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ASCO2026 レポート 泌尿器腫瘍

レポーター紹介[目次]PROTEUS試験TALAPRO-3試験RAMPART試験SARC041試験SAKK 06/19試験米国臨床腫瘍学会(American Society of Clinical Oncology;ASCO)の年1回の総会は、今年も米国イリノイ州シカゴで開催され、2026年は5月29日から6月2日まで5日間の日程で行われた。昨今の円安はさらに進み、5月29日時点で1ドル=160円前後と、現地参加へのモチベーションをそぐには十分な水準であり、今年もオンラインでの参加を選択した。泌尿器腫瘍領域では、前立腺がんを中心に、Oral Abstract Session、Rapid Oral Abstract Session、Poster Sessionで多数の演題が報告された。毎年の目玉であるPlenary SessionにはPractice changingな演題が選出されるが、今年は高リスク限局性/局所進行前立腺がんに対する周術期アパルタミド+ADTを検証したPROTEUS試験がLBA1として選出され、泌尿器腫瘍領域にとっても注目度の高い総会となった。今年のASCOでは、手術を中心とした限局性前立腺がん治療への全身療法の導入に加え、転移を有する前立腺がんにおける分子異常に基づく治療強化、腎細胞がん術後補助療法における免疫療法の位置付けなど、日常診療への影響を考えさせる報告が相次いだ。また、しばしば後腹膜腫瘍として携わる脱分化型脂肪肉腫に対する新たなエビデンスとして、アベマシクリブのSARC041試験もPlenary Sessionで報告された。膀胱がんの免疫併用療法の新時代を感じさせる報告も含め、PROTEUS、TALAPRO-3、RAMPART、SARC041、SAKK 06/19の5演題を取り上げて報告する。目次に戻るPlenary Session 前立腺がん#LBA1 高リスク限局性/局所進行前立腺がんに対する周術期アパルタミド+ADTは病理学的奏効とMFSを改善(PROTEUS試験)Perioperative(neoadjuvant and adjuvant) apalutamide(APA)+androgen deprivation therapy(ADT)vs placebo(PBO)+ADT with radical prostatectomy(RP) in high-risk localized or locally advanced prostate cancer(HR LPC/LAPC): Final analysis of the PROTEUS phase 3 study.Mary-Ellen Taplin(Dana-Farber Cancer Institute, Boston, MA, United States)高リスク限局性/局所進行前立腺がんでは、根治的前立腺全摘術後も一定割合で再発や遠隔転移を来すが、手術に全身療法を組み合わせる周術期治療は標準治療として確立していなかった。PROTEUS試験は、根治的前立腺全摘術を予定する高リスク限局性/局所進行前立腺がんを対象に、術前6サイクルおよび術後6サイクルのアパルタミド+ADTとプラセボ+ADTを比較した国際共同二重盲検ランダム化比較第III相試験である。主要評価項目は、病理学的完全奏効または微小残存病変(pCR/MRD)および中央判定による無転移生存期間(MFS)であった。2,109例が登録され、追跡期間中央値約5年時点で、pCR/MRDはアパルタミド+ADT群で8.9%、プラセボ+ADT群で1.0%(オッズ比:10.17、p<0.0001)と有意に改善した。5年MFS率は78.2%と73.5%であり、ハザード比[HR]:0.80(95%信頼区間[CI]:0.67~0.96、p=0.02)と、遠隔転移または死亡リスクを20%低下させた。無イベント生存期間(EFS)も57.1ヵ月と38.4ヵ月で延長し、次治療開始までの期間も約3年遅延したと報告された。Grade 3/4有害事象は39.6%と31.0%で、主な差は皮疹などアパルタミドに関連する毒性であった。本試験は、手術を予定する高リスク前立腺がんにおいて、周術期のアンドロゲン受容体経路阻害薬+ADTが病理学的奏効だけでなくMFSも改善することを示した初の第III相試験であり、前立腺がん周術期治療の考え方を変える報告であった。日本でもアパルタミドは転移を有する去勢感受性前立腺がん(mHSPC)および転移のない去勢抵抗性前立腺がん(nmCRPC)で使用可能であり、本試験に日本人も含まれており承認される可能性が高い。高リスク限局性前立腺がんの治療は放射線治療も選択肢となり、PROTEUS試験では従来非切除アプローチを優先してきたN1症例も含まれる。術前においても泌尿器科と腫瘍内科、放射線治療科が連携して全身療法を検討する流れが必要かもしれない。本試験の結果を解釈するためのハードルは以下の3点である。1.現在の標準治療である手術単独との比較ではなく両群にADTが行われていたこと2.試験参加およびフォローアップにPSMA-PETが用いられていたこと3.全生存期間(OS)は主要/副次評価項目に入っていないこと、また、この治療を適用するに当たり術後治療まで行う必要性があるかどうか目次に戻るOral abstract session 前立腺、精巣、陰茎#LBA5007 HRR遺伝子異常を有するmHSPCに対するタラゾパリブ+エンザルタミドはrPFSを延長(TALAPRO-3試験)TALAPRO-3: Talazoparib(TALA)+enzalutamide(ENZA) compared with placebo (PBO)+ENZA for the treatment of patients(pts) with metastatic castration-sensitive prostate cancer(mCSPC) harboring homologous recombination repair(HRR) gene alterations.Neeraj Agarwal(Huntsman Cancer Institute[NCI-CCC], University of Utah, Salt Lake City, UT)タラゾパリブはPARP阻害薬であり、エンザルタミドとの併用は転移を有する去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)を対象としたTALAPRO-2試験で有効性が示されている。ASCO2026では、この併用療法をmHSPCに前倒しし、HRR遺伝子異常を有する症例に対象を絞って検証したTALAPRO-3試験(NCT04821622)の結果が報告された。本試験は国際共同二重盲検ランダム化比較第III相試験で、対象となるHRR遺伝子はATM、ATR、BRCA1、BRCA2、CDK12、CHEK2、FANCA、MLH1、MRE11A、NBN、PALB2、RAD51Cの12遺伝子であった。患者はタラゾパリブ+エンザルタミド+ADT群とプラセボ+エンザルタミド+ADT群にランダム化され、主要評価項目は治験担当医判定による画像上の無増悪生存期間(rPFS)であった。599例が登録され、84%がde novo転移、71%がhigh-volume diseaseであり、アジア人は約39%を占めていた。rPFSはタラゾパリブ群で有意に改善し、3年rPFS率は77%と56%、HR:0.48(95%CI:0.36~0.65、p<0.001)であった。BRCA変異例ではHR:0.37、non-BRCA HRR変異例でもHR:0.57と、一貫した改善が示された。OSは中間解析時点でHR:0.77(95%CI:0.56~1.04)と未成熟であった。安全性については、重篤な有害事象はタラゾパリブ群42%、対照群32%であり、Grade3/4の貧血は51%、輸血は40%に認められた。TALAPRO-3試験は、mHSPCにおいてHRR陽性集団をPARP阻害薬併用による治療強化の対象として確立した試験である。日本人を含む試験であり、承認されればmHSPC診断時からHRR検査を行い、分子異常に基づいて初回治療を選択する診療へ移行する可能性がある。一方で、治療期間が長くなりうるmHSPCでは、貧血を中心とした血液毒性管理と、OS成熟後のベネフィットの評価が今後の課題である。目次に戻るClinical Science Symposium -腎&膀胱-#LBA4511 切除後腎細胞がんに対する術後デュルバルマブ単剤はDFSを有意に改善せず(RAMPART試験)Durvalumab monotherapy versus active monitoring for resected primary renal cell carcinoma in RAMPART: An international, phase 3, randomized controlled trial. James Larkin(The Royal Marsden NHS Foundation Trust, London, United Kingdom)腎細胞がんに対する術後補助療法では、KEYNOTE-564試験によりペムブロリズマブが無病生存期間(DFS)およびOSを改善し、日本でも再発リスクの高い淡明細胞型腎細胞がんに対する標準治療となっている。一方、術後免疫療法の有効性は試験間で一貫しておらず、免疫チェックポイント阻害薬の種類や併用療法の意義は重要な臨床疑問であった。RAMPART試験は、腎摘除後に再発リスクを有する腎細胞がんを対象に、active monitoring、デュルバルマブ単剤、デュルバルマブ+トレメリムマブを比較した国際共同ランダム化比較第III相試験である。対象はLeibovich scoreで中間または高リスク、あるいは完全切除後(M1 NED)症例で、主要評価項目はDFSであった。ASCO2026では、デュルバルマブ単剤とactive monitoringの比較結果が報告された。追跡期間中央値3.5年時点で、3年DFS率はデュルバルマブ単剤群78%、active monitoring群72%であり、HR:0.74(95%CI:0.53~1.04、片側p=0.041)と数値上は改善したものの、事前に規定された有意水準には到達しなかった。一方、既報のデュルバルマブ+トレメリムマブ群では、3年DFS率80%と72%、HR:0.65(95%CI:0.45~0.93、片側p=0.0094)と有意な改善を認めた。OSは未成熟であり、3年OS率はデュルバルマブ+トレメリムマブ群96%、デュルバルマブ単剤群98%、active monitoring群96%で、明らかな差は認められていない。安全性では、Grade3/4有害事象はデュルバルマブ+トレメリムマブ群41%、デュルバルマブ単剤群30%、active monitoring群9%であり、重篤な有害事象はそれぞれ34%、19%、6%であった。まれではあるが、致死的な免疫関連有害事象として重症筋無力症や心筋炎も報告された。RAMPART試験は、デュルバルマブ単剤を術後補助療法の新たな標準とする結果ではなかった。一方で、CTLA-4抗体を加えた併用療法ではDFS改善が示され、とくに高リスクまたはM1 NED症例で利益が大きい可能性がある。日本の日常診療では、すでにOS延長を示したペムブロリズマブ術後療法が標準であり、RAMPARTの結果をただちに診療へ反映する場面は限られるが、術後補助免疫療法におけるリスク選択、併用療法の意義、毒性とのバランスを再考させる重要な報告であった。目次に戻るPlenary Session 脱分化型脂肪肉腫#LBA2 進行脱分化型脂肪肉腫に対するアベマシクリブはPFSを有意に延長(SARC041試験)SARC041: A phase 3 randomized double-blind study of abemaciclib versus placebo in patients with advanced dedifferentiated liposarcoma.Mark Dickson(Memorial Sloan Kettering Cancer Center, New York, NY)脱分化型脂肪肉腫(dedifferentiated liposarcoma;DDLS)は、後腹膜原発として診療に携わることも多いまれな軟部肉腫であり、再発・転移例では薬物療法の選択肢が限られている。DDLSではCDK4を含む12番染色体領域の増幅が高頻度に認められることから、CDK4/6阻害薬による治療開発が進められてきた。SARC041試験は、再発または転移を有するDDLSを対象に、アベマシクリブとプラセボを比較した二重盲検ランダム化第III相試験である。アベマシクリブは日本では乳がんに対して使用されている経口CDK4/6阻害薬であり、連日投与可能であることが特徴である。本試験では、進行DDLS 108例がアベマシクリブ200mg 1日2回またはプラセボに1:1で割り付けられた。ベースラインで前治療歴0の患者が両群で約50%ずつ含まれた。主要評価項目はPFSであり、病勢進行後はプラセボ群からアベマシクリブへのクロスオーバーが許容された。PFS中央値はアベマシクリブ群9.7ヵ月、プラセボ群1.5ヵ月であり、HR:0.38、p<0.001と有意な延長が示された。6ヵ月PFS率は60%と22%、12ヵ月PFS率は39%と13%であった。奏効率は9%と高くはないものの、プラセボ群では奏効例がなく、DDLSにおいて病勢制御を得る治療としての意義が示された。OS中央値はアベマシクリブ群で未到達、プラセボ群で25.5ヵ月、HR:0.55、p=0.07であり、プラセボ群の85%がクロスオーバーしたことを踏まえると良好な傾向であった。有害事象は下痢、血球減少、悪心など、既知のアベマシクリブの安全性プロファイルに沿うものであった。アベマシクリブ群の39%で減量を要したが、忍容性は管理可能と報告された。SARC041試験は、DDLSにおいて初めて明確なPFS改善を示した第III相試験であり、希少肉腫における分子標的治療の開発として重要な報告であった。ただし、本試験では腫瘍量が多く緊急に細胞障害性化学療法を要する症例や、プラセボ対照試験に適さないほど急速に進行する症例は除外されており、ドキソルビシンなど既存の細胞障害性化学療法に置き換わる治療と位置付けるには慎重な解釈が必要である。また、米国のみで行われた試験であり、日本を含め各国で承認を得られるかどうかは不透明である。目次に戻るOral abstract session -腎&膀胱-#4503 筋層浸潤性膀胱がんに対する膀胱内rBCG+chemo-IO周術期治療は高いpCR率を示す(SAKK 06/19試験)Intravesical recombinant BCG combined with chemo-immunotherapy (chemo-IO) as perioperative therapy for patients with muscle-invasive bladder cancer (MIBC): Primary analysis of SAKK 06/19.Richard Cathomas(Division of Oncology, Cantonal Hospital Graubunden, Chur, Switzerland)筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)では、根治的膀胱全摘術にシスプラチン併用術前化学療法を組み合わせることが標準治療であり、近年はNIAGARA試験により周術期化学療法と免疫療法の併用(chemo-IO)の有効性も示されている。一方で、pCR率はなお十分とはいえず、さらなる治療強化の余地がある。BCG膀胱内注入療法は筋層非浸潤性膀胱がんで広く用いられ、局所免疫反応を誘導する治療であるが、MIBCに対する使用は全身性合併症への懸念もあり十分に検討されてこなかった。SAKK 06/19試験では、免疫原性の増強と安全性改善を目的に開発された組換えBCGワクチンVPM1002BC(rBCG)を、周術期chemo-IOに組み合わせる治療戦略が検討された。本試験は、シスプラチン適格で根治的膀胱全摘術を予定するcT2-T4aN0-1 MIBCを対象とした、オープンラベル単群第II相試験である。rBCGはday 1、8、15に週1回計3回膀胱内注入され、アテゾリズマブ1,200mgはday 1から3週ごとに計4回投与された。ゲムシタビン+シスプラチン療法はday 22から3週ごとに4サイクル行われ、その後に根治的膀胱全摘術が実施された。術後病理でypT2以上またはypN陽性の場合には、アテゾリズマブを術後13サイクル追加する設定であった。主要評価項目は中央病理判定によるpCR(ypT0N0)であり、副次評価項目には病理学的奏効(PaR、ypT1N0以下)、EFS、OS、実施可能性、安全性が含まれた。2022年4月から2025年4月までにスイス国内10施設で47例が登録され、このうち40例が根治的膀胱全摘術を受けた。手術例の臨床病期はcT2が53%、cT3が37%、cT4が10%であり、cN1は12%であった。rBCGは95%の症例で投与され、78%が3回すべての投与を受けた。アテゾリズマブ4回投与は98%、プラチナ併用化学療法4サイクルは95%で実施され、20%ではカルボプラチンへ変更された。中央病理判定による手術例のpCR率は65%(26/40)、PaR率は80%(32/40)であり、登録例全体でみてもpCR率は55%(26/47)であった。治療関連有害事象は、rBCG関連では全Gradeが48%、Grade3が9%、アテゾリズマブ関連では全Gradeが55%、Grade3が15%、Grade4が2%、化学療法関連では全Gradeが98%、Grade3が38%、Grade4が17%であった。治療関連死亡は認められず、追跡期間中央値11.8ヵ月時点で1年EFS率は88%、1年OS率は95%であった。本試験は、chemo-IOにさらに膀胱内rBCGを加えることで、非常に高い病理学的奏効を示した。これは、従来の化学療法単独で期待されるpCR率27~33%を30%程度上回る数値でありChemo+IOで+10%程度、抗体薬物複合体製剤+IOで+20%程度であることを考慮すると、膀胱がんにおいて腫瘍局所の免疫賦活がいかに重要であるかを示唆する貴重な報告である。BCGにより膀胱局所の自然免疫・獲得免疫を刺激し、全身の免疫チェックポイント阻害薬および化学療法と相乗効果を狙うという発想は、MIBC治療開発の新たな方向性として興味深い。もちろん、本試験は単群第II相試験であり、NIAGARA試験やEV+ペムブロリズマブを用いた第III相試験との直接比較ではない。また、EFSやOSの追跡期間はまだ短く、pCRの高さが長期予後改善につながるかは今後の検証が必要である。それでも、MIBCにおいて局所免疫療法を全身治療に組み込むというコンセプトを示した点で、今後のランダム化比較試験や膀胱温存療法への応用に期待が膨らむ内容であった。目次に戻る

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EGFR-TKI後のNSCLC、ivonescimabがOSを改善/JAMA

 上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子の変異を有する進行非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療では、現在、第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)が標準治療であるが、獲得耐性は避けられず、EGFR-TKIの投与中に病勢が進行した患者は、耐性のメカニズムが不均一か不明であるため治療選択肢が限られている。中国・中山大学がんセンターのWenfeng Fang氏らHARMONi-A Study Investigatorsは「HARMONi-A試験」において、EGFR-TKI療法後のEGFR変異陽性NSCLC患者では、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)と血管内皮増殖因子(VEGF)の二重特異性抗体であるivonescimabと化学療法の併用は、化学療法単独と比較して、許容範囲内の安全性プロファイルを保持しつつ、全生存期間(OS)の統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善をもたらすことを示した。本研究の成果は、JAMA誌オンライン版2026年6月17日号で報告された。中国の無作為化プラセボ対照比較第III相試験 HARMONi-A試験は、中国の55施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照比較第III相試験(Akeso Biopharmaの助成を受けた)。 2022年1月25日~11月2日に、局所進行または転移のある非扁平上皮NSCLCでEGFR変異陽性と確認され、(1)第1または第2世代EGFR-TKI治療後にEGFR T790M変異陰性が確認された患者、または(2)第3世代EGFR-TKIを1次または2次治療として受けた患者を登録した。 被験者322例(年齢中央値59.4歳、女性51.6%)を、3週を1サイクルとし、1日目にivonescimab 20mg/kgを静脈内投与する群(161例)またはプラセボ群(161例)に無作為に割り付けた。全例に、ペメトレキセド+カルボプラチンによる化学療法を行った。これを4サイクル施行後、それぞれivonescimab+ペメトレキセドまたはプラセボ+ペメトレキセドによる維持療法を行った。 主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)であり、すでに中間解析の結果(ハザード比[HR]:0.46、p<0.001、中央値の群間差:2.3ヵ月)が報告されている。今回は、中間解析時から25ヵ月の追跡期間を経た時点での主な副次評価項目であるOSのデータが公表された。OS中央値はivonescimab群16.8ヵ月、プラセボ群14.1ヵ月 ベースラインにおいて、ivonescimab群の35例(21.7%)とプラセボ群の37例(23.0%)が脳転移を有していた。それぞれ139例(86.3%)と137例(85.1%)に、第3世代EGFR-TKIによる治療歴があった。追跡期間中央値は32.5ヵ月だった。 OS中央値は、プラセボ群14.1ヵ月に対し、ivonescimab群は16.8ヵ月と2.7ヵ月有意に長かった(層別HR:0.74、95%信頼区間[CI]:0.58~0.95、p=0.02)。 24ヵ月時のOS率は、ivonescimab群35.3%、プラセボ群28.8%であり、30ヵ月OS率は、それぞれ29.1%および18.4%であった。 また、ベースラインの脳転移の有無を問わず、ivonescimab群で生存に関する明確な有益性を認めた(脳転移ありHR:0.61[95%CI:0.37~1.03]、脳転移なしHR:0.77[95%CI:0.58~1.03])。安全性プロファイルは中間解析とほぼ一致 ivonescimab+化学療法の安全性プロファイルは、中間解析の結果や、化学療法、PD-1阻害薬、VEGF阻害薬の既知の毒性作用とほぼ一致していた。治療期間中に発生したGrade3以上の有害事象(67.1%vs.54.7%)およびGrade3以上の治療関連有害事象(59.6%vs.44.7%)は、プラセボ群よりivonescimab群で頻度が高かった。 治療期間中に発生した有害事象による治療中止は、ivonescimab群で11.8%、プラセボ群で8.1%に認められた。また、免疫関連有害事象はivonescimab群で多かった(29.2%vs.8.1%)が、免疫関連有害事象による治療中止はまれであり、両群間で同率だった(各1.2%)。 著者は、「ivonescimabによるOS中央値の改善は2.7ヵ月とわずかではあるが、2つの群の生存曲線はとくに後期の時点で大きく乖離し、30ヵ月時のOS率には10.7%ポイントの差を認めた」「これらの所見は、PD-1とVEGFの二重阻害と化学療法の併用が有効な治療戦略であることを立証するとともに、本研究の対象となった患者群において、ivonescimabと化学療法の併用が新たな治療選択肢となりうることを示すものである」としている。

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プラチナ抵抗性卵巣がんに対するrelacorilant+nab-パクリタキセル、タキサン既治療例でも良好な結果(ROSELLA試験)/ASCO2026

 プラチナ抵抗性再発卵巣がん(Platinum-Resistant Ovarian Cancer、以下PROC )に対するグルココルチコイド受容体拮抗薬relacorilantとnab-パクリタキセルの併用は、全集団およびタキサン既治療群において生存ベネフィットを示した。relacorilantの第III相試験であるROSELLA試験についてLucy Gilbert氏(カナダ・McGill University)が米国臨床腫瘍学会年次総会(2026 ASCO Annual Meeting)で発表した。 コルチゾールがグルココルチコイド受容体(GR)を介して伝えるシグナルは、腫瘍細胞の化学療法に対する感受性を低下させることが明らかとなっている1)。グルココルチコイド受容体拮抗薬であるrelacorilantは、がん細胞の化学療法への感受性を回復させる作用が期待されている。同試験では、PROC患者を対象に、標準治療の1つであり、事前の支持療法にステロイドを必要としないnab-パクリタキセルへのrelacorilantの上乗せ効果が検証された。・試験デザイン:国際共同第III相試験・対象:PROC患者(プラチナ最終投与から6ヵ月以内に進行)・試験群:nab-パクリタキセル 80mg/m2(28日サイクルの1・8・15日目)+relacorilant 150mg(nab-パクリタキセル投与の前日・当日・翌日[サイクル1の前日投与はなし]) 188例・対照群:nab-パクリタキセル 100mg/m2(28日サイクルの1・8・15日目) 193例・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)による無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)[副次評価項目]治験担当医によるPFS、奏効率、奏効期間、安全性など 主な結果は以下のとおり。・前治療ライン数3の患者が4割超、2以上の患者は9割を超えていた。・relacorilant+nab-パクリタキセル群は、BICR判定によるPFS、OS共に有意な改善を示した(PFSのハザード比[HR]:0.70、95%信頼区間[CI]:0.54~0.91、p=0.0076、OSのHR:0.65、95%CI:0.51~0.83、p=0.0004)。・OSのサブグループ解析において、タキサン既治療群では、relacorilant+nab-パクリタキセル群が対照群よりも良好な傾向を示した。タキサン既治療全集団のOSのHRは0.65(95%CI:0.51~0.83)、タキサンなし期間6ヵ月以下集団では0.6(同:0.31~1.15)、タキサンなし期間6ヵ月超集団では0.66(同:0.51~0.86)であった。・relacorilant+nab-パクリタキセル群の新たな安全性プロファイルは確認されなかった。同群で発現頻度の高い有害事象は好中球減少、貧血、倦怠感、悪心など化学療法由来のものが中心であった。 Gilbert氏は、今回の結果から、予後不良なPROC患者にとって、relacorilantはバイオマーカーによる患者選択を必要としない新たな治療選択肢となり得ると結論づけた。

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7月6日 ワクチンの日【今日は何の日?】

【7月6日 ワクチンの日】〔由来〕1885年の今日、細菌学者のルイ・パスツール(フランス)が開発した狂犬病ワクチンが、少年に接種されたことを記念し、ワクチンの大切さを多くの人に知ってもらうことを目的に日本ベクトン・ディッキンソンが制定。関連コンテンツ今、知っておきたいワクチンの話麻しん・おたふくかぜ・風しんの3種混合生ワクチン「ミムリット皮下注用」【最新!DI情報】ワクチン接種率向上のための介入、有効な要素は?/BMJ新規インフルワクチンの第III相試験、mRNA-1010 vs.従来型ワクチン/NEJM市中肺炎で検出された肺炎球菌、ワクチンカバー率は?/感染症学会・化学療法学会

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転移・再発乳がんへのパルボシクリブ、1次治療vs.2次治療~日本人大規模RWデータで検証

 HR+/HER2-転移・再発乳がん患者において、1次治療として内分泌療法とCDK4/6阻害薬の併用療法が推奨されている。一方で、1次治療の期間は長期にわたるため、CDK4/6阻害薬特有の有害事象や経済毒性は無視できない課題となっている。CDK4/6阻害薬の1次治療使用群と2次治療使用群を比較した第III相無作為化比較試験(SONIA試験)では、2次治療での使用の妥当性が示された。東京医科大学の石川 孝氏らは、パルボシクリブ治療に関する日本における大規模多施設共同前向き観察研究を実施。その結果、SONIA試験の知見をリアルワールドデータで支持する結果が得られ、パルボシクリブを2次治療で導入する治療戦略の妥当性が示された。Breast Cancer Research誌オンライン版2026年5月29日号掲載の報告。 本研究では、1次、2次、または3次治療としてパルボシクリブを使用する閉経後HR+/HER2-転移・再発乳がん患者を対象に、その有効性と安全性を検証した。主要評価項目は無増悪生存期間(PFS:パルボシクリブ投与開始から疾患進行または死亡まで)、副次評価項目は、PFS2(1次治療群ではパルボシクリブ投与開始から次治療で病勢進行が認められるまで、2次治療群では前治療のホルモン療法開始からパルボシクリブ投与後病勢進行が認められるまで)および有害事象などであった。 主な結果は以下のとおり。・2019年4月~2023年1月に593例(1次治療群246例、2次治療群282例、3次治療群65例)が組み入れられた。・年齢中央値は1次治療群、2次治療群、3次治療群でそれぞれ68歳、66歳、68歳であった。術前または術後化学療法はそれぞれ25.6%、55.0%、46.2%で実施されていた。内臓転移を有する患者はそれぞれ38.3%、58.9%、58.1%、骨病変のみを有する患者は1.7%、8.1%、4.7%であった。・PFS中央値は1次治療群、2次治療群、3次治療群でそれぞれ25.8ヵ月(95%信頼区間[CI]:21.4~未到達)、18.0ヵ月(95%CI:14.0~22.7)、および12.0ヵ月(95%CI:7.7~17.4)であった。・PFS2中央値は1次治療群、2次治療群でそれぞれ36.9ヵ月(95%CI:27.7~未到達)および57.9ヵ月(95%CI:43.4~65.3)であった。・2次治療群のPFS2中央値が1次治療群を大きく上回った要因として、2次治療群では内分泌療法単独で治療開始後、急速な病勢進行のため化学療法が選択されるなどの理由で、パルボシクリブ療法に移行できなかった症例が除外されているためと考えられた。そのため、SONIA試験のデータを参考に、そのような症例を補正した感度解析を実施した結果、1次治療群と2次治療群のPFS2は近似した。・Grade3以上の好中球減少症が70%で発現し、80%超でパルボシクリブ減量が行われていた。 現在、副次評価項目の1つである全生存期間(OS)の追跡調査が行われており、患者報告アウトカム(PRO)の解析結果と合わせて、今後報告される予定となっている。

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実測GFRおよび推定GFRと、死亡・腎不全との関連/JAMA

 スウェーデンの成人において、実測糸球体濾過量(mGFR)が60mL/分/1.73m2の場合、90mL/分/1.73m2と比較して全死因死亡率および腎不全の発生率が高く、慢性腎臓病(CKD)の定義に用いられる現在の推定GFR(eGFR)の閾値60mL/分/1.73m2が支持されることが示された。また、mGFRと死亡との関連は、血清クレアチニン(cr)値と血清シスタチンC(cys)値に基づき算出したeGFR(すなわちeGFRcr-cys)で最もよく反映されていたが、cr値に基づくeGFRcrは死亡リスクを過小評価し、cys値に基づくeGFRcysは過大評価となることが示された。オランダ・ライデン大学医療センターのEdouard L. Fu氏らが、後ろ向き観察コホート研究の結果を報告した。eGFRの低下は死亡および腎・心血管イベントの発生増加と関連しているが、腎機能評価の精度はmGFRよりも低いとみなされている。一方でmGFRとアウトカムの関連も依然として明らかになっていない。JAMA誌オンライン版2026年6月4日号掲載の報告。死亡・腎不全との関連を、mGFRとeGFRcr・eGFRcys・eGFRcr-cysで比較 研究グループは、2011年1月1日~2021年12月31日に、スウェーデンのストックホルムにおいて専門医の判断によりmGFR検査が施行され、mGFR測定から30日以内に血清クレアチニン値および血清シスタチンC値の測定が行われた18歳以上の成人6,174例を対象とした。 一般的に、mGFR検査の適応となる患者は、薬剤投与量決定のために正確なGFRを必要とする患者(がん化学療法など)、肝硬変患者、腎移植のレシピエントまたは生体腎ドナー、およびeGFRcrとeGFRcysが不一致の患者などで、これらに該当する患者を適格とした。透析を受けている患者、またはmGFRが0mL/分/1.73m2未満もしくは150mL/分/1.73m2超の患者は除外された。 mGFRは、カロリンスカ大学病院臨床化学部門において、イオヘキソール静脈内投与後の単回採血検体を用い、Jacobsson式による血漿クリアランスに基づき算出された。eGFRについては、慢性腎臓病疫学共同研究(Chronic Kidney Disease Epidemiology Collaboration:CKD-EPI)の2021年式を用いてeGFRcrおよびeGFRcr-cysを、2012年式を用いてeGFRcysを算出した。 主要アウトカムは、全死因死亡および腎代替療法(透析開始または腎移植と定義)を要する腎不全とし、各種GFR値とアウトカムとの関連を、年齢、性別、BMI値、既往歴、治療薬、および尿中アルブミン/クレアチニン比で補正したハザード比(HR)を用いて評価した。mGFRは死亡・腎不全の発生と有意に関連、mGFR評価とほぼ一致したのはeGFRcr-cys 解析対象6,174例の患者背景は、年齢中央値59歳(四分位範囲[IQR]:43~69)、男性3,686例(60%)、女性2,488例(40%)で、主な併存疾患は高血圧2,765例(45%)、がん1,998例(32%)、糖尿病1,244例(20%)、心不全651例(11%)であった。 追跡期間中央値5.9年(IQR:3.0~8.8)において、1,977例(32%)が死亡し、426例(6.9%)が腎代替療法を要する腎不全に至った。 全死因死亡率(1,000人年当たり)はベースラインのmGFR(mL/分/1.73m2)が90で22.4件に対し、60、45、30および15mL/分/1.73m2ではそれぞれ27.6件、32.5件、37.4件および42.7件、補正後HRはそれぞれ1.21(95%信頼区間[CI]:1.14~1.28)、1.41(95%CI:1.30~1.52)、1.62(95%CI:1.49~1.76)、1.85(95%CI:1.62~2.11)であり、mGFRの低下は全死因死亡の発生率の増加と有意に関連していた。 腎代替療法を要する腎不全についても同様で、mGFRの低下はその発生率の増加と関連しており、発生率(1,000人年当たり)はベースラインのmGFR(mL/分/1.73m2)90の0.4件に対して、60、45、30および15ではそれぞれ1.2件、3.6件、14.9件、72.2件へ増加し、補正後HRはそれぞれ2.85(95%CI:2.06~3.94)、8.77(95%CI:5.81~13.24)、38.5(95%CI:24.69~59.90)、200.3(95%CI:129.1~310.9)であった。 実測・推定GFR値が90mL/分/1.73m2未満の患者において、eGFRcrはmGFRと比較し死亡率との関連性を有意に過小評価していたのに対し(例:実測・推定GFR値60での死亡のハザード比の比[RHR]:0.87、95%CI:0.79~0.95)、eGFRcysはmGFRより死亡率との関連性を有意に過大評価していた(例:実測・推定GFR値60での死亡のRHR:1.17、95%CI:1.08~1.27)が、eGFRcr-cysはmGFRと差がなかった(例:実測・推定GFR値60でのRHR:1.03、95%CI:0.96~1.10など)。

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HER2陽性胃がんに対する二重特異性抗体薬zanidatamabの有用性―トラスツズマブとの比較試験(解説:上村直実氏)

 最近、分子標的薬を含む生物学的製剤の開発が進み、がん診療において効率の良い治療レジメンを選択するためにバイオマーカー検査が必須となっているが、胃がん治療でも「HER2」「PD-L1」「MSI」「Claudin18.2」の4つのバイオマーカー検査の確立に伴って切除不能胃がんに対する薬物療法が急激な変化を遂げている。HER2陽性胃がんに対する標準治療は、従来の化学療法に抗HER2モノクローナル抗体のトラスツズマブを追加した3剤併用療法が標準的1次治療として推奨されているが、今回、日本を含む33ヵ国の無作為化第III相試験の結果、2つの抗原を同時に標的とする二重HER2標的抗体薬であるzanidatamab+抗PD-1抗体チスレリズマブと化学療法の併用もしくはzanidatamab+化学療法の併用治療が、従来の標準治療であるトラスツズマブ+化学療法と比較して、無増悪生存期間(PFS)を有意に延長することが2026年5月のNEJM誌に報告された。 日本では、HER2陽性・PD-L1陽性の切除不能進行胃がん患者を対象にトラスツズマブ+抗PD-1抗体ペムブロリズマブ+化学療法の併用療法が昨年5月に承認されており、本研究は免疫療法の併用に加えてHER2標的治療そのものの質を高めるアプローチが企図された臨床試験といえる。この分野で先行している血液がんに対する抗体医薬は、すでにモノクローナル抗体から二重特異性抗体薬へと置き換わりつつある。二重特異性抗体薬はT細胞などの免疫細胞と腫瘍細胞とを近接化させて免疫攻撃を促進する機能や複数のシグナル経路を同時に制御して薬効が増強されることを期待する薬剤であり、最近では肺がんをはじめとする固形がんに対する二重特異性抗体薬の開発が進んでいる。 今回の研究結果から、固形がんに対する薬物療法においても二重特異性抗体薬の有用性が高くなることが期待されるが、二重特異性抗体薬の利点のみでなく課題も知っておく必要がある。すなわち、血液がんと違って固形がんの腫瘍不均一性による効果のばらつきに伴う混合反応性や過度の免疫活性化に伴うサイトカイン放出症候群、免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群、標的分子が発現している正常細胞を攻撃する可能性などが報告されており、今後、このような課題を解決しつつ、本研究のように二重特異性抗体と免疫チェックポイント阻害薬を用いた薬物治療がさらに改善することが期待される。

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初発または再発の進行dMMR/MSI-H子宮体がんにdostarlimab+化学療法は長期PFSベネフィットを維持(RUBY)/ASCO2026

 ミスマッチ修復機能欠損(dMMR)または高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)を有する初発または再発の進行子宮体がん患者に対し、dostarlimabと化学療法の併用療法は、長期にわたる無増悪生存(PFS)ベネフィットを維持した。また、混合治癒モデル(mixture cure model[MCM解析])による推定治癒割合は50%を超えることが示された。 この結果はENGOT-EN6-NSGO/GOG-3031/RUBY試験の4年長期追跡および治癒モデリングに関する事後解析によるもの。米国臨床腫瘍学会年次総会(2026 ASCO Annual Meeting)において、Matthew A. Powell氏(米国・ワシントン大学)が発表した。 同疾患に対するdostarlimabと化学療法(カルボプラチン+パクリタキセル[CP])の併用は、RUBY試験において全生存期間(OS)およびPFSの有意な改善を示したが1,2)、長期の結果や治癒可能性については明らかにされていなかった。・試験デザイン:国際共同無作為化二重盲検多施設共同第III相試験・対象:未治療または再発進行子宮体がん・試験群:dostarlimab+カルボプラチン+パクリタキセル 3週ごと6サイクル→dostarlimab 6週ごと3年以内(dostarlimab+CP群、245例)・対照群:プラセボ+カルボプラチン+パクリタキセル 3週ごと6サイクル→プラセボ 6週ごと3年以内(プラセボ+CP群、249例)・評価項目[主要評価項目]治験担当医評価のPFS、OS[副次評価項目]BICR評価のPFS、PFS2、全奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値55.6ヵ月となるdMMR/MSI-H集団の追加追跡の結果、プラセボ+CP群のPFS中央値7.7ヵ月に対し、dostarlimab+CP群は依然として未到達であることが示された(ハザード比[HR]:0.30、95%CI:0.17~0.52)。・48ヵ月PFS割合はプラセボ+CP群の15.7%に対し、dostarlimab+CP群は57.9%であった。・条件付きPFS解析の結果、1年間進行がなかった患者における1~4年の3年PFS割合は88.6%、2年間進行がなかった患者における2~4年の2年PFS割合は91.7%であった。・条件付きOS解析の結果、1年間生存した患者における1~4年の3年OS割合は84.0%、2年間生存患者における2~4年の2年OS割合は88.0%であった。・混合治癒モデルを用いて4年時点の長期生存患者の割合(cure rate)を解析したところ、プラセボ+CP群では14%、dostarlimab+CP群では54%と推定された。・dostarlimab+CP群の主な試験治療下における有害事象(TEAE)は、脱毛(50.0%)、疲労(46.2%)、悪心(46.2%)、末梢神経障害(42.3%)、関節痛(36.5%)などであり、同群でもっとも頻度の高い免疫関連有害事象(irAE)は甲状腺機能低下症で15.4%であった。 本試験結果はGynecologic Oncology誌2026年5月29日オンライン版に同時掲載されている。

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転移TN乳がん1次治療におけるDato-DXd、TROPION-Breast02の日本人サブ解析/日本乳癌学会

 免疫療法が適応とならない未治療の局所再発・切除不能/転移トリプルネガティブ乳がん(TNBC)を対象に、ダトポタマブ デルクステカン(Dato-DXd)の1次治療としての有効性と安全性を治験責任医師選択の化学療法(ICC)と比較した国際第III相TROPION-Breast02試験における日本で登録された38例での解析結果を、福島県立医科大学の佐治 重衡氏が第34回日本乳癌学会学術総会で報告した。 本試験では、ITT集団において全生存期間(OS)および盲検下独立中央判定(BICR)による無増悪生存期間(PFS)が、Dato-DXd群で有意な改善が認められたことがESMO2025で報告されている。・対象:免疫療法が適応とならない未治療の局所再発・切除不能/転移TNBC・試験群:Dato-DXd(3週ごと6mg/kg点滴静注)・対照群:ICC(パクリタキセル、nab-パクリタキセル、カペシタビン、エリブリン、カルボプラチンから選択)・評価項目:[主要評価項目]OS、BICRによるPFS[副次評価項目]治験担当医師評価によるPFS、BICRによる奏効率(ORR)、奏効期間(DoR)、安全性 主な結果は以下のとおり。・ITT集団644例のうち日本で登録された患者は38例(Dato-DXd群:17例、ICC群:21例)であった。・患者背景について、日本の集団ではICC群の選択薬剤がITT集団と比べてnab-パクリタキセルが少なく、多くの医師がパクリタキセルを選択していた。・BICRによるPFS中央値は、Dato-DXd群が15.0ヵ月とICC群の7.0ヵ月より改善し(ハザード比[HR]:0.45、95%信頼区間[CI]:0.19~1.01)、ITT集団と同様であった。・OS中央値は、Dato-DXd群24.0ヵ月、ICC群18.5ヵ月でITT集団とほぼ同様であった(HR:0.55、95%CI:0.22~1.30)。・BICRによるORRは、少数例ではあるもののDato-DXd群64.7%、ICC群23.8%であった。DoR中央値は順に、20.3ヵ月(95%CI:4.6~NR)と5.8ヵ月(同:4.2~NR)であった。・毒性について、治療関連有害事象(TRAE)による治療中止例はDato-DXd群が12%、ICC群が16%とICC群のほうが多かった。TRAEは、Dato-DXd群では脱毛、悪心、口内炎、角膜炎など眼症状が多く発現し、脱毛は全体集団に比べて日本の集団で多かった。 佐治氏は、「例数は少ないが、日本サブセットでもDato-DXdは効果および安全性ともITT集団と同様のデータが示された」とまとめ、「日本の患者においてもITT集団のデータを基に説明したり、投与することが可能」と述べた。

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進行・再発子宮体がん、ペムブロリズマブ+化学療法の長期OS結果(NRG-GY018)/ASCO2026

 進行または再発の子宮体がんに対し、ペムブロリズマブと化学療法の併用療法はミスマッチ修復機能欠損(dMMR)およびミスマッチ修復機能正常(pMMR)のいずれのコホートにおいても、標準的な化学療法単独と比較して長期的な全生存期間(OS)の改善効果を維持した。 第III相無作為化比較試験NRG-GY018の長期追跡によるOSおよび後治療に関する解析結果を米国臨床腫瘍学会年次総会(2026 ASCO Annual Meeting)において、Ramez N. Eskander氏(米国・カリフォルニア大学サンディエゴ校)が発表した。 ペムブロリズマブと化学療法の併用は、MMRステータスに関わらず無増悪生存期間(PFS)を統計学的に有意に改善することが同試験で示されている1)。今回の発表ではdMMRおよびpMMRコホートにおけるOSアップデートと後治療による影響に関する検証結果が報告された。・試験デザイン:第III相無作為化比較試験・対象:StageIII/IVまたは測定可能病変の有無を問わないStageIVB、あるいは再発病変を有する子宮体がん(術後補助化学療法歴がある場合は試験開始12ヵ月以上前に完了していること)・試験群:ペムブロリズマブ(200mg)+パクリタキセル(175mg/m2)+カルボプラチン(AUC 5)を3週ごと6サイクル投与後、維持療法としてペムブロリズマブ(400mg)を6週ごと最大14サイクル投与(ペムブロリズマブ群)・対照群:プラセボ+パクリタキセル(175mg/m2)+カルボプラチン(AUC 5)を3週ごと6サイクル投与後、維持療法としてプラセボを6週ごと最大14サイクル投与(プラセボ群)・評価項目:[主要評価項目]治験医師判定によるPFS[副次評価項目]dMMRおよびpMMRコホートにおけるOS、試験治療後のICI治療状況など 主な結果は以下のとおり。[dMMRコホート]・割り付けは222例、追跡期間中央値は49ヵ月であった。・OS中央値は両群ともに未到達であったが、プラセボ群と比較してペムブロリズマブ群は有意な改善を示した(ハザード比[HR]:0.56、95%信頼区間[CI]:0.34~0.92、p=0.0124)。48ヵ月OS割合はペムブロリズマブ群78.6%に対し、プラセボ群は60.4%であった。・進行後にICIによる治療を受けた割合はプラセボ群の93.2%に対し、ペムブロリズマブ群では34.1%であった。[pMMRコホート]・割り付けは588例、追跡期間中央値は44ヵ月であった。・OS中央値はプラセボ群の35.1ヵ月に対し、ペムブロリズマブ群は44.4ヵ月で、ペムブロリズマブ群で良好な傾向が維持されていた(HR:0.86、95%CI:0.69~1.08、p=0.1072)。・進⾏後にICI治療による後治療を受けた割合は、プラセボ群81.1%に対しペムブロリズマブ群では42.9%であった。 今回の長期追跡データにより、進行・再発子宮体がんにおけるペムブロリズマブ+化学療法のOSベネフィットが裏付けられた。プラセボ群において高頻度でICIによる後治療が行われたにもかかわらず、ペムブロリズマブの上乗せが持続的な⽣存改善をもたらすことが⽰されたとEskander氏は結んだ。

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monarchE試験、日本人サブグループの長期解析結果/日本乳癌学会

 HR+/HER2-でリンパ節転移陽性の高リスク早期乳がんに対する術後内分泌療法(ET)へのアベマシクリブ追加の有用性を検討したmonarchE試験では、浸潤疾患生存期間(iDFS)、無遠隔再発生存期間(DRFS)および全生存期間(OS)の統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善が示され、アベマシクリブ併用の内分泌療法は再発抑制のための重要な標準治療の1つとして推奨されている。今回、同試験に登録された日本人患者における長期(追跡期間中央値76ヵ月)の有効性および安全性を評価したサブグループ解析の結果を、中山 貴寛氏(大阪国際がんセンター)が第34回日本乳癌学会学術総会で発表した。・対象:リンパ節転移陽性で再発高リスクのHR+/HER2-早期乳がん患者[コホート1]リンパ節転移4個以上またはリンパ節転移1~3個でグレード3もしくは腫瘍径5cm以上[コホート2]リンパ節転移1~3個でKi-67値20%以上かつグレード1~2で腫瘍径5cm未満・試験群(アベマシクリブ+ET群):術後療法として、標準内分泌療法+アベマシクリブ150mg1日2回・対照群(ET単独群):標準内分泌療法単独・評価項目:[主要評価項目]iDFS[重要な副次評価項目]DRFS、OS、安全性など・データカットオフ:2025年7月15日 主な結果は以下のとおり。・日本人サブグループは377例が登録され、コホート1には344例、コホート2には33例が含まれた。アベマシクリブ+ET群に181例、ET単独群に196例が1対1の割合で無作為に割り付けられた。・ベースラインの患者特性は両群間でバランスがとれており、全体集団のプロファイルと類似していた。日本人サブグループの年齢中央値は、アベマシクリブ+ET群51.0歳vs.ET単独群49.0歳であった。閉経前が49.7%vs.50.0%、化学療法歴なしがともに7.7%、リンパ節転移数4個以上が61.9%vs.64.3%、Ki-67値20%以上が51.4%vs.55.6%であった。 ・追跡期間中央値60ヵ月時点におけるiDFSは、日本人サブグループのITT集団全体でアベマシクリブ+ET群83.8%vs.ET単独群75.8%(ハザード比[HR]:0.786、95%信頼区間[CI]:0.520~1.187)で、全体集団と同様にアベマシクリブ併用によるiDFSイベントリスク低減の持続的なベネフィットが確認された(全体集団:83.1%vs.76.5%、HR:0.786)。コホート1におけるiDFSについても、83.8%vs.74.7%(HR:0.786、95%CI:0.512~1.205)となり、全体集団同様アベマシクリブ+ET群で良好であった。・DRFSについても、日本人サブグループのITT集団全体でアベマシクリブ+ET群88.2%vs.ET単独群80.6%(HR:0.762、95%CI:0.482~1.204)、コホート1で88.0%vs.80.0%(HR:0.760、95%CI:0.476~1.215)と全体集団同様アベマシクリブ+ET群で良好であった。・追跡期間中央値76ヵ月時点におけるOSイベントはアベマシクリブ+ET群14例(7.7%)vs.ET単独群19例(9.7%)で発生し、イベント数は非常に少ないものの、HRは0.772(95%CI:0.387~1.541)であった。・アベマシクリブ+ET群における試験治療下における有害事象(TEAE)は、全Gradeが99.4%、Grade3以上が59.7%で認められたが、死亡例および肺炎は認められていない。また、43.6%で減量が行われていた。・2年間の試験治療完遂率は、アベマシクリブ+ET群88.4%(アベマシクリブのみの中止も含む)vs.ET単独群86.7%とアベマシクリブ追加による影響はみられず、アベマシクリブ+ET群でアベマシクリブも含み2年間の投与を完遂したのは72.9%であった。・安全性プロファイルは全体集団とおおむね一致していたが、アベマシクリブ+ET群において認められた全GradeのTEAEとしては、下痢(日本人サブグループ89.5%、全体集団83.5%)、好中球減少症(77.3%、46.0%)、貧血(35.9%、24.5%)、アラニンアミノトランスフェラーゼ増加(22.7%、12.6%)などが日本人サブグループで若干多い傾向がみられた。 中山氏は本結果について、日本人集団におけるアベマシクリブ+ET療法の有効性は全体集団と一貫しており、再発高リスク早期乳がん患者に対する臨床的ベネフィットが改めて示されたと述べた。安全性に関しては、日本人サブグループにおいて骨髄抑制や肝酵素増加について頻度が若干高かった点を指摘し、日常診療における適切なモニタリングや用量調整の重要性を強調した。

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ハイリスク患者の術前説明やリスク評価、どこまでやる? 術式選択の裁量はある?【医療訴訟の争点】第22回

症例本稿では、食道がん患者に対する手術前のリスク評価及び説明のあり方、さらに術後合併症発生後の再手術における術式選択の適否が争われた岡山地裁令和7年5月20日判決を紹介する。<登場人物>患者60歳・男性原告患者の妻及び子ら(相続人)被告地方独立行政法人(市民病院)、担当消化器外科医事案の概要は以下の通りである。平成29年(2017年)1月20日本件患者は他院に入通院してアルコール依存症治療中であったが、発熱、全身倦怠感、低栄養、腹水貯留等の精査加療目的で被告病院へ転院。2月6日上部消化管内視鏡検査により食道がん発見。その後の2月8日、体調を整えるため、もともと入院治療を受けていた病院に転院。2月22日食道がんの治療のため、被告病院へ再入院。2月23日担当医は本件患者に対し、食道がんの病状などについて以下を説明。食道がんは現時点ではStageIと考えられている。この場合、手術が最も確実な治療法であるが、手術が嫌なら放射線、化学療法の治療法もあること手術を行う場合の手術概要手術は患者の協力がなければできない、断酒、禁煙は当然であるが、呼吸訓練も含め努力していただきたいこともある、これらができないのであれば手術に伴うリスクは高くなる、どうするかについては家族とよく相談すること。3月8日担当医は本件患者及び家族に対し、食道がんに対する手術について、以下を説明。StageIの食道がん治療としては、手術、放射線+抗がん剤による治療法があること胸腔鏡下食道亜全摘術など(本件手術1)の手術時間は8時間前後、出血量は200~600mL、入院期間は3~4週間の見込みであること食道がんに対する手術のリスクについては、その合併症によって異なり、手術に関連した合併症による死亡率は2~3%。併存疾患によりその程度は変化するが、食道がん手術において術後の合併症で1番問題となるのは、呼吸器系、とりわけ胸水の貯留、無気肺、肺炎などの発症に起因する呼吸不全があり、一旦起こると長期の管理が必要となること消化管吻合(初回の手術は食道胃吻合術)における縫合不全の発症は、治癒が遷延することがあり、一旦発症すると唾液漏の形をとりなかなか治癒しないで厄介になり、縫合不全の合併症が生じるリスクは約10%であることそのほか、創部の感染、腸管麻痺による腸閉塞など、また健康人でも発症する心筋梗塞、脳卒中などが周術期に偶然発症することがあること3月10日午前9時頃から午後9時30分頃まで本件手術1が施行。患者にはアルコール性肝障害や腹水貯留などが認められていたが、担当医はICG負荷試験を実施しないまま手術が施行した。食道がん術後、人工呼吸管理中の重篤な状態であると判断され、ICUに入室した。3月12日午前6時ころ、心拍数上昇、血圧低下、胃管出血が認められ、循環動態が悪化。担当医は緊急再手術を決定し、午前8時頃から午後6時頃まで、止血術、胃管抜去及び食道再建術(本件手術2)を施行。本件手術2では、出血性ショック状態に近い状況下で、結腸再建及び空腸再建を含む長時間かつ高侵襲な再建術が実施された。3月16日午後4時30分頃、患者の状態はさらに悪化し、担当医は本件患者家族に対し、腸管気腫症が広範囲に発生しており広範囲に腸が壊死している可能性もあり得る、原因除去のための再手術は危険性は極めて大きいが、緊急手術が必要であると説明した上で、午後7時30分頃から午後10時頃にかけて再度の緊急手術(本件手術3)を施行。3月17日患者は多臓器不全により死亡。 実際の裁判結果本件では、以下が主な争点となった。(1)食道がん手術(本件手術1)前にICG負荷試験を実施しなかったこと及びその結果を踏まえた説明を行わなかったことが検査・説明義務違反に当たるか(2)その義務違反と死亡との間に相当因果関係が認められるか(3)術後出血に対する再手術(本件手術2)時に、食道切除と再建を別の機会に行う二期的再建術とするのではなく一期的再建術を選択したことが術式選択義務違反に当たるか(4)その義務違反と死亡との間に相当因果関係が認められるか争点(1)について裁判所は、争点(1)について、本件手術1当時の最新のガイドラインであった『食道癌診断・治療ガイドライン 第3版』(日本癌治療学会編、2012年4月発行)の記載や、関連する医学的知見を指摘した上で、「本件手術1が施行された平成29年3月当時、食道がんの治療方針決定のために、治療方針を患者へ提示し、診断根拠や診断過程などを説明するに当たっては、がんの進行度診断や病巣特性(悪性度)の把握のほか、全身状態の把握・評価が重要とされており、その中でも肝硬変症例については、患者の肝機能ないし肝予備能が保たれているかを確認・判定することが必要・重要であり、ICG負荷試験はそのための重要な検査と位置付けられ、かかる試験の結果、高い数値が出た場合には、術後合併症やそれによる死亡のリスクが高まると理解されていたものと認めるのが相当である」とした。そして、本件患者が、腹部CTで腹水や肝硬変が指摘されていたこと、アルブミン点滴で経過を見たものの、2週間が経っても腹水は減少しつつも依然として貯留していたこと、肝細胞の合成能障害を反映するChEは被告病院受診当初から手術前まで基準値を大幅に下回る値であったこと等を指摘し、「アルコール性の代償性肝硬変の疑いが強く、肝機能が低下していることを示す具体的な所見が認められていたのであり、肝機能ないし肝予備能が保たれているかを慎重に確認・判定する必要があったものというべきであった」とした。その上で、「食道がんに対する治療方針を提案・説明するに当たっては、肝機能ないし肝予備能が保たれているかを確認・把握するためにICG負荷試験を実施した上で、その結果を踏まえて、全身状態の評価、さらにはリスク評価をして、治療方針を本件患者に提示して説明をすべき注意義務を負っていたものと認めるのが相当」とし、特別な事情や理由もないまま、ICG負荷試験を実施せず、適切な全身状態の評価やリスク評価をしないまま、縫合不全になるリスクは10%程度、多臓器不全等で死亡するリスクが2ないし3%程度として、リスクを過小にとどめた説明をしたことに説明義務違反があるとした。争点(2)について裁判所は、本件手術1に先立ち、本件患者にICG負荷試験を実施した場合には、20%を超える相当に高い数値が出る蓋然性があったこと、その場合、本件手術1につき術後合併症発生率は80%以上であり、術後合併症死亡率は15~30%かそれ以上であること、手術以外の治療法として根治的化学放射線療法も適応があったことを指摘し、「これらの説明を受けていれば、本件患者においては、本件手術1をせずに根治的化学放射線療法ないしは放射線単独療法を選択していた高度の蓋然性があり、また、その場合、本件患者が死亡した3月17日時点でなお生存していた高度の蓋然性があると認めるのが相当である」として、説明義務違反と死亡との間の因果関係を認めた。争点(3)について食道切除と再建をそれぞれ分けて2回手術をするか、1回にまとめて手術をするかについて、裁判所は、関連する文献の記載を指摘した上で、「二期的分割手術の適応について明確な基準は確立しておらず、緊急再手術時にどのような方針で手術を行うかについては具体的状況によって対応するしかなく、原則として、手術に当たる医師の現場における合理的な裁量に委ねられるものというべきであるが、ただし、全身状態が悪く、耐術能が十分でないと判断される患者に対しては、一期的再建手術ではなく二期的分割手術を実施すべき場合もあるものと認めるのが相当である」とした。そして、本件患者はそもそも10時間以上にわたる本件手術1を受けてから本件手術2開始までに約35時間しか経っていない状態にあったこと、肝硬変であると確認されていたこと、重症の出血性ショックに陥り、複数の昇圧剤を継続的に大量投与しなければ循環動態等を保つことが困難な状態にあったことを指摘し、「本件患者の全身状態は悪く、耐術能が十分でないと判断される患者であり、その救命を最優先とすべき具体的状況にあったといわなければならない」とした。その上で、「高侵襲かつ長時間を要する一期的再建術から、侵襲の小さい二期的分割手術へと方針を変更するか否かを具体的に検討・判断しなければならなかった」として、「本件手術2の術中の本件患者の状態について、循環動態等を保つことが困難な重篤な状態にあり、救命が最優先であると評価すべきところ、出血については迅速にコントロールができ血圧も安定しているなどと合理性を欠く評価をし、これを前提として胃管抜去後、右側結腸再建及び有茎空腸再建等を行って9時間15分にわたって本件手術2を継続・実施したものであり、術者としての合理的な裁量を逸脱し、術式選択義務に違反したものと認めるのが相当」と判示し、術式選択義務違反を認めた。争点(4)について裁判所は、分割手術の死亡率が一期的手術よりも低い旨が報告されている文献を指摘し、「本件手術2において、再建術まで実施せず、胃管抜去後、食道瘻を造設し、栄養チューブを留置する等して再建術を実施せずに閉腹していれば、正午ころには手術を終えることができ、9時間15分もの長時間にわたり大量の昇圧剤を継続使用することや、結腸・空腸再建術に伴う高い侵襲を回避することができ、本件患者においては、循環不全、呼吸不全等を引き起こすことなく状態が安定していた高度の蓋然性があり、また、その場合、本件患者が死亡した3月17日時点でなお生存していた高度の蓋然性があると認めるのが相当」と判断し、術式選択義務違反と死亡との因果関係を認めた。損害等以上の結果、裁判所は病院及び担当医の責任を認め、患者妻に対して約2,812万円、その余の遺族に対して各55万円の支払を命じた。注意ポイント解説本件は、食道がん手術後に患者が死亡した事案であるが、裁判所が問題としたのは手術手技そのものではなく、「術前のリスク評価及び説明」と「術後合併症発生後の再手術時の術式選択(に関する医師の裁量)」であったが、それぞれ以下の点が注目される。1. 術前のリスク評価と説明について医療訴訟では、説明義務違反のみが認定される場合には自己決定権侵害の慰謝料のみが認められるにとどまり、死亡との因果関係が否定されることも少なくない。しかし本件では、手術以外に有効な代替治療が存在し、適切な説明があれば患者が手術を選択しなかった高度の蓋然性があるとして、死亡結果との因果関係まで認められた点が重要である。本件の裁判所がこのような判断を下した背景には、以下の点があると考えられる。本件患者にアルコール依存症の既往があり、画像検査上も肝硬変を疑わせる所見が存在し、さらに腹水貯留や低アルブミン血症等も認められていたことから、担当医は肝機能障害の存在を十分認識し得たと判断したこと。食道がん手術は消化器外科領域の中でも侵襲の大きい手術の一つであり、肝機能障害を有する患者では術後合併症や死亡リスクが上昇することは広く知られていること。当時の食道がん診療ガイドラインにおいて肝硬変症例に対する術前評価としてICG負荷試験が挙げられていたこと患者の食道がんがStageIであったことに加え、当時すでに根治的化学放射線療法が有力な治療選択肢として存在していたこと裁判所は、ICG負荷試験を実施しなかったこと自体を形式的に問題視したのではなく、肝硬変ないし肝機能障害が疑われる患者に対し、十分なリスク評価を行わないまま死亡率を2~3%程度と説明し、その結果、患者が危険な治療を選択してしまったことを問題視したといえる。したがって、然るべき検査をして適切なリスク評価をした上で、合併症や死亡のリスクを説明しなければ、患者の自己決定に必要な情報提供がなされたとは言えず、説明義務を果たしたとは認められないことを改めて認識する必要がある。2. 術式選択に関する医師の裁量について一般に術式選択は高度に専門的な医療判断であり、複数の合理的選択肢が存在する場合には裁量が広く認められる傾向があり、本判決もこのことを認める判示をしている。しかし本判決は、患者の全身状態、再手術時の循環動態、昇圧剤の使用状況、手術時間、侵襲度等を詳細に検討した上で、「救命を優先すべき局面であった」という事実認定をし、侵襲の大きい一期的再建術を選択したことを裁量の範囲外と評価した。かかる判断において裁判所は、長時間手術後わずか約35時間しか経過していない状況で、さらに約10時間近い再建術を実施したことについて、患者の耐術能との関係を厳しく検討しているが、これは「一期的再建術は危険だから違法である」としたものではなく、「極めてハイリスクな患者に対して救命より根治性を優先した判断」を問題としたものである。ここでは、術式選択について「どちらの術式が正しかったか」という議論ではなく、「当時の患者状態に照らして合理的な判断過程がとられていたか」が問題となっていると言えるため、医療機関としては、ハイリスク患者に対する治療方針決定の際には、カンファレンス記録、説明記録、診療録への記載等を通じて判断根拠を残しておくことが極めて重要である。とくに複数の合理的選択肢が存在する場面では、「なぜその選択肢を採用したのか」という思考過程を後から説明できる状態にしておくことが、訴訟対応上も重要になると言える。医療者の視点本件では、「術前評価の不備」と「術中の術式選択」の2点が問われています。術前評価については、ガイドライン上の基本的な検査であるICG負荷試験を省略し、客観的根拠に乏しい楽観的なリスク説明を行ったことが問題視されました。これは実臨床の感覚に照らしても、患者の自己決定権を担保する説明義務のあり方として不適切であり、裁判所の判断は妥当と受け止められます。一方で、術式選択における裁量逸脱の認定には、臨床現場の医師として悩ましさを覚えます。裁判所は、昇圧剤を大量に使用する重篤な状況下で、高侵襲な一期的再建術を継続したことを裁量逸脱と断じました。たしかに結果から見ればその通りですが、実際の緊急手術の現場では事情が複雑です。二期的再建を選択した場合、長期にわたる生活の質の低下や、癒着による将来の再建手術の困難さが予想されます。そのため、術中の出血がコントロールできていると術者が判断すれば、患者の将来を見据えて一期的に再建を完了させたいと考えるのは、十分にあり得る思考回路です。とはいえ、訴訟においては事後的な客観的データに基づき、救命最優先の局面であったと厳格に評価されます。実臨床で私たちが身を守るためには、ハイリスク症例において術前に最悪の事態を想定しておくことが不可欠です。どの状態に至ればダメージコントロールに切り替えるのか、チーム内で明確な撤退基準を共有し、それを診療録に記録しておく姿勢が求められます。Take home message治療法の説明は、然るべき検査をして適切なリスク評価をした上で行う必要がある。高侵襲手術においては、術式そのものだけでなく、術前リスク評価、代替治療を含めた説明内容、そして合併症発生時の意思決定過程までが後に検証対象となる。特にハイリスク症例においては、「なぜその治療を選択したのか」を説明できる診療録・説明記録を残しておくことが重要である。キーワード食道がん、周術期リスク評価、説明義務、ICG負荷試験、肝硬変合併症例、術後合併症、手術適応、術式選択、二期的再建術、医師の裁量、ハイリスク症例 、意思決定過程 、チームカンファレンス

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プラチナ感受性再発卵巣がんに対するmirvetuximab soravtansine+カルボプラチンの結果(MIROVA/AGO-OVAR 2.34)/ASCO2026

 プラチナ感受性進行再発卵巣がんに対し、新たな抗体薬物複合体(ADC)であるmirvetuximab soravtansine(MIRV)とカルボプラチンの併用療法が高い抗腫瘍効果を示した。しかし、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)の延長は示されなかった。 プラチナ感受性進行再発卵巣がんに対し、カルボプラチン・MIRV併用療法の実行可能性(feasibility)と有効性を評価する国際共同無作為化第II相試験の初回解析結果が米国臨床腫瘍学会年次総会(2026 ASCO Annual Meeting)で発表された。発表者はPhilipp Harter氏(ドイツ・Ev. Kliniken Essen-Mitte)。 MIRVは卵巣がんに高発現している葉酸受容体α(FRα)を標的としたADCである。同剤はプラチナ抵抗性のFRα高発現高悪性度漿液性卵巣がんにおいて、PFSおよび全生存期間(OS)の有意な改善を示している1)。 その一方で、プラチナ感受性卵巣がんにおけるカルボプラチンとの併用や維持療法としての役割、高悪性度漿液性以外の組織型における治療効果は十分に確立されていない。今回発表されたのは、FRα高発現のプラチナ感受性再発卵巣がんコホートにおける初回解析結果である。・試験デザイン:国際共同無作為化第II相試験・対象:既治療のFRα高発現進行再発卵巣がん、卵管がん、または腹膜がん(FRαパターンスコア2+、プラチナ最終治療から再発までの期間[TFIp]>3ヵ月)・試験群:カルボプラチン(AUC5)+MIRV 6mg/kg(調整理想体重)投与後にMIRVによる維持療法(MIRV併用群75例)・対照群:カルボプラチン+PLD、またはカルボプラチン+ゲムシタビン、カルボプラチン+パクリタキセル(1:1にランダム化)後に経過観察またはPARP阻害薬による維持療法(標準化学療法群70例)・評価項目:[主要評価項目]治験担当医師判定によるPFS[副次評価項目]安全性、客観的奏効率(ORR)、OS、QOLなど 主な結果は以下のとおり。・患者の組織型は高悪性度漿液性卵巣がんが標準化学療法群とMIRV併用群でそれぞれ85.7%と81.3%、BRCA野生型が87.1%と84.0%、前治療ライン数が1が54.3%と48.0%、ベバシズマブ既治療が75.7%と78.7%、PARP阻害薬既治療が70.0%と64.0%、TFIp>12ヵ月が67.1%と66.7%であった。・標準化学療法群では維持治療として42.9%にPARP阻害薬が投与されていた。・主要評価項目であるPFS中央値は、標準化学療法群で9.79ヵ月、MIRV併用群で9.53ヵ月で、両群に差は示されなかった(ハザード比[HR]: 1.0、95%信頼区間:0.68~1.46、p=0.996)。・ORRは標準化学療法群32.8%(CR 4.3%、PR 24.3%)に対し、MIRV併用群では66.2%(CR 4.0%、PR 58.7%)とMIRV併用群で高かった。・サブグループ解析を見ると、前治療ライン数1(HR:0.64)、同1~2(HR:0.76)、BRCA変異陽性(HR:0.45)集団でMIRV併用群に良好な傾向がみられたが、前治療ライン数2超の集団では標準化学療法群が良好であった(HR:5.73)。・全般的なQOL評価では両群に差は認められなかったが、サブグループを見ると悪心・嘔吐、食欲不振、末梢神経障害ではMIRV併用群が不良であった。・MIRV群で頻度の高い有害事象(AE)は、神経障害(53%)、霧視(49%)、血小板減少症(47%)、悪心(41%)などであった。・MIRV併用群における毒性による治療中止は22.7%であった。 MIROVA試験において、高いORRを示したが、主要評価項目であるPFSの延長には反映されなかった。末梢神経障害から、維持療法のMIRV用量(6mg/kg)が最適か否かを検証するFLORENZA試験が進行中である。さらに、患者集団背景を均一にした国際共同臨床試験(GOG-3078/ENGOT-ov76/GLORIOSA試験)も現在進行中である。

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IDH1変異陽性胆道がんに対するイボシデニブ、国内初のIDH1阻害薬として承認/日本セルヴィエ

 日本セルヴィエは2026年6月19日、IDH1遺伝子変異陽性の切除不能な胆道がんを対象として、イボシデニブ(商品名:ティブソボ)の適応追加承認を取得したと発表した。適応は「がん化学療法後に増悪したIDH1遺伝子変異陽性の治癒切除不能な胆道癌」であり、国内初のIDH1遺伝子変異を標的とした胆道がん治療薬となる。 胆道がんは胆管がん、胆嚢がん、十二指腸乳頭部がんからなり、多くが進行期に診断されるため予後不良である。なかでも肝内胆管がんは近年国内で増加傾向にあり、10~20%の症例にIDH1遺伝子変異が認められると報告されている。これまで国内では、胆道がんに対するIDH1変異標的薬は承認されておらず、2次治療以降の選択肢は限られていた。 今回の承認は、IDH1遺伝子変異陽性の既治療切除不能または転移のある胆管がん患者を対象とした国際第III相試験「ClarIDHy試験」および日本人患者を対象とした国内第II相試験(CL2-95031-008試験)の結果に基づく。 ClarIDHy試験は185例を対象とした無作為化二重盲検プラセボ対照試験で、患者はイボシデニブ500mg群またはプラセボ群に2:1で割り付けられた。主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)は、イボシデニブ群で中央値2.7ヵ月、プラセボ群で1.4ヵ月となり、有意な改善が示された(ハザード比[HR]:0.37、95%信頼区間[CI]:0.25~0.54、p<0.0001)。 一方、副次評価項目の全生存期間(OS)は、イボシデニブ群10.3ヵ月、プラセボ群7.5ヵ月で統計学的に有意な延長は認められなかった。しかし、本試験ではプラセボ群患者の70.5%が病勢進行後にイボシデニブへクロスオーバーしており、その影響を補正した解析ではOS中央値はプラセボ群5.1ヵ月となり、イボシデニブ群は死亡リスクを51%低減した(HR:0.49、95%CI:0.34~0.70、p<0.0001)。 安全性解析対象166例における副作用発現率は62.7%であった。主な副作用は下痢(21.1%)、悪心(20.5%)、疲労(16.9%)、嘔吐(8.4%)、食欲減退(7.2%)、頭痛(6.0%)、心電図QT延長(5.4%)などであり、既報と大きな差異は認められなかった。 イボシデニブは2025年3月にIDH1遺伝子変異陽性急性骨髄性白血病(AML)に対する適応で国内承認を取得しており、今回の適応追加により固形がん領域へ保険適用が拡大した。胆道がんでは近年、FGFR2融合遺伝子やRET融合遺伝子など、分子異常に基づく治療開発が進んでいる。今回のイボシデニブ承認は、IDH1変異を標的とした国内初の治療選択肢となり、次世代シークエンシング(NGS)を用いたがん遺伝子パネル検査などの臨床的重要性をさらに高めるものとなる。【製品情報】商品名:ティブソボ錠250mg一般名:イボシデニブ効能・効果:IDH1遺伝子変異陽性の急性骨髄性白血病がん化学療法後に増悪したIDH1遺伝子変異陽性の治癒切除不能な胆道癌用法・用量:通常、成人にはイボシデニブとして1日1回500mgを経口投与する。

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ASCO2026 レポート 先端研究・希少がん

レポーター紹介[目次]SARC041試験(第III相試験)PEAK試験(第III相試験)StrateGIST 1試験(第I/Ib相試験)RINGSIDE試験(第III相試験)EMITT-1試験【Abstract LBA2】SARC041試験(第III相試験):脱分化型脂肪肉腫に対するCDK4/6阻害薬アベマシクリブの有効性を検証進行・再発脱分化型脂肪肉腫(dedifferentiated liposarcoma:DDLPS)に対し、CDK4/6阻害薬であるアベマシクリブがプラセボと比較して無増悪生存期間(PFS)を有意に延長することが報告された。DDLPSでは12番染色体長腕(12q13-15)の増幅が高頻度に認められる。その部位にはCDK4やMDM2遺伝子増幅が認められる。そのため、CDK4阻害が治療として期待され、過去、単群の第II相試験が実施され、有効性が示唆されていた。本試験は、DDLPSにおいて第III相比較試験でCDK4阻害薬がpositiveな結果を示した点で重要である。本試験は、進行・再発または転移のあるDDLPS患者を対象とした第III相ランダム化二重盲検プラセボ対照試験であり、患者をアベマシクリブ200mg 1日2回内服群またはプラセボ群に1:1で割り付けた。適格基準として前化学療法歴の有無は問わなかった。主要評価項目はPFSであり、病勢進行後にはプラセボ群からアベマシクリブへのクロスオーバーが許容された。主要評価項目であるPFS中央値は、アベマシクリブ群9.7ヵ月、プラセボ群1.5ヵ月であり、アベマシクリブ群で統計学的に有意な延長を認めた(ハザード比[HR]:0.38、p<0.001)。6ヵ月PFS率は60%vs.22%、12ヵ月PFS率は39%vs.13%であった。奏効率はアベマシクリブ群9%、プラセボ群0%であった。全生存期間(OS)については、中央値はアベマシクリブ群で未到達、プラセボ群で25.5ヵ月であり、統計学的有意差には至らなかったものの、アベマシクリブ群で良好な傾向を認めた(HR:0.55、p=0.07)。プラセボ群の85%が病勢進行後にアベマシクリブへクロスオーバーしていた。探索的な解析であるが、前化学療法歴なしの患者のPFS中央値は16.4ヵ月、ありの患者では5.3ヵ月であった。安全性については、アベマシクリブで既知の有害事象プロファイルとおおむね一致していた。主な有害事象は、下痢、血球減少、貧血、白血球減少、クレアチニン上昇などであり、用量減量を要した症例はアベマシクリブ群で39%であった。本試験の結果から、アベマシクリブは進行・再発DDLPSにおける新たな治療選択肢となると考える。一方、本試験は海外の臨床試験グループにより実施されたものであり、日本ですぐに使用可能な状況とはならない。今後、日本での治療開発も期待される。目次に戻る【Abstract 11500】PEAK試験(第III相試験):イマチニブ治療後GISTに対するbezuclastinib+スニチニブ併用療法の有効性イマチニブ治療後の進行消化管間質腫瘍(GIST)に対し、KIT阻害薬であるbezuclastinibとスニチニブの併用療法が、現在の標準的2次治療であるスニチニブ単剤と比較してPFSを有意に延長することが、PEAK試験の結果として報告された。GISTでは、1次治療のイマチニブ後に耐性機構としてKITの2次変異が出現することが知られており、exon13/14やexon17/18変異がその代表である。現在の標準的な2次治療はスニチニブであるが、スニチニブはexon13/14への阻害活性が高い一方、exon17/18への阻害活性が乏しい。bezuclastinibは次世代のKIT阻害薬であり、exon17/18への阻害活性を有している。両者を併用することで広範にKIT変異をカバーする意義を検討したのが本試験である。本試験は、イマチニブ抵抗性または不耐の進行GIST患者を対象とした国際共同第III相ランダム化試験である。主要評価項目であるPFS中央値は、bezuclastinib+スニチニブ群16.5ヵ月、スニチニブ単剤群9.2ヵ月であり、併用群で統計学的に有意な延長を認めた(HR:0.50、p<0.0001)。PFSのサブグループ解析では、exon17/18変異、exon13/14変異、またKITの1次変異であるexon9、exon11変異の状況にかかわらず、全体的に併用群で良好であった。奏効率も併用群46%、スニチニブ単剤群26%と、併用群で高い腫瘍縮小効果が示された。OSは、データカットオフの時点でイベント数が20%未満であり、現時点でimmatureであった。PFS2においても併用群に良好な傾向が示された。安全性については、bezuclastinib+スニチニブ併用による新たな安全性シグナルは認められず、全体としてスニチニブの既知の安全性プロファイルとおおむね一致していた。Grade3以上の主な有害事象としては、高血圧、好中球減少、肝機能上昇、貧血、下痢などが報告された。ALT/AST上昇は併用群で多い傾向があるものの、多くは可逆的で管理可能とされた。本試験では、イマチニブ治療後GISTにおいて、スニチニブ単剤に対してbezuclastinib+スニチニブ併用療法が明確な優越性を示した。新たな標準治療候補となる可能性が高い。現在、FDAではpriority review(優先審査)となっている。本試験に日本は参加しておらず、今後日本での本治療開発が期待される。目次に戻る【Abstract 11501】StrateGIST 1試験(第I/Ib相試験):進行GISTに対する新規KIT阻害薬velzatinibの1次・2次治療における有効性の示唆先に記載したPEAK試験に続き、同セッションで本StrateGIST 1試験が発表された。進行・再発または切除不能のGISTに対し、新規KIT阻害薬であるvelzatinib(IDRX-42)が、1次治療および2次治療のいずれにおいても有望な抗腫瘍活性と忍容性を示すことが報告された。velzatinibは、新規KIT阻害薬を創出する目的でexon13変異を対象としたハイスループットスクリーニングとその後の最適化のステップを経て開発された経緯がある(Blum A, et al. J Med Chem. 2023;66:2386-2395.)。velzatinibはexon14変異以外の1次、2次KIT変異に対して高い阻害活性を有する。StrateGIST 1試験は、進行GIST患者を対象としたfirst-in-humanの第I/Ib相試験であり、今回の解析では推奨第Ib相用量であるvelzatinib 300mg錠または曝露量が同等となる400mgカプセルを投与された1次治療例および2次治療例が評価された。対象は、KITまたはPDGFRAに変異を有する進行・再発または切除不能GIST患者であり、1次治療コホートでは未治療例、2次治療コホートでは主にイマチニブ治療後の患者が含まれた。有効性評価可能例は、1次治療コホート23例、2次治療コホート46例であった。1次治療コホートでは、未確定奏効率は65%、確定奏効率は56%であり、多くの症例で腫瘍縮小が認められた。最大腫瘍縮小までの期間は中央値8.1ヵ月であり、データカットオフ時点で83%の患者が治療継続中であった。観察期間中央値は7.4ヵ月であり、PFSはimmatureであった。観察期間はまだ限られるものの、初回治療として高い腫瘍縮小効果と持続的な病勢制御が期待される結果である。2次治療コホートでは、未確定奏効率は40%、確定奏効率は33%であり、PFS中央値は13.7ヵ月であった。安全性については、1次・2次治療例73例の解析において、治療関連有害事象(TRAE)は95%に認められ、Grade3以上のTRAEは33%であった。有害事象による治療中止は5%、用量減量は21%であり、全体として管理可能な安全性プロファイルであった。主な有害事象は、下痢、悪心、味覚異常、好中球減少、倦怠感、胃食道逆流症、貧血、食欲低下、腹痛、嘔吐などであった。Grade3以上では好中球減少や貧血が比較的多く認められており、血液毒性のモニタリングは重要と考えられる。本試験は単群の第I/Ib相試験であり、現時点で標準治療に影響があるものではない。しかし、velzatinibは1次治療では高い奏効率、2次治療ではPFS中央値13.7ヵ月という有望な成績を示しており、次世代KIT阻害薬として期待される。イマチニブ後の2次治療においては、スニチニブとの比較第III相試験であるStrateGIST 3試験が進行中である。一方で、1次治療としての位置付けについては、イマチニブとの比較試験や長期安全性、耐性変異出現パターンの検討が今後の課題である。目次に戻る【Abstract 11506】RINGSIDE試験(第III相試験):進行性デスモイド腫瘍に対するγセクレターゼ阻害薬varegacestatの有効性進行性デスモイド腫瘍に対し、経口γセクレターゼ阻害薬であるvaregacestatがプラセボと比較して主要評価項目であるPFSを有意に改善することが、RINGSIDE試験の結果として報告された。デスモイド腫瘍は遠隔転移を来さないものの、局所浸潤性が強く、疼痛、機能障害、臓器障害を引き起こす中間悪性度の肉腫である。デスモイド腫瘍では、APCやβカテニンの変異によるWntシグナルの活性化が生じている。一方、Notchシグナルも腫瘍の病態に寄与している可能性が報告されている。DeFi試験では別のγセクレターゼ阻害薬であるnirogacestatの有効性が示され、FDAで承認されている。本試験は、新規のγセクレターゼ阻害薬であるvaregacestatについて検証したものである。RINGSIDE試験は、進行性デスモイド腫瘍患者156例を対象とした国際共同第III相ランダム化二重盲検プラセボ対照試験であり、varegacestat 1.2mg 1日1回投与とプラセボが比較された。主要評価項目は独立中央判定によるPFSであり、主な副次評価項目としてRECIST v1.1に基づく奏効率、腫瘍体積変化、患者報告アウトカムによる疼痛評価などが設定された。主要評価項目であるPFSについて、varegacestatはプラセボと比較して病勢進行または死亡リスクを84%低下させた(HR:0.16、p<0.0001)。このPFS改善効果は、腫瘍部位、ベースライン腫瘍サイズ、年齢、前治療歴などのサブグループにおいても一貫していた。奏効率はvaregacestat群56%、プラセボ群9%であり、腫瘍縮小効果も明確に示された。さらに、疼痛スコアは投与開始後早期から改善し、12週時点で臨床的にも意味のある疼痛軽減が認められた。安全性については、全体としてγセクレターゼ阻害薬で予想される有害事象プロファイルと一致していた。主な有害事象は、下痢、倦怠感、皮疹、悪心、咳嗽などであり、多くはGrade1または2であった。一方、閉経前女性では卵巣機能に関連する有害事象が一定割合で認められており、若年女性に投与する際には妊孕性や月経異常に関する説明とモニタリングが重要である。また、有害事象による用量減量や中止も一定数みられており、長期投与を前提とした副作用管理が必要となる。本試験の結果から、varegacestatは進行性デスモイド腫瘍に対する有力な新規治療選択肢となる可能性がある。とくに、PFSのみならず、奏効率、腫瘍体積、疼痛という患者にとって臨床的意義の高い評価項目を同時に改善した点は重要である。一方で、すでに同じγセクレターゼ阻害薬であるnirogacestatの臨床的位置付けが確立しつつあるため、今後は、有効性、安全性、卵巣機能への影響、投与スケジュール、患者背景ごとの使い分けが課題となる。現在、日本ではnirogacestatの単群の第II相試験が実施され、募集終了となっている(jRCT2031250269)。目次に戻る【Abstract 2500】EMITT-1試験:ERAP1阻害薬GRWD5769とセミプリマブ併用による抗腫瘍免疫再活性化の可能性免疫チェックポイント阻害薬に抵抗性を示した複数の固形がんに対し、経口ERAP1阻害薬GRWD5769と抗PD-1抗体セミプリマブの併用療法が、早期臨床試験ながら複数のがん種で抗腫瘍活性を示したことが、EMITT-1試験の第Ib相拡大コホートの結果として報告された。免疫チェックポイント阻害薬抵抗性の克服は重要課題である。ERAP1はMHC class Iに提示されるペプチドレパートリーの形成に関与する酵素である。ERAP1阻害により腫瘍細胞表面に提示される抗原ペプチドが変化し、T細胞による腫瘍認識を再誘導することが期待される。GRWD5769はfirst-in-classの経口ERAP1阻害薬であり、腫瘍の抗原提示を変化させることで、免疫チェックポイント阻害薬抵抗性を克服するという新しい免疫治療アプローチである。EMITT-1試験は、GRWD5769とセミプリマブ併用療法を評価する第I/II相試験であり、第Ib相拡大コホートでは、非小細胞肺がん、尿路上皮がん、肝細胞がん、MSS大腸がん、子宮頸がん、頭頸部扁平上皮がんの6コホートが検討された。多くの症例は既治療歴を有し、MSS大腸がんを除き、抗PD-1療法に対する2次抵抗性を示した患者が対象とされた。有効性については、各コホートで奏効率13~36%が報告された。尿路上皮がんでは奏効率36%、非小細胞肺がんでは21%、肝細胞がんでは14%、MSS大腸がんでは17%、子宮頸がんでは14%、頭頸部扁平上皮がんでは13%であった。また、6ヵ月以上の奏効または安定を含むdurable clinical benefitも複数のコホートで認められ、非小細胞肺がんおよびMSS大腸がんではPFS中央値が33週と報告された。とくに、MSS大腸がんは一般に免疫チェックポイント阻害薬単独では有効性が乏しい集団であり、本併用療法のシグナルは注目される。安全性については、全体として忍容性は良好であり、新たな安全性シグナルは認められなかった。多くの有害事象はGrade1であり、免疫関連有害事象も限定的であった。本試験は早期相試験であり、対象患者数も限られているため、現時点で標準治療を変える結果ではない。しかし、ERAP1阻害による抗原提示改変という新しい治療戦略が、臨床的にも抗腫瘍活性を示しうることを示した点で意義が大きい。今後は、ランダム化第II相試験での検証、奏効予測バイオマーカーの同定、がん種別の最適な対象集団の絞り込みが重要となる。目次に戻る

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ASCO2026 レポート 乳がん

レポーター紹介[目次]persevERA試験SERENA-6試験JCOG1919E (AMBITION)試験SAKK96/12 REDUSE試験OPTIMA試験PRO-MOTE試験はじめに2026年5月29日~6月2日までシカゴで開催されたASCO年次総会は、「The Science and Practice of Translation: Improving Cancer Outcomes Worldwide」がテーマで、研究成果を臨床に迅速に届け、地域社会や資源の限られた国々へ広げる取り組みが強調された。航空運賃の高騰、円安、米国内のインフレなど学会参加コストの上昇から、日本からの参加者はコロナ前と比べてあまり戻っていない印象だが、それでも多くの研究者と交流できた。また、6月3日に台風チャンミーが日本を直撃し、多くの国際線・国内線が欠航になる中、帰国に影響があった参加者も多かったようである。私は外来日の関係で帰国が1日早かったので、幸い影響を受けなかった。今回は直接日常臨床を変える試験は多くなかったが、将来の開発の方向性を考えるうえで重要だと考えられた6試験を紹介する。目次に戻るpersevERA試験:ESR1で絞り込まない経口SERDの可能性persevERA試験は、ホルモン受容体陽性(HR+)HER2陰性(HER2-)転移乳がん(MBC)の1次治療として、経口選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)のgiredestrant+パルボシクリブ療法とレトロゾール+パルボシクリブ療法を比較した第III相試験である。すでにプレスリリースで公開されているようにnegative studyであった。主要評価項目の無増悪生存期間(PFS)は、giredestrant群33.1ヵ月、レトロゾール群28.2ヵ月でハザード比[HR]:0.89(95%信頼区間[CI]:0.76~1.05、p=0.1553)と数値的な延長を示したが、統計学的有意差には至らず、また副次評価項目の全生存期間(OS)は未成熟で明確な差はなかった。奏効率と臨床的ベネフィット率はほぼ同等で、奏効期間は経口SERD群でやや長かった。主な有害事象は好中球減少、貧血などで、両群とも管理可能だった。ESR1変異を有する集団における有効性のデータの多い経口SERDにおいて、本試験ではESR1変異の有無が適格基準となっていない点が特徴である。同様のセッティングで行われる他剤の結果などを含めて、経口SERDの今後の開発の方向性に影響する試験といえるだろう。目次に戻るSERENA-6試験:ctDNAでのESR1変異検出後の早期スイッチSERENA-6試験は、アロマターゼ阻害薬(AI)+CDK4/6阻害薬併用療法を受けるHR+HER2-MBC患者で、血中ctDNA検査によりESR1変異が検出され、画像上病勢進行(PD)がない時点でcamizestrantに早期スイッチするか、AIを継続するかをPFSをエンドポイントとして検証したランダム化第III相試験である。主要評価項目の結果は昨年のASCOのplenaryで発表され、AI継続群に比べ、camizestrant+CDK4/6阻害薬群はPFSが7.6ヵ月延長(16.8ヵ月vs.9.2ヵ月)し、HR:0.45(95%CI:0.34~0.59)と統計学的有意差を示した。今回は副次評価項目である2次PFS(PFS2)の結果が報告され、25.7ヵ月vs.19.1ヵ月、HR :0.63(95%CI:0.46~0.86、p=0.00373)と、PFSでの効果がそのままPFS2に持ち越されていた。総ctDNAのクリアランス率は51%vs.2%と差が顕著で、化学療法/ADCフリー生存期間が延長し、患者報告アウトカムも改善した。ESR1変異出現を2〜3ヵ月に1回検査する必要があり、検査費用やモニタリング体制、検査に対する患者の不安が課題となる。臨床増悪時にスイッチする戦略や他の併用との比較は行われておらず、米国食品医薬品局(FDA)での審査においても試験デザインに対する懸念が報告されている(でも、試験開始前にFDAと相談してこのデザインになったのでは?)。日本での承認も見込まれるが、ESR1検査の保険適用や体制の整備が必要であり、今後の適正導入に向けた議論が求められる。目次に戻るJCOG1919E (AMBITION)試験:HR+HER2-乳がんにおける免疫療法日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)が実施したJCOG1919E(AMBITION)試験は、HR+HER2-進行乳がん患者281例を対象に、パクリタキセル+ベバシズマブに免疫チェックポイント阻害薬アテゾリズマブを上乗せする意義を検討した第III相試験である。JCOG乳がんグループ初の医師主導治験であり、研究事務局の愛知県がんセンター原 文堅先生が発表された。主要評価項目のPFSはアテゾリズマブ併用群12.4ヵ月vs.対照群11.2ヵ月(HR:0.876、95%CI:0.670~1.145、p=0.168)と有意差を示さず、免疫療法追加の恩恵は確認できなかった。OSは39.1ヵ月vs.31.2ヵ月(HR:0.804、p=0.091)と数値的な延長傾向が認められたが統計学的有意差は認められなかった。安全性はおおむね既知のプロファイルに一致し、免疫関連有害事象は追加されたものの管理可能であった。HR+HER2-乳がんは免疫学的に“cold”とされており、VEGF阻害薬+細胞障害性抗がん薬+免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の組み合わせでも効果は限定的であった。HR+HER2-MBCにICIを併用した日本から初めての無作為化第III相試験であり、現在進行中のトランスレーショナルリサーチにより、ICI追加のメリットの得られるサブグループの同定に期待したい。目次に戻るSAKK96/12 REDUSE試験:デノスマブ投与間隔を12週に延長MBCに対する支持療法の試験も紹介する。SAKK96/12 REDUSE試験は、骨転移を有する転移乳がんおよび去勢抵抗性前立腺がん患者1,380例を対象に、デノスマブ120 mgを4週間ごと(従来)と12週間ごとの維持投与にランダム化した非劣性試験である。主要評価項目は初回症候性骨関連事象までの期間であり、12週投与群のハザード比は1.023(90%CI: 0.874~1.197)で非劣性の閾値1.20を下回り、中央値はどちらも約56.5ヵ月と同等であった。副次評価項目では12週群で低カルシウム血症や顎骨壊死が有意に少なく、OSも大きな差はなかった。試算では投与間隔延長により薬剤費が約半減し、スイスでは年間1,500万CHF程度の医療費削減が見込まれる。日本でもデノスマブは骨関連事象予防の標準薬であり、12週投与への変更は患者の通院負担を軽減し、医療資源の効率化につながる。また骨修飾薬には非定型骨折など特徴的な有害事象があり、今後は12週間隔投与が標準となると考えられるが、論文化されたデータを確認して日常臨床に適用していきたい。目次に戻るOPTIMA試験:PAM50を用いた遺伝子検査による化学療法削減OPTIMA試験は、臨床的に高リスクと判断されるHR+HER2-早期乳がん患者約4,400例を対象に、従来の術後化学療法を一律に行う群と、50遺伝子のPAM50(Prosigna)検査結果に基づき化学療法の有無を決める群を比較した国際ランダム化非劣性試験である。対象は40歳以上で最大9個のリンパ節転移を認める症例まで含まれ、約2/3がリスクスコア60以下であった。浸潤乳がん再発または死亡のない生存期間は両群でほぼ同等で、試験群は化学療法群に対して5年時点の差が1.5%以下に収まり非劣性が確認された。低リスク腫瘍では化学療法の恩恵はごくわずかであり、100人中2人程度しか再発予防効果が得られないことが示された。この50遺伝子検査は、卵巣機能抑制下の40歳以上閉経前女性や4〜9個のリンパ節転移を有する症例でも補助化学療法の省略判断に活用できる。日本で用いられる21遺伝子検査(Oncotype DX)はリンパ節転移陰性もしくはリンパ節転移3個までの患者を対象とした臨床試験を有し、日本では保険適用ではないが多くの試験のあるMammaPrintも同様である。リンパ節転移4個以上9個までの、従来再発高リスクと考えられ、基本的に術後化学療法を提案していた患者が含まれている点が本試験の特徴である。一方で、検査費用(これは他のパネルも同様)やフォローアップ期間が63%の患者で5年以下と短いこと、40歳未満の若年者が除外されている点に留意が必要である。目次に戻るPRO-MOTE試験:日本最大規模のePRO試験最後にPRO-MOTE試験を紹介する。本試験は、日本の49施設が参加した進行がん患者501例を対象とする電子的患者報告アウトカム(ePRO)システムの実用性を検証したランダム化試験である。乳がんのみを対象とした試験ではないが、日本から報告された最大規模のePRO試験でありここで紹介する。神戸大学の清田 尚臣先生が発表された。PRO-MOTE試験はスマートフォンアプリによる週1回の症状報告と医師へのアラート送信を行う介入群と、通常診療のみの対照群を比較し、主要評価項目にEORTC QLQ-C30による24週時点のグローバルヘルスステータス(GHS)およびOSを設定した。中間解析ではePRO群のGHSは対照群に対して平均−0.61ポイント(95%CI:−3.03~1.82、p=0.625)と有意差がなく、OSもHR:0.91(95%CI:0.70~1.19、p=0.48)と差がなかった。一方でアンケート回答率は90%前後と高く、機能領域や症状の多くでePRO群に有利な改善がみられた。サブグループ解析では明確な恩恵を示す集団は見出されなかったが、デジタルツールの高い受容性と症状評価の質向上が示された。日本初の大規模ePRO試験として価値は高いものの、OSやGHSを主要エンドポイントとする設計では差が検出されず、今後のePRO研究では何をエンドポイントとして設定すべきか(症状制御や治療継続性など)について問題提起する報告であった。目次に戻る

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デュルバルマブ、切除可能胃がんの周術期治療で承認/AZ

 アストラゼネカは2026年6月19日、抗PD-L1抗体デュルバルマブ(商品名:イミフィンジ)が、「胃がんにおける術前・術後補助療法」の適応で厚生労働省の承認を取得したと発表した。これにより同薬は、日本で初めてかつ唯一の切除可能胃がんに対する周術期免疫療法として使用可能となった。 胃がんは世界で年間約100万人が新たに診断される主要ながんの1つであり、日本でも罹患数第3位、死亡数第4位を占める。切除可能症例では手術と周術期治療が治癒を目指す標準的アプローチであるものの、依然として再発率は高く、さらなる予後改善が課題となっている。 今回承認されたレジメンは、デュルバルマブとFLOT療法(フルオロウラシル、レボホリナート、オキサリプラチン、ドセタキセル)を組み合わせた周術期治療(D-FLOTレジメン)である。用法・用量は、術前および術後にそれぞれ最大2回、4週間間隔でデュルバルマブ1,500mgをFLOT療法と併用投与し、その後デュルバルマブ単剤を4週間間隔で最大10回投与する。 今回の承認は国際第III相MATTERHORN試験の結果に基づくもの。同試験は、切除可能なStageII~IVAの胃がんまたは食道胃接合部がん患者948例を対象とした無作為化二重盲検プラセボ対照国際共同第III相試験である。患者はデュルバルマブ+FLOT群またはプラセボ+FLOT群に割り付けられ、主要評価項目は無イベント生存期間(EFS)とされた。 計画された中間解析では、デュルバルマブ併用群は対照群と比較して病勢進行、再発または死亡のリスクを29%低下させた(ハザード比[HR]:0.71、95%信頼区間[CI]:0.58~0.86、p<0.001)。EFS中央値は対照群の32.8ヵ月に対し、デュルバルマブ群では未到達であった。24ヵ月時点のEFS率は67.4%対58.5%と、デュルバルマブ群で良好な結果が示された。 さらに最終全生存期間(OS)解析では、死亡リスクが22%低下した(HR:0.78、95%CI:0.63~0.96、p=0.021)。3年生存率はデュルバルマブ群69%、対照群62%であり、経時的に生存曲線の乖離が拡大する傾向が認められた。OSベネフィットはPD-L1発現状況にかかわらず確認された。 安全性については既知のプロファイルと概ね一致していた。Grade3以上の有害事象発現率はデュルバルマブ群71.6%、対照群71.2%と同程度であり、手術完遂率にも大きな差はみられなかった。 日本人サブグループ解析では、デュルバルマブ群40例、プラセボ群46例が登録され、有効性および安全性はいずれも全体集団と同様の傾向を示した。 愛知県がんセンターの室 圭氏は、「周術期D-FLOTレジメンは日本の患者にも新たな治療選択肢となり、周術期免疫療法が新たな標準治療となる可能性がある。切除可能胃がん治療における大きなパラダイムシフトである」とコメントした。また、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)胃がんグループ代表の吉川 貴己氏も、「依然として高い再発率を背景に、より強力な周術期治療が求められていた。本承認は切除可能胃がん患者の予後改善に向けた重要な選択肢となる」と期待を示した。 今回の承認により、切除可能胃がんに対する周術期治療戦略は、化学療法単独から免疫療法併用へと移行する可能性がある。【製品概要】(下線部が今回より追加)製品名:イミフィンジ点滴静注120mg、イミフィンジ点滴静注500mg一般名:デュルバルマブ(遺伝子組換え)効能又は効果:・切除不能な局所進行の非小細胞肺癌における根治的化学放射線療法後の維持療法・切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌・非小細胞肺癌における術前・術後補助療法・進展型小細胞肺癌・限局型小細胞肺癌における根治的化学放射線療法後の維持療法・治癒切除不能な胆道癌・進行・再発の子宮体癌・膀胱癌における術前・術後補助療法・胃癌における術前・術後補助療法

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複合がん免疫療法の近未来/日本臨床腫瘍学会

 がん免疫療法は、複数の免疫療法を組み合わせることで治療効果を最大化する新たなフェーズへと進展しつつある。2026年3月26~28日に開催された第23回日本臨床腫瘍学会学術集会では、「複合がん免疫療法の近未来」をテーマとしたシンポジウムが企画され、次世代の治療戦略が議論された。腫瘍免疫の理解が深化する中で、がん免疫応答の多面的なメカニズムを考慮した新たな複合がん免疫療法の確立が期待される。持続型T細胞免疫システムとCD4陽性T細胞療法 冒頭、各務 博氏(埼玉医科大学国際医療センター)は、近年のがん免疫療法の進歩を背景に、免疫応答をいかに持続させるかが重要な課題となっていることを指摘した。そのうえで、腫瘍微小環境内に形成される三次リンパ様構造(TLS)を基盤とした持続型T細胞免疫システムと、CD4陽性T細胞を活用した新たな治療戦略について講演した。 TLSは腫瘍局所に形成されるリンパ組織様構造で、抗原特異的T細胞の増殖や機能維持を担う場として機能する。ここでは、前駆疲弊CD8陽性T細胞(Tpex)が中心的役割を果たしている。TpexはPD-1を発現しつつも自己複製能を保持し、抗原特異的T細胞を継続的に供給する貯蔵プールとして働く。PD-1阻害薬の投与によりTpexが増殖し、抗腫瘍効果を引き起こすことが知られている。 さらに、Tpexの維持には特定のCD4陽性T細胞群が関与することが明らかとなっている。Tpexと連動して長期的な免疫応答を維持する重要な細胞集団であるTh7Rは、Tpexと類似した遺伝子発現を示し、腫瘍内で近接して分布する。解析の結果、Th7RとTpexの細胞数は相関しており、CD4陽性T細胞がTpexの形成および維持に寄与する可能性が示唆されている。 モデルマウスを使用した研究では、Th7Rを投与することで腫瘍内のTpexが増加し、抗腫瘍効果の増強が確認された。また、PD-1やCTLA-4阻害薬との併用により、その効果が持続することも示された。これは、Tpex/Th7R相互作用の維持を目的とした細胞療法として、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)治療の有望な戦略となる可能性を示唆している。 臨床的にもCD4陽性T細胞の存在は予後と関連し、PD-1阻害薬による治療前後で血中のTh7Rが減少していない患者さんで5年生存例が多いことが報告されている。一方で、これらの細胞が減少すると再発や死亡につながる可能性がある。このため、CD4陽性T細胞を継続的に補充する細胞療法により、腫瘍微小循環を維持し、免疫応答を長期にわたって持続させる治療戦略が重要であると各務氏は指摘する。 総じて、腫瘍微小循環にはTLS・Tpex/Th7R相互作用に代表される持続型抗腫瘍細胞メカニズムが存在し、持続的ながん免疫の基盤となっている。腫瘍微小循環を維持する細胞療法の併用は、今後のICI治療の発展において重要な方向性になることが期待されている。ICIとADC併用療法の現状と展望 続いて、清水 俊雄氏(関西医科大学附属病院 新薬開発科)はICIと抗体薬物複合体(ADC)の併用療法について、その作用機序、臨床的課題、今後の展望などについて概説した。 ADCは、標的に特異的に結合する抗体、細胞障害作用を担うペイロード、そして両者を連結するリンカーの3要素から構成される。これら各要素の設計は、有効性と安全性を大きく左右する。とくにリンカーの安定性や薬物抗体比(DAR)は体内動態(PK/PD)や毒性に強く影響する。また、ペイロードの疎水性や膜透過性は、腫瘍細胞内での作用に加え、周囲細胞へも影響する重要な因子である。 臨床的課題としては、標的抗原を発現する正常組織にも作用するオンターゲット毒性と、非特異的にほかの組織へ影響を及ぼすオフターゲット毒性が挙げられる。さらに、ADCは体内で単一の形態として存在するわけではなく、完全体、ペイロードが解離した抗体、遊離ペイロードなど複数の分子種が時間とともに変動する。このような動的な分布が薬効と毒性のバランスを規定するため、PK/PDの理解と最適化が重要となる。 免疫学的観点では、ADCによる腫瘍細胞障害は腫瘍抗原の放出を促し、免疫応答を活性化する。これにより樹状細胞およびT細胞が活性化され、腫瘍細胞では主要組織適合複合体(MHC)クラスI分子やPD-L1の発現が増加する。その結果、CD8陽性T細胞の腫瘍への浸潤が促進される。このような背景から、ICIとの併用による相乗的な抗腫瘍効果が期待されており、ADCとPD-1阻害薬の併用による有望な臨床試験の成績が報告されている。 一方で、併用療法の最適化にはいくつかの重要な課題がある。具体的には、標的抗原発現の維持、毒性の重複回避、ならびにADCの非特異的取り込みの抑制が挙げられる。さらに近年では、二重特異性抗体や二重ペイロードの導入、腫瘍特異的に活性化される設計、免疫刺激型ペイロードの活用など、機能を拡張した次世代ADCの開発が進んでいる。これらの新規ADCはまだ早期開発段階にあるものの、バイオマーカーの確立と臨床的有用性の検証が進めば、より精緻な個別化治療の実現が期待される。 最後に清水氏は、ADCとICIの併用療法は大きな可能性を有する一方で、その成功には分子設計、薬物動態、免疫学的作用、臨床戦略を統合的に理解することが不可欠となることを強調した。加えて、適切な薬剤選択や投与タイミングの最適化、さらには構造の改良による安全性と有効性の向上が、今後の治療成績を左右すると締めくくった。肺がん領域における二重特異性抗体の最前線 ICIの登場により、肺がん、とくに非小細胞肺がんの治療成績は大きく向上した。しかし、すべての患者さんに十分な効果が得られるわけではなく、新たな治療戦略の開発が求められている。こうした中で、最近は二重特異性抗体が注目されている。吉田 達哉氏(国立がん研究センター中央病院 呼吸器内科/先端医療科)は、肺がん領域における二重特異性抗体の臨床的展開について、最近の動向を報告した。 二重特異性抗体は、異なる2つの分子を同時に標的とすることを特徴とし、デュアルチェックポイント阻害型とT細胞誘導型(T細胞エンゲージャー)とに大きく分類される。前者は複数の免疫抑制シグナルを同時に阻害することで免疫応答を増強し、後者は腫瘍抗原とT細胞上の分子を橋渡ししてT細胞を直接腫瘍へ誘導・活性化する。造血器腫瘍ではT細胞エンゲージャーの成功例が多く報告されている一方、固形腫瘍である肺がんでは、これらを単独あるいはICIと組み合わせて用いる戦略が活発に検討されている。 肺がん領域では、特定のドライバー変異に関連する受容体を同時に標的とするアプローチや、腫瘍特異的抗原とT細胞を結び付けるT細胞エンゲージャーが臨床開発の段階から実臨床へと移行しつつある。前者は分子標的薬との併用により生存期間の延長が示唆され、後者は小細胞肺がんにおいて化学療法との併用で良好な治療成績が報告されており、新たな標準治療となる可能性がある。 一方で、患者選択の指標として用いられてきたPD-L1発現のみでは、ICIによる治療効果を十分に予測することが難しく、腫瘍変異量、抗原提示細胞や制御性T細胞の分布など、免疫微小環境をより詳細に解析する必要がある。こうした多面的なバイオマーカーの開発が、今後の個別化医療の鍵を握ると吉田氏は指摘する。 また、二重特異性T細胞エンゲージャーは腫瘍内の局所的なT細胞浸潤と免疫チェックポイント分子の発現を誘導し、ICI併用の有効性を示唆する一方で、抗原喪失などの免疫逃避が課題となる。 現在、T細胞エンゲージャーとICIの併用を検証する後期臨床試験が進行中であり、最適な併用方法や投与タイミングの確立が期待されているという。肺がん治療は、免疫療法のさらなる進展により新たな段階へと移行しつつあると、吉田氏は講演をまとめた。ICIとネオ抗原ワクチンの併用療法 近年、感染症領域におけるmRNAワクチンの成功を契機として、個別化がんワクチンの開発が大きく加速している。北野 滋久氏(がん研究会有明病院 先端医療開発科/がん免疫治療開発部)は、免疫学の観点からICIとネオ抗原ワクチンとの併用療法について概説した。 従来のがん抗原は自己由来成分に近く、十分な免疫応答を誘導できないことが多く、ワクチン療法としての成功例は限られてきた。これに対し、ネオ抗原は腫瘍細胞に特異的に生じた遺伝子変異に由来する新規タンパク質断片であり、後天的に獲得されるため免疫寛容の影響を受けにくく、高い免疫原性を持つ可能性がある。 ネオ抗原は、がん細胞内で産生された変異タンパク質が分解され、ヒト白血球抗原(HLA)に提示されることでT細胞に認識される。主にクラスIではCD8陽性T細胞、クラスIIではCD4陽性T細胞を活性化する。この過程には個人ごとのHLA型や遺伝子変異の違いが大きく影響するため、治療には患者さんごとの個別化が不可欠となる。近年では、DNAおよびRNAのシーケンシングと計算アルゴリズムを組み合わせることで、有望なネオ抗原候補を予測する技術が進歩し、個別化ワクチン開発が現実味を帯びてきた。 ワクチンにはペプチド、mRNA、DNA、ウイルスベクターなど多様な種類があり、とくにmRNAワクチンは柔軟性と開発の速さから注目されている。早期臨床試験ではネオ抗原特異的な免疫応答が確認され、ICIとの併用により抗腫瘍効果の向上が期待される。免疫応答は主にCD8陽性T細胞が担い、CD4陽性T細胞も補助的に関与する。安全性については、腫瘍特異的標的であるため理論上重篤な副作用はほとんどないと考えられる。 さらに、従来は注目されていなかったイントロンを含む非コード領域(いわゆるダークゲノム)や、スプライシング異常に由来するネオ抗原の存在も明らかになりつつあり、抗原候補の幅が大きく広がっている。全ゲノム解析を活用することで、これまで見逃されていた免疫標的の同定が進み、新たな治療戦略につながる可能性がある。 北野氏は、こうした科学的進展に加え、産学連携や国家レベルの研究基盤整備も進展しており、個別化ネオ抗原ワクチンと免疫療法の統合的アプローチは、がん治療の新たな柱として実用化に向けた期待が高まっていることを強調した。

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腹膜播種を伴う胃がん、腹腔内パクリタキセル追加でOS延長(DRAGON-01)

 腹膜播種を伴う胃がんは予後不良であり、1次治療として全身化学療法が行われるものの全生存期間(OS)中央値は1年未満にとどまる。中国で実施された第III相ランダム化比較試験DRAGON-01において、腹腔内パクリタキセルを静脈内パクリタキセル+S-1療法に追加することで、OSが有意に延長することが報告された。JAMA Oncology誌オンライン版2026年5月21日号掲載の報告。 パクリタキセルは腹膜腔内で高濃度を長時間維持できることから、腹腔内投与による局所制御向上が期待されてきた。DRAGON-01試験は、中国9施設で実施された多施設共同第III相比較試験であり、対象は胃腺がんかつ腹腔鏡で確認された腹膜転移を有し、腹膜外転移および既治療歴のない成人患者であった。 患者はIP群(パクリタキセル50mg/m2静注+パクリタキセル20mg/m2腹腔内+S-1)とPS群(パクリタキセル70mg/m2静注+S-1)に2対1で割り付けられた。主要評価項目はOS、副次評価項目は無増悪生存期間(PFS)、安全性、コンバージョン手術施行率などであった。 主な結果は以下のとおり。・222例(IP群148例、PS群74例)が解析対象となった。年齢中央値は59歳、腹膜播種指数(PCI)中央値は15で、比較的進行した腹膜病変を有する集団であった。・追跡期間中央値72.2ヵ月時点で、OS中央値はIP群19.4ヵ月、PS群13.9ヵ月で、IP群で有意な延長を示した(ハザード比[HR]:0.67、95%信頼区間[CI]:0.50~0.90)。・PFS中央値はIP群11.2ヵ月、PS群7.2ヵ月でこちらもIP群で有意な延長を示した(HR:0.72、95%CI:0.54~0.96)。・3年OS率はIP群25.0%、PS群12.2%であり、長期生存割合にも差がみられた。・コンバージョン手術施行率はIP群50.7%に対しPS群35.1%、ベースラインで腹膜細胞診陽性だった患者の陰性化率はIP群83.6%に対しPS群52.6%と、いずれもIP群で高かった。・Grade3/4の有害事象はIP群38.5%、PS群41.9%で発生し、両群に大きな差はなかった。主な重篤有害事象は好中球減少、白血球減少、貧血などであり、治療関連死亡は認められなかった。・IPポート関連合併症は27.0%に認められたが、多くは試験初期に発生しており、施設経験の蓄積による改善が示唆された。 著者らは、「静脈内パクリタキセル+S-1療法への腹腔内パクリタキセル追加は、重篤な毒性を増加させることなく、OSを有意に改善した」と結論付けた。一方で、本試験には現在標準となりつつある免疫チェックポイント阻害薬併用療法が導入されておらず、PD-L1やMSI情報も未取得であった。今後は免疫療法との併用を含めた検証が必要とされる。

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EGFR exon20挿入変異陽性進行NSCLCの初回治療、経口sunvozertinibが有効(WU-KONG28)/NEJM

 EGFR exon20挿入変異陽性の進行非小細胞肺がん(NSCLC)の初回治療として、sunvozertinibはプラチナベースの化学療法よりも有効性に優れることが示された。中国・Shanghai East HospitalのCaicun Zhou氏らWU-KONG28 Investigatorsが、15ヵ国154施設で被験者を募り実施した海外第III相無作為化試験の結果を報告した。sunvozertinibは、WU-KONG1B試験およびWU-KONG6試験の結果に基づき、米国および中国で、既治療のEGFR exon20挿入変異陽性の進行NSCLC患者に対する治療薬として迅速承認された経口薬。早期相の試験において、初回治療の選択薬としてもベネフィットをもたらす可能性が示唆され、有効性および安全性の検証が求められていた。NEJM誌オンライン版2026年5月29日号掲載の報告。主要評価項目はPFS 研究グループは、EGFR exon20挿入変異陽性の進行非扁平上皮NSCLC患者を、sunvozertinib群または化学療法群(カルボプラチン+ペメトレキセド)に、1対1の割合で無作為に割り付けた。ベースラインの脳転移の有無で層別化した。 sunvozertinib群の患者には、プロトコールで定義した病勢進行またはその他の投与中止基準に該当するまで、sunvozertinibが1日1回300mg経口投与された。化学療法群の患者は、治験担当医師の判断で最長4または6サイクルのカルボプラチン(AUC5)+ペメトレキセド(500mg/m2)投与を受け、その後に病勢進行またはその他の投与中止基準に該当するまでペメトレキセドの投与を受けた。化学療法は3週ごとの静脈内投与とした。 主要評価項目は、盲検下独立中央判定(BICR)による無増悪生存期間(PFS)であった。化学療法群は、病勢進行確認後にsunvozertinibへのクロスオーバーが許容された。 副次評価項目は、全生存期間(OS)、治験担当医師評価のPFS、奏効率(ORR)、腫瘍径の変化、奏効期間(DOR)などとした。化学療法群よりも、PFSが有意に延長 2022年12月~2025年5月に449例がスクリーニングされ、324例が無作為化された(sunvozertinib群163例、化学療法群161例)。両群の人口統計学的および臨床的な特性は、sunvozertinib群で男性が多く、ベースラインで腫瘍病変を認める臓器数が4つ以上の患者が多かったことを除き、バランスが取れていた。被験者のうち約31%が、北米(米国、カナダ)または欧州からの登録であった。 sunvozertinib群では化学療法群よりも、PFSが有意に延長した(PFS中央値:10.3ヵ月vs.7.5ヵ月、病勢進行または死亡のハザード比[HR]:0.65、95%信頼区間[CI]:0.50~0.85、p<0.001)。 12ヵ月PFS率は、sunvozertinib群46.1%、化学療法群26.7%であった。OSのデータは未成熟であった(成熟度38.9%)。ORRは、sunvozertinib群58.9%、化学療法群31.1%。腫瘍径の最良変化率中央値はそれぞれ-42.1%と-24.7%、DOR中央値は11.2ヵ月と7.1ヵ月であった。 Grade3以上の有害事象は、sunvozertinib群75.5%、化学療法群56.7%の患者で報告された。sunvozertinib群で多くみられたGrade3以上の有害事象は、血清クレアチンキナーゼ値上昇、下痢、貧血であった。治験担当医師がsunvozertinibに関連すると判定した死亡例はなかった。

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