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BRAF変異肺がんダブラフェニブ・トラメチニブ併用がEUで承認

 ノバルティスは2017年4月13日、欧州委員会がBRAF V600陽性の進行・転移非小細胞肺がん(NSCLC)の治療に、トラメチニブ(商品名:メキニスト)とダブラフェニブ(商品名:タフィンラー)の併用を承認したと発表した。 今回のEUの承認は、ステージ4のBRAF V600E変異NSCLC患者(36例は未治療、57例は化学療法既治療)に対する、第II相3コホート多施設オープンラベル試験の結果に基づき、ダラブフェニブとトラメチニブの併用に対して、ヒト用医薬品委員会(CHMP)が2月にくだした肯定的意見に従う形となった。 当第II相試験では、前治療なしの36例のORRは61.1%(95%CI:43.5~76.9)であった。このコホートでは、68%の患者が9ヵ月後も無増悪であった。奏効期間(DoR)および無増悪生存期間(PFS)の中央値は未達。前治療ありの57例のORRは66.7%であった(95%CI:52.9~78.6)。このコホートでのDoR中央値は9.8ヵ月(95%CI:6.9~16.0)で、効果は持続的であった。前治療なしコホートの詳細な分析は、今後の医学会議で発表される予定。 一般的な有害事象(発生率>20%)は、発熱、悪心、嘔吐、末梢浮腫、下痢、皮膚乾燥、食欲減退、無力症、悪寒、咳、疲労、皮疹、呼吸困難であった。 BRAF V600陽性NSCLCは、世界中で毎年約3万6,000人(肺がん患者の約1〜3%)が診断されていると推定されている。従来は治療法がほとんどなかった患者集団である。

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短期の放射線療法+テモゾロミドは、高齢膠芽腫患者の生存を延長(解説:中川原 譲二 氏)-667

 高齢者の膠芽腫は予後不良である。70歳以下の患者では、標準放射線療法(60Gy/6週間)+テモゾロミドの追加により生存期間の延長が示されていた。一方、高齢患者にはより楽な短期の放射線療法が通常用いられているが、短期の放射線療法+テモゾロミド併用の有効性は不明であった。カナダ・オデットがんセンターのJames R Perry氏らは、65歳以上の初発膠芽腫患者を対象とした第III相無作為化試験によって、高齢の膠芽腫患者に対する短期の放射線療法+テモゾロミドは、放射線療法単独と比較して生存期間を延長させることを明らかにした(NEJM誌2017年3月16日号)。高齢膠芽腫患者で、短期の放射線療法単独とテモゾロミド併用を比較 研究グループは、新たに膠芽腫(WHO grade IV)と診断された65歳以上の高齢患者562例(年齢中央値73歳、範囲65~90歳)を、短期の放射線療法(40Gy/15分割/3週間)単独群と、放射線療法+テモゾロミド(75mg/m2/日を毎日、21日間)併用群に、281例ずつ無作為に割り付けた。主要評価項目は全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)で、有効性に関してはintention-to-treat解析を実施した。テモゾロミド併用により、全生存期間、無増悪生存期間のいずれも延長 その結果、テモゾロミド併用群のOS中央値は、放射線療法単独群に対し有意な延長が認められた(9.3ヵ月 vs.7.6ヵ月、死亡のハザード比[HR]:0.67、95%信頼区間[CI]:0.56~0.80、p<0.001)。同様に併用群のPFS中央値も有意に延長した(5.3ヵ月 vs.3.9ヵ月、増悪または死亡のHR:0.50、95%CI:0.41~0.60、p<0.001)。一方、O6-メチルグアニン-DNA メチルトランスフェラーゼ(MGMT)のメチル化がみられる症例165例では、OS中央値は、テモゾロミド併用群13.5ヵ月、放射線療法単独群7.7ヵ月(死亡のHR:0.53、95%CI:0.38~0.73、p<0.001)で、非メチル化症例189例では、それぞれ10.0ヵ月と7.9ヵ月(死亡のHR:0.75、95%CI:0.56~1.01、p=0.055、交互作用のp=0.08)であった。生活の質(QOL)は両群で同様であった。 比較的若年の膠芽腫患者に対する放射線療法(60Gy/6週間)+テモゾロミド併用は、標準的治療として受け入れられているが、予後が不良な高齢の膠芽腫患者では、本邦においてもこれまで有効性の確認がないままに、患者負担の軽減の観点から短期の放射線療法が選択されてきた。本研究によって、高齢の膠芽腫患者に対する短期の放射線療法+テモゾロミド併用が有効であること、MGMTのメチル化がみられる症例でその有効性が高いことなどが明らかになり、今後は、わが国においても膠芽腫に対する放射線化学療法の治療プロトコールの精緻化が課題になるものと考えられる。

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自己免疫性溶血性貧血〔AIHA: autoimmune hemolytic anemia〕

1 疾患概要■ 概念・定義自己免疫性溶血性貧血(autoimmune hemolytic anemia:AIHA)は、赤血球膜上の抗原と反応する自己抗体が産生され、抗原抗体反応の結果、赤血球が傷害を受け、赤血球の寿命が著しく短縮(溶血)し、貧血を来す。AIHAは、自己抗体の性状によって温式抗体によるものと、冷式抗体によるものに2大別される。温式抗体(warm-type autoantibody)による病型を単に自己免疫性溶血性貧血(AIHA)と呼ぶことが多い。冷式抗体(cold-type autoantibody)による病型には、寒冷凝集素症(cold agglutinin disease:CAD)と発作性寒冷ヘモグロビン尿症(paroxysmal cold hemoglobinuria:PCH)とがある。温式抗体は体温付近で最大活性を示し、原則としてIgG抗体である。一方、冷式抗体は体温以下の低温で反応し、通常4℃で最大活性を示す。IgM寒冷凝集素とIgG二相性溶血素(Donath-Landsteiner抗体)が代表的である。時に温式抗体と冷式抗体の両者が検出されることがあり、混合型(mixed type)と呼ばれる。■ 疫学AIHAの推定患者数は100万人対3~10人、年間発症率は100万人対1~5人で、病型別比率は、温式AIHA90.4%、CAD7.7% 、PCH1.9%とされている。温式AIHAの特発性/続発性は、ほぼ同数に近いと考えられる。特発性温式AIHAは、小児期のピークを除いて二峰性に分布し、若年層(10~30歳で女性が優位)と老年層(50歳以後に増加し70代がピークで性差はない)に多くみられる。全体での男女比は1~2:3で女性にやや多い。CADのうち慢性特発性は40歳以後にほぼ限られ男性に目立つが、続発性は小児ないし若年成人に多い。PCHは、現在そのほとんどは小児期に限ってみられる。■ 病因自己抗体の出現機序として次のように整理されている。1)免疫応答機構は正常だが患者赤血球の抗原が変化して、異物ないし非自己と認識される。2)赤血球抗原に変化はないが、侵入微生物に対して産生された抗体が正常赤血球抗原と交差反応する。3)赤血球抗原に変化はないが、免疫系に内在する異常のために免疫的寛容が破綻する。4)すでに自己抗体産生を決定付けられている細胞が、単または多クローン性に増殖または活性化され、自己抗体が産生される。■ 症状1)温式AIHA臨床像は多様性に富み、発症の仕方も急激から潜行性まで幅広い。とくに急激発症では発熱、全身衰弱、心不全、呼吸困難、意識障害を伴うことがあり、ヘモグロビン尿や乏尿も受診理由となる。急激発症は小児や若年者に多く、高齢者では潜行性が多くなるが例外も多い。受診時の貧血は高度が多く、症状の強さには貧血の進行速度、心肺機能、基礎疾患などが関連する。黄疸もほぼ必発だが、肉眼的には比較的目立たない。特発性でのリンパ節腫大はまれである。脾腫の触知率は32~48%で、サイズも1~2横指程度が多い。温式AIHAの5~10%程度に直接クームス試験が陰性のものがあり、クームス陰性AIHAと呼ばれる。クームス試験が陽性にならない程度のIgG自己抗体が赤血球に結合しており、診断には赤血球結合IgG定量が有用である。クームス陽性AIHAと同様にステロイド反応性は良好である。特発性血小板減少性紫斑病(ITP)を合併する場合をエヴァンス症候群と呼び、特発性AIHAの10~20%程度を占める。2)寒冷凝集素症(CAD)臨床症状は溶血と末梢循環障害によるものからなる。感染に続発するCAD は、比較的急激に発症し、ヘモグロビン尿を伴い貧血も高度となることが多い。マイコプラズマ感染では、発症から2~3週後の肺炎の回復期に溶血症状を来す。血中には抗マイコプラズマ抗体が出現し、寒冷凝集素価が上昇する時期に一致する。溶血は2~3週で自己限定的に消退する。EBウイルス感染に伴う場合は症状の出現から1~3週後にみられ、溶血の持続は1ヵ月以内である。特発性慢性CADの発症は潜行性が多く慢性溶血が持続するが、寒冷曝露による溶血発作を認めることもある。循環障害の症状として、四肢末端・鼻尖・耳介のチアノーゼ、感覚異常、レイノー現象などがみられる。これは皮膚微小血管内でのスラッジングによる。クリオグロブリンによることもある。皮膚の網状皮斑を認めるが、下腿潰瘍はまれである。脾腫はあっても軽度である。3)発作性寒冷ヘモグロビン尿症(PCH)現在ではわずかに小児の感染後性と成人の特発性病型が残っている。以前よくみられた梅毒性の定型例では、寒冷曝露が溶血発作の誘因となり、発作性反復性の血管内溶血とヘモグロビン尿を来す。寒冷曝露から数分~数時間後に、背部痛、四肢痛、腹痛、頭痛、嘔吐、下痢、倦怠感に次いで、悪寒と発熱をみる。はじめの尿は赤色ないしポートワイン色調を示し、数時間続く。遅れて黄疸が出現する。肝脾腫はあっても軽度である。このような定型的臨床像は非梅毒性では少ない。急性ウイルス感染後の小児PCHは5歳以下に多く、男児に優位で、季節性、集簇性を認めることがある。発症が急激で溶血は激しく、腹痛、四肢痛、悪寒戦慄、ショック状態や心不全を来したり、ヘモグロビン尿に伴って急性腎不全を来すこともある。発作性・反復性がなく、寒冷曝露との関連も希薄で、ヘモグロビン尿も必発とはいえない。成人の慢性特発性病型はきわめてまれである。気温の変動とともに消長する血管内溶血が長期間にわたってみられる。■ 分類AIHAは臨床的な観点から、有意な基礎疾患ないし随伴疾患があるか否かによって、続発性(2次性)と特発性(1次性、原発性)に、また臨床経過によって急性と慢性とに区分される。基礎疾患としては全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ(RA)などの自己免疫疾患とリンパ免疫系疾患が代表的である。マイコプラズマや特定のウイルス感染の場合、卵巣腫瘍や一部の潰瘍性大腸炎に続発する場合などでは、基礎疾患の治癒や病変の切除とともにAIHAも消退し、臨床的な因果関係が認められる。 ■ 予後温式AIHAで基礎疾患のない特発例では、治療により1.5年までに40%の症例でクームス試験の陰性化がみられる。特発性AIHAの生命予後は5年で約80%、10年で約70%の生存率であるが、高齢者では予後不良である。続発性の予後は基礎疾患によって異なり、リンパ系疾患に比べてSLEなどの自己免疫性疾患に続発する場合のほうが良好である。CADは感染後2~3週の経過で消退し、再燃しない。リンパ増殖性疾患に続発するものは基礎疾患によって予後は異なるが、この場合でも溶血が管理の中心となることは少ない。小児の感染後性のPCH は発症から数日ないし数週で消退する。強い溶血による障害や腎不全を克服すれば一般に予後は良好であり、慢性化や再燃をみることはない。梅毒に伴う場合の多くは、駆梅療法によって溶血の軽減や消退をみる。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)(図1 AIHAの診断フローチャート)最初に溶血性貧血としての一般的基準を満たすことを確認し、次いで疾患特異的な検査によって病型を確定する。溶血性貧血の診断基準と自己免疫性溶血性貧血の診断基準を表1と表2に示す。画像を拡大する血液検査や臨床症状から溶血性貧血を疑った場合は、直接クームス試験を行い、陽性の場合は特異的クームス試験で赤血球上のIgG と補体成分を確認する。補体のみ陽性の場合は、寒冷凝集素症(CAD)や発作性寒冷ヘモグロビン尿症(PCH)の鑑別のため、寒冷凝集素価測定とDonath-Landsteiner(DL)試験を行う。寒冷凝集素は、凝集価が1,000 倍以上、または1,000 倍未満でも30℃以上で凝集活性がある場合には病的意義があるとされる。スクリーニング検査として、患者血清(37~40℃下で分離)と生食に懸濁したO型赤血球を混和し、室温(20℃)に30~60分程度放置後、凝集を観察する。凝集が認められない場合は病的意義のない寒冷凝集素と考えられる。凝集がみられた場合には、さらに温度作動域の検討を行う。凝集素価が低値でもアルブミン法などで30℃以上での凝集が認められる場合は低力価寒冷凝集素症とする。DL 抗体の検出は、現在外注で依頼できる検査機関がないことから、自前の検査室で行う必要がある。直接クームス試験が陰性であったり、特異的クームス試験で補体のみ陽性の場合でも、症状などから温式AIHA が疑われる場合やほかの溶血性貧血が否定された場合は、赤血球結合IgG 定量を行うとクームス陰性AIHA と診断できることがある。温式AIHAと寒冷凝集素症が合併している場合は、混合型AIHA の診断となる。表1 溶血性貧血の診断基準(厚生労働省 特発性造血障害に関する調査研究班[平成16年度改訂])1)1)臨床所見として、通常、貧血と黄疸を認め、しばしば脾腫を触知する。ヘモグロビン尿や胆石を伴うことがある。2)以下の検査所見がみられる。(1)へモグロビン濃度低下(2)網赤血球増加(3)血清間接ビリルビン値上昇(4)尿中・便中ウロビリン体増加(5)血清ハプトグロビン値低下(6)骨髄赤芽球増加3)貧血と黄疸を伴うが、溶血を主因としない他の疾患(巨赤芽球性貧血、骨髄異形成症候群、赤白血病、congenital dyserythropoietic anemia、肝胆道疾患、体質性黄疸など)を除外する。4)1)、2)によって溶血性貧血を疑い、3)によって他疾患を除外し、診断の確実性を増す。しかし、溶血性貧血の診断だけでは不十分であり、特異性の高い検査によって病型を確定する。表2 自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の診断基準(厚生労働省 特発性造血障害に関する調査研究班[平成16年度改訂])1)1)溶血性貧血の診断基準を満たす。2)広スペクトル抗血清による直接クームス試験が陽性である。3)同種免疫性溶血性貧血(不適合輸血、新生児溶血性疾患)および薬剤起因性免疫性溶血性貧血を除外する。4)1)~3)によって診断するが、さらに抗赤血球自己抗体の反応至適温度によって、温式(37℃)の(1)と、冷式(4℃)の(2)および(3)に区分する。(1)温式自己免疫性溶血性貧血臨床像は症例差が大きい。特異抗血清による直接クームス試験でIgGのみ、またはIgGと補体成分が検出されるのが原則であるが、抗補体または広スペクトル抗血清でのみ陽性のこともある。診断は(2)、(3)の除外によってもよい。(2)寒冷凝集素症(CAD)血清中に寒冷凝集素価の上昇があり、寒冷曝露による溶血の悪化や慢性溶血がみられる。直接クームス試験では補体成分が検出される。(3)発作性寒冷ヘモグロビン尿症(PCH)ヘモグロビン尿を特徴とし、血清中に二相性溶血素(Donath-Landsteiner抗体)が検出される。5)以下によって経過分類と病因分類を行う。急性推定発病または診断から6ヵ月までに治癒する。慢性推定発病または診断から6ヵ月以上遷延する。特発性基礎疾患を認めない。続発性先行または随伴する基礎疾患を認める。6)参考(1)診断には赤血球の形態所見(球状赤血球、赤血球凝集など)も参考になる。(2)温式AIHAでは、常用法による直接クームス試験が陰性のことがある(クームス陰性AIHA)。この場合、患者赤血球結合IgGの定量が有用である。(3)特発性温式AIHAに特発性血小板減少性紫斑病(ITP)が合併することがある(エヴァンス症候群)。また、寒冷凝集素価の上昇を伴う混合型もみられる。(4)寒冷凝集素症での溶血は寒冷凝集素価と平行するとは限らず、低力価でも溶血症状を示すことがある(低力価寒冷凝集素症)。(5)自己抗体の性状の判定には抗体遊出法などを行う。(6)基礎疾患には自己免疫疾患、リウマチ性疾患、リンパ増殖性疾患、免疫不全症、腫瘍、感染症(マイコプラズマ、ウイルス)などが含まれる。特発性で経過中にこれらの疾患が顕性化することがある。(7)薬剤起因性免疫性溶血性貧血でも広スペクトル抗血清による直接クームス試験が陽性となるので留意する。診断には臨床経過、薬剤中止の影響、薬剤特異性抗体の検出などが参考になる。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 温式AIHAの治療(図2 特発性温式AIHAの治療フローチャート)画像を拡大する特発性の温式AIHAの治療では、副腎皮質ステロイド薬、摘脾術、免疫抑制薬が三本柱であり、そのうち副腎皮質ステロイド薬が第1選択である。特発性の80~90%はステロイド薬単独で管理が可能と考えられる。1)急性期:初期治療(寛解導入療法)ステロイド薬使用に対する重大な禁忌条件がなければ、プレドニゾロン換算で1.0mg/kgの大量(標準量)を連日経口投与する。高齢者や随伴疾患があるときは、減量投与が勧められる。約40%は4週までに血液学的寛解状態に達する。AIHAでは輸血はけっして安易に行わず、できる限り避けるべきとするのが一般的であるが、薬物治療が効果を発揮するまでの救命的な輸血は、機を失することなく行う必要がある。その場合、生命維持に必要なヘモグロビン濃度の維持を目標に行う。安全な輸血のため、輸血用血液の選択についてあらかじめ輸血部門と緊密な連携を取ることが勧められる。2)慢性期:ステロイド減量期ステロイド薬の減量は、状況が許すならば急がず、慎重なほうがよく、はじめの1ヵ月で初期量の約半量(中等量0.5mg/kg/日)とし、その後は溶血の安定度を確認しながら2週に5mgくらいのペースで減量し、10~15mg/日の初期維持量に入る。減量期に約5%で悪化をみるが、その際はいったん中等量(0.5mg/kg/日)まで増量する。3)寛解期:維持療法・治療中止時期ステロイド薬を初期維持量まで減量したら、網赤血球とクームス試験の推移をみて、ゆっくりとさらに減量を試み、平均5mg/日など最少維持量とする。直接クームス試験が陰性化し、数ヵ月以上経過しても再陽性化や溶血の再燃がみられず安定しているなら、維持療法をいったん中止して追跡することも可能となる。4)増悪期:再燃時、ステロイド不応例維持療法中に増悪傾向が明らかならば、早めに中等量まで増量し、寛解を得た後、再度減量する。ステロイド薬の維持量が15mg/日以上の場合、また副作用・合併症の出現があったり、悪化を繰り返すときは、2次・3次選択である摘脾や免疫抑制薬、抗体製剤の採用を積極的に考える。ステロイドによる初期治療に不応な場合は、まず悪性腫瘍などからの続発性AIHAの可能性を検索する。基礎疾患が認められない場合は、特発性温式AIHAとして複数の治療法が考慮されるが、優先順位や適応条件についての明確な基準はなく、患者の個別の状況により選択され、いずれの治療法もAIHAへの保険適用はない。唯一、摘脾とリツキシマブについては短期の有効性が実証されており、摘脾が標準的な2次治療として推奨されている。(1)摘脾脾臓は感作赤血球を処理する主要な臓器であり、自己抗体産生臓器でもある。わが国では特発性AIHAの約15%(欧米では25~57%)で摘脾が行われており、短期の有効性は約60%と高い。ステロイド投与が不要となる症例や20%程度に治癒症例もみられることから、ステロイド不応性AIHAの2次治療として推奨されている。(2)リツキシマブステロイド不応性温式AIHAに対する新たな治療法として注目されている。短期の有効性について多くの報告はあるが、まだ保険適用ではない。標準的治療としては375mg/m2を1週間おきに4回投与する。80%の有効率が報告されている。安全性に関しても大きな問題はない。短期間のステロイド投与を併用した低用量のリツキシマブ(100mg、4週ごと投与)も試みられている。(3)免疫抑制薬ステロイドに次ぐ薬物療法の2次選択として、シクロホスファミドやアザチオプリンなどが用いられる。主な作用は抗体産生抑制で、有効率は35~40%で、ステロイド薬の減量効果が主である。免疫抑制、催奇形性、発がん性、不妊症など副作用に注意が必要であり、有効であったとしても数ヵ月以上の長期投与は避ける。■ 冷式AIHAの治療保温が最も基本的である。室温、着衣、寝具などに十分な注意を払い、身体部分の露出や冷却を避ける。輸血や輸液の際の温度管理も問題となる。CADに対する副腎皮質ステロイド薬の有効性は温式AIHAに比しはるかに劣るが、激しい溶血の時期には短期間用いて有効とされることが多い。貧血が高度であれば、赤血球輸血も止むを得ないが、補体(C3d)を結合した患者赤血球が溶血に抵抗性となっているのに対し、輸注する赤血球はむしろ溶血しやすい点に留意する。摘脾は通常適応とはならない。リンパ腫に伴うときは、原疾患の化学療法が有効である。マイコプラズマ肺炎に伴うCADでは適切な抗菌薬を投与するが、溶血そのものに対する効果とは別であり、経過が自己限定的なので、保存療法によって自然経過を待つのが原則である。特発性慢性CADの治療として、リツキシマブ単独療法やリツキシマブ+フルダラビン併用療法が報告されている。■ PCHの治療小児で急性発症するPCHは、寒冷曝露との関連が明らかではないが、保温の必要性は同様である。急性溶血期を十分な支持療法で切り抜ける。溶血の抑制に副腎皮質ステロイド薬が用いられ、有効性は高い。小児PCHでは、摘脾を積極的に考慮する状況は少ない。貧血の進行が急速なら赤血球輸血も必要となるが、DL抗体はP特異性を示すことが多く、供血者赤血球は大多数がP陽性なので、溶血の悪化を招く恐れもある。急性腎不全では血液透析も必要となる。4 今後の展望AIHAの治療では、リツキシマブが登場したことで、ステロイド不応例などでの治療選択の幅が広がった。今後、自己抗原反応性T細胞などを対象にした疾患特異的な治療法の開発が期待される。5 主たる診療科血液内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報特発性造血障害に関する調査研究班(医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター 自己免疫性溶血性貧血(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)改訂版作成のためのワーキンググループ(厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業特発性造血障害に関する調査研究). 自己免疫性溶血性貧血 診療の参照ガイド(平成26年度改訂版). 特発性造血障害に関する調査研究班.(参照2015.4.17)2)改訂版作成のためのワーキンググループ(厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業特発性造血障害に関する調査研究). 自己免疫性溶血性貧血 診療の参照ガイド(平成28年度改訂版). 特発性造血障害に関する調査研究班. (参照2017)公開履歴初回2015年05月26日更新2017年04月04日

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VEGF阻害剤アフリベルセプト ベータ、大腸がんに承認:サノフィ

 サノフィ株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:ジャック・ナトン)は、2017年3月30日、抗悪性腫瘍剤/VEGF(血管内皮増殖因子)阻害剤アフリベルセプト ベータ(商品名:ザルトラップ点滴静注 100mg/200mg、以下ザルトラップ )について、「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌」の効能・効果で厚生労働省より製造販売承認を取得したと発表。 アフリベルセプト ベータは、がんの増殖や転移に関与するVEGF-A、VEGF-Bおよび胎盤増殖因子(PlGF)に作用する分子標的治療薬。オキサリプラチンを含む化学療法で治療中または治療後に増悪した転移性結腸・直腸がんの2 次治療として、FOLFIRI療法(イリノテカン、レボホリナートおよびフルオロウラシル)との併用でプラセボと比較した海外III相臨床試験(VELOUR試験)では、主要評価項目である全生存期間(OS)を13.50ヵ月と、プラセボ群の12.06ヵ月に対し、有意に改善した(HR:0.817、95.34%CI:0.713~0.937、p=0.0032)。また、副次的評価項目の無増悪生存期間(PFS)も有意に改善している( HR:0.758、 95%CI:0.661〜0.869、p<0.0001)。  ザルトラップは2017年3月現在、70以上の国と地域で承認されており、日本では、2016年4月にサノフィが製造販売承認申請を行っていた。なお、日本での製造販売はサノフィが行い、プロモーションはサノフィとヤクルト本社が共同で行う。(ケアネット 細田 雅之)参考VELOUR試験(Clinical Trials.gov)

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ニボルマブ、再発・転移頭頸部がんに承認

 小野薬品工業株式会社とブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社は2017年3月24日、抗PD-1抗体ニボルマブ(商品名:オプジーボ)が「再発又は遠隔転移を有する頭頸部癌」に対する国内製造承認事項一部変更の承認を得たと発表。 頭頸部がんの国内における年間患者数(甲状腺がんを除く)は2万4,000人と推定されている。再発または遠隔転移を有する頭頸部がんに対しては、プラチナ製剤による化学療法が第1選択として推奨されているものの、大多数の患者で局所に病勢進行が、50%以上の患者で3年以内の再発が認められている。プラチナ製剤投与後、早期に再発または遠隔転移が認められた患者に対しては、既存治療のなかで全生存期間(OS)の延長が検証されている薬剤はなく、新たな治療選択肢が期待されている。 日本人を含む再発または転移性頭頸部がん患者を対象とした国際共同試験(ONO-4538-11/CA209141)において、対照群のOSが5.06ヵ月であったのに対し、ニボルマブは7.49ヵ月(95%CI:5.49~9.10)であり、ニボルマブが有意にOSを延長した(HR:0.70、97.73%CI:0.51~0.96、p=0.0101)。また、当試験におけるニボルマブの安全性プロファイルは、これまでの臨床試験の結果と一貫していた。(ケアネット 細田 雅之)参考小野薬品工業株式会社プレスリリースブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社ニュースリリースONO-4538-11/CA209141(CHECKMATE-141)試験(Clinical Trials.gov)

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オラパリブ、BRCA変異陽性卵巣がんの病勢進行リスクを70%低減:アストラゼネカ

 アストラゼネカ (本社:英国ロンドン、最高経営責任者[CEO]:パスカル・ソリオ)は2017年3月14日、生殖細胞系列BRCA (以下、gBRCA)変異陽性プラチナ感受性再発卵巣がん患者を対象に、オラパリブの維持療法をプラセボと比較した第III相臨床試験SOLO-2において、無増悪生存期間(PFS)の延長が示されたとの結果を発表した。 SOLO-2試験は、gBRCA遺伝子変異陽性プラチナ製剤感受性再発卵巣がん患者を対象とした、オラパリブの単剤維持療法としての有効性をプラセボと比較評価する多施設共同無作為化二重盲検第III相試験。患者はgBRCA1またはgBRCA2変異陽性の卵巣がんで、最低2レジメンのプラチナ製剤ベースの化学療法による前治療を受け、完全または部分奏効を示している。295例の患者をオラパリブ(300mg×2/日)投与群とプラセボ投与群に無作為に割り付けた。 試験結果は米国の婦人科腫瘍学会年次集会において発表された。治験医師評価によるPFSは、オラパリブ群19.1ヵ月、プラセボ群5.5ヵ月で、オラパリブ群で有意な延長を示した(HR:0.30、95%CI:0.22~0.41、p<0.0001)。盲検下独立中央判定(BICR)評価によるPFSは、オラパリブ群30.2ヵ月、プラセボ群5.5ヵ月で、オラパリブ群で 24.7ヵ月の延長がみられた(HR:0.25、95% CI:0.18~0.35、p<0.0001)。さらに副次的評価項目である2次進行または死亡までの生存期間(PFS2)においても、オラパリブ群未到達に対し、プラセボ群18.4ヵ月と、オラパリブ群で有意な改善がみられた(HR:0.50、95%CI:0.34~0.72、p=0.0002)。 本試験のオラパリブの安全性プロフィルは、従来の欧米での結果と一貫しており、Grade3以上の有害事象はオラパリブ群の36.9%、プラセボ群の18.2%に報告された。発生頻度20%以上のオラパリブの非血液学的有害事象は、悪心75.9%(Grade3以上2.6%)、疲労・無力症65.6%(Grade3以上4.1%)、嘔吐37.4%(Grade3以上2.6%)であった。主な血液学的有害事象は貧血43.6%(Grade3以上19.5%)、好中球減少症19.5%(Grade3以上 5.1%)、血小板減少症13.8%(Grade3以上1.0%)であった。アストラゼネカ株式会社のプレスリリースはこちら

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ペムブロリズマブ 肺がん1次治療の新戦略

 2017年3月13日、MSD株式会社は、抗PD-1抗体「キイトルーダ点滴静注20mg」および「キイトルーダ点滴静注100mg」(一般名:ペムブロリズマブ)の発売に伴うプレスセミナーを開催した。その中で、京都府立医科大学大学院医学研究科 呼吸器内科学 教授の高山 浩一氏による、「肺がん治療における免疫療法の展望~免疫チェックポイント阻害剤の登場で変わる治療戦略~」と題した講演が行われた。その内容をレポートする。 ペムブロリズマブは、根治切除不能な悪性黒色腫およびPD-L1陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんに対する適応を取得した免疫チェックポイント阻害剤であり、非小細胞肺がん患者には化学療法未治療・既治療ともに使用可能である。その際、1次治療ではPD-L1高発現(TPS[tumor proportion score]≧50%)でEGFR遺伝子変異またはALK融合遺伝子変異が陰性の患者、2次治療以降ではPD-L1発現(TPS≧1%)の患者が投与対象となる。 1次治療の投与対象は、PD-L1陽性の切除不能な進行・再発の未治療非小細胞肺がん患者を対象とした国際共同第III相試験(KEYNOTE-024試験)の結果に基づくものである。本試験において、ペムブロリズマブ投与群(154例)は化学療法群(151例)に比較して無増悪生存期間(PFS[ハザード比:0.50、95%CI:0.37~0.68])および全生存期間(OS[ハザード比:0.60、95%CI:0.41~0.89])の著明な改善を示した。この結果について、高山氏は「ペムブロリズマブを先に用いることで、PFSだけでなくOSの改善がみられたことが極めて大きなインパクトである」と述べた。 副作用については、現在使用可能な免疫チェックポイント阻害剤と同様のプロファイルを持ち、化学療法に比較して重度の副作用は少ないものの、免疫関連の副作用を中心として全身に起こる可能性がある。さらに、化学療法と比べて副作用の発現時期が予測できないことも特徴であり、引き続き患者教育や院内での連携が重要であるという。 ペムブロリズマブの各臨床試験において、PD-L1高発現の患者割合は一貫して2~3割であり、この患者群がペムブロリズマブ1次治療の対象となる。非小細胞肺がんの1次治療で用いることのできる唯一の抗PD-1抗体として、今後の活用が期待される。

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二重HER2阻害療法によるネオアジュバント、HER2-enrichedがpCR予測因子

 乳がんは4つの固有分子サブタイプに分類され(luminal A、luminal B、HER2-enriched、basal-like)、HER2-enriched タイプは最も高いEGFR-HER2経路の活性を持つ。スペイン・Arnau de Vilanova大学病院のAntonio Llombart- Cussac氏らによる、HER2陽性早期乳がん患者を対象とした多施設臨床試験の結果、HER2-enrichedが二重HER2阻害療法(化学療法の併用なし)の効果予測因子となる可能性が明らかになった。Lancet Oncology誌オンライン版2017年2月23日号掲載の報告。 著者らは、オープンラベル、単一群、多施設の第II相試験を、スペインの19病院で行った(PAMELA試験)。試験対象はホルモン受容体の陽性、陰性を含めた前治療歴のないステージI~IIIAのHER2陽性(女性)患者、年齢は18歳以上であった。 対象者にはラパチニブ(1,000mg/日)とトラスツズマブ(初期投与8mg/kg、以降3週間ごとに6mg/kg)を18週間術前投与し、ホルモン受容体陽性患者には、さらにレトロゾール(2.5mg/日;閉経後患者)あるいはタモキシフェン(20mg/日;閉経前患者)を投与。試験最終投与の1〜3週間後に外科手術を行った。腫瘍生検検体の固有分子サブタイプはベースライン時(第0日)と第14日にPAM50により分類された。 主要評価項目は手術時の病理学的完全奏効(pCR)の予測因子としてのHER2-enrichedタイプの有用性である(手術時のpCR率)。 主な結果は以下のとおり。・2013年10月28日~2015年11月26日の間に、151例が組み入れられ、うち14例(9%)は治療を中止し、137例(91%)が計画通り治療を完了した。・ベースライン時、最も多かったのはHER2-enrichedの患者で101例(67%)、続いてluminal A 22 例(15%)、luminal B 16例(11%)、basal-like 9例(6%)、normal-like 3例(2%)の順であった。・手術時(乳房での)pCRが得られたのは、151例中46例(30%、95%CI:23~39)であった。・pCRが得られたのは、HER2-enrichedタイプでは101例中41例(41%、95%CI:31~51)、HER2-enriched以外のサブタイプでは50例中5例(10%、95%CI:4~23)であった(オッズ比6.2、95%CI:2.3~16.8、p=0.0004)。【訂正のお知らせ】本文内に誤りがあったため、一部訂正いたしました(2017年3月24日)。(ケアネット 遊佐 なつみ)

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HER2陽性早期乳がんに対するトラスツズマブ投与は1年間が依然として標準である(解説:下井 辰徳 氏)-655

 トラスツズマブは、増殖因子であるHER2をターゲットとしたモノクローナル抗体薬である。早期乳がん患者全体の15~20%を占めるとされるHER2陽性乳がん患者に対しては、周術期治療にトラスツズマブを追加することで無病生存期間(DFS)、全生存期間(OS)ともに改善できることが、いくつものランダム化比較試験の結果で示されている。術後トラスツズマブの追加に関しては、その投与期間や投与スケジュールは試験により異なるものの、コクランにおけるメタアナリシスでは、DFS(HR:0.60、95%CI:0.50~0.71)、OS(HR:0.66、95%CI:0.57~0.77)ともに改善することが示されている1)。このように、現在の乳がん診療においてトラスツズマブは欠くことができない治療薬の1つとなっている。 術後トラスツズマブ追加について検証した試験の多くは、トラスツズマブの投与期間は1年とされていたが、むしろ至適投与期間について検討した試験は多くはない。とくに1年以上(2年間)と1年間投与とを直接比較した試験としては、本論文で報告されているHERA試験が唯一である。HERA試験はもともと、HER2陽性の早期乳がん患者で、術前または術後化学療法や必要に応じた放射線治療を終了した患者を対象として、トラスツズマブ1年間投与の経過観察に対する、トラスツズマブ2年間投与の経過観察に対する優越性をそれぞれ比較したオープンラベルの試験である。さらに、追加の解析として、ランダム化から12ヵ月時点に無再発で生存してトラスツズマブを投与されていた3,105例を対象に、以後2年投与群と1年投与群に分け、トラスツズマブ2年間投与の1年間投与に対する、無病生存期間の優越性も比較された。これまでに1年、2年、4年、8年フォローアップの報告がなされてきたが、今回がもともと予定されていた、フォローアップ中央値11年に基づく最終報告であった。 HERA試験は、2001年から2005年までの間に、5,102例(経過観察群1,698例、トラスツズマブ1年投与群1,703例、2年投与群1,701例)の患者が登録、割り付けされた。今回の最終解析の結果、DFSに関して、1年投与群、2年投与群ともに、経過観察群に比較してそれぞれ(HR:0.77、95%CI:0.69~0.87)、(HR:0.76、95%CI:0.68~0.86)と、有意に良好な結果であった。10年目時点でのDFSはトラスツズマブ投与群1年間も2年間投与もいずれも69%であり、経過観察群63%であった。同様に、OSに関しては、1年投与群、2年投与群ともに、経過観察群に比較してそれぞれ(HR:0.72、95%CI:0.62~0.83)、(HR:0.74、95%CI:0.64~0.86)と、こちらも有意に良好な結果であった。12年目時点でのOSはトラスツズマブ1年投与群79%、2年投与群80%であり、経過観察群73%であった。 過去の報告では、1年目と4年目の解析では、1年間トラスツズマブ投与の経過観察群に対するOSの優越性が示されていない結果が認められたが、今回の最終解析では、トラスツズマブ投与によるOSの優越性が示されている。ただし、死亡リスク減少の絶対リスク減は27%から21%の6%と限定的であるが、Table2をみると、トラスツズマブ追加による再発割合の低下は、主に遠隔転移再発の抑制によってなされており、これがOS改善につながっていることが推測される。また、10年間の再発はトラスツズマブ投与症例でも3割程度と、再発割合が高い。この理由として、本試験の対象患者がリンパ節転移を有する症例が7割弱と、大部分は再発リスクが高い患者を対象としており、35~59歳が8割弱を占めるなど、若年患者が対象である。 それに対して、周術期化学療法としてアンスラサイクリン系抗がん剤を受けている患者は97%に上るものの、アンスラサイクリン系とタキサン系薬剤が使用されている患者は、そのうち26%に限られているなど、現在の治療方針と若干異なる点が存在する。これが、再発割合の高さに影響していることは否めない。さらに、現在はトラスツズマブの投与に関しては、化学療法、とくにタキサンと同時投与を開始することが多い。過去のHERA試験の結果を含めた前出のコクランのメタアナリシスでも1)、トラスツズマブの追加に関しては逐次投与よりも同時投与のほうでOSの利益がより明確に示されており、同時投与が標準的な現在の診療においては、本試験結果より良い成績が期待される。 ホルモン受容体別の解析においては、Figure2で、ホルモン受容体陰性症例のほうが再発しやすく、早期に再発が多いことも示された。さらに、Figure3では、ホルモン受容体の有無によるトラスツズマブの効果は差がなく、いずれにせよ上乗せ効果は認められた。Table2では、ホルモン受容体の状況別に転移部位は示されているが、遠隔再発病変としてホルモン受容体陽性症例では骨転移が多く、陰性症例では内臓転移がより多い結果となっていた。 トラスツズマブ2年間投与の1年間投与に対するDFSとOSの解析については、ランドマーク解析が行われた。この結果、トラスツズマブ2年投与群の1年投与群に対するDFS(HR:1.02、95%CI:0.89~1.17)およびOS(HR:1.01、95%CI:0.84~1.21)の優越性はいずれも示されなかった。 この解析自体は、試験の主要評価項目や副次評価項目などとは別に予定されており、検定の多重性の問題がどのように解消されているかについては、プロトコルにも記載はされていなかった。統計学的には解析の妥当性が保証されているとして、この結果はこれまでに報告されてきたHERA試験の結果2) と変わりはなかった。さらに、PHARE試験やHORG試験の結果3)4)5)を踏まえ、6ヵ月のトラスツズマブの投与期間が1年間投与に対する非劣性を示すことができておらず、現状では術後トラスツズマブ投与期間は1年間が標準である。トラスツズマブの1年以上の継続に関しては今回の試験では否定的であったが、成績向上のための試みとして、近年、新規薬剤の追加が検証されている。APHYNITY試験ではトラスツズマブ術後併用療法に対するペルツズマブの上乗せが6)、また、ExteNET試験7) では、トラスツズマブ併用療法後のNeratinibの1年間の維持療法により浸潤性乳がんの無再発生存を改善させることが示されている。今後のHER2陽性乳がんの治療開発としては、トラスツズマブの投与期間延長よりは、新規薬剤の追加やHER2発現以外の、より有効なバイオマーカーに基づく治療開発など、precision medicineの推進が期待される。 本試験は、もともと左室駆出率55%以上の症例を対象としていた。重篤な心臓イベント(New York Heart Associationに定義される心不全ClassIII-IV、左室収縮率が50%未満へ低下し、10%以上の低下、心臓死)については経過観察群で0.1%、トラスツズマブ1年投与群で1%、トラスツズマブ2年投与群で1%と、いずれも低頻度であった。心毒性の頻度(無症状ないし軽度症状で左室駆出率がベースラインより10%以上低下、または左室駆出率50%以下となること)は経過観察群で0.9%、トラスツズマブ1年投与群で4.4%、トラスツズマブ2年投与群で7.3%と、長期間の投与でより高い頻度であった。 今回のHERA試験のように、治療終了後も長期間、定期的な心機能フォローアップがなされた試験はなかった8)。心毒性の頻度については、Figure4をみても、トラスツズマブ投与期間が終了までで心臓に関連したイベントはほぼプラトーに達している。過去のトラスツズマブの術後治療の試験をみても、心機能低下の出現時期は投与期間中がほとんどであるとされている9)。今回の結果はより詳細な心機能フォローアップの結果、これまでの知見が再現されていた。実臨床での心機能フォローアップをいつまで行うのかに関しては、さらなるデータの集積を待ちたいと思う。 以上より、今回のHERA試験の結果により、術後トラスツズマブ療法は1年が最適であり、長期間フォローアップにおいても、心毒性を含めた追加の有害事象の懸念がないことが示された。参考文献1)Moja L, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2012 Apr 18:CD006243.2)Goldhirsch A, et al. Lancet. 2013;382:1021-1028.3)Pivot X, et al. Lancet Oncol. 2013;14:741-748. 4)Pivot X, et al. Eur J Cancer. 2015;51:1660-1666.5)Mavroudis D, et al. Ann Oncol. 2015;26:1333-1340.6)F. Hoffmann-La Roche, Ltd.:メディアリリース(英語)7)Chan A, et al. Lancet Oncol. 2016;17:367-377. 8)de Azambuja E, et al. J Clin Oncol. 2014;32:2159-2165.9)Pondé NF, et al. ESMO Open. 2016;1:e000073.

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乳がん化学療法においてタキサン系薬剤による脱毛の予防に頭皮冷却が有効(解説:矢形 寛 氏)-654

 乳がん術前後の化学療法には、通常アントラサイクリン系とタキサン系薬剤が使用され、脱毛は必発である。脱毛は患者にとって最も辛い副作用の1つであり、これを回避することができれば治療後の生活の質の改善にもつながりうる。 頭皮冷却による脱毛予防は以前より研究されてきたが、今回は乳がんの標準的化学療法に的を絞った質の高い試験結果の報告であり、本格的に臨床応用を考えていく段階に入ったといえる。 しかしながら、頭皮冷却によって十分な効果が認められたのはタキサン系薬剤のみであり、アントラサイクリン系薬剤では有効性は低そうである。現在私たちは、アントラサイクリン系薬剤とタキサン系薬剤を併用し、6ヵ月間の治療を行うことが多く、頭皮冷却による脱毛予防効果は期待しにくい。現状では、アントラサイクリン系薬剤を用いず、タキサン系薬剤を柱とする治療(TC、TCHなど)を行う場合によい適応となろう。 ただし、本邦において臨床応用にはさまざまな課題が残る。頭皮冷却は化学療法前から始まり終了後もしばらく継続するため、患者1人当たりの化学療法室占有時間が長くなる、冷却装置を複数台置くための十分なスペースが必要であり管理するための医療者の労働負担も大きくなる、冷却装置自体決して安価なものではなく保険適応外のため、病院または患者に一定の費用負担がかかる、などである。

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膠芽腫〔GBM: glioblastoma multiforme〕

1 疾患概要 ■ 概念・定義 膠芽腫(glioblastoma multiforme: GBM)は、悪性脳腫瘍の中で最も頻度が高く、かつ生物学的にもっとも未分化な予後不良の悪性新生物(brain cancer)である。高齢者の大脳半球、ことに前頭葉と側頭葉に好発し、浸潤性増殖を特徴とする。 病理学的に腫瘍細胞は異型性が強く、未分化細胞、類円形細胞、紡錘形細胞、多角細胞および多核巨細胞より構成され、壊死を取り囲む偽柵状配列を特徴とする(pseudopalisading necrosis)。 WHO grade IVに分類され5年生存率は10%、平均余命は15ヵ月。分子生物学的特徴から2型に分類される。イソクエン酸脱水素酵素(IDH1: isocitrate dehydrogenase 1)遺伝子のコドン132のアルギニン(R)がヒスチジン(H)に点変異を有することにより、分化度の高いWHO grade II、IIIの星細胞腫から悪性転換(malignant transformation)した続発性膠芽腫(secondary GBM)とIDH1の変異を伴わない原発性膠芽腫(primary GBM)とに区別される。両者ともGBMとしての予後に差異はなく、半年から1年程度である(表)。 前者では、TP53 mutation(>65%)、ATRX mutation(>65%)に続いてLOH 19q(50%)、LOH 10q(>60%)、TERT mutation(30%)が引き起こされる。一方、後者の遺伝子異常とその頻度はTERT mutation(70%)、EGFR amplification(35%)、TP53 mutation(30%)、PTEN mutation(25%)、LOH 10p(50%)、LOH 10q(70%)である。 画像を拡大する Grade Iは、小児に多い分化型腫瘍で予後が良い(10年生存は80%以上)。 Grade II、IIIは、1年から数年でGrade IVに悪性転換する。これとは別に、初発から神経膠芽腫として発症するタイプがある。いずれの神経膠芽腫も予後はきわめて悪い(5年生存率10%)。 BRAF: B-Raf proto-oncogene、serine/threonine kinaseでRAS/RAF/MEK/MAPKシグナル伝達の主要な役割を担う。 TP53: p53をコードする遺伝子 G-CIMP: CpG island methylation phenotype DNA修復酵素MGMTのプロモーター領域のメチル化を示す表現型。この表現型ではMGMTの蛋白発現は抑制されるため、予後良好のマーカーとなる。GBM患者でCIMP+は若年者、腫瘍の遺伝子表現型がproneural typeに多く全生存期間の延長に寄与する。 ATRX: alpha-thalassemia/mental retardation syndrome x-linked geneで、この遺伝子の変異は、テロメアの機能異常からテロメアの伸長(alternative lengthening of telomeres: ATL)を来す。 なお、遺伝子表現型とグリオーマ予後との関連は、次の文献を参考にした。Siegal T. J Clin Neurosci. 2015;22:437-444. 欧州で施行された臨床試験においてテモゾロミド(TMZ[商品名:テモダール])併用群(2年生存率26.5%、平均全生存期間14.6ヵ月)が、放射線治療(RT)単独治療群(2年生存率10.4%、平均全生存期間12.1ヵ月)に比して、有意差をもって生存期間の延長が認められ、TMZ + RTがGBMの標準治療とされている。 GBMは、このように予後不良で“がんの中のがん”といい得るため、創薬の対象となり、さまざまな臨床試験や新規治療薬が開発されている。GBMの根本治療の創出が今後の大きな課題である。 ■ 疫学 国内における原発性脳腫瘍患者(年間2万人、人口10万人につき14人)のうち、GBMは2,220人で、悪性脳腫瘍の中で最も多く、11.1%を占める。 大脳半球白質に好発し(前頭葉35%、側頭葉25%、頭頂葉18%、後頭葉6%)、時に脳梁を介して対側半球へ浸潤する。平均発症年齢は60歳、45~75歳の中高年に多く、 原発性膠芽腫が9割を占め、その平均発症年齢は62歳、続発性膠芽腫は平均45歳と若い。男性が女性の1.4倍多く、小児ではまれであり、成人と異なり脳幹部、視床、基底核部に好発する。 ■ 病因 発生起源細胞の同定および腫瘍形成の分子機構は解明されていない。 BaileyとCushing(1926年)は、組織発生を念頭に起源細胞に基づいた組織分類を提唱し、脳腫瘍を16型に分類し、glioblastomaの起源細胞をbipolar spongioblast(双極性突起を持つ紡錘型細胞)とした。 WHO脳腫瘍分類に貢献した群馬大学の石田陽一は、膠芽腫を星細胞腫とともに星形グリアの腫瘍と定義した1)。石田の正常な星形グリアとグリオーマの電顕像での詳細な観察によると、 血管壁まで伸び足板を壁におく太い細胞突起には、8~9nmの中間径フィラメントと少量の20~25nmの微小管とグリコーゲン顆粒を有する星形グリアとしての形質が、分化型の星細胞種でよく保たれており、膠芽腫でも保持されていることから、グリオーマを腫瘍性グリアと考察した。さらに星芽細胞腫(astroblastoma)は、腫瘍細胞が血管を取り囲んで放射冠状に配列されていることから、血管足が強調された腫瘍型とした。このように多くの病理学者が、星細胞腫をアストロサイトの脱分化した腫瘍と定義している。 発生学的には、げっ歯類の観察から、成体脳においても脳室周囲の脳室下帯(SVZ)や海馬歯状回(DG)において、neural stem cell/glial progenitorの活発な嗅球や顆粒細胞層へのmigrationが確認されていた。James E Goldmanらは、グリオーマ細胞の特性である高い遊走能は、neural stem cell/glial progenitorの特性を反映していると推察している2)。Fred H Gageらは、ブロモデオキシウリジンをヒトに投与することで、高齢者においてもSVZとDGではDNA合成するNeuN陽性細胞を同定し、neural stem cell/neural progenitorの存在を確認したと報告した3)。Sanai Nらは、ヒトSVZ生検材料を用いた培養系の研究から、脳室壁ependyma直下のastrocyteが、neural progenitorであると判定した4)。状況証拠的には、 現時点で直接証明はなされていないがneural stem cell/glial progenitorが、グリオーマ細胞の起源細胞の有力な候補であると思われる。さらに原発性GBMと続発性GBMでは、前述したように遺伝子異常のパターンが異なるため、起源細胞が異なる可能性も示唆される5、6)。 以上のほか、歴史的にグリオーマの病因としては、グリア(アストロサイト)の脱分化とする考えと、前駆細胞のmaturation arrestとする説がある。 近年、携帯電話の普及に伴い、公衆衛生学的観点からは、ラジオ波電磁界の発がん性の懸念が提起されている。山口によると7)、携帯電話と神経膠腫に関する疫学調査では、デンマークの前向きコホート調査が実施されたが、10年以上の長期契約者でもリスクの上昇を認めなかった。スウェーデンにおける症例対照研究では、10年を超えて携帯電話端末を使用した群では、非使用群と比較して2.6倍のリスクが指摘された。日本も参加した国際共同研究「INTERPHONE研究」では、累積使用時間が1,640時間以上でオッズ比1.4倍と、有意な上昇を示した。 以上から、携帯電話は人にがんを生じさせる可能性があると判定されている。 ■ 症状 腫瘍塊周囲に脳浮腫を伴いながら急速に浸潤性に増殖するため、早ければ週単位で、少なくとも月単位で症状が進行する。初発症状としては頭痛(31%)が最も多く、次いで痙攣(18%)、性格変化(16%)や運動麻痺(13%)などの巣症状が多い。 症状は、腫瘍の発生した場所の脳機能の障害を反映するのが基本である。また、病変が進行し、広範に浸潤すると症状は顕著となる。たとえば両側前頭葉に浸潤する症例では、性格変化、意欲低下、尿失禁、下肢の麻痺が出現する。一側では、初期には徴候は目立たず、徐々に腫瘍塊を形成し、脳浮腫が顕著になると具現化する。側頭葉腫瘍では、優位半球の病変では失名詞などの失語症状や4分の1半盲などが出現しやすい。また、視野症状に、患者自身が気付いていないことが多い。 前述したように、腫瘍局在に応じた神経学的局在症状の出現が基本であるが、たとえば前頭葉に局在する腫瘍でも神経回路網(frontal-parietal networks)を介して、頭頂葉の症候が認められることがあるので注意しなければならない。 具体例として、右側前頭葉病変ではいつも通りに職場へ通勤できなくなるなどの空間認知能の低下や、左側前頭葉腫瘍では失書・失算や左右失認など優位半球頭頂葉症状としてのゲルストマン症状が認められるなどの例が挙げられる。このような症例では、画像検査で大脳白質を介する脳浮腫が顕著である場合が多い。 小児や若年者では、ひとたび頭痛や吐気などの頭蓋内圧亢進症状が出現すると、急速に脳ヘルニアへと進行し、致命的な事態になるので、時期を逸せず迅速に対応することが重要となる。時として脳腫瘍患者は、内科・小児科、精神科において感冒、インフルエンザ、下痢・嘔吐症、認知症、精神疾患として誤診されている場合もある。たまたま下痢・嘔吐症が、流行する時期に一致すると、症状のみの診断では見逃される可能性が高くなりやすい。 そのため、器質的疾患が強く疑わしい症例に限定して画像検査(MRI)を施行するのではなく、症状が軽快せず、進行・悪化している場合には、致命的な見逃しをなくすため、また、器質的な疾患をスクリーニングするためにも、脳画像検査を診療の早期に取り入れる視点が大切であろう。これによりカタストロフィックな見逃しは回避でき、患者の生命および機能予後の改善につなげることができるからである。強く疑わしい症例でなくとも、鑑別診断をするために、脳神経外科を紹介しておく心がけも重要である。 ■ 予後 標準治療、すなわち外科的な切除後にTMZを内服併用した放射線化学療法施行患者の全生存期間(OS)は、15ヵ月程度である。IDH1野生型で9.9ヵ月、IDH1変異型で24.0ヵ月である。ヒト化モノクロナール抗体のベバシズマブ(商品名: アバスチン)やインターフェロンの併用は、OSには寄与しない。組織学的にglioblastoma with oligodendroglioma component、giant cell GBM、 cystic GBMは悪性だが、古典的なGBMよりやや予後が良い傾向にある。分子基盤に基づいてMGMT非メチル化症例やIDH1野生型の予後不良例では、TMZに反応を示さない場合が多く、今後免疫療法や免疫チェックポイント阻害剤の応用が取り入れられるであろう。これらの治療には、腫瘍ペプチドワクチン療法WT1やさらに百日咳菌体をアジュバントしたWT1-W10、抗PD-1 (Programmed cell deah-1) 抗体療法などT細胞の免疫応答にかけられたブレーキを解除することでT細胞の活性化状態を維持し、がん細胞を細胞死に追いやる試みである。 同じくT細胞の表面に発現する抑制性因子CTLA (Cytotoxic T-lymphocyte-associated antigen 4 ) に対する抗体の併用も期待されている。 2 診断 (検査・鑑別診断も含む) ■ 検査 造影MRI、 脳血管撮影、 MRS、 PET(methionine、FDG)などの検査と合わせ、総合的に判断する。 ■ 鑑別診断 造影MRIや造影CTでは、不規則なリング状の造影効果を示す。GBM、転移性脳腫瘍、脳膿瘍との鑑別が必要である。GBMでは、造影部分は壊死を取り囲む血管新生を反映するので、より不規則なリング状になる。それに比べ脳膿瘍のリングは、円形でよりスムースである。転移性脳腫瘍は、GBMと脳膿瘍の中間を取るので目安になるが、さらに拡散強調MRIやMRスペクトルスコピーなど多種類の検査で、総合的に判断することが重要である。 術中迅速診断では、壊死を取り囲む偽柵状配列が明らかでないとHGG(high grade glioma)と診断されるので、確定診断は永久標本によることになる。摘出腔内にカルムスチン(脳内留置用徐放性製剤: BCNUウェハー[商品名: ギリアデル])の使用を予定するときは、時に悪性リンパ腫との鑑別が問題となる。 悪性リンパ腫では、血管中心性の腫瘍細胞の集簇に注目して診断するが、LCA、GFAP、MIB-1など免疫組織学的検査では、迅速標本の作成が必要となる症例もある。 転移性脳腫瘍との組織上の鑑別は容易であるが、きわめてまれにadenoid glioblastomaの症例で腺腔形成や扁平上皮性分化を示すので、注意が必要である。 3 治療 (治験中・研究中のものも含む) ■ 基本治療 腫瘍容量の減圧と確定診断を目的に、まず外科治療を行う。近年、ナビゲーションと術中MRIを用いた画像誘導による外科手術が、一般的となってきている。グリオーマの外科手術の目標は、機能を損なうことなく最大限の摘出をすることにある。 MRI Gd(Gadolinium)-DTPAにて造影された腫瘍塊が、全部摘出された症例の予後では期待でき、腫瘍摘出度が高いほど予後の改善に結び付くと、複数の報告がなされている。 次いで確定診断後には、TMZ併用の化学放射線療法が標準治療である。放射線療法は、拡大局所にtotal 60Gy(2Gy×30 fractions)を週5回、6週間かけて行うのが標準である。 最近は、周囲脳の保護を目的に強度変調放射線治療(Intensity Modulated Radiation Therapy: IMRT)を行うことが多い。 初期治療終了後には、TMZの内服を月5日間行う。再発時にはインターフェロンβの併用や、血管内皮増殖因子に対するベバシズマブの併用などが行われている。 ■ その他の治療 手術前日にタラポルフィンナトリウム(商品名: レザフィリン)を投与し、病巣部位に集積させ、手術により最大限の摘出後にレーザー光を照射する摘出断端の浸潤部位に対する光線力学的療法やカルムスチンの摘出腔留置などがある。 4 今後の展望 陽子線、炭素線やホウ素中性子補足療法などの、新しい線源を用いた悪性脳腫瘍への応用やウイルス療法、脳内標的部位への薬剤分布を高める技術として開発されたconvection-enhanced delivery(CED)、免疫療法などがある。 免疫療法には、がん免疫に抑制性に働くものに対する解除を目的とする、T細胞活性化抑制抗原に対する抗PD-1抗体による治療やがん遺伝子WT1(Wilms tumor 1)を抗原標的として、自己のTリンパ球にがん細胞を攻撃させるWT1ペプチドワクチン療法がある。後者は、脳腫瘍の最新治療法として安全性や有効性が確立されつつあり、ランダム化比較試験の結果が期待される。 5 主たる診療科 脳神経外科 ※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。 6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など) 診療、研究に関する情報 国立がん研究センター がん対策情報センター がん情報サービス (一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報) 一般社団法人 日本脳神経外科学会、日本脳神経外科コングレス 脳神経外科疾患情報ページ (一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報) 1)石田陽一. 北関東医. 1990;40:355-361.2)Cayre M, et al. Prog Neurobiol. 2009;88:41-63.3)Eriksson PS,et al. Nat Med. 1998;4:1313-1317.4)Sanai N, et al. Nature. 2004;427:740-744.5)Louis DN, et al. WHO Classification of Tumours of the Central Nervous System. Revised 4th Edition.Lyon;IARC Press:2016.pp52-56.6)Louis DN, et al. Acta Neuropathol. 2016;131:803-820.7)Yamaguchi N. Clin Neurosci. 2013;31:1145-1146.公開履歴初回2015年02月27日更新2017年03月21日

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日本人の扁平上皮NSCLCにおけるニボルマブの評価

 扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)の2次治療におけるニボルマブ(商品名:オプジ-ボ)の有用性は、先行するCheckMate-017で示されている。本研究は、扁平上皮NSCLCの日本人患者におけるニボルマブの有効性および安全性を検討した、愛知県がんセンター中央病院 樋田 豊明氏らの研究。 この多施設第II相試験では、プラチナ含有化学療法後に進行した進行・再発扁平上皮がん患者に、ニボルマブ3mg/kgを、進行(PD)となるか忍容されない毒性が認められるまで、2週間ごとに投与した。主要評価項目は、独立放射線審査委員会(IRC)評価による全奏効率(ORR)、副次的評価項目は、試験実施施設評価によるORR、全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)、奏効期間、初回奏効までの時間、最良総合効果(BOR)、および安全性である。この調査には、日本の17施設からの35例の患者が登録された。 主な結果は以下のとおり。・IRC評価のORRは25.7%(95%CI:14.2~42.1)であった。・試験実施施設評価のORRは20.0%(95%CI:10.0~35.9)、OSは16.3ヵ月(95%CI:12.4~25.4)、PFSは4.2ヵ月(95%CI:1.4~7.1)、初回奏効までの期間は2.7ヵ月(範囲:1.2~5.5)であった。 ・IRC評価のBORは、部分奏効(PR)25.7%、安定(SD)28.6%、進行(PD)45.7%であった。・治療関連有害事象は24例(68.6%)で報告され、大部分はステロイド療法またはニボルマブの中止を含む治療によって解決した。 ニボルマブはプラチナ含有化学療法後に増悪した進行・再発扁平上皮NSCLCの日本人患者において有効であり、十分な忍容性も示した。

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小児がんサバイバー、放射線治療減少で新生物リスク低下/JAMA

 1990年代に診断を受けた小児がんサバイバーの初回診断後15年時の悪性腫瘍のリスクは、上昇してはいるものの、1970年代に診断されたサバイバーに比べると低くなっており、その主な要因は放射線治療の照射線量の減少であることが、米国・ミネソタ大学のLucie M Turcotte氏らの調査で明らかとなった。同氏らは、「現在も続けられている長期の治療毒性の軽減に向けた取り組みが、サバイバーの新生物罹患リスクの低減をもたらしている」と指摘する。JAMA誌2017年2月28日号掲載の報告。2万3,603例を治療年代別に後ろ向きに検討 研究グループは、小児がんサバイバーにおいて、時代による治療量の変化と新生物のリスクの関連を定量的に評価するレトロスペクティブな多施設共同コホート研究を行った(米国国立先進トランスレーショナル科学センターなどの助成による)。 対象は、1970~99年に米国およびカナダの小児病院で診断を受けた21歳未満の小児がん患者で、5年以上生存し、2015年12月にフォローアップが可能であった者とした。治療年代別の新生物の15年累積罹患率、累積疾病負担、悪性腫瘍の標準化罹患比(SIR:実測罹患数/期待罹患数)、5年ごとの相対罹患率(RR)の評価を行った。 2万3,603例が解析の対象となった。治療時期は1970年代(1970~79年)が6,223例、1980年代(1980~89年)が9,430例、1990年代(1990~99年)は7,950例であった。悪性腫瘍累積罹患率:2.1%→1.7%→1.3% 初回診断時の平均年齢は7.7(SD 6.0)歳、女児が46.3%であった。初回診断名は、急性リンパ芽球性白血病(35.1%)が最も多く、次いでホジキンリンパ腫(11.1%)、星状細胞腫(9.6%)、ウィルムス腫瘍(8.0%)、非ホジキンリンパ腫(7.2%)、神経芽細胞腫(6.8%)の順であった。 治療年代別の平均フォローアップ期間は、70年代が27.6年、80年代が21.1年、90年代は15.7年であった。全体の平均フォローアップ期間20.5年(37万4,638人年)の間に、1,639例が3,115個の新生物を発症し、そのうち1,026個が悪性腫瘍、233個が良性髄膜腫、1,856個が非黒色腫皮膚がんであった。最も頻度の高い悪性腫瘍は、乳がんおよび甲状腺がんであった。 放射線治療の施行率は、70年代の77%から90年代には33%まで低下し、照射線量中央値は70年代の30Gy(IQR:24~44)から90年代には26Gy(IQR:18~52)まで減少した。また、アルキル化薬やアンスラサイクリン系薬の使用率は経時的に上昇したが、用量中央値は減少した。プラチナ製剤の使用率は増加したが、エピポドフィロキシンは80年代には累積用量中央値が増加したが、90年代には減少した。 新生物の累積罹患率は、70年代が2.9%、80年代が2.4%、90年代は1.5%と、経時的に有意に低下した(70 vs.80年代:p=0.02、70 vs.90年代:p<0.001、80 vs.90年代:p<0.001)。サバイバー100例当たりの累積疾病負担は、70年代が3.6、80年代が2.8、90年代は1.7であり、やはり経時的に有意に軽減した(同p=0.02、p<0.001、p=0.001)。 悪性腫瘍の累積罹患率は、90年代が1.3%と、80年代の1.7%(p<0.001)、70年代の2.1%(p<0.001)に比し有意に低かった。同様の傾向が、非黒色腫皮膚がんにもみられたが、髄膜腫には認めなかった。 基準となる背景因子(化学療法非施行、脾臓摘出術、放射線治療、男性、28歳)のサバイバーにおける1,000人年当たりの絶対罹患率は、悪性腫瘍が1.12、髄膜腫が0.16、非黒色腫皮膚がんは1.71であった。 悪性腫瘍のSIRは、到達年齢が上がるにしたがって3つの治療年代とも低下した。性、診断時年齢、到達年齢で補正した新生物のRRは、5年経過するごとに有意に低下し(RR:0.81、95%CI:0.76~0.86、p<0.001)、悪性腫瘍(0.87、0.82~0.93、p<0.001)、髄膜腫(0.85、0.75~0.97、p=0.03)、非黒色腫皮膚がん(0.75、0.67~0.84、p<0.001)のRRも有意に低くなった。 媒介分析では、放射線治療の照射線量の変化は、治療年代関連の新生物罹患率の低下の主要な寄与因子であり、経時的な新生物罹患率低下と有意な関連を示す治療変量の唯一の構成要素であった。

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セリチニブがALK陽性肺がん1次治療の優先審査対象に:FDA

 ノバルティスは2017年2月23日、米国食品医薬品局(FDA)が、ALK陽性の転移性非小細胞肺がん(NSCLC)の患者に対する1次治療薬として、セリチニブ(商品名:ジカディア)の医薬品承認事項変更申請(sNDA)を受理したと発表した。 FDAはまた、脳転移を伴うALK陽性の転移性NSCLC患者のセリチニブをブレークスルーセラピーに指定した。 セリチニブの1次治療に対するこのsNDA提出は、ASCEND-4試験の初回解析の結果に基づいている。ASCEND-4は、ステージIIIBまたはIVのALK陽性進行NSCLC成人患者の1次治療における、セリチニブの安全性および有効性を標準化学療法と比較した国際第III相無作為化オープンラベル多施設臨床試験。被験者は、セリチニブ群(750mg /日)と化学療法群(ペメトレキセド500mg/m2+シスプラチン75mg/m2またはカルボプラチンAUC 5~6を4サイクル後ペメトレキセド維持療法)に無作為に割り付けられた。 無増悪生存期間(PFS)中央値は、セリチニブ治療群の16.6ヵ月(95%CI:12.6~27.2)に対し、化学療法群では8.1ヵ月(95%CI:5.8~11.1)で、化学療法群と比較してセリチニブ群で45%のPFSリスク減少が得られた(HR:0.55、95%CI:0.42~0.73、片側p<0.001)。 スクリーニング時に脳転移のない患者のPFS中央値は、セリチニブ群26.3ヵ月(95%CI:15.4~27.7)、化学療法群では8.3ヵ月(95%CI:6.0~13.7)であった(HR:0.48、95%CI:0.33~0.69)。脳転移を伴う患者では、セリチニブ群10.7ヵ月(95%CI:8.1~16.4)、化学療法では6.7ヵ月(95%CI:4.1~10.6)であった(HR:0.70、95%CI:0.44~1.12)。頭蓋内における全体奏効率(ORR)72.7%(95%CI:49.8~89.3)は、全身ORRの72.5%(95.5%CI:65.5~78.7)と一貫した結果であった。 セリチニブ群の25%以上で発生する一般的な有害事象(AE)は、下痢、悪心、嘔吐、食欲低下、ALT上昇、AST上昇、γ-グルタミルトランスフェラーゼ上昇、アルカリフォスファターゼ上昇、疲労であった。ノバルティス(Global)のプレスリリースはこちら

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ペムブロリズマブ、進行性尿路上皮がんの2次治療でOS延長/NEJM

 進行性尿路上皮がんの2次治療において、免疫チェックポイント阻害薬ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)は化学療法に比べ全生存(OS)期間を延長し、治療関連有害事象も少ないことが、米国・ダナ・ファーバーがん研究所のJoaquim Bellmunt氏らが実施したKEYNOTE-045試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2017年2月17日号に掲載された。本症の標準的1次治療はプラチナ製剤ベースの化学療法であるが、国際的に承認された標準的な2次治療はなく、2次治療のOS期間中央値は6~7ヵ月にすぎない。ペムブロリズマブはPD-1のヒト型モノクローナルIgG4κアイソタイプ抗体であり、第Ib相試験(KEYNOTE-012試験)および第II相試験(KEYNOTE-052試験)で本症への腫瘍縮小効果が確認されている。542例を対象とする国際的な無作為化試験 KEYNOTE-045試験は、進行性尿路上皮がんの2次治療におけるペムブロリズマブの有用性を評価する国際的な非盲検無作為化第III相試験(Merck社の助成による)。 対象は、年齢18歳以上、腎盂・尿管・膀胱・尿道の尿路上皮がんと診断され、進行病変に対するプラチナ製剤ベースの化学療法施行後の進行例、または筋層浸潤性局所病変に対する術前あるいは術後のプラチナ製剤ベースの化学療法施行後の再発例で、全身状態(ECOG PS)が0~2の患者であった。 被験者は、ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)を投与する群または担当医の選択による化学療法(パクリタキセル、ドセタキセル、ビンフルニンのいずれか)を施行する群に無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、全患者および腫瘍のPD-L1発現率(腫瘍に占める、PD-L1を発現している腫瘍細胞と腫瘍浸潤免疫細胞の割合)が10%以上の患者におけるOSおよび無増悪生存(PFS)の複合エンドポイントとした。 2014年11月5日~2015年11月13日に、29ヵ国120施設で患者登録が行われた。542例が登録され、ペムブロリズマブ群に270例、化学療法群には272例が割り付けられた。実際に治療を受けたのはそれぞれ266例、255例(パクリタキセル84例、ドセタキセル84例、ビンフルニン87例)だった。OS期間が約3ヵ月延長 ベースラインの年齢中央値は、ペムブロリズマブ群が67歳(範囲:29~88歳)、化学療法群は65歳(同:26~84歳)、男性がそれぞれ74.1%、74.3%を占めた。PD-L1発現率≧10%の患者の割合は、28.5%、33.8%だった。 全患者のOS期間中央値は、ペムブロリズマブ群が10.3ヵ月と、化学療法群の7.4ヵ月に比べ有意に延長した(ハザード比[HR]:0.73、95%信頼区間[CI]:0.59~0.91、p=0.002)。また、PD-L1発現率≧10%の患者のOS期間中央値も、ペムブロリズマブ群が8.0ヵ月と、化学療法群の5.2ヵ月に比し有意に長かった(0.57、0.37~0.88、p=0.005)。 PFS期間中央値は、全患者(ペムブロリズマブ群:2.1ヵ月 vs.化学療法群:3.3ヵ月、HR:0.98、95%CI:0.81~1.19、p=0.42)およびPD-L1発現率≧10%の患者(0.89、0.61~1.28、p=0.24)とも、両群に差を認めなかった。 全患者の客観的奏効率はペムブロリズマブ群が有意に高く(21.1% vs.11.4%、p=0.001)、奏効までの期間中央値は両群とも2.1ヵ月であった。奏効期間中央値は、ペムブロリズマブ群が未到達、化学療法群は4.3ヵ月だった。奏効期間が12ヵ月以上の患者の推定割合は、それぞれ68%、35%だった。PD-L1発現率≧10%の患者でも、ほぼ同様の結果であった。 治療関連有害事象の発現率は、全Grade(60.9% vs.90.2%)およびGrade 3~5(15.0% vs.49.4%)とも、ペムブロリズマブ群が少なく、治療関連の治療中止(5.6% vs.11.0%)も少なかった。治療関連死は、ペムブロリズマブ群が1例(肺臓炎)、化学療法群は4例(敗血症2例、敗血症性ショック1例、その他1例)に認められた。 ペムブロリズマブ群で頻度の高い全Gradeの治療関連有害事象として、そう痒(19.5%)、疲労(13.9%)、悪心(10.9%)がみられたが、Grade 3~5の有害事象で発現率が5%を超えるものはなかった。2例以上に発現したGrade 3~5のとくに注目すべき有害事象は、肺臓炎(2.3%)、腸炎(1.1%)、腎炎(0.8%)であり、Grade 5は1例(肺臓炎)に認められた。 著者は、「ペムブロリズマブのベネフィットは、腫瘍および腫瘍浸潤免疫細胞のPD-L1発現にかかわらず認められた。バイオマーカーとしてのPD-L1の役割は、現在進行中のより早期の治療ラインの無作為化試験で明らかとなる可能性がある」としている。

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HER2陽性早期乳がんへのトラスツズマブ、11年追跡の結果は?/Lancet

 HER2陽性早期乳がんに対し、補助療法としてのトラスツズマブ投与は、無病生存期間を長期とする改善効果が、中央値11年間の追跡で確認された。投与期間については、2年投与は1年投与と比べ追加ベネフィットは認められなかった。英国・エディンバラ大学がん研究センターのDavid Cameron氏らが国際共同多施設非盲検第III相無作為化試験「HERA(HERceptin Adjuvant)」の最終解析の結果、報告した。Lancet誌オンライン版2017年2月16日号掲載の報告。39ヵ国、5,102例の患者を対象に試験 HERA(BIG 1-01)試験は2001~05年にかけて、39ヵ国の医療機関を通じHER2陽性早期乳がんの患者5,102例を対象に行われた。手術や化学療法、放射線療法などの乳がんに対する1次治療を行った後、研究グループは被験者を無作為に3群に分け、トラスツズマブ1年投与(初回投与量8mg/kg体重、その後6mg/kg体重を3週ごとに静脈内投与)、トラスツズマブ2年投与(1年投与と同様の投与スケジュール)、トラスツズマブ非投与(観察群)をそれぞれ行った。 主要エンドポイントは無病生存期間(DFS)で、ITT集団で解析した。Coxモデルでハザード比(HR)を算出し、Kaplan-Meier法で生存曲線を算出した。トラスツズマブ1年投与群と2年投与群との比較は、366日ランドマーク解析で検証した。DFSに関するハザード比、トラスツズマブ1年群で0.76 被験者のうち追跡可能だったのは5,099例(1年投与群1,702例、2年投与群1,700例、観察群1,697例)だった。追跡期間の中央値は11年(四分位範囲:10.09~11.53)だった。また、本試験では観察群に割り付けられた患者の884例(52%)は、選択的クロスオーバーでトラスツズマブも受けていた。 解析の結果、1年投与群は観察群と比較して、DFS(HR:0.76、95%信頼区間[CI]:0.68~0.86)、死亡(同:0.74、0.64~0.86)のリスクの有意な減少が認められた。 2年投与群は1年投与群と比較してDFSのアウトカム改善は認められず(HR:1.02、同:0.89~1.17)、長期投与ベネフィットのエビデンスは認められなかった。 10年DFSの推定達成率は、観察群が63%、トラスツズマブ1、2年投与群は共に69%だった。 心毒性はすべての群で低率にとどまった。副次的心エンドポイントの発生は、2年投与群が7.3%と、1年投与群(4.4%)および観察群(0.9%)に比べ頻度が高かった。

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2種の頭皮冷却法、乳がん化学療法の脱毛を半減/JAMA

 化学療法は、乳がんの微小転移を抑制し、再発リスクを低減して生存期間を延長するが、有害事象として、女性にとって最も大きな苦痛の1つとされる化学療法誘発性の脱毛が高頻度に発現する。対策として、頭皮冷却法の検討が進められており、2017年2月14日発行のJAMA誌に、2種のデバイスに関する米国の2つの研究論文が掲載された。2つの試験は、試験デザイン、患者選択基準、デバイスのタイプが異なるが、ほぼ同様の結果が得られており、頭皮冷却は半数以上の女性で脱毛を予防することが示された。無作為化試験の脱毛予防達成率:50.5% vs.0% 毛嚢細胞は、がん細胞と同様に増殖が活発で、化学療法への感受性が高いため、脱毛が発症するとされる。これに対し、頭皮を冷却すると頭皮下の血管が収縮し、毛嚢への血流が低下するため、化学療法薬の取り込みが減少する。また、冷却により毛嚢細胞の生化学活性も抑制されることから、化学療法薬への感受性が低下し、脱毛が抑制されると考えられる。 米国・ベイラー医科大学のJulie Nangia氏らは、術前または術後の化学療法が予定されている乳がん女性(StageI/II)を対象に、化学療法誘発性脱毛の予防における頭皮冷却デバイス(Paxman scalp cooling system)の有用性を評価する多施設共同無作為化試験を実施した(英国、Paxman Coolers社の助成による)。 2013年12月9日~2016年9月30日に、米国の7施設に182例が登録され、頭皮冷却群(119例)または頭皮冷却を行わない対照群(63例)に無作為に割り付けられた。事前に規定された中間解析時に、142例(頭皮冷却群:95例、対照群:47例)が評価可能であった。 142例の平均年齢は52.6(SD 10.1)歳で、36%(51例)がアントラサイクリン系薬ベースの化学療法、64%(91例)はタキサン系薬ベースの化学療法を受けた。StageIが40%(57例)、StageIIは60%(85例)だった。 主要評価項目である化学療法4サイクル施行後の脱毛予防(CTC-AE ver. 4の脱毛:Grade0[脱毛なし]またはGrade1[かつらを必要としない50%未満の脱毛])の達成率は、頭皮冷却群が50.5%(48/95例、95%信頼区間[CI]:40.7~60.4)と、対照群の0%(0/47例、95%CI:0~7.6)に比べ有意に良好であった(成功率の差:50.5%、95%CI:40.5~60.6)。 Fisher正確確率の片側検定はp<0.001であり、優越性の限界値(p=0.0061)を超えていたため、2016年9月26日、データ・安全性監視委員会によって試験の終了が勧告された。 ベースラインから4サイクル終了までのQOLの変化には、両群間に有意な差を認めなかった。また、頭皮冷却群で54件のデバイス関連の有害事象(頭痛、悪心、めまいなど)が報告されたが、Grade1が46件、2が8件(頭痛が7件、頭皮痛が1件)で、重篤な有害事象はみられなかった。前向き観察研究の脱毛治療成功率:66.3% vs.0% 一方、米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のHope S Rugo氏らは、頭皮冷却システム(DigniCap scalp cooling system)の脱毛予防効果を検証するプロスペクティブなコホート試験を行った(スウェーデン、Dignitana社の助成による)。 頭皮冷却は、化学療法の各サイクルの30分前に開始し、投与中および投与終了後90~120分間は頭皮を摂氏3℃(華氏37°F)に維持した。各サイクルの投与前および最終投与から数週後に、5枚の頭髪の写真(前面、後面、両側面、上面)が撮影された。脱毛は、化学療法の最終投与から4週後に、Deanスケール(0[脱毛なし]~4[75%以上の脱毛])に基づいて患者自身が評価した。 Deanスケールのスコアが0~2(50%以下の脱毛)の場合に治療成功と定義した。頭皮冷却群の50%以上が治療成功を達成し、成功率の95%信頼区間(CI)の下限値が40%以上の場合に、頭皮冷却と脱毛リスクの改善にはpositiveな関連があると判定した。Fisher正確確率検定でp<0.05の場合に、頭皮冷却群は対照群に対し統計学的に優越性があると確定することとした。 2013年8月~2014年10月に、米国の5施設に早期乳がん(StageI/II)女性122例(頭皮冷却群:106例、対照群:16例)が登録された。対照群のうち14例は、後ろ向きに年齢と化学療法レジメンをマッチさせた。 全体の平均年齢は53歳(範囲:28~77歳)、白人が77.0%で、化学療法の平均投与期間は2.3ヵ月であった。化学療法レジメンは、ドセタキセル+シクロホスファミドの3週ごと4~6サイクルが最も多く(頭皮冷却群:75.2%、対照群:62.5%)、次いでweeklyパクリタキセル12サイクル(11.9%、12.5%)であった。頭皮冷却群には、アントラサイクリン系薬の投与を受けた患者はいなかった。 脱毛50%以下(Deanスコア:0~2)の達成率は、頭皮冷却群の評価可能例が66.3%(67/101例、95%CI:56.2~75.4)と、対照群の0%(0/16例)に比べ有意に優れた(Fisher正確確率検定:p<0.001)。治療成功の67例の内訳は、Deanスコア0(脱毛なし)が5例、1(脱毛:>0~≦25%)と2(同:>25~≦50%)が31例ずつだった。 また、頭皮冷却群では、化学療法終了後1ヵ月時のEORTC乳がん特異的QOL質問票の5項目のうち3つが、対照群に比べ有意に良好であった。たとえば、「疾患や治療の結果として、身体的な魅力が低下したと感じた」と答えた患者の割合は、頭皮冷却群が27.3%と、対照群の56.3%に比べ有意に低かった(p=0.02)。 頭皮冷却群の106例のうち7例に冷却治療関連の有害事象が認められた(頭痛4例[3.8%]、そう痒1例、皮膚の痛み1例、頭部不快感1例)。症状が重度な患者はなく、中等度が1例(頭痛)であった。また、3例(2.8%)が寒気により冷却治療を中止した。有効な支持療法が治療の開始を促進する可能性 これら2つの論文のエディトリアルにおいて、米国・コロンビア大学医療センターのDawn L. Hershman氏は、「乳がん女性が化学療法を躊躇する最大の原因は脱毛であるが、この問題への厳密な取り組みは、これまでほとんど行われていない」とし、「今回の2つの研究はがん患者のQOL改善における重要な一歩であるが、Nangia氏らの検討では治療期間中のQOLに差がなく、Rugo氏らの検討では治療終了後1ヵ月のQOLが改善されたものの、サンプルサイズが小さく、観察研究である点に限界がある」と指摘している。 また、同氏は、支持療法の意義として、「患者を安心させることで、有害事象への懸念を持つ患者に、治療を開始するよう説得するのに役立つ可能性がある」とし、「将来、分子標的治療の導入で、化学療法の重篤な有害事象を回避できるようになる可能性があるが、それまでは頭皮冷却などの介入によって乳がん患者の治療関連毒性を軽減し、結果として転帰の改善が可能と考えられる」と記している。

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BRAF変異肺がんにダブラフェニブ・トラメチニブ併用:EMAが肯定的見解

 欧州医薬品庁(EMA)のヒト用医薬品委員会(CHMP)は、BRAF V600E変異陽性の進行性または転移性非小細胞肺がん(NSCLC)治療として、ダブラフェニブ(商品名:タフィンラー)とトラメチニブ(商品名:メキニスト)併用療法の承認を推奨した。 当申請は、他施設、非無作為化、オープンラベル試験第II相試験に基づくもの(3つの連続したコホートからなり当該結果はコホートB)。 この第II相試験の対象は1つ以上のプラチナベースの化学療法を受け増悪したBRAF V600E変異を有するStage4のNSCLC患者で、北米、欧州、アジアの9ヵ国30施設から57例が登録された。患者は ダブラフェニブ150mg×2/日とトラメチニブ 2mg×1/日の投与を21日サイクルで受けた。主要評価項目は主治医判定による客観的奏効率(ORR)、副次的評価項目は無増悪生存期間(PFS)、奏効期間(DOR)、全生存期間(OS)、および安全性。 患者の中央値年齢は64歳で、98%は腺がん、72%が元喫煙者、33%が2ライン以上の前レジメンを受けていた。併用療法のORRは63.2%(95%CI:49.3~75.6)。PFS中央値は9.7ヵ月(95%CI:6.9~19.6)、6ヵ月PFSは 65%(95% CI:51~76)、DOR中央値は9.0ヵ月(95%CI:6.9~18.3)であった。OS中央値は分析時点では未達、6ヵ月OSは82%であった。ちなみに、ダブラフェニブの単独使用(コホートA)のORRは33%、PFS中央値は5.5ヵ月であった。よくみられた有害事象(AE)は、発熱、悪心、嘔吐、下痢 、無力症、食欲減退であった。Grade3/4のAEは49%でみられた。AEによる減量または投与中止は、それぞれ35%、14%の患者でみられた。(ケアネット 細田 雅之)関連情報欧州医薬品庁(EMA):ニュースリリース(PDF)当第II相試験原著:Planchard D, et al. J Clin Oncol. 2016 Jun 6.[Epub ahead of print]当第II相試験(ClinicalTrials.gov)

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悪性黒色腫〔malignant melanoma〕

1 疾患概要■ 概念・定義悪性黒色腫(メラノーマ:malignant melanoma)は、メラノサイト(メラニン色素産生細胞)ががん化して生じる悪性腫瘍である。表皮基底層部のメラノサイトが、がん化して皮膚に生じることが多いが、粘膜(口腔、鼻腔、肛門部など)や眼内(脈絡膜など)に生じることもある。■ 疫学人種によって発生頻度が大きく異なる。日本人では1~2/10万人年と見積もられている。白人では15~30/10万人年、黒人では0.5/10万人年程度の発生率である。■ 分類表皮に沿った悪性黒色腫細胞の組織学的増殖様式の特徴によって、以下の4型に分けるClark分類が用いられている(図1)1)。(1)表在拡大型: 白人の悪性黒色腫の70~80%を占める病型で、男性の背部や女性の下肢などに好発する(図1a)。日本人では全悪性黒色腫の20%程度を占め、近年増加している。(2)末端黒子型: 掌蹠や爪部を侵す病型であって(図1b)、日本人の悪性黒色腫の最多病型で50%程度を占める。(3)悪性黒子型: 高齢者の顔面に好発する病型で(図1c)、日本人、白人のいずれでも10%程度を占める。(4)結節型: 病変周囲に色素斑を伴わない病型で(図1d)、全身各所に生じうる。日本人の悪性黒色腫の15~20%を占める。なお最近、Bastianらによる新たな分類法が提案され、遺伝子変異を反映する分類として注目されている2)。■ 病因日光からの紫外線が主要発がん因子であり、表在拡大型は強い紫外線への間欠的曝露が、悪性黒子型は長年月にわたる慢性的な紫外線曝露が発生に関与するとされている。ただし、末端黒子型の発生には紫外線は関与せず、機械的刺激の関与が推定されている。■ 症状腫瘍細胞によるメラニン色素産生のために黒褐色調の病変としてみられることが多い1)。臨床的には濃淡不整な不規則形状の黒褐色斑として生じてくる。その後、一部に隆起性結節が生じ、さらに進行すれば潰瘍化を来す。■ 予後Tumor thickness(表皮顆粒層から最深部の悪性黒色腫細胞までの垂直距離をmm単位で表すもの)が最も重要な予後因子であり、T分類もこれによって規定される。AJCC(American Joint Committee on Cancer)の病期別の5年生存率は(同一病期でも亜病期によってかなり大きな差があるが)、病期Iが90%以上、病期IIが50~80%、病期IIIが25~60%程度、病期IVが10%程度である3)。後掲の表に各病期の概要を示した。なお、AJCCの予後予測ツールがネット上に公開されているので参考にされたい(http://www.melanomaprognosis.net/)。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 臨床診断悪性黒色腫の原発巣は、臨床的には大型で不整形状の黒褐色病変としてみられ、多くは色調に無秩序な濃淡差が認められる(図2a)。黒褐色調を呈する皮膚病変は悪性黒色腫以外にも多数存在するので、慎重に鑑別しなければならない1)。主要な鑑別診断と鑑別のポイントは、以下のとおりである。(1)色素細胞母斑: 径7mm程度までの小型の病変で、形状・色調に不規則、不整は目立たない(図2b)。ただし、先天性母斑は大きなことがある。(2)脂漏性角化症: 境界きわめて明瞭な隆起性結節としてみられ、表面が角化性で規則的な顆粒状凹凸を示すことが多い(図2c)。(3)基底細胞がん: 高齢者の頭頸部に好発し、青黒色調の局面、結節としてみられ、潰瘍化することも多い。周囲に色素斑を伴わないこと、病変表面が平滑で、透明感を呈することが特徴である(図2d)。■ ダーモスコピー診断近年、皮膚科診療に導入された診断法であり、乱反射を防止したうえで病変部に白色光を照射しながら10~20倍の拡大像を観察する。肉眼的に認識できないさまざまな所見を明瞭に観察することができ、とくに色素性皮膚病変の診断に有用である。その詳細は成書に譲るが4)、一点だけ日本人に多い掌蹠の悪性黒色腫の診断への有用性を記載する。掌蹠の悪性黒色腫は、ダーモスコピーにて早期段階から皮野(指紋)の隆起部(皮丘)に一致する色素沈着(parallel ridge pattern)を呈するのに対し、良性の母斑は皮野の溝(皮溝)に一致する色素沈着(parallel furrow pattern)を呈する(図3)。この所見の差異は両者の鑑別にきわめて有用であり、掌蹠の悪性黒色腫の早期検出と診断確定に役立つ4、5)。■ 病理組織診断臨床所見やダーモスコピー所見にて診断が確定できない場合は、生検して病理組織学的に診断を確定する。生検は可能ならば全摘生検が望ましい。生検することにより、もっとも重要な予後因子であるtumor thicknessを計測することもできる。悪性黒色腫は病理組織診断も難しいことが知られている。悪性黒色腫早期病変と良性のClark母斑の鑑別、結節型などの悪性黒色腫とSpitz母斑(良性の母斑の一種で、増殖するメラノサイトが顕著な核異型を示す)との鑑別がしばしば問題になる。疑わしい症例は、この方面のエキスパートにコンサルテーションすることが望ましい。■ 画像検査と病期の確定悪性黒色腫と診断されたら、AJCCの病期を決定する。原発巣のtumor thicknessを評価するとともに、理学的に所属リンパ節やその他の部位・臓器への転移がないかを検討する。必要に応じてCTやMRIなどの画像検査も施行する。PETも悪性黒色腫の転移の検出に、きわめて有用である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)AJCCの病期に対応して表のような治療を施行することが推奨されている。病期I、IIの段階ならば、原発巣の外科的切除を施行する。切除マージンはtumor thicknessによって規定されるが、早期病変は0.5~1cmのマージン、進行病変は2~3cmのマージンが推奨されている。症例によってはセンチネルリンパ節生検の実施を考慮する。病期IIIには原発巣の切除に加えて、所属リンパ節の郭清術を施行する。メラノーマは化学療法に抵抗性で、標準薬とされてきたダカルバジン(商品名:同)でも奏効率は15%程度に過ぎない。近年、分子標的薬が病期IVあるいは外科的根治術不能な病期IIICのメラノーマ患者に有効なことが明らかにされ、治療方針が激変した。病期IVにはMAPK経路の阻害薬や免疫チェックポイント阻害薬が選択される6)。現在、わが国で保険適用となっているのは、MAPK阻害薬では変異BRAF阻害薬のベムラフェニブ(同:ゼルボラフ)、ダブラフェニブ(同:タフィンラー)とMEK阻害薬のトラメチニブ(同:メキニスト)である。免疫チェックポイント阻害薬ではニボルマブ(抗PD-1抗体、同:オプジーボ)、ペムブロリズマブ(抗PD-1抗体、同:キイトルーダ)とイピリムマブ(抗CTLA-4抗体、同:ヤーボイ)である。いずれの薬剤も特有の強い有害反応を有するので、施設内で治療チームを設けて対応することが望ましい。薬剤の選択順位は、確定的な推奨ではないが、増殖スピードの速いメラノーマにはまずベムラフェニブ単独またはベムラフェニブとトラメチニブの併用療法を考える。増殖スピードの遅いメラノーマには当初から抗PD-1抗体(ニボルマブまたはペムブロリズマブ)あるいはイピリムマブを用いる。抗PD-1抗体はイピリムマブよりも奏効率、有害反応の点から臨床的意義が高い可能性がある。ただし、腫瘍細胞がPD-L1陰性の場合はイピリムマブを選択する。これらの治療に抵抗性となった高度進行例には、適切な緩和療法を施行する。4 今後の展望ニボルマブとイピリムマブの併用療法の治験が進んでいる。また、上記以外の分子標的薬も続々と開発され、わが国においても臨床治験が進められている。術後補助療法としてニボルマブとイピリムマブの有用性の比較やペムブロリズマブの有用性も治験が実施されている。5 主たる診療科皮膚科が主たる診療科であり、診断から治療まで一貫した対応ができる。病理組織診断には病理科が、切除後の外科的再建などには形成外科が対応することもある。分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬の使用にあたっては施設内に多職種診療チームを発足させることが望ましい。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報日本皮膚悪性腫瘍学会が作成した日本皮膚科学会皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン(ほぼ同じものがMindsと日本がん治療学会のホームページにも掲載されている)(医療従事者向けのまとまった情報)米国NCCNの診療ガイドライン(リスト中“Melanoma”の項を参照)(医療従事者向けの英文のまとまった情報)国立がん研究センターがん情報サービス:「悪性黒色腫」患者用解説冊子(一般利用者向けのまとまった情報)1)斎田俊明ほか編. 1冊でわかる皮膚がん. 文光堂;2011.p.220-237.2)Curtin JA, et al. N Engl J Med. 2005;353:2135-2147.3)Balch CM, et al. J Clin Oncol. 2009;27:6199-6206.4)斎田俊明編. ダーモスコピーのすべて 皮膚科の新しい診断法.南江堂;2012.5)Saida T, et al. J Dermatol. 2011;38:25-34.6)宇原 久. 癌と化学療法. 2016;43:404-407.公開履歴初回2014年02月27日更新2017年02月21日

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尿路上皮がんにニボルマブ承認:FDA

 米国食品医薬品局(FDA)は2017年2月2日、プラチナベースの化学療法中および後、あるいは白金含有化学療法によるネオアジュバントまたはアジュバント療法12ヵ月以内に増悪した局所進行・転移性尿路上皮がん患者の治療に、ニボルマブ(商品名:オプジーボ)を迅速承認した。 この承認は、上記の尿路上皮がん患者270例を対象にしたシングルアーム試験の結果に基づく。患者は、疾患進行が認められるか忍認できない毒性が認められるまで、2週間ごとにニボルマブ3mg/kgの投与を受けた。RECIST1.1評価基準を用いた独立した放射線学的レビュー委員会によって確認された客観的奏効率は、19.6%(270例中53例、95%CI:15.1~24.9)であった。 7例の患者がCRを示し、46例がPRを示した。カットオフ時の推定奏効期間中央値は10.3ヵ月であった。 多く見られた副作用(20%以上)は、疲労、筋骨格痛、悪心、および食欲低下であった。 ニボルマブに起因する肺炎や心血管障害で死亡した4例の患者を含め、14例の患者が疾患進行以外の原因で死亡した。副作用は患者の17%において用量の中断をもたらした。 FDAは、このニボルマブの申請にブレークスルーセラピー指定と優先審査資格を与え、目標日の約1ヵ月前に承認に至った。ニボルマブは昨年のatezolizumabに続き、尿路上皮がんにおいてFDAの承認を受けた2つ目の免疫チェックポイント阻害薬となった。米国食品医薬品局(FDA)Approved Drugs

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