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食道がん1次治療、ニボルマブ+CRTの安全性確認、完全奏効率73%(NOBEL)/京都大学ほか

 国内における食道がんの初回標準治療は、病期や全身状態によって手術、化学放射線療法(CRT)、放射線療法が選択される。近年、切除不能例の2次治療におけるニボルマブをはじめ、免疫療法も承認されているが、CRTとの併用に関するエビデンスは限られていた。京都大学をはじめとした国内5施設において、ニボルマブ+CRTの有用性を検討するNOBEL試験によって本併用療法の安全性が確認され、完全奏効率や1年全生存(OS)率においても有望な成績が報告された。京都大学の野村 基雄氏らによる研究結果は、EClinicalMedicine誌2026年1月号に掲載された。 NOBEL試験は、多施設共同単群第II相試験で、未治療のPS 0~1の食道扁平上皮がん患者(20~75歳、切除可能・不能問わず)が登録された。治療はニボルマブ+CRT(シスプラチン+5-FU、50.4Gy照射)、それに続く最長1年間のニボルマブの維持療法であった。  主要評価項目は安全性で、Grade4以上の非血液学的毒性の発生率10%以下、Grade3以上の肺臓炎発生率15%以下と定義された。副次評価項目は完全奏効率、無増悪生存期間(PFS)、OSなどであった。治療前の生検検体において51の免疫関連遺伝子バイオマーカー解析を実施した。  主な結果は以下のとおり。・2019年1月~2021年9月に患者が登録され、ベースライン後の腫瘍評価を受けた41例(年齢中央値65歳、男性36例)が解析対象となった。・Grade3以上の肺臓炎を経験した患者は5%(2/41例)で、既報から想定された頻度よりも低く、主要安全性評価項目を達成した。最も頻度の高い有害事象は食道炎、便秘、リンパ球減少であり、治療関連死亡は認められなかった。・1年OS率は92.7%(95%信頼区間[CI]:79.0~97.6)、1年PFS率は65.4%(95%CI:48.6~77.9)であった。・完全奏効率は73%(30/41例、95%CI:58~84%)であった。とくに切除可能例における完全奏効率は84%、1年OS率は100%に達した。・バイオマーカー解析においては、免疫活性の高いサブタイプでは奏効率が高い傾向が見られたが、サンプルサイズが小さいため、参考データ扱いとなった。 研究者らは「食道がん初回治療において、ニボルマブとCRTの併用は実施可能であり、許容可能な安全性を示した。切除可能、不能例双方における高い完全奏効率は、この併用療法が有望な治療選択肢であることを示唆している。しかし、サンプルサイズが小さく、切除不能例の登録遅れによって試験が早期に終了したこともあり、これらの結果は予備的なものとして、慎重に解釈すべきである。臨床的意義を確立するためには、より大規模な無作為化試験を経て、結果を検証する必要がある」としている。

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1月20日 血栓予防の日【今日は何の日?】

【1月20日 血栓予防の日】〔由来〕「大寒」に前後する、この時季は血栓ができやすいという背景と「20」を「ツマル」と語呂合わせして日本ナットウキナーゼ協会が制定。「ナットウキナーゼ」が血栓を溶解し、脳梗塞や心筋梗塞を予防する効果があることを啓発している。関連コンテンツ小児の消化管アレルギー(食物蛋白誘発胃腸症)【すぐに使える小児診療のヒント】副作用編:下痢(抗がん剤治療中の下痢対応)【かかりつけ医のためのがん患者フォローアップ】2日目のカレーは食中毒のリスク【患者説明用スライド】コーヒー摂取量と便秘・下痢、IBDとの関連は?心筋梗塞後の便秘、心不全入院リスクが上昇~日本人データ

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肥満症の治療にアミリン受容体作動薬は登場するか?(解説:小川大輔氏)

 肥満症の治療において最も基本となるものが食事療法と運動療法であるが、これらに取り組んでも効果が不十分な場合は薬物療法が検討される。GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬は糖尿病治療薬として開発されたが、体重減少効果もあるため近年は肥満症治療薬としても承認されている。GIPやGLP-1以外にも肥満症の新しい治療標的が探索されているが、その1つがアミリン(amylin、別名:IAPP)と呼ばれるホルモンである。 アミリンは、インスリンと共に膵臓のβ細胞から分泌されるホルモンで、胃の動きを遅らせて糖の吸収を穏やかにする、あるいはグルカゴン分泌を抑制するなど、血糖値の調節に関わることが知られている。また脳に作用して満腹感を高める作用もあり、食欲抑制に重要な役割を果たしていると考えられている。アミリンの働きを模倣するアミリンアナログが糖尿病や肥満症の治療薬として開発され、米国ではすでにpramlintideが糖尿病の治療薬として承認されているが、作用時間が短く1日3回の注射製剤のため使用は限定的である。 eloralintideは長時間作用の選択的アミリン受容体作動薬で、今回肥満患者を対象とした第II相試験の結果が発表された1)。プラセボ群と比較しeloralintide投与群では48週後の体重の平均変化率が9~20%減少と、有意な体重減少効果を認めた。主な有害事象としては悪心、便秘、下痢などの消化器症状と疲労であった。 肥満症の治療薬としてGLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬がすでに使用されており、今後「トリプルアゴニスト」と呼ばれるGIP/GLP-1/グルカゴン受容体作動薬や、新規の経口GLP-1受容体作動薬が登場する予定である。アミリン受容体作動薬としては2021年にcagrilintideが第II相試験で肥満症に対して有効性が確認され2)、さらに2025年にcagrilintideとGLP-1受容体作動薬セマグルチドの配合薬が肥満・過体重の減量に効果があることが報告された3)。今後eloralintideを含め、アミリン受容体作動薬が肥満症の治療薬として日本で使用できるようになるか、引き続き注目したい。

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P-CABとPPI、ガストリン値への影響の違いは?

 胃食道逆流症(GERD)および消化性潰瘍患者において、カリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)はプロトンポンプ阻害薬(PPI)と比較して、全体的な有害事象プロファイルは同様であるが、血清ガストリン値の上昇が有意に大きいことが示された。韓国・亜洲大学校のYewon Jang氏らが、システマティックレビューおよびメタ解析の結果をJournal of Gastroenterology and Hepatology誌オンライン版2025年12月2日号で報告した。 研究グループは、MEDLINE、Embase、Cochrane Libraryのデータベースを用いて、2024年6月3日までに公開された文献を検索した。対象は、GERDまたは消化性潰瘍(胃潰瘍または十二指腸潰瘍)患者において、P-CABとPPIの安全性を比較した無作為化比較試験(RCT)および観察研究とした。なお、Helicobacter pylori除菌療法での使用は除外した。主な評価項目は有害事象および重篤な有害事象の発現割合とし、血清ガストリン値の変化についても解析した。最終的に11件の研究(RCT 10件、観察研究1件)が抽出され、合計5,896例(P-CAB群3,483例、PPI群2,413例)が解析に含まれた。 主な結果は以下のとおり。・特定の有害事象を報告した9件の研究において、下痢(7研究)、便秘(4研究)、上気道炎(4研究)、鼻咽頭炎(3研究)、悪心(3研究)、肝機能検査値異常(3研究)などが報告された。・主な有害事象(5%超に発現)は、鼻咽頭炎(P-CAB群16.4%vs.PPI群16.2%)、上気道炎(7.4%vs.5.1%)、下痢(5.2%vs.5.2%)であった。・P-CAB群ではPPI群と比較して、骨折が多く発現する傾向にあった(1.3%vs.0.4%)。・多くの研究で既存の肝障害患者は除外されていたにもかかわらず、肝関連有害事象は一定数発現した(ALT増加:P-CAB群2.9%vs.PPI群3.1%など)。・重篤な有害事象の発現割合は、ほとんどの研究で両群とも10%未満であり、両群で同程度であった。・血清ガストリン値の具体的な変化を報告した6件の研究のメタ解析の結果、P-CAB群はPPI群と比較して、血清ガストリン値の上昇が有意に大きかった(平均差:130.92pg/mL、95%信頼区間[CI]:36.37~225.47、p<0.01)。ただし、研究間の異質性が高かった(I2=98%)。・ボノプラザンとランソプラゾールを比較した3研究の解析でも、ボノプラザン群で血清ガストリン値の上昇が有意に大きかった(平均差:174.03pg/mL、95%CI:78.43~269.52、p<0.01、I2=98%)。 著者らは、本研究結果について「P-CABの有害事象プロファイルはPPIと同様であることが示唆された。しかし、P-CABを用いる患者では、胃酸分泌抑制に伴う血清ガストリン値上昇のモニタリングが不可欠である。また、P-CABとPPIのいずれを用いる場合でも、肝機能障害について注意深くモニタリングすることが求められる」と結論付けた。また、骨折について「先行研究では、長期のPPI使用者において、高ガストリン血症が骨折リスクの重要な要因であることが報告されている。P-CABも血清ガストリン値の上昇を誘発することから、同様のリスクを有する可能性が考えられる。そのため、とくに骨粗鬆症リスクのある患者において、P-CABの長期安全性を評価するためのさらなる検討が求められる」と考察した。

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再発・難治性濾胞性リンパ腫、タファシタマブ追加でPFS改善(inMIND)/Lancet

 濾胞性リンパ腫は長期生存率が高いが、一般的に根治が困難で、寛解と再発を繰り返すことから複数の治療ラインが求められている。カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のLaurie H. Sehn氏らによる「inMIND試験」において、再発・難治性濾胞性リンパ腫の治療では、レナリドミド+リツキシマブへの追加薬剤として、プラセボと比較しFc改変型抗CD19抗体タファシタマブは、統計学的に有意で臨床的に意義のある無増悪生存期間(PFS)の改善をもたらし、全奏効割合や奏効期間も良好で、安全性プロファイルは許容可能であることが示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2025年12月5日号で報告された。世界210施設の無作為化プラセボ対照比較試験 inMIND試験は、日本を含む世界210施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験であり、2021年4月~2023年8月に参加者を登録した(Incyteの助成を受けた)。 年齢18歳以上、組織学的にCD19+およびCD20+の濾胞性リンパ腫と確定され、1ライン以上の全身療法(抗CD20モノクローナル抗体を含む)を受けた後に再発または不応の病変を有する患者を対象とした。 被験者を、タファシタマブ(28日を1サイクルとし、1~3サイクル目は1・8・15・22日に、4~12サイクル目は1・15日に12mg/kgを静注投与)を最大12サイクル投与する群、またはプラセボ群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。全例に、レナリドミド+リツキシマブを投与した。 主要評価項目は、ITT集団におけるPFS(無作為化の時点から初回の病勢進行、再発、全原因による死亡までの期間)とし、各施設の担当医がLugano分類(2014)に従って評価した。安全性は、無作為化の対象となった患者のうち少なくとも1回の試験薬の投与を受けた集団で評価した。全生存期間のデータは不十分 548例(ITT集団)を登録した。273例をタファシタマブ群に、275例をプラセボ群に割り付けた。ITT集団の年齢中央値は64歳(範囲:31~88)で、249例(45%)が女性であった。 ベースラインで、433例(79%)が濾胞性リンパ腫国際予後指標で中または高リスクであり、患者全体の前治療ライン数中央値は1(範囲:1~10)で、248例(45%)が2ライン以上の前治療を受けていた。173例(32%)に初回診断から24ヵ月以内の病勢進行(POD24)を認め、209例(38%)が直近の前治療に不応で、233例(43%)は抗CD20モノクローナル抗体に不応の治療歴を有していた。 追跡期間中央値14.1ヵ月の時点で、担当医判定によるPFS中央値は、プラセボ群が13.9ヵ月(95%信頼区間[CI]:11.5~16.4)であったのに対し、タファシタマブ群は22.4ヵ月(95%CI:19.2~評価不能)と有意に優れた(ハザード比[HR]:0.43、95%CI:0.32~0.58、p<0.0001)。 独立審査委員会の判定によるPFS中央値も、タファシタマブ群で有意に延長した(未到達[95%CI:19.3~評価不能]vs.16.0ヵ月[95%CI:13.9~21.1]、HR:0.41、95%CI:0.29~0.56、p<0.0001)。 PFSのサブグループ解析では、POD24の有無、抗CD20抗体の不応歴の有無、前治療ライン数(1ライン、2ライン以上)、地理的地域の違い(欧州、北米、その他)を問わず、いずれの集団でもタファシタマブ群で有意に優れた。 全奏効割合(完全奏効、部分奏効:84%vs.72%、オッズ比:2.0、95%CI:1.30~3.02、p=0.0014)、奏効期間中央値(21.2ヵ月vs.13.6ヵ月、HR:0.47、95%CI:0.33~0.68、p<0.0001)、後治療開始までの期間中央値(未到達vs.28.8ヵ月、HR:0.45、95%CI:0.31~0.64、p<0.0001)は、いずれもタファシタマブ群で有意に良好だった。一方、全生存期間のデータは不十分であり、全体的な解析は追跡期間5年の時点で行う予定とされる。標準治療の新たな選択肢となる可能性 いずれかの群で患者の20%以上に発現した有害事象は、好中球減少(タファシタマブ群133例[49%]vs.プラセボ群123例[45%])、下痢(103例[38%]vs.77例[28%])、COVID-19(86例[31%]vs.64例[24%])、便秘(80例[29%]vs.67例[25%])などであった。 また、Grade3または4の有害事象(タファシタマブ群195例[71%]vs.プラセボ群189例[69%])、および重篤な有害事象(99例[36%]vs.86例[32%])の発現率は両群で同程度だった。 試験期間中にタファシタマブ群で15例(6%)、プラセボ群で23例(9%)が死亡し、それぞれ5例(2%)および17例(6%)が病勢進行による死亡だった。タファシタマブ群では治療関連有害事象による死亡例は認めなかったが、プラセボ群では2例(1%)に治療関連の致死的な有害事象が発現した。 著者は、「この3剤併用療法は3次医療機関だけでなく地域医療においても実施可能であるため、とくに現在選択肢が少ない2次治療として、再発・難治性濾胞性リンパ腫患者の標準治療の新たな選択肢となる可能性が示唆される」「タファシタマブ治療後の患者におけるCD19発現の解析が、その後の治療の決定の指針となる情報をもたらすと考えられる」としている。

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「グーフィス」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第83回

第83回 「グーフィス」の名称の由来は?販売名グーフィス®錠5mg一般名(和名[命名法])エロビキシバット水和物(JAN)効能又は効果慢性便秘症(器質的疾患による便秘を除く)用法及び用量通常、成人にはエロビキシバットとして10mgを1日1回食前に経口投与する。なお、症状により適宜増減するが、最高用量は1日15mgとする。警告内容とその理由設定されていない禁忌内容とその理由禁忌(次の患者には投与しないこと)1.本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者2.腫瘍、ヘルニア等による腸閉塞が確認されている又は疑われる患者[腸閉塞を悪化させるおそれがある。]※本内容は2026年1月5日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2022年4月改訂(第6版)医薬品インタビューフォーム「グーフィス®錠5mg」

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「かかりつけ医・認知症サポート医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン(第3版)」改訂のポイント

 2025年6月、日本認知症学会、日本老年精神医学会、日本神経学会、日本精神神経学会、日本老年医学会、日本神経治療学会の監修により、「かかりつけ医・認知症サポート医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン(第3版)」が公表された1)。2016年の第2版公表から9年ぶりとなる今回の改訂では、最新のエビデンスと新規薬剤の登場を踏まえた、より実践的な治療アルゴリズムが示されている。 本稿では、本ガイドラインのワーキンググループの主任研究者を務めた筑波大学医学医療系臨床医学域精神医学 教授の新井 哲明氏による解説を基に、改訂のポイントと臨床における留意点をまとめる。地域医療におけるBPSD対応の切実なニーズ 認知症患者数は2025年に約471万例、2060年には約645万例に達すると推計されている2)。認知症患者の60〜90%が最低1つは経験するとされるBPSD(行動・心理症状)は、患者本人のQOL低下や早期の施設入所リスクを高めるだけでなく、とくにBPSDにおける過活動・攻撃的行動は、介護者への負担増大により不適切なケアを誘発する「悪循環」を招く最大の要因となっている。 認知症におけるBPSD(行動・心理症状)は、心理症状として、抑うつ、不安、焦燥、無気力・無関心、妄想などがあり、行動症状として、興奮、大声を出す、叩くなどの攻撃的な行動、同じ行動を繰り返す常同行動、徘徊などがある。 この悪循環を防ぐためには、BPSDへの早期かつ適切な介入が不可欠である。地域での支援体制が不可欠であり、とくにかかりつけ医の役割が大きく、早期発見や家族支援、地域包括支援センターや専門医との連携を通じて、認知症の人と家族を支える役割が求められている。 新井氏が紹介した、かかりつけ医200人(内科、精神科、脳神経内科、脳神経外科、老年科)を対象としたアンケート調査では、以下の実態が明らかになった。・処方実態:非専門医であっても約8割がBPSDに対して抗精神病薬を処方している。・処方理由:「危険度が高い時」「介護負担が高い時」が主な理由となっている。・66%の医師が従来のガイドライン(第2版)を活用(参照・利用)している。 この結果は、地域医療の現場においてBPSDへの薬物療法がすでに広く行われていることを示唆しており、より安全で適正な使用指針の普及が急務であった。ガイドライン第3版:BPSDへの対応の原則 今回のガイドライン改訂(第3版)は、新規薬剤の登場やエビデンスの蓄積を反映し、より実践的なアルゴリズムへと刷新された。BPSDへの対応においては、まず以下の原則を順守することが重要となる。 原則として、「緊急性が高く速やかな薬物治療の開始を要するような精神症状が認められた場合には、認知症疾患医療センターを含めた認知症専門医がいる医療機関に紹介する」とされている。たとえば、重度のうつ状態、他者に危害を加える可能性が非常に高い妄想、自分自身や他者を危険にさらす原因となる攻撃性などがそれに相当する。 かかりつけ医・認知症サポート医で対応する場合は以下を考慮する。・せん妄の除外・BPSD様症状を引き起こし得る病態の鑑別:感染症、脱水、便秘、疼痛など・BPSD様症状を引き起こし得る薬剤の除外・レビー小体型認知症の可能性:幻視や妄想、抗精神病薬への過敏性に注意が必要 上記のとおり病態を把握した後、環境調整、ケアの変更、リハビリテーションの利用など、非薬物的介入を優先する。症状が改善しない場合にのみ薬物療法を検討する。薬物治療を開始する際は、低用量で開始する。 向精神薬を使用する場合には、本人・家族との共同意思決定(SDM:Shared Decision Making)のプロセスを経ることが明記された。本人の意思が確認できる場合は、アドバンス・ケア・プランニング(advance care planning:ACP)などによる話し合いを尊重し、本人の理解が不十分な場合や意思が確認できない場合は、家族などと繰り返し話し合い、本人の推定意思と最善利益を踏まえて方針を決定する。向精神薬の使用中は常に減量・中止を念頭に置き、長期使用は避ける、などが明記されている。5つのカテゴリー分類とアルゴリズムの明確化 第2版からの大きな変更点として、BPSDの症状分類が整理された。「過食・異食・徘徊・介護の抵抗」といった薬剤効果が乏しい症状は独立カテゴリーから外れた(非薬物的対応を推奨)。症状は以下の5つに分類され、それぞれの対応方針がアルゴリズムで示されている。・幻覚・妄想:まずメマンチンや抑肝散の投与を検討する。これらにより標的症状が改善せず緊急性が高い場合、抗精神病薬の投与を検討する。レビー小体型認知症にみられる幻視には、まずコリンエステラーゼ阻害薬を投与することが望ましい。・易刺激性・焦燥性興奮(アジテーション):アルツハイマー型認知症に伴う焦燥感、易刺激性、興奮に起因する、過活動または攻撃的言動に対しては、ブレクスピプラゾールが保険適用を有する。・不安・抑うつ:抗うつ薬やタンドスピロン、抑肝散、クエチアピンの使用を検討する。・アパシー:非薬物的介入が基本だが、コリンエステラーゼ阻害薬が有効なことがある。・睡眠障害:睡眠衛生指導や睡眠覚醒リズムの確立のための環境調整を行った上で、病態に応じてオレキシン受容体拮抗薬、メラトニン受容体作動薬、抗うつ薬(トラゾドン)の使用を検討する。 BPSDに対する薬剤開始後は、副作用のモニタリングを行った後、患者本人の苦痛や介護者/家族の負担が軽減したかどうかを評価する。NPI-Q(Neuropsychiatric Inventory - Questionnaire)を用いて効果の定量的な評価を行うことが望ましい。抗精神病薬の適正使用と各薬剤の臨床的位置づけ とくに介護負担の大きい易刺激性・焦燥性興奮(アジテーション)について、アルツハイマー型と診断された患者には、非薬物的介入が無効な場合、ブレクスピプラゾールのみ保険適用となっている。 クエチアピン、ハロペリドール、ペロスピロン、リスペリドンに関しては、原則として、器質的疾患に伴うせん妄・精神運動興奮状態・易怒性に対して処方した場合、当該使用事例を審査上認めるとの通達がある(2011年9月28日、厚生労働省保険局医療課長、保医発0928第1号、社会保険診療報酬支払基金、第9次審査情報提供)。このうち、ハロペリドールは錐体外路系副作用が強いことから、パーキンソン病、レビー小体型認知症には使用禁忌である。 チアプリドは、脳梗塞後遺症に伴う精神興奮・徘徊・せん妄に保険適用があるため、血管性認知症患者における易刺激性・焦燥性興奮に対して使用を考慮してもよい。 睡眠障害に対しては、睡眠薬の項の記載に従った薬剤選択を行い、それでも改善のない場合は、クエチアピンの使用を考慮してもよい。レビー小体型認知症の幻覚・妄想、易刺激性・焦燥性興奮、不安・抑うつ、睡眠障害に対しても、クエチアピンの使用を考慮してもよいと記載されている。 本ガイドラインでは、抗精神病薬の副作用についても詳細に記載されている。留意点として以下のような項目が記載されている。・抗精神病薬の併用(2剤以上)は避ける。・2週間くらいの時間をかけて薬効を評価する。・常に減量・中止が可能かを検討し、長期使用は避ける。抗精神病薬でBPSDが軽快した場合には、投与開始4ヵ月以内に減量・中止を試みる。ブレクスピプラゾールへの期待 2024年9月、ブレクスピプラゾールは「アルツハイマー型認知症に伴う焦燥感、易刺激性、興奮に起因する過活動又は攻撃的言動」に対し、国内で初めて効能・効果を取得した。・対象:易刺激性・焦燥性興奮といった内的な不穏を背景とする攻撃的言動に適応となる。単なる徘徊や、これらを伴わない幻覚・妄想は適応外である。・有効性:国内第II/III相試験(BRIDGE試験)において、CMAIスコア(アジテーション指標)を有意に改善させた。・安全性:錐体外路症状などの副作用リスクは比較的低いとされるが、他の抗精神病薬と同様に、傾眠、運動緩慢、流涎過多などへの注意は必要である。 本ガイドライン改訂を受けて、大塚製薬主催で6月23日に開催されたプレスセミナーにて、新井氏は自ら経験した症例として「夫婦間で、妻の妄想から暴言・暴力に発展したケース」を紹介した。ブレクスピプラゾールの投与によって症状が落ち着き、夫婦関係も良好になったことを挙げ、本剤が患者の在宅生活の継続に寄与する可能性を示唆した。 新井氏は、「ガイドラインが改訂され、治療アルゴリズムや薬剤の位置づけが明確化された。これらの情報が広くかかりつけ医・認知症サポート医に普及することで、より適切なBPSD診療が実現し、本人のQOL向上や介護負担の軽減といった社会的課題の解決につながることが期待される」と結んだ。

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小児の便秘症【すぐに使える小児診療のヒント】第9回

小児の便秘症小児の腹痛の約9割は便秘が原因であるというのは比較的有名な話かもしれません。浣腸で一時的に腹痛が改善したとしても、「そうしなければ出ない」状態そのものを改善しないと子供のQOLに大きな影響を与えます。また、一見便が出ているようにみえても、実は「隠れ便秘」を見逃しているサインである場合もあります。症例4歳女児。夕食後から強い腹痛を訴えて眠れないため、23時に救急外来を受診した。腹壁は柔らかく、臍周囲に軽度の圧痛を認め、左下腹部に便塊を触知した。「うんちは毎日出ていますか」と尋ねると、母は「はい、ちゃんと出ています」と答えた。浣腸により大量の排便が得られると、腹痛は速やかに消失し、元気に帰宅した。「たかが便秘」と侮ることなかれ小児の便秘は決してまれではありません。乳幼児期から学童期まで、小児科診療で頻繁に遭遇する病態であり、離乳の開始・終了期、トイレットトレーニング期、就学開始などの生活環境の変化を契機に発症・増悪しやすいことが知られています。便秘は「排便が少ない」という状況だけではなく、排便時痛、硬便、漏便、排便困難など、排便にまつわる苦痛や異常があれば便秘症として治療が必要になります。小児の便秘症が進行しやすい背景には、下記のような2つの悪循環が関連しています。(1)痛みによる排便回避行動硬便や肛門裂創を経験した子供は、排便を避けようとし、脚を交差させる・肛門を締めるなどの「便を我慢する行動」をとります。その間に大腸で便がさらに硬化し、次の排便がより痛くなるという悪循環に陥ります。(2)直腸拡張に伴う便意消失長期間便が直腸に停滞すると直腸が拡張し、便意の感覚が弱くなります。その結果、ますます排便間隔が空き、便の硬化が進行します。診療では、まず「便秘の存在」を見逃さないことが重要です。一見、軟便やコロコロ便が頻回に出ている場合でも、実は肛門を塞ぐような便塊(便塞栓)が直腸にあり、その隙間から漏れ出ている可能性があります。また、鎖肛やHirschsprung病などの器質的疾患、内分泌疾患、心理社会的要因など、2次性便秘を示唆する所見がないかを問診・診察で丁寧に把握します。特別な原因が否定されれば、適切な治療で悪循環を断ち切ることが予後改善の鍵となります。「ちゃんと出ている」も人それぞれ排便状況の聴取では、「うんちは出ていますか?」という問いだけでは不十分です。下記のように、トイレにいるところが頭に思い描けるように詳細に聴取しましょう。週に何日、1日に何回出るのか(週に3日、毎日、1日2回…)1回量はどの程度か(小指の先程度の少量、便器いっぱいくらい大量…)どのような形状・固さなのか(カチカチ、コロコロ、バナナ、べちゃっとした…)排便にかかる時間や様子はどうか(30分こもる、顔を真っ赤にして、べそをかきながら…)保護者や本人が便秘をまったく認識していないことも珍しくありません。実際、「うちの子はずっと下痢気味で、漏らしてばかりで…」と受診したものの、実は慢性便秘症で便塞栓が形成され、漏便が続いていたというケースもあります。冒頭の症例も、表面的には浣腸によって腹痛が改善して問題が解決したようにみえますが、深夜でも面倒がらずに問診を深掘りすると、以下のようなやり取りがあったかもしれません。問診例うんちは毎日出ていますか?はい、ちゃんと出ています。形や固さはどうですか? バナナのような? それともコロコロの硬い便でしょうか?コロコロの硬い便がいくつか出ています。排便のときはどうですか? 踏ん張ってつらそうな様子はありますか?顔を真っ赤にして30分くらい格闘している日があります。そのせいか、最近トイレに行きたがりません。それは便秘の可能性が高いです。薬を使って排便しやすくしたほうがよいでしょう。毎日出ているのに便秘だなんて思ってもいませんでした。治療と専門医紹介のタイミング便秘症の治療は、便塞栓がある場合、まず直腸内に形成された便塞栓を完全に除去することから始まります。多くの児では直腸が拡張して大きな便塊が停滞しているため、この便塞栓が残ったままでは生活指導や薬物治療の効果が不十分です。浣腸や、場合によっては洗腸による便塞栓除去を確実に行い、直腸を「空の状態」に戻すことが治療の出発点となります。そしてその後、維持治療によって便を柔らかく保ち、再度便塞栓を作らせないことが重要です。維持治療では、排便習慣の確立や生活リズムの調整に加えて、モビコールや酸化マグネシウム、ピコスルファートなどの薬物療法を適切に継続し、慢性便秘症に戻らないようサポートします。治療を適切に行っても1~2ヵ月以内に「便秘でない状態」(痛みのない排便が週3回以上、漏便なし、QOL良好)に到達しない場合には、器質的疾患の評価や治療方針の再検討が必要です。また、治療が難渋することを示唆するYellow Flag(重度の便塞栓、反復する漏便、顕著な排便回避行動、心理社会的要因など)がある児では早期の専門医紹介が望まれます。なお、Red Flag(新生児期からの便秘、生後48時間以上の胎便排泄遅延、肛門奇形、著明な腹部膨満、神経学的異常など)を認める場合には、器質的疾患の可能性が高く、治療開始前であっても迅速な専門医紹介が推奨されます。保護者への説明保護者からは「薬を使うと癖になりませんか?」と相談されることがよくありますが、まずは「薬を使うことで規則正しい排便習慣をつける」ことが治療の目的であると説明し、安心して治療に臨めるようにします。また、生活指導では、落ち着いた朝の排便習慣づくりが重要であることも伝えられるとよいでしょう。1日の中でも、とくに朝は副交感神経から交感神経へ切り替わるタイミングです。しっかり朝食をとることで胃-結腸反射が働き、またその後ゆっくりと時間がとれれば、副交感神経優位で腸管蠕動が進み、排便につながります。しかし、朝の慌ただしさですぐに交感神経優位に切り替わってしまったり、「時間がない」状況でトイレを我慢してしまったりすると、排便のリズムが乱れ、便が腸に停滞する原因となり、便秘へとつながってしまいます。排便習慣は日々の生活に密接に関わり、慢性化すると子供のQOLに大きな影響を与えます。「隠れ便秘」を見逃さず、適切な問診・指導・治療につなげましょう。ひとことメモ:便秘と排尿トラブルの関係小児では、慢性便秘により直腸が便で拡張すると、膀胱が物理的に圧迫され、膀胱容量の減少や膀胱過活動が生じます。また、便を長く我慢する習慣は骨盤底筋の緊張を高め、排便だけでなく排尿時にも筋がうまく弛緩しなくなるため、残尿や尿意切迫、昼間尿失禁につながります。さらに、直腸に便が充満した状態では膀胱の完全排尿が妨げられて残尿が増えるため、反復性尿路感染症の原因にもなります。このように、直腸拡張による膀胱圧迫・膀胱機能変化・骨盤底筋の協調不全が同時に起こるため、排尿トラブルの評価時には必ず便秘の有無を確認する必要があります。便秘治療によって直腸が適正サイズに戻り、膀胱機能や骨盤底筋の協調が回復することで、夜尿・昼間尿失禁・尿意切迫などが改善することも多く、両者を一体として診療することが重要です。参考資料 1) 日本小児栄養消化器肝臓学会/日本小児消化管機能研究会編. 小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン2025年版. 診断と治療社;2025. 2) 十河剛. 子どもの便秘はこう診る!親子のやる気を引き出す小児消化器科医のアプローチ. 南山堂;2020. 3) 小児慢性機能性便秘

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経口orforglipron、2型糖尿病の肥満にも有効/Lancet

 2型糖尿病の過体重/肥満成人において、生活習慣改善の補助的介入としての経口低分子GLP-1受容体作動薬orforglipronの1日1回投与は、プラセボと比較して体重減少効果は統計学的に優れ、安全性プロファイルは他のGLP-1受容体作動薬と同等であったことが示された。米国・University of Texas McGovern Medical SchoolのDeborah B. Horn氏らATTAIN-2 Trial Investigatorsが、第III相の多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照試験「ATTAIN-2試験」の結果を報告した。肥満は2型糖尿病およびその合併症と深く関わる。非糖尿病の肥満成人を対象としたATTAIN-1試験では、orforglipron 36mgの1日1回投与による治療で72週後の体重が最大12.4%減少し、心代謝リスク因子が改善したことが示されていた。Lancet誌オンライン版2025年11月20日号掲載の報告。BMI値27以上、HbA1c値7~10%を対象にorforglipronの3用量vs.プラセボ ATTAIN-2試験は、10ヵ国(アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、中国、チェコ、ドイツ、ギリシャ、インド、韓国、米国)136施設で行われ、3週間のスクリーニング期間と、72週間の治療期間(うち用量漸増期間最長20週間)および2週間の治療後安全性追跡期間で構成された。 BMI値27以上、HbA1c値7~10%(53~86mmol/mol)の患者を対象とし、orforglipronを1日1回6mg、12mg、36mgまたはプラセボを投与する群に1対1対1対2の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、ベースラインから72週までの体重の平均変化率であった。主要推定値は、治療レジメン推定値(中間事象にかかわらず無作為化された全被験者のデータを使用)とし、補助解析として有効性推定値も算出した。 安全性は、試験薬を少なくとも1回投与を受けたすべての患者を対象に評価が行われた。体重およびHbA1c値など心代謝指標、orforglipron群で統計学的有意に改善 2023年6月5日~2024年2月15日に、2,859例がスクリーニングを受け、1,613例が生活習慣改善指導(健康食と運動)とともにorforglipronを1日1回6mg(329例)、12mg(332例)、36mg(322例)投与またはプラセボ(630例)投与を受けるよう無作為化された。 試験を完遂したのは1,444例(89.5%)であった。治療中止の理由として最も多くみられたのは、個人的事情(試験とは関係ない理由、スケジュールが合わない、転居のため)および有害事象であった。 無作為化された1,613例のベースラインの特性は、orforglipron群とプラセボ群で類似しており、平均年齢56.8歳(SD 10.7)、女性757例(46.9%)、体重101.4kg(SD 22.5)、BMI値35.6(SD 6.6)、HbA1c値8.05%(SD 0.75、64.4mmol/mol[SD 8.2])であった。 治療レジメン推定値でみたベースラインから72週までの体重の平均変化量は、プラセボ群-2.5%(95%信頼区間[CI]:-3.0~-1.9)であったのに対して、orforglipron 6mg群は-5.1%(95%CI:-6.0~-4.2、対プラセボ推定治療差[ETD]:-2.7[95%CI:-3.7~-1.6]、p<0.0001)、12mg群は-7.0%(-7.8~-6.2、ETD:-4.5[-5.5~-3.6]、p<0.0001)、36mg群は-9.6%(-10.5~-8.7、ETD:-7.1[-8.2~-6.1]、p<0.0001)であった。 事前に規定した体重およびHbA1c値など心代謝指標は、orforglipron群で統計学的に有意に改善した。有害事象(軽症~中等症の消化器イベント)、主に用量漸増期間中に発現 有害事象を理由とした治療中止の割合はorforglipron群がプラセボ群よりも高かった(orforglipron 6mg群6.1%、12mg群9.6%、36mg群9.9%、プラセボ群4.1%)。orforglipron群で最も多くみられた有害事象は軽症~中等症の消化器関連イベント(下痢、悪心、嘔吐、または便秘)で、主に用量漸増期間中に発現した。 死亡は試験期間中に10例(orforglipron群6例[12mg群4例、36mg群2例]、プラセボ群4例)が報告された。試験治療担当医師により、プラセボ群の1例とorforglipron 12mg群の1例以外の死亡は、試験治療との関連性はないと判断された。orforglipron群の症例では関連性を示す報告はされておらず、死亡前の1年間に試験薬による治療を受けていなかった。

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術前療法後に残存病変を有するHER2+早期乳がん、T-DXd vs.T-DM1(DESTINY-Breast05)/NEJM

 再発リスクの高い、術前化学療法後に浸潤性残存病変を有するHER2陽性(+)の早期乳がん患者において、術後療法としてのトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)はトラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)と比較して、無浸潤疾患生存期間(iDFS)を統計学的に有意に改善し、毒性作用は主に消化器系および血液系であったことが、ドイツ・Goethe University FrankfurtのSibylle Loibl氏らDESTINY-Breast05 Trial Investigatorsが行った第III相の国際共同非盲検無作為化試験「DESTINY-Breast05試験」の結果で示された。NEJM誌オンライン版2025年12月10日号掲載の報告。主要評価項目はiDFS、重要な副次評価項目はDFS 研究グループは、術前化学療法後(タキサン系化学療法と抗HER2療法を含む)に乳房または腋窩リンパ節に浸潤性残存病変を有する、あるいは初診時に手術不能病変を有する、再発リスクの高いHER2+乳がん患者を対象に、術後療法としてT-DXd 5.4mg/kgと現行の標準治療であるT-DM1 3.6mg/kgを比較した。再発高リスクの定義は、術前療法前にT4 N0~3 M0またはcT1~3 N2~3 M0で手術不能と判断、または術前療法前に手術可能と判断されたが(cT1~3 N0~1 M0)術前療法後に腋窩リンパ節転移が陽性(ypN1~3)であったこととされた。 主要評価項目はiDFS。重要な副次評価項目は無病生存期間(DFS、非浸潤性乳がんおよび二次原発性非乳がんのDFSを含む)であった。その他の副次評価項目は、全生存期間、無遠隔転移生存期間および安全性などであった。iDFSおよびDFSイベントの発生とも、T-DXd群で統計学的に有意に改善 2020年12月4日~2024年1月23日に1,635例が1対1の割合で無作為化され、T-DXd(818例)またはT-DM1(817例)の投与を受けた。データカットオフ(2025年7月2日)時点で、追跡期間中央値は両群ともおよそ30ヵ月(T-DXd群29.9ヵ月[範囲:0.3~53.4]、T-DM1群29.7ヵ月[0.1~54.4])であった。ベースライン特性は両群で類似しており、大半が65歳未満(T-DXd群89.9%vs.T-DM1群90.1%)、ホルモン受容体陽性(71.0%vs.71.4%)、術前療法後に腋窩リンパ節転移陽性(80.7%vs.80.5%)、術前療法として2剤併用抗HER2療法(78.5%vs.79.1%)、アントラサイクリンまたはプラチナ製剤ベースの化学療法(アントラサイクリン:51.7%vs.48.8%、プラチナ製剤:47.2%vs.48.0%)、および放射線療法(93.4%vs.92.9%)を受けていた。また、被験者のほぼ半数がアジア人(48.8%vs.47.2%)であった。 iDFSイベントの発生は、T-DXd群51例(6.2%)、T-DM1群102例(12.5%)であった(ハザード比[HR]:0.47、95%信頼区間[CI]:0.34~0.66、p<0.001)。3年iDFS率はそれぞれ92.4%と83.7%であった。 DFSイベントの発生は、T-DXd群52例(6.4%)、T-DM1群103例(12.6%)であった(HR:0.47、95%CI:0.34~0.66、p<0.001)。3年DFS率はそれぞれ92.3%と83.5%であった。間質性肺疾患リスクに対する適切なモニタリングと管理が必要 最も多くみられた有害事象は、T-DXd群では悪心(発現率71.3%)、便秘(32.0%)、好中球減少(31.6%)、嘔吐(31.0%)であり、T-DM1群では肝機能評価値の上昇(AST上昇50.2%、ALT上昇45.3%)および血小板数の低下(49.8%)であった。 治療薬に関連した間質性肺疾患の発現頻度は、T-DXd群(9.6%)がT-DM1群(1.6%)と比べて高かった。T-DXd群では、間質性肺疾患を呈した2例が死亡した。 著者は、「T-DXdの特定された重要なリスクは間質性肺疾患であり、適切なモニタリングと管理が必要である」と述べている。

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12月11日 胃腸の日【今日は何の日?】

【12月11日 胃腸の日】 〔由来〕 「いに(12)いい(11)」(胃にいい)の語呂合わせから日本大衆薬工業協会(現:日本OTC医薬品協会)が2002年に制定。師走に1年間を振り返り、大切な胃腸に負担をかけてきたことを思い、胃腸へのいたわりの気持ちを持ってもらうのが目的。胃腸薬の正しい使い方や、胃腸の健康管理の大切さなどをアピールしている。関連コンテンツ 小児の消化管アレルギー(食物蛋白誘発胃腸症)【すぐに使える小児診療のヒント】 副作用編:下痢(抗がん剤治療中の下痢対応)【かかりつけ医のためのがん患者フォローアップ】 2日目のカレーは食中毒のリスク【患者説明用スライド】 コーヒー摂取量と便秘・下痢、IBDとの関連は? 心筋梗塞後の便秘、心不全入院リスクが上昇~日本人データ

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心不全に伴う体液貯留管理(3):症例1(97歳女性)【Dr.わへいのポケットエコーのいろは】第9回

心不全に伴う体液貯留管理(3):症例1(97歳女性)前回、下大静脈の見かたとVMTスコアの出し方について解説しました。今回は、VMTスコアを用いて管理を行った症例を紹介します。息切れの症状が強い97歳女性【今回の症例】97歳女性主訴室内歩行時の息切れが困る現病歴タクシー運転手の息子と2人暮らし。室内での転倒が多いものの、息子のために家事をしたいという希望が強く、台所に立つ。5分おきに椅子に座りながら、洗い物・料理などを行っている。内服薬(服薬管理者:息子)カンデサルタン8mg 2×、アムロジピン2.5mg 1×、ミラベグロン25mg 1×、エペリゾン50mg 1×、酸化マグネシウム1,320mg 2×、ゾルピデム10mg 1×併存症高血圧、脂質異常症、高尿酸血症、不眠症、過活動性膀胱、便秘症バイタル体温36.6℃、血圧174/97mmHg、脈拍68回/分 整、安静時SpO2 97%(room air)今回は、室内で歩く時に息切れの症状が強い97歳女性を例に考えます。会話をすると「先生、ぜえぜえ、病院? いや、絶対行かない。家にいたい」と言います。このように途切れ途切れで喋るのですが、息子のために家事がしたいと主張します。家事は5分おきに椅子に座ってやっているとのこと。内服薬を見ていただくとわかると思うのですが、心不全の指摘はありませんでした。そのような場合、息切れの要素を考えると心不全だけではなく、肺気腫や間質性肺炎もチェックしていく必要があります。それを踏まえて、エコーの所見を見ていきたいと思います。このような方は、意外に安静時のSpO2は高いことがあり、この患者も97%でした。治療経過初回の心エコーを見てみましょう。下大静脈(IVC)を見ると20mmです。呼吸性変動があるので推定右房圧は8mmHgとなります(図1)。これだけではなんとも言えないですね。図1 IVCのエコー像画像を拡大する続いて、VMTを見ていきましょう。こちらは僧帽弁が先に開いています(図2)。そのため、点数としては2点となります。また、胸水の有無を確認すると、胸水はありませんでした(図3)。図2 三尖弁と僧帽弁のエコー像画像を拡大する図3 胸水の有無画像を拡大するどうでしょうか。もしVMTスコアがなければ、IVCが20mmというだけで心不全として治療するかどうか、結構迷いどころですよね。もちろんこの2つの指標に限らず、余裕があれば心エコーをしっかり行っても問題ありません。それでは短い動画を見てみましょう。治療介入前の心エコー像心エコー検査を行うと、駆出率(EF)は45%程度、大動脈弁口面積(AVA)は1.5cm2程度、そして弁の石灰化は強いことがわかります。つまり、慢性心不全の中等度の大動脈弁狭窄症(AS)があって、徐々に悪くなっていったのだろうということで、クリニカルシナリオ(CS)分類はCS2。そして、ステージ分類ではステージC、NYHA分類は3と判断できました。この患者の治療介入として、フロセミド20mgを投与してみました。すると、1ヵ月後の評価では、下腿のむくみは少し減ったようですが、まだ少し残っている印象でした。VMTでは三尖弁と僧帽弁が開くタイミングがほぼ同時になり、IVCの拡張もやや改善がみられました。治療開始1ヵ月後の三尖弁と僧帽弁のエコー像まだまだこれだけでは評価が難しいため、16週後までの経過を見ていきました。すると、どうでしょうか。心エコーの動画を見てみてください。治療開始16週後の三尖弁と僧帽弁のエコー像体重は2kgしか減っていませんでしたが、エコーの所見としては三尖弁のほうが先に開いていて、VMTスコアが1~0程度になっていたのです(図4)。図4 治療開始16週後のNT-proBNP・症状・VMTスコア画像を拡大する今回の症例をまとめます。治療介入から4ヵ月後には、何かにつかまらなくても立って夕飯の支度ができるようになりました。そして、ふらつきが減って室内を動き回って、30分連続して台所に立つことができたとのことです。高齢のため家族のサポートも重要ですが、治療介入が在宅の患者さん自身の「やりがい」の回復に繋がったケースでした(図5)。図5 治療介入16週後の患者の状態画像を拡大する

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ESMO2025 レポート 泌尿器がん

レポーター紹介2025年10月17~21日に、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)がドイツ・ベルリンで開催され、後の実臨床を変えうる注目演題が複数報告された。虎の門病院の竹村 弘司氏が泌尿器がん領域における重要演題をピックアップし、結果を解説する。ここ数年、泌尿器腫瘍領域の薬物治療における重要な研究成果はESMOで報告されることが多く、ESMO2023ではEV-302試験、ESMO2024ではNIAGARA試験の結果が報告されたことが記憶に新しい。いずれも大きな話題となり、本邦においてもこれらの臨床試験の結果が今日の日常臨床を変えた。ESMO2025では、泌尿器領域から4演題がPresidential Symposiumに採択された。いずれも近い将来の日常臨床や治療開発の方向性を変える可能性のある臨床試験である。本レポートでは、これら4演題の内容についての詳細を解説する。(表)ESMO2025 GU領域の注目演題のQuick Check画像を拡大する[目次]1.【膀胱がん】LBA22.【膀胱がん】LBA83.【前立腺がん】LBA64.【尿路上皮がん】LBA7【膀胱がん】LBA2Perioperative (periop) enfortumab vedotin (EV) plus pembrolizumab (pembro) in participants (pts) with muscle-invasive bladder cancer (MIBC) who are cisplatin-ineligible: The phase 3 KEYNOTE-905 study1.背景筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)の標準治療はシスプラチンを含む術前化学療法後の根治的膀胱全摘除術(RC)であるが、腎機能障害や併存疾患のためにシスプラチン不適格となる患者が約半数を占める。このような患者群に対しては (周術期化学療法なしの)膀胱全摘術が現在の標準治療であるが、再発率が高く、予後が悪い。本試験(KEYNOTE-905)は、シスプラチン不適格または拒否例のMIBC患者を対象に、EV+ペムブロリズマブ(以下EVP療法)による周術期化学療法の有効性および安全性を検証した第III相無作為化比較試験である。2.試験デザインデザイン多施設共同、第III相、無作為化比較試験対象シスプラチン不適格または拒否したMIBC患者治療:治療EVP群:EVP療法3コース後に膀胱全摘術、術後にEV 6コース、ペムブロリズマブ14コース対照群(標準治療/膀胱全摘術±リンパ節郭清のみ)主要評価項目無イベント生存期間(EFS)副次評価項目全生存期間(OS)、病理学的完全奏効率(pCR)、安全性など3.結果EVP群170例、対照群174例に無作為割り付けされた。観察期間中央値は25.6ヵ月(範囲:11.8~53.7)。EVP群の患者の年齢中央値は74.0歳(範囲:47~87)であり、75歳以上の高齢者は45.9%含まれていた。ECOG PS 0が60%、男性が80.6%であった。シスプラチン不適格例が83.5%、拒否例が16.5%であった。病期別ではT2N0が17.6%、T3/T4が78.2%、N1症例が4.1%であった。両群間で背景に大きな差はなかった。主要評価項目であるEFS中央値はEVP群で未到達、対照群で15.7ヵ月であり、ハザード比(HR)は0.40(95%信頼区間[CI]:0.28~0.57、p<0.0001)と、EVP群で有意なリスク低減が認められた。12ヵ月時点のEFS率は77.8%vs. 55.1%、24ヵ月時点では74.7%vs.39.4%であった。EFS改善効果は事前に設定されたサブグループ解析でも一貫しており、年齢、性別、PS、PD-L1発現、腎機能などにかかわらずEVP群で良好であった。OS中央値は、EVP群で未到達、対照群で41.7ヵ月であり、HR:0.50(95%CI:0.33~0.74、p=0.0002)とEVP群で有意な生存延長を認めた。12ヵ月時点での生存率は86.3%vs.75.7%、24ヵ月時点で79.7%vs.63.1%であった。pCR率は57.1%vs.8.6%(95%CI:39.5~56.5、p<0.000001)であった。本試験において、pCRは手術検体における腫瘍残存なし(pT0N0)と定義されており、手術未施行例は非奏効(non-responder)として解析されている。周術期EVP療法の安全性プロファイルは既報の進行期尿路上皮がん(UC)治療での報告とおおむね一致し、新たな安全性シグナルは認められなかった。また、本併用療法は根治的手術施行率を低下させなかったことも示された。4.結論周術期EVP療法は、シスプラチン不適格または拒否したMIBC患者において、EFS、OS、pCR率を有意に改善した。手術実施率への悪影響はなく、安全性も許容範囲内であった。本試験は、MIBCに対する周術期治療としてEVP療法が新たな標準治療となる可能性を初めて示した第III相試験である。5.筆者コメントEVP療法はすでに転移を有する再発UCの領域でパラダイムシフトを起こしており、予想はしていたが、KEYNOTE-905試験もpositiveな結果であった。文句なくpractice changeであるが、今後検証・確認しないといけないこととして以下が挙げられる。シスプラチン適格の患者を対象に、シスプラチンベースのレジメンと比較してもEVPが優れるかどうか。→EV-304試験の結果が待たれる。術後のEVP療法は全例に必要なのか。→術後EVP、ペムブロリズマブのみ、経過観察のみ、の3群比較ではどうなるか。今後リアルワールドデータの報告なども待たれる。周術期にEVが合計9コース投与されるため、末梢神経障害も懸念される。周術期EVP療法におけるctDNAステータスを絡めた探索的解析の結果が待たれる。【膀胱がん】LBA8IMvigor011: a Phase 3 trial of circulating tumour (ct)DNA-guided adjuvant atezolizumab vs placebo in muscle-invasive bladder cancer1.背景MIBCの術後アテゾリズマブ療法の有効性を検証したランダム化第III相試験であるIMvigor010試験はnegative studyであったが、探索的研究でctDNAが予後予測因子であることに加えてアテゾリズマブの効果予測因子であることが示唆された。そのような背景から、ctDNA-guided selectionされたコホートにおけるアテゾリズマブの有効性を検証したのがIMvigor011試験である。IMvigor011試験は、MIBC患者のうち術後ctDNAが陽性であるコホートのみを対象としたアテゾリズマブ術後療法の有効性を評価したランダム化第III相試験である。2.試験デザインデザイン多施設共同、第III相、無作為化比較試験対象膀胱全摘術後6〜24週以内のMIBC(pT2-T4aN0M0またはpT0-T4aN+M0)。術前化学療法の実施は許容された。介入:介入6週ごとのctDNA評価、12週ごとの画像評価を実施。ctDNA陽性→アテゾリズマブ(1,680mg IV 4週ごと×最大1年)vs.プラセボ(2:1)ctDNA陰性→無治療・経過観察群主要評価項目治験医師評価の無病生存期間(DFS)副次評価項目OS3.結果登録患者756例(ctDNA陽性:379例、ctDNA陰性:377例)。このうち、ctDNA陽性例250例がランダム化(アテゾリズマブ:167例、プラセボ:83例)。患者の年齢中央値は69歳(範囲:42~87)、ほぼ全例がECOG PS 0~1であった。病理学的ステージはpT3/4が約7割、リンパ節転移陽性が約6割であった。初回ctDNA評価で陽性判定されたのは約6割、フォローアップ中のctDNA評価で陽性判定されたのは約4割であった。主要評価項目である治験医師評価のDFS中央値は、アテゾリズマブ群9.9ヵ月、プラセボ群4.8ヵ月であり、HR:0.64(95%CI:0.47~0.87、p=0.0047)と統計学的に有意にアテゾリズマブ群が良好であった。12ヵ月DFS率は44.7%vs.30.0%、24ヵ月DFS率は28.0%vs.12.1%であった。OSは32.8ヵ月vs.21.1ヵ月(HR:0.59、95%CI:0.39~0.90、p=0.0131)であり、24ヵ月時点のOS率は62.8%vs.46.9%と、アテゾリズマブ群で明確な上乗せ効果を示した。なお、1年間のctDNAフォロー期間においてctDNA陰性で経過したコホートでは、24ヵ月時点のDFSは88.4%、OSは97.1%で無イベントで経過していた。4.結論ctDNAガイド下アテゾリズマブ術後療法は、ctDNA陽性のMIBC患者においてDFSおよびOSを有意に改善した。非選択集団で有効性を示せなかったIMvigor010試験と異なり、ctDNAを用いた層別化戦略により免疫療法の効果を享受できるコホートを抽出することができる可能性が示唆された。5.筆者コメントMIBCの術後化学療法において、ctDNAをベースとした免疫チェックポイント阻害薬による治療戦略を構築することに成功した重要な臨床試験である。周術期における免疫チェックポイント阻害薬を含む治療の有効性を検証している他の大規模比較試験においても同様の傾向がみられるか、今後再現性の評価も重要である。一方で、ctDNA陽性の場合、介入群でも多くの患者が再発しており、今後このコホートに対するより強度の高い治療の有効性が検証されるべきであると感じた。【前立腺がん】LBA6Phase 3 trial of 177Lu-PSMA-617 combined with ADT + ARPI in patients with PSMA-positive metastatic hormone-sensitive prostate cancer (PSMAddition)1.背景177Lu-PSMA-617は、VISION試験において転移を有する去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)に対する生存延長効果を示した。PSMAddition試験は、ホルモン感受性転移を有する前立腺がん(mHSPC)を対象に、177Lu-PSMA-617をアンドロゲン除去療法(ADT)+アンドロゲン受容体経路阻害薬(ARPI)に併用する有効性と安全性を検証した第III相無作為化試験である。2.試験デザインデザイン国際多施設共同、無作為化、第III相試験対象PSMA PET/CTで陽性のmHSPC男性(ECOG PS 0~2)介入群177Lu-PSMA-617(7.4GBq 6週ごと×最大6コース)+ADT+ARPI対照群ADT+ARPI無増悪確認後のクロスオーバー許可(BIRC評価)主要評価項目画像評価による無増悪生存期間(rPFS)副次評価項目全生存期間(OS)などESMO2025ではrPFSの第2回中間解析、OSの第1回中間解析の結果が発表された。3.結果1,529例がスクリーニングされ、PSMA陽性1,232例のうち1,144例が無作為化割り付け(177Lu-PSMA-617群572例、対照群572例)された。年齢中央値68歳(範囲:36~91歳)、70歳以上が43%、ECOG PS 0~1が97%以上であった。high volumeが68%、de novo症例が52.1%を占めた。使用ARPIはアビラテロン37.6%、アパルタミド32.9%、エンザルタミド22.1%、ダロルタミド6%であった。主要評価項目であるrPFS中央値は両群とも未到達であったが、HR:0.72(95%CI:0.58~0.90、p=0.002)と統計学的有意差をもって併用群で改善がみられた。事前に設定されたサブグループ(年齢、腫瘍量、PSA値、PSなど)によらず、一貫して併用群が優位であった。OSは中間解析時点で未到達(HR:0.84、95%CI:0.63~1.13、p=0.125)ながら、併用群で生存延長傾向を示した。その他の主要な副次評価項目の結果は以下のとおりである。奏効率(ORR) 85.3%vs.80.8%(CR:57.1%vs.42.3%)PSA進行までの期間 HR:0.42(95%CI:0.30~0.59)48週時点でのPSA<0.2ng/mL達成率 87.4%vs.74.9%mCRPCへの進行時間 HR:0.70(95%CI:0.58~0.84)有害事象(AE)は既知の177Lu-PSMA-617関連毒性とおおむね一致しており、主な毒性プロファイルを以下に示す。Grade≧3 AE 50.7%vs.43.0%177Lu-PSMA-617群でみられた主なAE:口渇(45.7%)、疲労(34.8%)、悪心(34.2%)、便秘(17.9%)、食欲低下(14.4%)、嘔吐(13.8%)、下痢(12.2%)、味覚異常(11.9%)。血液毒性:貧血(28%)、好中球減少(14.7%)、血小板減少(11.2%)と軽度の骨髄抑制がみられたが、治療関連死亡はなし。4.結論177Lu-PSMA-617をADT+ARPIに併用することにより、PSMA陽性mHSPCにおけるrPFSを有意に改善し、主要評価項目を達成した。OSは未成熟ながら改善傾向を示しており、副次評価項目(PSA応答、mCRPC進行時間など)も一貫して併用群が優れていた。安全性は既知の範囲内で、新たな毒性シグナルは認められなかった。5.筆者コメントcontrol armがARPI doubletであり、現在の標準治療に一致した治療が行われている。PFS benefitがあることは今回の結果で判明したが、OSの長期フォローアップデータが気になるところである。本邦ではmCRPCに対する177Lu-PSMA-617が保険承認されたが、日常臨床で広く利用可能になるには、まだまだ時間がかかりそうである。【尿路上皮がん】LBA7Disitamab vedotin (DV) plus toripalimab (T) versus chemotherapy (C) in first-line (1L) locally advanced or metastatic urothelial carcinoma (la/mUC) with HER2-expression1.背景これまでに、HER2陽性UCに対して、HER2抗体薬物複合体(ADC)であるdisitamab vedotin(DV)が有効性を示し、さらに抗PD-1抗体toripalimab(T)との併用は前治療歴を問わずORR76%、PFS中央値9.3ヵ月と有望な結果が報告されている。RC48-C016試験は、未治療のHER2発現(IHC 1+以上)局所進行または転移を有するUCを対象に、DV+T併用療法の1次治療における有効性と安全性を化学療法と比較した第III相試験である。2.試験デザインデザイン中国で実施された多施設共同、オープンラベル、無作為化第III相試験対象切除不能局所進行または転移を有するHER2 IHC 1+/2+/3+ UC、ECOG 0~1介入群(DV+T群)DV(2.0mg/kg)+T(3.0mg/kg)併用療法対照群(化学療法群)シスプラチンまたはカルボプラチン+ゲムシタビン主要評価項目BIRC評価によるPFSおよびOS副次評価項目治験医師評価PFS、ORR、奏効期間(DOR)、安全性など3.結果811例がスクリーニングされ、484例が無作為化割り付けされた。年齢中央値66歳、ECOG 0~1が97%以上であった。HER2発現はIHC 1+が22.6%、IHC 2+/3+は77.4%であった。内臓転移あり、上部尿路原発、シスプラチン適格性ありの患者は、いずれも半分程度であった。PFS中央値はBIRC評価でDV+T群13.1ヵ月vs.化学療法群6.5ヵ月であり、HR:0.36(95%CI:0.28~0.46、p<0.0001)と統計学的に有意にDV+T群で良好であった。12ヵ月PFS率は54.5%vs.16.2%であった。すべての事前に設定されたサブグループ(HER2発現、PD-L1、臓器転移、年齢、PS)で一貫した有効性を示した。OSはDV+T群31.5ヵ月vs.化学療法群16.9ヵ月(95%CI:14.6~21.7)であり、HR:0.54(95%CI:0.41~0.73、p<0.0001)と統計学的に有意にDV+T群で良好であった。ランドマークOSは12ヵ月OS率79.5%vs.62.5%、18ヵ月64.6%vs.48.1%であった。ORRは76.1%vs.50.2%(CR:4.5%vs.1.2%)、DoR中央値は14.6ヵ月vs.5.6ヵ月であり、DV+T群で良好な傾向にあった。化学療法群の64.7%が後治療を受け、そのうち40.2%が抗HER2療法、50.2%がPD-1/PD-L1阻害薬を使用していた。DV+T群では27.2%が後治療を受けており、主に殺細胞性抗がん剤による治療であった。安全性についてのプロファイルは以下のとおりである。治療関連有害事象(TRAE):DV+T群98.8%、化学療法群100%Grade≧3 TRAE:55.1%vs.86.9%主なAEトランスアミナーゼ上昇(43~49%)、貧血(42%)、末梢神経障害(18%)、発疹(21%)など免疫関連AE18.9%がGrade≧3、重篤な毒性増加はなし治療中止率12.3%vs.10.4%総じてDV+T併用は化学療法より有害事象が少なく、許容可能な安全性を示した。4.結論RC48-C016試験は、HER2発現mUCにおいて、抗HER2 ADCと抗PD-1抗体の併用が化学療法と比較して有効性を示した初めての第III相試験である。DV+T療法は1次治療HER2陽性進行尿路上皮がんの新たな標準治療候補として位置付けられる。5.筆者コメント本試験はHER2発現1+以上が参加可能となっており、今後プラクティスで使用可能となった場合は適格性を有する患者の割合はそれなりに多いことが想定される。本試験は中国のみで実施されたPhaseIIIであるが、SGNDV-001試験(DV+ペムブロリズマブのPhaseIII)でも同様の有効性が実証されるか、結果が期待される。HER2発現UCの1次治療として今後標準治療に組み込まれることが期待され、EV+ペムブロリズマブ療法との使い分けなど、今後検討が必要となる。直接比較はできないが、DVは比較的毒性がマイルドである可能性があり、プラクティスを大きく変化させる可能性がある。また、DV後のEV(またはEV後のDV)といったADC製剤の逐次的治療のデータなどの蓄積も今後期待される。

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慢性便秘の改善にキウイが有効

 キウイは健康的なおやつ以上のものかもしれない。英国栄養士会(BDA)が新たに作成した慢性便秘に関する包括的な食事ガイドラインによれば、キウイ、ライ麦パン、特定のサプリメントは、薬に頼らずに慢性便秘を管理するのに役立つ可能性があるという。英キングス・カレッジ・ロンドン(KCL)准教授で登録栄養士でもあるEirini Dimidi氏らが作成したこのガイドラインは、「Journal of Human Nutrition and Dietetics」に10月13日掲載された。 Dimidi氏は、「本ガイドラインは医薬品ではなく、食事療法による便秘治療に焦点を当てている」と説明する。同氏は、「便秘に悩む人が、科学的エビデンスに基づいた情報を得ることで、自分で症状をコントロールして、生活の質(QOL)に多大な影響を及ぼしている症状を改善することができると感じてくれることを願っている」と話している。 慢性便秘とは、週3回未満の排便が3カ月以上続く状態と定義されている。慢性便秘の一般的な症状は、硬い便や塊状の便、膨満感、腹部不快感、吐き気などである。慢性便秘は世界人口の10%以上に影響を与えている。米国消化器病学会によると、米国だけでも年間約250万人が便秘を理由に医療機関を受診している。慢性便秘の状態では、お腹の張りや痛み、倦怠感から体を動かすことができなかったり気分に影響したりする可能性がある」と米栄養と食事のアカデミー(AND)の広報担当者で管理栄養士のSue-Ellen Anderson-Haynes氏はNBCニュースに語っている。 この研究でDimidi氏らは、慢性便秘に対する食事による介入の効果を検討した75件のランダム化比較試験(RCT)を対象に4件のシステマティックレビューとメタアナリシスを行い、その結果に基づいて、GRADEアプローチ(エビデンスの確実性と推奨の強さを評価する手法)によりガイドライン(推奨事項)を作成した。主な推奨事項は以下の通り。・キウイ:毎日3個(皮付きまたは皮なし)食べると便通が改善する。・ライ麦パン:1日6〜8枚食べると排便回数を増やすことができる。ただし、これは全ての人にとって現実的とはいえない可能性があることをDimidi氏らは指摘している。・食物繊維サプリメント:サイリウム(オオバコ)などのサプリメントを1日当たり10g以上摂取すると排便回数が増え、いきみが楽になる。・酸化マグネシウムのサプリメント:1日0.5〜1.5g摂取することで排便回数が増え、腹部膨満感や痛みが軽減される。・プロバイオティクス:プロバイオティクス全体としては一部の人で効果のある可能性があるが、個々の種または菌株ごとの効果は不明である。・ミネラル豊富な水:マグネシウムを豊富に含む水の1日0.5~1.5Lの摂取を他の治療法と組み合わせることで、効果を高めることができる。 Dimidi氏は、「このガイドラインは、『食物繊維や水の摂取量を増やしましょう』というような漠然とした既存の助言を、より具体的で研究に裏打ちされた助言に置き換えることを目的としている」と述べている。同氏らによると、慢性便秘の既存の治療計画のほとんどは薬物療法に依存しているという。Dimidi氏は、「高繊維食は、健康全般や大腸がんのリスク軽減など、腸の健康にも非常に有益であるというエビデンスはいくつもある。しかし便秘に関しては、それが便秘を改善すると断言できるほどの十分なエビデンスは存在しない」とNBCニュースに対して語っている。 このガイドラインの作成には関与していない米ミシガン大学の消化器専門医であるWilliam Chey氏は、本ガイドラインを、「主治医の診察を待つ間に自分で試すことのできることについてまとめた貴重なロードマップだ」と評している。

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お腹の張りも奥が深いのです【非専門医のための緩和ケアTips】第111回

お腹の張りも奥が深いのです「お腹の張り」を訴える患者さん、内科診療をしている方であればしばしば遭遇するでしょう。皆さんはこうしたケースにどのように対応していますか? ちょっと曖昧な訴えにも感じられ、ついつい便秘と決めがちではないでしょうか。今回の質問肝臓がんでお腹の張りを訴える患者さんがいます。毎日というわけではないですが排便はあるようで、腹水が原因かと思っています。ただ、そこまで緊満しているわけではなく、対応を悩んでいます。これは腹水が溜まっている患者さんなどでよく遭遇する状況かと思います。患者さんの訴えも曖昧で、詳しく聞いてみても「とにかくお腹が張ってつらいんです」といった訴えが続くこともよくあります。緩和ケアは高齢患者も多く、詳細な情報収集が難しいのはよくあることなので、診察や検査といった客観的な情報と総合して、アプローチを考えるのが基本です。こういった時、我々の思考プロセスとしてまず考えたいのは、「緊急性の高い疾患がないか」という点です。とくに消化管穿孔、絞扼性イレウスといったところは見逃したくないですね。私の経験上では、普段から腹痛を訴えることの多い患者さんだったものの、痛みがいつもより強いようであることに違和感を覚え、検査をしました。その結果、腫瘍破裂による、腹腔内出血でした。血液は腹膜への刺激となるため、腹痛の原因となります。その典型的な例が子宮外妊娠ですが、がん患者にも同じような機序の痛みが起こりえます。「いつもの腹痛」と片付けていれば、対応が遅れるところでした。さて、上記のような緊急性の高い疾患がないことが確認できた後は、便秘や腹水貯留といった頻度の高い病態や症状であるの可能性を念頭に置いて、排便コントロールと腹水に対する介入を複数試すことになるでしょう。腹水であれば減塩、輸液量の調整、利尿薬を追加し、それでもコントロールが難しい場合は腹腔穿刺をして排液を試みます。それでも改善が乏しければ、NSAIDsやステロイドなどで腹膜の炎症を軽減しつつ、オピオイドの使用も検討します。その経過中に便秘が生じないように、緩下薬なども調整します。いずれにしても、患者さんの主観的な症状を否定せず、可能性のある病態に対し、安全な範囲で介入しながら様子を見る、という地道な診療が続きます。看護師にも観察してもらい、ケアで工夫できることを発見してもらったり、良い変化があれば小さいことでも患者と医師に共有してもらったりすることも重要です。なかなかすっきりしない症状ではありますが、私自身はこのような対応をすることが多いです。皆さんの工夫もぜひ教えてください。今回のTips今回のTips腹部の張りは鑑別に立ち返り、試行錯誤しながら対応しましょう。

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オピオイド鎮痛薬のトラマドール、有効性と安全性に疑問

 がんによる疼痛や慢性疼痛に対して広く処方されている弱オピオイド鎮痛薬(以下、オピオイド)のトラマドールは、期待されたほどの効果はないことが、新たな研究で明らかにされた。19件の研究を対象にしたメタアナリシスの結果、トラマドールは中等度から重度の疼痛をほとんど軽減しないことが示されたという。コペンハーゲン大学(デンマーク)附属のリグスホスピタレットのJehad Ahmad Barakji氏らによるこの研究結果は、「BMJ Evidence Based Medicine」に10月7日掲載された。研究グループは、「トラマドールの使用は最小限に抑える必要があり、それを推奨するガイドラインを再検討する必要もある」と結論付けている。 研究グループによると、トラマドールはモルヒネと同様に脳内のオピオイド受容体に結合することで鎮痛作用を発揮するが、セロトニンやアドレナリンといった脳内化学物質の再取り込みを阻害することで、抗うつ薬に似た作用も併せ持つ。トラマドールは、モルヒネ、オキシコンチン、フェンタニルといったより強力なオピオイドよりも安全で依存性が低い選択肢と見なされていることから使用が急増し、現在では米国で最もよく処方されるオピオイド鎮痛薬の一つになっているという。 Barakji氏らは今回、総計6,506人の慢性疼痛患者を対象とした19件のランダム化比較試験のデータを統合して解析した。5件の研究は神経痛、9件は変形性関節症、4件は腰痛、1件は線維筋痛症に対するトラマドールの使用を検討していた。 その結果、トラマドールは慢性疼痛の軽減に対してわずかに効果があるものの、その効果量は、NRS(Numerical Rating Scale;痛みを0〜10の数字で評価する指標)で1.0ポイントという、事前に設定した臨床における最小重要差には届かないことが明らかになった。重篤な有害事象については、トラマドール群ではプラセボ群と比較してリスクが2倍に増加しており、このリスクは、主に心臓関連イベントと新生物の発生率の高さに起因していた。その他の副作用には、吐き気、めまい、便秘、眠気などがあった。 これらの結果からBarakji氏らは、「疼痛管理のためにトラマドールを使用することで生じる潜在的な有害性は、その限られた有効性を上回る可能性が高い」と述べている。また同氏らは、対象とした研究の実施方法に鑑みると、これらの結果はトラマドールの有効性を過大評価する一方で、有害性を過小評価している可能性が高いと指摘している。 さらにBarakji氏らは、トラマドールの使用を控えるべき理由として依存と過剰摂取を挙げ、「世界中で約6000万人が依存を引き起こすオピオイドの作用を経験している。2019年には薬物使用により約60万人が死亡した。そのうちの約80%はオピオイド関連、約25%はオピオイドの過剰摂取によるものだった」と述べている。 研究グループは、「米国では、オピオイド関連の過剰摂取による死亡者数は、2019年の4万9,860人から2022年には8万1,806人に増加した。これらの傾向と今回の研究結果を考慮すると、トラマドールをはじめとするオピオイドの使用は可能な限り最小限に抑えるべきだ」と主張している。

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息切れがして歩きが遅い【漢方カンファレンス2】第8回

息切れがして歩きが遅い以下の症例で考えられる処方をお答えください。(経過の項の「???」にあてはまる漢方薬を考えてみましょう)【今回の症例】80代男性主訴呼吸困難、歩きが遅くなった既往慢性閉塞性肺疾患(COPD)、腰椎椎間板ヘルニア生活歴50歳まで喫煙、ADLは自立。病歴50歳時にCOPDと診断。呼吸器内科で吸入薬を中心とした治療を受け、咳や痰がときおりある程度で落ち着いていた。3ヵ月前に腰痛が悪化して、腰椎圧迫骨折の診断で3週間の入院加療を行った。退院後、腰痛は軽減して日常生活は問題なくできていたが、歩行時の息切れがひどくなった。以前から妻と散歩をしていたが、妻の歩きについていけなくなった。呼吸機能検査では悪化はなく、漢方治療を希望して受診した。現症身長161cm、体重52kg。体温35.4℃、血圧115/77mmHg、脈拍70回/分 整、SpO2 98%。呼吸音は異常なし、軽度の下肢浮腫あり。経過初診時「???」エキス3包 分3で治療開始。(解答は本ページ下部をチェック!)1ヵ月後息切れは変わらない。夜間尿が1〜2回に減った。下肢の浮腫は減ったが冷えは変わらない。ブシ末3包 分3を追加2ヵ月後腰痛と息切れがずいぶん楽になった。散歩に行く意欲がでてきた。3ヵ月後散歩で息切れがなくなって、妻と同じ速度で散歩ができるようになったと喜んでいる。問診・診察漢方医は以下に示す漢方診療のポイントに基づいて、今回の症例を以下のように考えます。【漢方診療のポイント】(1)病態は寒が主体(陰証)か、熱が主体(陽証)か?(冷えがあるか、温まると症状は改善するか、倦怠感は強いか、など)(2)虚実はどうか(症状の程度、脈・腹の力)(3)気血水の異常を考える(4)主症状や病名などのキーワードを手掛かりに絞り込む【問診】<陰陽の問診> 寒がりですか? 暑がりですか? 体の冷えを自覚しますか? 体のどの部位が冷えますか? 横になりたいほどの倦怠感はありませんか? 寒がりです。 足、とくに膝下が冷えます。 足は冷えますが、足の裏がほてることがあります。 横になりたいほどではありませんが歩くと息切れがひどくきついです。 入浴で長くお湯に浸かるのは好きですか? 入浴で温まると、腰痛はどうなりますか? 冷房は苦手ですか? 入浴の時間は長いです。 入浴後は腰痛が軽くなります。 冷房は好きでも嫌いでもありません。 のどは渇きますか? 飲み物は温かい物と冷たい物のどちらを好みますか? のどは渇く方です。 温かい飲み物が好きです。 <飲水・食事> 1日どれくらい飲み物を摂っていますか? 食欲はありますか? 胃は弱くありませんか? だいたい1日1L程度です。 食欲はあります。 胃は丈夫です。 <汗・排尿・排便> 汗はよくかきますか? 尿は1日何回出ますか? 夜、布団に入ってからは尿に何回行きますか? 便は毎日出ますか? 下痢や便秘はありませんか? 汗はあまりかきません。 尿は1日12回くらいです。 夜は3回トイレに行くので困っています。 便は毎日出ます。下痢はありません。 <ほかの随伴症状> 全身倦怠感はありますか? 朝が一番きついということはありませんか? 腰痛はどうですか? よく眠れますか? 歩くときついですがじっとしていれば倦怠感はありません。 朝は調子がよいです。 腰痛は随分よくなりましたが動くとまだ痛いですね。 睡眠は問題ありません。 日中の眠気はありませんか? 目の疲れや抜け毛は多くありませんか? 足をよくつりますか? 頭痛やめまいはありませんか? 下肢はむくみませんか? 眠気はありません。 目の疲れや抜け毛はありません。 足はつりません。 頭痛やめまいはしません。 夕方になると下肢がむくみます。 風邪をひきやすいですか? 咳や痰はひどいですか? 風邪はあまりひきません。 咳はたまに出る程度です。痰も量は少ないです。 ときどき粘っこい痰が出ます。 イライラや不安はありませんか? どれくらい生活に支障が出ていますか? イライラや不安はありませんが、何をするにも億劫になりました。以前はグランドゴルフもやっていましたが、いまは散歩にいく気力もありません。 【診察】顔色は正常。脈診ではやや沈・強弱中間の脈。また、舌は暗赤色、乾燥した白苔が中等量、舌下静脈の怒張あり。腹診では腹力は中等度より軟弱、胸脇苦満(きょうきょうくまん)・心下痞鞕(しんかひこう)はなし、腹直筋緊張あり、上腹部と比べて下腹部の腹力が低下している小腹不仁(しょうふくふじん)を認めた。下肢に浮腫が軽度あり、触診で冷感あり。カンファレンス 今回の症例は、呼吸困難感と歩行速度の低下を訴える高齢の男性です。 COPDはコモンな疾患で、抗コリン薬やステロイドの吸入が標準的な治療ですが、それ以外の治療は乏しいです。本症例は呼吸機能検査の悪化はなく、腰椎圧迫骨折を契機に出現した症状ということで、肺というよりは体力や筋力の低下が問題で「リハビリを頑張ってください」と言いたくなりますね。 そうですね。COPDの治療には生活の質の改善や身体活動性の維持・向上が含まれますから、リハビリの強化は必要ですね。 全身倦怠感や息切れのために積極的にリハビリが行えない、意欲が低下してなかなかリハビリが進まないケースも多いですね。 そういうケースに漢方薬を使うことでリハビリがスムーズに行えるように支えることができたらよいね。 それでは、順番にみていきましょう。 下肢、とくに膝下の冷えの訴えがあるので陰証でしょうか。そのほか寒がり、入浴の時間は長い、温かい飲み物を好む、触診で下肢に冷感があるなどが陰証を示唆する所見です。ただし、横になりたいほどの倦怠感はない、脈は強弱中間であることから、少陰病や厥陰病(けついんびょう)というわけではないようです。 そうだね。ただし腰痛が入浴で温まると改善するということは、冷えの関与が考えられるね。 入浴で温まると痛みがよくなるということで附子(ぶし)を使いたくなります。 それでは漢方診療のポイント(2)の虚実はどうだろう? 脈は強弱中間、腹力は中等度より軟弱であることからやや虚証〜虚実間です。 そうですね。では気血水の異常を考えてみましょう。 歩行できついという全身倦怠感があるので気虚でしょうか? 疲れやすさは気虚と考えることができるね。ただし本症例では気虚の倦怠感の特徴である食欲低下や昼食後の眠気は目立たないね。また、風邪をひきやすいことも気虚の特徴だけど、そちらもないよね。 気虚はありそうだけど、典型的な気虚というわけでもなさそうですね。 また、朝調子が悪いという気鬱の全身倦怠感でもないようです。 血の異常はどうだろう? 抜け毛、こむら返り、目の疲れなど血虚はありません。瘀血は舌暗赤色、舌下静脈の怒張があります。 水毒の所見としては下肢の浮腫がありますね。また夜間尿3回は夜間頻尿で水毒と考えることができますね。ここまでをまとめると、太陰病で、気虚はありそうだけど典型ではない、瘀血、水毒となりますね。 散歩に行く意欲がない、何をするのも億劫というのは気鬱でしょうか? 気鬱としてもよいかもしれないね。ただし、下肢の冷え、腰痛、夜間頻尿、歩行速度の低下などと意欲の低下を一元的に考えるとどうだろう? なるほど、心身一如の漢方治療ですね。それらを加齢に伴う症状として考えると漢方医学的には腎虚(じんきょ)と捉えることができませんか? そのとおり。腎の働きが加齢とともに弱くなり、腎の機能が衰えてくることを腎虚というよ。代表的なものは腰以下の症状(冷え、腰痛、下肢痛、下肢の脱力感など)、排尿異常(夜間頻尿、頻尿や尿量減少:尿が多くても少なくてもよい)、精力減退だね。下肢(とくに膝から下)の冷えが典型だけど、手掌や足底のほてりを訴えることもあるよ。加齢に伴う症状として、聴力障害、視覚障害、呼吸器症状なども腎虚による症状だね(腎虚については本ページ下部の「今回のポイント」の項参照)。 腎虚といえば、坐骨神経痛や夜間頻尿など、腰下肢痛や排尿異常を思い浮かべてしまいますが、さまざまな症状が含まれるのですね。 先天の気は腎に蓄えられることから、全身倦怠感や意欲の低下といった気虚と類似した症状もあらわれることがあるのも理解できるね。 現代ではフレイルやサルコペニアなどが老化の概念として活用されていますね。とくにフレイルには多面性があって、身体的フレイル、心理・精神的フレイル、社会的フレイルに分類され、心理社会的側面な意味を含むことも腎の働きと似ていますね。 あとは細かい点だけど、足の裏がほてるという症状も腎虚で出現する症状だよ。 本症例をまとめましょう。 【漢方診療のポイント】(1)病態は寒が主体(陰証)か、熱が主体(陽証)か?寒がり、下肢、とくに膝下が冷える、入浴は長い、下肢に冷感→陰証(太陰病)(2)虚実はどうか脈:やや強弱中間、腹:中等度より軟弱→やや虚証〜虚実間(3)気血水の異常を考える歩くと倦怠感→気虚?、舌暗赤色、舌下静脈の怒張→瘀血、下肢浮腫→水毒、下肢冷えと浮腫、腰痛、夜間頻尿、意欲の低下→腎虚(4)主症状や病名などのキーワードを手掛かりに絞り込む加齢症状、小腹不仁解答・解説【解答】本症例は、腎虚に対して用いる八味地黄丸(はちみじおうがん)で治療をしました。【解説】腎虚に対して用いる漢方薬が八味地黄丸です。古典を参考に八味丸(はちみがん)という場合もあります。八味地黄丸は、地黄(じおう)、山茱萸(さんしゅゆ)、山薬(さんやく)が体を栄養・滋潤する作用があり、そのほか、利水作用のある茯苓(ぶくりょう)、沢瀉(たくしゃ)、駆瘀血作用のある牡丹皮(ぼたんぴ)に加え、体を温める桂皮(けいひ)と附子で構成されます。八味地黄丸は太陰病の虚証に適応となる漢方薬ですが、虚証の程度は軽く、虚実間からやや実証まで幅広く適応になります。ひどく虚弱で胃が弱い人ではしばしば胃もたれすることがあるので注意が必要です。そのため食前ではなくあえて食後に内服する、あるいは減量して用いる場合もあります。この胃もたれは構成生薬の地黄が原因です。八味地黄丸に牛膝(ごしつ)と車前子(しゃぜんし)を加えたものが牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)で浮腫やしびれが強い場合に用います。また、冷えが目立たない症例では桂皮と附子を除いた六味丸(ろくみがん)を用います。腎虚の治療の効果判定は、加齢に伴う症状ですから、内服によりすべての症状がすみやかに改善することは難しく、じっくりと月単位で内服してもらいます。八味地黄丸は軽度アルツハイマー認知症患者に対してアセチルコリンエステラーゼ阻害薬に併用することで、女性や65歳以上では有意に認知機能を改善させたという前向きオープンラベル多施設ランダム化比較試験があります1)。また、精神症状に関する報告として、八味地黄丸を意欲の低下を目標に15症例に投与したところ、7割以上に有効で八味地黄丸には意欲賦活作用があるとする症例報告2)やうつ病患者の倦怠感や気力の低下に八味地黄丸や六味丸が有効であったとする報告3)があります。また呼吸器症状に関しても気管支喘息に対する八味地黄丸の効果4)やストレスに起因した慢性咳嗽に八味地黄丸が有効であった症例5)が報告されています。腎虚の治療薬は、夜間頻尿や過活動膀胱などに対する泌尿器科的な症状や牛車腎気丸が末梢神経障害に用いるといったイメージが強いですが、腎虚はもっと幅広い概念であるため、精神症状や呼吸器症状に有効であるということにも注目すべきでしょう。「腎は納気(のうき)を司(つかさ)どる」といわれ、肺だけでなく腎も呼吸にも関与しているとされているのです。今回のポイント「腎虚」の解説生命活動を営む根源的エネルギーである気(き)は「先天の気」と「後天の気」に分けられます。生まれた後は呼吸や消化によって後天の気を取り入れることができます。一方、先天の気は、生まれながらの生命力というべきもので「腎」に宿ります。腎は現代医学的な腎臓とは異なる概念で、全身の生命活動を支える根本的な臓器として、水分代謝の調整のほか、成長、発育、生殖能、呼吸機能などが含まれます。腎の働きは加齢とともに弱くなり、腎の機能が衰えてくることを腎虚といいます。代表的なものは腰以下の症状(冷え、腰痛、下肢痛、下肢の脱力感など)、排尿異常(夜間頻尿、頻尿や尿量減少:尿が多くても少なくてもよい)、精力減退です。下肢(とくに膝から下)の冷えが典型ですが、手掌や足底のほてりを訴えることもあります。加齢に伴う症状として、聴力障害、視覚障害、呼吸器症状なども腎虚による症状です。また、腎は思考力、判断力、集中力の保持にかかわっていると考えられ、腎虚ではそれらが低下して、易疲労感や意欲の低下が出現します。腎虚を示唆する身体所見として、上腹部より下腹部の腹力が減弱した小腹不仁(図)があります。今回の鑑別処方今回は八味地黄丸や牛車腎気丸から展開する漢方治療を紹介します。八味地黄丸は腎虚に対して用いる漢方薬ですが、さらにほかの漢方医学的異常を認める場合はそれぞれの病態に応じてほかの漢方薬と併用します。八味地黄丸や牛車腎気丸には附子が含まれていますが、冷えを伴わない場合は六味丸を用います。六味丸は小児の発育障害のような病態に用いられた歴史があります。逆に冷えや痛みが強い場合には八味地黄丸や牛車腎気丸にブシ末を併用して冷えや痛みに対する治療を強化します。また腰以下の冷え、とくに腰周囲や大腿部の冷えが目立つ場合は苓姜朮甘湯(りょうきょうじゅつかんとう)を併用します。全身倦怠感が強く気虚を合併していれば、補中益気湯を併用することもあります。補中益気湯と八味地黄丸の併用はしばしば男性不妊に対する治療で用います。八味地黄丸に含まれる地黄で胃もたれを生じるような場合は人参湯(にんじんとう)と併用することがあります。また脱水傾向があるとか、気道粘膜が乾燥傾向にあって乾性咳嗽を伴う場合には、麦門冬湯(ばくもんどうとう)を併用します。麦門冬湯には滋潤(じじゅん)作用といって潤す作用があり、COPD患者で乾燥傾向があってしつこい咳嗽(喀痰はあっても少量)がある場合に適応です。今回の症例で乾性咳嗽が目立っていれば併用すればよいでしょう。この麦門冬湯と八味地黄丸の併用は煎じ薬では味麦地黄丸(みばくじおうがん)という漢方薬と類似した構成です。また、当科では「八味丸と桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)に持ち込めば勝ち戦」という漢方治療の口訣があります。最初は食欲低下、冷え、不眠など、それぞれの漢方治療を行うけれども、最後に八味地黄丸や桂枝茯苓丸を内服できるようになればこちらの漢方治療が上手くいったという意味です。さまざまな症状が改善して漢方医学的異常として最後に残るのは腎虚と瘀血ということで、なんとも味わい深い口訣です。漢方外来ではそれらを飲んでいて、積極的に運動をするなど、活動的な高齢者も多いです。2つの漢方薬はともに甘草を含まないことから偽アルドステロン症の恐れもなく、地黄による胃もたれや漢方薬によるアレルギーさえなければ長期内服しやすい組み合わせになります。参考文献1)Kainuma M, et al. Front Pharmacol. 2022;13:991982.2)尾﨑哲, 下村泰樹. 日東医誌. 1993;43:429-437.3)Yamada K, et al. Psychiatry Clin Neurosci. 2005;59:610-612.4)伊藤隆ほか. 日東医誌. 1996;47:443-449.5)木村容子ほか. 日東医誌. 2016;67:394-398.

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下剤のルビプロストン、重大な副作用にアナフィラキシー追加/厚労省

 2025年10月22日、厚生労働省より添付文書の改訂指示が発出され、下剤のルビプロストン(商品名:アミティーザカプセル)や帯状疱疹ワクチン(同:シングリックス筋注用)において、「重大な副作用」が追加された。 ルビプロストンについては、国内のアナフィラキシー関連症例12例を評価したところ、本剤との因果関係が否定できない症例を5例(死亡0例)認めたため、使用上の注意を改訂することが適切と判断され、「重大な副作用」の項にアナフィラキシーが追記された。 また、乾燥組換え帯状疱疹ワクチン(チャイニーズハムスター卵巣細胞由来)では、ギラン・バレー症候群5例のうち因果関係が否定できない症例を1例認めたため、「重大な副作用」の項にギラン・バレー症候群が追記された。 そのほか、閉経期女性のホルモン補充療法(HRT)に用いられる15品目に対し、「臨床使用に基づく情報」の項に卵胞ホルモン製剤単剤使用における乳がんに関する注意喚起としてHRTと乳癌の危険性が追加された。

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片頭痛発作の急性期治療と発症抑制の両方に有効な経口薬「ナルティークOD錠75mg」【最新!DI情報】第49回

片頭痛発作の急性期治療と発症抑制の両方に有効な経口薬「ナルティークOD錠75mg」今回は、経口カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体拮抗薬「リメゲパント(商品名:ナルティークOD錠75mg、製造販売元:ファイザー)」を紹介します。本剤は、わが国で初めての片頭痛の急性期治療および発症抑制の両方を適応とする治療薬です。<効能・効果>片頭痛発作の急性期治療および発症抑制の適応で、2025年9月19日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>片頭痛発作の急性期治療:通常、成人にはリメゲパントとして1回75mgを片頭痛発作時に経口投与します。片頭痛発作の発症抑制:通常、成人にはリメゲパントとして75mgを隔日経口投与します。<安全性>重大な副作用として、過敏症(頻度不明)があります。その他の副作用として、便秘(1%以上)、浮動性めまい、悪心、下痢、アラニンアミノトランスフェラーゼ増加(いずれも0.5~1%未満)、上気道感染、尿路感染、単純ヘルペス、前庭神経炎、白血球減少症、好中球減少症、鉄欠乏性貧血、貧血、食欲亢進、うつ病、不眠症、易刺激性、異常な夢、錯乱状態、不安、傾眠、片頭痛、頭痛、錯感覚、頭部不快感、味覚不全、ドライアイ、回転性めまい、動悸、高血圧、潮紅、呼吸困難、腹痛、嘔吐、腹部不快感、胃食道逆流性疾患、肝機能異常、脂肪肝、発疹、そう痒症、ざ瘡、多汗症、蕁麻疹、頚部痛、背部痛、頻尿、疲労、倦怠感、口渇、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ増加、血中クレアチンホスホキナーゼ増加、体重増加、肝酵素上昇、血中クレアチニン増加、糸球体濾過率減少、肝機能検査値上昇、血圧上昇、心電図QT延長、サンバーン(いずれも0.5%未満)があります。<患者さんへの指導例>1.この薬は、片頭痛発作の急性期治療および発症抑制に用いられます。「前兆のない片頭痛」および「前兆のある片頭痛」のどちらにも使用できます。2.発作時には、頓用で服用します。ただし、1日に1錠を超えての服用はできません。3.発症を予防するには、隔日(2日に1回)、決まった時間に服用します。この薬を服用した日は、急性期治療として追加服用はできません。服用前であれば、急性期治療のために頓用で服用できますが、同日中に発症予防のための追加服用はできません。服用日以外の日に発作が生じた場合は、1日1錠まで服用ができます。<ここがポイント!>片頭痛は代表的な一次性頭痛の1つで、本邦における年間有病率は約8%(前兆のない片頭痛が5.8%、前兆のある片頭痛が2.6%)と報告されています。片頭痛は、日常生活に大きな支障を来す疾患であり、多くの患者が家事や仕事の生産性低下に悩まされています。片頭痛の主な誘因としてはストレスが最も多く、その他に女性ホルモンの変動、空腹、天候の変化、睡眠不足または過眠、特定の香水やにおいなどが挙げられます。片頭痛の発症機序は完全には解明されていませんが、「三叉神経血管説」が広く受け入れられています。この説では、何らかの原因で三叉神経を構成する無髄線維(C線維)からカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)が放出され、脳血管の拡張や神経の炎症を引き起こすことで痛みが生じると考えられています。リメゲパントは、CGRP受容体拮抗薬であり、CGRPによる血管拡張や神経原性炎症の誘導を阻害することで、片頭痛に伴う痛みや諸症状を軽減します。本剤の特徴は、わが国で初めて片頭痛発作の急性期治療および発症抑制の両方に適応を有する点です。急性期治療には片頭痛発作時に頓服で服用し、発症抑制には隔日で服用します。また、本剤は薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛:MOH)を誘発する可能性が低いと考えられているため、MOHの発症リスクを有する患者、またはMOHの既往のある患者について、添付文書上で特別な注意喚起をしていません。急性期治療に関しては、中等度または重度の片頭痛を有する日本人患者を対象とした国内第II/III相試験(BHV3000-313/C4951022試験)において、主要評価項目である投与2時間後の疼痛消失割合は、本剤75mg群で32.4%、プラセボ群で13.0%でした。群間差(本剤群-プラセボ群)は、19.4%(95%信頼区間[CI]:12.0~26.8)で本剤群のプラセボ群に対する優越性が検証されました(p<0.0001、Mantel-Haenszel検定)。一方、発症抑制に関しては、日本人患者を対象に片頭痛の予防療法を評価した国内第III相試験(BHV3000-309/4951021試験)において、主要評価項目である二重盲検期の最後の4週間(Week 9~12)での1ヵ月当たりの片頭痛日数のベースラインからの平均変化量は、本剤群で-2.4日(95%CI:-2.93~-1.96)、プラセボ群で-1.4日(95%CI:-1.87~-0.91)でした。両群間の差は-1.1日(95%CI:-1.73~-0.38)であり、本剤群のプラセボ群に対する優越性が検証されました(p=0.0021、反復測定線形混合効果モデル)。

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直腸異物はどの年齢に多いか?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第292回

直腸異物はどの年齢に多いか?私は普段直腸異物を診ていないのですが、直腸異物に関する論文はたぶん消化器科医よりたくさん読んでいると思います。それはそれでコワイな…。高位まで移行した物体では直腸穿孔や腹膜汚染を伴うことがあり、これらは出血や敗血症性ショックに至る重篤な合併症を引き起こしかねません。Bhasin S, et al. Rectal foreign body removal: increasing incidence and cost to the NHS. Ann R Coll Surg Engl. 2021;103:734-737.これは、イギリスにおいて2010~19年で直腸内異物除去のために病院で処置を受けた患者を対象とした研究です。イギリス国内で合計約3,500例、1年間で約389例に相当するとされています。国内では、年間約348ベッド日が使用されたと報告されています。直腸異物の患者さん、約85%が男性であり、年齢分布は20代前半と50代前半にピークがありました。10代から20代に変わるタイミングで爆増しているので、性的嗜好が大きく影響していることが推察されます。50代で多くなる理由はちょっとわかりません…。高齢化とともに便秘などの問題が増えることで、排便困難を解決しようとする過程で意図せず異物が挿入されてしまう、といったことが推測されますが、これも想像の域を出ません。小児(10~14歳)の小さなピークも観察されており、もしかすると虐待なども含まれているのかなと邪推しますが、これも理由は不明です。医療資源への財政負担もこの論文では提示されており、著者らは年間の保守的な推計で約34万ポンド(約6,800万円)と算出しています。公衆衛生的観点では、著者らは本事象の増加はインターネット上でのポルノの普及や多様な性具の入手と関連している可能性があるとしています。ただ、この統計データは手術コードに依存するため、因果まで推定できるわけではありません。確実なのは、20代で急に増えるということくらいでしょうか。

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