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新規診断AML、経口decitabine-cedazuridine+ベネトクラクスが有用/NEJM

 新たに診断された75歳以上または強力な寛解導入療法非適応の急性骨髄性白血病(AML)患者において、経口decitabine-cedazuridineとベネトクラクスの併用療法により、骨髄抑制作用が認められたものの、薬物相互作用を起こすことなく約半数の患者で完全寛解が認められた。米国・New York Presbyterian HospitalのGail J. Roboz氏らが、第I/II相多施設共同非盲検非無作為化臨床試験「ASCERTAIN-V(ASTX727-07)試験」の結果を報告した。75歳以上または強力な寛解導入療法非適応のAML患者に対しては、アザシチジンまたはdecitabineとベネトクラクスの併用療法が標準治療であるが、非経口投与は患者と医療従事者の双方に負担となっている。経口配合薬であるdecitabine-cedazuridineはAML治療薬として欧州で承認されており、静脈内投与のdecitabineと同等の薬物動態特性を有するが、単剤療法での生存期間延長効果は限定的であった。NEJM誌2026年6月4日号掲載の報告。第I/II相試験で、薬物動態と完全寛解率を評価 研究グループは、75歳以上の患者または18歳以上で強力な化学療法が非適応の、新たにAMLと診断された患者に、decitabine-cedazuridineおよびベネトクラクスを経口投与した。 全例に、1サイクルを28日として、1日目から5日目までdecitabine-cedazuridine(decitabine 35mg、cedazuridine 100mg)を経口投与し、ベネトクラクス400mgを1日1回経口投与した。ベネトクラクスは、腫瘍崩壊症候群を軽減するため第1サイクルに用量漸増投与(1日目100mg、2日目200mg、3日目以降400mg)を行った。 第IIb相では、第I相で観察された骨髄抑制を軽減するため、骨髄芽球の消失が確認された場合、decitabine-cedazuridineおよびベネトクラクスの投与期間を短縮することが推奨された。 主要評価項目は、第I相では第2サイクルの5日目および15日目に評価したベネトクラクスの血中濃度曲線下面積(AUC0-24)および最高血中濃度(Cmax)(decitabine-cedazuridine併用不問)とし、第IIa相では第2サイクルの5日目および15日目のベネトクラクスのAUC0-24およびCmax、ならびに完全寛解とし、第IIb相では完全寛解とした。薬物相互作用は認められず、完全寛解率は47% 2021年1月~2022年2月に30例(第I相)、2021年11月~2024年3月に58例(第IIa相)および101例(第IIb相)の、計189例が登録された。 第I相および第IIa相の薬物動態解析の結果、decitabine-cedazuridineとベネトクラクスの間に薬物相互作用は認められなかった。 第IIb相において、完全寛解は47%(95%信頼区間[CI]:36~57)に認められた。また、副次評価項目である完全寛解または血液学的回復が不完全な完全寛解の患者の割合は63%(95%CI:53~73)で、全生存期間中央値は15.5ヵ月(95%CI:7.6~推定不能)であった。 第IIb相におけるGrade3以上の有害事象の発現率は、貧血30%、好中球減少症26%、発熱性好中球減少症25%で、30日時点の死亡率は3%、60日時点の死亡率は10%であった。

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EGFR遺伝子変異陽性肺がんの耐性機序と新規治療から見た今後の展望/日本臨床腫瘍学会

 EGFR遺伝子変異陽性肺がんの治療は、分子標的薬の登場によって大きく進歩してきた。一方で、治療経過で生じる薬剤耐性、EGFRエクソン20挿入変異やHER2変異をはじめとするuncommon変異への対応、さらに治療シークエンスや併用療法に伴う有害事象の管理など、なお多くの課題が残されている。 2026年3月26〜28日に開催された第23回日本臨床腫瘍学会学術集会のシンポジウム「EGFR遺伝子変異陽性肺癌の治療課題と新規治療の展望」では、EGFR変異陽性肺がん診療が直面する近年の課題を踏まえ、その解決に向けた最新のエビデンスや治療戦略について幅広い議論が交わされた。EGFR変異陽性肺がんの耐性機序と後治療開発 James Chih-Hsin Yang氏(台湾・国立台湾大学)は、EGFR変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)における一次治療後の耐性機序に着目し、第3世代EGFR-チロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)であるオシメルチニブ単剤、オシメルチニブ+化学療法、EGFRとMETを標的とする二重特異性抗体であるアミバンタマブ+第3世代EGFR-TKIであるラゼルチニブでは、耐性化のパターンが異なることを示した。とくに、オシメルチニブによる治療ではMET増幅が重要な耐性機序となる一方、METも同時に抑制するアミバンタマブ併用では、その出現頻度が低い傾向が示された。初回治療の選択が、その後の腫瘍進化の方向性を規定しうる点は重要な示唆といえる。 また、MET関連耐性に対する治療戦略として、バイオマーカーに基づく症例選択の重要性を強調した。オシメルチニブによる一次治療後に病勢進行したEGFR変異陽性でMET過剰発現かつ/またはMET増幅を有するNSCLC患者を対象に、オシメルチニブ+新規MET阻害薬の併用療法を評価した国際共同第II相試験「SAVANNAH試験」では、MET過剰発現またはMET増幅を基準とした患者選択により、一定の奏効率と奏効期間が得られたことから、今後の第III相試験の結果が注目されるとした1)。 さらに、既治療EGFR変異陽性NSCLC患者に対する後治療として、抗TROP2抗体薬物複合体やPD-1/VEGF二重特異性抗体など、複数の新規薬剤の開発状況を紹介した。その中で、EGFRエクソン20挿入変異やその他の希少EGFR変異を標的とする低分子薬の開発も進んでいるが、薬剤ごとに活性に差があり、EGFR野生型への作用に伴う有害事象が治療強度を制限しうる点が課題として挙げられた。加えて、EGFRを分解させる抗体や、がん細胞に毒素を送達する抗体ベースの治療も有望視される一方、副作用への十分な配慮が必要だとした。Yang氏は、「EGFR変異陽性肺がんにおける二重標的治療やPD-1/PD-L1阻害薬の位置付けについても、なお活発な検討が続いている」とまとめた。EGFR変異陽性肺がんにおけるアミバンタマブの位置付け Byoung Chul Cho氏(韓国・延世がんセンター/延世大学医学部)は、アミバンタマブの臨床的意義を最新データとともに総括した。まず、本剤はEGFRとMETを同時に標的とするだけでなく、抗体依存性細胞傷害(ADCC)や抗体依存性細胞貪食(ADCP)といった免疫学的作用も有する点を特徴として挙げた。このような作用により、単なるシグナル阻害にとどまらず、腫瘍微小環境にも働きかけうることが長期にわたる有効性の背景にあるとの見方を示した。 MARIPOSA試験については、一次治療におけるアミバンタマブ+ラゼルチニブが、無増悪生存期間(PFS)だけでなく全生存期間(OS)も改善した点を強調した2)。また、アジア人集団においても一貫したOSの改善が見られたことを重視し、EGFR変異陽性肺がんにおいてアジアは単なるサブセットではなく、世界的な中心集団として捉えることも可能かもしれないと論じた。さらに、本試験は脳MRIを全例で継続的に評価した唯一の第III相試験であり、頭蓋内PFSや頭蓋内奏効期間の持続性という観点からも高く評価できるとした。 加えて、アミバンタマブ併用ではMET増幅や二次EGFR変異が減少し、耐性機序の複雑化そのものを抑制しうることを示した。Cho氏は、「アミバンタマブベースの二次治療の有用性を評価した複数の臨床試験成績を踏まえると、こうした治療はcommon変異、EGFRエクソン20挿入変異、atypical変異にわたり幅広い有効性が示唆され、EGFR変異陽性NSCLC全体の治療を変える基盤となりうる」と述べた。EGFRエクソン20挿入変異とuncommon変異に挑む新規治療開発 EGFRエクソン20挿入変異は、EGFR変異の中で3番目に多いサブタイプでありながら、従来のEGFR-TKIの効果が乏しいことが課題となっている。宇田川 響氏(国立がん研究センター東病院)は、その分子構造的背景としてP-loopやαC-helixの位置変化により薬剤結合ポケットが狭くなり、TKIの結合が妨げられていることを解説した。 こうした課題に対し、EGFRエクソン20挿入変異に高い選択性を有する新規TKIの開発が進んでいる。前臨床試験では複数の薬剤が有望視されており、臨床試験でも一定の奏効率と奏効期間が報告されていることから、今後の第III相試験の結果に期待が寄せられるとした。 さらに、G719X、S768I、L861Qなどのuncommon変異については、PACC(P-loop αC-helix compressing)変異という構造分類の考え方が紹介された。これらに対しては第2世代EGFR-TKIであるアファチニブが標準治療とされる一方、変異ごとの立体構造に応じて薬剤感受性が異なるため、今後はより広い変異スペクトラムに対応した次世代TKIの開発が重要になるとの見解を示した。融合遺伝子、多ドライバー化で生じるTKI耐性の克服に向けて 小林 祥久氏(国立がん研究センター研究所)は、EGFR-TKI耐性克服に向けた基礎研究を取り上げた。CRISPRゲノム編集技術を用いてEGFR変異細胞にKRAS変異やALK、RET、BRAF、FGFR3融合を導入し、耐性化を人工的に再現することで併用療法の最適化を検討したところ、BRAF融合モデルではBRAF阻害薬よりもMEK阻害薬であるトラメチニブの併用が有効であり、この知見が実臨床への応用にもつながった経緯が紹介された。 一方で、がんは併用療法に対してもさらに耐性を獲得しうる。RET融合モデルではRET G810S変異やRET融合増幅、FGFR3融合モデルではKRAS点突然変異など、多様な二次耐性の出現が認められたという。小林氏は、「単一ドライバーではなく、複数の腫瘍ドライバーが同時に存在する“多ドライバー腫瘍”という視点は、今後の耐性克服戦略においてきわめて重要である」と述べた。

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ASCO2026 レポート 消化器がん

レポーター紹介[目次]RASolute 302試験FIGHT-302試験BREAKWATER Cohort3試験EPISODE-III/JCOG1503C試験欧州CIRCULATE/日本発GALAXY試験ONO-4578-08試験PANKU-Esophagus01試験膵がんRASolute 302試験:daraxonrasibが膵がん薬物療法の地図を塗り替える可能性RASolute 302は、前治療歴を有する転移のある膵管腺がん(PDAC)を対象に、経口RAS(ON) multi-selective inhibitorであるdaraxonrasibと医師選択化学療法(GnP、mFOLFIRINOX、Nal-IRI+5FU/LV、FOLFOX)を比較した国際共同非盲検第III相試験である。主要評価項目はRAS G12変異例における全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)で、全体集団500例のうち91.8%がRAS G12変異例であった。RAS G12変異例では、OS中央値が13.2ヵ月vs.6.6ヵ月(ハザード比[HR]:0.40)、PFS中央値が7.3ヵ月vs.3.5ヵ月(HR:0.45)と、daraxonrasib群で有意に改善した。全体集団でもOS中央値13.2ヵ月vs.6.7ヵ月(HR:0.40)、PFS中央値7.2ヵ月vs.3.6ヵ月(HR:0.49)と一貫した効果が示され、RAS G12以外やRAS変異未同定例を含めた広い集団で有効性が確認された。客観的奏効率(ORR)もRAS G12変異例で33.2%vs.11.8%(p<0.0001)、全体集団で31.6%vs.11.2%(p<0.0001)と改善した。QOLも改善し、有害事象は発疹(全Grade:85%、Grade3以上:14%)・口内炎(全Grade:53%、Grade3以上:12%)などが中心である。臨床的インパクトは非常に大きく、主要評価項目であるOSの有意な結果が報告されたタイミングでスタンディングオベーションが起き、発表と同時にNEJM誌にも掲載された1)点も注目される。daraxonrasibはFDAからBreakthrough Therapy designationおよびOrphan Drug designationを受けており、膵がんで長く創薬困難とされてきたRASを、G12C単独ではなくG12D/V/Rを含む広いRAS変異に対して標的化できることを第III相試験で示した意義は大きく、PDACの治療体系を大きく変えると思われる。RAS阻害薬はほかにも多数の薬剤が開発中であり、初回治療例を対象にdaraxonrasib単剤vs.daraxonrasib+GnP vs.GnPを検証するRASolute 303試験をはじめ、術後補助療法におけるエビデンス創出など、今後の拡大が期待される。1)O'Reilly EM, et al. N Engl J Med. 2026 May 31. [Epub ahead of print]目次に戻る胆道がんFIGHT-302試験:FGFR2融合・再構成陽性胆管がんで1次治療FGFR阻害の可能性を検証FGFR2融合・再構成陽性胆管がんでは、既治療例を対象とした第II相FIGHT-202試験でペミガチニブの有効性が示され、最終解析ではORR 37.0%、PFS中央値7.0ヵ月、OS中央値17.5ヵ月、奏効期間(DoR)中央値9.1ヵ月であった2)。これを背景に、ペミガチニブは既治療のFGFR2融合・再構成陽性胆管がんで承認されており、FIGHT-302試験では1次治療への前倒しが検証された。FIGHT-302は、未治療の切除不能・転移FGFR2再構成陽性胆管がんを対象に、ペミガチニブ単剤とゲムシタビン+シスプラチン(GC)を比較した国際共同非盲検第III相試験である。希少な分子サブタイプを対象とするため登録は難航し、4,000例超を事前スクリーニングしたものの、最終的なランダム化例数は167例で、試験は早期終了となった。主要評価項目のPFS中央値は8.3ヵ月vs.6.8ヵ月(HR:0.58、nominal p=0.0078)とペミガチニブ群で延長し、ORRも47.0%vs.15.5%、DoR中央値も14.2ヵ月vs.6.3ヵ月と良好であった。一方、OS中央値は24.4ヵ月vs.25.0ヵ月と同程度であった。化学療法群では進行後に42例がペミガチニブへクロスオーバーしており、OS解釈には注意を要する。本試験は、FGFR2陽性胆管がんで1次治療から標的治療を用いる可能性を示した点で重要であり、同時にJournal of Clinical Oncology誌にも掲載された3)。とくにORRはペミガチニブ群47.0%と、胆道がん全体を対象としたTOPAZ-1/KEYNOTE-966のGC+免疫チェックポイント阻害薬(ICIs)におけるORRが約27~29%であったことを踏まえると、クロストライアル比較ながら腫瘍縮小を重視するFGFR2再構成陽性例では魅力的に映る。一方で、FIGHT-302の対照群はGC単独であり、現在の1次治療標準であるGC+ICIsとの直接比較ではない。また、OS非改善、早期終了による検出力の限界、クロスオーバーの影響、FGFR阻害薬後の耐性変異を踏まえると、ただちに1次治療を置き換えるというより、診断時からFGFR2検査を行い、FGFR2陽性例における1次治療・2次治療の最適なシーケンスを考えるデータと整理するのが妥当である。2)Abou-Alfa GK, et al. Lancet Oncol. 2020;21:671-684.3)Bekaii-Saab TS, et al. J Clin Oncol. 2026 Jun 1. [Epub ahead of print]目次に戻る大腸がんBREAKWATER Cohort3試験:FOLFIRIバックボーンでも良好な治療効果BRAF V600E変異陽性転移性大腸がんは予後不良な分子サブタイプであり、1次治療からBRAF/EGFR阻害を組み込む治療開発が進められてきた。第III相BREAKWATER試験では、エンコラフェニブ+セツキシマブ(EC)+mFOLFOX6が標準治療に対し、ORR:65.7%vs.37.4%、PFS中央値12.8ヵ月vs.7.1ヵ月、OS中央値30.3ヵ月vs.15.1ヵ月と良好な結果を示した。これを受け、本邦でも2025年11月にエンコラフェニブが1次治療へ適応拡大され、FOLFOX+ECはBRAF V600E変異陽性切除不能進行・再発大腸がんにおける初回治療の標準的選択肢として位置付けられている。一方、ASCO GI 2026では、BREAKWATERの別コホートとして、EC+FOLFIRIをFOLFIRI±BEV(ベバシズマブ)と比較した成績が報告され、BICR評価のORRは64.4%vs.39.2%(片側p=0.0011)と有意に改善していた。今回のASCO 2026ではPFSおよびOS解析が発表され、PFS中央値は15.2ヵ月vs.8.3ヵ月(HR:0.44、片側p=0.0002)と有意に延長した。OS中央値も、未到達vs.20.3ヵ月(HR:0.56)であり、OSも良好な傾向を示した。本結果はASCO 2026で発表されるとともに、Annals of Oncology誌に同時掲載された4)。FOLFOX+ECが本邦でも1次治療標準として位置付けられた一方、今回のFOLFIRIコホートは、オキサリプラチン不適例や末梢神経障害を避けたい症例における将来的な代替バックボーンとしての可能性を示した。ただし、EC+FOLFIRIの国内実装には薬事・ガイドライン上の位置付けの整理が必要である。4)Kopetz S, et al. Ann Oncol. 2026 May 31. [Epub ahead of print]目次に戻る大腸がん・日本発EPISODE-III/JCOG1503C試験:アスピリン補助療法は“全例投与”から“分子選択”か?術後大腸がんに対するアスピリン/COX阻害薬は、非選択集団では明確な上乗せ効果に乏しい一方、PI3K経路異常例では有望な可能性が示されている。非選択大腸がんを対象としたASCOLT試験では、アスピリン200mgを3年間投与しても5年DFSは77.0%vs.74.8%(HR:0.91)で主要評価項目は未達であった5)。また、PI3K経路異常を有する局所大腸がんを対象としたALASCCA試験では、アスピリン160mg・3年間によりPIK3CA exon 9/20変異例、その他PI3K経路異常例のいずれでも再発リスク低下が示された6)。COX-2阻害薬セレコキシブについても、CALGB/SWOG 80702試験の解析でPIK3CA gain-of-function変異例におけるDFS/OS改善が報告されている7)。EPISODE-III/JCOG1503Cは、下部直腸がんを除くR0切除後StageIII大腸がん882例を対象に、標準的な術後補助化学療法へ低用量アスピリン100mgを3年間上乗せする意義を検証した、日本発の二重盲検プラセボ対照第III相試験である。ASCO 2026では、国立がん研究センター中央病院の高島 淳生氏により、主要解析結果がLate-Breaking Abstract(LBA3508)として発表された。主要評価項目の3年DFSは、アスピリン群78.8%vs.プラセボ群75.4%と数値上はアスピリン群で良好であったが、HR:0.84、片側p=0.0987で統計学的有意差には至らなかった。RFSも79.5%vs.77.2%(HR:0.87)と同方向の傾向にとどまり、OSは未成熟であった。安全性はおおむね許容範囲であったが、下部消化管出血はアスピリン群でやや多かった(全Grade:2%vs.0.2%)。アスピリンによる再発抑制機序としては、COX-1/COX-2阻害を介したプロスタグランジン産生低下、血小板凝集抑制による循環腫瘍細胞の転移形成阻害、炎症性腫瘍微小環境の抑制などが想定される。JCOG1503Cは、非選択のStageIII大腸がん全例にアスピリンを追加する方針を支持する結果ではなかった。一方で、本試験は当時のエビデンス状況を踏まえた重要な全例対象試験であり、今後のPI3K/PIK3CA解析により、COX阻害薬を分子選択的な術後補助療法として再評価する足掛かりになる可能性がある。5)Chia JWK, et al. Lancet Gastroenterol Hepatol. 2025;10:198-209.6)Martling A, et al. N Engl J Med. 2025;393:1051-1064.7)Meyerhardt JA, et al. JAMA. 2021;325:1277-1286.目次に戻る大腸がん欧州CIRCULATE/日本発GALAXY試験:本邦におけるMRD元年大腸がん術後のctDNA/MRD検査は、再発リスクを高精度に層別化する手法として期待されており、ASCO 2026ではctDNAを単なる予後予測マーカーにとどめず、術後補助化学療法(ACT)の要否や期間を決める“治療設計ツール”としての可能性が示された。StageII pMMR/MSS結腸がんを対象とした欧州CIRCULATE(AIO-KRK-0217/ABCSG)試験では、tumor-informed型のアカデミックMRDアッセイを用い、術後ctDNA陽性例をACT群と観察群にランダム化した。本試験はドイツ・オーストリアで実施された前向きランダム化第III相試験で、ctDNA陽性例は41例、ITT解析対象はACT群26例、観察群15例であった。主要評価項目の3年DFSは、ACT群61%vs.観察群38%(HR:0.55、p=0.12)で、統計学的有意差には至らなかった。一方、事前規定のper-protocol解析では、ACT群に割り付けられたものの治療を開始しなかった5例を除外し、実際にACTを受けた21例と観察群15例を比較した。その結果、3年DFSは77%vs.38%(HR:0.31、p=0.021)、3年再発率はACT群19%vs.観察群62%(HR:0.23、p=0.009)と、ACT群で良好であった。本試験ではctDNA陽性率が2.9%と低く、早期終了により検出力が限られた点には注意が必要であるが、ctDNA陽性StageII結腸がんにおいて、術後補助化学療法による再発抑制が期待できることを示した前向きランダム化データとして意義は大きい。さらに日本発のCIRCULATE-Japan/GALAXY解析では、SignateraによるACT中のctDNA変化とACT期間との関係について、九州大学の沖 英次氏により報告された。対象は、ACTを受け、術後6ヵ月以内に2回以上ctDNA測定が行われた1,028例であり、ACT期間は90日以上をlong ACT、90日未満をshort ACTとして比較された。ctDNAが一貫して陰性であった症例では、long ACTによる明確なDFS改善は認められなかった(HR:0.71、95%CI:0.46~1.09)。また、ACT治療中にctDNAが陰転化した症例でも、ACT延長の上乗せ効果は明確ではなかった(HR:1.06、95%CI:0.57~1.97)。一方、ctDNAは低下したものの陽性が残るpartial molecular response例では、DFS中央値がlong ACT群5.9ヵ月vs.short ACT群1.7ヵ月と、long ACT群で良好であった(short vs.long:HR:3.64、95%CI:1.33~9.97、p=0.008)。この結果から、ctDNAが残存する一部の症例では、ACT期間の延長が有益となる可能性が示された。ただし、本解析は観察研究であり、現時点ではctDNA動態のみでACT期間を決定する段階ではなく、今後の前向き試験による検証が求められる。CIRCULATE-Japan/GALAXYではNatera社のSignateraが用いられており、術後ctDNAは再発リスクや補助化学療法効果の予測に有用であることがすでに報告されている。2026年5月に本邦でMRD検査の薬事承認が了承された8)ことで、2026年は「MRD実装元年」ともいえる局面を迎えたが、実臨床での普及には、保険適用時期、算定要件、測定タイミング、MRD陽性例に対する介入の整理が今後の課題と考える。8)日経バイオテク(2026年6月3日付)目次に戻る胃がんONO-4578-08試験:EP4阻害でPD-1阻害薬+化学療法の効果を高める新戦略ONO-4578は、PGE2受容体の1つであるEP4を阻害する経口EP4拮抗薬で、腫瘍微小環境における免疫抑制を解除し、PD-1阻害薬の効果を高めることが期待される。ONO-4578-08試験は、HER2陰性の未治療切除不能進行・再発胃がん/食道胃接合部がんを対象に、ONO-4578+ニボルマブ+SOX/CAPOXを、プラセボ+ニボルマブ+SOX/CAPOXと比較した、日本・韓国・台湾の多施設二重盲検プラセボ対照ランダム化第II相試験であり、ASCO 2026での発表に合わせてJCO誌オンライン版に掲載された9)。主要評価項目である治験担当医評価PFS中央値は9.0ヵ月vs.6.9ヵ月(HR:0.67、p=0.040)と、事前規定の統計設定で有意に延長した。OS中央値は未到達vs.12.7ヵ月(HR:0.60)と未成熟ながらONO-4578群で良好であり、ORRも62.0%vs.48.7%と上回った。とくにPD-L1 CPS≧1集団では、PFS中央値9.9ヵ月vs.5.7ヵ月(HR:0.52)、OS HR:0.44、ORR:70.9%vs.50.9%と、より明瞭なベネフィットが示された。一方で、CPS<1/判定不能例では明確な上乗せ効果は示されておらず、今後の患者選択が重要となる。安全性ではGrade3以上の有害事象が79.2%vs.69.3%とONO-4578群で多く、下痢、貧血、低アルブミン血症、消化管潰瘍などには注意を要する。消化管潰瘍の予防目的でPPI投与が推奨され、ONO-4578群内ではPPI使用例で消化管潰瘍が少なかった(3.4%vs.10.0%)。第II相試験であり、ただちに標準治療を変える段階ではないが、PD-1阻害薬+化学療法が標準となったHER2陰性胃がん1次治療に、免疫微小環境制御を上乗せする新しい戦略として重要である。今後は、PD-L1陽性例を中心とした第III相試験での検証が注目される。9)Nakayama I, et al. J Clin Oncol. 2026 Jun 1. [Epub ahead of print]目次に戻る食道扁平上皮がんPANKU-Esophagus01試験:中国発新規EGFR×HER3二重特異性ADCizalontamab brengitecan(iza-bren/BL-B01D1)は、EGFRとHER3を標的とする二重特異性抗体薬物複合体(ADC)である。ASCO 2026では、再発・転移性食道扁平上皮がんを対象とした中国の第III相PANKU-Esophagus01の中間解析結果が報告された。対象は、1次治療のPD-1/PD-L1阻害薬+プラチナ系化学療法後に進行した患者で、iza-bren群249例もしくは医師選択化学療法(イリノテカン、パクリタキセル、ドセタキセル)群248例に割り付けられた。主要評価項目であるOS中央値は9.8ヵ月vs.7.2ヵ月(HR:0.64)、PFS中央値は4.2ヵ月vs.2.0ヵ月(HR:0.50)と、いずれもiza-bren群で有意に改善した。ORRも35.3%vs.13.1%と良好であった。安全性では、Grade3以上の治療関連有害事象は85.1%vs.60.2%とiza-bren群で多く、主に血液毒性が中心であった。一方、治療関連有害事象による中止は2.0%vs.3.3%、治療関連死亡は1.2%vs.1.6%であり、間質性肺疾患の頻度も低かった(全Grade:1.6%vs.0.4%、Grade3以上:0.8%vs.0%)。1次治療で免疫チェックポイント阻害薬+化学療法が標準化した後の食道扁平上皮がんでは、2次治療の選択肢が限られており、iza-brenは新たな標準治療候補として注目される。ただし、中国の試験の結果であり、医師選択化学療法の詳細も未発表である。今後、日本を含むグローバルでの開発・承認動向を見極める必要がある。目次に戻る

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第299回 子供の軽症時、保護者の7割が「まず医療機関」 医療費構造の認知に課題/健保連

<先週の動き> 1.子供の軽症時、保護者の7割が「まず医療機関」 医療費構造の認知に課題/健保連 2.令和5年度病院立入検査、医師・看護師・薬剤師の人員適合率が低下/厚労省 3.高額療養費見直しでパブコメ開始、2026年8月から月額上限引き上げへ/厚労省 4.病院の情報管理に警鐘、研究用PC端末と廃棄媒体から患者データ流出か/九大ほか 5.チルゼパチド製剤の不適切使用に注意喚起、違法流通にも警鐘/リリー 6.髄腔内注射後に死亡、事故調が報告書概要 混入経路は特定できず/埼玉県 1.子供の軽症時、保護者の7割が「まず医療機関」 医療費構造の認知に課題/健保連健康保険組合連合会は6月3日、全国の20~80代3,000人を対象に2026年1月に実施した「医療・介護に関する国民意識調査」の速報版を公表した。医療費・介護費の増加と支え手の減少が進む中、保険料負担を「非常に重い」「やや重い」と感じる人は62.7%に上り、健保連は保険料のさらなる引き上げには限界感があるとみている。医療保険の給付と負担のあり方では、「給付を大幅に絞り込み、負担を軽減」が15.0%、「給付を絞り込み、負担の水準を維持」が25.0%で、給付範囲の見直しを求める回答が計40.0%となった。増加する医療費を賄う方法としては、「自己負担の増加(患者本人の窓口負担)」を選んだ人が30.2%に上り、税金の引き上げまたは新設(12.0%)や保険料の引き上げ(10.8%)を上回った。ただし「わからない」が44.1%と最多で、制度や財源構造への理解不足も示された。世代間負担では、「高齢者の負担増はやむを得ない」が37.1%で、「高齢者負担増は難しく、現役世代の負担増はやむを得ない」の18.1%を大きく上回った。75歳以上でも40.0%が高齢者自身の負担増を容認していた。高齢者医療では、70~74歳の原則2割負担の対象年齢を5歳引き上げる案に賛成35.7%、反対22.5%。将来的に高齢者の窓口負担を原則3割に見直す案も賛成34.2%が反対29.9%を上回ったが、60代以上では慎重姿勢が目立った。その一方で、軽度の体調不良時の受診行動では、大人で「まず医療機関を受診する」は30.6%にとどまるのに対し、18歳未満の子どもでは69.2%に達した。自治体の子供医療費助成について、自己負担が無料でも残りの多くは保険料で賄われることを「知らない」は全体で67.1%、子育て世帯でも54.4%だった。小児の軽症受診には不安軽減という側面がある一方で、時間外受診や小児科・救急外来の負荷にもつながる。健保連は、「無償化の下でも必要性に応じた適切な受診を考えて欲しい」としている。2026年度の健保組合収支は2,890億円の赤字見通しで、約7割の組合が赤字とされる。現役世代の保険料負担、高齢者医療への拠出、子供・子育て支援金の上乗せが重なる中、制度改革には国民への丁寧な説明が欠かせない。医療現場には、単なる受診抑制ではなく、救急性の見極め、家庭での観察、市販薬の活用、適正受診を患者・家族に伝える役割が一段と求められる。 参考 1) 医療・介護に関する国民意識調査-速報版-(健保連) 2) 医療費が増加する中で「患者の窓口負担増で対応すべき」「高齢者の負担増もやむなし」と考える国民が比較的多い-健保連(Gem Med) 3) 体調不良、子ども7割すぐ受診 「無償でも適切利用を」-健保連(時事通信) 4) 健康保険組合 2026年度は「2,890億円赤字」の見通し 加盟組合の約7割が赤字 高齢者医療費への拠出増などで 健保連が集計(TBSテレビ) 2.令和5年度病院立入検査、医師・看護師・薬剤師の人員適合率が低下/厚労省厚生労働省は、2023年度の「医療法第25条に基づく病院に対する立入検査結果」を公表した。対象は全国8,138病院で、7,587病院に検査を実施。実施率は93.2%と前年度から5.4ポイント上昇し、コロナ禍前に近い水準まで回復した。検査は、病院が医療法上の人員、構造設備、管理体制を満たしているかを確認するものだ。その一方で、医療法に基づく医療従事者の標準数への適合率は、主要職種でそろって低下した。医師数は97.9%で前年度比0.4ポイント減、看護師・准看護師数は99.4%で0.1ポイント減、薬剤師数は97.7%で0.4ポイント減だった。医師数では、北海道・東北が94.2%、北陸・甲信越が97.1%と低く、東海99.0%、近畿99.6%との差が目立った。病床規模別では、20~49床の一般病院で医師95.3%、看護師など98.1%、薬剤師93.9%と、小規模病院ほど人材確保の厳しさが示された。医師と看護師などの双方が標準数を満たした病院は全体の97.0%で、前年度の97.5%から低下。医師のみ不足する病院は155施設、看護師などのみ不足する病院は65施設、双方不足は5施設だった。薬剤師は中国地方95.2%、九州96.2%などで低く、病院薬剤師不足の地域差も浮き彫りとなった。管理面では、最も適合率が低かった項目が「サイバーセキュリティの確保」の91.1%だった。次いで職員の健康管理92.1%、医療法許可事項の変更92.7%が低かった。医療情報システムへの攻撃が診療継続を脅かす中、サイバー対策は医療安全上の重要課題として、立入検査でも確認が強まっている。人員不足と情報セキュリティの遅れは、地域医療提供体制と病院運営の持続性に直結する論点となる。人員適合率は医師の働き方改革、地域医療構想、薬剤師確保計画とも重なる課題として、各病院には自院だけでなく地域単位での人材配置と安全管理の再点検が求められる。 参考 1) 医療法第25条に基づく病院に対する立入検査結果について[令和5年度](厚労省) 2) 医療法に基づく人員の適合率、医師、看護職員、薬剤師とも低下-23年度病院立入検査(日本医事新報) 3) 病院の医師配置適合率は97.9%、看護師等は99.4%に低下、サイバーセキュリティ確保が遅れている-2023年度立入検査結果(Gem Med) 3.高額療養費見直しでパブコメ開始、2026年8月から月額上限引き上げへ/厚労省厚生労働省は6月6日、高額療養費制度の見直しに伴う健康保険法施行令等の改正案について、パブリック・コメントの募集を開始した。意見提出の期限は7月6日で、政令案と省令案の双方が対象となる。改正案は、2026年8月から月額負担上限額を1人当たり医療費の伸びに応じて見直し、2027年8月からは応能負担の観点で所得区分を細分化する内容で、公布は2026年7月、施行は同年8月1日を予定している。高額療養費制度は、重い疾病や高額な治療を受ける患者にとって、医療費負担を一定範囲に抑える公的医療保険の中核的なセーフティネットである。今回の見直しでは、低所得者や長期療養者への配慮として、多数回該当の限度額は原則維持し、年収約200万円未満の課税世帯では2027年8月から引き下げる。また、2026年8月から新たに年間上限を設け、長期にわたり継続治療を受ける患者への負担軽減を図るとしている。見直しを巡っては、2025年3月に当時の石破 茂首相がいったん実施見合わせを表明し、その後、社会保障審議会医療保険部会の専門委員会で患者団体、保険者、医療者、有識者へのヒアリングを重ねてきた経緯がある。その一方で、患者団体や保険医協会からは、月額上限の引き上げが治療継続や生活に与える影響を懸念する声が出ている。全国がん患者団体連合会と日本難病・疾病団体協議会の共同声明は、制度の一定の見直し自体には理解を示しつつ、月ごとの限度額については十分に抑制されていないと指摘している。例として、70歳未満で年収約650~770万円の区分では、現行の月額8万100円に医療費超過分の1%を加える水準から、見直し案では11万400円となり、37%増になるとしている。医療現場では、高額薬剤、がん治療、難病治療、透析、免疫疾患治療など、継続的に高額医療を必要とする患者への説明が重要になる。制度変更は、単なる「上限額の引き上げ」にとどまらず、月額負担、多数回該当、年間上限、所得区分の変更を組み合わせて患者ごとの実負担が変わる点に注意が必要となる。受診抑制や治療中断を避けるため、医療機関には、医療ソーシャルワーカーや医事課と連携し、限度額適用認定証、付加給付、自治体制度、分割払い相談などを含めた支援体制の再確認が求められる。 参考 1) 健康保険法施行令等の一部を改正する政令案に関するご意見の募集について(厚労省) 2) 健康保険法施行規則等の一部を改正する省令案に関するご意見の募集について(同) 3) 高額療養費見直し、厚労省が意見募集 7月5日まで(CB news) 4) 今年8月からの高額療養費「値上げ」 厚労省が意見募集開始(保団連) 5) 【募集】高額療養費制度の見直しについてのパブリック・コメント(日本難病・疾病団体協議会) 4.病院の情報管理に警鐘、研究用PC端末と廃棄媒体から患者データ流出か/九大ほか九州大学は6月10日、九州大学病院の患者43人分の氏名と手術動画データが外部に流出した可能性が否定できないと発表した。病院キャンパス内の研究室が管理する研究用端末1台が5月25日に不正アクセスを受け、ランサムウェアに感染したとみられる。教員が端末を起動した際、金銭を求める脅迫文が表示され、大学は直ちにネットワークから遮断した。端末は診療用ネットワークとは分離されており、電子カルテや診療業務への影響は確認されていない。情報の公開や悪用も現時点では確認されておらず、対象患者には個別に連絡し、謝罪している。大学では福岡県警とも連携し、侵入経路や被害範囲を調査する。その一方で、国立病院機構は6月8日、北海道医療センターと北海道がんセンターで廃棄処理を委託したハードディスクがインターネットオークションに転売され、患者や職員の個人情報が流出した可能性があると発表した。回収した90点のうち、31点が北海道医療センター、2点が北海道がんセンターで電子カルテシステムなどに使われていた。少なくとも約18万6,900人分、最大で約51万人分の氏名、住所、疾患名などが含まれる可能性がある。現時点で不正利用は確認されていないが、同機構は処分を受託した石狩市の産業廃棄物処理業者を廃棄物処理法違反の疑いで刑事告発した。2つの事案は、医療情報の漏えいリスクが電子カルテ本体へのサイバー攻撃だけではないことを示す。研究室端末に保存された手術動画、廃棄予定媒体に残った電子カルテ情報のいずれも、診療・研究・教育・廃棄の周辺工程で発生した。医療機関には、端末のアクセス管理、研究データの匿名化、ネットワーク分離、外部記録媒体の暗号化、廃棄時の物理破壊確認、委託先監査まで含めた情報管理体制の再点検が求められる。 参考 1) 九州大学 病院の患者データ 外部流出の可能性否定できない(NHK) 2) 手術動画流出の可能性、九大病院患者43人分 ランサムウェア感染か(朝日新聞) 3) 不正アクセスで手術動画データなど流出か 九州大病院 診療業務は通常通り(CB news) 4) 北海道がんセンターなどの患者情報が流出、最大51万人分…処分予定のHDDがネットオークションに転売(読売新聞) 5.チルゼパチド製剤の不適切使用に注意喚起、違法流通にも警鐘/リリー日本イーライリリーは6月10日、2型糖尿病治療薬チルゼパチド(商品名:マンジャロ)の不適切使用に関する声明を公表した。SNSや広告で、美容・痩身・ダイエット目的の使用を推奨していると受け取れる情報が拡散し、さらに許可なく同薬を売買した疑いで男女3人が書類送検されたことを受けた対応。上野 賢一郎厚生労働大臣も、個人間売買は違法であり、適応外使用では思わぬ副作用につながる可能性があるとして、適正使用を呼びかけている。同社は、「国内で承認されているチルゼパチドの効能・効果は『2型糖尿病』のみであり、医師の診断、管理、指導のもと、電子添付文書に則って使用される処方箋医薬品だ」と強調した。2型糖尿病以外の人が美容目的などで使用した場合の有効性・安全性は医学的に確認されていない。また、医薬品を許可なく個人間で売買・転売する行為は薬機法違反であり、管理されていない流通経路で入手した製品は品質や安全性が担保されず、本来の効果が得られないだけでなく、重篤な健康被害を招くリスクがあると警告した。その一方で、同一成分のチルゼパチド製剤には、肥満症治療薬「ゼップバウンド」もある。ただし、対象は高血圧、脂質異常症、耐糖能障害などを伴い、食事療法・運動療法で十分な効果が得られない肥満症患者などに限られ、単なる美容目的の減量とは異なる。医師による客観的診断と適切な処方プロセスが前提となる。報道では、使用済み注射針の不適切廃棄も問題化している。公共トイレなどへの投棄は清掃員らの針刺し事故や血液媒介感染のリスクにつながる。医療機関には、適応、禁忌、副作用説明に加え、入手経路や廃棄方法まで含めた患者教育が求められる。GIP/GLP-1受容体作動薬の需要が急拡大する中、適正使用、違法流通対策、供給管理は、糖尿病診療と肥満症治療の信頼性を守る医療安全上の課題となっている。 参考 1) 当社製品の適正使用に関する取り組み(日本イーライリリー) 2) 美容目的「マンジャロ」使用、製造元日本法人が警告 不適切使用や違法売買「容認できず」(J-CASTニュース) 3) 2型糖尿病治療薬「マンジャロ」の適正使用を推進 日本イーライリリーが不適切使用や違法転売に注意喚起(糖尿病ネットワーク) 4) 「マンジャロ注射針」不法投棄が横行で感染リスクへの懸念も…東京メトロが明かした“針刺し事故”の実例(女性自身) 6.髄腔内注射後に死亡、事故調が報告書概要 混入経路は特定できず/埼玉県埼玉県立小児医療センターは6月12日、白血病患者が抗がん剤の髄腔内注射後に神経症状を発症し、1人が死亡、2人が重体となった問題で、医療事故調査委員会の報告書概要を公表した。センターでは2025年1~10月、髄腔内化学療法を受けた患者5人に発熱、四肢疼痛、意識障害、呼吸障害などの神経症状が出現。死亡した10代男性を含む一部症例の保存髄液から、髄腔内に投与されるはずのない抗がん剤ビンクリスチンが検出された。委員会は、ビンクリスチンが通常の静脈内投与で中枢神経系へ移行する可能性は限定的であることなどから、「髄注薬に混入した状態で投与された可能性が極めて高い」と判断した。その一方で、混入経路を直接示す客観的証拠は確認されず、具体的な工程の特定には至らなかった。搬送、病棟保管、投与の各工程では、専用接続部品が注射筒に装着されていたことなどから、混入は極めて考えにくいと評価した。焦点となったのは無菌調製室での薬剤調製工程だ。報告書は、髄注薬とビンクリスチンが同じ空間に存在し得る運用で、空間的・時間的分離が十分とは言えなかったと指摘。調製完了時刻を客観的に確認できる記録や映像記録がなく、複数名によるリアルタイムの相互確認体制も整備されていなかったため、「調製時に混入した可能性を否定できない」と結論付けた。再発防止策として、髄注薬とビンカアルカロイド系抗がん剤の空間的・時間的分離、薬剤師2人によるダブルチェック、在庫・廃棄管理の強化、監視カメラ設置、マニュアル改定、投与前確認や廃棄工程の標準化、シリンジ払い出し廃止とミニバッグ化、定期監査、継続的な安全教育の9項目を提言した。センターは現在、髄腔内化学療法を中止しており、岡 明病院長は「まずは再発防止策を徹底して安全確保を図る」と述べ、再開時期は県や保健所と協議して検討する考えを示している。 参考 1) 使われるはずない薬「調製時混入の可能性」 埼玉・小児医療センター(朝日新聞) 2) 劇薬管理強化へ9項目 事故調報告書 小児医療センター(毎日新聞) 3) 埼玉の病院の医療死亡事故、調査報告「調剤時の混入否定できず」(日経新聞)

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完全切除NSCLCへのニボルマブ、DFSを改善せず(EA5142/ALCHEMIST)/JAMA

 切除可能な非小細胞肺がん(NSCLC)の治療では、抗PD-1抗体ニボルマブによる術前および周術期(術前・術後)の補助療法は無イベント生存期間(EFS)を改善することが知られているが、初回手術後の補助療法におけるニボルマブの役割は明らかにされていない。米国・Memorial Sloan Kettering Cancer CenterのJamie E. Chaft氏らは「ECOG-ACRIN EA5142試験」において、切除術を受けたNSCLC患者に補助化学療法または放射線療法(あるいは両方)を行った後にニボルマブを投与したところ、無病生存期間(DFS)は改善しなかったと報告した。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2026年6月1日号に掲載された。米国の無作為化第III相試験 ECOG-ACRIN EA5142試験は、全米臨床試験ネットワーク(NCTN)に加盟する378施設で実施した非盲検無作為化第III相試験(米国国立がん研究所の助成を受けた)。2016年5月~2019年9月に参加者を登録した。 対象は、切除腫瘍径4cm以上またはリンパ節転移陽性(N1/N2)、あるいはこれら両方の要件を満たし、予定された標準的な術後補助療法(化学療法または放射線療法、あるいはこれら両方)を完了した腺がん(EGFRおよびALKに感受性変異がない)または扁平上皮がんの患者であった。 被験者を、ニボルマブ(480mg、4週ごと、最長1年間)を静脈内投与する群、または標準治療で経過観察を行う群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要複合評価項目は、ITT集団およびPD-L1を発現した腫瘍の割合が50%以上の患者集団におけるDFS(無作為化から再発、新規肺がん、全死因死亡のいずれかが発生するまでの期間)とした。 本試験は、75%のデータが収集された時点で、中間解析の結果に基づき無効中止となった。全生存期間にも差はない 935例を登録し、ニボルマブ群に466例(年齢中央値66歳、男性241例[52%])、経過観察群に469例(67歳、245例[52%])を割り付けた。 追跡期間中央値72.6ヵ月(範囲:0.03~109)の時点でのITT集団におけるDFS中央値は、ニボルマブ群が71.3ヵ月、経過観察群は68.8ヵ月であり、両群間に有意差を認めなかった(ハザード比[HR]:0.97[97%信頼区間[CI]:0.79~1.20、95%CI:0.81~1.17]、片側p=0.39)。 また、同時点での腫瘍の50%以上にPD-L1の発現がみられる患者におけるDFS中央値は、ニボルマブ群が89.8ヵ月、経過観察群は78.5ヵ月だった(HR:0.86[98%CI:0.55~1.34、95%CI:0.59~1.25]、片側p=0.22)。 全生存期間中央値は、ITT集団ではニボルマブ群が95.9ヵ月、経過観察群は未到達であり(HR:1.02、95%CI:0.82~1.26)、腫瘍の50%以上にPD-L1の発現がみられる患者ではそれぞれ95.9ヵ月および未到達であった(HR:0.82、95%CI:0.53~1.28)。25%でGrade3~5のニボルマブ関連有害事象、術後補助ICI療法の有益性に疑問 ニボルマブに関連するGrade3~5の有害事象は116例(25%)で報告された。内訳は、Grade3が103例(22%)、Grade4が11例(2%)、Grade5が2例(1%未満)であった。 Grade5の2例は、いずれも呼吸器系のものであった。1例は肺切除術および術後補助化学療法を受けた患者で、もう1例は術後放射線療法から4週間未満で無作為化が行われたため、後に不適格とみなされた患者であった。 著者は、「両群ともDFSの目標値(54ヵ月)を上回ったが、これは術前病期分類の改正、あるいは登録前に再発した高リスク例の除外を含むその他の患者選択基準を反映している可能性がある」としている。 また、「先行研究におけるデュルバルマブ(抗PD-L1抗体)による術後補助療法に関する否定的な結果や、ペムブロリズマブ(抗PD-1抗体)およびアテゾリズマブ(抗PD-L1抗体)の術後補助療法で観察された一貫性のない結果を踏まえると、本研究の結果は、NSCLCにおける免疫チェックポイント阻害薬による術後補助療法の有益性について疑問を投げかけるものである」と指摘している。

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がん関連症状:呼吸困難【かかりつけ医のためのがん患者フォローアップ】第9回

今回はがん患者の呼吸困難についてです。呼吸困難は、がん患者の約35%が経験するという頻度の高い症状です。初診から終末期までの経過を通じて、一度も呼吸困難を経験せずに過ごせる患者さんはわずか11%のみとも報告されています。呼吸困難による患者さんの苦痛や不安が非常に強い一方、その原因や重症度はさまざまであり、外来で対応に迷う場面も少なくありません。今回は、呼吸困難を訴える患者さんについて、症例を通して、鑑別のポイントと外来での対応を解説します。【症例1】74歳、男性主訴労作時呼吸困難病歴進行肺腺がん(StageIV)に対して化学療法後、best supportive careの方針となっている。以前より軽度の呼吸困難はあったが、2週前より徐々に歩行時の息苦しさが増悪し、外来を受診した。診察所見呼吸数22回/分、SpO2 97%(室内気)、体温36.7℃。会話は可能。右下肺野で呼吸音の減弱あり。下腿浮腫なし。【症例2】57歳、女性主訴咳嗽、呼吸困難病歴再発乳がんに対して化学療法施行中。2週間前より免疫チェックポイント阻害薬を含む治療を開始していた。数日前から乾性咳嗽が出現し、本日より労作時呼吸困難と発熱を認めたため受診。診察所見呼吸数30回/分、SpO2 82%(室内気)、体温38.1℃。会話は短文のみ可能。両側肺野にfine cracklesを聴取。ステップ1 呼吸困難のアセスメント呼吸困難は、「呼吸の際に生じる不快な感覚という主観的な経験」と定義されており、SpO2や血液ガス所見が正常で、呼吸不全を伴わない場合でも生じることがあります。呼吸困難を訴える患者さんを診た際には、まず症状の経過や随伴症状、診察所見などから原因をアセスメントする必要があります。下記にがん患者における呼吸困難の主な原因を示します(表1)。表1 呼吸困難の原因(参考文献3より一部筆者改変)画像を拡大する症例1では、SpO2は97%と保たれているものの、ここ1週間で労作時呼吸困難が徐々に増悪しています。また、右下肺野で呼吸音の減弱を認めており、胸水貯留による呼吸困難が考えられます。この症例では、発熱や咳嗽はなく、急激な症状悪化ではないことから、感染症や肺塞栓などの急性疾患の可能性は低いと考えられます。一方、症例2では、免疫チェックポイント阻害薬を含む治療歴があり、数日前からの乾性咳嗽に加えて、発熱と急速に進行する呼吸困難を認めています。さらに、SpO2低下、頻呼吸、両側肺野のfine cracklesを認めることから、まず薬剤性肺障害を疑う状況です。化学療法中の患者さんでは、薬剤性肺障害は急速に重症化することがあり注意が必要です。本症例では、会話も短文のみ可能であり、呼吸状態の急速な悪化を認めていることから、重症度の高い呼吸困難と考えられます。なお、肺炎などの感染症も重要な鑑別疾患となります。このように、呼吸困難ではSpO2のみで重症度を判断するのではなく、症状の経過や随伴症状、身体所見をもとに原因と緊急性をアセスメントすることが重要です。呼吸困難では、原因となる病態ごとに治療が異なり、早期介入を要する緊急性の高い病態も存在するため、外来での適切な評価が求められます。ステップ2 外来での対応上述のように、呼吸困難では原因となる病態ごとに治療方針が大きく異なります(表2)。そのため、外来では原因と重症度を踏まえた対応が重要となります。表2 呼吸困難の治療(参考文献4より一部筆者改変)画像を拡大する症例1は、SpO2は保たれており、会話も可能であることから、まずは外来での症状緩和を検討します。呼吸困難に対しては、体位調整や送風に加えて、少量オピオイド投与が症状緩和に有効な場合があります。また、本症例では胸水貯留が疑われることから、胸水ドレナージの適応評価も含めて、X線/CT検査や胸腔穿刺が可能な施設との連携を検討します。一方、症例2では、低酸素血症に加えて頻呼吸を認め、会話も短文のみ可能であることから、重症度の高い呼吸困難と考えられます。薬剤性肺障害では急速に呼吸状態が悪化することがあり、早期のステロイド導入が必要となる場合もあるため、外来での経過観察ではなく、速やかな病院への相談・紹介が必要です。呼吸困難は、がんそのものだけでなく、治療関連有害事象や併存疾患など、さまざまな病態によって生じます。外来では、原因と重症度を適切にアセスメントしたうえで、必要に応じて治療医や専門医療機関と連携しながら対応していくことが求められます。まとめ呼吸困難は、SpO2などの客観的所見だけでは評価しきれない症状です。そのため、日々患者さんを診ているかかりつけの先生方による症状経過や呼吸状態の細やかな観察が非常に重要となります。そうした情報共有は、病院側にとっても病態把握や早期介入の大きな助けとなります。クリニックと病院がそれぞれの立場から情報を共有しながら、一緒に患者さんの呼吸困難を支えていくことが大切だと考えます。 1) Teunissen SCCM, et al. J Pain Symptom Manage. 2007;34:94-104. 2) Currow DC, et al. J Pain Symptom Manage. 2010;39:680-690. 3) 日本緩和医療学会編. 進行性疾患患者の呼吸困難の緩和に関する診療ガイドライン(2023年版). 金原出版;2023. 4) 余宮 きよみ著. ここが知りたかった緩和ケア 改訂第3版. 南江堂;2023. 講師紹介

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大腸がん、ctDNAによる術後化学療法と投与期間の選択(CIRCULATE・GALAXY後方解析)/ASCO2026

 StageII/III大腸がんにおける術後補助化学療法は複数のレジメンがあり、最適な投与期間も明らかになっていない。米国臨床腫瘍学会年次総会(2026 ASCO Annual Meeting)では、術後のctDNAを予後マーカーとして、術後補助療法のベネフィットを受ける患者層の特定や最適な投与期間を検討した2つの試験結果が発表された。1)CIRCULATE試験・試験デザイン:多施設共同・前向き観察コホート研究・対象:pMMRのStageII結腸がん、術後にctDNA検査を施行。ctDNA陽性→2:1で ・補助化学療法(adjuvant chemotherapy:ACT)群 ・経過観察(観察群)へ割り付けctDNA陰性→1:4で ・試験内観察  ・試験外観察 へ割り付け・主要評価項目:ctDNA陽性群における3年無病生存期間(DFS)・1,400例がランダム化されたがctDNA陽性率は2.9%にとどまり、41例のctDNA陽性例がACT群26例、観察群15例に割り付けられた。ACT群では81%がカペシタビンを投与され、うち33%がオキサリプラチン併用だった。・主要評価項目であるctDNA陽性群の3年DFSは、ACT群61%、観察群38%(HR:0.55、p=0.12)となり、統計学的有意差は認められなかった。・一方、事前に規定されたper-protocol解析で、ACT群に割り付けられたものの治療未施行だった5例を除外した解析結果では、3年DFSはACT群77%、観察群38%(HR:0.31、p=0.021)となり、3年再発率もACT群19%、観察群62%(HR:0.23、p=0.009)と、ACT群で良好であった。・3年再発率はctDNA陰性群12%、ctDNA陽性ACT群35%、ctDNA陽性未治療群62%だった。 発表したドイツ・ドレスデン工科大学のGunnar Folprecht氏は「ctDNA陽性率が約3%と低く、予定症例数へ到達できず、信頼区間が広くなったことが主要評価項目を達成できなかった一因だ。術後ctDNAは極めて強力な予後マーカーであることは本試験でも裏付けられ、pMMR StageII結腸がんにおいてctDNAに基づく治療エスカレーション戦略を支持する結果である」とした。2)CIRCULATE-Japan GALAXY試験の後方解析・試験デザイン:国内多施設共同研究・対象:術前化学療法なし、切除後StageI~IV大腸がん患者1,028例。ctDNA検査はACT前と長期ACT群(ACT施行期間>90日)は治療中、短期ACT群(ACT施行期間≦90日)は治療後に行い、ctDNAの結果によって4群に分類し、DFSとの関連をみた。1)陰性群(Sustained negativity):開始前陰性→3ヵ月後陰性2)クリアランス群(Clearance):陽性→陰性3)部分奏効群(Partial molecular response):陽性→陽性だが減少4)上昇群(Rising):陽性→陽性かつ増加・治療前ctDNA陽性患者に着目すると、クリアランス群は長期ACT、上昇群は短期ACTが多いことが観察された。・ctDNA動態とDFSは4群で明確に分離した。予後は1)~4)の順番で良好だった。・1)陰性群では、長期ACTによる利益は認められなかった。ACT期間にかかわらず予後はきわめて良好で、むしろ短期ACT群の方がわずかに良好だった。・2)クリアランス群でも、長期ACTによる追加利益は認められなかった。ACT期間にかかわらず良好な予後が得られた。・3)部分奏効群では、長期ACT群によって予後改善傾向が認められた。・4)上昇群では、ACT期間に関係なく予後は不良であり、長期ACTを行っても有意な生存利益は認められなかった。・部分奏効群のうち長期ACTを受けた患者を対象に、治療中の残存ctDNA量で層別化すると、残存ctDNA量が低い患者のほうが良好なDFSを示した。 発表した九州大学の沖 英次氏は「部分奏効群ではACT期間延長による利益があり、このことは奏効例では3ヵ月超のACT継続が有益である可能性を示している。一方で、上昇群はACT期間に関係なく予後不良であり、このことは分子学的進行が認められた時点で、同一の化学療法を継続する意義は限定的であることを示唆している。ACT開始後約3ヵ月時点のctDNA動態はACTへの分子学的反応を反映し、再発リスクを有意に層別化できた。本結果は、大腸がんにおけるACT期間の最適化および個別化周術期治療戦略の構築に寄与する可能性がある」とした。

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ivonescimab、進行扁平上皮NSCLCの1次治療でOSも延長(HARMONi-6)/Lancet

 未治療の進行扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、ivonescimab+化学療法はチスレリズマブ+化学療法と比較して全生存期間(OS)を有意に延長したことが、中国・上海交通大学のShun Lu氏らが同国の50施設で実施した第III相無作為化二重盲検比較試験「HARMONi-6試験」の事前規定の中間解析の結果で示された。HARMONi-6試験に関してはこれまでに、ivonescimab+化学療法がチスレリズマブ+化学療法と比較し、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)を有意に延長したことが報告されていた(ジャーナル四天王「進行扁平上皮NSCLCの1次治療、ivonescimab併用がICI併用と比較しPFS改善(HARMONi-6)/Lancet」)。Lancet誌オンライン版2026年5月31日号掲載の報告。ivonescimab vs.チスレリズマブで、OSの中間解析を実施 HARMONi-6試験の対象は、年齢18~75歳、病理学的に確認された切除不能なStageIIIB/IIICまたはStageIVの扁平上皮NSCLCで、全身療法の治療歴がなく、ECOG PSが0または1の患者である。 研究グループは適格患者を、ivonescimab+化学療法群(ivonescimab群)またはチスレリズマブ+化学療法群(チスレリズマブ群)に、1対1の割合で無作為に割り付けた。無作為化の層別因子は、臨床病期(StageIIIB/IIIC期vs.IV期)およびPD-L1発現(TPS≧1%vs.<1%)であった。 ivonescimab群ではivonescimab 20mg/kg、チスレリズマブ群ではチスレリズマブ200mgに加えて、いずれもカルボプラチン(AUC 5mg/mL/分)およびパクリタキセル(175mg/m2)を3週ごとに4サイクル静脈内投与し、その後維持療法として同用量のivonescimabまたはチスレリズマブを3週ごとに投与した。治療期間は最長24ヵ月、または試験責任医師の判断による臨床効果の消失、許容できない毒性の発現のいずれか早い時点までとした。 主要評価項目は、独立画像判定委員会(IRRC)の評価によるRECIST ver.1.1に基づくPFSであり、重要な副次評価項目がOSであった。有効性の解析対象集団は無作為化されたすべての患者、安全性の解析対象集団は無作為化され試験薬を少なくとも1回投与されたすべての患者とした。 重要な副次評価項目であるOSについては、中間解析1回および最終解析を行うこととされ、中間解析はOSイベントが約225件観察された時点で計画されていたが、規制当局の期限に合わせ204件に達した時点で実施された。したがって、中間解析の有意水準は片側0.0049であった。OS中央値はivonescimab群27.9ヵ月、チスレリズマブ群23.7ヵ月 2023年8月17日~2025年1月21日に761例がスクリーニングされ、適格基準を満たした532例が無作為化された(各群266例)。患者背景は、年齢中央値64歳(四分位範囲[IQR]:59~69)、男性494例(93%)、女性38例(7%)であった。 データカットオフ日の2026年2月27日時点(追跡期間中央値21.4ヵ月、95%信頼区間[CI]:20.27~21.91)で、204例の死亡が確認された。ivonescimab群が84例(32%)、チスレリズマブ群が120例(45%)であった。 OS中央値は、ivonescimab群27.9ヵ月(95%CI:27.89~評価不能[NE])、チスレリズマブ群23.7ヵ月(95%CI:20.11~NE)であり、死亡のハザード比は0.66(95%CI:0.50~0.87、片側p=0.0017)で、事前に規定された有意水準を満たした。 ivonescimab群のOS延長効果は、事前に規定されたサブグループ解析でもほぼ一貫していた。 Grade3以上の治療関連有害事象は、ivonescimab群で266例中184例(69%)、チスレリズマブ群で265例中156例(59%)に発現した。Grade3以上の治療関連出血は、それぞれ7例(3%)および2例(1%)に認められた。

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CDK4/6阻害薬治療後のER+/HER2-進行乳がん、giredestrant+エベロリムスがPFS2を改善(evERA BC)/ASCO2026

 CDK4/6阻害薬+内分泌療法後のエストロゲン受容体陽性(ER+)/HER2陰性(HER2-)進行乳がんに対して、新規経口SERDであるgiredestrant+エベロリムスを標準的内分泌療法+エベロリムスと比較した国際共同無作為化非盲検第III相evERA BC試験において、無増悪生存期間(PFS)が有意かつ臨床的に意義のある改善を示したことはすでに報告されている(ESMO2025)。今回、探索的評価項目であるPFS2および化学療法フリー生存期間を解析した結果、どちらもgiredestrant+エベロリムスで改善が示されたことを、米国・Memorial Sloan-Kettering Cancer Center and Weill Cornell Medical CollegeのKomal L. Jhaveri氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2026 ASCO Annual Meeting)で発表した。・対象:CDK4/6阻害薬+内分泌療法の治療中もしくは治療後に病勢進行/再発が認められたER+/HER2-進行乳がん(進行がんに対する内分泌療法は2ライン以下、化学療法なし)・試験群:giredestrant(30mg1日1回経口)+エベロリムス(10mg) 183例・対照群:医師選択の内分泌療法(エキセメスタン/フルベストラント/タモキシフェン)+エベロリムス 190例・評価項目:[主要評価項目]ESR1変異陽性患者および全体集団における治験責任医師評価によるPFS[副次評価項目]全生存期間(OS)など[探索的評価項目]PFS2、化学療法フリー生存期間、病勢進行後治療 主な結果は以下のとおり。・PFS2は、全体集団、ESR1変異陽性集団、ESR1変異陰性集団のすべてでgiredestrant+エベロリムス群が長く、ハザード比(HR)は順に0.69(95%信頼区間[CI]:0.51~0.92)、0.61(同:0.40~0.93)、0.77(同:0.51~1.17)であった。giredestrant+エベロリムス群のPFS2中央値は、全体集団およびESR1変異陽性集団で19.02ヵ月、ESR1変異陰性集団で17.25ヵ月であった。・化学療法フリー生存期間においても、全体集団、ESR1変異陽性集団、ESR1変異陰性集団のすべてでgiredestrant+エベロリムス群が長く、HRは順に0.61(95%CI:0.47~0.78)、0.46(同:0.32~0.66)、0.80(同:0.57~1.14)であった。・OSの中間解析では、giredestrant+エベロリムス群で良好な傾向がみられ、OS中央値は全体集団、ESR1変異陽性集団、ESR1変異陰性集団とも未到達であった。・後治療は、各群でおおむねバランスが取れており、現在の標準治療を代表するものだった。

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PD-L1陽性胃がん、周術期serplulimab療法でEFS改善(ASTRUM-006)/Lancet

 切除可能なPD-L1陽性胃がんまたは胃食道接合部腺がんにおいて、術前S-1+オキサリプラチン(SOX)+術前・術後serplulimabは、術前・術後SOX単独と比較して無イベント生存期間(EFS)を改善し、安全性プロファイルは良好であることが示された。中国・北京大学がん病院・研究所のLin Shen氏らASTRUM-006 Study Groupが無作為化二重盲検多施設共同の第III相試験「ASTRUM-006試験」の結果を報告した。先行研究で周術期免疫化学療法は、胃がんまたは胃食道接合部腺がんにおいてさまざまなアウトカムを示している。今回の試験結果を踏まえて著者は、「術後の化学療法スペアリングに対するserplulimab+SOXによる周術期療法の優位性を確立するためには、さらなる追跡調査による全生存期間(OS)のデータが必要である」と述べている。Lancet誌オンライン版2026年6月1日号掲載の報告。術前serplulimab+SOX→術後serplulimabのEFSを評価 ASTRUM-006試験は、中国およびタイの75病院で患者をスクリーニングして行われた。18~70歳、PD-L1 CPS(Combined Positive Score)≧5の切除可能な胃がんまたは胃食道接合部腺がんの適格患者を、術前補助療法としてserplulimab(4.5mg/kgをday1に静脈内投与)+SOX(オキサリプラチン130mg/m2をday1に静脈内投与+S-1 40~60mgをday1~14に1日2回経口投与)を3サイクル(1サイクル21日)受け、術後補助療法としてserplulimab単独を最長17サイクル受ける群(serplulimab群)、または術前にSOX+プラセボを3サイクル受け、術後にSOXを5サイクル受ける群(プラセボ群)に、1対1の割合で無作為に割り付け追跡評価した。 主要評価項目は、試験担当医師の評価によるEFS(無作為化から病勢進行または局所再発あるいは遠隔再発、新たな悪性腫瘍、死亡までの期間として定義)。有効性の評価は、最初にPD-L1 CPS≧10の集団で行い、次いでITT集団(CPS≧5)で行った。PD-L1 CPS≧10集団、ITT集団(CPS≧5)でEFSが有意に延長 2019年11月26日~2024年4月19日に、1,646例がスクリーニングされ、そのうち中国の57病院で588例がserplulimab群(292例)またはプラセボ群(296例)に無作為化された。588例は年齢中央値61.0歳(四分位範囲[IQR]:55~66)、女性124例(21%)、男性464例(79%)であった。 追跡期間中央値42.7ヵ月(IQR:24.3~53.6)において、PD-L1 CPS≧10集団におけるEFS中央値は、serplulimab群がプラセボ群よりも有意に延長した(未到達vs.42.0ヵ月、ハザード比[HR]:0.65[95%信頼区間[CI]:0.47~0.90]、p=0.0082)。 また、追跡期間中央値35.9ヵ月(IQR:23.5~49.4)において、ITT集団(CPS≧5)におけるEFS中央値も、serplulimab群がプラセボ群よりも有意に延長した(未到達vs.35.9ヵ月、HR:0.73[95%CI:0.56~0.94]、p=0.015)。 Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)の発現は、serplulimab群で136例(47%)、プラセボ群で172例(59%)報告された。治療中止に至ったTRAEは、各群19例(7%)および31例(11%)に認められた。

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KRAS G12C陽性NSCLCの1次治療、divarasib+ペムブロリズマブが有望(Krascendo-170)/ASCO2026

 KRAS G12C変異陽性の進行・転移非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療では、免疫チェックポイント阻害薬単剤または化学療法との併用が標準治療として用いられている。しかし、全生存期間中央値は約1.5年であり、アンメットニーズが存在する。KRAS G12C阻害薬としてはソトラシブが臨床応用されているが、2次治療以降での使用が適応となっている。 そこで、1次治療において経口KRAS G12C阻害薬divarasibとペムブロリズマブの併用療法の安全性・有効性を検討する国際共同第Ib/II相試験「Krascendo-170試験」が実施されている。米国臨床腫瘍学会年次総会(2026 ASCO Annual Meeting)において、本試験の解析結果が報告され、PD-L1≧1%コホート、PD-L1<1%コホートのいずれにおいても良好な奏効が得られ、管理可能な安全性プロファイルが示された。Ferdinandos Skoulidis氏(米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンター)が、本解析結果を報告した。 Krascendo-170試験は、未治療のKRAS G12C変異陽性進行・転移非扁平上皮NSCLC患者を対象とした国際共同第Ib/II相非盲検用量探索・用量拡大試験である。今回は、PD-L1≧1%コホート(コホートA1)におけるdivarasib 400mg 1日1回+ペムブロリズマブ200mg 3週ごと投与の主要解析、PD-L1<1%コホート(コホートA2)における同用量の予備的解析の結果が報告された。主要評価項目は安全性であり、主要な副次評価項目として奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、患者報告アウトカム、薬物動態、推奨用量が評価された。 主な結果は以下のとおり。【PD-L1≧1%コホート】・divarasib 400mg+ペムブロリズマブによる治療を受ける群に59例が組み入れられた。年齢中央値は67歳で、男性の割合は62.7%であった。PD-L1 1~49%が37.3%、≧50%が61.0%であった。追跡期間中央値は12.2ヵ月。・確定ORRは72.9%(CR 10.2%、PR 62.7%)で、DOR中央値は未到達であった。・PFS中央値は19.3ヵ月で、6ヵ月PFS率は83.5%であった。なお、PFSのデータは未成熟であった。【PD-L1<1%コホート】・登録された23例の年齢中央値は72歳で、男性の割合は69.6%であった。追跡期間中央値は3.4ヵ月。・ORRは69.6%(すべてPR)で、初回奏効までの期間中央値は40.5日であった。・PFSデータは未成熟であった。【PD-L1≧1%コホート+PD-L1<1%コホート】・安全性は、PD-L1≧1%コホートおよびPD-L1<1%コホートを併合した安全性解析対象78例で評価された。有害事象は全例に認められ、Grade3以上の有害事象は76.9%、重篤な有害事象は50.0%に発現した。・治療関連有害事象(TRAE)は98.7%に認められ、Grade3/4のTRAEは65.4%、重篤なTRAEは28.2%に発現した。Grade5のTRAEは0例であった。・divarasibの減量に至ったTRAEは52.6%、中断に至ったTRAEは69.2%、試験治療中止に至ったTRAEは12.8%に認められた。・主なTRAE(40%以上に発現)は、下痢(74.4%)、悪心(64.1%)、ALT上昇(52.6%)、AST上昇(48.7%)であった。Grade3/4の下痢、ALT上昇、AST上昇はそれぞれ17.9%、23.1%、17.9%に認められた。 本試験結果について、Skoulidis氏は「KRAS G12C変異陽性の進行NSCLC患者において、1次治療としてのdivarasib+ペムブロリズマブは良好な臨床活性を示した。頻度の高いTRAEは、低Gradeが多く可逆的であり、管理可能であった。なお、有害事象の予防レジメン、有害事象管理アルゴリズム、忍容性に応じた用量調整方法が本試験中に段階的に開発されており、第III相Krascendo-2試験では患者の臨床アウトカムを最適化するために、試験開始時から導入されている」とまとめた。 なお、未治療のKRAS G12C変異陽性の進行・転移NSCLC患者を対象とする国際共同第III相試験「Krascendo-2試験」が進行中であり、KRAS G12C変異陽性のStageIIIA/IIIBの完全切除NSCLC患者を対象として、術後療法におけるdivarasibの有用性を検証する国際共同第III相試験「Krascendo-3試験」が計画されている。

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HER2+胃食道腺がん1次治療、zanidatamab+化学療法±チスレリズマブがPFS延長(HERIZON-GEA-01)/NEJM

 HER2陽性胃食道腺がんの1次治療において、従来の標準治療であるトラスツズマブと化学療法の併用と比較して、zanidatamab(HER2の細胞外ドメイン2および4に結合する二重特異性IgG1様抗体)と化学療法の併用は、チスレリズマブ(抗PD-1抗体)の併用、非併用のいずれの場合でも、無増悪生存期間(PFS)を有意に延長し、チスレリズマブとの併用では全生存期間(OS)に関しても有意な有益性をもたらすことが、国立がん研究センター東病院の設楽 紘平氏らHERIZON-GEA-01 Investigatorsが実施した「HERIZON-GEA-01試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2026年5月28日号で報告された。日本を含む33ヵ国の無作為化第III相試験 研究グループは、zanidatamabの補体依存性細胞傷害作用を含む免疫介在性効果と、チスレリズマブによるPD-1阻害作用を併用することで、HER2陽性胃食道腺がんにおける抗腫瘍免疫がさらに増強するとの仮説を立て、これを検証する目的で非盲検無作為化実薬対照第III相試験を行った(Jazz Pharmaceuticalsなどの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、未治療で切除不能な局所進行または転移・再発のあるHER2陽性胃・胃食道接合部・食道腺がんの患者であった。 被験者を、zanidatamab+チスレリズマブ+化学療法、zanidatamab+化学療法、トラスツズマブ+化学療法のいずれかを受ける群に、1対1対1の割合で無作為に割り付けた。化学療法は、カペシタビン+オキサリプラチンまたはフルオロウラシル+シスプラチンのいずれかを選択した。 主要評価項目は、盲検下独立中央判定によるPFSとOSの2つとした。 2021年12月~2025年2月に、日本を含む33ヵ国の225施設で914例を登録した。zanidatamab+チスレリズマブ群に302例(年齢中央値63歳[範囲:22~81]、女性58例[19.2%])、zanidatamab群に304例(62.5歳[25~87]、60例[19.7%])、トラスツズマブ群に308例(64歳[21~84]、70例[22.7%])を割り付けた。奏効率、奏効期間も良好 追跡期間中央値25.9ヵ月の時点における中間解析で、PFS中央値は、トラスツズマブ群が8.1ヵ月であったのに対し、zanidatamab+チスレリズマブ群は12.4ヵ月(ハザード比[HR]:0.63、95%信頼区間[CI]:0.51~0.78、p<0.001)、zanidatamab群は12.4ヵ月(HR:0.65、95%CI:0.52~0.81、p<0.001)と、いずれも有意に延長した。 OS中央値は、トラスツズマブ群の19.2ヵ月に比べ、zanidatamab+チスレリズマブ群は26.4ヵ月と有意に長かった(HR:0.72、95%CI:0.57~0.90、p=0.004)。一方、zanidatamab群のOS中央値は24.4ヵ月であり、この初回中間解析時にはトラスツズマブ群との間に有意差を認めなかった(HR:0.80、95%CI:0.64~1.01、p=0.06)。 奏効率は、zanidatamab+チスレリズマブ群が70.7%、zanidatamab群が69.6%、トラスツズマブ群は65.7%であり、このうち完全奏効を達成した患者の割合はそれぞれ19.6%、17.1%、11.0%であった。また、奏効例における奏効期間中央値は、それぞれ20.7ヵ月、14.3ヵ月、8.3ヵ月だった。下痢の頻度が高い Grade3以上の有害事象はzanidatamab+チスレリズマブ群で83.3%、zanidatamab群で73.8%、トラスツズマブ群で74.5%に発現した。このうち下痢の頻度が最も高く、それぞれ24.8%、20.0%、12.9%の患者に認めた。薬剤関連の下痢によるHER2標的療法(zanidatamab、トラスツズマブ)の中止は、zanidatamab+チスレリズマブ群の4.1%とzanidatamab群の1.3%で生じた。 重篤な有害事象は、zanidatamab+チスレリズマブ群の58.5%、zanidatamab群の49.2%、トラスツズマブ群の42.4%に発現し、HER2標的療法の中止に至った有害事象は、それぞれ13.3%、10.5%、5.6%に認めた。免疫介在性有害事象は、zanidatamab+チスレリズマブ群の37.8%で報告され、発疹(14.3%)の頻度が最も高かった。Grade5の薬剤関連有害事象(死亡)は、zanidatamab+チスレリズマブ群で多かった(それぞれ2.4%、0.3%、1.3%)。 著者は、これらの結果について、「チスレリズマブの併用の有無にかかわらず、zanidatamabはHER2陽性胃食道腺がん患者にとって、有望な標的治療の選択肢であることを裏付けている」「単一のHER2ドメインにのみ結合するトラスツズマブよりも、zanidatamab独自の二重のHER2標的化メカニズムが、大きな臨床的利益をもたらすことが示唆される」としている。

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PD-L1陽性転移TN乳がん1次治療のSG+ペムブロリズマブ、PFS2と後治療までの期間を改善(ASCENT-04)/ASCO2026

 ASCENT-04試験において、PD-L1陽性の転移を有するトリプルネガティブ乳がん(TNBC)の1次治療で、サシツズマブ ゴビテカン(SG)+ペムブロリズマブが化学療法+ペムブロリズマブより無増悪生存期間(PFS)を改善したことがすでに報告されている。今回、PFS2と後治療について解析した結果、化学療法+ペムブロリズマブ群からSG単剤療法へのクロスオーバー率が高かったにもかかわらず、PFS2はSG+ペムブロリズマブ群で長く、長期的なベネフィットが持続することが示唆された。また、最初と2番目の後治療までの期間はどちらもSG+ペムブロリズマブ群で長かった。米国・Winship Cancer Institute of Emory UniversityのKevin Kalinsky氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2026 ASCO Annual Meeting)で発表した。・対象:PD-L1陽性(CPS≧10)で未治療(根治治療の完了から6ヵ月以上経過)の局所進行切除不能/転移TNBC患者・試験群:SG(21日サイクルの1、8日目に10mg/kg点滴静注)+ペムブロリズマブ(21日サイクルの1日目に200mg)221例・対照群:化学療法(パクリタキセルもしくはnab-パクリタキセルもしくはゲムシタビン+カルボプラチン)+ペムブロリズマブ 222例、病勢進行後SG単剤への変更を許容・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS[副次評価項目]全生存期間、BICRによる奏効率・奏効期間、安全性、QOL[探索的評価項目]PFS2、最初の後治療までの期間(TFST)、2番目の後治療までの期間(TSST)など 主な結果は以下のとおり。・データカットオフ(2025年3月3日)時点で追跡期間中央値は14.0ヵ月であり、SG+ペムブロリズマブ群では43%、化学療法+ペムブロリズマブ群では23%が試験治療を継続していた。・治療中止例のうち何らかの後治療を受けたのは、SG+ペムブロリズマブ群が55%、化学療法+ペムブロリズマブ群が70%であった。SG+ペムブロリズマブ群では19%がADC(うち3例がSG)、化学療法+ペムブロリズマブ群では82%がADCの投与を受け、ほとんどがSGであった。両群共に3次治療を受けたのは14%と17%だった。・PFS2は、化学療法+ペムブロリズマブ群のクロスオーバー率が高いにもかかわらずSG+ペムブロリズマブ群で長く、PFS2中央値は、SG+ペムブロリズマブ群では未到達、化学療法+ペムブロリズマブ群で21.0ヵ月であり、層別ハザード比(HR)は0.67(95%信頼区間[CI]:0.48~0.95)であった。・TFST中央値はSG+ペムブロリズマブ群17.3ヵ月、化学療法+ペムブロリズマブ群9.8ヵ月であり、層別HRは0.59(95%CI:0.46~0.76)、TSST中央値はSG+ペムブロリズマブ群は未到達、化学療法+ペムブロリズマブ群21.0ヵ月であり、層別HRは0.82(95%CI:0.59~1.14)であった。 Kalinsky氏は、「これらの結果は、PD-L1陽性の転移TNBC患者の1次治療としてSG+ペムブロリズマブの併用投与をさらに支持するものである」と結んだ。

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EGFR L858R陽性NSCLC、エルロチニブ+ラムシルマブvs.オシメルチニブ(REVOL858R/WJOG14420L)/ASCO2026

 EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)のうち、L858R変異陽性例はexon19欠失例と比較してEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)への感受性が低く、予後不良である可能性が指摘されている。一方で、エルロチニブ+ラムシルマブの有用性を検討した国際共同第III相試験「RELAY試験」1)では、L858R変異陽性例における全生存期間(OS)中央値が52ヵ月であったことが報告され、EGFR-TKIへのラムシルマブの上乗せによりexon19欠失例と同等の予後が、L858R変異陽性例において得られる可能性が考えられた2)。 そこで、L858R変異陽性例を対象に、エルロチニブ+ラムシルマブ併用療法で治療を開始し、治療中にT790M変異が検出された場合にオシメルチニブへ移行する逐次治療戦略の有用性について、オシメルチニブとの比較により検討する国内第III相試験「REVOL858R試験」が実施された。その結果、エルロチニブ+ラムシルマブ後にオシメルチニブを投与する治療戦略は、初回オシメルチニブ単剤療法と比較して、治療戦略成功期間(TFS:Time to Failure of Strategy)を改善しなかった。米国臨床腫瘍学会年次総会(2026 ASCO Annual Meeting)において、試験事務局を務めた原武 直紀氏(九州がんセンター 呼吸器腫瘍科)が結果を報告した。試験デザイン:国内第III相無作為化非盲検試験対象:未治療の進行または再発を有するEGFR遺伝子L858R変異陽性NSCLC患者試験群(エルロチニブ+ラムシルマブ群):エルロチニブ(150mg、1日1回)+ラムシルマブ(10mg/kg、2週ごと)→再生検またはリキッドバイオプシーによる遺伝子検査→T790M陽性例ではオシメルチニブ(80mg、1日1回)、T790M陰性例ではプロトコール治療を終了 116例対照群(オシメルチニブ群):オシメルチニブ(80mg、1日1回) 116例評価項目:[主要評価項目]TFS(治療開始からオシメルチニブで病勢進行または死亡まで、もしくはオシメルチニブ導入不可の場合は初回の病勢進行または死亡までの期間)[副次評価項目]OS、無増悪生存期間(PFS)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・患者背景は両群でおおむねバランスがとれていた。全体の年齢中央値は73歳、女性の割合は62%であった。ベースライン時に脳転移を有していた割合は29%であった。・主要評価項目であるTFS中央値は、エルロチニブ+ラムシルマブ群16.6ヵ月、オシメルチニブ群14.8ヵ月であり、エルロチニブ+ラムシルマブ群の有意な改善は認められなかった(ハザード比[HR]:1.03、95%信頼区間[CI]:0.78~1.38)。・TFSに関する事前に規定されたサブグループ解析でも、明確な治療効果の差が示される集団はみられなかった。・副次評価項目のOS(HR:0.98、95%CI:0.66~1.45)、PFS(同:1.08、0.81~1.44)も両群間に差はみられなかった。・安全性について、Grade3以上の有害事象は、エルロチニブ+ラムシルマブ群72%、オシメルチニブ群44%に発現し、エルロチニブ+ラムシルマブ群で多かった。治療中止に至った有害事象は、それぞれ36%、21%にみられた。一方で病勢進行による治療中止は、エルロチニブ+ラムシルマブ群で23%にとどまり、オシメルチニブ群では52%であった。・間質性肺疾患(ILD)は、エルロチニブ+ラムシルマブ群2%、オシメルチニブ群10%に認められ、エルロチニブ+ラムシルマブ群のほうが少ない傾向がみられた。・エルロチニブ+ラムシルマブ群でT790M変異の検査が実施された割合は41%で、T790M変異陽性は全体の13%にとどまった。 本結果について、原武氏は「オシメルチニブ群のPFS中央値(14.8ヵ月)は、FLAURA試験3)の報告(14.4ヵ月)と同様であったが、エルロチニブ+ラムシルマブ群のPFS中央値(14.9ヵ月)は、RELAY試験の報告(19.4ヵ月)よりも数値的に短かった」と指摘した。また「EGFR遺伝子L858R変異を有するNSCLCには、アンメットニーズが存在するため、今回のシークエンス治療の長期的なOSへの影響について、長期追跡が進行中である」とまとめた。 また、会場から今後の臨床現場におけるエルロチニブ+ラムシルマブ療法の役割を問われ、原武氏は「本試験はネガティブな結果であったことを考慮すると、EGFR遺伝子L858R変異を有するNSCLCの標準治療は、MARIPOSAレジメン(アミバンタマブ+ラゼルチニブ)もしくはFLAURA2レジメン(オシメルチニブ+化学療法)であると考える。ただし、エルロチニブ+ラムシルマブはILDの発現割合が低かったことを考慮すると、一部の患者でこのレジメンの恩恵を得られる可能性がある。恩恵が得られる患者集団を明らかにするため、追加のサブグループ解析やOSに関する長期追跡が進行中である」と述べた。

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小細胞肺がん脳転移例の2次治療、タルラタマブがCNS進行リスクを低下(DeLLphi-304)/ASCO2026

 小細胞肺がん(SCLC)では脳転移を来す患者が多く、脳転移を有する患者の予後は不良である。しかし、脳転移を有するSCLCの2次治療において、タルラタマブが良好な治療成績を示す可能性がある。プラチナ製剤を含む化学療法後に進行したSCLC患者を対象とした国際共同第III相試験「DeLLphi-304試験」1)において、ベースライン時に脳転移を有する患者のpost-hoc解析が実施された。その結果、タルラタマブは化学療法と比較して、中枢神経系無増悪生存期間(CNS PFS)を延長し、全生存期間(OS)も改善した。本研究結果は、米国臨床腫瘍学会年次総会(2026 ASCO Annual Meeting)において、Giannis S. Mountzios氏(ギリシャ・Henry Dunant Hospital Center)によって報告された。・試験デザイン:国際共同第III相無作為化非盲検比較試験・対象:プラチナ製剤を含む化学療法±抗PD-1/PD-L1抗体薬による1次治療を受けたSCLC患者(無症候性の脳転移は治療歴を問わず許容)・試験群(タルラタマブ群):タルラタマブ(1日目に1mg、8、15日目に10mgを点滴静注し、以降は2週間間隔で10mgを点滴静注) 254例・対照群(化学療法群):化学療法(トポテカン、アムルビシン、lurbinectedinのいずれか)※ 255例・評価項目:[主要評価項目]OS[主要な副次評価項目]PFS、患者報告アウトカム[副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性など※:日本はアムルビシン 今回のpost-hoc解析では、ベースラインで脳転移を有する患者を対象に、盲検下独立中央判定(BICR)によるCNS PFS、CNS奏効、CNS病勢コントロール率(CNS DCR)などが評価された。また、ベースライン時の脳転移の有無別にみたOSおよび安全性も評価された。主な結果は以下のとおり。・全体集団において、治験担当医師評価によるCNS PFS中央値は、タルラタマブ群で未到達、化学療法群で7.2ヵ月であった(ハザード比[HR]:0.54、95%信頼区間[CI]:0.39~0.75)であった。・ベースライン時に脳転移を有する患者は、タルラタマブ群98例、化学療法群99例であった。このうち、ベースライン時および1回以上のベースライン後の脳画像評価を有するCNS Full Analysis Set(CNS FAS)は、タルラタマブ群67例、化学療法群56例であった。・CNS FASにおける年齢中央値はタルラタマブ群64.0歳、化学療法群63.5歳で、男性の割合はそれぞれ75%、70%であった。脳転移に対する前治療として放射線療法または手術を受けていた患者の割合はそれぞれ75%、71%で、10mm以上のCNS病変を有する患者の割合はそれぞれ23.9%、23.2%であった。・CNS FASにおけるBICR評価によるCNS PFS中央値はタルラタマブ群6.5ヵ月、化学療法群4.2ヵ月であり、タルラタマブ群でCNS PFSの延長がみられた(HR:0.40、95%CI:0.24~0.66)。6ヵ月CNS PFS率はそれぞれ53.9%、27.0%であった。・CNS完全奏効(CNS CR)はタルラタマブ群14.9%、化学療法群5.4%に認められた。CNS CR期間中央値はタルラタマブ群未到達、化学療法群3.6ヵ月。・CNS DCRはタルラタマブ群77.6%、化学療法群71.4%に認められた。CNS DCR期間中央値はそれぞれ8.2ヵ月、5.2ヵ月。・ベースライン時に脳転移を有する患者におけるOS中央値はタルラタマブ群13.9ヵ月、化学療法群6.8ヵ月であり、タルラタマブ群でOSの延長がみられた(HR:0.51、95%CI:0.34~0.74)。12ヵ月OS率はそれぞれ51.1%、26.0%であった。・ベースライン時に脳転移を有する患者の安全性解析対象は、タルラタマブ群98例、化学療法群93例であった。・Grade 3以上の有害事象は、タルラタマブ群54.1%、化学療法群87.1%に認められた。治療中断または減量に至った治療関連有害事象(TRAE)はそれぞれ18.4%、54.8%に発現し、中止に至ったTRAEはそれぞれ7.1%、32.3%にみられた。・タルラタマブ投与例において、ベースライン脳転移の有無別にサイトカイン放出症候群(CRS)と免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)の発現割合を比較したところ、CRSは脳転移ありで53.1%、脳転移なしで56.5%にみられた。ICANSはそれぞれ9%、4%であった。 本解析結果について、Mountzios氏は「これらの結果は、脳転移を有するSCLC患者においても、タルラタマブがSCLCの2次治療における標準治療となることを支持するものである」とまとめた。

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HER2陽性進行胃食道腺がん、zanidatamab+チスレリズマブはPD-L1発現にかかわらず有効(HERIZON-GEA-01)/ASCO2026

 今年1月に行われた米国臨床腫瘍学会消化器がんシンポジウム(ASCO GI 2026)で発表されたHERIZON-GEA-01試験では、HER2陽性局所進行または転移のある胃食道腺がん1次治療において、化学療法に二重HER2標的抗体zanidatamabと抗PD-1抗体チスレリズマブを追加することで、無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)の改善が示された。5月29日~6月2日に行われた米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO 2026)では、韓国・延世がんセンターのSun Young Rha氏が、本試験におけるPD-L1サブグループの解析結果を報告した。・試験デザイン:国際共同非盲検第III相試験・対象:未治療のHER2陽性進行・転移胃食道腺がん患者・試験群:zanidatamab+チスレリズマブ+化学療法(CAPOXまたはFP)       zanidatamab+化学療法・対照群:トラスツズマブ+化学療法(トラスツズマブ群)・評価項目:[主要評価項目]PFSおよびOS[副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性など PD-L1発現の評価指標にはTAPスコアおよびCPSが用いられた。 既報の主要解析では、追跡期間中央値26ヵ月時点で、zanidatamab+チスレリズマブ+化学療法群はトラスツズマブ群と比較してPFSを有意に延長し(HR:0.63)、OSについても有意な改善が認められた(HR:0.72)。 主な結果は以下のとおり。・PD-L1発現レベル(TAPおよびCPS)別のPFS中央値は以下のとおりで、PD-L1の発現状況にかかわらず一貫して改善が認められた。・TAP<1%:zanidatamab+チスレリズマブ+化学療法群18.5ヵ月vs.トラスツズマブ群7.9ヵ月(HR:0.47)・TAP≧1%:同11.3ヵ月vs.8.3ヵ月(HR:0.65)・CPS<1:同18.5ヵ月vs.8.1ヵ月(HR:0.48)・CPS≧1:同12.3ヵ月vs.8.2ヵ月(HR:0.62)・zanidatamab+チスレリズマブ+化学療法群において、TAP<1%およびTAP≧1%における18ヵ月PFS率はそれぞれ50.3%および42.6%、24ヵ月OS率は63.7%および53.5%であった。 ・一方、トラスツズマブ+化学療法群ではPD-L1陽性例のほうが陰性例よりOSが良好であった。研究グループはその要因として後治療の違いを挙げており、トラスツズマブ群では免疫チェックポイント阻害薬が15%、HER2標的治療が29%に施行されたのに対し、zanidatamab+チスレリズマブ+化学療法群ではそれぞれ2%、13%であった。・Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)は、トラスツズマブ群で59.6%、zanidatamab+チスレリズマブ+化学療法群で71.8%に認められた。主な有害事象として下痢が認められたがGrade3以上の発現率は低く、新たな安全性シグナルは確認されなかった。 Rha氏らは、「zanidatamab+チスレリズマブ+化学療法は、TAPおよびCPSで評価したPD-L1陽性例・陰性例の双方において、臨床的に意義のあるPFSおよびOSの改善を示した」と結論付けた。HER2陽性進行胃食道腺がんに対する本レジメンの有効性はPD-L1発現に依存せず認められ、新たな1次治療標準となる可能性が示された。

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HR+/HER2-進行乳がんに対するパクリタキセル+ベバシズマブへのアテゾリズマブ追加、PFSの改善みられず(JCOG1919E/AMBITION)/ASCO2026

 ホルモン受容体陽性(HR+)/HER2陰性(HER2-)進行乳がんは免疫学的に「cold」な腫瘍とされ、免疫チェックポイント阻害薬の臨床的有用性は限定的と位置付けられる。一方、VEGFを介した血管新生は免疫抑制的な腫瘍微小環境を促進するため、VEGF阻害により免疫抑制状態を解除し、免疫療法への応答を増強できると考えられる。こうした背景のもと、パクリタキセルおよびベバシズマブへのアテゾリズマブの上乗せ効果を検証する第III相JCOG1919E(AMBITION)試験が国内24施設で実施された。その主要解析結果を、愛知県がんセンターの原 文堅氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO 2026)で報告した。・対象:切除不能な局所進行・再発またはStageIVのHR+/HER2-乳がん患者(≧20歳、ECOG PS 0~2、内分泌療法抵抗性または生命を脅かす内臓転移あり[有症状の転移があり早急な腫瘍縮小により症状緩和が必要な状態]、進行がんに対する化学療法歴なし)・試験群(アテゾリズマブ追加群):28日サイクルでパクリタキセル(90mg/m2、1・8・15日目)+ベバシズマブ(10mg/kg、1・15日目)+アテゾリズマブ(840mg、1・15日目)投与 141例・対照群:28日サイクルでパクリタキセル+ベバシズマブ投与 140例・評価項目:[主要評価項目]RECIST v1.1に基づく治験責任医師評価による無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]全生存期間(OS)、盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS、奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性・データカットオフ:2025年9月15日 主な結果は以下のとおり。・ベースライン特性は両群でバランスがとれており、年齢中央値はアテゾリズマブ追加群56.0歳vs.対照群57.0歳、PD-L1陽性(IC 1-3)は15.6%vs.16.4%、de novo症例が31.9%vs.34.3%、肝転移が67.4%vs.68.6%、CDK4/6阻害薬併用の内分泌療法歴ありが64.5%vs.62.1%、周術期の化学療法歴ありが42.6%vs.52.1%であった。・主要評価項目である治験責任医師評価によるPFS中央値は、アテゾリズマブ追加群12.4ヵ月(95%信頼区間[CI]:10.3~15.2)、対照群が11.2ヵ月(95%CI:9.6~13.5)で、統計学的な有意差は認められなかった(層別ハザード比[HR]:0.876、95%CI:0.670~1.145、p=0.168)。・PD-L1発現状況別にみた治験責任医師評価によるPFS中央値は、IC 0ではアテゾリズマブ追加群13.6ヵ月vs.対照群11.3ヵ月(層別HR:0.826、95%CI:0.619~1.101)、IC 1-3では9.7ヵ月vs.8.4ヵ月(層別HR:1.018、95%CI:0.537~1.931)。・BICR評価によるPFS中央値は、アテゾリズマブ追加群16.7ヵ月vs.対照群13.8ヵ月であった(層別HR:0.919、95%CI:0.678~1.246、p=0.294)。・治験責任医師評価によるPFS中央値のサブグループ解析の結果、de novo症例、転移がんへのCDK4/6阻害薬歴なし、周術期化学療法歴なしの患者において、アテゾリズマブ追加群で良好な傾向がみられた。・OS中央値は、アテゾリズマブ追加群が39.1ヵ月、対照群が31.2ヵ月で、アテゾリズマブ追加群で数値上の改善傾向がみられたものの、統計学的な有意差は示されなかった(層別HR:0.804、95%CI:0.584~1.108、p=0.091)。12ヵ月OS率は85.8%vs.84.8%、24ヵ月OS率は71.6%vs.58.5%、36ヵ月OS率は51.2%vs.41.5%であった。・治験責任医師評価によるORRはアテゾリズマブ追加群73.0%vs.対照群71.9%、DOR中央値は12.0ヵ月vs.9.5ヵ月であった。・Grade3以上の試験治療下における有害事象(TEAE)はアテゾリズマブ追加群84.9%vs.対照群78.6%で発現した。アテゾリズマブ追加群では、皮疹(36.0%)、副腎機能不全(11.5%)、甲状腺機能低下症(10.8%)などの免疫関連有害事象が多くみられたが、多くは管理可能であり、既知の安全性プロファイルと一致していた。 原氏は今回の結果について、「HR+/HER2-進行乳がんに対するパクリタキセル+ベバシズマブへのアテゾリズマブの追加はPFSの統計学的に有意な改善を示さなかった。OSでの数値上の改善傾向はみられたものの、アテゾリズマブのルーチンな追加を支持する結果ではない」と結論付けている。なお、バイオマーカー探索のためのトランスレーショナル研究が予定されている。

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第316回 埼玉県立小児医療センターの死亡事故、何があったのか(前編)

INDEXビンクリスチンの誤髄注死亡事故、世界的に報告事故が起こりやすい治療時期ビンクリスチンの誤髄注死亡事故、世界的に報告今年3月上旬、埼玉県立小児医療センターが明らかにした急性リンパ性白血病(ALL)で治療中の患者5例が、髄腔内注射(以下、髄注)の後に重篤な神経症状を発症し、うち1例はこれが原因とみられる状態で死亡に至った事案は記憶に新しい。この件では5例中3例の髄液から髄注には禁忌の抗がん剤ビンクリスチン(商品名:オンコビン)が検出されたことが判明し、重篤な神経症状発症事例の可能性が濃厚と指摘されている。ちなみに、ビンクリスチンは微小管重合阻害薬(ビンカアルカロイド系)であり、紡錘体を形成しているチューブリンに結合して微小管の形成を阻害し、細胞分裂を停止させる作用を持つ。また、ビンクリスチンは胆汁排泄される肝代謝型で、主な代謝酵素は CYP3A4 とCYP3A5 である。ただし、CYP3A5の発現レベルには大きな個人差があり、その度合いによって副作用の出現頻度は異なる。一般的な副作用は末梢神経症状であり、薬剤が末梢神経に到達すると、軸索輸送(タンパク質・小胞の輸送)に必須な軸索内の微小管が障害される。このため、もし髄注でビンクリスチンが脊髄・脳に接触すれば、同部位には代謝機構は存在しないため、直接高濃度で曝露することになり、末梢神経毒性とは比較にならないほど重篤な神経症状が生じる。具体的には軸索の順行性・逆行性輸送が破綻し、神経細胞の変性・壊死が急速に進行する。実際の症状としては、激しい疼痛、下肢麻痺、上行性麻痺、呼吸筋麻痺、意識障害などを発症し、最悪は死に至る。救命のためには早期に大量の脳脊髄液洗浄を行う必要があるが、誤って髄注してしまった場合の救命例は少数といわれている。2006年に米国・ノースウェスタン大学のグループが行った文献レビュー1)では、当時確認されたミスによるビンクリスチンの髄注事例32例中27例(84.3%)が死亡したとされている。なお、オーストラリアの研究者が2019年に発表した論文2)によれば、過去の論文検索や事故報告書などの集計から、これまで全世界で確認されているビンクリスチンの誤った髄注事例は少なくとも135例あるものの、これは氷山の一角とみられている。この件について同センターが医療法の医療事故調査制度に基づいて設置した外部有識者による医療事故調査委員会は、5月27日に第3回の会合を開き、「ビンクリスチン混入の原因特定は困難」との結論に達した。一方で再発防止策については、3回の会合で委員から提示された意見を踏まえ、過失、故意のいずれの可能性でも対応し得る対策がまとめられたとし、これを反映させた報告書の微修正などは委員長に一任された。報告書は同センターに提出され、調査対象となっている5例の家族に内容を説明後、個人情報などに配慮しつつ可能な範囲で公表する予定だ。事故が起こりやすい治療時期しかし、何ともすっきりしない結末である。この事件を改めて振り返り論考してみたい。まず、今回の事案で髄液からビンクリスチンが検出されたのは、髄注時期別にみると、2025年1月に投与された10歳未満の男児、2025年3月と10月にそれぞれ10代男性の3例である。3例とも注射後数日以内に下肢痛や麻痺などの神経症状を発症。2025年10月に髄注を受けた患者は2026年2月に死亡し、残る2例も意識不明や全身麻痺などの重篤な状態となった。実は同センター側では3例目の神経症状発症事例を経験した直後の11月、院内外の委員で構成される調査対策委員会を発足させ、対外的な公表の約1週間前の3月5日まで同委員会が計6回開催されていた。この3例の髄液中のビンクリスチン検出は、同委員会の開催過程で、がん性髄膜炎の評価などほかの神経症状を検索するために採取した髄液を使用した髄液タンデム質量分析の結果、判明したものである。さて、ここで改めて小児でのALLの標準的治療について触れておかねばならないだろう。ALLではおおむねプレフェーズ(導入前治療)→寛解導入療法→強化(地固め)療法→再寛解導入療法→維持療法という流れとなる。プレフェーズは、腫瘍崩壊症候群の防止とステロイドへの反応性の評価を目的として行われるもので、プレドニゾロンまたはデキサメタゾンが通常5~7日程度投与される。今回、焦点となっているのは、寛解導入療法の段階である。この寛解導入療法(約4週間)では、ビンクリスチン、プレドニゾロンまたはデキサメタゾン、L-アスパラギナーゼの3剤(高リスク群ではダウノルビシンなどを加えた4剤)併用療法とメトトレキサートの髄注が行われる。ちなみにこのうちプレドニゾロンは内服、そのほかは基本的に静脈注射である(ただしL-アスパラギナーゼは筋注の場合もあり)。ALLではがん細胞が中枢神経に潜伏しやすく、血液脳関門の存在ゆえにこうした潜伏したがん細胞を制圧するには全身化学療法では不十分であり、メトトレキサート、シタラビン、ヒドロコルチゾンの3剤併用による髄注(トリプルIT)が寛解導入療法の時期から行われる。ただし、ビンクリスチンは一般的に寛解導入療法後の強化療法で使われるケースは少ないものの、再寛解導入療法以降に再び定期的に投与されるようになる。今回の事案については、どの治療段階で起きたかは明らかにされていない。ただ、過失で起きた前提で考えるならば、それが起きやすい環境があるのは寛解導入療法時となる。そして同センターではこの事案が公表された今年3月11日から約1週間後の3月17日にこの3例以外にも髄注を受けた2例のALL患者で神経症状が疑われることを公表している。前出の3例とは異なり、この2例の患者プロファイルは明らかにされていない。前出の3例は早い患者で髄注翌日、遅い患者でも4日以内に症状が出現、急速に進行・重症化した。それに対し、この2例は発症まで約2週間を要し、症状は下肢麻痺などで命に別状はないことなどから、前述の調査対策委員会では「最初の3例と同じ病態であることには否定的」との見解だ。ALLでは、ビンクリスチン静注とトリプルIT髄注を同日に行うことによる取り違えに起因した事故が過去に世界的にも報告されている。このため昨今ではあえて投与日を変えて行うことが一般的と言われる。患者や施設の事情によっては、同日に行われることもあるという。もちろん過去の事故のことは多くの施設で念頭にあることは想像に難くなく、その場合は同日内でも相当時間を空けて行うなど、通常は相当厳重な注意が払われる。今回は小児ALL治療の背景と事件の事実関係について触れた。次回、「なぜ起きたのか?」 故意・過失の双方から今回の事件を独自視点でひもといてみたい。参考1)Basetty P, et al. blood. 2006;108:3327.2)Gilbar P, et al. J Oncol Pharm Pract. 2020;26:263-266.3)日本小児血液・がん学会編. 小児白血病・リンパ腫 診療ガイドライン 2016 年版. 金原出版株式会社. 2016.4)厚生労働省:埼玉県立小児医療センターの報道に関する対応状況について(報告)令和8年3月26日

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未治療MCLへのイブルチニブを含む1次治療±ASCT、長期解析結果(TRIANGLE)/Lancet

 18~65歳の未治療マントル細胞リンパ腫(MCL)患者において、標準的な免疫化学療法へイブルチニブを追加した治療に、自家造血幹細胞移植(ASCT)を追加する意義を検討した「TRIANGLE試験」の長期追跡評価(55ヵ月)の結果が、ドイツ・LMU University HospitalのMartin Dreyling氏らEuropean Mantle Cell Lymphoma Networkによって報告された。イブルチニブ追加療法群は治療成功生存期間(Failure Free Survival:FFS)のみならず全生存期間(OS)の改善との関連も示された。一方で、イブルチニブ追加療法+ASCT群ではASCT追加のベネフィットは示されず、毒性の増加が認められた。TRIANGLE試験の最初の評価報告(追跡期間中央値31ヵ月)では、標準的な1次免疫化学療法へのイブルチニブ追加はFFSを改善することが示されていたが、さらにASCTを追加すべきかどうかについては議論の余地が残っていた(ジャーナル四天王「未治療MCL、免疫化学療法+イブルチニブ±ASCT(TRIANGLE)/Lancet」)。Lancet誌2026年5月16日号掲載の報告。ASCT+免疫化学療法群、ASCT+免疫化学療法+イブルチニブ群、免疫化学療法+イブルチニブ群に無作為化 TRIANGLE試験は、MCLの治療経験がありASCTが実施可能または実施可能施設と連携する欧州13ヵ国およびイスラエルの165施設(2次または3次医療センター)で実施された第III相の3群無作為化非盲検優越性試験。18~65歳、未治療の病期II~IV期でASCTの適応がある患者を、1対1対1の割合で対照群のA群(ASCT+免疫化学療法群)、試験群のA+I群(ASCT+免疫化学療法+イブルチニブ群)またはI群(免疫化学療法+イブルチニブ群)の3群に無作為に割り付け追跡評価した。無作為化は、コンピュータ生成乱数を用いて行われ、研究グループおよびMCL国際予後指数(Mantle Cell Lymphoma International Prognostic Index:MIPI)リスク分類で層別化された。 A群の治療は、R-CHOP(0日目または1日目にリツキシマブ375mg/m2静脈内投与、1日目にシクロホスファミド750mg/m2、1日目にドキソルビシン50mg/m2、1日目にビンクリスチン1.4mg/m2[最大2mgまで]、1~5日目にprednisone 100mg経口投与)と、R-DHAPまたはR-DHAOx(0日目または1日目にリツキシマブ375mg/m2静脈内投与、1~4日目にデキサメタゾン40mg静脈内または経口投与、2日目に高用量シタラビン2×2g/m2を12時間ごと3時間かけて静脈内投与、これらに加えて1日目に24時間かけてシスプラチン100mg/m2を静脈内投与[R-DHAP]または1日目にオキサリプラチン130mg/m2を静脈内投与[R-DHAOx])を21日間ごと交互に6サイクル行われ、その後にASCTを行った。 A+I群では、経口イブルチニブ(1日560mg)がR-CHOPサイクルの1~19日目(導入療法)に追加され、またASCT後に2年間投与された(維持療法)。 I群では、A+I群同様にイブルチニブが投与された(導入療法と維持療法)が、ASCTは行われなかった。 すべての治療群で国際ガイドラインに従い、リツキシマブ維持療法が許容された。 主要アウトカムはFFSで、3つのペアワイズ片側log-rank検定により統計学的にモニタリングされた。主要解析は、すべての無作為化された患者(プロトコール逸脱の有無は不問)を包含したITTにて行われた。安全性は無作為化され、いずれかの治療フェーズを開始した患者を対象に評価した。4年FFS率、イブルチニブ追加療法へのASCT上乗せ効果は示されず 2016年7月29日~2020年12月28日に870例が無作為化された(A群288例、A+I群292例、I群290例)。無作為化された患者の年齢中央値は57歳(四分位範囲:52~61)、男性が662例(76%)であり、病期IV期の患者が757/869例(87%)、MIPI低リスク504/870例(58%)、中程度236/870例(27%)であった。 追跡期間中央値54.9ヵ月(95%信頼区間[CI]:54.4~56.0)後、A+I群のI群に対する優越性は示されなかった。4年FFS率はそれぞれ82%(95%CI:78~87)、81%(76~86)であった(ハザード比[HR]:0.86、片側98.33%CI:0.00~1.27、片側p=0.21)。 一方、A群の4年FFS率は70%(95%CI:65~76)であり、A+I群のA群に対する優越性が認められた(HR:0.63、片側98.33%CI:0.00~0.89、片側p=0.0026)。また、初回評価時同様、A群のI群に対する優越性は認められなかった(HR:1.45、片側98.33%CI:0.00~2.02、片側p=0.99)。 4年OS率は、A+I群88%(95%CI:84~92)vs.A群81%(76~85)(HR:0.59、95%CI:0.38~0.92、p=0.0036)、I群90%(87~94)vs.A群81%(76~85)(HR:0.57、95%CI:0.36~0.90、p=0.0019)であり、両イブルチニブ追加療法群ともに、非追加群と有意な差が認められた。イブルチニブを含む導入・維持療法を新たな標準治療とすべき 維持療法または追跡期間中、最も多くみられたGrade3~5の有害事象は血液およびリンパ系障害で、A+I群で127/234例(54%)報告されたのに対して、I群では74/269例(28%)であり、またA群では56/240例(23%)であった。感染症の発現は、A+I群で80/234例(34%)報告されたのに対して、I群では71/269例(26%)、A群では37/240例(15%)であった。 維持療法または追跡期間中、最も多くみられた死亡に至った有害事象は感染症で、A+I群で4/234例(2%)、I群で5/269例(2%)報告された。 これらの結果を踏まえて著者は、「より若いMCL患者に対して、イブルチニブ+R-CHOP+R-DHAP(またはR-DHAOx)による導入療法後、2年間のイブルチニブ維持療法を新たな標準治療として検討すべきである」と述べている。

40.

未治療尿路上皮がんへのEV+ペムブロリズマブ、3.5年の長期解析結果(EV-302/KEYNOTE-A39)/ASCO2026

 EV-302/KEYNOTE-A39試験の結果に基づき、エンホルツマブ ベドチン(EV)+ペムブロリズマブ併用療法は、未治療の局所進行または転移を有する尿路上皮がんに対する標準治療となっている。英国・Barts Cancer InstituteのThomas Powles氏は、米国臨床腫瘍学会年次総会(2026 ASCO Annual Meeting)で、3.5年時点における同試験のフォローアップ解析結果を発表した。・対象:未治療の局所進行/転移を有する尿路上皮がん患者(GFR≧30mL/分、ECOG PS≦2)・試験群:EV(1.25mg/kg、3週ごと1・8日目に静脈内投与)+ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと1日目に静脈内投与) 442例・対照群:ゲムシタビン+シスプラチン(シスプラチン不適格例ではゲムシタビン+カルボプラチン) 444例・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)による無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)[副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性など・層別因子:シスプラチン適格性、PD-L1発現状況、肝転移の有無 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値42.8ヵ月(データカットオフ:2025年10月6日)時点におけるOS中央値は、試験群33.6ヵ月(95%信頼区間[CI]:26.6~39.8ヵ月)vs.対照群15.9ヵ月(95%CI:13.6~18.3ヵ月)と試験群におけるOSベネフィットが維持されていた(層別ハザード比:0.53、95%CI:0.45~0.63)。・試験群で試験治療後の後治療(全身療法)を受けた割合は39.1%、最も多かったのはプラチナベース化学療法で30.5%を占めた(カルボプラチンベース:16.5%、シスプラチンベース:13.8%)。プラチナベース化学療法開始からのOS中央値は10.9ヵ月、ORRは20.7%であった。・対照群で試験治療後の後治療(全身療法)を受けた割合は68.5%、最も多かったのはPD-(L)1阻害薬で59.7%を占めた(アベルマブ維持療法が30.4%)。・ORRも引き続き試験群で良好であり(試験群67.5%vs.対照群44.2%)、完全奏効(CR)は30.4%vs.14.5%と約2倍の差がみられた。・試験群でCRを達成した133例のうち、45例(試験群全体の10.3%)は初回治療でCRを達成し、88例(同20.1%)は初回治療で部分寛解(PR)達成後、CRに移行した。・試験群におけるCR達成例のベースライン特性をみると、とくに初回治療でのCR達成例は内臓転移が35.6%と少なく(試験群全体:71.9%)、リンパ節転移のみの症例が51.1%と多い傾向がみられた(同:23.3%)。・CR達成例の3.5年OS率は、全体では82.4%、PRからCRへの移行例では83.6%と同等であった。・EVの治療期間中央値は7.1ヵ月で、60.0%が投与中断、43.0%が減量を実施していた。ペムブロリズマブの治療期間中央値は8.5ヵ月であった。・治療期間の延長に伴う、新たな安全性シグナルは認められなかった。累積増加率が最も高かったのは末梢性感覚ニューロパチーで、2年超EV治療を受けた症例の約90%で認められたが、Grade3以上は依然としてまれであった。 Powles氏は、「追跡期間中央値3.5年経過時点において、EV+ペムブロリズマブ併用療法は化学療法と比較して引き続き優れた有効性を示しており、新たな安全性のシグナルは認められなかった」としたうえで、「CR達成例の3分の2はPRから移行しており、アウトカムを最大化するために治療期間が重要であることが示唆された」とまとめている。

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