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TN乳がん1次治療へのペムブロリズマブ上乗せ、化療レジメンによらず有効(KEYNOTE-355)/SABCS2020

 手術不能な局所再発または転移を有するPD-L1陽性(CPS≧10)のトリプルネガティブ(TN)乳がんの1次治療において、併用する化学療法の種類によらず、ペムブロリズマブの追加で無増悪生存期間(PFS)を改善することが明らかになった。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)包括的がんセンターのHope S. Rugo氏が、第III相KEYNOTE-355試験の新たな解析結果をサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2020)で発表した。 同試験については、CPS≧10のPD-L1陽性患者におけるPFS中央値が、ペムブロリズマブ+化学療法群9.7ヵ月 vs.化学療法単独群5.6ヵ月(ハザード比[HR]:0.65、95%CI:0.49~0.86、片側p=0.0012)と有意に改善したことが報告されている。今回は、探索的評価項目(併用化学療法別のPFS中央値)ならびに副次評価項目(ORR、DOR、DCR)の解析結果が発表された。・対象:18歳以上の手術不能な局所再発または転移を有するTN乳がん(ECOG PS 0/1)847例・試験群:ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)+化学療法(ナブパクリタキセル、パクリタキセル、ゲムシタビン/カルボプラチンの3種類のうちいずれか)566例・対照群:プラセボ+化学療法 281例・評価項目:[主要評価項目]PD-L1陽性患者(CPS≧10およびCPS≧1)およびITT集団におけるPFSと全生存期間(OS)[副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、病勢コントロール率(DCR)、安全性[探索的評価項目]PD-L1陽性患者(CPS≧10およびCPS≧1)およびITT集団における併用化学療法の種類による治療効果の一貫性 主な結果は以下のとおり。・併用化学療法別のPFS中央値[CPS≧10の患者]全体(323例):ペムブロリズマブ群9.7ヵ月 vs.化学療法単独群5.6ヵ月(HR:0.65、95%CI:0.49~0.86)ナブパクリタキセル(99例): 9.9ヵ月 vs. 5.5ヵ月(HR:0.57、95%CI:0.34~0.95)パクリタキセル(44例):9.6ヵ月 vs.3.6ヵ月(HR:0.33、95%CI:0.14~0.76)ゲムシタビン/カルボプラチン(180例):8.0ヵ月 vs.7.2ヵ月(HR:0.77、95%CI:0.53~1.11)[CPS≧1の患者]全体(636例):7.6ヵ月 vs. 5.6ヵ月(HR:0.74、95%CI:0.61~0.90)ナブパクリタキセル(204例):6.3ヵ月 vs. 5.3ヵ月(HR:0.66、95%CI:0.47~0.92)パクリタキセル(84例):9.4ヵ月 vs.3.8ヵ月(HR:0.46、95%CI:0.26~0.82)ゲムシタビン/カルボプラチン(348例): 7.5ヵ月 vs.7.5ヵ月(HR:0.86、95%CI:0.66~1.11)[ITT集団]全体(847例):7.5ヵ月 vs. 5.6ヵ月(HR:0.82、95%CI:0.69~0.97)ナブパクリタキセル(268例):7.5ヵ月 vs.5.4ヵ月(HR:0.69、95%CI:0.51~0.93)パクリタキセル(114例):8.0ヵ月 vs.3.8ヵ月(HR:0.57、95%CI:0.35~0.93)ゲムシタビン/カルボプラチン(465例):7.4ヵ月 vs.7.4ヵ月(HR:0.93、95%CI:0.74~1.16)・ORRはCPS≧10の患者で53.2% vs.39.8%、CPS≧1の患者で45.2% vs.37.9%、ITT集団で41.0% vs.35.9%であった。・ORRを併用化学療法別にみると、ITT集団のゲムシタビン/カルボプラチン併用を除いて(40.2% vs. 42.2%)、ペムブロリズマブ群で高かった。・DCRはCPS≧10の患者で65.0% vs.54.4%、CPS≧1の患者で58.6% vs.53.6%、ITT集団で56.0% vs.51.6%であった。・DOR中央値はCPS≧10の患者で19.3ヵ月 vs.7.3ヵ月、CPS≧1の患者で10.1ヵ月 vs.6.5ヵ月、ITT集団で10.1ヵ月 vs.6.4ヵ月であった。 Rugo氏は、サブグループ解析の結果、化学療法レジメンの種類によらずペムブロリズマブの上乗せによりPFSは改善し、またその治療効果はPD-L1発現状況に応じて高まる傾向がみられると結論付けた。ディスカッサントを務めた米国・NYU Langone Medical CenterのSylvia Adams氏は、併用する化学療法レジメンの比較については、本サブ解析結果のみで判断するのはエビデンスとして十分ではないと述べている。

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なぜ・どうやって患者に禁煙をすすめるか?/日本肺癌学会

 11月に行われた第61回日本肺癌学会学術集会では、「禁煙を通して肺がん撲滅をめざす」と題したシンポジウムが行われ、この中で岡山済生会総合病院 がん化学療法センター長の川井 治之氏が「呼吸器内科医はなぜ・どうやって患者に禁煙をすすめているのか」と題した講演を行った。 冒頭に川井氏は、患者に禁煙を薦める理由として 1)喫煙は多くの呼吸器疾患の原因や悪化因子となる 2)がん治療への悪影響がある 3)がん治療後の2次(原発)がんの発生要因となる という基本事項を確認した。 1)について、今年に入って注目されたトピックスとして、COVID-19と喫煙の関係を紹介し、最新の研究を踏まえると「喫煙者は非喫煙者と比較して約2倍、新型コロナ感染症で重症化しやすい」1)というデータを共有した。 2)について、手術においては術後合併症発生率・術後死亡率・再手術の発生率がいずれも上がること、抗がん剤治療においてはイリノテカン・エルロチニブの全身曝露量を低下させ効果を減弱させる、シスプラチンの作用によるアポトーシスを阻害して耐性をもたらす、放射線治療においては治療効果の低下、治療関連毒性の増加など、各治療において広範囲に及ぶ悪影響があることを紹介した。さらに、小細胞肺がんの放射線化学療法中に喫煙を継続した場合、5年生存率が5%低下する2)、喫煙が肺がんの脳転移リスクを上昇させる3)といった研究結果も紹介した。 3)の喫煙関連の2次がんのリスク増については、喫煙者は治療後の肺がん発症リスクが6~24倍になること4)、2次がん発症のリスクが76%増加すること5)を指摘した。さらに診断時、3年以内に禁煙していた場合、現在の喫煙者と比較して死亡リスクが11%減少するというデータ6)を紹介し、喫煙の有害性、禁煙の有効性を改めて訴えた。相手に合わせて言葉を変え、あらゆる機会に介入 続けて、実際に診療にあたってどのように患者に禁煙をすすめるのかという点について、自身の実践を踏まえて紹介した。 初診時は、カルテのバイタルサイン欄に喫煙歴のチェック欄を設け、診療時に医療者が喫煙について触れる機会をつくる試みを紹介。この際、過去に喫煙歴のある患者は「(現在は)喫煙していない」と回答しがちなので、過去の喫煙歴も必ず聞くとよい、とアドバイスした。  「検診の胸部異常陰影で受診したが、CTでは異常がなかった」というケースの診療時では、「肺がんでなくてよかったですね。でもこのままタバコを吸っていると6人に1人は肺がんになります。良い機会ですから禁煙しませんか?」と伝え、40歳以下の患者であれば「喫煙者は寿命が10歳短くなりますが、今禁煙すれば寿命に対する影響をほぼなしにできますよ」と相手に響く言葉を添えたうえで禁煙外来につなぐことを紹介した。 さらに、非専門医が禁煙をすすめる際の手引きとして日本肺癌学会が翻訳・公開するNCCNガイドラインを推奨、自身のブログ・SNSを使った禁煙についての情報発信も紹介し、一般向けにわかりやすく禁煙の大切さを伝える重要性を訴えた。■参考1)Patanavanich R , et al. Nicotine & tobacco research. 2020 ;24:22;1653-1656.2)Videtic GMM, et al. J Clin Oncol. 2003;21:1544-9.3)Wu SY, et al. Int J Clin Exp Med. 2020;03:2174)The Health Consequences of Smoking—50 Years of Progress: A Report of the Surgeon General5)Tabuchi T, et al. Ann Oncol. 2013;24:2699-27046)Tabuchi T, et al. Int J Cancer. 2017;140:1789-1795.

963.

早期TN乳がんの術前化療+アテゾリズマブにおける患者報告アウトカム(IMpassion031)/SABCS2020

 未治療の早期トリプルネガティブ(TN)乳がんの術前化学療法に、免疫チェックポイント阻害薬アテゾリズマブの追加を検討したIMpassion031試験における患者報告アウトカムの解析結果が報告された。米国・Brigham and Women's Hospital Dana-Farber Cancer InstituteのElizabeth A. Mittendorf氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2020)で発表した。 本試験では、18歳以上で未治療のStageII~IIIのTN乳がん患者333例を、アテゾリズマブ(840mg、2週ごと)+nab-パクリタキセル(アテゾリズマブ群)またはプラセボ+nab-パクリタキセル(プラセボ群)に1対1で無作為に割り付けた。12週間(3サイクル)投与後、ドキソルビシン+シクロホスファミド(AC)との併用で8週間(2サイクル)投与し、手術を実施した。術後、アテゾリズマブ群はアテゾリズマブ(1,200mg、3週ごと)を11回投与し、プラセボ群は経過観察を行った。主要評価項目の病理学的完全奏効(pCR)率については、PD-L1の有無にかかわらず、アテゾリズマブ群が57.6%とプラセボ群41.1%に比べて有意に改善(p=0.0044)したことがすでに報告されている。 患者報告アウトカムの測定は、EORTC Quality of Life Questionnaire Core 30(QLQ-C30)およびFunctional Assessment of Cancer Therapy-General(FACT-G)single item GP5の質問票を用いて、術前療法および術後療法の各サイクルのベースライン・1日目・治療終了時、観察期間には1年目は3ヵ月ごと、2~3年目は6ヵ月ごと、その後は年に1回実施した。 主な結果は以下のとおり。・両群のQLQ-C30完了率(ITT解析)は、ベースラインは100%、術前療法期間では90%以上、術後療法期間(16サイクルまで)では89%以上、GP5完了率は、ベースライン(2サイクル1日目)で98%以上、術前療法期間および術後療法期間で88%以上であった。・ベースラインの平均値(95%CI)は、身体機能がアテゾリズマブ群91%(89~93)、プラセボ群90%(88~92)、役割機能がアテゾリズマブ群89%(86~93)、プラセボ群89%(86~92)、健康関連(HR)QOLがアテゾリズマブ群79%(76~82)、プラセボ群76%(73~79)と高かった。・16サイクルまでの治療評価期間、観察期間を通じ、身体機能、役割機能、HRQOLの平均値とベースライン値からの平均変化は両群で類似していた。・平均身体機能は、両群で3~5サイクル目の術前療法期間中に臨床的に重要な低下を示したが、術後療法期間に回復し、7サイクル目の開始を安定させた。・平均役割機能は、アテゾリズマブ群では2サイクル目から、プラセボ群では3サイクル目から5サイクル目までの術前療法期間で臨床的に重要な低下を示したが、術後療法期間に回復し、プラセボ群のみ9サイクル目で安定した。・平均HRQOLは、両群で3~5サイクル目の術前療法期間で臨床的に重要な低下を示したが、術後療法期間で回復し、6サイクル目から安定した。・術前療法期間の疲労、下痢、悪心・嘔吐は、機能およびHRQOLにおけるベースライン値からの平均および平均変化と類似した傾向で、両群とも5サイクルを通じて悪化した。術後療法期間の平均症状スコアは、疲労を除いて両群ともベースラインと同様であった。 Mittendorf氏は、「両群の治療関連症状は類似しており、化学療法へのアテゾリズマブの追加は新たな副作用はみられず忍容性があった。この解析結果から、nab-パクリタキセル後にACを投与する術前化学療法にアテゾリズマブを追加することで、患者に新たな治療負担を与えることなくpCRを改善することが示された」と述べた。

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PD-L1陽性TN乳がん1次治療、ペムブロリズマブの上乗せ効果は?(KEYNOTE-355)/Lancet

 未治療の局所再発手術不適応または転移のあるPD-L1 CPS 10以上のトリプルネガティブ乳がん患者において、ペムブロリズマブ+化学療法はプラセボ+化学療法と比べて、無増悪生存(PFS)期間が有意かつ臨床的意義のある改善を示した。スペイン・Quiron GroupのJavier Cortes氏らによる第III相の国際多施設共同プラセボ対照二重盲検試験「KEYNOTE-355試験」の結果で、Lancet誌2020年12月5日号で発表された。著者は、「今回示された結果は、転移のあるトリプルネガティブ乳がんの1次治療について、標準治療へのペムブロリズマブ上乗せの意義を示すものである」と述べている。先行研究で同患者へのペムブロリズマブ単剤療法が、持続的な抗腫瘍活性と管理可能な安全性を示しており、研究グループは、同患者へのペムブロリズマブの上乗せが、化学療法の抗腫瘍活性を増強するかを検討した。29ヵ国209ヵ所の医療機関で試験 KEYNOTE-355試験は、29ヵ国209ヵ所の医療機関を通じ、未治療の局所再発手術不適応または転移を有するトリプルネガティブ乳がん患者を無作為に2対1の2群に割り付け、一方にはペムブロリズマブ(200mg、3週間ごと)+化学療法(nabパクリタキセル、パクリタキセル、ゲムシタビン+カルボプラチンのいずれか)、もう一方にはプラセボ+化学療法を行った。無作為化は、ブロック法(ブロックサイズは6つ)および統合Web応答機能付き対話型音声応答システムを用い、化学療法のタイプ(タキサン系またはゲムシタビン+カルボプラチン)、ベースラインでのPD-L1発現(CPS 1以上または1未満)、同クラス薬剤による化学療法歴(術前・術後)で層別化も行った。 適格基準は、18歳以上、トリプルネガティブ乳がんを中央施設で確認、測定可能病変が1つ以上、中央検査施設でトリプルネガティブ乳がんの状態およびPD-L1の状態を免疫組織学的に検査するための新たな腫瘍病変が提供可能、ECOG PSが0または1、十分な臓器機能であった。試験のスポンサー、研究者、そのほか各地の試験スタッフ(マスクされなかった薬剤師は除く)および患者は、ペムブロリズマブまたはプラセボ投与について知らされず、患者ごとのPD-L1バイオマーカーの結果も知らされなかった。 主要評価項目は2つで、PD-L1 CPSが10以上の患者、CPSが1以上の患者、ITT集団のそれぞれにおけるPFSと全生存(OS)だった。PFSは今回の中間解析で評価し、OSの評価は追跡を継続している。PFSの評価には階層テスト戦略が用いられ、最初にPD-L1 CPSが10以上の患者で行われ(今回の中間解析の事前規定の統計学的基準はα=0.00411)、その後にCPSが1以上の患者(今回の中間解析のα=0.00111、CPSが10以上の患者のPFSからの部分的α値を含む)、最後にITT集団(今回の中間解析のα=0.00111)で評価した。CPS 10以上の無増悪生存、ペムブロリズマブ群9.7ヵ月、プラセボ群5.6ヵ月 2017年1月9日~2018年6月12日に1,372例がスクリーニングを受け、847例が無作為に割り付けられた(ペムブロリズマブ群566例、プラセボ群281例)。2次中間解析(データカットオフは2019年12月11日)での追跡期間中央値は、ペムブロリズマブ群25.9ヵ月(IQR:22.8~29.9)、プラセボ群26.3ヵ月(22.7~29.7)だった。 CPS 10以上の患者群では、PFS期間中央値はペムブロリズマブ群9.7ヵ月、プラセボ群5.6ヵ月だった(病勢進行または死亡に関するハザード比[HR]:0.65、95%信頼区間[CI]:0.49~0.86、片側p=0.0012)。 CPS 1以上の患者群では、PFS期間中央値はそれぞれ7.6ヵ月、5.6ヵ月で有意差は示されなかった(HR:0.74、95%CI:0.61~0.90、片側p=0.0014)。ITT集団では、それぞれ7.5ヵ月、5.6ヵ月だった(0.82、0.69~0.97、有意性の検定は未実施)。 ペムブロリズマブの治療効果として、PD-L1誘発の増大が確認された。 Grade3~5の治療関連有害イベントの発生率は、ペムブロリズマブ群68%、プラセボ群67%だった。そのうち、死亡はペムブロリズマブ群1%未満、プラセボ群0%だった。

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再発スコアの低いリンパ節転移陽性閉経後早期乳がん、術後化学療法は回避可能か(RxPonder)/SABCS2020

 リンパ節転移1~3個でオンコタイプDX乳がん再発スコアが0~25の閉経後早期乳がん患者において、術後内分泌療法への化学療法追加のベネフィットが認められなかったことが、RxPonder試験(SWOG S1007)の中間解析で示された。米国・エモリー大学のKevin Kalinsky氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2020)で発表した。RxPonder試験は、米国国立がん研究所(NCI)の支援でSWOG Cancer Research Networkが主導している前向き無作為化第III相試験。RxPonder試験で閉経後の患者に化学療法追加のベネフィットがないことが示唆された RxPonder試験の対象は、ホルモン受容体陽性HER2陰性でリンパ節転移1~3個の18歳以上の早期乳がんの女性。再発スコア0~25の女性を内分泌療法単独群と内分泌療法後に化学療法を追加する群に1:1で無作為化し、再発スコア(0~13と14~25)、閉経状態、リンパ節の術式(リンパ節郭清とセンチネルリンパ節生検)で層別化した。主要な目的は、化学療法が無浸潤疾患生存期間(iDFS)に及ぼす影響と、その影響が再発スコアに依存するかどうかの評価であった。 RxPonder試験の中間解析で示された主な結果は以下のとおり。・2011年2月28日~2017年9月29日に登録された9,383例のうち5,083例(54.2%)が無作為化され、追跡期間中央値5.1年で、447のiDFSイベントが認められた。・化学療法のベネフィットと再発スコアの交互作用は統計学的に有意ではなかった(p=0.30)。・化学療法・再発スコア・閉経状態を含むモデルにおいて、再発スコアが高いほうがiDFSが悪化し(HR:1.06、p<0.001、95%CI:1.04~1.07)、化学療法がiDFSの改善と関連していた(HR:0.81、p=0.026、95%CI:0.67~0.98)。・事前に設定された解析で、化学療法と閉経状態の間に有意な交互作用が確認され(p=0.004)、閉経状態による解析を行った。・閉経後の患者(3,350例、67%)においては、再発スコアを調整すると、内分泌療法単独群に対する化学療法追加群のHR(0.97)は有意ではなく(p=0.82、95%CI:0.78~1.22、 5年iDFS率:91.6% vs.91.9%)、化学療法追加のベネフィットがないことが示された。・閉経前の患者(1,665例、33%)においては、内分泌療法単独群に対する化学療法追加群のHR(0.54)が統計学的に有意であり(p=0.0004、95%CI:0.38~0.76、5年iDFS率:94.2% vs.89.0%)、化学療法追加のベネフィットが示された。 これらのRxPonder試験の結果から、Kalinsky氏は「現時点のデータでは、リンパ節転移が1~3個で再発スコアが0~25の閉経後患者では、iDFSを悪化させることなく化学療法を回避することが可能だろう。一方、リンパ節転移陽性で再発スコアが0~25の閉経前患者は化学療法で有意なベネフィットがあるようだ」と述べた。

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高リスク早期乳がんへの術後内分泌療法+パルボシクリブ、初回解析でiDFS改善みられず(PENELOPE-B)/SABCS2020

 術前化学療法後に浸潤性病変が残存している高リスクのホルモン受容体(HR)陽性HER2陰性早期乳がん患者に対する、術後内分泌療法へのパルボシクリブ併用療法は、内分泌療法単独と比較して無浸潤疾患生存期間(iDFS)の有意な改善を示さなかった。ドイツ・German Breast GroupのSibylle Loibl氏が、第III相PENELOPE-B試験の初回解析結果をサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2020)で発表した。・対象:タキサンを含む術前化学療法後に病理学的完全奏効が得られず、再発リスクの高いHR+/HER2-の早期乳がん患者(術前補助療法後の残存浸潤性病変有、CPS-EGスコア≧3または 2、ypN+、術前化学療法≧16週、最終手術日から16週未満または放射線療法完了後10週未満)・試験群:術後療法として、パルボシクリブ(125mg1日1回×3週投与1週休薬の28日を1サイクルとして、13サイクル)+標準的内分泌療法・対照群:術後療法として、プラセボ(13サイクル)+標準的内分泌療法・評価項目:[主要評価項目]iDFS[副次評価項目]二次性原発浸潤性非乳がんを除くiDFS、遠隔無再発生存期間、全生存期間(OS)、安全性など・層別化因子:リンパ節転移の有無(ypN0-1 vs.ypN2-3)、年齢(50歳以下 vs.50歳超)、Ki-67値(15%超 vs.15%未満)、地域(アジア vs.非アジア)、CPS-EGスコア(3以上 vs.2かつypN+) 主な結果は以下のとおり。・2014年2月~2017年12月に計1,250例が登録され、パルボシクリブ群に631例、プラセボ群に619例が無作為に割り付けられた。・年齢中央値は49(19~79)歳。ypN0-1が49.6%、G3は47.4%で報告され、Ki-67>15%は25.5%。59.4%がCPS-EGスコア3以上であった。ベースライン時の患者特性は両群でバランスがとれていた。・13サイクルの治療を完了したのはパルボシクリブ群80.5%に対しプラセボ群84.5%。少なくとも7サイクルの治療を完了したのは88.6% vs.90.3%であった。相対用量強度は82.1% vs. 98.9%であった。・追跡期間中央値42.8ヵ月において、主要評価項目であるiDFSの層別ハザード比は0.93(95%信頼区間[CI]:0.74~1.17、p=0.525)で有意な差はみられなかった。・2年iDFS率はパルボシクリブ群88.3% vs.プラセボ群84.0%、3年iDFS率は81.2% vs. 77.7%、4年iDFS率73.0% vs. 72.4%であった。・サブグループ解析の結果、パルボシクリブから高いベネフィットを受ける因子は特定されなかった。・iDFSイベントは遠隔再発が全体の74%を占め、浸潤性局所再発、対側乳がん、二次性原発浸潤性非乳がん、イベント発生なしの死亡について、両群間に差はなかった。・OSの層別ハザード比(中間解析)は0.87(95%CI:0.61~1.22、p=0.420)。2年OS率はパルボシクリブ群96.3% vs.プラセボ群94.5%、3年OS率は93.6% vs.90.5%、4年OS率は90.4% vs.87.3%であった。・用量減量はパルボシクリブ群で多く、最終サイクルでは約50%が減量していた。・Grade3/4の有害事象は、パルボシクリブ群79.6% vs.プラセボ群20.1%で発生。血液学的有害事象(Grade3/4)は73.1% vs.1.3%とパルボシクリブ群で多くみられたが、非血液学的有害事象(Grade3/4)は19.9% vs.19.0%と両群間に差はみられなかった。重篤な副作用(SAE)は、パルボシクリブ群9.3%、プラセボ群8.7%でみられた。 ディスカッサントを務めた米国・ウィスコンシン大学マディソン校のRuth O'Regan氏は、monarchE試験、PALLAS試験との違いについて考察。PENELOPE-B試験では適格性の基準に解剖学的病期分類ではなくCPS-EGスコアが使われていること、PALLAS試験と比較してパルボシクリブのアドヒアランスが良好なこと、PENELOPE-B試験では治療期間が12ヵ月(PALLASとmonarchEは24ヵ月)であることなどを挙げ、アベマシクリブがより効果的な可能性があるが、リボシクリブのNATALEE試験も含め、各試験の長期結果をみていく必要があるとした。

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高リスク早期乳がんへの術後内分泌療法+アベマシクリブ、iDFS改善が継続(monarchE)/SABCS2020

 再発リスクの高いリンパ節転移陽性ホルモン受容体(HR)陽性HER2陰性の早期乳がんに対し、術後内分泌療法へのアベマシクリブ追加の有効性を評価する第III相monarchE試験の追跡調査において、無浸潤疾患生存期間(iDFS)の改善が引き続き示され、Ki-67値20%以上の患者での有意な改善が示された。米国・ピッツバーグ大学のPriya Rastog氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2020)で発表した。 monarchE試験は中間解析(追跡期間中央値15.5ヵ月)でアベマシクリブ追加によるiDFSの有意な改善(p=0.0096、ハザード比[HR]:0.747、95%信頼区間[CI]:0.598~0.932)が報告されている。今回、iDFSの約390イベント発生後に計画されていた解析の結果が報告された。・対象:再発リスクの高いHR+/HER2-の早期乳がん(リンパ節転移4個以上、リンパ節転移1~3個の場合はKi-67値20%以上・グレード3・腫瘍径5cm以上のいずれか)、術前/術後の化学療法は許容・試験群:術後療法として、標準的内分泌療法+アベマシクリブ150mg×2/日投与。アベマシクリブは最長2年間投与(ET+アベマシクリブ群:2,808例)・対照群:術後療法として、標準的な内分泌療法(タモキシフェン、アロマターゼ阻害薬、LH-RHアゴニストなど。薬剤は主治医選択)を5年以上施行(ET群:2,829例)・評価項目:[主要評価項目]iDFS[副次評価項目]遠隔無転移生存期間(DRFS)、全生存期間(OS)、安全性、患者報告アウトカム、薬物動態 主な結果は以下のとおり。・主要評価項目の解析における追跡期間中央値は両群で19ヵ月(中間分析+3.5ヵ月)であった。1,437例(25.5%)が2年間の治療期間を完了し、3,281例(58.2%)はまだ2年間の治療期間中だった。・ITT集団において395例にiDFSイベントが観察され、ET+アベマシクリブ群はET群より優れたiDFSを示し、iDFSイベント発生リスクが28.7%減少した(p=0.0009、HR=0.713、95%CI:0.583~0.871)。2年iDFS率は、ET+アベマシクリブ群で92.3%、ET群で89.3%であった。事前に指定されたサブグループすべてにおいてET+アベマシクリブ群が優れていた。・ITT集団で、中央測定機関評価のKi-67値が20%以上であった2,498例における有効性を評価したところ、ET+アベマシクリブ群(1,262例)では、ET群(1,236例)より優れたiDFSを示し、iDFSイベント発生リスクが30.9%減少した(p=0.0111、HR:0.691、95%CI:0.519~0.920)。2年iDFS率はそれぞれ91.6%、87.1%だった。・ITT集団におけるDRFSについても、ET+アベマシクリブ群はET群より優れ、DRFSイベント発生リスクが31.3%減少した(p=0.0009、HR=0.687、95%CI:0.551~0.858)。2年DRFS率は、ET+アベマシクリブ群で93.8%、ET群で90.8%であった。・安全性は、中間iDFS解析結果およびアベマシクリブの既知の安全性プロファイルと一致していた。有害事象による中止のほとんどが治療開始5ヵ月以内であった。・現在OSは未到達であり、OSの最終解析まで試験は継続される。

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エンコラフェニブ+ビニメチニブ+セツキシマブ、BRAF変異大腸がんに国内承認/小野

 小野薬品工業、2020年11月27日、BRAF阻害薬エンコラフェニブ(商品名:ビラフトビ)およびMEK阻害薬ビニメチニブ(商品名:メクトビ)とEGFR抗体セツキシマブとの3剤併用療法、およびエンコラフェニブとセツキシマブの2剤併用療法における「がん化学療法後に増悪したBRAF遺伝子変異を有する治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌」に対する効能又は効果の追加に係る製造販売承認事項一部変更承認を取得したと発表。エンコラフェニブおよびビニメチニブとセツキシマブとの3剤群のOSが有意な延長 今回の承認は、1次または2 次治療後に進行したBRAF V600E変異を有する治癒切除不能な進行または再発の結腸・直腸がんを対象に実施された国際共同無作為化非盲検第III相試験(BEACON CRC試験)の結果に基づいている。 同試験の結果、エンコラフェニブおよびビニメチニブとセツキシマブとの3剤群は対照群と比較して、主要評価項目の1 つである全生存期間(OS)で統計学的に有意な延長を示した(HR:0.52;95%VI:0.39~0.70、p<0.0001)。もう 1 つの主要評価項目である盲検下独立中央判定の奏効率についても、3剤群が対照群と比較して、統計学的に有意な改善を示した(p<0.0001)。また、副次評価項目であるエンコラフェニブとセツキシマブの2剤併用療法(2剤群)におけるOSも、2剤群で統計学的に有意なOSの延長を示した(HR:0.60、95%CI:0.45~0.79、p=0.0002)。本試験におけるエンコラフェニブとビニメチニブの安全性プロファイルに関しては、3剤群および2剤群の両群において予期せぬ毒性は認められなかった。

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ペムブロリズマブと化学療法の併用、進行・再発食道がん1次治療に国内承認申請/MSD

 MSDは、2020年11月30日、抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)について、化学療法(シスプラチン+5-フルオロウラシル)との併用療法において、根治切除不能な進行・再発の食道癌に対する1次治療としての製造販売承認事項一部変更を承認申請したと発表。 今回の製造販売承認事項一部変更承認申請は、局所進行または転移性食道がんおよび食道胃接合部(GEJ)がんの1次治療として、キイトルーダと化学療法(シスプラチン+5-フルオロウラシル)との併用療法をプラセボ+化学療法と比較した、第III相KEYNOTE-590試験の結果に基づくもの。この試験でペムブロリズマブ併用療法群は化学療法に比べ、有意な延長を認めている。

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リキッドバイオプシー検査、ドライバー遺伝子変異では8割の一致率/日本肺癌学会

 液性検体(血漿や尿など)を検査等に利用する、リキッドバイオプシーの医療現場での普及が急速に進んでいる。がん治療においては、低侵襲で簡便な検査による早期発見や組織採取が難しい部位のがんでの診断等に応用が期待される。 こうした状況を背景に、11月に行われた第61回日本肺癌学会学術集会では「リキッドバイオプシーの可能性」と題したシンポジウムが開催された。この中で、国立がん研究センター東病院の善家 義貴氏は「リキッドバイオプシーの有効性に関する前向き観察研究(LC-SCRUM-Liquid)」について、最新情報を共有した。 LC-SCRUMは肺がんの遺伝子変異をスクリーニングし、治療薬開発につなげることを目的とした産学連携プロジェクトであり、現在全国200施設が参加し、現在、非小細胞肺がん(NSCLC)患者1万例を組み入れ、進行中だ。この試験の付随研究として実施されたLC-SCRUM-Liquidは、1)現行の組織採取による次世代シークエンス(NGS)遺伝子検査と血中遊離DNA(cfDNA)を用いたNGS解析の肺癌遺伝子異常の検出精度の比較2)リキッドバイオプシーによる遺伝子検査で特定遺伝子の異常を確認した場合、分子標的治療が有効かどうかという2点の検証を目的とした。 LC-SCRUM-Liquid には39都道府県159施設が参加、患者の組み入れ基準はLC-SCRUMに準じており、主なものは以下の通り。・20歳以上のNSCLC患者・StageIIIまたはIV・手術・放射線療法不適で、化学療法を実施または予定され、2レジメンまでの薬物療法歴・検査用組織を採取した4週以内に血漿(cfCNA)を採取・組織はオンコマイン(OCA v3)、cfCNAはGuardant360を用いて解析、ターゲットとする遺伝子はEGFR/KRAS/BRAF/ERBB2/MET/ALK/ROS1/RETとした。・腫瘍組織はOncomine Comprehensive Assay version 3 (OCA:Thermo Fisher Scientific社) を、cfDNAはGuardant 360(G360:Guardant Health社)を用いて解析した。 主な結果は以下のとおり。・2017年12月~2020年10月に887例が登録され、非適格者等を除いた832例が解析対象となった。・年齢中央値は68(SD:25~91)歳、男性が60%、腺がんが77%、初回治療例が92%だった。・検査受診から結果が返ってくるまでの日数中央値は組織検査が23(8~55)日、cfCNA検査が15(7~27)日だった。・組織検査は主に肺(59%)とリンパ節(22%)から、気管支鏡(69%)による生検で採取された。・遺伝子異常の検出率はEGFR(組織26% vs.cfCNA 24%)、KRAS(14% vs.12%)の順で高く、約半数で何らかのドライバー遺伝子が検出された。・腫瘍組織検査陽性に対し、cfCNA検査も陽性となった一致率を見ると、EGFR:78%、KRAS:76%、BRAF:80%、ERBB2:71%と遺伝子変異は高かったが、MET:57%、ALK:44%、ROS1:8%、RET:54%など融合遺伝子では低かった。・cfDNAのみで陽性となった患者の60%は, 組織検体不良が原因であった。・もっとも多かったEGFR変異陽性例で分子標的治療の効果を見たところ、組織検査のみ陽性(43例)で奏効率(ORR)60%、cfCNA検査のみ陽性(40例)で70%、両方で陽性(36例)で69%と、ほぼ同等の結果だった。 善家氏は「リキッドバイオプシーによるコンパニオン診断は現時点では保険承認されていないが、今回の試験によってその精度を確認できた。今後の承認に向け、一致率が高く、治療薬が存在するEGFR/ALKについてはすでにアンブレラ試験を開始し、RET/ROS1についても12月中に開始予定だ。ただし、融合遺伝子の検出精度については引き続き検討が必要だろう」とまとめた。

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非小細胞肺がん1次治療、3種の二ボルマブ関連併用療法が国内承認/小野・BMS

 小野薬品工業とブリストル・マイヤーズ スクイブは、2020年11月27日、ニボルマブとイピリムマブについて、「切除不能な進行・再発の 非小細胞肺がん」の効能又は効果に対して、以下の併用療法に係る国内製造販売承認事項一部変更承認を取得したと発表。 (1) ニボルマブとイピリムマブとの併用療法 (2) ニボルマブとイピリムマブおよびプラチナダブレット化学療法との併用療法(3) ニボルマブとプラチナダブレット学療法との併用療法 今回の承認は下記の試験結果に基づいたもの。・(1)(3):化学療法歴のない切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん(NSCLC)患者 を対象に、ニボルマブ単剤療法、ニボルマブとイピリムマブの併用療法又はニボルマブとプラチナ製剤を含む2剤化学療法との併用療法をプラチナダブレット化学療法と比較した複数のパ ートで構成された多施設国際共同無作為化非盲検第III相臨床試験(CheckMate-227試験) ・(2):化学療法歴のない切除不能進行・再発の NSCLC患者を対象に、ニボルマブとイピリムマブの併用療法にプラチナ製剤を含む2剤化学療法(2サイクル)を追加した併用療法を、プラチナダブレット化学療法と比較した多施設国際共同無作為化非盲検第III相臨床試験 (CheckMate -9LA試験)の結果に基づいた承認である。関連記事ニボルマブ・イピリムマブ併用NSCLC1次治療、日本人の結果(CheckMate-227)/日本肺癌学会2020進行NSCLCの初回治療、ニボルマブ+イピリムマブが有効/NEJMニボルマブ+イピリムマブ+2週間化学療法の肺がん1次治療、アジア人の成績は?(CheckMate9LA)/日本肺癌学会2020ニボルマブ+イピリムマブ+化学療法限定追加レジメン、肺がん1次治療でOS改善(CheckMate9LA)/ASCO2020

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オシメルチニブ、T790M変異陽性NSCLCの2次治療のOS結果(AURA3最終)/Ann Oncol

 第3世代EGFR-TKIオシメルチニブについて検討した、AURA3試験の最終解析結果が報告された。同試験においてオシメルチニブは、既治療のEGFR T790M変異陽性進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対して、プラチナ併用化学療法と比較し、無増悪生存(PFS)期間および奏効率を有意に改善することが示されていた。今回、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのV A Papadimitrakopoulou氏らは、最終的な全生存(OS)期間について解析を行い、オシメルチニブ群とプラチナ+ペメトレキセド群に統計学的な有意差は認められなかったと発表した。ただし、示された結果について著者は、プラチナ+ペメトレキセド群からオシメルチニブ群へのクロスオーバーが高率であったことを反映している可能性があると指摘している。Annals Oncology誌2020年11月号掲載の報告。 AURA3試験の対象は、EGFR-TKIによる1次治療中に病勢進行したEGFR T790M変異陽性の切除不能な進行・再発NSCLC成人患者。被験者は、オシメルチニブ群またはプラチナ+ペメトレキセド群(カルボプラチンまたはシスプラチン+ペメトレキセド、3週ごと最大6サイクル)に、2対1の割合で無作為に割り付けられ追跡を受けた。 プラチナ+ペメトレキセド群では、盲検化独立中央評価によって病勢進行が確認された場合は、オシメルチニブへのクロスオーバーが許容された。OSおよび安全性が副次評価項目であった。 主な結果は以下のとおり。・279例がオシメルチニブ群、140例がプラチナ+ペメトレキセド群(治療を受けたのは136例)に割り付けられた。・データカットオフ(2019年3月15日)時点での死亡は、オシメルチニブ群188例(67%)、プラチナ+ペメトレキセド群93例(66%)であった。・OS中央値は、オシメルチニブ群26.8ヵ月、プラチナ+ペメトレキセド群22.5ヵ月であった(ハザード比[HR]:0.87、95%CI:0.67~1.12、p=0.277)。・24ヵ月および36ヵ月の推定生存率(オシメルチニブ群 vs.プラチナ+ペメトレキセド群)は、それぞれ55% vs.43%、37% vs.30%であった。・クロスオーバー調整後のOSのHRは0.54(95%CI:0.18~1.6)であった。・最初の後治療または死亡までの期間は、オシメルチニブ群で有意に延長し、臨床的に意義のある利点が示された(HR:0.21、95%CI:0.16~0.28、p<0.001)。・データカットオフ時点では、プラチナ+ペメトレキセド群の73%(99/136例)がオシメルチニブ群にクロスオーバーしており、そのうち67%(66/99例)が死亡した。・主な治療関連有害事象は、オシメルチニブ群では下痢(32%、Grade3以上は1%)および発疹(32%、Grade3以上は<1%)、プラチナ+ペメトレキセド群では悪心(47%、Grade3以上は3%)であった。

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ニボルマブ+イピリムマブ+2週間化学療法の肺がん1次治療、アジア人の成績は?(CheckMate9LA)/日本肺癌学会

 非小細胞肺がん(NSCLC)1次治療における、ニボルマブ+イピリムマブへの2週間の限定化学療法の追加治療を評価する第III相非盲検無作為化試験CheckMate9LA試験。そのアジア人サググループの解析が、第61回日本肺癌学会学術集会において埼玉県がんセンターの酒井 洋氏より発表された。・対象:未治療のStage IVまたは再発NSCLC患者(PS 0~1)・試験群:ニボルマブ360mg 3週ごと+イピリムマブ1mg 6週ごと+組織型別化学療法(シスプラチン/カルボプラチン+ペメトレキセド+ペメトレキセド維持療法またはカルボプラチン+パクリタキセル)3週ごと2サイクル(NIVO+IPI+Chemo群)・対照群:組織型別化学療法 3週ごと4サイクル(Chemo群)・評価項目:[主要評価項目]全生存期間(OS)[副次評価項目]盲検下独立中央画像判定機関(BICR)評価のPFS、BICR評価の全奏効率(ORR)、PD-L1発現別抗腫瘍効果 主な結果は以下のとおり。・アジア人のOS中央値はNIVO+IPI+Chemo群未達に対しChemo群13.3ヵ月であった(HR:0.33)。・BICR評価のPFSはNIVO+IPI+Chemo群8.4ヵ月に対しChemo群5.4ヵ月であった(HR:0.47、1年PFSは35%対12%)。・BICR評価のORRはNIVO+IPI+Chemo群57%に対しChemo群23%であった。・奏効期間はNIVO+IPI+Chemo群7.0ヵ月に対しChemo群4.4ヵ月であった。・アジア人集団の全Gradeの治療関連有害事象(TRAE)はNIVO+IPI+Chemo群100%、Chemo群97%、Grade3〜4のTRAEはそれぞれ57%と60%であった。・免疫関連有害事象は全集団に比べアジア人で多くみられたが、その大半はGrade1〜2であった。

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ペムブロリズマブ+アキシチニブ、腎細胞がん1次治療のOS延長持続(KEYNOTE-426)/Lancet Oncol

 化学療法未治療の進行性腎細胞がん患者に対する、ペムブロリズマブ+アキシチニブ併用とスニチニブ単独の有効性を比較したKEYNOTE-426試験の長期有効性・安全性を支持する結果が示された。同試験の中間解析では併用群が優れていることが示されているが、英国・Barts Cancer CentreのThomas Powles氏らは長期追跡の探索的解析を行い、その優れた有効性が維持されていたと発表した。結果を踏まえて著者は、「今回示された結果は、進行性腎細胞がんの標準治療としてのペムブロリズマブ+アキシチニブ併用による1次治療を、さらに支持するものである」とまとめている。Lancet Oncology誌オンライン版2020年10月23日号掲載の報告。 KEYNOTE-426試験は、16ヵ国129施設で実施中の国際共同無作為化非盲検第III相試験である。2016年10月24日~2018年1月24日に、化学療法未治療の局所進行または転移を有する淡明細胞型腎細胞がん患者(18歳以上)861例を登録し、ペムブロリズマブ+アキシチニブ併用群(432例)、またはスニチニブ群(429例)に、地域およびIMDCリスク分類を層別因子として1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目は、ITT集団における全生存(OS)期間および無増悪生存(PFS)期間であった。初回中間解析で主要評価項目が達成されているため、今回の解析は名目上のp値で報告されている。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値30.6ヵ月におけるOS期間中央値は、ペムブロリズマブ+アキシチニブ併用群で未到達、スニチニブ群では35.7ヵ月で、ペムブロリズマブ+アキシチニブ併用群のOS延長効果が継続していることが観察された(HR:0.68、95%CI:0.55~0.85、p=0.0003)。・PFS期間中央値は、15.4ヵ月vs.11.1ヵ月であった(HR:0.71、95%CI:0.60~0.84、p<0.0001)。・主なGrade3以上の治療関連有害事象(発現率10%以上)は、高血圧(ペムブロリズマブ+アキシチニブ併用群22% vs.スニチニブ群20%)、ALT上昇(13% vs.3%)、および下痢(11% vs.5%)であった。・初回中間解析以降、治療に関連した新たな死亡は報告されていない。

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ニボルマブ・イピリムマブ併用NSCLC1次治療、日本人の結果(CheckMate-227)/日本肺癌学会

 第61回日本肺癌学会学術集会においてがん研有明病院の西尾 誠人氏が非小細胞肺がん(NCSLC)1次治療CheckMate-227試験Part1の3年フォローアップデータから、ニボルマブ・イピリムマブ併用の日本人サブセットの分析結果を発表した。ニボルマブ+イピリムマブ療法を日本人においても支持する結果・対象:未治療のPD-L1発現1%以上(Part1a)および1%未満(Part1b)のStageIVまたは再発NSCLCの初回治療患者(PS 0~1、組織型問わず)・試験群:ニボルマブ+イピリムマブ群     ニボルマブ単剤群(TPS1%以上)     ニボルマブ+化学療法群(TPS1%未満)・対照群:化学療法(組織型により選択)単独群・評価項目:[複合主要評価項目]高TMB(≧10/メガベース)患者におけるニボルマブ+イピリムマブ群対化学療法単独群の無増悪生存期間(PFS)、PD-L1発現(≧1%)患者におけるニボルマブ+イピリムマブ群対化学療法単独群の全生存期間(OS)[副次評価項目]高TMB(≧13/メガベース)かつPD-L1発現(TPS1%以上)患者におけるニボルマブ単剤群対化学療法単独群のPFS、高TMB(≧10/メガベース)患者におけるニボルマブ+化学療法群対化学療法単独群のOS、PD-L1なしまたは低発現(TPS1%未満)患者におけるニボルマブ+化学療法群対化学療法単独のPFS、そのほか奏効率(ORR)、奏効期間(DoR)、安全性など NCSLC1次治療試験でニボルマブ・イピリムマブ併用の日本人を分析した主な結果は以下のとおり。・日本人PD-L1≧1%集団のOS中央値はニボルマブ+イピリムマブ群未達に対し化学療法単独群は28.9ヵ月(HR:0.77、3年OS率は56%対45%)であった。この集団のニボルマブ+イピリムマブ群の日本人OSはグローバル(17.1ヵ月)に比べて良好であった。・日本人全集団のOS中央値はニボルマブ+イピリムマブ群48.8ヵ月に対し化学療法単独群は24.9ヵ月(HR:0.63、3年OS率は56%対36%)であった。この集団のニボルマブ+イピリムマブ群の日本人OSはグローバル(17.1ヵ月)、アジア人(36.2ヵ月)に比べて良好であった。・日本人PD-L1≧1%集団のPFS中央値はニボルマブ+イピリムマブ群19.4ヵ月に対し化学療法単独群6.7ヵ月((HR:0.64、3年PFS率は33%対14%)であった。この集団のニボルマブ+イピリムマブ群の日本人PFSはアジア人(11.0ヵ月)に比べても良好であった。・日本人全集団のPFS中央値はニボルマブ+イピリムマブ群11.1ヵ月に対し化学療法単独群5.6ヵ月(HR:0.65、3年PFF率は25%対9%)であった。この集団のニボルマブ+イピリムマブ群の日本人PFSはアジア人(8.5ヵ月)に比べても良好であった。・日本人PD-L1≧1%集団のORRはニボルマブ+イピリムマブ群は63%に対し化学療法単独群40%であった。この集団のニボルマブ+イピリムマブ群の日本人ORRはグローバル(36%)、アジア人(56%)に比べて良好であった。・日本人全集団のORRはニボルマブ+イピリムマブ群53%に対し化学療法単独群36%であった。ニボルマブ+イピリムマブ群の日本人ORRはグローバル(33%)、アジア人(48%)に比べて良好であった。・ニボルマブ+イピリムマブ群の治療関連有害事象(TRAE)の全Gradeの発現は日本人96%、グローバル77%、アジア人87%、Grade3〜4のTRAEは日本人54%、グローバル33%、アジア人40%と、日本人で高い傾向にあった。今回の解析結果はグローバル、アジア人と同様、日本人においても進行NSCLCの1次治療としてのニボルマブ+イピリムマブ療法を支持するものだとしている。

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乳がんでの免疫チェックポイント阻害薬の臨床開発はかなり複雑/日本癌治療学会

 2020年の乳がん診療におけるトピックスの1つとして、トリプルネガティブ(TN)乳がんに対する免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の第III相試験の結果が多く発表されたことが挙げられる。しかし、これらの結果にはまだまだ未知の要因が関係しており、その理解はかなり複雑である。福島県立医科大学の佐治 重衡氏は、乳がんに対する免疫チェックポイント阻害薬の試験結果によるディスカッションポイントについて、第58回日本癌治療学会学術集会(10月22~24日)の会長企画シンポジウムにおける「乳癌診療の新たな構築 2020」で解説した。 乳がんでは腫瘍遺伝子変異量(TMB)が少ないとされ、免疫チェックポイント阻害薬への期待は高くはなかった。しかし、2019年にPD-L1陽性進行/再発TN乳がんに対するアテゾリズマブ+nabパクリタキセルが承認され、今後、ペムブロリズマブもKEYNOTE-355試験の結果を基にPD-L1陽性進行/再発TN乳がんに承認される可能性が高い。今回、佐治氏は、乳がんにおける免疫チェックポイント阻害薬治療でのディスカッションポイントとして、早期乳がんと進行/再発乳がんで免疫チェックポイント阻害薬の効果が異なる点、免疫チェックポイント阻害薬と組み合わせる化学療法によって異なる点を挙げ、それぞれ解説した。早期乳がんと進行/再発乳がんで免疫チェックポイント阻害薬の効果が異なるのは? 早期(Stage II~III)TN乳がんの術前治療としての免疫チェックポイント阻害薬アテゾリズマブを検討した第III相試験であるIMpassion031試験がESMO2020で発表された。本試験では、術前治療としてnabパクリタキセルを12週投与後、ドキソルビシン+シクロホスファミド8週投与する群とアテゾリズマブ追加群を比較した結果、術後の病理学的完全奏効(pCR)がアテゾリズマブ追加群で57.6%とプラセボ群(41.1%)より16.5%上乗せされたことが示された。また、この上乗せはPD-L1発現状況にかかわらずみられた。 ESMO2019で発表されたKEYNOTE-522試験においても、IMpassion031試験とは化学療法(カルボプラチン+パクリタキセルを4サイクル後、ドキソルビシン/エピルビシン+シクロホスファミドを4サイクル)は異なるが、早期TN乳がんの術前治療に免疫チェックポイント阻害薬ペムブロリズマブを追加することによりpCRの上乗せが示された。また、IMpassion031試験と同様に、PD-L1発現状況にかかわらず15%前後の上乗せが示された。どちらもリンパ節転移陽性例のほうが陰性例より上乗せ効果が高かった。 佐治氏は、この2つの試験結果から、なぜ早期乳がんではPD-L1陰性でも効果があるのか、また、なぜリンパ節転移陽性だとpCRの上乗せが顕著なのか、疑問を呈した。 まず前者について、佐治氏はESMO2020で発表されたNeoTRIP試験(早期TN乳がんに術前治療としてカルボプラチン+nabパクリタキセルにアテゾリズマブを追加)の結果を提示した。本試験では、術前治療前と途中のペア組織生検からPD-L1の発現変化を調べた結果、アテゾリズマブ併用群では、治療前にPD-L1陰性だった患者のうち64.3%が治療の途中で陽性となったのに対して、プラセボ群では17.7%しか陽性にならなかった。この結果から、佐治氏は、抗PD-L1抗体の併用により原発腫瘍のPD-L1の発現が誘導される可能性を言及した。リンパ節転移がある乳がんへの免疫チェックポイント阻害薬の効果の影響は? 後者については、治療する時点でリンパ節転移がある場合に免疫チェックポイント阻害薬の効果が顕著であるとするなら、リンパ節転移陽性の患者さんが乳房切除+リンパ節郭清といった手術後に免疫チェックポイント阻害薬を受けるときの効果はどうなるのか、という疑問が生じる。 これまで乳がんの術前治療と術後治療は効果が同じという前提で治療を行ってきているが、治療時にリンパ節転移があるほうが免疫チェックポイント阻害薬の効果が高いという仮説が正しいのであれば、術前治療と術後治療において免疫チェックポイント阻害薬の利益には差があることになってしまう。佐治氏は「もしそうであれば、免疫チェックポイント阻害薬を使用する時代になったときに手術を含めた治療戦略そのものを変えなければいけない」と述べ、「今後、術後治療での免疫チェックポイント阻害薬の結果が出てきたとき、リンパ節転移の有無が本当に大事なのかどうかは重要なポイントとなる」と指摘した。免疫チェックポイント阻害薬と組み合わせる化学療法の違いで異なる結果 免疫チェックポイント阻害薬と組み合わせる化学療法については、これまで、何を選んでもある程度の上乗せを期待できると考えられてきた。しかし、ESMO2020で発表されたIMpassion131試験は、対象が同じ未治療のPD-L1陽性進行/再発TN乳がんであるにもかかわらず、IMpassion130試験と異なる結果であった。すなわち、アテゾリズマブにnabパクリタキセルを組み合わせたIMpassion130試験では、無増悪生存期間(PFS)の上乗せ効果があったのに対し、パクリタキセルを組み合わせたIMpassion131試験では上乗せ効果がなかった。 この理由として、パクリタキセルの場合はステロイドを投与するためという意見もあるが、KEYNOTE-355試験など、ステロイドを必要とする化学療法との組み合わせがある他の試験では効果がみられているため、よくわかっていないという。佐治氏は、「今後、サブセット解析や細かいデータを見直した結果が発表されたときに、化学療法のペアの問題がどれくらい重要なのかがわかるだろう」と述べた。 最後に佐治氏は、「進行/再発乳がんではPD-L1陽性例にしか効果がないのに、なぜ早期乳がんではPD-L1の発現によらず効果があるのか。また、早期乳がんにおいてリンパ節転移が治療効果に影響している結果をどう解釈すればよいのか。さらに、どの化学療法を組み合わせて開発していくのか。乳がんにおける免疫チェックポイント阻害薬の臨床開発は簡単ではなく、やるべきことが多いことがわかった」と課題を述べ、講演を締めくくった。

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がん診療病院でのCOVID-19クラスター、その教訓は/日本癌治療学会

 市中感染が広がる状況下では、感染者が院内に入り込む可能性や病院内感染発生のリスクが常にある。リスクをいかに減らし、万が一予期せぬ感染者が発覚した場合にどのような対応が必要か、がん診療をどのように維持していけばよいのか。第58回日本癌治療学会学術集会(10月22~24日)で、「COVID-19蔓延期の癌治療―体験と教訓―」と題した会長企画シンポジウムが開かれ、がん診療を担う病院での今春からの経験、実施している対策が相互に共有された。本稿では、加藤 秀則氏(北海道がんセンター)、佐藤 悠城氏(神戸市立医療センター中央市民病院)による発表内容を中心に紹介する。北海道がんセンターでクラスターが発生した原因 北海道がんセンターでは、4月13日に消化器内科病棟で看護師1名と患者1名が発熱、翌日には同病棟勤務の看護師2名も発熱した。当時院内ではPCR検査が実施できなかったため、保健所を通じPCR検査を実施したところ、16日に4名で新型コロナウイルス陽性を確認。これを契機に、同病棟および隣接する泌尿器科(同フロア)の患者、勤務する看護師、医師らの間で集団感染が発生した。厚生労働省クラスター班による調査・指導等を経て、5月16日に看護師1名の感染が確認されたのを最後に、6月13日の終息宣言に至った。 北海道がんセンターの加藤氏は、クラスターが発生してしまった原因として下記を挙げている:・病院の収益を確保するため、病床稼働率を上げなければならず病棟は密な状態であった・がん患者はさまざまな病態で熱発していることも多く、最初からコロナ肺炎を疑わない症例も多い・がん患者はPSの悪いことも多く、看護師が密着せざるを得ない看護も多い・築40年程度経過した病院で全体にスペースも狭く、空調も悪く、陰圧室もない・PCR検査は市の保健所でしか実施できず、疑い症例を自由に、迅速に行える状況ではなかった 北海道がんセンターのクラスターの端緒となったと考えられる患者は感染発覚前に、消化器内科から泌尿器科の病室に移っており、その隣室患者および看護した看護師へと伝播していった。加藤氏は、「進行がんで看護必要度の高い患者さんが多く、主に看護師を通して伝播したと考えられる」と話した。感染者の中には清掃やリネン、放射線技師といった病棟横断的に業務を行う者も含まれており、院内感染防止の観点から注意が必要な部分と振り返った。 また、消化器内科病棟勤務で感染した看護師19名のうち、1回目のPCR検査で陽性となったのは13名。2回目が5名で、症状だけが続き4回目ではじめて陽性となった者も1名いたという。加藤氏は、PCR検査の感度、タイミングの問題も考えていかなければいけないと話した。北海道がんセンターでの感染対策の改善点 北海道がんセンターでは、外来・病棟それぞれにおいて、下記を中心とした感染対策の改善を行っている。[外来での改善点]・待合室の3密対策・入口を1ヵ所にしてサーモグラフィチェック・発熱者の隔離部屋を用意・採血室、外来化学療法室の増設・過密回避、外来診察室の医師と患者の間にスクリーンの設置・各受付にスクリーンの設置・CTなどの検査機器、X線照射装置、胃カメラ、ベッドなどは毎回消毒・電カル、キーボード、マウスのアルコールペーパーでの消毒など職員の衛生意識改善[病棟での改善点]・定期入院はすべて事前にPCRと肺CT検査を行い陰性者のみ入院・PCRは自院の装置、検査会社との契約により件数拡充・臨時入院は個室隔離し、PCR結果が出るまではPPE対応・病室は過密対策で稼働を50%にコントロール・看護師休憩室の増設・面会の全面禁止 また、復帰した医療者のメンタルケアの重要性を感じたと加藤氏。感染症から回復して復帰しても、精神的に回復するまでには時間を要したという。「プライバシー保護にも配慮が必要であるし、回復には時間がかかる。専門の心理療法士に依頼し、病院全体を挙げてのケアの必要性を感じた」と話した。神戸市立医療センター中央市民病院の院内感染の原因 神戸市立医療センター中央市民病院は、地域がん診療拠点病院であるとともに第一種感染症指定医療機関で、神戸市でCOVID-19が初発した3月上旬より、約200例のCOVID-19患者を受け入れている。うち、7例が院内感染によるもの。佐藤氏は、院内感染発生の原因として、1)COVID-19患者の在院日数の長さ、2)ゾーニングの問題、3)強い感染力を挙げて考察した。 1)については、酸素投与を要した患者における在院日数の中央値は31日、ICU在室日数の中央値は9日と長く、病床がひっ迫していた状況があった。2)10床の感染症病床(陰圧個室)を有し、専門看護師が感染者の看護に従事していたが、ナースステーションと休憩室は一般病床を担当する看護師と共通で、ここで医療従事者間での感染が起こったと推測される。3)同院での院内感染の伝播において重要な役割を果たしたと考えられる患者は、透析患者で当初感染が疑われておらず、せん妄があったことなどからナースステーションでの大声での発話などがあり、PCRでは高ウイルス量が検出されるなどの因子が重なって、複数の医療従事者の感染につながったことが推測される。多いCOVID-19疑似症、対策はあるのか 神戸市立医療センター中央市民病院では、ビニールシートによる職員の保護等ゾーニングの徹底や、全例PCRを実施する入院前検査のほか、COVID-19合同診療チームを立ち上げて対策にあたっている。重症例はICUで一括管理できるものの、軽症~中等症例はICUを出た後各科の持ち回りになるため、1人の医師が感染者と非感染者の診療を行うことに対するリスクを減らすため、このチームが立ち上げられた。全科から選抜、各科業務を完全に外れ、2週間勤務後1週間の自宅待機を経て復帰する。 2月はじめから院内感染により病院が機能停止した4月中旬までの約2ヵ月半で、救急外来と感染症外来を受診したCOVID-19疑似症患者は286例に及ぶ。そこで同院では、感染拡大期には感染疑い病棟を設置。PCR検査が陰性であっても、類似症状や胸部異常影がある患者についてはいったん同病棟に収容し、担当医も分ける形をとるようにした。感染対策解除基準のフローを作り、どうしても臨床的な疑いが解除できない患者においては何度でもPCR検査を行い、それまで感染症対応を解除しないという方法をとっている。「今後のがん診療では、COVID-19疑似症の対応は必須になるのではないかと考えている」と佐藤氏。胸部CTにおいて、一見器質化肺炎が疑われた患者でCOVID-19陽性であった例や、末梢側のすりガラス影がみられる患者で薬剤性肺障害であった例など、いくつか自験例を示して解説した。 自院の症例約100例でCOVID-19と薬剤性肺障害の背景因子を後ろ向きに比較した結果では、COVID-19症例では陰影のある肺葉数が多いという傾向はみられたものの、大きな臨床所見の差はみられなかった。呼吸器内科医としては、今後これらの鑑別をしっかり行っていかなければならないと話し、またCOVID-19後遺症として罹患後に間質陰影を呈した肺がん症例での治療再開の判断の難しさにも触れ、後遺症に関してもエビデンスの蓄積が待たれるとした。

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ニボルマブ・イピリムマブ併用、悪性胸膜中皮腫に国内申請/小野・BMS

 小野薬品工業とブリストル・マイヤーズ スクイブは、2020年10月27日、抗PD-1抗体ニボルマブと抗CTLA-4抗体イピリムマブの併用療法について、切除不能な進 行・再発の悪性胸膜中皮腫に対する効能又は効果に対する製造販売承認事項一部変更承認申請を行ったと発表した。 今回の承認申請は、未治療の切除不能な悪性胸膜中皮腫患者を対象に、ニボルマブとイピリムマブの併用療法をプラチナ製剤を含む標準治療の化学療法(ペメトレキセドとシスプラチンまたはカルボプラチンの併用療法)と比較評価した多施設国際共同無作為化非盲検第III相臨床試験(CheckMate-743試験)の中間解析の結果に基づいている。 本解析において、ニボルマブとイピリムマブの併用療法は、化学療法と比較して、主要評価項目である全生存期間(OS)の有意な延長を達成した。また、本試験で認められたニボルマブとイピリムマブの併用療法の安全性プロファイルは、本併用療法でこれ までに認められているものと一貫していた。

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未治療Ph陽性ALLへのダサチニブ+ブリナツモマブ、第II相試験結果/NEJM

 フィラデルフィア染色体(Ph)陽性急性リンパ性白血病(ALL)成人患者の1次治療において、分子標的・免疫療法戦略に基づくダサチニブ+ブリナツモマブによる、化学療法薬を用いない寛解導入・地固め療法は、分子遺伝学的奏効の達成割合および生存率が良好で、Grade3以上の毒性は少ないことが、イタリア・Sapienza University of RomeのRobin Foa氏らGIMEMA共同研究グループが実施した「GIMEMA LAL2116 D-ALBA試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年10月22日号に掲載された。Ph陽性ALL患者の予後は、ABL特異的チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)の登場によって著明に改善し、全身化学療法併用の有無を問わず、ほとんどの患者で血液学的完全奏効が得られている。ダサチニブは複数のチロシンキナーゼを標的とするTKIであり、ブリナツモマブはB細胞のCD19とT細胞のCD3に二重特異性を有する遺伝子組み換えモノクローナル抗体である。ダサチニブ+ブリナツモマブの分子遺伝学的奏効を評価 研究グループは、新たにPh陽性ALLと診断された成人(年齢の上限はない)を対象に、ダサチニブ+ブリナツモマブの第II相単群試験を行った(Associazione Italiana per la Ricerca sul Cancroなどの助成による)。 被験者は、寛解導入療法としてダサチニブ(140mg、1日1回)の85日間の投与を受けた後、地固め療法としてブリナツモマブ(28μg/日)の投与を2サイクル受けた(最大5サイクルまで許容された)。ブリナツモマブの各サイクルの投与前にデキサメタゾン(20mg)が投与された。ダサチニブは、ブリナツモマブ投与中および投与後も継続投与された(T315I変異陽性例を除く)。 主要評価項目は、治療後の骨髄における持続的な分子遺伝学的奏効(分子遺伝学的完全奏効、微小残存病変の定量化が不能な奏効)とした。ダサチニブ+ブリナツモマブの分子遺伝学的奏効率は60% 2017年5月~2019年1月の期間に、63例(年齢中央値54歳[範囲24~82]、女性34例[54%])が登録された。このうち98%(62/63例)で完全寛解が得られた。 ダサチニブによる寛解導入療法の終了時(85日)に、患者の29%(17/59例)で分子遺伝学的奏効が達成された。この割合は、ブリナツモマブの2サイクル投与後に60%(33/55例)まで上昇し、投与サイクル数が増えるに従ってさらに上昇した(3サイクル:70%[28/40例]、4サイクル:81%[29/36例]、5サイクル:72%[21/29例])。 追跡期間中央値18ヵ月の時点で、全生存率は95%、無病生存率は88%であった。無病生存率は、IKZF1欠失に加え他の遺伝子異常(CDKN2AまたはCDKN2Bと、PAX5、あるいはこれら両方の異常[IKZF1plus])を有する患者で低かった。ダサチニブによる寛解導入療法中に微小残存病変が増加した6例でABL1の変異が検出され、これらの変異はすべてブリナツモマブにより消失した。再発は6件発生した。 全体で、28例に60件の有害事象が発現した。Grade3以上の有害事象は21件であり、サイトメガロウイルス再活性化/感染症(6例)、好中球減少(4例)、持続性発熱(2例)、胸水(1例)、肺高血圧症(1例)、神経学的障害(1例)が含まれた。24例が同種造血幹細胞移植を受け、1例(4%)が移植関連で死亡した。 著者は、「患者アウトカムは年齢を問わずきわめて良好で、移植関連死が少なかった。予想に反して、サイトメガロウイルス再活性化の頻度が高かったが、この現象はダサチニブ投与例の以前の研究で報告されている」としている。

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NSCLCに対するペムブロリズマブ・化学療法併用の最長追跡データ(KEYNOTE-021)/MSD

 Merck社は、2020年10月16日、進行非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)患者においてペムブロリズマブと化学療法の併用療法を評価したKEYNOTE-021試験(コホートG)の長期追跡の結果、PD−L1の発現にかかわらず、ペムブロリズマブと化学療法の併用療法による1次治は、化学療法単独と比較して、客観的奏効率の改善、無増悪生存期間の改善が認められたと発表。この試験結果は、北米肺癌学会議(NACLC)において報告された(Featured Poster #OFP01.02)。NSCLC患者の1次治療における抗PD-1/L1抗体と化学療法の併用療法を評価した最長のフォローアップデータとなる。 マルチコホート多施設共同非盲検第I/II相KEYNOTE-021試験のコホートGでは、進行非扁平上皮NSCLC患者の初回治療におけるペムブロリズマブと化学療法の併用療法(n=60)と化学療法のみ(n=63)を比較した。全生存期間(OS)中央値はペムブロリズマブと化学療法併用34.5ヵ月、化学療法のみ21.1ヵ月、3年生存率は化学療法のみ患者では37%だったのに対し、ペムブロリズマブと化学療法併用患者では50%であった(HR=0.71、95% CI:0.45~1.12)。このOSの改善は、70%(n=43/61)の患者が後に化学療法から抗PD-1/L1抗体治療にクロスオーバーしたにもかかわらず認められた。ORRはペムブロリズマブと化学療法の併用では58%、化学療法のみでは33%であった。PFS中央値は、ペムブロリズマブと化学療法併用24.5ヵ月、化学療法のみ9.9ヵ月であった(HR=0.54、95% CI:0.35~0.83)。奏効期間(DoR)中央値はペムブロリズマブと化学療法の併用では36.3ヵ月、化学療法のみでは22.8ヵ月であった。また、ペムブロリズマブと化学療法の併用療法に関し、長期的なフォローアップにおいて新たな安全性シグナルは認められなかった。

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