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IB~IIIB期ALK陽性NSCLC、完全切除後ensartinibが有効/NEJM

 完全切除されたIB~IIIB期のALK陽性非小細胞肺がん(NSCLC)の術後補助療法において、経口投与が可能で強力なALK阻害薬であるensartinibはプラセボと比較して、24ヵ月の時点で生存かつ無病状態(非再発)を維持していた患者の割合が有意に高く、新たな安全性シグナルを認めないことが、中国・Tianjin Medical University Institute and HospitalのDongsheng Yue氏らELEVATE Study Groupが実施した「ELEVATE試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2026年7月9日号に掲載された。無病生存を無作為化第III相試験で評価 ELEVATE試験は、IB~IIIB期ALK陽性NSCLC患者における完全切除術後のensartinib補助療法の安全性と有効性の評価を目的とする二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験(Betta Pharmaceuticalsの助成を受けた)。 2022年7月~2024年7月に、年齢18歳以上、全身状態の指標であるECOG PSが0または1で、完全切除されたIB、II、IIIA、IIIB期のNSCLCであり、ALK陽性の患者を登録した。IIB~IIIB期の患者は術後補助化学療法を受けることが求められた。 被験者274例を、完全切除および予定された術後化学療法の終了後に、ensartinib(225mg、1日1回)の経口投与を受ける群(137例、年齢中央値55歳、女性91例[66.4%])、またはプラセボ群(137例、年齢中央値54歳、女性84例[61.3%])に無作為に割り付けた。投与期間は最長24ヵ月であった。 主要評価項目は、II~IIIB期のNSCLC患者における無病生存(無作為化から再発または全死因死亡までの期間)とした。全患者でもII~IIIB期と同等に、無病生存率が改善 IIB~IIIB期の患者の89.1%(172/193例)と、IBまたはIIA期の患者の23.5%(19/81例)が、白金製剤ベースの術後補助化学療法を受けた。ensartinib群では94例(68.6%)、プラセボ群では97例(70.8%)が受けていた。 24ヵ月時点で、II~IIIB期の患者における生存かつ無病状態の患者の割合は、プラセボ群が53.5%であったのに対し、ensartinib群は86.4%と有意に優れた(再発または死亡のハザード比[HR]:0.20、95%信頼区間[CI]:0.11~0.38、p<0.001)。 また、24ヵ月時の全患者(IB~IIIB期)における生存かつ無病状態の患者の割合は、プラセボ群の57.2%に対しensartinib群は87.3%であり、有意に高かった(HR:0.20、95%CI:0.10~0.37、p<0.001)。 ほぼすべてのサブグループにおいて、ensartinib群で一貫して良好な無病生存の有益性を認めた。 最も多い再発部位は脳であった(ensartinib群5/137例[3.6%]、プラセボ群17/137例[12.4%])。中枢神経系(CNS)の再発または死亡のリスクはensartinib群で低かった(HR:0.22、95%CI:0.08~0.60)。全生存のデータは未確定であった。Grade3以上・重篤な有害事象が多い ensartinib群の安全性プロファイルは、以前の進行病変に関する報告と一致しており、新たな安全性シグナルは認めなかった。 Grade3以上の有害事象は、ensartinib群の49例(35.8%)およびプラセボ群の25例(18.2%)で発現した。Grade3以上の治療関連有害事象は、それぞれ27.0%および6.6%に認められた。重篤な有害事象は、それぞれ25例(18.2%)および14例(10.2%)で報告された。ensartinibに関連すると判定された重篤な有害事象はすべて解消した。 有害事象による投与中断、減量、治療中止は、ensartinib群でそれぞれ48例(35.0%)、41例(29.9%)、3例(2.2%)、プラセボ群ではそれぞれ20例(14.6%)、2例(1.5%)、2例(1.5%)で発生した。 著者は、「ensartinibによる補助療法は、ALK陽性NSCLCで完全切除を受けた患者にとって、有効な新たな治療戦略となる」としている。 また、「補助療法としてのALK阻害が、治癒した患者の割合を増加させるのか、それとも主に疾患の再発を遅らせるのかについては、現時点では決定的な判断を下せない」「最新の知見によると、ALK変異は早期NSCLC患者において、脳再発の素因となる可能性が示唆され、CNS限局病変は積極的な局所療法で治療可能であることから、無症状のCNS再発を早期に検出することが重要である」「ALK阻害薬の今後の検討事項として、術前補助療法が挙げられる」と指摘している。

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激辛料理を食べると膣が燃える女性【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第310回

【第310回】激辛料理を食べると膣が燃える女性「激辛料理を食べると、デリケートゾーンがヒリヒリ燃える」――そんな主訴で来られたら、皆さんは何を疑いますか。中国・西南医科大学附属病院からの、なんとも珍妙な1例です。 Wu Y, et al. Capsaicin-Triggered Vaginal Burning Due to Obstructed Rectovaginal Fistula: A Rare Case of Perineal Coproliths Am J Case Rep. 2026 Mar 11;27:e950337.52歳の女性。2年前から、辛いものを食べたときだけ膣に「唐辛子の汁をかけたような」灼熱感が出る、という主訴です。驚くべきことに、薄味の食事なら症状は出ないそうです。地元の病院でエコーも受けましたが、異常はありませんでした。3ヵ月前、下痢のあとに症状が悪化しました。膣炎を疑って自分でアジスロマイシンを飲んでも効かず、結局「薄味で耐える」しかなかったそうです。辛いものを食べると燃える、薄味だと燃えない。再現性は間違いなくある。既往歴は多彩でした。卵巣嚢腫で片側卵巣摘出、出産時に会陰手術、左乳がんで手術+化学療法の既往あり。下部消化器の専門医2名が診察すると、会陰部に2×2cmの硬結がありました。エコーで石灰化がみられ、造影骨盤MRIでは低位括約筋の瘻孔が見つかりました。大腸内視鏡も腫瘍マーカーも胸部CTも、ほかは軒並み正常でした。麻酔下で会陰を切開してみると、直腸膣中隔に約2cmの空洞が見られ、中には複数の硬い糞石と、線維組織がぎっしり詰まっていました。除去して奥を探ると、腸管は膣後壁と交通していることがわかりました。普通、直腸膣瘻といえば、膣からガスや便が漏れて明らかになるのが定石ですが、本例は糞石で詰まっていたため、ガスも便も漏れない仕様になっていました。ではなぜ「激辛のときだけ燃える」のか。著者らの仮説は、カプサイシンだけがすり抜けて膣側に達し、灼熱感を起こすというものです。便は通れなくても、辛味成分は通るという、なんともトリッキーな話です。糞石を除去することで灼熱感の症状は軽快しました。1年後も再発なく過ごされているそうです。骨盤の手術歴がある女性が、原因不明で食事に連動する膣の違和感を訴えたら、ガスや便漏れがなくても潜在性の瘻孔を疑う必要があるのかもしれません。

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ASCO2026 レポート 肺がん

レポーター紹介ASCO2026は、プレナリーセッションに肺がんの演題が2演題選ばれるなど、肺がん領域におけるインパクトが大きい大会となった。とくに、ivonescimabとチスレリズマブを比較したHARMONi-6試験の全生存期間(OS)解析がプレナリーセッションに選出され、これは中国発の治験薬がASCOの60年以上の歴史でプレナリーセッションに選ばれた初めての事例だと思われる。同じくプレナリーセッションでは、RET融合陽性早期非小細胞肺がん(NSCLC)に対する術後補助療法としてのセルペルカチニブの有効性を示したLIBRETTO-432試験の結果も発表され、EGFR、ALKに続きRETでも術後補助療法における分子標的治療のエビデンスが確立した。周術期領域では、ALK融合陽性のStageIII NSCLCに対する周術期ロルラチニブの試験であるLORIN試験が、化学療法や免疫チェックポイント阻害薬(ICI)に匹敵する、あるいはそれを上回る高い病理学的奏効を報告し話題となった。転移・進行期領域では、EGFR exon20挿入変異陽性NSCLCの1次治療におけるsunvozertinib単剤の優越性を示したWU-KONG28試験、PD-L1陽性NSCLCの1次治療としてTROP2標的抗体薬物複合体(ADC)とペムブロリズマブの併用療法の有効性を示したOptiTROP-Lung05試験など、新規の分子標的薬と抗体医薬品を軸とした新たな治療選択肢の広がりが続いた。ALK陽性NSCLCでは、CROWN試験の7年フォローアップにより、ロルラチニブの長期的ベネフィットが改めて示された。さらに、オシメルチニブなど第3世代EGFR-TKI耐性後の中心的な耐性機序であるC797X変異を克服しうる第4世代EGFR-TKIの開発が世界各地で進み、DZD6008、BH-30643、BDTX-1535 (silevertinib)、VRN110755など複数の候補薬の初期臨床データが報告された年でもあった。[目次]WU-KONG28試験OptiTROP-Lung05試験LORIN試験LIBRETTO-432試験HARMONi-6試験CROWN試験第4世代EGFR-TKI(DZD6008、BH-30643、BDTX-1535、VRN110755)さいごにWU-KONG28試験EGFR exon20挿入変異陽性の進行NSCLCに対する1次治療として、次世代EGFR-TKIであるsunvozertinib単剤とプラチナ併用化学療法を比較する国際多施設共同ランダム化第III相試験がWU-KONG28試験である。本試験は、未治療の進行NSCLC患者324例を、sunvozertinib単剤の1日1回投与群、またはカルボプラチン+ペメトレキセド併用後にペメトレキセド維持療法を行う化学療法群に無作為に割り付けた国際共同試験であり、化学療法群では病勢進行後にsunvozertinibへのクロスオーバーが許容された。主要評価項目は独立中央画像判定(BICR)による無増悪生存期間(PFS)であった。PFS中央値はsunvozertinib群で10.3ヵ月、化学療法群で7.5ヵ月であり、ハザード比(HR)は0.65(95%CI:0.50~0.85、p<0.001)と統計学的に有意な結果であった。奏効割合(ORR)はsunvozertinib群で58.9%、化学療法群で31.1%、奏効期間(DoR)の中央値はそれぞれ11.2ヵ月、7.1ヵ月であった。安全性プロファイルは既報と一致し、新規の安全性シグナルは認められなかった。本試験の結果はNew England Journal of Medicine誌に同時掲載された。EGFR exon20挿入変異陽性NSCLCの1次治療は、既に抗体医薬品であるアミバンタマブと化学療法の併用療法(PAPILLON試験)が導入されつつある領域であり、sunvozertinibは経口薬としての利便性を武器に一定の地位を確立する可能性がある。さらに、中枢神経系(CNS)における効果、至適用量、非アジア人集団における有効性、near-loop型とfar-loop型の挿入変異による効果の違い、そしてアミバンタマブを中心とした治療戦略との最適なシークエンスなど、今後検討すべき課題も多く残されている。目次に戻るOptiTROP-Lung05試験PD-L1陽性進行NSCLCの1次治療として、TROP2を標的とした抗体薬物複合体であるsacituzumab tirumotecan(sac-TMT)とペムブロリズマブの併用療法の意義を検証した国際多施設共同非盲検ランダム化第III相試験がOptiTROP-Lung05試験である。本試験は、EGFR・ALK遺伝子異常を有さず、PD-L1 TPS 1%以上の未治療の局所進行・転移性NSCLC患者413例を対象とし、sac-TMT(4mg/kgを2週ごと)とペムブロリズマブ(400mgを6週ごと)の併用群、またはペムブロリズマブ単独群に1:1の割合で無作為に割り付けた。主要評価項目は独立中央判定によるPFSであった。PFS中央値は併用群で未到達、ペムブロリズマブ単独群で5.7ヵ月であり、HRは0.35(95%CI:0.26~0.47、p<0.0001)と大きな差が認められた。12ヵ月時点のPFS率は62.4%と29.0%であった。ORRは併用群70.2%、単独群42.0%であり、50%以上の深い奏効を示した割合も49.0%と25.9%であった。OSは未成熟であったが、12ヵ月OS率は併用群80.4%、単独群68.9%と良好な傾向を示した。Grade3以上の治療関連有害事象は併用群55.3%、単独群31.4%であり、好中球減少、貧血、口内炎などが主な事象であった。本試験は、ADCとICIの併用療法がPD-L1陽性進行NSCLCの1次治療においてPFSの統計学的に有意な改善を示した初めての第III相試験であり、結果はLancet誌に同時掲載された。一方で、対照群がペムブロリズマブ単独である点は解釈上の限界であり、とくにPD-L1 TPS 1~49%の集団では化学療法併用が国際的な標準治療とされているため、単独群との比較で得られた効果の大きさをそのまま評価してよいかは慎重な検討を要する。CNSにおける効果や成熟したOSデータ、グローバルでの検証が今後の焦点となる。目次に戻るLORIN試験ALK融合遺伝子陽性のStageIII NSCLCに対する周術期治療として、ロルラチニブの術前投与とその後の手術、術後継続投与の有効性・安全性を検討した中国発の多施設共同単群第II相試験がLORIN試験である。本試験では、切除可能または境界切除可能なStageIIIのALK融合陽性NSCLC患者を対象に、術前ロルラチニブ投与後に手術を行い、可能な症例では術後もロルラチニブを継続する治療戦略が検討された。主要評価項目である病理学的完全奏効割合(pCR)は46.9%、副次評価項目のMajor Pathologic Response(MPR)は81.3%であり、神経療法やICIを含む従来の周術期治療と比較しても高い病理学的奏効が報告された。当初手術不能と判断されていた24例のうち18例(75.0%)は集学的な再評価を経てconversion surgeryに至り、残る症例もTKIの継続投与や放射線治療などが選択された。追跡期間中央値13ヵ月の時点で、1年無イベント生存(EFS)率は97.1%(95%CI:91.5~100)であり、OSイベントは認められなかった。局所再発は3例のみで、いずれも初診時N3の症例であり、術後補助療法としてのロルラチニブは投与されていなかった。EGFR遺伝子変異陽性肺がんに対するNeoADAURA試験やこれまでのオシメルチニブによる術前治療の病理学的完全奏効割合がおおむね10%未満にとどまっていたことと比較すると、ロルラチニブによる病理学的奏効の高さは際立っている。ただし本試験は単群かつ中国単独の小規模な検討であり、EFS・OSのデータも未成熟である。目次に戻るLIBRETTO-432試験RET融合遺伝子陽性の早期NSCLCに対する術後補助療法として、選択的RET阻害薬であるセルペルカチニブの有効性・安全性を検討したプラセボ対照二重盲検ランダム化第III相試験がLIBRETTO-432試験であり、本年のプレナリーセッションで発表された。本試験は、根治的な手術または放射線治療を受けたStageIB~IIIAのRET融合陽性NSCLC患者を対象に、22か国から151例を登録し、セルペルカチニブ群(75例)またはプラセボ群(76例)に1:1の割合で無作為に割り付けた。主要な解析対象集団であるStageII~IIIAの患者において、EFSのHRは0.172(95%CI:0.058~0.509、p=0.0003)であり、2年EFS率はセルペルカチニブ群91.5%、プラセボ群61.1%であった。全体集団(151例)においても、EFSのHRは0.165(95%CI:0.056~0.485、p=0.0002)、2年EFS率は92%と61%であり、両群ともEFS中央値は未到達であった。死亡は3例のみで、いずれもプラセボ群における原疾患による死亡であり、割り付けられた治療期間中の死亡はなかった。有害事象はALT・AST上昇を中心に、進行期での既報プロファイルと一致していた。本試験は、早期RET融合陽性NSCLCに対するRET阻害薬の術後補助療法としての有効性を検証した初めての第III相試験であり、結果はNew England Journal of Medicine誌に同時掲載された。EGFR遺伝子変異陽性肺がんにおけるオシメルチニブ、ALK融合遺伝子陽性肺がんにおけるアレクチニブに続き、RET融合陽性肺がんにおいても術後補助療法としての分子標的治療のエビデンスが確立したことになる。RET融合陽性NSCLCは全体の1~2%程度とまれな分子サブグループであるが、3,446例をスクリーニングして151例を組み入れたという実施体制は、稀少なバイオマーカーに基づく術後補助療法試験の実施可能性を示した点でも意義深い。また、EGFR、ALKに続いて、シングルプレックスの遺伝子検査が存在しないRET融合遺伝子についても術後療法のエビデンスが創出されたことにより、周術期のバイオマーカー検査へのアクセスのさらなる拡大が期待される。目次に戻るHARMONi-6試験未治療進行扁平上皮NSCLCの一次治療として、PD-1/VEGF二重特異性抗体であるivonescimabと化学療法の併用療法と、抗PD-1抗体であるチスレリズマブと化学療法の併用療法を比較した中国発の国際共同ランダム化第III相試験がHARMONi-6試験であり、本年のプレナリーセッションで発表された。本試験は、未治療のStageIII~IVの扁平上皮NSCLC患者532例を、ivonescimab+化学療法群、またはチスレリズマブ+化学療法群に1:1(各266例)の割合で無作為に割り付けた。既報のPFS解析では、PFS中央値は11.1ヵ月と6.9ヵ月、ハザード比0.60(p<0.0001)と統計学的に有意な結果が示されていたが、本年は副次評価項目であるOSの事前規定の中間解析結果が報告された。データカットオフ日(2026年2月27日)時点で、追跡期間中央値21.36ヵ月において、OS中央値はivonescimab群27.89ヵ月、チスレリズマブ群23.69ヵ月であり、HRは0.66(95%CI:0.50~0.87、片側p=0.0017)と、事前に規定された有意性の境界(片側p<0.0049)を上回る統計学的に有意な結果であった。24ヵ月OS率は64.7%と48.6%であった。PD-L1 TPS1%未満の集団においてもOS中央値は未到達と18.6ヵ月であり、ハザード比0.64と一貫したベネフィットが認められた。本試験は、中国発の治験薬としてASCOの61年の歴史で初めてプレナリーセッションに選出された演題であり、結果はLancet誌に同時掲載された。一方で、対照群であるチスレリズマブ+化学療法群のOSが、既存の欧米標準治療であるペムブロリズマブ+化学療法(KEYNOTE-407試験)の成績を上回っている点は、対照群自体の成績が良好であるがゆえに、相対的な効果が過大評価されている可能性を示唆するとの指摘もあり、今後グローバルな集団における検証(HARMONi-3試験等)が焦点となる。目次に戻るCROWN試験未治療進行ALK融合遺伝子陽性NSCLCに対する1次治療として、ロルラチニブとクリゾチニブを比較した国際共同ランダム化第III相試験であるCROWN試験は、すでに実臨床に導入された標準治療の1つであるが、本年のASCOでは登録された296例(ロルラチニブ群149例、クリゾチニブ群147例)を対象とした7年フォローアップの結果が報告された。追跡期間中央値はロルラチニブ群83.0ヵ月、クリゾチニブ群77.2ヵ月であり、投与者評価によるPFS中央値はロルラチニブ群で未到達、クリゾチニブ群で9.1ヵ月、HRは0.19(95%CI:0.13~0.26)であった。7年時点でのPFS率はロルラチニブ群55%(95%CI:46~63)、クリゾチニブ群3%(95%CI:1~8)であり、24ヵ月の時点でPFSイベントを認めなかった患者が7年時点まで無増悪でいられる確率は79%であった。頭蓋内病勢進行までの期間中央値はロルラチニブ群で未到達、クリゾチニブ群で16.4ヵ月であり、HRは0.06(95%CI:0.03~0.12)、ロルラチニブ群では投与開始後30ヵ月以降に新規の頭蓋内進行イベントは認められなかった。安全性プロファイルは5年時点の解析から大きな変化はなく、データカットオフ時点でロルラチニブ群の44%が投与を継続していた(クリゾチニブ群は3%)。CROWN試験は、固形がん全体を通じても単剤の分子標的治療としては過去最長級のPFSを更新し続けており、ALK融合遺伝子陽性肺がんの1次治療におけるロルラチニブの位置付けを改めて強固なものとした。一方で、高脂血症、体重増加、浮腫、末梢神経障害、認知機能への影響など、長期間にわたる投与に伴う有害事象については、早期からの積極的なマネジメントと必要に応じた減量が実臨床上の重要な課題であり続けている。目次に戻る第4世代EGFR-TKI(DZD6008、BH-30643、BDTX-1535、VRN110755)オシメルチニブに代表される第3世代EGFR-TKI耐性後の中心的な耐性機序の1つであるEGFR C797X変異は、既存の薬剤では標的化することができず、これを克服しうる第4世代EGFR-TKIの開発が世界各地で進められている。本年のASCOでは、中国・米国・韓国発の複数の候補薬について初期臨床データが報告された。DZD6008は、EGFR exon19del/L858Rに加え、T790MやC797Xを含む二重・三重変異にも活性を有し、血液脳関門透過性に優れた第4世代EGFR-TKIである。第3世代EGFR-TKI後に増悪したEGFR C797X陽性NSCLC患者24例(評価可能例)を対象とした、TIAN-SHAN1・TIAN-SHAN2試験(第I/II相)では、20/40/60mgの用量でDZD6008が1日1回投与され、全体でのORRは41.7%、腫瘍縮小を認めた割合は75%であった。推奨第II相用量における解析では、40mg群(13例)でORR 23.1%、60mg群(10例)でORR 60.0%であった。DoR・PFSはいずれも未到達で、9ヵ月PFS率はそれぞれ54.5%、64.8%であった。頭蓋内活性も確認され、Grade3以上の治療関連有害事象はリンパ球数減少(8.3%)などにとどまり、用量制限毒性は認めなかった。BH-30643は、Macrocyclic構造を持つ非共有結合型・変異選択的な「OMNI-EGFR」阻害剤であり、T790MやC797Sの有無にかかわらず活性を維持することが前臨床で示されている。この薬剤を創薬したのは、ロルラチニブやレポトレクチニブなどのMacrocyclic阻害薬の創薬でも有名なJean Cui博士である。第I相のSOLARA試験では、EGFR・HER2変異陽性NSCLC患者72例(前治療ライン数中央値3、脳転移65%)が登録され、画像評価可能な17例中10例(59%)に部分奏効を認め、奏効割合はT790M陽性例(50%)と陰性例(66%)で同程度であった。とくにC797S陽性28例のうち画像評価可能な17例中10例(59%)が奏効し、ctDNA上でもC797S陽性例9例中7例でvariant allele frequencyの99%を超える減少が確認された。安全性についてはビリルビン上昇(36%)がGrade3の治療関連有害事象の主体であるが臨床的にはマネジメント可能で、間質性肺疾患は認められなかった。BDTX-1535(silevertinib)は、古典的変異に加え非典型的(non-classical/PACC)変異やC797S変異を標的とする、脳移行性の高い第4世代の共有結合型EGFR-TKIである。今回ポスターで発表されたのは、第3世代EGFR-TKI(主にオシメルチニブ)による治療歴を有し、非典型的変異またはC797S変異を有するNSCLC患者を対象とした第II相試験であり、前治療は2ライン以内、EGFR-TKIの投与歴は1剤に限定された集団が組み入れられた。200mg1日1回投与において、非典型的変異コホート(30例)のORRは16.7%(PACC変異に限定した解析[23例]ではORR 21.7%)、C797S変異コホート(33例)のORRは36.4%であり、治療期間中央値は4.8~5.0ヵ月であった。脳転移合併率はそれぞれ49%、31%であった。安全性はEGFR-TKI様のプロファイルであり、重篤な治療関連有害事象は11%、治療関連有害事象による投与中止は8%、Grade3の主な事象は発疹(13%)、下痢(8%)であった。同時期に別セッションで発表された未治療例におけるORR 60%というデータと比較すると、既治療・耐性獲得後の集団におけるベネフィットはより限定的であることが示唆される。VRN110755は、韓国のバイオベンチャーであるVoronoi社が開発する変異選択的かつ脳移行性の高い第4世代EGFR-TKIである。既治療のEGFR変異陽性NSCLC患者を対象とした第I/II相試験(REACH-EGFR)において、160mg以上の用量群で画像評価可能な21例中4例に部分奏効、16例に病勢安定が認められ、病勢コントロール率は95.2%であった。忍容性は良好であり、Grade3以上の治療関連有害事象や用量制限毒性は認められず、既存のEGFR-TKIと比較して下痢の頻度が低く、間質性肺疾患やQTc延長も認めなかった点が特徴として報告されている。C797S変異陽性例を含む前治療の進んだ集団においても一定の抗腫瘍活性が確認されており、今後の用量最適化および拡大コホートでの検証が注目される。以上のように、各薬剤ともまだ単群・少数例による初期段階のデータではあるが、C797X耐性を克服しうる経口の第4世代EGFR-TKIとして、抗体医薬品を中心としたアプローチ(アミバンタマブなど)とは異なる選択肢としての開発が進んでいる。今後は奏効の持続性(DoR・PFS)、頭蓋内活性、そして肝機能検査値異常や皮膚障害を中心とした忍容性の観点から、各剤の位置付けと差別化が焦点となっていくものと考えられる。目次に戻るさいごに2026年のASCOはHARMONi-6、LIBRETTO-432に代表される大型の第III相試験の結果に加え、周術期領域でのLORIN試験、進行期1次治療でのWU-KONG28試験・OptiTROP-Lung05試験、そして長期フォローアップデータとしてのCROWN試験7年成績など、肺がん治療のあらゆる場面において着実な進展がみられた。さらに、第4世代EGFR-TKIをめぐる複数の候補薬の初期データが報告されたことは、オシメルチニブ耐性後という長らく有効な標的治療の乏しかった領域に、新たな選択肢が生まれつつあることを示している。周術期ICIや抗体薬物複合体の開発とあわせ、肺がんの治療開発が実に幅広い領域で同時並行的に展開している状況は今後も続くと考えられる。目次に戻る

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プラチナ抵抗性または不応性卵巣がんにchiauranib+パクリタキセルがPFSを延長(CHIPRO)/ASCO2026

 プラチナ抵抗性または難治性卵巣がんに対し、Aurora Bキナーゼなどを標的とするマルチキナーゼ阻害薬chiauranibとweeklyパクリタキセルの併用が、無増悪生存期間(PFS)を統計学的に有意に延長した。全生存期間(OS)全体では有意差はみられなかったものの、後治療を受けなかった患者などで良好な生存ベネフィットが示されている。米国臨床腫瘍学会年次総会(2026 ASCO Annual Meeting)において、Xiaohua Wu氏(中国・復旦大学 上海がんセンター)が発表した。 中国における卵巣がんは年間6万例以上が新たに診断され、3万例以上が死亡している。初期治療の15%がプラチナ抵抗性であり、初期治療後3年以内に70%が再発する。chiauranibは、腫瘍細胞の増殖に関わるAurora B阻害、腫瘍抑制性免疫微小環境の再プログラム化、血管新生阻害という3つの経路を標的として抗腫瘍効果を発揮するように設計されたチロシンキナーゼ阻害薬である。第II相試験でプラチナ抵抗性卵巣がんに有望な結果が得られたことから第III相試験CHIPRO試験が実施された。・試験デザイン:第III相無作為化比較試験・対象:プラチナ抵抗性または不応性で既治療(前ライン数1~5)の上皮性卵巣がん、卵管がん、または原発性腹膜がん・試験群:chiauranib(連日投与)+ weeklyパクリタキセル(1サイクル3週で最大6サイクル)→chiauranibによる維持療法(CP群、228例)・対照群:プラセボ+weeklyパクリタキセル(同上)→プラセボによる維持療法(PP群、231例)・評価項目:[主要評価項目]独立審査委員会(IRC)判定によるPFS、OS[副次評価項目]治験医師判定によるPFS、奏効率(ORR)、疾患コントロール率、奏効期間、QOL、安全性 主な結果は以下のとおり。・対象患者には高悪性度漿液性卵巣がんが多数(CP群78.9%、PP群81.8%)含まれた。化学療法のライン数3以上はCP群とPP群でそれぞれ27.6%と27.7%、PARP阻害薬治療歴は51.3%と58.4%、VEGF/VEGFR阻害薬治療歴は70.2%と71.0%であった。・IRC判定のPFS中央値は、PP群の2.69ヵ月に対し、CP群では4.57ヵ月であり、CP群で有意に延長した(ハザード比[HR]:0.427、95%信頼区間[CI]:0.34~0.54、p<0.001)。・CP群のベネフィットはすべてのサブグループで一貫して認められた。・OS中央値は、CP群12.09ヵ月、PP群12.12ヵ月であり、両群間に統計学的有意差は認められなかった(HR:0.932、95%CI:0.73〜1.20、p=0.583)。・試験後に後治療を受けなかった集団のOS中央値をみると、PP群の4.70ヵ月に対し、CP群では7.39ヵ月と、CP群で有意な改善が認められた(HR:0.599、95%CI:0.39~0.91、p=0.016)。・IRC判定によるORRは、PP群の14.3%に対し、CP群では32.0%とCP群で有意に高かった(p<0.001)。・Grade3以上の有害事象はCP群では90.4%、PP群では54.3%に発現した。CP群で頻度の高い試験治療下における有害事象は白血球減少症、好中球減少症、貧血などの血液毒性であった。血管新生阻害薬でみられる蛋白尿、高血圧による治療中断はなかった。

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診療科別2026年上半期注目論文5選(呼吸器内科編)

Nerandomilast in progressive pulmonary fibrosis: data from the whole follow-up period of the FIBRONEER-ILD trialWijsenbeek MS, et al. Eur Respir J. 2026 Mar 26. [Epub ahead of print].<FIBRONEER-ILD試験>:ネランドミラストはPPFの臨床的イベントと死亡リスクを低減進行性肺線維症(PPF)を対象としたFIBRONEER-ILD試験の全追跡期間データです。ネランドミラストは、52週時のFVC低下抑制に加え、ILD急性増悪、呼吸器疾患による入院、死亡を含む臨床的に重要なイベントのリスクを低減しました。とくに死亡リスクは両用量でプラセボより低く(ハザード比[HR]:0.51)、有害事象による中止もプラセボと同程度でした。PPFに対する新たな抗線維化治療として、今後の実臨床での位置付けが注目されます。Survival with Osimertinib plus Chemotherapy in EGFR-Mutated Advanced NSCLCJanne PA, et al. N Engl J Med. 2026;394:27-38.<FLAURA2試験>:オシメルチニブと化学療法併用はEGFR変異陽性進行NSCLCのOSを延長EGFR exon 19 deletionまたはL858R変異陽性の未治療進行非扁平上皮NSCLCを対象とした、FLAURA2試験の全生存期間最終解析です。オシメルチニブにプラチナ製剤+ペメトレキセドを併用すると、オシメルチニブ単剤に比べてOS中央値は47.5ヵ月vs.37.6ヵ月に延長しました(HR:0.77)。一方、Grade3以上の有害事象は70%vs.34%と多く、初回治療から併用する患者を慎重に選ぶ必要があります。Amikacin liposome inhalation suspension in newly diagnosed Mycobacterium avium complex lung disease (ARISE): a 6-month double-blind, active comparator trialDaley CL, et al. Ann Am Thorac Soc. 2026;23:536-547. <ARISE試験>:新規診断MAC症へのALIS追加で培養陰性化率が改善新規または再発の非空洞型MAC肺疾患患者を対象に、リポソーム化アミカシン吸入懸濁液(ALIS)の初期治療での有効性を評価した二重盲検実薬対照試験です。アジスロマイシン、エタンブトールにALISを追加した群では、6ヵ月目までの培養陰性化率が80.6%(対照群63.9%)、7ヵ月目までが78.8%(47.1%)と良好でした。QOL-B respiratory domainの改善も示されており、難治例だけでなく初期治療からALISを導入する意義を考えるうえで注目されます。Associations between antibiotic use and outcomes in patients hospitalized with community-acquired pneumonia and positive respiratory viral assaysBiebelberg B, et al. Clin Infect Dis. 2026;82:630-638.<ウイルス陽性市中肺炎>:短期抗菌薬と標準期間で臨床転帰は同等呼吸器ウイルス検査陽性の市中肺炎入院患者を対象に、抗菌薬0~2日と5~7日投与を傾向スコア重み付けで比較した後ろ向き研究です。調整後、入院期間、48時間後のICU入室、院内死亡率、30日間の非入院日はいずれも同等でした。細菌性肺炎が明らかでないウイルス陽性市中肺炎では、抗菌薬を漫然と継続しない判断を後押しするデータです。Oral corticosteroid reduction and discontinuation in adults with corticosteroid-dependent, severe, uncontrolled asthma treated with tezepelumab (WAYFINDER): a multicentre, single-arm, phase 3b trialJackson DJ, et al. Lancet Respir Med. 2026;14:129-140.<WAYFINDER試験>:テゼペルマブは重症喘息の維持OCS減量を後押しOCS依存性の重症非コントロール喘息成人を対象に、テゼペルマブ210mgを4週ごとに投与した第IIIb相単群試験です。52週時点で約90%が喘息コントロールを保ったまま維持OCSを5mg/日以下に減量し、50.3%が完全中止に到達しました。表現型にかかわらずOCS負担を減らせる可能性を示し、実臨床でのステロイド離脱戦略に重要な示唆を与えます。

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ASCO2026 レポート 泌尿器腫瘍

レポーター紹介[目次]PROTEUS試験TALAPRO-3試験RAMPART試験SARC041試験SAKK 06/19試験米国臨床腫瘍学会(American Society of Clinical Oncology;ASCO)の年1回の総会は、今年も米国イリノイ州シカゴで開催され、2026年は5月29日から6月2日まで5日間の日程で行われた。昨今の円安はさらに進み、5月29日時点で1ドル=160円前後と、現地参加へのモチベーションをそぐには十分な水準であり、今年もオンラインでの参加を選択した。泌尿器腫瘍領域では、前立腺がんを中心に、Oral Abstract Session、Rapid Oral Abstract Session、Poster Sessionで多数の演題が報告された。毎年の目玉であるPlenary SessionにはPractice changingな演題が選出されるが、今年は高リスク限局性/局所進行前立腺がんに対する周術期アパルタミド+ADTを検証したPROTEUS試験がLBA1として選出され、泌尿器腫瘍領域にとっても注目度の高い総会となった。今年のASCOでは、手術を中心とした限局性前立腺がん治療への全身療法の導入に加え、転移を有する前立腺がんにおける分子異常に基づく治療強化、腎細胞がん術後補助療法における免疫療法の位置付けなど、日常診療への影響を考えさせる報告が相次いだ。また、しばしば後腹膜腫瘍として携わる脱分化型脂肪肉腫に対する新たなエビデンスとして、アベマシクリブのSARC041試験もPlenary Sessionで報告された。膀胱がんの免疫併用療法の新時代を感じさせる報告も含め、PROTEUS、TALAPRO-3、RAMPART、SARC041、SAKK 06/19の5演題を取り上げて報告する。目次に戻るPlenary Session 前立腺がん#LBA1 高リスク限局性/局所進行前立腺がんに対する周術期アパルタミド+ADTは病理学的奏効とMFSを改善(PROTEUS試験)Perioperative(neoadjuvant and adjuvant) apalutamide(APA)+androgen deprivation therapy(ADT)vs placebo(PBO)+ADT with radical prostatectomy(RP) in high-risk localized or locally advanced prostate cancer(HR LPC/LAPC): Final analysis of the PROTEUS phase 3 study.Mary-Ellen Taplin(Dana-Farber Cancer Institute, Boston, MA, United States)高リスク限局性/局所進行前立腺がんでは、根治的前立腺全摘術後も一定割合で再発や遠隔転移を来すが、手術に全身療法を組み合わせる周術期治療は標準治療として確立していなかった。PROTEUS試験は、根治的前立腺全摘術を予定する高リスク限局性/局所進行前立腺がんを対象に、術前6サイクルおよび術後6サイクルのアパルタミド+ADTとプラセボ+ADTを比較した国際共同二重盲検ランダム化比較第III相試験である。主要評価項目は、病理学的完全奏効または微小残存病変(pCR/MRD)および中央判定による無転移生存期間(MFS)であった。2,109例が登録され、追跡期間中央値約5年時点で、pCR/MRDはアパルタミド+ADT群で8.9%、プラセボ+ADT群で1.0%(オッズ比:10.17、p<0.0001)と有意に改善した。5年MFS率は78.2%と73.5%であり、ハザード比[HR]:0.80(95%信頼区間[CI]:0.67~0.96、p=0.02)と、遠隔転移または死亡リスクを20%低下させた。無イベント生存期間(EFS)も57.1ヵ月と38.4ヵ月で延長し、次治療開始までの期間も約3年遅延したと報告された。Grade 3/4有害事象は39.6%と31.0%で、主な差は皮疹などアパルタミドに関連する毒性であった。本試験は、手術を予定する高リスク前立腺がんにおいて、周術期のアンドロゲン受容体経路阻害薬+ADTが病理学的奏効だけでなくMFSも改善することを示した初の第III相試験であり、前立腺がん周術期治療の考え方を変える報告であった。日本でもアパルタミドは転移を有する去勢感受性前立腺がん(mHSPC)および転移のない去勢抵抗性前立腺がん(nmCRPC)で使用可能であり、本試験に日本人も含まれており承認される可能性が高い。高リスク限局性前立腺がんの治療は放射線治療も選択肢となり、PROTEUS試験では従来非切除アプローチを優先してきたN1症例も含まれる。術前においても泌尿器科と腫瘍内科、放射線治療科が連携して全身療法を検討する流れが必要かもしれない。本試験の結果を解釈するためのハードルは以下の3点である。1.現在の標準治療である手術単独との比較ではなく両群にADTが行われていたこと2.試験参加およびフォローアップにPSMA-PETが用いられていたこと3.全生存期間(OS)は主要/副次評価項目に入っていないこと、また、この治療を適用するに当たり術後治療まで行う必要性があるかどうか目次に戻るOral abstract session 前立腺、精巣、陰茎#LBA5007 HRR遺伝子異常を有するmHSPCに対するタラゾパリブ+エンザルタミドはrPFSを延長(TALAPRO-3試験)TALAPRO-3: Talazoparib(TALA)+enzalutamide(ENZA) compared with placebo (PBO)+ENZA for the treatment of patients(pts) with metastatic castration-sensitive prostate cancer(mCSPC) harboring homologous recombination repair(HRR) gene alterations.Neeraj Agarwal(Huntsman Cancer Institute[NCI-CCC], University of Utah, Salt Lake City, UT)タラゾパリブはPARP阻害薬であり、エンザルタミドとの併用は転移を有する去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)を対象としたTALAPRO-2試験で有効性が示されている。ASCO2026では、この併用療法をmHSPCに前倒しし、HRR遺伝子異常を有する症例に対象を絞って検証したTALAPRO-3試験(NCT04821622)の結果が報告された。本試験は国際共同二重盲検ランダム化比較第III相試験で、対象となるHRR遺伝子はATM、ATR、BRCA1、BRCA2、CDK12、CHEK2、FANCA、MLH1、MRE11A、NBN、PALB2、RAD51Cの12遺伝子であった。患者はタラゾパリブ+エンザルタミド+ADT群とプラセボ+エンザルタミド+ADT群にランダム化され、主要評価項目は治験担当医判定による画像上の無増悪生存期間(rPFS)であった。599例が登録され、84%がde novo転移、71%がhigh-volume diseaseであり、アジア人は約39%を占めていた。rPFSはタラゾパリブ群で有意に改善し、3年rPFS率は77%と56%、HR:0.48(95%CI:0.36~0.65、p<0.001)であった。BRCA変異例ではHR:0.37、non-BRCA HRR変異例でもHR:0.57と、一貫した改善が示された。OSは中間解析時点でHR:0.77(95%CI:0.56~1.04)と未成熟であった。安全性については、重篤な有害事象はタラゾパリブ群42%、対照群32%であり、Grade3/4の貧血は51%、輸血は40%に認められた。TALAPRO-3試験は、mHSPCにおいてHRR陽性集団をPARP阻害薬併用による治療強化の対象として確立した試験である。日本人を含む試験であり、承認されればmHSPC診断時からHRR検査を行い、分子異常に基づいて初回治療を選択する診療へ移行する可能性がある。一方で、治療期間が長くなりうるmHSPCでは、貧血を中心とした血液毒性管理と、OS成熟後のベネフィットの評価が今後の課題である。目次に戻るClinical Science Symposium -腎&膀胱-#LBA4511 切除後腎細胞がんに対する術後デュルバルマブ単剤はDFSを有意に改善せず(RAMPART試験)Durvalumab monotherapy versus active monitoring for resected primary renal cell carcinoma in RAMPART: An international, phase 3, randomized controlled trial. James Larkin(The Royal Marsden NHS Foundation Trust, London, United Kingdom)腎細胞がんに対する術後補助療法では、KEYNOTE-564試験によりペムブロリズマブが無病生存期間(DFS)およびOSを改善し、日本でも再発リスクの高い淡明細胞型腎細胞がんに対する標準治療となっている。一方、術後免疫療法の有効性は試験間で一貫しておらず、免疫チェックポイント阻害薬の種類や併用療法の意義は重要な臨床疑問であった。RAMPART試験は、腎摘除後に再発リスクを有する腎細胞がんを対象に、active monitoring、デュルバルマブ単剤、デュルバルマブ+トレメリムマブを比較した国際共同ランダム化比較第III相試験である。対象はLeibovich scoreで中間または高リスク、あるいは完全切除後(M1 NED)症例で、主要評価項目はDFSであった。ASCO2026では、デュルバルマブ単剤とactive monitoringの比較結果が報告された。追跡期間中央値3.5年時点で、3年DFS率はデュルバルマブ単剤群78%、active monitoring群72%であり、HR:0.74(95%CI:0.53~1.04、片側p=0.041)と数値上は改善したものの、事前に規定された有意水準には到達しなかった。一方、既報のデュルバルマブ+トレメリムマブ群では、3年DFS率80%と72%、HR:0.65(95%CI:0.45~0.93、片側p=0.0094)と有意な改善を認めた。OSは未成熟であり、3年OS率はデュルバルマブ+トレメリムマブ群96%、デュルバルマブ単剤群98%、active monitoring群96%で、明らかな差は認められていない。安全性では、Grade3/4有害事象はデュルバルマブ+トレメリムマブ群41%、デュルバルマブ単剤群30%、active monitoring群9%であり、重篤な有害事象はそれぞれ34%、19%、6%であった。まれではあるが、致死的な免疫関連有害事象として重症筋無力症や心筋炎も報告された。RAMPART試験は、デュルバルマブ単剤を術後補助療法の新たな標準とする結果ではなかった。一方で、CTLA-4抗体を加えた併用療法ではDFS改善が示され、とくに高リスクまたはM1 NED症例で利益が大きい可能性がある。日本の日常診療では、すでにOS延長を示したペムブロリズマブ術後療法が標準であり、RAMPARTの結果をただちに診療へ反映する場面は限られるが、術後補助免疫療法におけるリスク選択、併用療法の意義、毒性とのバランスを再考させる重要な報告であった。目次に戻るPlenary Session 脱分化型脂肪肉腫#LBA2 進行脱分化型脂肪肉腫に対するアベマシクリブはPFSを有意に延長(SARC041試験)SARC041: A phase 3 randomized double-blind study of abemaciclib versus placebo in patients with advanced dedifferentiated liposarcoma.Mark Dickson(Memorial Sloan Kettering Cancer Center, New York, NY)脱分化型脂肪肉腫(dedifferentiated liposarcoma;DDLS)は、後腹膜原発として診療に携わることも多いまれな軟部肉腫であり、再発・転移例では薬物療法の選択肢が限られている。DDLSではCDK4を含む12番染色体領域の増幅が高頻度に認められることから、CDK4/6阻害薬による治療開発が進められてきた。SARC041試験は、再発または転移を有するDDLSを対象に、アベマシクリブとプラセボを比較した二重盲検ランダム化第III相試験である。アベマシクリブは日本では乳がんに対して使用されている経口CDK4/6阻害薬であり、連日投与可能であることが特徴である。本試験では、進行DDLS 108例がアベマシクリブ200mg 1日2回またはプラセボに1:1で割り付けられた。ベースラインで前治療歴0の患者が両群で約50%ずつ含まれた。主要評価項目はPFSであり、病勢進行後はプラセボ群からアベマシクリブへのクロスオーバーが許容された。PFS中央値はアベマシクリブ群9.7ヵ月、プラセボ群1.5ヵ月であり、HR:0.38、p<0.001と有意な延長が示された。6ヵ月PFS率は60%と22%、12ヵ月PFS率は39%と13%であった。奏効率は9%と高くはないものの、プラセボ群では奏効例がなく、DDLSにおいて病勢制御を得る治療としての意義が示された。OS中央値はアベマシクリブ群で未到達、プラセボ群で25.5ヵ月、HR:0.55、p=0.07であり、プラセボ群の85%がクロスオーバーしたことを踏まえると良好な傾向であった。有害事象は下痢、血球減少、悪心など、既知のアベマシクリブの安全性プロファイルに沿うものであった。アベマシクリブ群の39%で減量を要したが、忍容性は管理可能と報告された。SARC041試験は、DDLSにおいて初めて明確なPFS改善を示した第III相試験であり、希少肉腫における分子標的治療の開発として重要な報告であった。ただし、本試験では腫瘍量が多く緊急に細胞障害性化学療法を要する症例や、プラセボ対照試験に適さないほど急速に進行する症例は除外されており、ドキソルビシンなど既存の細胞障害性化学療法に置き換わる治療と位置付けるには慎重な解釈が必要である。また、米国のみで行われた試験であり、日本を含め各国で承認を得られるかどうかは不透明である。目次に戻るOral abstract session -腎&膀胱-#4503 筋層浸潤性膀胱がんに対する膀胱内rBCG+chemo-IO周術期治療は高いpCR率を示す(SAKK 06/19試験)Intravesical recombinant BCG combined with chemo-immunotherapy (chemo-IO) as perioperative therapy for patients with muscle-invasive bladder cancer (MIBC): Primary analysis of SAKK 06/19.Richard Cathomas(Division of Oncology, Cantonal Hospital Graubunden, Chur, Switzerland)筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)では、根治的膀胱全摘術にシスプラチン併用術前化学療法を組み合わせることが標準治療であり、近年はNIAGARA試験により周術期化学療法と免疫療法の併用(chemo-IO)の有効性も示されている。一方で、pCR率はなお十分とはいえず、さらなる治療強化の余地がある。BCG膀胱内注入療法は筋層非浸潤性膀胱がんで広く用いられ、局所免疫反応を誘導する治療であるが、MIBCに対する使用は全身性合併症への懸念もあり十分に検討されてこなかった。SAKK 06/19試験では、免疫原性の増強と安全性改善を目的に開発された組換えBCGワクチンVPM1002BC(rBCG)を、周術期chemo-IOに組み合わせる治療戦略が検討された。本試験は、シスプラチン適格で根治的膀胱全摘術を予定するcT2-T4aN0-1 MIBCを対象とした、オープンラベル単群第II相試験である。rBCGはday 1、8、15に週1回計3回膀胱内注入され、アテゾリズマブ1,200mgはday 1から3週ごとに計4回投与された。ゲムシタビン+シスプラチン療法はday 22から3週ごとに4サイクル行われ、その後に根治的膀胱全摘術が実施された。術後病理でypT2以上またはypN陽性の場合には、アテゾリズマブを術後13サイクル追加する設定であった。主要評価項目は中央病理判定によるpCR(ypT0N0)であり、副次評価項目には病理学的奏効(PaR、ypT1N0以下)、EFS、OS、実施可能性、安全性が含まれた。2022年4月から2025年4月までにスイス国内10施設で47例が登録され、このうち40例が根治的膀胱全摘術を受けた。手術例の臨床病期はcT2が53%、cT3が37%、cT4が10%であり、cN1は12%であった。rBCGは95%の症例で投与され、78%が3回すべての投与を受けた。アテゾリズマブ4回投与は98%、プラチナ併用化学療法4サイクルは95%で実施され、20%ではカルボプラチンへ変更された。中央病理判定による手術例のpCR率は65%(26/40)、PaR率は80%(32/40)であり、登録例全体でみてもpCR率は55%(26/47)であった。治療関連有害事象は、rBCG関連では全Gradeが48%、Grade3が9%、アテゾリズマブ関連では全Gradeが55%、Grade3が15%、Grade4が2%、化学療法関連では全Gradeが98%、Grade3が38%、Grade4が17%であった。治療関連死亡は認められず、追跡期間中央値11.8ヵ月時点で1年EFS率は88%、1年OS率は95%であった。本試験は、chemo-IOにさらに膀胱内rBCGを加えることで、非常に高い病理学的奏効を示した。これは、従来の化学療法単独で期待されるpCR率27~33%を30%程度上回る数値でありChemo+IOで+10%程度、抗体薬物複合体製剤+IOで+20%程度であることを考慮すると、膀胱がんにおいて腫瘍局所の免疫賦活がいかに重要であるかを示唆する貴重な報告である。BCGにより膀胱局所の自然免疫・獲得免疫を刺激し、全身の免疫チェックポイント阻害薬および化学療法と相乗効果を狙うという発想は、MIBC治療開発の新たな方向性として興味深い。もちろん、本試験は単群第II相試験であり、NIAGARA試験やEV+ペムブロリズマブを用いた第III相試験との直接比較ではない。また、EFSやOSの追跡期間はまだ短く、pCRの高さが長期予後改善につながるかは今後の検証が必要である。それでも、MIBCにおいて局所免疫療法を全身治療に組み込むというコンセプトを示した点で、今後のランダム化比較試験や膀胱温存療法への応用に期待が膨らむ内容であった。目次に戻る

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EGFR-TKI後のNSCLC、ivonescimabがOSを改善/JAMA

 上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子の変異を有する進行非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療では、現在、第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)が標準治療であるが、獲得耐性は避けられず、EGFR-TKIの投与中に病勢が進行した患者は、耐性のメカニズムが不均一か不明であるため治療選択肢が限られている。中国・中山大学がんセンターのWenfeng Fang氏らHARMONi-A Study Investigatorsは「HARMONi-A試験」において、EGFR-TKI療法後のEGFR変異陽性NSCLC患者では、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)と血管内皮増殖因子(VEGF)の二重特異性抗体であるivonescimabと化学療法の併用は、化学療法単独と比較して、許容範囲内の安全性プロファイルを保持しつつ、全生存期間(OS)の統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善をもたらすことを示した。本研究の成果は、JAMA誌オンライン版2026年6月17日号で報告された。中国の無作為化プラセボ対照比較第III相試験 HARMONi-A試験は、中国の55施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照比較第III相試験(Akeso Biopharmaの助成を受けた)。 2022年1月25日~11月2日に、局所進行または転移のある非扁平上皮NSCLCでEGFR変異陽性と確認され、(1)第1または第2世代EGFR-TKI治療後にEGFR T790M変異陰性が確認された患者、または(2)第3世代EGFR-TKIを1次または2次治療として受けた患者を登録した。 被験者322例(年齢中央値59.4歳、女性51.6%)を、3週を1サイクルとし、1日目にivonescimab 20mg/kgを静脈内投与する群(161例)またはプラセボ群(161例)に無作為に割り付けた。全例に、ペメトレキセド+カルボプラチンによる化学療法を行った。これを4サイクル施行後、それぞれivonescimab+ペメトレキセドまたはプラセボ+ペメトレキセドによる維持療法を行った。 主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)であり、すでに中間解析の結果(ハザード比[HR]:0.46、p<0.001、中央値の群間差:2.3ヵ月)が報告されている。今回は、中間解析時から25ヵ月の追跡期間を経た時点での主な副次評価項目であるOSのデータが公表された。OS中央値はivonescimab群16.8ヵ月、プラセボ群14.1ヵ月 ベースラインにおいて、ivonescimab群の35例(21.7%)とプラセボ群の37例(23.0%)が脳転移を有していた。それぞれ139例(86.3%)と137例(85.1%)に、第3世代EGFR-TKIによる治療歴があった。追跡期間中央値は32.5ヵ月だった。 OS中央値は、プラセボ群14.1ヵ月に対し、ivonescimab群は16.8ヵ月と2.7ヵ月有意に長かった(層別HR:0.74、95%信頼区間[CI]:0.58~0.95、p=0.02)。 24ヵ月時のOS率は、ivonescimab群35.3%、プラセボ群28.8%であり、30ヵ月OS率は、それぞれ29.1%および18.4%であった。 また、ベースラインの脳転移の有無を問わず、ivonescimab群で生存に関する明確な有益性を認めた(脳転移ありHR:0.61[95%CI:0.37~1.03]、脳転移なしHR:0.77[95%CI:0.58~1.03])。安全性プロファイルは中間解析とほぼ一致 ivonescimab+化学療法の安全性プロファイルは、中間解析の結果や、化学療法、PD-1阻害薬、VEGF阻害薬の既知の毒性作用とほぼ一致していた。治療期間中に発生したGrade3以上の有害事象(67.1%vs.54.7%)およびGrade3以上の治療関連有害事象(59.6%vs.44.7%)は、プラセボ群よりivonescimab群で頻度が高かった。 治療期間中に発生した有害事象による治療中止は、ivonescimab群で11.8%、プラセボ群で8.1%に認められた。また、免疫関連有害事象はivonescimab群で多かった(29.2%vs.8.1%)が、免疫関連有害事象による治療中止はまれであり、両群間で同率だった(各1.2%)。 著者は、「ivonescimabによるOS中央値の改善は2.7ヵ月とわずかではあるが、2つの群の生存曲線はとくに後期の時点で大きく乖離し、30ヵ月時のOS率には10.7%ポイントの差を認めた」「これらの所見は、PD-1とVEGFの二重阻害と化学療法の併用が有効な治療戦略であることを立証するとともに、本研究の対象となった患者群において、ivonescimabと化学療法の併用が新たな治療選択肢となりうることを示すものである」としている。

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プラチナ抵抗性卵巣がんに対するrelacorilant+nab-パクリタキセル、タキサン既治療例でも良好な結果(ROSELLA試験)/ASCO2026

 プラチナ抵抗性再発卵巣がん(Platinum-Resistant Ovarian Cancer、以下PROC )に対するグルココルチコイド受容体拮抗薬relacorilantとnab-パクリタキセルの併用は、全集団およびタキサン既治療群において生存ベネフィットを示した。relacorilantの第III相試験であるROSELLA試験についてLucy Gilbert氏(カナダ・McGill University)が米国臨床腫瘍学会年次総会(2026 ASCO Annual Meeting)で発表した。 コルチゾールがグルココルチコイド受容体(GR)を介して伝えるシグナルは、腫瘍細胞の化学療法に対する感受性を低下させることが明らかとなっている1)。グルココルチコイド受容体拮抗薬であるrelacorilantは、がん細胞の化学療法への感受性を回復させる作用が期待されている。同試験では、PROC患者を対象に、標準治療の1つであり、事前の支持療法にステロイドを必要としないnab-パクリタキセルへのrelacorilantの上乗せ効果が検証された。・試験デザイン:国際共同第III相試験・対象:PROC患者(プラチナ最終投与から6ヵ月以内に進行)・試験群:nab-パクリタキセル 80mg/m2(28日サイクルの1・8・15日目)+relacorilant 150mg(nab-パクリタキセル投与の前日・当日・翌日[サイクル1の前日投与はなし]) 188例・対照群:nab-パクリタキセル 100mg/m2(28日サイクルの1・8・15日目) 193例・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)による無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)[副次評価項目]治験担当医によるPFS、奏効率、奏効期間、安全性など 主な結果は以下のとおり。・前治療ライン数3の患者が4割超、2以上の患者は9割を超えていた。・relacorilant+nab-パクリタキセル群は、BICR判定によるPFS、OS共に有意な改善を示した(PFSのハザード比[HR]:0.70、95%信頼区間[CI]:0.54~0.91、p=0.0076、OSのHR:0.65、95%CI:0.51~0.83、p=0.0004)。・OSのサブグループ解析において、タキサン既治療群では、relacorilant+nab-パクリタキセル群が対照群よりも良好な傾向を示した。タキサン既治療全集団のOSのHRは0.65(95%CI:0.51~0.83)、タキサンなし期間6ヵ月以下集団では0.6(同:0.31~1.15)、タキサンなし期間6ヵ月超集団では0.66(同:0.51~0.86)であった。・relacorilant+nab-パクリタキセル群の新たな安全性プロファイルは確認されなかった。同群で発現頻度の高い有害事象は好中球減少、貧血、倦怠感、悪心など化学療法由来のものが中心であった。 Gilbert氏は、今回の結果から、予後不良なPROC患者にとって、relacorilantはバイオマーカーによる患者選択を必要としない新たな治療選択肢となり得ると結論づけた。

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7月6日 ワクチンの日【今日は何の日?】

【7月6日 ワクチンの日】〔由来〕1885年の今日、細菌学者のルイ・パスツール(フランス)が開発した狂犬病ワクチンが、少年に接種されたことを記念し、ワクチンの大切さを多くの人に知ってもらうことを目的に日本ベクトン・ディッキンソンが制定。関連コンテンツ今、知っておきたいワクチンの話麻しん・おたふくかぜ・風しんの3種混合生ワクチン「ミムリット皮下注用」【最新!DI情報】ワクチン接種率向上のための介入、有効な要素は?/BMJ新規インフルワクチンの第III相試験、mRNA-1010 vs.従来型ワクチン/NEJM市中肺炎で検出された肺炎球菌、ワクチンカバー率は?/感染症学会・化学療法学会

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転移・再発乳がんへのパルボシクリブ、1次治療vs.2次治療~日本人大規模RWデータで検証

 HR+/HER2-転移・再発乳がん患者において、1次治療として内分泌療法とCDK4/6阻害薬の併用療法が推奨されている。一方で、1次治療の期間は長期にわたるため、CDK4/6阻害薬特有の有害事象や経済毒性は無視できない課題となっている。CDK4/6阻害薬の1次治療使用群と2次治療使用群を比較した第III相無作為化比較試験(SONIA試験)では、2次治療での使用の妥当性が示された。東京医科大学の石川 孝氏らは、パルボシクリブ治療に関する日本における大規模多施設共同前向き観察研究を実施。その結果、SONIA試験の知見をリアルワールドデータで支持する結果が得られ、パルボシクリブを2次治療で導入する治療戦略の妥当性が示された。Breast Cancer Research誌オンライン版2026年5月29日号掲載の報告。 本研究では、1次、2次、または3次治療としてパルボシクリブを使用する閉経後HR+/HER2-転移・再発乳がん患者を対象に、その有効性と安全性を検証した。主要評価項目は無増悪生存期間(PFS:パルボシクリブ投与開始から疾患進行または死亡まで)、副次評価項目は、PFS2(1次治療群ではパルボシクリブ投与開始から次治療で病勢進行が認められるまで、2次治療群では前治療のホルモン療法開始からパルボシクリブ投与後病勢進行が認められるまで)および有害事象などであった。 主な結果は以下のとおり。・2019年4月~2023年1月に593例(1次治療群246例、2次治療群282例、3次治療群65例)が組み入れられた。・年齢中央値は1次治療群、2次治療群、3次治療群でそれぞれ68歳、66歳、68歳であった。術前または術後化学療法はそれぞれ25.6%、55.0%、46.2%で実施されていた。内臓転移を有する患者はそれぞれ38.3%、58.9%、58.1%、骨病変のみを有する患者は1.7%、8.1%、4.7%であった。・PFS中央値は1次治療群、2次治療群、3次治療群でそれぞれ25.8ヵ月(95%信頼区間[CI]:21.4~未到達)、18.0ヵ月(95%CI:14.0~22.7)、および12.0ヵ月(95%CI:7.7~17.4)であった。・PFS2中央値は1次治療群、2次治療群でそれぞれ36.9ヵ月(95%CI:27.7~未到達)および57.9ヵ月(95%CI:43.4~65.3)であった。・2次治療群のPFS2中央値が1次治療群を大きく上回った要因として、2次治療群では内分泌療法単独で治療開始後、急速な病勢進行のため化学療法が選択されるなどの理由で、パルボシクリブ療法に移行できなかった症例が除外されているためと考えられた。そのため、SONIA試験のデータを参考に、そのような症例を補正した感度解析を実施した結果、1次治療群と2次治療群のPFS2は近似した。・Grade3以上の好中球減少症が70%で発現し、80%超でパルボシクリブ減量が行われていた。 現在、副次評価項目の1つである全生存期間(OS)の追跡調査が行われており、患者報告アウトカム(PRO)の解析結果と合わせて、今後報告される予定となっている。

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実測GFRおよび推定GFRと、死亡・腎不全との関連/JAMA

 スウェーデンの成人において、実測糸球体濾過量(mGFR)が60mL/分/1.73m2の場合、90mL/分/1.73m2と比較して全死因死亡率および腎不全の発生率が高く、慢性腎臓病(CKD)の定義に用いられる現在の推定GFR(eGFR)の閾値60mL/分/1.73m2が支持されることが示された。また、mGFRと死亡との関連は、血清クレアチニン(cr)値と血清シスタチンC(cys)値に基づき算出したeGFR(すなわちeGFRcr-cys)で最もよく反映されていたが、cr値に基づくeGFRcrは死亡リスクを過小評価し、cys値に基づくeGFRcysは過大評価となることが示された。オランダ・ライデン大学医療センターのEdouard L. Fu氏らが、後ろ向き観察コホート研究の結果を報告した。eGFRの低下は死亡および腎・心血管イベントの発生増加と関連しているが、腎機能評価の精度はmGFRよりも低いとみなされている。一方でmGFRとアウトカムの関連も依然として明らかになっていない。JAMA誌オンライン版2026年6月4日号掲載の報告。死亡・腎不全との関連を、mGFRとeGFRcr・eGFRcys・eGFRcr-cysで比較 研究グループは、2011年1月1日~2021年12月31日に、スウェーデンのストックホルムにおいて専門医の判断によりmGFR検査が施行され、mGFR測定から30日以内に血清クレアチニン値および血清シスタチンC値の測定が行われた18歳以上の成人6,174例を対象とした。 一般的に、mGFR検査の適応となる患者は、薬剤投与量決定のために正確なGFRを必要とする患者(がん化学療法など)、肝硬変患者、腎移植のレシピエントまたは生体腎ドナー、およびeGFRcrとeGFRcysが不一致の患者などで、これらに該当する患者を適格とした。透析を受けている患者、またはmGFRが0mL/分/1.73m2未満もしくは150mL/分/1.73m2超の患者は除外された。 mGFRは、カロリンスカ大学病院臨床化学部門において、イオヘキソール静脈内投与後の単回採血検体を用い、Jacobsson式による血漿クリアランスに基づき算出された。eGFRについては、慢性腎臓病疫学共同研究(Chronic Kidney Disease Epidemiology Collaboration:CKD-EPI)の2021年式を用いてeGFRcrおよびeGFRcr-cysを、2012年式を用いてeGFRcysを算出した。 主要アウトカムは、全死因死亡および腎代替療法(透析開始または腎移植と定義)を要する腎不全とし、各種GFR値とアウトカムとの関連を、年齢、性別、BMI値、既往歴、治療薬、および尿中アルブミン/クレアチニン比で補正したハザード比(HR)を用いて評価した。mGFRは死亡・腎不全の発生と有意に関連、mGFR評価とほぼ一致したのはeGFRcr-cys 解析対象6,174例の患者背景は、年齢中央値59歳(四分位範囲[IQR]:43~69)、男性3,686例(60%)、女性2,488例(40%)で、主な併存疾患は高血圧2,765例(45%)、がん1,998例(32%)、糖尿病1,244例(20%)、心不全651例(11%)であった。 追跡期間中央値5.9年(IQR:3.0~8.8)において、1,977例(32%)が死亡し、426例(6.9%)が腎代替療法を要する腎不全に至った。 全死因死亡率(1,000人年当たり)はベースラインのmGFR(mL/分/1.73m2)が90で22.4件に対し、60、45、30および15mL/分/1.73m2ではそれぞれ27.6件、32.5件、37.4件および42.7件、補正後HRはそれぞれ1.21(95%信頼区間[CI]:1.14~1.28)、1.41(95%CI:1.30~1.52)、1.62(95%CI:1.49~1.76)、1.85(95%CI:1.62~2.11)であり、mGFRの低下は全死因死亡の発生率の増加と有意に関連していた。 腎代替療法を要する腎不全についても同様で、mGFRの低下はその発生率の増加と関連しており、発生率(1,000人年当たり)はベースラインのmGFR(mL/分/1.73m2)90の0.4件に対して、60、45、30および15ではそれぞれ1.2件、3.6件、14.9件、72.2件へ増加し、補正後HRはそれぞれ2.85(95%CI:2.06~3.94)、8.77(95%CI:5.81~13.24)、38.5(95%CI:24.69~59.90)、200.3(95%CI:129.1~310.9)であった。 実測・推定GFR値が90mL/分/1.73m2未満の患者において、eGFRcrはmGFRと比較し死亡率との関連性を有意に過小評価していたのに対し(例:実測・推定GFR値60での死亡のハザード比の比[RHR]:0.87、95%CI:0.79~0.95)、eGFRcysはmGFRより死亡率との関連性を有意に過大評価していた(例:実測・推定GFR値60での死亡のRHR:1.17、95%CI:1.08~1.27)が、eGFRcr-cysはmGFRと差がなかった(例:実測・推定GFR値60でのRHR:1.03、95%CI:0.96~1.10など)。

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HER2陽性胃がんに対する二重特異性抗体薬zanidatamabの有用性―トラスツズマブとの比較試験(解説:上村直実氏)

 最近、分子標的薬を含む生物学的製剤の開発が進み、がん診療において効率の良い治療レジメンを選択するためにバイオマーカー検査が必須となっているが、胃がん治療でも「HER2」「PD-L1」「MSI」「Claudin18.2」の4つのバイオマーカー検査の確立に伴って切除不能胃がんに対する薬物療法が急激な変化を遂げている。HER2陽性胃がんに対する標準治療は、従来の化学療法に抗HER2モノクローナル抗体のトラスツズマブを追加した3剤併用療法が標準的1次治療として推奨されているが、今回、日本を含む33ヵ国の無作為化第III相試験の結果、2つの抗原を同時に標的とする二重HER2標的抗体薬であるzanidatamab+抗PD-1抗体チスレリズマブと化学療法の併用もしくはzanidatamab+化学療法の併用治療が、従来の標準治療であるトラスツズマブ+化学療法と比較して、無増悪生存期間(PFS)を有意に延長することが2026年5月のNEJM誌に報告された。 日本では、HER2陽性・PD-L1陽性の切除不能進行胃がん患者を対象にトラスツズマブ+抗PD-1抗体ペムブロリズマブ+化学療法の併用療法が昨年5月に承認されており、本研究は免疫療法の併用に加えてHER2標的治療そのものの質を高めるアプローチが企図された臨床試験といえる。この分野で先行している血液がんに対する抗体医薬は、すでにモノクローナル抗体から二重特異性抗体薬へと置き換わりつつある。二重特異性抗体薬はT細胞などの免疫細胞と腫瘍細胞とを近接化させて免疫攻撃を促進する機能や複数のシグナル経路を同時に制御して薬効が増強されることを期待する薬剤であり、最近では肺がんをはじめとする固形がんに対する二重特異性抗体薬の開発が進んでいる。 今回の研究結果から、固形がんに対する薬物療法においても二重特異性抗体薬の有用性が高くなることが期待されるが、二重特異性抗体薬の利点のみでなく課題も知っておく必要がある。すなわち、血液がんと違って固形がんの腫瘍不均一性による効果のばらつきに伴う混合反応性や過度の免疫活性化に伴うサイトカイン放出症候群、免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群、標的分子が発現している正常細胞を攻撃する可能性などが報告されており、今後、このような課題を解決しつつ、本研究のように二重特異性抗体と免疫チェックポイント阻害薬を用いた薬物治療がさらに改善することが期待される。

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初発または再発の進行dMMR/MSI-H子宮体がんにdostarlimab+化学療法は長期PFSベネフィットを維持(RUBY)/ASCO2026

 ミスマッチ修復機能欠損(dMMR)または高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)を有する初発または再発の進行子宮体がん患者に対し、dostarlimabと化学療法の併用療法は、長期にわたる無増悪生存(PFS)ベネフィットを維持した。また、混合治癒モデル(mixture cure model[MCM解析])による推定治癒割合は50%を超えることが示された。 この結果はENGOT-EN6-NSGO/GOG-3031/RUBY試験の4年長期追跡および治癒モデリングに関する事後解析によるもの。米国臨床腫瘍学会年次総会(2026 ASCO Annual Meeting)において、Matthew A. Powell氏(米国・ワシントン大学)が発表した。 同疾患に対するdostarlimabと化学療法(カルボプラチン+パクリタキセル[CP])の併用は、RUBY試験において全生存期間(OS)およびPFSの有意な改善を示したが1,2)、長期の結果や治癒可能性については明らかにされていなかった。・試験デザイン:国際共同無作為化二重盲検多施設共同第III相試験・対象:未治療または再発進行子宮体がん・試験群:dostarlimab+カルボプラチン+パクリタキセル 3週ごと6サイクル→dostarlimab 6週ごと3年以内(dostarlimab+CP群、245例)・対照群:プラセボ+カルボプラチン+パクリタキセル 3週ごと6サイクル→プラセボ 6週ごと3年以内(プラセボ+CP群、249例)・評価項目[主要評価項目]治験担当医評価のPFS、OS[副次評価項目]BICR評価のPFS、PFS2、全奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値55.6ヵ月となるdMMR/MSI-H集団の追加追跡の結果、プラセボ+CP群のPFS中央値7.7ヵ月に対し、dostarlimab+CP群は依然として未到達であることが示された(ハザード比[HR]:0.30、95%CI:0.17~0.52)。・48ヵ月PFS割合はプラセボ+CP群の15.7%に対し、dostarlimab+CP群は57.9%であった。・条件付きPFS解析の結果、1年間進行がなかった患者における1~4年の3年PFS割合は88.6%、2年間進行がなかった患者における2~4年の2年PFS割合は91.7%であった。・条件付きOS解析の結果、1年間生存した患者における1~4年の3年OS割合は84.0%、2年間生存患者における2~4年の2年OS割合は88.0%であった。・混合治癒モデルを用いて4年時点の長期生存患者の割合(cure rate)を解析したところ、プラセボ+CP群では14%、dostarlimab+CP群では54%と推定された。・dostarlimab+CP群の主な試験治療下における有害事象(TEAE)は、脱毛(50.0%)、疲労(46.2%)、悪心(46.2%)、末梢神経障害(42.3%)、関節痛(36.5%)などであり、同群でもっとも頻度の高い免疫関連有害事象(irAE)は甲状腺機能低下症で15.4%であった。 本試験結果はGynecologic Oncology誌2026年5月29日オンライン版に同時掲載されている。

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転移TN乳がん1次治療におけるDato-DXd、TROPION-Breast02の日本人サブ解析/日本乳癌学会

 免疫療法が適応とならない未治療の局所再発・切除不能/転移トリプルネガティブ乳がん(TNBC)を対象に、ダトポタマブ デルクステカン(Dato-DXd)の1次治療としての有効性と安全性を治験責任医師選択の化学療法(ICC)と比較した国際第III相TROPION-Breast02試験における日本で登録された38例での解析結果を、福島県立医科大学の佐治 重衡氏が第34回日本乳癌学会学術総会で報告した。 本試験では、ITT集団において全生存期間(OS)および盲検下独立中央判定(BICR)による無増悪生存期間(PFS)が、Dato-DXd群で有意な改善が認められたことがESMO2025で報告されている。・対象:免疫療法が適応とならない未治療の局所再発・切除不能/転移TNBC・試験群:Dato-DXd(3週ごと6mg/kg点滴静注)・対照群:ICC(パクリタキセル、nab-パクリタキセル、カペシタビン、エリブリン、カルボプラチンから選択)・評価項目:[主要評価項目]OS、BICRによるPFS[副次評価項目]治験担当医師評価によるPFS、BICRによる奏効率(ORR)、奏効期間(DoR)、安全性 主な結果は以下のとおり。・ITT集団644例のうち日本で登録された患者は38例(Dato-DXd群:17例、ICC群:21例)であった。・患者背景について、日本の集団ではICC群の選択薬剤がITT集団と比べてnab-パクリタキセルが少なく、多くの医師がパクリタキセルを選択していた。・BICRによるPFS中央値は、Dato-DXd群が15.0ヵ月とICC群の7.0ヵ月より改善し(ハザード比[HR]:0.45、95%信頼区間[CI]:0.19~1.01)、ITT集団と同様であった。・OS中央値は、Dato-DXd群24.0ヵ月、ICC群18.5ヵ月でITT集団とほぼ同様であった(HR:0.55、95%CI:0.22~1.30)。・BICRによるORRは、少数例ではあるもののDato-DXd群64.7%、ICC群23.8%であった。DoR中央値は順に、20.3ヵ月(95%CI:4.6~NR)と5.8ヵ月(同:4.2~NR)であった。・毒性について、治療関連有害事象(TRAE)による治療中止例はDato-DXd群が12%、ICC群が16%とICC群のほうが多かった。TRAEは、Dato-DXd群では脱毛、悪心、口内炎、角膜炎など眼症状が多く発現し、脱毛は全体集団に比べて日本の集団で多かった。 佐治氏は、「例数は少ないが、日本サブセットでもDato-DXdは効果および安全性ともITT集団と同様のデータが示された」とまとめ、「日本の患者においてもITT集団のデータを基に説明したり、投与することが可能」と述べた。

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進行・再発子宮体がん、ペムブロリズマブ+化学療法の長期OS結果(NRG-GY018)/ASCO2026

 進行または再発の子宮体がんに対し、ペムブロリズマブと化学療法の併用療法はミスマッチ修復機能欠損(dMMR)およびミスマッチ修復機能正常(pMMR)のいずれのコホートにおいても、標準的な化学療法単独と比較して長期的な全生存期間(OS)の改善効果を維持した。 第III相無作為化比較試験NRG-GY018の長期追跡によるOSおよび後治療に関する解析結果を米国臨床腫瘍学会年次総会(2026 ASCO Annual Meeting)において、Ramez N. Eskander氏(米国・カリフォルニア大学サンディエゴ校)が発表した。 ペムブロリズマブと化学療法の併用は、MMRステータスに関わらず無増悪生存期間(PFS)を統計学的に有意に改善することが同試験で示されている1)。今回の発表ではdMMRおよびpMMRコホートにおけるOSアップデートと後治療による影響に関する検証結果が報告された。・試験デザイン:第III相無作為化比較試験・対象:StageIII/IVまたは測定可能病変の有無を問わないStageIVB、あるいは再発病変を有する子宮体がん(術後補助化学療法歴がある場合は試験開始12ヵ月以上前に完了していること)・試験群:ペムブロリズマブ(200mg)+パクリタキセル(175mg/m2)+カルボプラチン(AUC 5)を3週ごと6サイクル投与後、維持療法としてペムブロリズマブ(400mg)を6週ごと最大14サイクル投与(ペムブロリズマブ群)・対照群:プラセボ+パクリタキセル(175mg/m2)+カルボプラチン(AUC 5)を3週ごと6サイクル投与後、維持療法としてプラセボを6週ごと最大14サイクル投与(プラセボ群)・評価項目:[主要評価項目]治験医師判定によるPFS[副次評価項目]dMMRおよびpMMRコホートにおけるOS、試験治療後のICI治療状況など 主な結果は以下のとおり。[dMMRコホート]・割り付けは222例、追跡期間中央値は49ヵ月であった。・OS中央値は両群ともに未到達であったが、プラセボ群と比較してペムブロリズマブ群は有意な改善を示した(ハザード比[HR]:0.56、95%信頼区間[CI]:0.34~0.92、p=0.0124)。48ヵ月OS割合はペムブロリズマブ群78.6%に対し、プラセボ群は60.4%であった。・進行後にICIによる治療を受けた割合はプラセボ群の93.2%に対し、ペムブロリズマブ群では34.1%であった。[pMMRコホート]・割り付けは588例、追跡期間中央値は44ヵ月であった。・OS中央値はプラセボ群の35.1ヵ月に対し、ペムブロリズマブ群は44.4ヵ月で、ペムブロリズマブ群で良好な傾向が維持されていた(HR:0.86、95%CI:0.69~1.08、p=0.1072)。・進⾏後にICI治療による後治療を受けた割合は、プラセボ群81.1%に対しペムブロリズマブ群では42.9%であった。 今回の長期追跡データにより、進行・再発子宮体がんにおけるペムブロリズマブ+化学療法のOSベネフィットが裏付けられた。プラセボ群において高頻度でICIによる後治療が行われたにもかかわらず、ペムブロリズマブの上乗せが持続的な⽣存改善をもたらすことが⽰されたとEskander氏は結んだ。

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monarchE試験、日本人サブグループの長期解析結果/日本乳癌学会

 HR+/HER2-でリンパ節転移陽性の高リスク早期乳がんに対する術後内分泌療法(ET)へのアベマシクリブ追加の有用性を検討したmonarchE試験では、浸潤疾患生存期間(iDFS)、無遠隔再発生存期間(DRFS)および全生存期間(OS)の統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善が示され、アベマシクリブ併用の内分泌療法は再発抑制のための重要な標準治療の1つとして推奨されている。今回、同試験に登録された日本人患者における長期(追跡期間中央値76ヵ月)の有効性および安全性を評価したサブグループ解析の結果を、中山 貴寛氏(大阪国際がんセンター)が第34回日本乳癌学会学術総会で発表した。・対象:リンパ節転移陽性で再発高リスクのHR+/HER2-早期乳がん患者[コホート1]リンパ節転移4個以上またはリンパ節転移1~3個でグレード3もしくは腫瘍径5cm以上[コホート2]リンパ節転移1~3個でKi-67値20%以上かつグレード1~2で腫瘍径5cm未満・試験群(アベマシクリブ+ET群):術後療法として、標準内分泌療法+アベマシクリブ150mg1日2回・対照群(ET単独群):標準内分泌療法単独・評価項目:[主要評価項目]iDFS[重要な副次評価項目]DRFS、OS、安全性など・データカットオフ:2025年7月15日 主な結果は以下のとおり。・日本人サブグループは377例が登録され、コホート1には344例、コホート2には33例が含まれた。アベマシクリブ+ET群に181例、ET単独群に196例が1対1の割合で無作為に割り付けられた。・ベースラインの患者特性は両群間でバランスがとれており、全体集団のプロファイルと類似していた。日本人サブグループの年齢中央値は、アベマシクリブ+ET群51.0歳vs.ET単独群49.0歳であった。閉経前が49.7%vs.50.0%、化学療法歴なしがともに7.7%、リンパ節転移数4個以上が61.9%vs.64.3%、Ki-67値20%以上が51.4%vs.55.6%であった。 ・追跡期間中央値60ヵ月時点におけるiDFSは、日本人サブグループのITT集団全体でアベマシクリブ+ET群83.8%vs.ET単独群75.8%(ハザード比[HR]:0.786、95%信頼区間[CI]:0.520~1.187)で、全体集団と同様にアベマシクリブ併用によるiDFSイベントリスク低減の持続的なベネフィットが確認された(全体集団:83.1%vs.76.5%、HR:0.786)。コホート1におけるiDFSについても、83.8%vs.74.7%(HR:0.786、95%CI:0.512~1.205)となり、全体集団同様アベマシクリブ+ET群で良好であった。・DRFSについても、日本人サブグループのITT集団全体でアベマシクリブ+ET群88.2%vs.ET単独群80.6%(HR:0.762、95%CI:0.482~1.204)、コホート1で88.0%vs.80.0%(HR:0.760、95%CI:0.476~1.215)と全体集団同様アベマシクリブ+ET群で良好であった。・追跡期間中央値76ヵ月時点におけるOSイベントはアベマシクリブ+ET群14例(7.7%)vs.ET単独群19例(9.7%)で発生し、イベント数は非常に少ないものの、HRは0.772(95%CI:0.387~1.541)であった。・アベマシクリブ+ET群における試験治療下における有害事象(TEAE)は、全Gradeが99.4%、Grade3以上が59.7%で認められたが、死亡例および肺炎は認められていない。また、43.6%で減量が行われていた。・2年間の試験治療完遂率は、アベマシクリブ+ET群88.4%(アベマシクリブのみの中止も含む)vs.ET単独群86.7%とアベマシクリブ追加による影響はみられず、アベマシクリブ+ET群でアベマシクリブも含み2年間の投与を完遂したのは72.9%であった。・安全性プロファイルは全体集団とおおむね一致していたが、アベマシクリブ+ET群において認められた全GradeのTEAEとしては、下痢(日本人サブグループ89.5%、全体集団83.5%)、好中球減少症(77.3%、46.0%)、貧血(35.9%、24.5%)、アラニンアミノトランスフェラーゼ増加(22.7%、12.6%)などが日本人サブグループで若干多い傾向がみられた。 中山氏は本結果について、日本人集団におけるアベマシクリブ+ET療法の有効性は全体集団と一貫しており、再発高リスク早期乳がん患者に対する臨床的ベネフィットが改めて示されたと述べた。安全性に関しては、日本人サブグループにおいて骨髄抑制や肝酵素増加について頻度が若干高かった点を指摘し、日常診療における適切なモニタリングや用量調整の重要性を強調した。

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ハイリスク患者の術前説明やリスク評価、どこまでやる? 術式選択の裁量はある?【医療訴訟の争点】第22回

症例本稿では、食道がん患者に対する手術前のリスク評価及び説明のあり方、さらに術後合併症発生後の再手術における術式選択の適否が争われた岡山地裁令和7年5月20日判決を紹介する。<登場人物>患者60歳・男性原告患者の妻及び子ら(相続人)被告地方独立行政法人(市民病院)、担当消化器外科医事案の概要は以下の通りである。平成29年(2017年)1月20日本件患者は他院に入通院してアルコール依存症治療中であったが、発熱、全身倦怠感、低栄養、腹水貯留等の精査加療目的で被告病院へ転院。2月6日上部消化管内視鏡検査により食道がん発見。その後の2月8日、体調を整えるため、もともと入院治療を受けていた病院に転院。2月22日食道がんの治療のため、被告病院へ再入院。2月23日担当医は本件患者に対し、食道がんの病状などについて以下を説明。食道がんは現時点ではStageIと考えられている。この場合、手術が最も確実な治療法であるが、手術が嫌なら放射線、化学療法の治療法もあること手術を行う場合の手術概要手術は患者の協力がなければできない、断酒、禁煙は当然であるが、呼吸訓練も含め努力していただきたいこともある、これらができないのであれば手術に伴うリスクは高くなる、どうするかについては家族とよく相談すること。3月8日担当医は本件患者及び家族に対し、食道がんに対する手術について、以下を説明。StageIの食道がん治療としては、手術、放射線+抗がん剤による治療法があること胸腔鏡下食道亜全摘術など(本件手術1)の手術時間は8時間前後、出血量は200~600mL、入院期間は3~4週間の見込みであること食道がんに対する手術のリスクについては、その合併症によって異なり、手術に関連した合併症による死亡率は2~3%。併存疾患によりその程度は変化するが、食道がん手術において術後の合併症で1番問題となるのは、呼吸器系、とりわけ胸水の貯留、無気肺、肺炎などの発症に起因する呼吸不全があり、一旦起こると長期の管理が必要となること消化管吻合(初回の手術は食道胃吻合術)における縫合不全の発症は、治癒が遷延することがあり、一旦発症すると唾液漏の形をとりなかなか治癒しないで厄介になり、縫合不全の合併症が生じるリスクは約10%であることそのほか、創部の感染、腸管麻痺による腸閉塞など、また健康人でも発症する心筋梗塞、脳卒中などが周術期に偶然発症することがあること3月10日午前9時頃から午後9時30分頃まで本件手術1が施行。患者にはアルコール性肝障害や腹水貯留などが認められていたが、担当医はICG負荷試験を実施しないまま手術が施行した。食道がん術後、人工呼吸管理中の重篤な状態であると判断され、ICUに入室した。3月12日午前6時ころ、心拍数上昇、血圧低下、胃管出血が認められ、循環動態が悪化。担当医は緊急再手術を決定し、午前8時頃から午後6時頃まで、止血術、胃管抜去及び食道再建術(本件手術2)を施行。本件手術2では、出血性ショック状態に近い状況下で、結腸再建及び空腸再建を含む長時間かつ高侵襲な再建術が実施された。3月16日午後4時30分頃、患者の状態はさらに悪化し、担当医は本件患者家族に対し、腸管気腫症が広範囲に発生しており広範囲に腸が壊死している可能性もあり得る、原因除去のための再手術は危険性は極めて大きいが、緊急手術が必要であると説明した上で、午後7時30分頃から午後10時頃にかけて再度の緊急手術(本件手術3)を施行。3月17日患者は多臓器不全により死亡。 実際の裁判結果本件では、以下が主な争点となった。(1)食道がん手術(本件手術1)前にICG負荷試験を実施しなかったこと及びその結果を踏まえた説明を行わなかったことが検査・説明義務違反に当たるか(2)その義務違反と死亡との間に相当因果関係が認められるか(3)術後出血に対する再手術(本件手術2)時に、食道切除と再建を別の機会に行う二期的再建術とするのではなく一期的再建術を選択したことが術式選択義務違反に当たるか(4)その義務違反と死亡との間に相当因果関係が認められるか争点(1)について裁判所は、争点(1)について、本件手術1当時の最新のガイドラインであった『食道癌診断・治療ガイドライン 第3版』(日本癌治療学会編、2012年4月発行)の記載や、関連する医学的知見を指摘した上で、「本件手術1が施行された平成29年3月当時、食道がんの治療方針決定のために、治療方針を患者へ提示し、診断根拠や診断過程などを説明するに当たっては、がんの進行度診断や病巣特性(悪性度)の把握のほか、全身状態の把握・評価が重要とされており、その中でも肝硬変症例については、患者の肝機能ないし肝予備能が保たれているかを確認・判定することが必要・重要であり、ICG負荷試験はそのための重要な検査と位置付けられ、かかる試験の結果、高い数値が出た場合には、術後合併症やそれによる死亡のリスクが高まると理解されていたものと認めるのが相当である」とした。そして、本件患者が、腹部CTで腹水や肝硬変が指摘されていたこと、アルブミン点滴で経過を見たものの、2週間が経っても腹水は減少しつつも依然として貯留していたこと、肝細胞の合成能障害を反映するChEは被告病院受診当初から手術前まで基準値を大幅に下回る値であったこと等を指摘し、「アルコール性の代償性肝硬変の疑いが強く、肝機能が低下していることを示す具体的な所見が認められていたのであり、肝機能ないし肝予備能が保たれているかを慎重に確認・判定する必要があったものというべきであった」とした。その上で、「食道がんに対する治療方針を提案・説明するに当たっては、肝機能ないし肝予備能が保たれているかを確認・把握するためにICG負荷試験を実施した上で、その結果を踏まえて、全身状態の評価、さらにはリスク評価をして、治療方針を本件患者に提示して説明をすべき注意義務を負っていたものと認めるのが相当」とし、特別な事情や理由もないまま、ICG負荷試験を実施せず、適切な全身状態の評価やリスク評価をしないまま、縫合不全になるリスクは10%程度、多臓器不全等で死亡するリスクが2ないし3%程度として、リスクを過小にとどめた説明をしたことに説明義務違反があるとした。争点(2)について裁判所は、本件手術1に先立ち、本件患者にICG負荷試験を実施した場合には、20%を超える相当に高い数値が出る蓋然性があったこと、その場合、本件手術1につき術後合併症発生率は80%以上であり、術後合併症死亡率は15~30%かそれ以上であること、手術以外の治療法として根治的化学放射線療法も適応があったことを指摘し、「これらの説明を受けていれば、本件患者においては、本件手術1をせずに根治的化学放射線療法ないしは放射線単独療法を選択していた高度の蓋然性があり、また、その場合、本件患者が死亡した3月17日時点でなお生存していた高度の蓋然性があると認めるのが相当である」として、説明義務違反と死亡との間の因果関係を認めた。争点(3)について食道切除と再建をそれぞれ分けて2回手術をするか、1回にまとめて手術をするかについて、裁判所は、関連する文献の記載を指摘した上で、「二期的分割手術の適応について明確な基準は確立しておらず、緊急再手術時にどのような方針で手術を行うかについては具体的状況によって対応するしかなく、原則として、手術に当たる医師の現場における合理的な裁量に委ねられるものというべきであるが、ただし、全身状態が悪く、耐術能が十分でないと判断される患者に対しては、一期的再建手術ではなく二期的分割手術を実施すべき場合もあるものと認めるのが相当である」とした。そして、本件患者はそもそも10時間以上にわたる本件手術1を受けてから本件手術2開始までに約35時間しか経っていない状態にあったこと、肝硬変であると確認されていたこと、重症の出血性ショックに陥り、複数の昇圧剤を継続的に大量投与しなければ循環動態等を保つことが困難な状態にあったことを指摘し、「本件患者の全身状態は悪く、耐術能が十分でないと判断される患者であり、その救命を最優先とすべき具体的状況にあったといわなければならない」とした。その上で、「高侵襲かつ長時間を要する一期的再建術から、侵襲の小さい二期的分割手術へと方針を変更するか否かを具体的に検討・判断しなければならなかった」として、「本件手術2の術中の本件患者の状態について、循環動態等を保つことが困難な重篤な状態にあり、救命が最優先であると評価すべきところ、出血については迅速にコントロールができ血圧も安定しているなどと合理性を欠く評価をし、これを前提として胃管抜去後、右側結腸再建及び有茎空腸再建等を行って9時間15分にわたって本件手術2を継続・実施したものであり、術者としての合理的な裁量を逸脱し、術式選択義務に違反したものと認めるのが相当」と判示し、術式選択義務違反を認めた。争点(4)について裁判所は、分割手術の死亡率が一期的手術よりも低い旨が報告されている文献を指摘し、「本件手術2において、再建術まで実施せず、胃管抜去後、食道瘻を造設し、栄養チューブを留置する等して再建術を実施せずに閉腹していれば、正午ころには手術を終えることができ、9時間15分もの長時間にわたり大量の昇圧剤を継続使用することや、結腸・空腸再建術に伴う高い侵襲を回避することができ、本件患者においては、循環不全、呼吸不全等を引き起こすことなく状態が安定していた高度の蓋然性があり、また、その場合、本件患者が死亡した3月17日時点でなお生存していた高度の蓋然性があると認めるのが相当」と判断し、術式選択義務違反と死亡との因果関係を認めた。損害等以上の結果、裁判所は病院及び担当医の責任を認め、患者妻に対して約2,812万円、その余の遺族に対して各55万円の支払を命じた。注意ポイント解説本件は、食道がん手術後に患者が死亡した事案であるが、裁判所が問題としたのは手術手技そのものではなく、「術前のリスク評価及び説明」と「術後合併症発生後の再手術時の術式選択(に関する医師の裁量)」であったが、それぞれ以下の点が注目される。1. 術前のリスク評価と説明について医療訴訟では、説明義務違反のみが認定される場合には自己決定権侵害の慰謝料のみが認められるにとどまり、死亡との因果関係が否定されることも少なくない。しかし本件では、手術以外に有効な代替治療が存在し、適切な説明があれば患者が手術を選択しなかった高度の蓋然性があるとして、死亡結果との因果関係まで認められた点が重要である。本件の裁判所がこのような判断を下した背景には、以下の点があると考えられる。本件患者にアルコール依存症の既往があり、画像検査上も肝硬変を疑わせる所見が存在し、さらに腹水貯留や低アルブミン血症等も認められていたことから、担当医は肝機能障害の存在を十分認識し得たと判断したこと。食道がん手術は消化器外科領域の中でも侵襲の大きい手術の一つであり、肝機能障害を有する患者では術後合併症や死亡リスクが上昇することは広く知られていること。当時の食道がん診療ガイドラインにおいて肝硬変症例に対する術前評価としてICG負荷試験が挙げられていたこと患者の食道がんがStageIであったことに加え、当時すでに根治的化学放射線療法が有力な治療選択肢として存在していたこと裁判所は、ICG負荷試験を実施しなかったこと自体を形式的に問題視したのではなく、肝硬変ないし肝機能障害が疑われる患者に対し、十分なリスク評価を行わないまま死亡率を2~3%程度と説明し、その結果、患者が危険な治療を選択してしまったことを問題視したといえる。したがって、然るべき検査をして適切なリスク評価をした上で、合併症や死亡のリスクを説明しなければ、患者の自己決定に必要な情報提供がなされたとは言えず、説明義務を果たしたとは認められないことを改めて認識する必要がある。2. 術式選択に関する医師の裁量について一般に術式選択は高度に専門的な医療判断であり、複数の合理的選択肢が存在する場合には裁量が広く認められる傾向があり、本判決もこのことを認める判示をしている。しかし本判決は、患者の全身状態、再手術時の循環動態、昇圧剤の使用状況、手術時間、侵襲度等を詳細に検討した上で、「救命を優先すべき局面であった」という事実認定をし、侵襲の大きい一期的再建術を選択したことを裁量の範囲外と評価した。かかる判断において裁判所は、長時間手術後わずか約35時間しか経過していない状況で、さらに約10時間近い再建術を実施したことについて、患者の耐術能との関係を厳しく検討しているが、これは「一期的再建術は危険だから違法である」としたものではなく、「極めてハイリスクな患者に対して救命より根治性を優先した判断」を問題としたものである。ここでは、術式選択について「どちらの術式が正しかったか」という議論ではなく、「当時の患者状態に照らして合理的な判断過程がとられていたか」が問題となっていると言えるため、医療機関としては、ハイリスク患者に対する治療方針決定の際には、カンファレンス記録、説明記録、診療録への記載等を通じて判断根拠を残しておくことが極めて重要である。とくに複数の合理的選択肢が存在する場面では、「なぜその選択肢を採用したのか」という思考過程を後から説明できる状態にしておくことが、訴訟対応上も重要になると言える。医療者の視点本件では、「術前評価の不備」と「術中の術式選択」の2点が問われています。術前評価については、ガイドライン上の基本的な検査であるICG負荷試験を省略し、客観的根拠に乏しい楽観的なリスク説明を行ったことが問題視されました。これは実臨床の感覚に照らしても、患者の自己決定権を担保する説明義務のあり方として不適切であり、裁判所の判断は妥当と受け止められます。一方で、術式選択における裁量逸脱の認定には、臨床現場の医師として悩ましさを覚えます。裁判所は、昇圧剤を大量に使用する重篤な状況下で、高侵襲な一期的再建術を継続したことを裁量逸脱と断じました。たしかに結果から見ればその通りですが、実際の緊急手術の現場では事情が複雑です。二期的再建を選択した場合、長期にわたる生活の質の低下や、癒着による将来の再建手術の困難さが予想されます。そのため、術中の出血がコントロールできていると術者が判断すれば、患者の将来を見据えて一期的に再建を完了させたいと考えるのは、十分にあり得る思考回路です。とはいえ、訴訟においては事後的な客観的データに基づき、救命最優先の局面であったと厳格に評価されます。実臨床で私たちが身を守るためには、ハイリスク症例において術前に最悪の事態を想定しておくことが不可欠です。どの状態に至ればダメージコントロールに切り替えるのか、チーム内で明確な撤退基準を共有し、それを診療録に記録しておく姿勢が求められます。Take home message治療法の説明は、然るべき検査をして適切なリスク評価をした上で行う必要がある。高侵襲手術においては、術式そのものだけでなく、術前リスク評価、代替治療を含めた説明内容、そして合併症発生時の意思決定過程までが後に検証対象となる。特にハイリスク症例においては、「なぜその治療を選択したのか」を説明できる診療録・説明記録を残しておくことが重要である。キーワード食道がん、周術期リスク評価、説明義務、ICG負荷試験、肝硬変合併症例、術後合併症、手術適応、術式選択、二期的再建術、医師の裁量、ハイリスク症例 、意思決定過程 、チームカンファレンス

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プラチナ感受性再発卵巣がんに対するmirvetuximab soravtansine+カルボプラチンの結果(MIROVA/AGO-OVAR 2.34)/ASCO2026

 プラチナ感受性進行再発卵巣がんに対し、新たな抗体薬物複合体(ADC)であるmirvetuximab soravtansine(MIRV)とカルボプラチンの併用療法が高い抗腫瘍効果を示した。しかし、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)の延長は示されなかった。 プラチナ感受性進行再発卵巣がんに対し、カルボプラチン・MIRV併用療法の実行可能性(feasibility)と有効性を評価する国際共同無作為化第II相試験の初回解析結果が米国臨床腫瘍学会年次総会(2026 ASCO Annual Meeting)で発表された。発表者はPhilipp Harter氏(ドイツ・Ev. Kliniken Essen-Mitte)。 MIRVは卵巣がんに高発現している葉酸受容体α(FRα)を標的としたADCである。同剤はプラチナ抵抗性のFRα高発現高悪性度漿液性卵巣がんにおいて、PFSおよび全生存期間(OS)の有意な改善を示している1)。 その一方で、プラチナ感受性卵巣がんにおけるカルボプラチンとの併用や維持療法としての役割、高悪性度漿液性以外の組織型における治療効果は十分に確立されていない。今回発表されたのは、FRα高発現のプラチナ感受性再発卵巣がんコホートにおける初回解析結果である。・試験デザイン:国際共同無作為化第II相試験・対象:既治療のFRα高発現進行再発卵巣がん、卵管がん、または腹膜がん(FRαパターンスコア2+、プラチナ最終治療から再発までの期間[TFIp]>3ヵ月)・試験群:カルボプラチン(AUC5)+MIRV 6mg/kg(調整理想体重)投与後にMIRVによる維持療法(MIRV併用群75例)・対照群:カルボプラチン+PLD、またはカルボプラチン+ゲムシタビン、カルボプラチン+パクリタキセル(1:1にランダム化)後に経過観察またはPARP阻害薬による維持療法(標準化学療法群70例)・評価項目:[主要評価項目]治験担当医師判定によるPFS[副次評価項目]安全性、客観的奏効率(ORR)、OS、QOLなど 主な結果は以下のとおり。・患者の組織型は高悪性度漿液性卵巣がんが標準化学療法群とMIRV併用群でそれぞれ85.7%と81.3%、BRCA野生型が87.1%と84.0%、前治療ライン数が1が54.3%と48.0%、ベバシズマブ既治療が75.7%と78.7%、PARP阻害薬既治療が70.0%と64.0%、TFIp>12ヵ月が67.1%と66.7%であった。・標準化学療法群では維持治療として42.9%にPARP阻害薬が投与されていた。・主要評価項目であるPFS中央値は、標準化学療法群で9.79ヵ月、MIRV併用群で9.53ヵ月で、両群に差は示されなかった(ハザード比[HR]: 1.0、95%信頼区間:0.68~1.46、p=0.996)。・ORRは標準化学療法群32.8%(CR 4.3%、PR 24.3%)に対し、MIRV併用群では66.2%(CR 4.0%、PR 58.7%)とMIRV併用群で高かった。・サブグループ解析を見ると、前治療ライン数1(HR:0.64)、同1~2(HR:0.76)、BRCA変異陽性(HR:0.45)集団でMIRV併用群に良好な傾向がみられたが、前治療ライン数2超の集団では標準化学療法群が良好であった(HR:5.73)。・全般的なQOL評価では両群に差は認められなかったが、サブグループを見ると悪心・嘔吐、食欲不振、末梢神経障害ではMIRV併用群が不良であった。・MIRV群で頻度の高い有害事象(AE)は、神経障害(53%)、霧視(49%)、血小板減少症(47%)、悪心(41%)などであった。・MIRV併用群における毒性による治療中止は22.7%であった。 MIROVA試験において、高いORRを示したが、主要評価項目であるPFSの延長には反映されなかった。末梢神経障害から、維持療法のMIRV用量(6mg/kg)が最適か否かを検証するFLORENZA試験が進行中である。さらに、患者集団背景を均一にした国際共同臨床試験(GOG-3078/ENGOT-ov76/GLORIOSA試験)も現在進行中である。

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IDH1変異陽性胆道がんに対するイボシデニブ、国内初のIDH1阻害薬として承認/日本セルヴィエ

 日本セルヴィエは2026年6月19日、IDH1遺伝子変異陽性の切除不能な胆道がんを対象として、イボシデニブ(商品名:ティブソボ)の適応追加承認を取得したと発表した。適応は「がん化学療法後に増悪したIDH1遺伝子変異陽性の治癒切除不能な胆道癌」であり、国内初のIDH1遺伝子変異を標的とした胆道がん治療薬となる。 胆道がんは胆管がん、胆嚢がん、十二指腸乳頭部がんからなり、多くが進行期に診断されるため予後不良である。なかでも肝内胆管がんは近年国内で増加傾向にあり、10~20%の症例にIDH1遺伝子変異が認められると報告されている。これまで国内では、胆道がんに対するIDH1変異標的薬は承認されておらず、2次治療以降の選択肢は限られていた。 今回の承認は、IDH1遺伝子変異陽性の既治療切除不能または転移のある胆管がん患者を対象とした国際第III相試験「ClarIDHy試験」および日本人患者を対象とした国内第II相試験(CL2-95031-008試験)の結果に基づく。 ClarIDHy試験は185例を対象とした無作為化二重盲検プラセボ対照試験で、患者はイボシデニブ500mg群またはプラセボ群に2:1で割り付けられた。主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)は、イボシデニブ群で中央値2.7ヵ月、プラセボ群で1.4ヵ月となり、有意な改善が示された(ハザード比[HR]:0.37、95%信頼区間[CI]:0.25~0.54、p<0.0001)。 一方、副次評価項目の全生存期間(OS)は、イボシデニブ群10.3ヵ月、プラセボ群7.5ヵ月で統計学的に有意な延長は認められなかった。しかし、本試験ではプラセボ群患者の70.5%が病勢進行後にイボシデニブへクロスオーバーしており、その影響を補正した解析ではOS中央値はプラセボ群5.1ヵ月となり、イボシデニブ群は死亡リスクを51%低減した(HR:0.49、95%CI:0.34~0.70、p<0.0001)。 安全性解析対象166例における副作用発現率は62.7%であった。主な副作用は下痢(21.1%)、悪心(20.5%)、疲労(16.9%)、嘔吐(8.4%)、食欲減退(7.2%)、頭痛(6.0%)、心電図QT延長(5.4%)などであり、既報と大きな差異は認められなかった。 イボシデニブは2025年3月にIDH1遺伝子変異陽性急性骨髄性白血病(AML)に対する適応で国内承認を取得しており、今回の適応追加により固形がん領域へ保険適用が拡大した。胆道がんでは近年、FGFR2融合遺伝子やRET融合遺伝子など、分子異常に基づく治療開発が進んでいる。今回のイボシデニブ承認は、IDH1変異を標的とした国内初の治療選択肢となり、次世代シークエンシング(NGS)を用いたがん遺伝子パネル検査などの臨床的重要性をさらに高めるものとなる。【製品情報】商品名:ティブソボ錠250mg一般名:イボシデニブ効能・効果:IDH1遺伝子変異陽性の急性骨髄性白血病がん化学療法後に増悪したIDH1遺伝子変異陽性の治癒切除不能な胆道癌用法・用量:通常、成人にはイボシデニブとして1日1回500mgを経口投与する。

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ASCO2026 レポート 先端研究・希少がん

レポーター紹介[目次]SARC041試験(第III相試験)PEAK試験(第III相試験)StrateGIST 1試験(第I/Ib相試験)RINGSIDE試験(第III相試験)EMITT-1試験【Abstract LBA2】SARC041試験(第III相試験):脱分化型脂肪肉腫に対するCDK4/6阻害薬アベマシクリブの有効性を検証進行・再発脱分化型脂肪肉腫(dedifferentiated liposarcoma:DDLPS)に対し、CDK4/6阻害薬であるアベマシクリブがプラセボと比較して無増悪生存期間(PFS)を有意に延長することが報告された。DDLPSでは12番染色体長腕(12q13-15)の増幅が高頻度に認められる。その部位にはCDK4やMDM2遺伝子増幅が認められる。そのため、CDK4阻害が治療として期待され、過去、単群の第II相試験が実施され、有効性が示唆されていた。本試験は、DDLPSにおいて第III相比較試験でCDK4阻害薬がpositiveな結果を示した点で重要である。本試験は、進行・再発または転移のあるDDLPS患者を対象とした第III相ランダム化二重盲検プラセボ対照試験であり、患者をアベマシクリブ200mg 1日2回内服群またはプラセボ群に1:1で割り付けた。適格基準として前化学療法歴の有無は問わなかった。主要評価項目はPFSであり、病勢進行後にはプラセボ群からアベマシクリブへのクロスオーバーが許容された。主要評価項目であるPFS中央値は、アベマシクリブ群9.7ヵ月、プラセボ群1.5ヵ月であり、アベマシクリブ群で統計学的に有意な延長を認めた(ハザード比[HR]:0.38、p<0.001)。6ヵ月PFS率は60%vs.22%、12ヵ月PFS率は39%vs.13%であった。奏効率はアベマシクリブ群9%、プラセボ群0%であった。全生存期間(OS)については、中央値はアベマシクリブ群で未到達、プラセボ群で25.5ヵ月であり、統計学的有意差には至らなかったものの、アベマシクリブ群で良好な傾向を認めた(HR:0.55、p=0.07)。プラセボ群の85%が病勢進行後にアベマシクリブへクロスオーバーしていた。探索的な解析であるが、前化学療法歴なしの患者のPFS中央値は16.4ヵ月、ありの患者では5.3ヵ月であった。安全性については、アベマシクリブで既知の有害事象プロファイルとおおむね一致していた。主な有害事象は、下痢、血球減少、貧血、白血球減少、クレアチニン上昇などであり、用量減量を要した症例はアベマシクリブ群で39%であった。本試験の結果から、アベマシクリブは進行・再発DDLPSにおける新たな治療選択肢となると考える。一方、本試験は海外の臨床試験グループにより実施されたものであり、日本ですぐに使用可能な状況とはならない。今後、日本での治療開発も期待される。目次に戻る【Abstract 11500】PEAK試験(第III相試験):イマチニブ治療後GISTに対するbezuclastinib+スニチニブ併用療法の有効性イマチニブ治療後の進行消化管間質腫瘍(GIST)に対し、KIT阻害薬であるbezuclastinibとスニチニブの併用療法が、現在の標準的2次治療であるスニチニブ単剤と比較してPFSを有意に延長することが、PEAK試験の結果として報告された。GISTでは、1次治療のイマチニブ後に耐性機構としてKITの2次変異が出現することが知られており、exon13/14やexon17/18変異がその代表である。現在の標準的な2次治療はスニチニブであるが、スニチニブはexon13/14への阻害活性が高い一方、exon17/18への阻害活性が乏しい。bezuclastinibは次世代のKIT阻害薬であり、exon17/18への阻害活性を有している。両者を併用することで広範にKIT変異をカバーする意義を検討したのが本試験である。本試験は、イマチニブ抵抗性または不耐の進行GIST患者を対象とした国際共同第III相ランダム化試験である。主要評価項目であるPFS中央値は、bezuclastinib+スニチニブ群16.5ヵ月、スニチニブ単剤群9.2ヵ月であり、併用群で統計学的に有意な延長を認めた(HR:0.50、p<0.0001)。PFSのサブグループ解析では、exon17/18変異、exon13/14変異、またKITの1次変異であるexon9、exon11変異の状況にかかわらず、全体的に併用群で良好であった。奏効率も併用群46%、スニチニブ単剤群26%と、併用群で高い腫瘍縮小効果が示された。OSは、データカットオフの時点でイベント数が20%未満であり、現時点でimmatureであった。PFS2においても併用群に良好な傾向が示された。安全性については、bezuclastinib+スニチニブ併用による新たな安全性シグナルは認められず、全体としてスニチニブの既知の安全性プロファイルとおおむね一致していた。Grade3以上の主な有害事象としては、高血圧、好中球減少、肝機能上昇、貧血、下痢などが報告された。ALT/AST上昇は併用群で多い傾向があるものの、多くは可逆的で管理可能とされた。本試験では、イマチニブ治療後GISTにおいて、スニチニブ単剤に対してbezuclastinib+スニチニブ併用療法が明確な優越性を示した。新たな標準治療候補となる可能性が高い。現在、FDAではpriority review(優先審査)となっている。本試験に日本は参加しておらず、今後日本での本治療開発が期待される。目次に戻る【Abstract 11501】StrateGIST 1試験(第I/Ib相試験):進行GISTに対する新規KIT阻害薬velzatinibの1次・2次治療における有効性の示唆先に記載したPEAK試験に続き、同セッションで本StrateGIST 1試験が発表された。進行・再発または切除不能のGISTに対し、新規KIT阻害薬であるvelzatinib(IDRX-42)が、1次治療および2次治療のいずれにおいても有望な抗腫瘍活性と忍容性を示すことが報告された。velzatinibは、新規KIT阻害薬を創出する目的でexon13変異を対象としたハイスループットスクリーニングとその後の最適化のステップを経て開発された経緯がある(Blum A, et al. J Med Chem. 2023;66:2386-2395.)。velzatinibはexon14変異以外の1次、2次KIT変異に対して高い阻害活性を有する。StrateGIST 1試験は、進行GIST患者を対象としたfirst-in-humanの第I/Ib相試験であり、今回の解析では推奨第Ib相用量であるvelzatinib 300mg錠または曝露量が同等となる400mgカプセルを投与された1次治療例および2次治療例が評価された。対象は、KITまたはPDGFRAに変異を有する進行・再発または切除不能GIST患者であり、1次治療コホートでは未治療例、2次治療コホートでは主にイマチニブ治療後の患者が含まれた。有効性評価可能例は、1次治療コホート23例、2次治療コホート46例であった。1次治療コホートでは、未確定奏効率は65%、確定奏効率は56%であり、多くの症例で腫瘍縮小が認められた。最大腫瘍縮小までの期間は中央値8.1ヵ月であり、データカットオフ時点で83%の患者が治療継続中であった。観察期間中央値は7.4ヵ月であり、PFSはimmatureであった。観察期間はまだ限られるものの、初回治療として高い腫瘍縮小効果と持続的な病勢制御が期待される結果である。2次治療コホートでは、未確定奏効率は40%、確定奏効率は33%であり、PFS中央値は13.7ヵ月であった。安全性については、1次・2次治療例73例の解析において、治療関連有害事象(TRAE)は95%に認められ、Grade3以上のTRAEは33%であった。有害事象による治療中止は5%、用量減量は21%であり、全体として管理可能な安全性プロファイルであった。主な有害事象は、下痢、悪心、味覚異常、好中球減少、倦怠感、胃食道逆流症、貧血、食欲低下、腹痛、嘔吐などであった。Grade3以上では好中球減少や貧血が比較的多く認められており、血液毒性のモニタリングは重要と考えられる。本試験は単群の第I/Ib相試験であり、現時点で標準治療に影響があるものではない。しかし、velzatinibは1次治療では高い奏効率、2次治療ではPFS中央値13.7ヵ月という有望な成績を示しており、次世代KIT阻害薬として期待される。イマチニブ後の2次治療においては、スニチニブとの比較第III相試験であるStrateGIST 3試験が進行中である。一方で、1次治療としての位置付けについては、イマチニブとの比較試験や長期安全性、耐性変異出現パターンの検討が今後の課題である。目次に戻る【Abstract 11506】RINGSIDE試験(第III相試験):進行性デスモイド腫瘍に対するγセクレターゼ阻害薬varegacestatの有効性進行性デスモイド腫瘍に対し、経口γセクレターゼ阻害薬であるvaregacestatがプラセボと比較して主要評価項目であるPFSを有意に改善することが、RINGSIDE試験の結果として報告された。デスモイド腫瘍は遠隔転移を来さないものの、局所浸潤性が強く、疼痛、機能障害、臓器障害を引き起こす中間悪性度の肉腫である。デスモイド腫瘍では、APCやβカテニンの変異によるWntシグナルの活性化が生じている。一方、Notchシグナルも腫瘍の病態に寄与している可能性が報告されている。DeFi試験では別のγセクレターゼ阻害薬であるnirogacestatの有効性が示され、FDAで承認されている。本試験は、新規のγセクレターゼ阻害薬であるvaregacestatについて検証したものである。RINGSIDE試験は、進行性デスモイド腫瘍患者156例を対象とした国際共同第III相ランダム化二重盲検プラセボ対照試験であり、varegacestat 1.2mg 1日1回投与とプラセボが比較された。主要評価項目は独立中央判定によるPFSであり、主な副次評価項目としてRECIST v1.1に基づく奏効率、腫瘍体積変化、患者報告アウトカムによる疼痛評価などが設定された。主要評価項目であるPFSについて、varegacestatはプラセボと比較して病勢進行または死亡リスクを84%低下させた(HR:0.16、p<0.0001)。このPFS改善効果は、腫瘍部位、ベースライン腫瘍サイズ、年齢、前治療歴などのサブグループにおいても一貫していた。奏効率はvaregacestat群56%、プラセボ群9%であり、腫瘍縮小効果も明確に示された。さらに、疼痛スコアは投与開始後早期から改善し、12週時点で臨床的にも意味のある疼痛軽減が認められた。安全性については、全体としてγセクレターゼ阻害薬で予想される有害事象プロファイルと一致していた。主な有害事象は、下痢、倦怠感、皮疹、悪心、咳嗽などであり、多くはGrade1または2であった。一方、閉経前女性では卵巣機能に関連する有害事象が一定割合で認められており、若年女性に投与する際には妊孕性や月経異常に関する説明とモニタリングが重要である。また、有害事象による用量減量や中止も一定数みられており、長期投与を前提とした副作用管理が必要となる。本試験の結果から、varegacestatは進行性デスモイド腫瘍に対する有力な新規治療選択肢となる可能性がある。とくに、PFSのみならず、奏効率、腫瘍体積、疼痛という患者にとって臨床的意義の高い評価項目を同時に改善した点は重要である。一方で、すでに同じγセクレターゼ阻害薬であるnirogacestatの臨床的位置付けが確立しつつあるため、今後は、有効性、安全性、卵巣機能への影響、投与スケジュール、患者背景ごとの使い分けが課題となる。現在、日本ではnirogacestatの単群の第II相試験が実施され、募集終了となっている(jRCT2031250269)。目次に戻る【Abstract 2500】EMITT-1試験:ERAP1阻害薬GRWD5769とセミプリマブ併用による抗腫瘍免疫再活性化の可能性免疫チェックポイント阻害薬に抵抗性を示した複数の固形がんに対し、経口ERAP1阻害薬GRWD5769と抗PD-1抗体セミプリマブの併用療法が、早期臨床試験ながら複数のがん種で抗腫瘍活性を示したことが、EMITT-1試験の第Ib相拡大コホートの結果として報告された。免疫チェックポイント阻害薬抵抗性の克服は重要課題である。ERAP1はMHC class Iに提示されるペプチドレパートリーの形成に関与する酵素である。ERAP1阻害により腫瘍細胞表面に提示される抗原ペプチドが変化し、T細胞による腫瘍認識を再誘導することが期待される。GRWD5769はfirst-in-classの経口ERAP1阻害薬であり、腫瘍の抗原提示を変化させることで、免疫チェックポイント阻害薬抵抗性を克服するという新しい免疫治療アプローチである。EMITT-1試験は、GRWD5769とセミプリマブ併用療法を評価する第I/II相試験であり、第Ib相拡大コホートでは、非小細胞肺がん、尿路上皮がん、肝細胞がん、MSS大腸がん、子宮頸がん、頭頸部扁平上皮がんの6コホートが検討された。多くの症例は既治療歴を有し、MSS大腸がんを除き、抗PD-1療法に対する2次抵抗性を示した患者が対象とされた。有効性については、各コホートで奏効率13~36%が報告された。尿路上皮がんでは奏効率36%、非小細胞肺がんでは21%、肝細胞がんでは14%、MSS大腸がんでは17%、子宮頸がんでは14%、頭頸部扁平上皮がんでは13%であった。また、6ヵ月以上の奏効または安定を含むdurable clinical benefitも複数のコホートで認められ、非小細胞肺がんおよびMSS大腸がんではPFS中央値が33週と報告された。とくに、MSS大腸がんは一般に免疫チェックポイント阻害薬単独では有効性が乏しい集団であり、本併用療法のシグナルは注目される。安全性については、全体として忍容性は良好であり、新たな安全性シグナルは認められなかった。多くの有害事象はGrade1であり、免疫関連有害事象も限定的であった。本試験は早期相試験であり、対象患者数も限られているため、現時点で標準治療を変える結果ではない。しかし、ERAP1阻害による抗原提示改変という新しい治療戦略が、臨床的にも抗腫瘍活性を示しうることを示した点で意義が大きい。今後は、ランダム化第II相試験での検証、奏効予測バイオマーカーの同定、がん種別の最適な対象集団の絞り込みが重要となる。目次に戻る

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