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統合失調症に関する10年間の調査~実臨床のためのレビューとレコメンド

 フランス・パリ・エスト・クレテイユ大学のF. Schurhoff氏らは、統合失調症専門家のための学術研究センター(FondaMental Academic Center of Expertise for Schizophrenia:FACE-SZ)グループによる最初の10年間のコホート研究について報告を行った。L'Encephale誌オンライン版2018年10月13日号の報告。 FACE-SZでは、700以上のコミュニティで安定している患者を募集し、現在まで評価を行っている。対象者は、平均年齢32歳、男性の割合75%、平均罹病期間11年、平均発症年齢21歳、統合失調症の平均未治療期間1.5年、喫煙者55%であった。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者におけるメタボリックシンドロームの有病率は、一般集団と比較し2倍であり、正しい評価や治療が行われていなかった。・ベンゾジアゼピン使用患者および慢性低悪性度末梢炎症患者において、認知機能低下が認められた。・うつ病の合併は、対象患者の約20%で認められた。・うつ病は、QOL低下や統合失調症の喫煙者におけるニコチン依存症の増加と関連が認められた。・うつ病および陰性症状の改善は、統合失調症患者のQOL改善のための最も効果的な治療戦略であると考えられる。・大麻使用患者および発症年齢が19歳未満の患者では、統合失調症の未治療期間が長くなる傾向が認められた。・治療開始後、主観的にネガティブの印象を報告した患者では、錐体外路症状や体重増加などの客観的な副作用とは無関係に、治療に対するアドヒアランスが低下した。・アカシジアは、統合失調症の18%で認められ、これは抗精神病薬の多剤併用と関連が認められた。 結果を踏まえ、臨床ケアを行う際の、著者らのレコメンドは以下のとおりである。・統合失調症の早期診断は、青年および大麻使用者でとくに強化すべきである。・すべての患者において、治療開始時および安定後に総合的な神経心理学的評価を行わなければならない。・代謝パラメータや生活習慣(食生活や身体活動)の改善を強化すべきである。・ベンゾジアゼピンおよび抗精神病薬の多剤併用については、ベネフィット/リスク比を定期的に再評価し、できるだけ早い段階で是正すべきである。・うつ病の改善は、統合失調症のQOLを大幅に改善する可能性があるため、うつ病の診断、治療を行うべきである。・認知リハビリテーション療法や抗炎症戦略は、より治療戦略に組み込むべきである。■関連記事統合失調症患者の死亡率に関する30年間のフォローアップ調査初回エピソード統合失調症患者における抗精神病薬治療中止に関する20年間のフォローアップ研究統合失調症患者の強制入院と再入院リスクとの関連~7年間のレトロスペクティブコホート研究

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特発性肺線維症〔IPF : idiopathic pulmonary fibrosis〕

特発性肺線維症特発性肺線維症のダイジェスト版はこちら1 疾患概要■ 概念・定義間質性肺炎は、肺の間質と呼ばれる肺胞(隔)壁などに傷害と炎症が生じ、不可逆的な線維化を起こす疾患群である。この間質性肺炎には、薬剤性、膠原病性、大量の粉塵吸入など原因が明らかなものと、原因が不明な特発性間質性肺炎とがある。主な特発性間質性肺炎は7つの病型に分類されているが、そのうち患者数が最も多く、かつ予後不良の中心的疾患が特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis:IPF)である。IPFは慢性、進行性の疾患であり、高度の線維化が肺底部、肺の末梢領域から肺全体へ広がって、不可逆性の蜂巣肺と呼ばれる病変を形成する、きわめて予後不良の疾患である。IPFの病理組織像はusual interstitial pneumonia (UIP)と呼ばれている所見である。従来、有効な治療法のない疾患であったが、近年、2つの抗線維化薬が治療薬として注目されている。■ 疫学近年まで特発性間質性肺炎、IPFの患者数についての正確な調査は行われておらず、まったく不明であったが、厚生労働省難治性疾患克服研究事業「びまん性肺疾患に関する調査研究班」により2008年以来、北海道において詳細な疫学研究が行われ、実態が明らかにされてきた。これによると、特発性間質性肺炎の有病率は10万人あたり10.0人であり、日本全体では少なくとも約1万3千人の患者数となり、その多くがIPFであることから、少なくみても1万数千人以上のIPF患者が日本には存在すると考えられる。■ 病因定義で述べたように、IPFの原因は不明であるが、リスク・ファクターとして喫煙、職場の粉塵(とくに金属粉塵)、ウィルスなどが考えられている。家族性で遺伝的素因が強くうかがわれる例もある。■ 症状IPFはゆっくりと進行する疾患であるが、個々の患者によって比較的急速に進行する例もある。主な症状は労作時の呼吸困難とさまざまな程度の乾性咳嗽である。労作時の息切れは、来院する6ヵ月~数年前から存在しており、聴診ではほとんどの例で、背部下肺野に捻髪音(fine crackle)を聴取する。半分~1/3の例で「ばち指」を認める。進行し末期に至ると、肺性心、末梢性浮腫、チアノーゼなどがみられてくる。■ 分類背景因子として、粉塵吸入の目立つ例、C型肝炎例、糖尿病合併例、膠原病が疑われる症状のある例、過敏性肺炎との鑑別が難しい例、家族性の例などさまざまなサブタイプの存在するheterogeneousな疾患といえる。近年、欧米からの指摘により日本でも再注目されているのが、上肺に気腫が存在し、下肺に線維化がある「気腫合併肺線維症」(CPFE:combined pulmonary fibrosis and emphysema)である。本病態は喫煙と強い関係があり、呼吸機能上、気腫と線維化が相殺されて、1秒率 (FEV1/FVC)は一見正常に近いが、肺拡散能が低下しているという特徴を有する。本病態では、肺がんの高率合併や症例によっては強い肺高血圧症を合併することからも注意が必要である。分類ではないが、IPFの病態としてきわめて重要なものに「急性増悪」と肺がん合併がある。急性増悪を一旦起こすと、死亡率約80%ともいわれ、きわめて予後不良である。■ 予後IPFはきわめて予後不良の疾患で、わが国のある調査では、初診時を起点とした平均生存期間は約5年であった。また、欧米での診断確定後の平均生存期間は28~52ヵ月とされる。しかしながら、IPFの予後にはきわめて多様性があり、数ヵ月で急性増悪などにより死亡する例から10数年以上生存する例までさまざまである。ただ、全体的にはきわめて予後不良の疾患であることは間違いのないところである。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)IPFの診断については基本的には図1の「IPF診断のフローチャート」に沿って行われる。まず、原因の明らかな他の間質性肺疾患を除外し、つぎにHRCT所見で典型的なUIPパターン(表1)を示す場合には、臨床的にIPFと確定診断される。外科的肺生検が実施された例では、HRCT所見と病理所見の組み合わせで判断していく(表2)。HRCTで典型的なUIPパターンを示さない場合でもpossible UIPパターンで、臨床経過がIPFに合致するような肺機能低下を示す(disease behavior)例ではIPFと臨床診断されることも可能である。こういった診断の際には間質性肺疾患の診断経験を十分に積んだ呼吸器専門医、画像診断医、病理診断医がMDD(multi-disciplinary discussion:多職種による合議)を行い、総合的に判断していくことがIPFの正確な診断に重要とされている。血液検査所見としては、従来LDHのみであったが、近年、新しい間質性肺炎マーカーとしてKL-6、SP-D、SP-Aが導入された。これらは、診断と共に活動度の判定にも有用である。呼吸機能としては、通常肺活量(VC)や全肺気量(TLC)の低下がみられ、拘束性換気障害のパターンを示し、また同時に肺拡散能の低下も認められる。ただし、気腫合併肺線維症ではこの限りではないことは前述した。IPFとの鑑別が必要な主な疾患として、表3のようなものがあげられる。画像を拡大する■MDD(multidisciplinary discussion)の取り扱いMDD:下記のとおり、呼吸器内科医、画像診断医、病理診断医が総合的に診断するMDD-A:画像上他疾患が考えられる場合、気管支鏡検査あるいは外科的肺生検で他疾患が見込まれる場合MDD-B:外科的肺生検は積極的UIP診断の根拠になる場合が多いため、患者のリスクを勘案の上、可能な限り施行するMDD-C:IPF症例で非典型的な画像(蜂巣肺が不鮮明など)を約半数で認めるため、呼吸機能の低下など、進行経過(behavior)を総合して臨床的IPFと判断する症例があるMDD-D:病理検査のない場合の適格性を検討する各MDDにおいて最終診断が変わりうる可能性がある画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する3 治療今まで、IPFの生存率や健康関連QOLに対して明らかな有効性が証明された薬物治療法はなかったが、2008年に新しく上市された抗線維化薬ピルフェニドン(商品名:ピレスパ)、さらに2015年に上市されたニンテダニブ(同:オフェブ)が大きく注目されている。IPFは治癒が期待できない難治性疾患であるため、その治療目標は改善ではなく、むしろ悪化防止(現状維持)が現実的である。予後不良因子である急性増悪の予防(感冒・心不全などの予防、無理をしないなど)、合併症の肺がん、肺高血圧症の早期発見と対応が求められる。後述する薬剤治療に関しても、治療効果と副作用を考えて選択することが重要である。次に、薬剤治療について述べる。1)N-アセチルシステイン(NAC:N-acetylcysteine)は、グルタチオンの前駆物質であり、抗酸化作用を有すると共に、活性酸素のスカベンジャー作用、炎症性サイトカイン産生の抑制作用などがある。IPFの病変部ではグルタチオンが減少し、レドックスバランスの不均衡が生じていることからも、NACの有用性が考えられる。NACの経口薬については欧州を中心とした臨床試験において効果が示されていたが、近年PANTHER試験で経口薬は無効とされた。しかし、日本ではNACはすでに吸入薬の形で去痰薬として長い歴史がある。吸入薬の形によるNACのIPFに対する検証がわが国でも厚生労働省の研究班を中心に行われ、一定の効果が示されている。NACの利点は副作用が少ない点であるが、吸入療法のため、アドヒアランスに欠点がある。吸入薬のNACについては、抗線維化薬との併用を含めさらに検討が必要である。2)抗線維化薬ピルフェニドンピルフェニドンは米国で創薬された薬剤であり、TNF-αなどの炎症性サイトカイン抑制、線維芽細胞のコラーゲン産生抑制といった抗炎症、抗線維化作用を有する薬剤である。わが国において軽症および中等症のIPFを対象とした第II相試験が行われ、歩行時低酸素血症の改善、呼吸機能の悪化抑制が認められた。さらに第III相試験が行われ、%VC悪化の有意な抑制、無増悪生存期間の改善が認められ、2008年12月に世界初の抗線維化薬として市販された。副作用として当初は光線過敏症が注目されていたが、実際に使用してみるとむしろ問題になるのは胃腸障害である。その後の研究でピルフェニドンはIPF患者のVC/FVCの低下を抑制し、無増悪生存期間の延長、6分間歩行距離の低下抑制を示した。とくに軽症例においてVC低下抑制、無増悪生存期間の延長が際立っていた。いくつかのトライアルの統合解析において、ピルフェニドンはIPF患者の全死亡率、疾患関連死亡率の低下を示したという。3)抗線維化薬ニンテダニブニンテダニブは、ベーリンガーインゲルハイム社によって開発された経口薬である。肺の線維化に関係する3つの分子、VEGF受容体、PDGF受容体、FGF受容体を阻害する低分子トリプリチロキンシナーゼ阻害薬である。わが国では2015年に第2の抗線維化薬として承認され市販された。ニンテダニブは全世界的規模のトライアルにおいてIPF患者の呼吸機能の年間低下率を約50%抑制した。主な副作用は下痢であり、その他肝機能障害などがみられる。4)ステロイド、免疫抑制剤これらの抗炎症薬のIPFに対する効果は基本的に否定されているが、IPFの終末期など症例によっては一定の効果をみる場合もある。また、急性増悪の際の治療としては、頻用されている。その他、進行例では在宅酸素療法が行われ、呼吸リハビリテーションも重要である。進行例で基準を満たせば肺移植の適応でもある。4 今後の展望前述の2つの抗線維化薬に対して、今後どのような重症度から投与するのか、長期の安全性、2つの薬の使い分けまたは併用の可能性などの多くの明らかにすべき課題がある。5 主たる診療科呼吸器内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 特発性間質性肺炎(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)日本呼吸器学会(医療従事者向けのまとまった情報)1)日本呼吸器学会びまん性肺疾患診断・治療ガイドライン作成委員会編. 特発性間質性肺炎診断と治療の手引き.改訂第3版:南江堂;2016.2)「びまん性肺疾患に関する調査研究」班特発性肺線維症の治療ガイドライン作成委員会編. 特発性肺線維症の治療ガイドライン2017. 南江堂;2017.3)杉山幸比古編.特発性肺線維症(IPF) 改訂版.医薬ジャーナル社;2013.4)杉山幸比古編、特発性間質性肺炎の治療と管理.克誠堂出版;2013.公開履歴初回2013年02月28日更新2018年11月13日

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50歳以上で増加の加齢黄斑変性、最新レジメンが患者と介助者を救う

 失明の原因第4位である加齢黄斑変性(AMD)。日本人の場合、50歳以上の男性の有病率が高く、なかでもリスクの高い滲出型になりやすいとの報告がある1)、2)。2018年10月16日にバイエル薬品が主催するプレスセミナー「中途失明を引き起こす疾患・滲出型加齢黄斑変性治療の新しいあり方~日本人患者さんにおける最新エビデンスより~」が開催され、高橋 寛ニ氏(関西医科大学眼科教室主任教授)と塙本 宰氏(小沢眼科内科病院)が登壇し、新たな治療レジメンと地方における治療継続の是非を語った。加齢黄斑変性は長期マネジメントが必要 AMDは、萎縮型(dry)と滲出型(wet)に分類され、日本人で発症しやすい滲出型加齢黄斑変性(wAMD)は、網膜に浮腫や出血を起こすことで高度の視覚障害リスクを伴う。これは、黄斑下に脈絡膜由来の脈絡膜新生血管の増殖が原因とされ、抗VEGF薬による治療が必要となる。自覚症状として、歪んで見える(変視症)、中心部が見えにくい(中心暗点)、ぼやけて見える(視力低下)があり、高橋氏は、「発症後10ヵ月で小数視力が0.4から0.2に低下するほどのインパクトがある」とコメントした。 主な危険因子に喫煙、加齢、肥満、太陽光などが挙げられ、同氏は、「1番の危険因子は喫煙であり、長期喫煙者は、非喫煙者と比較して4~5倍罹患率が上昇する」と述べ、「一度発症すると、寛解と再燃の繰り返しによる長期マネジメントが必要となるばかりか、視力低下が生活に影響を及ぼすことで、うつ傾向に陥る」ことを問題点として挙げた。Treat&Extend投与レジメンによる最新エビデンス 海外第III相試験(VIEW1試験)と日本人を含む第III相国際共同試験(VIEW2試験)により、アフリベルセプト群のラニビズマブ群に対する非劣性が検証される以前は、治療遅延による視力低下リスクのあるリアクティブ投与が行われていた。しかし、これらの試験結果に基づき、個々の患者に合わせ、事前に計画した適切な投与間隔で投与するTreat&Extend(T&E)投与レジメンが推奨されるようになった。 実臨床においてはアフリベルセプト投与のT&Eレジメンは厳密に行われておらず、リアクティブ投与が多用されることによって1年目に良好であった視力が2年後には低下傾向を示すことが判明した(市販後調査の結果)。このため、現在、アフリベルセプトにおけるT&E投与レジメンについて厳密に検討した、国内第IⅤ相臨床試験ALTAIR試験が行われている。今年9月には2年目のデータが中間報告され、これを踏まえて同氏は、「これまでのデータでは投与間隔の延長が最長12週間であったのに対し、16週間も投与を延長できた患者が40%もいた」と述べ、「医師と患者双方の負担を増やすことなく、長期の視力予後へ貢献できる」と、新しい治療法に期待を寄せた。治療継続には介助者負担の考慮も重要 wAMDの治療患者は高齢であり、車社会の地方部では送迎のための介助が必須となる。「付添人のつらさを目の当たりにした」という塙本氏は、未治療のwAMDに対して抗VEGF薬による治療が1年以上経過している患者と介助者を対象とした研究3)を行った。 この研究では、PRN法とT&E法による介助者への負担や患者の視力変化などについて検討した。その結果、介助者の半数が就業中で介助のために有給取得を行っている、介助者へ付き添う人の8割が毎月同一である、介助者の約8割が自家用車を利用、などの結果が得られた。また、介助者の負担感については、BIC-11(多次元介護負担感尺度:Burden Index of Caregivers-11)を用いて測定し、PRN群とT&E群では、後者の数字が低く、負担感を感じにくいという結果であった。これを踏まえ、塙本氏は「投与タイミングが事前にわかっているT&E法は患者と介助者の負担軽減にマッチした投与法」と述べ、「T&E群では、2年後視力もほぼ維持することができた」と、T&E法が患者と介助者双方のメリットに繋がることを示した。■参考1)Yasuda M, et al.Ophthalmology.2015;57:207-12.2)Yasuda M, et al.Ophthalmology.2009;116:2135-40.3)Hanemoto T, et al. PLoS One.2017;12:e0189035.バイエル薬品:ニュースリリース■関連記事加齢黄斑変性の抗VEGF阻害薬治療、3年後視力と強い関連

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周期投与と連続投与が選択できる月経困難症治療薬「ジェミーナ配合錠」【下平博士のDIノート】第12回

周期投与と連続投与が選択できる月経困難症治療薬「ジェミーナ配合錠」今回は、「レボノルゲストレル・エチニルエストラジオール配合剤(商品名:ジェミーナ配合錠)」を紹介します。本剤は、周期投与と連続投与の2つの服用パターンが選択でき、月経困難症に悩む女性のQOL改善が期待されています。<効能・効果>本剤は月経困難症の適応で、2018年7月2日に承認され、2018年10月4日より販売されています。<用法・用量>下記の2つの投与周期が規定されています。1)1日1錠を毎日一定の時刻に21日間連続経口投与し、その後7日間休薬(28日周期)2)1日1錠を毎日一定の時刻に77日間連続経口投与し、その後7日間休薬(84日周期)いずれの場合も出血の継続の有無にかかわらず、休薬期間終了後の翌日から次の周期を開始し、以後同様に繰り返します。<副作用>月経困難症を対象とした臨床試験では、全解析対象241例中214例(88.8%)に臨床検査値異常を含む副作用が認められました(承認時)。主な副作用は、不正子宮出血、希発月経、月経過多、下腹部痛、悪心、頭痛などでした。<患者さんへの指導例>1.この薬は、黄体ホルモンと卵胞ホルモンを補充することで、月経時の下腹部痛や頭痛などを改善します。2.薬を飲んでいる途中に不正出血が起こることがあります。通常は飲み続けるうちに少なくなりますが、長期間にわたって出血が続いたり、出血量が多かったりする場合は、医師に相談してください。3.血栓症の主な症状である足の急激な痛み・腫れ・しびれ、突然の息切れ、胸の痛み、激しい頭痛などが現れた場合は、服用を中止して救急医療機関を受診してください。これらの症状が軽い場合や体が動かせない状態、脱水になった場合も服用を中止して医療機関を受診してください。4.28日周期の場合に、2周期連続して月経が来なかった場合は妊娠している可能性が疑われますので、すぐに医療機関を受診してください。5.他の医療機関から処方されている薬剤やサプリメントなどを服用する際は、本剤を服用中であることを伝えてください。6.飲み忘れたときは、当日に気付いた場合は気付いた時点で服用し、翌日以降に気付いた場合は、前日分(1日分のみ)を気付いた時点で服用し、当日分をいつもの時間に服用してください。1日に2錠を超えて服用することはできません。<Shimo's eyes>月経困難症は、月経に随伴して起こる病的症状を言い、激しい下腹部痛および腰痛を主とした症候群です。卵胞ホルモン・黄体ホルモン配合剤が、非ステロイド性抗炎症薬と共に月経困難症治療の第1選択薬となっています。本剤は月経困難症治療薬として、わが国で初めて第2世代黄体ホルモンであるレボノルゲストレルを含有した超低用量卵胞ホルモン・黄体ホルモン配合剤です。本剤の特徴は、同じ製剤で周期投与(28日周期)と連続投与(84日周期)の両方に使用できることです。2種類のシートが用意されており、周期投与は21錠シート1枚分を服用した後7日間休薬し、連続投与は28錠シート2枚と21錠シート1枚分(計77日分)を服用した後に7日間休薬します。既存薬は処方された製品によって投与周期がわかりますが、本剤ではどちらの周期で使用するのか、しっかり患者さんに確認する必要があります。国内第III相長期投与比較試験において、連続投与群の月経困難スコア合計は、周期投与群と比べて、1~11周期のいずれにおいても有意な低下を示しました。また、連続投与では服薬期間中に少量の出血(不正子宮出血)が認められることがあるものの、休薬期間(月経予定)が減ることによって月経痛が生じる頻度が下がるため、一般的な月経周期で月経があるほうが望ましいと考える患者さん以外では、連続投与が選択されると考えられます。なお、連続投与群の副作用発現率が86例中85例(98.8%)と高いのは、服薬期間中の不正子宮出血や希発月経などが含まれているためです。卵胞ホルモン・黄体ホルモン配合剤に共通の重篤な副作用である血栓症の発症に注意が必要です。ドロスピレノン・エチニルエストラジオール錠(商品名:ヤーズ配合錠)は、2014年に血栓症に関するブルーレターの発出があり注意喚起されています。そのため本剤も類薬であることから、医薬品リスク管理計画書において、重要な特定されたリスクとして血栓症が設定されています。しかし、レボノルゲストレルを含有する配合剤は、他の黄体ホルモンを含有する配合剤に比べ、血栓症の発現リスクが低かったという海外での報告もあります。既存の卵胞ホルモン・黄体ホルモン配合剤と同様に、禁忌薬や併用注意薬が大変多いため、処方監査の際には薬歴やお薬手帳を必ず確認しましょう。服薬指導では、休薬期間ではない日に少量の出血があっても、基本的にはそのまま服用するように伝え、喫煙により静脈血栓症、肺塞栓症、心筋梗塞、脳卒中などの危険性が高まることから、禁煙の厳守を理解してもらいましょう。また、生活習慣病に罹患すると血栓症のリスクが高まるため、適切な生活習慣の改善も必要です。さらに、万一飲み忘れに気付いた場合の対応が避妊薬とは異なるので、しっかり説明しましょう。

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第6回 心電図、正しくとれてる?(後編)~自動診断の「側壁梗塞」にご用心!~【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】

第6回:心電図、正しくとれてる?(後編)~自動診断の「側壁梗塞」にご用心!~第5回では、心電図電極のつけ間違い、なかでも最も典型例な「手電極を逆につけてしまうミス」を取り上げ、所見の様相とその理由、およびI誘導の“オール下向き”から不正を疑う方法までを解説しました。今回も同じ女性の症例で“気づき”を与えてくれる所見を解説します。また、最後のオマケ、女性の狭心症のpitfall(落とし穴)にもご留意あれ!前回のおさらい症例48歳。女性。昨晩からの心窩部痛にて救急受診。以前より血圧高値を指摘されるも受診せず。間欠的に“さしこむような”痛みがあり、発作時には冷汗を伴う。何度か嘔吐もした。労作時症状はない。昼過ぎに市販の制酸剤を服用したが改善しないため、夕刻に受診し、来院時に心電図検査を行なった(図1)。喫煙:20-30本/日(18歳~:現在も喫煙中)家族歴:冠動脈バイパス術(父親)身長156cm、体重105kg。体温36.9℃、血圧154/95mmHg、脈拍62/分。(図1)来院時心電図画像を拡大する冠危険因子リッチな女性が冷汗をかくような心窩部痛ですから、心電図検査もマストですね。「ST変化はどうかな…」と見る前に、肢誘導の電極が左右逆じゃないかしら、通常あまり見ないI誘導のカタチ(すべて下向き)だな、という疑問から根本的“ミス”に気づけるか?…それが前回と今回のテーマです。今回は、I誘導以外に“手の電極が左右逆かも?”と気づかせてくれる所見について2つ紹介します。1つ目は、とかく無視されがちなaVR誘導、ここを見て下さい。aVR誘導で陽性QRS波なら“左右逆”の線がさらに濃厚になります。今回の例もそうなっていますよね。次の図を使って、そのワケを理解しましょう(図2)。(図2)aVR誘導で上向きQRS波が起こりにくい理由画像を拡大するQRS電気軸は4つの領域からなります(図2-A)。これを意識した上でaVR誘導のQRS波が上向き(陽性)となる領域を考えます(図2-B)。すると、一番ヤバいゾーンである高度軸偏位(ないし北西軸)にほぼ一致します。ところが、この状態は現実的に起こりにくいので、「aVR誘導の上向きQRS波なんてオカシイよ。正しく記録できてないんじゃない?」、そう思える感覚が大事なんです。I誘導とは逆に、aVRはP-QRS-Tすべて下向き(陰性)が“お約束”な誘導と覚えておいて下さい。少し余談です。ボクが医学部生の頃、確認テストに「正常(代表的)なII誘導とV5誘導の波形を描きなさい」という問題が出ました。当時は、講義をしていたのが心電図界の“大家”(今でもご活躍されています)なことを知る由もなく…P波がどれで何を意味するのかわからないボクは『なんたる悪問! 何言ってんの、あのオジサン…。』と毒づきながら、最初に目についた波形を写したのを記憶しています(笑)「頭の中に心電図波形の“テンプレート”を入れておく」、「比較できる過去の心電図がなくても、目の前の波形を“テンプレート”と比較しながら異常を抽出する」。循環器のプロたちって、みな無意識にそうしてるんです。いろいろな方々にレクチャーする立場になった今、“あの先生の意図はそういうことだったんじゃないかなぁ”と感じています。普通はここまでですが、Dr.ヒロ的ポイントがもう一つ!「側壁梗塞」という自動診断を見たら、ズバリ左右電極間違いを疑うのです。これもボク以外、強調している人は少ないかも!?側壁梗塞の場合、I誘導とaVL誘導に大きな(深くて広い)異常Q波が出るんです。aVL誘導に単独でQ波が見られるのは正常亜型の一種でもあるんですが、I誘導も含む側壁梗塞パターンは現実にはかなり起こりにくいのです。なので、ボクの頭の中では「自動診断で側壁梗塞?→嘘でしょ?→電極でもつけ間違ってんじゃないの?」と分析します。実際に心電図(図1)にも「側壁心筋梗塞」って書いてますでしょ。最近の心電計はだいぶ優秀になってきていて、「左右電極のつけ間違い(の可能性)」などとズバッと教えてくれる場合もあるので、もちろんそれも参考にしましょう。【左右電極のつけ間違いを疑うヒント】すべて“サカサマ”(陰性)のI誘導aVR誘導で上向き(陽性)QRS波自動診断の指摘した「側壁梗塞」や「左右電極のつけ間違い(の可能性)」さぁ、ここまで聞いたら、自分でも上肢電極の左右つけ間違いを見抜けるはず! 最後に鑑別すべき病態も示したので、これも参考に。【電極の左右つけ間違い(疑)で鑑別すべき病態】右胸心(肢誘導はソックリ、胸部誘導で鑑別できる)右心系負荷を生じる疾患(右軸偏位や左室肥大を伴うとヤッカイ)肺全摘術・気胸療法後など(心臓が正常な位置からだいぶズレる)鑑別には、胸部X線でも心エコーでも何でも参考にするとよいでしょう。この状況で心電図だけで“勝負”しようとするのは愚かなことですし、多くは他の検査を見たら一発で診断可能なはず。Dr.ヒロの口ぐせは“心電図だけで考えようとしない”なんですよね。心電図がデキる人ほど、そうだと思っています。自分が間違えないのはもちろん、時には他人の記録ミスを指摘できる、そんなスゴ腕ドクターにぜひなって下さい。もちろん、指摘するときは“やさしく”ね(笑)さて、電極の間違いに気づいて心電図をとり直しても“本題”は解決していません。心電図だけではなく、他の情報も総合して患者さんの病態に迫りましょう。自分ならどんな検査をするか考えつつ、次問をどうぞ。【問題】血液検査では、WBC:11,980/μL、CRP

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初期および慢性期の統合失調症を識別するマーカー

 初期および慢性期の統合失調症を識別する精神病理、認知機能、機能面、身体的健康、炎症マーカーを特定するため、スペイン・オビエド大学のL. Garcia-Alvarez氏らが検討を行った。The World Journal of Biological Psychiatry誌オンライン版2018年10月8日号の報告。 本研究は、統合失調症患者104例を対象とした横断的・自然主義的研究。対象患者は、罹病期間7年以下の初期統合失調症(ESSCH)群35例と罹病期間が10年超の慢性期統合失調症(LSSCH)群69例に分けられた。統計分析では、年齢、性別、BMI、1日当たりの喫煙本数でコントロールし、カイ二乗検定、スチューデントのt検定、ANCOVAまたはクェード検定を行った。最後に、二項ロジスティック回帰を実施した。 主な結果は以下のとおり。・ESSCH群は、より重症な陰性症状(t=2.465、p=0.015)、低IκBαレベル(F=7.644、p=0.007)が認められ、LSSCH群と比較し、正常体重の割合が高かった(40% vs.18.8%、p=0.032)。・二項ロジスティック回帰では、両群間の年齢(B=0.127、p=0.001)、IκBα(B=0.025、p=0.002)において差が認められ、分散の38.9%を占めていた(model df:7、カイ二乗:41.841、p<0.0001)。 著者らは「年齢およびIκBαは、ESSCHとLSSCHを識別する特異なマーカーである。これらの結果は、エピソードの有害性の仮説を支持しており、新規エピソード予防の重要性を強調するものだ」としている。■関連記事統合失調症患者の性格で予後を予測統合失調症の発症は予測できるか、ポイントは下垂体:富山大学統合失調症の新たなバイオマーカー:順天堂大学

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アジア人でより有効、進行肺がんへのプラチナ+ペメトレキセド+アテゾリズマブ(IMpower132)/ESMO 2018

 Stage IV非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)1次治療におけるペメトレキセドとプラチナ製剤の併用療法、およびペメトレキセドによる維持療法へのPD-L1阻害薬アテゾリズマブの上乗せ効果を検討した第III相IMpower132試験では、アテゾリズマブ併用群で無増悪生存期間(PFS)を有意に延長したことがすでに発表されている(5.2ヵ月 vs.7.6ヵ月、ハザード比[HR]:0.60、95%信頼区間[CI]:0.49~0.72、p<0.0001)。ドイツ・ミュンヘンで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO2018)では、本試験のサブグループ解析結果が、フランス・エクス=マルセイユ大学のFabrice Barlesi氏により発表された。IMpower132試験を年齢・人種・喫煙歴・肝転移の有無でサブグループ解析 IMpower132試験は、化学療法未治療の進行非扁平上皮NSCLC患者(EGFR/ALK陰性)を対象とし、カルボプラチンまたはシスプラチンとペメトレキセド併用→ペメトレキセド維持療法群(PP群)と、カルボプラチンまたはシスプラチンとペメトレキセド併用+アテゾリズマブ→ペメトレキセド+アテゾリズマブ維持療法群(APP群)を比較したオープンラベル多施設共同無作為化第III相試験。 今回のIMpower132試験のサブグループ解析では、年齢(<65歳/≧65歳)、人種(アジア人/非アジア人)、喫煙歴(非喫煙者/現在あるいは過去の喫煙者)、およびベースライン時点での肝転移の有無の4項目についてPFSおよび中間解析時点での全生存期間(OS)が評価された。 IMpower132試験のサブグループ解析の主な結果は以下のとおり。・データカットオフ(2018年5月22日)時点で、追跡期間中央値は14.8ヵ月であった。・年齢別(PFS中央値)<65歳(PP群167例 vs.APP群153例):4.4ヵ月 vs.6.9ヵ月(HR:0.63、95%CI:0.49~0.80)≧65歳(PP群119例 vs.APP群139例):5.6ヵ月 vs.8.4ヵ月(HR:0.55、95%CI:0.42~0.73)。・年齢別(OS中央値)<65歳:14.2ヵ月 vs.18.8ヵ月(HR:0.89、95%CI:0.62~1.21)。≧65歳:12.8ヵ月 vs.18.1ヵ月(HR:0.71、95%CI:0.50~1.01)。・人種別(PFS中央値)アジア人(PP群65例 vs.APP群71例):5.3ヵ月 vs.10.2ヵ月(HR:0.42、95%CI:0.028~0.63)。非アジア人(PP群221例 vs. APP群221例):5.0ヵ月 vs.6.9ヵ月(HR:0.65、95%CI:0.53~0.81)。・人種別(OS中央値)アジア人:NE vs.NE(HR:0.68、95%CI:0.37~1.24)。非アジア人:11.0ヵ月 vs.13.0ヵ月(HR:0.82、95%CI:0.64~1.06)。・喫煙歴別(PFS中央値)非喫煙者(PP群30例 vs.APP群37例):5.5ヵ月 vs.8.6ヵ月(HR:0.49、95%CI:0.28~0.87)。現在・あるいは過去の喫煙者(PP群256例 vs.APP群255例):5.1ヵ月 vs.7.5ヵ月(HR:0.61、95%CI:0.50~0.74)。・喫煙歴別(OS中央値)非喫煙者:13.3ヵ月 vs.18.1ヵ月(HR:0.65、95%CI:0.32~1.30)。現在・あるいは過去の喫煙者:13.6ヵ月 vs.18.8ヵ月(HR:0.83、95%CI:0.65~1.06)。・肝転移有無(PFS中央値)肝転移有(PP群36例 vs.APP群37例):4.0ヵ月 vs.4.4ヵ月(HR:0.77、95%CI:0.47~1.25)。肝転移無(PP群250例 vs.APP群255例):5.5ヵ月 vs.8.4ヵ月(HR:0.56、95%CI:0.46~0.69)。・肝転移有無(OS中央値)肝転移有:6.9ヵ月 vs.10.1ヵ月(HR:0.99、95%CI:0.57~1.70)。肝転移無:14.2ヵ月 vs.19.9ヵ月(HR:0.76、95%CI:0.59~0.98)。※医師限定ASCO2018最新情報ピックアップDoctors’ Picksはこちら

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COPD増悪予防、ICSへのテオフィリン追加に効果なし/JAMA

 増悪リスクが高いCOPD成人患者において、吸入ステロイド薬(ICS)による治療に低用量のテオフィリン薬を加えても、増悪頻度は減少しないことが、英国・アバディーン大学のGraham Devereux氏らによるプラグマティックな二重盲検プラセボ対照無作為化試験「TWICS試験」の結果、示された。COPDは世界的に重大な健康問題となっている。テオフィリン薬の使用は広く行われており、前臨床試験では、血漿中テオフィリンの低濃度(1~5mg/L)により、COPDにおけるコルチコステロイドの抗炎症効果を増強することが示されていた。今回の試験の結果を受けて著者は、「COPD増悪の予防について、ICS治療への補助療法としての低用量テオフィリン使用は、支持できないことが示された」と述べている。JAMA誌2018年10月16日号掲載の報告。ICS+低用量テオフィリンまたはプラセボを投与し1年間追跡 TWICS(theophylline with inhaled corticosteroids)試験は、COPDにおけるICS+低用量テオフィリンの有効性を検討した試験。2014年2月6日~2016年8月31日に、英国内の121の診療所および2次医療機関から、FEV1/FVC比0.7未満、前年に少なくとも2回の増悪を経験しており(抗菌薬、経口コルチコステロイド、もしくは両薬で治療)、ICSを使用しているCOPD患者を登録して行われた(最終フォローアップは2017年8月31日)。 被験者は無作為に、低用量テオフィリン(200mgを1日1または2回、血漿中濃度が1~5mg/L[標準体重と喫煙状態で確定]となるよう調整)、またはプラセボの追加投与を受ける群に割り付けられ追跡評価を受けた。主要評価項目は、1年間の治療期間中に発生した中等度~重度増悪(抗菌薬、経口コルチコステロイド、もしくは両薬で治療)の回数であった。年間の増悪発生平均回数は併用群2.24回、プラセボ群2.23回 1,578例が無作為化を受け(テオフィリン群791例、プラセボ群787例)、解析には1,567例(788例、779例)が包含された(平均年齢68.4歳[SD 8.4]、男性54%)。 主要評価項目(増悪発生)の解析には、データが入手できた1,536例(98%、772例、764例)が包含された。同集団における増悪の発生は、全体では3,430件で、テオフィリン群は1,727件(平均2.24回/年[95%信頼区間[CI]:2.10~2.38])、プラセボ群は1,703件(平均2.23回/年[95%CI:2.09~2.37])であった(補正前平均差:0.01[95%CI:-0.19~0.21]、補正後発生率比:0.99[95%CI:0.91~1.08])。 重篤な有害事象(例:心臓系[テオフィリン群2.4% vs.プラセボ群3.4%]、消化管系[2.7% vs.1.3%])、および有害反応(例:悪心[10.9% vs.7.9%]、頭痛[9.0% vs.7.9%])について両群間で有意な差はなかった。■「COPD増悪」関連記事COPD増悪抑制、3剤併用と2剤併用を比較/Lancet

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AIが3年後の糖尿病発症リスクを予測

 わが国では、糖尿病が強く疑われる人が約1,000万人、糖尿病の可能性を否定できない人が約1,000万人と推計されている。糖尿病は、網膜症、腎症、神経障害の3大合併症に加えて、心血管疾患、がん、認知症などのさまざまな疾患のリスクを高めることが知られており、健康寿命を延伸するため、糖尿病の予防対策は国民的な課題となっている。 こうした情勢をうけ、国立研究開発法人 国立国際医療研究センタ-(理事長:國土 典宏、以下「NCGM」と略す)は、自分の健康診断の結果を入力することで糖尿病発症のリスクを予測するツ-ル「糖尿病リスク予測ツ-ル」を、株式会社教育ソフトウェアと共同開発し、10月24日よりNCGMのホ-ムペ-ジで公開した。※26日10時現在、上記ページ(糖尿病情報センターの「糖尿病リスク予測ツール」)が閲覧できなくなっています。3万例のデータで予測する糖尿病発症のリスク 本予測ツ-ルは、利用者の3年後の糖尿病発症のリスクを予測するもので、職域多施設研究(J-ECOHスタディ)で収集した3万例の健康診断デ-タに基づき、機械学習手法(人工知能)により開発された。 対象者の体重、血圧、喫煙習慣などの基本項目(非侵襲的デ-タ)のみによる予測と、さらに空腹時血糖やHbA1cなどの血液デ-タを追加することで精度の高い予測の2通りから選択できる。また、デ-タを入力することで、3年後の糖尿病発症リスクとともに、同性・同年代の中での相対的な比較をグラフ上に示すこともできる。 なお、本ツ-ルは、糖尿病と診断されたことのない30~59歳の人が対象となる。■参考NCGM糖尿病情報センタ-■関連記事糖尿病診療コレクション

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喫煙が橈骨動脈増幅係数と関連~わが国の横断研究

 わが国の地域住民を対象としたCIRCS研究(Circulatory Risk in Communities Study)により、大量喫煙男性と女性において喫煙および累積喫煙曝露量が、橈骨動脈増幅係数の増加と正相関を示すことが報告された。橈骨動脈増幅係数は機能的動脈硬化の指標となる。Hypertension Research誌オンライン版2018年10月17日号に掲載。 本研究は、わが国の40~79歳の男性1,593人および女性2,671人を対象とした横断的な集団ベースの研究。喫煙状況はインタビューで確認し、pack-yearを算出した。橈骨動脈増幅係数は、自動血圧計(HEM-9000AI、オムロンヘルスケア社)を用いて測定した中心脈圧と上腕脈圧の比とした。 主な結果は以下のとおり。・男性で30本/日以上喫煙する現在喫煙者および女性の喫煙者では、非喫煙者よりも橈骨動脈増幅係数が高い人の割合が高かった。・既知のアテローム性動脈硬化リスク因子を調整後、非喫煙者と比べた、30本/日以上喫煙する男性における高い橈骨動脈増幅係数の多変量オッズ比(OR)(95%信頼区間[CI])は1.9(1.1~3.4)であった。・女性において、非喫煙者と比べた過去喫煙者および現在喫煙者における高い橈骨動脈増幅係数の多変量OR(95%CI)は、それぞれ1.8(1.2~2.7)および2.5(1.6~3.9)であった。・喫煙pack-yearは男女とも高い橈骨動脈増幅係数と正の相関があった。・男女とも、喫煙状況と高い中心脈圧または上腕脈圧との関連はなかった。

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尿酸値上昇、食事の影響はわずか/BMJ

 一般集団において血清尿酸値の変化は、遺伝的寄与とは対照的に食事の寄与はわずかであることが明らかにされた。ニュージーランド・オタゴ大学のTanya J. Major氏らによる住民ベースコホート研究のメタ解析の結果で、BMJ誌2018年10月10日号で発表された。血清尿酸値は、遺伝的暴露と特定の食品などを含む環境的曝露による影響を受けることが知られている。血清尿酸値と食事内容の関係を統計的に検証 研究グループは、血清尿酸値と食事内容の関係を統計的に検証し、血清尿酸値の集団における変動に対する食事パターンおよび遺伝的変異の相対的な推定寄与を評価した。検討には、米国の断面調査データ(5つのコホート試験)を用いてメタ解析を行った。 解析に包含されたのは、ヨーロッパ系米国人1万6,760例(男性8,414例、女性8,346例)。腎疾患や痛風を有しておらず、尿酸降下薬や利尿薬を服用していない18歳以上を適格とした。全被験者は、血清尿酸測定値、食事調査データ、交絡因子情報(性別、年齢、BMI、平均1日摂取カロリー、教育を受けた年数、運動レベル、喫煙状態、更年期の状態)、ゲノムワイド遺伝子型の情報を有していた。 主要評価項目は、平均血清尿酸値と血清尿酸値の変動で、多変量線形回帰分析からのβ値(95%信頼区間[CI])とボンフェローニ補正p値を、各回帰分析で求めた食品が寄与する部分的R2値とともに用いて、関連性を定量化した。食事は尿酸値上昇と関連するが、影響はわずか 7つの食品(ビール、リキュール、ワイン、ジャガイモ、鶏、清涼飲料水、肉[牛、豚、ラム])が、血清尿酸値上昇と関連していた。一方、8つの食品(卵、ピーナッツ、コールドシリアル、スキムミルク、チーズ、ブラウンブレッド、マーガリン、非柑橘系果物)が、血清尿酸値低下と関連していた。これらは、男性コホート、女性コホートあるいは全コホートにおいて認められた。 健康的な食事ガイドラインに基づいて構築された3つの食事スコア(DASH、Mediterranean、Healthy Eating)は血清尿酸値と逆の相関関係を示し、使用したデータセットの食事パターンに基づくデータドリブンスコアは、血清尿酸値の上昇と正の関連を示したが、いずれも血清尿酸値の変動は0.3%以下であった。対照的に、一般的にみられたゲノムワイド一塩基変異による血清尿酸値の変動は、23.9%であった。

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第5回 心電図、正しくとれてる?(前編)~鏡の中のマボロシ~【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】

第5回:心電図、正しくとれてる?(前編)~鏡の中のマボロシ~私たちは心電図の波形を目で見て診断・解釈し、医療行動を施します。でも、もしも不適切な方法で心電図が記録されていたら…患者さんの治療にも影響しかねない一大事です。その見抜き方をDr.ヒロがレクチャーします。症例提示48歳。女性。昨晩からの心窩部痛にて救急受診。以前より血圧高値を指摘されるも受診せず。間欠的に“さしこむような”痛みがあり、発作時には冷汗を伴う。何度か嘔吐もした。労作時症状はなし。昼過ぎに市販の制酸剤を服用したが改善しないため、夕刻に受診、来院時に心電図検査を行った(図1)。喫煙:20-30本/日(18歳~:現在も喫煙中)家族歴:冠動脈バイパス術(父親)身長156cm、体重105kg。体温36.9℃、血圧154/95mmHg、脈拍62/分。(図1)来院時心電図画像を拡大する【問題】心電図所見として正しいものを2つ選べ。1)洞(性)不整脈2)左房調律3)電極の左右つけ間違い(上肢)4)電極の左右つけ間違い(下肢)5)右胸心解答はこちら1)、3)解説はこちら“お決まり”ですが、1問目は心電図の読み方を問います。“型”の通りに読めるようになっていますか?(第1回参照)1)○:R-R間隔どうですか?一見すると整のようですが、よーく見ると不整でしょ。“最短”と“最長”で3目盛り(0.12秒)*以上差がある洞調律を「洞(性)不整脈」と診断します。胸部誘導3~4拍と4~5拍ではR-R間隔の差が4目盛り以上ありそうなので該当しますね。(*:0.16秒以上とする本もあり、その場合は「4目盛り」となる)。2)×:イチニエフ法(第2回参照)を適用しようとすると…アレッ? I誘導から陰性(下向き)でII誘導もなんとも変なカタチ…ということは、「異所性心房調律」?そう思えたアナタは素晴らしい!たしかに、この「左房調律」も代表的な異所性心房調律でI誘導が陰性のことが多いです(正式にはV6誘導の陰性Pをもって定義されます)。ただ、QRS波形の変化は説明不能ですから、これは不適です。3)○:I誘導のP-QRS-Tが“すべて下向き(陰性)”を見たとき、最も頻度が高いのは「左右の上肢電極のつけ間違い」です。aVR誘導が陽性QRS波なのもオカシイですよね。次回、詳しく解説します。4)×:下肢電極(黒・緑)を左右逆にしても、実は心電図波形はほとんど変わりません。黒色はアース電極で、緑色が左右どちらの足でも電極間の引き算という観点では同じなのです。5)×:右手・左手の電極つけ違い(選択肢3)の心電図との鑑別時に問題となる右胸心。肢誘導だけでなく、胸部誘導のR波増高プロセスも異常となりますが、今回はほぼ正常なので、該当しません。“電極つけ間違いのカラクリを理解する”皆さんは自分で心電図を記録することがありますか?研修医の時以来してないな…なんて人もいるかもしれませんね。医師の多くはナースや検査技師さんなどのコメディカルがとってくれた心電図を見るわけですが、「もしかして正しくとれてない?」と、考えたことはありませんか?何の根拠もなく人を疑うべきではありませんが(チーム医療が崩壊してしまいますよね…)、現実には、心電図の記録ミスは頻繁に起きているんです。なかでも今回取り上げる上肢電極(右手・左手)のつけ間違いが代表的です。つまり、右手に黄電極、左手に赤電極をつけてしまうミスです。自分で正しく記録するのは当然ですが、他人の記録ミスにも気づける能力が、デキる医師には大切だと思います。解説でも述べましたが、右足(黒)、左足(緑)を逆につけても波形にはほとんど無影響です。頻度的には手も足も同じくらい間違われているはずですが、波形の解釈が問題となるのは上肢の方。これがなぜなのか説明していきましょう。今回の症例で、電極を正しく貼って記録した心電図を示します(図2)。何のことはない、イチニエフ法と検脈法(第3回参照)を用いて心拍数60/分の正常洞調律と診断、ST変化もありません。(図2)正しく記録した心電図画像を拡大する図1と比較してもわかるように、手足の電極をつけ間違えた場合、当然ながら影響が出るのは肢誘導のみで、胸部誘導は変わりません。ここで、実際の波形を表にし、4つの特徴をまとめました(図3)。(図3)上肢の左右電極つけ間違いと正常の比較画像を拡大する左右電極つけ間違い(右手⇔左手ミス)による心電図の特徴(1)Iが上下逆さま(P-QRS-Tすべてが陰性となるのが典型的)(2)aVRとaVLが入れ換わり(3)IIとIIIが入れ換わり(4)aVFは(ほぼ)不変もちろん、“なんでこうなの?”と、思う人がいるでしょう。右手と左手の電極を逆につけた場合、“肢誘導の世界”でも左右が逆転します。実は、これさえ理解できれば、わざわざ4つの特徴を覚える必要はありません。“肢誘導の世界”とは、I、II、IIIとaVR、aVL、aVFの計6個の電極が乗っている断面のことで、前額断(“おでこに平行”という意味)ないし冠状断と呼ばれます。図示すると、どこかで一度は目にしたことがあろう「円座標システム」となります(図4)。中心に心臓があるイメージです。(図4)肢誘導システム(前額断[冠状断])杉山 裕章. 心電図のみかた、考えかた[基礎編]. 中外医学社;2013.p.171.を改変画像を拡大する真ん中の±90゜の正中線をはさんで、IIとIII、そしてaVRとaVLとが左右対称の位置関係であることがわかりますか?IとaVF以外は、鏡に映したような心電図になってしまうのです。「aVFは不変」というのは、まさに正中線上なので、ひっくり返しようがない(笑)。残るI誘導は心臓から見て真左、角度では「0°」なんですが、左右反転したら「180°(-I誘導)」となるので、刺激興奮をまったく逆の右方向から眺めることになり、心電図波形としては極性、すなわち“上下”が逆となります。フムフム。手電極の左右を間違えると波形がどうなるかはわかったけど、実際にはどうやって見抜けばいいのでしょう?ハイどうぞ、と言わんばかりの試験問題なら簡単かもしれませんが、現実には正常波形を横に準備してくれているわけでないので、ピンッとくる感覚、そんなアンテナのような“気づき”が大事だと思います。“秘伝”というほどのシロモノではないですが、独自のアイディアも交えて皆さんと共有したいと思います。今回は最もスタンダードな点から。まず一つ目。ボクが左右電極のつけ間違いを疑う際に重要と考えるI誘導。I誘導では、正常ならP波もQRS波もT波もすべて上向き(陽性)です。「右軸偏位」ならQRS波は下を向きますが、P波までが陰性になることはありません。もちろん、異所性心房調律にはイチゴロク(I、V5、V6)が陰性Pを呈する「左房調律」もありますし、心房細動のようにP波が存在しないこともあります。ただ、この陰性P±陰性QRS・TがI誘導で一緒に見られる時、とにかくボクは「右手⇔左手ミス」を一番に考え、過去の心電図と比較するようにしています。選択肢にも入れた右胸心ほか、いくつかの鑑別は必要ですが、電極のつけ間違いだけは、こちらが疑わない限り絶対に診断できないのです。なお、後半に述べた“座標”だ“角度”だといった話は、QRS電気軸のところでも登場します。やけに“数学的”で難しくてとても覚えられないという人! 大丈夫。考え方さえ分かれば十分ですよ。今回はここまで。次回は同じ症例で残りのDr.ヒロ流“気づき”ポイントなどを紹介するので、お楽しみに!Take-home Message1)肢誘導電極(右手・左手)のつけ違いを見抜けるようになろう!2)つけ間違いに気づくには、まずI誘導に注目せよ【古都のこと~岩清水八幡宮~】7月の最終土曜、折しも夜半より大型台風が上陸するとされた日、なぜか夕方に愛車を飛ばして八幡市の男山へ。天王山に対峙する国家鎮護の社、国宝でもある岩清水八幡宮をお参りしました。竹の森林浴を楽しんでから、本殿に向かうと、強くなりつつある風が神紋を揺らしていました。門から御社が見えた時、境内には、なんと自分一人のみ。並々ならぬ御加護を頂戴し、帰路を急いだのでした。

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日本人統合失調症患者の喫煙率に関する大規模コホートメタ解析

 統合失調症患者の喫煙は、世界的に一般集団と比較してより多くみられるが、日本での研究結果では矛盾が生じていた。最近では、一般集団の喫煙率は徐々に低下している。金沢医科大学の大井 一高氏らは、日本人の統合失調症患者を対象に、喫煙率の大規模コホートメタ解析を行った。The International Journal of Neuropsychopharmacology誌オンライン版2018年9月17日号の報告。 対象は、喫煙状況に関する日本の大規模コホートメタ解析より、統合失調症患者1,845例および一般集団19万6,845例、25年に及ぶ12件の研究より、統合失調症患者842例および精神医学的に健康な対照者766例(著者らの研究による、統合失調症患者301例および対照者131例を含む)。 主な結果は以下のとおり。・著者らのケースコントロールサンプルでは、統合失調症患者において、健康な対照者よりも有意に高い喫煙率が認められた(p=0.031)。・統合失調症患者のヘビースモーカーの割合(p=0.027)および1日の喫煙本数(p=0.0082)は、健康な対照者よりも有意に高かった。・統合失調症の喫煙者において、非定型抗精神病薬の投与量と1日の喫煙本数との間に正の相関が認められた(p=0.001)。・メタ解析では、統合失調症患者は男性(OR:1.53、p=0.035、統合失調症患者:52.9%、一般集団:40.1%)、女性(OR:2.40、p=0.0000108、統合失調症患者:24.4%、一般集団:11.8%)の両方において、一般集団よりも高い喫煙率が認められた。・男性の統合失調症患者は、男性の健康な対照者よりも高い喫煙率が認められたが(OR:2.84、p=0.00948、統合失調症患者:53.6%、健康な対照者:32.9%)、女性では統計学的に有意な差は認められなかった(OR:1.36、p=0.53、統合失調症患者:17.0%、健康な対照者:14.1%)。・男女両方において、統合失調症患者は、一般集団(OR:1.88、p=0.000026)および健康な対照者(OR:2.05、p=0.018)よりも高い喫煙率が認められた。・これらの割合は、患者が登録された年に影響を受けなかった(p>0.05)。・1日当たりの喫煙値は、統合失調症患者22.0、一般集団18.8であった。 著者らは「日本における10年以上のデータに基づくと、日本人の統合失調症患者は、一般集団および健康な対照者よりも、喫煙する可能性が約2倍高いことが示唆された」としている。■関連記事統合失調症患者は、なぜ過度に喫煙するのか統合失調症患者とタバコ、どのような影響を及ぼすのか?統合失調症発症予測に喫煙が関連

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紙巻きタバコのニコチン含量の即時低減は段階的低減や現状維持に比べ減煙達成率は高いが、その一方で禁煙率の改善につながるか不明?(解説:島田俊夫氏)-928

 紙巻きタバコの喫煙習慣が健康にとって有害なのは周知されている。しかし、多くの喫煙者が禁煙できないのも現実。タバコには習慣性があり、自力で禁煙に苦しむニコチン中毒患者を禁煙させるのは簡単ではない。喫煙による多種多様の有害物の長期吸入による影響が動脈硬化やがんの発生につながるため、禁煙達成こそゴールとなる。禁煙指導の推進の結果として、日本の喫煙者率は減少傾向にあるのは事実であるが、本来の目標を達成するためには喫煙ゼロを目指すべき。ニコチン含量を減らした紙巻きタバコを使った禁煙/減煙に関する論文1)は散見されるが、2018年9月4日号のJAMA誌に掲載された米国ミネソタ大学のHatsukami DK氏らの論文は、研究対象も多く、追跡期間も相対的に長く、困難な禁煙に風穴を開ける減煙成功率の高い方法に関する報告であり、禁煙に難渋している喫煙者にとり禁煙への扉を開く可能性を秘めた論文と考え私見をコメントする。研究の概略 研究グループは30日以内に禁煙する意思を持たず毎日喫煙している対象を2014年7月~2016年6月の期間に登録し、2週間のベースライン喫煙と20週間の介入を行い、2017年3月の最終フォローアップをもって研究完了とした。 米国内10ヵ所で喫煙者1,250名を禁煙手段により2重盲検無作為並行比較試験を即時減煙(紙巻タバコのニコチン含量を0.4mg/gまで即時減量)、段階的減煙(5ヵ月かけニコチン含量/gを15.5mgから0.4mgに減量)、現状維持(15.5mg/gを維持)の3群に割付した。 主評価項目・測定値:呼気一酸化炭素(CO)、尿中3-HPMA(アクロレイン代謝物)、尿中PheT(多環芳香族炭化水素)の煙媒毒性暴露バイオマーカー値を20週にわたり介入期間中に測定し濃度時間曲線下面積を算出した。 結果:1,250名の参加者(平均年齢:45歳、549名女性[44%]、958名[77%]試験完了)の中で、即時ニコチン減量群と段階的ニコチン減量群間の比較においてCO(平均差:-4.06ppm[95%CI:-4.89~-3.23]、p<0.0055)、3-HPMA(幾何平均比:0.83[95%CI:0.77~0.88]、p<0.0055、pheT(幾何平均比:0.88[95%CI:0.83~0.93]、p<0.0055)のすべてで、即時ニコチン減量群に有意な低レベル暴露が肯定された。即時ニコチン減量群と対照群間でも同様の比較を行い、すべてのバイオマーカーで同様の結果を得た。段階的減量群と維持群間での比較では、すべてのバイオマーカーに有意差はなかった。筆者コメント 3種のバイオマーカーの測定に基づく喫煙暴露の結果から、減煙治療による紙巻きタバコのニコチン即時低減は、段階的低減や現状維持に比べてニコチン低下が顕著で、しかも段階的低減、現状維持の間で有意差を認めなかったため、即時低減法が優れた減煙手段であり、積極的に取り入れることで減煙成功に導くことを示した意義は大きい。しかしながら、最も重要な禁煙達成率に関する情報の欠落は大きな弱点である。喫煙者へのメッセージとして“タバコは百害あって一利なし”を念頭に置くならば、本来減煙ではなく禁煙を達成しなければ目的を達成できたとは言い難い。この減煙法は、極低ニコチン含有紙巻きタバコへの即時切り替えが、確実に減煙成功への近道であることを確認した点は評価するが、減煙は禁煙への途上であり、ゴールはあくまで禁煙である。この方法が、禁煙率の改善に確実につながる成果を示すことが必要である。ニコチンはタバコの原因と捉えるのでなく、あくまで喫煙評価のメルクマールであり、紙巻タバコに含まれる幾多の有害物資を断ち切るためには禁煙が必要であることは言うまでもない。この論文は禁煙のステップとしての減煙成功率を高めることが禁煙につながる可能性を示した意味での価値は大きいが、禁煙率改善の証拠が必要である。

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急性心筋梗塞、発症後早期のウエアラブル除細動器の効果/NEJM

 心筋梗塞(MI)を発症してから間もない駆出分画率35%以下の患者において、着用型自動除細動器(wearable cardioverter-defibrillator:WCD)の使用は、非使用者と比較して主要評価項目の90日時点の不整脈死リスクは有意に低下しなかった。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のJeffrey E. Olgin氏らが、2,302例の患者を対象に行った無作為化比較試験の結果で、NEJM誌2018年9月27日号で発表した。駆出分画率が低下したMI後の患者において突然死は高率に認められるが、植込み型除細動器は、発症後40~90日間は禁忌とされている。研究グループは、このハイリスク期間中の突然死発生をWCDが低減するのか検討した。ガイドライン推奨治療のみ、ガイドライン推奨治療+着用型自動除細動器を比較 研究グループは2008年7月~2017年4月に、米国(76地点)、ポーランド(24)、ドイツ(6)、ハンガリー(2)で、急性MIを発症し、駆出分画率が35%以下の患者2,302例を登録・包含した。退院7日後に無作為に2対1の割合で2群に分け、一方にはWCD+ガイドライン推奨治療を(デバイス群、1,524例)、もう一方にはガイドライン推奨治療のみを行った(対照群、778例)。 主要評価項目は、90日時点の突然死または心室頻脈性不整脈による死亡(不整脈死)とした。副次評価項目は、全死因死亡、非不整脈死などだった。不整脈死発生率、デバイス群1.6%、対照群2.4%で有意差なし 被験者の平均年齢はデバイス群60.9±12.6歳、対照群61.4±12.3歳、男性の割合はそれぞれ72.8%、74.7%、直近の入院前の喫煙者36.9%、35.5%だった。被験者全体において、平均駆出分画率は28%、83.6%が指標入院中に経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けていた。 平均フォローアップ期間は84.3±15.6日。デバイス群10例、対照群12例が追跡不能となり、90日時点のバイタル状況が不明だった。 デバイス群のWCD装着時間中央値は、1日当たり18.0時間(四分位範囲:3.8~22.7)だった。 不整脈死の発生率は、デバイス群1.6%、対照群2.4%だった(相対リスク[RR]:0.67、95%信頼区間[CI]:0.37~1.21、p=0.18)。 全死因死亡の発生率は、デバイス群3.1%、対照群4.9%だった(同:0.64、0.43~0.98、補正前p=0.04)。非不整脈死の発生率はそれぞれ1.4%、2.2%だった(同:0.63、0.33~1.19、補正前p=0.15)。 デバイス群で死亡した48例のうち、死亡時にデバイスを装着していたのは12例だった。また、デバイス群で適切な電気ショックを受けたのは20例(1.3%)、不適切な電気ショックを受けたのは9例(0.6%)だった。

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心血管病の証拠のない2型糖尿病患者への予防的ω-3多価不飽和脂肪酸の投与効果は期待はずれか(ω-3PUFA効果は夢か幻か?)(解説:島田俊夫氏)-926

 多価不飽和脂肪酸(PUFA)が心血管病に良い影響を与えるということが巷でささやかれており、サプリメントも広く普及している。PUFAにまつわる話はグリーランドのイヌイット(エスキモー)に心血管病が少ないことに着目した研究に端を発している1)。この研究以降、精力的に研究が行われてきたが、PUFAサプリメントの投与と心血管病の予防・治療への有効性は、いまだ確立されていない。とくに1次予防に関しては、悲観的な結果が優勢であるがわが国の大規模研究JELIS2)は、高コレステロール血症に対してスタチン投与中の集団を無作為にEPA(1,880mg/day)、プラセボに割り付けることにより、主冠動脈イベント発症率は19%有意に低下した。2次予防サブ解析では累積冠動脈イベントが23%低下した。脳卒中に関しては1次予防効果は認めず、2次予防効果において20%の抑制効果が認められた。しかし、この研究がprobe法を用いた研究であったことが信憑性に疑念を抱かせる結果となっている。 NEJM誌オンライン版の2018年8月26日号に掲載された英国・オックスフォード大学のLouise Bowman氏らの論文は、PUFAの予防投与における有用性に疑問を投じる貴重な報告と考え、私見を述べる。研究の概略 観察研究では、ω-3PUFAの摂取増加は心血管病リスク低下に関係している。 ところがこれらの所見は、ランダム化試験においていまだ是認されていない。ω-3PUFAサプリメントが糖尿病患者の心血管リスクに便益をもたらすか、いまだ解決されていない。 明らかな動脈硬化性疾患の証拠を持たない糖尿病患者1万5,480例を、ω-3PUFA1gカプセル服用群(PUFA群)、オリーブオイル服用群(プラセボ群)のいずれかの群に無作為に割り付けを行った。1次アウトカムは、初回の重篤な血管イベントとした(つまり、確定した脳内出血を除いた非致死的心筋梗塞、脳卒中、一過性脳虚血発作または血管死)。 7.4年のフォローアップ期間中(アドヒアランス:76%)、重篤な血管イベントが脂肪酸群で689例(8.9%)、プラセボ群で712例(9.2%)に発生した(率比:0.97、95%CI:0.87~1.08、p=0.55)。重篤な血管イベントあるいは血管再建複合アウトカムは、それぞれ882例(11.4%)、887例(11.5%)に起こった(率比:1.00、95%CI:0.91~1.09)。全死因死亡は脂肪酸群で752例(9.7%)、プラセボ群で788例(10.2%)に起こった(率比:0.95、95%CI:0.86~1.05)。非致死的重篤有害イベント率に関しては有意差を認めなかった。筆者コメント 結論として、心血管病の証拠のない糖尿病患者は、ω-3PUFAサプリメント群、プラセボ群に無作為に割り付けられた2群間比較で、重篤な心血管イベントリスクに有意差を認めなかった。本論文のメッセージは、心血管病予防にこれまで期待の大きかったPUFAサプリメントの1次予防への投与が無作為に割り付けられた糖尿病患者で、かつ明らかな心血管疾患の証拠のない患者の2群間(ω-3PUFAサプリメント群とプラセボ群)比較で有意差を認めなかった事実から、PUFAの予防投与は思いの外、糖尿病患者の心血管病予防への期待を裏切る結果となった。高コレステロール血症治療中の患者を対象とした研究、2型糖尿病治療群を対象とした本研究での結果の乖離が、単なる対象疾患の差にもとづくものか慎重な判断が必要である。1次予防に関する研究は追跡期間、人口構成らが大いに結果に影響し、至適追跡期間が不適切であれば検出力不足のために陰性になる恐れもあり、本研究の平均追跡期間7.4年が1次予防効果を評価するに十分であったか多少の疑問が残る。これまでの多くのエビデンスを考えると多価不飽和脂肪酸サプリメントへの過大な期待に対する警鐘と理解するのが、現段階では妥当な解釈かと考えている。効果を否定するのは早計と考える。

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禁煙に伴う体重増加は糖尿病の短期リスクを増やすも心血管病死・全病因死亡に影響なし!(解説:島田俊夫氏)-925

 紙巻きタバコが体に悪いことは昔からよく知られているけれど、耳を傾けようとしない無関心な方々が数多く見受けられます。もちろんタバコは本人にとって有害であるだけでなく、身辺にいる家族を含め、被害を被る人たちが多数いることを顧みて一日も早く禁煙することを勧めます。“タバコは万病の元”という言葉は、本当にタバコの持つ有害性を端的に表しています。私は患者さんに診療時、“タバコは百害あって一利なし”という言葉を使い、説明させてもらっています。多くの方は耳を傾けてくれますが、残念ながらタバコの真の怖さを十分に理解してもらえていないと感じています。「タバコはお金もかかり、あらゆる病気にかかりやすく、タバコに火をつけて燃やせば燃やすほど、あなたの命のロウソク(ロウソク寿命)を短くする貧乏神のようなものです」と話すと、「タバコを吸うとストレスが緩和できる」といった得手勝手なこじつけの類の言い訳が時折返ってきます。これまで禁煙と体重増加を取り上げた論文1)は散見されますが、禁煙に伴う体重増加を心血管死亡、全病因死亡に関連付けた信憑性の高い研究はほとんどありません。 2018年8月16日号のNEJM誌に掲載された、米国・ハーバード大学公衆衛生大学院のYang Hu氏らが、米国の3つのコホート研究(NHS、NHS II、HPFS)のデータを利用・解析し、禁煙に伴う体重増加が心血管死や全病因死亡への禁煙のメリットを損なわず、ただ2型糖尿病の短期リスクを増やすことに関係していると報告した論文は、禁煙に伴う喫煙者の体重増加への不安や弁解を払拭する重要な論文であり、私見をコメントします。研究の要約 米国の3コホート研究参加者の中で禁煙を自己申告した男女参加者を同定し、喫煙状況、体重変化を前向きに評価した。禁煙を自己申告した参加者中、禁煙後の体重増加の程度に基づいて、2型糖尿病リスク、心血管病死、全病因死亡を評価した。 2型糖尿病リスクは、最近禁煙者(禁煙後2〜6年)では現在喫煙者よりも高かった(HR:1.22、95%CI:1.12~1.32)。糖尿病リスクのピークは禁煙後5~7年にあり、その後次第に低下した。糖尿病リスクの一時的増加は体重の増加に比例して増加したが、体重増加のない禁煙者ではリスク増加は認めなかった(相互作用のp<0.001)。逆に、禁煙後の体重増加と無関係に、禁煙者死亡率の増加はみられなかった。現在喫煙者と比較して、体重増加のない禁煙者では心血管病死に対するHRは0.69(95%CI:0.54~0.88)、0.1~5.0kg体重増加した禁煙者ではHRは0.47(95%CI:0.35~0.63)、5.1~10.0kg体重増加した禁煙者ではHRは0.25(95%CI:0.15~0.42)、体重増加が10kg以上の禁煙者ではHR 0.33(95%CI:0.18~0.60)、長期禁煙者(6年超え禁煙者)ではHR 0.50(95%CI:0.46~0.55)であった。同様の結果が全病因死亡についても観察された筆者コメント 本論文は、禁煙に伴う体重増加は糖尿病の短期リスク増加に関係するが、心血管死亡、全病因死亡の減少に影響せず禁煙メリットを損なうことはなかったと報告している。 禁煙するとつい口寂しさのあまり甘いものを食べたくなる欲望を自制し、体重増加を軽視せず最小限度に抑えながら禁煙に務めることが大事です。しかし軽度の体重増加は、通常は一過性であり過度に不安視する必要はありません。体重増加を気にして、あるいは言い訳にして喫煙を続けることはやめてください。しかし体重が増加し続けることを黙認し続けることは、決して好ましいことではありません(肥満は病気と理解してください)。 本論文は禁煙の重要性が体重増加に優ることを端的に物語っており、ひとまず体重増加を忘れ前向きに禁煙に取り組む姿勢が禁煙成功につながると考えて禁煙にチャレンジしてください。

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禁煙のための電子タバコ、ニコチン依存症での役割

 電子タバコ(電子ニコチン送達システム:ENDS)は、若者の間で一般的なタバコ製品となりつつある。電子タバコには、有害物質の低減や禁煙に効果的であるとのエビデンスもあるが、議論の余地は残っている。電子タバコが、ニコチン依存者の喫煙の減少や禁煙に対してどのように寄与するかは、ほとんど知られていない。米国・ノースダコタ大学のArielle S. Selya氏らは、ニコチン依存症に対する電子タバコの有効性について検討を行った。Nicotine & Tobacco Research誌2018年9月4日号の報告。 若年成人(おおよそ19~23歳)コホートを4年にわたり調査した。電子タバコの使用と従来型タバコの喫煙頻度との関係、ニコチン依存度の違いがこの関係にどのような影響を及ぼすかについて、変数係数モデル(VCM)を用いて検討した。 主な結果は以下のとおり。・直近ではなく生涯にわたり、高レベルのニコチン依存者における電子タバコの使用は、従来型タバコを同時に喫煙する頻度の少なさと関連していた。・しかし、非依存的な電子タバコの使用者は、未使用者よりも、従来型タバコを喫煙する頻度がわずかに高かった。・電子タバコ使用者の約半数は、禁煙目的のために電子タバコを使用していた。・禁煙目的での電子タバコ使用者において、電子タバコの使用頻度は、将来の従来型タバコの喫煙頻度の減少と関連が認められなかった。 著者らは「電子タバコは、高度なニコチン依存を有する若年成人の喫煙者において、禁煙を補助する可能性がある。しかし、非依存者では逆の反応がみられており、非喫煙者の電子タバコ使用は、避けるべきであることが示唆された。また、多くの若者が、禁煙目的で電子タバコを使用していたが、電子タバコによる自発的な禁煙への取り組みは、将来の喫煙減少や禁煙と関連が認められなかった」としている。■関連記事世界61ヵ国のタバコ依存症治療ガイドラインの調査青年期の喫煙、電子タバコ使用開始とADHD症状との関連精神疾患発症と喫煙の関連性

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第8回 内科クリニックからのクラリスロマイシンの処方【適正使用に貢献したい  抗菌薬の処方解析】

Q1 予想される原因菌は?マイコプラズマ・・・7名百日咳菌・・・6名コロナウイルス、アデノウイルスなどのウイルス・・・3名結核菌・・・2名肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)・・・6名モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)・・・2名インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)・・・1名遷延性の咳嗽 清水直明さん(病院)3週間続く咳嗽であることから、遷延性の咳嗽だと思います。そうなると感染症から始まったとしても最初の原因菌は分からず、ウイルスもしくは非定型菌※による軽い感冒から始まったことも予想されるでしょう。他に、成人であっても百日咳の可能性も高いと思われます。その場合、抗菌薬はクラリスロマイシン(以下、CAM)でよいでしょう。初発がウイルスや非定型菌であったとしても、二次性に細菌感染を起こして急性気管支炎となっているかもしれません。その場合は、Streptococcus pneumoniae、Haemophilus influenzae、Moraxella catarrhalisなどが原因菌として想定されます。このようなときにグラム染色を行うことができると、抗菌薬選択の参考になります。※非定型菌は一般の細菌とは異なり、βラクタム系抗菌薬が無効で、培養や染色は困難なことが多い。マイコプラズマ、肺炎クラミジア、レジオネラなどがある。結核の可能性も 児玉暁人さん(病院)長引く咳とのことで、マイコプラズマや百日咳菌を疑います。患者背景が年齢しか分かりませんが、見逃すと怖いので念のため結核も考慮します。細菌感染症ではないのでは? 中西剛明さん(薬局)同居家族で最近かかった感染症があるかどうかを確認します。それで思い当たるところがなければ、まず、ウイルスかマイコプラズマを考えます。肺炎の所見もないので、肺炎球菌、インフルエンザやアデノウイルスなどは除外します。百日咳は成人の発症頻度が低いので、流行が確認されていなければ除外します。RSウイルスやコロナウイルス、エコーウイルスあたりはありうると考えます。ただ、咳の続く疾患が感染症とは限らず、ブデソニド/ホルモテロールフマル酸塩水和物(シムビコート®)が処方されているので、この段階では「細菌感染症ではないのでは?」が有力と考えます。Q2 患者さんに何を確認する?薬物相互作用 ふな3さん(薬局)CAMは、重大な相互作用が多い薬剤なので、併用薬を確認します。禁忌ではありませんが、タダラフィル(シアリス®)などは患者さんにとっても話しにくい薬なので、それとなく確認します。喫煙の有無と、アレルギー歴(特にハウスダストなどの通年性アレルギー)についても確認したいです。自覚していないことも考慮  児玉暁人さん(病院)やはり併用薬の確認ですね。スボレキサント錠(ベルソムラ®)やC型肝炎治療薬のアナスプレビルカプセル(スンベプラ®)は、この年齢でも服用している可能性があります。ピロリ菌の除菌など、パック製剤だと本人がCAM服用を自覚していないことも考えられるので、重複投与があるかどうかを確認します。シムビコート®は咳喘息も疑っての処方だと思います。感染性、非感染性のどちらもカバーし、β2刺激薬を配合したシムビコート®は吸入後に症状緩和を実感しやすく、患者さんのQOLに配慮されているのではないでしょうか。過去に喘息の既往はないか、シムビコート®は使い切りで終了なのか気になります。最近の抗菌薬服用歴 キャンプ人さん(病院)アレルギー歴、最近の抗菌薬服用歴、生活歴(ペットなども含める)を確認します。受診するまでの症状確認とACE阻害薬 柏木紀久さん(薬局)この3週間の間に先行して発熱などの感冒症状があったか、ACE阻害薬(副作用に咳嗽がある)の服用、喫煙、胸焼けなどの確認。Q3 抗菌薬の使用で思い浮かんだことは?咳喘息ならば・・・ 清水直明さん(病院)痰のからまない乾性咳嗽であれば、咳喘息の可能性が出てきます。そのために、シムビコート®が併用されていると思われ、それで改善されれば咳喘息の可能性が高くなります。咳喘息に対しては必ずしも抗菌薬が必要とは思いませんが、今の状態では感染症を完全には否定できないので、まずは今回の治療で反応を見たいと医師は考えていると思います。抗菌薬の低感受性に注意 JITHURYOUさん(病院)CAMは、抗菌作用以外の作用もあります。画像上、肺炎はないということですが、呼吸器細菌感染症としては肺炎球菌、インフルエンザ菌を想定しないといけないので、それらの菌に対する抗菌薬の低感受性に注意しなければなりません。さらに溶連菌、Moraxella catarrhalisなども考慮します。抗菌薬の漫然とした投与に注意 わらび餅さん(病院)痰培養は提出されていないようなので、原因菌を特定できるか分かりません。CAM耐性菌も以前より高頻度になっているので、漫然と投与されないように投与は必要最低限を維持することが大切だと思います。再診時の処方が非常に気になります。CAMの用量 柏木紀久さん(薬局)副鼻腔気管支症候群ならCAMは半量での処方もあると思いますが、1週間後の再診で、かつ感染性咳嗽の可能性を考えると400mg/日で構わないと思います。しっかりとした診断を 荒川隆之さん(病院)長引く咳の原因としては、咳喘息や後鼻漏、胃食道逆流、百日咳、結核、心不全、COPD、ACE阻害薬などの薬剤性の咳など多くありますが、抗菌薬が必要なケースは少ないです。もし百日咳であったとしても、感染性は3週間程度でなくなることが多く、1~2カ月程度続く慢性咳嗽に対してむやみに抗菌薬を使うべきではないと考えます。慢性咳嗽の原因の1つに結核があります。ニューキノロン系抗菌薬は結核にも効果があり、症状が少し改善することがありますが、結核は複数の抗菌薬を組み合わせて、長い期間治療が必要な疾患です。そのため、むやみにニューキノロン系抗菌薬を投与すると、少しだけ症状がよくなる、服用が終わると悪くなる、を繰り返し、結核の発見が遅れる可能性が出てくるのです。結核は空気感染しますので、発見が遅れるということは、それだけ他の人にうつしてしまう機会が増えてしまいます。また、結核診断前にニューキノロン系抗菌薬を投与した場合、患者自身の死亡リスクが高まるといった報告もあります(van der Heijden YF, et al. Int J Tuberc Lung Dis 2012;16(9): 1162-1167.)。慢性咳嗽においてニューキノロン系抗菌薬を使用する場合は、結核を除外してから使用すべきだと考えます。まずはしっかりした診断が大事です。Q4 その他、気付いたことは?QOLのための鎮咳薬 JITHURYOUさん(病院)小児ではないので可能性は低いですが、百日咳だとするとカタル期※1でマクロライドを使用します。ただ、経過として3週間過ぎていることと、シムビコート®が処方されているので、カタル期ではない可能性が高いです。咳自体は自衛反射で、あまり抑えることに意味がないと言われていますが、本症例では咳が持続して夜間も眠れないことや季肋部※2の痛みなどの可能性もあるので、患者QOLを上げるために、対症療法的にデキストロメトルファンが処方されたと考えます。※1 咳や鼻水、咽頭痛などの諸症状が起きている期間※2 上腹部で左右の肋骨弓下の部分鎮咳薬の連用について 中堅薬剤師さん(薬局)原疾患を放置したまま、安易に鎮咳薬で症状を改善させることは推奨されていません1)。また、麦門冬湯は「乾性咳嗽の非特異的治療」のエビデンスが認められている2)ので、医師に提案したいです。なお、遷延性咳嗽の原因は、アレルギー、感染症、逆流性食道炎が主であり、まれに薬剤性(副作用)や心疾患などの要因があると考えています。話は変わりますが、開業医の適当な抗菌薬処方はずっと気になっています。特にキノロン系抗菌薬を安易に使いすぎです。高齢のワルファリン服用患者にモキシフロキサシンをフルドーズしようとした例もありました。医師の意図 中西剛明さん(薬局)自身の体験から、マイコプラズマの残存する咳についてはステロイドの吸入が効果的なことがあると実感しています。アレルギーがなかったとしても、マイコプラズマ学会のガイドラインにあるように、最終手段としてのステロイド投与(ガイドラインでは体重当たり1mg/kgのプレドニゾロンの点滴ですが)は一考の余地があります。また、マイコプラズマ学会のガイドラインにも記載がありますが、このケースがマイコプラズマであれば、マクロライド系抗菌薬の効果判定をするため、3日後に再受診の必要があるので3日分の処方で十分なはずです。ステロイド吸入が適切かどうか議論のあるところですが、シムビコート®を処方するくらいですから医師は気管支喘息ということで治療をしたのだと考えます。Q5 患者さんに何を説明する?抗菌薬の患者さんに対する説明例 清水直明さん(病院)「咳で悪さをしているばい菌を殺す薬です。ただし、必ずしもばい菌が悪さをしているとは限りません。この薬(CAM)には、抗菌作用の他にも気道の状態を調節する作用もあるので、7日分しっかり飲み切ってください。」CAMの副作用 キャンプ人さん(病院)処方された期間はきちんと内服すること、副作用の下痢などの消化器症状、味覚異常が出るかもしれないこと。抗菌薬を飲み切る 中堅薬剤師さん(薬局)治療の中心になるので、CAMだけは飲み切るよう指示します。また、副作用が出た際、継続の可否を主治医に確認するよう話します。別の医療機関にかかるときの注意 ふな3さん(薬局)CAMを飲み忘れた場合は、食後でなくてよいので継続するよう説明します。また、別の医師にかかる場合は、必ずCAMを服用していることを話すよう伝えます。後日談本症例の患者は、1週間後の再診時、血液検査の結果に異常は見られなかったが、ハウスダストのアレルギーがあることが分かり、アレルギー性咳嗽(咳喘息)と診断された。初診後3日ほどで、咳は改善したそうだ。医師からはシムビコート®の吸入を続けるよう指示があり、新たな処方はなされなかった。もし咳が再発したら受診するよう言われているという。1)井端英憲、他.処方Q&A100 呼吸器疾患.東京、南山堂、2013.2)日本呼吸器学会.咳嗽に関するガイドライン第2版.[PharmaTribune 2016年11月号掲載]

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喫煙が日本人労働者の死亡率に及ぼす影響

 わが国の職域多施設研究(Japan Epidemiology Collaboration on Occupational Health Study:J-ECOHスタディ)で、労働人口における喫煙・禁煙の死亡率への影響を調べたところ、喫煙が全死亡・心血管疾患(CVD)死亡・タバコ関連がん死亡のリスク増加と関連していた。また、この死亡リスクは禁煙後5年で減少していた。Circulation Journal誌オンライン版2018年9月12日号に掲載。 本調査の対象は、J-ECOHスタディに参加した20~85歳の日本人労働者7万9,114人で、死亡診断書や病気休暇書類などから、死亡および死亡原因を同定した。ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)はCox比例ハザード回帰により推定した。 主な結果は以下のとおり。・最大6年間の追跡期間中、252人が死亡した。・現在喫煙者の非喫煙者に対する全死亡・CVD死亡・タバコ関連がん死亡の多変量補正HR(95%CI)は順に、1.49(1.10~2.01)、1.79(0.99~3.24)、1.80(1.02~3.19)であった。・現在喫煙者では、全死亡・CVD死亡・タバコ関連がん死亡のリスクは、タバコ消費量の増加に伴って増加した(傾向のp<0.05)。・過去喫煙者の非喫煙者に対する全死亡のHR(95%CI)は、ベースラインまでの禁煙期間が5年未満で1.80(1.00~3.25)、5年以上で1.02(0.57~1.82)であった。

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