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第86回 「オミクロン株感染者」国内初確認で浮上した「例外」入国の課題

新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」が世界的に拡大する中、日本政府は11月29日、11月30日~12月31日までの間、世界からの外国人の新規入国を原則停止すると発表した。南アフリカが、オミクロン株の発生を公表した翌11月26日、日本政府は、6ヵ国からの入国者に国指定の宿泊施設での10日間の待機を求める決定を行い、官邸幹部は比較的早い対応に胸を張った。しかし、感染力が強くワクチン効果が下がる可能性が指摘されるオミクロン株の感染者が日本国内で初めて確認され、第6波のきっかけになることが懸念されている。国内初の感染確認例、ワクチン2回接種もブレークスルー感染か菅 義偉前首相がデルタ株への対応に遅れたと批判され、衆議院選を前に内閣支持率が低下したことから、岸田 文雄首相は来年夏の参議院選を踏まえ、外国人の新規入国禁止に踏み切った。それでも、外国人の入国禁止間際の11月28日夕方に、ナミビアから経由地を経て成田空港に到着した同国の男性外交官(30代)が新型コロナウイルスに感染した疑いがあったことから、国立感染症研究所(感染研)でゲノム解析を実施。その結果、30日にオミクロン株と確認された。日本国内でわかった初のオミクロン株感染者となった。男性は、7月にモデルナ製ワクチンの2回目接種を受けており、入国時には無症状だったが、空港検疫で陽性と判断。11月29日から発熱の症状が出た。成田空港検疫所が指定する施設で療養していたが、オミクロン株の感染判明後は医療機関で隔離。一緒に入国した妻子は陰性だったが、隔離された。抜け穴になりかねない「濃厚接触者扱い」の自宅待機男性と同じ飛行機で日本に入国した人は70人いた。ナミビアからの入国者に関しては、検疫所が指定する施設で10日間隔離される。一方、経由地で男性と同じ飛行機に乗った場合、自宅などで最長14日間の待機のみになる可能性がある。飛行機では通常、陽性者の列の前後2列ずつを濃厚接触者として追跡調査を行うが、空気感染の可能性も指摘される中、日本政府は今回、全員を「濃厚接触者扱い」にするという異例の措置に踏み切った。現在のところ全員陰性だったが、宿泊施設もしくは自宅での待機が指示されている。そのうち40人程度が都内在住だという。全員アプリで経過観察を行い、2日ごとに検査を実施。協力を得られない場合、政府は氏名を公表するという。ただ、自宅待機を認めると、そこに抜け穴が生じる可能性がある。本来なら、濃厚接触者は決められた施設に入り、一定期間きちんと管理するのが重要だ。医療機関はオミクロン株感染者受け入れを前提にした態勢成田空港で見つかった新型コロナ感染者が搬送される病院の1つ、国際医療福祉大学成田病院では、オミクロン株に感染した可能性があることを前提で対応する方針だ。11月30日に記者会見した感染研の脇田 隆字所長は「これから年末に向けて、いずれ感染拡大が再度起きうる想定は、われわれとしてはしていかなければいけないと考えている。オミクロン株がどの程度影響するかについては、感染伝播力がどの程度強いのか、ワクチンに対する免疫力をどの程度落とすものか、順次知らせていきたい」と述べた。また、オミクロン株感染者が空港検疫をすり抜ける可能性がある中、後藤 茂之厚生労働大臣は「従来15~20%のゲノム解析を能力のある限り(実施)してほしい」と訴えた。新型コロナの新規感染者が減少し、医療機関に余力が出てきた分、広くスクリーニングできる体制づくりが必要だ。オミクロン株の存在が発表されてからわずか5日間で、日本を含め23ヵ国・地域に急拡大した。イギリスやオランダ、ドイツなどでは、自身の海外渡航歴がない、もしくは渡航歴がある人との接触がない人のオミクロン株感染が報告されており、市中感染の可能性が指摘されている。このような状況下、各国は対策を急いでおり、イギリスではブースター接種の対象年齢を40歳以上から18歳以上に引き下げ、2回目接種からの間隔を6ヵ月から3ヵ月に短縮した。政府・与党は経済を後回しにしてもオミクロン株対策優先オミクロン株が日本に来るスピードの速さには驚かされる。第6波の引き金になることを想定した対策を打つ必要がある。人の移動や接触が増える年末年始を前に、政府・与党は経済を回すために飲食店での人数制限やイベントの開催制限の緩和を進めてきたが、経済を後回しにしてでもオミクロン株対策を厳しくする必要があるとの考えが支配的になってきているという。佐藤 正久・自民党外交部会長は、外国人の新規入国原則停止の「原則」を問題視。原則がある以上、例外がある。たとえば10月の場合、「特段の事情」という例外で3万3,000人の外国人が入国し、11月以降も例外が継続される点に対し、それが抜け穴となってオミクロン株が国内に持ち込まれないよう、外国人の入国の厳格化・極小化、できればゼロにすることを訴えている。最初に規制の網を大きく広げておき、オミクロン株の感染力の強さ、重症化リスク、ワクチン効果などがわかってきて大丈夫だと判断できれば、再び規制を緩和していくのが良いだろう。どのタイミングで、どう対応していくのか、引き続き、政府の迅速な対応が求められる。

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HPVワクチンの接種個別勧奨を自治体へ指示/厚労省

 11月26日、厚生労働省は「ヒトパピローマウイルス感染症に係る定期接種の今後の対応について」の通知を全国の自治体に向けて発出した。 同省は、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症に係る予防接種の積極勧奨について、ワクチンとの因果関係を否定できない持続的な疼痛が接種後に特異的にみられたことから、定期接種を積極的に勧奨すべきではないとし、平成25年6月14日発出の通知により接種の積極的な勧奨とならないよう留意するなどの対応を勧告してきた。 今回の通知はその勧告を変更するもので、先の平成25年の通知は廃止され、令和4年4月よりHPVワクチン接種対象者に予防接種法第8条に基づき勧奨を行うこととなる。現在の状況を終わらせフォローを厚く 厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会および薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会での同ワクチンの有効性・安全性、接種後に生じた症状への対応、ワクチンについての情報提供の取組みなどについて議論が行われた。その結果、第72回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、令和3年度第22回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会(合同開催)で最新の知見を踏まえ、改めて同ワクチンの安全性について特段の懸念が認められないこと、接種による有効性が副反応のリスクを明らかに上回ることが認められたことから、現在の状態を終了させることが妥当とされた。 ただし、引き続き同ワクチンの安全性の評価、接種後に生じた症状の診療に係る協力医療機関の診療実態の継続的な把握や体制強化は行い、都道府県や地域の医療機関などの関係機関の連携を強化し地域の支援体制の充実、同ワクチンの情報提供の充実はさせていく。具体的な動きについて1)HPVワクチンの個別の勧奨について 市町村長は、予防接種法第8条規定による勧奨を行うこと。具体的には、対象者またはその保護者に対し、予診票の個別送付を行うことなどにより、接種を個別に勧奨することが考えられる。2)HPVワクチンの個別勧奨および接種を進めるに当たっての留意点(1)個別勧奨を進めるに当たり、標準的な接種期間に当たる者(13歳となる日の属する年度の初日から当該年度の末日までの間にある女子)に対して行うことに加え、これまで個別勧奨を受けていない令和4年度に14~16歳になる女子についても、同ワクチンの供給・接種体制などを踏まえつつ、必要に応じて配慮する。(2)同ワクチンの接種を進めるに当たっては、対象者などに対しワクチン接種について検討・判断するために必要な情報提供が行われるとともに、被接種者が接種後に体調の変化を感じた際に、地域において適切に相談や診療などの対応が行われるよう、医療機関や医師会などの関係者の連携の下、十分な相談支援体制や医療体制の確保に遺漏なきを期す。(3)市町村長は、管内の医療機関に対して、HPV感染症に係る定期接種の対象者などが接種のために受診した場合には、同ワクチン接種の有効性および安全性などについて十分に説明した上で、対象者などが接種を希望した場合に接種することを引き続き周知する。(4)HPV感染症の定期接種を含め、予防接種による副反応疑いの報告が適切に行われるよう、市町村長は管内の医療機関に対し「定期の予防接種等による副反応疑いの報告等の取扱いについて」の周知を引き続き図る。3)その他 平成25年通知が廃止されるまでの間、積極的な勧奨の差控えにより接種機会を逃した方への対応については、公費による接種機会の提供などに向けて対象者や期間などについての議論を開始した。今後、方針が決定次第、速やかに周知する予定。 なお、この通知にともない「予防接種法第5条第一項の規定による予防接種の実施について」も改訂され、令和3年11月26日より施行された。

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3回目接種開始に伴う追記など、新型コロナ予防接種の手引き改訂/厚労省

 厚生労働省は、11月30日付でホームページ上に「新型コロナウイルス感染症に係る予防接種の実施に関する手引き(5.0版)」を公開した。今回は、今月より新型コロナワクチンの追加(3回目)接種が開始することに伴う追記(予診票、請求事務の変更など)が主な改訂ポイントとなる。 最新版手引きによると、追加接種は、「2回目接種から原則8ヵ月以上経過した者に対して1回行うこと」としている。そのため、追加接種についても2回目接種までの時期が早かった医療従事者などから順次開始する。初回接種(1、2回目接種)で使用したワクチン接種の種類にかかわらず、現時点で追加接種において使用できるワクチンは、ファイザー社製ワクチン(コミナティ)のみで、接種対象者は18 歳以上。今後の薬事承認等の状況を踏まえ、使用できるワクチンが追加される可能性がある。 なお、12 月1日以降は、原則として新様式の接種券一体型予診票を使用することになるが、追加接種と初回接種とではそれぞれ予診票が異なるので注意が必要だ。 手引きの詳細や新様式の関連文書などは、厚労省の当該ページ(新型コロナワクチンの接種を行う医療機関へのお知らせ)を参照いただきたい。

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インド製コロナワクチン、有効率77.8%で忍容性良好/Lancet

 インドで開発された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンBBV152は、成人においてウイルス学的に確認された症候性COVID-19の発症予防に対し高い有効性を示し、忍容性は良好で安全性に関する懸念はない。インド・バーラト・バイオテック社のRaches Ella氏らが、インドの25施設で実施した無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験の中間解析結果を報告した。BBV152ワクチンは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)NIV-2020-770株をβ-プロピオラクトンで不活化し、ウイルス抗原6μgを、ミョウバン(Algel)にtoll様受容体7/8アゴニスト分子(イミダゾキノリン:IMDG)を吸着させたAlgel-IMDGと共に製剤化した不活化全ウイルスワクチンで、保存温度は2~8度であることから、輸送・保管システムの必要条件を緩和できる可能性が示されている。Lancet誌オンライン版2021年11月11日号掲載の報告。約2万6千人をBBV152ワクチン群とプラセボ群に無作為化 研究グループは、18歳以上の健康成人または慢性疾患を有する成人(免疫不全状態または免疫抑制療法が必要な状態ではない)を、ワクチン群またはプラセボ(Algelのみ含有)群に、慢性疾患の有無で層別化して1対1の割合に無作為に割り付け、ワクチンまたはプラセボを4週間間隔で2回筋肉内投与した。 主要評価項目は、per-protocol集団(ベースラインで血清陰性、2回目投与後14日以上追跡)におけるワクチン2回目投与から14日以降の症候性COVID-19(PCR検査により確認、重症度は問わない)初回発症に対する有効性とした。また、ワクチンを少なくとも1回またはプラセボの投与を受けたすべての被験者における、試験期間中の安全性と反応原性についても評価した。 2020年11月16日~2021年1月7日の間に、26,028例がスクリーニングを受け、2万5,798例がワクチン群(1万2,899例)およびプラセボ群(1万2,899例)に無作為に割り付けられた。有害事象は同率、アナフィラキシーやワクチン関連死の報告なし 無作為化された2万5,798例のうち、2万4,419例がワクチンまたはプラセボの2回投与を完了した(それぞれ1万2,221例、1万2,198例)。 データカットオフ(2021年5月17日)時点で、per-protocol集団1万6,973例中、症候性COVID-19は130例に認められた。ワクチン群が8,471例中24例(0.3%)、プラセボ群が8,502例中106例(1.2%)であり、全体でのワクチン有効率は77.8%(95%信頼区間:65.2~86.4)と推定された。 安全性解析対象集団は2万5,753例で、このうち3,194例に5,959件の有害事象が発生した。有害事象の発現率は、ワクチン群12.4%(1,597/12,879例)、プラセボ群12.4%(1,597/12,874例)と同じであり、自発的および非自発的に報告された有害事象、重篤な有害事象の発現率に両群で有意差はなく、アナフィラキシーやワクチン関連死も報告されなかった。

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第88回 オミクロン株のスパイクタンパク質の抗体認識領域はどれも変異している

先週金曜日26日、南アフリカから24日に世界保健機関(WHO)に初めて報告された心配な新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)変異株B.1.1.529がオミクロン(Omicron)株と命名されました1)。南アフリカでのこれまでの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行の波は3回あり、直近の第3波は主にデルタ株が担いました。オミクロン株が認められた検体の最初の採取日は26日時点で知られている限り今月上旬の9日で、同国ではその検出と時を同じくしてここ数週間SARS-CoV-2感染が急増しています。オミクロン株はやけに多くの変異を有し、これまでの変異株に比べて再感染しやすいようです1)。渡航制限にもかかわらず世界にすでに広がっており、29日のReutersのニュースによると南アフリカに加えてオーストリア、ベルギー、ボツワナ、英国、デンマーク、ドイツ、香港、イスラエル、イタリア、オランダで検出されています2)。オミクロン株が憂慮されるのはなぜかというと、COVID-19研究で名を馳せた英国の大学インペリアル・カレッジ・ロンドンの専門家によればスパイクタンパク質のこれまでに知られている抗原部分のどうやらすべてに変異を有しているからです3)。ワクチンに応じて作られる抗体はSARS-CoV-2スパイクタンパク質の随所の抗原領域に取り付き、ウイルスの細胞侵入を阻止して感染や発病を防ぎます。ウイルスが抗体一揃いを回避する変異1つを獲得したとしてもたいていは他の抗体一揃いの働きで依然として感染を防ぐことができます。抗体は変異に対応しうる余力をそのように常に残しています。しかしオミクロン株のスパイクタンパク質の抗原領域はどこもかしこもすべて変異しているらしく、抗体のかなりがオミクロン株スパイクタンパク質の認識には苦労しそうです。ゆえに、現在普及しているワクチンはオミクロン株に手こずるかもしれません。ただし、まったく歯が立たないのかそれとも苦戦するとはいえ勝てる相手なのかはまだわかりません。オミクロン株のスパイクタンパク質のフリン切断領域の変異も心配です。それらの変異は感染をより広まりやすくすることと関連し、デルタ株もその領域に非常に手強い変異を有しています。また、細胞のACE2受容体にスパイクタンパク質を結合しやすくする変異もオミクロン株は有します。その変異はアルファ株の広まりやすさに貢献したことで知られます。スパイクタンパク質以外の核タンパク質等にもオミクロン株は心配な変異を有します。それらの変異はウイルス粒子内のゲノムの組み立てや収納を捗らせて免疫反応に打ち勝てるようにするようです。WHOも把握している通り南アフリカでオミクロン株はデルタ株を急速に凌駕して感染者数を増やしていることが伺え、おそらく横溢(fit)で伝播可能であり、現在のワクチンや先立つ感染経験で確立した免疫の少なくとも幾らかは回避できるようです。オミクロン株感染の特徴免疫を回避して生じたオミクロン株感染がより重病を招くかどうかは不明ですが、幸いにも南アフリカの感染者はいまのところ軽症で済んでいます。新参のSARS-CoV-2感染を早くに察した南アフリカの医師の一人Angelique Coetzee氏が治療したオミクロン株感染者はいたって軽症であり、外科的処置が必要になったことはなく、自宅で治療できています4)。デルタ株感染とは違ってオミクロン株感染者は匂いや味の消失を被っておらず、酸素レベルの大幅な低下も認められていません。最も目立つ症状は1日か2日の極度の疲労感で、頭痛やその他の痛みを伴います。Coetzee氏が治療したオミクロン株感染症患者のおよそ半数はワクチンを接種していませんでした。南アフリカではわずかに4人に1人ほどしかワクチン接種が済んでいません5)。流通の不手際に加えてワクチン接種忌避や無関心が同国でのワクチンの普及を妨げています。流行第4波の火種となりうるオミクロン株感染増加を背景にして南アフリカの大統領Cyril Ramaphosa氏は一定条件でのCOVID-19ワクチン接種義務化を検討しています5)。オミクロン株とワクチン開発オミクロン株に対応するようにワクチンの手直しが必要かどうかを決める更なるデータが早ければ来月初めには揃い、必要とあらば修正済みの新たなワクチンを100日もあれば出荷しうるとの見解をPfizer(ファイザー)/BioNTech(ビオンテック)が先週金曜日に発表しました6)。Moderna(モデルナ)も対応を始めており、オミクロン株に特化したワクチンmRNA-1273.529の開発を急いで進める予定です7)。また、先立って試験が進む変異株向けのワクチンmRNA-1273.211やmRNA-1273.213、それに世界で使用されている認可済みのmRNA-1273の高用量投与がオミクロンに有効かどうかの検討も進めます。AstraZeneca(アストラゼネカ)も同様にオミクロン株のワクチンや抗体治療への影響を調べています8)。参考1)Classification of Omicron (B.1.1.529): SARS-CoV-2 Variant of Concern / WHO2)Omicron variant detected in more countries as scientists race to find answers / Reuters3)Q&A: Imperial experts discuss new variant B.1.1.529 / Imperial College London4)South African doctor says patients with Omicron variant have "very mild" symptoms / Reuters5)South Africa mulling compulsory COVID-19 jabs for some places, activities / Reuters6)Pfizer/BioNTech, Moderna expect data on shot's protection against new COVID-19 variant soon / Reuters7)Moderna Announces Strategy to Address Omicron (B.1.1.529) SARS-CoV-2 Variant / BUSINESS WIRE8)AstraZeneca examining impact of new COVID variant on vaccine, antibody cocktail/ Reuters

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ワクチン接種の目的は“次世代の健康”/EFPIA Japan

 EFPIA(欧州製薬団体連合会)Japanは、2021年11月22日に感染症領域のエキスパートである岡部 信彦氏(川崎市健康安全研究所 所長)を講師に迎え、ワクチンに関するオンラインプレスセミナーを開催した。セミナーでは、ワクチンが人類に果たしてきた役割について、その軌跡をたどるとともに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の盾を担うmRNAワクチンにも触れて講演が行われた。ワクチンギャップは解消しつつある日本 岡部氏を講師に「生涯を通じての感染症予防(Life Course Immunization)-COVID-19の経験を含めて-」をテーマにレクチャーが行われた。 はじめに予防接種の歴史について振り返り、天然痘の予防としてわが国では江戸時代末期から種痘が行われたこと、その際に種痘後にお土産を渡すなど予防接種へのインセンティブをもたらす取り組みがこの時代から行われていたことを現代のCOVID-19ワクチン接種の現状と重ねて説明した。 次に戦後のわが国の予防接種制度と社会状況の変化との関連について振り返り、その時代時代と予防接種は強い関係にあると説明した。現在、日本で接種できるワクチンは定時/臨時接種で21種類、任意接種で10種類、計31種類の接種ができ、世界から遅れていたワクチンギャップも解消に向かいつつあるという(2021年9月現在)。また、近年では「院内感染対策としてのワクチンガイドライン」(日本環境感染学会)や「医療関係者のためのワクチンガイドライン」(同学会)も整備され、医療者の感染予防と他者への感染源とならないための予防などの指針も整備されていると解説を行った。子供がかかる感染症に大人がかかるとリスクが上がる 次にCOVID-19を例にとり、現在までのクラスターの発生状況を振り返った上で、「ワクチン接種のターゲットとして、まず医療機関が守られることであり、医療が動くことが重要」と述べ、ワクチンのポリシーとしては「死亡者を出さないことが大事だ」と語った。 次に大人がかかる子供の感染症について解説を行った。 大人がかかるとリスクが高い感染症として、「水ぼうそう」「はしか」「おたふくかぜ」「ポリオ」「手足口病」「伝染性紅斑」「百日咳」などを代表感染症に挙げ、沖縄県で起こった麻疹のクラスター、近年の風疹のクラスターについて解説。いずれもワクチン接種をしていない、接種不明や1回のみ接種などで抗体ができていない大人が感染し、拡大させていたことを報告した。大人でもワクチンを接種しておけばクラスターを予防できた可能性を述べるとともに、社会的事象としておたふくかぜと難聴の関係、大規模災害と破傷風の流行なども示し、ワクチンの重要性を強調した。これからのワクチン接種で大切な“ISRR” 予防接種の目的は、「感染症罹患予防」「個人の健康保持」「次世代の健康を守る」「社会を守る」「感染症の制圧・根絶」「がんの予防」などさまざまな目的があることを示し、とくに「次世代の健康を守る」「社会を守る」ことが重要だと同氏は語る。また、COVID-19ワクチンとして現在広く接種されているmRNAワクチンについても触れ、開発は過去の研究から積み重ねられて製作されたこと、新しいものを含めワクチンの接種では、感染症患者、健康被害者、健康な人のどこに視点をおいて守るかにより接種機会は変わってくることを説明し、ワクチンの接種では、「いつも接種のメリットとデメリットを衡量することが重要」と同氏は指摘した。また、最近ワクチン接種で注目されているトピックスとして、予防接種ストレス関連反応(Immunization stress related response:ISRR)について触れ、「接種時に医療者はISRRも考慮し、丁寧な説明、接種手技、科学的・医学的対応をする必要がある」と警鐘を鳴らした。 最後に同氏は成人のワクチンの課題として、「効果・安全性に関する説明法やその内容、費用の負担、接種への動機付けなどがある」と指摘し、「ワクチンの安全性を高めるためにも医療者も被接種者も『焦らない・慌てない・数を競わない』ようにしてほしい」と結びレクチャーを終えた。

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エアロゾル感染への対応、ワクチン後の対応などを改訂/医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド 第4版

 日本環境感染学会は「医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド 第4版」を2021年11月22日に公開した。第3版からの主な改訂項目は、エアロゾル(微小飛沫)による感染への対応、新型コロナウイルスのワクチン接種後の対応、積極的な検査の導入を含めた対応、である。 本ガイドの第1版は2020年2月12日に公開され、その後の状況の変化に応じて改訂し、2020年5月8日に第3版を公開していた。その後、変異株の拡大やワクチン接種、検査の積極的な導入などにより、医療機関での対応も変化してきていることから、現状を踏まえた改訂が実施された。

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第79回 新たなコロナウイルス変異株「オミクロン型」に警戒を/WHO

<先週の動き>1.新たなコロナウイルス変異株「オミクロン型」に警戒を/WHO2.子宮頸がんワクチン積極的勧奨、来年4月から/厚労省3.医療費適正化に向け、リフィル処方箋の導入求める声も/経済諮問会議4.コロナ赤字を抱える病院、診療報酬改定をめぐる攻防の行方は?5.サイバー攻撃を受けた電子カルテ、約2億円をかけ復旧目指す/徳島県1.新たなコロナウイルス変異株「オミクロン型」に警戒を/WHO世界保健機関(WHO)は26日、南アフリカで新たに見つかった新型コロナウイルスの変異型を最も警戒レベルが高い「懸念される変異型(VOC)」に分類し、「オミクロン型」と名付けた。アフリカ以外に、香港やイギリス、オランダ、ベルギーなどでも感染が確認されており、多くの国が南アフリカとその周辺地域からの直行便の運航を禁止するなど、各国で対応を急いでいる。わが国でも国際便を運航する空港で水際対策強化を進めている。(参考)WHO、新変異型「オミクロン」と命名 警戒最大に(日経新聞)新変異ウイルス「オミクロン株」 懸念される変異株に指定 WHO(NHK)オミクロン株、英独伊で検出 ジョンソン首相、行動規制の復活発表(毎日新聞)成田や羽田で「オミクロン株」対策始まる、誓約書記入も…帰国の男性「細かいが仕方ない」(読売新聞)2.子宮頸がんワクチン積極的勧奨、来年4月から/厚労省厚生労働省は26日に、子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス感染を防ぐHPVワクチンについて、従来行ってきた定期接種ではなく、積極的に個別勧奨することを自治体に向けて通知した。これまでの積極的勧奨の差し控えを求めていた2013年の勧告は廃止した。接種の再開時期は2022年4月としているが、体制が整った自治体では前倒しも可能としている。(参考)子宮頸がんワクチン積極勧奨 来春再開、空白世代も救済 公費での接種調整(日経新聞)子宮頸がんワクチン 来年4月 接種の積極的呼びかけ再開 厚労省(NHK)ヒトパピローマウイルス感染症に係る定期接種の今後の対応について(厚労省)3.医療費適正化に向け、リフィル処方箋の導入求める声も/経済諮問会議政府は25日に開催した経済諮問会議(議長:岸田首相)で、来年度の予算編成に向けて、社会保障改革や今後の財政運営について議論を行った。この中で、諮問会議民間委員は「診療報酬本体のメリハリのある見直しを行い、国民負担を軽減すべき」とし、通院回数を減らすことによる感染症拡大中の患者負担軽減や医療費の抑制、さらに残薬の削減に向け、かかりつけ薬剤師による適切な服薬指導の下、リフィル処方を導入すべきとの意見を出した。また、一人当たり医療費・介護費の地域差半減・縮減の推進のために、地域医療構想のPDCAサイクルの強化や医療費適正化計画の在り方の見直しを求めた。(参考)諮問会議で鈴木財務相 22年度改定は「“医療提供体制改革なくして診療報酬改定なし”の姿勢で臨む」(ミクスonline)令和3年11月25日 経済財政諮問会議(首相官邸)4.コロナ赤字を抱える病院、診療報酬改定をめぐる攻防の行方は?厚労省は24日の中央社会保険医療協議会の総会において、医療機関の経営状況を調べた医療経済実態調査の結果を公表した。2020年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響により受診控えが生じたため、一般病院の損益は6.9%の赤字となり、前年度の赤字(3.1%)を上回ることが明らかとなった。政府が行った新型コロナウイルス対策で、一般病院に対して1施設当たり平均約2.4億円、コロナ専用病棟を持つ重点医療機関には約10億円を支払った補助金を含めると0.4%の黒字となったものの、2021年6月に至っても感染拡大の影響が残り、赤字基調のままだった。医療界は診療報酬のプラス改定を求めているが、財務省はコロナ対策を契機に医療費適正化のため診療報酬の引き上げに対しては否定的であり、年末まで各団体との調整が続くと見られる。(参考)診療報酬めぐり「日医」「財務省」攻防激化(産経新聞)来年度の改定“診療報酬 引き下げを” 健保連など厚労省に要請(NHK)病院の利益率、マイナス6.9% コロナ補助金で黒字化 20年度(毎日新聞)5.サイバー攻撃を受けた電子カルテ、約2億円をかけ復旧目指す/徳島県 徳島県つるぎ町(人口7,877人)にある町立半田病院の電子カルテが、10月31日にサイバー攻撃を受け、カルテ情報が暗号化されアクセスできなくなって約1ヵ月、病院側はランサムウェア攻撃の犯行声明を出した国際的なハッカー集団に身代金を支払うことなく、約2億円をかけて新システムによる電子カルテの復旧を行うことになった。これまでのサイバー犯罪は企業をターゲットにした犯行が多かったが、電子カルテについても今後増えていく可能性が高く、対策強化が必要となる。(参考)消えた電子カルテ、お産もできない…田舎の病院を襲ったサイバー攻撃(朝日新聞)身代金払わず2億円で新システム 徳島サイバー被害病院(日経新聞)サイバー被害の徳島・半田病院、通常診療を一部再開 小児科と産科部門を先行(徳島新聞)

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J-CLEAR特別座談会(4)「COVID-19:治療薬の現状と展望~エビデンスからの検証」

J-CLEAR特別座談会(4)「COVID-19:治療薬の現状と展望~エビデンスからの検証」出演東京都健康長寿医療センター顧問 桑島 巖 氏東京医科大学呼吸器内科客員教授、健康医学会附属東都クリニック 山口 佳寿博 氏東海大学医学部内科学系循環器内科学教授、J-CLEAR理事 後藤 信哉 氏琉球大学大学院医学研究科臨床薬理学、横浜市立大学ヘルスデータサイエンス専攻 植田 真一郎 氏「CLEAR!ジャーナル四天王」執筆メンバーら4氏が、「COVID-19:治療薬の現状と展望~エビデンスからの検証」をテーマに、各々の専門領域の知見を基に議論を交わしたウェブ座談会の模様を前・後編でお届けします。なお、この番組は2021年10月21日に収録したもので、当時の情報に基づく内容であることをご留意ください。

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新型コロナとインフルワクチンの同時接種は安全か/Lancet

 新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンを同時に接種できれば、医療現場の負担減少につながる。米国ではワクチン接種率を高めるために同時接種も可としているが、日本では現時点で互いに片方のワクチンを受けて2週間後に接種可となっている。今回、英国のComfluCOV Trialグループによる多施設共同無作為化第IV相試験で、新型コロナウイルスへのアストラゼネカ製ワクチン(ChAdOx1)もしくはファイザー製ワクチン(BNT162b2)とインフルエンザワクチンの同時接種により安全性の懸念は引き起こされなかったことが示された。また、両ワクチンに対する抗体反応も維持されていた。英国・University Hospitals Bristol and Weston NHS Foundation TrustのRajeka Lazarus氏らが、Lancet誌オンライン版2021年11月11日号で報告した。 本試験では、2021年4月1日~6月26日に英国における12施設で、新型コロナワクチン(ChAdOx1またはBNT162b2)の初回接種を受けた成人679人を登録し、以下の6グループに分けて検討した。・ChAdOx1+培養細胞4価インフルエンザワクチン:129人・BNT162b2+培養細胞4価インフルエンザワクチン:139人・ChAdOx1+MF59Cアジュバント添加3価インフルエンザワクチン:146人・BNT162b2+MF59Cアジュバント添加3価インフルエンザワクチン:79人・ChAdOx1+遺伝子組換え4価インフルエンザワクチン:128人・BNT162b2+遺伝子組換え4価インフルエンザワクチン:58人 その後、新型コロナワクチンの2回目接種と一緒にインフルエンザワクチンもしくはプラセボを接種し、その3週間後にインフルエンザワクチン接種者にはプラセボを、プラセボ接種者にはインフルエンザワクチンを接種し、6週間観察した。前者には340人、後者には339人が無作為に割り付けられた。主要評価項目は、インフルエンザワクチンもしくはプラセボの接種後7日間に参加者から報告された1つ以上の特定全身反応であり、差が25%未満であれば非劣性とした。また、局所および非特定全身反応、液性応答も評価した。 主な結果は以下のとおり。・6グループのうち、ChAdOx1+細胞培養4価インフルエンザワクチン(インフルエンザワクチン群とプラセボ群のリスク差:-1.29%、95%信頼区間:-14.7~12.1)、BNT162b2+培養細胞4価インフルエンザワクチン(6.17%、-6.27~18.6)、BNT162b2+MF59Cアジュバント添加3価インフルエンザワクチン(-12.9%、-34.2~8.37)、ChAdOx1+遺伝子組換え4価インフルエンザワクチン(2.53%、-13.3~18.3)の4グループでは非劣性を示した。一方、ChAdOx1+MF59Cアジュバント添加3価インフルエンザワクチン(10.3%、-5.44~26.0)、BNT162b2+遺伝子組換え4価インフルエンザワクチン(6.75%、-11.8~25.3)では、95%CIの上限が非劣性マージンを超えた。・ワクチン接種による全身反応のほとんどが軽度もしくは中等度だった。・局所および非特定全身反応の割合は、無作為に割り付けられた2群間で同様だった。・重篤な有害事象は重度の頭痛による入院の1件で、試験的介入に関連していると考えられた。・免疫応答への影響はなかった。 研究者らは「来シーズンに、新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンを一緒に接種することで、ワクチン接種のための医療現場の負担が軽減され、ワクチンが必要な人々へのタイムリーなワクチン投与とCOVID-19とインフルエンザの予防を可能になる」と考察している。専門家はこう見る:CLEAR!ジャーナル四天王COVID-19ワクチンと季節性インフルエンザワクチン同時接種における安全性と免疫原性(解説:小金丸 博 氏)-1476 コメンテーター:小金丸 博( こがねまる ひろし ) 氏東京都健康長寿医療センター 感染症内科医長

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新型コロナウイルスワクチン接種者のブレークスルー感染(既感染者と未感染者の比較)(解説:小金丸博氏)

 新型コロナウイルスワクチン接種後にブレークスルー感染が起こることはすでに知られた事実である。今回、mRNAワクチンである「BNT162b2」(Pfizer-BioNTech製)または「mRNA-1273」(Moderna製)の接種者を対象に、ブレークスルー感染発生率を既感染者と未感染者で比較した観察研究がJAMA誌に報告された。 BNT162b2接種群の累積感染発生率(追跡期間120日)は既感染者で0.15%(95%信頼区間[CI]:0.12~0.18)、未感染者で0.83%(同:0.79~0.87)、mRNA-1273接種群では既感染者で0.11%(同:0.08~0.15)、未感染者で0.35%(同:0.25~0.48)だった。既感染者は感染により自然免疫を獲得できているため、感染発生率が低いのは予想できる結果である。今回の研究では、既感染者の中でワクチン接種群と非接種群を比較したデータはなく、既感染者にワクチンを接種することによるワクチン免疫の上乗せ効果がどれだけあったかは不明である。 また、既感染者のうち、初回ワクチン接種が感染後6ヵ月以上経過していた人の方が6ヵ月未満だった人よりも、ブレークスルー感染率が低いという結果が得られた。興味深い結果ではあるが、このような結果が得られた理由は説明できていない。既感染者に対するワクチンの適切な接種時期、スケジュールは確立されておらず、今後の課題の1つである。 本研究はカタールで実施された全国レベルの大規模なコホート研究である。注意すべきLimitationとしては、未感染者の中に見逃された感染者が含まれている可能性があること、対象に小児や高齢者の割合が少なく一般化できないこと、基礎疾患に関してマッチングをできていないこと、2種類のワクチンの直接比較はできなかったこと、などが挙げられる。 ワクチンの効果は患者側の要因(年齢、基礎疾患など)に加えて、ウイルスの要因(変異株の種類など)の影響を受けると考える。ブレークスルー感染が起こる原因を特定し、有効性の高いワクチンの開発やブースター接種スケジュールの確立が望まれる。

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第85回 今度は野党の代表選、各氏の新型コロナ対策はやはり痛し痒しだった!?

先の衆議院選中に各政党の政策比較をしたが、選挙の結果は周知のように与党である自民党と公明党がやや議席を減らしながらも安定多数を確保し、野党は日本維新の会が躍進するものの、野党第1党である立憲民主党が議席減となり、枝野 幸男代表が辞任を表明。現在同党は代表選挙の真っ最中だ。代表選に出馬したのは4人。以前、自民党総裁選に出馬した4人の政策を俯瞰したが、ここでも一応、「平等性」を鑑み、例のごとく、各人の新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)に関する政策(経済支援は除く)を「独断と偏見」で俯瞰してみようと思う。ちなみに私個人はそもそもこの間に立憲民主党が提案していた新型コロナに関する政策にはやや否定的。最大の理由は、同党が6月に提出した「新型インフルエンザ等治療用特定医薬品の指定及び使用に関する特別措置法案」(通称:日本版EUA整備法案)」に対しての評価が低いからだ。この法案は今回の新型コロナ対応として、一部で有効性があると指摘される適応外医薬品を厚生労働大臣が指定し、その生産・安定供給確保と医師が処方した際に万が一起きた副作用被害について公的救済制度を適用するという内容だ。一見すると非常時に機動的な法案のようにも思えるが、そもそも根幹にある日本国内での医療用医薬品の承認審査制度を揺るがしかねない問題であり、そう単純な話ではない。また、コロナ禍に入ってから、駆虫薬のイベルメクチン(商品名:ストロメクトール)やインフルエンザ治療薬のファビピラビル(商品名:アビガン)のように新型コロナに対するエビデンスが薄弱なものを臨床で使用すべきという声が市中の一部で加熱し、臨床現場にも混乱を与えている状況がある。そうした中で、同法案提出の中心的な存在でもある外科医で同党衆議院議員である中島 克仁氏が、強力なイベルメクチン信奉者であることにもかなり疑問を感じている。さて前置きが長くなったが、そうしたことから代表選に出馬している各氏が今後新型コロナに関してどのような政策を訴えているかは、今後の同党の行方を占う上で一定の評価軸になると考えている。もっとも今回の代表選が自民党総裁選と違う点は、各人の代表選用ページがあまりにも貧弱なこと。これは与党議員と野党議員の資金力とマンパワーの違いも影響しているのだろうか? また、立憲民主党自体は各地で積極的に4候補の演説会や会見、討論会を割とシステマティックに実施しているのだが、逆にシステマティック過ぎて各候補者の持ち時間が少なく、十分な話が聞けないという点もある。それを前提に各候補者のホームページと新型コロナ対策がメインテーマの1つだった札幌市での公開討論会から各氏の意気込みを拾い上げてみたい。なお取り上げる順番は五十音順に従う。政策はスローガン止まりか? 泉氏まず、衆議院議員の泉 健太氏(47)。北海道生まれで同党の福山 哲郎幹事長の秘書を経て、2003年衆議院選に旧民主党から出馬し初当選(京都3区)。民主党政権時代は内閣府大臣政務官を務め、希望の党、国民民主党を経て立憲民主党に合流し、現在8期目である。泉氏は自身のホームページでは以下のような新型コロナ対策を掲げている。国の責任で、宿泊療養も含めた医療体制を強化。いつでもどこでも誰でも安く検査を受けられる体制の確立を前提に、ワクチン接種済者・検査陰性者の行動の自由を拡大。3回目ワクチン接種の確実な実施、国産ワクチン・治療薬開発へ強力な支援。ちなみに札幌市での討論会では次のように語っている。「とにかく自宅療養は事実上の医療放棄だと言われてしまった。本当に不安の中でパルスオキシメーターはあるかもしれないけれど、電話をすればいいかもしれないけど、やはり自宅療養というのはあってはならないことだと思っております。その意味でしっかりとサポート体制を作っていく、これをまず訴えています。ワクチン接種済み者、検査陰性者の行動の自由を確保することに当たっては、いつでもどこでも誰でも安く検査を受けられる体制が重要。四国に選挙の応援で行った時、ある女性の方からやはりどうしてもアレルギーで(ワクチンを)打てないと、そういう中で女性から『あなた打ちましたか?』という(周囲からの)問いかけこそが心理的負担になるんだというお話を伺った。そんなことが変に問われる社会をつくるのではなく、皆さんが過ごしやすい社会を作っていくということだと思います」この医療体制の確保は今般与野党問わず政治家がほぼ口にすることだが、残念ながら泉議員の政策や肉声からは、そのためにどのようなことに取り組もうとしているのかはまったく聞こえてこない。もはやこの点はスローガンのみで良いステージは過ぎており、その点では具体策に欠くと言わざるを得ない。一方、ワクチン接種と行動制限緩和に関する件では、確かに医学的に受けられない人はいるため、その点に対する何らかの救済が必要な点と、個人の選択が尊重されるべきことは同意する。念のため言っておくと、私はなるべくワクチンは接種すべきと考えているし、自己選択で接種しない人に対して一定の懸念も有している。しかし、現行の法制度で強制ではない以上、その点は尊重されなければならないというものだ。もっとも現時点の医学的エビデンスを考えれば、個人にとっても社会全体にとってもワクチンの有用性は明らかであり、自己選択によるワクチン非接種者の陰性確認のための検査に公費を投入することには、やや疑問も感じている。ただ、泉議員が「無償」と主張していない点は一定程度評価してもいる。国産ワクチン・治療薬について、私は以前から与野党の議員とも軽々しく口にし過ぎであると感じる。やや乱暴な言い方をすれば、「国内でワクチン開発が可能な3~4社の製薬企業に1社当たりワクチン関連研究開発支援金を年2,000億円、20年間提供し、20年後のパンデミック時にいずれかの企業によって世界3番手のワクチン製造ができたら大成功」と言っていいくらい困難なものと考えている。唯一の医療系出身者、逢坂氏次が衆議院議員の逢坂 誠二氏(62)。今回の候補者では最年長である。北海道大学薬学部を卒業し、地元のニセコ町役場に就職。後に同町の町長選に出馬し、史上最年少の35歳で町長に就任した。2005年に旧民主党から衆議院選に出馬し初当選(比例北海道ブロック)。旧民主党政権では内閣総理大臣補佐官、総務大臣政務官を歴任。希望の党騒動時は無所属となり、その後立憲民主党に合流。現在5期目だ。経歴を見ればわかる通り、逢坂氏は医療畑出身で、これは今回の4候補者でただ1人であるが、自身のホームページには残念ながら今回の代表選用の特設ページや政策集はない。一応、新型コロナ対策について、それ以前に掲げた政策があるので以下に箇条書きするとワクチンの円滑な接種に全力を尽くす。コロナ禍によって明らかになった日本の医療や福祉の弱点を強化するため、医療福祉従事者の処遇の改善、地域ごとに偏った医療や福祉資源の改善に取り組む。ともにスローガンのみで具体策はない。そして札幌での討論会では次のように語っている。「政府の対策の一番の問題は、感染症は科学的な根拠をもって対策をしなければならないのに、科学的な根拠を優先せずに専門家の意見を聞く前に政府のほうで方針を決めたり、政府がいろんなことを押し付けたりしていた。だから科学的な根拠を持ってコロナ対策をしっかりやれるようにしていく。われわれが政権をとっていたら、私は総理ならばその方向でやっていたと思います」さてここで逢坂氏がこれまでの政府の新型コロナ対策が科学的ではないという総論は同意する。私は以前に何度も指摘しているが、とくに第4波の際の政府の緊急事態宣言解除時期の判断は明らかに科学的な根拠を欠き、それが多数の自宅療養者が発生した第5波につながっていると考えている。もっとも逢坂氏がどの点を科学的根拠に欠くと考えているのかは分からない。そこでネットを検索すると、次のような記事がヒットした。「科学的裏付けも国民の信頼もなかった安倍・菅政権のコロナ対策<立憲民主党衆議院議員 逢坂誠二>」(日刊SPA!/月刊日本)ここで言われているのはPCR検査体制の不十分さ、感染経路追跡のためのゲノム解析の拡大、「市中感染を徹底的に封じ込める」「感染経路が追跡可能な範囲まで感染を抑制する」という意味での『ゼロコロナ政策』である。少なくとも昨春のパンデミック発生当初、国内のPCR検査体制が不十分だったことは事実だが、この記事が公開された10月の段階でもなおその体制が不十分だという認識はいささか疑問を感じる。となると、逢坂氏は保険適応のPCR検査の対象をどこまで拡大すべきと考えているのだろうか? この点が不明で何とも判断がつきかねる。一方、逢坂氏は前述の日本版EUA整備法案の提案者の一人になっていることはやや懸念を感じる。念のため検索すると、逢坂氏自身はイベルメクチンやファビピラビルについて賛同の言及をしている痕跡はネットサーフィンをしている範囲では見つからない。特定の薬剤を極度に信奉しているわけではなく、同法案に総論的な賛成の立場なのかもしれない。しかし、概して言っても逢坂氏が主張する「科学的根拠に基づくコロナ対策」に私個人は納得感が得られていない。内容薄め?小川氏3番手は衆議院議員の小川 淳也氏(50)。旧自治省の出身で2005年の衆議院選で初当選(香川1区、比例復活)。旧民主党政権時代は総務大臣政務官を務め、希望の党、無所属を経て立憲民主党に合流している。現在は6期目。小川氏のホームページには代表選の政策としてコロナ対策に言及がある。それは以下のようなものだ。ワクチン接種の推進医療提供体制の充実治療薬や国産ワクチンの開発普及推進経済活動との両立についてはワクチン接種証明等を活用して経済刺激策を検討する一方で、体質や心情等に十分配慮し、無償の検査並びに無償の陰性証明をセットで提供そして札幌での討論会では次のように語っている。「幸かな、今比較的落ち着いた状況にありますが、しかし、第6波がないとはいえません。この完全収束に向けて政治は全力を挙げるべきです。その際ワクチンのさらなる接種と治療薬の承認普及、それともちろん医療提供体制と同時に経済も少しずつ動かしていかねばなりません。政府はGo Toキャンペーンなどと言っていますが、ワクチンの接種完了証明と併せての経済活動、さらにその時にやっぱりワクチン受けたくない、体質の問題と心情的に非常に抵抗感あるという方、結構いらっしゃる。やっぱり無償の検査と無償の陰性証明、これはぜひセットにすべきではないか」上記政策のうち上から3つは、言っては悪いが美辞麗句を並べただけにしか映らない。そしていわゆる「ワクチン・検査パッケージ」では検査無料を訴えている。この点について私の見方は泉氏のところで触れたとおりだ。独断と偏見で恐縮だが、全候補者の中で最も中身が薄い。厚労副大臣の経験がものを言う?西村氏そして最後が女性唯一の候補者である衆議院議員の西村 智奈美氏(54)。大学院で法学修士号を取得し、複数の大学で講師を務める傍ら、国際協力のNPO法人を創設し事務局長を務め、1999年に旧民主党から新潟県議会議員選挙に立候補し当選。2003年に衆議院選初当選(新潟1区)。旧民主党政権では外務大臣政務官、厚生労働副大臣を歴任。希望の党騒動時から立憲民主党に参加した。現在6期目。自身の代表選特設ホームページでは、新型コロナ対策として「新型ウイルス対策の司令塔の強化」を掲げているものの、現在の司令塔のどこに問題があり、本人はどのように強化しようとしているかはまったく言及がない。そのほかには以下のようなことも訴えている。新型ウイルス禍などで医療崩壊の事態を二度と繰り返さない病床数削減などの公立公的病院の縮小・再編を見直す保健所やケアワーカー、介護保育福祉の現場などで働くエッセンシャルワーカーの待遇改善札幌での討論会の発言は以下のようなものだ。「この間自民党政権は小さな政府を追い求め続けてしまったと思います。保健所の体制が大きく弱ってしまいました。感染症は終わったということで、およそ30年前から生活習慣病へと保健所の仕事がシフトしてきてしまった。感染症のお医者さんも足りません、感染症のベッドは今回のウイルスの感染が起きるまでは1,800床ぐらいしか全国にありませんでした。このことを契機にしっかりと見直していく。一には検査そして隔離・治療、こんなウイルスで治療を受けることができずに亡くなる方を今後は一人たりとも生まないように医療の体制もしっかり立て直していきたい」少なくとも厚労副大臣を務めたこともあってか、この発言の前段のように一定の見識は持っているようだ。もっとも保健所機能も含め日本全体の医療体制が生活習慣病へとシフトしたのは、もはや避けられない少子高齢化が進行しているためであり、日本全体の針路を考えると、この方向性そのものは大きく変えられない。そうした中で、感染症専門医も感染症対応病床も掛け声だけで増えるわけもない以上、災害のような感染症対策のために日本の医療にどの程度エクストラな余裕を持たせるかについては、もう少し具体策への言及が必要だろう。政治に期待しても無駄と言われてしまうかもしれないが、今回のコロナ禍ではやはり政治の重要性と日本国内でのその迷走ぶりが際立っただけに、やはり無視はできない。とはいえ、ここまでざっと触れてきた野党第1党の各候補とも「帯に短し襷に長し」というか…。

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HPVワクチン接種行動は変わったか?

 HPVワクチンは2010年の接種開始以降、副反応忌避が続き接種率1%未満が続いていたが、昨年自治体から接種対象者への個別通知が再開し、今年は積極的受診勧奨再開に向けた検討会が開かれるなど動きが出てきた。 現在どのように接種行動や意識は変化しているのだろうか。HPVワクチンの普及啓発活動を行う一般社団法人みんなで知ろうHPVプロジェクト(通称みんパピ!)が、現在のHPVワクチンに対する意識・実態調査を行った。接種率は約14% 調査はインターネット上で行われた。9,219名の回答者から無料接種対象年齢の本人として高校1年生の女子473名を抽出しHPVワクチン接種の有無を尋ねたところ、接種した、もしくは接種中が14.4%だった。接種へのハードルは情報提供 未接種者の接種意向とどのような情報提供が必要か知るために、高校1年生の女子245名(以下本人)と高校1年生の女子を子供に持つ女性245名(以下親)を対象にアンケートを行った。そのうち未接種者の接種意向は、本人(32.4%)、親(12.6%)で、本人の接種意向がより高い傾向にあった。接種意向のある本人におけるハードルは、安全性への懸念(約16%)や副反応への懸念(約13%)が多く、次いでHPVワクチンの情報不足(約11%)や申し込み方法がわからない(約11%)といった手続き上の不安が挙がった。手続きについての不安は自治体からの個別通知が有効である可能性が高い。接種意欲を向上させる情報は? 上記の不安を踏まえ、どのような情報が接種を促すだろうか。アンケート内でHPVワクチンに関して無料接種対象年齢やHPV感染率、ワクチンの有効性、安全性といった情報提供を行い、再度接種意向を聞いたところ示唆に富む結果が出ている。 本人では「HPV感染率-生涯で約8割がHPVに感染する」ことの認知度は接種者・未接種者ともに低かった。そしてこの情報提供後に未接種者の約56%が接種意向を示した。 親ではHPV感染率の情報提供で約32%が接種意向を示した。本人に比べて情報提示後の変化は少ないが、本人・親ともにHPV感染率についての情報提供が接種への寄与度が高いといえる。 さらに有効性に関する詳細な情報提供も行った中でも本人と親に違いがみられた。本人では子宮頸がんを発症した場合9割は子宮摘出などの侵襲治療が必要という情報の認知度が低く、情報提供後の接種意向の上昇に寄与している。 親ではHPVワクチンが中咽頭がんや肛門がんなどほかのがん予防になるという情報が意向に寄与した。情報の入手経路 子供は学校とSNS、親はテレビや病院から知りたい ワクチンに関する情報入手経路は、本人は親からが最多。親はテレビ新聞などのオールドメディアや自治体広報が上位を占めた。今後どのような媒体からの情報を希望するかという問いに対して多い回答は、本人は約40%が学校から、約25%がSNSからの情報提供を望んでいた。SNSの中ではYouTubeの希望度が高かった。親は約40%がテレビ番組やCM、約38%が病院や医療機関からの情報入手を望んでいることがわかった。 同団体は昨年クラウドファンディングで資金調達し、説明に時間のかかる安全性情報の提供をサポートするパンフレットの無償配布や学校での情報提供などで啓発を行っている。クラウドファンディングは継続しており、アンケートで希望があったYouTubeをはじめとしたSNSでの展開拡大などを予定している。 結果の詳細はみんパピ!ホームページで確認できる。

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第85回 インフルワクチン・後発薬の供給不足招いた薬剤費削減政策のツケ

新型コロナウイルスの新規感染者数は急減しているが、喜んでばかりもいられない状況になっている。インフルエンザワクチンでは製造で使う部品が新型コロナ用に回されて確保が難しくなっている上、ジェネリック医薬品も供給停止・出荷調整問題や新型コロナ感染症による需要の変化が影響し、供給不足に拍車が掛かっている。ジェネリック医薬品の使用率は2020年9月時点で78.3%と大きく、医療現場にも影響を及ぼしている。このような状況下、大阪府保険医協会は現状を把握するため、会員を対象にアンケートを実施し、11月18日に結果を公表した。厚生労働省にも実態を伝え、12月に要望書を提出する予定だ。アンケートは11月8日に会員4,407件にファクスを送信し、15日までに470件の回答を得た。主に院内処方は156件、院外処方は286件だった。インフルワクチン納入、8割超が「減った」まず、インフルエンザワクチンの当初入荷量について、397件(84.5%)が「昨年より少ない」と回答。そのうち、一番多かったのは「昨年比70%」だった。現在の入荷状況については「既に入荷」が171件、「12月までに入荷予定」が147件、「入荷数が減り目途が立たない」が144件だった(「12月まで」「目途が立たない」の重複回答が若干あり)。11月上旬時点では不安定な入荷状況が伺える。現在のインフルエンザワクチンの接種対応は「予約制」が270件、「ワクチンがあれば接種」が201件。一方で、「今季は終了した」も7件あった。また、ジェネリック医薬品については「納入がなくなった」「薬局に在庫がないと言われた」は374件(79.6%)に上った。具体的な医薬品名として175品目が挙げられ、なかでも骨粗鬆症に関わる医薬品が上位を占めた。次いで抗アレルギー薬、高血圧や消化器系の医薬品が多かった。後発薬不足による薬剤変更で副作用・症状悪化も医薬品の供給不足による影響は、「薬剤への切り替えに手間がかかる」(214件)、「他剤に切り替えたことへの弊害」(104件)、「休薬せざるを得なかった」(130件)などが挙がった。薬剤の形状や色が変わることや、医薬品不足でたびたび薬剤を変更することへの不安などから患者に対する説明が増え、薬局からの問い合わせ、代替薬の検討などの業務が診療にも影響を与えている状況が伺えた。また、頭痛・めまい・不眠などの副作用、中には圧迫骨折や発作の再発など深刻な症状悪化の報告もあった。このほか「患者負担が増えた」との報告も少なくなかった。安定供給への国の支援求める一方、政策に疑問の声一連の問題に対して国・厚生労働省が取るべき対応については、「単にメーカーの問題とせず安定供給への国の支援」(280件)がトップに挙げられた。次いで「医薬品供給状況の迅速な情報開示」(194件)、「ジェネリック医薬品の品質管理に対する規制強化」(191件)などが挙がった。会員からは、これまでの国のワクチン行政やジェネリック医薬品誘導政策への疑問の声も上がった。「毎年10月1日から全国の自治体でワクチン接種が始まることが決まっているのに、なぜ毎年、入荷が遅れたり、ワクチンが不足したりするのか」「ジェネリック医薬品の過度な誘導が今回の結果を招いている」などだ。菅 義偉政権が2年に一度だった薬価改定を毎年実施(事実上の引き下げ)に転換するなど、国の薬価切り下げ政策が医薬品メーカーの開発力や品質、安定供給体制などを低下させてはいないか。医療を巡る緊縮財政策が国民の安心安全を脅かしてはいけない。

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3回目のワクチンは2回目完了から8ヵ月/厚労省

 11月17日、厚生労働省は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンについて、今後のCOVID-19ワクチンの追加接種などに関する自治体向け説明会を開催した。追加接種については11月15日開催のワクチン分科会を踏まえた対応方針をもとに行われる。本稿では資料より抜粋した主要項目を示す。ワクチン追加接種のスケジュール(1)3回目の追加接種について【ワクチンの対象者】・感染拡大防止及び重症化予防の観点から、1回目・2回目の接種が完了していない者への接種機会の提供を継続するとともに、2回接種完了者すべてに対して追加接種の機会を提供する。・18歳以上の者に対する追加接種としてファイザー社ワクチンが薬事承認されたことを踏まえ、まずは18歳以上の者を予防接種法上の特例臨時接種に位置付ける。・重症化リスクの高い者、重症化リスクの高い者と接触の多い者、職業上の理由などによりウイルス曝露リスクの高い者については、とくに追加接種を推奨する。【使用するワクチン】・1回目・2回目に用いたワクチンの種類にかかわらず、mRNAワクチン(ファイザー社ワクチンまたモデルナ社ワクチン)を用いることが適当。(※mRNAワクチン以外のワクチンの使用は科学的知見を踏まえ引き続き検討)・当面は、薬事承認されているファイザー社ワクチンを使用することとし、追加接種にモデルナ社ワクチンを使用することに関しては、薬事審査の結果を待って改めて議論する。【2回目接種完了からの接種間隔】・2回目接種完了から原則8ヵ月以上とする。(2)小児(5~11歳)の新型コロナワクチンの接種について 小児の感染状況、諸外国の対応状況および小児に対するワクチンの有効性・安全性を整理した上で、議論する。(3)特例臨時接種の期間について 現行の期間(令和4年2月28日まで)を延長し、令和4年9月30日までとする。小児への接種では学校集団接種は推奨せず 小児への接種体制については、事前承認前であり、すべて予定の情報である。【小児用(5~11歳用)ファイザー社ワクチンの特性について】 5~11歳用のファイザー社ワクチンは、12歳以上用の(既存の)ファイザー社ワクチンとは濃度や用量が異なる。5~11歳の方には、必ず5~11歳用のワクチンを使用のこと。 とくに希釈が必要(1.3mLの薬液を1.3mLの生理食塩液で希釈)で、1回当たり0.2mLを接種する。小分けルールは12歳以上用の製剤と同様。【基本的な考え方】 小児への接種についても、(1)1機関で複数ワクチンを取り扱うことを許容するほか、(2)12歳以上と同様に小児用ワクチンを取り扱う医療機関間での小分け配送が可能。 また、12歳以上用と小児用で取扱いルールが異なることから、別種類のワクチンとして扱う。複数ワクチンを取り扱う場合には、混同しないような接種体制が必要。 (3)学校集団接種については、「保護者への説明機会が乏しい」「体調不良時の対応の困難性」などの制約から現時点では推奨するものではない。若年に多い副反応報告 アナフィラキシーなどの副反応に関する報告を次のようにまとめている。【アナフィラキシーについて】(1)引き続き国際的な基準(ブライトン分類)に基づく評価を実施。(2)ファイザー社ワクチンのアナフィラキシー疑いとして報告されたものは、接種開始から10月24日までに2,922件(うちブライトン分類で555件がアナフィラキシー)と評価された。(3)武田モデルナ社ワクチンは10月24日までに製造販売業者報告は491件だった(うちブライトン分類に基づく評価においては、アナフィラキシーと評価されたものは50件)。(4)アストラゼネカ社ワクチンは10月24日までに医療機関報告は3件あり、いずれもブライトン分類4だった。(5)年齢、性別別の解析結果では、若年の女性においてアナフィラキシーの報告頻度が多い傾向がみられている。(6)アナフィラキシー疑いとして報告され、転帰が確認されたほとんどの例で軽快したことが判明している。【心筋炎関連事象について】(1)集団としての分析に関し、以下の状況が認められる。・COVID19感染症により心筋炎を合併する確率は、ワクチン接種後に心筋炎を発症する確率と比較して高い。ワクチン接種後の心筋炎については、国内外において、若年男性で2回目接種後4日以内の発症報告が多い。・(ワクチン間の被接種者の属性が異なることに留意が必要として)国内における年齢、性別別の報告頻度に係る集団的な解析で、10歳代および20歳代男性の報告頻度が多く、10歳代および20歳代男性についてファイザー社ワクチンに比べて、モデルナ社ワクチン接種後の報告頻度が高い。・心筋炎関連事象疑い事例の死亡の報告頻度は一般人口と比べて高かったが、若年の年代別の死亡全体の報告頻度は一般人口と比べて低かった。(2)心筋炎関連事象の転帰は、発症しても軽症であることが多いとされている。国内で報告があった若年男性の事例では、死亡例や重症例も報告されているが、引き続き、転帰が確認可能であった多くの事例で、軽快または回復が確認されている。【血小板減少症を伴う血栓症について】 ファイザー社ワクチンについては12件、モデルナ社ワクチンについては2件、アストラゼネカ社ワクチンについては1件が、ブライトン分類に基づき血小板減少症を伴う血栓症と評価された。【年齢・性別に関して】(1)mRNAワクチンにおいては、アナフィラキシーおよび心筋炎関連事象以外の副反応疑い報告全体の報告頻度についても、若年者において報告頻度が多い傾向がみられている。(2)死亡報告については高齢者において報告頻度が多い傾向がみられてれいる。 なお、上記の報告内容は発表時点の内容であり、接種対応などについては、12月1日以降の改正された省令・大臣指示により行われる。

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コロナワクチン3回接種、抗体はどのくらい増える?/JAMA

 新型コロナのファイザー製ワクチン(BNT162b2:以下、ワクチン)の60歳以上での抗体価の持続については、まだ不明瞭な点が多い。そこで今回、イスラエル・テルアビブ大学のNoa Eliakim-Raz氏らは、60歳以上を対象に3回目ワクチンの接種前後の抗体価を調査した。その結果、3回目接種が接種10~19日後のIgG抗体価の増加と有意に関連していることが明らかになった。JAMA誌オンライン版11月5日号のリサーチレターに掲載された。ワクチン3回目接種前と接種10~19日後のIgG抗体価をを測定 ワクチンを2回接種した人の免疫応答を年齢で見た場合、65~85歳では18~55歳よりも低いことが明らかになっている。さらに、2回目のワクチンを接種した4,868人の医療従事者でとくに65歳以上では、2回目接種から6ヵ月以内に液性免疫(IgG抗体、中和抗体)の有意な低下が観察されている。また、イスラエルのある研究1)で、3回目接種が新型コロナウイルス感染と重症者の発生率低下との関連性を示唆していたことから、本研究では60歳以上の3回目接種による免疫反応を見るために、血清学的検査データを評価項目として追加した。 イスラエルでのワクチン3回目接種が世界で初めて承認後、Rabin Medical Center(RMC)のワクチン接種センターで60歳以上の研究参加者を募集、97例が適格だった。除外基準は、新型コロナウイルス既感染者と活動性の悪性腫瘍を有する者だった。IgG抗体価を3回目の接種前(2021年8月4~12日)と接種10~19日後(2021年8月16〜24日)にSARS-CoV-2 IgG II Quant assayを用いて測定した。血清陽性は、50任意単位(AU:arbitrary units)/mL以上と定義された。 ワクチン3回目接種前と接種10~19日後の抗体価を調査した主な結果は以下のとおり。・97例の年齢中央値は70歳(四分位数[IQR]:67~74)で、61%が女性だった。・3回目の投与前(最初のワクチン接種後の中央値:221日、IQR:218~225)の段階で、94例(97%)が陽性だった。・IgG抗体価の中央値は、3回目接種後に有意に増加し、440AU/mL(IQR:294~923)から2万5,468AU/mL(IQR:1万4,203~3万6,618、p

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第84回 コロナワクチン3回目、エビデンスによる“2回目から6ヵ月以上”が選ばれない理由

非常事態の行政対応はかくも難しいものか。ニュースを眺めていて、ふとそう思った。そのニュースとは新型コロナウイルス感染症の3回目のワクチン接種を巡る問題である。この件についてはNHKの以下の報道が良くまとまっている。「3回目ワクチン接種『2回目からの間隔 原則8ヵ月以上で』厚労省」(NHK)今回とりわけ問題になったのは、3回目の追加接種を2回目から「8ヵ月以上」か「6ヵ月以上」かという点だ。これについてSNS上では「『8ヵ月以上』とはどんなエビデンスなんだ」との声も聞かれるが、上記記事にもある通り厳格なエビデンスに基づいたものではなく、行政的判断である。具体的には9月17日に開催された第24回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会で事務局を担当する厚生労働省健康局健康課予防接種室が、先行して3回目接種を開始あるいは決定した各国はおおむね2回接種の7~8ヵ月後から開始しているとの資料(リンク先P42)を提示して8ヵ月以上を提案し、参加した各委員がこれを了承したものである。しかし、この後、ファイザーやモデルナといった各社が第3四半期決算発表時にそれまで解析した自社調査によるデータを公表。2回接種完了から半年後に思ったよりも抗体価が低下していることが明らかになり、それとともに国内外で「6ヵ月以上が適切かも」という声が増えてきたという次第だ。どちらかと言えばこちらのほうが医学的なエビデンスと言えるが、ワクチン販売企業のデータゆえ、利益相反(COI)を考慮しなければならないだろう。結局、前述の記事や各種報道にあるように「2回目接種完了から8ヵ月以上」を原則とし、当初は地域の感染状況に応じて自治体の判断で「2回目接種完了から6ヵ月以上」でも対応可能としたものの、最終段階で後者の選択を取る場合は「国への事前相談」が必要となった。個人的には今回の決定はある意味妥当な着地点を見いだせたのではないかと感じる。NHKの記事を読むと、自治体側は「6ヵ月以上」となると想定していた準備の前倒しにより混乱が起きるため「8ヵ月以上」を歓迎しているようだ。一方、私個人が「妥当」と考えたのはワクチンの供給量の観点からだ。今回、主軸となるファイザー製ワクチンは年内に約1億9,000万回分が供給見込みで、すでに約1億7,584万回分が接種済み。年内の残りは1,400万回分だが、現時点で1回目接種完了者の2回目接種分約360万回分が必要なため、年内に3回目接種に回せる可能性があるのは最大でも1,000万回分強である。そして3回目接種は、当初の優先接種者で、すでに接種完了から8ヵ月以上が経過しているエッセンシャルワーカー最上位の医療従事者から始まるのは確実。すでに公表されているデータから医療従事者の追加接種分を算出すると約490万回が必要となる。もっとも現時点でもまだ1回目接種に辿り着いていない若年者はいるため、前述の1,000万回分すべてが3回目の接種に回せるわけではないのは周知のこと。このように考えると、地方自治体が担当する3回目接種の最初の対象者となる高齢者に回せる可能性があるワクチンは多くとも全国で300万回分程度である。接種完了済みの高齢者で概算すると、もし年内に高齢者に追加接種をするとなると、10人に1人しかできない計算になる。このため自治体判断で「6ヵ月以上」を援用できるようにすると、それこそ自治体間で醜いワクチン獲得競争が生じてしまう恐れもある。ただし、一定の柔軟性は必要とも考えている。というのも、どのように配分したとしても自治体によってはワクチン在庫に余剰が生じる可能性があり、「8ヵ月以上」あるいは「感染状況悪化時の6ヵ月以上」という基準を金科玉条にすると、期限切れで無駄に廃棄するワクチンが生じてしまう恐れがあるからだ。この辺は厚生労働省と自治体の柔軟な対応に期待したいところだ。一方で、「そこを柔軟にする?」と思った点もある。それは今回、同一医療機関でファイザー製とモデルナ製を取り扱えるとした点である。ご存じのように両ワクチンは原理がほぼ同じだが、保管管理や接種前の準備が異なる。これでは悪気がなくとも誤った接種が行われる確率は従来よりも高くなると考えられる。その意味で今回の3回目接種のさまざまな基準は、細かいようだが柔軟性が必要なところにそれが欠け、逆により厳格化すべきところが柔軟になるという「要る時に要らない。要らない時に要る」風呂の蓋のようなちぐはぐさも感じてしまうのである。

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英語で「予防接種を受けましたか」は?【1分★医療英語】第3回

第3回 英語で「予防接種を受けましたか」は?Did you receive a measles shot as a child?(子供のころに麻疹の予防接種を受けましたか?)Yes, I did. And I think all my vaccines are fully up-to-date.(はい、受けました。必要なワクチンはすべて受けていると思います)《例文1》I’ll get vaccinated against the flu tomorrow.(明日、インフルエンザのワクチンを受けます)《例文2》The patient has just received the second COVID shot/jab.(その患者は2回目のコロナワクチンを接種したばかりだ)《解説》予防接種を受ける行為やプログラムのことを“vaccination”と表現します。日本でもよく聞く“vaccine”のほうは、予防接種時に投与する薬剤そのものを指します。また、簡易的な表現として米国では“shot”、英国では“jab”という表現もよく使われます。注射全般を指す“injection”も文脈次第でワクチンを意味することがあり、「予防」という意味の“protection”もワクチンを指すことがあります。また、抗体検査をしてワクチンの効果を確認したり、必要なワクチン接種を追加接種したりすることを“To update one’s vaccine status”ということがあります。“Which of my vaccines need to be updated?”(受け直したほうがいい予防接種はありますか?)などのように使います。講師紹介

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ワクチン接種はコロナ重症化リスクを減らすか?/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のmRNAワクチン接種は、COVID-19による入院ならびにCOVID-19入院患者の死亡/人工呼吸器装着への進行を有意に低下させる可能性が認められた。米国疾病予防管理センターのMark W. Tenforde氏らが、米国の21施設で実施した症例コントロール研究の結果を報告した。COVID-19ワクチン接種の有益性を包括的に理解するためには、ワクチン接種にもかかわらずCOVID-19を発症した人の疾患重症度が、ワクチン未接種者よりも低いかどうかを判断する疾患軽減について検討する必要があった。著者は、「今回の結果は、ワクチン未接種の場合と比較すればワクチン接種後のブレークスルー感染のリスクが低いことと一致している」とまとめている。JAMA誌オンライン版2021年11月4日号掲載の報告。死亡/人工呼吸器装着のデータがある入院患者4,513例について解析 研究グループは、2021年7月14日までに登録され、2021年3月11日~8月15日の期間に入院し、死亡と人工呼吸器装着の28日転帰に関するデータを入手できた成人4,513例について解析した。最終追跡調査日は2021年8月8日。 主要評価項目は、(1)COVID-19による入院(症例:COVID-19の診断で入院した患者、対照:他の診断で入院した患者)、(2)COVID-19で入院した患者の疾患進行(症例:死亡または人工呼吸器を装着した患者、対照:それらへの進行なしの患者)で、これらとワクチン接種との関連について多重ロジスティック回帰を用いて検討した。 解析対象4,513例の患者背景は、年齢中央値59歳(IQR:45~69)、女性が2,202例(48.8%)、非ヒスパニック系黒人23.0%、ヒスパニック系15.9%、また免疫抑制状態の患者20.1%などであった。COVID-19入院患者、疾患重症化はワクチン接種者で有意に低下 4,513例中、COVID-19入院患者が1,983例、他の診断による入院患者が2,530例であった。COVID-19入院患者1,983例のうち、84.2%(1,669例)がワクチン未接種者であった。 COVID-19による入院は、ワクチン接種より未接種と有意に関連しており(症例15.8% vs.対照54.8%、補正後オッズ比[aOR]:0.15、95%信頼区間[CI]:0.13~0.18)、SARS-CoV-2がアルファ株(8.7% vs.51.7%、0.10、0.06~0.16)、デルタ株(21.9% vs. 61.8%、0.14、0.10~0.21)でも同様に認められた。 また、この関連性は、免疫正常者(11.2% vs.53.5%、aOR:0.10、95%CI:0.09~0.13)のほうが、免疫抑制患者(40.1% vs.58.8%、0.49、0.35~0.69)より強く(p<0.001)、BNT162b2ワクチン(Pfizer/BioNTech製)接種後120日以降(5.8% vs.11.5%、0.36、0.27~0.49)のほうが、mRNA-1273ワクチン(Moderna製)接種後120日以降(1.9% vs.8.3%、0.15、0.09~0.23)より弱かった(p<0.001)。 COVID-19入院患者のうち2021年3月14日~7月14日に登録された1,197例において、28日までの死亡または人工呼吸器装着は、ワクチン接種よりワクチン未接種に有意に関連していた(12.0% vs.24.7%、aOR:0.33、95%CI:0.19~0.58)。

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