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STEMIへの線溶療法、薬剤により死亡リスクに差/Lancet

 ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者に対する線溶療法では、薬剤などによって重要な相違点があり、アルテプラーゼ急速投与、テネクテプラーゼ(tenecteplase)およびレテプラーゼ(reteplase)は、ストレプトキナーゼ(streptokinase)やアルテプラーゼ非急速投与より優先して考慮されるべきで、線溶療法への糖蛋白IIb/IIIa阻害薬の追加は避けるべきである。タイ・ウボンラーチャターニー大学のPeerawat Jinatongthai氏らが、無作為化試験のシステマティックレビューとネットワークメタ解析の結果を報告した。線溶療法は、医療資源が乏しい環境下のSTEMI患者に対する、機械的再灌流に代わる治療法であるが、各種線溶療法を比較した包括的なエビデンスは不足していた。Lancet誌2017年8月19日号掲載の報告。約13万例を含む計40試験をネットワークメタ解析 研究グループは、PubMed、Embase、the Cochrane Library、ClinicalTrials.gov、WHO-ICTRPを用い、2017年2月28日までに発表された、成人STEMI患者の再灌流療法としての線溶薬の無作為化比較試験(対照は他の線溶薬、プラセボまたは無治療。単独投与または補助的な抗血栓療法との併用投与は問わず)を検索。STEMIに対する再灌流療法の適応が承認されている線溶薬(ストレプトキナーゼ、テネクテプラーゼ、アルテプラーゼ、レテプラーゼ)を検証した試験のみを対象に、ネットワークメタ解析を行った。 主要評価項目は、30~35日以内の全死因死亡率、安全性評価項目は大出血(BARC基準の3a、3b、3c)。 選択基準を満たした試験は40件で、12種類の異なる線溶療法を受けた12万8,071例が解析に組み込まれた。死亡リスク増加、出血リスク増加の種類別特性が明らかに アルテプラーゼ急速投与(tPA_acc)+非経口抗凝固薬(PAC)と比較し、ストレプトキナーゼ+PACおよびアルテプラーゼ非急速投与(tPA)+PACは、全死因死亡のリスク増加と有意な関連が認められた。リスク比(RR)は、ストレプトキナーゼ+PACが1.14(95%信頼区間[CI]:1.05~1.24)、tPA+PACが1.26(同:1.10~1.45)であった。一方、tPA_acc+PACと、テネクテプラーゼ+PACおよびレテプラーゼ+PACは、死亡リスクに差はなかった。 大出血に関しては、テネクテプラーゼ+PACは、他のレジメンと比較して出血リスクの低下と関連している傾向があった(RR:0.79、95%CI:0.63~1.00)。一方、線溶薬+PACへの糖蛋白IIb/IIIa阻害薬(GP)の追加は、tPA_acc+PACと比較して、大出血リスクの増加がみられた。RRは、tPA+PAC+GPが1.27(95%CI:0.64~2.53)、テネクテプラーゼ+PAC+GPが1.47(同:1.10~1.98)、レテプラーゼ+PAC+GPが1.88(同:1.24~2.86)、ストレプトキナーゼ+GPが8.82(同:0.52~151.04)であった。 なお著者は、大出血の定義の異質性や、観察期間が短いこと、脳卒中の診断法に関する詳細が不明などを研究の限界として指摘し、「脳卒中の転帰に対する線溶薬の有効性については解釈に注意が必要である」と述べている。

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抗凝固薬の中和薬:マッチポンプと言われないためには…(解説:後藤 信哉 氏)-715

 手術などの侵襲的介入時におけるヘパリン抗凝固効果はプロタミンにより中和可能であり、経口抗凝固薬は外来通院中の症例が使用しているので、ワルファリン抗凝固効果は新鮮凍結血漿により即座に、ビタミンKの追加により緩除に中和できることを知っていても、中和薬の必要性を強く感じる場合は少なかった。止血と血栓は裏腹の関係にあるので、急性期の血栓、止血の両者を管理する必要のある症例の多くは入院症例であり、その多くは調節可能な経静脈的抗凝固療法を受けていた。 モニタリングせずに使用する経口抗トロンビン、抗Xa薬(いわゆるNOACs、DOACs)は、血栓イベントリスクの高い機械弁、僧帽弁狭窄症では使われていない。緊急手術が必要な状態になった場合、重篤な出血が薬剤により惹起されたとき、薬剤投与を中止して止血できるまで、どの程度の時間が必要であるかがわからない。プロトロンビンを濃縮した血液製剤などを使うと直感的に止血を実感できる。本研究ではトロンビンの酵素作用を直接阻害するダビガトランに中和抗体を作用させれば、即座に抗トロンビン効果は消失することを示した。臨床的な止血効果をおそらく医師は現場で実感したと想定するが、臨床試験にて有効性を数値で示すことはできなかった。 血液凝固カスケードは液相の反応が広く知られるが、現実の血液凝固の重要部分は活性化血小板膜上にて起こる。Xaは血小板上のプロトロンビナーゼ複合体の形成に未知の複雑なメカニズムで作用するので、Xaのおとりではプロトロンビン時間が正常化しても血栓イベントは増えるような結果であった。ダビガトランの抗体の作用は、Xa阻害薬の中和薬よりは作用が直線的である。それでも、「抗凝固薬を不必要に多用して、自然歴ではない出血イベントを多発させ、抗凝固薬の中和薬を多用する」のは、マッチポンプ的で患者にも社会にも不利益をもたらす。抗Xa薬の中和薬よりは直線的だがダビガトラン抗体に価値があるのかどうか、現時点では筆者にもわからない。 放置すれば近未来ほぼ確実に血栓イベントが起こる症例に、抗凝固薬を限局的に使用する世界が筆者には効率的に思える。

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イダルシズマブはダビガトラン中和薬として有用/NEJM

 イダルシズマブ(商品名:プリズバインド)の、ダビガトラン(商品名:プラザキサ)の中和薬としての有効性、安全性について検討した臨床試験「RE-VERSE AD」のフルコホート解析の結果が発表された。緊急時においてイダルシズマブは、迅速、完全かつ安全にダビガトランの抗凝固作用を中和することが示されたという。イダルシズマブの有用性は、同試験の登録開始90例の時点で行われた中間解析で示されていたが、今回、米国・トーマス・ジェファーソン大学のCharles V. Pollack氏らが全503例の解析を完了し、NEJM誌オンライン版2017年7月11日号で発表した。39ヵ国173施設で登録された503例について評価 試験は多施設共同前向き非盲検にて行われ、イダルシズマブ5g静注がダビガトランの抗凝固作用を中和可能かについて、重大出血を呈した患者(A群)または緊急手術を要した患者(B群)を対象に検討された。 主要エンドポイントは、イダルシズマブ投与後4時間以内のダビガトラン抗凝固作用の最大中和率(%)で、希釈トロンビン時間とエカリン凝固時間について確認された。副次エンドポイントは、止血までの時間や安全性評価などが含まれた。 2014年6月~2016年7月に、39ヵ国173施設で503例が登録された。A群は301例、B群は202例であった。95%以上の患者が、心房細動に関連する脳卒中予防の目的でダビガトランを服用しており、年齢中央値は78歳であった。患者報告に基づく、最終ダビガトラン投与から初回イダルシズマブ投与までの時間は、A群14.6時間、B群18.0時間であった。なお被験者の多くが試験登録時に合併症を有していた。A群では、消化官出血が45.5%、頭蓋内出血32.6%、外傷性出血25.9%などが、B群では重大または命を脅かす出血が88.0%、外科的介入に至った出血が20.3%、出血で血行動態が不安定となった患者が37.9%いた。最大中和率は100%(95%CI:100~100) 解析の結果、ダビガトランの最大中和率は、希釈トロンビン時間とエカリン凝固時間ともに100%(95%信頼区間[CI]:100~100)であった。 A群における止血までの時間中央値は、2.5時間であった。B群では、計画的処置介入の開始までの時間中央値は1.6時間であった。また、B群において、93.4%の患者が周術期止血は正常と評価され、軽度異常は5.1%、中等度異常は1.5%であった。 90日時点で、血栓性イベントが報告されたのはA群6.3%、B群7.4%であった。また死亡率はそれぞれ18.8%、18.9%であった。安全性に関わる重篤有害なシグナルはなかった。 結果を踏まえて著者は、「イダルシズマブは、重大出血を呈した患者や緊急手術を要した患者でダビガトランの中和に有効であった。血栓溶解または血栓摘出は、イダルシズマブによるダビガトラン中和後に安全に実行可能であることを示すケースが報告されているが、さらなる市販後調査によって、引き続きイダルシズマブの有効性をモニタリングし、安全性を評価することが求められる」とまとめている。

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心不全の鉄補充治療において、経口剤ではフェリチンが上昇せず運動耐容能も改善しない(解説:原田 和昌 氏)-701

 心不全はしばしば心臓外の臓器に合併症(併存症)を持つ。欧州心不全学会の急性、慢性心不全の診断と治療ガイドライン2012年版には、「ほとんどの併存症は心不全の状態が不良であることや予後不良因子と関係する。したがって貧血など一部の併存症はそれ自体が治療対象となる」と記載された。 併存症は高齢者心不全においてとくに重要であり、2016年に上梓されたわが国の高齢心不全患者の治療に関するステートメントでは、「感染症、貧血、腎不全、脳梗塞、認知症、骨折や関節症などによるロコモティブ症候群、甲状腺疾患、閉塞性肺疾患、悪性疾患などの併存症の多くが独立した心不全の予後規定因子である」と表現された。 なかでも貧血は重要な併存症である。貧血の治療には輸血、赤血球造血刺激因子製剤(ESA)や鉄剤の投与などがあるが、左室駆出率の低下した心不全(HFrEF)患者にESAを投与したRED-HF試験では有効性を示すことができなかった。一方、HFrEF患者の約半数に鉄欠乏がみられること、貧血よりもむしろ鉄欠乏が生活機能の低下や死亡の独立した予測因子になることが報告されている。鉄剤の静脈内投与が心不全の再入院を低下しQOLを改善したことから(FAIR-HF試験、CONFIRM-HF試験)、欧州の心不全治療ガイドライン2016年版は鉄の静脈内投与を推奨した(クラスIIa)。実際HFrEF患者の鉄欠乏は、ミトコンドリア機能低下、筋のサルコメア構造の異常、左室収縮機能と関係することが示されている。 鉄欠乏を伴うHFrEF患者に経口で高用量鉄補充療法を行っても運動耐容能は改善しないことが、IRONOUT HF試験で示された。鉄欠乏は他の試験と同様に、貯蔵鉄を表す血清フェリチン値15~100ng/mLまたはトランスフェリン飽和度<20%で定義した。経口鉄補充は16週時のフェリチンを有意に増加しなかったが、これはカルボキシマルトース鉄静注を用いたFAIR-HF試験で24週時にフェリチンが有意に増加したのとは対照的であった。 高齢者の貧血では潜在的な出血や食事からの鉄の摂取不足が原因となることが多く、経口の鉄補充が有効であることも多い。しかし、慢性炎症では肝臓で産生されるhepcidinが増加し、腸管からの鉄吸収が阻害されるため経口の鉄補充はあまり有効ではない。心不全でもNYHA 1、2度の時期よりhepcidinが増加していることが報告されており、抗血栓治療とならんで鉄欠乏の原因ではないかと推測されている。 Lewis氏、Braunwald氏らが本試験にて何を証明しようとしたのかはよくわからないが、実際hepcidinが高いとフェリチンが上昇しないという関係がしっかりと示されており、経口的な鉄補充が有効でないという結果は当然と考えられる。貯蔵鉄の上昇なしに最大酸素摂取量の改善はありえない。ちなみに、わが国で静注のカルボキシマルトース鉄製剤は認可されていない。

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新規経口抗凝固薬、眼内出血リスクはワルファリンの5分の1

 眼内出血リスクは、新規経口抗凝固薬でワルファリンの約5分の1に低下することが、オーストラリア・アデレード大学のMichelle T. Sun氏らによるメタ解析の結果、明らかとなった。新規経口抗凝固薬のベネフィットは、心房細動患者と静脈血栓塞栓症患者とで類似していた。今回の結果は、自然発生的な網膜または網膜下出血の高リスク患者にとってとくに問題であり、著者は、「周術期には新規経口抗凝固薬を使用したほうが良いかもしれないことが示唆された。今後、眼疾患と心血管疾患の両方を有する患者の最適な管理についての研究が必要である」とまとめている。JAMA Ophthalmology誌オンライン版2017年7月6日号掲載の報告。 研究グループは、ワルファリンと新規経口抗凝固薬の眼内出血リスクを比較する目的で、システマティックレビューとメタ解析を行った。 MEDLINEおよびClinicalTrials.govを用い、2016年8月までに発表された無作為化臨床試験を検索し、特定された臨床試験の論文および他の総説の引用文献についてもマニュアル検索をした。心房細動患者または静脈血栓塞栓症患者が対象であり、新規経口抗凝固薬(ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバンまたはエドキサバン)とワルファリンを比較した第III相無作為化臨床試験で、眼内出血に関するデータが記録された試験をメタ解析の対象とした。 眼内出血に関するデータは、逆分散重み付け固定効果モデルを用いて統合した。データの要約と質の評価はPRISMAガイドラインに従うとともに、2人の研究者が独立してデータを抽出。主要評価項目は、ワルファリンに対する新規経口抗凝固薬の眼内出血イベントとリスク比であった。 主な結果は以下のとおり。・12件の臨床試験(合計10万2,627例)がレビューに組み込まれた。・新規経口抗凝固薬は、ワルファリンと比較し相対的に眼内出血が22%減少した(リスク比:0.78、95%信頼区間[CI]:0.61~0.99)。・有意な異質性は認められなかった(I2=4.8%、p=0.40)。・サブグループ解析でも、新規経口抗凝固薬の眼内出血リスクの低さは同様にみられ、新規経口抗凝固薬の適応症(異質性のp=0.49)または種類(異質性のp=0.15)によって有意差はなかった。・要約推定値は、ランダム効果モデルを用いた場合でも大きな違いはなかった。

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老人性紫斑

老人性紫斑【皮膚疾患】◆病状腕(とくに手首と肘の間)、手の甲、前胸部などにできる暗い赤紫色の斑です。通常は痛みはありませんが、時には痛いこともあります。◆原因軽くぶつけたり、掻いたりすることで毛細血管が破れ、出血することで起こります。老化で血管がもろくなることが主な原因ですが、抗凝固薬の服用、糖尿病などの要因があると起きやすいです。◆治療と予防・数週間で消えますので特別な治療は不要ですが、褐色・黄色の跡が残る場合があります。・内服薬が影響している場合、薬の変更など主治医と相談が必要です。●一言アドバイス他の病気と鑑別するため、出血傾向の有無の検査が必要となる場合があります。監修:ふくろ皮膚科クリニック 院長Copyright © 2017 CareNet,Inc. All rights reserved.袋 秀平氏

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出血か、血栓か:それが問題だ!(解説:後藤 信哉 氏)-690

 アスピリンは抗血小板薬として、心血管イベント後の2次予防に広く用いられている。安全性の高いアスピリンといえども、抗血小板薬なので重篤な出血イベントを惹起する。2次予防の症例であればアスピリンが惹起する出血よりも、アスピリンにより予防される血栓イベントの数が多いとの過去のランダム化比較試験が、2次予防の症例にアスピリンを使用する根拠であった。ランダム化比較試験に参加する症例は若い。世界は高齢化している。ランダム化比較試験ではメリットのほうが多いとされた2次予防の症例であってもアスピリンを長期服用すれば、ランダム化比較試験ではイベントの確認されていない「高齢者」になる。 英国には長期観察臨床データベースが多い。本研究も、一過性脳虚血発作、虚血性脳卒中、急性心筋梗塞後にアスピリンを開始した症例を長期観察している。開始時には、いずれの症例もアスピリンの適応であった。30日、6ヵ月、1年、5年、10年と観察するとイベントが起こる。英国では看護師の機能分化が進んで、臨床研究を主務とする看護師もいる。イベントの観察は医師または看護師によりなされた。 長期に観察すると患者は老いる。年間約3%が出血イベントを起こし、1.5%が重篤な出血イベントを起こした。75歳以上、85歳以上の症例では医療を要する出血、入院を要する出血ともに75歳以下の症例より増加した。高齢者の出血イベントとして消化管出血が多かったので、PPIにより予防できるかもしれない。日本ではアスピリン、PPIともに処方薬であるが、米国ではOTCとしてスーパーで売っている。一過性脳虚血発作、虚血性脳卒中、心筋梗塞などを発症したら、数年はアスピリンの服用に意味がある。服用開始5年、10年後にメリットを得ているのか、副作用のほうが多いのかは、正直わからない。多くのランダム化比較試験は2年程度の観察の結果に過ぎない。患者の高齢化、長期服用中の老化による条件の変化がリスク・ベネフィットに与える影響の定量評価が必要である。 比較的安全なアスピリンにて、開始時には血栓イベントリスクの高い症例であっても長期服用では出血が無視できないことを本研究は示した。アスピリン・クロピドグレルの抗血小板併用療法、抗凝固療法による出血イベントリスクはさらに大きい。抗血栓薬処方時には、その時の患者にとって「出血か、血栓か:それが問題だ!」との意識をもって診療に当たることが必須である。

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2017年度認定内科医試験、直前対策ダイジェスト(後編)

【第1回】~【第6回】は こちら【第7回 消化器(消化管)】 全9問消化器は、最近ガイドライン改訂が続いているため、新たなガイドラインはチェックしておきたい。また潰瘍性大腸炎とクローン病については毎年出題されているので、両疾患の相違点を確認しておくことも重要である。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)胃食道逆流症(GERD)について正しいものはどれか?1つ選べ(a)コレシストキニンは下部食道括約筋(LES)収縮作用を持つ(b)シェーグレン症候群の合併症に胃食道逆流症(GERD)がある(c)食道粘膜障害の内視鏡的重症度は、自覚症状の程度と相関する(d)非びらん性胃食道逆流症はびらん性胃食道逆流症と違い、肥満者に多いという特徴を持つ(e)除菌治療によるピロリ菌感染率低下により、今後、患者数は減少すると予想されている例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第8回 消化器(肝胆膵)】 全8問肝臓については、各々の肝炎ウイルスの特徴と肝細胞がんの新たな治療アルゴリズムを確認しておきたい。膵臓については、膵炎の新たなガイドラインについて出題される可能性があるので、一読の必要がある。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)肝炎について正しいものはどれか?1つ選べ(a)急性肝炎でAST(GOT)>ALT(GPT)は、極期を過ぎて回復期に入ったことを示している(b)de novo B型肝炎は、HBV既往感染者(HBs抗原陰性・HBc抗体陽性・HBs抗体陽性)にステロイドや免疫抑制薬を使用した際にHBV再活性化により肝炎を発症した状態であり、通常のB型肝炎に比べて劇症化や死亡率は低い(c)HBVゲノタイプC感染に伴うB型急性肝炎では、肝炎が遷延もしくは慢性化する可能性がほかのゲノタイプよりも高い(d)B型急性肝炎とキャリアからの急性発症との鑑別にIgM-HBc抗体価が使用される(e)HBs抗原陽性血液に曝露した場合の対応として、 被曝露者がHBs抗原陰性かつHBs抗体陰性であれば十分な水洗いと曝露時のワクチン接種ならびに72時間以内のB型肝炎免疫グロブリン(HBIG)が推奨されている例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第9回 血液】 全7問血液領域については、何といっても白血病が設問の中心である。認定内科医試験では、治療よりも染色の特徴、検査データ、予防因子についてよく出題される傾向がある。このほか、貧血に関する出題も多いので、しっかりと押さえておきたい。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)急性白血病について正しいものはどれか?1つ選べ(a)急性骨髄性白血病(AML)MO・M5b・M7では、MPO染色陰性であるため、注意する必要がある(b)急性前骨髄球性白血病(APL)では、白血病細胞中のアズール顆粒内の組織因子やアネキシンIIにより、播種性血管内凝固症候群(DIC)を高率に合併する(c)AMLのFAB分類M5では、特異的エステラーゼ染色・非特異的エステラーゼ染色とも陽性を示す(d)AMLの予後不良因子は、染色体核型がt(15:17)・t(8:21)・inv(16)である(e)ATRAを用いた治療中にレチノイン酸症候群または分化症候群を発症した場合、治療中断による白血病増悪を考え、ステロイド併用などを行いつつ治療を継続すべきである例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第10回 循環器】 全9問循環器領域については、弁膜症や心筋梗塞など主要疾患の診断確定に必要な身体所見と検査所見をしっかり押さえることが重要である。高血圧や感染性心内膜炎の問題は毎年出題されているので、フォローしておきたい。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)弁膜症について正しいものはどれか?1つ選べ(a)僧帽弁狭窄症(MS)は、本邦では高齢化に伴い近年増加傾向である(b)僧帽弁狭窄症(MS)では、拡張期ランブルを聴診器ベル型で聴取する(c)僧帽弁狭窄症(MS)では、心音図でQ-I時間が短いほど、II-OS時間が長いほど重症と判定する(d)僧帽弁狭窄症(MS)の心臓超音波検査では、僧帽弁前尖の拡張期後退速度(DDR)の上昇を認める(e)僧帽弁逸脱症(MVP)は肥満体型の男性に多く認める例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第11回 神経】 全8問神経領域については、今年度も「脳卒中治療ガイドライン2015」と血栓溶解療法の適応に関する出題が予想される。各神経疾患における画像所見、とりわけスペクトとMIBGシンチグラフィは毎年出題されている。アトラス等でしっかりと確認しておきたい。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)脳梗塞について正しいものはどれか?1つ選べ(a)心原性脳塞栓症は、階段状増悪の経過をとることが多い(b)一過性脳虚血発作(TIA)で一過性黒内障の症状を認めた場合、椎骨脳底動脈系の閉塞を疑う(c)TIAを疑う場合のABCD2スコアは、A:Age(年齢)、B:BP(血圧)、C:Consciousness level(意識障害の程度)、D:duration(持続時間)とdiabetes(糖尿病の病歴)の5項目をスコアリングし、合計したものである(d)CHADS2スコア1点の非弁膜症性心房細動(NVAF)患者の脳卒中発症予防には、ワルファリンによる抗凝固療法が勧められている(e)血栓溶解療法(アルテプラーゼ静注療法)は、血小板8万/mm3では適応外である例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第12回 総合内科/救急】 全5問総合内科/救急では、「心肺蘇生ガイドライン2015」や、JCS・GCSスコアリング、確率計算の出題が予想される。2016年12月に「日本版敗血症診療ガイドライン2016」が発表されたので、内容を押さえておきたい。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)事前確率25%で感度60%・特異度80%の検査が陽性であった場合の正しい事後確率はどれか?1つ選べ(a)15%(b)20%(c)50%(d)60%(e)80%例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【例題の解答】第7回:(b)、第8回:(d)、第9回:(b)、第10回:(b)、第11回:(e)、第12回:(c)【第1回】~【第6回】は こちら

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ワルファリン服用者の骨は脆い?(解説:後藤 信哉 氏)-676

 ワルファリンは、ビタミンK依存性の凝固因子の機能的完成を阻害する抗凝固薬である。ワルファリン服用者にはビタミンKの摂取制限を指導する。ビタミンKは「ビタミン」であるため、摂取制限により「ビタミン」不足の症状が起こる場合がある。ビタミンKを必要とする生体反応として骨代謝は重要である。ワルファリンはビタミンK依存性の凝固蛋白の機能的完成を阻害して、血液凝固を阻害する。骨の石灰化に必須のオステオカルシンの活性化にもビタミンKが必要である。ビタミンK摂取制限、ワルファリンの服用により、出血以外に骨粗鬆症も懸念される。もともと高齢で骨が弱い症例が、ワルファリン治療の対象となる。臨床的仮説として「ワルファリンの服用者では非服用者よりも骨粗鬆症性骨折が増える」とするのは妥当である。 本研究は香港の無名化臨床データベースを用いた。ワルファリンとダビガトランの服用はランダム化されていない。リスク因子などをそろえるpropensity matchを行っているが、臨床医がワルファリンまたはダビガトランを選択した個別の理由があると考えると、リスク因子がそろってワルファリン群とダビガトラン群がランダムに割り付けられていないことが本研究の限界である。2年程度の観察にて、骨粗鬆症性骨折はダビガトラン群の1.0%、ワルファリン群の1.5%に起こった。ランダム化比較試験が示した年間3%以上の重篤な出血の半分以下ではあるが、ワルファリン使用例では骨折にも注意が必要である。 50年の経験を有するワルファリンの欠点を、臨床医は十分に理解している。心房細動症例に起こる心原性脳塞栓症は予防したい。しかし、抗凝固薬には欠点がある。ワルファリンの欠点のうち、一部はNOACsにより改善できた。しかし、重篤な出血を起こすNOACsは安心して長期服用できる薬ではない。ブームに乗ってNOACsの使用推奨をするよりも、NOACsの出血の問題を克服できる次世代の薬剤開発に、時間とエネルギーを割くべきである。 本研究では香港の無名化(annotated)臨床データを用いている。電子カルテから個人を特定できる情報をすべて抜き取って院内のサーバーに蓄積する。そのannotatedな臨床データを日本中から集めて解析すれば、日本のデータを使って多くのclinical questionに関する回答を不完全ながら得ることができる。これはアカデミアの研究というよりも、コンピューターによる自動化で可能な事務仕事といえるレベルでできる。オープンソースにして誰もが解析可能とすれば、日本の臨床研究の質を楽に、一気に引き上げることができる。法整備ができれば、電子カルテ業界は競ってpopulation scienceのデータ化を容易にできるシステムを作ると思う。多くの人が自分でデータベースを操作してみれば、臨床医も「エビデンス」の限界を直感できるであろう。技術的には十分可能と思うので、あとは国民のコンセンサスの問題である。

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循環器内科 米国臨床留学記 第20回

第20回 米国の電子カルテ事情日本でも電子カルテが一般的になっていますが、米国では電子カルテのことをElectrical Medical Record (EMR)と言います。今回は、米国におけるEMR事情について書いてみたいと思います。米国のEMRの特徴の1つとして、どこからでもアクセスできるというのが挙げられます。「今日は疲れたから、残りのカルテは家で書きます」といった感じで、インターネットで世界中のどこからでも電子カルテにアクセスできます。実際、私も帰国時に日本から米国の患者に処方したり、カルテをフォローしたりすることがあります。日本でも電子カルテが登場して久しいですが、インターネットを介して患者のカルテにアクセスするのはまだ一般的でないかもしれません。Medscapeのリポートによると、2016年の段階で91%の医師が電子カルテを使用しており、これは2012年の74%から比べても大幅な増加です。その中でも、41%と圧倒的なシェアを誇るのがEPICというシステムです。ほかのEMRと比べても、EPICはuser friendlyで使いやすく、日常臨床を強力にサポートしてくれます。私のいるカリフォルニア大学アーバイン校では、現在はEPICと異なるシステムを使っていますが、評判が悪いため、来年EPICに移行します。乱立していたEMRの会社も徐々に淘汰され、数社に絞られてきているようです。また、同じEMRシステムを使うと、異なる病院間でも情報が共有できるといったサービスもあります。以前いたオハイオ州のシンシナティーという町にはEPIC everywhereというシステムがあり、EPICを使っているシンシナティー市内すべての病院の情報が共有されていました。ほかの病院の情報に簡単にアクセスできると、無駄な検査を減らすことができます。EMRは、入院時に必要なオーダーを入れないとオーダーを完了できないシステムになっています。例えば、深部静脈血栓症(DVT)予防は、入院時に必須のオーダーセットに入っているため、オーダーせずに患者を入院させようとすると、ブロックサインが現れ、入院させることが難しくなっています。このようなシステムは日本の電子カルテにもあると思います。また、代表的なEMRのシステムには、ガイドラインに準じたクリニカルパスが組み込まれています。 主なものとしては、敗血症ショックセット、糖尿病ケトアシドーシス(DKA)セット、急性冠動脈症候群(ACS)セットなどが挙げられます。例えばACSで入院すると、ヘパリン、アスピリン、クロピドグレル、スタチン、β遮断薬をクリック1つで選択するだけですから、確かに処方し忘れなどは減ります。オーダーセットは非常に楽ですし、DKAなどは勝手に治療が進んでいき、うまくいけば入院時のワンオーダーで、ほぼ退院まで辿り着けるかもしれません。しかしながら、一方で医者が状況に応じて考えなければいけないことが減り、時には危険なことも起こります。患者の状態は、1人ずつ異なりますから、tailor madeな治療が必要になります。実際、DKAで入院した患者がDKAオーダーセットによる多量の生理食塩水で心不全を起こすというようなことは、何度も見てきました。このほか、EMRで問題となっているのは、いわゆる“copy and paste”です。デフォルトのカルテでは、正常の身体所見が自動的に表示されます。注意を怠ると、重度の弁膜症患者にもかかわらず「雑音がない」とか、心房細動なのに脈拍が“regular”などといった不適切な記載となります。実際に、このようなことはしょっちゅう見受けられます。他人のカルテをコピーすることも日常茶飯事なので、4日前に投与が終わったはずの抗生剤が、カルテの記載でいつまでも続いているということもあります。Medscapeの調査でも66%の医者が“copy and paste”を日常的に(時々から常に)使用しているとのことでした。外来でのEMRは、Review of System、服薬の情報、予防接種(インフルエンザ、肺炎球菌)、スクリーニング(大腸ファイバーなど)などをすべて入力しなければ、カルテを終了(診察を終了)できなくなっています。こうした項目を入力しないと医療点数(診療費)に関わってくるからです。その結果、EMRに追われてしまい、患者を見ないでひたすらコンピューターの画面を見て診療しているような状況に陥りがちです。こうなると、自分がEMRを操作しているのか、EMRに操作されているのかわからなくなります。いろいろな問題がありますが、EMRは日々進歩している印象があります。使い勝手は良いのですが、最終的には医者自身が頭を使わければ患者に不利益が被ることもあるため、注意が必要です。

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いわゆるコッツン外傷について【Dr. 中島の 新・徒然草】(166)

百六十六の段 いわゆるコッツン外傷について脳外科でも総合診療科でも、よく出くわすのが軽い頭部外傷、いわゆるコッツン外傷です。「足を滑らせて転倒し、後頭部を打ってしまった。意識ははっきりしているが、心配なので診てほしい」といった訴えで、患者さんが来院されます。これに対して、ついついやってしまいがちな対応が、頭部CTを撮影してとくに異常がないので「心配要りません」と安直に帰してしまうことです(昔の私がそうでした)。数時間後に、急性硬膜下血腫や遅発性外傷性脳内血腫を来して大変なことになってしまった、ということをこれまで10回ほど経験しました。割合からすれば、100例に1例か200例に1例くらいのものだとは思いますが、実際の診療では用心するに越したことはありません。このような地雷を正確に検知するのは不可能なので、リスク評価をして対処するべきだと私は思います。後に状態が悪化するリスクとして、私は以下の項目をチェックするようにしています。60歳以上の高齢者アルコールを飲んでいるワルファリンやアスピリンなど、出血を来しやすい薬剤を服用している受傷時に一過性の意識障害があった嘔吐があった痙攣発作があった嗅覚障害がある軽い外傷とはいえない(階段から転落した、など)独居であるこのようなリスクがあった場合にどうするのがベストかは、その医療機関の設備などで変わってくると思います。必ずしも入院可能であったり、CTが利用できたりするとは限りませんから。しかし、どんな場合でも大切なことは、リスクをチェックする今は良くても後に悪化する可能性を患者さんによく説明する上記をカルテに記録して残しておくということです。リスクのチェックは大変そうに見えますが、慣れれば体感的には1分もかかりません。後に悪化する可能性については、具体的な症状(ロレツが回らない、呼んでも起きない、歩きにくくなる、など)を説明し、実際にそのようなことが起こった場合はどうすればよいか、たとえば夜中でも電話してもらうとか救急車を呼ぶとか、もあわせて説明しておくとよいでしょう。私自身は、注意すべき具体的症状と当院の夜間休日を含めた電話番号を書いた紙をあらかじめ準備しておき、「頭部外傷時の注意書き」として患者さんにお渡ししています。きちんとリスクをチェックし、後々のことも説明しておくと、患者さんのほうも「なんて親切なお医者さん!」と思ってくれるのか、あまりトラブルになるようなこともありません。次回は、私が経験したこれまでの大失敗の数々を紹介いたします。最後に1句コッツンに リスクを評価 ぬかりなく

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ワルファリンはなぜ負け続けるのか?(解説:香坂 俊 氏)-668

心房細動に対するカテーテルアブレーションはわが国でも広く行われているが、まれに脳梗塞などの合併症を起こすことがある(1%以下だが、主治医としては絶対に避けたい合併症の1つ)。そうした塞栓系のリスクを減らすためにはアブレーション前後の抗凝固薬管理が重要となるわけだが、、、、<これまでの大前提>これまでの研究から、ワルファリンを中止してヘパリンブリッジを行うよりも、ワルファリンをずっとそのまま中止せずに継続したほうが合併症のリスクを減らせることがわかっている(ただ、ヘパリンブリッジも現場ではまだ広く行われている)。<この試験の仮説>このRE-CIRCUIT試験では、継続的に周術期に投与する抗凝固薬をワルファリンからダビガトラン(NOACと呼ばれる新規抗凝固薬の1つ)にしたら、もっと結果が良くなるのではないか? ということを検証している。そのため104の施設(日本の施設も12施設含まれている)から704人のAFアブレーション患者を登録し、術前投薬をワルファリンかダビガトランでランダム化した(ブラインドはしていない)。手技の4~8週前から抗凝固を開始し、両薬剤とも手技の日の朝まで服用することが決められていた。この結果、アブレーション後に大量出血を起こした患者はダビガトランで5人 (1.6%)、 ワルファリンでは22 人(6.9%)であった。統計的に補正しハザード比を計算すると、80%近くのリスク減ということになる(ハザード比:0.22、95%信頼区間:0.08~0.59)。さて、この稿のテーマは、なぜワルファリンはNOACに負け続けるのか、ということである。当初(2008年~13年くらいまで)心房細動や深部静脈血栓のRCTでワルファリンとNOACはまったくの互角であった。さらに、人工弁など抗凝固が「決定的に必要」な症例ではNOAC(ダビガトラン)のほうで成績が悪く、この分野での適応はまだNOACでは通っていない。しかし、冠動脈疾患を合併した心房細動の症例を対象とした試験(PIONNEER AF-PCI試験:昨秋発表)や今回のRE-CIRCUIT試験などでワルファリンはNOACに負け続けている(大出血などsafety endpointにおいて)。これは自分が思うに、ワルファリンはPIONNEER AF-PCI やRE-CIRCUITなど「抗凝固の適応そのものを問う」ような分野では、強く力を発揮し過ぎるのではないか? 臨床試験では●NOACは安全性に重点をおいた用量設定を行っている(しかも変動しない)●これに対し、ワルファリンは INR 2~3 をターゲットにTTR(percent time in therapeutic INR range)70%以上を要求されるこれが人工弁のようなスーパーハイリスク患者群であれば適切な威力を(塞栓などefficacy endpointに)発揮するものの、PIONEER の冠動脈疾患(抗血小板薬をすでに使用)+心房細動 や 今回 RE-CIRCUITの塞栓リスクはあるものの1%以下であるというアブレーション症例では強く効き過ぎるのではないかと考えられる(リアルな臨床の場であれば、INRを1.5に落としたりする症例が出るのであろうが、臨床試験ではそれが許されない)。このようにちょっとsafety endpointで考えるといつもワルファリンにかわいそうな結果になってしまうのだが、これもリアルといえばリアルなので(ガイドラインどおり厳密にやるとすればこういう結果になる)、NOACはコストの問題さえクリアできれば、引き続きこうした抗凝固に迷うような分野で力を発揮していくのではないだろうか。

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日本人心房細動患者における左心耳血栓、有病率と薬剤比較:医科歯科大

 心房細動(AF)は、一般的な心臓不整脈であり、血栓塞栓性事象を含む心血管罹患率および死亡率の増加と関連している。東京医科歯科大学の川端 美穂子氏らは、抗凝固療法中に前処置経食道心エコー(TEE)を受けている日本人非弁膜症性心房細動(NVAF)患者における左心耳(LAA)血栓の有病率を評価し、ワルファリンと直接経口抗凝固薬(DOAC)の有効性の比較を行った。Circulation journal誌オンライン版2017年2月7日号の報告。 抗凝固療法を3週間以上行ったのち、前処置TEEを受けたNVAF患者559例(男性:445例、年齢:62±11歳)をレトロスペクティブに検討した。 主な結果は以下のとおり。・非発作性のAFは、275例(49%)で認められた。・LAA血栓は、15例(2.7%)で認められた。・LAA血栓の有病率は、DOAC群(2.6%)とワルファリン群(2.8%)で同様であった(p=0.86)。・CHA2DS2-VAScスコア0、脳卒中歴のない発作性AF、一過性虚血発作では、LAA血栓を有する患者はいなかった。・単変量解析では、LAA血栓と関連していた項目は、非発作性AF、心構造疾患、抗血小板療法、左心房の大きさ、高BNP、LAA流量の減少、CHA2DS2-VAScスコアの高さであった。・多変量解析では、BNP173pg/mL以上のみがLAA血栓の独立した予測因子であった。 著者らは「経口抗凝固療法を継続しているにもかかわらず、LAA血栓は、日本人NVAF患者の2.7%に認められた。血栓の発生率は、DOAC群、ワルファリン群で同様であった」としている。

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AFの抗凝固療法での骨折リスク、ダビガトランは低減/JAMA

 非弁膜症性心房細動(NVAF)患者の抗凝固療法では、ダビガトラン(商品名:プラザキサ)がワルファリンに比べ骨粗鬆症による骨折のリスクが低いことが、中国・香港大学のWallis C Y Lau氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2017年3月21日号に掲載された。ワルファリンは、骨折リスクの増大が確認されているが、代替薬がないとの理由で数十年もの間、当然のように使用されている。一方、非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)ダビガトランは、最近の動物実験で骨体積の増加、骨梁間隔の狭小化、骨代謝回転速度の低下をもたらすことが示され、骨粗鬆症性骨折のリスクを低減する可能性が示唆されている。リスクを後ろ向きに評価するコホート試験 本研究は、香港病院管理局が運営するClinical Data Analysis and Reporting System(CDARS)を用いて2つの抗凝固薬の骨粗鬆症性骨折リスクをレトロスペクティブに評価する地域住民ベースのコホート試験である。 CDARSの登録データから、2010年1月1日~2014年12月31日に新規にNVAFと診断された患者5万1,946例を同定した。このうち、傾向スコアを用いて1対2の割合で背景因子をマッチさせた初回投与例8,152例(ダビガトラン群:3,268例、ワルファリン群:4,884例)が解析の対象となった。 ポアソン回帰を用いて、2群の骨粗鬆症による大腿骨近位部骨折および椎体骨折のリスクを比較した。罹患率比(IRR)および絶対リスク差(ARD)と、その95%信頼区間(CI)を算出した。転倒、骨折の既往例でリスク半減 ベースラインの全体の平均年齢は74(SD 11)歳、50%(4,052例)が女性であった。平均フォローアップ期間は501(SD 524)日だった。この間に、104例(1.3%)が骨粗鬆症性骨折を発症した(ダビガトラン群:32例[1.0%]、ワルファリン群:72例[1.5%])。初回投与から骨折発症までの期間中央値は、ダビガトラン群が222日(IQR:57~450)、ワルファリン群は267日(81~638)だった。 ポアソン回帰分析において、ダビガトラン群はワルファリン群に比べ骨粗鬆症性骨折のリスクが有意に低いことが示された。すなわち、100人年当たりの発症割合はそれぞれ0.7、1.1であり、100人年当たりの補正ARDは-0.68(95%CI:-0.38~-0.86)、補正IRRは0.38(0.22~0.66)であった(p<0.001)。また、投与期間が1年未満(1.1 vs.1.4/100人年、p=0.006)、1年以上(0.4 vs.0.9/100人年、p=0.002)の双方とも、ダビガトラン群のリスクが有意に低かった。 転倒、骨折、これら双方の既往歴がある患者では、ダビガトラン群のリスクが統計学的に有意に低かった(1.6 vs.3.6/100人年、ARD/100人年:-3.15、95%CI:-2.40~-3.45、IRR:0.12、95%CI:0.04~0.33、p<0.001)が、これらの既往歴がない患者では両群間に有意差は認めなかった(0.6 vs.0.7/100人年、ARD/100人年:-0.04、95%CI:0.67~-0.39、IRR:0.95、95%CI:0.45~1.96、p>0.99)(交互作用検定:p<0.001)。 事後解析では、ダビガトラン群は無治療の患者との比較でも、骨粗鬆症性骨折リスクが有意に良好であった(ARD/100人年:-0.62、95%CI:-0.25~-0.87、IRR:0.52、95%CI:0.33~0.81)。 著者は、「これら2つの薬剤と骨折リスクの関連の理解を深めるには、無作為化試験を含め、さらなる検討を要する」と指摘している。

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