サイト内検索|page:95

検索結果 合計:2008件 表示位置:1881 - 1900

1881.

早期乳がんの術後化学療法、どのレジメンが最も有効か?:約10万例のメタ解析

早期乳がんの術後化学療法では、アントラサイクリン系薬剤+タキサン系薬剤ベースのレジメンおよび高用量アントラサイクリン系薬剤ベースレジメンによって乳がん死が約3分の1低下することが、Early Breast Cancer Trialists’ Collaborative Group(EBCTCG)の検討で明らかとなった。乳がんの術後化学療法の効果には差があり、治療法の選択に影響を及ぼす可能性があるという。EBCTCGは、すでに1995年までに開始された試験のメタ解析の結果を報告しているが、用量は考慮されず、タキサン系薬剤は含まれていなかった。Lancet誌2012年2月4日号(オンライン版2011年12月6日号)掲載の報告。1973~2003年に開始された123件、約10万例のメタ解析研究グループは、早期乳がんに対する個々の化学療法レジメンの有用性を比較するために、無作為化試験の患者データを用いたメタ解析を実施した。1973~2003年に開始された全無作為化試験123件の2005~2010年の個々の患者データ(約10万例)を収集した。試験の内訳は、1)タキサン系薬剤(TAX)ベースレジメンと非TAX系薬剤ベースレジメンを比較した33試験(1994~2003年に開始)、2)アントラサイクリン系薬剤(Anth)ベースレジメンとCMF(シクロホスファミド+メトトレキサート+フルオロウラシル)を比較した20試験(1978~1997年に開始)、3)高用量と低用量のAnthベースレジメンを比較した6試験(1985~1994年に開始)、4)多剤併用化学療法と非化学療法を比較した64試験(1973~1996年に開始、種々のAnthベースレジメンに関する22試験およびCMFに関する12試験を含む)。年齢や腫瘍の性状などの背景因子は影響しない用量を固定したAnthベースの対照群に比べ、これにTAXを4コース追加して治療期間を延長した群では、乳がん死が有意に低下した(率比[RR]:0.86、両側検定:2p=0.0005)。同様にTAX 4コースを追加し、対照群も他の薬剤をほぼ2倍の用量を追加してバランスを調整した試験では、有意な差は認めなかった(RR:0.94、2p=0.33)。CMFを対照とした試験では、標準4AC(ドキソルビシン+シクロホスファミド、3週ごと、4コース)と標準CMF(4週ごと、6コース)の乳がん死抑制効果はほぼ同等(RR:0.98、2p=0.67)だったが、標準4ACよりも高用量である3剤併用Anthベースレジメン(CAF[シクロホスファミド+ドキソルビシン+フルオロウラシル、4週ごと、6コース]、CEF[シクロホスファミド+エピルビシン+フルオロウラシル、4週ごと、6コース])は、標準CMFに比べ高い効果を示した(RR:0.78、2p=0.0004)。非化学療法群との比較試験では、CAF(RR:0.64、2p<0.0001)、標準4AC(RR:0.78、2p=0.01)、標準CMF(RR:0.76、2p<0.0001)のいずれのレジメンも、有意に乳がん死抑制効果を改善したが、標準4ACや標準CMFに比べCAFの有効性が優れることが示唆された。すべてのTAXベースまたはAnthベースレジメンに関するメタ解析では、年齢、リンパ節転移の有無、腫瘍径、腫瘍分化度、エストロゲン受容体の状態、タモキシフェンの使用歴による有効性の差はほとんどみられなかった。それゆえ、年齢や腫瘍の性状とは無関係に、TAX+Anthベースまたは高用量Anthベースレジメン(CAF、CEF)は乳がん死を平均で約3分の1低下させることが確認された。著者は、「非化学療法群と比べても、TAX+Anthベースまたは高用量Anthベースレジメンは10年間で乳がん死亡率を約3分の1低下させた。エストロゲン受容体陽性例に適切なホルモン療法を行ってもリスクは変わらなかった」と結論している。(菅野守:医学ライター)

1882.

子宮内容除去術後のhCG高値持続例は経過観察で

胞状奇胎妊娠女性に対する子宮内容除去術から6ヵ月以降もヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)高値が持続する場合、化学療法を行わなくとも、一定の指針に基づいて経過を観察すれば、hCG値は自然に低下する可能性が高いことが、英国Imperial College LondonのRoshan Agarwal氏らの検討で示された。イギリスでは妊娠1,000件当たり1~3件の頻度で全胞状奇胎または部分胞状奇胎がみられ、奇胎妊娠女性には妊娠第1期の膣出血や、血清あるいは尿中hCG値の上昇が認められる。胞状奇胎に対する子宮内容除去術から6ヵ月後もhCG値の上昇がみられる場合は、その価値は下落しつつあるとはいえ、妊娠性絨毛性疾患として化学療法が適応されるという。Lancet誌2012年1月14日号(オンライン版2011年11月29日号)掲載の報告。経過観察群と化学療法群をレトロスペクティブに評価研究グループは、胞状奇胎妊娠に対し子宮内容除去術を施行後もhCG値の上昇が持続する患者に対し、現在でも化学療法は必須か否かを評価するために、レトロスペクティブなコホート試験を実施した。1993年1月~2008年5月までにCharing Cross病院(ロンドン市)を受診し、胞状奇胎の子宮内容除去術から6ヵ月後もhCG高値が持続していた患者を登録した。6ヵ月以降も経過観察のみを続けた患者と、化学療法を施行した患者においてhCG値の正常化率、再発率、死亡率の評価を行った。一定の指針に基づく経過観察は、患者の75%以上でhCG値が正常に帰した場合に臨床的に許容されることとした。hCG値正常化率:98% vs. 80%胞状奇胎の妊婦1万3,960例のうち、子宮内容除去術から6ヵ月以降もhCG値>5IU/Lが持続した患者は76例(<1%)であった。これらの患者のうち経過観察のみを行ったのは66例(87%)で、そのうち65例(98%)が化学療法を受けずにhCG値が自然に正常に帰した。残りの1例は慢性腎不全が原因でhCG値が正常化しなかったが、現在は健康を維持している。化学療法を受けた10例のうち、hCG値が正常化したのは8例(80%)で、残りの2例はhCG値がわずかに高値(6~11 IU/L)を維持したが、それ以上の治療を行わなくとも臨床的な問題は生じなかった。この経過観察群98%、化学療法群80%という正常化率には有意差が認められた(p=0.044)。子宮内容除去術から6ヵ月後のhCG値中央値は、化学療法群よりも経過観察群で有意に低かった(13 IU/L[5~887] vs. 157 IU/L[6~6、438]、p=0.004)が、それ以外の因子は両群間に有意な差はみられなかった。両群ともに死亡例は認めなかった。著者は、「子宮内容除去術から6ヵ月以降もhCG高値が持続する胞状奇胎妊娠女性には、化学療法よりも一定の指針に基づく経過観察が推奨される」と結論し、「化学療法はhCG値345 IU/L以上が持続する場合に考慮すべき」としている。(菅野守:医学ライター)

1883.

腎細胞がんに対するセカンドライン治療の第III相試験、axitinib対ソラフェニブ

新規の分子標的薬であるaxitinibは、進行腎細胞がんに対するセカンドライン治療の標準的治療薬であるソラフェニブに比べ、無増悪生存期間(PFS)を有意に延長し、新たな選択肢となる可能性があることが、米国・Cleveland Clinic Taussig Cancer InstituteのBrian I Rini氏らが行ったAXIS試験で示された。毎年、世界で約17万人が腎細胞がんと診断され、7万2,000人が死亡している。多くが切除不能な進行病変として発見され、局所病変の多くは再発し、化学療法薬やサイトカイン製剤に抵抗性を示す頻度も高い。進行腎細胞がんの治療は分子標的薬の登場によって激変したが、現在まで分子標的薬同士の効果を比較した第III相試験の報告はされていなかった。Lancet誌2011年12月3日号(オンライン版2011年11月4日号)掲載の報告。2つの分子標的薬を直接比較する無作為化第III相試験AXIS試験の研究グループは、第2世代の選択的血管内皮細胞増殖因子(VEGF)受容体阻害薬であるaxitinibと、欧米で転移性腎細胞がんのセカンドライン治療として承認されているVEGF受容体阻害薬ソラフェニブの有用性を比較する無作為化第III相試験を行った。22ヵ国175施設から、ファーストライン治療としてスニチニブ、ベバシズマブ+インターフェロンα、テムシロリムス、サイトカイン製剤を用いた治療を行っても病勢が進行した18歳以上の腎細胞がん患者が登録された。これらの患者が、axitinib(5mg、1日2回)あるいはソラフェニブ(400mg、1日2回)を経口投与する群に無作為に割り付けられた。axitinibは、高血圧やグレード2以上の有害反応が発現しなければ7mg、10mgへと増量してもよいこととした。患者および担当医には治療薬はマスクされなかった。主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)であり、マスクされた独立の画像審査員によって判定され、intention-to-treat解析が行われた。PFS中央値が2ヵ月延長723例が登録され、axitinib群に361例、ソラフェニブ群には362例が割り付けられた。PFS中央値はaxitinib群が6.7ヵ月と、ソラフェニブ群の4.7ヵ月に比べ有意に延長した(ハザード比:0.665、95%信頼区間:0.554~0.812、p<0.0001)。有害事象による治療中止は、axitinib群で4%(14/359例)に、ソラフェニブ群は8%(29/355例)に認められた。最も高頻度にみられた有害事象は、axitinib群が下痢、高血圧、疲労感で、ソラフェニブ群は下痢、手掌・足底発赤知覚不全症候群、脱毛であった。著者は、「axitinibは、ソラフェニブに比べPFSを有意に延長したことから、進行腎細胞がんのセカンドライン治療の選択肢となる可能性がある」と結論し、「現時点では全生存期間(OS)のデータは不十分なため、さらなる追跡を行う予定である」としている。(菅野守:医学ライター)

1884.

選択的ニューロキニン1受容体拮抗型制吐剤 ホスアプレピタントメグルミン(商品名:プロイメンド)

がん化学療法に伴う悪心・嘔吐に対する制吐剤として、選択的ニューロキニン1(NK1)受容体拮抗薬であるホスアプレピタントメグルミン(商品名:プロイメンド点滴静注用150mg、以下プロイメンド)が、2011年12月9日に発売された。本剤は、2009年12月に発売された経口制吐剤アプレピタント(商品名:イメンドカプセル)のプロドラッグ体の注射剤である。がん化学療法における制吐療法の現状と課題抗がん剤の有害事象の1つである悪心・嘔吐は、患者さんのQOLを著しく低下させ、治療継続を妨げる大きな要因となる。その発現時期により、抗がん剤投与後24時間までに発症する「急性」の悪心・嘔吐と、24時間以降に発症する「遅発性」の悪心・嘔吐に分けられ、急性には主にセロトニンが、遅発性には主に中枢でのサブスタンスPが関与するとされている。急性の悪心・嘔吐については、1990年代に発売された5HT3受容体拮抗薬により大きく改善されたが、遅発性の悪心・嘔吐には抑制効果が不十分であった。その後、サブスタンスPとNK1受容体の結合を阻害するアプレピタントが、急性および遅発性の悪心・嘔吐に対して高い有効性が認められ、2009年12月に発売された。さらに、2010年4月、半減期が長く遅発性の悪心・嘔吐にも効果を示す5HT3受容体拮抗薬のパロノセトロンが発売され、同年5月には日本癌治療学会から制吐薬適正使用ガイドラインが発行されたことにより、制吐療法への関心が高まった。しかし、患者さんが症状を訴えられずにいたり、近年普及してきている外来化学療法では、患者さんが自宅に戻るため悪心・嘔吐症状が把握しにくいなど、症状を見逃す可能性も少なくない。今後、患者さんの症状を拾い上げるためのさらなる工夫が必要と思われる。一方、アプレピタントは経口剤であることから、咽頭・喉頭・食道がんなどの患者さんでは服用が難しく、また、患者さんの認識不足や飲み忘れにより、処方しても服用されないことが懸念されることや、抗がん剤には点滴静注で投与される薬剤も多いことなどから、医療現場では注射剤の発売が期待されていた。注射剤により確実に投与可能今回、発売されたプロイメンドは、アプレピタントのプロドラッグ体であり、静脈内投与後、速やかにアプレピタントに代謝される注射剤である。そのため、経口剤の服用が困難な患者さんにも投与可能であり、飲み忘れを懸念することなく確実に投与できる。本剤1回点滴静注投与によって、急性・遅発性ともに、アプレピタント3日間投与と同等の効果が得られることが海外第Ⅲ相二重盲検比較試験において示されている。国内では、グラニセトロン(iv)+デキサメタゾンリン酸エステル(iv)の2剤併用群(標準治療群)と、この2剤にプロイメンドを追加した3剤併用群(プロイメンド群)を比較した第Ⅲ相二重盲検比較試験において、全期間における有効率がプロイメンド群64.2%と、標準治療群47.3%に比べて有意に(p<0.05)高い有効率が得られた。なお、本試験では26.4%に副作用(臨床検査値異常を含む)が認められている。主な副作用は、便秘(9.2%)、ALT(GPT)上昇(6.9%)、しゃっくり(5.7%)、注入部位疼痛・滴下投与部位痛(5.2%)などであった(承認時)。また、重大な副作用として、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、穿孔性十二指腸潰瘍、アナフィラキシー反応が報告されている(アプレピタントでの報告を含む)。ガイドラインにおける推奨2010年5月発行の制吐薬適正使用ガイドラインでは、高度催吐リスクの抗がん剤・レジメン、中等度催吐リスクの抗がん剤・レジメンのうちカルボプラチン、イホスファミド、イリノテカン、メトトレキサートなどを使用する際には、アプレピタント+5HT3受容体拮抗薬+デキサメタゾンの3剤併用が推奨されている。すでに米国など世界30ヵ国以上でプロイメンドが発売されており、ASCOガイドライン(2011年改訂版)やNCCNガイドライン(2011年3月改訂版)には、プロイメンド+5HT3受容体拮抗薬+デキサメタゾンの3剤併用が追記されている。わが国の制吐薬適正使用ガイドラインにおいても、次回改訂時に追記されることが予想される。がん化学療法におけるQOL改善と治療継続に期待プロイメンドの登場により、アプレピタントが服用困難ながん患者さんへの投与が可能となった。また、患者さんの服薬コンプライアンスによらず、確実に投与できることも大きなメリットと言えよう。医療者側においても、点滴ラインから一連の投与を行うレジメンに組み込みやすいと思われる。がん化学療法においては、薬剤・レジメンの催吐リスク、性別、年齢、前治療などを考慮した適切な制吐剤により悪心・嘔吐を予防することが、がん治療の継続につながる。プロイメンドが、より多くのがん患者さんにおけるQOLの改善、がん化学療法の継続に貢献することが期待される。

1885.

がん化学療法における制吐療法に新たな選択肢

がん化学療法に伴う悪心・嘔吐に対する制吐剤として、選択的ニューロキニン1(NK1)受容体拮抗薬であるホスアプレピタントメグルミン(商品名:プロイメンド点滴静注用150mg、以下プロイメンド)が、本日(12月9日)発売された。本剤は、2009年12月に発売された経口制吐剤アプレピタント(商品名:イメンドカプセル)のプロドラッグ体の注射剤である。がん化学療法における制吐療法の現状と課題抗がん剤の有害事象の1つである悪心・嘔吐は、患者さんのQOLを著しく低下させ、治療継続を妨げる大きな要因となる。その発現時期により、抗がん剤投与後24時間までに発症する「急性」の悪心・嘔吐と、24時間以降に発症する「遅発性」の悪心・嘔吐に分けられ、急性には主にセロトニンが、遅発性には主に中枢でのサブスタンスPが関与するとされている。急性の悪心・嘔吐については、1990年代に発売された5HT3受容体拮抗薬により大きく改善されたが、遅発性の悪心・嘔吐には抑制効果が不十分であった。その後、サブスタンスPとNK1受容体の結合を阻害するアプレピタントが、急性および遅発性の悪心・嘔吐に対して高い有効性が認められ、2009年12月に発売された。さらに、2010年4月、半減期が長く遅発性の悪心・嘔吐にも効果を示す5HT3受容体拮抗薬のパロノセトロンが発売され、同年5月には日本癌治療学会から制吐薬適正使用ガイドラインが発行されたことにより、制吐療法への関心が高まった。しかし、患者さんが症状を訴えられずにいたり、近年普及してきている外来化学療法では、患者さんが自宅に戻るため悪心・嘔吐症状が把握しにくいなど、症状を見逃す可能性も少なくない。今後、患者さんの症状を拾い上げるためのさらなる工夫が必要と思われる。一方、アプレピタントは経口剤であることから、咽頭・喉頭・食道がんなどの患者さんでは服用が難しく、また、患者さんの認識不足や飲み忘れにより、処方しても服用されないことが懸念されることや、抗がん剤には点滴静注で投与される薬剤も多いことなどから、医療現場では注射剤の発売が期待されていた。続きはこちら

1886.

びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫に対する標準+リツキシマブvs. 強化+リツキシマブ

びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫に対し、標準化学療法(CHOP)+リツキシマブ(R-CHOP)と比べて、強化化学療法(ACVBP)+リツキシマブ(R-ACVBP)が、18~59歳患者の生存を有意に改善することが第III相オープンラベル無作為化試験の結果、示された。フランス・トゥールーズ大学病院のChristian Recher氏らによる。強化療法の血液毒性は高まったが管理可能だったという。びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫のアウトカムは、化学療法にリツキシマブ(抗CD20モノクローナル抗体、商品名:リツキサン)を加えることでかなり改善される。その知見を踏まえRecher氏らは、標準療法への追加と強化療法への追加について比較を行った。Lancet誌2011年11月26日号掲載報告より。無イベント生存率を主要エンドポイントに各群レジメンは、強化療法リツキシマブ(R-ACVBP)群が、リツキシマブ、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンデシン、ブレオマイシン、プレドニゾンで、標準療法リツキシマブ(R-CHOP)群が、リツキシマブ、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾンであった。試験は2003年12月~2008年12月に、フランス、ベルギー、スイスの73施設部門で行われ、コンピュータシステムにて4ブロックの無作為化介入群に割り付けがされた。無作為化された被験者は、18~59歳の年齢補正国際予後指数が1の未治療患者380例(R-ACVBP群196例、R-CHOP群184例)だった。主要エンドポイントは、無イベント生存率とし、intention-to-treatにて、有効性と安全性について解析が行われた。被験者のうち、治療開始前に1例が同意を取り下げ(R-ACVBP群)、54例が治療を完了しなかった(R-ACVBP群35例、R-CHOP群19例)。強化リツキシマブ(R-ACVBP群)のほうが有意に上昇追跡期間中央値44ヵ月時点の、推定3年無イベント生存率は、R-ACVBP群81%(95%信頼区間:75~86)であり、R-CHOP群67%(同:59~73)も有意な上昇が認められた(ハザード比:0.56、95%信頼区間:0.38~0.83、p=0.0035)。推定3年無増悪進行生存率[87%(同:81~91)vs. 73%(同:66~79)、ハザード比:0.48(同:0.30~0.76)、p=0.0015]、全生存率[92%(同:87~95)vs. 84%(同:77~89)、ハザード比:0.44(同:0.28~0.81)、p=0.0071]も、R-ACVBP群で有意な上昇が認められた。R-ACVBP群196例のうち重篤な有害事象を伴ったのは82例(42%)だった。これに対してR-CHOP群は183例のうち28例(15%)だった。R-ACVBP群のほうがグレード3~4の血液毒性がより多くみられ、発熱性好中球減少患者の割合が高かった[38%(75/196例)vs. 9%(16/183例)]。

1887.

ヘルスケア施設関連C. difficile感染と保菌、宿主因子と病原菌因子が異なる

 ヘルスケア施設関連での集団下痢症の主な原因であるClostridium difficile(C. difficile)感染症について、感染と保菌では、宿主因子および病原菌因子が異なることが明らかにされた。施設関連の同感染については、無症候でも保菌が認められる場合がある。カナダ・McGill大学ヘルスセンターのVivian G. Loo氏らが、カナダの6つの病院で15ヵ月間にわたり、C. difficile感染症患者と保菌患者の宿主因子および細菌因子の同定を行った前向き研究の結果、報告した。NEJM誌2011年11月3日号掲載報告より。カナダ6病院で前向き研究研究グループは、2006年3月6日~2007年6月25日にわたり、カナダのケベック州とオンタリオ州にある6つの国立病院で15ヵ月間にわたる前向き研究を行った。対象病院の患者に関して、人口統計学的情報、既知のリスク因子、潜在的な交絡因子などの情報収集と、週1回の便検体または直腸スワブの収集を行い解析した。C. difficile分離株の遺伝子型の同定はパルスフィールドゲル電気泳動法(PFGE)にて行い、C. difficile毒素AおよびBの血清抗体値測定なども行った。合計4,143例の患者の情報が収集され解析された。感染例2.8%、保菌例3.0%で、北米PFGE1型(NAP1)株は感染例では62.7%、保菌例36.1%ヘルスケア施設関連C. difficile感染例は117例(2.8%)、保菌例は123例(3.0%)だった。ヘルスケア施設関連C. difficile感染例は、「より高齢」「抗菌薬・PPI使用」と有意な関連が認められた。一方保菌例については、「以前に2ヵ月間入院したことがある」「化学療法・PPI・H2ブロッカーを使用」「毒素Bに対する抗体」が関連していた。また、北米PFGE1型(NAP1)株を有していたのは、感染例では62.7%であったが、保菌例では36.1%だった。(武藤まき:医療ライター)

1888.

70歳以上の非小細胞肺がん患者への併用化学療法は生存ベネフィットあり

非高齢の進行型非小細胞肺がん患者に対して推奨されるプラチナ製剤ベースの併用化学療法カルボプラチン(同:パラプラチンなど)+パクリタキセル(同:タキソールなど)は、従来推奨されていなかった70歳以上の高齢患者においても、ビノレルビン(商品名:ナベルビンなど)やゲムシタビン(同:ジェムザールなど)の単剤療法との比較で、毒性作用の増大はあるものの生存ベネフィットが認められることが示された。フランス・ストラスブール大学Elisabeth Quoix氏らが、第3相無作為化試験「IFCT-0501」の結果、報告したもので、「現在の高齢患者への治療パラダイムを再考すべきと考える」と結論している。がんの疾患リスクは先進諸国では、長寿社会の進展とともに増大しており、肺がんの診断時の年齢中央値は現在63~70歳と、高齢患者の顕著な増加が認められているという。Lancet誌2011年9月17日号(オンライン版2011年8月9日号)掲載報告より。WHOパフォーマンスステータススコア0-2の、70~89歳の高齢患者を被験者に試験は、2006年4月~2009年12月の間に多施設共同オープンラベルにて61施設から、進行型または転移性非小細胞肺がんで、WHOパフォーマンスステータススコアが0-2の、70~89歳の高齢患者が登録され行われた。被験者は、カルボプラチン(1日目)+パクリタキセル(1、8、15日目)の併用化学療法(3週投薬1週休薬)の4サイクル投与群か、ビノレルビンまたはゲムシタビン単剤化学療法(1、8日目)(2週投薬1週休薬)の5サイクル投与群に無作為に割り付けられ追跡された。主要エンドポイントは、全生存率とし、intention to treat解析された。全生存率中央値、併用療法群10.3ヵ月、単剤療法群6.2ヵ月登録患者451例(併用療法群225例、単剤療法群226例)は、年齢中央値77歳、追跡期間中央値は30.3ヵ月(範囲:8.6~45.2)であった。全生存率の中央値は、併用療法群10.3ヵ月、単剤療法群6.2ヵ月であった(ハザード比:0.64、95%信頼区間:0.52~0.78、p<0.0001)。また、1年生存率は、併用療法群44.5%(95%信頼区間:37.9~50.9)、単剤療法群25.4%(同:19.9~31.3)であった。毒性作用は、併用療法群のほうが単剤療法群より頻度が高かった。最も頻度が高かったのは好中球減少症で108例(48.4%)対28例(12.4%)、また無力症は23例(10.3%)対13例(5.8%)であった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

1889.

術後タモキシフェン5年投与、ER陽性乳がんの再発・死亡リスクを長期に低減

タモキシフェン(TAM、商品名:ノルバデックスなど)を用いた5年間の術後補助内分泌療法は、エストロゲン受容体(ER)陽性の早期乳がん患者の10年再発および15年乳がん死のリスクを有意に低下させることが、Early Breast Cancer Trialists’ Collaborative Group (EBCTCG)の検討で示された。術後TAM 5年投与の臨床試験の無作為割り付け後の追跡期間が10年を超えるようになり、乳がん死や他の死因による死亡に及ぼす効果、さらにホルモン受容体が弱陽性の患者に対する効果の評価が可能な状況が整いつつあるという。Lancet誌2011年8月27日号(オンライン版2011年7月29日号)掲載の報告。20の無作為化試験の個々の患者データを解析EBCTCGは、早期乳がんの術後補助内分泌療法としてのTAMの5年投与に関する無作為化試験のメタ解析を行い、ホルモン受容体の発現状況などの背景因子が本治療法の長期的な転帰に及ぼす影響について評価した。解析には、早期乳がんに対する術後TAM 5年投与と非投与を比較した20の無作為化試験に参加した2万1,457例の個々の患者データを用いた。全体の服薬コンプライアンスは約80%であった。log-rank検定を行って再発および死亡の率比(rate ratio; RR)を算出した。服薬コンプライアンスが十分であれば、全ER陽性例で死亡リスクが約3分の1低下ER陽性例(1万645例)では、治療開始から10年間の再発率はTAM群のほうが非TAM群に比べ有意に低下しており、RRは0~4年が0.53(SE 0.03)、5~9年は0.68(SE 0.06)であった(いずれも2p<0.00001)。しかし、10~14年のRRは0.97(SE 0.10)であり、治療期間が10年以降になると、TAMによる再発抑制効果はそれ以上高くも低くもならないことが示唆された。ER弱陽性(1mgのサイトゾル蛋白当たり10~19fmol)例においても、RRは0.67(SE 0.08)と、TAMによる再発抑制効果が確認された。ER陽性例における再発のRRには、プロゲステロン受容体(PgR)の陽性/陰性や陽性の程度、年齢、リンパ節転移の有無、化学療法の有無の影響はほとんどなかった。乳がんによる死亡率は、治療開始から15年で約3分の1低下しており、RRは0~4年が0.71(SE 0.05)、5~9年は0.66(SE 0.05)、10~14年は0.68(SE 0.08)であった(いずれも超過死亡率低下のp<0.0001)。ERの状態は、リスク低下に関する唯一の有意な予測因子TAMは、55歳以上の患者でのみ血栓塞栓症および子宮がんによる死亡のリスクをわずかに上昇させたものの、非乳がん死亡にはほとんど影響を及ぼさず、したがって全死因死亡は非TAM群に比べて有意に低かった。ER陰性例では、TAM投与による乳がんの再発、死亡への影響は認めなかった。著者は、「術後のTAM 5年投与は、早期乳がんの再発および乳がん死のリスクを10~15年にわたり低下させ、安全性にも問題はなかった。ERの状態は、リスク低下に関する唯一の有意な予測因子であった」と結論し、「弱陽性を含むすべてのER陽性乳がん患者では、服薬コンプライアンスが十分であれば、術後TAM 5年投与によって15年間の乳がん死のリスクが、術後補助内分泌療法を施行しない場合に比べ、少なくとも約3分の1低減することが示された」としている。(菅野守:医学ライター)

1890.

多発性骨髄腫の治療戦略-日欧における現状と展望

 多発性骨髄腫の治療においては、近年、ボルテゾミブ(商品名:ベルケイド)、サリドマイド(商品名:サレド)、レナリドミド(商品名:レブラミド)といった新規薬剤が開発・発売され、わが国では、現在、再発・難治性症例に対して承認されている。一方、欧米では、これらの薬剤が、再発・難治性症例だけでなく、他のステージでも使用され、次々と臨床研究結果が報告されている。 ここでは、2011年8月8日に都内で開催された多発性骨髄腫治療に関するセミナー(主催:セルジーン株式会社)における、トリノ大学血液学科骨髄腫ユニットチーフ Antonio Palumbo氏、がん研有明病院化学療法科・血液腫瘍科部長 畠清彦氏の講演から、欧米とわが国における多発性骨髄腫治療の現状と展望についてレポートする。欧米における治療戦略とレナリドミドの成績 Palumbo氏によると、多発性骨髄腫の治療には、まず完全寛解(CR)を達成すること、さらにCR期間を延長させるために治療を継続することが重要である。また、CRのなかでも、より深い寛解である分子生物学的寛解、すなわちDNAレベルでの効果が重要である。 今回の講演で、Palumbo氏は、主にレナリドミドによる維持療法の成績について取り上げ、移植適応の若年者に対する移植後の維持療法については、フランスIFMの試験では無増悪期間(PFS)が、また米国CALGBの試験ではPFS、全生存期間(OS)が、レナリドミド投与群において有意に延長したことを紹介した。 また、移植非適応の65歳以上の高齢者におけるレナリドミド維持療法については、MPR(メルファラン、プロドニゾン、レナリドミド)による寛解導入療法後にレナリドミド(10mg/日、3週間投与)で維持療法を行うMPR-R群を、維持療法を行わないMPR群、MP群と比較した海外多施設臨床試験を紹介した。この試験では、MPR-R群ではMPR群に比べ増悪リスクが約70%減少し、また、年齢、寛解の程度、病期(ISS)にかかわらずPFSが有意に延長したことが示されている。 Palumbo氏は、欧米における多発性骨髄腫患者に対する治療アルゴリズムを、多発性骨髄腫に関する最新のレビューにまとめている(N Engl J Med. 2011;364:1046)。それによると、移植適応症例では、新規薬剤を含む併用レジメン(主に欧州では3剤、米国では2剤併用)で寛解導入後に移植を実施し、サリドマイドもしくはレナリドミドによる維持療法を実施、また、移植非適応例では、新規薬剤を含む併用レジメンを実施し、そのうちレナリドミドを含むレジメンの場合は、増悪もしくは不耐容となるまで継続するとしている。日本における現状と展望 畠氏は、わが国における課題と展望について、レナリドミドの特徴やがん研有明病院における使用状況を交えて紹介した。 レナリドミドの特徴については、経口剤のため外来治療が可能で、頻回通院の必要がなく遠方の患者さんでも通院しやすい、2011年8月から長期投与可能となり使いやすくなった、と畠氏は評価している。その他の特徴として、高リスク例に対して有効である、細胞性免疫の増強作用がある、腎障害例における減量が必要、末梢血幹細胞は早期採取が必要であることを挙げた。また主な副作用として、好中球減少、疲労、筋痙攣などが報告されている。 がん研有明病院においては、7月28日時点のレナリドミド使用経験は14例で、投与症例は、経口剤が適している、遠方から来院、肺障害がある、高齢といった症例という。投与方法は、レナリドミド25mg(21日間投与、7日間休薬)+デキサメタゾン40mg(週1回投与)であり、血栓予防としてアスピリンを、またアスピリンによる消化器障害に対してプロトンポンプ阻害薬を併用しているとのことである。また、がん研有明病院の取り組みとして、レナリドミドの承認前から医師、病棟看護師、外来看護師、病棟薬剤師によってチームを立ち上げ、院内マニュアルの作成や投与すべき症例の選択などの準備を進めていたことを紹介した。 わが国における課題として畠氏は、海外とのドラッグラグはもちろん、臨床現場への普及の遅れを指摘している。多発性骨髄腫においては、日本で長い間標準治療であったMP療法、VAD(ビンクリスチン、ドキソルビシン、デキサメタゾン)療法から、新規薬剤による治療に移行しつつあり、現時点ではこれらの薬剤を年齢、病態、合併症に応じて選択し、日本での長期の成績により評価していく必要があると述べた。 最後に、畠氏は、今後はわが国では承認されていない初発例に対する治療や新規薬剤どうしの併用やアルキル化剤との併用、さらに維持療法など、より有効な治療法の確立が望まれると締めくくった。

1891.

アロマターゼ阻害薬エキセメスタン、閉経後女性の浸潤性乳がん発症を有意に減少

 閉経後女性の乳がん予防に関して、アロマターゼ阻害薬のエキセメスタン(商品名:アロマシン)が、浸潤性乳がん発症を有意に減少することが示された。米国・マサチューセッツ総合病院がんセンターのPaul E. Goss氏ら「NCIC CTG MAP.3」試験グループが行った無作為化プラセボ対照二重盲検試験の結果による。これまで乳がん一次予防の化学療法としては、選択的エストロゲン受容体調節薬であるタモキシフェン(抗がん薬、商品名:ノルバデックスなど)やラロキシフェン(骨粗鬆症薬、同:エビスタ)が注目されてきたが、毒性効果がもたらすリスクに対する懸念からこれらの使用は広がっていないという。一方、エキセメスタンは、閉経後女性のエストロゲン抑制に優れ、実験モデルにおいて乳がん発症を減少することが認められ、また早期乳がん対象の試験において、対側原発性乳がんを、タモキシフェンよりも減少し副作用も少ないことが報告されていた。NEJM誌2011年6月23日号(オンライン版2011年6月4日号)掲載より。4ヵ国から4,560例を登録し、無作為化プラセボ対照二重盲検試験 NCIC CTG MAP.3試験は、カナダ、米国、スペイン、フランスで被験者を募り、35歳以上で適格条件[60歳以上、Gail 5年リスクスコア>1.66%(5年以内の浸潤性乳がん発症が100である可能性)、異型乳管過形成、異型小葉過形成、非浸潤性小葉がん、乳房切除を伴う非浸潤性乳管がん]を1つ以上有する閉経後女性を対象とし行われた。 本試験は、浸潤性乳がんの65%の相対的減少を検知するようデザインされた。主要アウトカムは浸潤性乳がん発生率で、毒性効果、健康関連QOL、閉経期特異的QOLについても測定が行われた。2004年11月~2010年3月の間に、4,560例が登録。被験者の年齢中央値は62.5歳、Gailリスクスコアは2.3%で、無作為にエキセメスタン群(2,285例)とプラセボ群(2,275例)に割り付けられ追跡された。追跡期間中央値35ヵ月時点で、エキセメスタン群の65%の相対的減少を検知 結果、浸潤性乳がんの65%の相対的減少は、追跡期間中央値35ヵ月時点で検知された。同時点の浸潤性乳がん発生は、エキセメスタン群11例(0.19%)、プラセボ群32例(0.55%)で、ハザード比0.35(95%信頼区間:0.18~0.70、P=0.002)だった。 副次エンドポイントの侵襲性+非侵襲性(非浸潤性乳管がん)乳がんの年間発生率は、エキセメスタン群0.35%、プラセボ群0.77%(ハザード比:0.47、95%信頼区間:0.27~0.79、P=0.004)であった。 有害事象は、エキセメスタン群88%、プラセボ群85%で発生した(P=0.003)。毒性効果の評価指標である骨折、心血管イベント、その他のがん、治療関連の死亡に関して両群間で有意差は認められなかった。 QOLの差はわずかだった。健康関連QOLはSF-36質問票にて悪化、不変、改善の区分でスコア化されたが、両群間で有意な差は認められなかった。閉経期特異的QOLについてはエキセメスタン群の悪化(全体的に7%多く)が認められた。Goss氏は、「乳がんリスクが中程度に上昇した閉経後女性に対して、エキセメスタンは侵襲性乳がんを有意に減少した。また追跡期間中央値3年の間、エキセメスタンは重篤な毒性効果との関連は認められず、健康関連QOLについての変化はわずかだった」と結論している。

1892.

抗悪性腫瘍剤 エリブリンメシル酸塩(商品名:ハラヴェン)

新規抗がん剤であるエリブリンメシル酸塩(以下エリブリン、商品名:ハラヴェン)が、2011年4月、アントラサイクリン系およびタキサン系抗がん剤での治療歴を含む化学療法施行後の手術不能または再発乳がんを適応として承認された。今年7月にも薬価収載・発売が予定されている。 進行または再発乳がん治療の現状と課題現在、アントラサイクリン系およびタキサン系抗がん剤での治療歴を有する進行または再発乳がんに対しては、カペシタビン、S-1、ゲムシタビン、ビノレルビン、イリノテカンなどが用いられている。しかし、どの薬剤もベストサポーティブケアとの比較試験の結果を持たないというのが現状である。また、近年、化学療法を外来治療で行うことが主流となり、治療時間の短縮化など、外来治療に適した薬剤が求められている。単剤で初めて前治療歴のある進行または再発乳がんの全生存期間を延長このような状況のなか、エリブリンは海外第Ⅲ相試験(EMBRACE試験)において、単剤で初めて、前治療歴のある進行または再発乳がんにおける全生存期間(OS)を有意に延長した1)。本試験では、アントラサイクリン系およびタキサン系抗がん剤を含む2~5レジメンの化学療法歴のある進行または再発乳がん762例を対象とし、エリブリン投与群と主治医選択治療群を比較した。最新の解析結果では、エリブリン投与群は主治医選択治療群に比べて2.7ヵ月間の有意なOS延長が認められている(13.2ヵ月 vs 10.5ヵ月、ハザード比:0.81、p=0.014)。なお本試験では、主治医選択治療群の96%がビノレルビン、ゲムシタビン、カペシタビンなどの化学療法を受け、4%がホルモン療法を受けていた。また、安全性については、骨髄抑制が高頻度に認められており、とくに好中球減少が多く認められている。骨髄抑制が発現しやすい患者の場合には注意して投与することが必要である。短い投与時間と簡便性エリブリンの特長として、投与時間の短さと簡便さが挙げられる。エリブリンは、2~5分でボーラスもしくは点滴静注で投与する。溶解補助剤に伴う過敏反応を回避するステロイドなどの前処置が不要であることから、ルート確保、投与、フラッシングまでを約30分で終えることができる。そのため、外来治療における患者の負担を軽減でき、さらに看護師の負担も軽減できる。外来化学療法室での限られたベッド数を考えると、こうした特長は施設にとってメリットと言えるだろう。タキサン耐性症例における効果エリブリンは、チューブリン重合を阻害して細胞分裂を抑制することにより、抗腫瘍効果を示す。同じくチューブリンに作用するタキサン系薬剤とは作用部位が異なるため、交差耐性は起こりにくいと考えられている。実際にin vitro、in vivoにおける試験において、エリブリンがパクリタキセル耐性細胞に対し、パクリタキセル感受性細胞と同様の抗腫瘍効果を示したことが報告されている2)。臨床においても、タキサン耐性症例に対する効果が期待されており、今後の臨床症例の蓄積が待たれる。日米欧3極同時申請通常、外資系製薬会社で開発される薬剤は、欧米での承認から数年遅れて日本で承認される。そのようななか、エリブリンは2010年3月に世界で初めて日米欧で同時申請され、同年11月に米国、2011年3月に欧州、4月に日本で承認された。米国における承認から半年以内に日本で承認されたことになる。今後の開発薬剤について、さらにドラッグラグが短縮されていくことが期待される。延命を目的とする再発がん治療において、治療選択肢の増加は大きな意義を持つ。エーザイ株式会社オンコロジー領域部部長の内藤輝夫氏は、「アントラサイクリン系やタキサン系薬剤の投与後に進行・再発した患者さんにおいて、今後は延命効果が証明されたエリブリンがお使いいただけることは、患者さんの生きる希望につながる。また、これまでの治療ですでに数種類の薬剤を投与され、効果が期待できる薬剤がなくなった患者さんにとって、新たな治療オプションが増えることは非常に意義がある」と話している。

1893.

骨髄異形成症候群-相次ぐ新薬発売で治療が大きく変化

骨髄異形成症候群(MDS)は、高齢者に多く見られる疾患で、高齢者の人口増加に伴い有病率の増加が懸念されている。MDS治療において、治癒を期待できるのは造血幹細胞移植のみであるが、高齢者には難しく、有効な治療手段がない。このような状況のなか、昨年から今年にかけてMDS治療における新薬の発売が相次ぎ、治療方法が大きく変化しつつある。 ここでは、2011年5月31日、帝国ホテル(東京)にて開催されたプレスセミナー「今だからこそ正しく知りたい『血液がん』~MDSの事例から~」(主催:セルジーン株式会社)での埼玉医科大学総合医療センター血液内科 教授 木崎昌弘氏の講演から、MDSの最新の治療についてレポートする。増加するMDS患者現在、日本におけるMDS患者は約10,000 人と推定され、高齢者の人口増加に伴い患者数は増加している。患者数の増加について、木崎氏は「疾患に関する理解が広まり、血液内科へ紹介、診断されるケースが増えていることも理由の1つではないか」と述べた。MDSは、骨髄不全と前白血病状態という2つの側面を持つ疾患である。男女比は2:1で、高齢者に多く発症し、他のがんに対する化学療法や放射線療法の前治療歴もリスク因子に挙げられている。MDSのリスク分類と治療の現状MDSの治療方針は、MDSの病型、リスク分類に加え、症状、年齢、全身状態、患者の意向を考慮し決定される。リスク分類については、国際予後判定システム(IPSS)では「骨髄中の芽球の割合」「血球減少が何種類か」「染色体異常の種類」の3項目により判定するが、各リスク群における生存期間中央値と急性骨髄性白血病(AML)移行率は、低リスク:5.7年/19%、中間リスク-1:3.5年/30%、中間リスク-2:1.2年/33%、高リスク:0.4年/45%である。現在、MDS治療で治癒を期待できるのは同種造血幹細胞移植のみであるが、高リスク群あるいは頻回の輸血を必要とする場合に適応となり、一般的には55歳位までに限られている。日本における移植成績は欧米よりも良好であり、MDS全体での移植後長期生存率は約40%と比較的良好といえる。比較的若年者には、AML治療に準じた強力な化学療法が行われるが、一般的に奏効率は低い。相次ぐ新薬発売このような状況のなか、2010年、新たな治療薬としてレナリドミド(商品名:レブリミド)が承認された。レナリドミドは、5番染色体長腕部欠失を伴うMDSに対して有用性が認められており、海外第3相試験において、プラセボ群に比べて赤血球輸血非依存率を有意に増加させ、ヘモグロビン値を増加させることが示されている。また、5番染色体異常が正常になる例も認められたことから、木崎氏は疾患の本態を改善している可能性もあると述べた。さらに自験例として、レナリドミドの投与により、へモグロビン値が徐々に増加し、5番染色体異常が正常となった症例(68歳女性)の治療経過を提示した。さらに今年、メチル化阻害剤であるアザシチジン(商品名:ビダーザ)が発売された。アザシチジンは高リスクMDSにおいて高い有効性を示し、多施設国際共同第3相試験において、従来の治療群と比較して全生存期間(24.5ヵ月 vs 15ヵ月)、2年生存率(50.8% vs 26.2%)を有意に改善したことが報告されている。輸血依存による鉄過剰症の治療一方、MDS治療においては、輸血依存による鉄過剰症がしばしば問題となる。鉄過剰症はさまざまな臓器障害の原因となり、全生存率(OS)を低下させるが、過剰となった鉄分を除去する鉄キレート剤デフェラシロクス(商品名:エクジェイド)が2008年に発売されている。フランスでのプロスペクティブ調査では、赤血球輸血を実施するMDS患者において、デフェラシロクス投与によりOSを有意に改善したことが報告されている。新たな治療薬を含めたリスク別治療方針木崎氏は、米国NCCN(National Comprehensive Cancer Network)ガイドライン2011年v.2を基にしたリスク別治療方針を紹介した。低リスク群では輸血頻度の軽減やAMLへの移行をできるだけ少なくするために、造血因子やレナリドミド、アザシチジンを投与する。高リスク群では生存期間の延長をゴールとして、アザシチジンの投与やAMLに準じた化学療法、同種造血幹細胞移植を行う。残念ながら、治療失敗あるいは治療に反応しない場合には臨床試験に頼るしかないという現状である。患者さんとの向き合い方MDS患者には、どのように向かい合えばよいのか。木崎氏はMDS患者に対して、MDSにはさまざまな治療の選択肢があること、加えて、治りにくい病気であるが病態解明に関する研究の進歩とともに新しい薬剤の開発も盛んなので、主治医と相談して最適な治療法を選択するように伝えていると紹介した。(ケアネット 金沢 浩子)

1894.

全用量投与不適な進行大腸がんへの減量化学療法、オキサリプラチン追加で予後が改善傾向

標準治療の全用量投与が適切でないと判定された進行大腸がんに対する減量投与では、フッ化ピリミジン系薬剤へのオキサリプラチン(L-OHP、商品名:エルプラット)の追加により、フッ化ピリミジン系薬剤単独に比べ無増悪生存期間(PFS)が延長する傾向を認めたことが、イギリス・リーズ大学のMatthew T Seymour氏らが行ったFOCUS2試験で示された。イギリスでは、進行大腸がんによる死亡の年齢中央値は77歳で、75歳以上の死因の60%、80歳以上の死因の42%が大腸がんだという。一方、重要な臨床試験では通常、対象は75歳未満に限られ、75歳以上や体力が減退した患者などに対する減量投与を検討した試験はほとんどない。Lancet誌2011年5月21日号(オンライン版2011年5月12日号)掲載の報告。減量投与の有用性を評価する2×2ファクトリアル・デザインの非盲検無作為化試験FOCUS2試験の研究グループは、標準的化学療法薬の全用量投与が適切でないと判定された未治療の進行大腸がん患者を対象に、減量投与に関する2×2ファクトリアル・デザインの非盲検無作為化試験を実施した。2004年1月~2006年7月までにイギリス国内61施設から登録された患者が、包括的健康評価(comprehensive health assessment:CHA)を受けた後、次の4つのレジメンに無作為に割り付けられた。患者の年齢は問わなかった。(1)FU群:LV5FU2レジメン(48時間静注フルオロウラシル[5-FU]/レボホリナート[l-LV])の標準用量の80%、(2)OxFU群:FOLFOXレジメン(L-OHP+5-FU/l-LV)の標準用量の80%、(3)Cap群:カペシタビン(Cap)の標準用量の80%、(4)OxCap群:XELOX(L-OHP+Cap)レジメンの標準用量の80%を投与。主要評価項目は、PFSに基づくL-OHP追加の有効性([FU群 vs. OxFU群]+[Cap群 vs. OxCap群])およびベースラインから12週までのQOLの変化に基づく5-FUの代替としてのCapの有効性とした([FU群 vs. Cap群]+[OxFU群 vs. OxCap群])。PFS:L-OHP追加群5.8ヵ月 vs. 非追加群4.5ヵ月、QOL改善率:5-FUレジメン56% vs. Capレジメン56%459例が登録され、FU群、OxFU群、Cap群には115例ずつ、OxCap群には114例が無作為に割り付けられた。L-OHPの追加によりPFSが改善される傾向が認められたが、有意差はなかった(L-OHP追加群:5.8ヵ月 vs. 非追加群:4.5ヵ月、ハザード比:0.84、95%信頼区間:0.69~1.01、p=0.07)。QOL改善率は5-FUを含むレジメンが56%(69/124例)、Capを含むレジメンも56%(69/123例)であった。グレード3以上の有害事象の発現リスクは、L-OHPを追加しても増加しなかった(38%[83/219例] vs. 32%[70/221例]、p=0.17)が、Capを含むレジメンは5-FUを含むレジメンよりも有意に高かった(40%[88/222例] vs. 30%[65/218例]、p=0.03)。著者は、「L-OHPを含むレジメンは、フッ化ピリミジン系薬剤の単独投与よりも予後が良好な傾向を認めたが、PFSの有意な改善は得られなかった。経口フッ化ピリミジン系薬であるCapは、5-FUに比べQOLを改善しなかった。ベースラインのCHAは治療効果の客観的予測因子として有望と考えられる」と結論している。(菅野守:医学ライター)

1895.

転移性膵臓がんに対するFOLFIRINOXレジメンvs. ゲムシタビン

転移性膵臓がんに対する第一選択治療としての併用化学療法レジメンFOLFIRINOXの有効性と安全性について、ゲムシタビン単剤療法と比較した初の検討結果が示された。フランス・ナンシー大学腫瘍学部門のThierry Conroy氏らによる。FOLFIRINOXは、オキサリプラチン+イリノテカン+フルオロウラシル+ロイコボリンの4剤併用のレジメンで、ゲムシタビン併用レジメンの検討で示唆された細胞傷害性を参考に編み出された。全身状態良好な進行性膵臓がんを対象とした第1相、第2相試験で有効であることを試験成績が示され、第2-3相試験として転移性膵臓がんに対する第一選択治療としてのゲムシタビンとの比較検討が行われた。NEJM誌2011年5月12日号掲載より。全身状態良好な転移性膵臓がん患者342例を対象に無作為化試験試験は2005年12月~2009年10月の間、フランス国内48施設から集められた、全身状態の指標であるECOG(Eastern Cooperative Oncology Group)スコア(0~5、スコアが高いほど重症度が高い)が0もしくは1の患者342例を対象に行われた。被験者は無作為にFOLFIRINOXレジメンかゲムシタビン単剤を投与する群に割り付けられた。FOLFIRINOXレジメンは、2週間を1サイクルとして、オキサリプラチン85mg/m2を2時間静注、直後にロイコボリン400mg/m2を2時間静注、ロイコボリン投与開始遅れること30分後にイリノテカン180mg/m2静注を開始し90分間、直後にフルオロウラシルを400mg/m2ボーラス投与後2,400mg/m2を46時間持続点滴静注であった。一方、ゲムシタビン投与は1,000mg/m2の週1回30分間静注を7週間投与し、1週間休薬後、4週間のうち3週間投与というスケジュールだった。両群とも反応がみられた患者で、6ヵ月間の化学療法が推奨された。主要エンドポイントは、全生存期間。最終データの解析が行われたのは2010年4月だった。FOLFIRINOX群の死亡ハザード比0.57、有害事象の発生はより多い結果、全生存期間中央値は、ゲムシタビン群6.8ヵ月に対しFOLFIRINOX群は11.1ヵ月で、FOLFIRINOX群の死亡ハザード比は0.57(95%信頼区間:0.45~0.73、P<0.001)だった。無増悪生存期間中央値は、FOLFIRINOX群6.4ヵ月、ゲムシタビン群3.3ヵ月で、FOLFIRINOX群の疾患進行ハザード比は0.47(同:0.37~0.59、P<0.001)だった。客観的奏効率は、ゲムシタビン群9.4%に対し、FOLFIRINOX群は31.6%であった(P<0.001)。有害事象の発生は、FOLFIRINOX群のほうが多かった。またFOLFIRINOX群で発熱性好中球減少症を呈した患者は5.4%であった。6ヵ月時点の定義評価でQOL低下が認められた患者は、FOLFIRINOX群31%に対し、ゲムシタビン群66%に上った(ハザード比:0.47、95%信頼区間:0.30~0.70、P<0.001)。以上からConroy氏は、「FOLFIRINOXレジメンはゲムシタビン単剤療法と比べて、生存利益があることが認められた。毒性はより強かった」とまとめたうえで、「FOLFIRINOXレジメンは、転移性膵臓がんで全身状態が良好な患者の治療選択肢の一つとなる」と結論している。(武藤まき:医療ライター)

1896.

浸潤性乳がん患者へのタキサン系+アントラサイクリン系ベース化学療法後の生存率の予測モデルを開発

米国Nuvera Biosciences社のChristos Hatzis氏らは、浸潤性乳がん患者へのタキサン系+アントラサイクリン系ベース化学療法に対する反応性を、遺伝子発現様式で予測するモデルを開発した。同モデルとエストロゲン受容体(ER)の陽性・陰性を組み合わせることで、生存率について8~9割の確率で予測することができたという。JAMA誌2011年5月11日号で発表した。浸潤性乳がん310人を基にモデル開発、198人を対象に検証研究グループは、2000年6月~2010年3月にかけて、多施設共同前向き試験を行った。被験者は、新たに浸潤性乳がんの診断を受けたERBB2(HER2またはHER2/neu)陰性の患者で、タキサン系+アントラサイクリン系ベースの化学療法の治療を受けた310人だった。ER陽性の場合には、化学療法と併せて内分泌療法を行った。被験者グループを基に、遺伝子発現様式によるタキサン系+アントラサイクリン系ベース化学療法感受性の予測モデルを作り、独立評価群(198人)で生存率や病理学的反応などについての予測能を検証した。なお、独立評価群の99%が臨床ステージ2または3だった。治療感受性群の遠隔無再発生存率は92%結果、独立評価群のうち、同モデルで治療感受性と予測された人は28%で、そのうち病理学的反応が非常に良好である確率は56%(95%信頼区間:31~78)、遠隔無再発生存率は92%(同:85~100)、絶対リスク減少は18%(同:6~28)だった。被験者でER陽性のうち同モデルで治療感受性と予測されたのは30%で、遠隔無再発生存率は97%(同:91~100)、絶対リスク減少は11%(同:0.1~21)だった。一方ER陰性のうち治療感受性と予測されたのは26%で、遠隔無再発生存率は83%(同:68~100)、絶対リスク減少は26%(同:4~48)だった。また、化学療法への反応性が予測された患者は、その他の遺伝子予測因子によって逆説的に生存率が悪いことが示された。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

1897.

末期がん患者に対する化学療法、医療従事者の考え方の違いとは? オランダの調査

末期がん患者に対する化学療法では、医師はこれを継続することで良好な健康状態を維持しようとするのに対し、看護師は継続に疑念を示し、余命の有効活用を優先する傾向があることが、オランダ・アムステルダム大学のHilde M Buiting氏らの調査で示された。がん治療の進歩により有効な治療法が増え、末期がん患者に対する化学療法薬投与の決定は繊細で複雑なプロセスとなっているが、最近の調査では末期がん患者への化学療法施行は増加し、「がん治療の積極傾向(a trend towards the aggressiveness in cancer care)」と呼ばれる状況にある。医療従事者は患者の利益となる治療を提供する義務があるが、患者の自律性に重きが置かれる社会では患者利益は先験的に明らかなわけではなく、化学療法の利益と負担に関する医療従事者の考え方もほとんど知られていないという。BMJ誌2011年4月16日号(オンライン版2011年4月4日号)掲載の報告。転移性がん治療に当たる医師と看護師への面接調査研究グループは、末期がん患者に対する化学療法施行時の医療従事者の経験およびその姿勢について、主に治療者としての考え方を引き出すことを目的に、面接に基づく質的調査を行った。2010年6~10月に、オランダの大学病院および一般病院の腫瘍科に所属し、転移性がんの治療に当たる医師14人(平均年齢41歳、女性8人)および看護師13人(同:40歳、11人)に対し半構造的面接を行った。生命予後とQOLのバランスの回復には、看護師の意見の導入が必要か医師と看護師は、不良な予後や治療選択肢について患者に十分な説明を試みたと述べた。また、化学療法の効果と有害事象を十分に考慮し、場合によっては治療を続けることが患者のQOLに寄与するか疑わしいこともあったと答えた。医師、看護師ともに、患者の健康状態を良好に保つことが重要と考えていた。医師は化学療法を継続することで患者の健康を維持しようとし、患者がそれに従うことが多い傾向がみられた。これに対し、看護師は化学療法の継続に疑念を表明する傾向が強く、患者が残された時間を最大限に活用できるように配慮するほうがよいと考えていた。治療上のジレンマや治療に対する患者の意向に直面した場合、医師は「では、もう1回だけ試してみませんか」などの妥協案を提示することを好んだ。化学療法施行中に、患者と死や臨終について語り合うことは、患者の希望を失わせる可能性があるとして、治療とは矛盾する行為と考えられていた。著者は、「末期がん患者に対し化学療法を継続する傾向は、患者と医師の『あきらめない』という態度の相互補強、および患者QOLに関する医師の広範な解釈の仕方で説明可能と考えられ、これは『治療を控えることで患者の希望を奪うのは危険』との考え方が元になっていると推察された」と結論し、「生命予後(quantity of life)とQOLのバランスを取り戻すには、医師以外の医療従事者、とりわけ看護師の意見の導入が必要と考えられる」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

1898.

震災時の抗がん剤治療に指標を

今回の震災にあたり、時間の経過とともに、急性期から亜急性期・慢性期に対する医療の問題がクローズアップされてきている。がん治療も生存期間の延長により慢性期医療の側面が濃くなっており、例外ではない。なかでも、抗がん剤治療については術後補助療法、再発転移治療ともに医薬品の流通が良好ではない被災地では大きな問題を抱えている。このような状況のなか解決策はあるのか、がん薬物療法のスペシャリストがん研有明病院化学療法科の畠清彦氏に聞いた。 Q. 被災地での抗がん剤治療に関する懸念がでてきているようですが? A. 現在は、当院でも抗がん剤の流通が良好な状態であるとはいえません。被災地ではなおさら条件が厳しいと思います。がん患者さんへの抗がん剤の投薬については、私たちが想像する以上に多くの問題を被災地では抱えていると思います。治療がままならないとはいえ、患者さんを放っておくわけにはいかず、お悩みの先生も大勢いらっしゃると思います。また、治療途中の病院がなくなってしまい途方にくれている患者さんも数多くいらっしゃることと思います。… 全文はこちらhttp://www.carenet.com/oncology/keyword/12/ ※畠清彦氏作「震災時の抗がん剤治療」も上記からダウンロード可能

1899.

化学療法後の切れ目ない医療の実践

2011年3月初旬、震災前の青森県三沢市にて第83回日本胃癌学会総会が開催された。大会3日目「化学療法後の切れ目ない医療の実践」と題したシンポジウムが行われた。このテーマは今回の会長である三沢市立三沢病院 坂田優氏の意向で主要演題として取り上げられた。がん診療連携拠点病院での緩和ケアが診療報酬加算の対象となったが、その要件の一つである緩和ケアチームのあり方について臨床現場での問題は多く、熱い論議が展開された。当シンポジウムは7人の演者が、基本講演と追加発言という形式で現場での取り組みについて発表を行った。基本講演から埼玉医科大学国際医療センター 奈良林至氏は、化学療法から全面的な緩和ケアに移行する時点で生じる診療の問題点を指摘した。わが国の固形がん治療は、診断から終末期にいたるまで外科医が担うという状況が永年続いていた。現在は、腫瘍内科医、放射線腫瘍医、緩和ケア医が併診するスタイルとなりつつあり、診療の経過のなかに多くの医療者が関わるようになったものの、化学療法から全面的な緩和ケアへの移行期については依然として診療の切れ目が顕著であるという。一般病棟で診療を選ぶか緩和ケア施設での診療を選ぶかは、患者の選択が重視されるべきである。しかし、実際には十分な情報がないまま短時間で患者は自分の将来を決定しなければならない。一方、医療者側も多くの人間が関わる中で、患者の病状や希望について十分な確認が行われていないといえる。医療者は、緩和ケア移行前から情報を共有し患者が納得して方向を決定するに十分な情報を提供する必要があると述べた。都立駒込病院 佐々木常雄氏は、終末期もがん薬物治療を継続するという診療形態が標準化する可能性と、それに対応できない現状の課題を指摘した。近年、分子標的治療薬では病状が進行しPD(progressive disease)となった後も薬剤投与を継続することで生存率向上を示すエビデンスがいくつか出てきている。一方、患者側からも化学療法が効果を示さなくなった後も治療を望む声は多く聞かれる。このように薬物治療の進化によるエビデンスの出現と患者の要望を考えると、終末期も薬物を用いた切れ目のない医療を提供する必要が出てくると予想される。しかし、現行のホスピスなどでは抗がん剤治療について制度上の制限があり、この診療形態に適応することは困難であるという。近い将来、こういった治療の流れに対応する必要が出てくるであろうと述べた。古川浩一氏インタビュー講演後、追加発言シンポジストの一人である新潟市民病院 古川浩一氏に話を伺った。古川氏の施設は600床以上の大病院であり、がん拠点病院である。緩和外来はあるものの、がん診療医ではなく総合診療科での開設であり受診者は2名たらず。また、緩和ケア病棟がないという理由で、緩和ケア担当医はいても実際には外科医を含めたがん診療を担う医療者が緩和ケアを行い、終末期診療を担い最期を看取っている構造は従来と変わらない。他のがん拠点病院でもこのような施設は少なくはなさそうである。そこには、がん医療が抱えるいくつかの問題点があるといえそうだ。 患者中心でないチーム医療の落とし穴: 緩和ケアの認知と普及は関係者の努力の甲斐あってめざましいものがある。その一方で、緩和ケアチームと称していても単なるグループとしての活動が中心となっていないだろうかと古川氏は指摘する。チームメンバーも“チーム”を作るために“召集”され、活動のための“活動”に重きが置かれ、患者中心に作られるチームであるはずが、初期の目的から離れて制度のために作られるチームとなってしまうことが危惧される。たとえば、緩和ケアチームチームの介入は活動を優先するあまり“イニシアチブを担い治療方針の決定を下すのは誰なのか所在がはっきりしない事態”が発生している。結果として、かえって患者の利益が損なわれたりすることはないだろうかと古川氏はいう。フラットな関係でもリーダー(司令塔)がいれば、情報が集約され適切な治療方針の決定ができ、不要なリスクも回避できる。地域のニーズや医療水準を加味した患者中心のチーム医療に回帰し、化学療法、緩和ケア、在宅医療といった枠を超えたより包括的なチームを再構築すべき段階が来ている。 他施設移行における問題: 患者は“誰が自分を診てくれるのか”“頼れるべき人なのか”わからないまま施設を移らざるを得ない。これはいずれの施設に移行する場合も大きな問題であるが、なかでもホスピスとの連携には制度上の段差があり敷居は高いという。病院とホスピス転移の際の段差をどうするかが今後の大きな問題といえそうである。一方、在宅医療との連携は良好である。古川氏の施設では在宅移行する場合、在宅診療医が各領域の担当スタッフを連れて来院し患者にあいさつをする。患者には“あなたの周りにはこんなに信頼できるスタッフがいて支えています”ということが目に見えてわかる。病院も在宅移行後の対応を保障している。患者にとっては初期の主治医との関係が途切れることなく心強いし、在宅診療医にとってはネットワーク時の障害である後方ベッド確保が保障される。古川氏は、「こういった取り組みを行うことで、参加者が増えネットワークができ、さらに切れ目なき医療モデルになると思う。とはいえ、現状ではまだまだ在宅ケアに取り組む多くの医療者の熱意に依存していることを忘れてはいけない」という。病院、ホスピス、在宅と連携して、今後ますますより充実した継続可能な制度設計をしていく必要があるといえる。最後に古川氏は、「がん対策基本法は、この5年間を振り返り次の5年間をどうするかという段階にきている。現実の医療を鑑みながら患者中心のチーム医療の在り方を見誤ることなく次の5年を考えるべきでしょう」と語った。(ケアネット 細田 雅之)

1900.

トロンボポエチン受容体作動薬eltrombopag、特発性血小板減少性紫斑病に有用

eltrombopagは、慢性免疫性血小板減少(特発性血小板減少性紫斑病:ITP)の管理に有用であり、特に脾臓摘出などの治療に反応しなかった患者にベネフィットをもたらす可能性があることが、中国・香港中文大学のGregory Cheng氏らによる検討で明らかとなった。ITPでは、抗血小板抗体によって血小板の破壊が増進されるとともに巨核球からの血小板の放出が抑制されるため、軽度~重度の出血をきたす。eltrombopagは経口投与が可能な小分子の非ペプチド性トロンボポエチン受容体作動薬で、ITPのほかC型肝炎やがんの化学療法に伴う血小板減少の治療に使用されている。Lancet誌2011年1月29日号(オンライン版2010年8月24日号)掲載の報告。6ヵ月治療のプラセボ対照無作為化第III相試験研究グループは、ITPに対するeltrombopagとプラセボの効果、安全性を評価する二重盲検無作為化第III相試験を実施した。対象は、6ヵ月間以上の治療を受け、ベースラインの血小板数が<30,000/μLの成人ITP患者。これらの患者が、各国の標準治療+eltrombopag 50mg/日を投与する群あるいは標準治療+プラセボを投与する群に無作為に割り付けられ、6ヵ月間の治療が行われた。患者、医師、データの評価者には治療割り付け情報は知らされなかった。用量は治療への反応としての血小板数の変動に基づいて調節した。治療への反応(血小板数:5万~40万/μLと定義)は、最初の6週間は毎週1回、その後は少なくとも4週に1回評価した。主要評価項目は、上記の定義による治療への反応とし、intention-to-treat解析を行った。血小板数が増加、レスキュー治療や重度出血は減少2006年11月22日~2007年7月31日までに23ヵ国75施設から197例が登録され、eltrombopag群に135例が、プラセボ群には62例が割り付けられた。治療期間中に1回以上の治療への反応が確認された患者は、eltrombopag群が79%(106例)、プラセボ群は28%(17例)であり、オッズ比は8.2(95%信頼区間:3.59~18.73)と有意な差が認められた(p<0.0001)。併用された標準治療の減量が可能となったのは、eltrombopag群の59%(37例)に対しプラセボ群は32%(10例)であり、有意差がみられた(p=0.016)。治療期間中にレスキュー治療(用量の増量、新たな治療の追加、血小板輸血、脾臓摘出)を要した患者は、eltrombopag群が18%(24例)と、プラセボ群の40%(25例)に比べ有意に良好であった(p=0.001)。血栓塞栓イベントは、eltrombopag群の2%(3例)にみられたが、プラセボ群では認められなかった。ALT値の軽度上昇がeltrombopag群の7%(9例)、プラセボ群の3%(2例)に、総ビリルビン値の上昇がeltrombopag群の4%(5例)に認められた(プラセボ群は0%)。重度出血イベントは、eltrombopag群が<1%(1例)であったのに対し、プラセボ群は7%(4例)で発生した。著者は、「eltrombopagはITPの管理に有用であり、特に脾臓摘出などの治療に反応しなかった患者にベネフィットをもたらす可能性がある」と結論した上で、「これらのベネフィットを選択する場合は、eltrombopag治療に伴う潜在的なリスクとのバランスを十分に考慮して決めるべきである」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

検索結果 合計:2008件 表示位置:1881 - 1900