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アテゾリズマブ+化学療法の非小細胞肺がん脳転移例への効果(ATEZO-BRAIN)/WCLC2021

 脳転移はがんの合併症として多くみられ、治療やQOLに悪影響をおよぼす。 世界肺癌学会(WCLC2021)では、脳転移を有する非小細胞肺がんに対するアテゾリズマブの効果と安全性を評価する第II相試験ATEZO-BRAINが発表された。その結果、アテゾリズマブ+化学療法の脳転移を有する非小細胞肺がんへの有用性が示唆されている。アテゾリズマブと化学療法併用は脳転移病変未治療の非小細胞肺がんに有用対象:脳転移病変未治療の非小細胞肺がん(PD-L1発現問わず、ステロイド[デキサメタゾン4mg以下/日]は許容)介入:アテゾリズマブ(1,200mg)+ペメトレキセド(500mg/m2)+カルボプラチン(ACU5 ) 3週ごと4~6サイクル→アテゾリズマブ+ペメトレキセドを疾患進行まで、または最大2年間投与主要評価項目:治験担当医評価の無増悪生存期間(PFS)、安全性副次評価項目:奏効率(ORR)、奏効期間、全生存期間(OS)、QOLなど 脳転移を有する非小細胞肺がんに対するアテゾリズマブの効果と安全性を評価する第II相試験ATEZO-BRAINの主な結果は以下のとおり。・40例が対象として登録された。・患者の年齢中央値は62.6歳、男性72.5%、腺がんが97.5%を占めた。・有効性評価対象は24例、安全性評価対象は11例であった。・PFS中央値は8.9ヵ月、18ヵ月PFS率は24.9%であった。・頭蓋内PFS中央値は6.9ヵ月、18ヵ月頭蓋内PFS率は10.4%であった。・OS中央値は13.6ヵ月、2年OS率は32%であった。・Grade3/4の有害事象は27.5%、頻度が高いものは、疲労感、貧血、息切れ、悪心であった。 アテゾリズマブと化学療法(ペメトレキセド+カルボプラチン)併用は、脳転移病変未治療の非小細胞肺がんに対して、良好な効果と安全性を示した。脳画像イメージと血液サンプルの関係を調べる試験が進行中である。

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世界初となるがん悪液質に対する栄養・運動・薬物の併用療法:NEXTAC-THREE試験 シリーズがん悪液質(8)【Oncologyインタビュー】第34回

がん悪液質は、薬剤をはじめとする治療の開発が進まず、長年にわたり問題となっていた。しかし2021年、アナモレリンが治療薬として認可され、がん悪液質は一躍注目を浴びることとなる。そのような中、栄養・運動療法にアナモレリンによる薬物療法を組み合わせた、がん悪液質治療の研究「NEXTAC-THREE試験」が始まる。栄養・運動療法に薬物療法を加えることで、どのような可能性があるのか。NEXTAC-THREE試験の責任者である静岡県立静岡がんセンターの内藤 立暁氏に聞いた。有効な治療法を模索するがん悪液質―がん悪液質の病態と、研究がどのように進んできたのか教えていただけますか。がん悪液質は、European Palliative Care Research Collaborative(EPCRC)で「通常の栄養サポートでは完全に回復することができず、骨格筋量の持続的な減少を特徴とし、進行性の機能障害に至る、多因子性の症候群」と定義されています。通常、食事から摂取する栄養素は筋肉や脂肪になります。しかし、がん悪液質では、栄養素が豊富にあっても、代謝障害により活用できずに痩せていきます。がん悪液質の代謝障害は、腫瘍由来のさまざまな液性因子で生じます。また、がんを異物と見なした宿主が生体反応として慢性の炎症を生じ、炎症性サイトカインによって食欲が減退し、体の痩せをさらに助長します。がん悪液質は、病理や画像所見などの肉眼で病因を確認することができない機能的疾患であるため、長く疾病として認識されず治療の進歩を妨げていたともいえます。画像を拡大するがん悪液質については世界的に多くの研究が行われてきましたが、有効性が確認されたものは非常に少ないのが現状です。1966~2019年の無作為化比較試験をレビューした2020年のASCOがん悪液質ガイドライン(Management of Cancer Cachexia: ASCO Guideline)は、今までのがん悪液質エビデンスが集約されたものです。ガイドラインの中で、栄養カウンセリングについていくつかの研究が取り上げられていますが、有効性のエビデンスレベルは「Low」という評価です。運動療法については、ほとんどエビデンスがありません。薬物療法についても、多数の研究が行われています。プロゲステロン、ステロイドなど、一時的に食欲改善、体重増加、QOL向上などを示すものもありますが、長期使用では有効性の低下や毒性の問題が出てしまうなど、総合的にみて推奨できるものはありませんでした。その中で、アナモレリンについては、身体機能の改善こそ証明されていませんが、複数の試験で食欲、体重、骨格筋量について、プラセボに対する有意な改善が認められ、2021年1月に日本で製造販売承認を取得しました。―わが国で行われている「NEXTAC研究」は、がん悪液質の集学的治療についての研究ですね。そのとおりです。栄養と運動のプログラムについては、皆が重要だと思っているものの標準プログラムがないため、この2つを組み合わせたオリジナルの栄養・運動プログラムを作ろうというプロジェクトです。NEXTAC(Nutrition and Exercise Treatment for Advanced Cancer)は、がん悪液質のリスクを有する患者さんの身体機能の維持・回復を目的とし、多職種の介入で進行がんの診断後に早期から運動療法と栄養療法を導入する集学的介入の名前です。2016年(平成28年)から国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の助成を受けて開発を始めました。海外で開発中の栄養・運動プログラムでは、高強度の介入のため患者さんが継続できず、多くが治療中に脱落してしまうため、NEXTACプログラムは高齢者が自宅で毎日行えるよう、低強度の運動と、患者教育を中心に設計されているのが特徴です。これまでに、NEXTAC-ONE試験(安全性と忍容性を見る第I相試験)とNEXTAC-TWO試験(効果を検証する第II相試験)を実施しています。画像を拡大するまず、NEXTAC-ONE試験についてです。この試験は、安全性・忍容性試験として京都府立医科大学、静岡県立静岡がんセンター、新潟県立がんセンター、国立がん研究センター東病院の4施設で行われ、すでに最終結果が公表されています。主要評価項目であるNEXTACプログラムへの参加率(栄養・運動療法の計6回のセッションのうち4回以上参加した患者数の割合)は97%、プログラムのコンプライアンス(サプリメント服用、筋トレ実施、歩数計装着)はいずれも9割を超えて良好でした。さらに、7割の患者さんが屋外活動を、8割の患者さんが屋内活動を増やし、教育的な介入の成果が行動変容に現れたことはとても重要な結果と感じています。次にNEXTACプログラムが健康寿命(自立した生存期間)を延長するか否かを検証する無作為化第II相試験のNEXTAC-TWO試験を行い。国内の16施設から131例の症例登録を完遂し、本年度中に主解析の結果を公表予定です。―栄養・運動療法に薬物療法を加えたNEXTAC-Three試験がスタートするそうですね。NEXTAC-ONEやNEXTAC-TWO試験では、がん悪液質の高リスクの患者さんに対する治療開発を行いました。一方で、がん悪液質を発症してしまった患者さんに対しては、別の戦略が必要です。がん悪液質の病態には多因子が関与しますので、栄養・運動・薬物療法それぞれ単独で行っても、効果が出づらいからです。そこで、薬剤を組み合わせた栄養・運動介入のプログラムを検討する、NEXTAC-THREE試験が開始されることとなりました。これはアナモレリンの発売を見込み、当初から計画していたものです。今まで行ってきたNEXTACの栄養・運動介入プログラムに薬物を組み合わせたらどうなるかを検討します。―3つのモダリティを併せることで予想される効果は?アナモレリンが骨格筋量を増やしても握力などの身体機能が改善しなかったのは、作った筋肉を有効に活用するための運動という介入がないことが主たる理由と推定されます。アナモレリンで骨格筋を増やし、そこに栄養療法で良質の蛋白質を摂取し、さらに継続的なトレーニングを加えることで、進行がんを有する高齢者で、すでにがん悪液質があったとしても、身体機能を改善できるのではないか、というのがNEXTAC-THREE試験の仮説です。3モダリティの併用は、がん悪液質の有効な介入プログラムとなるか―NEXTAC-THREEの試験デザインを教えてください。NEXTAC-THREE試験の正式名称は、「高齢者進行非小細胞肺がん/膵がんに対する早期栄養・運動介入とアナモレリン塩酸塩の併用療法の多施設共同ランダム化第二相試験」です。試験の対象は70歳以上の新規化学療法を開始する患者さんで、全員がん悪液質を有しています。コホート1は非小細胞肺がん(NSCLC)で、サンプルサイズは60例。コホート2は膵がんで、サンプルサイズは30例です。NSCLC患者さんは1次治療で、初回化学療法時からアナモレリンを投与した群と、そこにNEXTACプログラムの栄養・運動療法を併用した群を比較します。評価項目は歩行障害の発生率です。「6分間歩行距離40m以上減少」は臨床的意義のある歩行障害といわれ、身体機能の状態を表します。この障害の発生率を減らすかを見ることで、アナモレリンと栄養・運動療法の組み合わせが身体機能を改善するかを評価します。膵がんについては、今までの研究データがないため、2次治療患者でのアナモレリンと栄養・運動療法の組み合わせの安全性を評価項目としています。画像を拡大する―NEXTAC-THREE試験はどのようなスケジュールで進んでいく予定ですか。NEXTAC-THREE試験は、2021年、AMEDの助成を受けて開始されます。倫理審査で承認をうけ、試験担当者の研修や設備の準備を行い、9月以降に試験開始の予定です。患者さんはすべてがん悪液質を有する方ですし、初回治療なので治験も競合するため、患者登録も苦労すると予想されます。2023年度までに試験を完了し、2024年に主解析を報告の予定です。―今後、参加施設を拡大していくのですか。まずはは、静岡がんセンター、京都府立医科大学、国立がん研究センター東病院、新潟県立がんセンターの4施設で行い、その後、参加施設を徐々に拡大していく予定です。また、国際協力者として、英国のエディンバラ大学、グラスゴー大学と相互に協力していくこととしています。彼らは欧州を中心とした研究グループで、栄養・運動療法(MENACプログラム)を開発しているグループです。NEXTAC-ONEからTHREEまでの結果がそろう時期に、彼らの集学的治療の研究と統合解析して、国際的ながん悪液質のガイドラインを作ろうという計画をしています。日本が世界をリードするがん悪液質研究―CareNet.com会員の方にメッセージをお願いします。がん悪液質は昔からある病気ですが、病態が複雑でわかりにくいため、がんに対する薬物療法や制吐療法などと比べ、治療の開発が遅れていました。しかし、近年の科学の進歩によりその病態が次第に解明され、また2021年のアナモレリンの承認によりスポットライトが当たりました。アナモレリンは、世界に先駆け日本で承認された薬剤です。つまり、日本は一番の先進国といえます。若い研究者の方々には、この機会を活かして、一緒に世界に研究を発信していただければと思います。がんサポーティブケア学会には世界でも少ないがん悪液質に特化した研究グループがありますので、まずは、そこに参加していただきたいと思います。参考1)NEXTAC-TWO試験(UMIN)2)NEXTAC-THREE試験(jRCT)

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進行食道がん1次治療、化療にペムブロリズマブ併用でOS延長/Lancet

 進行食道がんの1次治療において、抗PD-1抗体ペムブロリズマブ+化学療法はプラセボ+化学療法と比較して、PD-L1陽性(CPS≧10)の食道扁平上皮がん患者の全生存(OS)期間を延長した。また、食道扁平上皮がん患者、PD-L1陽性(CPS≧10)患者、ならびに組織型にかかわらず全無作為化患者のOS期間および無増悪生存(PFS)期間を延長し、有害事象はすべて管理可能であることが示された。韓国・成均館大学校のJong-Mu Sun氏らが、世界26ヵ国168施設で実施された国際共同無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験「KEYNOTE-590試験」の結果を報告した。これまで進行食道がんの1次治療は、フルオロピリミジン+プラチナ系薬剤併用療法に限られていた。Lancet誌2021年8月28日号掲載の報告。KEYNOTE-590試験は未治療の食道がん患者749例でOSを評価 研究グループは、未治療の組織学的/細胞学的に確認された局所進行切除不能/転移のある食道腺がん/扁平上皮がん、またはSiewert type 1食道胃接合部腺がん(PD-L1検査値にかかわらず)で、RECIST ver. 1.1に基づく測定可能病変を有し、ECOG PSが0/1の18歳以上の患者を、ペムブロリズマブ(200mgを3週ごと最大35サイクル)+化学療法(5-FU[800mg/m2を1~5日目に3週ごと最大35サイクル]+シスプラチン[80mg/m2を1日目に3週ごと最大6サイクル])群、またはプラセボ+化学療法群に、地域(アジアvs.非アジア)、組織型(腺がんvs.扁平上皮がん)、ECOG PS(0 vs.1)で層別化し、1対1の割合で無作為に割り付けた。患者、治験責任医師およびスタッフは、治療群およびPD-L1バイオマーカーの結果について盲検化された。 KEYNOTE-590試験の主要評価項目は、PD-L1 CPS 10以上の食道扁平上皮がん患者におけるOS、食道扁平上皮がん患者、PD-L1 CPS 10以上の患者、無作為化された全患者におけるOSおよびPFSであった。 KEYNOTE-590試験は2017年7月25日~2019年6月3日に、1,020例がスクリーニングされ、749例がペムブロリズマブ+化学療法群(373例、50%)、またはプラセボ+化学療法群(376例、50%)に割り付けられた。KEYNOTE-590試験の初回中間解析でペムブロリズマブ群のOSが有意に延長 KEYNOTE-590試験は初回中間解析(追跡期間中央値22.6ヵ月)において、ペムブロリズマブ+化学療法群はプラセボ+化学療法群と比較し、PD-L1 CPS 10以上の食道扁平上皮がん患者(OS期間中央値13.9ヵ月vs.8.8ヵ月、ハザード比[HR]:0.57、95%信頼区間[CI]:0.43~0.75、p<0.0001)、食道扁平上皮がん患者(12.6ヵ月vs.9.8ヵ月、0.72、0.60~0.88、p=0.0006)、PD-L1 CPS 10以上の患者(13.5ヵ月vs.9.4ヵ月、0.62、0.49~0.78、p<0.0001)、ならびに無作為化された全患者(12.4ヵ月vs.9.8ヵ月、0.73、0.62~0.86、p<0.0001)で、OSの優越性が示された。 また、PFSに関してもペムブロリズマブ+化学療法群はプラセボ+化学療法群と比較し、食道扁平上皮がん患者(6.3ヵ月vs.5.8ヵ月、HR:0.65、95%CI:0.54~0.78、p<0.0001)、PD-L1 CPS 10以上の患者(7.5ヵ月vs.5.5ヵ月、0.51、0.41~0.65、p<0.0001)、無作為化された全患者(6.3ヵ月vs.5.8ヵ月、0.65、0.55~0.76、p<0.0001)で、優越性が示された。 Grade3以上の治療関連有害事象の報告は、ペムブロリズマブ+化学療法群で266例(72%)、プラセボ+化学療法群で250例(68%)であった。

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日本人のがん患者の新型コロナウイルス抗体レベルは低いのか/JAMA Oncol

 がん患者における新型コロナ抗体レベルは健康成人と比べて低いのか。わが国のがん患者と、非がん罹患者としての医療者のあいだで、血清SARS-CoV-2抗体の状態を比較した国立がんセンター中央病院 矢崎 秀氏らの前向き研究が発表された。 対象は2020年8月3日~10月30日に、東京周辺の2つのがんセンターから、16歳以上のがん患者と医療者で前向きに登録された。 評価項目は、がん患者と医療者の血清有病率と抗体レベル。血清陽性の定義は、ヌクレオカプシドIgG(N-IgG)および/またはスパイクIgG(S-IgG)の陽性であった。がん患者は、薬物療法、外科手術、放射線療法などのがん治療を受けている。 主な結果は以下のとおり。・がん患者500例(年齢中央値62.5歳、男性55.4%)と医療者1,190例(年齢中央値40歳、男性25.4%)が登録された。・がん患者の97.8%は固形腫瘍で、1ヵ月以内に抗がん治療を受けていた患者は71.0%であった。・血清有病率は、がん患者1.0%、医療者0.67%と同等であった(p=0.48)。・抗体レベルは2種とも、医療者に比べがん患者で有意に低かった(N-IgG抗体:p<0.001、S-IgG抗体:p<0.0001)。[がん患者における薬物療法と躯体レベルの関係]・化学療法を受けた患者のN-IgGレベルは、化学療法を受けなかった患者より有意に低かった(p=0.04)。・免疫チェックポイント阻害薬(ICI)投与を受けた患者の抗体レベルは2種ともICI投与を受けなかった患者より有意に高かった(N-IgGレベル:p=0.02、 S-IgGレベル:p=0.02)。 この前向き研究では、SARS-CoV-2の血清有病率はがん患者と医療者で差はなかったが、抗体レベルはがん患者で有意に低かった。また、がん患者においては治療薬剤によって抗体レベルに差があった。 筆者は、がんの合併は、SARS-CoV-2への免疫応答に影響を与える可能性があることを示唆している、と述べている。

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第74回 膵がん治療に欠かせないアブラキサン10月供給停止へ、学会、患者会が他工場製品の緊急承認要望

“末期”となり抗体カクテルも効かなかった菅首相こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。菅 義偉首相が昨年の安倍 晋三前首相に続き、またまた投げ出し退陣をすることになりました。コロナ対策も総じて後手後手でしたが、自身の政権延命策も後手後手の印象で、最後は自分で自分を“詰んで”しまいました。新聞やテレビは、退陣に追い込まれるに至ったいくつかの潮目について解説していましたが、個人的にはコロナ対策で8月2日に政府が打ち出した「新型コロナウイルスの感染者は重症患者を除き自宅療養を基本」とした方針が大きかったと思っています(「第70回 真夏のホラー、コロナ患者「重症者以外自宅療養」方針めぐるドタバタで考えた“野戦病院”の必要性」参照)。この方針は「棄民政策」とまで批判され、その後変更を余儀なくされましたが、「国民の安全、安心」と言いながら、コロナ患者の現状をまったく見ていなかったことが、この一件で明らかになりました。前回に書いた抗体カクテル療法は、発症早期の投与が求められる治療法ですが、“末期”だった自身の政権に効く“特効薬”はもはやなかったようです。今週はコロナを離れ、がん治療の現場を騒がせている抗がん剤のニュースを取り上げます。膵がん患者にとっては死活問題大鵬薬品工業のがん治療薬「アブラキサン点滴静注用100mg」(パクリタキセル アルブミン懸濁型)の供給が2021年10月以降、停滞することが明らかになり、がん治療の現場やがんの患者会では大騒ぎとなっています。この問題、夏の初めころから腫瘍内科医の間では話題となっていたようですが、表沙汰にはなっていませんでした。8月18日、大鵬薬品は「アブラキサン点滴静注用100mg供給に関するお詫び」と題した文書を医療機関向けに出し、「10月以降安定供給に一時的な支障を来す」と公表しました。2日後の8月20日には、全国のがん患者会でつくる「全国がん患者団体連合会」が厚生労働省や大鵬薬品などに対し「出庫調整並びに供給停止に関する要望書」を提出したことで、一般メディアも知るところとなりました。この要望書では、アブラキサンは膵がん、乳がん、胃がん、肺がんの治療のために重要であり、特に膵がんの治療には不可欠で、死活問題になりかねない状況だとして、供給停止に至った理由や対応策、今後の見通しなどについて速やかに情報公開を行うこと、医療機関での在庫を把握して、特に必要とする患者に対して適切に配分されるようにすることなどを求めました。アブラキサンについては、乳がん、胃がん、肺がん(非小細胞肺がん)に関してはパクリタキセルで代用できますが、膵がんでは代用品がありません。国内では年間4万人が使用しており、全アブラキサンの約65%が膵がんに使用されているとのことです。アリゾナ州フェニックスの工場の不具合なぜアブラキサンが供給停止になるのか…。はじめにこのニュースを聞いたときにはコロナの影響かとも思ったのですが、どうもそうではないようです。専門誌の報道やすい臓がんの患者会サイト(PanCAN)などによれば、大鵬薬品の海外生産拠点である米国のAbraxis BioScience社(米Bristol-Myers Squibb社の子会社)のアブラキサンの製造工場(アリゾナ州フェニックス)で製造上での不具合が見つかり、生産が中断したことから海外の供給先の1つである日本への供給が停止した、とのことです。なお、北米(米国、カナダ)とヨーロッパ(英国など)ではアブラキサンの供給停止は起こっておらず、日本への供給ストップは海外供給を担当しているアリゾナ工場の不具合が原因とのことです。日本以外ではオーストラリアでも供給停止となっています。大鵬薬品は供給停止の理由について「米国のメーカーから『製造工程に関する定期的な検証にて再評価が必要となる旨の連絡』があった」と説明していますが、詳しい内容は明らかにしていません。がん関連の6学会が合同声明、胃がん、乳がん、肺がん患者には切り替えを勧めるアブラキサン供給停止問題を受け、がん関連の6学会(日本臨床腫瘍学会、日本癌治療学会、日本膵臓学会、日本胃癌学会、日本乳癌学会、日本肺癌学会)は8月26日、医療関係者に対して合同声明を出しました。現在の状況が続くとアブラキサンの国内の在庫が10月中旬でなくなることが予想され、現時点では供給の目処が立っていないことから、声明では以下の3点を医療関係者に求めました。1.現在アブラキサンによる治療を継続中の患者さんについては、アブラキサンによる治療に効果があり継続中の患者さんを最優先してください。胃癌・乳癌・肺癌患者さんにおきましてはアブラキサンをパクリタキセルに切り替えるなど代替治療を積極的にご検討ください。2.新規に治療を開始する患者さんについては、代替治療への切り替えが困難な膵がん患者さんやアルコール不耐(パクリタキセルへの代替困難)の患者さんの治療を優先ください。胃癌・乳癌・肺癌患者さんにおきましてはアブラキサンをパクリタキセルに切り替える(肺癌、胃癌)か、他の治療法に切り替える(乳癌)など代替治療を積極的にご検討ください。3.アブラキサンはもとより、パクリタキセルなどの代替薬の必要以上の購入はお控えください。膵臓学会は他製造工場の製品の緊急承認求める9月1日には、膵がん治療の専門医の集まりである日本膵臓学会が、厚生労働省と医薬品医療機器総合機構(PMDA)に対してアブラキサンの供給一時停止という事態の打開を訴える要望書を提出しました。要望書では、「アブラキサンはゲムシタビンとの併用で進行膵がんの1次化学療法薬として延命効果が証明され、最も多く用いられている極めて重要な薬剤です。アブラキサンは膵がんにおいて代替薬が無く、供給に支障を来した状況では進行膵がん患者の生命予後に直結する極めて重大な事態となります」と供給停止の深刻さを指摘、その上で、次の2点を要望しました。1.アブラキサン製造所に関する一部変更の緊急承認(今回問題が生じている日本向けアブラキサン製造所以外で製造されたアブラキサンの緊急承認)。2.アブラキサンの海外ジェネリック製品の緊急承認Abraxis BioScience社のアブラキサンの製造拠点は米国イリノイ州メルローズ・パークとアリゾナ州フェニックスの2ヵ所にあります。日本向け製品はフェニックスで製造されており、こちらだけが製造が止まっています。そこでメルローズ・パークで製造されたものを緊急承認してもらうとともに、欧州で流通しているジェネリックも使えるようにしてくれ、という要望です。なお、全国がん患者団体連合会も同様の要望を準備しているとのことです。ファイザーのパクリタキセルも出荷調整へ今回の事態の影響はアブラキサンだけではなく、パクリタキセルにも及んでいます。パクリタキセルを供給するファイザーは8月26日、医療関係者向けに「パクリタキセル点滴静注液の出荷調整のご案内」を出しました。それによると、ファイザーはパクリタキセルを「他社同種同効薬の出荷調整の影響から平常時を大幅に超える需要が想定されるため、既存のお得意様への供給を継続すべく関係卸様への出荷調整を実施」し、「しばらくの間は新規ご採用を辞退する」としています。大鵬薬品お詫び2報でも原因わからず当の大鵬薬品ですが、9月2日にお詫びの第2報を出しました。しかし、ここでも「当該製造拠点にて原因調査およびこれまでに製造した製品への影響度評価を進めております」と、原因は説明されていません。そして、「現在弊社が保有している在庫から鑑み、本製品のメーカー在庫消尽は10 月中旬頃となる可能性が出てまいりました」として、「出庫調整の後、在庫がなくなり次第、供給を一時停止」としています。供給の再開時期については、「グローバル在庫を調整の上、日本市場向け製品の輸入を現在交渉しているところ」とのことです。医薬品供給体制の脆弱さが浮き彫りにそれにしても、米国の1工場の不具合で、がん患者が窮地に追い込まれるとは、日本の医薬品供給体制の脆弱さが改めて浮き彫りになった格好です。日本国内で使用されている薬剤のうち、がん治療に用いられる分子標的治療薬や抗体医薬はその多くが海外から輸入されています。しかも今回のように、1ヵ所の製造所に依存しているケースもあります。アブラキサンについては、フェニックスの工場が停止した場合の対応策についてまったく考えていなかった大鵬薬品の責任は重いと言えるでしょう。他製造工場でつくられたアブラキサンやヨーロッパで流通しているジェネリックの確保が果たして可能なのか、そしてPMDAは緊急承認するのか、今後の展開が気になります。医薬品供給を巡っては、ジェネリックの自主回収(「第53回 まだまだ続く日医工自主回収、ジェネリックが再び「ゾロ」と呼ばれる日」参照)が問題になったばかりですが、海外の製造工場に依存するがん治療薬などについても、BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)を策定しておくなど、製薬会社にはしっかりとしたリスクマネジメントを期待したいところです。

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アントラサイクリンベース化療中の乳がん、心保護薬の併用でLVEF低下を予防

 イタリア・フィレンツェ大学Lorenzo Livi氏らがアントラサイクリンベースの化学療法で治療を受けている乳がん患者の無症候性の心臓損傷を軽減できるかどうかを調査した結果、β遮断薬のビソプロロールやACE阻害薬のラミプリル(日本未承認)を投与することで、がん治療に関連するLVEF低下や心臓リモデリングから保護する可能性を示唆した。JAMA Oncology誌2021年8月26日号オンライン版ブリーフレポートでの報告。 本研究であるSAFE試験は、イタリアの8施設の腫瘍科で実施された多施設共同無作為化プラセボ対照二重盲検比較試験で、12ヵ月で心臓評価を完了した最初の174例に関する中間分析。対象者の募集は2015年7月~2020年6月の期間で、中間分析は2020年に実施された。対象者はアントラサイクリンベースのレジメンを使用し、一次または術後の全身療法を受ける兆候があった患者で、事前に心血管疾患の診断を有していた患者は除外された。心臓保護薬としてビソプロロール、ラミプリル、ラミプリルとビソプロロール併用に割り付け、プラセボ群と比較。化学療法の開始から1年間、またはERBB2陽性者はトラスツズマブ療法の終了まで投与を行った。全グループの用量について、ビソプロロール(1日1回5mg)、ラミプリル(1日1回5mg)、プラセボを可能な範囲で体系的に漸増した。 主要評価項目は、無症状(10%以上悪化)の心筋機能(左心室駆出率[LVEF])と歪み(長軸方向の歪み[GLS:global longitudinal strain])で、2Dおよび3Dの心エコー法で検出した。 主な結果は以下のとおり。・対象者は174例の女性(年齢中央値48歳、範囲24〜75歳)だった。・12ヵ月間の3D心エコーでLVEFの低下状況を確認したところ、プラセボ群で4.4%、ラミプリル群、ビソプロロール群、併用群でそれぞれ3.0%、1.9%、1.3%の低下だった(p=0.01)。・全体的な長軸方向の歪みは、プラセボ群で6.0%、ラミプリル群とビソプロロール群でそれぞれ1.5%と0.6%悪化したが、併用群では変化しなかった(0.1%の改善、p<0.001)。・3D心エコーでLVEFが10%以上低下した患者数は、プラセボ群で8例(19%)、ラミプリル群で5例(11.5%)、ビソプロロール群で5例(11.4%)、併用群で3例(6.8%)だった。 ・プラセボ群15例(35.7%)は、ラミプリル群(7例:15.9%)、ビソプロロール(6例:13.6%)、および併用群(6例:13.6%)と比較して、GLSが10%以上も悪化を示した(p=0.03)。

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ペグフィルグラスチムの自動投与デバイスを国内申請/協和キリン

 協和キリンは、2021年8月30日、テルモと共同開発中の持続型G-CSF製剤ペグフィルグラスチム(製品名:ジーラスタ)の自動投与デバイスについて、がん化学療法による発熱性好中球減少症注の発症抑制を適応症とした製造販売承認申請を厚生労働省に行った。 今回の申請は、協和キリンが実施した、安全性の評価を目的とする第I相臨床試験の結果に基づくもの。 ペグフィルグラスチムは、がん化学療法剤投与終了後の翌日以降に投与されるのが通常である。 同デバイスは、ペグフィルグラスチムが一定時間後に自動で投与される機能を搭載している。そのため、がん化学療法と同日に使用することが可能となり、投与のための通院が不要となる。 患者の通院負担と医療従事者の業務負担の軽減につながることが期待されている。

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「遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)ガイドライン」刊行、ポイントは?

 遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)の診療に関しては、2017年に「遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)診療の手引き」が刊行されている。HBOC既発症者へのリスク低減手術の保険収載や、膵がん・前立腺がんへのPARP阻害薬の承認など、遺伝子検査に基づく治療・マネジメントがいっそう求められる中、Minds「診療ガイドライン作成マニュアル2017」を遵守する形で、今回新たにガイドラインがまとめられた。2021年8月7日、webセミナー「遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)診療ガイドライン 2021年版の解説(主催:厚生労働科学研究費補助金[がん対策推進総合研究事業]「ゲノム情報を活用した遺伝性腫瘍の先制的医療提供体制の整備に関する研究」班)が開催され、各領域のポイントが解説された。遺伝子診断・遺伝カウンセリング領域のポイント 遺伝子診断・遺伝カウンセリング領域の最も重要なコンセプトは「がん未発症と既発症を区別せず、遺伝的な特性としてHBOCを捉えるという点」と平沢 晃氏(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科臨床遺伝子医療学)。BRCA遺伝情報を知ることのメリットは、(1)本人の治療法の選択、(2)本人のがん予防、(3)血縁者へのがん予防であると整理した。 現在、手術や検査の対象によって、保険収載と未収載が混在している状況がある。遺伝BQ1ではこれらの状況について整理している。遺伝BQ2では、表「NCCNガイドラインの遺伝学的検査の基準」を掲載し、どのようなクライエントにBRCA遺伝学的検査を推奨するかがまとめられている。平沢氏はこの表のうち、 乳がんの発症者で・45歳以下の発症・50歳以下の発症で条件に当てはまる場合・60歳以下のトリプルネガティブ乳がん・年齢を問わず1人以上の近親者が条件に当てはまる場合・卵巣がん発症者・男性乳がんについて、2020年よりBRCA遺伝学的検査が保険診療の対象となったことを解説。その他(既知のBRCA1/2の病的バリアントを保持する家系の個人、膵がん、高グレード前立腺がんで条件に当てはまる場合、腫瘍プロフィール検査でBRCA1/2の病的バリアントを認めた場合)は未収載となっている。 また今回のガイドラインでは、「遺伝BQ10 生殖に関する遺伝カウンセリングにはどのように対応するべきか?」を新設。BRCA病的バリアント保持女性の妊孕性温存への対応フローが掲載されている。乳がん領域のポイント 領域リーダーを務めた有賀 智之氏(都立駒込病院乳腺外科)はまず、BRCA遺伝学的検査を推奨する乳がん患者について、従来からの血縁者に乳がんまたは卵巣がん患者がいる場合のほか、膵がん患者がいる場合が追加されたことが大きな変更点とした(乳癌BQ1)。 BRCA病的バリアントを有する乳がん患者に対する乳房温存療法については、2017年版の手引きでは「推奨されない」となっていたのに対し、今回は「条件付きで行わないことを推奨する」と変更された(乳癌CQ3)。背景について同氏は、ガイドライン作成にあたり独自に実施されたメタアナリシスの結果、残存乳房内再発率が散発性乳がん患者と比較して高いこと、この傾向は観察期間が長くなるほど明確になることから、温存乳房内の新規発症リスクは長期に継続するものと推察されたと解説。一方で、生存率の悪化についてのデータは認められなかったことから、上記リスクや継続的なスクリーニングの必要性などを理解したうえで選択する場合は、否定しないという位置づけとした。 そのほか、RRMについては2020年4月に保険適応となり、乳がん既発症/未発症のいずれにおいても新規乳がんのリスク低減効果が示されている(乳癌CQ1、2)。造影乳房MRIについては、乳がん既発症/未発症のいずれも条件付きで推奨とされたが(乳癌CQ4、5)、乳がんも卵巣がんも未発症の場合BRCA病的バリアント保持者へのサーベイランスは保険未収載となっている。この点について同氏は、未発症者においてもMRIサーベイランスからのベネフィットは得られるので、早期に対応されることを期待したいと話した。卵巣がん領域のポイント 卵巣がん領域では、領域リーダーを務めた岡本 愛光氏(東京慈恵会医科大学産婦人科学講座)が登壇、解説を行った。BRCA病的バリアント保持者に対するRRSOについて、標準的な術式として低侵襲(腹腔鏡)手術が推奨され、術中播種を予防するための手術操作が箇条書きで示された(卵巣癌BQ2)。RRSOの際の卵管の病理検索については、SEE-FIMプロトコールに準じることが条件付きで推奨され、条件付きとされた理由として、「STIC検出の臨床的意義が現状不確実であること、標本作成等で病理医の負担が増加することがある」と説明した(卵巣癌CQ2)。 卵巣がんに対する初回薬物療法としては、BRCA病的バリアント保持者においてもプラチナ製剤併用レジメンによるOSの有意な延長がRCT1報、症例対象研究5報で示されており、本ガイドラインでも推奨が示された(卵巣癌CQ3)。PARP阻害薬については、プラチナ製剤を含む初回化学療法後に奏効した同患者に対し、維持療法としての使用を条件付きで推奨するとされた。条件付きとされた理由は、薬剤費が高額なこと、二次がんを含めた長期合併症に関するデータが乏しいこと、至適投薬期間については不確実性が残ることが挙げられた。前立腺がん領域のポイント 「BRCAバリアント陽性前立腺がんの大きな特徴は、診断時からのリンパ節転移・遠隔転移症例が有意に多いこと」と小坂 威雄氏(慶應義塾大学医学部泌尿器科教室)。前立腺がんの早期限局がんでの発見例の予後は非常によいことから、転移前にできるだけ早く見つけることが何よりも重要と話した。現在継続中の試験ではあるものの、大規模コホート研究であるIMPACT研究を根拠として、本ガイドラインでは未発症BRCAバリアントの男性保持者に対して、より低いPSAカットオフ値(3.0ng/mL)を用いて40歳からのサーベイランスを実施することを条件付きで推奨している(前立腺癌CQ1)。 また、前立腺がんにおいては生殖細胞系列だけでなく、体細胞系列のバリアントを有する症例が約半数いる。「家族歴が全くない転移前立腺がん患者さんの中にもBRCAバリアント保持者がいる可能性が指摘されている」と小坂氏は話し、BRCA遺伝学的検査の実施が推奨される前立腺がん患者の条件として、他のがん種で条件とされている家族歴のほか、「遠隔転移またはリンパ節転移を有する転移性前立腺がん患者」が加えられていることが大きな特徴とした(前立腺癌FQ1)。また治療については、2020年に新規内分泌療法後の転移を有する症例について、PARP阻害薬が保険収載された。同氏は、今後実臨床における有効性データが蓄積していくことが望まれると話した(前立腺癌FQ2)。膵がん領域のポイント 膵がんにおいて、BRCAバリアント陽性患者は4~7%と報告されている。BRCA遺伝学的検査の実施が推奨される膵がん患者の条件としては、家族歴のほか、「遠隔転移を有するまたは術後再発」であることが示されている(膵癌FQ1)。尾阪 将人氏(がん研有明病院肝胆膵内科)は、「膵がんの治療選択肢は非常に限られており、遺伝学検査を行うことで選択肢を広げることの意義は大きい」と話した。 BRCAバリアント保持者に対する膵がんのスクリーニングの考え方に関して、同氏は遺伝子変異+膵がん家族歴の聴取が非常に重要と指摘。第一度近親者内に膵がん患者が1人以上おりかつBRCA2陽性の場合SIR(標準化罹患比)が5倍以上、第一度近親者内に膵がん患者が2人以上おりかつBRCA2陽性の場合、SIRが30倍以上というデータを紹介した。本ガイドラインでは、「少なくとも1人の第一度近親者に膵がん家族歴のあるBRCA1、2病的バリアント保持者に対し、MRIまたは超音波内視鏡を用いたスクリーニングを考慮する」とされている(膵癌FQ2)。 治療については、POLO試験においてBRCA病的バリアントを有するプラチナ感受性切除不能膵がんに対する維持療法としてオラパリブがPFSを延長したことを根拠として、同患者に対する治療を条件付きで推奨している(膵癌CQ1)。同氏は留意点として、推奨文から下記を抜粋した:・OSの延長効果を認めていないことを患者と共有したうえで投与することが望ましい・BRCA病的バリアントを有する膵がん患者の家系に対しても、継続的な遺伝カウンセリングを実施していくことが望ましい

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ペムブロリズマブ、MSI-H大腸がんとTN乳がんに適応拡大/MSD

 MSDは2021年8月25日、抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)について、治癒切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する結腸・直腸がん(大腸がん)およびPD-L1陽性のホルモン受容体陰性かつHER2陰性の手術不能または再発乳がんに関する国内製造販売承認事項一部変更の承認を取得したことを発表した。治癒切除不能な進行・再発MSI-H大腸がんに対する適応拡大について 今回の承認は、化学療法歴のない治癒切除不能な進行・再発のミスマッチ修復(MMR)欠損またはMSI-Highを有する結腸・直腸がん患者307例(日本人22例を含む)を対象とする国際共同第III相試験KEYNOTE-177試験のデータ等に基づく。 同試験において、ペムブロリズマブ群は化学療法群と比較して、主要評価項目の一つである無増悪生存期間(PFS)を有意に延長した(HR:0.60、95%CI:0.45~0.80)。安全性については、安全性解析対象例153例中、ペムブロリズマブ群で高頻度(10%以上)に認められた有害事象は、下痢(24.8%)、疲労(20.9%)、そう痒症(13.7%)、悪心(12.4%)、AST増加(11.1%)、発疹(11.1%)、関節痛(10.5%)および甲状腺機能低下症(10.5%)であった。PD-L1陽性のHR陰性/HER2陰性の手術不能または再発乳がんに対する適応拡大について 今回の承認は、転移・再発乳がんに対する化学療法歴のない転移・再発または局所進行性のトリプルネガティブ乳がん患者847例(日本人87例を含む)を対象とした国際共同第III相試験KEYNOTE-355試験のデータ等に基づく。 同試験において、ペムブロリズマブ+化学療法(ゲムシタビンおよびカルボプラチン、パクリタキセルまたはnab-パクリタキセル)併用群はプラセボ+化学療法併用群に対して、PD-L1陽性(CPS≧10)患者323例(日本人28例を含む)において、主要評価項目の一つである無増悪生存期間(PFS)を有意に延長した(HR:0.65、95%CI:0.49~0.86)。安全性については、PD-L1陽性(CPS≧10)患者における安全性解析対象例219例中、ペムブロリズマブ併用群の主な副作用(20%以上)は、貧血(48.9%)、悪心(41.1%)、好中球減少症(39.7%)、脱毛症(34.7%)、疲労(29.2%)、好中球数減少(23.7%)、下痢(21.9%)、ALT増加(21.5%)および嘔吐(20.1%)であった。 なお、PD-L1の発現状況を検査するための体外診断薬として、アジレント・テクノロジー株式会社のPD-L1 IHC 22C3 pharmDx「ダコ」が承認されている。

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高リスク尿路上皮がんのニボルマブ術後補助療法をFDAが承認/BMS

 ブリストル マイヤーズ スクイブは、2021年8月20日、米国食品医薬品局(FDA)が、術前補助化学療法やリンパ節転移の有無、PD-L1の発現レベルにかかわらず、根治切除後の再発リスクが高い尿路上皮がん(UC)患者の術後補助療法として、ニボルマブを承認したと発表。 この承認は、ニボルマブとプラセボを比較した第III相CheckMate-274試験に基づいている。 同試験において、ニボルマブ群は、プラセボ群と比較して、無病生存期間(DFS)中央値を延長した(ニボルマブ群20.8ヵ月 vs.プラセボ群10.8ヵ月、ハザード比:0.70、95% CI:0.57~0.86、p=0.0008)。

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HER2陽性早期乳がんへのトラスツズマブの上乗せ効果~メタ解析/Lancet Oncol

 HER2陽性早期乳がんに対する補助化学療法へのトラスツズマブ上乗せによる再発率と死亡率への長期的ベネフィットについて、Early Breast Cancer Trialists’ Collaborative group(EBCTCG)が7つの無作為化試験のメタ解析により検討した。その結果、トラスツズマブ上乗せにより、患者および腫瘍の特徴にかかわらず、乳がん再発率を34%、乳がん死亡率を33%減少させたことが示唆された。Lancet Oncology誌2021年8月号に掲載。 本研究は、化学療法+トラスツズマブを化学療法のみと比較した無作為化試験における個々の症例データのメタ解析。リンパ節転移なしまたはありの手術可能な乳がん女性を登録した無作為化試験が含まれる。ベースラインの特徴、最初の遠隔再発と局所再発もしくは2次発がんの日付と部位、死亡の日付と原死因について、各症例のデータを収集した。主要アウトカムは、乳がん再発率、乳がん死亡率、再発なしの死亡率、全死亡率とした。年齢、リンパ節転移の有無、エストロゲン受容体(ER)の状態、試験で層別化し、ITT集団で解析した。トラスツズマブ併用群と化学療法単独群の年間イベント発生率比(RR)とその信頼区間(CI)をlog-rank検定を用いて推定した。 主な結果は以下のとおり。・選択基準を満たした無作為化試験は7件、計1万3,864例で、2000年2月~2005年12月に登録された。・予定治療期間の平均は14.4ヵ月、観察期間中央値は10.7年(四分位範囲:9.5~11.9)だった。・化学療法単独よりトラスツズマブ併用のほうが、乳がんの再発リスク(RR:0.66、95%CI:0.62~0.71、p<0.0001)および乳がん死亡リスク(RR:0.67、95%CI:0.61~0.73、p<0.0001)が低かった。10年での再発率は絶対値で9.0%(95%CI:7.4~10.7、p<0.0001)減少し、乳がん死亡率では6.4%(95%CI:4.9~7.8、p<0.0001)減少、全死亡率では6.5%(95%CI:5.0~8.0、p<0.0001)減少した。再発なしの死亡率は増加しなかった(0.4%、95%CI:-0.3~1.1、p=0.35)。・トラスツズマブ上乗せによる再発率の減少は、無作為化後0~1年で最大であり(RR:0.53、99%CI:0.46〜0.61)、2〜4年(RR:0.73、99%CI:0.62〜0.85)および5~9年(RR:0.80、99%CI:0.64~1.01)ではベネフィットが継続し、10年目以降はほとんどフォローアップされていなかった。また、患者および腫瘍の特徴(ERの状態含む)にかかわらず、同様だった。

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肺がん、新PD-1阻害薬cemiplimab+化学療法の第III相試験(EMPOWER-Lung3)が有効中止/Sanofi

 進行非小細胞肺がん(NSCLC)に対する新規PD-1阻害薬cemiplimabとプラチナダブレット化学療法の併用の有用性を検討した第III相EMPOWER-Lung3試験は、主要評価項目である全生存期間(OS)を達成し、中間解析で有効中止された。 EMPOWER-Lung3試験は、未治療のStage IVまたはStage IIIB/CのNSCLCにおいて、PD-L1発現および組織型(扁平上皮および非扁平上皮)に関係なく、cemiplimab+プラチナダブレット化学療法とプラチナダブレット化学療法単独を比較した無作為化多施設第III相試験。 466例の患者が登録され、cemiplimab 350 mg(n=312)またはプラセボ(n=154)に2対1に無作為に割り付けられた。結果、OS中央値はcemiplimab+化学療法群22ヵ月、化学療法単独群13か月で、cemiplimab+化学療法群で有意に改善した(ハザード比:0.71、95%信頼区間:0.53〜0.93、p=0.014)。cemiplimabの新しい安全性シグナルは特定されなかった。 試験の早期中止の決定は、中間分析中の独立データ監視委員会(IDMC)による推奨に基づいたもの。詳細な有効性と安全性のデータは、今後の医学会議で発表される予定。

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EGFR EXON20変異の非小細胞肺がんに対するEGFR-MET二重特異性抗体amivantamabの評価(CHRYSALIS)/JCO

 EGFR exon20挿入変異(Exon20ins)を伴う非小細胞肺がん(NSCLC)は、従来のチロシンキナーゼ阻害薬に対して耐性を示す。一方、amivantamabはEGFRとMETの双方の受容体の細胞外ドメインに結合し、TKI結合部位での耐性を回避するEGFR-MET二重特異性抗体である。 韓国のKeunchil Park氏らは、化学療法進行後のEGFR Exon20insを有するNSCLC患者に対する第I相試験初回解析において、amivantamab単剤の有効性と忍容性を報告した。 CHRYSALISは、EGFR Exon20ins NSCLCの集団を含む、非盲検用量漸増・拡大第I相試験である。・対象:プラチナベース化学療法後のEGFR Exon20ins NSCLC患者・介入:第II相推奨用量1,050mgのamivantamab(初回は4週ごと、その後5週目から2週ごと)を投与・主要評価項目:用量制限毒性と全奏効率(ORR) 主な結果は以下のとおり。・有効性評価集団(n=81)の年齢中央値は62歳、49%がアジア人であった。・前治療ライン数中央値は2であった。・ORRは40%(CR3例)であった。・無増悪生存期間の中央値は8.3ヵ月、奏効期間中央値は11.1ヵ月であった。・頻度の多い有害事象は、皮疹86%(98例)、インフージョンリアクション66%(75例)、爪囲炎45%(51例)であった。

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下痢症状から急性胃腸炎を診断、ゴミ箱診断を防ぐには?【Dr.山中の攻める!問診3step】第5回

第5回 下痢症状から急性胃腸炎を診断、ゴミ箱診断を防ぐには?―Key Point―下痢症状から急性胃腸炎の診断をするときは、本当に診断が正しいのかどうか後ろめたい気持ちにならなければならない。なぜなら、ゴミ箱診断の可能性があるからである。48歳男性が動悸を主訴に救急室を受診。1週間前から臥位で寝ると息苦しいという。3日前に下痢と発熱が出現。昨日は37.9℃、水様便10回と嘔吐20回あり。意識清明で38.2℃、血圧230/102mmHg、心拍数132回/分(絶対性不整脈)、呼吸回数22回/分だった。ベラパミル(商品名:ワソラン)5mgを2回静注しても頻脈は変化なし。甲状腺機能を調べるとTSH:0.01μIU/mL(基準値:0.3~4.0)、 FT4:8ng/dL(基準値:0.9~1.7)であった。このとき優秀な後期研修医が「発熱+下痢+嘔吐+頻脈+心不全、これって甲状腺クリーゼじゃないの」と気が付いてくれた。◆今回おさえておくべき疾患はコチラ!経口摂取や消化液の分泌により、毎日7.5Lの水分が消化管に流れ込む。小腸でほとんどの水分が吸収され、1.2Lの水分が大腸に到達する。大腸は1Lの水分を吸収するため、正常の便は200mLの水分を含む。したがって、大量の下痢は小腸に病変があることを示す1)急性下痢は感染症、慢性下痢は感染症以外で起こることが多い急性下痢では脱水になっていないかの評価が重要である就寝中に起こる下痢は器質的疾患の存在を示唆する大腸がんでは便秘のみならず下痢となることもある【STEP1】患者の症状に関する理解不足を解消させよう【STEP2】疾患の緊急性を見極める下痢は腸管以外の原因から考える。下痢の原因は腸管にあると考えがちだが、緊急性が高い腸管以外の疾患から考えるようにするとよい。●緊急性が高い“腸管以外”の疾患甲状腺クリーゼ、アナフィラキシー、トキシックショック症候群(TSS)、敗血症、腹膜炎、膵炎、薬剤●うんちしたい症候群(しぶり腹)大動脈瘤の切迫破裂、直腸がん、異所性妊娠、虚血性腸炎、炎症性腸疾患、細菌性大腸炎、急性虫垂炎、憩室炎、直腸異物*しぶり腹とは激しい便意にもかかわらず、ほとんど便が出ない状態*S状結腸や直腸に刺激が加わるとしぶり腹になる●血便が出る感染性下痢症腸管出血性大腸菌、赤痢菌、サルモネラ、カンピロバクター、赤痢アメーバ【分類】■急性下痢(1)炎症性(大腸型)下痢腸管出血性大腸菌、赤痢菌、サルモネラ、カンピロバクター、赤痢アメーバ*発熱、少量頻回(8~10回/日)の血性下痢、しぶり腹(2)非炎症性(小腸型)下痢ノロウイルス、ロタウイルス、コレラ、ウェルシュ、ランブル鞭毛虫*軽度の発熱、多量の水様下痢(3~4回/日)、悪心嘔吐、脱水■慢性下痢2)(1)浸透圧性下痢乳糖不耐症、下剤*乳糖不耐症は大人になって起こることがある*絶食により下痢は軽快する(2)炎症性下痢炎症性腸疾患、顕微鏡的大腸炎、放射線照射性腸炎、好酸球性腸炎、悪性腫瘍(大腸がん、悪性リンパ腫)*NSAIDsやプロトンポンプ阻害薬は顕微鏡的大腸炎を起こす*炎症性腸疾患は30~40代で多く、顕微鏡的大腸炎は70~80代に多い。(3)吸収不良症候群慢性膵炎、small intestinal bacterial overgrowth(SIBO、小腸内細菌異常増殖症)、短腸症候群*脂肪便は悪臭を伴い、便器に付着したり水に浮いたりする(4)分泌性下痢神経内分泌腫瘍(カルチノイドやVIPoma)、胆汁酸による下痢(5)腸管運動の異常過敏性腸症候群、糖尿病、甲状腺機能亢進症、強皮症(6)慢性感染症ランブル鞭毛虫、アメーバ赤痢、Clostridium difficile【STEP3】検査で原因を突き止める●急性下痢のほとんどは自然治癒するので検査は不要●以下の症状があれば検査が必要発熱(38.5℃超)、血便、脱水、ひどい腹痛、免疫力が低下している、高齢者(70歳超)、衛生状態が悪い外国から帰国症状に応じて血算、生化学、ヘモグロビン、便中白血球、便培養、CD毒素/抗原、寄生虫、大腸カメラを考慮する。●薬が原因の下痢は多い(薬剤性下痢)化学療法薬、抗菌薬、NSAIDs、アンギオテンシンンII受容体拮抗薬(とくにオルメサルタン)、プロトンポンプ阻害薬、ジゴキシン、メトホルミン、コルヒチン、ジスチグミン*、人工甘味料、アルコール*ジスチグミン(商品名:ウブレチド)はコリン作動性クリーゼを起こす<参考文献>1)Mansoor AM. Frameworks for Internal Medicine. p.176-197.2)Alguire PC, et al. MKSAP18 Gastroenterology and Hepatology. 2018. p.26-35.

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免疫チェックポイント阻害薬:“予後に影響大”の心筋炎を防ぐには? 【見落とさない!がんの心毒性】第5回

はじめにこれまでの連載ではアントラサイクリン心筋症、そしてHER2阻害薬やVEGFR-TKIといった分子標的薬による心毒性が取り上げられてきました。今回は、免疫チェックポイント阻害薬について、塩山と向井が解説します。この薬は患者さん自身の免疫系を活用することによってがん細胞を攻撃するという新しい概念の治療法です。自然免疫と獲得免疫免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の作用機序を理解するために、まずは昔に勉強した(はずの)基本的な免疫システムの復習から始めましょう。免疫系には、「自然免疫」と「獲得免疫」の2つがあります。自然免疫とは生まれつき持っている免疫反応で、細菌やウイルス、がん細胞といった異物を最初に攻撃するシステムです。病原体(抗原)を好中球やマクロファージ、NK(ナチュラルキラー)細胞といった食細胞が認識して攻撃します。それに引き続いて樹状細胞が活性化します。抗原を取り込んだ樹状細胞は、異物の断片(ペプチド)を主要組織適合遺伝子複合体(MHC :major histocompatibility complex)分子に結合してヘルパーT細胞に提示(抗原提示)します。そしてヘルパーT細胞から指令を受けたB細胞が抗体を産生し、またキラーT細胞が誘導されることで異物を攻撃するシステムが獲得免疫です(図1)。(図1)自然免疫と獲得免疫画像を拡大する免疫チェックポイント阻害薬(ICI)免疫システムには免疫反応を活性化するアクセル(共刺激分子)と、抑制するブレーキ(共抑制分子)が存在します。共抑制分子は自己に対する不適切な免疫応答や過剰な免疫反応を抑制し、免疫システムが暴走することを防いでいます。T細胞上にはPD-1(Programmed cell death 1)やCTLA-4(Cytotoxic T lymphocyte- associated antigen 4)といった免疫チェックポイント分子が存在し、共抑制分子として作用しています。がん細胞に発現しているPD-L1や樹状細胞(抗原提示細胞)に発現しているB7といったリガンドがPD-1、CTLA-4にそれぞれ結合することによりT細胞の活性化が抑制され、免疫系からの攻撃を回避しています(図2:左)。ICIは免疫チェックポイント分子もしくはそのリガンドに結合してT細胞の抑制シグナル(ブレーキ)を解除することによってT細胞の活性化を誘導し、がん細胞に対する免疫応答を高めます(図2:右)。(図2)免疫チェックポイント阻害薬の作用機序画像を拡大するこの仕組みをつきとめ、がん免疫療法という新たな分野を開拓した京都大学の本庶 佑博士ならびにテキサス大学のジェームズ・アリソン博士に2018年ノーベル生理学・医学賞が授与されたことは記憶に新しいですね。現在承認されているICIには、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA-4抗体の3種類があります(表1)。適応症は年々拡大しており、手術、化学療法、放射線治療に次ぐ第4の治療法として期待されています。(表1)本邦で使用可能な免疫チェックポイント阻害薬画像を拡大する免疫関連有害事象(irAE)ICIによる免疫系の活性化に伴って、自己免疫疾患に類似した副作用を引き起こすことが知られています。従来の殺細胞性抗がん剤や分子標的薬による副作用とは異なる作用機序であり、免疫関連有害事象(irAE :immune-related adverse event)と呼ばれます。irAEは、皮膚、消化器、呼吸器、内分泌、神経など、全身のあらゆる臓器に発現することが報告されています1)(図3)。(図3)ICIによる有害事象[irAE]画像を拡大する心臓におけるirAEも心筋炎、心筋症、心膜疾患、不整脈など多岐にわたりますが、中でも心筋炎は予後に影響するため注意が必要です。心筋炎の発症頻度は~1%程度と決して多くはありませんが、中には劇症化する症例が存在し、致死率は50%に達すると報告されています2)。そのため早期に発見して適切に対応することが重要です。ICIによる心筋炎の発症機序として、心筋細胞に発現しているPD-L1と、T細胞上のPD-1の結合を阻害することで過剰な免疫応答が生じている可能性が考えられますが、それ以外にもいくつかの機序が推定されており、正確なメカニズムは明らかになっていません。irAE心筋炎の診断心筋炎に特異的な症状はなく、軽微な検査値異常のみで自覚症状をまったく認めないものから、劇症型心筋炎に進行して急変する症例まで多岐にわたります。有害事象の重症度は有害事象共通用語規準(CTCAE :Common Terminology Criteria for Adverse Events) ver. 5.0に基づいてGrade 1~5に分類されています(表2)。(表2)CTCAEによる心毒性の評価画像を拡大するICI投与中には、定期的にバイオマーカー(トロポニン、BNP)、心電図、心臓超音波検査のチェックが必要です。心筋炎の発症はICI開始3ヵ月以内が多いと言われていますので、投与初期にはとくに注意する必要があります。心筋炎を発症した症例のうち、9割以上にトロポニン上昇を認めますが、約半数では左室収縮能が正常であったという報告もあり3)、心臓超音波検査はあくまで補助的な診断ツールです。現時点では心筋生検が診断のゴールドスタンダードであり、病理組織学的にCD8陽性細胞障害性T細胞(キラーT細胞)、CD68陽性マクロファージ、CD4陽性ヘルパーT細胞の浸潤が特徴とされています。ただし感度があまり高くなく、またウイルス性心筋炎との鑑別が難しいことも念頭におく必要があります。近年では心臓MRI検査によるガドリニウム遅延造影(LGE)所見やT2-STIR画像が有用とされていますが、心筋生検と同様に偽陰性が存在するため、結果の解釈には注意する必要があります4)。最終的にはこれらの所見を組み合わせて総合的に診断します5)(表3)。(表3)ICI関連心筋炎の診断画像を拡大するirAE心筋炎の治療ICI投与中にトロポニンの上昇や心電図異常が出現した場合(Grade 1)、あるいは軽微な症状の場合(Grade 2)にはICIを休薬します。休薬のみで検査値異常や自覚症状が改善すれば投与再開も考慮しますが、十分なエビデンスがあるわけではありません。息切れなどの症状が増強すれば(Grade 2-3)、ICIを休薬した上でステロイドによる治療が必要です。基本的にはプレドニゾロン1~2mg/kgで治療を行いますが、循環動態が悪化していれば(Grade 4)ステロイドパルス療法(メチルプレドニゾロン1g/日)を3日間先行します。さらに病態に応じて、心臓ペーシングや機械的な循環動態の補助が必要な症例もあります。ステロイド治療に反応しない場合には、タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、インフリキシマブ、アバタセプトなどの免疫抑制剤や免疫グロブリン大量療法が有効であったという報告がありますが、エビデンスに乏しく、わが国では保険適応外です。おわりに2014年に登場したニボルマブは、がん免疫療法のブレークスルーとなり、今後もICIの開発は加速すると思われます。また2019年には患者さん自身のT細胞に遺伝子改変を行い、がん細胞を攻撃するキメラ抗原受容体(Chimeric Antigen Receptor: CAR)-T細胞療法が血液がんに対して保険承認され、個別化医療への期待が高まっています。近年ではさらなる相乗効果を期待して、ICIと標準治療(手術・化学療法・放射線療法)の併用療法や、2種類のICIによる併用療法も行われています。しかし複数の薬剤を併用することでirAEが増加することが懸念されていますので、循環器内科医とがん治療医の連携が今後益々重要になってくるでしょう。1)Wang DY, et al. JAMA Oncol. 2018;4:1721-1728.2)Salem JE, et al. Lancet Oncol. 2018;19:1579-1589.3)Mahmood SS, et al. J Am Coll Cardiol. 2018;71:1755-1764.4)Zhang L, et al. Eur Heart J. 2020;41;1733-1743.5)Bonaca MP, et al. Circulation. 2019;140:80-91講師紹介

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ペムブロリズマブ併用、PD-L1陽性進行TN乳がんでOS改善/MSD

 MSDは2021年7月27日、転移を有するトリプルネガティブ乳がん(mTNBC)患者を対象として抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)と化学療法との併用療法を評価する第III相KEYNOTE-355試験において、全生存期間(OS)の改善が認められたことを発表した。 同試験の最終解析の結果、PD-L1陽性(CPS≧10)のmTNBC患者に対する一次治療として、ペムブロリズマブと化学療法(ナブパクリタキセル、パクリタキセルまたはゲムシタビン/カルボプラチン)との併用療法は、化学療法単独と比較して統計学的に有意かつ臨床的に意味のあるOSの改善が認められた。なお、米国ではFDAが承認した検査で腫瘍にPD-L1の発現が認められる(CPS≧10)切除不能な局所再発または転移を有するトリプルネガティブ乳がんを適応症として、化学療法との併用療法が承認されている。今回のOSの結果は今後主要な学会で発表され、規制当局に提出される予定。 KEYNOTE-355試験は、化学療法歴のない切除不能な局所再発または転移を有する進行トリプルネガティブ乳がんの患者を対象として、ペムブロリズマブと3種の化学療法のうち1種との併用療法をプラセボと3種の化学療法のうち1種との併用療法と比較する2つのパートからなる、第III相無作為化プラセボ対照試験。主要評価項目はPD-L1陽性(CPS≧1およびCPS≧10)の患者およびすべての被験者(ITT集団)におけるPFSおよびOSであった。このほかの評価項目は客観的奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、病勢コントロール率(DCR)、患者報告アウトカム(PRO)および安全性。 KEYNOTE-355試験のパート2では、被験者847例を2:1の割合でペムブロリズマブ(200mgを3週間毎)と化学療法(ナブパクリタキセル、パクリタキセルまたはゲムシタビン/カルボプラチンから医師が選択)との併用療法、またはプラセボとナブパクリタキセル、パクリタキセルまたはゲムシタビン/カルボプラチンとの併用療法のいずれかに無作為に割り付けた。各群に登録された被験者のうち、CPS≧1のPD-L1陽性患者は約75%(ペムブロリズマブ+化学療法群566例中425例、プラセボ+化学療法群281例中211例)であり、CPS≧10のPD-L1陽性患者は約38%(ペムブロリズマブ+化学療法群566例中220例、プラセボ+化学療法群281例中103例)であった。

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新たな薬物療法などを収載、「胃癌治療ガイドライン」が3年ぶりの改訂

 2021年7月下旬、「胃癌治療ガイドライン 第6版」が発行された。胃癌治療ガイドラインとしては前版(2017年11月発行、2018年1月改訂)から3年ぶりの改訂となる。前版で採用された構成(教科書形式による解説+CQ)を踏襲しつつ、Minds診療ガイドライン作成マニュアル2017を参考とした作成方法を採用し、新たな薬剤や治療法の解説・推奨が追加された。胃癌治療ガイドラインは3年ごとを目処に改訂を予定 胃癌治療ガイドラインの前版からの主な変更点は以下のとおり。1)外科・内視鏡治療、化学療法、緩和的治療に関するCQを前版の26項目から32項目に増加(新たに設けられたCQには免疫チェックポイント阻害薬、ゲノム検査に関するものが含まれる)。2)日本胃癌学会と日本食道学会の実施した前向き研究結果に基づき、cT2-T4の食道胃接合部癌に対する手術アプローチとリンパ節郭清のアルゴリズムを示した。また食道胃接合部癌に関する3つのCQを作成し推奨を示した。3)腹腔鏡下手術およびロボット支援下手術について、最新の研究状況を踏まえた推奨を示した。4)切除不能進行・再発胃癌に対する化学療法のレジメンは、「推奨されるレジメン」、「条件付きで推奨されるレジメン」として、「治療法」の章のアルゴリズムに列記した。治療選択肢は増す一方、個々のレジメントを比較したエビデンスは十分でないため、優先順位は付けず、エビデンスレベルも記載しなかった。5)免疫チェックポイント阻害薬の最新の研究成果をCQにて解説した。 胃癌治療ガイドラインの巻末には、これまでのガイドラインが臨床現場でどう使われているか、実際を知るための調査として行われている「Quality Indicatorによる胃がん医療の均てん化・実態に関する研究」のデータ解析結果が収載されている。胃癌治療ガイドラインは今後も3年ごとを目処に改訂を予定するが、重要事項は学会サイト上の速報で発表するという。■胃癌治療ガイドライン 第6版編集:日本胃癌学会定価:1,650円(税込)発行:金原出版発行日:2021年7月20日金原出版サイト

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子宮内膜がんに対するペムブロリズマブ+レンバチニブをFDAが承認/メルク・エーザイ

 メルクとエーザイは、2021年7月22日、治療ラインに関わらず全身療法後に増悪した、根治的手術または放射線療法に不適応なMSI-Highを有さない進行子宮内膜がんに対する抗PD-1抗体ペムブロリズマブとチロシンキナーゼ阻害薬レンバチニブの併用療法の適応について、米国食品医薬品局(FDA)より承認を取得したと発表。 今回の承認は、第III相臨床試験 (KEYNOTE-775 試験/309 試験)の結果に基づいたもの。同試験において、対照薬の化学療法(治験医師選択によるドキソルビシンまたはパクリタキセル)と比較して、同併用療法は全生存期間(ハザード比[HR]:0.68、95%信頼区間[CI]:0.56~0.84、p=0.0001)、無増悪生存期間(HR:0.60、95%CI:0.50-0.72、p<0.0001)共に有意に延長した。さらに奏効率は30%で、対照群の15%に比べ有意な改善を示した。 根治的治療に不適応な進行性子宮内膜がんの5年生存率は17%と低い。なかでも、全身化学療法後に増悪した患者の治療選択肢は限られているが、今回の承認で、生存期間を延長する新たな治療選択肢が加わった。

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がん化療中の副作用、遠隔モニタリングで症状負荷減少/BMJ

 Advanced Symptom Management System(ASyMS)を用いたがん治療中の遠隔モニタリングにより、症状の負担が有意に減少することが示された。英国・ストラスクライド大学のRoma Maguire氏が、オーストリア、ギリシャ、ノルウェー、アイルランドおよび英国のがんセンター12施設で実施した無作為化評価者盲検比較試験「eSMART試験」の結果を報告した。ASyMSは、携帯電話を用い化学療法の毒性を24時間体制でリアルタイムにモニタリングし管理するシステムである。著者は、「効果量は“中(medium)”(Cohen's d=0.5)であったことから、ASyMSは臨床的に有効と考えられる。遠隔モニタリングシステムは、将来の医療サービス、とくにCOVID-19のパンデミックで生じる混合医療提供モデルには不可欠である」とまとめている。BMJ誌2021年7月21日号掲載の報告。初回または5年ぶりの化学療法を受けるがん患者829例を無作為化し評価 研究グループは、補助化学療法関連副作用の遠隔モニタリングが、症状の負担やQOLなどに及ぼす影響を評価する目的で、初回または5年ぶりの化学療法を受ける、転移のない乳がん、大腸がん、ホジキン病または非ホジキンリンパ腫患者829例を、ASyMSを用いた治療群(介入群、415例)または標準治療群(対照群、414例)に無作為に割り付け、6サイクルの化学療法を行った。 介入群は、ASyMSを用い、10種類の症状(悪心・嘔吐、下痢、便秘、粘膜炎、知覚異常、手足の痛み、インフルエンザ様症状/感染症、疲労感、痛み)および最大6種類の追加症状を評価する質問票(Daily Chemotherapy Toxicity Self-Assessment Questionnaire: DCTAQ)に記入した。 主要評価項目は症状の負担(Memorial Symptom Assessment Scale:MSASで評価)、副次評価項目はそれぞれの評価スケールによる、健康関連QOL(Functional Assessment of Cancer Therapy-General:FACT-G)、支持療法のニーズ(Supportive Care Needs Survey Short-Form:SCNS-SF34)、不安(State-Trait Anxiety Inventory-Revised:STAI-R)、自己効力感(Communication and Attitudinal Self-Efficacy Scale for Cancer:CASE-Cancer)、および労働遂行能力(Work Limitations Questionnaire:WLQ)であった。ASyMSを用いた副作用の遠隔モニタリングで症状負荷が軽減 症状の負担(MSAS総スコア)は、介入群では化学療法前(ベースライン)と同程度であったが、対照群ではサイクル1以降、増加した。ベースラインからの変化量は、介入群が低かった(補正後平均群間差:-0.15、95%信頼区間[CI]:-0.19~-0.12、p<0.001、Cohen's d=0.5)。MSASのサブドメインについても、介入群では対照群と比較し、全体的苦痛指数(-0.21、-0.27~-0.16、p<0.001)、精神症状(-0.16、-0.23~-0.10、p<0.001)、および身体症状(-0.21、-0.26~-0.17、p<0.001)が有意に低いことが示された。 副次評価項目のベースラインからの変化量については、介入群でFACT-G総スコアは高く(補正後平均群間差:4.06、95%CI:2.65~5.46、p<0.001)、STAI-R特性不安(-1.15、-1.90~-0.41、p=0.003)およびSTAI-R状態不安(-1.13、-2.06~-0.20、p=0.02)は低く、CASE-Cancerスコアは高く(0.81、0.19~1.43、p=0.01)、SCNS-SF34はほとんどのドメイン(性的なニーズ、患者ケアとサポートのニーズ、身体と日常生活のニーズ)が低かった。その他のSCNS-SF34ドメインおよびWLQには有意な差はなかった。 ASyMSの安全性は良好であった。好中球減少症が介入群で高頻度にみられた。

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ASCO2021 レポート 消化器がん(肝胆膵がん)

レポーター紹介今年のASCOもCOVID-19の影響でVirtual meetingとなり、2年連続Web開催となった。2021年6月4日から始まったが、いつものようなワクワク感がない。今年は、肝胆膵領域でそこまで面白い演題がなかったこともあるのだが、海外の先生と接する機会もなく質問もできないので、演題を生で聞かなきゃという気持ちに焦りもなく、あとでon demandで見ようという感じになる。また、ASCO期間中に集中して行われていたmeetingも数少なくなり、ASCOが終わって1ヵ月たってもだらだらと行われている感じである。そして、気が付いたらESMO-GI(WCGC)まで終わっているという状況であり、ASCOだという華やかさがなく、寂しさを感じた。やはり顔を見ながら、お互いの意見を突き付けてdiscussionする機会が欲しい。いろんな先生と交流の機会があることで、やる気も高まってくるものである。しかも、昨年、ASCO memberは参加費が不要だったので、今年も不要になることを信じて事前登録もしていなかったため、ASCO当日、慌てて全額を支払い、Virtual meetingに参加することとなった。当日参加は1,395ドルもかかり、非常に痛い出費である。「くっそー、COVIDの野郎め」と八つ当たりしながら、ChicagoでDeep-Dish Pizzaを食べている自分をイメージして、いつものDomino’s Pizzaを食べつつ、今年のASCOを振り返りたいと思う。肝臓がんさて、本題です。まずは肝臓がんから解説します。今年の肝胆膵領域はあまり面白い演題がなかったなというのが本音である。肝細胞がん領域では、Oral presentationに2演題が選ばれていたが、Poster discussionでは1演題も採択されていなかった。また、今年発表されるであろうと期待されていたデュルバルマブ+tremelimumabの第III相試験(HIMALAYA)やペムブロリズマブ+レンバチニブの第III相試験(LEAP-002)、tislelizumabの第III相試験(RATIONALE-301)などの大規模試験の結果を期待していたのだが、報告されなかった。そして、今年も中国からFOLFOX肝動注化学療法の第III相試験が2演題であり、中国1国のみでいくつもの第III相試験を発表しており、どんなに肝細胞がんの患者さんがいるのだろうかと感じずにはいられなかった。進行肝細胞がんに対するオキサリプラチン+フルオロウラシル併用肝動注療法とソラフェニブ療法の比較:ランダム化第III相試験(The FOHAIC-1 study)著者:Ning Lyu, et al.、Oral presentation本試験は、肝内腫瘍量が多い進行肝細胞がん症例に対する1次薬物療法として、FOLFOX肝動注療法の有効性を、ソラフェニブをコントロールとして検証するランダム化第III相試験(FOHAIC-1試験)である。主な適格基準はBarcelona Clinic Liver Cancer(BCLC)Stage BまたはC、Child-Pugh分類A~B7、Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)-Performance Status(PS)0~2などで、肝動注群とソラフェニブ群に1:1で割り付けられた。FOLFOX肝動注療法は、オキサリプラチン130mg/m2、ロイコボリン(LV)200mg/m2、5-フルオロウラシル(5-FU)400mg/m2および5-FU 2,400mg/m2 46時間持続投与を3週間ごとに行い、ソラフェニブ群はソラフェニブ1回400mgを1日2回内服した。ソラフェニブ群の全生存期間(OS)の中央値を8.0ヵ月、肝動注群を14ヵ月、検出力90%、両側α=0.05として、36ヵ月間の登録期間、最大60ヵ月の追跡期間として、247例の登録が必要となり、260例の登録を目標症例数として設定された。登録患者は肝動注群(130例)とソラフェニブ群(132例)に割り付けられた。患者背景は両群において有意な差は認めなかった。本試験の治療成績を表に示す。主要評価項目であるOSは、ソラフェニブ群と比べて肝動注群で有意に良好であった。薬物療法によるダウンステージングは、肝動注群で16例(12.3%)、ソラフェニブ群で1例(0.8%)に認めた。また、腫瘍の肝占拠割合が50%以上または門脈本幹に腫瘍栓を有する高リスク群のOSも肝動注群で有意に良好であった。RECISTv1.1による客観的奏効割合(ORR)は肝動注群で有意に良好だった(p<0.001)。薬剤に関連したGrade3以上の有害事象はむしろソラフェニブ群で有意に多く、主な有害事象は、肝動注群のオキサリプラチン投与に伴う腹痛(40.6%)であったが、投与による有害事象で肝動注療法を中止した患者はいなかった。画像を拡大するこのように、肝内病変が進行した肝細胞がん患者を対象として、FOLFOX肝動注療法はソラフェニブと比較した第III相試験において、有意に良好なOSとORRが示された。かなり予後の厳しい肝腫瘍量が50%以上の症例や門脈本幹に腫瘍栓を有する症例でも有効であり、ダウンステージできた症例、局所療法にコンバージョンできた症例も高率に認められ、有害事象も低頻度であり、今後が期待される結果であった。しかし、本試験は中国単施設の結果で、B型肝炎の患者が90%前後を占める対象で行われた試験であり、解釈には注意が必要であることや、現在の標準治療であるアテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法と比較してどうなのかなど疑問点も残っており、この試験の結果に基づきFOLFOX肝動注療法が標準治療と位置付けられるまでには至っていない。術前補助療法としてのFOLFOX肝動注療法は、ミラノ基準外の切除可能BCLC Stage A/Bの肝細胞がん患者の予後を改善させた:多施設共同ランダム化第III相試験の中間解析著者:Li S, et al.、Oral presentationミラノ基準外のBCLC Stage A/Bの切除可能肝細胞がんに対して、術前補助療法FOLFOX肝動注療法を行った患者と肝動注療法は行わずに切除した患者の有効性と安全性を、多施設共同ランダム化第III相試験にて検討した。ミラノ基準外の切除可能BCLC Stage A/Bの肝細胞がん患者に対して、術前補助療法としてFOLFOX肝動注療法を施行した群と、術前補助療法を行わずに直接手術を行う群に1:1でランダムに割り付けられた。術前肝動注群は2サイクルのFOLFOX肝動注療法を施行し、忍容性があれば抗腫瘍効果を確認し、完全奏効/部分奏効が得られていれば切除、安定であれば追加の2サイクルの肝動注療法を行い、増悪の場合には次治療へ移行した。主要評価項目は全生存期間(OS)、副次評価項目は無増悪生存期間(PFS)、無再発生存期間(RFS)と安全性とした。切除可能肝細胞がん患者208例が登録され、術前化療群99例、切除先行群100例が解析対象となった。患者背景において、両群間に差は認めなかった。本試験の治療成績を表に示す。術前化療群では、ORR 63.6%、病勢制御割合(DCR)96.0%で、88例(88.9%)で肝切除が施行された。術前化療群は、脈管浸潤の割合が11.4%であり、切除先行群(39.0%)と比べて低値であった。OSとPFSは術前化療群で有意に良好であったが、RFSは両群間に有意差はなかった。FOLFOX肝動注療法群の有害事象は、Grade1を59.6%、Grade2を26.3%に認めたが、Grade3以上の重篤な有害事象は認めなかった。なお、OSとPFSのサブグループ解析では、50歳以下の若い患者や腫瘍が単発である患者、AFPが400ng/mL以上と高い患者、HBV-DNAが低い患者においてより良好な結果が示された。画像を拡大する著者らは、FOLFOXによる肝動注療法は、肝細胞がんに対して効果的で安全であること、ミラノ基準外の切除可能BCLC A/Bの肝細胞がん患者に対して生存期間の延長効果が見込まれることを結論付けた。本試験の結果、肝細胞がんの術前補助療法として、FOLFOX肝動注療法の有用性が示された。この演題のDiscussantは、39%の症例が多発例であり、通常、切除しないような症例が多数含まれていることや中国の5施設の結果であり、B型肝炎の患者が中心である点については注意して解釈すべきであり、日常診療に取り入れる前に世界規模または欧米での検証が必要であろうとコメントしていた。このように、中国からFOLFOX肝動注療法に関連する2演題が発表された。ともに、中国1ヵ国での第III相試験であり、全世界で受け入れられるには、さらなる試験が必要である。しかし、これだけの試験を中国だけで、症例集積できることが驚きである。しかも、この試験のほかにも、昨年、sintilimab+ベバシズマブ-バイオシミラーの第III相試験(ORIENT-32)、donafenibの第III相試験、apatinibの第III相試験など、進行がんでも中国1ヵ国で行った試験の結果が報告されており、計り知れないほど患者さんがいて、臨床試験に参加してくれる環境ができていることを考慮すると、今後の肝細胞がんの薬物療法の開発において、中国の存在が重要になってくることが改めて予想された。また、この数年、アジアを中心に肝細胞がんに対する肝動注療法の有用性を示唆する結果が報告されてきており、肝細胞がんの薬物療法において、肝動注療法が再度、見直される日が来る可能性も十分にあることが示された。余談であるが、Q&Aセッションで、抗がん剤の投与方法についてDiscussionがあった。通常、米国では肝動注を行う場合に抗がん剤が100mL程度注入できるポンプを皮下に埋め込んで投与を行うことが多い(ポンプは結構な大きさで、皮下に埋められる米国人患者もすごいのではあるが…)。中国ではポンプの合併症はどうかという質問があり、演者らはポンプを使用していないことを説明し、腫瘍の多いところにカテーテルを挿入して投与しているとのことであった。柔軟に対応が可能で、より効率よく抗がん剤が投与できることを解説していたが、では、カテーテルを留置せず、どうやって2日間のFOLFOXを投与しているのか、私には謎であった。質問できる知り合いの先生が中国にはいなかったため答えはわからないのであるが、おそらく3週に1回、血管造影を行い、カテーテルを挿入した後は2日間、動かずに安静にして投与しているのかなと勝手に想像しているところである。胆道がん胆道がんでは、ナノリポソーマルイリノテカン(Nal-IRI)+5-フルオロウラシル(5-FU)+ロイコボリン(LV)と5-FU/LVを比較したランダム化第II相試験がOral presentationで1演題、取り上げられていた。非常に期待できる2次治療のレジメンが報告されたが、遺伝子異常に基づく分子標的治療薬の開発に移行していた胆道がんが、また細胞障害性抗がん剤の開発に戻るのかなと、少し不安も隠せなかった。ゲムシタビン+シスプラチン併用療法後の転移性胆道がん患者に対するリポソーム型イリノテカンとフルオロウラシル、ロイコボリンの併用療法:多施設ランダム化比較第IIb相試験(NIFTY試験)著者:Yoo C, et al.、Oral presentation切除不能・転移性胆道がんに対してゲムシタビン+シスプラチン療法(GC)後に進行した症例の2次治療の標準治療は確立していない。ABC-06試験によって、2次治療としてFOLFOX療法を行うことで、積極的な症状コントロールのみを行った患者と比べて、OSが延長したことが示されたが、まだその治療成績は十分とは言い難い。ゲムシタビン耐性の膵がんに対するナノリポソーマルイリノテカン(Nal-IRI)+5-FU/ロイコボリン(LV)療法は、NAPOLI-1試験の結果、プラセボと比較してPFSとOSの延長が示された。胆道がんでも本レジメンによる治療が有効である可能性がある。1次治療でGC療法を行った転移性胆道がん患者を対象として、2次治療としてNal-IRI+5-FU/LVと5FU/LVを比較した多施設共同非盲検ランダム化比較第IIb相試験(NIFTY試験)が行われた。対象は、1次治療でGC療法を行って病勢の進行が確認された胆道がん患者174例であった。患者は、Nal-IRI(70mg/m2、90分)+5-FU(2400mg/m2、46時間)/LV(400mg/m2、30分)を2週に1回投与する群と、5-FU(2400mg/m2、46時間)/LV(400mg/m2、30分)を2週に1回投与する群に、1:1でランダムに割り付けられた。主要評価項目は盲検下の独立中央判定委員会によるPFSとして、副次評価項目は担当医師によるPFS、OS、ORR、安全性などであった。症例数設定は、Nal-IRI+5-FU/LV群のPFS中央値を3.3ヵ月、5-FU/LV群の中央値を2ヵ月、検出力80%、両側α=5%、ハザード比0.6で有意差が検出できるように設定し、総数174例が必要と判断された。患者背景において、両群に差は認めなかった。本試験の治療成績を表に示す。主要評価項目である独立中央判定委員会によるPFSはNal-IRI+5-FU/LV群で有意に良好であった。副次評価項目である担当医師によるPFSやOSもNal-IRI+5-FU/LV群で有意に良好であった。独立中央判定委員会によるORRは両群で有意差を認めなかったが、担当医師判定では統計学的な有意差を認めた。安全性について、好中球減少症と疲労は、5-FU/LV群と比較してNal-IRI+5-FU/LV群に多く認められたが、膵がんに対して行われたNAPOLI-1試験の結果と同様の結果であった。画像を拡大するNal-IRI+5FU/LV療法は、1次治療でGC療法を行った転移性胆道がん患者に対してPFS、OS、ORRを有意に改善させた。Nal-IRI+5-FU/LV療法の有害事象は十分に管理可能で、膵がんに対するNAPOLI-1試験で示された安全性と同様の結果であった。今回の検討は韓国のみで行われた臨床試験であり、全世界に一般化できる結果ではないが、この試験の統計学的事項は十分な検出力があり、PFSやORRも中央判定で行われており、抗腫瘍効果も十分に評価できる。この試験の結果から、Nal-IRI+5-FU/LV療法はGC療法で増悪した進行胆道がん患者に対する標準治療の1つとして考慮されるべきであると著者らは結論していた。確かに、本試験の結果はNal-IRI+5-FU/LV療法は、GC療法の2次治療としてABC-06試験で優越性が示されたFOLFOXレジメンよりも良好なPFS、OS、ORRが示されており、かなり期待できるレジメンである。また、ランダム化第II相試験ではあるが、第III相試験と遜色のない試験デザインで行われている。演者であるYoo先生は知り合いなので、直接、試験デザインについて聞いてみたところ、症例数設定は第III相試験としても十分であるが、主要評価項目としてPFSを選択したので、第IIb相試験としたとコメントがあった。なるほど、第IIb相試験というあまり聞き慣れない相にしているのはそういうことであったか、と。そして、Yoo先生は、第III相試験と宣言して行えばよかったなと後悔されていた。しかし、仮に本試験が第III相試験であったとしても、韓国1ヵ国の試験であり、アジアの結果を米国のFDAや欧州のEMEAが受け入れるかどうかは微妙である。また、本試験でOSでも有意差があるといっても、PFSが主要評価項目であるランダム化第II相試験であり、OSを主解析として行った試験ではないため、この試験結果をもって標準治療とするには時期尚早と考える。今後、Nal-IRI+5-FU/LVとFOLFOXのどちらが良いのかを明らかにする検討も必要であり、IDH1変異に対するIDH阻害剤、FGFR変異に対するFGFR阻害剤など、actionableな遺伝子変異を有する患者において、どちらを先行して治療すべきかなども明らかにする必要があると思われる。膵がん膵がんでは、Oral presentationに1演題も取り上げられていなかったが、Poster discussionでは6演題、取り上げられていた。膵がんにおいては薬物療法も停滞期で、なかなか次の良い薬剤が登場してこない状況である。今回のASCO2021で何らかの目を見張る結果が報告されることを期待したが、まだ突破口が見えていない現状であった。その中でも、やはり日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)からの発表などいくつか知っておいてほしい結果があるので、取り上げて解説する。局所進行膵がんに対するmodified FOLFIRINOXとゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法の無作為化比較第II相試験(JCOG1407)著者:Ozaka M, et al.、Poster discussionFOLFIRINOX療法とゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法(GEM+nab-PTX療法)は、それぞれProdige4-ACCORD11試験およびMPACT試験においてゲムシタビン単剤と比較して優越性を示したレジメンである。どちらも遠隔転移膵がんのみを対象とした試験であり、局所進行膵がんに対する評価はこれまで十分に行われていない。今回、局所進行膵がん患者を対象として、FOLFIRINOX療法の5-FUの静注とイリノテカンの投与量を150mg/m2に減量し、有害事象を軽減させたmodified FOLFIRINOX(mFOLFIRINOX)療法とGEM+nab-PTX療法の有効性と安全性を検討し、より有望な治療法を選択することを目的としてランダム化第II相試験(JCOG1407)が行われた。本試験の対象は、全身化学療法歴のない局所進行膵がん患者であり、mFOLFIRINOX療法群とGEM+nab-PTX療法群に1:1でランダムに割り付けられた。主要評価項目はOS(1年生存割合)、副次的評価項目はPFS、無遠隔転移生存期間、ORR、CA19-9奏効割合、有害事象発生割合などであった。症例数設定は、2つの試験治療群のうち、1年生存割合が良好な群を53%、不良な群を63%と仮定し、良好な試験治療を正しく選択できる確率が85%以上となるように算出した。また、2つの試験治療群のうち、良好な群の期待1年生存割合を70%と仮定し、閾値1年生存割合を53%、片側有意水準α=5%、検出力80%とし、必要症例数は120例と算出された。mFOLFIRINOX療法群に62例、GEM+nab-PTX療法群に64例で、計126例が登録された。患者背景では、両群に大きな偏りは見られなかった。JCOG1407試験の結果を表に示す。1年生存割合はGEM+nab-PTX療法群で良好だったが、2年生存割合はmFOLFIRINOX療法群で良好であり、ハザード比は1.162(95%CI:0.737~1.831)であった。PFSと無遠隔転移生存期間は有意差を認めなかったが、mFOLFIRINOX療法群で良好な傾向であった。ORRは有意差を認めなかったが、GEM+nab-PTX療法群で良好であった。CA19-9奏効割合はGEM+nab-PTX療法群で有意に良好であった。有害事象において、Grade3~4の好中球減少/白血球減少はGEM+nab-PTX療法群で高率、全Gradeの悪心/嘔吐や下痢はmFOLFIRINOX療法群で高率に認められたが、治療関連死は見られなかった。画像を拡大する本試験は、局所進行膵がんに対する2つのレジメンを比較した最初のランダム化試験であった。GEM+nab-PTX療法群の1年生存割合はmFOLFIRINOX療法群より良好であったが、mFOLFIRINOX療法群は2年生存割合が高く、その他の項目では良かったり悪かったりとなっており、どちらが良好とは言い難い結果であった。局所進行膵がんに対しては、『膵癌診療ガイドライン2019年版』でも転移性膵がんのエビデンスに基づき、mFOLFIRINOXとGem+nab-PTXが提案されているが、しっかりしたランダム化比較試験は行われていない。今回はJCOG肝胆膵グループで行われたmFOLFIRINOXとGem+nab-PTXを比較するランダム化第II相試験の結果は、主要評価項目である1年生存割合では、Gem+nab-PTXが良好であったが、全体の生存曲線や2年生存割合ではmFOLFIRINOXが優勢であった。下痢、悪心、嘔吐などの消化器毒性はmFOLFIRINOX群で高頻度に認められたが、骨髄抑制や神経障害はGem+nab-PTX群で高頻度に認められており、優劣はつけ難い結果であった。今後、長期間の追跡調査を行い、どちらを選択すべきかを明らかにしていくことが必要である。NRG1融合遺伝子陽性の膵がんや他の固形がんに対するzenocutuzumabの有効性と安全性著者:Schram AM, et al.、Oral presentation膵がんに対するNRG1融合遺伝子に対するzenocutuzumabのpreliminaryな結果が報告されていた。zenocutuzumab(MCLA-128)はADCC活性を持つHER2、HER3を阻害する二重特異性抗体で、HER3にNRG1 fusionのEGF-likeドメインの結合を阻害することで、HER2/HER3の二量体形成を阻害し、下流のPI3K/AKT/mTORシグナルによる腫瘍増殖を阻害する抗体製剤である。NRG1融合遺伝子を有する患者に有効性が期待され、開発が進んでいる。膵がんパートに登録された12例のうち5例(42%)に奏効が得られており、11例中11例全例でCA19-9の50%以上の低下が認められ、7例(64%)においては正常値まで低下したことが報告された。有害事象はGrade1~2であり、重篤な消化器や皮膚、心毒性は認めなかったことが報告され、期待されている薬剤である。膵がんにおけるNRG1融合遺伝子の頻度は1%未満といわれており、非常にまれではあるが、60歳以下の若年者やKRAS wildの患者に多く認められることを手掛かりとして、聖マリアンナ医大と国立がん研究センター東病院を中心に、NRG1のスクリーニングが行われている。術前化学放射線療法が膵がん患者の生存期間を改善させる:多施設共同第III相試験(PREOPANC)の長期治療成績著者:Van Eijck C, et al.、Poster discussion切除可能膵がんまたは切除可能境界膵がんに対して、ゲムシタビンによる術前化学放射線療法は、切除先行と比べて、R0切除割合や無病生存期間を改善させた。生存期間においては良好な傾向は示されていたが、有意な差を認めていなかった。今回、この試験を長期フォローアップすることで、生存期間への効果が検討された。結果を表に示す。R0切除割合やN0切除割合、Intention to treatによるOS、切除できた患者のOS、補助療法を受けた患者のOSにおいて、化学放射線療法群で有意に良好な結果が示された。切除可能膵がんまたは切除可能境界膵がんに対する術前治療の有効性が示されたことにより、日本ではすでに術前治療が標準治療であるが、海外でも術前治療へよりシフトすることが推測された。画像を拡大するまとめ今年のASCO2021では、肝細胞がんでは初回薬物療法として肝動注化学療法、胆道がんでは2次治療としてNal-IRI+5-FU/LV、膵がんでは局所進行膵がんの1次治療としてmFOLFIRINOX/Gem+nab-PTX、切除可能/切除可能境界膵がんに対する術前化学放射線療法など、少し昔の時代に戻ったかのように、主要演題には細胞障害性抗がん剤による治療が席巻していた。しかし、肝胆膵がんでは分子標的治療や免疫チェックポイント阻害薬を中心に治療開発が進んでおり、今後、新たなエビデンスはこれらの治療から生まれてくると思われる。今年のASCOでは世の中を大きく変えるような結果は出てこなかったが、世界的にも注目される重要な学会であり、Web開催であろうと、みんなが参加する学会である。ぜひ来年は、COVID-19が落ち着いて、現地でみんなと一緒にFace to Faceで談笑しながら、肝胆膵のOncologyについて語り合いたいものである。1)Ning Lyu, Ming Zhao. Hepatic arterial infusion chemotherapy of oxaliplatin plus fluorouracil versus sorafenib in advanced hepatocellular carcinoma: A biomolecular exploratory, randomized, phase 3 trial (The FOHAIC-1 study). J Clin Oncol 39, 2021 (suppl 15; abstr 4007)2)Shaohua Li, Chong Zhong, Qiang Li, et al. Neoadjuvant transarterial infusion chemotherapy with FOLFOX could improve outcomes of resectable BCLC stage A/B hepatocellular carcinoma patients beyond Milan criteria: An interim analysis of a multi-center, phase 3, randomized, controlled clinical trial. J Clin Oncol 39, 2021 (suppl 15; abstr 4008)3)Changhoon Yoo, Kyu-Pyo Kim, Ilhwan Kim, et al. Liposomal irinotecan (nal-IRI) in combination with fluorouracil (5-FU) and leucovorin (LV) for patients with metastatic biliary tract cancer (BTC) after progression on gemcitabine plus cisplatin (GemCis): Multicenter comparative randomized phase 2b study (NIFTY). J Clin Oncol 39, 2021 (suppl 15; abstr 4006)4)Masato Ozaka, Makoto Ueno, Hiroshi Ishii, et al. Randomized phase II study of modified FOLFIRINOX versus gemcitabine plus nab-paclitaxel combination therapy for locally advanced pancreatic cancer (JCOG1407). J Clin Oncol 39, 2021 (suppl 15; abstr 4017)5)Alison M. Schram, Eileen Mary O'Reilly, Grainne M. O'Kane, et al. Efficacy and safety of zenocutuzumab in advanced pancreas cancer and other solid tumors harboring NRG1 fusions. J Clin Oncol 39, 2021 (suppl 15; abstr 3003)6)Casper H.J. Van Eijck, Eva Versteijne, Mustafa Suker, et al. Preoperative chemoradiotherapy to improve overall survival in pancreatic cancer: Long-term results of the multicenter randomized phase III PREOPANC trial. J Clin Oncol 39, 2021 (suppl 15; abstr 4016)

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