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早期乳がんの遺伝子診断で過剰な術後化療を回避/NEJM

 遺伝子診断の導入により、臨床リスクが高い乳がん患者の半数近くが、術後の化学療法は不要と判定され、毒性を伴う化学療法による過剰治療の回避につながる可能性があることが、ポルトガル・Champalimaud臨床センターのFatima Cardoso氏らが行ったMINDACT試験で示された。研究の成果はNEJM誌2016年8月25日号に掲載された。早期乳がん患者への術後補助療法の適用は、腫瘍および患者の特性に基づく臨床リスクで決定される。これらの特性を判定する診断ツールのアルゴリズムは、個々の患者の腫瘍の生物学的特性を考慮していないため、多くの患者が過剰治療となり、効果のない治療による毒性のリスクに曝されている可能性があるという。70遺伝子シグニチャー検査(MammaPrint)は、早期乳がん女性の臨床アウトカムの予測を改善することが示されている。遺伝子診断追加の臨床的有用性を無作為化試験で評価 MINDACT試験は、術後補助化学療法の対象の選択において、標準的な臨床病理学的判定基準に、70遺伝子シグニチャー検査を追加することの臨床的な有用性を前向きに評価する無作為化第III相試験(欧州委員会第6次フレームワークプログラムなどの助成による)。 2007~2011年に、欧州9ヵ国112施設で患者登録を行った。対象は、年齢18~70歳、組織学的に浸潤性の原発乳がん(Stage T1、T2、切除可能なT3)が確認され、リンパ節転移陰性の女性であった(2009年8月以降は、最大3個の腋窩リンパ節転移のある女性も可とした)。 ゲノムリスクは、70遺伝子シグニチャーで評価し、臨床リスクの評価には、改訂版Adjuvant! Onlineを用いた。 双方のリスクが低い患者は、術後補助化学療法が施行されなかったが、両リスクが高い患者には行われた。2つのリスクが一致しない患者は、いずれかのリスクに基づき、化学療法を施行する群と施行しない群に無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、無遠隔転移生存とし、初回遠隔転移の発現または死亡までの期間と定義した。臨床リスクは高いが、ゲノムリスクが低く、化学療法を行わなかった患者において、5年無遠隔転移生存率の95%信頼区間(CI)の下限値が92%(非劣性境界)を上回るかを検討した。術後補助化学療法なしでも、5年無遠隔転移リスク上昇せず 6,693例が登録された。年齢は、<35歳が1.8%、35~49歳が31.4%、50~70歳が65.9%、>70歳が0.8%であり、リンパ節転移陰性が79.0%、ホルモン受容体陽性が88.4%、HER2陰性は90.3%であった。 低臨床リスク/低ゲノムリスク群は2,745例(41.0%)、低臨床リスク/高ゲノムリスク群は592例(8.8%)、高臨床リスク/低ゲノムリスク群は1,550例(23.2%)、高臨床リスク/高ゲノムリスク群は1,806例(27.0%)であった。 高臨床リスク/低ゲノムリスク群の化学療法非施行例の5年無遠隔転移生存率は、94.7%(95%CI:92.5~96.2)であり、95%CI下限値≧92%を満たした。 同群の化学療法非施行例と施行例の5年無遠隔転移生存率の絶対差は1.5ポイントであり、非施行例のほうが低かったが、有意な差は認めなかった(ハザード比[HR]:0.78、95%CI:0.50~1.21、p=0.27)。 エストロゲン受容体陽性、HER2陰性、リンパ節転移陰性、同陽性のサブグループの無遠隔転移生存率も、同様の結果であった。 著者は、「70遺伝子シグニチャーを加えることで、臨床リスクは高いがゲノムリスクは低い患者において、5年時の遠隔転移または死亡のリスクを高めることなく、毒性を伴う化学療法を回避できる可能性が示唆された」とまとめ、「これらの知見により、臨床リスクの高い乳がん女性の約46%は、化学療法を必要としない可能性がある」と指摘している。

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医師への苦情の第1位は説明不足!? 患者が求めるコミュニケーションとは

 患者の意思決定支援はどうあるべきかを患者視点から検討する「第2回SDM(シェアード・ディシジョン・メイキング)フォーラム2016『患者視点から考えるヘルスコミュニケーション』」1)が8月25日都内で開催され、3人の患者団体の代表2)3)4)が講演した。 同フォーラムを主催した厚生労働行政推進調査事業費補助金「診療ガイドラインの担う新たな役割とその展望に関する研究」班の代表である中山 健夫氏(京都大学大学院 医学研究科社会健康医学系専攻健康情報学分野 教授)は、診療ガイドラインは、最善の患者アウトカムを目指した推奨を提示することで、「患者と医療者の意思決定を支援する文書」であるという定義を紹介し、とくに不確実性の高い治療選択においてSDMが重要であることを強調した。他の職種より医師への不満が断トツに多い理由とその改善策とは 全国の患者からの電話相談事業を実施している認定NPO法人 ささえあい医療人権センターCOML2)理事長の山口 育子氏によると、医師への不満は、例年相談内容の上位に入っており、全体の約25%を占めることが紹介された。これは看護師や薬剤師など他の医療職種に対する不満と比べて突出して多いという。 山口氏は「ヘルスコミュニケーション改善のカギは“チーム医療”である」と考えている。患者は希望や意向を医師には正直に言いにくい、ということがしばしば見受けられるため、多様な職種が関わる中での患者の意思決定支援が望ましいことを説明した。 また、相談内容を分析した結果、医師への不満の背景として、患者や家族が、薬の情報、リハビリテーション、日常生活の疑問、転院に関する問題など医療に関するあらゆる情報や支援などすべてを医師に期待する傾向があるため、このように不満が医師に集中する結果になっていると考えている。医療機関において、チーム医療体制は定着しつつあるが、患者に看護師や薬剤師の役割・専門性について質問しても答えに窮する現状があるという。医師以外の医療職種が何のために存在しているのか、患者に説明される機会はほとんどないため、ぜひそれぞれの医療職種の役割・専門性について患者に伝えてほしいと訴えた。医師への苦情第1位は説明不足!? 原因は“日本版”インフォームドコンセント 医師に対する不満や苦情の内容で最も多いのが、非常に基本的な情報に関して「説明を受けていない」というもの。そのような相談受けた際に、山口氏は、本当に説明がなかったのかどうか必ず丁寧に患者に確認するようにしている。すると、実際には手術や化学療法など大きな決断が必要となる場面では、「1時間ほど説明があった」などと判明することがよくあるそうだ。 この食い違いの原因として考えられるのは、インフォームドコンセントが日本では単に「説明すること」に重きが置かれている点である。治療に関する意思決定が必要な際に多くの場合、患者は専門的な説明を、長い時間にわたり口頭で聞き続けるが、その内容すべてを記憶しておくことは困難である。実際にそのとき話を聞いていたとしても、理解ができていないと、後から「聞いていない」という訴えになってしまうのだ。高齢の患者が増加し、患者自身が説明を理解することが困難なケースも珍しくない中で、どのように必要な情報を共有するかは大きな課題であり、支援ツールの活用などが求められる。医師から患者に「メモを取ってもよい」と伝えて 患者は医師に対する遠慮や自身のプライドなどから、理解していなくてもうなずくことがしばしばあるという。よって、「うなずいたから理解している」と思うのは危険であり、患者自身に言語化してもらい、理解を確認することが大切である。また、口頭による説明には限界があるため、理解の補助として、メモや治療に関する資料などの活用も期待される。とくに、患者はメモを取ることが「医療者に対して失礼では」「やっかいな患者と思われるのでは」などと心配し、控えることがあるため、ぜひ医療者から「メモを取ってもよい」ことを患者に伝えてほしいと山口氏は述べた。インフォームドコンセント、なぜこのタイミング? 潰瘍性大腸炎患者の参加者からは、手術の具体的な説明が手術前日であったことに対する不満が紹介された。手術の前日は非常に緊張していたため、説明内容をほぼ理解できなかったという。「医療提供者側にもさまざまな事情はあると思うが、もっと前に説明してくれれば落ち着いて聞くことができ、理解できたと思う」と同参加者は述べた。 これを受けて登壇者の認定NPO法人 健康と病の語り ディペックス・ジャパン3)理事・事務局長の佐藤 りか氏は、同団体が運営する患者体験談データベースではこのような患者自身の医療・健康にまつわる体験動画が閲覧できるため、ぜひ多くの医療者にも活用してほしいと述べた。(ケアネット 後町 陽子)参考資料1)第2回SDM(シェアード・ディシジョン・メイキング)フォーラム2016(PDF)2)認定NPO法人 ささえあい医療人権センターCOML(コムル)3)認定NPO法人 健康と病いの語り ディペックス・ジャパン4)日本患者会情報センター

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新規候補薬剤veliparibがトリプルネガティブ乳がんに有効な可能性(解説:矢形 寛 氏)-575

 I-SPY2試験は、新規薬剤の有効性をみるために、再発率の高い乳がんに対して、乳がん術前化学療法でpCR率を標準治療との間で比較する無作為化第II相試験である。 少ない症例数、低コスト、短い期間で効率的に候補を選び出す試験として注目を浴びている。 バイオマーカーを使って乳がんのサブタイプ分類を行い、どのサブタイプが新規薬剤に有効でありそうかを調べるのであるが、適応的ランダム化という方法を使って適宜割り付けを調整し、有効である確率が高いサブタイプを抽出して、第III相試験に移行させていこうというものである。 PARP阻害薬とプラチナ製剤の組み合わせは、過去の試験よりトリプルネガティブ乳がんに対して有効でありそうだということが知られているが、本試験でもPARP阻害薬であるveliparibとカルボプラチンの有効性が高そうだということがわかった。このような方法論は、今後も普及していく可能性がある。

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新規候補薬剤neratinibがHER2陽性/HR陰性乳がんに有効な可能性(解説:矢形 寛 氏)-576

 I-SPY2試験は、新規薬剤の有効性をみるために、再発率の高い乳がんに対して、乳がん術前化学療法でpCR率を標準治療との間で比較する無作為化第II相試験である。 少ない症例数、低コスト、短い期間で効率的に候補を選び出す試験として注目を浴びている。 バイオマーカーを使って乳がんのサブタイプ分類を行い、どのサブタイプが新規薬剤に有効でありそうかを調べるのであるが、適応的ランダム化という方法を使って適宜割り付けを調整し、有効である確率が高いサブタイプを抽出して、第III相試験に移行させていこうというものである。 新規薬剤であるneratinibはチロシンキナーゼ阻害薬であるが、有効な乳がんサブタイプを本試験で検討したところ、HER2陽性/HR陰性において有効である可能性が高そうだという結果となった。このような方法論は、今後も普及していく可能性がある。

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未分化大細胞型リンパ腫〔ALCL : anaplastic large cell lymphoma〕

1 疾患概要■ 概念・定義未分化大細胞型リンパ腫(anaplastic large cell lymphoma:ALCL)は、1985年Steinらによって初めて特徴づけられたaggressive lymphomaである。キール大学で開発されたCD30に対するKi-1抗体によって認識される活性化T細胞由来のリンパ腫で、Ki-1リンパ腫との異名ももっていた。以前「悪性組織球症」といわれていた症例の多くがこのリンパ腫であることが判明し、リンパ球の活性化マーカーであるCD30、CD25のほか、上皮性細胞マーカーであるEMAが陽性となる特徴を有する。腫瘍細胞は胞体が豊かなホジキン細胞様で馬蹄様核をもつhallmark cellが特徴的である(図)。画像を拡大するこの多形芽球様細胞の形態を示すリンパ腫には、全身性ALCLのほか、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫のanaplastic variantや病変が皮膚に限局する皮膚ALCLがある。また、豊胸手術後に乳房に発症するALCLも、最近注目されるようになった。ALCLは、あくまで末梢性T細胞リンパ腫の一病型であり、B細胞由来のものは含まれない。ALCLは、インスリン受容体スーパーファミリーの受容体型チロシンキナーゼであるanaplastic lymphoma kinase(ALK)をコードするALK1遺伝子の発現増強を認めるALK陽性ALCLと、発現増強を認めないALK陰性ALCLに分類される。皮膚ALCLや豊胸術後のALCLは共にALK陰性である。■ 疫学ALCLは、わが国で発症する非ホジキンリンパ腫の中で、3%程度を占めるまれな疾患である。ALK陽性ALCLは、ほとんどが50歳以下で発症し、発症のピークは10代の若年者である。一方、ALK陰性ALCLは、加齢とともに発症頻度が増し、50代に多い。両者ともやや男性に多く発症する。皮膚ALCLと豊胸術後のALCLについては、わが国での頻度は不明である。■ 病因ALK陽性ALCLは、t(2;5)(p23;q35)の染色体異常を80%程度に認める。2番染色体2p23に位置するALK1遺伝子が5q35のNPM遺伝子と結合して融合遺伝子を形成し、その発現増強が腫瘍の発症・維持に重要と考えられている。この転座によって生じるNPM-ALKはホモダイマーを形成し、midkineなどのリガンドの結合なしにキナーゼ活性を亢進させ、PI3KからAkt、STAT3やSTAT5などの細胞内シグナル伝達を活性化させる。ALK1遺伝子はNPM遺伝子以外にも1q21/TPM3などの遺伝子と融合するが、このような場合でもALKのホモダイマー形成が生じ、ALKの構造的活性亢進が起きるとされている。NPMは核移行シグナルをもち、NPM-ALKとNPMのヘテロダイマーは核まで移行するため、t(2;5)異常をもつALCLでは、ALKが細胞質のみならず、核も染色される。一方、ALK陰性ALCLの病因はすべて明らかにされているわけではない。アレイCGHやgene expression profilingによる解析では、ALK陰性ALCLは、ゲノム異常や遺伝子発現パターンがALK陽性ALCLとはまったく異なることがわかっている。ALK陰性ALCLの中には、t(6;7)(p25.3;q32.3)の染色体転座をもち、6p25.3に位置するDUSP22遺伝子の切断による脱リン酸化酵素機能異常が確認されている群がある。6p25には転写因子をコードするIRF4遺伝子も存在するが、末梢性T細胞性リンパ腫・非特定型や皮膚ALCLにおいても6p25転座が認められることがあり、それらとの異同も含めてまだ不確定な部分がある。皮膚ALCLはリンパ腫様丘疹症(lymphomatoid papulosis)との異同が問題となる症例があり、これらは皮膚CD30陽性リンパ増殖性疾患という範疇であって、連続性の疾患と捉える向きもある。豊胸術後のALCLについてはまだ不明な点が多い。■ 症状全身性ALCLは、診断時すでに進行期(Ann ArborシステムでIII期以上)のことが多く、B症状(発熱・体重減少・盗汗)を認めることが多い。リンパ節病変は約半数に認められ、節外病変も同時に伴うことが多い。ALK陽性ALCLでは、筋肉などの軟部組織や骨が多く、ALK陰性ALCLでは皮膚・肝臓・肺などが侵されやすい。皮膚ALCLは孤立性または近い部位に複数の皮膚腫瘤を作ることが多いが、所属リンパ節部位以外の深部リンパ節には病変をもたず、その点が全身性ALCLとは異なる。また、豊胸術後のALCLも80%以上の症例が乳房に限局しており、その中で腫瘤を作らずeffusion lymphomaの病態をとるものもある。両者とも発熱などの全身症状は認められないことが多い(表)。画像を拡大する■ 予後ALK陽性ALCLは、末梢性T細胞リンパ腫の中でも予後のよい病型である。5年の全生存割合は80%程度で、ALK陰性ALCLの40%程度と比べて、CHOP療法などのアントラサイクリン系抗生剤を含む初回化学療法によって、効果が期待できる疾患である。ヨーロッパの小児領域における3つの大規模臨床研究の結果から、(1)縦隔リンパ節病変(2)体腔内臓器浸潤(肺、脾、肝)(3)皮膚浸潤が予後不良因子として重要で、これら1項目でも満たすものを高リスク群とみなす。高リスク群は5年の全生存割合が73%と、標準リスク群の94%に比べて有意に下回る結果を示している。小児領域のALCLは、90%がALK陽性例で占められるが、成人領域と比べるとリスクに応じてかなり強度を上げた治療が施行され、高リスク群の治療成績は比較的良好な結果を示していると思われる。一方、成人例に多いALK陰性ALCLは、aggressive lymphomaで共通する国際予後指標(international prognostic index〔IPI〕: 年齢、performance status、LDH値、節外病変数、臨床病期からスコア化する)が参考となるが、(1)骨髄浸潤(2)β2ミクログロブリン高値(3)CD56陽性なども予後不良因子として認識されている。International T-cell lymphoma projectによる検討では、ALK陰性ALCLの60%程度を占めるIPI 3項目以上の患者群における5年の全生存割合は、CHOP療法主体の治療を受けても30%を下回る結果となっている。ただし、ALK陰性であっても皮膚ALCLや豊胸術後のALCLは限局例が多く、生命予後はそれほど悪くない。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)ほかの悪性リンパ腫と同様、ALCLの診断には、(1)組織診断による病型の確定(2)PET-CTなどの画像検査と骨髄検査による正確な臨床病期診断が必須である。また、皮膚に病変がある場合には、全身症状と病変の分布について、しっかりと把握しなければならない。■ 組織診断HE染色による腫瘍の形態観察とhallmark cellの有無を確認する。hallmark cellがあればALK染色によってALK陽性かALK陰性かを明らかにする。まれにsmall-cell variantや反応性の組織球増生が特徴的なlymphohistiocytic variantがあるので注意を要する。これらはALK陽性ALCLのうち、治療反応の乏しい形態学的亜型として注目されている。さらに腫瘍細胞の特定には、CD30、EMA、lineage marker、TIA-1、granzyme Bなどの細胞傷害性分子の発現を免疫染色で評価する。ALK陽性例についてはFISH検査で2p23の転座があるか確認する。■ 臨床病期診断ALCLはFDG-avidな腫瘍であり、FDG-PETを組み込んだPET-CT検査によって臨床病期診断のみならず治療効果の判定が可能である。皮膚に限局しているようにみえても、PETで深部リンパ節病変が指摘された場合には、全身性ALCLとして対応しなければならない。骨髄検査は、リンパ腫細胞の浸潤の有無と造血能の評価を行うことを目的とする。単なる形態診断だけでなく、免疫染色や染色体・FISH検査によって腫瘍の浸潤評価を行う必要がある。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)前述した通り、全身性ALCLは進行期例が多いことから、アントラサイクリン系抗生剤を含む多剤併用化学療法が施行される。ALK陽性ALCLでは、CHOP様レジメンで90%近くに奏効が得られ、再発・再燃の割合もALK陰性ALCLよりも低く、5年の生存割合は70%以上を維持できる。つまり、低リスク群の初回治療はCHOP様レジメンで十分といえる。高リスク群に対し、小児領域では髄腔内抗がん剤投与を含む強度を上げた治療が行われている。成人領域ではなかなか治療強度を上げることが難しいため、自己造血幹細胞移植(autologous hematopoietic stem cell transplantation: ASCT)が考慮される。また、小児領域の治療研究では、ビンブラスチン(商品名:エクザール)が単剤で再燃を延長させる効果をもつことが示されている。高リスク群では、この薬剤をいかに利用して再燃を防ぐことができるのか、今後のレジメン内容を考えるうえでも、さらなる検討が必要である。一方、成人に多いALK陰性ALCLに対しては、現時点で標準化学療法が確立した状況とはいえない。CHOP療法による奏効割合は80%程度期待できるものの、再発・再燃の割合も高く、無増悪生存割合は最終的に20%台まで落ち込んでしまう。成人領域のALCLに対する治療研究は、ほかの末梢性T細胞リンパ腫の病型と同時に含まれて対象とされるため、ALCLに限った治療法が開発されているわけではない。そのため今後も残念ながら、個々の病型に対する標準治療が確立しにくい状況なのである。ALCL患者を対象として多く含む、ドイツの複数の前向き治療研究の解析結果をまとめると、CHOP療法にエトポシド(同:ラステットほか)を加えたほうが完全奏効割合や無イベント生存割合が改善することがわかっている。また、末梢性T細胞リンパ腫全体では、治療強度を上げることが必ずしも全生存割合の向上に寄与しているとは証明されていないが、それは十分な治療効果を生む標準化学療法が確立していないことが背景にあるためと考えられる。全身放射線を前処置として用いないASCTを初回奏効例に施行する、ノルウェーから報告されたNLG-T01試験では、ALK陰性ALCLに対する5年の全生存割合は60%以上を示し、他の病型よりも期待のもてる結果を示している。小児領域のリスクに応じて強度を調節する治療研究の結果も踏まえて考えると、ALK陰性ALCLに対し、治療強度を上げることで生存に有利となる患者群がいることがわかる。こういった問題は、今後も前向き治療研究の場で確定していかなければならない。実地診療において現時点では、CHOPあるいはCHOEP、EPOCHなどのエトポシドを含むCHOP様レジメンが初回治療として選択されることになる。非常にまれな皮膚ALCLや豊胸術後のALCLについての標準治療法は確立されていない。皮膚ALCLは限局性であれば、外科的切除、電子線照射が試みられる。多発性腫瘤の場合には化学療法が行われるが、どのような治療が適切か確固たるエビデンスはない。経験的に少量メトトレキサート、少量エトポシドなどの内服治療が行われている。豊胸術後のALCLも外科的切除で、対応可能な限局期症例の予後は比較的良好であるが、両者とも進行期例に対する治療は全身性ALCLに準ずることになる。4 今後の展望小児領域のヨーロッパ・日本の共同研究で検討された中枢神経浸潤についてみると、全体の2.6%に中枢神経系のイベントが認められ、その半数に脳実質内腫瘤を認めている。ヨーロッパのintergroup(EICNHL)のBFM90試験において、メトトレキサートの投与法が24時間から大量の3時間投与として髄腔内投与を施行しなくとも、中枢神経系のイベントは変わらずに同等の治療効果を生むことが確認されている。Lymphohistiocytic variantでは、比較的中枢神経系イベントが多いとされているが、生命予後の悪い高リスク群患者に対して、いかに毒性を下げて治療効果を生むかという点について、今後も治療法の進歩が期待される。小児領域と成人領域では、治療強度とそれに対する忍容性が異なる。成人領域では治療強度を上げるためには、ASCTを考慮しなければならず、とくに10代後半~20代の患者群に対する治療をどうしていくか、まだまだ解決しなければならない課題は多い。ALK陽性ALCLはALKが分子標的となるため、ALK陽性非小細胞肺がんで効果を示しているALK阻害薬が、今後の治療薬として注目される。クリゾチニブ(同: ザーコリ)は第I相試験が海外で終了しており、今後ALCLに対する有効性の評価がなされていくことになる。わが国ではそれに先立ち、再発・難治性のALK陽性ALCLに対してアレクチニブ (同: アレセンサ) の第II相試験が現在進行中である。また、CD30を標的したマウス・ヒトキメラ抗体のSGN-30は、皮膚ALCLに対する一定の効果は認められたものの、全身性ALCLに対する効果は不十分であったため、SGN-30に微小管阻害薬であるmonomethylauristatin Eを結合させたSGN-35(ブレンツキシマブ ベドチン、同: アドセトリス)が開発された。ブレンツキシマブ ベドチンは再発・難治性のALCL58例に対し、50例(86%)に単剤で奏効を認めており(33例に完全奏効)、再発・難治例に期待できる薬剤である。有害事象として血球減少以外に、ビンカアルカロイドと同様の神経障害が問題となるが、ホジキンリンパ腫でABVD療法と併用した際に肺毒性が問題となっていて、ブレオマイシン(同:ブレオ)との併用は難しいものの、アントラサイクリン系抗生剤やビンブラスチンとの併用が可能であることを考えると、ALCLに対して化学療法との併用の可能性も広がると考えられる。5 主たる診療科血液内科、小児科、皮膚科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報European Intergroup for Childhood NHL(欧州で開催された医療従事者向けのフォーラムの内容)患者会情報グループ・ネクサス・ジャパン(悪性リンパ腫患者とその家族の会)1)Savage KJ, et al. Blood.2008;111:5496-5504.2)Kempf W, et al. Blood.2011;118:4024-4035.3)Ferreri AJ, et al. Crit Rev Oncol Hematol.2012;83:293-302.4)Ferreri AJ, et al. Crit Rev Oncol Hematol.2013;85:206-215.5)Miranda RN, et al. J Clin Oncol.2014;32:114-120.公開履歴初回2014年03月13日更新2016年08月02日

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高度催吐性化療の制吐薬としてオランザピンが有効/NEJM

 高度催吐性化学療法(highly emetogenic chemotherapy:HEC)を受けるがん患者において、オランザピンは悪心・嘔吐の予防に有効であることが、米国・インディアナ大学のRudolph M Navari氏らの検討で示された。研究の成果はNEJM誌2016年7月14日号にて発表された。オランザピンは非定型抗精神病薬であり、中枢神経系のドパミン受容体(D1、D2、D3、D4)、セロトニン受容体(5-HT2a、5-HT2c、5-HT3、5-HT6)、アドレナリンα1受容体、ヒスタミンH1受容体など多くの神経伝達物質を遮断する。体重増加や糖尿病リスクの増加などの副作用がみられるが、とくにD2、5-HT2c、5-HT3受容体は悪心・嘔吐に関与している可能性があり、制吐薬としての効果が示唆されている。悪心・嘔吐の予防効果を無作為化試験で検証 研究グループは、HECによる悪心・嘔吐に対するオランザピンの予防効果を検証する二重盲検無作為化第III相試験を行った(米国国立がん研究所[NCI]の助成による)。 対象は、年齢18歳以上、全身状態(ECOG PS)0~2で、前化学療法歴がなく、シスプラチンを含むレジメンまたはシクロホスファミド+ドキソルビシンによる治療が予定されているがん患者であった。 これらの患者が、化学療法の第1~4日にオランザピン(10mg、1日1回)またはプラセボを経口投与する群に無作為に割り付けられた。全例に、5-HT3受容体拮抗薬、デキサメタゾン、NK1受容体拮抗薬が投与された。 主要評価項目は悪心の予防とし、副次評価項目は嘔吐完全制御(CR)率などであった。「悪心なし」は、視覚アナログスケール(VAS、0~10点、点数が高いほど重度)が0点の場合とし、全期間(0~120時間)、急性期(0~24時間)、遅発期(25~120時間)に分けて評価を行った。CRは、嘔吐のエピソードがなく、かつレスキュー治療が行われなかった場合とした。 2014年8月~2015年3月までに、米国の46施設に380例が登録され、オランザピン群に192例、プラセボ群には188例が割り付けられた。第2日の鎮静が増加、食欲増進に差はない 全体の年齢中央値は57.0歳(範囲:28.0~89.0歳)、女性が72.4%を占めた。原発巣は乳がんが63.7%、肺がんが12.9%、その他が23.4%であった。化学療法は、シスプラチンを含むレジメンが35.8%、シクロホスファミド+ドキソルビシン療法は64.2%だった。 悪心なしの割合は、急性期ではオランザピン群が73.8%、プラセボ群は45.3%(p=0.002)、遅発期ではそれぞれ42.4%、25.4%(p=0.002)、全期間は37.3%、21.9%(p=0.002)であり、いずれもオランザピン群で有意に良好であった。 臨床的に問題となる悪心がない患者(VAS:0~2点)の割合も、急性期(87 vs.70%、p=0.001)、遅発期(72 vs.55%、p=0.001)、全期間(67 vs.49%、p=0.001)のすべてでオランザピン群が有意に優れた。 また、CRの割合も、急性期(86 vs.65%、p<0.001)、遅発期(67 vs.52%、p=0.007)、全期間(64 vs.41%、p<0.001)のすべてでオランザピン群が有意に良好だった。 Grade3の有害事象はオランザピン群で2件(疲労、高血糖)、プラセボ群でも2件(腹痛、下痢)にみられ、Grade4の有害事象はそれぞれ3件(そのうち2件が血液毒性)、0件だった。Grade5は認めなかった。 オランザピン群は、ベースラインと比較した第2日の鎮静の発現(5%が重度)が、プラセボ群に比べ有意に多かったが、第3、4日に継続投与しても第3~5日の鎮静の発現に有意な差はなく、鎮静による治療中止もなかった。また、第2~5日の望ましくない食欲増進の発現にも差は認めなかった。 著者は、「今後の試験では、より高用量および低用量での効果や毒性の評価、多サイクルの化学療法での効果の検討を考慮すべきである」としている。

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乳がんのI-SPY試験、neratinibは第II相を卒業し第III相へ/NEJM

 HER2陽性ホルモン受容体陰性乳がんに対する術前化学療法は、標準療法+neratinibの併用が、トラスツズマブを用いた標準療法と比較し病理学的完全奏効率が高くなる可能性が高いことが示された。米国・カリフォルニア大学のJohn W. Park氏らが、I-SPY2試験の結果、報告した。I-SPY2試験は、複数の新薬候補を同時に評価できる適応的無作為化デザインを用い、StageII/IIIの高リスク乳がんに対する標準的な術前化学療法と併用する新薬候補の有効性をバイオマーカーで評価する多施設共同第II相臨床試験。新薬候補としてチロシンキナーゼ阻害薬であるneratinibを含む7種が検討されている。本試験で、neratinibは有効性の閾値に達したことから「卒業」となり、第III相臨床試験(I-SPY3試験)へ進んでいる。NEJM誌オンライン版2016年7月7日号掲載の報告。neratinib併用の病理学的完全奏効率を適応的無作為化デザインにて比較 研究グループは、適応的無作為化デザインにより、パクリタキセル→ドキソルビシン+シクロホスファミド(AC)(対照群)と、neratinib+パクリタキセル→AC(neratinib併用群)を比較した。対照群でHER2陽性例にはトラスツズマブも投与した。 適格基準は、18歳以上、StageII/III、未治療、腫瘍径が臨床検査で2.5cm以上および画像で2cm以上、ECOG PSが0~1、MRIが実施可能、MammaPrint検査で高リスク、MammaPrint検査の結果に関係なくHER2陽性またはHR陰性、である。適格患者をHER2の状態、HRの状態および70遺伝子の発現プロファイル(MammaPrint検査)に基づき8つのサブタイプに分類し、10種類のバイオマーカー特性(あらゆるバイオマーカー、HR陽性、HR陰性、HER2陽性、HER2陰性、MammaPrint検査で高リスクカテゴリー2、HER2陽性/HR陽性、HER2陽性/HR陰性、HER2陰性/HR陽性、HER2陰性/HR陰性)に関して有効性を評価した。 主要評価項目は病理学的完全奏効(pCR)で、対照群に対するneratinib併用群の優越性のベイズ確率に基づき患者を割り付けた。1種類以上のバイオマーカー特性においてあらかじめ規定した有効性の閾値(300人規模の第III相試験で成功のベイズ予測確率が85%以上)を満たした場合に「卒業」(第III相試験へ進む)、すべてのバイオマーカー特性について成功のベイズ予測確率が10%未満の場合は登録中止とした。neratinib併用療法はHER2陽性HR陰性乳がんに対して有効である確率が高い 2010年3月~2013年1月に、計127例がneratinib併用群に、84例が対照群に割り付けられ、このうちpCRの評価可能症例はそれぞれ115例および78例であった。 neratinibは、HER2陽性/HR陰性に関してのみ事前に規定した有効性の閾値に達した。HER2陽性/HR陰性乳がん患者の推定pCR率は、neratinib群56%(95%ベイズ確率区間[PI]:37~73%)、対照群33%(95%PI:11~54%)で、第III相試験における成功予測確率は79%であった。

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トリプルネガティブ乳がん、veliparib+CBDCA併用の術前化学療法でpCR向上/NEJM

 トリプルネガティブの乳がん患者では、術前補助化学療法として標準療法に加え、ポリ(ADPリボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害薬veliparib+カルボプラチンを併用することで、病理学的完全奏効率が向上することが示された。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のHope S. Rugo氏らが、多施設共同の適応的無作為化第II相試験「I-SPY2」で明らかにしたもので、NEJM誌2016年7月7日号で発表した。乳がんは、遺伝的・臨床的不均一性から有効な治療の特定が困難になっている。研究グループは、実験的試験で効果のあるがんサブタイプを見つけることを目的とした。被験者を10種のバイオマーカー標識に分類 試験は、腫瘍が直径2.5cm以上でステージIIまたはIIIの乳がんの女性を対象に、実験的レジメンにより治療アウトカムが向上する乳がんサブタイプについて調べるもので、現在も継続中である。 具体的には、乳がんをヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)、ホルモン受容体、70の遺伝子アッセイにより8つのバイオマーカー・サブタイプに分類。そのうえで、あらかじめ定義したバイオマーカーの組み合わせで10種のバイオマーカー標識を作成し、標準治療と実験的レジメンを比較することとした。被験者は、標準療法よりも良好な成績のレジメンを受けられるよう、バイオマーカー・サブタイプ内で適応的無作為化を行った。 今回報告されている標準療法にveliparibとカルボプラチンを併用するレジメンは、HER2陰性腫瘍について検討され、3標識について評価が行われた。 主要評価項目は、病理学的な完全奏効で、治療中にMRIで腫瘍体積を測定して完全奏効を予測する形で評価。また、ベイズ確率で第III相試験での成功予測が高いと示されたレジメンについて、第II相から第III相へ進めると判定することとした。標準療法にveliparib+カルボプラチンで病理学的完全奏効が51% veliparib+カルボプラチンを投与した被験者は72例、対照群は44例だった。トリプルネガティブ(エストロゲン受容体・プロゲステロン受容体・HER2が陰性など)の患者において、化学療法終了時点で病理学的完全奏効が予測された人の割合は、veliparib+カルボプラチン群が51%(95%ベイズ確率区間:36~66)だったのに対し、対照群では26%(同:9~43)だった。 また、トリプルネガティブ乳がんに関して、veliparib+カルボプラチンレジメン治療が第III相で成功する確率は88%だった。 なお、veliparib+カルボプラチン群の毒性は、対照群より高かった。

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膵がん切除後のS-1とゲムシタビンによる補助化学療法の有用性(解説:上村 直実 氏)-560

 膵がんは、最も予後の悪い悪性腫瘍の1つであり、手術可能な早期がんで発見され治癒切除術が施行された場合でも、その5年生存率は20%程度であるとされている。手術単独での再発率が高いため、治癒率を上げるために補助化学療法が必要となる。膵がん切除後の補助化学療法は、ゲムシタビンを使用したものが標準レジメンとされているが、今回、日本で胃がんや大腸がんに対する主要な経口抗がん剤であるS-1の有用性を検討するため、S-1とゲムシタビンとのRCT「JASPAC-01研究」の結果が報告された。 「JASPAC-01」は、日本人を対象に行われた無作為化非盲検多施設共同の第III相試験で、組織学的に確認された切除可能な浸潤性膵管がんで、かつ病理学的にStageI~III、肉眼的に完全切除され残存腫瘍が認められないと判定された385例を対象として、S-1群192例とゲムシタビン群193例に割り付けられた。主要評価項目である全生存期間では、5年生存率はゲムシタビン群24.4%(95%CI:18.6~30.8)に対し、S-1群は44.1%(95%CI:36.9~51.1)であり、ゲムシタビン群に対するS-1群の死亡ハザード比は0.57(同:0.44~0.72)であった。すなわち、S-1を用いた補助化学療法の死亡リスクがゲムシタビンに比べて40%以上も低下することが示されたのである。有害事象に関しては、Grade3または4の白血球減少症および好中球減少症、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの増加は、ゲムシタビン群でより高率に認められたが、S-1群で高率にみられたのは口内炎や下痢であった。 S-1は、日本で開発された経口抗がん剤であり、胃がんや大腸がんに対する化学療法の主要薬剤として頻用されているが、欧米とくに米国における臨床試験の際に有害事象発生率が高率であったことから、欧米では敬遠される傾向がある。今後、非アジア人の患者でも臨床的評価を行うべきであるという著者らの主張が通ることが期待される。

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ホジキンリンパ腫、中間PET-CT結果による治療変更は有効か?/NEJM

 進行期古典的ホジキンリンパ腫の患者に対し、ABVD(ドキソルビシン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ダカルバジン)療法2サイクル後に中間PET-CTを行い、その結果を基に治療をガイドしていくことは有効なのか。英国・サウサンプトン大学のPeter Johnson氏らが、1,214例の患者を対象に無作為化比較試験にて検討した。中間PET-CTの結果が陰性例について、ブレオマイシンを除いたAVD療法に変更した場合、ABVD療法の継続例と比較して、肺毒性発生率は低下し、有効性に有意な低下は認められなかったという。NEJM誌2016年6月23日号掲載の報告。 ABVD療法2サイクル後に中間PET-CTを実施 検討は、進行期ホジキンリンパ腫患者の治療における化学療法の効果を、中間PET-CTで早期判定することの有用性を調べることが目的だった。新たに進行期古典的ホジキンリンパ腫の診断を受けた患者1,214例を対象に、ベースラインでPET-CTを行い、ABVD療法を2サイクル施行後に再度PET-CTを行い、その画像を5ポイント制で中央評価した。 その結果、陰性と判定した患者を無作為に2群に分け、3~6サイクルの治療施行について、一方の群はABVD療法を継続し、もう一方の群はブレオマイシンを除いたAVD療法とした。また、これら陰性患者には、放射線療法は推奨しなかった。 中間PET-CTの結果が陽性だった患者については、BEACOPP(ブレオマイシン、エトポシド、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、プロカルバジン、プレドニゾン)療法を行った。 主要評価項目は、無作為化群の3年無増悪生存率の群間差とし、5ポイント以上の差を除外する非劣性試験を行った。3年無増悪生存率、ABVD群85.7%、AVD群84.4% 被験者のうち中間PET-CTを行ったのは1,119例で、そのうち937例(83.7%)が陰性だった。935例が無作為化を受けた。 追跡期間中央値41ヵ月時点で、ABVD群(470例)の3年無増悪生存率は85.7%(95%信頼区間[CI]:82.1~88.6)、全生存率は97.2%(同:95.1~98.4)だった。一方AVD群(465例)は、それぞれ84.4%(同:80.7~87.5)、97.6%(同:95.6~98.7)だった。3年無増悪生存率の絶対群間差は、1.6ポイント(同:-3.2~5.3)で、わずかだが非劣性マージンを超えていた。 また中間PET-CTの結果が陽性でBEACOPPを受けた群(172例)の74.4%が、3回目のPET-CTで陰性だった。同群の3年無増悪生存率は67.5%、全生存率は87.8%だった。 全体では、試験期間中の死亡例は62例(うちホジキンリンパ腫による死亡は24例)で、3年無増悪生存率は82.6%、全生存率は95.8%だった。 これらの結果を踏まえて著者は、非劣性マージンに達しなかったものの、AVD群はABVD群に比べ、肺毒性発生率は低下し、有効性は有意に低下しなかったと結論している。

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日本人の膵がん術後補助化学療法、S-1 vs.GEM/Lancet

 日本人膵がん患者の切除後の補助化学療法は、S-1が標準治療となりうることが示された静岡県立静岡がんセンターの上坂克彦氏らによる「JASPAC-01」の結果が、Lancet誌オンライン版2016年6月2日号に掲載された。本検討においてゲムシタビンに比べS-1補助化学療法により死亡リスクが約4割低下することなどが示された。膵がん術後の補助化学療法はゲムシタビンが標準治療とされているが、今回の試験では、死亡リスクについてS-1のゲムシタビンに対する非劣性のみならず優越性も示された。385例の患者を対象に試験 「JASPAC-01」は、日本人を対象に行われた無作為化非盲検多施設共同のフェーズ3試験。2007年4月1日~2010年6月29日にかけて、日本国内33ヵ所の医療機関で、組織学的に確認された切除可能な浸潤性膵管がんで、病理学的にStageI~III、肉眼的に完全切除され顕微鏡による残存腫瘍が認められない20歳以上の患者385例を対象に行われた。 研究グループは切除後に被験者を無作為に2群に分け、一方の群にはゲムシタビン(4週1サイクルとし1,000mg/m2を1、8、15日目に投与を6サイクル、193例)を、もう一方の群にはS-1(6週1サイクルとし体表面積に応じて40、50、60mg/回・1日2回を1~28日連続投与を4サイクル、192例)を、それぞれ投与した。 主要評価項目は、全生存期間。評価はper-protocol集団で、不適格患者および割り付け治療を受けなかった患者を除外して行った。また、S-1の非劣性が確認された場合、log-rank検定で全生存期間に関するS-1の優越性も検討することが事前規定のプロトコルとされていた。 全生存および無再発生存期間は、Kaplan-Meier法を用いて算出し、S-1のゲムシタビンに対する非劣性は、Cox比例ハザードモデルを用いて評価。死亡予想ハザード比(HR)は0.87で非劣性マージンは1.25(検出力80%:片側タイプ1エラー2.5%)とした。死亡に関するS-1群のゲムシタビン群に対するハザード比は0.57 無作為化を受けた被験者のうち、不適格3例、治療を受けなかった5例を除く、ゲムシタビン群190例、S-1群187例が解析対象となった。試験は2012年9月、独立データ・安全モニタリング委員会の勧告を受け、中間解析による有効性が事前に規定した早期終了基準に適合したため、すべての治療プロトコルが終わった時点で終了となった。 2016年1月15日までの追跡データを解析した結果、5年全生存率はゲムシタビン群24.4%(95%信頼区間[CI]:18.6~30.8)に対し、S-1群は44.1%(同:36.9~51.1)と高率で、死亡ハザード比は0.57(同:0.44~0.72)であった(非劣性に関するp<0.0001、優越性に関するp<0.0001)。 Grade3または4の白血球減少症、好中球減少症、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼの増加は、ゲムシタビン群でより高率に認められた。一方でS-1群でより高率にみられたのは、口内炎、下痢であった。 今回の結果について著者は、「結果について、非アジア人の患者で評価を行うべきである」とまとめている。

1592.

非小細胞肺がんに新たなALK阻害剤 セリチニブ発売

 ノバルティス ファーマ株式会社(代表取締役社長:ダーク・コッシャ)は、ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺がん(以下、ALK+ NSCLC)の治療薬として、本年(2016年)3月28日に製造販売承認を取得したセリチニブ(商品名:ジカディア カプセル150mg)の販売を本日開始した。 セリチニブは、受容体チロシンキナーゼであるALKの自己リン酸化を阻害し、がん細胞の増殖を抑制する、強力かつ選択的な経口ALK阻害剤。現在、ALK+ NSCLCの治療には、複数のALK阻害剤が用いられているが、既存のALK阻害剤に不耐容であったり、効果が十分ではない、耐性により増悪するケースが報告されている。またALK+ NSCLCでは脳転移のリスクが増加することが示唆されており、脳転移が治療上の大きな課題となっている。 セリチニブは、化学療法及び既存のALK阻害剤(クリゾチニブ)治療歴があるALK+ NSCLC患者を対象とした国際共同第II相臨床試験(日本人を含む)において、奏効率37.1%(95%CI:29.1-45.7%)で主要目的を達成し、高い抗腫瘍効果を示した。同様に、ALK+ NSCLC患者においても、脳転移病変に対するセリチニブの抗腫瘍効果が示唆された。なお、 セリチニブの主な副作用は、悪心(77.9%)、下痢(77.1%)、嘔吐(58.6%)、ALT(GPT)増加(37.9%)、食欲減退(35.7%)、AST(GOT)増加(28.6%)であった。ノバルティス ファーマ株式会社のプレスリリースはこちら

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妊孕性温存の選択肢となるか? 月内にも日本初の卵巣バンク開設

 できるだけ早い治療が望まれる悪性腫瘍。一方で、将来的に妊娠を望む女性にとって、化学療法などによる妊孕性の低下を受け入れることは非常に難しい問題だ。この課題に直面する女性たちの希望となりうるのか―。 4月27日、不妊治療や生殖医療を専門とする医療法人レディースクリニック京野(宮城県仙台市、京野廣一理事長)が、運営する同法人の2クリニック(仙台市、東京都港区)に、卵巣組織を凍結保存する卵巣バンクを設立することを発表した。卵巣凍結保存や再移植は、これまでにも個々の医療施設単独で行われていたが、今般の取り組みでは、凍結卵巣組織を安定的に保存する技術を有する卵巣バンク施設と、卵巣摘出や移植、原疾患の治療を行う各専門施設が連携してネットワークを構築することにより“分業化”を実現。がんの治療を必要としながらも挙児希望のある女性に対し、妊孕性温存の選択肢を提供するとともに、治療機会の地域間格差を是正する狙い。国内では初めての試みとなる。実際に卵巣バンクが稼働するのは、日本産科婦人科学会の承認後からとなるが、5月中の開設を目指している。 卵巣凍結保存の適応対象となるのは、悪性腫瘍(乳がん、子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がん、血液がんなど)を有する患者。なかでも乳がんについては、抗がん剤治療によって閉経を早める可能性があるほか、日本人女性に多いとされるER陽性乳がんの場合、5~10年の長期にわたる内分泌療法によって、治療終了時には妊娠および出産が難しい年齢に差しかかることも、治療を受ける女性の大きな懸念材料となっている。こういった点からも、妊孕性温存の選択肢として新たに卵巣凍結が加わることはメリットと考えられる。なお白血病については、卵巣への侵襲性が高い化学療法が先行するため、適応外としている。 卵巣バンクネットワークは、卵巣摘出および移植を行う医療施設として、東京、群馬、兵庫、沖縄、青森などに計13施設、凍結保存を連携して行う卵巣バンク施設としては、前述の医療法人レディースクリニック京野の2施設を含め計4施設が提携先となっている(2016年4月27日現在)。 妊孕性温存のための生殖医療は、卵巣凍結のほかに卵子凍結と受精卵凍結(いずれも適応疾患は白血病、乳がん、悪性リンパ腫など)がある。卵巣凍結の最大のメリットは、自然妊娠が望める点だろう。卵子凍結と受精卵凍結は、ICSI(顕微授精)かIVF(体外受精)による授精・妊娠に限られるが、卵巣凍結はそれらに加え自然妊娠も可能となる。また、卵巣凍結は未婚・既婚を問わず、対象年齢が0~37歳以下で摘出可能(ただし凍結保存した卵巣の再移植は45歳未満)である。この点で、いずれも13歳以上を対象とし、未婚に限られる卵子凍結や既婚に限られる受精卵凍結よりも適応が広げられている。一方で、卵子凍結と受精卵凍結は融解後の生存率が90%と高く、この点については卵巣凍結(生存率50~80%)よりも優位である。 卵巣凍結保存をめぐっては、保存した卵巣組織にがんが転移している可能性を100%排除できないという課題があるという。京野氏は「移植の際にがん細胞の再移入を完全に排除しきれないことが今後の課題であることは十分認識している。より精度の高い検査を実施し、できる限りの安全性の担保に努めたい」と述べた。卵巣バンクについての詳しい情報はこちら。

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急性前骨髄球性白血病〔APL : acute promyelocytic leukemia〕

1 疾患概要■ 概念・定義急性前骨髄球性白血病(acute promyelocytic leukemia:APL)は急性骨髄性白血病の1つで、FAB分類ではM3に分類される。大部分の症例でt(15;17)(q22;q12)を認め、15番染色体q22上のpromyelocytic leukemia(PML)遺伝子と17番染色体q12上のretinoic acid receptor α(RARA)遺伝子の融合遺伝子を形成するため、WHO分類ではt(15;17)(q22;q12); PML-RARAを伴う急性前骨髄球性白血病という一疾患単位が設定されている。線溶亢進型の播種性血管内凝固症候群(DIC)を高率に合併し、脳出血など致命的な臓器出血を来しやすく、出血による早期死亡が寛解率を低下させていたが、ビタミンAの一種である全トランス型レチノイン酸(all-trans retinoic acid: ATRA、一般名:トレチノイン、商品名:ベサノイド)を寛解導入療法に用いることで、APL細胞を分化させるとともにDICが軽減され、きわめて高い寛解率が得られるようになった。また、APL細胞はP糖蛋白の発現が低く、アントラサイクリン系薬をはじめ抗腫瘍薬に対する感受性も高い。したがって十分な寛解後療法を行えば再発の危険性も低く、急性白血病の中では化学療法により完治を得る可能性が最も高い疾患と認識されている。■ 疫学わが国において白血病は、年に10万人当たり男性で約6人、女性で約4人に発症し、その約60%が急性骨髄性白血病、さらにその10~15%がAPLといわれている。世界的にみると、イタリアやスペインなど南ヨーロッパで発症率が高い。ほかの急性骨髄性白血病よりも発症年齢が若い傾向がある。■ 病因15番染色体q22上のPML遺伝子と17番染色体q12上のRARA遺伝子は、骨髄系細胞の増殖抑制、分化の調整を行うが、相互転座の結果PML-RARA融合遺伝子が形成されると、骨髄系細胞の分化が抑制され、前骨髄球レベルで分化を停止した細胞が腫瘍性に増殖することで発症すると考えられる。■ 症状1)出血最も重要な症状は出血で、主としてDICに起因する。皮膚の紫斑・点状出血のほか、歯肉出血、鼻出血などを来す。抜歯など、観血的な処置後の止血困難もしばしば診断のきっかけになる。脳出血など、致命的な出血も少なくない。2)貧血骨髄での赤血球産生低下と出血のため貧血となり、動悸、息切れ、疲れやすさなどを自覚する。3)感染、発熱正常な白血球、とくに好中球数が低下し、発熱性好中球減少症を起こしやすい。病原微生物として、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌、腸球菌、緑膿菌などの細菌、カンジダやアスペルギルスなど真菌が多い。感染部位として菌血症、肺炎が多いが、起因菌や感染部位が同定できないことも少なくない。■ 予後寛解導入療法に広くATRAが用いられるようになった1990年代以後、寛解率は90%を超えている。非寛解例の多くが出血による早期死亡であり、初期にDICをコントロールできるかどうかが生存に大きく影響する。いったん寛解に入り、十分な寛解後療法を行えば再発しにくく、70%以上の患者は無再発での長期生存が可能である。とくに白血球数が少なく(≦10,000/mm3)、血小板数が比較的保たれた(>40,000/mm3)症例では再発のリスクが低い1)。一方、地固め療法後にRQ-PCR法にてPML-RARAが消失しない、あるいはいったん消失したPML-RARAが再出現する場合は、血液学的再発のリスクが高い2)。ただし、再発した場合も多くは亜ヒ酸(一般名:三酸化ヒ素、商品名: トリセノックス)が奏効し、さらに自家造血幹細胞移植も有効であるため、急性白血病の中で最も予後良好といえる。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 血液検査所見白血球数は減少していることが多い。APL細胞はアズール顆粒が充満しており、アウエル小体が束状に存在するFaggot細胞として存在するものもある。貧血もほぼ必発で大部分が正球性である。産生低下およびDICにより、血小板数は著しく低下する。DICのため、プロトロンビン時間(PT)延長、フィブリン分解産物(FDP)およびD-ダイマー高値、フィブリノーゲン低値を示す。DICは線溶亢進型で、トロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)、プラスミン-α2プラスミンインヒビター複合体(PIC)ともに高値となる。アンチトロンビンは正常のことが多い。■ 骨髄所見骨髄は末梢血と同様の形態をもつAPL細胞が大部分を占め、正常な造血は著しく抑制される。APL細胞は、ペルオキシダーゼに強く染まり、細胞表面マーカーはCD13、CD33が陽性、CD34、HLA-DR陰性である。染色体および遺伝子検査では90%以上にt(15;17)(q22;q12)が、約98%にPML-RARA融合遺伝子が証明される。t(15;17)(q22;q12)以外の非定型染色体転座にt(5;17)(q35;q12); NPM1-RARA、t(11;17)(q23;q12); ZBTB16(PLZF)-RARA、t(11;17)(q13;q12); NUMA1-RARAなどがある。画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)ATRAを中心とした初回寛解導入療法、寛解導入後の地固め療法や維持療法、再発例に対する治療、造血幹細胞移植などがある。■ 初回寛解導入療法診断が確定したら、ATRAを寛解到達まで内服する。ATRA単独の寛解導入療法はATRAと従来の化学療法剤との併用療法に比べ寛解率に差はないが、再発のリスクが高いとする報告もあり3)、とくに診断時白血球数の多い症例、ATRA投与中に白血球数増加を来した症例、APL分化症候群を合併した症例では積極的にイダルビシン(商品名: イダマイシン)などのアントラサイクリンやシタラビン(同:キロサイド)を併用する。初回寛解導入療法中の重篤な合併症として、DICに伴う出血とAPL分化症候群がある。DICに伴う致命的な出血を予防するため、最低でも血小板数は50,000/mm3、フィブリノーゲンは150mg/dLを保つように血小板および新鮮凍結血漿の輸血を行うとともに、トロンボモジュリン(同:リコモジュリン)などDICに対する薬物療法を行う。APL分化症候群は、ATRAや亜ヒ酸の刺激を受けたAPL細胞から過剰産生される、さまざまな炎症性サイトカインやAPL細胞の接着分子発現増強などにより発症する。80%以上の患者に発熱や低酸素血症による呼吸困難が認められるほか、体重増加、浮腫、胸水、心嚢水、低血圧、腎不全などを来す。両側の間質性肺炎様のX線あるいはCT所見は診断に有用である。好発時期は寛解導入療法開始後1~2週間であり、ATRAや亜ヒ酸投与期間中に白血球数の増加を伴って発症することが多い。治療にはステロイドが有効で、重篤な場合はATRAや亜ヒ酸を中止するとともに、未投与であればアントラサイクリンやシタラビンを投与する。■ 地固め療法寛解導入後には、地固め療法としてイダルビシン、ダウノルビシン(同:ダウノマイシン)などアントラサイクリンや同様の作用機序を有するミトキサントロン(同:ノバントロン)の3~5日間点滴を、約1ヵ月おきに2~4回繰り返す。シタラビンについては意見が分かれるが、診断時の白血球数が10,000/mm3未満の症例では、十分なアントラサイクリンが投与されればその意義は低く、むしろ再発を高める可能性もある一方で、10,000/mm3以上の症例では高用量での投与が有用と報告されている4)。■ 維持療法ATRAを中心とした維持療法は再発予防に有用である。通常、地固め療法終了後にATRA 14日間の内服を約3ヵ月間隔で2年間繰り返す。6-メルカプトプリン(同:ロイケリン)やメトトレキサート(同:メソトレキセート)の併用はさらに再発抑制効果を高める可能性がある5)。■ 再発例に対する治療亜ヒ酸が第1選択薬であり80%以上の再寛解が期待できる。ゲムツズマブ オゾガマイシン(同:マイロターグ)や合成レチノイド、タミバロテン(同:アムノレイク)も有用である。なお、血液学的寛解中であってもRQ-PCR法でPML-RARA陽性となった場合は再発と判断し、上記の再寛解導入療法を開始する。■ 造血幹細胞移植本症はATRAを中心とした化学療法が有効であり、通常第1寛解期には造血幹細胞移植は行わない。第2寛解期では造血幹細胞移植が推奨される。第2寛解期での自家造血幹細胞移植は、同種造血幹細胞移植に比べ再発率は高いものの治療関連死が少なく、全生存率は同種造血幹細胞移植を上回っている6)。そのため、地固め療法後にRQ-PCR法でPML-RARA陰性例には自家移植、陽性例には同種移植を考慮する。4 今後の展望今後もATRAを中心とした化学療法が治療の主体であると考えられる。診断時の白血球数や地固め療法後のPML-RARA融合遺伝子の有無など、リスクファクターによる層別化治療を寛解導入療法のみならず寛解後療法においても広く用いることにより、再発リスクと有害事象の軽減が図れると期待される。さらに寛解導入療法でのATRAと亜ヒ酸の併用や、地固め療法での亜ヒ酸の積極的使用により、治療成績はさらに向上する可能性がある。5 主たる診療科血液内科あるいは血液腫瘍内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報JALSGホームページ(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)がんプロ.comホームページ(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)公益財団法人先端医療振興財団 臨床研究情報センター「がん情報サイト」(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報つばさの広場(血液疾患患者とその家族の会)海好き(白血病患者とその家族の会)1)Sanz MA, et al. Blood. 2000; 96: 1247-1253.2)Gallagher RE, et al. Blood. 2003; 101: 2521-2528.3)Fenaux P, et al. Blood. 1999; 94: 1192-1200.4)Adès L, et al. Blood. 2008; 111: 1078-1084.5)Adès L, et al. Blood. 2010; 115: 1690-1696.6)de Botton S, et al. J Clin Oncol. 2005; 23: 120-126.公開履歴初回2014年03月20日更新2016年04月26日

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診療の現場における安全な処方に必要なものは何か…(解説:吉岡 成人 氏)-512

薬剤をより安全に処方すること 外科医が行う手術、内科医が行う外科的なインターベンションと並んで、抗菌薬や抗がん化学療法薬などに代表される薬物治療は、内科医にとって重要な治療のツールである。臨床の現場では、作用と副作用というアンビバレンスを勘案して、慎重に処方を行うことが望まれる。一方、忙しさに紛れ、薬物の相互作用にうっかり気付かずに、副作用のリスクを高めてしまう処方が行われることもまれではない。 本論文は、スコットランドにおけるプライマリケアの診療現場で、一定の割合で副作用を引き起こす可能性のある高リスク薬の処方を、どのような臨床介入によって適正化しうるかについて検討した成績を示した論文である。教育と情報そして金銭的なインセンティブ 高リスク薬として、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、抗血小板薬を取り上げ、慢性腎臓病患者(CKD≧ステージ3)や、利尿薬とACE阻害薬ないしはARBを併用している患者にNSAIDsを処方した場合、胃粘膜保護薬を併用せずにNSAIDsと抗凝固薬の併用を行った場合を高リスク処方と判定し、介入によって処方行動が変容するか否かを検討している。 教育、金銭的インセンティブ、患者情報の提供という3つの介入が実施されている。まずは、薬剤師がクリニックを訪問し1時間にわたって知識の共有と確認を行い、続いて、参加登録時に350ポンド(600USドル)、高リスク薬を処方した患者の病歴を確認した際には患者1人当たり15ポンド(25USドル)のインセンティブを支払い、さらに、プライマリケア医が診療している患者の中から、病歴の確認が必要な患者を抽出し、「フラグ」を付けてアラートを行い、医師が対象薬となっている高リスク薬剤の投与を中止するか、副作用を予防する薬剤を追加処方した際に「フラグ」が消えるというシステムを構築し、医師が容易に診療内容をネット上でID、パスワードを用いて確認することができるようにするという、3つの介入を実施している。高リスク処方の減少と副作用による入院が減少 Stepped wedge designという、試験開始の時期をずらしながら順番に介入を行うという方法で介入試験を行った、33ヵ所の診療現場における3万3,000例以上の患者の結果が解析されている。 高リスク処方の割合は、3.7%(2万9,537例中1,102例)から2.2%(3万187例中674例)に有意に低下し(オッズ比0.623、95%信頼区間:0.57~0.86、p<0.001)、消化性潰瘍や消化管出血による入院も1万人年当たり55.7件から37.0件に有意に減少。心不全による入院も1万人年当たり707.7件から513.5件に有意に減少したが、急性腎不全による入院に変化はなかった(1万人年当たり101.9件から86.0件、オッズ比0.84、95%信頼区間:0.68~1.09、p=0.19)。高リスク処方の減少に何が有効だったのか それでは、知識の提供、金銭的インセンティブ、高リスク処方に注意を喚起するシステムのうち、何が最も有用であったのか…。それについては、この論文からは読み取ることができない。どのような知識を持っていても、忙しい診療の現場では、ついうっかり…という処方ミスが起こる可能性はきわめて大きい。しかし、処方を実施した後にレビューするシステムがあったとしても、習慣としてそれにアクセスするには動機(きっかけ)が必要であろう。そのために、世俗的ではあるが、少額ではあっても金銭的インセンティブが有用なのかもしれない。 処方の適正化はきわめて重要なことであり、予想しうる副作用を阻止するためのフェイルセイフ機構を構築することは喫緊の課題ともいえる。しかし、その方策をどのようにすべきか…。ひとつの回答が示されたが、この回答をどのように臨床の現場で応用していくのかは簡単ではなさそうである。関連コメント高リスク処方回避の具体的方策が必要(解説:木村 健二郎 氏)診療所における高リスク処方を減らすための方策が立証された(解説:折笠 秀樹 氏)ステップウェッジ法による危険な処方を減らす多角的介入の効果測定(解説:名郷 直樹 氏)「処方箋を書く」医師の行為は「将棋」か「チェス」か?(解説:後藤 信哉 氏)

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ALK阻害剤セリチニブ、非小細胞肺がんの治療薬として承認取得

 ノバルティス ファーマ株式会社(代表取締役社長:ダーク・コッシャ)は、2016年3月28日、経口ALK阻害剤であるセリチニブ(商品名:ジカディア カプセル150mg)について、ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺がん(以下、NSCLC)の治療薬として、国内における製造販売承認を取得したと発表。 セリチニブは、化学療法及び既存のALK阻害剤クリゾチニブ治療歴のあるALK陽性NSCLC患者を対象とした第II相臨床試験(日本人を含む国際共同治験)において、奏効率37.1%(95%CI:29.1-45.7)で主要目的を達成し、高い抗腫瘍効果を示した。 国際共同第II相試験におけるセリチニブの主な副作用は、悪心(77.9%)、下痢(77.1%)、嘔吐(58.6%)、ALT(GPT)増加(37.9%)、食欲減退(35.7%)、AST(GOT)増加(28.6%)であった。 セリチニブは、2013年3月に米食品医薬品局(FDA)よりブレークスルー・セラピーの指定を受け、2014年4月に米国で「クリゾチニブによる治療後に疾患が進行したクリゾチニブ不耐容のALK陽性 NSCLC」の治療薬として迅速承認を得たほか、2015年5月にはEUにおいても承認を取得し、2016年3月現在、アジアを含む世界50カ国以上で承認されている。 ジカディア カプセル150mgの効能/効果は、クリゾチニブに抵抗性又は不耐容のALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発のNSCLC。ノバルティス ファーマ株式会社のプレスリリースはこちら

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抗PD-L1抗体atezolizumab、既治療NSCLCのOS延長/Lancet

 既治療の非小細胞肺がん(NSCLC)の治療において、新規免疫チェックポイント阻害薬atezolizumabは、ドセタキセル(商品名:タキソテールほか)に比べ予後が良好であることが、米国・カイザーパーマネンテ医療センターのLouis Fehrenbacher氏らが行ったPOPLAR試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2016年3月9日号に掲載された。ニボルマブやペムブロリズマブがT細胞上のPD-1を標的とするのに対し、atezolizumabは腫瘍細胞および腫瘍浸潤免疫細胞上に発現しているPD-L1(PD-1のリガンド)に対するヒト型IgG1モノクローナル抗体で、T細胞上のPD-1だけでなくB7.1(CD80)との結合を阻害する。それゆえ、T細胞活性化阻害作用の抑制効果が抗PD-1抗体よりも高い可能性があり、またPD-L2とPD-1の相互作用には影響しないことから、免疫系の恒常性への影響を回避できると考えられている。ドセタキセルと比較する無作為化第II相試験 POPLAR試験は、既治療のNSCLC患者においてatezolizumabとドセタキセルの有用性を比較し、PD-L1発現レベルを評価する非盲検無作為化第II相試験(F Hoffmann-La Roche/Genentech社の助成による)。 対象は、プラチナ製剤による化学療法後に病勢が進行したNSCLCで、全身状態(ECOG PS)が0/1、測定可能病変(RECIST ver.1.1)を有する患者であった。 被験者は、腫瘍浸潤免疫細胞上のPD-L1の状態、組織型、前治療レジメン数で層別化され、atezolizumab(1,200mg、静脈内投与)またはドセタキセル(75mg/m2、静脈内投与)を3週ごとに投与する群に無作為に割り付けられた。 免疫組織化学(IHC)検査に基づき、腫瘍細胞上のPD-L1(TC3:≧50%、TC2:5~50%、TC1:1~5%、TC0:<1%)および腫瘍浸潤免疫細胞上のPD-L1(IC3:≧10%、IC2:5~10%、IC1:1~5%、IC0:<1%)をスコア化した。 主要評価項目は全生存期間(OS)とし、探索的解析としてバイオマーカーの評価を行った。 2013年8月5日~14年3月31日までに、13ヵ国61施設に287例が登録された。atezolizumab群に144例、ドセタキセル群には143例が割り付けられ、それぞれ142例、135例が1回以上の投与を受けた。OS中央値:約3ヵ月延長、PD-L1発現率が高いほど良好 年齢中央値は両群とも62歳、男性はatezolizumab群が65%、ドセタキセル群は53%であり、喫煙者/元喫煙者がそれぞれ81%、80%、前治療レジメン数は1が65%、67%、2が35%、33%だった。 OS中央値はatezolizumab群が12.6ヵ月であり、ドセタキセル群の9.7ヵ月に比べ有意に延長した(ハザード比[HR]:0.73、95%信頼区間[CI]:0.53~0.99、p=0.04)。 また、OS中央値はPD-L1の発現率が高い患者ほど良好であった(TC3またはIC3=HR:0.49[0.22~1.07]、p=0.068/TC2/3またはIC2/3=HR:0.54[0.33~0.89]、p=0.014/TC1/2/3またはIC1/2/3=HR:0.59[0.40~0.85]、p=0.005/TC0およびIC0=HR:1.04[0.62~1.75]、p=0.871)。 既存免疫(エフェクターT細胞およびインターフェロン-γの関連遺伝子発現≧中央値で定義)を有する患者の探索的解析では、atezolizumab群のOS中央値が有意に改善された(HR:0.43、95%CI:0.24~0.77)。 atezolizumab群で頻度の高い全原因有害事象として、食欲減退、呼吸困難、悪心、下痢、発熱などが認められ、免疫関連有害事象としてAST上昇(4%)、ALT上昇(4%)、肺臓炎(3%)、腸炎(1%)、肝炎(1%)がみられた。 治療関連有害事象の発現率は、atezolizumab群が67%、ドセタキセル群は88%であった。有害事象による治療中止は、atezolizumab群が8%(11例)、ドセタキセル群は22%(30例)、Grade 3/4の治療関連有害事象はそれぞれ11%(16例)、39%(52例)であり、atezolizumab群で少なかった。治療関連死はatezolizumab群が<1%(1例:心不全)、ドセタキセル群は2%(3例:敗血症、急性呼吸窮迫症候群、原因不明)だった。 著者は、「atezolizumabはドセタキセルに比べ既治療のNSCLC患者の予後を改善した」とまとめ、「PD-L1の発現は、atezolizumabのベネフィットを予測するバイオマーカーとなる可能性が示唆される」と指摘している。

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がん免疫療法薬・安全性は「多職種連携」がカギ

 2016年2月17日、都内にて「がん免疫療法で変わる肺がん治療」をテーマにプレスセミナーが開催された(主催:小野薬品工業株式会社/ブリストル・マイヤーズ株式会社)。脚光を浴びているがん免疫療法、安全性は? ニボルマブ(商品名:オプジーボ)は2014年9月に発売された、世界初の抗PD-1モノクローナル抗体で、がん免疫療法薬と呼ばれている。がん免疫療法は従来の化学療法や手術、放射線療法とはまったく異なる新たな治療法で、身体の免疫系に直接作用してがんと闘う機序を持つ。本邦において、ニボルマブは「根治切除不能な悪性黒色腫」「切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」の2つの疾患に適応がある。免疫系に作用するという新しいアプローチと、治験時における有害事象、とくに骨髄抑制の少なさからがん治療において大きな期待を寄せられている。 しかし、使用経験の蓄積からこれまでの薬剤では経験のない免疫関連有害事象が報告されている。注意すべき、免疫関連有害事象とは? がん免疫療法薬は全身の臓器にも働きかけるといわれており、過度の免疫反応により免疫関連有害事象が複数の臓器で報告されている。演者の中西 洋一氏(九州大学大学院 呼吸器内科学分野 教授)は、とくに注意すべき副作用として間質性肺炎、重症筋無力症、劇症1型糖尿病、甲状腺機能障害の4つを挙げた。 とくに劇症1型糖尿病は、インスリンを産生する膵島細胞の急速な破壊により急激に高血糖を来す。また、時には致死的であり、たとえ回復してもインスリン産生の枯渇により、血糖コントロール困難となり、社会生活に高度の支障を来す重大な疾患である。ニボルマブの臨床試験において、劇症1型糖尿病は報告されていなかったが、使用経験の蓄積により報告が上がってきた。2016年1月に日本腫瘍学会と日本糖尿病学会より、連名でステートメントが出たことは記憶に新しい1)。副作用に立ち向かうには? 九州大学病院の事例 上記の重症筋無力症、劇症1型糖尿病、甲状腺機能障害などの副作用は必ずしもオプジーボを使用している医師の専門であるとはいえない。このような副作用に、どのように対応していけばよいのだろうか? 対応策の一例として、中西氏は九州大学病院の「免疫チェックポイント阻害薬適正使用委員会」を挙げた。同委員会では、副作用対策において、呼吸器内科・腫瘍内科・皮膚科など免疫療法実施診療科を、他の専門科や看護師、薬剤師、ソーシャルワーカーなどがサポートする、診療科・職域横断的なチェック体制づくりに取り組んでいる。専門外の医師をはじめとし、看護師・薬剤師などコメディカルとの連携によって、副作用の早期発見や適切な管理、細やかな対応が可能になるという。 ニボルマブは安全性の面以外にも、コストとの兼ね合い、バイオマーカーの探索、他剤との併用などさまざまな点に課題があるものの、これまで治療の選択肢に難渋していた患者にとって希望の光となりうる薬剤である。しかし、2016年2月より包括医療費支払い制度(DPC)の対象外となったため、今後さらなる使用患者数の増加が予想され、これに伴い予期せぬ副作用が生じる可能性も否定できない。治療医師のみならず、多職種が連携することで患者にとって最適な医療を行うことが望まれる。【参考】1)免疫チェックポイント阻害薬に関連した劇症 1 型糖尿病の発症について(PDFがダウンロードされます)

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第2回 東京医科歯科大学「がんを考える」市民公開講座/ブルーリボンキャラバン~もっと知ってほしい大腸がんのこと2016 in東京~【ご案内】

 東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍センター、同院腫瘍化学療法外科、同院大腸・肛門外科は、NPO法人キャンサーネットジャパンと共催で、2016年3月21日(月・祝)に、無料の市民公開講座を開催する。本講座は、がんに関するさまざまなテーマを取り上げる、東京医科歯科大学「がんを考える」市民公開講座の第2回で、毎年各地で行われている大腸がん疾患啓発活動「ブルーリボンキャラバン」との共同開催となる。総合司会は、フリーアナウンサーの中井 美穂氏。当日参加者にはもれなくオリジナルの「もっと知ってほしい大腸がんのこと」冊子をプレゼント。また、ブルーを身に着けて来場した方には粗品も用意されている。 開催概要は以下のとおり。【日時】2016年3月21日(月・祝)《セミナー》11:00~16:50《ブース展示》10:00~17:00【場所】東京医科歯科大学 M&Dタワー 2階 鈴木章夫記念講堂〒113-8519 東京都文京区湯島1-5-45【参加費】無料(※参加申し込みは不要です)【予定内容】《セミナー》総合司会:中井 美穂氏(フリーアナウンサー)11:00-11:10 開会挨拶 小西 敏郎氏(NPO法人キャンサーネットジャパン 理事)11:10-11:30 講演(1) 大腸がんってどんな病気?~特徴と治療の全体像~ 安野 正道氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 大腸・肛門外科)11:30-12:00 講演(2) 大腸がん/大腸ポリープの診断・検査の実際 石黒 めぐみ氏(東京医科歯科大学大学院 応用腫瘍学講座)12:00-13:00 休憩13:00-13:30 講演(3) 大腸がんの外科的治療(手術) 板橋 道朗氏(東京女子医科大学 第二外科)13:30-13:45 講演(4) 大腸がん手術後の生活 金光 幸秀氏(国立がん研究センター中央病院 大腸外科)13:45-14:00 体験談(1) 直腸がん術後、私の日常生活~トイレと上手に付き合いながら~ 高垣 諭氏14:00-14:25 Q&A(1) パネルディスカッション 大腸がんの手術と手術後の生活 パネリスト:安野 正道氏/板橋 道朗氏/金光 幸秀氏/高垣 諭氏14:25-14:35 休憩14:35-15:05 講演(5) 大腸がんの薬物療法(抗がん剤・分子標的薬) 山口 研成氏(がん研有明病院 消化管化学療法科 部長)15:05-15:35 講演(6) 大腸がんの薬物療法の実際~副作用とその対策~ 篠崎 英司氏(がん研有明病院 消化器センター消化器内科)15:35-15:45 情報提供(1) RAS遺伝子検査とは? 石川 敏昭氏(東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍化学療法外科)15:45-16:00 体験談(2) 大腸がんの化学療法~「心と体」副作用と上手に付き合う方法~ 野城 郁郎氏16:00-16:25 Q&A(2) パネルディスカッション 大腸がんの薬物療法と治療中の生活 パネリスト:山口 研成氏/篠崎 英司氏/石川 敏昭氏/野城 郁郎氏16:25-16:35 情報提供(2) 治療費の負担を軽くする制度 近藤 明美氏(近藤社会保険労務士事務所 特定社会保険労務士)16:35-16:45 情報提供(3) がん相談支援センター利用のすすめ 東京医科歯科大学医学部附属病院 がん相談支援センター16:45-16:50 閉会挨拶 杉原 健一氏(大腸癌研究会 会長/東京医科歯科大学 特任教授)《ブース展示》会場では大腸がんの検査・治療に使用する機器などのブース展示を開催します。展示スペースはどなたでもご自由にご観覧いただけますのでお気軽にお越しください。[出展協力]・株式会社メディコン・アミン株式会社・ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社・オリンパスメディカルサイエンス販売株式会社・公益社団法人日本オストミー協会・ブーケ(若い女性オストメイトの会)・NPO法人がんと暮らしを考える会・東京医科歯科大学 歯学部口腔保健学科・東京医科歯科大学医学部附属病院 臨床栄養部・メルクセローノ株式会社【問い合わせ先】ブルーリボンキャンペーン事務局 NPO法人キャンサーネットジャパン〒113-0034 東京都文京区湯島1-10-2 御茶ノ水K&Kビル 2階TEL:03-5840-6072(平日10時~17時)FAX:03-5840-6073【共催】東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍センター東京医科歯科大学医学部附属病院 腫瘍化学療法外科東京医科歯科大学医学部附属病院 大腸・肛門外科NPO法人キャンサーネットジャパン【後援】東京都/文京区/東京都医師会/東京医科歯科大学医師会/日本癌治療学会/大腸癌研究会/公益社団法人日本オストミー協会/NPO法人ブレイブサークル運営委員会/NPO法人西日本がん研究機構詳細はこちら。画像を拡大する

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悪性胸膜中皮腫へのシスプラチン+ペメトレキセド+ベバシズマブ療法(解説:小林 英夫 氏)-478

 悪性胸膜中皮腫は早期発見が困難で、診断時点では進行期である症例が大多数を占める。2003年のVogelzang 氏らの報告に基づいて、ペメトレキセドが世界初の悪性胸膜中皮腫治療薬として米国で承認され、わが国でも2007年に薬価収載された。現在、悪性胸膜中皮腫標準化学療法はペメトレキセド+シスプラチン併用と認識されている。しかし、その治療成績は必ずしも満足できるレベルには到達しておらず、胸膜肺全摘除術や片側全胸郭照射などを組み合わせたマルチモダリティー療法などが検討されている。 こうした中、中皮腫において血管内皮増殖因子(VEGF)シグナルが重大な役割を果たすことが示唆され、2010年以降いくつかの試験が実施された。そこで、VEGFをターゲットとする抗血管新生治療薬ベバシズマブの上乗せ効果について、Zalcman氏らによる本検討(第III相試験)が実施された。その結果、彼らは「循環器系の有害事象が増えるものの予想範囲内のものであり、ベバシズマブ上乗せは全生存期間(OS)を有意に改善する」とまとめている。Appendixを閲覧すると循環器系有害事象のほとんどは高血圧であった。 本研究デザインは、フランスの73病院において、18~75歳の切除不能悪性胸膜中皮腫、化学療法未治療、Eastern Cooperative Oncology Group PSスコア0~2、重大な心血管疾患の併存なし、CTで評価可能病変が少なくとも1つあり、余命12週超の症例が対象である。除外基準は、脳転移、抗血小板薬使用中、ビタミンK拮抗薬・ヘパリン・非ステロイド性抗炎症薬の投与中などであった。被験者は、ペメトレキセド+シスプラチン+ベバシズマブ投与のPCB群、またはベバシズマブの代わりにプラセボを投与するPC群に無作為に割り付け、3週間に1回を最大6サイクル、病勢進行または毒性効果が認められるまで投与した。主要アウトカムはOSである。 計448例が無作為化され、PCB群223例、PC群225例、男性75%、年齢中央値65.7歳、上皮型中皮腫81%であった。6サイクルを完遂したのは、PCB群74.9%、PC群76.0%。フォローアップ中央値は39.4ヵ月で両群に差はなかった。 主要アウトカムであるOS中央値は、PC群(16.1ヵ月、95%信頼区間[CI]:14.0~17.9)と比べPCB群(18.8ヵ月、15.9~22.6)で有意に延長した(ハザード比[HR]:0.77、95%CI:0.62~0.95、p=0.0167)。なお、PFS(無増悪生存)もPCB群で有意な改善が認められた(9.2ヵ月 vs.7.3ヵ月、HR:0.61、95%CI:0.50~0.71、p<0.0001)。 Grade3/4の有害事象は、PCB群158/222例(71%)、PC群139/224例(62%)であった。PC群と比べてPCB群では、Grade3以上の高血圧症(51/222例[23%] vs.0例)、血栓イベント(13/222例[6%]vs. 2/224例[1%])の頻度が高かった。 これまで進行性悪性中皮腫へのペメトレキセド+カルボプラチン療法効果は、OS中央値は約12ヵ月、無増悪生存(PFS)中央値は約6ヵ月、とされていた。抗血管新生治療の上乗せ効果は期待できそうだが、それでも5年生存率は20%弱であり、さらなる検討が望まれる。また、血清VEGF値により治療効果に差が生じる可能性も示唆されており、今後、中皮腫のバイオマーカーとして活用していくことも考慮される。 悪性胸膜中皮腫の臨床試験は、現在本邦で4試験が実施されている。免疫チェックポイント阻害薬トレメリムマブ、がん抑制遺伝子アデノウイルスベクター、シスプラチン+ペメトレキセド+Napabucasin、アネツマブ・ラブタンシン、の第I、II相試験であり、どのような結果が得られるのか注視していきたい。なお、胸膜腫瘍WHO分類は2015年に改訂され、Journal of thoracic oncology誌2016年2月号(オンライン版2015年12月22日号)1)で発表されている。

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