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高齢者のがん薬物療法GLの改訂ポイント【乳腺】/日本臨床腫瘍学会

 『高齢者のがん薬物療法ガイドライン 改訂第2版』が2026年3月25日に発刊され、第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)のシンポジウムで全17項目のクリニカルクエスチョン(CQ)が解説された。乳腺領域からは、HER2陽性(CQ12)、トリプルネガティブ(CQ13)、ホルモン受容体陽性HER2陰性(CQ14)の高齢者の周術期乳がんの薬物療法に関する計3つのCQが設定された。CQ12 高齢者HER2陽性乳がん周術期治療には、どのような治療が推奨されるか? HER2陽性乳がん術後の標準治療は、化学療法と抗HER2モノクローナル抗体トラスツズマブの併用療法である。しかし、高齢者では治療利益と化学療法やトラスツズマブの忍容性のバランスが問題となるため、化学療法とトラスツズマブの併用、化学療法のみ、トラスツズマブのみ、経過観察など治療選択が割れやすい。本CQでは、高齢者HER2陽性乳がん患者の周術期治療の実臨床における個別化治療と意思決定を支えるため、(1)トラスツズマブ+化学療法、(2)トラスツズマブ単剤、(3)トラスツズマブ+ペルツズマブ+化学療法の3つに分けて評価を行った。(1)トラスツズマブ+化学療法推奨:高齢者HER2陽性乳がん周術期治療には、トラスツズマブ+化学療法を強く推奨する。推奨のタイプ:当該介入の強い推奨エビデンスの強さ:A 4件のランダム化比較試験(RCT)(HERA、BCIRG006、NSABP B-31/N9831統合解析)で、トラスツズマブ+化学療法群は化学療法単独群に比べ、全生存期間(OS)および無病生存期間(DFS)が改善した。これらは高齢者のみを対象とした試験ではないが、60歳以上のサブグループにおいても良好であり、高齢者でも治療利益は大きいと考えられた。トラスツズマブの併用により心不全や心機能低下が有意に増加したが、その多くは可逆的であった。OS・DFSの延長について、トラスツズマブ+化学療法の益は大きく一貫していることから、化学療法単独よりも優れていると評価された。(2)トラスツズマブ単剤推奨:化学療法の忍容性がない場合には、トラスツズマブ単剤が選択肢となりうる。推奨のタイプ:当該介入または比較対照のいずれかについての条件付きの推奨エビデンスの強さ:B わが国で行われた70歳以上の高齢者HER2陽性乳がん患者を対象としたRCT(RESPECT)において、トラスツズマブ単剤群は化学療法併用群と比べ、OS・DFSの非劣性は統計学的に示されなかった。トラスツズマブ単剤群では治療開始12ヵ月においてQOL低下が少なかった。Grade3以上の有害事象は化学療法併用群において有意に多く生じていた。1件のRCTに限られるが日本人高齢者を対象として直接性が高く、結果に対する不確実性は少ないと評価された。(3)トラスツズマブ+ペルツズマブ+化学療法推奨:再発リスクが高く、全身状態良好で化学療法に十分耐えうる状況に限り、トラスツズマブ+ペルツズマブ+化学療法が選択肢となりうる。推奨のタイプ:当該介入または比較対照のいずれかについての条件付きの推奨エビデンスの強さ:C 1件のRCT(APHINITY)において、トラスツズマブ+ペルツズマブ+化学療法群はトラスツズマブ+化学療法群と比べてOSの有意差は認められなかった一方、ペルツズマブ追加により無浸潤疾患生存期間(iDFS)は有意に改善し、とくにリンパ節転移陽性例ではハザード比0.72と良好な上乗せ効果が示された。Grade3以上の有害事象はペルツズマブ追加により6%増加した。下痢によるQOL低下もみられたが、永続的な有害事象ではなかった。1件のRCTに限られ、高齢者に特化した試験ではないが、ペルツズマブによる予後改善が期待でき、かつ十分な忍容性があると判断される患者では検討しうると評価された。CQ13 高齢者の周術期トリプルネガティブ乳がんに対して、免疫チェックポイント阻害薬の使用は推奨されるか?推奨:周術期トリプルネガティブ高齢者乳がんに対して、免疫チェックポイント阻害薬の併用を弱く推奨する。推奨のタイプ:当該介入の条件付きの推奨エビデンスの強さ:C トリプルネガティブ乳がんの周術期標準治療は化学療法であるが、近年では再発高リスク症例に対して免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を併用したレジメンも推奨されている。高齢者では、治療効果と有害事象のバランスが重視されるため、ICIの使用推奨を検討することは臨床的に重要である。そこで本CQでは、高齢者トリプルネガティブ乳がんで、ICIを含む薬物治療を実施した群(介入群)とICIを含まない薬物治療または経過観察の群(対照群)のアウトカムを評価した。OS・DFSを指標とした2件のRCT(KEYNOTE-522、IMpassion031)および関連サブ解析において、OSには有意差を認めなかったが(文献検索期間終了後にOS改善の報告あり)、DFSはKEYNOTE-522では介入群で有意な延長を認め、IMpassion031でも延長傾向が示された。Grade3以上の有害事象の頻度に差はなかった。免疫関連有害事象(irAE)は介入群で増加したが、AE of special interestの定義が異なったため、評価には限界があった。ICI併用による持続的なQOL低下は認めなかった。根拠となる試験には全身状態が良好な高齢者が一部含まれるのみで、高齢者におけるエビデンスは十分ではないと評価された。CQ14 ホルモン受容体陽性HER2陰性高齢者乳がんの術後内分泌療法にアベマシクリブやS-1の併用は推奨されるか? ホルモン受容体陽性HER2陰性乳がん術後の標準治療は内分泌療法であるが、再発リスクが高い場合は追加治療が検討される。近年では内分泌療法にアベマシクリブやS-1を併用する新たな治療戦略が登場している。これらの薬剤は作用機序ならびに治療効果、有害事象のプロファイルが異なることから、本CQでは(1)内分泌療法+アベマシクリブ、(2)内分泌療法+S-1に分けて、それぞれを内分泌療法単独と比較した。(1)アベマシクリブ推奨:ホルモン受容体陽性HER2陰性高齢者乳がんの術後内分泌療法として、再発リスクが高く治療に耐えうる状況に限り、アベマシクリブが選択肢となりうる。推奨のタイプ:当該介入または比較対照のいずれかについての条件付きの推奨エビデンスの強さ:C 1件のRCT(monarchE)において、内分泌療法+アベマシクリブ群は内分泌療法のみの群と比べてOSの有意差は認められなかった(文献検索期間終了後にOS改善の報告あり)が、iDFSはアベマシクリブ追加により有意に改善した。Grade3以上の有害事象は併用群で増加した。下痢などは高齢者で問題となりやすく、休薬・減量を含めた管理を要した。本試験は高齢者に特化したものではないが、アベマシクリブ併用による再発抑制効果は示される一方、有害事象増加にも留意が必要であり、高齢者への適用は個別に判断すべきと評価された。(2)S-1推奨:再発高リスクホルモン受容体陽性HER2陰性高齢者乳がんの術後内分泌療法へのS-1併用は、患者の全身状態やリスク・ベネフィットを総合的に考慮したうえで行うことが望ましい。推奨のタイプ:当該介入または比較対照のいずれかについての条件付きの推奨エビデンスの強さ:C 1件のRCT(POTENT)において、内分泌療法+S-1群は内分泌療法のみの群と比べてOSの有意差は認められなかったが、iDFSはS-1追加により有意に改善した。Grade3以上の有害事象は併用群で好中球減少(8%)、下痢(2%)などが報告された。1件のRCTに限られ、かつ高齢者に特化した試験ではないという限界を有するもののS-1併用による再発抑制効果は示唆されている一方、毒性増加のリスクもあることから高齢者に対する適用は個別に判断すべきと考えられた。

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EGFR変異NSCLC、アミバンタマブ皮下注+ラゼルチニブの日本人解析結果(PALOMA-3)/日本臨床腫瘍学会

 EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)において、アミバンタマブ皮下注製剤(商品名:リブロファズ)+ラゼルチニブ(同:ラズクルーズ)の併用療法は、アミバンタマブ静脈内投与製剤(同:ライブリバント)+ラゼルチニブと一貫した有効性を示し、Infusion-Related Reaction(IRR)の発現率を低減させることが、国際共同第III相試験「PALOMA-3試験」で示されている1)。本試験の日本人集団の解析結果について、田宮 基裕氏(大阪国際がんセンター)が第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)で報告した。本解析において、アミバンタマブ皮下注製剤は日本人集団でも全体集団と一貫した臨床的有益性を示すことが示唆された。なお、アミバンタマブ皮下注製剤は2026年3月18日に薬価収載され、同日に発売されている。・試験デザイン:国際共同第III相非盲検無作為化比較試験・対象:EGFR変異陽性(exon19欠失またはL858R)で、オシメルチニブ+プラチナ製剤を含む化学療法後に進行したNSCLC患者・試験群(SC群、206例):アミバンタマブ皮下投与(体重に応じ1,600mgまたは2,240mg、最初の4週間は週1回、それ以降は隔週)+ラゼルチニブ経口投与(240mg、1日1回)・対照群(IV群、212例):アミバンタマブ静脈内投与(体重に応じ1,050mgまたは1,400mg、最初の4週間は週1回、それ以降は隔週)+ラゼルチニブ経口投与(240mg、1日1回)・評価項目:[主要評価項目]2サイクル目1日目もしくは4サイクル目1日目のトラフ濃度、1~15日目の血中濃度曲線下面積[副次評価項目]奏効割合(ORR)、無増悪生存期間(PFS)、患者満足度、安全性など[探索的評価項目]全生存期間(OS)など 今回は、日本人集団56例(SC群26例、IV群30例)の解析結果が報告された。主な結果は以下のとおり。・年齢中央値はSC群70歳、IV群63歳であった。ECOG PS0の割合はそれぞれ62%、27%であり、SC群が高かった。脳転移歴を有する割合はそれぞれ46%、23%であり、こちらもSC群が高かった。・日本人集団の薬物動態パラメータは、全体集団と同様であった。・ORRはSC群39%、IV群30%であった。なお、データカットオフ時点において、奏効例では死亡および病勢進行イベントは認められていなかった。・PFS中央値はSC群未到達、IV群4.5ヵ月であった(ハザード比[HR]:0.44、95%信頼区間[CI]:0.18~1.10)。・OS中央値はSC群未到達、IV群8.8ヵ月であった(HR:0.14、95%CI:0.02~1.17)。1年OS率はそれぞれ96%、48%であった。・Grade3以上の有害事象の発現割合はSC群42%、IV群70%であった。投与中止に至った有害事象の発現割合はそれぞれ15%、20%であった。・SC群におけるIRRの発現率は15%であり、IV群の60%と比較して低減した。・静脈血栓塞栓症(VTE)の発現割合はSC群12%、IV群17%であった。なお、SC群のVTEは、予防的抗凝固薬の投与を受けていない患者のみに発現した。 本結果について、田宮氏は「EGFR遺伝子変異陽性の進行NSCLC日本人患者において、アミバンタマブ皮下注製剤+ラゼルチニブが、より有望な治療選択肢となることを支持するものである」とまとめた。 また、SC群ではIRRの発現が低減した一方で、皮膚障害は低減しなかったことについて問われ、これに対して同氏は「皮下投与では薬剤の吸収が緩やかであり、ピーク濃度は低くなる。このことにより、SC群でIRRの発現が低減した可能性がある。一方で、皮膚障害には、組織における薬剤濃度が関係していると考えられる。体内の薬剤濃度はSC群のほうが安定して高い濃度を維持している可能性があり、このことから皮膚毒性や低アルブミン血症はSC群で多い傾向にあったのではないか」と見解を述べた。

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高齢者のがん薬物療法GLの改訂ポイント【総論・造血器】/日本臨床腫瘍学会

 『高齢者のがん薬物療法ガイドライン 改訂第2版』が2026年3月25日に発刊され、第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)のシンポジウムで全17項目のクリニカルクエスチョン(CQ)が解説された。 本ガイドラインは、2019年の初版以降に蓄積されたエビデンスを踏まえ改訂された。「Minds診療ガイドライン作成マニュアル2020」に準拠し、新規CQの追加や対象領域の拡張を行った。今回の改訂では新たに「Evidence to Decision(EtD)フレームワーク」が導入された点が大きな特徴である。これにより、エビデンスの確実性だけでなく、益と害のバランス、患者の価値観、実行可能性など多面的な要素を考慮した推奨決定のプロセスが可視化された。 総論からは「がん薬物療法を考慮している高齢がん患者に対して、高齢者機能評価とそれに基づくマネジメントの実施は推奨されるか?」「がん薬物療法を考慮している高齢がん患者のがん薬物療法の選択に、高齢者機能評価は推奨されるか?」、造血器からは「初発高齢者びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の治療方針の判断に高齢者機能評価は有用か?」「80歳以上の初発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に対してドキソルビシンを含む薬物療法は推奨されるか?」が設定された。総論 Geriatric Assessment(GA:高齢者機能評価)により患者の脆弱性を多面的に評価し、その結果に基づく介入により重篤な毒性の軽減やQOLの改善の可能性が示されている。しかし、初版の総論では以下の2つのCQが並立しており、患者アウトカムを目的としたGAは提案される一方、治療方針を判断する目的のGAは過少治療による不利益の可能性から推奨されていなかった。 (旧)CQ1 高齢がん患者において、がん薬物療法の適応を判断する方法として、高齢者機能評価を実施することを提案する。 (旧)CQ2 高齢者びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対して、治療方針の判断には高齢者機能評価を使わないことを提案する。 今回の改訂では、QOLや機能に関わるアウトカムと腫瘍関連アウトカムという視点別に、CQ1-1とCQ1-2に分けて包括的なメッセージを示す構成へと再編した。CQ1-1 がん薬物療法を考慮している高齢がん患者に対して、高齢者機能評価とそれに基づくマネジメントの実施は推奨されるか?推奨:高齢がん患者に対して、がん薬物療法を考慮する際には、高齢者機能評価およびその結果に基づくマネジメントを実施することを弱く推奨する。推奨のタイプ:当該介入の条件付きの推奨エビデンスの強さ:C 本CQでは、がん薬物療法の適応が考慮されている高齢者に対し、GAとその結果に基づくマネジメントを受けた群(介入群)と受けなかった群(対照群)の患者中心アウトカムを評価した。8件のランダム化比較試験(RCT)を主なエビデンスとして評価を行った。GAとその結果に基づくマネジメントにより、QOLの維持・改善、医師とのコミュニケーション、患者満足度について有意な改善が報告された。介入群では対照群と比較して、一貫してGrade3以上の有害事象の有意な減少傾向を認め、統合解析でも有意な結果であった。重篤な毒性の有意な低下は臨床的に意味が大きく、QOLや満足度など患者中心アウトカムも良好な一方、有害な影響を示す根拠は乏しいと評価された。CQ1-2 がん薬物療法を考慮している高齢がん患者のがん薬物療法の選択に、高齢者機能評価は推奨されるか?推奨:がん薬物療法を考慮している高齢がん患者のがん薬物療法の選択に、高齢者機能評価を実施することを弱く推奨する。推奨のタイプ:当該介入の条件付きの推奨エビデンスの強さ:C 本CQでは、がん薬物療法の適応が考慮されている高齢者に対し、GAに基づく治療決定を受けた群(介入群)と受けなかった群(対照群)の腫瘍関連アウトカムを評価した。7件のRCTおよび4件の前向き観察研究をもとに評価した。全生存期間(OS)・無増悪生存期間(PFS)・奏効率のいずれも介入群と対照群で有意差を認めなかったものの、介入群では一貫してGrade3以上の有害事象の減少傾向を認め、統合解析でも有意な結果だった。腫瘍関連アウトカムの改善は認めなかったもののOSの明らかな増悪は認めず、毒性低減という臨床的意義を示したと評価された。造血器CQ2 初発高齢者びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の治療方針の判断に高齢者機能評価は有用か?推奨:初発高齢者びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の治療方針の判断に高齢者機能評価を行うことを弱く推奨する。推奨のタイプ:当該介入の条件付きの推奨エビデンスの強さ:C DLBCLは発症年齢中央値が約70歳であり、高齢患者が多数を占めている。R-CHOP療法などの標準化学療法により治癒が期待できるが、高齢者には毒性が高く、暦年齢やパフォーマンスステータス(PS)のみでは個体差を正確に評価することが困難である。個人の予備能をより正確に見極めるためにGAの重要性が認識されている。本CQでは、初発高齢者DLBCLを対象に、GAが良好な群(介入群)と不良な群(対照群)のアウトカムについて、GAの有無による直接比較ではなく、EtDフレームワークを用いてGAによって層別化された群で比較して総合的な評価が行われた。文献検索の結果、RCTは該当しなかったが、前向きおよび後ろ向きの観察研究21件が抽出された。GAが良好な群ではOSが優れており、標準治療の適用によって若年者と同程度の治療アウトカムが期待できることが示された。標準治療による有害事象は一定頻度で生じるが適切な対策で完遂可能である一方、GAが不良な群では毒性が重篤化する懸念がある。観察研究のみのためエビデンスの強さは「C(弱い)」に留まると評価されたが、得られる臨床的利益の大きさから、総合的な効果のバランスはGA実施を強く支持している。CQ3 80歳以上の初発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に対してドキソルビシンを含む薬物療法は推奨されるか?推奨:80歳以上の初発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に対してドキソルビシンを含む薬物療法を行うことを弱く推奨する。ただし、ドキソルビシンのdose intensityを考慮する必要がある。推奨のタイプ:当該介入の条件付きの推奨エビデンスの強さ:C DLBCLは標準治療であるR-CHOP療法により、半数程度の治癒が見込まれる。しかし、ドキソルビシンは心毒性が問題となり、心疾患の併存が多い高齢者では、血液毒性や粘膜障害のリスクも相まって使用が躊躇されることがある。そこで本CQでは、80歳以上の未治療DLBCL(日本人含む)を対象に、ドキソルビシンを含むレジメン(R-CHOP、R-miniCHOP、R-THP-COPなど[介入群])とドキソルビシンを含まないレジメン(R-CVP、R-benda、ステロイド単剤、支持療法など[対照群])のアウトカムを評価した。文献検索の結果、ドキソルビシンの有無を直接比較したRCTは該当せず、12件の前向き・後ろ向き観察研究などが採用された。介入群の2年OS率は60〜70%、2年PFS率は50〜60%と良好で、対照群と比較して一貫して優れた治療効果が示された。ドキソルビシンを50%程度に減量した介入研究では、心毒性が2〜5%、治療関連死亡が0〜5%と許容範囲に収まっていた。しかし、通常量を投与した観察研究では、治療関連死亡が20%に達するという報告もあり、投与量に配慮が必要と評価された。

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既治療EGFR変異NSCLCにおけるsacituzumab tirumotecanのOS最終結果(OptiTROP-Lung03)/ELCC2026

 既治療のEGFR陽性非小細胞肺がん(NSCLC)においてsacituzumab tirumotecan(sac-TMT)が持続した全生存期間(OS)の改善を示した。sac-TMTはTROP2を標的とした抗体薬物複合体(ADC)である。独自のリンカーでトポイソメラーゼI阻害薬belotecanの腫瘍細胞への送達を最大化する。すでに第II相OptiTROP-Lung03試験で、既治療のEGFR陽性NSCLCに対する有意な無増悪生存期間(PFS)およびOSの改善が報告されている1)。欧州肺がん学会(ELCC2026)では、中国・中山大学がんセンターのYunpeng Yang氏がOptiTROP-Lung03試験の最終OS解析を紹介した。・対象:EGFR-TKIとプラチナベース化学療法の併用または逐次療法で進行した非扁平上皮EGFR陽性(19-DelまたはL858R)NSCLC・試験群:sac-TMT 5mg/kg 2週ごと(sac-TMT群)・対照群:ドセタキセル75mg/m2 3週ごと(ドセタキセル群)・評価項目:[主要評価項目]奏効率(ORR)[副次評価項目]PFS、OS、奏効期間(DoR)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・追跡23.8ヵ月のPFS中央値は、sac-TMT群7.9ヵ月、ドセタキセル群2.8ヵ月であった(ハザード比[HR]:0.23、95%信頼区間[CI]:0.15~0.35)。・OS中央値はsac-TMT群20.0ヵ月、ドセタキセル群13.5ヵ月であった(HR:0.63、95%CI:0.40~0.98)。・ドセタキセル群の患者の41%がsac-TMTにクロスオーバーした。・クロスオーバー調整後のOS中央値はsac-TMT群20.0ヵ月に対し、ドセタキセル群は11.2ヵ月で、sac-TMT群の優越性はより強く表れた(HR:0.45、95%CI:0.28~0.73)。・全Gradeの治療関連有害事象(TRAE)発現割合は両群とも97.8%であった。Grade3以上のTRAEはsac-TMT群60.4%、ドセタキセル群73.9%で発現した。・主たるTRAEは両群とも血液毒性であった。・間質性肺疾患の発現は両群とも2.2%の発現であった。・sac-TMT群では治療中止または死亡に至ったTRAEは認められなかった。 本試験の結果は、「既治療のEGFR変異NSCLCに対する有望かつ新たな治療選択肢として、sac-TMTの重要性を強調するものである」と Yang氏は結んだ。 sac-TMTはOptiTROP-Lung04試験の結果2)に基づき、EGFR-TKI不応後のEGFR変異NSCLCに対して中国で承認された。

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肺がんのICIの投与のベストタイミングは午前か午後か(i-TIMES)/ELCC2026

 非小細胞肺がん(NSCLC)および小細胞肺がん(SCLC)における免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の投与タイミングについてスイス・ローザンヌ大学のSolange Peters氏が欧州肺がん学会(ELCC2026)で発表。午後投与は午前投与に対する非劣性を示した。 ICIの治療効果に、概日リズム(サーカディアンリズム)が与える影響については、長年議論されてきた。近年、ICIの抗腫瘍効果について、遅時間帯投与に比べ早時間帯投与で 臨床結果 が改善するという研究が、後ろ向き研究やメタアナリシスで示されている1-3)。しかし、現時点では、ほとんどのエビデンスは後方視的研究である。肺がんにおいては、第III相無作為化試験で早時間帯投与による生存改善が示された4)。しかし、同研究はプロトコールの不一致が指摘されるなど、さらなる検証が必要とされているという。 そのような背景から、ETOP(欧州胸部腫瘍プラットフォーム)とロシュによる共同研究であるi-TIMES試験が行われた。 同研究は、個々の患者データ(IPD)を用いた後方視的なマッチド・コホート患者レベル・メタ解析で、目的は午前投与に対する午後投与の非劣性評価である。解析対象となった試験は、ICI(アテゾリズマブ)対化学療法を無作為で比較したロシュ提供の第II/III相無作為化臨床試験(計8試験)である。マッチングされた患者は、ICIの投与タイミングによって、午前投与群と午後投与群に分類された。主要評価項目は全生存期間である。午前投与に対する午後投与の非劣性の限界値として、ハザード比(HR)の95%信頼区間(CI)上限を1.18に設定した。 主な結果は以下のとおり。・ 8つの試験から3,060例を分析、最終的なマッチング解析コホートは1,550例となった。・全体の32%が午後投与、41%が午前投与、28%は午前と午後が混在していた。解析には午前投与と午後投与だけが用いられている。・主要評価項目である全生存期間(OS)中央値は、午前投与群で17.3ヵ月、午後投与群では16.0ヵ月あった。午前投与に対する午後投与のOSのHRは1.039、95%CIは0.925~1.168であった。95%CIの上限は、事前に設定された非劣性限界1.18を下回り、午後投与の非劣性が示されている。・非マッチングの解析によるOS中央値では、午前投与18.5ヵ月、午後投与15.7ヵ月。HRは1.088で95%CIは0.982~1.207と、午後投与の非劣性は示されなかった。 Peters氏は「i-TIMES試験では、ICIの投与タイミングが治療効果の重要な決定要因となる可能性は低いという結果を示した。これにより、各施設の状況に応じた柔軟で実用的な治療スケジュールの設定によって、臨床アウトカムを損なうことなく治療が可能であることを示唆している」と結んだ。

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体内CAR-T細胞生成による多発性骨髄腫治療、ESO-T01の第I相試験結果/Nat Med

 体内でのCAR-T細胞の生成は、体外培養やリンパ球除去を省略できるため、細胞療法へのアクセスを簡素化・迅速化する可能性がある。今回、再発・難治性多発性骨髄腫の成人患者を対象に、体内でCAR-T細胞を生成するレンチウイルスベクターであるESO-T01の安全性と忍容性を評価した第I相試験の結果を、中国・Huazhong University of Science and TechnologyのNing An氏らがNature Medicine誌オンライン版2026年3月25日号に報告した。 ESO-T01は、ナノボディ指向性の免疫遮蔽レンチウイルスベクターで、ヒト化抗B細胞成熟抗原(BCMA)CARをコードしている。本試験では、白血球アフェレーシス、体外培養、リンパ球除去化学療法を実施せずに、0.2×109形質導入単位を静脈内に単回投与した。前治療歴の多い男性患者5例(治療ライン中央値:3)が連続して登録され、追跡期間中央値は6.0ヵ月であった。主要評価項目は安全性、忍容性、副次評価項目は有効性、薬物動態、薬力学などであった。 主な結果は以下のとおり。・全例でGrade3以上の有害事象が認められた。・サイトカイン放出症候群が4例(Grade3が3例、Geade2が1例)に認められ、副腎皮質ステロイド、トシリズマブ、支持療法で管理された。・最も多かった毒性は一過性の血球減少および可逆的な肝酵素値の上昇で、Grade2の感染症が3例に認められた。・Grade1の免疫エフェクター細胞関連神経毒性が1例に認められ、骨髄外病変に関連する脊髄圧迫により死亡した。・5例中4例で奏効が得られ、うち3例は厳格な完全寛解であった。・評価可能な奏効例(4例)すべてで、60日目までに微小残存病変陰性(10-5)が確認された。

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胃がん周術期、デュルバルマブ+FLOTは日本人でも有効性を再現(MATTERHORN)/日本臨床腫瘍学会

 MATTERHORN試験は、切除可能な胃がん/胃食道接合部がん患者を対象に、周術期のデュルバルマブ+FLOT(フルオロウラシル、ロイコボリン、オキサリプラチン、ドセタキセル)療法の有用性を検討した試験である。昨年の米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)で、デュルバルマブ+FLOT群がプラセボ+FLOT群と比較して無イベント生存期間(EFS)、病理学的完全奏効(pCR)、全生存期間(OS)を有意に改善したことが報告され、欧米の多くの国ではすでに標準治療となっている。第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)のPresidential Sessionで愛知県がんセンターの室 圭氏が本試験の日本人集団の結果を報告した。・国際共同二重盲検ランダム化第III相試験・対象:切除可能なStageII~IVA期局所進行胃がん/食道胃接合部がん 948例・試験群:術前FLOT(2サイクル)+デュルバルマブ1500mgを併用、術後FLOT(2サイクル)+デュルバルマブ、その後デュルバルマブ単剤を最大10サイクル(D+FLOT群)474例・対照群:デュルバルマブに代えてプラセボ投与(FLOT群)474例・評価項目:[主要評価項目]EFS[副次評価項目]OS、pCR、安全性など・データカットオフ:2024年12月20日 既報の主要な結果は以下のとおり。・D+FLOT群はFLOT群と比較して、統計学的に有意なEFSの改善を示した(ハザード比[HR]:0.71、95%信頼区間[CI]:0.58~0.86)。・EFS中央値はD+FLOT群は未到達(95%CI:40.7~未到達)、FLOT群で32.8ヵ月(95%CI:27.9~未到達)だった。2年EFS率は、D+FLOTでFLOT群よりも高かった(67%対59%)。・OS中央値は、両群とも未到達であった(HR:0.78、95%CI:0.63~0.96、p=0.025)。・pCR率はD+FLOT群で19.2%、FLOT群で7.2%だった。・Grade3/4の有害事象の発現率は両群で類似していた。 日本人集団の解析結果は以下のとおり。・全体集団の20%がアジア人で、うち日本人は86例(D+FLOT群:40例、FLOT群:46例)だった。それぞれ38例対42例が手術を完了し、35例対39例がD+FLOT群およびFLOT群で補助療法を開始した。・全体集団同様に、D+FLOT群はFLOT群と比較してEFSを改善(HR:0.32、95%CI:0.13~0.72)し、24ヵ月EFS率はD+FLOT群で84.1%、FLOT群で54.5%であった。EFS改善は年齢、PD-L1発現率などいずれのサブグループでも共通していた。・pCRは、D+FLOT群で17.5%、FLOT群で6.5%であった(オッズ比:2.98、95%CI:0.71~12.43)。・OSも、D+FLOT群がFLOT群に比べて改善した(ハザード比:0.25、95%CI:0.08~0.63)。・Grade3/4の有害事象はD+FLOT群の85%、FLOTの84.8%で報告された。最も頻度の高いのは好中球減少症(好中球数減少含む)であり、両群で発現率は同程度であった(75.0%対73.9%)。 室氏は「日本人患者における有効性および安全性の結果は全体集団と一致していた。D+FLOT群はFLOT群と比較してEFS、pCR、OSを改善し、安全性のプロファイルは各薬剤と一致していた」とまとめた。 本発表のディスカッサントを務めた国立がん研究センター東病院の坂東 英明氏は「現在の日本の『胃癌治療ガイドライン2025年版』では、“切除可能な進行胃がん・食道胃接合部がんに対する術前補助化学療法については明確な推奨ができない”とされており、本レジメンを臨床導入するにあたってはガイドライン改訂の議論が必要になるだろう。日本国内の多くの施設ではFLOT療法に関する経験が限られているが、日本人サブグループ解析の結果はこのレジメンが十分に管理可能であり、有効性もきわめて高いことを示唆している」とした。 これを受けて室氏は「FLOTの毒性について懸念の声が多いが、予防的にG-CSF製剤を使うことで十分に管理可能だと考える。すでに食道がんで使われているDCF療法のほうが毒性の強いレジメンであり、がん診療連携拠点病院であればFLOTは問題なく投与・管理できるはずだ。胃がん術前療法は各国で異なるレジメンが使われているのが問題だったが、今回の結果を基にD-FLOTに統一されていくことが望ましいと考える。私見になるが、日本人集団のEFSの成績が全体集団より良好だったのは、日本の優れた手術と適切な周術期管理が一因だと考える。日本においても胃がん周術期療法が早期に普及することを期待している」とした。

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KRAS p.G12D変異あり既治療進行固形がん、setidegrasibの安全性確認/NEJM

 KRAS p.G12D変異を有する既治療進行非小細胞肺がん(NSCLC)および膵管腺がん(PDAC)の患者において、開発中のsetidegrasib(KRAS G12D変異体を標的とするファーストインクラスの標的タンパク質分解誘導薬)は抗腫瘍活性を示し、治療中止に至った有害事象の発現は低頻度であったことが、米国・Memorial Sloan Kettering Cancer CenterのWungki Park氏らによる、第I相試験の結果で報告された。KRAS p.G12D変異は、NSCLC患者の5%にみられる。PDAC患者では40%にみられ、最も頻度の高い変異型であるが、KRAS p.G12D変異を標的とする承認薬は現状では存在していない。NEJM誌オンライン版2026年3月25日号掲載の報告。5ヵ国28施設で、NSCLCおよびPDAC患者を対象に実施 研究グループは、KRAS p.G12D変異を有する既治療の進行固形がん患者において、setidegrasibの安全性、薬物動態、薬力学、および抗腫瘍活性を評価する国際共同非盲検多施設共同第I相試験(用量漸増コホートおよび用量拡大コホートを含む)を実施した。setidegrasibは、10~800mgの用量で週1回静脈内投与された。 本試験の主要目的は、安全性プロファイル(主要評価項目とした用量制限毒性および有害事象)の評価、および第II相の試験用量を確定することであった。 2022年6月21日~2025年4月24日に、日本を含む5ヵ国28施設で203例(NSCLC 59例、PDAC 124例、その他固形がん20例)が登録された。2025年10月9日(安全性評価のデータのカットオフ日)時点で、計24例(NSCLC 20例、PDAC 4例)が治療を継続していた。治療中止の理由としては病勢進行が最も多かった(152/179例[85%])。第II相の推奨試験用量は600mg、Grade3以上の有害事象の発現は42% 安全性、薬物動態、薬力学および有効性の解析に基づき、第II相の推奨試験用量として選択されたのは、76例(NSCLC 45例、PDAC 31例)が受けていた週1回600mg静脈内投与であった。76例の年齢中央値は、NSCLC群68歳(範囲:36~81)、PDAC群65歳(36~79)であり、NSCLC群の30%、PDAC群の57%がアジア人であった。前治療ライン数中央値は、両群とも2(範囲:1~5)であった。前治療として、NSCLC群の93%がプラチナベース化学療法+免疫チェックポイント阻害薬を、PDAC群では84%がゲムシタビン+パクリタキセルまたはnab-パクリタキセルを、52%がmFOLFIRINOXを受けていた。 週1回600mg静脈内投与された76例の安全性解析の結果、Grade3以上の有害事象は32例(42%)に発現した。治療関連有害事象は71例(93%)で報告され、最も多くみられたのは注入に伴う反応(80%)および悪心(30%)であった。治療中止に至った有害事象は2例であった。 600mgの投与を受けたNSCLC患者45例において、36%(95%信頼区間[CI]:22~51)が部分奏効を示し、無増悪生存期間(PFS)中央値は8.3ヵ月(95%CI:4.1~推定不能)、推定12ヵ月全生存率は59%(95%CI:40~74)であった。 2次治療または3次治療として600mgの投与を受けた転移のあるPDAC患者21例(うち67%が3次治療)において、24%(95%CI:8~47)で部分奏効が認められ、PFS中央値は3.0ヵ月(95%CI:1.4~6.9)、全生存期間中央値は10.3ヵ月(95%CI:4.2~13.0)であった。

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HER2陽性乳がんの新規経口薬「ツカイザ錠50mg/150mg」【最新!DI情報】第60回

HER2陽性乳がんの新規経口薬「ツカイザ錠50mg/150mg」今回は、HER2チロシンキナーゼ阻害薬「ツカチニブ(商品名:ツカイザ錠50mg/150mg、製造販売元:ファイザー)」を紹介します。本剤は、化学療法歴のあるHER2陽性の手術不能または再発乳がんの治療薬であり、抗HER2療法に抵抗性を示した患者や脳転移のある患者の新たな治療選択肢として期待されています。<効能・効果>化学療法歴のあるHER2陽性の手術不能または再発乳がんの適応で、2026年2月19日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>トラスツズマブ(遺伝子組換え)およびカペシタビンとの併用において、通常、成人にはツカチニブとして1回300mgを1日2回経口投与します。なお、患者の状態により適宜減量します。<安全性>重大な副作用として、重度の下痢(10.6%)、肝機能障害(高ビリルビン血症[21.9%]、AST増加[20.0%]、ALT増加[20.0%])、間質性肺疾患(頻度不明)があります。その他の副作用(5%以上のもの)として、下痢(72.6%)、手足症候群(64.9%)、悪心(52.1%)、疲労(36.0%)、口内炎(26.8%)、嘔吐(25.3%)、食欲減退(20.9%)、感染症(眼、耳、上咽頭、上気道、気管支、皮膚、爪、爪床、尿路、膣、限局性)、貧血、好中球減少症、白血球減少症、血小板減少症、低カリウム血症、末梢性ニューロパチー(末梢性運動ニューロパチー、末梢性感覚ニューロパチー)、味覚障害(味覚不全)、頭痛、鼻出血、腹痛、消化不良、口腔障害(口腔内出血、口腔内痛、口腔内不快感、口内乾燥)、爪の障害(爪甲脱落症、爪甲剥離症、爪線状隆起、爪破損、陥入爪、爪変色、爪ジストロフィー、爪痛、爪毒性)、皮膚乾燥、皮膚色素過剰、爪囲炎、そう痒症、脱毛症、斑状丘疹状皮疹、筋骨格痛(筋肉痛、骨痛、関節痛、顎痛、頚部痛、胸痛、背部痛、四肢痛)、血中クレアチニン増加、無力症、体重減少(いずれも5%以上)があります。<患者さんへの指導例>1.この薬は、HER2チロシンキナーゼ阻害薬であり、化学療法歴のあるHER2陽性の手術不能または再発乳がんに用いられます。2.トラスツズマブ(遺伝子組換え)およびカペシタビンと併用して使用されます。3.咳、息切れ、息苦しさ、発熱などが現れた場合は、速やかに医療機関を受診してください。4.妊婦または妊娠している可能性のある人は医師に相談してください。5.妊娠する可能性のある女性は、この薬の投与期間中および最終投与後1週間は適切に避妊してください。<ここがポイント!>乳がんは、日本人女性において最も発生頻度の高いがんであり、そのうちHER2陽性乳がんは全体の約15~20%を占めています。HER2陽性乳がんは、HER2陰性乳がんと比較して、診断時に進行した病期で発見されることが多く、若年者に多く認められるほか、進行が速く、転移や再発のリスクが高いことが知られています。HER2は膜貫通性のチロシンキナーゼ受容体であり、その過剰発現や遺伝子増幅は腫瘍細胞の増殖を促進する重要な因子です。近年、抗HER2抗体薬やチロシンキナーゼ阻害薬などHER2を標的とした医薬品の開発により、HER2陽性乳がんの予後は大きく改善されました。しかしながら、多くの症例において抗HER2療法後に疾患の進行(PD)を認め、進行後の標準的な治療戦略はいまだ確立されていないのが現状です。ツカチニブエタノール付加物は、HER2を選択的に阻害する低分子チロシンキナーゼ阻害薬です。本剤は、HER2チロシンキナーゼのリン酸化を選択的かつ可逆的に阻害することで、腫瘍細胞の増殖・生存に関与する下流のシグナル伝達経路を抑制すると考えられています。化学療法歴のあるHER2陽性の手術不能または再発乳がんを適応症とし、既存の抗HER2療法に抵抗性を示す患者や脳転移を有する患者に対する新たな治療選択肢となります。本剤は、トラスツズマブおよびカペシタビンと併用して使用します。治療歴のある切除不能な局所進行または転移・再発HER2陽性乳がん患者を対象とした海外第II相試験(HER2CLIMB:ONT-380-206試験[カペシタビンとトラスツズマブを併用、脳転移がある患者を含む])において、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)の中央値は、本剤群7.8ヵ月(95%信頼区間[CI]:7.5~9.6)、対照群5.6ヵ月(95%CI:4.2~7.1)であり、本剤群では対照群と比較してPFSが延長し、統計的に有意にPDまたは死亡のリスクが46%減少しました(層別ハザード比:0.54[95%CI:0.42~0.71]、p<0.00001[有意水準(両側):0.05])。また、治療歴のある切除不能な局所進行または転移・再発HER2陽性乳がん患者66例(日本人患者53例)を対象とした国際共同第II相試験(HER2CLIMB-03:MK-7119-001試験[カペシタビンとトラスツズマブを併用])において、主要評価項目である日本人集団の奏効率は35.4%(90%CI:24.0~48.3)で、90%CIの下限が事前に規定した閾値である20%を上回っていたことから帰無仮説は棄却され、日本人に対する本剤+トラスツズマブ+カペシタビン併用療法の有効性が示されました。

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KRAS G12C変異陽性大腸がん、ソトラシブ+パニツムマブのアジア人・長期の有用性(CodeBreaK 300/101)/日本臨床腫瘍学会

 既治療のKRAS G12C変異陽性の転移大腸がん(mCRC)において、選択的KRAS G12C阻害薬ソトラシブと抗EGFR抗体パニツムマブの併用療法は、第III相CodeBreaK 300試験および第Ib相CodeBreaK 101試験において有用性が示され、すでに米国と日本において承認されている。今回、本レジメンのアジア人に対する有用性と、長期にわたる臨床的ベネフィットが確認された。第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO 2026)において九州がんセンターの江崎 泰斗氏がアジア人サブグループ解析の結果を、国立がん研究センター東病院の久保木 恭利氏が両試験を統合した長期生存解析の結果を報告した。 江崎氏らは、ソトラシブ960mg(連日)+パニツムマブ6mg/kg(2週間ごと)の投与を受けた両試験のアジア人15例(アジア人群)とその他地域の参加者(その他群)78例を対象に、有効性と安全性を比較する事後解析を実施した。試験デザインは、CodeBreaK 300試験が治療歴を有するKRAS G12C変異陽性mCRC患者を対象にソトラシブ+パニツムマブと既存治療を比較したランダム化試験であり、CodeBreaK 101試験が用量探索と有効性、安全性を評価した多施設共同試験である。評価項目には、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、奏効率(ORR)、安全性が含まれた。 主な結果は以下のとおり。・ORRはアジア人群で33%(95%信頼区間[CI]:12~62)、その他群で29%(95%CI:20~41)であり、アジア人においても高い奏効が示された。・病勢コントロール率(DCR)はアジア人群で87%(95%CI:60~98)、その他群で79%(95%CI:69~88)であった。・PFS中央値はアジア人群で8.3ヵ月(95%CI:2.8~推定不能)、その他群で5.7ヵ月(95%CI:4.2~7.4)であった。・OS中央値はアジア人群で15.2ヵ月(95%CI:8.7~推定不能)、その他群で12.6ヵ月(95%CI:10.7~18.4)であった。・Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)の発現率はアジア人群で20%、その他群で39%であり、アジア人において低い傾向が認められた。アジア人群における主なTRAE(20%以上)は、ざ瘡様皮膚(53%)、発疹(40%)、低マグネシウム血症(33%)、下痢(27%)であった。 久保木氏らは、両試験においてソトラシブ+パニツムマブによる治療を受けた患者93例を対象に、2年OS、後治療、安全性の解析を行った。CodeBreaK 300試験の追跡期間中央値は28ヵ月、CodeBreaK 101試験は38ヵ月だった。 主な結果は以下のとおり。・統合解析におけるOS中央値は13.2ヵ月(95%CI:10.8~15.2)であり、既存の標準治療であるトリフルリジン・チピラシルやレゴラフェニブと比較して臨床的に意義のある改善が示された。・2年OS率は23%(95%CI:14.5~32.3)で、生存曲線は後方でプラトーを形成しており、一部の患者で長期生存が得られる可能性が示唆された。・長期フォローアップにおいても新たな安全性の懸念は認められず、毒性は管理可能であった。・後治療を受けた患者は53%であり、患者の3分の1は、試験終了後にトリフルリジン・チピラシルまたはレゴラフェニブを投与された。 江崎氏は「以上の結果から、ソトラシブ+パニツムマブ併用療法は、アジア人を含むKRAS G12C変異陽性の既治療mCRC患者に対して、一貫して良好な有効性と安全性を示すことが確認された」。久保木氏は「本レジメンは長期にわたって有用であり、化学療法抵抗性KRAS G12C変異大腸がん患者における標準治療としての位置付けが確認された。現在、本レジメンの1次治療としての有効性を検証する第III相試験(CodeBreaK 301試験)が進行中であり、さらなる治療の進展に期待する」とまとめた。

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手術不能進行胃がんに対する初期治療と維持療法における免疫チェックポイント阻害薬の有用性と日本の課題について(解説:上村直実氏)

 食道胃接合部腺がんを含む手術不能進行胃がんに対する初期薬剤治療は、CAPOX療法などの代謝拮抗薬(フッ化ピリミジン系)とプラチナ製剤の併用療法が標準治療となっていたが、最近、遺伝子診断の進歩と免疫チェックポイント阻害薬(ICI)や新たな分子標的薬の登場により劇的に変化している。 日本胃癌学会が遺伝子診断に関するバイオマーカーとして推奨しているのは、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)、Programmed cell Death Ligand 1(PD-L1)、マイクロサテライト不安定性/ミスマッチ修復(MSI/MMR)、Claudin(CLDN)18の4検査である。なかでも、HER2蛋白の有無により初期治療が選別されている。すなわち、HER2陽性胃がんに対しては抗HER2抗体であるトラスツズマブ(商品名:ハーセプチン)を追加した3剤併用レジメンが初期治療の第1選択となり、さらにICIを追加した4剤併用療法も使用されつつある。一方、胃がんの80%以上を占めるHER2陰性胃がんに対しては、標準化学療法にニボルマブやペムブロリズマブなどのICIを加えた、化学療法と免疫療法による3剤併用治療が標準的な初期治療として確立している。さらに、血管新生阻害薬(VEGFR阻害薬:ベバシズマブ)やCLDN18陽性胃がんに対してはCLDN18を標的とした抗体薬(ゾルベツキシマブ)も承認されている。 今回、中国の多施設共同研究として、HER2陰性切除不能胃がんに対する初回治療としてCAPOX+ICI(camrelizumab)の3剤併用療法を行った後、維持療法としてCAPOX単独、camrelizumab単独およびcamrelizumab+血管新生阻害薬(apatinib)の3群について有用性の指標としての全生存期間(OS)と安全性を比較した結果、camrelizumabを用いた群のOSがCAPOX単独群に比べて有意に延長した。維持療法にニボルマブやペムブロリズマブを使用すると化学療法単独に比べてOSが延長するとした以前の報告を支持するものであった。しかし、apatinibの追加はcamrelizumab単独群と比較してOSの延長がなく、有害事象が増加した結果、ICIに血管新生阻害薬を併用する意義は高くないことが示唆された(BMJ誌2026年3月12日号)。 今後、ICIを含めた最適な維持療法の確立が期待される。 最後に、わが国における手術不能進行がんに対する薬物療法に関する課題を述べておく。1つは、個別化医療推進に伴う課題であり、分子標的薬など新規薬剤の薬価の高騰および、治療レジメンを選択するためのHER2などのバイオマーカーの検査およびコンパニオン診断薬のコストである。国民皆保険制度による国の負担がこれ以上大きくなると、保険制度自体の存続が困難となる可能性が危惧される。次は、最近の臨床研究、とくに高精度のRCTに関する日本からの発信はがんセンター中心に限られつつあるのに対して、中国や韓国からの報告の多さが顕著となっている点である。今回の研究も中国の75施設が共同で行ったRCTであるが、現在の日本では多施設共同RCTの実施自体が難しいことから、この分野においてさらに遅れていく可能性も危惧される。

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第289回 在宅往診体制を厳格化 体制外医師の利用を制限、24時間要件を明確化/厚労省

<先週の動き> 1.在宅往診体制を厳格化 体制外医師の利用を制限、24時間要件を明確化/厚労省 2.医療事故調査制度の地域差なお顕著 報告の質と迅速性向上が課題/医療安全調査機構 3.再生医療の安全管理に警鐘 死亡事例と法令違反受け制度見直しへ/厚労省 4.汚職対応に第三者委員会が厳しい報告 「自浄作用の放棄」と批判/東大 5.胸部CTで肺がん見落とし死亡 37mm腫瘤見逃しで医療事故/神戸市立医療センター 6.医師による性犯罪相次ぐ 実刑判決を受け行政処分の遅れに厳しい視線 1.在宅往診体制を厳格化 体制外医師の利用を制限、24時間要件を明確化/厚労省厚生労働省は3月31日に、先日公表した2026年度の診療報酬改定について、疑義解釈(その2)で在宅療養支援診療所(在支診)・在宅療養支援病院(在支病)の往診体制に関する施設基準を大幅に明確化し、とくに往診代行サービスの利用に厳しい要件を課すことを明らかにした。厚労省は、24時間往診体制を第三者サービスに依存する場合でも、患者への説明責任と医療の継続性確保を重視し、「体制内医師」であることを厳格に求める姿勢を示した。具体的には、往診担当医の氏名および担当日を患者・家族に文書で事前提示することが必須とされ、氏名の非開示は認められない。また、当該医療機関と雇用契約のない医師を往診担当医として記載することも不可とされた。さらに、やむを得ず事前に氏名を提示していない医師が往診を行う場合であっても、往診前日までに当該医療機関を訪問し、常勤医と対面で面談を行い、診療方針や患者情報を共有していることが条件となる。オンラインでの情報共有のみでは要件を満たさない点も重要である。共有すべき内容としては「患者の最新の病状や急変リスク」「今後の診療方針、緊急時の入院先や地域医療体制」「医療機関内の電子カルテや医療資材の運用方法」など、実務レベルまで具体的に示された。これにより、形式的な雇用契約のみでは要件を満たさず、対面での面談や診療方針の共有も必要となっている。従来の往診代行サービスは、外部医師のスポット対応や業務委託契約を前提とするモデルが多く、「誰が来るかわからない」体制でも運用されてきた。しかし、今回の解釈では、こうした外部プール型の仕組みは原則として施設基準を満たさない可能性が高く、実質的に継続困難とみられる。対応策としては、非常勤を含めた雇用契約の締結、連携医療機関としての正式な組み込み、自院内での当直体制強化などが挙げられるが、いずれも人的コストの増加は避けられない。今回の見直しは、責任の所在の明確化や医療の質担保という点では合理性を持つ一方で、小規模な在宅療養支援診療所にとっては24時間体制維持のハードルが一段と高まり、在宅医療提供体制の再編を促す可能性がある。制度上は在宅医療の推進が掲げられてきた中で、実運用面では「外注依存から体制内完結へ」の転換が強く求められる局面に入ったといえる。 参考 1) 疑義解釈資料の送付について(その2)(厚労省) 2) 在支診・在支病の施設基準、往診代行を使う場合は常勤医との対面での面談が必須に(日経メディカル) 2.医療事故調査制度の地域差なお顕著 報告の質と迅速性向上が課題/医療安全調査機構日本医療安全調査機構が公表した2025年年報によると、医療事故調査制度が始まった2015年10月~2025年末までの累計報告件数は3,633件に達し、このうち88.9%で院内調査が完了した。2025年単年では375件、月平均31件超で、前年よりやや増加した。都道府県別の人口100万人当たり報告件数は全国平均2.9件で、大分県と京都府がともに4.9件で最多、続いて三重県4.6件、宮崎県4.5件だった。その一方で、福井県1.1件、埼玉県1.6件、和歌山県1.7件など低い地域もあり、地域差が続いている。ただし、報告件数の多寡は直ちに医療安全水準を示すものではなく、報告文化や制度理解の差を反映している可能性がある。事故の起因となった医療内容では、分娩を含む手術が158件で全体の43.9%を占め、依然として最大の割合を占めた。処置は39件、10.8%だった。有床診療所では事故の起因となった医療内容の75.7%が手術関連で、帝王切開を含む分娩が多い点が目立った。手術の内訳では、経皮的血管内手術、内視鏡下手術、開腹手術が上位を占めた。事故発生から院内調査結果報告までの平均期間は494.4日で、前年より延びた。発生から報告まで100.1日、報告から院内調査結果報告まで394.3日で、迅速化にはなお課題が残る。2025年に完了した院内調査は360件で、累計3,230件となり、コロナ禍前の水準に戻りつつある。外部委員の参加は81.4%、解剖・死亡時画像診断(Ai)実施は49.4%だったが、いずれも前年より低下した。2026年4月からは制度見直しにより、医療事故判断プロセスの記録保存、管理者らの研修受講、遺族申し出への組織的対応などが求められる。報告の質と調査の透明性を高め、再発防止に結びつける運用強化が、今後の医療安全の焦点となる。 参考 1) 医療事故調査・支援センター 2025年 年報(日本医療安全調査機構) 2) 2025年の「人口100万人あたり医療事故報告件数」最多は大分と京都、手術・分娩関連の死亡事故が依然多い-日本医療安全調査機構(Gem Med) 3.再生医療の安全管理に警鐘 死亡事例と法令違反受け制度見直しへ/厚労省自由診療で行われる再生医療を巡り、死亡事例や法令違反が相次いでいる。厚生労働省の資料では、2025年8月に都内クリニックで自己脂肪由来間葉系幹細胞の投与中に患者が急変し死亡した事案を受け、提供の一時停止命令や立入検査を実施し、製造施設には改善命令を出した。提供医療機関側でも、救急体制の不備、適切な救急措置の未実施、原因究明に必要な投与残余物の廃棄などが課題として示された。別の都内のクリニックでも、計画に記載のない医師や医薬品・試薬による実施、未届出疾患への提供、疾病など報告の未実施などが確認され、改善命令が出されている。問題の背景には、自由診療の再生医療が「認定再生医療等委員会の審査・届出を経ている」ことで、患者側に国が有効性や安全性を評価したかのような誤認が生じやすい構造がある。厚労省の見直し資料も、美容やがん治療などで妥当性が明確でない再生医療が増え、健康被害や信頼性低下のリスクが顕在化していると整理している。日本再生医療学会も2026年3月に「科学的根拠が不十分な自由診療の拡大は深刻な課題だ」と表明している。厚労省は今後、再生医療等安全性確保法の見直しに向け、リスク分類の再検討、自由診療の妥当性評価、提供医師・医療機関の適格性確保、認定委員会の審査の質向上、患者フォローアップや監査体制の強化、国民へのわかりやすい情報提供などを検討する。医師にとっては、自由診療であっても「届出済み」では十分ではなく、科学的妥当性、救急対応、合併症発生時の検体保全、説明責任まで含めた実施体制が厳しく問われる局面に入った。 参考 1) 再生医療等の安全性の確保等に関する法律に基づく行政処分等について(厚労省) 2) 再生医療等安全性確保法の見直しに関する今後の検討方法について(同) 3) 「再生医療」事故や違反相次ぐ 自由診療、安全性に課題 厚労省、制度見直しへ(時事通信) 4.汚職対応に第三者委員会が厳しい報告 「自浄作用の放棄」と批判/東大東京大学医学部・附属病院を巡る一連の汚職事件について、第三者のプロセス検証委員会は4月3日、大学側の対応を「組織の自浄作用と説明責任の放棄」と厳しく批判する報告書を公表した。問題の中心となったのは、内部通報があったにもかかわらず、警察の捜査を理由に学内調査を約7ヵ月間事実上停止した対応で、委員会は「真相究明を警察に委ねる姿勢は、『大学の自治』を自ら毀損する危うさをはらむ」と指摘した。報告書は、東大本部の初動の遅れに加え、総長を含む執行部の危機意識の不足、部局や研究室が互いに干渉しない組織風土、重要会議で議事録を残さないなど運営プロセスの軽視を根本要因に挙げた。また、「東大は悪いことをしない」という無謬性への思い込みと、不祥事が大学全体に及ぼす影響を十分に想像できない体質が、対応の後手を招いたと分析している。そのうえで委員会は、外部第三者による継続的なモニタリング、内部監査・監事監査・会計監査の連携強化、最高リスク責任者(CRO)の配置、対内外コミュニケーションの活性化、教員懲戒制度の迅速化と抜本的見直しの5点を提言した。東大では報告書を受け、近日中に改革策を示すとしている。今回の報告は、医学部に限らず大学全体のガバナンス不全を問う内容であり、東大の信頼回復には、再発防止策だけでなく、自浄能力を備えた組織文化への転換が不可欠だといえる。 参考 1) プロセス検証委員会報告書について(東大) 2) 東大汚職事件めぐり第三者委員会が調査結果を公表(NHK) 3) 東大収賄事件「総長の危機意識不足」、第三者委が報告 初動も問題視(朝日新聞) 4) 東京大院汚職「組織の自浄作用発揮できず」 検証委が報告書(日経新聞) 5.胸部CTで肺がん見落とし死亡 37mm腫瘤見逃しで医療事故/神戸市立医療センター神戸市立医療センター西市民病院で、CT画像に写っていた肺がんを見落とした医療事故が発生し、70代女性患者が死亡した。同院によると、女性は2024年5月、階段からの転落による外傷評価のため整形外科を受診し、CT検査を実施。画像には右肺に最大約37mmの腫瘤影が認められていたが、放射線科医がこれを指摘せず、整形外科医側でも十分な確認が行われなかった。その後、女性は2025年10月に呼吸困難と大量胸水で再受診し、精査の結果、同部位に肺がんが判明。すでにステージIVまで進行しており、手術による根治は困難な状態だった。化学療法が行われたものの全身状態が悪化し、同年12月に死亡した。初回CT画像の再検証により見落としが明らかとなった。病院は今回の事案について過失を認め、遺族に謝罪。補償については現在検討中としている。見落としの背景として、外傷評価が主目的であったため肺野の読影が不十分であったこと、ならびに読影結果の共有・確認体制の不備があったと説明している。再発防止策として、放射線科医と各診療科医師によるダブルチェックの徹底、ならびにAI読影支援ソフトの活用強化を掲げた。今回の事例は、偶発的に撮影された画像所見であっても全身的な異常の見落としを防ぐ体制の重要性を示すものであり、読影責任の所在や多職種間の情報共有の在り方が改めて問われる結果となった。 参考 1) CT画像で肺がん見落とし70代の女性患者死亡 神戸市立・西市民病院、遺族に謝罪(産経新聞) 2) CT検査で肺がん見落とし70代女性死亡 神戸市立病院で医療事故(朝日新聞) 3) 神戸市立医療センター西市民病院で医療事故 外傷診断目的で受診・70代女性患者のCT撮影した際に放射線科医が『がん』見落とす 女性患者はがんが進行して死亡(FNNプライムオンライン) 6.医師による性犯罪相次ぐ 実刑判決を受け行政処分の遅れに厳しい視線美容外科医が麻酔や睡眠薬を悪用し、無抵抗状態にした女性患者や職員らに対して長期間にわたり性的暴行を繰り返していた事件で、東京地裁は被告人の男性医師に懲役25年の実刑判決を言い渡した。犯行は約9年間に及び、被害者は21人、うち未成年が4人、最年少は9歳と極めて重大である。患者の多くは手術中や処置後の麻酔下にあり、医療行為そのものが加害の機会として利用されていた点が特徴。また、同一被害者に対する複数回の加害行為や、犯行の様子を撮影するなど、計画性と執拗性も認定された。判決は、医師という立場を利用した「悪質で卑劣な犯行」と断じ、常習性と規範意識の著しい欠如を強く非難している。求刑27年に対し25年の量刑となったが、被害の規模と内容から極めて重い判断といえる。被告は起訴事実を認めつつも量刑不当として控訴している。本件は、医療機関という本来安全であるべき場において、患者の身体的・心理的脆弱性が悪用された点で社会的衝撃が大きい。加えて、捜査段階から余罪の可能性も指摘されており、押収された記録媒体には他の被害をうかがわせる映像が含まれていたとされる。事件の実態は、判決で認定された範囲をなお上回る可能性がある。さらに、別の精神科医による患者への不同意性交事件も発覚しており、診察後に施錠された空間で逃げ場を奪われた状況での犯行が疑われている。この医師は過去の逮捕・有罪事案を経ても、診療を継続していたことが明らかとなり、行政処分の遅れに対する制度的問題も浮上している。一連の事件を受け、世論は極めて厳しく、「医師免許制度は機能しているのか」「なぜ再犯を防げなかったのか」といった批判が噴出している。とくに、刑事罰や行政処分が抑止力として十分に機能していない実態に対し、制度の見直しを求める声が強まっている。医療は患者の信頼の上に成り立つが、その信頼を根底から覆す行為が繰り返されたことは、医療界全体の倫理と統治の在り方を問い直す事案となっている。 参考 1) 美容外科医が麻酔で無抵抗の女性患者らに性犯罪、9歳児含む21人が被害…「悪質で卑劣な犯行」懲役25年判決(読売新聞) 2) 女性にわいせつ行為容疑、医師を逮捕 10人以上の被害状況を撮影か(朝日新聞) 3) 「まだ診察ある」経営する心療内科で20代女性患者に不同意性交 容疑で医師の男を逮捕(産経新聞) 4) 患者の女性を閉じ込め不同意性交か 歌舞伎町の精神科医を逮捕(毎日新聞) 5) 新宿・歌舞伎町“有名精神科医”が不同意性交の疑いで7回目の逮捕…20年にわたり犯罪を繰り返してきた激ヤバ医師の「数々の悪行」(現代ビジネス) 6) なぜ6回逮捕でも医師免許は剥奪されないのか…女性患者を襲い続けた歌舞伎町の精神科医を守る「歪んだ制度」の正体(同)

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HR+HER2-転移・再発乳がんへのSG、日本人での有効性と安全性(ASCENT-J02)/日本臨床腫瘍学会

 日本人の既治療HR+HER2-転移・再発乳がんに対するサシツズマブ ゴビテカン(SG)の有効性・安全性を評価した非盲検第I/II相ブリッジング試験(ASCENT-J02試験)の結果、国際第III相TROPiCS-02試験における結果と同程度の効果が認められ、安全性についても既知の安全性プロファイルと同様であったことが報告された。国立国際医療センターの下村 昭彦氏が、第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)で同試験の第II相HR+HER2-転移・再発乳がんコホートの結果を発表した。・対象:CDK4/6阻害薬、内分泌療法およびタキサン系薬剤による治療歴があり、かつ進行・転移病変に対する2ライン以上の全身化学療法歴のある、HR+HER2-乳がん患者(ECOG PS 0/1)42例・方法:SG(1、8日目に10mg/kg、21日ごと)を病勢進行または許容できない毒性が認められるまで静脈内投与・評価項目:[主要評価項目]独立判定委員会(IRC)評価による奏効率(ORR)[副次評価項目]治験責任医師評価によるORR、無増悪生存期間(PFS)、奏効までの期間(TTR)、奏効期間(DOR)、全生存期間(OS)、安全性 主な結果は以下のとおり。・2024年11月26日のデータカットオフ時点で、16例(38%)が試験治療を継続していた(追跡期間中央値は7.5ヵ月)。・年齢中央値は56歳(範囲:37~79歳)、がん薬物療法歴の中央値は6.0レジメン(同:3.0~11.0)、進行・転移病変に対する全身化学療法歴の中央値は2.0レジメン(同:1.0~3.0)、全例にCDK4/6阻害薬治療歴があった(治療期間は≦12ヵ月が43%)。・主要評価項目であるIRC評価によるORRは16.7%(95%信頼区間[CI]:7.0~31.4、p=0.1214)で、本試験における統計学的基準(p>0.025)は満たさなかったものの、TROPiCS-02試験におけるIRC評価によるORR(21.0%)と同程度であった。・治験責任医師評価によるORRは28.6%(95%CI:15.7~44.6)であった(TROPiCS-02試験では16.2%)。・IRC評価によるTTR中央値は2.8ヵ月(範囲:1.2~3.0)、DOR中央値は未到達(同:2.7~未到達)であった。・IRCによるPFS中央値は4.4ヵ月(95%CI:2.7~8.5)、治験責任医師評価によるPFS中央値は5.6ヵ月(95%CI:3.3~7.1)であった(TROPiCS-02試験ではそれぞれ5.5ヵ月[95%CI:4.2~7.0]、4.4ヵ月[95%CI:3.8~5.4])。・OS中央値は13.0ヵ月(95%CI:11.0~未到達)であった(TROPiCS-02試験では14.4ヵ月[95%CI:13.0~15.7]、追跡期間中央値:12.5ヵ月)。・Grade3以上の試験治療下における有害事象(TEAE)が83%に認められた。10%以上で発現したのは好中球減少症(71%)と白血球減少症(40%)であった。G-CSF製剤の予防的投与は36%で実施された。 下村氏は、本試験はブリッジング試験としてデザインされたもので、サンプルサイズが少なく、対照群との比較がなく、追跡期間が短いことなどを研究の限界として挙げたうえで、本試験とTROPiCS-02試験の結果は、内分泌療法抵抗性の日本人HR+HER2-転移・再発乳がん患者に対し、化学療法に続くSGの投与を支持するものとまとめている。

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EGFR変異NSCLC、アミバンタマブ+ラゼルチニブがアジア人でもOS良好(MARIPOSA)/日本臨床腫瘍学会

 EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療として、アミバンタマブ+ラゼルチニブは、国際共同第III相無作為化比較試験「MARIPOSA試験」において、無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)を改善することが示されている1)。第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)において、本試験のアジア人集団におけるOSなどのアップデート解析結果が、林 秀敏氏(近畿大学医学部内科学腫瘍内科部門 主任教授)により発表され、アミバンタマブ+ラゼルチニブは、アジア人集団においてもオシメルチニブ単剤と比較してOSが良好であることが示された。なお本演題は、欧州臨床腫瘍学会アジア大会(ESMO Asia2025)のアンコール演題であったが、日本人集団のpost-hoc解析結果が追加された。・試験デザイン:国際共同第III相無作為化比較試験・対象:未治療のEGFR遺伝子変異(exon19欠失またはL858R)陽性の進行・転移NSCLC患者・試験群1(ami+laz群):アミバンタマブ(体重に応じ1,050mgまたは1,400mg、最初の1サイクル目は週1回、2サイクル目以降は隔週)+ラゼルチニブ(240mg、1日1回) 429例・試験群2(laz群):ラゼルチニブ(240mg、1日1回) 216例・対照群(osi群):オシメルチニブ(80mg、1日1回) 429例・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定に基づくPFS[主要な副次評価項目]OS[その他の評価項目]PFS2(2次治療開始後のPFS)、治療中止までの期間、頭蓋内PFS(icPFS)、頭蓋内奏効率(icORR)、頭蓋内奏効期間(icDOR)、症状進行までの期間(TTSP)、安全性など 今回は、アジア人集団(ami+laz群250例、osi群251例)の比較結果が報告された。主な結果は以下のとおり。・ベースラインの患者背景は両群でバランスがとれており、年齢中央値は63歳であった。EGFR遺伝子変異の内訳はexon19欠失が55%、L858Rが45%であり、脳転移を有する割合は44%であった。・追跡期間中央値38.7ヵ月時点におけるOS中央値は、ami+laz群が未到達、osi群38.4ヵ月であり、ami+laz群で延長がみられた(ハザード比[HR]:0.74、95%信頼区間[CI]:0.56~0.97、名目上のp=0.026)。3年OS率はami+laz群61%、osi群53%で、42ヵ月OS率はそれぞれ59%、46%であった。・OSのサブグループ解析において、一貫したOSのベネフィットが示された。日本人を対象としたpost-hoc解析においても一貫した傾向がみられた(HR:0.77、95%CI:0.34~1.77)。・病勢進行後に後治療を受けた患者の割合はami+laz群71%、osi群75%であり、いずれも多くが化学療法またはチロシンキナーゼ阻害薬を含む治療を受けていた。・PFS2中央値はami+laz群が未到達、osi群34.2ヵ月であり、ami+laz群が良好であった(HR:0.70、95%CI:0.54~0.91、名目上のp=0.007)。・治療中止までの期間中央値はami+laz群27.9ヵ月、osi群23.2ヵ月であり、ami+laz群が長かった(HR:0.74、95%CI:0.59~0.93、名目上のp=0.008)。・icPFS中央値はami+laz群が23.5ヵ月、osi群が23.9ヵ月であった(HR:0.79、95%CI:0.57~1.09)。3年icPFS率はami+laz群が36%、osi群が18%であった。・icORRはami+laz群が78%、osi群が79%であった。icDOR中央値はそれぞれ未到達、27.4ヵ月であった。・TTSP中央値はami+laz群が未到達、osi群が30.8ヵ月であった(HR:0.65、95%CI:0.51~0.84、名目上のp<0.001)。・安全性プロファイルは既報および全体集団と一貫していた。静脈血栓塞栓症(VTE)はami+laz群の34%、osi群の7%で発現したが、追跡期間の延長による意義のある増加はみられなかった。なお、ベースライン時に抗凝固薬を使用していたのは3%であった。肺臓炎の発現割合はいずれの群も2%と低かった。・ami+laz群における注目すべき有害事象の多くは投与初期(0~4ヵ月)に発現しており、長期の観察において安全性に関する新たなシグナルはみられなかった。このことから、長期的な治療継続が実現可能であることが示唆された。 本結果について、林氏は「アミバンタマブ+ラゼルチニブはオシメルチニブ単剤と比較して、全体集団と同様にアジア人集団でも死亡リスクを有意に低下させ、アジア人集団における新たな標準治療としての位置付けがさらに強固なものとなった」とまとめた。なお、日本人集団のOS解析結果について、同氏は「日本人集団のOS解析結果はpost-hoc解析であり、サンプルサイズやイベント数が少なかった。アジア人は層別化因子であったことを考慮すると、アジア人集団の解析結果のほうがより重要なデータである」と述べた。

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StageIIIのdMMR大腸がん、術後アテゾリズマブ上乗せでDFS改善(ATOMIC)/NEJM

 DNAミスマッチ修復機能欠損(dMMR)のあるStageIII結腸がんの術後補助療法において、アテゾリズマブ(抗PD-L1抗体)+mFOLFOX6はmFOLFOX6単独と比較して、無病生存(DFS)率が有意に高く、有害事象は試験薬の既知の安全性プロファイルと一致したことを、米国・Mayo ClinicのFrank A. Sinicrope氏らが「ATOMIC試験」の結果で報告した。StageIII結腸がんは、欧米では標準治療(切除+術後補助療法[フッ化ピリミジン系薬+オキサリプラチン])を行っても約30%が再発するという。研究の成果は、NEJM誌2026年3月26日号に掲載された。米独の無作為化第III相試験 ATOMIC試験は、米国の303施設とドイツの9施設で実施した無作為化第III相試験(米国国立がん研究所[NCI]およびGenentechの助成を受けた)。2017年9月~2023年1月に、年齢18歳以上、完全切除(R0)が成されたStageIII結腸腺がん(N1/2、M0)で、dMMRが確認された患者712例(年齢中央値64歳[四分位範囲:49~72]、女性392例[55.1%])を登録した。 これら患者を、術後10週以内に補助療法として、アテゾリズマブ(840mg、2週ごと、静脈内投与、12サイクル)+mFOLFOXを6ヵ月間投与した後アテゾリズマブ(13サイクル)単剤を6ヵ月間投与する群(アテゾリズマブ群:355例)、またはmFOLFOXを6ヵ月間投与する群(mFOLFOX単独群:357例)に無作為に割り付けた。 mFOLFOXは両群とも、フルオロウラシル(400mg/m2をボーラス投与後、2,400mg/m2を46時間で持続静注投与)+オキサリプラチン(85mg/m2)+ロイコボリン(400mg/m2)を投与した。 主要評価項目はDFS率(無作為化から再発または全死因死亡までの期間)、副次評価項目は全生存(OS)および有害事象プロファイルとした。5年OS率には差がない 684例(96.1%)が米国施設登録患者であった。328例(46.1%)が臨床的に低リスク(Tx~3、N1/1c)、384例(53.9%)が高リスク(T4またはN2、あるいはこれら両方)で、150例(21.1%)がLynch症候群であった。 追跡期間中央値40.9ヵ月の時点で、3年DFS率は、mFOLFOX単独群が76.2%(95%信頼区間[CI]:70.9~80.6)であったのに対し、アテゾリズマブ群は86.3%(81.8~89.8)と有意に高かった(ハザード比[HR]:0.50、95%CI:0.35~0.73、層別log-rank検定のp<0.001)。 5年OS率は、アテゾリズマブ群が89.7%(95%CI:85.2~92.9)、mFOLFOX単独群は87.9%(83.1~91.4)であり、両群間に有意な差を認めなかった(層別HR:0.90、95%CI:0.55~1.47)。Grade3/4の有害事象、アテゾリズマブ群84.1%vs.mFOLFOX単独群71.9% Grade3または4の有害事象は、アテゾリズマブ群で頻度が高かった(84.1%vs.71.9%)。とくに非血液毒性(69.4%vs.54.5%)の差が大きく、なかでも疲労(10.1%vs.3.3%)が高頻度にみられた。Grade3または4の血液毒性もアテゾリズマブ群で多く(46.8%vs.38.6%)、なかでも好中球数の減少(43.6%vs.35.9%)の頻度が高かった。 各施設の担当医判定によるGrade3または4の治療関連有害事象は、アテゾリズマブ群で72.5%、mFOLFOX単独群で61.7%に発現した。Grade5(死亡)の有害事象は、それぞれ6例および2例にみられ、このうち治療関連と判定されたのはアテゾリズマブ群の2例(突然死、敗血症)のみだった。 著者らは、「アテゾリズマブの追加により、化学療法の曝露量が減少することはなく、Grade3/4の免疫関連有害事象の発生率が上昇することもなかった」とし、「本試験の参加施設のほとんどが地域密着型の診療施設であり、患者の年齢にも上限を設けなかったため、得られた知見は一般化が可能と考えられる」と指摘している。 なお、本試験の結果は最新のNCCNガイドラインに組み込まれ、StageIIがんT4bN0にもこれらの知見が適用されているという。

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進行乳がん1次治療中にESR1変異出現でcamizestrantに切り替え、SERENA-6試験の日本人解析/日本臨床腫瘍学会

 SERENA-6試験は、ER+/HER2-の進行乳がんに対して1次治療のアロマターゼ阻害薬(AI)+CDK4/6阻害薬併用療法中、病勢進行する前にctDNA検査でESR1変異が検出された患者において、CDK4/6阻害薬を継続しAIを経口選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)camizestrantに切り替えることの有用性を検討した国際共同第III相二重盲検試験である。すでに中間解析(データカットオフ:2024年11月28日)で、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)の有意な改善(ハザード比[HR]:0.44、p<0.0001)が報告されている。今回、日本人集団の結果(データカットオフ:2025年6月30日)について、名古屋市立大学の岩田 広治氏が第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)で発表した。 本試験では、1次治療としてAI+CDK4/6阻害薬を6ヵ月以上投与されたER+/HER2-進行乳がん患者に、定期的な画像検査に合わせて2~3ヵ月ごとにctDNA検査を行い、ESR1変異の有無を評価した。ESR1変異出現時に病勢進行が認められない患者を、camizestrant(75mg、1日1回経口投与)+CDK4/6阻害薬(種類・用量を継続)+AIのプラセボ、およびAI+CDK4/6阻害薬+camizestrantのプラセボの2群に1:1に無作為に割り付けた。主要評価項目は治験責任医師判定によるPFS、副次評価項目はPFS2と全生存期間(OS)であった。 主な結果は以下のとおり。・315例中20例が日本人患者であった(camizestrant+CDK4/6阻害薬群:11例、AI+CDK4/6阻害薬群:9例)。患者の背景因子は全体集団ではバランスがとれていたが、日本人集団は少数のためバランスがとれておらず、初回検査でのESR1変異検出例は、camizestrant+CDK4/6阻害薬群が73%とAI+CDK4/6阻害薬群の33%より多く、早期進行例もcamizestrant+CDK4/6阻害薬群で多かった。・PFS中央値は、camizestrant+CDK4/6阻害薬群が19.4ヵ月、AI+CDK4/6阻害薬群が9.3ヵ月、HRは0.42(95%信頼区間[CI]:0.08~0.93)で有意な改善がみられた。・PFS2中央値は、camizestrant+CDK4/6阻害薬群が35.5ヵ月、AI+CDK4/6阻害薬群が19.4ヵ月、HRは0.38(95%CI:0.10~1.36)で全体集団と同様の傾向であった。・最初の後続治療までの期間(TFST)の中央値は、camizestrant+CDK4/6阻害薬群が20.4ヵ月、AI+CDK4/6阻害薬群が7.7ヵ月、HRは0.30(95%CI:0.09~0.92)で全体集団と同様の傾向であった。2回目の後治療までの期間(TSST)も同様の傾向であった。・化学療法もしくはADC(抗体薬物複合体)フリー生存期間の中央値は、全体集団でcamizestrant+CDK4/6阻害薬群が22.7ヵ月、AI+CDK4/6阻害薬群が18.7ヵ月、HRは0.69(95%CI:0.49~0.97)であり、日本人集団でも同様の傾向であった。・全体集団において、camizestrant+CDK4/6阻害薬群では8週以内にESR1変異のアレル頻度が大幅に減少したが、AI+CDK4/6阻害薬群ではほとんどの患者で増加した。・camizestrant+CDK4/6阻害薬群は、日本人患者において良好な忍容性を示し、Grade3以上の有害事象は27.3%で、有害事象プロファイルは全体集団と同様であった。・日本人集団では、camizestrant+CDK4/6阻害薬群での好中球数減少症は全Gradeが27.3%、Grade3以上が18.2%であり、曝露期間を調整した発現割合はcamizestrant+CDK4/6阻害薬群のほうが低かった。・camizestrantによる光視症は全体集団では20.6%に報告されたが、日本人集団では2例のみでどちらもGrade1であった。 これらの結果から、岩田氏は「1次治療の内分泌療法を、CDK4/6阻害薬を継続しながらcamizestrantに切り替えることは、病勢進行を遅らせ、化学療法/ADCフリー生存期間を延長させるだけでなく、ESR1変異のアレル頻度を大幅かつ迅速に減少させることにより、治療上のベネフィットを大幅に高める」とまとめた。

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高齢HER2+早期乳がん、術後化学療法省略の判断にHER2DXが有用な可能性(Trans-RESPECT)/日本臨床腫瘍学会

 高齢のHER2陽性早期乳がん患者における長期転帰の予測に、多遺伝子アッセイ「HER2DX」が有用である可能性が示された。また探索的解析の結果、同アッセイによるpCRスコア高値群で術後化学療法の上乗せが有効となることも示唆された。名古屋市立大学臨床研究戦略部の能澤 一樹氏が、RESPECT試験の追加解析「Trans-RESPECT」の結果を、第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)で発表した。 RESPECT試験は本邦で実施された第III相無作為化比較試験で、70~80歳のHER2陽性早期乳がん患者を対象に、術後トラスツズマブ単独療法(H群)とトラスツズマブ+化学療法(H+CT群)を比較。トラスツズマブ単独療法の非劣性は証明されなかったが、3年DFS率は92.4%vs.95.3%であり、トラスツズマブ単独療法が高齢患者における治療選択肢の1つとなりうることが示された。<HER2DXとは> HER2陽性早期乳がんに特化した多遺伝子アッセイ。27遺伝子の発現を解析し、リスクスコアとpCRスコア、ERBB2 mRNAスコアを算出する。本解析では、リスクスコアについてカットオフ値を50とし、低リスク(1~49)および高リスク(50~99)に分類している。 主な結果は以下のとおり。・RESPECT試験の対象者275例のうち、適格患者154例(H群74例、H+CT群80例)についてHER2DXによる評価が行われた。・本解析対象者の患者背景は、平均年齢がH群73.6歳vs.H+CT群73.9歳、ER陽性が41.9%vs.46.3%などおおむねバランスがとれていたが、pN0の症例は90.5%vs.77.5%とH群でより多くを占めていた。・HER2DXリスクスコアにより、40例(H群16例vs.H+CT群24例)が高リスク群、114例(58例vs.56例)が低リスク群に分類された。・10年RFS率はHER2DX高リスク群68.0%vs.低リスク群77.9%(ハザード比[HR]:0.48、95%信頼区間[CI]:0.23~1.01、p=0.05)、10年OS率は69.7%vs.85.9%(HR:0.34、95%CI:0.15~0.80、p=0.01)であった(追跡期間中央値:9.1年)。・感度分析の結果、5、6、7、8、9、10年のすべての時点でRFSとOSのHR推定値は低リスク群において良好であり、一貫して0.50未満であった。・HER2DX pCRスコア(高値/中間~低値)別にみた10年OS率は、pCR高値群ではH群66.4%vs.H+CT群94.4%(HR:0.23、95%CI:0.05~1.08、p=0.04)と化学療法併用群で生存期間の延長が認められたが、中間~低値群では88.6%vs.76.2%(HR:1.68、95%CI:0.50~5.60、p=0.40)と認められず、トラスツズマブ単剤においても良好な全生存期間を示した。 能澤氏は、HER2DX低リスクと判定された患者を中心に、治療方針決定におけるHER2DXの有用性を検証する前向き試験の実施が期待されるとした。

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T-DXdが胃がん2次治療に、胃癌学会がガイドライン速報発表

 第一三共は2026年3月23日、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd、商品名:エンハーツ)の添付文書改訂が行われ、HER2陽性の治癒切除不能な進行・再発の胃がんの2次治療として使用が可能となったことを発表した。今回の改訂は、2025年6月に開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO 2025)で発表されたDESTINY-Gastric04試験の結果に基づくもの。HER2陽性胃がん/胃食道胃接合部腺がんに対し、T-DXdはそれまでの標準2次治療であるラムシルマブ+パクリタキセル(RAM+PTX)療法と比較して全生存期間(OS)を有意に延長することが示された。これまでHER2陽性胃がんに対するT-DXdは3次治療以降で承認されていたが、より早期での使用が可能となる。 これを受け、日本胃癌学会のガイドライン委員会は3月24日付で速報を出した。――以下の観点から、トラスツズマブ併用1次化学療法後に増悪したHER2陽性の治癒切除不能な進行・再発胃癌/胃食道接合部癌における二次治療として、T-DXd療法を推奨する。1)日本人を含むDESTINY-Gastric04試験において、RAM+PTX療法と比較してT-DXd療法が有意に長いOSおよびPFSが示されたこと。2)DESTINY-Gastric04試験だけでなく、すでに国内ではT-DXd療法の使用経験が多く、安全性が確認されていること。―― 同時に、胃がんに特徴的な「HER2陰性化」に言及し、再生検や再評価に関連する注意点を挙げている。――・HER2陽性胃癌では抗HER2療法後にHER2発現が低下し、陽性から陰性へ転じること(HER2陰性化)が報告されており、HER2療法後の陽性率は概ね約3割から7割程度とされている。二次治療前にHER2 statusを確認しない場合には、HER2陰性化した症例における抗HER2療法による治療効果の減弱が危惧されるため、可能であれば一次治療の増悪時点で腫瘍検体を採取し、HER2を再評価したうえで治療選択を行うことが望ましい。・再生検でHER2陰性または判定不能となった集団における二次治療としてのT-DXdの有効性は確立していないため、投与は慎重に考慮すべきである。・ただし、原発巣がない場合には再検は侵襲を伴い、原発巣があっても検査に要する時間や病理体制の制約により治療導入が遅れる場合があるため、採取の難易度、病勢の切迫度、一次治療前のHER2所見等を総合して、再生検実施の適否を個別に判断することが求められる。・再生検が困難な症例では、一次治療前のHER2所見、患者背景と病勢、三次治療でのT-DXd使用の可能性、ならびに間質性肺炎等のT-DXdの毒性リスクを踏まえ、T-DXd投与の適応を総合的に検討する。・また、HER2は腫瘍内で発現のばらつき(腫瘍内不均一性)があり、採取部位や採取量によってHER2判定結果が異なる可能性がある。DG-04バイオマーカー解析における中央判定と施設判定の乖離、ならびに中央判定でHER2陰性となる症例が一定数認められた点は、こうした生物学的要因に加えて、検査手技や判定者の違いが判定結果に影響することも示唆しており、二次治療においてT-DXdの適応の決定に際して、再生検の位置づけや検査・判定の標準化は今後の重要な検討課題である。――

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EGFR変異NSCLC、オシメルチニブ+化学療法の日本人解析結果(FLAURA2)/日本臨床腫瘍学会

 EGFR遺伝子変異陽性の進行・転移非小細胞肺がん(NSCLC)に対する1次治療として、オシメルチニブ+化学療法はオシメルチニブ単剤と比較して、日本人集団においても無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)が良好であった。第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)において、国際共同第III相無作為化比較試験「FLAURA2試験」の日本人集団の結果を栁谷 典子氏(がん研究会有明病院)が報告した。日本人集団のOSの解析結果は、2025年11月に開催された第66回日本肺癌学会学術集会でも報告されていたが、今回はさらに詳細な結果が報告された。試験デザイン:国際共同第III相非盲検無作為化比較試験対象:未治療の局所進行/転移EGFR遺伝子変異陽性(exon19欠失またはL858R)の非扁平上皮NSCLC成人患者557例試験群:オシメルチニブ(80mg/日)+化学療法(ペメトレキセド[500mg/m2]+シスプラチン[75mg/m2]またはカルボプラチン[AUC 5]を3週ごと4サイクル)→オシメルチニブ(80mg/日)+ペメトレキセド(500mg/m2)を3週ごと(併用群、279例)対照群:オシメルチニブ(80mg/日)(単独群、278例)評価項目:[主要評価項目]RECIST 1.1を用いた治験担当医師評価に基づくPFS[副次評価項目]OSなど 日本人集団の解析結果は以下のとおり。なお、PFSのデータカットオフは2023年4月、OS・安全性・曝露期間・次治療のデータカットオフは2025年6月であった。・解析対象は併用群47例、単独群47例であった。男性の割合はそれぞれ34%、51%であり、年齢中央値はそれぞれ68歳(範囲:39~83)、65歳(同:33~79)であった。中枢神経系転移を有する割合はそれぞれ38%、40%であった。EGFR遺伝子変異の内訳は、exon19欠失変異/L858R変異が、併用群49%/51%、単独群66%/34%であった。日本人集団はグローバル集団と比較して、年齢が高く、前喫煙者が多いという特徴があった。・PFS中央値は併用群24.8ヵ月、単独群16.4ヵ月であり、日本人集団でも併用群が良好であった(ハザード比[HR]:0.49、95%信頼区間[CI]:0.28~0.86)。・1年、2年時のPFS率は、併用群がそれぞれ83%、64%であり、単独群がそれぞれ63%、30%であった。・OS中央値は併用群48.3ヵ月、単独群34.3ヵ月であり、日本人集団でも併用群が良好であった(HR:0.60、95%CI:0.36~1.03)。・2年、3年、4年時のOS率は、併用群がそれぞれ85%、65%、52%であり、単独群がそれぞれ65%、41%、33%であった。・データカットオフ時点(2025年6月)において、試験治療を継続していた患者の割合は併用群28%(オシメルチニブ28%、ペメトレキセド6%)、単独群15%であった。・併用群は化学療法フリー期間が長かった。各薬剤の曝露期間中央値は、併用群はオシメルチニブ28.5ヵ月、ペメトレキセド5.5ヵ月、プラチナ製剤2.8ヵ月であった。単独群のオシメルチニブは16.0ヵ月であった。・次治療を受けた患者の割合は併用群75%、単独群86%であった。最初の次治療の内訳は、併用群では化学療法が多く(プラチナ製剤を含む化学療法40%、プラチナ製剤を含まない化学療法33%)、単独群ではプラチナ製剤を含む化学療法が多かった(71%)。・安全性について、主解析後の2年間の観察期間において、新たな間質性肺疾患の発現はなく、安全性に関する新たなシグナルはみられなかった。 なお、グローバル集団における既報の主要結果1)は以下のとおり。・PFS中央値(併用群vs.単独群)25.5ヵ月vs.16.7ヵ月(HR:0.62、95%CI:0.49〜0.79、p<0.001)・1/2年PFS率(同上)80%/57%vs.66%/41%・OS中央値(同上)47.5ヵ月vs.37.6ヵ月(HR:0.77、95%CI:0.61〜0.96、p=0.02)・2/3/4年OS率(同上)80%/63%/49%vs.72%/51%/41% 本結果について、栁谷氏は「オシメルチニブは、EGFR遺伝子変異陽性進行NSCLCの1次治療として確立した推奨治療である。FLAURA2試験では、オシメルチニブ+プラチナ製剤+ペメトレキセド併用療法がオシメルチニブ単剤と比較してOSを有意に延長し、日本人集団でもOSの改善傾向が示された。これらの結果は、併用療法が1次治療として強く推奨される選択肢であることを支持する」と述べている。

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ASCO GU 2026レポート

レポーター紹介2026年2月26~28日に米国・サンフランシスコで開催された2026 ASCO Genitourinary Cancers Symposium(ASCO GU 2026)における重要演題を、がん研有明病院 先端医療開発科の竹村 弘司氏がレビューする。泌尿器腫瘍領域の薬物療法は新規薬剤の開発や臨床応用の発展が目覚ましく、臨床現場における標準治療も大きく変化している。ASCO GU 2026ではPractice changeとなることが期待される重要演題が複数報告されるとともに、バイオマーカー研究や早期臨床開発中の薬剤における重要な知見が共有された。本稿では、臨床医(泌尿器科医、腫瘍内科医)が知っておくべき重要な演題について、私見を交えながら詳細を解説する。ASCO GU 2026の重要演題 One-slide summaryINDEX【腎がん】LITESPARK-011試験【腎がん】LITESPARK-022試験【尿路上皮がん】KEYNOTE-B15 (EV-304)試験【尿路上皮がん】IMvigor011試験 exploratory analysis【前立腺がん】PEACE-3試験【前立腺がん】PAnTHA試験[腎がん 演題1]LITESPARK-011Belzutifan Plus Lenvatinib Versus Cabozantinib for Advanced Renal Cell Carcinoma After Anti-PD-(L)1 Therapy: Open-Label Phase 3 LITESPARK-011 Study1. 背景転移を有する腎細胞がん(mRCC)において、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を含む治療が標準治療となった。現在、ICI治療後の後方ラインで用いられている薬剤は、ICI導入前の時代に確立されたエビデンスであるものも多く、現代の治療シークエンスにおける位置付けは十分に確立されていない。ベルズチファンはHIF-2α阻害薬として新たな作用機序を有し、既治療mRCCにおいて有効性が示されている。LITESPARK-011試験は、ICI治療後の進行例を対象に、ベルズチファンとVEGFR-TKIであるレンバチニブの併用療法について、標準治療の1つであるカボザンチニブと比較して、有効性・安全性を検証した第III相試験である。2. 試験デザインデザイン国際多施設共同、オープンラベル、第III相無作為化比較試験対象抗PD-(L)1抗体治療後に進行した局所進行または転移を有する淡明細胞型腎細胞がん(clear cell RCC)(最大2レジメンまで、VEGFR-TKI既治療も許容)介入併用群ベルズチファン120mg+レンバチニブ20mg対照群カボザンチニブ60mg評価項目主要評価項目無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)副次評価項目奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性など3. 結果747例が無作為化され、ベルズチファン+レンバチニブ群371例、カボザンチニブ群376例であった。背景因子は両群でおおむね均衡しており、IMDCリスク分類は中間群が約6割を占めた。主要評価項目であるPFS中央値は、併用群14.8ヵ月、対照群10.7ヵ月であり、ハザード比(HR):0.70(95%信頼区間[CI]:0.59~0.84、p=0.00007)と有意な改善が認められた。PFS改善効果は事前に設定されたサブグループ解析でも一貫していた。OSは中間解析時点で、併用群34.9ヵ月、対照群27.6ヵ月であり、HR:0.85(95%CI:0.68~1.05)と改善傾向を示したが、統計学的有意差には至らなかった。ORRは52.6%vs.40.2%と併用群で高かった。安全性プロファイルは既知の各薬剤の毒性とおおむね一致しており、管理可能な範囲であった。ただし、併用療法群で心機能障害が7%(Grade3以上が4.6%)でみられた。4. 結論ベルズチファン+レンバチニブ併用療法は、抗PD-(L)1治療後の進行clear cell RCCにおいて、カボザンチニブと比較してPFSを有意に改善し、主要評価項目を達成した。OSは未成熟ながら改善傾向を示しており、新たな治療選択肢となる可能性が示された。5. 筆者コメントベルズチファンはLITESPARK-005試験の結果を受けて、後方ライン・単剤での有効性が示され臨床実装されているが、Primary PDの割合が比較的高いこと(約3分の1が初回評価で病勢進行)が課題である。HIF-2α阻害薬の臨床開発において、(1)「より前方ライン」での使用がよいのか、(2)「併用薬剤」はどれが最も効果を最大化するか、というのが現在の大きなClinical questionsである。本試験は、レンバチニブとの併用でカボザンチニブと比較してPFSやORRを改善したことから、サルベージ治療として奏効が期待される後方ラインの選択肢として有望である。ただし、OSの統計学的優位性が現時点で証明されておらず、今後の長期フォローアップデータを確認していく必要がある(現時点では、確固とした標準治療とまでは言えないと考える)。[腎がん 演題2]LITESPARK-022Adjuvant Pembrolizumab Plus Belzutifan Versus Pembrolizumab for Clear Cell Renal Cell Carcinoma: The Randomized Phase 3 LITESPARK-022 Study1. 背景腎摘除後の再発高リスクclear cell RCCに対しては、KEYNOTE-564試験によりペムブロリズマブによる術後補助療法が標準治療として確立されている。LITESPARK-022試験は、術後補助療法としてのペムブロリズマブにベルズチファンを上乗せすることで、治療成績の向上が得られるかを検証した第III相試験である。2. 試験デザインデザイン国際多施設共同、二重盲検、第III相無作為化比較試験対象腎摘除後12週以内の再発中間高リスクclear cell RCC(intermediate-high risk、high risk、M1 NED)介入併用群ペムブロリズマブ400mg(約1年間)+ベルズチファン120mg(最大54週)対照群ペムブロリズマブ+プラセボ評価項目主要評価項目無病生存期間(DFS)副次評価項目OS、安全性など3. 結果1,841例が無作為化され、併用群921例、対照群920例であった。リスク分類は中間・高リスクが約85%、M1 NEDが約9%を占め、両群間で背景は均衡していた。主要評価項目であるDFSはHR:0.72(95%CI:0.59~0.87、p=0.0003)と、併用群で有意な改善が認められた。DFS中央値はいずれの群でも未到達であった。2年時点でのDFSは併用群で80.7%、対照群で73.7%であった。OSは中間解析時点でHR:0.78(95%CI:0.55~1.09)と改善傾向を示したが、統計学的有意差には至っておらず、今後のフォローアップが必要である。安全性については、併用群で有害事象による中止率がやや高い傾向がみられたものの、全体として管理可能な範囲であった。4. 結論ペムブロリズマブにベルズチファンを併用する術後補助療法は、再発高リスクclear cell RCCにおいてDFSを有意に改善し、主要評価項目を達成した。OSは未成熟であるが改善傾向を示しており、術後補助療法の新たな選択肢となる可能性が示唆された。5. 筆者コメント臨床現場において標準治療として確立されるためには、OSのフォローアップデータの結果がポジティブであることが必要であると考える。HIF-2α阻害薬が術後療法の領域で有効性があることが示唆されたことは非常に興味深い。腎がん領域ではRAMPART試験(デュルバルマブ+トレメリムマブ)のフォローアップデータも期待されており、複数のレジメンが今後使用可能となった場合の治療戦略は混沌としていく可能性がある。[尿路上皮がん 演題1]KEYNOTE-B15 (EV-304)Neoadjuvant and Adjuvant Enfortumab Vedotin Plus Pembrolizumab for Participants With Muscle-Invasive Bladder Cancer Who Are Eligible for Cisplatin: Randomized, Open-Label, Phase 3 KEYNOTE-B15 Study1. 背景筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)に対する標準治療は、シスプラチンを含む術前化学療法後の根治的膀胱全摘除術である。シスプラチン適格患者においては、ゲムシタビン+シスプラチン(GC療法)による術前化学療法が実施されている。一方で、進行・転移を有する尿路上皮がんの領域では、エンホルツマブ ベドチン(EV)+ペムブロリズマブ併用療法(EVP療法)が高い有効性を示し、治療パラダイムを変えた。KEYNOTE-B15試験は、シスプラチン適格MIBC患者を対象に、EVP療法による周術期治療の有効性と安全性を検証した第III相無作為化比較試験である。2. 試験デザインデザイン国際多施設共同、オープンラベル、第III相無作為化比較試験対象シスプラチン適格のMIBC(cT2-T4aN0M0またはT1-4aN1M0)介入併用群EVP 4コース(術前)→膀胱全摘除術→EV 5コース+ペムブロリズマブ13コース(術後)対照群GC 4コース(術前)→膀胱全摘除術(術後は経過観察、ただし2023年2月以降、病理結果に応じて術後ニボルマブが可となった)評価項目主要評価項目無イベント生存期間(EFS)副次評価項目OS、病理学的完全奏効(pCR)、安全性など3. 結果808例が無作為化され、EV+ペムブロリズマブ群405例、GC群403例であった。背景因子は両群で均衡しており、年齢中央値は66歳、ECOG PS 0が約8割、病期はT2N0が約19%、T3/T4aN0が約72%、N1が約8%であった。追跡期間中央値は33.6ヵ月であった。主要評価項目であるEFSは、EVP群で有意な改善が認められた。EFS中央値は併用群で未到達、対照群で48.5ヵ月であり、HRは0.53(95%CI:0.41~0.70、 片側p<0.0001)と、明確なリスク低減が示された。副次評価項目であるOSについても有意な改善が認められた。OS中央値はいずれの群でも未到達であったが、HRは0.65(95%CI:0.48~0.89、片側p=0.0029)であった。pCR率は55.8%vs.32.5%と、併用群で有意に高かった。安全性については、Grade3以上の有害事象は75.7%vs.67.2%と併用群でやや高頻度であったが、既知の安全性プロファイルとおおむね一致しており、新たな安全性シグナルは認められなかった。周術期治療の導入による手術完遂率への明らかな悪影響も認められなかった。4. 結論EVP療法による周術期治療は、シスプラチン適格MIBC患者において、従来のシスプラチンベース化学療法と比較してEFS・OSを有意に改善し、主要評価項目を達成した。周術期治療戦略における新たな標準治療となる可能性が示された。5. 筆者コメント本演題の結果はPractice changeであり、ASCO GU 2026の最重要演題である。EVが合計9コース投与されるため、末梢神経障害が懸念される。今後は術後療法が省略できる可能性がないかの検証が必要である。また、EVP療法のような強力な薬物治療が使用可能となったことにより、膀胱温存療法についての研究も今後検証されていくことが予想される。 [尿路上皮がん 演題2]IMvigor011 exploratory analysisCirculating tumor (ct)DNA-guided adjuvant atezolizumab (atezo) in muscle-invasive bladder cancer (MIBC): Exploratory analysis of ctDNA dynamics in the IMvigor011 trial.1. 背景IMvigor011試験は、膀胱全摘後MIBCに対してctDNA陽性例を選択し、術後アテゾリズマブの有効性を検証した第III相試験であり、既報では主要評価項目のDFSおよび主な副次評価項目のOSを達成している。本発表はその探索的解析であり、ctDNA陽性・陰性という二値評価にとどまらず、ctDNA陽性化のタイミングやctDNA濃度、さらに治療中のctDNA clearanceが予後やアテゾリズマブの効果とどのように関係するかを検討した。2. 試験デザイン膀胱全摘後のMIBC患者を対象に、6週ごとにctDNAを測定し、ctDNA陽性となった患者をアテゾリズマブ1,680mg q4w最大1年とプラセボに2対1で無作為化した。ctDNA陰性を1年間維持した患者は無治療経過観察とされた。本探索的解析では、ctDNAの陽性化時期、ctDNA濃度、ctDNA動態などとDFS/OSといった臨床的アウトカムとの関連を解析した。3. 結果761例がsurveillanceに登録され、379例がいずれかの時点でctDNA陽性、377例がpersistent ctDNA陰性であった。ctDNA陽性379例のうち、初回検査で陽性化したのは225例、追跡中に陽性化したのは154例であった。未治療集団において、ctDNA陽性化のタイミングは予後と強く関連した。DFS中央値は、persistent ctDNA陰性群で未到達、初回検査陽性群で6.0ヵ月(95%CI:5.1~6.6)、追跡中陽性化群で11.1ヵ月(95%CI:9.2~13.5)であった。OS中央値はpersistent ctDNA陰性群で未到達、初回検査陽性群で21.9ヵ月(95%CI:15.0~NE)、追跡中陽性化群で35.1ヵ月(95%CI:24.9~NE)であった。すなわち、早期にctDNA陽性となる症例ほど予後不良であった。また、初回ctDNA濃度別のDFS中央値は、≦0.1 MTM/mLで12.2ヵ月、>0.1~≦3 MTM/mLで7.8ヵ月、>3 MTM/mLで5.3ヵ月であり、OS中央値はそれぞれ35.1ヵ月、29.3ヵ月、21.1ヵ月であり、高濃度ctDNAほど予後不良であった。一方、アテゾリズマブの有効性はctDNA陽性化時期や濃度にかかわらず、おおむね一貫していた。全体コホートでDFS中央値は9.9ヵ月vs.4.8ヵ月、DFSはHR:0.64(95%CI:0.47~0.87)であった。初回陽性例ではHR:0.62、追跡中陽性化例ではHR:0.67であり、濃度別でも≦0.1 MTM/mLで0.81、>0.1~≦3 MTM/mLで0.59、>3 MTM/mLで0.47であった。OSについては全体で32.8ヵ月vs.21.1ヵ月、HR:0.67(95%CI:0.44~1.01)で、各サブグループでも大きな方向性の違いはみられなかった。4. 結論IMvigor011の探索的解析により、MIBC術後のctDNAは単なる陽性・陰性だけでなく、陽性化のタイミングと濃度が追加の予後情報を与えることが示された。早期陽性化および高濃度ctDNAはDFS・OS不良と関連し、一方でpersistent ctDNA陰性例はきわめて良好な転帰を示した。また、アテゾリズマブはctDNA陽性化時期や濃度にかかわらず一貫した有効性を示し、さらにctDNA clearanceを促進した。これらの結果は、ctDNA動態を用いたより精緻な術後リスク層別化および治療最適化の可能性を支持する。5. 筆者コメントIMvigor011試験の結果から、ctDNAは尿路上皮がんにおける術後予後因子のみならず、ICIの効果予測因子としても有用であることが示された。今回の探索的解析ではctDNAの「動態」が臨床的アウトカムに関連することが報告された。本邦ではまだ臨床現場での使用ができていないが、今後の尿路上皮がんのバイオマーカーとして広く用いられることが期待されるため、今後もその有用性の研究に注目する必要がある。[前立腺がん 演題1]PEACE-3Final overall survival results from EORTC 1333/PEACE-3: enzalutamide with or without radium-223 in metastatic castration-resistant prostate cancer1. 背景転移のある去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)において、エンザルタミドは1次標準治療の1つである。PEACE-3試験は、骨転移を有するmCRPC患者において、エンザルタミドにRa223を併用することで、エンザルタミド単剤を上回る臨床的有用性が得られるかを検証した第III相試験である。前回の解析では主要評価項目であるrPFS(画像評価PFS)の有意な改善が示されており(ESMO 2024)、本発表では副次評価項目である最終OS解析の結果が報告された。2. 試験デザイン試験デザイン国際多施設共同、無作為化、第III相試験対象骨転移を有するmCRPC、無症候性または軽症候性、WHO PS 0~1、エンザルタミドおよびRa223未治療、内臓転移なし、ADT継続中介入1対1で無作為化治療群エンザルタミド160mg/日+Ra223 55 kBq/kgを4週ごとに6回対照群エンザルタミド160mg/日評価項目主要評価項目rPFS副次評価項目OS、次治療開始までの期間、疼痛進行までの期間、初回症候性骨関連事象までの期間、安全性層別因子  国、疼痛、ドセタキセル既往、骨修飾薬使用、アビラテロン既往※骨修飾薬は試験途中の2018年3月以降、必須となった。3. 結果446例が登録され、エンザルタミド+Ra223群222例、エンザルタミド群224例であった。年齢中央値は両群とも70歳で、PS 0が69%、mHSPC段階でのドセタキセル既往は約30%、骨病変10個以上は約4割、骨外病変を約3分の1に認めた。追跡期間中央値は4.8年であった。最終OS解析では、OS中央値はエンザルタミド+Ra223群38.21ヵ月、エンザルタミド群32.62ヵ月であった。HRは0.76(95%CI:0.60~0.96)で、片側p値はlog-rank 0.0096であり、事前に設定された有意水準(1-sided α=0.0248)を満たした。24ヵ月OS率は71.1%vs.67.7%、36ヵ月OS率は54.2%vs.47.4%であった。なお、生存曲線は18ヵ月付近まで交差がみられたが、その後は併用群で一貫して良好であった。rPFSについても、前回報告と同様に改善が維持されていた。rPFS中央値は19.19ヵ月vs.16.43ヵ月、HR:0.71(95%CI:0.57~0.89)であり、24ヵ月rPFS率は44.1%vs.37.2%であった。安全性について、Grade3~5の試験治療下における有害事象(TEAE)は69.3%vs.57.6%、Grade3~5のdrug-related TEAEは28.9%vs.18.8%であった。発表全体としては、「moderate increase in adverse events」と総括されている。4. 結論PEACE-3試験の最終OS解析により、骨転移を有するmCRPCにおいてエンザルタミドへのRa223追加は、エンザルタミド単剤と比較してOSを有意に改善することが確認された。rPFS改善も維持されており、安全性は一定の上昇を伴うものの管理可能な範囲であった。BPA併用を前提として、エンザルタミド+Ra223はmCRPCの1次治療における有力な選択肢となる可能性が示された。5. 筆者コメントPositive studyであるが、現在の臨床実践ではmHSPCの段階でARSI(新規アンドロゲン受容体シグナル阻害薬)が導入される症例が多く、本試験の適格基準に合致する患者は実際には多くないと思われる。[前立腺がん 演題2]PAnTHAFirst-in-human assessment of actinium-225-PSMA-Trillium (BAY3563254) in mCRPC: dose-escalation results from the phase 1 PAnTHA study1. 背景mCRPCに対する放射性リガンド療法として、β線放出核種である177Lu-PSMA-617の有効性が確立されつつある。一方、α線放出核種である225Acは、より高いlinear energy transferと短い飛程を有し、理論的には強力な抗腫瘍効果と周辺正常組織への影響低減が期待される。PAnTHA試験ではfirst-in-humanである225Ac-PSMA-Trilliumのdose-escalation studyの結果が発表された。2. 試験デザイン試験デザイン第I相、dose-escalation part対象18歳以上、ECOG PS 0~1、mCRPC、PSMA陽性病変を1つ以上有する患者主な適格条件ARPI(アンドロゲン受容体経路阻害薬)既治療、1〜2レジメンのタキサン系薬剤既治療、放射性医薬品(radionuclide therapy)未治療治療225Ac-PSMA-Trilliumを6週ごとに最大4サイクル投与用量75/100/125/150 kBq/kg主要評価項目安全性、有効性、recommended dose for expansion(RDE)の決定3. 結果dose-escalation partでは計50例が登録された。年齢中央値は70.5歳で、骨転移は90%の患者でみられた。追跡期間中央値は7.2ヵ月、80%が4サイクルを完遂し、投与サイクル中央値は4であった。安全性については、全例で何らかのTEAEを認めたが、DLT(用量制限毒性)は全用量レベルで認められなかった。Grade3~4のTEAEは全体で44%に出現し、用量調整は10%、治療中止は6%、治療関連の死亡は認めなかった。発表では「no DLTs or Grade 3 xerostomia」と総括されており、口腔乾燥の重篤例がみられなかった点はα線PSMA治療として注目される。主なGrade3以上の有害事象としてはリンパ球減少と貧血が挙げられた。有効性については、全50例におけるPSA50達成率は62%、PSA90達成率は40%であった。測定可能病変を有する24例におけるORRはCRで42%、DCRで79%であった。用量別では125 kBq/kgが最もバランス良好と判断され、RDEとされた。この125 kBq/kgコホートでは、PSA50達成率83%、PSA90達成率67%、ORRはconfirmed responseのみで43%、confirmed+unconfirmedで71%であった。さらに、ベースラインSUVmeanが高い症例ほど反応率が高く、PSA50達成率はSUVmean ≦6で22%、>6~≦10で57%、>10で93%であった。4. 結論PAnTHA試験は、225Ac-PSMA-TrilliumがmCRPCにおいて良好な忍容性を示し、DLTを認めず、かつ有望な生化学的・画像学的抗腫瘍効果を示すことを初めて報告した。とくに125 kBq/kgは安全性と有効性のバランスに優れ、RDEとして選択された。225Acを用いたPSMA標的α線治療の臨床開発を前進させる重要なfirst-in-humanデータである。5. 筆者コメントPSMA-based therapyは本邦での臨床使用が欧米と比較して遅れをとっている。本試験のように次世代のラジオリガンドが続々と開発されており、今後の動向に注目が必要である。

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