1622.
ビスホスホネートは、転移抑制、とくに骨転移の予防に効果を示す可能性が指摘されているが、臨床試験によって結果が一定していない。しかし、サブセット解析では、閉経後または高齢女性に対してはベネフィットが示唆されている。そこで、術後補助療法としてのビスホスホネートのリスクとベネフィットを明らかにするため、Early Breast Cancer Trialists’Collaborative Group(EBCTCG)のグループによってメタ分析が行われた。主要評価項目は、再発、遠隔再発と乳がん死である。主要サブグループ調査項目は、遠隔転移部位(骨とそれ以外)、閉経状態(閉経後[自然および人工]とそれ以外)、ビスホスホネートのクラス(アミノ基を含有するもの[ゾレドロン酸、イバンドロン酸、パミドロン酸]とそれ以外[クロドロン酸])である。 26試験の参加女性1万8,766例のうち、2~5年のビスホスホネートの試験1万8,206例(97%)のデータが得られ、中央観察期間(5.6年)で3,453例の初回再発と、その後の2,106例の死亡が確認された。全体として、再発減少は(RR 0.94、95%[CI]:0.87~1.01、2p=0.08)、遠隔再発は(0.92、0.85~0.99、2p=0.03)、乳がん死は(0.91、0.83~0.99、2p=0.04)と、わずかに有意差が認められたのみであったが、骨転移の減少は明らかであった(0.83、0.73~0.94、2p=0.004)。 閉経前ではいずれも治療効果が認められなかったが、閉経後女性(1万1,767例)では、再発(RR 0.86、95%[CI]:0.78~0.94、2p=0.002)、遠隔再発(0.82、0.74~0.92、2p=0.0003)、骨転移(0.72、0.60~0.86、2p=0.0002)、乳がん死(0.82、0.73~0.93、2p=0.002)ともに大きな減少効果が認められた。絶対的な効果の違い(10年)は、骨転移2.2%、乳がん死3.3%である。 年齢でみると、45歳未満では効果がなく、55歳以上では明らかに有効であった。閉経状態と年齢による差は類似しており、どちらがより有意かは明らかにできなかった。ビスホスホネートのクラス、治療のスケジュール(治療の強度や期間)、エストロゲン受容体の状態、リンパ節、腫瘍グレード、化学療法の併用による効果の違いはなかった。乳がん以外のがん死は有意差が認められなかった。骨折の情報は1万3,341例(71%)からのみ得られ、5年の骨折リスクは6.3%から5.1%にわずかに減少した(RR 0.85、95%[CI]:0.75~0.97、2p=0.02)。最も効果がみられたのは2~4年の間であった。5年以降での効果はあまりないようであるが、情報が不完全であるためかもしれない。対側乳がんの発生率は疫学データとは異なり、無作為化試験では有意差がみられなかった。 ビスホスホネートは、治療開始時に閉経後(自然閉経と人工閉経)であった女性にのみ、転移抑制効果と乳がん死の抑制に明らかな効果が認められることが示された。今までも複数のメタ分析の報告がみられ、結果がまちまちであったが、本研究は最も信頼性の高いものと思われる。まず、ビスホスホネート開始時に閉経後であることが重要である。次に、乳がんの進行度やサブグループには関係なく、効果は一定であることから、再発リスクの低い乳がんではビスホスホネートの効果はきわめて小さく、逆にリスクの高い乳がんでは、それだけ絶対的な有効性が高まるであろう。さらに、顎骨壊死などの有害事象は、より強力なビスホスホネートの使い方で頻度が上がるため、内服治療や6ヵ月ごとのゾレドロン酸投与が推奨され、期間もやみくもに長く行われるべきではない。ビスホスホネートのレジメンによる違いについては、今後進行中の試験によって、より明確になってくるであろう(SWOG0307、SUCCESS、HOBOE-premenopausal、TEAM-IIb)。