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コロナ感染後の心筋梗塞・脳卒中発生率、ワクチン接種者vs.未接種者/JAMA

 韓国・国民健康保険公団(National Health Insurance Service)のKim Young-Eun氏らが、新型コロナウイルス感染後のワクチン接種状況と急性心筋梗塞(AMI)および虚血性脳卒中との関連を調査した。その結果、新型コロナ感染後の急性心筋梗塞および虚血性脳卒中の発生率の増加は、血栓症のリスク増加に関連しており、ワクチンを完全接種することでワクチン接種が感染後の二次合併症のうちAMIおよび虚血性脳卒中のリスク低下に関連していることが明らかになった。JAMA誌オンライン版2022年7月22日号リサーチレターに掲載。ワクチン接種状況によるコロナ感染後の急性心筋梗塞および虚血性脳卒中の発生率 研究者らはワクチン未接種者とワクチン完全接種者(mRNAワクチンまたはウイルスベクターワクチンを2回接種)の新型コロナ感染後の急性心筋梗塞および虚血性脳卒中の発生率を比較した。研究には韓国の全国新型コロナレジストリ(感染と予防接種に関する)と国民健康保険公団のデータベースが使用された。対象者は2020年7月~2021年12月に無症候性感染を含む新型コロナと診断された18歳以上の成人。主要評価項目は新型コロナの診断から31~120日後に発生した急性心筋梗塞と虚血性脳卒中による入院の複合アウトカムとした。 新型コロナウイルス感染後のワクチン接種状況と急性心筋梗塞および虚血性脳卒中との関連を調査した主な結果は以下のとおり。・研究期間中の新型コロナ患者59万2,719例のうち、23万1,037例が該当した。そのうち6万2,727例はワクチン接種を受けておらず、16万8,310例はワクチン完全接種をしていた。・ワクチン完全接種者は年齢が高く、併存疾患を有する者が多かった。その一方で、新型コロナの重症例はみられなかった。・複合アウトカムの発生は、ワクチン未接種群で31例、ワクチン完全接種群で74例であり、100万人日あたりの発生率はそれぞれ6.18と 5.49だった。また、調整ハザード比[aHR]は0.42(95%信頼区間[CI]:0.29~0.62)とワクチン完全接種群で有意に低かった。・急性心筋梗塞と虚血性脳卒中それぞれのaHRもワクチン完全接種群で有意に低かった(0.48[同:0.25~0.94]vs. 0.40[同:0.26~0.63]。・年齢区分で見た場合、40~64歳のaHRは0.38(同:0.20~0.74)、65歳以上では0.41(同:0.26~0.66)だった。・ただし、ワクチン接種者の転帰イベントリスクは全サブグループで観察されたものの、重症または重篤患者の一部では統計学的有意差が得られなかった。 本調査結果は「心血管疾患の危険因子を持つ人々へのコロナワクチン接種を支持する。しかし、患者の特徴にばらつきがあり、予防接種を受けるかどうかの決定には心血管リスクに関連する可能性のある複数の因子の影響を受ける」としている。コロナワクチン接種と心疾患 7月25日に開催された疾病・障害認定審査会 感染症・予防接種審査分科会でコロナワクチン接種と「死亡」との因果関係が初めて認められた1)。これまでもアナフィラキシーなどが理由で請求が認定されたのは850件にのぼるが、死亡一時金が支払われるのは今回が初めて。認定事例は90代女性で、死因は急性アレルギー反応と急性心筋梗塞。基礎疾患として脳虚血発作、高血圧症、心肥大を有していた。このようなニュースが報道されると心疾患のある方がコロナワクチン接種をためらってしまいそうだが、第7波の爆発的に感染が広がりいつ自分が感染してもおかしくない状況下では、上記の論文を踏まえ、ワクチンの推奨はやはり大切なのかもしれない。

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第111回 限りある医療資源を有効活用するため、発熱外来のガイダンス発表/4学会

<先週の動き>1.限りある医療資源を有効活用するため、発熱外来のガイダンス発表/4学会2.紙レセ医療機関等以外はオンライン資格確認システムを義務化、早めの申し込みを/厚労省3.医療機関の宿日直許可申請についてFAQを都道府県に通知/厚労省4.コロナ感染の発生届け一部項目を簡略化、抜本的改正は秋の国会後に/厚労省5.子宮頸がん9価ワクチンの定期接種は問題なし/厚労省6.インフレで電気代3割増、ガス代6割増/四病協1.限りある医療資源を有効活用するため、発熱外来のガイダンス発表/4学会新型コロナウイルス感染症(第7波)が全国へ急速に拡大しているため、多くの医療機関において救急外来・発熱外来の逼迫、救急車の受け入れ困難事例の多発している状況を改善させるために、関連4学会(日本プライマリ・ケア連合学会、日本救急医学会、日本臨床救急医学会、日本感染症学会)では厚生労働省とも意見交換を行った上、医学的な立場から救急外来/救急車の利用および発熱外来受診にあたっての指針を発表した。この中で、症状が軽い場合は、65歳未満で基礎疾患や妊娠がなければ、あわてて検査や受診をする必要はなく、自宅療養とし、医療機関を受診することは避ける。また救急車の利用の目安については「救急車利用リーフレット(高齢者版、成人版、子供版)」を活用することも求めている。厚生労働省は8月4日、各自治体に対し、日本感染症学会など4学会が軽症なら受診を控えるよう呼びかけた緊急声明を参考にするよう通知した。(参考)「限りある医療資源を有効活用するための医療機関受診及び救急車利用に関する4学会声明」公表にあたって(日本感染症学会)発熱外来「パンク状態」 受診の目安は? 医療逼迫改善へ例示(東京新聞)コロナ感染、厚労省も「軽症なら受診控えて」 学会声明を追認、自治体に通知 「37.5度4日以上」の目安は除外(同)「65歳未満で軽症・基礎疾患なし」は受診控えて 厚労相(日経新聞)2.紙レセ医療機関等以外はオンライン資格確認システムを義務化、早めの申し込みを/厚労省厚生労働省は、顔認証付きカードリーダーの2023年4月からの原則義務化を決めた。現在、医療機関・薬局に無償配布しており、全医療機関・薬局の61%が申し込み済み(7月24日時点)となっている。まだ対応していない約4割の医療機関・薬局について、2023年4月からの原則義務化に対応するためには、カードリーダーのメーカーは受注生産であり、申し込みから配送までに4ヵ月程度が必要なため、「遅くとも9月ごろまでに、顔認証付きカードリーダーを申し込む必要がある」とした。(参考)オンライン資格確認カードリーダー、9月までに申し込みを 厚労省、23年4月からの義務化に向け(CB news)オンライン資格確認等システム、2023年4月から紙レセ医療機関等以外は「原則、導入義務」へ-中医協総会(2)(Gem Med)3.医療機関の宿日直許可申請についてFAQを都道府県に通知/厚労省厚生労働省は、医療機関の宿日直許可申請について8月1日に全国の都道府県や病院団体に向けて「医療機関の医師の宿日直許可に関する取扱いについて」とする事務連絡を行った。これは令和6年度から医師に対する時間外労働の上限の適用について、各医療機関が医師の宿日直許可の申請をするにあたって必要な情報として提供をした。内容には宿日直許可された事例や申請前のチェックリストなど含んでおり、医師の時間外労働規制について対応が必要な医療機関は参考にされたい。(参考)医療機関の宿日直許可申請、「FAQ」を都道府県に周知 厚労省(Medifax)医療機関の医師の宿日直許可に関する取扱いについて(厚労省)4.コロナ感染の発生届け一部項目を簡略化、抜本的改正は秋の国会後に/厚労省新型コロナウイルスの感染拡大により、医療機関や保健所で業務が逼迫しているとして、全数把握を見直す意見が上がっているが、後藤茂之厚生労働相は5日の閣議後会見で、秋の国会以降になるとの見通しを示した。また、厚労省は、現場の負担軽減のため、重症化リスクが低い患者の発生届では、患者の診断日、ワクチン接種回数などの入力項目を削除すると発表したが、「健康フォローアップセンター」などを都道府県の設置が条件であり、根本的な改正にはまだ時間がかかる見込み。(参考)コロナ発生届け出簡略化、診断日など不要に 現場の負担軽減へ、厚労省(CB news)コロナ患者の全数把握見直し、厚労相「法改正して」 秋の国会以降か(朝日新聞)患者の全数把握、医療現場を圧迫 政府、簡素化で急場しのぎ(毎日新聞)5.子宮頸がん9価ワクチンの定期接種は問題なし/厚労省子宮頸がんなどを起こすヒトパピローマウイルス(HPV)の9種類の遺伝子型に対応した「9価ワクチン(商品名:シルガード9)」の定期接種化について、厚生労働省の厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会において、科学的に問題はないとする結論を出した。今後、専門部会でワクチンの開始時期や対象などを議論し、実施していく見通し。(参考)第82回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、令和4年度第8回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会子宮頸がん9価ワクチン、科学的に「問題なし」 厚労省(日経新聞)9価ワクチン定期接種「問題なし」 厚労省小委、HPVめぐり結論(中日新聞)6.インフレで電気代3割増、ガス代6割増/四病協四病院団体協議会(日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会)は8月3日、会員病院を対象に調査を実施し、その中間報告を発表した。ウクライナ情勢などにより、電気代やガス代が高騰し、前年同期に比べて電気料金の1キロワットアワー当たりの単価が約3割上昇し、都市ガス料金の単価も57.5%も上がり、病院経営に影響を与えているとした。これより先だつ6月23日に四病院団体協議会、可及的速やかな財政措置の充実を求める要望書を萩生田光一経済産業相に「医療機関における光熱費(電気・ガス・燃料)に関する要望」を提出した。(参考)3-5月の電気料約3割増、四病協調べ 都市ガス料金は約6割増(CB news)病院の光熱費、使用量の減少・微増にもかかわらず、前年に比べ「2-6割のコスト増」に-四病協(Gem Med)「医療機関における光熱費(電気・ガス・燃料)に関する要望」

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未接種者とブレークスルー感染者、臨床転帰と免疫の違いは?

 国内における新型コロナ感染流行の第7波においては、ワクチン接種後の感染、いわゆるブレークスルー感染も多数報告されている。ワクチン接種を受けた感染者の大半は軽症か無症状だが、入院を要する者もいる。ワクチン接種者またはワクチン未接種者で新型コロナ感染により重症化した患者について免疫および臨床的特徴を調べたイタリア・フローレンス大学のGiulia Lamacchia氏らの研究がJournal of Clinical Immunology誌2022年7月9日号オンライン版に掲載された。ワクチン未接種の新型コロナ感染者は有意に高い重症度指数を示した 本試験では、2021年11月~12月中旬のデルタ株の流行時に、イタリア・フィレンツェのカレッジ大学病院に入院した新型コロナウイルス感染症患者を、発症からの期間や重症度に関係なく対象とし、臨床データおよび検査データを収集した。ウイルスベクターまたはmRNAワクチンを完全接種した患者36例(うち4例はブースター接種まで完了)、ワクチン未接種者29例だった。最後のワクチン接種から感染までの平均時間は139±63日であった。 ワクチン接種者またはワクチン未接種者で新型コロナ感染により重症化した患者の症状を調べた主な結果は以下のとおり。・ワクチン接種群の平均年齢は73歳、ワクチン非接種群は67歳だった。入院時、ワクチン接種群は併存疾患がワクチン未接種群と比較して有意に多かった(平均4.3 vs. 2.9)。一方で、ワクチン未接種群はワクチン接種群と比較して血清フェリチン値、乳酸脱水素酵素(LDH)が有意に上昇していた。肺機能障害、他の炎症マーカー(反応性タンパク質、IL-6、Dダイマー)レベルについては両群間に有意差はなかった。・ワクチン未接種者群はワクチン接種群に比べ、有意に高い重症度指数を示した。肺炎の発症率はワクチン未接種群93%(27/29)に対し、ワクチン接種群69%(24/36)、死亡率はワクチン未接種群31%(9/29)、ワクチン接種群11%(4/36)であった。・ワクチン接種の有無にかかわらず、生存例(52例)と死亡例(13例)の入院時の抗SARS-CoV-2免疫を比較したところ、抗N IgGおよび抗S IgMは両群間に差がなかったが、抗S IgGおよび中和Igは生存例で有意に高かった(生存例は死亡例よりも高いレベルの抗S IgGとスパイク特異的CD4+T細胞を示した)。・新型コロナ感染入院時、65例中6例(9.2%)が高い抗IFN-α抗体価を示した。6例中の5例が男性で、女性は最年長者(90歳)のみであった。平均年齢は79歳で、他のコホートの平均年齢70歳よりも高かった。高抗IFN-α抗体保有者6例のうち、ワクチン未接種群の3例は死亡し、ワクチン接種群の3例は生存して退院した。 著者らは「ワクチン接種者はワクチン未接種者より入院前の身体状態が不良であったにもかかわらず、転帰は良好であった。抗SARS-CoV-2特異的免疫の迅速な活性化は、感染症の治癒のために不可欠であり、ワクチン接種による事前の免疫獲得は疾患の悪化防止に大きく貢献し、高リスク因子(高齢、合併症、抗IFN-α自己抗体)の存在さえも克服することが可能である」としている。

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第120回 コロナ第7波も行動制限したがらない岸田首相の意外な行動記録

新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の第7波が始まってからのSNS空間はもはや阿鼻叫喚と言って良い。外来がパンクし、疲弊していることを訴える医療従事者に対して「そんなの(感染症法上)の5類にすれば解決する」「感染者が増えても重症者が増えていないのだから騒ぎ過ぎ」「医療やメディアが煽ってきた結果」と無責任に言い放つ一般人との応酬だ。しかも、後者の論理に一部の文化人や医師免許を持つ人たちが組しているため、ぱっとSNS上を見るとそちら側が優勢に見える瞬間もある。正直、見ているこちら側は溜息しか出てこない。そもそも感染症法上の分類を5類に変更したところで現状のような医療逼迫が解決するわけではない。確かに全数把握がなくなることで保健所のひっ迫は解消するかもしれないが、「5類なんだからどこの医療機関でも見てくれる」と勘違いした一般人が近隣の医療機関に押し寄せ、混乱するだけだろう。そして読者の皆さんには釈迦に説法だが、5類になったところでクラスターを起こしやすく、重症化リスクのある人以外に特化した治療薬がない新型コロナを診察する医療機関は増えないだろう。もし一般のクリニックなどに無理やり診察させれば、動線確保などのクラスター防止対策の結果、新型コロナもそれ以外の患者も恐る恐る最低限しか受け入れなくなる。結局、「医療逼迫の構図になる」という想像もしたくない事態に陥る可能性は十分にあり得る。しかし、この現在のSNSのような状況がなぜ起こるのか。私見では現在の政治、有り体に言えば岸田政権があまりにも無策過ぎるとしか思えないのである。今回、第7波到来を最初に明言したのは内閣の下に設置された新型コロナウイルス感染症対策本部の諮問機関「新型コロナウイルス感染症対策分科会」会長の尾身 茂氏である。尾身氏は7月11日に首相官邸を訪問して岸田 文雄首相と面会後、記者のぶら下がりに応じて「1回落ち着いてきたものが、新たな波として来ていることは間違いない」と語った。当初、行動制限は必要ないと語っていた尾身氏だが、あまりの感染急拡大を受けて7月14日に開催された分科会がまとめた「第7波に向けた緊急提言」には「次頁に示すような取組をしっかりと行い、医療のひっ迫等の回避を目指すが、それでもひっ迫が生じる場合には、人々の行動や接触を抑えるような施策も選択肢の一つとなりうる」という一文がひっそり盛り込まれていた。この2年間、新型インフルエンザ等特別措置法に基づく「緊急事態宣言」と「まん延防止等重点措置」があまりにも乱発されたことに国民がややうんざりしていること、さらに経済への打撃が大きいことに相当配慮したのだろう。ちなみにこの文言で触れた「次頁に示すような取組」とは、(1)ワクチン接種の加速化(2)検査のさらなる活用(3)効率的な換気の提言(4)国・自治体による効率的な医療機能の確保(5)基本的な感染対策の再点検と徹底である。個々の詳細は原典に譲ることにする。では、これを受けて政府は今何をしているのか? 提言がまとめられた14日夜の岸田首相の記者会見では、まず第6波までを乗り越えた対応力を全面的に展開することで「新たな行動制限は現時点では考えていない」と断言。新たに医療従事者と高齢者施設の従事者約800万人を対象とした4回目接種の開始を発表するとともに、現在の感染の中心となり、3回目のワクチン接種率の低い30代までの若年層へワクチン接種を呼びかけた。さらに全国約1万3,000ヵ所の無料検査拠点で帰省前などに検査を受けられることや、主要な駅や空港などで100ヵ所以上の臨時の無料検査拠点を整備する方針も示した。しかし、提言に盛り込まれた(3)~(5)はいずれも軽く触れたのみだ。原典に当たればわかるように、換気に関して分科会はかなり具体的な対策を提示している。しかし、会見で岸田首相が言及したのは、「重ねてお願いになりますが、とくにこの夏は冷房で籠もりがちになる室内、飲食店内での十分な換気をお願いいたします」の一言のみ。もっとも大所高所からモノを語らなければならない岸田首相の口から会見でそこまで細かく語ることは必ずしも必要ないとの意見もあるだろう。それには一定程度同意する。ならば各閣僚を通じて省庁など関係各方面に情報発信の強化を指示すればよい。しかし、内閣官房が運営する「新型コロナウイルス感染症対策」、厚生労働省(以下、厚労省)の「新型コロナウイルス感染症情報」そして「政府広報」のいずれのページにもこの点に関して新たな記載はない。また、岸田首相が会見で新型コロナ関連の中で多くの時間を割いたワクチン接種についても、明らかに発信量が足りていない。会見では若年層の3回目接種率の低さを挙げて、若年でも重症化や後遺症のリスクはあることから、自分だけでなく家族や高齢者を守るためにも接種するように呼び掛けている。しかし、そもそも3回目接種に消極的な若年層は、接種する意味を理解できていないことに着目しなければならない。「あなた方は接種率が低いから…」という理由のみで進んで接種してくれるほど甘くはない。ならばこそ、3回目接種の効果などをグラフを使って説明するなど、もう一工夫が必要なのである。もちろんそれだけで若年層の接種率がぐんと伸びるとは言えないが、説明が足りていないことは明らかである。実際、政府広報にある岸田首相自らの呼びかけ動画も会見での語り以上のものはない。そしてSNSを見ればわかることだが、そもそも現時点はワクチンに関してかなり疑念が渦巻いている。端を発したのは、厚労省がワクチン接種歴ごとの陽性率集計で、接種歴不明者を未接種者に含めて集計をしていた事件だ。これを集計し直した結果、人口当たりの陽性率はわずかながら未接種よりも2回接種済みで留まっている人のほうが高くなった。読者の皆さんはよくおわかりのことだが、これで示された差は2回目接種のほうが高いと言っても有意差があるレベルではないし、半年も経てばワクチンの感染・発症予防効果がほぼなくなるのはすでに明らかになっている。ただ、一般人は後者をうっすらと理解していても、前者についての理解はないと言って良い。見た目の数字が高いことだけに着目してしまっている。そもそも論に立てば、この接種区分ごとの陽性率のデータは、あまりにも交絡因子や接種歴不明者が多過ぎてワクチンの効果そのものを議論するデータとしては使えない。ところが厚労省は一時期、このデータをワクチンの効果を示唆するものとして使った“前科”もあってか、この件について十分な説明をしていないという現実もある。いずれにせよワクチン接種については単に呼びかけるだけでなく、効果や疑念に応える積極的な情報発信が改めて必要な段階にあるということを、政府をはじめとする公的機関が再認識すべきなのだ。さらに言えば、こうした情報発信を強化しながら、最も政府がしたくないであろう「行動制限」をオプションとして準備していることぐらいは示しても良いのではないだろうか? 「伝家の宝刀」を使う英断とそのタイミングも重要だが、チラ見せにも一定の効果がある。感染拡大時にはそういう選択肢もありうると言及することで、これを嫌うであろう一般人の感染対策見直しには一定の効果も期待できるだろう。もっとも新聞の首相動静を見ていると、岸田首相が「行動制限」に踏み込みたくないのはご自身の行動を制限されたくないからなのではないかとも勘繰ってしまう。尾身氏の第7波発言以降も、日本料理の「千羽鶴」「新ばし金田中」「赤坂浅田」「山里」、フランス料理店「日比谷パレス」に「レ セゾン」、イタリア料理「IL RISTORANTE LUCA FANTIN」やステーキ店「ウルフギャング・ステーキハウス」「ピーター・ルーガー・ステーキハウス 東京」と、庶民もうらやむような飲食店で自民党や政権の幹部、各界有力者と会食を繰り返している。最近の感染動向の主流が、福祉施設、高齢者福祉施設、学校・教育施設などでのクラスターやそれに伴う家庭内感染であることは確かである。しかし、感染主流株がオミクロン株のBA.5に変化しようとも、いまだ会食の席での感染リスクが高いことに変わりはない。そのことを岸田首相も知らぬはずはないだろう。必要な情報の発信も不十分なまま、感染リスクの高い行動を続ける首相を目にして国民は感染対策を抜かりなくやってくれるだろうか。山火事がどんどん延焼を続けているにもかかわらず、部下の消防士に適当な消火作業を指示し、自らは消防署から外出して路傍で火遊びをする消防署長。言っては悪いが今の岸田首相はそんな感じである。

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4回目接種、感染予防は限定的だが重症化・死亡に高い効果

 国内ではワクチン4回目接種の対象が医療者等に拡大されたが、接種が先行する海外では4回目接種の有効性の検証が行われている。世界に先駆けてワクチン接種を開始したイスラエルにおいて、施設に入居する高齢者を対象とした4回目接種の有効性を見たコホート試験の結果が、JAMA Internal Medicine誌オンライン版6月23日号に掲載された。ワクチン4回目接種の感染に対する重症化の予防率は67% 本試験はオミクロン株による感染が主流となった2022年1月10日~3月31日にイスラエルで実施され、当時の接種対象となった60歳以上で、高齢者施設に入居または通所している人を対象とした。BNT162b2(ファイザー製)のワクチン3回接種者と4回接種から7日以上経過した者を対象とし、COVID-19の感染、入院、死亡の累積発生数を比較した。 ワクチン4回目接種の有効性を検証した主な結果は以下のとおり。・781施設の4万3,775例(平均[SD]年齢80.1[9.4]歳、女性2万9,679例[67.8%])のデータを解析した。ワクチン4回接種群が2万4,088例(55.0%)、3回接種群(4ヵ月以上前に接種)が1万9,687例(45.0%)だった。ワクチン4回接種群は3回接種群と比較して、高齢(平均[SD]年齢82.3[8.7]歳 vs. 77.3[9.5]歳)で、日常生活動作に最大限のまたは全面的な介助を必要とする入居者の割合は両群間でほぼ同じであった(16.3% vs.15.3%)。・ワクチン4回接種群の追跡期間中央値は73日(IQR:6日)、3回接種群73日(IQR:56日)であった。ワクチン4回接種群4,058例、3回接種群4,370例でSARS-CoV-2感染が検出された(累積発生率、17.6% vs. 24.9%)。・軽症から中等症の入院発生率はワクチン4回接種群0.9% vs. 3回接種群2.8%、重症化0.5% vs.1.5%、死亡0.2% vs. 0.5%であった。・ワクチン4回目接種の調整後の予防率は、感染全体34%(95%CI:30%~37%)、軽症~中等症の入院64%(95%CI:56%~71%)、重症化67%(95%CI:57%~75%)、関連死亡72%(95%CI:57%~83%)であった。 著者らは、「ワクチン4回目接種は、オミクロン株に対して高齢者のCOVID-19入院および死亡に対する高い抑制効果をもたらしたが、感染に対する予防効果は限定的であった。本研究で得られたオミクロン株に対するワクチン4回接種の推定効果は、デルタ株に対する3回接種の効果[感染全体89%、入院および死亡に対して92%~96%]より低く、これはオミクロン株の高い免疫逃避に起因していると考えられる。これらの知見は今後の感染対策に役立つものだ」としている。

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コロナワクチン、医師はいくらまで払う?/1,000人アンケート

 第7波の到来により、医療者へもコロナワクチン4回目接種が始まった。6月にCareNet.comが会員医師に行った『ワクチン4回目接種、あなたは受けたい?/会員医師1,000人アンケート』の結果によると、回答者の7割が接種したいと回答していた(対象となったらすぐに接種したい:33%、対象となったら時期をみて接種したい:36%)。コロナワクチンがいくらなら妥当かを調査 ところで、コロナワクチン接種は現時点では全額公費負担(厚生労働大臣の指示に基づき国の負担により実施することを踏まえ、全国統一の単価で接種1回あたり2,070円[消費税については、定期接種の予防接種と同様の取り扱い。ワクチン代はワクチンを国が確保し供給するため含まれていない1)])であり、自分の懐が痛むことはない。だが、将来的に新型コロナワクチン接種が定着した場合は自己負担になる可能性が高く、もしも費用負担が発生したら、医師も接種を控えたいと考えるのだろうか。さらには、ほかのワクチンとの兼ね合いを考慮した適正価格や、患者負担の許容範囲はいくらが妥当と捉えているのだろうかー。 そこで、今回『コロナワクチンが自己負担になったら、いくらなら妥当?』と題し、会員医師1,000人を対象に、以下の項目について調査を実施した。・コロナワクチンが自己負担/保険診療になった場合、受けたいか否か・コロナワクチン1回あたりの自己負担額とその理由・自身の患者がコロナワクチン接種を受ける場合、1回あたりいくらまでなら受けるか・コロナワクチンは、将来的に年に何回接種することになるか(予想回数)コロナワクチン自己負担…接種したい医師が減少 Q1「コロナワクチンが自己負担もしくは保険診療になった場合、受けたいと思いますか?」では、受けたいと回答したのは60%と、4回目接種希望者アンケートと回答者が異なるものの、自己負担に抵抗を感じている医師が一定数いることが明らかになった。なかでも、“受けたくない”との回答が最多だったのは30代で、わからないとの回答者も合算すると48%と約半数にのぼった。コロナワクチンを受けるなら中央値は2,500円 続いて、Q2「ご自身がコロナワクチン接種を受ける場合、自己負担がいくらまでなら受けたいと思いますか?(1回あたりの金額)」では、Q1の受けたくない・わからないの回答者も含むため、0円(33%)の回答者が最も多かった。次に3,000~4,000円未満(26%)、5,000円以上(15%)と続いた。0円(無料)を希望したのは20~40代が多く、その理由として以下のようなコメントがあった。・効果が限定的だから(20代、糖尿病・内分泌内科)・副反応がきついため(30代、消化器科)・基礎疾患のある者が受ければよい(30代、外科)・4回目以降のデータがまだ不完全(40代、呼吸器科)・コロナワクチンの効果と副反応のバランスに疑問があるため(40代、放射線科)なかには「お金をもらっても受けたくないです(30代、精神科)」と言う声も。年齢層が低いほど副反応が出やすいため、20~40代では上記のような意見が多くみられた。コロナワクチン、いくらまでなら患者は受けるか Q4「ご自身の患者さんがコロナワクチン接種を受ける場合、いくらまでなら受けると思いますか?(1回あたりの金額)」では、3,000~4,000円未満(30%)との回答者が最も多く、中央値は3,000円だった。インフルエンザワクチンの場合、全国平均は3,500円との試算があり、それに準ずる金額にすることで、多くの患者さんに打ってもらいたいと考える傾向にあった。コロナワクチン接種回数、医師の観測的希望は1~2回 ウイルス変異によるコロナワクチンの効果などにはまだまだ未知なる点が多いため、観測的希望に過ぎないが、将来の接種回数を現時点の印象から伺ったところ、「2回」が41%と最も多かった。 オミクロン株亜種であるBA.4および BA.5が猛威を振るい、これまで接種したコロナワクチンの有効性を疑問視する声もあるため、本結果ではワクチンの継続接種に難色を示す方もいた。だが、ファイザー社やモデルナ社(オミクロン株に対する2価追加接種ワクチン候補mRNA-1273.214)のオミクロン株対応ワクチンが今秋にも導入されると言われており、コロナワクチンの将来性に期待したい。アンケートの詳細は以下のページで公開中。『コロナワクチンが自己負担になったら、いくらなら妥当?』<アンケート概要>目的:新型コロナワクチンに自己負担が発生した場合、これまで通りに接種を希望するかどうかなどを調査するため。対象:ケアネット会員医師1,000人調査日:2022年7月15日方法:インターネット

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コロナ禍で医療資源確保のために国民へのお願い/4学会

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第7波の流行拡大が深刻な様相を呈している。発熱外来には連日長蛇の受診者がならび診療予約の電話が鳴りやまない。また、救急搬送は大都市圏で稼働率9割を超え、受け入れ先医療機関の不足や長い待機時間などが大きな問題となっている。 こうした事態を鑑み、日本感染症学会(理事長:四柳 宏)、日本救急医学会(代表理事:坂本 哲也)、日本プライマリ・ケア連合学会(理事長:草場 鉄周)、日本臨床救急医学会(代表理事:溝端 康光)の4学会は連名で「限りある医療資源を有効活用するための医療機関受診及び救急車利用に関する4学会声明」を8月2日に急遽発表した。 声明では、COVID-19に罹患したと思われる際の個々人の行動について、軽症で重篤化リスクのない人については、自宅療養を勧めるとともに、救急車を利用する際の指針について示している。COVID-19かなと思ったら?【声明の4つのポイント】1)症状が軽い*場合は、65歳未満で基礎疾患や妊娠がなければ、あわてて検査や受診をする必要はありません。自宅療養を続けられます。この場合、新型コロナウイルス専用の特別な治療は行いません。医療機関での治療は、つらい発熱や痛みを和らげる薬が中心になり、こうした薬は薬局などで購入できます。限りある医療資源を有効活用するためにも、検査や薬のためにあわてて医療機関を受診することは避けてください。 *症状が軽いとは「飲んだり食べたりできる、呼吸が苦しくない、乳幼児で顔色が良い」2)症状が重い**場合や、37.5℃以上の発熱が4日以上続く場合、65歳以上の方や65歳未満でも基礎疾患がある方、妊娠中、ワクチン未接種の方などは、重症になる可能性があります。早めにかかりつけ医に相談してください。高熱が続くなど症状が長引いたり、重くなるようでしたら、かかりつけ医や近隣の医療機関へ必ず相談、受診(オンライン診療を含む)してください。 **症状が重いとは「水分が飲めない、ぐったりして動けない、呼吸が苦しい、呼吸が速い、乳幼児で顔色が悪い、乳幼児で機嫌が悪くあやしてもおさまらない」3)救急車を呼ぶ必要がある症状は、顔色が明らかに悪い、唇が紫色になっている、(表情や外見などが)いつもと違う、様子がおかしい、息が荒くなった、急に息苦しくなった、日常生活で少し動いただけで息苦しい、胸の痛みがある、横になれない、座らないと息ができない、肩で息をしている、意識がおかしい(意識がない)などがあります。このようなときには救急車を呼ぶことをためらわないでください。4)救急車の利用の目安については「救急車利用リーフレット(高齢者版、成人版、子供版)」をご活用ください。 判断に迷う場合には、普段からの体調を把握しているかかりつけ医への相談、各種相談窓口(行政などが設置している発熱相談窓口や♯7119などの救急安心センター・救急相談センター、♯8000)などの活用をしてください。7項目で診療集中の弊害を説明 上記の診療を受ける、救急車を利用する前のポイントを踏まえ、解説として7項目のCOVID-19のとくにオミクロン株に関する疾患情報やリスクの高い場合の対応を記している。以下に抜粋して示す。【オミクロン株にかかったときの自然経過】・オミクロン株への曝露があってから平均3日で急性期症状(発熱・喉の痛み・鼻水・咳・全身のだるさ)が出現するが、そのほとんどが2~4日で軽くなること。・COVID-19の検査を受けることは大切だが、検査を受けることができなくてもあわてないで療養(自宅での静養)することが大切。・重症化する人の割合は数千人に1人程度と推定(厚生労働省資料より)。【COVID-19を疑う症状が出た場合】・COVID-19の症状(発熱・のどの痛み・鼻水・咳・全身のだるさなど)が出た場合は、まず仕事や学校を休んで外出を避け、自宅療養を始める。【症状が軽く65歳未満で基礎疾患がない場合、妊娠中でない場合】・症状が軽く(飲んだり食べたりできて、呼吸が苦しくない、乳幼児で顔色が良い)、基礎疾患がない場合や妊娠がない場合は、検査や薬のためにあわてて医療機関を受診をする必要はない。・COVID-19専用の特別な治療は行わない。つらい発熱や痛みを和らげる薬(アセトアミノフェンなどの解熱鎮痛薬)が治療の中心で、このような薬は薬局など(ドラッグストアやインターネット販売も含む)で購入できる。・限りある医療資源を有効活用するためにも、検査を目的とした医療機関の受診は避ける。・市販の医療用抗原検査キットを使い、症状が出た翌日以降に自分で検査することもできるが、症状が出た当日に検査をすると新型コロナウイルスに感染しているのに陰性になる可能性が高いため、翌日以降の検査をお勧めする。【症状が重い、発熱が4日以上、65歳以上、基礎疾患がある場合、妊娠中の場合】・症状が重い(水分が飲めない、ぐったりして動けない、呼吸が苦しい、呼吸が速い、乳幼児で顔色が悪い、乳幼児で機嫌が悪くあやしても治まらない)場合や、37.5℃以上の発熱が4日以上続いている場合は、医療機関への受診(オンライン診療を含む)が必要。・たとえ症状が軽くても、65歳以上の方、基礎疾患がある方や妊娠中の方、ワクチン未接種の方などは、重症になる可能性があるので、早めにかかりつけ医に相談。・熱が続くなど症状が長引いたり、重くなるようだったら、かかりつけ医や近隣の医療機関に必ず相談、受診(オンライン診療を含む)。・次の主な重症化のリスク因子がある方は受診が必要。〔主な重症化のリスク因子〕65歳以上の高齢者/悪性腫瘍(がん)/慢性呼吸器疾患(COPDなど)/慢性腎臓病/糖尿病/高血圧/脂質異常症/心臓や血管の病気/脳梗塞や脳出血など脳血管の病気/高度肥満(BMIが30以上)/喫煙(ヘビースモーカーの場合)/固形臓器移植後の免疫不全/妊娠後期/免疫抑制・調整薬の使用/HIV感染症(参考:厚生労働省 新型コロナウイルス感染症COVID-19診療の手引き 第8.0版を改変)【医療機関への受診について】・医療機関に受診が必要な場合は、通常診療中の時間帯(平日の日中など)に、かかりつけ医や近所の医療機関に電話相談してから受診。【救急車の利用の目安について】・COVID-19により救急車を呼ぶ必要がある症状としては、顔色が明らかに悪い、唇が紫色になっている、(表情や外見などが)いつもと違う、様子がおかしい、息が荒くなった、急に息苦しくなった、日常生活で少し動いただけで息苦しい、胸の痛みがある、横になれない、座らないと息ができない、肩で息をしている、意識がおかしい(意識がない)などがある。このようなときには救急車を呼ぶことをためらわない。 以上、国民向けの内容であるが、外来診療などの際に患者さんにお伝えすることで、現在の診療への集中化の緩和につながればと期待する。

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サル痘予防にKMバイオの天然痘ワクチンを承認/厚生労働省

 厚生労働省は8月2日のプレスリリースで、KMバイオロジクスの天然痘ワクチン(一般名:乾燥細胞培養痘そうワクチン、販売名:乾燥細胞培養痘そうワクチンLC16「KMB」)に対し、サル痘予防の効能追加を承認したことを発表した。二叉針を用いた多刺法により皮膚にワクチン接種 本ワクチンのサル痘予防の効能追加承認にあたり、添付文書が改訂された。主な追記部分は以下のとおり。<添付文書情報>【効能・効果】痘そう及びサル痘の予防【用法・用量】本剤を添付の溶剤(20vol%グリセリン加注射用水)0.5mLで溶解し、通常、二叉針を用いた多刺法により皮膚に接種する。【接種上の注意】4.副反応(1)重大な副反応1)ショック、アナフィラキシー(いずれも頻度不明):ショック、アナフィラキシー(蕁麻疹、呼吸困難、口唇浮腫、喉頭浮腫等)があらわれることがあるので、接種後は観察を十分に行い、異常が認められた場合には適切な処置を行うこと。(2)その他の副反応(頻度不明)接種局所のほか、接種10日前後に全身反応として発熱、発疹、腋下リンパ節の腫脹をきたすことがある。また、アレルギー性皮膚炎、多形紅斑が報告されている。5.妊婦、産婦、授乳婦等への接種妊娠していることが明らかな者には接種しないこと。妊娠可能な女性においては、あらかじめ約1ヵ月間避妊した後接種すること、及びワクチン接種後約2ヵ月間は妊娠しないように注意させること。授乳婦においては、予防接種上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。6.接種時の注意(2)接種時本剤の溶解に当たっては、容器の栓及びその周囲をアルコールで消毒した後、添付の溶剤0.5mLで均一に溶解する。溶解後に金属の口金を切断してゴム栓を取り外す。二叉針の先端部を液につけワクチン1人分を吸い取る。溶解後のワクチン液は、専用の二叉針で50人分以上を採取することができる。(4)接種方法多刺法:二叉針を用いる方法で、針を皮膚に直角に保ち、針を持った手首を皮膚の上において、手首の動きで皮膚を圧刺する。圧刺回数は、通常、専用の二叉針を用いて15回を目安とし、血がにじむ程度に圧刺する。他の二叉針を用いる場合は、それらの二叉針の使用上の注意にも留意して圧刺すること。接種箇所は、上腕外側で上腕三頭筋起始部に直径約5mmの範囲とする。7.その他の注意(1)本剤接種後に被接種者が接種部位を手などで触り、自身の他の部位を触ることで、ワクチンウイルスが他の部位へ広がる自家接種(異所性接種)が報告されている。また、海外において、本剤とは異なるワクチニアウイルス株を用いた生ワクチン(注射剤)接種後に、ワクチン被接種者から非接種者へのワクチンウイルスの水平伝播が報告されている。接種部位の直接の接触を避け、また触れた場合はよく手指を水洗いすること。(2)WHOより発出されたサル痘に係るワクチン及び予防接種のガイダンスにおいて、サル痘ウイルス曝露後4日以内(症状がない場合は14日以内)に、第二世代又は第三世代の適切な痘そうワクチンを接種することが推奨されている。

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2022-23年シーズンのインフル対策に4つの提言/日本感染症学会

 日本感染症学会(理事長:四柳 宏氏[東京大学医科学研究所附属病院長])は、7月26日に同学会のホームページで学会提言として「2022-2023年シーズンのインフルエンザ対策について」(医療機関の方々へ)を公開した。 現在、わが国は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)第7波の真っただ中であるが、インフルエンザについては、国内でCOVID-19の流行が始まった2020年2月以降、患者報告数は急速に減少していた。しかしながら、2021年後半から2022年前半にかけて、北半球の多くの国ではインフルエンザの小ないし中規模の流行がみられていたことから、感染症学会では今回の提言を行うこととなった。インフルエンザ対策に感染症学会の4つの提言1)2022-2023年シーズンは、インフルエンザの流行の可能性が大きい 北半球冬季のインフルエンザ流行の予測をするうえで、南半球の状況は参考になるが2022年は4月後半から報告数が増加し、例年を超えるレベルの患者数となっており、医療の逼迫が問題となっている。今後、海外からの入国が緩和され人的交流が増加すれば、国内へウイルスも持ち込まれると考えられ、わが国においても、今秋から冬には、同様の流行が起こる可能性がある。 一方、過去2年間、国内での流行がなかったために、社会全体のインフルエンザに対する集団免疫が低下していると考えられる。そのため、一旦感染が起ると、とくに小児を中心に大きな流行となる恐れがある。2)A(H3N2)香港型に注意 オーストラリアで本年度に検出されたインフルエンザウイルスのうち、サブタイプが判明したものでは、約80%はA(H3N2)、約20%がA(H1N1)だった。そのため、今シーズンは、わが国でもA(H3N2)香港型の流行が主体となる可能性がある。 そのため今季のA(H3N2)のワクチン株は、オーストラリアのDarwinで分離された、A/Darwin/9/2021 (H3N2)-like virus, clade 3C.2a1b.2a.2(2a.2)が採用された。3)今季もインフルエンザワクチン接種を推奨 今季に流行が予想されるA(H3N2)香港型に対するワクチンの発病防止効果は未知だが、発症してもワクチンによる一定の重症化防止効果は期待でき、欧州では65歳以上の高齢者においてA(H3N2)感染による入院防止率は37%であったと報告されている。 わが国においても、ワクチンで予防できる疾患については可及的に接種を行い、医療機関への受診を抑制して、医療現場の負担を軽減することも重要となる。よって、今季も例年通りに、小児、妊婦も含めて接種できない特別な理由のある人を除き、できるだけ多くの人にインフルエンザワクチンの積極的な接種を推奨する。4)例年通りのインフルエンザ診療が必要 今季、発熱患者では、ワクチン接種歴に関わらずCOVID-19とインフルエンザの鑑別が重要となり、また、両者の合併例も考えられる。したがって、外来診療では両方のウイルスを念頭にいれて、PCR、抗原検査、迅速診断などによる確定診断が必要となる。 検査の進め方については、感染症学会からの提言「今冬のインフルエンザと COVID-19 に備えて」や厚生労働省「新型コロナウイルス感染症診療の手引き(最新 第8.0版)」を参照されたい。 インフルエンザと診断されたときは、抗ウイルス薬による治療を検討することとなる。抗ウイルス薬は、インフルエンザの重症化、死亡率を抑制する。重症化のリスクのある人は当然治療の対象だが、リスクを持たない人でも重症化することがあり、その予測は困難である。 治療の実際については、2021年に感染症学会が発表した提言「今冬のインフルエンザに備えて.治療編〜前回の提言以降の新しいエビデンス」を参照されたい。抗ウイルス薬の耐性の状況については、過去2年間に流行がなかったために、今後の動向を見守る必要がある。

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コロナとインフルワクチンの同時接種での副反応、ファイザー製vs.モデルナ製

 日本国内でも先日開催された厚生労働省の厚生科学審議会・予防接種・ワクチン分科会にて、新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンの同時接種が了承された1)2)。世界ではすでに新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンの同時接種を行う例もあり、米国・CDC COVID-19 Response TeamのAnne M Hause氏らが同時接種による有害事象の増加有無、ワクチンメーカーによる違いについて調査した結果、新型コロナワクチンのブースター接種とインフルエンザワクチンを同時接種した者は新型コロナワクチンのみを接種した者と比較して、接種後0~7日の全身反応の報告が有意に増加していたことが明らかになった。ただし、それらは軽度~中等度であること、また、同時接種による調整オッズ比[aOR]はファイザー製で1.08、モデルナ製で1.11であったことも示唆された。本研究はJAMA Network Open誌2022年7月15日号に掲載された。コロナとインフルエンザワクチンの同時接種の全身反応は軽度または中等度 研究者らは米国における新型コロナワクチンのブースター接種とインフルエンザワクチンを同時に接種した際の有害事象を評価するため、後ろ向きコホート研究を実施。用いたデータはv-safe*から収集したもので、12歳以上の2021年9月22日~2022年5月1日のワクチン接種後0〜7日目の情報(接種部位反応[注射部位疼痛]と全身反応[倦怠感、頭痛、筋肉痛…]および健康への影響)だった。新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンの同時接種後7日間の全身反応のオッズ比を性別、年齢、ワクチン接種の週で調整し、新型コロナワクチンのブースター接種単独とインフルエンザワクチンとの同時接種を評価した。*v-safeとは、CDCが新型コロナワクチン接種プログラムのために特別に確立した安全監視システム。ワクチン接種後の個々の健康状態を把握するため、テキストメッセージとWebで調査するためのスマートフォンベースのツール。ワクチン接種後の最初の週に、登録者は局所注射部位と全身反応に関する調査を毎日行う。登録者は、欠勤の有無、日常生活の可否、症状が出現した場合に医療者からケアを受けたかなどを尋ねられる。 コロナワクチンとインフルエンザワクチンの同時接種による副反応を調査した主な結果は以下のとおり。・v-safeに登録されている12歳以上98万1,099例のうち、9万2,023例(9.4%)が新型コロナワクチンのブースター接種とインフルエンザワクチン接種を同時に行った。女性が5万4,926例(59.7%)、男性が3万6,234例(39.4%)で、性別不明は863例(0.9%)だった。・年齢構成は、12〜49歳が3万7,359例(40.6%)、50〜64歳は2万3,760例(25.8%)、65〜74歳は2万4,855例(27.0%)、75歳以上は6,049例(6.6%)だった。・ワクチン接種翌週の回答によると、ファイザー製コロナワクチンとインフルエンザワクチンを同時接種したうちの3万6,144例(58.9%)と、モデルナ製コロナワクチンとインフルエンザワクチンを同時接種したうちの2万1,027例(68.6%)が全身反応を報告し、ほとんどの反応は軽度または中等度だった。・報告はワクチン接種の翌日が最も多く、その症状は倦怠感、頭痛、筋肉痛だった。ファイザー製コロナワクチンとインフルエンザワクチン同時接種群(6万1,390例)とファイザー製コロナワクチン単独群(46万6,439例)を比較した場合の報告割合は、接種部位反応(注射部位疼痛):62.2% vs.61.1%、疲労:44.2% vs.43.6%、筋肉痛:33.2% vs.33.4%、頭痛:33.7% vs.34.8%だった。一方、モデルナ製コロナワクチン群(3万633例)とインフルエンザワクチン同時接種群(42万2,637例)では、接種部位反応(注射部位疼痛):70.6% vs.67.4%、疲労:52.8 vs.48.9%、筋肉痛:43.6 vs.39.6%、頭痛:43.1 vs.40.3%だった。・コロナワクチンとインフルエンザワクチンを同時接種した場合のファイザー製とモデルナ製でのaORを算出したところ、さまざまな全身反応については、ファイザー製が1.08(95%信頼区間[CI]:1.06~1.10)、モデルナ製が1.11(同:1.08~1)だった。接種部位反応については、ファイザー製が1.10(同:1.08~1.12)、モデルナ製が1.05(1.02~1.08)だった。・さまざまな健康への影響についてはファイザー製が0.99(0.97~1.02)、モデルナ製が1.05(1.02~1.08)だった。そのうち、通学や業務への支障は、ファイザー製が1.04(1.01~1.07)、モデルナ製が1.08(1.04~1.12)だった。 なお、本結果は、第33回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会(令和4年7月22日)における同時接種の有効性・安全性に関する資料1)にも引用されている。

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BA.4/BA.5に強力な中和抗体反応/2価ワクチン候補mRNA-1273.214

 2022年7月11日(現地時間)、Moderna(米国)は、オミクロン株亜系統BA.1を含む追加接種用2価ワクチン候補mRNA-1273.214について新しい臨床データを発表し、mRNA-1273(商品名:スパイクバックス筋注)による追加接種と比較して、オミクロン亜系統BA.4およびBA.5に対する有意な中和抗体反応が示されたことを発表した。 Modernaは、各市場におけるオミクロン亜系統の状況に応じて、今秋に向け2種類の追加接種用2価ワクチン候補の開発を進めている。今回公表されたのは、そのうちのmRNA-1273.214に関するデータである。主な結果は以下のとおり。・接種時に感染のない被験者において、2価ワクチン候補mRNA-1273.214 は、既存のmRNA-1273による追加接種と比較して、BA.4/BA.5に対して有意に高い中和抗体価を示し、幾何平均比は1.69(95%信頼区間[CI]:1.51~1.90)であった。・追加接種から1ヵ月後の時点におけるBA.4/BA.5に対する中和抗体価は、mRNA-1273.214 では776(95%CI:719~838)、mRNA-1273による追加接種では458(95%CI:421~499)であった。・同臨床試験における追加接種前の値を基にしたBA.4/BA.5の幾何平均増加倍率(GMFR)は、mRNA-1273.214の被接種者で6.3倍(95%CI:5.7~6.9)、mRNA-1273の被接種者では3.5倍(95%CI:3.2~3.9)であった。 mRNA-1273.214は本試験データに基づきEU、英国、オーストラリアの規制当局へ承認申請を提出しており、他の規制当局へも順次申請を予定している。また、オミクロン亜系統BA.4/BA.5に対応する2つ目の2価ワクチン候補mRNA 1273.222についても、FDAの勧告に基づき開発が進められている。

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ファイザー製とAZ製、コロナワクチンの有効性を比較 /BMJ

 イングランドでは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)アルファ変異株の流行期の健康な医療従事者において、BNT162b2(mRNAワクチン、ファイザー製)とChAdOx1(ウイルスベクターワクチン、アストラゼネカ製)という2つのワクチンには、接種後20週以内のSARS-CoV-2感染および新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生について実質的な差はなく、これらの発生率は初回接種後3~4週間目には急激に低下して、それ以降はCOVID-19関連の受診や入院が少なくなったことから、両ワクチンはいずれもアルファ変異株によるCOVID-19に対する強力な予防効果を有することが、英国・オックスフォード大学のWilliam J. Hulme氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2022年7月20日号で報告された。イングランドの効果比較試験類似のコホート研究 研究グループは、イングランドの医療従事者およびソーシャルケアワーカーにおいて、SARS-CoV-2感染とCOVID-19発生に対する2つのワクチン(BNT162b2、ChAdOx1)の有効性を比較する目的で、イングランド国民保健サービス(NHS England)の委託として、効果比較試験に類似のコホート研究を行った(英国研究技術革新機構[UKRI]などの助成を受けた)。 SARS-CoV-2アルファ変異株が優勢な時期におけるOpenSAFELY-TPPの研究プラットフォーム内で利用可能なプライマリケア、病院、COVID-19サーベイランスの記録が関連付けられた。 参加者は、2021年1月4日~2月28日の期間に初回ワクチン接種を受けた年齢18~64歳の医療従事者およびソーシャルケアワーカーで、イングランドでTPP SystmOne臨床情報システムを使用して総合診療医(GP)に登録し、臨床的に極端に脆弱ではない集団(31万7,341人)であった。これらの参加者は、COVID-19ワクチンの全国展開の一環として、BNT162b2またはChAdOx1の接種を受けた。 主要アウトカムは、接種後20週以内のSARS-CoV-2検査陽性、COVID-19関連の救急診療部(A&E)受診または入院とされた。3つのアウトカムの発生率はほぼ同等 参加者31万7,341人のうち、BNT162b2の接種を受けたのは25万3,134人(女性79%、SARS-CoV-2感染歴あり10.8%)で、ChAdOx1の接種は6万4,207人(77%、14.1%)が受けた。 初回接種から12週(84日)までに2回目の接種を受けたのは、BNT162b2接種者が95.4%、ChAdOx1接種者は90.8%であった。20週(140日)以内に2回目の接種を受けた参加者のうち413人(0.13%)(BNT162b2接種者288人、ChAdOx1接種者125人)が、1回目とは異なるワクチン(mRNA-1273[モデルナ製]を含む)の接種を受けていた。 11万8,771人年の追跡期間中に、6,962人がSARS-CoV-2検査陽性となり、282人がCOVID-19関連でA&Eを受診し、166人がCOVID-19で入院した。 初回接種から20週の時点(多くが2回目の接種を終了)での個々のアウトカムの累積発生率は、2つのワクチンでほぼ同程度であった。すなわち、初回接種後20週以内のSARS-CoV-2検査陽性率は、1,000人当たりBNT162b2接種者が21.7人(95%信頼区間[CI]:20.9~22.4)、ChAdOx1接種者は23.7人(21.8~25.6)で、両ワクチン群間の絶対リスク差は1,000人当たり2.04人(95%CI:0.04~4.04)だった。 また、両ワクチン群間で、COVID-19関連A&E受診の累積発生率の絶対リスク差は、1,000人当たり0.06人(95%CI:-0.31~0.43)であり、COVID-19関連入院の累積発生率の絶対リスク差は0.11人(-0.22~0.44)であった。 全般に、両ワクチンとも、イベントの発生率は接種後の数週間が最も高く、3~4週目には低下して横ばいとなり、その後はきわめて低値となった。 著者は、「より新しく、より流行している変異株に対する有効性や、より長期の有効性の評価のために、新たな研究を行う必要がある」としている。

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A型肝炎ワクチン【今、知っておきたいワクチンの話】各論 第13回

ワクチンで予防できる疾患(疾患について・疫学)A型肝炎は、ウイルス感染によって起こる急性肝炎である。感染しても多くは軽症で自然軽快し、劇症化は1%以下とまれである。急性肝炎のみで慢性化はしない。感染症法においては全数報告対象の4類感染症に指定されており、診断した医師は直ちに最寄りの保健所に届け出なければならない。主な感染経路は糞口感染で、汚染された食品を喫食することで感染が成立する。環境やヒトからの接触感染も報告があり、近年は糞口感染の変形として肛門性交による感染例が増えている。これらから、途上国など流行地域への渡航、輸入食材の喫食に加え、違法薬物使用や男性同性間性的接触者(MSM)もリスク因子の1つとされる。感染成立から2〜7週後(平均は4週)に、発熱、倦怠感、食思不振、嘔吐といった初期症状に続いて血清トランスアミナーゼ(ALTまたはGPT、ASTまたはGOT)が上昇する。典型例では黄疸、肝腫大、濃色尿、灰白色便などを認める。臨床症状や肝障害の改善は割に早く、既述の通り慢性化もしないので、劇症化しなければ一過性の急性肝炎として収束する。劇症化を含む重症化は、感染初期の高度なウイルス増殖に対する過剰な宿主免疫反応に関連する。主なリスク因子は高齢(50代以上)や高度肝障害(慢性肝炎や肝硬変)とされる。血中IgM-HA抗体、もしくは血液または糞便検体からPCR法によりRNAが陽性となれば診断が確定する。IgM抗体は発症から約1ヵ月後にピークに達し、3〜6ヵ月後に陰性となる。抗体価は重症例ほど高く、長く検出される。糞便中のウイルスは発症から1〜2ヵ月後まで検出される。ワクチンの概要(効果・副反応・生または不活化・定期または任意・接種方法)A型肝炎ワクチンには、わが国で承認を得て流通しているワクチンが乾燥組織培養不活化A型肝炎ワクチン(商品名:エイムゲン)として1種類ある。海外で流通しているワクチンでは数種類(HAVRIX、AVAXIMなど)がある。海外では、A型肝炎とB型肝炎に対する混合ワクチンTwinrix および Twinrix Juniorも普及している。いずれも不活化ワクチンで、日本では任意接種の扱いとなっている。ワクチンの免疫付与効果はほぼ100%とされている。接種のスケジュール(小児/成人)画像を拡大する画像を拡大する日常診療で役立つ接種ポイント説明方法として「衛生的でない食品による急性肝炎であるA型肝炎を予防するワクチンです。効果も安全性も非常に高いため、感染リスクがある方には接種をお勧めします」など申し添える。また、迅速接種の場合は、接種スケジュールの通り、「2週間後に2回目を接種すると1年程度は免疫が得られます。その場合でも3回目接種を推奨します」など申し添える。海外製品の方が接種回数や長期効果の面で優れているため、特に移住などの長期渡航に際しては、現地もしくは国内トラベルクリニックで海外製品を接種することも選択肢として検討する。今後の課題・展望国産ワクチン(エイムゲン)と海外製ワクチンの互換性に関するエビデンスがないため、今後の研究が期待されている。エイムゲンを1〜2回接種した状態で渡航した場合、互換性が保証されないため現地で接種をやり直すことになり、カウントエイムゲンの接種が丸ごとムダになってしまう。また、今後の承認が期待されるワクチンとして、A型肝炎とB型肝炎が混合されたワクチンや、A型肝炎と腸チフスが混合されたワクチンなどがある。これらが承認されれば、海外渡航や移住する成人にとって利便性が高い。参考となるサイト(公的助成情報、主要研究グループ、参考となるサイト)国立感染症研究所 A型肝炎とは厚生労働省検疫所FORTH 海外渡航のためのワクチン厚生労働省 肝炎総合対策の推進疾病対策予防センター(CDC) Viral Hepatitis講師紹介

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コロナワクチン、2回目接種後6ヵ月で陽性率は未接種者と同等?/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチンの有効性の低下は、COVID-19関連入院、COVID-19関連死、SARS-CoV-2検査陽性で一貫しており、年齢および感染リスクで定義したサブグループ間で差はみられないことが、英国・ブリストル大学のElsie M. F. Horne氏らによるOpenSAFELY-TPPデータベースを用いたコホート研究の結果、示された。最近のシステマティック・レビューでは、COVID-19重症化に対するワクチンの有効性が2回目接種後1~6ヵ月間で10%(95%信頼区間[CI]:6.1~15.4)低下すると推定されたが、研究デザインの違いや結果のばらつきにより結論は得られていなかった。著者は、「今回の結果は、オミクロン変異株感染や、ブースターワクチン接種が続くならばブースターワクチン接種のスケジュール決定に役立つと考えられる」とまとめている。BMJ誌2022年7月20日号掲載の報告。OpenSAFELY-TPPを用い2,400万人のデータを解析 研究グループは、OpenSAFELY-TPPデータベースを用いてコホート研究を行った。データベースには、英国の一般診療に登録された2,400万人(英国住民の約44%)について、国民保健サービス(NHS)番号を介し救急外来受診、入院記録、SARS-CoV-2検査記録および死亡登録記録にリンクしたプライマリケアの詳細なデータが含まれている。 解析対象は、SARS-CoV-2感染歴のない18歳以上の成人(介護施設入所者および医療従事者は除外)で、BNT162b2ワクチン(ファイザー製)2回接種群、ChAdOx1ワクチン(アストラゼネカ製)2回接種群、ワクチン未接種群に分け、4週間ずつ連続した6回の比較期間においてワクチンの有効性を比較した。 主要評価項目は、COVID-19関連入院、COVID-19関連死、SARS-CoV-2検査陽性および非COVID-19関連死の、ワクチン未接種者に対する接種者の補正後ハザード比(aHR)とし、ワクチンの有効性の低下を65歳以上、感染リスクの高い18~64歳、40~64歳、18~39歳のサブグループ別に4週間ごとの補正後ハザード比の比(RaHR)として定量化した。2回目接種後26週で入院・死亡75%以上抑制も、陽性率は未接種者と同等 適格基準を満たした解析対象は、BNT162b2ワクチン2回接種群195万1,866例とChAdOx1ワクチン2回接種群321万9,349例、ワクチン未接種群242万2,980例であった。 ワクチンの有効性の低下は、評価項目およびワクチンのブランド間で同程度と推定された。65歳以上のサブグループでは、COVID-19関連入院、COVID-19関連死、SARS-CoV-2検査陽性のRaHRは4週あたり1.19(95%CI:1.14~1.24)~1.34(95%CI:1.09~1.64)であった。 ワクチンの有効性の低下にもかかわらず、ワクチン接種群は未接種群と比較して2回目接種から26週後まではCOVID-19関連入院・死亡率が非常に低く、ワクチンの有効率はBNT162b2で80%以上、ChAdOx1で75%以上と推定された。23~26週目までに、ワクチン接種群のSARS-CoV-2検査陽性率は未接種群と同等もしくは高率となった(aHRはBNT162b2で1.72[95%CI:1.11~2.68]、ChAdOx1で1.86[95%CI:1.79~1.93])。

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5~11歳へのファイザーワクチン、オミクロン株への有効性/NEJM

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のオミクロン変異株(B.1.1.529)流行中における5~11歳へのmRNAワクチンBNT162b2(ファイザー製)の2回接種により、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による入院リスクは低下したことが、シンガポール・シンガポール大学のSharon H. X. Tan氏らによる検討で示された。2021年11月初旬に初めて確認されて以来、オミクロン変異株は多くの国で急速に拡大し、デルタ変異株(B.1.617.2)に置き換わり、優勢株となっている。これまで、小児におけるオミクロン変異株に対するワクチンの有効性に関するデータは不足していた。NEJM誌オンライン版2022年7月20日号掲載の報告。2022年1月21日~4月8日における25万5,936例のデータを解析 研究グループは、オミクロン変異株が急速に拡大した2022年1月21日~4月8日におけるシンガポールの5~11歳の小児のデータを解析した。シンガポール保健省に報告され同省が保持している公式データに基づく解析である。 対象小児をワクチン未接種群、部分接種群(ワクチン1回目接種後1日以上、2回目接種後6日まで)、完全接種群(2回目接種後7日以上)に分け、報告されたすべてのSARS-CoV-2感染(PCR検査、迅速抗原検査、またはその両方で確認)、PCR検査で確認されたSARS-CoV-2感染、およびCOVID-19関連入院の発生率を評価項目とし、ポアソン回帰法を用いて各評価項目の発生率比からワクチンの有効性を推定した。 解析対象集団は計25万5,936例で、このうち17万3,237例(67.7%)が完全接種群、3万656例(12.0%)が部分接種群、5万2,043例(20.3%)が未接種群であった。2回接種でCOVID-19関連入院に対する有効性は約83% 報告されたすべてのSARS-CoV-2感染、PCR検査で確認されたSARS-CoV-2感染、およびCOVID-19関連入院の粗発生率(100万人日当たり)は、ワクチン未接群がそれぞれ3,303.5、473.8、および30.0、部分接種群では2,997.3、391.2、および19.1、完全接種群では2,770.3、111.8、および6.6例であった。 部分接種群のワクチン有効率は、すべてのSARS-CoV-2感染に対しては13.6%(95%信頼区間[CI]:11.7~15.5)、PCR検査で確認されたSARS-CoV-2感染に対しては24.3%(19.5~28.9)、およびCOVID-19関連入院に対しては42.3%(24.9~55.7)であった。 完全接種群のワクチン有効率はそれぞれ36.8%(95%CI:35.3~38.2)、65.3%(62.0~68.3)、82.7%(74.8~88.2)であった。

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第119回 「加点による合格は賄賂」、東京医大入試裁判で文科省元局長に有罪判決

第7波の今の混乱は政治の責任こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。新型コロナウイルスのBA.5株が猛威を振るっています。ここにきて、政府は4回目のワクチン接種の促進、濃厚接触者の待機期間を7日間から5日間に短縮、抗原検査キットの無料配布など、新しい対策を続々と打ち出し始めています。しかし、どれも付け焼き刃的で、医療機関や保健所の業務の逼迫度合いは増すばかりです。第5波、第6波で問題となったことが再び繰り返されているわけで、もうこうなると明らかに政治の責任と言えるでしょう。第6波収束後に、風邪やインフルエンザと同様、健康で重症化しなさそうな人や自力で治そうと思う人は、検査は不要かつ医療機関を受診しなくてもいい、というルールに変えて国民に周知しておけば、今回の現場の混乱を多少は防げたはずです。あるいは、第4回目のワクチン接種を早めに進めておいたり、抗原検査キットを事前に国民に配布しておいたりすることもできたはずです。第6波収束後、感染症法上の扱いを「5類並み」に変更するチャンスも十分にあったと思います。しかし、「喉元過ぎれば熱さを忘れる」ではないですが、参議院選挙を前にして、その検討を真剣に行わなかった岸田 文雄首相の責任は重いと言えます。感染症ですから患者が増えていること自体は仕方ありませんが、以前と同じように医療現場があたふたとしている状況を見ると、この2年余りのあいだ国は一体何をしていたんだ、と思います。私の周囲の“医療提供の仕組み”がわかった友人の中には、「重症化はほぼしないのだから、もし罹っても医療機関には行かず自力で治す。それが世のため」という人もいます。そもそも風邪やインフルエンザは、医療機関を受診しても療養期間がそう短くならない病気です。「熱っぽい時は医者へ」という日本人の固定観念自体も、今後変えて行く必要がありそうです。さて、今回は事件発覚から実に4年、先週やっと判決が出た、東京医大入試裁判について書いてみたいと思います。元局長に懲役2年6カ月、執行猶予5年の判決文部科学省の私立大学支援事業で東京医科大に便宜を図る見返りに、自分の息子を東京医科大に合格させてもらったとして、受託収賄罪に問われた同省の元科学技術・学術政策局長、佐野 太被告(62)ら4人の判決公判が7月20日、東京地裁でありました。東京地裁(西野 吾一裁判長)は「入試の公平性をないがしろにする甚だしい利益を収受した。賄賂に該当するのは明らか」として、佐野被告に懲役2年6ヵ月、執行猶予5年(求刑懲役2年6ヵ月)を言い渡しました。佐野被告の退職金の支払いが差し止められるなど社会的制裁も受けている点を考慮し、判決は執行猶予付となりました。一方、贈賄罪に問われた東京医科大元理事長の臼井 正彦被告(81)は懲役1年6ヵ月、執行猶予4年(同1年6ヵ月)、元学長の鈴木 衛被告(73)は懲役1年、執行猶予2年(同1年)、受託収賄ほう助罪などに問われた医療コンサルタント会社元役員、谷口 浩司被告(51)は懲役2年、執行猶予5年(同2年)としました。「私立大学研究ブランディング事業」の選定で便宜判決によると、佐野被告は官房長だった2017年5月、臼井被告から、独自色がある私大を支援する「私立大学研究ブランディング事業」の選定で便宜を図ってほしいと依頼され、医療コンサルタント会社元役員だった谷口被告を通して事業計画書の書き方などを助言。その謝礼として、臼井、鈴木両被告から、2018年2月に同大を受験した息子の試験結果に加点してもらい合格させてもらったとのことです。佐野被告は「不正をしてまで息子を合格させてもらおうと思ったことは一度もない」として無罪を主張。臼井、鈴木両被告らも起訴事実を否認していました。判決は、佐野被告と臼井被告が2017年5月に会食した際の音声データを基に、臼井被告が「来年は、絶対大丈夫だと思いますので」などと発言したと認定。佐野被告が、息子に加点などの優遇措置がとられることを認識した上で私大支援事業への助言などの依頼を受け、承諾したと判断しました。ちなみに東京医大は「私立大学研究ブランディング事業」の対象校に選ばれ、2017年度に3,500万円が交付されています。判決では「事業の公平性や補助金の適正な交付を妨げてはならないという職務に反した」と佐野被告を強く非難しています。「加点による合格は賄賂」と結論付ける公判では、不正に得点を加えた大学側の優遇措置が佐野被告への賄賂に当たるかどうかが争点でした。佐野被告の息子は、2018年2月に実施されたマークシート方式の1次試験(400点満点)で大学側から本来の得点に10点の加算を受けたことで、2次試験の小論文や面接を踏まえた最終順位が74位となり、75人の正規合格の枠に入り、合格しました。佐野被告側は公判で「加点がなくても補欠として合格でき、賄賂にはあたらない」と訴えていました。判決理由も「加点がなくても補欠合格していた」ことを認めていますが、「補欠合格は正規合格者の辞退という偶然の事情に左右される。早期に正規合格者の地位を得ることは、他の大学への高額な入学金の納付を避けられ、経済的な利益もある」と指摘。会食の録音データなども踏まえ、佐野被告は「加点などの優遇措置が講じられ、正規合格の地位を受ける可能性を認識していた」として、加点による合格が賄賂に当たると結論付けました。判決後、佐野被告は弁護人を通じ「不当な判決」などとコメントし、控訴する意向を示しました。医学部入試の透明性改善のきっかけとなった事件2018年7月に発覚したこの事件は、日本の医学部入試にも多大な影響を及ぼしました。当初は一般的な贈収賄事件として扱われていましたが、その後の東京医大の内部調査で、同大が行っていた点数操作が佐野被告の息子だけでなく、女性や3浪以上の男性にも一律に不利になるように行われていたことが判明、事件は一気に社会問題化しました。文科省は医学部医学科がある全国81大学の入学者選抜の過去6年間の実態を緊急調査し、2018年9月に2013年〜2018年度の男女別の合格率を公表しました。これらの調査結果と各大学へのヒアリングを基に、東京医大を含む10大学の医学部医学科においても「不適切である可能性が高い」選抜や「疑惑を招きかねない」選抜が行われていた事実が明らかになったのです。同省は2019年6月、「大学入学者選抜実施要項」を見直し、差別を禁止する具体的なルールを設定。各大学では受験生の名前や性別、年齢を伏せて合否を決めたり、女性面接官を増やしたりする対策がとられるようになりました。元受験生による集団訴訟も継続中実際、こうした対策の効果は大きく、本連載の「第94回 昨年の医学部入試で男女別合格率が逆転!医師が『An Unsuitable Job for a Woman』でなくなる日は本当に来るか」でも詳しく書いたように、国公私立81大学における2021年度の医学部入試での女性の平均合格率は13.60%と、男性の13.51%を上回り、データのある2013年度以降で初めて男女の合格率が逆転しています。もしこの事件が発覚しなかったら、女性や複数年浪人生への不当な差別がその後も続いていたと思うと、恐ろしいことです。ちなみに、文科省の調査で不適切入試が指摘された大学については、元受験生が損害賠償を求めて提訴する動きも広まりました。東京医大のほか昭和大や聖マリアンナ医科大などに対する集団訴訟が続いています。2022年5月には、東京地裁が順天堂大に対し、医学部で不合格となった元受験生の女性13人に計約805万円の支払いを命じる判決を言い渡しています。順大については判決が確定し、元受験生と大学側は和解しています。いくつかの集団訴訟はまだ続いており、佐野元被告も控訴する方針なので、今回の有罪判決もまだ確定しません。東京医大入試事件をきっかけに全国の医学部を揺るがせた不正入試の余波は、まだまだ収まりそうにありません。

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インフルとの鑑別を更新、COVID-19診療の手引き8.0版/厚労省

 7月22日、厚生労働省は「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第8.0版」を公開し、全国の自治体や関係機関に通知を行った。 今版の主な改訂点は以下の通り。第8版の主な改訂点【1 病原体・疫学】・(1)病原体、(3)国内発生状況、(4)海外発生状況の情報を更新【2 臨床像】・(1)臨床像を更新(とくにオミクロン株の知見、インフルエンザとの鑑別を更新)・(2)重症化リスク因子、(3)胸部画像所見、(4)合併症を更新・(5)小児例の特徴で小児の重症度、小児における家庭内感染率について更新・(5)小児例の特徴で「小児における死亡例」を追加・(6)妊婦例の特徴を更新【3 症例定義・診断・届出】・(1)症例定義を更新・(4)届出を更新【4 重症度分類とマネジメント】・(1)重症度分類、(2)軽症、(3)中等症II 呼吸不全あり、(4)重症の中のECMO、血液浄化療法、血栓症対策、図を更新・「高齢者における療養のあり方について」を追加・「医療提供体制と自宅療養について」を参考から追加【5 薬物療法】・(1)抗ウイルス薬のモルヌピラビルを更新・(2)中和抗体薬のソトロビマブ、カシリビマブ/イムデビマブを更新・(4)妊婦に対する薬物療法で「禁忌」を追加・(参考)の「日本国内で開発中の薬剤」を更新【6 院内感染対策】・序文、換気を(2)環境整備に統合し更新・(4)患者寝具類の洗濯を更新・(7)職員の健康管理を更新・(8)妊婦および新生児への対応を更新・【参考】感染予防策を実施する期間の表を追加【7 退院基準・解除基準】・(1)退院基準を更新

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コロナ・インフルワクチン同時接種可、オミクロン株対応ワクチン秋以降に導入へ/厚労省

 これまで新型コロナワクチンの接種は他のワクチン接種と13日以上の間隔を空けて実施することとされていたが、知見等の蓄積をふまえ、インフルエンザワクチンに関しては同時接種も可能とすることが、7月22日に開催された第33回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会で了承された。同会ではそのほか、オミクロン株対応ワクチンの接種や4回目接種の対象者拡大等についても議論された。各社のコロナワクチンとインフルワクチン同時接種の有効性・安全性<同時接種の有効性>ファイザー社・アストラゼネカ社:2回目接種において、ファイザー社またはアストラゼネカ社ワクチン単独接種と比べ、新型コロナウイルス抗スパイクIgG抗体価は有意差がなかった。さらにファイザー社ワクチンとの同時接種においてインフルエンザの一部の株に対するHI抗体価の上昇がみられた。モデルナ社:追加接種において、インフルエンザワクチン単独またはモデルナ社ワクチン単独接種と比べて、インフルエンザHI抗体価、新型コロナウイルス抗スパイクIgG抗体価共に低下はなく、免疫干渉はないと報告された。武田社:初回接種において、インフルエンザワクチン単独接種と比べて、インフルエンザHI抗体価は同程度に上昇した。また、両ワクチンの同時接種による新型コロナウイルス感染症発症予防効果は87.5%と、武田社ワクチン単独接種の89.8%と同程度であった。<同時接種の安全性>ファイザー社・アストラゼネカ社:観察期間を通じた全身副反応報告割合は非同時接種群と比較して、同時接種群でも同程度であり、同時接種での安全性の懸念は認められなかった。モデルナ社:接種後21日間に報告された有害事象は同時接種群17.0%、モデルナ群14.4%、インフルエンザ群10.9%であり、同時接種での安全性の懸念は認められなかった。武田社:接種後21日以内に報告された有害事象は同時接種群18.4%、ノババックス群17.6%、インフルエンザ群:14.5%で同時接種により安全性の懸念が増すことはなかった。 米国ではインフルエンザワクチンを含めて、他のワクチンと新型コロナワクチンは同時接種可能とされており、2021年9月~2022年5月のデータにおけるmRNAワクチンの追加接種とインフルエンザワクチンの同時接種後7日間の全身反応の調整オッズ比は、mRNAワクチン追加接種の単独接種と比較し、ファイザー社ワクチンとの同時接種で1.08、モデルナ社ワクチンとの同時接種で1.11であったと報告されている。英国では2022年5月26日にインフルワクチンとコロナワクチンの同時接種は安全であるという基本方針が示されており、同会ではこれらの知見と諸外国の対応等考慮して、新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンについては、間隔の規定を廃止し同時接種を認める一方、インフルエンザ以外のワクチンとの同時接種については、13日以上の間隔を開けることとし、引き続きエビデンスを収集しながら検討することとされた。 なお、委員からは同時接種を積極的に推奨するのか? という質問が上がり、厚労省では、積極的に推奨するということではなく、1つの選択肢として同時接種も可能となるという位置づけと回答した。「オミクロン株対応ワクチン」今秋以降に導入の方向で検討 ファイザー社およびモデルナ社では、「オミクロン株対応ワクチン」の開発を進めており、ともにオミクロン株(BA.1)の成分を含んだワクチンの臨床試験結果を発表し、BA.1に対する中和抗体価が従来ワクチンと比較して優越性を示したことが報告されている。FDAでは製造販売業者に対して、オミクロン株(BA.4/5)の成分を含む2価の追加接種用ワクチンを開発するよう、COVID-19ワクチンを改良することを検討するよう勧告しており、これにより、改良されたワクチンが2022年秋の初めから中頃に利用できるようになる可能性がある。 本邦でも「オミクロン株対応ワクチン」を予防接種に導入していく方向が了承され、「オミクロン株対応ワクチン」の構成(オミクロン株の成分のみを含んだ単価ワクチンとするか従来型ワクチンを含んだ2価ワクチンとするか、オミクロン株の構成亜系統[BA.1またはBA.4/5])について専門的に議論する場を設けることで一致した。 なお、厚労省では同日7月22日付けで「オミクロン株に対応した新型コロナワクチンの接種体制確保について」と題した事務連絡を発出し、「オミクロン株対応ワクチン接種は、少なくとも新型コロナウイルス感染症にかかった場合の重症化リスクが高い高齢者等を対象とすることが考えられるが、今後得られるデータや諸外国の動向等を踏まえて、高齢者等以外の者も対象とする可能性があるため、現時点では、初回接種を完了した全ての住民を対象に実施することも想定して準備を進める」ことを要請している。4回目接種対象者、医療従事者に拡大 3回目接種から4ヵ月以上経過した60歳以上において、オミクロン株流行期におけるファイザー社ワクチン4回目接種による感染予防効果は、4回目接種後22~28日後には約50%であったが、50~56日後には約9%である一方、重症化予防効果は4回目接種後36~42日後においても77%であったと報告されている。また18歳以上の医療従事者を対象とした前向き臨床研究では、オミクロン株流行下においてファイザー社またはモデルナ社ワクチン4回目接種の感染予防効果は、3回目接種と比較してそれぞれ30.0%および10.8%であり、発症予防効果についてはそれぞれ43.1%および31.4%であったとの未査読の研究報告がある。 これらいくつかの論文データからは、4回目接種の感染予防効果は限定的とのエビデンスに特段変わりはないものの、新規感染者が急速な増加傾向にあることから、重症化リスクの高い者が多数集まる医療機関・高齢者施設等において従事者を通じた集団感染が生じることを懸念し、60歳未満の医療機関・高齢者施設等の従事者に対する4回目接種を、予防接種法に基づく予防接種として位置付けることを了承した。 同時接種可能とすることおよび4回目接種対象者の拡大については、同日公開された「新型コロナウイルス感染症に係る予防接種の実施に関する手引き(8.2版)」にも反映されている。

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第109回 サル痘にWHOが緊急事態宣言、国内ではワクチンなどの対策を検討/厚労省

<先週の動き>1.サル痘にWHOが緊急事態宣言、国内ではワクチンなどの対策を検討/厚労省2.放火事件やわいせつ事件で、医師11名、歯科医6名に行政処分/厚労省3.岸田首相に日本医師会長が面会、新型コロナウイルス「第7波」に、休日診療の充実を4.新型コロナウイルス、感染症患者の入院診療加算は9月末まで延長/厚労省5.新型コロナウイルスワクチン接種、医療者・介護従事者にも4回目の接種を承認/厚労省6.薬剤師の過剰を懸念、薬学部の新設を2025年以降は抑制/文科省1.サル痘にWHOが緊急事態宣言、国内ではワクチンなどの対策を検討/厚労省世界保健機関(WHO)は、7月23日に動物由来のウイルス感染症「サル痘」について「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」の宣言をした。アフリカ以外の欧米諸国でも感染が急速に広がっており、各国に対して、感染対策の強化を促す目的。日本国内での感染者はまだ確認されていないが、政府は海外での感染拡大を受けて、ワクチンや治療薬の配備や医療機関での受け入れ態勢について検討を開始しており、発症予防効果があるとされている天然痘のワクチンの承認についても、今月29日に専門家部会で検討する。(参考)感染拡大のサル痘にWHOが「緊急事態」を宣言 71ヵ国で1万人超(朝日新聞)WHO、サル痘に緊急事態宣言 感染拡大防止へ対策強化(日経新聞)「サル痘」に備え 薬やワクチンなど整備進める 厚労省(NHK)2.放火事件やわいせつ事件で、医師11名、歯科医6名に行政処分/厚労省厚生労働省は、7月21日に医道審議会医道分科会の答申を受けて、刑事事件で有罪が確定したとして、医師11人と歯科医師6人に対して免許取り消しや業務停止などの行政処分を行うこととした。発効は8月4日。このうち免許取り消しとなったのは、自身のクリニックに放火して非現住建造物等放火罪で有罪が確定した小児科医が1名、業務停止で3年となったのは女性宅に侵入してわいせつな行為をした福岡市の医師が含まれている。(参考)医師と歯科医17人処分 放火やわいせつ行為など 厚労省(時事通信)放火や準強制わいせつ 17人を医師免許取り消しなどの処分 厚労省(朝日新聞)3.岸田首相に日本医師会長が面会、新型コロナウイルス「第7波」に、休日診療の充実を日本医師会の松本吉郎会長は、首相官邸において岸田総理に面会し、新型コロナウイルスの第7波の感染拡大に対応するため会談を行った。発熱外来の患者増に対応するために、希望する患者に対して検査キットを配布し、自主検査の態勢の構築を説明し、協力を要請した。さらに、週末などに対応できる医療機関を増やすことを求めた。(参考)首相 日本医師会長と面会 休日診療の発熱外来増など協力求める(NHK)首相、抗原検査キットの配布意向説明 日医会長と面会(日経新聞)希望者への検査キット配布に協力する意向を伝える(日本医師会)4.新型コロナウイルス、感染症患者の入院診療加算は9月末まで延長/厚労省厚生労働省は、新型コロナウイルスの感染拡大により、新規感染者数が全国的に上昇している中、必要な医療提供体制を確保していくため、臨時の診療報酬の加算のうち、感染患者の初診で行う入院診療加算(250点)について、7月末までであった臨時措置を9月30日まで延長するとした。また、新型コロナウイルス感染症に罹患して自宅療養や宿泊療養中の患者を、医師が電話などを用いて、診療を行った場合も同様に147点の算定を引き続き、9月30日まで認めるとした。(参考)新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その72)(厚労省)5.新型コロナウイルスワクチン接種、医療者・介護従事者にも4回目の接種を承認/厚労省厚生労働省は7月22日に開催された厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会において新型コロナウイルスの4回目のワクチン接種を医療・介護従事者にも拡大することを了承した。これによって、7月22日から接種可能となる。また、この秋以降の、新型コロナワクチンについては、ファイザー社およびモデルナ社が開発中のオミクロン株対応の改良型を導入し臨時接種を行うこととした。また、インフルエンザワクチンとの同時接種も可能とすることとした。(参考)ワクチン4回目接種の対象拡大 医療・介護従事者600万人にも(毎日新聞)今秋以降の接種、オミクロン株対応の改良型導入へ…インフルワクチンと同時接種も了承(読売新聞)新型コロナワクチンの接種について(第33回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会)6.薬剤師の過剰を懸念、薬学部の新設を2025年以降は抑制/文科省文部科学省は7月22日、大学の6年制薬学部の新設について、2025年度から新設や定員増を原則として認めない方針を決めた。これは平成15年度から平成20 年度にかけて28学部が増加し、最近も平成30年度に1学部(公立)、令和2年度に2学部(私立)、令和3年度に2学部(公立1、私立1)が新設されており、入学定員は、平成20年度に1万2,170人と最大となり、その後、令和3年度には1万1,797人若干減少している。一方、私立大学の薬学部の入学定員充足率、志願倍率、入学志願者数は減少傾向が続いており、入学定員充足率が80%以下となる私立大学は、約3割に達している状況や、私立大学の卒業生の標準修業年限内の国家試験合格率(令和2年度)が、18~85%までばらつきがあるものの中央値57%と低迷していることなどを鑑みて、今後、質の高い薬剤師を養成するためには、6年制の薬学部の新設や定員の増加を原則として認めない方針をまとめた。(参考)薬学部新設、抑制へ 供給過剰を危惧 25年度以降(毎日新聞)“薬剤師過剰” 薬学部の新設・定員増抑制へ 文科省専門家会議(NHK)6年制課程における薬学部教育の質保証に関するとりまとめ(案)(薬学部教育の質保証専門小委員会)

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