなっていたのでした。お受験の対策も、受験が終わったら、ほとんど忘れているでしょう。一方、琉晴の行動力やふざける癖は、ストローを噛む癖や「オーマイガット!」の口癖と同じように、変わらず続いています。3つ目の違いは、癖になるかどうか、つまり幼児期での敏感さです。認知能力は、いったん身に付いても、やり続けていないとだんだん失われていく、つまりなかなか癖にならない特徴があります。一方、非認知能力は、なかなか失われにくい、つまり癖になる特徴があります。その原因は、敏感さです。特に幼児期においては、認知能力よりも非認知能力に敏感に反応することが分かっています。この時期は、敏感期、臨界期と呼ばれています。先ほどの車に例えると、まずは運転手が運転したいという意思があるからこそ、車の性能があるのです。運転手が運転したいと思わなければ、いくら車の性能があったとしても使われず、すぐに錆びれてしまうと言えます。幼児は、それほど単純であると言えます。実際に、ヘックマン(2000年にノーベル経済学賞を受賞)の研究において、経済的な貧困層(幼児教育などの子育てが適切に行われていないネグレクトの可能性が高い家庭)の幼児を対象に、幼児教育プログラムを受けた子どもと受けていない子どもが成人になった時の両者を比較した結果、受けた子どもグループは、収入、学歴が高く、犯罪率が低いことが判明しました。その一方で、IQ(知能指数)には明らかな差が出なかったことも判明しました。これは、このプログラムによって、認知能力ではなく、非認知能力が高められたことが考えられてます。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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そして父になる(続編・その1)【英才教育で親がハマる「罠」とは?(教育虐待)】Part 3

英才教育で親がハマる「罠」とは?認知能力と非認知能力の本質的な違いは、測りやすさ、心の折れにくさ、幼児期での敏感さであることが分かりました。この違いから、良多の関わり方を通して、英才教育のリスクを大きく3つ挙げてみましょう。そして、英才教育で親がハマる「罠」を明らかにしましょう。(1)測りやすい認知能力ばかりにとらわれる良多は、みどりに「今の時代、優し過ぎるのは損だからな」と説き、慶多にしつけを厳しくして、ピアノの練習を毎日必ずさせています。しかし、ピアノ演奏会で、慶多はうまく弾けず、うまく弾いているほかの子に「上手だね」と感心して言います。そんな慶多に、良多は「悔しくないのか? もっと上手に弾きたいと思わなければ続けてても意味ないぞ」と叱るのです。1つ目のリスクは、測りやすい認知能力ばかりにとらわれることです。良多は、社会は厳しいと言っていますが、それは彼の考え方が投影されています。つまり、彼自身が自分に厳しく、そして他人にも厳しいのでした。その厳しさとは、勝ち負けの結果や体裁を重んじることです。それが、彼が説く「意味」なのでした。だからこそ、良多は慶多を有名私立小学校に入学させ、ピアノ演奏会で悔しがることを強いるのです。すると、子どもも、その親の価値観がすり込まれて(内在化)、結果を出すことや体裁を気にするようになるでしょう。そして、自分も相手もそれでしか評価できなくなってしまいます。たとえば、聞かれてもいないのに自分の学歴や家柄をひけらかすことです。また、学歴、キャリア、家柄、見た目などで相手を値踏みすることです。さらには、すでにお受験対策で学習してしまったように嘘をついて体裁を取り繕ったり、結果を出すために無理をする生き方(過剰適応)をしてしまうリスクもあるでしょう。その測りやすさから、権威を振りかざし、権威にすがる生き方をしてしまうこともあるでしょう。(2)非認知能力が育まれずに心が折れやすくなる慶多は、自宅でのピアノの練習ではかなりうまく弾けていたのに、演奏会ではありえないミスを連発します。彼は、本番(いつもと違う状況)に弱いのでした。2つ目のリスクは、非認知能力が育まれずに心が折れやすくなることです。ピアノの演奏会における非認知能力とは、本番であっても心を落ち着かせて(セルフコントロール)、ピアノの演奏そのものを楽しみ(自発性)、その気持ちを一緒にいる人たちと共有することです(共感性)。慶多は、父親(良多)の顔色ばかりを伺い、自分の演奏をあまり楽しめていません。もちろん、斎木家でお試し外泊を繰り返している最中であることも、心を落ち着かせられない要因として考えられます。認知能力にとらわれるということは、裏を返せば、非認知能力を疎かにすること、つまり価値がない、無駄だと思ってしまうことです。たとえば、琉晴が野々宮家で暮らすようになってから、置かれているピアノの鍵盤をメチャクチャに(大胆に?)弾くシーンがあります。見かねた良多は、「うるさいぞ。静かにしろ」「やめろって言ってんだ!」と怒鳴ってしまいます。しかし、よくよく考えれば、琉晴なりに音感や演奏のヒントを探しているかもしれません。かつてバンド活動までしていた良多の血を引いていると考えれば、琉晴には音楽の素質があるかもしれません。良多は、やめさせるのではなく、音量を下げてそのまま好きにさせてあげたり、そのあとに琉晴に演奏の仕方の基本を教えてあげれば、演奏の楽しさ(自発性)を育むこともできたでしょう。もちろん、認知能力も非認知能力も両方高めていくことが理想です。しかし、子どもの時間とエネルギーは限られています。その時間とエネルギーを、認知能力のために使ってしまえば、その分、非認知能力のために使えなくなってしまいます。これは、トレードオフ(一得一失)の関係です。これが極端になれば、認知能力は、やればやるほど結果が出る、早くやればやるほど結果が出ると思い込みます。こうして、英才教育をやらせ過ぎたり、早くにやらせ過ぎてしまいます。そのために、「あれだめ!」「これして!」「早くして!」としつけが厳しくなってしまいます。すると、子どもが自由に遊んだり自分で考える時間(自発性)や友達と一緒に遊ぶ時間(共感性)がますます減るでしょう。また、友達とけんかをすることは、本来セルフコントロールを育むために必要です。しかし、その機会も、不要なこととされてしまい、先回りによって奪われてしまうでしょう。なお、世の中では、このような厳しいしつけは、セルフコントロールを育むために必要であると考えられています。しかし、これは大きな誤解です。実際の研究では、親が子どもの行動をコントロールし過ぎると、逆に子どもは自分で自分の行動をコントロールしなくなることが分かっています。その訳は、しつけが一方的な命令の場合、恐怖刺激によって言われた通りに行動する条件反射は形成されても、思考停止によって自分で自分の行動を決めることができなくなるからです。そして、受け身の指示待ち人間になってしまうのです。(3)その後に認知能力が伸び悩むピアノ演奏会で、良多の説教を慶多の横で聞いていたみどりは、「みんながあなたみたいに頑張れるわけじゃないわよね」と言います。良多は「頑張るのが悪いみたいな言い方だな」と言い返します。すると、みどりは「頑張りたくても頑張れない人もいるってこと」「慶多はきっと私に似たのよ(私がそうだったから)」と語気を荒くして言います。みどりは、練習を頑張っている慶多の姿をそばでずっと見てきており、自分と同じ、ある危うさをほのめかしています。3つ目のリスクは、その後に認知能力が伸び悩むことです。幼児期の認知能力は、すでにご説明した通り、その癖のなりにくさから、いったん高まっても、やり続けていないと、だんだん失われていきます。つまり、非認知能力が充分に育まれていなければ、その後にやり続けたいという気持ち(自発性)が芽生えず、結局その認知能力が維持できなくなってしまうということです。つまり、学ぶとは、「ただ学ぶ」(認知能力)のではなく、「学ぶ楽しさ」(非認知能力)も一緒に学ぶ必要があるということです。たとえば、知能指数(IQ)が分かりやすいです。英才教育によって、知能検査の類似問題を解く特訓をより長い時間やれば、そしてより小さい時からやれば、知能指数は確実に上がります。すると、親は喜びます。しかし、それがその後の学力が高くなることに直接結び付くわけではありません。ましてや大人になって仕事や人間関係でうまくやって行く能力とも結び付くわけではありません。よって、その後に子どもの認知能力が伸び悩んだら、親は焦ります。良多のように「頑張りが足りない」と言い出し、ますます本人の自由、つまり非認知能力を高める機会を奪うでしょう。これは、教育虐待と呼ばれます。教育虐待とは、勉強や習いごとなどの教育を子どもに過剰に強いる不適切な関わりです。子ども虐待の1つとして、昨今注目されています。これは、認知能力を重視するあまりに非認知能力が育まれない点でも、子どもの人権への侵害と言えます。非認知能力が育まれない危うさがある点で、先ほどのヘックマンの研究でご紹介した、もともと経済的な貧困層(ネグレクト)の子どもと、逆に認知能力を重視する良多のような富裕層の子どもが共通しているのが興味深いです。つまり、ネグレクトと教育虐待は、それぞれ教育をやらなさ過ぎとやり過ぎであり、一見すると真逆ですが、非認知能力が育まれないリスクがある点では同じであるということです。そして、非認知能力が育まれていない点で、もしも取り違えが発覚せずに野々宮家の英才教育がそのまま続いていたとしたら、慶多は不登校やひきこもりになるリスクが高まります。これが、英才教育で親がハマる「罠」なのです。<< 前のページへ■関連記事クレヨンしんちゃん【ユーモアのセンス】Part 1ショーシャンクの空に【心の抵抗力(レジリエンス)】[改訂版]

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双極性障害に対するアドヒアランス強化戦略

 双極性障害患者は、服薬アドヒアランスが不良であることが少なくない。米国・ケース・ウェスタン・リザーブ大学のMartha Sajatovic氏らは、長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬を組み合わせたカスタマイズアドヒアランス強化(CAE)戦略が双極性障害患者のアドヒアランス、症状、機能へ及ぼす影響を評価するため、パイロット研究を実施した。The Primary Care Companion for CNS Disorders誌2021年9月16日号の報告。 アドヒアランスが不良な双極性障害患者30例を対象に、LAI抗精神病薬を組み合わせたCAE戦略の有効性を評価するため6ヵ月間の非対照試験を行った。アドヒアランスの評価にはTablets Routine Questionnaire(TRQ)、症状の評価には簡易精神症状評価尺度(BPRS)、ヤング躁病評価尺度(YMRS)、ハミルトンうつ病評価尺度(HAMD)、臨床全般印象評価尺度(CGI)を用いた。機能は、社会的職業的機能評定尺度(SOFAS)、機能の全体的評定尺度(GAF)を用いて評価した。評価は、スクリーニング時、ベースライン時、12週目、24週目(6ヵ月後)に実施した。調査期間は、2018年4月~2020年5月であった。 主な結果は以下のとおり。・対象患者の平均年齢は49.5±9.3歳、黒人の割合は56.7%であった。・研究を途中で中止した患者は9例(30%)であり、副作用による中止は1例(振戦)のみであった。・LAIの平均投与量は、314.3±96.4mgであった。・過去1週間で服薬を守れなかった割合(平均TRQ)は、スクリーニング時の50.1±24.8%から24週目の16.9±27.0%へ有意な改善が認められた(p<0.001)。過去1ヵ月間のTRQについても40.6±23.8%から19.2±24.0%への改善が認められた(有意傾向、p=0.599)。・ベースライン時から24週目のTRQの変化に有意な差は認められなかった。・BPRS(p<0.001)、MADRS(p=0.01)、YMRS(p<0.001)、CGI(p<0.001)、SOFAS(p<0.001)、GAF(p<0.001)においても、有意な改善が認められた。 著者らは「LAIを組み合わせた個別のアドヒアランス強化戦略は、ハイリスク双極性障害患者のリカバリー向上が期待できる」としている。

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統合失調症症状別の抗精神病薬至適用量~用量反応メタ解析

 統合失調症の急性期治療において抗精神病薬の最適な投与量を決定することは、臨床的に非常に重要なポイントである。また、急性期治療後には維持期治療へ移行するため、陰性症状に対する抗精神病薬の効果を考慮することも求められる。スイス・ジュネーブ大学のMichel Sabe氏らは、急性期統合失調症に対する抗精神病薬の有効性を評価した固定用量ランダム化比較試験(RCT)のシステマティックレビューに基づき、陰性症状および陽性症状の用量反応メタ解析を実施した。NPJ Schizophrenia誌2021年9月13日号の報告。 主な結果は以下のとおり。・40件のRCTより、1万5,689例が抽出された。・各薬剤の1日当たりの95%有効量は、以下のとおりであり、多くの薬剤で陰性症状と陽性症状で違いが認められた。 ●amisulpride(陰性症状:481mg、陽性症状:690.6mg) ●アリピプラゾール(陰性症状:11.9mg、陽性症状:11mg) ●アセナピン(陰性症状:7.61mg、5.66mg) ●ブレクスピプラゾール(陰性症状:2.1mg、陽性症状:4mg) ●cariprazine(陰性症状:4mg、陽性症状:6.51mg) ●ハロペリドール(陰性症状:6.34mg、陽性症状:7.36mg) ●ルラシドン(陰性症状:58.2mg、陽性症状:86.3mg) ●オランザピン(陽性症状:15.5mg、陽性症状:9.52mg) ●オランザピン長時間作用型注射剤(陰性症状:15.7mg、陽性症状:13.5mg) ●パリペリドン(陰性症状:7.2mg、陽性症状:7mg) ●パリペリドン長時間作用型注射剤(陰性症状:7.5mg、5.9mg) ●クエチアピン即放性製剤(陰性症状:264.2mg、陽性症状:316.5mg) ●クエチアピン徐放性製剤(陰性症状:774mg、陽性症状:707.2mg) ●リスペリドン(陰性症状:7.5mg、陽性症状:7.7mg) ●リスペリドン長時間作用型注射剤(陰性症状:5.13mg、陽性症状:6.7mg) ●sertindole(陰性症状:13.5mg、陽性症状:16.3mg)●ziprasidone(陰性症状:71.6mg、陽性症状:152.6mg)・用量反応曲線の形状は薬剤により異なっていたが、ほとんどの薬剤は高用量で定常状態に達していた。 著者らは「ほとんどの薬剤の最大有効量は、各薬剤の承認用量の低~中程度の範囲であることが確認された。最適な用量を把握するためには、さらなるRCTが必要とされる」としている。

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認知症の焦燥性興奮にミルタザピンの効果は?/Lancet

 ミルタザピンは、欧州で高齢者や認知症患者に最も一般的に処方されているノルアドレナリン作動性/特異的セロトニン作動性抗うつ薬である。英国・プリマス大学のSube Banerjee氏らは、「SYMBAD試験」において、認知症患者の焦燥性興奮の治療におけるミルタザピンの効果について検討し、プラセボと比較して有効性は認められず、確定的ではないものの死亡率を高める可能性があることを示した。研究の詳細は、Lancet誌2021年10月23日号に掲載された。英国の二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験 研究グループは、認知症患者の焦燥性興奮の治療におけるミルタザピンの有効性と安全性の評価を目的に、英国の国民保健サービス(NHS)下の26の施設で二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験を行った(英国国立健康研究所[NIHR]医療技術評価[HTA]プログラムの助成を受けた)。 対象は、非薬物療法に反応しない焦燥性興奮がみられるアルツハイマー型認知症(probableまたはpossible)で、コーエン・マンスフィールド焦燥評価票(CMAI)スコアが45点以上の患者であった。 被験者は、通常治療と共にミルタザピン(15mg/日から開始し45mg/日へ増量)またはプラセボの経口投与を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、12週時のCMAIスコアで評価した焦燥の軽減とされた。認知機能やQOL、介護者負担にも差はない 2017年1月~2020年3月の期間に204例が登録され、ミルタザピン群に102例(平均年齢[SD]82.2[7.8]歳、女性75%)、プラセボ群に102例(82.8[7.7]歳、58%)が割り付けられた。ベースラインの平均(SD)CMAIスコアは、ミルタザピン群71.1(16.4)点、プラセボ群69.8(17.1)点だった。 12週時の平均CMAIスコアは、ミルタザピン群が61.4(22.6)点、プラセボ群は60.8(21.8)点であり、両群間に有意な差は認められなかった(補正後平均群間差:-1.74、95%信頼区間[CI]:-7.17~3.69、p=0.530)。また、6週時の平均CMAIスコアにも差はなかった(61.4[23.5]点vs.60.0[19.9]点、補正後平均群間差:-0.55、95%CI:-6.18~5.08、p=0.848)。 12週時の認知機能(標準化MMSE)、QOL(DEMQOL、DEMQOL-proxy、EQ-5D)、神経精神症状(総NPIスコアなど)にも、両群間に差はみられなかった。 また、介護者のアウトカムは、12週時のZarit介護負担尺度(家族介護者が対象、ミルタザピン群で負担が大きい、p=0.020)を除き、6週時のZarit介護負担尺度、6週および12週時のGHQ-12、EQ-5D、NPI-Dには差がなかった。 有害事象の発現率は、ミルタザピン群が66%(67/102例)、プラセボ群は64%(65/102例)であり、両群で同程度であった。16週までに死亡した患者は、ミルタザピン群が7例で、プラセボ群の1例よりも多く、事後解析で示された統計学的有意性は僅差であった(p=0.065)。 著者は、「これらのデータには、ミルタザピンが認知症患者の焦燥性興奮には無効であり、有害な可能性があることだけでなく、薬物を用いない従来療法を行えば、薬物療法による有害作用なしに焦燥性興奮が癒やされる可能性があることを示唆する肯定的な理由も含まれている」としている。

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