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1981.

近年の婦人科がん医療の進歩:最近の学会報告から がん医療セミナー 「もっと知って欲しい女性のがん」より

 2008年8月10日、NP法人キャンサーネットジャパン、NPO法人ブーゲンビリア、卵巣がん体験者の会スマイリー、NPO法人女性特有のガンサポートグループオレンジティの4団体が主催する婦人科腫瘍啓発セミナーが開催された。セミナーでの、埼玉医大国際医療センター包括的がんセンター婦人腫瘍科、藤原恵一氏の講演の様子をレポートする。主な婦人科腫瘍とそれぞれの進行がん標準治療 婦人科の主な癌種は子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がんである。これら3種の進行がん標準治療は概ね下記のようになる。・子宮頸がん:プラチナ製剤ベースの化学療法(CDDP)同時放射線療法・子宮体がん:術後放射線療法・卵巣がん:減量手術後化学療法 パクリタキセル(PTX)+カルボプラチン(CBDCA) 進行度別にみると、子宮頸がん・体がんでは早期例が多く0期からII期が半数以上である。特に頸がんでは0期が40%以上を占める。一方、卵巣がんでは進行例が多くIII期からIV期が半数以上を占める。卵巣がんの予後と治療 卵巣がんは予てから死亡率が高く予後が悪いといわれている。その言葉が示すとおり、卵巣がん(約7000人)罹患数は子宮がん(約18000人)の半分以下であるが、死亡数はほぼ同等である(子宮がん5500人に対し卵巣がん4400人)。その理由は、卵巣がんの進行例の割合が多いため(卵巣がんはIII~IV期が70%、子宮がんでは0期~I期が70%)だと考えられる。 進行卵巣がんはインオペ例とされていたが、1980年のCDDP登場、その後のタキサン系薬剤の登場で生存率は改善し、現在CBDCA+PTXが標準療法となっている。だが、その後は有効率の向上を目指し標準治療への抗がん剤のアドオン試験が行われたが予後改善をもたらすにはいたっていない。卵巣がんの治療の今後 そのような中、有効率の改善を目指すべく幾つかの研究が行われている。投与法も研究され、プラチナ製剤の腹腔内投与の有効性が米国NCI(National Institute of Cancer)が推奨されている。そして、2008年、日本発のエポックメイキングな研究がASCO2008で発表された。これは、医師主導治験JGOG3016で、PTX毎週投与の有効性試験有効性が立証された。今後、保健適応取得に向け行政への働きかけが重要となる。 さらに、分子標的治療薬の有効性も検討されており、医師主導の治験で、ベバシズマブの有効性研究も進行中である(GOG218)。 一方、ドラッグラグの問題も以前残っている。ドキシル(リボゾーマドキソルビシン)は世界80カ国で承認され、標準治療無効例における2ndライン薬剤として期待されておる。しかし、日本では以前未承認であり、現在自費投与1回あたり30~40万/回の金銭的負荷がかかる。子宮頸がんの治療 子宮頸がんは0期が多く、この段階で発見できれば多くの患者さんが助かることになる。 そのためには、まず、検診の普及が非常に重要である。実際、検査の普及率が高い国では子宮頸がんの死亡率は低いが、日本の検診普及率は22%であり後進国並みといえる。そのためか、日本では若年層での罹患数が増加しているという問題もある。 子宮がんの治療は、プラチナ製剤の化学療法(CDDP単独またはCDDP+5FU)と放射線治療同時併用が標準治療である。しかし、本邦での普及は依然高いとはいえない。今後の課題として日本人のCDDP適正ドーズの設定、ガイドラインでの積極的取り上げなど一層の普及が急がれる。子宮頸がんの治療の今後 そして、近年のトピックとして子宮頸がんにおけるHPV(ヒトパピローマウイルス)の関与があげられる。HPVは子宮頸がん患者の大部分が感染しており、確率こそ非常に少ないが子宮頸がんの発症因子である。そのため、HPVワクチンがHPVの感染予防および前がん病変への移行を防止するとして多大な効果が期待できる。現在、米国、オーストラリアをはじめ多くの国で承認されており日本でも早期の承認が望まれる。日本の婦人科腫瘍治療 日本の婦人科がんの取り組みは欧米に比べ遅れている。そこに昨今の婦人科医師不足が重なり、婦人科腫瘍の診療は大変な状況である。 婦人科腫瘍の場合、そのような状況下であっても製薬メーカーの協力を仰がず医師主導治験をしている例は多い。医師主導治験に携わる医師は診療後に何ら報酬もない中、ボランティアで協力している。しかしながら、医師主導治験を国に認めさせるシステムがなく、今後は医師主導治験で行政を動かしてゆく手法を検討する必要がある。 また、ドラックラグについても大きな問題である。ドキシルのように海外で実績があるのに日本では未承認という薬剤は多い。副作用発現などのリスクから優先審査への動き鈍ることも一つの要因であるが、一番の被害者は患者さんであることを忘れて欲しくない。この点については、マスメディアの取り上げ方が大きな影響を及ぼすため、正確な情報提供をお願いしたいと考える。

1982.

高齢者の肺炎に対するインフルエンザワクチンの効果は予想よりも低い

インフルエンザ流行時期の高齢者肺炎に対するインフルエンザワクチンの効果は予想よりも低い可能性があることが、地域住民をベースとした調査で明らかとなった。肺炎は高齢者のインフルエンザ感染における最も頻度の高い合併症であり、それゆえインフルエンザワクチンは肺炎の予防に有効な可能性がある。しかし、これまでに報告されたワクチンの有効性を示唆する検討には根本的なバイアスが含まれるため信頼性は高くないという。米国シアトル市のGroup Health Center for Health StudiesのMichael L Jackson氏が、Lancet誌2008年8月2日号で報告した。ワシントン州西部の地域住民をベースとしたnested case-control study本研究は、2000年、2001年、2002年のインフルエンザ流行前および流行時期に、ワシントン州西部の健康維持組織である“Group Health”に登録された65~94歳の免疫応答が正常な高齢者を対象に実施された地域住民ベースのnested case-control studyである。症例は市中肺炎で外来通院中あるいは入院中の患者(診療記録あるいは胸部X線所見で確定)とし、それぞれの症例群に対し年齢および性別をマッチさせた2つの対照群を無作為に選択した。診療記録を評価して、交絡因子として喫煙歴、肺疾患および心疾患への罹患とその重症度などを規定した。ワクチンは高齢者の市中肺炎のリスクを低減させない1,173例の市中肺炎症例および2,346人の対照が登録された。診療記録審査に基づいて規定された併存疾患の存在および重症度で補正したところ、インフルエンザ流行期間中にインフルエンザワクチンを接種しても、高齢者の市中肺炎のリスクは低減しないことが示された(オッズ比:0.92、95%信頼区間:0.77~1.10)。著者は、「インフルエンザ流行時期の高齢者肺炎に対するインフルエンザワクチンの効果は予想よりも低い可能性がある」と結論したうえで、1)インフルエンザ感染を原因とする高齢者の肺炎はわずかであり、そのため感染リスクを低減しても肺炎は減少しない、あるいは2)ワクチンは、肺炎のリスクを有する高齢者におけるインフルエンザ感染リスクの低減にはそれほど有効ではないという2つの可能性を示唆し、「これらの可能性はワクチン開発およびその接種勧告においてまったく異なる意義を持つことから、基礎研究で確定されたエンドポイントを用いた臨床試験を行う必要がある」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

1983.

アミロイドβペプチドワクチンはアルツハイマー病の神経変性を予防しない

 全長アミロイドβペプチド(Aβ42)ワクチン(AN1792)はアルツハイマー病のアミロイド斑を除去するが、進行性の神経変性は予防しないことが、開発中止後の長期的な事後検証試験の結果から明らかとなった。Aβ42ワクチンの第I相試験では、アミロイド斑の除去効果に加え、多様性が高く広範な非用量依存性を示す抗体反応が確認されていた。イギリスSouthampton大学臨床神経科学部のClive Holmes氏が、Lancet誌2008年7月19日号で報告した。第I相試験の登録例を長期フォローアップ 2000年9月にAβ42ワクチンによる免疫療法のプラセボ対照無作為化第I相試験に登録されたアルツハイマー病の80例(もしくは介護者)から、2003年6月に長期的な臨床的フォローアップ、開発中止後の神経病理学的な検証試験あるいはその両方に関する承諾を得た。フォローアップ試験は2006年9月に終了した。 アミロイド斑の評価は、皮質のAβ免疫染色法(Aβ負荷)およびアミロイド斑の除去を反映する固有の組織学的特徴について行った。重篤な認知症あるいは死亡までの生存率はCox比例ハザードモデル用いて評価した。アミロイド斑は有意に除去、生存期間、重篤な末期認知症発症までの期間は改善せず フォローアップ開始前に20例(ワクチン群15例、プラセボ群5例)が、フォローアップ期間中に22例(ワクチン群19例、プラセボ群3例)が死亡した。死亡例のうち9例(いずれもワクチン群)は検証試験に同意していたが、アルツハイマー病以外で死亡した1例は解析から除外した。 ワクチンを投与され神経病理学的な検査を受けた8死亡例では、Aβ負荷が死亡時の年齢でマッチさせた対照群よりも有意に低かった(2.1% vs. 5.1%、p=0.02)。ワクチン群のAβ負荷およびアミロイド斑除去の程度にはばらつきが見られたが、治療期間中に達成された平均抗体反応が高いほどアミロイド斑除去の程度も高かった(Kruskal-Wallis検定:p=0.02)。 ワクチン群の8例中7例(事実上アミロイド斑が完全に除去された例も含まれる)は死亡前に重篤な末期認知症を呈していた。全体では、生存期間(ハザード比:0.93、95%信頼区間:0.43~3.11、p=0.86)あるいは重篤な認知症に至るまでの期間(1.18、0.45~3.11、p=0.73)について、ワクチン群の改善効果を示すエビデンスは得られなかった。 Holmes氏は、「Aβ42ワクチンはアルツハイマー病のアミロイド斑を除去する効果を有するが、進行性の神経変性の予防効果はない」と結論し、「最近の免疫修飾療法の臨床試験ではアミロイド斑の除去効果と高い安全性が証明されているが、今回の試験からはアルツハイマー病の進行性の神経変性を予防するにはAβの除去だけでは不十分なことが示唆される」と指摘している。

1984.

腎細胞癌に対する自己腫瘍由来ワクチンによる術補助療法の有効性示せず

腎細胞癌に対する腎摘出術後の自己腫瘍由来熱ショック蛋白ワクチン(HSPPC-96、vitespen)療法は無再発生存率を改善しないことが、米国M D Anderson癌センターのChristopher Wood氏が行った無作為化第III相試験で明らかとなった。限局性腎細胞癌の標準治療は局所あるいは根治的な腎摘出術であるが、有効な補助療法がないため患者は実質的に再発のリスクに晒されているという。Lancet誌2008年7月12日号(オンライン版2008年7月3日号)掲載の報告。術後補助療法としてのvitespen群と観察群を比較本研究は、局所進行腎細胞癌切除後の高再発リスク例に対する補助療法としての自己腫瘍由来ワクチンvitespenの有用性を評価するもの。vitespen群に409例が、術後に治療を行わない観察群に409例が無作為に割り付けられた。vitespenは週1回4 週間にわたって皮内投与され、その後はワクチン効果が消失するまで2週に1回投与された。主要エンドポイントは無再発生存率とした。全体の再発率、死亡数は同等、早期ステージ群で再発率が優れる傾向フォローアップ期間中央値1.9年における再発率はvitespen群が37.7%(136/361例)、観察群は39.8%(146/367例)であり、両群間に差は認めなかった(ハザード比:0.923、95%信頼区間:0.729~169、p=0.506)。2007年3月までフォローアップを継続したところ、vitespen群で70例が死亡し、観察群の死亡数は72例であったが(p=0.896)、全体の生存データとしてはまだ十分でなく、さらなるフォローアップを続けている。American Joint Committee on Cancer(AJCC)のステージ分類に基づく事前に規定された探索的解析では、ステージIあるいはIIの症例の再発率はvitespen群が15.2%(19例)、観察群は27.0%(31例)であった(ハザード比:0.576、95%信頼区間:0.324~1.023、p=0.056)。vitespen群で最も多く報告された有害事象は、注射部位の紅斑(158例)および硬化(153例)であった。重篤な有害事象としてはグレード2の自己免疫性甲状腺炎が1例で認められたが、治療に関連したグレード3/4の有害事象は見られなかった。Wood氏は、「腎細胞癌に対する腎摘出術後のvitespenによる補助療法は、観察群との間に無再発生存率の差を認めなかった」と結論し、「vitespen群のうち早期ステージの無再発生存率の改善効果を評価するには、さらなる検証が求められる」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

1985.

複数ワクチン接種と健康不良は無関係

1991年の湾岸戦争時も話題になった、複数ワクチン接種と健康不良との関連。本報告は、2003年以降イラク戦争に従軍したイギリス軍兵士を対象にしたもので、ロンドン大学Dominic Murphy氏らによるもの。複数のワクチン接種と健康不良との関係を、ワクチン接種の事実に関する自己申告群と、診療録で確認できた群とで、それぞれ検証した。結果、複数ワクチン接種は健康不良とは無関係と報告している。BMJ誌2008年6月30日号掲載より。ワクチン接種と健康不良の関係を自己申告群と記録確認群で検証試験参加者は、2003年以降イラクに展開し1日に複数ワクチンを受けたと回答した軍人から無作為に選択された4,882例。陸軍68%、海軍14%、空軍16%で、将校が16%、女性は8%。平均32.2歳。このうち、ワクチン接種の記録を確認することができた378例をサブセットグループとし検証対照とした。378人のうち、303人は自己申告と診療録の記録が一致していた。主要転帰項目は、心理的苦痛、疲労、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の症状、健康を自覚、および多発性身体症状。思い出しバイアスで混乱を来した?1日で2種以上のワクチン接種を受けたと自己申告した人は、疲労(調整後リスク比:1.17、95%信頼区間1.05~1.30)、共通した精神障害(1.31、1.13~1.53)、多発性身体症状(1.32、1.08~1.60)を呈する傾向があった。しかし、診療録でワクチン接種が確認できたサブセットグループで検証した結果、1種だった場合と2種以上だった場合とで、健康結果に有意な差は見られなかった。Murphy氏は、「イラク戦争に従軍した英軍兵士の、複数ワクチン接種と有害な健康結果とは無関係。有害な健康結果は、あくまで自己申告した場合に関連が示されており、“思い出しバイアス”(記憶が定かでなく回答に誤りがある等)がかかっていると解釈される」と結論。「湾岸戦争時の検証では、自己申告に基づく検証しか行われなかった。同様のバイアスがあったかもしれない」とまとめている。

1986.

子宮頸がん予防ワクチンCervarixが英国の国民予防接種プログラムに組み入れられる

グラクソ・スミスクライン株式会社は、英国保健省が英国国民に対するヒトパピローマウイルス(以下:HPV)感染予防の予防接種プログラムのためのワクチンとして子宮頸がん予防ワクチンCervarixを選択したと発表した。子宮頸がんの原因の約70%となる発がん性HPVの2つの型の感染を予防することを目的とするこのプログラムは、2008年9月より12~13歳の女児を対象にワクチン接種が開始されている。次いで14歳から18歳までの女性を対象としたキャッチアップ・プログラムも今後2~3年の間に実施される。詳細はプレスリリースへhttp://glaxosmithkline.co.jp/press/press/2008_01/P1000490.html

1987.

旅行者下痢の予防に大腸菌由来毒素含有ワクチンパッチが有効

旅行者下痢に対し、腸管毒素原性大腸菌(ETEC)由来の易熱性毒素(LT)を含有する経皮吸収型のワクチンが有効なことが、IOMAI Corporation(米国、Gaithersburg)のSarah A Frech氏らが健常な旅行者を対象に行った第II相試験で示された。ETECは、流行地への旅行者や開発途上国の幼児の下痢の主要原因である。毎年2,700万人の旅行者および2億1,000万人の小児が急性の下痢を発症し、38万人の子どもが死亡しているという。Lancet誌2008年6月14日号掲載の報告。メキシコあるいはグアテマラへの旅行者を対象とした無作為化第II相試験本研究は、メキシコあるいはグアテマラへの旅行を計画している18~64歳の健常成人のうち、米国の地域ワクチンセンターにアクセスした者を対象に行われた無作為化第II相試験である。割り付けには中央無作為化コードを用い、参加者および各施設のスタッフには割り付け状況はマスクされた。主要エンドポイントはETEC性下痢の発症率およびワクチンパッチから放出されたLTの安全性の評価とした。副次エンドポイントは旅行者下痢およびETECに対するワクチンの有効性などとした。参加者は旅行前に2~3週間隔で2枚のパッチを用いてワクチンを接種された。パッチにはLT 37.5μgあるいはプラセボが含有された。参加者は旅行先の国でカード形式の日誌に排便量を記録し、下痢を起こした場合は病原菌同定のためにサンプルを提出した。下痢の重症度は24時間における軟便の排便回数で評価した(軽度:3回、中等度:4、5回、重度:6回以上)。なお、旅行者下痢は一般に18回ほどの軟便の排便回数を伴って4~5日間持続し、通常、悪心・嘔吐、腹部疝痛、衰弱、脱水をきたす。ワクチンパッチは重度の下痢を有意に予防、罹病期間、軟便排便回数を低減2006年5~12月に201人が登録され、そのうち178人が2回のワクチン接種を受けてメキシコおよびグアテマラに旅行し、170人が解析の対象となった。プラセボ群の111人のうち24人(22%)が下痢を発症したが、ETEC性の下痢は11人(10%)であった。ワクチンは安全であり、免疫原性は発揮されていた。ワクチン群の59人においては、中等度~重度の下痢(予防効果:75%、p=0.0070)および重度の下痢(予防効果:84%、p=0.0332)に対する有意な予防効果が認められた。下痢をきたしたワクチン群の症例は、プラセボ群に比べ罹病期間が有意に短く(0.5日 vs 2.1日、p=0.0006)、軟便の排便回数が有意に少なかった(3.7回 vs 10.5回、p<0.0001)。Frech氏は、「旅行者下痢は一般的な疾病であり、旅行先での下痢の10%は腸管毒素原性大腸菌(ETEC)によるものである。ワクチン貼付薬は安全かつ実行可能であり、旅行者下痢の発症頻度および重症度を抑制する効果を有する」と結論している。また、同氏は「経皮的パッチは簡便かつ注射器不要で、低温流通体系(cold chain)を必要とせず、旅行者および途上国での使用に適するようデザインされている。今回確認された効果は第III相試験で検証する必要がある」とコメントしている。(菅野守:医学ライター)

1988.

HPVワクチンのガーダシル、欧州にて膣部前がん病変の適応追加の推奨を受ける 

万有製薬株式会社は、子宮頸がんを予防する4価HPVワクチンGARDASILが、欧州医薬品庁の医薬品委員会より、腟部前がん病変の適応追加について推奨を受けたと発表した。GARDASILは米国など100カ国以上で承認されており、多くの国で接種の義務化や接種費用の公費助成が行われている。多くの国での現在の適応は、9~26歳の女性に対するHPV6,11,16,18型に起因する子宮頸がん、前がん病変、異形成、尖圭コンジローマの予防。詳細はプレスリリースへhttp://www.banyu.co.jp/content/corporate/newsroom/2008/merck_0606.html

1989.

米国における流行性耳下腺炎の再燃で予防接種改善の必要性

米国では1990年以降、学童に対する流行性耳下腺炎(おたふく風邪)ワクチンの2回接種が広範に行われるようになってから、その流行発生は歴史的な低さが続いていたが、2006年に米国内としては過去20年間で最大の流行が発生した。そこで米国疾病管理予防センター(CDC)が全国調査を実施した。NEJM誌2008年4月10日号より。2006年に発症した6,584例と予防接種率データを調査米国は2010年までに流行性耳下腺炎を根絶するという目標を掲げたが、2006年に計6,584例の発生が報告されたことから、同年の耳下腺炎症例に関する全国データに加えて、最も患者が多かった州からの詳細な症例データ、および3つの全国調査に基づく予防接種率データを検証した。最多発の中西部8州で予防接種による免疫付与に失敗か全症例の76%が3~5月に発症し、85例が入院したが、死亡は報告されなかった。また全体の85%は、中西部の隣接する8州に居住していた。耳下腺炎の全国的発病率は、人口10万人当たり2.2人で、18~24歳の年齢層が最も発症率が高く、他の全年齢層を合計した発症率の3.7倍に達していた。これらの患者の83%は当時、大学に在籍していた。最も流行した8州の予防接種状況では、住民全体の63%と、18~24歳の84%が、流行性耳下腺炎ワクチンの2回接種を受けたことが確認された。大流行に先立つ12年間、未就学児童に対する耳下腺炎の第1回予防接種率は、全国で89%以上、最も流行した8州では86%以上だった。2006年における、若年者に対する第2回接種は、米国史上最高の87%だった。しかし、流行性耳下腺炎を含むワクチン2回接種が高率であるにもかかわらず、耳下腺炎の大流行が起こったのは、おそらく学童期に予防接種を受けた中西部の大学生と同年代の若者たちに、ワクチン2回接種でも免疫が成立しなかったことを意味する。このためCDCは「将来の流行性耳下腺炎発生を回避し、耳下腺炎の根絶を成し遂げるには、より効果的なワクチンか、予防接種方針の変更が必要になるだろう」と報告をまとめ警告を発している。(武藤まき:医療ライター)

1990.

MMRワクチン再びの推進突破口はどこにあるか

 英国でMMRワクチン接種が導入されたのは1988年。生後13ヵ月までの接種が推奨され1995年には2歳児までの接種率が92%に達したが、1998年にワクチン接種が自閉症や腸疾患と関連するとの調査報告がされ79%(2003年)まで落ち込んだ。その後、報告は根拠のないものと証明されたが、一部の親はいまだに否定的で最新接種率(2007年7~9月)は85%にとどまっている。英国UCL 小児保健研究所のAnna Pearce氏らは、ワクチン接種推奨のターゲットを絞り込むため、接種に影響している因子について検証した。BMJオンライン版2008年2月28日付、本誌2008年4月5日号より。英国ミレニアムコホート14,578例の接種状況と背景因子を解析 本研究では、MMRワクチン接種と単一抗原ワクチン接種とを評価し、MMRが選択されない因子を探った。対象は2000~2002年に生まれた「英国ミレニアムコホート」で、ワクチン免疫のデータが入手できた小児14,578例について、3歳時点で「MMR接種を受けた」「単一抗原ワクチン接種を受けた」「接種を受けていない」を主要評価項目に解析された。「単一ワクチン接種」派は「高収入」「高齢出産」「高学歴」 対象で「MMR接種を受けた」は88.6%(13,013例)、「単一抗原ワクチン接種を受けた」は5.2%(634例)だった。 「MMR接種を受けていない」因子として浮かび上がったのは、「きょうだいが3人以上いる」「片親」「母親の出産時年齢が20歳以下」「母親の出産時年齢が34歳以上」「母親が高学歴(学士取得)」「母親が無職」「母親が自営業」。 「単一ワクチン接種」派の因子として浮かび上がったのは「高収入世帯(52,000ポンド以上;ユーロ換算69,750、ドル換算102,190)」「母親の出産時年齢が40歳以上」「母親が高学歴(学士取得)」だった。 逆に「単一ワクチン接種」派ではない因子として浮かび上がったのは、「きょうだいが3人以上いる」、母親が「インド人」「パキスタンもしくはバングラディッシュ人」「黒人系」、そして「母親の出産時年齢が25歳以下」だった。 MMR接種をしなかった親の4分の3(74.4%、1,110例)が「意図的な選択」で 接種を拒否したことも明らかとなった。理由としては「危険すぎる(24.1%)」「子どもに合わない(18.6%)「自閉症との関連への懸念(14.1%)」「ネガティブ報道」(9.5%)となっていた。 Pearce氏らは「ミレニアムコホートのMMR接種率は高率だが、主に親の『意図的な選択』で、かなりの小児が感染しやすい状況に置かれている。接種格差の実態は、接種推進の介入目標を明らかにすることができた」と結論している。

1991.

乳幼児の重症ロタウイルス胃腸炎の予防に経口生ワクチンRIX4414が有効

2歳までの乳幼児の重症ロタウイルス胃腸炎に対しロタウイルスワクチンRIX4414が有効なことが、ラテンアメリカ10ヵ国で実施されたHuman Rotavirus Vaccine Study Groupの検討で明らかとなった。ロタウイルスは世界的に乳幼児の重症胃腸炎の主たる原因とされる。下痢関連入院の1/3以上に関与し、年に約52万7,000人の5歳以下の乳幼児が死亡し、開発途上国では最も頻度の高い死亡原因であるという。ブラジル保健省Evandro Chagas研究所のAlexandre C Linhares氏がLancet誌2008年4月5日号で報告した。RIX4414あるいはプラセボを2回接種する群に無作為に割り付け本研究は、2003年8月~2005年10月にラテンアメリカの10か国から生後6~13週の健常乳児1万5,183人が登録された二重盲検プラセボ対照第III相試験。ほぼ生後2~4か月の時点でRIX4414あるいはプラセボを2回接種する群に無作為に割り付けられた。1次評価項目は2回目の投与の2週間後から1歳までのワクチンの有効性とした。治療の割り付けは研究者および幼児の両親ともに知らされず、胃腸炎に対する効果のフォローアップは約2歳になるまで行われた。重症胃腸炎発生率は、RIX4414群0.4%、プラセボ群2.3%897人がaccording-to-protocol解析から除外された。2年間に記録された重症ロタウイルス胃腸炎は、プラセボ群が7,081人中161例(2.3%)に対しRIX4414群では7,205人中32例(0.4%)であり、ワクチン群で有意に少なかった(p<0.0001)。ワクチンの有効率は80.5%であり、そのうち野生型G1株では82.1%、非G1株では77.5%、非G1 P[8]株では80.5%ではあった。ロタウイルス胃腸炎による入院に対するワクチンの有効率は83.0%であり、下痢による入院に対しては39.3%であった。フォローアップ期間の2年目における腸重積は報告されなかった。Linhares氏は、「RIX4414の2回接種は、ラテンアメリカの生後2年までの乳幼児における重症ロタウイルス胃腸炎の予防に有効であった」と結論し、「小児のルーチンな予防接種にRIX4414を用いれば、ロタウイルス胃腸炎による世界的な負担が軽減される可能性がある」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

1992.

米国FDA、小児用3種混合ワクチンDAPTACELの5回目接種分を承認

サノフィ・アベンティスグループのワクチン事業部門であるサノフィパスツールは、ジフテリア、破傷風、百日咳の予防を目的とした4~6歳の小児に対するDAPTACELワクチン(ジフテリア、破傷風トキソイド、無細胞型百日咳沈降精製ワクチン)の5回目接種が、米国医薬品食品局により承認されたと発表した。DAPTACELワクチンは2002年に4回接種ワクチンとしてFDAの承認を取得、現在は2,4,6ヶ月齢と15-20ヶ月齢に接種されている。今回の承認により5回接種すべてに対する承認を取得した。詳細はプレスリリースへhttp://www.sanofi-aventis.co.jp/live/jp/ja/layout.jsp?scat=D85FC173-8D5D-4C22-94DB-93D72F0A86EC

1993.

子宮頸がん予防ワクチンCervarix、6年以上の長期にわたり、予防効果を示す

グラクソ・スミスクラインは、子宮頸がん予防ワクチンCervarixが、現在報告されている中では最長のほぼ6年半にわたり、子宮頸がん発症の原因であるヒトパピローマウイルス(HPV)のうち、最も検出頻度の高い4つのタイプの感染を顕著に予防することが新しいデータで明らかになったと発表した。この子宮頸がん予防ワクチンでは、がん原性HPVである16型と18型により起こる前がん病変に対して、6年半近くの間、100%の予防効果を示したばかりか、HPV31型及び45型という他のがん原性HPVに対しても十分な予防効果を示す。また、試験に参加した15~25歳の女性のほぼ100%で、6年半近くのすべての期間においてHPV16型と18型に対して高い抗体価を示したことが認められた。詳細はプレスリリースへhttp://glaxosmithkline.co.jp/press/press/2008_01/P1000467.html

1994.

新規髄膜炎ワクチンMenACWYは乳児にも忍溶性が高い

全米で青少年に推奨される髄膜炎の予防ワクチンは四価複合ワクチン(血清A、C、W、Y)だが、乳児期における免疫原性が十分ではない。この点を改良した新規四価複合ワクチンMenACWYに関して、オックスフォード大学ワクチングループが行った乳児期の免疫原性に関するフェーズ2(無作為化非盲検コントロール試験)の結果が、JAMA誌2008年1月9日号で公表されている。生後2ヵ月の乳児、英国225例、カナダ196例を対象に対象は生後2ヵ月の乳児で、英国225例、カナダ196例。期間は2004年8月~2006年9月の間に行われた。英国の乳児はMenACWYを、2、3、4ヵ月時の計3回接種する群と、2、4ヵ月時の計2回接種群、または単価ワクチン(MenC)を2、4ヵ月時の計2回接種する群の3群に割り付けられた。そして全員12ヵ月時にMenACWY接種を受けている。カナダの乳児はMenACWYを、2、4、6ヵ月時の計3回接種群と、2、4ヵ月時の計2回接種群に割り付けられた。12ヵ月時には、3回接種群の半数はMenACWYを追加接種、残り半数は追加接種をせず、また2回接種群については半数にMenACWYを接種、残り半数には従来型の四価ワクチンを接種する形で治験が行われた。主要評価項目は、ヒト血清殺菌活性(hSBA:human complement serum bactericidal activity)力価が、MenACWYを主要に投与した群、および12ヵ月時に追加接種した群で1:4以上となった乳児の割合とされ、安全性と反応性についても評価が行われた。忍容性高く、免疫原性も十分治験実施計画書適合解析(per-protocol analysis)の結果、英国乳児MenACWY 3回接種群では、hSBA 力価1:4以上に達した割合は、血清A:93%(95%信頼区間:84%~98%)、C:96%(同89%~99%)、W-135:97%(90%~100%)、Y:94%(86%~98%)。事後解析の結果は、血清CとYの価は不変、A:92%(84%~97%)、W-135:97% (91%~99%)だった。カナダ乳児MenACWY 3回接種群では、A:81%(71%~89%)、C:98%(92%~100%)、W-135:99%(93%~100%)、Y:98%(92%~100%)。事後解析の結果は、A:83%(74%~89%)、C:98%(93%~99%)、W-135:99%(94%~100%)、Y:98%(92%~99%)で、3回接種群ではいずれも十分な免疫原性が得られた。2回接種群では、血清C、W-135、Yについては84%以上だったが、血清Aについては60%台。それでもMenACWYを主要にもしくは追加接種された乳児の少なくとも95%は13ヵ月時点で血清C、W-135、YのhSBA力価1:4以上を達成、Aについての達成率は84%であるとの結果が得られている。なお接種後疼痛が観察されたのは、英国ではMenACWY 2回接種群で2%、MenC 2回接種群で4%。38℃以上の発熱が観察されたのは、これら接種群でそれぞれ4%、2%。以上から研究グループは、「MenACWYは乳児に対する忍容性が高く、免疫原性も十分に得られるものだ」と結論付けている。(武藤まき:医療ライター)

1995.

ロタウイルス性胃腸炎のワクチン予防効果は87%

毎年、世界で約61万1,000人の子どもがロタウイルスが原因で死亡していると推定されるが、その多くは低所得国である。EUでは5歳未満の子どものロタウイルスによる死亡は200人以上、入院は8万7,000回以上、医療機関の受診は約70万回と推定されている。 T. Vesikari氏(フィンランド、タンペレ大学ワクチン研究センター)らは、EUにおける生後2年までの乳幼児のロタウイルスによる胃腸炎に対するロタウイルスワクチン(RIX4414)の有効性を評価した。11月24日付Lancet誌掲載の報告。ワクチンは2回経口投与、フォローアップは2シーズン6ヵ国から3,994人が登録され、ワクチン群(2,646人)あるいはプラセボ群(1,348人)に無作為に割り付けられた。ワクチン群には定期接種の乳幼児用ワクチンとの併用でRIX4414を2回経口投与し、胃腸炎のフォローアップはウイルス流行の2シーズンにわたって行った。胃腸炎の症状がみられた患児の便を採取し、ELISA法でロタウイルスの検査を行い、RT-PCR法で株型を判別した。胃腸炎の重症度の判定には20ポイントVesikariスケールを用い、症状スコアが11ポイント以上を重症と判定した。予防効果の有効性を確認初回効果フォローアップ期間(平均5.7ヵ月)において、プラセボ群では評価可能な1,302人中94人にロタウイルス性胃腸炎がみられたのに対し、ワクチン群では2,572人中24人であり、ワクチンによるロタウイルス性胃腸炎の予防効果は87.1%であった(p<0.0001)。複合効果フォローアップ期間(平均17ヵ月)における重症ロタウイルス性胃腸炎の予防効果は90.4%(p<0.0001)であり、ロタウイルス性胃腸炎による入院の予防効果は96.0%(p<0.0001)、ロタウイルス関連の医療機関受診の予防効果は83.8%(p<0.0001)であった。有害事象はワクチン群の11%、プラセボ群の13%にみられた。1人がワクチン投与後8日目に腸重積を発症したが、手術により軽快した。Vesikari氏は、「RIX4414の2回投与は、5つの株型(G1、G2、G3、G4、G9)のロタウイルスによるあらゆる重症度のロタウイルス性胃腸炎および重症ロタウイルス性胃腸炎に対し、有意な予防効果を示した」と結論している。(菅野 守:医学ライター)

1996.

ワクチン接種は疾患発現減少に功を奏したか?

アメリカにおける全国的なワクチン接種プログラムの勧告は、対象疾患発現の減少、排除または根絶を目標に行われている。その目標は果たされているのか。CDC(疾病予防管理センター)のSandra W. Roush氏らワクチン予防接種専門調査委員会(Vaccine-Preventable Disease Table Working Group)は、2005年までに行われてきた13疾患対象の予防的なワクチン接種について、勧告・実行前後の罹患率および死亡率の比較を行った。JAMA誌11月14日号掲載の報告から。ワクチン対象13疾患の死亡率、罹患率を過去と現在で比較検証された13ワクチン対象疾患は、ジフテリア、百日咳、破傷風、ポリオ、はしか、耳下腺炎、風疹(先天性風疹症候群を含む)、侵襲性のインフルエンザ桿菌b型(Hib)、急性B型肝炎、A型肝炎、水痘、肺炎球菌性肺炎と天然痘。ワクチン勧告前の基線データは、主要なデータソースからの代表的・歴史的に有名なデータとし、それらと直近の罹患率(2006年)、死亡率(2004年)とを比較した。主要評価項目は、疾患発現の症例数、死亡数と疾患による入院数。症例数は最低を記録するに至っているジフテリア、耳下腺炎、百日咳、破傷風は、1980年以前の状況よりも、ワクチン接種の勧告・実行によって、症例数は92%以上減少、死亡数は99%以上減少していた。地域流行性のポリオウイルス、はしか、風疹の伝染は、米国内では排除された。天然痘は、世界的に根絶に至っている。A型肝炎、急性B型肝炎、インフルエンザ桿菌b型、水痘を含む1980年以降にターゲットとされてきた大半のワクチン接種対象疾患については、症例数、死因数とも80%以上減少していた。侵襲性の肺炎球菌性肺炎は症例数は34%、死因数は25%減少していた。委員会は、「大部分のワクチン接種で予防可能とされる疾患の症例数は、最低を記録するに至っている。入院および死亡についても、減少は著しい」と述べ、ワクチンはバイオメディカルおよび公衆衛生の最も偉大な業績の1つであり、今後もワクチン開発・資金調達・調査・評価・配布に努力していくべきと結論づけている。(武藤まき:医療ライター)

1997.

高齢者のインフルエンザ、肺炎に対する意識は高い!?

今年もインフルエンザの流行の兆しが見え始め、メディアなどでも様々な話題が報じられているが、万有製薬株式会社は、2007年7月に全国65歳以上の男女計467人を対象に行ったインフルエンザと肺炎に関する意識調査を発表した。調査結果によると、 1.インフルエンザワクチンを接種した経験がある人は67.2%に上るが、最近1年間に接種した方は44.3%で、1年より前に接種した人は22.9%。 2.インフルエンザワクチンを接種した経験がない人でも98.7%がインフルエンザワクチンを知っており、そのうち53.7%が接種の必要性を感じている。 3.67.2%が「肺炎は怖い」というイメージを持っており、また66.2%が「自分もかかるかもしれない」と感じている。そして、36.8%が「肺炎は予防可能な疾患である」と考えている。 4.肺炎球菌ワクチンの認知率は52.7%で、そのうちの35.0%が1年以内に知ったものだった。 プレスリリースはこちら http://www.banyu.co.jp/content/corporate/newsroom/2007/corporate_1112.html

1998.

小児急性中耳炎原因菌に多剤耐性菌が出現

7価を有する複合ワクチン(PCV7)には含まれておらず、小児の急性中耳炎(AOM)を引き起こす原因となる肺炎球菌に、多剤耐性菌出現の可能性が懸念されている。 アメリカ・ロチェスター大学小児科のMichael E. Pichichero氏らは、AOMに罹患した患児の原因肺炎球菌の抗原型を調べ、その抗生物質感受性を調査した。JAMA誌10月17日号より。肺炎球菌の抗原型と抗生物質感受性を調査本研究は前向きコホート研究で、AOMを引き起こす肺炎球菌の負担変動を、特に抗原型と抗生物質感受性に注意を払いながら、複合ワクチンPCV7投与後継続的にモニタリングされた。対象となったのは、2003年9月~2006年6月の間にPCV7の投与を受けた小児。AOMの原因肺炎球菌の確認は鼓室穿刺術を用いて行われた。小児は全員、ロチェスター、ニューヨークの小児科で診療を受けている。AOMと診断された小児は1,816例。鼓室穿刺術は212例で実行され、59例で肺炎球菌感染が確認された。多剤耐性を有する抗原型19Aの肺炎球菌を9/59例で確認このうち9例で確認された菌株(2003~2004年:2例、2004~2005年:2例、2005~2006年:5例)は、新規の遺伝子型を有する抗原型19A。これはAOMに罹患した小児に用いることができるすべてのFDA承認抗生物質に耐性だった。4例の感染小児は2種類以上の抗生物質(高用量amoxicillinあるいはamoxicillin-clavulanateを含む)を用いても治療が失敗に終わった。結局、中耳腔換気用チューブが挿入されている。3例はceftriaxone注射剤投与で反復性AOMを、その他2例の感染は乳幼児期の早い段階で確認されていた。これらには手術以外の感染消散の手段としてlevofloxacinの投与が行われた。Pichichero氏らは、「PCV7ワクチン導入数年で、小児AOM治療に対するすべてのFDA承認抗生物質に耐性の肺炎球菌が出現していることが本研究で明らかとなった」とまとめている。(武藤まき:医療ライター)

1999.

民間保険加入小児に生じているワクチン投与格差

米国では最近5年間で小児および思春期の若者へのワクチンが倍増した。髄膜炎、3種混合(破傷風-ジフテリア-百日咳)、A型肝炎、インフルエンザ、ロタウイルス、ヒトパピローマウイルス(HPV)など新たにもしくは拡大推奨されたワクチンを、小児全員に投与するための公的セクターのコストは7.5倍(1995年155ドル→2007年1,170ドル)に膨らんだという。 ワクチン投与は罹患率の低下など効果をもたらす一方、州の政策立案者や臨床家から、ワクチン接種をカバーしないタイプの民間保険に加入する小児(2000年時点で約14%)の問題が指摘されるようになった。彼らのワクチンコストは州がカバーすることになっているが、その適用に格差が生じているというのである。 ハーバード大学メディカルスクール&ハーバード・ピルグリム・ヘルスケアのGrace M. Lee氏らは、格差の実態と原因を調査。JAMA誌8月8日号に詳細が報告された。州担当者にワクチン購入・供給について聞き取り本研究は、各州の予防接種プログラム・マネジャーへの2段階の聞き取り調査によって行われた。州保健局に雇用される予防接種プログラム・マネジャーは、公的資金で必要なワクチンを購入し、公的セクター(保健所など)や民間クリニックの臨床家に配布する役割を果たしている。第1 段階の調査は2005年11月~12月にかけて、それぞれ異なる資金調達方針を掲げる9人のマネジャーに対する、1時間に及ぶ質的な質問項目からなる電話インタビュー。第2段階は2006年1月~6月にかけて、全国50州のマネジャーを対象とする電話と書面による調査が行われた。回答が得られたのは48州(96%)。格差の原因は資金調達システムにその結果、髄膜炎ワクチンについて、公的資金での購入・供給を民間クリニックに対して行っていないと回答したのが30/43州(70%)、公的セクターにしていないと回答したのは17/43州(40%)に上った。肺炎球菌ワクチンについてはそれぞれ24/48州(50%)、8/48州(17%)だった。また10の州で、新規ワクチン購入資金が限られていることを理由に2004年~2006年前半の間に、私的保険加入小児が公的資金で購入した新規ワクチンを接種できないように州の政策を変更していた。米国では、保険未加入およびメディケイドなど公的保険に加入する小児へのワクチン投与は連邦政府が資金を提供するVFCプログラムによって保障される。マネジャーはこのVFC資金、セクション317と呼ばれる資金と、州が割り当てる予算でワクチンを購入するのだが、調査ではマネジャーから「私的保険加入児の前には連邦および州政府の財源不足という壁が立ちふさがっている」との指摘が相次いだ。こうした結果を踏まえLee氏らは、「子どもたちがすべてのワクチン接種を受けられるような資金調達システムの戦略が必要だ」と提起した。(武藤まき:医療ライター)

2000.

新たなアジュバントによる抗原節減法が鳥インフルエンザワクチンの免疫原性を増強

次なるヒトインフルエンザの汎流行(爆発的大流行、パンデミック)の原因となる可能性が高いウイルスとしてH5N1型鳥インフルエンザが考えられているが、その対策としてのインフルエンザワクチンの生産能には世界的に限界がある。抗原節減法は1接種に要する抗原量を少なくできるため、パンデミックワクチンの開発において重要なアプローチと考えられており、アジュバント(免疫増強法)は抗原節減の重要な戦略である。 ベルギー・ヘント大学病院ワクチンセンターのIsabel Leroux-Roels氏らは、独自に開発した新たなアジュバント法で調整した遺伝子組み換えH5N1スプリットウイルス粒子ワクチンの安全性および免疫原性を評価し、交差反応性免疫の誘導能について検証を行った。8月18日付Lancet誌掲載の報告から。4種類の抗体量とアジュバントの有無で8群に分け、2回ずつ接種試験には、不活化されたスプリットA/Vietnam/1194/2004 NIBRG-14[逆遺伝学(reverse genetics)の手法で作製された遺伝子組み換えH5N1]ワクチンが用いられた。2006年3月27日~6月15日の間に18~60歳の健常ボランティア400人が登録された。これらの対象は、4種類の抗体量(ヘマグルチニンH5抗体3.8、7.5、15、30μg)とアジュバントの有無によって分けられた8つのワクチン群に無作為に割り付けられ、それぞれ2回ずつワクチン接種が行われた(1回目の21日後に2回目を接種)。液性免疫応答の解析のために血液サンプルを採取し、有害事象は51日目(2回目の接種後30日)まで記録した。安全性が高く、少ない抗原量で十分な免疫応答が得られた8つの群すべてにおいて良好な安全性プロフィールが示され、重篤な有害事象は認めなかった。アジュバントワクチンは非アジュバントワクチンに比べ接種部位の症状および一般症状の頻度が高かったが、ほとんどが軽度~中等度であり、本質的に一過性であった。全抗原量において、アジュバントワクチンは非アジュバントワクチンよりも免疫原性が優れた。抗原量が最も少ない群(3.8μg)においても、アジュバントワクチンの遺伝子組み換え同種ワクチン株(A/Vietnam/1194/2004 NIBRG-14、clade 1)に対する免疫応答は、アメリカおよびEUの基準を十分に満たした。また、3.8μgアジュバントワクチン接種者の77%において、H5N1の分離株(A/Indonesia/5/2005、 clade 2)に対する中和抗体が陽性化した。Leroux-Roels氏は、「独自の新アジュバントは抗原の節減法としてきわめて有用であり、パンデミックインフルエンザワクチンの生産能を高めると考えられる」と結論、「cross-clade中和抗体反応からは、パンデミック前の予防接種に本ワクチンが使用可能なことが示唆される」と指摘している。(菅野 守:医学ライター)

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