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早期乳がんへの術前nab-PTX、DFSを改善/JCO

 GeparSepto試験では、早期乳がん患者のネオアジュバント治療として、アルブミン懸濁型パクリタキセルの週1回投与(weekly nab-PTX)が、従来の溶媒型パクリタキセルの週1回投与(weekly sb-PTX)に比べ、病理学的完全寛解率を有意に改善することが示されている。今回、ドイツ・Helios Klinikum Berlin-BuchのMichael Untch氏らは、本試験の長期アウトカムとして、invasive disease-free survival(iDFS)などを報告した。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2019年5月13日号に掲載。 本試験では、組織学的に確認された原発性乳がん患者を、weekly nab-PTX 150mg/m2(試験修正後は125mg/m2)またはweekly sb-PTX 80mg/m2に1:1の割合で無作為に割り付けた。両群とも、エピルビシン90mg/m2+シクロホスファミド600mg/m2を3週ごとに4サイクル投与した。HER2陽性例には、化学療法と並行して、トラスツズマブ(初期用量8mg/kg、その後3週ごとに6mg/kg)とペルツズマブ(初期用量840mg、その後3週ごとに420mg)の投与を1年間継続した。 主な結果は以下のとおり。・nab-PTX群606例、sb-PTX群600例で、計1,206例が治療を開始した。・追跡期間中央値49.6ヵ月(範囲:0.5~64.0ヵ月)以降、243のiDFSに関わるイベントが報告された(sb-PTX群143イベント、nab-PTX群100イベント)。・4年時点で、nab-PTX群ではsb-PTX群と比べて有意にiDFSが高かった(84.0% vs. 76.3%、ハザード比:0.66、95%CI:0.51~0.86、p=0.002)が、全生存率は有意な差はなかった(89.7% vs.87.2%、ハザード比:0.82、95%CI:0.59~1.16、p=0.260)。・治療関連末梢性感覚ニューロパチー(PSN)の長期フォローアップの結果、nab-PTX 150mg/m2と比べて125mg/m2でPSNが改善するまでの期間の中央値が有意に減少した。

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APT試験のHER2陽性乳がん、術後パクリタキセル+トラスツズマブの長期転帰/JCO

 Adjuvant Paclitaxel and Trastuzumab(APT)試験は、腫瘍径が小さなHER2陽性乳がんに対する術後化学療法としてのパクリタキセル・トラスツズマブ併用療法について検討した第II相試験。これまでに主要解析の3年無病生存率(DFS)は98.7%であることが示されていたが、今回、長期追跡(7年)の結果が米国・ダナ・ファーバーがん研究所のSara M. Tolaney氏らにより発表された。長期予後はきわめて良好であったこと、また、腫瘍径が小さなHER2陽性乳がんの内因性サブタイプは腫瘍径が大きなHER2陽性乳がんと類似していることや、パクリタキセル誘発性末梢神経障害(TIPN)に関連する一塩基多型(SNP)について明らかになったという。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2019年4月2日号掲載の報告。APT試験におけるHER2陽性乳がん7年DFSは93.3% 研究グループは、APT試験の長期予後について解析するとともに、腫瘍径が小さなHER2陽性乳がんの生物学ならびにTIPNの発症と関連する遺伝要因を明らかにする目的で探索的解析を行った。APT試験の対象は腫瘍径3cm以下、リンパ節転移陰性のHER2陽性乳がん患者で、パクリタキセル(80mg/m2)+トラスツズマブを12週間、その後トラスツズマブを9ヵ月間投与された。 主要評価項目はDFS、副次評価項目は無再発率(RFI)、乳がん特異的生存率および全生存率(OS)であった。探索的解析として、保存組織を用いnCounterシステムによるPredictor Analysis of Microarray 50(PAM50)遺伝子解析(Prosigna法)を行い、内因性サブタイプの分類と再発リスクスコア(ROR)を算出するとともに、TIPNに関連するSNP遺伝子型判定を行った。 APT試験のHER2陽性乳がんについて解析した主な結果は以下のとおり。・2007年10月~2010年9月に、計410例が登録された。・追跡期間中央値6.5年において、DFSイベント発生は23件であった。・7年DFSは93.3%(95%CI:90.4~96.2)で、4例(1.0%)は遠隔再発であった。・7年OSは95.0%(95%CI:92.4~97.7)、7年RFIは97.5%(95%CI:95.9~99.1)であった。・PAM50解析(278例)では、HER2 enrichedが65.5%と大半を占め、luminal Bが13.7%、luminal Aが12.6%、basal-likeが7.9%であった。・遺伝子型判定(230例)の結果、Grade2以上のTIPN(10.4%)患者においてTIPNのリスク増加と関連するSNP、rs3012437が同定された。

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DS-8201、HER2陽性乳がん第II相臨床試験の結果/第一三共

 第一三共株式会社とアストラゼネカは、HER2陽性の再発または転移のある乳がん患者を対象とした抗体薬物複合体トラスツズマブ デルクステカン(DS-8201)の第II相臨床試験(DESTINY-Breast01)において、臨床的意義のある効果が示されたと発表。 同試験は、T-DM1治療を受けたHER2陽性の再発または転移のある乳がん患者253例を対象とした北米、欧州および日本を含むアジアにおけるグローバル第II相臨床試験。同試験の主要評価項目である客観的奏効率は、2019年4月に医学雑誌「The Lancet Oncology」にて公表された本剤の日米共同第1相臨床試験の結果と同様の傾向が認められた。また、本試験において安全性上の新たな懸念は認められなかった。 同剤は、米国食品医薬品局より、HER2陽性の再発・転移性乳がん治療を対象として画期的治療薬(Breakthrough Therapy)指定およびファストトラック指定を受けている。また、厚生労働省よりがん化学療法後に増悪したHER2過剰発現が確認された治癒切除不能な進行・再発胃がんに対する治療として先駆け審査指定を受けている。 同試験結果の詳細は、今後、学会にて公表する予定とのこと。

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高齢者NSCLCにおけるペムブロリズマブの成績/ELCC2019

 ペムブロリズマブの3つ無作為化比較試験KEYNOTE-010、024、042のプール解析の結果、高齢の非小細胞肺がん(NSCLC)患者では、ペムブロリズマブでの全生存期間が化学療法を有意に上回った。この研究は3件の臨床試験の高齢(75歳以上)患者264例と75歳未満の患者2,292例の結果を比較したもので、九州がんセンターの野崎 要氏らが欧州肺癌学会(European Lung Cancer Congress 2019)で発表した。対象患者はPD-L1(TPS)1%以上であり、高齢患者の半数はPD-L1(TPS)50%以上であった。 主な結果は以下のとおり。・PD-L1(TPS)1%以上の高齢患者における化学療法群と比較したペムブロリズマブ群の全生存期間(OS)のHRは0.76(95%CI:0.56~1.02)であった。 ・PD-L1(TPS)50%以上の高齢者のOSにおいてもペムブロリズマブ群が化学療法群に比べ改善した(HR:0.41、95%CI:0.23~0.73)。・高齢患者と若年者を比較した1年OS率は、PD-L1 (TPS)1%で53.7%対54.9%、PD-L1 (TPS)50%以上で61.7%対61.7%と、共に同程度であった。・ペムブロリズマブ群高齢患者の治療関連有害事象(TRAE)の頻度は、化学療法群に比べ少なかった(68%対94%)。Grade3~5のTRAEも、ペムブロリズマブ群で少なかった(24%対61%)。・高齢患者における免疫関連有害事象およびインフュージョンリアクションはペムブロリズマブ群で多くみられた(25%対7%)ものの、その頻度は若年者と同様であった(25%)。

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局所進行胃がん周術期療法、FLOT vs.ECF/ECX/Lancet

 切除可能な局所進行胃・胃食道接合部腺がんの治療において、ドセタキセルベースの3剤併用レジメンによる術前後の化学療法は標準レジメンと比較して、全生存期間(OS)を1年以上延長することが、ドイツ・UCT-University Cancer Center FrankfurtのSalah-Eddin Al-Batran氏らが行ったFLOT4-AIO試験で示された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2019年4月11日号に掲載された。術前後のエピルビシン+シスプラチン+フルオロウラシル(ECF)の有用性を示した大規模臨床試験(MAGIC試験)以降、いくつかのレジメンが検討されたが、いずれも不成功に終わっている。ドセタキセルベースの化学療法では、転移を有する胃・胃食道接合部腺がんにおける有効性が報告されている。FLOT4-AIOはFLOT群とECF/ECX群のレジメンに無作為割り付け FLOT4-AIOは、ドイツの38施設で実施された第II/III相非盲検無作為化試験であり、今回は第III相の結果が報告された(German Cancer Aid[Deutsche Krebshilfe]などの助成による)。 対象は、組織学的に確定された臨床病期cT2以上またはリンパ節転移陽性(cN+)、あるいはこれら双方で、遠隔転移がなく、切除可能な腫瘍を有する患者であった。 被験者は、次の2つのレジメンに無作為に割り付けられた。FLOT群:術前と術後に、2週を1サイクルとして4サイクルずつ、ドセタキセル(50mg/m2)+オキサリプラチン(85mg/m2)+ロイコボリン(200mg/m2)/フルオロウラシル(2,600mg/m2、24時間静注)を1日目に投与。ECF/ECX群(対照群):術前と術後に、3週を1サイクルとして3サイクルずつ、エピルビシン(50mg/m2、1日目)+シスプラチン(60mg/m2、1日目)+フルオロウラシル(200mg/m2、持続静注、1~21日)またはカペシタビン(1,250mg/m2、経口投与、1~21日)を投与。ECF/ECX群のフルオロウラシルかカペシタビンかの選択は担当医が行った。 主要アウトカムはOS(優越性)とし、intention-to-treat解析を実施した。FLOT群はECF/ECX群よりOSが15ヵ月延長 2010年8月~2015年2月の期間に716例が登録され、FLOT群に356例(年齢中央値62歳、男性75%)、ECF/ECX群には360例(62歳、74%)が割り付けられた。フォローアップは2017年3月に終了した。 実際に術前化学療法を開始したのは、FLOT群352例(99%)、ECF/ECX群353例(98%)で、全サイクルを完了したのはそれぞれ320例(90%)、326例(91%)であった。また、術後化学療法を開始したのはFLOT群213例(60%)、ECF/ECX群186例(52%)で、全サイクル完了はそれぞれ162例(46%)、132例(37%)だった。 投与中止の理由は、病勢進行/無効/早期死亡がFLOT群46例(13%)、ECF/ECX群74例(21%)、患者の要望がそれぞれ59例(17%)、62例(17%)、毒性が35例(10%)、47例(13%)であった。 手術開始は、FLOT群345例(97%)、ECF/ECX群341例(95%)、腫瘍手術が行えたのは、それぞれ336例(94%)、314例(87%)であった。断端陰性(R0)切除の達成は、FLOT群が301例(85%)と、ECF/ECX群の279例(78%)に比べ有意に高かった(p=0.0162)。 OS中央値は、FLOT群がECF/ECX群よりも有意に延長した(50ヵ月[95%信頼区間[CI]:38.33~未到達]vs.35ヵ月[27.35~46.26]、ハザード比[HR]:0.77、95%CI:0.63~0.94、p=0.012)。2、3、5年全生存率は、FLOT群がそれぞれ68%、57%、45%、ECF/ECX群は59%、48%、36%であった。このFLOTの治療効果は、すべてのサブグループで一致して認められた。また、無病生存期間中央値もFLOT群で有意に優れた(30ヵ月 vs.18ヵ月、0.75、0.62~0.91、p=0.0036)。 治療に関連する可能性のあるGrade3/4の有害事象のうち、FLOT群で多かったのは、感染症(18 vs.9%)、好中球減少(51 vs.39%)、下痢(10 vs.4%)、末梢神経障害(7 vs.2%)であり、ECF/ECX群で多かったのは、悪心(7 vs.16%)、嘔吐(2 vs.8%)、血栓塞栓イベント(3 vs.6%)、貧血(3 vs.6%)であった。また、治療関連の重篤な有害事象(手術のための入院期間中のものも含む)の発現状況は、両群で同等であった(FLOT群97例[27%]vs.ECF/ECX群96例[27%])。毒性による入院は、それぞれ89例(25%)、94例(26%)に認められた。 著者は、「本試験の結果は、有効な治療選択肢の幅を広げるものである」としている。

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CAR-T療法が臨床へ、まずは2~3施設でスタート

 CAR-T療法が、白血病や悪性リンパ腫に対する治療として実臨床で使用される日が近づいてきた。2019年3月、キメラ抗原受容体T(CAR-T)細胞療法として国内で初めて、チサゲンレクルユーセル(商品名:キムリア)が製造販売承認を取得した。これを受けて4月18日、都内でメディアセミナー(主催:ノバルティス ファーマ)が開催された。 セミナーでは、豊嶋 崇徳氏(北海道大学大学院医学研究院血液内科 教授)、平松 英文氏(京都大学医学部附属病院小児科 講師)が登壇。CAR-T療法(キムリア)の適応症である再発・難治性のCD19陽性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、B細胞性急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)について、それぞれ実臨床での展望を示した。CAR-T細胞の製造と、実際のCAR-T療法の流れとは CAR-T療法の実施には、まずはじめに患者の末梢血から白血球が採取される。これは成分献血装置を用いた白血球アフェレーシスによって1~2時間かけて、T細胞を含む白血球成分が採取される。凍結保存処理後、米国の製造施設に輸送される。 製造過程では、T細胞の遺伝子改変→細胞増殖→品質チェックというプロセスを経て、病院に製造されたCAR-T細胞(キムリア)が届けられる(最短で5~6週間程度)。患者には、体内のリンパ球を減らしてCAR-T細胞を増殖しやすくするために、リンパ球除去化学療法と呼ばれる前治療が施され(3~4日間)、その後、キムリアが点滴により輸注される(単回投与)。輸注後は通常1~2ヵ月の入院を経て、その後は外来で経過観察が行われる。CAR-T療法(キムリア)のDLBCLへの有効性を確認、ただし慎重な適応判断が必要 DLBCLは悪性リンパ腫の中で最も頻度が高く、約30~40%を占める。本邦における総患者数は約2万1,000人。あらゆる年齢で発症するが、とくに高齢になるにつれ増加する。ただし、小児では他のがんの発症が少ないため高い割合を示す。 標準治療としてR-CHOP(リツキシマブ、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾン)療法が確立されている。しかし、約50%の患者では無効か、再発する。これらの患者の次なる治療法は自家造血幹細胞移植だが、適応があるのはその半数以下で、さらに奏効した患者でも再発がありうる。 こうした再発・難治性DLBCL患者に対するこれまでの救援化学療法の生存期間中央値は、6.3ヵ月1)。対するCAR-T療法であるキムリアの生存期間中央値は、日本人を含む第II相JULIET試験の結果12ヵ月で、奏効率は52%(うち完全奏効:40%)であった2)。 豊嶋氏はこの結果について、「12ヵ月時点の生存率という観点でみると、25%→50%に改善したという結果。すべての患者さんにとって“夢の治療法”とはいえないだろう。奏効する場合は1回の治療で効果が得られ、QOLも高い可能性がある。しかし、状態や進行速度によって、そもそもこの治療に進める患者さんは限られる。さらに製造の待ち時間、製造不良のリスクもある」として、患者やその家族に過度の期待を持たせることに対しては強い懸念を示した。 臨床試験で多く発現したCAR-T療法(キムリア)の有害事象は、サイトカイン放出症候群(58%で発現、中等症以上は22%)、脳症(21%で発現、中等症以上は12%)など。低ガンマグロブリン血症に伴う免疫グロブリン補充療法は30%で実施された。有害事象による死亡事例はなかったが、「身体に対する治療負担の重さという観点でいえば、自家ではなく、同種造血幹細胞移植と近い。実臨床ではかなり慎重な有害事象のコントロールが必要になるだろう」と述べた。CAR-T療法(キムリア)はB-ALLでも奏効例では高い効果、しかし輸注に至らない例も 本邦におけるALLの総患者数は約5,000人。診断時の年齢中央値は15歳で、好発年齢は2~3歳。そして小児ALLの8割以上がB細胞性(B-ALL)と報告されている。1次治療は寛解導入療法・地固め療法・維持療法からなる多剤併用療法である。80~90%が2~3年にわたるこの強力な1次治療によって完全寛解に到達するが、小児患者の約20%で再発する。再発・難治患者の生存可能性は、小児で16~30%に留まる。 平松氏は、承認の根拠となった第II相ELIANA試験3)の日本人成績について詳細を紹介した。日本人患者は、8例(5~24歳、前治療歴3~7回)が登録された。うち、製品不適格(製造されたが、うまく増殖しなかった)1例、製造を待機するうちに原病が悪化した1例を除く6例に、実際にCAR-T療法のキムリアが投与された。 結果は、3例で完全寛解、1例で血球数回復が不十分な完全寛解が得られた。他2例では効果なしであった。同氏は、「寛解が得られた4例ではすべて微小残存病変も陰性。これは非常に高い効果」と話した。 一方で、6例中5例が重症サイトカイン放出症候群を発症。集中治療室での濃厚な治療が必要となった。「全例が治療に反応しコントロールできたが、院内連携を強化し、新たな有害事象の発現を関連部門の医師が迅速に共有する必要がある」とした。CAR-T療法(キムリア)はまず国内2~3施設で開始、ピーク時で年間250人の患者を想定 最後に登壇したノバルティスファーマ オンコロジージャパン プレジデントのブライアン グラッツデン氏は、発売後の見通しについて説明。CAR-T療法のキムリアによる治療を行う医療機関は、細胞採取の品質確保や副作用管理について同社がトレーニングを実施し、認定した施設に限定するとした。発売初期、国内では2~3施設を予定しており、ピーク時の患者数はCAR-T細胞の製造におけるキャパシティもあり年間250人を想定しているという。また、薬価はまだ決定されていないが、米国で導入された「成功報酬型」の支払い方式は日本では採用されない見通しであることも示された。

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放射線療法による口内炎の疼痛、有効な含嗽薬は?/JAMA

 頭頸部放射線療法を実施している患者において、doxepin含嗽あるいはジフェンヒドラミン-リドカイン-制酸薬含嗽は、プラセボと比較し、含嗽後最初の4時間の口腔粘膜炎の疼痛を有意に軽減させたものの、その効果は臨床的に意味のある最小の差より小さかった。米国・Mayo Clinic HospitalのTerence T. Sio氏らが、doxepin含嗽またはジフェンヒドラミン-リドカイン-制酸薬含嗽の有効性を評価する第III相無作為化試験「Alliance A221304」の結果を報告した。doxepin含嗽により口腔粘膜炎関連の疼痛が軽減することが無作為化試験で示されているが、一般的に広く用いられているジフェンヒドラミン-リドカイン-制酸薬含嗽については、無作為化プラセボ対照比較試験やCochraneレビューで使用を支持するエビデンスは示されていなかった。JAMA誌2019年4月16日号掲載の報告。2つの含嗽とプラセボで、口腔粘膜炎の疼痛スコアを比較 研究グループは、2014年11月1日~2016年5月16日の期間で、米国の30施設において、根治的頭頸部放射線療法を実施し口腔粘膜炎の疼痛スコア(範囲0~10)が4点以上の患者275例を、doxepin含嗽群92例、ジフェンヒドラミン-リドカイン-制酸薬含嗽群91例、プラセボ群92例に無作為に割り付け、最大28日間追跡した。 主要評価項目は、doxepin含嗽またはジフェンヒドラミン-リドカイン-制酸薬含嗽を単回投与後4時間における、プラセボ含嗽と比較した全口腔粘膜炎の疼痛の軽減とし(曲線化面積によって確認、ベースライン時の疼痛スコアで補正)、臨床的に意味のある最小差は変化量3.5点とした。 副次評価項目は、眠気、不快な味、刺すような痛み(刺痛)および灼熱痛。すべての評価尺度は0点(最小)~10点(最大)とした。含嗽後4時間以内の疼痛スコアは低下するも臨床的に意味のある最小差に達せず 無作為化された275例(年齢中央値61歳、女性58例[21%])のうち、227例(83%)が試験を完遂した。 投与後最初の4時間以内の口腔粘膜炎の疼痛スコアは、doxepin含嗽群で11.6点、ジフェンヒドラミン-リドカイン-制酸薬含嗽群で11.7点、プラセボ含嗽群で8.7点の低下が確認された。群間差は、doxepin含嗽群vs.プラセボ含嗽群で2.9点(95%信頼区間[CI]:0.2~6.0、p=0.02)、ジフェンヒドラミン-リドカイン-制酸薬含嗽群vs.プラセボ含嗽群で3.0点(95%CI:0.1~5.9、p=0.004)であった。プラセボ含嗽群と比較して、doxepin含嗽群のほうが眠気(1.5点、95%CI:0~4.0、p=0.03)、不快な味(1.5点、95%CI:0~3.0、p=0.002)、刺すような痛みと灼熱痛(4.0点、95%CI:2.5~5.0、p<0.001)が多く報告された。 Grade3(最大)の有害事象は、doxepin含嗽群で3例(4%)、ジフェンヒドラミン-リドカイン-制酸薬含嗽群で3例(4%)、プラセボ含嗽群で2例(2%)報告された。倦怠感は、doxepin含嗽群で5例(6%)確認されたが、ジフェンヒドラミン-リドカイン-制酸薬含嗽群では確認されなかった。 著者は研究の限界として、化学療法の種類や放射線療法の範囲など他の要因が関与している可能性などを挙げ、「両含嗽法の長期的な有効性と安全性についてさらに評価する必要がある」とまとめている。

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大腸がん治療へのビタミンD補充、高用量 vs.標準用量/JAMA

 切除不能大腸がんの治療における標準化学療法へのビタミンD3補充療法の併用では、高用量は標準用量と比較して無増悪生存を改善しないことが、米国・ダナ・ファーバーがん研究所のKimmie Ng氏らが行ったSUNSHINE試験で示された。研究の成果は、JAMA誌2019年4月9日号に掲載された。転移を有する大腸がんの前向き観察研究により、血漿25ヒドロキシビタミンD(25[OH]D)値が高いほうが、生存は良好と報告されている。この知見を確証するための無作為化試験の実施が求められていた。高用量のPFS改善効果を評価する米国の無作為化第II相試験 本研究は、米国の11施設で行われた多施設共同二重盲検無作為化第II相試験であり、2012年3月~2016年11月の期間に患者登録が行われた(米国国立がん研究所[NCI]などの助成による)。 対象は、病理学的に確認された切除不能な局所進行または転移を有する大腸腺がんの患者139例(平均年齢56歳、女性43%)であった。全例に、修正FOLFOX6(mFOLFOX6)+ベバシズマブが、14日(1サイクル)ごとに投与された。これらの患者が、ビタミンD3の高用量(69例)または標準用量(70例)を投与する群に無作為に割り付けられた。 高用量群には、1サイクル目に8,000IU/日(4,000IUカプセルを2つ)を投与し、その後のサイクルでは4,000IU/日を投与した。標準用量群には、全サイクルで400IU/日(400IUカプセル1つとプラセボカプセル1つ)を投与した。治療は、病勢進行、耐用不能な毒性、同意撤回のいずれかが発生するまで継続した。 主要エンドポイントは無増悪生存期間(PFS)とした。副次エンドポイントには、客観的奏効率(ORR)、全生存期間(OS)、血漿25(OH)D値の変化が含まれた。25(OH)D値は高用量群で有意に高い 全体のフォローアップ期間中央値は22.9ヵ月であった。両群とも、ビタミンD3の服用率の中央値は98%で、アドヒアランスは高かった。 PFS期間中央値は、高用量群が13.0ヵ月(95%信頼区間[CI]:10.1~14.7)、標準用量群は11.0ヵ月(9.5~14.0)であり、有意な差は認めなかった(非補正log-rank検定p=0.07)。多変量ハザード比(HR)は0.64(0~0.90、p=0.02)であり、有意差が認められた。 ORR(高用量群58%vs.標準用量群63%、差:-5%、95%CI:-20~100、p=0.27)およびOS期間中央値(24.3 vs.24.3ヵ月、log-rank検定p=0.43)にも、両群に有意差はみられなかった。 ベースラインの25(OH)Dの中央値は、高用量群が16.1ng/mL、標準用量群は18.7ng/mLであり、有意差はなかった(差:-2.6ng/mL、95%CI:-6.6~1.4、p=0.30)。1回目の病期再評価時(4サイクル終了時、約8週後)には、高用量群で有意に高値となり(32.0ng/mL vs.18.7ng/mL、差:12.8ng/mL、95%CI:9.0~16.6、p<0.001)、2回目の病期再評価時(8サイクル終了時、約16週後、35.2ng/mL vs.18.5ng/mL、16.7ng/mL、10.9~22.5、p<0.001)および治療終了時(34.8ng/mL vs.18.7ng/mL、16.2ng/mL、9.9~22.4、p<0.001)も、高用量群で有意に高い値を示した。 化学療法+ビタミンD3による最も頻度の高いGrade 3以上の有害事象は、両群とも好中球減少(高用量群35% vs.標準用量群31%)と高血圧(13% vs.16%)であった。Grade 3以上の下痢は高用量群で少なかった(1% vs.12%)。ビタミンD3関連の可能性がある有害事象として、高リン血症(高用量群の1例)と腎臓結石(標準用量群の1例)がみられたが、高カルシウム血症は認めなかった。 著者は、「これらの知見は、より大規模な多施設共同無作為化臨床試験によって、さらに検討を進めることを正当化するものである」としている。

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NSCLCの1次治療としてのペムブロリズマブ単剤の適応をTPS≧1%に拡大/FDA

 米国食品医薬品局(FDA)は、2019年4月11日、外科的切除または根治的化学放射線療法の候補ではないStageIIIまたは転移のある、PD-L1(TPS)1%以上の非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療としてペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)を承認した。この承認は1274例を対象に行われたKEYNOTE-042試験に基づくもの。 ペムブロリズマブ単剤投与の1次治療は従来、PD-L1(TPS)発現50%以上の転移を有するNSCLCに承認されていた。 KEYNOTE-042において患者は、ペムブロリズマブと化学療法(カルボプラチン+ペメトレキセドまたはパクリタキセル)に無作為に割り付けられ、ECOG PS、組織、地域、PD-L1発現(TPS≧50%対TPS 1~49%)によって層別化された。 主要評価項目はTPS≧50%、TPS≧20%、および全母集団(TPS≧1%)の全生存期間(OS)。この試験では、これらすべての集団においてペムブロリズマブ群で統計的に有意な改善を示した。 TPS≧1%の全母集団のOS中央値はペムブロリズマブ群および化学療法群でそれぞれ16.7および12.1ヵ月であった(HR 0.81、95%CI:0.71~0.93)。TPS≧20%サブグループのOS中央値はペムブロリズマブ群および化学療法群でそれぞれ17.7ヶ月および13.0ヶ月(HR 0.77、95%CI:0.64~0.92)。TPS≧50%サブグループのOS推定中央値は、ペムブロリズマブ群および化学療法群でそれぞれ20ヵ月および12.2ヵ月であった(HR 0.69、95%CI:0.56~0.85)。 KEYNOTE-042でペムブロリズマブ単剤投与群で多くみられる(10%以上)有害事象は、倦怠感、食欲減退、呼吸困難、咳、発疹、便秘、下痢、悪心、甲状腺機能低下症、肺炎、発熱、および体重減少であった。■関連記事PD-L1陽性肺がん1次治療におけるペムブロリズマブ単剤の効果(KEYNOTE-042)/Lancetペムブロリズマブ、非小細胞肺がん(PD-L1高発現)1次治療に承認/FDA

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EGFR変異肺がん1次治療におけるエルロチニブ+ベバシズマブの効果(NEJ026)/Lancet Oncol

 StageIVのEGFR変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)ではEGFR-TKIが標準療法であるが、1年程度で半数に耐性が起こる。そのため、さまざまな併用療法が試みられている。NEJ026はASCO2018で発表されたEGFR変異陽性NSCLCの1次治療に対するエルロチニブとベバシズマブの併用をエルロチニブ単剤と比較した第III相試験であるが、その中間解析の結果がLancet Oncology誌2019年4月8日号で発表された。・対象:化学療法歴のないStageIIIB~IVまたは再発のEGFR変異陽性NSCLC患者(PS 0~2)。・試験薬:ベバシズマブ3週ごと投与+エルロチニブ連日投与群(BE群)・対象薬:エルロチニブ単独連日投与群(E群)・主要評価項目:[主要評価項目]PFS、[副次評価項目]全生存期間(OS)、客観的奏効率(ORR)、病勢制御率(DCR)、奏効期間、安全性、QOLであった。 主な結果は以下のとおり。・228例の患者が登録され、BE群とE群に無作為に割り付けられた。(ともにn=114)。・追跡期間の中央値は12.4ヵ月であった。・主要評価項目であるPFS中央値は、BE群が16.9ヵ月(14.2~21.0ヵ月)、E群が13.3ヵ月(11.1~15.3ヵ月)で、BE群で有意な延長効果が確認された(HR:0.605、95%CI:0.417~0.877、p=0.016)。・副次評価項目のうち、ORRはBE群72%、E群66%、DCRはBE群95%、E群96%で両群間に有意差はなかった。・Grade3以上の有害事象発現率は、BE群88%、E群46%であった。■関連記事EGFR変異肺がんにおけるエルロチニブ・ベバシズマブ併用第III相試験(NEJ026)/ASCO2018

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S-1+ドセタキセルが、胃がんアジュバントのスタンダードに(JACCRO GC-07)/JCO

 Stage II/IIIの治癒切除胃がんに対する標準治療として、本邦ではS-1による術後補助化学療法が用いられる。一方、ドセタキセルは標準化学療法との併用で、進行期および周術期における生存ベネフィットが証明されている。Stage III胃がん患者に対するS-1+ドセタキセル併用療法とS-1単独療法を比較した無作為化第III相比較試験JACCRO GC-07(START-2)の中間解析の結果がJournal of Clinical Oncology誌2019年3月29日号で発表された。GC-07試験は1,100例の登録が計画されていたが、第2回中間解析において、効果安全性評価委員会より有効中止が勧告されていた。 対象は20~80歳の治癒切除(R0)を施行したStageIII胃がん患者。S-1+ドセタキセル併用群は、サイクル1(3週間):S-1(1.25m2未満 80mg、1.25以上1.5m2未満 100mg、1.5m2以上 120mg)1日2回day1~14日投与7日間休薬、サイクル2~7(3週間ごと):ドセタキセル(40mg/m2)day1、S-1 day1~14日投与7日間休薬、サイクル8以降(6週間ごと):S-1 day1~28投与14日間休薬。S-1単独群は、S-1 day1~28日投与14日間休薬を手術1年後まで継続した。主要評価項目は3年無再発生存率(RFS)。 主な結果は以下のとおり。・454例がS-1+ドセタキセル併用群に、459例がS-1群に無作為に割り付けられた。・追跡期間中央値は12.5ヵ月であった。・3年RFSはS-1+ドセタキセル併用群66%、S-1群50%と、S-1+ドセタキセル併用群で有意に延長した(HR:0.632、99.99%CI:0.400~0.998、p<0.001)。 ・RFS中央値はS-1+ドセタキセル併用群は未到達、S-1群は34.5ヵ月であった。・Grade3以上の有害事象は、S-1+ドセタキセル併用群では58%にS-1群では42%に発現した。とくに好中球減少、白血球減少がS-1+ドセタキセル併用群で多かった。 GC-07試験の結果を受けて、S-1・ドセタキセル併用療法がStageIII胃がんの標準的な術後補助療法の1つとなった。

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PD-L1陽性肺がん1次治療におけるペムブロリズマブ単剤の効果(KEYNOTE-042)/Lancet

 米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2018)で発表された、PD-L1発現1%以上の進行または転移を有する非小細胞肺がん(NSCLC)に対するペムブロリズマブ単剤の1次治療を評価する第III相試験KEYNOTE-042試験の結果が、Lancet誌オンライン版2019年4月4日号に掲載された。 KEYNOTE-042は32ヵ国、213施設で行われたオープンラベル第III相試験。・対象:PD-L1 TPS1%以上の進行または転移を有するNSCLC患者・試験薬:ペムブロリズマブ200mg/日3週ごと・対照薬:カルボプラチン+パクリタキセルまたはペメトレキセド3週ごと(治験担当医の選択による)・評価項目:[主要評価項目]全生存期間(OS)(TPS50%以上、20%以上、1%以上で評価)。[副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)と奏効率(ORR)(TPS50%以上、20%以上、1%以上で評価)、安全性(TPS1%以上) 主な結果は以下のとおり。・1,274例の患者が、ペムブロリズマブ単剤群(n=637)と化学療法群(n=637)に無作為に割り付けられた。・追跡期間中央値は12.1ヵ月であった。・TPS50%以上のOSは ペムブロリズマブ群20.0ヵ月、化学療法群12.2ヵ月と、有意にペムブロリズマブ群で延長した(HR:0.69、95%CI:0.56~0.85、p=0.0003)。・TPS20%以上のOSはペムブロリズマブ群17.7ヵ月、化学療法群13.0ヵ月と、有意にペムブロリズマブ群で延長した(HR:0.77、95%CI:0.64~0.92、p=0.0020)。・TPS1%以上のOSはペムブロリズマブ群16.7ヵ月、化学療法群12.1ヵ月と、有意にペムブロリズマブ群で延長した(HR:0.81、95%CI:0.71~0.93、p=0.0018)。・探索的研究でのTPS1~49%のOSはペムブロリズマブ群13.4ヵ月、化学療法群12.1ヵ月であった(HR:0.92、95%CI:0.77~1.11)。・TPS50%以上のPFSは、ペムブロリズマブ群7.1ヵ月に対し化学療法群6.4ヵ月(HR:0.81、p=0.0170)、TPS20%以上では6.2ヵ月対6.6ヵ月(HR:0.94)、TPS1%以上では5.4ヵ月対6.5ヵ月であった(HR:1.07)。・Grade3以上の治療関連有害事象発現は、ペムブロリズマブ群18%に対して化学療法群41%であった。■参考KEYNOTE-042試験(Clinical Trials.gov)■関連記事肺がん1次治療、PD-L1低発現でもペムブロリズマブ単剤?(KEYNOTE-042)/ASCO2018

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NSCLC:ニボルマブ治療後のドセタキセル・ラムシルマブ併用の有効性

 肺がんへの免疫療法後の化学療法による有効性を評価した論文が、国内で報告された。 今回、埼玉医科大学国際医療センターの塩野 文子氏らによる後ろ向き研究で、非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、抗PD-1抗体ニボルマブによる治療に病勢増悪後、ドセタキセルとラムシルマブを併用投与した場合、ニボルマブ投与なしのレジメンと比較して高い奏効率が得られた。Thoracic Cancer誌オンライン版2019年2月27日号に掲載。 本試験では、2016年2月~2017年12月に当施設でニボルマブを投与されたNSCLC患者152例から、ニボルマブ治療後にドセタキセルとラムシルマブを投与された20例について、全奏効率(ORR)、無増悪生存期間(PFS)、および全生存期間(OS)を調査した。 患者の年齢中央値は70歳(範囲:55~77歳)で、男性12例、女性8例だった。そのうち、16例が腺がん、3例が扁平上皮がん、1例がその他であった。 主な結果は以下のとおり。・18例(90%)に予防的なG-CSF製剤の投与が行われた。・20例の患者のうち、12例が部分奏効(PR)を達成し、ORRは60%だった。・6例が安定(SD)を示し、病勢コントロール率は90%だった。・PFSは169日、OSは343日だった。・消化器系の有害事象が19例の患者で観察された。

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展望とトピックス-第83回日本循環器学会学術集会

 第83回日本循環器学会学術集会(JCS2019)が2019年3月29~31日の3日間、横浜市にて開催される(会長:東京大学大学院医学系研究科循環器内科 小室 一成氏)。今年のテーマは、「循環器病学Renaissance-未来医療への処方箋-」。循環器に関わるさまざまな問題解決のための戦略と、これからの方向性を示すことを目的としている。海外応募含む2,194題が採択、JCSによる新しい取り組みとは? 世界の死亡率1位は、“がん”ではない-心筋梗塞なのである。現在、日本における主要死因別死亡数の1位はがんであるが、高齢化に伴い後期高齢者の循環器疾患による死亡者数は増え続け、がんを凌ぐ勢いである。そのような状況を踏まえ、2018年末には「脳卒中・循環器病対策基本法」が成立し、今後、わが国の循環器診療・研究は大きく変わっていくことが予想される。 現在、日本循環器学会は「脳卒中と循環器病克服5ヵ年計画」「脳卒中・循環器病対策基本法」「国際化」の3つの事業を軸に学会開催や専門医の育成などを行っているが、学会の国際化、2020年のAPSC(アジア太平洋心臓病学会)、2021年のWCC(世界心臓病学会)との合同開催を見越して、海外から座長や演者の誘致、性別、国籍などを問わない学会への参加などのダイバーシティ推進にも力を注いでいる。 そうした中、今回の取り組みとして、アジアの参加者も国の代表者として競うことができる「ドクターJCSアジアチャンピオンシップ」、ポスター発表の中から優秀な演題が採択される「ベストポスターセッション」、アプリのツイート機能を用いて演者への意見や質問を受け付けるなど、多彩な企画が盛り込まれている。JCSお薦めのセッション3選◆ガイドライン 2018年に改訂されたガイドラインは計7種。1)急性冠症候群ガイドライン、2)慢性冠動脈疾患診療ガイドライン、3)冠動脈血行再建ガイドライン、4)心筋症診療ガイドライン、5)不整脈非薬物治療ガイドライン、6)心疾患患者の妊娠・出産の適応、管理に関するガイドライン、7)先天性並びに小児期心疾患ガイドラインの改訂におけるポイント解説が各セッションで行われる。また、ガイドラインの利用方法が学べる、「症例から学ぶガイドラインセミナー」も開催される予定だ。◆不整脈 突然死の原因とされる先天性QT延長症候群やブルガタ症候群は特定の遺伝子変異が原因とされる遺伝性不整脈の1つである。これらに関する遺伝子検査による予後予測、そのメリットについて報告が予定されている。◆心不全 『心不全とは、心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です』-2017年10月に一般にも発信しやすい定義が公開。高齢化が進む日本では、終末期心不全における地域を巻き込んだ緩和ケア対策が必要となることから、2021年より『心不全療養指導士』の認定制度がスタートする。対象職種は看護師、保健師、薬剤師など。これを踏まえ、「チームで取り組む循環器症状の緩和ケア」と題し、日本緩和医療学会とのジョイントシンポジウムが開催される。また、2017年10月に発足した日本腫瘍循環器学会が取り組む化学療法関連心機能障害などについて、「Onco-Cardiologyの最前線」にて発表が予定されている。 新たな取り組みが盛り込まれた今大会の会長を務める小室氏は、「循環器疾患は、ほかの疾患に比べて患者会が少ない。学会が主導となって患者との距離を縮め、要望などを聞きながら密接な関係を築いていきたい」と、これまでの学会の伝統を継承しつつも新しい世界を創造していくことに意気込んだ。■参考日本循環器学会:第83回日本循環器学会学術集会■関連記事心不全を予防するために何をすべきか/日本循環器学会

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Trop-2に対する抗体と抗がん剤の複合体は転移性のTNBCに有効である可能性を示唆(解説:矢形寛氏)-1020

 trophoblast cell-surface antigen 2(Trop-2)は正常組織ではわずかしか発現していないのに対し、がん腫では広く発現していることが知られている。TNBCでは80%以上に発現しているようで、注目すべき標的となっていた。sacituzumab govitecan-hziyは、抗Trop-2抗体にSN-38(化学療法薬イリノテカンの活性代謝物)を結合させた抗体薬物複合体(ADC)であり、乳がん領域ではADCとしてT-DM1がすでに臨床応用されている。本試験は第1/2相試験であり、2レジメン以上の治療を受けたTNBC患者が対象となっている。非常に期待できる効果が示され、イリノテカンで心配された下痢などの患者にとってつらい有害事象も、重篤なものは少なく、治療による脱落例が少ないことは特筆すべきである。また、症例数は少なかったものの既治療との交差耐性もなさそうである。今後第3相試験が計画されているが、非常に期待される治療薬である。

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ごく早期に発現するがん悪液質の食欲不振とグレリンの可能性/JSPEN

 本年(2019年)2月、第34回日本静脈経腸栄養学会学術集会(JSPEN2019)が開催された。その中から、がん悪液質に関する発表について、日本緩和医療学会との合同シンポジウム「悪液質を学ぶ」の伊賀市立上野総合市民病院 三木 誓雄氏、教育講演「がんの悪液質と関連病態」の鹿児島大学大学院 漢方薬理学講座 乾 明夫氏の発表の一部を報告する。前悪液質状態の前から起きている食欲不振 伊賀市立上野総合市民病院 三木 誓雄氏は「がん悪液質の病態評価と治療戦略」の中で次のように発表した。 がん悪液質の出現割合は全病期で50%、末期になると80%にもなる。また、がん患者の30%は悪液質が直接の原因で死亡する。EPCR(European Palliative Care Research Collaborative)のガイドラインでは、がん悪液質は前悪液質(Pre-Cachexia)、悪液質(Cachexia)、不可逆的悪液質(Refractory Cachexia)の3つのステージに分けられる。ESPEN(European Society for Clinical Nutrition and Metabolism:欧州静脈経腸栄養学会)のエキスパートグループは、食欲不振・食物摂取の制限は前悪液質となる前から現れると述べている。 この食欲不振の原因は全身性炎症反応である。McMahon氏らの研究では、未治療の肺がん患者のCRPは、手術侵襲のピーク時を超える高値で持続するとされる。全身性炎症反応の最も大きな原因は、腫瘍から放出されるTNFα、IL-6、IL-1などの炎症性サイトカイン。「炎症性サイトカインが中枢神経に働きかけて、まず食欲が失われ、それに伴って悪液質が始まり、代謝異化に向かい体重減少し、最後にはサルコペニアに至る」という。悪液質の発現で変わるがん治療効果 全身性炎症はまた、がんの治療効果にも影響を及ぼす。全身性炎症が亢進すると、薬物代謝酵素である肝臓のチトクロームP450活性が低下する。薬の代謝が抑制されるため薬物毒性が増える。一方、代謝を受けて薬効を示すプロドラッグなどは効果が減弱する。Carla氏らの報告では、非悪液質患者の抗がん剤の毒性出現頻度は約20%だが、悪液質患者では約50%と上昇する。抗がん剤の治療成功期間(Time to progression)も、非悪液質に比べ悪液質では約400日短縮する。 三木氏らは、伊賀市立上野総合市民病院で、5%以上の体重減少があるがん化学療法施行消化器がん患者179例に対して栄養療法(EPA 1g/日含有栄養剤:300kcal)のトライアルを行った。結果、栄養支持療法なし群だけをみると悪液質(体重減少5%以上かつCRP 0.5以上)は20%に発現し、この悪液質発現群では非発現群と同様の化学療法を受けていても全生存期間が有意に短かった(p<0.01)。また、栄養支持療法あり群では、がん化学療法施行時中もCRPは上昇せず、骨格筋量、除脂肪体重は増加した。栄養支持療法なし群ではCRPは上昇し、骨格筋量、除脂肪体重は増加しなかった。がん化学療法継続日数は栄養支持療法あり群で80日延長した(388.8日 vs.308.0日)。これら栄養支持療法による生命予後改善は、悪液質患者に限ってみられた(全患者:p=0.84、悪液質患者:p=0.0096)。「栄養支持療法をすることで、悪液質患者を非悪液質患者と同じ抗がん剤治療の土俵へ上げることができたことになる」と三木氏は述べる。がん悪液質におけるグレリンの役割 鹿児島大学大学院 漢方薬理学講座 乾 明夫氏は「がん悪液質と関連病態」の中でグレリンについて次のように述べた。 グレリンは胃から分泌され、摂食促進、エネルギー消費抑制に働く。グレリンはグレリン受容体(成長ホルモン分泌促進受容体)に結合し、食欲促進ペプチドである視床下部の神経ペプチドY(NPY)に作用し食欲を増やす。また、下垂体前葉において成長ホルモンの分泌を促進しサルコペニアを改善する。 がん悪液質では、グレリンの相対的分泌低下とレプチンの相対的上昇があり、食欲抑制系が優位状態となっていることが、動物実験で示されている。そのため「外部からグレリンを投与し補充することは理論的」と乾氏は言う。動物実験では実際に、グレリンを投与すると空腹期強収縮が起こり、胃の中に食物があっても空腹期様の強収縮を起こすことも示されている。 グレリン化合物には、多くの開発品がある。anamorelinは、グレリン受容体に強力な親和性を有する経口のグレリンアゴニストである。すでに4つの第II相試験と2つの第III相試験を実施している。StageIII/IVの悪液質を有する非小細胞肺がん患者174例を対象にした第III相試験においては、主要評価項目である除脂肪体重(p<0.0001)に加え、全体重も有意に改善した(p<0.001)。握力はp=0.08で有意な改善は示さなかったものの、「悪液質の診断がついて早期に使えば、より大きな効果を期待できるであろう」と乾氏。 さらに、グレリン・NPYを活性化するものに人参養栄湯がある。グレリン分泌の促進とグレリン非依存性のNPY活性化という2つの作用を有する。食欲、サルコペニア、疲労・抑うつの改善など、重症がん患者に対する支持療法としてさまざまな効果がある。「将来はグレリンアゴニストと人参養栄湯をドッキングして使われることもあると思う」と乾氏は言う。

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“医療者ではできない”がん患者支援…がん経験者コミュニティ「5years」【Oncologyインタビュー】第3回

従来の患者会とは異なるがん患者とサバイバーのコミュニティサイト「5years」が医療者の間で話題だ。5yearsはどのようなコンセプトでどのような活動をしているのか。代表の大久保 淳一氏に聞いた。精巣腫瘍最終ステージからの復帰、5yearsの設立大久保氏は42歳で精巣腫瘍と診断された。診断時はすでに最終ステージのStageIIIで、首、腹、肺まで転移していた。2回目の手術*で後腹膜リンパ節郭清を受けたが、抗がん剤治療中に合併した間質性肺炎が急性増悪し、呼吸機能の3分の1が消失。医師からは、がんと合わせ5年生存率2割以下、助かっても酸素ボンベの生活と言われていた。しかし、10ヵ月の入院で奇跡的に一命を取り留める。8ヵ月後に復職、6年後には100キロマラソンにも復帰。さらにその2年後、闘病前の記録を更新して完走。社会を勇気づける話題として新聞、TVなどのメディアに取り上げられる。5yearsトップページメディアで取り上げられたこともあり、医師からがん患者への面会を要望される。定期診療の際、病棟を訪問してみると、以前の自分と同じ状況の方がたくさんいた。励ましの言葉をかけるものの、それ以上何もできない。復職していた大久保氏は会社で仕事している間も、命と向き合っている人がたくさんいることに葛藤を感じた。「生かされた意味があるのではないか」と真剣に考えた。そして、事業として社会に貢献したいという思いから、2014年に50歳で退職し5yearsを立ち上げた。*非セミノーマ精巣腫瘍では、化学療法後に腫瘍マーカーが正常な範囲に戻った段階において、大動脈周囲の後腹膜リンパ節を切除する手術を追加する。病気を乗り越えた先人の有益な情報を提供し、患者・家族が抱える問題を解決5yearsは現在webサイトを主体に活動。設立時から順調に登録者を増やし、2019年1月現在6,500人に達している。5yearsの取り組みは2つ、どちらも大久保氏が闘病時に欲しかったものだ。1つは“元気になった患者の情報”、もう1つは“(先にがんになった人たちに)相談に乗ってもらえる仕組み”である。まざまな治療修了者、治療中の患者の情報が掲載される“元気になった患者の情報”はわが国ではほとんど入手できない。大久保氏自身「闘病時は本当に欲しかった情報」だと言う。5yearsのトップページから「全登録者」のリンクをクリックすると、1,200人を超える(2019年2月時点)治療終了者や治療中の患者の一覧が見られる。そこには、それぞれの患者が、どんながんで、どういう治療やリハビリを受け、現在どのように過ごしているのか、といった詳細なプロフィール情報が紹介されている。自分と同じ病気をした人が、その後どのように生活しているのか、どこまで社会復帰しているのか。読んでいるだけでも、患者は勇気づけられるという。また、姉妹サイト「ミリオンズライフ」では、5yearsに登録されているがん経験者を大久保氏自身が取材し、がん闘病記を配信している。もう一つの“相談に乗ってもらえる仕組み”として、SNS「みんなの広場」とTV電話を使ったサポートサービス「経験つなぎ隊」を行っている。SNS「みんなの広場」がん患者・家族はさまざまな悩みや不安を抱えている。それを物語るように「みんなの広場」の相談・質問回数は2,600件を超える。患者や家族からの質問が掲載されると、経験者が一斉に教えてくれる。たとえば、主治医から胃全摘を勧められるものの、その後の生活が不安な患者に対しては、「全摘後も食事がおいしく取れている」「割合早く食べられるようになった」など相談者が聞きたい情報が即座に集まる。「経験つなぎ隊」は、相談を希望する患者と、全国の体験者をTV電話でつなぐ座談会だ。不安や悩みを抱える患者と同じ状況を経験した会員の双方をTV電話でつなぐ。治療選択は患者の時代といわれるが、そう簡単に決め切れるものではない。経験者たちの話を聞くことで勇気づけられ、社会復帰の後押しになることも多いという。また、最近はネットだけなくリアルな活動も実施している。登録者の要望で2年前からオフ会を都内と大阪で実施している。5yearsはプロフィール情報から共感する人やロールモデルを見つけられることもあり、「この人に会いたい」と全国から会場に集まってくる。コミュニケーションによる癒しとともに、「ロールモデルに会うことで社会復帰にもプラスになる可能性もある」と大久保氏は言う。「治療の話」は慎重に扱うみんなの広場には、さまざまな質問が来るが、すべてが掲載されるわけではない。投稿はすべて5years事務局が定款に照らして審査し、問題ないもののみ掲載される。病気と治療に関する質問は一切受け付けない。「素人が治療の話を出すのは罪深い。それは資格のある医療者のやること」と大久保氏。寄せられる投稿は生活情報が主だ。医療者が伝えられないことを伝える仕組み「われわれは患者に寄り添っているつもりだが、まだ患者は孤独なのか」と大久保氏は医療者から言われることがあるという。確かに医療者の丁寧な説明は重要である。しかし、それだけでなく、患者は、自分の身体に抗がん剤を入れた人、胃を切った人、同じ状況を経験している人たちの話を聞きたいと大久保氏は述べる。どんなに問題ないと思っていても医療者は、「大丈夫」という言葉は使いにくい。5yearsのSNSには「大丈夫」という言葉がたくさん出てくる。患者あるいは経験者だから言える言葉であろう。5yearsを知った医療者は「自分たちが伝えられないことを伝えてくれている」と言う。目指すは社会変革5years代表 大久保淳一氏寄付にだけ頼るのは継続性・発展性がない。大久保氏は5yearsを、社会貢献活動から事業収益を得て、その事業収益からまた活動を続けていく、日本最大の患者支援団体にしたいという。たとえば、臨床試験事業への参入だ。わが国の臨床試験の患者リクルーティングはとても厳しい状況で、50名の患者を集めるのに大変な苦労をする。患者は臨床試験情報が欲しいし、製薬会社や医師は適合患者が欲しいが、フィルターがあってマッチングできない。膨大かつ詳細な患者データがあり、かつ連絡が取れる団体なら、もっと効率的に臨床試験ができる可能性がある。大久保氏は10万人規模で患者を集めたいという。それ以降は他の疾患に広げようと思っているという。がん以外の疾患でも自分と同じ病気をしている人とつながりたいという要望は非常に強いそうだ。患者は常に不安を抱えている。わらにもすがる思いで、不適切な情報を入手し、不幸な方向に進むこともまれではない。5yearsは、適切な情報配信と患者が本当に求める癒しと希望を提供している場だ。医療者から患者・家族に紹介するには最高のコミュニティサイトだといえよう。1)日本最大級のがん経験者コミュニティ「5years」2)5yearsファンドレイジング3)がん患者100万人のための生活情報メディア「ミリオンズライフ」

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新規抗体薬物複合体、難治性の転移TNBCに有効/NEJM

 開発中のsacituzumab govitecan-hziyは、2レジメン以上の前治療歴のある転移性トリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者の3分の1に客観的奏効をもたらし、奏効期間中央値は7ヵ月以上に及ぶことが、米国・マサチューセッツ総合病院のAditya Bardia氏らが実施した第I/II相試験(IMMU-132-01試験)で示された。研究の詳細は、NEJM誌2019年2月21日号に掲載された。前治療歴のあるTNBC患者では、標準化学療法は奏効率が低く、無増悪生存(PFS)期間が短いことが知られている。本薬は、ヒト栄養膜細胞表面抗原2(Trop-2)を標的とするヒト化モノクローナル抗体に、トポイソメラーゼI阻害薬イリノテカンの活性代謝産物であるSN-38を、切断可能なリンカーで結合させた抗体薬物複合体であり、腫瘍に高濃度のSN-38を送達できるという。複数治療歴のある患者のバスケットデザインによる単群試験 研究グループは、TNBCを含む、転移病変を有する既治療の種々の固形がん患者を対象としたバスケットデザインのもとで、sacituzumab govitecan-hziyの多施設共同非盲検単群試験を進めている(Immunomedics社の助成による)。転移性TNBCについては、すでに69例の結果が報告されている。また、2016年、本薬は、米国食品医薬品局(FDA)により、2レジメン以上の前治療を受けた転移性TNBC患者の「画期的治療」に指定された。 本研究では、2レジメン以上の前治療歴のある進行性上皮がん患者が、21日を1サイクルとして1日目と8日目に、sacituzumab govitecan-hziy(10mg/kg体重)の静脈内投与を受けた。治療は、病勢進行または忍容できない毒性が発現するまで継続された。 エンドポイントは安全性、RECIST ver. 1.1に準拠して各施設で評価した客観的奏効率(完全奏効[CR]+部分奏効[PR])、奏効期間、臨床的有用率(CR+PR+6ヵ月以上持続する安定[SD]の割合)、PFS期間、全生存(OS)期間などとした。事後解析として、奏効率と奏効期間について、盲検下に独立中央判定での評価を行った。主な有害事象は骨髄・消化器毒性、PFS期間5.5、OS期間13.0ヵ月 2013年6月~2017年2月の期間に108例が登録された。ベースラインの年齢中央値は55歳(範囲:31~80)、男性が1例含まれた。全身状態(PS)は0が28.7%、1が71.3%で、前治療レジメン数中央値は3(2~10)だった。98.1%にタキサン系薬剤、86.1%にアンスラサイクリン系薬剤の投与歴があった。フォローアップ期間中央値は9.7ヵ月。 治療期間中央値5.1ヵ月(範囲:0.03~36.1)の間に、平均18.7回(1~102)、平均9.6サイクル(1~51)の治療が行われた。頻度の高い有害事象として、悪心(67%)、好中球減少(64%)、下痢(62%)、疲労/無力症(55%)、貧血(50%)、嘔吐(49%)などが認められた。 Grade3、4の有害事象は、好中球減少がそれぞれ26%、16%、貧血が11%、0%、白血球数の減少が8%、3%にみられた。発熱性好中球減少は10例(9.3%)に発現し、このうちGrade3が7例(6%)、Grade4は2例(2%)であった。重篤な有害事象は35例(32%)で報告され、発熱性好中球減少、嘔吐、悪心、下痢、呼吸困難の頻度が高かった。 治療期間中に4例が死亡した。3例(2.8%)が有害事象により治療を中止し、このうち2例は治療薬関連イベントによる中止であった。 奏効率は33.3%(36/108例、CR:3例、PR:33例)であり、臨床的有用率は45.4%(49/108例)であった。奏効例36例の奏効までの期間中央値は2.0ヵ月(範囲:1.6~13.5)、奏効期間中央値は7.7ヵ月(95%信頼区間[CI]:4.9~10.8)であった。独立中央判定では、奏効率が34.3%、奏効期間は9.1ヵ月と、各施設判定とほぼ同様であった。 PFS期間中央値は5.5ヵ月、6および12ヵ月時のPFS率はそれぞれ41.9%、15.1%であった。また、OS期間中央値は13.0ヵ月、6および12ヵ月時のOS率はそれぞれ78.5%、51.3%だった。 著者は、「タキサン系、アンスラサイクリン系薬剤の治療歴のある患者にも有効であったことから、前治療の細胞傷害性化学療法薬との交差耐性はないと示唆される」とし、「治療期間中央値(5.1ヵ月)は直前の抗がん剤治療(2.5ヵ月)よりも長く、これは治療困難な転移性TNBC患者における臨床活性に関して、さらなるエビデンスをもたらすものである」と指摘している。

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がんマネジメントに有用な栄養療法とは?

 2019年2月14、15日の2日間にわたり、第34回日本静脈経腸栄養学会学術集会が開催された。1日目のシンポジウム3「がんと栄養療法の実際-エビデンス?日常診療?」(司会:比企 直樹氏、鍋谷 圭宏氏)では、岡本 浩一氏(金沢大学消化器・腫瘍・再生外科)が「食道がん化学療法におけるCAWLと有害事象対策としての栄養支持療法」について講演。自施設での食道がん化学療法におけるがん関連体重減少(CAWL)・治療関連サルコペニア対策としての栄養支持療法について報告した。がん患者、体重減少の2つの理由 がん患者における体重減少の原因は主に2つに分類することができる。まず、がん誘発性体重減少(CIWL)。これは、がん細胞から分泌される炎症性サイトカイン(IL-1、IL-6、TNF-α)やホルモンによる代謝異常、タンパク質分解誘導因子(PIF)の増加が影響しているため、従来管理での改善や維持は、現段階でエビデンスが乏しい。一方、もう1つのCAWLは、消化管の狭窄や閉塞による通過障害、がん治療の有害事象(AE)に起因する体重減少のため、「タンパク質やエネルギーの補給、AE対策によって改善が可能」と岡本氏は述べた。化学療法前にサルコペニアを意識する 抗がん剤の投与量決定に重要となる体表面積を求めるには、体重が必要となる。「この時に筋肉量まで考慮しないと、AE発現率に影響が生じる恐れがある」と同氏はコメント。実際、筋肉量が少ない患者における化学療法では、AEが高率に発現するとの報告*もあり、この事象が原因でサルコペニアの増悪にまで発展してしまうのである。これは、抗がん剤治療によって小腸などの消化管でグルタミン消費量が増加すると、骨格筋分解によってグルタミンが消費され、筋タンパク分解・筋萎縮亢進に至るためである。よって、筋肉量の少ない患者では、「AE発現リスクが高くなるため、治療開始前に患者のサルコペニア有無を認識しておく必要がある」と、同氏は語った。 同氏らの施設では、食道がん患者の化学療法マネジメントとして、栄養バンドル療法(Oral cryotherapy、予防的G-CSF投与、Pharmaconutritionの概念に基づいた栄養補助)を実施し、対策に取り組んでいる。サルコペニアへの対応が長期予後に影響 同氏の施設では食道がん術前・導入化学療法として、2008年よりcStage II以上のSCCに対してFP療法(Day1:CDDP 80mg/m2、Day1~5:5-FU 800mg/m2)を、2012年よりcStage III以上のSCCに対してDCF療法(Day1:DTX 60mg/m2、CDDP 60mg/m2、Day1~5:5-FU 800mg/m2)を実施している。 これらの治療を施行した食道がん患者176例を対象とし、栄養バンドル療法に含まれる栄養剤の有用性を検討するために、2011年3月~2018年7月の期間、HMB・アルギニン・グルタミン配合飲料(以下、配合飲料)非投与群(76例)と配合飲料投与群(100例)に割り付け、後ろ向き研究を実施。方法は2012年5月以降、化学療法開始7日以上前より1日2包を経口もしくは経管投与とし、評価項目はAE発生率、重症度、腸腰筋面積、栄養学的指標の変化とした。その結果、DCF療法を行った配合飲料非投与群(15例)vs.配合飲料投与群(81例)で、総合効果判定PR以上:20% vs.54.3%(p=0.023)、腫瘍縮小割合:-11% vs.29.4%(p=0.065)と改善。同氏は「有意差はつかなかったものの、AEの軽減と奏効率の向上が望める」とし、腸腰筋面積の減少を有意に抑制(-5.2% vs.2.8%、p<0.001)したことを踏まえ、「サルコペニアの予防・治療の介入に有用であった」とコメントした。 また、3年生存率は26.7% vs.46.7%(p=0.098)と、サルコペニア対策が長期予後にも密接に関連していることが裏付けられる結果となった。 化学療法時の栄養バンドル療法導入を振り返り、同氏は「サルコペニアと体重減少の改善を図りながら、化学療法をより安全に行うことが可能となった。この方法によりCAWLやサルコペニアのみならず、QOL、さらなる奏効率向上も期待できる」と締めくくった。■参考*Prado CM, et al.Clin Cancer Res. 2007;13:3264-3268

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