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小児急性胃腸炎動向からみえたノロウイルスワクチン開発の鍵

 長崎大学大学院のHoa Tran TN氏らは、小児(18歳以下)の急性散発性胃腸炎におけるノロウイルス遺伝子型分布を明らかにするため、2000年以降の発表論文のシステマティックレビューを行った。その結果、直近10年でGII.4、GII.3が大勢を占めるようになっており、その背景には世界的なGII.4変異型の出現があること、またノロウイルスはロタウイルス感染胃腸炎の減少と相反する形で小児急性胃腸炎での重要度を増している傾向が認められることなどを報告した。著者は、有効なノロウイルスワクチン開発には、GII.4、GII.3株に対する獲得免疫の提供が欠かせないとまとめている。Journal of Clinical Virology誌オンライン版2012年12月4日号の掲載報告。 ノロウイルスは世界的な流行性または散発性急性胃腸炎の原因である。研究グループは、過去20年間、感度の高い分子診断技術の開発がノロウイルス分子疫学の解明に革命をもたらしたものの、ノロウイルス株タイプと散発性胃腸炎との関連については十分に解明されていないとして、ノロウイルスの疫学的解析を行った。 2000年以降に行われた試験報告についてシステマティックレビューを行い、散発性急性胃腸炎の小児(18歳以下)におけるノロウイルス遺伝子型の分布状況を明らかにした。 主な結果は以下のとおり。・遺伝子グループでみるとGIIの占める割合が最も高く、すべての散発的な感染症のうち96%を占めていた。・遺伝子型でみるとGII.4の分布が最も優勢で、カプシド遺伝子型では70%を、ポリメラーゼ遺伝子型では60%を占めていた。次いで、GII.3(カプシド遺伝子型で16%)、GII.b(ポリメラーゼ遺伝子型で14%)であった。・最も頻度の高い組換え型ORF1.ORF2インター遺伝子型は、GII.3カプシド遺伝子型との結合によるGII.b、GII.12およびGII.4ポリメラーゼ遺伝子型で、同定されたすべての遺伝子型の19%を占めていた。・ここ10年間は、GII.4の突然変異の分布が勝っていた。現在までにGII.4/2002、GII.4/2004、GII.4/2006b、GII.4/2008、GII.4/2006bと続いてきている。・直近10年間の小児の散発性急性胃腸炎では、遺伝子型GII.4、GII.3の分布が優勢であった。その動きは、GII.4変異型ノロウイルスの世界的な出現で最も顕著であった。・小児予防接種プログラムの導入に伴ってロタウイルス疾患負荷が減少するに従い、相対的にノロウイルスが小児急性胃腸炎の原因における重要度を増している可能性がうかがえた。・有効なノロウイルスワクチン開発には、カプシド遺伝子型GII.4、GII.3株に対する獲得免疫提供が必要である。

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医療施設におけるインフルエンザの予防と治療

1 流行に備えた感染対策インフルエンザ対策は、本格的な流行が始まる前に開始する。平素の感染対策活動に加え、流行前に職員に対するインフルエンザ感染対策に関する啓発活動を強化する。また、施設内で患者発生を早期に探知できる体制を構築しておく。職員もインフルエンザ様症状を認めた場合はただちに当該部署に届けて欠勤するなどのルールを作っておく。その他重要な点を以下に示す。(1)ワクチン接種ワクチン接種はインフルエンザ感染対策の基本である。患者に対し、予防接種の意義、有効性、副反応の可能性を十分に説明して同意を得たうえで、禁忌者を除き積極的にワクチンを接種する。とくに65歳以上の者、および60歳以上65歳未満の者であって心臓、腎臓もしくは呼吸器の機能またはHIV感染による免疫機能障害を有する者に対するワクチン接種は、予防接種法上定期接種と位置付けられている。医療施設の職員にも、禁忌者を除き積極的にワクチン接種を勧める。(2)ウイルスの持ち込みリスクの低減流行期間中、ウイルスは医療施設外からもたらされるため、ウイルス持ち込みのリスクを低減する工夫が必要となる。インフルエンザ様症状を呈する者が面会などの目的で施設内に入ることは、必要に応じて制限する。そのため施設の入口にポスターを掲示したり、家族等にはあらかじめ説明しておくなどして、事前に理解を得ておく。施設に入る前に擦り込み式アルコール消毒薬の使用を求めることも必要である。2 流行開始後の感染対策インフルエンザ患者に対しては、まず良質かつ適切な医療の提供が基本となる。治療については後述するので、ここでは医療施設内でインフルエンザが発生した後の対応について述べる。(1)速やかな患者の隔離施設内でインフルエンザ様患者が発生した場合は、迅速診断キットを活用して診断を行う。発症早期には偽陰性となる場合があるので、キットの結果が陰性であっても、臨床的に疑われる場合はインフルエンザとして扱う。患者はただちに個室に隔離し、できるだけ個室内で過ごすように指示する。個室が確保できない場合は、患者とその他の患者をカーテン等で遮蔽する、ベッド等の間隔を2メートル程度空ける、患者との同室者について、入居者の全身状態を考慮しつつサージカルマスクの着用を勧める、といった次善の策も提案されている。患者が複数いる場合は、同型のインフルエンザ患者を同室に集めることも検討する。(2)飛沫感染予防策とその他の予防策職員が患者の部屋に入る場合はサージカルマスクを着用する。インフルエンザ患者がやむを得ず部屋を出る場合は、サージカルマスクを着用させる。インフルエンザの感染対策では通常、空気予防対策は不要であるが、サクションチューブで喀痰を吸引する時や、緊急で心肺蘇生を行う場合などは、N95マスクなどの高性能マスクの着用も勧められる。飛沫予防策として、インフルエンザを発症してから7日間もしくは発熱や呼吸器症状が消散してから24時間のどちらか長い方が経過するまで継続することが推奨されている。(3)患者への抗ウイルス薬の予防投与CDCは、施設内で72時間以内に2名以上のインフルエンザ様患者が発生した場合や、1名のインフルエンザ確定患者が発生した場合は、入所者への抗ウイルス薬の予防投与を勧めている。日本感染症学会は、インフルエンザ患者に接触した患者には、承諾を得たうえで、ワクチン接種歴にかかわらずオセルタミビルかザナミビルによる予防投与を開始すべきであるとしている。予防投与の範囲は、原則的にはインフルエンザ発症者の同室者とする。なお、現時点でペラミビルとラニナミビルには予防投与の適応は無い。(4)職員への予防投与CDCは、医療施設の職員についても、ワクチン未接種者については抗ウイルス薬の予防投与を検討すべきであるとしている。日本感染症学会は、職員は本来健康なので抗ウイルス薬の予防投与は原則として必要ではなく、発症した場合の早期治療開始でよいとしている。しかし、施設内での流行伝搬に職員が関与していると考えられる場合、とくに職員の間でインフルエンザ発症が続く場合は、職員にも予防投与が必要であるとしている。3 インフルエンザの治療-抗インフルエンザウイルス薬-ここでは主に抗ウイルス薬について述べる。現在わが国で使用可能な抗インフルエンザウイルス薬は、アマンタジン、ザナミビル水和物、オセルタミビルリン酸塩、ペラミビル水和物、ラニナミビルオクタン酸エステル水和物の5種類である。そのうちアマンタジンはA型ウイルスにのみ有効であることと、ほとんどの流行株が耐性化していること、ならびに副作用の問題などから使用機会は少なく、現在は主としてノイラミニダーゼ阻害薬が使用される。以下に各薬の特徴をまとめた。ザナミビル水和物(商品名:リレンザ)は、吸入で用いるノイラミニダーゼ阻害薬である。通常インフルエンザウイルスは主に上気道~気管で増殖するため、非常に高濃度のザナミビルが感染局所に到達する。副作用として、まれではあるが吸入に伴い気道攣縮を誘発する可能性がある。これまでにザナミビルでは耐性ウイルスの出現はほとんど報告されていない。オセルタミビルリン酸塩(同:タミフル)は、内服のノイラミニダーゼ阻害薬である。消化管から吸収され、肝でエステラーゼにより加水分解され活性体に変換される。ペラミビル水和物(同:ラピアクタ点滴用)は、1回の点滴静注でA型およびB型インフルエンザウイルス感染症に対して有効性を示す。点滴静注であるため確実に血中に移行し長時間効果を表す。ラニナミビルオクタン酸エステル水和物(同:イナビル吸入粉末剤)の特徴は、初回の吸入のみで完結する点で、服薬中断や服薬忘れの懸念が無い。以上の薬剤をどのように使い分けるかは、臨床的に大きな課題である。社団法人日本感染症学会の提言などが参考になる。文献(1)CDC. Prevention strategies for seasonal influenza in healthcare settings. http://www.cdc.gov/flu/professionals/infectioncontrol/healthcaresettings.htm(2)CDC. Interim guidance for influenza outbreak management in long-term care facilities. http://www.cdc.gov/flu/professionals/infectioncontrol/ltc-facility-guidance.htm(3)厚生労働省健康局結核感染症課、日本医師会感染症危機管理対策室.インフルエンザ施設内感染予防の手引き 平成23年11月改訂.http://dl.med.or.jp/dl-med/influenza/infl_tebiki23.pdf(4)社団法人日本感染症学会.社団法人日本感染症学会提言2012~インフルエンザ病院内感染対策の考え方について~(高齢者施設を含めて).http://www.kansensho.or.jp/influenza/pdf/1208_teigen.pdf(5)Fiore AE, et al. MMWR.Recomm Rep.2011;60 : 1-24.

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エキスパートが質問に回答「インフルエンザ診療」その1

CareNet.comでは12月のインフルエンザ特集を配信にあたり、会員の先生よりインフルエンザ診療に関する質問を募集しました。その中から、多く寄せられた質問に対し、岡部信彦先生にご回答いただきました。成人のインフルエンザワクチン接種について、推奨される接種時期を教えてください。インフルエンザ流行時には抗体をすでに持っていないと予防にならないため、10月下旬から12月中旬までに接種しておくことが望ましいといえます。妊婦へのインフルエンザワクチン接種で注意する点を教えてください。ワクチンは不活化ワクチンなので、妊婦が接種しても直接的な影響はないと考えられています。また、これまで接種により胎児に影響があったというデータもありません。ただし、妊娠の初期段階は不安定な状態であり、インフルエンザワクチン接種の有無にかかわらず、流産など妊娠経過に異常を来しやすい時期です。よって、この点について妊婦さんには十分な説明が必要だと思います。インフルエンザ予防におけるマスク、うがい、手洗い、加湿器などの実際の効果とその根拠について教えてください。身近なインフルエンザ予防については、次のように考えています。マスク:ウイルスをブロックするのであればN95のマスクが有効です。しかし一般生活の中では使い勝手が悪く、実際的ではないでしょう。飛沫感染予防という点では、医療現場ではサージカルマスク、一般の方であれば不織布製マスクが使いやすいと思います。うがい:うがい施行群で上気道感染症全般の頻度が低いというデータがみられますが、インフルエンザウイルス感染について明らかな有効性が示されたデータはないように思います。しかし、口腔内の湿潤を保ち、清浄にするという意味では有効であろうと思います。手洗い:手洗いでインフルエンザ感染が減少したとういうエビデンスは多くないと思いますが、上気道感染症全体の頻度が低下したというデータがあります。手洗いは感染症予防の基本であり、日常の一般的な予防手段として、身につけておきたいことだと思います。加湿器:湿度が高い方がウイルスの広がりを抑えるというデータもあるようですが、これによってインフルエンザウイルスが激減したというデータはないと思います。しかし、加湿することで口腔内や気管のコンディションが良くなることから、気道感染症全体の感染機会を下げるという効果はあると考えられます。インフルエンザ迅速診断キットでは陰性だが、症状からインフルエンザが疑われる場合、すぐに抗インフルエンザ薬を使用した方がよいのでしょうか? とくに小児の対応をお願いします。インフルエンザ迅速診断キットで陰性であってもインフルエンザに感染していることは十分考えられます。迅速診断キットの感度は、キットそのものの性能のほかにも、検体を得るタイミングや手技、つまりそこに含まれるウイルス量に影響されます。一般的には、発症初期の検査ではウイルスが検出されず陰性になることも少なからずあり、やはり診断は、症状や検査、周辺の疫学情報などを考慮した総合的な判断が必要であろうかと思います。つまり、インフルエンザの可能性が高いと思われたら、必ずしもインフルエンザ迅速診断キットに100%頼る必要はありません。これは成人でも小児でも同様です。インフルエンザ迅速診断キット検査で陽性になるのは、発熱出現後何時間くらいでしょうか? 目安があれば教えてください。キットの種類によっても異なりますが、おおむね発熱後12時間あるいは5日以内が陽性結果を得られやすい時期の目安となります。

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ロタウイルス胃腸炎の世界的な季節性パターンを明らかにするには?

 米国疾病管理予防センター(CDC)のManish M. Patel氏らは、ロタウイルス胃腸炎発生の世界的な季節性パターンの分布図作成を目的に、ワクチンが広く導入される以前の発生に関する報告論文をレビューした。しかし、統一的な説明が可能である季節性のパターンは認められず、国の所得レベルが多少ではあるが、他の因子よりも季節性疾患であることを示す予測因子であることが明らかになったという。Pediatric Infectious Disease Journalオンライン版2012年11月28日号の掲載報告。 研究グループは、1995年以降に発表された下痢症状を伴う小児におけるロタウイルス検出を報告した研究をレビューした。 季節性有病率と局地性(地理的、国の発展度、緯度別にみたロタウイルス陽性下痢症状の発生割合を月平均でプロットしたもの)との関連性を評価した。線形回帰分析にてロタウイルスの季節性を指し示す可能性のある変数を同定した。 主な結果は以下のとおり。・世界6大地域の状況を示す合計99件の研究報告をレビューした。・国の所得レベルが低レベルまたは低~中レベルの国では、高レベルの国よりも、ロタウイルス胃腸炎が年間を通して発生しているとのエビデンスが顕著であった。・所得が高レベルの国では、ロタウイルス胃腸炎は季節性である可能性が高かった。・国の発展レベルは、地理的な位置や気候よりも、季節性の強さを示す有意な予測因子であった(p=0.001)。・一方で、地理的、緯度、開発程度が同程度の国でも、ロタウイルス胃腸炎について明確に異なる季節性パターンがみられ、ロタウイルス胃腸炎の季節性のバリエーションについて、単一の統一された見解を示すことのできる可能性は低いと思われた。・以上の結果を踏まえて著者は、「さらに、異なる設定のもと、季節性パターンにおけるロタウイルスワクチン接種の効果について研究を進めることで、ロタウイルス胃腸炎の世界的な季節性を指し示す因子の解明に寄与する可能性がある」と結論した。

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肺炎球菌ワクチン導入後10年、依然として高い小児科開業医の急性中耳炎負荷

 急性中耳炎(AOM)の発生率は、地域性や試験デザイン・報告・設定の違いにより、国によって異なる。たとえば、米国では肺炎球菌ワクチン(PCV)導入後10年で同発生率が低下したものの、依然として高いことが報告されている。イタリア・ミラノ大学のPaola Marchisio氏らは、欧州ではやや低いが研究報告自体が少なく、イタリアのデータがきわめて少ないことから、同国の小児科開業医が認めたAOMの発生率を評価した。また、小児科開業医によるAOMの診断法についても調べた。BMC Pediatricsオンライン版2012年11月29日号の掲載報告。 イタリアの6歳未満児は全員、国民健康保健サービスの一環として小児科開業医に登録される。研究グループは、その小児科データベースのデータを2次解析し、小児科開業医が認めたAOMの発生率について評価した(/100人・年で算出した全AOM、単発AOM、再発AOM発生率を評価)。また、AOMをどのように診断しているかについても調べた。 AMOエピソードは、患者の日記で確認した。 主な結果は以下のとおり。・2003年1月~2007年12月の間の0~6歳児9万2,373人(男児52.1%)、累計22万7,361人・年が追跡された。・AOMエピソードがみられたのは、2万3,039人(24.9%)で、全エピソードは3万8,241件(単発エピソード94.6%、再発エピソード5.4%)であった。・5年間の、AOM全発生率は16.8/100人・年(95%CI:16.7~16.9)、単発AOM発生率は15.9/100人・年(同:15.7~16.1)、再発AOM発生率は0.9/100人・年(同:0.9~0.9)であった。・年間発生率はわずかだが継続的に、減少の傾向が認められた(年率変化:-4.6%、95%CI:-5.3~-3.9)。・AOM発生率は年齢により異なり、3~4歳児での発生がピークであった(22.2/100人・年、95%CI:21.8~22.7)。・大多数のAOMエピソード(96.3%、3万6,842/3万8,241例)は、耳鏡(static otoscope)で診断していた。気密耳鏡(pneumatic otoscope)の利用は3.7%のみであった。・AOMは、イタリアの小児科開業医システムにとって相当な負担となっていることが示された。・AOMの診断について教育的なプログラムが必要である。また、PCV導入拡大と関連してAOM発生率をモニターするさらなる研究が求められる。

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インフルエンザ流行の立ち上がりをSHARE…MLインフルエンザ流行前線情報DB

MLインフルエンザ流行前線情報DB http://ml-flu.children.jp(以下ML-flu)は医師が参加するメーリングリスト(以下ML)で有志を募り、インフルエンザ症例をインターネット上のデータベースに自主的に報告し、日本全国および各地のインフルエンザの流行を迅速に周知するプロジェクトであり、2000-01シーズンから13シーズン運用している。多忙な臨床の傍ら、プロジェクトを発足させ、現在も運営業務を行っている西藤成雄氏にプロジェクト発足の経緯と現状を聞いた。MLインフルエンザ流行前線情報DB開始の経緯従来から国立感染症研究所では流行状況を把握するため各地域の医療機関の定点観測による感染症発生動向調査週報(以下IDWR)を配信していますが、その集計結果が診療現場に届くには10日から2週間ほど要しています。感染症の流行阻止には早期の対策が重要であり、インフルエンザのような立ち上がりの早い感染症では課題を残していました。そのような中、2000年に国立感染症研究所感染症情報センターの砂川富正先生はML上でインフルエンザ症例を報告して流行情報を共有しようと呼びかけられました。時代はWeb拡大の折、MLを通じて診療の情報交換を行うようになっていました。インフルエンザ診療においては、迅速診断キットや最初の抗インフルエンザ薬アマンタジン(シンメトレル)が発売され、大きな転換期を迎えていました。当時は、国立感染症研究所のサーベイランスも臨床的診断であり、砂川先生のインフルエンザ迅速診断を用いた症例報告の提案は確実なインフルエンザの検出状況を共有できる素晴らしいものでした。砂川先生の呼びかけに対し小児科医が報告しだしましたが、当初は毎日報告された症例を、砂川先生が夜間に集計して公開するというものでした。そのやり取りをみていて、報告数が増え数百件というレベルになると対応できなくなるので、それに特化したwebデータベースを作りませんかと私から提案させていただきました。当時開発していたオンライン喘息日誌を応用してインフルエンザの広がりがわかるよう日本地図に表示し、喘息日誌のゾーン分けに習い流行数に応じた色分けを盛り込み、岐阜県医師会で運用されていたインフルエンザWebサイトを参考にして、直接webページに入力し自動的に集計されるシステムを作りました。画像を拡大するML-fluのトップページ日本地図に色分けされた流行情報が表示されるhttp://ml-flu.children.jp/こうしたユニークさのためか、提案はすぐに受け入れられました。そして、データベースが完成したのち、砂川先生を通し有志医師に登録を呼びかけていただきました。呼びかけは日本小児科電子メールカンファレンス(JPMLC) (代表:日本大学医学部社会医学系医療管理学分野 根東義明 先生)、小児科フリートークML (Ped-ft)(代表:たからぎ医院・東京都渋谷区 宝樹真理 先生)、さらに私が行っている内科医主体のFlu-DBのMLに対して行いました。小児科医MLの2つの会員数は計5,000名を超え、小児科専門医なら1/3をカバーする大きなネットワークです。2004年までは私だけでシステム開発をしていましたが、それ以降は谷口清洲先生(元 国立感染症研究所感染症情報センター第一室長)の研究班に参加させていただき、現在まで研究と開発・運営を続けてきました。ML-flu参加者・報告数の推移有志医師数はスタートから280~400名程度で運営しています、2009年が最も多く、その後は、300名程度の先生に情報提供いただいています。近年、報告件数が増えており2011-12シーズンは7万5千例以上の症例が登録されました。これは報告者一人当たりにすると年間260例以上の報告件数となります。運営を重ねていくにつれ感染症に関心が高い医師に数多く参加いただいているようです。 ML-fluはリアルタイムで流行の立ち上がりを知らせる事を大切な目的としていますので、必ずしも感染者数の定量性は、正しいとは考えておりませんでした。しかし、自主的に報告するML-fluが実際の流行をどの程度正しく反映するのか調査してみました。ML-fluの報告推移とIDWRの報告を重ね合わせてみたところ、非常に強い相関を示すことがわかりました。ML-fluとIDWRとの報告数推移の決定係数(R2)は運用開始した2000-01シーズンから1シーズンを除き0.9以上であり、最近2シーズンは0.99以上となっています。画像を拡大するML-fluとIDWRのデータの相関は高いML-fluの機能・特徴まず日本の全国集計がリアルタイムで見られることが大きな特徴です。これは短い期間で感染が拡大するインフルエンザにとっては非常に有効です。また、集められたデータを様々な断面で分析できることも特徴だといえます。報告数推移、タイプ(A/B)別割合、男女比、年齢分布、薬剤の使用割合などがわかります。報告数推移については直近3ヵ月、1ヵ月、2週間のデータが得られ、リアルタイムで流行の傾向を把握することができます。また、全国集計だけではなく、地域別集計地域も行っており、47都道府県のすべてが集計・分析されているとともに、各都道府県の市町村レベルの情報も地図とグラフで表されます。上記はML-fluに参加しなくても得られる機能ですが、参加登録する事によって有志医師には、より多くのメリットが得られます。参加登録するには、前述のJPMLC、 Ped-ft、Flu-DBのMLに参加します。参加いただくと報告用のURLやパスワードが送られて、ウイルス分離状況、ワクチン接種状況に加え、登録されたすべての症例の詳細が閲覧できます。また、ユニークなサービスとしてMyData機能があります。これは症例報告した有志医師ごとにアカウントを設けて、ご自身が登録した症例がすべてご覧になれるというもので、自施設のインフルエンザの報告数推移やタイプ別の分析など全国集計と同じ分析が可能です。つまり、自施設のインフルエンザ診療が統計処理されたデータとして得られる訳で、診療における強力なツールとなると思います。データはExcel形式でダウンロードできるので、臨床の分析や研究に利用できます。自施設の検出状況をランダムパスを発生させたURLに表示も可能で、自施設のホームページからリンクを張り、インフルエンザの検出状況として通院される患者さんに周知する、といった利用も可能です。また、メールによる集計結果の配信が日・週単位で届きます。ここには報告例数の他に、感染症関連のトピックスが配信されています。このように、私自身が臨床を行っているなかで、欲しいと思う機能はすべてMyDataという機能に実装しました。画像を拡大するML-fluのデータはXMLで書き出すことが可能である今までの活動の中で役に立ったエピソード09-10シーズンはGW明けから、ML-fluでA型の割合が急増していました。新型インフルエンザの早期察知かと思ったのですが、調べてみるとA/香港型による学級閉鎖など季節性インフルエンザの報告によるものでした。早期察知はできなかったももの、新型インフルエンザを本邦で最初に報告した医師は、プロジェクトの有志であり、その症例はML-fluに登録されていました。手軽に報告できる機能や1年を通したリマインドが、発見後すぐの報告をもたらしたエピソードだと思います。また、ML-fluによって未知のインフルエンザの振る舞いが把握できました。未知の感染症では、臨床症状、重症度なども分かりません。これらに対応するためには、定型の入力フォームを事前に準備することはできません。そこでML-fluでは症例入力ページを通常症例(軽症例)と特異症例(重症例)に分け、重症例を文章で書き込むというシステムにしていました。ML-fluには感染症に関心が高い臨床医が多く、その先生方の重症例報告とそこに書き込む文章は多くの情報を提示してくれます。H1N1pdm09感染が主だった09-10シーズンは重症例数をみると、過去のシーズンに比べ重症例の報告が圧倒的に多いことがわかりました。インフルエンザ1000件当たりの重症例の件数は1.82件、前年は 0.22件だったので約9倍重症例が多かったことになります。ちなみに、翌年は0.82件と平年通りになっています。つまり、H1N1pdm09は重症度が高かったということが把握できたのです。とはいえ、一人の臨床医にすると、重症例の印象は年間1例入院が出たかな?という小さなものです。それが数万という症例情報が入る事で違いが分かるのです。また、症状について重症例報告の書き込みからキーワードを分析してみると、09-10シーズンでは呼吸器症状に関する記載が他シーズンよりも特異的に高いということもわかりました。このように重症度や臨床症状といった新型インフルエンザの振る舞いを捉えていくことができたのも一つのエピソードです。ML-fluの今後の上手な活用方法ML-fluでは各都道府県のデータも市町村単位で集計表示されます。地域単位で参加していただければ、すぐにでもその地域の流行状況を共有することができます。都道府県・市町村にインフルエンザのローカルサーベイランスがない場合など、ご活用いただたくのもよい方法だと思います。ML-fluにはXMLによる生データ書き出し機能も備えておりますので、流行状況をご自身のwebサイトに表示していただくこともできます。また、前述のようにMyDataを活用し自分のサイトに自院のデータを掲示するのもよいでしょう。ご自身の医療機関におけるインフルエンザの検出情報は、患者さんにとって最も身近で確かなインフルエンザの流行情報となります。とはいえ、日集計を読んで流行情報を臨床に役立てていただくだけでも立派な活用だと考えております。視聴者の先生へメッセージ有志の先生が多いほど、より流行を正確に提供できます。また地域の偏りを無くすためにも、一人でも多くの有志の先生を募集しております。インフルエンザの流行の立ち上がりを知らせ合う事はもちろんですが、「これはもしかすると」ということを知らせあう事もとても大事です。専門外の先生方にも気軽に参加していただければと思います。現在、オンラインサーベイは乱立の状態です。各ローカルサーベイもにXMLを盛り込んでいただければ、データ連携が実現し、各都道府県の生データを集めて一晩で全国集計を出すことも可能です。実際、石川県のローカルサーベイランスと連携しており、石川県のローカルサーベイに入力すると同時にML-fluに記録される仕組みが成立しています。将来的には、感染症情報交換規約を作って各都道府県のローカルサーベイと連携をしていければと考えています。オンラインサーベイランスの展望ML-fluのシステムはさらに、RSウイルスオンラインサーベイや百日咳発生データベースなどに転用されている。そのような中、西藤氏はITによる感染症サーベイランスの「症候群サーベイランス」としての可能性を期待している。そして、Ml-fluで文字の情報からインフルエンザ情報が把握できることが明らかになったことから、新たなインフルエンザサーベイランスとしてツイッター「tweetflu」http://tweetflu.jpを立ち上げた。これは、twitter機能を利用して"インフルエンザ"が含まれるツイートを取り出すものである。患者さんがそのまま入力するため、医師の入力というタイムラグがない。まさにリアルタイム集計といえる。このサイトでは、ツイートを全国集計し、日本地図上で流行の分布を、そしてツイート数に応じた色分けで流行の度合いを表わしている。さらに、時系列グラフで流行の傾向をも把握できる。ツイート数の集計データも、厚生省の報告と相関のあるML-fluと相関しているという分析データもある。この新しい試みの展開に期待したい。「tweetflu」http://tweetflu.jp

1908.

少量、安全接種が可能な貼付パッチ式のロタウイルスワクチンの可能性

 米国疾病予防管理センター(CDC)のSungsil Moon氏らは、極微針パッチ(microneedle patch)を用いた皮下注射による、ロタウイルスワクチン予防接種の可能性についてマウスを用いた試験で検討を行った。皮下注予防接種(skin immunization)は天然痘や結核など多数の感染症で効果が認められているが、接種が難しい。一方、極微針パッチは、貼付式で接種が容易であり、その点で有望視されている。Vaccine誌オンライン版2012年11月19日号の掲載報告。 研究グループは、不活化ロタウイルス・ワクチン(IRV)の皮下ワクチン接種において、接種容易な極微針(MN)パッチの活用についてマウス試験で評価(接種効果と投与量)を行った。 6グループのメスの純系BALB/cマウスを対象に、5μgまたは0.5μgのIRVをコーティングしたMNパッチ、または各量IRVを筋肉内注射によりそれぞれ1回接種を行った。その後、0日、10日、28日時点で採血を行った。 主な結果は以下のとおり。・ロタウイルス特異的IgGは、MNパッチ群、筋肉内注射群いずれも、時間の経過とともに血清内レベルが上昇した。・IgG値と中和活性は、筋肉内注射群よりもMNパッチ群で概してより高かった。0.5μg MNパッチ群は、5μg筋肉内注射群とIgG上昇についてはほぼ匹敵、またはより高く、投与量が節約できることを示した。・陰性対照である無抗原のMNパッチを貼り付けたマウスでは、いかなるIgGをも有していなかった。・MNパッチによる予防接種は、筋肉内注射によるものと同程度以上の効果があり、脾臓由来樹状細胞の免疫誘導が示された。・試験によって、MNパッチでは筋肉内注射よりも少ない量のIRVで免疫を得られる可能性が示された。MNパッチは、世界中の子どもが、より安全で効果的なロタウイルスワクチンを受けるための開発戦略として有望視される。

1911.

小児の百日咳発症にみられたDTaPワクチン防御効果の漸減/JAMA

 米国・カリフォルニア州では2010年に、60歳以上で大規模な百日咳の流行が発生した。疾患負荷は、3種混合(DTaP)ワクチン接種率が高率であったにもかかわらず7~10歳の年齢層で顕著に大きく、ワクチンによる防御効果が漸減する可能性が示された。そこで米国疾病予防管理センター(CDC)のLara K. Misegades氏らは、百日咳発症とDTaPワクチンの5回目までの接種との関連についてケースコントロールによる評価を行った。JAMA誌2012年11月28日号掲載より。4~10歳症例682例についてケースコントロール ケースコントロールは、カリフォルニア州の15郡を対象に、症例は、2010年1月~12月14日に報告があった4~10歳児の百日咳の症例(疑い例含む)682例について行われた。対照群は2,016例で症例が報告されたクリニックで治療を受けた同一年齢群で、症例1例につきコントロール3例を設定した。ワクチン接種歴は、カルテと予防接種レジストリから入手した。 主要アウトカムは、(1)百日咳と5回接種シリーズのDTaPワクチンとの関連オッズ比(OR)、(2)百日咳とDTaPワクチン5回接種完了までの期間(<12、12~23、24~35、36~47、48~59、≧60ヵ月)との関連ORであった。 ORの算出はロジスティック回帰分析を用いて郡、主治医ごとに算出し、ワクチンの有効性(VE)は、(1-OR)×100%で推定値を算出した。発症オッズ比は、5回接種完了から時間が経つほど増大 症例では53例(7.8%)が、対照群では19例(0.9%)が、百日咳を含むあらゆるワクチンを受けていなかった。 対照群と比較して、百日咳の発症オッズ比は、DTaPワクチン接種5回をすべて受けた患児でより低かった[OR:0.11、95%CI:0.06~0.21(推定VE:88.7%、95%CI:79.4~93.8)]。 DTaPワクチン接種回数で階層化した場合、百日咳を発症した患児は対照群と比較して、12ヵ月までに5回投与を完了した割合が低い傾向がみられた[19例(2.8%)vs. 354例(17.6%)、OR:0.02、95%CI:0.01~0.04(推定VE:98.1%、95%CI:96.1~99.1)]。 この関連はワクチン接種から時間が経つほど顕著で、5回目投与から時間が経つほどORは増大した。 60歳以上の症例は231例(33.9%)、対照群288例(14.3%)で、ORは0.29[95%CI:0.15~0.54(推定VE:71.2%、95%CI:45.8~84.8)]だった。推定VEは、DTaPワクチン5回目接種以後、毎年減少していた。 以上を踏まえて著者は、「カリフォルニア15の郡の小児における、百日咳発症は、対照群との比較で、DTaPワクチン5回接種シリーズを受けている子どものほうが低かった。最後の接種から時間が経つほど百日発症との関連オッズ比は増大していた。このことは、最後の接種以降、推定ワクチン効果は毎年漸減していることと一致する」と結論している。

1912.

患者と保護者にワクチンの安全性を説明するために、医師が学んでいること

 医師は、ワクチンの安全性に関する懸念について患者・保護者と話し合うことにかなりの時間を費やす。米国・スタンフォード医科大学のClea Sarnquist氏らは、医師がそうしたコミュニケーションに関してどのようなことを学んでいるのか、および学びたいと思っているのかについて調査を行った。Journal of Public Health Management & Practice誌2013年1月号の掲載報告。 調査は、ワクチンの安全性についてのコミュニケーションに関して、米国医師の学習ニーズをよりよく理解すること、主に現在受講しているコミュニケーショントレーニングを定量化し、受講選択の好みを明らかにすることを目的とした。 フォーカスグループの調査とサーベイによる混合研究法を実施。全米から連続サンプルとして、303人の小児科医と内科医にオンライン参加をしてもらい、匿名サーベイを2010年3月~6月に行った。また、47人を対象に9つのフォーカスグループ調査を行った。 主な結果は以下のとおり。・調査には、小児科医239人(80.2%)、内科医30人(10.1%)、複数科を標榜する小児科医29人(9.7%)が含まれた。・20.6%の医師は、レジデンスプログラムでワクチン安全コミュニケーションについては「何も学んでいない」と回答した。・好みの学習法(最も一般的に活用していた学習法でもある)は、講義とロールモデル/症例検討であった。・電子媒体による教育法は、要求が低かっただけでなく、実際の利用もとても少なかった。・95%以上の医師は、ワクチン安全コミュニケーションは、自分たちのキャリアにおいて「非常に重要である」あるいは「ある程度重要である」と考えていると回答した。・レジデンスプログラムにおいて、ワクチン安全コミュニケーションについての教育を改善することは、自己学習機会を提供すると同時に、医師としてのキャリアアップにもつながるだろう。

1913.

インフルエンザの流行状況とワクチン、抗インフルエンザ薬の有効性について(日本臨床内科医学会シンポジウムより)

日本臨床内科医会インフルエンザ研究班 班長 岐阜市河合内科医院 院長 河合直樹氏日本臨床内科医会では、インフルエンザ研究班を組織し、全国の会員による多施設共同試験を2000-01シーズンから行っている。今回は昨シーズン(2011-12年)の結果を発表する。インフルエンザの流行状況インフルエンザ流行は毎年のようにドラスティックな変化を起こしている。当研究会班で調査している過去10シーズンをみると、A型が流行し、少し後にB型が流行するのが典型的なパターンである。2004-05シーズンや2006-07シーズンはA・B 両型が同時流行し、2009-10のパンデミックシーズンでは季節外れの時期に流行したが、最近の2010-11、2011-12シーズンは冬季にA型が流行し、その後B型が流行する典型的パターンに戻っている。A型亜型の流行をみると、2006-07シーズンまではほとんどがH3N2(香港型)であった。しかし、2007-08シーズンはH1N1 (ソ連型)が大流行し、翌2008-09シーズンには、このH1N1 (ソ連型)のほとんどがH275Y変異によりオセルタミビル(タミフル)耐性となっている。そして、2009-10シーズンはH1N1 (ソ連型)に代わりH1N1pdm09(パンデミックウイルス)がすべての年齢層で流行した。H1N1pdm09の流行はその後も続くと予想されたが、翌2010-11シーズンにはH3N2が復活し、H1N1pdm09、H3N2、B型の混合流行となった。昨シーズン(2011-12)はH1N1pdm09が姿を消し、H3N2に置き換わった形となり、H3N2とB型の混合流行となった。図:Key Note Lecture 12ページ 「インフルエンザの型・亜型別内訳」参照このH3N2はすべての年代で前シーズンより増えている。また、H3N2の高齢者層の罹患が過去2シーズン(09-10、10-11)のH1N1pdm09やH3N2よりも増加し、昨シーズンのH3N2罹患者における60歳以上の比率は13.5%と非常に高くなっている点は注目すべきである。すでにH3N2ウイルスに何回もさらされているはずの高齢者層での流行、ワクチンの有効性の低さを考えると、H3N2はこの数年で連続変異が進んでいる可能性がある。B型については、国立感染症研究所のデータによれば、ここ数年Victoria系統が流行していたが、昨シーズン(2011-12)は山形系統が増えてきている。インフルエンザワクチンの発症予防効果本邦のインフルエンザワクチンの発症予防効果については疑問を唱える説もあるが、われわれ臨床家としては予防効果を期待したいところである。当研究班では、過去11シーズン臨床現場におけるワクチン接種の有無によるインフルエンザの発生率を前向き調査している。調査開始後の数シーズンは、接種群において有意に発症が少なかった。2009-10シーズンでは、H1N1pdm09単価ワクチンが、患者の多かった19歳以下で有意に良好な効果を示している。また、2010-11シーズンの3価ワクチンも、H1N1pdm09の比率が高かった成人層で高い効果を示している。昨シーズンは成人層で大きな有効性は確認されていないが、未成年では接種群で発症が少ない傾向がみられているのは、臨床現場としては救いである。研究班ではまた血清HI抗体価によるワクチンの有効性について検討している。これはワクチン接種により、HI抗体価が40倍以上の感染防御水準に被接種者の何%が達するかを調査するものである。2011-12シーズンではH1N1、H3N2とも接種後の40倍以上の抗体価保有率は良好(各々81.5、97.0%)であったがH3N2については、接種前すでに同抗体価保有率は83%あり、ワクチン接種による効果は限定的と思われた。一方、B型はいずれのシーズンでもA型に比べ、接種により感染防御機能水準に達する割合は低く、その傾向は昨シーズンも同様であった。ワクチン株と臨床株の抗原性の差が生じていないか、ここで問題となるのはワクチンのマッチングである。昨年まで使われたH3N2のA/ビクトリア/210/2009株については、マッチングが良好でない旨がすでに関係方面から発表されており、これが現実となった可能性もある。2012-13シーズンではH3N2はA/ビクトリア/361/2011株に変わっている。B型に流行を反映し、山形系統に入れ替わる。今回の株の変更でワクチンの効果が戻る事を期待したい。抗インフルエンザ薬の効果当研究班での昨シーズンの抗インフルエンザ薬の使用状況をみてみると、9歳以下ではオセルタミビルが過半数、ザナミビル(リレンザ)も増えておりラニナミビル(イナビル)も一部使われている。10歳代では原則としてオセルタミビルはハイリスク以外使えないため、ザナミビル、ラニナミビル、ペラミビル(ラピアクタ)という使用頻度である。20歳以上ではオセルタミビル、ラニナミビル、ザナミビルの使用頻度が高く、ペラミビルも使われている。解熱時間をみるとH3N2については、いずれの薬剤でも27~28時間であり、薬剤間でほとんど差がない。H1N1ソ連型のH275Y変異による耐性のため2008-09シーズンにオセルタミビルの小児での解熱時間が延びたものの、その後H1N1(ソ連型)は消失しH1N1pdm09となったことによりオセルタミビルの有効性は戻ってきている。B型での解熱時間は、いずれの薬剤においてもA型よりも長く、31~38時間であった。また、年齢層別にみると、いずれの薬剤においても成人に比べ15歳以下で長い傾向となる。新種ブタH3N2vインフルエンザ新しい情報としては、現在米国で散発的に発生している新種のブタH3N2vインフルエンザがある。今のところブタからの直接感染のみ認められている。ウイルス学的にはヒトのH3N2とは異なるが、H1N1pdm09の遺伝子を一部持っているので今後の動向に注意が必要であるとされている。そのほか、症状は季節性とほぼ同様、迅速診断キットは有用だが偽陰性もみられA型季節性との鑑別できない、季節性ワクチン無効、NA阻害薬オセルタミビルやザナミビルは有効、10歳以下の小児はこのウイルスの免疫を持っていない、などの特徴がある。最近のデータでは306例ほど罹患し、死亡例が9月に入って1例発生したと報じられている*。*シンポジウム開催日(2012年10月7日)現在直近のインフルエンザ流行状況をみると、H3N2、H1N1pdm09、B型といろいろな型が流行し、シーズンによってその様相は大きく変わる。日本ではH1N1pdm09はほぼ消えているが、国外ではまだ流行している地域もある。このように多くの要素があり、来たるシーズンどのような流行になるのか予想は難しい。さらに、米国での新たなH3N2v出現など、今後ともインフルエンザの流行状況からは目を離すことはできないであろう。

1914.

ロタウイルスワクチンの効果について41試験をレビュー

 英国・Enhance Reviews社のKarla Soares-Weiser氏らは、ロタウイルス下痢症予防に用いられているロタウイルスワクチン接種介入試験の系統的レビューを行った。評価は、現在承認されている、単価ワクチン(RV1、商品名:ロタリックス)、5価ワクチン(RV5、商品名:ロタテック)と、中国のみで使用されている蘭州ラムロタウイルスワクチン(LLR、蘭州生化学製品研究所製)を対象として行われた。Cochrane Library 2012年11月14日の発表報告。 MEDLINE(PubMed経由、1966年~2012年5月)、Cochrane Infectious Diseases Group Specialized Register(2012年5月10日)、CENTRAL(Cochrane Library 2012年5月発表)、などにより文献検索を行い、小児を対象としたワクチン接種とプラセボ(または非接種あるいは他のワクチン接種)とを比較している無作為化試験(RCT)を選択した。 2人のレビュワーが個別に試験適格の評価、データ抽出、バイアスリスク評価を行った。リスク比(RR)、95%信頼区間(CI)を利用して二分データを統合し、小児死亡率による解析を階層化し、GRADEにてエビデンスの質を評価した。 主な結果は以下のとおり。・適格基準を満たしたのは41試験(被験者総計18万6,263例)で、そのうち29試験(同10万1,671例)がRV1を、12試験(同8万4,592例)がRV5を評価したものであった。LLRについては適格試験がみつからなかった。[RV1接種1歳未満児について]・小児死亡率の低い国では、重症ロタウイルス下痢症の86%が予防された(RR:0.14、95%CI:0.07~0.26、被験者4万631人・6試験、エビデンス高)。すべての原因による重症下痢症エピソードの予防は、ラテンアメリカとフィンランドにわたる大規模多施設試験1試験から、40%と思われる(同:0.60、0.50~0.72、1万7,867例・1試験、エビデンス中)。・小児死亡率の高い国では、重症ロタウイルス下痢症の63%が予防されたと思われる(同:0.37、0.18~0.75、5,414人・2試験、エビデンス中)。すべての原因による重症下痢症エピソードの予防は、マラウイと南アフリカでの1試験から、34%であると思われる(同:0.66、0.44~0.98、4,939例・1試験、エビデンス中)。[RV1接種2歳児まで]死亡率の低い国では、重症ロタウイルス下痢症の85%が予防された(RR:0.15、95%CI:0.12~0.20、被験者3万2,854人・8試験、エビデンス高)。すべての原因による重症下痢症エピソードの予防は、37%であると思われる(同:0.63、0.56~0.71、3万9,091例・2試験、エビデンス中)。・死亡率の高い国では、マラウイと南アフリカでの1試験から、重症ロタウイルス下痢症の42%が予防されたと思われる(同:0.58、0.42~0.79、2,764人・1試験、エビデンス中)。すべての原因による重症下痢症エピソードの予防は、18%であると思われる(同:0.82、0.71~0.95、2,764例・1試験、エビデンス中)。[RV5接種1歳未満児について]・死亡率の低い国では、重症ロタウイルス下痢症の87%が予防されたと思われる(RR:0.13、95%CI:0.04~0.45、被験2,344人・3試験、エビデンス中)。すべての原因による重症下痢症エピソードの予防は、フィンランドでの1試験から、72%であると思われた(同:0.28、0.16~0.48、1,029例・1試験、エビデンス低)。・死亡率の高い国では、重症ロタウイルス下痢症の57%が予防された(同:0.43、0.29~0.62、5,916人・2試験、エビデンス高)。しかし、すべての原因による重症下痢症エピソードついては、データが不十分であった。[RV5接種2歳児まで]・死亡率の低い国についてのデータがあったのは、4試験であった。3試験から、重症ロタウイルス下痢症の予防は82%と思われた(RR:0.18、95%CI:0.07~0.50、被験3,190人・3試験、エビデンス中)。1試験(フィンランド)から、すべての原因による重症下痢症エピソードについて、96%が予防可能であることがわかった(同:0.04、0.00~0.70、1,029例・1試験、エビデンス低)。・死亡率の高い国では、重症ロタウイルス下痢症の41%が予防された(同:0.59、0.43~0.82、5,885人・2試験、エビデンス高)。すべての原因による重症下痢症エピソードの予防は、15%であった(同:0.85、0.75~0.98、5,977人・2試験、エビデンス高)。・ワクチンの死亡に対する効果のエビデンスはなかった(18万1,009例、34試験、エビデンス低)。ただし同エンドポイントの検出力はなかった。・重篤な有害事象は、RV1について4,565例(9万9,438例中)、RV5は1,884例(7万8,226例中)で報告された。・腸重積症の報告例は、RV1接種後58例(9万7,246例中)、RV5は34例(8万1,459例中)であった。・重篤な有害事象、とりわけ腸重積症については、RV1またはRV5接種群とプラセボ群で有意な差はみられなかった。・RV1、RV5はロタウイルス下痢症のエピソードを予防する。ワクチンの効果は、死亡率の高い国では低かったが、疾患負荷が高いためであり、絶対的なベネフィットは高い。腸重積症を含む重篤な有害事象のリスク増加は検出されなかったが、導入後サーベイランスはワクチン関連のまれなイベントを検出するためにも必要である。

1915.

小児と成人の季節性インフルエンザワクチン有効率は解析因子で変化

 小児と成人(高齢者を除く)への季節性インフルエンザワクチンの有効性と、その有効性を規定する因子について検証した結果、有効率の推定は、ワクチンのタイプ(弱毒生、不活化)、接種年齢(小児、成人)、ワクチンとウイルス株の適合度、インフルエンザのタイプ、症例確認の手法といった因子次第で変わることが明らかにされた。インフルエンザワクチンの真の有効性レベルについては議論の的となっており、その推定には多くの因子が影響をもたらす可能性があり、米国・Sanofi PasteurのCarlos A Diazgranados氏らがメタ解析にて検証した。Vaccine誌2012年11月7日号の掲載報告。 解析は、小児と成人(高齢者除く)のインフルエンザワクチン予防接種の効果を評価すること、およびワクチンのタイプ、年齢、ウイルス株の適合度、インフルエンザのタイプ、症例確認法のワクチン推定有効率への影響を調べることを目的とした。 2011年10月時点のMedlineとEmBaseを検索し、関連論文の参考文献についてもレビューを行い、季節性インフルエンザワクチンの評価と検査確認されたインフルエンザ発生率を示していた対照試験を適格とした。実験的なチャレンジ後に有効性を評価しているもの、複製データが認められた試験、グループランダム化試験、特定年齢を対象とした試験は除外した。 ワクチンのインフルエンザ予防に関する有効性は、Mantel-Haenszelリスク比(RR)で算出し、ランダム効果モデルを用いて評価した。各比較群のワクチン有効性は、[(1-RR)×100]にて算出した。 主な結果は以下のとおり。・1つ以上の分析が行われていた30試験(計101の分析含む、被験者8万8,468例)が解析に組み込まれた。解析のエビデンスについての不均一性は49%であった。・ワクチンの有効性は、あらゆるウイルス株に対しては65%であり、適合したウイルス株に対しては78%、非適合ウイルス株に対しては55%であった。・弱毒生および不活化ワクチンのいずれもが、非適合ウイルス株に対する予防効果は低かった(それぞれ60%、55%)。・小児においては、弱毒生ワクチン接種のほうが不活化ワクチン接種よりも良好であった(80%vs. 48%)。一方、成人では、不活化ワクチンのほうが弱毒生ワクチンよりも良好であった(59%vs. 39%)。・非適合ウイルス株に対する有効性について、インフルエンザA型(69%)と、インフルエンザB型(49%)では大きな差(20%)があった。・ワクチン有効率の推定は、疾患確認を培養法をベースに行った場合、最も高かった。

1916.

ロタウイルスワクチン予防接種プログラム、導入初年度から明らかなインパクト

 フィンランド国立健康福祉研究所(THL)のTuija Leino氏らは、同国で2010年に導入されたロタウイルスワクチン予防接種プログラムの初年度の影響について推定評価を行った。その結果、重症度、病院での治療、ロタウイルス胃腸炎の型について明らかに管理コントロールできたことを報告した。Vaccine誌オンライン版2010年11月1日号の掲載報告。 研究グループは、ロタウイルスワクチン予防接種プログラム導入後初年度のフィンランドにおける、病院で治療された急性胃腸炎の負荷について、および重症ロタウイルス疾患の負荷について推定することを目的とした。また、接種したワクチンによって生じた免疫が非特異的な疾患負荷をも防御するという仮説を検討するというワクチン探索的研究の意図も目的に含んだ。 ロタウイルス関連のアウトカムは、ICD 10コードを用いてコーディングされた国立病院退院レジスターに登録されるデータに基づいた。 5歳未満児の急性胃腸炎またはロタウイルス胃腸炎による入院および外来症例の発生率を、プログラム導入前(1999~2005年)とプログラム開始後(2010年)とで比較した。 利用したICD 10コードは、A00~A09、R11、K52であった。 主な結果は以下のとおり。・プログラム導入前と比較した導入後の疾患負荷の減少率は、1歳未満児において、入院ロタウイルス胃腸炎患児においては80.3%(95%CI:74.5~84.7)であり、感染性胃腸炎の総入院患者負荷でみた場合は同一年齢グループで53.9%(同:49.8~57.7)であった。・同じく外来患者についても、それぞれ78.8%(同:48.4~91.3)、12.5%(同:7.1~17.7)の減少がみられた。・ロタウイルス胃腸炎に対する2010年ロタウイルスシーズン前のワクチン接種の全体的なインパクトは、97%(同:90.7~99.0)であった。・ロタウイルス胃腸炎と細菌未特定だがロタウイルス胃腸炎とみなされた症例について、ともに総発症数が減少した場合に獲得可能な総疾患負荷の住民ベース推計は、1歳未満児のロタウイルス胃腸炎入院で1,000人・年当たり10.5であった。一方で、診断特異的発生率はその半分以下の4.9であった。・総疾患負荷は、ワクチン導入後は診断症例よりもエンドポイントとして、より価値があるが、本研究は、ワクチン導入後のフォローアップが非常に短期であり限定的なものである。

1917.

MMRワクチン2回接種高率地域では、耳下腺炎流行を3回目の接種でコントロール可能

 MMRワクチン2回接種率の高い地域では、耳下腺炎流行時に3回目の接種を行うことで、接種後すみやかに発生率の減少がみられ、流行のコントロールに有用である可能性が示された。米国CDCのIkechukwu U Ogbuanu氏らが、耳下腺炎流行コントロールに対するMMRワクチン3回目接種の影響を評価した初の試験結果として報告した。米国では2009~2010年に北東部の宗教コミュニティにおいて、MMRワクチン2回接種率が高率であったにもかかわらず耳下腺炎の大規模な流行が発生した。その際、同地域の学生に対し、流行のコントロール効果を目的にMMRワクチンの3回目の接種が行われた。Pediatrics誌オンライン版2012年11月5日号の掲載報告。 MMRワクチンの3回目の接種に関する試験は、3校の6~12学年の学生に対して行われた。 ベースライン評価とフォローアップ評価、および医師の症例報告によって、耳下腺炎罹患率(接種前後3週間の期間について算出)をモニタリングした。 主な結果は以下のとおり。・試験適格であった学生2,265例のうち、2,178例(96.2%)に対し追加接種に関する文書を提供した。接種を選択した学生は高率(1,755例、80.6%)であった。・6~12学年全体の耳下腺炎罹患率は、ワクチン接種前は4.93%であったが、接種後は0.13%に低下した(p<0.001)。・コミュニティ全体の罹患率は、介入後75.6%まで低下した。・罹患率の低下は全年齢群でみられたが、ワクチン接種を行った11~17歳群での低下は、その他のどの年齢群よりも有意に大きかった(96.0%)。・有害事象発生の報告は、MMRワクチン接種1回目または2回目の既存報告の範囲内、もしくはより低率であった。

1918.

ハイリスク群へのPCV13接種の費用対効果は?/BMJ

 多くの国で侵襲性肺炎球菌感染症のハイリスク患者には23価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV23)の予防的投与が推奨されているが、欧州委員会は最近、13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)の適応を50歳以上の成人まで拡大した。オランダ・フローニンゲン大学のMark H Rozenbaum氏らは、ハイリスク患者に対するPCV13接種の費用対効果について検証した。BMJ誌2012年11月10日号(オンライン版2012年10月26日号)掲載より。2歳以上のイギリス人ハイリスク患者を対象にコスト、QALYを評価 経済解析は保険者視点によるコホートモデルを用いて行われ、対象は、2歳以上のイギリス人で、慢性腎臓病、脾臓の機能不全、HIV感染症、免疫系の易感染、慢性の心臓・肝臓・呼吸器系の疾患、糖尿病などで侵襲性肺炎球菌感染症のリスクが高い者であった。 主要評価項目はコスト、質調整生存年(QALY)、増分費用効果比(ICER)とした。非肺炎球菌菌血症に対するPCV13の有効性が実証されれば費用対効果が高い可能性 PCV13を用いた新生児ワクチン接種プログラムによる間接効果の増大は、一方でハイリスク群の予防可能な疾患負荷を減らすことが可能であることを意味する。 ベース症例の条件(ハイリスク群の非肺炎球菌菌血症に全体的な効果が認められず、ハイリスクワクチン接種プログラムは新生児接種プログラム後の2~3歳で開始する)下では、増分費用効果比は最大ハイリスク群でQALY当たり3万ポンド(3万7,216ユーロ、4万8,210ドル)以上になると推定された。 しかし、もしワクチンが非肺炎球菌菌血症の予防に効果がない、あるいはワクチンを新生児PCV13プログラム開始と同時とした場合は、ハイリスク患者への接種は(より)費用対効果に優れている可能性があるとしている。 感度解析では、費用対効果はとくに集団ベネフィットと有効性の推定において感度が高かった。 これらの結果からRozenbaum氏らは、ベース症例前提条件下では、高い費用対効果が可能と考えられるリスク群への肺炎球菌ワクチン接種プログラムは考えにくいとしたうえで、この不確定さは、非肺炎球菌菌血症に対するPCV13の有効性を実証することによって、かなり減少される可能性はあると報告した。

1919.

ロタウイルスワクチン接種は、ローコストでハイリターン

 ロタウイルスワクチン接種は、わずかなコストにより、相当な疾患負担を減少することが、カナダ・トロント大学のDavid N Fisman氏らによる検討の結果、報告された。ロタウイルス胃腸炎は世界中の小児における罹患率と死亡率の要因となっており、カナダを含む高所得国では、高い罹患率とヘルスケア利用は大きな負担となっている。カナダでは現在、2種のロタウイルスワクチン(商品名:ロタリックス、ロタテック)が承認されているが、これまで経済効果については調査されていなかったという。Vaccine誌オンライン版2012年10月26日号の掲載報告。 研究グループは、2つのモデル(マルコフ連鎖モンテカルロ法シミュレーションと、ブリティッシュコロンビア州小児のロタウイルス胃腸炎に関する動的伝播モデルシミュレーション)による経済解析を行った。モデルは、疾患自然史、疫学情報、ワクチンの有効性およびコスト、医療費について入手可能な最善のデータに基づいて示され、ヘルスケア利用、ワクチン普及率は経験的推定値とすり合わせて調整した。それら予測値の検証について、決定論的・確率論的感度解析で評価した。 主な結果は以下のとおり。・小児のロタウイルス胃腸炎に対する予防接種は、小児への接種100人につき63~81人の感染を防御することが予測された。外来患者については、相当数を防御すると予測された。・2種のワクチンはともに、小児への接種100人につき1~2件の入院を防御すると予測された。・ワクチン接種は、ヘルスケアコストを増加すると予測された。・ロタリックスによる予防接種はおよそ1感染防御につき10ドルのコストを要し、2,400ドルQALYを獲得する可能性が示された。ロタテックは、コストが多いが効果は低く、優先的に選ばれない可能性が示された。・それらの可能性は、広範囲の感度解析でも揺るがなかった。

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インフルエンザの乳児、細菌性髄膜炎と菌血症のリスクは非常に低い

 乳児のインフルエンザ罹患症状は重篤な細菌感染症と似通っており、腰椎穿刺のような侵襲的検査が行われる。しかし、インフルエンザが細菌性髄膜炎を併発するとのエビデンスは限られており、それでも腰椎穿刺が行われるのは、実施が考慮される時点でインフルエンザの診断が確立されていない場合がほとんどであるからとされる。オーストラリア・国立ワクチン予防接種疾患研究・サーベイセンターのGulam Khandaker氏らは、腰椎穿刺の実施およびその必要性を考慮するにあたって、インフルエンザを有した小児と、その他の呼吸器感染症を有した小児とを比較する後ろ向き研究を行った。 研究グループは、オーストラリア シドニーのウェストミード小児病院で、冬季1シーズン中に検査確認されたインフルエンザまたはその他の呼吸器ウイルス感染症(ORVIs、RSウイルスは除外)を有したすべての小児について、後ろ向きカルテレビューを行った。 侵襲的検査(主として腰椎穿刺、血液培養も対象とする)の実施例をインフルエンザ群と非インフルエンザ群で比較し、その必要性を検討した。 また、細菌性髄膜炎または菌血症の同時罹患率も調べた。 主な結果は以下のとおり。・対象患児294例中、51%が検査確認されたインフルエンザ患児であり、49%がORVIs(パラインフルエンザウイルス34%、アデノウイルス15%)患児であった。・インフルエンザ群のうち、18%が腰椎穿刺を、71%が血液培養を受けていた。一方、ORVIs群はそれぞれ6.3%、55.5%であった(いずれもp<0.01)。・インフルエンザ群のほうがORVIs群よりも、入院中に腰椎穿刺を受けている傾向が認められた。ORVIsと比較するとインフルエンザのケースでは、入院時に腰椎穿刺を行う可能性は3倍以上に上った。・多変量解析の結果、インフルエンザの診断は、腰椎穿刺(p=0.02)、血液培養(p=0.05)を実施に関してそれぞれ強力な因子であった。・インフルエンザを有した患児で、菌血症を伴ったのは1例(0.9%)であった。髄膜炎を有した患児はいなかった。・インフルエンザが入院時にベッドサイド検査で確認されている場合は、臨床医は安心感から腰椎穿刺を行わない傾向がある。一方で、もし髄膜炎が臨床的に疑われるようであれば、それに応じた対応をしなければならない。・しかし、インフルエンザやORVIsで入院した小児では、細菌性髄膜炎と菌血症のリスクは非常に低いことが認められた。本知見について、大規模な試験設定でのシステマティックレビューを行う必要がある。

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