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高齢がん患者、補助的医療従事者の介入で急性期医療利用が減少/JAMA

 レイヘルスワーカー(補助的医療従事者)主導による症状評価の介入は、急性期医療の利用を減少させるために広く実現可能なアプローチとなりうることが、米国・スタンフォード大学のManali I. Patel氏らがカリフォルニア州とアリゾナ州の地域がん外来クリニック43施設で実施した無作為化臨床試験の結果で示された。高齢者において、がん症状に対する治療は十分にされていないことが多い。一方で、効果的な早期発見および介入も限定的なままであった。JAMA誌オンライン版2025年12月30日号掲載の報告。75歳以上のがん患者、レイヘルスワーカー介入vs.通常ケアで急性期医療の利用を比較 本検討は、固形がんまたは血液がんの新規診断または画像検査や生検により確認された新規再発・進行がんを有する75歳以上のメディケアアドバンテージ受給者を対象に行われた。 保険請求データを用い、参加施設において2週間以内にがん治療を受ける予定の患者を特定して、電子カルテで適格性をスクリーニングし電話で同意を得た後、症状評価+通常ケア群(症状評価群)と通常ケア群(対照群)に1対1の割合で無作為に割り付け、12ヵ月間追跡調査を行った。研究者、臨床医、統計解析担当者は割り付けに関して盲検化された。 症状評価群では、通常ケアに加えて、レイヘルスワーカーがエドモントン症状評価システムを用いて電話による症状評価を、転移のあるがん・化学療法中・症状スコアが4以上の患者については週1回、それ以外は月1回行い、症状評価で症状スコアが4以上または2点以上悪化した場合は、同日中にadvanced practice practitioner(APP、registered nurse practitioner[登録ナースプラクティショナー:NP]またはフィジシャンアシスタント:PAのいずれか)に照会し、必要な介入が行われた。 主要アウトカムは、試験登録後12ヵ月以内の救急外来受診および入院とした。副次アウトカムは、総医療費、ホスピスの利用、12ヵ月以内に死亡した患者における死亡前30日間の救急外来受診および入院、ホスピスの利用、急性期病院での死亡とした。介入により、救急外来受診、入院、総医療費が減少 2020年11月~2023年10月に416例が登録された(データ解析は2024年12月12日~2025年2月15日)。年齢中央値は82歳(範囲:75~99)、男性219例(52.6%)、Stage4が171例(41.1%)、再発が27例(6.4%)であった。リスク調整因子の平均スコアは2.70(SD 1.77)であった。 症状評価群は対照群と比較し、救急外来受診のオッズが53%低く(救急外来受診回数1回以上:61例[30.5%]vs.103例[47.7%]、補正後オッズ比[OR]:0.47、95%信頼区間[CI]:0.32~0.71)、入院のオッズは68%低く(入院回数1回以上:37例[18.5%]vs.86例[39.8%]、OR:0.32、95%CI:0.20~0.51)、患者1人当たりの平均総医療費が1万2,000ドル低かった(p=0.01)。 12ヵ月の追跡期間中に142例(各群71例)が死亡した。症状評価群では、死亡前30日以内の救急外来受診のオッズが68%低く(OR:0.32、95%CI:0.12~0.88)、急性期病院での死亡オッズは75%低下した(OR:0.25、95%CI:0.08~0.77)。

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高リスク早期TN乳がん、術後EC+PTXにCBDCA追加で3年DFS・OS改善/BMJ

 高リスクの早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者に対する術後補助療法として、エピルビシン+シクロホスファミド(EC療法)後の週1回パクリタキセル(PTX)投与にカルボプラチン(CBDCA)を追加することで、新たな安全性の懸念なく早期再発リスクが低下し、生存アウトカムが有意に改善したことが示された。中国・復旦大学上海がんセンターのYin Liu氏らが、第III相の無作為化非盲検試験「CITRINE試験」の結果を報告した。高リスクの早期TNBCの予後は不良であり、術後補助療法の強化戦略の最適化が依然として必要とされていたが、TNBCに対する術後補助療法としてのアントラサイクリン/タキサン系化学療法へのカルボプラチン追加の有益性については、意見が分かれていた。BMJ誌2025年12月23日号掲載の報告。中国の復旦大学上海がんセンターで実施 研究グループは、新たに診断された切除可能な片側浸潤性TNBCで、手術後の切除断端陰性、病理学的に局所リンパ節転移陽性またはリンパ節転移陰性でありKi-67が50%以上の18~70歳の女性患者を、カルボプラチン群または対照群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 カルボプラチン群は、エピルビシン+シクロホスファミドを2週間隔で4サイクル投与後、パクリタキセルとカルボプラチンを1サイクル28日(1日目、8日目、15日目に投与)で4サイクル投与した。対照群は、エピルビシン+シクロホスファミドを3週または2週間隔で4サイクル投与後、パクリタキセルを1サイクル21日(1日目、8日目、15日目に投与)で4サイクル投与した。 主要評価項目はITT集団における無病生存期間(DFS)、副次評価項目は無再発生存期間(RFS)、遠隔無病生存期間(DDFS)、全生存期間(OS)および安全性であった。3年DFS、RFS、DDFSおよびOSが改善 2020年3月~2022年3月に808例が登録され無作為化された(カルボプラチン群404例、対照群404例)。このうち、カルボプラチン群の1例が治療開始前に同意を撤回した。 データカットオフ日(2025年3月10日)時点で、追跡期間中央値44.7ヵ月において推定3年DFS率は、カルボプラチン群92.3%、対照群85.8%であった(補正前ハザード比[HR]:0.64、95%信頼区間[CI]:0.43~0.95、p=0.03)。しかし、比例ハザード仮説の検証では仮説が成立しないことが判明し(p=0.02)、区分ハザードモデルによる解析の結果、HRが時間経過とともに変化することが示された(0~12ヵ月のHR:0.31[95%CI:0.13~0.73]、12~36ヵ月のHR:0.65[95%CI:0.39~1.09]、36ヵ月以降のHR:1.98[95%CI:0.69~5.69])。 副次エンドポイントについては、カルボプラチン群は対照群と比較し、3年RFS率(93.8%vs.88.3%、HR:0.59[95%CI:0.37~0.93]、p=0.02)、3年DDFS率(94.8%vs.89.8%、0.61[0.37~0.98]、p=0.04)、および3年OS率(98.0%vs.94.0%、0.41[0.20~0.83]、p=0.01)の改善が認められた。 Grade3/4の治療関連有害事象の発現割合は、カルボプラチン群で66.7%(269/403例)、対照群で55.0%(222/404例)であった。治療に関連した死亡は認められなかった。

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PD-L1陰性転移トリプルネガティブ乳がん1次治療におけるサシツズマブ ゴビテカン(解説:下村昭彦氏)

オリジナルニュース免疫療法の対象とならない進行TN乳がんの1次治療、SGがPFS延長(ASCENT-03)/ESMO2025 PD-L1陰性転移トリプルネガティブ乳がん(TNBC)の初回治療としては、長らくタキサンを中心とした化学療法が実施されてきた。2次治療以降ではTROP2 ADCやHER2低発現に対するトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)が用いられるようになり、TNBCの治療は大きく変化している。これらADCの1次治療における有効性が期待されてきた。 ASCENT-03試験はPD-1/PD-L1阻害薬の対象とならない転移TNBCを対象として、サシツズマブ ゴビテカン(SG)と化学療法を比較した第III相試験である(Cortes J, et al. N Engl J Med. 2025;393:1912-1925.)。主要評価項目の無増悪生存期間(PFS)中央値において9.7ヵ月vs.6.9ヵ月(ハザード比[HR]:0.62、95%信頼区間:0.50~0.77、p<0.0001)と統計学的有意にSG群で良好であった。一方、全生存期間(OS)中央値は21.5ヵ月vs.20.2ヵ月(HR:0.98)とSGの優越性は示されなかった。そもそもTNBCのOS中央値は15ヵ月程度であり(Deluche E, et al. Eur J Cancer. 2020;129:60-70.)対照群のOSそのものも、かつてよりかなり良くなっている。これは、2次治療以降でOSを延長することが示された複数の薬剤(SGやT-DXd)が使用可能になったためであると考えられる(Bardia A, et al. N Engl J Med. 2021;384:1529-1541.、Modi S, et al. N Engl J Med. 2022;387:9-20.)。 一方で、欧州臨床腫瘍学会(ESMO)で同時に発表された同様にPD-L1陰性TNBC1次治療としてのダトポタマブ デルクステカン(Dato-DXd)がPFSならびにOSの延長を有意に示したことから、その結果の不一致について検討が必要である。後治療としてADCが使えることは両試験とも同じであることを考えると、OSの結果の違いには何らかの薬剤としての違いがある可能性がある。ホルモン受容体陽性乳がんの2次治療では、TROPiCS-02試験でSGがOSの延長を示し、Dato-DXdはTROPION Breast-01試験でOSの延長を示せなかったことから、サブタイプによってその結果が逆転している(Bardia A, et al. J Clin Oncol. 2025;43:285-296.、Rugo HS, et al. Lancet. 2023;402:1423-1433.)。単純にOSの結果が安定するほどの薬効がない可能性もあるが、PFSは確実に延長していることから、今後は後治療の影響やバイオマーカーなどの探索が必要である。

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第300回 新調したての精子で体外受精が成功しやすくなる

新調したての精子で体外受精が成功しやすくなる射精してから間もない新調したての精子を使った体外受精(IVF)がどうやら妊娠の成功を増やすようです1,2)。体外受精では、精子を採取する2~7日前に前もって射精しておくことがたいてい男性に指示されます。できるだけ健康な精子が体外受精で受精するようにするためです。精巣で精子がより長く留まるとさまざまな内なる毒素、とくには活性酸素種(ROS)や、汚染物質などの外襲に見舞われる期間も長くなります。それが原因で精子はDNAを傷めて役目を果たせないようになるかもしれません。実際、精巣での滞在期間がより短い精子ほど質が良いのは本当のようです。2年ほど前のメタ解析では、前の射精から4日間以内の不妊男性の精液の質の改善がみられています3)。3年ほど前の別のメタ解析では前の射精後すぐの4時間以内の精子はDNA損傷が少なく、よく動くという結果が得られています4)。さらには、射精控えの期間が短いほどどうやら妊娠しやすくなることが、卵子に精子を直に注入する体外受精(intracytoplasmic sperm injection:ICSI)の1,691回の取り組みを調べた試験で示されています5)。しかし、精子が卵子に泳いで行く昔ながらの体外受精(conventional in vitro fertilization:c-IVF)で射精控えを短くすることに同様の取り柄があるかどうかはよくわかっておらず、c-IVFに最適な射精控えの期間も定まっていません。そこで中国の吉林大学第一病院(First Hospital of Jilin University)のYueying Zhu氏らは、同病院でc-IVFに臨むパートナー500組を募って、射精控え期間を短くすることに取り柄があるかどうかを無作為化試験で調べました。それらの男性はc-IVFの精子回収が先立つ2日以内の射精後の群(射精控え短期群)と標準の2~7日後の群(標準群)に1対1の割合で割り振られました。最終的に射精控え短期群の226組と標準群の227組が試験を完了しました。幸いにして射精控え短期群の妊娠継続(12週間以上の胎児の心臓の活動)達成率は標準群より有意に高く、それぞれ46%と36%でした(p=0.030)。射精から精子回収までの期間が短いことは精子不足でのICSI移行を増やすかもしれないとの懸念は当たらず、精子不足でのICSI移行率は両群で似たり寄ったりでした(それぞれ3%と2%)。今回報告された結果は試験の全容の一部にすぎません。被験者の経過の記録は進行中で、肝要の転帰である生児出生率を含むほかの評価項目が後に報告されます1)。盛りだくさんとはいえ今回の試験は1つの病院で実施されたものであり、多施設でより多くの被験者を募る試験でより短期の射精控えの効果を調べることが今後必要と著者は言っています。まだまだ調べることは多そうですが、より直前に射精しておくことが好調な精子を得る良い手段であることを今回の結果はひとまず示したようです2)。体外受精をしないパートナーの妊娠もそういう新調したての精子で改善するかどうかも今後の試験で判明しそうです。乗り物酔いの薬を米国承認身近な困りごとの薬を米国がここ40年で初めて承認しました6)。承認されたのは乗り物酔いの嘔吐を防ぐ飲み薬です。米国の製薬会社Vanda Pharmaceuticalsが開発しました。商品名はNereusです。Nereusは吐きそうな動き(motion)がある出来事(event)の1時間ほど前に1回きり経口服用します7)。その成分tradipitantは化学療法の悪心嘔吐の予防に使われる薬と同様にニューロキニン遮断作用を担います。米国の沿岸で被験者に船に乗ってもらった2つの第III相試験(Motion SyrosとMotion Serifos)でNereusの効果が裏付けられています。それらの試験で同剤投与群の嘔吐の発生率はプラセボ群の半分足らずで済みました8,9)。向こう数ヵ月のうちにNereusを米国で発売するとVanda社は同剤承認を知らせる先月末30日のニュースに記しています6)。参考1)Trigger-Day Ejaculation Improves Conventional in vitro fertilization Outcomes: A Prospective Randomized Controlled Trial. The Lancet on SSRN. 2025 Dec 2.2)IVF success may depend on how long men abstain from ejaculation / NewScientist3)Du C, et al. Andrology. 2024;12:1224-1235.4)Barbagallo F, et al. J Clin Med. 2022;11:7303.5)Gupta S, et al. J Hum Reprod Sci. 2021;14:273-280.6)Vanda Pharmaceuticals Announces FDA Approval of NEREUSTM(tradipitant)for the Prevention of Vomiting Induced by Motion7)NEREUS PRESCRIBING INFORMATION8)Polymeropoulos VM. et al. Front Neurol. 2025;16:1550670. 9)Vanda Pharmaceuticals Reports Positive Results from a Second Phase III Study of Tradipitant in Motion Sickness / PRNewswire

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がん免疫療法、投与時刻が効果に影響

 がん免疫療法の効果は、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を投与する時刻によって異なる可能性のあることが、新たな研究で示唆された。進展型小細胞肺がん(extensive-stage small-cell lung cancer;ES-SCLC)患者を対象にしたこの研究では、15時より前にICIの点滴を受けた患者では、15時以降に点滴を受けた患者に比べて無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)が有意に長かったことが示されたという。中南大学(中国)湘雅医学院付属腫瘍病院のYongchang Zhang氏らによるこの研究結果は、「Cancer」に12月8日掲載された。 Zhang氏は、「点滴を行う時刻の調整は、生存期間を延ばすための安価な方法となる可能性がある。追加費用も不要で、さまざまな医療現場で容易に実施できる簡単な介入だ」と述べている。 この研究では、2019年5月から2023年10月までの間にES-SCLCと診断され、化学療法に抗PD-L1抗体(アテゾリズマブまたはデュルバルマブ)を併用する一次治療を受けた397人を対象に、ICIの投与時刻が効果に影響するのかどうかが検討された。ICIの投与時刻は、各患者の最初の4サイクルのICI投与時刻の中央値とした。 解析の結果、ICIの効果を最大限に高める最適な投与時刻のカットオフは15時であることが示された。15時より前にICI投与を受けた患者では、15時以降に投与を受けた患者と比べて、PFSとOSが有意に長かった。多変量解析では、15時より前の早い投与時刻はPFSとOSのいずれにおいても独立した予後因子であることが確認され、病勢が進行するリスクは約52%(調整ハザード比0.483)、死亡リスクは約63%(同0.373)低下すると推定された。 Zhang氏は、「この研究結果は即時的な臨床的意義があり、現在のES-SCLC治療のプロトコルに変革をもたらす可能性を秘めている」と述べている。 研究グループは、ICIの投与時刻による効果の差は、体内時計(概日リズム)が免疫反応を含むさまざまな生体機能に影響するためだと考えている。それでも、概日リズムががん治療に及ぼす影響を理解し、患者の概日リズムを治療に最大限に活かす方法を確立するには、さらなる研究が必要だと指摘している。 研究グループは、「今回の知見は、生体リズムとICIによる治療の重要な相互作用を示しており、治療戦略の最適化に向けた新しい可能性を開くものだ」と結論付けている。(HealthDay News 2025年12月9日)

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化学療法中のワクチン接種【かかりつけ医のためのがん患者フォローアップ】第6回

化学療法中のがん患者は、化学療法の影響や原疾患により免疫力が低下しているため、感染症に罹患しやすく重症化しやすい傾向があります。国内のガイドラインやASCOガイドラインおいても、がん患者の治療やケアにおいて適切なワクチン接種がもたらす良い影響が述べられています。今回は固形がん化学療法中の患者を想定した、5つの主なワクチンの特徴や効果、推奨される接種時期についてお話しします。1)インフルエンザワクチン背景がん患者がインフルエンザに罹患した場合、死亡のリスクが高いことが複数の研究から報告されています。とくに肺がんや血液腫瘍患者はより重症化するリスクが高いことが知られています。インフルエンザワクチンは、A型(H3N2・H1N1)とB型の3株を含む混合ワクチンであり、世界的流行株とWHO推奨株に基づき毎年選定されるため、毎年の接種が推奨されます。健康な人における有効性は70~90%程度とされていますが、流行株との一致度により変動します。予防効果と安全性複数の研究から、血清学的な反応は健康な人と比較して劣る可能性はあるものの、予防医学的な意義は明らかであることがメタアナリシスにより示されています。近年、高用量インフルエンザワクチン(商品名:エフルエルダ筋注)が承認され、米国では65歳以上のがん患者に高用量ワクチン接種が推奨されています。化学療法中のインフルエンザワクチン投与に関してとくに重篤な有害事象が増加するという報告はありません。注意点リツキシマブやオファツムマブ、オビヌツズマブなどの治療後は、少なくとも半年間はワクチン効果が期待できない可能性があります。また、免疫抑制薬を服用中の患者でも効果が低い場合があります。接種時期インフルエンザワクチンは10~12月までの接種が推奨されています。化学療法の開始前(少なくとも2週間前)に接種するのが理想ですが、治療中に流行期を迎える場合は接種時期を調整する必要があります。化学療法中は骨髄抑制の最も低下した時期(nadir)を避けて接種することが望ましいです。2)肺炎球菌ワクチン背景日本の成人市中肺炎では、肺炎球菌が最も頻度の高い起炎菌です。65歳以上や糖尿病・心不全などの基礎疾患を有する場合には、重症感染症を起こしうるため、肺炎球菌ワクチン接種が推奨されています。国内データでは、侵襲性肺炎球菌感染症の死亡率は約19%と高く、患者の約7割は65歳以上です。また、固形がん患者や脾摘患者が肺炎球菌感染症に罹患した場合、非がん患者と比較して死亡のリスクが高いことが報告されています。予防効果と安全性肺炎球菌ワクチンによる抗体価の上昇は、化学療法中であっても健康な人と同等であると報告されています。化学療法中の肺炎球菌ワクチン投与に関してとくに重篤な有害事象が増加するという報告はありません。ワクチンの特徴ポリサッカライドワクチン(ニューモバックス[PPSV23]:定期接種)と結合型ワクチン(キャップバックス[PCV21]、プレベナー20[PCV20]、バクニュバンス[PCV15])の2種類があります。免疫力をつける力(免疫原性)はPCV21/20/15のほうがPPSV23より高いです。日本ワクチン学会・日本感染症学会・日本呼吸器学会では、がん患者へのPCV20の1回接種もしくはPCV15とPPSV23の連続接種を推奨しています。画像を拡大する接種時期肺炎球菌感染症は1年を通して発生するため、季節を問わず接種が可能です。化学療法開始前(少なくとも2週間前)に接種、もしくは化学療法中は骨髄抑制の最も低下した時期(nadir)を避けて接種することが望ましいです。3)帯状疱疹ワクチン背景水痘帯状疱疹ウイルス(ヘルペスウイルス3型)初感染は水痘として発症し、感染後に後根神経節に不活性状態で長期間潜伏します。その後、加齢・疲労・病気などで免疫が弱まるとウイルスが再活性化し、帯状疱疹として発症します。症状は片側に帯状に広がる発疹と刺すような痛みが典型的で、約10%の症例で帯状疱疹後神経痛が発生し、QOLを低下させる原因になります。免疫不全のない患者と比較して、固形がん患者は約5倍、血液がん患者は約10倍帯状疱疹の頻度が高いことが報告されています。画像を拡大する安全性化学療法中の帯状疱疹ワクチン投与に関してとくに重篤な有害事象が増加するという報告はありません。生ワクチンは、免疫低下患者(がん薬物療法中やステロイド使用中)には接種不可です。接種時期化学療法の開始前(少なくとも2週間前)に接種します。化学療法中は骨髄抑制の最も低下した時期(nadir)を避けて接種することが望ましいです。4)新型コロナ(COVID-19)ワクチン背景がん患者はCOVID-19に罹患すると重症化しやすいため、ワクチン接種の利益は大きいです。そのため、基本的には接種を検討すべきとされています。ただし、がんの種類や治療内容、免疫状態により、効果や副反応が異なる可能性があります。治療のタイミングにより接種時期を調整したほうがよい場合もあります。副反応が治療の有害事象と区別しにくい場合があるため注意が必要となります。総じて、患者ごとの状況に応じて主治医と相談して判断することが重要と考えられます。予防効果と安全性ワクチンを接種したがん患者約3万例を対象とした観察研究が報告されており、がん患者であってもCOVID-19ワクチンを2回接種することで感染リスクが低下することが示されています。一方でワクチンの感染リスク低下効果は58%(非がん患者:90%以上)であり、がん患者ではワクチンの効果が減弱する可能性が示唆されています。とくにワクチン接種前6ヵ月以内に化学療法を受けた場合はワクチンの効果が低いことが報告されています。定期的な追加接種が推奨され、感染時は早期の受診と抗ウイルス薬治療が重要となります。接種時期基本的に最新の推奨スケジュールに従った接種が推奨され、明確な最適時期はまだ不明ですが化学療法の開始前に接種して、化学療法中は骨髄抑制の最も低下した時期を避けて接種することが望ましいです。抗CD20抗体(リツキシマブやオビヌツズマブなど)治療後半年以内はワクチンの効果が乏しいことが示されています。注意事項ワクチン接種により、接種側の腋窩・鎖骨上窩・頸部リンパ節の腫大が報告されており、PETでも集積を認めることがあり、転移との鑑別が必要になる場合があります。画像検査の際にはワクチン接種歴と部位の情報を得ておくことが望ましいです。5)RSウイルスワクチン背景高齢者、慢性の基礎疾患(喘息、COPD、心疾患、がんなど)、免疫機能が低下している人は、RSウイルス感染症の重症化リスクが高く、肺炎、入院、死亡などの重篤な転帰につながる可能性があります。また、RSウイルス感染症は、喘息、COPD、心疾患などの基礎疾患の増悪の原因となることもあり、日本では約6万3,000例の入院と約4,500例の院内死亡が推定されています。米国での大規模データ研究では、がん患者がRSウイルス感染症に罹患した場合、非がん患者と比較して死亡のリスクが2倍以上高いことが報告されています。画像を拡大する接種時期化学療法の開始前(少なくとも2週間前)に接種します。化学療法中は骨髄抑制の最も低下した時期(nadir)を避けて接種することが望ましいです。1)Kamboj M, et al. JCO Oncol Pract. 2024;20:889-892. 2)日本癌学会、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会. 新型コロナウイルス感染症とがん診療について(医療従事者向け)Q&A:2021.3)国立がん研究センター:がん情報サービス4)日本乳癌学会. 乳癌診療ガイドライン2022年版. 金原出版:2022.5)アレックスビー筋注用添付文書6)アブリスボ筋注用添付文書講師紹介

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HR+/HER2-転移乳がん内分泌療法後の1次治療、SGはPFS延長せず(ASCENT-07)/SABCS2025

 局所進行切除不能または転移のあるホルモン受容体陽性(HR+)/HER2陰性(HER2-)乳がん患者における内分泌療法(ET)後の1次治療として、サシツズマブ ゴビテカン(SG)は医師選択の化学療法と比較して、統計学的に有意な無増悪生存期間(PFS)の延長を示さなかった。米国・メモリアルスローンケタリングがんセンターのKomal Jhaveri氏が、日本も参加している第III相ASCENT-07試験の主要解析結果を、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2025、12月9~12日)で発表した。・試験デザイン:第III相非盲検無作為化試験・対象:局所進行切除不能または転移のあるHR+/HER2-乳がん患者(進行がんに対する化学療法歴がなく、以下のうち1つ以上に該当:2ライン以上のET±標的療法後に進行/1次治療としてのET±CDK4/6阻害薬開始後<6ヵ月に進行/術後ET+CDK4/6阻害薬開始後<24ヵ月に再発し追加のETの対象外)・試験群:SG(21日サイクルの1日目と8日目に10mg/kg点滴静注) 456例・対照群:医師選択治療(カペシタビンもしくはパクリタキセルもしくはnab-パクリタキセル) 234例・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS[重要な副次評価項目]全生存期間(OS)、BICRによる奏効率(ORR)、QOL[その他の副次評価項目]治験責任医師評価によるPFS、ORR、安全性など・観察期間中央値:15.4ヵ月(データカットオフ:2025年9月15日) 主な結果は以下のとおり。・ベースライン特性は両群でバランスが取れており、年齢中央値はSG群57歳vs.対照群58歳、HER2発現状態はIHC 0が42%vs.43%、転移の診断から無作為化までの期間中央値は23.9ヵ月vs.26.2ヵ月、内臓転移ありが89%vs.88%、肝転移ありが70%vs.67%であった。・前治療歴については、治療ライン中央値はともに2ライン、ET+CDK4/6阻害薬治療歴ありがSG群91%vs.対照群92%、CDK4/6阻害薬による治療期間≦12ヵ月が43%vs.42%であった。・BICRによるPFS中央値は両群で8.3ヵ月(層別ハザード比[HR]:0.85、95%信頼区間[CI]:0.69~1.05、p=0.130)で、SG群における統計学的に有意な改善は認められなかった。・BICRによるPFSのサブグループ解析の結果は、全体集団とおおむね一致していたが、HER2 IHC 0の患者ではSG群で数値的に良好な傾向を示した。・治験責任医師評価によるPFS中央値はSG群8.4ヵ月vs.対照群6.4ヵ月(層別HR:0.78、95%CI:0.64~0.93、名目上のp=0.008)であり、SG群で数値的な改善傾向を示した。・OSデータは未成熟であり(maturity:27%)、OS中央値は両群ともに未到達であったが、SG群で良好な傾向が示された(HR:0.72、95%CI:0.54~0.97、名目上のp=0.029)。・試験治療中止後の次治療は、ADCがSG群32%vs.対照群61%、化学療法が84%vs.66%などであった。・BICRによるORRはSG群37%(CR:1%)vs.対照群33%(CR:0%)、奏効期間中央値は12.1ヵ月vs.9.3ヵ月であった。・Grade3以上の試験治療下における有害事象(TEAE)はSG群72%vs.対照群48%で発現し、TEAEによる治療中止は3%vs.7%であった。SG群の安全性プロファイルはこれまでの報告と一致しており、多く発現したGrade3以上のTEAEは、好中球減少症(56%)、白血球減少症(14%)、貧血(10%)などであった。 Jhaveri氏は、TROPiCS-02試験に基づき、SGはHR+/HER2-転移乳がんに対する内分泌療法および化学療法後の標準治療として引き続き位置付けられるとした(本邦では2025年12月25日現在未承認)。なお、ASCENT-07試験は進行中で、OSが継続して評価される予定。

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再発・難治性濾胞性リンパ腫、R2療法+エプコリタマブでORR・PFS改善/Lancet

 再発または難治性の濾胞性リンパ腫患者において、レナリドミド+リツキシマブの2剤併用療法(R2)と比較して、エプコリタマブ+R2の3剤併用療法は、奏効率(ORR)および無増悪生存期間(PFS)に関して優越性が認められた。エプコリタマブ+R2はR2と比較してGrade3以上の有害事象の発現割合が高かったが、有害事象は管理可能で、個々の既知の安全性プロファイルと一致しており、新たな安全性に関する懸念は認められなかった。米国・Memorial Sloan Kettering Cancer CenterのLorenzo Falchi氏らが、30ヵ国189施設で実施した国際共同無作為化非盲検第III相試験「EPCORE FL-1試験」の結果を報告した。著者は、「今回の結果は、エプコリタマブ+R2を濾胞性リンパ腫の2次治療以降における新たな標準治療と位置付けるものである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2025年12月7日号掲載報告。R2へのエプコリタマブ上乗せの有効性と安全性を検証 研究グループは、18歳以上、ECOG PSスコア0~2で、抗CD20抗体と化学療法を併用した1レジメン以上の治療歴のあるステージII~IV(以前の分類ではGrade1~3A)の再発または難治性の濾胞性リンパ腫患者を、エプコリタマブ+R2群またはR2のみ群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 28日間を1サイクルとして、エプコリタマブはサイクル1~3では週1回、サイクル4~12では4週間ごとに、2~3ステップ漸増により最長12サイクル皮下投与した。レナリドミドは20mg 1日1回を最長12サイクル経口投与し、リツキシマブはサイクル1では週1回、サイクル2~5では4週ごとに375mg/m2を最長5サイクル静脈内投与した。 主要評価項目は、独立判定委員会によるLugano基準に基づくORRおよびPFSであった。 統計解析はORR→PFSの順に階層的検定を行い、有意水準はORRが片側0.005、PFSは片側0.0023とした。 2025年5月24日のデータカットオフ日までに2回の中間解析が実施され、本報告はPFSイベントの78%が発生した後に実施された第2回中間解析に基づくものであった。エプコリタマブ+R2群でORRは95%、PFSは中央値未到達 2022年9月20日~2025年1月10日に、スクリーニングを受けた668例のうち488例が無作為化された(エプコリタマブ+R2群243例、R2群245例)。 本試験は主要評価項目を達成し、エプコリタマブ+R2群のR2群に対する優越性が検証された。 追跡期間中央値14.8ヵ月(四分位範囲:11.4~19.0)において、ORRはエプコリタマブ+R2群95%(95%信頼区間[CI]:92~97)、R2群79%(74~84)(群間差:16%、95%CI:10~22、p<0.0001)であった。 また、PFS中央値は、エプコリタマブ+R2群では未到達、R2群では11.7ヵ月(95%CI:11.1~15.1)であり、エプコリタマブ+R2群で有意に延長した(ハザード比:0.21、95%CI:0.14~0.31、p<0.0001)。16ヵ月PFS率は、エプコリタマブ+R2群で良好であった(85.5%vs.40.2%)。 Grade3以上の有害事象の発現率は、エプコリタマブ+R2群90%(219/243例)、R2群68%(161/238例)であった。エプコリタマブ+R2群におけるサイトカイン放出症候群は軽度(Grade1:28例[21%]、Grade2:7例[5%])かつ管理可能であり、全例で回復した。

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第295回 「効果が乏しい医療」に新たに「腰痛症(神経障害性疼痛を除く)に対するプレガバリン」追加、近い将来査定の対象に

「神経障害性疼痛ではない腰痛には効かない」と国が判定こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この週末は、茨城県桜川市で有機農業を営む大学の先輩宅へ農作業の支援に行ってきました。筑波大学近くの公園で落ち葉を拾い集め、軽トラックに乗せて農園まで運び、腐葉土にする準備を行いました。落ち葉を竹製の手箕(てみ)で拾い集めるという単純な作業です。しかし、落ち葉を拾う時の中腰の姿勢はつらく、目一杯落ち葉を詰めたネットの袋は15~20kgほどの重さになります。中高年にとってこうした冬の屋外での農作業は、腰痛悪化やぎっくり腰再発などと隣合わせで、それなりのリスクを伴うものです。とは言え、参加者全員なんとか無事に20袋ばかりの落ち葉を拾い集めることができ、ご褒美に茨城・大洗沖で採れたアンコウの鍋をご馳走してもらいました。さて今回はプレガバリンの話題を取り上げます。厚生労働省は11月27日に開いた社会保障審議会医療保険部会で、「効果が乏しい医療」に神経障害性疼痛ではない「非神経障害性腰痛症」に対するプレガバリン(商品名:リリカなど)の処方を追加する案を出し、同部会は了承しました。また、医療費の適正化に向け、「効果が乏しいというエビデンスがあることが指摘されている医療」を今後も探して評価を検討していく方針も示されました。とくに整形外科で多用されており、私もかつて「四十肩」の治療で、NSAIDsに追加する形で処方されたこともあるプレガバリンですが、「神経障害性疼痛ではない腰痛には効かない」と国が判定を下したわけで、現場の診療に少なからぬ影響が出そうです。「十分な効果があるというエビデンスがない医療といったものを保険対象から外すという見直しも図っていくべき」と医療保険部会「効果が乏しい医療」とは、2023年に策定された2024~29年度の第4期医療費適正化計画の中で「新たな目標の設定」として盛り込まれた「医療資源の効果的・効率的な活用」で挙げられた「効果が乏しいというエビデンスがあることが指摘されている医療」のことを指します。同計画策定時、「効果が乏しい医療」としては「急性気道感染症・急性下痢症に対する抗菌薬処方」が挙げられていました。その後、医療保険部会では「無価値医療、すなわち効果があるというエビデンスが十分ない医療や、低価値医療、これは仮に効果があるというエビデンスがあったとしても、その効果が小さく、つまり十分な効果があるというエビデンスがない医療といったものを保険対象から外すという見直しも図っていくべき」といった意見が出され、さらなる探索・検討が行われてきました。その結果、今回、「腰痛症(神経障害性疼痛を除く)に対するプレガバリン」が新たに追加されることになったわけです。今後、効果が乏しい医薬品として都道府県が患者や医師への周知を行うことになります。2028年度診療報酬改定での取り扱いについて中医協で審議予定医療保険部会に出された厚労省の資料には、「プレガバリン(商品名 リリカ錠)の効果・効能は神経障害性疼痛、線維筋痛症に伴う疼痛。薬理作用はカルシウムチャネルα2δ遮断薬。神経障害性疼痛では有効なケースもあるが、非神経障害性腰痛では効果が限定的。めまい・眠気などの副作用が比較的多い薬と一般的に言われている。先行研究では、腰痛に対するプレガバリン処方が効果が乏しい医療として指摘されている」とその理由が書かれています。この決定がすぐさま「保険診療での査定」につながるわけではありませんが、今後、関係学会と調整後、次々期、2028年度診療報酬改定での取り扱いについて中央社会保険医療協議会で審議が行われ、審議結果に即した診療報酬上の対応が決定されることになります。将来的には神経障害性疼痛ではない腰痛症には処方できなくなると考えられます。なお、医療費適正化計画基本方針は次のように変更されます(下線部追記)。第1 都道府県医療費適正化計画の作成に当たって指針となるべき基本的な事項一 全般的な事項(略)二 計画の内容に関する基本的事項1 (略)2  医療の効率的な提供の推進に関する目標に関する事項(1)~(2)(略)(3)急性気道感染症及び急性下痢症の患者に対する抗菌薬の処方、神経障害性疼痛を除く腰痛症の患者に対するプレガバリンの処方といった効果が乏しいというエビデンスがあることが指摘されている医療や白内障手術及び化学療法の外来での実施状況などの医療資源の投入量に地域差がある医療については、個別の診療行為としては医師の判断に基づき必要な場合があることに留意しつつ、地域ごとに関係者が地域の実情を把握するとともに、医療資源の効果的かつ効率的な活用に向けて必要な取組について検討し、実施していくことが重要である。(略)プレガバリンの年間薬剤費は約60億円との推計、その半分の30億円が削減目標日経メディカルなどの報道によれば、プレガバリンの年間薬剤費は約60億円と推計されており、その半分の30億円が削減目標になる見込みだそうです。第4期医療費適正化計画(2024~29年度)では、急性気道感染症・急性下痢症に対する抗菌薬処方の適正化で約270億円、入院で行う白内障手術や化学療法の適正化で約106億円の削減を見込んでおり、プレガバリンの削減分はそれに加わる形となります。プレガバリンは、日本ではごく軽症の痛みに対しても多く処方されている薬です。神経障害性疼痛の薬となっていますが、そんなことお構いなく、整形外科などで漫然と投与されている印象です。私自身、近所の整形外科で「四十肩」に処方されたときは驚きました。「効くのかな」と思い数日飲んでみたのですが、顕著なふらつきが出て、怖くなって止めました。その後、「四十肩」は3ヵ月余りで自然と治りました。国は「効果が乏しいというエビデンスがあることが指摘されている医療」を今後も探し出し、医療費適正化計画にも盛り込んでいく計画とのことですが、プレガバリンは、その副作用から転倒骨折や交通事故の危険性も高く、もっと早くに”適正化”が行われてしかるべきだった気がします。「効果が乏しい医療」のさらなる探索と検討に期待したいと思います。参考1)第4期医療費適正化計画における医療資源の効果的・効率的な活用について/厚生労働省

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cT1-2N0乳がんにおけるSLNB省略、5年RRFSで非劣性(BOOG2013-08)/SABCS2025

 乳房温存療法(乳房温存手術および全乳房照射)を受けるcT1-2N0乳がんにおけるセンチネルリンパ節生検(SLNB)の省略を検討したBOOG2013-08試験で、SLNB非施行群が5年領域無再発生存(RRFS)率においてSLNB施行群に非劣性を示した。オランダ・Maastricht University Medical CenterのMarjolein L. Smidt氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2025、12月9~12日)で発表した。 BOOG2013-08試験は、2015~22年にオランダの25施設で実施された多施設共同非劣性無作為化第III相試験である。・対象:乳房温存療法で治療予定のcT1-2N0の片側浸潤性乳がんの女性・試験群(非施行群):SLNB非施行・対照群(施行群):SLNB施行・評価項目:[主要評価項目]5年RRFS率(絶対差の両側95%信頼区間[CI]が5%未満の場合に非劣性と定義)[副次評価項目]局所再発率、対側乳がん発生率、遠隔転移・死亡、5年遠隔無再発生存期間(DDFS)率など 主な結果は以下のとおり。・計1,733例が登録され1,572例がPPS解析の対象となった(施行群:748例、非施行群:824例)。平均年齢は施行群61.6歳、非施行群61.4歳で、89%が50歳以上であった。82%がcT1で、82.8%が腫瘍グレード1/2であった。乳がんのサブタイプはHR+/HER2-が最も多かった。施行群におけるセンチネルリンパ節転移陰性は86.3%で、微小転移が6.0%、肉眼的転移が7.7%に検出された。術後療法については、なしが52%、化学療法が約12%、分子標的療法が4~5%、内分泌療法は約44%であった。・5年RRFS率は、施行群96.6%(95%CI:95.2~98.0)、非施行群94.2%(同:92.4~96.0)で、絶対差2.35%(同:0.06~4.72)で5%の非劣性マージンを超えず、ITT解析も同様であった。・5年領域再発(RR)率は、施行群0.6%(95%CI:0.0~1.1)、非施行群1.1%(同:0.4~2.0)であり、絶対差は0.5%(同:-0.3~1.7)であった。・5年DDFS率は、施行群96.0%(95%CI:94.4~97.6)、非施行群92.9%(同:90.9~94.9)であり、絶対差は3.3%であった。 Smidt氏は「本試験の対象患者のほとんどが50歳以上、HR+/HER2-、腫瘍グレード1/2のcT1乳がんであり、今回の結果はこの集団においてはSLNB省略が安全に考慮されうることを示唆している」とまとめ、さらに「この集団においては内分泌療法がSLNB省略の必要条件ではないようだ」と追加した。

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ER+/HER2-進行乳がんへのimlunestrant、OS中間解析時点の最新データ(EMBER-3)/SABCS2025

 エストロゲン受容体陽性HER2陰性(ER+/HER2-)の進行乳がんを対象とした経口選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)imlunestrantの第III相EMBER-3試験において、事前に規定された全生存期間(OS)中間解析時点(追跡期間中央値:28.5ヵ月)での各評価項目の最新データを、米国・Memorial Sloan Kettering Cancer CenterのKomal L. Jhaveri氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2025、12月9~12日)で発表した。 本試験の1次解析(追跡期間中央値:15.7ヵ月)では、ESR1変異を有する患者においてimlunestrant群が標準内分泌療法群に比べて無増悪生存期間(PFS)が有意に改善し、またESR1変異の有無にかかわらず全患者において、imlunestrant+アベマシクリブ群がimlunestrant群に比べPFSを有意に改善したことが報告されている。・対象:アロマターゼ阻害薬±CDK4/6阻害薬による治療歴のあるER+/HER2-進行乳がん患者874例・試験群(imlunestrant群):imlunestrant単剤(1日1回400mg)331例・試験群(imlunestrant+アベマシクリブ群):imlunestrant(1日1回400mg)+アベマシクリブ(1日2回150mg)330例・対照群(標準内分泌療法群):治験責任医師がエキセメスタン/フルベストラントから選択 213例・評価項目:[主要評価項目]治験責任医師評価によるPFS(ESR1変異を有する患者および全患者におけるimlunestrant群vs.標準内分泌療法群、全患者におけるimlunestrant+アベマシクリブ群vs.imlunestrant群)[重要な副次評価項目]OS、盲検独立中央判定によるPFS、奏効率、安全性など[探索的評価項目]化学療法開始までの期間(TTC)、無化学療法生存期間、PFS2 主な結果は以下のとおり。・OS中間解析2の時点(データカットオフ:2025年8月18日)で、追跡期間中央値は28.5ヵ月、治療継続率はimlunestrant群10%、標準内分泌療法群5%、imlunestrant+アベマシクリブ群18%であった。<ESR1変異を有する患者におけるimlunestrant群vs.標準内分泌療法群>・PFS中央値はimlunestrant群が5.5ヵ月、標準内分泌療法群が3.8ヵ月で、PFSベネフィットが維持されていた(ハザード比[HR]:0.62、95%信頼区間[CI]:0.47~0.82)。・OS中央値はimlunestrant群が34.5ヵ月、標準内分泌療法群が23.1ヵ月で、11.4ヵ月改善したが、事前に規定された有意性の境界に達しなかった(HR:0.60、95%CI:0.43~0.86、p=0.0043)。・TTC中央値はimlunestrant群が15.6ヵ月、標準内分泌療法群が10.2ヵ月であった(HR:0.66、95%CI:0.48~0.92)。・imlunestrantは良好な安全性プロファイルを維持し、経口SERD特有の毒性はなかった。<全患者におけるimlunestrant+アベマシクリブ群vs.imlunestrant群>・PFS中央値はimlunestrant+アベマシクリブ群が10.9ヵ月、imlunestrant群が5.5ヵ月でPFSベネフィットが維持されていた(HR:0.59、95%CI:0.47~0.74)。サブグループ解析では、CDK4/6阻害薬治療歴のある患者においてもimlunestrant+アベマシクリブ群のPFSベネフィットが維持されていた(HR:0.53、95%CI:0.40~0.69)。また、ESR1変異やPI3K経路の変異の有無にかかわらず、imlunestrant+アベマシクリブ群のPFSベネフィットが維持され、ESR1とPI3K経路ともに変異のある患者においても維持されていた。・OS中央値は、imlunestrant+アベマシクリブ群が未達、imlunestrant群が34.4ヵ月であった(HR:0.82、95%CI:0.59~1.16、p=0.2622)。生存曲線は24ヵ月以降に離れた。・imlunestrantとアベマシクリブの既知の安全性プロファイルを維持していた。 Jhaveri氏は、「imlunestrantは、単剤療法またはアベマシクリブとの併用療法として、内分泌療法歴のあるER+/HER2-進行乳がん患者に対して、化学療法を含まない経口剤のみの治療選択肢を提供する」と結論した。

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乳房温存術時1~3個のセンチネルリンパ節転移陽性乳がん、SNLB単独はcALNDに非劣性示せず(INSEMA)/SABCS2025

 乳房温存術時に1~3個のセンチネルリンパ節転移陽性の浸潤性乳がん患者において、センチネルリンパ節生検(SNLB)のみの施行は、完全腋窩リンパ節郭清(cALND)の施行と比較し無浸潤疾患生存期間(iDFS)に関して非劣性を示さなかった。ドイツ・ロストック大学のToralf Reimer氏が、ドイツの142施設およびオーストリアの9施設で実施した前向き無作為化非劣性試験「Intergroup Sentinel Mamma:INSEMA試験」における、2次無作為化後の副次評価項目の解析結果を、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2025、12月9~12日)で発表した。 本研究では、18歳以上で乳房温存術と術後放射線治療を受ける予定の浸潤性乳がん患者(腫瘍サイズ≦5cmのcT1またはcT2、かつcN0)を対象として、SNLB省略群とSNLB単独群に1対4の割合で無作為に割り付けた(初回無作為化)。その後、SNLB単独群で1~3個のセンチネルリンパ節転移陽性と診断された患者を、SNLB単独群とcALND群に1対1の割合で無作為に割り付けた(2次無作為化)。 今回発表された重要な副次評価項目は、SNLB単独群とcALND群における(2次無作為化)乳房温存術後のiDFSであった(追跡期間中央値:74.2ヵ月)。 主な結果は以下のとおり。・初回無作為化でSNLB単独群に割り付けられた4,184例のうち、センチネルリンパ節転移陽性と診断されたのは1,050例であった。2次無作為化を受けたのは485例で(ITT解析集団)、うち386例がper-protocol解析集団に含まれた。・per-protocol解析集団におけるベースライン特性は両群でおおむねバランスが取れており、65歳未満はSNLB単独群64.5%vs.cALND群65.7%、術前の腫瘍サイズ≦2cmは80.2%vs.82.2%、ERおよび/またはPgR陽性は97.7%vs.82.2%、HER2陰性は94.9%vs.85.9%であった。Ki-67≦20%は84.6%vs.76.6%、化学療法歴ありは33.6%vs.39.6%、領域リンパ節照射ありは20.6%vs.36.6%であった。・per-protocol解析集団における5年iDFS率は、SNLB単独群86.6%vs.cALND群93.8%(ハザード比[HR]:1.69、95%信頼区間[CI]:0.96~2.94)となり、非劣性は示されなかった(事前に規定された非劣性マージン:1.271)。・iDFSイベントについて、遠隔転移(6.9%vs.4.1%)と二次がん(4.1%vs.2.1%)はSNLB単独群で多く発生したが、腋窩再発については1例(0.5%)vs.0例であった。・iDFSについてのサブグループ解析の結果、術後の腫瘍サイズ>2cmの患者およびマクロ転移個数の多い患者においては、cALNDによるベネフィットが少ない傾向がみられた。一方、Ki-67>20%の患者においてはcALNDにより大きなベネフィットが得られる可能性が示唆された。・ITT解析集団における5年iDFS率は、SNLB単独群86.0%vs.cALND群89.3%(HR:1.26、95%CI:0.80~1.99)となり、非劣性は示されなかった。・イベント数は少ないものの、per-protocol解析集団における5年OS率は、SNLB単独群94.9%vs.cALND群96.2%(HR:1.19、95%CI:0.55~2.56)であった。・術後放射線療法については、通常分割照射(75.1%vs.87.0%)および追加照射(80.6%vs.88.8%)の実施率はcALND群で有意に高かったが、腋窩放射線治療の線量に治療群による差はなかった。 Reimer氏は、同患者におけるcALNDの省略が5年iDFS率に影響を与える可能性が初めて示唆されたとし、この結果は放射線治療の内容、化学療法の実施有無、およびKi-67高値の影響により部分的に説明できる可能性があるとまとめている。同試験のフォローアップは継続中で、10年時データは2029年に得られる予定。

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Stage I~III膵管腺がんの術前療法、PAXG vs.mFOLFIRINOX(CASSANDRA)/Lancet

 切除可能または切除可能境界膵管腺がん(PDAC)において、PAXG療法(シスプラチン+nab-パクリタキセル+カペシタビン+ゲムシタビン)はmFOLFIRINOX療法(フルオロウラシル+ロイコボリン+イリノテカン+オキサリプラチン)と比較して無イベント生存期間(EFS)を有意に改善したことが、イタリア・IRCCS San Raffaele Scientific InstituteのMichele Reni氏らが行った第III相の無作為化非盲検2×2要因試験「PACT-21 CASSANDRA試験」の結果で示された。周術期化学療法は、切除可能または切除可能境界PDAC患者における標準治療の1つである。結果を踏まえて著者は、「PAXGは、術前療法の標準治療となりうることが示された。今後の試験では、術前PAXGを比較対照群として検討すべきであろう」とまとめている。Lancet誌オンライン版2025年11月20日号掲載の報告。切除可能または切除可能境界PDACを対象 PACT-21 CASSANDRA試験は、切除可能または切除可能境界PDAC患者においてPAXGのmFOLFIRINOXに対する優越性の評価を目的に、イタリアの大学病院17施設で行われた。適格患者は、18~75歳の病理学的に切除可能または切除可能境界PDACと診断された患者。 無作為化は、Rコードリストとコンピュータアルゴリズムを用いた中央ウェブベースシステムにより行われた。割合は1対1で、施設およびCA19-9血清レベルでブロック層別化を行った。 被験者は、最初にPAXG(カペシタビン総量1日1,250mg/m2[625mg/m2を1日2回]投与、および14日ごとにシスプラチン30mg/m2、nab-パクリタキセル150mg/m2、ゲムシタビン800mg/m2を静脈内投与)またはmFOLFIRINOX(14日ごとにフルオロウラシル2,400mg/m2、ロイコボリン400mg/m2、イリノテカン150mg/m2、オキサリプラチン85mg/m2を静脈内投与)のいずれかに無作為化され4ヵ月間治療を受け、その後、2ヵ月間の追加化学療法について、術前または術後のいずれかに2回目の無作為化が行われた。 主要評価項目は、ITT集団におけるEFS。安全性は、割り付けられた治療法を少なくとも1サイクル受けた患者を対象に評価した。EFS中央値、PAXG群16.0ヵ月、mFOLFIRINOX群10.2ヵ月 本論では、最初の無作為化の結果が報告されている。 2020年11月3日~2024年4月24日に、適格患者260例が無作為化された。PAXG群(132例)は年齢中央値65歳(四分位範囲:60~70)、女性が68例(52%)、男性が64例(48%)。mFOLFIRINOX群(128例)はそれぞれ63歳(57~69)、62例(48%)と66例(52%)であった。260例全例が、割り付けられた治療法を少なくとも1サイクル受けた。 PAXG群はmFOLFIRINOX群と比較して、EFS中央値を統計学的有意に延長した(16.0ヵ月[95%信頼区間[CI]:12.4~19.8]vs.10.2ヵ月[8.6~13.5]、ハザード比:0.63[95%CI:0.47~0.84]、p=0.0018)。 少なくとも1件のGrade3以上の有害事象が報告されたのは、PAXG群87/132例(66%)、mFOLFIRINOX群78/128例(61%)であった。mFOLFIRINOX群では敗血症による治療関連死が1件報告された。

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副作用対策、用量調節で悩ましいこと 【高齢者がん治療 虎の巻】第5回

<今回のPoint>「プロの勘」ではなく、高齢者機能評価(Geriatric Assessment:GA)で根拠を可視化しチームで共有することが信頼される医療の土台に治療方針決定にGAを活用すれば、単なる点数評価で終わらず、個別化した薬剤調整が可能にGAは多職種との連携に使ってこそ意味がある<症例>(第1回、第2回、第4回と同じ患者)88歳、女性。進行肺がんと診断され、本人は『できることがあるなら治療したい』と希望。既往に高血圧、糖尿病、軽度の認知機能低下があり、PSは1〜2。診察には娘が同席し、『年齢的にも無理はさせたくない。でも本人が治療を望んでいるなら…』と戸惑いを見せる。遺伝子変異検査ではドライバー変異なし、PD-L1発現25%。G8:10.5点(失点項目:年齢、併用薬数、外出の制限など)/HDS-R 20点(認知症の可能性あり)多職種カンファレンスで免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の単剤投与を提案。薬剤師には併用薬の整理を、MSWには家庭環境の支援を依頼し、チームで治療準備を整えた。副作用なく3サイクル投与できたが病勢は進行。ベストサポーティブケア(BSC)への移行を提案したが、本人は次治療を希望。TTF-1陰性でありカルボプラチン(CBDCA)+ナブパクリタキセル(nab-PTX)療法が検討された1)が、標準量か減量すべきかが議論された 。その道のプロにGAは不要!?GA普及の初期、しばしば耳にしたのが、 「患者が診察室に入ってくる足音で脆弱性の有無がわかる」「結局、全例抗がん剤減量するからGAは不要」 といった声です。つまり“プロの勘があるのでGAは必要ない”という意見です。おそらく、臨床経験豊富な先生は頭の中で独自のGAを実施されているものと思います。ですが、そのプロの勘を見える化し、チームで共有することができているでしょうか。GAの本質は、「コンセンサスのあるツールで構造化された評価を行い、結果を共有して意思決定の質を高め、必要な介入へとつなげる」点にあります。多職種とつなげて点から線へ流れを作り、評価するだけのGAではなく、使いこなしてこそ価値が出るものと考えます。それこそが「プロの勘」をチーム医療の武器に変える力と言えるでしょう。GAのSDMへの貢献:再治療をどうするか冒頭の症例は、ICIによる副作用を認めなかったことで、本人・家族とも「次もいけるかも」という安心感がありました。ここで、改めて高齢者機能評価を実施してみましょう。生活機能基本的日常生活動作(BADL)…自立手段的日常生活動作(IADL)…買い物、食事の支度、交通手段に関して介助が必要G89点(失点項目:年齢、併用薬数、外出の制限、体重減少など)CARGスコア2)(失点項目:移動の制限、転倒歴など)*CARGの詳細は本文後半のコラム参照<図1より算出したCARGスコア>多剤併用標準量13点、高リスク多剤併用減量11点、高リスク単剤標準量11点、高リスク単剤減量9点、中リスク(図1)CARGスコア[参考]画像を拡大するG8は初回治療前と比較し、若干の体重減少のため点数が下がっていました。また、転倒歴が判明し、栄養指導や自宅環境の整備を再度実施することにしました。カンファレンスではこの結果をもとに「単剤減量+支持療法強化」が提案されると判断しました。本人と家族には、「細胞傷害性抗がん薬の投与は高リスクであること」「前回のように必ずうまくいくとは限らないこと」を丁寧に説明した結果、十分な支持療法を実施しながらnab-PTX単剤を減量して開始する方針になりました。GAによる「見える根拠」を示した説明で、本人・家族の納得度を高め、信頼関係の構築にもつながった症例です。(図2)高齢者機能評価は誰のため?GAにより治療選択とその対策を見える化する画像を拡大する適切な投与量調節とはGAで脆弱性を認める→減量すべき、は一見自然な流れですが「どのくらい減らすか」には明確な指針がありません。米国・ロチェスター大学教授Supriya G. Mohile氏のラボでは、GAで脆弱性がある場合、細胞傷害性抗がん薬は一律80%の減量を行っていました。非常に明快な指針ですが、日本では減量にもエビデンスが必要と考える文化が根強く、考え方をそのまま導入するのは困難だと思います。そこで、以下の視点から減量を検討することを提案いたします。一律の減量ではなく、エビデンスに基づいた減量レジメンの選択臨床試験で用いられた減量基準に従った投与量調整GAを活用し、医師自身が理論的に納得したうえで減量を提案たとえ結果的に減量という同じ結論に至っても、そのプロセスが納得に裏付けられたものであるかどうかがSDMの質を左右すると考えます。このように、高齢者に抗がん剤治療を行う場合は最終的に減量を推奨することも多いと思いますが、GAを用いて理論的に担当医自身も納得したうえで患者や家族に提案すること、点数だけで治療を決めず、介入や十分な支持療法を検討することも重要だと思います。Chemo-Toxicity Calculator、CARG scoreとは何か?2,3)CARGスコアは、米国のArti Hurria氏らが高齢がん患者における化学療法の毒性リスクを予測するために開発したツールで、Cancer and Aging Research Group(CARG)によって報告されました。65歳以上の多がん種患者を対象に、化学療法前に包括的高齢者機能評価(CGA)を実施し、治療中に生じたCTCAE Grade3以上の有害事象との関連からリスク因子を抽出しています。評価項目には、年齢・性別・身長/体重・がん種・レジメンの強度・Hb・Cr値に加え、難聴、転倒歴、100m歩行の制限、人付き合いの制限など、身体的・社会的な要素が含まれています。G8だけでは算出できない項目が多く、CARGスコアの計算はより包括的な高齢者評価を行う良い契機になります。リスクスコアは低(0~5点)、中(6~9点)、高リスク(10点以上)に分類され、視覚的に有害事象リスクを把握しやすいのが利点です。ただし、細胞傷害性抗がん薬を対象としたツールであり、ICIや分子標的薬には適用できず、日本では前向き研究による妥当性検証がされていない点には注意が必要です。1)Kogure Y, et al. Lancet Healthy Longev. 2021;2:e791-e800.2)Hurria A, et al. J Clin Oncol. 2011;29:3457-3465. 3)Cancer and Aging Research Group:Chemo-Toxicity Calculator講師紹介

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術前療法後に残存病変を有するHER2+早期乳がん、T-DXd vs.T-DM1(DESTINY-Breast05)/NEJM

 再発リスクの高い、術前化学療法後に浸潤性残存病変を有するHER2陽性(+)の早期乳がん患者において、術後療法としてのトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)はトラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)と比較して、無浸潤疾患生存期間(iDFS)を統計学的に有意に改善し、毒性作用は主に消化器系および血液系であったことが、ドイツ・Goethe University FrankfurtのSibylle Loibl氏らDESTINY-Breast05 Trial Investigatorsが行った第III相の国際共同非盲検無作為化試験「DESTINY-Breast05試験」の結果で示された。NEJM誌オンライン版2025年12月10日号掲載の報告。主要評価項目はiDFS、重要な副次評価項目はDFS 研究グループは、術前化学療法後(タキサン系化学療法と抗HER2療法を含む)に乳房または腋窩リンパ節に浸潤性残存病変を有する、あるいは初診時に手術不能病変を有する、再発リスクの高いHER2+乳がん患者を対象に、術後療法としてT-DXd 5.4mg/kgと現行の標準治療であるT-DM1 3.6mg/kgを比較した。再発高リスクの定義は、術前療法前にT4 N0~3 M0またはcT1~3 N2~3 M0で手術不能と判断、または術前療法前に手術可能と判断されたが(cT1~3 N0~1 M0)術前療法後に腋窩リンパ節転移が陽性(ypN1~3)であったこととされた。 主要評価項目はiDFS。重要な副次評価項目は無病生存期間(DFS、非浸潤性乳がんおよび二次原発性非乳がんのDFSを含む)であった。その他の副次評価項目は、全生存期間、無遠隔転移生存期間および安全性などであった。iDFSおよびDFSイベントの発生とも、T-DXd群で統計学的に有意に改善 2020年12月4日~2024年1月23日に1,635例が1対1の割合で無作為化され、T-DXd(818例)またはT-DM1(817例)の投与を受けた。データカットオフ(2025年7月2日)時点で、追跡期間中央値は両群ともおよそ30ヵ月(T-DXd群29.9ヵ月[範囲:0.3~53.4]、T-DM1群29.7ヵ月[0.1~54.4])であった。ベースライン特性は両群で類似しており、大半が65歳未満(T-DXd群89.9%vs.T-DM1群90.1%)、ホルモン受容体陽性(71.0%vs.71.4%)、術前療法後に腋窩リンパ節転移陽性(80.7%vs.80.5%)、術前療法として2剤併用抗HER2療法(78.5%vs.79.1%)、アントラサイクリンまたはプラチナ製剤ベースの化学療法(アントラサイクリン:51.7%vs.48.8%、プラチナ製剤:47.2%vs.48.0%)、および放射線療法(93.4%vs.92.9%)を受けていた。また、被験者のほぼ半数がアジア人(48.8%vs.47.2%)であった。 iDFSイベントの発生は、T-DXd群51例(6.2%)、T-DM1群102例(12.5%)であった(ハザード比[HR]:0.47、95%信頼区間[CI]:0.34~0.66、p<0.001)。3年iDFS率はそれぞれ92.4%と83.7%であった。 DFSイベントの発生は、T-DXd群52例(6.4%)、T-DM1群103例(12.6%)であった(HR:0.47、95%CI:0.34~0.66、p<0.001)。3年DFS率はそれぞれ92.3%と83.5%であった。間質性肺疾患リスクに対する適切なモニタリングと管理が必要 最も多くみられた有害事象は、T-DXd群では悪心(発現率71.3%)、便秘(32.0%)、好中球減少(31.6%)、嘔吐(31.0%)であり、T-DM1群では肝機能評価値の上昇(AST上昇50.2%、ALT上昇45.3%)および血小板数の低下(49.8%)であった。 治療薬に関連した間質性肺疾患の発現頻度は、T-DXd群(9.6%)がT-DM1群(1.6%)と比べて高かった。T-DXd群では、間質性肺疾患を呈した2例が死亡した。 著者は、「T-DXdの特定された重要なリスクは間質性肺疾患であり、適切なモニタリングと管理が必要である」と述べている。

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ER+/HER2-進行・転移乳がん、ESR1変異検出時のcamizestrantへの切り替えでPFS延長(SERENA-6)/SABCS2025

 ASCO2025で第III相SERENA-6試験の中間解析結果が報告され、ER+/HER2-の進行または転移を有する乳がんと診断され、アロマターゼ阻害薬(AI)+CDK4/6阻害薬の併用療法を開始してESR1変異が検出された患者が、次世代経口選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)および完全ER拮抗薬であるcamizestrant+CDK4/6阻害薬へ切り替えることによって、無増悪生存期間(PFS)の統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示した。今回、SERENA-6試験の最終PFS解析結果とESR1変異血中循環腫瘍DNA(ctDNA)動態の探索的解析の結果を、フランス・Institut CurieのFrancois-Clement Bidard氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2025、12月9~12日)で報告した。 SERENA-6試験は、ctDNAによって内分泌療法抵抗性を検出し、病勢進行前に治療の切り替えを実施するアプローチを使用した初の第III相国際共同二重盲検試験。定期的な腫瘍の画像検査時にctDNA検査を行い、内分泌療法抵抗性の初期兆候およびESR1変異を有する患者を特定した。ESR1変異が検出され、病勢進行がない場合は、AI(アナストロゾール、レトロゾール)からcamizestrant(75mg、1日1回経口投与)に切り替えて、同じCDK4/6阻害薬(パルボシクリブ、アベマシクリブ、ribociclib)との併用を続けた。camizestrant切替群にはAIのプラセボ、AI継続群にはcamizestrantのプラセボも投与された。 主な結果は以下のとおり。・315例の患者がcamizestrant切替群(157例)とAI継続群(158例)に無作為に割り付けられた。データカットオフ(2025年6月30日)時点での追跡期間中央値は18.7ヵ月であった。・主要評価項目であるPFS中央値は、camizestrant切替群16.6ヵ月(95%信頼区間[CI]:14.7~19.4)、AI継続群9.2ヵ月(同:7.2~9.7)であり、中間解析と同様にcamizestrant切替群で有意に良好であった(ハザード比[HR]:0.46[95%CI:0.34~0.62]、p<0.00001)。・2次治療開始後のPFS(PFS2)中央値は、camizestrant切替群25.7ヵ月(95%CI:20.3~28.9)、AI継続群19.4ヵ月(同:17.8~21.4)であった(HR:0.56[95%CI:0.39~0.80]、名目のp=0.00153)。・化学療法/抗体薬物複合体(ADC)の投与を開始するまでの期間の中央値は、camizestrant切替群22.7ヵ月(95%CI:20.3~31.5)、AI継続群18.7ヵ月(同:16.7~24.7)であり、camizestrant切替群で長かった(HR:0.69[95%CI:0.49~0.97]、p=0.029)。・8週時点のESR1変異のアレル頻度はcamizestrant切替群で大幅に減少し(ベースラインからの変化の中央値:-100%[IQR:-100~-100])、AI継続群で増加した(同:+66.7%[IQR:-67.9~+465.0])(p<0.00001)。AI継続群では、ESR1変異のアレル頻度がベースラインから500%以上増加した患者は24.4%であったのに対し、camizestrant切替群では0.8%であった。・新たな安全性シグナルは報告されなかった。

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ゾンゲルチニブ発売、HER2変異陽性NSCLCの治療の変化は?/ベーリンガーインゲルハイム

 日本ベーリンガーインゲルハイムは、ゾンゲルチニブ(商品名:ヘルネクシオス)を2025年11月12日に発売した。発売を機に「非小細胞肺がん(NSCLC)のアンメットニーズと最新治療」をテーマとしたメディアセミナーを2025年11月18日に開催した。後藤 功一氏(国立がん研究センター東病院 副院長 兼 呼吸器内科 科長)がHER2遺伝子変異陽性NSCLC治療のアンメットニーズと最新治療について紹介し、HER2遺伝子変異陽性NSCLC患者の清水 佳佑氏(肺がんHER2「HER HER」代表)が、患者会の運営経験、患者が抱える課題やアンメットニーズを述べた。HER2遺伝子変異陽性NSCLCの特徴 後藤氏は、LC-SCRUM-Asiaの取り組み、HER2遺伝子変異陽性肺がんの特徴や治療法などについて紹介した。 LC-SCRUM-Asiaは、肺がんの原因となる希少遺伝子変化を見つけ出し、有効な治療薬を届けることを主な目的としている。後藤氏によると、これまでに2万5千例以上の肺がん患者が登録され、これまでの活動に伴って14種類の分子標的薬が臨床応用されているとのことだ。 LC-SCRUM-Asiaにおける遺伝子解析結果によると、HER2遺伝子変異は日本人NSCLC患者の2.6%にみられる。このうちexon20挿入変異が79%であり、そのなかでYVMA変異(HER2 A775_G776insYVMA)が66%を占める。HER2遺伝子exon20挿入変異を有するNSCLC患者の特徴としては、若年発症が多い(年齢中央値65歳[範囲:29~90])、女性の割合が多い(57%)、非喫煙者が多い(55%)、腺がんがほとんど(98%)といったことが挙げられる1)。 現在、HER2遺伝子変異陽性NSCLC患者に対する1次治療の標準治療の1つとして、免疫チェックポイント阻害薬+化学療法があるが、LC-SCRUM-Asiaの登録患者における無増悪生存期間(PFS)中央値は8.5ヵ月であった1)。化学療法単独と比較してPFSは延長しているが、アンメットニーズが存在すると言える。新たな治療選択肢の登場 そのようななか、2次治療以降の選択肢として、HER2を標的とする抗体薬物複合体トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)が登場した。既治療のHER2遺伝子変異陽性NSCLC患者を対象とした国際共同第II相試験「DESTINY-Lung02試験」2)において、T-DXd 5.4mg/kgは奏効割合(ORR)50.0%(完全奏効[CR]2.9%、部分奏効[PR]47.1%)、PFS中央値10.0ヵ月、全生存期間(OS)中央値19.0ヵ月といった良好な治療成績を示した。ただし、後藤氏は「有効な薬剤であることに間違いないが、限界も存在する」と述べる。 そこで、新たな治療選択肢として登場したのがゾンゲルチニブである。ゾンゲルチニブは、HER2と構造的な関連のある野生型EGFRに対する阻害活性を弱め、HER2を選択的に阻害するように設計された薬剤である。野生型EGFRを阻害すると、発疹や下痢などのEGFR関連有害事象が生じやすくなるが、ゾンゲルチニブはその毒性を軽減するように開発された。 既治療のHER2遺伝子変異陽性NSCLC患者を対象とした国際共同第I相試験「Beamion LUNG-1試験」3)において、ゾンゲルチニブはORR 71%(CR 7%、PR 64%)、PFS中央値12.4ヵ月という良好な有効性を示した。安全性については、主な治療関連有害事象(TRAE)として下痢(56%)や肝機能障害(AST増加24%、ALT増加21%)、発疹(33%)などがみられたが、全体のGrade3以上のTRAEの発現割合は17%であった。 Beamion LUNG-1試験の結果から、『肺癌診療ガイドライン2025年版』では、T-DXdと並んで、2次治療以降でゾンゲルチニブ単剤療法を行うことが強く推奨された(推奨の強さ:1、エビデンスレベル:C)4)。 後藤氏は、ゾンゲルチニブについて「最も大きな特徴は毒性が軽いという点である。非常に使いやすい薬剤であり、HER2遺伝子変異陽性NSCLCの治療において、最も使われる薬剤になるのではないかと考えている」と期待を語った。HER2肺がんの患者会設立と活動 清水氏は、2017年にStageIIIBの肺腺がんの告知を受け、標準治療および臨床試験への参加を経てCRに至ったがんサバイバーであり、HER2遺伝子変異またはHER2過剰発現を有する肺がんを対象とした患者会として、2018年に肺がんHER2「HER HER」を設立した。 清水氏は「日常のことやHER2に関することを話したいと思っても話す場がない。臨床試験の情報を得ても共有する場所がなく、もったいない。HER2遺伝子変異またはHER2過剰発現を有する肺がん患者が安心して集まる場があるとよい」という思いを抱えていたという。そのようななか、日本臨床腫瘍学会学術集会の懇親会において、ROS1融合遺伝子陽性の肺がんを対象とした患者会の会員と出会ったことで、肺がんHER2「HER HER」の設立を決意したとのことだ。 現在(講演時)の会員数は52名であり、30~60代の患者が中心で、とくに50代の患者が多い。患者家族も会員の約4分の1を占めている。HER2遺伝子に特化した患者会であることから、沖縄県から宮城県まで会員が分布している。そのため、活動はオンラインが中心とのことである。 本患者会では「治療と共に」「仲間と共に」「社会と共に」という3つのテーマを掲げている。活動としては、患者同士で日々の治療や副作用、治療や生活の不安や悩みなどについて情報共有をするほか、臨床試験の情報を共有しているという。また、ほかの肺がんの患者団体、疾患を超えた団体とも活動を行っており、「社会と一緒に医療を作っていきたい」と考えながら、研究への患者・市民参画(PPI)の活動も積極的に進めているとのことである。患者会の活動で得られた変化とアンメットニーズ このような活動を進めていくなかで、周囲との関係性に変化があったと清水氏は語る。その例として、医療者とのコミュニケーションの変化、家族や周囲の方との関係の変化などを挙げた。医療者との関係性について、清水氏は「患者会内の先輩患者から医療者とのコミュニケーション方法を学ぶことで、医療者との信頼関係の構築につながることがあった。治療に関する知識や情報を持つことで、主治医と共に納得して治療を進められるようになった方もいた」と述べた。また、生活の工夫など、普段聞くことのできない体験談を聞くことで、家族や周囲の方との関係に変化が生まれ、生活がしやすくなったという方もいたとのことである。 一方で、課題も存在すると清水氏は述べる。EGFR遺伝子などの主要なドライバー遺伝子と比較し、希少遺伝子異常は治療選択肢が限られる場合があり、臨床試験情報へのアクセスが求められることもある。実際に、臨床試験の探し方や参加方法がわからないといった相談を受けることもあるという。これについて、後藤氏は「遺伝子解析結果とその結果に関連する臨床試験情報を患者へ直接提供するLC-SCRUM-Supportというプロジェクトを開始している。患者またはその近親者のメールアドレスを登録いただくと、現在進行中の臨床試験情報が届くため、患者会の皆さまにも活用いただきたい」と述べた。 以上を踏まえ、清水氏は「形式的なPPIにとどまらず、双方向のコミュニケーションが当たり前になることが重要だと捉えている。より患者の声が生きる設計を共に作っていき、情報が誰でも届く社会になることを期待している」と述べた。また、今後の活動について「がん治療を行っている患者や家族には、それぞれの悩みや不安がある。少しでもその不安や悩みを解消し、穏やかな生活を送っていただきたい。そのため、一人ひとりの声をしっかりと聞き、寄り添いながら活動を進めたいと考えている。私たちの声が誰かの治療に繋がり、誰かの声が私たちの希望に繋がる。『HER HER』はその架け橋のような存在でありたいと思っている」と語った。

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THP療法後に病勢進行のないHER2+転移乳がん維持療法、tucatinib追加でPFS改善(HER2CLIMB-05)/SABCS2025

 タキサン+トラスツズマブ+ペルツズマブ(THP)併用療法後に病勢進行のないHER2陽性(HER2+)転移乳がん患者における維持療法として、トラスツズマブ+ペルツズマブ(HP)へのtucatinibの追加は、プラセボ+HP療法と比較して無増悪生存期間(PFS)を統計学的有意に改善した。米国・Sarah Cannon Research InstituteのErika P. Hamilton氏が、日本を含む23ヵ国で実施された第III相HER2CLIMB-05試験の結果をサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2025、12月9~12日)で発表した。なお、この結果はJournal of Clinical Oncology誌オンライン版2025年12月10日号に同時掲載されている1)。・試験デザイン:第III相無作為化二重盲検プラセボ対照国際多施設共同試験・対象:THP療法(4~8サイクル)後に病勢進行のない、スクリーニング時の造影MRIで脳転移がないもしくは無症候性の脳転移を有するHER2+転移乳がん患者(ECOG PS 0/1)・試験群:tucatinib(1日2回300mg、経口投与)+HP(3週間間隔)±内分泌療法 326例・対照群:プラセボ+HP±内分泌療法 328例・評価項目:[主要評価項目]RECIST v1.1を用いた治験担当医師評価に基づくPFS[重要な副次評価項目]全生存期間(OS)[副次評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS、中枢神経系無増悪生存期間(CNS-PFS)、安全性など・データカットオフ:2025年9月5日(追跡期間中央値:23ヵ月) 主な結果は以下のとおり。・ベースラインの患者特性は両群でバランスがとれており、年齢中央値はともに54歳、ホルモン受容体陽性がtucatinib+HP群51.5%vs.プラセボ+HP群53.7%で、脳転移ありもしくはあった症例が12.6%vs.12.2%、de novo転移が69.6%vs.68.9%であった。・治験担当医師評価に基づくPFS中央値は、tucatinib+HP群24.9ヵ月vs.プラセボ+HP群16.3ヵ月で、tucatinib+HP群における統計学的有意な改善が認められた(ハザード比[HR]:0.641、95%信頼区間[CI]:0.514~0.799、両側検定のp<0.0001)。・ホルモン受容体の状態、ベースラインでの脳転移の有無、年齢(<65歳/≧65歳)など事前に規定されたすべてのサブグループにおいて、tucatinib+HP群におけるPFSベネフィットが確認された。ホルモン受容体の状態別にみると、陽性患者においてもtucatinib+HP群における統計学的有意な改善が認められたが(25.0ヵ月vs.18.1ヵ月、HR:0.725、95%CI:0.535~0.983、p=0.0389)、陰性患者でより大きなベネフィットがみられた(24.9ヵ月vs.12.6ヵ月、HR:0.554、95%CI:0.403~0.761、p=0.0002)。・OSデータは未成熟であるものの、tucatinib+HP群において数値的に良好な傾向がみられた。・CNS-PFS中央値はITT集団全体では両群で未達、探索的解析項目であるベースラインで脳転移を有する患者(41例vs.40例)においてはtucatinib+HP群8.5ヵ月vs.プラセボ+HP群4.3ヵ月(HR:0.719、95%CI:0.406~1.273)であった。・Grade3以上の試験治療下における有害事象(TEAE)はtucatinib+HP群42.3%vs.プラセボ+HP群24.4%で発現した。tucatinib+HP群で多く発現したGrade3以上のTEAEは、ALT上昇(13.5%)、AST上昇(7.1%)、下痢(6.1%)などであった。 Hamilton氏は今回の結果について、HER2+転移乳がん患者に対するTHP療法後の維持療法として、HP+tucatinib療法が、病勢進行までの期間を延長し化学療法を受ける期間を短縮させるための選択肢の1つとなることを示したとまとめている。

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ER+/HER2-早期乳がん術後ホルモン療法、giredestrant vs.標準治療(lidERA)/SABCS2025

 ER+/HER2-早期乳がんの術後内分泌療法として、経口選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)giredestrantと現在の標準治療である内分泌療法を比較した第III相lidERA試験の中間解析の結果、giredestrantは無浸潤疾患生存期間(iDFS)の統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善をもたらし、再発または死亡に至る可能性を30%低下させたことを、米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のAditya L. Bardia氏が、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2025、12月9~12日)で報告した。・試験デザイン:非盲検国際多施設共同無作為化試験・対象:12ヵ月以内に乳がん手術を受け、必要に応じて術前/術後化学療法を完了したStageI~III、ER+/HER2-の早期乳がん患者 4,170例・試験群:giredestrant 30mg 1日1回経口投与 2,084例・対照群:標準内分泌療法(タモキシフェン、アナストロゾール、レトロゾール、エキセメスタンから1つ選択) 2,086例※5年間または許容できない毒性が発現するまで継続。閉経前・閉経前後の女性および男性はLH-RHアゴニストを併用。・評価項目:[主要評価項目]iDFS[副次評価項目]無遠隔再発期間(DRFI)、全生存期間(OS)、安全性など・データカットオフ:2025年8月8日 主な結果は以下のとおり。・ベースライン特性は両群でバランスがとれており、年齢中央値は両群ともに54.0歳で女性が99.5%であった。閉経後がgiredestrant 59.0%および標準内分泌療法群59.6%、StageIが12.3%および13.6%、StageIIが49.0%および45.7%、StageIIIが38.7%および40.6%、化学療法歴を有したのは81.0%および78.4%であった。・追跡期間中央値は32.3ヵ月であった。・主要評価項目であるIDFSイベントはgiredestrant群140例(6.7%)、標準内分泌療法群196例(9.4%)に発生し、ハザード比(HR)は0.70(95%信頼区間[CI]:0.57~0.87、p=0.0014)であった。3年IDFS率はgiredestrant群92.4%、標準内分泌療法群89.6%であった。・IDFSを内分泌療法別にみると、giredestrant vs.アロマターゼ阻害薬のHRは0.73(95%CI:0.58~0.92)、giredestrant vs.タモキシフェンのHRは0.53(0.35~0.80)であった。・IDFSにおけるgiredestrantのベネフィットは、事前に規定していたすべてのサブグループで同様であった。・DRFIイベントはgiredestrant群102例(4.9%)、標準内分泌療法群145例(7.0%)に発生した(HR:0.69、95%CI:0.54~0.89)。3年DRFI率はgiredestrant群94.4%、標準内分泌療法群92.1%であった。・OSは未成熟であったものの、giredestrant群において改善傾向がみられた(HR:0.79、95%CI:0.56~1.12、p=0.1863)。・Grade3/4の有害事象(AE)はgiredestrant群407例(19.8%)および標準内分泌療法群372例(17.9%)、重篤なアウトカムに至ったAEは6例(0.3%)および16例(0.8%)に発現した。・giredestrant群で多かった全GradeのAEは関節痛(48.0%)、ホットフラッシュ(27.4%)、頭痛(15.3%)などであった。Grade3/4のAEは高血圧(2.6%)、関節痛(1.5%)などであった。 Bardia氏は「lidERA試験の結果は、giredestrantがER+/HER2-早期乳がん患者における新たな標準治療となる可能性を支持するものである」とまとめた。

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