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英語で「嘔吐」は?医療者と患者さんで使い分け【患者と医療者で!使い分け★英単語】第25回

医学用語紹介:嘔吐 emesis今回は「嘔吐」についてお話ししていきます。医療現場ではemesisという専門用語が使われますが、患者さんとの会話では、どのような一般用語を使って伝えたらよいでしょうか? 講師紹介

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賃金・物価上昇、診療報酬改定が直撃!診療所の経営は?/医師1,000人アンケート

 2024年の診療報酬改定は、診療報酬本体は+0.88%、薬価・材料価格引き下げは-1.00%で、全体ではマイナス改定となった。「医療従事者の賃上げ」「医療DX等による質の高い医療の実現」「医療・介護・障害福祉サービスの連携強化」という3つの目標が掲げられ、関連する項目が加算・減算された。診療報酬改定のほか、ここ数年の急激な物価上昇や人件費高騰もクリニックの経営に影響を与えていることが予想される。ケアネットでは「自身でクリニックを経営し、開業後3年以上が経過している医師」(40代以上)を対象に、直近の経営状況についてWebアンケートで聞いた。患者数は「増えた」が2割に対し、「減った」が4割 「1ヵ月の延べ患者数」について2023年度と2024年度を比較すると、「やや減った」と回答したのは25%、「大きく減った」は13%に上り、全体の38%が患者減少を報告した。一方で、「やや増えた」(17%)、「大きく増えた」(3%)は合わせて20%に留まった。「大きく減った」との回答は小児科(27%)、産婦人科(18%)、消化器内科(15%)、耳鼻咽喉科(15%)で目立った。一方で、耳鼻咽喉科は「大きく増えた」も最多の9%で、コロナ禍の収束後に経営状況の二極化が進んでいるようだ。診療報酬単価、精神科は5割強が「減った」 2023年度と2024年度の「患者1人当たりの診療単価の平均」については、「やや減った」(34%)、「大きく減った」(11%)を合わせると45%が減少したと回答した。「やや増えた」(8%)、「大きく増えた」(2%)としたクリニックは全体の1割に過ぎなかった。とくに精神科(「大きく減った」と「やや減った」の合計55%)、呼吸器内科(同52%)、循環器内科(同52%)などで「減った」との回答が目立った。精神科は2024年の診療報酬改定で30分未満の診療報酬が減額(精神保健指定医は330点→315点、非指定医は315点→290点)されたことが大きく響いたようだ。ほかの診療報酬改定の項目としては「特定疾患療養管理料から糖尿病・脂質異常症・高血圧を除外」も内科系クリニックの経営に与えた影響が大きかったようだ。「患者数」と比較して、「診療報酬単価」は「増えた」という回答の割合が一層低く、「減った」という回答の割合が高かった。患者数減少よりも診療報酬単価低下が、診療所の収益をより圧迫している状況が伺える。増えた費用としては「人件費」がトップ 費用面で、2023年度と2024年度を比較して増えた項目(複数回答)としては、(経営者以外の)人件費(588人)が最多で、以下医薬品・医療消耗品費(504人)、水道光熱費・通信費(475人)の回答が多かった。賃上げ圧力が強まり、マイナンバーカードや電子処方箋への対応など医療DXへの投資も求められ、固定費の上昇が利益を一層圧迫している状況が見える。5割以上が「減益」と回答 患者数と診療報酬単価の減少傾向、そして費用の上昇は、結果として最終利益の変動にも明確に表れた。2023年度と2024年度の「最終利益(自身の給与を含む)」について、「やや減った」が36%、「大きく減った」が20%で、過半数を超える56%が減益と回答した。「変わらない」は22%、「やや増えた」(12%)、「大きく増えた」(2%)は合わせて14%だった。とくに小児科は4割近く、産婦人科も3割超が「大きく減った」と回答した。今後の経営方針は「攻め」と「守り」に二極化 「今後の経営方針」(複数回答)では、「攻め」「守りor撤退」と明暗が分かれた。自由診療やDX化などの拡大路線に舵を切る選択肢を選んだのは、腎臓内科、呼吸器内科、消化器内科などの医師に多かった。一方、「減益」との診療所が多かった産婦人科、小児科、耳鼻咽喉科などは診察日縮小や閉院を視野に入れるとの回答が多かった。年代別では、40代の比較的若い医師は「DX化」「自由診療」などの「攻め」の志向が強かったが、この割合は年代とともに減少した。60代以上では2割、70代以上では3割が「閉院」または「事業譲渡」を検討していると回答した。 経営や診療報酬に関する自由回答では、物価高、人件費高騰の中での診療報酬単価の据え置きや減額に対する不満や抗議の声一色となった。「物価上昇に連動しない診療報酬の改定は違法だと思う」(内科・東京都・60代)「物価上昇に応じた診療報酬の増額が不可欠」(眼科・大阪府・50代)「診療報酬は下げられる中で、スタッフの給料は上げてやりたい。となると自分の取り分を減らすしかない」(耳鼻咽喉科・宮城県・60代)「売り上げが減って自身の給与を大幅に減らした」(消化器内科・大阪府・60代)「利益が前年に比べて半減。本当の話です。閉院も検討中です」(内科・京都府・50代)「コロナ禍の『医療者に感謝』という言葉は何だったのか。次のパンデミック時に、末端の診療所が閉院していたら誰が患者を診るのか? 中小病院に患者が集中して混乱が起きることは目に見えている」(内科・福井県・50代)アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。クリニックの経営動向/医師1,000人アンケート

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乳児期の犬への曝露は幼少期のアトピーリスクを低下させる?

 犬を飼っている家庭の乳児は、幼少期にアトピー性皮膚炎(AD)を発症するリスクが、犬を飼っていない家庭の児よりも低い傾向があるようだ。新たな研究で、乳児期に犬に曝露することで、ADの発症に関与する遺伝子の影響が軽減される可能性が示された。英エディンバラ大学皮膚科教授のSara Brown氏らによるこの研究結果は、「Allergy」に6月4日掲載された。 Brown氏は、「遺伝子の組み合わせが小児のAD発症リスクに影響を与えることは分かっていたし、過去の研究でも、犬を飼うことがAD発症の予防に有効な可能性が示されている。しかし、分子レベルでその仕組みを示したのはこの研究が初めてだ」と述べている。 ADは、皮膚のバリア機能が低下することで刺激物やアレルゲンが侵入しやすくなり、それによって免疫反応が引き起こされ、湿疹、かゆみ、炎症などの症状が生じる疾患で、遺伝的要因と環境要因が関与するとされている。研究グループによると、遺伝的にADを発症しやすい人がいることは判明しているものの、遺伝子と環境がどのように相互作用してADリスクを増大させたり低下させたりしているのかは明確になっていないという。 Brown氏らは今回、ヨーロッパで実施された16件の研究データを分析し、ADに関連する既知の24種類の遺伝的バリアントと、母親の妊娠中および児の生後1年間における18種類の環境要因の相互作用を調べた。 その結果、犬の飼育を含む7つの環境要因と少なくとも1つのAD関連遺伝的バリアントとの間に14の相互関係が示唆された。また、25万4,532人を対象とした追加解析から、犬への曝露と第5染色体に位置する遺伝的バリアント「rs10214237」との間に統計学的に有意な相互作用が認められた(相互作用のオッズ比0.91、95%信頼区間0.83〜0.99、P=0.025)。rs10214237は、免疫応答の調節に関与するインターロイキン(IL)-7受容体をコードする遺伝子の近傍に位置する。 次いで、実験室でのテストにより、rs10214237と犬アレルゲン曝露との相互作用がADの発症リスクにどのように影響するのかを検討した。その結果、犬への曝露はこの遺伝的バリアントの影響を変化させて皮膚の炎症を抑え、AD発症リスクを抑制している可能性が示唆された。 研究グループは、今回の研究で得られた結果を確認し、今後の研究で犬が人間の遺伝子に与える影響についての理解を深める必要があるとしている。Brown氏は、「われわれの研究は、臨床の現場で問われる『なぜうちの子はADなのか』『赤ちゃんを守るために何ができるのか』などの最も難しい質問に答えることを目的としている」と話す。同氏はさらに、「さらなる研究が必要だが、本研究結果は、アレルギー疾患の増加に介入し、将来の世代を守るチャンスがあることを意味する」と述べている。

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第270回 「骨太の方針2025」の注目ポイント(後編) 「OTC類似薬の保険給付のあり方の見直し」に強い反対の声上がるも、「セルフメディケーション=危険」と医療者が決めつけること自体パターナリズムでは?

映画『国宝』は過活動膀胱の行動療法のヒントにもこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。前回、映画『国宝』(監督:李 相日)について書きましたが、一つ書き忘れたことがあります。それは映画の上映時間についてです。『国宝』の上映時間はなんと174分、ほぼ3時間です。ハリウッドも含め、最近の映画ではとても珍しいことです。観る側は“タイパ(タイムパフォーマンス)”を気に掛け、一方で配給会社は観客の回転数も重視するようになった今、よく東宝が3時間の上映時間を認めたものです。とは言え、かつての長尺の傑作映画には、前段の長い前フリ部分が映画全体に深みをもたらしている作品が少なくありません。『ゴッドファーザー』しかり、『ディア・ハンター』しかりです。『国宝』も仮に2時間だったら主人公たちの若い頃のシーンも相当割愛しなければならなかったでしょう。その意味でも174分は必然の上映時間だったのかもしれません。それにしても、中高年の観客が多いはずなのに、上映中、トイレに立つ人がほとんどいなかったのも驚きでした。私も通常、2時間程度しかもたない頻尿なのですが、席を立つこともなくなんとか乗り切れました。何かに集中している時は尿意を忘れるというのは本当ですね。映画『国宝』は過活動膀胱の行動療法のヒントにもなりそうです。さて、今回も前回に引き続き、6月13日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2025~『今日より明日はよくなる』と実感できる社会へ~」(骨太の方針2025)について書いてみたいと思います。前回は、社会保障関係費について、骨太に「高齢化による増加分に相当する伸びにこうした経済・物価動向等を踏まえた対応に相当する増加分を加算する」と明記されたことで、2026年度診療報酬改定からは高齢化による伸びに加え、経済・物価対応による増加分も考慮されるだろう、と書きました。今回は、「骨太の方針2025」のもう一つの注目点であった、自民党・公明党・日本維新の会の「3党合意」の内容がどの程度反映されたか(6月6日に公表された「骨太の方針2025(原案)」にどう加筆されたか)について書きます。3党合意で検討の期限と数値目標が明記されたのは「OTC類似薬」「病床削減」「電子カルテ」の3項目自民党、公明党、日本維新の会の3党が6月11日に合意した社会保障改革案には、1.OTC類似薬の保険給付のあり方の見直し2.新たな地域医療構想に向けた病床削減3.医療DXを通じた効率的で質の高い医療の実現4.地域フォーミュラリの全国展開5.現役世代に負担が偏りがちな構造の見直しによる応能負担の徹底6.生活習慣病の重症化予防とデータヘルスの推進の6項目が盛り込まれました。このうち、検討の期限と数値目標が明記されたのは「OTC類似薬」「病床削減」「電子カルテ(医療DX)」の3項目で、具体的な文言は以下のようなものでした。OTC類似薬2025年末までの予算編成過程で十分な検討を行い、早期に実現が可能なものについて、2026年度から実行。セルフメディケーション推進の観点から、夏以降、当初の医師の診断や処方を前提にしつつ、症状の安定している患者にかかる定期的な医薬品・検査薬のスイッチOTC化に向けて、制度面での必要な対応を含め、更なる実効的な方策を検討する。国内でスイッチOTC化されていない医薬品(約60成分)を2026年末までにOTC化病床削減人口減少等により不要となると推定される、約11万床の一般病床・療養病床・精神病床といった病床について、次の地域医療構想までに削減を図る電子カルテ現時点の電子カルテ普及率が約50%であることに鑑み、普及率約100%を達成するべく、5年以内の実質的な実現を見据え電子カルテを含む医療機関の電子化を実現する骨太には3党合意にあった「医薬品(約60成分)を2026年末までにOTC化」、「11万床削減」といった数値目標は盛り込まれずこの3党合意を踏まえ、6月13日に閣議決定された「骨太の方針2025」では、「第3章 中長期的に持続可能な経済社会の実現」の「2.主要分野ごとの重要課題と取組方針」の中の「(1)全世代型社会保障の構築」に、合意内容が次のように列記されています。持続可能な社会保障制度のための改革を実行し、現役世代の保険料負担を含む国民負担の軽減を実現するため、OTC類似薬の保険給付の在り方の見直しや、地域フォーミュラリの全国展開、新たな地域医療構想に向けた病床削減、医療DXを通じた効率的で質の高い医療の実現、現役世代に負担が偏りがちな構造の見直しによる応能負担の徹底、がんを含む生活習慣病の重症化予防とデータヘルスの推進などの改革について、引き続き行われる社会保障改革に関する議論の状況も踏まえ、2025年末までの予算編成過程で十分な検討を行い、早期に実現が可能なものについて、2026年度から実行するそして本文の脚注には3党合意を踏まえ以下のように書かれています。OTC類似薬医療機関における必要な受診を確保し、こどもや慢性疾患を抱えている方、低所得の方の患者負担などに配慮しつつ、個別品目に関する対応について適正使用の取組の検討や、セルフメディケーション推進の観点からの更なる医薬品・検査薬のスイッチOTC化に向けた実効的な方策の検討を含む病床削減2年後(2027年)の新たな地域医療構想に向けて、不可逆的な措置を講じつつ、調査を踏まえて次の地域医療構想までに削減を図るただし、3党合意にあった「医薬品(約60成分)を2026年末までにOTC化」、「11万床削減」といった、より具体的な数値目標は脚注にも記されませんでした。その理由は、より大局的な予算編成の方向性を示す「骨太」の性格もありますが、病床数については、地域の実情を踏まえた調査や必要病床数の再精査がこれから行われるためでもあるでしょう。なお、6月11日の3党合意の文書には、11万床削減した場合1兆円程度の医療費削減につながるとした「厚生労働省の調査に基づく日本維新の会の試算」が別紙で添付されていますが、その実現性や根拠に疑問の声が多く上がりました。そうしたことも「11万床削減」が未記載になった理由かもしれません。「OTC類似薬の保険給付のあり方の見直し」には医療機関側から反対の声こうした骨太の個別政策に対して、医療機関側から一番反対の声が上がったのは、予想通り「OTC類似薬の保険給付のあり方の見直し」でした。日本医師会の松本 吉郎会長は6月18日の定例記者会見で、「骨太の方針2025」について、「歳出改革の中での引き算ではなく、物価・賃金対応分を加算するという足し算の論理となり、年末の予算編成における診療報酬改定に期待できる書きぶりとなった」と評価するコメントを出しました。一方で「OTC類似薬の保険給付のあり方の見直し」についてはさまざまな懸念があると説明、「OTC類似薬を保険適用から除外した場合、たとえば院内での処置等に用いる薬剤、薬剤の処方、在宅医療における薬剤使用に影響することが懸念されるが、これは絶対に避けなければならない」と述べるとともに、3党合意や「骨太の方針2025」の脚注に記された、「医療機関における必要な受診を確保し、子供や慢性疾患を抱えている方、低所得の方の患者負担などに配慮しつつ」の一文などを踏まえた慎重な検討が必要であると強調したとのことです。「スイッチOTC化やセルフメディケーションを拙速に進めることは、自己判断による誤用で重篤な疾患の発見が遅れる恐れがある」と日医会長松本会長は6月22日の日本医師会の定例代議員会でも「OTC類似薬の保険給付のあり方の見直し」について同じ趣旨の発言を繰り返しました。スイッチOTC化がどんどん進み、かつ処方薬から外される流れが進めば、医師への受診回数が激減することに対する危機感からと考えられます。6月23日付のミクスオンラインなどの報道によれば、松本会長は6月22日の定例代議員会で「スイッチOTC化やセルフメディケーションを拙速に進めることは、自己判断による誤用で重篤な疾患の発見が遅れる恐れがある。特に、高齢者などでは、医師との対話の機会が減少し、病歴や服薬歴の記録が途切れ、診療の精度が落ち健康リスクが高まる」と指摘、「適正使用されず、乱用の増加も懸念される。セルフメディケーションは、セルフケアの一つの手段であり、ヘルスリテラシーと共にあるべき。国においては、国民の安心・安全を第一に考えて進めて行っていただきたい」と述べたそうです。また代表質疑では、宮川 政昭常任理事が「やみくもなセルフメディケーションの推進、社会保険料の削減を目的としたOTC類似薬の保険適用除外やスイッチOTC化を進めることは、必要な時に適切な医療を受けられない国民が増え、国民皆保険制度の根幹を揺るがしかねないと危惧している」と話し、問題点として、医療機関の受診控えによる健康被害が増加すること、国民の経済的負担が増加すること、薬の適正使用が難しくなることを挙げたとのことです。 本当に「セルフメディケーション=危険」なのか?「セルフメディケーションを推進すれば、健康被害が増える」というロジックはいかがなものでしょう。そもそも現状、処方箋を発行する医師は薬の説明をほぼ薬局薬剤師に丸投げし、その薬局薬剤師も印刷された薬剤情報提供書を右から左へ受け渡しているだけ、というところが少なくありません(私の近所の薬局も)。OTCよりも危険な処方薬ですらきちんと説明が行われず、ポリファーマシーによる健康被害が頻発している状況をさておいて、「セルフメディケーション=危険」と医療者が決めつけること自体がパターナリズムに近いものを感じます。各種スイッチOTCにしても、薬剤師が店頭できちんと説明しているはずですから、国民のヘルスリテラシーは徐々に向上していてもおかしくないはずですが、それでも向上していないとすれば、それは薬剤師や製薬会社がそこに注力してこなかったことにも責任があるのではないでしょうか。一連のOTC類似薬の議論を聞きながら、医療者はもう少し患者(国民)を信頼・信用してもいいのではと思う今日この頃です。

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就学前までのBMIの変化で将来の肥満リスクを予測可能

 幼少期のBMIの変化の軌跡から、その後の肥満リスクを予測できるとする、米ワシントン州立大学のChang Liu氏らの研究結果が、「JAMA Network Open」に5月22日掲載された。1~6歳の間にBMIが低下しない場合、9歳時点で小児肥満となっている可能性が高く、米国の子どもの約1割がこれに該当するという。 この研究では、米国立衛生研究所(NIH)がサポートしている、小児の健康に関する大規模コホート研究(Environmental influences on Child Health Outcomes;ECHO)の1997年1月~2024年6月のデータが縦断的に解析された。この期間に体重と身長の測定が4回以上行われた1~9歳の子ども9,483人(男児51.9%)を対象として、BMIの変動パターンを検討。その結果、典型的なパターンとそうでない非典型的なパターンの2種類に、明確に分類可能であることが分かった。 典型的なBMI変動パターンは全体の約9割(89.4%)を占めていた。このパターンでのBMIは1~6歳にかけて直線的に低下し6歳時点で最も低値となり、その後は9歳になるまで直線的に上昇。9歳時点のBMIは平均17.33だった。一方、全体の約1割(10.6%)を占める非典型的な変動パターンでは、1~3.5歳までBMIが低下せず横ばいで推移し、3.5歳から9歳にかけては急な傾きで直線的に上昇。9歳時点でのBMIは平均26.2に達していた。このBMI平均値は、米国の9歳児のBMI分布の99パーセンタイルを超えている。 Liu氏は、「3歳半という早い段階でBMIの異常な変動パターンを特定できるという事実は、成長後の肥満を予防するために、幼少期がいかに重要であるかを示している」と述べている。研究者らによると、BMIの高い子どもは成人後に過体重や肥満であることが多く、結果として糖尿病や心臓病などの慢性疾患のリスクが高まる可能性があるという。 この研究では、BMIの変動が非典型的なパターンであることの関連因子の検討も行われた。その結果、女児(オッズ比〔OR〕1.22〔95%信頼区間1.05~1.42〕)、出生体重高値(OR1.40〔同1.21~1.63〕)、および、母親の妊娠前BMI高値(OR1.09〔1.07~1.12〕)、妊娠中の喫煙(OR1.76〔1.31~2.37〕)、妊娠中の体重増加の大きさ(OR1.26〔1.11~1.43〕)などとの有意な関連が認められた。 これらの結果に基づきLiu氏は、「われわれの研究は、妊婦に対し妊娠中の適切な体重増加をサポートすること、喫煙習慣のある妊婦に対しては禁煙を促すこと、および、急激な体重増加の兆候を示している子どもを注意深くモニタリングすることなどが、小児肥満を減らす上で重要な介入となり得ることを示唆している」と述べている。

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妊娠中のカルシウム摂取量が子供のうつ症状に関連か

 栄養バランスの偏りや特定の栄養素の不足は、うつ症状の発症リスクを高める可能性があるとされている。今回、妊娠中の母親のカルシウム摂取量が、子供のうつ症状の発症リスクと関連しているとする研究結果が報告された。妊娠中の母親のカルシウム摂取量が多いほど、生まれた子の13歳時うつ症状に予防的であることを示したという。愛媛大学大学院医学系研究科疫学・公衆衛生学講座の三宅吉博氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Psychiatric Research」に5月6日掲載された。 2017年に実施された5つの研究を含むメタ解析では、カルシウム摂取量とうつ病のリスクとの間には有意な負の関連が認められている。さらに、国内の九州・沖縄母子研究(KOMCHS)のデータから、カルシウム摂取量と妊娠中のうつ症状の有病率との間に負の関連があることが示された。しかし、妊娠中の母親のカルシウム摂取量と生まれた子のうつ症状との関連を検討した研究は存在しない。また、思春期は精神衛生上きわめて重要な時期であり、この時期に発症するうつ症状の修正可能なリスク因子を特定することで、若年層の精神疾患の増加を抑えられる可能性がある。このような背景から筆者らは、KOMCHSのデータを活用し、妊娠中の母親のカルシウム摂取量と13歳時うつ症状のリスクとの関連を前向きに検討した。 KOMCHSは母子の健康問題に関するリスク要因と予防要因を特定することを目的とした前向きの出生前コホート研究である。KOMCHSでは、2007年4月から2008年3月にかけて、九州7県および沖縄県に在住していた妊婦1,757名がベースライン調査に参加した。ベースライン後の追跡調査は、出産時、産後4ヵ月時、1、2、3、4、5、6、7、8、10、11、12、13歳の時点で実施した。本研究では13歳時追跡調査に参加した873組の母子を対象とした。13歳時追跡調査では、子供がCenter for Epidemiologic Studies Depression Scale(CES-D)の日本語版に回答し、うつ症状の評価を行った。CES-Dスコアのカットオフ値は16点とした。また、母親の妊娠中の食習慣に関するデータは、自記式食事歴法質問票(DHQ)を用いて収集した。 873組において、子供の13歳時うつ症状の有症率は23.3%であった。ベースライン調査時の平均妊娠週は17.0週目、母親の平均年齢は32.0歳であり、約18%が妊娠中にうつ症状を呈していた。1日のカルシウム摂取量の中央値は482.5mgであった。 次に、ベースライン時の母親の年齢、妊娠週、両親の教育歴などで補正した多重ロジスティック回帰分析により、妊娠中の母親のカルシウム摂取量別にみた、13歳時の子供のうつ症状に対するオッズ比(OR)を算出した。その結果、妊娠中の母親のカルシウム摂取量の第1分位(最低摂取量)を基準として比較した場合、第2、第3、第4分位における子供のうつ症状の補正OR(95%信頼区間)は0.63(0.39~0.99)、0.91(0.58~1.41)、0.58(0.36~0.93)であった(P=0.10〔傾向性P値〕)。 本研究の結果について筆者らは、「本研究では、妊娠中の母親のカルシウム摂取量を増やすことで、13歳時の子供がうつ症状を発症するリスクが低下する可能性が示唆された。この知見は、小児期のうつ症状を予防する手段として、妊娠中の母親のカルシウム摂取量の増加がもたらす潜在的なメリットを明らかにしている」と述べている。

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第249回 医療事故調査制度10年 問われる「報告文化」と診療所の安全対策/厚労省

<先週の動き> 1.医療事故調査制度10年 問われる「報告文化」と診療所の安全対策/厚労省 2.百日咳が過去最多ペースで拡大、マクロライド耐性株による死亡例も/小児科学会 3.救急車の選定療養費、半年で徴収率4%も軽症搬送は1割減/茨城 4.高度がん医療機関の「集約化」へ、医師確保と症例偏在が課題に/厚労省 5.看護師養成数が減少、地域医療に深刻な影響、人材確保へ政策転換が急務/看護協会 6.美容医療バブルに陰り 利益率2.6%・淘汰の時代へ/東京商工リサーチ 1.医療事故調査制度10年 問われる「報告文化」と診療所の安全対策/厚労省医療事故調査制度の施行から10年を迎え、厚生労働省は6月27日、「医療事故調査制度等の医療安全に係る検討会」を設置し、初会合を開いた。制度は、患者の予期せぬ死亡事例の原因を調査・分析し、再発防止に資することを目的として2015年に開始され、これまでに3,338件の報告がなされている。会合では、横浜市立大学病院が取り組む重大事例への会議体での分析と改善策検討の事例が紹介され、座長には中央大学の山本 和彦教授が就任した。一方で、地域医療を担う診療所における医療安全体制の遅れも明らかとなっている。日本プライマリ・ケア連合学会の調査では、医療安全指針の策定は53%、インシデントレポート件数は年間10件未満が約65%と、体制未整備や過少報告の実態が浮かび上がった。教育機会や外部支援体制の不足、データ活用の課題も指摘されており、安全文化の定着には支援強化が不可欠とされる。検討会では、生成AIを活用した好事例の抽出や標準モデルの提示、医学生・研修医への安全教育の強化、遺族の声の反映などが論点として挙げられた。また、医療安全対策加算や地域連携加算の届出施設数は年々増加しているが、中でも事故リスクが高い集中治療室や内視鏡手術に対しては、届出要件の厳格化も進められている。国は今秋を目途に施策の方向性を取りまとめ、医療安全体制の標準化と格差是正、とくに診療所や中小病院の支援策に向けた制度的整備を進める構えだ。 参考 1) 第1回医療事故調査制度等の医療安全に係る検討会(厚労省) 2) 患者の予期せぬ死亡の原因探る 医療安全施策の課題解決へ 厚労省検討会が初会合(産経新聞) 3) 診療所にも義務付けられている医療安全確保のための指針、約5割が作成せず(日経メディカル) 2.百日咳が過去最多ペースで拡大、マクロライド耐性株による死亡例も/小児科学会百日咳の全国的な流行が深刻化している。国立健康危機管理研究機構(JIHS)によると、2025年第24週の報告患者数は2,970人で、過去最多の前週に次ぐ規模。累計では前年の約8倍に達し、東京都では第25週に278人が報告され、3週連続で過去最多を更新している。とくに10~19歳の患者が多く、乳幼児にも拡大している。日本小児科学会はワクチン未接種の生後2ヵ月未満児への感染防止を呼び掛け、感染症対策の徹底とマクロライド耐性菌(MRBP)を想定した治療体制の整備を求めている。また、MRBPによる重症例や死亡例も確認されており、医療機関にはST合剤使用などを含む柔軟な対応が求められている。百日咳は飛沫・接触感染を介し、咳が数ヵ月持続することもあり、新生児や乳児では重篤化しやすい。2023年以降は世界的にも流行が拡大しており、コロナ禍による集団免疫の低下や感染対策の緩和が要因とされる。また、妊婦へのワクチン接種も感染予防の有効策として注目されている。海外では成人用百日咳ワクチンの妊娠中接種による乳児重症化予防の効果が報告されており、わが国でも小児用3種混合ワクチンの使用で抗体移行が期待できる。産婦人科専門医らは、妊娠27~36週の接種を推奨しており、家族全体での予防接種の重要性が増している。百日咳の今後の動向には警戒が必要であり、医療従事者には迅速な診断、耐性菌への備え、ワクチン啓発の三本柱による対策が求められている。 参考 1) 生後2ヵ月未満の乳児における重症百日咳の発症に関する注意喚起と治療薬選択について(日本小児科学会) 2) 生後2ヵ月未満の百日咳、感染対策の徹底呼び掛け 全国的な流行拡大止まらず 日本小児科学会(CB news) 3) 百日咳の報告数、微減も過去2番目の2,970人-累計は昨年の約8倍 JIHS公表(同) 4) 都内の百日咳報告数、3週連続最多の278人 前週比2割増、累計もワーストに迫る(同) 3.救急車の選定療養費、半年で徴収率4%も軽症搬送は1割減/茨城茨城県が2023年12月から導入した、緊急性の低い救急搬送患者から「選定療養費」を徴収する制度について、導入半年の徴収率はわずか約4%に止まった。一方、県内の「軽症など」による救急搬送は前年同期比で1割以上減少し、県は制度に一定の効果があったと評価している。主な徴収対象は腰痛や風邪症状などで、県の救急電話相談利用も増加した。救急要請に慎重になる傾向もみられ、とくに学校現場では、保護者への負担や判断責任をめぐる混乱が生じている。水戸市やつくば市では、生徒の軽症搬送で選定療養費が徴収され、教職員の間で救急要請をためらう事態も発生している。これを受け県は「緊急性が疑われる場合はためらわず救急車を」と繰り返し呼びかけている。相談で搬送助言があれば徴収は原則免除されるが、制度周知は不十分との指摘もあり、県はホームページなどを通じて説明強化に乗り出した。議会や市民団体からは、教育現場を徴収対象から除外するよう求める意見書や陳情も出されているが、県は現時点で除外の考えはないとしている。今後、熱中症搬送の増加も想定される中、制度の適正運用と現場支援の両立が問われている。 参考 1) 選定療養費 徴収率4% 茨城県内開始半年 軽症等搬送1割減(茨城新聞) 2) 選定療養費 学校、救急要請で苦慮 茨城県「緊急時 迷わずに」(同) 3) 「選定療養費」茨城県 “救急電話相談で助言あれば徴収ない”(NHK) 4.高度がん医療機関の「集約化」へ、医師確保と症例偏在が課題に/厚労省厚生労働省は6月23日に「がん診療提供体制のあり方に関する検討会」を開き、2040年に向けたがん医療の需給推計と、均てん化・集約化の方針案を提示した。推計によれば、がん患者数は大都市部を中心に増加する一方、地方では減少が見込まれる。治療法別では、手術療法の需要は減少傾向にある一方で、放射線療法や薬物療法は全国的に増加が予測される。とくに東京・沖縄・滋賀・神奈川では放射線療法の需要が30%以上増加する見込み。同時に、外科医の数は横ばいで、消化器外科医は減少傾向にあり、放射線科医も多数の施設に分散し、治療件数が少ない施設が目立つ。このような供給面の制約を踏まえ、厚労省は、医療技術の高度化や人材確保の観点からも集約化の必要性を強調した。希少がんや高度手術、粒子線治療などは都道府県単位での集約化、標準的な治療は医療圏単位での集約化の検討を求めている。今後は、各都道府県のがん診療連携協議会において、診療実績や患者数、医療従事者の配置状況などのデータをもとに、集約化・均てん化すべき医療の切り分けを進める。地域の実情や患者の医療アクセスに配慮しつつ、質の高い持続可能ながん医療提供体制の構築が求められる。 参考 1) 第18回がん診療提供体制のあり方に関する検討会[資料](厚労省) 2) がん放射線療法の需要、4都県で3割以上増 25-40年に 厚労省推計(CB news) 3) 多くの地域でがん患者が減少する点、手術患者は減少するが放射線・薬物療法患者は増加する点踏まえて集約化検討を-がん診療提供体制検討会(Gem Med) 4) 地域のがん診療実績踏まえ、患者アクセスにも配慮し、各都道府県で「がん医療の集約化」方針を協議せよ-がん診療提供体制検討会(同) 5.看護師養成数が減少、地域医療に深刻な影響、人材確保へ政策転換が急務/看護協会看護師養成の現場が、いま大きな転換点に立たされている。厚生労働省の報告によると、看護師学校養成所の卒業者数は2021年度をピークに減少に転じ、2024年度には大学卒業者も初めて減少した。看護系3年課程の定員充足率は9割を下回り、養成基盤そのものが揺らいでいる。背景には、少子化や大学進学志向の高まり、処遇改善の遅れがある。日本看護協会の調査では、看護師の平均基本給は12年間で約6,000円の増加に止まり、物価上昇に追いつかず、低賃金層では離職率が高い傾向が示された。17.5万円未満の初任給では離職率が16.9%と、27.5万円以上の倍に及ぶ。地方ではさらに深刻であり、釧路市医師会看護専門学校(北海道)や浜田准看護学校(島根県)など、入学者減少により複数の看護学校が閉校に追い込まれており、2028年度までに閉校予定の学校は全国で相次いでいる。これにより、医療過疎地域での看護職員供給に大きな穴が空く恐れがある。医師会立の看護学校でも定員割れが深刻化。群馬県では医師会立の准看護学校の6校中4校で存続が危ぶまれている。こうした中、ふるさと納税や自治体支援を活用した財源確保や、オンライン講義・地域密着型実習の導入など、各地で独自の取り組みも始まっている。また、看護学校内でのパワハラ問題も学生離れの一因とされている。教員の不適切な言動や旧来型の上下関係がハラスメントとして報じられ、若年層の看護職志望者にマイナスの影響を与えている。教育現場では、教員の意識改革と学生の主体性を育む学習スタイルへの転換が求められている。こうした危機を受け、福井県では定員充足率が90%未満の民間養成所への支援を盛り込んだ「看護師養成所学生確保重点支援事業」を新設し、運営費や広報支援を拡充するなどの対策が始まった。2025年には日本看護協会初の男性会長も就任し、「処遇改善を国に求め、地域で必要な看護師を確保したい」と意欲を示す。医療現場を支える看護職の安定確保は、医師の業務負担や診療機能の維持にも直結する喫緊の課題である。医師会や関係団体が連携し、看護教育・待遇改善への具体的支援と政策提言を強化する必要がある。 参考 1) 中央社会保険医療協議会 総会 医療提供体制等について(厚労省) 2) 看護師の新規養成数、ピークアウト 大卒が初の減少 厚労省調べ(CB news) 3) 看護師の基本給、12年でアップ約6千円のみ 低賃金だと離職率高く日看協調べ(同) 4) 看護師等養成所を取り巻く厳しい状況や新たな取り組みを報告(医師会) 5) 2024年度 「看護職員の賃金に関する実態調査」看護師のベースアップの低さが浮き彫りに(日看協) 6) 日本看護協会 初の男性会長が就任 “男性看護師 増加を期待”(NHK) 7) 釧路市医師会看護専門学校 入学者減り2030年度末に閉校へ(同) 8) 浜田准看護学校、2026年3月末で閉校へ(中国新聞) 6.美容医療バブルに陰り 利益率2.6%・淘汰の時代へ/東京商工リサーチ美容医療市場は拡大の一途をたどっている。東京商工リサーチによれば、全国248の美容クリニックの2024年の売上高は約3,137億円で、2022年比1.5倍に成長。SNSや自己投資志向を背景に需要が高まり、性別・年齢を問わず受診が一般化している。その一方で、利益率は2.6%と低く、倒産や休廃業が2024年には計7件と過去最多になった。単一施術型や広告依存型の経営はリスクが高く、差別化と持続的経営力が問われている。市場の急成長と裏腹に、美容医療による健康被害の報告も急増している。厚生労働省の分析では、施術件数は2019年の約123万件から2022年には約373万件に急増。2024年度には国民生活センターなどへの相談が1万700件あり、そのうち健康被害の訴えは898件に上った。施術結果への不満、合併症や後遺症も多く、顔のやけどやしびれ、感染例も報告されている。トラブルの背景には、SNS経由で施術を知った若年層がリスクを十分に理解せず施術を受ける傾向や、研修経験の乏しい「直美(ちょくび)」医師の増加もある。カウンセラー主導で契約が進み、医師の診察やリスク説明が不十分なケースも目立つ。厚労省は美容クリニック勤務医の資格や安全管理状況の年次報告を義務付ける方針。美容医療は「施術力」と「経営力」に加え、安全性・倫理性が問われる時代に入った。医師にとっては、信頼される提供体制の再構築が急務となっている。 参考 1) 「美容医療」市場は3年間で1.5倍に拡大 “経営力”と“施術力”で差別化が鮮明に(東京商工リサーチ) 2) 美容医療市場の売上高、3年で1.5倍 利益率は2.6%にとどまる 東京商工リサーチ(CB news) 3) 美容医療のトラブルが急増 結果に不満、合併症や後遺症も(中日新聞)

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だ~まにゅ Dermatology Manual

必要なとこだけ、ムダなく最短で診療へ「皮膚科の臨床」67巻6号(2025年5月臨時増刊号)“迷わず使える”皮膚科マニュアル『だ~まにゅ Dermatology Manual』登場! 新薬・治療法の最新情報をキャッチアップできる「治療薬・治療法一覧」、エキスパートによる治療の実践法がわかる「治療実践マニュアル」など、皮膚科診療に必要なエッセンスを疾患ごとにぎゅっと凝縮。治療法に迷ったときや最新情報を確認したいとき、手軽に参照できる診療の即戦力!画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大するだ~まにゅ Dermatology Manual定価8,800円(税込)判型B5判頁数224頁発行2025年6月編集「皮膚科の臨床」編集委員会ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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歌いかけはぐずる乳児の気分を落ち着かせる

 乳児に歌いかけることは、乳児の気持ちを落ち着かせる簡単で安全、かつ費用もかからない方法であることが新たな臨床試験で明らかになった。新しい歌や歌を使った育児のアイディアを教えられた親は乳児に歌いかける頻度が高くなり、その結果、乳児の全般的な気分が改善することが示されたという。オークランド大学(ニュージーランド)心理学分野のSamuel Mehr氏らによるこの研究結果は、「Child Development」に5月28日掲載された。  論文の筆頭著者である米イェール大学児童研究センターのEun Cho氏は、「歌うことは誰にでもできるし、ほとんどの家庭ですでに実践されている。われわれは、このシンプルな習慣が乳児の健康に実際に効果のあることを証明した」と話している。また、研究グループは、乳児の気分の改善は、親と乳児双方の生活の質(QOL)の向上につながるため、結果的に家族全体の健康にも有益であると述べている。 この研究では、米国とニュージーランドの乳児の親110人を対象に10週間のランダム化比較試験を実施し、乳児期に親が子どもに歌いかけることの効果を検討した。対象者は、介入群(54人)と対照群(56人)にランダムに割り付けられた。1週目はテスト前期間、2〜5週目は介入群の介入期間、6週目はテスト後期間とし、その後、対照群にも同じ介入が4週間にわたって行われた。介入は、親による乳児への歌いかけの頻度を増やし、歌のレパートリーを広げることを目的としたもので、具体的には、親に新しい歌を教えるためのカラオケ風の歌の動画や乳児向けの音の出る歌の絵本の提供、週に1回のメールでのニュースレターの配信、定期的な連絡だった。全期間を通じて、スマートフォンで乳児と親の気分などを質問票を通して記録するEMA(エコロジカル・モーメント評価)が実施された。 その結果、介入により親が乳児に歌いかける頻度が高まることが明らかになった。論文の共著者であるアムステルダム大学(オランダ)心理学分野のLidya Yurdum氏は、「乳児にもっと歌いかけるよう促し、それをサポートするための基本的なツールを提供すれば、親は自然に乳児に歌いかけるようになる」と話す。 また親は、乳児に歌いかけることが増えただけでなく、ぐずる乳児を落ち着かせるための方法として歌を使うことも明らかになった。Mehr氏は、「われわれは親に、乳児がぐずっているときに歌いかけるようにと伝えてはいないが、親は実際にそのために歌を使ったのだ」と話す。そして、「親は、乳児を落ち着かせる上で歌がどれほど効果的なのかを介入を通してすぐに理解し、乳児の感情をコントロールするツールとして直感的に歌の力を借りたのだろう」との見方を示している。 さらにEMAからは、歌いかけの頻度が高まった親の乳児は、対照群の乳児と比較して、気分が全体的に大きく改善したことも示された。ただし、親自身の気分には有意な改善が見られなかった。 研究グループは、「これらの結果は、乳児への歌いかけを推奨する低コストプログラムが乳児を落ち着かせ、その結果、親のストレス軽減に役立つ可能性があることを示唆している」と述べている。またYurdum氏は、「同程度に効果的で導入の簡単な方法があるのだから、高価で複雑な介入にばかりに焦点を合わせる必要はない」と話している。

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自閉スペクトラム症に対する非定型抗精神病薬の有効性〜ネットワークメタ解析

 自閉スペクトラム症(ASD)患者は、社会的な交流や行動に関連する多様な症状を呈する。非定型抗精神病薬は、小児および成人ASD患者の易刺激性、攻撃性、強迫観念、反復行動などの苦痛を伴う症状の治療に広く用いられてきた。しかし、その効果と相対的な有効性は依然として明らかではなかった。チリ・Universidad de ValparaisoのNicolas Meza氏らは、ASDに対する非定型抗精神病薬の有効性を明らかにするため、ネットワークメタ解析を実施した。The Cochrane Database of Systematic Reviews誌2025年5月21日号の報告。 小児および成人ASD患者を対象とした短期フォローアップ調査において、易刺激性に対する非定型抗精神病薬の相対的ベネフィットを評価するため、ネットワークメタ解析を実施した。さらに、短期、中期、長期フォローアップにおける、小児および成人ASD患者のさまざまな症状(攻撃性、強迫行動、不適切な発言など)と副作用(錐体外路症状、体重増加、代謝性副作用など)に対する非定型抗精神病薬のベネフィット/リスクについて、プラセボ群または他の非定型精神病薬との比較を行い、評価した。CENTRAL、MEDLINEおよびその他10のデータベース、2つのトライアルレジストリーを検索し、リファレンスの確認、引用文献の検索、研究著者への連絡を行い、対象研究を選定した(最終検索:2024年1月3日)。ASDと診断された小児および成人を対象に、非定型抗精神病薬とプラセボまたは他の非定型抗精神病薬と比較したランダム化比較試験(RCT)を対象に含めた。重要なアウトカムは、易刺激性、攻撃性、体重増加、錐体外路症状、強迫行動、不適切な発言とした。バイアスリスクの評価には、Cochrane RoB 2ツールを用いた。易刺激性の複合推定値には頻度主義ネットワークメタ解析、その他のアウトカムにはランダム効果モデルを用いて、対比較統計解析を実施した。エビデンスの確実性の評価には、GRADEを用いた。 主な結果は以下のとおり。・17研究、1,027例をネットワークメタ解析に含めた。成人対象は1研究(31例)、残りの16研究(996例)は小児対象であった。非定型抗精神病薬には、リスペリドン、アリピプラゾール、ルラシドン、オランザピンが含まれた。・易刺激性についてのネットワークメタ解析では、小児ASDに対してリスペリドンとアリピプラゾールは、プラセボ群と比較し、短期的に易刺激性の症状軽減に有効である可能性が示唆された。ルラシドンはプラセボと比較し、短期的な易刺激性に対する効果に、ほとんどまたはまったく差はないと考えられる。【リスペリドン】平均差(MD):-7.89、95%信頼区間(CI):-9.37〜-6.42、13研究、906例、エビデンスの確実性:低【アリピプラゾール】MD:-6.26、95%CI:-7.62〜-4.91、13研究、906例、エビデンスの確実性:低【ルラシドン】MD:-1.30、95%CI:-5.46〜2.86、13研究、906例、エビデンスの確実性:中・その他のアウトカムについては、小児ASDにおける短期フォローアップ調査において、非定型抗精神病薬は、プラセボと比較し、攻撃性に及ぼす影響が、非常に不確実であることが示唆された(リスク比[RR]:1.06、95%CI:0.96〜1.17、1研究、66例、エビデンスの確実性:非常に低)。バイアスリスクと重大な不正確さの懸念から、エビデンスの確実性は非常に低いと考えられる。・小児ASDにおける短期フォローアップ調査において、非定型抗精神病薬は、プラセボと比較し、体重増加の発生に及ぼす影響が、非常に不確実であることが示唆された(RR:2.40、95%CI:1.25〜4.60、7研究、434例、エビデンスの確実性:非常に低)。短期的な体重増加についても、非常に不確実であった(MD:1.22kg、95%CI:0.55〜1.88、3研究、297例、エビデンスの確実性:非常に低)。いずれの研究においても、バイアスリスクと重大な不正確さの懸念から、エビデンスの確実性は非常に低いと考えられる。・小児ASDにおける短期的な錐体外路症状の発生に対する非定型抗精神病薬の及ぼす影響は、プラセボと比較し、非常に不確実であった(RR:2.36、95%CI:1.22〜4.59、6研究、511例、エビデンスの確実性:非常に低)。バイアスリスクと重大な不正確さの懸念から、エビデンスの確実性は非常に低いと考えられる。・小児ASDにおいて、非定型抗精神病薬は、プラセボと比較、短期的に強迫行動を改善する可能性が示唆された(MD:-1.36、95%CI:-2.45〜-0.27、5研究、467例、エビデンスの確実性:低)。バイアスリスクと異質性への懸念から、エビデンスの確実性は低い。・小児ASDにおいて、非定型抗精神病薬は、プラセボと比較、短期的に不適切な発言を減少させる可能性が示唆された(MD:-1.44、95%CI:-2.11〜-0.77、8研究、676例、エビデンスの確実性:低)。バイアスリスクと異質性への懸念から、エビデンスの確実性は低い。・他の非定型抗精神病薬の効果は評価不能であった。・利用可能な研究が不足していたため、成人ASDに関する知見は得られなかった。 著者らは「リスペリドンおよびアリピプラゾールは、プラセボと比較し、短期的に小児ASDの易刺激性の症状を改善する可能性が示唆されたが、ルラシドンは、ほとんどまたはまったくないと考えられる。その他の有効性および潜在的な安全性に関しては、中〜非常に低い確実性のエビデンスとなっていた。現在利用可能なデータでは、包括的なサブグループ解析を行うことはできなかった。非定型抗精神病薬による介入の有効性および安全性を十分な確実性をもってバランスを取るためには、より大規模なサンプルによる新たなRCTが必要である。とくに成人ASDを対象とした研究が求められる。また、研究著者は、対象集団と介入の特性を透明化し、可能な場合には患者別、個別のデータを提供する必要があり、さらにデータの統合プロセスにおける問題を回避するためにも、各アウトカムについての一貫した測定方法を確立する必要がある」と結論付けている。

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溶連菌咽頭炎への抗菌薬、10日間から短縮可能?

 本邦では、『気道感染症の抗菌薬適正使用に関する提言(改訂版)』1)において、A群溶血性レンサ球菌(GAS)が検出された急性咽頭・扁桃炎に対して、抗菌薬を投与する場合にはアモキシシリン内服10日間を検討することが推奨されている。ただし、海外では臨床的な治療成功については、短期治療(5~7日)が10日間の治療と同等であるいう報告もあり、短期治療の可能性が検討されている。 2022年にニュージーランドで実施された抗菌薬適正使用の取り組みの一環として、GAS咽頭炎に対する抗菌薬治療期間の短縮が、地域的に促進された。この介入により、抗菌薬の投与期間が10日間から5日間や7日間などへ短縮されるようになったが、治療成績に及ぼす影響は明らかになっていなかった。そこで、Max Bloomfield氏(Awanui Laboratories、Te Whatu Ora/Health New Zealand)らの研究グループは、後ろ向きコホート研究により治療期間の短縮の影響を検討した。その結果、治療期間を短縮しても治療成績に悪影響はみられなかった。本研究結果は、Open Forum Infectious Diseases誌2025年6月6日号に掲載された。 本研究では、ニュージーランド・ウェリントン地域の検査所において、咽頭ぬぐい液培養によりGAS陽性と報告された患者のうち、報告時点で抗菌薬が処方されていなかった患者を対象とした。対象患者を2022年の抗菌薬適正使用の取り組みの実施前と実施後で2群(介入前群851例、介入後群1,746例)に分類し、抗菌薬治療期間、GAS再陽性、再治療、予定外入院、感染に関連する入院、家庭内感染、急性リウマチ熱について解析した。 主な結果は以下のとおり。・抗菌薬10日間治療の割合は介入前群68.7%、介入後群41.0%であった。5日間治療はそれぞれ2.4%、21.2%であった。抗菌薬非投与はそれぞれ24.9%、28.0%であった。・主な抗菌薬の内訳は、penicillin Vが介入前群75.9%、介入後群80.9%であり、アモキシシリンがそれぞれ19.4%、11.1%、セファレキシンがそれぞれ0.9%、3.8%であった。・介入前後の治療成績は、いずれの評価項目も両群間に有意差はみられなかった。介入前後の治療成績は以下のとおり(介入前群vs.介入後群、調整オッズ比[aOR]、95%信頼区間[CI]、p値を示す)。 -GAS再陽性:3.5%vs.2.7%、0.78、0.48~1.25、p=0.30 -再治療(抗菌薬再処方):12.8%vs.12.9%、1.02、0.79~1.31、p=0.88 -予定外入院:0.1%vs.0.5%、3.98、0.50~31.84、p=0.19 -咽頭・頭頸部感染による入院:0.0%vs.0.2% -家庭内感染:6.3%vs.6.5%、0.96、0.69~1.36、p=0.86 -急性リウマチ熱:両群0例・治療期間別にみた再治療割合は、抗菌薬非投与の集団で高い傾向にあった。各治療期間の再治療割合は以下のとおり。 -10日間:11.4%(参照) -7日間:11.7%(aOR:1.01、95%CI:0.59~1.73、p=0.98) -5日間:12.7%(aOR:1.10、95%CI:0.75~1.64、p=0.63) -非投与:15.6%(aOR:1.80、95%CI:1.26~2.55、p<0.01)・治療期間別にみた家庭内感染割合は、5日間治療の集団で低い傾向にあった。各治療期間の家庭内感染割合は以下のとおり。 -10日間:7.0%(参照) -7日間:6.2%(aOR:0.81、95%CI:0.40~1.65、p=0.57) -5日間:4.0%(aOR:0.52、95%CI:0.28~0.97、p=0.04) -非投与:7.1%(aOR:1.04、95%CI:0.64~1.68、p=0.89)・GAS再陽性の割合は、治療期間による差はみられなかった。 本研究結果について、著者らは「本コホートでは、GAS咽頭炎に対する抗菌薬治療期間を短縮しても、治療成績に悪影響はみられなかった。また、他の研究では短期治療によりGASの除菌率が低下することが報告されているが、本研究では短期治療により家庭内感染は増加しなかった。これは新たな発見である」とまとめた。

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第17回 米国10代で肥満症治療薬「セマグルチド」使用が50%急増、期待と懸念が交錯

アメリカの若者の間で深刻化する肥満。この問題に対し、新しい治療の選択肢として登場したGLP-1受容体作動薬の肥満症治療薬セマグルチド(商品名:ウゴービ[Wegovy])の使用が、10代の若者たちの間で急増しています。ロイター通信が報じた最新のデータによると、その使用率は昨年1年間で50%増加しました1)。これは、長年有効な対策が限られていた若年層の肥満治療における大きな転換点であると同時に、専門家の間では期待と懸念の意見が交錯しています。深刻化する肥満と「最後の手段」としての新薬このニュースの背景には、米国の若者をめぐる深刻な健康問題があります。現在、米国の12~19歳の約23%、約800万人が肥満であるとされ、この割合は1980年の5%から大幅に増加しています。肥満は将来の糖尿病や心臓病のリスクを高めるため、長年、食事療法や運動といったライフスタイルの改善が推奨されてきましたが、それだけでは効果が不十分なケースが少なくありませんでした。こうした状況の中、製薬大手ノボ ノルディスク ファーマの開発したセマグルチドが、2022年後半に12歳以上の青少年への使用を承認されました。この薬には強力に食欲を抑える効果があり、臨床試験で高い有効性が示されています。米国小児科学会(AAP)も2023年1月に、12歳以上の肥満の子供に対し、生活習慣の改善と並行して減量薬を使用することを推奨するガイドラインを発表しています2)。こうした流れが、医師や患者家族の間でセマグルチドに対する信頼感を高め、使用の拡大につながったとみられています。50%増でも「氷山の一角」、使用率が示す現実ロイターが報じた分析によれば、セマグルチドの処方率は2023年の青少年10万人当たり9.9件だったのが、昨年(2024年)には14.8件と50%増加し、今年(2025年)の最初の3ヵ月では17.3件にまで伸びています。このデータは、全米130万人の12~17歳の電子カルテを分析したものです。しかし、この数字はまだ「氷山の一角」にすぎないという指摘もあります。実際、肥満の青少年は10万人当たり推定2万人いるとされており3)、現在の処方率はそのごくわずかにすぎません。残る長期的な安全性への懸念使用が拡大する一方で、懸念の声も上がっているのは事実です。とくに、体の発達において重要な時期にある青少年への長期的な影響については、まだデータが十分ではないという懸念です。また、これらの薬は使用を中止すると体重が元に戻る可能性があり、長期にわたって使い続ける必要があるかもしれないという課題も指摘されています。製造元のノボ ノルディスク ファーマは、臨床試験においてセマグルチドが「成長や思春期の発達に影響を与えるようにはみえなかった」として、その安全性と有効性に自信を示していますが、十分なエビデンスがあるとはいえません。確かにセマグルチドの登場は、これまで有効な手段が乏しかった青少年の肥満治療に大きな希望をもたらしています。しかし一方で、長期的な安全性や費用、そして「痩せ薬」として安易に使用されている現状への懸念など、社会が向き合うべき課題は少なくありません。この新しい治療法が、今後どのように若者たちの健康に影響を与えるのか、慎重に見守っていく必要があるでしょう。 参考文献・参考サイト 1) Terhune C, et al. Wegovy use among US teens up 50% as obesity crisis worsens. Reuters. 2025 Jun 4. 2) Hampl SE, et al. Clinical Practice Guideline for the Evaluation and Treatment of Children and Adolescents With Obesity. Pediatrics. 2023;151:e2022060640. 3) CDC. Childhood Obesity Facts. 2024 Apr 2.

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女性の低体重/低栄養症候群(FUS)は社会で治療する疾患/肥満学会

 日本肥満学会は、日本内分泌学会との合同特別企画として、6月6日(金)に「女性の低体重/低栄養症候群(Female Underweight/Undernutrition Syndrome:FUS)-背景、現況、その対応-」のシンポジウムを開催した。シンポジウムでは、なぜ肥満学会が「女性の痩せ」を問題にするのか、その背景やFUSの概念、対応などが講演された。わが国の肥満の統計から見えてきた「女性の痩せ問題」 「なぜ、肥満学会が『痩せ』を問題とするのか」をテーマに同学会理事長の横手 幸太郎氏(千葉大学 学長)が講演を行った。 わが国のBMI25以上の成人肥満人口は男性では31.7%、女性では21%あり、なかでもBMI30以上の高度肥満が増加している。とくにアジア人では、より低いBMIから肥満に関連する健康障害が生じることから「肥満症診療のフローチャート」や「肥満症治療指針」などを定め、『肥満症診療ガイドライン2022』(日本肥満学会 編集)で広めてきた。 これらの作成の過程で、わが国の20~39歳の女性では、BMI18.5以下の人口が多く、女性の痩せすぎが顕著であることが判明した。痩せすぎると健康障害として免疫力の低下、骨粗鬆症、不妊、将来その女性から産まれてくる子供の生活習慣病リスクなどが指摘されている。また、近年では、糖尿病や肥満症治療で使用されるGLP-1受容体作動薬などが痩身などの目的で適応外の人に使用されることで、消化器症状、栄養障害、重症低血糖などの健康障害の報告もされている。こうした状況に鑑み、「肥満症治療薬の安全・適正使用に関するワーキンググループ」を立ち上げ、適正使用の啓発に努めてきた。こうした関連もあり、同学会が健康障害への介入ということで、「FUSの概念を提唱し、診療すべき疾患と位置付けていく」と経緯の説明を行った。診断基準、治療法の確立で低体重/低栄養の健康被害をなくす 「女性の低体重/低栄養症候群(FUS)の概念提唱の背景」をテーマに小川 渉氏(神戸大学大学院医学研究科橋渡し科学分野代謝疾患部門 特命教授)が、FUS概念提唱の背景を講演した。 肥満と低体重はともに健康障害のリスクであり、メタボリックシンドロームは肥満と関連し、サルコペニアは痩せと関連するという疫学データを示した1)。 また、低体重や低栄養が健康障害リスクであることの認知は高齢者医療を除き、まだ不十分であり、医療制度や公衆衛生対策では肥満対策が現在も重視され、高齢者以外の低体重/低栄養のリスクは学術的・政策的にも軽視されていると指摘した。たとえば具体的な健康障害として、肥満も低体重も月経周期の長さや規則性に悪影響を来すことが知られており、若年女性におけるBMIと骨密度の関係では、いずれの年代でもBMIが20を下回ると急激に骨塩量が低下するという2)。 そして、わが国の若年女性の低体重/低栄養に関わる問題として、20代女性の2割がBMI18.5以下と低体重率が高いこと、月経周期異常、骨量減少、貧血などの低体重で多くみられる健康障害があること、健康障害を伴うような痩身への試みとして「GLP-1ダイエット」に代表される「痩せ志向」などがある。とくに「GLP-1ダイエット」は、法律、倫理、臨床上の問題が絡む複合的な課題であると警鐘を鳴らした。 今後の展開として、小川氏は低体重/低栄養の学術上の課題として、低体重(BMI18.5以下)の定義へのさらなる科学的エビデンスの集積とともに、疾患概念確立のために他の関連する学会とのワーキンググループによる活動を行うという。 疾患概念・定義の確立の意義としては、「一定の疾患概念に基づくエビデンスの収集、低体重/低栄養と健康障害に関する社会的認知の向上から診断基準の作成、介入・治療法の確立、健診などでの予防体制整備、教育現場や社会への啓発活動が行われ、健康障害がなくなるようにしたい」と展望を語った。親の一言が子供の「痩せ志向」を助長させる可能性 「女性の低体重/低栄養症候群(FUS)の対応~アカデミアの役割と社会へのアプローチ~」をテーマに田村 好史氏(順天堂大学院スポーツ医学・スポートロジー/代謝内分泌内科学 教授)が、FUSの概要説明と痩身願望が起こる仕組み、そして、今後の取り組みについて講演した。 はじめに本年4月17日に発表された「女性の低体重/低栄養症候群(FUS)ステートメント」に触れ、FUSは18歳以上で閉経前までの成人女性を対象に、低栄養・体組成の異常、性ホルモンの異常、骨代謝異常など6つの大項目の疾患や状態がある場合の症候と定義されていると述べた。現時点では、基準を定めるエビデンスの不足から枠組みを提示するにとどめ、摂食障害や二次性低体重(たとえば甲状腺機能亢進症など)は除かれ、閉経後の女性や男性は含まないと説明した。 FUSの原因としては、ソーシャルメディア(SNS)やファッション誌などのメディアの影響、体質による痩せ、貧困などの社会経済的要因など3つが指摘され、とくに痩せ願望は小学校1年生ごろから生じているという報告もある。 とくにこうした意識は保護者などから「太っちゃうよ」など体型に関する指摘や友人の「痩せた?」などの会話と相まってSNSなどのメディアの影響で熟成され、痩せ願望へとつながると指摘する。 こうした痩身志向者への対応では、体型の正しい理解を促進するために教育介入が必要であると同時に、体質による痩せには定期的な骨密度測定や血液検査、栄養指導などの健康管理が、社会・経済的要因の痩せでは社会福祉の充実が必要と語る。また、その際にFUSの提唱が新しいスティグマ(差別・偏見)とならないように留意が必要とも述べた。 今後の方向性と提言として、診断基準確立のためにガイドラインの策定、健診制度への組み込みで骨量低下の早期発見、教育・産業界との連携で適切な体型イメージ教育や諸メディアとの連携、内閣府の取り組みとして戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)との連携が必要と4項目を示した。 おわりに田村氏は、現在進行しているSIP事業(2023~27年度)として「女性のボディイメージと健康改善のための研究開発」の一端を披露し、「痩せが美しいという単一価値の変更」のために、FUSに該当する女性の疫学調査、学校での教育事業例を紹介した。啓発活動では「マイウェルボディ協議会」を設立し、「医学的に適正な体型を自分の意志で選択できる世界を目指して社会概念の変化を促していきたい、そのために社会的な機運を上げていきたい」と抱負を語り、講演を終えた。 講演後の総合討論では、会場参加の医師などから「子供の摂食障害の問題」「親の痩せているほうがよいという意識の問題」などが指摘された。また、骨量の最高値が30歳前後であることの啓発と若年からの骨密度測定などの必要性が提案されるなど、活発な話し合いが行われた。

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第248回 骨太方針の「OTC類似薬見直し」診療現場や患者からは懸念の声も/政府

<先週の動き> 1.骨太方針の「OTC類似薬見直し」診療現場や患者からは懸念の声も/政府 2.コロナワクチンの接種の遅れ、孤独感や誤情報、公衆衛生の新たな課題/東京科学大など 3.「かかりつけ医機能」の再設計へ、次期改定で評価を見直し/中医協 4.オンライン診療1.3万施設まで増加、精神疾患が主領域に/厚労省 5.病床転換助成、利用率わずか1%台 延長か廃止かで紛糾/厚労省 6.ハイフ施術でやけど多発、違法エステ横行に警鐘/厚労省 1.骨太方針の「OTC類似薬見直し」診療現場や患者からは懸念の声も/政府政府は、医療費削減の一環として「OTC類似薬(市販薬と成分・効果が類似する医療用医薬品)」の保険適用見直しを検討しており、6月13日に閣議決定された「骨太の方針2025」にその方針が盛り込まれた。自民・公明・日本維新の会の3党が合意し、社会保障費抑制と現役世代の保険料軽減を目的としている。見直し対象は、花粉症薬や解熱鎮痛薬、保湿剤、湿布などで、最大で7,000品目とされる。仮に保険給付から除外されれば、患者の自己負担は数千円~数万円単位で跳ね上がる。とくに慢性疾患や難病患者、小児、在宅患者への影響が懸念されている。日本医師会の松本 吉郎会長は18日の記者会見で、「医療提供が可能な都市部と異なり、へき地では市販薬へのアクセスも困難。経済性を優先しすぎれば、患者負担が重くなり、国民皆保険制度の根幹が揺らぐ」と指摘。医療機関での診療や処方の自由度が制限されることにも懸念を示した。また、現場の開業医からも、「処方薬が保険適用外となれば、治療選択肢が狭まり、医師としての判断が制限される」「市販薬への誘導が誤用や副作用を招きかねない」との声が上がっている。とくに皮膚疾患やアレルギー疾患、疼痛管理においては、治療の中核となる薬剤が影響を受けるとされる。6月18日には、難病患者の家族らが約8万5千筆の署名とともに厚生労働省に保険適用継続を要望。厚労省は「具体的な除外品目は未定で、医療への配慮を踏まえて議論する」としているが、今後の制度設計次第で現場への影響は甚大となる可能性がある。次期診療報酬改定との整合性も含め、制度の動向を注視しつつ、患者支援の観点から声を上げていくことが求められる。 参考 1) 経済財政運営と改革の基本方針2025(内閣府) 2) 市販薬と効果似た薬の保険外し、患者に懸念 医療費節約で自公維合意(日経新聞) 3) 日医会長、3党合意のOTC類似薬見直しに懸念 骨太方針は高評価、次期診療報酬改定に期待(CB news) 4) 「命に関わる」保湿剤・抗アレルギー薬などの“OTC類似薬”保険適用の継続を求め…難病患者ら「8.5万筆」署名を厚労省に提出(弁護士JPニュース) 5) 「OTC類似薬」保険適用の継続を 難病患者家族が厚労省に要望書(NHK) 2.コロナワクチンの接種の遅れ、孤独感や誤情報、公衆衛生の新たな課題/東京科学大など新型コロナウイルス感染症におけるワクチン接種の効果と課題が、複数の研究から改めて浮き彫りになっている。東京大学の古瀬 祐気教授らの推計によれば、2021年に国内で行われたワクチン接種がなければ、死者数は実際より2万人以上増えていたとされる。ワクチン接種の開始が3ヵ月遅れた場合、約2万人の追加死亡が生じた可能性があり、接種のタイミングが公衆衛生に与える影響の大きさが示された。一方、接種を妨げた要因として「誤情報」と「孤独感」の影響が注目されている。同チームの調査では、誤情報を信じた未接種者が接種していれば、431人の死亡を回避できたとの推計もなされている。さらに、東京科学大学らの研究では、若年層のワクチン忌避行動に「孤独感」が強く影響していたことが判明した。都内の大学生を対象とした調査では、孤独を感じる学生は、感じない学生と比べてワクチンをためらう傾向が約2倍に上った。社会的孤立(接触頻度)とは異なり、孤独感という主観的要因がワクチン行動に与える心理的影響が独立して存在することが示された。東京都健康長寿医療センターの研究でも、「孤独感」はコロナ重症化リスクを2倍以上高めるとの結果が示されており、孤独感が接種率の低下だけでなく、重症化リスクの増大にも寄与している可能性がある。今後の感染症対策では、誤情報対策だけでなく、心の健康や社会的つながりを強化する施策が、接種率の向上および重症化予防の両面において重要になると考えられる。次のパンデミックに備えるためにも、若年層に対する心理的支援や信頼形成のアプローチが不可欠である。 参考 1) 若年層のワクチン忌避、社会的孤立より“孤独感”が影響(東京科学大学) 2) ワクチン接種をためらう若者 孤独感が影響 東京科学大など調査(毎日新聞) 3) 接種遅れればコロナ死者2万人増 21年、東京大推計(共同通信) 4) 「孤独感」はコロナ感染症の重症化リスクを高める、今後の感染症対策では「心の健康維持・促進策」も重要-都健康長寿医療センター研究所(Gem Med) 3.「かかりつけ医機能」の再設計へ、次期改定で評価を見直し/中医協厚生労働省は、6月18日に中央社会保険医療協議会(中医協)総会を開き、2026年度の診療報酬改定に向け、「かかりつけ医機能」の診療報酬評価の見直しについて検討した。今年の医療法改正により医療機関機能(高齢者救急・地域急性期機能、在宅医療等連携機能、急性期拠点機能など)報告制度が始まったことを踏まえ、「機能強化加算」や地域包括診療料などの体制評価が現状に即しているかが問われている。厚労省は6月に開かれた「入院・外来医療等の調査・評価分科会」で、医療機関が報告する「介護サービス連携」「服薬の一元管理」などの機能は診療報酬で評価されているが、「一次診療への対応可能疾患」など一部機能は報酬上の裏付けがない点を指摘。これに対し支払側委員からは、既存加算は制度趣旨に適さず、17領域40疾患への対応や時間外診療など実態に即した再評価を求める声が上がった。また、診療側からは、看護師やリハ職の配置要件など「人員基準ありきの報酬」が現場に過度な負担を強いており、患者アウトカムや診療プロセスを評価軸とすべきとの意見も強調された。とりわけリハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算は基準が厳しく、取得率が1割未満に止まっている現状が報告された。今後の改定論議では、「構造(ストラクチャー)」評価から「プロセス」「アウトカム」重視への段階的な移行とともに、新たな地域医療構想や外来機能報告制度との整合性が問われる。かかりつけ医機能の再定義とそれを支える診療報酬のあり方は、地域包括ケア時代における制度の根幹をなす論点となる。 参考 1) 第609回 中央社会保険医療協議会 総会(厚労省) 2) 「かかりつけ医機能」の診療報酬見直しへ 機能強化加算など、法改正や高齢化踏まえ(CB news) 3) 診療側委員「人員配置の要件厳し過ぎ」プロセス・アウトカム重視を主張(同) 4) 2026年度診療報酬改定、「人員配置中心の診療報酬評価」から「プロセス、アウトカムを重視した診療報酬評価」へ段階移行せよ-中医協(Gem Med) 4.オンライン診療1.3万施設まで増加、精神疾患が主領域に/厚労省2025年4月時点でオンライン診療を厚生労働省に届け出た医療機関数が1万3,357施設に達し、前年より2,250件増加したことが厚労省の報告で明らかになった。届け出数は、初診からのオンライン診療が恒久化された2022年以降増加傾向にあり、対面診療全体に占める割合も2022年の0.036%から2023年は0.063%に上昇した。厚労省の分析によれば、オンライン再診では精神疾患の割合が高く、2024年7月の算定データでは「適応障害」が最多で8,003回(9.1%)、次いで高血圧症や気管支喘息、うつ病などが続いた。とくに対面診療が5割未満の施設では、再診での適応障害(22.2%)やうつ病、不眠症など精神科領域の算定が顕著だった。この結果から中央社会保険医療協議会(中医協)の分科会では、「オンラインと対面での診療内容の差異を調査すべき」との指摘もあった。こうした中、日本医師会は6月18日、「公益的なオンライン診療を推進する協議会」を発足。郵便局などを活用した地域支援型の導入モデルを想定し、医療関係4団体や自治体、関係省庁、郵政グループとともに初会合を行った。松本 吉郎会長は「利便性や効率性のみに偏らず、安全性と医療的妥当性を担保した導入が不可欠」と強調し、とくに医療アクセスに困難を抱える地域、在宅医療、災害・感染症時の手段としての有効性に言及した。郵便局のインフラを活用した実証事業も一部地域で始動しており、診療報酬制度の課題、患者負担への配慮、医師会・自治体との連携が今後の焦点となる。 参考 1) オンライン診療に1.3万施設届け出 厚労省調べ、4月時点(日経新聞) 2) オンライン再診、精神疾患の割合が高く 厚労省調べ(CB news) 3) オンライン診療で医産官学の協議会発足 郵便局など活用で連携を強化(同) 5.病床転換助成、利用率わずか1%台 延長か廃止かで紛糾/厚労省厚生労働省は6月19日、医療療養病床から介護施設などへの転換を支援する「病床転換助成事業」の今後の在り方について、社会保障審議会・医療保険部会で実態調査結果を報告した。2008年度に開始され、これまでに7,465床の転換に活用されたが、今後の活用予定医療機関は2025年度末時点で1.4%、2027年度末でも3.0%に止まり、活用実績も病院7.3%、有床診療所3.7%と低迷している。事業延長については委員の間で意見が分かれ、健康保険組合連合会の佐野 雅宏委員らは既存支援策との重複や利用率の低さを理由に廃止を主張。一方、日本医師会の城守 国斗委員は、申請手続きの煩雑さや認可の遅れがネックとなっていると指摘し、当面の延長と支援対象の拡大を提案した。今後、厚労省は部会の意見を整理し、年度内に方針を提示する見通し。地域医療の再編を進める上で、同事業の位置付けと実効性が改めて問われている。 参考 1) 病床転換助成事業について(厚労省) 2) 病床転換の助成事業、活用予定の医療機関1-3% 事業の延長に賛否 医療保険部会(CB news) 6.ハイフ施術でやけど多発、違法エステ横行に警鐘/厚労省痩身やリフトアップ目的で人気を集めるHIFU(高密度焦点式超音波)による美容医療で、違法施術により重篤な被害を受けた事例が再び注目を集めている。2021年に東京都内のエステサロンで医師免許のない施術者からHIFUを受け、重度のやけどを負った女性が損害賠償を求め提訴。2025年6月、エステ側が謝罪し、解決金を支払う形で和解が成立した。厚生労働省は2024年6月、「HIFU施術は医師による医療行為であり、非医師が行うことは医師法違反」と明確化したにもかかわらず、違法施術による健康被害は依然として後を絶たない。美容医療に起因する健康被害の相談件数は2023年度に822件と、5年前の1.7倍に増加。熱傷、重度の形態異常、皮膚壊死などの深刻な合併症が報告されている。こうした背景から、東京・新宿の春山記念病院では、美容医療トラブル専門の救急外来を本格的に開始。美容クリニックと施術情報の事前共有を行うなど、連携体制を整備している。厚労省も、美容医療を提供する医療機関に対し、合併症時の対応マニュアル整備や他院との連携構築、相談窓口の報告を義務化する方向で検討を進めている。医師が美容医療に携わる場合は、医療行為の厳密な定義のもと、適切な説明責任とアフターフォロー体制の構築が不可欠である。また、美容分野に参入する無資格者の排除に加え、トラブル患者の受け皿となる救急医療体制との連携も、今後の制度整備における重要課題となる。 参考 1) 「やせる」美容医療でやけど、エステ店側と和解 被害「氷山の一角」(朝日新聞) 2) 医師以外の「ハイフ施術」でやけど エステサロンと被害女性が和解(毎日新聞) 3) “美容施術 HIFUでやけど” 会社が謝罪し解決金で和解成立(NHK) 4) 美容医療トラブルに特化した救急外来が本格開始 東京 新宿(同)

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第267回 ワクチン懐疑派が集結、どうなる?米国のワクチン政策

やはり、トランプ氏より危険だった嫌な予感が的中してしまった。3回前の本連載で米国・トランプ政権の保健福祉省長官のロバート・F・ケネディ・ジュニア氏(以下、ケネディ氏)について言及したが、「ついにやっちまった」という感じだ。前述の連載公開10日後の6月9日、ケネディ氏は米国・保健福祉省と米国疾病予防管理センター(CDC)に対してワクチン政策の助言・提案を行う外部専門家機関・ACIP(予防接種の実施に関する諮問委員会)の委員全員を解任すると発表したからだ。アメリカでは政権交代が起こると官公庁の幹部まで完全に入れ替わる(日本と違い、非プロパーが突如、官公庁幹部に投入される)のが常だが、1964年に創設されたACIP委員が任期途中(任期4年)で解任された事例は調べる限りない模様である。一斉に解任された委員に代わって、ケネディ氏は新委員8人を任命した。このメンツが何とも香ばしい。ある意味、粒ぞろいの人選まず、ほぼ各方面から懸念を表明されているのが、国立ワクチン情報センター(National Vaccine Information Center:NVIC)ディレクターで看護師のヴィッキー・ペブスワース氏と医師で生化学者のロバート・W・マーロン氏の2人である。ペブスワース氏については、所属が「国立」となっているので公的機関のような印象を受けるが、完全な民間団体で従来からワクチン接種が自閉症児を増やすという、化石のような誤情報を声高に主張している。同センターによると、ペブスワース氏自身がワクチン接種で健康被害を受けた息子の母親であるという。マーロン氏は1980年代後半にmRNAの研究を行っていたとされ、今回の新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)に対するmRNAワクチンの発明者だと自称している。その後は大学で教鞭をとったり、ベンチャー系製薬企業の幹部に就任したりしている。mRNAワクチンの発明者を自称しながら、今回のファイザーやモデルナのワクチンには否定的で、「最新のデータによると、新型コロナワクチン接種者は未接種者に比べて感染、発症、さらには死亡する可能性が高くなることが示されている。そしてこうしたデータによると、このワクチンはあなただけでなく、あなたのお子さんの心臓、脳、生殖組織、肺に損傷を与える可能性があります」などと主張している人物である。どこにそんなデータがあるのか見せてもらいたいが。これ以外でも、mRNAワクチンは若年者で死亡を含む深刻な害悪があると主張するマサチューセッツ工科大学教授のレツェフ・レヴィ氏、コロナ禍中の2020年10月に全米経済研究所が若年者などは行動制限せずに集団免疫獲得を目指すべきと政策提言した「グレートバリントン宣言」の起草者に名を連ねた生物統計学者のマーティン・クルドルフ氏とダートマス大学ガイゼル医学部小児科教授のコーディ・マイスナー氏も含まれている。意味不明な選出もこれだけワクチンを含む新型コロナ対策における亜流・異端のような人物たちが過半数を占め、驚くべき状況である。ACIPはケネディ氏の“趣味”仲間の井戸端会議になり果ててしまったと言ってよいだろう。残るのは元米国立衛生研究所(NIH)の所員で精神科医のジョセフ・R・ヒッベルン氏、元救急医のジェームズ・パガーノ氏、慢性疾患患者向けの治療薬投与システムを開発するベンチャー企業の最高医療責任者(CMO)で産婦人科医のマイケル・A・ロス氏だが、ケネディ氏の志向と合致する前述の5氏と比べれば、この3氏はなぜ選出されたのかも意味不明である。ただ、もともと感染症学や予防医学や公衆衛生学などの専門家に加え、消費者代表を加えてバランスを取っていた以前のACIPとはまったく異なる組織になったことだけは確かである。これから考えれば、昨今国会でキャスティングボードを握り始めた某野党の参議院選比例代表候補者にワクチン懐疑派の候補者が1人含まれているなどという日本の状況は、まだましなのかもしれない(もちろん私自身はそれを許容するつもりはないが)。

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世代を超えた自閉スペクトラム症と認知症との関係

 自閉スペクトラム症(ASD)患者は、認知機能低下や認知症のリスクが高いことを示唆するエビデンスが報告されている。この関連性が、ASDと認知症の家族的因子によるものかは不明である。スウェーデン・カロリンスカ研究所のZheng Chang氏らは、ASD患者の親族における認知症リスクを調査した。Molecular Psychiatry誌オンライン版2025年5月14日号の報告。 スウェーデンのレジスターにリンクさせた家族研究を実施した。1980〜2013年にスウェーデンで生まれた個人を特定し、2020年までフォローアップを行い、ASDの臨床診断を受けた人を特定した。このASD患者と両親、祖父母、叔父/叔母をリンクさせた。ASD患者の親族における認知症リスクの推定には、Cox比例ハザードモデルを用いた。認知症には、すべての原因による認知症、アルツハイマー病、その他の認知症を含めた。親族の性別およびASD患者の知的障害の有無で層別化し、解析を行った。 主な内容は以下のとおり。・ASD患者の親族は、認知症リスクが高かった。・認知症リスクは、両親で最も高く、祖父母、叔父/叔母では低かった。【両親】ハザード比(HR):1.36、95%信頼区間(CI):1.25〜1.49【祖父母】HR:1.08、95%CI:1.06〜1.10【叔父・叔母】HR:1.15、95%CI:0.96〜1.38・ASD患者と母親の認知症リスクには、父親よりも強い相関が示唆された。【母親】HR:1.51、95%CI:1.29〜1.77【父親】HR:1.30、95%CI:1.16〜1.45・ASD患者の親族において、知的障害の有無による差はわずかであった。 著者らは「ADSとさまざまな認知症は、家族内で共存しており、遺伝的関連の可能性を示唆する結果となった。今後の研究において、ASD患者の認知症リスクを明らかにすることが求められる」としている。

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「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024」新薬5剤を含む治療アルゴリズムの考え方は

 近年新規薬剤の発売が相次ぐアトピー性皮膚炎について、2024年10月に3年ぶりの改訂版となる「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024」が発表された。外用薬のホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害薬ジファミラスト、注射薬の抗IL-31受容体A抗体ネモリズマブおよび抗IL-13受容体抗体トラロキヌマブ、経口JAK阻害薬ウパダシチニブおよびアブロシチニブの5剤が、今版で新たに掲載されている。ガイドライン策定委員会メンバーである常深 祐一郎氏(埼玉医科大学皮膚科)に、新薬5剤を含めた治療アルゴリズムの考え方について話を聞いた。いかに寛解導入に持っていくか、アトピー治療のPDCAサイクルの回し方 前版である2021年版のガイドラインで、治療アルゴリズムの骨格が大きく変更された。全身療法(注射薬と経口薬)の位置付けについて、寛解維持療法の選択肢に一部が加えられたほか、使用対象がその前の2018年版アルゴリズムの「重症・最重症・難治性状態」から「中等症以上の難治状態」に変更されている。そして各段階で「寛解導入できたか」という問いが加えられ、そのyes/noに応じて治療のPDCAサイクルを回していく構成となっている。この背景には、使用できる薬剤が増えたことが何よりも大きいと常深氏は話し、PDCAサイクルを回してこれらの薬剤を活用し、必ず寛解導入すること(Treat to Target)が重要とした。 アルゴリズムでは診断と重症度評価に続いて、「疾患と治療の目標(ゴール)の説明・共有」を行うことが推奨されており、末尾の“共有”という言葉が2024年版で追記された。常深氏は「説明は医療者から患者さんへの一方的なものだが共有は違う。この言葉が入ったことにはとても大きな意味があり、“とりあえず治療を始めてみましょう”ではなく“どんな状態をゴールとして目指すか”を共有したうえで治療をスタートしてほしい」とこの言葉の意図を説明した。寛解導入のメインはまず“ステロイドの適切な使用”で変わりない ジファミラストを含む非ステロイド系外用薬の選択肢が増えている。寛解導入での位置付けについて常深氏は「軽い皮疹の場合に非ステロイド系で寛解導入もありうるが、メインはやはりステロイド系外用薬」と話し、ランクの選択を含めてステロイドをどう適切に使えるかが非常に重要とした。「顔だから、年齢が低いからという理由で皮疹の重症度に見合わない弱いランクを選んでしまうケースがみられるが、重症度評価に応じたランクのステロイドを自信をもって選択してほしい」とし、落ち着いたらランクを下げるもしくは非ステロイド系に切り替えるといった使い方が望ましいと話した。  一方、ステロイド系外用薬は局所的な副作用が出るなど長期使用には向かないため、寛解維持の外用療法のメインとしては非ステロイド系外用薬が適しているが、常深氏は「非ステロイド系外用薬のなかでどの薬剤をどのタイミングで行うとよいかは明確になっていない」とし、「患者さんごとに使ってみて使いやすいものを選ぶといった考え方もよいのではないか」と柔軟な対応を提案した。全身療法の使いどころ、使い分けは? 全身療法は中等症以上の多くのアトピー性皮膚炎患者に対して推奨されており、「決してしきいの高いもの・最後の切り札ではない」と常深氏。「必ずしもとことん外用療法をやりきってから全身療法という考え方ではなく、患者さんが外用療法に疲れてしまったり時間をかけてQOLが下がってしまったりという状況になる前に、使用ガイダンスで示された条件を満たしたうえで1,2)早めに全身療法に切り替えるのも1つの選択肢」と私見を交えて解説した。 注射薬である抗体製剤(デュピルマブ、トラロキヌマブ、ガイドライン改訂後に登場したレブリキズマブ)の特徴として、常深氏は、投与前後の検査不要で安全性が高いこと、幅広い患者に有効性があることを挙げた。それに対して経口JAK阻害薬(バリシチニブ、ウパダシチニブ、アブロシチニブ)は、使用ガイダンス2)に示されるように投与後も画像を含めた検査が必要であり、効き始めは早いがレスポンダーとノンレスポンダーが分かれる傾向があるという。「経口がやはり楽という患者さんもいるし、数週間おきの注射のほうがむしろ楽という患者さんもいる」とし、上記の特徴も踏まえた選択が重要と話した。 抗体製剤やJAK阻害薬には治療費の問題がある。同氏は治療費がハードルになるケースでは、従来からの全身療法薬であるシクロスポリンをしっかりと使っていくことも大事と指摘。「悪くなりかけた際にシクロスポリンを使うという使い方で、短期の使用であれば副作用の可能性も低い」とした。アトピーはいまや“すごくよくなる”疾患、患者も医療者もイメージを変えていく必要 アトピー性皮膚炎には以前から“なかなか治らない疾患”というイメージが根強くあり、そもそも医療機関にかかっていない患者も多い。しかし有効な薬剤が複数登場し、適切な治療により、アルゴリズムで治療のゴールとして示された「症状がないか、あっても軽微で、日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としない」状況を実現することができるようになっている。  常深氏は、医師を含む医療者が“アトピーは外用薬しかない”、あるいは“改善の難しい疾患だからあまりよくならなくても仕方がない”と思っていたらそこで治療は止まってしまうとし、「抗体製剤使用のハードルは決して高くなく、要件を満たせば1)クリニックでも使用できる。また自院で使用しなくても、必要性を感じた場合は専門医に積極的につないでほしい」と話した。

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生後3ヵ月未満児の発熱【すぐに使える小児診療のヒント】第3回

生後3ヵ月未満児の発熱今回は、生後3ヵ月未満児の発熱についてお話しします。小児において「発熱」は最もよく経験する主訴の1つですが、「生後3ヵ月未満の」という条件が付くとその意味合いは大きく変わります。では、何が、なぜ違うのでしょうか。症例生後2ヵ月、女児受診2時間前に、寝付きが悪いため自宅で体温を測定したところ38.2℃の発熱があり、近医を受診した。診察時の所見では、活気良好で哺乳もできている。この乳児を前にして、皆さんはどう対応しますか? 「元気で哺乳もできているし、熱も出たばかり。いったん経過観察でもよいのでは?」と考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、この場合は経過観察のみでは不十分であり、全例で血液検査・尿検査を行うことが推奨されています。また、必要があれば髄液検査や入院も考慮すべきです。そのため、適切な検査の実施が難しい施設であれば、専門施設への紹介が望ましいです。小児科では自然に行われている対応ですが、非小児科の先生にとっては馴染みが薄いかもしれません。これは、かつて医師国家試験で関連問題の正答率が低く採点対象外となり、その後出題が避けられた結果、臨床知識として広まりにくかったという経緯が背景にあります。なぜ、生後3ヵ月未満児では対応が異なるのか?乳児期早期は免疫機能が未熟であり、とくに新生児では母体からの移行抗体に依存しているため、自身の感染防御機能が十分ではなく、全身性の感染症に進展しやすいという特徴があります。さらに、この時期の感染症は症状が非特異的で、診察時に哺乳力や活気が保たれていても、重症細菌感染症が隠れていることがあります。生後3ヵ月未満の発熱児では1〜3%に髄膜炎や菌血症、9〜17%に尿路感染症が認められると報告されています。なお「発熱」とは、米国小児科学会(AAP)が2021年に発表したガイドラインでは、直腸温で38.0℃以上が基準とされています。腋窩での測定ではやや低くなる傾向があり、腋窩温では37.5℃以上を発熱とみなすことが多いですが、施設や文献によって差があります。また、診察時に平熱であっても、自宅での発熱エピソードがあれば評価の対象になることを念頭に置く必要があります。発熱を認めたらまず血液検査+尿検査日本小児科学会やAAPでは、生後3ヵ月未満の発熱児については全例で評価を行うことを推奨しています。日齢に応じて、血液培養、尿検査、髄液検査を行い、入院加療を考慮する方針です。とくに生後28日未満の新生児では、入院による経過観察が標準対応とされています。一例として、私が所属する東京都立小児総合医療センターにおける現時点でのフローを以下に示します。0〜28日の新生児は髄液検査を含めたwork upを行って全例入院し、各種培養が48時間陰性であることを確認できるまで広域な静注抗菌薬投与、29〜90日の乳児はバイタルサインや検査で低リスクであると評価されれば帰宅可能(36時間以内に再診)、それ以外は入院としています。東京都立小児総合医療センターのフロー※ANC(好中球絶対数)は白血球分画を参考にして算出施設ごとに細かな対応は異なるとは思いますが、以下のポイントは共通しているのではないでしょうか。生後3ヵ月未満では「元気そう」は安心材料にならない発熱を認めたらルーチンで血液検査・尿検査を行う生後28日未満では髄液検査、入院を推奨まずは細菌感染症を前提に対応するどこまでのリスクに備えるか成人や高齢者の診療と同様に、場合によってはそれ以上に小児の診療でも「重い疾患を見逃さないために、どこまで検査や治療を行うべきか」という判断がシビアに求められます。目の前の小児が元気そうに見えても、ごくまれに重篤な疾患が潜んでいることがある一方で、すべての小児に負担の大きい検査を行うことが常に最善とは限りません。こうした場面で重要になるのが、「どの程度のリスクを容認できるか」という価値観です。答えは1つではなく、医学的なリスク評価に加えて、家族ごとの状況や思いを丁寧にくみ取る必要があります。AAPのガイドラインでは、医療者の一方的な判断ではなく、保護者とともに意思決定を行う「shared decision-making(共有意思決定)」の重要性が強調されています。とくに腰椎穿刺の実施や、入院ではなく自宅での経過観察を選択する場合など、複数の選択肢が存在する場面では、保護者の価値観や理解度、家庭の状況に応じた柔軟な対応が求められます。医療者は、最新の医学的知見に基づきつつ、家族との信頼関係の中で最適な方針をともに選び取る姿勢を持つことが求められます。保護者への説明と啓発の重要性現在の日本の医療では、生後3ヵ月未満の発熱児では全例に対して検査が必要となり、入院が推奨されるケースも少なくありません。しかし、保護者の多くは「少し熱が出ただけ」と気軽に受診することも多く、検査や入院という結果に戸惑い、不安を強めることもあります。このようなギャップを埋めるには、まず医療者側が「生後3ヵ月未満の発熱は特別である」という共通認識を持つことが大前提です。また、日頃から保護者に対して情報提供を行っておくことも重要だと考えます。保護者が「発熱したら、入院や精査が必要になるかもしれない」とあらかじめ理解していれば、診察時の説明もよりスムーズに進み、医療者と保護者が同じ方向を向いて対応できるはずです。実際の説明例入院!? うちの子、重い病気なんですか?生後3ヵ月未満の赤ちゃんはまだ免疫が弱く、見た目に異常がなくても重い感染症が隠れていることがあります。とくにこの時期は万が一を見逃さないように“特別扱い”をしていて、血液や尿、ときに髄液の検査を行います。検査の結果によっては入院まではせず通院で様子をみることができる可能性もありますが、入院して経過を見ることが一般的です。生後3ヵ月未満児の発熱は、「見た目が元気=安心」とは限らないという視点をもち、適切な検査の実施あるいは小児専門施設への紹介をご検討いただければ幸いです。そして、どんな場面でも、判断に迷うときこそ保護者との対話が助けとなることが多いと感じています。そうした視点を大切にしていただけたらと思います。次回は、見逃せない「小児の気道異物」について、事故予防の視点も交えてお話します。ひとことメモ:原因病原体は?■ウイルス発熱児において最も一般的な原因がウイルスです。ウイルス感染のある3ヵ月未満児は重症細菌感染症を合併していなくても、とくに新生児では以下のウイルスにより重篤な症状を来すことがあります。単純ヘルペスウイルスエンテロウイルス(エコーウイルス11型など)パレコウイルスRSウイルス など■細菌細菌感染症のうち、最も頻度が高いのは尿路感染症です。このほか、菌血症、細菌性髄膜炎、蜂窩織炎、肺炎、化膿性関節炎、骨髄炎なども重要な感染源ですが、頻度は比較的低くなります。主な病原体は以下のとおりですが、ワクチン定期接種導入により肺炎球菌やインフルエンザ菌による重症感染症は激減しています。大腸菌黄色ブドウ球菌インフルエンザ菌B群連鎖球菌肺炎球菌リステリア など参考資料 1) Up to date:The febrile neonate (28 days of age or younger): Outpatient evaluation 2) Up to date:The febrile infant (29 to 90 days of age): Outpatient evaluation 3) Pantell RH, et al. Pediatrics. 2021;148:e2021052228. 4) Leazer RC. Pediatr Rev. 2023;44:127-138. 5) Perlman P. Pediatr Ann. 2024;53:e314-e319. 6) Aronson PL, et al. Pediatrics. 2019;144:e20183604.

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