サイト内検索|page:63

検索結果 合計:2010件 表示位置:1241 - 1260

1241.

わが国の膵臓がん悪液質、7割に発症、有害事象発現も高く/日本癌治療学会

 がん悪液質は、骨格筋の持続的な減少などを主体とする多因子性の症候群であり、膵臓がんでは高頻度で見られるとされる。国立がん研究センター東病院の光永 修一氏らは、わが国の膵臓がん患者における悪液質の発症頻度と発症時期、有害事象との関係などを調査する後ろ向きコホート研究を実施。第57回日本癌治療学会学術集会(10月24~26日)で発表した。 対象は、2008~17年に膵管がんと診断され、国立がんセンター東病院で初回化学療法を受けた150例の患者。悪液質の定義は5%以上の体重減少、BMI20kg/m2未満の患者では2%を超える体重減少。初回化学療法時を起算日として、12週ごとに体重を測定し、悪液質の発症時期を調査した(以下、フォローアップ悪液質と称す)。 主な結果は以下のとおり。・患者の年齢中央値は65.0歳、男性58.7%、PSは0が70.7%、1が29.3%、BMI中央値は21.7kg/m2、CRP中央値は0.39mg/Lであった。・1次治療化学療法の実施前に悪液質と診断された患者は50%であった。・フォローアップ悪液質の発症時期は、化学療法開始後12週間以内が32.0%、以後、12~24週に13.3%、24~36週に10.7%発症した。・累積発症率をみると、化学療法開始時から急増し48週で64%となる。しかし、増加はその後緩徐となり70%程度で横ばいとなった。・全生存期間(OS)はフォローアップ悪液質発症群374.0日、非発症群は302.0日で、悪液質の発症と予後に関係はみられなかった(p=0.8886)。・48週生存した患者を対象にOSを解析した場合、フォローアップ悪液質発症群のOSは528.0日、非発症群は758.0日と、統計学的有意は示さないものの、悪液質発症群で予後不良の傾向にあった(p=0.0677)。・化学療法開始から24週間でのフォローアップ悪液質発症群と非発症群で有害事象を比較した。食欲不振ありは発症群で86.8%(Grade2/3は52.9%)、非発症群で65.9%(Grade2/3は28%)、倦怠感ありは発症群で69.1%(Grade2/3は32.3%)、非発症群で57.3%(Grade2/3は19.5%)と、フォローアップ悪液質発症患者で頻度および重症度ともに高かった。そのほかの消化器症状(悪心、下痢)でも同様の傾向が認められた。 化学療法開始後24週以内で、進行膵臓がん患者の半数でがん悪液質が観察された。一方、化学療法開始後のがん悪液質は予後不良因子としては確認できなかった。また、膵臓がん悪液質患者では、化学療法による有害事象(食欲不振などの消化器症状と倦怠感)の発現頻度、重症度ともに高いことが示された。

1242.

進行/再発乳がんへのパルボシクリブ、実臨床での有効性と安全性/日本癌治療学会

 進行/再発乳がんに対するCDK4/6阻害薬のパルボシクリブ(商品名:イブランス)の有効性と安全性を後ろ向き単施設観察研究で検討した結果、実臨床データベースにおいても、内分泌療法耐性の患者にも有効であり、内分泌療法に感受性の高い患者やフロントラインでの使用がより効果的な傾向が示唆された。がん・感染症センター都立駒込病院の岩本 奈織子氏が、第57回日本癌治療学会学術集会(10月24~26日)で発表した。 進行/再発乳がんにおいて、パルボシクリブは内分泌療法に耐性でも有効で、内分泌療法に感受性の高い患者でより有効であり、高齢者にも比較的安全であるとされている。一方、好中球減少の発現率がとくにアジア人で高いことが明らかになっている。しかしながら実臨床におけるアジア人のデータが限られていることから、岩本氏らは、実臨床データよりパルボシクリブの有効性と安全性を検証した。 本試験は、2017年12月~2018年12月にパルボシクリブ125mg(3週投与、1週休薬)による治療を開始したエストロゲン受容体(ER)陽性/HER2陰性の進行/再発乳がん45例が対象。そのうち、開始用量減量、内分泌治療歴なし、化学療法治療歴2ライン以上、他のCDK4/6阻害薬の使用歴ありの患者を除外した24例のデータを評価した。主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目は有害事象(AE)であった。 主な結果は以下のとおり。・24例中8例がde novo症例で、9例がPALOMA-3試験の適格基準に適合した。・年齢中央値は66.5歳(45~86歳)、23例(96%)が閉経後であった。・再発乳がんに対して化学療法を受けていた患者は21%であった。・パルボシクリブとの併用薬剤は17例(71%)がフルベストラント、6例(25%)がレトロゾール、1例(4%)がアナストロゾールであった。・奏効率は9%、クリニカルベネフィット率は32%、病勢コントロール率は55%であった。・平均追跡期間は11.4ヵ月、PFS中央値は9.8ヵ月(95%信頼区間:8.8~13.8)であった。・サブ解析では、直近の内分泌療法期間が6ヵ月以下より6ヵ月超のほうが、また65歳未満より65歳以上のほうが、PFSが良好な傾向がみられた。・好中球減少症は、全Gradeでは100%、Grade3/4では92%に発現した。発熱性好中球減少症(FN)が1例(4%)に認められた。各AEの発現率は65歳以上と65歳未満の患者でほぼ同等であった。・FNの1例を除く23例(96%)で休薬、19例(79%)が減量していた。2例(8%)がAE(クレアチニン上昇、下痢)で中止していた。65歳以上のほうが65歳未満より減量例が多かった。 岩本氏は、PALOMA-3試験やTREnd試験などの結果を交えて考察し、パルボシクリブのベネフィットについて、フロントラインでの使用が効果的であること、内分泌療法に対する感受性が有効性の指標となること、高齢者にも忍容性があることの3点を提示した。

1243.

遠隔オリゴ転移再発乳がんの予後および予後因子/日本癌治療学会

 進行乳がん(ABC)のガイドラインの定義によるオリゴ転移がん(OMD)がNon-OMD(NOMD)と比べて有意に予後良好であり、通常の再発乳がんの予後因子である「遠隔転移巣の根治切除の有無」「転移臓器個数」「転移臓器部位」「無病期間(DFI)」「周術期の化学療法の有無」がOMDにおいても予後因子であることが示唆された。がん研有明病院/隈病院の藤島 成氏が第57回日本癌治療学会学術集会(10月24~26日)で発表した。 一部の進行乳がんにおいて長期予後が得られる症例があり、そのような症例としてOMDやHER2陽性乳がんが挙げられる。ABCのガイドラインにおけるOMDの定義は、転移個数が少なくサイズが小さい腫瘍量の少ない転移疾患とされており、その転移個数は5個以下となっているが、転移臓器の個数は定義されていない。OMDの転移臓器の個数は1つにすべきというドイツのグループからの意見もあり、その定義について議論されている。今回、藤島氏らはABCのガイドラインの定義によるOMDの予後を評価し、さらにOMDの予後因子を検討した。 対象は、がん研有明病院で原発性乳がんの手術を受け2005~14年に遠隔再発を来した患者612例のうち、重複がん、両側乳がん、追跡不能例を除いた437例。ABCのガイドラインに基づき分類したOMDとNOMDの予後を比較し、さらにOMDの予後因子を分析した。脳転移および転移個数5個以下でも根治切除不能と判断した症例はNOMDに分類した。 主な結果は以下のとおり。・OMDは133例、NOMDは304例であった。・再発時年齢中央値、DFI中央値、エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体、HER2の発現は両群に有意差はなかった。・サブタイプ別では全体として両群に有意差はなかったが、トリプルネガティブ(TN)についてOMDが10.5%、NOMDが20.4%と、OMDのほうが少なかった。・転移部位について、肝転移、肺転移では両群に差はなかったが、骨転移、遠隔リンパ節転移はNOMDよりOMDで少なかった(どちらもp<0.01)。・再発後の初回全身療法はNOMDで化学療法が有意に多く(p<0.01)、OMDは内分泌療法が有意に多かった(p<0.01)。・OMD症例の14例(10.5%)に遠隔転移巣の根治切除術が実施されており、14例中13例が1臓器のみの転移であった(肺転移:9例、肝転移:3例、骨転移:1例、子宮・卵巣:1例)。・追跡期間中央値は40ヵ月(範囲:0~150)、遠隔再発後の全生存期間(OS)中央値は、OMD(76ヵ月)がNOMD(33ヵ月)よりも有意に予後が良好だった(p<0.01)。・OMDにおけるサブタイプ別のOS中央値は、luminalが92ヵ月、luminal/HER2が126ヵ月と、HER2の59ヵ月、TNの52ヵ月より予後良好な傾向が認められた。・OMDにおけるOSに関する単変量比例ハザードモデル解析によると、ER陽性(p=0.02)、周術期の化学療法なし(p=0.01)、遠隔転移巣の根治切除あり(p=0.04)、1臓器のみの転移(p<0.01)、DFI 2年以上(p<0.01)、肝転移なし(p=0.04)、サブタイプがluminalもしくはluminal/HER2(p=0.03)が有意な予後良好因子であった。再発時年齢が50歳未満も予後良好な傾向がみられた(p=0.07)。・多変量比例ハザードモデル解析によると、周術期の化学療法なし(p=0.04)、遠隔転移巣の根治切除あり(p=0.03)、1臓器のみの転移(p<0.01)、DFI 2年以上(p<0.01)、肝転移なし(p=0.05)が有意な予後良好因子であった。・予後良好因子が2個以下と3個以上で分類すると、遠隔転移後のOS中央値は3個以上が106ヵ月で、2個以下の34ヵ月に比べて有意に予後が良好であった(p<0.01)。 藤島氏は、「ABCのガイドラインに基づいてOMDとNOMDに分類すると、OMDは有意に予後良好である。しかし、OMD患者の予後は臨床的因子によって異なるため、OMD患者の中でも臨床的因子を考慮した異なる治療戦略が必要ではないか」と述べた。

1244.

EGFR-TKI併用療法、これまでのまとめ【忙しい医師のための肺がんササッと解説】第10回

第10回 EGFR-TKI併用療法、これまでのまとめ1)Stinchombe TE, Janne PA, Wang X, et al. Effect of Erlotinib Plus Bevacizumab vs Erlotinib Alone on Progression-Free Survival in Patients With Advanced EGFR-Mutant Non-Small Cell Lung Cancer A Phase 2 Randomized Clinical Trial. JAMA Oncol. 2019 Aug 8. [Epub ahead of print]2)Noronha V, Patil VM, Joshi M, et al. Gefitinib Versus Gefitinib Plus Pemetrexed and Carboplatin Chemotherapy in EGFR-Mutated Lung Cancer. J Clin Oncol. 2019 Aug 14. [Epub ahead of print]3)Nakagawa K, et al. Ramucirumab plus erlotinib in patients with untreated, EGFR-mutated, advanced non-small-cell lung cancer (RELAY): a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 3 trial.Lancet Oncol. 2019 Oct 4.[Epub ahead of print]EGFR変異陽性例に対する初回治療は、オシメルチニブがOSでも有効性を示した(Ramalingam S, ESMO2019)ことでおおむね片が付いたとみる向きが多いが、次なる方向性として併用療法やcell-free DNAを組み合わせたアプローチなどが模索されている。今回は最近の報告を基に併用療法についてまとめてみた。1)について米国から報告された第II相試験。88例をエルロチニブ+/-ベバシズマブに1:1で無作為化。プライマリーエンドポイントであるPFSは17.9ヵ月 vs.13.5ヵ月と併用群で延長していたが、統計学的な有意差なし(HR:0.81、p=0.39)。ORRは同等(81% vs.83%)、驚くべきことにOSは併用群で劣る傾向(32.4ヵ月 vs.50.6ヵ月、HR:1.41、p=0.33)であった。後治療としてオシメルチニブが併用療法群で10例・単剤群で13例投与されている(これらを省いたOSデータは示されていない)。2)について細胞傷害性抗がん剤との併用インドから報告された単施設の(!)第III相試験。350例をゲフィチニブ+/-化学療法(カルボプラチン+ペメトレキセド)に1:1で無作為化。PS 2が21%と多く含まれている。プライマリーエンドポイントであるPFSは16ヵ月 vs.8ヵ月と併用群で有意に延長していた(HR:0.51、p<0.001)。ORR(75% vs.63%)、OS(中央値未到達vs.17ヵ月、HR:0.45、p<0.001)も併用群で有意に上回っていた。後治療として単剤群のうち、カルボプラチン+ペメトレキセドを受けたものは32.4%とやや低めである。解説血管新生阻害薬との併用については、本邦から報告されたゲフィチニブ+/-ベバシズマブの第II相試験(JO25567)での良好なPFSを基に複数の第III相臨床試験が計画された。昨年・本年のASCOで本邦からの第III相試験が報告され、PFS延長が確認されたことは周知のとおり(Saito, Lancet Oncol. 2019、Nakagawa, Lancet Oncol. 2019)。今後、中国やEUからも第III相試験の報告が予想されている。今回の第II相試験は残念ながらnegativeな結果に終わったが、著者らも触れているように単剤群の治療成績が予想よりよかったことも影響しており、血管新生阻害薬併用によるPFS延長は十分確認されたと考えられる。ただし、より重要なのは、JO試験に引き続いてOSの延長が認められなかったことであろう。それほど毒性の強い治療でもないので後治療に差があるわけではないと思うのだが、この理由は明らかになっておらず、今後の開発にやや不安を残したといえる。オシメルチニブとの併用を含めた主だった試験のまとめは以下のとおり。細胞傷害性抗がん薬との併用は、古くTRIBUTE試験などで検討されてきたが、EGFR変異陽性例に絞った検討はNEJグループが牽引してきた経緯がある(Sugawara S, Ann Oncol2015, Oizumi S, ESMO Open2018)。第III相試験については昨年のASCOで報告され(Furuya N, ASCO2018)、本年インドからも同様の結果が示された。PFSは延長して当然な一方で、2つの第III相試験ともにOS延長が示されたことは重要である(ただしインドの試験では低い後治療の割合がOSの大きな差に影響している可能性はあり)。主だった試験のまとめは以下のとおり。以上が現状のまとめとなる。元々のコンセプトとして、前者はEGFR-TKIの効果増強を意図している一方で、後者は腫瘍のheterogeneityに対して異なる機序の薬剤の相乗効果を狙っている。また、血管新生阻害剤併用の場合には後治療として化学療法(+免疫チェックポイント阻害剤)が使用可能であるのに対して、細胞傷害性抗がん剤併用後の増悪に対しては単剤化学療法が標準と考えられることから、これら併用療法のPFSを単純に比べることはあまり意味がなさそうである。一方でこれら試験結果を待っている間に、オシメルチニブというgame changerが登場したため、結果の解釈はより難しくなった。現在、オシメルチニブを用いても同様の治療戦略が成り立つのかを検討すべく、さまざまな計画がなされている(Yu H, ASCO2019)。以上、簡単にEGFR-TKI併用療法の現状をまとめた。今後オシメルチニブを軸に治療開発がなされると考えられるが、エンドポイントをどう設定するかは非常に重要な問題である。クロスオーバーの影響を考慮すべき治療の場合、PFSでは不十分な可能性があるが、そうなると相当大規模な症例数が必要となる。長期奏効の指標としてX年無再発率のような新しい指標を検討すべきなのか、乳がんのホルモン治療やICIで近年検討されているように「試験治療開始から化学療法開始までの期間(=どの程度の期間化学療法を回避できたか)」や「治療休止期間」のような患者のQOLをより反映したソフトエンドポイントも興味深く、ドライバー変異陽性肺がんもこうした新規エンドポイントを検討すべき時代になっているのかもしれない。また、オシメルチニブ単剤でも良好なPFSが得られる状況において、果たして併用療法が本当に意義のあるPFS延長を示せるのかも気になる点である(実際、オシメルチニブ+ベバシズマブの試験ではPFSはそれほど延びていない)。図表(ppt)はこちら。右クリックでダウンロードできます。

1245.

HER2-乳がん1次治療、S-1が標準治療に非劣性(SELECT BC-CONFIRM)/日本癌治療学会

 HER2陰性の進行・再発乳がん(mBC)に対する1次治療として、S-1が標準治療(アンスラサイクリンを含むレジメンあるいはタキサン)と比較して非劣性であることが示された。第57回日本癌治療学会学術集会(10月24~26日)で、大阪市立大学の高島 勉氏が第III相SELECT BC試験およびSELECT BC-CONFIRM試験の統合解析結果を発表した。 はじめに実施されたSELECT BC試験は、化学療法歴のないHER2陰性mBC患者を対象とした、タキサンとS-1のランダム化比較試験。主要評価項目である全生存期間(OS)は、タキサン群の37.2ヵ月に対しS-1群35.0ヵ月と、S-1のタキサンに対する非劣性が証明された(ハザード比[HR]:1.05、95%信頼区間[CI]:0.86~1.27、non-inferiority test p=0.015)。またHRQoLの比較において、全般的健康(p=0.04)、身体機能(p<0.01)、認知機能(p=0.03)など、経済的困難、疼痛を除くすべての項目でS-1群が有意に優れていた。 SELECT BC-CONFIRM試験は、同様の患者を対象としたアンスラサイクリンとS-1のランダム化比較試験。本試験はSELECT BC試験との統合解析を前提として組まれている。そのうえで、OSについては、アンスラサイクリン群33.7ヵ月に対してS-1群30.1ヵ月(HR:1.09、95%CI:0.80~1.48、ハザード比の非劣性マージン1.333を超えない確率=90.27%)と報告されている。HRQoLについては、両群で有意な差はみられなかった。今回の発表では、新たに両試験の統合解析結果(主要評価項目:OS、副次評価項目:安全性、HRQoL、PFSなど)が報告された。 主な結果は以下のとおり。・SELECT BC試験:618例、SELECT BC-CONFIRM試験:230例の計848例が組み入れられ、それぞれS-1群と標準治療群に無作為に割り付けられた。辞退者などを除き、最終的な解析はS-1群419例、タキサン群286例、アンスラサイクリン群109例について行われた。・ベースライン時の患者特性は、年齢中央値がS-1群57.7歳/タキサン群57.6歳/アンスラサイクリン群59.9歳であった。各群3/4がホルモン受容体陽性、1/3が肝転移陽性の患者であった。周術期治療としては、ホルモン療法が約6割、タキサンが3割弱、経口FU剤が1割強で使われていた。無再発期間(DFI)は2~5年および5年以上の患者がそれぞれ約3割を占めていた。・追跡期間中央値32.7ヵ月において、OS中央値はタキサンとアンスラサイクリンの標準治療群36.3ヵ月 に対しS-1群32.7ヵ月(HR:1.06、95%CI:0.90~1.25)となり、あらかじめ設定された非劣性マージン(1.333)を下回り、S-1の標準治療に対する非劣性が証明された(non-inferiority test p=0.0062)。・無増悪生存期間(PFS)中央値は、両群ともに11.2ヵ月であった(HR:1.10、95%CI:0.95~1.27)。・HRQoLについては、S-1とアンスラサイクリンで両群間に差異はなかった(p=0.257)が、S-1とタキサンでは有意差が確認された(p=0.0039)。・有害事象による治療中止は、S-1群5.7%、標準治療群6.6%で発生した。・血液毒性としては、アンスラサイクリン群で貧血や好中球減少のGrade3以上が若干多い傾向がみられた。S-1群ではトランスアミラーゼ上昇やビリルビン上昇が多い傾向がみられたものの、ほとんどがGrade1/2であった。・非血液毒性としては、S-1群では脱毛が少ないことが特徴的であった。タキサン群では神経障害が多く、アンスラサイクリン群とS-1群では食欲不振、吐き気といった消化器毒性が多い傾向がみられた。 高島氏は、アンスラサイクリン群との比較においてHRQoLについて有意な差がみられなかったことについては、制吐剤の進歩などによりアンスラサイクリン投与中のQoLは比較的良好なのではないかと考察。しかし、同薬は心毒性による用量制限があり、奏効しても長期間使用ができない場合があることを指摘した。経口薬であることによる投与の簡便さと、脱毛や末梢神経障害、浮腫や心機能障害などの苦痛を伴う有害事象が少ないという点にS-1の利点があるとまとめている。

1246.

ESMO2019レポート 消化器がん

レポーター紹介胃がんに対する術前化学療法の意義―PRODIGY試験とRESOLVE試験切除可能な進行胃がんに対する治療は本邦では、S-1、CapeOx、SOX、S-1+ドセタキセル(DS)による術後補助化学療法が標準的治療の位置付けである。欧州では、FLOT4試験の結果、術前術後に3剤併用療法を行うことが標準となった。今回、アジアから2つの術前治療に関する第III相試験が発表された。PRODIGY試験は、韓国で実施されたcT2-3N+M0またはcT4NanyM0に対する術前DOS療法+手術+術後S-1療法(以下、CSC群)の、手術+術後S-1療法(以下、SC群)に対する優越性を検証する第III相無作為化比較試験である。計530例が登録され、最終的な解析対象(FAS)は484例であった。年齢中央値は両群とも58歳、食道胃接合部原発が5%程度含まれていた。CSC群におけるGrade3以上の治療関連有害事象として、好中球減少12.6%、発熱性好中球減少9.2%、下痢5.0%を認め、術前治療中の治療関連死は0.8%であった。手術におけるR0切除割合は、CSC群(238例)96.4% vs.SC群(246例)85.8%(p<0.0001)であった。CSC群では病理学的完全奏効(CR)が10.4%(p<0.0001)で認められた。主要評価項目の3年無増悪生存期間(PFS)は、CSC群66.3% vs.SC群60.2%(HR:0.70、95%CI: 0.52~0.95、p=0.0230)であった。ITT解析でもHR:0.69、6ヵ月のランドマーク解析でもHR:0.71と一貫した結果であった。RESOLVE試験は、中国で行われたcT4a/N+M0またはcT4bNanyM0に対する、術後XELOX、術後SOX、術前SOX+手術+術後SOXの3群比較試験である。計1,094例が登録され、年齢中央値は59~60歳、食道胃接合部原発が35~38%含まれていた。術後化学療法実施割合は、各群66~70%であった。3年無病生存(DFS)は、術後XELOX群と比較して、術前術後SOX群で優越性が示され(54.78% vs.62.02%、HR:0.79、95%CI:0.62~0.99、p=0.045)、術後SOX群の非劣性が示された(54.78% vs.60.29%、HR:0.85、95%CI:0.67~1.07、Non-Inferiority margin:1.33)。以上、中国および韓国から2つの第III相試験が報告され、術前化学療法の優越性が検証された。試験の質も大きな問題はないと考えられ、本邦の実地臨床にも外挿できる可能性が高いと考えられる。ただ、中国の試験はcT4と局所進行症例の中でもより進行した集団が対象であること、韓国の試験は優越性を示すも、PFS曲線はほぼR0切除率の差がPFSの差につながっていることが示唆されることを考慮すれば、すべての切除可能胃がんで術前化学療法が必要とは言い切れないだろう。ただ、発表からは術前化学療法の有害事象も許容範囲内で、術後合併症の発生割合も同程度であったことから、大きなデメリットが感じられない。本邦では、JCOG1509試験、JCOG1704試験の2つの胃がんにおける術前化学療法を検討する前向き試験が実施中である。前者はcT3-4N+M0(肉眼型大型3型および4型を除く)を対象に術前S-1+オキサリプラチン(OX)療法の優越性を無治療群と比較する第III相試験、後者はBulky Nがあるものを対象にしたDOS療法を評価する第II相試験である。これらの試験の結果を待つか、中国・韓国のエビデンスを外挿するか、もう少し国内での議論が必要かもしれない。BRAF V600E変異型大腸がんに対する新規分子標的治療―BEACON試験切除不能BRAF V600E変異陽性大腸がんは、大腸がんの約5%に認められ、きわめて予後不良である。大腸がん治療ガイドラインでは、1次治療においてFOLFOXIRI+ベバシズマブ療法が推奨レジメンの1つとなっているが、2次治療以降には有効な治療が乏しいのが現状である。BRAF変異陽性メラノーマや非小細胞肺がんではBRAF阻害薬+MEK阻害薬の有効性が示されており、同様の治療戦略が大腸がんでも期待されていた。BEACON試験は、BRAF V600E変異を有する切除不能・進行再発大腸がんにおいて、1次治療もしくは2次治療後に腫瘍進行を認めた患者を対象とした無作為化第III相試験である。対象患者665例は、エンコラフェニブ+ビニメチニブ+セツキシマブの3剤併用療法群、エンコラフェニブ+Cmabの2剤併用療法群、FOLFIRI+Cmab療法またはIRI+Cmab療法のコントロール群の3群に、1:1:1で無作為に割り付けられた。OS期間中央値は、3剤併用療法群vs.コントロール群で9.0ヵ月vs.5.4ヵ月(p<0.0001)、2剤併用療法群vs.コントロール群で8.4ヵ月vs.5.4ヵ月(p<0.0003)、最初の331例のORRは3剤併用療法群vs.コントロール群で26% vs.2%(p<0.0001)、2剤併用療法群vs.コントロール群で20% vs.2%(p<0.0001)であり、主要評価項目を達成した。相対用量強度(RDI)は3剤併用療法群では、エンコラフェニブ 91%、ビニメチニブ 87%、Cmab 91%、2剤併用療法群では、エンコラフェニブ 98%、Cmab 93%、コントロール群では74~85%であった。Grade3以上の有害事象割合は、3剤併用療法群58%、2剤併用療法群50%、コントロール群61%であり、3剤併用療法群で下痢10%、貧血11%が高く、全Gradeの有害事象において2剤併用療法群で筋肉痛(13%)、関節痛(19%)、頭痛(19%)などの頻度がやや高かった。QOLに関してはQLQ-C30、FACT-Cにおいては差を認めなかった。以上から、3剤併用療法群において良好な有効性を認め、高いRDIを維持しながらも、管理可能な有害事象のプロファイルとQOLの維持を認めた。以上から、今後切除不能BRAF V600E変異陽性大腸がんにおいて、本併用療法は2次治療以降の標準治療として臨床導入されることが期待される。3剤併用療法で有効性がやや高く、有害事象も2剤併用療法とプロファイルが異なるだけでQOLに差がないことからまずは3剤併用でトライしてみることが勧められる。Grade3以上の消化器毒性は3剤併用療法で高いことから、その場合には2剤併用療法もオプションとなりえるだろう。今後メラノーマ同様に1次治療や補助療法での有効性にも期待したいところである。現状、臨床現場でも困っている患者さんのために、早急な薬事承認に期待したいが、まだ1年程度先になるだろう。それまでは、拡大治験の実施や患者申出制度の利用に活路を見いだしたいところである。ハイリスクStageII結腸がんに対する補助療法―ACHIEVE-2試験リンパ節転移のないStageII結腸がんでは、臨床病理学的な再発ハイリスク因子を持つ場合にのみ術後補助化学療法が推奨され、レジメンはCAPOX/FOLFOX療法やフルオロピリミジン単独療法が6ヵ月間行われる。StageIIIにおいて、IDEA collaborationの結果から、CAPOX/FOLFOX療法の3ヵ月投与が治療選択肢として確立されたことからハイリスクStageII結腸がんでも同様の検討が行われた。2019年ASCOでIDEA collaborationに参加した6つの臨床試験のうち、4つの試験(SCOT、TOSCA、ACHIEVE-2、HORG)の統合解析が発表され、主要評価項目である5年無病生存率(DFS)は非劣性が証明されず、negative studyであった。しかし、CAPOX群では3ヵ月と6ヵ月で大きな差を認めず、ハイリスクStageII症例の術後補助化学療法を行う場合でも、CAPOXなら3ヵ月への短縮が可能と結論付けていた。今回のESMOでは、本邦での試験であるACHIEVE-2試験の結果が発表された。514例が登録され、ハイリスク因子はT4 36%、低分化腺がん10~13%、郭清リンパ節転移個数不十分13%、腸閉塞発症19~20%、脈管侵襲陽性87~88%であった。観察期間中央値約36ヵ月の時点で、3年DFSは3ヵ月群88.2% vs.6ヵ月群87.9%であった(HR:1.12、95%CI:0.80~1.57)。レジメン別解析では、FOLFOX群(n=82)3ヵ月群88.6% vs.6ヵ月群85.7%、CAPOX群(n=432)3ヵ月群88.2% vs.6ヵ月群88.4%であった。サブグループ解析では、T4群では3ヵ月群76.2% vs.6ヵ月群79.7%(HR:1.28、95%CI:0.84~1.95)であった。本試験結果の解釈は非常に悩ましい。もともとIDEA collaborationは、統合解析が主体となっていることから、個々の試験の解釈をするときは、統合解析の結果と合わせて評価することが必要である。3年DFSで大きな差はないが、HRが1.12と少し1を超えている点は気になるところである。とくに、T4集団での解析では少数例の検討とはいえ、HR:1.28と1を大きく超えている。全体の3年DFSがlow risk StageIIIよりも悪いことも鑑みると、T4集団ではCAPOX 6ヵ月を選択することが妥当という印象を持った。スペシャルセッションの最後には、登壇者からStageII CCの補助療法のアルゴリズムが提案されたが、私自身はあまり納得のいくものではなかった。国内でのコンセンサス形成には少し時間がかかると思われた。まとめ今回のESMOでも、多くの新しいエビデンスに巡り合うことができた。胃がん、大腸がんでは肺がんなどに比べ新薬の登場が遅れており、その間に周術期治療の開発がトピックスとなっている印象を受けた。日本人の発表やディスカッサント登壇も多く、世界と一緒に新しい治療方針を議論している実感が得られた。腫瘍医としての矜持を持ち、目の前の患者さんにこの新しいエビデンスをどう適用させるかが肝要である。その過程で、また新たなクリニカルクエスチョンが生じ、それに答えるべく臨床試験に取り組む…この繰り返しの結果が今日までのがん治療の進歩であり、令和の時代にも継続していかねばならないだろう。

1247.

日本の胃がん患者における悪液質の実態/日本癌治療学会

 がん悪液質は体重減少と食欲不振を主体とした複雑な病態の疾患概念である。日本の胃がんにおいて悪液質を発症した場合の予後や経過についての報告は少ない。 久留米大学病院の深堀 理氏らは、久留米大学病院および静岡がんセンター病院で化学療法を受けた進行胃がん患者を対象に、体重減少に焦点を当て、悪液質との相関を調べる後ろ向き観察試験を実施。第57回日本癌治療学会学術集会(10月24~26日)で発表した。主要評価項目は、化学療法導入から悪液質発症までの期間、副次評価項目は悪液質と血液検査結果、全生存期間(OS)、副作用との関連。悪液質の定義は、5%を超える体重減少、BMI 20kg/m2未満の場合は2%以上の体重減少とした。 主な結果は以下のとおり。・2010年9月1日~2016年8月31日、131例が登録された。患者の年齢中央値は68.0歳、男性76.3%、BMI中央値は21.2、PS0~1が90%超であった。・化学療法開始から悪液質発症までの期間は、12週以内が53.4%であった。その後12~24週で16.0%、24~36週で7.6%であった。48週間の時点で87.7%の患者が悪液質を発症した。・OS中央値は、48週時点で悪液質を発症した患者群では459日、悪液質非発症群では851日で、発症群で有意に予後不良であった(p=0.002)。12週(p=0.0167)と24週(p=0.0017)でも同様に発症群で予後不良であった。・悪液質発症の有無と、胃がんの予後不良因子とされる、PS、転移臓器個数、ALP値で調整解析を行ったところ、PSが独立した予後不良因子であった。しかしながら、悪液質発症はHR 1.39(95%CI:0.95~2.0)であり、予後不良の傾向は示していた。・悪液質発症の有無と副作用の関連をみると、食欲低下と疲労のいずれも、悪液質あり患者群では発現頻度が高く、重症度も高かった。 進行胃がんにおける悪液質は、治療開始12週以内に半数以上の患者に発症していた。また、悪液質を発症した患者群は、発症時期によらず予後不良であることを示した。さらに、悪液質を発症した患者群の化学療法の副作用(食欲低下・疲労)の発現頻度が高く、重症化していることが示された。

1248.

卵巣がん、オラパリブ+ベバシズマブ維持療法の第III相試験(PAOLA-1/ENGOT-ov2)/ESMO2019

 フランス・レオンベラールセンターのIsabelle Ray-Coquard氏は、進行卵巣がんでプラチナ製剤+タキサン系抗がん剤+ベバシズマブでの1次治療が奏効した患者に対するPARP阻害薬オラパリブとベバシズマブの併用とベバシズマブ単剤での維持療法を比較した第III相PAOLA-1(ENGOT-ov2)試験の結果を発表。オラパリブ・ベバシズマブ併用はベバシズマブ単剤と比較して無増悪生存期間(PFS)を有意に延長すると報告した。PAOLA-1(ENGOT-ov2)は無作為化二重盲検比較。・対象:FIGO臨床病期分類でStage III~IVの高グレード漿液性がん、類内膜がん卵管がん、腹膜がんと診断され、プラチナ製剤+タキサンベースの化学療法にベバシズマブ3サイクル以上を施行し、完全奏効(CR)あるいは部分奏効(PR)と判定された患者806例・試験群:オラパリブ(300mg×2/日)+ベバシズマブ(15mg/kg、3週ごと)(537例)・対照群:プラセボ+ベバシズマブ(同上)(269例)・評価項目:[主要評価項目]研究グループ判定のPFS[副次評価項目]全生存期間(OS)、無作為化から2度目の増悪または死亡までの期間(PFS2)、最初の後治療開始から死亡までの期間(TFST)、2度目の後治療開始から死亡までの期間(TSST)、QOL、安全性および忍容性。患者は1次治療における効果とBRCA変異の状態で層別化された。 主な結果は以下のとおり。・治験担当医評価によるPFS中央値(ITT集団)は、試験群が22.1ヵ月、対照群が16.6ヵ月で、試験群で有意な延長が認められた(ハザード比[HR]:0.59、95%信頼区間[CI]0.49~0.72、p<0.0001)・暫定PFS2中央値は試験群が32.3ヵ月、対照群が30.1ヵ月であった(HR:0.86、95%CI:0.69~1.09)、OS中央値は未到達。・TFST中央値は試験群が24.8ヵ月、対照群が18.5ヵ月であった(HR:0.59、95%CI:0.49~0.71、p<0.0001)。・予め定めた年齢、Stage、PS、腫瘍減量手術時期、腫瘍減量手術の結果、1次治療の反応性のサブグループ解析ではいずれも試験群が優位であった。・BRCA遺伝子変異を有する症例でのPFS中央値は試験群が37.2ヵ月、対照群が21.7ヵ月(HR:0.31、95%CI:0.20~0.47)、BRCA遺伝子変異なしの症例では試験群が18.9ヵ月、対照群が16.0ヵ月(HR:0.71、95%CI:0.58~0.88)であった。・BRCA変異を含む相同組換え修復異常(HRD)を有する症例でのPFS中央値は試験群が37.2ヵ月、対照群が17.7ヵ月であった(HR:0.33、95%CI:0.25~0.45)。・BRCA変異を含まないHRDを有する症例でのPFS中央値は試験群が28.1ヵ月、対照群が16.6ヵ月であった(HR:0.43、95%CI:0.28~0.66)。・HDRなしあるいは不明の症例でのPFS中央値は16.9ヵ月、対照群が16.0ヵ月であった(HR:0.92、95%CI:0.72~1.17)。・治療関連有害事象発現率は試験群が99%、対照群が96%、Grade3以上は試験群が57%、対照群が51%であった。主な項目は試験群が疲労感/無力症、悪心、高血圧、対照群が高血圧、疲労感/無力症、関節痛であった。・健康関連QOLのスコアは両群で差を認めなかった。

1249.

大腸がん術後補助化学療法、ctDNAによる評価(A GERCOR-PRODIGE)/ESMO2019

 フランス・European Georges Pompidou HospitalのJulien Taieb氏は、StageIIIの結腸がんでの術後補助化学療法では血液循環腫瘍DNA(ctDNA)が独立した予後予測因子であり、ctDNAが陽性か否かにかかわらず、術後補助化学療法は6ヵ月のほうが無病生存期間(DFS)が良好な傾向が認められたと欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で報告した。 今回の結果はIDEA FRANCE試験に参加した患者の血液検体を用いたA GERCOR-PRODIGE試験に基づくもの。IDEA FRANCE試験は、大腸がんの術後補助化学療法としてのFOLFOX療法またはCapeOX療法の投与期間について、3ヵ月間と6ヵ月間を比較した6つの前向き第III相無作為化試験を統合解析したIDEA collaborationに含まれる試験の1つ。 IDEA collaboration では全体として6ヵ月投与群に対する3ヵ月投与群の非劣性は確認されなかった。とくにCapeOX療法の患者の低リスク群では、3ヵ月投与は6ヵ月間投与と同様の有効性を示した。ただ、FOLFOX療法の患者の高リスク群では、6ヵ月間投与群でより高いDFSが得られたという結果になっている。 A GERCOR-PRODIGE試験の対象はIDEA FRANCE試験参加者のうち805例。検体採取は化学療法施行前にEDTA採血管を用いて行われている。検体の解析はWIF1遺伝子と神経ペプチドY(NPY)のメチル化マーカーをデジタルPCRによって解析した。最終的に805例のうち、ctDNA陰性群は696例、ctDNA陽性群は109例であった。 主な結果は以下のとおり。・2年DFS率はctDNA陽性群が64.12%、ctDNA陰性群が82.39%でctDNA陽性群は予後不良であった(ハザード比[HR]:1.85、95%信頼区間[CI]:1.31~2.61、p<0.001)。・多変量解析では、ctDNA陽性(HR:1.85、95%CI:1.31~2.61、p=0.0005)、N2(≧4)(HR:2.09、95%CI:1.59~2.73、p<0.0001)は予後不良因子であった。・治療期間別にみると、6ヵ月投与は3ヵ月投与に比べ予後が良好だった(HR:0.6、95%CI:0.45~0.78、p=0.0002)・ctDNA陽性・陰性別と治療期間の関係では、ctDNA陽性群で治療期間3ヵ月間でのDFS率が最も低かった(p<0.0001)。・T4またはN2(≧4)あるいはその両方を有する高リスクStage IIIではctDNA陽性群のDFS率が有意に低かった(p<00001)。・T1-3かつN1(1-3)の低リスクStage IIIではctDNA陽性群とctDNA陰性群の間でDFS率に有意差は認めなかった(p=0.07)。 今回の結果についてTaieb氏は「術後補助化学療法の3ヵ月間はとりわけctDNA陽性結腸がん患者では不十分なアウトカムに関連している可能性がある」と述べている。

1250.

レンバチニブ、胸腺がん2次治療以降に有望(REMORA)/ESMO2019

 胸腺がんは10万人年に0.02という希少悪性疾患である。プラチナベース化学療法が1次治療であるが、プラチナベース化学療法後の標準治療は確立していない。いくつかの試験では、スニチニブなど血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)を主な標的とするマルチキナーゼ阻害薬の有効性が報告されている。マルチキナーゼ阻害薬レンバチニブ(商品名:レンビマ)においては、前臨床試験でスニチニブと同等かそれ以上の阻害活性を示している。兵庫県立がんセンターの伊藤 彰一氏らは、進行または転移のある胸腺がん患者におけるレンバチニブの有効性と安全性を検討する多施設オープンラベル単群第II相REMORA試験を実施。その中間解析の結果を欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で発表した。 REMORA試験では、プラチナベース化学療法後に進行した転移を有する胸腺がん患者(ECOG PS 0~1)を対象に、レンバチニブ(24mg/日)を増悪または忍容できない有害事象発現まで投与した。主要評価項目は独立放射線審査委員会(IRR)評価による全奏効率(ORR)であった(ORR閾値10%、期待値25%)、副次評価項目は無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、病勢制御率(DCR)、安全性であった。 主な結果は以下のとおり。・2017年4月~2018年2月、日本の8施設から42例の患者が登録された。・追跡期間の中央値は15.5ヵ月であった。・ORRは38.1%(90%信頼区間[CI]:25.6~52.0)で、主要評価項目を達成した。・病勢制御率は95.2%(PR16例[38.1%]16例、SD24例[57.1%])であった。・PFS中央値は9.3ヵ月(95%CI:7.7~13.9)であった。・OS中央値は未達、12ヵ月OS率83.3%であった。・頻度の高い治療関連有害事象は、高血圧(88.1%)、手足症候群(69.0%)、タンパク尿(66.7%)、甲状腺機能低下症(64.3%)などであった。治療関連死はなかった。 発表者は、レンバチニブはプラチナベース化学療法で増悪した胸腺がん患者の標準治療選択肢の1つになりうるとしている。

1251.

ペムブロリズマブのMSI-High固形がんに対する第II相試験(KEYNOTE-164、158統合解析)/ESMO2019

 米メモリアル・スローン・ケタリングがんセンター固形がん腫瘍学部門のLuis Diaz氏は、局所進行・転移のあるミスマッチ修復(MMR)欠損または高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形がんに対するペムブロリズマブの第II相試験KEYNOTE-164とKEYNOTE-158の統合解析結果を欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で発表。MMR欠損またはMSI-Highを有する固形がんでは、がん種にかかわらずペムブロリズマブが安定した効果を示し、安全性も管理可能なものであると述べた。ペムブロリズマブの奏効率は34% KEYNOTE-164とKEYNOTE-158は共に化学療法で既治療の切除不能な局所進行・転移のあるMMR欠損またはMSI-Highを有する固形がんの患者で行われた非無作為化非盲検第II相試験。KEYNOTE-164の対象は大腸がん患者124例。KEYNOTE-158は子宮内膜がん49例、胆管がん22例、膵がん22例、小腸がん19例、卵巣がん15例、脳腫瘍13例、肉腫9例、子宮頸がんと前立腺がんが6例などを含む合計233例。両試験ともペムブロリズマブ200mg、3週ごと最長約2年間投与した。 ペムブロリズマブの第II相試験を解析した主な結果は以下のとおり。・ペムブロリズマブの奏効率(ORR)は34%、CRは8%であった。・ペムブロリズマブの奏効期間(DOR)中央値は未到達。54%の患者でDORは18ヵ月以上であった。・ペムブロリズマブの全生存期間(OS)中央値は27.8ヵ月(95%信頼区間[CI]:21.3~未到達)。患者の52%はOSが2年以上であった。・ペムブロリズマブの無増悪生存期間(PFS)中央値は4.0ヵ月(95%CI:2.5~4.3)。31%の患者ではPFS中央値が2年以上であった。・AEはペムブロリズマブで既知のものだった。 この結果からLuis Diaz氏は「ペムブロリズマブはMMR欠損またはMSI-Highを有する固形がんで永続性のある強力な効果を示し、安全性は管理可能なものであった」と述べた。

1252.

脳転移のあるPD-L1陽性肺がんにもペムブロリズマブ単剤が有効/ESMO2019

 米メイヨークリニックのAaron S. Mansfield氏は、ペムブロリズマブに関する臨床試験であるKEYNOTE-001、010、 024、042の統合解析結果から、脳転移があるPD-L1陽性非小細胞肺がん(NSCLC)に対するペムブロリズマブ単独療法は、脳転移なしと同等以上の予後改善効果があると欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で発表した。 統合解析に用いた4試験(KEYNOTE-001、010、024、042)のうちKEYNOTE-001のみが単群試験で、その他はいずれも化学療法との比較試験である。 主な結果は以下のとおり。・統合解析による全症例数は3,170例。うち脳転移ありは293例、脳転移なし2,877例であった。・PD-L1 TPS≧50%の脳転移あり症例の全生存期間(OS)中央値はペムプロリズマブ群が19.7ヵ月(95%信頼区間[CI]:12.1~31.4)、化学療法群が9.7ヵ月(95%CI:7.2~19.4)であった(ハザード比[HR]:0.78、95%CI:0.71~0.85)。・PD-L1 TPS≧50%の脳転移なし症例でのOS中央値はペムブロリズマブ群が19.4ヵ月(95%CI:17.0~22.4)、化学療法群が11.7ヵ月(95%CI:10.1~13.1)であった(HR:0.66、95%CI:0.58~0.76)であった。・PD-L1 TPS≧1%の脳転移あり症例でのOS中央値はペムブロリズマブ群が13.4ヵ月(95%CI:10.4~18.0)、化学療法群が10.3ヵ月(95%CI:8.1~13.3)であった(HR:0.83、95%CI:0.62~1.10)であった。・PD-L1 TPS≧1%の脳転移なし症例でのOS中央値はペムブロリズマブ群が14.8ヵ月(95%CI:13.4~16.1)、化学療法群が11.3ヵ月(95%CI:10.2~12.0)であった(HR:0.78、95%CI:0.71~0.85)であった。・PD-L1 TPS≧50%の脳転移あり症例での無増悪生存期間(PFS)中央値はペムブロリズマブ群が4.1ヵ月(95%CI:2.3~10.6)、化学療法群が4.6ヵ月(95%CI:3.5~8.4)であった(HR:0.70、95%CI:0.47~1.03)。・PD-L1 TPS≧50%の脳転移なし症例でのPFS中央値はペムブロリズマブ群が6.5ヵ月(95%CI:6.1~8.1)、化学療法群が6.1ヵ月(95%CI:5.8~6.2)であった(HR:0.69、95%CI:0.62~0.78)であった。・PD-L1 TPS≧1%の脳転移あり症例でのPFS中央値はペムブロリズマブ群が2.3ヵ月(95%CI:2.1~3.9)、化学療法群が5.2ヵ月(95%CI:4.2~8.3)であった(HR:0.96、95%CI:0.73~1.25)であった。・PD-L1 TPS≧1%の脳転移なし症例でのPFS中央値はペムブロリズマブ群が4.3ヵ月(95%CI:4.2~5.1)、化学療法群が6.1ヵ月(95%CI:6.0~6.3)であった(HR:0.91、95%CI:0.84~0.99)であった。・PD-L1 TPS≧50%の脳転移あり症例での奏効率(ORR)はペムブロリズマブ群が33.9%、化学療法群が14.6%、脳転移なしの症例でペムブロリズマブ群が38.1%、化学療法群が26.1%であった。・PD-L1 TPS≧1%の脳転移あり症例でのORRはペムブロリズマブ群が26.1%、化学療法群が18.1%、脳転移なしの症例でペムブロリズマブ群が25.8%、化学療法群が22.2%であった。・奏効期間(DOR)中央値はPD-L1 TPS≧50%の脳転移あり症例でペムブロリズマブ群が未到達、化学療法群が7.6ヵ月、脳転移なしの症例でペムブロリズマブ群が33.9ヵ月、化学療法群が8.2ヵ月であった。・DOR中央値はPD-L1 TPS≧1%の脳転移ありの症例でペムブロリズマブ群が未到達、化学療法群が8.3ヵ月、脳転移なしの症例でペムブロリズマブ群が30.4ヵ月、化学療法群が8.1ヵ月であった。・Grade3以上のAE発現率は脳転移ありのペムブロリズマブ群が15%、脳転移なしのペムブロリズマブ群が18%、脳転移ありの化学療法群が46%、脳転移なしの化学療法群が43%であった。 この結果からペムブロリズマブ単独療法は脳転移の有無にかかわらず、なおかつPD-L1 TPS≧50%、PD-L1 TPS≧1%のいずれの場合でも脳転移ありの症例ではDOR中央値が未到達であることをMansfield氏は強調。「ペムブロリズマブ単独療法は脳転移を有する場合も含めPD-L1陽性の進行NSCLCの標準治療」との結論を述べた。

1253.

ニボルマブ+低用量イピリムマブ、NSCLCのOS有意に改善(CheckMate-227)/ESMO2019

 イピリムマブとニボルマブの併用は、悪性黒色腫や腎細胞がんにおいて全生存期間(OS)の改善を示している。非小細胞肺がん(NSCLC)においても、イピリムマブの用法・用量の肺がんへの適正化(1mg/kg 6週ごと投与)により、有効性を示す試験結果が報告されている。CheckMate-227試験は、ニボルマブベースの治療と化学療法を比較したオープンラベル無作為化第III相試験。同試験は、Part1とPart2で構成されており、Part1の結果として、高腫瘍変異負荷(TMB≧10mut/Mb)患者におけるイピリムマブ・ニボルマブ併用の化学療法に対する無増悪生存期間(PFS)の延長が報告されている。欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)では、Part1の最終結果、とくにPD-L1≧1%の患者における主要評価項目であるイピリムマブ+ニボルマブ対化学療法の全生存期間(OS)のデータについて、スイス・ローザンヌ大学のSlonge Peters氏が発表した。・対象:未治療のPD-L1発現1%以上(Part1a)および1%未満(Part1b)のStageIVまたは再発NSCLCの初回治療患者(PS 0~1、組織系問わず)・試験群:ニボルマブ+イピリムマブ群(NIVO+IPI群)     ニボルマブ単独群(TPS1%以上)(NIVO群)     ニボルマブ+化学療法群(TPS1%未満)(NIVO+Chemo群)・対照群:化学療法(組織型により選択)単独(Chemo群)・評価項目[複合主要評価項目]高TMB(≧10/メガベース)患者におけるNIVO+IPI群対Chemo群のPFS、PD-L1発現(≧1%)患者におけるNIVO+IPI群対Chemo群のOS[副次評価項目]高TMB(≧13/メガベース)かつPD-L1発現(TPS1%以上)患者におけるNIVO群対Chemo群のPFS、高TMB(≧10/メガベース)患者におけるNIVO+Chemo群対Chemo群のOS、PD-L1なしまたは低発現(TPS1%未満)患者におけるNIVO+Chemo群対Chemo群のPFS、そのほか奏効率(ORR)、奏効期間(DoR)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・PD-L1≧1%のOSはNIVO+IPI群で17.1ヵ月、Chemo群14.9ヵ月と有意にNIVO+IPI群で改善した(ハザード比[HR]:0.79、95%信頼区間[CI]:0.65~0.96、p=0.007)。同条件におけるNIVO群のOSは15.7ヵ月でChemo群に対するHRは0.88(95%CI:0.75~1.04)であった。・盲検下独立中央評価委員会(BICR)評価によるORRはNIVO+IPI群35.9%、NIVO群27.5%、Chemo群30.0%であった。・BICR評価によるDORはNIVO+IPI群23.2ヵ月、NIVO群15.5ヵ月、Chemo群6.2ヵ月であった。・PD-L1<1%のOSはNIVO+IPI群17.2ヵ月、Chemo群12.2ヵ月であった(HR:0.62、95%CI:0.48~0.78)。同条件におけるNIVO+Chemo群のOSは15.2ヵ月でChemo群に対するHRは0.78(95%CI:0.60~1.02)であった。・全対象患者(PD-L1レベルにかかわらず)のOSはNIVO+IPI群17.1ヵ月、Chemo群13.9ヵ月であった(HR:0.73、95%CI:0.64~0.84)。・NIVO+IPI群とChemo群のサブグループ解析のすべての項目、いずれのPD-L1発現レベルにおいてもNIVO+IPI群が優位であった。・有害事象については、従来の報告と同様であり、新たなものはみられなかった。 CheckMate-227試験は、NSCLCの1次治療におけるPD-L1阻害薬とCTLA-4阻害薬の併用で主要評価項目を達成した初の第III相試験となった。PD-L1発現レベルを問わず、化学療法に対し臨床的に意味のあるOSの改善を示した。加えて、PD-L1≧1%以上についてはNIVO群に対しPD-L1<1%についてはNIVO+Chemo群に対し、アウトカムを改善した。Peters氏は個人的見解として、免疫チェックポイント阻害薬の併用は、進行NSCLCの1次治療の選択肢となる可能性を示したと結んだ。 この発表は同時にNEJM誌オンライン版2019年9月28日号に掲載された。

1254.

EGFR陽性NSCLC1次治療、ベバシズマブ+エルロチニブがPFS改善(CTONG 1509)/ESMO2019

 EGFR変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)に対する1次治療としてのベバシズマブ+エルロチニブ併用療法の試験結果が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で、中国・Guangdong Lung Cancer InstituteのQing Zhou氏より発表された。 CTONG 1509試験は、中国国内の14施設で実施されたオープンラベルの無作為化比較第III相試験である。症例登録期間は、2016年4月~2017年7月であり、主解析に用いたデータのカットオフは2019年1月であった。 ・対象:化学療法未治療EGFR変異陽性(exon 19 del/exon 21 L858R)進行・再発NSCLC 311例・試験群:ベバシズマブ(15mg/kg、3週ごと)+エルロチニブ(150mg/日)(Bev併用群)・対照群:エルロチニブ(150mg/日)(ERL群)・評価項目: [主要評価項目]独立評価委員会(IRC)による無増悪生存期間(PFS) [副次評価項目]主治医判定によるPFS、奏効率(ORR)、病勢コントロール率(DCR)、奏功期間(DOR)、安全性 [探索的検討項目]耐性獲得に関与するバイオマーカー検索  主な結果は以下のとおり。・Bev併用群には157例、ERL群には154例が登録された。Exon 19 delとExon 21 L858Rは両群ともほぼ50%ずつで、脳転移ありは両群とも約30%と均等に割り付けられていた。・追跡期間中央値はBev併用群22.0ヵ月、ERL群で21.5ヵ月であった。・IRC評価によるPFS中央値はBev併用群18.0ヵ月(95%信頼区間[CI]:15.2~20.7)、ERL群11.3ヵ月(95%CI:9.8~13.8)であり、ハザード比(HR)は0.55(95%CI:0.41~0.75)でp値<0.001とBev併用群が良好であった。・IRC評価によるEGFR変異タイプごとのPFSは、Exon 19 delで中央値17.9ヵ月対12.5ヵ月、HRは0.62(95%CI:0.41~0.92)、Exon 21 L858Rでは19.5ヵ月対9.7ヵ月、HRは0.51(95%CI:0.33~0.79)と、同様にBev併用群が良好であった。・IRC評価による脳転移の有無別のPFSは、脳転移ありグループでHR 0.50(95%CI:0.28~0.88)、脳転移なしグループでHR 0.59(95%CI:0.42~0.85)であった。・IRC評価によるORRは、Bev併用群で86.3%、ERL群で84.7%であり、DOR中央値はそれぞれ16.6ヵ月と11.1ヵ月で、HRは0.59(95%CI:0.42~0.82)であった。・Grade3以上の有害事象はBev併用群53.5%、ERL群25.5%でありBev併用群では皮疹、蛋白尿、高血圧、下痢が多く認められたが、未知の有害事象はなかった。・耐性に関わると思われる治療後の新たな遺伝子変異はERL群で多く認められ、T790MはBev併用群で33%、ERL群で42%に認められた。 Zhou氏は「ベバシズマブ・エルロチニブ併用療法は、EGFR変異陽性NSCLCに対する新たなる標準治療となりえる」と結んだ。

1255.

局所進行胃がんに対するDOSによる術前化学療法の追加効果(PRODIGY)/ESMO2019

 局所進行胃がんに対する術後S-1治療への術前ドセタキセル+オキサリプラチン+S-1(DOS)の追加効果を検討したPRODIGY試験の結果が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で報告された。韓国・蔚山大学校のYoon-Koo Kang氏による発表。DOSの術前化学療法追加で腫瘍のStage減少ならびにPFSの延長がみられた アジアにおいて、胃切除リンパ節郭清(D2)とそれに続く術後化学療法は、切除可能進行胃がんに対する標準治療となっている。PRODIGY試験は、標準治療へのDOSの術前化学療法追加による効果を検証した第III相試験である。・対象:新規に局所進行胃がんまたは食道胃接合部がんと診断された韓国人患者530例(cTNM分類でcT2/N+、cT3-4/N+、cT4/N-、PS:0~1)・試験群(CSC群):術前DOS+術後S-1(266例)・対照群(SC群):術後S-1(264例)・評価項目: [主要評価項目]3年無増悪生存期間(PFS) [副次評価項目]R0切除率、術後Stage、全生存期間(OS)、安全性 切除可能進行胃がん標準治療へのDOS追加による効果を検証した主な結果は以下のとおり。・計484例(最大の解析集団[FAS])が登録され、CSC群に238例、SC群に246例が割り付けられた。・37.4ヵ月の追跡期間(中央値)のうち、FASにおける3年PFSの割合はCSC群66.3%、SC群60.2%(ハザード比[HR]:0.70、95%信頼区間[CI]:0.52~0.95、p=0.023)であった。・CSC群において、R0切除率の有意な増加がみられた(CSC群:96.4%、SC群:85.8%、p<0.0001)。・CSC群におけるGrade3以上の主な副作用は、好中球減少症(12.6%)、発熱性好中球減少症(9.2%)、下痢(5.0%)であった。また、治療に関連した死亡が1例みられた。・術後S-1に術前DOSを追加することで、腫瘍のStage減少ならびにPFSの延長がみられた。

1256.

WCLC(World Conference on Lung Cancer)2019 レポート

レポーター紹介世界肺がん学会WCLC(World Conference on Lung Cancer)2019はスペインのバルセロナで、2019年9月7~10日の期間に行われた。今年は9月末に欧州臨床腫瘍学会が同じスペインのバルセロナで行われることもあり、例年のWCLCと比べるとトピックスが少ない印象ではあったが、公式発表では100ヵ国以上から7,000例以上がWCLCに参加し、多くの演題(2,853演題)が報告された。学会初日の印象では参加人数が例年よりも少なそうで寂しい印象を受けたが、Presidential Symposiumの発表時には、会場はほぼ満席であり活気に満ちたものであった。このレポートでは、私的に選んだ今学会でのトピックスをいくつか紹介する。外科手術のトピックVIOLET試験の効果と安全性に関する探索的検討clinical stage cT1~3、N0~1、M0の肺がん、もしくは肺がんが強く疑われる患者を対象に、開胸手術とVATSを比較する第III相試験における早期の効果と安全性の結果が報告された。入院中の死亡率は、VATS群で1.4%(VATS治療から開胸手術の移行率5.7%)であった。また、完全切除率については、VATS群で98.8%、開胸切除で97.4%であり、有意差を認めなかった(p=0.839)。術後の疼痛についてmedian(visual analogue)pain scoreで評価が行われており、術後1日では術後疼痛についてmedian scoreに差を認めなかったが、術後2日では術後疼痛の強さがVATS群で有意に改善され、入院期間についてもVATS群が4日、開胸手術群が5日と有意に短くなる(p=0.008)ことが報告された。また、入院中の術後合併症がVATS群で32.8%、開胸手術群で44.3%と有意に低下する(p=0.008)という結果であった。今回の報告では、VATSと開胸手術において、侵襲の少ないVATSが開胸手術と比較しても根治率が変わらないことが報告され、合併症や入院期間、術後疼痛が良好であることが報告され、日常臨床で広く浸透しているVATSが短期的な指標では有用であることが検証された試験である。今後の長期予後データなどの報告が待たれる。(Lim E, et al. PL 02-06)分子標的療法におけるトピックスLIBRETTO-001 study進行非小細胞肺がんのRET-fusion遺伝子変異に対する分子標的療法で、保険償還承認が得られた治療はまだ存在しない。LIBRETTO-001試験で使用されたLOXO-292はRETを選択的に強く阻害する分子標的薬であり、脳への移行性も高く、RET-fusion遺伝子変異に対する治療薬として期待されている。今学会ではLIBRETTO-001試験における、LOXO-292療法の効果と安全性についての第I/II相試験の結果が報告された。253例のRET-fusion陽性の非小細胞肺がんの患者が参加し、うちprimary analysis set (PAS) に139例が登録された。105例が初回にプラチナ製剤併用化学療法を受け、58例がPD-1/PD-L1阻害薬療法を受けていた。奏効率(ORR)は68%(95%CI:58~76%、n=71/105)であり、RET fusionのパートナーにかかわらず治療効果を認めた。また治療奏効期間は20.3ヵ月(95%CI:13.8~24.0ヵ月)であり、脳転移のある患者における脳転移のORRは91%(n=10/11:2 confirmed CRs、8 confirmed PRs)であった。さらに未治療のRET-fusion陽性の患者ではORR85%(95%CI:69~95%、n=29/34)であった。毒性(AEs)は、ほとんどがGrade1/2と軽微であり、頻度では口腔内乾燥、下痢、高血圧、AST/ALTの上昇が多かった。今回のLOXO-292のデータは非常に良好であり、RET-fusion陽性肺がんの標準療法になりうると考えられ早期での臨床導入が期待される。(Drilon A, et al. PL 02-08)免疫チェックポイント阻害薬のトピックスCASPIAN study進展型小細胞肺がんに対し、初回治療でのプラチナ(シスプラチンもしくはカルボプラチン)+エトポシド(EP)療法の標準療法と、デュルバルマブもしくはデュルバルマブ+tremelimumabの上乗せ治療を比較するオープンラベル下での第III相試験である。この試験はプレスリリースにおいて、デュルバルマブ上乗せ群が標準療法群に対してOSを有意に改善したと発表しており、今学会の最注目演題であった。今学会ではCASPIAN試験における、標準療法群とデュルバルマブ併用療法群の結果が報告された。PS 0~1の未治療進展型小細胞肺がんの患者を対象に、デュルバルマブ1,500mg+EP療法を3週ごと、デュルバルマブ1,500mg+tremelimumab 75mg+EP療法を3週ごと、もしくはEP療法を3週ごと4コースの治療を行った。免疫療法群では、4コース終了後のデュルバルマブ維持療法が認められており、EP療法では6コースまで投与をすることが認められていた。また、主治医判断での予防的全能照射(prophylactic cranial irradiation [PCI])も認められていた。EP+デュルバルマブ療法群に268例、EP療法群に269例が割り付けられ、56.8%の患者が6コースのEP療法を受けていた。全生存期間においてEP+デュルバルマブ群がEP療法群と比較して、HR0.73、95%CIは0.591~0.909、p=0.0047と生存期間を有意に延長し、生存期間中央値(mOS)はEP+デュルバルマブ療法群で13ヵ月、EP療法群で10.3ヵ月であった。また18ヵ月の時点で、EP+デュルバルマブ療法群では33.9%の患者が生存しており、EP療法群では24.7%の患者が生存していた。無増悪生存期間(PFS)や奏効率(ORR)においてもEP+デュルバルマブ療法群がEP療法群よりも優れた結果であった。EP+デュルバルマブ療法群とEP療法群でそれぞれ、mPFSが5.1ヵ月と5.4ヵ月、PFSはHR0.78、95%CIは0.645~0.936、12ヵ月PFS rateが17.5%と4.7%、ORR(RECIST v1.1:unconfirmed)が79.5%と70.3%(odds ratio:1.64、95%CI:1.106~2.443)であった。毒性(AEs)ではEP+デュルバルマブ療法群とEP療法群でGrade3/4 AEsが61.5%と62.4%、AEsによる治療中断率は各9.4%と差を認めなかった。この試験では、先行するIMpower133試験(カルボプラチン+エトポシド療法にアテゾリズマブの上乗せの有効性が証明された)と同様にPD-L1阻害薬の標準療法への上乗せが証明された。この試験では、EP+デュルバルマブ+tremelimumab療法群の結果、すなわちPD-L1阻害薬+CTLA-4阻害薬の標準療法への上乗せ効果は公表されておらず、いまだ不明のままである。(Luis Paz-Ares, et al. PL 02-11)CheckMate 817試験(Cohort A1)PS 2や肝障害やHIV感染症を持つPS 0~1(all other special population:AOSP)のIV期非小細胞肺がんの初回治療として、ニボルマブ(PD-1阻害薬)+イピリムマブ(CTLA-4阻害薬)併用療法の効果と安全性を確認する第IIIb/IV相試験の結果が報告された。この試験での治療方法はニボルマブ240mg(2週ごと)、イピリムマブ1mg/kg(6週ごと)の固定容量での治療である。この試験ではPS 2の患者139例とAOSPの患者59例が試験に登録された。安全性についてはPS 2の患者でも、AOSPの患者でも、通常のPS 0~1の患者と比較して、治療関連有害事象や治療関連有害事象による治療中断、治療関連死に差がないことが示された。奏効率は、PS 2で20%、AOSPで37%であり、PS 0~1で35%であったが、PFSはPS 2やAOSPの患者で、PS 0~1の患者より有意に短かった。免疫チェックポイント阻害薬の併用において、PS不良の患者でも安全性はPS良好な患者と同様であり、初回治療の選択肢となりうることが示されたと考えてよいだろう。(Valette CA, et al. OA 04-02)その他の免疫チェックポイント阻害薬のトピック今回の学会では、以前に発表された第III相試験の長期予後データについていくつかの報告があった。PD-L1 50%陽性、EGFRやALK変異陰性の患者で行われた第III相試験であるKEYNOTE-024試験の3年目解析データが報告された。生存期間中央値(mOS)はペムブロリズマブ群26.3ヵ月(18.3~40.4)、殺細胞性抗がん剤治療群14.2ヵ月(9.8~18.3)で、OSはHR0.65、95%CIは0.50~0.86、p=0.001であり、長期間の観察期間でも有意にOSを延長していることが報告された。また、この発表では抗がん剤治療群からのペムブロリズマブのクロスオーバーしたペムブロリズマブの治療成績が報告されており、奏効率(ORR)は20.7%であり、治療奏効期間の中央値は20.9ヵ月と報告された。(Reck M, et al. OA 14-01)また、扁平上皮がんに対するプラチナ+タキサン療法へのアテゾリズマブの上乗せを検討しているIMpower131試験の最終解析結果も報告された。この試験は、ASCO2018においてOSの有意な延長が示されておらず、PD-L1 1~49%群でのOSがプラチナ製剤併用療法群と比較してクロスすることが報告されていた。今回の最終解析において、カルボプラチン+nabパクリタキセル+アテゾリズマブ群とカルボプラチン+nabパクリタキセル群の生存期間中央値(mOS)は14.2ヵ月vs.13.5ヵ月で、OSはHR0.88、95%CIは0.73~1.05、p=0.158で、OSの延長効果は示されなかった。ただし、PD-L1TPS 50%以上の高発現群においては、mOSは23.4ヵ月vs.10.2ヵ月、OSはHR0.48、95%CIが0.29~0.81とサブグループ解析ではあるが有意に延長していることが報告された。同じ扁平上皮がんを対象としたプラチナ+タキサン療法へのペムブロリズマブの上乗せを検討したKEYNOTE-407試験では、ペムブロリズマブの上乗せの生存延長効果が示されているだけに、PD-1阻害薬とPD-L1阻害薬で扁平上皮がんに効果に違いが出るのか興味深いところではある。(Cappuzzo F, et al. OA 14-02)小細胞肺がんのトピックスSensitive Relapse小細胞肺がんを対象にカルボプラチン+エトポシドとトポテカンを比較した第III相試験トポテカンはヨーロッパでは小細胞肺がんの2次療法で承認されている数少ない抗がん剤であり、ヨーロッパだけでなく本邦含めグローバルで標準療法として広く用いられている。この試験では、初回治療から90日以上たってから再燃してきた小細胞肺がんをsensitive relapse小細胞肺がんとして定義しており、この対象を満たし初回治療でプラチナ+エトポシド療法が施行されている患者に対して、カルボプラチン+エトポシドとトポテカンの比較試験が行われた。この試験での意義は初回治療のre-challengeと標準療法であるトポテカンのどちらが良いかを比較している点で、今までのクリニカル・クエスチョンを確認する試験である。主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)については、中央値がre-challenge群で4.7ヵ月(95%CI:3.9~5.5)、トポテカン群で2.7ヵ月(95%CI:2.3~3.2)、PFSがHR0.6、95%CIは0.4~0.8、p<0.002であり、re-challenge群が有意にPFSを延長していた。またre-challenge群とトポテカン群の比較において、他の主な評価項目では、奏効率が49% vs.25%(p<0.002)とre-challenge群で有意に奏効率が高かったが、全生存期間ではmOSが7.5ヵ月(95%CI:5.4~8.7)vs.7.4ヵ月(95%CI:6.0~9.3)であり、両群で有意な差を認めなかった。毒性では、トポテカン群はGrade3/4の好中球減少が35.8% vs.19.7%(p<0.001)と有意に高かったが、発熱性好中球減少症が13.6% vs.6.2% (p=0.19)で両群に有意な差を認めず、その他の毒性も両群で差を認めなかった。この試験の結果からは、日常臨床で行われることが多いsensitive relapse小細胞肺がんにおけるre-challenge療法を、標準療法の一つとして考えてもよいのかもしれない。(Monnet I, et al. OA 15-02)

1257.

局所進行NSCLCのCRT、10年でどこまでcure?(WJTOG0105)/ESMO2019

 WJTOG0105は、切除不能Stage III非小細胞肺がん(NSCLC)における、胸部放射線治療(TRT)の併用化学療法として、第3世代レジメン(イリノテカン+カルボプラチン、パクリタキセル+カルボプラチン)と第2世代レジメン(マイトマイシンC+ビンデシン+シスプラチン)を比較した第III相試験である。この試験の結果、第3世代レジメンによる化学放射線療法(CRT)は切除不能Stage III NSCLCの標準治療の1つとして確立された。しかし、CRTによる累積毒性と長期生存はまだ明らかになっていない。国立がん研究センター東病院の善家 義孝氏は、欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)において、わが国のStage III NSCLCにおけるCRTの生存と毒性の10年間追跡調査の結果を報告した。・対象:切除不能Stage IIIA/B NSCLC(70歳未満、PS 0~1)・対照群[A群]シスプラチン+ビンデシン+MMC(4週ごと2サイクル)+TRT(60Gy)→シスプラチン+ビンデシン+MMC(4週ごと2サイクル)・試験群[B群]イリノテカン+カルボプラチン(毎週6週間)+TRT(60Gy)→カルボプラチン+イリノテカン(3週ごと2サイクル)[C群]パクリタキセル+カルボプラチン(毎週6週間)+TRT(60Gy)→パクリタキセル+カルボプラチン(3週ごと2サイクル)。・評価項目:5年および10年の全生存(OS)率、晩期毒性(CRT開始後90日以降に発生) 主な結果は以下のとおり。・2001年9月~2005年9月に440例が登録され、A群(n=146)、B群(n=147)、C群(n=147)に無作為に割り付けられた。・追跡期間中央値は140ヵ月であった。・OSはA群20.5ヵ月に対しB群19.8ヵ月(ハザード比[HR]:1.18、95%信頼区間[CI]:0.82~1.51)、C群22.0ヵ月(HR:1.01、95%CI:0.79~1.30)であった。・5年OS率はA群20.8%、B群16.0%、C群18.3%、10年OS率はそれぞれ13.6%、7.5%、15.2%であった。・5年無増悪生存(PFS)率はA群10.2%、B群10.8%、C群12.3%、10年PFS率はそれぞれ8.5%、5.9%、11.1%であった。・Grade3/4の晩期毒性はA群3.4%(心臓0.7%、肺2.7%)、B群で3.4%(肺のみ)、C群4.1%(肺のみ)、Grade5は、C群で0.7%(肺のみ)であった。 C群のカルボプラチン+パクリタキセルは、A群と同程度の効果と毒性プロファイルを有していることが示された。10年OS率15%、PFS率11%という結果から、免疫療法を含めた新たな治療戦略が必要だとしている。 発表者の善家義貴氏との1問1答はこちら。この試験を行った背景について教えてください。 Stage IIIのCRTは従来5年生存をcureの指標としていましたが、がん患者さんの生存が延長した現在、cureは10年生存でみるべきだといえます。しかし、CRTを10年間観察した大規模研究はありませんでした。そこで、今回初めて、CRTが10年という長期のcureを実現しているのかを追跡評価しました。この結果をどう評価されますか。 今までCRT後の生存率は5年で20%と言われていましたが、その後はどのようになるのか明らかになっていませんでした。今回の試験で、10年で15%というデータが出たことは重要だと思います。 また現在、実臨床で使われているCRTの化学療法は、ほとんどがC群のカルボプラチン+パクリタキセルだと思います。当試験の結果からも、このレジメンが効果、安全性ともにスタンダードであると言えると思います。この試験で苦労されたことは? 10年間、患者さんの生存調査をすることは大変な作業でした。しかし、この難しい作業を研究者の先生方は快く協力していただけました。その背景には、この研究の結果をぜひ知りたいという強い興味が、肺がん診療医にあったのではないかと思います。 CRTはcureを目指す治療です。10年生存15%は満足な数字だとは言えません。今後は免疫療法などで、どこまで引き上げられるかが課題です。

1258.

進行NSCLCの初回治療、ニボルマブ+イピリムマブが有効/NEJM

 進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、ニボルマブ+イピリムマブ併用療法による初回治療はPD-L1発現レベルを問わず、化学療法と比較して全生存(OS)期間を延長することが認められた。また、長期追跡において新たな安全性の懸念は生じなかった。米国・Memorial Sloan Kettering Cancer CenterのMatthew D. Hellmann氏らが、第III相の無作為化非盲検試験「CheckMate-227試験」の結果を報告した。進行NSCLC患者を対象とした第I相試験において、とくにPD-L1陽性患者で、ニボルマブ+イピリムマブ併用療法がニボルマブ単剤療法よりも奏効率が良好であることが示され、NSCLC患者におけるニボルマブ+イピリムマブの長期的な有効性を評価するデータが必要とされていた。NEJM誌オンライン版2019年9月28日号掲載の報告。進行NSCLC患者約1,700例についてOSで評価 研究グループは2015年8月~2016年11月に、StageIVまたは再発NSCLCでPD-L1発現率1%以上の患者1,189例を、ニボルマブ+イピリムマブ併用群、ニボルマブ単剤群、化学療法群のいずれかに1対1対1の割合で無作為に割り付けた。また、PD-L1発現率1%未満の患者550例について、ニボルマブ+イピリムマブ併用群、ニボルマブ+化学療法併用群、化学療法単独群のいずれかに1対1対1の割合で無作為に割り付けた。患者は全例、化学療法歴がなかった。 主要評価項目は、PD-L1発現率1%以上の患者における化学療法群と比較したニボルマブ+イピリムマブ併用群のOSであった。PD-L1発現率を問わず、ニボルマブ+イピリムマブ併用療法でOSが延長 PD-L1発現率1%以上の患者において、OS中央値はニボルマブ+イピリムマブ併用群17.1ヵ月(95%信頼区間[CI]:15.0~20.1)、化学療法群14.9ヵ月(95%CI:12.7~16.7)であった(p=0.007)。2年OS率は、それぞれ40.0%および32.8%、奏効期間中央値は23.2ヵ月および6.2ヵ月であった。 OSの延長は、PD-L1発現率1%未満の患者においても確認され、ニボルマブ+イピリムマブ併用群17.2ヵ月(95%CI:12.8~22.0)、化学療法群12.2ヵ月(95%CI:9.2~14.3)であった。 本試験に組み込まれた全患者のOS中央値は、ニボルマブ+イピリムマブ併用群17.1ヵ月(95%CI:15.2~19.9)、化学療法群13.9ヵ月(95%CI:12.2~15.1)であった。 Grade3/4の治療関連有害事象が発現した患者の割合は、ニボルマブ+イピリムマブ併用群32.8%、化学療法群36.0%であった。

1259.

ニボルマブ、食道がん2次治療以降のOS改善(ATTRACTION-3)/ESMO2019

 韓国・延世医科大学延世がんセンターのByoung Chul Cho氏は、進行・再発の食道扁平上皮がんの2次治療でニボルマブとタキサン系抗がん剤による化学療法を比較した第III相試験ATTRACTION-3の結果を欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で報告。ニボルマブは化学療法と比較し、全生存期間(OS)を有意に延長したことを明らかにした。・対象:1次治療でプラチナベース化学療法が不応あるいは施行後に無効になった切除不能な進行・再発の食道扁平上皮がん患者(PS 0~1)・試験群:ニボルマブ240mg 2週ごと(n=210)・対照群:ドセタキセル75mg/m2 3週ごと、あるいはパクリタキセル100mg/m2 毎週(n=209)・評価項目: [主要評価項目]全生存期間(OS) [副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、奏効率(ORR)、病勢コントロール率(DCR)、奏効までの期間(TTR)、奏効期間(DOR)、健康関連QOL、有害事象 主な結果は以下のとおり。・OS中央値はニボルマブ群が10.9ヵ月、化学療法群が8.4ヵ月で、ニボルマブ群で有意な延長が認められた(ハザード比[HR]:0.77、95%信頼区間[CI]:0.62~0.96、p=0.019)。・年齢、性別、人種、PS、手術歴、放射線治療歴、PD-L1発現率、喫煙歴といったいずれのサブグルーブ別でもニボルマブ群で良好なOSの傾向を示した。・PFS中央値はニボルマブ群が1.7ヵ月、化学療法群が3.4ヵ月で、両群間の有意差はなかった(HR:1.08、95%CI:0.87~1.34)。・ORRはニボルマブ群が19%、化学療法群が22%で、両群で同等だった。・DCRはニボルマブ群が37%、化学療法群が63%であった。・TTR中央値はニボルマブ群が2.6ヵ月、化学療法群が1.5ヵ月であった。・DOR中央値はニボルマブ群が6.9ヵ月、化学療法群が3.9ヵ月であった。・EQ-5D-3Lを用いた健康関連QOLの調査では、計測された42週にわたりニボルマブ群は一貫して化学療法群を上回っていた。・ニボルマブ群での治療関連の主要な免疫関連有害事象は、内分泌系、消化管系、肝臓系、肺系、腎系、皮膚系であり、そのほとんどはGrade2以内であり、いずれもGrade3以上の発現率は2%以内であった。・Grade3以上の全治療関連有害事象発現率はニボルマブ群が18%、化学療法群が63%であった。 この結果を受けてCho氏は「ニボルマブは進行食道扁平上皮がんの2次治療で新たな標準治療となる可能性を示している」と述べた。

1260.

早期TN乳がんの術前化学療法にペムブロリズマブ追加でpCR改善(KEYNOTE-522)/ESMO2019

 新規に診断された早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対して、術前化学療法にペムブロリズマブを追加することにより、病理学的完全奏効(pCR)率が有意に上昇したことがKEYNOTE-522試験で示された。また、術前/術後のペムブロリズマブ投与により無イベント生存率(EFS)が改善する傾向もみられた。欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で、英国・Barts Cancer Institute, Queen Mary University LondonのPeter Schmid氏が発表した。 本試験は、早期TNBCに対してペムブロリズマブの術前化学療法との併用および術後補助療法での投与について検討した、初のプラセボ対照無作為化比較第III相試験である。・対象:新規に診断されたTNBC患者(AJCC/TNM分類でT1c N1-2またはT2-4 N0-2、ECOG PS 0/1)・試験群:術前に化学療法(カルボプラチン+パクリタキセルを4サイクル後、ドキソルビシン/エピルビシン+シクロホスファミドを4サイクル)+ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)、術後にペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)を9サイクルあるいは再発または許容できない毒性発現まで投与(ペムブロリズマブ群)・対照群: 術前に化学療法(試験群と同様)+プラセボ、術後にプラセボを投与(プラセボ群)・評価項目:[主要評価項目]pCR(ypT0/Tis ypN0)、EFS[副次評価項目]pCR(ypT0 ypN0およびypT0/Tis)、全生存期間(OS)、PD-L1陽性例におけるpCR・EFS・OS、安全性 主な結果は以下のとおり。・1,174例が2:1に無作為化され、ペンブロリズマブ群に784例、プラセボ群に390例が割り付けられた。・追跡期間中央値はペムブロリズマブ群15.3ヵ月、プラセボ群15.8ヵ月であった。・主要評価項目のpCR(ypT0/Tis ypN0)は、ペムブロリズマブ群は64.8%とプラセボ群51.2%に対して有意な改善を示した(p=0.00055)。・副次評価項目のpCR(ypT0 ypN0)およびpCR(ypT0/Tis)も、ペムブロリズマブ群vs.プラセボ群でそれぞれ59.9%vs.45.3%および68.6%vs.53.7%と同様であった。・PD-L1発現の有無別のペムブロリズマブ群とプラセボ群におけるpCR(ypT0/Tis ypN0)は、PD-L1陽性で68.9%vs.54.9%、PD-L1陰性で45.3%vs.30.3%であり、PD-L1発現にかかわらず、ペムブロリズマブの改善効果が認められた。・EFSの最初の中間解析でのイベント発生率は、ペムブロリズマブ群7.4%、プラセボ群11.8%で、ハザード比は0.63(95%信頼区間:0.43~0.93)であったが、事前に設定したp値の有意水準を達成しなかった。18ヵ月時のEFSはペムブロリズマブ群91.3%、プラセボ群85.3%であった。・Grade3以上の治療関連有害事象の発現率は、術前療法期ではペムブロリズマブ群76.8%、プラセボ群72.2%、術後療法期では5.7%、1.9%であった。・Grade3以上の免疫介在性有害事象の発現率は、ペムブロリズマブ群14.1%、プラセボ群2.1%であった。

検索結果 合計:2010件 表示位置:1241 - 1260