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日本における小児に対する抗精神病薬処方の動向

 統合失調症は、幻覚・妄想やその他の症状を特徴とする精神疾患である。日本においても統合失調症の治療ガイドラインが確立されているが、小児患者に対する薬物療法は推奨されていない。さらに、小児統合失調症患者に対する抗精神病薬の処方傾向は、あまりよくわかっていない。東北医科薬科大学病院の菊池 大輔氏らは、2015~22年の日本における小児外来患者に対する抗精神病薬の処方動向を明らかにするため、本研究を実施した。その結果、日本では小児統合失調症に対して、主にアリピプラゾールとリスペリドンが処方されており、アリピプラゾールの処方割合が時間の経過とともに有意に増加していることを報告した。Journal of Pharmaceutical Health Care and Sciences誌2024年1月2日号の報告。 対象は2015年1月1日~2022年12月31日に、急性期地域医療連携病院を受診した0~18歳の統合失調症患者。2023年11月時点での日本人小児外来患者の管理データを分析した。対象薬剤は、2022年12月時点に日本で発売されている統合失調症の適応を有する薬剤とした。期間中の抗精神病薬の年間処方傾向は、その割合に応じて算出した。各抗精神病薬の処方割合の評価には、Cochran-Armitageの傾向検定を用いた。 主な結果は以下のとおり。・小児統合失調症患者に対して主に処方されていた抗精神病薬は、アリピプラゾールとリスペリドンであった。・男性患者では、アリピプラゾールの処方割合が21.5%(2015年)から35.9%(2022年)へ有意な増加が認められた(p<0.001)。一方、リスペリドンの処方割合は、47.9%(2015年)から36.7%(2022年)へ有意な減少が認められた(p<0.001)。・女性患者においても、男性と同様に、アリピプラゾールの処方割合が21.6%(2015年)から35.6%(2022年)へ有意に増加し(p<0.001)、リスペリドンの処方割合は、38.6%(2015年)から24.8%(2022年)へ有意に減少していた(p<0.001)。

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小児・思春期の2価コロナワクチン、有効性は?/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する2価mRNAワクチンについて、小児・思春期(5~17歳)へのSARS-CoV-2感染および症候性COVID-19に対する保護効果が認められることが示された。米国疾病予防管理センター(CDC)のLeora R. Feldstein氏らが、3つの前向きコホート試験に参加した約3,000例のデータを解析し報告した。米国では12歳以上については2022年9月1日から、5~11歳児については同年10月12日から、COVID-19に対する2価mRNAワクチンの接種を推奨しているが、その有効性を示す試験結果は限られていた。著者は、「今回示されたデータは、小児・思春期へのCOVID-19ワクチンの有益性を示すものである。対象となるすべての小児・思春期は、推奨される最新のCOVID-19ワクチン接種状況を維持する必要がある」と述べている。JAMA誌2024年2月6日号掲載の報告。米国計6ヵ所で集めたデータを統合し解析 研究グループは、米国で行った3つの前向きコホート試験(計6ヵ所で実施)の2022年9月4日~2023年1月31日のデータを統合し、5~17歳の小児・思春期におけるCOVID-19に対する2価mRNAワクチンの有効性を推定した。被験者総数は2,959例で、定期的サーベイ(人口統計学的・世帯特性、慢性疾患、COVID-19症状を調査)を行った。サーベイでは、症状の有無にかかわらず自己採取した鼻腔ぬぐい液スワブを毎週提出してもらい、また症状がある場合には追加の同スワブを提出してもらった。 ワクチン接種の状況は定期的サーベイで集め、州の予防接種情報システムや電子カルテで補完した。 採取したスワブを用いてRT-PCR検査でSARS-CoV-2ウイルスの有無を調べ、症状の有無にかかわらず陽性はSARS-CoV-2感染と定義した。検体採取から7日以内に2つ以上のCOVID-19症状がある検査陽性例を、症候性COVID-19と定義した。 COVID-19 2価mRNAワクチン接種者と、非接種者または単価ワクチンのみ接種者について、Cox比例ハザードモデルを用いてSARS-CoV-2感染や症候性COVID-19のハザード比を算出。年齢や性別、人種、民族、健康状態、SARS-CoV-2感染歴、試験地別の流行型の割合、地域ウイルス感染率などで補正を行い評価した。感染率は2価ワクチン群0.84/1,000人日、非2価ワクチン群1.38/1,000人日 被験者2,959例のうち、女子は47.8%、年齢中央値は10.6歳(四分位範囲[IQR]:8.0~13.2)、非ヒスパニック系白人は64.6%だった。COVID-19 2価mRNAワクチンを1回以上接種したのは、25.4%だった。 試験期間中、SARS-CoV-2感染が確認されたのは426例(14.4%)だった。このうち184例(43.2%)が症候性COVID-19を有した。426例の感染者のうち、383例(89.9%)はワクチン未接種または単価ワクチンのみ接種者で(SARS-CoV-2感染率1.38/1,000人日)、43例(10.1%)が2価mRNAワクチン接種者だった(同感染率0.84/1,000人日)。 SARS-CoV-2感染に対する2価mRNAワクチンの有効性は、54.0%(95%信頼区間:36.6~69.1)で、症候性COVID-19に対する同有効性は49.4%(22.2~70.7)だった。 ワクチン接種後の観察期間中央値は、単価ワクチンのみ接種者は276日(IQR:142~350)だったのに対し、2価mRNAワクチン接種者は50日(27~74)であった。

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2月14日 予防接種記念日【今日は何の日?】

【2月14日 予防接種記念日】〔由来〕1790(寛政2)年の今日、秋月藩(福岡県朝倉市)の藩医・緒方春朔が、初めて天然痘の人痘種痘を行い成功させたことから、「予防接種は秋月藩から始まった」キャンペーン推進協議会が制定した。関連コンテンツインフルエンザ【今、知っておきたいワクチンの話】肺炎球菌ワクチン【今、知っておきたいワクチンの話】インフルエンザワクチン(1)鶏卵アレルギー【一目でわかる診療ビフォーアフター】コロナワクチン、2024年度より65歳以上に年1回の定期接種へ/厚労省新型コロナワクチン、午前に打つと効果が高い?

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英語で「慎重かつ前向きに」は?【1分★医療英語】第117回

第117回 英語で「慎重かつ前向きに」は?《例文1》 Let's prepare for the worst and hope for the best.(最悪の事態に備えて準備して、最善を祈りましょう)《例文2》He always has a glass-half-full mentality and never pessimistic.(彼は常に「コップが半分満たされている」という精神でいて、決して悲観的にならない)《解説》“cautiously optimistic”は英語の頻用表現です。“optimistic”は前向き、楽観的という意味で、“pessimistic”(悲観的)の対語です。医療現場では気軽に楽観的な言葉を掛けられない深刻な状況もありますが、「そんな状況でも患者さんを励ましたい」という場面で使うことができます。“cautiously”と前置きすることで、「医師として最大限に慎重に対応はしているが、そのうえで前向きに希望を持って臨みたい」という気持ちを伝えることができます。類似表現として、例文に示した“prepare for the worst and hope for the best”も同じような状況・意図で使われます。英語表現では楽観的・悲観的という性格を、“glass-half-full mentality” or “glass-half-empty mentality”と呼ぶことがあります。これは、水が半分入ったコップを見たときに、楽観的な人は「コップは半分まで満ちている」と言い、悲観的な人は「コップは半分まで空になっている」と言う、という逸話に由来します。講師紹介

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神経発達障害リスク、中等度/後期早産児で高い/BMJ

 正期産(在胎期間39週0日~40週6日)で出生した子供と比較して、中等度早産(同32週0日~33週6日)および後期早産(同34週0日~36週6日)で出生した子供は、有害な神経発達アウトカムのリスクが高く、このリスクは在胎週数32週から41週まで徐々に低下することが、スウェーデン・カロリンスカ研究所のAyoub Mitha氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2024年1月24日号で報告された。スウェーデンの128万人の子供のコホート研究 本研究は、異なる在胎週数で出生した子供における長期的な神経発達アウトカムの評価を目的とするスウェーデンの全国規模のコホート研究である(スウェーデン・カロリンスカ研究所研究基金などの助成を受けた)。 解析には、Swedish Medical Birth Registerといくつかの全国的な登録システムのデータを用いた。対象は、1998~2012年に、在胎期間32週0日~41週6日の単胎の生児として出生し、先天奇形のない子供128万1,690人であった。 主要アウトカムは、16歳までに診断された運動障害、認知障害、てんかん発作、視覚障害、聴覚障害、およびあらゆる神経発達障害の複合であった。神経発達障害は1万人年当たり47.8人で発生 7,525人(0.6%)が在胎週数32~33週(中等度早産)、4万8,772人(3.8%)が同34~36週(後期早産)、25万7,591人(20.1%)が同37~38週(早期正期産)、71万3,952人(55.7%)が同39~40週(正期産)、25万3,850人(19.8%)が同41週(後期正期産)に出生した。 追跡期間中央値は13.1年(四分位範囲[IQR]:9.5~15.9)で、この間に7万5,311人(47.8人/1万人年)の子供が、少なくとも1回の神経発達障害の診断を受けた。内訳は、運動障害が5,899人(3.6人/1万人年)、認知障害が2万7,371人(17.0人/1万人年)、てんかん発作が1万1,870人(7.3人/1万人年)、視覚障害が1万9,700人(12.2人/1万人年)、聴覚障害が2万393人(12.6人/1万人年)であった。同胞比較解析でも、ほぼ同様の関連性 あらゆる神経発達障害の複合リスクは、正期産児と比較して、中等度早産児(ハザード比[HR]:1.73[95%信頼区間[CI]:1.60~1.87]、リスク群間差:4.75%[95%CI:3.88~5.60])および後期早産児(1.30[1.26~1.35]、2.03%[1.75~2.35])で高かった。 同様に、運動障害、認知障害、てんかん発作、視覚障害、聴覚障害、重度障害のリスクはいずれも、正期産児に比べ中等度早産児および後期早産児で高かった。 また、運動障害、認知障害、てんかん発作、視覚障害、聴覚障害、あらゆる神経発達障害の複合、重度障害のリスクはいずれも、在胎週数32週に出生した子供で最も高く、41週まで徐々に低下しており、正期産(在胎週数39~40週)と比較して早期正期産(同37~38週)の子供で高かった。 一方、同胞比較解析(34万9,108人)では、在胎週数とてんかん発作および聴覚障害には関連がなかったが、これらを除けば、在胎週数と神経発達障害の関連性は安定的に維持されていた。 著者は、「これらの早産児は、早産児全体の中でも大きな割合を占めるため、絶対リスクが小さくても過小評価すべきではない。今回の知見は、医療従事者と家族が中等度/後期早産児のリスク、フォローアップ、医療システム計画のより良い評価を行うのに役立つだろう」としている。

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事例041 コレクチム軟膏の査定【斬らレセプト シーズン3】

解説2ヵ月以上湿疹の続く乳児をアトピー性皮膚炎と診断し、デルゴシチニブ(商品名:コレクチム)軟膏を処方したところ、C事由(医学的理由による不適当)が適用されて査定となりました。査定理由を調べるために添付文書を参照してカルテと照らし合わせました。用法および用量、関連する注意に記載されている範囲内で使用されていました。ここまでにおいて査定の理由が見当たりません。さらに読み進めると、「9.特定の背景を有する患者に関する注意」の「9.7小児等」に、「低出生体重児、新生児及び6か月未満の乳児を対象に、有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない」と記載がありました。言い換えると「6か月未満の乳児等には安全性が認められていない」ことが注意書きされていたのです。患者は6ヵ月未満の乳児です。使用月齢に達していないことを理由に査定となったことが推測できます。コンピュータ審査において添付文書の奥深くまで審査ロジックが組まれていることに驚きを禁じ得ませんでした。医師には、このことを伝え、調剤システムに使用月齢制限を登録して査定対策としました。

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ADHD治療薬、長期使用のデメリットに心血管疾患リスク増大

 注意欠如・多動症(ADHD)の罹患者数は過去数十年で大幅に増加しており、治療薬の処方もそれに伴い増加している。ADHD治療薬には心拍数・血圧の上昇との関連が報告されているが、これに関し、重大な心血管疾患(CVD)との関連を調査した研究結果が発表された。スウェーデン・カロリンスカ研究所のLe Zhang氏らによる本研究の結果は、JAMA Psychiatry誌2024年2月1日号に掲載された。ADHD治療薬の長期服用が高血圧と動脈疾患のリスク増加と関連 2007~20年にスウェーデン国内でADHD診断を受けた、または同国で承認されたADHD治療薬である精神刺激薬(メチルフェニデート・アンフェタミン・デキストロアンフェタミン・リスデキサンフェタミン)および非精神刺激薬(アトモキセチン・グアンファシン)のいずれかの処方を受けた6~64歳の患者を対象に、ADHD治療薬の長期使用とCVD(虚血性心疾患・脳血管疾患・高血圧・心不全・不整脈・血栓塞栓症・動脈疾患・その他の心疾患)の関連を調査した。CVDの既往歴がある患者は除外され、ADHD治療薬の累積使用期間は14年以内であった。 ADHD治療薬と重大な心血管疾患との関連を調査した主な結果は以下のとおり。・CVDを発症した1万388例(年齢中央値34.6歳、男性59.2%)を同定し、CVDを有さない対照者5万1,672例とマッチさせた。両群の追跡期中央値は4.1年だった。・ADHD治療薬の使用期間が長いほど、非使用者と比較したCVDリスクが増加していた。(使用期間1~2年の調整オッズ比[aOR]:1.09、3~5年:1.27、5年超:1.23)。・ADHD治療薬の長期使用は高血圧(5年超のaOR:1.80)、動脈疾患(5年超のaOR:1.49)のリスク増加と関連していた。・14年の追跡期間全体では、ADHD治療薬の使用期間が1年延長するごとにCVDリスクが4%増加し、最初の3年は8%とより大きなリスク増加が見られた。小児および青年(25歳未満)、成人(25歳以上)において同様のパターンが観察された。 研究者らは「この症例対照研究では、ADHD治療薬の長期服用がCVD、とくに高血圧と動脈疾患のリスク増加と関連していることが明らかになった。これらの所見は、ADHD治療薬の長期使用について治療方針を決定する際に、潜在的な利益とリスクを慎重に比較検討することの重要性を強調するものである。臨床医は治療期間中、定期的かつ一貫して心血管系の徴候や症状をモニタリングすべきである」と結論付けている。

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母乳最低限の超早産児の神経発達、ドナーミルクvs.早産児用粉ミルク/JAMA

 最小限の母乳しか与えられなかった超早産児は、ドナーミルクまたは早産児用粉ミルクのいずれを与えられても、修正月齢22~26ヵ月時点の神経発達アウトカムに差異は認められなかった。米国・アイオワ大学のTarah T. Colaizy氏らが、Eunice Kennedy Shriver National Institute of Child Health and Human Development Neonatal Research Networkに参加している米国の大学医療センター15施設で実施した無作為化二重盲検臨床試験「MILK試験」の結果を報告した。出生後入院中の超早産児の母乳育児は、早産児用粉ミルクと比較して神経発達の良好なアウトカムと関連しているが、母乳をまったく与えていない、または最小限しか与えていない超早産児において、ドナーミルクが早産児用粉ミルクと同様の神経発達上の利点をもたらすかは不明であった。JAMA誌オンライン版2024年1月30日号掲載の報告。修正月齢22~26ヵ月でのBSID認知スコアを比較 研究グループは、2012年9月7日~2019年3月13日に、生後7日未満で参加施設に入院した在胎週数29週0日未満または出生時体重1,000g未満の新生児を登録した。主な登録基準は、(1)出産した母親が授乳を開始していない、(2)授乳は開始されたが出産後21日以前に母親が搾乳を中止、(3)出生後7~21日の間、母乳供給量が最小限(5日間の平均母乳量が3オンス/日以下)であった。 登録した新生児をドナーミルク群または早産児用粉ミルク群に無作為に割り付け、無作為化から生後120日時点か死亡または退院のいずれか早い日まで与えた。母乳の基準が満たされていれば、生後21日目までいつでも無作為化できるとした。 主要アウトカムは、修正月齢22~26ヵ月で測定されたBayley乳幼児発達検査(BSID)の認知スコアとした。無作為化から修正月齢22~26ヵ月の間に死亡した乳児には、54ポイント(スコア範囲:54~155、≧85は神経発達の遅れがないことを示す)を割り当てた。副次アウトカムは、BSIDの言語および運動スコア、院内での成長、壊死性腸炎、死亡などを含む24項目であった。修正月齢22~26ヵ月の追跡調査終了日は2021年11月15日であった。ドナーミルク群と早産児用粉ミルク群で神経発達アウトカムに有意差なし 適格新生児1,965例のうち、483例が無作為化された(ドナーミルク群239例、早産児用粉ミルク群244例)。在胎週数中央値は26週(四分位範囲[IQR]:25~27)、出生時体重中央値は840g(IQR:676~986g)、女児52%であった。出産した母親の人種は、自己申告で黒人52%(247/478例)、白人43%(206/478例)、その他5%(25/478例)であった。 追跡調査前に死亡した乳児は54例だった。生存乳児の88%(376/429例)は、修正月齢22~26ヵ月で評価された。 調整平均BSID認知スコアは、ドナーミルク群80.7(SD 17.4)、早産児用粉ミルク群81.1(SD 16.7)、補正後平均群間差は-0.77(95%信頼区間[CI]:-3.93~2.39)で、両群間に有意差はなかった。補正後平均BSID言語スコアおよび運動スコアにも有意差は認められなかった。 死亡率(追跡調査前の死亡)は、ドナーミルク群13%(29/231例)、早産児用粉ミルク群11%(25/233例)であった(補正後群間リスク差:-1%、95%CI:-4~2)。壊死性腸炎は、ドナーミルク群では4.2%(10/239例)に発生したが、早産児用粉ミルク群では9.0%(22/244例)に発生した(-5%、-9~-2%)。 体重増加は、ドナーミルク群22.3g/kg/日(95%CI:21.3~23.3)、早産児用粉ミルク群24.6g/kg/日(23.6~25.6)で、ドナーミルク群のほうが緩徐であった。

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映画「かがみの孤城」(その3)【この城が答えだったんだ!(不登校への学校改革「かがみの孤城プロジェクト」)】Part 1

今回のキーワード目的評価距離感工場型一斉授業飛び級・「留級」グループワークブレンディッド・ラーニング不登校特例校前々回(その1)では、不登校の心理を掘り下げ、学校にしてもフリースクールにしてもただ居場所であるだけでは不十分である理由を説明しました。前回(その2)では、不登校へのペアレントトレーニングを紹介し、家で子供に好きなことをさせるだけでは不十分である理由も説明しました。それでは、これらを踏まえて、なぜこころたちは城には通えているのでしょうか? つまり、学校とこの城との違いは何でしょうか?今回(その3)も、不登校をテーマに、アニメ映画「かがみの孤城」を取り上げます。この映画を通して、これからの学校に必要な機能を明らかにします。そして、「かがみの孤城プロジェクト」と勝手に名づけ、不登校を解決するための抜本的な学校改革をご提案します!さらに、いきなりの改革に戸惑いや抵抗を感じる関係者の方々に考慮して、このプロジェクトをスムーズに進めるための第一歩を最後にご提案します。なんで城には通えているの?こころは、フリースクールにさえ行けなかったのに、他の6人と同じように、城にはほぼ毎日、自分から通うようになります。なぜでしょうか? ここから、学校やフリースクールになくて城にあった、ある「仕組み」を主に3つ挙げて、その理由を考えてみましょう。(1)願いを叶えるという目的がある―自我を育むこころたちが城に運ばれた時、狼の仮面をかぶった謎の案内人の女の子が、城に隠された鍵を探し出せば、願いが叶うことを伝えます。さらにその子は、「夢がないなあ、おまえたち。物語の主人公に選ばれたって思わないのか」「おまえたち、願いごとってないの?」「まあ、ないならないで構わないが」と言って煽ります。1つ目の仕組みは、願いを叶えるという目的があることです。これが、こころたちが城に通うようになった一番の理由です。こころの当初の願いごとは、「真田さん(いじめグループのリーダー)がいなくなってほしい」という短絡的で自己中心的なものでした。現実的には、その「真田さん」がいなくなったとしても、思春期の集団心理のなかですぐに第2の「真田さん」が現れるので、本当に願いが叶うわけではありません。それでも最初はそれで良いのです。結果的に、城に通うようになったからです。そして、城という「学校」に通うなかで、彼女の願いごとが「自分のため」から「大切な誰かのため」、つまりより社会的な自我(アイデンティティ)を育むものに変わっていったからです。この願いごとを叶えるとは、大人になって社会で自分が望むように生きていくこと、つまり自我同一性(アイデンティティ)の確立と言い換えられます。これは、案内人の女の子の言うところの「夢」であり、人生という「物語の主人公」になることです。一方で、現実の学校はどうでしょうか? 学校に行くのは、大人になって社会でどう生きていくかを学ぶという本質的な目的よりも、より偏差値の高い高校、より有名な大学に合格するという目先の目的になっています。もちろん、学校としても、それを親(社会)が望むことを忖度しているからです。結局、親だけでなく、学校も、自分の人生に責任を持つ必要があるという思春期に達成するべき一番の目的を軽視していることがわかります。(2)先に鍵を見つけられるかという評価がある―自信を育む謎の案内人の女の子は、「今日から来年の3月30日までにその鍵を探し出してもらわねばならない」「要は早い者勝ちだ。誰かが鍵を見つけて願いを叶えたら、その時点でゲームオーバー」と言います。するとその後に、彼らはお互いに隠れてその鍵を必死に探すようになっていたのでした。2つ目の仕組みは、先に鍵を見つけられるかという評価があることです。これは、競争原理であり、城になるべく通う動機づけになっています。そして、自分こそが探し出すという自信を引き出します。もはや、そうしなくてもいいのにそうさせてもらえる点で、義務ではなく権利になります。なお、ちょうど3月という年度替わりが期限になっており、進級を象徴しているようでもあります。一方で、学校はどうでしょうか? 学校でも成績表という評価は存在しますが、ただ存在するだけです。その成績をもとに、達成度別のクラス分けをすることはありません。授業に出席していなくても、小学校や中学校は自動的に進級します。高校進学は基本的に一発勝負であるため、学校の成績表は軽視されます。保健室やフリースクールへの登校で出席扱いにできる措置もあり、高校への進学の内申点にあまり影響がないように配慮されている場合もあります。つまり、何を学んだかという中身よりも、とりあえず学校(またはフリースクール)に来る、そして教室に座っているという形式に重きが置かれています。もちろん、学校としても、それを親(社会)が望むことを忖度しているからです。結局、学校は、配慮を優先して、達成しなかったら認めないという評価を避けてしまっていることがわかります。(3)ほどほどに仲良くなれるという距離感がある―自尊心を育む城に通える選ばれし7人は、男子4人と女子3人で、中1が3人、中2が2人、中3が2人でした。さらに、それぞれの個性が際立っていました。そして、城には、全員が集まることができる大広間、中庭、屋上とは別に、それぞれの個室が用意され、9時から17時の間なら、だれがいつ来てもいつ帰っても良いルールになっていました。ちなみに、そのルールを破った場合は、「狼に食われる」というとんでもないペナルティもありました。こころは、「どんな願いを叶えたいのって聞きたかったけど。聞けない。私も聞かれたくなかったし」「学校行ってないのって誰も聞かない。それが心地いい」「なんか和む」と心の中でつぶやいています。だんだん顔を合わせていくうちに仲良くなり、お互いの境遇を気にかけるようにもなります。やがて、あるメンバーが「お互いライバルだけど、もし見つかったら、誰がどんな願いを叶えたいかって話し合って、くじ引きかジャンケンで決めてもいいかなって」と言い出し、鍵探しの場所を分担し、協力するようになります。また、願いごとが叶うとその時点で城がなくなってしまうことを案内人の女の子から聞かされていたため、別のメンバーが「たとえ鍵を見つけたとしても、それは3月の末まで使わない」と提案して、全員の合意のもとで取り決めをするなど、自分たちでルールをつくっていました。3つ目の仕組みは、ほどほどに仲良くなれるという距離感があることです。この距離感とは、少人数に絞られた集団で、男女の違い、学年の違い、個性の違いという心理的な距離(多様性)、個室にもいられるという空間的な距離(開放性)、いつでも出入りが自由という時間的な距離(流動性)です。不登校で鍵探しをするという共通点がある一方、これらの距離により、ほどほどの関係を保つことができます。そして、協力関係から信頼が生まれ、自尊心を育みます。一方で、学校の教室はどうでしょうか? 基本的に同じ学年で同じ制服(見た目)という心理的な近さ(均一性)、保健室しか逃げ場がなく教室に閉じ込められているという空間的な近さ(閉鎖性)、一日中ずっと一緒にいなければならないという時間的な近さ(固定性)があります。この条件は、その近さから、「ほどほど」ではなく「べたべた」の仲良しになろうとする心理(同調)を煽ります。そして、同時に、そうならない人を仲間外れにしようとする心理(排他性)も煽られ、結果的にいじめのリスクを高めます。次に誰がいじめのターゲット(スケープゴート)になるかを探り合ってばかりで、煮詰まって息苦しいです。これは、一緒にいて協力する目的がはっきりしていないのに、一緒にいなければならない状況をつくってしまうと、協力するための目的を無意識につくり上げてしまう心のメカニズム(社会脳)によるものです。たとえば、もしもあの城に願いを叶えるという目的の仕組みがなくて、毎日強制的に運ばれる仕組みになっていたら、どうでしょうか? 「天然キャラ」(非定型発達)の男子あたりがまずいじめのターゲットになっていたことは容易に想像できるでしょう。つまり、一緒にいるから協力するのではなく、協力するから一緒にいることができるのです。重要なことは、結果的に居場所になることであり、最初から居場所を目指すことは危ういということです。この点で、学校にしてもフリースクールにしても、ただ居場所であることを強調することは、逆説的にも居場所にならなくなってしまうおそれがあることもわかります。ちなみに、もしも城に通える生徒が7人に限定されずに、学校のクラスのように大人数だったら、どうでしょうか? 結局少人数グループがいくつかできて、その中であぶれた人が「ぼっち」のレッテルを貼られ、やはり通えなくなっていたでしょう。だからこそ、最初から少人数に限定されていたのです。この点でも、「かがみの孤城」の設定はよくできています。結局、学校は、生徒たちの近すぎる距離により、居場所であるどころか、サバイバルの戦場になっていることがわかります。なお、排他性の心理の詳細については、関連記事1をご覧ください。次のページへ >>

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映画「かがみの孤城」(その3)【この城が答えだったんだ!(不登校への学校改革「かがみの孤城プロジェクト」)】Part 2

これからの中学校に必要な機能とは?こころたちが城に通うようになったのは、願いを叶えるという目的がある、先に鍵を見つけられるかという評価がある、ほどほどに仲良くなれるという距離感があるからであることがわかりました。そして、これらの仕組みは、学校にはないことがわかりました。これを踏まえて、とくにこれからの中学校はどう変わればいいでしょうか? 私たちの現実の世界で、「かがみの孤城」のような中学校をどうつくることができるでしょうか? ここから、「かがみの孤城プロジェクト」と称して、これからの中学校に必要な機能を主に3つご提案します。(1)学校に行く目的を意識させる―自我を育む1つ目の機能は、学校に行く目的を意識させることです。その1でも説明したとおり、小学校までは「親に言われるから」「友達に会えるから」という理由で、学校に行っていました。しかし、中学校からは、これだけではなく、学校に行く目的を自分で納得する必要があります。これは、自分は何を学んでどうなりたいかという自我を育みます。そのための具体的な取り組みを主に3つ挙げてみましょう。a.ビジョンを共有する学校では、従来から「将来の夢」を書かせることはよくあります。ただ、これだけで終わらせないことです。その夢の実現のためのプロセスを具体的に示し、話し合って共有する必要があります。1つ目は、ビジョンを共有することです。これは、大人になったらどうしたいか、どうなりたいか、つまりどうやって生きていきたいかを本人、家族、そして学校が定期的に話し合っており、それを共有していることです。また、学校に行く一番の目的は、なるべく偏差値の高い高校や有名な大学に進学するためではないことも共通認識とする必要があります。その一番の目的は、先ほども触れましたが、大人になって社会で自分が望むように生きていくためです。その結果として、偏差値の高い高校や有名な大学に進学する必要が出てくることはあります。これは、その2でご紹介した家庭でのタイムマシンクエスチョンに通じます。ちなみに、プロスポーツ選手、アイドル、ユーチューバー、ゲームクリエイターなどなかなかなれない職業を言ってきたら、どうしましょうか? その夢は夢で支持しつつも、実際になれる人の数や知名度による収入差を示し、なれなかった時のバックアップのための現実的な職業も考えてもらうことです。思いつかないと言ったら、どうしましょうか? その2でも説明したとおり、いったん本人の強み(リソース)の再確認をして、自尊心や自信を高めます。そして、「やってもいい職業」「嫌いじゃない職業」と言い換え、ハードルを下げて、とりあえず何かの職業を言いやすくすることです。そして、その職業を「仮ビジョン」とすることです。大事なことは、何でもいいからまずビジョンを描くことです。そうすれば、こころの願いごとが最後に変わったように、学校で出会う友達や先生との相互作用によって、仮ビジョンが最終ビジョンに変わっていく可能性を見出せます。逆に、仮ビジョンすらなければ、学校に行く目的を見失ってしまい、最終ビジョンを育むチャンスを逃してしまいます。b.どれだけ学ぶかの自由を与える小学校の教育は、社会で生きていくために必要なものばかりです。一方、高校の教育は、義務教育ではなく、何をどれだけ学ぶかの選択の自由があります。その間の中学校の教育は、現代の情報化社会では必ずしも生きていくために必要なものばかりではないのに、義務教育であるという建前のため、高校のような選択の自由がないです。自由があるとしたら、それは不登校という一択だけです。2つ目は、どれだけ学ぶかの自由を与えることです。これは、本人のビジョンに合わせて、何をどれだけ学ぶかの多様性(自由)を認めることです。学びのトータルの時間を変えずに、そのバランスを選ばせるということです。もちろん、従来の標準的な各科目の授業時間数は基準として示しておけば、従来通りの教育を受けることもできます。たとえば、英語、国語、数学、理科、社会科の各科目の時間数の60%は必修としつつ、残りの40%は選択とすることです。すると、英語をもっと学びたいけど数学は必要最低限で良いという生徒は、数学の40%の時間を英語に回して、英語の授業時間数を増やすことができます。逆に、言語能力がもともと低い場合は、英語が負担になってしまうため、英語の40%の時間を国語に回して、日本語に専念することができます。このプロセスで大事なことは、あえて生徒に選ばせることです。選べばそこに責任が生まれます。これは、学ぶことで責任感を持たせ、学校に行く動機づけを高めます。もともと決められたこととしてやらなければならないという心理(外発的動機づけ)から、自分で決めてやりたいという心理(内発的動機づけ)に変えていくことができます。これは、本人の意思を尊重している点で、大人扱いです。そして、学校に行かないと得るものがないという点で、学校に行くことは義務ではなく権利であるという感覚になります。そして、学校で自分がどうしたいかという自我を育みます。c.学ぶ責任を自覚させる高校では、何をどれだけ学ぶかの自由があると同時に、その学びが期限内に達成されなければ、留年や中途退学という責任が負わされます。先ほどのように、中学校でもどれだけ学ぶかの自由(選択権)をある程度与えるなら、その選んだ責任が生まれると考えることができます。3つ目は、学ぶ責任を自覚させることです。これは、学校に行かないことによる将来のリスクを説明するだけでは限界があります。義務教育であるだけに、やはり社会的な介入が必要になります。たとえば、欠席日数が1ヵ月を超えた時点で、教育委員会や専門医療機関での評価と定期的な心理カウンセリングを義務づけることです。その義務も果たさない場合は、親(養育者)に罰金を課すことです。親としても、罰金を取られたくないという大義名分から、本人に義務を守ることを促すことができます。これも大人扱いです。学校に行かないと面倒が起きて損をするという点でも、本人にその責任を自覚させることができます。ちょうど、車がスピードを自由に出してはいけないという交通ルールがあるのと同じです。子供が教育を受けないで自由にしていてはいけないという「ワークルール」を教える必要があります。教育を受けるとは、何かに取り組むこと(ワーク)であり、働く(ワーク)リハーサルをしているとも言えます。これは、日本国憲法に定められた三大義務のもう1つである「勤労の義務」につながります。交通ルールと同じように、この「ワークルール」も、罰金などのペナルティがあることで、ルールを守る責任を自覚させることができます。(2)評価によって今後を左右させる―自信を育む2つ目の機能は、評価によって今後を左右させることです。その1でも説明したとおり、小学校まではまず居場所であることが重要なため、評価は二の次でした。しかし、中学校からは、積極的に評価して、本人の強み(リソース)を自覚させる必要があります。これは、自信を育みます。具体的な取り組みを主に3つ挙げてみましょう。a.科目別・達成度別にクラスを分ける1つ目の取り組みは、科目別・達成度別にクラスを分けることです。たとえば、1学年で4クラスあるなら、それぞれの科目で4つの達成度別のクラスをつくります。ちょうど、英検や漢検などの資格が細かく級分けされているイメージです。すると、より自分のレベルに合った授業を受けられるため、わからなくて嫌になることも物足りなくて嫌になることもなくなります。そして、学べば学ぶほど、達成した結果が目に見えるため、自信がつきます。これは、その2でご紹介した家庭でのお小遣いルールに通じます。また、この取り組みによって、よく一緒の授業を受ける人が数人いることはあっても、すべての授業を同じ数十人が同じ教室でずっと一緒に受け続けることはなくなります。もはや「〇組」という概念は曖昧になります。すると、クラスの人間関係は流動的となり、先ほど説明した同調性が低くなるので、結果的にいじめのリスクが低くなるという副次的な効果が得られるでしょう。b.クラス替えを年複数回にする2つ目の取り組みは、クラス替えを年複数回にすることです。すると、もしも自分のレベルに合っていないクラスだったり、人間関係でうまく行かなかったとしても、1年我慢して待たなくてよくなります。これは、不登校のリスクを下げるでしょう。たとえば、年度替わりの4月、夏休み明けの9月、冬休み明けの1月でそれまでのクラスの評価をもとにクラス替えを3回行います。冬休み明けの1月を外して、2回にすることもできます。評価には、休み中の課題を加味すれば、その課題の達成率が飛躍的に高まります。人間はやってもやらなくても状況が変わらないのだったらたいていやる気が起きませんが、やっただけ評価され、状況が変わるのであれば、やる気は高まります。この取り組みも、クラスの人間関係をさらに流動的にさせるため、いじめのリスクをさらに低くさせることができるでしょう。c.飛び級・「留級」を可能にする3つ目の取り組みは、飛び級・「留級」を可能にすることです。たとえば、3学年で12クラスあるなら、科目別と達成度別に12のクラスをつくります。達成度によってその生徒に合う授業を受けることを優先することです。もはや、年齢と学年を厳密に一致させる合理性はまったくなくなります。これは、ある生徒がある科目のクラスに出席していなかったりただ教室に座っているだけの場合、その生徒はそのクラスに次の学期(約3ヵ月)に留まること(名づけて「留級」)になります。この状況は、見方によっては「かわいそう」と思われるかもしれません。しかし、よくよく考えると、学んでいないのに自動的に進級させるのは、本人にとってさらに難しい授業を受けさせることになります。むしろこちらの方が「かわいそう」です。また、すべての科目の1年間の留年と違い、1つずつの科目の3ヵ月の「留級」は、そのロスが最低限です。逆に、ある科目のクラスで生徒の学ぶスピードが速いのであれば、次の学期で飛び級にすることは、その生徒により合った授業を提供することになるため、もちろん合理的であり、その生徒のためになります。中学校を半年早く卒業すれば、海外の高校にも進学できます。ただし、これらは本人希望であることが大前提です。本人が望まなければ、大人扱いして本人の意思を尊重します。また、本人があえて「留級」を望む場合も同じです。この取り組みは、科目によっては学年が上がっていたり下がっていたりすることもあることから、もはや「〇学年」という概念も曖昧になるでしょう。ちなみに、欧米では、小学校、中学校での留年率が一定数ある国が多いです。たとえば、留年率が高い国としてはドイツの中学校(15%)、フランスの中学校(30%)です1)。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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映画「かがみの孤城」(その3)【この城が答えだったんだ!(不登校への学校改革「かがみの孤城プロジェクト」)】Part 3

(3)教え合うという役割を与える―自尊心3つ目の機能は、教え合うという役割を与えることです。その1でも説明したとおり、小学校までは不特定多数の友達づくりの心理から、教室にただ一緒にいるだけで居場所になりました。しかし、中学校からは、特定少数の親友づくり(グループ形成)の心理が高まることから、ただ一緒にいるだけでは仲間外れが起こり、居場所になるとは限りません。よって、学校側が一緒にいる理由(役割)を枠組みとしてつくる必要があります。これは、自尊心を育みます。具体的な取り組みを主に3つ挙げてみましょう。a.グループワークをメインにする1つ目の取り組みは、授業はグループワークをメインにすることです。少人数グループに分けて、一人ひとりが学んだことを発表し合い、お互いに教え合います。教師は、教え合うテーマを出して、簡単なガイダンスをすることはあっても、一方的に教えるのを控え、サポートに徹します。これは、まさに映画に登場する案内人の女の子の立ち位置です。逆に言えば、ただ教室に座っているだけの生徒は評価されないことになります。教室で発言しようとする態度とその発言内容が評価されます。生徒たちもお互いにどれだけ学んでいるかがわかり、評価もオープンなものになります。すると、授業中に寝る生徒はいなくなるでしょう。寝るなら、評価されないだけだからです。これは、わざわざ寝ている生徒を起こす必要がなくなり、教師にとっても楽になります。なお、教え合うにはやはり達成度が同じレベルであることが必要になります。同じでなければ、教え合ってもわかり合えないという事態が起きるからです。この取り組みは、アクティブ・ラーニングとも呼ばれています。この詳細は、関連記事2のページの最後をご覧ください。b.オンラインによる個別学習にする2つ目の取り組みは、オンラインによる個別学習です。これは、グループワークの前に自習時間を設け、各自で予習をすることです。教えるためには、やはりまず教わる必要があります。ただし、教わる場所や教師は、同じである必要はありません。場所は、図書室、空き教室、自宅などで自由とします。その内容は、すでに収録された授業をストリーミング動画でいつでも視聴できるようにします。また、教える先生は、グループワークと同じ先生ではなく、別の学校の先生でも、学習塾の先生でも可能とします。どの先生にするか、生徒に選ぶ自由(選択権)を与えるのです。これも、大人扱いです。そもそも、現代の情報化社会でICTが高度に発展しているなか、大人数が教室という1ヵ所に集まって、決まった教師が話すことを一方的に聞いて、黒板を静かに書き写す作業を1日中続けることは、何の合理性もないです。これは、海外の教育学者から「工場型一斉授業」と指摘されています2)。まさに、商品がベルトコンベヤーに並べられて自動的に作り込まれていくのと同じように、生徒たちが教室に並べられて有無を言わさずに一方的に知識を詰め込まれるイメージです。オンライン個別学習によって、1人の教師の授業動画を数百万人の生徒に共有できるようにすれば、残りのほとんどの教師はグループワークの授業だけになり、時間と労力が相当数浮きます。その分、グループワークの授業に専念できますし、グループワークに複数の教師を配置することもできます。そして、もともとの教師不足という社会問題の打開策にもなります。また、科目別・達成度別のクラスを複数維持するためには、選択したいクラスがバッティングしないように予備の時間(自習時間)を増やす必要があります。その時間にオンライン個別学習を当てれば、この問題は解消されます。なお、オンライン学習(学習インプット)+グループワーク(学習アウトプット)は、ブレンディッド・ラーニングと呼ばれ、すでに米国で広がりつつあります2)。ちなみに、オンライン個別学習だけで、すでにホームスクーリング(家庭学習)の役割を果たしていることにもなります。ちなみに、テストも個別学習と同じように、オンライン化していつでもどこでも受けられるようにします。生成AIを導入すれば、オンラインで面接テストも可能です。成績表(評価)を自動算定できるようにします。これらの取り組みは、生徒だけでなく、教師の労力も大幅に減らすことができます。もはや、教室という空間は、生徒たちが静かに座っている場ではなく、生徒たちが活発に話し合って動き回って相互作用する場にしかしないようにするのです。この取り組みも、自習時間がクラスの人間関係から解放される時間になり、逆に「ぼっち」がありふれたものになるため、もはや「ぼっち」というレッテルを貼るいじめはなくなるでしょう。c.校則を生徒たちの投票によって決める3つ目の取り組みは、校則を生徒たちの投票によって決めることです。これは、かがみの孤城で7人が話し合いによってルールを決めていたように、自分たちの学校生活のルールを話し合い、投票によって決めるのです。そのためには、生徒会が真の役割を発揮するでしょう。これは、民主主義の基本を学ぶことにもなります。条例が法律に則っていれば有効であるのと同じように、校則も法律や条例に則っていれば有効です。すると、制服や髪型の規制をはじめとする不合理な「ブラック校則」はすぐになくなるでしょう。これは、その2でご紹介した家庭のルールづくりの交渉制に通じます。この取り組みは、生徒一人ひとりに票があるという点で、自尊心を育みます。また、選ぶという行為によって、自我が高まります。かがみの孤城プロジェクト」をスムーズに進めるには?こころたち7人の共通点は、不登校でした。当初、だから城に集められたと私たちは思い込んでいました。ネタバレになるため詳細は避けますが、彼らが城に集められたのは、ある別の目的によって不登校であることが都合良かったからなのでした。この映画の設定と同じようにすれば、「かがみの孤城プロジェクト」を実験的にスムーズに進めることができます。ここから、3つの段階に分けてご提案します。(1)第1段階第1段階は、すでに不登校になっている中学生を全国から募り、個別学習だけでなくグループワークもオンラインにすることです。まさに、パソコンやスマホの画面という「かがみ」を通して、グループワークという「孤城」に参加するのです。こころたちと同じように、新しい人間関係になるため、もともとのクラスに戻るよりも引け目がない分、ずっと参加しやすいでしょう。そもそも、彼らは、たいてい昼に家にいます。そして、不登校であるため、学習指導要領に縛られるという問題は起きません。つまり、不登校に対して規制がないことを逆手に取るのです。これは、不登校の生徒たちだからこそ実現できる学校改革です。そして、これがこのプロジェクトをスムーズに進めるための第一歩です。これだと、戸惑いや抵抗を感じる関係者の方々は少ないでしょう。すでに、「不登校特例校」でオンライン授業を2025年から開始する構想があります。この構想にこのプロジェクトが結びつくことが理想でしょう。(2)第2段階第1段階で枠組みが整えば、第2段階は、募集対象を不登校になりそうな子供、希望する子供まで広げることです。また、地域のフリースクールや学習塾と連携することです。そうすれば、オンラインから、オフライン、つまり実際のこれらの教室でもグループワークに段階的に参加する頻度を増やすことができるでしょう。グループワークで重要なのは、オンラインはあくまで橋渡しの位置づけで、最終的には生身の人間関係にも慣れていく必要があることです。なぜなら、在宅ワークが増えたとはいえ、やはり社会の仕組みが対面の人間関係に重きを置いているからです。そして、これが私たちの本来の姿(社会脳)だからです。(3)最終段階第2段階で規模が大きくなっていけば、最終段階は、すべての生徒たちに、いままでどおり学校に行くか、それともプロジェクトに参加するかを選ばせることです。また、プロジェクトに参加してグループワークの授業をする教師を学校の教師からも募集することです。プロジェクト参加を希望する生徒や教師がどんどん増えれば、必然的に学校からどんどん生徒や教師が減っていきます。すると、学習指導要領をはじめとする学校の仕組み自体を大きく見直す必要に迫られるでしょう。これが、学校改革のタイミングです。そして、学校が「かがみの孤城プロジェクト」そのものになる日が来るでしょう。その時、問題なのは、不登校の生徒ではなく、不登校を招く学校のあり方であったことに気付くでしょう。なお、このプロジェクトは、中学校の科目全般で進めるだけでなく、小学校の英語教育でも進めることができます。この詳細については、関連記事3をご覧ください。1)「教育は何を評価してきたのか」P49:本田由紀、岩波新書、20202)「ブレンディッド・ラーニングの衝撃」P14、P37:マイケル・B・ホーンほか、教育開発研究所、2017<< 前のページへ■関連記事マザーゲーム(前編)【ママ友付き合い、なんで息苦しいの?(「女心」の二面性)】Part 1クレヨンしんちゃん【ユーモアのセンス】Part 2NHKラジオ「小学生の基礎英語」【和製英語教育」から抜け出せる?日本人がバイリンガルになった未来とは?(言語政策)】Part 1

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第83回 反ワクチンは左派が多い?

illustACより使用SNSでは反ワクチン・反マスク・反医療などが話題になりました。ある程度弱毒化したため、COVID-19のワクチンも以前ほど取り上げられなくなりました。医療従事者でも、もう接種していない人であっても普通に働いている印象です。さて、X(旧Twitter)を使った興味深い研究結果が報告されました1,2)。ズバリ、「反ワクチンは左派が多い」というものです。個人的には右派だろうと左派だろうと、どちらでもいいのですが、SNSでは結構バズっているので取り上げてみました。とはいえ、反ワクチンにも幅があります。何となく心配だから…という人の気持ちはよくわかります。「殺人ワクチンや!」みたいなことを叫んでいる人は、ガチの反ワクチンでよいと思います。そういう方は、攻撃的なアカウントのことが多く、私も職場にいくつか誹謗中傷のお手紙が届きました。風の噂では、「ワクチン接種をやめろ」とカッターナイフが職場に届いた医師もいるそうです。さて、この研究は、2021年1~12月にワクチンを含んだツイート(現在は「ポスト」といいます)を収集して、機械学習を用いて「ワクチン賛成」「ワクチン政策批判」「ワクチン反対」の3つのクラスターに分類しました。ワクチン反対ツイートを多く投稿したアカウントを特定し、このアカウント周辺の方々を反ワクチンと定義しています。ワクチン賛成派と反対派を比較して、反対派の特徴を明らかにしました。結果、ワクチン反対派は賛成派と比べて政治的関心が強いことがわかりました。基本的に、左側に偏った意見が多かったようです。これはわれわれも実感するところです。他方、ワクチン賛成派は政治的なツイートは多くなかったようです。また、コロナ禍以前から反ワクチンだった人は、同様に政治的関心が強く、ほとんどが左派政党や陰謀論に偏っていることもわかりました。そして、コロナ禍以降に新たに反ワクチンになった人は陰謀論・スピリチュアリティ・代替医療に傾倒しやすく、反ワクチンを掲げる参政党への支持を高めているという結果が示されています。確かに、アメリカにおいても反ワクチンは、イベルメクチンや一部政党と関連があったという研究結果も報告されています。国を挙げた政策になることから、ワクチンと政治は切っても切れない関係なのかもしれません。個人的にはワクチンに懐疑的な集団をすべて反ワクチンとひとくくりにするのではなく、エビデンスがしっかり確立されているにもかかわらず、強い熱意を持って反対活動を行い、周囲の人へ当該危険性を知らしめるような行動を取る人に注意すべきだと思っています。参考文献・参考サイト1)Toriumi F, et al. Anti-vaccine rabbit hole leads to political representation: the case of Twitter in Japan. J Comput Soc Sci. 2024 Feb 5. [Epub ahead of print]2)東京大学工学部:人はなぜワクチン反対派になるのか ―コロナ禍におけるワクチンツイートの分析―

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ニーマン・ピック病C型へのN-アセチル-L-ロイシン、神経学的状態を改善/NEJM

 ニーマン・ピック病C型(NPC)の患者において、リソソームと代謝の機能障害改善が期待されるN-アセチル-L-ロイシン(NALL)による12週間の治療はプラセボと比較し、神経学的状態を改善したことが、スイス・ベルン大学のTatiana Bremova-Ertl氏らが、60例を対象に行ったプラセボ対照無作為化二重盲検クロスオーバー試験の結果で示された。NPCは、進行性、衰弱性、早期致死性の常染色体劣性遺伝性リソソーム蓄積症(ライソゾーム病)で、発症頻度は10万人に1人(本邦では12万に1人)と報告される希少疾病である。現行では、ミグルスタットによる薬物治療があるが進行抑制に限定され、欧州連合(EU)と本邦を含むいくつかの国では承認されているが、米国では未承認である。NALLの有効性と安全性を評価した今回の結果について著者は、「さらなる検討で長期の有効性を確認する必要がある」とまとめている。NEJM誌2024年2月1日号掲載の報告。12週投与後の小脳性運動失調評価法(SARA)の合計スコアをプラセボと比較 研究グループは、4歳以上の遺伝学的に確認されたNPC患者を1対1の割合で無作為に2群に割り付け、一方にはNALLを12週間投与後にプラセボを12週間投与、もう一方にはプラセボを12週間投与し、その後NALLを12週間投与した。 NALLまたはプラセボは、体重35kg未満の4~12歳には体重ベースの用量(2~4g/日)を1日2~3回、体重35kg以上の4~12歳および13歳以上には4g/日を1日3回(朝2g、昼1g、夜1g)経口投与した。 主要エンドポイントは、小脳性運動失調評価法(SARA:0~40で数値が低いほど神経学的状態が良好)の合計スコアだった。副次エンドポイントは、臨床全般印象度改善度(CGI-I)スコア、脊髄小脳性運動失調症機能指数(SCAFI)スコア、modified Disability Rating Scale(mDRS)スコアなどだった。 各群のクロスオーバーデータを用いて、NALL群とプラセボ群の比較を行った。合計スコア変化量、NALL群-1.97ポイントvs.プラセボ群-0.60ポイント 5~67歳の患者60例が登録された。主要エンドポイントであるSARAのベースライン時の平均合計スコアは、NALL初回投与前(60例)が15.88、プラセボ初回投与前(59例、1例はプラセボ投与なし)が15.68だった。 SARA合計スコアのベースラインからの平均変化量(±SD)は、NALL 12週間投与後は-1.97±2.43ポイント、プラセボ12週間投与後は-0.60±2.39ポイントだった(最小二乗平均差:-1.28ポイント、95%信頼区間:-1.91~-0.65、p<0.001)。 副次エンドポイントについては、概して主要解析の結果を支持するものだったが、それらの結果について、多重比較補正は事前に規定していなかった。有害事象の発現率はNALLとプラセボで同等で、重篤な治療関連有害事象は認められなかった。

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洗剤誤飲【いざというとき役立つ!救急処置おさらい帳】第11回

異物誤飲は救急外来で遭遇する機会の多い疾患の1つです。高齢者の義歯が取れて飲み込んでしまった、コップに洗剤を入れていたことを忘れてそれを飲んでしまった…など。わが国の誤飲頻度の正確なデータはありませんでしたが、単施設での報告によると65歳以上の高齢者の頻度が多く、1位:薬剤の包装紙、2位:義歯、3位:魚骨でした1,2)。一方、消費者庁によると2020年度の65歳以上の高齢者の誤飲・誤食の事故情報は318件寄せられており、医薬品の包装シート、義歯・詰め物、洗剤や漂白剤が多いそうです3)。洗剤や漂白剤を誤飲してしまったときの対処法を記載した医学書やレビューは少ないため、実際に私も救急外来で「誤って洗剤を飲んでしまったが、かかりつけ医に相談したところ救急外来を受診するよう指示されたので来た」という話を聞くことがあります。私は年に数回「誤って洗剤を飲んでしまった」という電話相談もしくは診察をすることがありますが、私の経験では成人が洗剤や漂白剤を誤飲したとしても何か特別な処置が必要なケースは限られていて、ほとんどが何もすることなく終わっています。だからといって全部大丈夫というわけではないため、日本石鹸洗剤工業会の「誤飲・誤用の応急処置(公益財団法人 日本中毒情報センター監修)」を参考に、私の診療過程を症例をもとに紹介します。なお、今回は認知症のない成人で台所用洗剤に重点を置きます。<症例>70歳女性主訴誤って台所用洗剤を飲んだ。昼の12時ごろ台所のコップに入っていた水を飲んだところ変な味がした。娘に確認したところコップを洗剤につけて茶渋を取っていたとのこと。口腔内に違和感があるため受診。既往歴高血圧上記は救急外来にフラッとやって来た患者さんです。順を追って対処しましょう。(1)バイタルサイン、嘔吐の有無の確認こういった洗剤などの誤飲で問題になってくるのは、嘔吐して誤嚥してしまうことです。洗剤は当然飲むものではなく、強い味や香りのため飲めたものではありません。万が一飲んでしまった場合、その味や香りで嘔吐して誤嚥することがあります。そのため、まずは誤嚥性肺炎を生じていないか確認しましょう。この患者さんは、嘔吐もなく、SpO2は室内気で98%でした。(2)洗剤の種類の確認台所用洗剤の種類は大きく分けて合成洗剤、食器洗い機専用洗剤、台所用石けん、台所用漂白剤(塩素系)、台所用漂白剤(酸素系)、クレンザーとなります。いずれの中毒量(マウス)は液状だと5mL/kgとなっています。体重が50kgの人だと250mL程度になりますが、原液を10mL飲むのも困難であり、私は意識がはっきりしている人で大量の原液を誤飲した症例の経験はありません。しかし、洗剤の誤飲は少量であれば問題にならないのかというとそうでもありません。第9回の化学眼外傷のときに紹介したとおり、強い酸性orアルカリ性の物質の場合は強い粘膜障害が生じる懸念があります。それらを誤飲した場合は、腐食性食道炎が生じ食道穿孔などが生じるリスクがあり、内視鏡検査や入院治療が必要になり注意が必要です4,5)。本症例は、茶渋をとるために強アルカリ(pH11.0~12.0)の次亜塩素酸塩配合の台所用漂白剤(キッチンハイター)を入れていたそうです。(3)誤飲状況の詳細と症状を確認では、強アルカリの物質を誤飲してしまった場合、すべて消化器内科を受診して入院が必要なのでしょうか? そんなことはありません。腐食性食道炎を生じるには、それなりの量が必要です。何mL飲めば生じる可能性が上がるという根拠は見つかりませんでしたが、先述のとおり洗剤は通常飲めないようにできています。ハイターの臭いをかいだことがあればわかると思いますが、あの匂いのものを間違えてごくごく飲むのはかなり無理があります。私は味わったことがないですが、誤飲した人に聞いたところ「苦いけど苦いとも言えない味、刺激が強い」とのことでした。意識がある人が飲めるものではありません。実際に腐食性食道炎を生じている患者が強酸性or強アルカリ性の物質を摂取した理由は自殺が最も多く、私が和文文献を探していて唯一自殺以外であったのが「酩酊状態の誤飲」でした4-6)。また症状としては、粘膜障害が生じるため咽頭痛、嗄声、嘔吐、心窩部痛が2~3時間以内に急激に生じます。今回の症例の場合、水で薄めたハイターをコップに入れていて、患者は一口飲んで吐き出したので飲んだには飲んだがほんの少しだけでした。症状としては口に苦い感じがするとのことでした。飲んだ量も少なく、濃度も薄い、さらに症状もほとんどありません。1時間ほど外来で経過をみましたが何もないため経過観察としました。治療に関しては、今回のようなケースではとくにすることはありません。少量誤飲してすぐの状態であれば、口をゆすいだ後に水を飲んでもらうくらいです。昔から食器用洗剤を誤飲した場合は牛乳がよいと言われていますが、効果のほどは定かではありません。プロトンポンプ阻害薬やアルギン酸を粘膜保護を目的に投与している施設もありますが、今回のようなほぼ無症状の人に対して投与する明確な根拠はありません。少なくとも私は中性洗剤の場合であれば処方はせず、帰宅後に何らかの症状が出現すれば再診としています。今回のような粘膜障害を生じうる洗剤を飲んだ場合は症状に合わせて3日分処方することもありますが、もし電話相談で「ハイターを飲んでしまった。症状はない」という相談が来たときに、プロトンポンプ阻害薬とアルギン酸を処方するために受診させたりはしません。今回は、台所用洗剤の誤飲に重点を置いて紹介しました。まとめますと、「意識がはっきりしている人が洗剤を誤飲したとして、大量に誤飲した可能性は低いためさほど恐れることはない」ということです。特殊なものを除き、家庭にあるほとんどの洗剤は同じストラテジーで対処できます。ただし、強い症状(嚥下時痛、嗄声、心窩部痛など)があれば内視鏡や胃洗浄などを行いますので、高次医療機関に相談してください。教科書や論文のレビューが少ないテーマなので経験がない人は不安になるかもしれませんので参考になればと思います。1)岡 陽一郎ほか. 日本臨床外科学会雑誌. 2007;68:2449-58.2)山本 龍一ほか. 埼玉医科大学雑誌. 2010;37:11-14. 3)消費者庁:高齢者の誤飲・誤食事故に注意しましょう! 4)松村 英樹ほか. 日本臨床外科学会雑誌. 2015;76:714-719.5)De Lusong MAA, et al. World J Gastrointest Pharmacol Ther. 2017;8:90-98. 6)佐藤 雄亮ほか. 日本臨床外科学会雑誌. 2008;69:1658-1662.

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先天性難聴児、遺伝子治療で聴力回復/Lancet

 常染色体劣性難聴9(DFNB9)の小児の治療において、ヒトOTOF遺伝子導入アデノ随伴ウイルス血清型1型(AAV1-hOTOF)を用いた遺伝子治療は、安全かつ有効であり、新たな治療法となる可能性があることが、中国・復旦大学のJun Lv氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2024年1月24日号に掲載された。中国1施設の単群試験 本研究は、中国の1施設(復旦大学附属眼耳鼻喉科医院)で行われた単群試験であり、2022年10月~2023年6月に参加者のスクリーニングを行った(中国国家自然科学基金委員会などの助成を受けた)。 年齢1~18歳、重度~完全難聴で、OTOF遺伝子の2つのアレルの双方に変異を認め、人工内耳を埋め込んでいないか、片側のみに埋め込んでいる患児6例(男女3例ずつ、年齢1.0~6.2歳)を登録した。用量制限毒性とGrade4/5の有害事象は発現せず AAV1-hOTOFを、正円窓から蝸牛に注射(単回)した。6例のうち1例には9×1011ベクターゲノム(vg)、5例には1.5×1012vgを注射した。全例が26週間のフォローアップを完了した。 注射後6週の時点で用量制限毒性(主要エンドポイント)は発現せず、試験期間中にGrade4または5の有害事象は認めなかった。合計48件の有害事象が観察され、このうち46件(96%)はGrade1または2であり、2件(4%)はGrade3(1例で2件の好中球数の減少、いずれも自然消退)であった。6例中5例でABR閾値が改善 5例で聴力の回復を認め、0.5~4.0kHzにおける聴性脳幹反応(ABR)の平均閾値が40~57dB低下した。 9×1011vgのAAV1-hOTOFの投与を受けた患児(1例)では、平均ABR閾値はベースラインの95dB以上から、4週後には68dB、13週後には53dB、26週後には45dBにまで改善した。また、1.5×1012vgの投与を受けた患児(5例)のうち4例では、平均ABR閾値はベースラインの95dB以上から、48dB、38dB、40dB、55dBと変化し、26週には聴力の回復を認めた。 聴力が回復した患児では、音声知覚(speech perception)の改善がみられた。 著者は、「本研究は、DFNB9の治療における遺伝子治療の安全性と有効性に関するエビデンスを提供し、他の遺伝性難聴の新たな治療法としての遺伝子治療の基礎を築くものである」としている。

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超早産児の動脈管開存症、イブプロフェンによる早期治療は無益/NEJM

 超早産児の動脈管開存症(PDA)の治療において、早期のイブプロフェン投与はプラセボと比較し、最終月経後年齢36週時における死亡または中等度~重度気管支肺異形成症のリスクを低下させないことが示された。英国・ダラム大学のSamir Gupta氏らが、英国の新生児集中治療室(NICU)32施設で実施した多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果を報告した。シクロオキシゲナーゼ阻害薬であるイブプロフェンは、早産児のPDA治療に使用できるが、大きなPDAへの選択的早期治療が、短期アウトカムを改善するかどうかは不明であった。NEJM誌2024年1月25日号掲載の報告。大きなPDAを有する生後72時間以内の超早産児でイブプロフェンvs.プラセボ 研究グループは、在胎23週0日~28週6日で出生し、心エコー検査によりPDA(直径1.5mm以上、左右シャント)が確認された生後72時間以内の新生児を、イブプロフェン群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付けた。イブプロフェン群には10mg/kgを負荷用量として投与した後、5mg/kgを24時間以上の間隔を空けて2回投与した。 主要アウトカムは、最終月経後年齢36週時の死亡または中等度~重度の気管支肺異形成症の複合、退院時までの副次アウトカムは主要アウトカムの個々のイベント、気管支肺異形成症の重症度などであった。 2015年7月~2020年12月に、計653例がイブプロフェン群(326例)とプラセボ群(327例)に無作為に割り付けられた。このうち、割り付けられた治療を受けたのは、それぞれ318例(97.5%)および315例(96.3%)であった。死亡または中等度~重度気管支肺異形成症の発生、69.2% vs.63.5% 主要アウトカムのイベントは、イブプロフェン群で318例中220例(69.2%)、プラセボ群で318例中202例(63.5%)に発生し、補正後リスク比は1.09(95%信頼区間[CI]:0.98~1.20、p=0.10)であった。 イブプロフェン群で323例中44例(13.6%)、プラセボ群で321例中33例(10.3%)が死亡した(補正後リスク比:1.32、95%CI:0.92~1.90)。 最終月経後年齢36週時までの生存児において、中等度~重度の気管支肺異形成症は、イブプロフェン群で274例中176例(64.2%)、プラセボ群で285例中169例(59.3%)に発生した(補正後リスク比:1.09、95%CI:0.96~1.23)。 イブプロフェンに関連する可能性があると評価された予測できない重篤な有害事象が2件発生し、このうち1件は予測できない重篤な副作用に分類された。

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ハイゼントラ、プレフィルドシリンジの剤形追加承認を取得/CSLベーリング

 CSLベーリングは1月22日付のプレスリリースで、人免疫グロブリン製剤「ハイゼントラ20%皮下注」について、新剤形としてプレフィルドシリンジ製剤に対する医薬品製造販売承認を取得したことを発表した。 ハイゼントラは、効能・効果として2013年9月に「無又は低ガンマグロブリン血症」が承認され、2019年3月には「慢性炎症性脱髄性多発根神経炎の運動機能低下の進行抑制(筋力低下の改善が認められた場合)」が追加された。2023年12月時点で米国、欧州を含む67以上の国と地域で承認されている。 同社の代表取締役社長である吉田 いづみ氏は、「このたびのプレフィルドシリンジ製剤の承認により、本剤を使用される患者さんおよび医療従事者の利便性向上と投与時の負担軽減につながることが期待されます。当社は、血漿分画製剤と免疫グロブリン補充療法のグローバル・リーダーとして、希少・難治性疾患の患者さんのアンメットニーズを満たし、患者さんの人生をより豊かなものにできるよう、これからも全力で取り組む所存です」としている。

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第179回 コロナ第10波とインフルエンザが同時流行、警戒を呼びかける/厚労省

<先週の動き>1.コロナ第10波とインフルエンザが同時流行、警戒を呼びかける/厚労省2.診療報酬改定、医療従事者の処遇改善とともに入院基本料・初診料を引き上げへ/厚労省3.岸田首相、認知症施策推進本部で認知症対策の強化を指示/政府4.小児とAYA世代のがん患者の10年後の生存率が明らかに/国立がん研究センター5.新型コロナ後も続く少子化、2023年出生数が大幅減/厚労省6.労災認定された過労死自殺の遺族が病院に2億円超の賠償請求/兵庫1.コロナ第10波とインフルエンザが同時流行、警戒を呼びかける/厚労省厚生労働省の発表によると、新型コロナウイルスの新規感染者数が9週連続で増加していることが明らかになった。1月15日~21日の間に約5,000の定点医療機関から報告された新規感染者数は計6万268人で、1定点当たり12.23人となり、前週の8.96人から約1.36倍に増加した。入院患者数も昨年末の約2倍に増加している。都道府県別では、福島県が最多で18.99人、茨城県が18.33人、愛知県が17.33人と続いている。東京都は8.33人、大阪府は7.96人、福岡県は10.40人。新規入院患者数は3,462人で、前週から600人増加したが、集中治療室(ICU)に入院している患者数は115人で、前週より21人減少。季節性インフルエンザの新規感染者数も増加しており、1定点当たり17.72人となっている。専門家は「新型コロナはすでに冬の流行期に入っており、『第10波』入り」を指摘している。参考1)「コロナ第10波に入った」の声…インフルと同時流行(読売新聞)2)全国のコロナ感染者数、9週連続で増加 入院患者は昨年末の2倍に(朝日新聞)3)新型コロナ インフルエンザ ともに患者数増加 感染対策徹底を(NHK)2.診療報酬改定、医療従事者の処遇改善とともに入院基本料・初診料を引き上げへ/厚労省厚生労働省は、1月26日に中央社会保険医療協議会(中医協)総会を開催し、来年度の診療報酬改定で入院基本料の引き上げを決定した。今回の改定の主な目的は、40歳未満の勤務医や事務職員の賃上げを実現すること。また、医療従事者の処遇改善や日常的な感染防止対策の原資として、初診料や再診料の引き上げも含んでいる。入院基本料の見直しでは、栄養管理体制の基準の明確化、患者意思決定支援の推進、身体的拘束の最小化などが求められている。今回の改定により、国費ベースで約800億円の財源が確保され、医療行為の対価に当たる本体部分が0.88%引き上げられる。そのうち、0.61%分の財源は看護職員や病院薬剤師、コメディカルの賃上げに充てられ、2024年度に2.5%、2025年度に2.0%のベースアップが行われる。また、40歳未満の勤務医や薬局に勤務する薬剤師、事務職員らの賃上げに0.28%分程度の財源が回される予定。急性期入院医療に関しては、急性期充実体制加算や総合入院体制加算の要件が厳格化され、急性期病棟のリハビリテーション、口腔管理、栄養管理の充実に向けた新加算が評価される。同時に、DPC(診断群分類)参加基準も厳格化され、基礎係数の見直しが行われる。参考1)個別改定項目(その1)について(厚労省)2)入院基本料引き上げへ、若手勤務医らの賃上げで 初・再診料もアップ 24年度診療報酬改定(CB news)3)急性期充実・総合入院体制加算の要件厳格化、急性期病棟のリハ・口腔・栄養管理を新加算で評価、DPC参加基準厳格化-中医協総会(1)(Gem Med)4)若手勤務医や事務員等の処遇改善は「入院料や初再診料アップ」で対応、「点数増が処遇改善につながったか」の検証は?-中医協総会(2)(同)3.岸田首相、認知症施策推進本部で認知症対策の強化を指示/政府2024年1月26日、政府は認知症対策に関する国の基本計画を策定するため、「認知症施策推進本部」の初会合を開催した。岸田 文雄首相は、認知症の当事者やその家族から意見を聞き、今秋に計画を策定することを目指している。岸田首相は、認知症になり得るすべての人々が尊重され、支え合いながら共生する活力ある社会の実現を強調した。この基本計画では、認知症の人々が尊厳と希望を持って暮らせるようにするための基本理念を定めている。政府は、認知症の人々と共生できる社会環境の整備、認知症の予防、治療薬の開発などについて議論し、関連施策をまとめる予定。また、岸田首相は、認知症と共に希望を持って生きる新しい認知症観の理解促進の重要性を指摘し、高齢者の生活課題への取り組みに生かすことを強調した。参考1)岸田首相 認知症対策強化へ “政府一丸で必要な取り組みを”(NHK)2)認知症基本計画、今秋策定へ 推進本部が初会合-政府(時事通信)3)認知症の人との共生、今秋めどに基本計画策定 施策推進本部が初会合(朝日新聞)4.小児とAYA世代のがん患者の10年後の生存率が明らかに/国立がん研究センター国立がん研究センターは、2011年にがんと診断された小児(0~14歳)とAYA世代(15~39歳)の患者の10年後の生存率を初めて集計し、公表した(この結果は全国341施設の約36万例のデータを基にしている)。小児がんの生存率は比較的高く、とくに白血病の10年生存率は86.2%、脳腫瘍は71.5%で、5年生存率と比べて大きな低下はみられなかった。AYA世代では、がんの種類によって生存率に差があり、乳がんの10年生存率は83.5%、脳・脊髄腫瘍は77.8%となった。子宮頸部・子宮がんの10年生存率は87.2%で、大きく低下していないことが確認された。全体のがん患者の10年生存率は実測で46%、がんの影響を直接的に計算した生存率は53.5%だった。研究者は、「小児がん患者の長期の予後が良いことを示すデータが乏しかったが、この研究で裏付けられた」と指摘している。また、「AYA世代のがん患者には、がんの種類や年齢に応じたきめ細かいケアが必要である」と強調している。参考1)院内がん登録2022年登録例集計 公表 2022年のがん診療連携拠点病院等におけるがん診療の状況(国立研究開発法人 国立がん研究センター)2)がん診断の0~39歳 10年後の生存率を初集計 “実感”裏付け(毎日新聞)3)小児がん、10年生存70~90% 初の集計、大人より高い傾向(日経新聞)4)小児・「AYA世代」 がん患者 10年後の生存率 初公表(NHK)5.新型コロナ後も続く少子化、2023年出生数が大幅減/厚労省厚生労働省がまとめた人口動態統計速報によると、2023年1月~11月までの日本の出生数が69万6,886人に減少し、前年同期比で5.3%の減少を記録したことが明らかになった。これは2004年以降で初めて70万人を下回る数値であり、2023年通年の出生数は過去最少となる見通し。同期間の婚姻件数も前年比5.6%減の45万1,769組と減少し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響による出会いの機会減少が一因とされる。しかし、COVID-19が感染症法上の5類に移行した後も婚姻件数の回復はみられない。一方で、死亡数は1.4%増の144万4,146人となり、自然増減はマイナス74万7,260人に達した。出生数の減少と高齢化の進行により、わが国の人口減少が進んでいる。政府は2024年度から3年間で少子化対策を強化し、出生減に歯止めをかける計画を立てている。これには児童手当や育児休業給付の拡充が含まれ、26年度までに年3.6兆円の予算が確保される予定。参考1)2023年の出生数、過去最少か 1~11月出生数69万6千人(産経新聞)2)23年1~11月までの出生数が70万人割れ(CB news)3)23年1~11月の出生数、69.6万人 前年同期比5.3%減(日経新聞)6.労災認定された過労死自殺の遺族が病院に2億円超の賠償請求/兵庫2024年1月27日、兵庫県神戸市の甲南医療センターに勤務していた26歳の医師、高島 晨伍さんが自殺した事件に関して、遺族が病院の院長らに対し、2億3,000万円余りの損害賠償を求める民事訴訟を起こすことが報道で明らかになった。高島さんは亡くなる直前まで100日間連続で勤務し、亡くなる直前の1ヵ月間の時間外労働は207時間余りだった。西宮労働基準監督署は「極度の長時間労働により精神障害を発症し自殺した」として、すでに労災認定をしている。遺族によると、高島さんの両親は運営法人「甲南会」と具 英成院長を相手取り、過重労働を知っていたにも関わらず是正措置をとらなかったため自殺したと主張している。また、この事件の発生前に他の若手医師も過酷な勤務状況を訴えていたが、病院幹部は「僕ら昔の世代の人間やから…意識が違う」と述べ、適切な対応がなされていなかったことも明らかになっている。参考1)100連勤・月200時間超の時間外労働で若手医師が自殺 病院の院長らに2億3,000万円余りの損害賠償求め来週にも提訴へ(MBS)

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10項目の要点確認で災害高血圧を防ぐ/日本高血圧学会

 日本高血圧学会(理事長:野出 孝一氏[佐賀大学医学部内科学講座 主任教授])は、今般の能登半島地震の発生を受け、避難所での災害関連死を予防する観点から「被災地における高血圧疾患予防」をテーマに、緊急メディアセミナーを開催した。 セミナーでは、10項目の「寒冷被災地における血圧管理と高血圧合併症予防の要点」を示し、震災の避難所で医療者も一般の人も確認できる高血圧予防指標の紹介と震災地での初動活動について報告が行われた。なお、10項目の要点は、同学会のホームページで公開され、ダウンロードして使用することができる。140mmHg超の血圧ではまわりの医療者へ相談を 苅尾 七臣氏(自治医科大学内科学講座循環器内科学部門 教授)は、今回の10項目の要点の制作についてその背景を語った。 過去の大規模災害を振り返ると災害被災周辺地域では、災害高血圧が発生し、心血管疾患、脳卒中、大動脈解離などの循環器疾患が増加、命を落とす方も多かった。また、今回の能登半島地震のように冬季でしかも寒冷地域のようなところでは、血圧コントロールも難しく、さらなる循環器疾患の増加も懸念されている(とくに心血管死亡は血圧が10/20mmHg上昇するごとに2倍ずつ増えるとされ、90/140mmHgがリスクの目安となる)。 こうした事態から高血圧の特徴と循環器リスク低減のために要点が制作された。ただ、災害時の血圧管理に関する十分なエビデンスはなく、過去の災害から得られた知見などをもとにレトロスペクティブなエビデンスに基づき本要点は作成されているので、この点を注意していただき、診療での目安として現地で役立ていただきたいと期待を寄せた。【寒冷被災地における血圧管理と高血圧合併症予防の要点】(抜粋)※できているものにチェックし、1つでも多くのチェックが付くようにする。〔A 生活環境の整備〕1.寒さ対策:保温性の高い衣服を着用し、体を冷やさない。理想の室温は18℃以上2.睡眠:できるだけ横になる、6時間以上の睡眠を心掛ける〔B 生活習慣の維持〕3.生活リズム:できる限り起床・就寝時刻を決め、生活のリズムを作る4.運動:身体を動かす。1日に20分以上の歩行でも大丈夫5.食事:なるべく塩分の摂り過ぎに注意し、野菜、果物、乳製品などカリウムの多い食事を心がける(医師からカリウム制限を受けている腎臓病の方は指示通りに)6.体重の維持:体重計があれば測って、増減を確認7.感染症予防:できる限りマスク着用、手洗いが大切8.血栓の予防:こまめに水分を摂り、1時間に1回は足を動かす〔C 治療の継続〕9.薬の継続:普段飲んでいる薬は、いつも通り飲み続ける10.血圧管理:血圧を測定し140mmHg以上なら医師、看護師、保健師に相談(とくに160mmHg以上は、できるだけ早い時期に医師に相談) また、苅尾氏はさらに詳しく災害高血圧について説明。「災害地域に生じる高血圧(≥90/140mmHg)」と定義し、被災直後から発生、生活環境と生活習慣が回復・安定するまで持続し、とくに循環器疾患のリスクが高い早朝高血圧は寒冷の影響を受けやすいと詳しく解説した。 特徴として以下の項目がある。・災害後の血圧上昇は一過性で1ヵ月以降低下するが、高齢者、慢性腎臓病、肥満者などの患者では遷延すること・災害時の血圧140mmHg未満を目標とし、血圧レベルは2週間毎に再評価すること(なお、災害時は白衣効果が増大することから避難所などに自動血圧計の設置が望ましい)・患者の服薬状況が不明な場合、安全性と効果の高い長時間作用型カルシウム拮抗薬が適切であること そのほか、過去の震災などの知見から脳血管疾患の発症について、外部仮設トイレ、早朝(とくに午前5時~午前11時)、70歳以上の高齢者はリスクが高くなることを指摘し、これからの数ヵ月、循環器疾患リスクを可能な限り減らしてもらいたいと述べ、説明を終えた。 勝谷 友宏氏(勝谷医院 院長)は、同学会の実地医家部会ネットワークを活用した被災地支援について、血圧計と減塩食について、メーカーなどと協議を行い、現地に手配する準備を行っていることを報告した。 宮川 政昭氏(宮川内科小児科医院 院長)は、日本医師会と連携した被災地支援について説明した。医師会は対策本部を七尾市に置き、日本医師会災害医療チーム(JMAT)の支援を行っている。今回の震災は、過去の震災と違い、現場への派遣に困難を来たし、支援に遅れが生じている。そのため、今までは災害医療派遣チーム(DMAT)からJMATに引き継がれることが多かったが、現在は両チームが並列して活動している。JMATの派遣も約900名となり、今後も能登北部への支援に現地の医師と連携して診療支援を行っていくと展望を語った。

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新型コロナ、ワクチン接種不足で重症化リスク増/Lancet

 英国において、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン接種が推奨回数に満たないワクチン接種不足者が、2022年6月時点の同国4地域別調査で32.8~49.8%に上り、ワクチン接種不足が重症COVID-19のリスク増加と関連していたことが、英国・エディンバラ大学のSteven Kerr氏らHDR UK COALESCE Consortiumが実施したコホート研究のメタ解析の結果で示された。ワクチン接種不足は完全接種と比較して、COVID-19による入院や死亡といった重症アウトカムのリスク増大と関連している可能性がある。研究グループは、ワクチン接種不足の要因を特定し、ワクチン接種不足者の重症COVID-19のリスクを調査する検討を行った。Lancet誌オンライン版2024年1月15日号掲載の報告。英国のほぼ全国民をカバーする医療データセットを用いて解析 研究グループは、イングランド、北アイルランド、スコットランド、ウェールズの4地域におけるTrusted Research Environment(TRE)の医療データセットを用いてコホート研究を行った。このデータデットには、ほぼ全国民をカバーする匿名化された電子健康記録のデータが含まれている。 5歳以上を対象に2022年6月1日時点のワクチン接種不足の補正後オッズ比を推定するとともに、同日~9月30日の4ヵ月間における重症COVID-19の発生について、ワクチン接種不足との関連を解析した。ワクチン接種は、英国の予防接種に関する共同委員会(Joint Committee on Vaccination and Immunisation:JCVI)による年齢層別の推奨接種回数を満たしている場合を完全接種、満たしていない場合を接種不足と定義した。 重症COVID-19とワクチン接種不足との関連は、4地域の各TREで解析を行った後、逆分散加重固定効果メタ解析を用いて統合した。完全接種なら、重症COVID-19の2割弱(7,180/4万393件)は回避できた可能性 2022年6月1日時点のワクチン接種不足者は、イングランドで5,896万7,360人中2,698万5,570人(45.8%)、北アイルランドで188万5,670人中93万8,420人(49.8%)、スコットランドで499万2,498人中170万9,786人(34.2%)、ウェールズで235万8,740人中77万3,850人(32.8%)であった。4地域全体の接種不足者は3,040万7,626人(44.4%)であった。 5~74歳の集団において、若年、社会経済的貧困度が高い、非白人、合併症の数が少ないといった人ほど、ワクチン接種不足の可能性が高かった。 重症COVID-19の発生は、全体で4万393件であった。このうちワクチン接種不足者での発生は1万4,156件であった。ワクチン接種不足は、すべての年齢群、すべての地域で、とくに75歳以上において重症COVID-19のリスク増大と関連していた。 2022年6月1日時点で、すべての人がワクチンを完全接種していたと仮定して分析したところ、追跡期間4ヵ月時点で、5~15歳210件(95%信頼区間[CI]:94~326)、16~74歳1,544件(1,399~1,689)、75歳以上5,426件(5,340~5,512)、合計7,180件の重症COVID-19を減少したと推定された。 75歳以上におけるCOVID-19重症化の補正後ハザード比は、推奨回数より1回少ない場合で2.70(95%CI:2.61~2.78)、2回少ない場合で3.13(2.93~3.34)、3回少ない場合で3.61(3.13~4.17)、4回少ない場合で3.08(2.89~3.29)であった。

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