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ASCO2019レポート 消化器がん(Upper GI)

レポーター紹介今年のASCOも消化器がん領域では免疫チェックポイント阻害薬が主役であった。胃がん初回化学療法におけるペムブロリズマブの効果を検証したKEYNOTE-062試験の結果が報告された。また、ポスターセッションでは、免疫チェックポイント阻害薬の治療効果をより高めるために、血管新生阻害薬との併用効果を検討したり、食道がん術前化学放射線療法に免疫チェックポイント阻害薬を併用した試験が多く認められた。膵臓がんでは、gBRCA陽性患者に対するPARP阻害薬のメンテナンス治療の効果をみた試験の結果がプレナリーセッションで報告された。また、支持療法では、消化器がんで用いることが多い、50mg/m2以上のCDDPを使用する患者に対して、4剤併用の有効性を検証したJ-FORCE試験が報告された。LBA-4007 胃がん初回化学療法KEYNOTE-062試験(Non-colorectal, Oral presentation)胃がんにおける免疫チェックポイントの位置付けは、3次治療以降でのニボルマブの単剤投与であり、昨年報告されたKEYNOTE-061試験の結果では、2次治療としてのペムブロリズマブは、パクリタキセル単剤に対してCPS(Combined Positive Score:腫瘍細胞および腫瘍浸潤免疫細胞でのPD-L1陽性割合)が1%以上の胃がんでの優越性を示すことはできなかった。今回は初回化学療法例を対象に、5-FU(あるいはカペシタビン)+CDDP療法(C群)に対する、ペムブロリズマブ併用療法(C+P群)の優越性と、単剤療法(P群)の非劣性を検証したKEYNOTE-062試験の結果が報告された。対象はCPS 1%以上の切除不能再発胃がんで、763例が登録された。日本を含む東アジアからは約25%が登録され、欧州・米国・オーストラリアからの登録が約60%と多数を占めた。主要評価項目は4つあり、C群に対するP+C群の無増悪生存期間(PFS)の優越性(≧CPS 1)、全生存期間(OS)の優越性(≧CPS 1)および(≧CPS 10)、P群のOSでの非劣性(≧CPS 1)であった。C群とP群の比較においては、OS中央値、12ヵ月OS割合、24ヵ月OS割合は、C群とP群でそれぞれ11.1ヵ月と10.6ヵ月、46%と47%、そして19%と27%であり、HR:0.91(99.2%CI:0.69~1.18)と、HRの信頼区間の上限は、あらかじめ決めておいた非劣性マージン1.20を下回ったため、P群の非劣性が示された。探索的な検討であるが、≧CPS 10の患者群では、24ヵ月生存割合がC群とP群で22%と29%と、よりP群で良好な結果であった。しかし、PFS中央値は、C群とP群で6.4ヵ月と2.0ヵ月、12ヵ月PFS割合は19%と14%と、P群で不良な傾向であった。後治療はP群で52.8%実施されていることから、後治療を含めた治療により、長期生存が得られていると考えられた。C群とC+P群の比較では、OS中央値はC群とC+P群でそれぞれ11.1ヵ月と12.5ヵ月、12ヵ月OS割合は46%と53%、24ヵ月OS割合は19%と24%であり、HR:0.85(95%CI:0.70~1.03、p=0.046)と、統計学的に有意な生存期間の延長は認められなかった。驚いたことに、≧CPS 10の患者群でも両者のHRは0.85であり、より有効性が期待できる手段においてもC+P群の効果は変わらなかった。有害事象はいずれの群も許容される範囲内であった。まず、CPSにて対象を絞っても、他のがん種で示されているような、プラチナ併用初回化学療法に対する免疫チェックポイント阻害薬の併用効果が胃がんでは示せなかったこと、C+P群で思ったほど治療効果が持続していないこと、KEYNOTE-061試験で示されたCPSでの対象選択が、併用群では打ち消されていることなど、いくつかのポイントがクエスチョンとして挙がってくるが、今後の検討が必要である。非劣性が示され、CPS 1以上の胃がんでの初回化学療法の選択肢となりうるとされたペムブロリズマブも、効果のある症例は長く持続するが、半数の患者が2ヵ月で病勢進行を来している。従来の化学療法を受ける機会を逸しないためにも、対象は慎重に選択されるべきで、CPS 10以外にも効果のありそうな対象が絞り込める情報が必要である。また、薬剤コストの面についても問題が指摘されており、臨床的意義についてディスカッションが必要である。また、現在実施中である、ATTRACTION-4試験(胃がん初回化学療法SOX/XELOX±ニボルマブ)、CheckMate-649試験(胃がん初回化学療法XELOX/FOLFOX±ニボルマブ、およびニボルマブ+イピリムマブ)の比較試験の結果がどうなるのか、同じ結果なのか、異なる結果になるのか、大変興味深い。消化管がんに対する免疫チェックポイント阻害薬と血管新生阻害薬、放射線療法の併用(Non-colorectal, Developmental therapeutics, poster)KEYNOTE-062試験の結果で、改めて消化管がんの研究者が思ったことは、胃がんは免疫原性が低い、CPSも堅牢なバイオマーカーではなく、化学療法との併用も微妙で、より強力な治療が必要、である。以前より、ニボルマブ(Nivo)とラムシルマブの併用が有効性を高めることが報告されていたり、肝細胞がんでのペムブロリズマブとレンバチニブとの併用で、奏効割合の改善が報告されたりしていたが、同様に、免疫チェックポイント阻害薬と血管新生阻害薬の併用療法を検討した、Nivoとレゴラフェニブ(Rego)の併用Phase I試験の結果が報告された(#2522)。REGONIVO試験では、標準投与量のNivoにRegoを通常量の半量である80mgより併用し、毒性をみながら増量し安全性をみる試験である。Regoが腫瘍関連マクロファージ(TAM)を抑えることで免疫抑制状態を解除し、抗腫瘍効果を高めるということが報告されている。胃がん、大腸がんそれぞれ25例が登録されたが、Rego 80mgとRego 120mgのコホートでは用量制限毒性(DLT)を認めず、160mgへ増量された。160mgのコホートでは、3例中3例にDLT(皮膚毒性、蛋白尿、消化管穿孔)が認められ、また120mgのコホートでも継続投与にて頻繁にGrade3の皮膚毒性が認められたため、Rego 80mgが推奨投与量とされた。奏効割合はマイクロサテライト安定(MSS)大腸がんに対して36%、胃がんに対して44%と高い効果を認め、さらなる治療開発が期待されている。また、胃がん初回化学療法例に対して、XELOX療法に抗PD-1抗体であるcamrelizumabを併用し、4~6回投与した後、XELOXを休止、血管新生阻害薬であるapatinibとcamrelizumabの併用療法によるメンテナンスを行うPhase II試験(#4031)では奏効割合58.6%、食道扁平上皮がんの初回化学療法例に対するリポソーマルパクリタキセルと、ネダプラチンにcamrelizumabとapatinibの併用を評価したPhase II試験(#4033)では奏効割合80%と報告されている。いずれも併用により毒性が強くなるため、血管新生阻害薬の単剤での投与量を大幅に減量する必要があるが、有効性は、探索的な検討ながら、良好にみえる。さらなる結果を待って、使いどころを検討する必要がある。肺がんなど他がん腫ですでに示されている、放射線療法と免疫チェックポイント阻害薬の探索的な試験の結果が報告されている。韓国からは食道扁平上皮がんに対する術前化学放射線療法にペムブロリズマブを併用したPhase II(#4027)が報告された。病理学的完全奏効割合(pCR)は46.1%と高く、懸念された間質性肺炎は認められなかったが、手術症例26例中2例がARDSなどの肺障害により死亡しており、術前のペムブロリズマブの影響が懸念された。また食道胃接合部腺がんに対しては、欧米での標準治療の1つである術前カルボプラチン+パクリタキセル+放射線療法に、PD-L1抗体であるアベルマブを併用し、術後にもアベルマブを継続するPhase I/II試験(#4041)が行われ、7例のPhase I部分のみの発表であったが、重篤な毒性はなく、pCR割合も43%と比較的良好であった。また、術前化学放射線療法後に切除を行った食道胃接合部腺がんの術後にデュルバルマブを1年投与するPhase II試験(#4058)では、重篤な有害事象はないと報告されている。今後の免疫療法は、“併用療法”“周術期”といったところへシフトしていくと思われる。LBA4 膵臓がんに対するPARP阻害薬メンテナンス:POLO試験(Plenary session)PARP阻害薬であるオラパリブは、生殖細胞系列遺伝子のBRCA(gBRCA)に変異のある乳がんや卵巣がんに用いられているが、他がん腫での検討はまれである。POLO試験では、gBRCA1/2に変異のある進行膵がんに対してプラチナ併用化学療法を行い、進行がみられなかった患者をオラパリブとプラセボに割り付け、メンテナンス治療としての有効性をみた試験である。gBRCA1/2変異は、3,315例の患者をスクリーニングし、247例(7.4%)に認められ、うち、92例がオラパリブ群、62例がプラセボ群に割り付けられた。前治療はFOLFIRINOXが約80%と多く、治療効果も群間で差異はなかった。主要評価項目である無増悪生存期間中央値はオラパリブ群7.4ヵ月、プラセボ群3.8ヵ月であり、HR:0.53と有意に改善が認められた。生存期間を評価するにはイベントは不十分であるが、中央値オラパリブ群18.9ヵ月、プラセボ群18.1ヵ月と差を認めなかった。有害事象は予想されたものであった。また、すべてのサブグループにて同様の傾向であった。日本ではこの試験は実施されておらず、この結果が今後の日常診療にどのように取り込まれるのか、今後注目される。#11503 標準的制吐薬に対するオランザピンの上乗せ効果を検証したJ-FORCE試験(Symptom and Survivorship, Oral presentation)高度催吐性化学療法(Highly Emetogenic Chemotherapy:HEC)における標準制吐療法である、アプレピタント(APR)、セロトニン受容体拮抗薬、デキサメタゾン(DEX)にオランザピン(OLZ)10mgを併用することが遅発期の制吐に有効であることが証明されているが、眠気が問題点であった。この試験では予備的試験を行ったうえ、OLZ:5mgを試験治療群とし、プラセボ群に対する、遅発期(CDDP投与開始24時間後から120時間以内)の嘔吐完全抑制割合における優越性を検証した。705例が登録され、試験治療群が354例、プラセボ群が351例、患者背景は、55歳以上が80%以上、男性が65%、肺がん(50%)、食道がん(20%)、婦人科がん(10%)、その他であった。主要評価項目である遅発期の嘔吐完全抑制割合は、プラセボ群の66%に対して、試験治療群が79%(p<0.001)と有意に優れた結果であった。また、副次的評価項目である急性期の嘔吐完全抑制割合は、プラセボ群の89%に対して、試験治療群が95%(p=0.002)、全期間の嘔吐完全抑制割合は、プラセボ群の64%に対して、試験治療群が78%(p<0.001)と有意に良好な結果であった。試験治療群の有害事象のうち、全グレード(Grade3)の眠気が43%(0.3%)、めまいが8%(0%)と口腔内乾燥が21%(0%)と有意に多かったが、両群ともにGrade4は認めなかった。しかしながら、治療期間中の生活経過記録の解析結果から、試験治療群はプラセボ群と比較して有意(p<0.05)に良好であったことが示され、新たな標準治療であることが示された。日本の支持療法研究グループで行われた臨床試験が、世界の標準治療を塗り替えた非常に意義深い試験である。今回のASCOでも依然として免疫チェックポイント阻害薬の演題が多数を占めた。単剤の治療の時代から、併用療法や集学的治療へシフトしている。また、免疫細胞療法などの演題も多数認められ、新時代の到来を予感させられる。また、J-FORCE試験がOral Presentationに選ばれるなど、支持療法のエビデンス創出が日本でも盛んになってきており、今後にも期待したい。

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1人でも多くの人に正しい理解を―『がん悪液質ハンドブック』発信。シリーズがん悪液質(3)【Oncologyインタビュー】第7回

昨今、がん悪液質に関しては認知度が徐々に高まっているが、決定打となる治療方針はないのが実情である。そのような状況下で日本がんサポーティブケア学会は、2019年3月より、同学会監修によるガイドブックのダイジェスト電子版を学会HPで公開している。こうした取り組みについて、同学会で作成の実務を担当した、静岡県立静岡がんセンター 呼吸器内科の内藤 立暁氏に聞いた。―まず『がん悪液質ガイドブック』電子版作成の経緯を教えていただけますか。がん悪液質に関するガイドライン、治療指針は、欧州のEuropean Palliative Care Research Collaborative(EPCRC)によるガイドラインを除くと、世界的にもほとんどないのが現状です。日本では日本緩和医療学会、日本静脈経腸栄養学会などの関連ガイドラインの中で一部言及がある程度で、やはりまとまったマニュアル、ガイドラインはありませんでした。こうした中、日本がんサポーティブケア学会(JASCC)代表理事である田村 和夫先生(福岡大学医学部 総合医学研究センター 教授)から、最新研究をまとめた英文学術書『Cancer cachexia: mechanisms and progress in treatment(がん悪液質:機序と治療の進歩)』(著者:Egidio Del Fabbroら)の翻訳書を学会から発行しようという提案があり、そこから、学会内に高山 浩一先生(京都府立医科大学 呼吸器内科 教授)を部会長としたJASCC Cachexia部会で翻訳が始まりました。その結果、学会監修で『がん悪液質:機序と治療の進歩』が発刊されましたが、非常に膨大なものなので読み切ることは難しく、コンパクトにまとめたものが欲しいとの要望がありました。その要望にお応えしたのが、2019年3月にJASCCより発刊された全16ページの『がん悪液質ハンドブック』(以下ハンドブック)です。―ハンドブック作成の目的、無料の電子版を公表した意図を教えていただけますか。ハンドブックを作成した目的は大きく3つあります。1つ目は、がん悪液質の正しい理解を広め、社会の認知度を高めることです。臨床現場では「がん悪液質は終末期の緩和病棟などで起こる症状」という誤った固定概念が根付いてしまっています。しかし最近、がんの種類によっては、手術で治癒が見込める症例であっても、術前の体重や骨格筋の減少が術後転帰を悪化させることが報告されています。つまり進行がんだけでなく、治癒可能な早期のがんでも悪液質はすでに共存しているのです。この事実を医療従事者が広く知り、イメージを変えてもらいたいのです。2つ目は、医療従事者に、がん患者さんの体重への関心を高めていただくことです。がん悪液質の診断には体重測定が重要ですが、がん治療を専門とする医療機関であっても、定期的な体重測定の習慣が根付いていないことが少なくありません。がん患者さんの体重減少の重要性が認知されていないのです。体重を定期的に測定することによって、医療従事者にも患者さんにも栄養状態の変化に関心を持っていただきたいのです。3つ目の目的は、医師以外の医療従事者にも気軽に読んでいただき、多職種の連携に役立てていただくことです。ハンドブックでも述べたように、がん悪液質の治療は医師の力だけでは難しいのです。栄養士の栄養管理、理学療法士による運動療法、看護師の生活指導、薬剤師の薬剤管理、心理療法士の心理介入など、がん悪液質の治療には多職種の協力が不可欠です。そのため、内容を絞り込み、図説を多用することで、多くの職種の皆さんに受け入れやすいハンドブックとなるよう心がけました。―ガイドブックの内容について簡単にご説明ください画像を拡大する内容は3章立てで、第1章ではがん悪液質がどのような症状で、臨床転帰にどのような影響を及ぼすかを解説しています。それは、がん悪液質は生命予後に影響するという大枠はもちろんのこと、悪液質があれば、化学療法の効果減弱と副作用増加を引き起こし、結果として治療の継続性に関わる疾患であるという点です。また、筋肉量の減少に伴う体重低下と食欲の低下は、外見の変貌なども相まって外出・外食を控える、その結果、家族との軋轢が生じるなど、心理面の影響も大きいのです。加えて、前述のEPCRCガイドラインで示されている悪液質のステージも紹介しています。このステージ分類では「前悪液質」→「悪液質」→「不応性悪液質」という段階を踏み、すでに「前悪液質」で集学的介入の必要性があることをうたっています。前述した悪液質に対する誤ったイメージは、「不応性悪液質」と呼ばれる最終段階のみを悪液質だと思い込んでいるためではないかと考えられます。画像を拡大する第2章では、悪液質の症状と現在わかっているそのメカニズムを解説しています。骨格筋減少では慢性的炎症とそれに伴うサイトカインの分泌物が特殊な代謝状況を引き起こしていること、また脂肪組織から分泌され食欲を抑えるホルモン「レプチン」と、胃から分泌され食欲を増進するホルモン「グレリン」のバランスが治療の鍵を握ることなど、図解を用いて説明しています。第3章では、現在までにわかっている各種治療の実態を解説しています。早期診断・早期介入の必要性、薬物だけでなく栄養、運動、社会心理面など、集学的介入の必要性を示しています。要は、がん悪液質の治療はどこか1つのスイッチを押せばよいというのではなく、多職種連携のもとで集学的に取り組む必要性があることが、この章でお伝えできればと思います。また、新規に開発されている薬物療法も紹介しています。―臨床現場でどのような活用を期待していますか?まずは病棟や外来で設置や配布し、看護師、薬剤師、理学療法士など多くの医療従事者に目を通していただき、がん悪液質の認知を広めてほしいということに尽きます。患者さんに見ていただいても差し支えないとも思っています。患者さんにとってはやや難しい内容かもしれませんが、「がん悪液質」という病名とその概要を大まかに知っていただき、医療スタッフと体重についてお話するきっかけになるかもしれません。医療現場でこのような対話が増えることが、がん悪液質の早期発見と早期治療の鍵となると考えています

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頭頸部扁平上皮がん1次治療にペムブロリズマブが新たなスタンダードに(KEYNOTE-048)/ASCO2019

 転移のある頭頸部がんでは従来から治療薬の選択肢が少ないことで知られ、免疫チェックポイント阻害薬の登場により全生存期間(OS)の延長効果が認められるようになったことが注目されている。 これまで頭頸部がん1次治療としてのペムブロリズマブ+化学療法はセツキシマブ+化学療法に比べて、PD-L1発現陽性およびすべての集団でOSを改善することがオープンラベル無作為化比較第III相臨床試験「KEYNOTE-048」の最終解析からわかった。同試験についてオーストラリアのPeter MacCallum Cancer Centreの Danny Rischin氏らが米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2019)で発表した。頭頸部扁平上皮がんでの新たな標準治療であることを支持 同試験の対象は、未治療の再発または転移のある頭頸部(中咽頭、口腔、喉頭)扁平上皮がん患者882例。登録患者はペムブロリズマブ3週ごと最大35サイクルに300例、ペムブロリズマブ+化学療法(カルボプラチンまたはシスプラチン+5-FU)3週ごと6サイクル後にペムブロリズマブ3週ごと(最大35サイクル)に281例、EXTREME試験と同じセツキシマブ+化学療法(前述に同じ)3週ごと6サイクル後にセツキシマブ毎週投与の301例に無作為に割り付けられた。 主要評価項目はPD-L1陽性スコア(CPS)20以上、CPS1以上、頭頸部扁平上皮がん全患者でのOS、盲検下独立中央判定委員会が評価した無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目はCPS20以上、CPS1以上、全患者での6ヵ月PFS率、12ヵ月PFS率、奏効率、ベースラインからのQOLスコアの変化、安全性であった。 ペムブロリズマブ+化学療法群とセツキシマブ+化学療法の比較では、CPS20以上のOS中央値はペムブロリズマブ+化学療法群14.7ヵ月、セツキシマブ+化学療法群11.0ヵ月で、ペムブロリズマブ+化学療法群が有意なOS延長効果を示した(HR:0.60、95%CI:0.45~0.82、p=0.0004)。CPS1以上のOS中央値はそれぞれ13.6ヵ月、10.4ヵ月で、ペムブロリズマブ+化学療法群の有意なOS延長効果が認められた(HR:0.65、95%CI:0.53~0.80、p<0.0001)。全患者でのOSの比較ではHR0.72(0.60~0.87)、OS中央値はペムブロリズマブ+化学療法群が13.0ヵ月、セツキシマブ+化学療法群が10.7ヵ月で有意な延長効果を示した。また、ペムブロリズマブ+化学療法群のOSは全サブグループで優れていた。 PFS中央値は、CPS20以上でペムブロリズマブ+化学療法群が5.8ヵ月、セツキシマブ+化学療法群が5.2ヵ月でHR0.73(0.55~0.97、p=0.0162)、CPS1以上では両群とも5.0ヵ月、HR0.82(0.67~1.00)で、いずれも有意差は認められなかった。奏効率はCPS20以上で、ペムブロリズマブ+化学療法群が42.9%、セツキシマブ+化学療法群が38.2%、CPS1以上ではそれぞれ36.4%、35.7%だった。なお奏効期間中央値はCPS20以上でそれぞれ7.1ヵ月、4.2ヵ月、CPS1以上でそれぞれ6.7ヵ月、4.3ヵ月だった。 一方、ペムブロリズマブ単独群とセツキシマブ+化学療法群との比較では、頭頸部扁平上皮がん全患者のOS中央値はそれぞれ11.5ヵ月、10.7ヵ月でHR0.83(0.70~0.99、p=0.0199)。CPS20以上でのOS中央値はペムブロリズマブ単独群が14.8ヵ月、セツキシマブ+化学療法群が10.7ヵ月、HR0.58(0.44~0.78)、CPS1以上でのOS中央値はそれぞれ12.3ヵ月、10.3ヵ月、HR0.74(0.61~0.90)。 PFS中央値はそれぞれ2.3ヵ月、5.2ヵ月でHR1.34(1.13~1.59)。奏効率はペムブロリズマブ単独群が16.9%、セツキシマブ+化学療法群が36.0%だった。 全有害事象発現率はペムブロリズマブ単独群が96.7%、ペムブロリズマブ+化学療法群が98.2%、セツキシマブ+化学療法群が99.7%。グレード3以上の有害事象は、それぞれ54.7%、85.1%、83.3%だった。 この結果について、Rischin氏はペムブロリズマブ+化学療法は「セツキシマブ+化学療法に比べ、CPS20以上、CPS1以上、さらに全患者でOSを改善し、同等の安全性プロファイルを示した」と述べるとともに、「ペムブロリズマブ単剤はCPS20以上、CPS1以上の患者でのOSは優れており、全患者では非劣性であった。また安全性は良好であった」と評した。そのうえで「このデータはペムブロリズマブ+化学療法、ペムブロリズマブ単独療法は再発および転移のある頭頸部扁平上皮がんでの1次治療の新たな標準治療であることを支持している」と結論付けた。

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ASCO2019レポート 肺がん

レポーター紹介2019年のASCO、とくに肺がん領域は、このところ続いた免疫チェックポイント阻害薬による新境地の開拓の連続とは異なり、比較的おとなしいエビデンスの報告が主体であった。その中でも、RELAY試験の中川先生、JIPANG試験の劔持先生、COMPASS試験の瀬戸先生、そして大規模な外科切除データに基づく発表が注目された津谷先生といった日本人演者のOral presentationが多数報告され、活況を呈した。今回はその中から、とくに注目すべき演題について概観したい。RELAY試験EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんの患者を対象に、試験治療としてのエルロチニブとラムシルマブの併用療法を標準治療としてのエルロチニブと比較したRELAY試験の結果が報告された。本試験には、Exon19欠失変異、Exon21 L858R変異があり、PS 0-1、血管新生阻害薬の一般的な適格規準を満たし、脳転移のない患者が合計449例登録された。主要評価項目はPFS、副次評価項目は安全性、OS、奏効割合などが設定されている。本試験はこれまでのEGFR-TKIと血管新生阻害薬の試験に比べ多数の症例が登録されており、また、アジア例が77%、そのうち日本人が多数を占めるという点も特徴的である。主要評価項目であるPFS中央値は、試験治療群で19.4ヵ月、標準治療群で12.4ヵ月、ハザード比は0.591(95%信頼区間0.461~0.760)であり、有意にエルロチニブ+ラムシルマブ併用群が良好な成績であった。探索的に実施されたPFS2の解析でも、ハザード比0.690(95%信頼区間0490~0.972)であった。安全性に関しては、Grade 3以上の有害事象が試験治療群で72%、標準治療群で54%報告されており、両者の違いは多くは高血圧であり、皮膚障害などの有害事象はCTCAE Gradeでは大きな違いを認めなかった。脳転移のない患者集団であることは考慮する必要があるものの、PFSの中央値でオシメルチニブのFLAURA試験と同等の結果が得られたことは、今後明らかになる全生存期間の解析に期待が持たれる結果であった。ゲフィチニブ+カルボプラチン+ペメトレキセド併用療法EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんの患者を対象に、試験治療としてゲフィチニブとカルボプラチン+ペメトレキセド療法を併用する治療と、標準治療としてのゲフィチニブを比較するPhase III試験の結果が、インドから報告された。本試験には、Exon 19欠失変異、Exon 21 L858R変異があり、PS 0~2の患者が350例登録された。主要評価項目はPFS、副次評価項目はOS、安全性、奏効割合などであった。本試験に登録された患者の年齢中央値は50代半ばであり、PSに関しては2の患者が21~22%登録されており、わが国で実施されたNEJ009試験とは患者集団が異なる可能性が高い試験である。PFS中央値は試験治療群で16ヵ月、標準治療群で8ヵ月であり、ハザード比0.51(95%信頼区間0.39~0.66)と、良好な成績であった。OSについては試験治療群の中央値は到達しておらず、ハザード比は0.45(95%信頼区間0.31~0.65)であり、副次評価項目ながら併用療法群が良好な結果であった。NEJ009試験で話題となったゲフィチニブ、カルボプラチン+ペメトレキセド療法がPDとなった後のPSや腫瘍量などについての情報は開示されなかったものの、同様にOSを延長する結果が得られたことは評価に値する。ただ、FLAURA試験の結果でオシメルチニブが初回治療で注目されており、オシメルチニブを基本として今回と同様のデザインでどのような結果が得られるか、注目がさらに集まっている。JCOG1210/WJOG7813L試験75歳以上の高齢者を対象として、試験治療としてのカルボプラチン+ペメトレキセド療法と標準治療ドセタキセルと比較したPhase III試験である、JCOG1210/WJOG7813L試験の結果も報告されている。本試験には未治療、PS 0~1の75歳以上の非扁平上皮非小細胞肺がん患者433例が登録され、試験治療としてカルボプラチン+ペメトレキセド併用療法とその後の維持療法が、標準治療としてドセタキセル単剤療法が実施された。主要評価項目はOSの非劣性であり、非劣性マージンはハザード比で1.154に設定された。登録された患者の年齢中央値は78歳、試験治療群では最高87歳、標準治療群では最高88歳の高齢患者が登録されている。OSは中央値で試験治療群が18.7ヵ月、標準治療群が15.5ヵ月、ハザード比は0.850(95%信頼区間は0.684~1.056)であり、カルボプラチン+ペメトレキセド併用療法のドセタキセルに対する非劣性が証明された。安全性については、試験治療群で貧血が多い傾向にあり、標準治療群で白血球減少、好中球減少が多い傾向を認め、治療関連死はそれぞれ2例ずつ報告されている。FACT-LCを用いたQOL評価では、試験治療群が良いことが示されている。非劣性が証明され、かつ有害事象やQOLでも試験治療群が想定されたとおり良好な結果であったことを受け、カルボプラチン+ペメトレキセド併用療法とそれに続くペメトレキセド維持療法が、75歳以上の高齢者における標準治療と考えて問題ない結果であった。サブセット、フォローアップ今回、肺がん領域では、主たる結果が発表済みの試験においても盛んにサブセット解析、フォローアップ解析の結果が報告された。IMpower150試験は、進行期非小細胞肺がんにおいて、カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブにアテゾリズマブを上乗せすることの優越性を示したPhase III試験である。本試験ではこれまでのベバシズマブを用いた試験の結果を受け、肝転移の有無が層別化因子に加えられていた。今回報告された肝転移の有無で分けられたサブセット解析では、肝転移を有する症例で、カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ療法に対し、アテゾリズマブを加えることで、PFS、OSのハザード比がそれぞれ0.41(95%信頼区間0.26~0.62)、0.52(95%信頼区間0.33~0.82)と、いずれも明らかに改善していることが認められた。AACRでは、KEYNOTE189試験において、層別化因子には含まれていなかったものの肝転移の有無でのサブセット解析結果が報告されており、同様に肝転移症例でも有効であることが示されている。肝転移症例が予後不良であることはすでに報告されており、この患者集団においてもプラチナ併用療法と免疫チェックポイント阻害薬の併用療法の意義を示すエビデンスが積み重ねられている。一方、フォローアップデータとしては、KEYNOTE189試験のアップデート、PACIFIC試験のアップデート等が報告され、いずれも良好な傾向が維持されていることが示されている。なかでも注目を集めたのはLate breakingで報告されたKEYNOTE001試験の5年生存のデータである。KEYNOTE001試験は、ペムブロリズマブのPhase I試験であり、この中から同薬の安全性や至適投与量のデータだけでなく、PD-L1のTPSカットオフについての知見も得られている。今回報告された5年生存のデータでは、未治療患者、治療歴のある患者それぞれについて、PD-L1発現別のサブセットを含め長期生存のデータが評価された。5年生存割合は、未治療患者では23.2%、治療歴あるセカンドライン以降の患者では15.5%であった。すでにニボルマブの長期生存のデータが報告されており、既治療の患者集団での成績は大きく異ならない印象であった。一方、未治療の患者における23.2%の5年生存割合はこれまで報告されていなかった情報であり、初回治療から免疫チェックポイント阻害薬を使用する場合の5年生存割合の新たな指標として受け止められる結果であった。PD-L1 TPS別の解析結果でも、PD-L1 50%以上の集団では、未治療、既治療問わず、5年生存割合が25%を超えるという驚くべき結果であった。ただし、Phase I試験のデータであるなど、対象となった患者集団は日常臨床の患者集団とは異なる、具体的にはより状態が良い可能性もあり、この結果が一般臨床でも再現されるかは、今後の追加情報を待つ必要がある。周術期治療NEOSTAR:術前のニボルマブ+イピリムマブ併用療法の有効性と安全性を評価するPhase II試験である。本試験には、切除可能Stage I~IIIA(Single N2)症例44例が登録され、ニボルマブ単剤療法とニボルマブ+イピリムマブ併用療法にランダム化された。主要評価項目はMajor Pathologic Response(<10% viable tumor)とされた。両群併せて手術検体が得られた41例中10例(29%)、ニボルマブ単剤では20%、ニボルマブ+イピリムマブ併用療法では43%でMPRが達成されていた。有害事象に関しては、ニボルマブ群1例でbronchopleural fistulaとそれに伴う肺臓炎による死亡例が報告されており、それ以外にも、肺臓炎、低酸素血症、低マグネシウム血症、下痢などがGrade 3の有害事象として報告されている。免疫チェックポイント阻害薬による術前導入療法については、本試験以外にも複数実施されており、注目が高まっている。評価手法として用いられたMPRについて、従来からあるpCRを含めた病理学的効果判定の意義や、長期生存のデータとの関連性等について今後さらなる解析が必要と考えられる。JIPANG:Stage II~IIIAの非扁平上皮非小細胞肺がんの術後化学療法として、試験治療としてシスプラチン+ペメトレキセド併用療法を、標準治療であるシスプラチン+ビノレルビン併用療法と比較したPhase III試験である。本試験には、完全切除後のpStage II-IIIAの非扁平上皮非小細胞肺がん患者804例が登録され、性別、年齢、pStage、EGFR遺伝子変異の有無、施設を層別化因子としてランダム化された。主要評価項目は無再発生存期間、副次評価項目はOS、安全性等とされ、優越性試験のデザインで実施された。無再発生存期間の中央値は、試験治療群で38.9ヵ月、標準治療群で37.3ヵ月、ハザード比は0.98(95%信頼区間0.81~1.20)であり、試験治療の優越性は証明されなかった。安全性に関しては、Grade 3以上の有害事象の発生頻度は、試験治療群で47.4%、標準治療群で89.4%であり、試験治療群がより良好な結果であった。確かに優越性は証明されなかったものの、有効性は大まかには同等といえ、かつ安全性においてもシスプラチン+ペメトレキセドが良好な傾向を示したことが、会場でも話題になっていた。分子標的薬今回のASCOではMET阻害薬のデータが複数報告された。capmatinibとtepotinibは従来からMET exon14 skipping変異に対する有効性が報告されており、今回もそのフォローアップならびに追加データが示された。capmatinibに関しては、MET amplificationに対しても開発が進められている。MET阻害薬の発表と同時に、クリゾチニブを中心としたMETに対するTKIの耐性機序についても小数例ながら報告が行われており、EGFR等と並んで耐性機序の克服についても将来的には課題となってくることが示唆された。EGFRについては、通常のEGFR-TKIでは効果が限定されるExon 20 insに対する治療薬である、TAK788のPhase I試験の有効性と安全性が報告された。一方、EGFR等Driver oncogeneに対する治療の耐性因子としてMETに対する治療開発も盛んであり、今回ADCであるTeliso-V、EGFRとc-METのbispecific抗体であるJNJ-61186372についても発表があった。EGFR遺伝子変異陽性患者におけるADCであるTeliso-Vとエルロチニブの併用療法、EGFRとc-METを標的とする抗体療法によって、EGFR遺伝子変異陽性肺がんにおける新たな治療戦略が開拓されることが期待されている。最初に記載したとおり、今回のASCO肺がん領域では、いくつかの重要なPhase III試験の結果発表とともに、免疫チェックポイント阻害薬による術前治療、新たな分子標的薬等、近い将来の標準治療の変革を示唆する情報が多数報告された。今後の各学会、来年のASCOに期待したい。

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がん専門病院が取り組む、漢方療法の最前線

 漢方薬は、エビデンスの少なさや体質や症状に応じた選択の難しさなどから処方を敬遠する医師も少なくない。神奈川県立がんセンターは、重粒子線治療施設を備えた都道府県がん診療連携拠点病院であり、なおかつ漢方サポートセンターを持つという、全国でも珍しい存在だ。2019年6月6日に行われた「漢方医学フォーラム」(漢方医学フォーラム主催)では、同院の東洋医学科部長の板倉 英俊氏が、がん治療における漢方に関する取り組みと症例を紹介した。がん患者に漢方薬を投与し、心身全体の改善を評価 板倉氏は「がん治療における漢方の役割~西洋医学と漢方医学の融合によるがん支持療法の現状と今後の展望」をテーマに講演した。同院の漢方サポートセンターは2015年に出された厚生労働省の「がん対策加速化プラン」を契機に創設された。がん治療が進化し、長くがんと共生する患者が増えたことを背景に、漢方を使い、患者のQOLを向上させることを命題とする。 がんと漢方のエビデンスとしては、胃がんの補助化学療法が食欲不振や吐き気などの副作用を理由とした中断が多いことを踏まえ、補中益気湯を併用して効果を見た京都大学などの研究がある1)。この研究では、ステージ2~3のがん患者に対し術後の補助化学療法としてS-1もしくはS-1+補中益気湯を投与した群を比較したところ、3年生存率・3年無再発生存率ともに向上は期待しにくい、という結果が出た。 このがんと漢方のエビデンスに対し、板倉氏は「研究データを詳細に見ると、ステージ3、65歳以上という悪い状態にあることが予想される患者には効果が出ている。さらに、漢方では全身を診る漢方医学的診断とそれに基づく生活指導を踏まえた服薬が重要で、この研究結果だけで漢方ががんに効果がないとは言い切れない」と主張した。 神奈川県立がんセンターでは、東洋医学専属の看護師を配置し、がん患者への生活指導をしつつ、容態に適した漢方を処方。心身全体の改善を評価するため、がん患者のQOL評価に用いられる自記式調査票の「EORTC QLQ-C30」を用い、初診時と3ヵ月後を比較した。対象は全がん患者とし、1年間調査した結果、8.4%の改善が見られた(n=34、p<0.02)。化学療法を受け、下痢・食欲不振・関節痛などを主訴とするがん患者に対して漢方薬を処方し、改善に向かった症例も紹介された。 板倉氏は、「西洋医学と東洋医学では身体や病気に対する捉え方が異なる。その違いを知った上で漢方薬をうまく治療に取り入れてほしい」と述べた。具体的には、同じ病気でも患者の身体所見や体質の違いに応じて異なった薬を使う「同病異治(どうびょういち)」の考え方、五臓は物質的な部分だけでなく精神的な部分の機能もコントロールしている「心身一如(しんしんいちにょ)」の考え方が鍵となる、とした。「漢方薬だけでがんが治る」はあり得ない 「一般患者には漢方薬だけでがんが治る、といった誤解が広まっているが、それはあり得ない。東洋医学で心身の回復を図った上で、抗がん剤や手術の西洋医学の療法を施すという、両者の融合が大切」と板倉氏は強調する。今回のがん患者への漢方による改善効果の調査は同院のみ、期間も1年と限られ参考値としての位置付けだ。一方、2007年から国内の全医学部で漢方の講義が行われ、2019年からWHOのICD-11(国際疾病分類第11版)に伝統医学が追加されるなど東洋医学への関心は高まっており、今後はがん患者への漢方による改善効果の臨床データの増加が期待される。

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StageII大腸がんの予後予測因子としての簇出(SACURA試験)/JCO

 Stage II大腸がんにおける術後補助化学療法の有効性を検討したSACURA試験(主任研究者:東京医科歯科大学 杉原 健一氏)の付随研究として、簇出(budding)の予後予測因子、補助化学療法の効果予測因子としての有用性を評価した解析結果を、防衛医科大学校の上野 秀樹氏らが報告した。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2019年6月10日号に掲載。簇出は、国際対がん連合(UICC)が腫瘍関連の予後因子として挙げている因子であり、2016年のInternational Tumor Budding Consensus Conference(ITBCC2016)において国際的評価基準が定義された。簇出の評価によって術後補助化学療法の適応となる対象を適切に選別 SACURA試験は、Stage II大腸がんを対象として、経口テガフール-ウラシル(UFT)1年間投与による術後補助化学療法群と手術単独群とを比較した大規模な無作為化試験である。今回の付随研究では、2006~10年の間に123施設からSACURA試験に登録されたStage II大腸がん1,982例のうち、991例の病理標本を収集した。簇出は、後にITBCC2016に採用された評価基準に基づいた中央判定によって3つのグレード(BD1/BD2/BD3)に診断され、前向きに記録された。5年間の患者登録完了後に主研究で収集した臨床病理学的データおよび予後データと統合し、解析を行った。 簇出の予測因子としての有用性を評価した主な解析結果は以下のとおり。・991例のうち、BD1(簇出が0~4個)が376例、BD2(同5~9個)が331例、BD3(同10個以上)が284例であった。5年無再発生存率(RFS)はそれぞれ90.9%、85.1%、74.4%(p<0.001)で、深達度T4の部分集団解析では、RFSの分かれ方が顕著であった(86.6~53.3%)。・簇出のグレードは、肝臓、肺、リンパ節、腹膜における再発と有意に相関した(p<0.01~0.001)。・多変量解析において、簇出と壁深達度は、独立した予後不良因子であった。Harrellのc統計量(c-index)に基づくと、これらの2因子はRFSの予測モデルの分別能を有意に改善した。・BD2、BD3の部分集団いずれにおいても、統計学的に有意差は無いものの、手術単独群に比べて術後補助化学療法群で5年累積再発率が約5%良好であった。 これらの結果から、研究グループは「Stage II大腸癌においては、ITBCC2016基準による簇出をルーチンに評価すべきであり、これにより術後補助化学療法の適応となる対象の適切な選別と予後向上が期待される」としている。

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早期乳がんへの術後トラスツズマブ投与、PHERE試験の最終解析/Lancet

 早期乳がんの術後トラスツズマブ治療において、6ヵ月投与は12ヵ月投与に対し非劣性ではないことが、フランス・Centre Paul StraussのXavier Pivot氏らが行った「PHARE試験」の最終解析で示された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2019年6月6日号に掲載された。本試験の2013年の中間解析では非劣性が確認できず、今回は、事前に規定されたイベント発生数に基づき、予定された最終解析の結果が報告された。無病生存を評価するフランスの無作為化非劣性試験 PHAREは、フランスの156施設が参加した非盲検無作為化第III相非劣性試験であり、2006年5月~2010年7月の期間に患者登録が行われた(フランス国立がん研究所の助成による)。 対象は、年齢18歳以上、転移がなく、HER2陽性の切除可能な腺がんで、腋窩リンパ節転移の有無は問わず、腫瘍径が10mm以上であり、化学療法を4サイクル以上受け、術後トラスツズマブ治療を開始した患者であった。 被験者は、術後トラスツズマブ治療開始後3~6ヵ月の治療期間中に、6ヵ月または12ヵ月投与の群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、intention-to-treat(ITT)集団における無病生存の、6ヵ月投与群の12ヵ月投与群に対する非劣性とした。事前に規定されたハザード比(HR)のマージンは1.15であった。標準投与期間は12ヵ月のままに 3,380例(ITT集団)が登録され、6ヵ月投与群に1,690例(年齢中央値55歳[範囲23~85]、リンパ節転移陰性54.7%、ホルモン受容体陰性38.5%)、12ヵ月投与群にも1,690例(54歳[21~86]、55.4%、39.6%)が割り付けられた。化学療法は、タキサン系薬+アンスラサイクリン系薬剤が、それぞれ72.7%、73.9%で施行された。 フォローアップ期間中央値7.5年(IQR:5.3~8.8)の時点で、無病生存関連イベントが704件認められた(6ヵ月投与群359件[21.2%]、12ヵ月投与群(345件[20.4%])。層別因子で補正したHRは1.08(95%信頼区間[CI]:0.93~1.25、p=0.39)であった。事前に規定された非劣性マージン(1.15)が95%CI内に含まれたため、非劣性仮説は証明されなかった。 サブグループ解析(年齢、リンパ節転移、腫瘍サイズ、ホルモン受容体など)では、トラスツズマブの投与期間の違いで無病生存率に差はみられなかった。 6ヵ月投与群の186例(11.0%)、12ヵ月投与群の170例(10.1%)が死亡した(HR:1.13、95%CI:0.92~1.39、p=0.26)。3年生存率は、6ヵ月投与群が89.3%、12ヵ月投与群は92.2%であり、5年生存率はそれぞれ84.2%、86.2%、7年生存率は80.6%、82.3%であった。 また、遠隔再発は6ヵ月投与群が249例(14.7%)、12ヵ月投与群は224例(13.3%)に認められ、無転移生存率のHRは1.15(95%CI:0.96~1.37、p=0.14)であった。 トラスツズマブ投与終了後に、安全性関連のイベントはほとんど発現しなかった。前回の報告以降、心不全は発現せず、12ヵ月投与群で新たに3例に左室駆出率50%未満を認めたのみだった。 著者は、「治療曝露の削減には疑問が残るため、術後トラスツズマブ治療の標準投与期間は12ヵ月のままとすべきと考えられる」としている。

1328.

日本人非扁平上皮NSCLCへの維持療法、Bev対Bev+Pem(COMPASS)/ASCO2019

 日本人進行非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)患者における、カルボプラチン+ペメトレキセド+ベバシズマブ後の維持療法として、ベバシズマブとベバシズマブ・ペメトレキセド併用を比較した第III相COMPASS試験の結果を、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2019)で、九州がんセンターの瀬戸 貴司氏が発表した。・対象:化学療法歴のない、Stage IIIB~IV、EGFR野生型または不明の非扁平上皮NSCLC患者(被験者は、カルボプラチン・ペメトレキセド・ベバシズマブ併用3週ごと4サイクルの導入療法実施後、維持療法として、ベバシズマブ群とベバシズマブ・ペメトレキセド併用群に無作為に割り付けられた)・試験群:(維持療法)ベバシズマブ+ペメトレキセド3週ごとPDまで(Bev+Pem群)・対照群:(維持療法)ベバシズマブ3週ごとPDまで(Bev群)・評価項目:[主要評価項目]無作為化後の全生存期間(OS)[副次評価項目]無作為化後の無増悪生存期間(PFS)、1次登録(導入療法開始前)時からのOSとPFS、安全性 1次登録での主な結果は以下のとおり。・2010年9月~2015年9月に、71施設から907例が1次登録され、導入療法が実施された。1次登録からの追跡期間中央値は63.3ヵ月。・1次登録におけるPFS中央値は7.1ヵ月、OS中央値は21.1ヵ月であった。 無作為化後の主な結果は以下のとおり。・導入療法後、599例がBev群とBev+Pem群に無作為に割り付けられ、うち維持療法評価に登録された患者は594例(Bev群295例、Bev+Pem群299例)であった。無作為化後の追跡期間中央値は59.9ヵ月。・無作為化後のOS中央値は、Bev群19.6ヵ月に対しBev+Pem群23.3ヵ月であった(HR:0.87、95%CI:0.73~1.05、p=0.069)。・無作為化後のPFS中央値は、Bev群4.0ヵ月に対しBev+Pem群5.7ヵ月と、Bev+Pem群で有意に改善した(HR:0.67、95%CI:0.57~0.79、p<0.001)。・無作為化後のOSについてサブグループ解析の結果、70歳未満(Bev群19.7ヵ月対Bev+Pem群23.7ヵ月、HR:0.79、95%CI:0.64~0.98、p=0.03)ならびにEGFR野生型(Bev群18.8ヵ月対Bev+Pem群23.3ヵ月、HR:0.82、95%CI:0.68~0.99、p=0.041)において、Bev+Pem群でより改善した。・維持療法におけるGrade3以上の有害事象のうち、Bev+Pem群で多くみられたのは好中球数減少(1.0%対14.0%)、白血球数減少(0.0%対5.4%)であった。高血圧については、Bev群16.6%、Bev+Pem群11.7%であった。新たな有害事象のプロファイルはみられなかった。 Bev+Pemによる維持療法は、Bev単剤に比べPFSを延長し、また、70歳未満およびEGFR野生型患者においてはOSを有意に改善した。瀬戸氏は、カルボプラチン・ペメトレキセドベースの1次治療において、ペメトレキセドによる継続維持療法は外せないと結論付けている。

1329.

Stage I NSCLCにおける術後補助化学療法の効果/ASCO2019

 StageIの非小細胞肺がん(NSCLC)には異質性があり、再発を来すケースがある。しかし、これらの集団に対する術後補助化学療法には議論の余地がある。広島大学の津谷 康大氏らは、再発リスクによる病理StageI(pStage I)のNSCLCの術後補助化学療法の効果を分析し、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2019)で発表した。 肺葉手術で完全切除したpStageI NSCLC 1,278例を分析対象とした。再発高リスクはCox比例ハザードモデルにより、腫瘍径(浸潤径)2cm超、リンパ管侵襲あり、血管侵襲あり、臓側胸膜浸潤ありと定義した。評価項目は無再発生存期間(RFS)、全生存期間(OS)、がん特異的生存期間(CSS)とした。 主な結果は以下のとおり。[高リスク群と低リスク群の予後]・5年RFSは低リスク群96.0%、高リスク群76.7%(HR:6.62、95%CI:4.18~11.10、p<0.0001)、5年OSは低リスク群96.0%、高リスク群85.7%(HR:3.99、95%CI:2.39~7.03、p<0.0001)と、いずれも高リスク群で不良であった。[術後補助化学療法の効果]低リスク群・5年RFSは術後補助化学療法群98.1%、観察群95.7%(HR:0.47、95%CI:0.07~1.67、p=0.30)、5年OSは術後補助化学療法群98.0%、観察群95.6%(HR:0.50、95%CI:0.08~1.81、p=0.35)、5年CSSは補助療法群100%、観察群99.4%(HR:NA、p=0.52)と、いずれも統計学的な差は示さなかった。高リスク群・5年RFSは術後補助化学療法群81.4%、観察群73.8%(HR:0.63、95%CI:0.41~0.93、p=0.023)、5年OSは術後補助化学療法群92.7%、観察群81.7%(HR:0.28、95%CI:0.13~0.53、p<0.0001)、5年CSSは術後補助化学療法群95.0%、観察群89.5%(HR:0.34、95%CI:0.13~0.77、p=0.012)と、いずれも術後補助化学療法で有意に良好であった。・高リスク群における化学療法をプラチナダブレットと単剤化学療法(以下、単剤)で比較したところ、5年RFSはプラチナダブレット群72.8%、単剤群83.3%(HR:1.45、95%CI:0.72~2.94、p=0.29)、5年OSはプラチナダブレット群72.8%、単剤群83.3%(HR:0.69、95%CI:0.32~4.98、p=0.69)と統計学的な差は認められなかったが、5年CSSについてはプラチナダブレット群89.9%、単剤群98.4%と単剤で良好であった(HR:8.92、95%CI:1.40~172.80、p=0.018)。 同氏らは、腫瘍径(浸潤径)2cm超、リンパ管侵襲あり、血管侵襲あり、臓側胸膜浸潤ありは再発高リスク因子であること、術後補助化学療法は高リスク患者の生存を改善すること、pStageIのNSCLCにおける単剤化学療法と比べたプラチナダブレットの生存改善は認められなかったことを結論として示した。

1330.

局所進行NSCLCにおけるCCRT+アテゾリズマブの評価(DETERRED)/ASCO2019

 デュルバルマブが局所進行非小細胞肺がん(NSCLC)の化学放射線同時併用療法(CCRT)後の地固め療法の新たなスタンダードとなるなど、CCRTと免疫療法の併用によるサバイバルの改善が期待されている。そのような中、StageII~IIIのNSCLCにおいて、CCRTとアテゾリズマブの併用(地固めおよび維持療法)とCCRT単独を比較する第II相臨床試験DETERREDが実施された。その結果を米国・MDアンダーソンがんセンターのSteven H. Lin氏らが米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2019)で発表した。 同試験の対象は手術不能でPS2以下、StageII~IIIの局所進行NSCLC患者40例。患者のステージは、StageIIが15%、IIIAが50%、IIIBが35%、組織型は腺がん58%、扁平上皮がん35%、分類不能が7%であった。 登録患者は40例で、パート1(10例)、パート2(30例)に割り付けられた。パート1はCCRT(カルボプラチン+パクリタキセル+放射線、毎週)後に地固め化学療法(カルボプラチン+パクリタキセル)+アテゾリズマブ3週ごとを2サイクル、さらにその後に維持療法として1年以内のアテゾリズマブを3週ごと。パート2はCCRT(パート1と同様)+アテゾリズマブ後に地固め化学療法(パート1と同様)+アテゾリズマブ3週ごとを2サイクル、さらにその後に維持療法として1年以内のアテゾリズマブ3週ごとという投与方法である。主要評価項目は安全性、副次評価項目は無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、Grade3以上の放射線肺臓炎など。 Grade3以上の有害事象発現頻度はパート1が60%、パート2が67%、試験薬の投与中止につながった有害事象発現頻度はそれぞれ30%、17%、Grade3以上のアテゾリズマブに関係する免疫関連有害事象の発現頻度はそれぞれ30%、20%だった。 PFS中央値はパート1が18.6ヵ月、パート2が13.2ヵ月、OS中央値はパート1が22.8ヵ月、パート2が未到達であった。

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終末期14日間の化学療法、5%未満に減少/JCO

 終末期(end of life、以下EOL)がん患者の積極的治療について、わが国でも高齢者においては中止を支持する機運が醸成されつつあるのではないだろうか。米国ではEOL化学療法は、最も広く行われている、不経済で、不必要な診療行為として、ベンチマーキングで医師のEOL14日間の化学療法使用を減らす取り組みが行われている。その結果、同施行は2007年の6.7%から2013年は4.9%に減少したことが、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのPenny Fang氏らによる調査の結果、明らかになった。著者は、「首尾よく5%未満に減少した。この結果を現行のEOLオンコロジー戦略に反映することで、さらに高レベルのEOLの実践が期待できるだろう」と述べている。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2019年5月29日号の掲載報告。 研究グループは全米のEOL化学療法と標的療法の最近の傾向を評価するため、SEER-Medicareデータベースを用いて、2007~13年に乳がん(1万9,887例)、肺がん(7万9,613例)、大腸がん(2万9,844例)、前立腺がん(1万7,910例)で死亡した65歳以上の患者について、EOL14日間の化学療法の使用に関するガイドラインベンチマーク指標を評価した。 EOL6ヵ月間の各タイムポイントでの化学・標的療法の非ベンチマーク指標を比較アウトカムとし、Cochran-Armitage検定法で時間的傾向を評価。また、医師レベルによるEOL化学療法の使用のばらつきを、マルチレベル・ロジスティックモデルおよび級内相関係数(ICC)を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・EOL14日間の化学療法は、2007年6.7%から2013年は4.9%まで減少した(傾向のp<0.001、Δ=-1.8%)。・同様の減少傾向は、EOL1ヵ月間(傾向のp<0.001、Δ=-1.8%)および同2ヵ月間(傾向のp<0.001、Δ=-1.3%)にも認められた。・対象的に、EOL4~6ヵ月間の化学療法使用は増加していた(傾向のp≦0.04、Δ=0.7→1.7%)。・EOL6ヵ月間で化学療法を受けた患者は、全体の43.0%であった。・EOL6ヵ月間のすべてのタイムポイントの標的療法の頻度は、2007~13年にわずかだが安定的に上昇していた(傾向のp=0.09~0.82、Δ=-0.2→1.8%)・標的療法を受けた患者は、EOL14日間で1.2%、同1ヵ月間で3.6%であった。同6ヵ月間では13.2%であった。・マルチレベルモデルの評価(ICC法による)において、医師レベルに起因すると考えられるEOL14日間の化学療法のばらつきは5.19%であった。

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HER2陽性早期乳がん、トラスツズマブ投与期間短縮で効果は?/Lancet

 HER2陽性早期乳がんの治療において、トラスツズマブの6ヵ月投与は、12ヵ月投与に対し非劣性であることが、英国・ケンブリッジ大学のHelena M. Earl氏らが行った「PERSEPHONE試験」で示された。研究の成果はLancet誌オンライン版2019年6月6日号に掲載された。術後のトラスツズマブ治療は、HER2陽性早期乳がん患者のアウトカムを有意に改善する。標準的な投与期間は12ヵ月だが、より短い期間でも有効性はほぼ同様で、毒性は軽減し、費用は削減される可能性が示唆されている。HER2陽性早期乳がん患者にトラスツズマブを6ヵ月または12ヵ月投与 PERSEPHONE試験は、英国の152施設が参加した非盲検無作為化第III相非劣性試験であり、2007年10月~2015年7月の期間に患者登録が行われた(英国国立衛生研究所[NIHR]の助成による)。 対象は、年齢18歳以上、HER2陽性で、化学療法の明確な適応がある浸潤性早期乳がん患者であった。被験者は、化学療法との併用(同時または逐次投与)で、3週ごとにトラスツズマブを静脈内投与(負荷用量8mg/kgののち、維持用量6mg/kg)または皮下投与(600mg)され、これを6ヵ月間または12ヵ月間施行する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要評価項目は無病生存期間とした。非劣性マージンは4年無病生存率の3%であった。4年無病生存率:トラスツズマブ6ヵ月投与群89.4% vs. 12ヵ月投与群89.8% HER2陽性早期乳がん患者4,088例が登録され、トラスツズマブ6ヵ月投与群に2,043例(年齢中央値56歳[範囲23~83])、トラスツズマブ12ヵ月投与群には2,045例(56歳[23~82])が割り付けられた。 全体の69%がエストロゲン受容体陽性であった。術前化学療法を受けた620例では、89%がアンスラサイクリン系薬剤とタキサン系薬、9%がアンスラサイクリン系薬のみ、2%がタキサン系薬のみを投与され、術後化学療法を受けた3,468例では、それぞれ41%、47%、11%の投与であった。 フォローアップ期間中央値5.4年(IQR:3.6~6.7)の時点で、無病生存イベントはトラスツズマブ6ヵ月投与群が265例(13%)、12ヵ月投与群は247例(12%)に認められた。4年無病生存率は、それぞれ89.4%、89.8%で、ハザード比(HR)は1.07(90%信頼区間[CI]:0.93~1.24、非劣性のp=0.011)であり、6ヵ月投与群の非劣性が示された。 全生存率は、トラスツズマブ6ヵ月投与群が93.8%、12ヵ月投与群は94.8%であり、非劣性が確認された(HR:1.14、90%CI:0.95~1.37、非劣性のp=0.0010)。 トラスツズマブ6ヵ月投与群は、12ヵ月投与群に比べ重篤な有害事象(19%[373/1,939例] vs.24%[459/1,894例]、p=0.0002)が少なく、心毒性による早期治療中止(3%[61/1,939例] vs. 8%[146/1,894例]、p<0.0001)も少なかった。 著者は、「これらの結果は、再発リスクが本試験の患者と同程度の女性における、トラスツズマブ投与期間の短縮の検討を支持する」としている。

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局所進行子宮内膜がん、術後化学放射線療法vs.化学療法/NEJM

 StageIIIまたはIVAの子宮内膜がん患者において、化学療法と放射線療法の併用は化学療法単独と比較し、無再発生存期間を延長しないことが示された。米国・ノースウェスタン大学のDaniela Matei氏らが、第III相多施設共同無作為化試験「Gynecologic Oncology Group 258:GOG 258試験」の結果を報告した。StageIII/IVAの子宮内膜がんは全身または局所再発の重大なリスクがあり、これまで化学療法と放射線療法の併用について検証されてきたが、化学療法単独と比較した有効性については確認されていなかった。NEJM誌2019年6月13日号掲載の報告。813例を対象に試験、無再発生存期間を比較 研究グループは、FIGO StageIII/IVAの子宮内膜がん、またはStageI/IIの明細胞がんまたは漿液性子宮内膜がんで腹膜洗浄細胞診陽性の患者を、6ヵ月間の化学放射線療法群(シスプラチン+放射線療法→カルボプラチン+パクリタキセル)と、6サイクルの化学療法単独群(カルボプラチン+パクリタキセル)に1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目は無再発生存期間。副次評価項目は全生存期間、安全性および生活の質(QOL)などとした。intention-to-treat集団にて、層別log-rank検定および線形混合モデルを用いて解析した。化学放射線療法と化学療法単独で無再発生存率に有意差なし 2009年6月29日~2014年7月28日に813例が登録され、適格基準を満たした736例(化学放射線療法群370例、化学療法単独群366例)が解析対象となった。このうち707例が無作為に割り付けられた介入を受けた(それぞれ346例および361例)。追跡期間中央値は47ヵ月であった。 60ヵ月時点における無再発生存率(Kaplan-Meier推定値)は、化学放射線療法群59%(95%信頼区間[CI]:53~65)、化学療法単独群58%(95%CI:53~64)であった(ハザード比[HR]:0.90、90%CI:0.74~1.10)。 化学放射線療法群は化学療法単独群と比較し、5年の膣再発率(2% vs.7%、HR:0.36、95%CI:0.16~0.82)および5年の骨盤・大動脈周囲リンパ節再発率(11% vs.20%、HR:0.43、95%CI:0.28~0.66)が低かった。しかし、遠隔再発率は化学放射線療法群が高率であった(27% vs.21%、HR:1.36、95%CI:1.00~1.86)。 Grade3以上の有害事象は、化学放射線療法群で202例(58%)、化学療法単独群で227例(63%)に認められた。

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ASCO2019レポート 消化器がん(Lower GI)

レポーター紹介2019年5月31日~6月4日まで、イリノイ州シカゴにあるMcCormick Placeにて2019 ASCO Annual Meetingが開催された。本稿では、その中から大腸がん関連の演題をいくつか紹介したい。進行再発大腸がんに対する新しい薬剤はここ数年登場しておらず、残念ながら今年のASCOでも、すぐに臨床現場に登場するような新規薬剤の発表はなかった。しかし、臨床家として興味深い演題は多数みられ、そのうちのいくつかを周術期化学療法、進行再発大腸がんに対する化学療法、手術手技のそれぞれに分けて紹介する。周術期化学療法ASCOにおける大腸がんに対する周術期化学療法の発表としては、2017年のIDEA collaborationが記憶に新しい。StageIII結腸がんに対する術後補助化学療法の至適投与期間についての検討である。標準治療であるオキサリプラチン併用レジメ(FOLFOXもしくはCAPOX)の6ヵ月投与に対して、試験治療である3ヵ月投与の非劣性が検証された。試験全体の結果はnegativeであったものの、リスク、治療レジメによる差がみられ、その後の各ガイドラインの記載、日常診療に影響を与えた。#3501:Prospective pooled analysis of four randomized trials investigating duration of adjuvant (adj) oxaliplatin-based therapy (3 vs 6 months {m}) for patients (pts) with high-risk stage II colorectal cancer (CC).IDEA collaborationに参加した6つの臨床試験のうち、4つの試験(SCOT、TOSCA、ACHIEVE-2、HORG)ではStageIIIとともにハイリスクStageII症例も登録されており、その結果が報告された。ハイリスクの因子として挙げられたのは、T4、低分化、不十分なリンパ節郭清、血管・神経浸潤、閉塞、穿孔である。統計学的にはオキサリプラチンの上乗せ効果が60%まで低下することを許容し、非劣性マージンは1.2、80%の検出力で542イベントが必要との仮説であった。ハイリスクStageII症例3,273例が、試験治療である3ヵ月群と標準治療である6ヵ月群に無作為割り付けされ、3ヵ月群では有意に有害事象の低減がみられたものの(p<0.0001)、主要評価項目である5年無病生存率(DFS)は3ヵ月群80.7% vs.6ヵ月群83.9%であり非劣性は証明されず、試験全体としてはnegative studyであった(HR:1.18、80%CI:1.05~1.31、p=0.3851)。レジメと期間ごとの5年DFSはCAPOX 3ヵ月81.7% vs.6ヵ月82.0%、FOLFOX 3ヵ月79.2% vs.6ヵ月86.5%であり、CAPOXにおいてその差は小さい傾向にあった。これらの結果から発表者は、ハイリスクStageII症例の術後補助化学療法を行う場合、CAPOXなら3ヵ月、FOLFOXなら6ヵ月と結論付けていた。#3504:FOxTROT: an international randomised controlled trial in 1052 patients (pts) evaluating neoadjuvant chemotherapy (NAC) for colon cancer.切除可能大腸がんに対しては術後補助化学療法が標準治療であるが、術前化学療法は切除前に化学療法を行うことにより腫瘍縮小による切除率の向上、微小転移の抑制などが期待される。FoxTROT試験は、切除可能大腸がんにおいて術前化学療法が治療成績を改善するか、を検証した第III相試験である。T3-4、N0-2、M0かつFOLFOX療法、手術が可能と考えられる1,052例が、試験治療である術前化学療法群(FOLFOX 3コース→手術→FOLFOX 9コース:NAC群)、もしくは標準治療である術後補助化学療法群(手術→FOLFOX 12コース:術後治療群)に2:1で無作為割り付けされた。NAC群においてRAS野生型であればパニツムマブの併用が許容された。2点において主治医の裁量での変更が可能であり、治療全体の期間が高齢者や再発リスクの低い症例では全体の投与期間が24週ではなく12週でもよい、FOLFOXの代わりにCAPOXでもよい、という設定であった。術前化学療法は安全に施行され全体として大きな合併症の増加はみられなかった。不完全切除率(R1、R2もしくは非切除)はNAC群4.8%、術後治療群11.1%であり、NAC群において有意に低かった(p=0.0001)。病理組織学的検討では、pT0は4.1% vs.0%、pN0は59.4% vs.48.8%で、いずれもNAC群においてdown stagingが得られていた(p<0.0001)。NACによる病理組織学的効果は59%の症例で確認され、pCRの症例を3.5%認めた。主要評価項目である2年後の再発もしくは腫瘍残存はNAC群13.6%、術後治療群17.2%であり、NAC群において予後良好な傾向を認めたものの有意差を認めなかった(HR:0.75、p=0.08)。NAC群におけるパニツムマブの上乗せ効果は認めなかった(p=0.30)。主要評価項目では統計学的有意差を認めなかったものの、大腸がんに対するNACは新たな概念であり、今後の続報を待ちたい発表であった。進行再発大腸がんに対する化学療法ここ数年のASCOでは免疫チェックポイント阻害剤(Immune Checkpoint Inhibitor: ICI)が大きな話題である。大腸がんにおいてはマイクロサテライト不安定性を認める症例(MSI-high)ではICIの効果が期待されるものの、その割合は大腸がん症例全体の数%にすぎず、大腸がんの多くを占めるMSS症例に対する効果は期待できなかった。#2522:Regorafenib plus nivolumab in patients with advanced gastric (GC) or colorectal cancer (CRC): An open-label, dose-finding, and dose-expansion phase 1b trial (REGONIVO, EPOC1603).制御性T細胞(regulatory T cells:Tregs)や腫瘍関連貪食細胞(tumor-associated macrophages:TAMs)は抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体治療に対する抵抗性に関与すると考えられている。レゴラフェニブは大腸がんにおいていわゆるLate lineで使用される薬剤であるが、血管新生阻害作用や腫瘍関連キナーゼ阻害作用を持ち、TAMsを減らすことが腫瘍モデルにて示されている。本試験は、標準治療に不応・不耐となった進行・再発胃がん、大腸がん症例を対象としたレゴラフェニブとニボルマブの併用療法の第Ib相試験である。主要評価項目は用量制限毒性(DLT)、最大耐用量(MTD)と推奨用量(RD)であり、副次評価項目は奏効率(ORR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、病勢コントロール率(DCR)であった。レゴラフェニブの1日1回で21日間内服・7日間休薬とニボルマブの3mg/kgを2週ごとに点滴静注を併用する投与スケジュールであった。レゴラフェニブの用量は80mg/day、120mg/day、160mg/dayの3レベルが設定され、低いほうから3例ずつ投与し有害事象がなければ増量していくdose-escalation cohortと、求められたRDで治療を行うexpansion cohortが設定された。胃がん25例、大腸がん25例が登録され、MSI-highは1例(2%)、MSSが49例(98%)であった。レゴラフェニブのdose-escalation cohortにおいて80mg/day、120mg/day、160mg/dayにそれぞれ4例、7例、3例が登録され、160mg/dayのレベルにてGrade3の発疹、蛋白尿、結腸穿孔を認めた。この結果から推奨用量は120mg/dayとなったが、その後Grade3の皮膚症状の頻度が多かったため最終的にレゴラフェニブの用量は80mg/dayとされた。胃がん、大腸がんを合わせた50例全体のORRは40%(95%CI:26~55)、DCRは88%(95%CI:76~96)であった。レゴラフェニブの用量別のORRの検討では、80mgは45%、120mgは36%、160mgは33%であった。大腸がん全体のORRは36%であり、MSSだけに限ると33%であった。胃がんのORRは44%であり全例がMSSであった。全体のPFS中央値は6.3ヵ月であった。消化器がんにおいて今までICIの効果が期待できなかったMSS症例で、レゴラフェニブとの併用においてICIの効果を認めたことは特筆すべきと考える。レゴラフェニブをTregsやTAMsを抑えるために使用するという発想も興味深く、今後の第II相、第III相試験の結果が待たれる。手術手技ASCOは化学療法のみの学会ではなく手術手技、放射線治療、支持療法、緩和ケア、予防、早期発見、医療経済、サバイバーシップなど多岐にわたる発表が行われる。本邦からの大腸がん手術手技に関する演題がPoster Discussion Sessionにおいて発表された。#3515:A randomized controlled trial of the conventional technique versus the no-touch isolation technique for primary tumor resection in patients with colon cancer: Primary analysis of Japan Clinical Oncology Group study JCOG1006.大腸がん手術時に最初に血管の結紮を行うno-touch isolation technique(NTIT)は、手術手技による腫瘍細胞の血行性転移を防ぐことに有効と考えられていたが、大規模な有効性のデータは存在しなかった。JCOG1006はこのNTITの有効性を検証した第III相試験である。主な適格症例は組織学的に確認された大腸がん(回盲部~Rs直腸まで)、T3-4、N0-2、M0などである。症例はconventional technique(CoT:[1]腸管の剥離・授動→[2]辺縁血管の結紮→[3]腸管切離→[4]脈管根部での結紮)もしくはNTIT([1]脈管根部での結紮→[2]辺縁血管の結紮→[3]腸管切離→[4]腸管の剥離・授動)に無作為化された。手術はすべて開腹手術であり、術後病理組織学的にStageIIIと診断された症例はカペシタビンによる術後補助化学療法を受けた。主要評価項目は無病生存期間(DFS)であった。2011年1月~2015年11月に853例が登録され、CoT 427例、NTIT 426例に無作為化された。3年DFSはCoT 77.3%、NTIT 76.2%であり、NTITの優越性は証明されなかった(HR:1.029、95%CI:0.800~1.324、p=0.59)。3年OSはCoT 94.8%、NTIT 93.4%であった(HR:1.006、95%CI:0.674~1.501)。これらの結果からNTITは術後再発率、生存率に寄与しないと結論付けられた。本試験は結果としてnegative studyであったが、臨床現場のClinical Questionに対してきちんとした第III相試験を立案、実施、解析、発表するその姿勢は素晴らしく、そのことが評価されてのPoster Discussionへの採択であったと感じられた。最後に今年のASCO大腸がん領域の演題からいくつかを紹介したが、上記演題のほかにも進行再発がんに対するTripletレジメや、抗PD-1抗体+抗CTL-4抗体、抗PD-1抗体+放射線治療など、さまざまな興味深い演題の発表があった。ASCO2019のテーマは“Caring for Every Patient, Learning from Every Patient”であり、上記のようなさまざまなエビデンスを理解したうえで、患者一人ひとりから学び、患者一人ひとりに最良の治療、ケアを提供していくことが大切であると考えられた。

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ABCP療法、肺がん肝転移例に良好な結果(IMpower150)/ASCO2019

 非小細胞肺がん(NSCLC)のうち化学療法未治療の肝転移を有する非扁平上皮がんでは、ベバシズマブ・化学療法併用にアテゾリズマブを追加することで、ベバシズマブ・化学療法併用に比べ、無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)を有意に延長することがわかった。NSCLCを対象に行った無作為化オープンラベル第III相試験IMpower150の試験開始時に規定した探索的解析に基づき、米AdventHealth Cancer InstituteのMark A. Socinski氏らが米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2019)で発表した。ABCP療法は肝転移を有する非扁平上皮非小細胞肺がんで重要な選択肢 IMpower150は、化学療法未治療の切除不能な進行・再発の非扁平上皮NSCLC患者1,202例を対象に、アテゾリズマブ+ベバシズマブ+カルボプラチン+パクリタキセル(ABCP群)、アテゾリズマブ+カルボプラチン+パクリタキセル(ACP群)、ベバシズマブ+カルボプラチン+パクリタキセル(BCP群)の効果と安全性を評価した。 Impower150試験開始時の肝転移例は162例。各群の肝転移例はABCP群が52例、ACP群が53例、BCP群が57例で、試験開始時の肝転移例での患者背景は3群間で差はなかった。 肝転移例のPFS中央値はABCP群が8.2ヵ月、ACP群が5.4ヵ月、BCP群が5.4ヵ月でBCP群に対するABCP群のハザード比(HR)は0.41(95%CI:0.26~0.62)、OS中央値はABCP群が13.3ヵ月、ACP群が8.9ヵ月、BCP群が9.4ヵ月でBCP群に対するABCP群のHRは0.52(95%CI:0.33~0.82)と、いずれもBCP群に対してABCP群で改善が認められた。 肝転移例での全奏効率はABCP群が60.8%、ACP群が26.9%、BCP群が41.1%、奏効期間中央値はそれぞれ10.7ヵ月、5.6ヵ月、4.6ヵ月であった。 Grade3~4の治療関連有害事象発現率はABCP群、ACP群、BCP群でそれぞれ、52.1%、36.5%、54.5%だった。 Socinski氏は「アテゾリズマブ+ベバシズマブ+カルボプラチン+パクリタキセルは、肝転移を有する非扁平上皮NSCLCで重要な治療選択肢となる」との見解を強調した。

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NSCLC1次治療、ペムブロリズマブ+化学療法のOS、PFS2(KEYNOTE-189)/ASCO2019

 未治療の転移を有する非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)での1次治療としてのペムブロリズマブとプラチナベースの化学療法の併用は、化学療法のみと比べ、PD-L1発現レベルにかかわらず、全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)、2次治療までの無増悪生存期間(PFS2)を約2倍に有意に改善することがプラセボ対照無作為化二重盲検第III相試験KEYNOTE-189の解析結果から明らかになった。米Karmanos Cancer InstituteのShirish M. Gadgee氏らが米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2019)で発表した。 同試験の対象は、再発・転移のある無治療のStageIV非扁平上皮NSCLC患者616例。登録患者は、ペムブロリズマブ(200mg 3週ごと最大35サイクル)+化学療法(カルボプラチンAUC5またはシスプラチン75mg/m2+ペメトレキセド500mg/m2の3週ごと4サイクル後、ペメトレキセド500mg/m2 3週ごと)群410例とプラセボ+化学療法(ペムブロリズマブ併用群と同一用法用量)群206例に無作為に割り付けられた。 主要評価項目はOS、PFS、副次評価項目は客観的奏効率(ORR)、奏効期間、安全性、予備的評価項目としてPFS2であった。今回はデータカットオフ日2018年9月21日、試験の追跡期間中央値が23.1ヵ月(生存者の追跡期間中央値は18.7ヵ月)の発表。 OS中央値はペムブロリズマブ+化学療法群22.0ヵ月、プラセボ+化学療法群10.7ヵ月であった(HR:0.56、95%CI:0.45~0.70)。PFS中央値はペムブロリズマブ+化学療法群9.0ヵ月、プラセボ+化学療法群4.9ヵ月であった(HR:0.48、95%CI:0.40~0.58)。 ORRはペムブロリズマブ+化学療法群48.0%、プラセボ+化学療法群19.4%であった。PFS2中央値はペムブロリズマブ+化学療法群17.0ヵ月、プラセボ+化学療法群9.0ヵ月であった(HR:0.49、95%CI:0.40~0.59)。 TPS別のOS中央値のHRはTPS50以上が0.59、TPS1~49が0.62、TPS1未満が0.52、PFS中央値のHRはTPS50以上が0.36、TPS1~49が0.51、TPS 1未満が0.64、PFS2はTPS1未満が0.52、PFS中央値のHRはTPS50以上が0.47、TPS1~49が0.59、TPS 1未満が0.46であった。TPS別のORRは、TPS50以上でペムブロリズマブ+化学療法群62.1%、プラセボ+化学療法群24.3%、TPS1~49でそれぞれ49.2%、20.7%、TPS1未満ではそれぞれ32.3%、14.3%だった。 全有害事象発現率はペムブロリズマブ+化学療法群99.8%、プラセボ+化学療法群99.0%。免疫関連有害事象およびインジェクションリアクションの発現率は、ペムブロリズマブ+化学療法群26.4%、プラセボ+化学療法群12.9%であった。 Gadgee氏はこの結果について「ペムブロリズマブ+化学療法はPD-L1の発現有無にかかわらず、転移を有する非扁平上皮NSCLCのアウトカムを最大化させる1次治療の一つと位置付けるべき」との見解を強調した。

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CDK4/6阻害薬ribociclib、進行乳がんのOS延長/NEJM

 HER2陰性ホルモン受容体陽性進行乳がんの治療において、標準的な内分泌療法にサイクリン依存性キナーゼ4/6(CDK4/6)阻害薬ribociclibを併用すると、内分泌療法単独に比べ、全生存(OS)期間が有意に延長することが、韓国・ソウル大学校病院のSeock-Ah Im氏らが実施したMONALEESA-7試験で示された。研究の成果はNEJM誌オンライン版2019年6月4日号に掲載された。本試験の早期解析では、ribociclib追加によって、主要評価項目である無増悪生存(PFS)期間の延長が確認されており、今回は、プロトコルで規定された主要な副次評価項目であるOSの中間解析の結果が報告された。上乗せ効果を検証するプラセボ対照無作為化試験 MONALEESA-7は、国際的な二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験で、2014年12月~2016年8月に患者登録が行われた(Novartisの助成による)。 対象は、年齢18~59歳、HER2陰性、ホルモン受容体陽性で、局所領域再発または転移を有する進行乳がんであり、全身状態(ECOG PS)が0~1の患者であった。 被験者は、ribociclib(28日を1サイクルとし、1日1回600mgを21日間経口投与、7日間休薬)またはプラセボを投与する群に無作為に割り付けられた。両群とも、内分泌療法として、ゴセレリン(3.6mgを各サイクルの1日目に皮下注)の投与を受け、非ステロイド性アロマターゼ阻害薬(レトロゾール2.5mgまたはアナストロゾール1mg)もしくはタモキシフェン(20mg)を1~28日目に1日1回経口投与された。 672例が登録され、ribociclib群に335例、プラセボ群には337例が割り付けられた。死亡リスクが29%低減、後治療中のPFSも良好 OS解析のカットオフ日の時点で、ribociclib群は116例(34.6%)、プラセボ群は57例(16.9%)が治療を受けていた。フォローアップ期間中央値は34.6ヵ月であった。ribociclib群は83例(24.8%)、プラセボ群は109例(32.3%)が死亡した。 ITT解析では、ribociclib群はプラセボ群に比べOS期間が有意に延長し(評価不能vs.40.9ヵ月)、42ヵ月時の推定OS率はそれぞれ70.2%および46.0%と、ribociclib群で死亡リスクが29%有意に低減した(死亡のハザード比[HR]:0.71、95%信頼区間[CI]:0.54~0.95、log-rank検定のp=0.00973)。 アロマターゼ阻害薬の投与を受けたサブグループ(495例)における42ヵ月時の推定OS率は、ribociclib群が69.7%と、プラセボ群の43.0%に比べ有意に良好で、ITT集団の結果と一致していた(HR:0.70、95%CI:0.50~0.98)。タモキシフェンのサブグループ(177例)では、両群間に42ヵ月時の推定OS率の差は認めなかった(71.2% vs.54.5%、0.79、0.45~1.38)。 ribociclib群の219例と、プラセボ群の280例が試験治療を中止し、それぞれ151例(68.9%)および205例(73.2%)が後治療を受けた。後治療レジメンは、化学療法単独(ribociclib群22.4%、プラセボ群28.6%)および内分泌療法単独(22.4%、20.4%)が多かった。42ヵ月時に、化学療法による後治療を開始していなかった患者の割合は、ribociclib群がプラセボ群よりも高かった(65.8% vs.49.0%、HR:0.60、95%CI:0.46~0.77)。 42ヵ月時に生存または2次治療中に病勢が進行しなかった患者の割合(後治療中のPFS率)は、ribociclib群がプラセボ群に比し有意に高かった(54.6% vs.37.8%、HR:0.69、95%CI:0.55~0.87)。 有害事象の発現状況は、初回解析時と一致していた。主なGrade3/4のとくに注目すべき有害事象は、好中球減少(ribociclib群63.5%、プラセボ群4.5%)、肝胆道毒性作用(11%、6.8%)、QT間隔延長(1.8%、1.2%)だった。 著者は、「全生存および病勢進行後のアウトカムは、臨床的意思決定において重要な要因であるため、今回の早期治療ラインの結果は患者にとってきわめて重要である。後治療中のPFS解析では、1次治療と2次治療を通じたribociclibの有益性が示された」としている。

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胃がん、ペムブロリズマブによる1次治療の結果(KEYNOTE-062)/ASCO2019

 国内の進行・再発胃がんでの免疫チェックポイント阻害薬の使用は、化学療法無効後のニボルマブ、同じく化学療法無効後の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)例に対するペムブロリズマブがそれぞれ単剤療法で承認されている。ただ、現時点ではこうした進行・再発胃がんでの1次治療で承認されている免疫チェックポイント阻害薬は存在しない。KEYNOTE-062、胃がんのペムブロリズマブ1次治療の有効性を評価 そうした中、進行胃・胃食道接合部腺がんに対する1次治療での抗PD-1抗体ペムブロリズマブの有効性を評価した第III相試験「KEYNOTE-062」の結果から、PD-L1陽性(CPS1以上)の患者で、ペムブロリズマブ単独療法は標準治療の化学療法に対して、全生存期間(OS)で非劣性、CPS10以上では臨床的に意義のある改善を示すことがわかった。また、ペムブロリズマブと化学療法の併用は、化学療法単独に対してOSで優越性を示せなかった。スペインVall d’Hebron University Hospital and Institute of OncologyのJosep Taberneroがシカゴで開催された米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2019)で報告した。 同試験の対象はPS0~1でHER2/neuタンパク陰性、PD-L1陽性(CPS1以上)の局所進行で手術不能あるいは転移のある胃がん・胃食道接合部腺がん患者763例。登録患者はペムブロリズマブ単独群256例、ペムブロリズマブ+化学療法(シスプラチン+5FUあるいはカペシタビン)群257例、プラセボ+化学療法群250例に無作為に割り付けられた。いずれの群も毒性による忍容性の限界、病勢進行、患者本人および医師による中断決定まで投与が実施された。 主要評価項目はOS、無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目は客観的奏効率(ORR)、安全性。 ペムブロリズマブ単独群とプラセボ+化学療法群との比較では、CPS1以上でのOS中央値はペムブロリズマブ単独群10.6ヵ月、プラセボ+化学療法群11.1ヵ月で、ペムブロリズマブ単独療法は化学療法単独に対して非劣性だった(HR:0.91、95%CI:0.69~1.18)。一方でCPS10以上では、OS中央値がそれぞれ17.4ヵ月、10.8ヵ月で有意なOS改善が認められた(HR:0.69、95%CI:0.49~0.97)。ただ、PFSについてはCPS1以上でのPFS中央値はペムブロリズマブ単独群が2.0ヵ月、プラセボ+化学療法群が6.4ヵ月(HR:1.66、95%CI:1.37~2.01)、CPS10以上でそれぞれ2.9ヵ月、6.1ヵ月(HR:1.10、95%CI:0.79~1.51)で化学療法に対するペムブロリズマブの優越性は示せなかった。ORRはCPS1以上でそれぞれ14.8%、37.2%、CPS10以上で25.0%、37.8%だった。胃がんの1次治療におけるペムブロリズマブは化学療法と同等のベネフィット ペムブロリズマブ+化学療法群とプラセボ+化学療法群の比較では、CPS1以上でのOS中央値はペムブロリズマブ+化学療法群が12.5ヵ月、プラセボ+化学療法群が11.1ヵ月(HR:0.85、95%CI:0.70~1.03、p=0.046)、CPS10以上ではそれぞれ12.3ヵ月、10.8ヵ月(HR:0.85、95%CI:0.62~1.17、p=0.158)で、いずれも化学療法単独に対するペムブロリズマブ+化学療法の優越性は示せなかった。PFS中央値はCPS1以上でペムブロリズマブ+化学療法群6.9ヵ月、プラセボ+化学療法群6.4ヵ月(HR:0.84、95%CI:0.70~1.02、p=0.039)、CPS10以上でそれぞれ5.7ヵ月、6.1ヵ月であった(HR:0.73、95%CI:0.53~1.00)。ペムブロリズマブ+化学療法群のORRはそれぞれCPS1以上で48.6%、CPS10以上で52.5%であった。 全有害事象発現頻度はペムブロリズマブ単独群が54%、ペムブロリズマブ+化学療法群が94%、プラセボ+化学療法群が92%、Grade3以上の有害事象発現頻度はそれぞれ16%、71%、68%となり、ペムブロリズマブ単独では良好な安全性で、ペムブロリズマブ+化学療法化学療法のみでは同等だった。なお、いずれの群でもこれまで知られていない副作用の発現は認められなかった。 Tabernero氏は「CPS1以上のPD-L1陽性進行胃がん・胃食道接合部がんの1次治療ではペムブロリズマブは化学療法と同等、CPS10以上ではより良好なOSベネフィットがあり、忍容性ではペムブロリズマブが良好」と最終結論を述べた。

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乳がん化学療法、望ましいアントラサイクリンは?

 アントラサイクリン系抗がん剤の心毒性は古くから知られており、抗腫瘍効果との兼ね合いがよく話題に上る。中国・上海中医薬大学のZhujun Mao氏らは、乳がんに対するアントラサイクリン系薬の有用性はなお議論の的であり結論が得られていないとして、無作為化臨床試験のネットワークメタ解析を行った。その結果、心毒性と抗腫瘍効果を考慮すると乳がんの化学療法に適したアントラサイクリン系薬は、ドキソルビシンリポソームまたはエピルビシン+デクスラゾキサンであることが示されたという。Oncology Research and Treatment誌オンライン版2019年5月17日号掲載の報告。 研究グループは、乳がんに対するアントラサイクリン系薬の心毒性と有効性を評価する目的でネットワークメタ解析を行った。PubMed、Embaseおよびコクラン・データベースを用い、2018年8月までに発表された論文を検索し、アントラサイクリン系薬の心毒性と有効性を検討した無作為化臨床試験19件(乳がん患者計3,484例)を特定した。 ドキソルビシン、エピルビシン、ドキソルビシンリポソーム、ドキソルビシン+デクスラゾキサン(DD)およびエピルビシン+デクスラゾキサン(ED)の5つの治療戦略に関する研究を適格として解析した。 主な結果は以下のとおり。・直接比較のメタ解析では、エピルビシン、ドキソルビシンリポソーム、DDおよびEDは、ドキソルビシンと比較して心保護作用が有意に優れており、オッズ比はそれぞれ1.64、3.75、2.88および3.66であった。・奏効率は、ドキソルビシンリポソームが最も高く、次いでドキソルビシン、エピルビシン、EDおよびDDの順であった。・ベネフィットとリスクのバランスが最も好ましいのはEDで、次いでドキソルビシンリポソーム、DD、エピルビシン、ドキソルビシンの順であった。

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適切な乳がん補助化学療法のためのガイド情報が明らかに/NEJM

 乳がん患者において、21遺伝子アッセイに基づく再発スコアに臨床的な再発リスク層別化の予後情報を加味すると、治療による恩恵効果が高い閉経前女性の特定が可能であることが示された。米国・アルベルト・アインシュタイン医学校のJoseph A. Sparano氏らが、21遺伝子アッセイの有用性を検証したTrial Assigning Individualized Options for Treatment(TAILORx試験)の副次的解析結果を報告した。乳がん患者への補助化学療法の必要性は、臨床病理学的因子とオンコタイプDXによる再発リスクを確定するための21遺伝子アッセイに基づく再発スコアによって判断できる可能性が示されていたが、再発スコアに臨床的な再発リスクのレベル情報を追加する意義については明らかになっていなかった。NEJM誌オンライン版2019年6月3日号掲載の報告。腫瘍径とグレードに基づき臨床リスクを層別化、遺伝子再発スコアと併用して評価 研究グループは、TAILORx試験に参加したリンパ節転移陰性のER陽性かつHER2陰性乳がん患者9,427例を対象に、臨床的な再発リスクを腫瘍の大きさ・組織学的悪性度(グレード)に基づき、低臨床リスク(腫瘍径3cm以下・Grade I、2cm以下・Grade II、1cm以下・Grade III)と高臨床リスク(低臨床リスクに該当しない場合)に分類。これら臨床リスクの影響について、Cox比例ハザードモデルを用いて遠隔再発のハザード比を算出して評価した。 遺伝子再発スコア(スコア範囲0~100:高値ほど予後不良もしくは化学療法の潜在的ベネフィットが大きいことを示す)は、低リスク(0~10)、中間リスク(11~25)、高リスク(26~100)で評価した。 被験者9,427例のうち、低臨床リスクは70.2%、高臨床リスクは29.8%。年齢分布の比率も類似していた(50歳超は68.6%、50歳以下は31.4%)。なお、初回ホルモン療法について、50歳未満の閉経前女性患者の大部分がタモキシフェン単独療法を受けていた。臨床リスク分類の併用は有用 再発スコアが中間リスクでホルモン療法単独症例の場合、低臨床リスクに対する高臨床リスクの遠隔再発ハザード比は2.73(95%信頼区間[CI]:1.93~3.87)であり、中間リスクでホルモン療法+化学療法例の場合は、同遠隔再発ハザード比は2.41(95% CI:1.66~3.48)であった。また、再発スコアが高リスクでホルモン療法+化学療法例の場合、同遠隔再発ハザード比は3.17(95%CI:1.94~5.19)であり、再発スコアが中間リスクまたは高リスクのいずれにおいても、臨床リスク分類が遠隔再発の予後因子であることが示された。 50歳未満のホルモン療法単独症例では、9年遠隔再発率(推定)は、再発スコア低リスク症例では臨床リスクにかかわらず5%未満(≦1.8±0.9%)であったが、再発スコア中間リスクで低臨床リスク症例では4.7±1.0%であった。また、高臨床リスクの場合は再発スコアが中間リスク以上において、9年遠隔再発率が10%を超えた(再発スコア中間リスクのホルモン療法単独症例で12.3±2.4%、再発スコア高リスクの化学療法併用例で15.2±3.3%)。

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