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制吐目的のオランザピン、糖尿病患者にも厳格管理下で投与可能へ/日本癌治療学会

 2026年8月25日、日本癌治療学会制吐薬適正使用ガイドライン改訂ワーキンググループ(以下、WG)は、「制吐目的としてのオランザピン投与時の血糖管理」について、ガイドライン速報版として公開した。同日に厚生労働省から添付文書の改訂指示が発出され、経口薬のオランザピンについては、警告が新設されると同時に禁忌の項が改訂された。 同ワーキンググループの安部 正和氏(浜松医科大学医学部産婦人科)は、本公表に至る経緯や臨床現場への期待について、以下のように本稿へコメントを寄せている。  「私と国立がん研究センター中央病院薬剤部の橋本 浩伸先生、矢内 貴子先生が中心となってシスプラチンレジメンを対象に行ったJ-FORCE試験、乳がんのAC療法を対象に日本で行われたJTOP-B試験、米国で行われたALLIANCE試験の3試験によって、オランザピンを含む4剤併用療法は、日本・米国・欧州のガイドラインにて、高度催吐性化学療法に対する標準制吐療法になりました。これまで日本でのみ糖尿病患者への投与が禁忌であったことから、国内の糖尿病患者さんだけがオランザピンを含む制吐療法を受けることができませんでした。  この臨床課題について、私と橋本先生は2年前に、日本がんサポーティブケア学会のCINV部会のミッションとしてオランザピンの糖尿病患者への投与禁忌解除を掲げ、活動を開始しました。CINV部会および制吐薬適正使用ガイドラインの関係者からの協力もいただき、オランザピンの治験データ、国内で行われたオランザピン5mgを含む制吐療法を検証した第III相試験の血糖値データ、オランザピンを使用した国内外のランダム化比較試験の文献、海外のオランザピンの添付文書、教科書的記載などを調査し、厚生労働省医薬局医薬安全対策課と医薬品医療機器総合機構(PMDA)の方と安全な使用条件について検討を重ね、ようやく今回の添付文書に至りました。  抗がん剤に伴う悪心・嘔吐は患者さんがつらいだけではなく、コントロールが悪いと生命予後が短くなることが示されています。日本の糖尿病患者さんの制吐療法においてオランザピンが使用できることになったことは非常に喜ばしいことである一方で、安全に使用できることが非常に重要です。がん治療に関わる医療者の皆さまにおかれましては、WGが発出したガイドライン速報版の内容を十分確認の上、安全かつ適正な使用をお願いいたします」添付文書の改訂点【警告】<抗悪性腫瘍剤(シスプラチン等)投与に伴う消化器症状(悪心、嘔吐)>糖尿病又はその既往のある患者へ本剤を投与する場合には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合以外は投与しないこと。また、本剤投与前及び投与期間中は、毎日頻回に血糖値のモニタリングの管理を行い、本剤投与後も血糖値が安定するまではモニタリングを継続するなど患者の状態を継続的に観察するとともに、投与期間を通じて、緊急時に十分に対応できる体制を整えた上で投与すること。【禁忌】糖尿病の患者、糖尿病の既往歴のある患者↓<統合失調症、双極性障害における躁症状及びうつ症状の改善>糖尿病の患者、糖尿病の既往歴のある患者厳格な血糖管理と入院管理の徹底 今回示された臨床管理の主なポイントは以下のとおり。・入院治療の適応:糖尿病またはその既往のある患者に制吐目的でオランザピンを投与する場合、血糖コントロールが安定していることを確認のうえ、入院管理で化学療法を行う。外来治療が可能な化学療法(AC療法や中等度催吐性化学療法など)であっても、高度催吐性リスクであるシスプラチンを含む化学療法と同様に入院管理で実施する。・事前コンサルト:化学療法前の検査で糖尿病が判明した場合や血糖コントロール不良例では、あらかじめ内分泌内科・糖尿病内科へコンサルトを行い、十分なコントロールを得た上で治療を開始する。・血糖管理:日常臨床で行われているスライディングスケール(毎食前±眠前の1日3〜4回の血糖測定)を用いた厳格な血糖管理を行う。・入院(投与)期間と退院基準:標準制吐療法のオランザピン投与日数(1〜4日目の4日間)を遵守し、追加投与が必要な場合も入院管理を継続して必要最低限にとどめる。オランザピンおよび併用するデキサメタゾンの投与期間・投与量に留意し、食前血糖値200mg/dL未満など血糖値が安定した状態を確認して退院を計画する。・退院後の外来管理・緊急対応:自己血糖測定(SMBG)患者での食前血糖値200mg/dL以上の継続・300mg/dL以上の高血糖時、SMBGが保険診療上できない患者での口渇・多尿・倦怠感などの発現時には、夜間・休日を問わず受診している医療機関に連絡・受診するよう指導を徹底する。カルテへの明確な記載や院内マニュアルを整備し、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の安全管理体制と同様に、多科・多職種による安全管理体制の構築を推奨する。禁忌解除の要望が実現 多元受容体拮抗薬(MARTA)で非定型抗精神病薬のオランザピンは、発売開始後の公知申請によって、2017年に抗悪性腫瘍剤(シスプラチンなど)投与に伴う消化器症状(悪心、嘔吐)に対する効果的な制吐薬として承認されている。また、2023年10月に改訂された『制吐薬適正使用ガイドライン第3版』では急性期・遅発期ともに有効な新たな制吐薬として使用可能になった点などが反映されたことで、現在では臨床で広く浸透している。その一方で、重大な副作用として著しい血糖値の上昇や糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡等が報告されていたことから、「糖尿病またはその既往のある患者には投与禁忌」とされ、糖尿病歴のある患者が化学療法を行う際に、制吐対策が限定される状況であった。しかし、これまで報告されている本薬の有効性を検証した臨床試験において、「重篤な高血糖関連事象は報告されていない」「本薬を含む4剤併用の制吐療法は、国内外のガイドラインにおいて高度催吐性リスクの化学療法に対する標準制吐療法になっているが、本邦のみ本薬が糖尿病患者に対して禁忌」であることを踏まえ、WGにより禁忌解除の要望書を2026年4月9日付けで厚生労働省に提出。医薬品医療機器総合機構(PMDA)の評価でも支持を受け、今回、「抗悪性腫瘍剤(シスプラチン等)投与に伴う消化器症状(悪心、嘔吐)」の効能に対しては、禁忌を解除し、慎重投与可能と判断されるに至った。 今回の速報版は、ガイドライン上の既存の推奨内容を変更するものではないが、糖尿病またはその既往のある患者であっても、適切な厳格管理体制を整えることでオランザピンを制吐目的で安全に投与・活用できるようにするための具体的な管理手順および留意点を取りまとめたものである。薬物動態と臨床試験データ さらに速報版では、制吐目的での短期投与に関する薬理学的データや臨床試験成績も提示されている。オランザピンの半減期は約33時間であり、定常状態に達するには約1週間(約163時間)を要するため、標準的な4〜6日間の連続投与時点では血中濃度が上がり切っていない状態にある。また、日本国内で実施された各種ランダム化比較試験(J-FORCE試験、JTOP-B試験、肺がんカルボプラチン試験など)のデータにおいて、制吐薬としてオランザピンを短期間併用した群と対照群との間で、Grade3〜4の重篤な高血糖発現率に大きな差は認められていない。 制吐目的での短期投与における高血糖関連有害事象のエビデンスがまだ十分に集積されていない現状を踏まえ、本速報版では臨床現場でより安全にオランザピンを使用するための慎重なリスク管理体制が提示された形だ。

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卵巣予備能がHR+/HER2-乳がんの術後化学療法ベネフィットを予測/Ann Oncol

 21遺伝子アッセイ(オンコタイプDX)の再発スコアが25以下のHR+/HER2-乳がん患者を対象に、術後の内分泌療法と内分泌療法+化学療法(化学内分泌療法)を比較した第III相RxPONDER試験の55歳未満を対象とするバイオマーカー解析の結果、超高感度アッセイを用いて測定した卵巣予備能の指標である抗ミュラー管ホルモン(AMH)が化学療法追加のベネフィットを予測し、AMHが低値の患者では化学療法追加によるベネフィットが認められなかったことを、米国・エモリー大学のKevin Kalinsky氏らが示した。Annals of Oncology誌2026年9月号掲載の報告。 RxPONDER試験では、リンパ節転移1~3個、再発スコアが25以下のHR+/HER2-乳がん患者を、術後に内分泌療法単独を受ける群または化学内分泌療法を受ける群に無作為に割り付けた。その結果、閉経後患者においては化学療法追加のベネフィットは認められなかった一方、閉経前患者ではベネフィットが示されている。しかし、同試験では閉経前患者における卵巣機能抑制の併用率が低く、化学療法によるベネフィットのかなりの部分が化学療法そのものの抗腫瘍作用ではなく、化学療法に伴う卵巣機能抑制を介した内分泌学的作用によるのではないかと示唆されている。そこで本解析では、化学療法追加によるベネフィットを予測する因子をさらに検討するため、卵巣予備能に関連するホルモンを評価した。 解析対象は、55歳未満で治療前の血清検体が利用可能であった1,556例とした。治療前の血清エストラジオール、プロゲステロン、卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、AMH、インヒビンB(INHB)を盲検下で評価した。評価項目は無浸潤疾患生存期間(iDFS)および無遠隔再発生存期間(DRFS)とし、再発スコアで調整したCox回帰モデルを用いて、治療割り付けと各ホルモン指標の交互作用を検討した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象1,556例のうち、閉経前は1,221例、閉経後は335例であった。追跡期間中央値は8.0年。・解析対象全体では、内分泌療法単独群と比較して、化学内分泌療法群ではiDFSが有意に改善した。年齢別では、50歳未満では化学内分泌療法の有意なベネフィットが認められたが、50~54歳では有意ではなかった。ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)は以下のとおり。 -解析対象全体 HR:0.65、95%CI:0.50~0.85、調整後のp=0.0066 -50歳未満 HR:0.47、95%CI:0.33~0.67、調整後のp=0.0004 -50~54歳 HR:1.02、95%CI:0.68~1.54、調整後のp=0.95・閉経前患者では化学内分泌療法によるiDFSのベネフィットが認められたが、閉経後患者では認められなかった。 -閉経前 HR:0.55、95%CI:0.41~0.75、調整後のp=0.0009 -閉経後 HR:1.18、95%CI:0.67~2.07、調整後のp=0.72・AMH値と治療割り付けの交互作用は有意であり(調整後のp=0.0034)、AMH値によって化学療法追加による治療効果が異なることが示された。・AMH値10pg/mL以上の群では、化学内分泌療法によりiDFSが有意に改善し、5年iDFSの絶対利益は8.5%であった。AMH値10pg/mL未満の群では化学療法の追加による有意なベネフィットは認められなかった。 -AMH値10pg/mL以上 HR:0.46、95%CI:0.33~0.65、調整後のp=0.00012 -AMH値10pg/mL未満 HR:1.27、95%CI:0.81~1.99、調整後のp=0.47・DRFSについても同様であり、AMH値10pg/mL以上の群では化学内分泌療法のベネフィットが認められ、AMH値10pg/mL未満の群では認められなかった。・INHB値12pg/mL以上の群ではiDFSで化学療法追加のベネフィットが認められ、DRFSでも同様の傾向がみられた。一方、INHB値12pg/mL未満群ではiDFSのベネフィットは認められなかった。・エストラジオール、プロゲステロン、FSH値は化学内分泌療法のベネフィットを予測する因子ではなく、LH値は弱い予測能を示すにとどまった。 研究グループは「55歳未満の患者を対象とする本解析において、ベースラインのAMH値が10pg/mL未満の参加者は化学内分泌療法による恩恵を受けなかった。AMH値は、閉経状態、年齢、その他のホルモン値よりも、化学内分泌療法の有効性を示す有意に優れた指標であった。適切な超高感度アッセイを用いた卵巣予備能の測定は、閉経状態が不明確な患者において、化学療法を安全に省略できる患者の特定に役立つ可能性がある」とまとめた。

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乳がん治療の変遷と今後【温故知新30年】

講師紹介30年間における乳がん患者数の急増と社会現象30年前(1996年)、私は名古屋市立大学外科医局で乳腺内分泌外科の助手をしていた。その当時、大学の乳がん症例は年間30例ほどであり、着任したばかりの胸部外科の教授との面談で、「将来は乳腺診療一本でやっていきたい」と話をしたら、「乳腺を専門にするだけではやっていけないよ」と諭された。その後、乳がん患者数の急増により、生涯で女性の8人に1人が乳がんになり、年間の新規乳がん患者数は10万人を超える時代になった。乳がんに対する学会活動も、30年前は日本乳癌学会の黎明期であり(1993年が第1回学術総会)、日本臨床腫瘍学会はまだ産声を上げていなかった。対策型乳がん検診にマンモグラフィ(MMG)が導入されたのは2000年であり、30年前は視触診のみ行われていた。しかし、患者数の増加とともにさまざまな市民活動が始まった。MMG検診普及事業と連携して海外で行われていたピンクリボン運動が2002年に朝日新聞主催で開始された。MD Andersonなど米国のCancer Centerから導入されたチーム医療の考え方は瞬く間に日本中に広がり、今では常識的な体制になっている。2013年に女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)でリスク低減乳房切除(RRM)を受けたことをきっかけに、HBOCの認知度が高まり、それとともに学会活動(2016年 日本遺伝性乳癌卵巣癌総合診療制度機構[JOHBOC]設立)も始まった。HBOC診断のためのBRCA遺伝学的検査、RRM、リスク低減卵巣卵管切除(RRSO)の保険適用などは日本独自の画期的な取り組みである。がん医療の進歩は治療だけでなく、取り巻く社会環境、医療環境も大きく変化したと感じる。30年前の標準治療(架空症例)【症例】60歳女性、しこりを自覚して外科を受診【診断】視触診、MMG、超音波検査でしこりを認識し、摘出生検で乳がんと診断【治療(手術)】腋窩リンパ節腫大はないが、乳房全摘術+腋窩郭清術を施行【病理結果】浸潤径:2cm、腋窩リンパ節転移:1/25、ER陽性・PgR陽性(HER2測定は標準的に行われていなかった)【治療(薬物療法)】術後は再発予防のために、AC療法(アドリアマイシン+エンドキサン)4回点滴投与し、その後TAMを2年間内服。術後は1年ごとにCT、骨シンチなどで再発チェックを行う30年間の局所治療の進歩1)手術療法の進歩30年前は、乳がんであれば全例腋窩郭清術が行われ、多くの患者さんが術後上腕浮腫の合併によりQOLが低下した。革新的な進歩はセンチネルリンパ節生検(SLNB)の導入である。米国で開始されたSLNBの概念は1998年に日本へ紹介され、2003年に先進医療として開始、2010年に保険承認された。その後SLNBの適応が少しずつ広がり、一部の症例ではSLNB陽性でも郭清しないことが標準治療となっている。乳房に対する手術療法の変化は、1990年代後半から2000年代前半にかけて乳房温存療法が急速に広がったことだ。背景には乳房部分切除+放射線治療の有効性が国際的に確立したこと、ガイドラインの普及、検診MMGの導入で小さながんが発見されるようになったことが挙げられる。同時に、マスコミは温存率の高い病院を『いい病院』とするようなキャンペーンを打ち上げた。これにより各病院は温存率を上げるために、無理をして乳房を残し(温存率90%の病院もあった)、結果として断端陽性症例が増加し、乳房内再発例が増えたことは負の歴史である。その後は全摘+再建術の普及により、乳房温存率は適切な数字に落ち着いている。再建手術の普及により、治す時代から整容性も追求する時代になった。2013年に日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会(JOPBS)が設立され、同年乳房再建用シリコンインプラントが保険適用となった。2006年に保険適用になった自家組織(腹直筋皮弁、広背筋皮弁など)による乳房再建とともに、乳房再建術が標準治療として認知される時代である。2)放射線治療の進歩乳がん患者への放射線治療は、温存術が広まると同時に全国に普及した。乳房を残す手術をした場合には、残存乳房に放射線照射をすることが標準治療である。またリンパ節転移が4個以上の再発ハイリスク患者では、胸壁+鎖骨上照射(PMRT)で生存率の改善が認められ、放射線照射を受ける患者数は増加した。30年間、放射線治療方法自体に大きなパラダイムチェンジはないが、術後照射回数が25回から16回への過分割照射のエビデンスが出て、回数を減らす方向に向かっている。転移・再発治療における放射線治療については、脳転移に対する体幹部定位放射線治療(SBRT)や、重要臓器を避けて照射する強度変調放射線治療(IMRT)など技術の進歩によって、痛みの緩和をベースにさまざまな場面で放射線治療が導入されることが多い。3)全身薬物療法の進歩この30年で薬物療法の革新的な進歩には目を見張るものがある。30年前に使えた薬は抗がん剤が数種類、ホルモン剤はタモキシフェン、分子標的薬という概念はなく、乳がんをサブタイプで考えることもなかった。この30年で使用可能になった薬剤を示す画像を拡大する周術期に全身薬物療法を行うタイミングも、2000年代前半から術前化学療法の臨床試験が国内外で活発に行われた。得られた多くの知見によって、より個別化した適応が現在の標準治療と位置付けられる。サブタイプに分けて考え、ER陽性HER2陰性のLuminal typeは原則手術先行であり、手術の結果で得られた臨床病理学的所見とともに、多遺伝子アッセイ(Oncotype DX)によって化学療法の必要性を判断する時代である。ER陰性HER2陽性のHER2 typeやtriple negative(TN)typeでは、術前化学療法が積極的に行われる。術前化学療法後の病理診断でpCRであった症例の予後はきわめて良好であり、non-pCR症例では予後の改善を目的に、術後追加治療(HER2 typeではT-DM1、TN typeではカペシタビン)を加えるのが標準治療である。転移再発乳がん治療では、新規薬剤開発と並行して生存期間の延長が顕著である。30年前、HER2 typeの再発後生存期間は2年に満たなかったのが、多くの抗HER2薬の導入により今では6年を超える生命予後が期待できる。なかには完治したのではないかと思われるケースも存在する。Luminal typeは長くホルモン治療単独の時代が続いたが、CDK4/6阻害薬が承認され、バイオマーカーによる薬剤選択が標準化したことで今後の生存期間延長が期待できる。TN typeでは免疫チェックポイント阻害薬、ADC(抗TROP-2 ADC、T-DXd)の開発で抗がん剤しか手段がない状態が改善した。私にとってのパラダイムシフト・イノベーション2002年に始まったHERA study(術後トラスツズマブの有効性を評価する国際共同治験)へ参加したこと、患者登録とASCOでの発表(2005年)でスタンディングオベーションを現場で体験したこと、そしてNEJM誌への共著者として掲載されたことで人生が変わった。臨床研究(試験)による標準治療構築、新薬開発の道は今も続き、JCOG乳がんグループ代表を2010年から14年間務めた。その間、並行して多くの企業とともに日本に導入された数々の新薬開発にも携わり、たくさんの仲間とともに標準治療を変える臨床試験を立案、実行してきたことはかけがえのない財産である。次の5年で乳がん診療はどう変わっていくか最も注目しているのはMRD(minimal residual disease)研究である。周術期薬物療法は、臨床病理学的因子やOncotype DXに基づき、再発リスクを鑑みて薬剤選択をしてきた。しかし、無治療でも再発しない方が多数存在することも事実である。残念ながら今まではそれを予測できないために、多くの患者さんに治療が行われてきた。今、高感度MRD assayにより、術後MRD陰性の方の予後はきわめて良好なことが判明しつつある。術前治療の効果判定、術後の予後予測、再発予防治療の選択などにMRD assayが導入される時代が、すぐそこまで来ている。もう一つの注目は人工知能(AI)の導入である。画像診断、病理診断ではAI導入による臨床試験の結果(positive)も報告され、一般診療に導入される夜明け前の状態だ。さまざまな場面での薬剤選択も、gene signatureで予測していた時代から、膨大な遺伝子情報から導き出されたアルゴリズムによるAI pathologyで、薬剤の必要性を判断する時代が来ると予想する。安価で簡便な方法であり、技術進歩による歩みは止まらないだろう。最後に、世界の中での日本を俯瞰した時、東アジア各国の台頭により日本のプレゼンスが弱くなっている。新薬開発分野、標準治療構築のための国際協働の枠組みに日本がはじかれることのないように、医療体制・医学教育全体の見直しが急務だと考えている。

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ペムブロリズマブ投与後の好酸球割合、irAE発現リスク評価の手掛かりに

 免疫チェックポイント阻害薬はがん治療に大きく貢献している一方、免疫関連有害事象(irAE)への対応が課題となっている。今回、転移性尿路上皮がん患者を対象とした研究で、ペムブロリズマブ投与3週間後の好酸球割合が、irAE発現リスクを評価する手掛かりとなる可能性が示された。研究は名古屋市立大学大学院医学研究科臨床薬剤学分野の小田切州広氏、同大学医学部附属西部医療センター泌尿器科の内木拓氏らによるもので、詳細は7月1日付の「Cancer Medicine」に掲載された。 転移性尿路上皮がん(mUC)は予後不良で、これまで主にプラチナ製剤を用いた化学療法が行われてきた。近年はペムブロリズマブが治療選択肢となり、治療成績が改善しているが、irAEは発症時期や発症する臓器の予測が難しく、早期にリスクを把握できるバイオマーカーの確立が求められている。著者らはこれまで他のがん種で好酸球とirAEとの関連を報告してきたが、ペムブロリズマブで治療を受ける転移性尿路上皮がん患者での有用性は明らかになっていなかった。そこで本研究では、ペムブロリズマブで治療を受けたmUC患者を対象に、治療前および治療3週間後の好酸球割合がirAE発現の予測マーカーとなり得るかを検討した。 研究グループは、2018年1月~2024年10月に東海地方の6施設でペムブロリズマブ単剤療法を1コース以上受けたmUC患者124人を対象に、多施設共同の後ろ向きコホート研究を実施した。患者はirAEの発症の有無で2群に分け、治療開始前と初回投与3週間後に採取した血液中の好酸球割合および好酸球数を比較した。irAEはCTCAE v5.0に基づいて評価した。さらに、原発部位別の解析も行い、膀胱がん患者と上部尿路上皮がん患者で結果を検証した。 研究期間中、124人の患者から47件のirAEが確認された。47件のirAEのうち、初回ペムブロリズマブ投与から21日以内に発症したものは9件(19.1%)で、38件(80.9%)は治療開始21日以降に発症した。 解析の結果、治療開始前から3週間後にかけての好酸球割合の変化は、irAE発症群で有意に大きかった(非発症群:2.4%から3.1%、発症群:2.2%から4.3%)。一方、好酸球数の変化については、両群で有意な差は認められなかった。 この関連が原発部位によって異なるかを調べるため、膀胱がんと上部尿路上皮がんに分けて解析した。膀胱がん患者では、irAE発症群で好酸球割合の上昇が有意に大きかった(非発症群:2.5%から2.8%、発症群:1.9%から4.1%)。一方、上部尿路上皮がん患者では、好酸球割合の変化とirAE発現との間に有意な関連は認められなかった。 この結果を踏まえ、膀胱がん患者において治療3週間後の好酸球割合とirAE発現リスクとの関連を詳しく解析したところ、好酸球割合5.0%がリスク評価のカットオフ値となった。多変量解析では、好酸球割合5.0%以上の患者は、5.0%未満の患者と比べてirAEを発症するリスクが高かった(オッズ比3.61、95%信頼区間1.00~13.0)。 著者らは、ペムブロリズマブ治療後の好酸球割合の変化を把握することで、irAE発現リスクを早期に把握するための手掛かりになる可能性があると考察している。また、3週間間隔の投与スケジュールに合わせて好酸球割合を確認することは、実臨床でも取り入れやすい評価方法になる可能性があるという。なお、好酸球の増加は免疫チェックポイント阻害薬の治療効果や予後改善とも関連することが報告されており、上昇のみを理由に治療中止を判断すべきではないと指摘している。 一方で、本研究は後ろ向き研究であり、好酸球割合を単独の指標として臨床応用するには、今後さらなる検証が必要だとしている。

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TP53変異を伴うEGFR陽性NSCLC、オシメルチニブ+化学療法が有効(TOP)/JAMA

 上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)患者に有望な治療法として併用療法が注目されているが、最も大きな恩恵を受ける可能性が高い患者の特定が未解決の臨床的課題とされる。中国・Guangdong Provincial Clinical Research Center for CancerのTing Zhou氏らは、TP53遺伝子変異を伴うEGFR遺伝子変異陽性進行NSCLC患者の1次治療では、オシメルチニブと化学療法の併用療法はオシメルチニブ単独と比較して、無増悪生存期間(PFS)を有意に延長し、Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)の頻度が高いものの新たな安全性シグナルは認められないことを示した。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2026年8月10日号に掲載された。中国の無作為化第III相試験 本研究は、中国の17施設で実施した非盲検無作為化第III相試験であり、2021年3月~2024年7月に、年齢18歳以上、EGFR遺伝子の感受性変異(Ex19delまたはL858R変異)とともにTP53遺伝子変異を有する未治療のStageIVまたは再発の非扁平上皮NSCLC患者を登録した(AstraZenecaの助成を受けた)。 被験者294例(年齢中央値57歳[範囲:26~79]、女性159例[54.1%])を、オシメルチニブ+化学療法(ペメトレキセド-カルボプラチン療法を4サイクル[1サイクル3週間])を施行後に維持療法としてオシメルチニブ+ペメトレキセドの投与を受ける群(146例)、またはオシメルチニブのみの投与を受ける群(148例)に無作為に割り付けた。 主要評価項目は、試験担当医師判定によるPFSであった。副次評価項目は、全生存期間(OS)、奏効期間、安全性およびQOLなどであった。PFSは34.0ヵ月vs.15.6ヵ月、奏効期間は約2倍に ベースラインにおいて全体の48.6%が脳転移を有していた。データカットオフ日(2025年11月11日)の時点で、追跡期間中央値は化学療法併用群が25.1ヵ月、オシメルチニブ単独群は26.1ヵ月だった。 PFS中央値は、化学療法併用群34.0ヵ月、オシメルチニブ単独群15.6ヵ月であった(群間差:18.4ヵ月[95%信頼区間[CI]:9.9~22.3]、ハザード比[HR]:0.44[95%CI:0.32~0.60]、p<0.001)。 化学療法併用群におけるPFSの有益性は、脳転移を有する患者やL858R変異を有する患者を含む事前に規定されたサブグループ全体で一貫して認められた。 OSのデータは十分でなかった(データ成熟度30.6%)が、化学療法併用群で有益性が高い傾向がみられた(OS中央値:化学療法併用群48.4ヵ月[95%CI:42.7~評価不能]vs.オシメルチニブ単独群36.5ヵ月[95%CI:28.1~評価不能]、HR:0.57[95%CI:0.38~0.88])。 奏効率は、化学療法併用群が82.9%(すべて部分奏効)、オシメルチニブ単独群は71.6%(同)であった。また、奏効期間中央値は、化学療法併用群がオシメルチニブ単独群の約2倍だった(32.7ヵ月vs.15.3ヵ月)。病勢コントロール率は両群で同程度だった(91.8%vs.84.5%)。Grade3以上のTRAEは併用群で高い、新たな安全性シグナルはなし Grade3以上のTRAEの発生率は化学療法併用群で高かった(62.4%vs.14.9%)。なかでも、好中球数減少(38.3%vs.4.1%)、白血球数減少(24.1%vs.0%)、血小板数減少(23.4%vs.0%)、貧血(9.2%vs.0.7%)の頻度が高かった。 重篤なTRAEの頻度も化学療法併用群で高かった(10.6%vs.1.4%)。化学療法併用群の1例が、肺出血に至った治療関連の重度の血小板減少で死亡した。また、とくに注目すべき有害事象として、間質性肺疾患または肺臓炎が化学療法併用群の7例(5.0%)、オシメルチニブ単独群の10例(6.8%)に、心不全がそれぞれ3例(2.1%)、1例(0.7%)に発現した。 化学療法併用群では、TRAEによる試験薬の中断が58例(41.1%)、減量が28例(19.9%)、中止が37例(26.2%)で発生し、オシメルチニブの中断は44例(31.2%)、減量は1例(0.7%)、中止は4例(2.8%)でみられた。オシメルチニブ単独群では、それぞれ13例(8.8%)、0%、2例(1.4%)であった。また、新たな安全性シグナルは確認されなかった。 著者は、「これらの知見は、EGFR変異を有する進行NSCLCに対する、分子リスクに基づく併用療法による個別化治療戦略を支持する重要なエビデンスをもたらす」としている。

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「Frailだから無理」と諦めない高齢者の放射線治療~がん腫・病期×全身状態でみつける、最適アプローチ【高齢者がん治療 虎の巻】第12回

講師紹介<今回のPoint>有害事象の発生や重症度は、照射部位、照射法、照射野の大きさに依存する高齢者では、放射線治療による有害事象の発生頻度、重症度が高くなる可能性がある線量集中性の高い強度変調放射線治療(IMRT)や定位照射などの高精度放射線治療は、高齢者に対しても有用である放射線治療施行の絶対条件は、照射体位を15分以上保持できることである(照射法により異なる)放射線治療の目的および照射法放射線治療の目的は、根治から緩和まで多岐にわたります。一般的に緩和照射で必要となる線量は根治照射よりも低く、有害事象も軽微なことが多いです(図1)。(図1)放射線治療の目的画像を拡大する従来は、三次元のCT情報に基づき多方向から照射する「三次元原体照射(3DCRT、図2a)」が主に行われていました。しかし、一方向からのビームに強弱をつけられないため、病巣周囲の正常臓器に対する線量低減には限界がありました。一方、強度を変調した線束を用いて多方向から集光的に照射する「強度変調放射線治療(IMRT、図2b)」では、病巣への線量を担保しつつ正常臓器への線量を低減可能です。また「定位照射(図2c)」は、小さな領域に対し細いビームを用いてピンポイントに集中的な照射を行うため、高い局所制御率と低い有害事象頻度が得られます。IMRTや定位照射は「高精度放射線治療」に分類され臨床的な有用性が認められていますが、3DCRT(照射時間:約10~20分)と比較して厳密な位置精度が求められるため、照射時間が長くなる点に注意が必要です(IMRT:約20~30分、定位照射:約30分~1時間)。(図2)照射法画像を拡大する放射線治療を施行する上での絶対条件放射線治療室は漏洩防止のため、迷路構造(図3a)や厚い金属扉(図3b)で遮蔽されており、照射時には寝台が1.0~1.5mの高さまで上昇します(図3c)。そのため、モニターなどで患者の異変や危険を察知してからスタッフが駆け付けるまでに数十秒を要し、万が一の転落時には重症化リスクが高まります。したがって、放射線治療を安全に施行するための絶対条件は「寝台上で一定時間の安静を保持できること」です(基本的には安定性の高い仰臥位で照射しますが、有害事象対策や疼痛・呼吸苦などに配慮してほかの体位を選択することもあります)。(図3)放射線治療室の構造画像を拡大する高齢がん患者における放射線治療の適応標準治療は主に健常成人を対象に確立されています。これまでさまざまながん腫における(化学)放射線治療の有効性を検証した臨床試験のサブグループ解析では、「若年者と比べ高齢者で生存効果が劣る」とする報告1,2)と「同等である」とする報告3,4)があり、一貫した見解は得られていません。そのため、高齢患者に対して標準治療を選択すべきか否かは、個々の症例に応じた検討が必要です。放射線治療の有害事象は、照射部位・照射野の広さ・総線量に依存しますが、糖尿病や動脈硬化、感染症などの併存疾患が存在すると、発生頻度の上昇や重症化を招くおそれがあります5,6)。加えて高齢がん患者では、健常成人と比べ、有害事象の(1)発生頻度が高まる、(2)重症化しやすいという特徴があります。したがって、標準治療に伴うリスクを患者ごとに想定した上で、忍容性を判断しなければなりません。たとえば、直腸がんに対する術前化学放射線療法を検証した臨床試験において、70歳以上の高齢者では若年者と比較して、治療の中断率(4.2% vs.1.4%、p=0.03)およびGrade3~4の非血液毒性発生率(21.1% vs.13.6%、p=0.03)が有意に高く、手術施行率も有意に低い結果でした(95.8% vs.99.0%、p=0.008)7)。また、本邦の多施設試験においても、患者背景から治療強度の減弱を選択した症例の89%で併用化学療法の変更(減量・中止)がなされており、放射線治療の変更(照射野縮小や線量低減など)は少数であったものの、予定された放射線治療自体の完遂率は98%と良好でした8)。一般に放射線治療単独と比べ、化学放射線療法では有害事象が発生しやすくなるため、化学療法を併用することのベネフィットとリスクのバランスを見極めることが重要です。高齢がん患者に対する放射線治療の実際線量集中性に優れた定位照射や粒子線治療について、高齢がん患者に対する有効性を後方視的に検討した報告では、良好な成績が示されています。原発性肺・肝がんを有する高齢者への定位照射では、9割程度の局所制御率を得ながら、Grade3以上の有害事象は0~4.7%程度と報告されており、高い有効性と安全性が示されています9-11)。また転移性脳腫瘍患者を対象に「全脳照射+定位照射」と「定位照射単独」を比較した臨床試験では、全生存に有意差はないものの定位照射単独群のほうが照射3ヵ月後の認知機能低下が有意に少なく、年齢層別解析でも一貫した結果が得られました12)。同様に、高齢の肝細胞がん・食道がん・原発性肺がんに対する粒子線治療でも、低い有害事象頻度と高い局所制御率が報告されています13-15)。さらに後方視的解析ではありますが、高齢膀胱がんに対する根治的放射線治療において3DCRTとIMRTを比較した結果、照射法による全生存や局所再発に有意差はないもののIMRT群で急性期有害事象が有意に減少しました(22% vs.2%、p=0.02)16)。高齢がん患者において3DCRTとIMRTを直接比較したランダム化比較試験は限られているものの、「有害事象が発生しやすく重症化しやすい」という高齢者の特性を踏まえると、正常組織への影響を低減できる高精度放射線治療の有用性は若年者と同様に高いと考えられます。高齢がん患者の治療選択においては、照射時間中の安静保持を含めた忍容性や、選択する治療法の損益など、多角的な視点からアプローチを検討することが望まれます。最後に脆弱性を有する高齢がん患者において、重篤な有害事象の発生により、治療効果が打ち消される治療法の選択は回避しなければなりません。しかし、放射線治療の目的は緩和から根治までと幅が広く、患者への負担および有害事象の発生頻度や重症度は照射部位や照射法、総線量などに依存します。そのため、Frailな高齢がん患者に対して、根治的放射線治療の適応がない場合にも緩和照射を行うことは日常臨床において多く経験します。また、定位照射などを用いた根治照射を安全に施行できることもあります。「Frailだから放射線治療は無理」と考えてしまうと、本来受けるべき放射線治療による恩恵を逃してしまう可能性があります。日常臨床で治療選択に悩まれたら、ぜひ放射線治療医にご相談ください。1)Kish JA, et al. J Geritr Oncol. 2021;12:937-944.2)Stinchcombe TE, et al. Cancer. 2019;125:382-390. 3)Pignon T, et al. Eur J Cancer. 1996;32A:2075-2081.4)Schild SE, et al. J Clin Oncol. 2003;21:3201-3206.5)Darby SC, et al. N Eng J Med. 2013;368:987-998.6)Johnson S, et al. Rep Pract Oncol Radiother. 2026;31:175-185.7)François E, et al. Radiother Oncol. 2014;110:144-149. 8)Murofushi KN, et al. Clin Oncol. 2025;45:103894.9)Cassidy RJ, et al. Clin Lung Cancer. 2017;18:551-558.10)Tamura Y, et al. Cancers (Basel). 2026;18:1809. 11)Watanabe K, et al. Radiat Oncol. 2021;16:39. 12)Brown PD, et al. JAMA. 2016;316:401-409.13)Hata M, et al. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2007;69:805-812.14)Ono T, et al. Thorac Cancer. 2020;11:2170-2177.15)Ohnishi K, et al. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2020;106:82-89.16)Lutkenhaus LJ, et al. Radiat Oncol. 2016;11:45.

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胃がんに初の周術期治療、D-FLOTレジメン承認/AZ

 2026年6月、抗PD-L1抗体デュルバルマブ(商品名:イミフィンジ)が「胃癌における術前・術後補助療法」の適応追加で国内承認された。これまで手術と術後補助化学療法を中心としてきた日本の胃がん治療に、デュルバルマブとFLOT療法を組み合わせた周術期治療の選択肢が加わることとなる。8月4日に開催されたアストラゼネカのメディアセミナーでは、山梨大学医学部外科学講座第1教室教授の市川 大輔氏が「胃がん治療のアンメットメディカルニーズとMATTERHORN試験がもたらすPractice Change」と題して講演を行った。 日本では胃がんに対する外科治療が高度に標準化され、原発巣切除+所属リンパ節郭清を基本として良好な治療成績を積み上げてきた。一方、定型手術の範囲を超えてリンパ節や隣接臓器を同時切除する拡大手術については、単純に切除範囲を広げるだけでは予後改善につながらないことが明らかになってきた。その結果、治療成績向上の焦点は、外科治療から薬物療法を組み合わせた集学的治療へと移ってきた。 ただし、その発展の仕方は日本と欧米で異なる。市川氏は、早期発見例が多く、D2リンパ節郭清など手術の質が標準化されてきた日本では「まず確実に切除する」戦略が発展したのに対し、高度進行例が多く手術の質にも施設間格差がある欧米では「まず薬物療法を確実に行う」という考え方から術前化学療法が普及したと、説明した。 日本の従来戦略にも課題は残る。胃切除後には胃容量の減少に伴う食事摂取量低下などさまざまな栄養障害が生じ、術後補助化学療法を十分に導入・継続できない場合がある。全国胃がん登録を用いた解析では、StageII/IIIの胃がん患者1万5,848例のうち、術後補助化学療法が実施されなかった割合は46.5%で、とくに75歳以上では71.5%に達した。 そこで注目されてきたのが術前化学療法戦略だ。術前治療には、薬物療法を確実に導入できることに加え、微小転移への早期介入、腫瘍縮小による治癒切除率の向上などが期待できる。さらに、腫瘍が存在する術前から免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を投与することで、豊富ながん抗原を背景にT細胞を活性化し、微小転移を抑制できる可能性がある。一方、治療中の病勢進行や有害事象による手術延期、術前病期診断の誤差に伴う過剰治療などのデメリットもある。 こうした背景の下で行われたのが、国際共同第III相MATTERHORN試験である。切除可能なStageII~IVAの胃または食道胃接合部腺がん患者948例を、デュルバルマブ+FLOT(D-FLOT)群474例とプラセボ+FLOT群474例に無作為化。術前・術後にFLOTをそれぞれ4回投与するとともにデュルバルマブまたはプラセボを併用し、その後デュルバルマブまたはプラセボを最大10回単独投与した。主要評価項目は無イベント生存期間(EFS)、重要な副次評価項目には病理学的完全奏効(pCR)率などが設定された。 結果、D-FLOT群はプラセボ+FLOT群に対してEFSを有意に延長した。EFSのハザード比(HR)は0.71(95%信頼区間[CI]:0.58~0.86、p<0.001)で、イベント発生リスクを29%低減した。EFS中央値はD-FLOT群で未到達、プラセボ+FLOT群では32.82ヵ月だった。pCR率はそれぞれ19.2%、7.2%で、D-FLOT群が有意に高かった。安全性では、Grade3/4の有害事象発現率はD-FLOT群71.6%、プラセボ+FLOT群71.2%で、大きな差は認められなかった。 日本人サブセットはD-FLOT群40例、プラセボ+FLOT群46例と限られるものの、全体集団を上回るEFS改善傾向が示された(HR:0.32、95%CI:0.13~0.72)。一方、Grade3/4の好中球数減少が両群とも約67%に認められたほか、発熱性好中球減少症もD-FLOT群12.5%、プラセボ+FLOT群4.3%に認められ、いずれも全体集団より高値だった。市川氏は、良好な成績は日本の術技や術後管理のレベルの高さに起因する可能性があるとする一方で、欧米で確立されたFLOTレジメンそのものへの忍容性も含め、適切な支持療法が必要になると指摘した。 こうしたエビデンスを受け、日本胃癌学会は2026年6月19日付の「胃癌治療ガイドライン速報」において、「根治切除可能な臨床病期II~IVAの胃癌・胃食道接合部腺癌に対する周術期D-FLOT療法およびその後のデュルバルマブ単剤療法を推奨する」とした。 市川氏は、今後は外科医だけでなく腫瘍内科医を含めた多職種で治療戦略を検討し、患者背景、臨床病期、腫瘍特性、薬物療法への忍容性などを踏まえて、周術期治療に適切な症例を選択することが重要になるとの考えを示した。D-FLOTレジメン承認を契機に、日本の切除可能進行胃がんにおいても、「まず手術」という従来の治療体系から周術期全体を見据えて治療を最適化する時代へと移行することになりそうだ。

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gBRCA病的バリアントを有する若年早期乳がん、周術期化学療法の種類と生存アウトカムの関係

 生殖細胞系列BRCA1/2病的バリアントを有する40歳以下のHER2陰性(HER2-)早期乳がん患者において、周術期化学療法のレジメン間で生存アウトカムに統計学的な有意差はみられないことが、国際多施設共同後ろ向きコホート研究(BRCA BCY Collaboration研究)の結果で示された。イスラエル・Sheba Medical CenterのRinat Bernstein-Molho氏らが、European Journal of Cancer誌オンライン版2026年8月11日号に報告した。 本研究では、2000~2020年にStageI~IIIのHER2-乳がんと診断された40歳以下のBRCA1/2病的バリアント保持者を対象に、アントラサイクリン+タキサン系、アントラサイクリン系(タキサンなし)、非アントラサイクリン系の各術前/術後化学療法による無病生存期間(DFS)および全生存期間(OS)を評価した。また、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)においてはプラチナ製剤の使用とアウトカムとの関連も評価した。 主な結果は以下のとおり。・109施設から4,200例が解析対象となり、うち58.7%がTNBCであった。・追跡期間中央値は8.1年(四分位範囲:4.7~12.6年)であった。・使用された化学療法レジメンの割合は、アントラサイクリン+タキサン系が74.4%、アントラサイクリン系(タキサンなし)が19.3%、非アントラサイクリン系が6.3%であった。また、TNBCでは19.8%でプラチナ製剤が投与されていた。・多変量調整後、アントラサイクリン系(タキサンなし)とアントラサイクリン+タキサン系との間で、DFS(調整ハザード比[aHR]:0.88、95%信頼区間[CI]:0.73~1.05)およびOS(aHR:1.20、95%CI:0.87~1.67)に有意差は認められなかった。・同様に、アントラサイクリン系(タキサンなし)と非アントラサイクリン系の比較においても、DFS(aHR:1.07、95%CI:0.82~1.38)およびOS(aHR:1.16、95%CI:0.68~2.00)に有意差は認められなかった。・TNBC症例において、プラチナ製剤の使用とアウトカム改善の間に関連はみられなかった。 著者らは今回の結果について、同患者集団における化学療法のde-escalation戦略を評価する今後の前向き研究に有益な情報をもたらすものとしている。

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転移大腸がん1次治療への高用量ビタミンD3上乗せ、PFSを延長せず/JAMA

 未治療の転移を有する大腸がん(mCRC)の1次治療において、高用量ビタミンD3の補充は標準用量のビタミンD3の補充と比較して無増悪生存期間(PFS)を延長しないことが、米国・ダナファーバーがん研究所のKimmie Ng氏らによる第III相「SOLARIS(Alliance A021703)試験」の結果で示された。前臨床研究および疫学研究により、大腸がんにおけるビタミンDの抗悪性腫瘍薬としての役割が示され、第II相SUNSHINE試験では、標準用量と比較して高用量ビタミンD3の補充はPFSを改善する可能性が示唆されていた(13ヵ月vs.11ヵ月、多変量補正後ハザード比[HR]:0.64、片側95%信頼区間[CI]:0~0.90、p=0.02)。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2026年8月3日号に掲載された。米国の無作為化第III相試験 SOLARIS試験は、米国の151施設で実施した二重盲検無作為化第III相試験である(米国国立がん研究所[NCI]の助成を受けた)。2019年10月~2022年12月に、年齢18歳以上で、未治療の切除不能な局所進行または転移を有する大腸がん患者を登録した。 被験者455例(年齢中央値59歳[四分位範囲[IQR]:50.0~68.0]、女性181例[39.8%])に、血管新生阻害薬ベバシズマブ(2週ごと)とともに、標準化学療法としてmFOLFOX6(5-フルオロウラシル/ロイコボリン+オキサリプラチン)またはFOLFIRI(5-フルオロウラシル/ロイコボリン+イリノテカン)を投与した。 これらの患者を、高用量ビタミンD3(負荷用量:8,000 IU/日×14日間投与後、4,000 IU/日)(228例)または標準用量ビタミンD3(400 IU/日)(227例)を投与する群に無作為に割り付け、病勢進行、耐用不能な毒性、同意の撤回のいずれかが発生するまで継続投与した。 主要評価項目はPFS(log-rank検定で評価)であった。副次評価項目は、客観的奏効率、全生存期間(OS)および毒性などであった。奏効率、OSにも差はない 原発巣は、左結腸が高用量群38.2%、標準用量群39.8%、右結腸がそれぞれ35.1%および33.6%、直腸が21.5%および20.4%であった。多くの患者が、基礎化学療法としてmFOLFOX6を受けた(高用量群85.8%、標準用量群84.2%)。 追跡期間中央値20ヵ月の時点で、PFS中央値は高用量群が11.8ヵ月(95%CI:10.3~13.3)、標準用量群は10.3ヵ月(95%CI:9.4~12.2)であり、両群間に有意な差を認めなかった(片側log-rank検定のp=0.25)。 また、客観的奏効率(高用量群51%[95%CI:44~58]vs.標準用量群44%[37~50]、p=0.12)およびOS中央値(25.6ヵ月vs.27.0ヵ月、HR:1.05、95%CI:0.81~1.36、片側log-rank検定のp=0.66)にも、両群間に有意差はみられなかった。Grade3以上の好中球減少、高血圧が高頻度 Grade3以上の毒性の発生に関して、両群間に臨床的に意義のある差を認めなかった。Grade3の有害事象は高用量群で115例(54.2%)、標準用量群で109例(52.2%)、Grade4はそれぞれ34例(16.0%)および31例(14.8%)、Grade5は5例(2.4%)および6例(2.9%)に発現した。高用量群におけるGrade5の有害事象のうち試験治療に関連したものはなかった。 最も頻度の高いGrade3以上の有害事象は、好中球減少(高用量群67例[31.6%]vs.標準用量群62例[29.7%])、高血圧(42例[19.8%]vs.49例[23.4%])、白血球減少(19例[9.0%]vs.9例[4.3%])、末梢性感覚神経障害(19例[9.0%]vs.7例[3.3%])、下痢(16例[7.5%]vs.10例[4.8%])であった。 ビタミンD関連の有害事象(全Grade)として、高カルシウム血症(高用量群7例[3.3%]vs.標準用量群3例[1.4%])、高リン血症(7例[3.3%]vs.10例[4.8%])、腎結石(3例[1.4%]vs.0例)などがみられた。 著者は、「これらの知見に基づき、未治療のmCRC患者に対し、標準化学療法に高用量のビタミンD3を追加することは推奨できない」としている。また、SUNSHINE試験との間に結果の相違がみられたことの説明の1つとして、ベースラインの血漿25(OH)Dが本試験で高かった点(両群中央値21.8ng/mL vs.17.6ng/mL)を挙げ、「ベースラインの25(OH)D値が低いほど、ビタミンD3補充に対する反応が大きいことが知られており、したがって本試験の患者は高用量ビタミンD3補充療法から、それほど大きな恩恵を受けなかった可能性がある」と指摘している。

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婦人科腫瘍の循環器合併症~血栓症と高血圧~/日本婦人科腫瘍学会

 婦人科がんと循環器疾患の関連は深い。第68回日本婦人科腫瘍学会学術集会にて、大阪がん循環器病予防センターの向井 幹夫氏は「婦人科腫瘍学と腫瘍循環器学の連携」と題し、両者の密接な関係について紹介した。婦人科腫瘍とがん関連血栓症(CAT) 婦人科腫瘍患者は、閉経後の動脈硬化リスク上昇に加え、卵巣摘出後の外科的閉経や薬物治療により心血管イベントリスクが増大する。中でも、CATへの対応は婦人科腫瘍の診療においてきわめて重要である。 がんはTissue Factor(TF)やサイトカイン、さらにマイクロパーティクルを分泌して凝固系を活性化し血栓を形成する。がんはこの血栓を利用して転移するのである。がん自体による血栓形成以外に、薬剤による血栓形成も問題となる。婦人科がんで汎用される内分泌薬やパクリタキセル、タキサンなどの化学療法薬は血栓症合併リスクが高い。 日本の固形がん1万例における静脈血栓塞栓症(VTE)の発症を前向きに調べたCancer VTE Registryによれば、全体集団では5.9%、婦人科腫瘍では5.5%にVTEが認められた。また、婦人科腫瘍800例超におけるVTEの発症と危険因子を調べたGOTIC-VTE試験では、全体のVTE発症は5.8%、卵巣・卵管・腹膜がんでは13.7%に上る。その多くは無症候性であり、近位部よりも遠位部が多かった。婦人科腫瘍における脚の腫れは治療によるリンパ浮腫とみなされがちだが、末梢の血栓が隠れているケースは多いと、向井氏は注意を促す。 『肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症および肺高血圧症に関するガイドライン』2025年改訂版では、がん関連VTEに関する記載が追加された。そこでは、活動性がん患者の肺血栓塞栓症/中枢型深部静脈血栓症(DVT)の治療は、がんが治癒しない/活動性がなくならない限り継続を考慮すること、中枢型DVTの延長治療には低用量DOACを考慮することなどが記載されている。婦人科腫瘍とがん関連高血圧(Onco-Hypertension) がん治療関連高血圧では、がん由来のサイトカインや化学療法の血管内皮障害により、通常の高血圧より急速に病態が重篤化する。通常5年かかるプラーク形成が、これらの薬剤では1年程度で起こる可能性があるという。 血管新生阻害薬は投与直後から血圧を上昇させ、長期使用で血管内皮の障害を引き起こす。そのほかプラチナ系薬、アルキル化薬、PARP阻害薬、アロマターゼ阻害薬など婦人科腫瘍の治療で汎用される抗がん剤には血圧を上昇させるものが多い。 『高血圧管理・治療ガイドライン』2025年改訂版では、担がん患者の項が追加され、がんと高血圧の双方向性や治療ステップが示されている。そこでは、がん治療患者の降圧治療開始時期と降圧目標、降圧薬の第1選択、治療抵抗性への対応などが取り上げられている。 婦人科腫瘍における循環器合併症の管理には、ライフステージ、性ホルモン、血栓・出血リスクといった婦人科特有の課題がある。より良い循環器疾患の合併症管理には、婦人科腫瘍医と循環器医の情報共有と連携が大きな鍵を握ることは間違いない。

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宮崎大学医学部附属病院 臨床腫瘍科【大学医局紹介~がん診療編】

細川 歩 氏(教授)秋月 渓一 氏(助教)田村 穂高 氏(助教)末田 光恵 氏(助教)大槻 佑生子 氏(医員)講座の基本情報当科独自の取り組み・特徴、医師の育成方針宮崎大学医学部附属病院臨床腫瘍科は2018年10月に設立され、悪性腫瘍に対する専門的な薬物療法および緩和ケアを提供するとともに、がん診療を担う人材の育成に取り組んでいます。また、都道府県がん診療連携拠点病院として、宮崎県のがん診療の質の向上に貢献するとともに、がんゲノム医療の推進にも積極的に取り組んでいます。薬物療法では、消化器悪性腫瘍および原発不明がんを中心に診療を行っており、当院におけるがん薬物療法の中核を担っています。また、西日本がん研究機構(WJOG)の特定臨床研究をはじめとする多施設共同研究や治験に積極的に参加し、新たな治療法の開発にも取り組んでいます。さらに、若手医師は消化器悪性腫瘍の診療に必要な内視鏡検査を含めた幅広い診療に携わりながら経験を積むことができ、当科では診断から治療まで一貫して担うことのできる専門医の育成に努めています。力を入れている治療当科では、食道がん・胃がん・大腸がんを中心とした消化器がんの薬物療法を専門的に行っています。分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬など最新の治療を取り入れ、エビデンスに基づく診療を実践しています。また、肉腫や原発不明がんなどの希少がん診療にも積極的に取り組んでおり、幅広い悪性腫瘍の診療経験を積むことができます。当科でのがん診療消化器外科や放射線科など関連診療科と連携し、集学的ながん診療を実践しています。定期的なキャンサーボードでは多職種で症例を検討し、外科治療・放射線治療・薬物療法を組み合わせた最適な治療戦略を学ぶことができます。診断から再発後治療、緩和ケアまで一貫して患者さんに関わることで、総合的ながん診療能力を養えます。医学生・初期研修医へのメッセージがん診療に興味のある方はもちろん、進路を検討中の方にも幅広い学びの機会があります。ぜひ見学にお越しいただき、患者さんに寄り添うがん医療の魅力を体感してください。力を入れている診療テーマ私は初期研修修了後、3年間一般消化器内科を専攻し、その後がん薬物療法に従事して4年目となりました。進行がんの根治が難しい現代においては、今ある医療を最大限に生かして患者さんに届けることと、未来のよりよいがん診療のための治療法の開発の2つの軸が大切だと感じています。当科で力を入れているテーマは、質の高い日常診療と地方から臨床研究に携わることの両立です。当科の魅力中核病院で長く研鑽されてこられた細川教授のがん診療の考え方や技術を間近で勉強しつつ、WJOG、北海道消化器癌化学療法研究会(HGCSG)、富山大学との共同研究などさまざまな多施設共同臨床試験を経験させていただいています。また、薬物療法だけでなく、内視鏡検査や中心静脈ポート造設などの手技、多様な症状に対する他科との連携、また地域連携や緩和医療にも携わります。それぞれの分野に温かく指導してくださるメンターがおり、総合的ながん診療を学べる恵まれた環境だと感じています。当科の雰囲気大所帯ではありませんが、地域のがん治療を支えるという志を共有できる医師、看護師、薬剤師などのメディカルスタッフが在籍しています。私の隣の細川教授の診察室からは、いつも患者さんとの自由な会話や笑い声が聞こえてきます。真剣さの中にも明るく前向きな雰囲気のあるチームです。臨床腫瘍科の中で緩和医療を担当しています。多職種で構成された緩和ケアチームの専任医師として、院内のいろいろな科で治療を受けられている患者さんの身体的苦痛の緩和や、精神的な問題やせん妄への対応、療養場所選定のサポートなどを行っています。大学病院の緩和ケアチームということで、対象の患者さんはベストサポーティブケア(BSC)となった方だけでなく、がんの診断時や治療中の苦痛がある方も対象ですので、オピオイドを中止することができる患者さんの診療に携わることもあります。これは、治療中の患者さんが対象だからこそできる経験ではないでしょうか。また、治療中の患者さんが対象となっていることが多いため、主治医との連携もとても大切で、できるだけ密にコミュニケーションをとるよう心がけています。患者さんや主治医が望んでいる治療が少しでも苦痛なく行えるよう、また、継続できるようしっかりとサポートをしていくことが役割と考えています。緩和医療というと何か特別なもの、というイメージを持つ医師が多いようですが、がん治療の一部でもありますので、少しでも興味を持っていただける医師が増える一助になれるとうれしいです。これまでの経歴宮崎県に生まれ育ち、宮崎大学医学部へ進学、卒業しました。在学中に祖父が胃がんと診断され、家族として治療や意思決定に関わったことをきっかけに、がん診療に興味を抱きました。宮崎大学病院での臨床研修を修了後、消化器内科や臨床腫瘍科での研鑽を開始し、宮崎でも質の高いがん薬物療法を提供できるよう、日々患者さんと向き合っています。現在学んでいること消化器がん領域を中心としたがん薬物療法の知識や技術に加え、内視鏡診療や緩和医療についても学んでいます。がん診療では治療を行うだけでなく、患者さんやご家族の思いに耳を傾けながら、1人ひとりに合った医療を考えることが大切だと感じています。また、学会発表や研究活動にも取り組み、診療で得た経験を学びにつなげることを心がけています。今後のキャリアプラン今後は消化器内科医としての専門性を高めるとともに、がん薬物療法専門医の取得を目指しています。地域においても高度ながん医療を提供できる医師となり、患者さんに寄り添いながら安心して治療を受けられる環境づくりに貢献していきたいと考えています。宮崎大学医学部附属病院 臨床腫瘍科住所〒889-1692 宮崎県宮崎市清武町木原5200問い合わせ先cancer-center@med.miyazaki-u.ac.jp医局ホームページ宮崎大学医学部附属病院 臨床腫瘍科宮崎大学医学部附属病院 がんセンター所属スタッフが取得している専門医資格日本内科学会 総合内科専門医日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医日本がん治療認定医機構 がん治療認定医日本消化器病学会 消化器病専門医日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医 など研修プログラムの特徴(1)消化器悪性腫瘍を中心に、診断から薬物療法、緩和医療まで一貫した診療を経験することができます。(2)化学療法レジメン、有害事象マネジメント、画像評価など、がん薬物療法に必要な実践的な知識・技術を体系的に身につけることができます。(3)がんゲノム医療や臨床研究に触れ、がん診療に必要な知識や考え方を学ぶことができます。(4)多職種と連携し、患者さん1人ひとりに寄り添った緩和医療を経験することができます。

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卵巣がんの新たな3つのターゲット療法、日本人患者の成績/日本婦人科腫瘍学会

 これまで有効な治療選択肢が限られていた卵巣がんの組織型に対し、分子標的療法の臨床試験が有望な成果を示している。第68回日本婦人科腫瘍学会学術集会では、3つの組織型の新薬における日本人患者の成績を三重大学 金田 倫子氏、兵庫県立がんセンター 山本 香澄氏、名古屋大学 新美 薫氏が紹介した。低異型度漿液性卵巣がんに対するavutometinib+defactinibの日本人成績(RAMP201J) 低異型度漿液性卵巣がん(LGSOC)は卵巣がんの10%未満とまれな組織型である。再発に対する化学療法の奏効率は0~13%と低く、新たな治療法の開発が強く望まれている。 LGSOCではKRAS変異を含むRAS/MAPキナーゼ経路の異常が高頻度に認められることから、この経路を標的とした治療法の開発が期待されている。avutometinibはRAF/MEKクランプ薬で、RAS/MAPK経路におけるRAFとMEKを抑えることでシグナル伝達を阻害する。一方のdefactinibはFAK阻害薬である。avutometinibとdefactinibの併用によりRAF/MEKとFAKを阻害することで高い抗腫瘍効果が期待される。グローバルのRAMP201試験における奏効率(ORR)は全体集団で31%、KRAS変異例では44%。無増悪生存期間(PFS)中央値は全体で12.9ヵ月、KRAS変異例では19.6ヵ月であった。これらのデータを背景に、日本人LGSOCを対象とした第II相試験RAMP201J試験が開発された。 RAMP201Jはプラチナ既治療患者を対象とし、avutometinibとdefactinibを3週投与1週休薬の4週サイクルで投与する。同学術集会では治験担当医の判定による中間解析結果を報告した。日本人は16例が登録され、KRAS変異例が7例、KRAS野生型が9例であった。年齢中央値は47歳、44%の患者が4ライン以上の前治療歴を有していた。 追跡中央値12.4ヵ月での日本人患者のORRは全体で44%、KRAS変異例は71%、KRAS野生型は22%であった。病勢コントロール率(DCR)は全体で94%、KRAS変異例は100%、KRAS野生型は89%であった。全体の44%が1年以上治療を継続しており、治療継続期間中央値はKRAS変異例で11.7ヵ月、KRAS野生型は10.9ヵ月であった。 有害事象(AE)については、ほとんどがGrade1/2であり、Grade3の主なものはCPK上昇と皮疹であった。93%が休薬を必要とし、31%が減量を要したが、AEによる治療中止例はなかった。 今回の結果より、日本人LGSOC患者に対するavutometinib+defactinib併用療法は、RAMP201と同様の有効性・安全性・薬物動態を示すことが確認されている。また、KRAS変異例だけでなくKRAS野生型でも一定の奏効率を示した。現在、第III相試験(RAMP301試験)が実施されている。FRα陽性プラチナ抵抗性卵巣がんに対するmirvetuximab soravtansineの日本人成績 プラチナ抵抗性再発卵巣がんに対する単剤化学療法やベバシズマブ併用療法の有効性は限定的であり、新たな治療選択肢が強く求められている。葉酸受容体α(FRα)は上皮性卵巣がんで高発現することが知られており、有望なバイオマーカーとして注目されている。 mirvetuximab soravtansine(MIRV)はFRαを標的とした抗体薬物複合体(ADC)である。MIRVの有効性・安全性はSORAYA試験(第II相)およびMIRASOL試験(国際共同第III相)で示されており、米国をはじめ複数の国でFRα陽性プラチナ抵抗性卵巣がんへの適応が承認されている。 これらのピボタル試験には日本人が組み入れられていなかった。そのため、日本人に対するMIRVの安全性・有効性・薬物動態を評価する多施設共同オープンラベル第I/II相試験が行われた。第I相ではMIRV(6mg/kg 3週ごと投与)の安全性・薬物動態を、第II相では有効性、安全性などを評価した。 第I相(3例)で用量制限毒性が認められないことを確認し、上記用量で第II相へ移行した。第II相(25例)ではFRα高発現のプラチナ製剤抵抗性上皮性卵巣がん・卵管がん・原発性腹膜がんを対象として、ORR、奏効期間(DOR)、安全性を評価した。 結果、主要評価項目であるORRは44%(25例中11例)で、完全奏効は2例で認められた。DCRは88%であった。 全例に何らかのAEが認められ、Grade3以上が52%、重篤なAEが24%に発生したが、AEによる治療中止例・死亡例はなかった。臨床的に重要なAEとして眼障害64%、末梢神経障害28%、肺炎24%が認められた。 これらの結果から、日本人患者においても既報と同様にMIRVの有効性、安全性が得られた。PIK3CA変異卵巣明細胞がんに対するリソバリシブの日本人成績(CYH33-G201) 卵巣明細胞がん(OCCC)はまれで化学療法抵抗性を示すがん種であり、確立された2次治療の選択肢がない。再発例では奏効率8%未満、OS中央値約11ヵ月と予後不良である。 PIK3CA遺伝子のホットスポット(exon9、exon20などの高頻度変異領域)変異はOCCCの30~40%に認められる。リソバリシブ(CYH33)はPI3キナーゼα(PI3Kα)に結合して腫瘍の増殖・生存を抑制することからOCCCの治療薬として期待されている。 CYH33-G201試験はPIK3CAホットスポット変異を有する再発および持続性OCCCを対象とし、リソバリシブ40mg/日経口投与を評価した国際共同第II相試験である。同学術集会では日本人集団の結果が発表された。 日本人患者は52例で、年齢中央値は53.5歳、PS0が94%、前治療ラインは2ラインが最多(48%)であった。PIK3CAホットスポット変異はexon9が39%、exon20が50%である。 主要評価項目のORRは全体集団で34.5%、日本人集団で30.4%であり、両群で同等の有効性が示された。DCRは全体で76.2%、日本人で73.9%であった。PFS中央値は全体・日本人ともに約4.86ヵ月、OS中央値は全体で14.39ヵ月、日本人で11.17ヵ月であった。75%で用量減量が、90%で休薬が実施された。 全例に何らかのAEが認められた。頻度の高い治療関連AEは高血糖(85%)と発疹(75%)で、日本人での発現率はそれぞれ84.6%と75.0%であった。AEによる減量は75%、休薬は90%で発生している。治療関連AEによる死亡は認められていない。 リソバリシブはグローバル試験と同様、日本人患者でも有望な治療選択肢となることが確認された。PIK3CA変異陽性の卵巣明細胞がん治療薬として国内で本年(2026年)7月に承認、発売されている。 卵巣がんの新たな標的であるKRAS、FRα、PIK3CA治療、いずれにおいても日本人でグローバルデータと同様に有効性が確認された。■参考文献RAMP201試験(ClinicalTrials.gov)Banerjee SN, et al. J Clin Oncol. 2025;43:2782-2792.RAMP201J(ClinicalTrials.gov)RAMP301(ClinicalTrials.gov)SORAYA試験(ClinicalTrials.gov)Matulonis UA, et al. J Clin Oncol. 2023;41:2436-2445.MIRASOL試験(ClinicalTrials.gov)Moore KN, et al. N Engl J Med. 2023;389:2162-2174.FRα陽性固形がん成人患者を対象とするTAK-853の試験(jRCT)CYH33-G201試験(ClinicalTrials.gov)

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進行扁平上皮肺がんにおける免疫チェックポイント阻害薬+血管新生阻害薬の二重特異性抗体ivonescimabの効果(解説:田中希宇人氏/山口佳寿博氏)

 非小細胞肺がん(NSCLC)の約25~30%を占める扁平上皮がんは、腺がんと比較して治療選択肢が限定的であり、肺がん領域の大きな課題である。免疫チェックポイント阻害薬(ICI)により予後は改善したものの、長期生存を期待できる症例は依然として限られている。 腺がんにおいて抗腫瘍効果を発揮してきたベバシズマブなど血管新生阻害薬の併用は、扁平上皮がんにおいては中枢型病変や空洞形成、大血管侵襲に伴う致死的な出血リスクとなっている。 このような背景の中、注目されているのがPD-1とVEGFの両方を標的とする二重特異性抗体(bispecific antibody)ivonescimabである。ivonescimabは、PD-1とVEGFの両方が存在する腫瘍微小環境において結合親和性が飛躍的に高まる協調的結合(cooperative binding)という特殊な構造特性を有する。全身性のVEGF阻害による毒性を抑えつつ、腫瘍局所で強力な免疫活性化と血管正常化を同時に引き起こす設計となっている。 本稿で取り上げるHARMONi-6試験は、未治療の進行扁平上皮NSCLCを対象にivonescimab+カルボプラチン+パクリタキセルの有効性と安全性を、対照群であるチスレリズマブ(PD-1阻害薬)+カルボプラチン+パクリタキセルと比較検討した第III相試験である。すでに無増悪生存期間(PFS)の延長が報告されているが、今回全生存期間(OS)の中間解析結果が公表された。結果として、中国における既存の標準治療を対照群として死亡リスクを34%低減させ、OS中央値27.9ヵ月という数字のインパクトはきわめて大きい。 さらに注目すべきは、PD-L1陰性例においてもハザード比(HR)0.64とOS延長効果が示された点である。PD-L1陰性群では従来のICI療法の効果を認めにくいが、VEGF阻害による抗腫瘍免疫の誘導・血管正常化とPD-1阻害が抵抗性を克服したものと考える。 扁平上皮がんに対するベバシズマブ投与は、致死的出血のリスクから実臨床では避けられていた。本試験において、ivonescimab群のGrade3以上の出血発生率は3%(対照群は1%)であった。適応基準では「明らかな腫瘍壊死・空洞形成があり大出血リスクが高いと判断された症例」や「大血管侵襲例」は除外されているが、ベースラインで空洞を認めた症例(ivonescimab群24例)においても、認められた気道出血はすべてGrade1~2の軽度なものであったと報告されている。筆者らは扁平上皮がんに対しても血管新生阻害薬を安心して届けられるといったメッセージを残しているが、その出血の頻度から日本の実臨床で投与するには一抹の不安が残る。 ivonescimabのメリットを考えると、サブグループ解析において、PD-L1 TPS<1%(HR:0.64)や転移部位数3ヵ所以上(HR:0.47)の患者群できわめて良好な傾向がみられた。PD-L1陰性で腫瘍量が多く、複数臓器に転移を認める扁平上皮がんに遭遇した際、従来治療では効果を期待できずに頭を悩ませていたことだろう。このような「ICI単独/併用では不十分な群」に対して、ivonescimab+化学療法は強力な第1選択となる可能性がある。 注意が必要なのは、本試験では登録患者の93%が男性であり、女性の割合がきわめて低い点や、75歳以上の高齢者やPSが2以上のフレイル症例は除外されている点などである。また中国の50施設で実施された地域限定の試験であり、日本の肺がん症例にそのまま当てはめることは難しく、現在進行中のグローバル第III相試験「HARMONi-3試験」の成果が待たれる。 もう1つ注意が必要なのは、対照群として選択されているチスレリズマブである。同薬は中国や欧州で承認されている抗PD-1抗体であるが、日本や米国で最も広く使われている標準治療はKEYNOTE-407に基づくペムブロリズマブである。チスレリズマブ+化学療法群のOS中央値23.7ヵ月は良好な成績ではあるが、本邦の標準治療に対する直接的な比較ではない点は差し引いて考えるべきである。

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筋層浸潤性膀胱がん、周術期EV+ペムブロリズマブが有効/NEJM

 シスプラチンベースの化学療法の対象となる筋層浸潤性膀胱がん患者において、周術期(術前・術後)にエンホルツマブ ベドチン(ネクチン-4を標的とする抗体薬物複合体)+ペムブロリズマブ(抗PD-1抗体)を投与すると、術前補助療法としてシスプラチン+ゲムシタビンを投与した場合と比較して、無イベント生存率(EFS)と全生存率(OS)が有意に改善し、病理学的完全奏効率も有意に良好であり、一方でGrade3以上の有害事象の発現率は高かった。米国・マウントサイナイ・アイカーン医科大学のMatthew D. Galsky氏らKEYNOTE-B15/EV-304 Investigatorsが、米国、欧州連合、その他の地域(日本を含む)の158施設で実施した非盲検無作為化実薬対照第III相試験「KEYNOTE-B15/EV-304試験」の結果を報告した。研究の成果は、NEJM誌2026年7月23日号で発表された。術前シスプラチン+ゲムシタビンと比較 KEYNOTE-B15/EV-304試験は2021年5月~2023年12月に実施され(Merck Sharp and Dohmeなどの助成を受けた)、年齢18歳以上で、組織学的に筋層浸潤性膀胱がん(臨床病期T2~4aN0M0/T1~4aN1M0)と確認され、シスプラチンベースの化学療法が適応の患者を登録した。 被験者808例を、術前にエンホルツマブ ベドチン+ペムブロリズマブを投与した後に根治的膀胱全摘除術(+骨盤内リンパ節郭清)を行い、術後にエンホルツマブ ベドチン+ペムブロリズマブの投与を受ける群(周術期EV-Pembro群:405例、年齢中央値66.0歳、男性80.7%)、または術前にシスプラチン+ゲムシタビンを投与した後に根治的膀胱全摘除術(+骨盤内リンパ節郭清)を受ける群(術前Cis-Gem群:403例、年齢中央値66.0歳、男性81.1%)に無作為に割り付けた。 主要評価項目はEFSとし、重要な副次評価項目としてOSおよび病理学的完全奏効(pT0N0)の評価を行った。2年EFS率は79.4%vs.66.2%、2年OS率、病理学的完全奏効率も良好 無作為化からデータカットオフ日(2025年10月27日)までの期間中央値は33.6ヵ月(範囲:22.5~53.6)であった。周術期EV-Pembro群の86.7%、術前Cis-Gem群の89.6%が膀胱全摘除術を受けた。 2年の時点でのKaplan-Meier法による推定EFS率は、術前Cis-Gem群が66.2%(95%信頼区間[CI]:61.2~70.8)であったのに対し、周術期EV-Pembro群は79.4%(95%CI:74.9~83.1)と有意に優れた(イベントまたは死亡のハザード比[HR]:0.53、95%CI:0.41~0.70、p<0.001)。 また、EFS中央値は、周術期EV-Pembro群が未到達、術前Cis-Gem群は48.5ヵ月(95%CI:43.3~未到達)だった。 2年OS率は、術前Cis-Gem群の81.3%(95%CI:77.1~84.8)に比べ、周術期EV-Pembro群は86.9%(95%CI:83.2~89.8)であり、有意に良好であった(死亡のHR:0.65、95%CI:0.48~0.89、両側p=0.006)。 病理学的完全奏効の達成率も、周術期EV-Pembro群で有意に優れた(226例[55.8%]vs.131例[32.5%]、推定群間差:23.4%ポイント、95%CI:16.7~29.8、p<0.001)。Grade3以上の有害事象は75.7%vs.67.2% あらゆる原因によるGrade3以上の有害事象は、周術期EV-Pembro群で75.7%、術前Cis-Gem群で67.2%に発現し、重篤な有害事象はそれぞれ63.3%および48.0%にみられた。手術期のGrade3以上の有害事象は、それぞれ36.2%および35.4%に認められた。 死亡に至った有害事象は、周術期EV-Pembro群で17例(4.2%:術前治療期7例、手術期2例、術後治療期8例)にみられ、このうち治療関連死は2例(いずれも多臓器不全症候群)であった。同様に、術前Cis-Gem群では11例(2.8%:術前治療期2例、手術期9例)にみられ、治療関連死は1例(肺炎)だった。 Grade3以上の薬剤関連有害事象は、周術期EV-Pembro群で46.4%、術前Cis-Gem群で46.5%に発現し、試験薬の投与中止に至った薬剤関連有害事象はそれぞれ35.2%および11.1%にみられた。また、周術期EV-Pembro群で認められたとくに注目すべき有害事象では、皮膚反応(63.5%)と末梢神経障害(36.0%)の頻度が高かった。 著者は、「本試験とKEYNOTE-905試験(シスプラチン適応外の患者で周術期EV-Pembro群の強力な抗腫瘍効果を確認)の結果を合わせると、シスプラチンの適応の有無を問わず、切除可能な筋層浸潤性膀胱がん患者に対する根治的膀胱全摘除術と周術期エンホルツマブ ベドチン+ペムブロリズマブ療法の併用の有用性を裏付けている」「これらの知見は、この病態における免疫療法および抗体薬物複合体に基づく新たな治療選択肢を提示するものである」と指摘している。

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卵巣明細胞がんに対するPI3Kα阻害薬リソバリシブ発売/大鵬薬品

 大鵬薬品は、PI3Kα阻害薬リソバリシブ(商品名:ハイツエキシン)が、2026年7月15日に薬価収載され、同月28日に日本国内で発売を開始したと発表した。 同薬は、中国・Haihe Biopharmaの子会社である海和製薬が、2026年3月に「がん化学療法後に増悪したPIK3CA遺伝子変異を有する卵巣明細胞癌」の効能又は効果で、日本国内での製造販売承認を取得。大鵬薬品は、Haihe Biopharmaとの契約に基づき、同薬の日本国内においての販売および情報提供活動を行う。 卵巣がんは世界で約32万件が新たに診断される(2022年)。日本における卵巣がんの症例数は1万6,590例(2023年の報告)で、明細胞がんはそのうち21.9%を占める。卵巣明細胞がんに対する治療選択肢は限られており、新たな治療法の開発が求められている。卵巣明細胞がんにおけるPIK3CA遺伝子変異は30~40%とされ、その患者数は年間650~950人程度と推計される。 リソバリシブは、PI3KαのATP結合部位に結合し、キナーゼ活性を阻害することで、PI3Kシグナル伝達経路の下流分子であるAKTのリン酸化を阻害するなどにより、腫瘍増殖抑制作用を示すと考えられている。<製品概要>製品名:ハイツエキシン錠10mg一般名:リソバリシブメシル酸塩水和物効能又は効果:がん化学療法後に増悪したPIK3CA遺伝子変異を有する卵巣明細胞癌用法及び用量:通常、成人にはリソバリシブメシル酸塩として1回40mgを1日1回空腹時に経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。製造販売承認取得日:2026年3月23日薬価収載日:2026年7月15日発売日:2026年7月28日薬価:7,313.40円/錠包装:PTP包装28錠(14錠×2)製造販売元:海和製薬

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高用量ビタミンDでがん治療関連皮膚障害が改善する可能性

 化学療法や放射線療法に伴う皮膚障害は、疼痛や灼熱感、紅斑などによって患者のQOLを大きく低下させるだけでなく、抗がん治療の減量や中断の原因となる。今回、高用量ビタミンD内服により、化学療法・放射線療法関連皮膚障害が改善する可能性が示された。イリノイ大学(米国)のMihir K. Patil氏らによる本研究結果は、JAMA Dermatology誌オンライン版2026年7月15日号に掲載された。 本研究は2021年12月~2024年1月に米国の3つの医療機関で実施された後ろ向きケースシリーズだった。対象は化学療法誘発性紅斑(toxic erythema of chemotherapy:TEC)または急性放射線皮膚炎(acute radiation dermatitis:ARD)に対して高用量ビタミンDの経口投与を受け、10日以上追跡された33例だった。患者は平均年齢60.9歳、女性58%、TECが28例(85%)、ARDが5例(15%)で、コレカルシフェロールまたはエルゴカルシフェロール10万IUを1回または2回経口投与された。 主要評価項目は患者報告による症状改善までの期間、および医師評価による5段階リッカート紅斑スコアの改善とした。副次評価項目として血清カルシウム値の変化や抗がん治療継続の可否を評価した。 主な結果は以下のとおり。・症状評価が可能であった30例中26例(87%)で、投与後10日以内に自覚症状の改善が認められた。・症状改善までの期間中央値は5日(範囲:1~28日)であり、入院患者では3日(1~16日)と、より早期の改善がみられた。・客観的評価でもリッカート紅斑スコアが改善し、ベースラインの4.36±0.60から10日後には2.21±1.36へ低下した。・病型別では、好中球性エクリン汗腺炎およびスティーブンス・ジョンソン症候群/中毒性表皮壊死症様サブタイプの患者でとくに速やかな反応が認められた。・血清カルシウム値に有意な変化は認められず、33例中24例(73%)が抗がん治療を中断することなく継続した。 著者らは、高用量ビタミンDの経口投与は症状および皮膚所見の速やかな改善と関連し、研究期間中に治療関連有害事象は報告されなかったと結論付けた。一方、本研究は後ろ向きのケースシリーズであり、症例数も33例と限られているため、有効性や最適な投与タイミング、対象患者の選択については前向き無作為化比較試験での検証が必要だとした。

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診療科別2026年上半期注目論文5選(消化器内科編~消化管領域)

Darvadstrocel in Patients With Crohn’s Disease With Complex Perianal Fistulas: The ADMIRE CD II Phase 3 Randomized TrialColombel JF, et al. Gastroenterology. 2026;170:1562-1570.<ADMIRE CD II試験>:複雑痔瘻を有するクローン病患者に対するdarvadstrocel、24週時の痔瘻寛解率を低下させずランダム化盲検、プラセボ対照試験。本試験では、欧州の複雑痔瘻を有するクローン病患者において、24週痔瘻寛解率がdarvadstrocel群(同種脂肪組織由来間葉系幹細胞の局所投与)48.8%(138/283例)、プラセボ群46.3%(132/285例人)であり、有意な改善は認められませんでした(群間差:2.4%、95%信頼区間[CI]:-5.8~10.6、p=0.571)。クローン病複雑痔瘻に対する幹細胞治療の位置付けを再考させる重要な知見です。Zanidatamab with and without Tislelizumab in HER2-Positive Gastroesophageal CancerShitara K, et al. N Engl J Med. 2026;394:2002-2014.<HERIZON-GEA-01試験>:未治療のHER2陽性進行胃・食道胃接合部・食道腺がんへのzanidatamab併用、PFS延長ランダム化非盲検、実薬対照試験。本試験は、全世界のHER2陽性切除不能局所進行・再発・転移を有する胃・食道胃接合部・食道腺がん患者を対象に実施され、初回治療において、無増悪生存期間(PFS)中央値がzanidatamab併用群(zanidatamab+チスレリズマブ+化学療法群[カペシタビン+オキサリプラチンまたはフルオロウラシル+シスプラチン]、zanidatamab+化学療法群)でともに12.4ヵ月、zanidatamab非併用群(トラスツズマブ+化学療法)8.1ヵ月でした(zanidatamab非併用群に対するハザード比[95%CI]:0.63[0.51~0.78]、0.65[0.52~0.81])。既存HER2抗体薬とは独立したHER2抗体薬の有効性を示した点で、臨床的意義が大きい結果です。Effect of a Computer-Aided Device for Detecting Gastric Neoplasms: A Multicenter, Randomized Controlled TrialDong Z, et al. Gastroenterology. 2026;170:1518-1532.<上部消化管内視鏡におけるAI支援システム>:胃腫瘍検出率の有意な改善は認められず多施設ランダム化比較試験。本試験では、中国の上部消化管内視鏡を受ける患者において、胃腫瘍検出率がAI支援内視鏡群1.42%(600/1万4,767例)、AI支援システム非使用群1.25%(185/1万4,747例)であり、有意差は認められませんでした(リスク比:1.13、95%CI:0.92~1.38、p=0.25)。上部消化管内視鏡AIの胃腫瘍検出支援としての位置付けを再考させる知見です。Vonoprazan-Tetracycline Dual Regimen as Rescue Therapy for Helicobacter pylori Infection: Randomized Controlled TrialGao W, et al. Gastroenterology. 2026;170:1473-1483.<pylori除菌不成功患者へのボノプラザン+テトラサイクリン>:ビスマス4剤治療群と比較して除菌率は非劣性非盲検ランダム化非劣性試験。中国のHelicobacter pylori除菌不成功患者において、除菌率が、ボノプラザン+テトラサイクリン治療群(14日間)90.6%(154/170例)、ビスマス4剤治療群(ランソプラゾール、ビスマス、テトラサイクリン、メトロニダゾール、14日間)89.3%(151/169例)でした(群間差1.2%、95%CI:-5.7~8.2、非劣性p=0.0003)。2次以降の除菌治療において、欧米の主要な除菌治療法であるビスマス4剤治療群に対する、ボノプラザンをベースとした除菌治療の非劣性が示された重要な試験です。Long-term effects of colonoscopy screening on colorectal cancer incidence and mortality: a multicountry, population-based randomised controlled trialKaminski MF, et al. Lancet. 2026;407:1787-1795.<NordICC試験>:55~64歳の一般住民に対する1回の大腸内視鏡、大腸がん死亡率の有意な減少効果を認めず多国間人口ベースランダム化比較試験。13年追跡時点で大腸がん死亡率が大腸内視鏡検査スクリーニング群0.41%(106/2万8,217人)、非スクリーニング群0.47%(236/5万6,366人)であり、死亡率の有意な減少は認められませんでした(群間差:-0.06、95%CI:-0.16~0.04)。一般集団検診における大腸内視鏡検査の有用性を再考させる重要な知見です。

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HER2+局所進行/転移乳がんへの二重HER2阻害療法と併用の1次化学療法、エリブリンvs.タキサンの最終OS解析(JBCRG-M06/EMERALD)/ESMO Open

 HER2陽性(HER2+)局所進行/転移乳がんに対して、二重HER2阻害療法(トラスツズマブ+ペルツズマブ)と併用する1次化学療法として、エリブリンと医師選択のタキサンを比較した第III相JBCRG-M06/EMERALD試験の最終解析の結果、全生存期間(OS)中央値が6年を超え、2群間に有意差は認められなかったことが示された。福島県立医科大学の佐治 重衡氏らがESMO Open誌8月号に報告した。本試験ではすでに、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)においてエリブリンがタキサンに非劣性を示したことが報告されている。 本試験では、HER2+局所進行/転移乳がん患者をエリブリン群または医師選択のタキサン(ドセタキセルまたはパクリタキセル)群に無作為に1:1の割合で割り付け、1次化学療法としてトラスツズマブ+ペルツズマブと併用した。PFSは2023年6月30日まで、OSは2024年12月31日まで評価した。生存アウトカムは、エリブリン群とタキサン群で比較し、循環腫瘍DNA(ctDNA)によるPIK3CA変異(E542K、E545K、H1047R、N345Kの単一ヌクレオチド変異)またはHER2増幅(ERBB2コピー数>2.5)の検出状況に応じて比較した。 主な結果は以下のとおり。・OS中央値は、エリブリン群が78.5ヵ月(95%信頼区間[CI]:64.3~未到達)、タキサン群が未到達で、ハザード比は1.25(95%CI:0.92~1.71、p=0.19)であった。・60ヵ月OS率は、エリブリン群が59.7%、タキサン群が65.2%であった。・患者全体および治療群ごとのいずれにおいても、ctDNA PIK3CA変異陽性例ではOS中央値および60ヵ月OS率が数値的に低く、ctDNA HER2増幅陽性例では高かった。・治療群とctDNA PIK3CA変異またはctDNA HER2増幅の状態との間に統計学的に有意な相互作用は認められなかった。・PFSについても同様の傾向が観察された。

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進行卵巣がんにおけるカルボプラチン腹腔内投与の位置付け/日本婦人科腫瘍学会

 2025年12月に卵巣がんの1次化学療法としてカルボプラチンの腹腔内(IP)投与が保険収載された。本年(2026年)7月に開催された第68回日本婦人科腫瘍学会学術講演会では、同がんにおけるIPカルボプラチンの可能性について、岡山大学の長尾 昌二氏が最新の臨床知見を基に紹介した。大規模試験が示した卵巣がんにおけるIP化学療法の可能性 PARP阻害薬や抗体薬物複合体(ADC)の登場により急速に変化する卵巣がん治療においてIP化学療法はどのような役割を担えるのか。長尾氏が研究代表者を務めたiPocc試験は、カルボプラチン腹腔内投与の有効性を前向き無作為化比較試験で証明し、世界的にも高く評価されている。その成果はNEJM Evidence誌に掲載され、日本におけるIPカルボプラチンを保険収載に導いた。 IP化学療法の目的は、腹腔内に播種したがん組織に対して高濃度の抗がん薬を直接曝露させることで、局所治療としての効果を最大化することである。先駆けとなったのはGynecologic Oncology Group(GOG)が実施した3つの大規模無作為化比較試験である。シスプラチンの静注(IV)とIPを比較したGOG104試験、パクリタキセルのIVとシスプラチンのIPを比較したGOG114試験、パクリタキセルのIVとIPを比較したGOG172試験。いずれの試験でもIP投与の生存メリットが示された。その後のメタアナリシスではIV療法に比べIP療法が死亡リスクを約20%低下(ハザード比[HR]:0.79)させるという結果を出している。 これらの結果を受けて、米国国立がん研究所(NCI)は卵巣がんに対してIP化学療法を推奨するアナウンスメントを出した。しかし、IP療法は実臨床に広く普及することはなかった。試験デザイン上の問題、標準治療の変化、シスプラチンの毒性、カテーテルトラブルの頻度などが普及を阻んだ大きな要因だと長尾氏は指摘する。IPカルボプラチンの有効性を立証した日本発のiPocc試験 IP化学療法の課題を乗り越えるべく、使用薬剤とその薬理学的特性の再検討が世界的に行われた。その結果、IP投与は薬剤によってまったく異なる薬理学的傾向を持つことが明確になる。 プラチナ製剤は分子量が比較的小さく水溶性であるため、IP投与後急速に吸収される。IP投与により腹腔内濃度は血漿中の20倍程度に達したのち、速やかに血中に移行し、IVと同等の血中濃度が維持される。一方、パクリタキセルは分子量が大きく脂溶性であるため、腹膜からの吸収は緩徐で腹腔内に長時間とどまる。そのため腹腔内のAUCは血漿中の1,000倍近くとなる。腹膜から吸収されやすいプラチナ製剤などによるIP投与は全身治療としての特性も有しているのではないかと長尾氏は述べる。 こうした知見を背景に、IPカルボプラチンの有用性を検証する複数の国際試験が行われた。しかし、北米や欧州で行われた試験では良好な結果は出なかった。そのような状況のなかで、日本発のiPocc試験が注目を集める結果を示す。 iPocc試験は、新たに診断されたFIGO StageII~IVの上皮性卵巣がんを対象として行われた。この試験では幅広い患者群に対し、dose dense TC(パクリタキセル+カルボプラチン)のIV投与(以下、ddTC IV)とカルボプラチンをIP投与としたdose dense TC(以下ddTC IP)を比較した。その結果、OSでは有差が得られなかったものの、PFSのHRは0.83(95%信頼区間[CI]:0.69〜0.99)とddTC IP群で有意な改善を示した(p=0.04)。 サブグループ解析では残存腫瘍の大きさにかかわらず、ddTC IP群で良好な傾向が示されている。IP投与で懸念されていたカテーテル感染症および腹痛の発現は、9.5%と34.1%であった。IPカルボプラチンの実臨床での活用方法──岡山大学のアルゴリズム PARP阻害薬やADCが標準化された現在の卵巣がん治療において、IP療法をどのように位置付けるかは、卵巣がん治療における重要な戦略的課題の1つと言える。 岡山大学では独自の治療アルゴリズムによりIPカルボプラチンが運用されている。診察時腹腔鏡でプラチナ感受性が期待できる漿膜性や類内膜型の組織型を選択する。腹膜切除をせずに初回腫瘍縮小手術(PDS)でR0(肉眼的残存なし)切除が達成できた症例にはIPポートを留置し、ddTC IP療法を実施する。また、術前化学療法(NAC)から中間的腫瘍減量術(IDS)と進む症例では術前と術後にddTC IPを実施する。 IPカルボプラチンは単なる薬剤投与方法の追加にとどまらず、進行卵巣がん全身治療の有望な選択肢として大きな意味を持つと考えられる。また、iPocc試験の検体を用いた、さらなる研究も行われており、IPカルボプラチンは卵巣がん治療において今後も選択の幅を広げていくと長尾氏は結んだ。

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抗TROP-2 ADCはTROP-2発現レベルで効果が変わるか

 抗TROP-2抗体薬物複合体(ADC)は、転移乳がんの治療薬として有効性を示しているが、患者のTROP-2の発現レベルによって効果がどの程度異なるかは明らかではなかった。今回、イタリア・Istituto Nazionale Tumori, IRCCS Fondazione G. PascaleのRoberto Buonaiuto氏らのシステマティックレビューおよびメタ解析により、抗TROP-2 ADCは転移乳がんの無増悪生存期間(PFS)を有意に改善するが、その治療効果はTROP-2発現レベルが高い患者でより顕著であることが示された。Journal of the National Cancer Institute誌オンライン版2026年7月10日号掲載の報告。 研究グループは、転移乳がん患者を対象に抗TROP-2 ADCによる治療を行った第II~III相試験(2015年1月~2025年9月)のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施し、TROP-2発現レベルと抗TROP-2 ADCの有効性との関係を評価した。対象は、ASCENT試験(サシツズマブ ゴビテカン)、TROPiCS-02試験(サシツズマブ ゴビテカン)、EVER-132-002試験(サシツズマブ ゴビテカン)、OptiTROP-Breast01試験(sacituzumab tirumotecan)、TROPION-Breast01試験(ダトポタマブ デルクステカン)の5試験の参加者であった。 各試験が独自に設定したTROP-2発現レベルごとに、PFSのハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)のデータを抽出した。さらに、試験間のデータの異質性を考慮したうえで、固定効果モデルあるいはランダム効果モデルを用いて統合ハザード比を推定した。 主な結果は以下のとおり。・解析には、抗TROP-2 ADCまたは化学療法が実施された1,879例が含まれた。・抗TROP-2 ADCは、全体のサブグループとトリプルネガティブ乳がん(TNBC)のサブグループにおいて、TROP-2発現レベルにかかわらず化学療法と比較してPFSを有意に改善した。 -全体集団のTROP-2高発現群 HR:0.34、95%CI:0.20~0.57 -全体集団のTROP-2低発現群 HR:0.63、95%CI:0.50~0.79 -TNBCのTROP-2高発現群 HR:0.27、95%CI:0.20~0.37 -TNBCのTROP-2低発現群 HR:0.46、95%CI:0.33~0.64・HR+/HER2-乳がんにおいては、PFSの有意な改善はTROP-2高発現群でのみ確認された(HR:0.56、95%CI:0.47~0.68)。・すべてのサブタイプにおいて、PFSの改善はTROP-2高発現群でより顕著であった。 研究グループは「これらの知見は、患者の選択と治療方針の決定を最適化するために、標準化され、臨床的に意義のあるTROP-2検査の重要性を浮き彫りにしている」とまとめた。

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