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肺炎小児へのアモキシシリン推奨は妥当か/NEJM

 5歳未満の非重症肺炎小児の治療において、治療失敗の頻度はアモキシシリンよりもプラセボのほうが高く、この差はプラセボの非劣性マージンを満たさないことから、現在の世界保健機関(WHO)の推奨は有効であることが、パキスタン・アガカーン大学のFyezah Jehan氏らが実施した「RETAPP試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年7月2日号に掲載された。WHOは、頻呼吸を伴う肺炎患者に経口アモキシシリンを推奨している。一方、この病態の治療にアモキシシリンを使用しなくても、使用した場合に対して非劣性である可能性を示唆するデータがあるという。プラセボを試験レジメンとする無作為化非劣性試験 研究グループは、パキスタン・カラチ市のHIV感染がなく、マラリアの発生率が低い低所得地域の1次医療施設を受診した小児を対象に、頻呼吸を伴う肺炎の管理におけるプラセボのアモキシシリンに対する非劣性を検証する目的で、二重盲検無作為化対照比較試験を行った(英国国際開発省、英国医学研究評議会[MRC]、ウェルカム・トラストの共同グローバルヘルス試験計画[JGHT]などの助成による)。 対象は、頻呼吸を伴う非重症肺炎がみられ、WHOの基準を満たす生後2~59ヵ月の患児であった。被験者は、アモキシシリンシロップ(実薬対照)またはプラセボ(試験レジメン)を投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 アモキシシリンは、WHOの総合的小児疾患管理(WHO-IMCI)の体重別の用量に従って、3日間投与された(体重4~<10kg:500mgを12時間ごと、10~<14kg:1,000mgを12時間ごと、14~<20kg:1,500mgを12時間ごと)。14日間のフォローアップが行われた。 主要アウトカムは、3日間の投与期間中の治療失敗とした。治療失敗は、患者が死亡またはWHOの定義による危険な徴候や下部胸壁の陥凹が発生した場合、患者が入院した場合、新規感染症や重篤な有害事象のため担当医が試験薬を変更した場合とされた。事前に規定された非劣性マージンは1.75ポイントだった。PP解析とITT解析で、ほぼ同様の結果 2014年11月9日~2017年11月30日の期間に、4,002例が無作為化され、プラセボ群に1,999例(平均年齢16.5±13.9ヵ月、男児53.9%)、アモキシシリン群には2,003例(16.4±14.0ヵ月、51.1%)が割り付けられた(intention-to-treat[ITT]集団)。このうち、プラセボ群の1,927例(96.4%)およびアモキシシリン群の1,929例(96.3%)がper-protocol(PP)解析に含まれた。 PP解析では、治療失敗はプラセボ群が1,927例中95例(4.9%)、アモキシシリン群は1,929例中51例(2.6%)で発生した(群間差:2.3ポイント、95%信頼区間[CI]:0.9~3.7)。非劣性マージンを超えていることから、プラセボ群のアモキシシリン群に対する非劣性は示されなかった。この95%CIは、アモキシシリン群の優越性を示唆するものであった。ITT解析でも、同様の結果だった(4.8% vs.2.5%、群間差2.3ポイント、95%CI:0.9~3.6)。 探索的解析では、アモキシシリン群はプラセボ群に比べ治療失敗のリスクが低かった(オッズ比[OR]:0.52、95%CI:0.37~0.74)。治療失敗の他の独立の予測因子として、呼吸数(45回/分以上)、喘鳴、発熱、発熱の既往歴、下痢の既往歴、室内空気の質の悪さが挙げられた。 14日目までに、再発はプラセボ群40例(2.2%)、アモキシシリン群58例(3.1%)で認められた(平均群間差:0.9ポイント、95%CI:-2.1~0.3)。3日目までに、有害事象はプラセボ群63例(3.3%)、アモキシシリン群43例(2.2%)で発現した(1.0ポイント、-0.2~2.2)。両群1例(<0.1%)ずつが死亡した。また、1件の治療失敗の予防に必要な治療数は44例(95%CI:31~80)だった。 著者は、「これらの知見は、現行のWHOの推奨が妥当であることを示唆する」とまとめ、「1件の治療失敗を防ぐのに必要な治療数(44例)は比較的高く、この数値は多くの小児は抗菌薬の投与が不要である可能性を示唆するが、その一方で抗菌薬治療を必要とする重症のサブグループも存在する。これらを判別して標的治療を行うことで、不必要な抗菌薬使用を抑制できると考えられる」と指摘している。

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第14回 日医8年ぶりのトップ交代、診療報酬のツケが行く手を阻む?

「人が決まって嘘をつく時。それは狩りの後、戦争の最中、そして選挙の前」といったのは世界史の教科書で『鉄血宰相』の異名でも取り上げられるドイツのオットー・フォン・ビスマルクである。先日の東京都知事選で圧勝した現職が前回選挙時の公約実現率ほぼゼロという現実は、まさにこの言葉を体現したとも言えるが、それ以上に今回の結果は、今から10年以上前の同選挙のある候補が金切り声をあげて政見放送で言った「所詮選挙なんか多数派のお祭りに過ぎない」との言葉を体現した、といったほうが良いかもしれない。そんな白けた選挙の直前には手に汗握る極めて興味深い選挙があったことは、このサイトの読者ならばよくご存じだろう。日本医師会(日医)会長選挙である。結果は、5選目を目指した横倉 義武氏が174票、これに挑んだ中川 俊男氏が191票。中川氏側から9票動けば横倉氏の勝利となっていたわけだから、ボクシングでいうところのスプリット・デシジョン*である。だが、この近年まれに見る接戦となった会長選挙の結果は、今後日医という組織に瞬殺のアッパーカットのような強烈なダメージを与える可能性がある。*:ボクシングの試合判定で、3人の判定が2対1に分かれること既に各所で報じられているように当初、横倉氏は中川氏に会長職を禅譲する予定だったが、中川氏に代替わりすることを懸念した政治・官僚サイドが横倉氏を慰留。結果、横倉氏が翻意したが、こうした横倉氏の姿勢や官邸・自民党と距離の近さゆえ、政治と妥協的姿勢を図ることへの嫌悪が中川氏が接戦を制した要因と分析されている。中川氏の会長当選後の第一声が「国民の健康と命を守るためならどんな圧力にも決して負けない、そして堂々とものを言える新しい日本医師会に変えていこうと思っている」だったのも、この勝因を意識したものに映る。中川氏側だったある日医の代議員は次のように語る。「横倉会長時代の診療報酬改定では本体は常にプラスだったが、実際のところそのほとんどが0.5%前後。原中 勝征会長時代とは比べ物にならず、結果として現場の運用次第ではマイナスだった」どうやらこの代議員の頭にあるのは、横倉氏の前任だった原中会長時代の2010年度改定の本体改定率1.55%プラス、2012年改定の本体改定率1.379%プラスという数字らしい。しかし、当時の状況を知る人からすれば、この数字こそ異例というのが正しい認識なはずだ。そもそもこの2回の改定時は旧民主党政権時のこと。「聖域なき構造改革」を掲げた自民党・小泉 純一郎政権下での2006年の診療報酬・介護報酬同時改定時の本体1.36%マイナスに対する政治的アンチテーゼとして行われたのが2010年、2012年のプラス改定である。その意味では2018年の診療報酬・介護報酬同時改定時は将来の財源不安なども考慮すれば、本体マイナス改定が必至の情勢で、財務省もそこにはギリギリまでこだわった。にもかかわらず、この時0.55%プラスでおさまったのは、「勝つには勝つが、一人勝ちはしない」という「横倉マジック」で無い袖を振らせた結果だった。逆に言えば、本来マイナスすべきだったツケがたまっているのが現下の状況とも言える。しかも、2025年の地域包括ケア完成に向けて、残すところは2022年の診療報酬改定、2024年の診療報酬・介護報酬同時改定の2回しか残されていない。日医が「堂々とものを言う」方法を間違えれば、財源論と世論を味方に本体マイナス改定という「伝家の宝刀」が抜かれる可能性は否定できない。このように言うと、「日医の集票力を自民党も無視はできない」としたり顔で口にする面々が登場する。戦後、日医会長として25年の長期政権を維持した武見 太郎会長時代は「医師のかばんの中には10票が入っている」と言われ、日医の組織内候補への集票力は100万票超と称されてきた。しかし、その集票力はもはや蜃気楼である。2019年参議院選挙(参院選)で日医組織内候補だった自民党の羽生田 俊議員(元日医副会長)の得票は15万2,807票。日本看護協会、日本薬剤師会の組織内候補よりも得票数は下回り、2013年参院選に初当選した時の24万9,818票から大きく減らした。そもそも日医は2000年代半ばごろからは、病院建設などで激しく対立してきた徳洲会関係者から全国比例区で3~4万票分の支援を受けてもいる。旧民主党政権への失望から国政選挙で保守系野党の得票が伸び悩み、なんとなく空気で自民党が大勝を続ける今、17万人超の会員平均1票にも満たない日医の集票力はとても政治的山を動かせる原動力にはなり得ないのが現実だ。実際、今回の日医選挙の結果に永田町界隈では「中川会長のお手並み拝見」とのささやきも聞かれる。つまるところ、舌鋒の鋭さで知られる中川会長率いる日医の新執行部の言動が傍目に「欲張り村の村長」にしか見えない状況が続くようになれば、巨大なブーメランの直撃を受ける可能性は少なくないといえる。

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喘息治療薬2剤の製造販売承認を取得/ノバルティス ファーマ

 ノバルティス ファーマ株式会社は、6月29日、LABA/LAMA/ICS配合喘息治療剤インダカテロール酢酸塩/グリコピロニウム臭化物/モメタゾンフランカルボン酸エステル(商品名:エナジア)とLABA/ICS配合喘息治療剤インダカテロール酢酸塩/モメタゾンフランカルボン酸エステル(同:アテキュラ)の製造販売承認を取得したと発表した。1日1回で3成分を同時に吸入 喘息は世界中で3億5,800万人(うちわが国では約800万人が罹患)の患者が推定され、症状がコントロール不十分な場合、個人的、健康的、経済的負担の点から重大な問題が生じるリスクが高くなる。また、症状コントロールが不十分な喘息患者は、疾患の重症度を軽視または過小評価する傾向があり、増悪、入院または死亡のリスクが高くなるという報告もある。そのため、治療法が合わない、経口ステロイド剤の安全性、生物学的製剤の不適応など喘息に対するアンメット・メディカル・ニーズはまだ多く存在する。今回承認された両剤は、こうした臨床現場からの要望に応えたもので単一吸入器による1日1回投与で3成分を同時に吸入でき、十分な喘息コントロールが得られるものと期待されている。スマホと連動し、患者の服薬状態もチェックできる 今回発売されたエナジアは、長時間作用性β2刺激剤(以下「LABA」という)のインダカテロール酢酸塩、長時間作用性抗コリン剤(以下「LAMA」という)のグリコピロニウム臭化物、吸入ステロイド剤(以下「ICS」という)のモメタゾンフランカルボン酸エステルのLABA/LAMA/ICS配合剤で、専用の吸入器「ブリーズヘラー」による1日1回投与で気管支拡張作用および抗炎症作用を発揮する。中用量および高用量の2規格ともにインダカテロールは150μg、グリコピロニウムは50μgを含有し、モメタゾンフランカルボン酸エステルはそれぞれ80μgおよび160μgを含有する。同じくアテキュラも、ブリーズヘラーを用いて1日1回投与するLABA/ICS配合剤で、低用量、中用量および高用量の3規格ともにインダカテロールは150μgを含有し、モメタゾンフランカルボン酸エステルはそれぞれ80μg、160μg、320μgを含有する。 また、特色として、両剤は日本で初めて吸入器に装着してスマートフォンと連動させ、日々の服薬記録や服薬リマインダー機能を持つブリーズヘラー用センサーにより医師を通じて提供される仕組みが付き、アドヒアランス向上などに役立てることができる。エナジアの概要製品名:「エナジア」(吸入用カプセル中用量/高用量)一般名:インダカテロール酢酸塩/グリコピロニウム臭化物/モメタゾンフランカルボン酸エステル効能または効果:気管支喘息(吸入ステロイド剤、長時間作用性吸入β2刺激剤および長時間作用性吸入抗コリン剤の併用が必要な場合)用法および用量:通常、成人にはエナジア吸入用カプセル中用量1回1カプセル(インダカテロールとして150μg、グリコピロニウムとして50μgおよびモメタゾンフランカルボン酸エステルとして80μg)を1日1回本剤専用の吸入用器具を用いて吸入する。なお、症状に応じてエナジア吸入用カプセル高用量1回1カプセル(インダカテロールとして150μg、グリコピロニウムとして50μgおよびモメタゾンフランカルボン酸エステルとして160μg)を1日1回本剤専用の吸入用器具を用いて吸入する。承認取得日:2020年6月29日製造販売:ノバルティス ファーマ株式会社なお、薬価・発売日は未定。アテキュラの概要製品名:「アテキュラ」(吸入用カプセル低用量/中用量/高用量)一般名:インダカテロール酢酸塩/モメタゾンフランカルボン酸エステル効能または効果:気管支喘息(吸入ステロイド剤および長時間作用性吸入β2刺激剤の併用が必要な場合)用法および用量:通常、成人にはアテキュラ吸入用カプセル低用量1回1カプセル(インダカテロールとして150μgおよびモメタゾンフランカルボン酸エステルとして80μg)を1日1回本剤専用の吸入用器具を用いて吸入する。なお、症状に応じて以下用量の1回1カプセルを1日1回本剤専用の吸入用器具を用いて吸入する。・アテキュラ吸入用カプセル中用量(インダカテロールとして150μgおよびモメタゾンフランカルボン酸エステルとして160μg)・アテキュラ吸入用カプセル高用量(インダカテロールとして150μgおよびモメタゾンフランカルボン酸エステルとして320μg)承認取得日:2020年6月29日製造販売:ノバルティス ファーマ株式会社なお、薬価・発売日は未定。

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新型コロナ感染の川崎病様小児患者、大半で心機能障害/NEJM

 米国ニューヨーク州では5月上旬時点で、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)への感染が認められた小児発症性多系統炎症症候群(MIS-C)は95例に上ったことが、米国・ニューヨーク州保健局(New York State Department of Health:NYSDOH)のElizabeth M. Dufort氏らによる調査により明らかにされた。そのほとんどで、C反応性蛋白(CRP)値、Dダイマー値、トロポニン値が上昇し、心機能障害との関連が認められたという。MIS-Cは、皮膚・皮膚粘膜症状、消化器系症状を伴うhyperinflammatory syndromeで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)との関連が示唆されており、NYSDOHでは、同症状を呈した入院患者の記述的サーベイランスを州全体で強化していたという。NEJM誌オンライン版2020年6月29日号掲載の報告。川崎病、MIS-C疑い例など21歳未満の入院患者を対象に調査 研究グループは、2020年3月1日~5月10日にNYSDOHに報告された川崎病、毒素性ショック症候群、心筋炎、およびMIS-Cが疑われる21歳未満の入院患者を対象に調査を行った。 NYSDOHのMIS-C症例基準に適合した患者について、臨床症状、合併症、アウトカムを要約した記述的分析を行った。ICU治療は80%、昇圧剤サポートは62% 2020年5月10日時点で191例の症例がNYSDOHに報告された。 このうち、MIS-Cと診断(急性または最近のSARS-CoV-2感染が検査で確認)されたのは95例、また臨床・疫学的基準に適合しMIS-Cの疑いがあると判断された症例が4例で、54%(53例)が男性だった。人種別では、31/78例(40%)が黒人、31/85例(36%)がヒスパニック系だった。年齢別では、0~5歳が31例(31%)、6~12歳が42例(42%)、13~20歳が26例(26%)だった。 全例で主観的な発熱または寒気があり、頻拍は97%、消化器系症状は80%、発疹は60%、結膜充血は56%、粘膜変化は27%にそれぞれ認められた。 CRP値、Dダイマー値、トロポニン値の上昇は、それぞれ100%、91%、71%で認められた。昇圧剤サポートを要したのは62%、心筋炎のエビデンスが認められたのは53%、集中治療室(ICU)での治療を要したのは80%、死亡は2例だった。 入院期間の中央値は6日だった。

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ダウン症者のアルツハイマー病は予測可能、異常は20代から/Lancet

 ダウン症者におけるアルツハイマー病は、20年以上にわたる前臨床段階を有し、バイオマーカーの変化で予測可能であることが明らかにされた。スペイン・Barcelona Down Medical CenterのJuan Fortea氏らが、ダウン症候群者388例を含む横断研究の結果を報告した。アルツハイマー病とその合併症は、ダウン症の成人における主な死因となっている。先行研究で、ダウン症者のアルツハイマー病について評価は行われたが、ダウン症者におけるバイオマーカーの変化の経過は確認されていなかった。Lancet誌2020年6月27日号掲載の報告。ダウン症者のアルツハイマー病について横断試験 研究グループは、スペイン・バルセロナのSant Pau病院と、英国・ケンブリッジ大学で、ダウン症者とその対照群を集めて横断研究を行った。バルセロナでは、住民ベースの医療保険プランを通じて、またケンブリッジでは、英国とスコットランドの知的障害者支援サービスを通じて、18歳以上のダウン症者を集めた。 被験者の適格条件は、軽度~中等度の障害を持ち、次のアルツハイマー病の指標や検査で陽性が1つ以上認められる場合とした。アポリポ蛋白E対立遺伝子の状況、アミロイドβペプチド1-42と1-40血清濃度とその比率(Aβ1-42/1-40)、総タウタンパク質、ニューロフィラメント軽鎖タンパク質(NFL)、脳脊髄液中(CSF)のスレオニン181でリン酸化されたタウ(p-tau)やNFL、18F-FDG(フルオロデオキシグルコース)によるPET、アミロイドトレーサーによるPET、磁気共鳴画像(MRI)。 対照群は、バイオマーカーに異常がなく、認知能力が正常な18~75歳とした。 1次LOESS平滑化曲線により、バイオマーカー変化の順番と年齢、分岐となる最低年齢などを求めて評価した。ダウン症者におけるアルツハイマー病の有病率は年齢とともに上昇 バルセロナでは2013年2月~2019年6月、ケンブリッジでは2009年6月~2014年12月にかけて、ダウン症者388例(無症状257例[66%]、アルツハイマー病前駆症状48例[12%]、認知症を伴うアルツハイマー病83例[21%])と、その対照群242例を集めた。 ダウン症者では、CSF Aβ1-42/1-40と血清NFLの変化が20代で認められ、アミロイドPETの変化は30代で認められた。18F-FDG PETやCSF p-tauの変化は30代後半に、その後40代になると海馬萎縮や認知能力に変化が起きていた。 前駆期アルツハイマー病の診断年齢中央値は50.2歳(IQR:47.5~54.1)、認知症を伴うアルツハイマー病は同53.7歳(49.5~57.2)だった。 ダウン症者におけるアルツハイマー病の有病率は年齢とともに上昇し、60代には90~100%に達していた。 結果を踏まえて著者は、「被験者集団は、散発性および常染色体優性アルツハイマー病と類似しており、ダウン症候群の有病率も高いことから、アルツハイマー病の予防治療のターゲットとして適していると考えられる」と述べている。

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開発中の遅発型ポンペ病治療薬の有効性/サノフィ

 サノフィ株式会社は、6月16日、酵素補充療法剤として現在開発中のavalglucosidase alfa(以下「本剤」という)が、遅発型ポンペ病の患者の臨床症状(呼吸障害と運動性の低下)に対し臨床上意義ある改善をもたらしたと報告した。世界には推定5万人の患者がいるポンペ病 ポンペ病は、ライソゾーム酵素の1つである酸性α-グリコシダーゼ(GAA)の遺伝子欠損または活性低下が原因で生じる疾患。グリコーゲンが近位筋肉や横隔膜をはじめとする筋肉内に蓄積し、進行性の不可逆的な筋疾患が生じる。世界の患者数は約5万人と推定され、乳児期から成人後期のいずれの時期にも発症する可能性がある。 本症は、遅発型と乳児型に分類され、遅発型では1歳以降から成人後期までのいずれかの時期に発症する。遅発型の特徴的な症状は、呼吸機能の低下と筋力低下で、多くの場合、運動機能の低下に至る。患者は、歩行が困難となり、車椅子での生活を余儀なくされることが多く、呼吸困難が現れ人工呼吸器が必要となることもあり、主な死因は呼吸不全となっている。乳児型は生後1年以内に発症し、骨格筋の筋力低下に加え、心機能障害がみられる。 COMET試験の概要 今回報告されたCOMET試験は、無作為化二重盲検第III相試験で、20ヵ国56施設において治療経験のない遅発型ポンペ病の小児患者または成人患者100例が対象。患者を無作為化し、本剤群またはアルグルコシダーゼアルファ(標準治療薬)群に割り付け、いずれの群とも49週間にわたり1回20mg/kgの点滴静脈内投与を隔週で受ける。49週間後、非盲検の継続投与を行い、標準治療群については本剤20mg/kgによる治療に切り替える。 主要評価項目は、呼吸筋機能の変化で、立位での予測値に対する比率をパーセントで表した努力性肺活量(%FVC)に基づき評価した。本剤群の患者は、アルファグリコシダーゼの標準治療群の患者に比べ、%FVCが2.4ポイント改善し(95%信頼区間[CI]:-0.13/4.99)、試験計画で規定した非劣性の基準を上回る呼吸機能の改善を示した(p=0.0074)。ただ、主要評価項目の優越性については、本剤群は統計学的に有意な優越性を示すには至らなかった(p=0.0626)ため、試験計画で定めた解析の実施順序に従い、副次評価項目に関する正式な統計学的検討は行わなかった。主な副次評価項目は、6分間歩行試験による運動性の評価、呼吸筋力、運動機能と生活の質(QOL)を評価など。 本剤の安全性プロファイルは標準治療薬と同様で、49週間の二重盲検試験の期間中、本剤群44例、標準治療群45例に有害事象が現れた。重度の有害事象は、本剤群6例、標準治療群7例。重篤な有害事象が現れた患者数は、本剤群(8例、うち1例は投与との因果関係が否定できない重篤な有害事象)の方が標準治療群(12例、うち3例は投与との因果関係が否定できない重篤な有害事象)より少数だった。標準治療群では、4例が有害事象のため投与中止に至り、1例は急性心筋梗塞(投与との因果関係なし)のため死亡した。本剤群での投与中止や死亡はなかった。avalglucosidase alfaの概要 ポンペ病の酵素補充療法の目標は、筋細胞の中にあるライソゾームに酵素を送り届け、欠損しているか機能低下がみられる酸性α-グルコシダーゼに代わって筋肉内のグリコーゲン蓄積を防ぐことにある。本剤は、筋肉内、とくに骨格筋の細胞に酵素を送り届ける機能を高めるよう設計されていて、標準治療で用いられるアルグルコシダーゼアルファに比べ、-マンノース-6-リン酸の含量を約15倍に高めた物質で、酵素の細胞内への取り込みを向上させ、標的組織において高いグリコーゲン除去効果を得る目的で開発された。ただ、この差の臨床的意義は、まだ確認されていない。 同社では、「今回の試験結果により、avalglucosidase alfaをポンペ病の新たな標準治療薬として確立させるという目標に向けた歩みがまた一歩進んだ」と期待をにじませている。 また、今回のデータに基づき、2020年下半期に世界各国で承認申請を行う予定であり、米国食品医薬品局(FDA)は、ポンペ病と確定診断された患者に対する治療薬候補として画期的新薬として、ファストトラック審査の対象に指定している。

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デキサメタゾンは小児心臓手術時の重度合併症を抑制せず/JAMA

 人工心肺装置(CPB)を使用する心臓手術を受けた生後12ヵ月以下の乳児において、術中のデキサメタゾン投与はプラセボと比較して、30日以内の重度合併症や死亡のリスクを低減しないことが、ロシア・E. N. Meshalkin国立医療研究センターのVladimir Lomivorotov氏らが実施した「DECISION試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌2020年6月23日号に掲載された。米国のデータでは、1998年以降、CPBを伴う心臓手術を受けた先天性心疾患小児の死亡率は約3%まで低下しているが、重度合併症の発生率は30~40%と、高率のままとされる。CPBによって引き起こされる全身性の炎症反応が臓器機能を低下させ、長期の集中治療室(ICU)入室や、入院の長期化をもたらすことが知られている。この全身性炎症反応や合併症の低減を目的に、コルチコステロイドが広く用いられているが、その臨床的有効性は確実ではないという。デキサメタゾンまたはプラセボに小児患者を1対1で割り付け 本研究は、小児の心臓手術における、術中デキサメタゾン投与による重度合併症や死亡の抑制効果を評価する医師主導の二重盲検無作為化試験であり、3ヵ国(中国、ブラジル、ロシア)の4施設の参加の下、2015年12月~2018年10月の期間に患者登録が行われた(各参加施設の研究助成のみで実施)。 対象は、生後12ヵ月以下で、CPBを伴う待機的心臓手術が予定されている患児であった。これらの患児は、麻酔導入後にデキサメタゾン(1mg/kg)またはプラセボ(0.9%塩化ナトリウム水溶液)の静脈内投与を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、術後30日以内の死亡、非致死的心筋梗塞、体外式膜型人工肺の必要性、心肺蘇生法の必要性、急性腎障害、長期の機械的換気、神経学的合併症の複合とした。副次エンドポイントは、主要エンドポイントの個々の構成要素のほか、機械的換気の期間、変力指標、ICU入室期間、ICU再入室、入院期間など17項目であった。デキサメタゾンとプラセボは副次エンドポイントのすべてで有意差なし 小児患者394例(月齢中央値6ヵ月、男児47.2%)が登録され、全例が試験を完遂した。デキサメタゾン群に194例、プラセボ群には200例が割り付けられた。CPB時間中央値は、デキサメタゾン群が50分、プラセボ群は46分だった。 主要複合エンドポイントの発生は、デキサメタゾン群が74例(38.1%)、プラセボ群は91例(45.5%)であり、両群間に有意な差は認められなかった(絶対リスク減少:7.4%、95%信頼区間[CI]:-0.8~15.3、ハザード比[HR]:0.82、95%CI:0.60~1.10、p=0.20)。事前に規定されたすべてのサブグループで、両群間に治療効果の差はみられなかった。 主要エンドポイントの個々の構成要素を含む副次エンドポイントのすべてで、両群間に有意差はなかった。デキサメタゾン群で2例(1.0%)、プラセボ群で4例(2.0%)の小児患者が死亡した。急性腎障害はそれぞれ10例(5.1%)および14例(7.0%)で発生し、長時間の換気(24時間以上)は70例(36.1%)および84例(42.0%)で認められ、神経学的イベントは6例(3.1%)および13例(6.5%)で発現した。 感染症は、デキサメタゾン群が4例(2.0%)、プラセボ群は3例(1.5%)で発生した。デキサメタゾン群の3例で肺炎、1例で縦隔炎がみられ、プラセボ群の2例で肺炎(1例は創感染を伴う)、1例で深部胸骨感染が発生した。敗血症は認めなかった。 著者は、「本試験は、治療効果を過大評価している可能性があり、主要エンドポイントの群間差の95%CIの範囲内に、臨床的に意義のある最小変化量(15%)が含まれていることから、検出力が十分でない可能性がある」としている。

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混合性の双極性うつ病の小児・青年に対するルラシドンの有用性

 混合性(亜症候性躁病)の双極性うつ病の小児および青年の治療に対するルラシドンの有効性と安全性について、米国・スタンフォード大学のManpreet K. Singh氏らが、事後分析により評価を行った。Journal of Child and Adolescent Psychopharmacology誌オンライン版2020年5月8日号の報告。 DSM-Vで双極I型うつ病と診断された10~17歳の患者を対象に、6週間のランダム化二重盲検試験を実施した。対象患者は、ルラシドン20~80mg(フレキシブルドーズ)またはプラセボを1日1回投与する群にランダムに割り付けられた。混合性(亜症候性躁病)は、ベースライン時のヤング躁病評価尺度(YMRS)5以上と定義した。評価項目は、ベースラインから6週目までのChildren's Depression Rating Scale-Revised(CDRS-R)スコア(主要評価項目)および臨床全般印象度-双極性障害 重症度(CGI-BP-S)スコアとし、反復測定分析による混合モデルを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時に亜症候性躁病が認められた患者の割合は、54.2%であった。・ルラシドン治療は、亜症候性躁病の有無にかかわらず、6週間後のCDRS-Rスコアを有意に減少させた。 ●亜症候性躁病あり:ルラシドン(-21.5)vs.プラセボ(-15.9)、p<0.01、エフェクトサイズd=0.43 ●亜症候性躁病なし:ルラシドン(-20.5)vs.プラセボ(-14.9)、p<0.01、d=0.44・ルラシドン治療は、亜症候性躁病の有無にかかわらず、6週間後のCGI-BP-Sスコアを有意に減少させた。 ●亜症候性躁病あり:ルラシドン(-1.6)vs.プラセボ(-1.1)、p<0.001、d=0.51 ●亜症候性躁病なし:ルラシドン(-1.3)vs.プラセボ(-1.0)、p=0.05、d=0.31・治療中に認められた軽躁病および躁病の発生率は、ルラシドンとプラセボで同等であった。 ●亜症候性躁病あり:ルラシドン(8.2%)vs.プラセボ(9.0%) ●亜症候性躁病なし:ルラシドン(1.3%)vs.プラセボ(3.7%) 著者らは「ルラシドンは、混合性の双極性うつ病の小児・青年の治療に有効であり、治療に伴う躁病リスクを含む安全性プロファイルは、プラセボとの差が認められなかった」としている。

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次亜塩素酸水は物品消毒に有効、空間噴霧は勧められない

 6月26日、独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE)が実施した新型コロナウイルスに対する消毒方法の有効性評価を踏まえ、経済産業省、厚生労働省、消費者庁が合同で、消毒・除菌方法に関する情報を取りまとめた。次亜塩素酸水は、物品における新型コロナウイルスの消毒に対して、一定条件下での有効性を報告した一方、手指消毒や空間噴霧の有効性・安全性は評価されておらず、まわりに人がいる中での空間噴霧はお勧めできないと注意喚起している。有効塩素濃度35ppm以上の次亜塩素酸水が物品消毒に有効 新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、アルコール消毒液が手に入りにくい状況が続いたことを受け、家庭や職場でアルコール以外による物品の消毒の選択肢を増やすため、経済産業省の要請を受けたNITEが消毒方法の有効性評価を進めていた。 新型コロナウイルスに対する消毒方法として新しく有効と判断されたのは、界面活性剤の純石けん分(脂肪酸カリウム 0.24%以上/脂肪酸ナトリウム 0.22%以上)と、有効塩素濃度35ppm以上の次亜塩素酸水(電解型/非電解型)。ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムを水に溶かす場合は、有効塩素濃度100ppm以上で有効とされる。 なお、検証結果を踏まえ、次亜塩素酸水の利用に当たっては(1)汚れ(手垢、油脂など)をあらかじめ除去すること、(2)対象物に対して十分な量を使用することなどの注意が必要だ。次亜塩素酸水の空間噴霧は勧められない 経済産業省の取りまとめサイトでは、新型コロナウイルスに有効な消毒・除菌方法についてまとめた以下のポスターが公開されている。・次亜塩素酸ナトリウム(塩素系漂白剤)など既存の消毒・除菌方法について・界面活性剤の使い方について・次亜塩素酸水の使い方について なお、次亜塩素酸水に関しては、製造・販売事業者向けにも、有効性・使い方・販売方法などについてのお知らせが出されている。これによると、次亜塩素酸水の手指などへの影響、空間噴霧の有効性・安全性は評価されておらず、利用する際の注意として「塩素に過敏な方は使用を控えるべきこと」、「飲み込んだり、吸い込んだりしないよう注意すること」、「次亜塩素酸水を、まわりに人がいる中で空間噴霧することはお勧めできないこと」が明記されている。 これ以外にも、次亜塩素酸ナトリウムとは異なることや、酸性の製品と混ぜると塩素ガスが発生して危険であることなど、適切な表示をするよう呼び掛けられている。国民一人ひとりが目的にあった製品を正しく選び、正しい方法で使用するために、情報の周知が重要だ。

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医療ミス多いのは?24h以上の長時間勤務 vs.16h以内の2交代制/NEJM

 米国小児科研修医のICUローテーション中のスケジュールについて、24時間以上の長時間勤務のほうが、16時間以内の日中・夜間勤務を繰り返すスケジュールに比べ、研修医による重大な医療ミス発生率が低かったことが示されたという。ただし、実施した施設によるばらつきは大きかった。米国・ボストン小児病院のChristopher P. Landrigan氏らが行った、2パターンの勤務シフトを比較した多施設共同クラスター無作為化クロスオーバー試験の結果で、著者は「仮説に反する試験結果となった」と述べながら、要因として「各研修医が治療するICUの患者数は、長時間勤務でないスケジュール群のほうが多かった」ことに触れている。NEJM誌2020年6月25日号掲載の報告。米国内6ヵ所の小児ICUで試験 研究グループは2013年7月~2017年3月にかけて、米国内6施設の小児ICUを対象に試験を行った。小児科研修医のICUローテーション中のスケジュールについて、(1)24時間以上の勤務シフトを含む、長時間勤務スケジュール(対照群)、(2)16時間以内の日中・夜間勤務サイクルを繰り返すスケジュール(介入群)の2パターンを比較した。 主要アウトカムは、研修医による重大な医療ミスとし、直接的な観察と診療録レビューなどの、強化サーベイランスにより評価を行った。研修医の1人当たりの平均ICU患者数、介入群で約2人増 比較した2種の勤務スケジュール期間の、ICU患者の特性は類似していた。一方で、研修医1人当たりの平均ICU患者数で表した研修医の仕事量は、対照群が6.7人(SD 2.2)に対し、介入群が8.8人(2.8)と多かった。 研修医による重大な医療ミス発生率は、対照群79.0件/1,000患者日に対し、介入群が97.1件/1,000患者日と高率だった(相対リスク[RR]:1.53、95%信頼区間[CI]:1.37~1.72、p<0.001)。 ICUユニット全体の重大な医療ミスについても、対照群131.5件/1,000患者日に対し、介入群が181.3件/1,000患者日と高率だった(RR:1.56、95%CI:1.43~1.71)。 なお、研修医による重大な医療ミス発生率については施設間のばらつきが大きく、医療ミス発生率が介入群で対照群より低かったのは1施設、同等だったのは2施設、高かったのは3施設だった。 研修医1人当たりの患者数を交絡因子として補正後、介入群と医療ミス発生率増大には関連が認められなかった。

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ラコサミドに点滴静注100mgが登場/ユーシービージャパン

 ユーシービージャパン株式会社は、6月11日に抗てんかん剤ラコサミド(商品名:ビムパット点滴静注100mg)を新発売した。 てんかんは、全世界で約6,500万人、わが国には約100万人の患者数が推定され、毎年57,000人が新たにてんかんを発症している。患者の大部分が長期的な薬物療法を必要とするが、既存の抗てんかん薬を使用しても、30%を超える患者がてんかん発作を十分にコントロールできていないとの報告もあり、てんかん治療ではアンメット・ニーズが高い。 今回発売されたラコサミドは、電位依存性ナトリウムチャネルの緩徐な不活性化を選択的に促進することにより、神経細胞の過剰な興奮を低下させる薬剤1)。2016年7月に成人の「てんかん患者の部分発作に対する併用療法」で製造販売承認を取得後、成人の「てんかん患者の部分発作に対する単剤療法」(2017年8月)、4歳以上の小児てんかん患者の部分発作に対する併用療法及び単剤療法に係る新用量(2019年1月)、ドライシロップと点滴静注(2019年1月)とそれぞれ追加承認されている。 ビムパット点滴静注100mgは、一時的に経口投与ができない患者への部分発作(二次性全般化発作を含む)の治療に対し承認されている先行の「同点滴静注200mg」の充填量を半量とした製剤。1回の投与で使い切ることができ、同社では「錠剤とドライシロップ10%、点滴静注200mgに加え、点滴静注100mgを追加することで、患者や医療関係者に一層貢献できる」と期待を寄せている。ビムパットの概要商品名:ビムパット点滴静注100mg一般名:ラコサミド効能または効果:一時的に経口投与ができない患者における、下記の治療に対するラコサミド経口製剤の代替療法てんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)用法・ラコサミドの経口投与から本剤に切り替える場合:通常、ラコサミド経口投与と同じ1日用量および投与回数にて、1回量を30分から60分かけて点滴静脈内投与する。・ラコサミドの経口投与に先立ち本剤を投与する場合:成人:通常、ラコサミドとして1日100mgより投与を開始し、その後1週間以上の間隔をあけて増量し、維持用量を1日200mgとするが、いずれも1日2回に分け、1回量を30分から60分かけて点滴静脈内投与する。小児:通常、4歳以上の小児にはラコサミドとして1日2mg/kgより投与を開始し、その後1週間以上の間隔をあけて1日用量として2mg/kgずつ増量し、維持用量を体重30kg未満の小児には1日6mg/kg、体重30kg以上50kg未満の小児には1日4mg/kgとする。いずれも1日2回に分け、1回量を30分から60分かけて点滴静脈内投与する。ただし、体重50kg以上の小児では、成人と同じ用法・用量を用いる。いずれの場合においても、症状により適宜増減できるが、1日最高投与量および増量方法は以下のとおりとする。成人:1日最高投与量は400mgを超えないこととし、増量は1週間以上の間隔をあけて1日用量として100mg以下ずつ行う。小児:4歳以上の小児のうち体重30kg未満の小児では1日12mg/kg、体重30kg以上50kg未満の小児では1日8mg/㎏を超えないこととし、増量は1週間以上の間隔をあけて1日用量として2mg/kg以下ずつ行う。ただし、体重50kg以上の小児では、成人と同じ1日最高投与量および増量方法とする。製造販売承認日:2020年1月27日薬価基準収載日:2020年5月27日薬価:ビムパット点滴静注100mg 1瓶2,459円発売日:2020年6月11日製造販売元:ユーシービージャパン株式会社販売元:第一三共株式会社

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COVID-19流行期の小児炎症性多臓器症候群、その臨床的特徴は?/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生率が高い地域では、通常とは異なる発熱や炎症の症候群を呈する子供の症例が報告されている。そこで、英国・Imperial College Healthcare NHS TrustのElizabeth Whittaker氏らは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)による感染症流行期の小児炎症性多臓器症候群(PIMS-TS)の判定基準を満たした入院患児の調査を行い、発熱や炎症から心筋障害、ショック、冠動脈瘤の発現まで、さまざまな徴候や症状とともに、重症度にも違いがみられることを明らかにした。JAMA誌オンライン版2020年6月8日号掲載の報告。58例の臨床的特徴を抽出し、他の炎症性疾患と比較 研究グループは、PIMS-TSの判定基準を満たした入院患児の臨床所見や検査値の特徴を調査し、これらの特徴を他の小児炎症性疾患と比較する目的で、症例集積研究を行った(英国国立健康研究所[NIHR]などの助成による)。 2020年3月23日~5月16日の期間に、イングランドの8つの病院に入院したPIMS-TS患児58例を対象とした。最終フォローアップ日は2020年5月22日。 診療記録を精査することで、臨床所見や検査値の特徴を抽出し、2002~19年に欧米の病院に入院した川崎病(1,132例)、川崎病ショック症候群(45例)、毒素性ショック症候群(37例)の臨床的特徴と比較した。感染率78%、年齢が高く、炎症マーカーが高値 58例の年齢中央値は9歳(IQR:5.7~14)で、女児が33例(57%)であった。SARS-CoV-2のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査では15例(26%)が陽性で、SARS-CoV-2のIgG検査では46例中40例(87%)が陽性であった。全体として、58例中45例(78%)で現在または過去のSARS-CoV-2感染のエビデンスが得られた。 全患児に、発熱と非特異的症状(嘔吐26/58例[45%]、腹痛31/58例[53%]、下痢30/58例[52%])が認められた。発疹は58例中30例(52%)に、結膜充血は58例中26例(45%)にみられた。 検査値の評価では、著明な炎症が認められた。たとえば、C反応性蛋白(CRP)中央値(58例全例で測定)は229mg/L(IQR:156~338)で、フェリチン(58例中53例で評価)中央値は610μg/L(359~1,280)であった。 58例の患児のうち、29例がショック(心筋機能障害の生化学的エビデンスを伴う)を来し、強心薬および蘇生輸液を要した(29例中23例[79%]が機械的換気を受けた)。13例は米国心臓協会(AHA)の川崎病の定義を満たし、23例はショックや川崎病の特徴を伴わない発熱および炎症所見を有していた。8例(14%)には、冠動脈拡張と冠動脈瘤が発現した。 PIMS-TSを川崎病および川崎病ショック症候群と比較したところ、臨床所見や検査値の特徴に違いが認められた。たとえば、PIMS-TSは、これら2つの炎症性疾患に比べ年齢中央値が高く(PIMS-TS:9歳[IQR:5.7~14]vs.川崎病:2.7歳[1.4~4.7]vs.川崎病ショック症候群:3.8歳[0.2~18])、CRP中央値(229mg/L[IQR:156~338]vs.67mg/L[40~150]vs.193mg/L[83~237])などの炎症マーカーが高値を示した。 著者は、「これらの知見は、重篤なPIMS-TSで入院した患児の臨床的特徴を示しており、この明らかに新しい症候群の実態を理解するのに役立つだろう」としている。

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MRワクチン【今、知っておきたいワクチンの話】各論 第1回

ワクチンで予防できる疾患(疾患について・疫学)ワクチンで予防できる疾患、VPD(Vaccine Preventable Disease)は、数えられるほどしかない。しかし、世界ではいまだに多くの子供や大人(時に胎児も)が、ワクチンで予防できるはずの感染症に罹患し、後遺症を患ったり、命を落としたりしている。わが国では2012~2013年の風疹大流行(感染者約17,000人)に引き続き1)、2018~2019年にも流行した(感染者5,000人以上)。その影響もあり、日本は下記期間において世界3位の風疹流行国となっている2)(図1、表1)。風疹ワクチンのもっとも重要な目的は先天性風疹症候群(Congenital Rubella Syndrom:CRS)の予防である。それには、風疹が流行しないよう、風疹含有ワクチン接種により集団免疫を高めることが何より重要である。図1 2019年3月~2020年2月(1年間)の風疹発生数と発生率(100万人当たり)画像を拡大する表1 風疹患者数(上位10ヵ国)Global Measles and Rubella Monthly Update (Accessed on April 24, 2020)より引用画像を拡大する一方、麻疹は、世界で約14万人の命を奪う(2018年推計)ウイルス感染症である。麻疹の死亡率は先進国でさえも約1,000人に1人といわれており、重症度の高い感染症である。感染力も強いため、風疹と同様、予防接種により高い集団免疫を獲得する必要がある。しかし、日本国内での麻疹の散発的流行はいまだ絶えない。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に係る緊急事態宣言が解除された今なお、予防接種は不要不急だと考え接種を控えるケースが見受けられる。しかし「ワクチンと新型コロナウイルスと検疫」でも述べられているように、予防接種(特に小児)は適切な時期に受けることが重要であり、接種を延期する必要はない。過度な制限や自粛により、予防できるはずの感染症に罹患してしまうことは避けなければならない3)。麻疹・風疹の概要VPDの第1弾として、「麻疹・風疹」を取り上げる。麻疹・風疹ワクチンともに、経済性、安全性、有効性に優れており費用対効果も高い。日本国内における麻疹・風疹の感染流行の首座は、小児よりも青年・成人である。そのため、あらゆる年代、あらゆる受診機会に触れるプライマリケア医からの啓発が、非常に重要かつ効果的である。麻疹について1)麻疹の概要感染経路:空気感染、飛沫感染、接触感染潜伏期:10~12日周囲に感染させうる期間:症状出現1日前~解熱後3日間感染力(R0:基本再生産数):12-18感染症法:5類感染症(全数報告、直ちに届出が必要)学校保健安全法:第2種(出席停止期間:解熱後3日経過するまで)注)R0(基本再生産数):集団にいるすべての人間が感染症に罹る可能性をもった(感受性を有した)状態で、一人の感染者が何人に感染させうるか、感染力の強さを表す。つまり、数が多い方が感染力は強いということになる。2)麻疹の臨床症状麻疹の特徴は、感染力の強さと重症度の2つである。空気感染する感染症は、麻疹以外では結核と水痘がある。感染力を表すR0(アールノート)は、インフルエンザが1-2、COVID-19が1.3-2.5(5月時点)なので、麻疹はこれらの約10倍に相当する極めて強い感染力をもつ。典型的な麻疹の臨床経過は、10~12日程度の潜伏期ののち、3つの病期を経る。感染力がもっとも強いカタル期(2~4日間)には、高熱、上気道症状、目の充血、コプリック斑などが出現する。その後、一旦解熱し、再度高熱(二峰性発熱)と全身性の紅斑(発疹期)が拡がる(3~5日間)。発疹が出て3~4日後に徐々に解熱し回復する(回復期)。麻疹に対する免疫をもたない人が感染すると、約3割に合併症が生じ、肺炎や脳炎、中耳炎、心筋炎などを来す。肺炎や脳炎は2大死亡原因と言われ、乳児では麻疹による死亡例の6割が肺炎に起因する。まれではあるが罹患してから数年後に発症する亜急性硬化性全脳炎(SSPE)という重篤な合併症を来すこともある。病歴や臨床症状から疑い、血清学的検査(IgM抗体、IgG抗体など)やPCR検査(咽頭、尿など)などにより確定診断をする(詳細は「医療機関での麻疹対応ガイドライン 第7版」4)を参照)。特異的な治療法はないため、対症療法が中心である。3)麻疹の疫学麻疹の感染者は、全数報告が開始された2008年が約1万1,000例だったが、2009年以降は、毎年数十~数百例の報告数である。2016年は165例、2017年は186例、2018年282例と続き、2019年は744例と多かった。かつては5歳未満の小児が主な感染者であったが、2011年頃からは20~30代の患者が半数以上占めている5)。2019年は感染者の56%が20~30代であり、主な感染者は接種歴のない乳児を除いて、30代をピークとした成人であることがわかる(図2、3)。図2 年齢群別接種歴別麻疹累積報告数 2019年第1~52週(n=744)画像を拡大する図3 年齢別麻疹累積報告数割合 2019年第1~52週(n=744)国立感染症研究所 感染症発生動向調査 2020年1月8日現在より引用画像を拡大する4)麻疹の抗体保有率抗体保有率は麻疹の感受性調査として、ほぼ毎年国立感染症研究所より報告されている。抗体価はあくまで免疫能の一部を表しているに過ぎないため、抗体価が基準を満たせば良い、という単純な話ではない(総論第4回 「抗体検査」参照)。しかし、年代と抗体保有率との相関性をみることで、ある程度の傾向が把握できるため紹介する。麻疹の抗体保有率(PA法16倍以上:図4赤線)は1歳以上の全年代で95%以上を維持しているが、修飾麻疹を含めた発症予防可能レベルは128倍以上が望ましい6)(図4:緑線)。10代と60代以上で128倍の抗体価を下回る人が多く、注意が必要である。また、すべての年代で128倍未満のものがいることから、輸入麻疹による感染拡大の危機は常につきまとうことになる。図4 麻疹の抗体価保有状況 2019年感染症流行予測調査より(2020年2月暫定値)国立感染症研究所 2019年感染症流行予測調査(2020年2月暫定値)より引用画像を拡大するわが国は2015年3月27日にWHOによる麻疹排除認定を受けた。麻疹排除認定の定義とは「質の高いサーベイランスが存在するある特定の地域、国等において、12ヵ月間以上継続した麻疹ウイルスの伝播がない状態」とされている。これは土着の麻疹ウイルスが国内流行しなくなった状態を意味するだけであり、土着でない、海外から持ち込まれた“輸入麻疹”は、麻疹排除認定後も、2020年現在まで国内で散発的にみられている(図5)。近年の代表的な事例として、2018年には海外からの旅行者を発端とした沖縄での集団感染(101例)や、2019年にはワクチン接種率の低い三重県の宗教団体関係者を中心とした集団感染(49例)などがある。その感染力の高さから4次や5次感染を来した事例も複数報告されている7)。その他、医療関係者、教育関係者、空港職員などが感染した事例も多く、不特定多数の人に接触しうる職種は特に、あらかじめワクチン接種により免疫を獲得しておくことが重要である。図5 麻疹累積報告数の推移 2013~2020年第15週 (2020年4月15日現在)国立感染症研究所 感染症発生動向調査より引用画像を拡大する麻疹はアジア・アフリカ諸国を始め、世界各国で流行が続いており、2019年は40万人以上が罹患したと報告されている。一方で、わが国への出入国者数は年々増加し、年間5,000万人を超えている。つまり、日本全体が麻疹に対する強固な集団免疫を獲得しないと、世界各国とのアクセスが容易な現代においては、“ふと”やってくる輸入麻疹を防げないのである。風疹について1)風疹の概要感染経路:飛沫感染、接触感染潜伏期:14~21日周囲に感染させうる期間:発疹出現前後1週間感染力(R0:基本再生産数):5-7感染症法:5類感染症(全数報告、直ちに届出が必要)学校保健安全法:第2種(出席停止期間:発疹が消失するまで)2)風疹の臨床症状風疹は、比較的予後の良い急性ウイルス感染症である。しかし、妊婦が風疹に罹患すると、その胎児に感染し、先天性風疹症候群(Congenital Rubella Syndrome:CRS)が発生する可能性がある(後述)。風疹の主な感染様式は、風邪やインフルエンザと同様に飛沫感染であり、感染力は比較的強い(R0は5-7)。風疹の臨床経過について。2~3週間の潜伏期の後、軽い発熱と淡い全身性発疹が同時に出現する。その他、耳下や頸部リンパ節腫脹も特徴的で、関節痛を伴うこともある。発疹は3~5日程度で消失するため、風疹は“三日はしか”とも言われる。風疹ウイルスに感染した成人の約15%は不顕性感染(感染していても症状がでない)であり、たとえ症状がでても軽度なことも多い。そのため、自分が感染していることに気付かず、他人に感染させてしまう可能性がある。診断方法:臨床症状から疑い、血清検査(IgMやIgGなど)にて確定診断を行う。治療:CRSも含め、風疹に特異的な治療法はなく対症療法が中心となる。そのため、ワクチンがもっとも有効な予防方法となる。予後は基本的には良好だが、時に血小板減少性紫斑病や脳炎を合併することがある。3)先天性風疹症候群(Congenital Rubella Syndrome:CRS)冒頭で述べたように、日本では2012~13年および2018~19年に風疹が流行した。2012~13年には17,000人以上の風疹感染者と45人のCRSが、2018~19年には5,000人以上の風疹感染者と5人のCRSが届出された。妊婦の風疹感染により流産や胎児死亡が起こりうることから、より多くの妊婦と胎児が風疹感染の犠牲となった可能性がある。CRSとは、風疹に対する免疫が不十分な妊婦が、妊娠中に風疹に罹患し、経胎盤感染により胎児が罹患する症候群である。3大症状は難聴、先天性心疾患、白内障であり、その他、肝脾腫、糖尿病、精神運動発達遅滞などを来す。妊婦(風疹に対する免疫が不十分な場合)の風疹感染によるCRS発生率は妊娠週数によって異なり、妊娠初期の感染は80%以上と非常に高率である(妊娠4~6週で100%、7~12週で約80%、13~16週で45~50%、17~20週で6%、20週以降で0%8))。2012~13年に発生したCRS45人の追跡調査で、11人が死亡していたことがわかり、致死率は24%と報告された。そのほとんどが重度の先天性疾患が死因となった1)。一方、CRS児の母親の年代は14~42歳と幅広く、風疹含有ワクチン接種歴が2回確認された母親はいなかった(接種歴1回が11例、なしが19例、不明が15例)。妊娠可能年齢の女性に対する風疹ワクチンの2回接種がいかに重要であるかがわかる。また、4例の母親には妊娠中に感染症状がなかった(31例は症状あり、10例は不明)ことから、不顕性感染によるCRSであったことが推測される。CRSもワクチンで予防できるVPDである。また、風疹流行は、妊婦にとって脅威である。妊娠可能年齢の女性やそのご家族には、積極的に風疹ワクチン2回の接種歴を確認し、不足回数分の接種を推奨いただきたい。4)風疹の疫学と抗体保有率近年の風疹流行の首座は成人(感染者の9割以上)であり、中でも20~50代の男性が約7~8割を占める9)。これらの年代は働き盛り、かつ子育て世代でもあることから、職場や家族内感染が主な感染源と推定された10)。一方、女性の感染者では妊娠可能年齢の20~30代が女性感染者全体の6割を占め、CRS予防の観点からも、憂慮すべきデータである。抗体保有率も上記の年代で低いことがわかる(図6)。風疹抗体価についてはHI法8倍以上(図6:赤線)で陽性とされるが、感染予防には16倍以上(図6:黄線)、さらにはCRS予防には32倍以上(図6:青線)が望ましい。男性については30~50代において抗体価が低いことがよくわかる。近年の風疹流行の首座の年代である。この年代で抗体価が低いのは、後述する過去の予防接種制度の煽りを受けたことが原因であり、昨年度から全国で開始された「風疹第5期定期接種」の対象年齢(1962~1979年生まれ)が含まれる。一方、女性では、HI法8、16倍以上の抗体保有率は高いものの、CRS予防に望ましい32倍以上(図6:青線)の抗体保有率は妊娠可能年齢(10~40代)では7~8割にとどまる。やはり小児期に2回の定期接種が義務付けられていなかった年代が含まれており、男性のように成人に対する定期接種制度はないため、日常診療における接種歴の確認が重要となる。図6 男女別の風疹抗体保有率 2018年画像を拡大する国立感染症研究所 年齢別/年齢群別の風疹抗体保有状況、2018年より引用画像を拡大する妊娠可能年齢の女性やその家族には、あらかじめ風疹ワクチンでの予防措置を講じておくことが非常に重要である。ワクチンの概要(効果・副反応、生または不活化、定期または任意、接種方法) 1)麻疹・風疹ワクチン(表2)画像を拡大する効果(免疫獲得率)麻疹ワクチン:1回接種により免疫獲得率93~95%以上、2回接種で97~99%3)風疹ワクチン:1回接種による免疫獲得率は95%、2回接種では約99%11)副反応:一部(10~30%)に軽度の麻疹様発疹や風疹様症状(発熱、発疹、リンパ節腫脹、関節痛など)を伴うことがあるが、いずれも軽度で数日中に消失する一過性のものである。その他、ワクチン接種による一般的な副作用以外に、MRワクチンに特異的な副反応報告はない。禁忌:発熱や急性疾患に罹患中の人、妊婦、明らかな免疫抑制状態にある人、このワクチンによる重度のアレルギー症状(アナフィラキシーなど)を呈した既往がある人注意事項:生ワクチン接種後は、2ヵ月間は妊娠を避ける。ただし、この期間に妊娠しても、母体や胎児に問題が生じた報告はない。また、輸血製剤またはガンマグロブリン製剤投与後は6ヵ月の間隔をあけてから接種する。麻疹風疹(MR)ワクチンは、2006年から小児に対して2回の定期接種(1期、2期)が定められた。1期(1歳)の接種率は目標の95%以上を維持しているが、2期(5~6歳)についてはいまだ93~94%で推移している12)。あらゆる機会を利用してキャッチアップを行うことにより、すべての人が生涯で計2回のワクチン接種が受けられるような啓発や取り組みが喫緊の課題である。2)麻疹の緊急ワクチン接種麻疹患者との接触者で、麻疹に対する免疫がない人は、接触後72時間以内に麻疹含有ワクチンを接種することで、発症を予防できる可能性がある(緊急ワクチン接種)4)。1歳未満の乳児でも、生後6ヵ月以降であれば曝露後接種は可能である(自費)。しかし、この場合は母親からの移行抗体によりワクチンウイルスが中和されてしまう可能性もあるため、必ず1歳以降で2回の定期接種を受ける必要がある。3)接種のスケジュール(小児/成人)麻疹・風疹ワクチンは、いずれも1歳以上で生涯計2回接種することで、麻疹・風疹ウイルスに対する免疫能を高率に獲得できる。血清検査で診断された罹患歴がなければ、不足回数分の接種を推奨する。ウイルス抗体価の測定は必須ではない。理由は前述の「抗体検査」で述べられたとおりであり、改定された日本環境感染学会のワクチンガイドラインでも同様の考えに基づくアルゴリズムが提示されている13)。抗体価は参考値として測定することはあっても、あくまで接種歴の方が重要度としては高い。よって、抗体価を測定せずに、接種歴の情報を元に接種回数を決めてよい。接種歴がわからない(もしくは、接種した記憶はあるが、記録がない)場合は、接種しすぎることによる害はないため「接種歴なし」として、1ヵ月以上の間隔をあけて、2回の接種を推奨する。4)小児期に2回の麻疹・風疹ワクチン接種が定期接種となった年代麻疹・風疹(それぞれ単独)ワクチン:2000年4月2日生まれ以降の人(表3)は、小児期に麻疹・風疹含有ワクチンが定期接種化されている年代である。ただし、1990年4月2日生まれ~2000年4月1日生まれまでの人(特例措置の年代)の接種率は80%台と低かった。どの年代においても接種歴の確認が重要である。特例措置:麻疹または風疹ワクチンの2回目を、中学1年生(第3期)と高校3年生相当(第4期)に対象者を拡大して5年間の期間限定で接種が行われた。表3 出生年月日および性別別の早見表:麻疹(上段)、風疹(下段)画像を拡大する5)成人に対する風疹第5期定期接種14)1962年4月2日生まれ以降~1979年4月1日生まれの年代(41~58歳)は、小児期の予防接種制度の影響で、小児期に風疹含有ワクチンを2回接種する機会がなかった。そのため、先述したように風疹抗体保有率が低く、風疹流行の首座となってしまった。この世代に対して、2019年度から全国で該当者(風疹含有ワクチンの接種歴がなく罹患歴もないなど)には無料で風疹の抗体価測定を行い、抗体価が不足している場合(HI法8倍以下)は、無料でMRワクチンを接種できる“風疹第5期定期接種”が開始された。しかし、2020年4月時点でクーポン券を使用した抗体検査実施率は16.2%、予防接種実施割合は3.4%と低迷している15)。プライマリケア医による能動的な情報提供、啓発が望まれる。日常診療で役立つ接種のポイント(例:ワクチンの説明方法や接種時の工夫)繰り返しになるが、麻疹・風疹ともに、罹患歴がなければ1歳以上で生涯2回の接種が必要である。接種歴がないまたは不明の場合は、接種しすぎることによる害はないため、任意接種であれば、1ヵ月あけて2回の接種を推奨する。麻疹または風疹のいずれか一方のみの接種を希望する人がいた場合、2回の接種歴が記録で確認できなければ、MRワクチンでの接種を推奨する。下記、MRワクチン接種を負担なく啓発できる工夫について何点かご紹介する。1)外来における工夫(1)小児の受診時受診理由に関わらず、母子手帳の提出をルーチン化する。電話予約時に一言添える、受付時や看護師の予診時などに提出をお願いする。これを習慣化すると、受診者全体に徐々にその文化が根付いていく。医師が診療前後に母子手帳の接種記録を確認し、不足しているものがあれば推奨する。ワクチンスケジュールの知識がある看護師などが担当してもよい。(2)カルテ記録プロブレムリストに「ヘルスメンテナンス」または「予防接種歴」を追加する。医師自身がリマインドできるシステムを作る。外来で扱う主要なプロブレムが落ち着いたときに、患者さんに一言接種歴の確認をするだけでも良い。余裕ができたときに、不足しているワクチンについて紹介、接種の推奨をする。(3)ポスターを掲示するワクチン接種についてのポスターを待合室に掲示する。リーフレットとして配布してもよい15)。2)積極的にワクチン接種を推奨したい対象者(1)妊娠可能年齢の女性とその家族あらゆる感染症は、妊婦の流産早産に関連しうる。CRSを含めたVPDとそのワクチンについて情報提供する。特に、妊娠中は接種が禁忌となる生ワクチン(風疹・麻疹・水痘・ムンプス)について、妊娠前にあらかじめ免疫をつけておくことが重要であることを情報提供する。妊娠希望の女性に対して、MRワクチン接種の助成がある自治体も多い。自治体によっては、そのパートナーにも助成を出しているところもある。あらかじめ自身の自治体の助成制度の確認を行い、該当者がいれば渡せるように当該ページを印刷しておくとよい。(2)風疹第5期定期接種の対象者(41~58歳:2020年4月中旬時点)接種率の低さから、自宅に風疹対策のクーポン券(無料で受けられる風疹抗体検査の受診券)が届いていても、それに気付いていない、またはその重要性を知らず放置している例も多いことが考えられる。定期接種の対象である年代については、受付などで、対象者であることを示す札や目印を作成し、受診時に医療スタッフから制度利用の推奨・案内をできるようにしておくとよい。自宅に定期接種のクーポン券が届いていないかどうか事前に確認し、検査を推奨する。届いていなければ地域の保健所に問い合わせるよう促せば対応してくれる。(3)海外渡航予定のある人海外では麻疹流行国が多数ある。渡航先に関わらず、海外渡航時はルーチンワクチンをキャッチアップする良い機会である。あれば母子手帳をもとに、なければ麻疹を含めたVPDについてしっかり話し合う。長期出張の場合は会社からの補助がでないか、家族同伴の場合は家族の予防接種状況も含めて、安心かつ安全な海外渡航となるよう、サポートする。(4)不特定多数の人と接触する職業(空港など)・医療職・教育関係者などこれらの職業の人は、感染リスクが高く、感染した場合の公衆衛生学的なインパクトも大きい。これらの職業に携わる人には、積極的にワクチン接種歴の確認をし、不足回数分の接種を推奨する。今後の課題・展望世界では、世界保健機関(WHO)などにより、麻疹および風疹排除を加速させる活動が進められている(Global Vaccine Action Plan 2011-2020)。わが国では、2015年に認定された麻疹排除認定を取り消されることがないよう、小児定期接種の高い接種率(1、2期ともに95%以上)を目指すと同時に、海外から麻疹ウイルスを持ち込まれても、国内流行につながらない高い集団免疫を目標にしなければいけない。風疹については、2014年3月に厚生労働省が「風疹に関する特定感染症予防指針」を策定した。この指針は、早期にCRSの発生をなくし、2020年度までに風疹排除(適切なサーベイランス制度のもと、土着株による感染が1年以上確認されないこと)を達成することを目標としている(なお、2020年1~4月の風疹感染者数は73人とCRSが1人、4~5月は3人、CRSは0人15,17))。プライマリケア医には、既存の制度(自治体の助成制度や風疹第5期定期接種など)の積極的利用の促進、また、日常診療内で幅広い年代に対する能動的な啓発および接種歴の確認・推奨を行うことが望まれる。参考となるサイト(公的助成情報、主要研究グループ、参考となるサイト)こどもとおとなのワクチンサイト予防接種啓発ツール 厚生労働省1)2012~2014年に出生した先天性風疹症候群45例のフォローアップ調査結果報告(IASR;Vol.39:p33-34.)2)Global Measeles and Rubella Monthly Update(pptx). Measeles and Rubella Surveillansce Data WHO (Accessed on March,2020)3)新型コロナウイルス感染症に対するQ&A 日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会(2020年4月20日更新)4)医療機関での麻疹対応ガイドライン第7版 国立感染症研究所 感染症疫学センター (2018年4月17日)5)国立感染症研究所 病原微生物検出情報 麻疹[2019年2月現在](IASR Vol.40.p.49-51.)6)国立感染症研究所 病原微生物検出情報 麻疹の抗体保有状況2018年(IASR.Vol.40.p.62-63.)7)多屋馨子. モダンメディア. 2019;65:29-37.8)Ghidini A,et al. West J Med. 1993;159:366-373.9)風疹および先天性風疹症候群の発生に関するリスクアセスメント第3版(国立感染症研究所 2018年1月24日)10)風疹流行に関する緊急情報:2019年12月25日現在(国立感染症研究所 感染症疫学センター)11)風疹Q&A[2018年1月30日改定](国立感染症研究所)12)麻疹風疹予防接種の実施状況(厚生労働省)13)医療関係者のためのワクチンガイドライン 第3版(日本環境感染学会)14)風疹の追加的対策 専用ページ(厚生労働省)15)風疹に関する疫学情報 2020年4月8日現在(国立感染症研究所 感染症疫学センター )16)予防接種啓発ツール(厚生労働省)17)風疹に関する疫学情報 2020年6月3日現在(国立感染症研究所 感染症疫学センター)講師紹介

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ACE2遺伝子発現の年齢依存的な増加はCOVID-19重症化と関連?/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、小児では比較的重症化しにくいとされている。その要因の1つとして、小児の鼻上皮におけるアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)発現が成人より少ないことがあるかもしれない。米国・Icahn School of Medicine at Mount SinaiのSupinda Bunyavanich氏らの調査で、鼻上皮におけるACE2遺伝子発現が年齢とともに増加することが示された。JAMA誌オンライン版2020年5月20日号リサーチレターでの報告。ACE2遺伝子発現は10歳未満で最も低く、年齢とともに増加 本研究は、2015~18年にMount Sinai Health System(ニューヨーク市)を受診した4~60歳の患者の鼻上皮を後ろ向きに調査した。サンプルは、喘息におけるバイオマーカー研究のため、喘息の有無にかかわらず収集されたもの。線形回帰モデルは、統計処理ソフトウェアR version 3.6.0(R Foundation)を使用して、ACE2遺伝子発現を100万当たりのlog2カウントで従属変数として、年齢層を独立変数として作成した。年齢層は、10歳未満(45例)、10〜17歳(185例)、18〜24歳(46例)、25歳以上(29例)の4群に分類した。 4~60歳のCOVID-19患者のACE2遺伝子発現を調査した主な結果は以下のとおり。・305例のコホートが収集され、そのうち48.9%が男性、49.8%が喘息だった。・鼻上皮に年齢依存的なACE2遺伝子発現が見られた。ACE2遺伝子発現は、10歳未満で最も低く2.40(95%信頼区間:2.07~2.72)で、年齢とともに増加し、10〜17歳では2.77(同:2.64~2.90)、18〜24歳では3.02(同:2.78~3.26)、25歳以上では3.09(同:2.83~3.35)だった。・従属変数としてのACE2遺伝子発現および独立変数としての年齢層を使用した線形回帰は、年少児と比較して、ACE2遺伝子発現が年長児(p=0.01)、若年成人(p<0.001)、および成人(p=0.001)で有意に高かったことを示した。・性別と喘息について調整された線形回帰モデルでも、ACE2遺伝子発現と年齢層間に有意な関連(両側検定、有意な閾値:p≦0.05)が示され、この関連が性別と喘息に依存しないことを示した。 著者らは「この研究結果は、SARS-CoV-2と人体の最初の接触点である鼻上皮におけるACE2発現が年齢依存的であることを示している。成人に比べて子供のACE2発現が低いことが、COVID-19が子供に少ない理由を説明するのに役立つかもしれない。なお、本研究の限界として60歳以上の検体が含まれていないということがある」と述べている。

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