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学校でのコロナ感染対策、マスクの効果が明らかに

 本邦では、2023年5月8日に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染症法上の分類が5類に引き下げられ、文部科学省は、5類移行後の学校でのマスクの着用や検温報告を原則不要とする方針を、各教育委員会に通知している1)。しかし、スイスの中学校で実施された研究において、マスク着用の義務化はウイルス感染に重要な役割を果たすとされるエアロゾルの濃度を低下させ、新型コロナウイルス感染リスクを大幅に低減させたことが報告された。本研究結果は、スイス・ベルン大学のNicolas Banholzer氏らによってPLOS Medicine誌2023年5月18日号で報告された。マスク着用に新型コロナウイルスの感染予防効果 研究グループは、2022年1~3月(オミクロン株の流行期)において、スイスの2つの中学校(90人、1教室あたり平均18人)を対象として、マスク着用や空気清浄機の有無による新型コロナウイルス感染リスクの変化を検討した。7週間の期間(マスク着用義務化[学校A:2週間、学校B:4週間]、非介入[それぞれ3週間、1週間]、空気清浄機使用[いずれも2週間])において、疫学データ(新型コロナウイルス感染症の症例)、環境データ(CO2濃度、エアロゾル濃度など)、分子データ(唾液とバイオエアロゾル[ウイルスなどの生物に由来する粒子])が収集された。 マスク着用や空気清浄機の有無による新型コロナウイルス感染リスクの変化を検討した主な結果は以下のとおり。・唾液262サンプル中21サンプルにウイルスが含まれ(19サンプルが新型コロナウイルス)、バイオエアロゾル130サンプル中10サンプルにウイルスが含まれた(9サンプルが新型コロナウイルス)。・新型コロナウイルスが含まれた唾液サンプルの割合は、非介入時11.5%であったのに対し、マスク着用義務化時5.7%、空気清浄機使用時7.7%であった。新型コロナウイルスが含まれたバイオエアロゾルサンプルの割合は、非介入時8.1%であったのに対し、マスク着用義務化時7.1%、空気清浄機使用時5.0%であった。・CO2濃度(日平均値±標準偏差[SD])は1,064±232ppmであった。・エアロゾル濃度(日平均値±SD)は非介入時177±109個/cm3に対し、マスク着用義務化時49±52個/cm3(調整変化率:-69%)、空気清浄機使用時84±56個/cm3(調整変化率:-39%)であった。・新型コロナウイルス感染リスクは、非介入時と比べてマスク着用義務化時で低かった(調整オッズ比[aOR]:0.19、95%信用区間[CrI]:0.09~0.38)。空気清浄機使用時は非介入時と同様であった(aOR:1.00、95%CrI:0.15~6.51)。・試験期間中、マスク着用義務化により新型コロナウイルス感染が9.98件(95%CrI:2.16~19.00)回避されたと推定された。 本研究結果について、著者らは「時間の経過とともに感受性の高い学生の数が減少したことから評価期間による交絡の可能性は否定できず、空気中のウイルスの検出は曝露を意味するが、必ずしも伝播とは限らないという限界がある」としつつも、「一般的なマスクの着用により新型コロナウイルス感染が予防されたことから、感染対策によって学校の教室での呼吸器感染症の伝播を減らせることが示唆された」とまとめた。

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小児喘息の罹患率や症状、居住環境が影響/JAMA

 米国都市部の貧困地域に居住する子供たちにおける、不釣り合いに高い喘息罹患率には、構造的人種主義が関与しているとされる。米国・ジョンズ・ホプキンズ大学ブルームバーグ公衆衛生大学院のCraig Evan Pollack氏らは、MAP研究において、住宅券(housing voucher)と低貧困地域への移住支援を提供する住宅移動プログラムへの参加が、小児の喘息罹患率や症状日数の低下をもたらすことを示した。研究の成果は、JAMA誌2023年5月16日号で報告された。ボルチモア郡の前向きコホート研究 MAP研究は、2016~20年に家族がBaltimore Regional Housing Partnership(BRHP)の住宅移動プログラムに参加した、持続型喘息を有する5~17歳の小児123例を対象とする前向きコホート研究である(米国国立環境健康科学研究所[NIEHS]の助成を受けた)。 ボルチモア郡の低貧困地域への引っ越しが、小児の喘息の増悪および症状に及ぼす影響を評価した。また、傾向スコアを用いて、Urban Environment and Childhood Asthma(URECA)の出生コホートに登録された小児とマッチングした解析も行われた。 123例の年齢中央値は8.4歳、58例(47.2%)が女児、120例(97.6%)が黒人であった。81%(89/110例)が引っ越し前は高貧困地域(貧困線を下回る家族が20%以上の地域)に居住しており、引っ越し後のデータが得られた小児のうち高貧困地域に住んでいたのは0.9%(1/106例)のみだった。傾向スコアマッチング解析でも、有意差を保持 このコホートにおいては、引っ越し前の3ヵ月間に、少なくとも1回の喘息の増悪がみられた患児は15.1%であったのに対し、引っ越し後は8.5%に低下し、補正後の引っ越し前後の差は-6.8ポイント(95%信頼区間[CI]:-11.9~1.7、p=0.009)と、有意な改善が認められた。 また、過去2週間の最大症状日数(患児が全身症状、活動性低下、夜間覚醒を訴えた最大の日数)は、引っ越し前が5.1日であったのに対し、引っ越し後は2.7日に減少し、補正後の引っ越し前後の差は-2.37日(95%CI:-3.14~-1.59、p<0.001)であり、有意な改善がみられた。 これらの結果と同様に、URECAデータを用いた傾向スコアマッチング解析でも、有意差が保たれていた。 さらに、社会的結束(social cohesion)、日中および夜間の近隣の安全性、都市のストレスなどのストレス指標は、いずれも引っ越しによって改善し、引っ越しと喘息増悪との関連の29~35%、引っ越しと症状発現の減少との関連の13~34%を、これらの指標が媒介すると推定された。 著者は、「政策立案者や臨床医が、1世紀以上に及ぶ住宅差別(housing discrimination)の遺産を抱える地域の家族を支援するプログラムを開発し検証する際に、これらの知見は子供の健康に有益な可能性を示唆するエビデンスとなる」としている。

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青少年トランスジェンダーへの医療ケア、どうあるべき?

 米国を中心に、トランスジェンダー(出生時点の身体と自認の性別が一致していない人)をはじめとした性的マイノリティーに対する社会制度・配慮がどうあるべきかという議論が高まっている。トランスジェンダーを肯定した医療や制度整備を進めることを目的に、医学・法学などの専門家で構成される国際的非営利組織「世界トランスジェンダー保健専門家協会(World Professional Association for Transgender Health:WPATH)は、独自に「トランスジェンダーとジェンダー多様な人々の健康のためのケア基準」を作成している。10年ぶりの更新となる第8版(SOC-8)が2022年9月に発表され、JAMA誌2023年5月18日号にそのサマリーが公開された。 冒頭には「トランスジェンダー及び性別の多様な患者は、適切に訓練された医療従事者から、偏見のないケアを受けるべきである。ジェンダーを肯定するプライマリ・ケアには、予防ケア、メンタルヘルス及び物質使用障害のスクリーニング、ホルモン療法、および非医学的/非外科的なジェンダー肯定的介入に関する教育が含まれる」と記され、幼少期、思春期の経時的なケアから、アセスメント、ホルモン療法、手術、メンタルヘルスといったテーマ別のケアへの提言、さらに教育や制度といった社会的側面までが網羅されている。 SOC-8は「トランスジェンダーと性別の多様な患者は、しばしば医療的ケアの障壁に直面している」とし、これらの格差に対処することを求めている。さらに「本基準が依拠するエビデンスは拡大しており、性別を確認するためのホルモン療法や外科的介入に関連するポジティブな結果を示す研究がある」としている。さらに、トランスジェンダーの健康を改善するために、スティグマ、差別、人権侵害に対処することの重要性を強調している。 現在大きな争点となっているのは、青少年期のトランスジェンダーに対する医療の提供だ。青少年期(主に13~17歳を指す)におけるトランスジェンダー関連の医療ニーズは高まっているものの、関連した医療、とくに乳房切除や性的縫合手術などの外科的医療について、何歳から提供すべきなのかについての見解はさまざまだ。 実際、米国では中南部を中心とした10以上の州が、未成年に対してトランスジェンダーを肯定する医療(ホルモン療法・関連手術など)を提供することを禁止しており、これに違反した医療者は罰金や免許剥奪、懲役を含む罰則が科せられる。この5月には全米第2の人口を抱えるテキサス州においても同様の法案が可決されており(知事の署名と施行決定はこれから)、これを受けて医療者団体やトランスジェンダー団体が反対声明を出すなど、国を二分する議論となっている。

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第148回 新型コロナ定点感染者数を初公表、緩やかな増加傾向/厚労省

<先週の動き>1.新型コロナ定点感染者数を初公表、緩やかな増加傾向/厚労省2.国内で麻疹患者を複数確認、国内でも流行を懸念/厚労省3.GLP-1ダイエットの健康被害、日本医師会も問題視4.国立健康危機管理研究機構の設立へ、衆議院を通過/国会5.高度急性期偏重の診療報酬改定で、2次救急医療に悪影響か/中医協6.次世代医療基盤法改正案が成立、医療ビッグデータの利用促進へ/内閣府1.新型コロナ定点感染者数を初公表、緩やかな増加傾向/厚労省厚生労働省は、5月19日に定点把握による新型コロナウイルス感染症の感染状況データを初めて公表した。全国の約5,000の医療機関から報告された1週間の感染者数は1万2,922人で、1医療機関当たりの平均患者数は2.63人だった。東京、神奈川、埼玉、千葉の推移をみると、都道府県ごとの感染者数は増加しており、特に沖縄県が最も多い6.07人だった。厚労省はこれまでの感染者数と比較して、緩やかな増加傾向が続いていると分析している。また、新たに始められた「新規入院者数」の発表では、1週間で2,330人の新規入院があり、前週と比べてほぼ横ばい。厚労省では、今後も定点把握を通じて感染状況を把握し、対策を進める方針。(参考)新型コロナウイルス感染症サーベイランス週報:発生動向の状況把握(国立感染症研究所)新型コロナ「緩やかな増加傾向」 厚労省が定点把握で初発表(東京新聞)コロナ定点把握 5類変更後初めて公表 新規患者数 8-14日の1週間分 厚労省(CB news)新型コロナ「定点把握」全国の感染状況データ 初の発表 厚労省(NHK)2.国内で麻疹患者を複数確認、国内でも流行を懸念/厚労省感染力が強い「麻疹」の感染者が国内で複数確認され、厚生労働省が注意喚起を行っている。今月に入って確認された感染者は、インドから帰国した30代男性と、東京都在住の男女2人で、同じ新幹線の車内にいたことで感染経路が特定されている。海外との往来の増加により、国内での感染例が増加する可能性が懸念されており、厚労省は海外渡航者へ注意喚起とワクチン接種を呼びかけている。麻疹は非常に感染力が強く、免疫力のない人が感染するとほぼ100%発症する。感染経路は空気感染のため、手洗いやマスクでは予防できない。麻疹の治療は対症療法であり、ワクチン接種が有効とされている。しかし、国内でのワクチン接種率は目標の95%を下回っており、国内での流行の懸念が高まっている。加藤厚生労働大臣は、5月16日の記者会見で麻疹の症状を有する場合は麻疹を疑い、医療機関を受診のための移動の際は公共交通機関の利用を控えるよう呼び掛けている。厚労省は、自治体や医療機関に対し、麻疹に対する注意喚起を行い、同省のホームページやSNSなどで国民に向けた情報の提供をしている。(参考)加藤大臣会見概要[令和5年5月16日](厚労省)国内での麻しん流行を懸念、発熱や発疹のある者は麻しんを疑った行動・診療を!医療従事者は2回の予防接種歴確認を-厚労省(Gem Med)「麻しん疑われる時は受診前に医療機関に連絡を」相次ぐ感染者の確認を受け 加藤厚労相(CB news)はしか、国内で複数の感染者確認 同じ新幹線車両に乗り合わせ(朝日新聞)はしか相次ぎ、厚労相「症状あれば交通機関の利用控えて」…感染者が不特定多数と接触か(読売新聞)3.GLP-1ダイエットの健康被害、日本医師会も問題視糖尿病治療薬のセマグルチド(商品名:リベルサス)が「飲むだけで痩せられる薬」として処方され、健康被害が相次いでいることが5月18日に一般報道された。ダイエット目的でのGLP-1受容体作動薬の処方は、美容クリニックやオンラインクリニックで行われている。しかし、吐き気やめまいなどの副作用が出現するほか、急性膵炎で入院する人も報告されている。本来、セマグルチドは糖尿病の治療薬であり、ダイエットの薬としての厚生労働省の承認はなく、適応外使用となる。オンライン診療での医師の診察は短時間で行われ、医師とは対面もなく検査もされないまま処方薬が自宅へ配送されており、TwitterなどのSNSでも副作用の訴えが多く寄せられている。現在、美容クリニックやオンライン診療での糖尿病の薬の処方は自由診療で行われているため、現状では規制が難しい状況であり、日本医師会もこれを問題視し、繰り返しこの行為の問題を表明している。同会では今後、処方を正しく行うための法整備が必要と訴えている。(参考)「飲むだけで痩せられる」糖尿病の薬を“痩せる薬”として処方 副作用で吐き気やめまいなど健康被害相次ぐ…入院する人も(TBS)自由診療における糖尿病治療薬の不適切使用に対する見解示す(日医)自由診療におけるオンライン診療の不適切事例について(医薬品の適応外使用)(同)4.国立健康危機管理研究機構の設立へ、衆議院を通過/国会次の感染症に備えるため、アメリカのCDC(疾病対策センター)をモデルとして、内閣感染症危機管理統括庁や厚生労働省に科学的知見を提供するため、国立感染症研究所と国立国際医療研究センターを統合して新たな専門家組織「国立健康危機管理研究機構」を設立する法案が国会に提出されていた。この5月18日に衆議院本会議で採決が行われ、自民、公明党などの賛成多数で可決された。今後、参議院に送付されて採決で成立すれば、法案に基づいて設立される。設立は令和7年度以降に予定されている。(参考)国立健康危機管理研究機構について(厚労省)国立健康危機管理研究機構(仮称)と地方衛生研究所等の連携強化(同)国立健康危機管理研究機構法案(衆議院)日本版CDC法、衆院通過 司令塔新設案、参院審議へ(東京新聞)5.高度急性期偏重の診療報酬改定で、2次救急医療に悪影響か/中医協厚生労働省は5月17日に中央社会保険医療協議会(中医協)の総会を開催した。来年度から始まる第8次医療計画のうち新興感染症を除く5事業について、診療報酬の在り方の議論を始めた。診療側が問題提起したのは救急医療。去年の診療報酬の改定では、高度急性期医療を評価する「急性期充実体制加算」の新設によって、「総合入院体制加算」(診療科として精神科、小児科、産婦人科の標榜が施設基準)から急性期充実体制加算の算定に移行するため、医療機関側が精神科や産科を廃止するなど地域の2次救急の維持・運営に支障が生じていると指摘があった。本来は100万人に1つの3次救急施設を整備する方針だったが、すでに国内には300施設存在し、さらに増加傾向が続いており、診療側は医療計画がゆがんでいないか、診療報酬以外の財政措置も考慮すべきだと主張した。また、診療報酬の評価方法を見直し、2次救急の評価を充実させる必要があると訴えた。その他、高齢者の救急患者については、急性期以外の医療機関での対応を促す仕組みを強化すべきだと指摘があった。(参考)総合入院体制加算の届け出1年間で35%減 厚労省、周産期医療への影響を注視(CB news)二次救急医療機関への評価充実要望、中医協で診療側 支払側「高齢の救急患者は急性期以外で」(同)総合入院体制加算⇒急性期充実体制加算シフトで産科医療等に悪影響?僻地での訪問看護+オンライン診療を推進!-中医協総会(Gem Med)中央社会保険医療協議会 総会[第545回](厚労省)6.次世代医療基盤法改正案が成立、医療ビッグデータの利用促進へ/内閣府医療ビッグデータの利用を促進するため、今国会に内閣府が提出していた次世代医療基盤法(医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律)の改正法案が、5月17日に開かれた参議院本会議で可決・成立した。この法律は、病院などから提供された医療情報を加工し、研究開発などに活用するために、個人情報保護法の特例法として平成29年に制定されていた。現行法では個人情報の保護のため制限があり、これまでの利用実績は20数件と少なく、新薬の研究開発などに活用しにくいという課題があった。このため経団連や日本製薬工業協会などからは改正を求める声が上がっていた。新たに成立した改正次世代医療基盤法では、匿名化したままでより精緻な医療データを新薬の開発などに利用に活用することが可能となる。具体的には、血圧や体重などの検査値の提供範囲を拡大し、創薬や副作用の早期把握などに活用することが期待されている。また、個人情報保護のため新たな制度が導入され、元の医療情報から患者本人を直接特定できないように、個人情報の保護と情報漏えいの防止強化にも取り組むことになる。(参考)「次世代医療基盤法」とは(内閣府)精緻な医療データを製薬利用へ 法改正、個人情報は配慮(日経新聞)医療データ活用へ 改正次世代医療基盤法 参院本会議で成立(NHK)世代医療基盤法の見直し(経団連)

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喘息の症状悪化、次にすべきは?【乗り切れ!アレルギー症状の初診対応】第1回

喘息の症状悪化、次にすべきは?講師富山赤十字病院 小児アレルギーセンター センター長 足立 雄一 氏【今回の症例】7歳の男児。1年ほど前から喘息のため、吸入ステロイド薬(フルチカゾン換算で50μgを1日2回吸入)で治療。半年以上良い状態が続いていたが、ここ2~3ヵ月は風邪をひくと咳込みが長引き、その都度、気管支拡張薬や去痰薬を内服していた。今回は、最近体育の授業で息苦しいことがある、と来院。吸入は朝晩続けている。どのように対応すればよいか?1.吸入ステロイド薬を増量する2.吸入ステロイド薬は増量せず、長時間作用性β2刺激薬との合剤に変更する3.吸入ステロイド薬は増量せず、ロイコトリエン受容体拮抗薬を追加する

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1~3歳のピーナッツアレルギー児、パッチ療法の有用性を検証/NEJM

 ピーナッツアレルギーの1~3歳児において、12ヵ月間にわたるピーナッツパッチを用いた経皮免疫療法はプラセボと比べて、脱感作の児の増加、症状を引き起こすピーナッツ量の増量という点で優れていたことが示された。米国・コロラド大学のMatthew Greenhawt氏らが第III相の多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照試験の結果を報告した。ピーナッツアレルギーの4歳未満児に対する承認された治療法はなく、これまでピーナッツアレルギー幼児へのピーナッツパッチによる経皮免疫療法の有効性と安全性は確認されていなかった。NEJM誌2023年5月11日号掲載の報告。8ヵ国51ヵ所で試験、12ヵ月時点の減感作を評価 試験は2017年7月31日~2022年4月27日に、米国、カナダ、オーストラリア、欧州の計8ヵ国51ヵ所で、ピーナッツアレルギーの1~3歳児を登録して行われた。 ピーナッツ蛋白の誘発用量(アレルギー反応を引き起こすのに用する量)が300mg以下の患児を、2対1の割合で無作為に、ピーナッツパッチ(ピーナッツ蛋白250μg含有[ピーナッツ1個の約1,000分の1])による経皮免疫療法を受ける群(介入群)とプラセボ群に割り付け、1日1回の貼付を12ヵ月間にわたって行った。 主要エンドポイントは、12ヵ月時点の治療効果で、ピーナッツ蛋白の誘発用量で評価した。評価に用いる誘発用量は、ベースラインでの誘発用量が10mg超の場合は少なくとも1,000mg(ピーナッツ約3、4個分相当)とし、10mg以下の場合は300mg(同約1個分相当)とした。 安全性は、ピーナッツパッチまたはプラセボ貼付中に発現した有害事象で評価した。介入群67.0%で効果、治療関連のアナフィラキシー発現は1.6% 362例が無作為化され、主要有効性および安全性解析に含まれた(介入群244例、プラセボ群118例)。このうち68.8%が男児で、年齢中央値は2.5歳、63.3%が白人であった。ベースラインの誘発用量が10mg以下だった患児は67例(介入群51例、プラセボ群16例)、10mg超は295例(同193例、102例)であった。ベースラインの両群の人口統計学的特性はバランスがとれていた。試験を完了したのは84.8%(介入群208例、プラセボ群99例)であった。 12ヵ月時点で治療効果が認められたのは、介入群67.0%、プラセボ群33.5%で介入群が有意に多かった(リスク群間差:33.4ポイント、95%信頼区間[CI]:22.4~44.5、p<0.001)。 両群の貼付中に発現した有害事象(治療との関連性に関係なく)は、介入群100%、プラセボ群99.2%で観察された。最も多くみられたのは貼付部位反応(紅斑[介入群98.0%、プラセボ群90.7%]、かゆみ[94.7%、61.0%]、貼付部位腫脹[72.5%、39.0%]など)であった。また、研究グループによって皮膚の反応は、介入またはプラセボの貼付開始時(0~3ヵ月目)の発現頻度が最も多く、その後は低下し、ほとんどがGrade1(紅斑、または紅斑と浸潤)もしくは2(紅斑と少数の丘疹)であったことが確認された。 重篤な有害事象は、介入群8.6%(うち7.8%がアナフィラキシー)、プラセボ群2.5%(同3.4%)で認められた。重篤な治療関連有害事象は、介入群0.4%、プラセボ群では報告がなかった。治療に関連したアナフィラキシーは、介入群1.6%、プラセボ群では報告がなかった。

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第160回 インフルの集団感染、新型コロナの教訓はいずこに!?

新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の教訓は生かされていないのか? 宮崎県でのインフルエンザ集団発生の報道を知って、そう思った。1つの高校で教職員・生徒を合わせて491人ものインフルエンザの感染者が発生したとの一報を目にした時は、正直「冗談だろう? もしかして新型コロナと間違えた?」と思った。集団発生が起きた高校の生徒数はわからないが、宮崎県内の高校のデータを参照すると、全日制高校の生徒数は最大規模でも約1,600人。多くは700~900人規模かそれ以下である。ざっくり計算をすると、集団発生が起きた高校では2~4人に1人がインフルエンザに感染したことになる。となると基本再生産数が約2のインフルエンザではなく、5以上と報告されているオミクロン株による新型コロナではないかと考えてしまったのだが、この時期の呼吸器感染症ではPCR検査による鑑別はしているはずで、やはりインフルエンザということなのだろう。ただ、立ち止まって考えてみれば、不思議はないのかもしれない。まず、報道されているように、きっかけはどうやら体育祭のようだ。前回の記事でも触れたように、文部科学省が4月1日から「学校での教職員・生徒のマスク着用を原則不要」と通知した中、体育祭では教職員・生徒の多くがマスクを外していた可能性がある。その環境で人と人とが密着しやすい体育祭を行えば、集団発生が起こりやすいのは確かだ。ここであえて言及すると、この高校の体育祭で教職員・生徒の多くが実際にマスク非着用だったとしても、私はこれを批判するつもりはない。とはいえ、近年、1つの学校で短期間にこれだけのインフルエンザ患者が発生したケースは、少なくとも私個人は記憶にない。そしてここまでの集団発生の主たる原因は、マスク非着用での体育祭実施よりも、コロナ禍でインフルエンザの流行がかなり抑えられた結果、多くの人でインフルエンザに対して免疫が失われていたからではないだろうか。これに高校生がインフルエンザワクチンの定期接種の対象者ではないこと、仮に昨秋以降にワクチン接種をした人がいたとしても季節外れで効力が失われていることを考え併せると、今回の集団発生はおおむね説明がつくのかもしれない。では、ここからは私がこの事例でどんな「教訓」が生かされていないと考えているかに話の軸を移していきたい。ここでは釈迦に説法となるが、改めてインフルエンザの特徴を整理しよう。潜伏期間は1~3日無症候割合は10%ほどで、こうしたケースではウイルス量は低い感染力(ウイルス排出量)のピークは発症後この特徴を踏まえれば、今回の集団発生は、他者への感染が起きやすい環境と集団免疫の喪失に加え、この教職員・生徒の中に症状があるのに体育祭に参加した人がいるということだ。まさに私が指摘したいのはこの点である。コロナ禍を通じて、繰り返し叫ばれたのは「風邪様症状のある人は外出を控えて」というメッセージだ。コロナ禍当初には、OTCの風邪薬のCMで有名だった「風邪でも絶対休めないあなたへ」というキャッチコピーもついに消えた(このコピーについては2016年から問題が指摘されていたが、変更されたのは2020年3月ごろ。当該製薬企業は「TVCMの放映期間ならびにキャンペーンが終了したため修正した」と説明している)。残念ながら、今回の集団発生ではこのメッセージが守られていなかった可能性があると考えざるを得ない。集団発生の時期は新型コロナの感染症法上「5類化」後であり、この高校では久々の体育祭だったかもしれない。ならば教職員・生徒共に無理を押してでも参加したい気持ちがあったのだろうと想像する。しかし、ちょっとした“油断”がこれだけの事態を招いてしまう。今はコロナ禍を経た過渡期だが、同時にこれまでに得た教訓を踏まえ、社会がより良い方向に定着していくための重要な時期でもある。たとえば、コロナ禍で得られた重要な教訓・経験の1つはリモート化・オンライン化である。これを活用して体育祭の実況中継によるハイブリット開催も可能だったはず。数少ない貴重なイベントだからこそ、体調不良の教職員・生徒が少しでも安心して休め、かつ疎外感を抱かないようそこまで配慮しても良かったのではと思う。しかも、以前よりもこうしたことは低コストでできる。もちろん現場で参加する高揚感や充実感にはかなわないのは確かだが、そうしたサポートがないより遥かにマシなはず。そして社会がコロナ禍明けで「湧いている」ようにも見える今こそ、コロナ禍の教訓をいかに社会に定着させるかを改めて再認識する必要がある。そのためには途方もない地味な努力の継続が求められるだろう。たとえば「風邪様症状のある人は家で休もう」と言い続けることはその1つだ。これはある種、医療関係者だけでなく社会全体にとって「苦痛」な作業となる。しかし、これをあきらめたら、私たちは新型コロナに真の敗北を喫することになる。

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NHK「おかあさんといっしょ」(後編)【絶対音感よりも○○!?才能よりも○○!?(幼児教育)】Part 1

今回のキーワード音の高さ(音高)音の共鳴(音素)言語能力連合学習(条件付け)臨界期相対音感フラッシュカード(瞬間記憶)音楽教育とくに幼い子供のいる皆さんは、習いごとを「いつから」そして「どれだけ」やらせればいいんだろうとお悩みじゃないですか? NHKの「おかあさんといっしょ」を見せてはいるけど、それだけじゃ足りないんじゃないか? 自分が怠けたせいであとあと隠れた才能を開花させられなかったと悔やむんじゃないか? たとえばそれが絶対音感だったり?前編では、「おかあさんといっしょ」をヒントに発語(発声学習)のメカニズムを説明し、その起源に迫りました。今回の後編では、前編を踏まえて、絶対音感という「才能」を例に挙げて、より良い音楽教育、そしてより良い幼児教育を一緒に考えてみましょう。絶対音感とは?「おかあさんといっしょ」の番組内では、音楽とともに歌ったり踊ったりして、幼児の音感が養われます。音感とは、まさに音に対する感覚で、音の高低、音色、メロディなどを聞きわける全般的な音楽の能力です。その中で、とくに絶対音感と聞くと、とても神秘的です。ある1つの音を聞くだけで(ほかの音との比較なしで)、瞬時にその音の高さ(音高)がわかり、ドレミの12音のどれかを言い当てることができるわけですから。聞いた曲をすぐに楽譜に書き起こせて便利そうです。この能力のある人は、一般人口の0.01%程度と言われています8)。絶対音感が言語能力である根拠は?絶対音感と聞くと、音楽的才能を連想します。しかし、実はこの正体は言語能力であることがわかっています。その根拠を3つ挙げてみましょう。(1)トレーニング方法1つ目は、絶対音感を身に付けるトレーニング方法です。自然に身に付くことは極めてまれで、特定の和音のパターンを使い、聞こえた音の高さをすぐにドレミの音高名に結びつけることを延々と繰り返します。そうするとやがて、特定の音高を聞くと、もはや抑えようとしても抑えられないくらい、自動的に音高名が頭の中に出てくるようになります。つまり、これは、特定の音高と特定の音高名(音素/言語)を結びつける連合学習(条件付け)であることがわかります8)。この点で、絶対音感は「音感」と表記されていますが、単に音高に限定された感覚であるため、厳密には「絶対音高感」という表記がより適切であると言われています。(2)脳の活動部位2つ目は、絶対音感を司る脳の活動部位です。メロディなどの音楽全般を司る部位が右半球優位であるのに対して、絶対音感を司るのは左半球優位であることがわかっています8)。これは、言語能力と同じです。(3)臨界期3つ目は、絶対音感が身に付けられる臨界期です。その年齢は概ね6歳です。この年齢を過ぎてトレーニングをしてもほぼ身に付かないことがわかっています8)。この年齢は、母語や第2言語の自然学習の臨界期に一致します。つまり、前編で子音や母音である音素(2種類の周波数/共鳴音)の識別能力の臨界期が1歳であると説明しましたが、この音高(1種類の周波数/単音)の識別能力の臨界期は6歳であると言えます。なお、6歳という言語能力に臨界期があるのは、6歳以降は単なる具体的な言葉を覚えるのではなく(それまでの語彙の記憶を固定化させて)、次のステップとしてそれらの言葉を駆使して、より抽象的な思考をすることに脳がエネルギーを注ぐ必要があるからと考えられます。同じように、絶対音感に臨界期があるのは、6歳以降は単なる音高の識別ではなく(それまでの音高識別の能力を固定化させて)、次のステップとしてそれらの音高の組み合わせ(メロディ)をつくり、より創造的な音感を発揮することに脳がエネルギーを注ぐ必要があるからでしょう。次のページへ >>

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乳児期のRSV感染が小児喘息発症に関連/Lancet

 正期産の健常児で、生後1年目(乳児期)に重症呼吸器合胞体ウイルス(RSV)に感染していない場合は感染した場合と比較して、5歳時点の小児喘息の発生割合が大幅に低く、乳児期のRSV感染と小児喘息には年齢依存的な関連があることが、米国・ヴァンダービルト大学医療センターのChristian Rosas-Salazar氏らが実施した「INSPIRE試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年4月19日号で報告された。米国テネシー州の大規模な出生コホート研究 INSPIRE試験は、2012年6月~12月または2013年6月~12月に正期産で生まれた非低出生体重の健常児を対象とする大規模な住民ベースの出生コホート研究であり、米国テネシー州中部地域の11の小児科診療所で参加者の募集が行われた(米国国立衛生研究所[NIH]の助成を受けた)。 乳児期のRSV感染状況(感染なし・感染あり)を、受動的サーベイランスと能動的サーベイランスを併用して調査し、分子生物学的手法と血清学的手法によりウイルスを同定した。主要アウトカム(5歳時点の喘息)を前向きにフォローアップし、5年間のフォローアップを完了したすべての子供について解析が行われた。 1,946例(年齢中央値55日[四分位範囲[IQR]:16~78]、女児48%)が登録され、このうち1,741例(89%)で生後1年目のRSV感染状況のデータが得られた。乳児期に944例(54%)がRSVに感染し、797例は感染しなかった。RSV感染回避により、15%で喘息が予防 5歳時点で喘息を発症していた子供の割合は、RSV感染群が21%(139/670例)であったのに対し、RSV未感染群は16%(91/587例)と有意に低かった(p=0.016)。補正後リスク比は0.74(95%信頼区間[CI]:0.58~0.94、p=0.014)であり、乳児期のRSV感染回避によって予防可能な5歳時点の小児喘息の割合は15%(95%CI:2.2~26.8)と推定された。 また、子供の年齢で層別化したモデルでは、喘鳴の年間再発リスクは、1~4歳のいずれの時点においても、RSV感染群に比べRSV未感染群で低かったが、有意差は1歳時(p<0.0001)と2歳時(p=0.043)でのみ認められた。 アトピー型喘息を、5歳時の喘息と3歳時の空中アレルゲン感作で定義した場合、5歳時の非アトピー型喘息の頻度はRSV感染群に比べRSV未感染群で有意に低かった(p=0.010)が、アトピー型喘息との関連はなかった。また、アトピー型喘息を、医師が5歳までにアレルギー性鼻炎またはアトピー性皮膚炎と診断し、親によって報告された場合と定義しても、同様の結果であった。 著者は、「乳児期のRSV感染と小児喘息との因果関係を明確に示すには、初回RSV感染の予防、遅延、重症度の軽減が、喘息に及ぼす影響について検討する必要がある」としている。

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小児への抗菌薬処方、多面的介入で減らせるか/BMJ

 急性咳嗽および呼吸器感染症(通常はウイルス性疾患)の小児は、プライマリケアにおいて最大の患者集団であり、半数近くが抗菌薬治療を受けている。そのような現状を背景に、英国・ブリストル大学のPeter S. Blair氏らは、抗菌薬適正使用支援の多面的介入の効果を無作為化試験で検証した。小児への無分別な抗菌薬使用の重大要因として、予後不良に関する不確実性があることなどを踏まえて介入効果を検証したが、全体的な抗菌薬投与を減らしたり、呼吸器感染症関連の入院を増やしたりすることもなかったことを報告した。BMJ誌2023年4月26日号掲載の報告。呼吸器感染症で受診していた0~9歳児への抗菌薬の処方調剤率と入院率を評価 研究グループは、呼吸器感染症でプライマリケアを受診した小児について、使いやすい多面的介入が、呼吸器感染症関連の入院を増やすことなく抗菌薬の処方調剤率を減らすかどうかを、効率的実臨床クラスター2アーム(介入vs.通常診療)非盲検無作為化試験で評価した。定性的および経済的評価を伴う日常的なアウトカムデータを用い、イングランドのEMIS電子医療記録システムを使用している一般診療所に、COVID-19パンデミック前および期間中に呼吸器感染症で受診していた0~9歳児をクラスター化して評価した。 介入は、(1)診察中に保護者の懸念を誘発、(2)受診した小児の30日以内の入院リスク(極めて低い、標準、高い)を予測するための臨床医向け診療アルゴリズムと抗菌薬処方ガイダンスの提供、(3)セーフティネットのアドバイスなどが示された介護者向けリーフレットの提供であった。 主要アウトカムは2つで、12ヵ月の試験期間中に処方されたアモキシシリンおよびマクロライド系抗菌薬の処方調剤率(比較群との優越性を評価)、呼吸器感染症による入院率(比較群との非劣性を評価)であった。介入の効果はみられず 一般診療所310ヵ所のうち、イングランドの全登録0~9歳児の5%が受診していた294ヵ所(95%)が無作為化された(介入群144ヵ所、対照群150ヵ所)。このうち12ヵ所(4%)は、その後に退いた(6ヵ所はパンデミックによる)。診療所当たりの介入利用中央値は70であった(臨床医中央値9人による)。 介入診療所(155[95%信頼区間[CI]:138~174]剤/年/1,000児)と対照診療所(157[140~176]剤/年/1,000児)で、抗菌薬の処方調剤率が異なるというエビデンスは認められなかった(率比:1.011、95%CI:0.992~1.029、p=0.25)。 事前規定のサブグループ解析において、処方看護師が少ない介入診療所で処方調剤の減少が示唆された。この示唆は単施設(多施設との比較において)で、社会経済的貧困レベルは低い地域の診療所でみられ、さらなる調査が必要である可能性があった。 事前規定の感度解析では、介入診療所の年齢の高い小児において処方調剤率の減少が示唆された(p=0.03)。 事後解析では、パンデミック前の介入診療所のほうが処方調剤率は低いことが示唆された(率比:0.967、95%CI:0.946~0.989、p=0.003)。 介入診療所の呼吸器感染症に関する入院率(13[95%CI:10~18]の入院/1,000児)は、対照診療所の同入院率(15[12~20]の入院/1,000児)に対して非劣性であった(率比:0.952、95%CI:0.905~1.003)。 結果を踏まえて著者は、「いくつかのサブグループとシチュエーション(たとえば非パンデミック下)で、介入によりわずかに処方調剤率の減少がみられたが、介入が臨床的に妥当な手法といえるものではなかった」とまとめている。

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ADHD患者の不安症やうつ病の併発、その影響はどの程度か

 注意欠如多動症(ADHD)患者では精神医学的疾患の併発が多く、診断に難渋したり、治療のアウトカムおよびコストに影響を及ぼしたりする可能性がある。米国・大塚ファーマシューティカルD&CのJeff Schein氏らは、同国におけるADHDおよび不安症やうつ病を併発した患者の治療パターンとコストを調査した。その結果、不安症やうつ病を併発したADHD患者では、これらの併存疾患がない患者と比較し、治療変更が行われる可能性が有意に高く、治療変更の追加によるコスト増加が発生することが明らかとなった。Advances in Therapy誌オンライン版2023年3月13日号の報告。 薬理学的治療を開始したADHD患者の特定には、IBM MarketScan Data(2014~18年)を用いた。最初に観察されたADHD治療の日付をインデックス日とした。併存疾患(不安症および/またはうつ病)のプロファイルは、ベースライン前6ヵ月間評価した。治療変更(中止、切り替え、併用、併用中止)は、治療開始後12ヵ月間調査した。治療変更に至るオッズ比(OR)を推定した。治療を変更した患者と変更しなかった患者において、調整された年間医療コストの比較を行った。 主な結果は以下のとおり。・対象患者は17万2,010例(小児[6~12歳]:4万9,756例、青少年[13~17歳]:2万9,093例、成人[18歳以上]:9万3,161例)。・不安症および/またはうつ病の有病率は、年代別に以下のとおりであり、小児期から成人期にかけて増加していた。 【不安症】  小児期:11.0%、青少年期:17.7%、成人期:23.0% 【うつ病】  小児期:3.4%、青少年期:15.7%、成人期:19.0% 【不安症および/またはうつ病】  小児期:12.9%、青少年期:25.4%、成人期:32.2%・併存疾患がある患者は、併存疾患がない患者と比較し、治療変更の確率が有意に高かった。 【不安症】  小児期OR:1.37、青少年期OR:1.19、成人期OR:1.19 【うつ病】  小児期OR:1.37、青少年期OR:1.30、成人期OR:1.29 【不安症および/またはうつ病】  小児期OR:1.39、青少年期OR:1.25、成人期OR:1.21・医療コストは、一般的に治療変更の回数が増えるほど高額であった。・治療変更を3回以上行った場合の患者1人当たりの年間超過コストは以下のとおりであった。 【不安症】  小児期:2,234ドル、青少年期:6,557ドル、成人期:3,891ドル 【うつ病】  小児期:4,595ドル、青少年期:3,966ドル、成人期:4,997ドル 【不安症および/またはうつ病】  小児期:2,733ドル、青少年期:5,082ドル、成人期:3,483ドル

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KMT2A-r ALL乳児、化学療法+ブリナツモマブでDFS改善/NEJM

 新規に診断されたKMT2A再構成陽性急性リンパ芽球性白血病(KMT2A-r ALL)の乳児において、Interfant-06試験の化学療法へのブリナツモマブ追加投与は、Interfant-06試験のヒストリカルコントロールと比較し安全で有効性も高いことが確認された。オランダ・Princess Maxima Center for Pediatric OncologyのInge M. van der Sluis氏らが、多施設共同前向き単群第II相試験の結果を報告した。乳児のKMT2A-r ALLは、3年無イベント生存率が40%未満の進行性疾患で、多くが治療中に再発する。その再発率は、診断後1年以内で3分の2、2年以内では90%である。化学療法が強化されたにもかかわらず、この20数年、アウトカムは改善されていなかった。NEJM誌2023年4月27日号掲載の報告。1歳未満児を対象に、導入療法後ブリナツモマブを4週間投与 研究グループは、2018年7月~2021年7月に9ヵ国12施設にて、新たにKMT2A-r ALLと診断された1歳未満の乳児30例を登録し、Interfant-06試験で用いた導入療法を1ヵ月行った後、1コースのブリナツモマブ(体表面積1m2当たり15μg/日、4週間持続注入)を追加し、その後、Interfant-06プロトコールに従ってプロトコールIB(シクロホスファミド、シタラビン、メルカプトプリン)、MARMA(高用量シタラビン、高用量メトトレキサート、メルカプトプリン、アスパラギナーゼ)、OCTADAD(ビンクリスチン、デキサメタゾン、アスパラギナーゼ、ダウノルビシン、thioguanine、シタラビン、シクロホスファミド)、および維持療法(メルカプトプリン、メトトレキサート)を連続して行った。 主要評価項目は、臨床的に意義のある毒性(ブリナツモマブに起因する可能性のある、または確実に起因する毒性、およびブリナツモマブ投与中止または死亡に至った毒性と定義)、副次評価項目は微小残存病変(MRD)反応を含む抗白血病活性などであった。有害事象について評価し、有害事象のデータはブリナツモマブ注入開始から次のプロトコールIBの開始まで収集した。アウトカムに関するデータは、Interfant-06試験のヒストリカルコントロールと比較した。ブリナツモマブ投与終了時93%がMRD陰性または低値、2年全生存率は93.3% 追跡調査期間中央値は26.3ヵ月(範囲:3.9~48.2)で、30例全例がブリナツモマブ4週間投与を完了した。 主要評価項目の毒性イベントは発現しなかった。重篤な有害事象は9例に10件報告された(発熱4件、感染症4件、高血圧1件、嘔吐1件)。毒性プロファイルは、より年齢の高い患者で報告されたものと類似していた。 ブリナツモマブ投与終了時、30例中28例(93%)がMRD陰性(16例)またはMRD低値(<5×10-4、正常細胞1万個当たり白血病細胞5個未満)であった。化学療法を継続した全例が、その後の治療期間中にMRD陰性となった。 2年無病生存率は81.6%(95%信頼区間[CI]:60.8~92.0)、2年全生存率は93.3%(95%CI:75.9~98.3)であった。Interfant-06試験のヒストリカルコントロール(本試験の適格基準を満たし、導入療法終了時のMRDに関するデータが得られた214例)における2年無病生存率および2年全生存率は、49.4%(95%CI:42.5~56.0)および65.8%(95%CI:58.9~71.8)であった。

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査読者が教える 臨床研究のロジック‐臨床センスを生かした統計解析と論文作成

カンファレンスの設定で学ぶ論文作成法大好評、森本 剛先生の「査読者が教えるシリーズ」第3弾。「ピエール先生と弟子(臨床医)のカンファレンス」という設定で、師弟のやりとりを通じて研究の論文化方法を学びます。論文の流れに沿って適宜掲載しているコラムでは、単なる用語解説にとどまらず、著者森本先生の実体験を基に適用できるケースや注意点などを紹介しています。SNSは一切しない森本先生の言葉が読めるのは本書のみ。初めての論文を書いてみよう!論文を書いたことがあるが、書き方のコツがつかめていない!論文を書いてもなかなか採用されない!論文作成の指導をすることになってしまった!という読者にはとくにオススメです。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    査読者が教える 臨床研究のロジック‐臨床センスを生かした統計解析と論文作成定価3,850円(税込)判型菊判、並製頁数208頁(写真・図・表:約100点)発行2023年4月著者森本 剛(兵庫医科大学)

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喘息診断で注目、タイプ2炎症バイオマーカーの手引き発刊/日本呼吸器学会

 タイプ2炎症は、主に2型ヘルパーT細胞(Th2細胞)や2型自然リンパ球(ILC2)が産生するIL-4、IL-5、IL-13などの2型サイトカインが作用する炎症である。気道・肺疾患と密接な関係にあり、診断や治療に直結する。とくに、生物学的製剤の治療選択や効果予測に重要な役割を果たすことから、近年注目を集めている。そのような背景から、「タイプ2炎症バイオマーカーの手引き」が2023年4月3日に発刊された1)。第63回日本呼吸器学会学術講演会において、本書の編集委員長を務めた松永 和人氏(山口大学大学院医学系研究科呼吸器・感染症内科学講座 教授)が「タイプ2炎症バイオマーカーが切り拓く未来」と題し、主に「喘息の診断と管理効率の向上」「疾患修飾による喘息寛解の展望」について、解説した。タイプ2気道炎症は喘息の診断、管理に有用 喘息の補助診断には、血中好酸球数、呼気NO濃度(FeNO)、IgEが有用である。そこで「タイプ2炎症バイオマーカーの手引き」では、血中好酸球数とFeNOについて、喘息の補助診断に関するカットオフ値が設定された1)。 血中好酸球数については、タイプ2炎症の有無を鑑別するカットオフ値が220cells/μLであったという報告2)、一般住民における75パーセンタイル値が210cells/μLであり、210cells/μL以上では喘息を有する割合が高かったという報告3)などがある。以上などから、喘息を疑う症状のある患者における、喘息の補助診断のカットオフ値は220cells/μL(喘息診断を支持)に設定された1)。詳細は、手引きを参照されたい。 FeNOについては、タイプ2炎症の有無を鑑別するカットオフ値が20ppbであったという報告2)、本邦で喘息患者と非喘息患者を鑑別する際のカットオフ値が22ppb(感度91%、特異度84%)であったという報告4)などがある。ただし、FeNO値22ppbを適用すると非喘息患者の約15%もこの範囲に当てはまってしまう。そこで、FeNO値37ppbを適用すると特異度は99%となる4)。以上などから、吸入ステロイド薬(ICS)未使用の喘息を疑う症状のある患者における、喘息の補助診断のカットオフ値は22ppb(喘息の可能性が高い)、35ppb(喘息診断の目安)に設定された1)。詳細は、手引きを参照されたい。 なお、血中好酸球数、FeNOを補助診断に用いる場合、いずれも最終的な喘息の診断は、治療による反応性、治療効果の再現性などの臨床経過や症状・呼吸機能の変動を含め総合的に判断する。 また、FeNOと血中好酸球数は喘息管理においても有用である。そこで「タイプ2炎症バイオマーカーの手引き」では、喘息管理における解釈に関するカットオフ値も設定された1)。 ICSによる治療前後のFeNOの変化と気流制限、気道過敏性には相関があり、治療効果予測への有用性が指摘されている5)。ICS/長時間作用性β2刺激薬(LABA)による治療中はFeNOが低下し、治療を中止するとFeNOが上昇することが報告されているため、FeNOによる炎症モニタリングは、アドヒアランスやステロイド抵抗性の評価にも有用とされる6)。また、現在の治療ステップにかかわらず、増悪歴やリスク因子(症状、呼吸機能など)に加えて血中好酸球数とFeNOが高値の患者では将来の増悪リスクが高いことが近年報告されている7)。 以上から、喘息管理におけるFeNOのカットオフ値は20ppb、35ppbに設定され、血中好酸球数のカットオフ値は150cells/μL、300cells/μLに設定された。症状がなく、これらに基づくタイプ2炎症が低レベルであれば、抗炎症治療は適切と考えられ、抗炎症薬の減量が考慮可能である。一方、高レベルであれば症状がなくとも、服薬アドヒアランス・吸入手技の不良や、抗炎症薬の減量で症状が悪化する可能性がある。また、現在の治療でも症状が続いており炎症が高レベルであれば、増悪や呼吸機能低下のリスクが高いため、抗炎症治療の強化が考慮される1)。詳細は、手引きを参照されたい。タイプ2炎症への早期介入で疾患修飾・喘息寛解の達成へ タイプ2炎症と気道機能障害は喘息の治療可能な臨床特性(Treatable Traits)であることが、近年提唱されている8)。とくに、タイプ2炎症型の重症喘息では、タイプ2炎症が強いほど喘息が重症化するという知見も得られている。重症喘息はICS抵抗性であることが多いことから、さまざまな生物学的製剤が開発され、使用可能となっている。 同じく複数の生物学的製剤の適応がある関節リウマチの治療戦略では、Bio-free-remission(生物学的製剤での早期介入によりdeep remission[臨床的寛解、機能的寛解、免疫学的寛解のすべて]を達成し、生物学的製剤なし、もしくは投与間隔を長くする)が目指されており、エビデンスも集積されつつある。しかし、重症喘息では生物学的製剤の中止に関する臨床研究のエビデンスが乏しいのが現状である。したがって、松永氏らの研究グループは、まず生物学的製剤による「疾患活動性の抑制」を達成し、「deep remission」を達成した患者ではBio-free-remissionを目指せる可能性を提唱している9)。 松永氏らの研究グループは1年間の生物学的製剤の使用により、喘息の臨床的寛解が69%、deep remissionが32%で達成できたこと、deep remissionが達成された患者の特徴は、早期かつ呼吸機能が保たれている段階での生物学的製剤の使用であったことを2023年4月に報告している10)。そのため、松永氏は「バイオマーカーを活用しながら、呼吸機能が保たれている患者に対して早期に生物学的製剤を導入し、疾患修飾をかけてほしい」と強調した。タイプ2炎症バイオマーカーの手引きはバイオマーカーと疾患を網羅 「タイプ2炎症バイオマーカーの手引き」は、タイプ2炎症のバイオマーカーとそれに関連する疾患を網羅した1冊となっている。松永氏は「さまざまな気道・肺疾患の診断や治療方針の決定に直結するため、タイプ2炎症が注目されている。本書は、実臨床の具体的な状況において簡便に活用できる臨床指針を提供することで、タイプ2炎症評価の適正な普及につなげ、気道・肺疾患のさらなる管理効率の向上を目指して作成したため、ぜひ活用いただきたい」とまとめた。タイプ2炎症バイオマーカーの手引き編集:タイプ2炎症バイオマーカーの手引き作成委員会/日本呼吸器学会肺生理専門委員会定価:3,190円(税込)発行日:2023年4月20日A4変型判・120頁■参考文献1)タイプ2炎症バイオマーカーの手引き作成委員会/日本呼吸器学会肺生理専門委員会編集. タイプ2炎症バイオマーカーの手引き. 南江堂;20232)McGrath KW, et al. Am J Respir Crit Care Med. 2012;185:612-619.3)Hartl S, et al. Eur Respir J 2020;55:1901874.4)Matsunaga K, et al. Allergol Int. 2011;60:331-337.5)Ichinose M, et al. Eur Respir J. 2000;15:248-253.6)Bardsley G, et al. Respir Res. 2018;19:133.7)Couillard S, et al. Thorax. 2022;77:199-202.8)Shaw DE, et al. Lancet Respir Med. 2021;9:786-794.9)Hamada K, et al. J Asthma Allergy. 2021;14:1463-1471.10)Oishi K, et al. J Clin Med. 2023;12:2900.

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コロナワクチン接種スケジュールを簡略化、初回接種に2価を承認/FDA

 米国食品医薬品局(FDA)は4月18日付のリリースにて、モデルナおよびファイザーの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)2価mRNAワクチンの緊急使用許可(EUA)を修正し、より簡略化した接種スケジュールを発表した。これにより、ワクチン未接種者や生後6ヵ月以上の小児に対し、オミクロン株BA.4/BA.5対応2価ワクチンの初回接種の使用許可などが決定された。また、今回の修正に伴い、モデルナおよびファイザーの従来型の1価ワクチンは、米国での使用許可が取り消された。 発表の主な内容は以下のとおり。・1価ワクチンを接種済みで、まだ2価ワクチンを接種したことがない人のほとんどは、2価ワクチンを1回追加接種することができる。・すでに2価ワクチンを接種した人のほとんどが、次の接種を受ける資格がなくなる。今後の接種については、FDAが6月に開催する諮問会議にて2023年秋以降の接種方針を決定する予定。・2価ワクチンを1回接種した65歳以上の人は、最初の2価ワクチン接種から少なくとも4ヵ月後に1回の追加接種を受けることができる。・2価ワクチンを接種済みの特定の免疫不全者のほとんどは、2価ワクチンを接種してから少なくとも2ヵ月後に、2価ワクチンを1回追加接種できる。医療者の判断で、さらに追加接種することも可能。ただし、生後6ヵ月~4歳までの免疫不全者の場合、追加接種の適応は以前に接種したワクチンの種類によって異なる。・現在までワクチン未接種の人は、従来型の1価ワクチンを複数回接種するのではなく、2価ワクチンを1回接種することができる。・ワクチン未接種の生後6ヵ月~5歳の小児は、モデルナの2価ワクチン(生後6ヵ月~5歳用)を2回接種するか、ファイザーの2価ワクチン(生後6ヵ月~4歳用)を3回接種できる。5歳の小児は、モデルナの2価ワクチンを2回接種するか、ファイザーの2価ワクチンを1回接種できる。・1価ワクチンを1回、2回、または3回接種した生後6ヵ月~5歳の小児は、2価ワクチンを接種できるが、接種する回数はワクチンの種類や接種歴により異なる。

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カビっぽい教室だと生徒の肺機能が悪くなる【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第233回

カビっぽい教室だと生徒の肺機能が悪くなるUnsplashより使用小児喘息の多くは、ハウスダストなどのアレルギーが関連しており、衛生仮説における議論の余地はあるものの、抗原に曝露され続けるよりも、喘息の悪化を回避するほうが重要かもしれません。Vesper SJ, et al.HEPA filtration intervention in classrooms may improve some students' asthma.J Asthma. 2023 Mar;60(3):479-486.これは、喘息を持つ生徒がいる教室において、環境相対カビ指数(Environmental Relative Moldiness Index:ERMI)を用いて定量化したカビレベルに対するHEPAフィルターによるろ過の介入の効果と、生徒の喘息がどのくらい改善するかを見た稀有な研究です。150例の喘息小児を対象に、教室と家庭内から、学年の始めに介入前サンプルとしてダストの捕集を行いました。HEPAフィルターあるいは偽フィルターの介入を行い、その後のダストの捕集を行いました。さらに、介入前と介入終了時に、スパイロメトリー検査によって各生徒の肺機能を評価し、%1秒量を測定しました。結果、介入前の教室のカビレベルが自宅よりも高いグループの生徒94例については、%1秒量の結果が教室のカビレベルと有意に逆相関していました(p<0.05)。HEPAフィルターを用いた介入によって、カビの量が減少し、その後%1秒量の平均値は偽フィルター介入と比べて4.22%高くなることも示されました。すなわち、喘息児童を見ていく上で、とくにカビレベルが高い教室では、積極的にHEPAフィルターによる除去を目指したほうが良いと考えられます。また、中長期的には喘息児童の肺機能を低下させることにつながるので、将来のためにもできるだけダストの除去を心掛けるほうが良いのでしょう。

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NHK「おかあさんといっしょ」(前編)【歌うと話しやすくなるの?(発声学習)】Part 1

今回のキーワード感覚性言語(側頭葉のウェルニケ野)運動性言語(前頭葉のブローカー野)ミラーリング前適応失語症「言語遺伝子」(FOXP2遺伝子)発達性言語障害声認識(声紋)NHKの「おかあさんといっしょ」は、誰もが知っている幼児向けの音楽番組ですよね。子供は、テレビの前で、出演しているお友達たちと一緒に歌って踊りながら楽しく言葉を覚えています。どうやら歌と言葉は密接に結びついているようです。今回は、このテレビ番組をヒントに、発語(発声学習)のメカニズムを解き明かし、その起源に迫ります。どうやって言葉が出てくるの?最初に出てくる言葉(初語)は、1歳前後で、だいたい「まんま」「ぱっぱ」などです。「まんま」のように「ご飯食べたい」や「ママ来て」というさまざまな意味を持つ初語は、文としても成り立つため、一語文とも呼ばれます。そして、2歳で「でんしゃ、きた」「パパ、かいしゃ」などの二語文になっていきます。そして、4歳までには日常的な話し言葉(三語文)になっていきます。それでは、どうやって言葉が出てくるのでしょうか? ここから、発語(発声学習)のメカニズムを2つに分けて考えてみましょう。(1)発音を聞き分ける1つ目のメカニズムは、母音と子音のそれぞれの発音(音素)を聞き分けることです。このプロセスは、ちょうど1歳の初語が出てくるまで行われます。逆に、1歳以降は新しい発音の自然な学習が難しくなります。たとえば、日本語にない英語のLとRの発音は、その学習を1歳以降にしても、自然な聞き分けが難しくなります1)。逆に言えば、1歳になるまでの赤ちゃんは、英語のLとRを潜在的に聞き分ける能力を持っていると言えます。つまり、音素を聞き分ける能力の臨界期は1歳までということになります。臨界期があるのは、1歳以降は、1つ1つの音素を聞き分けるのではなく、すでに学習した音素の連続したかたまり(言葉)を聞き取ることに脳がエネルギーを注ぐ必要があるからであると考えられます。脳科学的に言えば、これらは感覚性言語(側頭葉のウェルニケ野)の発達です。(2)発音をまねる2つ目のメカニズムは、発音(音素)をまねることです。その前段階が喃語(乳児が発する意味のない声)です。そして、1歳前後になると発音しやすい音素から試すようになります。それが「ま」や「ぱ」なのです。初語が「ママ」であるのは、ママがママと呼ばせようとしたからというよりも、赤ちゃんが発音しやすいからでしょう。実際に、ほとんど言語の幼児語としての親の呼び名は「ママ」「パパ」のように呼びやすいものです。日本語の古語でも、母(はは)は「ぱぱ」「ふぁふぁ」、父(ちち)は「てて」「てぃてぃ」です2)。呼びやすさの観点から、昔の日本人はママを「ぱぱ」と呼んでいたのは納得できます。また、「ママ」のように音素を2回繰り返すのは、その方が赤ちゃんにとってインパクトがあり、また「て・に・を・は」などの機能語と区別できて、学習しやすいからであると考えられます。だからこそ、「手」「目」ではなく「おてて」「おめめ」なのです。よって、幼児期は「ないないするよ」「バイバイね」などの幼児語を周りが好んで使う方が、言葉の学習は進むでしょう。さらには、赤ちゃんが言った言葉を親などが繰り返すこと(ミラーリング)で、赤ちゃんの発音にフィードバックが働きます。こうして、言葉の発音を学んでいくのです。まさに、「学ぶ」の語源の「まねぶ」に通じます。なお、ミラーリングの詳細については、関連記事1をご覧ください。1歳以降は、音素の連続したかたまり(言葉)を聞き取るだけでなく、それを発することに脳がエネルギーを注ぐようになります。脳科学的に言えば、これは運動性言語(前頭葉のブローカー野)の発達です。こうして、音素を次々と切り替え素早く並べて、言葉にすることができるようになっていくのです。歌と言葉の関係は?「おかあさんといっしょ」では、「みんな~おっどろ~!」とリズムで呼びかけたり、歌のリズムに合わせてしりとりや言葉遊びをしています。このように、とくに発声学習の観点では、歌と言葉は切っても切り離せないようです。それは、なぜでしょうか?この答えは、進化の歴史から、発語は、歌の発声が進化の土台(前適応)になっていると考えられているからです3)。前適応とは、ある機能が進化の過程で別の機能に転用されている場合、もとの機能を指す用語です。たとえば、揚力を生み出す鳥の羽の前適応は、もともと羽毛による保温であったと考えられています3)。また、コイがほかの魚と違って高い音を聞き取ることができるのは、浮くための浮袋が内耳とつながるよう進化したからでした。つまり、コイの聴覚の前適応は浮袋による浮上だったと考えられています。同じように、歌うこと(発声)がまず先にあって、その後に話すこと(発語)が生まれたと考えられます。実際に、脳血管障害による失語症では、話せなくなったけど歌えるという場合があります。これは、言語の領域が左脳で優位であるのに対して、歌唱の領域は右脳を含め広範囲だからです。つまり、脳の機能としても、話すこと(発語)は、歌うこと(発声)をベースとしていることがわかります。このことからも、失語症へのリハビリとして、歌うことが注目されています4)。また、このことから、外国語を話せるようになるためには、まずその外国語の歌を歌うと学習の効果が上がりそうです。なお、歌の起源の詳細については、関連記事2をご覧ください。次のページへ >>

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NHK「おかあさんといっしょ」(前編)【歌うと話しやすくなるの?(発声学習)】Part 2

いつ言葉は生まれたの?発語(発声学習)のメカニズムは、発音(音素)を聞き分ける、発音(音素)をまねることであることがわかりました。そして、進化の歴史上、発語は歌うことの後に生まれたことがわかりました。それでは、いつ言葉は生まれたのでしょうか?その答えは、約20万年前(厳密には20万年前から約15万年前までの間)と考えられています。この根拠は、主に3つあります5)。(1)現生人類が誕生した時期1つ目は、現生人類(ホモ・サピエンス)が誕生した時期です。遺跡の発掘調査から、現代人と解剖学的にほぼ同じ骨格のサピエンスの化石で最も古い年代は約20万年前であることが定説となっています。なお、モロッコで出土した初期サピエンスの化石の年代が約30万年前であることが2017年に判明しましたが、頭蓋骨の形状が現生サピエンスとはやや異なっていた点で、言葉を持たなかったと推測されています。(2)現生人類がアフリカ内で拡散し始めた時期2つ目は、現生人類(ホモ・サピエンス)がアフリカ内で拡散し始めた時期です。古代ゲノム学の研究から、サピエンスが誕生地の東アフリカからアフリカの各地に拡散したなかで最も古い時期が、サピエンスの誕生と同じ時期の20万年前であることがわかっています。また、アフリカ内での人種分岐は14万年前~13万年前であることがわかっています。言葉の出現が、高度な道具の発明を可能にして拡散を促進した可能性が示唆されます。逆に、拡散が始まった時点で、まだ言葉(言語併合)が生まれていなかったとしたら、そのまま言葉を持たない文化の部族や人種が存在してもいいことになります。しかし、そのような部族は現存していません。もちろん、そんな部族はすでに絶滅した可能性も考えられます。(3)現生人類に「言語遺伝子」があること3つ目は、現生人類(ホモ・サピエンス)に「言語遺伝子」(FOXP2遺伝子)があることです。実際の臨床では、この遺伝子の変異によって発達性言語障害を引き起こすことがわかっています。これは、全般的な知的能力に問題はないのに、言語能力に限って著しい困難があることです。なお、古代ゲノム学の研究によって、約4万年前までサピエンスと共存していたネアンデルタール人とデニソワ人(この2つの人類亜種の共通の祖先は約80万年前にサピエンスと分岐)も、このFOXP2遺伝子を持っていることが判明し、言葉を話していた可能性が考えられていました。しかし、転写因子の結合に影響を与える置換が違うことが指摘されたことで、この遺伝子の発現の調節がうまくいかず、やはり言葉を話せなかったと推定されるに至っています。彼らは、言葉が生まれなかったことで、高度な道具を発明することができず、約7.5万年前に主たる出アフリカによって急激に増えたサピエンスとの生存競争に負けた(多少の異種交配はありつつも)と考えられています。ちなみに、「言語遺伝子」(FOXP2)の突然変異は、約6千万年前からの哺乳類の進化の過程で3回、そのうち2回は人類が誕生してからであることがわかっています6)。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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NHK「おかあさんといっしょ」(前編)【歌うと話しやすくなるの?(発声学習)】Part 3

どうやって言葉は生まれたの?言葉が生まれた時期が、約20万年前(~約15万年前)であることがわかりました。それでは、どうやって言葉は生まれたのでしょうか? ここから、発語(発声学習)が生まれた要因を主に2つに分けて迫ってみましょう。なお、厳密に言えば、言葉は、発語、象徴、統語の主に3つの機能があります。今回は、発語にフォーカスしています。(1)うまい歌声を出す人類が歌うようになってから、歌の良し悪しによって結婚相手に選ばれるかが決まったのでしょう。つまり、より良い歌声を持つ人が選ばれ子孫を残すという淘汰圧がかかりました。こうして、喉・口・舌などの声道(発声器官)の構造が進化しました。さらに、この進化に連動して、それらを司る脳内の運動性言語(前頭葉のブローカー野)が進化しました。1つ目の発語が生まれた要因は、うまい歌声を出すことです。これが結果的に、小鳥のさえずりのように、多様な音素の発声をもたらしたのです。まず、舌や唇の位置取りによって子音が生まれたのでしょう。さらに、声道内の2つの違う音(周波数)の共鳴ができるようになって母音(共鳴音)が生まれたのでしょう。これらの子音と母音の組み合わせが、発語の起源なのです。また、人類は、共鳴音をより安定させるため、つまりより美しい歌声を出すために、進化の過程で声帯にある声帯膜と声帯嚢を消失させたと考えられています7)。これらは、チンパンジーなどの類人猿には存在する器官です。これらが存在することで、声帯の振動が不規則になり、彼らは逆にガラガラ声やかすれ声などのより「汚い」唸り声を大音量で出して、天敵や恋敵を威圧することができます。つまり、類人猿は安定しないけれど大音量の音源(声帯)で声を出すのに対して、人類は大音量ではないけれど安定した音源(声帯)で声を出すように進化したのでした。そもそも、人類は集団で天敵に対抗するようになったため、個人で大声や唸り声を出す必要がなくなっていたのでした。なお、発声学習が人間よりも進化している動物は、オウムやインコなどです。これらの喉には、鳴管という発声器官があり、人間の言葉(音素)をまねて自由自在に「オウム返し」をすることができます。この声まねは、天敵から身を守る擬態の一種と考えられています。(2)うまい歌声を聞き分ける歌う人類が増えるということは、当然ながらその歌を聞き取れる人類も増えます。ということは、歌の良し悪しがわかる人がより良い歌声を持つ人を結婚相手に選ぶでしょう。つまり、「良い声」を聞き分ける「良い耳」を持つ人が子孫を残すという淘汰圧がかかりました(共進化)。共進化とは、1つの機能(生物学的要因)が別の機能に影響を及ぼして共に進化していくことです。こうして、耳(聴覚器官)の構造が進化しました。この進化に連動して、それらを司る脳内の感覚性言語(側頭葉のウェルニケ野)が進化しました。2つ目の発語が生まれた要因は、うまい歌声を聞き分けることです。これが結果的に、多様な発音(音素)の識別をもたらしたのです。さらには、声の主を聞き分けることも進化したでしょう。これは、単に声の高さ(音高)によって男性か女性か子供かを聞き分けるだけでなく、母音の発音(共鳴音の音素)によって特定の誰かを聞き分けることです。なぜなら、集団生活をするなか、夜中や洞窟の中などの暗闇で頼りになったのは、顔や姿ではなく、単なる唸り声(音高)でもなく、かけ声(共鳴音の音素)だったと考えられるからです。これが、声認識(声紋)の起源です。たとえば、歌詞のないハミングよりも歌詞のある歌のほうが、声当ての正答率は明らかに高いでしょう。後編では、発声学習のメカニズムと起源を踏まえて、音感について掘り下げます。そして、より良い音楽教育、そしてより良い幼児教育を考えます。1)「言語の獲得・進化・変化」P86、P198:遊佐典昭、開拓社、20182)「昔の人は「はは(母)」をどう発音したか?」:2015年3)「こころと言葉」P30:長谷川寿一、東京大学出版会、20084)「歌うことは脳卒中後の失語症からの回復に役立つ可能性」:ケアネットHealthDay news、20235)「言語の獲得・進化・変化」P188、P189、P199:遊佐典昭、開拓社、20186)『「つながり」の進化生物学』P95:岡ノ谷一夫、朝日出版社、20137)「特集 鳴く動物 話すヒト」P34:日経サイエンス2023年1月号、日経サイエンス社<< 前のページへ■関連記事アンパンマン【その顔はおっぱい?】映画「RRR」【なんで歌やダンスがうまいとモテるの?(ラブソング・ラブダンス仮説)】Part 1

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