サイト内検索|page:33

検索結果 合計:2112件 表示位置:641 - 660

641.

コロナワクチン第4弾!【Dr. 中島の 新・徒然草】(440)

四百四十の段 コロナワクチン第4弾!コロナ第7波は相変わらず猛威を振るっています。当院でも医療スタッフが次々にPCR陽性となり、現場の人手不足が目立つようになりました。そんな中、4回目のコロナワクチンが始まりました。私自身は過去3回ともファイザーでしたが、今回はモデルナに割り当てられました。未体験のワクチンだと、何となく不安です。先に済ませた人たちには「発熱で翌日は休んでいた」とか「腕が腫れた」とか、恐ろしい話を聞かされました。「ちょっと大げさ過ぎるのと違うか」と思いつつも、不安が募ってきます。で、いよいよ恐怖のコロナワクチン第4弾、打った感想は?結論から言うと、ファイザーの2回目や3回目より楽でした。2回目の最高体温は38.1度、3回目のそれは38.0度だったのに対し、4回目は37.7度だったのです。とはいえ、過去3回の経験に学んで、カロナールやロキソニンは早めに服用しました。金曜日午後3時頃に接種し、その3時間後に寒気を感じたのでまず1錠、以後はほぼ6時間ごとに土曜日の18時までカロナールかロキソニンを服用。幸い土曜日と日曜日はどこにも行かずに済んだので、1日中布団に寝てゴロゴロしていました。結局、日曜日の朝に1錠、月曜日の朝にもう1錠、ロキソニンを追加で飲んだだけで済みました。カロナールとロキソニン合わせて7錠です。発熱と寒気、頭痛の軽いものはあったものの、全部で60時間ほどの持続で済みました。早めの服薬と、無理せずに寝ていたのが良かったのかもしれません。もちろんワクチンを打ったからといって、調子に乗って外に出掛けることは控えておきます。今後も自宅か病院に籠って、コロナ禍をやり過ごそうと決意を新たにしました。読者の皆様も、どうぞお気を付けてお過ごしください。最後に1句ワクチンを 打ってゴロゴロ 夏休み

642.

添付文書だけではわからない!?サル痘ワクチンの打ち方

添付文書だけではわからない!?サル痘ワクチンの打ち方サル痘が国内でも確認されたことを契機に、8月2日、天然痘ワクチンに対し「サル痘予防」の効能追加が承認されました。しかし、その接種方法はかなり特殊なため、事前に理解していないと思わぬ落とし穴にはまる可能性もあります。もちろん添付文書にも接種方法や注意事項の記載はありますが、動画で見ておくと、実際にイメージしやすいのではないでしょうか。そこで、国立国際医療研究センター病院が医療者向けに配信している『天然痘(痘そう)ワクチンの準備から接種まで』の字幕解説付き動画を同施設の許可を得て、CareNet.comでも配信します。いつ自分が接種対象者、接種者になるかは分かりませんが、この機会にぜひご覧ください。本編では調剤から接種後の注意点までが丁寧に解説されています。<内容>調剤および接種に必要な物品調剤接種また、同施設では職員向け資料として、「乾燥細胞培養痘そうワクチンLC16「KMB」接種手順ガイド」も公開しており、テキストのみで手順を確認したい場合、添付文書のなかでとくに注意が必要な点を知りたい場合に有用です。※本ガイドは7月22日に作成されており、8月2日の効能追加承認による添付文書改訂(種痘回数など)が反映されていないため、現在Ver.2を作成中とのこと。参考国立国際医療研究センター病院:サル痘の予防について

643.

オミクロン流行期、小児コロナ入院患者の症状に変化/国立成育医療研究センター

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第7波が全国的に猛威をふるっている。一般報道では第7波の特徴として小児の陽性感染が多いことが指摘され、全国の小児科はいつにも増して診療を待つ患者であふれているという。小児がCOVID-19に感染した場合、症状が軽微とあると従来言われてきたが、実際入院した患者ではどのような特徴があるだろう。 国立成育医療研究センター感染症科の庄司 健介氏らのグループは、国立国際医療研究センターの研究チームと合同で、オミクロン株流行期における小児新型コロナウイルス感染症による入院例の疫学的・臨床的な特徴を、デルタ株流行期と比較検討し、その結果を公表した。 この研究は、国立国際医療研究センター運営の国内最大のCOVID-19レジストリ「COVID-19 Registry Japan(COVIREGI-JP)」利用し、今回初めてわが国の小児COVID-19患者の特徴を、オミクロン株流行期とそれ以前とで比較した大規模な研究となる。 本研究は、デルタ株流行期(2021年8月~2021年12月)、オミクロン株流行期(2022年1月~3月)に、それぞれの期間に登録された18歳未満の小児COVID-19入院例847人(デルタ株流行期:458人、オミクロン株流行期:389人)を対象に実施したもの。その結果、オミクロン株流行期は、デルタ株流行期に比べて2~12歳の患者で発熱やけいれんが、13歳以上の患者では咽頭痛が有意に多かったことが判明した。一方で、6歳以上の患者の嗅覚・味覚障害はオミクロン株流行期には少なかったこともわかった。 また、新型コロナウイルスワクチンの接種歴の有無が入力されていた790名に着目してみると、酸素投与・集中治療室入院・人工呼吸管理などのいずれかを要した「より重症と考えられる患者」43名は、いずれも新型コロナウイルスワクチン2回接種を受けていなかったことからワクチン接種が子ども達を重症化から守る方向に働いている可能性があることも示唆された。オミクロン株流行期では発熱やけいれんが多い【背景・目的】わが国におけるオミクロン株流行期の小児COVID-19の臨床的特徴についての情報の解明【研究概要・結果】研究対象:2021年8月~2021年12月(デルタ株流行期)と2022年1月~3月(オミクロン株流行期)の間にCOVIREGI-JPに登録された18歳未満のCOVID-19患者研究方法:COVIREGI-JPに登録されている、患者の背景や臨床経過、ワクチン接種歴、予後などのデータを集計・分析【研究結果概要】・研究対象となった18歳未満の患者はデルタ株流行期458人、オミクロン株流行期389人。・入院患者の年齢の中央値はデルタ株流行期が8歳、オミクロン株流行期が6歳。オミクロン株流行期の方が若年化している傾向にあった。・オミクロン株流行期は、デルタ株流行期に比べて2~12歳の患者で発熱やけいれんが、13歳以上の患者では咽頭痛が有意に多くあった。一方で、6歳以上の患者の嗅覚・味覚障害はオミクロン株流行期に少なかった。・酸素投与を要した患者はオミクロン株流行期に多かったが、人工呼吸管理や集中治療室入院を要した患者の数、割合には大きな変化はなかった。・新型コロナワクチン2回接種を終えていた患者は、研究対象847人のうち50人(5.9%)だった(接種の有無不明は57人)。この50人は、いずれも軽症だった。・ワクチン接種歴の有無が判明していた790人の中で、酸素投与、集中治療室入院、人工呼吸管理のいずれかを要したより重症と考えられる患者43人のうち、新型コロナワクチン2回接種を受けていた患者はいなかった。ワクチンが重症化から子ども達を守る これらの研究結果を踏まえ庄司氏らは、「発熱やけいれんが増えていたことは、小児COVID-19の診断を考える上で重要な情報と考えられる。また、小児新型コロナワクチン接種者自体が少ない時期の研究なので限界はあるが、ワクチン接種が子ども達をCOVID-19の重症化から守る方向に働いている可能性を示唆している結果であったことは重要な結果と考える。小児COVID-19の特徴はそのときに流行している変異株により変化しうるので、引き続き情報の収集、解析を続けていくことが重要」と今後の展望を述べている。※なお、本研究は、オミクロン株(BA.5)流行前に実施されているためその影響は検討できていないこと、また、それぞれの株が国内の主流であった時期の患者を比較した研究であることなど注意を喚起している。

644.

イベルメクチン、メトホルミン、フルボキサミンはコロナ重症化を予防せず/NEJM

 メトホルミン、イベルメクチン、フルボキサミンはいずれも、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関連した低酸素血症や救急外来受診、入院または死亡の発生に対する予防効果はないことが、米国・ミネソタ大学のCarolyn T. Bramante氏らが行った第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果、示された。3剤は、SARS-CoV-2感染早期の外来患者への投与でCOVID-19重症化を予防できるのではと期待されていた。NEJM誌2022年8月18日号掲載の報告。SARS-CoV-2感染3日以内、発症7日以内の過体重/肥満の外来成人患者に投与 研究グループは2×3要因デザイン法を用いて、SARS-CoV-2感染確認から3日以内、発症から7日以内の外来成人患者に対し、メトホルミン、イベルメクチン、フルボキサミン3種の薬剤のドラッグ・リパーパシングとして、COVID-19の重症化予防効果を検証した。被験者は30~85歳で、過体重または肥満だった。 主要エンドポイントは、低酸素血症(自宅測定での酸素飽和度≦93%)、救急外来受診、入院、死亡の複合とした。 全解析は、同時に無作為化した対照群を用い、SARS-CoV-2ワクチン接種状況や、他の試験薬の使用で補正を行った。主要複合イベント補正後オッズ比、0.84~1.05でいずれも有意差なし 合計1,431例が無作為化を受け、主要解析は1,323例を対象に行われた。被験者は年齢中央値46歳、56%が女性(うち6%が妊婦)で、52%がワクチン接種歴ありだった。 主要複合イベント発生に関する補正後オッズ比は、メトホルミン群0.84(95%信頼区間[CI]:0.66~1.09、p=0.19)、イベルメクチン群1.05(0.76~1.45、p=0.78)、フルボキサミン群0.94(0.66~1.36、p=0.75)だった。 事前に規定した副次解析において、救急外来受診、入院、死亡に関する補正後オッズ比は、メトホルミン群0.58(95%CI:0.35~0.94)、イベルメクチン群1.39(0.72~2.69)、フルボキサミン群1.17(0.57~2.40)だった。また、入院または死亡に関するオッズ比は、それぞれ0.47(0.20~1.11)、0.73(0.19~2.77)、1.11(0.33~3.76)だった。 結果を踏まえて著者は、「過体重/肥満の成人患者を対象に行った今回の無作為化試験では、検討した3剤は、主要複合イベントをいずれも予防できなかった。事前規定の副次解析において、メトホルミンは救急外来受診、入院、死亡を減らす可能性があることが示唆されたが、3剤ともそれぞれマッチさせたプラセボ投与よりも、重症度が低かった薬剤はなかった」とまとめている。

645.

5~11歳へのBNT162b2ワクチンのオミクロン株に対する有効性(解説:寺田教彦氏)

 本論文は、新型コロナウイルスのオミクロン変異株流行中における5~11歳へのBNT162b2(ファイザー製)ワクチンの2回接種の有効性を報告しており、過去の報告との差異は、2回接種後のCOVID-19関連入院予防効果がより高い可能性が示唆されたことである。 本研究では、シンガポールで5~11歳の25万5,936例を解析対象としており、完全接種(2回接種後7日以上)の小児ではワクチンによるSARS-CoV-2感染の有効率は36.8%(95%CI:35.3~38.2)、COVID-19関連入院の予防が82.7%(95%CI:74.8~88.2)だった。また、ワクチン接種後の重篤な有害事象は0.005%が保健科学庁に報告されたと発表している。 5~11歳へのBNT162b2ワクチンの有効性に関するこれまでの報告を振り返ってみると、米国での1,185例の症例患者と1,627例を対照患者として組み入れたtest-negativeデザインのstudyで、5~11歳の小児の入院予防効果は68%(95%CI:42~82)(Price AM, et al. N Engl J Med. 2022;386:1899-1909.)、イスラエルからの報告では、2回接種後7~21日目で感染予防効果が51%、症候性COVID-19の予防効果は48%(Cohen-Stavi CJ, et al. N Engl J Med. 2022;387:227-236.)、イタリアの296万5,918人の5~11歳を対象にしたレトロスペクティブ分析では、2回接種群でワクチンの有効性は、SARS-CoV-2感染に対して29.4%(95%CI:28.5~30.2)、重症COVID-19に対して41.1%(95%CI:22.2~55.4)(Sacco C, et al. Lancet. 2022;400:97-103.)などがある。成人同様に、オミクロン株が流行株に変化して以降、感染予防効果は低下している。しかし、今回の論文を合わせて考えると、重症化予防効果やCOVID-19関連の入院予防効果はオミクロン株でも期待ができそうである。 さて、5~11歳の小児への新型コロナワクチン接種について2022年8月中旬時点で再考してみる。今回も接種によるメリットとデメリットについて論じる。 メリットとしては、(1)感染予防効果、(2)重症化やCOVID-19関連入院の予防効果、(3)小児多系統炎症性症候群などの重症合併症の予防効果、(4)集団免疫効果などがある。デメリットとしては、副反応などが考えられる。 過去に論じた内容(CLEAR!ジャーナル四天王「オミクロン株流行時期における5~11歳児に対するBNT162b2ワクチンの有効性」)から変化することは、メリットは、本論文を参考にすると、(2)のCOVID-19関連入院を防ぐ効果がより期待できるだろう。しかし、今回の論文の内容以上に臨床現場で変わった重要なポイントとして、オミクロン株流行以降は、小児の感染者が増加しただけではなく、クループ症候群や熱性けいれん患者も増加し、脳症や心筋炎などの重症例も報告されるようになっていることがある。また、入院を要しない患者でも、発熱の頻度は高く、咽頭痛、嘔吐の報告が多く(日本小児科学会.「データべースを用いた国内発症小児 Coronavirus Disease 2019[COVID-19]症例の臨床経過に関する検討」の中間報告:第3報 オミクロン株流行に伴う小児 COVID-19症例の臨床症状・重症度の変化)、当地域でもご家族から病院や保健所への相談が増加していることがある。 オミクロン株が流行している本邦としては、小児でも重症例や入院を要する症例、場合によっては死亡例が報告されるようになった。そして、新型コロナワクチンは、これらのリスクを低下させることが示されており、5~11歳では副反応の報告も低いことからワクチン接種のメリットのほうが大きいだろう。 また、小児の感染経路もデルタ株以前とは変化してきている。感染対策のために、感染経路を調査することがあるが、第7波では、学童や小学校でクラスターとなり、小児が家庭に持ち込む事案が増えているような感覚がある。データベースを参考にすると、小児が感染した経路は、兄弟や両親や祖父母を含めた家族が最多ではあるが、学校関係者や幼稚園・保育園関係者からの症例も多いように感じられる(日本小児科学会.「データベースを用いた国内発症小児 Coronavirus Disease 2019[COVID-19]症例の臨床経過に関する検討」に基づく早期公開情報)。 (4)の集団免疫効果について、小児に対する新型コロナワクチンでは、高齢者や成人を守るための集団免疫効果は期待するべきではない、という議論もあったが、集団免疫効果は成人を含めた社会集団にのみ当てはまることではなく、小児のコミュニティにおいても成立する。新型コロナワクチンの予防接種を受けている子供が増えることで、集団内でCOVID-19が流行するリスクは減らすことができるだろう。メリットとして挙げた(1)の感染予防効果は低くなっているとはいえ、小児の所属する集団で皆がある程度感染予防効果を身に付けることで、(4)の集団免疫効果もある程度は期待できるのではないかと考える。 日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会から2022年8月10日付で「5~17歳の小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方」が示されており、本文では「日本小児科学会は、5~17歳のすべての小児に新型コロナワクチン接種を推奨します」としている。 本論文を含めた知見や、昨今の本邦の状況を鑑みても、5~11歳の新型コロナワクチンは私も接種は推奨されると考える。そして、「5~17歳の小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方」は、ワクチンに関するメリットとデメリットについて現時点で判明している知見を丁寧にまとめており、これらの資料も参考に、ご両親は子供やかかりつけ医師と新型コロナワクチン接種の是非について相談していただければと考える。

646.

コロナvs.インフル、年齢別死亡リスクを比較/奈良医大

 新型コロナウイルスのオミクロン株は、デルタ株と比較して重症化リスクが低下したとされ、季節性インフルエンザとの臨床経過を比較することへの関心が高まっている。奈良県立医科大学は、8月4日のプレスリリースで、同大学の野田 龍也氏らによる、日本における季節性インフルエンザとオミクロン株流行期の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による人口1,000万人当たりの年間死亡者数について、複数の公開データベースを用いて年齢別に比較した研究を発表した。その結果、70歳以上の高齢者ではCOVID-19による年間死者数が有意に多かったのに対して、20~69歳では、COVID-19の年間死亡者数のほうがインフルエンザのよりも多いものの、その差が小さかったという結果が得られたという。なお本研究は、日本臨床疫学会発行のAnnals of Clinical Epidemiology誌オンライン版2022年8月3日号に早期公開された。インフルエンザと新型コロナの死亡者数の差は69歳以下では大きくない 本研究では、オミクロン株が主流となった2022年1月5日~7月5日の26週間、および高齢者のワクチン接種が80%を超えた2022年3月30日~7月5日の14週間におけるCOVID-19関連の年齢別死亡者数を、厚生労働省の公開データベースから特定されている。COVID-19関連の累計死亡者数は、26週間で1万3,756例だった。COVID-19の第6波の流行期の死亡者数を基に、その流行期と同水準の死亡者数が1年間にわたり発生するという想定で年間死亡者数が推計されている。 一方、新型コロナパンデミック以前は、国内での季節性インフルエンザによる毎年の累積推計受診者数は約1,200万人であったが、新型コロナ流行以降は受診者数が大きく減少している。そのため本研究での季節性インフルエンザ関連の年齢別死亡者数は、新型コロナパンデミック以前の2017年9月1日~2019年8月31日の期間、厚生労働省が構築しているレセプト情報・特定健診等情報データベースから、COVID-19による1,000万人当たりの年齢別年間死亡者数と比較対象となる数値が算出されている。同期間でのインフルエンザ関連の累計死亡者数は2万2,876例だった。 季節性インフルエンザと新型コロナの年間死亡者数について比較した主な結果は以下のとおり。・COVID-19の26週間における分析では、1,000万人当たりの年齢別年間死亡者数をCOVID-19とインフルエンザで年齢別に比較すると、最小値は共に10~19歳で11例vs.15例(死亡者数の差:-5、95%信頼区間[CI]:-16~7)、最大値は共に80歳以上で1万7,192例vs.7,531例(同:9,661、95%CI:9,285~1万36)となった。・COVID-19の26週間における分析では、1,000万人あたりの年齢別年間死亡者数0~9歳ではCOVID-19のほうがインフルエンザよりも30例少なく、10~29歳ではその差が不確実だった。30~69歳では、COVID-19による死者数のほうが20~439例多くなり、70歳以上では1,951~9,661例多くなっていた。・高齢者のコロナワクチン3回目接種率が高かった2022年3月30日以降14週間における分析でも、おおむね26週間の分析と類似の結果が得られた。 研究チームは本結果について、インフルエンザ関連の死亡者数は、レセプトの特性上、院外死亡のケースが計上されない可能性があるが、COVID-19では院外死亡例も多くが把握されやすいといった理由から、COVID-19の年間死亡者数が多めに算出されやすいとしている。しかしその想定下でも、新型コロナとインフルエンザの年間死亡者数の差は、69歳以下では大きいものではなく、70歳以上で有意に大きかったため、高齢者を優先した感染対策が重要となることが示唆されている。

647.

BA.2.75の免疫回避能、BA.5より低い?/Lancet Microbe

 2021年11月に新型コロナウイルス亜種のオミクロン株が出現後、BA.1、BA.2、BA.2.12.1、BA.2.75(別名:ケンタウロス)、BA.4、BA.5などが世界中で流行している。BA.2.75は2022年6月にインドと日本で確認された新しい変異株で、そのスパイクタンパク質にはBA.2にはない9つの変異がある。今回、シンガポール・Duke-NUS Medical SchoolのChee-Wah Tan氏らが、ヒト血清でBA.5とBA.2.75の免疫回避の程度を調べたところ、BA.2.75とBA.5はワクチン接種やBA.1/BA.2への感染で誘導された免疫を回避すること、BA.2.75の免疫回避能はBA.5より低いことが示唆された。Lancet Microbe誌オンライン版2022年8月10日号に掲載。 本研究では、以下の血清パネルを用いて、武漢株、BA.1、BA.2、BA.2.75、BA.5の免疫回避の程度をシュードウイルスに対する50%中和抗体価(pVNT50s)の幾何平均で比較した。- ファイザー製ワクチン(BNT162b2)2回接種(n=20)- ファイザー製ワクチン3回接種(n=19)- ファイザー製ワクチン2回接種後モデルナ製ワクチン(mRNA-1273)1回接種(n=20)- ファイザー製ワクチン2回接種後オミクロン株に感染(n=19)- ファイザー製ワクチン3回接種後オミクロン株に感染(n=9)- ワクチン未接種でBA.1に感染(n=11)- ワクチン未接種でBA.2に感染(n=8) 主な結果は以下のとおり。・ファイザー製ワクチン2回接種者では、武漢株に対するpVNT50sの幾何平均に比べて、BA.2.75、BA.5を含むオミクロン株全般に対しては低く、26~35分の1だった。・ワクチン3回接種者(3回目にモデルナ製ワクチンを接種した人を含む)、ワクチン2回または3回接種後にオミクロン株に感染した人では、各オミクロン株に対する中和抗体価はワクチン2回接種者より改善したものの、武漢株に対する抗体価より低く、BA.5に対する抗体価が最も低かった。BA.2に対するpVNT50sの幾何平均と比べると、BA.2.75に対しては1.1~1.4分の1、BA.5に対しては2.2~3.8分の1と低かった。・ワクチン未接種でBA.1もしくはBA.2に感染した人は、武漢株、BA.2.75、BA.5に対する中和抗体価が低かった。・BA.1感染者において、BA.1に対するpVNT50の幾何平均と比べると、BA.2.75に対しては10分の1、BA.5に対しては28分の1と低かった。・BA.2感染者において、BA.2に対するpVNT50の幾何平均と比べると、BA.2.75に対しては5分の1、BA.5に対しては7分の1と低かった。 Tan氏らは「重要なのは、BA.2.75がBA.5より後に出現し多くの変異があるにもかかわらず、BA.5より免疫回避能が低いことだ」としている。

648.

第122回 「ブラックな職場環境を変えるのも医師の社会的責任」-NHK党・浜田氏に聞く(後編)

NHKの既得権益打破のみのシングル・イシュー政党だったかと思いきや、実は他党と比べても遜色のない新型コロナ政策を公約に掲げていたNHK党。同党の新型コロナ対策を立案した同党政調会長の浜田 聡参議院議員にその背景を聞いたインタビューの前編を第121回に掲載した。今回はその後編で、主に日本版のCDC(疾病予防管理センター)構想、日本版ACIP(ワクチン接種に関する諮問委員会)構想やワクチン政策について聞いた。現状で一気に新型コロナを5類相当にすると保健所のパンクは解消されるかもしれませんが、医療機関への問い合わせが激増して逆に医療逼迫を加速化させかねません。確かにそのような懸念もあるでしょう。しかし、保健所に比べて医療機関のほうが対応力は高いはずなので、見方を変えると、その流れのほうが本来の方向性と言える面もあります。一方、重症化リスクが高いと言われたデルタ株の流行時と比べれば、新型コロナの診療を行う医療機関も確実に増えています。この動きは少しずつかもしれませんが、今後も進んでいくと予想しています。その意味で受け入れ医療機関のすそ野を広げるためには、新型コロナ患者の受け入れが経営に寄与するような仕組みも必要です。NHK党でもこの辺を念頭に置いた政策立案を検討しています。公約に掲げていた日本版CDC創設は、参議院選挙前に岸田首相が打ち出しました。これについてはどのように受け止めていますか?まず、われわれが政策に盛り込んだのは、厚生労働省(以下、厚労省)が感染症を担当することは組織的には当然ながらも、同省の業務の幅が広く、かつ膨大なため、今回のようなパンデミックが重なれば業務逼迫は必然だと思ったからです。菅 義偉前首相が厚労省の分割案を唱えた背景にも同じような事情があったのだろうと推察しています。こうした観点から別途、感染症担当専門組織の創設が望ましいと考え、アメリカなどにあるCDCを手本とした組織創設を政策に盛り込みました。岸田首相による日本版CDC創設の決定は、私たちが掲げた政策と同じ方向に進んでいる点で喜ばしいと受け止めています。現状で日本版CDCの全貌は見えてませんが、私がこの組織に求めるのは、医療従事者向けの感染症教育機能です。もちろん医学部などでの感染症教育はありますが、現状のコロナ禍のような状況に立ち向かうことを想定するならば、学部教育では不十分です。また、現時点では少ない日本感染症学会の認定感染症専門医が今後増えていくと仮定しても、パンデミック時に必要なマンパワーにはほど遠いだろうと予想します。その意味で日本版CDC創設による感染症教育の充実を期待したいところです。今回提示した政策の中にはCDC創設だけではなく、アメリカでCDCや保健福祉省にワクチン接種の推奨提案を行う「ワクチン接種に関する諮問委員会(ACIP)」制度の日本版導入も訴えていますね。私自身がACIPの存在を知ったのは、神戸大学医学部教授の岩田 健太郎氏の著書を通じてです。そもそもアメリカは自由の国と言いつつ、感染症対策の中でもワクチン接種に関してはやや強権的な方針を絶妙に医療政策に反映しています。その一翼を担っているのがACIPです。ACIPの活動の中で個人的に最も納得感が大きかったのは、ワクチン接種推奨の議論をフルオープンな場で行うことです(議論は全公開で、インターネット配信もされる)。このような政策決定議論の公開性が今の日本の政治、政策決定で最も足りない部分です。この公開性はすべての政策決定で必要だと私個人は思っています。実は過去の衆参両院の議事録を調べると、国会議員から日本版ACIP創設を求める意見が何度か出ています。しかも、議事録を読む限りでは厚労省も否定的ではありませんでした。その意味でも実現に向けて貢献したいと考えています。もちろん公開性を実現しても、ワクチン問題では付き物のワクチン忌避派の不満がゼロになるわけではないことは百も承知です。しかし、忌避派も含めさまざまな意見を公開することは、国民の納得感がより高いワクチン政策を進める良策だと思います。その意味では先日、塩野義製薬が緊急承認を申請した新型コロナ治療薬の審議がリアルタイムで公開されました。同様の公開性をワクチンに関する審議でも目指したいということですね?そうですね。政策的な妥当性が一方的な多数決で決定できるほど単純ではないことは分かりますし、あの公開を受けてSNS上に医療関係者を中心にさまざまな声が発信されたというのは改めて興味深かったですね。ちなみに新型コロナワクチンの接種を推進している現在の政府の政策についてはどのように見ていますかまず、基本的に今回の新型コロナワクチンに関しては、各種トップジャーナルの論文などで示された有効性・安全性は信頼性がある報告と考えています。また、従来からインフルエンザワクチンでは高齢者などのハイリスク者や医療従事者のシーズン毎接種が推奨されている経験もあり、私自身は今後、新型コロナワクチンが毎年接種の勧奨になったとしても、とくに抵抗はありません。ただし、コロナ禍がなかなか収束しないということで、重症化リスクの低い若年者でも同様に頻回接種を続けていくべきかと言えば、必ずしもそこまで必要とは思っていません。基本的に一医療者としては、半ば接種を強く求める現状の法的な努力義務はあるべき姿とは思いますが、社会一般の受け入れを念頭に置いた場合はより緩やかに自由意思を尊重する立場です。ワクチン忌避の考えは、日本に限らず世界的にもゼロにはなりませんから、本音を言ってしまうと、やむを得ないのかなという思いもあります。新型コロナワクチン接種に関しては、先日岸田首相が突如、医療従事者と高齢者施設職員を新たな4回目接種対象者に加えました。これまで対象になっていなかったのは、おそらくイスラエルの研究で、比較的若年層の4回目接種の効果が高齢者などに比べると極めて限定的という結果があったからだと思います。それを変更したのはこの第7波があったからでしょうが、この点はどのような評価ですか?状況が突然大きく変化したので何かしたいという岸田首相の思いは十分理解はできます。ただ、この点に関する評価は、今後の推移を見ないと、なんとも言えないのではないかと考えています。最近ではファイザーやモデルナが開発を進めているオミクロン株対応も含めた2価ワクチンでの5回目接種を政府が考えているとの報道もありました。検討している政策について、かなり早い段階で漏れ出てくるのは、ある意味観測気球の側面があるのではないかという穿った見方もできてしまいますので、その是非についても現時点では肯定も否定もしにくいですね。基本的に今回の新型コロナワクチンそのものには肯定的立場とのことですが、参議院選挙直後、今回新たに議席を得た参政党と院内会派を組むことを検討していましたね。参政党は今回の新型コロナワクチンについて懐疑的な主張をしています。この辺の矛盾はないのでしょうか?まず政党と会派はある意味似ているようで結構違うところがあります。政党内では基本的に政策の賛否をすべて一致させる必要があり、それゆえに党議拘束もあるわけですが、会派はその必要がありません。その意味で国防や皇室・国体という国の在り方である程度一致していれば、ほかの政策の違いは許容の範囲と受け止めています。ですので、会派結成に関して参政党との新型コロナワクチンに対する考え方の違いに大きな問題があるとは考えていません。そもそも参政党の神谷 宗弊さんとは2018年から付き合いがありますので、個人的な付き合いなども加味して会派を組むべきかなと思っていました。もっとも直近の会派届け出は締め切られたので次の機会があればと思うのですが、これはさまざまな事情も絡むのでその時になってみないと分からないですね。また、今回の政策で驚いたのはアメリカのナース・プラクティショナー制度の日本導入を掲げたことです。浜田さん自身、現在の医師の偏在や過重労働を念頭に置いたということでしょうか?この政策は一般社団法人・救国シンクタンクから提案を受けたものを取り入れました。最大の理由は地域偏在も含めた医師不足に対応するという意味です。ナース・プラクティショナー自体はご存じのようにすでにアメリカの各州で実際に運用されている制度です。アメリカの場合、現在の新型コロナ治療薬を、こうした資格を持つ看護師のほか、薬剤師なども処方できる柔軟さを持ち合わせています。もちろん現在の新型コロナ治療薬の中にはファイザー社のパキロビッドのように多様な相互作用が指摘されているものもあり、医師以外が処方することに慎重な意見があるのは承知しています。ただ、そもそも私個人は現状の医師をガチガチに守る規制は、時代に合わせて緩和していくべきだと思いますし、ナース・プラクティショナーは実際に運用している国があるわけですから、今後の日本の医療制度を考えた場合に選択肢の一つだと考えています。もっとも日本の場合はなかなか進まなさそうな感じもしますが。この点については推進したい日本看護協会とそれに反対する日本医師会の平行線状態が続いています。ちなみに浜田さんは議員になる前の医師専業時代、医師の労働環境をどのように見ていましたか? 私の場合は放射線科医ですが、画像読影を行う放射線科医の数には限界があるため、多くの放射線科医が過重労働に近い読影環境に置かれていたとの印象があります。また、周囲の他診療科でも過重労働の環境にある医師を目にしてきました。しかし、時に「私はこんな過酷な労働条件で働いています」という感じの自虐とも自慢ともとれるアピールをする医師がいますが、私はそうしたスタンスには疑問を持ちます。専門職の職能を存分に発揮するためには過酷な職場環境は積極的に変えていこうとするのが専門職の社会的責任の一つではないと思うからです。「そうは言っても、なかなか難しい」というご意見もあるでしょう。しかし、少し考えてみればわかるように、医師は一定の独自裁量を持ち、身分保障もある専門職です。おごった言い方に聞こえるかもしれませんが、仕事そのものを完全に失うリスクは他職種に比べ明らかに低いのです。ならば、ブラックな環境を積極的に変えていく、それが叶わないならば自分からそこを去るという決断も可能だと思っています。今回はコロナ対策を中心にお話を聞きましたが、今回の公約には載せていないものの、医療・社会保障関連で政治家として訴えていきたいことがあれば教えてください。一つは専門的な観点からの医療政策の発出、平たく言えば検査や予防接種をはじめとして医療の専門的観点を可能な範囲で一般の方々にも広めていきたいという抱負はあります。もう一つは先ほど言及したACIPに通じるところもありますが、政策決定の透明化です。現在の政策決定プロセスは半ばブラックボックスですが、どのような理由でその政策を進めるかが明らかになったほうが一般の方々にとってのメリットは多いはずです。そうしたことに少しでも尽力できればと思っています。繰り返しになるがNHK党と言えば、ド派手なスローガンとパフォーマンスの党首・立花 孝志氏のイメージが強いが、私個人が今回お会いした浜田氏は、立花氏と比べると真逆なキャラクターだった。低めの声で朴訥と語り、とりわけ新型コロナワクチンの予防接種法に基づく努力義務に関連した話題では、医師、政治家、市民の三者の立場への配慮や苦悩をにじませながら語った瞬間もあったように見えた。つまり私たちがよく目にする「政治家を演じ切っている政治家」とは異なるという印象だ。ところで記者・ジャーナリストによる政治家への取材となると、おおむねその対象は与党第一党、あるいは野党第一党の幹部となることが多い。それ以外はあったとしても衆参両院のいずれか、あるいはその合計で二桁議席がある政党ぐらいである。その点からすると今回取材したNHK党は浜田氏、さらに先ごろの参議院選挙で当選したYouTuberのガーシー(東谷 義和)氏の2人のみの小政党である。当然ながら読者の皆さんの中には「そんな小所帯の政党の政策を聞いて何になる?」との意見もあるだろう。しかし、この連載で政治的な話題に触れる時、時折紹介する友人のフリーライター・畠山 理仁氏は、「既存政党とは無関係の無頼系独立候補(一般には泡沫候補と呼ばれるが畠山氏は候補者への敬意からこの言葉を使わない)の中にもキラリと光る政策がある」と力説している。この言葉を聞いてから選挙公報にはくまなく目を通すようになったが、興味深い政策は結構あるものだ。もっともその政党や候補者のそうした政策や背景について知れる機会は少ない。その一助となれば幸いである。

649.

サル痘を疑う閾値を低くする必要も、多様な症状/Lancet

 スペイン・Hospital Universitario 12 de OctubreのEloy Jose Tarin-Vicente氏らは、同国サル痘患者について臨床およびウイルス学的特性を明らかにする前向き観察コホート研究を行い、サル痘は性器、肛門周囲および口腔の病変と直腸炎や扁桃炎などの合併症を引き起こしており、病変部でウイルス量が多いことを示した。著者は、「症状はさまざまであり、臨床医はサル痘を疑う閾値を低くする必要がある」と述べている。また、「罹患者の性的接触歴や病変の分布から、現在起きている集団発生は濃厚接触が主要な感染経路と考えられる」とも報告した。サル痘は、2022年5月に欧州の複数の国で発症例が報告されて以降、急速に世界中に広がったが、初期の報告では非定型的な症状が示唆されていた。Lancet誌オンライン版2022年8月8日号掲載の報告。サル痘患者181例を前向きに観察、臨床・ウイルス学的特性を解析 研究グループは、2022年5月11日~6月29日の期間に、スペインのマドリードおよびバルセロナにある性の健康クリニック3施設において、検査で確定診断されたサル痘患者を全例連続登録した。PCR検査のため病変部、肛門および中咽頭スワブを採取するとともに、皮膚科医または性感染症専門医が問診により患者データを収集し、標準的な症例報告書に記録した。 評価項目は、人口統計学的事項、天然痘ワクチン接種歴、HIVの状況、他のサル痘患者との接触、旅行、大集団への参加、性感染症のリスク因子、性行動、初発の徴候と症状、複数の身体部位でのウイルス学的結果、他の性感染症の同時感染、および発症14日後の臨床アウトカムである。臨床アウトカムについては2022年7月13日まで追跡調査を実施した。 サル痘と確定診断を受け、本研究に登録された患者は181例であった。92%はMSM、潜伏期間中央値は7日、肛門性器部病変が78%などの特性が判明 181例中166例(92%)がゲイ、バイセクシャル男性を含む男性同性間性的接触者(MSM)で、9例(5%)が異性愛の男性、6例(3%)が異性愛の女性であった。また、年齢中央値は37.0歳(IQR:31.0~42.0)で、32例(18%)は天然痘ワクチン接種歴があり、72例(40%)がHIV陽性、8例(11%)がCD4細胞数500個/μL未満、31例(17%)が他の性感染症の同時感染と診断された。 サル痘の潜伏期間中央値は7.0日(IQR:5.0~10.0)であった。全例に皮膚病変があり、141例(78%)が肛門性器部、78例(43%)が口腔および口周囲部に確認された。70例(39%)で治療を要する合併症が確認され、直腸炎45例(25%)、扁桃炎19例(10%)、陰茎浮腫15例(8%)、膿瘍6例(3%)、発疹8例(4%)であった。 皮膚病変部スワブ180検体のうち178検体(99%)が陽性であり、咽頭スワブ117検体中82検体(70%)も同様に陽性であった。PCRサイクル閾値(Ct値)(平均±SD)は皮膚病変検体群が23±4、咽頭検体群が32±6で、皮膚病変検体群のほうが有意に低く(群間絶対差:9、95%信頼区間[CI]:8~10、p<0.0001)、皮膚病変部でウイルス量が多いことが示された。 MSMの166例中108例(65%)が肛門性交(アナルセックス)を報告し、肛門性交を行ったMSM群は肛門性交を行わなかったMSM群と比較し、直腸炎(38%[41/108例]vs.7%[4/58例]、群間絶対差:31%、95%CI:19~44、p<0.0001)、発疹前の全身症状(62%[67/108例]vs.28%[16/58例]、34%、28~62、p<0.0001)を高頻度に認めた。扁桃炎を有していた19例中18例(95%)が口腔性交(オーラルセックス)を行ったと報告した。 病変発生から痂皮形成までの期間の中央値は10日(IQR:7~13)であった。

650.

心筋炎リスクを天秤にかけても新型コロナワクチンは接種したほうがよいようだ(解説:甲斐久史氏)

 感染力は強いものの重症化率が低いとされるオミクロン株が主流となったことで、正常な社会経済活動と新型コロナウイルスが共存するWithコロナ時代が本格的到来かと思われた。しかし、オミクロン株BA.5による感染拡大第7波は、8月に入ってもピークアウトすることなく、3年ぶりの行動制限のない夏休み・お盆休みを迎えた。感染者も小児〜若年者中心から後期高齢者も含めた全年齢層に拡大し、重症者数・死亡者数も着実に増加している。加えて、多くの医療従事者が感染者あるいは濃厚接触者となることで出勤停止となり、その結果、コロナ診療のみならず一般医療・救急医療はこれまでにない逼迫した状況に直面している。そのような中、60歳以上の高齢者に加えて、急遽、医療従事者および高齢者施設等の従事者への新型コロナワクチン第4回目接種が進められることとなった。わが国における3回目接種率は60歳以上では80%以上であるのに対して、12〜19歳では36%、20〜30歳代では50%前後にとどまっている。若者ほどワクチン接種後の高熱や倦怠感といった副反応が強いことに加え、若者には実感しにくい重症化予防効果はさておき、目に見える感染予防効果がオミクロン株において低下していることもその背景にあろう。依然、若年者、とくに若年男性には新型コロナワクチン接種後心筋炎の危惧もある。 本研究は、新型コロナmRNAワクチン接種後心筋炎の大規模なケースレポート/サーベイランスの包括的検索による総説である。2020年10月から2022年1月までの間にmRNAワクチン(ファイザー社製コミナティ、モデルナ社製スパイクバックス)接種後、心筋炎約8,000例(一部、心膜炎・心筋心膜炎)が報告されていた。従来の報告どおり、mRNAワクチン接種後心筋炎は思春期から青年期の男性に最も多く認められ、その発生頻度は12〜17歳で50〜139例/100万人、18〜29歳で28〜147例/100万人であった。コミナティと比較してスパイクバックスで発症率が高かった。18〜29歳女性の発症率は20例/100万人未満であった。5〜11歳男女においてはコミナティのデータしかないが、発症率は20例/100万人未満であった。30歳以上の男女、12〜17歳の女性については、若年男性より明らかに発症は少ないが、バラツキが大きく統計的信頼度が不十分なため発症率を提示できなかったという。興味深いことに、1回目と2回目の接種間隔は31日以上で発症が少なく、とくに18〜29歳男性では56日以上で明らかな低下がみられた。発症後の経過は従来の報告どおり、症状は軽微で自然軽快し、入院期間も2〜4日間、薬物治療もおおむね非ステロイド系抗炎症薬による対症療法であった。本研究では、心筋炎発症の危険因子、長期予後、発症機序についても検討されたが、いずれも評価に耐えるエビデンスは得られなかったという。また、3回接種の影響については、40歳以上の男性では発症率20例/100万人未満であろうという確実性の低い結果以外に、われわれが最も知りたい若年男性を含めた他のグループについてのエビデンスは現時点で存在しないとのことであった。 結局のところ、一般の心筋炎の発症頻度が80〜100例/100万人であり、新型コロナウイルス罹患後の心筋炎発症率が約800例/100万人であることを考えると、高齢者や重症化高リスク群はもとより、12〜29歳の男性においても、mRNAワクチン接種のメリットは、ワクチン接種後心筋炎の発症リスクを上回っている。これからも引き続き、このコンセンサスを踏まえて、本人(または保護者)に説明し納得してもらうことになる。せめて、12〜29歳男性に対しては、任意にコミナティを選択できるようにしたいものである。

651.

第7回 どこまで進むか小児新型コロナワクチン

小児COVID-19の問題点「子供にとって、COVID-19はただの風邪」という意見もよく耳にします。実際にほとんどが風邪症状で終わっていますが、感染者がとても多い年齢層であることから、ワクチン未接種が感染拡大に影響していることはほぼ間違いないとされています。最近、日本の小児COVID-19に関する研究が2つ報告されています。1つ目は、デルタ株優勢期(2021年8月1日~12月31日)とオミクロン株優勢期(2022年1月1日~3月31日)の疫学的・臨床的特徴を比較検討したものです1)。国立国際医療研究センターが運営している国内最大の新型コロナウイルス感染症のレジストリ「COVID-19 Registry Japan(COVIREGI-JP)」を用いて、国立成育医療研究センターの医師らが解析したものです。これによると、オミクロン株優勢期では、2~12歳で発熱やけいれんが多く観察されることが示されています。また、ワクチン接種歴の有無が判明していた790例に絞ると、酸素投与・集中治療室入院・人工呼吸管理などのいずれかを要した43例は、いずれも新型コロナウイルスワクチン2回接種を受けていないことがわかりました。オミクロン株の113例とオミクロン株前の106例の小児を比較した、もう1つの国立成育医療研究センターの研究では、0~4歳の患者において、咽頭痛と嗄声はオミクロン株のほうが多く(それぞれ11.1% vs.0.0%、11.1% vs.1.5%)、嗄声があったすべての小児でクループ症候群という診断が下りました。また、5~11歳の小児において、嘔吐はオミクロン株のほうが多いことが示されました(47.2% vs.21.7%)2)。オミクロン株になって軽症化しているのは、ワクチンを接種した成人だけであって、小児領域では基本的に症状が強めに出るようです。重症例がおおむねワクチン未接種者で構成されているというのは、驚くべき結果でした。小児の新型コロナワクチン接種率現在、5歳以上の小児には新型コロナワクチン接種が認められていますが、ほかの年齢層と比べると、その接種率は非常に低い状況です(表)。実際私の子供の周りでも、接種していないという小学生は結構多いです。それぞれの考え方がありますので、接種率が低い現状について親を責めようという気持ちはありません。表. 8月15日公表時点でのワクチン接種率(首相官邸サイトより)日本小児科学会の推奨さて、小児におけるCOVID-19の重症化予防のエビデンスが蓄積されてきました。オミクロン株流行下では、確かに感染予防効果はこれまでの株と比べて劣るものの、接種によって、小児多系統炎症性症候群の発症を約90%防げることがわかっています3)。そのため、受けないデメリットのほうが大きいと判断され、5~17歳の小児へのワクチン接種は「意義がある」という表現から、「推奨します」という表現に変更されました4)。子供のワクチン接種率は、親の意向が如実に反映されてしまいます。「とりあえず様子見」という親が多いので、日本小児科学会の推奨によって接種率が向上するのか注目です。参考文献・参考サイト1)Shoji K, et al. Clinical characteristics of COVID-19 in hospitalized children during the Omicron variant predominant period. Journal of Infection and Chemotherapy. DOI: 10.1016/j.jiac.2022.08.0042)Iijima H, et al. Clinical characteristics of pediatric patients with COVID-19 between Omicron era vs. pre-Omicron era. Journal of Infection and Chemotherapy. DOI: 10.1016/j.jiac.2022.07.0163)Zambrano LD, et al. Effectiveness of BNT162b2 (Pfizer-BioNTech) mRNA Vaccination Against Multisystem Inflammatory Syndrome in Children Among Persons Aged 12-18 Years - United States, July-December 2021. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2022;71(2):52-8.4)日本小児科学会 5~17歳の小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方

652.

第122回 米国では使わない2価の“旧改良ワクチン”を日本は無理やり買わされる?国のコロナワクチン対策への素朴な疑問

「2日早いです!」、自衛隊大規模接種会場でワクチン打てずこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。先週は野球の話題に事欠かない1週間でした(内閣改造もありましたが、その話題は日を改めて)。米国ではロサンゼルス・エンゼルスの大谷 翔平選手が10勝目をあげ、2桁勝利、2桁本塁打を達成しました(勝利後の大谷選手が冷静かつ少々浮かない表情だったのが気になりました)。また、昨年「第71回 『もはや災害時』なら、『現実解』は“野戦病院”、医師総動員、医療職の業務範囲拡大か」でも書いた、MLBの「フィールド・オブ・ドリームス」公式戦(シンシナティ・レッズ対シカゴ・カブス)が今年もアイオワ州ダイアーズビルで行われ、ファンを楽しませました。日本ではヤクルト・スワローズの村上 宗隆内野手が史上最年少、22歳で本塁打40号に到達しました。村上選手は近い将来、MLBに挑戦すると思いますが、本塁打に関しては、大谷、松井選手以上の成績を残すかもしれません。高校野球では、14日に行われた2回戦、大阪桐蔭(大阪)対聖望学園(埼玉)の試合がいろいろな意味で衝撃的でした。埼玉大会の決勝で、強豪、浦和学院を1対0で破った聖望は、エース岡部 大輝投手の制球が素晴らしく、王者・大阪桐蔭の打線をどこまで抑えられるかが見どころでした。結果は、19対0と歴史的な大敗。夏の埼玉大会は毎年、何試合か現場で観戦しているので、個人的にも大きなショックでした。果たして、埼玉の高校野球は立ち直れるでしょうか……。そうした野球観戦の合間に、新型コロナワクチンの4回目接種を受けに、東京・大手町の自衛隊大規模接種会場に家族と出かけました。同行の家族はすんなり打てたのですが、私は隅に連れて行かれ、「5ヵ月まで2日早いです!なので打てません」の宣告。接種券をよく見てみると、接種が可能となる5ヵ月目までまだ2日あったのです。少々ごねてみたのですが、スタッフは「できません」の一点張り。結局、再予約するはめになってしまいました。たった2日早いだけなのに……。スタッフの多さがやたらと目立つガラガラの会場で、日本のワクチン行政の融通の効かなさ、硬直性にため息しか出ませんでした。というわけで、今回は久しぶりに下世話な事件から離れ、コロナに関する出来事について書いてみたいと思います。2価ワクチンの“謎”、従来型対応はいるの?厚生労働省は8月8日、新型コロナウイルスのオミクロン型に対応した2価の改良ワクチンの接種を10月半ばにも始める方針を明らかにしました。米・ファイザーと独・ビオンテック、米・モデルナが開発を進めてきた製品で、9月から輸入できる見通しとのことです。今後、2回目までの接種を終えている全員を対象に想定して準備を進めるそうです。厚労省はこれら2製品の製薬企業と供給契約を結んでおり、承認申請はファイザー・ビオンテックが8月8日に、モデルナは8月10日に済ませています。この改良ワクチンは、新型コロナウイルス(SARS-CoV2)の起源株(いわゆる従来株)とオミクロン株 「BA.1」系統のスパイクタンパク質をそれぞれコードする2種類のメッセンジャーRNA(mRNA)を含む2価ワクチンで、生理食塩水での希釈が不要な「RTU製剤」とのことです。臨床試験では、オミクロン型や派生型に対する抗体ができるのを確認できたとのことで、8日の厚労省の審議会では、高齢者の重症化だけでなく若者の感染や発症を防ぐ効果も期待できる、との声も上がったとのことです。なお、モデルナの臨床試験では、追加接種によってオミクロン株の働きを抑える中和抗体の量が現行品よりも増えることが確認されており、BA.1だけでなく現在主流のBA.5に対しても“一定の効果“が期待できるとのことです。ファイザー・ビオンテック製、モデルナ製ともに厚労省は審査を簡略化する特例承認制度を適用して迅速に審査を進める方針で、承認されれば9月中旬にも輸入される予定です。なお、打つ間隔などは製造販売を承認する際に決めるそうですが、3回目から5ヵ月空ける場合、60歳以上の対象者数のピークは12月以降、冬になる見通しだそうです。FDAはBA.4とBA.5に有効な新しい改良ワクチンの開発をメーカーに要請2価のワクチンで、今流行中のBA.5にも一定の効果があるということですから、一見、期待が高まるニュースのように読めますが、気になる点もあります。日本貿易振興機構(ジェトロ)が7月1日に配信したビジネス短信に、「米FDA、オミクロン株新派生型に有効な改良ワクチン開発を製薬企業に要請」というタイトルのニュースがありました。それによれば、米国食品医薬品局(FDA)は6月30日、諮問委員会の新型コロナウイルス用ワクチンに関する討論を経て、「2022年秋から追加接種として使用する新型コロナワクチンのオミクロン株に対抗する要素を含めることを推奨する」とした委員が圧倒的多数を占めたと発表しました。その上でFDAは、ワクチンメーカーに対して、オミクロン株のBA.4とBA.5に有効な新しい改良ワクチンを、今年秋からの追加接種のために開発するよう要請したそうです。なお、モデルナはBA.4とBA.5に関して、同社が開発中の改良ワクチン(mRNA-1273.214、以降、旧改良ワクチンと呼びます)の有効性が確認されたとしており、6月22日に公表されたデータでは、過去の感染有無にかかわらず全被験者(2回接種に加え、追加1回接種済み)でBA.4、BA.5に対する強力な中和抗体反応が確認できたとのことです。一方、ファイザーとビオンテックは6月25日、同社が開発中の改良ワクチン(つまり旧改良ワクチン)は、追加接種として接種した場合に、BA.1に対して高い有効性があると発表しました。ただし、BA.4とBA.5に対しては、BA.1に対する効果の3分の1程度だったとのことです。米国、モデルナの新改良ワクチンを導入決定このニュースから見えてくるのは、日本はどうやら米国では使わない旧改良ワクチンを買わされて使うことになるのだろう、ということです。米国はメーカーにBA.4とBA.5に効く“新改良ワクチン”の開発を急がせており、秋からの追加接種に間に合わせようしています。上述したように、従来株とBA.1対応の2価の旧改良ワクチンでは、BA.4とBA.5に対する効果が低いことがわかっているからです。しかし、8日に日本政府が導入すると発表したのはこの旧改良ワクチンです。「開発はしてみたけれど、米国ではもっと効く新改良ワクチンを投入する予定だから、効きが弱い古いのは日本に売ってしまおう」とファイザー・ビオンテックや、モデルナが考えたかどうかわかりませんが、何だか“余り物”を掴まされているようで、気分はスッキリしません。と、ここまで書いたら、モデルナの2価の新改良ワクチン(mRNA-1273.222)を、米国政府が6,600万回分確保した、というニュースが飛び込んできました。このワクチンは、従来製品「スパイクバックス」にオミクロンBA.4、BA.5対応のmRNAを組み合わせたもので、追加接種用ワクチン候補を2億3,400万回分追加購入するオプションを含んだ契約だそうです。やはり米国は秋以降、旧改良ワクチンではなく、新改良ワクチンでコロナに対抗しようとしているのです。ちなみに、モデルナの旧改良ワクチンは英国、オーストラリア、カナダ、EUなど日本以外の複数の国でも導入が決定しており、英国政府は8月15日に世界で初めて承認したと発表しました。いつまでたっても、米国を周回遅れでしか追えない日本のワクチン接種。開発力の差がその根底にあるのは確かですが、それを招いたのは、国の緊急の感染症発生に対する準備不足です。パンデミックが起こる前から、ワクチン研究者やメーカーへの支援や臨床試験や承認手続きの簡略化などにしっかり取り組んでいれば、状況はもう少し変わっていたはずです。その意味で、“余り物”の旧改良ワクチン導入は、日本のワクチン行政の融通の効かなさ、硬直性が招いた結果であるとも言えるでしょう。

653.

CDCが接触者の行動指針を更新、その詳細は?隔離不要だが…

 CDCは2022年8月11日、COVID-19感染者の接触者が取るべき行動の指針を更新した。今回の更新では、隔離は緩和されたものの、10日後までは、屋内では高性能マスクもしくは医療用マスク(N95など)を着用する、マスクを着用できない場所には行かない、6日後に検査を受ける、などが求められている。 COVID-19感染者の接触者となった際のCDCの指針は以下のとおり。この指針はワクチン接種の有無やCOVID-19感染歴の有無によらない。■曝露が判明したらすぐにマスクを着用■曝露日(Day 0)から10日後(Day 10)までの措置(COVID-19発症の可能性があるため)・自宅や屋内の公共の場で周囲に人がいるときは、常に高性能マスクもしくは医療用マスク(N95など)を着用する。・マスクを着用できない場所(旅行や公共交通機関を含む)には行かない。・重症化するリスクが高い人の近くにいる場合は、とくに注意する。・発熱(38℃以上)、咳、息切れなどのCOVID-19症状が出たら、すぐに隔離し、検査を受け、結果がわかるまで自宅にいる。・検査が陽性の場合は隔離に関する推奨に従う。■曝露から6日後(Day 6)に検査を実施・曝露から5日以上経過してから検査を受ける(症状が出ていなくても)。・過去90日以内にCOVID-19の感染歴がある場合は、別途、推奨事項を参照する。・陰性の場合、10日後(Day10)まで上記措置を継続し、自宅や屋内の公共の場で周囲に人がいるときは高性能マスクを着用する。・陽性の場合はすぐに隔離する。

654.

モデルナ、オミクロン株対応2価ワクチンを国内承認申請

 2022年8月10日、モデルナ・ジャパンは、追加接種用2価ワクチンmRNA-1273.214 50μgを、18歳以上を対象とした追加接種用ワクチンとして厚生労働省に承認事項一部変更申請を行ったことを発表した。追加接種用2価ワクチンmRNA-1273.214は、mRNA-1273とオミクロン株対応のmRNAを含んでいる。 今回の申請は、臨床試験前に血清学的にSARS-CoV-2検査が陰性であった被験者に対する、第II/III相臨床試験などの結果に基づく。 第II/III相臨床試験では、mRNA-1273.214による追加接種(50μg)が、mRNA-1273の追加接種(50μg)との比較において、オミクロン株(BA.1)に対する中和抗体反応など全ての主要評価項目を達成した。 さらに、mRNA-1273.214は、感染歴に関係なくBA.4/BA.5に対して、全ての被験者で試験開始前の5.4倍(95%信頼区間[CI]:5.0~5.9)、血清学的にSARS-CoV-2検査陰性被験者では6.3倍(95%CI:5.7~6.9)の中和抗体価を誘導した。BA.4/BA.5に対する中和抗体価は、BA.1に対する中和抗体価の約3分の1だった。 接種時に感染のない被験者では、mRNA-1273による追加接種と比較して、mRNA-1273.214はBA.4/BA.5に対し有意に高い中和抗体価を示し、幾何平均比は1.69(95%CI:1.51~1.90)であった。

655.

コロナ関連死リスク、BA.1株はデルタ株より低い/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による死亡のリスクは、オミクロン変異株(BA.1)のほうがデルタ変異株(B.1.617.2)より低い。英国・Office for National StatisticsのIsobel L. Ward氏らが、後ろ向きコホート研究の結果を報告した。これまでに、オミクロン株のすべての系統(BA.1、BA.2、BA.3、BA.4、BA.5)はデルタ株より感染しやすいが、SARS-CoV-2検査陽性後28日以内の入院および死亡リスクは、オミクロン株のほうがデルタ株より低いことが示唆されていた。しかし、オミクロン株とデルタ株で、死亡診断書から特定されるCOVID-19関連死のリスクを比較した研究は不足していた。BMJ誌2022年8月2日号掲載の報告。死亡診断書で特定したCOVID-19関連死について解析 研究グループは2021年12月1日~30日の期間に、国民保健サービス(NHS)Test and Trace(Pillar 2)のPCR検査が陽性で、Lighthouse研究所における分析にてオミクロンBA.1またはデルタ株の感染が確定し、国家統計局(ONS)公衆衛生データ資産にリンクできた18~100歳の103万5,149例(2021年12月の検査陽性成人全体の約44%)を解析対象とした。 主要評価項目は、死亡診断書で特定されたCOVID-19関連死で、性別、年齢、ワクチン接種状況、感染歴、感染日、民族、貧困状態(複数の剥奪指標のランク)、世帯貧困、学位、キーワーカーの状況、出生国、主要言語、地域、障害、併存疾患で調整した死因別Cox比例ハザードモデル(COVID-19関連死以外の死亡は打ち切りとする)を用いて解析した。また、変異株と、性別、年齢、ワクチン接種状況、併存疾患との交互作用についても検討した。オミクロンBA.1によるCOVID-19関連死のリスクは、デルタ株より66%低下 潜在的な交絡因子を調整したCOVID-19関連死のリスクは、デルタ株と比較してオミクロンBA.1で66%低下した(ハザード比[HR]:0.34、95%信頼区間[CI]:0.25~0.46)。デルタ株と比較したオミクロン株のCOVID-19関連死リスクの低下は、18~59歳(死亡数:デルタ株46例vs.オミクロン株11例、HR:0.14[95%CI:0.07~0.27])において、70歳以上(113例vs.135例、0.44[0.32~0.61]、p<0.0001)より顕著であった。変異株と併存疾患数との間にリスク差は確認されなかった。 著者は、すべてのSARS-CoV-2感染者が対象ではないこと、病院での検査(NHS Pillar 1)でCOVID-19変異株を特定したデータを利用できず症例数が少ないことなどを研究の限界として挙げた上で、今回の結果は「デルタ株と比較してオミクロンBA.1では、入院に関して重症化リスクが低いことを示唆する以前の研究を裏付けるものである」と述べている。

656.

第121回 「コロナ検査で陽性でも治療方針は変わらない」-NHK党・浜田氏に聞く(前編)

先日の参議院選挙直前に各党の政策をやや斜に構えて紹介(第115回、第116回)したが、その際私が一番驚いたのはNHK党の新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)対策だった。なんせ同党は党首の立花 孝志氏が「NHKをぶっ壊す!」と、いつもながらに標的のNHKの政見放送で叫ぶ強烈さが頭を離れず、どうしてもシングル・イシューの政党のイメージが強かった。その意味でこの公約を読んだ私は、半ば「鳩が豆鉄砲を食らった」ような状態だった。本連載記事では、「誰か新たなブレーンが入ったのだろうか?」と書いていたが、直後に政治界隈に詳しい知り合いから、「あれはたぶん浜田さんが作ったものじゃないか」という情報が入ってきた。同党は2019年参議院選挙の比例代表で初めて1議席を獲得し、立花氏が晴れて国会議員になったが、なんとその3ヵ月後、立花氏は参議院埼玉選挙区の補欠選挙に出馬するとして辞職。その結果、同党からは繰り上げ当選者が発生した。「浜田さん」とは、この時繰り上げ当選者となった浜田 聡氏である。浜田氏の同参議院議員選挙での個人得票は9,308票。参議院比例代表当選者では史上2番目に少ない得票で議員に就任した。その後は同党の政策調査会長に就任している。率直に言うと、私は浜田氏のことはまったくフォローしていなかったが、情報を得た後に調べると東京大学卒業後、京都大学医学部医学科に再受験で入学し、2011年卒業。政治家になる前は放射線科医として働いていたという。前述の政治界隈事情通から浜田氏のことを聞いた直後、同党が毎週金曜日に開催している定例記者会見への参加を模索していた。参議院選投開票の前週金曜日は東京を不在にしていたため、投開票2日前の会見に出席するつもりだった。ところがご存じのようにその前日、奈良県で安倍 晋三元首相が凶弾に倒れる事件があり、そちらへの対応でてんてこ舞になってしまった(一応、医療ジャーナリストを名乗りながらも国際紛争やテロもカバーしているため)。その最中、本連載の担当編集者から、なんと浜田氏から私宛に同党の政策を評価してもらえたことの謝辞メールが届いたことを知った。それによると今回の政策は昨年末の衆議院選挙最中に浜田氏が作成して発表したものを一部改変したもので、たまたま私が同党ホームページを見た時にはなかったのだろうとの説明が記されていた。謝辞メールには浜田氏のメールアドレスも記載してあったが、私は記者根性の一端でやっぱり直撃しようと7月22日の同党定例会見に向かい、そこで初めてこの件について質問した。これは同党が配信するyoutube動画(私の質問は49:38ぐらいから)でも配信されている。もっとも会見という時間の制約がある現場でもあったため、浜田氏の説明は極めて簡潔なもの。そこで改めてインタビューをお願いし、参議院議員会館で話を聞いた。今回と次回の2回に分けて報告したいと思う。NHK党・浜田氏×医療ジャーナリスト・村上氏今回の公約でマスク外しを提唱された背景を教えてください。(インタビューは屋内であるため、浜田氏も私もこの時はマスクを着用)マスク外しに関しては後藤厚労相の発言がありますが、それ以前から厚生労働省は「屋外やリスクの低い環境でマスクを外して良い」と言っていたはずです。しかし、ご存じの通り、現状で外を歩けばそうした人は全然いないと言っても良い状態です。その意味では政治の側からもリスクの低い屋外などで積極的にマスクを外していきましょうという主張があっていいはずです。過去に曲がりなりにも政治の立ち位置からそのような主張をしていたのは、私の知る限り、以前NHK党から参議院選挙に立候補し、その後、国民主権党を自ら設立した平塚 正幸さんぐらいでしょう。彼の主張は周囲から白眼視されていますし、私も若干そういう目で見ていたところはありますが。そうした観点で、公約を発表した昨年衆議院議員選挙時や先日の参議院選挙時は感染状況がかなり落ち着いていたこともあり、公約の中に入れました。炎天下の中、多くの人がマスクを外さず屋外を闊歩する状況を浜田さんはどのように分析されていますか?一度始めた習慣が定着し、マスクを外すという行動に至り難くなっているのではないでしょうか。日本人の特性と言って切って良いかはさまざまな意見があるでしょうが、個人的には良くも悪くも日本人らしいと考えています。政治家が呼びかけることで一般人の行動変容は起こるでしょうか?効果の程は、正直私もわかりかねます。呼びかけの主体が自民党である場合とわれわれNHK党である場合でもかなり状況が異なるとは思います。ただ、最大与党の自民党がそうした呼びかけをしないのなら、リスクの低い局面でのマスク外しをわれわれが主張をする意味はあると思っています。一方、NHK党は「検査の意義を考慮した上で、無駄な検査や害となりうる検査拡充に警鐘を鳴らす」とPCR検査などの検査拡充に異議を唱えています。多くの政党がむしろ検査拡充を訴える中で目を引きました。参議院選挙後に起きた現在の第7波の最中では検査拡充の持つ意味はやや異なってきますが、まず検査について一般の方々の誤解が多いと感じています。医療者の立場からすれば、検査とは必ず白黒がはっきりするものではなく、限界があるというのが当然の認識です。しかし、一般の方々の多くはそのことを知らないのだろうという印象を持っています。私は2011年に医学部を卒業していますが、学部では臨床教育移行時にどのような場合に検査をすべきかについて、いわゆる「ベイズの定理」に基づき、事前確率の高さを基準に検査をすべきとの教育を受けました。ところが最近の国会での議論を見てると、率直に言って医師免許を有する比較的高齢の国会議員の方々がそうしたことを十分に理解されていない点にやや危機感を覚えます。事前確率で絞り込むことなしに闇雲に検査件数を増やせば、間違った検査結果も必然的に増加します。近年の医学教育を受けた自分としては、この点は国政の場でしっかりと伝えていくべきだと思っています。他方、一部の地方首長はこの検査の限界を理解して発言されています。国会で同じ方向で議論が進めば良いと願い、公約に入れさせていただいたのが経緯です。先ほど、第7波突入を念頭に置いた次元の変化に触れましたが、では第7波下の検査のあり方についてはどのようにお考えですか?まず陽性者の受け入れ態勢を一旦脇に置いて考えると、自治体によっては時に検査陽性率90%超というケースも報告されている現在は、理論上から言えば検査件数がまったく足りないことになるので、検査を拡充したほうが良いという判断になるでしょう。しかし、受け入れ態勢を含めて考えるとかなり厄介です。現在主流のオミクロン株(BA.5)の感染では、基本的に自宅療養をすれば良い方がほとんどです。しかし、一般の方は陽性と判定されれば、ほとんどの方が不安を抱えます。その結果、軽症患者が医療機関の外来に殺到しているという悩ましい状況が今現在です。政府は抗原検査キットの無料配布政策まで打ち出しました。一般の方々は興味本位も含め自分の感染有無を知りたい方が多いでしょうし、その気持ちもわかります。その気持ちに配慮した上で行われている政策であることは理解できます。しかし、医師でもある自分の考えは、検査結果次第で治療方針が変わるならば検査の意味はありますが、新型コロナの場合は重症化リスクのある人を除けば、陽性が確定しても特別な治療があるわけではありません。これは検査によって治療方針がほとんど変わらない事例の典型例とも言えます。今回の幅広い層への抗原検査キットや無料検査所の拡大は、こうした医学的視点が反映されていない政策です。私自身はどちらかといえばやらないほうが良いのではと思っています。現在も診療に従事されているとのことですが、その現場で第7波の影響を感じることはありますか?私自身は、放射線科医なので新型コロナの肺炎に至った患者さんのCT画像を見ることはありますが、現状はそうした事例は必ずしも多くはありません。また、勤務先の病院は新型コロナ患者で逼迫しているという状況でもないです。ただ一方で、友人や恩師の医師のSNSの投稿やコメントでは、軽症患者が殺到して混乱に陥っていること、また保健所も大変な状況にあることは認識しています。そうした中で、当事者たちからそろそろ全数把握は止めて、入院患者に限定した患者数把握で良いのではないかとの意見が出ていることも承知しています。私自身もその通りだと考えています。その意味では新型コロナに関しては従来から感染症法上の5類扱いにすべきという意見があります。この論調はデルタ株などに比べ感染力が強いわりに重症化リスクは低いと言われているオミクロン株に入れ替わってから、一般人を中心に勢いを増し、一方でこの点に慎重な医療従事者との溝が深まっている印象も受けます。私自身は新型コロナを感染症法上の5類扱いにするか否かについて、あまり強いこだわりはありません。そもそも5類に分類されている感染症の中でも現実の臨床現場での対応には差がつけられているように感じています。新型コロナについても同様で今後のワクチン接種の進展などに応じてケースバイケースで少しずつ緩やかに設定を進めていけば良いのではないでしょうか。もっとも一般の方々からすると、この5類か否かという議論はある意味わかりやすさもあるのでしょうし、議論すること自体を私は否定しているわけではありません。印象論になってしまいますが、この件に関して、厚生労働省は保健所が過度な負担を抱えていることを認識しているにもかかわらず、あまり現状を動かしたがっていないように感じています。この認識に立つと、厚生労働省の対応は以前から少し不思議ですね。もっともこの点も厚生労働省自体が未曽有のコロナ禍でなかなか身動きがとりにくい状況なのかもしれないと推察しています。次回は日本版CDCや日本版ACIP、ナースプラクティショナー導入を提唱した経緯やワクチン政策などについて浜田氏の考えを取り上げる予定である。

657.

医療者のブレークスルー感染率、3回vs.4回接種

 オミクロン株流行下において、感染予防の観点から医療従事者に対する4回目接種を行うメリットは実際あったのか? イスラエルでのオミクロン株感染ピーク時に、3回目接種済みと4回目接種済みの医療従事者におけるブレークスルー感染率が比較された。イスラエル・Clalit Health ServicesのMatan J. Cohen氏らによるJAMA Network Open誌オンライン版2022年8月2日号掲載の報告より。ブレークスルー感染予防に医療従事者の4回目ワクチン接種は有効 本研究は、イスラエルにおけるオミクロン株感染者が急増し、医療従事者に対する4回目接種が開始された2022年1月に実施された。対象はイスラエルの11病院で働く医療従事者のうち、2021年9月30日までにファイザー社ワクチン3回目を接種し、2022年1月2日時点で新型コロナウイルス感染歴のない者。4回目接種後7日以上が経過した者(4回目接種群)と、4回目未接種者(3回目接種群)を比較し、新型コロナウイルス感染症の感染予防効果を分析した。感染の有無はPCR検査結果で判定され、検査は発症者または曝露者に対して実施された。 3回目接種済みと4回目接種済みの医療従事者におけるブレークスルー感染率を比較した主な結果は以下の通り。・計2万9,611例のイスラエル人医療従事者(女性:65%、平均[SD]年齢:44[12]歳)が2021年9月30日までに3回目接種を受けていた。・このうち2022年1月に4回目接種を受け、接種後1週間までに感染のなかった5,331例(18%)が4回目接種群、それ以外の2万4,280例が3回目接種群とされた(4回目接種後1週間以内に感染した188例も3回目接種群に組み入れられた)。・接種後30日間における全体のブレークスルー感染率は、4回目接種群では7%(368例)、3回目接種群では20%(4,802例)だった(粗リスク比:0.35、95%信頼区間[CI]:0.32~0.39)。・3回目のワクチン接種日によるマッチング解析の結果(リスク比:0.61、95%CI:0.54~0.71)および時間依存のCox比例ハザード回帰モデルの結果(調整ハザード比:0.56、95%CI:0.50~0.63)において、4回目接種群で同様のブレークスルー感染率の減少がみられた。・両群とも、重篤な疾患や死亡は発生していない。 著者らは、4回目のワクチン接種は医療従事者のブレークスルー感染予防に有効であり、パンデミック時の医療システムの機能維持に貢献したことが示唆されたとまとめている。

658.

「BA.1対応型」で10月接種開始予定、小児へのワクチンは「努力義務」に変更/厚労省

 オミクロン株対応ワクチンについて、本邦では10月半ば以降、初回接種を完了したすべての住民を対象に接種を開始することを想定して「BA.1対応型」2価ワクチンの導入を進めることが、8月8日に開催された第34回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会で了承された。また同会では、小児(5~11歳)の新型コロナワクチン接種について現行の取り扱いを変更し、努力義務の適用とすることも了承された。「BA.1対応型」ワクチンの導入が了承された背景 ファイザー社およびモデルナ社では、「オミクロン株対応ワクチン」(オミクロン株のスパイクタンパクを成分として含んだワクチン、従来型ワクチンとの2価ワクチンを含む)を開発中であり、6月28日のFDA諮問委員会に臨床試験等の結果を報告している。ただし、これらの結果はBA.1の成分を含むワクチンについてであり、FDAはBA.4/5の成分を含む2価の追加接種用ワクチンの開発を検討するよう、両社に勧告している。 これらの状況を受け7月22日、「新型コロナワクチンの製造株に関する検討会」が立ち上げられ、本邦での導入にむけた同ワクチンの構成について議論がなされた結果、まずはいち早く利用可能となる「BA.1対応型」を選択すべきではないかとの見解が示された。その理由として、現在の主な流行株はオミクロン株となっていることから、利用可能なオミクロン株対応ワクチンによる接種になるべく早く切り替えることが妥当であると考えられること、現在までに示されたデータの範囲内では、従来型ワクチンと比較して、ワクチンに含まれる成分と異なる亜系統のオミクロン株に対しても中和抗体価の高い上昇が見られ、オミクロン株に対するより高い有効性が期待されることなどが挙げられた。 「BA.1対応型」ワクチンについて、現時点で報告されている臨床試験結果は以下のとおり。ファイザー社・18~55歳対象、BA.1対応単価ワクチン(30μg) BA.1に対する中和抗体価(従来型と比較して)1.75倍※1・56歳以上対象、従来株+BA.1対応2価ワクチン(15μgずつ) BA.1に対する中和抗体価(従来型と比較して)1.56倍※1 BA.4/5に対する中和抗体価はBA.1に対する上昇よりは低い・56歳以上対象、従来株+BA.1対応2価ワクチン(30μgずつ) BA.1に対する中和抗体価(従来型と比較して)1.97倍※1 BA.4/5に対する中和抗体価はBA.1に対する上昇よりは低いモデルナ社・18歳以上対象、従来株+BA.1対応2価ワクチン(25μgずつ) BA.1に対する中和抗体価(従来型と比較して)1.75倍※1 BA.4/5に対する中和抗体価(接種前と比較して)5.44倍※2※1:幾何平均比、※2:幾何平均上昇倍率 なお、ファイザー社は8月8日のプレスリリースにおいて、従来株+BA.1対応2価ワクチンの承認申請を行ったことを発表した。同ワクチンは生理食塩水での希釈が不要なRTU 製剤とされている。小児に対する有効性・安全性のエビデンスが蓄積、「努力義務」へ 小児(5~11歳)に対する新型コロナワクチンの本邦での取り扱いについて、前回議論された2月10日時点では、小児におけるオミクロン株の感染状況(感染者、重症化の動向)が確定的でないことや、オミクロン株についてはエビデンスが必ずしも十分ではないことから、努力義務の規定は小児について適用しないこととされていた。しかし、この半年の間に海外および国内でのエビデンスが蓄積されている。 有効性について新たに報告されたデータとしては、オミクロン株流行下における、小児に対するワクチンの発症予防効果としては、2~4週間後 60.1%、5~8週間後には28.9%との報告があり、入院予防効果については、2回接種後約60日までで約80%の有効性を認めたとの報告がある。 安全性については、米国での約1,600万回の接種についての大規模解析において、安全性に関する懸念は認められておらず、2回目接種後7日間の追跡で認めた副反応は12~15歳よりも頻度が少なく、接種後の心筋炎の報告率は、12~15歳および16~17歳の男性における報告率より低いと報告されている。国内においても、約270万回の接種について、重大な懸念は認められていない。 複数の委員から「努力義務」という言葉の意味(義務とは異なり接種は強制ではなく、最終的には、あくまでも本人が納得した上での判断を促すもの)を丁寧にわかりやすく示す必要があるという指摘があったが、そのうえで、「努力義務」に変更することが了承された。

659.

オミクロン株対応2価ワクチンを国内承認申請/ファイザー

 ファイザー社は8月8日付のプレスリリースで、オミクロン株対応の新型コロナウイルスワクチンを厚生労働省に承認事項一部変更申請を行ったことを発表した。今回申請したワクチンは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の起源株と、オミクロン株BA.1系統のスパイクタンパク質をそれぞれコードする2種類のmRNAを含む2価ワクチンで、生理食塩水での希釈が不要なRTU製剤となっている。 同社の2価ワクチンの効果については、6月25日付の米国でのプレスリリースによると、56歳以上を対象とした第II/III相試験において、現行のワクチンと比較してオミクロン株BA.1に対して大幅に高い中和抗体反応を示し、中和抗体価の幾何平均比(GMR)は、2価ワクチン30μgで1.56(95%信頼区間[CI]:1.17~2.08)、60μgで1.97(95%CI:1.45~2.68)であった。追加接種から1ヵ月後では、オミクロン株BA.1に対する中和幾何平均抗体価(GMT)が、30μgで9.1倍、60μgで10.9倍に追加接種以前より増加した。 なお、オミクロン株BA.4/BA.5に対しての効果は、56歳以上の被験者の血清で試験したSARS-CoV-2ライブウイルス中和アッセイによると、BA.1の約3分の1の力価でBA.4/BA.5を中和したという。 オミクロン株対応ワクチンについては、ファイザー社とモデルナ社が現在複数の種類の開発を進めている。厚生労働省は8月8日の厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会において、まずはいち早く利用可能となるBA.1対応型の2価ワクチンを導入するのが妥当であるという方針を示した。薬事上の承認が成された場合、9月中に輸入を開始し、10月半ば以降には接種を開始できる見込みという。

660.

コロナ感染後の心筋梗塞・脳卒中発生率、ワクチン接種者vs.未接種者/JAMA

 韓国・国民健康保険公団(National Health Insurance Service)のKim Young-Eun氏らが、新型コロナウイルス感染後のワクチン接種状況と急性心筋梗塞(AMI)および虚血性脳卒中との関連を調査した。その結果、新型コロナ感染後の急性心筋梗塞および虚血性脳卒中の発生率の増加は、血栓症のリスク増加に関連しており、ワクチンを完全接種することでワクチン接種が感染後の二次合併症のうちAMIおよび虚血性脳卒中のリスク低下に関連していることが明らかになった。JAMA誌オンライン版2022年7月22日号リサーチレターに掲載。ワクチン接種状況によるコロナ感染後の急性心筋梗塞および虚血性脳卒中の発生率 研究者らはワクチン未接種者とワクチン完全接種者(mRNAワクチンまたはウイルスベクターワクチンを2回接種)の新型コロナ感染後の急性心筋梗塞および虚血性脳卒中の発生率を比較した。研究には韓国の全国新型コロナレジストリ(感染と予防接種に関する)と国民健康保険公団のデータベースが使用された。対象者は2020年7月~2021年12月に無症候性感染を含む新型コロナと診断された18歳以上の成人。主要評価項目は新型コロナの診断から31~120日後に発生した急性心筋梗塞と虚血性脳卒中による入院の複合アウトカムとした。 新型コロナウイルス感染後のワクチン接種状況と急性心筋梗塞および虚血性脳卒中との関連を調査した主な結果は以下のとおり。・研究期間中の新型コロナ患者59万2,719例のうち、23万1,037例が該当した。そのうち6万2,727例はワクチン接種を受けておらず、16万8,310例はワクチン完全接種をしていた。・ワクチン完全接種者は年齢が高く、併存疾患を有する者が多かった。その一方で、新型コロナの重症例はみられなかった。・複合アウトカムの発生は、ワクチン未接種群で31例、ワクチン完全接種群で74例であり、100万人日あたりの発生率はそれぞれ6.18と 5.49だった。また、調整ハザード比[aHR]は0.42(95%信頼区間[CI]:0.29~0.62)とワクチン完全接種群で有意に低かった。・急性心筋梗塞と虚血性脳卒中それぞれのaHRもワクチン完全接種群で有意に低かった(0.48[同:0.25~0.94]vs. 0.40[同:0.26~0.63]。・年齢区分で見た場合、40~64歳のaHRは0.38(同:0.20~0.74)、65歳以上では0.41(同:0.26~0.66)だった。・ただし、ワクチン接種者の転帰イベントリスクは全サブグループで観察されたものの、重症または重篤患者の一部では統計学的有意差が得られなかった。 本調査結果は「心血管疾患の危険因子を持つ人々へのコロナワクチン接種を支持する。しかし、患者の特徴にばらつきがあり、予防接種を受けるかどうかの決定には心血管リスクに関連する可能性のある複数の因子の影響を受ける」としている。コロナワクチン接種と心疾患 7月25日に開催された疾病・障害認定審査会 感染症・予防接種審査分科会でコロナワクチン接種と「死亡」との因果関係が初めて認められた1)。これまでもアナフィラキシーなどが理由で請求が認定されたのは850件にのぼるが、死亡一時金が支払われるのは今回が初めて。認定事例は90代女性で、死因は急性アレルギー反応と急性心筋梗塞。基礎疾患として脳虚血発作、高血圧症、心肥大を有していた。このようなニュースが報道されると心疾患のある方がコロナワクチン接種をためらってしまいそうだが、第7波の爆発的に感染が広がりいつ自分が感染してもおかしくない状況下では、上記の論文を踏まえ、ワクチンの推奨はやはり大切なのかもしれない。

検索結果 合計:2112件 表示位置:641 - 660