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ファセンラ、小児の難治性気管支喘息で製造販売承認(一部変更)取得/AZ

 アストラゼネカは、2024年3月26日付のプレスリリースで、ファセンラ皮下注30mg/10mg*シリンジ(一般名:ベンラリズマブ[遺伝子組換え])が、既存治療によっても喘息症状をコントロールできない、6歳以上の小児の難治の気管支喘息患者に対する治療薬として、日本で製造販売承認を取得したと発表した。*ファセンラ皮下注10mgシリンジの発売時期は未定 ファセンラは、ヒト化抗IL-5受容体αモノクローナル抗体製剤で、好酸球の表面に発現するインターロイキン-5受容体αに直接結合し、増強された抗体依存性細胞傷害活性によって好酸球を直接的に除去する。 既存治療によっても喘息症状をコントロールできない、小児の難治の気管支喘息患者に対する治療の新たな選択肢として、本剤は貢献できる薬剤になりうると期待される。

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出生率は世界的に低下、2100年までの予測/Lancet

 世界的に出生率が低下しており、2021年は、半数以上の国・地域で人口置換水準値を下回っていたこと、2000年以降の傾向として出生率の下がり方には大きな不均一性がみられ、最低出生率が観察された後にわずかでも回復した国はごく少数であり、人口置換水準値へと回復した国はなかったことが示された。さらには、世界中の出生数の分布が変化しており、とりわけ低所得国が占める割合が増加していたという。米国・ワシントン大学のSimon I. Hay氏らGBD 2021 Fertility and Forecasting Collaboratorsが解析結果を報告した。今回の結果を踏まえて著者らは、「出生率は、将来的に世界中で低下し続け、出生促進政策の実施が成功したとしても低いままとなるだろう。これらの変化は、高所得国における高齢化の進展と労働力の減少に加え、すでに最貧地域で出生率が増加していることで、広範囲にわたる経済的および社会的な影響をもたらすだろう」とまとめている。Lancet誌オンライン版2024年3月20日号掲載の報告。GBD 2021のデータを用いて解析 研究グループは、8,709国年の人口動態登録と標本登録、1,455件の調査と国勢調査、および150のその他の情報源から得られたデータを統合し、混合効果回帰モデルおよび時空間ガウス過程回帰モデルを用いて、10歳から54歳までの5歳ごとの年齢別出生率(ASFR)を算出し、ASFRより合計特殊出生率(TFR)を推計するとともに、ASFRと年齢別の女性人口を掛けて出生数を算出した。 保健指標評価研究所(IHME)の予測モデルを用いて2100年までの将来の出生率を予測するとともに、参照シナリオと政策に依存する重要な代替シナリオに基づいて、2100年までの出生率指標を予測した。出生率は1950年以降、すべての国・地域で低下 1950~2021年に、世界のTFRは4.84(95%不確定区間[UI]:4.63~5.06)から2.23(2.09~2.38)へ減少した。世界の年間出生数は、2016年に1億4,200万人(95%UI:137~147)とピークに達した後、2021年には1億2,900万人(121~138)まで減少した。 出生率は1950年以降すべての国・地域で低下し、2021年にTFRが2.1(人口置換水準出生率)を上回ったのは94の国・地域(46.1%)であった。この94の中には、サハラ以南のアフリカ46ヵ国中44ヵ国が含まれ、2021年の出生数の割合が最も多いsuper-region(29.2%、95%UI:28.7~29.6)であった。 1950~2021年に、推定出生率の最低値が人口置換水準を下回った47の国・地域では、その後1年以上出生率が上昇したが、人口置換水準以上に回復したのは3つの国・地域のみであった。TFR予想、2050年に1.83、2100年に1.59 将来にわたって出生率は世界的に低下を続け、参照シナリオでは世界全体のTFRは2050年に1.83(95%UI:1.59~2.08)、2100年に1.59(95%UI:1.25~1.96)と予測された。出生率が人口置換水準を上回る国・地域は、2050年には49(24.0%)、2100年にはわずか6(2.9%)と予測され、この6ヵ国・地域のうち3ヵ国・地域は2021年の世界銀行の定義する低所得グループに含まれ、すべてがサハラ以南のアフリカのGBD super-regionに位置していた。 出生数の割合は、サハラ以南のアフリカで2050年には41.3%(95%UI:39.6~43.1)、2100年には54.3%(47.1~59.5)と、世界の半数以上を占めると予測された。出生数の割合は、他の6つのsuper-regionのほとんどは2021年から2100年の間に減少すると予測され、たとえば、南アジアでは2021年24.8%(95%UI:23.7~25.8)から2050年16.7%(14.3~19.1)、2100年7.1%(4.4~10.1)に減少するが、北アフリカ、中東、および高所得のsuper-regionでは緩やかに増加すると予測された。 代替複合シナリオの予測では、教育と避妊に関するSDGs目標の達成と出生促進政策の実施により、世界のTFRが2050年には1.65(95%UI:1.40~1.92)、2100年には1.62(1.35~1.95)になることが示唆された。

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麻疹ワクチン不足、定期接種を最優先に/日医

 日本医師会常任理事の釜萢 敏氏が、2024年3月27日の定例記者会見で、現在の麻疹(はしか)の流行状況について報告した。 麻疹の届け出は、2019年は744例、2020年は10例、2021年は6例、2022年は6例、2023年は28例であったが、本年は3月17日までに20例あり、海外から持ち込まれる麻疹の感染者が着実に増えてきているという認識を示した。そのような中で、麻疹含有ワクチンの接種を希望する人が増え、それによって定期接種のMR(麻疹風疹混合)ワクチンが入手できないという懸念が寄せられているという。 そのような状況を踏まえて、定期接種(第1期、第2期)を最優先で行い、ワクチンは例年の接種実績に応じた数を適切に発注するように呼びかけるとともに、日本医師会として今後のワクチンの需要と供給を注視していくとまとめた。

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妊娠後期の抗てんかん薬、薬剤ごとの児への影響は?/NEJM

 出生前に抗てんかん薬に曝露された児は、曝露されていない児より自閉症スペクトラム障害の発生率が高いことが示された。ただし、適応症やその他の交絡因子で調整すると、トピラマートとラモトリギンへの曝露児では実質上その関連がみられなくなったのに対し、バルプロ酸への曝露児ではリスクが高いままであった。米国・ハーバード大学T.H. Chan公衆衛生大学院のSonia Hernandez-Diaz氏らが、米国の2つの医療利用データベースを用いた解析結果を報告した。母親の妊娠中のバルプロ酸使用は、児の神経発達障害のリスク上昇との関連が示されている。一方で母親のトピラマート使用に関連した児の自閉症スペクトラム障害のリスクに関しては、限定的だが相反するデータが示されていた。NEJM誌2024年3月21・28日号掲載の報告。曝露群vs.非曝露群で、自閉症スペクトラム障害のリスクを比較 研究グループは、米国のメディケイド受給者の医療利用に関するデータを含むMedicaid Analytic eXtract-Transformed Medicaid Statistical Information System Analytic Files(MAX-TAF)の2000~18年のデータ、および民間医療保険に関するデータを含むMerative MarketScan Commercial Claims and Encounters Database(MarketScan)の2003~20年のデータを用い、妊婦とその児を同定した。 解析対象は、推定最終月経日の3ヵ月以上前から出産1ヵ月後まで保険に加入していた12~55歳の女性(とその児)を全体集団とし、てんかんと診断されている女性に限定した集団についても解析を行った。 妊娠19週目から出産まで(妊娠後期)にトピラマートの投薬を1回以上受けた妊婦とその児を曝露群(トピラマート群)、最終月経の90日前から出産まで抗てんかん薬の投薬を受けていない妊婦とその児を非曝露群とした。また、トピラマート群の陽性対照としてバルプロ酸、陰性対照としてラモトリギンの投薬を1回以上受けた妊婦とその児を設定した。 主要アウトカムは、児の自閉症スペクトラム障害の臨床診断(自閉症スペクトラム障害のコードが2回以上の受診で記載されていること)で、曝露群の児と非曝露群の児について自閉症スペクトラム障害のリスクを比較した。トピラマート群6.2%、バルプロ酸群10.5%、ラモトリギン群4.1%、非曝露群4.2% 解析対象の全体集団は429万2,539例で、このうち2,469例がトピラマート群、1,392例がバルプロ酸群、8,464例がラモトリギン群、非曝露群が419万9,796例であった。また、てんかんの診断を有する女性の限定集団は2万8,952例で、トピラマート群1,030例、バルプロ酸群800例、ラモトリギン群4,205例、非曝露群8,815例であった。 全体集団において、非曝露群の児(419万9,796例)における8歳時の自閉症スペクトラム障害の推定累積発症率は1.9%(95%信頼区間[CI]:1.87~1.92)であった。 てんかんと診断されている母親の限定集団では、8歳時の自閉症スペクトラム障害の推定累積発症率は、非曝露群4.2%に対して、トピラマート群6.2%、バルプロ酸群10.5%、ラモトリギン群4.1%であった。ベースラインの交絡因子を補正した傾向スコア加重ハザード比は、トピラマート群0.96(95%CI:0.56~1.65)、バルプロ酸群2.67(1.69~4.20)、ラモトリギン群1.00(0.69~1.46)であった。

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シナジス、RSウイルス発症抑制で製造販売承認(一部変更)取得/AZ

 アストラゼネカは、2024年3月26日付のプレスリリースで、抗RSウイルスヒト化モノクローナル抗体製剤「シナジス」(一般名:パリビズマブ[遺伝子組換え])について、RSウイルス感染症の重症化リスクの高い、肺低形成、気道狭窄、先天性食道閉鎖症、先天代謝異常症、神経筋疾患を有する乳幼児を新たに投与対象とする製造販売承認事項一部変更承認を取得したと発表した。 RSウイルスは、乳幼児の気管支炎や肺炎を含む、下気道感染の原因となる一般的な病原体であり、2歳までにほとんどの乳幼児が感染するといわれており、早産児や生まれつき肺や心臓などに疾患を抱える乳幼児に感染すると重症化しやすいとされている。シナジスは、これらの重症化リスクを有する乳幼児に対し発症抑制の適応としてすでに承認されている。 今回の承認は、森 雅亮氏(聖マリアンナ医科大学 リウマチ・膠原病・アレルギー内科/東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 生涯免疫難病学講座 教授)が実施した医師主導治験の結果に基づく。シナジスの投与対象としてすでに承認されている疾患以外にも、その病態からRSウイルス感染症に対し慢性肺疾患と同等の重症化リスクが存在する疾患の存在が指摘されていた。そこで、日本周産期・新生児医学会が中心となり、関連学会である日本先天代謝異常学会、日本小児神経学会、日本小児呼吸器学会および日本小児外科学会から要望を集めた結果、換気能力低下および/または喀痰排出困難によりRSウイルス感染症が重症化するリスクの高い肺低形成、気道狭窄、先天性食道閉鎖症、先天代謝異常症または神経筋疾患を伴う乳幼児への追加適応が望まれていることがわかった。これらの疾患は国内推定患者数が少なく大規模臨床研究が困難であるため、医師主導治験が実施された。医師主導治験では、今回承認された疾患群における有効性、安全性、および薬物動態を検討し、いずれの疾患においてもRSウイルス感染による入院は認められなかった。 本治験を率いた森氏は、「今回の承認の基となった治験は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構が、革新的な医薬品・医療機器の創出を目的とした臨床研究や治験のさらなる活性化を目的とした研究を推進する“臨床研究・治験推進研究事業”に採択されている。これまで薬事承認のなかった重症化リスクの高い肺低形成、気道狭窄、先天性食道閉鎖症、先天代謝異常症、神経筋疾患を有する患者に対して、ようやく臨床の場でシナジスを広く使用できることをうれしく思う」と述べている。 松尾 恭司氏(アストラゼネカ 執行役員ワクチン・免疫療法事業本部長)は、「シナジスは、今まで日本においてRSウイルス感染症による重篤な下気道疾患の発症抑制に対する唯一の抗体薬として、多くの早産児や生まれつき肺や心臓などに疾患を抱える乳幼児の医療に貢献してきた。今回の承認により、これまでシナジスを投与できなかったハイリスクの乳幼児とそのご家族に対しても貢献できることを大変うれしく思う」としている。

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第205回 アドレナリンを「打てない、打たない」医者たちを減らすには(後編) 「ここで使わなきゃいけない」というタイミングで適切に使えていないケースがある

インタビュー: 海老澤 元宏氏(国立病院機構相模原病院 臨床研究センター長)昨年11月8日掲載の、本連載「第186回 エピペンを打てない、打たない医師たち……愛西市コロナワクチン投与事故で感じた、地域の“かかりつけ医”たちの医学知識、診療レベルに対する不安」は、2023年に公開されたケアネットのコンテンツの中で最も読まれた記事でした。同記事が読まれた理由の一つには、この事故を他人事とは思えなかった医師が少なからずいたためと考えられます。そこで、前回に引き続き、この記事に関連して行った、日本アレルギー学会理事長である海老澤 元宏氏(国立病院機構相模原病院 臨床研究センター長)へのインタビューを掲載します。愛西市コロナワクチン投与事故の背景には何があったと考えられるのか、「エピペンを打てない、打たない医師たち」はなぜ存在するのか、「アナフィラキシーガイドライン2022」のポイントなどについて、海老澤氏にお聞きしました。(聞き手:萬田 桃)造影剤、抗がん剤、抗生物質製剤などなんでも起こり得る(前回からの続き)――「薬剤の場合にこうした呼吸器症状、循環器症状単独のアナフィラキシーが起こりやすく、かつ症状が進行するスピードも早い」とのことですが、どういった薬剤で起こりやすいですか。海老澤造影剤、抗がん剤、抗生物質製剤などなんでも起こり得ます。とくにIV (静脈注射)のケースでよく起こり得るので、呼吸器単独でも起こり得るという知識がないとアナフィラキシーを見逃し、アドレナリンの筋注の遅れにつながります。ちなみに、2015年10月1日〜17年9月30日の2年間に、医療事故調査・支援センターに報告された院内調査結果報告書476件のうち、死因をアナフィラキシーと確定または推定したのは12例で、誘引はすべて注射剤でした。造影剤4例、抗生物質製剤4例、筋弛緩剤2例などとなっていました。――病院でも死亡例があるのですね。海老澤IV(静脈注射)で起きたときは症状の進行がとても速く、時間的な余裕があまりないケースが多いです。また、心臓カテーテルで造影剤を投与している場合は動脈なので、もっと速い。薬剤ではないですが、ハチに刺されたときのアナフィラキシーも比較的進行が速いです。こうしたケースで致死的なアナフィラキシーが起こりやすいのです。2001~20年の厚労省の人口動態統計では、アナフィラキシーショックの死亡例は1,161例で、一番多かったのは医薬品で452例、次いでハチによる刺傷、いわゆるハチ毒で371例、3番目が食品で49例でした。そして、そもそもアナフィラキシーを見逃すことは致命的ですが、対応しても手遅れとなってしまうケースもあります。病院の救急部門などで治療する医師の中には、「ルートを取ってまず抗ヒスタミン薬やステロイドで様子を見よう」という方がまだいるようです。しかし、その過程で「ここでアドレナリンを使わなきゃいけない」というタイミングで適切に使えていないケースがあるのです。先程の死亡例の中にもそうしたケースがあります。点滴静注した後の経過観察が重要――いつでもどこでも起き得るということですね。医療機関として準備しておくことは。海老澤大規模な医療機関ではどこでもそうなっていると思いますが、たとえば当院では、アドレナリン注シリンジは病棟、外来、検査室、処置室などすべてに置いてあります。ただ、アドレナリンだけで軽快しないケースもあるので、その後の体制についても整えておく必要があります。加えて重要なのは、薬剤を点滴静注した後の経過観察です。抗がん剤、抗生物質、輸血などは処置後の10分、20分、30分という経過観察が重要なので、そこは怠らないようにしないといけません。ただ、処方薬の場合、自宅などで服用してアナフィラキシーが起こることになります。たとえば、NSAIDs過敏症の方がNSAIDを間違って服用するとアナフィラキシーが起こり、不幸な転帰となる場合があります。そうした点は、事前の患者さんや家族からのヒアリングに加えて、歯科も含めて医療機関間で患者さんの医療情報を共有することが今後の課題だと言えます。抗ヒスタミン薬とステロイド薬で何とか対応できると考えている医師も一定数いる――先ほど、「僕らの世代から上の医師だと、“心肺蘇生に使う薬”というイメージを抱いている方がまだまだ多い」と話されましたが、アナフィラキシーの場合、「最初からアドレナリン」が定着しているわけでもないのですね。海老澤アナフィラキシーという診断を下したらアドレナリン使っていくべきですが、たとえば皮膚粘膜の症状だけが最初に出てきたりすると、抗ヒスタミン薬をまず使って様子を見る、ということは私たちも時々やることです。もちろん、アドレナリンをきちんと用意したうえでのことですが。一方で、抗ヒスタミン薬とステロイド薬でアナフィラキシーを何とか対応できると考えている医師も、一定数いることは事実です。ルートを確保して、抗ヒスタミン薬とステロイド薬を投与して、なんとか治まったという経験があったりすると、すぐにアドレナリン打とうとは考えないかもしれません。PMDAの事例などを見ると、アナフィラキシーを起こした後、死亡に至るというのは数%程度です。そういった数字からも「すぐにアドレナリン」とならないのかもしれません。アナフィラキシーやアレルギーの診療に慣れている医師だと、「これはアドレナリンを打ったほうが患者さんは楽になるな」と判断して打っています。すごくきつい腹痛とか、皮膚症状が出て呼吸も苦しくなってきている時に打つと、すっと落ち着いていきますから。打てない、打たない医者たちを減らしていくには――打つタイミングで注意すべき点は。海老澤血圧が下がり始める前の段階で使わないと、1回で効果が出ないことがよくあります。「血圧がまだ下がってないからまだ打たない」と考える人もいますが、本来ならば血圧が下がる前にアドレナリンを使うべきだと思います。――「打ち切れない」ということでは、食物アレルギーの患者さんが所持している「エピペン」についても同様のことが指摘されていますね。海老澤文科省の2022年度「アレルギー疾患に関する調査」1)によれば、学校で子供がアナフィラキシーを発症した場合、学校職員がエピペン打ったというのは28.5%に留まっていました。一番多かったのは救急救命士で31.9%、自己注射は23.7%でした。やはり、打つのをためらうという状況は依然としてあるので、そのあたりの啓発、トレーニングはこれからも重要だと考えます。――教師など学校職員もそうですが、今回の事件で浮き彫りになった、アドレナリンを「打てない」「打たない」医師たちを減らしていくにはどうしたらいいでしょうか。海老澤エピペン注射液を患者に処方するには登録が必要なのですが、今回、コロナワクチンの接種を契機にその登録数が増えたと聞いています。登録医はeラーニングなどで事前にその効能・効果や打ち方などを学ぶわけですが、そうした医師が増えてくれば、自らもアドレナリン筋注を躊躇しなくなっていくのではないでしょうか。立位ではなく仰臥位にして、急に立ち上がったり座ったりする動作を行わない――最後に、2022年に改訂した「アナフィラキシーガイドライン」のポイントについて、改めてお話しいただけますか。海老澤診断基準の2番目で、「典型的な皮膚症状を伴わなくてもいきなり単独で血圧が下がる」、「単独で呼吸器系の症状が出る」といったことが起こると明文化した点です。食物によるアナフィラキシーは一番頻度が高いのですが、9割方、皮膚や粘膜に症状が出ます。多くの医師はそういったイメージを持っていると思いますが、ワクチンを含めて、薬物を注射などで投与する場合、循環器系や呼吸器系の症状がいきなり現れることがあるので注意が必要です。――初期対応における注意点はありますか。海老澤ガイドラインにも記載してあるのですが、診療経験のない医師や、学校職員など一般の人がアナフィラキシーの患者に対応する際に注意していただきたいポイントの一つは「患者さんの体位」です。アナフィラキシー発症時には体位変換をきっかけに急変する可能性があります。明らかな血圧低下が認められない状態でも、原則として立位ではなく仰臥位にして、急に立ち上がったり座ったりする動作を行わないことが重要です。2012年に東京・調布市の小学校で女子児童が給食に含まれていた食物のアレルギーによるアナフィラキシーで死亡するという事故がありました。このときの容態急変のきっかけは、トイレに行きたいと言った児童を養護教諭がおぶってトイレに連れて行ったことでした。トイレで心肺停止に陥り、その状況でエピペンもAEDも使用されましたが奏効しませんでした2)。アナフィラキシーを起こして血圧が下がっている時に、急激に患者を立位や座位にすると、心室内や大動脈に十分に血液が充満していない”空”の状態に陥ります。こうした状態でアドレナリンを投与しても、心臓は空打ちとなり、心拍出量の低下や心室細動など不整脈の誘発をもたらし、最悪、いきなり心停止ということも起きます。――そもそも動かしてはいけないわけですね。海老澤はい。ですから、仰臥位で安静にしていることが非常に重要です。とにかく医療機関に運び込めば、ほとんどと言っていいほど助けられますから。アナフィラキシーは症状がどんどん進んで状態が悪化していきます。そうした進行をまず現場で少しでも遅らせることができるのが、アドレナリン筋注なのです。(2024年1月23日収録)参考1)令和4年度アレルギー疾患に関する調査報告書/日本学校保健会2)調布市立学校児童死亡事故検証結果報告書概要版/文部科学省

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乳児HIV感染予防、母親のウイルス量に基づくラミブジン単剤投与が有望/Lancet

 小児の新規HIV感染の半数以上が母乳を介したものだという。ザンビア・University Teaching HospitalのChipepo Kankasa氏らは「PROMISE-EPI試験」において、ポイントオブケア検査での母親のウイルス量に基づいて、乳児へのラミブジンシロップ投与を開始する予防的介入が、小児のHIV感染の根絶に寄与する可能性があることを示した。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2024年3月11日号で報告された。ザンビアとブルキナファソの無作為化対照比較第III相試験 研究グループは、母親への抗レトロウイルス療法(ART)に加えて、母親のウイルス量のポイントオブケア検査に基づく乳児へのラミブジンによる出生後予防治療の期間を延長することで、出生後の感染の抑制が可能との仮説を立て、これを検証する目的で、ザンビアとブルキナファソの8施設で非盲検無作為化対照比較第III相試験を行った(英国保健省[DHSC]によるEDCTP2プログラムの助成を受けた)。 HIVに感染している母親と、Expanded Programme of Immunisation(EPI-2)に参加しており2回目の受診時にHIV未感染であった母乳による育児を受けている乳児(生後6~8週)を、介入群または対照群に無作為に割り付けた。 介入群は、Xpert HIVウイルス量検査を用いて母親のウイルス量を測定し、即座に得られた結果に基づき、母親のウイルス量が1,000コピー/mL以上の乳児には12ヵ月間、または授乳中止後1ヵ月間、1日2回のラミブジンシロップの投与を開始した。 対照群は、出生後のHIV感染予防のための国のガイドラインに準拠して対応した。 主要アウトカムは、出生後12ヵ月の時点での乳児のHIV感染とし、6ヵ月および12ヵ月時にHIV DNAのポイントオブケア検査を行った。評価は修正ITT集団を対象に行った。介入群のHIV感染乳児は1例、有意差はなし 2019年12月12日~2021年9月30日に、3万4,054例の母親がHIV検査を受けた。このうち、HIVに感染している母親と感染していない乳児の組み合わせ1,506組を登録し、介入群に753組、対照群にも753組を割り付けた。 ベースラインの母親の年齢中央値は30.6歳(四分位範囲[IQR]:26.0~34.7)であった。1,504例の母親のうち1,480例(98.4%)がARTを受けており、1,466例の母親のうち169例(11.5%)はウイルス量が1,000コピー/mL以上だった。 追跡期間中にHIVに感染した乳児は、介入群が1例、対照群は6例であった。100人年当たりのHIV感染の発生率は、介入群が0.19(95%信頼区間[CI]:0.005~1.04)、対照群は1.16(0.43~2.53)であり、両群間に統計学的に有意な差を認めなかった(p=0.066)。重篤な有害事象、HIV非感染生存にも差はない 重篤な有害事象を発症した乳児の割合は、介入群が8.2%、対照群は7.0%で、両群間に有意な差はなかった(p=0.44)。また、12ヵ月時のHIV非感染生存割合は、介入群が99.4%(95%CI:98.4~99.8)、対照群は98.2%(96.8~99.1)で、有意差はみられなかった(p=0.071)。 一方、探索的解析では、乳児におけるHIV感染が高リスク(母親のウイルス量≧1,000コピー/mL、出生後に予防治療を受けていない状態)の累積期間は、100人年当たり対照群が6.38年であったのに対し、介入群は0.56年と有意に優れた(p<0.001)。 著者は、「これらの結果は、既存の方法の組み合わせによって、母乳を介した感染をほぼゼロにすることが可能であることを強く示唆する」と述べるとともに、「本試験により、受診時にウイルス量の結果が得られるポイントオブケア検査の重要性が示された。出生後の感染を実質的に防止することで、小児のHIV感染の根絶が手の届くところに来ている」としている。

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映画「バッド・ジーニアス」【学歴社会を引っくり返す⁉(カンニング教育革命)】Part 1

今回のキーワードICT(情報通信技術)カンニングビジネス教育の平等身分社会(アリストクラシー)学歴社会(メリトクラシー)機会の平等結果の平等真の民主社会(デモクラシー)皆さんは、試験でカンニングをするのはけしからんと思いますか? なぜでしょうか? ずるくて不公平だから? それでは、試験を課す学歴社会の方が実は不公平だとしたら、どうでしょうか? そして、もしも絶対にバレないカンニングができるとしたら? さらに、実はみんなすでにこっそりやっているとしたら???今回は、カンニングをテーマに、映画「バッド・ジーニアス」を取り上げます。この映画を通して、文化進化の視点から、生成AIをはじめとするICT(情報通信技術)の高度な進歩によって、もはやカンニングが取り締まれなくなったら、学歴社会はどうなるのかを予想します。そして、カンニングをしても意味がなくなるようなこれからの教育のあり方、名付けて「カンニング教育革命」を一緒に探ってみましょう。カンニングはどこまでハイテク化したの?主人公のリンはタイの女子高校生。けっして裕福ではない父子家庭で育ちながら、成績が抜群に優秀だったため、特待奨学生として名門校に入学します。そこで人当たりの良いグレースと友達になります。グレースは勉強が苦手であったため、リンが家庭教師を引き受けることになります。しかし、テストでは、グレースは苦戦してしまい、前の席に座っていたリンはつい消しゴムに答えを書いて教えてしまうのです。この一件から、カンニングの手助けを希望するクラスメートがどんどん増えていきます。やがてリンたちは、米国の大学入学統一試験でハイテクも駆使して、世界を股にかけた「カンニングプロジェクト」をもくろみます。カンニングとは、試験で不正に答えを知ることです。古くは、中国の科挙まで遡ります。当時は、答えとなる聖典がびっしりと下着に書かれていました。このような歴史的な背景から、現在の中国でも超小型カメラ内臓の眼鏡や腕時計、金属探知機にも反応しない超小型イヤホンまでもが出回り、カンニングが闇ビジネスと化しています。そして、たびたび摘発されています1)。まさに、スパイさながらです。韓国でも、2009年に米国の大学入学統一試験(SAT)で、問題用紙がタイで持ち出され、時差によって米国にいる韓国人の受験生たちにその正解を流出させる事件が発覚しました2)。これが、この映画のモチーフとなっているようです。スウェーデンでは、2016年にテレビ番組のレポーターが潜入取材としてカンニングビジネスの犯罪グループに接触し、渡された超小型イヤホンを使うことで、実際の大学入学試験でほぼ満点を取ったことがテレビで放映されました3)。しかし、振り込め詐欺と同じように、捕まえられたのは「受け子」(お金の受け取り役)だけで、犯罪グループの全容は突き止めることができませんでした。なお、直接的なカンニングではありませんが、米国では、2019年に一流大学の関係者を組織的に買収するという不正入学事件が起き、30数人の裕福な親が起訴されました4)。その1人には、ドラマ「デスパレートな妻たち」の主演女優もいて、話題となりました。日本でも、2011年に京大をはじめとする4つの大学の入試問題が、携帯電話のメール機能によってヤフー知恵袋に投稿され、試験中に解答された事件がありました。2022年には共通テストの問題が試験中にスマホで撮影され流出した事件がありました。このように、たびたびニュースになっていますが、ICTが高度に進歩してしまった現在、これらの事件は氷山の一角でしょう。なんでカンニングに加担するの?リンたちが、米国の大学入学統一試験の正答の情報を流出させようとするシーンは、まさにスパイ映画を見ているようでスリリングです。カンニングを望む心理はよくわかるのですが、一方で、なぜカンニングに加担してしまうのでしょうか?ここで、その心理を大きく3つ挙げてみましょう。そして、実際のカンニングビジネスの協力者の心理に迫ってみましょう。(1)友達ほしさリンは、最初、本当にグレースを助けたいという純粋な思いで、つい答えを教えてしまいました。しかし、リンの彼氏からも手助けをお願いされてしまい、断れなくなくなります。リンは、グレース以外に友達がいなくて、カンニングによってでも、グレースとの関係をつなぎ留めておきたかったのでした。1つ目は、友達ほしさです。やがて、他のクラスメートたちからもカンニングの手助けをお願いされるようになり、ちやほやされます。リンもまんざらではありません。これは、承認の心理です。(2)お金ほしさグレースの彼氏は、裕福であったことから、大金を提示して、カンニングをビジネスにすることをリンに持ちかけます。決して裕福ではないリンは、その儲け話に乗ってしまいます。そして、手に入れたお金で父親に高級なシャツをプレゼントするのです。2つ目は、お金ほしさです。とくにタイでは貧富の差が大きく、お金のある人がお金のない人を搾取するという格差の問題としても描かれています。実際のカンニングビジネスにおいても、協力者たちはバレるリスクに見合う相当の大金が手に入るでしょう。(3)役割ほしさリンは、学校でカンニングに加担したことがバレて、奨学金や留学のチャンスを取り消されます。父親から「まともに育てられないなら、借金する意味がない」「留学はあきらめろ。どこにも行かず、ここにいろ(大学には進学せず地元で就職しろ)」と言われて、泣き崩れます。しかし、その後に再びグレースたちから、今度は米国の大学入学統一試験のカンニングの協力を持ちかけられます。リンは、カンニングの新しいアイデアを思いつき、彼女の死んでいた目が再び輝きを取り戻していくのです。3つ目は、役割ほしさです。これまでずっとリンは勉強ができることが唯一の取柄で、勉強ができることが彼女のすべてになっていました。しかし、進学の道が断たれてその能力を生かせず、悶々としていました。そんななか、その能力を発揮するチャンスが巡ってきたのでした。これは、アイデンティティの心理です。実際のカンニングビジネスにおいても、確実に合格点を取る協力者がいるわけですが、よくよく考えると、タイのような発展途上国でなければ、そんなに勉強ができる人は、表社会でエリートになっていそうです。それなのに、犯罪に手を染めてしまうのは、実は勉強ができるからといって、必ずしも仕事ができるとは限らないということがわかります。米国の研究においても、IQ 135以上の「極めて優秀」とされる約1,500人を子供の時から60年にわたって調査した結果、大多数が「普通」と呼ばれる仕事に就き、期待外れの仕事をしていたとの結果が出ています5)。この原因として、脳の機能はトレードオフ(一得一失)の関係にあるため、認知能力(システム化脳)が高すぎると、その分、社会的コミュニケーション能力(共感脳)が低くなってしまうことが考えられます(ゼロサム説)。たとえば、驚異的な記憶能力を発揮する人(サヴァン症候群)の多くは、非定型発達(自閉スペクトラム症)であることがわかっています。つまり、世の中には勉強しかできない人たちが一定数いるわけです。お金ほしさに加えて、この勉強ができるという役割(アイデンティティ)がほしいために、カンニングビジネスに「優秀」な協力者がいるのです。彼らが、まさにこの映画のタイトルの「バッド・ジーニアス」と言えるでしょう。なお、システム化脳と共感脳におけるゼロサム説の詳細については、関連記事1の最後をご覧ください。次のページへ >>

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映画「バッド・ジーニアス」【学歴社会を引っくり返す⁉(カンニング教育革命)】Part 2

学歴社会はどうなっていくの?リンは、カンニングプロジェクトを進めるために、もう1人優秀な生徒、バンクを引き込みます。彼もまた、母子家庭で決して裕福ではなく、家業を継がなければならない状況に追い込まれていました。リンは、「私たちは生まれながらの負け犬」「こっちが騙さなきゃ、世間に騙されるわ」と言い放ちます。身勝手な理屈ですが、不遇な彼にとっては殺し文句だったのでした。リンの言う「生まれながらの負け犬」とは、生まれながらの貧富による格差社会で搾取される側を意味しています。どんなに勉強ができてもお金がないために進学できない状況で、彼女は学力と悪知恵(カンニングビジネス)によってそこから抜け出し、学歴社会で成り上がろうとしているわけです。ただし、先ほど触れたように今後にカンニングがもはや取り締まれなくなったら、その学歴社会はどうなっていくのでしょうか?ここから、文化進化の視点から、学歴社会(学校)の起源を掘り下げ、現在の問題点を浮き彫りにし、その未来を予測してみましょう。(1)身分社会と違って公平に?-起源約5千年前に、西アジアの都市で文字が発明され、家畜などの数の情報管理が可能になり、ますます都市化していきました。これが、読み書きの起源です。この詳細については、関連記事2をご覧ください。当時から、読み書きを次世代に教える場所が町に設けられました。これが、学校の起源です。そして、読み書きを学校で学んだ人が、そのままその能力を発揮する仕事(特権階級)に就きました。しかし、学校に行ける人は、そもそも一部の特権階級の子女に限られていました。時代は進み、約200年前の産業革命以降、読み書き(計算も加わり)が職業的により多くの人に必要とされるようになったため、学校がどんどん増えていき、学校に行ける人もどんどん増えていきました。日本でも、江戸時代に寺子屋がありましたが、明治維新から学校制度が始まりました。そして、どこまで進学したか、つまりどれだけ能力があるかによって社会的地位(階級)が変わるようになりました。とくに戦後の日本では、教育の平等の名のもと、学習指導要領、検定教科書、同年齢同学年(学級固定化)の徹底によって、教育の内容が高度に標準化されるようになりました。こうして、学力の地域差を少なくするという成果をあげることができました6)。同時に、それでも能力に違いが出る場合は、それぞれの努力に違いがあるからだと考えられるようになりました。このように本人の努力によって能力が高まるとされる点で、このやり方は、生まれながらの身分社会(アリストクラシー)と違って公平であるとして受け入れられるようになりました。これが、学歴社会(能力主義、メリトクラシー)の起源です。(2)結局新たな「身分社会」に?-現在の問題点先ほどの裏を返せば、学歴がない、つまり能力が低いのは本人の努力が足りずに頭を良くすることができなかったということになります。現在、この考え方が主流になっています。そして、能力の高い人たちが能力の低い人たちよりも、より多くの収入を得ることは当然とされています。そして、その収入格差はますます大きくなっています。それでも、能力の低い人たちは努力不足というコンプレックスを植え付けられ卑屈にさせられているため、目立って抵抗できません。できるとしたら、代わりに自分の子供の学歴を高くさせようと必死になることでしょう。とくに日本では、その努力が、学校だけでなく塾にも通うことになっています。塾に行かせられる経済力のある家庭環境かそうじゃないかという教育格差の議論は、また別にあります。しかし、行動遺伝学の研究によると、努力(性格)も頭の良さ(知能)も、もともとの生まれ持った資質(遺伝)が約50%程度影響していることがわかっています7)。そして、グラフ1のように、収入への遺伝の影響度は、入職時から上積みされていき40代には約60%近くに達することがわかっています7)。一方で、収入への家庭環境の影響度、つまり教育格差は逆に目減りしていき40代にはほぼ0%になることから、教育格差は最終的には問題ではないこともわかります。ちなみに、国際比較すると、日本における教育格差は凡庸な水準です8)。一番問題なのは、遺伝という「生まれ」によって社会に格差を生み出していることです。この点では、学歴社会も公平であるとは言えず、結局新たな「身分社会」をつくっていることになります。これが、現在の問題点です。そして、これは「遺伝格差」と言い換えることができます。なお、教育格差と遺伝格差の詳細については、関連記事3をご覧ください。つまり、試験は、かつては測った能力によって順当に社会的役割を割り当てる手段であったはずなのに、現在では逆に社会的地位を分け隔てるために不当に能力(遺伝)の違いを見いだす目的そのものになってしまったのです。これは、よくある「手段の目的化」です。簡単に言うと、能力があるから試験で選ばれるのではなく、試験で選ばれるから能力があるとみなされるようになったのです。文化進化の視点に立てば、この社会構造(環境)の変化によって、先ほど触れた「勉強しかできない人(遺伝子)」が現れるようになったのでしょう。この変化の期間は、産業革命から約200年間であり、遺伝子進化の歴史としてはかなり短いです。しかし、この環境の変化は劇的であることから、より適応的な遺伝子(より勉強ができる人)が急速に選択されていった(結婚相手に選ばれていった)と考えられます。これは、ここ100年で知能検査が改定されるたびに知能指数が相対的に上がり続けている現象(フリン効果)を説明することができます。ちなみに、知能検査についても、能力の違いによって知能指数に違いが出るのではなく、知能指数に意図的につくった違い(正規分布)によって能力に違いがあるとみなしています。なお、学歴への選り好みの心理の詳細については、関連記事4をご覧ください。(3)カンニングが革命に?-未来不公平かどうかは置いておいて、学歴社会は国力を高めるために必要であると考える人は多いです。国民の学力(認知能力)が高まれば高まるほど国の経済力がますます高まるという考え方です。実は、厳密には違います。確かに、現在まで日本のPISA(国際学習到達度調査)の成績はトップレベルを維持しており、GDP(国内総生産)もトップレベルを維持してます。しかし、GDPのトップである米国のPISAの成績は決してトップレベルではありません。GDPで2位の中国のPISAの成績(2018年)は、確かにトップレベルなのですが、北京などの大都市に絞り農村部を除いている点で、いかにも面子を重んじる中国ならではの結果です。また、1人あたりGDPとしてみると、米国は10位以内で良いのですが、なんと日本は世界ランキング30位台で、中国は50位圏外です。むしろ、米国、中国、日本に共通するのは、先進国の中で格差の度合い(ジニ係数)が大きいことです8)。このことから、かつての身分社会にしても現在の学歴社会にしても、結果的に搾取するシステムを先鋭化させて格差を大きくした方が、その国の経済力が高まることがわかります。たとえば、中国はコネ社会(身分社会)と学歴社会の要素が両方あります。米国も実は日本以上に学歴社会です。米国が「自由の国」であるというのは昔話であり、学歴という「身分」を得ることができなければ搾取される「自己責任の国」になっています。逆に、北欧のように格差の小さい社会を目指そうとしたら、経済力はそこまで高まらず、国際競争力は期待できないというジレンマはあります。このわけは、格差の大きい社会と格差の小さい社会をそれぞれゲーム理論の「主人と奴隷戦略」「しっぺ返し戦略」に当てはめて説明することができます(関連記事5)。つまり、学歴(認知能力)は先進国になるためにある程度必要ですが、学歴を高めれば高めるほど、その分仕事がよりできる(経済力がより高まる)ようになるわけではないです。とくに日本における高度な受験勉強が、その後の一般の仕事や日常生活に役立つことがほとんどないことは、受験勉強をした多くの人がすでに気付いていることでしょう。受験勉強がその後の人生に役立つと主張する人は、実は教育ビジネスに携わる人だけでしょう。学歴社会が公平であるということも経済力を高めるということも見せかけで、その実態は不公平(格差)を生み出す装置になり下がっていることがわかりました。そんな学歴社会をひっくり返すのが、なんとカンニングです。現在、生成AIの登場によって、今ある多くの認知能力を必要とする仕事は将来なくなっていくことが予測されています。それでは、残った仕事の取り合いのために、学歴社会がより熾烈になるでしょうか?むしろ、残った仕事は、学歴で求められるような認知能力を必要としません。仮にそれでもあえて学歴が求められたとしても、生成AIを利用した「カンニング眼鏡」が出回れば、受験生全員が単独犯でほぼ満点の答案を作成することができるようになります。すでに、生成AIを利用した学校の課題レポートの作成が急速に広まっています。もはやカンニングが取り締まれなくなる状況は、すぐそこまで来ています。もちろん、生成AIを使いこなす認知能力は必要ですが、認知能力そのものを高める必要はなくなります。これはちょうど、サバンナで猛獣と戦うために、原始の時代は身体能力を高める必要がありましたが、現代では身体能力そのものを高める必要はなく、銃と車を使いこなす能力があれば十分であるのと同じです。つまり、カンニングが学歴社会に革命を起こすと言えます。そうなれば、学歴に価値がそこまでなくなります。スポーツや楽器演奏が得意であるのと同じレベルになります。そして、学校は、それ自体に権威がなくなり、もはや役所や公園と同じようなただの社会の機能の1つにすぎなくなるでしょう。すると、最終的にはカンニングをする必要すらなくなります。これは、学歴社会、学校の歴史の1つの転換期と見ることができます。この時、真の教育のあり方が問われます。これは、「カンニング教育革命」と名付けることができます。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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映画「バッド・ジーニアス」【学歴社会を引っくり返す⁉(カンニング教育革命)】Part 3

じゃあなんで学ぶの?「カンニング教育革命」によって、学歴社会がひっくり返ったあとはどうなるでしょうか? それでも、私たちは勉強するでしょうか? 再び映画のワンシーンから、これからの真の学びのあり方を大きく3つ挙げてみましょう。(1)楽しむリンとバンクが早押しクイズ大会に参加して優勝するシーンがあります。彼らは、誇らしげで楽しそうです。1つ目は、楽しむことです。たとえば、たとえ車があっても足の速さはオリンピックなどで突出した身体能力として注目されるのと同じように、AIがあっても頭の良さはクイズ大会などで突出した認知能力として注目されます。もちろん、価値が置かれるのは、あくまでエンターテインメントです。そして、競技になるのであれば、スポーツにドーピング検査があるのと同じように、クイズ大会会場での「カンニング眼鏡」の取り締まりや通信電波の遮断を徹底するでしょう。参加者は、プロアスリートと同じように「プロ勉強家」と呼ばれるでしょう。つまり、スポーツをしたり楽器を演奏したりするのと同じように、楽しむために語学や数学の勉強をする人が増えていくことが考えられます。(2)答えじゃなくて問いを探すラストシーンで、バンクはカンニングビジネスに染まり、新しい計画をリンに持ちかけます。まさに、カンニングビジネスが彼のアイデンティティになってしまっていたのでした。大金とアイデンティティが両方再び得られる点で、リンの答えは決まっているかに思われました。しかし、リンはためらいます。2つ目は、答えではなく問いを探すことです。もはや必要な答えを出すことは生成AIができてしまいます。生成AIにできなくて人にできることは、ものごとに疑問を感じることです。人から教えられたことを鵜呑みにせず、社会で当然とされている前提を疑うことです。そこから、自分は本当に何を学びたいか、もっと言えば、自分はどう生きるか、これで幸せかどうか、そして人はどこに向かっていくのかを問い続けるのです。つまり、学ぶとは、答えを得るという結果ではなく、問い続けるというプロセスに重きが置かれるようになります。これは、知的好奇心を追い求める従来の学者の姿勢です。この点で、学歴社会がひっくり返ったからと言って、学問自体がなくなるわけではないです。むしろ、学問が学歴に利用されることがなくなり、より純粋に学びたいことを学ぶ人が増えるでしょう。一方で、学びたくない人は学ばなくなるでしょう。ちょうど、運動したくない人がいるのと同じように、本人の生き方の問題になるわけです。(3)自分なりの答えを出すリンが断ろうとすると、バンクはカンニングビジネスの首謀者だったことをバラすと脅します。彼から「おまえの決断次第だ」と言われたリンは、「そうね、私次第ね」と最後は微笑み、なんと自分がやってきたカンニングビジネスについてメディアに告白するのです。彼女らしい行動です。その告白の内容は、自分の言葉で語られる真実であり、試験の正解ではありません。3つ目は、自分なりの答えを出すことです。生成AIが模範解答を瞬時に教えてくれる時代、求められるのは、1つの模範解答をなるべく速く出すことではなくなります。それは、その人の経験と結びついたオリジナルの答えをじっくり出すことです。学校の課題レポートもそうなっていくでしょう。それが、その人の魅力になるでしょう。これは、学歴社会とは真逆の価値観です。なお、その人なりの言葉で語られることは、「ポスト真実」という昨今の情報コミュニケーションのあり方や、「ナラティブセラピー」という心理カウンセリングにも通じます。これらの詳細については、関連記事6、関連記事7をご覧ください。学歴社会がひっくり返った先にある社会とは?「カンニング教育革命」によって学歴社会がひっくり返った先にある社会とは、どのようなものでしょうか? ここで、平等を「機会の平等」と「結果の平等」に分け、それぞれを縦軸と横軸にして、グラフ化します。そして、社会のタイプを4つに分けて、公平という視点で望ましい社会を考えてみましょう。なお、この分類の仕方は、子育てタイプの分類にも重なります。この詳細については、関連記事8をご覧ください。(1)身分社会1つ目は、身分社会(アリストクラシー)です。これは、生まれた身分による明らかな差別があり、教育を受ける機会がありません。貧富の差(収入格差)もはっきりしています。機会の平等も結果の平等もありません。このような社会はもちろん不公平で、私たちは決して望まないでしょう。しかし、AIに依存する未来の社会では、ごく一部のAIの管理者が社会システムをコントロールして、新たな身分社会をつくる可能性があります。(2)学歴社会2つ目は、学歴社会(メリトクラシー)です。これは、先ほど日本の戦後の「教育の平等」で触れたように、教育の機会については平等です。しかし、その分収入格差が広がることを良しとしてしまっている点で、結果の平等はありません。結局、遺伝という「生まれ」によって新たな身分社会をつくっていることになり、公平とは言えません。だからこそ、革命が起きるとも言えるでしょう。ただし、すでに既得権のあるエリート層や受験ビジネスの関係者たちがあの手この手で学歴社会を維持しようとするかもしれません。実際に、日本では今のところ、カンニングは偽計業務妨害罪(刑法第233条)に当たり、軽犯罪です。一方、中国では、大学入試の当日には受験会場の敷地の通信電波がすべて遮断され、カンニング行為には有期刑が課されるなど、取り締まりが徹底されています。それほど、カンニングが国家体制(学歴社会)を揺るがすものであると認識されています。(3)共産主義社会3つ目は、共産主義社会です。これは、貧富の差をなくすことを徹底するため、結果(収入)については平等です。しかし、がんばっても(能力を発揮しても)、収入が増えない点では不公平です。そうなると、機会の平等は、どうでもよくなります。がんばってもがんばらなくても変わらないので、仕事をする気が失せて生産性が落ち、国の経済力は高まりません。これは、歴史が証明しています。さらに、一部のエリート層が私腹を肥やし、結局ステルスの身分社会になっていました。(4)真の民主社会4つ目は、真の民主社会(デモクラシー)です。これは、教育などの機会の平等を保ちつつ、収入格差を小さくするよう調整して、結果もある程度平等にすることです。これは、能力(遺伝)の違いを認めつつも、その結果が大きな不平等にも完全な平等にもならないようにバランスを取ることです。これが、公平です。先ほどにも触れたように、すでに北欧諸国がこのような社会を目指しています。進化心理の視点に立てば、この公平さは、原始の時代の部族社会のあり方にも重なります。たとえば、獲物を捕まえた人は、その能力があるからと言ってその肉を独り占めせず、部族の仲間に公平に分け与えていました。人類は数百年万年という気の遠くなる期間を、部族でこのやり方を貫くことで生き延び、子孫を残してきました。その心を受け継いだのが現代の私たちです。だからこそ、このような社会を望ましいと思うのです。なお、人類が公平さを好む心理メカニズムは、先ほど紹介したゲーム理論の「しっぺ返し戦略」を含むさまざまな心理実験で確かめられています。再び「バッド・ジーニアス」とは?「カンニング教育革命」によって学歴社会がひっくり返った未来の社会に思いを馳せました。学歴社会の不公平さに気付いた今、映画のタイトルの「バッド・ジーニアス」とは、リンやバンクのようにカンニングによって学歴社会を出し抜く側の人間ではなく、実は学歴社会を頑なに守ろうとする側の人間であるように思えてくるのではないでしょうか? そして、今後にAIで社会を支配しようともくろむ人間であるようにも思えてくるのではないでしょうか?1)「中国の入試「カンニング」驚愕のハイテク化実態」:浦上早苗、東洋経済オンライン、20222)「時差利用してSAT試験で不正、江南語学院の講師摘発」:東亜日報、20103)「変動する大学入試」P195:伊藤実歩子、大修館書店、20204)「実力も運のうち 能力主義は正義か?」P21:マイケル・サンデル、早川書房、20235)「脳科学的に正しい一流の子育てQ&A」P43:西剛志、ダイヤモンド社、20196)「教育と平等」P241:苅谷 剛彦、中公新書、20097)「日本人の9割が知らない遺伝の真実」P81、P106:安藤寿康、SB新書、20168)「教育は何を評価してきたのか」P10、P8:本田由紀、岩波新書、2020<< 前のページへ■関連記事ガリレオ【システム化、共感性】映画「イン・ハー・シューズ」【なんで読み書きだけできないの?なんで計算できないの?(学習障害)】Part 2ドラマ「ドラゴン桜」(中編)【実は幻だったの!? じゃあ何が問題?(教育格差)】Part 1ドラマ「ドラゴン桜」(後編)【そんなんで結婚相手も決めちゃうの? 教育政策としてどうする?(学歴への選り好み)】Part 1半沢直樹【なんでやられたらやり返すの?逆に手を組むには?(ゲーム理論)】Part 2NHKドラマ「フェイクニュース あるいはどこか遠くの戦争の話」(中編)【そもそもなんで私たちは噂好きなの?じゃあこれから情報にどうする?(メディアリテラシー)】Part 1ライフ・イズ・ビューティフル【こんな人生に意味はない」と嘆かれたら?(ナラティブセラピー)】Part 1クレヨンしんちゃん【ユーモアのセンス】Part 1

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背中を叩いて助かった!【Dr. 中島の 新・徒然草】(521)

五百二十一の段 背中を叩いて助かった!天気のいい日は花粉がきつい! 日本はいつからこんな大変な国になってしまったのでしょうか。私が小学生の時には、花粉症などという言葉はありませんでした。記憶に残る最初の花粉症は大学を卒業した頃くらい。以来、花粉症がひどく出る年とそうでない年があり、コロナ禍の間は比較的マシでしたが、今年はひどくなりそうな予感があります。近隣清掃の時にこの話をすると、他の人たちも賛同してくれました。さて、前々回に、ファイブ・アンド・ファイブ(背部叩打法5回とハイムリック法5回)の話をしました。ちょっとおさらいをしておきましょう。もし誰かが喉に食べ物を詰めた場合、意識があれば最初に背部叩打法を試してみます。5回まで試してみて、それでだめならハイムリック法(腹部突き上げ法、上腹部圧迫法)を5回まで試してみるというものです。実は先日のこと。親戚の叔母さんが遠い昔に背部叩打法を実際にやったことがある、ということを耳にしました。もう5~60年も前の昭和の時代。叔母さんの隣に住んでいた奥さんの叫び声が聞こえてきたのだそうです。「助けて―、ター坊がリンゴを詰めて窒息した!」ター坊というのは隣の家の2歳になる長男です。その声を聞いた叔母さんは、慌てて隣の家に向かいました。玄関に飛び込んでいったら、顔面蒼白で床にぐったりと倒れているター坊が!そこで叔母さんは左手でター坊の両足をつかんで逆さまにしました。背中をパンッ、パンッ、パンッと叩くと、リンゴの塊がポロッと口から出てきたそうです。幸いなことに、ター坊は「ハアーッ、ハアーッ」と言いながら息を吹き返しました。背部叩打法を知っていたのかを叔母さんに尋ねたところ、「よくは知らなかったけど、何となく知っていた」ということでした。知識というのはそんなものかもしれません。因みに隣の奥さんは教会に熱心に通う信徒さんだったのですが、この時ばかりは神様ではなくて叔母さんに激しく感謝してくれたそうです。現在、アラ還のター坊はどこかの会社の偉いさんになっているのだとか。で、今になって叔母さん曰く。「あれは余所の子だったからできたんじゃ」もし自分の子だったら気が動転してしまって逆さまにすることもできないし、背中も叩けなかっただろうということです。「私も手探りで子育てをしていたけど、あのことがあってから自信がついたのよ。何でもやってみるもんじゃね」それにしても背部叩打法って有効だったんですね。あらためて感心しました。私もいざという時のために心づもりをしておきます。最後に1句花粉なき 昭和の事件 思い出す

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ADHD患者の薬物療法、全死因死亡リスクを有意に低減/JAMA

 注意欠如・多動症(ADHD)患者への薬物療法は、全死因死亡リスクを有意に低減することが示された。スウェーデン・カロリンスカ研究所のLin Li氏らが、約15万例のADHD患者を対象に行った全国的な観察コホート試験で明らかにした。ADHDは早期死亡を含む有害な健康アウトカムのリスク増大と関連していることが知られているが、ADHD薬物療法が死亡リスクに影響を与えるかどうかについては不明だった。JAMA誌2024年3月12日号掲載の報告。ADHD診断後2年間の全死因、自然死因、非自然死因の死亡率を比較 研究グループは、今回スウェーデンで行われた観察コホート試験について、標的試験模倣フレームワークを用い、2007~18年にADHDの診断を受け、診断前にADHD薬物療法を受けていなかった6~64歳を特定した。ADHDの診断から、死亡、移住、ADHD診断後2年、2020年12月31日のいずれか早い時点まで追跡した。ADHD薬物療法の開始は、診断後3ヵ月以内の処方で定義した。 ADHD診断後2年間の全死因死亡、自然死因(身体の状態によるなど)、非自然死因(不慮の傷害、自殺、偶発的な中毒によるなど)を評価した。ADHD薬物療法、自然死は低減せず ADHDと診断された14万8,578例(女性6万1,356例、41.3%)のうち、診断後3ヵ月以内にADHD薬物療法を開始したのは8万4,204例(56.7%)だった。診断時の年齢中央値は17.4歳(四分位範囲:11.6~29.1)だった。 ADHD診断後3ヵ月以内に薬物療法を開始し継続する「治療開始戦略」群と、薬物療法を行わない「非治療開始戦略」群の2年全死因死亡リスクは、それぞれ39.1/1万人と48.1/1万人だった(リスク差:-8.9/1万人、95%信頼区間[CI]:-17.3~-0.6)。 ADHD薬物療法の開始は、全死因死亡(ハザード比[HR]:0.79、95%CI:0.70~0.88)、非自然死(2年死亡リスク:治療開始戦略群25.9/1万人vs.非治療開始戦略群33.3/1万人、群間差:-7.4/1万人[95%CI:-14.2~-0.5]、HR:0.75[95%CI:0.66~0.86])の有意な低減と関連していた。 一方で、自然死の低減には関連していなかった(2年死亡リスク:治療開始戦略群13.1/1万人vs.非治療開始戦略群14.7/1万人、群間差:-1.6/1万人[95%CI:-6.4~3.2]、HR:0.86[95%CI:0.71~1.05])。

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第204回 アドレナリンを「打てない、打たない」医者たちを減らすには(前編) アナフィラキシーが呼吸器系の症状や循環器症状が単独で起こった場合は判断が難しい

インタビュー: 海老澤 元宏氏(国立病院機構相模原病院 臨床研究センター長)昨年11月8日掲載の、本連載「第186回 エピペンを打てない、打たない医師たち……愛西市コロナワクチン投与事故で感じた、地域の“かかりつけ医”たちの医学知識、診療レベルに対する不安」は、2023年に公開されたケアネットのコンテンツの中で最も読まれた記事でした。同記事が読まれた理由の1つは、この事故を他人事とは思えなかった医師が少なからずいたためだと考えられます。そこで、今回と次回はこの記事に関連して行った、日本アレルギー学会理事長である海老澤 元宏氏(国立病院機構相模原病院 臨床研究センター長)へのインタビューを掲載します。愛西市コロナワクチン投与事故の背景には何があったと考えられるのか、「エピペンを打てない、打たない医師たち」はなぜ存在するのか、「アナフィラキシーガイドライン2022」のポイントなどについて、海老澤氏にお聞きしました。(聞き手:萬田 桃)アドレナリンは“心肺蘇生に使う薬”というイメージを抱いている方がまだまだ多い――この記事が多くの読者に読まれた理由について、先生はどうお考えですか。海老澤タイトルにあるように、「エピペンを打てない、打たない医師」は実際に少なくなく、そうした方が読んだということが1つ考えられます。また、ワクチンの集団接種会場ということで、医師会などから依頼されて医師等が接種を行うわけですが、アナフィラキシーなど、万が一のことが起こった場合に、その場ですぐに全身管理ができるような体制は多くの会場で整っていなかったと考えられます。そういった意味で、「自分にも起こり得た事件だった」と捉えた方も多かったのかもしれません。――「エピペン」こと、アドレナリンを「打てない、打たない医師」はまだ結構いるのでしょうか。海老澤アドレナリンの筋肉注射については、僕らの世代から上の医師だと、”心肺蘇生に使う薬”というイメージを抱いている方がまだまだ多い印象です。最近は、医師国家試験でもアナフィラキシーの時のアドレナリン筋注は第一選択だということが設問になるくらいで、若い医師たちには十分浸透していることだと思います。しかし、一方で少し世代が上になると、「まずアドレナリン筋注」とは考えない医師は存在します。使った経験がない人だと躊躇してしまうことはある――今回のコロナワクチンのアナフィラキシーに最初に対応した医師は、事故報告書によれば「内科医、医師歴5年以上10年未満」となっていました。海老澤比較的若い医師だったのですね。今回のケースに当てはまるかどうかはわかりませんが、アナフィラキシーの患者にこれまで遭遇したことがある医師は、アナフィラキシーの患者を目の前にして、すぐに筋注しても問題はないと理解していると思うのですが、使った経験がない人だと躊躇してしまうことはあると思います。これまでにアナフィラキシーの患者さんを1人も診たことがなく、対処法に慣れていない医師は全国で少なくないと思います。仮に病院での治療中に起きたアナフィラキシーだったら、筋注後すぐにICUに運びルートを取り、アドレナリンを希釈して投与することも可能です。酸素投与もできます。また、手術中であればすでにルートが取れているので、即時対応が可能です。しかし、アナフィラキシーの初期対応としてアドレナリン筋注(0.1%アドレナリンの筋肉内注射、またはアドレナリン自己注射用製剤〈エピペン0.3mg製剤の投与〉)が第一選択だというのは基本中の基本です。もちろん、糖尿病や高血圧、動脈硬化など基礎疾患があるような方だと、アドレナリンを打って血圧が急上昇して脳出血を起こしたりするリスクは全くゼロではありません。そうしたリスクとベネフィットを考えて投与するわけですが、打って害になることは少ないと思います。アナフィラキシーが呼吸器系の症状や循環器症状が単独で起こった場合は判断が難しい――報告書によれば、看護師の1人は、アナフィラキシーの可能性を考え、アドレナリン1mgプレフィールドシリンジに22ゲージ針を付け、医師の指示があればいつでも筋注できるよう準備をしていましたが、「医師の判断を尊重するため、アドレナリンの準備ができていることを積極的に伝えようとはしなかった」とのことです。海老澤なるほど。ただ、そこは医師の判断ですから難しいですね。あともう1つ考えられるのは、アナフィラキシーの症状が典型的なパターンではなく、それが見逃しにつながった可能性です。――報告書では、「接種前から体調不良、呼吸苦があったようだという看護師からの情報と、粘膜所見、皮膚所見、掻痒感、消化器症状など『アナフィラキシーで典型的な症状』がなかったことから、女性の病態はアナフィラキシーの可能性が低いと判断し、アドレナリンの筋肉内注射を第一治療選択から外した」と書かれています。海老澤アナフィラキシーが呼吸器系の症状や、血圧低下などの循環器症状が単独で起こった場合は、判断が難しいというのは確かにあります。2022年に改訂した「アナフィラキシーガイドライン」1)では、診断基準が2つに集約されました。1つは、「皮膚、粘膜、またはその両方の症状(全身性の蕁麻疹、瘙痒または紅潮、口唇・舌・口蓋垂の腫脹など)が急速に(数分~数時間)で発症した場合」。もう1つが「典型的な皮膚症状を伴わなくても、当該患者にとって既知のアレルゲンまたはアレルゲンの可能性が高いものに曝露された後、血圧低下または気管支痙攣または咽頭症状が急速に(数分〜数時間)で発症した場合」となっています。この2番目は、循環器症状と呼吸器症状の単独の場合を言っているわけです。アナフィラキシーの基本は皮膚症状なのですが、典型的な皮膚症状がなくても、アナフィラキシーを疑う場面で、血圧低下または気管支攣縮、咽頭症状などの呼吸器症状があればアドレナリンを打つ、というのが2022年改訂の大きなポイントです。ワクチンもそうですが、薬剤等の場合にこうした呼吸器症状、循環器症状単独のアナフィラキシーが起こりやすく、かつ症状が進行するスピードも早く時間的余裕もないので、そこはとくに注意が必要です。重症の方の場合、アドレナリン投与1回では効かないこともある――今回の事故で「打たなかった」背景にはいろいろな原因が考えられるわけですね。海老澤今回の事例に直接当てはまるかどうかは軽々に言えませんが、「アナフィラキシーの典型的な症状ではなく判断が難しかった」「アナフィラキシーに対する医療者の経験値、慣れが足りなかった」「何か起こった場合に対応する医療体制が乏しかった」ことなどが教訓として挙げられると思います。ただ、症状の進行はものすごく速かったと考えられるので、アドレナリンの1回の筋注で軽快していたかどうかはわかりません。重症の方の場合、アドレナリン投与1回では効かないこともあります。それでもダメな場合は、ルートを取って輸液したり、酸素を投与したりと全身管理が必要になってきます。救命できるかどうかは、そういった一連の流れの中で決まってきます。(この項続く)(2024年1月23日収録)【事故の概要】2022年11月、愛知県愛西市の集団接種会場で、新型コロナワクチンを接種した女性(当時42)が直後に容体が急変し死亡しました。愛西市がまとめた報告書2)によれば、接種4分後から女性に咳嗽と呼吸苦が発現したにもかかわらず、看護師らは「ワクチン接種前からマスク着用の圧迫感による過呼吸発作状態にあったもの」と解釈していました。また、体調不良者が出たことで対応を依頼された医師も「接種前から体調不良、呼吸苦があったようだ」という看護師からの情報と、粘膜所見、皮膚所見、掻痒感、消化器症状など「アナフィラキシーで典型的な症状」がなかったことから、女性の病態はアナフィラキシーの可能性が低いと判断し、アドレナリンの筋肉内注射を第一治療選択から外してしまいました。女性は接種14分後に心停止、3次救急病院に搬送されるも到着時にはすでに心肺停止状態で、心肺蘇生を試みた後、死亡が確認されました。報告書で愛西市医療事故調査委員会は、「ワクチン接種後待機中の患者の容体悪化(咳嗽、呼吸苦の訴え)に対し、看護師らがアナフィラキシーを想起できなかったこと、問診者に接種前の患者の状態を確認することなく、患者は接種前から調子が悪かったと解釈したことは標準的ではなかった。また、その情報に影響を受け、ワクチン接種後患者の容体変化に対し、アドレナリンの筋肉内注射が医師によって迅速になされなかったことは標準的ではなかった」とし、「本事例は、ワクチン接種後極めて短時間に患者が急変し、死亡に至ったものである。非心原性肺水腫による急性呼吸不全及び急性循環不全が直接死因であると考えられ、この両病態の発症にはアナフィラキシーが関与していた可能性が高い。本事例は短時間で進行した重症例であることから、アドレナリンが投与されたとしても救命できなかった可能性はあるが、特に早期にアドレナリンが投与された場合、症状の増悪を緩徐にさせ、高次医療機関での治療につなげ、救命できた可能性を否定できない」と結論付けました。参考1)アナフィラキシーガイドライン2022/日本アレルギー学会2)事例調査報告書/愛西市

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第186回 65歳以上のコロナワクチン定期接種、自己負担は7,000円に/厚労省

<先週の動き>1.65歳以上のコロナワクチン定期接種、自己負担は7,000円に/厚労省2.医師国家試験合格者、7年連続9,000人超え/厚労省3.進む医師の働き方改革、診療体制の縮小が課題に/厚労省4.地域医療構想の加速化、国がモデル推進区域を選定/厚労省5.ゲノム医療に共同提言、エビデンスなき遺伝子検査ビジネスに警鐘/医学会・日医6.労組結成後のストライキ、医療法人が職員に莫大な損賠を請求/大阪1.65歳以上のコロナワクチン定期接種、自己負担は7,000円に/厚労省厚生労働省は、2024年度から65歳以上の高齢者を中心とした新型コロナウイルスワクチンの定期接種開始について、自己負担額が最大7,000円程度に設定することを発表した。これまで無料で提供されていたワクチン接種が、4月からは季節性インフルエンザワクチン同様、一部自己負担が必要な定期接種へと移行する。接種費用は、1回当たり約1万5,300円と見積もられ、このうち8,300円を国が市町村に助成し、残額を個人が負担する形となる。ただし、市町村による独自の補助がある場合、実際の自己負担額はこれより低くなる可能性がある。定期接種の対象は、65歳以上の高齢者と60~64歳で基礎疾患がある人に限られ、それ以外の人は任意接種として全額自費負担となるが、低所得者に対しては無料接種が継続される。厚労省は、新型コロナワクチンの価格が想定より3倍以上高額になることを受け、急激な自己負担額の増加を緩和するために追加助成を行うことを上記のように決定した。今後、新型コロナウイルスワクチンの接種は、年1回秋冬の接種となり、65歳未満で健康な人は4月以降、定期接種の対象ではなく任意接種の扱いとなるため、自己負担額は7,000円を超える見込み。参考1)コロナ定期接種、自己負担7,000円程度 24年度65歳以上(日経新聞)2)新型コロナワクチン、自己負担7,000円程度に 4月から国の助成で(毎日新聞)3)新型コロナ ワクチン定期接種の自己負担額 最大約7,000円で決定(NHK)4)コロナ定期接種、最大7千円負担 4月から65歳以上対象 厚労省(産経新聞)2.医師国家試験合格者、7年連続9,000人超え/厚労省2024年3月15日、厚生労働省は、2月に実施された第118回医師国家試験の結果を発表した。合格率は92.4%に達し、前年比0.8ポイント上昇、過去10年で最高を記録した。合格者数は9,547人で、7年連続で9,000人を超える結果となった。とくに、新卒者の合格率は95.4%で、全体の合格者数の中で9,048人を占めた。女性合格者は3,307人(全体の34.6%)、男性は6,240人で、男女別の合格率はそれぞれ91.7%、93.6%だった。学校別の合格率では、自治医科大学が新卒・既卒共に100%の合格率を達成し、このほか群馬大学医学部、名古屋大学医学部、東海大学医学部も新卒者の合格率が100%だった。ほかに高い合格率を示した学校では、国際医療福祉大医学部99.2%、兵庫医科大学99.1%、産業医科大学99.0%などがあった。合格基準については、必修問題の採点に一般問題を1問1点、臨床実地問題を1問3点とし、200点満点中160点以上が合格ラインとされた。また、一般問題と臨床実地問題はそれぞれ1問1点で、300点満点中230点以上が必要となった。今回の医師国家試験は、過去10年間で最も高い合格率を記録し、医療界への新たな人材の供給が期待されている。また、性別や大学別のデータは、今後の医療教育の改善や方針策定に役立つ貴重な情報となる。参考1)第118回医師国家試験の合格発表について(厚労省)2)医師試験9,547人合格 厚労省発表(東京新聞)3)医師国家試験、合格率92.4% 新卒の合格者は9千人を突破(CB news)4)第118回医師国家試験(2024年)合格発表…合格率92.4%(リセマム)5)医師国家試験2024、自治医科大学100%合格…学校別合格率(同)3.進む医師の働き方改革、診療体制の縮小が課題に/厚労省2024年4月の医師の働き方改革施行を控え、厚生労働省は、労働時間の上限規制に関する「C水準」の上限見直しを検討している。C水準は、研修医や高度な技能を目指す医師に適用される特例で、現在は年間1,860時間の上限が設けられている。厚労省は、医師の労働時間短縮推進と、地域医療の提供体制と働き方改革の関係に焦点を当て、具体的な対応策の検討を進めている。その一方で、「医療機関勤務環境評価センター」が受け付けた医師の労働時間短縮の取り組みに対する評価の申し込みは、想定を下回る483件に留まっている。これは、タスクシフトや労働基準監督署長による宿直許可取得など、働き方改革が進んだ結果とみられている。厚労省は、診療体制の縮小や派遣医師の引き揚げによる地域医療への影響を調査することで、改革の実施に伴う課題に対応していきたいとしている。また、全国約7,000医療機関を対象にした調査では、49医療機関で派遣医師の引き揚げによる診療体制の縮小が見込まれ、地域医療への影響が懸念されている。これに対し、厚労省は、地域医療の維持に向けた支援策を強化する方針。働き方改革の影響調査や都道府県との連携による医療機関の支援は、改革の進展に伴い重要性を増している。労働時間の短縮だけでなく、地域医療の維持と医師のスキルアップを両立させるための施策が求められ、これらの取り組みは、医師の働き方改革が単なる時間規制に留まらず、より質の高い医療サービスの提供と医師自身のキャリア発展を促す方向に進むことを示している。参考1)第19回医師の働き方改革の推進に関する検討会(厚労省)2)派遣医師の引き揚げで49施設が診療体制縮小の可能性-働き方改革準備状況調査(医事新報)3)医師の働き方改革“地域医療への影響調査を”厚労省検討会(NHK)4)医師働き方改革に向け都道府県-医療機関の連携深化、2024年4月以降も勤務医の労働環境・地域医療への影響を注視-医師働き方改革推進検討会(Gem Med)5)医師の時短評価受審申し込み483件、想定下回る 厚労省「働き方改革が進んだため」(CB news)6)C水準の上限見直し検討へ、厚労省方針 働き方改革推進の課題に「縮減のあり方」(同)7)診療体制縮小の見込み「あり」457カ所 医師の残業上限規制で、厚労省調査(同)4.地域医療構想の加速化、国がモデル推進区域を選定/厚労省厚生労働省は、3月13日に第8次医療計画等に関する検討会の分科会の地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループを開き、地域医療計画の進捗などについて討論した。第8次医療計画の策定に向けて、各都道府県に対して「推進区域」と「モデル推進区域」を指定し、支援を実施する方針を固めた。この後ワーキンググループでの了承を経て、厚労省は今後の詳細な計画を策定し、通知として各都道府県へ発出する予定。人口動態の変更を加味し、2次医療圏ごとに病床の必要量と実際の見込み病床数の乖離、医療提供体制の課題解決に向けた工程表作成など、地域ごとの取り組みには差がある。国は、これらの課題に対して「地域の医療提供体制の見える化」「都道府県が行うべき事項のチェックリスト作成」などの支援を提供することで、2025年の目標実現を促進する。とくに注目されるのは、地域医療構想の実現に向けた具体的な支援策。これには、地域別の病床機能などのデータの可視化、都道府県および医療機関の好事例の共有、地域医療介護総合確保基金などの支援策の活用方法の周知、都道府県や医療機関の取り組みを評価するチェックリストの作成と公表が含まれる。また、モデル推進区域では、伴走支援として技術的、財政的支援を実施する。この新方針に対する構成員からの意見も考慮され、推進区域やモデル推進区域の選定、医師働き方改革の影響の検討、ポスト地域医療構想に向けた準備など、今後の地域医療の提供体制構築に向けた課題と解決策が議論されている。参考1)第14回地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ(厚労省)2)地域医療構想実現に向けた取り組みはバラつき大、国が「推進区域、モデル推進区域」指定し支援実施-地域医療構想・医師確保計画WG(Gem Med)5.ゲノム医療に共同提言、エビデンスなき遺伝子検査ビジネスに警鐘/医学会・日医日本医学会と日本医師会は、3月13日共同で記者会見を開き、「ゲノム医療の推進に関する共同提言」を発表した。ゲノム研究の国際競争が激化する中、わが国の国家的な体制整備の遅れに対する危機感を表明し、オープンサイエンスの推進と大規模な基盤構築の必要性を強調している。また、ゲノム情報の取り扱いに関し、不当な差別を防ぐための罰則を含む法整備も求めた。2023年6月に公布されたゲノム医療推進法は、良質かつ適切なゲノム医療の提供を目的としている。日本医学会は142の分科会の意見を取り入れ、提言ではゲノム医療が医学・医療分野全体に関わる事項であることを強調、国家レベルでの大規模データ収集とその利活用の進め方、オープンサイエンスの理念の重要性を指摘している。また、ゲノム医療の推進が厚生労働省だけでなく、総務省、文部科学省、経済産業省など関連するすべての省庁にまたがる課題でもあるとしている。具体的な提案としては、ゲノム医療に関する特別法の制定、遺伝・ゲノムリテラシーの向上、遺伝子検査ビジネスの規制などが挙げられている。また、遺伝カウンセリング体制の充実やゲノム情報に基づく不利益や差別の防止に向けた罰則のある法律の策定も求められている。そして、提言では、ゲノム医療の安心・安全な提供とその推進に向けた国家的な取り組みの加速を促すもので、わが国が新たな科学立国としての地位を世界に示し、サイエンス分野での地位の維持と向上に直結するものであるとの視点から、具体的な行動計画の策定と実施が急務であると訴えている。参考1)ゲノム医療推進のため大規模な基盤構築を-日本医学会と日医が提言(医事新報)2)「良質かつ適切なゲノム医療を国民が安心して受けられるようにするための施策の総合的かつ計画的な推進に関する法律」に関する提言について(日本医学会・日本医師会)6.労組結成後のストライキ、医療法人が職員に莫大な損賠を請求/大阪大阪地域合同労働組合は、大阪市で開かれた記者会見で、クリニックの待遇改善を求めてストライキを行った男性組合員とその労働組合に対し、運営する医療法人から約8,400万円の損害賠償を請求されたことを公表した。この訴訟提起は、組合活動を抑圧する目的で行われたスラップ訴訟(訴訟による嫌がらせ)に当たると主張し、「組合つぶしの意図が明らかで不当である」と非難している。被告の男性組合員は、大阪にある精神科「ブレインクリニック」の職員で、2022年10月に同僚らと合理性のない基本給の減給廃止、昇給制度廃止の撤廃などの待遇悪化および診療方針の改善を求めて労働組合を結成し、大阪地域合同労組に加盟した。しかし、団体交渉での応答がゼロだったため、2023年8~11月にかけて、大阪および名古屋で合計6回のストライキを実施した。また、原告のクリニックは、発達障害の専門外来として経頭蓋磁気刺激治療(TMS)などの保険適用外の自由診療を提供していることが明らかにされている。医療法人による損害賠償請求は、労働者の組合活動を支援する大阪地域合同労組によって強く反発されており、今後の展開が注目されている。参考1)医療法人がストに損賠提訴 8,400万円、組合側反発(中日新聞)2)発達障害外来、学会の指針逸脱 クリニックが高額治療(共同通信)

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【緊急寄稿】働き方改革、スタート目前!米国医師の働き方を変えた「10の仕組み」~第2回・スマホアプリ編~

第1回は米国病院の勤務体系についてご紹介しました。今回は米国と日本の臨床現場での大きな違いの1つとなっている、「スマホアプリ」がテーマです。多くの専用アプリが導入されており、業務の効率化や働き方改革に大きく貢献しています。今回は、その例をいくつかご紹介します。仕組み5:Haiku日本の電子カルテは富士通などが主流ですが、米国ではEpic Systemsの「Epic」という電子カルテシステムがシェアのトップを占めています。このEpicにはさまざまな便利機能が付いているのですが、一番大きな利点は「スマホで電子カルテを閲覧できる」ことです。スマホでは「Haiku」という名前のアプリで、由来はおそらく日本語の俳句から取ったものだと思うのですが、正確なところはよくわかりません。このアプリでは患者さんのカルテをどこでも閲覧可能で、業務効率が格段に上がります。血液検査データや画像検査の結果もアプリ上で閲覧できるため、検査データを確認するために電子カルテ用のパソコンを立ち上げる必要もなくなります。また、患者さんの皮膚所見など、カルテに取り込みたい画像がある場合には、アプリを立ち上げて患者さんを選択し、スマホで写真を撮影するだけで簡単に追加することができます。以前の日本の職場では、デジタルカメラで写真を撮り、USBでパソコンにつないで…という手順を追う必要があり、「Haiku」によって大幅な時間短縮になっています。さらに、Epicには「Epic chat」というメッセンジャー機能があり、看護師とのやりとりや他科へのコンサルトをLINEのような感覚で行えます。日本で働いていた時には院内PHSに頻繁に電話がかかってくるのがストレスでしたが、Epic chatでは空いた時間にまとめて返信できるので、業務に集中することができます。さらに、「消化管出血の患者さんへの治療介入を消化器内科、消化器外科、放射線科のどの医師が担当するかディスカッションする」という際、日本では専攻医の自分が仲介役となって各科の医師に何回も電話する必要がありましたが、Epic chatでは関係する科のグループチャットを作ってそこで議論ができるため、非常に効率が良いと感じます。仕組み6:Doximity「Doximity」というアプリは、遠隔診療やオンラインFAXの機能が充実しています。たとえば、「患者さんやその家族にスマホから電話をかけたいが、自分の電話番号は知られたくない」といったときに、このアプリから通話をすると、病院の電話番号経由で患者さんに電話をかけることができます。電子カルテの遠隔利用とこのサービスを組み合わせることで、医師は自宅からでも患者さんの家族に電話をかけたり、病状説明をしたりすることができます。また、日本と同じく、米国でもいまだに他の医療機関とFAXでのやりとりをするケースがあるのですが、Doximityはアプリ内で自分のFAX番号を作成して、送られてきたFAXをそのままスマホで閲覧したり、スマホで撮影した画像をFAXで送ることができたりする機能があります。シンプルですが、FAXに関連するトラブルを最小限にできるため、重宝しています。日本でも遠隔診療を進めるうえで、こうしたアプリの需要が高まってくるのではないでしょうか。仕組み7:AMiON米国では多くの医師が看護師のようなシフト制で働いています。そのため、「どの科のどの医師がその時間を担当しているか」を把握する必要があるのですが、その際に使われているのが「AMiON」という当直表管理アプリです。いわば「オンラインで見られる当直表」で、どの科の医師がどういうスケジュールで働いているかが、一目でわかります。勤務の交代があった場合でもオンライン上で簡単に変更ができます。日本では当直の変更があるたびに事務職員の方が当直表を新しく印刷して張り替える、ということをしていたので、それと比較して格段に効率的です。

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第202回 麻疹感染が拡大、“真の死亡率”が報道されていない?

昨今、国内での麻疹患者の確認が話題だ。今年に入り3月13日までに確認された麻疹患者は11人。わずか3ヵ月弱で昨年の報告数28人の3分の1以上に達している。日本での麻疹はほぼ輸入感染症の様相を呈しているため、コロナ禍による入国制限があった2020~22年各年の報告数は10人以下だった。もっとも麻疹が感染症法で全数報告となった2008年からコロナ禍前の2019年までの年間報告数は、最大が2008年の1万1,013人、最小が2015年の35人、それ以外の年は200人弱から700人超だったことを考えれば、現状はまだコロナ禍の入国制限の影響を引きずった一過性の減少と言えるだろう。実際、出入国在留管理庁の統計を参照すると、日本の年間出入国者は2022年が約1,353万人、2023年が約7,052万人で、コロナ禍前の2019年の1億264万人までは復活していない。加えて世界保健機関(WHO)から麻疹の排除認定を受けていないインド、インドネシア、中国、ロシアなど、従来から日本への入国者が多い国からの入国者もいまだ2019年水準から見て数分の1というレベルである。一方、国内事情を考えると気になるのが麻疹ワクチンの接種状況である。現在の麻疹ワクチン接種は、いわゆる風疹との混合ワクチンの2回接種がスタンダードとなり、概して言えば、定期接種対象者の接種率は1回目接種が95%以上、2回目接種が90%台前半だが、2018~22年の接種率は経時的に漸減傾向にあり、この5年間で2~3%低下している。2022年度の1回目接種率は95.4%、2回目接種率は92.4%で、集団免疫獲得の目安とされる95%を超えるのは香川県のみ。続いて北海道、鹿児島県、沖縄県は90%未満である。その意味で現在の状況はかなり警戒度を高めなければならないことは疑いようがない。メディア各社もこの現状と麻疹ウイルスの感染力の強さ、ワクチン接種の有効率の高さなどを盛んに報じている。これ自体は非常に良い傾向だと思っている。もっとも各社の報道を見ているとバラツキを感じるのも現実だ。私が気になっているのは2点。1点目はワクチン接種に関してだ。現在では2回接種が基本となっているが、2000年4月以前に生まれた人は1回接種だったため*、免疫獲得が不十分な人がいる。麻疹ワクチン接種1回以下の世代は現時点で全員が成人であり、未成年よりも行動半径が広く、この世代の確実な免疫獲得は感染拡大阻止の成否に直結すると言っても過言ではない。しかも、麻疹の場合、子供の病気で成人にはあまり関係ないと思っている人は想像以上に多いのも問題である。*1990年4月2日~2000年4月1日に生まれた人は特例措置で中学1年生、高校3年生相当年齢に2回目接種が実施されているが、受けていない人もいる。2点目は麻疹の死亡率に関する報道である。国内の報道を散見する限り、感染者1,000人当たり1人が死に至るとの報道がほとんどだ。これ自体は先進国に関する一般論では正しいが、あくまで一般論である。国立感染症研究所が公表している日本国内の感染状況の年報と厚生労働省の人口動態統計をもとに試算すると、この数字は高い年度だと約250人に1人の時もある。「そこまで細かくなくとも…」というご意見はあるだろう。しかし、人とは不都合な情報ほど都合よく解釈するものである。たとえば100人に1人の確率で起こる悪い事象の場合、多くの人は“自分にはそれが起こらない、99人のほうだ”と勝手に思い込んでいる。その意味では危機を身近に感じてもらうためには、やや恐怖訴求になってしまっても、起きているよりワーストな現実を伝えることも必要である。麻疹のような極めて感染力が強い感染症の場合、とりわけこのシナリオを適用するほうが向いているとさえいえる。そんなこんなで巷の報道を横目で眺めながら、隔靴掻痒の感を抱いている(もちろんこの点を踏まえて自分も一般向け記事を執筆しようと思っているが)。

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新規2型経口生ポリオワクチン(nOPV2)、有効性・安全性を確認/Lancet

 新規2型経口生ポリオウイルスワクチン(nOPV2)は、ガンビアの乳幼児において免疫原性があり安全であることを、ガンビア・MRC Unit The Gambia at the London School of Hygiene and Tropical MedicineのMagnus Ochoge氏らが、単施設で実施した第III相無作為化二重盲検比較試験の結果を報告した。nOPV2は、セービン株由来経口生ポリオウイルスワクチンの遺伝的安定性を改善し、ワクチン由来ポリオウイルスの出現を抑制するために開発された。著者は、「本試験の結果は、nOPV2の認可とWHO事前認証を支持するものである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2024年2月22日号掲載の報告。ガンビアの乳児および幼児で、有効性、ロット間の同等性、安全性を検討 研究グループは、ガンビアにおいて2021年2~10月に、生後18週以上52週未満の乳児と1歳以上5歳未満の幼児を登録した。 乳児は、nOPV2の3ロットのうちの1つ(各群670例)またはbOPVの1ロット(335例)の計4群に、2対2対2対1の割合で無作為に割り付けられた。また、nOPV2の3群のうち、それぞれ224例は2回投与群(1回目投与の28日後に同じロットのnOPV2を投与)に、bOPV群も同様に112例が2回投与群に無作為に割り付けられた。 幼児は、nOPV2(ロット1)群またはbOPV群に1対1の割合で無作為に割り付けられ、28日間隔で2回投与を受けた。 免疫原性の主要アウトカムは、乳児におけるnOPV2ワクチン1回目投与28日後のポリオウイルス2型のセロコンバージョン(抗体陽転)率で、nOPV2の3群のうち各2群間のセロコンバージョン率の差の95%信頼区間(CI)が-10%から10%の範囲内にある場合、各ロットは同等であるとみなした。 忍容性および安全性の主要アウトカムは、投与後7日までの特定有害事象(solicited adverse events)、28日後までの非特定有害事象(unsolicited adverse events)、および投与後3ヵ月までの重篤な有害事象の発現率で、便中のポリオウイルス排泄量も調査した。全体で2回投与後の抗体保有率は93~96% 乳児2,346例が無作為に割り付けられ、2,345例がワクチンの投与を受け、2,272例が1回投与後の解析対象集団に、また746例が2回投与後の解析対象集団に組み入れられた。幼児は600例が無作為に割り付けられ、全例がワクチン投与を受けた。 乳児の1回投与群におけるセロコンバージョン率は、ロット1が48.9%、ロット2が49.0%、ロット3が49.2%であった。2ロット間のセロコンバージョン率の差の95%CIは、ロット1とロット2の比較で-5.5~5.4、ロット1とロット3の比較で-5.8~5.1、ロット2とロット3の比較で-5.7~5.2であり、ロット間の同等性が示された。 ベースラインにおいて血清陰性であった乳幼児におけるセロコンバージョン率は、乳児で1回投与後が63.3%(316/499例)(95%CI:58.9~67.6)、2回投与後が85.6%(143/167例)(79.4~90.6)、幼児ではそれぞれ65.2%(43/66例)(52.4~76.5)、83.1%(54/65例)(71.7~91.2)であった。 ベースラインにおいて血清陰性および血清陽性であった乳幼児における2回投与後の抗体保有率(血清中和抗体価が≧8を抗体保有と定義)は、乳児で92.9%(604/650例)(95%CI:90.7~94.8)、幼児で95.5%(276/286例)(92.4~97.6)であった。 安全性に関する懸念は認められなかった。1回目投与の7日後にポリオウイルス2型の排泄を認めた乳児は、187例中78例(41.7%)(95%CI:34.6~49.1)であった。

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小児インフルワクチン接種は10月がおすすめ?(解説:栗原宏氏)

Strong point ・82万人を対象とした大規模調査・接種時期と診断率の大規模な検討は日本では非常に実施困難Limitation・国土の広い米国では、インフルエンザの蔓延ピークやワクチンの接種状況が地域によって異なる可能性がある・対象は民間保険に加入している小児であり、対象として一般化できない可能性がある・有意差があるとしても実感できるほど大きな差ではない? インフルエンザワクチン接種後の免疫獲得と持続期間を考慮し、米国では9~10月に接種することが推奨されている。 米国では民間保険に加入した小児のワクチン接種が行われており、誕生月に基づいてインフルエンザワクチンを含むワクチン接種スケジュールが組まれている。これを踏まえて本研究では、インフルエンザワクチン接種月とインフルエンザ感染率を比較し、インフルエンザワクチン接種の最適な時期を検討している。本調査では交絡の可能性はあるものの、10月生まれ(=10月にワクチン接種)群の感染率が他の月より有意に低く、推奨されている9~10月という接種時期の妥当性が裏付けられた。 日本国内におけるインフルエンザワクチン接種は任意であり、その接種の時期について公的な推奨時期は設けられていない。ワクチン接種は出荷されたワクチンが医療機関に出回り始めた10月頃から開始され、12月頃までに実施されているのが実情であろう。統計的には有意差があるとはいえ、実社会で有効性が体感できるかは不明だが、本調査を踏まえるならば、就学前の子供に関しては、10月の接種開始後なるべく早めの接種が望ましいと考えられる。※日本におけるインフルエンザワクチンは、1962年から推奨接種、1977年から予防接種法により接種が義務化され、小中学生に集団接種されるようになった。しかしながら副反応による訴訟が相次いだことから、1987年に保護者の同意を得た希望者に接種する方式に変更となり、1994年には任意接種となった。厚労省のデータによれば、1994年以降の数年は供給が激減したが、その後は増加傾向となっている。近年の小児へのインフルエンザワクチン接種率は50-60%程度とされている。

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第88回 麻疹以外でもKoplik斑が出る!?

イラストレインより使用先週も麻疹について取り上げましたが、東京都で感染者が報告されたことで、とうとう全国的にも麻疹が報道されるようになりました。私、先週からずっと言ってますからね!!「2峰目」前の診断が難しい麻疹は、症状でどこまで疑えるかがポイントになります。2峰性の経過なので、2峰目の発熱と発疹で「こりゃ麻疹やで!」ということになりますが、1峰目の発熱時にKoplikが口腔内にみられることがあり(写真1)、これが特異的な所見だと思われてきました。Koplikは、この所見が麻疹にみられることを発見した130年前の医師です(写真2)。「2峰目」前の診断が難しい麻疹は、症状でどこまで疑えるかがポイントになります。2峰性の経過なので、2峰目の発熱と発疹で「こりゃ麻疹やで!」ということになりますが、1峰目の発熱時にKoplikが口腔内にみられることがあり(写真1)、これが特異的な所見だと思われてきました。Koplikは、この所見が麻疹にみられることを発見した130年前の医師です(写真2)。       写真1. Koplik斑        写真2. Henry Koplik(1858~1927年)(Wikipediaより使用)写真1. Koplik斑写真2. Henry Koplik(1858~1927年)(Wikipediaより使用)2峰目で発見する前に麻疹らしいかどうかを判断する上で、Koplik斑は100年以上にわたって小児科医や内科医の間で「定番の所見」として君臨してきました。しかしながら、Koplik斑は感度や特異度についてまとまった報告がなく、他の感染症でも観察されるのではないかという見解もありました。Koplik斑の診断精度をみた国内3,000例以上の研究日本において、2009~14年にかけて、麻疹および麻疹が疑われる3,023例の全国調査が行われました1)。診断はPCRやRT-PCRを用いて行われ、合計3,023例が登録されました。このうち、Koplik斑が観察されたのは717例(23.7%)であり、麻疹と確定した症例の28.2%、風疹と確定した症例の17.4%、パルボウイルスB19感染症と確定した症例の2.0%にみられたのです。その他、アデノウイルス、ライノウイルス、ヘルペスウイルスでもKoplik斑が観察されました。この研究によると、麻疹の診断マーカーとしてのKoplik斑の感度は48%、特異度は80%と報告されています。つまり、風疹を含めた他のウイルス感染症でもKoplik斑が観察されるというわけです。もちろん周囲に麻疹の人がいれば事前確率は高くなりますが、一般的な発熱外来におけるKoplik斑は確実な所見とは言えないのかもしれません。参考文献・参考サイト1)Kimura H, et al. The Association Between Documentation of Koplik Spots and Laboratory Diagnosis of Measles and Other Rash Diseases in a National Measles Surveillance Program in Japan. Front Microbiol. 2019 Feb 18;10:269.

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オマリズマブ、複数の食物アレルギーに有効/NEJM

 複数の食物アレルギーを持つ1歳以上の若年者において、抗IgEモノクローナル抗体オマリズマブの16週投与は、ピーナッツやその他の一般的な食物アレルゲンに対するアレルギー反応の閾値の上昇に関して、プラセボよりも優れていることが示された。米国・ジョンズ・ホプキンス大学のRobert A. Wood氏らが、180例を対象に行った無作為化比較試験の結果を報告した。米国では小児の最大8%、成人の最大10%が食物アレルギーを有し、その多く(30~86%)が複数の食物アレルギーを有しているという。一方で、唯一承認されている治療法は、ピーナッツアレルギーに対する経口免疫療法であった。NEJM誌2024年2月25日号掲載の報告。ピーナッツほか2つ以上の食物アレルギーがある患者を対象にプラセボ対照試験 本試験で研究グループは、オマリズマブが複数の食物アレルギーを有する患者に対する単剤療法として、有効かつ安全であるかどうかを評価した。被験者は、ピーナッツとその他の少なくとも2つ以上の試験指定食物(カシューナッツ、牛乳、卵、クルミ、小麦、ヘーゼルナッツ)にアレルギーを持つ1~55歳で、食物負荷試験でピーナッツ蛋白100mg以下、その他2つの食物は300mg以下の摂取でアレルギー反応を呈する患者を包含した。 被験者を2対1の割合で無作為化し、オマリズマブまたはプラセボを2~4週に1回16~20週間、体重とIgE値に基づく用量で皮下投与した。その後、負荷試験を再度行った。 主要エンドポイントは、ピーナッツ蛋白を1回600mg以上、用量制限を要する症状なしに摂取することとした。重要な副次エンドポイントは3つで、カシューナッツ、牛乳、卵をそれぞれ1回1,000mg以上、用量制限を要する症状なしに摂取することとした。 この第1段階の評価を完了した最初の60例(うち59例が小児または思春期児)は、24週間の非盲検延長試験に登録された。主要エンドポイント達成、オマリズマブ群67% vs.プラセボ群7% 462例がスクリーニングを受け、180例が無作為化された。解析には、小児・思春期児(1~17歳)177例が含まれた。 主要エンドポイントを達成したのは、オマリズマブ群79/118例(67%)、プラセボ群4/59例(7%)だった(p<0.001)。 重要な副次エンドポイントの結果も主要エンドポイントの結果と一致しており、カシューナッツ摂取ではオマリズマブ群41% vs.プラセボ群3%、牛乳はそれぞれ66% vs.10%、卵は67% vs.0%だった(すべての比較でp<0.001)。 安全性のエンドポイントは、オマリズマブ群がプラセボ群に比べ注射部位反応が多かったことを除き、群間差は認められなかった。

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