サイト内検索|page:50

検索結果 合計:1918件 表示位置:981 - 1000

981.

T-DM1、HER2陽性早期乳がんの術後薬物療法に適応追加/中外製薬

 中外製薬は、抗HER2抗体チューブリン重合阻害剤複合体トラスツズマブ エムタンシン(商品名:カドサイラ、以下T-DM1)について、「HER2陽性の乳癌における術後薬物療法」に対する適応追加の承認を8月21日に取得したことを発表した。手術前の薬物療法で病理学的完全奏効(pCR)が得られなかったHER2陽性早期乳がんに対して、術後薬物療法の新たな選択肢となる。T-DM1の優越性が術前療法でpCRが得られなかったHER2陽性早期乳がんの術後薬物療法で認められた 今回のT-DM1の承認は、海外で実施された非盲検ランダム化第III相国際共同臨床試験(KATHERINE試験)の成績に基づく。本試験では、トラスツズマブを含む術前薬物療法でpCRが得られなかったHER2陽性早期乳がん1,486例を対象に、術後薬物療法としてのT-DM1の有効性と安全性をトラスツズマブと比較した。その結果、主要評価項目である浸潤性疾患のない生存期間(IDFS)について、トラスツズマブに対するT-DM1の優越性が認められた(非層別ハザード比:0.50、95%信頼区間:0.39~0.64、p<0.0001)。また、本試験におけるT-DM1の安全性は、転移を有するHER2陽性乳がんにおける治療で認められている安全性プロファイルと同様であり、忍容性が認められた。【添付文書情報】(下線部分が追加)■効能・効果・HER2陽性の手術不能又は再発乳癌・HER2陽性の乳癌における術後薬物療法■効能・効果に関連する注意〈効能共通〉1. HER2陽性の検査は、十分な経験を有する病理医又は検査施設において実施すること。2. 本剤は、トラスツズマブ(遺伝子組換え)及びタキサン系抗悪性腫瘍剤による化学療法の治療歴のある患者に投与すること。3. 本剤の術前薬物療法における有効性及び安全性は確立していない。〈HER2陽性の乳癌における術後薬物療法〉4. 術前薬物療法により病理学的完全奏効(pCR)が認められなかった患者に投与すること。5. 臨床試験に組み入れられた患者のpCRの定義等について、「17. 臨床成績」の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で、適応患者の選択を行うこと。■用法・用量通常、成人にはトラスツズマブ エムタンシン(遺伝子組換え)として1回3.6 mg/kg(体重)を3週間間隔で点滴静注する。ただし、術後薬物療法の場合には、投与回数は14回までとする。

982.

未治療AML、アザシチジン+ベネトクラクス併用でOS延長/NEJM

 強力な化学療法が適応とならない未治療の急性骨髄性白血病(AML)患者において、アザシチジン+ベネトクラクス併用療法はアザシチジン単独投与と比較して、発熱性好中球減少症の発現率は高かったものの、全生存期間および寛解率の有意な改善を達成したことが、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのCourtney D. DiNardo氏らによる多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験「VIALE-A試験」で明らかとなった。高齢のAML患者は、メチル化阻害剤による治療でも予後不良であり、第Ib相試験においてアザシチジン+ベネトクラクス併用療法の有効性が示唆されていた。NEJM誌2020年8月13日号掲載の報告。未治療の高齢AML患者約430例で有効性と安全性を単独投与と比較 研究グループは、併存疾患を有する、または75歳以上のため、標準的な寛解導入療法の適応とならない未治療のAML患者431例を、アザシチジン+ベネトクラクス併用療法(ベネトクラクス群)またはアザシチジン+プラセボ(プラセボ群)に2対1の割合で無作為に割り付けた。アザシチジンは標準的な用法・用量で投与し(28日を1サイクルとし1日目~7日目に75mg/m2を皮下投与または静脈内投与)、ベネトクラクス(目標用量400mg)またはプラセボは1サイクル28日で1日1回経口投与した。 主要評価項目は全生存期間(OS)、副次評価項目は複合完全寛解(完全寛解+好中球数または血小板数の回復が不完全な完全寛解)、完全寛解などであった。ベネトクラクス併用療法はアザシチジン単独投与よりOSを約5ヵ月延長 2017年2月6日~2019年5月31日の間に、27ヵ国134施設において579例がスクリーニングされ、433例が無作為化された。intention-to-treat集団には、431例が組み込まれた(ベネトクラクス群286例、プラセボ群145例)。両群の年齢中央値は76歳であった(範囲:49~91歳)。 追跡期間中央値20.5ヵ月において、OS中央値はベネトクラクス群14.7ヵ月(95%信頼区間[CI]:11.9~18.7)、プラセボ群9.6ヵ月(7.4~12.7)で、死亡のハザード比は0.66(95%CI:0.52~0.85、p<0.001)であった。 完全寛解率は、ベネトクラクス群がプラセボ群より高く(36.7% vs.17.9%、p<0.001)、複合完全寛解も同様の結果であった(66.4% vs.28.3%、p<0.001)。 主な有害事象は、全グレードの悪心(ベネトクラクス群44%、プラセボ群35%)、ならびにGrade3以上の血小板減少症(それぞれ45%、38%)、好中球減少症(42%、28%)、発熱性好中球減少症(42%、19%)であった。全グレードの感染症は、ベネトクラクス群で85%、プラセボ群で67%に認められた。 重篤な有害事象の発現率は、それぞれ83%および73%であった。

983.

二ボルマブ+化学療法、胃がん食道がん1次治療法でOS、PFSを改善(CheckMate-649)/BMS

 ブリストル マイヤーズ スクイブは、2020年8月11日、ファーストラインの転移性胃がん、胃食道接合部(GEJ)がんまたは食道腺がんを対象に二ボルマブと化学療法の併用療法を化学療法と比較評価したピボタルな第III相CheckMate-649試験において、二ボルマブと化学療法の併用療法が、PD-L1発現combined positive score(CPS)が5以上の患者において、主要評価項目である中間解析での全生存期間(OS)および最終解析での無増悪生存期間(PFS)の両方を達成したことを発表した。二ボルマブと化学療法の併用療法の安全性プロファイルは、ファーストラインの胃がんおよび食道がんの治療において二ボルマブと化学療法の併用療法でこれまでに認められているものと一貫していた。 CheckMate-649試験は、未治療のHER2陽性以外の進行または転移のある胃がん、GEJがんまたは食道腺がんの患者を対象に、二ボルマブと化学療法の併用療法または二ボルマブとイピリムマブの併用療法を、化学療法と比較評価した多施設無作為化非盲検第III相臨床試験。二ボルマブと化学療法の併用療法群の患者は、二ボルマブ360mgとカペシタビンおよびオキサリプラチン(CapeOX)を3週間間隔で、または二ボルマブ240mgとFOLFOXを2週間間隔で投与を受けた。二ボルマブとイピリムマブの併用療法群の患者は、二ボルマブ1mg/kgおよびイピリムマブ3mg/kgを3週間間隔で計4回投与を受け、その後、二ボルマブ240mgを2週間間隔で投与を受けた。化学療法群の患者は、FOLFOXを2週間間隔で、またはCapeOXを3週間間隔で投与を受けた。試験の主要評価項目は、二ボルマブと化学療法の併用療法を受けたCPSが5以上のPD-L1陽性患者におけるOS、および二ボルマブと化学療法の併用療法を受けたCPSが5以上の患者における盲検下独立中央評価委員会(BICR)の評価によるPFS。主な副次評価項目は、二ボルマブと化学療法の併用療法を受けたCPSが1以上および割り付けられた全ての患者におけるOS、および二ボルマブとヤーボイの併用療法を受けた患者におけるOSと症状悪化までの期間である。

984.

TN乳がんの術後補助療法、パクリタキセル+カルボプラチンでDFS改善/JAMA Oncol

 手術可能なトリプルネガティブ(TN)乳がんへの術後補助療法において、パクリタキセルとカルボプラチンの併用が標準レジメンより5年無病生存率が有意に高かったことが、無作為化第III相試験(PATTERN試験)で示された。中国・Fudan University Shanghai Cancer CenterのKe-Da Yu氏らが報告した。JAMA Oncology誌オンライン版2020年8月13日号に掲載。 本試験は中国の9施設のがんセンターと病院で実施された。対象患者は2011年7月1日~2016年4月30日に登録し、データはITT集団で2019年12月1日~2020年1月31日に解析した。・対象: 18~70歳の手術可能なTN乳がんの女性(病理学的に確認された局所リンパ節転移のある患者もしくは原発腫瘍径10mm超のリンパ節転移のない患者)で、除外基準は、転移ありもしくは局所進行の患者、TNではない乳がん患者、術前治療(化学療法、放射線療法)を受けた患者・試験群: 1、8、15日目にパクリタキセル80mg/m2+カルボプラチン(AUC 2)、28日ごと6サイクル投与(PCb群)・対照群:シクロホスファミド500mg/m2+エピルビシン100mg/m2+フルオロウラシル500mg/m2を3週ごと3サイクル投与後、ドセタキセル100mg/m2を3週ごと3サイクル投与(CEF-T群)・評価項目:[主要評価項目]無病生存期間(DFS)[副次評価項目]全生存期間、遠隔DFS、無再発生存期間、BRCA1/2もしくは相同組換え修復(HRR)関連遺伝子の変異がある患者のDFS 、毒性  主な結果は以下のとおり。・手術可能なTN乳がん患者647例(平均年齢[SD]:51[44~57]歳)をCEF-T群(322例)またはPCb群(325例)に無作為に割り付けた。・中央値62ヵ月の追跡期間で、PCb群はCEF-T群よりDFSが長かった(5年DFS:86.5% vs.80.3%、ハザード比[HR]:0.65、95%CI:0.44~0.96、p=0.03)。遠隔DFSと無再発生存期間でも同様の結果が認められた。・全生存期間は統計学的な有意差がみられなかった(HR:0.71、95%CI:0.42~1.22、p=0.22)。・サブグループ解析では、BRCA1/2変異のある患者のDFSのHRは0.44(95%CI:0.15~1.31、p=0.14)、HRR関連遺伝子変異のある患者では0.39(95%CI:0.15~0.99、p=0.04)であった。・安全性データは既知の安全性プロファイルと一致していた。 著者らは、「これらの結果から、手術可能なTN乳がん患者においてパクリタキセルとカルボプラチンの併用が術後補助化学療法の代替の選択肢となりうることが示唆される。分子分類の時代においては、PCbが有効なTN乳がんのサブセットをさらに調べる必要がある」としている。

985.

ぺムブロリズマブ+化学療法による小細胞肺がん1次治療、PFSを延長(KEYNOTE-604)/JCO

 未治療の進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)に対する、初回治療としての抗PD-1抗体ペムブロリズマブと化学療法(エトポシド+プラチナ:EP)の併用療法について検討した第III相プラセボ対照二重盲検無作為化試験KEYNOTE-604において、ペムブロリズマブ+EPはプラセボ+EPと比較して、無増悪生存(PFS)を有意に延長したことが報告された。ペムブロリズマブ併用群で、想定外の毒性はみられなかったという。米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのCharles M. Rudin氏らによる検討で、著者は「示されたデータは、ES-SCLCにおけるペムブロリズマブの有益性を支持するものである」と述べている。先行研究で、SCLC患者においてペムブロリズマブ単独療法が抗腫瘍活性を示したことが報告されていた。Journal of Clinical Oncology誌2020年7月20日号掲載の報告。 試験では、適格患者を無作為に1対1で割り付け、ペムブロリズマブ200mgを3週ごと(最大35サイクル)+EP(最大4サイクル)またはプラセボ+EP(最大4サイクル)が投与された。 主要評価項目は、PFS(中央レビュー委員会評価)および全生存(OS)で、ITT解析にて評価した。副次評価項目は、客観的奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)であった。事前に規定した有効性のp値(片側検定による)は、PFSがp=0.0048、OSがp=0.0128であった。 主な結果は以下のとおり。・被験者は453例で、228例がペムブロリズマブ+EP群に、225例がプラセボ+EP群に割り付けられた。・ペムブロリズマブ+EP群は、PFSを有意に改善した(ハザード比[HR]:0.75、95%信頼区間[CI]:0.61~0.91、p=0.0023)。12ヵ月時点の推定PFS率は、ペムブロリズマブ+EP群が13.6%、プラセボ+EP群は3.1%であった。・ペムブロリズマブ+EP群はOSを延長したが、有意差は示されなかった(HR:0.80、95%CI:0.64~0.98、p=0.0164)。24ヵ月時点の推定OS率は、ペムブロリズマブ+EP群22.5%、プラセボ+EP群11.2%であった。・ORRは、ペムブロリズマブ+EP群70.6%、プラセボ+EP群は61.8%であった。12ヵ月時点で奏効が持続していたレスポンダーの推定割合は、それぞれ19.3%、3.3%であった。・全要因の有害事象の発現頻度は、Grade3/4がペムブロリズマブ+EP群76.7%、プラセボ+EP群74.9%、Grade5はそれぞれ6.3%、5.4%、あらゆる薬物の中断率は14.8%、6.3%であった。

986.

肺がん1次治療における抗PD-1抗体sintilimab+化学療法の成績(ORIENT-11)/WCLC2020

 新たな抗PD-1抗体sintilimabの非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)における有効性は、第Ib相試験で示された。この結果を基に、無作為化二重盲検第III相ORIENT-11試験が行われ、その初回解析の結果を中国・Sun Yat-Sen University Cancer Centreの Zhang Li氏が、世界肺癌学会WCLC2020Virtual Presidential Symposiumで発表した。sintilimabがPFSを有意に延長・対象:未治療の局所進行または転移のあるNSCLC患者・試験群:sintilimab(200mg)+ペメトレキセド(500mg/m2)+シスプラチン(75mg/m2)またはカルボプラチン(AUC5) 3週ごと4サイクル投与→sintilimab+ペメトレキセド維持療法(sintilimab群)・対照群:プラセボ+ペメトレキセド+プラチナ 3週ごと4サイクル投与→ペメトレキセド維持療法(化学療法群) 化学療法群のsintilimab群へのクロスオーバーは許容された。・評価項目: [主要評価項目]独立放射線審査委員会評価の無増悪生存期間(PFS) [副次評価項目]全生存期間(OS)、客観的奏効期間(ORR)、効果発現までの時間、安全性 sintilimabのNSCLCにおける有効性を評価した主な結果は以下のとおり。・対照患者397例はsintilimab群266例、プラセボ群131例に2対1で無作為に割り付けられた。プラセボ群のsintilimabへのクロスオーバーは35例(31.3%)であった。・追跡期間中央値8.9ヵ月でのPFS中央値は、sintilimab群8.9ヵ月、化学療法群5.0ヵ月と、sintilimab群で有意に長かった(HR:0.482、95%CI:0.362〜0.643、p<0.00001)。・OS中央値は、両群とも未達であった(HR:0.609、95CI:0.400〜0.926、p=0.01921)。・ORRは、sintilimab群51.9%、化学療法群で29.8%であった。・Grade3以上の有害事象発現率は、sintilimab併用群61.7%、プラセボ併用群58.8%であった。 Discussantである米国・Karmanos Cancer Canterの長阪 美沙子氏は、当試験が東アジアのデータであることを重要であるとした。また、PFS、OSは他の免疫チェックポイント阻害薬のNSCLC1次治療のデータと匹敵するものだとしながら、PFSの改善がOSの改善に結びつかないこともあることから、長期のフォローアップの必要性を強調した。 この試験の結果は、Journal of Thoracic Oncology誌2020年8月8日オンライン版にも同時掲載された。

987.

IO+Chemoへのベバシズマブ add onは有用か:APPLE Study【肺がんインタビュー】 第48回

第48回 IO+Chemoへのベバシズマブ add onは有用か:APPLE Study出演:九州大学病院 呼吸器科 白石 祥理氏非小細胞肺がん1次治療において免疫チェックポイント阻害薬と化学療法の併用にベバシズマブを上乗せすることの有効性と安全性を検討するWJOG11218L試験(APPLE Study)が進行中である。この試験の研究事務局の九州大学病院 呼吸器科 白石 祥理氏に試験実施の背景と臨床的意義について聞いた。

988.

がん患者の脱毛軽減に有用な頭皮冷却装置、国内初の製造販売承認

 2020年7月10日、「抗がん剤治療の副作用による脱毛を低減・抑制する国産初の『頭皮冷却装置』発表記者会見」が開催された(株式会社毛髪クリニックリーブ21主催)。小林 忠男氏(大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻 招へい教授)が「乳がん化学療法患者さんにおけるリーブ21 CellGuard(セルガード、頭皮冷却装置)を用いた脱毛の軽減化について」を、渡邉 隆紀氏(仙台医療センター乳腺外科医長)が「乳がんにおける化学療法と脱毛の問題点」について講演した。 がん化学療法に伴う容姿変化が原因で治療介入に対し消極的となる患者も存在する。そのような患者のサポートを行う上でエビデンスが集約され治療に役立つのが、「がん患者に対するアピアランスケアの手引き」である。これには脱毛をはじめ、爪の変形や皮膚への色素沈着などへの対応法がまとめられ、たとえば、脱毛に関しては“CQ1:脱毛の予防や重症度の軽減に頭皮冷却は有用か”の項で、頭皮冷却の推奨はC1a(科学的根拠はないが、行うように勧められる)とされている。しかし、日本は海外に比べ、医療施設への頭皮冷却装置の導入が遅れているのが現状であるー。頭皮冷却装置でがん患者の満足度アップ 小林氏は化学療法に誘発される脱毛(CIA:Chemotherapy induced-alopecia)のメカニズムについて、頭皮冷却の理論的根拠(温度低下により血管が収縮→血流低下により薬剤濃度低下、または反応速度低下→毛根細胞生存の維持)や脱毛頻度の高い抗がん剤開発と頭皮冷却の歴史を交えて解説。CIAが女性患者にもたらす影響として以下を述べた。●身体的また精神的な悪影響●心理学的な症状●ボディイメージの低下●乳房を失うよりも強いトラウマ●QOLの低下:Identityと個性に強い影響を及ぼす●治療後も持続的な髪質の変化(くせ毛・量・太さ) これらの悩みを解決するべく誕生したのがセルガードであり、この特徴として、「制御付き頭皮冷却のデジタルシステムである。頭皮温度を氷点下で維持することで毛根周囲の血管を収縮させて、毛根周辺毛細血管に到達する抗がん剤の量を抑制することができる。また、1台で2名が利用でき外来化学療法に有用」と説明した。上田 美幸氏らが第18回日本乳癌学会学術総会(2010年)で報告した『頭皮冷却キャップ装着に伴う変化 患者満足度アンケート』によると、装着の問題、使用中の気分不快、頭痛について調査し大多数で満足が得られているほか、加藤乳腺クリニックの29例を対象とした調査では、NCI-CTC scale Grade0は8例、Grade1は17例、Grade2は4例という結果が得られた。これを踏まえ同氏は、「セルガードによる頭皮冷却法がCIAに効果的であると証明された。今後、患者のQOLを向上させるだけではなく、より良い治療へ貢献する可能性がある」と語った。脱毛に関する不安、患者と医療者で大きな差 脱毛の臨床的な見解を示した渡邉氏は、がん化学療法を受けた患者の苦痛調査1,2,3,4)から「脱毛は、この30年間で常に上位に位置するほど患者の大きな悩み。また、別の調査5)でも治療時の不安において、患者は脱毛を4番目に挙げる一方、看護師は9番目、医師は12番目に挙げた」と、がん患者・看護師・医師の認識の乖離を指摘。なかでも、乳がんは患者の増加、初発年齢の若さ、適格な診断・予後の良さに加え、近年では外来化学療法が主流となっているが、体毛すべてに影響を及ぼす乳がん再発予防の治療は患者に大きな負担をもたらしている。同氏らが行った調査6)によると乳がん患者が脱毛した場合、再発毛しても頭髪8割以上の回復は60%、頭髪5~8割の回復は25%、頭髪5割未満の回復は15%で、再発毛不良部位は前頭部と頭頂部が圧倒的に多いことが明らかになった。また、ウイッグの使用期間は平均12.5±9.7ヵ月で、60ヵ月以上もウィッグを手放せない患者も存在した。このことから同氏は「脱毛程度の軽減、再発毛の促進に頭皮冷却装置の効果を期待する」と締めくくった。日本人向け脱毛防止装置で苦痛開放へ 日本での冷却装置導入の遅れに注目したリーブ21代表取締役社長の岡村 勝正氏は、「女性にとって乳がん治療はがん告知、乳房、髪の毛を失う三重の苦しみがあると言われている。欧米で発売されている頭皮冷却装置は日本人に適さないことから、脱毛で悩む日本人を救うため開発を行った」とし、「同製品は本年秋頃、全国のがん診療連携拠点病院に対してプロモーションを予定している」と話した。■参考リーブ21:頭皮冷却装置<セルガード> 1)Coates A, et al. Eur J Cancer Clin Oncol. 1983;19:203-208.2)Griffin AM, et al. Ann Oncol. 1996;7:189-195.3)Dennert MB, et al. Br J Cancer. 1997;76:1055-1061.4)Carelle N, et al. Cancer. 2002;95:155-163.5)Mulders M, et al. Eur J Oncol Nurs. 2008;12:97-102.6)Watanabe T, et al. PLoS One.2019;14:e0208118.

989.

ニボルマブ+ベバシズマブ+化学療法、非小細胞肺がん1次治療でPFS延長(ONO-4538-52/TASUKI-52)/小野

 小野薬品工業は、2020年8月3日、抗PD-1抗体ニボルマブ(商品名:オプジーボ)について、化学療法未治療の根治照射不能なIIIBIV期又は再発の非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象に、抗VEGF抗体であるベバシズマブと化学療法の併用療法群(ニボルマブ併用療法群:275例)をプラセボ、ベバシズマブと化学療法の併用療法群(対照併用療法群:275例)と比較評価した第III相臨床試験(ONO-4538-52/TASUKI-52)のトップライン結果を発表。本試験において、予め計画していた中間解析で、オプジーボ併用療法群が、対照併用療法群と比較して、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)で統計学的に有意な延長を示した。本試験におけるニボルマブ併用療法群の安全性プロファイルは、化学療法未治療のNSCLC治療において免疫チェックポイント阻害剤、およびベバシズマブと化学療法の併用療法でこれまでに認められているものと一貫していた。 ONO-4538-52/TASUKI-52試験は、化学療法未治療の根治照射不能なIIIB/IV期又は再発の非扁平上皮NSCLCを対象に、ニボルマブ、ベバシズマブと化学療法の併用療法群(ニボルマブ併用療法群:275例)をプラセボ、ベバシズマブと化学療法の併用療法群(対照併用療法群:275例)と比較評価した多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験(ONO-4538-52/TASUKI-52)。ニボルマブ併用療法群の患者には、ニボルマブ360mg、カルボプラチンAUC6、パクリタキセル200mg/m2およびベバシズマブ15mg/kgを3週間1サイクルとして投与し、対照併用療法群の患者には、プラセボ、カルボプラチンAUC6、パクリタキセル200mg/m2およびベバシズマブ15mg/kgを3週間1サイクルとして投与した。両群ともカルボプラチンおよびパクリタキセルは4サイクルまで投与し、安全に投与を継続することが可能と判断された場合は最大6サイクルまで投与継続可能とした。その後、ニボルマブ併用療法群ではニボルマブおよびベバシズマブの投与を、対照併用療法群ではプラセボおよびベバシズマブの投与を病勢進行又は許容できない毒性が確認されるまで継続した。主要評価項目は、独立画像判定委員会の評価に基づくPFS。副次評価項目は全生存期間(OS)、実施医療機関の医師判定に基づくPFSおよび奏効率(ORR)など。

990.

併存症のある高齢乳がん患者、補助化学療法と生存は関連するか/JAMA Oncol

 複数の併存疾患を有する高齢乳がん患者において、補助化学療法は生存と関連するのか。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのNina Tamirisa氏らは、併存疾患を有する70歳以上の乳がん患者を対象に、補助化学療法と生存の関連を評価する、後ろ向きの大規模コホート研究を実施した。JAMA Oncology誌オンライン版2020年7月16日号に掲載の報告より。 対象は米国国立がんデータベースに登録された、70歳以上のエストロゲン受容体陽性、ERBB2陰性、Charlson/Deyo併存疾患指数が2または3の乳がん患者。2010年1月1日~2014年12月31日にリンパ節転移陽性乳がんの手術を受けていた。 年齢、併存症スコア、施設タイプ、施設の場所、病理学的TおよびN分類、補助内分泌療法と放射線療法の有無に基づく傾向スコアを用いた、二重ロバストCox比例ハザード回帰モデルにより、補助化学療法と全生存との関連が推定された。データ分析期間は、2018年12月13日~2020年4月28日。 主な結果は以下のとおり。・データベースに含まれる計244万5,870例のうち、1,592例(平均年齢:77.5[SD 5.5]歳、女性:96.9%)が包含基準を満たした。・これらの患者のうち、350例(22.0%)で化学療法が実施され、1,242例(78.0%)では実施されなかった。・化学療法グループと比較して、化学療法なしのグループは若く(平均年齢:74 vs.78歳、p<0.001)、原発腫瘍が大きく(pT3/T4:72例[20.6%] vs.182例 [14.7%]、p = 0.005)、リンパ節転移数が多かった(pN3:75例[21.4%]vs.81例[6.5%]、pN1:182例[52.0%]vs.936例[75.4%]、p<0.001)。・化学療法グループでより多く、他の術後療法も行われていた:内分泌療法(309例 [88.3%] vs.1,025例[82.5%]、p=0.01)、放射線療法(236例[67.4%]vs.540例[43.5%]、p<0.001)。・追跡期間中央値43.1ヵ月(95%CI:39.6~46.5ヵ月)において、化学療法グループと化学療法なしのグループの全生存期間中央値に、統計的有意差はみられなかった(78.9ヵ月[95%CI:78.9ヵ月~NR]vs.62.7ヵ月[95%CI:56.2ヵ月~NR]、p = 0.13)。・潜在的な交絡因子で調整後、化学療法の実施と生存率改善が関連した(ハザード比:0.67、95%CI:0.48~0.93、p=0.02)。 著者らは、複数の併存症を有するリンパ節転移陽性、エストロゲン受容体陽性の高齢乳がん患者において、化学療法の実施が全生存期間の改善に関連することが明らかになったとし、選択バイアスによる調整後これらの結果が得られたことからは、補助化学療法から治療効果が得られる可能性が高い患者を医師が慎重に選択したことが示唆されていると結論づけている。

991.

免疫チェックポイント阻害薬の未来―がん免疫療法の耐性とその克服【そこからですか!?のがん免疫講座】最終回

はじめに「がん免疫の基礎を…」ということで始まったこのシリーズは、当初5回くらいで終わる予定でしたが、いろいろ盛り込んで増えてしまい、計7回になりました。まだまだトピックスはありますが、込み入った話はあまりせず、がん免疫療法の将来像を「個人的」な想像(妄想?)も交えてお話しすることで、終わりにしたいと思います(あくまで「個人的」な見解であり、承認されていない薬剤や使用方法についても記載がありますが、ご容赦ください)。ICIはどんどん早い段階で使われるように現在、臨床応用されている免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は、抗PD-1/PD-L1抗体と抗CTLA-4抗体です。ご存じのように、これらは当初の適応がん種であった悪性黒色腫や肺がんだけでなく、さまざまながんで効果が証明され、使用が広がっています。免疫応答ががん細胞に対してしっかり起きていれば(とくにT細胞がしっかり攻撃できれば)、がん種に関係なく効く、というわけなのです。「ネオ抗原を反映する体細胞変異数が重要」という話をバイオマーカーの話題の回で紹介しましたが、体細胞変異数が多いMSI highというくくりや、最近では体細胞変異数が多いがんというくくりにおいても、ICIの効果が証明されつつあります。今まで臓器別で承認されてきた抗がん剤ですが、ここに来てがん種横断的な承認・使用ができるようになってきています。似たようなことはゲノム医療が進む分子標的薬の世界でも広がっていますね。そして、遅いラインでの使用よりもファーストラインでの使用、さらには早期がんでの周術期、というように、ICIはどんどん早い段階で使用する方向に向かっています。患者さんの検体を解析していて感じますが、やはり早期の小さいがんほど「(俗っぽい表現ですが)免疫状態がよく」、がん免疫療法もそういった小さな、早期のものほど効く可能性が高いと感じます。マウスの実験でも、小さい腫瘍のほうが明らかによく効きます(図1)1)。とくに最近の術前補助化学療法としてICIを使う効果は特筆すべきものがあり2)、今後「術前ICI」という治療が、いろいろながん種で臨床に入ってくるかもしれません。画像を拡大する今後を占うのは、ICIの「3つの耐性機序」今までの分子標的薬治療の開発史においても、耐性機序を解明することによって次の治療が登場してきました。たとえば、第1世代EGFR-TKIに耐性を示すEGFR T790M変異が見つかったことで第3世代EGFR-TKIが開発されたわけです。ICIについても今後の治療開発には耐性機序が非常に重要ですので、ここでも少し触れたいと思います。今までのデータを見ると、ICIの耐性機序はEGFRのT790M変異のような特定の機序というよりは、さまざまな耐性機序が複雑に絡み合っていると考えられます。このシリーズでは耳にタコができるくらい繰り返しご紹介してきましたが、ICIはT細胞を活性化させる治療ですので、代表的な耐性機序をT細胞活性化の7つのステップに準じてA~Cの3つにまとめました(図2)3)。画像を拡大する A がん抗原の認識に関わる耐性:T細胞活性化は抗原の認識から始まります。たとえば、ネオ抗原がない(≒体細胞変異が少ない)とT細胞も強く活性化できず、ICIは耐性となります。ほかにも、がん抗原を乗せるお皿であるMHCに異常があって抗原を提示することができない場合は、T細胞ががん細胞を認識しようがありませんので、耐性化してしまいます4)。 B T細胞の遊走・浸潤に関わる耐性:活性化したT細胞ががん細胞を攻撃するためには、がん細胞のいる攻撃の場へ遊走・浸潤していく必要があります。しかし、遊走・浸潤に関わるケモカインという物質などが妨害されてしまうと耐性化する、とされます。これはさまざまな機序で起きているとされており、たとえば、がん化に寄与する重要ながん側の因子がケモカイン産生を低下させていることが報告されています5)。 C 細胞傷害に関わる耐性:活性化したT細胞ががん細胞を攻撃する最終段階において、がん細胞を傷害できずに耐性化してしまうこともあります。たとえば、PD-1やCTLA-4以外の免疫チェックポイント分子がT細胞を強く抑制している場合や、免疫を抑制してしまう細胞が関与することなどが報告されています6)。耐性克服のカギはPrecision Medicineこれらの耐性を克服するために抗がん剤や放射線治療との併用や、ほかの免疫チェックポイントに作用する薬剤との併用などが試みられています。とくに、抗がん剤併用は肺がんでは効果が証明され、すでに臨床応用されています7)。また、承認済みのPD-1/PD-L1やCTLA-4を組み合わせるだけでなく、ほかの免疫チェックポイント分子を標的にした抗LAG-3抗体や抗TIGIT抗体などとの併用療法が現在開発されており、その結果が待たれます。しかしながら、開発中のものにはあまり生物学的な根拠がないものもあります。個人的には、もう少し耐性機序を考慮したうえで個々の組み合わせを考えることが必要だと考えています。がん免疫療法もゲノム医療のようにPrecision Medicineに進むべきです。がん細胞に対してT細胞がまったく攻撃している気配がない患者さん(「砂漠」と表現されます)には、どんなに併用をしようともICIの効果は出ないのではないか?ともいわれています。たとえば、MHCの異常で抗原が提示できない場合には、病理学的にもT細胞がまったく見られず(まさに「砂漠」)4)、どんなにT細胞を活性化させようとも、攻撃するT細胞がそこに存在せず、かつ、がん細胞を認識すらできませんので治療効果は期待できません。「砂漠」にも可能性を感じる細胞療法前回は、CAR-T細胞療法の話題を取り上げました8)。まだ血液腫瘍だけではありますが、このような治療が有効というのは非常に興味深く、示唆に富んだ結果だと思っています。「砂漠」に近い患者さんに対しても、外から攻撃するT細胞を入れることで効果が期待できるかもしれません。実際に、前回紹介したTIL療法はICIが効かないような例でも効果が報告されています9)。似たような発想で、がん細胞の表面に出ている分子を認識する抗体と、T細胞を活性化させる刺激抗体をくっつけたBispecific抗体というものがあります。抗体の片方はがん細胞にくっついて、もう片方がT細胞を活性化させます。つまり表現が少し悪いかもしれませんが、「無理やりにでもT細胞をがん細胞に対して攻撃するように仕向ける」ことができるわけです。おわりに2012年の米国臨床腫瘍学会(ASCO)でのICIの報告から8年が経ち、がん免疫療法はここまで臨床に広がりました。ICI登場まで、(私も含めて)がん免疫を「うさんくさい」と思っていた方が多いかもしれません。ご存じのようにPD-1は日本で見つかり研究が進んだもので10)、こういった基礎研究の成果がここまで臨床応用されていることに非常に感銘を受け、「うさんくさい」と思っていた自分を恥じました。しかしながら、その有効性は不十分で、まだまだ不明な点が多いのも事実です。マウスで進んできた研究ですが、ヒトでの証明が不十分なものも多いのです。今後の新しい治療開発のためにも、実際の患者さんの検体での解析がますます重要になってくるでしょう。こうした成果を積み重ねれば、将来的には進行がんでも「完治」に近い状態を実現できるのではないかと思います。ややこしい内容も多い中、最終回までお付き合いいただき、ありがとうございました。ケアネット編集部の方には理解しにくい部分をいろいろご指摘いただいて、何とか読める内容になったと思います。そして、私にがん免疫の「いろは」をご教授くださった国立がん研究センター/名古屋大学の西川先生にも、併せて深謝申し上げて本シリーズを終わりにしたいと思います。1)Umemoto K,et al.Int Immunol.2020;32:273-281.2)Forde PM, et al. N Engl J Med. 2018;378:1976-1986.3)冨樫庸介.実験医学増刊.2020;38.4)Inozume T, et al. J Invest Dermatol. 2019;139:1490-1496.5)Sugiyama E, et al. Sci Immunol. 2020;5:eaav3937.6)Togashi Y, et al. Nat Rev Clin Oncol. 2019;16:356-371.7)Gandhi L, et al. N Engl J Med. 2018;378:2078-2092.8)Singh AK, et al. Lancet Oncol. 2020;21:e168-e178.9)Zacharakis N, et al. Nat Med. 2018;24:724-730.10)Ishida Y, et al. EMBO J. 1992;11:3887-3895.

992.

Round tableがん栄養【Oncologyインタビュー】第18回

出演者進行:聖マリアンナ医科大学 水上 拓郎氏ゲスト:静岡県立静岡がんセンター 内藤 立暁氏、名古屋医療センター 杉山 圭司氏2020年度診療報酬改定で外来化学療法を受けるがん患者の栄養管理評価が見直されるなど、進行がん患者に対する介入の意義は注目の分野である。当該分野で活躍する3名の医師によるディスカッションを紹介する。

993.

FDA、マントル細胞リンパ腫に新CAR-T療法を迅速承認

 米国食品医薬品局(FDA)は、2020年7月24日、成人の再発・難治性マントル細胞リンパ腫患者治療に、CD19を標的とするCAR-T細胞免疫療法brexucabtagene autoleucelを迅速承認した。 この承認は、アントラサイクリンまたはベンダムスチンを含む化学療法、抗CD20抗体、BTK阻害薬の治療歴のある再発・難治性マントル細胞リンパ腫(MCL)患者74例を対象とした非盲検多施設単群試験ZUMA-2に基づいたもの。主要有効性評価項目は、独立レビュー委員会による客観的奏効率(ORR)であった。 最小6ヵ月の追跡期間に基づいた60例の患者の有効性評価によれば、ORRは87%、完全寛解(CR)率は62%。推定奏効期間中央値は未達であった。 頻度の高い(10%以上)Grade3以上の毒性は、貧血、好中球減少症、血小板減少症、低血圧、低リン血症、脳症、白血球減少症、低酸素症、発熱、低ナトリウム血症、高血圧、病原菌不明感染症、肺炎、低カルシウム血症、およびリンパ球減少症でした。

994.

扁平上皮肺がん、ペムブロリズマブ+化学療法による1次治療の最終解析(KEYNOTE-407)/JTO

 扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)について、ペムブロリズマブ+化学療法の1次治療は引き続き、予後良好であることが示された。スペイン・Universidad Complutense & CiberoncのLuis Paz-Ares氏らが、化学療法未治療の転移を有する扁平上皮NSCLC患者を対象とした無作為化比較試験「KEYNOTE-407試験」の最終解析のアップデート、および2次治療での進行に関する解析を行った。今回の解析でも、ペムブロリズマブと化学療法(カルボプラチン+パクリタキセルまたはnab-パクリタキセル)の併用による全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)の改善は維持されていた。また、無作為化から2次治療における病勢進行(PD)または死亡までの期間であるPFS-2も、良好であることが示されたという。KEYNOTE-407試験の今回の解析結果を踏まえて著者は、「PFS-2の解析結果からも、転移を有する扁平上皮NSCLCに対する1次治療の標準治療としてペムブロリズマブ+化学療法併用が支持される」とまとめている。Journal of Thoracic Oncology誌オンライン版2020年6月26日号掲載の報告。今回の解析でもペムブロリズマブ併用群でOSが有意に改善 KEYNOTE-407試験では、化学療法未治療の転移のある扁平上皮NSCLC患者559例を、化学療法+ペムブロリズマブ併用群(278例)および化学療法+プラセボ併用群(281例)に無作為に割り付け追跡評価した。 KEYNOTE-407試験の第2回中間解析においてペムブロリズマブ併用の有効性が認められたことから、プラセボ併用群の患者はPDが確認された時点で、ペムブロリズマブ単剤投与にクロスオーバー可とされた。 主要評価項目はOSとPFSであり、PFS-2を探索的評価項目とした。 KEYNOTE-407試験の今回の解析結果は以下のとおり。・追跡期間中央値14.3ヵ月において、OS中央値はペムブロリズマブ併用群17.1ヵ月、プラセボ併用群11.6ヵ月であり、ペムブロリズマブ併用群で臨床的に意義のある改善が認められた(ハザード比[HR]:0.71、95%CI:0.58~0.88)。・PFS中央値も同様に、ペムブロリズマブ併用群8.0ヵ月、プラセボ併用群5.1ヵ月であり、ペムブロリズマブ併用群で臨床的に意義のある改善が認められた(HR:0.57、95%CI:0.47~0.69)。・PFS-2は、1次治療でペムブロリズマブ併用群に無作為化された患者のほうが良好であった(HR:0.59、95%CI:0.49~0.72)。・Grade3~5の有害事象は、ペムブロリズマブ併用群で74.1%、プラセボ併用群で69.6%に認められた。

995.

日本初の試み「患者提案型医師主導治験」がスタート

 患者が要望し、医師が主導するという新たな形態の臨床試験がスタートする。7月9日に行われたWebセミナー「今ある薬を、使えるようにするために―Wanna Be a part of History ?―」では、日本初となるこの「患者提案型医師主導治験」の実現までの道筋や背景が説明された。 今回の治験「WJOG12819L」は、非小細胞肺がん(NSCLC)に対するオシメルチニブの適応拡大を目指す目的で行われる第II相試験。オシメルチニブの添付文書では「他のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)による治療歴を有し、病勢進行が確認されている患者では、EGFR T790M変異が確認された患者に投与すること」とされている。そのため、既に第1、2世代EGFR-TKIを投与されている患者で全身増悪したケースや投与中に脳転移のみが起きたケースでは、T790M変異陰性の場合にはオシメルチニブを投与することができない。T790M変異陽性の患者は全体のおよそ半数で、開発時の臨床試験におけるオシメルチニブの奏効割合は約70%。一方で、陰性患者に対する奏効割合も約20%あるとされ、該当する患者からは「この条件に納得できない」という声が上がっていた。 「置き去りにされた、という思いでした」と語るのは、今回の治験の発端となった日本肺がん患者連絡会 理事長の長谷川 一男氏だ。長谷川氏はT790M変異陰性患者を含めた適応拡大には治験をするしかないと考え、講演会で知り合った近畿大学腫瘍内科 教授/西日本がん研究機構(WJOG)理事の中川 和彦氏と連携し、製薬メーカーへの協力依頼と資金集めを2年越しで行い、協力を取り付けることに成功した。 中川氏は「従来、医薬品の承認や適応拡大を目的とし、厚労省の治験ルールであるGCPに則り、医薬品医療機器総合機構(PMDA)に届けを出して行う治験は、医師主導か製薬メーカー主導かの2択だった。今回はそこに『患者提案型医師主導治験』という新たな選択肢が加わったわけで、その意義は大きい」と語る。薬剤承認に関わる治験には厳密性が求められ、通常は数億円規模の予算が必要となる。一般の治験においては、治験運営資金は製薬メーカーまたは国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)などの公的資金で賄うことが多いが、今回の患者提案型医師主導治験では費用の一部に患者会の寄付をあてる予定だ。「米国では患者会が大きな資金力と発言力を持っており、患者提案型治験が多く実施されている。日本でもその一歩が踏み出せた」(中川氏)。 続いて、本試験のデザインが、近畿大学医学部内科学講座腫瘍内科部門 ゲノム医療センターの武田 真幸氏から発表された。・対象はEGFR-TKI治療後、脳転移単独増悪となったT790M変異陰性/不明の患者と腫瘍増悪で引き続きプラチナ化学療法を受けたT790M変異陰性の患者。・主要評価項目は、画像中央判定による腫瘍に対する奏効割合。・脳転移増悪群17例、全身腫瘍増悪群53例の計70例を目標に2020年8月に登録を開始。3年で登録、1年で解析を目指し、早期に患者が集まれば解析を前倒しする。・患者募集は、近畿大学病院を中心に全国15施設で行う。 本治験の通称は「KISEKI試験」。適応拡大に向けた奇跡が起きることと、患者提案型治験の軌跡になりたいとの意味を掛け合わせた、という。

996.

ドセタキセルベースの乳がん術後化療、BMIでベネフィットに差/JCO

 タキサンなどの脂溶性薬剤は、脂肪組織に対して高い親和性を持ち、分布容積が増す。大規模アジュバント試験BIG 2-98の再分析が実施され、ベースライン時のBMIにより、乳がん患者におけるドセタキセルベースの術後化学療法のベネフィットが異なる可能性が示唆された。ベルギー・Laboratory for Translational Breast Cancer ResearchのChristine Desmedt氏らが、Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2020年7月2日号に報告した。 BIG 2-98は、リンパ節転移陽性乳がん患者の術後化学療法として、ドセタキセルベースと非ドセタキセルベースの治療法を比較したインターグループ無作為化第III相試験。今回、研究者らは同試験の全患者(2,887例)のデータを後ろ向きに再分析し、ベースライン時のBMI値に従って、ドセタキセルベースの術後化学療法のベネフィットが非ドセタキセルベースの術後化学療法と異なるかどうかを評価した。 BMI(kg/m2)は以下のように分類されている。・やせ型:18.5~<25.0・過体重:25.0 ~<30.0・肥満:30.0 以上 主要評価項目は無病生存期間(DFS)、副次評価項目は全生存期間(OS)。二次交互作用として、治療法、BMI、およびエストロゲン受容体(ER)の発現状態について評価された。 主な結果は以下のとおり。・非ドセタキセル群では、BMIに応じたDFSまたはOSの違いはみられなかったが、ドセタキセル群では、BMI分類が上がるにつれ、DFSおよびOSの低下が観察された。・DFSおよびOSの調整ハザード比は、過体重 vs.やせ型で1.12(95%信頼区間[CI]:0.98~1.50、p=0.21)および1.27(95%CI:1.01~1.60、p=0.04)。肥満 vs.やせ型 で1.32(95%CI:1.08~1.62、p=0.007)および1.63(95%CI:1.27~2.09、p<0.001)であった。・ER陰性とER陽性を別々に検討した場合、およびドセタキセルの相対用量強度(RDI)≧85%の患者のみを検討した場合にも、同様の結果が得られた。・治療効果に対するBMIおよびER状態の共修正の役割は、DFS(調整後のp=0.06)およびOS(調整後のp=0.04)で明らかであった。 研究者らは、ベースライン時のBMIによるドセタキセルに対する反応の違いが強調される結果とまとめている。乳がんにおけるタキサン使用のリスクベネフィット比の、身体組成に基づく再評価が求められるとし、今回の結果は追加試験による確認が必要としている。

997.

J-TOPの活動概要 シリーズ がんチーム医療(2)【Oncologyインタビュー】第17回

出演:国立国際医療研究センター がん総合診療センター 乳腺・腫瘍内科 下村 昭彦氏出演:国立がん研究センター中央病院 薬剤部 外来化学療法主任 大里 洋一氏がんチーム医療の推進を目的として活動する 「J-TOP(Japan Team Oncology Program)」。どのようにしたら良好なチーム医療を実現することができるのか。J-TOPのメンバーを中心に議論するシリーズ対談。第1回はJ-TOP議長である下村昭彦氏と副議長である大里洋一氏に同プログラムの活動全般について議論いただいた。

998.

NSCLC術後補助療法、ペメトレキセド+シスプラチンの有効性は?/JCO

 完全切除のStageII~IIIAの非小細胞肺がん(NSCLC)に対する術後補助療法としてのペメトレキセド+シスプラチンの有効性について、ビノレルビン+シスプラチンと比較した第III相無作為化非盲検試験の結果が示された。静岡がんセンター呼吸器内科の釼持 広知氏らによる報告で、ペメトレキセド+シスプラチンの優越性は示されなかったが、補助化学療法として忍容性は良好であることが示されたという。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2020年5月14日号の掲載報告。 試験は、日本国内7つの臨床試験グループに属する50施設で行われた。被験者は、病理学的に完全切除が確認されたStageII~IIIA(TNM 7th editionに基づく)の非扁平上皮NSCLC患者で、ペメトレキセド(500mg/m2、day1)+シスプラチン(75mg/m2、day1)またはビノレルビン(25mg/m2、day1およびday8)+シスプラチン(80mg/m2、day1)のいずれかを投与する群に無作為に割り付けた。年齢、性別、病理学的ステージ、EGFR変異、試験地で層別化も行った。 割付治療は、3週間ごと4サイクルで計画。主要評価項目は、修正intent-to-treat集団(非適格患者を除外)において評価した無再発生存(RFS)であった。 主な結果は以下のとおり。・2012年3月~2016年8月に、804例が登録された(ペメトレキセド+シスプラチン群402例、ビノレルビン+シスプラチン群402例)。・適格患者は784例で、410例(52%)がStageIIIAで、192例(24%)がEGFR変異陽性であった。・追跡期間中央値45.2ヵ月時点で、RFS期間中央値はビノレルビン+シスプラチン群37.3ヵ月に対し、ペメトレキセド+シスプラチン群38.9ヵ月であった(ハザード比:0.98、95%信頼区間[CI]:0.81~1.20、片側検定のp=0.474)。・ビノレルビン+シスプラチン群のほうがペメトレキセド+シスプラチン群よりも、Grade3/4毒性(11.6% vs.0.3%)、および貧血(9.3% vs.2.8%)について報告頻度が高かった。・治療に関連した死亡は、各群1例ずつ報告された。

999.

ASCO2020レポート 乳がん

レポーター紹介2020年5月29日から6月2日まで5日間にわたり、ASCO2020が例年どおりシカゴマコーミックプレイスで開催される予定であった。しかしながら、COVID-19の流行により、今年は初のVirtual Annual Meetingが行われた。5月29日より一般演題やポスターはオンデマンドで視聴できるようになり、ハイライトセッションおよびプレナリーセッションは、ライブ配信+オンデマンドで視聴できた。2020年のテーマは“Unite & Conquer: Accelerating Progress Together”であった。プレナリーセッションを中心に、標準治療が変わる演題が多数報告された。乳がんにおいてもプレナリーセッション1題、口演17演題が発表され、標準治療を変えるもの、標準治療を変えないものの長年の臨床的疑問に一定の答えを出すものが発表された。乳がんの演題について、プレナリーセッションの1題、Local/Adjuvant口演から1演題、Metastaticから2演題を紹介する。初発IV期乳がんに対する原発巣切除の全生存期間に対する影響(E2108試験)日常臨床においては初発IV期乳がんに対して原発巣切除が行われている場合もある。後ろ向き研究では切除した場合に全生存期間が良好な傾向が示されているが、バイアスを含んでおり前向き試験が複数計画された。インドで行われた試験では、全身治療を行った後に手術群と非手術群にランダム化された。この試験では全生存期間(overall survival:OS)の差は認められなかった。さらに、トルコで行われた試験では全身治療前にランダム化され手術群で5年生存割合が良好な傾向を認めた。このように相反する結果であり、原発巣切除の意義については結論が出ていない状況であった。E2108試験は1次登録をした後に4〜8ヵ月の全身治療を行い、病勢進行が認められなかった症例を手術群と全身治療継続群に1対1にランダム化された。368例が登録され、258例がランダム化され、125例が手術群に、131例が全身治療継続群に割り付けられた。主要評価項目はOSで、53ヵ月の観察期間中央値で、生存期間中央値が54ヵ月、ハザード比1.09(90%CI:0.80~1.49、p=0.63)で両群間に有意差は認められなかった。副次評価項目の無増悪生存期間(progression-free survival:PFS)でも両群間の差は認められず、生存曲線もほぼ重なっている状態であった。サブタイプ別のサブグループ解析ではホルモン受容体陽性HER2陰性、HER2陽性では差を認めなかったが、トリプルネガティブ乳がん(triple negative breast cancer:TNBC)ではハザード比3.50(95%CI:1.16~10.57)で、手術群で有意に悪かった。これはおそらく進行の速いTNBCにおいては全身治療の継続が重要であるということを示唆しているのであろう。局所の病変進行については手術群で良好な傾向であった。QOLは両群で変化がなかった。今回の試験はネガティブであったが、この結果をもって初発IV期乳がんに対する原発巣切除に意義がないと判断することはできない。E2108は開始後に進捗が悪く、プロトコール改訂が行われサンプルサイズが減らされた。JCOG1017(研究事務局:岡山大学 枝園 忠彦氏)は同様の試験であるが、570例が1次登録され、全身治療で進行しなかった407例がランダム化されている。また、ランダム化までの期間が日常臨床で効果判定を行うことの多い3ヵ月に設定されている。JCOG1017の試験結果が得られた後に、あらためてこれまでの試験を総括し、原発巣切除の意義について議論する必要があるだろう。HER2陽性乳がんの術後化学療法におけるT-DM1+ペルツズマブとトラスツズマブ+ペルツズマブ+タキサンの比較第III相試験(KAITLIN試験)HER2陽性乳がんにおけるペルツズマブの術後化学療法における上乗せ効果はAPHINITY試験で示されており、リンパ節転移陽性であればペルツズマブを上乗せすることが現在の標準治療となっている。本試験は、トラスツズマブに微小管阻害薬であるエムタンシンを結合した抗体医薬複合体であるT-DM1の術後化学療法における有用性(トラスツズマブ+タキサンと置き換えることが可能であるか)を検証した第III相試験である。本試験ではHER2陽性でリンパ節転移陽性(N+)もしくはリンパ節転移陰性でホルモン受容体陰性かつT2以上の症例を対象として、1,846例が3~4サイクルのAC療法とトラスツズマブ+ペルツズマブ+タキサン(THP群)またはT-DM1+ペルツズマブ群(KP群)にランダム化された。主要評価項目はリンパ節転移陽性例およびITT集団における無浸潤疾患生存(invasive disease-free survival:IDFS)の2つとされた。918例がTHP群、928例がKP群に割り付けられた。約90%がN+であった。腫瘍経はT1が約30%、T2が約60%であった。ホルモン受容体は56%程度で陽性であった。1つ目の主要評価項目であるN+における3年IDFSはTHP群で94.1%、KP群で92.8%(HR:0.97、95%CI:0.71~1.32、p=0.8270)でありKP群の優越性は示せなかった。ITT集団でも同様の結果であった。PROではKP群で良好な傾向を認めたが、有害事象中止、グレード3/4の肝障害、神経障害はKP群で多かった。心毒性はTHP群で多かった。本試験は2014年の1月から2015年の6月まで登録されている。T-DM1とタキサン+トラスツズマブをHER2陽性転移乳がんの初回治療で検討したMARIANNE試験は2015年に最初の解析結果が発表されており、T-DM1のタキサン+トラスツズマブに対する優越性は示せていなかった。イベントの多く発生する転移乳がんにおいてネガティブであったことを考えると、よりハイリスクのN+が多く含まれるとはいえ、術後のセッティングで優越性を示すことは困難であったと予想される。また、APHINITY試験のときにも感じたことであるが、HER2陽性早期乳がんの予後はかなり良くなっているため、このセッティングにおける術後治療のエスカレーションは限界が来ていると考えても良いかも知れない。今後はKATHERINE試験やTNBCにおけるCREATE-X試験などのように、術前治療で治療感受性を判断し、治療効果が不十分な対象に対して別の治療アプローチを行うことがエスカレーションにおいては重要であろう。TNBC1次治療における化学療法へのペムブロリズマブの上乗せ(KEYNOTE-355試験)2018年の欧州臨床腫瘍学会でTNBC1次治療におけるアルブミン結合パクリタキセル(nab-PTX)に対する抗PD-L1抗体であるアテゾリズマブの上乗せを検討したIMpassion130試験の結果が発表され、ITT集団とPD-L1陽性群においてPFSの延長を示し、PD-L1陽性群におけるOS延長の期待が示された。これを受けて、わが国においてもPD-L1陽性TNBCに対しアテゾリズマブが承認された。他がん種ではすでに広く使われるようになっていた免疫チェックポイント阻害薬が、乳がんの日常臨床に登場した。ペムブロリズマブは抗PD-1抗体であり、TNBC初回化学療法へのペムブロリズマブの有効性を検証した試験がKEYNOTE-355試験である。847例がランダム化され、566例がペムブロリズマブ群に、281例がプラセボ群に2対1に割り付けられた。化学療法として、タキサン(nab-PTXまたはパクリタキセル)およびゲムシタビン+カルボプラチンが許容され、それぞれ約45%と55%であった。割り付け調整因子にPD-L1陽性細胞割合(CPS)1%以上または未満が含まれた。主要評価項目はPD-L1陽性集団(CPS≧1%および10%)とITT集団におけるPFS、ならびに同OSとされた。両群において、CPS≧1%は約75%、CPS≧10%は40%弱であった。CPS≧10%集団において、PFSは9.7ヵ月vs.5.6ヵ月(HR:0.65、95%CI:0.49~0.86、p=0.0012)と統計学的有意差をもってペムブロリズマブ群で良好であった。CPS≧1%集団においては7.6ヵ月vs.5.6ヵ月(HR:0.74、95%CI:0.61~0.90、p=0.0014※)と統計学的有意差は示せなかった。ITT集団においてもペムブロリズマブの上乗せを示すことはできなかった。有害事象のプロファイルは両群間で大きな差は認めなかったが、甲状腺機能障害や肺臓炎など、免疫関連有害事象と考えられるものについてはペムブロリズマブ群で多い傾向にあった。これは、これまでに他がん種でみられた、もしくはTNBCにおけるアテゾリズマブでみられたものと同様の傾向であった。本試験の結果を受けて、TNBC初回治療の際にはアテゾリズマブまたはペムブロリズマブを化学療法と併用することが選択肢として加わった。これら2剤はPD-L1の評価方法が異なっていることに注意が必要である。また、アテゾリズマブ、ペムブロリズマブいずれもTNBCに対する術前化学療法に併用することで病理学的完全奏効率を改善することが示されており、将来術前(および術後)に免疫チェックポイント阻害薬を使用した後に再発した場合、どのような治療戦略を取っていくかが今後の課題の一つとなる。※p<0.00111で有意ホルモン受容体陽性HER2陰性進行・再発乳がん1次治療におけるフルベストラント+パルボシクリブとレトロゾール+パルボシクリブを比較するランダム化第II相試験(PARSIFAL試験)ホルモン受容体陽性HER2陰性進行・再発乳がんの1次治療においては、アロマターゼ阻害薬(AI)とCDK4/6阻害薬(パルボシクリブ[Palbo]、アベマシクリブ、ribociclib)の併用がPFSを延長することが示されており、現在の標準治療となっている。また、内分泌療法で進行した場合、2次治療でフルベストラント(Ful)とCDK4/6阻害薬の併用が標準治療である。内分泌療法単剤では初発IV期乳がんを対象とした第III相試験であるFALCON試験においてFulとAI(アナストロゾール)が比較され、ITT集団でFulがAIと比較してPFSにおいて優っていることが示された。これらの試験結果から、1次治療においてCDK4/6阻害薬と併用すべきはAIか、それともFulであるか、という臨床疑問が生まれた。PARSIFAL試験はこの仮説の可能性を探ることを目的として計画されたランダム化第II相試験である。転移・再発乳がんに対する治療歴のない症例が対象となり、486例がFul+Palbo群243例とレトロゾール(LET)+Palbo群243例に1対1に割り付けられた。閉経前も登録可能で、卵巣機能抑制の併用が求められたが、割合としては7〜8%しか含まれなかった。PFSにおいてFul+Palbo群で9.3ヵ月の上乗せを仮定し、優越性を検証するデザインとされたが、優越性が検証できなかった場合には非劣性(非劣性マージン1.21)を検証するとされた。主要評価項目である研究者評価PFSにおいて、LET+Palbo群で32.8ヵ月、Ful+Palbo群で27.9ヵ月(HR:1.13、95%CI:0.89~1.45、p=0.321)であり、優越性はおろか、非劣性を示すこともできなかった(95%CIの上限が非劣性マージンである1.21を上回っている)。FALCON試験においてはサブグループ解析において臓器転移がある場合は有意差がなく、臓器転移がない場合に有意であったことから同様の解析が行われたが、いずれも差は認めず、臓器転移がある場合にはLET+Palboで良い傾向を認めた。再発と初発IV期のサブグループ解析でも両群間の差は認めなかった。副次評価項目である3年OSにおいて、LET+Palbo群で77.1%、Ful+Palbo群で79.4%(HR:1、95%CI:0.68~1.48、p=0.986)であり、こちらも両群間の差は認めなかった。有害事象も大きな差はみられなかった。Ful+CDK4/6阻害薬は初回治療として最強なのではないか、と期待して行われた第II相試験であるが、残念ながらその傾向を感じることすらできなかった。サブグループ解析では前治療(すなわち術後治療)としてAIが行われていた場合にFul+Palboが良い傾向を示したが(有意差なし)、これはAIに長期に曝露されることで約30%程度でESR1の変異を獲得するからと考えられる。AIによる治療歴がないとESR1の変異は数%でしか検出されない。エストロゲン受容体そのものの発現量を減らすというFulの作用機序は、ホルモン感受性が低下してから本領を発揮するのかもしれない。

1000.

デュルバルマブ承認後の実臨床における、局所進行非小細胞肺がんCCRTの肺臓炎(HOPE-005/CRIMSON)/ASCO2020

 デュルバルマブが局所進行非小細胞肺がん(NSCLC)の化学放射線同時療法(CCRT)後の地固め療法の標準治療として確立された。しかし、デュルバルマブ承認後の実臨床におけるCCRTの実態は明らかになっていない。この実臨床の状況を調べるため、Hanshin Oncology critical Problem Evaluate group(HOPE)では、プラチナ化学療法と放射線の同時療法(CCRT)を受けた局所進行NSCLC患者を対象にした後ろ向きコホート研究を実施。肺臓炎/放射線肺臓炎(以下、肺臓炎)の実態に関する結果を千葉大学の齋藤 合氏が米国臨床腫瘍学会(ASCO20 Virtual Scoentific Program)で発表した。 主な結果は以下のとおり。・対象は、2018年5月〜2019年5月に、HOPEの15施設でCCRTを開始したわが国各地の切除不能局所進行NSCLC患者で、解析対象は275例であった。・患者の年齢中央値は69.9歳、V20(20Gy以上照射される肺体積の全肺体積に対する割合)中央値は19.5%、線量中央値は60Gy、CCRT開始からの観察期間中央値8.4ヵ月であった。・275例中、肺臓炎の発症は全Gradeで81.8%(225例)、内訳はGrade 1が134例, Grade 2以上が91例, Grade 3以上が18例, Grade 5が4例であった。・CCRT開始から肺臓炎の発現までの期間(中央値)は14週、デュルバルマブ開始からの期間(四分位範囲)は7〜10週であった。・ 多変量ロジスティック回帰解析による症候性(≧Grade 2)肺臓炎の独立した危険因子はV20 25%以上であった(OR:2.74、95%信頼区間[CI]:1.35〜5.53、p=0.0045)。・デュルバルマブの維持療法を受けた患者の割合は204例(全体の74.2%)であった。そのうち84%(171例)で肺臓炎が発現し、24.7%(51例)はデュルバルマブの中止とステロイド治療が行われた。・肺臓炎によりデュルバルマブを中止し、ステロイドが投与された51例中41%(21例)で同剤の再投与が行われた。再投与21例中72%(15例)は再燃なく同剤を継続できた。28%(6例)で肺臓炎が再燃したが、6例中3例はデュルバルマブを継続され、3例は中止となった。 発表者の千葉大学 齋藤 合氏との1問1答この研究実施の目的について教えていただけますか。 2018年、デュルバルマブが承認され、切除不能局所進行NSCLCにおけるCCRTの維持療法の標準治療となりました。デュルバルマブの承認後、治療成績向上に対する期待だけでなく、日本人に多いとされる肺臓炎に対する懸念もあり、CCRTにおける放射線治療の部分に関しても内科系の医師の関心が高まっています。しかし、合併症である肺臓炎の詳細など、実臨床で知りたい情報は、同剤による地固め療法の効果を検討した第III相PACIFIC試験で不明な点が多く存在します。デュルバルマブ登場以降の実臨床におけるCCRTの全体像を明らかにするためにこの研究を行いました。デュルバルマブの再投与についての分析も行われていますね。 局所進行NSCLCのCCRTでは、薬剤だけでなく放射線による肺臓炎の懸念もあります。薬剤性の肺障害は残念なことに致死的なケースも多く経験されます。ところが、前述のPACIFIC試験では、条件を満たせば肺臓炎発症患者へのデュルバルマブ再投与がプロトコルで認められていました。従来の臨床医の感覚としては、再投与はややためらいをおぼえるものでした。実臨床においてもある程度の割合で再投与が行われ、かつ、継続できていたことは、実地臨床で悩まれる先生方の参考にもなるのではないかと思います。ただし、本検討は介入研究でないことは強調したいと思います。この研究結果はどのように実臨床に活かせるのでしょうか。 今回の検討結果のポイントは、3点あると思います。 1つ目は、デュルバルマブ登場以降のわが国のCCRTにおいて、どのくらいの重症度の肺臓炎がどのくらいの頻度で起きているかを示したという点です。実際に本検討の観察期間中に約5分の4が肺臓炎を発症しましたが、過半数はGrade 1であったという結果でした。 2つ目は、CCRTにおいて放射線治療医との連携が重要であると確認できたことです。従来から、V20が高いことはCCRTにおける肺臓炎発現のリスク因子として報告されていましたが、今回の検討でも同様の結果が示されました。これにより放射線科医と連携してリスクを把握し、患者さんのインフォームドコンセントに活かすことの重要さを再確認できました。 3つ目は、前述のデュルバルマブの再投与の可能性についてです。従来わが国の肺がん診療において、肺障害出現後の再投与には抵抗を覚える先生も多かったかと思います。しかし、デュルバルマブ地固め療法による全生存期間の延長効果が示され、かつ治験の段階で再投与が許容されたことで、再投与が可能なのであれば検討したいと考えていた先生方もいたのではないかと思います。今回、再投与が行われた患者さんは比率として多いわけではありませんが、4割にデュルバルマブの再投与が行われたこと、さらに多くの患者さんで投与が継続できていたという結果は、あくまでも参考ですが、デュルバルマブの再投与という選択肢を検討するきっかけになるかもしれません。

検索結果 合計:1918件 表示位置:981 - 1000