サイト内検索

検索結果 合計:503件 表示位置:1 - 20

1.

日本におけるがん薬剤費は10年で3倍に、総医療費最大は肺がん

 日本の全国レセプトデータベース(NDB)を用いて、2011~22年にがん診療を受けた約2,320万人を対象とした大規模解析が実施された。その結果、がん診療に伴う医療費は日本の経済成長率を大きく上回るペースで増加しており、とくに免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を中心とする新規抗がん薬が医療費増加の主要因であることが明らかになった。京都大学の福山 啓太氏らによる研究はScientific Reports誌オンライン版2026年6月15日号に掲載された。 本後ろ向きコホート研究では、2011年4月~2022年3月に悪性腫瘍と診断された患者をがん種別に分類し、月ごとの保険請求額と適用薬剤を分析した。対象は悪性腫瘍患者約2,320万人(男性:約1,203万人、女性:約1,118万人)で、95%以上の電子レセプトを網羅する全国データを利用し、がん種別、年齢別、薬剤別に医療費を評価した。また、薬価改定を反映した独自のマスターデータを構築し、薬剤価格の経年変化も考慮した。 主な結果は以下のとおり。・患者数では乳がんが最多で、胃がん、大腸がん、肺がん、前立腺がんが続いた。・総医療費が最も高額だったのは肺がんだった。肺がんの患者数は減少傾向にあるにもかかわらず、診療費は解析期間を通じて増加を続け、2022年には全がん種で最大となった。一方、患者1人当たりの月額医療費では多発性骨髄腫が最も高く、2022年3月時点で約40万9,000円に達した。・研究期間中、がん患者の月当たり人数は612万人から544万人へ約68万人減少したにもかかわらず月額総請求額は5,590億円から7,100億円へ約1,510億円増加しており、1人当たり医療費の増加が認められた。・薬剤費の解析では、ICIの増加が際立った。肺がんではPD-1/PD-L1阻害薬が急速に普及し、分子標的薬やVEGF阻害薬とともに薬剤費増加の主因となっていた。乳がんではHER2標的薬やCDK4/6阻害薬、胃がんではPD-1/PD-L1阻害薬およびVEGF阻害薬、前立腺がんでは新規ホルモン療法薬の使用増加が確認された。・抗がん薬全体の薬剤費は、2011年の月347億円から2022年には1,090億円へと約3.1倍に増加した。なかでもICI関連薬剤は薬価改定により一部価格が引き下げられたものの、新規適応拡大や使用患者数の増加により、総薬剤費は増加を続けた。 同期間における日本の実質GDPは約8.5%の増加にとどまった。これに対し、がん診療費は約1.27倍、抗がん薬剤費は約3.1倍に増加しており、研究者らは「がん診療費の伸びは経済成長を大きく上回っている」と指摘する。一方で研究者らは、「本研究は高額薬剤の使用抑制を提案するものではない。ICIや分子標的薬は臨床試験で有効性が示され、患者予後の改善に大きく寄与している。しかし、公的保険制度の持続可能性を考えると、個々の薬剤の増分費用効果比(ICER)のみでは十分とは言えず、国家経済や医療財政全体を踏まえた新たな評価指標の構築が必要だ」としている。さらに、がん検診による早期発見やワクチンによる予防は、高額な薬物療法を回避できる可能性があり、医療経済の観点からも重要な介入となる可能性が示唆された。

2.

HER2陽性胃がんに対する二重特異性抗体薬zanidatamabの有用性―トラスツズマブとの比較試験(解説:上村直実氏)

 最近、分子標的薬を含む生物学的製剤の開発が進み、がん診療において効率の良い治療レジメンを選択するためにバイオマーカー検査が必須となっているが、胃がん治療でも「HER2」「PD-L1」「MSI」「Claudin18.2」の4つのバイオマーカー検査の確立に伴って切除不能胃がんに対する薬物療法が急激な変化を遂げている。HER2陽性胃がんに対する標準治療は、従来の化学療法に抗HER2モノクローナル抗体のトラスツズマブを追加した3剤併用療法が標準的1次治療として推奨されているが、今回、日本を含む33ヵ国の無作為化第III相試験の結果、2つの抗原を同時に標的とする二重HER2標的抗体薬であるzanidatamab+抗PD-1抗体チスレリズマブと化学療法の併用もしくはzanidatamab+化学療法の併用治療が、従来の標準治療であるトラスツズマブ+化学療法と比較して、無増悪生存期間(PFS)を有意に延長することが2026年5月のNEJM誌に報告された。 日本では、HER2陽性・PD-L1陽性の切除不能進行胃がん患者を対象にトラスツズマブ+抗PD-1抗体ペムブロリズマブ+化学療法の併用療法が昨年5月に承認されており、本研究は免疫療法の併用に加えてHER2標的治療そのものの質を高めるアプローチが企図された臨床試験といえる。この分野で先行している血液がんに対する抗体医薬は、すでにモノクローナル抗体から二重特異性抗体薬へと置き換わりつつある。二重特異性抗体薬はT細胞などの免疫細胞と腫瘍細胞とを近接化させて免疫攻撃を促進する機能や複数のシグナル経路を同時に制御して薬効が増強されることを期待する薬剤であり、最近では肺がんをはじめとする固形がんに対する二重特異性抗体薬の開発が進んでいる。 今回の研究結果から、固形がんに対する薬物療法においても二重特異性抗体薬の有用性が高くなることが期待されるが、二重特異性抗体薬の利点のみでなく課題も知っておく必要がある。すなわち、血液がんと違って固形がんの腫瘍不均一性による効果のばらつきに伴う混合反応性や過度の免疫活性化に伴うサイトカイン放出症候群、免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群、標的分子が発現している正常細胞を攻撃する可能性などが報告されており、今後、このような課題を解決しつつ、本研究のように二重特異性抗体と免疫チェックポイント阻害薬を用いた薬物治療がさらに改善することが期待される。

3.

ASCO2026 レポート 先端研究・希少がん

レポーター紹介[目次]SARC041試験(第III相試験)PEAK試験(第III相試験)StrateGIST 1試験(第I/Ib相試験)RINGSIDE試験(第III相試験)EMITT-1試験【Abstract LBA2】SARC041試験(第III相試験):脱分化型脂肪肉腫に対するCDK4/6阻害薬アベマシクリブの有効性を検証進行・再発脱分化型脂肪肉腫(dedifferentiated liposarcoma:DDLPS)に対し、CDK4/6阻害薬であるアベマシクリブがプラセボと比較して無増悪生存期間(PFS)を有意に延長することが報告された。DDLPSでは12番染色体長腕(12q13-15)の増幅が高頻度に認められる。その部位にはCDK4やMDM2遺伝子増幅が認められる。そのため、CDK4阻害が治療として期待され、過去、単群の第II相試験が実施され、有効性が示唆されていた。本試験は、DDLPSにおいて第III相比較試験でCDK4阻害薬がpositiveな結果を示した点で重要である。本試験は、進行・再発または転移のあるDDLPS患者を対象とした第III相ランダム化二重盲検プラセボ対照試験であり、患者をアベマシクリブ200mg 1日2回内服群またはプラセボ群に1:1で割り付けた。適格基準として前化学療法歴の有無は問わなかった。主要評価項目はPFSであり、病勢進行後にはプラセボ群からアベマシクリブへのクロスオーバーが許容された。主要評価項目であるPFS中央値は、アベマシクリブ群9.7ヵ月、プラセボ群1.5ヵ月であり、アベマシクリブ群で統計学的に有意な延長を認めた(ハザード比[HR]:0.38、p<0.001)。6ヵ月PFS率は60%vs.22%、12ヵ月PFS率は39%vs.13%であった。奏効率はアベマシクリブ群9%、プラセボ群0%であった。全生存期間(OS)については、中央値はアベマシクリブ群で未到達、プラセボ群で25.5ヵ月であり、統計学的有意差には至らなかったものの、アベマシクリブ群で良好な傾向を認めた(HR:0.55、p=0.07)。プラセボ群の85%が病勢進行後にアベマシクリブへクロスオーバーしていた。探索的な解析であるが、前化学療法歴なしの患者のPFS中央値は16.4ヵ月、ありの患者では5.3ヵ月であった。安全性については、アベマシクリブで既知の有害事象プロファイルとおおむね一致していた。主な有害事象は、下痢、血球減少、貧血、白血球減少、クレアチニン上昇などであり、用量減量を要した症例はアベマシクリブ群で39%であった。本試験の結果から、アベマシクリブは進行・再発DDLPSにおける新たな治療選択肢となると考える。一方、本試験は海外の臨床試験グループにより実施されたものであり、日本ですぐに使用可能な状況とはならない。今後、日本での治療開発も期待される。目次に戻る【Abstract 11500】PEAK試験(第III相試験):イマチニブ治療後GISTに対するbezuclastinib+スニチニブ併用療法の有効性イマチニブ治療後の進行消化管間質腫瘍(GIST)に対し、KIT阻害薬であるbezuclastinibとスニチニブの併用療法が、現在の標準的2次治療であるスニチニブ単剤と比較してPFSを有意に延長することが、PEAK試験の結果として報告された。GISTでは、1次治療のイマチニブ後に耐性機構としてKITの2次変異が出現することが知られており、exon13/14やexon17/18変異がその代表である。現在の標準的な2次治療はスニチニブであるが、スニチニブはexon13/14への阻害活性が高い一方、exon17/18への阻害活性が乏しい。bezuclastinibは次世代のKIT阻害薬であり、exon17/18への阻害活性を有している。両者を併用することで広範にKIT変異をカバーする意義を検討したのが本試験である。本試験は、イマチニブ抵抗性または不耐の進行GIST患者を対象とした国際共同第III相ランダム化試験である。主要評価項目であるPFS中央値は、bezuclastinib+スニチニブ群16.5ヵ月、スニチニブ単剤群9.2ヵ月であり、併用群で統計学的に有意な延長を認めた(HR:0.50、p<0.0001)。PFSのサブグループ解析では、exon17/18変異、exon13/14変異、またKITの1次変異であるexon9、exon11変異の状況にかかわらず、全体的に併用群で良好であった。奏効率も併用群46%、スニチニブ単剤群26%と、併用群で高い腫瘍縮小効果が示された。OSは、データカットオフの時点でイベント数が20%未満であり、現時点でimmatureであった。PFS2においても併用群に良好な傾向が示された。安全性については、bezuclastinib+スニチニブ併用による新たな安全性シグナルは認められず、全体としてスニチニブの既知の安全性プロファイルとおおむね一致していた。Grade3以上の主な有害事象としては、高血圧、好中球減少、肝機能上昇、貧血、下痢などが報告された。ALT/AST上昇は併用群で多い傾向があるものの、多くは可逆的で管理可能とされた。本試験では、イマチニブ治療後GISTにおいて、スニチニブ単剤に対してbezuclastinib+スニチニブ併用療法が明確な優越性を示した。新たな標準治療候補となる可能性が高い。現在、FDAではpriority review(優先審査)となっている。本試験に日本は参加しておらず、今後日本での本治療開発が期待される。目次に戻る【Abstract 11501】StrateGIST 1試験(第I/Ib相試験):進行GISTに対する新規KIT阻害薬velzatinibの1次・2次治療における有効性の示唆先に記載したPEAK試験に続き、同セッションで本StrateGIST 1試験が発表された。進行・再発または切除不能のGISTに対し、新規KIT阻害薬であるvelzatinib(IDRX-42)が、1次治療および2次治療のいずれにおいても有望な抗腫瘍活性と忍容性を示すことが報告された。velzatinibは、新規KIT阻害薬を創出する目的でexon13変異を対象としたハイスループットスクリーニングとその後の最適化のステップを経て開発された経緯がある(Blum A, et al. J Med Chem. 2023;66:2386-2395.)。velzatinibはexon14変異以外の1次、2次KIT変異に対して高い阻害活性を有する。StrateGIST 1試験は、進行GIST患者を対象としたfirst-in-humanの第I/Ib相試験であり、今回の解析では推奨第Ib相用量であるvelzatinib 300mg錠または曝露量が同等となる400mgカプセルを投与された1次治療例および2次治療例が評価された。対象は、KITまたはPDGFRAに変異を有する進行・再発または切除不能GIST患者であり、1次治療コホートでは未治療例、2次治療コホートでは主にイマチニブ治療後の患者が含まれた。有効性評価可能例は、1次治療コホート23例、2次治療コホート46例であった。1次治療コホートでは、未確定奏効率は65%、確定奏効率は56%であり、多くの症例で腫瘍縮小が認められた。最大腫瘍縮小までの期間は中央値8.1ヵ月であり、データカットオフ時点で83%の患者が治療継続中であった。観察期間中央値は7.4ヵ月であり、PFSはimmatureであった。観察期間はまだ限られるものの、初回治療として高い腫瘍縮小効果と持続的な病勢制御が期待される結果である。2次治療コホートでは、未確定奏効率は40%、確定奏効率は33%であり、PFS中央値は13.7ヵ月であった。安全性については、1次・2次治療例73例の解析において、治療関連有害事象(TRAE)は95%に認められ、Grade3以上のTRAEは33%であった。有害事象による治療中止は5%、用量減量は21%であり、全体として管理可能な安全性プロファイルであった。主な有害事象は、下痢、悪心、味覚異常、好中球減少、倦怠感、胃食道逆流症、貧血、食欲低下、腹痛、嘔吐などであった。Grade3以上では好中球減少や貧血が比較的多く認められており、血液毒性のモニタリングは重要と考えられる。本試験は単群の第I/Ib相試験であり、現時点で標準治療に影響があるものではない。しかし、velzatinibは1次治療では高い奏効率、2次治療ではPFS中央値13.7ヵ月という有望な成績を示しており、次世代KIT阻害薬として期待される。イマチニブ後の2次治療においては、スニチニブとの比較第III相試験であるStrateGIST 3試験が進行中である。一方で、1次治療としての位置付けについては、イマチニブとの比較試験や長期安全性、耐性変異出現パターンの検討が今後の課題である。目次に戻る【Abstract 11506】RINGSIDE試験(第III相試験):進行性デスモイド腫瘍に対するγセクレターゼ阻害薬varegacestatの有効性進行性デスモイド腫瘍に対し、経口γセクレターゼ阻害薬であるvaregacestatがプラセボと比較して主要評価項目であるPFSを有意に改善することが、RINGSIDE試験の結果として報告された。デスモイド腫瘍は遠隔転移を来さないものの、局所浸潤性が強く、疼痛、機能障害、臓器障害を引き起こす中間悪性度の肉腫である。デスモイド腫瘍では、APCやβカテニンの変異によるWntシグナルの活性化が生じている。一方、Notchシグナルも腫瘍の病態に寄与している可能性が報告されている。DeFi試験では別のγセクレターゼ阻害薬であるnirogacestatの有効性が示され、FDAで承認されている。本試験は、新規のγセクレターゼ阻害薬であるvaregacestatについて検証したものである。RINGSIDE試験は、進行性デスモイド腫瘍患者156例を対象とした国際共同第III相ランダム化二重盲検プラセボ対照試験であり、varegacestat 1.2mg 1日1回投与とプラセボが比較された。主要評価項目は独立中央判定によるPFSであり、主な副次評価項目としてRECIST v1.1に基づく奏効率、腫瘍体積変化、患者報告アウトカムによる疼痛評価などが設定された。主要評価項目であるPFSについて、varegacestatはプラセボと比較して病勢進行または死亡リスクを84%低下させた(HR:0.16、p<0.0001)。このPFS改善効果は、腫瘍部位、ベースライン腫瘍サイズ、年齢、前治療歴などのサブグループにおいても一貫していた。奏効率はvaregacestat群56%、プラセボ群9%であり、腫瘍縮小効果も明確に示された。さらに、疼痛スコアは投与開始後早期から改善し、12週時点で臨床的にも意味のある疼痛軽減が認められた。安全性については、全体としてγセクレターゼ阻害薬で予想される有害事象プロファイルと一致していた。主な有害事象は、下痢、倦怠感、皮疹、悪心、咳嗽などであり、多くはGrade1または2であった。一方、閉経前女性では卵巣機能に関連する有害事象が一定割合で認められており、若年女性に投与する際には妊孕性や月経異常に関する説明とモニタリングが重要である。また、有害事象による用量減量や中止も一定数みられており、長期投与を前提とした副作用管理が必要となる。本試験の結果から、varegacestatは進行性デスモイド腫瘍に対する有力な新規治療選択肢となる可能性がある。とくに、PFSのみならず、奏効率、腫瘍体積、疼痛という患者にとって臨床的意義の高い評価項目を同時に改善した点は重要である。一方で、すでに同じγセクレターゼ阻害薬であるnirogacestatの臨床的位置付けが確立しつつあるため、今後は、有効性、安全性、卵巣機能への影響、投与スケジュール、患者背景ごとの使い分けが課題となる。現在、日本ではnirogacestatの単群の第II相試験が実施され、募集終了となっている(jRCT2031250269)。目次に戻る【Abstract 2500】EMITT-1試験:ERAP1阻害薬GRWD5769とセミプリマブ併用による抗腫瘍免疫再活性化の可能性免疫チェックポイント阻害薬に抵抗性を示した複数の固形がんに対し、経口ERAP1阻害薬GRWD5769と抗PD-1抗体セミプリマブの併用療法が、早期臨床試験ながら複数のがん種で抗腫瘍活性を示したことが、EMITT-1試験の第Ib相拡大コホートの結果として報告された。免疫チェックポイント阻害薬抵抗性の克服は重要課題である。ERAP1はMHC class Iに提示されるペプチドレパートリーの形成に関与する酵素である。ERAP1阻害により腫瘍細胞表面に提示される抗原ペプチドが変化し、T細胞による腫瘍認識を再誘導することが期待される。GRWD5769はfirst-in-classの経口ERAP1阻害薬であり、腫瘍の抗原提示を変化させることで、免疫チェックポイント阻害薬抵抗性を克服するという新しい免疫治療アプローチである。EMITT-1試験は、GRWD5769とセミプリマブ併用療法を評価する第I/II相試験であり、第Ib相拡大コホートでは、非小細胞肺がん、尿路上皮がん、肝細胞がん、MSS大腸がん、子宮頸がん、頭頸部扁平上皮がんの6コホートが検討された。多くの症例は既治療歴を有し、MSS大腸がんを除き、抗PD-1療法に対する2次抵抗性を示した患者が対象とされた。有効性については、各コホートで奏効率13~36%が報告された。尿路上皮がんでは奏効率36%、非小細胞肺がんでは21%、肝細胞がんでは14%、MSS大腸がんでは17%、子宮頸がんでは14%、頭頸部扁平上皮がんでは13%であった。また、6ヵ月以上の奏効または安定を含むdurable clinical benefitも複数のコホートで認められ、非小細胞肺がんおよびMSS大腸がんではPFS中央値が33週と報告された。とくに、MSS大腸がんは一般に免疫チェックポイント阻害薬単独では有効性が乏しい集団であり、本併用療法のシグナルは注目される。安全性については、全体として忍容性は良好であり、新たな安全性シグナルは認められなかった。多くの有害事象はGrade1であり、免疫関連有害事象も限定的であった。本試験は早期相試験であり、対象患者数も限られているため、現時点で標準治療を変える結果ではない。しかし、ERAP1阻害による抗原提示改変という新しい治療戦略が、臨床的にも抗腫瘍活性を示しうることを示した点で意義が大きい。今後は、ランダム化第II相試験での検証、奏効予測バイオマーカーの同定、がん種別の最適な対象集団の絞り込みが重要となる。目次に戻る

4.

ASCO2026 レポート 乳がん

レポーター紹介[目次]persevERA試験SERENA-6試験JCOG1919E (AMBITION)試験SAKK96/12 REDUSE試験OPTIMA試験PRO-MOTE試験はじめに2026年5月29日~6月2日までシカゴで開催されたASCO年次総会は、「The Science and Practice of Translation: Improving Cancer Outcomes Worldwide」がテーマで、研究成果を臨床に迅速に届け、地域社会や資源の限られた国々へ広げる取り組みが強調された。航空運賃の高騰、円安、米国内のインフレなど学会参加コストの上昇から、日本からの参加者はコロナ前と比べてあまり戻っていない印象だが、それでも多くの研究者と交流できた。また、6月3日に台風チャンミーが日本を直撃し、多くの国際線・国内線が欠航になる中、帰国に影響があった参加者も多かったようである。私は外来日の関係で帰国が1日早かったので、幸い影響を受けなかった。今回は直接日常臨床を変える試験は多くなかったが、将来の開発の方向性を考えるうえで重要だと考えられた6試験を紹介する。目次に戻るpersevERA試験:ESR1で絞り込まない経口SERDの可能性persevERA試験は、ホルモン受容体陽性(HR+)HER2陰性(HER2-)転移乳がん(MBC)の1次治療として、経口選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)のgiredestrant+パルボシクリブ療法とレトロゾール+パルボシクリブ療法を比較した第III相試験である。すでにプレスリリースで公開されているようにnegative studyであった。主要評価項目の無増悪生存期間(PFS)は、giredestrant群33.1ヵ月、レトロゾール群28.2ヵ月でハザード比[HR]:0.89(95%信頼区間[CI]:0.76~1.05、p=0.1553)と数値的な延長を示したが、統計学的有意差には至らず、また副次評価項目の全生存期間(OS)は未成熟で明確な差はなかった。奏効率と臨床的ベネフィット率はほぼ同等で、奏効期間は経口SERD群でやや長かった。主な有害事象は好中球減少、貧血などで、両群とも管理可能だった。ESR1変異を有する集団における有効性のデータの多い経口SERDにおいて、本試験ではESR1変異の有無が適格基準となっていない点が特徴である。同様のセッティングで行われる他剤の結果などを含めて、経口SERDの今後の開発の方向性に影響する試験といえるだろう。目次に戻るSERENA-6試験:ctDNAでのESR1変異検出後の早期スイッチSERENA-6試験は、アロマターゼ阻害薬(AI)+CDK4/6阻害薬併用療法を受けるHR+HER2-MBC患者で、血中ctDNA検査によりESR1変異が検出され、画像上病勢進行(PD)がない時点でcamizestrantに早期スイッチするか、AIを継続するかをPFSをエンドポイントとして検証したランダム化第III相試験である。主要評価項目の結果は昨年のASCOのplenaryで発表され、AI継続群に比べ、camizestrant+CDK4/6阻害薬群はPFSが7.6ヵ月延長(16.8ヵ月vs.9.2ヵ月)し、HR:0.45(95%CI:0.34~0.59)と統計学的有意差を示した。今回は副次評価項目である2次PFS(PFS2)の結果が報告され、25.7ヵ月vs.19.1ヵ月、HR :0.63(95%CI:0.46~0.86、p=0.00373)と、PFSでの効果がそのままPFS2に持ち越されていた。総ctDNAのクリアランス率は51%vs.2%と差が顕著で、化学療法/ADCフリー生存期間が延長し、患者報告アウトカムも改善した。ESR1変異出現を2〜3ヵ月に1回検査する必要があり、検査費用やモニタリング体制、検査に対する患者の不安が課題となる。臨床増悪時にスイッチする戦略や他の併用との比較は行われておらず、米国食品医薬品局(FDA)での審査においても試験デザインに対する懸念が報告されている(でも、試験開始前にFDAと相談してこのデザインになったのでは?)。日本での承認も見込まれるが、ESR1検査の保険適用や体制の整備が必要であり、今後の適正導入に向けた議論が求められる。目次に戻るJCOG1919E (AMBITION)試験:HR+HER2-乳がんにおける免疫療法日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)が実施したJCOG1919E(AMBITION)試験は、HR+HER2-進行乳がん患者281例を対象に、パクリタキセル+ベバシズマブに免疫チェックポイント阻害薬アテゾリズマブを上乗せする意義を検討した第III相試験である。JCOG乳がんグループ初の医師主導治験であり、研究事務局の愛知県がんセンター原 文堅先生が発表された。主要評価項目のPFSはアテゾリズマブ併用群12.4ヵ月vs.対照群11.2ヵ月(HR:0.876、95%CI:0.670~1.145、p=0.168)と有意差を示さず、免疫療法追加の恩恵は確認できなかった。OSは39.1ヵ月vs.31.2ヵ月(HR:0.804、p=0.091)と数値的な延長傾向が認められたが統計学的有意差は認められなかった。安全性はおおむね既知のプロファイルに一致し、免疫関連有害事象は追加されたものの管理可能であった。HR+HER2-乳がんは免疫学的に“cold”とされており、VEGF阻害薬+細胞障害性抗がん薬+免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の組み合わせでも効果は限定的であった。HR+HER2-MBCにICIを併用した日本から初めての無作為化第III相試験であり、現在進行中のトランスレーショナルリサーチにより、ICI追加のメリットの得られるサブグループの同定に期待したい。目次に戻るSAKK96/12 REDUSE試験:デノスマブ投与間隔を12週に延長MBCに対する支持療法の試験も紹介する。SAKK96/12 REDUSE試験は、骨転移を有する転移乳がんおよび去勢抵抗性前立腺がん患者1,380例を対象に、デノスマブ120 mgを4週間ごと(従来)と12週間ごとの維持投与にランダム化した非劣性試験である。主要評価項目は初回症候性骨関連事象までの期間であり、12週投与群のハザード比は1.023(90%CI: 0.874~1.197)で非劣性の閾値1.20を下回り、中央値はどちらも約56.5ヵ月と同等であった。副次評価項目では12週群で低カルシウム血症や顎骨壊死が有意に少なく、OSも大きな差はなかった。試算では投与間隔延長により薬剤費が約半減し、スイスでは年間1,500万CHF程度の医療費削減が見込まれる。日本でもデノスマブは骨関連事象予防の標準薬であり、12週投与への変更は患者の通院負担を軽減し、医療資源の効率化につながる。また骨修飾薬には非定型骨折など特徴的な有害事象があり、今後は12週間隔投与が標準となると考えられるが、論文化されたデータを確認して日常臨床に適用していきたい。目次に戻るOPTIMA試験:PAM50を用いた遺伝子検査による化学療法削減OPTIMA試験は、臨床的に高リスクと判断されるHR+HER2-早期乳がん患者約4,400例を対象に、従来の術後化学療法を一律に行う群と、50遺伝子のPAM50(Prosigna)検査結果に基づき化学療法の有無を決める群を比較した国際ランダム化非劣性試験である。対象は40歳以上で最大9個のリンパ節転移を認める症例まで含まれ、約2/3がリスクスコア60以下であった。浸潤乳がん再発または死亡のない生存期間は両群でほぼ同等で、試験群は化学療法群に対して5年時点の差が1.5%以下に収まり非劣性が確認された。低リスク腫瘍では化学療法の恩恵はごくわずかであり、100人中2人程度しか再発予防効果が得られないことが示された。この50遺伝子検査は、卵巣機能抑制下の40歳以上閉経前女性や4〜9個のリンパ節転移を有する症例でも補助化学療法の省略判断に活用できる。日本で用いられる21遺伝子検査(Oncotype DX)はリンパ節転移陰性もしくはリンパ節転移3個までの患者を対象とした臨床試験を有し、日本では保険適用ではないが多くの試験のあるMammaPrintも同様である。リンパ節転移4個以上9個までの、従来再発高リスクと考えられ、基本的に術後化学療法を提案していた患者が含まれている点が本試験の特徴である。一方で、検査費用(これは他のパネルも同様)やフォローアップ期間が63%の患者で5年以下と短いこと、40歳未満の若年者が除外されている点に留意が必要である。目次に戻るPRO-MOTE試験:日本最大規模のePRO試験最後にPRO-MOTE試験を紹介する。本試験は、日本の49施設が参加した進行がん患者501例を対象とする電子的患者報告アウトカム(ePRO)システムの実用性を検証したランダム化試験である。乳がんのみを対象とした試験ではないが、日本から報告された最大規模のePRO試験でありここで紹介する。神戸大学の清田 尚臣先生が発表された。PRO-MOTE試験はスマートフォンアプリによる週1回の症状報告と医師へのアラート送信を行う介入群と、通常診療のみの対照群を比較し、主要評価項目にEORTC QLQ-C30による24週時点のグローバルヘルスステータス(GHS)およびOSを設定した。中間解析ではePRO群のGHSは対照群に対して平均−0.61ポイント(95%CI:−3.03~1.82、p=0.625)と有意差がなく、OSもHR:0.91(95%CI:0.70~1.19、p=0.48)と差がなかった。一方でアンケート回答率は90%前後と高く、機能領域や症状の多くでePRO群に有利な改善がみられた。サブグループ解析では明確な恩恵を示す集団は見出されなかったが、デジタルツールの高い受容性と症状評価の質向上が示された。日本初の大規模ePRO試験として価値は高いものの、OSやGHSを主要エンドポイントとする設計では差が検出されず、今後のePRO研究では何をエンドポイントとして設定すべきか(症状制御や治療継続性など)について問題提起する報告であった。目次に戻る

5.

複合がん免疫療法の近未来/日本臨床腫瘍学会

 がん免疫療法は、複数の免疫療法を組み合わせることで治療効果を最大化する新たなフェーズへと進展しつつある。2026年3月26~28日に開催された第23回日本臨床腫瘍学会学術集会では、「複合がん免疫療法の近未来」をテーマとしたシンポジウムが企画され、次世代の治療戦略が議論された。腫瘍免疫の理解が深化する中で、がん免疫応答の多面的なメカニズムを考慮した新たな複合がん免疫療法の確立が期待される。持続型T細胞免疫システムとCD4陽性T細胞療法 冒頭、各務 博氏(埼玉医科大学国際医療センター)は、近年のがん免疫療法の進歩を背景に、免疫応答をいかに持続させるかが重要な課題となっていることを指摘した。そのうえで、腫瘍微小環境内に形成される三次リンパ様構造(TLS)を基盤とした持続型T細胞免疫システムと、CD4陽性T細胞を活用した新たな治療戦略について講演した。 TLSは腫瘍局所に形成されるリンパ組織様構造で、抗原特異的T細胞の増殖や機能維持を担う場として機能する。ここでは、前駆疲弊CD8陽性T細胞(Tpex)が中心的役割を果たしている。TpexはPD-1を発現しつつも自己複製能を保持し、抗原特異的T細胞を継続的に供給する貯蔵プールとして働く。PD-1阻害薬の投与によりTpexが増殖し、抗腫瘍効果を引き起こすことが知られている。 さらに、Tpexの維持には特定のCD4陽性T細胞群が関与することが明らかとなっている。Tpexと連動して長期的な免疫応答を維持する重要な細胞集団であるTh7Rは、Tpexと類似した遺伝子発現を示し、腫瘍内で近接して分布する。解析の結果、Th7RとTpexの細胞数は相関しており、CD4陽性T細胞がTpexの形成および維持に寄与する可能性が示唆されている。 モデルマウスを使用した研究では、Th7Rを投与することで腫瘍内のTpexが増加し、抗腫瘍効果の増強が確認された。また、PD-1やCTLA-4阻害薬との併用により、その効果が持続することも示された。これは、Tpex/Th7R相互作用の維持を目的とした細胞療法として、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)治療の有望な戦略となる可能性を示唆している。 臨床的にもCD4陽性T細胞の存在は予後と関連し、PD-1阻害薬による治療前後で血中のTh7Rが減少していない患者さんで5年生存例が多いことが報告されている。一方で、これらの細胞が減少すると再発や死亡につながる可能性がある。このため、CD4陽性T細胞を継続的に補充する細胞療法により、腫瘍微小循環を維持し、免疫応答を長期にわたって持続させる治療戦略が重要であると各務氏は指摘する。 総じて、腫瘍微小循環にはTLS・Tpex/Th7R相互作用に代表される持続型抗腫瘍細胞メカニズムが存在し、持続的ながん免疫の基盤となっている。腫瘍微小循環を維持する細胞療法の併用は、今後のICI治療の発展において重要な方向性になることが期待されている。ICIとADC併用療法の現状と展望 続いて、清水 俊雄氏(関西医科大学附属病院 新薬開発科)はICIと抗体薬物複合体(ADC)の併用療法について、その作用機序、臨床的課題、今後の展望などについて概説した。 ADCは、標的に特異的に結合する抗体、細胞障害作用を担うペイロード、そして両者を連結するリンカーの3要素から構成される。これら各要素の設計は、有効性と安全性を大きく左右する。とくにリンカーの安定性や薬物抗体比(DAR)は体内動態(PK/PD)や毒性に強く影響する。また、ペイロードの疎水性や膜透過性は、腫瘍細胞内での作用に加え、周囲細胞へも影響する重要な因子である。 臨床的課題としては、標的抗原を発現する正常組織にも作用するオンターゲット毒性と、非特異的にほかの組織へ影響を及ぼすオフターゲット毒性が挙げられる。さらに、ADCは体内で単一の形態として存在するわけではなく、完全体、ペイロードが解離した抗体、遊離ペイロードなど複数の分子種が時間とともに変動する。このような動的な分布が薬効と毒性のバランスを規定するため、PK/PDの理解と最適化が重要となる。 免疫学的観点では、ADCによる腫瘍細胞障害は腫瘍抗原の放出を促し、免疫応答を活性化する。これにより樹状細胞およびT細胞が活性化され、腫瘍細胞では主要組織適合複合体(MHC)クラスI分子やPD-L1の発現が増加する。その結果、CD8陽性T細胞の腫瘍への浸潤が促進される。このような背景から、ICIとの併用による相乗的な抗腫瘍効果が期待されており、ADCとPD-1阻害薬の併用による有望な臨床試験の成績が報告されている。 一方で、併用療法の最適化にはいくつかの重要な課題がある。具体的には、標的抗原発現の維持、毒性の重複回避、ならびにADCの非特異的取り込みの抑制が挙げられる。さらに近年では、二重特異性抗体や二重ペイロードの導入、腫瘍特異的に活性化される設計、免疫刺激型ペイロードの活用など、機能を拡張した次世代ADCの開発が進んでいる。これらの新規ADCはまだ早期開発段階にあるものの、バイオマーカーの確立と臨床的有用性の検証が進めば、より精緻な個別化治療の実現が期待される。 最後に清水氏は、ADCとICIの併用療法は大きな可能性を有する一方で、その成功には分子設計、薬物動態、免疫学的作用、臨床戦略を統合的に理解することが不可欠となることを強調した。加えて、適切な薬剤選択や投与タイミングの最適化、さらには構造の改良による安全性と有効性の向上が、今後の治療成績を左右すると締めくくった。肺がん領域における二重特異性抗体の最前線 ICIの登場により、肺がん、とくに非小細胞肺がんの治療成績は大きく向上した。しかし、すべての患者さんに十分な効果が得られるわけではなく、新たな治療戦略の開発が求められている。こうした中で、最近は二重特異性抗体が注目されている。吉田 達哉氏(国立がん研究センター中央病院 呼吸器内科/先端医療科)は、肺がん領域における二重特異性抗体の臨床的展開について、最近の動向を報告した。 二重特異性抗体は、異なる2つの分子を同時に標的とすることを特徴とし、デュアルチェックポイント阻害型とT細胞誘導型(T細胞エンゲージャー)とに大きく分類される。前者は複数の免疫抑制シグナルを同時に阻害することで免疫応答を増強し、後者は腫瘍抗原とT細胞上の分子を橋渡ししてT細胞を直接腫瘍へ誘導・活性化する。造血器腫瘍ではT細胞エンゲージャーの成功例が多く報告されている一方、固形腫瘍である肺がんでは、これらを単独あるいはICIと組み合わせて用いる戦略が活発に検討されている。 肺がん領域では、特定のドライバー変異に関連する受容体を同時に標的とするアプローチや、腫瘍特異的抗原とT細胞を結び付けるT細胞エンゲージャーが臨床開発の段階から実臨床へと移行しつつある。前者は分子標的薬との併用により生存期間の延長が示唆され、後者は小細胞肺がんにおいて化学療法との併用で良好な治療成績が報告されており、新たな標準治療となる可能性がある。 一方で、患者選択の指標として用いられてきたPD-L1発現のみでは、ICIによる治療効果を十分に予測することが難しく、腫瘍変異量、抗原提示細胞や制御性T細胞の分布など、免疫微小環境をより詳細に解析する必要がある。こうした多面的なバイオマーカーの開発が、今後の個別化医療の鍵を握ると吉田氏は指摘する。 また、二重特異性T細胞エンゲージャーは腫瘍内の局所的なT細胞浸潤と免疫チェックポイント分子の発現を誘導し、ICI併用の有効性を示唆する一方で、抗原喪失などの免疫逃避が課題となる。 現在、T細胞エンゲージャーとICIの併用を検証する後期臨床試験が進行中であり、最適な併用方法や投与タイミングの確立が期待されているという。肺がん治療は、免疫療法のさらなる進展により新たな段階へと移行しつつあると、吉田氏は講演をまとめた。ICIとネオ抗原ワクチンの併用療法 近年、感染症領域におけるmRNAワクチンの成功を契機として、個別化がんワクチンの開発が大きく加速している。北野 滋久氏(がん研究会有明病院 先端医療開発科/がん免疫治療開発部)は、免疫学の観点からICIとネオ抗原ワクチンとの併用療法について概説した。 従来のがん抗原は自己由来成分に近く、十分な免疫応答を誘導できないことが多く、ワクチン療法としての成功例は限られてきた。これに対し、ネオ抗原は腫瘍細胞に特異的に生じた遺伝子変異に由来する新規タンパク質断片であり、後天的に獲得されるため免疫寛容の影響を受けにくく、高い免疫原性を持つ可能性がある。 ネオ抗原は、がん細胞内で産生された変異タンパク質が分解され、ヒト白血球抗原(HLA)に提示されることでT細胞に認識される。主にクラスIではCD8陽性T細胞、クラスIIではCD4陽性T細胞を活性化する。この過程には個人ごとのHLA型や遺伝子変異の違いが大きく影響するため、治療には患者さんごとの個別化が不可欠となる。近年では、DNAおよびRNAのシーケンシングと計算アルゴリズムを組み合わせることで、有望なネオ抗原候補を予測する技術が進歩し、個別化ワクチン開発が現実味を帯びてきた。 ワクチンにはペプチド、mRNA、DNA、ウイルスベクターなど多様な種類があり、とくにmRNAワクチンは柔軟性と開発の速さから注目されている。早期臨床試験ではネオ抗原特異的な免疫応答が確認され、ICIとの併用により抗腫瘍効果の向上が期待される。免疫応答は主にCD8陽性T細胞が担い、CD4陽性T細胞も補助的に関与する。安全性については、腫瘍特異的標的であるため理論上重篤な副作用はほとんどないと考えられる。 さらに、従来は注目されていなかったイントロンを含む非コード領域(いわゆるダークゲノム)や、スプライシング異常に由来するネオ抗原の存在も明らかになりつつあり、抗原候補の幅が大きく広がっている。全ゲノム解析を活用することで、これまで見逃されていた免疫標的の同定が進み、新たな治療戦略につながる可能性がある。 北野氏は、こうした科学的進展に加え、産学連携や国家レベルの研究基盤整備も進展しており、個別化ネオ抗原ワクチンと免疫療法の統合的アプローチは、がん治療の新たな柱として実用化に向けた期待が高まっていることを強調した。

6.

腹膜播種を伴う胃がん、腹腔内パクリタキセル追加でOS延長(DRAGON-01)

 腹膜播種を伴う胃がんは予後不良であり、1次治療として全身化学療法が行われるものの全生存期間(OS)中央値は1年未満にとどまる。中国で実施された第III相ランダム化比較試験DRAGON-01において、腹腔内パクリタキセルを静脈内パクリタキセル+S-1療法に追加することで、OSが有意に延長することが報告された。JAMA Oncology誌オンライン版2026年5月21日号掲載の報告。 パクリタキセルは腹膜腔内で高濃度を長時間維持できることから、腹腔内投与による局所制御向上が期待されてきた。DRAGON-01試験は、中国9施設で実施された多施設共同第III相比較試験であり、対象は胃腺がんかつ腹腔鏡で確認された腹膜転移を有し、腹膜外転移および既治療歴のない成人患者であった。 患者はIP群(パクリタキセル50mg/m2静注+パクリタキセル20mg/m2腹腔内+S-1)とPS群(パクリタキセル70mg/m2静注+S-1)に2対1で割り付けられた。主要評価項目はOS、副次評価項目は無増悪生存期間(PFS)、安全性、コンバージョン手術施行率などであった。 主な結果は以下のとおり。・222例(IP群148例、PS群74例)が解析対象となった。年齢中央値は59歳、腹膜播種指数(PCI)中央値は15で、比較的進行した腹膜病変を有する集団であった。・追跡期間中央値72.2ヵ月時点で、OS中央値はIP群19.4ヵ月、PS群13.9ヵ月で、IP群で有意な延長を示した(ハザード比[HR]:0.67、95%信頼区間[CI]:0.50~0.90)。・PFS中央値はIP群11.2ヵ月、PS群7.2ヵ月でこちらもIP群で有意な延長を示した(HR:0.72、95%CI:0.54~0.96)。・3年OS率はIP群25.0%、PS群12.2%であり、長期生存割合にも差がみられた。・コンバージョン手術施行率はIP群50.7%に対しPS群35.1%、ベースラインで腹膜細胞診陽性だった患者の陰性化率はIP群83.6%に対しPS群52.6%と、いずれもIP群で高かった。・Grade3/4の有害事象はIP群38.5%、PS群41.9%で発生し、両群に大きな差はなかった。主な重篤有害事象は好中球減少、白血球減少、貧血などであり、治療関連死亡は認められなかった。・IPポート関連合併症は27.0%に認められたが、多くは試験初期に発生しており、施設経験の蓄積による改善が示唆された。 著者らは、「静脈内パクリタキセル+S-1療法への腹腔内パクリタキセル追加は、重篤な毒性を増加させることなく、OSを有意に改善した」と結論付けた。一方で、本試験には現在標準となりつつある免疫チェックポイント阻害薬併用療法が導入されておらず、PD-L1やMSI情報も未取得であった。今後は免疫療法との併用を含めた検証が必要とされる。

7.

ASCO2026 レポート 消化器がん

レポーター紹介[目次]RASolute 302試験FIGHT-302試験BREAKWATER Cohort3試験EPISODE-III/JCOG1503C試験欧州CIRCULATE/日本発GALAXY試験ONO-4578-08試験PANKU-Esophagus01試験膵がんRASolute 302試験:daraxonrasibが膵がん薬物療法の地図を塗り替える可能性RASolute 302は、前治療歴を有する転移のある膵管腺がん(PDAC)を対象に、経口RAS(ON) multi-selective inhibitorであるdaraxonrasibと医師選択化学療法(GnP、mFOLFIRINOX、Nal-IRI+5FU/LV、FOLFOX)を比較した国際共同非盲検第III相試験である。主要評価項目はRAS G12変異例における全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)で、全体集団500例のうち91.8%がRAS G12変異例であった。RAS G12変異例では、OS中央値が13.2ヵ月vs.6.6ヵ月(ハザード比[HR]:0.40)、PFS中央値が7.3ヵ月vs.3.5ヵ月(HR:0.45)と、daraxonrasib群で有意に改善した。全体集団でもOS中央値13.2ヵ月vs.6.7ヵ月(HR:0.40)、PFS中央値7.2ヵ月vs.3.6ヵ月(HR:0.49)と一貫した効果が示され、RAS G12以外やRAS変異未同定例を含めた広い集団で有効性が確認された。客観的奏効率(ORR)もRAS G12変異例で33.2%vs.11.8%(p<0.0001)、全体集団で31.6%vs.11.2%(p<0.0001)と改善した。QOLも改善し、有害事象は発疹(全Grade:85%、Grade3以上:14%)・口内炎(全Grade:53%、Grade3以上:12%)などが中心である。臨床的インパクトは非常に大きく、主要評価項目であるOSの有意な結果が報告されたタイミングでスタンディングオベーションが起き、発表と同時にNEJM誌にも掲載された1)点も注目される。daraxonrasibはFDAからBreakthrough Therapy designationおよびOrphan Drug designationを受けており、膵がんで長く創薬困難とされてきたRASを、G12C単独ではなくG12D/V/Rを含む広いRAS変異に対して標的化できることを第III相試験で示した意義は大きく、PDACの治療体系を大きく変えると思われる。RAS阻害薬はほかにも多数の薬剤が開発中であり、初回治療例を対象にdaraxonrasib単剤vs.daraxonrasib+GnP vs.GnPを検証するRASolute 303試験をはじめ、術後補助療法におけるエビデンス創出など、今後の拡大が期待される。1)O'Reilly EM, et al. N Engl J Med. 2026 May 31. [Epub ahead of print]目次に戻る胆道がんFIGHT-302試験:FGFR2融合・再構成陽性胆管がんで1次治療FGFR阻害の可能性を検証FGFR2融合・再構成陽性胆管がんでは、既治療例を対象とした第II相FIGHT-202試験でペミガチニブの有効性が示され、最終解析ではORR 37.0%、PFS中央値7.0ヵ月、OS中央値17.5ヵ月、奏効期間(DoR)中央値9.1ヵ月であった2)。これを背景に、ペミガチニブは既治療のFGFR2融合・再構成陽性胆管がんで承認されており、FIGHT-302試験では1次治療への前倒しが検証された。FIGHT-302は、未治療の切除不能・転移FGFR2再構成陽性胆管がんを対象に、ペミガチニブ単剤とゲムシタビン+シスプラチン(GC)を比較した国際共同非盲検第III相試験である。希少な分子サブタイプを対象とするため登録は難航し、4,000例超を事前スクリーニングしたものの、最終的なランダム化例数は167例で、試験は早期終了となった。主要評価項目のPFS中央値は8.3ヵ月vs.6.8ヵ月(HR:0.58、nominal p=0.0078)とペミガチニブ群で延長し、ORRも47.0%vs.15.5%、DoR中央値も14.2ヵ月vs.6.3ヵ月と良好であった。一方、OS中央値は24.4ヵ月vs.25.0ヵ月と同程度であった。化学療法群では進行後に42例がペミガチニブへクロスオーバーしており、OS解釈には注意を要する。本試験は、FGFR2陽性胆管がんで1次治療から標的治療を用いる可能性を示した点で重要であり、同時にJournal of Clinical Oncology誌にも掲載された3)。とくにORRはペミガチニブ群47.0%と、胆道がん全体を対象としたTOPAZ-1/KEYNOTE-966のGC+免疫チェックポイント阻害薬(ICIs)におけるORRが約27~29%であったことを踏まえると、クロストライアル比較ながら腫瘍縮小を重視するFGFR2再構成陽性例では魅力的に映る。一方で、FIGHT-302の対照群はGC単独であり、現在の1次治療標準であるGC+ICIsとの直接比較ではない。また、OS非改善、早期終了による検出力の限界、クロスオーバーの影響、FGFR阻害薬後の耐性変異を踏まえると、ただちに1次治療を置き換えるというより、診断時からFGFR2検査を行い、FGFR2陽性例における1次治療・2次治療の最適なシーケンスを考えるデータと整理するのが妥当である。2)Abou-Alfa GK, et al. Lancet Oncol. 2020;21:671-684.3)Bekaii-Saab TS, et al. J Clin Oncol. 2026 Jun 1. [Epub ahead of print]目次に戻る大腸がんBREAKWATER Cohort3試験:FOLFIRIバックボーンでも良好な治療効果BRAF V600E変異陽性転移性大腸がんは予後不良な分子サブタイプであり、1次治療からBRAF/EGFR阻害を組み込む治療開発が進められてきた。第III相BREAKWATER試験では、エンコラフェニブ+セツキシマブ(EC)+mFOLFOX6が標準治療に対し、ORR:65.7%vs.37.4%、PFS中央値12.8ヵ月vs.7.1ヵ月、OS中央値30.3ヵ月vs.15.1ヵ月と良好な結果を示した。これを受け、本邦でも2025年11月にエンコラフェニブが1次治療へ適応拡大され、FOLFOX+ECはBRAF V600E変異陽性切除不能進行・再発大腸がんにおける初回治療の標準的選択肢として位置付けられている。一方、ASCO GI 2026では、BREAKWATERの別コホートとして、EC+FOLFIRIをFOLFIRI±BEV(ベバシズマブ)と比較した成績が報告され、BICR評価のORRは64.4%vs.39.2%(片側p=0.0011)と有意に改善していた。今回のASCO 2026ではPFSおよびOS解析が発表され、PFS中央値は15.2ヵ月vs.8.3ヵ月(HR:0.44、片側p=0.0002)と有意に延長した。OS中央値も、未到達vs.20.3ヵ月(HR:0.56)であり、OSも良好な傾向を示した。本結果はASCO 2026で発表されるとともに、Annals of Oncology誌に同時掲載された4)。FOLFOX+ECが本邦でも1次治療標準として位置付けられた一方、今回のFOLFIRIコホートは、オキサリプラチン不適例や末梢神経障害を避けたい症例における将来的な代替バックボーンとしての可能性を示した。ただし、EC+FOLFIRIの国内実装には薬事・ガイドライン上の位置付けの整理が必要である。4)Kopetz S, et al. Ann Oncol. 2026 May 31. [Epub ahead of print]目次に戻る大腸がん・日本発EPISODE-III/JCOG1503C試験:アスピリン補助療法は“全例投与”から“分子選択”か?術後大腸がんに対するアスピリン/COX阻害薬は、非選択集団では明確な上乗せ効果に乏しい一方、PI3K経路異常例では有望な可能性が示されている。非選択大腸がんを対象としたASCOLT試験では、アスピリン200mgを3年間投与しても5年DFSは77.0%vs.74.8%(HR:0.91)で主要評価項目は未達であった5)。また、PI3K経路異常を有する局所大腸がんを対象としたALASCCA試験では、アスピリン160mg・3年間によりPIK3CA exon 9/20変異例、その他PI3K経路異常例のいずれでも再発リスク低下が示された6)。COX-2阻害薬セレコキシブについても、CALGB/SWOG 80702試験の解析でPIK3CA gain-of-function変異例におけるDFS/OS改善が報告されている7)。EPISODE-III/JCOG1503Cは、下部直腸がんを除くR0切除後StageIII大腸がん882例を対象に、標準的な術後補助化学療法へ低用量アスピリン100mgを3年間上乗せする意義を検証した、日本発の二重盲検プラセボ対照第III相試験である。ASCO 2026では、国立がん研究センター中央病院の高島 淳生氏により、主要解析結果がLate-Breaking Abstract(LBA3508)として発表された。主要評価項目の3年DFSは、アスピリン群78.8%vs.プラセボ群75.4%と数値上はアスピリン群で良好であったが、HR:0.84、片側p=0.0987で統計学的有意差には至らなかった。RFSも79.5%vs.77.2%(HR:0.87)と同方向の傾向にとどまり、OSは未成熟であった。安全性はおおむね許容範囲であったが、下部消化管出血はアスピリン群でやや多かった(全Grade:2%vs.0.2%)。アスピリンによる再発抑制機序としては、COX-1/COX-2阻害を介したプロスタグランジン産生低下、血小板凝集抑制による循環腫瘍細胞の転移形成阻害、炎症性腫瘍微小環境の抑制などが想定される。JCOG1503Cは、非選択のStageIII大腸がん全例にアスピリンを追加する方針を支持する結果ではなかった。一方で、本試験は当時のエビデンス状況を踏まえた重要な全例対象試験であり、今後のPI3K/PIK3CA解析により、COX阻害薬を分子選択的な術後補助療法として再評価する足掛かりになる可能性がある。5)Chia JWK, et al. Lancet Gastroenterol Hepatol. 2025;10:198-209.6)Martling A, et al. N Engl J Med. 2025;393:1051-1064.7)Meyerhardt JA, et al. JAMA. 2021;325:1277-1286.目次に戻る大腸がん欧州CIRCULATE/日本発GALAXY試験:本邦におけるMRD元年大腸がん術後のctDNA/MRD検査は、再発リスクを高精度に層別化する手法として期待されており、ASCO 2026ではctDNAを単なる予後予測マーカーにとどめず、術後補助化学療法(ACT)の要否や期間を決める“治療設計ツール”としての可能性が示された。StageII pMMR/MSS結腸がんを対象とした欧州CIRCULATE(AIO-KRK-0217/ABCSG)試験では、tumor-informed型のアカデミックMRDアッセイを用い、術後ctDNA陽性例をACT群と観察群にランダム化した。本試験はドイツ・オーストリアで実施された前向きランダム化第III相試験で、ctDNA陽性例は41例、ITT解析対象はACT群26例、観察群15例であった。主要評価項目の3年DFSは、ACT群61%vs.観察群38%(HR:0.55、p=0.12)で、統計学的有意差には至らなかった。一方、事前規定のper-protocol解析では、ACT群に割り付けられたものの治療を開始しなかった5例を除外し、実際にACTを受けた21例と観察群15例を比較した。その結果、3年DFSは77%vs.38%(HR:0.31、p=0.021)、3年再発率はACT群19%vs.観察群62%(HR:0.23、p=0.009)と、ACT群で良好であった。本試験ではctDNA陽性率が2.9%と低く、早期終了により検出力が限られた点には注意が必要であるが、ctDNA陽性StageII結腸がんにおいて、術後補助化学療法による再発抑制が期待できることを示した前向きランダム化データとして意義は大きい。さらに日本発のCIRCULATE-Japan/GALAXY解析では、SignateraによるACT中のctDNA変化とACT期間との関係について、九州大学の沖 英次氏により報告された。対象は、ACTを受け、術後6ヵ月以内に2回以上ctDNA測定が行われた1,028例であり、ACT期間は90日以上をlong ACT、90日未満をshort ACTとして比較された。ctDNAが一貫して陰性であった症例では、long ACTによる明確なDFS改善は認められなかった(HR:0.71、95%CI:0.46~1.09)。また、ACT治療中にctDNAが陰転化した症例でも、ACT延長の上乗せ効果は明確ではなかった(HR:1.06、95%CI:0.57~1.97)。一方、ctDNAは低下したものの陽性が残るpartial molecular response例では、DFS中央値がlong ACT群5.9ヵ月vs.short ACT群1.7ヵ月と、long ACT群で良好であった(short vs.long:HR:3.64、95%CI:1.33~9.97、p=0.008)。この結果から、ctDNAが残存する一部の症例では、ACT期間の延長が有益となる可能性が示された。ただし、本解析は観察研究であり、現時点ではctDNA動態のみでACT期間を決定する段階ではなく、今後の前向き試験による検証が求められる。CIRCULATE-Japan/GALAXYではNatera社のSignateraが用いられており、術後ctDNAは再発リスクや補助化学療法効果の予測に有用であることがすでに報告されている。2026年5月に本邦でMRD検査の薬事承認が了承された8)ことで、2026年は「MRD実装元年」ともいえる局面を迎えたが、実臨床での普及には、保険適用時期、算定要件、測定タイミング、MRD陽性例に対する介入の整理が今後の課題と考える。8)日経バイオテク(2026年6月3日付)目次に戻る胃がんONO-4578-08試験:EP4阻害でPD-1阻害薬+化学療法の効果を高める新戦略ONO-4578は、PGE2受容体の1つであるEP4を阻害する経口EP4拮抗薬で、腫瘍微小環境における免疫抑制を解除し、PD-1阻害薬の効果を高めることが期待される。ONO-4578-08試験は、HER2陰性の未治療切除不能進行・再発胃がん/食道胃接合部がんを対象に、ONO-4578+ニボルマブ+SOX/CAPOXを、プラセボ+ニボルマブ+SOX/CAPOXと比較した、日本・韓国・台湾の多施設二重盲検プラセボ対照ランダム化第II相試験であり、ASCO 2026での発表に合わせてJCO誌オンライン版に掲載された9)。主要評価項目である治験担当医評価PFS中央値は9.0ヵ月vs.6.9ヵ月(HR:0.67、p=0.040)と、事前規定の統計設定で有意に延長した。OS中央値は未到達vs.12.7ヵ月(HR:0.60)と未成熟ながらONO-4578群で良好であり、ORRも62.0%vs.48.7%と上回った。とくにPD-L1 CPS≧1集団では、PFS中央値9.9ヵ月vs.5.7ヵ月(HR:0.52)、OS HR:0.44、ORR:70.9%vs.50.9%と、より明瞭なベネフィットが示された。一方で、CPS<1/判定不能例では明確な上乗せ効果は示されておらず、今後の患者選択が重要となる。安全性ではGrade3以上の有害事象が79.2%vs.69.3%とONO-4578群で多く、下痢、貧血、低アルブミン血症、消化管潰瘍などには注意を要する。消化管潰瘍の予防目的でPPI投与が推奨され、ONO-4578群内ではPPI使用例で消化管潰瘍が少なかった(3.4%vs.10.0%)。第II相試験であり、ただちに標準治療を変える段階ではないが、PD-1阻害薬+化学療法が標準となったHER2陰性胃がん1次治療に、免疫微小環境制御を上乗せする新しい戦略として重要である。今後は、PD-L1陽性例を中心とした第III相試験での検証が注目される。9)Nakayama I, et al. J Clin Oncol. 2026 Jun 1. [Epub ahead of print]目次に戻る食道扁平上皮がんPANKU-Esophagus01試験:中国発新規EGFR×HER3二重特異性ADCizalontamab brengitecan(iza-bren/BL-B01D1)は、EGFRとHER3を標的とする二重特異性抗体薬物複合体(ADC)である。ASCO 2026では、再発・転移性食道扁平上皮がんを対象とした中国の第III相PANKU-Esophagus01の中間解析結果が報告された。対象は、1次治療のPD-1/PD-L1阻害薬+プラチナ系化学療法後に進行した患者で、iza-bren群249例もしくは医師選択化学療法(イリノテカン、パクリタキセル、ドセタキセル)群248例に割り付けられた。主要評価項目であるOS中央値は9.8ヵ月vs.7.2ヵ月(HR:0.64)、PFS中央値は4.2ヵ月vs.2.0ヵ月(HR:0.50)と、いずれもiza-bren群で有意に改善した。ORRも35.3%vs.13.1%と良好であった。安全性では、Grade3以上の治療関連有害事象は85.1%vs.60.2%とiza-bren群で多く、主に血液毒性が中心であった。一方、治療関連有害事象による中止は2.0%vs.3.3%、治療関連死亡は1.2%vs.1.6%であり、間質性肺疾患の頻度も低かった(全Grade:1.6%vs.0.4%、Grade3以上:0.8%vs.0%)。1次治療で免疫チェックポイント阻害薬+化学療法が標準化した後の食道扁平上皮がんでは、2次治療の選択肢が限られており、iza-brenは新たな標準治療候補として注目される。ただし、中国の試験の結果であり、医師選択化学療法の詳細も未発表である。今後、日本を含むグローバルでの開発・承認動向を見極める必要がある。目次に戻る

8.

完全切除NSCLCへのニボルマブ、DFSを改善せず(EA5142/ALCHEMIST)/JAMA

 切除可能な非小細胞肺がん(NSCLC)の治療では、抗PD-1抗体ニボルマブによる術前および周術期(術前・術後)の補助療法は無イベント生存期間(EFS)を改善することが知られているが、初回手術後の補助療法におけるニボルマブの役割は明らかにされていない。米国・Memorial Sloan Kettering Cancer CenterのJamie E. Chaft氏らは「ECOG-ACRIN EA5142試験」において、切除術を受けたNSCLC患者に補助化学療法または放射線療法(あるいは両方)を行った後にニボルマブを投与したところ、無病生存期間(DFS)は改善しなかったと報告した。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2026年6月1日号に掲載された。米国の無作為化第III相試験 ECOG-ACRIN EA5142試験は、全米臨床試験ネットワーク(NCTN)に加盟する378施設で実施した非盲検無作為化第III相試験(米国国立がん研究所の助成を受けた)。2016年5月~2019年9月に参加者を登録した。 対象は、切除腫瘍径4cm以上またはリンパ節転移陽性(N1/N2)、あるいはこれら両方の要件を満たし、予定された標準的な術後補助療法(化学療法または放射線療法、あるいはこれら両方)を完了した腺がん(EGFRおよびALKに感受性変異がない)または扁平上皮がんの患者であった。 被験者を、ニボルマブ(480mg、4週ごと、最長1年間)を静脈内投与する群、または標準治療で経過観察を行う群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要複合評価項目は、ITT集団およびPD-L1を発現した腫瘍の割合が50%以上の患者集団におけるDFS(無作為化から再発、新規肺がん、全死因死亡のいずれかが発生するまでの期間)とした。 本試験は、75%のデータが収集された時点で、中間解析の結果に基づき無効中止となった。全生存期間にも差はない 935例を登録し、ニボルマブ群に466例(年齢中央値66歳、男性241例[52%])、経過観察群に469例(67歳、245例[52%])を割り付けた。 追跡期間中央値72.6ヵ月(範囲:0.03~109)の時点でのITT集団におけるDFS中央値は、ニボルマブ群が71.3ヵ月、経過観察群は68.8ヵ月であり、両群間に有意差を認めなかった(ハザード比[HR]:0.97[97%信頼区間[CI]:0.79~1.20、95%CI:0.81~1.17]、片側p=0.39)。 また、同時点での腫瘍の50%以上にPD-L1の発現がみられる患者におけるDFS中央値は、ニボルマブ群が89.8ヵ月、経過観察群は78.5ヵ月だった(HR:0.86[98%CI:0.55~1.34、95%CI:0.59~1.25]、片側p=0.22)。 全生存期間中央値は、ITT集団ではニボルマブ群が95.9ヵ月、経過観察群は未到達であり(HR:1.02、95%CI:0.82~1.26)、腫瘍の50%以上にPD-L1の発現がみられる患者ではそれぞれ95.9ヵ月および未到達であった(HR:0.82、95%CI:0.53~1.28)。25%でGrade3~5のニボルマブ関連有害事象、術後補助ICI療法の有益性に疑問 ニボルマブに関連するGrade3~5の有害事象は116例(25%)で報告された。内訳は、Grade3が103例(22%)、Grade4が11例(2%)、Grade5が2例(1%未満)であった。 Grade5の2例は、いずれも呼吸器系のものであった。1例は肺切除術および術後補助化学療法を受けた患者で、もう1例は術後放射線療法から4週間未満で無作為化が行われたため、後に不適格とみなされた患者であった。 著者は、「両群ともDFSの目標値(54ヵ月)を上回ったが、これは術前病期分類の改正、あるいは登録前に再発した高リスク例の除外を含むその他の患者選択基準を反映している可能性がある」としている。 また、「先行研究におけるデュルバルマブ(抗PD-L1抗体)による術後補助療法に関する否定的な結果や、ペムブロリズマブ(抗PD-1抗体)およびアテゾリズマブ(抗PD-L1抗体)の術後補助療法で観察された一貫性のない結果を踏まえると、本研究の結果は、NSCLCにおける免疫チェックポイント阻害薬による術後補助療法の有益性について疑問を投げかけるものである」と指摘している。

9.

がん関連症状:呼吸困難【かかりつけ医のためのがん患者フォローアップ】第9回

今回はがん患者の呼吸困難についてです。呼吸困難は、がん患者の約35%が経験するという頻度の高い症状です。初診から終末期までの経過を通じて、一度も呼吸困難を経験せずに過ごせる患者さんはわずか11%のみとも報告されています。呼吸困難による患者さんの苦痛や不安が非常に強い一方、その原因や重症度はさまざまであり、外来で対応に迷う場面も少なくありません。今回は、呼吸困難を訴える患者さんについて、症例を通して、鑑別のポイントと外来での対応を解説します。【症例1】74歳、男性主訴労作時呼吸困難病歴進行肺腺がん(StageIV)に対して化学療法後、best supportive careの方針となっている。以前より軽度の呼吸困難はあったが、2週前より徐々に歩行時の息苦しさが増悪し、外来を受診した。診察所見呼吸数22回/分、SpO2 97%(室内気)、体温36.7℃。会話は可能。右下肺野で呼吸音の減弱あり。下腿浮腫なし。【症例2】57歳、女性主訴咳嗽、呼吸困難病歴再発乳がんに対して化学療法施行中。2週間前より免疫チェックポイント阻害薬を含む治療を開始していた。数日前から乾性咳嗽が出現し、本日より労作時呼吸困難と発熱を認めたため受診。診察所見呼吸数30回/分、SpO2 82%(室内気)、体温38.1℃。会話は短文のみ可能。両側肺野にfine cracklesを聴取。ステップ1 呼吸困難のアセスメント呼吸困難は、「呼吸の際に生じる不快な感覚という主観的な経験」と定義されており、SpO2や血液ガス所見が正常で、呼吸不全を伴わない場合でも生じることがあります。呼吸困難を訴える患者さんを診た際には、まず症状の経過や随伴症状、診察所見などから原因をアセスメントする必要があります。下記にがん患者における呼吸困難の主な原因を示します(表1)。表1 呼吸困難の原因(参考文献3より一部筆者改変)画像を拡大する症例1では、SpO2は97%と保たれているものの、ここ1週間で労作時呼吸困難が徐々に増悪しています。また、右下肺野で呼吸音の減弱を認めており、胸水貯留による呼吸困難が考えられます。この症例では、発熱や咳嗽はなく、急激な症状悪化ではないことから、感染症や肺塞栓などの急性疾患の可能性は低いと考えられます。一方、症例2では、免疫チェックポイント阻害薬を含む治療歴があり、数日前からの乾性咳嗽に加えて、発熱と急速に進行する呼吸困難を認めています。さらに、SpO2低下、頻呼吸、両側肺野のfine cracklesを認めることから、まず薬剤性肺障害を疑う状況です。化学療法中の患者さんでは、薬剤性肺障害は急速に重症化することがあり注意が必要です。本症例では、会話も短文のみ可能であり、呼吸状態の急速な悪化を認めていることから、重症度の高い呼吸困難と考えられます。なお、肺炎などの感染症も重要な鑑別疾患となります。このように、呼吸困難ではSpO2のみで重症度を判断するのではなく、症状の経過や随伴症状、身体所見をもとに原因と緊急性をアセスメントすることが重要です。呼吸困難では、原因となる病態ごとに治療が異なり、早期介入を要する緊急性の高い病態も存在するため、外来での適切な評価が求められます。ステップ2 外来での対応上述のように、呼吸困難では原因となる病態ごとに治療方針が大きく異なります(表2)。そのため、外来では原因と重症度を踏まえた対応が重要となります。表2 呼吸困難の治療(参考文献4より一部筆者改変)画像を拡大する症例1は、SpO2は保たれており、会話も可能であることから、まずは外来での症状緩和を検討します。呼吸困難に対しては、体位調整や送風に加えて、少量オピオイド投与が症状緩和に有効な場合があります。また、本症例では胸水貯留が疑われることから、胸水ドレナージの適応評価も含めて、X線/CT検査や胸腔穿刺が可能な施設との連携を検討します。一方、症例2では、低酸素血症に加えて頻呼吸を認め、会話も短文のみ可能であることから、重症度の高い呼吸困難と考えられます。薬剤性肺障害では急速に呼吸状態が悪化することがあり、早期のステロイド導入が必要となる場合もあるため、外来での経過観察ではなく、速やかな病院への相談・紹介が必要です。呼吸困難は、がんそのものだけでなく、治療関連有害事象や併存疾患など、さまざまな病態によって生じます。外来では、原因と重症度を適切にアセスメントしたうえで、必要に応じて治療医や専門医療機関と連携しながら対応していくことが求められます。まとめ呼吸困難は、SpO2などの客観的所見だけでは評価しきれない症状です。そのため、日々患者さんを診ているかかりつけの先生方による症状経過や呼吸状態の細やかな観察が非常に重要となります。そうした情報共有は、病院側にとっても病態把握や早期介入の大きな助けとなります。クリニックと病院がそれぞれの立場から情報を共有しながら、一緒に患者さんの呼吸困難を支えていくことが大切だと考えます。 1) Teunissen SCCM, et al. J Pain Symptom Manage. 2007;34:94-104. 2) Currow DC, et al. J Pain Symptom Manage. 2010;39:680-690. 3) 日本緩和医療学会編. 進行性疾患患者の呼吸困難の緩和に関する診療ガイドライン(2023年版). 金原出版;2023. 4) 余宮 きよみ著. ここが知りたかった緩和ケア 改訂第3版. 南江堂;2023. 講師紹介

10.

KRAS G12C陽性NSCLCの1次治療、divarasib+ペムブロリズマブが有望(Krascendo-170)/ASCO2026

 KRAS G12C変異陽性の進行・転移非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療では、免疫チェックポイント阻害薬単剤または化学療法との併用が標準治療として用いられている。しかし、全生存期間中央値は約1.5年であり、アンメットニーズが存在する。KRAS G12C阻害薬としてはソトラシブが臨床応用されているが、2次治療以降での使用が適応となっている。 そこで、1次治療において経口KRAS G12C阻害薬divarasibとペムブロリズマブの併用療法の安全性・有効性を検討する国際共同第Ib/II相試験「Krascendo-170試験」が実施されている。米国臨床腫瘍学会年次総会(2026 ASCO Annual Meeting)において、本試験の解析結果が報告され、PD-L1≧1%コホート、PD-L1<1%コホートのいずれにおいても良好な奏効が得られ、管理可能な安全性プロファイルが示された。Ferdinandos Skoulidis氏(米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンター)が、本解析結果を報告した。 Krascendo-170試験は、未治療のKRAS G12C変異陽性進行・転移非扁平上皮NSCLC患者を対象とした国際共同第Ib/II相非盲検用量探索・用量拡大試験である。今回は、PD-L1≧1%コホート(コホートA1)におけるdivarasib 400mg 1日1回+ペムブロリズマブ200mg 3週ごと投与の主要解析、PD-L1<1%コホート(コホートA2)における同用量の予備的解析の結果が報告された。主要評価項目は安全性であり、主要な副次評価項目として奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、患者報告アウトカム、薬物動態、推奨用量が評価された。 主な結果は以下のとおり。【PD-L1≧1%コホート】・divarasib 400mg+ペムブロリズマブによる治療を受ける群に59例が組み入れられた。年齢中央値は67歳で、男性の割合は62.7%であった。PD-L1 1~49%が37.3%、≧50%が61.0%であった。追跡期間中央値は12.2ヵ月。・確定ORRは72.9%(CR 10.2%、PR 62.7%)で、DOR中央値は未到達であった。・PFS中央値は19.3ヵ月で、6ヵ月PFS率は83.5%であった。なお、PFSのデータは未成熟であった。【PD-L1<1%コホート】・登録された23例の年齢中央値は72歳で、男性の割合は69.6%であった。追跡期間中央値は3.4ヵ月。・ORRは69.6%(すべてPR)で、初回奏効までの期間中央値は40.5日であった。・PFSデータは未成熟であった。【PD-L1≧1%コホート+PD-L1<1%コホート】・安全性は、PD-L1≧1%コホートおよびPD-L1<1%コホートを併合した安全性解析対象78例で評価された。有害事象は全例に認められ、Grade3以上の有害事象は76.9%、重篤な有害事象は50.0%に発現した。・治療関連有害事象(TRAE)は98.7%に認められ、Grade3/4のTRAEは65.4%、重篤なTRAEは28.2%に発現した。Grade5のTRAEは0例であった。・divarasibの減量に至ったTRAEは52.6%、中断に至ったTRAEは69.2%、試験治療中止に至ったTRAEは12.8%に認められた。・主なTRAE(40%以上に発現)は、下痢(74.4%)、悪心(64.1%)、ALT上昇(52.6%)、AST上昇(48.7%)であった。Grade3/4の下痢、ALT上昇、AST上昇はそれぞれ17.9%、23.1%、17.9%に認められた。 本試験結果について、Skoulidis氏は「KRAS G12C変異陽性の進行NSCLC患者において、1次治療としてのdivarasib+ペムブロリズマブは良好な臨床活性を示した。頻度の高いTRAEは、低Gradeが多く可逆的であり、管理可能であった。なお、有害事象の予防レジメン、有害事象管理アルゴリズム、忍容性に応じた用量調整方法が本試験中に段階的に開発されており、第III相Krascendo-2試験では患者の臨床アウトカムを最適化するために、試験開始時から導入されている」とまとめた。 なお、未治療のKRAS G12C変異陽性の進行・転移NSCLC患者を対象とする国際共同第III相試験「Krascendo-2試験」が進行中であり、KRAS G12C変異陽性のStageIIIA/IIIBの完全切除NSCLC患者を対象として、術後療法におけるdivarasibの有用性を検証する国際共同第III相試験「Krascendo-3試験」が計画されている。

11.

腎細胞がん1次治療、ミヤBM併用でICIの有効性高まる可能性/ASCO2026

 転移を有する腎細胞がん(mRCC)の1次治療において、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を含むレジメンに生菌製剤であるCBM588(ミヤBM)を追加することで、臨床的活性が高まる可能性が示唆された。さらに、便のメタゲノム解析により、腸内細菌叢の乱れ(ディスバイオシス)を有する患者においてCBM588追加の恩恵がより大きいことが明らかになった。米国・City of Hope Comprehensive Cancer CenterのRahul Winayak氏が、2つの第I相無作為化比較試験(NCT038291111)、NCT051225462))の統合解析結果を米国臨床腫瘍学会(ASCO 2026)で報告した。・対象:未治療のmRCC患者・試験群(CBM588群):標準治療(ニボルマブ+イピリムマブまたはニボルマブ+カボザンチニブ)+CBM588 39例・対照群:標準治療のみ 20例・評価方法および評価項目:メタゲノム ショットガン・シーケンス(全ゲノムシーケンス)データを用いて、TOPOSCOREとS-SCOREを算出。SIG1+(特定の細菌叢の異常[ディスバイオシス]がみられる)vs.SIG2+(腸内細菌叢が正常)について解析を実施。無増悪生存期間(PFS)、奏効率(ORR)、病勢コントロール率(DCR)などを比較した。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン特性は、年齢中央値がCBM588群67歳vs.対照群61.5歳、淡明細胞型腎細胞がんが89.7%vs.85.0%、IMDC分類中/高リスクが76.9%vs.82.4%、転移部位として最も多かったのは肺で74.4%vs.65.0%であった。・ORRはCBM588群69.2%vs.対照群20.0%(p=0.001)、DCRは79.5%vs.45.0%(p=0.0095)であった。・コホート全体におけるPFS中央値は、CBM588群32.0ヵ月(95%信頼区間[CI]:16.6~未到達)vs.対照群3.7ヵ月(95%CI:2.6~17.0)であり、CBM588の追加により進行リスクが有意に低下した(調整ハザード比[aHR]:0.31、95%CI:0.16~0.62、p=0.001)。・SIG1+の患者におけるPFS中央値は、CBM588群24.9ヵ月vs.対照群2.8ヵ月と、CBM588追加による顕著なPFSの改善が認められた(aHR:0.17、95%CI:0.05~0.54、p=0.003)。・一方で、SIG2+の患者におけるPFS中央値は、CBM588群32.0ヵ月vs.対照群10.9ヵ月であり、CBM588追加による統計学的に有意な改善は認められなかった(aHR:0.58、95%CI:0.19~1.73、p=0.328)。・Grade3~4の有害事象はCBM588群56.4%vs.対照群50.0%で発現した。Grade3~4の下痢は10.3%vs.5.0%であったが、全体としてCBM588追加による新たな安全性上の懸念は認められなかった。 Winayak氏は、「mRCCの1次治療において、ICIレジメンにCBM588を追加することで臨床成績が改善し、新たな安全性上の懸念も認められなかった。とくにディスバイオシスを有する患者(SIG1+)でCBM588の恩恵がより大きいことが示唆された」とまとめた。現在、mRCCにおけるCBM588の臨床的活性を評価する第III相無作為化比較試験(SWOG BIOFRONT試験3))が進行中である。

12.

HER2陽性進行胃食道腺がん、zanidatamab+チスレリズマブはPD-L1発現にかかわらず有効(HERIZON-GEA-01)/ASCO2026

 今年1月に行われた米国臨床腫瘍学会消化器がんシンポジウム(ASCO GI 2026)で発表されたHERIZON-GEA-01試験では、HER2陽性局所進行または転移のある胃食道腺がん1次治療において、化学療法に二重HER2標的抗体zanidatamabと抗PD-1抗体チスレリズマブを追加することで、無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)の改善が示された。5月29日~6月2日に行われた米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO 2026)では、韓国・延世がんセンターのSun Young Rha氏が、本試験におけるPD-L1サブグループの解析結果を報告した。・試験デザイン:国際共同非盲検第III相試験・対象:未治療のHER2陽性進行・転移胃食道腺がん患者・試験群:zanidatamab+チスレリズマブ+化学療法(CAPOXまたはFP)       zanidatamab+化学療法・対照群:トラスツズマブ+化学療法(トラスツズマブ群)・評価項目:[主要評価項目]PFSおよびOS[副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性など PD-L1発現の評価指標にはTAPスコアおよびCPSが用いられた。 既報の主要解析では、追跡期間中央値26ヵ月時点で、zanidatamab+チスレリズマブ+化学療法群はトラスツズマブ群と比較してPFSを有意に延長し(HR:0.63)、OSについても有意な改善が認められた(HR:0.72)。 主な結果は以下のとおり。・PD-L1発現レベル(TAPおよびCPS)別のPFS中央値は以下のとおりで、PD-L1の発現状況にかかわらず一貫して改善が認められた。・TAP<1%:zanidatamab+チスレリズマブ+化学療法群18.5ヵ月vs.トラスツズマブ群7.9ヵ月(HR:0.47)・TAP≧1%:同11.3ヵ月vs.8.3ヵ月(HR:0.65)・CPS<1:同18.5ヵ月vs.8.1ヵ月(HR:0.48)・CPS≧1:同12.3ヵ月vs.8.2ヵ月(HR:0.62)・zanidatamab+チスレリズマブ+化学療法群において、TAP<1%およびTAP≧1%における18ヵ月PFS率はそれぞれ50.3%および42.6%、24ヵ月OS率は63.7%および53.5%であった。 ・一方、トラスツズマブ+化学療法群ではPD-L1陽性例のほうが陰性例よりOSが良好であった。研究グループはその要因として後治療の違いを挙げており、トラスツズマブ群では免疫チェックポイント阻害薬が15%、HER2標的治療が29%に施行されたのに対し、zanidatamab+チスレリズマブ+化学療法群ではそれぞれ2%、13%であった。・Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)は、トラスツズマブ群で59.6%、zanidatamab+チスレリズマブ+化学療法群で71.8%に認められた。主な有害事象として下痢が認められたがGrade3以上の発現率は低く、新たな安全性シグナルは確認されなかった。 Rha氏らは、「zanidatamab+チスレリズマブ+化学療法は、TAPおよびCPSで評価したPD-L1陽性例・陰性例の双方において、臨床的に意義のあるPFSおよびOSの改善を示した」と結論付けた。HER2陽性進行胃食道腺がんに対する本レジメンの有効性はPD-L1発現に依存せず認められ、新たな1次治療標準となる可能性が示された。

13.

HR+/HER2-進行乳がんに対するパクリタキセル+ベバシズマブへのアテゾリズマブ追加、PFSの改善みられず(JCOG1919E/AMBITION)/ASCO2026

 ホルモン受容体陽性(HR+)/HER2陰性(HER2-)進行乳がんは免疫学的に「cold」な腫瘍とされ、免疫チェックポイント阻害薬の臨床的有用性は限定的と位置付けられる。一方、VEGFを介した血管新生は免疫抑制的な腫瘍微小環境を促進するため、VEGF阻害により免疫抑制状態を解除し、免疫療法への応答を増強できると考えられる。こうした背景のもと、パクリタキセルおよびベバシズマブへのアテゾリズマブの上乗せ効果を検証する第III相JCOG1919E(AMBITION)試験が国内24施設で実施された。その主要解析結果を、愛知県がんセンターの原 文堅氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO 2026)で報告した。・対象:切除不能な局所進行・再発またはStageIVのHR+/HER2-乳がん患者(≧20歳、ECOG PS 0~2、内分泌療法抵抗性または生命を脅かす内臓転移あり[有症状の転移があり早急な腫瘍縮小により症状緩和が必要な状態]、進行がんに対する化学療法歴なし)・試験群(アテゾリズマブ追加群):28日サイクルでパクリタキセル(90mg/m2、1・8・15日目)+ベバシズマブ(10mg/kg、1・15日目)+アテゾリズマブ(840mg、1・15日目)投与 141例・対照群:28日サイクルでパクリタキセル+ベバシズマブ投与 140例・評価項目:[主要評価項目]RECIST v1.1に基づく治験責任医師評価による無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]全生存期間(OS)、盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS、奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性・データカットオフ:2025年9月15日 主な結果は以下のとおり。・ベースライン特性は両群でバランスがとれており、年齢中央値はアテゾリズマブ追加群56.0歳vs.対照群57.0歳、PD-L1陽性(IC 1-3)は15.6%vs.16.4%、de novo症例が31.9%vs.34.3%、肝転移が67.4%vs.68.6%、CDK4/6阻害薬併用の内分泌療法歴ありが64.5%vs.62.1%、周術期の化学療法歴ありが42.6%vs.52.1%であった。・主要評価項目である治験責任医師評価によるPFS中央値は、アテゾリズマブ追加群12.4ヵ月(95%信頼区間[CI]:10.3~15.2)、対照群が11.2ヵ月(95%CI:9.6~13.5)で、統計学的な有意差は認められなかった(層別ハザード比[HR]:0.876、95%CI:0.670~1.145、p=0.168)。・PD-L1発現状況別にみた治験責任医師評価によるPFS中央値は、IC 0ではアテゾリズマブ追加群13.6ヵ月vs.対照群11.3ヵ月(層別HR:0.826、95%CI:0.619~1.101)、IC 1-3では9.7ヵ月vs.8.4ヵ月(層別HR:1.018、95%CI:0.537~1.931)。・BICR評価によるPFS中央値は、アテゾリズマブ追加群16.7ヵ月vs.対照群13.8ヵ月であった(層別HR:0.919、95%CI:0.678~1.246、p=0.294)。・治験責任医師評価によるPFS中央値のサブグループ解析の結果、de novo症例、転移がんへのCDK4/6阻害薬歴なし、周術期化学療法歴なしの患者において、アテゾリズマブ追加群で良好な傾向がみられた。・OS中央値は、アテゾリズマブ追加群が39.1ヵ月、対照群が31.2ヵ月で、アテゾリズマブ追加群で数値上の改善傾向がみられたものの、統計学的な有意差は示されなかった(層別HR:0.804、95%CI:0.584~1.108、p=0.091)。12ヵ月OS率は85.8%vs.84.8%、24ヵ月OS率は71.6%vs.58.5%、36ヵ月OS率は51.2%vs.41.5%であった。・治験責任医師評価によるORRはアテゾリズマブ追加群73.0%vs.対照群71.9%、DOR中央値は12.0ヵ月vs.9.5ヵ月であった。・Grade3以上の試験治療下における有害事象(TEAE)はアテゾリズマブ追加群84.9%vs.対照群78.6%で発現した。アテゾリズマブ追加群では、皮疹(36.0%)、副腎機能不全(11.5%)、甲状腺機能低下症(10.8%)などの免疫関連有害事象が多くみられたが、多くは管理可能であり、既知の安全性プロファイルと一致していた。 原氏は今回の結果について、「HR+/HER2-進行乳がんに対するパクリタキセル+ベバシズマブへのアテゾリズマブの追加はPFSの統計学的に有意な改善を示さなかった。OSでの数値上の改善傾向はみられたものの、アテゾリズマブのルーチンな追加を支持する結果ではない」と結論付けている。なお、バイオマーカー探索のためのトランスレーショナル研究が予定されている。

14.

PD-L1陽性NSCLC、sac-TMT+ペムブロリズマブがPFS改善(OptiTROP-Lung05)/ASCO2026

 PD-L1陽性非小細胞肺がん(NSCLC)において、TROP2を標的とする抗体薬物複合体(ADC)sacituzumab tirumotecan(sac-TMT)とペムブロリズマブの併用療法は、ペムブロリズマブ単剤と比較して無増悪生存期間(PFS)を改善した。海外第III相試験「OptiTROP-Lung05試験」の結果を、Caicun Zhou氏(中国・Shanghai East Hospital)が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2026 ASCO Annual Meeting)で発表した。本研究結果は、Lancet誌オンライン版2026年5月29日号に同時掲載された1)。・試験デザイン:海外第III相無作為化非盲検試験(中国のみで実施)・対象:未治療の局所進行または転移を有するStageIIIB~IVのNSCLC患者で、PD-L1 TPS 1%以上の患者(EGFR遺伝子変異陰性、ALK融合遺伝子陰性)・試験群(sac-TMT群):sac-TMT(4mg/kg、2週ごと)+ペムブロリズマブ(400mg、6週ごと、18サイクルまで)208例・対照群(ペムブロリズマブ群):ペムブロリズマブ(同上)205例・評価項目:[主要評価項目]RECIST v1.1に基づく盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS[主要な副次評価項目]全生存期間(OS)[副次評価項目]治験担当医師評価によるPFS、奏効率(ORR)、病勢コントロール率(DCR)、奏効期間(DOR)、安全性など  主な結果は以下のとおり。・患者背景は両群でおおむねバランスがとれていた。年齢中央値はsac-TMT群64歳、ペムブロリズマブ群65歳で、65歳以上はそれぞれ48.6%、52.7%であった。男性の割合はそれぞれ79.8%、84.9%、ECOG PS 1はそれぞれ84.6%、84.4%であった。・データカットオフ時点(2025年9月29日)で治療を継続していた患者の割合は、sac-TMT群63.5%、ペムブロリズマブ群33.2%であった。・主要評価項目であるBICRによるPFSは、sac-TMT群で有意に改善した。BICRによるPFS中央値は、sac-TMT群が未到達、ペムブロリズマブ群で5.7ヵ月であった(ハザード比[HR]:0.35、95%CI:0.26~0.47、p<0.0001)。12ヵ月PFS率は、それぞれ62.4%、29.0%であった。・PD-L1 TPS別、組織型別にみたBICRによるPFS中央値は以下のとおり(sac-TMT群vs.ペムブロリズマブ群)。<TPS 50%以上>未到達vs.9.5ヵ月(HR:0.47、95%CI:0.29~0.77)<TPS 1~49%>未到達vs.4.3ヵ月(HR:0.28、95%CI:0.19~0.41)<非扁平上皮>未到達vs.6.6ヵ月(HR:0.28、95%CI:0.18~0.43)<扁平上皮>未到達vs.5.5ヵ月(HR:0.44、95%CI:0.29~0.66)・OSは解析時点で未成熟であったが、sac-TMT群で良好な傾向が認められた。ORR、DORもsac-TMT群が良好であった。詳細は以下のとおり(sac-TMT群vs.ペムブロリズマブ群)。<OS中央値>未到達vs.14.5ヵ月(HR:0.55、95%CI:0.36~0.85)<ORR>70.2%vs.42.0%<ORR(PD-L1 TPS 50%以上)>80.7%vs.60.5%<ORR(PD-L1 TPS 1~49%)>63.2%vs.30.1%<12ヵ月DOR率>77.7%vs.59.4%(HR:0.47、95%CI:0.27~0.82)・試験治療下における有害事象(TEAE)はsac-TMT群99.5%、ペムブロリズマブ群87.3%に認められた。Grade3以上のTEAEはそれぞれ55.3%、31.4%であり、sac-TMT群で多かった。・重篤なTEAEはsac-TMT群38.9%、ペムブロリズマブ群28.9%に認められた。死亡に至ったTEAEはそれぞれ2.4%、6.4%に認められたが、sac-TMTに起因すると判断された治療関連死亡は認められなかった。・sac-TMTに関する、とくに注目すべき有害事象として、貧血87.0%、好中球数減少45.2%、口内炎44.2%、眼表面毒性14.4%、注入に伴う反応5.8%が認められた。Grade3以上では、好中球数減少19.2%、貧血9.1%、口内炎6.3%であった。 本試験結果についてZhou氏は「EGFR遺伝子変異やALK遺伝子異常のないPD-L1陽性進行NSCLCの1次治療において、sac-TMTとペムブロリズマブの併用療法が新たな治療選択肢となる可能性を支持するものである」とまとめた。

15.

胃がん診療、周術期を中心とした個別化治療の時代へ/AZ

 アストラゼネカは5月13日、「胃がん疾患啓発セミナー」を開催した。セミナーでは木下 敬弘氏( 国立がん研究センター東病院 胃外科科長)が「胃がん治療の現在地と今後の課題」と題した講演を行った。 ――日本における胃がんの疫学では、がん種別にみた罹患数では全体3位、死亡数では4位を占め、依然として主要ながん種である。世界的にも東アジアで発生頻度が高く、日本、中国、韓国が罹患の多い地域に含まれる。近年の治療の発達に伴い、胃がんの5年相対生存率は約65~67%まで伸びており、「不治の病」ではなくなりつつある。しかし、StageIVの5年相対生存率は6.6%にとどまり、早期発見・早期治療の重要性が裏付けられている。  胃がんの大きなリスク要因がヘリコバクター・ピロリ菌感染だが、ここ10年ほどでピロリ菌感染検査、除菌治療が普及し、感染率は急速に低下している。一方、除菌後も胃がんリスクは残り、定期的な内視鏡フォローが必要であることはさらに周知すべきだろう。また、ピロリ菌感染は胃酸分泌低下を引き起こす場合があるが、感染率低下に伴い、胃酸過多となり胃食道逆流症(GERD)を発症するケースがある。GERDがリスク因子の1つとされる食道胃接合部がんの罹患数も増加しており、こうした除菌普及に伴う新たな問題に対応することも必要だ。 日本の胃がん治療は、これまでD2郭清を伴う高精度手術と、術後補助化学療法を組み合わせた治療戦略が中心だった。切除できたように見えても、再発リスクを下げるためには薬物療法を組み合わせる必要があり、術後化学療法は目に見えない微小残存病変を制御するために役立つ。  一方で、画像上切除可能であっても、診断時点ですでに微小転移を伴っている症例も少なくない。とくにスキルス胃がんや高度リンパ節転移症例など、再発高リスク群では手術先行のみでは限界があるケースも多い。こうした場合は、術前に化学療法を行い、腫瘍縮小後に手術を行う術前化学療法が欧米を中心に発展してきた。術前化学療法は、腫瘍縮小によるR0切除率向上、微小転移の早期制御、さらには機能温存の可能性向上などが利点だ。さらに症例によっては術後にも化学療法を行い、周術期全体で再発を抑え込む方向へと、治療戦略は進化を続けている。 さらに、切除不能のStageIV症例に対しても、免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬の進歩によって、薬物療法後にコンバージョン手術へ到達する症例が増加している。一方で、実際に切除まで到達できるのは10~20%程度であり、依然として進行胃がん克服には課題が残る。ここでは新たな薬剤や治療戦略の開発に期待したい。 私が専門とする外科領域では、低侵襲化と機能温存の流れが加速している。国内では腹腔鏡手術やロボット支援手術が急速に普及し、精緻な郭清や再建が可能となり、機能温存との両立が進んでいる。ロボット手術にAI機能を搭載する技術も急速に発達し、手術ガイドなどが実臨床で使われるようになっている。日本の外科手術の手技レベルは非常に高く、日本人外科医の手術手技をAIに学習させ、術中ナビゲーションとして活用する研究も進んでいる。ただし、手術の低侵襲化が進んでも、胃全摘後には15~20%程度の体重減少がみられ、ダンピング症状や逆流症状など術後QOLへの影響は依然として大きい。根治性を担保しながらいかに術後生活を維持するかが重要となる。この方面では、私の施設では胃切除後の患者向けのメニューを開発して施設内レストランで提供するなど、多職種が協力してサポートにあたっている。 ほかのがんで進むゲノム検査やバイオマーカーを使った個別化医療は、胃がんにおいてもすでに日常診療になっており、今後は予防、早期発見とあわせ、患者ごとの腫瘍特性に応じた治療法、術式選択、薬剤選択がますます重要になってくる。

16.

ICIとの併用でOSが延長、肺がん治療の新戦略「TTフィールド」の可能性/ノボキュア

 ノボキュアは2026年4月にメディアラウンドテーブル「進行期肺がん治療の新潮流」を開催した。同イベントでは近畿大学医学部内科学腫瘍内科の林 秀敏氏と同社の代表取締役である小谷 秀仁氏が登壇。2026年3月に保険収載された非小細胞肺がん(NSCLC)の腫瘍治療電場(TTフィールド)「オプチューンルア」について、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)との併用効果などを解説した。TTフィールドの抗腫瘍効果 TTフィールドは、電場をがん治療に応用した新たな治療モダリティである。肺がんに対しては150kHzの交流電場を体内に形成することで、直接および間接作用で抗腫瘍効果を発揮する。 直接作用として明らかになっているのは有糸分裂阻害である。交流電場によって細胞分裂に必要な紡錘体形成が妨げられ、がん細胞がアポトーシスへと誘導される。交流電場によって免疫原性細胞死が誘導されて抗腫瘍免疫が惹起されることで間接作用として抗腫瘍活性が発揮される。この結果、がん免疫療法がより有効に機能する状態が整えられる。 腫瘍細胞と正常細胞では電場の最適周波数が異なること、急速に分裂する腫瘍細胞に対して選択的に作用する特性から、TTフィールドは正常細胞への影響が少ないとされる。肺がんにおけるTTフィールドへの期待 日本における肺がんの罹患数は全がん種の中で2位、死亡数は最多である。新薬の登場で改善しつつあるが、肺がんの生命予後はいまだに厳しい。とくに2次治療以降の有効な選択肢は少ない。 こうした背景のもと、プラチナベース化学療法で進行した再発・進行NSCLCを対象に、国際多施設共同無作為化試験LUNARが実施された。 同試験の結果、全体集団においてオプチューンルア+標準療法(治験責任医師選択のICIまたはドセタキセル)群の全生存期間(OS)中央値は13.2ヵ月、標準療法群は9.9ヵ月と、統計学的に有意な延長が示され、主要評価項目を達成した(ハザード比:0.74、95%信頼区間:0.56〜0.98、p=0.035)。特筆すべきはICIとの併用サブグループである。対照群であるICI単独群のOS中央値10.8ヵ月に対し、オプチューンルア+ICI群では19.0ヵ月を示し、8.2ヵ月の延長が認められた1)。TTフィールドが腫瘍免疫を活性化することでICIの有効性をさらに高める可能性が示唆される結果となった。 オプチューンルアの対象となるドライバー遺伝子陰性NSCLCにおいても、ICIによる2次治療の効果は限られている。林氏は「ICIをいかに効きやすくするかは、われわれに課せられた重要な使命であり、TTフィールドはその1つの答えになり得る」と期待を語った。実臨床での活用とサポート体制 オプチューンルアによる治療は在宅で実施する。胸部の前後を挟み4枚のアレイを貼付するという単純なものである。 LUNAR試験における主な有害事象はアレイ貼付部位の皮膚炎(大半がGrade1〜2)であり、保湿やスキンケアなどのシンプルな対応が有効である。 臨床効果の発現は長時間貼付することで、より発揮され、18時間以上の使用が推奨されている。 ノボキュアでは医療者、患者のサポート体制を整えている。MDR(Medical Device Representative)が医療機関向けに情報提供・適正使用推進を担い、DSS(Device Support Specialist)は機器の取り扱いトレーニングなどを担う。在宅療法という特性上、24時間365日のコールセンターでサポートする。アレイには着用時間を記録する温度センサーが内蔵されており、患者の使用データをDSSが担当の医療者に毎月フィードバックする。 治験を行なった林氏は「治療を頑張りたいという患者さんが多い。患者さん自身が治療に関与できる点がモチベーションにもつながっているのではないか」と語った。 TTフィールド療法は従来の薬物治療とは一線を画す新たなモダリティとして、またICIの有効性を底上げする治療戦略として、再発・進行NSCLCにおける新たな潮流となることが期待される。

17.

TN乳がん1次治療のDato-DXd、QOL悪化までの期間を延長(TROPION-Breast02)/ESMO BREAST 2026

 免疫チェックポイント阻害薬の適応とならない局所進行切除不能または転移を有する未治療のトリプルネガティブ乳がんを対象とした第III相TROPION-Breast02試験において、抗TROP2抗体薬物複合体であるダトポタマブ デルクステカン(Dato-DXd)は、化学療法と比較してQOL悪化までの期間を延長したことを、英国・Barts Cancer InstituteのPeter Schmid氏が欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2026、5月6~8日)で報告した。 これまでの解析では、Dato-DXdが治験責任医師選択化学療法(パクリタキセル、nab-パクリタキセル、カペシタビン、エリブリン、カルボプラチン)と比較して、主要評価項目である全生存期間および無増悪生存期間において統計的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示したことが報告されている。今回報告された患者報告アウトカム(PRO)解析では、全般的健康状態/QOL(GHS/QoL)、身体機能、疼痛、乳房症状、上肢症状について、初回悪化までの期間(time to first deterioration:TTFD)および悪化が確認されるまでの期間(time to confirmed deterioration:TTCD)などを評価した。PROは主としてEORTC QLQ-C30、EORTC Item Library(IL146、IL116)を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・合計644例がDato-DXd群または化学療法群に1対1で無作為に割り付けられた。・GHS/QOL悪化までの期間は、Dato-DXd群のほうが化学療法群よりも有意に長かった。中央値とハザード比(HR)、95%信頼区間(CI)は以下のとおり。 -TTFD 23.5ヵ月vs.8.3ヵ月(HR:0.64[95%CI:0.46~0.88]) -TTCD 未到達vs.29.0ヵ月(HR:0.61[95%CI:0.41~0.91])・身体機能についてもDato-DXd群で悪化リスクの有意な低下が認められた。 -TTFD 10.4ヵ月vs.4.1ヵ月(HR:0.67[95%CI:0.51~0.90]) -TTCD 24.9ヵ月vs.9.0ヵ月(HR:0.59[95%CI:0.42~0.83])・上肢症状についてもDato-DXd群で悪化リスクの有意な低下が認められた。 -TTFD 未到達vs.12.5ヵ月(HR:0.51[95%CI:0.35~0.75]) -TTCD 両群とも未到達(HR:0.48[95%CI:0.30~0.76])・疼痛および乳房症状についてもDato-DXd群で悪化リスクの低下傾向がみられたものの、統計学的有意差は認められなかった。・患者報告による症候性有害事象および治療忍容性は、主解析における医師報告の安全性プロファイルとおおむね一致していた。

18.

タルラタマブが小細胞肺がん2次治療に加わる意義/アムジェン

 2026年3月、タルラタマブ(商品名:イムデトラ)が小細胞肺がん(SCLC)の2次治療に承認された。アムジェンが主催したメディアセミナーでは、関西医科大学呼吸器腫瘍内科学講座の倉田 宝保氏と肺がん患者会のワンステップの長谷川 一男氏が登壇。医師と患者の立場から、新たな展開の意義を語った。小細胞肺がん治療における免疫チェックポイント阻害薬の導入 SCLCは肺がんの10〜15%を占める。喫煙との関連が高く、病勢進行も速い。進行の速さに加え、喫煙歴のある患者が多いため、咳や痰などの症状がSCLCによるものなのか、その鑑別は容易ではない。発見時には片肺にとどまっている限局性であっても、もう一方の肺に浸潤した進展型となっていることがほとんどだ。 1960年代、SCLCの治療には薬物療法が有効であることが証明されている。しかし、予後は不良で、1981年当時の生存期間中央値(MST)は、限局型が14ヵ月、進展型では7ヵ月にとどまっていた。その後、同時化学放射線療法(シスプラチン+エトポシド+放射線)により限局型のMSTは27.3ヵ月に、シスプラチン+イリノテカン療法により進展型のMSTは12.8ヵ月に延びるが、それ以降、近年まで成績は向上しなかった。 そのような中、SCLCにも免疫チェックポイント阻害薬(ICI)が導入された。ICIは腫瘍変異量が多い腫瘍に有効性が高い。喫煙との関連が深いため腫瘍変異量が多いSCLCではICIの効果が期待されていた。 しかし、SCLCにおけるICIの効果は限定的であった。進展型SCLCの1次治療でICIを化学療法に上乗せしても、5年生存率の改善は10〜12%にとどまる。理由の1つにSCLCがCold tumorであることもあげられている。SCLCでは、T細胞受容体およびT細胞ががん細胞を認識するMHCクラスIの発現が低く、PD-L1発現も低い。さらに、腫瘍へのリンパ球浸潤が少ないことが明らかになっている。 十分とは言えなくとも選択肢が増えた1次治療に比べ、2次治療以降はさらに深刻な状況である。日本におけるSCLC2次治療の標準療法であるアムルビシン単剤のMSTは6〜9ヵ月程度にとどまる。そのような状態にもかかわらず、アムルビシン承認以降、約20年にわたって2次治療に新規薬剤は登場しなかった。タルラタマブによる課題の克服と2次治療への導入 こうした課題を背景に、タルラタマブが登場した。タルラタマブはSCLC細胞に高発現するDLL3とT細胞表面のCD3に結合する二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)である。 タルラタマブはDLL3を介してT細胞をがん細胞に近接させ、T細胞を活性化・増殖させるとともに、炎症性サイトカインなどの放出を誘発してがん細胞のアポトーシスをもたらす。「免疫的にColdなtumorをHotに変え、免疫療法を作用させていく薬」と倉田氏は説明した。 タルラタマブの承認根拠となったDeLLphi-301試験では、3次治療以降のSCLC患者を対象に単剤投与が行われた。奏効率(ORR)は41.4%、生存期間中央値(OS)は14.3ヵ月という成績を示した。「3次治療の患者は免疫系が疲弊していて免疫治療が効きにくい状態にある。そういう状態でこれだけの効果を示すことは非常に興味深い」と倉田氏は評価する。 今回、2次治療適応追加の根拠となったのが、タルラタマブ単剤と化学療法を比較したDeLLphi-304試験である。主要評価項目であるOS中央値は、タルラタマブ群の13.6ヵ月に対し、化学療法群では8.3ヵ月。ハザード比は0.60(95%信頼区間:0.47〜0.77)、p<0.001と、タルラタマブによる有意なOS延長が示された。一方、サイトカイン放出症候群(多くはGrade2以下)は半数以上に認められ、発熱、食欲減退、味覚不全などの有害事象が報告されている。 倉田氏は「これからのSCLCの治療に免疫療法は欠かせない。有害事象を管理してタルラタマブを使用するのはわれわれの責務」とし、また「免疫療法はより早い段階での投与が効果を高めることがわかっている。今後タルラタマブの2次治療以前の使用が実現することを強く期待している」と述べた。SCLC患者が直面する現実 長谷川 一男氏らが運営する肺がん患者の会ワンステップでは、2ヵ月に1度「おしゃべり会」を設けている。同会にSCLC患者も参加するが、1〜2回で来られなくなることが多かったという。 疾患自体の厳しさにとどまらず、SCLCの患者・家族が直面する現実は深刻だ。患者の喫煙が発症に関連することから、家族は患者を責め、患者は罪悪感に苛まれる。 2016年の日本肺癌学会学術集会。プログラムの中に「30年間変わらない小細胞肺がんの治療」と題したセッションが設けられていたという。当時は分子標的薬や免疫療法が非小細胞肺がんの景色を変えていた時期であり、SCLCが取り残されていた現実を表しているといえるだろう。30年変わらなかった治療に光が差し始めた 転機が訪れたのは2019年だった。世界肺がん学会(WCLC2019)の最重要演題が集まるPresidential Symposiumで、SCLCの免疫治療の結果が発表された。「長く止まっていた領域にようやく光が差し始めた瞬間だった」と長谷川氏は当時の興奮を伝える。 その後、SCLCに対してタルラタマブが臨床導入される。長谷川氏によれば、タルラタマブが臨床で使われるようになってから、治療中も仕事を続けているSCLC患者に出会うこともあるという。 SCLC治療に選択肢が増えることは「仕事ができる、家族との時間を守れる」など患者・家族の日常生活にも大きな恩恵をもたらす。「以前は生きられるかどうかで精一杯というのがSCLC患者さんの実情だったが、今はどう生きるかを考える余地が出てきた」と長谷川氏は強調した。 長谷川氏は最後に、「タルラタマブのような新薬が3次治療から2次治療、そして1次治療へと移行していき、SCLC患者の現実をどんどん変えてくれることを願っている」と結んだ。

19.

生菌製剤と食物繊維、肺がんに対するICIの効果を増強か/日本呼吸器学会

 がん免疫療法において腸内細菌叢へのアプローチが注目されている。近年、生菌製剤として用いられる酪酸菌Clostridium butyricum MIYAIRI 588株(以下、CBM588)が、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を用いた進行肺がん患者の全生存期間(OS)の延長と関連していたことが、後ろ向き研究で報告されている1)。また、腎細胞がんでは、無作為化比較試験においても、CBM588がICIによる治療を受ける患者の無増悪生存期間や奏効率の改善に寄与する可能性が示唆されている2,3)。そこで、本邦においても、CBM588の使用の有無と食物繊維の摂取量がICIの効果に及ぼす影響について、前向き観察研究での検討が実施された。その結果、CBM588の使用はICIによる治療を受けた非小細胞肺がん(NSCLC)患者のOSを延長する可能性があり、その効果は食物繊維摂取量が多いと増強されることが示唆された。第66回日本呼吸器学会学術講演会において、徳永 龍輝氏(熊本大学病院 呼吸器内科)が報告した。 本研究は、単施設前向き観察研究として実施された。対象は、2021年3月~2024年8月に熊本大学病院でICIによる治療を開始した、20歳以上の進行・再発NSCLC患者101例とした。ICI治療開始3週間前から投与中の期間に、整腸剤としてCBM588を投与された患者(CBM588群、55例)と投与されなかった患者(対照群、46例)に分類した。また、アンケート回答が得られた88例について、推定食物繊維摂取量が10g/1,000kcal以上に相当するhigh-fiber集団(CBM588群25例、対照群30例)と、それ未満のlow-fiber集団(それぞれ23例、10例)に分類して評価した。OSの解析には、傾向スコアに基づく逆確率重み付け(IPTW)を用いたCox比例ハザードモデルを使用した。 主な結果は以下のとおり。・CBM588群は対照群と比較して、OSが有意に延長した。OS中央値はCBM588群未到達、対照群10.1ヵ月であった(ハザード比[HR]:0.44、95%信頼区間[CI]:0.24~0.78、p=0.005)。・IPTWを用いた解析においても、CBM588群でOSの有意な延長が認められた(HR:0.28、95%CI:0.14~0.58、p<0.001)。・食物繊維摂取量別の解析において、CBM588群ではhigh-fiber集団がlow-fiber集団と比較して、OSが有意に延長した。OS中央値はhigh-fiber集団未到達、low-fiber集団27.3ヵ月であった(HR:0.26、95%CI:0.08~0.82、p=0.021)。・一方、対照群では、high-fiber集団とlow-fiber集団の間にOSの差はみられなかった(OS中央値:15.9ヵ月vs.16.1ヵ月)。 本結果について、徳永氏は「腸内細菌は食物繊維の発酵により酪酸などの短鎖脂肪酸を産生する。この酪酸はCD8陽性T細胞の抗腫瘍機能を高めるとされており、ICIの抗腫瘍効果を増強した可能性が考えられる」と考察した。また「NSCLC患者において、CBM588はICIの効果を増強し、生存期間を延長する可能性がある。また、十分な食物繊維摂取下では、さらにICIの抗腫瘍効果を増強する可能性があることが示唆された」とまとめた。

20.

高齢者のがん薬物療法GLの改訂ポイント【泌尿器】/日本臨床腫瘍学会

 『高齢者のがん薬物療法ガイドライン 改訂第2版』が2026年3月25日に発刊され、第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)のシンポジウムで全17項目のクリニカルクエスチョン(CQ)が解説された。初版には泌尿器領域のCQはなかったため、すべて新規で尿路上皮がん(CQ15)、前立腺がん(CQ16)、腎がん(CQ17)の3つのCQが設定された。CQ15 転移性尿路上皮がんに対して免疫チェックポイント阻害薬単剤療法や併用療法は、高齢者や超高齢者に対して推奨されるか?推奨:転移性尿路上皮がんに対して免疫チェックポイント阻害薬単剤療法や併用療法を、高齢者や超高齢者に対して弱く推奨する。推奨のタイプ:当該介入の条件付きの推奨エビデンスの強さ:D  転移尿路上皮がんの標準治療は長らくシスプラチンを中心としたプラチナ製剤併用化学療法であったが、近年では免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の有効性や安全性が複数のランダム化比較試験(RCT)によって示されている。しかし、高齢者におけるエビデンスは十分に確立されておらず、実臨床では個別に適応を判断しているのが現状である。そこで本CQでは、転移尿路上皮がんの高齢者(75歳以上と定義)・超高齢者(80歳以上と定義)に対して、ICIの投与を開始した群(介入群)と無治療あるいは化学療法の投与を開始した群(対照群)のアウトカムを評価した。RCTにおいて、全体集団ではICIによる全生存期間(OS)や無増悪生存期間(PFS)、奏効率の優越性が示されているが、高齢者や超高齢者に限定しているものではなかった。2件の後ろ向き研究において、ICIを投与した75歳以上と未満の群間におけるOSに有意差は認めなかったが、設定した対照群に合致しなかった。75歳以上のPFSと治療中断・延期に関するデータを示した第II相試験が存在するが、75歳未満のデータは示されていない。コホート研究において高齢者でも同様の有効性が期待され、観察研究において高齢者での重篤な有害事象は示されなかったものの、RCTの結果を高齢者にそのまま適用できるかどうかの明確なエビデンスはないと判断された。CQ16 転移性ホルモン感受性前立腺がんに対してタキサン系抗がん薬は、高齢者や超高齢者に対して推奨されるか?推奨:転移性ホルモン感受性前立腺がんに対して、タキサン系抗がん剤を高齢者または超高齢者に使用することは、患者の全身状態、併存疾患、価値観、生活背景を総合的に考慮したうえで行うことが望ましい。推奨のタイプ:当該介入または比較対照のいずれかについての条件付きの推奨エビデンスの強さ:C 転移性ホルモン感受性前立腺がんの1次治療として、アンドロゲン除去療法(ADT)を基盤としたドセタキセル併用療法やアンドロゲン受容体シグナル阻害薬(ARSI)の併用が推奨されている。第III相のRCTであるCHAARTEDやSTAMPEDEにおいて、ADTへのドセタキセル上乗せによる有意なOSの延長が示され、ARASENSによりADT+ドセタキセルへのダロルタミド上乗せの有用性が示されている。しかし、転移性ホルモン感受性前立腺がんは高齢者に多い疾患であるにもかかわらず、高齢者を対象としたドセタキセルの有効性や安全性に関するエビデンスは十分に確立されていない。そこで本CQでは、タキサン系抗がん剤の治療適応のある転移性ホルモン感受性前立腺がん患者を対象に、高齢者(75歳以上と定義)・超高齢者(80歳以上と定義)に対してタキサン系抗がん剤の投与を開始した群(介入群)とタキサン系抗がん剤の投与を減量あるいは行わない群(対照群)のアウトカムを評価した。OSについては、CHAARTEDの70歳以上においてタキサン併用群ではADT単独と比較して有意な改善を認めた一方で、STAMPEDEの70歳以上では有意な延長は示さなかった。75歳以上を対象とした観察研究でもOSの有意差は認められなかった。PFSは、75歳以上を対象とした観察研究において、ADT+ドセタキセル併用群ではADT+アビラテロン併用群よりも有意に短縮した。1件のRCTでOS延長の優越性が示されたため一定の望ましい効果は期待でき、各RCTに高齢者・超高齢者は一定数含まれているため、適切な症例を選べば毒性は許容範囲内と評価された。CQ17 転移性腎がんに対して免疫チェックポイント阻害薬を含む併用療法は高齢者や超高齢者に対して推奨されるか? 進行腎がんの薬物療法では、9種の分子標的薬と4種のICIが保険適用となっており、1次療法として複合免疫療法(ICIを含む併用療法)が有効である。しかし、高齢者に限定した前向き試験は存在せず、後ろ向き研究も限定的であり、日常診療では若年者のエビデンスを高齢者に外挿しているのが現状である。そこで本CQでは、65歳以上を高齢者、75歳以上を超高齢者と定義し、それぞれの年代におけるICIを含む併用療法のアウトカムを評価した。高齢者に特化したICIを含む併用療法の有用性を検討した介入試験は存在しなかったため、高齢者サブグループ解析の結果をもとにシステマティックレビューとメタ解析を施行した。(1)65歳以上の高齢者推奨:65歳以上の高齢者の転移性腎がん患者に対して、免疫チェックポイント阻害薬を含む併用療法を行うことを弱く推奨する。推奨のタイプ:当該介入の条件付きの推奨エビデンスの強さ:C メタ解析の結果、OS、PFS、奏効率のいずれにおいても、ICI併用群ではTKI単剤群と比較して有意に良好な結果が示された。重篤な有害事象については、両群で大きな差は認められなかった。ICIを含む併用療法は高齢者においても十分な有効性と許容可能な安全性を示しており、若年者と同様に標準治療として推奨できるが、エビデンスの確実性は低いと評価された。(2)75歳以上の超高齢者推奨:75歳以上の高齢者の転移性腎がん患者に対して、免疫チェックポイント阻害薬を含む併用療法は、エビデンスが乏しく、明確に推奨することはできない。個別の病状や価値観を考慮して行うことが望ましい。推奨のタイプ:推奨なしエビデンスの強さ:D OSとPFSはICI併用による明確な改善効果は示されなかったものの、奏効率はICI併用群で有意に良好であった。有害事象の発現頻度に有意差はなかった。75歳以上の高齢者については患者数が少なく、OS・PFSにおける明確な有効性があると結論付けることは難しく、「推奨なし」と評価された。

検索結果 合計:503件 表示位置:1 - 20