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ニボルマブ、FDAに非扁平上皮NSCLCへの適応拡大を申請

 2015年9月2日、ブリストル・マイヤーズ スクイブ社(NYSE:BMY/本社:米国・ニューヨーク/CEO:ジョバンニ・カフォリオ)は、米国食品医薬品局(FDA)が、治療歴を有する非扁平上皮非小細胞肺がん(非小細胞肺がん、以下NSCLC)患者を対象としたニボルマブ(商品名:オプジーボ)に関する生物学的製剤承認一部変更申請(sBLA)を受理したことを発表した。このsBLAは、ニボルマブの現在の適応である、治療歴を有する扁平上皮NSCLCからの拡大を目的とするもの。FDAによる審査完了の目標期日は 2016年1月2日。 FDAはこの申請を優先審査の対象に指定すると共に、ニボルマブをブレークスルー・セラピーに指定した。 この申請は、プラチナ製剤を含む化学療法の2剤併用レジメンの前治療中または前治療後に病勢進行がみられた非扁平上皮NSCLC患者を対象に、全生存期間を評価した第III相臨床試験であるCheckMate‐057試験に基づいている。プレスリリースはこちら。(PDF)

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早期乳がんにおける術後補助療法としてのビスホスホネート:無作為化試験からの個々のデータのメタ分析(解説:矢形 寛 氏)-402

 ビスホスホネートは、転移抑制、とくに骨転移の予防に効果を示す可能性が指摘されているが、臨床試験によって結果が一定していない。しかし、サブセット解析では、閉経後または高齢女性に対してはベネフィットが示唆されている。そこで、術後補助療法としてのビスホスホネートのリスクとベネフィットを明らかにするため、Early Breast Cancer Trialists’Collaborative Group(EBCTCG)のグループによってメタ分析が行われた。主要評価項目は、再発、遠隔再発と乳がん死である。主要サブグループ調査項目は、遠隔転移部位(骨とそれ以外)、閉経状態(閉経後[自然および人工]とそれ以外)、ビスホスホネートのクラス(アミノ基を含有するもの[ゾレドロン酸、イバンドロン酸、パミドロン酸]とそれ以外[クロドロン酸])である。 26試験の参加女性1万8,766例のうち、2~5年のビスホスホネートの試験1万8,206例(97%)のデータが得られ、中央観察期間(5.6年)で3,453例の初回再発と、その後の2,106例の死亡が確認された。全体として、再発減少は(RR 0.94、95%[CI]:0.87~1.01、2p=0.08)、遠隔再発は(0.92、0.85~0.99、2p=0.03)、乳がん死は(0.91、0.83~0.99、2p=0.04)と、わずかに有意差が認められたのみであったが、骨転移の減少は明らかであった(0.83、0.73~0.94、2p=0.004)。 閉経前ではいずれも治療効果が認められなかったが、閉経後女性(1万1,767例)では、再発(RR 0.86、95%[CI]:0.78~0.94、2p=0.002)、遠隔再発(0.82、0.74~0.92、2p=0.0003)、骨転移(0.72、0.60~0.86、2p=0.0002)、乳がん死(0.82、0.73~0.93、2p=0.002)ともに大きな減少効果が認められた。絶対的な効果の違い(10年)は、骨転移2.2%、乳がん死3.3%である。 年齢でみると、45歳未満では効果がなく、55歳以上では明らかに有効であった。閉経状態と年齢による差は類似しており、どちらがより有意かは明らかにできなかった。ビスホスホネートのクラス、治療のスケジュール(治療の強度や期間)、エストロゲン受容体の状態、リンパ節、腫瘍グレード、化学療法の併用による効果の違いはなかった。乳がん以外のがん死は有意差が認められなかった。骨折の情報は1万3,341例(71%)からのみ得られ、5年の骨折リスクは6.3%から5.1%にわずかに減少した(RR 0.85、95%[CI]:0.75~0.97、2p=0.02)。最も効果がみられたのは2~4年の間であった。5年以降での効果はあまりないようであるが、情報が不完全であるためかもしれない。対側乳がんの発生率は疫学データとは異なり、無作為化試験では有意差がみられなかった。 ビスホスホネートは、治療開始時に閉経後(自然閉経と人工閉経)であった女性にのみ、転移抑制効果と乳がん死の抑制に明らかな効果が認められることが示された。今までも複数のメタ分析の報告がみられ、結果がまちまちであったが、本研究は最も信頼性の高いものと思われる。まず、ビスホスホネート開始時に閉経後であることが重要である。次に、乳がんの進行度やサブグループには関係なく、効果は一定であることから、再発リスクの低い乳がんではビスホスホネートの効果はきわめて小さく、逆にリスクの高い乳がんでは、それだけ絶対的な有効性が高まるであろう。さらに、顎骨壊死などの有害事象は、より強力なビスホスホネートの使い方で頻度が上がるため、内服治療や6ヵ月ごとのゾレドロン酸投与が推奨され、期間もやみくもに長く行われるべきではない。ビスホスホネートのレジメンによる違いについては、今後進行中の試験によって、より明確になってくるであろう(SWOG0307、SUCCESS、HOBOE-premenopausal、TEAM-IIb)。

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コーヒー4杯/日以上で結腸がんの再発が減少?

 座りがちな生活や肥満、食事による糖負荷増大などの相対的インスリン過剰状態では、結腸がんの再発が増加することが観察研究で示されている。一方、コーヒーの高摂取が、2型糖尿病リスクの減少とインスリン感受性の増大と関連しているが、結腸がんの再発と生存率に対するコーヒーの影響は不明である。米国・ハーバード大学のBrendan J. Guercio氏らは、コーヒー摂取量とステージIII結腸がん患者の再発および死亡との関連を検討し、コーヒーの高摂取が結腸がんの再発や死亡の減少に関連する可能性を報告した。Journal of clinical oncology誌オンライン版2015 年8月17日号に掲載。 著者らは、ステージIII結腸がん953例について、術後化学療法中および終了後6ヵ月間におけるカフェイン入りコーヒー、カフェイン抜きコーヒー、ハーブティー以外の紅茶、その他128種類の摂取量を前向きに調査した。がんの再発率や死亡率におけるコーヒー、ハーブティー以外の紅茶、カフェインの影響についてCox比例ハザード回帰を用いて調べた。 主な結果は以下のとおり。・コーヒー(カフェイン入りおよびカフェイン抜き)を4杯/日以上を摂取する患者の結腸がん再発または死亡の調整ハザード比(HR)は、まったく飲まない患者に比べ、0.58(95%CI:0.34~0.99)であった(傾向のp=0.002)。・カフェイン入りコーヒーを4杯/日以上摂取する患者では、がんの再発または死亡リスクがまったく飲まない人と比べて有意に減少し(HR:0.48、95%CI:0.25~0.91、傾向のp=0.002)、カフェイン摂取量の増加もがんの再発または死亡を有意に減少させた(HR:5分位の両端で0.66、95%CI:0.47~0.93、傾向のp=0.006)。・ハーブティー以外の紅茶とカフェイン抜きコーヒーの摂取量は患者の転帰と関連していなかった。・コーヒー摂取量と転帰改善の関連は、他の再発や死亡の予測因子を通じて一貫しているようにみえる。

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Stage IIIA/N2のNSCLC、術前化学放射線療法は有用か/Lancet

 Stage IIIA/N2の非小細胞肺がん(NSCLC)の治療では、術前の化学療法に放射線療法を併用しても、さらなるベネフィットは得られないことが、スイス・Kantonsspital WinterthurのMiklos Pless氏らSAKK Lung Cancer Project Groupの検討で示された。局所進行Stage III病変は治癒の達成が可能な最も進行したNSCLCであるが、最終的に患者の60%以上ががんで死亡する。Stage IIIA/N2の標準治療は同時併用化学放射線療法と手術+化学療法で、後者については術後または術前化学療法+手術が、手術単独よりも生存期間において優れることが示されているが、術前化学放射線療法+手術の第III相試験はこれまで行われていなかった。Lancet誌オンライン版2015年8月11日号掲載の報告より。術前放射線療法の逐次的追加の有用性を評価 研究グループは、術前放射線療法の追加により局所病変の奏効率や完全切除率が改善することで、無イベント生存期間(EFS)が延長し、全生存期間(OS)の延長の可能性もあるとの仮説を立て、これを検証するために無作為化第III相試験を行った(Swiss State Secretariat for Education, Research and Innovation[SERI]などの助成による)。 対象は、年齢18~75歳、T1~3N2M0、Stage IIIA/N2の局所進行NSCLCであり、全身状態が良好(ECOG PS:0、1)で、主要臓器機能が正常な患者であった。 被験者は、術前化学療法(シスプラチン100mg/m2+ドセタキセル85mg/m2、3週ごと)を3サイクル施行後に、術前放射線療法(総線量44Gy、22分割、3週間)を行う群(化学放射線療法群)、または同一レジメンの術前化学療法のみを行う群(化学療法単独群)に無作為に割り付けられた。術前化学放射線療法群は終了後21~28日に、術前化学療法単独群は21日に手術が予定された。 主要評価項目はEFS(割り付け時から再発、進行、2次がん、死亡のうち最初のイベント発生までの期間)とし、intention-to-treat解析を行った。 2001~2012年までに、スイス、ドイツ、セルビアの23施設に232例が登録され、化学放射線療法群に117例(年齢中央値60.0歳、女性33%、PS0 71%、喫煙者91%)が、化学療法単独群には115例(59.0歳、33%、69%、96%)が割り付けられた。フォローアップ期間中央値は52.4ヵ月だった。 本試験は、3回目の中間解析(イベント発生数134件)の結果を踏まえ、独立データ監視委員会の勧告により無効中止となった。奏効率は優れたが、EFSとOSに差なし 化学療法の完遂率は、化学放射線療法群が92%(108/117例)、化学療法単独群は90%(103/115例)であり、比較的高かった。化学放射線療法群の16%(19/117例)が放射線療法を開始できなかったが、予定線量の完遂率は96%(94/98例)だった。 化学療法を受けた患者では毒性作用が高頻度にみられ、Grade 3/4の発現率は化学放射線療法群が45%(49/110例)、化学療法単独群は60%(73/121例)であった。しかし、治療関連有害事象で化学療法が永続的に中止となった患者はそれぞれ4%(5/117例)、6%(7/115例)のみであった。放射線誘発性のGrade 3の嚥下障害が7%(7/98例)に認められた。 抗腫瘍効果は、化学放射線療法群で完全奏効(CR)が4例(3%)、部分奏効(PR)が67例(57%)にみられ、客観的奏効率は61%であったのに対し、化学療法単独群ではCRが2例(2%)、PRが48例(42%)で客観的奏効率は44%であり、両群間に有意な差が認められた(p=0.012)。 手術は、化学放射線療法群が85%(99/117例)、化学療法単独群は82%(94/115例)で行われた。完全切除率は両群間に有意な差はなく(p=0.06)、病理学的完全奏効(16 vs. 12%)やリンパ節転移のdownstaging(N2からN1/N0へ)(64 vs. 53%)も同等であった。術後30日以内に、化学療法単独群の3例が死亡した。 EFS中央値は、化学放射線療法群が12.8ヵ月(95%信頼区間[CI]:9.7~22.9)、化学療法単独群は11.6ヵ月(95%CI:8.4~15.2)であり、両群間に差を認めなかった(ハザード比[HR]:1.1、95%CI:0.8~1.4、p=0.67)。また、OS中央値も、化学放射線療法群が37.1ヵ月(95%CI:22.6~50.0)、化学療法単独群は26.2ヵ月(95%CI:19.9~52.1)と、両群間に差はなかった(HR:1.0、95%CI:0.7~1.4)。 著者は、「Stage IIIA/N2 NSCLCに対する術前化学療法+手術はきわめて良好な予後をもたらし、術前放射線療法を追加してもそれ以上のベネフィットは得られなかった」とまとめ、「これまでの知見も考慮すると、放射線療法と手術のいずれか1つの局所治療と化学療法の組み合わせは、Stage IIIA/N2 NSCLCの患者に施行可能であり、標準治療とみなすべきと考えられる」と指摘している。

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転移性前立腺がんのADT、ドセタキセル併用でOS延長/NEJM

 転移性前立腺がん治療について、アンドロゲン除去療法(ADT)単独よりも、ADT開始時にドセタキセルを6サイクル併用することで、全生存期間が有意に延長することが明らかにされた。米国ダナ・ファーバーがん研究所のChristopher J. Sweeney氏らが報告した。ADTは1940年代から転移性前立腺がんの治療の柱となっているが、患者への治療負荷の問題、また治療抵抗性が多く発生するなどの課題があり模索が続けられてきた。化学療法+ADT併用の先行研究では、有益性は示されなかったが、小規模の低腫瘍量患者を対象とした検討であったことから、今回研究グループは、高腫瘍量と低腫瘍量に層別化した前向きの検討を行い、ADT単独よりもADT+ドセタキセル併用のほうが、生存期間が延長するのかについて評価した。NEJM誌オンライン版2015年8月5日号掲載の報告より。患者790例を対象に、併用群の全生存期間延長が3割増しであるかを検証 検討は2006年7月~2012年12月に、総計790例の転移性ホルモン感受性前立腺がん患者を対象に行った。被験者を2群に無作為に割り付けて、ADT+ドセタキセル(75mg/m2体表面積を3週ごとに6サイクル投与)またはADT単独の投与を行った。 試験の主要目的は、単独群よりも併用群の患者の全生存期間中央値が33.3%延長するとの仮定を検証することであった。併用群の死亡に関するHRは0.61 被験者790例は、ADT単独群に393例、併用群に397例が無作為に割り付けられた。全体で、年齢中央値は63歳、約70%が腫瘍パフォーマンスステータスについてECOGスコア0、約65%が高腫瘍量、約60%がGleasonスコア(範囲:2~10、高値ほど増悪しており予後不良)8以上だった。追跡期間中央値は28.9ヵ月であった。 結果、全生存期間の中央値は、ADT単独群(44.0ヵ月)よりも併用群(57.6ヵ月)が有意に13.6ヵ月延長した。併用群の死亡に関するハザード比(HR)は0.61(95%信頼区間[CI]:0.47~0.80、p<0.001)。 生化学的、症状およびX線所見で確認した進行までの期間中央値は、併用群20.2ヵ月に対してADT単独群は11.7ヵ月であった(HR:0.61、95%CI:0.51~0.72、p<0.001)。 12ヵ月時点でPSA値0.2ng/mL未満であった患者は、併用群27.7%に対してADT単独群は16.8%だった(p<0.001)。 なお併用群でみられた有害事象として、グレード3/4の発熱性好中球減少症が6.2%、グレード3/4の好中球減少症を伴う感染症が2.3%、いずれもグレード3の感覚系神経障害および運動系神経障害が0.5%が報告されている。

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早期乳がんの術後ビスホスホネート、ベネフィットは閉経女性のみ?/Lancet

 早期乳がんに対するビスホスホネート製剤による術後補助療法は、骨再発を抑制し、生存期間の改善をもたらすが、明確なベネフィットは治療開始時に閉経に至っている女性に限られることが、Early Breast Cancer Trialists’ Collaborative Group(EBCTCG)の検討で示された。術後ビスホスホネート療法は、早期乳がん女性の無骨転移生存、無病生存、全生存を改善するとの報告がある一方で、全体では有意な効果はないものの、閉経後または高齢女性でベネフィットを認めたとの報告がある。これは、ビスホスホネート製剤は性ホルモンが低下した女性(閉経または卵巣抑制療法)にのみベネフィットをもたらすとの仮説を導く。Lancet誌オンライン版2015年7月23日号掲載の報告より。リスクとベネフィットをメタ解析で評価 研究グループは、早期乳がんに対する術後ビスホスホネート療法のリスクとベネフィットを評価するためにメタ解析を実施した(Cancer Research UKなどの助成による)。 早期乳がんの治療においてビスホスホネート製剤と対照を比較した無作為化試験のうち交絡因子のないすべての試験から個々の患者のデータを抽出した。 主要評価項目は、再発、遠位再発、乳がん死とした。初回遠位再発の部位(骨、その他)、閉経状況(閉経後[自然閉経、人工閉経]、閉経前)、ビスホスホネート製剤のクラス(アミノビスホスホネート[ゾレドロン酸、イバンドロネート、パミドロネート]、その他[クロドロネート])でサブグループ解析を行った。 intention-to-treat集団において、log-rank法を用いてビスホスホネート製剤と対照の初回イベント発生の率比(RR)を算出した。閉経後女性の骨再発を28%、乳がん死を18%抑制 26試験に参加した1万8,766例のデータを解析した。1万8,206例(97%)が2~5年(中央値3.4年)の治療を受け、フォローアップ期間中央値は5.6年であった。この間に3,453例が初回再発し、2,106例が死亡した。 対照と比較したビスホスホネート製剤の全体的な効果は、再発(RR:0.94、95%信頼区間[CI]:0.87~1.01、2p=0.08)、遠隔再発(0.92、0.85~0.99、2p=0.03)、乳がん死(0.91、0.83~0.99、2p=0.04)のいずれも有意水準の境界近くであったが、骨再発(0.83、0.73~0.94、2p=0.004)の抑制効果は明確であった。 閉経前女性では、どの評価項目にも明らかな効果は認めなかったが、閉経後女性1万1,767例の解析では、再発(RR:0.86、95%CI:0.78~0.94、2p=0.002)、遠位再発(0.82、0.74~0.92、2p=0.0003)、骨再発(0.72、0.60~0.86、2p=0.0002)、乳がん死(0.82、0.73~0.93、2p=0.002)が著明に改善された。 一方、ビスホスホネート製剤の骨再発抑制効果は、高齢女性で高く(2p=0.03)、閉経後女性で大きい傾向がみられたものの(2p=0.06)、年齢と閉経状況は密接に関連するため、どちらがより強く関連するかは決定できない。 薬剤のクラス、投与スケジュール、エストロゲン受容体(ER)の状態、局所リンパ節転移の有無、腫瘍の悪性度、併用化学療法の有無による差は認めなかった。また、乳がん以外の原因による死亡に差はなかったが、骨折はビスホスホネート製剤で有意に少なかった(RR:0.85、95%CI:0.75~0.97、2p=0.02)。 著者は、「ビスホスホネート製剤は、主にアロマターゼ阻害薬による治療を受けている閉経後ER陽性乳がん患者において、骨量減少や骨折リスクの抑制を目的に使用される。今回の解析結果は、これに加え、腫瘍に対する効果も有することを示しており、広範な閉経後女性において術後ビスホスホネート療法を考慮すべきであることが示唆される」と指摘している。

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新しいがん免疫療法、これまでと何が違う?~肺がん医療向上委員会

 7月27日(月)、都内で第8回肺がん医療向上委員会※が開催された。その中で、委員長である中西 洋一氏(九州大学大学院医学研究院臨床医学部門内科学講座呼吸器内科学 教授)が、注目を集める新しいがん免疫療法について、これまでの免疫療法との違い、抗PD-1抗体薬の試験成績と今後の課題について講演した。これまでの免疫療法との違い 免疫療法は、患者の免疫応答と関係なく、一定期間経過すると消失する「受動免疫療法」と、患者の免疫応答を誘導する「能動免疫療法」に分けられる。また、この分類とは別に、特定のがん抗原に対する免疫を強化する「特異的免疫療法」と、免疫機能全般を強化する「非特異的免疫療法」に分けられる。 中西氏によると、非特異的免疫療法の中には、免疫力全般を高め、ある程度の有効性が示されている免疫グロブリンやピシバニールのほか、プロポリスやアガリクス、丸山ワクチンなど有効性に関しては“怪しい”と言わざるを得ないものが含まれる。これらはまったく効果がないわけではなく、免疫力を若干高めるというもので、そのもの自体が怪しいわけではない。しかしながら、それらを「免疫を高めるから、がんに効く」と紹介したり、宣伝したりすることで“怪しい”ものになってしまっているという。 がんの免疫療法としては、受動免疫療法においては、がんを標的とした抗体や細胞療法、また、能動免疫療法には、がんワクチン、サイトカイン(IL、TNFα、GM-CSF)、T細胞活性化メディエーターがある。現在注目されている新たな免疫療法は、このT細胞活性化メディエーターである。これまで開発されてきた免疫療法の多くは特異的免疫療法であるが、T細胞活性化メディエーターは非特異的免疫療法である、と中西氏は強調した。また、T細胞活性化メディエーターには、アクセルである共刺激経路と、大きな注目を集めている、免疫のブレーキである免疫チェックポイント(免疫抑制経路)がある。 現在、肺がんにおける免疫チェックポイント阻害薬として期待されているものとして、抗PD-1抗体(ニボルマブやペムブロリズマブなど)と抗CTLA-4抗体(イピリムマブなど)がある(肺がんに対しては現在、国内未承認)。その違いについて中西氏は次のように説明した。CTLA-4はリンパ組織における抗原提示を制御し免疫系全体を抑制するのに対し、PD-1は不特定多数のがん特異的免疫を抑制する。よって、抗CTLA-4抗体のほうが、抗PD-1抗体より効果が強いが副作用も多い可能性がある。ニボルマブの肺がんにおける試験成績と今後の課題 ニボルマブの扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)に対するCheckMate017試験、非扁平上皮NSCLCに対するCheckMate057試験は、どちらも進行期肺がんのセカンドラインにおけるドセタキセルとの比較で、全生存期間(OS)を主要評価項目として実施された第III相試験である。これらの試験のOSのハザード比は、扁平上皮がんで0.59、非扁平上皮がんで0.73と、どちらも驚くべき結果が認められ、肺がんに対する免疫療法で初めて科学的に有効性を証明した。さらに、安全性にも期待が持てる結果であった。 一方、これらの試験では、ニボルマブ群とドセタキセル群の生存曲線の交差と、PD-L1発現とニボルマブの効果の相関という2つの点において、検討すべき結果が示されている。非扁平上皮がんではニボルマブ群とドセタキセル群の生存曲線が交差しており、ニボルマブにまったく効果のない例が存在する可能性があるという。また、非扁平上皮がんではPD-L1の発現割合の多い症例でニボルマブ群が優れており、PD-L1発現とニボルマブの効果に相関がみられたが、扁平上皮がんにおいてはPD-L1の発現の有無にかかわらず、ニボルマブ群が優れていた。 中西氏はこれらの結果をまとめ、抗PD-1抗体ニボルマブは既治療のNSCLC(扁平上皮がん、非扁平上皮がん)に対して、従来の抗がん剤に比べ、明らかに優れた結果が示されたと述べた。しかしながら、ニボルマブの効果を予測するバイオマーカーについて、PD-L1は関連がある場合とない場合があるため不十分であるとし、また、治療開始の早い段階で効果のない症例を見極めて次の治療を考えることが必要であると強調した。 最後に、中西氏は、肺がんに対する薬物療法において、これまでの化学療法と分子標的療法に加え、免疫療法というもう1つの武器が手に入ったが、今後、どのように使い分けていくか、どのように併用するかを、安全性の点を含めてしっかりと検討する必要がある、と結んだ。※肺がん医療向上委員会特定非営利活動法人日本肺癌学会が、肺がん患者とその家族に正しい情報を提供するとともに、正しい診断と治療がなされる環境を目指し、学術団体、がん領域に関わる患者支援団体、臨床試験グループ、製薬・臨床検査関連企業など、肺がん医療に関わるすべての関係者との連携の下、2013年11月に設置。

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ウィルムス腫瘍の術後補助療法、DOXは省略可/Lancet

 ステージII~IIIで中等度リスクのウィルムス腫瘍の標準的術後化学療法に関して、ドキソルビシン(商品名:アドリアシンほか)をレジメンに含む必要はないことが実証された。英国・ロンドン大学小児保健研究所のKathy Pritchard-Jones氏らが小児患者583例を対象に行った、国際多施設共同の第III相非盲検非劣性無作為化対照試験「SIOP WT 2001」の結果、示された。ドキソルビシンは標準レジメンに含まれているが、研究グループは、「ドキソルビシンの心毒性作用の回避が、術後予後が良好であった患児の長期アウトカム改善のために重要である」として、ドキソルビシンがレジメンから省略可能か検討を行った。Lancet誌オンライン版2015年7月8日号掲載の報告より。ドキソルビシンを省略可能か2年時点の無再発生存率で評価 SIOP WT 2001は、26ヵ国251病院から原発性腎腫瘍と診断された小児(生後6ヵ月~18歳)を集めて行われた。患児は、ビンクリスチン(商品名:オンコビン)とアクチノマイシンD(同:コスメゲン)による4週間の術前化学療法を受けていた。 待機的腎切除後の評価でステージII~III中等度リスクのウィルムス腫瘍と判定された患児を、最小化法を用いて、ビンクリスチン1.5mg/m2(1~8、11、12、14、15、17、18、20、21、23、24、26、27週時)+アクチノマイシンD 45μg/kg(2週目から3週間に1回)とドキソルビシン50mg/m2を5回(2週目から6週間に1回)投与する(標準治療)群またはドキソルビシン非投与(実験的治療)群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、2年時点の無再発生存率の非劣性についてで、intention to treatにて解析を行い規定マージンは10%であった。 また、安全性と有害事象について評価(肝毒性と心毒性を系統的にモニタリング)した。両群差4.4%で、省略群の非劣性が認められる 2001年11月1日~2009年12月16日の間に、583例の患児(ステージIIが341例、ステージIIIが242例)が集まり、ドキソルビシンを含む標準治療群に291例を、ドキソルビシンを省略した実験的治療群に292例を無作為に割り付けた。追跡期間中央値は60.8ヵ月(IQR:40.8~79.8)であった。 2年時点の無再発生存率は、標準治療群92.6%(95%信頼区間[CI]:89.6~95.7)、実験的治療群88.2%(同:84.5~92.1)で、両群差は4.4%(同:0.4~9.3)であり事前規定のマージン10%を超えなかった。 5年全生存率は、標準治療群96.5%(同:94.3~98.8)、実験的治療群95.8%(93.3~98.4)であった。 治療関連の毒性作用による死亡の報告は4例。標準治療群の死亡は1例(<1%)で敗血症によるものであった。残る3例が実験的治療群(1%)で、水痘、代謝性の発作、再発治療中の敗血症で死亡した。 また、17例の患児(3%)で肝静脈閉塞性疾患が、心毒性作用の報告は、標準治療群291例のうち15例(5%)であった。 腫瘍が再発し死亡に至ったのは、標準治療群12例、実験的治療群10例であった。

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専門外のアドバイス(前半)【Dr. 中島の 新・徒然草】(074)

七十四の段 専門外のアドバイス(前半)最近、親戚の男性が若くしてがんになってしまいました。当然のことながら奥さんもお母さんも周章狼狽。その結果、私にアドバイスを求めてきました。とはいえ消化器がんのことなんぞはまったくわからず、私もしどろもどろです。そうこうしているうちに手術が終わり、いよいよ化学療法。こちらも何とかしてあげたいのは山々です。「その病気だったら専門の先生に聞いて下さい」ということなら誰でも言えること。いくら専門外とはいえ、「私」にアドバイスを求めてきたのだから、「私」に話を聴いてもらいたいわけです。ということで、ある日、腹をくくって彼が入院している病院にお見舞いにいくことにしました。ロビーで彼と話をするうちに、医師ならではの助言が数多くできることに気づきました。というわけで、いくつかここに紹介しましょう。助言その1:標準治療こそ最強 中島 「病気になったら周囲の人が色々とアドバイスをしてくれると思うけど」 男性 「そうなんですよ」 中島 「たとえば『イワシの頭を食べたらがんに効く』とか、そのテのことだ」 男性 「もう既にあれこれ言われています」 中島 「親戚だからホントのことを言うけどね、そんなモンはクソだな!」 男性 「クソ……ですか?」 中島 「イワシの頭の錠剤とか、1本何万円の〇〇のエキスとか、全部その場で叩き返しなさい」 男性 「でも、せっかく親切で言ってくれているんだし」 中島 「現代医学を信じようよ。標準治療こそ最強だから」 男性 「標準治療といいますと?」 中島 「科学的な理論と膨大な試行錯誤で築き上げられた『定石』だ」 男性 「将棋や囲碁の定石のようなものですか」 中島 「そう。このステージならこう、この場合はこう、とベストのやり方が確立されているわけ」 男性 「なるほど」 中島 「もちろん定石として固まっていない部分もある。その場合は『治療法Aと治療法Bがあって、それぞれのメリット・デメリットはこうです』という説明があり、患者自身が選択しなくてはならない」 男性 「そうなんですね」 中島 「せっかく治るチャンスがあるんだから、民間療法に走ったりしないように」 男性 「確かに走りそうになっていました」 この男性は普通のサラリーマンですが、ロジカルな考え方のできる人のようでした。助言その2:健康な周囲の人を妬まないこと 中島 「若くして難しい病気にかかったら、『なんで俺が?』って思うでしょ」 男性 「正直なところ、そう思っています」 中島 「健康な人を妬ましく思うのは病人の自然な気持ちだから否定はしないけど」 男性 「ええ」 中島 「あんまり取り憑かれないほうがいいよ。自分が不幸になるだけだし」 男性 「わかりました」 私自身が病気になったときのことを思い出しながらのアドバイスです。助言その3:患者向けガイドラインを読むこと 男性 「何か読んでおいたほうがいい本とかありますか?」 中島 「患者向けガイドラインかな」 男性 「そんなものがあるんですか?」 中島 「各学会が出しているガイドラインは医師向けと患者向けがあるわけ。それの患者向けのものを読んでおくと凄く役に立つよ」 男性 「早速読んでみます」 中島 「ネットで公開されているし、なんせわかりやすいのは間違いない」 実はお見舞いの前に私がこっそり読んで来たのです。最近の患者向けガイドラインはよくできているので感心しました。助言その4:病気のことは周囲に打ち明けたほうが楽になる 中島 「病気のことは高度な個人情報だから周囲に隠しておく、というのも1つの考え方だ」 男性 「そうですね」 中島 「でもね、周囲の人たちにも言ったほうが楽になると僕は思う」 男性 「そうなんですか!」 中島 「自分だけで抱えていると苦しいのは間違いない。僕の場合は人と話をしたほうが気持ちが軽くなったな」 男性 「今日、こうやって話をしているだけでもかなり楽になってきました」 これは人によって立場や考え方は色々だと思います。あくまでも自分自身の経験に基づいての話です。助言その5:経済的補助に関する公的制度を活用すること 中島 「病気になったら治療費のことが気になると思うけど」 男性 「実際のところ気になって仕方ないんですよ。まだ子供も小さいし」 中島 「幸いなことに日本は色々な医療費助成制度があるし、病院にも窓口はあるから相談すべきだ」 男性 「そうですね」 中島 「各市町村にも助成制度があるから、ホームページなんかで調べるといいよ」 男性 「なるほど」 中島 「テレビドラマなんかで『手術してもらうために大金を準備しなくては!』とかやったりしているけど、『どこの外国の話ですか?』と、僕なんかそう思うね」 男性 「わかりました」 なんだかんだいっても諸外国に比べて日本の医療制度は良くできています。長くなりそうなので、話は後半に続きます。途中で1句医師ならば 専門外でも アドバイス

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フェブキソスタット、欧州で化学療法に伴う高尿酸血症への適応拡大

 帝人ファーマ株式会社は7月1日、同社が創製し欧州に導出している高尿酸血症・痛風治療剤「ADENURICR」(欧州販売名:アデニュリク、一般名:フェブキソスタット)について、欧州におけるサブライセンス先であるイタリアのメナリーニ社が、「腫瘍崩壊症候群の中間リスク及び高リスクを有する造血器腫瘍患者における化学療法に伴う高尿酸血症」に対する適応拡大の承認取得を発表したことを報告した。 今回の適応拡大は、腫瘍崩壊症候群の中間リスク及び高リスクを有する造血器腫瘍患者346名を対象に行われた第III相臨床試験の成績に基づくもの。 本試験によってフェブキソスタットが既存療法と比較して臨床的意義のある画期的な治療選択肢となり得ることが認められたことにより、販売保護期間(※)が2019年4月20日まで1年間延長されたという。 日本国内においては、帝人ファーマが2014年よりがん化学療法に伴う高尿酸血症を対象疾患とした第III相臨床試験を実施している。※欧州では、先発医薬品承認後の10年間、後発医薬品の販売が禁止されている。詳細は帝人ファーマ株式会社のプレスリリースへ

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進行扁平上皮NSCLC、ニボルマブで生存期間延長/NEJM

 進行扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)で化学療法中または療法後に疾患進行が認められた患者に対し、ニボルマブ(本邦ではメラノーマを対象に商品名オプジーボとして承認)投与はドセタキセル投与に比べ、生存を有意に改善したことが示された。米国ジョンズ・ホプキンス病院シドニー・キメル総合がんセンターのJulie Brahmer氏らが行った無作為化非盲検国際共同第III相試験の結果、報告された。ニボルマブは、完全ヒト型抗PD-1免疫チェックポイント阻害薬IgG4抗体の新しい分子標的薬である。一方、既治療で疾患進行が認められた進行扁平上皮NSCLC患者への治療オプションは限定的で、研究グループは、NSCLCでは腫瘍細胞においてPD-L1発現が一般的であることから本検討を行った。NEJM誌オンライン版2015年5月31日号掲載の報告より。ニボルマブを2週間ごと vs.ドセタキセルを3週間ごと投与 試験は2012年10月~2013年12月にかけて、272例を対象に行われた。研究グループは被験者を無作為に2群に分け、一方にはニボルマブ(3mg/kg)を2週間ごと、もう一方の群にはドセタキセル(75mg/体表面積m2)を3週間ごと投与した。 被験者の年齢中央値は63歳、男性の割合は76%だった。 主要評価項目は、全生存期間だった。全生存期間中央値はドセタキセル群6.0ヵ月、ニボルマブ群9.2ヵ月 結果、全生存期間中央値は、ドセタキセル群が6.0ヵ月(95%信頼区間[CI]:5.1~7.3ヵ月)だったのに対し、ニボルマブ群は9.2ヵ月(同:7.3~13.3)だった。 ニボルマブ群のドセタキセル群に対する死亡に関するハザード比は、0.59(同:0.44~0.79、p<0.001)で、ニボルマブ群の死亡リスクが41ポイント有意に低かった。 1年時点の全生存率は、ドセタキセル群24%(同:17~31)に対し、ニボルマブ群は42%(同:34~50)で、奏効率はそれぞれ9%、20%だった(p=0.008)。 無増悪生存期間の中央値も、ドセタキセル群2.8ヵ月に対し、ニボルマブ群は3.5ヵ月だった(死亡または疾患進行についてのハザード比:0.62、同:0.47~0.81、p<0.001)。 なお、検討では、PD-1のリガンドであるPD-L1発現レベル別(事前規定1、5、10%)で評価したが、有効性エンドポイントとの関連は示されなかった。 治療に関連したグレード3、4の有害事象の発生は、ドセタキセル群55%に対し、ニボルマブ群は7%だった。 上記を踏まえて著者は、「既治療の進行扁平上皮NSCLC患者に対し、全生存期間、奏効率、無増悪生存期間はいずれも、PD-L1発現レベルに関係なく、ドセタキセル投与群よりもニボルマブ群で有意に良好だった」とまとめている。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)関連記事 ASCO : nivolumab、肺がんに“前例なき”効果

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全周追加切除で早期乳がんの再手術が減少/NEJM

 乳房部分切除術後に切除腔の組織を全周的に追加切除すると、追加切除を行わない場合に比べ断端陽性率が改善し、再手術率が半減することが、米国イェールがんセンターのAnees B Chagpar氏らの検討で示された。早期乳がん女性の多くが乳房部分切除術による温存治療を受けており、全摘出術と同等の生存率が達成されている。一方、部分切除術後の断端陽性率は約20~40%とされ、この場合は局所再発を回避するために再手術を行うことが多い。NEJM誌オンライン版2015年5月30日号掲載の報告より。部分切除術終了後、術中に無作為割り付け 研究グループは、早期乳がんに対する乳房部分切除術時の全周追加切除術の有用性をプロスペクティブに評価する無作為化対照比較試験を行った(イェールがんセンターの助成による)。対象は、年齢18歳以上、針生検でStage 0~IIIの乳がんと診断され、乳房温存術が施行された患者であった。 被験者は、乳房部分切除術時に全周追加切除を施行する群と施行しない群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。割り付けは、外科医が標準的な乳房部分切除術を終了した後、術中に行われた。 断端陽性は、浸潤がんでは切除試料端に腫瘍が接触しており、非浸潤性乳管がん(DCIS)の場合は切除試料端から1mm以内に腫瘍が存在することと定義した。 主要評価項目は断端陽性率であり、副次評価項目は整容性(cosmesis)および切除組織量などとした。整容性の評価は、術後に4段階のリッカート尺度を用いて行い、割り付け群を知らされない状態で患者自身が判定した(手術前後の患者の写真が撮影された)。 2011年10月21日~2013年11月25日に、235例が登録された。年齢中央値は61歳(33~94歳)、フォローアップ期間中央値は22ヵ月だった。再手術率が21%から10%に、整容性も良好 最終的な病理検査では、54例(23%)が浸潤がん、45例(19%)がDCISで、125例(53%)は双方を併発していた。また、11例(5%)は腫瘍が消失しており、術前補助化学療法の完全奏効例などが含まれた。腫瘍最大径中央値は、浸潤がんが1.1cm(0~6.5cm)、DCISは1.0cm(0~9.3cm)であった。ベースラインの人口統計学的、臨床病理学的な背景因子は両群でよくバランスが取れていた。 乳房部分切除術後の割り付け前の断端陽性率は、全周追加切除群が36%(43/119例)、非追加切除群は34%(39/116例)であり、両群に差はなかった(p=0.69)。割り付け後の全周追加切除群の断端陽性率は19%(23/119例)に低下し、非追加切除群(34%)に比べ有意に良好であった(p=0.01)。 再手術を行った患者の86%が断端陽性例で、陰性例に比べ有意に多かった(p<0.001)。再手術率は全周追加切除群が10%であり、非追加切除群の21%に比べ有意に良好だった(p=0.02)。断端陽性例に対し外科医が再手術を行わないと判断した割合は、それぞれ57%、46%であり、両群に差はなかった(p=0.43)。 割り付け前の切除組織量は、全周追加切除群が74.3cm3、非追加切除群は74.2cm3であった(p=0.92)。全周追加切除群の総切除組織量は115.1cm3であり、非追加切除群(74.2cm3)よりも有意に多かった(p<0.001)。 患者自身による整容性の判定は、きわめて良好が全周追加切除群37%、非追加切除群37%、良好がそれぞれ50%、54%、適正が10%、8%、不良は3%、1%であり、両群に差を認めなかった(p=0.69)。血腫は全周追加切除群にはみられず、非追加切除群では3例に認められた(p=0.08)。 著者は、「全周追加切除群の総切除組織量は、他の試験と比較して標準的であった。また、全周追加切除群の患者は、非追加切除群よりも切除組織量が多いにもかかわらず、自分が全周追加切除群に割り付けられたことに気付いておらず、整容性アウトカムの受け入れの程度は両群で同等だった」と考察している。

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進行卵巣がんの術前化療、術後に非劣性/Lancet

 病期III・IVの卵巣がんに対して、化学療法を先行して後に手術を行う場合でも、手術を先行して後に化学療法を行う場合と比べてアウトカムは非劣性であることが示された。英国・バーミンガム大学のSean Kehoe氏らが、550例を対象に行った第III相の非盲検非劣性無作為化試験「CHORUS」の結果、報告した。著者は「今回の試験集団において進行卵巣がんについて、化学療法を手術よりも先行して行うことは標準療法として容認できるものであった」と述べている。Lancet誌オンライン版2015年5月19日号掲載の報告より。87ヵ所の医療機関で550例を対象に試験 研究グループは、2004年3月1日~2010年8月30日にかけて、英国とニュージーランド87ヵ所の医療機関で、病期IIIまたはIVと疑われる卵巣がんの患者552例を対象に試験を行い、化学療法先行の手術先行に対する非劣性を検証した。 被験者のうち条件に合った550例を無作為化し、手術先行群(276例)には最初に手術をした後、化学療法を6サイクル実施した。一方の化学療法先行群(274例)には、最初に化学療法を3サイクル行った後、手術を行い、その後に化学療法を3サイクル実施した。各3週間サイクルの化学療法レジメンは、カルボプラチンAUC5/AUC6+パクリタキセル175mg/m2、カルボプラチンAUC5/AUC6+その他の薬剤、またはカルボプラチンAUC5/AUC6単剤療法のいずれかだった。 主要評価項目は、全生存期間だった。非劣性は、ハザード比(HR)の90%信頼区間[CI]の上限値が1.18未満の場合とした。化学療法先行群の手術先行群に対する死亡ハザード比は0.87 その結果、2014年5月末時点で、死亡は451例で、うち手術先行群は231例、化学療法先行群は220例だった。生存期間中央値は、手術先行群が22.6ヵ月、化学療法先行群が24.1ヵ月だった。 化学療法先行群の手術先行群に対する死亡に関するHRは、0.87(90%片側信頼区間の上限値:0.98)と、化学療法先行群が良好で、非劣性が示された。 なお、術後28日間のグレード3または4の有害イベント(手術先行群は60/252例[24%] vs. 化学療法先行群30/209例[14%]、p=0.0007)および死亡(14例[6%] vs. 1例[1%未満]、p=0.001)の発生は、手術先行群のほうがいずれも有意に多かった。最も多かったグレード3または4の有害イベントは出血で、手術先行群が8例(3%)、化学療法先行群が14例(6%)だった。 グレード3または4の化学療法関連毒性作用の発現頻度は、手術先行群110/225例(49%)、化学療法先行群が102/253例(40%)で有意差はなかった(p=0.0654)。その大半が好中球減少症(各群頻度は20%、16%)であった。なお、致死的な毒性作用(好中球減少症に伴う敗血症)が1例、化学療法先行群で発生した。

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上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害薬に耐性の非小細胞肺がんに対するAZD9291の効果について(解説:小林 英夫 氏)-361

 すでにご承知の読者も多いであろうが、非小細胞肺がんの臨床において2002年から登場した上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)は現在不可欠な薬剤となっている。2014年版日本肺癌学会編『EBMの手法による肺癌診療ガイドライン』1)においても、手術不能非扁平上皮がんでEGFR遺伝子変異陽性例に治療推奨グレードAと位置付けられた。 第1世代EGFR-TKI(ゲフィチニブ、エルロチニブ)導入後には、高度な薬剤性肺障害の合併、無効症例の存在、人種差、薬剤耐性獲得などの問題点が指摘された。これらの課題は、合併肺疾患の有無や、組織型選択、性別、組織検体でのEGFR遺伝子変異といった評価プロセスを経ることにより、ある程度の改善が得られている。そして最大の未解決点は1~2年程度で生じてしまう薬剤耐性問題である。治療当初は良好な腫瘍縮小効果が得られた症例も恒久的効果は困難であり、この解決を目指して新規EGFR-TKI薬の開発が進められている。 今回、新規2薬剤の臨床試験が同時にNEJM誌に掲載されたが、本稿ではアジア人主体で日本人を含む検討がなされた第3世代EGFR-TKI(AZD9291)についての、Janne氏らの論文を概説する。 薬剤耐性獲得の約60%はEGFR T790M変異と考えられているが、AZD9291は非小細胞肺がんのEGFR-TKI活性化変異とEGFR T790M耐性変異を選択的かつ不可逆的に阻害する第3世代経口EGFR-TKIであり、前臨床モデルではこれら変異に有効である一方、野生型EGFRに対する効果は少ない。 AZD9291の安全性と有効性評価のための第I相試験は2013年3月から2014年8月まで行われた。対象は、既治療で、EGFR-TKI活性化変異が確認された、または他のEGFR-TKI治療によっても病勢が進行している、進行非小細胞肺がんである。 253例が登録され、用量漸増コホートに31例、拡大コホートには222例が割り付けられた。内訳は女性が62%、アジア人が62%、腺がんが96%で、80%に細胞傷害性化学療法歴があった。拡大コホート登録症例の62%で EGFR T790Mが検出された。用量漸増コホート31例で、28日間の1日1回20~240mg経口まででは用量制限毒性が発現しなかったため、最大耐用量は確定されなかった。 有害事象として、下痢(47%)、皮疹(40%)、悪心(22%)などが認められ、グレード3以上の有害事象は32%に、重篤な有害事象は22%にみられた。アジア人と非アジア人で重症度や頻度に差はなかった。肺臓炎様イベントは6例(2例はアジア人、4例は非アジア人)にみられ治療中止となったが、データ解析時には回復したか、回復しつつあった。7例が有害事象で死亡したが、薬剤関連の可能性は1例(肺炎)であった。 登録症例中239例で治療効果が判定でき、123例が部分奏効、1例が完全奏効、奏効率51%(95%信頼区間[CI]:45~58%)、病勢安定33%(78例)であった。また、EGFR T790M陽性例のうち評価可能であった127例は奏効率61%(95%CI:52~70%)、陰性例61例では奏効率21%(95%CI:12~34%)だった。奏効例のうち奏効期間が6ヵ月以上の患者の割合は85%で、 EGFR T790M陽性例では88%、陰性例では69%であった。全体の無増悪生存期間中央値は8.2ヵ月、T790M変異陽性例で9.6ヵ月(95%CI:8.3~未到達)、陰性例では2.8ヵ月(95%CI:2.1~4.3)であった。 本邦では第2世代薬のアファチニブが2014年に導入されたが、薬剤耐性について十分な問題解決には到達していない。Janne氏らは、第3世代のAZD9291はEGFR-TKIによる前治療下で病勢が進行してしまった EGFR T790M変異陽性の進行非小細胞肺がん患者に腫瘍縮小効果を示し、EGFR T790Mが本薬有効性の予測マーカーでもあることが示唆された、と結論している。 彼らの成績はencouragingではあるものの、観察期間が短いことや比較試験ではないことなど、さらなる検討を待たなければならない。ただ、非小細胞肺がん治療では治療前だけでなく増悪期においても、組織検体からEGFR遺伝子変異を評価することがますます重要となることは間違いない。なお、肺がんとEGFR-TKIについての手引きが日本肺癌学会より発行されている2)。

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TAS-102の第III相試験~既治療の切除不能大腸がんに有用/NEJM

 TAS-102(トリフルリジン・チピラシル塩酸塩配合薬)は、難治性の切除不能大腸がんの治療において、最良の支持療法(best supportive care:BSC)のみに比べ全生存期間(OS)が有意に延長することが、日本のほか欧米諸国とオーストラリアが参加した第III相試験(RECOURSE試験)で示された。研究の成果は、米国ダナ・ファーバーがん研究所のRobert J Mayer氏らにより報告された。本薬は、チミジンベースの核酸アナログであるトリフルリジンと、チミジンホスホリラーゼ阻害薬であるチピラシル塩酸塩を配合したヌクレオシド系経口抗がん剤。トリフルリジンはDNAに取り込まれることで抗腫瘍効果を発揮し、チピラシル塩酸塩はトリフルリジンの分解に関与するチミジンホスホリラーゼを阻害することでトリフルリジンの適切な血中濃度を維持するという。日本人を対象とするプラセボ対照無作為化第II相試験で、既治療の切除不能大腸がんに対する有用性が確認されていた。NEJM誌2015年5月14日号掲載の報告より。BSCへの追加効果をプラセボ対照無作為化試験で評価 RECOURSE試験は、切除不能な進行・再発大腸がんに対するTAS-102の有用性を評価する国際的な二重盲検プラセボ対照無作為化試験。対象は、年齢18歳以上、全身状態が良好(ECOG PS 0/1)で、生検で結腸または直腸の腺がんが確定され、2レジメン以上の標準的化学療法による前治療歴のある患者であった。 被験者は、TAS-102またはプラセボを投与する群に2対1の割合で無作為に割り付けられた。投与スケジュールは、TAS-102 35mg/m2(1日2回)の週5日投与、2日休薬を2週行ったのち2週休薬する4週を1サイクルとしてこれを繰り返した。また、全例にBSCが施行された。 主要評価項目は全生存期間(OS)、副次評価項目は無増悪生存期間(PFS)、奏効率、病勢コントロール率などであった。 2012年6月17日~2013年10月8日に、日本を含む13ヵ国116施設に800例が登録され、TAS-102群に534例、プラセボ群には266例が割り付けられた。798例(533例、265例)が治療を開始し、760例(502例、258例)で腫瘍反応の評価が行われた。OS、PFS、病勢コントロール率のほか、PS増悪までの期間も改善 ベースラインの年齢中央値は、TAS-102群が63歳、プラセボ群も63歳、男性がそれぞれ61%、62%で、日本人が33%ずつ含まれた。KRAS変異陽性例は51%ずつ、前治療レジメン数≧4は60%、63%を占めた。また、全例がフッ化ピリミジン系薬、オキサリプラチン、イリノテカンを含むレジメンによる前治療を受けており、プラセボ群の1例を除きベバシズマブの投与歴があった。 OS中央値は、TAS-102群が7.1ヵ月であり、プラセボ群の5.3ヵ月に比べ有意に延長した(ハザード比[HR]:0.68、95%信頼区間[CI]:0.58~0.81、p<0.001)。1年OSはそれぞれ27%、18%であった。また、事前に規定されたサブグループのほとんどで、プラセボ群よりもTAS-102群のOS中央値が良好であった。 PFS中央値も、TAS-102群が2.0ヵ月と、プラセボ群の1.7ヵ月に比し有意に延長した(HR:0.48、95%CI:0.41~0.57、p<0.001)。また、すべてのサブグループでTAS-102群のPFS中央値が有意に優れた。 TAS-102群の8例で部分奏効(PR)が、プラセボ群の1例で完全奏効(CR)が得られ、奏効率はそれぞれ1.6%、0.4%であった(p=0.29)。また、これに6週以上持続する病勢安静(SD)を加えた病勢コントロール率はそれぞれ44%、16%であり、TAS-102群で有意に優れた(p<0.001)。 ベースラインのPS 0/1が試験期間中に2以上へと増悪した患者は、TAS-102群が72%(383例)、プラセボ群は81%(216例)であり、増悪までの期間中央値はそれぞれ5.7ヵ月、4.0ヵ月と、TAS-102群で有意に長かった(HR:0.66、95%CI:0.56~0.78、p<0.001)。 Grade 3以上の有害事象の発現率は、TAS-102群が69%、プラセボ群は52%であった。TAS-102関連の臨床的に重要なgrade 3以上の有害事象として、好中球減少が38%、白血球減少が21%にみられた。また、発熱性好中球減少が4%に発現し、治療関連死が1例(敗血症性ショック)認められた。 そのほか、TAS-102群で頻度の高いGrade 3以上の有害事象として、貧血(18 vs. 3%)や血小板減少(5 vs. 1%)が認められた。一方、重篤な肝および腎機能障害、食欲不振、口内炎、手足症候群、心イベントには両群間に臨床的に重要な差はなかった。 著者は、「TAS-102は、日本人および西欧人において、フルオロウラシルに不応となった患者を含め、多種類の前治療歴のある切除不能大腸がんに対し臨床的な抗腫瘍効果をもたらした」とまとめ、「これらの知見は、TAS-102の作用機序はフッ化ピリミジン系薬とは異なるとの前臨床データを臨床的に支持するもの」と指摘している。

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第3世代EGFR-TKI、既存TKI耐性のNSCLCに有効/NEJM

 開発中の上皮成長因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)であるAZD9291は、既存のEGFR-TKIに耐性となった非小細胞肺がん(NSCLC)に対し高い抗腫瘍効果を発揮することが、米国・ダナファーバーがん研究所のPasi A Janne氏らの検討で示された。 EGFR T790M変異は、 EGFR 変異を認める肺がん( EGFR 変異陽性肺がん)患者のEGFR-TKIに対する薬剤耐性の獲得機構として最も頻度が高いとされる。AZD9291は、EGFR-TKI活性化変異およびT790M耐性変異を選択的かつ不可逆的に阻害する第3世代の経口EGFR-TKIで、前臨床モデルではこれらの変異の双方に有効であることが確認されている。NEJM誌2015年4月30日号掲載の報告より。約6割がアジア人の国際的第I相試験 本研究は、既治療の進行NSCLC患者におけるAZD9291の安全性と有効性を評価する国際的な第I相試験。対象は、EGFR-TKI活性化変異が確認されているか、または既存のEGFR-TKIによる前治療中あるいは治療後に画像検査で病勢の進行が確認された局所進行・転移性NSCLC患者であった。 被験者は、用量漸増コホートまたは用量拡大コホートに分けられ、両コホートとも5段階の用量(20、40、80、160、240mg、1日1回、経口投与)に無作為に割り付けられた。拡大コホートの患者は、 EGFR T790Mの有無を中央判定で確証するために、試験前に腫瘍生検が求められた。 日本、韓国、台湾を含む9ヵ国の33施設に253例が登録され、用量漸増コホートに31例、拡大コホートには222例が割り付けられた。女性が62%(156例)、アジア人が62%(156例)、腺がんが96%(242例)で、80%に細胞傷害性化学療法薬の投与歴があった。拡大コホートの62%(138例)で EGFR T790Mが検出された。T790M耐性変異例で奏効率61%、PFS中央値9.6ヵ月 本研究は進行中であり、2013年3月6日に患者登録が開始され、データのカットオフ日は2014年8月1日であった。用量漸増コホートの31例では、28日間の評価期間中に用量制限毒性(DLT)が発現しなかったため、最大耐用量(MTD)は確定されなかった。 全原因による有害事象で頻度の高いものとして、下痢(47%)、皮疹(40%)、悪心(22%)、食欲減退(21%)などが認められた。下痢と皮疹は用量依存性に増加する傾向がみられた。 Grade 3以上の有害事象は32%に発現した。有害事象による減量が7%、治療中止は6%に認められた。重篤な有害事象は22%にみられ、そのうち担当医が治療関連と判定したのは6%だった。アジア人と非アジア人で重症度や頻度の差はなかった。 肺臓炎様イベントは6例(2例は日本人以外のアジア人、4例は非アジア人)にみられ、いずれも治療中止となったが、データ・カットオフ時にすでに回復したか、回復しつつあった。また、高血糖が6例、補正QT間隔の延長が11例にみられた。7例が有害事象で死亡したが、薬剤関連の可能性が報告されたのは1例(肺炎)であった。 全体の客観的奏効率は51%(95%信頼区間[CI]:45~58%)であり(123/239例、完全奏効[CR]は1例)、病勢安定(SD)は33%(78例)であった。また、 EGFR T790M陽性例のうち評価が可能であった127例の奏効率は61%(95%CI:52~70%)、陰性例61例の奏効率は21%(95%CI:12~34%)だった。 奏効例のうち奏効期間が6ヵ月以上の患者の割合は85%であり、 EGFR T790M陽性例は88%、陰性例は69%であった。また、全体の無増悪生存期間(PFS)中央値は8.2ヵ月で、陽性例が9.6ヵ月(95%CI:8.3~未到達)、陰性例は2.8ヵ月(95%CI:2.1~4.3)であった。 著者は、「AZD9291は、EGFR-TKIによる前治療で病勢が進行した、 EGFR T790M変異陽性例を含む進行NSCLC患者において高い抗腫瘍活性を示した」とまとめ、「 EGFR T790Mは、NSCLCの予後バイオマーカーとされるが、今回の知見は本薬の有効性の予測バイオマーカーでもあることを示唆する」「EGFR-TKI耐性例ではMET阻害薬などと本薬の併用によりさらなる臨床転帰の改善が期待される」と指摘している。

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ニボルマブ、非小細胞肺がん(非扁平上皮がんを除く)の効能追加承認を申請

 小野薬品工業株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:相良暁)は、ヒト型抗ヒトPD-1(programmed cell death-1)モノクローナル抗体ニボルマブ(商品名:オプジーボ)について、2015年4月22日、「切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん(非扁平上皮がんを除く)」に対する効能追加承認申請を行った。 ニボルマブはPD-1とPD-1リガンドの経路を阻害する免疫チェックポイント阻害剤。化学療法治療歴を有する進行期肺扁平上皮がん患者に対する海外第Ⅲ相臨床試験(CheckMate-017)の中間解析において、ドセタキセルと比較して死亡リスクを41%低減させ、全生存期間(OS)の改善を示した。OS中央値はニボルマブ群が9.2ヵ月(95%CI:7.3~13.3)、ドセタキセル群が6.0ヵ月(95%CI:5.1~7.3)であった。 ニボルマブは2014年7月に「根治切除不能な悪性黒色腫」を効能・効果として、日本で製造販売承認された。また、海外でも、2014年12月に米国で「イピリムマブでの治療後、かつ、BRAF V600変異陽性の場合は、BRAF阻害剤での治療後に病勢進行が認められた切除不能または転移性悪性黒色腫」の治療薬として迅速承認され、さらに2015年3月、「プラチナ製剤による化学療法での治療中または治療後に進行・再発が認められた進行期肺扁平上皮がん患者の治療」の適応が追加承認された。小野薬品工業のプレスリリースはこちら。

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ペムブロリズマブ、進行非小細胞肺がんに有用/NEJM

 現在の進行非小細胞肺がん(NSCLC)の標準治療の全生存期間(OS)中央値は約1年にすぎず、新たな治療薬の開発が切望されている。米国カリフォルニア大学ロサンゼルス校のEdward B Garon氏らは、進行NSCLCに対する免疫チェックポイント阻害薬ペンブロリズマブ(国内未承認)の国際的な第I相試験(KEYNOTE-001試験、Merck社の助成による)を行い、副作用プロファイルは許容範囲内であり、持続性の抗腫瘍活性を発揮することを示した。研究の成果は、米国がん学会(AACR、2015年4月18~22日、フィラデルフィア)で発表され、4月19日号のNEJM誌オンライン版に掲載された。有用性とバイオマーカーを評価する国際的第I相試験 現在の進行NSCLCの標準治療は、プラチナ製剤ベースの化学療法±維持療法後に細胞傷害性化学療法薬による2次治療を施行するアプローチである。一方、近年、プログラム細胞死-1(PD-1)などの免疫チェックポイントを標的とするがん免疫療法の有用性が示され、NSCLCでも持続性の抗腫瘍効果が確認されている。 PD-1は、活性化T細胞表面に発現する抑制性の共刺激受容体で、これに腫瘍細胞表面に発現するリガンド(PD-L1、PD-L2)が結合すると、細胞傷害性T細胞の応答が抑制される。腫瘍は、この経路を利用してT細胞による抗腫瘍活性を回避しているとされる。ペンブロリズマブは、PD-1に対するヒト型IgG4モノクローナル抗体であり、PD-1とPD-L1、PD-L2の結合を阻害することで、T細胞による腫瘍の認識を回復させ、抗腫瘍効果を発揮するという。 本試験の対象は、年齢18歳以上、全身状態(ECOG PS)0/1の局所進行・転移性NSCLCの患者であった。2012年5月~2014年2月までに本薬の投与を1回以上受けた495例が登録され、安全性と有効性に加え、本薬の効果が高い患者を検出するバイオマーカーとしてPD-L1の発現状況の評価が行われた。 被験者は、トレーニング群(182例、既治療171例、未治療11例)またはバリデーション群(313例、既治療223例、未治療90例)に割り付けられ、本薬を3週ごとに2mg/kgまたは10mg/kg、2週ごとに10mg/kgを投与する治療が行われた。 また、腫瘍サンプルを用い、免疫組織化学的解析により細胞膜上のPD-L1が染色された腫瘍の占有率(プロポーション・スコア)を算出した。抗腫瘍効果の評価は9週ごとに中央判定で行った。有害事象Grade 3以上は9.5%、奏効期間が1年以上 患者の背景因子は進行NSCLCに典型的なものであった。フォローアップ期間中央値は10.9ヵ月だった。 治療関連有害事象は70.9%(351例)に発現したが、用量や投与スケジュールによる差は認めなかった。最も頻度の高い有害事象として、疲労(19.4%)、そう痒(10.7%)、食欲減退(10.5%)がみられた。また、Grade 3以上の有害事象は9.5%(47例)に発現した。 炎症性または免疫性の治療関連有害事象として、注射関連反応が3.0%(15例)、甲状腺機能低下症が6.9%(34例)、肺臓炎が3.6%(18例)にみられた。肺臓炎のうち9例(1.8%)がGrade 3以上で、1例が間質性肺疾患で死亡した。 全体の客観的奏効率は19.4%(既治療例:18.0%、未治療例:24.8%)で、病勢安定(SD)は21.8%であり、奏効期間中央値は12.5ヵ月(同:10.4ヵ月、23.3ヵ月)であった。また、無増悪生存期間(PFS)中央値は3.7ヵ月(同:3.0ヵ月、6.0ヵ月)、OS中央値は12.0ヵ月(同:9.3ヵ月、16.2ヵ月)だった。プロポーション・スコア≧50%が有効性の改善と相関 トレーニング群の検討では、腫瘍細胞におけるPD-L1発現細胞の占有率≧50%(プロポーション・スコア≧50%)がカットオフ値に選定された。バリデーション群でプロポーション・スコア≧50%の患者の検討を行ったところ、奏効率は45.2%(既治療例:43.9%、未治療例:50.0%)と良好であった。 全体のプロポーション・スコア≧50%の患者のPFS中央値は6.3ヵ月(既治療例:6.1ヵ月、未治療例12.5ヵ月)であり、OS中央値には未到達であった。また、プロポーション・スコア≧50%の患者に比べ、1~49%、<1%の患者は、PFS中央値およびOS中央値が短かった。一方、奏効期間中央値はプロポーション・スコアにかかわらず類似しており、≧50%が12.5ヵ月、1~49%が7.2ヵ月、<1%は未到達だった。 著者は、「ペンブロリズマブは既治療および未治療の進行NSCLCに対し持続的な抗腫瘍活性を有し、安全性も良好で、用量や投与スケジュールの違いによる差はないことが示された。PD-L1検査は実行可能であり、本薬の臨床的有効性が高い患者の同定に有用である」としている。

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ニボルマブとイピリムマブの併用、悪性黒色腫に優れた有効性

 米国ブリストル・マイヤーズ スクイブ社(NYSE:BMY/本社:米国・ニューヨーク/CEO:ランベルト・アンドレオッティ)は2015年4月20日、未治療の進行期悪性黒色腫患者を対象としたニボルマブ(商品名:オプジーボ)・イピリムマブ併用療法とイピリムマブ単剤療法を比較する第II相試験(CheckMate-069試験)の結果を発表した。 CheckMate-069試験は、未治療で切除不能のステージIIIまたはIVの悪性黒色腫患者に対してニボルマブ・イピリムマブ併用療法(以下、併用群)を評価した第II相二重盲検無作為化試験で、BRAF野生型とBRAF変異陽性の双方の悪性黒色腫患者を対象としている。142例の登録患者は、併用群95例とイピリムマブ単剤投与群(以下、単剤群)47例に無作為に割り付けられた。 主要評価項目はBRAF野生型患者の奏効率(ORR)。副次的評価項目はBRAF野生型患者における無増悪生存期間(PFS)、BRAF変異陽性患者におけるORRとPFS、EORTC-QLQ-C30/QoL composite scaleのベースラインからの変化であった。 その結果、主要評価項目であるBRAF野生型のORRは、併用群61%(72例中44例)に対し、単剤群11%(37例中4例)であった(p<0.001)。BRAF野生型患者のPFS中央値は未達。BRAF変異陽性患者のPFS中央値は併用群8.5ヵ月、単独群2.7ヵ月であった。 治療関連有害事象の発現率は併用群(91%)、単独群(93%)であった。重度(グレード3または4)有害事象は併用群で54%、単独群で24%であった。併用群で最も多く報告された重度有害事象は大腸炎17%、下痢11%、アラニンアミノトランスフェラーゼ上昇11%であった。 ニボルマブは米国において、2014年12月にイピリムマブで治療されたBRAF V600変異陽性の切除不能・転移性悪性黒色腫における、BRAF阻害薬でPDとなった後の治療薬として迅速承認された。さらに2015年3月、プラチナ製剤による化学療法の治療中または治療後に進行・再発が認められた進行期肺扁平上皮がん患者の治療の適応が追加承認されている。ブリストル・マイヤーズ株式会社のプレスリリースはこちら。

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未治療の高齢CLL、オファツムマブ併用でPFS延長/Lancet

 未治療の高齢者または併存疾患を有する慢性リンパ球性白血病(CLL)の治療において、標準治療薬であるクロラムブシル(国内未承認)にオファツムマブ(商品名:アーゼラ)を併用すると、臨床転帰が大きく改善され副作用プロファイルは管理可能であることが、英国・セントジェームズ大学病院のPeter Hillmen氏らが行ったCOMPLEMENT 1試験で示された。若年者や他の疾患がみられないCLL患者の標準治療は、プリン類似体であるフルダラビンをベースとする多剤併用レジメンであるが、高齢者や併存疾患を有する患者の多くは耐用不能である。オファツムマブは、リツキシマブとは異なる作用機序を持つヒト型抗CD20モノクローナル抗体であり、臨床試験でフルダラビン抵抗性CLLへの有効性が確認されている。Lancet誌オンライン版2015年4月13日号掲載の報告より。併用の効果と安全性を無作為化試験で評価 COMPLEMENT 1試験は、クロラムブシルへのオファツムマブ追加の有用性を検証する無作為化第III相試験(GlaxoSmithKline社などの助成による)。対象は、未治療の活動性のCLLで、高齢や併存疾患を理由にフルダラビンベースのレジメンが不適応と判定された患者であった。年齢制限は設けなかった。 被験者は、クロラムブシルを経口投与する群またはクロラムブシルにオファツムマブの静脈内投与を併用する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)であった。 2008年12月22日~2011年5月26日までに、16ヵ国109施設に447例が登録され、オファツムマブ併用群に221例、クロラムブシル単独群には226例が割り付けられた。PFSが9ヵ月以上延長、若年患者と同等 全体の年齢中央値は69(35~92)歳で、65歳以上が69%、70歳以上が49%、75歳以上は27%含まれ、63%が男性であった。また、65歳以上または併存疾患が2つ以上、クレアチニンクリアランスが70mL/分未満の患者が87%を占めた。 PFS中央値は、併用群が22.4ヵ月であり、単独群の13.1ヵ月に比べ有意に延長した(ハザード比[HR]:0.57、95%信頼区間[CI]:0.45~0.72、p<0.0001)。ほとんどのサブグループで、併用群のほうがPFS中央値が長かった。 また、65歳未満のPFS中央値のHRは0.54(95%CI:0.34~0.85)であるのに対し、65歳以上は0.57(95%CI:0.43~0.76)、75歳以上は0.56(95%CI:0.35~0.89)であり、高齢患者でも若年患者と同等のPFSが達成された。 寛解率は併用群が82%、単独群は69%(オッズ比[OR]:2.16、95%CI:1.36~3.42、p=0.001)、完全寛解率はそれぞれ14%、1%であり、いずれも年齢、性別、Stage、予後因子にかかわらず併用群で良好であった。 一方、フォローアップ期間中央値28.9ヵ月の時点で、両群ともに全生存期間(OS)中央値には未到達で、有意な差は認めなかった(HR:0.91、95%CI:0.57~1.43、p=0.666)。2年OSは併用群が89%、単独群は87%、3年OSはそれぞれ85%、83%だった。 Grade 3以上の有害事象の頻度は、併用群が50%、単独群は43%であり、好中球減少(26 vs. 14%)の頻度が最も高く、感染症(9 vs. 12%)は両群で同等であった。また、併用群でGrade 3以上の注射関連有害事象が10%に発現した。治療期間中に10例が死亡し(両群5例ずつ)、このうち5例(併用群3例、単独群2例)が治療関連死と考えられた。 著者は、「これらの知見に加え、最近のオビヌツズマブやリツキシマブとクロラムブシルの併用に関するデータを考慮すると、抗CD20抗体薬とクロラムブシルによる免疫化学療法は、未治療の高齢CLL患者の重要な治療選択肢と考えられる」と指摘している。

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