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術前化療で乳房温存療法が適応になる割合は(BrighTNess)/JAMA Surgery

 StageII~III乳がんでは乳房温存療法を可能にするべく術前化学療法が実施されることが多い。今回、米国・Brigham and Women's HospitalのMehra Golshan氏らは、BrighTNess試験の2次解析からトリプルネガティブ(TN)乳がん患者において術前化学療法により53.2%が乳房温存療法の適応になったことを報告した。また、北米では乳房温存治療適応患者でも乳房温存率が低く、生殖細胞系BRCA(gBRCA)変異のない患者での両側乳房切除率が高いことがわかった。JAMA Surgery誌オンライン版2020年1月8日号に掲載。 本研究は、多施設二重盲検無作為化第III相試験(BrighTNess)において事前に示されていた2次解析である。BrighTNess試験には、北米、欧州、アジアにおける15ヵ国145施設において、手術可能なStageII〜IIIのTN乳がんで術前化学療法開始前にgBRCA変異検査を受けた女性634例が登録された。登録患者をパクリタキセル+カルボプラチン+veliparib、パクリタキセル+カルボプラチン、パクリタキセル単独に無作為に割り付け、12週間投与後、ドキソルビシン+シクロホスファミドを4サイクル投与した。乳房温存療法の適応については、術前化学療法の前後に外科医が臨床およびX線写真により評価した。データは2014年4月1日~2016年12月8日に収集し、2018年1月5日~2019年10月28日に2次解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・634例(年齢中央値:51歳、範囲:22〜78歳)のうち、604例で術前化学療法前後の評価が可能であった。・ベースラインで乳房温存療法が不適応と判断された141例のうち、75例(53.2%)が術前化学療法後に適応となった。・全体として、術前化学療法後、乳房温存療法の適応と判断された502例のうち、342例(68.1%)が実際に乳房温存療法を受けた。このうち、乳房温存療法が非適応から適応に変わった75例では42例(56.0%)が実際に温存治療を受けた。・欧州およびアジアの患者は、北米の患者より乳房温存療法実施率が高かった(オッズ比:2.66、95%CI:1.84~3.84)。・gBRCA変異陰性で乳房切除術を受けた患者の対側乳房予防切除実施率は、北米の患者が70.4%(81例中57例)と、欧州およびアジアの患者の20.0%(30例中6例)に比べて高かった(p<0.001)。

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サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2019)レポート

レポーター紹介2019年12月10日~14日まで5日間にわたり、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2019)が開催された。乳がんだけを取り扱う世界最大の学会である。1977年より開催されており、90ヵ国を超える国々から研究者や医師、医療従事者が参加する。臨床試験のみならず、トランスレーショナルリサーチや基礎研究の演題も口演として聴講できるのが特徴である。ここ数年は欧州臨床腫瘍学会(ESMO)で大きな演題が発表されるようになった影響もあり、SABCSでは臨床試験についてはサブグループ解析や追跡調査の結果が取り上げられることが多かったが、2019年は今後の日常臨床に大きく影響を及ぼす演題が複数取り上げられた。とくにHER2陽性転移乳がんの演題は非常に重要なものが2題発表された。後に取り上げるDS-8201aの第II相試験の結果は、国内で開発された薬剤であるということもあり、ほぼ半数の演者が国内の研究者であった。すべての演題が興味深いものであったが、なかでも興味深かった6演題を紹介する。T-DM1既治療HER2陽性乳がんにおけるtrastuzumab deruxtecan(DESTINY-Breast01試験)trastuzumab deruxtecan(DS-8201a、T-DXd)は抗HER2抗体であるトラスツズマブにトポイソメラーゼ阻害薬であるexatecanの誘導体を結合した新しい抗体薬物複合体(antibody-drug conjugate:ADC)製剤である。1抗体当たりおよそ8分子の殺細胞性薬剤が結合しており、高比率に結合されている。すでに第I相試験の結果は発表・論文化されており、高い有効性が示されていて、期待されている薬剤の1つである。本試験はT-DM1既治療のHER2陽性進行乳がんを対象として行われた単群第II相試験である。第I相試験ではDLTを認めなかったものの、毒性の懸念からPART 1では用量の再設定が行われ、5.4mg/kgが至適投与量とされた。主要評価項目は独立中央判定委員会によるRECIST v1.1を用いた奏効率、副次評価項目として病勢制御率や臨床的有用率、無増悪生存期間、全生存期間、安全性などが置かれた。184例が5.4mg/kgで投与され、全員が女性であった。ホルモン受容体陽性が52.7%、HER2ステータスはIHC3+が83.7%、IHC2+または1+でISH陽性が16.3%であった。全例がトラスツズマブおよびT-DM1による治療歴を有した。主要評価項目である独立中央判定委員会による奏効率(objective response rate:ORR)は60.9%と非常に高い効果を示した。病勢制御率(disease control rate:DCR)は97.3%、6ヵ月以上の臨床的有用率(clinical benefit rate:CBR)は76.1%であった。奏効期間の中央値は14.8ヵ月であり、3次治療以降としては非常に長い奏効期間を有した。65.8%がペルツズマブによる治療歴を有し、ペルツズマブ治療歴のない症例でより奏効率が高い傾向を示した。無増悪生存期間(progression-free survival:PFS)の中央値は16.4ヵ月、全生存期間(overall survival:OS)の中央値は未到達であった。有害事象(adverse event:AE)はGrade3以上の治療関連AEが57.1%(薬剤との因果関係ありが48.8%)、SAEが22.8%(同12.5%)、治療関連死は4.9%(同1.1%)であった。とくに注目されているAEである肺障害は全Gradeで13.6%と高頻度に発生していた。多くはGrade1または2であったが、2.2%がGrade5であり、やはり注意が必要なAEであるといえよう。総じて毒性が強く、とくに肺障害に注意が必要なものの、非常に高い奏効率と奏効期間を有する薬剤であるといえる。本試験の結果は同日New England Journal of Medicine(NEJM)誌オンライン版に掲載された。筆者は本薬剤の開発の初期段階から関わってきたが、実際に自分が使って感じている実感と本臨床試験の結果は合致している。米国食品医薬品局(FDA)は本試験の結果をもって、2019年12月20日にT-DXdを迅速承認した。国内でも2019年9月に承認申請がなされており、早期に承認されて日本の患者さんに本薬剤が早く届くことを期待している。HER2陽性乳がんにおけるカペシタビン+トラスツズマブに対するtucatinibもしくはプラセボの上乗せ効果を比較する第III相試験(HER2CLIMB試験)tucatinibは経口チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)でHER2のキナーゼドメインを阻害する。ラパチニブはEGFRも阻害するが、tucatinibはHER2特異性が高い。本試験は、トラスツズマブ、ペルツズマブおよびT-DM1による治療歴を有するHER2陽性転移乳がんを対象とした第III相試験でtucatinibまたはプラセボをカペシタビン+トラスツズマブ療法に併用した。ベースラインでの脳MRIが必須とされており、脳転移があっても治療後で落ち着いている、もしくは早急な局所治療を必要としない場合は登録可能とされた。2対1の割合で割り付けが行われ、tucatinib群に410例、プラセボ群に202例が登録された。主要評価項目は最初に登録された480例における独立中央判定委員会によるPFSで、RECIST v1.1を用いて評価された。副次評価項目としてOS、脳転移のある症例のPFS、測定可能病変を有する症例でのORRとされた。脳転移症例は両群で50%弱の割合であった。主要評価項目評価対象症例におけるPFS中央値は7.8ヵ月vs.5.6ヵ月(ハザード比:0.51、95%CI:0.42~0.71、p<0.00001)でありtucatinib群で有意に良好であった。全登録症例におけるOS中央値は21.9ヵ月vs.17.4ヵ月(ハザード比:0.66、95%CI:0.5~0.88、p=0.0048)であり、こちらもtucatinib群で有意に良好であった。脳転移症例におけるPFS中央値は7.6ヵ月vs.5.4ヵ月(ハザード比:0.48、95%CI:0.34~0.69、p<0.00001)であり、脳転移症例においても同様の有効性を示した。奏効率は41% vs.23%でこちらもtucatinib群で有意に良好であり、すべての副次評価項目でtucatinib群が良好な結果であった。Grade3以上のAEはtucatinib群で55%に対しプラセボ群で49%であり、両群間で大きな差は認められなかった。頻度の高いAEは下痢、手足症候群、悪心、倦怠感、嘔吐などであり、HER2-TKIやカペシタビンでよくみられるAEが多かった。本試験の結果は同日NEJM誌オンライン版に掲載された。本試験はペルツズマブ、T-DM1既治療例を対象として行われた初めてのHER2-TKIの試験である。本試験ではPFSのみならずOSにおいても有意に良好であった。また、脳転移に特化したエンドポイントでも有効性を示しており、HER2陽性乳がんで多い脳転移症例に対しても期待される薬剤である。ただ、残念ながら日本からは本試験には参加していない。アロマターゼ阻害薬で進行したホルモン受容体陽性HER2陰性転移乳がんに対するパルボシクリブ+内分泌療法vs.カペシタビンの第III相試験(PEARL試験)2019年のASCOで韓国のグループより閉経前ホルモン受容体陽性HER2陰性転移乳がんに対するエキセメスタン+パルボシクリブ+LHRHa vs.カペシタビンの第II相試験結果(KCSG-BR 15-10)が発表されたことは記憶に新しい。PEARL試験は閉経後ホルモン受容体陽性HER2陰性転移乳がんの2次治療としてホルモン療法+パルボシクリブをカペシタビンと比較した第III相試験である。ホルモン療法としてはエキセメスタンとフルベストラントが選択され、それぞれ別のコホートとして試験が行われた。コホート1(エキセメスタン)、コホート2(フルベストラント)でそれぞれ300例が1対1の割合でホルモン療法+パルボシクリブもしくはカペシタビンに割り付けられた。主要評価項目はコホート2におけるフルベストラント+パルボシクリブのカペシタビンに対するPFSの優越性(ESR1の変異の有無によらない)、およびESR1変異のない症例におけるホルモン療法(エキセメスタン/フルベストラント)+パルボシクリブのカペシタビンに対するPFSの優越性の2つであった。1つ目の主要評価項目であるフルベストラント+パルボシクリブの優越性については、PFS中央値が7.5ヵ月vs.10ヵ月(ハザード比:1.09、95%CI:0.83~1.44、p=0.537)であり、優越性は示されなかった。2つ目の主要評価項目であるESR1変異のない症例におけるホルモン療法+パルボシクリブの優越性についても、PFS中央値が8.0ヵ月vs.10.6ヵ月(ハザード比:1.08、95%CI:0.85~1.36、p=0.526)であり、優越性は示されなかった。KCSG-BR 15-10試験ではエキセメスタン+パルボシクリブ+LHRHaはカペシタビンに対して良好なPFSを示した。KCSG-BR 15-10試験は第II相試験であるため単純に比較することはできないが、本試験が閉経後かつアロマターゼ阻害薬で進行した症例を対象にしているのに対し、KCSG-BR 15-10試験ではTAMの治療歴がある症例しか含まれておらずホルモン感受性が異なっていると考えられること、1次治療と2次治療の違い、などが結果の違いの原因となっていると考察できる。転移乳がんに対するデュルバルマブvs.化学療法のランダム化第II相試験(SAFIR02-IMMUNO試験)デュルバルマブは免疫チェックポイント阻害薬の1つで、PD-L1を阻害する。局所進行肺がんの化学放射線治療後の維持療法として使用されている。抗PD-L1抗体ではアテゾリズマブがアルブミン結合パクリタキセルとの併用において、PD-L1発現のあるトリプルネガティブ乳がん(TNBC)の初回治療としての有効性を示し標準治療となっている。本試験ではHER2陰性転移乳がんを対象として化学療法に対する維持療法としてのデュルバルマブの有効性を検討した第II相試験である。3コース目の化学療法前に腫瘍検体を採取し、その後CR/PR/SDを達成した症例が対象となった。腫瘍検体で標的分子が検出されている際には分子標的治療の臨床試験に参加し、検出されなかった症例が本試験の対象となった。主要評価項目はPFSであった。デュルバルマブ維持療法へスイッチする群と、治療を変更せずに化学療法を行う群に199例が2対1の割合で割り付けられた。PD-L1発現についてSP142抗体を用いて評価され、TNBCでは52.4%、ホルモン受容体陽性では14.9%が陽性であった。PFS中央値は2.7ヵ月vs.4.6ヵ月(ハザード比:1.40、95%CI:1.00~1.96、p=0.047)であり、化学療法群で良好な傾向であった。また、サブグループ解析ではホルモン受容体陽性で化学療法群が良好であった。OS期間においては21.7ヵ月vs.17.9ヵ月(ハザード比:0.84、95%CI:0.54~1.29、p=0.42)であり両群間に差を認めなかった。一方、サブグループ解析ではTNBCで21ヵ月 vs.14ヵ月、PD-L1陽性で26ヵ月vs.12ヵ月と、デュルバルマブで良好な傾向を認めた。乳がんに対しても活発に免疫チェックポイント阻害薬の開発が行われており、本試験もその1つである。All comerで行われた試験であったが、今後の開発はホルモン受容体ステータスやPD-L1の発現など、バイオマーカーでの絞り込みが必須と考えられる。また、ホルモン受容体陽性乳がんではこれまで免疫チェックポイント阻害薬の開発は成功しておらず、その生物学的背景の解明も重要である。ホルモン受容体陽性HER2陰性乳がんの術後ホルモン療法に対するS-1の追加効果を検証した第III相試験(POTENT試験)2017年のSABCSで日本と韓国のグループから術前化学療法で残存腫瘍があった症例に対するカペシタビンの上乗せ効果が示され(CREATE-X試験)、日本の研究者にとって大きな自信につながったことは記憶に新しい。POTENT試験はホルモン受容体陽性HER2陰性乳がんを対象として、低リスク症例を除いた症例群に対してS-1の上乗せ効果をみた第III相試験である。本試験ではStageIからIIIBを対象とし、リンパ節転移陽性もしくはリンパ節転移陰性かつ中間リスクもしくは高リスクの症例を対象とした。1,959例がホルモン療法+S-1群とホルモン療法単独群に1対1の割合で割り付けられた。主要評価項目は無浸潤疾患生存(invasive disease-free survival:IDFS)とされた。5年IDFSにおいて、S-1群で86.9%に対し、ホルモン療法単独群では81.6%(ハザード比:0.63、95%CI:0.49~0.81、p<0.001)であり、S-1群で良好な結果であった。本試験は中間解析で有効性の閾値を超えたため、早期有効中止となっている。AEについては、S-1群で増加傾向にあり、Grade3以上のものとしては好中球減少(7.5%)や下痢(1.9%)に注意が必要であるが、総じてコントロールは可能と考えられた。本試験は先進医療Bとして行われており、今後は保険承認の手続きを目指していくと思われる。2017年にはCREATE-X試験、2018年にはAERAS試験、そして本試験と、ここのところSABCSでは毎年日本から口演が発表されている。日本の研究者として大変誇らしいとともに、少しでも日本からのエビデンス発信に貢献していきたい。APHINITY試験全生存期間の中間解析APHINITY試験はHER2陽性乳がんの術後化学療法におけるトラスツズマブ療法へのペルツズマブの上乗せを検証した第III相試験である。4,805例のHER2陽性乳がん患者が登録され、ペルツズマブ群(2,400例)とプラセボ群(2,405例)に1対1の割合で割り付けられた。主要評価項目はIDFSであり、OSは副次評価項目に含められた。4年IDFSは92.3% vs.90.6%(ハザード比:0.81、95%CI:0.66~1.00、p=0.045)であり、絶対リスク減少は2%に満たないもののペルツズマブ群で良好であった。また、本試験は当初リンパ節転移のない症例も登録されていたが、イベントが少ないことから途中でプロトコールが改訂され、リンパ節転移陽性症例のみが適格となった。今回のOS期間の2回目の中間解析では、6年生存率は94.8% vs.93.9%(ハザード比:0.85、95%CI:0.67~1.07、p=1.07)であり、両群間に差を認めなかった。IDFSのフォローアップデータは、6年IDFSで90.6% vs.87.8%(ハザード比:0.76、95%CI:0.64~0.91)とペルツズマブ群で良好であったが、リンパ節転移の有無(すなわちベースラインリスクの違い)でサブグループ解析を行うと、リンパ節転移陽性では6年IDFSで87.9% vs.83.4%(ハザード比:0.72、95%CI:0.59~0.87)とペルツズマブの上乗せ効果を認めたのに対し、リンパ節転移陰性では95.0% vs.94.9%(ハザード比:1.02、95%CI:0.69~1.53)と上乗せ効果は認めなかった。ホルモン受容体ステータスによらずペルツズマブの上乗せ効果が認められた。トラスツズマブの登場によりHER2陽性乳がんの予後は劇的に改善しており、術後ペルツズマブの追加によりリンパ節転移陽性例に対してはIDFSの改善が期待される。ただし、中間解析時点ではOSの上乗せ効果は認めないため、最終解析の結果が待たれる。リンパ節転移陰性例に対しては原則として術後ペルツズマブの上乗せは不要であろう。

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進展型小細胞肺がんに対するペムブロリズマブ+化学療法の成績(KEYNOTE-604)/Merck

 Merck社は、2020年1月6日、進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)1次治療におけるペムブロリズマブと化学療法併用の第III相KEYNOTE-604試験において、主要評価項目の1つである無増悪生存期間(PFS)を達成したと発表。 同研究では、ペムブロリズマブと化学療法(エトポシド+シスプラチン/カルボプラチン)併用は、化学療法単独(エトポシド+シスプラチン/カルボプラチン)と比較して統計的に有意なPFSの改善がもたらした(HR:0.75、95%CI:0.61~0.91)。全生存(OS)についてはペムブロリズマブ併用患者で改善が認められたが、事前に指定された統計学的基準を満たさなかった(HR:0.80 、95%CI:0.64~0.98)。同試験におけるペムブロリズマブの安全性プロファイルは、以前に報告されものと同様であった。試験結果は今後の医学会議で発表され、規制当局と議論するとしている。 KEYNOTE-604試験では、453例が登録され、ペムブロリズマブ+化学療法またはプラセボ+化学療法に無作為に割り付けられた。複合主要評価項目はOSとPFS、副次評価項目は、客観的奏効率、奏効期間、安全性と生活の質(QoL)など。

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B細胞NHLへのR-CHOP、4サイクルvs.6サイクル/Lancet

 60歳以下の低リスク中悪性度(アグレッシブ)B細胞非ホジキンリンパ腫患者の治療において、リツキシマブとシクロホスファミド+ドキソルビシン+ビンクリスチン+prednisone(R-CHOP)併用療法の4サイクル投与は6サイクル(標準治療)に対し、有効性が非劣性で、毒性作用は治療サイクルが少ない分、抑制されることが、ドイツ・ザールラント大学のViola Poeschel氏らGerman Lymphoma Allianceが行った「FLYER試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2019年12月21/28日合併号に掲載された。国際予後指標(IPI)の年齢調整リスク因子がなく、非bulky病変(腫瘍最大径<7.5cm)を有するアグレッシブB細胞非ホジキンリンパ腫患者では、6サイクルのR-CHOP様レジメンの予後はきわめて良好と報告されている。一方、多くの患者にとって、このレジメンに含まれる6サイクルの細胞傷害性薬剤の併用療法(CHOP様)は過剰治療となっている可能性があるという。5ヵ国が参加した非劣性試験 本研究は、5ヵ国(デンマーク、イスラエル、イタリア、ノルウェー、ドイツ)の138施設が参加した多施設共同非盲検無作為化第III相非劣性試験であり、2005年12月2日~2016年10月7日の期間に患者登録が行われた(Deutsche Krebshilfeの助成による)。 対象は、年齢18~60歳で、StageI/II、血清乳酸脱水素酵素(LDH)濃度が正常、全身状態(ECOG PS)が0/1であり、非bulky病変(腫瘍最大径<7.5cm)を有するB細胞非ホジキンリンパ腫患者であった。 被験者は、R-CHOP 4サイクルに加えリツキシマブを単独で2回投与する群(4サイクル群)、またはR-CHOPを6サイクル投与する群(6サイクル群)に無作為に割り付けられた。1サイクルは21日であった。リツキシマブの用量は375mg/m2(体表面積)とした。精巣リンパ腫を除き、放射線治療は計画されなかった。 主要評価項目は、3年時の無増悪生存(PFS)率とし、intention-to-treat集団で解析が行われた。非劣性マージンは-5.5%とした。安全性の評価は、1回以上の投与を受けた患者を対象とした。3年PFS率:96% vs.94%、完全寛解率:91% vs.92% 592例が登録され、588例(4サイクル群293例[年齢中央値 49歳、女性 40%]、6サイクル群295例[47歳、39%])がintention-to-treat解析の対象となった。B症状が4サイクル群で多かった(9% vs.3%)。588例中499例(85%)がびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)であった。 追跡期間中央値66ヵ月(IQR:42~100)の時点における3年PFS率は、4サイクル群が96%(95%信頼区間[CI]:94~99)、6サイクル群は94%(91~97)であった。群間差は3%で、95%CIの下限値は0%であり、非劣性マージン(-5.5%)よりも高く、4サイクル群の6サイクル群に対する非劣性が確認された。 治療終了時に、4サイクル群267例(91%)、6サイクル群271例(92%)が完全寛解を達成し、それぞれ8例(3%)および11例(4%)が部分寛解で、6サイクル群の1例(<1%)が不変であった。治療中の増悪は両群3例(1%)ずつで認められた。 3年無イベント生存率は、4サイクル群が89%、6サイクル群も89%であり、3年全生存率はそれぞれ99%および98%だった。 また、事後解析では、5年PFS率は4サイクル群94%、6サイクル群94%、5年無イベント生存率はそれぞれ87%および88%、5年全生存率は97%および98%であった。 全体で40例が増悪または再発した。治療終了時の完全寛解/不確定完全寛解例での再発は、4サイクル群が11例(4%)、6サイクル群は13例(5%)であり、部分寛解例の再発はそれぞれ2例(25%)および2例(18%)だった。完全寛解/不確定完全寛解の再発例24例のうち、4例(17%)は登録から1年以内に、8例(33%)は2年以内に再発した。 4サイクル群(293例)では血液学的有害事象が294件、非血液学的有害事象が1,036件発現したのに比べ、6サイクル群(295例)ではそれぞれ426件および1,280件であり、4サイクル群で少ない傾向が認められた。重篤な有害事象は、4サイクル群48例、6サイクル群45例にみられた。感染症は、それぞれ116例(Grade3/4は22例)および156例(同23例)で発現した。6サイクル群で治療関連死が2例認められた。 著者は、「R-CHOP療法は、有効性を損なわずに、化学療法の施行数を減らすことができる」としている。

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日本人トリプルネガティブ乳がんのMSI-H頻度は?

 日本人のトリプルネガティブ乳がん患者におけるMSI-H頻度は高くはないものの、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)のターゲットとなる患者が存在することが示唆された。九州大学の倉田 加奈子氏らによる、Breast Cancer誌オンライン版2020年1月6日号掲載の報告より。 本邦では、MSI-HまたはdMMRを有する進行固形がんに対しペムブロリズマブが承認されている。また、ゲノム不安定性を有する腫瘍はPD-1 / PD-L1阻害に良好な反応を示し、難治性乳がんの有望なターゲットとなりうることが示唆されている。しかし、日本人のトリプルネガティブ乳がんにおけるMSI-H頻度は明らかになっていない。トリプルネガティブ乳がんでMSI-Hの場合、Ki-67高値など予後不良とされる特徴 本研究では、2004年1月から2014年12月の間に、国内3施設で術前化学療法なしで切除を実施した女性トリプルネガティブ乳がん患者228例を対象に、MSI-H頻度を後ろ向きに評価した。MSI解析には、5種類のマイクロサテライトマーカー(BAT-26、NR-21、BAT-25、MONO-27、NR-24)によるMSI Analysis System Version 1.2(Promega)を使用している。 トリプルネガティブ乳がん患者におけるMSI-H頻度を評価した主な結果は以下のとおり。・トリプルネガティブ乳がんの228検体のうち、222検体(97.4%)がマイクロサテライト安定性、4検体(1.7%)がMSI-L(いずれか1種類のマーカーで不安定性を示す)、2検体(0.9%)がMSI-H (2種類以上のマーカーで不安定性を示す)であった。・MSI-Hの2検体では、ともにBAT-26、NR21およびBAT-25の3つのマーカーで不安定性を示した。これらの腫瘍はそれぞれT1N0およびT2N0であり、NG3およびKi-67高値(>30%)といった予後不良とされる特徴を有し、基底細胞様、non-BRCAnessに分類された。1検体でのみPD-L1発現が確認され、2検体でTIL低値およびCD8陰性であった。・MSI-Lの4検体では、不安定性を示したマーカーはそれぞれ異なり、4検体が基底細胞様、2検体のみnon-BRCAnessに分類された。また、1検体のみPD-L1発現がありTIL高値、そのほか3検体はTIL低値であった。 著者らは、日本人のトリプルネガティブ乳がん患者におけるMSI-H頻度はまれではあるものの、ICIの潜在的なターゲットとなる患者は存在し、包括的なゲノムプロファイリングのプラットフォームを使用してピックアップしていく必要があると結論付けている。

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BRCA変異陽性膵臓がんにオラパリブを承認/FDA

 米国食品医薬品局(FDA)は2019年12月27日、プラチナベースの1次治療化学療法レジメンで16週間以上疾患が進行しなかった生殖細胞系列BRCA(gBRCA)変異陽性の転移を有する膵臓がんの成人患者の維持療法として、オラパリブ(商品名:リムパーザ)を承認した。オラパリブのPFS中央値は7.4ヵ月、プラセボは3.8ヵ月 FDAはまた、コンパニオン診断として、BRACAnalysis CDxテスト(Myriad Genetic Laboratories、Inc.)も承認した。 オラパリブの有効性は、転移を有するgBRCA変異膵腺がん患者154例においてオラパリブとプラセボを比較した多施設二重盲検無作為化プラセボ対照試験POLOで検討された。 主要有効性評価項目は、盲検独立中央委員会による無増悪生存期間(PFS)、追加の有効性評価項目は、全生存期間(OS)および全奏効率(ORR)であった。 PFS中央値は、オラパリブ投与患者7.4ヵ月、プラセボ投与患者では3.8ヵ月であった(HR:0.53、95%CI:0.35~0.81、p=0.0035)。OS中央値は、オラパリブおよびプラセボで18.9ヵ月および18.1ヵ月であった(HR:0.91、95%CI:0.56~1.46、p=0.683)。ORRは23%および12%であった。 POLO試験で観察されたオラパリブの一般的な副作用は既報のものと一致していた。10%以上の項目は、悪心、疲労、嘔吐、腹痛、貧血、下痢、めまい、好中球減少症、白血球減少症、鼻咽頭炎/上気道感染症/インフルエンザ、気道感染症、関節痛/筋肉痛、味覚障害、頭痛、消化不良、食欲減退、便秘、口内炎、呼吸困難、血小板減少であった。

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閉経後ルミナールB乳がんへの術前療法、ribociclib+レトロゾール併用が有望(CORALLEEN)/SABCS2019

 ホルモン受容体陽性/HER2陰性(HR+/HER2-)の閉経後乳がんに対する術前療法として、ribociclibとレトロゾールの併用投与が、術前化学療法と同様の効果を示す可能性があるとの試験結果が、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2019)で、スペインInstituto Valenciano de OncologiaのJoaquin Gavila氏より発表された。この結果はLancet Oncology誌オンライン版2019年12月11日号に同時掲載された。 本試験(CORELLEEN試験)は、2017年7月~2018年12月にスペイン国内(21施設)で実施された、オープンラベル無作為化比較の第II相試験である。・対象:Stage I~IIIAのHR+/HER2-ルミナールBタイプの閉経後乳がん患者(ルミナールBタイプは遺伝子発現プロファイル検査法PAM50で判定)・試験群:ribociclib+レトロゾール群(R群) 52例・対照群:ドキソルビシン+シクロホスファミド後にパクリタキセル逐次投与群(CT群) 54例・評価項目:[主要評価項目]手術時にPAM50によりROR(Risk Of Recurrence)-lowと判定される割合[副次評価項目]組織学奏効率(pCR)、残存腫瘍量(RCB)とPEPI(Preoperative Endocrine Prognostic Index)スコア、PAM50によるサブタイプ変化、奏効率、QOL、安全性、バイオマーカー検索など 両群共に6ヵ月の投薬期間後に手術を施行。ROR-Lowの判定は、リンパ節転移陰性(n0)の場合、RORスコア40以下、リンパ節転移1~3個(n1-3)の場合、15以下とした。同様にn0でRORスコアが41~60、n1~3で16~40をIntermediateとした。 主な結果は以下のとおり。・遺伝子検査の解析対象はR群49例、CT群51例であった。・手術時のROR-lowの割合は、R群46.9%(95%信頼区間[CI]:32.5~61.7)、CT群:46.1%(95%CI:32.9~61.5)であった。・RORスコアの中央値は、R群18、CT群25であった。中央判定によるKi67の中央値は、R群3、CT群10であった。・pCR率はR群0%(95%CI:0~7.2)、CT群5.8%(95%CI:1.4~16.6)、PEPIスコア0はR群22.4%(95%CI:11.7~36.6)、CT群17.3%(95%CI:8.6~31.4)であった。・手術時におけるサブタイプ変化は、R群の87.8%、CT群の82.7%がルミナールAとなっており、ルミナールBはR群で8.2%、CT群で15.4%であった。・ベースラインと薬剤投与15日目のRORの変化を見たところ、R群の1例以外はすべて減少しており、CT群に比べ大きなRORの低下がみられた。・Grade3以上の有害事象(AE)の発現率は、R群で56.9%、CT群で69.2%、重篤なAEはR群で3.9%、CT群で15.4%であった。また、AEによる投与中止はR群で15.7%、CT群で19.2%であった。Gavila氏はSABCSのプレスリリースで、「ハイリスクのルミナールB乳がん患者に対するribociclibとレトロゾールの併用による術前内分泌療法は有害事象も少なく、術前化学療法と同等の臨床的効果があり、今後は術前化学療法にとって代わる可能性がある」と述べている。

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ニボルマブ・イピリムマブ併用、非小細胞肺がんに対する国内承認申請/小野・BMS

 小野薬品工業とブリストル・マイヤーズ スクイブは、2019年12月25日、PD-1モノクローナル抗体ニボルマブ(商品名:オプジーボ)とCTLA-4モノクローナル抗体イピリムマブ(商品名:ヤーボイ)について、切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんに対する両剤の併用療法に係る国内製造販売承認事項一部変更承認申請を行ったと発表。 今回の承認申請は、小野薬品工業とブリストル・マイヤーズ スクイブ社が、化学療法未治療のStageⅣまたは再発の非小細胞肺がん患者を対象に実施した国際共同非盲検無作為化第III相臨床試験(CheckMate-227試験)の Part1の結果などに基づいている。本結果において、ニボルマブとイピリムマブの併用療法は、化学療法と比較して、主要評価項目の1つであるPD-L1発現レベルが1%以上の患者における全生存期間の有意な延長を達成している。

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最近の話題:アテゾリズマブ+Chemoの肺がん1次治療、FDAで承認【侍オンコロジスト奮闘記】第85回

第85回:最近の話題:アテゾリズマブ+Chemoの肺がん1次治療、FDAで承認West H, et al. Atezolizumab in combination with carboplatin plus nab-paclitaxel chemotherapy compared with chemotherapy alone as first-line treatment for metastatic non-squamous non-small-cell lung cancer (IMpower130): a multicentre, randomised, open-label, phase 3 trial.Lancet Oncol. 2019;20:924-937.FDA、非扁平上皮NSCLCの初期治療にアテゾリズマブ+化学療法を承認/Roche

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乳がん病期分類と微量栄養素の関係

 乳がん治療は、治療法の種類によって酸化ストレスレベル増加や抗酸化物質の枯渇を招く可能性がある。乳がんの病期分類が進行するにつれて、血清の微量栄養素濃度の有意な低下がみられることが、ブラジル・リオデジャネイロ連邦大学のCintia Rosa氏らの調査で明らかとなった。「微量栄養素間の相乗効果は、利益を最大化し、正常細胞への照射の悪影響を最小化するために考慮されなければならない」と報告している。Nutrients誌オンライン版2019年12月4日号掲載の報告。 研究グループは放射線治療前の乳がん患者を対象とした横断観察研究を行い、乳がんの病期分類(TNM分類)と微量栄養素(レチノール、β-カロテン、亜鉛)の血清濃度の相関関係を調査、放射線治療前に行われるさまざまな治療法とこれらの微量栄養素間の相乗効果について検討した。患者は、グループ1:乳房温存手術、グループ2:化学療法のみ、グループ3:乳房温存手術と化学療法の3グループに割り付けられ、それぞれのグループにおいて、レチノール、β-カロテン、および亜鉛の血清濃度を定量化した。 主な結果は以下のとおり。・230例の患者を評価した。・疾患の病期分類が進行するにつれ、微量栄養素の血清濃度が低下した。・手術のみの場合でも、レチノールは血清濃度に大きな悪影響を及ぼした。・放射線治療前の治療を考慮すると、手術のみと術後化学療法を受けている患者では、β-カロテンとレチノールの欠乏率が高かった。・亜鉛、レチノール、およびβ-カロテンの濃度間に正の相関があり、これらの微量栄養素間の相乗効果が示された。

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肺がん患者の血栓症の実態を探る大規模前向き試験「Rising-VTE」【肺がんインタビュー】 第30回

第30回 肺がん患者の血栓症の実態を探る大規模前向き試験「Rising-VTE」がん患者では静脈血栓塞栓症(VTE)リスクが高い。がん患者の生命予後の改善に伴い、VTE発症も増加している。しかし、いまだに日本人がん患者におけるVTEの大規模研究はない。そのような中、肺がん患者を対象にした、日本初の大規模前向き観察試験「Rising-VTE」試験が進行中である。試験責任者である島根大学の津端 由佳里氏に試験の背景と狙いを聞いた。「この患者さんが出血で亡くなったら…」データがない日本人がん患者のVTEこの試験を行おうと考えられたきっかけは何ですか。国立がん研究センターでの研修時、両側下肢のVTEの患者さんを診たことがきっかけです。当時、指導医と相談して、その患者さんにワルファリン療法を開始しました。ところが、カンファレンスで「もしこの患者さんが出血で亡くなったらどうするの?」と、当時の上司に指摘されました。がん患者のVTEのデータは海外の研究しかなかったのです。その後、島根大学に戻ると、肺がん患者さんの生命予後の延びに伴ってVTEの患者さんも多くなっていると実感しました。「こういう治療をするなら、津端先生自身が日本人のデータを出さなければいけない」。研修当時の上司の言葉が、ずっと心に残っていました。がん患者さんにVTEが多いのはなぜですか。また、VTEの合併はどの程度ですか。がん患者さんのVTEリスクが高いのは、がん細胞が凝固促進因子を積極的に作り出して凝固傾向を招いているからです。KhoranaのVTEリスクスコア*を用いた海外の報告では、入院がん患者の20%にVTEが存在するとあります。*Khorana VTEリスクスコア:がんの部位、血小板数、ヘモグロビン値、赤血球造血刺激因子製剤の使用、白血球数、BMIをリスク因子とし、合計点からVTE発症を予測するスコアDOACの登場で臨床試験実現この試験ではDOAC(direct oral anticoagulant:直接作用型経口抗凝固薬)をお使いですが、試験の実現に至った経緯との関係はありますか。まず、ワルファリンでの臨床試験を考えましたが、抗がん剤とワルファリンは相性が良くありません。ワルファリンの代謝はCYPに影響されるため、抗がん剤との併用が問題になることが多くあります。さらに、ワルファリンの効果はビタミンなど食事の内容に影響されます。化学療法を受けている患者さんは摂食に障害が出ることも多く、ワルファリンがコントロールしにくいのです。また、がん患者さんは出血リスクも高いため、出血傾向の問題になりえます。このようなことから、ワルファリンで研究するのは難しいと思っていました。そのような中、DOACが下肢VTEに承認されました。DOACであれば、出血リスクも少なく、食事の影響も受けにくいので、がん患者さんのVTE試験ができると思いました。そこで、医師主導で臨床試験をやりたいのでご支援いただけないかと、第一三共株式会社に相談しました。ちょうど同社にも、がん患者さんのデータに対するニーズがあり、ご了承いただき、医師主導臨床試験が実現しました。試験の概要について教えてください。Rising-VTEは多施設前向き観察試験です。国内の35施設から根治的な治療を行わない肺がん患者さんを登録し、診断時にVTE合併の有無を確認します。VTE合併のある患者さんには、エドキサバン(商品名:リクシアナ)の投与を行い、VTEの再発状況と治療の安全性を観察します。VTE合併のない患者さんには通常の治療を行い、2年間観察し、症候性および無症候性のVTEの発症を観察します。“医師の知りたい”に応える試験この試験で注目すべきことは何ですか?日本では、がん患者の血栓塞栓症の大規模な研究はまったくありませんでした。前向きの観察研究として、そして4期の肺がんを対象としたものとしては、初めてかつ最大規模であると考えています。医師主導臨床試験ですので、医師が知りたいと思うことをClinical Questionとして取り上げています。メーカーが考えたプロモーションのための試験ではなく、医師が知りたいと思ったことを提案し、それに関して企業からサポートを受けた試験ですので、日常診療に即した結果を大いに期待していただけると思います。「医師が知りたいと思うこと」とは、どのようなことですか。VTEの診療は、基本的にはASCO(米国臨床腫瘍学会)のガイドラインに準じて行います。この試験により、欧米人との発症の差や日本人としてのリスクをみることができます。また、がんの臨床経過とVTE発症の関係がみられると思います。がん細胞が血栓塞栓因子を出しているため、がんが良くなると血栓塞栓も良くなり、がんが悪くなると血栓塞栓も悪くなります。がんの臨床経過とVTE発症の関係をみることで、VTE治療の開始時期、中断と再開のタイミングなども検討できます。そして、4期の肺がんに特化することで、臨床に有益な細かな情報が得られます。肺がんでは、分子標的治療薬、免疫CP阻害薬、細胞障害性抗がん剤という3種の薬剤を使います。また、遺伝子変異検査を行っています。どの薬剤でどれくらい血栓塞栓が出るか、どの遺伝子変異でどれくらい血栓塞栓が出るか、そのほか、組織型などの患者背景によるリスクが明らかになってくると思います。試験のスケジュールはどのようなものですか。2016年6月から登録を開始し、2018年8月に登録は完了しました。登録症例数は1,000例を目標としましたが、最終的には1,021例の登録を頂きました。経過観察期間である2020年8月まで、VTEがどれだけ発症したか、最初にVTEがあった人の結果はどうだったかを調査します。最終結果は2021年になる予定です。最後に読者の方にメッセージをお願いします。がんとVTEは昔から非常に注目されていましたが、腫瘍を治療する医師と循環器内科医師の連携の機運も高まる中、最近はさらに注目を浴びています。当試験のベースラインのデータでも、肺がん診断時に6.4%の患者さんがVTEを合併し、そのうち80%の方が無症候性でした。目の前の患者さんにもVTE合併の可能性があることを念頭に置いて、積極的なVTEスクリーニングを心掛けていただければと思います。Rising-VTE試験世界肺癌学会(WCLC2019)での発表はこちら

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VMP療法+ダラツムマブ、多発性骨髄腫のOS延長/Lancet

 幹細胞移植の適応がない新規診断の多発性骨髄腫の患者では、標準治療であるボルテゾミブ+メルファラン+prednisone(VMP)療法にダラツムマブを追加(D-VMP療法)すると、標準治療単独に比べ全生存(OS)期間が有意に延長することが、スペイン・サラマンカ大学病院のMaria-Victoria Mateos氏らが行った「ALCYONE試験」の中間解析で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2019年12月9日号に掲載された。ダラツムマブは、CD38を標的とするヒトIgGκモノクローナル抗体製剤であり、直接的な腫瘍縮小作用とともに免疫調節作用を有するという。本試験の主解析では、D-VMP療法により無増悪生存(PFS)期間が有意に延長することが、すでに報告されている。上乗せ効果を評価する実薬対照無作為化試験 本研究は、25ヵ国162施設が参加した多施設共同非盲検実薬対照無作為化第III相試験であり、2015年2月9日~2016年7月14日の期間に患者登録が行われた(Janssen Research & Developmentの助成による)。今回は、主な副次評価項目であるOSの結果が報告された。 対象は、新規に診断された多発性骨髄腫で、年齢(≧65歳)または重大な合併症のため、大量化学療法+自家幹細胞移植が適応とならない患者であった。 被験者は、D-VMPまたはVMPを行う群に無作為に割り付けられた。全例に、ボルテゾミブ(1.3mg/m2[体表面積]を、1サイクル目は第1、4、8、11、22、25、29、32日に、2サイクル目以降は第1、8、22、29日に皮下投与)+メルファラン(9mg/m2を、各サイクルの第1~4日に、1日1回経口投与)+prednisone(60mg/m2を、各サイクルの第1~4日に、1日1回経口投与)による1サイクル6週の治療が、最大9サイクル施行された。 これに加え、D-VMP群は、ダラツムマブ(16mg/kg[体重])を1サイクル目は週1回、2~9サイクル目は3週に1回投与し、その後は維持療法として4週に1回、増悪または許容できない毒性が発現するまで継続投与した。3年以上の追跡で死亡リスク40%低下、良好なPFSが持続 706例が登録され、D-VMP群に350例、VMP群には356例が割り付けられた。ベースラインの全体の年齢中央値は71歳(範囲40~93)で、211例(30%)は75歳以上であった。271例(38%)は国際病期分類(ISS)のStageIIIであり、98例(14%)は細胞遺伝学的プロファイルが高リスクであった。 追跡期間中央値40.1ヵ月(IQR:37.4~43.1)の時点で、D-VMP群83例(24%)、VMP群126例(35%)が死亡した。死亡のハザード比(HR)は0.60(95%信頼区間[CI]:0.46~0.80、p=0.0003)であり、D-VMP群で死亡リスクが40%低下した。Kaplan-Meier法による36ヵ月時のOS率は、D-VMP群が78.0%(95%CI:73.2~82.0)、VMP群は67.9%(62.6~72.6)であり、両群ともOS期間中央値には未到達だった。 主要評価項目であるPFSのHRは0.42(95%CI:0.34~0.51、p<0.0001)であり、D-VMP群で病勢進行または死亡のリスクが58%低かった。36ヵ月PFS率は、D-VMP群が50.7%(45.1~55.9)、VMP群は18.5%(14.4~23.1)であり、PFS期間中央値はそれぞれ36.4ヵ月(32.1~45.9)および19.3ヵ月(18.0~20.4)だった。 全奏効率(D-VMP群90.9%、VMP群73.9%、p<0.0001)および最良部分奏効以上(73%、50%、p<0.0001)、完全奏効以上(46%、25%、p<0.0001)、微小残存病変陰性(28%、7%、p<0.0001)の割合は、いずれもD-VMP群で有意に良好であった。また、微小残存病変陰性が12ヵ月以上持続した患者は、PFSおよびOSが優れた。さらに、これら最良総合効果のD-VMP群における改善は、年齢(<75歳、≧75歳)および細胞遺伝学的状態(標準リスク、高リスク)にかかわらず認められた。 前回の解析以降の追跡期間中に、D-VMP群で安全性に関する新たな懸念は特定されなかった。1~9サイクルの治療期間中に最も頻度の高かったGrade3/4の治療関連有害事象は、好中球減少(D-VMP群40%、VMP群39%)、血小板減少(34%、38%)、貧血(15%、20%)であった。また、D-VMP群のダラツムマブ維持療法期に最も頻度の高かった全Gradeの有害事象は上気道感染症(19%)であり、次いで気管支炎(15%)、ウイルス性上気道感染症(12%)、咳嗽(12%)、下痢(10%)の順であった。 著者は、「現在、他の第III相試験でもダラツムマブのOSに関して長期の追跡調査が進められているが、今回の有効性と安全性の知見は、標準治療への本薬の追加を強く支持するものである」としている。

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HR+乳がん、術後ホルモン療法に1年のS-1併用が有効(POTENT)/SABCS2019

 ホルモン受容体陽性乳がん(HRBC)に対する術後療法として、5年間のホルモン療法に1年間のS-1の併用が有効であるとの試験結果が、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2019)で、京都大学の戸井 雅和氏より発表された。 本試験(POTENT試験)は、2012年2月~2016年2月に症例登録がなされた、国内多施設共同(139施設)のオープンラベル無作為化比較の第III相試験である。中間解析時に主要評価項目の閾値を達成したため早期に試験が中止され、今回の発表となった。・対象:StageI~IIIBのエストロゲン陽性かつHER2陰性再発リスク中~高の乳がん患者1,959例 (リンパ節転移状況は問わず)・試験群:S-1(2週連日投与1週休薬を1年間)と標準的ホルモン療法の併用群(S-1群) 解析対象957例・対照群:標準的ホルモン療法群(E群) 解析対象973例・評価項目:[主要評価項目]無浸潤疾患生存期間(iDFS)[副次評価項目]無病生存期間、全生存期間、安全性、バイオマーカー検索など 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値51ヵ月時点の5年時iDFS率はS-1群86.9%、E群81.6%で、ハザード比(HR)が0.63(95%信頼区間[CI]:0.49~0.81、p<0.0001)と、S-1群が統計学的に有意に良好な結果を示した。・各サブグループの解析(閉経状況、術前/術後の化学療法の有無、Ki-67値など)においても、ほぼ一貫してS-1群は良好な結果を示した。・安全性の報告に関しては、好中球減少、肝機能障害、消化器症状、色素沈着などがS-1群で多く報告されたが、いずれも対応可能であった。 SABCSのプレスリリースで戸井氏は「本試験の対象は日本人症例だけであり、安全性プロファイルに人種差がある可能性もあるが、HRBCへの術後ホルモン療法にS-1を併用することで、iDFSを有意に改善できる」と述べている。

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本態性血小板血症〔ET : essential thrombocythemia〕

1 疾患概要■ 概念・定義本態性血小板血症(essential thrombocythemia: ET)は、多能性造血幹細胞の腫瘍性増殖により、骨髄巨核球の過形成を来し、血小板増加をもたらす疾患である。WHO分類では、慢性骨髄増殖性腫瘍に分類されている。■ 疫学正確な発症頻度は不明であるが、ETの発症率は10万人あたり1~2.5人/年程度と推定されている。平均年齢は50~60歳。年齢の第1のピークは60歳にあり、性差はないが、第2のピークは30歳で、女性に多い1)。■ 病因ET症例の骨髄細胞において、トロンボポエチンのシグナル伝達を担うJAK2キナーゼの遺伝子変異(JAK2V617F)が約50%の症例で認められ、JAK2キナーゼが恒常的に活性化していることが、病因の1つと考えられている2)。また、約1%の症例でトロンボポエチン受容体をコードする遺伝子c-MPL遺伝子に変異がみられ(MPLW515L/K)、受容体の下流シグナルの恒常的な活性化が認められることも、病因の1つと考えられている3)。そのほか20%程度の症例でCALR遺伝子exon 9に挿入または欠失を認めるとの報告もある4)。■ 症状約半数の症例では無症状である。主な症状1)は以下のとおりである。(1)脾腫:約10%の症例で中等度の脾腫を認める(2)血管運動性症状:約20%の症例に微小循環不全によるものと考えられる、頭痛、失神、めまい、耳鳴、一過性視覚異常が認められる(3)血栓症:約17%の症例で認められる。血栓症は、静脈血栓より動脈血栓が多く、冠動脈血栓や四肢末端虚血の肢端紅痛症(erythromelalgia)がある(4)出血症状:約4%の症例で認められ、消化管や気道粘膜の出血が多い■ 分類ETは骨髄増殖性腫瘍に分類される。2次性骨髄線維症へ病型移行することがある。■ 予後ET の予後を規定するのは、血栓症や出血の合併である。また、一部の症例で骨髄線維症への移行や急性骨髄性白血病(AML)への移行が認められる。通常、ETの5年生存率は74~93%、10年生存率は61~84%と報告されている。骨髄線維症への移行は5年で2.7%、10年で8.3%、15年で15.3%と報告されている。AMLや骨髄異形成症候群(MDS)への移行は、発症後1.7~16年で認められると報告されており、頻度は0.6~5%と報告されている。ヒドロキシカルバミド(HU)〔商品名:ハイドレア〕単独投与例では、AMLやMDSへの移行率は低い。AML/MDSへの移行症例は化学療法抵抗性であることが多く、生存期間中央値は2~7ヵ月で、きわめて予後不良である。ETの主な死因は血栓症であり、とくに心血管系合併症である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)持続する45万/μL以上の血小板増加を認めた際に本疾患を疑う。本疾患は除外診断が重要であり、反応性血小板増加症、および他の骨髄増殖性腫瘍(真性多血症、骨髄線維症、慢性骨髄性白血病など)を除外することにより診断する。ETの診断基準はさまざまなものがあるが、現在WHO(2016)の診断基準が多く使用されている(表1)。鑑別診断を含めた診断のアプローチを図1に示す4)。画像を拡大する画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)ETの予後に大きく影響するのは、血栓症や出血の合併である。そのため、血栓症や出血をいかに予防するかが重要となってくる。そのため、治療は血栓症の既往、年齢などにより血栓症のリスク分類がなされ、血栓症のリスクとJAK2遺伝子変異の有無に応じた治療法が選択される(図2)5)。画像を拡大する■ 血栓症のリスク分類低リスク群: 年齢5 主たる診療科血液内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報日本血栓止血学会(医療従事者向けのまとまった情報)日本血液学会 造血器腫瘍診療ガイドライン(2018年度版)(医療従事者向けのまとまった情報)1)Dan K, et al. Int J Hematol. 2006;83:443-449.2)Campbell PJ, et al. N Engl J Med. 2006;355:2452-2466.3)Beer PA, et al. Blood. 2008;112:141-149.4)Rumi E, et al. Blood. 2016;128:2403-2414.5)日本血液学会. 造血器腫瘍診療ガイドライン2018年度版. 金原出版株式会社;2018.6)Harrison CN, et al. N Engl J Med.2005;353:33-45.7)Gisslinger H, et al. Blood.2013;121:1720-1728.公開履歴初回2013年05月09日更新2019年12月24日

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早期TN乳がんの術前化療後のctDNA検出が再発と関連/SABCS2019

 早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)で術前化学療法(NAC)後に手術を受けた女性において、血中循環腫瘍DNA(ctDNA)検出が遠隔無病生存期間(DDFS)および全生存期間(OS)に関連することが示された。米国・Indiana University Simon Cancer CenterのMilan Radovich氏が、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2019)で発表した。 本研究では、第II相BRE12-158試験(NAC後に残存病変を有する早期TNBC患者を、遺伝子に基づく治療と主治医選択の治療に無作為に割り付け)に登録された患者から採取した血漿サンプルを分析した。本試験には196例が参加し、FoundationOne Liquidにより142例のctDNA配列が解析された。ctDNA検出とDDFSおよびOSとの関連について、log-rank検定による単変量解析およびCox比例ハザードモデルを使用した多変量解析で評価した。 主な結果は以下のとおり。・142例のうち90例(63%)で変異したctDNAが検出され、最も多い変異はTP53であった。・追跡期間中央値17.2ヵ月において、ctDNA検出がDDFSと有意に関連し、ctDNA陽性例ではDDFS中央値が32.5ヵ月であったのに対し、陰性例では未到達であった。・24ヵ月後のDDFS率は、ctDNA陰性例81%に対し、陽性例では56%であった。多変量解析においても、残存腫瘍量、リンパ節転移の数、腫瘍の大きさ、ステージ、悪性度、年齢、人種を含む共変量を調整後、ctDNA検出とDDFSの間に独立した関連が認められ、ctDNA陽性例は陰性例に比べて遠隔再発リスクが3倍高かった。・ctDNA検出はOSの低下にも関連しており、ctDNA陽性例は陰性例に比べ死亡リスクが4.1倍高かった。 SABCS2019のプレスリリースで、本研究のシニアオーサーであるBryan P. Schneider氏(Indiana University)は「この結果は、術前化学療法後にctDNAが検出された早期TNBC患者は再発リスクが高いことを証明している」と述べている。

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LOXO-292のRET肺がんに対する有効性(LIBRETTO-001)/日本肺癌学会

 RET融合遺伝子陽性がんは全身のさまざまな臓器で見られる。非小細胞肺がん(NSCLC)においても2%を占めるといわれる。RET融合遺伝子陽性がんでは、半数に脳転移があるとの報告もある。従来のマルチキナーゼ阻害薬によるRET融合遺伝子陽性がん治療では、有効性に限度がみられた。selpercatinib(LOXO-292)は、選択性の高いRET阻害薬であり、幅広いがん種への有効性を示すとともに、CNSへの移行性も良好な薬剤である。 LOXO-292の国際第I/II相試験LIBRETTO-001の結果は本年の世界肺癌学会(WCLC2019)で発表された。第60回日本肺癌学会学術集会では、国立がん研究センター東病院の後藤 功一氏がそのアンコール発表を行った。 今回の発表は、2017年5月の登録開始から2016年6月までの肺がん初回データをまとめたもの。主要評価項目は客観的奏効率(ORR)、副次評価項目は奏効期間(DoR)、無増悪生存期間(PFS)、安全性。登録されたRET融合遺伝子陽性がんの総数は531例、そのうちNSCLCは253例であった。今回の発表では、前治療としてプラチナベース化学療法を実施した患者184例中の105例が解析対象であった。 主な結果は以下のとおり。・患者の年齢中央値は61歳、女性59%、前治療レジメン中央値は3(55%がPD-1/L1阻害薬実施、48%がマルチキナーゼ阻害薬実施)、脳転移は35%に認められた。・ORRは68%(95%信頼区間[CI]:58~76)であった。・CNS奏効率は91%(95%CI:59~100)であった。・DoR中央値は20.3ヵ月(95%CI:13.8~24.0)、PFS中央値は18.4ヵ月(95CI:12.9~24.9)であった。・今回の解析対象ではないが、未治療患者のORRは85%(95%CI:69~95)であった。・頻度の高い治療関連有害事象(TRAE)は口喝(27%)、AST上昇(22%)、ALT上昇(21%)。TRAEによる治療中止は1.7%であった。

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HIV患者のがん治療、免疫モニタリングが有益/JAMA Oncol

 抗ウイルス療法を受ける成人HIV患者のがん治療について、免疫モニタリングの有益性が、がん治療後の死亡率に関する定量化研究により明らかにされた。米国・ジョンズ・ホプキンズ・ブルームバーグ公衆衛生大学院のKeri L. Calkins氏らによる検討で、化学療法および/または放射線療法は、手術またはその他の治療を受けた場合と比べて、施術後早期のCD4細胞数を有意に減少させること、その数値の低さと死亡率増大は関連することが示されたという。JAMA Oncology誌オンライン版2019年12月5日号掲載の報告。 研究グループは、がん治療を受けるHIV患者の免疫低下とがん治療との関連は十分に特徴付けられていないことに着目し、がん治療ガイドラインに反映させうる検討として、がん治療に関連した免疫抑制と過剰死亡率の関連性の定量化を試みた。HIV患者のがん治療とCD4細胞数およびHIV RNA値の関連性、治療後CD4細胞数およびHIV RNA値の推移と全死因死亡との関連を推算した。 検討は観察コホート試験にて、1997年1月1日~2016年3月1日にジョンズ・ホプキンズHIVクリニックの治療を受けていた成人HIV患者で、初発のがんを有し、がん治療のデータを入手できた196例を対象に行われた。 試験では、化学療法および/または放射線療法は、手術またはその他の治療と比べて、(1)忍容性の問題によりHIV RNA値を増大する、(2)CD4細胞数の初期の減少幅が大きい、(3)減少したCD4細胞数の回復に時間がかかる、さらに(4)CD4細胞数の減少は、ベースラインのCD4細胞数、抗ウイルス薬の使用、罹患したがんのリスクとは独立して、高い死亡率と関連するとの仮説を立てて検証した。 被験者は、がん種別の初期治療(化学療法および/または放射線療法vs.手術またはその他の治療)を受けた。主要評価項目は、がん治療後のCD4細胞数の推移、HIV RNA値の推移、全死因死亡率であった。 データ解析は2017年12月1日~2018年4月1日に行われた。 主な結果は以下のとおり。・被験者196例は、男性135例(68.9%)、年齢中央値50歳であった。・化学療法および/または放射線療法について、ベースラインCD4細胞数が500個/μL超の患者では、治療後の初期細胞数が203個/μL(95%信頼区間[CI]:92~306)減少した。・一方、ベースラインCD4細胞数が350個/μL以下の患者における減少は、45個/μLであった(相互作用推定値:158個/μL[95%CI:31~276])。・化学療法および/または放射線療法は、HIV RNA値に有害な関連は示さなかった。・初期のがん治療後、CD4細胞数100個/μL低下につき、死亡率は27%増大することが示された(ハザード比:1.27、95%CI:1.08~1.53)。

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ペルツズマブ+トラスツズマブ+化学療法のHER2+乳がん術後療法、引き続き有用(APHINITY)/SABCS2019

 HER2陽性乳がんに対する術後療法としての、ペルツズマブとトラスツズマブと標準化学療法の併用を評価する第III相APHINITY試験の更新データが、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2019)で、ベルギー・Institut Jules BordetのMartin Piccart氏より発表された。 APHINITY試験は、2011年11月~2013年8月に症例登録された国際共同無作為化比較試験。2017年に初回解析結果が発表され、今回は2回目の解析データの発表。2017年の発表(症例追跡期間中央値45.4ヵ月時点)では、無浸潤疾患生存期間(iDFS)はハザード比(HR)が0.81(95%信頼区間[CI]:0.66~1.00、p=0.045)と、有意にペルツズマブ・トラスツズマブ・標準化学療法併用群(HP群)が良好な結果であった。とくに、リンパ節転移陽性群ではHR 0.77(95%CI:0.62~0.96、p=0.019)と、またホルモン受容体陽性群でもHR 0.76(95%CI:0.56~1.04、p=0.085)と、HP群が良い傾向を示していた。・対象:HER2陽性乳がん患者4,805例 (リンパ節転移状況、ホルモン受容体状況は問わず)・試験群:ペルツズマブ・トラスツズマブ・標準化学療法の併用群(HP群)2,400例・対照群:プラセボ・トラスツズマブ・標準化学療法の併用群(H群)2,405例・評価項目:[主要評価項目]iDFS[副次評価項目]無病生存期間、全生存期間(OS)、無再発期間、安全性、健康関連QOLなど標準化学療法は、78%がアントラサイクリンを含むレジメン、そのほかはドセタキセル+カルボプラチンなど。ペルツズマブとトラスツズマブの投与期間は1年間。 主な結果は以下のとおり。・2019年6月のデータカットオフ(追跡期間中央値:74.1ヵ月)時のデータで、2回目のOS解析が実施された。・6年OS率はHP群94.8%、H群93.9%で、OSのHRが0.85(95%CI:0.67~1.07、p=0.170)と両群間に統計学的な有意差はなかった(今回のOS解析での統計学的有意差の閾値はp=0.0012)。・6年iDFS率はHP群90.6%、H群87.8%で、iDFSのHRが0.76(95%CI:0.64~0.91)と、前回の解析よりHP群の効果が明確になっていた。とくに、遠隔再発率はHP群5.9%対H群7.7%、局所再発率はHP群1.2%対H群2.0%と、HP群で良好であった。・リンパ節転移の有無、ホルモン受容体の有無別のiDFSのHRは、2017年時の発表と同様、リンパ節転移陽性群では0.72(95%CI:0.59~0.87)、またホルモン受容体陽性群では0.73(95%CI:0.59~0.92)、さらにホルモン受容体陰性群でも0.83(95%CI:0.63~1.10)と、引き続きHP群が良好であった。しかし、リンパ節転移陰性群では1.02(95%CI:0.69~1.53)で、6年iDFS率もHP群95.0%対H群94.9%と差がなかった。・心機能イベントについては、HP群で0.8%、H群で0.3%と安全性に大きな問題はなかった。 SABCS2019のプレスリリースでPiccart氏は、「今回の解析により、HER2陽性乳がん患者の術後療法におけるトラスツズマブ+化学療法へのペルツズマブの追加は、さらに堅固なエビデンスとなった」と述べている。

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デュルバルマブの進展型小細胞肺がん、FDAの優先審査指定に/アストラゼネカ

 アストラゼネカは、2019年11月29日、デュルバルマブ(商品名:イミフィンジ)が治療歴のない進展型小細胞肺がん(SCLC)患者に対する治療薬として、米国食品医薬品局(FDA)から生物製剤承認一部変更申請(sBLA)に対する優先審査指定を受けたことを発表。 このsBLAは、The Lancet誌に掲載された第III相CASPIAN試験の良好な結果に基づいて行われた。CASPIAN試験は、進展型SCLC患者の1次治療を対象とした、無作為化非盲検国際多施設共同第III相試験。同試験では、デュルバルマブと化学療法(エトポシドおよびシスプラチンまたはカルボプラチン)の併用と化学療法単独、および、デュルバルマブ、トレメリムマブ、化学療法の併用と化学療法単独を比較したもの。全生存期間(OS)を主要評価項目とし、米国、欧州、南米、アジア、中東の 23カ国200以上の施設で実施されている。 同試験において、化学療法単独群のOS中央値は10.3ヵ月であったのに対し、デュルバルマブと化学療法併用群はOS中央値13.0ヵ月を示し、統計学的に有意で臨床的に意義のあるOSの延長を示した(ハザード比:0.73)。治療開始後18ヵ月時点で生存している患者の割合は、デュルバルマブ・化学療法併用群では33.9%、化学療法単独群では24.7%と推計され、併用療法によるOS延長のベネフィットが示された。 デュルバルマブの小細胞肺がん治療薬としての適応は本邦では未承認である。

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リンパ節転移陽性の早期TN乳がん、術前にペムブロリズマブ追加でpCR改善(KEYNOTE-522)/SABCS2019

 早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対して、術前補助化学療法にペムブロリズマブを追加すると病理学的完全奏効(pCR)率が有意に改善したことが、欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で報告されている(KEYNOTE-522試験)。12月10~14日に開催されたサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2019)では、本試験のサブグループにおけるpCR率が報告され、リンパ節転移陽性例においてもpCR率が有意に改善したことが示された。英国・Barts Cancer Institute, Queen Mary University LondonのPeter Schmid氏が発表。 本試験は、2017年3月~2018年9月に新規に診断された21カ国の18歳以上の転移のない早期TNBC患者1,174例が対象。術前補助療法として、ペムブロリズマブ+化学療法(ペムブロリズマブ群)またはプラセボ+化学療法(プラセボ群)に2:1に無作為に割り付けた。術前補助療法後、根治的手術を実施、適応があれば放射線療法を実施した。その後、再発または許容できない毒性が発現するまで、ペンブロリズマブまたはプラセボを投与した。主要評価項目は、pCRおよび無イベント生存(EFS)。 ESMO2019では、PD-L1の発現に関係なく、ペムブロリズマブ群(64.8%)はプラセボ群(51.2%)と比べpCR率が有意に高いことが報告された。今回のサブグループ解析ではリンパ節転移陽性例においても、ペムブロリズマブ群(64.8%)がプラセボ群(44.1%)に比べ有意に高いことが示された。

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