サイト内検索|page:36

検索結果 合計:1581件 表示位置:701 - 720

701.

AIが3年後の糖尿病発症リスクを予測

 わが国では、糖尿病が強く疑われる人が約1,000万人、糖尿病の可能性を否定できない人が約1,000万人と推計されている。糖尿病は、網膜症、腎症、神経障害の3大合併症に加えて、心血管疾患、がん、認知症などのさまざまな疾患のリスクを高めることが知られており、健康寿命を延伸するため、糖尿病の予防対策は国民的な課題となっている。 こうした情勢をうけ、国立研究開発法人 国立国際医療研究センタ-(理事長:國土 典宏、以下「NCGM」と略す)は、自分の健康診断の結果を入力することで糖尿病発症のリスクを予測するツ-ル「糖尿病リスク予測ツ-ル」を、株式会社教育ソフトウェアと共同開発し、10月24日よりNCGMのホ-ムペ-ジで公開した。※26日10時現在、上記ページ(糖尿病情報センターの「糖尿病リスク予測ツール」)が閲覧できなくなっています。3万例のデータで予測する糖尿病発症のリスク 本予測ツ-ルは、利用者の3年後の糖尿病発症のリスクを予測するもので、職域多施設研究(J-ECOHスタディ)で収集した3万例の健康診断デ-タに基づき、機械学習手法(人工知能)により開発された。 対象者の体重、血圧、喫煙習慣などの基本項目(非侵襲的デ-タ)のみによる予測と、さらに空腹時血糖やHbA1cなどの血液デ-タを追加することで精度の高い予測の2通りから選択できる。また、デ-タを入力することで、3年後の糖尿病発症リスクとともに、同性・同年代の中での相対的な比較をグラフ上に示すこともできる。 なお、本ツ-ルは、糖尿病と診断されたことのない30~59歳の人が対象となる。■参考NCGM糖尿病情報センタ-■関連記事糖尿病診療コレクション

702.

喫煙が橈骨動脈増幅係数と関連~わが国の横断研究

 わが国の地域住民を対象としたCIRCS研究(Circulatory Risk in Communities Study)により、大量喫煙男性と女性において喫煙および累積喫煙曝露量が、橈骨動脈増幅係数の増加と正相関を示すことが報告された。橈骨動脈増幅係数は機能的動脈硬化の指標となる。Hypertension Research誌オンライン版2018年10月17日号に掲載。 本研究は、わが国の40~79歳の男性1,593人および女性2,671人を対象とした横断的な集団ベースの研究。喫煙状況はインタビューで確認し、pack-yearを算出した。橈骨動脈増幅係数は、自動血圧計(HEM-9000AI、オムロンヘルスケア社)を用いて測定した中心脈圧と上腕脈圧の比とした。 主な結果は以下のとおり。・男性で30本/日以上喫煙する現在喫煙者および女性の喫煙者では、非喫煙者よりも橈骨動脈増幅係数が高い人の割合が高かった。・既知のアテローム性動脈硬化リスク因子を調整後、非喫煙者と比べた、30本/日以上喫煙する男性における高い橈骨動脈増幅係数の多変量オッズ比(OR)(95%信頼区間[CI])は1.9(1.1~3.4)であった。・女性において、非喫煙者と比べた過去喫煙者および現在喫煙者における高い橈骨動脈増幅係数の多変量OR(95%CI)は、それぞれ1.8(1.2~2.7)および2.5(1.6~3.9)であった。・喫煙pack-yearは男女とも高い橈骨動脈増幅係数と正の相関があった。・男女とも、喫煙状況と高い中心脈圧または上腕脈圧との関連はなかった。

703.

尿酸値上昇、食事の影響はわずか/BMJ

 一般集団において血清尿酸値の変化は、遺伝的寄与とは対照的に食事の寄与はわずかであることが明らかにされた。ニュージーランド・オタゴ大学のTanya J. Major氏らによる住民ベースコホート研究のメタ解析の結果で、BMJ誌2018年10月10日号で発表された。血清尿酸値は、遺伝的暴露と特定の食品などを含む環境的曝露による影響を受けることが知られている。血清尿酸値と食事内容の関係を統計的に検証 研究グループは、血清尿酸値と食事内容の関係を統計的に検証し、血清尿酸値の集団における変動に対する食事パターンおよび遺伝的変異の相対的な推定寄与を評価した。検討には、米国の断面調査データ(5つのコホート試験)を用いてメタ解析を行った。 解析に包含されたのは、ヨーロッパ系米国人1万6,760例(男性8,414例、女性8,346例)。腎疾患や痛風を有しておらず、尿酸降下薬や利尿薬を服用していない18歳以上を適格とした。全被験者は、血清尿酸測定値、食事調査データ、交絡因子情報(性別、年齢、BMI、平均1日摂取カロリー、教育を受けた年数、運動レベル、喫煙状態、更年期の状態)、ゲノムワイド遺伝子型の情報を有していた。 主要評価項目は、平均血清尿酸値と血清尿酸値の変動で、多変量線形回帰分析からのβ値(95%信頼区間[CI])とボンフェローニ補正p値を、各回帰分析で求めた食品が寄与する部分的R2値とともに用いて、関連性を定量化した。食事は尿酸値上昇と関連するが、影響はわずか 7つの食品(ビール、リキュール、ワイン、ジャガイモ、鶏、清涼飲料水、肉[牛、豚、ラム])が、血清尿酸値上昇と関連していた。一方、8つの食品(卵、ピーナッツ、コールドシリアル、スキムミルク、チーズ、ブラウンブレッド、マーガリン、非柑橘系果物)が、血清尿酸値低下と関連していた。これらは、男性コホート、女性コホートあるいは全コホートにおいて認められた。 健康的な食事ガイドラインに基づいて構築された3つの食事スコア(DASH、Mediterranean、Healthy Eating)は血清尿酸値と逆の相関関係を示し、使用したデータセットの食事パターンに基づくデータドリブンスコアは、血清尿酸値の上昇と正の関連を示したが、いずれも血清尿酸値の変動は0.3%以下であった。対照的に、一般的にみられたゲノムワイド一塩基変異による血清尿酸値の変動は、23.9%であった。

704.

第5回 心電図、正しくとれてる?(前編)~鏡の中のマボロシ~【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】

第5回:心電図、正しくとれてる?(前編)~鏡の中のマボロシ~私たちは心電図の波形を目で見て診断・解釈し、医療行動を施します。でも、もしも不適切な方法で心電図が記録されていたら…患者さんの治療にも影響しかねない一大事です。その見抜き方をDr.ヒロがレクチャーします。症例提示48歳。女性。昨晩からの心窩部痛にて救急受診。以前より血圧高値を指摘されるも受診せず。間欠的に“さしこむような”痛みがあり、発作時には冷汗を伴う。何度か嘔吐もした。労作時症状はなし。昼過ぎに市販の制酸剤を服用したが改善しないため、夕刻に受診、来院時に心電図検査を行った(図1)。喫煙:20-30本/日(18歳~:現在も喫煙中)家族歴:冠動脈バイパス術(父親)身長156cm、体重105kg。体温36.9℃、血圧154/95mmHg、脈拍62/分。(図1)来院時心電図画像を拡大する【問題】心電図所見として正しいものを2つ選べ。1)洞(性)不整脈2)左房調律3)電極の左右つけ間違い(上肢)4)電極の左右つけ間違い(下肢)5)右胸心解答はこちら1)、3)解説はこちら“お決まり”ですが、1問目は心電図の読み方を問います。“型”の通りに読めるようになっていますか?(第1回参照)1)○:R-R間隔どうですか?一見すると整のようですが、よーく見ると不整でしょ。“最短”と“最長”で3目盛り(0.12秒)*以上差がある洞調律を「洞(性)不整脈」と診断します。胸部誘導3~4拍と4~5拍ではR-R間隔の差が4目盛り以上ありそうなので該当しますね。(*:0.16秒以上とする本もあり、その場合は「4目盛り」となる)。2)×:イチニエフ法(第2回参照)を適用しようとすると…アレッ? I誘導から陰性(下向き)でII誘導もなんとも変なカタチ…ということは、「異所性心房調律」?そう思えたアナタは素晴らしい!たしかに、この「左房調律」も代表的な異所性心房調律でI誘導が陰性のことが多いです(正式にはV6誘導の陰性Pをもって定義されます)。ただ、QRS波形の変化は説明不能ですから、これは不適です。3)○:I誘導のP-QRS-Tが“すべて下向き(陰性)”を見たとき、最も頻度が高いのは「左右の上肢電極のつけ間違い」です。aVR誘導が陽性QRS波なのもオカシイですよね。次回、詳しく解説します。4)×:下肢電極(黒・緑)を左右逆にしても、実は心電図波形はほとんど変わりません。黒色はアース電極で、緑色が左右どちらの足でも電極間の引き算という観点では同じなのです。5)×:右手・左手の電極つけ違い(選択肢3)の心電図との鑑別時に問題となる右胸心。肢誘導だけでなく、胸部誘導のR波増高プロセスも異常となりますが、今回はほぼ正常なので、該当しません。“電極つけ間違いのカラクリを理解する”皆さんは自分で心電図を記録することがありますか?研修医の時以来してないな…なんて人もいるかもしれませんね。医師の多くはナースや検査技師さんなどのコメディカルがとってくれた心電図を見るわけですが、「もしかして正しくとれてない?」と、考えたことはありませんか?何の根拠もなく人を疑うべきではありませんが(チーム医療が崩壊してしまいますよね…)、現実には、心電図の記録ミスは頻繁に起きているんです。なかでも今回取り上げる上肢電極(右手・左手)のつけ間違いが代表的です。つまり、右手に黄電極、左手に赤電極をつけてしまうミスです。自分で正しく記録するのは当然ですが、他人の記録ミスにも気づける能力が、デキる医師には大切だと思います。解説でも述べましたが、右足(黒)、左足(緑)を逆につけても波形にはほとんど無影響です。頻度的には手も足も同じくらい間違われているはずですが、波形の解釈が問題となるのは上肢の方。これがなぜなのか説明していきましょう。今回の症例で、電極を正しく貼って記録した心電図を示します(図2)。何のことはない、イチニエフ法と検脈法(第3回参照)を用いて心拍数60/分の正常洞調律と診断、ST変化もありません。(図2)正しく記録した心電図画像を拡大する図1と比較してもわかるように、手足の電極をつけ間違えた場合、当然ながら影響が出るのは肢誘導のみで、胸部誘導は変わりません。ここで、実際の波形を表にし、4つの特徴をまとめました(図3)。(図3)上肢の左右電極つけ間違いと正常の比較画像を拡大する左右電極つけ間違い(右手⇔左手ミス)による心電図の特徴(1)Iが上下逆さま(P-QRS-Tすべてが陰性となるのが典型的)(2)aVRとaVLが入れ換わり(3)IIとIIIが入れ換わり(4)aVFは(ほぼ)不変もちろん、“なんでこうなの?”と、思う人がいるでしょう。右手と左手の電極を逆につけた場合、“肢誘導の世界”でも左右が逆転します。実は、これさえ理解できれば、わざわざ4つの特徴を覚える必要はありません。“肢誘導の世界”とは、I、II、IIIとaVR、aVL、aVFの計6個の電極が乗っている断面のことで、前額断(“おでこに平行”という意味)ないし冠状断と呼ばれます。図示すると、どこかで一度は目にしたことがあろう「円座標システム」となります(図4)。中心に心臓があるイメージです。(図4)肢誘導システム(前額断[冠状断])杉山 裕章. 心電図のみかた、考えかた[基礎編]. 中外医学社;2013.p.171.を改変画像を拡大する真ん中の±90゜の正中線をはさんで、IIとIII、そしてaVRとaVLとが左右対称の位置関係であることがわかりますか?IとaVF以外は、鏡に映したような心電図になってしまうのです。「aVFは不変」というのは、まさに正中線上なので、ひっくり返しようがない(笑)。残るI誘導は心臓から見て真左、角度では「0°」なんですが、左右反転したら「180°(-I誘導)」となるので、刺激興奮をまったく逆の右方向から眺めることになり、心電図波形としては極性、すなわち“上下”が逆となります。フムフム。手電極の左右を間違えると波形がどうなるかはわかったけど、実際にはどうやって見抜けばいいのでしょう?ハイどうぞ、と言わんばかりの試験問題なら簡単かもしれませんが、現実には正常波形を横に準備してくれているわけでないので、ピンッとくる感覚、そんなアンテナのような“気づき”が大事だと思います。“秘伝”というほどのシロモノではないですが、独自のアイディアも交えて皆さんと共有したいと思います。今回は最もスタンダードな点から。まず一つ目。ボクが左右電極のつけ間違いを疑う際に重要と考えるI誘導。I誘導では、正常ならP波もQRS波もT波もすべて上向き(陽性)です。「右軸偏位」ならQRS波は下を向きますが、P波までが陰性になることはありません。もちろん、異所性心房調律にはイチゴロク(I、V5、V6)が陰性Pを呈する「左房調律」もありますし、心房細動のようにP波が存在しないこともあります。ただ、この陰性P±陰性QRS・TがI誘導で一緒に見られる時、とにかくボクは「右手⇔左手ミス」を一番に考え、過去の心電図と比較するようにしています。選択肢にも入れた右胸心ほか、いくつかの鑑別は必要ですが、電極のつけ間違いだけは、こちらが疑わない限り絶対に診断できないのです。なお、後半に述べた“座標”だ“角度”だといった話は、QRS電気軸のところでも登場します。やけに“数学的”で難しくてとても覚えられないという人! 大丈夫。考え方さえ分かれば十分ですよ。今回はここまで。次回は同じ症例で残りのDr.ヒロ流“気づき”ポイントなどを紹介するので、お楽しみに!Take-home Message1)肢誘導電極(右手・左手)のつけ違いを見抜けるようになろう!2)つけ間違いに気づくには、まずI誘導に注目せよ【古都のこと~岩清水八幡宮~】7月の最終土曜、折しも夜半より大型台風が上陸するとされた日、なぜか夕方に愛車を飛ばして八幡市の男山へ。天王山に対峙する国家鎮護の社、国宝でもある岩清水八幡宮をお参りしました。竹の森林浴を楽しんでから、本殿に向かうと、強くなりつつある風が神紋を揺らしていました。門から御社が見えた時、境内には、なんと自分一人のみ。並々ならぬ御加護を頂戴し、帰路を急いだのでした。

705.

日本人統合失調症患者の喫煙率に関する大規模コホートメタ解析

 統合失調症患者の喫煙は、世界的に一般集団と比較してより多くみられるが、日本での研究結果では矛盾が生じていた。最近では、一般集団の喫煙率は徐々に低下している。金沢医科大学の大井 一高氏らは、日本人の統合失調症患者を対象に、喫煙率の大規模コホートメタ解析を行った。The International Journal of Neuropsychopharmacology誌オンライン版2018年9月17日号の報告。 対象は、喫煙状況に関する日本の大規模コホートメタ解析より、統合失調症患者1,845例および一般集団19万6,845例、25年に及ぶ12件の研究より、統合失調症患者842例および精神医学的に健康な対照者766例(著者らの研究による、統合失調症患者301例および対照者131例を含む)。 主な結果は以下のとおり。・著者らのケースコントロールサンプルでは、統合失調症患者において、健康な対照者よりも有意に高い喫煙率が認められた(p=0.031)。・統合失調症患者のヘビースモーカーの割合(p=0.027)および1日の喫煙本数(p=0.0082)は、健康な対照者よりも有意に高かった。・統合失調症の喫煙者において、非定型抗精神病薬の投与量と1日の喫煙本数との間に正の相関が認められた(p=0.001)。・メタ解析では、統合失調症患者は男性(OR:1.53、p=0.035、統合失調症患者:52.9%、一般集団:40.1%)、女性(OR:2.40、p=0.0000108、統合失調症患者:24.4%、一般集団:11.8%)の両方において、一般集団よりも高い喫煙率が認められた。・男性の統合失調症患者は、男性の健康な対照者よりも高い喫煙率が認められたが(OR:2.84、p=0.00948、統合失調症患者:53.6%、健康な対照者:32.9%)、女性では統計学的に有意な差は認められなかった(OR:1.36、p=0.53、統合失調症患者:17.0%、健康な対照者:14.1%)。・男女両方において、統合失調症患者は、一般集団(OR:1.88、p=0.000026)および健康な対照者(OR:2.05、p=0.018)よりも高い喫煙率が認められた。・これらの割合は、患者が登録された年に影響を受けなかった(p>0.05)。・1日当たりの喫煙値は、統合失調症患者22.0、一般集団18.8であった。 著者らは「日本における10年以上のデータに基づくと、日本人の統合失調症患者は、一般集団および健康な対照者よりも、喫煙する可能性が約2倍高いことが示唆された」としている。■関連記事統合失調症患者は、なぜ過度に喫煙するのか統合失調症患者とタバコ、どのような影響を及ぼすのか?統合失調症発症予測に喫煙が関連

706.

紙巻きタバコのニコチン含量の即時低減は段階的低減や現状維持に比べ減煙達成率は高いが、その一方で禁煙率の改善につながるか不明?(解説:島田俊夫氏)-928

 紙巻きタバコの喫煙習慣が健康にとって有害なのは周知されている。しかし、多くの喫煙者が禁煙できないのも現実。タバコには習慣性があり、自力で禁煙に苦しむニコチン中毒患者を禁煙させるのは簡単ではない。喫煙による多種多様の有害物の長期吸入による影響が動脈硬化やがんの発生につながるため、禁煙達成こそゴールとなる。禁煙指導の推進の結果として、日本の喫煙者率は減少傾向にあるのは事実であるが、本来の目標を達成するためには喫煙ゼロを目指すべき。ニコチン含量を減らした紙巻きタバコを使った禁煙/減煙に関する論文1)は散見されるが、2018年9月4日号のJAMA誌に掲載された米国ミネソタ大学のHatsukami DK氏らの論文は、研究対象も多く、追跡期間も相対的に長く、困難な禁煙に風穴を開ける減煙成功率の高い方法に関する報告であり、禁煙に難渋している喫煙者にとり禁煙への扉を開く可能性を秘めた論文と考え私見をコメントする。研究の概略 研究グループは30日以内に禁煙する意思を持たず毎日喫煙している対象を2014年7月~2016年6月の期間に登録し、2週間のベースライン喫煙と20週間の介入を行い、2017年3月の最終フォローアップをもって研究完了とした。 米国内10ヵ所で喫煙者1,250名を禁煙手段により2重盲検無作為並行比較試験を即時減煙(紙巻タバコのニコチン含量を0.4mg/gまで即時減量)、段階的減煙(5ヵ月かけニコチン含量/gを15.5mgから0.4mgに減量)、現状維持(15.5mg/gを維持)の3群に割付した。 主評価項目・測定値:呼気一酸化炭素(CO)、尿中3-HPMA(アクロレイン代謝物)、尿中PheT(多環芳香族炭化水素)の煙媒毒性暴露バイオマーカー値を20週にわたり介入期間中に測定し濃度時間曲線下面積を算出した。 結果:1,250名の参加者(平均年齢:45歳、549名女性[44%]、958名[77%]試験完了)の中で、即時ニコチン減量群と段階的ニコチン減量群間の比較においてCO(平均差:-4.06ppm[95%CI:-4.89~-3.23]、p<0.0055)、3-HPMA(幾何平均比:0.83[95%CI:0.77~0.88]、p<0.0055、pheT(幾何平均比:0.88[95%CI:0.83~0.93]、p<0.0055)のすべてで、即時ニコチン減量群に有意な低レベル暴露が肯定された。即時ニコチン減量群と対照群間でも同様の比較を行い、すべてのバイオマーカーで同様の結果を得た。段階的減量群と維持群間での比較では、すべてのバイオマーカーに有意差はなかった。筆者コメント 3種のバイオマーカーの測定に基づく喫煙暴露の結果から、減煙治療による紙巻きタバコのニコチン即時低減は、段階的低減や現状維持に比べてニコチン低下が顕著で、しかも段階的低減、現状維持の間で有意差を認めなかったため、即時低減法が優れた減煙手段であり、積極的に取り入れることで減煙成功に導くことを示した意義は大きい。しかしながら、最も重要な禁煙達成率に関する情報の欠落は大きな弱点である。喫煙者へのメッセージとして“タバコは百害あって一利なし”を念頭に置くならば、本来減煙ではなく禁煙を達成しなければ目的を達成できたとは言い難い。この減煙法は、極低ニコチン含有紙巻きタバコへの即時切り替えが、確実に減煙成功への近道であることを確認した点は評価するが、減煙は禁煙への途上であり、ゴールはあくまで禁煙である。この方法が、禁煙率の改善に確実につながる成果を示すことが必要である。ニコチンはタバコの原因と捉えるのでなく、あくまで喫煙評価のメルクマールであり、紙巻タバコに含まれる幾多の有害物資を断ち切るためには禁煙が必要であることは言うまでもない。この論文は禁煙のステップとしての減煙成功率を高めることが禁煙につながる可能性を示した意味での価値は大きいが、禁煙率改善の証拠が必要である。

707.

急性心筋梗塞、発症後早期のウエアラブル除細動器の効果/NEJM

 心筋梗塞(MI)を発症してから間もない駆出分画率35%以下の患者において、着用型自動除細動器(wearable cardioverter-defibrillator:WCD)の使用は、非使用者と比較して主要評価項目の90日時点の不整脈死リスクは有意に低下しなかった。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のJeffrey E. Olgin氏らが、2,302例の患者を対象に行った無作為化比較試験の結果で、NEJM誌2018年9月27日号で発表した。駆出分画率が低下したMI後の患者において突然死は高率に認められるが、植込み型除細動器は、発症後40~90日間は禁忌とされている。研究グループは、このハイリスク期間中の突然死発生をWCDが低減するのか検討した。ガイドライン推奨治療のみ、ガイドライン推奨治療+着用型自動除細動器を比較 研究グループは2008年7月~2017年4月に、米国(76地点)、ポーランド(24)、ドイツ(6)、ハンガリー(2)で、急性MIを発症し、駆出分画率が35%以下の患者2,302例を登録・包含した。退院7日後に無作為に2対1の割合で2群に分け、一方にはWCD+ガイドライン推奨治療を(デバイス群、1,524例)、もう一方にはガイドライン推奨治療のみを行った(対照群、778例)。 主要評価項目は、90日時点の突然死または心室頻脈性不整脈による死亡(不整脈死)とした。副次評価項目は、全死因死亡、非不整脈死などだった。不整脈死発生率、デバイス群1.6%、対照群2.4%で有意差なし 被験者の平均年齢はデバイス群60.9±12.6歳、対照群61.4±12.3歳、男性の割合はそれぞれ72.8%、74.7%、直近の入院前の喫煙者36.9%、35.5%だった。被験者全体において、平均駆出分画率は28%、83.6%が指標入院中に経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けていた。 平均フォローアップ期間は84.3±15.6日。デバイス群10例、対照群12例が追跡不能となり、90日時点のバイタル状況が不明だった。 デバイス群のWCD装着時間中央値は、1日当たり18.0時間(四分位範囲:3.8~22.7)だった。 不整脈死の発生率は、デバイス群1.6%、対照群2.4%だった(相対リスク[RR]:0.67、95%信頼区間[CI]:0.37~1.21、p=0.18)。 全死因死亡の発生率は、デバイス群3.1%、対照群4.9%だった(同:0.64、0.43~0.98、補正前p=0.04)。非不整脈死の発生率はそれぞれ1.4%、2.2%だった(同:0.63、0.33~1.19、補正前p=0.15)。 デバイス群で死亡した48例のうち、死亡時にデバイスを装着していたのは12例だった。また、デバイス群で適切な電気ショックを受けたのは20例(1.3%)、不適切な電気ショックを受けたのは9例(0.6%)だった。

708.

心血管病の証拠のない2型糖尿病患者への予防的ω-3多価不飽和脂肪酸の投与効果は期待はずれか(ω-3PUFA効果は夢か幻か?)(解説:島田俊夫氏)-926

 多価不飽和脂肪酸(PUFA)が心血管病に良い影響を与えるということが巷でささやかれており、サプリメントも広く普及している。PUFAにまつわる話はグリーランドのイヌイット(エスキモー)に心血管病が少ないことに着目した研究に端を発している1)。この研究以降、精力的に研究が行われてきたが、PUFAサプリメントの投与と心血管病の予防・治療への有効性は、いまだ確立されていない。とくに1次予防に関しては、悲観的な結果が優勢であるがわが国の大規模研究JELIS2)は、高コレステロール血症に対してスタチン投与中の集団を無作為にEPA(1,880mg/day)、プラセボに割り付けることにより、主冠動脈イベント発症率は19%有意に低下した。2次予防サブ解析では累積冠動脈イベントが23%低下した。脳卒中に関しては1次予防効果は認めず、2次予防効果において20%の抑制効果が認められた。しかし、この研究がprobe法を用いた研究であったことが信憑性に疑念を抱かせる結果となっている。 NEJM誌オンライン版の2018年8月26日号に掲載された英国・オックスフォード大学のLouise Bowman氏らの論文は、PUFAの予防投与における有用性に疑問を投じる貴重な報告と考え、私見を述べる。研究の概略 観察研究では、ω-3PUFAの摂取増加は心血管病リスク低下に関係している。 ところがこれらの所見は、ランダム化試験においていまだ是認されていない。ω-3PUFAサプリメントが糖尿病患者の心血管リスクに便益をもたらすか、いまだ解決されていない。 明らかな動脈硬化性疾患の証拠を持たない糖尿病患者1万5,480例を、ω-3PUFA1gカプセル服用群(PUFA群)、オリーブオイル服用群(プラセボ群)のいずれかの群に無作為に割り付けを行った。1次アウトカムは、初回の重篤な血管イベントとした(つまり、確定した脳内出血を除いた非致死的心筋梗塞、脳卒中、一過性脳虚血発作または血管死)。 7.4年のフォローアップ期間中(アドヒアランス:76%)、重篤な血管イベントが脂肪酸群で689例(8.9%)、プラセボ群で712例(9.2%)に発生した(率比:0.97、95%CI:0.87~1.08、p=0.55)。重篤な血管イベントあるいは血管再建複合アウトカムは、それぞれ882例(11.4%)、887例(11.5%)に起こった(率比:1.00、95%CI:0.91~1.09)。全死因死亡は脂肪酸群で752例(9.7%)、プラセボ群で788例(10.2%)に起こった(率比:0.95、95%CI:0.86~1.05)。非致死的重篤有害イベント率に関しては有意差を認めなかった。筆者コメント 結論として、心血管病の証拠のない糖尿病患者は、ω-3PUFAサプリメント群、プラセボ群に無作為に割り付けられた2群間比較で、重篤な心血管イベントリスクに有意差を認めなかった。本論文のメッセージは、心血管病予防にこれまで期待の大きかったPUFAサプリメントの1次予防への投与が無作為に割り付けられた糖尿病患者で、かつ明らかな心血管疾患の証拠のない患者の2群間(ω-3PUFAサプリメント群とプラセボ群)比較で有意差を認めなかった事実から、PUFAの予防投与は思いの外、糖尿病患者の心血管病予防への期待を裏切る結果となった。高コレステロール血症治療中の患者を対象とした研究、2型糖尿病治療群を対象とした本研究での結果の乖離が、単なる対象疾患の差にもとづくものか慎重な判断が必要である。1次予防に関する研究は追跡期間、人口構成らが大いに結果に影響し、至適追跡期間が不適切であれば検出力不足のために陰性になる恐れもあり、本研究の平均追跡期間7.4年が1次予防効果を評価するに十分であったか多少の疑問が残る。これまでの多くのエビデンスを考えると多価不飽和脂肪酸サプリメントへの過大な期待に対する警鐘と理解するのが、現段階では妥当な解釈かと考えている。効果を否定するのは早計と考える。

709.

禁煙に伴う体重増加は糖尿病の短期リスクを増やすも心血管病死・全病因死亡に影響なし!(解説:島田俊夫氏)-925

 紙巻きタバコが体に悪いことは昔からよく知られているけれど、耳を傾けようとしない無関心な方々が数多く見受けられます。もちろんタバコは本人にとって有害であるだけでなく、身辺にいる家族を含め、被害を被る人たちが多数いることを顧みて一日も早く禁煙することを勧めます。“タバコは万病の元”という言葉は、本当にタバコの持つ有害性を端的に表しています。私は患者さんに診療時、“タバコは百害あって一利なし”という言葉を使い、説明させてもらっています。多くの方は耳を傾けてくれますが、残念ながらタバコの真の怖さを十分に理解してもらえていないと感じています。「タバコはお金もかかり、あらゆる病気にかかりやすく、タバコに火をつけて燃やせば燃やすほど、あなたの命のロウソク(ロウソク寿命)を短くする貧乏神のようなものです」と話すと、「タバコを吸うとストレスが緩和できる」といった得手勝手なこじつけの類の言い訳が時折返ってきます。これまで禁煙と体重増加を取り上げた論文1)は散見されますが、禁煙に伴う体重増加を心血管死亡、全病因死亡に関連付けた信憑性の高い研究はほとんどありません。 2018年8月16日号のNEJM誌に掲載された、米国・ハーバード大学公衆衛生大学院のYang Hu氏らが、米国の3つのコホート研究(NHS、NHS II、HPFS)のデータを利用・解析し、禁煙に伴う体重増加が心血管死や全病因死亡への禁煙のメリットを損なわず、ただ2型糖尿病の短期リスクを増やすことに関係していると報告した論文は、禁煙に伴う喫煙者の体重増加への不安や弁解を払拭する重要な論文であり、私見をコメントします。研究の要約 米国の3コホート研究参加者の中で禁煙を自己申告した男女参加者を同定し、喫煙状況、体重変化を前向きに評価した。禁煙を自己申告した参加者中、禁煙後の体重増加の程度に基づいて、2型糖尿病リスク、心血管病死、全病因死亡を評価した。 2型糖尿病リスクは、最近禁煙者(禁煙後2〜6年)では現在喫煙者よりも高かった(HR:1.22、95%CI:1.12~1.32)。糖尿病リスクのピークは禁煙後5~7年にあり、その後次第に低下した。糖尿病リスクの一時的増加は体重の増加に比例して増加したが、体重増加のない禁煙者ではリスク増加は認めなかった(相互作用のp<0.001)。逆に、禁煙後の体重増加と無関係に、禁煙者死亡率の増加はみられなかった。現在喫煙者と比較して、体重増加のない禁煙者では心血管病死に対するHRは0.69(95%CI:0.54~0.88)、0.1~5.0kg体重増加した禁煙者ではHRは0.47(95%CI:0.35~0.63)、5.1~10.0kg体重増加した禁煙者ではHRは0.25(95%CI:0.15~0.42)、体重増加が10kg以上の禁煙者ではHR 0.33(95%CI:0.18~0.60)、長期禁煙者(6年超え禁煙者)ではHR 0.50(95%CI:0.46~0.55)であった。同様の結果が全病因死亡についても観察された筆者コメント 本論文は、禁煙に伴う体重増加は糖尿病の短期リスク増加に関係するが、心血管死亡、全病因死亡の減少に影響せず禁煙メリットを損なうことはなかったと報告している。 禁煙するとつい口寂しさのあまり甘いものを食べたくなる欲望を自制し、体重増加を軽視せず最小限度に抑えながら禁煙に務めることが大事です。しかし軽度の体重増加は、通常は一過性であり過度に不安視する必要はありません。体重増加を気にして、あるいは言い訳にして喫煙を続けることはやめてください。しかし体重が増加し続けることを黙認し続けることは、決して好ましいことではありません(肥満は病気と理解してください)。 本論文は禁煙の重要性が体重増加に優ることを端的に物語っており、ひとまず体重増加を忘れ前向きに禁煙に取り組む姿勢が禁煙成功につながると考えて禁煙にチャレンジしてください。

710.

禁煙のための電子タバコ、ニコチン依存症での役割

 電子タバコ(電子ニコチン送達システム:ENDS)は、若者の間で一般的なタバコ製品となりつつある。電子タバコには、有害物質の低減や禁煙に効果的であるとのエビデンスもあるが、議論の余地は残っている。電子タバコが、ニコチン依存者の喫煙の減少や禁煙に対してどのように寄与するかは、ほとんど知られていない。米国・ノースダコタ大学のArielle S. Selya氏らは、ニコチン依存症に対する電子タバコの有効性について検討を行った。Nicotine & Tobacco Research誌2018年9月4日号の報告。 若年成人(おおよそ19~23歳)コホートを4年にわたり調査した。電子タバコの使用と従来型タバコの喫煙頻度との関係、ニコチン依存度の違いがこの関係にどのような影響を及ぼすかについて、変数係数モデル(VCM)を用いて検討した。 主な結果は以下のとおり。・直近ではなく生涯にわたり、高レベルのニコチン依存者における電子タバコの使用は、従来型タバコを同時に喫煙する頻度の少なさと関連していた。・しかし、非依存的な電子タバコの使用者は、未使用者よりも、従来型タバコを喫煙する頻度がわずかに高かった。・電子タバコ使用者の約半数は、禁煙目的のために電子タバコを使用していた。・禁煙目的での電子タバコ使用者において、電子タバコの使用頻度は、将来の従来型タバコの喫煙頻度の減少と関連が認められなかった。 著者らは「電子タバコは、高度なニコチン依存を有する若年成人の喫煙者において、禁煙を補助する可能性がある。しかし、非依存者では逆の反応がみられており、非喫煙者の電子タバコ使用は、避けるべきであることが示唆された。また、多くの若者が、禁煙目的で電子タバコを使用していたが、電子タバコによる自発的な禁煙への取り組みは、将来の喫煙減少や禁煙と関連が認められなかった」としている。■関連記事世界61ヵ国のタバコ依存症治療ガイドラインの調査青年期の喫煙、電子タバコ使用開始とADHD症状との関連精神疾患発症と喫煙の関連性

711.

第8回 内科クリニックからのクラリスロマイシンの処方【適正使用に貢献したい  抗菌薬の処方解析】

Q1 予想される原因菌は?マイコプラズマ・・・7名百日咳菌・・・6名コロナウイルス、アデノウイルスなどのウイルス・・・3名結核菌・・・2名肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)・・・6名モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)・・・2名インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)・・・1名遷延性の咳嗽 清水直明さん(病院)3週間続く咳嗽であることから、遷延性の咳嗽だと思います。そうなると感染症から始まったとしても最初の原因菌は分からず、ウイルスもしくは非定型菌※による軽い感冒から始まったことも予想されるでしょう。他に、成人であっても百日咳の可能性も高いと思われます。その場合、抗菌薬はクラリスロマイシン(以下、CAM)でよいでしょう。初発がウイルスや非定型菌であったとしても、二次性に細菌感染を起こして急性気管支炎となっているかもしれません。その場合は、Streptococcus pneumoniae、Haemophilus influenzae、Moraxella catarrhalisなどが原因菌として想定されます。このようなときにグラム染色を行うことができると、抗菌薬選択の参考になります。※非定型菌は一般の細菌とは異なり、βラクタム系抗菌薬が無効で、培養や染色は困難なことが多い。マイコプラズマ、肺炎クラミジア、レジオネラなどがある。結核の可能性も 児玉暁人さん(病院)長引く咳とのことで、マイコプラズマや百日咳菌を疑います。患者背景が年齢しか分かりませんが、見逃すと怖いので念のため結核も考慮します。細菌感染症ではないのでは? 中西剛明さん(薬局)同居家族で最近かかった感染症があるかどうかを確認します。それで思い当たるところがなければ、まず、ウイルスかマイコプラズマを考えます。肺炎の所見もないので、肺炎球菌、インフルエンザやアデノウイルスなどは除外します。百日咳は成人の発症頻度が低いので、流行が確認されていなければ除外します。RSウイルスやコロナウイルス、エコーウイルスあたりはありうると考えます。ただ、咳の続く疾患が感染症とは限らず、ブデソニド/ホルモテロールフマル酸塩水和物(シムビコート®)が処方されているので、この段階では「細菌感染症ではないのでは?」が有力と考えます。Q2 患者さんに何を確認する?薬物相互作用 ふな3さん(薬局)CAMは、重大な相互作用が多い薬剤なので、併用薬を確認します。禁忌ではありませんが、タダラフィル(シアリス®)などは患者さんにとっても話しにくい薬なので、それとなく確認します。喫煙の有無と、アレルギー歴(特にハウスダストなどの通年性アレルギー)についても確認したいです。自覚していないことも考慮  児玉暁人さん(病院)やはり併用薬の確認ですね。スボレキサント錠(ベルソムラ®)やC型肝炎治療薬のアナスプレビルカプセル(スンベプラ®)は、この年齢でも服用している可能性があります。ピロリ菌の除菌など、パック製剤だと本人がCAM服用を自覚していないことも考えられるので、重複投与があるかどうかを確認します。シムビコート®は咳喘息も疑っての処方だと思います。感染性、非感染性のどちらもカバーし、β2刺激薬を配合したシムビコート®は吸入後に症状緩和を実感しやすく、患者さんのQOLに配慮されているのではないでしょうか。過去に喘息の既往はないか、シムビコート®は使い切りで終了なのか気になります。最近の抗菌薬服用歴 キャンプ人さん(病院)アレルギー歴、最近の抗菌薬服用歴、生活歴(ペットなども含める)を確認します。受診するまでの症状確認とACE阻害薬 柏木紀久さん(薬局)この3週間の間に先行して発熱などの感冒症状があったか、ACE阻害薬(副作用に咳嗽がある)の服用、喫煙、胸焼けなどの確認。Q3 抗菌薬の使用で思い浮かんだことは?咳喘息ならば・・・ 清水直明さん(病院)痰のからまない乾性咳嗽であれば、咳喘息の可能性が出てきます。そのために、シムビコート®が併用されていると思われ、それで改善されれば咳喘息の可能性が高くなります。咳喘息に対しては必ずしも抗菌薬が必要とは思いませんが、今の状態では感染症を完全には否定できないので、まずは今回の治療で反応を見たいと医師は考えていると思います。抗菌薬の低感受性に注意 JITHURYOUさん(病院)CAMは、抗菌作用以外の作用もあります。画像上、肺炎はないということですが、呼吸器細菌感染症としては肺炎球菌、インフルエンザ菌を想定しないといけないので、それらの菌に対する抗菌薬の低感受性に注意しなければなりません。さらに溶連菌、Moraxella catarrhalisなども考慮します。抗菌薬の漫然とした投与に注意 わらび餅さん(病院)痰培養は提出されていないようなので、原因菌を特定できるか分かりません。CAM耐性菌も以前より高頻度になっているので、漫然と投与されないように投与は必要最低限を維持することが大切だと思います。再診時の処方が非常に気になります。CAMの用量 柏木紀久さん(薬局)副鼻腔気管支症候群ならCAMは半量での処方もあると思いますが、1週間後の再診で、かつ感染性咳嗽の可能性を考えると400mg/日で構わないと思います。しっかりとした診断を 荒川隆之さん(病院)長引く咳の原因としては、咳喘息や後鼻漏、胃食道逆流、百日咳、結核、心不全、COPD、ACE阻害薬などの薬剤性の咳など多くありますが、抗菌薬が必要なケースは少ないです。もし百日咳であったとしても、感染性は3週間程度でなくなることが多く、1~2カ月程度続く慢性咳嗽に対してむやみに抗菌薬を使うべきではないと考えます。慢性咳嗽の原因の1つに結核があります。ニューキノロン系抗菌薬は結核にも効果があり、症状が少し改善することがありますが、結核は複数の抗菌薬を組み合わせて、長い期間治療が必要な疾患です。そのため、むやみにニューキノロン系抗菌薬を投与すると、少しだけ症状がよくなる、服用が終わると悪くなる、を繰り返し、結核の発見が遅れる可能性が出てくるのです。結核は空気感染しますので、発見が遅れるということは、それだけ他の人にうつしてしまう機会が増えてしまいます。また、結核診断前にニューキノロン系抗菌薬を投与した場合、患者自身の死亡リスクが高まるといった報告もあります(van der Heijden YF, et al. Int J Tuberc Lung Dis 2012;16(9): 1162-1167.)。慢性咳嗽においてニューキノロン系抗菌薬を使用する場合は、結核を除外してから使用すべきだと考えます。まずはしっかりした診断が大事です。Q4 その他、気付いたことは?QOLのための鎮咳薬 JITHURYOUさん(病院)小児ではないので可能性は低いですが、百日咳だとするとカタル期※1でマクロライドを使用します。ただ、経過として3週間過ぎていることと、シムビコート®が処方されているので、カタル期ではない可能性が高いです。咳自体は自衛反射で、あまり抑えることに意味がないと言われていますが、本症例では咳が持続して夜間も眠れないことや季肋部※2の痛みなどの可能性もあるので、患者QOLを上げるために、対症療法的にデキストロメトルファンが処方されたと考えます。※1 咳や鼻水、咽頭痛などの諸症状が起きている期間※2 上腹部で左右の肋骨弓下の部分鎮咳薬の連用について 中堅薬剤師さん(薬局)原疾患を放置したまま、安易に鎮咳薬で症状を改善させることは推奨されていません1)。また、麦門冬湯は「乾性咳嗽の非特異的治療」のエビデンスが認められている2)ので、医師に提案したいです。なお、遷延性咳嗽の原因は、アレルギー、感染症、逆流性食道炎が主であり、まれに薬剤性(副作用)や心疾患などの要因があると考えています。話は変わりますが、開業医の適当な抗菌薬処方はずっと気になっています。特にキノロン系抗菌薬を安易に使いすぎです。高齢のワルファリン服用患者にモキシフロキサシンをフルドーズしようとした例もありました。医師の意図 中西剛明さん(薬局)自身の体験から、マイコプラズマの残存する咳についてはステロイドの吸入が効果的なことがあると実感しています。アレルギーがなかったとしても、マイコプラズマ学会のガイドラインにあるように、最終手段としてのステロイド投与(ガイドラインでは体重当たり1mg/kgのプレドニゾロンの点滴ですが)は一考の余地があります。また、マイコプラズマ学会のガイドラインにも記載がありますが、このケースがマイコプラズマであれば、マクロライド系抗菌薬の効果判定をするため、3日後に再受診の必要があるので3日分の処方で十分なはずです。ステロイド吸入が適切かどうか議論のあるところですが、シムビコート®を処方するくらいですから医師は気管支喘息ということで治療をしたのだと考えます。Q5 患者さんに何を説明する?抗菌薬の患者さんに対する説明例 清水直明さん(病院)「咳で悪さをしているばい菌を殺す薬です。ただし、必ずしもばい菌が悪さをしているとは限りません。この薬(CAM)には、抗菌作用の他にも気道の状態を調節する作用もあるので、7日分しっかり飲み切ってください。」CAMの副作用 キャンプ人さん(病院)処方された期間はきちんと内服すること、副作用の下痢などの消化器症状、味覚異常が出るかもしれないこと。抗菌薬を飲み切る 中堅薬剤師さん(薬局)治療の中心になるので、CAMだけは飲み切るよう指示します。また、副作用が出た際、継続の可否を主治医に確認するよう話します。別の医療機関にかかるときの注意 ふな3さん(薬局)CAMを飲み忘れた場合は、食後でなくてよいので継続するよう説明します。また、別の医師にかかる場合は、必ずCAMを服用していることを話すよう伝えます。後日談本症例の患者は、1週間後の再診時、血液検査の結果に異常は見られなかったが、ハウスダストのアレルギーがあることが分かり、アレルギー性咳嗽(咳喘息)と診断された。初診後3日ほどで、咳は改善したそうだ。医師からはシムビコート®の吸入を続けるよう指示があり、新たな処方はなされなかった。もし咳が再発したら受診するよう言われているという。1)井端英憲、他.処方Q&A100 呼吸器疾患.東京、南山堂、2013.2)日本呼吸器学会.咳嗽に関するガイドライン第2版.[PharmaTribune 2016年11月号掲載]

712.

喫煙が日本人労働者の死亡率に及ぼす影響

 わが国の職域多施設研究(Japan Epidemiology Collaboration on Occupational Health Study:J-ECOHスタディ)で、労働人口における喫煙・禁煙の死亡率への影響を調べたところ、喫煙が全死亡・心血管疾患(CVD)死亡・タバコ関連がん死亡のリスク増加と関連していた。また、この死亡リスクは禁煙後5年で減少していた。Circulation Journal誌オンライン版2018年9月12日号に掲載。 本調査の対象は、J-ECOHスタディに参加した20~85歳の日本人労働者7万9,114人で、死亡診断書や病気休暇書類などから、死亡および死亡原因を同定した。ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)はCox比例ハザード回帰により推定した。 主な結果は以下のとおり。・最大6年間の追跡期間中、252人が死亡した。・現在喫煙者の非喫煙者に対する全死亡・CVD死亡・タバコ関連がん死亡の多変量補正HR(95%CI)は順に、1.49(1.10~2.01)、1.79(0.99~3.24)、1.80(1.02~3.19)であった。・現在喫煙者では、全死亡・CVD死亡・タバコ関連がん死亡のリスクは、タバコ消費量の増加に伴って増加した(傾向のp<0.05)。・過去喫煙者の非喫煙者に対する全死亡のHR(95%CI)は、ベースラインまでの禁煙期間が5年未満で1.80(1.00~3.25)、5年以上で1.02(0.57~1.82)であった。

713.

禁煙は「徐々に」でなく「一気に」の裏付け/JAMA

 喫煙者において、タバコのニコチン含有量を即時に減らすほうが、緩徐に減らすよりも、喫煙毒性曝露バイオマーカー値の低下は一貫して有意に大きいことが明らかにされた。また、緩徐に減量した場合とニコチン含有量を減量しなかった場合の同マーカー値には、有意差がなかった。米国・ミネソタ大学のDorothy K. Hatsukami氏らによる二重盲検無作為化並行群間比較試験の結果で、JAMA誌2018年9月4日号で発表された。米国内で販売されているすべてのタバコについて、ニコチン含有量を最小限または中毒性のないレベルにまで減量するための最適な時間的アプローチは、これまで検証されていなかったという。3つの毒性曝露バイオマーカー値で、減量効果を評価 研究グループは、毒性曝露バイオマーカーを用いて、ニコチン含有量を極度低値に低下することの即時vs.緩徐の有効性を検討し、また通常量維持の場合と比較した。試験は全米10地点で、2週間のベースライン喫煙期間に続いて、20週間の介入を行った。 2014年7月~2016年9月に、30日以内に禁煙する意思がなく毎日喫煙しているボランティア被験者を集めて、次の3群に割り付けて追跡した。(1)タバコのニコチン含有量を0.4mg/gへと即時に減量(即時低下群)、(2)5ヵ月かけて15.5mg/gから0.4mg/gへと徐々に減量(緩徐低下群)、(3)15.5mg/g量を維持(対照群)。最終フォローアップは2017年3月であった。 主要評価項目は3つで、呼気一酸化炭素(CO)、尿中3-HPMA(アクロレイン代謝物)、尿中PheT(多環芳香族炭化水素)の喫煙毒性曝露バイオマーカー値。介入20週の間の、濃度-時間曲線下面積(AUC)を算出して評価した。緩徐群と維持群には有意差みられず 1,250例(平均年齢45歳、女性549例[44%])が無作為化を受け、958例(77%)が試験を完了した。 即時低下群は緩徐低下群と比べて、CO値は有意に低値であった(平均値:16.17 vs.20.06ppm、補正後平均群間差[MD]:-4.06[95%信頼区間[CI]:-4.89~-3.23]、p<0.0055)。3-HPMA(クレアチニン幾何平均[GM]値:6.05 vs.7.26nmol/mg、補正後GM比[RGM]:0.83[95%CI:0.77~0.88]、p<0.0055)、PheT(同:2.06 vs.2.16pmol/mg、0.88[0.83~0.93]、p<0.0055)についても同様であった。 また、即時低下群は対照群との比較においても、3つのマーカー値が有意に低値であった。平均CO値は16.17 vs.19.68ppm(補正後MD:-3.38[95%CI:-4.40~-2.36]、p<0.0055)、3-HPMA(クレアチニンGM値)は6.05 vs.7.67nmol/mg(補正後RGM:0.81[95%CI:0.75~0.88]、p<0.0055)、PheT(同)は2.06 vs.2.41pmol/mg(0.86[0.81~0.92]、p<0.0055)であった。 緩徐低下群vs.対照群では、3つのマーカー値とも有意な差はみられなかった。平均CO値は20.06 vs.19.68ppm(補正後MD:0.68[95%CI:-0.31~1.67)、p=0.18)、3-HPMA(クレアチニンGM値)は7.26 vs.7.67nmol/mg(補正後RGM:0.98[95%CI:0.91~1.06]、p=0.64)、PheT(同)は2.16 vs.2.41pmol/mg(0.98[0.92~1.04]、p=0.52)であった。

714.

英国女性で腹部大動脈瘤(AAA)スクリーニングは無駄(解説:中澤達氏)-918

 英国において、女性に対するAAAスクリーニングプログラムは、男性と同様のデザインでは、費用対効果が得られそうもないという。 スクリーニング介入の費用対効果は、その国の手技料・償還価格に依存している。そして、罹患率、手術成功率にも依存する。さらに、費用対効果も検討時期においてのみ有効である。なぜなら英国の手技料・償還価格も改定されるし、罹患率も低下し、AAA手術に使用するデバイス(ステントグラフトや人工血管)も進化し成績が向上し価格も低下するかもしれない。 一般的に、罹患率が低い、または治療費用が低額である疾患のスクリーニング介入は、医療費総額の低減にはつながりにくい。AAAの場合、女性は男性に比較して罹患率が低く、手術は高額ではあるが破裂緊急手術と定時手術のコスト差が少ない(ICU滞在期間と輸血は高額であるが、使用デバイスは変わらない)ことが原因であろう。 スウェーデン人を対象としたレジストベースのコホート研究でも、AAAスクリーニングは、AAA死亡の減少に寄与していないことが明らかにされていた。これには喫煙の減少によりAAA罹患率低下が関連していた1)。 気になるのが、女性のための修正オプション(70歳時にスクリーニング、AAA診断は大動脈径2.5cm、手術検討は同5.0cmとする)のときの55%にも及ぶ過剰診断率である。過剰診断とは、死亡や合併症リスクを増大した手術が回避可能であるにもかかわらず行われたということだ。普段の診療においても、加齢によるリスク増加に対する不安と瘤を持っているという精神的負担により、手術適応より小さい時期に手術を希望される患者さんもいらっしゃるので、実感としては批判できない。 未病を見つけ指摘してしまうと治療に関連したリスクを上昇させるということは、精神科領域で以前に話題となったdisease mongering(病気の売り込み行為)を想起させられた。

715.

第6回 内科からのオーグメンチン・クラリスロマイシンの処方 (後編)【適正使用に貢献したい  抗菌薬の処方解析】

前編 Q1処方箋を見て、思いつく症状・疾患名は?Q2患者さんに確認することは?Q3 患者さんに何を伝える?副作用と再受診 キャンプ人ペニシリン系の副作用である下痢、発疹、クラリスロマイシンの副作用である下痢について説明します。また、原因菌が不明なので、出張中もきちんと薬を飲んで再度病院へ受診して点滴するように説明します。抗菌薬を決まった時間に服用 奥村雪男オーグメンチン®配合錠に含まれるアモキシシリンがペニシリン系で時間依存であることから、飲み忘れなく定時に服用することが大事であることを説明します。他院受診時に服薬状況を伝えることとアセトアミノフェンの服用方法 ふな3出張先などで体調が急変した場合に備えて、必ずおくすり手帳(もしくは薬情)を携帯して、これらの薬剤を服用していることを受診先でも伝えるように説明します。また、アセトアミノフェンの量が多めなので、高熱や寒気がひどくなければ、1回300mg 1錠でも効果は得られることと、1回2錠で服用する場合にはできれば6時間、最低4時間をあけて、1日2回までの服用にとどめるよう伝えます。飲酒や喫煙を控える JITHURYOU薬剤と同時に飲酒することはもちろん、飲酒も控える(特にアセトアミノフェンと飲酒は代謝が促進され、肝毒性のリスクが上昇する)ことを伝えます。仕事が多忙のようですが、安静にして外出は控えたほうが良いです。咳嗽が誘発されるので当然喫煙は控えるよう伝えます。他者にうつさないように わらび餅仕事を続けるとのことなので、他者にうつさぬよう感染対策(マスクや手洗い、消毒など)をお願いします。原因菌がはっきりしていないので、良くなっても途中で服薬を中断せず、3日以内に再受診するよう説明します。治癒傾向 中西剛明治療の経過で、食欲不振、横になるより起きていたほうが楽、という状況が改善されない場合は「無効」「悪化」を疑わなくてはいけません。眠ることができるようになった、食欲が回復してきたら治癒傾向ですよ、とお話しします。Q4 疑義照会をする?しない?疑義照会するオーグメンチン®配合錠の規格 奥村雪男添付文書上のオーグメンチン®配合錠の用法用量は「1回375mg 分3~4 6~8時間」なので、念のためオーグメンチン®配合錠の規格が125RSでなく250RSで良いか確認します。ただし、原因菌としてペニシリン耐性肺炎球菌を想定して、アモキシシリンを高用量で処方した可能性を踏まえておきます。CYP3A4を基質とする併用禁忌の薬剤を服用していて中止できない場合は、マクロライド系でCYP3A4阻害作用の弱いアジスロマイシンへの変更を提案します。消化器系の副作用予防を考慮 清水直明オーグメンチン®配合錠250RS 6錠/日は添付文書の年齢、症状により適宜増減の範囲内、アモキシシリンは1,500mgと高用量で、S. pneumoniaeを念頭においた細菌性肺炎の治療としては妥当と考えます。ただし、オーグメンチン®配合錠250RSでアモキシシリンを1,500mg投与しようとすると、必然的にクラブラン酸の量も多くなり、消化器系の副作用が出やすくなると思います。小児用ではクラブラン酸の比率を下げた製剤がありますが、成人用ではありません。そのため、オーグメンチン®配合錠250RS 3錠/日+アモキシシリン錠250mg 3錠/日を組み合わせて投与する方が、消化器系副作用の可能性は低くできると思うので疑義照会します(大部分のM. catarrhalisや一部のH. influenzae、あるいは一部の口腔内常在菌は、β-ラクタマーゼを産生しアモキシシリンを不活化する可能性があり、β-ラクタマーゼ阻害薬の配合剤が治療には適しているとされているので、あえてオーグメンチン®配合錠とアモキシシリンの組み合わせを提案します)。クラリスロマイシンについては、非定型肺炎も視野に入れて併用されていますが、M. pneumoniaeについてはマクロライド耐性株が非常に増加しています。しかし、そのような中でもM. pneumoniaeに対しての第1選択はクラリスロマイシンなどのマクロライド系薬であり4)、初期治療としては妥当と考えます。細菌性肺炎であったとしても、マクロライド系薬の新作用※3を期待して併用することで、症状改善を早めることができる可能性があるため併用する意義があると思います。※3 クラリスロマイシンなどのマクロライド系抗菌薬は、抗菌作用の他に、免疫炎症細胞を介する抗炎症作用、気道上皮細胞における粘液分泌調整作用、バイオフィルム破壊作用などをもつことが明らかになっている。保険で査定されないように 中西剛明抗菌薬の2種併用のため、疑義照会をします。医師から見ると「不勉強な薬剤師だ」と勘違いされてしまうかもしれませんが、抗菌薬の併用療法は根拠がない場合、査定の対象になることがあり、過去査定された経験があります。そのため「併用の必要性を理解している」上での問い合わせをします。耐性乳酸菌製剤の追加 中堅薬剤師過去に抗菌薬でおなかが緩くなって飲めなかったことがある場合は、耐性乳酸菌製剤の追加を依頼します。併用禁忌に注意 児玉暁人クラリスロマイシンとの併用禁忌薬を服用していれば、疑義照会をします。クラリスロマイシンの処方日数 ふな3セフトリアキソンを点滴していることから,処方医は細菌性肺炎を想定しつつも「成人市中肺炎診療ガイドライン」から非定型肺炎の疑いも排除できないため、クラリスロマイシンを追加したと考えました。セフトリアキソン単剤では、万一、混合感染であった場合に非定型肺炎の原因菌が増殖しやすい環境になってしまうことが懸念されるため、治療初期からクラリスロマイシンとの併用が望ましいと考えられるので、クラリスロマイシンの処方を4日に増やして、今日からの服用にしなくて良いのか確認します。基礎疾患の有無を確認してから 柏木紀久細菌性肺炎で原因菌が不明の場合を考え、まず「成人市中肺炎診療ガイドライン」に沿って基礎疾患の有無を確認します<表3> 。軽症基礎疾患がある場合のβ-ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリンは常用量と考えられるので、軽度基礎疾患が確認できた場合にはオーグメンチン®配合錠が高用量で良いのか確認します。膿や痰などの培養検査の有無の確認。検査をしていなければ検査依頼をします。基礎疾患がない場合では、細菌性肺炎を考えつつも出張などで他者へ感染させる可能性を考慮して、非定型肺炎や混合感染を完全には排除せずクラリスロマイシンも処方したのでは、などと考えますが、念のためクラリスロマイシンの処方意図を確認します。疑義照会をしないガイドラインに記載有り キャンプ人特にしません。非定型肺炎との鑑別がつかない場合は、「JAID/JSC感染症治療ガイド2014」2)にも同用量の記載があります。協力メンバーの意見をまとめました疑義照会については・・・ 疑義照会をする オーグメンチン®配合錠の消化器系の副作用予防・・・3名抗菌薬の2種併用について・・・2名オーグメンチン®配合錠の規格の確認・・・1名耐性乳酸菌製剤の追加依頼・・・1名併用禁忌薬について・・・1名クラリスロマイシンの処方日数・・・1名基礎疾患に基づいて疑義照会・・・1名 疑義照会をしない 2名1)日本呼吸器学会呼吸器感染症に関するガイドライン作成委員会. 成人市中肺炎診療ガイドライン. 東京、 日本呼吸器学会、 2007.2)JAID/JSC感染症治療ガイド・ガイドライン作成委員会. JAID/JSC感染症治療ガイド2014. 東京, 一般社団法人日本感染症学会, 2015.3)日本結核病学会. 結核診療ガイドライン 改訂第3版. 東京, 南江堂, 2015.4)「 肺炎マイコプラズマ肺炎に対する治療方針」策定委員会. 肺炎マイコプラズマ肺炎に対する治療指針. 東京, 日本マイコプラズマ学会, 2014.

716.

第5回 内科からのオーグメンチン・クラリスロマイシンの処方 (前編)【適正使用に貢献したい  抗菌薬の処方解析】

Q1 予想される原因菌は?(協力メンバー12名、複数回答)Haemophilus influenzae(インフルエンザ菌)・・・11名Streptococcus pneumoniae(肺炎球菌)・・・10名Mycoplasma pneumoniae(肺炎マイコプラズマ)・・・9名Moraxella catarrhalis(モラクセラ・カタラーリス)・・・6名Chlamydia pneumoniae(肺炎クラミジア)・・・5名Legionella 属(レジオネラ属)・・・2名Staphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)・・・2名細菌性肺炎・非定型肺炎の両方の可能性 奥村雪男オーグメンチン®配合錠が選択されていることから、S. pneumoniae、 H.influenzae(BLPAR※1を含む)、M. catarrhalis。クラリスロマイシンが選択されていることから、M.pneumoniae、 Legionella 属、 C. pneumoniae。市中肺炎であり原因菌が同定されていないため、細菌性肺炎・非定型肺炎の両方の可能性を考え、原因菌として主要な6つの病原体を全てカバーしていると考えます。点滴を行った時点では細菌性肺炎が強く疑われていたようですが、出張となるので非定型肺炎であった場合でも対応できるようにマクロライドが追加され、このような処方になったと考えます。肺炎の重症度は、「成人市中肺炎診療ガイドライン」1)では、A-DROPシステム<表1>のスコアが0→外来治療、1~2→外来または入院、3→入院治療、4~5→ICU入院としているので、入院が望ましいが外来でも可とのことから、1~2に該当する中等度肺炎と予想されます。※1 BLPAR:β-lactamase-positive ampicillin-resistant H. influenzae(β-ラクタマーゼ産生アンピシリン耐性インフルエンザ菌)非定型肺炎の鑑別診断も参考に 荒川隆之一般成人の市中肺炎なので、細菌性肺炎としてはS. pneumoniaeやH. influenzae、 M. catarrhalis、非定型肺炎としてはM. pneumoniaeやC. pneumoniae、Legionella 属などを想定します。「成人市中肺炎診療ガイドライン」の細菌性肺炎と非定型肺炎の鑑別<表2>を参照すると、この患者さんの場合、1~5の5項目中1、2、5を満たすと考えれば、非定型肺炎を疑う必要もあります。結核菌の可能性も 中西剛明外来なので市中肺炎の3 大原因菌( S. pneumoniae、 H. influenzae、 M.pneumoniae)の中から絞り込みます。尿検査をしているので、S. pneumoniaeの可能性は低い(尿中肺炎球菌抗原で原因菌の絞り込みが可能)、血液検査でマイコプラズマ抗体の検査が可能なこと、1週間点滴に通うようにと提案されている(M. pneumoniaeに感受性のある点滴はミノサイクリンくらいしか外来治療では使えない)ことから、H. influenzaeを疑います。それも、耐性菌の可能性を念頭に、BLPAR/BLNAR※2の線が濃厚です。処方日数が3日なのは、原因菌の特定が完全ではないこと、感受性試験の結果を見て薬剤を変更する余地を残していることが考えられます。加えて、結核の除外診断はついていないと予想できます。もし医師が結核の可能性がないと判断していれば、BLPAR/BLNARに対してレボフロキサシン単剤で処方2)していたでしょう。なお、結核疑いのままレボフロキサシンなどのキノロン系薬単剤で治療を開始することは、「結核診療ガイドライン」3)では禁忌事項に記載されています。※2 BLNAR:β-lactamase-negative ampicillin-resistant H. influenzae(β-ラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性インフルエンザ菌)複数の原因菌が混合している可能性も 柏木紀久喀痰検査が行われず、血液検査、尿検査を行った上での処方なので、細菌性肺炎か非定型肺炎か明らかでなかったか、または混合感染の可能性も考えますが、セフトリアキソンの点滴を行っているので原因菌不明の細菌性肺炎を主に想定していると考えます。Q2 抗菌薬について、患者さんに確認することは?併用薬と抗菌薬での副作用歴 中堅薬剤師併用薬と、今まで抗菌薬で副作用がなかったか。アレルギーと抗菌薬服用による下痢の経験 柏木紀久ペニシリンアレルギーと、抗菌薬の服用で下痢になったことがあるか。再受診と毎食後に服用可能か ふな33日後の再受診についてどのように指示されているか。食欲・嘔気の有無、食事は規則的か=毎食後で飲めるか。検査結果、既往歴、抗菌薬使用歴 佐々木康弘検査結果について確認したいです。Legionella属、M. pneumoniae、S. pneumoniaeの検査結果は抗菌薬選択に大きく影響します。既往歴や抗菌薬使用歴も確認したいです。気管支拡張症や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの既往歴があれば、Pseudomonas aeruginosa(緑膿菌)も想定した抗菌薬治療が必要ですし、抗菌薬治療していて増悪している場合はニューキノロン系薬剤の使用も考慮します。インフルエンザウイルスへの先行感染 奥村雪男受診時期が冬季であれば、インフルエンザウイルスへの先行感染が無かったか確認したいです。その場合は原因菌としてS. aureusを想定する必要があります。ただ、メチシリン感受性S. aureusであれば、オーグメンチン®配合錠で治療可能と考えます。職業や活動範囲などの情報収集 JITHURYOU患者インタビューの質を上げて、できるだけ多くの情報を得られるよう努めます。喫煙習慣、職業温泉や湖や沼などに最近行ってないか?(Legionella属鑑別)家族など周囲に咳が強く出ている人がいないか?(患者の年齢だと10~20代の子供がいる可能性があり、その年代は比較的M. pneumoniaeが多いとされている)鳥との接触はあるか?(オウム病鑑別)併用している抗菌薬の確認のため、ヘリコバクター・ピロリ除菌療法を受けているか、COPDなどの呼吸器系基礎疾患があるか(マクロライド長期療法を受けている可能性を考慮)後編では、本症例の患者さんに何を伝える、疑義照会をする/しない 理由を聞きます。1)日本呼吸器学会呼吸器感染症に関するガイドライン作成委員会. 成人市中肺炎診療ガイドライン. 東京、 日本呼吸器学会、 2007.2)JAID/JSC感染症治療ガイド・ガイドライン作成委員会. JAID/JSC感染症治療ガイド2014. 東京, 一般社団法人日本感染症学会, 2015.3)日本結核病学会. 結核診療ガイドライン 改訂第3版. 東京, 南江堂, 2015.4)「 肺炎マイコプラズマ肺炎に対する治療方針」策定委員会. 肺炎マイコプラズマ肺炎に対する治療指針. 東京, 日本マイコプラズマ学会, 2014.[PharmaTribune 2015年12月号掲載]

717.

7つの生活習慣、心血管にも認知機能にも好影響/JAMA

 フランス・ボルドー大学のCecilia Samieri氏らは、米国心臓協会(AHA)が推奨する7つの生活習慣(ライフ シンプル7)を用いて定義した心血管の健康レベルと、高齢者の認知症および認知機能低下のリスクとの関連性を検証する65歳以上の地域住民を対象としたコホート研究(The Three-City[3C] Study:3C研究)において、ライフ シンプル7の実行項目数の多さと心血管健康スコア高値は、認知症リスクおよび認知機能低下率の低さと関連していることを明らかにした。著者は、「認知機能低下や認知症と関連するリスク因子を予防するため、心血管の健康増進が望まれる」とまとめている。これまで、心血管の健康レベルと認知症リスクとの関連に関するエビデンスは限られていた。JAMA誌2018年8月21日号掲載の報告。65歳以上対象に、心血管健康レベルと認知症/認知機能との関連を評価3C研究は、フランスのボルドー、ディジョンおよびモンペリエの3都市で行われた。対象は、ベースラインで心血管疾患または認知症の既往がなく、1999年1月~2016年7月に、神経心理学検査と認知症発症の系統的検出を複数回受けた65歳以上の高齢者(最終追跡日は2016年7月26日)。 心血管健康レベルについて、推奨される最適水準でのライフ シンプル7(非喫煙、BMI<25、運動習慣あり、魚を週2回以上および野菜や果物を1日3回以上摂取、コレステロール値<200mg/dL[未治療]、空腹時血糖<100mg/dL[未治療]、血圧<120/80mmHg[未治療]:スコア範囲は0~7)の実行項目数と、心血管健康スコア(範囲:0~14点、7項目の測定レベルで不良[0]、中程度[1]、最適[2])で評価した。 主要評価項目は、専門委員会によって確認された認知症発症、ならびに全認知機能の複合スコアの変化(4つの認知機能検査のzスコアの平均値として計算、母集団平均と等しい場合を0、平均より1SD高値を+1、1SD低値を-1と表記)とした。心血管健康レベルが高いと、認知症発症リスクが低く認知機能低下が少ない 解析対象は6,626例(平均年齢73.7歳、女性4,200例[63.4%])で、ベースラインでライフ シンプル7の実行項目数が0~2は2,412例(36.5%)、3~4が3,781例(57.1%)、5~7が433例(6.5%)であった。 平均追跡期間8.5年(範囲:0.6~16.6)において、745例が認知症を発症した。ライフ シンプル7の実行項目数が0~1の場合の100人年当たり認知症発症率は1.76であったのに対し、2項目の場合の認知症発症率絶対差は100人年当たり-0.26(95%信頼区間[CI]:-0.48~-0.04)、3項目で-0.59(95%CI:-0.80~-0.38)、4項目で-0.43(95%CI:-0.65~-0.21)、5項目で-0.93(95%CI:-1.18~-0.68)、6~7項目で-0.96(95%CI:-1.37~-0.56)であった。 多変量モデル解析の結果、認知症発症のハザード比は、ライフ シンプル7の1項目追加当たり0.90(95%CI:0.84~0.97)、全認知機能スコアの1点増加当たり0.92(95%CI:0.89~0.96)であった。また、全認知機能スコアはライフ シンプル7の実行項目数が1追加ごとに、ベースラインで0.031(95%CI:0.009~0.053)、6年時で0.068(95%CI:0.045~0.092)、12年時で0.072(95%CI:0.042~0.102)高かった。〔9月3日 記事の一部を修正いたしました〕

718.

禁煙後の体重増加、死亡リスクへの影響は?/NEJM

 禁煙後の体重増加が、禁煙によるベネフィットを減弱させるかは不明とされる。米国・ハーバード大学公衆衛生大学院のYang Hu氏らは、3つのコホート研究のデータを解析し、体重増加は短期的な2型糖尿病のリスクを増大させるものの、禁煙による心血管イベントや死亡の抑制効果には影響しないことを示した。研究の成果は、NEJM誌2018年8月16日号に掲載された。禁煙により主要な慢性疾患のリスクが軽減し、余命の延長がもたらされるが、顕著な体重増加を来す場合があり、食欲の増進やエネルギー消費の低下に起因する可能性が指摘されている。体重増加は、禁煙の意欲を失わせ、心血管代謝疾患や早期死亡のリスクが増加することで、禁煙の健康ベネフィットが減弱する可能性が示唆されている。禁煙後6年の体重増加の、糖尿病、死亡リスクへの影響を評価 研究グループは、禁煙後の体重の変化に伴う疾患や死亡のリスクの推移を検討した(米国国立衛生研究所[NIH]の助成による)。 米国の男女を含む3つのコホート研究(Nurses' Health Study[NHS]、NHS II、Health Professionals Follow-up Study[HPFS])から、禁煙の報告のある参加者を同定し、喫煙状況と体重の変化を前向きに調査した。 被験者は、喫煙、禁煙(禁煙期間が2~6年)、長期禁煙(禁煙期間が6年超)、一過性禁煙、生涯非喫煙に分けられた。今回は、禁煙後6年間の体重の変化に焦点を当て、禁煙群を体重増加なし(不変および減少)、0.1~5.0kgの増加、5.1~10.0kgの増加、>10.0kgの増加に分類した。禁煙後の体重の変化の程度別に、2型糖尿病、心血管死、全死因死亡のリスクを評価した。体重増加がない禁煙者は、長期に死亡リスクが低下 ベースラインの喫煙群および4つの禁煙群の平均年齢は52.2~56.1歳、平均BMIは23.4~26.4であった。平均フォローアップ期間は19.6年で、この間に1万2,384例が2型糖尿病を発症し、2万3,867例が死亡(心血管死5,492例を含む)した。 全体の2型糖尿病のリスクは、禁煙群が喫煙群に比べ高かった(ハザード比[HR]:1.22、95%信頼区間[CI]:1.12~1.32)。2型糖尿病のリスクは禁煙後5~7年時にピークに達し、その後は徐々に低下した。この一時的なリスクの増加は、体重増加の程度と比例し、体重増加のない禁煙者ではリスクは増加しなかった(交互作用:p<0.001)。禁煙後6年間で2型糖尿病リスクは68.4%増加した。 これに対し、禁煙群では、禁煙後の体重の変化の程度にかかわらず、一時的な死亡リスクの増加は認めなかった。喫煙群と比較した心血管死のHRは、体重増加のない禁煙者が0.69(95%CI:0.54~0.88)、体重増加が0.1~5.0kgの禁煙者が0.47(0.35~0.63)、5.1~10.0kgの禁煙者が0.25(0.15~0.42)、>10.0kgの禁煙者が0.33(0.18~0.60)であり、長期禁煙者は0.50(0.46~0.55)だった。 喫煙群と比較した全死因死亡のHRには、心血管死とほぼ同様の関連が認められ、それぞれ0.81(95%CI:0.73~0.90)、0.52(0.46~0.59)、0.46(0.38~0.55)、0.50(0.40~0.63)、0.57(0.54~0.59)であった。 心血管死のリスクは、禁煙後持続的に低下し、10~15年後に最低値に達した後、緩徐に増加したが、喫煙者のレベルに到達することはなかった。このような関連のパターンが、体重が増加したすべての禁煙者にみられたが、体重が増加しなかった禁煙者は10~15年以降もリスクが低下し続け、その後、上昇傾向をみせずにプラトーに達した。 全死因死亡のリスクは、禁煙後5~7年まで単調に減少し、その後プラトーに達した。このパターンは、体重が増加したすべての禁煙者にみられたが、体重が増加しなかった禁煙者は、禁煙以降、直線的にリスクが低下した。 著者は、「以前の複数の研究で、禁煙後の2型糖尿病リスクの短期的な上昇を示唆する結果が示されており、今回の研究結果はこれらの知見と一致する」としている。

719.

潰瘍性大腸炎〔UC : ulcerative colitis〕

1 疾患概要■ 概念・定義潰瘍性大腸炎は、クローン病とともに炎症性腸疾患の1つで、主に粘膜および粘膜下層を侵し、しばしばびらんや潰瘍を形成する大腸の原因不明のびまん性非特異性炎症である。■ 疫学欧米に多く、白人とくにユダヤ系での発症が多いとされる。日本を含めた東アジアでも増加の一途をたどっている。難病であることから、わが国では指定難病に指定されており、患者数は20万人以上とされ、さらに毎年1万人程度増加している。性差はみられず、発症年齢は10代後半~30代に多く、25~29歳にピークがみられる。■ 病因発症原因はいまだ不明であるが、研究は飛躍的に進み、これまでの免疫学的な研究をはじめ、近年「genome-wide association study(GWAS)」により160以上の疾患関連遺伝子が特定され、また発症に関連する腸内細菌についても多くのことがわかり始めている。遺伝的素因、環境因子を背景に腸内細菌の影響の存在のうえで免疫異常を来し、腸管での免疫寛容が破綻することで慢性腸炎を誘導する。潰瘍性大腸炎ではクローン病とは対照的に、喫煙者の発症リスクは低い。発症自体とストレスの関連性は立証されていない。■ 症状主症状は粘血便(40%)、下痢(40%)、腹痛(30%)で、発熱や出血に伴う貧血もみられる。合併症は長期経過例での発がん、腸管外合併症として原発性硬化性胆管炎、仙腸関節炎や強直性脊椎炎などの関節炎、結節性紅斑や壊疽性膿皮症などの皮膚病変などがある。また、重症例では血栓傾向を認め、静脈血栓症のリスクがある。■ 分類治療法を選択するうえで、病期・病型(病変の広がり)・重症度を分類することが重要である。活動期か寛解期か、活動期であれば重症度(軽症〔63%〕・中等症〔28%〕・重症〔3%〕)(表1)および内視鏡所見(軽度・中等度・強度)(図1)はどうか、そして病型(直腸炎型〔22%〕、左側大腸炎型〔27%〕、全大腸炎型〔38%〕、右側あるいは区域性大腸炎)によっては局所製剤の適応を考慮することとなる。そのほか、臨床経過により再燃寛解型、慢性持続型、急性劇症型、初回発作型に分類される。難治性潰瘍性大腸炎の定義は、厳格なステロイド療法にありながらステロイド抵抗例あるいはステロイド依存例、またステロイド以外の厳密な内科治療下にありながら、再燃を繰り返すか慢性持続型を呈するものとされる。画像を拡大する画像を拡大する■ 予後治療介入の影響があるため、潰瘍性大腸炎の自然史は不明な点が多いが、炎症性腸疾患の自然治癒率は10%とされる。また、長期経過において50%は病状が安定していく。全大腸切除率は、欧米のコホート研究では発症1年で10%、2年目で4%、以降1年ごとに1%増加し、わが国では10年後の累積手術率は15%、とくに全大腸炎型では40%と高率である。死亡率についてはメタ解析によると、標準化死亡率は1.1で一般と差がない。炎症型発がんに起因する大腸がんの発生は、発症8年で1.6%、20年で8%、30年で18%と増加し、全大腸炎型に多いが、治療の進歩により近年では発がん率が減少しているとする報告もある。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)診断において最も重要なのが、病歴の聴取である。慢性の下痢・粘血便で潰瘍性大腸炎を疑い、病歴や細菌検査などで腸結核やアメーバ性大腸炎を含めた感染性腸炎・放射線照射性大腸炎・薬剤性大腸炎・虚血性大腸炎などを除外する。次に大腸内視鏡検査を行い、特徴的な病変を確認し生検を併用する。内視鏡所見では、直腸から連続する全周性・びまん性の活動性炎症を認め、粘膜浮腫による血管透見消失から細顆粒状粘膜、膿性粘液が付着し、易出血性、びらん・潰瘍形成、広範な粘膜の脱落と炎症の強度が上がる。病理組織検査では、慢性炎症の所見があるかないかで炎症性腸疾患か否か判別し、そうであれば潰瘍性大腸炎かクローン病かを検討する。これらの所見で総合的に判断するが、クローン病や腸型ベーチェットの鑑別も重要である。診断の確定は診断基準(表2)に照らし合わせて行う(図2)。画像を拡大する画像を拡大する「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班(鈴木班).平成29年度分担研究報告書.潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針 平成29年度改訂版 別冊.2018.3 治療 (治験中・研究中のものも含む)治療は、寛解導入療法とその後の寛解維持療法の双方を考えながら選択していく。厚生労働省難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班(鈴木班)の潰瘍性大腸炎治療指針を示す(表3)。寛解導入療法は、臨床的重症度と病型によって選択される(図3)。重症例や全身状態が不良な中等症では、入院のうえ、全身管理を行いながら治療をする。近年、重症例や難治例に対しタクロリムス(商品名:プログラフ)やインフリキシマブ(同:レミケード)、アダリムマブ(同:ヒュミラ)、ゴリムマブ(同:シンポニー)(図4)、さらには2018年にトファシチニブ(同:ゼルヤンツ)、ベドリズマブ(同:エンタイビオ)と新たな治療の選択肢が増えたが、効果不十分な場合に次々と別の治療法を試すのには慎重であるべきで、外科治療のタイミングを誤らないようにすることが重要である。画像を拡大する「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班(鈴木班).平成29年度分担研究報告書.潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針 平成29年度改訂版 別冊.2018.画像を拡大する「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班(鈴木班).平成29年度分担研究報告書.潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針 平成29年度改訂版 別冊.2018.画像を拡大する「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班(鈴木班).平成29年度分担研究報告書.潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針 平成29年度改訂版 別冊.2018.重症例やステロイド抵抗例・依存例つまり難治例において、タクロリムスやインフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリムマブ、シクロスポリン、トファシチニブ、ベドリズマブを使用する際は、専門施設での施行が望ましい。ステロイド、抗TNFα抗体や免疫調節薬を使用する際は、肝臓学会のガイドラインに沿ってHBV再活性化に対するサーベイランスが必要である。また、入院中の絶食は治療効果に影響しないばかりでなく栄養状態の悪化を招き、回復の遅延や術後合併症のリスクとなるため、大量出血や高度な腹痛などの超急性期以外は安易に選択するべきではない。維持治療においては、十分量を長期に使用することが重要で、いずれの維持治療においても薬剤中止後1年で50%が再燃するため、特段の事情がない限りは中止するべきではない。また、再燃の最大のリスクは、服薬アドヒアランスの低下であり、十分な服薬指導と定期的な確認が重要である。1)5アミノサリチル酸(5-ASA)製剤サラゾスルファピリジン(商品名:サラゾピリンほか)、メサラジン(同:ペンタサ、アサコール、リアルダ)が、わが国で使用できる5-ASA製剤である。炎症性腸疾患治療の基準薬であり、50~80%の寛解導入効果がある。また、寛解維持にも優れ、十分量を長期に使用することが重要である。4g/日以上の高用量導入が可能になり、ステロイドの投与を避けられる症例が増えた。まれに導入後・増量後に発熱・下痢を来すことがあるので5-ASAアレルギーを疑い、5-ASAでの維持が困難な場合は、後述の免疫調節薬にて維持治療を行うことになる。分割投与よりも1回または2回での投与のほうが、服薬アドヒアランスのみならず効果としても優れる可能性があり、2g/日では分1投与が認められている。また、リアルダは4.8g/日の1回投与製剤であり、より高用量の投与ができかつアドヒアランスの面でも有用である。直腸病変や遠位大腸病変には局所製剤の単独ないし併用が有用である。2)ステロイド寛解導入療法として中心的な薬剤であり、十分量の5-ASA製剤で効果不十分 な場合はステロイドの全身投与を行う。短期的には84%で有効である。しかし、離脱率は50%のみで、30%は手術、20%はステロイド依存となっていた。中等症では30~40mg経口投与を行い、1~2週間で効果判定を行う。重症潰瘍性大腸炎においては、ステロイド1~1.5mg/kgの静注療法を行うことで、約半数で寛解導入が可能である。さらに増量したとしても効果の増強は認めず副作用の危険のみが増すことが知られている。ステロイドが無効または効果不十分な場合は、ステロイド抵抗例として難治例の治療を行うことになる。維持療法としてのエビデンスはなく、寛解導入後は3~4ヵ月を目安に漸減・中止し、5-ASA製剤等での寛解維持療法へ移行する。漸減中の再燃または中止後早期の再燃を認める場合は、ステロイド依存例として免疫調節薬での寛解維持療法を行うことが望ましい。坐剤や注腸といった局所製剤は5ASA製剤が第1選択とされるが、ブデソニド注腸フォーム剤(同:レクタブル注腸フォーム)は他の注腸製剤より忍容性が高く、またブデソニドであるためステロイドによる副作用も軽減できるとされる。3)免疫調節薬アザチオプリン〔AZA〕(同:イムラン、アザニン)、メルカプトプリン〔6-MP〕(同:ロイケリン/保険適用外)。効果発現に1~3ヵ月を要するため、急速な寛解導入には向かず、主に寛解維持治療に使用する。約60%の良好な寛解維持率を認め、ステロイド減量効果も明らかとなっておりステロイド依存例の寛解維持治療に重要である。不耐症例があるため、導入初期は短期間でのモニタリングが必要である。適正投与量は個体によって異なるため、少量から開始し、WBC 3,000~4,000/μL程度への減少を目安にAZA 2~2.5mg/kg、6-MP 1~1.5mg/kgを目処に増量を試みる。感染症のリスクは、ステロイドに比較すると低い。4)タクロリムス(同:プログラフ)化合物としてはまったく異なるが、シクロスポリンと同様にカルシニューリン阻害剤として作用し、IL-2やIFN-γなどのサイトカイン産生を抑制する。わが国で開発された薬剤で、中等症~重症の潰瘍性大腸炎においてRCT(無作為化比較試験)で68%と高い改善率が認められた。添付文書の導入法では、目標血中トラフに到達するのに比較的長期間を要するため、専門施設を中心に速やかに上昇させる工夫がなされている。食前や絶食下での経口投与、高用量導入、また一部施設では持続静注によって急速に血中濃度を上昇させ、速やかな効果発現を得ている。寛解維持効果も示唆されているが、原則として3ヵ月を目安に中止するため、寛解導入後は免疫調節薬での寛解維持が望ましい。5)シクロスポリン(同:サンディシュン、ネオーラル / 保険適用外)タクロリムス同様カルシニューリン阻害剤として作用する。シクロスポリン持続静注は、ステロイド抵抗性の重症潰瘍性大腸炎に対し有効率は70~80%と高いが、長期成績は3年後の手術率50%、7年後88%と不良で、シクロスポリンで寛解導入した場合は、寛解維持に免疫調節薬が必要である。タクロリムスと異なり腸管からの吸収が安定しないため、経口投与での血中濃度の維持が困難であり、シクロスポリンでの寛解維持はできない。6)抗TNFα抗体製剤(インフリキシマブ〔レミケード®〕、アダリムマブ〔ヒュミラ®〕、ゴリムマブ〔シンポニー®〕)寛解導入および寛解維持に用いる。大規模なRCTの結果、抗TNFα抗体であるインフリキシマブがクローン病、関節リウマチなどに続き、認可された。既存治療抵抗性の中等症~重症潰瘍性大腸炎に対し、導入8週で69%の有効率、38.8%の寛解導入率を認め、30週で34%の寛解維持効果を示した。クローン病と同様に5mg/kgを0週、2週、6週で投与し、以降は8週毎の投与となる。潰瘍性大腸炎においては、効果減弱の際の倍量投与は認められていない。また、2013年6月ヒト抗体のアダリムマブが、潰瘍性大腸炎にも認可され、初回は160mg、2週後に80mg、以降は2週毎に40mgの皮下注射を行うが、これは自己注射が可能である。さらに2017年3月に4週間毎の皮下注射製剤であるヒト抗体のゴリムマブが適用追加となった。いずれの薬剤も導入前に胸部単純X線検査(必要に応じて胸部CT検査)、ツ反、IFN-γ遊離試験(IFN-γ release assay 〔IGRA〕: クオンティフェロン、TSPOTなど)で結核の感染を否定する必要がある。7)JAK阻害薬(トファシチニブ〔同:ゼルヤンツ〕)寛解導入および寛解維持に用いる。シグナル伝達分子をターゲットとした経口JAK阻害薬である。低分子化合物で、抗体製剤ではないため抗薬物抗体の産生による効果減弱は回避でき、また製造コストの抑制も可能である。既存治療抵抗性の潰瘍性大腸炎に対する第3相試験において、8週で約60%の改善率と18%の寛解導入率という有効性が示され、2018年5月に潰瘍性大腸炎に対して適用拡大となった。寛解維持率は、寛解導入試験で有効性を示した症例で52週の時点で34~40%の症例で寛解維持が得られた。なお、抗TNFα抗体製剤未使用例では寛解導入率25%で無効・効果減弱・不耐例では12%で、寛解維持率はそれぞれ5mg1日2回で27%、41%、10mg1日2回で37%、45%であった。投与法は1回10mgを1日2回、8週間投与し、効果不十分な場合はさらに8週間投与が可能である。寛解維持療法としては1回5mgを1日2回投与だが10mgを1日2回に増量することができる。なお、治験ではアジア人の比較的高齢者においてヘルペス感染症の発症が多く、注意が必要である。8) 抗α4β7インテグリン抗体(ベドリズマブ〔同:エンタイビオ〕)炎症細胞の腸管へのホーミングを阻害することで、炎症を抑制する。潰瘍性大腸炎に対する第3相試験であるGEMINI 1で47%の改善率と17%の寛解導入効果、52週において40~45%の寛解維持効果が示され、2014年に欧米で承認・発売となった。わが国においても臨床試験が行われ、2018年7月に承認された。300mgを0週、2週、6週で投与し、以降は8週毎の投与となる。腸管選択性が高いため、全身の免疫への影響が低いと考えられており、安全性に期待されている。薬理機序上効果発現はやや遅い印象があるが、寛解維持率が高く寛解維持療法における新たな選択肢として期待される。9)血球成分除去療法わが国で開発された白血球除去療法は、ステロイド抵抗例・依存例で保険適用とされ、使用されている。高用量のステロイドを要するような症例では、白血球除去療法を併用することで、より高い効果が期待でき副作用も少ないことが報告されている。しかし、海外での質の高いエビデンスは少ない。10)外科治療大腸穿孔、大量出血、中毒性巨大結腸症、重症・劇症で内科治療抵抗例、大腸がんおよびhigh grade dysplasia合併例では摘出手術の絶対的手術適応である。相対的手術適応例は、内科治療では寛解維持困難でQOLが保てない、または薬剤不耐などの難治例、内科治療抵抗性の壊疽性膿皮症など腸管外合併症例、狭窄や瘻孔、low grade dysplasiaなどの大腸合併症例である。術式は、大腸全摘・回腸嚢肛門吻合術(IAA)や大腸全摘・回腸嚢肛門管吻合術(IACA)が標準術式である。術後に回腸嚢炎を合併することがある。多くの報告で術後のQOLを評価しているが、いずれも術後数年でのQOLは良好である。4 今後の展望現在、創薬業界では生物製剤をはじめ分子標的薬が花盛りであり、炎症性腸疾患の分野も同様である。インフリキシマブが口火を切った炎症性サイトカインをターゲットとした抗体製剤や、接着分子をターゲットとし病原性リンパ球の腸管へのホーミングを阻害し動態制御を行うことで腸炎を抑制する薬剤、また造血幹細胞移植などが注目されている。新薬の許認可において、これまでいわゆるドラッグ・ラグがあり、有効な薬剤が欧米で使用可能でも、わが国で認可されるのが数年先となるようなことも少なくなかった。しかし近年、炎症性腸疾患の分野においては、多くが国際共同治験となり、ドラッグ・ラグは解消される方向へ向かっている。クローン病でも多くの治験が行われているが、潰瘍性大腸炎に対する今後の展開について述べる。現在臨床試験中あるいは終了している薬剤は、以下のようなものがある。炎症性サイトカインを標的とした薬剤としてJAK阻害薬が開発されている。承認されたトファシチニブに引き続いてJAK1選択性を高めた第二世代のJAK阻害薬であるフィルゴチニブやウパダシチニブなどが開発中である。クローン病において承認された抗IL12/23 p40抗体のウステキヌマブ(同:ステラーラ)は、潰瘍性大腸炎においても臨床試験が進んでおり、また抗IL23 p19抗体であるリサンキツマブやミリキツマブなども臨床試験が進んでいる。腸炎惹起性リンパ球の動態制御を目的とした薬剤も多数開発されている。抗α4β7インテグリン抗体であるベドリズマブに続き、AJM300は、わが国で開発された経口低分子化合物でα4インテグリンを阻害する。102例の潰瘍性大腸炎を対象とした第2相試験で、8週後の有効率62.7%、寛解率23.5%と有意に有効性を示した。低分子化合物であるため低コストで生産でき、抗体製剤のように免疫原性や効果減弱といったリスクを回避できる可能性がある。現在第3相試験中である。皮下注射製剤の抗MAdCAM抗体であるPF-00547659は、消化管組織中に発現するMAdCAMに結合し、インテグリンとの結合を阻害する。潰瘍性大腸炎に対する第2相試験TURANDOTで、12週の寛解率24%と有意な結果が報告された。S1Pおよびその受容体の1つであるS1P1受容体は、リンパ球の二次リンパ組織からの移出に必須の分子であるが、S1P受容体アゴニストはS1P1受容体を強力かつ長期に内在化させることで、リンパ球の動態制御を行い、炎症を抑制する。S1P1およびS1P5受容体に作用するRPC1063が、潰瘍性大腸炎に対する第2相試験TOUCHSTONEにおいて、8週で16.4%の寛解率、58.2%の有効率を示し、現在第3相試験へと移行している。その他、ブデソニドは、ステロイドの全身性の副作用の軽減を目的に、肝臓で速やかに代謝されるようデザインされた局所作用型のステロイドであり、欧米では一般に使用されているが、前述のようにわが国でもクローン病に対する経口薬に続き、本症で経肛門投与のフォーム薬が承認・発売された。また近年、腸内細菌研究の急速な進歩によってプロバイオティクスも再度注目されている。さらに、c.difficile関連腸炎において高い有効性を示し、欧米で認可された糞便微生物移植も炎症性腸疾患への応用が試みられているが、まだ有効性や投与法などに関する十分な大規模データは不足しているのが現状である。5 主たる診療科消化器内科、消化器外科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 潰瘍性大腸炎(一般向けと医療従事者向けのまとまった情報)日本炎症性腸疾患学会(医療従事者向けの研究情報)CCFA - Crohn's and Colitis Foundation of America(米国のIBD団体のサイト:一般利用者向けと医療従事者向けの情報)ECCO - European Crohn's and Colitis Organisation(欧州のIBD団体のサイト:医療従事者向けの研究・診療情報)東京医科歯科大学 潰瘍性大腸炎・クローン病先端治療センター(一般利用者向けの情報)厚生労働省 「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班(一般向けと医療従事者向けのまとまった情報、最新の診断指針・治療指針が公開されている。会員登録をすると「一目でわかるIBD」の閲覧やe-learningも可能)患者会情報IBDネットワーク(IBD患者と家族向けの情報)1)「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班(鈴木班).平成29年度分担研究報告書.潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針 平成29年度改訂版 別冊.2018.2)日本消化器病学会.炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016. 南江堂; 2016.3)渡辺守 編. IBD(炎症性腸疾患)を究める. メジカルビュー社; 2011.4)炎症性腸疾患(第2版)-病因解明と診断・治療の最新知見. 日本臨牀社;2018.公開履歴初回2013年07月04日更新2018年08月28日

720.

世界61ヵ国のタバコ依存症治療ガイドラインの調査

 英国・ノッティンガム大学のKapka Nilan氏らは、世界保健機関(WHO)のタバコ規制枠組み条約(FCTC)第14条およびそのガイドラインに従って、各国のタバコ依存症治療ガイドライン内容を評価し、その内容と国の所得水準との関連性について評価を行った。Addiction誌2018年8月号の報告。 本研究は、2016年3月~7月にオンライン調査にて実施された横断研究。対象国は、以前の調査においてガイドライン策定を表明していた、またはこれまで調査されていなかった77ヵ国(FCTC締約国:68ヵ国、署名国6ヵ国、非締約国:3ヵ国)。ガイドラインの内容、主要な提言、執筆、普及に関する9項目のアンケートを実施した。 主な結果は以下のとおり。・63ヵ国(82%)から回答が得られた。そのうち、61ヵ国はガイドラインを有していた。・大半は、医師(93%)、プライマリケア(92%)、看護師(75%)のためのものであった。・すべてにおいて短時間支援(brief advice)が推奨されており、主な内容は、医療記録に喫煙歴を記録(82%)、ニコチン置換療法(98%)、クイットライン(電話での無料禁煙相談)(61%)、テキストメッセージ(31%)、専門医の集中的な支援(87%)、医療従事者による喫煙しないことの重要性の強い主張(54%)であった。・普及戦略は57%でしか認められず、62%は5年以上更新歴がなかった。・高所得国と比較し、高中所得国のガイドラインでは、クイットラインが推奨される傾向が低く(OR=0.15、95%CI:0.04~0.61)、低中所得国では、専門医の集中的な支援が推奨される傾向が低かった(OR=0.01、95%CI:0.00~0.20)。・ガイドラインの更新は、国の所得水準と正の相関が認められた(p=0.027)。 著者らは「2016年に評価された61ヵ国のタバコ依存症治療ガイドラインのほとんどは、WHO FCTC第14条に則っており、国の所得水準による有意差は認められなかった。しかし、ガイドラインの更新、優れた執筆者の起用、普及戦略の推進において、改善が必要である」としている。■関連記事禁煙補助薬として抗うつ薬は有用なのか統合失調症患者は、なぜ過度に喫煙するのか青年期の喫煙、電子タバコ使用開始とADHD症状との関連

検索結果 合計:1581件 表示位置:701 - 720