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潰瘍性大腸炎、非侵襲性マーカーに新知見

 潰瘍性大腸炎(UC)において、内視鏡検査は侵襲的であり、症状を悪化させることもある。そのため、代わりとなる信頼性の高い非侵襲性マーカーが求められてきた。今回、韓国・釜山大学校のDae Gon Ryu氏らは、糞便マーカーである便中カルプロテクチン(Fcal)と免疫学的便潜血検査(FIT)がUCの内視鏡的活動度とよく相関することを確認した。また、便中カルプロテクチンは内視鏡的活動度の予測、免疫学的便潜血検査は粘膜治癒の予測に有用である可能性が示された。Medicine(Baltimore)誌2019年9月号に掲載された報告。 試験期間は2015年3月~2018年2月まで。期間中に、大腸内視鏡検査、便中カルプロテクチン、免疫学的便潜血検査を受けたUC患者128例から得た合計174件の結果を、後ろ向きに評価した。このうち、診断不明の6件、内視鏡検査日に糞便検体未提出の15件は除外された。 評価した項目は、各糞便マーカーと内視鏡的活動度の相関および予測精度、粘膜治癒を評価するうえでの各糞便マーカーの感度、特異度、陽性/陰性的中率であった。内視鏡的活動度はMayo内視鏡スコア(MES)、内視鏡的重症度指数(UCEIS)の両方により評価し、予測精度はROC曲線下面積(AUC)により評価した。また、MES 0かつUCEIS 0~1を粘膜治癒と定義した。 各糞便マーカーと内視鏡的活動度は、いずれも統計的に有意な相関を示した(MES Fcal:r=0.678、p<0.001、FIT:r=0.635、p<0.001、UCEIS Fcal:r=0.711、p<0.001、FIT:r=0.657、p<0.001)。 便中カルプロテクチンは免疫学的便潜血検査より、内視鏡的活動度の予測精度で統計的に優れていた(MES AUC:0.863 vs.0.765、p<0.001、UCEIS AUC:0.847 vs.0.757、p<0.001)。一方、粘膜治癒を評価する感度は、免疫学的便潜血検査のほうが便中カルプロテクチンよりも優れていた(MES:98.0% vs.78.4%、UCEIS:94.9% vs.74.6%)。 これらの結果から研究グループは、便中カルプロテクチンは、活動期のUC患者において粘膜病変の活動性および治療反応性評価に使用できる可能性があり、免疫学的便潜血検査は、粘膜治癒後のUC患者において、再発モニタリングに使用できる可能性がある、との見解を示した。

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大腸手術前のMOABPは有益か/Lancet

 大腸手術において、機械的腸管前処置と経口抗菌薬の併用による腸管前処置(MOABP)は、腸管前処置なし(NBP)と比較して、手術部位感染(SSI)や術後合併症は低下しないことが示された。フィンランド・ヘルシンキ大学のLaura Koskenvuo氏らが、現在推奨されているMOABPの日常的な使用について検証した前向き多施設共同無作為化単盲検並行群間試験「Mechanical and oral antibiotic bowel preparation versus no bowel preparation for elective colectomy:MOBILE試験」の結果を報告した。これまで行われたいくつかの大規模後ろ向き研究において、MOABPによりNBPと比較しSSIと術後合併症が減少することが報告されている。米国ではそれらのデータに基づいてMOABPの実施が推奨されているが、著者は今回の結果を受けて、「結腸切除術でSSIや合併症を減らすために、MOABPを推奨することは再考されるべきであると提案したい」とまとめている。Lancet誌オンライン版2019年8月8日号掲載の報告。前向き無作為化試験でMOABPとNBPを比較 研究グループは、フィンランドの病院4施設にて結腸切除術を受ける患者をMOABP群またはNBP群のいずれかに、施設で層別化し1対1の割合で無作為に割り付けた。治験募集担当者、担当医、執刀医、データ収集者および分析者は、治療の割り付けに関して盲検化された。また、緊急手術、腸閉塞、手術中に大腸内視鏡の使用が予定されている患者、ポリエチレングリコール・ネオマイシン・メトロニダゾールに対するアレルギーを有する患者、18歳未満および96歳以上の患者は除外された。 治験コーディネーターの看護師が患者の割り付けに関する封筒を開封し、割り付けに従って患者に指示を出し、MOABP群の患者には、術前日の午後6時前にポリエチレングリコール2Lと清澄水(脂肪や果肉などを含まない水やお茶など)1Lを飲んでもらい、午後7時に経口ネオマイシン2gを、午後11時に経口メトロニダゾール2gを服用してもらった。 主要評価項目は、術後30日以内のSSIで、修正intention-to-treat集団(無作為割り付けされ、吻合を伴う待機的結腸切除術を受けた全患者)を対象として解析するとともに、安全性についても評価した。手術部位感染症や合併症の発生は、MOABPとNBPで有意差を認めず 2016年3月17日~2018年8月20日の期間に417例が無作為割り付けされた(MOABP群209例、NBP群208例)。このうち、MOABP群13例とNBP群8例が手術前に除外され、修正intention-to-treat集団は396例(MOABP群196例、NBP群200例)である。 SSIは、MOABP群で13例(7%)、NBP群で21例(11%)に確認され(オッズ比:1.65、95%信頼区間[CI]:0.80~3.40、p=0.17)、吻合部離開はMOABP群で7例(4%)、NBP群で8例(4%)報告された。 再手術を要した症例は、MOABP群16例(8%)、NBP群13例(7%)であった。術後30日以内の死亡はNBP群で2例認められ、MOABP群では確認されなかった。 なお、著者は検出力不足であったこと、処置の特性上、盲検化が困難であったこと、吻合部離開はCT検査ではなく臨床所見や症状に基づいた評価であったことなどを挙げて、試験結果は限定的だとしている。

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アスピリン前投与で免疫学的便潜血検査法の精度は向上しない (解説:上村直実氏)-1078

 本邦では、胃がんが減少する反面、大腸がん死亡者数が増加し、がん死亡順位で女性1位、男性3位となり、大腸がんに対する対策として、免疫学的便潜血検査(FIT)を用いた公的な検診の受診率を上げる方策が模索されている。一方、米国では『10年に1回の全大腸内視鏡検査(TCF)もしくは毎年のFITを行うことを推奨する』とされている。すなわち、微小ポリープが進行大腸がんになるためには10年必要との仮説を基に、大腸がんの検出に最も精度が高いTCFを10年に1回行うか、簡便で死亡率減少効果が示されているFITを毎年行うかのどちらかで大腸がんによる死亡を防ぐ方針である。毎年1回のFITは簡便で良い方法であるが、前がん病変の検出感度や病変的中率が高くないため、欧米では感度および的中率を上げる種々の工夫が報告されている。 今回は、ドイツにおいて、検査前に抗血栓薬であるアスピリンの服用がFITの感度を上げる方法として有用であるかどうかを検証する多施設共同無作為比較試験(RCT)が施行された。その報告では、便提出2日前にアスピリンを経口投与しても前がん病変の検出感度は有意に上昇しないことが示されている。この結果は、FITは進行した大腸がんの検出精度は高いが、日本では粘膜内がんとされている『advanced neoplasms』ないしは『前がん病変』の検出感度を改善しないとされた従来の観察研究の結果と一致するものであった。このような欧米からの報告を考慮すると、FITの検出精度を上げるための抗血栓薬の使用は不要であると結論してもよいと思われる。 大腸がん死亡を防ぐための大腸内視鏡検査による検診とFIT検診の比較に関しては、スペインにおいて一度のTCFを受ける群と2年ごとのFITを行う群の両群に分けて大腸がんによる10年死亡率を比較するRCT(Quintero E, et al. N Engl J Med. 2012;366:697-706.)が現在進行中であり、日本でも話題になっている大腸がん死亡の予防に必要な内視鏡検査の間隔に関しても、この研究結果報告が待望されている。

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大腸がんの便潜血検査、アスピリンで感度は向上するか/JAMA

 アスピリンは免疫学的便潜血検査(FIT)による進行新生物の検出感度を、とくに男性において改善することが、観察研究で示されている。ドイツ・German Cancer Research CenterのHermann Brenner氏らは、この知見を検証するために、大腸内視鏡検査が予定されている40~80歳の男女を対象に無作為化試験を行った。その結果、FITの前にアスピリンを経口投与しても、進行大腸がんの検出感度は上昇しないことが示された。研究の詳細は、JAMA誌2019年5月7日号に掲載された。FITは、大腸がんの検出において高い特異度を有するが、多くの大腸がんの前駆病変である進行腺腫(advanced adenoma)の検出能は十分でない。特異度を損なわずに感度を向上させることができれば、大腸がんのスクリーニングにおけるFITの検出能が改善される可能性があるという。2つのカットオフ値の検出感度を評価 本研究は、ドイツの18施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験であり、2013年6月~2016年11月の期間に参加者の登録が行われた(ドイツ連邦教育・研究省の助成による)。 対象は、年齢40~80歳、大腸内視鏡検査が予定され、アスピリンおよび他の抗血栓作用を有する薬剤を使用していない集団であった。被験者は、FITのための便検体採取の2日前に、アスピリン300mgを含む錠剤を1錠投与する群またはプラセボ群に無作為に割り付けられた。FITの結果と大腸内視鏡検査所見を比較した。 主要アウトカムは、事前に規定された2つのカットオフ値(10.2および17μg Hb/g便検体)における、定量的なFITによる進行新生物(大腸がん、進行腺腫)の検出感度とした。2つのカットオフ値とも、感度に差はなく、特異度は低い 2,422例(平均年齢59.6[SD 7.9]歳、男性1,219例[50%])が無作為化の対象となり、このうち2,134例(アスピリン群1,075例、プラセボ群1,059例)が解析に含まれた。78%がスクリーニング大腸内視鏡検査、22%は診断的大腸内視鏡検査を受けた。 進行新生物は、224例(10.5%)で同定され、そのうち8例(0.4%)が大腸がんで、216例(10.1%)は進行腺腫であった。 定量的FITのカットオフ値10.2μg Hb/gにおける進行新生物の検出感度は、アスピリン群が40.2%と、プラセボ群の30.4%と比較して有意な差は認めなかった(群間差:9.8%、95%信頼区間[CI]:-3.1~22.2、p=0.14)。また、カットオフ値17μg Hb/gの感度は、それぞれ28.6%、22.5%であり、有意差はなかった(6.0%、-5.7~17.5、p=0.32)。 一方、カットオフ値10.2μg Hb/gの特異度は、アスピリン群が82.2%であり、プラセボ群の88.7%に比べ有意に低く(群間差:-6.4%、95%CI:-9.6~-3.2、p<0.001)、カットオフ値17μg Hb/gではそれぞれ91.7%、94.8%と、有意差が認められた(-3.1%、-5.4~-0.8、p=0.008)。 さらに、定性的な検査では、感度はアスピリン群が有意に高かったものの(34.7% vs.22.0%、群間差:12.7%、95%CI:0.1~24.7、p=0.048)、特異度は有意に低かった(83.8% vs.91.8%、-8.0%、-11.0~-4.9、p<0.001)。陽性適中率(PPV)および陰性適中率(NPV)にも、全体として有意な差はみられなかった。 重篤な有害事象は、アスピリン群で2例(急性虫垂炎、急性腎障害に伴う急性化膿性胆管炎)に発現し、いずれも入院を要したが、試験薬との関連はないと判定された。 著者は、「これまでの観察研究と本試験の結果を併せて考慮すると、アスピリンによるFITの検出能への影響を評価するには、より大規模で高い検出力を有するなど新たな試験研究が必要である。必要なアスピリンの用量、至適な投与時期、便検体の採取法なども重要な検討課題である」としている。

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英国でプライマリケアの検査件数が激増/BMJ

 英国では、性別や年齢、検査の種類にかかわらず、検査件数が経時的に増加しており、調査対象となった検査の9割が、16年間で統計学的に有意に件数が増加したことが、英国・オックスフォード大学のJack W. O’Sullivan氏らの検討で明らかとなった。プライマリケアにおける検査を定量的に評価したデータは、世界的にみても少ない。英国では、2005~09年の検査件数の増加を示す調査が1件あるだけで、加えてこの調査はサンプル数が少なく、種類は検体検査のみで、対象集団も限定的だという。BMJ誌2018年11月28日号掲載の報告。44の検査の16年間の使用状況を評価 研究グループは、英国のプライマリケアにおける検査の使用状況の経時的変化を評価するために、後ろ向きコホート研究を行った(英国国立健康研究所[NIHR]などの助成による)。 2000年4月1日~2016年3月31日の期間に、英国のGeneral Practices in the Clinical Practice Research Datalink(CPRD)に登録された全患者のデータを用いた。 プライマリケアにおける年間の年齢別、男女別の検査件数を算出。44の検査(検体検査:28、画像検査:11、その他の検査:5[スパイロメトリー、上部消化管内視鏡、大腸内視鏡、子宮頸部細胞診、心電図])の解析を行った。 16年間(7,143万6,331人年)において、1,108万2,628例の患者に2億6,297万4,099件の検査が行われた。使用率は3.3倍、1例に年5件、3分の1が年10件以上、40検査が有意に増加 年齢・性別で補正した検査の使用率は、年間8.5%(95%信頼区間[CI]:7.6~9.4)上昇し、2000~01年度の1万人年当たり1万4,869件から、2015~16年度は4万9,267件へと3.3倍に増加した。患者1例当たりの年間平均検査件数は、2000~01年度が1.5件であったのに対し、2015~16年度は5件に達した。 16年間を通じて、検査使用率が最も高い年齢層は45~64歳で、次いで65~74歳、25~44歳の順であった。年齢・性別で補正した検査使用率は調査期間を通じて全年齢層で有意に上昇し、最低でも6.5%増加した。年間使用率が最も上昇したのは85歳以上の患者(11.1%)で、次いで75~84歳の患者(9.8%)だった。 検体検査は、調査期間を通じて画像およびその他の検査よりも大幅に使用頻度が高かった。補正後使用率は、3種の検査のいずれもが有意に上昇した。検体検査は、2000~01年度の1万人年当たり1万3,091件から、2015~16年度には4万4,847件へと増加し、年間平均増加率は8.7%であった。同様に、画像検査とその他の検査の年間平均増加率は、それぞれ5.5%および6.3%だった。 年に10件以上の検査を受けた患者の割合は、2000~01年度が9.5%であったのに対し、2015~16年度は32.7%に増加した(絶対増加率:23.2%、p<0.001)。検査を1つだけ受けた患者の割合は、2000~01年度に比べ2015~16年度は16.4%低くなった(p<0.001)。年に1件以上の検査を受けた患者のうち、複数の検査を受けた患者の割合は、経時的に有意に増加していた。 腎機能検査、全血算検査、肝機能検査などの使用頻度が高く、骨盤CTや膝MRIの頻度は低かった。44の検査のうち40検査の使用率が有意に増加した。調査期間中に年間使用率が統計学的に有意に低下したのは、膣スワブ検査のみであった。また、3つの検査(子宮頸部細胞診、腰椎X線検査、非違法薬物の尿検査)は、変化に有意差がみられなかった。 著者は、「これらの変化は、人口増加の変化よりも大きかった」とし、「今回の結果により、政策立案者は検査の使用状況の傾向を評価可能となった。国民保健サービス(NHS)の先例のない財政負担を踏まえると、これらのデータは今後の医療リソース計画の指針となるだろう」と指摘している。

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EPAとアスピリン、単独/併用の大腸腺腫予防効果は?/Lancet

 オメガ3系多価不飽和脂肪酸であるエイコサペンタエン酸(EPA)もアスピリンも、大腸腺腫を有する患者割合の低下と関連していなかった。英国・リーズ大学のMark A. Hull氏らが、EPAとアスピリンの単独または併用投与の大腸腺腫予防効果を検証した、多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「seAFOod Polyp Prevention trial」の結果を報告した。EPAとアスピリンはともに、大腸がんの化学的予防に関するproof of concept試験で、有効性と優れた安全性プロファイルが示されていた。Lancet誌オンライン版2018年11月19日号掲載の報告。EPAとアスピリン、単独/併用投与による有効性を腺腫検出率で評価 研究グループは、英国の大腸がんスクリーニングプログラム(Bowel Cancer Screening Programme:BCSP)を実施している内視鏡部門53施設において、大腸内視鏡検査で高リスク(BCSP:腺腫が3つ以上で少なくとも1つは直径10mm以上、あるいはいずれも直径10mm未満だが腺腫が5つ以上)と特定された55~73歳の患者を対象に試験を行った。 被験者を、1)EPA-遊離脂肪酸2g/日投与(EPA)群、2)アスピリン300mg/日投与(アスピリン)群、3)EPA+アスピリン併用投与群または4)プラセボ群に、施設を層化因子とし置換ブロック法を用いて1対1対1対1の割合で無作為に割り付け(二重盲検)、それぞれ12ヵ月間投与した。 主要評価項目は、1年時点の大腸内視鏡検査における腺腫検出率(ADR:腺腫を有する患者の割合)で、観察可能な追跡調査データのあるすべての患者を対象とし、いわゆるat-the-margins法を用い施設とベースライン時の内視鏡再施行で補正して解析した。 安全性解析集団は、1回以上の治験薬投与を受けたすべての患者とした。EPAとアスピリンの単独/併用投与、いずれもADRは低下せず 2011年11月11日~2016年6月10日に、計709例が無作為化された(プラセボ群176例、EPA群179例、アスピリン群177例、EPA+アスピリン併用群177例)。 主要評価項目の解析対象は、プラセボ群163例(93%)、EPA群153例(85%)、アスピリン群163例(92%)、併用群161例(91%)で、ADRはそれぞれ61%(100/163例)、63%(97/153例)、61%(100/163例)、61%(98/161例)であった。 EPA群のリスク比(95%信頼区間[CI])は0.98(0.87~1.12)、リスク差(95%CI)は-0.9%(-8.8~6.9)(p=0.81)、アスピリン群ではそれぞれ0.99(0.87~1.12)、-0.6%(-8.5~7.2)(p=0.88)であり、どちらも有効性は認められなかった。 有害事象発現率は、プラセボ群44%(78/176例)、EPA群46%(82/177例)、アスピリン群39%(68/174例)、併用群45%(76/170)で、EPAおよびアスピリンの忍容性は良好であった。ただし、消化器系有害事象の発現件数はEPA群で増加した(EPA群146件、プラセボ群85件、アスピリン群86件、併用群68件)。また、上部消化管出血イベントは6例(EPA群2例、アスピリン群3例、プラセボ群1例)報告された。 一方で、両薬を受けた参加者1人当たりの平均腺腫数は少なく、大腸腺腫負荷に関する化学的予防効果は認められた。また、EPAとアスピリンの、腺腫サブタイプや発生部位に依存的な特異性は、従前の観察と一致しており、著者は、「今後、腺腫の種類や発生部位別の腺腫数に関する効果の検討が必要である」と述べている。さらに、アスピリンは大腸腺腫の再発を減らし大腸がんリスクを軽減するとの既存データを踏まえて、「EPAとアスピリンの最適使用は、大腸腺腫再発への的確な医学的アプローチにおいて必要なものかもしれない」と述べ、両薬に関する報告は、長期的大腸がんリスクにおける臨床的に意義のある減少に変わっていく可能性を示唆した。[12月3日 記事の一部を修正いたしました]

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潰瘍性大腸炎〔UC : ulcerative colitis〕

1 疾患概要■ 概念・定義潰瘍性大腸炎は、クローン病とともに炎症性腸疾患の1つで、主に粘膜および粘膜下層を侵し、しばしばびらんや潰瘍を形成する大腸の原因不明のびまん性非特異性炎症である。■ 疫学欧米に多く、白人とくにユダヤ系での発症が多いとされる。日本を含めた東アジアでも増加の一途をたどっている。難病であることから、わが国では指定難病に指定されており、患者数は20万人以上とされ、さらに毎年1万人程度増加している。性差はみられず、発症年齢は10代後半~30代に多く、25~29歳にピークがみられる。■ 病因発症原因はいまだ不明であるが、研究は飛躍的に進み、これまでの免疫学的な研究をはじめ、近年「genome-wide association study(GWAS)」により160以上の疾患関連遺伝子が特定され、また発症に関連する腸内細菌についても多くのことがわかり始めている。遺伝的素因、環境因子を背景に腸内細菌の影響の存在のうえで免疫異常を来し、腸管での免疫寛容が破綻することで慢性腸炎を誘導する。潰瘍性大腸炎ではクローン病とは対照的に、喫煙者の発症リスクは低い。発症自体とストレスの関連性は立証されていない。■ 症状主症状は粘血便(40%)、下痢(40%)、腹痛(30%)で、発熱や出血に伴う貧血もみられる。合併症は長期経過例での発がん、腸管外合併症として原発性硬化性胆管炎、仙腸関節炎や強直性脊椎炎などの関節炎、結節性紅斑や壊疽性膿皮症などの皮膚病変などがある。また、重症例では血栓傾向を認め、静脈血栓症のリスクがある。■ 分類治療法を選択するうえで、病期・病型(病変の広がり)・重症度を分類することが重要である。活動期か寛解期か、活動期であれば重症度(軽症〔63%〕・中等症〔28%〕・重症〔3%〕)(表1)および内視鏡所見(軽度・中等度・強度)(図1)はどうか、そして病型(直腸炎型〔22%〕、左側大腸炎型〔27%〕、全大腸炎型〔38%〕、右側あるいは区域性大腸炎)によっては局所製剤の適応を考慮することとなる。そのほか、臨床経過により再燃寛解型、慢性持続型、急性劇症型、初回発作型に分類される。難治性潰瘍性大腸炎の定義は、厳格なステロイド療法にありながらステロイド抵抗例あるいはステロイド依存例、またステロイド以外の厳密な内科治療下にありながら、再燃を繰り返すか慢性持続型を呈するものとされる。画像を拡大する画像を拡大する■ 予後治療介入の影響があるため、潰瘍性大腸炎の自然史は不明な点が多いが、炎症性腸疾患の自然治癒率は10%とされる。また、長期経過において50%は病状が安定していく。全大腸切除率は、欧米のコホート研究では発症1年で10%、2年目で4%、以降1年ごとに1%増加し、わが国では10年後の累積手術率は15%、とくに全大腸炎型では40%と高率である。死亡率についてはメタ解析によると、標準化死亡率は1.1で一般と差がない。炎症型発がんに起因する大腸がんの発生は、発症8年で1.6%、20年で8%、30年で18%と増加し、全大腸炎型に多いが、治療の進歩により近年では発がん率が減少しているとする報告もある。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)診断において最も重要なのが、病歴の聴取である。慢性の下痢・粘血便で潰瘍性大腸炎を疑い、病歴や細菌検査などで腸結核やアメーバ性大腸炎を含めた感染性腸炎・放射線照射性大腸炎・薬剤性大腸炎・虚血性大腸炎などを除外する。次に大腸内視鏡検査を行い、特徴的な病変を確認し生検を併用する。内視鏡所見では、直腸から連続する全周性・びまん性の活動性炎症を認め、粘膜浮腫による血管透見消失から細顆粒状粘膜、膿性粘液が付着し、易出血性、びらん・潰瘍形成、広範な粘膜の脱落と炎症の強度が上がる。病理組織検査では、慢性炎症の所見があるかないかで炎症性腸疾患か否か判別し、そうであれば潰瘍性大腸炎かクローン病かを検討する。これらの所見で総合的に判断するが、クローン病や腸型ベーチェットの鑑別も重要である。診断の確定は診断基準(表2)に照らし合わせて行う(図2)。画像を拡大する画像を拡大する「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班(鈴木班).平成29年度分担研究報告書.潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針 平成29年度改訂版 別冊.2018.3 治療 (治験中・研究中のものも含む)治療は、寛解導入療法とその後の寛解維持療法の双方を考えながら選択していく。厚生労働省難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班(鈴木班)の潰瘍性大腸炎治療指針を示す(表3)。寛解導入療法は、臨床的重症度と病型によって選択される(図3)。重症例や全身状態が不良な中等症では、入院のうえ、全身管理を行いながら治療をする。近年、重症例や難治例に対しタクロリムス(商品名:プログラフ)やインフリキシマブ(同:レミケード)、アダリムマブ(同:ヒュミラ)、ゴリムマブ(同:シンポニー)(図4)、さらには2018年にトファシチニブ(同:ゼルヤンツ)、ベドリズマブ(同:エンタイビオ)と新たな治療の選択肢が増えたが、効果不十分な場合に次々と別の治療法を試すのには慎重であるべきで、外科治療のタイミングを誤らないようにすることが重要である。画像を拡大する「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班(鈴木班).平成29年度分担研究報告書.潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針 平成29年度改訂版 別冊.2018.画像を拡大する「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班(鈴木班).平成29年度分担研究報告書.潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針 平成29年度改訂版 別冊.2018.画像を拡大する「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班(鈴木班).平成29年度分担研究報告書.潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針 平成29年度改訂版 別冊.2018.重症例やステロイド抵抗例・依存例つまり難治例において、タクロリムスやインフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリムマブ、シクロスポリン、トファシチニブ、ベドリズマブを使用する際は、専門施設での施行が望ましい。ステロイド、抗TNFα抗体や免疫調節薬を使用する際は、肝臓学会のガイドラインに沿ってHBV再活性化に対するサーベイランスが必要である。また、入院中の絶食は治療効果に影響しないばかりでなく栄養状態の悪化を招き、回復の遅延や術後合併症のリスクとなるため、大量出血や高度な腹痛などの超急性期以外は安易に選択するべきではない。維持治療においては、十分量を長期に使用することが重要で、いずれの維持治療においても薬剤中止後1年で50%が再燃するため、特段の事情がない限りは中止するべきではない。また、再燃の最大のリスクは、服薬アドヒアランスの低下であり、十分な服薬指導と定期的な確認が重要である。1)5アミノサリチル酸(5-ASA)製剤サラゾスルファピリジン(商品名:サラゾピリンほか)、メサラジン(同:ペンタサ、アサコール、リアルダ)が、わが国で使用できる5-ASA製剤である。炎症性腸疾患治療の基準薬であり、50~80%の寛解導入効果がある。また、寛解維持にも優れ、十分量を長期に使用することが重要である。4g/日以上の高用量導入が可能になり、ステロイドの投与を避けられる症例が増えた。まれに導入後・増量後に発熱・下痢を来すことがあるので5-ASAアレルギーを疑い、5-ASAでの維持が困難な場合は、後述の免疫調節薬にて維持治療を行うことになる。分割投与よりも1回または2回での投与のほうが、服薬アドヒアランスのみならず効果としても優れる可能性があり、2g/日では分1投与が認められている。また、リアルダは4.8g/日の1回投与製剤であり、より高用量の投与ができかつアドヒアランスの面でも有用である。直腸病変や遠位大腸病変には局所製剤の単独ないし併用が有用である。2)ステロイド寛解導入療法として中心的な薬剤であり、十分量の5-ASA製剤で効果不十分 な場合はステロイドの全身投与を行う。短期的には84%で有効である。しかし、離脱率は50%のみで、30%は手術、20%はステロイド依存となっていた。中等症では30~40mg経口投与を行い、1~2週間で効果判定を行う。重症潰瘍性大腸炎においては、ステロイド1~1.5mg/kgの静注療法を行うことで、約半数で寛解導入が可能である。さらに増量したとしても効果の増強は認めず副作用の危険のみが増すことが知られている。ステロイドが無効または効果不十分な場合は、ステロイド抵抗例として難治例の治療を行うことになる。維持療法としてのエビデンスはなく、寛解導入後は3~4ヵ月を目安に漸減・中止し、5-ASA製剤等での寛解維持療法へ移行する。漸減中の再燃または中止後早期の再燃を認める場合は、ステロイド依存例として免疫調節薬での寛解維持療法を行うことが望ましい。坐剤や注腸といった局所製剤は5ASA製剤が第1選択とされるが、ブデソニド注腸フォーム剤(同:レクタブル注腸フォーム)は他の注腸製剤より忍容性が高く、またブデソニドであるためステロイドによる副作用も軽減できるとされる。3)免疫調節薬アザチオプリン〔AZA〕(同:イムラン、アザニン)、メルカプトプリン〔6-MP〕(同:ロイケリン/保険適用外)。効果発現に1~3ヵ月を要するため、急速な寛解導入には向かず、主に寛解維持治療に使用する。約60%の良好な寛解維持率を認め、ステロイド減量効果も明らかとなっておりステロイド依存例の寛解維持治療に重要である。不耐症例があるため、導入初期は短期間でのモニタリングが必要である。適正投与量は個体によって異なるため、少量から開始し、WBC 3,000~4,000/μL程度への減少を目安にAZA 2~2.5mg/kg、6-MP 1~1.5mg/kgを目処に増量を試みる。感染症のリスクは、ステロイドに比較すると低い。4)タクロリムス(同:プログラフ)化合物としてはまったく異なるが、シクロスポリンと同様にカルシニューリン阻害剤として作用し、IL-2やIFN-γなどのサイトカイン産生を抑制する。わが国で開発された薬剤で、中等症~重症の潰瘍性大腸炎においてRCT(無作為化比較試験)で68%と高い改善率が認められた。添付文書の導入法では、目標血中トラフに到達するのに比較的長期間を要するため、専門施設を中心に速やかに上昇させる工夫がなされている。食前や絶食下での経口投与、高用量導入、また一部施設では持続静注によって急速に血中濃度を上昇させ、速やかな効果発現を得ている。寛解維持効果も示唆されているが、原則として3ヵ月を目安に中止するため、寛解導入後は免疫調節薬での寛解維持が望ましい。5)シクロスポリン(同:サンディシュン、ネオーラル / 保険適用外)タクロリムス同様カルシニューリン阻害剤として作用する。シクロスポリン持続静注は、ステロイド抵抗性の重症潰瘍性大腸炎に対し有効率は70~80%と高いが、長期成績は3年後の手術率50%、7年後88%と不良で、シクロスポリンで寛解導入した場合は、寛解維持に免疫調節薬が必要である。タクロリムスと異なり腸管からの吸収が安定しないため、経口投与での血中濃度の維持が困難であり、シクロスポリンでの寛解維持はできない。6)抗TNFα抗体製剤(インフリキシマブ〔レミケード®〕、アダリムマブ〔ヒュミラ®〕、ゴリムマブ〔シンポニー®〕)寛解導入および寛解維持に用いる。大規模なRCTの結果、抗TNFα抗体であるインフリキシマブがクローン病、関節リウマチなどに続き、認可された。既存治療抵抗性の中等症~重症潰瘍性大腸炎に対し、導入8週で69%の有効率、38.8%の寛解導入率を認め、30週で34%の寛解維持効果を示した。クローン病と同様に5mg/kgを0週、2週、6週で投与し、以降は8週毎の投与となる。潰瘍性大腸炎においては、効果減弱の際の倍量投与は認められていない。また、2013年6月ヒト抗体のアダリムマブが、潰瘍性大腸炎にも認可され、初回は160mg、2週後に80mg、以降は2週毎に40mgの皮下注射を行うが、これは自己注射が可能である。さらに2017年3月に4週間毎の皮下注射製剤であるヒト抗体のゴリムマブが適用追加となった。いずれの薬剤も導入前に胸部単純X線検査(必要に応じて胸部CT検査)、ツ反、IFN-γ遊離試験(IFN-γ release assay 〔IGRA〕: クオンティフェロン、TSPOTなど)で結核の感染を否定する必要がある。7)JAK阻害薬(トファシチニブ〔同:ゼルヤンツ〕)寛解導入および寛解維持に用いる。シグナル伝達分子をターゲットとした経口JAK阻害薬である。低分子化合物で、抗体製剤ではないため抗薬物抗体の産生による効果減弱は回避でき、また製造コストの抑制も可能である。既存治療抵抗性の潰瘍性大腸炎に対する第3相試験において、8週で約60%の改善率と18%の寛解導入率という有効性が示され、2018年5月に潰瘍性大腸炎に対して適用拡大となった。寛解維持率は、寛解導入試験で有効性を示した症例で52週の時点で34~40%の症例で寛解維持が得られた。なお、抗TNFα抗体製剤未使用例では寛解導入率25%で無効・効果減弱・不耐例では12%で、寛解維持率はそれぞれ5mg1日2回で27%、41%、10mg1日2回で37%、45%であった。投与法は1回10mgを1日2回、8週間投与し、効果不十分な場合はさらに8週間投与が可能である。寛解維持療法としては1回5mgを1日2回投与だが10mgを1日2回に増量することができる。なお、治験ではアジア人の比較的高齢者においてヘルペス感染症の発症が多く、注意が必要である。8) 抗α4β7インテグリン抗体(ベドリズマブ〔同:エンタイビオ〕)炎症細胞の腸管へのホーミングを阻害することで、炎症を抑制する。潰瘍性大腸炎に対する第3相試験であるGEMINI 1で47%の改善率と17%の寛解導入効果、52週において40~45%の寛解維持効果が示され、2014年に欧米で承認・発売となった。わが国においても臨床試験が行われ、2018年7月に承認された。300mgを0週、2週、6週で投与し、以降は8週毎の投与となる。腸管選択性が高いため、全身の免疫への影響が低いと考えられており、安全性に期待されている。薬理機序上効果発現はやや遅い印象があるが、寛解維持率が高く寛解維持療法における新たな選択肢として期待される。9)血球成分除去療法わが国で開発された白血球除去療法は、ステロイド抵抗例・依存例で保険適用とされ、使用されている。高用量のステロイドを要するような症例では、白血球除去療法を併用することで、より高い効果が期待でき副作用も少ないことが報告されている。しかし、海外での質の高いエビデンスは少ない。10)外科治療大腸穿孔、大量出血、中毒性巨大結腸症、重症・劇症で内科治療抵抗例、大腸がんおよびhigh grade dysplasia合併例では摘出手術の絶対的手術適応である。相対的手術適応例は、内科治療では寛解維持困難でQOLが保てない、または薬剤不耐などの難治例、内科治療抵抗性の壊疽性膿皮症など腸管外合併症例、狭窄や瘻孔、low grade dysplasiaなどの大腸合併症例である。術式は、大腸全摘・回腸嚢肛門吻合術(IAA)や大腸全摘・回腸嚢肛門管吻合術(IACA)が標準術式である。術後に回腸嚢炎を合併することがある。多くの報告で術後のQOLを評価しているが、いずれも術後数年でのQOLは良好である。4 今後の展望現在、創薬業界では生物製剤をはじめ分子標的薬が花盛りであり、炎症性腸疾患の分野も同様である。インフリキシマブが口火を切った炎症性サイトカインをターゲットとした抗体製剤や、接着分子をターゲットとし病原性リンパ球の腸管へのホーミングを阻害し動態制御を行うことで腸炎を抑制する薬剤、また造血幹細胞移植などが注目されている。新薬の許認可において、これまでいわゆるドラッグ・ラグがあり、有効な薬剤が欧米で使用可能でも、わが国で認可されるのが数年先となるようなことも少なくなかった。しかし近年、炎症性腸疾患の分野においては、多くが国際共同治験となり、ドラッグ・ラグは解消される方向へ向かっている。クローン病でも多くの治験が行われているが、潰瘍性大腸炎に対する今後の展開について述べる。現在臨床試験中あるいは終了している薬剤は、以下のようなものがある。炎症性サイトカインを標的とした薬剤としてJAK阻害薬が開発されている。承認されたトファシチニブに引き続いてJAK1選択性を高めた第二世代のJAK阻害薬であるフィルゴチニブやウパダシチニブなどが開発中である。クローン病において承認された抗IL12/23 p40抗体のウステキヌマブ(同:ステラーラ)は、潰瘍性大腸炎においても臨床試験が進んでおり、また抗IL23 p19抗体であるリサンキツマブやミリキツマブなども臨床試験が進んでいる。腸炎惹起性リンパ球の動態制御を目的とした薬剤も多数開発されている。抗α4β7インテグリン抗体であるベドリズマブに続き、AJM300は、わが国で開発された経口低分子化合物でα4インテグリンを阻害する。102例の潰瘍性大腸炎を対象とした第2相試験で、8週後の有効率62.7%、寛解率23.5%と有意に有効性を示した。低分子化合物であるため低コストで生産でき、抗体製剤のように免疫原性や効果減弱といったリスクを回避できる可能性がある。現在第3相試験中である。皮下注射製剤の抗MAdCAM抗体であるPF-00547659は、消化管組織中に発現するMAdCAMに結合し、インテグリンとの結合を阻害する。潰瘍性大腸炎に対する第2相試験TURANDOTで、12週の寛解率24%と有意な結果が報告された。S1Pおよびその受容体の1つであるS1P1受容体は、リンパ球の二次リンパ組織からの移出に必須の分子であるが、S1P受容体アゴニストはS1P1受容体を強力かつ長期に内在化させることで、リンパ球の動態制御を行い、炎症を抑制する。S1P1およびS1P5受容体に作用するRPC1063が、潰瘍性大腸炎に対する第2相試験TOUCHSTONEにおいて、8週で16.4%の寛解率、58.2%の有効率を示し、現在第3相試験へと移行している。その他、ブデソニドは、ステロイドの全身性の副作用の軽減を目的に、肝臓で速やかに代謝されるようデザインされた局所作用型のステロイドであり、欧米では一般に使用されているが、前述のようにわが国でもクローン病に対する経口薬に続き、本症で経肛門投与のフォーム薬が承認・発売された。また近年、腸内細菌研究の急速な進歩によってプロバイオティクスも再度注目されている。さらに、c.difficile関連腸炎において高い有効性を示し、欧米で認可された糞便微生物移植も炎症性腸疾患への応用が試みられているが、まだ有効性や投与法などに関する十分な大規模データは不足しているのが現状である。5 主たる診療科消化器内科、消化器外科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 潰瘍性大腸炎(一般向けと医療従事者向けのまとまった情報)日本炎症性腸疾患学会(医療従事者向けの研究情報)CCFA - Crohn's and Colitis Foundation of America(米国のIBD団体のサイト:一般利用者向けと医療従事者向けの情報)ECCO - European Crohn's and Colitis Organisation(欧州のIBD団体のサイト:医療従事者向けの研究・診療情報)東京医科歯科大学 潰瘍性大腸炎・クローン病先端治療センター(一般利用者向けの情報)厚生労働省 「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班(一般向けと医療従事者向けのまとまった情報、最新の診断指針・治療指針が公開されている。会員登録をすると「一目でわかるIBD」の閲覧やe-learningも可能)患者会情報IBDネットワーク(IBD患者と家族向けの情報)1)「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班(鈴木班).平成29年度分担研究報告書.潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針 平成29年度改訂版 別冊.2018.2)日本消化器病学会.炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016. 南江堂; 2016.3)渡辺守 編. IBD(炎症性腸疾患)を究める. メジカルビュー社; 2011.4)炎症性腸疾患(第2版)-病因解明と診断・治療の最新知見. 日本臨牀社;2018.公開履歴初回2013年07月04日更新2018年08月28日

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大腸を旅した歯ブラシ【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第118回

大腸を旅した歯ブラシ いらすとやより使用 歯ブラシをくわえたまま遊んでいる子供がいると「ケガするよ!」と怒鳴ったりします。咽頭の奥に刺さったりしたらタイヘンですからね。しかし世の中には、とんでもない歯ブラシ論文が存在するのだ。論文タイトルもなかなか文学的です。「飲み込んだ歯ブラシ、大腸への旅」。映画化しそう。 Kim IH, et al.Journey of a swallowed toothbrush to the colon.Korean J Intern Med. 2007;22:106-108.13年来の統合失調症のある31歳の男性が、1週間続く上腹部痛を訴えて来院しました。激痛というほどではなく、中等度の痛みで、軽い嘔気を伴っていました。かかりつけのドクターに診てもらったところ「軽い胃炎ですね」とでも言われたのか、制酸薬などを処方されただけでした。薬では痛みが治まらず、次第に熱も出るようになりました。来院時の体温は38.1℃。血液検査で白血球が上昇しており、トランスアミナーゼも軽度上昇していました。膵炎を示唆するような逸脱酵素の上昇はありませんでした。はて、この腹痛と熱の原因は何だろう?腹部画像検査を行いました。主治医は腹部CTを見て、驚きました。上行結腸に、何か異物がある!しかも、異物のせいで腹腔内感染症を起こしているようでした。これはいかん、大腸内視鏡で見てみよう、ということでカメラを入れると、モニター画面にとんでもないものがあらわれました。大腸壁を突き破った歯ブラシ。上行結腸だから、さすがに肛門から入れたわけではないだろうし、あれ? この歯ブラシはどこから来たんだ? そう思いながら、処置を進める主治医。術後、患者によくよく尋ねてみると、歯ブラシを飲み込んだことがあることを告げられました。へー、やっぱり口から飲み込んだんだね、じゃあいつ頃それを飲み込んだのか。1年前。なんと、1年前に彼は歯ブラシを飲み込んでしまっており、近くの病院で「こりゃあかん、手術やで!」と強く説得されたことがあるらしいのです。彼はそれをかたくなに拒否し、1年後腹痛を起こして来院したのでした。

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高度異型腺腫の有無で大腸がんリスクが有意に異なる(解説:上村直実氏)-868

 日本で大腸がんは肺がんに次いで2番目に多い死亡原因であり、大腸がんによる死亡リスクを低下するために便潜血による大腸がん検診が施行されている。一方、欧米では、大腸内視鏡検査(CF)を行うことにより大腸がんによる死亡率およびその発症率が低下する研究成果が数多く報告され1,2)、最近では死亡リスク低下に必要なCFの間隔が話題になっている。米国のガイドライン3)では、10年に1度のCFにより大腸がん死亡リスクが大幅に低下するとされており、大腸がんスクリーニングにCFを取り入れるべきで、ポリープ(腺腫)があれば5~10年後のCFが推奨されている。 今回JAMAに掲載された報告では、CFを行った時点で高度異型の腺腫すなわち腫瘍径1cm以上ないしは、tubulovillousやvillous腺腫を認めたものは、1cm以下の低異型度腺腫を有するものや腺腫を認めないものに比べて、その後13年間の大腸がん発症および大腸がん死亡リスクが有意に高いことが示された。すなわち、CFによるスクリーニングの重要性と大腸がんのリスクには腺腫の異型度が重要であることが強調されている。日本の消化器内視鏡診療は種々の特殊内視鏡により、世界を圧倒する高精度の内視鏡診断と圧倒的な内視鏡治療技術を有することは、世界中で周知されている。しかし、上記したように検診は便潜血検査でCFによる住民検診は行われていない現状は、医学的に大きな問題と言える。 一方、大腸がんにとって重要な本論文に引用されている38文献に、日本発の研究論文が皆無であることも重大な課題であろう。年間1,500万件の消化器内視鏡が施行されているわが国における内視鏡診療現場では新たな技術優先の傾向が強く、エビデンスを創出するためのデザインされた臨床研究が少ないことが従来からの課題と言えた。現在、日本全国の内視鏡ビッグデータを一括して日本消化器内視鏡学会で管理するシステムのJapan Endoscopy Database(JED)プロジェクトが進行中である。このデータベースが完成すれば、Propensity scoreなどを用いた解析により正確な成績を得ることが可能となり、わが国から精度の高い研究成果が世界のエビデンスとして排出されるものと期待される。

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内視鏡による進行腺腫あり vs.なし、大腸がんリスクに有意差/JAMA

 軟性S状結腸鏡検査(FSG)が陽性で大腸内視鏡検査を受けた結果、進行腺腫が認められた人は、腺腫が認められなかった人に比べて、その後の大腸がんリスクが有意に高かった。一方で非進行腺腫の有無と同リスク増大には関連は認められない可能性が示されたという。米国・ピッツバーグ大学のBenjamin Click氏らが、FSGの結果が陽性だった1万5,935例を対象にした試験で明らかにしたもので、JAMA誌2018年5月15日号で発表した。腺腫ポリープがある人は大腸がんを予防するために、定期的な大腸内視鏡検査を受けるよう勧められる。しかし、検査受診時の腺腫有無と、長期の大腸がん発症との関連は明らかになっていなかった。大腸内視鏡検査で腺腫ありvs.なしの15年以内の大腸がんリスクを評価 研究グループは、前立腺・肺・大腸・卵巣がんに関する多施設共同前向きコホート無作為化試験「PLCO(Prostate, Lung, Colorectal, and Ovarian)Cancer試験」を行った。全米各地で1993年にFSGスクリーニングを開始し、2013年まで大腸がん発症の追跡を行った。試験には、男女55~74歳の15万4,900例が登録され、無作為に2群に分けられ、一方はFSGによる追跡を、もう一方には通常ケアを行った。 初回FSGスクリーニングで陽性だった1万5,935例には、大腸内視鏡検査が行われ、腺腫の有無と状態の別で分類された。 主要評価項目は、ベースラインの大腸内視鏡検査から15年以内の大腸がん発症率。副次的評価項目は、大腸がん死亡率だった。進行腺腫あり、なしに比べて大腸がん死亡リスク2.6倍 大腸内視鏡検査を行った被験者1万5,935例の平均年齢は64歳、男性の割合は59.7%だった。初回大腸内視鏡検査の結果、進行腺腫が認められたのは2,882例(18.1%)、非進行腺腫は5,068人(31.8%)、腺腫がまったく認められなかったのは7,985例(50.1%)だった。大腸がん罹患率の追跡期間中央値は、12.9年だった。 大腸がんの罹患率は、腺腫が認められなかった群で7.5例/1万人年、非進行腺腫群は9.1例/1万人年だったのに対し、進行腺腫群では20.0例/1万人年と、進行腺腫群は無腺腫群に比べ有意に増大した(リスク比[RR]:2.7、95%信頼区間[CI]:1.9~3.7、p<0.001)。非進行腺腫群と無腺腫群では、有意差はなかった。 また、大腸がん死亡リスクについても、進行腺腫群の有意な増大が認められたが(RR:2.6、95%CI:1.2~5.7、p=0.01)、非進行腺腫群の同リスクに有意差はみられなかった(RR:1.2、95%CI:0.5~2.7、p=0.68)。

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人工知能(AI)で胃がんを発見する/がん研究会

 2018年1月22日、公益財団法人がん研究会有明病院(院長:山口 俊晴、所在地:東京都江東区)の平澤俊明医師(上部消化管内科副部長)と株式会社AIメディカルサービス(CEO: 多田智裕、所在地:東京都新宿区)の多田智裕医師(ただともひろ胃腸科肛門科院長/東京大学医学部客員講師)らの研究グループは、人工知能(AI)を活用し、胃内視鏡静止画像の中から高精度に胃がんを検出する内視鏡画像診断支援システムを開発したと発表。 がん研究会のプレスリリースによれば、胃がんは発見がむずかしいケースも多く、内視鏡による胃がんの見逃しは5~25%。近年、AIによる画像認識能力は大きく進歩し、大腸内視鏡におけるAIを用いた診断システムが報告されているが、胃がんではこれまでAIを用いた内視鏡診断支援システムは開発されていない。今回の報告はAIを活用した胃がん内視鏡診断支援システムとしては世界初。Gastric Cancer誌オンライン版2018年1月18日号に掲載された。 本研究グループは最先端のAI技術であるニューラルネットワークを用いたディープラーニングを活用し、13,584枚以上の胃がん内視鏡画像をAIに機械学習させ、病巣検出力を検証した。その結果、検証用の内視鏡画像2,296枚から、66の連続した胃がん症例(77病変)が登録された。77病変中71病変(92.2%)の胃がんを検出し、6mm以上に限定すると71病変中70病変(98.6%)を検出した。陽性反応的中率は30.6%(71/232)であった。また、2,296枚の画像の解析に要した時間は47秒であった。 今後さらに改良を進め、胃がん内視鏡検診の内視鏡画像ダブルチェックへの応用や内視鏡検査時にリアルタイムで胃がん検出を支援する内視鏡診断支援システムの実用化を目指すとしている。■参考がん研究会プレスリリースHirasawa T,et al. Gastric Cancer. 2018 Jan 15.[Epub ahead of print]

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大腸ポリープも身体活動や座位時間に関連

 定期的なレクリエーションでの中~高強度の身体活動(rMVPA)は大腸がん(CRC)リスク低下と関連しているが、前がん状態の前駆病変である大腸ポリープとの関連を検討した研究はほとんどない。今回、カナダ・アルバータヘルスサービスのDarren R. Brenner氏らが、大規模なCRCスクリーニング集団でスクリーニング時の身体活動および座位時間とポリープとの関連を調べたところ、とくに女性で、rMVPAの増加とポリープ有病率の減少の関連が示唆された。また、とくに男性で、習慣的な座位時間が短くてもポリープの存在に関連していた。Cancer epidemiology誌オンライン版2018年1月17日号に掲載。 本研究は、カナダ・アルバータ州カルガリーで、スクリーニングで大腸内視鏡検査を受けた2,496人における横断研究である。身体活動と座位時間は、身体活動の勧告に沿ったrMVPAの時間と、国際標準化身体活動質問票での自己申告データによる座位時間を用いて特徴付けた。rMVPAおよび座位時間に関連するポリープの存在について、ロジスティック回帰モデルを用いて、粗および調整オッズ比(OR)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・150分/週以上の身体活動指針の達成は、1つ以上のポリープ存在のオッズにおいてわずかに減少したが有意ではなかった(調整OR:0.95、95%CI:0.80~1.14)。・男性では、座位時間に関する閾値効果は20時間/週まで観察された(座位時間当たりの調整OR:1.07、95%CI:1.01~1.13)。・層別解析では、統合された結果と比較し、女性・肥満者・過去喫煙者におけるポリープの存在と身体活動の間に、より強い逆相関が認められた。 著者らは、「前がん状態の大腸病変の頻度を減らすための戦略をより明確にするためには、rMVPAおよび座位時間に関するさらなる研究が必要である」としている。

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再発性ディフィシル感染症に対する糞便移植-経口カプセル投与は有効か-(解説:小金丸博氏)-788

 クロストリジウム・ディフィシルは抗菌薬関連下痢症の原因となる主要な細菌である。クロストリジウム・ディフィシル感染症(CDI)は、治療によりいったん改善しても約20%で再発し、再入院や医療費増加の原因となることが知られている。また1度再発した患者のうち、40~65%がさらなる再発を経験する。再発を繰り返すCDIの治療アルゴリズムはまだ確立していないが、近年、糞便移植の有効性が数多く報告され注目を集めている。 本研究は、再発性CDI患者を対象に、便細菌叢の投与経路による有効性の違いを検討した非盲検ランダム化非劣性試験である。少なくとも3回以上CDIを繰り返した18~90歳の患者を対象とし、経口カプセルで投与する群と大腸内視鏡で投与する群に分けて、治療効果、有害事象発生率、患者不快感などを評価した。慢性下痢症、炎症性腸疾患、がんで治療中の患者などは対象から除外された。1回の糞便移植で12週後にCDI再発を予防できたのは、経口カプセル投与群、大腸内視鏡投与群ともに96.2%であり、経口カプセル投与群の大腸内視鏡投与群に対する非劣性が示された(群間差:0%、片側95%信頼区間:-6.1%~無限大、p<0.001)。また、経口カプセル投与群では「まったく不快でない」と回答した人の割合が、大腸内視鏡投与群と比較し有意に高率だった。 糞便移植とは、健常者の便に含まれる腸内細菌叢を患者に投与することで正常な腸内環境を復元し、腸炎の治癒を図る治療法である。本研究では、再発性CDIに対する治療法として、経口カプセルによる糞便移植が大腸内視鏡投与と同等の高い有効率を示した。カプセル製剤にすることで経口投与が可能となり、患者の心理的、肉体的負担を軽減できるのは大きなメリットである。再発性CDIに対する糞便移植の有効性については評価が定まりつつあるが、投与経路、長期安全性、ドナーの選定方法など未解決な部分も存在するため、今後のさらなる研究が待たれる。 CDIに対する糞便移植は、日本ではまだ一般的でなく、保険適用にもなっていない。しかしながら、再発性CDIに対する高い有効性は魅力的であり、利便性や安全性が高まれば、治療方法の1つとして日本でも広がる可能性が十分あると考える。■「糞便移植」関連記事糞便移植は潰瘍性大腸炎の新たな治療となるか/Lancet

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クロストリジウム感染症の再発予防の糞便移植、経口カプセルでも/JAMA

 再発性クロストリジウム・ディフィシル感染症(RCDI)に対する糞便微生物移植(FMT)の経口カプセルによる実施は、大腸内視鏡で行うFMTに対して再発予防効果は非劣性であることが示された。また、経口カプセルFMTは大腸内視鏡FMTに比べて、患者の不快感も少なかった。カナダ・アルバータ大学のDina Kao氏らが、116例の患者を対象に行った非盲検無作為化非劣性試験で明らかにしたもので、JAMA誌2017年11月28日号で発表した。これまでFMTについて、送達ルートの違いにより臨床的効果が異なるのかは不明であった。各FMT実施12週間後のRCDI予防効果を比較 研究グループは、2014年10月~2016年9月にかけて、カナダ・アルバータ州の3つの大学病院で、RCDI患者116例を対象に試験を開始し、経口カプセルFMTの大腸内視鏡FMTに対する非劣性を検証した。非劣性マージンは15%とした。 主要アウトカムは、FMT実施12週間後のRCDI非発生患者の割合だった。副次アウトカムは、(1)重度および軽度有害事象の発生率、(2)健康関連QOL(生活の質)36項目調査票(SF-36)スコア(0[QOLが最悪]~100[QOLが最良])、(3)患者評価に基づく不快感(10段階評価で1[まったく不快ではない]~10[きわめて不快])と満足感(1[最良]~10[最悪])だった。RCDI予防率は両群ともに約96% 被験者116例(カプセル群57例、大腸内視鏡群59例)は、平均年齢58[SD 19]歳、女性が68%を占めた。試験を完了したのは105例(91%)だった。 per-protocol解析の結果、1回のFMT実施で12週後にRCDIを予防できたのは、カプセル群51/53例、大腸内視鏡群50/52例で、両群ともに達成率は96.2%で、カプセル群の大腸内視鏡群に対する非劣性が示された(群間差:0%、片側95%信頼区間[CI]:-6.1~無限大、p<0.001)。 軽度有害事象の発生率は、大腸内視鏡群12.5%に対しカプセル群は5.4%だった。また、不快感に関する患者評価で「まったく不快ではない」と回答した人の割合は、大腸内視鏡群44%に対しカプセル群は66%と有意に高率だった(群間差:22%、95%CI:3~40、p=0.01)。 著者は、「経口カプセルFMTは、RCDI治療の効果的なアプローチ法と思われる」とまとめている。■「糞便移植」関連記事糞便移植は潰瘍性大腸炎の新たな治療となるか/Lancet

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郵送による受診推奨が大腸がんスクリーニングの完遂率を向上する(解説:上村直実氏)-749

 本研究は、米国において大腸がん検診の完遂率を高める方法を比較検討したものである。50~64歳の検診未受診者を、検便キット郵送群(便潜血検査キットと返送用封筒を郵送し、2週以内に返送がなければスタッフが電話する方法)、郵送型大腸内視鏡検査群(大腸内視鏡検査の予約電話番号を記載した案内状を郵送し、2週以内に電話がなければスタッフが直接電話する方法)、および通常ケア群(外来受診時に推奨された検査を受ける方法)の3群に無作為に割り付け、3年間追跡した結果、検診の完遂率は、通常ケア群(10.7%)、検便キット郵送群(28.0%)、郵送型内視鏡検査群(38.4%)の順に高率であり、病変の発見率も同様であった。すなわち、内視鏡検査の案内状の郵送が検診の完遂率や病変の発見に寄与する結果であった。 欧米では、1回の内視鏡検査で大腸がんの死亡率が大幅に減少すること1)がすでに報告されており、便潜血検査を用いた検診や内視鏡検診による内視鏡検査の機会を増やすことが重要との認識が一般常識である。わが国でも大腸がんによる死亡者数が初めて5万人を超えて、肺がんに次いで2番目となっており、住民検診ないしは職場検診の受診率および完遂率の向上が重要な課題となっている。わが国の大腸がん検診は1次検診に便潜血反応を用いて、潜血陽性者に対する精密検査として大腸内視鏡検査を行う方式であるが、精検受診率の低さが大きな課題であり、やはり今回報告されたような具体的な検診の完遂率向上策を模索する活動が必要であろう。一方、検診のみでなく便の潜血反応を簡便に調べることができる方策として便潜血キットのOTC化も模索されている。 消化器専門医のみでなく、一般医家や住民・患者自身が、「大腸がんは早期発見により完治する病気であること」、「10年に1度の大腸内視鏡検査で、大腸がんで死亡するリスクが大幅に低下すること」をよく知ることが大腸がん死亡者を減少させるために重要である。

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大腸がんスクリーニング、受診勧奨の郵送で完遂率が3~4倍/JAMA

 大腸がん(CRC)スクリーニングの完遂率を高めるために、免疫学的便潜血検査(FIT)または大腸内視鏡検査の完遂を郵便で働きかけるアウトリーチ活動を行った結果、通常ケアと比較して3年間で完遂率が有意に高くなり、検査別ではFITよりも内視鏡の完遂率のほうが有意に高率となった。米国・テキサス大学サウスウエスタン医療センターのAmit G. Singal氏らが、3年にわたるプラグマティックな無作為化臨床試験の結果を報告した。CRCスクリーニングの受診を1回増やすには、内視鏡完遂を働きかけるよりもFIT完遂を働きかけるほうが効果的とされる。しかし長期的な効果には繰り返しの検査受診と、異常が見つかった際の適時のフォローアップが必要ではないかとして、本検討が行われた。JAMA誌2017年9月5日号掲載の報告。約6,000例を対象に、アウトリーチ活動による大腸がんスクリーニング完遂率を評価 研究グループは、2013年3月~2016年7月にParkland Health and Hospital system(ダラスの公立病院地域医療ネットワーク)のプライマリケアを受診し、最新のCRCスクリーニングを受けていない50~64歳の患者5,999例を、郵送型FIT群(1回分のFIT検査キットと返送用封筒などを郵送、2週以内に返送がなければスタッフが電話:2,400例)、郵送型大腸内視鏡検査群(大腸内視鏡検査の予約電話番号を記載した案内状を郵送、2週以内に電話がなければスタッフが電話、検査費用は所得に応じて0~50ドルを患者が負担:2,400例)、および通常ケア群(外来受診時に推奨されたスクリーニングを受ける:1,199例)のいずれかに無作為に割り付け、3年間追跡した。アウトリーチ活動には、FIT群の異常なし例には年1回の定期的な検査を促す、FIT群の異常あり例または大腸内視鏡群の患者には診断およびスクリーニングのための大腸内視鏡検査の完遂を促す活動も含まれた。 主要評価項目は、スクリーニングの完遂(大腸内視鏡検査、年1回のFIT、およびFITで異常ありの場合の診断的大腸内視鏡検査の遵守)、CRCが検出された場合の治療評価、副次評価項目は、腺腫または進行がんの検出、出血や穿孔などのスクリーニング関連有害事象などである。3年間で完遂率が有意に上昇、またFITよりも内視鏡の完遂率が高率に 全5,999例(年齢中央値56歳、女性61.9%)において、スクリーニング完遂率は通常ケア群10.7%に対し、大腸内視鏡検査群38.4%(通常ケア群との群間差:27.7%、95%信頼区間[CI]:25.1~30.4%)、FIT群28.0%(同:17.3%、95%CI:14.8~19.8%)で、両アウトリーチ群の完遂率が通常ケア群より有意に高く(両群ともp<0.001)、また大腸内視鏡検査群のほうがFIT群より有意に高かった(群間差:10.4%、95%CI:7.8~13.1%、p<0.001)。 腺腫/進行がんの検出率も、通常ケア群より両アウトリーチ群で高く、大腸内視鏡検査群のほうがFIT群よりも有意に高かった。通常ケア群と比較した腺腫検出率の群間差は、大腸内視鏡検査群が10.3%(95%CI:9.5~12.1、p<0.001)、FIT群1.3%(同:-0.1~2.8、p=0.08)であり、大腸内視鏡検査群とFIT群の差は9.0%(同:7.3~10.7、p<0.001)であった。 スクリーニング関連有害事象は、いずれの群においても確認されなかった。 なお、著者は研究の限界として、参加者が対象機関以外でスクリーニングを受けた可能性があることなどを挙げている。

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便潜血陽性、大腸内視鏡検査はいつまでにすべきか/JAMA

 免疫学的便潜血検査(FIT)陽性患者に対するフォローアップ大腸内視鏡検査の実施時期を明らかにする検討が、米国・カイザーパーマネンテ北カリフォルニアの研究部門のDouglas A. Corley氏らにより行われた。その結果、8~30日に実施群と比べて10ヵ月以降実施群は、大腸がんリスクが有意に高く、診断時に進行大腸がん(Stage III、IV)であるケースが有意に多いことが示された。FITは大腸がんスクリーニングで用いられる一般的な検査法で、陽性の場合は大腸内視鏡検査のフォローアップを受けることが必要とされている。しかしフォローアップ実施までの期間にはばらつきがあり、そのことが腫瘍の進行と結び付いている可能性が示唆されていた。JAMA誌2017年4月25日号掲載の報告。50~75歳の7万124例の実施時期と大腸がんリスクとの関連を評価 研究グループは、FIT陽性後の大腸内視鏡検査までの期間(日数)を評価し、同期間と大腸がんリスクとの関連、および診断時のステージ進行との関連を評価した。 カイザーパーマネンテ北カリフォルニアおよび南カリフォルニアの加入者を対象に後ろ向きコホート試験を実施(2010年1月1日~2014年12月31日)。被験者は、大腸がんスクリーニング適格、FIT陽性でフォローアップ大腸内視鏡検査を受けた患者50~75歳の7万124例であった。 主要評価項目は、全大腸がんリスク、および進行大腸がん(Stage IIIおよびIVと定義)リスクで、オッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を、患者の人口動態学的特性とベースライン時のリスク因子で補正を行い算出して評価した。大腸がんリスク、10~12ヵ月後実施群1.48倍、12ヵ月後以降実施群2.25倍 対象被験者7万124例は、年齢中央値61歳(IQR:55~67)、男性が52.7%であった。このうち、全大腸がんを有したケースは2,191例、進行大腸がんは601例で認められた。 全大腸がんリスクについて、フォローアップ大腸内視鏡検査を8~30日の間に実施した群(2万7,176例)と比較して、2ヵ月後実施群(2万4,644例)、3ヵ月後実施群(8,666例)、4~6ヵ月後実施群(5,251例)、7~9ヵ月後実施群(1,335例)はいずれも有意な差は認められなかった。1,000患者当たりの症例数は、8~30日群30例に対し、2ヵ月後群28例、3ヵ月後群31例、4~6ヵ月後群31例、7~9ヵ月後群43例であった。 また、進行大腸がんリスクについても有意差はみられなかった。1,000患者当たりの症例数は、8~30日群8例に対し、2ヵ月後群7例、3ヵ月後群7例、4~6ヵ月後群9例、7~9ヵ月後群13例であった。 しかし、10~12ヵ月後実施群(748例)は、全大腸がんリスク(1,000患者当たりの症例数49例)、進行大腸がんリスク(同19例)ともに有意に高かった。全大腸がんリスクのORは1.48(95%CI:1.05~2.08)、進行大腸がんリスクのORは1.97(95%CI:1.14~3.42)であった。また、12ヵ月超実施群(747例)では、さらなるリスクの上昇が認められた。全大腸がんリスクは1,000患者当たり症例数が76例、ORは2.25(95%CI:1.89~2.68)であり、進行大腸がんは同31例、ORは3.22(95%CI:2.44~4.25)であった。 なお、結果について著者は、「さらなる研究を重ね、今回示された関連は因果関係があるのかを調べることが必要である」と述べている。

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クローン病に新たな治療アプローチ、IL-23阻害薬/Lancet

 インターロイキン-23(IL-23)のp19サブユニットを標的とするヒト型モノクローナル抗体製剤risankizumabは、活動期クローン病の臨床的寛解導入において、プラセボよりも高い効果を発揮することが、カナダ・ウェスタンオンタリオ大学のBrian G Feagan氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2017年4月12日号に掲載された。クローン病の発症には、遺伝学的、生物学的にIL-23経路の関与が認められる。予備的なデータでは、risankizumabは、IL-23経路が関与する慢性炎症性皮膚疾患である乾癬に有効なことが知られている。2つの用量とプラセボを比較する第II相試験 本研究は、北米、欧州、東南アジアの36施設が参加する二重盲検プラセボ対照無作為化第II相試験であり、2014年3月~2015年9月に患者登録が行われた(Boehringer Ingelheim社の助成による)。 対象は、年齢18~75歳、クローン病の診断後3ヵ月以上が経過し、スクリーニング時に中等症~重症クローン病と判定された患者であった(マスクされた中央判定で、回腸または結腸あるいは双方の粘膜潰瘍を伴い、クローン病活動指数[CDAI]スコアが220~450点、かつ大腸内視鏡検査でクローン病の内視鏡的活動性指標[CDEIS]スコアが7点以上[孤立性回腸炎の患者は≧4点])。 試験は、第1期(12週の二重盲検静脈内投与期)、第2期(12週のオープンラベル静脈内投与またはウォッシュアウト期)、第3期(26週の皮下投与期)の3つの治療期間に分けて行われ、今回は第1期の結果が報告された。被験者は、risankizumab 200mg、同600mg、プラセボを0、4、8週に投与する3つの群にランダムに割り付けられた。 主要評価項目は、ITT集団における12週時の臨床的寛解(CDAIスコア<150点)とした。安全性は、治験薬の投与を1回以上受けたすべての患者で評価した。 121例が登録され、risankizumab 200mg群に41例、同600mg群に41例、プラセボ群には39例が割り付けられた。高用量が有用な可能性 ベースラインの平均年齢は200mg群が39歳、600mg群が40歳、プラセボ群は36歳、女性がそれぞれ63%、61%、59%であった。CDAI中央値は、それぞれ311点、298点、295点、CDEIS中央値は12点、12点、11点だった。全体のクローン病の平均罹病期間は13(SD 9)年で、93%(113例)が1回以上の腫瘍壊死因子阻害薬(79%[96例]が治療不成功)の投与を受けていた。 12週時の臨床的寛解達成率は、200mg群が24.4%(10/41例)、600mg群が36.6%(15/41例)、プラセボ群は15.4%(6/39例)であった。2つの用量を合わせたrisankizumab群とプラセボ群の差は15.0%(95%信頼区間[CI]:0.1〜30.1)と、有意な差が認められた(p=0.0489)。200mg群とプラセボ群の差は9.0%(-8.3〜26.2、p=0.31)であり、有意差はみられなかったが、600mgとの差は20.9%(2.6〜39.2、p=0.0252)と有意であった。 12週時の臨床的奏効(CDAIスコア<150点またはCDAIスコアのベースラインから100点以上の低下)、内視鏡的奏効(CDEISスコアのベースラインから50%以上の低下)、完全寛解(臨床的寛解かつ内視鏡的寛解)は、いずれも200mg群とプラセボ群には差がなかったが、600mg群(それぞれp=0.0366、p=0.0106、p=0.0164)および200mg+600mg群(p=0.0273、p=0.0104、p=0.0107)はプラセボ群に比べ有意に優れた。内視鏡的寛解(CDEISスコア≦4点)は、200mg群(p=0.0357)、600mg群(p=0.0107)、200mg+600mg群(p=0.0015)が、いずれもプラセボ群よりも有意に良好だった。 12週時の有害事象は、79%(95例)に認められた(200mg群:32例、600mg群:31例、プラセボ群:32例)。重度有害事象は18例(それぞれ6例、3例、9例)、治療中止の原因となった有害事象は12例(5例、1例、6例)、重篤な有害事象は24例(9例、3例、12例)に発現した。最も頻度の高い有害事象は悪心、最も頻度の高い重篤な有害事象はクローン病の増悪であり、死亡例はなかった。 著者は、「これらの知見は、p19の阻害を介するIL-23の選択的遮断は、クローン病の治療アプローチとして実行可能であることを示唆する」と指摘している。

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ある日の救急外来【Dr. 中島の 新・徒然草】(164)

百六十四の段 ある日の救急外来年度末の土曜日のこと。夕方に救急外来をのぞくと、患者さんやその御家族でごったがえしていました。当院では、研修医2名が1・2次救急のファーストタッチを担当しています。日直から当直への交代時間はとうに過ぎたはずですが、研修医4名が、ショックバイタルの下血患者さんをはじめとした数名の救急患者さんに対応していました。中島「とにかくバイタルを何とかしろ!」研修医「はい」なんと言っても最重症は下血の患者さん。4人とも表情はテンパっていましたが、内視鏡オンコール医の「すぐ行くから腹部造影CTをやっといてくれ」を目標にして、何とか輸液と輸血でバイタルの立て直しを図っていました。そうこうしているうちにレジデントが応援に駆けつけ、ようやく血圧が100を超え始めました。このチャンスを逃さず、すかさず造影CTへ向かいます。残念ながらほかに用事があったので、私が見ることができたのはここまででした。翌朝、その後の経過を電子カルテで確認しました。造影CTでは、上行結腸から肝彎曲部の腸管内出血が疑われたようです。駆けつけた内視鏡オンコール医が大腸内視鏡で出血点を確認し、クリップ3つで止血に成功し、うまく救命することができました。この患者さんに人手を取られた結果、待たされたほかの患者さんから、いささか不平不満が出たようです。怒っている人ほど医学的には後回しになりがち、というのはよくある救急外来の景色。ただひたすらに頭を下げるのみです。年度末のこの時期、いつも研修管理委員会で問題になるのが、研修医の修了認定。内外の委員から「彼女の社会人としての資質はどうなのか?」「彼は患者さんやほかの職員に対する態度がなっていない」などと言われがちです。しかし、今回の救急室での対応を見るかぎり、合格点をあげてもいいのではないかと思いました。巣立っていく彼らの未来に幸多きことを祈ります。最後に1句出血の ショックを凌いで さあCT! 

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肉を多く食べる男性の大腸がんリスク1.3倍以上:高山スタディ

 肉を多く食べる男性は、そうでない人と比べて、大腸がんの発症リスクが有意に高いことが、岐阜大学の和田 恵子氏らによる研究で明らかになった。肉を多く食べ過ぎないことが、大腸がんの発症抑制につながるかもしれない。Cancer science誌オンライン版2017年3月3日号の報告。 日本人における肉の消費と大腸がんに関するエビデンスは、欧米人のそれと比較して限られている。そのため著者らは、日本において集団ベースの前向きコホート研究を実施し、食肉の消費と大腸がんリスクの関連について評価した。 対象は、1992年9月時点で35歳以上の男性1万3,957人、女性1万6,374人。食肉の消費は、食物摂取頻度調査票を用いて評価した。大腸がんの発症率は、地域集団ベースのがんレジストリおよび2つの主要病院で実施された大腸内視鏡検査における組織学的同定により調査した。 主な結果は以下のとおり。・1992年9月~2008年3月までに、男性429人、女性343人が大腸がんを発症した。・複数の交絡因子の調整後、男性の総食肉摂取量および赤肉摂取量の最高四分位群は、最低四分位群と比較して大腸がんの相対リスクが有意に上昇した。  総食肉(ハザード比:1.36、95%CI:1.03~1.79、p for trend=0.022)  赤肉(ハザード比:1.44、95%CI:1.10~1.89、p for trend=0.009)・男性の加工肉の摂取と結腸がんリスクとの間に正の関連性が認められた。・女性の大腸がんと食肉消費との間には有意な関連は認められなかった。

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