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在宅医療・介護の場で見逃してはいけない骨粗鬆症/日本シグマックス

 整形外科領域などで衛生材料や診療機器、サポーターなどの開発・販売を行う日本シグマックスは、2026年3月24日に都内で「在宅医療・介護で見過ごされがちな『骨粗鬆症』リスクと転倒・骨折予防の重要性」をテーマにメディアセミナーを開催した。 骨粗鬆症は自覚症状に乏しく、発見が遅れがちな疾患であり、転倒・骨折をきっかけに要介護へ移行するケースも多く、医療・介護双方で課題となっている。同社の代表取締役社長の鈴木 洋輔氏は、これらの課題の解決に「超音波医療機器の開発や機械の小型化といった知識の導入により、治療に貢献する製品を研究開発していく」と展望を述べている。 セミナーでは、骨粗鬆症の病態と予防の解説のほか、在宅医療の視点から骨折リスクとしての骨粗鬆症と在宅でできる予防法などが講演された。骨粗鬆症検診率は全国平均でまだ5% 「骨粗鬆症と骨折予防の意義」をテーマに山本 智章氏(新潟リハビリテーション病院 院長)が、骨粗鬆症の病態、高齢者と骨折、骨折予防などについて講演した。 ヒトの最大骨量は20~40代であり、男性は女性に比べてやや多い骨量となっている。とくに女性では閉経後に急激な骨量の減少がみられ、骨粗鬆症の1番の原因は閉経と老化とされる。若いときに最大骨量をいかに高められるかが、将来の骨粗鬆症の予防につながると近年の研究から判明し、生涯にわたり骨の健康を考えることが重要な時代となっている。 わが国は超高齢社会となり、2000年以降、骨折の概念は外傷性ではなく、脆弱性骨折へと変化している。実際、病院で受診する骨折患者のほとんどが脆弱性骨折であり、骨折はけがではなく、慢性疾患の中で起きる1つのイベントという認識が必要となる。 脆弱性骨折は、椎体や上腕骨、大腿骨近位部などさまざまな部位で発生する。とくに高齢者では、脊椎椎体と大腿骨頸部の骨折が多く、大腿骨近位部骨折の患者数は年々増加し、1980年代と比較すると5~6倍となり、2017年には約19万3,000例となっている1)。 大腿骨近位部骨折は、フレイル、骨粗鬆症、低栄養などさまざまな症状が併存した結果起こり、治療では手術が第1選択となる。また、骨折を起こすと医療費の増加、介護の発生、再発のリスクがあるほか、受傷1年後の患者の日常生活動作(ADL)を調査した研究によると1年以内の死亡が20%、永続的な能力障害が30%、歩行不能が40%、限定的な生活動作が80%と大きな生活上のリスクとなることが報告されている2)。そのため海外では、早期治療が有効であり、徹底して予防し、優先的に治療すべきとされている。 最近、社会的認知が広がっている「いつの間にか骨折」の椎体骨折の発生数について、ROAD研究から形態椎体骨折は420万件、臨床的椎体骨折は118万件と報告されている。多発脊椎圧迫骨折が進行すると脊柱後弯症となり、ADLの障害、慢性背部痛、呼吸換気不全などのQOLの低下を来す。また、体型バランスが変わることで転倒リスクが高くなり、さらなる転倒・骨折などを来す原因となる。 骨折について医療経済や介護環境についてみると、医療費の面で2018年の新潟県の後期高齢者入院の医療費では、「脆弱性骨折」が9.25%と1番高く、脳卒中が7.50%、そのほかの心疾患が7.40%の順で高かった。また、介護の主要因について厚生労働省の調査では、認知症が23.6%で1番高く、脳血管疾患が19.0%、骨折・転倒が13.0%と上位の3要因に入っている。骨折で介護が必要となった場合の5年間の自己負担額の試算では1,540万円と試算するデータもあり、これら介護の負担は、患者本人だけでなく、家族を巻き込み、社会的にも医療的にも問題となる。 骨折の原因となる骨粗鬆症治療を受けるべきターゲットは、「(1)(50歳以降に)骨折を起こした人、(2)骨密度の低下した人(若いときの70%以下の骨密度)のどちらかに該当する人は骨粗鬆症の治療を始めたほうがよい」と山本氏は提言する。 その一方で骨粗鬆症検診の現状は、全国平均で約5%と低く、地域によってはゼロというところもある。「健康日本21」では、「骨粗鬆症の検診率を15%まで引き上げる」という目標が設定され、今後積極的な取り組みがなされる。 わが国の高齢者の転倒発生率は80歳以上で11.1%、85歳以上で13.6%であり、その20%が治療適用となり、5~10%が骨折となる。転倒では、筋力の低下、バランス障害、歩行障害などが大きく寄与しており、正常なバランスの指標として「片足立ちができるかどうか」がある。片足でしっかり立てるということは、歩行も安定し、さまざまな場面でバランスも取れるということが転倒予防に重要となる。また、もう1つ重要なことが「環境」である。屋外はもちろん、屋内でも浴室や居間、階段などさまざまな場での転倒リスクをいかに低下させるかということを高齢者に指導していくことが重要となる。 最後に山本氏は「第28回 日本骨粗鬆症学会が新潟で開催される。『女性医学と整形老年病学』という若いときから女性がいかに元気でいられるかというテーマで開催されるので、多くの医療者に参加してもらいたい」と述べ、講演を終えた。病診連携では「再骨折予防手帳」を活用 「在宅だからこそ見逃される骨折リスクと地域連携の重要性」をテーマに山口 正康氏(医療法人社団 山口クリニック 院長)が、オンラインで在宅患者の骨粗鬆症リスクをいかに見つけ、どのように予防し、地域で支えていくかを講演した。 山口氏は、新潟市内で消化器内科を専門に、地域の在宅医療も行っている。往診先には寝たきりの患者、独居の認知症患者など、さまざまな患者が自宅で自分らしい生活を続けている中で、通院できない患者について骨折予防のため定期的に骨粗鬆症の治療も行っているという。 在宅医療患者の特性と骨折リスクとしては、身体的要因として転倒リスクが高い疾患が多いこと、服用薬の影響、加齢による骨・筋肉の脆弱化、通院できないことによる治療の放置がある。また、社会的要因として見守りの目が届きにくい住環境などに転倒誘因が多いほか、身体機能に合わない杖などの補助具の使用、閉じこもりによる身体の廃用性萎縮などがある。さらに在宅特有の診断困難性として、「DXA検査へのアクセス制限」「無症候骨折の看過」「既存骨折の未評価」「検査の遅れ」などもあり、骨折の診断・評価の機会損失が潜在化すると山口氏は警鐘を鳴らす。 骨粗鬆症財団の行った「診療所に通院する骨粗鬆症患者の合併症」の調査では、高血圧(55%)、脂質異常症(27%)、眼病(19%)、糖尿病と循環器疾患(13%)の順で多く、生活習慣病と骨粗鬆症は悪循環を形成し、心血管イベントのリスク因子となることも知られている3)。そのため在宅診療時には動脈硬化の進行度や心肺機能の検査も必要となる。 山口氏のクリニックでは、患者向けの骨粗鬆症の啓発に、疾患の説明や検査の内容を提示するとともに、待ち時間などの間に超音波測定法を用いた骨量測定器で測定なども行っている。そのほか骨粗鬆症の予防について万歩計を活用した1日8,000歩以上の励行や日常動作でのちょっとした運動の勧め、骨に関連するカルシウム、ビタミンD・Kなどの摂取について栄養士による指導も行っている。 高齢者が骨折や寝たきりの状態にならないためには、病診連携、多職種間、医療と介護、市町村と行政、患者(家族)と地域など幅広い連携が必要になる。とくに再骨折の予防のためには病診連携が重要であり、「正確な骨密度検査の結果と治療方針を病院、クリニック、患者と共有することが治療継続のための出発点となる」と山口氏は語る。 病診連携のメリットは専門医の診断により、治療方針が明確になることであり、病院の専門医と地域のかかりつけ医がそれぞれの役割を果たすことで地域全体による骨粗鬆症治療が活発化する。また、山口氏の地域では患者が病院からの紹介で受診される際、必ず「再骨折予防手帳」を持参するという。この手帳により患者の退院後の状態が容易に把握でき、病院の医師とかかりつけ医の情報共有ができ、患者の安心感につながっていく。 最後に山口氏は、「在宅医療における骨粗鬆症対策は、骨折する前に見つけることが最も重要な役割だと考えている。在宅特有の見逃されるリスクに目を向け、地域全体で骨折予防を支える体制作りを目指したい」と思いを述べ、講演を終えた。

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加齢観が健康改善に関連、高齢者の約半数で機能向上

 加齢は、身体的な衰退や認知機能の低下とイコールだと捉えられやすい。しかし新たな研究によると、高齢者でも心構え次第で歳とともに健康状態が改善するケースが少なくないことが示唆された。米イェール大学公衆衛生大学院のBecca Levy氏らが、米国健康・退職研究(Health and Retirement Study;HRS)のデータを解析して明らかにしたもので、詳細は「Geriatrics」に3月4日掲載された。 HRSは米国立加齢研究所のサポートにより、50歳以上の米国民を対象に隔年で実施されている長期追跡調査。Levy氏らの研究ではこのHRS参加者のうち、加齢に対する考え方と健康状態に関するデータに欠落のない1万1,000人以上を解析対象とした。加齢に対する考え方は、「歳を取ると役立たなくなると感じる」、「若いころと同じくらいに幸せだ」などの5項目の質問に対する同意の程度をスコア化して評価した。身体的健康状態は歩行速度で評価し、認知機能は妥当性が評価された電話による認知機能評価(Telephone Interview for Cognitive Status;TICS)にて評価した。 最長12年間の追跡で、参加者の45%が身体的健康または認知機能のいずれか、あるいはその両方で改善を示した。具体的には、身体的健康については4,638人(平均年齢74.03±6.07歳)を平均8.54±2.86年追跡し、対象者の28.00%に歩行速度の向上が認められた。認知機能については1万1,314人(同68.12±9.92歳)を平均8.04±3.27年追跡し、対象者の31.88%にTICSスコアの上昇が認められた。この結果の重要な点として、Levy氏は、「全体の平均値で評価すると、こうした改善は認められず、加齢による機能低下が示唆された。しかし、個々人の推移を見ると全く異なる変化が認められ、健康状態が改善していた高齢者がかなりの割合を占めていた」と指摘している。 また、加齢をポジティブに捉えている人は、身体的健康と認知機能の双方が改善することが多いという関連も見つかった。具体的には、加齢の捉え方のスコアが中央値を上回っている人は、スコアが中央値以下の人と比べ、交絡因子(年齢、性別、人種/民族、教育歴、婚姻状況、社会的孤立、抑うつレベル、認知症の遺伝的リスク〔APOE4〕など)を調整後、TICSスコア上昇のオッズ比(OR)が1.04(95%信頼区間1.00~1.08)であり、歩行速度の向上はOR1.09(同1.02~1.17)だった。なお、加齢に対する否定的な考え方が、記憶力や歩行速度の低下、心臓病やアルツハイマー病のリスク増大につながる可能性があることは、先行研究でも示されている。 Levy氏は、「得られた結果は、晩年になっても健康状態を改善する余地のあることを示唆している。そして、その可能性に影響を及ぼし得る加齢観は変更可能である。これらの知見は、高齢者の健康のために、個人ができることと社会的に介入すべきことの双方の可能性を開くものと言える」と総括。また研究者らは、一連の研究成果が高齢者の潜在的な回復力を活用する予防医療、リハビリテーション、健康増進プログラムの推進につながるだろうと述べている。

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4月20日 腰痛ゼロの日【今日は何の日?】

【4月20日 腰痛ゼロの日】〔由来〕「腰(4)痛(2)ゼロ(0)」と読む語呂合わせから「420の会」代表の本坊 隆博氏が制定。腰痛で悩んでいる人をゼロにしたいとの思いが込められており、腰痛に対する対処法、予防法が指導されている。関連コンテンツ腰痛予防には普段の姿勢の確認を(Dr.坂根のすぐ使える患者指導画集)米国でのCTO治療、腰痛防止の無重力防護服に驚き!【臨床留学通信 from Boston】腰痛時の日常動作、症状を悪化させるのか?腰痛の重症度に意外な因子が関連~日本人データ腰痛リスクが低下する1日の歩行時間は?

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脊髄損傷患者の運動制御と感覚フィードバックを同時に一部再現

 脊髄を損傷すると、手足の動きを制御する能力(運動制御能力)と、手足からの感覚情報を脳へフィードバックする能力(感覚フィードバック)の2つの重要な能力が失われる。運動制御能力と感覚フィードバックの双方向の情報伝達機能は、脚や腕を協調させて動かす上で不可欠である。新たな研究で、脊髄損傷部位の上下両方に電気刺激を与えることで、運動制御能力を高めるとともに感覚フィードバックの代替となる感覚を再現できる可能性が示された。米ブラウン大学工学分野のDavid Borton氏らによるこの研究結果は、「Nature Biomedical Engineering」に3月11日掲載された。 この研究でBorton氏らは、完全脊髄損傷により歩行能力を失った3人の患者の損傷部位の上下に電極を埋め込んだ。次いで同氏らは、患者とともに、歩行時の筋肉運動を担う神経への刺激を細かく調整した。その方法は、患者自身がノブとスライダーを備えた「DJボード」を操作し、脊髄の異なる部位に異なるレベルの刺激を与えながら、脚の筋肉を収縮・屈曲させる最適なパターンを探り当てるというものだった。論文の筆頭著者である米カリフォルニア大学デービス校神経外科学分野のJonathan Calvert氏は、「目標となる脚の位置や配置を提示し、それを実現する刺激パターンが見つかるまでボードを操作してもらった。参加者は、再び自分の脚が動く様子を目にし、ボードを通じて動きを自分で制御できることをとても喜んでいた」と語った。 そのようにして得られたデータを基に、機械学習モデルにより、それぞれの参加者で最も精度高く筋活動を引き起こす刺激パターンを最適化した。損傷部位より上への刺激についても同様のプロセスを用いて感覚フィードバックの生成を試みた。ただし、脊髄損傷のため、上への刺激を直接下肢の感覚と対応させることはできない。そこで、身体の別の部位に生じる感覚が下肢の感覚の代替として機能するかを検証した。Calvert氏は、「特定の感覚を特定の動作や刺激と関連付け、参加者が感覚的な手がかりを再解釈できるようにする『感覚代替』のアプローチを用いた。このアプローチでは、参加者は胸や腕、背中に感覚を感じるかもしれないが、それを脚の異なる関節角度と結び付けることを学習できる」と説明している。実際に参加者は、目隠しをした状態でも脚の角度を正確に報告できたという。 その後、天井から吊るされたハーネスで支えられた患者がトレッドミル上で歩行動作を行う際に2種類の電気刺激を同時に使用する実験を行った。その結果、参加者は歩行に必要な筋肉を使い、足が接地したタイミングを正確に報告できた。ただし、その感覚は、足ではない身体の別の部位に生じていた。ある参加者は、自分の胸を指しながら「足が地面についた瞬間が、ここへの感覚で分かった。足がトレッドミルに触れた感覚そのものではなかったが、それに近いものではあった」と語ったという。 Borton氏は、「この結果は、脊髄損傷患者の運動機能回復への道筋を示すものだ。完全脊髄損傷患者において、運動刺激と感覚フィードバックが同時に実証されたのは今回が初めてである」とプレスリリースで述べている。同氏はさらに、「これは、脊髄損傷によって生じた神経伝達の断絶を埋めるという目標に向けた重要な一歩である。われわれは、運動の活性化と感覚フィードバックを同時に提供することで、協調した動きと機能的な自立の回復に向けて前進している」と付け加えた。 研究グループは、この研究で示されたようなフィードバックは、将来的に脊髄損傷のリハビリを行う患者の助けになり得ると述べている。Borton氏は、「損傷部位をまたぐ協調した刺激がリハビリ効果をもたらす可能性がある。今回の研究では十分に検証できなかったが、今後の研究で追求していく予定である」と話している。研究グループは今後、より多くの脊髄損傷患者を対象に入院環境外でこの刺激アプローチを検証する長期研究の実施を計画している。

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筋力が高齢女性の死亡リスクと関連

 筋力が寿命に好ましい影響を与える可能性が報告された。高齢女性において、握力などで評価した筋力と8年間の追跡期間中の死亡リスクとの間に、有意な関連が見られたという。米ニューヨーク州立大学バッファロー校のMichael LaMonte氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Network Open」に2月13日掲載された。 この研究では、高齢者の筋力の評価によく用いられている、握力および椅子から立ち上がる速度(5回立ち上がりテスト:椅子からの立ち上がり動作を5回行った所要時間)という2項目が測定された。その結果、高齢女性では握力が15ポンド(7kg弱)高いごとに死亡率が12%低下し、椅子から立ち上がる所要時間が6秒短いごとに死亡率が4%低下するという関連が示された。 LaMonte氏は、「椅子から立ち上がるための筋力が低下していると、ウォーキングなどの有酸素運動を行うことも難しくなる。ウォーキングは米国の65歳以上の高齢者において、最も一般的な運動だ」と解説。また、「健康的な老化のためにはおそらく、適度な有酸素運動と筋力強化のための運動の双方を行うことが最善の方法ではないか」と語っている。 この研究には、63~99歳の女性5,472人(平均年齢78.7±6.7歳)が参加。平均8.4±2.4年の追跡期間中に1,964人が死亡した。死亡リスクに影響を及ぼし得る因子(年齢、社会人口統計学的因子、生活習慣、臨床因子)を調整後、握力が高いほど、また椅子から立ち上がる速度が速いほど、死亡リスクが低いという有意な関連が示された。具体的には、握力の第1四分位群(握力が最も弱い下位25%)を基準として、第4四分位群(握力が最も強い上位25%)はハザード比(HR)0.67(95%信頼区間0.58~0.78)で、第3四分位群もHR0.85(同0.75~0.97)だった(傾向性P<0.001)。椅子から立ち上がる速度については第4四分位群がHR0.63(0.54~0.73)、第3四分位群はHR0.76(0.67~0.87)で、第2四分位群もHR0.79(0.69~0.88)だった(傾向性P<0.001)。 これらの関連は、加速度計で測定した身体活動量や座位時間、歩行速度、全身性の炎症反応で調整しても有意性が維持されていた。また、筋力が強い高齢女性はガイドラインで推奨される身体活動量を満たしていなくても、死亡リスクが低かった。 重要なこととして、筋力が強いことによるメリットを得るために、ボディビルダーのようなたくましい体格である必要性がないことも示された。LaMonte氏は、「体重や除脂肪体重を考慮に入れて解析しても、筋力の強い高齢女性の死亡率は有意に低く、筋力と死亡率の関係は体格の違いでは説明できなかった」と述べている。 これらの結果に基づき研究者らは、高齢者が筋力を増強するために、必ずしもジムに通う必要はないと強調する。ただし注意点として、高齢者が筋力トレーニングを始める場合、事前に医師に相談することを強く推奨している。LaMonte氏も、高齢者が目標とする筋力トレーニングを安全に進めるために、理学療法士や運動専門家の助言を受けると良いと提案している。

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脳卒中後の転倒予防、在宅個別化介入で転倒率低下/BMJ

 脳卒中生存者の転倒率は、一般高齢者の転倒率と比べて2倍以上(73%vs.30%)と報告されており、多くの場合、転倒に伴う外傷や入院に至る。また、脳卒中経験者は転倒を繰り返す反復転倒者となるリスクが高く、転倒の影響は長期的な健康や幸福な生活を深刻に脅かす要因となるが、脳卒中後の転倒を予防する有効な介入法は確立されていない。オーストラリア・シドニー大学のLindy Clemson氏らは「FAST試験」において、在宅での個別化介入が、地域在住の脳卒中経験者の転倒を大幅に予防することを示した。研究の成果は、BMJ誌2026年3月24日号で報告された。理学療法士と作業療法士が連携して介入 FAST試験は、オーストラリアの3つの州で実施した無作為化第III相試験(オーストラリア国立保健医療研究評議会[NHMRC]の助成を受けた)。2019年8月~2023年12月に参加者を登録した。 対象は、年齢50歳超、脳卒中発症から5年以内で、正規のリハビリテーションを終えて退院し、地域社会に復帰しており、補助具の有無を問わず平坦な地面を10m歩行できる患者とした。一方、中等度~重度の受容性失語症の患者、または過去1年間に転倒することなく1.4m/秒以上の歩行速度を示した患者は除外した。 被験者を、介入群または対照群に無作為に割り付けた。介入群は、6ヵ月間にわたり、(1)習慣形成を目指した機能訓練(運動)、(2)自宅内での転倒の危険低減、(3)目標指向型の地域社会での移動能力の指導を受けた。対照群には通常ケアが提供された。介入は、理学療法士と作業療法士による2人1組のチームが、互いに連携して実施した。 主要アウトカムは、12ヵ月の時点での年間平均転倒率であった。転倒による骨折、入院も少ない 370例を登録し、介入群に186例(平均年齢75[SD 10]歳、女性87例[47%]、脳卒中発症後の平均経過期間27[SD 17]ヵ月)、対照群に184例(76[SD 9]歳、82例[45%]、29[SD 17]ヵ月)を割り付けた。 12ヵ月の時点での年間平均転倒率は、対照群が2.7(SD 5.5)回/年であったのに対し、介入群は1.8(SD 3.0)回/年と有意に低かった(発生率比:0.67、95%信頼区間[CI]:0.48~0.94、p=0.02)。これらの転倒の82%について、参加者は立ち上がりへの介助や医学的配慮は必要なかったと報告し、転倒による骨折(2%)および入院(4%)は少なかった。 一方、この間に転倒した参加者の割合(介入群56%[104例]vs.対照群59%[109例]、絶対リスク減少率:0.03[95%CI:-0.07~0.13]、p=0.52)は、両群間に有意な差を認めなかった。地域社会への参加、自己効力感なども改善 12ヵ月の時点における地域社会への参加(Late Life Function and Disability Instrument disability limitation[0~100点]の平均群間差:3%、95%CI:1~6、p=0.02)、自己効力感(Likert尺度[0~6点]の平均群間差:0.6、95%CI:0.2~1.0、p=0.004)、移動能力(fast walking speedの平均群間差:0.13m/秒、95%CI:0.06~0.19、p<0.001、preferred walking speedの平均群間差:0.06m/秒、95%CI:0.02~0.10、p=0.02)、バランス(Step Testの平均群間差:0.06ステップ/秒、95%CI:0.01~0.12、p=0.03)は、いずれも対照群に比べ介入群で有意に良好だった。 著者は、「自己効力感が対照群に比べ介入群で向上したことは、介入の実施における個別対応型のアプローチが、運動への継続的な参加を後押しした可能性を示唆する」「地域在住の脳卒中経験者を対象とし、自宅および地域社会で実施される介入について検証したことで、この介入法が容易に実践可能であることが示された」としている。

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英語で「整復する」ってどう言う?【患者と医療者で!使い分け★英単語】第55回

医学用語紹介:整復する reduce脱臼した関節や骨折を元の位置に戻すことを医学用語では「reduce(整復する)」と表現し、名詞では「reduction(整復)」となります。でも、患者さんにそのまま“reduce your shoulder”と言っても「肩を減らす?」と困惑されてしまいがちです。一般用語ではどう言い換えるとよいでしょうか?講師紹介

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第287回 医師国試合格率91.6%と低下、新卒合格者も9千人割れ/厚労省

<先週の動き> 1.医師国試合格率91.6%と低下、新卒合格者も9千人割れ/厚労省 2.はしか患者100人超、若年層中心に増加、感染拡大に警戒/厚労省 3.移植医療を集約化と体制強化、報酬を4倍加算、逼迫した現場を支援/厚労省 4.「新たな地域医療構想」機能選択で病院の再編・集約本格化/厚労省 5.2027年度専攻医シーリング決定、偏在是正へ都道府県連携強化/厚労省 6.薬剤アレルギー既往見落としで死亡事故が発生、市民病院を提訴/愛知県 1.医師国試合格率91.6%と低下、新卒合格者も9千人割れ/厚労省厚生労働省は2026年3月16日、第120回医師国家試験の合格者を発表した。受験者9,980人のうち合格者は9,139人で、合格率は91.6%と前回から0.7ポイント低下した。合格者数は前年より347人減少し、とりわけ新卒合格者は8,716人(合格率94.7%)と313人減少となり、3年ぶりに9,000人を下回った。医師供給動向に変化が生じている可能性が示唆される。試験は2026年2月に実施され、合格基準は必修問題で200点満点中160点以上、一般・臨床問題で300点満点中224点以上、禁忌肢3問以下とされた。近年と同様の基準であるが、合格率の微減と新卒者数の減少が今回の特徴となっている。大学別では、自治医科大学が新卒・既卒ともに合格率100%を達成したほか、北海道大学、京都大学も新卒で100%を記録した。平均合格率は国立93.0%、公立93.5%、私立92.5%と大きな差はないものの、既卒者を含むその他区分では54.8%と低水準にとどまった。男女別では女性92.4%、男性91.1%と女性が上回った。合格者数はコロナ禍以降、回復傾向にあったが、今回の減少は医学生数の変動や受験動向の影響が考えられる。医師偏在や地域医療構想の議論が進む中、今後の医師供給の量と質のバランスが一層重要となる。とくに新卒者数の減少は初期研修医確保にも影響を与える可能性があり、今後もこの傾向が続けば、各医療機関や自治体にとっても注視すべき事態となる。 参考 1)第120回医師国家試験の合格発表について(厚労省) 2)第120回医師国家試験の学校別合格者状況(同) 3)第120回医師国家試験合格者の状況(大学別合格者数)-9,139人が合格、合格率は91.6%(医事新報) 4)医師国家試験、合格率91.6%-新卒合格者は3年ぶりに9千人下回る(CB news) 5)2026年医師国家試験大学別合格率…合格率100%は自治医科大学(リセマム) 2.はしか患者100人超、若年層中心に増加、感染拡大に警戒/厚労省国内の麻疹(はしか)報告数が増加し、厚生労働省は注意喚起を強めている。2026年第9週までの累計報告数は87例、第10週時点では100例に達し、新型コロナ禍以降で最多となった。前年同期の22例を大きく上回る水準で、感染拡大の兆しがみられる。近年、わが国では土着株による感染は確認されておらず、2015年には世界保健機関(WHO)から排除状態と認定されている。現在の流行は、海外から持ち込まれたウイルスを起点に、国内で2次感染が広がる構図となっている。事例として、愛知県の高校での集団感染をはじめ、各地で散発的な発生が報告されており、都市部を中心に感染が拡大している。患者の約7割は10~30代で、ワクチン接種歴の不十分な層の影響が示唆されている。麻疹は空気感染を起こす極めて感染力の高い疾患であり、同一空間にいるだけで感染する可能性がある。発熱、咳、鼻水に続き発疹を呈し、重症例では脳炎を合併するリスクもある。その一方で、予防の柱であるMRワクチンの接種率は低下傾向にある。2024年度の接種率は1期92.7%、2期91.0%と、目標の95%を下回った。コロナ禍以降の接種控えが影響しているとみられ、集団免疫の維持に懸念が生じている。厚労省は、渡航前の接種歴確認や帰国後の健康観察を呼びかけるとともに、疑わしい症状がある場合は事前連絡のうえ医療機関を受診するよう求めている。感染再拡大を防ぐには、早期診断とワクチン接種率の回復が急務である。 参考 1)麻疹報告数、コロナ禍以降最多 厚労省が注意喚起(MEDIFAX) 2)はしか患者数、2026年累計100人に 25年同期22人を上回る(日経新聞) 3)感染症発生動向調査週報 2026年第9週第9号(国立健康危機管理研究機構) 3.移植医療を集約化と体制強化、報酬を4倍加算、逼迫した現場を支援/厚労省厚生労働省は、脳死下臓器提供の増加を背景に、移植医療の集約化と体制強化に舵を切った。今回の診療報酬改定で、多くの移植手術を担う施設を「拠点病院」として位置付け、人的・設備面の支援を検討する方針を打ち出している。臓器提供数は近年増加し、2025年には150例を超えたが、心臓や肺、肝臓など複数臓器の同時対応が求められるため、実施可能な施設は一部大学病院に限られている。その一方で、突発的な手術対応により手術室や看護師の確保が困難となり、受け入れ断念例も生じている。こうした現場の逼迫は深刻で、東京大学病院では移植件数が年間100例を超える中、ICUベッドに余裕があっても人員不足で受け入れられない状況や、病院経営への負担が指摘されている。実際、移植医療は従来、手術準備や人員確保のコストが大きく、病院側の持ち出しが問題となっていた。このため2026年度診療報酬改定では、臓器移植実施体制確保加算が新設され、手術料の実質4倍相当の評価が行われる。大学病院の試算では、従来は肺移植1例当たり約400万円の赤字だったが、新加算によりほぼ解消可能とされる。また、ドナーコーディネーターの業務も評価対象とし、院内での同意取得体制強化を促す。背景には、体制不足により移植を受けられなかった患者が2024年に延べ662人に上った現状がある。国立大学病院全体でも今回の改定により年間443億円の増収が見込まれ、赤字解消に寄与すると評価されている。しかし、紹介・逆紹介要件の厳格化による減収も予測され、経営改善には引き続き対応が求められる。移植医療は高度化・集約化が不可避な領域であり、今後は拠点化と財政支援を軸に、持続可能な提供体制の構築が問われる局面に入ったと言える。 参考 1)臓器移植支援へ一部病院を拠点化 厚労省、東大病院「経営苦しく」(朝日新聞) 2)脳死者の臓器移植に診療報酬加算へ…ドナーコーディネーターの働きも評価、報酬を手厚く(読売新聞) 3)国立大学病院長会議 26年度診療報酬改定年間443億円増収で赤字解消へ 外科医療確保や臓器移植加算を評価(ミクスオンライン) 4.「新たな地域医療構想」機能選択で病院の再編・集約本格化/厚労省厚生労働省は、2040年を見据えた「新たな地域医療構想」のとりまとめ案を示し、2028年度末までに各医療機関の「主たる機能」を明確化する方針を打ち出した。従来の病床機能報告に加え、新たに医療機関機能報告を導入し、各病院が担う役割を整理することで、再編・集約化と病床削減を一層進める構えである。新構想では、「医療機関の機能を急性期拠点」「高齢者救急・地域急性期」「在宅医療等連携」「専門等機能」の4区分に整理し、各施設が2040年に向けて担う機能を選択・報告する。複数機能の併存は認めつつも、急性期拠点については手術件数や救急対応などの実績要件を設け、実質的に高度急性期病院の集約を図る。人口20~30万人に1施設程度とする考え方が示され、全国では400~600施設に集約される見通しである。また、人口減少地域では構想区域の広域化を求め、より広い圏域で医療資源を維持する方向性も示された。その一方で、急性期以外の救急医療や夜間手術機能についても集約が検討されており、地域によってはアクセス低下への懸念が指摘されている。病床数の算定では、在宅医療の強化や早期リハビリによる在院日数短縮、医療DXによる効率化を前提に必要病床数を低く見積もる仕組みが採用される。急性期病床の稼働率も78%から84%へ引き上げられ、将来的な病床削減圧力が強まる見通しである。さらに、リハビリテーションでは、入院から在宅までの連続的な提供体制を支える「地域インフラ」として位置付けられ、栄養管理や口腔ケアとの一体的な取り組みも明記された。2026年10月からの機能報告を経て、各都道府県が調整を行い、医療機関ごとの役割分担が具体化する。医療提供体制の再構築が本格化する中、地域医療への影響が注視される。 参考 1)新たな地域医療構想に関するとりまとめ(厚労省) 2)新たな地域医療構想とりまとめ案 28年度末までに病院の「主な機能」を決定(保団連) 3)「新たな地域医療構想」とりまとめを了承、リハビリテーションは「地域のインフラ」へ(PT-OT-ST.NET) 5.2027年度専攻医シーリング決定、偏在是正へ都道府県連携強化/厚労省厚生労働省は、2026年3月18日に開催した「医道審議会医師専門研修部会」で、2027年度に専門研修を開始する専攻医の採用上限、いわゆるシーリング数案を了承した。新たに加算対象となった都道府県診療科から提出された指導医派遣実績を踏まえ、日本専門医機構が算定したもので、委員から大きな異論は出なかった。今後、6月下旬以降に都道府県へプログラム情報を提供し、各都道府県知事の意見や厚生労働大臣の要請を反映した修正を経て、11月の募集開始を予定している。今回のシーリングでは、最新の必要医師数と足下の医師数を用いて対象都道府県を設定し、特別地域連携プログラムと都道府県限定の連携プログラムを統合した点に特徴がある。特別地域連携プログラムの受け入れ可能数は全領域で採用上限を上回り、地域偏在是正に向けた受け皿整備は一定程度進んだ。その一方で、通常プログラム加算は実績に応じて付与されるが、加算上限を下回る領域もあり、制度運用はなお調整段階にある。あわせて部会では、2040年を見据えた医療需要の変化に対応する専門医養成も論点となった。85歳以上人口の増加、高齢者救急の拡大、生産年齢人口の減少を踏まえ、各基本領域学会に対し、将来重要となる疾患や患者像、専門医制度上の課題を尋ねるアンケート調査を実施する方針が示された。専攻医以降のキャリアチェンジやリカレント教育の必要性も指摘された。さらに、医師偏在対策では都道府県、大学医学部、大学病院の連携強化が不可欠とされた。地域枠、広域連携型臨床研修、専門研修連携プログラム、総合診療医育成などを医師確保計画に明確に位置付け、地域定着を後押しする方向で議論が進む。専攻医シーリングは、単なる採用枠調整にとどまらず、地域医療を支える医師養成全体を再設計する局面に入った。 参考 1)令和7年度第5回医道審議会医師分科会 医師専門研修部会(厚労省) 2)2027年度の専攻医シーリング数が決定、募集開始に向けた調整進む(日経メディカル) 3)医師偏在是正策の強化に向け「都道府県・大学医学部・大学病院の連携」をこれまで以上に強化せよ-医師偏在対策検討会(Gem Med) 6.薬剤アレルギー既往見落としで死亡事故が発生、市民病院を提訴/愛知県愛知県の西尾市民病院で診療を受けた70代女性が、薬剤アレルギー既往のある薬を処方・服用後に死亡したとして、遺族が市と調剤薬局を相手取り約2,541万円の損害賠償を求め提訴した。訴状によれば、女性は2025年2月に受診し、処方箋を受け取り、院外薬局で調剤された薬剤を服用後、約41日後に死亡した。遺族側では、医療機関はアレルギー既往歴を把握可能であったにもかかわらず看過したと主張している。その一方で、市側はアレルギー薬剤の処方自体は認めつつも、死亡との因果関係には争いがあるとしている。この事件は単なる確認漏れが原因ではなく、電子カルテおよびオーダリングシステムにおけるアレルギー情報の管理・共有体制が問題の根幹にある。日本医療機能評価機構は、医療安全情報の分析レポートで、アレルギー情報が「登録されているが参照されない」「画面上で視認性が低い」「更新が不十分」といった要因により、処方時に活用されない事例が発生していることを繰り返し指摘している。また、院内で把握されていた情報が院外薬局に十分伝達されないケースや、薬局側での最終確認が機能しなかった事例も報告されている。院外処方が一般化してから、医療機関と薬局の間の情報連携不足は構造的リスクとなっており、患者申告に依存した運用には限界がある。電子カルテ上のアレルギー情報については、入力の標準化、警告アラートの強化、処方時の確認が不可欠である。このためマイナ保険証の活用のほか、2重3重のチェック体制をどのように実効性ある形で運用するかが問われている。今回の訴訟は、医療安全について「情報があること」と「実際に使われること」の乖離を改めて浮き彫りにした。現場での確認フローの見直しなど再発防止策が求められる。 参考 1)「薬のアレルギーで死亡」70代女性遺族、愛知県西尾市などを提訴(中日新聞) 2)電子カルテ・オーダリングシステムを用いた薬剤アレルギーの情報共有に関連した事例(日本医療機能評価機構) 3)電子カルテ・オーダリングシステムを用いた薬剤アレルギーの情報共有に関連した事例(日本医療機能評価機構)

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事例44 運動器リハビリテーション(1)の査定と復活【斬らレセプト シーズン4】

解説事例では、「頸肩腕症候群」の患者に算定した「L000 運動器リハビリテーション」が、保険診療上適当でないとしてC事由(医学的理由による不適当)が適用されて査定となりました。診療報酬点数表の通知には、「運動器リハビリテーション料の対象患者 二 関節の変性疾患、関節の炎症性疾患その他の慢性の運動器疾患により、一定程度の運動機能および日常生活能力の低下を来している患者(令和6年3月5日 保医発0305第4号 別表第九の八)」とあります。この通知から「ICD-10 M53(頸腕症候群、脊柱不安定症など)」は、運動器リハビリテーションの対象とされています。頸肩腕症候群は、M53.1に割り当てられており、算定可能と考えていました。しかしながら、頸肩腕症候群は、必ずしも可動制限が伴い日常生活に支障を来すものではありません。運動器リハビリテーションを必要とする根拠に薄いと考えられます。事例ではここを根拠に、保険診療上適当でないとの判断をされたものと推測できます。運動器リハビリテーションを必要とする場合には、その適応状態を明確に示してほしいと投げかけられたのではないかと考えました。事例のカルテを参照すると、可動制限と日常生活の支障があるため、運動器リハビリテーション実施の指示が記載されていました。再審査請求可能と考え、運動器リハビリテーションを必要とした状態の説明とカルテの写しを添えて申請したところ復活しました。医師と相談して、運動器リハビリテーションの実施に際して該当病名だけでは根拠に薄いと考えられる場合には、必要とする状態を簡単に付記することにして査定対策としています。

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英語で「脱臼する」ってどう言う?【患者と医療者で!使い分け★英単語】第54回

医学用語紹介:脱臼する dislocate関節などを「脱臼する」ことを指す動詞はdislocate、名詞ではdislocationといいます。これらの単語は一般にも浸透している言葉ですが、「脱臼する」ことを「関節が外れた」と言うのと同様に、英語でも日常会話では別の言い方をすることが多いです。さて、それはどんな表現でしょう?講師紹介

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「スマートウェア」がフィットネストラッキングの次の最前線に

 健康意識の高い人は、ウォーキングやジョギングの前に手首にFitbitを装着したり、ベルトに歩数計を付けたりすることが習慣になっている。しかし、追加の装置を用意しなくても歩数の測定や身体の動きの追跡が可能な「スマートウェア」の実現につながる新たな研究結果が明らかになった。現在使用されている肌に密着させるセンサーよりも、ゆったりとした衣服に取り付けた小型センサーの方が、身体の動きを正確に記録できることを突き止めたという。英キングス・カレッジ・ロンドン(KCL)工学分野のMatthew Howard氏らによるこの研究の詳細は、「Nature Communications」に1月20日掲載された。 Howard氏は、「手首に付けるFitbitや、コンピューターで生成された映像のキャラクターを演じる俳優が着るスーツのような、動作追跡技術で最も正確な結果を得るには、センサーを身体に密着させる必要があると考えられてきた。センサーが密着していないとデータにノイズが含まれる、あるいは雑然としたものになるというのが一般的な考え方だった」と話す。 Howard氏らは今回の研究で、ゆったりとした衣服にセンサーを取り付け、人間とロボットに多様な動作を行わせて得られたデータを解析し、その動作認識能力および動作予測能力を、従来のようにセンサーを腕や脚に直接装着する方式と比較した。その結果、ゆったりとした衣服に取り付けられたセンサーでは、体に装着されたセンサーと比べて最大40%迅速かつ高い精度で身体の動きを捉え、そのために必要なデータ量は約80%削減できることが明らかになった。 Howard氏らによると、ゆったりした布地は動きを検知しやすくする「機械的増幅器」のように機能し、気付くのが難しいレベルのかすかな動きの違いも識別できることが分かったという。Howard氏は、「腕を動かし始めると、腕を緩やかにまとう袖は、一定の形が維持されずに、折れ曲がったり、波打ったり、複雑に揺れ動いたりする。身体に密着したセンサーよりも動きに対して繊細に反応するのだ」と同氏は説明する。 KCL解剖学・生体力学分野のIrene Di Giulio氏は、「手首にしっかりと巻き付けたリストバンドの場合、患者の動きが小さ過ぎて捉えられないことがある。そのため、パーキンソン病などの疾患が患者の日常生活にどのような影響を与えているのかについて、常に最も正確なデータが得られるわけではない。今回検討したアプローチでは、人の動きを『増幅』させることができるため、通常の障害のない身体の動きと比べて小さな動きでも検知できるようになる」とニュースリリースの中で述べている。 Di Giulio氏はまた、「この技術によって、自宅や介護施設などの慣れた環境の中で、普段着で過ごしている人の動きを追跡することができるようになるだろう。それにより、医師が患者をモニタリングしやすくなるだけでなく、医学研究者によるパーキンソン病などの疾患の解明や、こうした障害に対応するウェアラブル技術を含む新たな治療法の開発に不可欠なデータを収集しやすくなる可能性がある」と期待を示している。 さらにHoward氏は、「こうした動作追跡装置は、より高性能のロボットの開発にも活用できる。ロボット工学研究の多くは、人間の行動を学習し、それをロボットが模倣することを目的にしている。そのためには、普段の人間の動きから膨大なデータを収集する必要がある。しかし、伸縮性のある素材でできたボディスーツを着て日常生活を送りたいと思う人は多くはないだろう」と同氏は述べている。 その上でHoward氏は、「今回の研究は、普段着に目立たないセンサーを取り付けることで、ロボット工学の領域に革命をもたらすために必要な、世界中の人の動作データを収集できる可能性を示している」と述べている。

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自宅リハビリの実施状況、4人に3人が不十分

 多くの人が、自宅で行うように指示された理学療法の「宿題」の一部、あるいは全てを実施しておらず、その結果、回復の遅延や停滞が生じている可能性のあることが、新たな調査で明らかになった。米オハイオ州立大学ウェクスナー医療センターが行った調査によると、4人に3人(76%)の患者が、自宅で取り組むように言われたリハビリテーション(以下、リハビリ)を、指示通りに実施していないことが判明したという。 「こうした自主的に行うリハビリは、単なる形式的な課題ではなく、回復に欠かせない重要な要素だ」と同センターの理学療法士Kyle Smith氏は強調する。同氏は、「1週間は168時間あるが、患者がクリニックで過ごすのはそのうち1〜3時間に過ぎない。クリニックでの時間だけでは大きな変化を起こすには不十分なのだ」とニュースリリースで述べている。Smith氏らは、日常生活の中に取り入れられる簡単な行動でも違いが生まれると話す。例えば、通勤や買い物の際に少し遠くに駐車する、歯を磨きながら片足で立つ、テレビを見ながらストレッチやスクワットをするなどのちょっとした工夫が、効果につながるという。 今回の調査では、1,006人の米国人を対象に、処方された理学療法(リハビリ)の実施状況を尋ねた。調査は2025年9月18日から21日にかけてウェブと電話で実施された。 その結果、自宅でのリハビリを「全て実施した」と答えた人は24%にとどまり、28%は「4分の3以上(75〜99%)」、27%は「半分から4分の3(50〜74%)」、11%は「4分の1から半分(25〜49%)」実施したと回答した。一方で、8%は1〜25%しか行っておらず、全く行わなかった人も2%いた。 年齢別に見ると、65歳以上の高齢層は若い世代よりも指示通りにリハビリを行う傾向が強く、30%が「全て実施した」と回答したのに対し、30歳未満での割合は12%にとどまった。一方で、リハビリをほとんどやらなかった人の割合は、65歳以上では5%だったのに対し30歳未満では15%と、高齢層より若年層の方で指示通りに実施しない傾向が認められた。 リハビリを続けられなかった理由としては、「忘れてしまい、リマインダーもなかった」が40%で最も多く、次いで、「時間がなかった、予定が合わなかった」の33%、「運動が単調で退屈だった」が22%、「すぐに結果が見えなかった」が19%、「痛みがあった、悪化が心配だった」が18%、「通院の合間に状況確認がなかった」が15%、「自宅のスペースや器具が不足していた」が13%、「必要と思っていなかった」が12%、「指示を十分に理解できていなかった」が5%であった。 Smith氏は、「目標を達成し、筋力や移動能力を改善し、体の痛みに対する感受性を軽減するためには、患者自身の継続的な取り組みが不可欠であることを、われわれ理学療法士が患者にきちんと伝えていく必要がある」と述べている。

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第286回 OTC類似薬に追加負担、出産実質無償化 医療保険改革法案を閣議決定/政府

<先週の動き> 1.OTC類似薬に追加負担、出産実質無償化 医療保険改革法案を閣議決定/政府 2.小児医療センターで何が起きたのか 髄腔内注射で死亡発生/埼玉県 3.大学病院機能強化事業77校決定 収賄事件で東大対象外/文科省 4.赤穂市民病院の元執刀医に禁錮1年、執行猶予3年の有罪判決/神戸地裁 5.リハビリ病院で799件不正請求 2027年4月に保険医療機関指定取り消し/北海道 6.再生医療投与中に60代女性死亡、都内のクリニックに緊急停止命令/厚労省 1.OTC類似薬に追加負担、出産実質無償化 医療保険改革法案を閣議決定/政府政府は3月13日、健康保険法などの改正を柱とする医療保険制度改革法案を閣議決定した。現役世代の社会保険料負担の上昇抑制と、限られた医療財源の効率的配分を目的としたもので、OTC類似薬への追加負担導入や正常分娩の実質無償化などを盛り込んだ。主な柱は、「OTC類似薬の追加負担導入」「後期高齢者医療で金融所得を保険料や窓口負担に反映」「正常分娩の実質無償化」「高額療養費制度見直し時の長期療養患者への配慮」の4点。OTC類似薬とは、市販薬と成分や効果が似た処方薬で、77成分・約1,100品目が対象と想定される。政府は薬剤費の25%を追加負担とする方向で検討しており、子供やがん・難病患者、長期療養者、低所得者には配慮措置を設ける方針。また、後期高齢者医療では、これまで十分反映されてこなかった配当などの金融所得を把握し、保険料や窓口負担に反映させることで、負担能力に応じた公平化を図る。その一方で、正常分娩については全国一律の基本単価を設定し、保険給付と現金給付を組み合わせて妊婦の自己負担を軽減する。出産費用の地域差や施設間格差の是正も狙う。ただ、薬剤自己負担の見直しなどによる保険料軽減効果は1人当たり月183円程度との試算もあり、がん患者団体や野党は「重症患者や子育て世代に負担が集中する」と反発している。医療現場では、患者説明や処方行動、産科施設の経営や地域医療への影響など、制度改正の実務的な影響を注視する必要がある。 参考 1) 現在検討している医療保険制度改革についての考え方(厚労省) 2) 【OTC類似薬の自維合意】薬剤費の25%の上乗せされる薬剤(77成分1,100品目)(保団連) 3) 健康保険法など改正案決定 OTC類似薬に追加負担、75歳以上の医療費は金融所得反映(産経新聞) 4) 健保法改正案が閣議決定 OTC類似薬に追加負担 分娩、保険適用で無償に(日経新聞) 5) 市販薬と成分・効果似る「OTC類似薬」は患者が追加負担、健康保険法など改正案を閣議決定(読売新聞) 6) ロキソニンやアレグラなど1,100品目、27年3月から患者追加負担…厚労省が「OTC類似薬」提示(同) 7) “出産の無償化”法案が閣議決定 分娩1件の単価設定 分娩施設に直接支給へ 妊婦の負担軽減・現金支給も(FNNプライムオンライン) 2.小児医療センターで何が起きたのか 髄腔内注射で死亡発生/埼玉県埼玉県立小児医療センターで、白血病治療のため抗がん剤の髄腔内注射を受けた3人に重篤な神経障害が生じ、10代男性1人が死亡、10歳未満の男児と別の10代男性2人が重体となっている。3人はいずれも2025年1月、3月、10月に治療を受け、歩行困難や大腿部痛、全身まひなどを発症した。病院は2025年11月に髄腔内注射を中止し、外部有識者を含む調査対策委員会を設置。髄液検査の結果、本来この治療で使用しない抗がん剤のビンクリスチンが3人全員から検出され、原因薬剤の可能性が高いと判断した。ビンクリスチンは、白血病や悪性リンパ腫に用いる一方で、強い神経毒性があり髄腔内投与は禁止されている。世界でも誤投与事例が報告され、わが国でも2021年に静岡県内で同種の事故が起きていた。今回の髄腔内注射自体は、小児急性リンパ性白血病で中枢神経再発を防ぐ標準治療で、通常は慎重な管理のもと行われる。調剤室は3重のセキュリティー管理下にあり、薬剤は鍵付き保管庫で厳重保管、調剤・運搬・投与も複数職種で確認していたとされ、記録上も使用形跡や手順上の明確な不備は確認されていない。このため病院は事故と事件の両面を視野に3月10日に県警へ届け出た。当初病院側は1例目、2例目は副作用として捉えていたが、3例目を受け「9ヵ月で3回は異常」と判断して本格的な調査に着手した。上野 賢一郎厚生労働大臣はさいたま市と連携して対応する考えを示し、埼玉県も原因究明と医療安全の徹底、患者家族への説明を求めている。同センターは、県内小児高度医療の中核施設で、2024年には延べ512人、2025年も中止までに427人が髄腔内注射を受けていた。専門家からは「通常では考えられない」との声が出ており、同様の治療を受ける患者家族への不安対応も課題となっている。 参考 1) 小児医療センターにおける髄腔内注射治療後の重篤な神経症状の発症について(埼玉県立小児医療センター) 2) 髄くう内注射で患者が神経症状 病院 “3回は異常”で調査(NHK) 3) 埼玉県立小児医療センターで抗がん剤の髄腔内注射を受けた10代男性死亡、2人に重度の後遺症(読売新聞) 4) 小児医療センター、抗がん剤手順に「落ち度なし」「事件事故両面の可能性」(同) 5) 3重セキュリティーの調剤室、鍵付き保管庫、分単位の調剤記録…抗がん剤で患者死亡は「考えられない事態」(東京新聞) 6) 埼玉県立小児医療センターの患者死亡「市と連携し対応」厚労相(NHK) 7) 埼玉県立小児医療センター死亡問題 県「重く受け止める」 早期究明を要請(東京新聞) 3.大学病院機能強化事業77校決定 収賄事件で東大対象外/文科省文部科学省は3月11日、大学病院の教育・研究基盤の強化を支援する「大学病院機能強化推進事業」の対象として国公私立77大学を選定したと発表した。物価高や人件費上昇などで経営環境が悪化する大学病院を支援するため、2025年度補正予算で349億円を計上し、最先端医療機器の整備や人材育成、研究体制の強化などに対し1大学当たり最大5億円を補助する。医学部を持つ81大学のうち78の大学が申請したが、東京大学は唯一選定されなかった。その理由として大学院医学系研究科の元教授らが収賄容疑で逮捕・起訴された事件を受け、医学部・附属病院の組織風土改革や病院長のマネジメント体制など具体的な改革案が示されていない点が問題視された。また、九州大学は病院長が出張旅費の不正支出問題で辞任したことを踏まえ、交付額が3割減額された。選定委員会は、大学病院が高度医療の提供や医師養成、地域医療の中核を担う一方で、近年は経営悪化が進んでいると指摘している。また、各大学が提出した改革プランや自治体との連携体制、設備整備計画などを審査し、選定したとしている。大学病院を巡っては高度医療と教育研究を担う役割が大きいだけに、今回の選定結果は経営改革やコンプライアンス体制の重要性を示すものとなった。 参考 1) 大学病院機能強化推進事業(経営環境の改善に資する教育研究基盤の充実)の選定結果について(文科省) 2) 文科省の大学病院支援事業、東京大学選ばれず 汚職事件が影響(日経新聞) 3) 国の大学病院支援に東京大学のみ選ばれず 元教授らの収賄事件が影響(朝日新聞) 4) 大学病院機能強化事業、東大以外77大学を選定…文科省(リセマム) 4.赤穂市民病院の元執刀医に禁錮1年、執行猶予3年の有罪判決/神戸地裁兵庫県の赤穂市民病院で2020年、腰椎手術中に81歳女性患者の脊髄神経を医療用ドリルで切断し重い後遺障害を負わせたとして、業務上過失傷害罪に問われた元執刀医に対し、神戸地裁姫路支部は3月12日、禁錮1年、執行猶予3年の有罪判決を言い渡した。判決では、止血が不十分で術野の視認性が確保できないまま、ドリル操作を続けた点について、「止血に努めるのは基本中の基本」であり、基本的注意義務違反は明白だと指摘。患者は下半身不随や膀胱直腸障害、強い疼痛など全治不能の障害を負っており、「罰金刑にとどまる事案ではない」とした。その一方で、助手を務めた上級医が手術を止めず、経験の浅い術者を支えるチームが機能していなかったことや、被告が事実上医師として就労困難で社会的制裁を受けている事情を踏まえ、執行猶予を付けた。同病院では、同医師が関与した手術で計8件の医療事故が判明しており、本件はウェブ漫画『脳外科医竹田くん』を通じても広く知られた。被害者家族は判決後、「奪われた身体の自由と時間は戻らない」と厳しい処分を求め、代理人は医道審議会での免許取り消しも検討すべきだと訴えた。赤穂市は判決を厳粛に受け止め、医療安全体制の強化と再発防止に取り組むとしている。民事訴訟ではすでに市と元医師に約8,900万円の賠償を命じる判決が確定している。今回の刑事判決は、個人の手技上の過失だけでなく、指導・監督体制やインシデント把握後の組織対応も含めて医療安全を問い直す事案として受け止められている。被害者側は、通常の医療事故の刑事事件化拡大には慎重姿勢を示しつつも、本件は「基本中の基本」を欠いた特異な事案だと強調。判決を1つの節目としながらも、再発防止と信頼回復を求める声はなお強い。また、病院事業管理者は経営悪化の責任を取って3月末で辞任する意向を示しており、病院運営全体への影響も広がっている。 参考 1) 赤穂の患者神経切断、元執刀医に有罪 目視困難でもドリル操作(日経新聞) 2) 手術中ドリルで神経切断、半身不随に 医師に禁錮1年・執行猶予3年(朝日新聞) 3) 手術中に神経切断 元赤穂市民病院医師に執行猶予付き有罪判決(NHK) 4) 経営責任取り今月末で辞任 高原秀典・病院事業管理者(赤穂民報) 5.リハビリ病院で799件不正請求 2027年4月に保険医療機関指定取り消し/北海道北海道厚生局は3月11日、札幌市西区の平和リハビリテーション病院(160床)について、診療報酬の不正請求を理由に、保険医療機関の指定を2027年4月1日付で取り消すと発表した。確認された不正請求は2024年3~9月診療分までの799件、総額約1億8千万円に上る。厚生局によると、同院は療養病棟入院基本料1の施設基準である看護職員や看護補助者の配置数を満たしていないことを認識しながら、必要な変更届を出さないまま、同基本料や夜間看護加算、療養病棟療養環境加算1、医療安全対策加算2、感染対策向上加算3などを請求していた。開設者からの報告を受けた厚生局は、個別指導後に監査へ移行し、2025年3月から9月に計5回の監査を実施して不正を認定した。同病院を運営する医療法人社団静和会は謝罪し、保険指定取り消し後は運営継続が困難になるとして、地域医療への影響を避けるため、札幌市南区の医療法人社団CHCPヘルスケアシステムへの事業譲渡に向け調整を進める方針だと公表した。病院側は、内部監査で不正請求を把握したとし、「意図的ではなく管理不足が原因」と説明しているが、厚生局は保険診療の根幹を揺るがす重大事案と判断した。同院は内科、整形外科を標榜し、病床稼働率は9割超という。療養病床の看護配置や加算算定は慢性期医療の収益基盤に直結するだけに、届出基準と実態の乖離を放置した責任は重い。事業譲渡まで診療は継続する方針で、患者受け入れ体制を維持しながら信頼回復と再発防止策の具体化が求められる。慢性期病院を巡っては、人員確保難が続くが、基準未達のまま算定することは認められず、今後は法人統治とコンプライアンス体制の立て直しが焦点となる。 参考 1) 診療報酬不正請求799件 札幌の病院指定取り消し-来年4月1日付(CB news) 2) 札幌・平和リハビリテーション病院、保険指定取り消し 27年4月 診療報酬1億8千万円不正受給(北海道新聞) 3) 札幌市の病院が不正請求1億8,000万円 保険医療機関指定取り消し(毎日新聞) 6.再生医療投与中に60代女性死亡、銀座のクリニックに緊急停止命令/厚労省東京都中央区の「医療法人ネオポリス診療所銀座クリニック」で自由診療の再生医療を受けた外国籍の60代女性が死亡し、厚生労働省は2026年3月13日、再生医療安全性確保法に基づき同クリニックなどに業務の一時停止を命じる緊急命令を出した。女性は10日、慢性的な痛みの改善を目的として、自身の脂肪から採取した幹細胞を培養し、静脈内に投与する治療を受けていたが、投与中に容体が急変し、救急搬送中に心肺停止となり、搬送先の医療機関で死亡が確認された。死因は現時点で不明で、厚労省は原因究明を進めている。治療に用いられた細胞は、京都市の「JASC京都幹細胞培養センター」と韓国・ソウルの「RBio幹細胞培養センター」で製造されていた。厚労省は国内施設である京都のセンターに対して細胞製造の一時停止を命じ、韓国の施設には日本向けの出荷停止を要請した。さらに同施設の細胞加工物を使用している国内の医療機関にも使用中止を求めている。再生医療を巡っては、2025年8月にも都内の別のクリニックで患者が死亡する事案が発生しており、今回の緊急命令は2例目となる。厚労省は、再生医療を提供する医療機関に対し、救急対応体制の整備や法令順守の徹底を求める通知も出しており、自由診療の再生医療の安全管理のあり方が改めて問われている。今後、厚労省は立ち入り調査などを含め、治療の安全性や運用体制の実態解明を進める方針だ。 参考 1) 再生医療等の安全性の確保等に関する法律に基づく緊急命令について(厚労省) 2) 再生医療で60代女性死亡 銀座のクリニックなどに業務一時停止の緊急命令 厚労省(時事通信) 3) 都内クリニックで再生医療受けた60代女性が死亡…死因は不明、厚労省が医療提供一時停止の緊急命令(読売新聞) 4) 自由診療の細胞投与で死亡 厚労省、東京の診療所に治療提供停止命令(日経新聞)

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英語で「筋肉痛」ってどう言う?【患者と医療者で!使い分け★英単語】第53回

医学用語紹介:筋肉痛 myalgia今回は「筋肉痛」「筋肉の痛み」について説明します。医療現場ではmyalgiaという専門用語が使われますが、患者さんとの会話ではどのような一般的な英語表現を使えばよいでしょうか?講師紹介

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末梢動脈疾患(PAD)の症状改善にメトホルミンは無効(解説:小川大輔氏)

 末梢動脈疾患(Peripheral Artery Disease;PAD)は、動脈に脂肪やコレステロールが蓄積する動脈硬化によって、腹部大動脈から下肢の動脈が狭くなり血流が制限される疾患である。これにより、歩行時の足の痛み(間欠性跛行)などの症状が生じる。症状はゆっくりと現れることが多いが、急激に悪化する場合もある。主な原因は動脈壁への脂肪、コレステロールなどの蓄積、いわゆるアテローム性動脈硬化と考えられている。PADの患者は動脈硬化を原因とする狭心症や脳梗塞を合併することが多いため、下肢だけでなく全身の動脈硬化症の評価も必要となる。 PADの治療としては、禁煙、生活習慣病の管理、運動療法、薬物療法、血行再建術などがある。PADの最大の原因は喫煙であり、禁煙は必須の治療である。糖尿病、高血圧症、脂質異常症があればそれらの治療も行う。運動療法は血流改善や新しい血管(側副血行路)の発達を促すため、痛みが生じない範囲でのウォーキングなどの運動は有効である。血行再建術は、運動療法やシロスタゾールなどの薬物療法で症状の改善が見られない場合や重症の場合に検討される。カテーテル治療(血管内治療)やバイパス手術はPADの部位や患者の状態を考慮して実施される。 PADは歩行障害を引き起こす重篤な循環器疾患であり、効果的な治療法が限られている。そこで今回非糖尿病のPAD患者に対し、2型糖尿病の治療薬であるメトホルミンを6ヵ月間投与し、歩行能力に与える効果を検証したランダム化二重盲検試験が実施された1)。その結果、メトホルミンはPAD患者の歩行能力改善には効果がないと結論付けられた。 メトホルミンは主に肝臓での糖新生を抑制したり、筋肉や脂肪組織でのブドウ糖の取り込みを促進したりすることによって血糖値を下げる効果がある。その他、血管内皮細胞におけるAMP活性化プロテインキナーゼの活性化、酸化ストレスの抑制、内皮型一酸化窒素合成酵素の活性化などの作用も報告されている2)。メトホルミンのこれらの“pleiotropic effects”による血管内皮機能の改善により、PAD患者の血流改善や歩行時間延長を期待され、この試験が実施された。 メトホルミンがPAD患者の歩行能力改善に効果がなかった理由として、喫煙率が約30%と高かったことや、インスリン抵抗性の強くない症例が多かったこと、また観察期間が6ヵ月と短かったことなどが考えられる。その他の可能性として、著者らはPAD患者の骨格筋や血管内皮でAMP活性化プロテインキナーゼがすでに最大活性化されているため、メトホルミンの追加効果が得られなかった可能性を考察している。 いずれにしても今回の研究でPADの歩行障害に対するメトホルミンの効果はないことが示された。今後は異なる作用機序を持つ治療薬の開発や、PADの複雑な病態に対処する新たなアプローチの研究が求められる。またそれ以前に、完全禁煙や肥満の是正、厳格な血圧管理など、現状できることをまずはきちんと行うことが重要である。

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脳外傷後の迅速な神経リハがアルツハイマー病のリスクを抑制する

 外傷性脳損傷(TBI)がアルツハイマー病(AD)や認知症のリスク上昇と関連していることが疫学研究から示されている。一方、TBI後の神経リハビリテーション(神経リハ)がそのリスクを抑制し得ることを示唆する、複数の研究結果が報告されている。ただし、神経リハ開始のタイミングによってAD等のリスクが異なるのかは明らかでない。米ケース・ウェスタン・リザーブ大学のAustin A. Kennemer氏らはこの点について、リアルワールドの医療情報データベースであるTriNetXを用いて、米国内の大規模医療機関69施設の患者データを解析し検証した。結果の詳細は「Journal of Alzheimer's Disease」に10月9日掲載された。 2000~2019年に中等度または重度のTBIと診断され6カ月以内に神経リハを受けていた50~90歳の患者から、TBI前にAD、認知症、軽度認知障害(MCI)の診断またはAD関連薬剤の処方記録がある患者を除外した3万7,081人を抽出。このうち2万8,157人は神経リハがTBI後1週間以内に開始され、8,924人は1週間以上経過してから開始されていた。 人口統計学的因子(年齢、性別、人種/民族)、社会経済的因子(教育歴、雇用状況、居住環境など)、およびTBIや認知症のリスクに影響を及ぼし得る疾患等の既往歴(糖尿病、肥満、心血管疾患、COPD、薬物乱用など)について傾向スコアマッチングを行い、各群8,818人からなるコホートを作成。3年後および5年後の追跡調査時点のAD発症を主要アウトカム、MCI、認知症、およびAD関連薬剤の処方を副次的アウトカムとしてリスクを比較した。なお、神経リハ早期開始群は平均年齢64.0±9.09歳、女性41.1%、後期開始群は同順に63.9±9.05歳、40.9%だった。 Cox比例ハザードモデルでの検討の結果、神経リハ早期開始群の後期開始群に対するADリスクは、3年後(ハザード比〔HR〕0.59〔95%信頼区間0.41~0.86〕)および5年後(HR0.70〔同0.52~0.94〕)ともに有意に低いことが示された。同様に、認知症(3年後がHR0.77〔0.68~0.88〕、5年後が0.88〔0.79~0.98〕)、MCI(同順に0.71〔0.60~0.84〕、0.72〔0.62~0.84〕)、AD関連薬剤の処方(0.69〔0.56~0.84〕、0.79〔0.66~0.93〕)のいずれも、早期開始群の方が有意に低リスクだった。 Kennemer氏は、「われわれの研究結果は、TBI後の迅速な神経リハ開始が、長期予後にとり重要であることを示している」と述べている。

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英語で「足をひきずる」は?【患者と医療者で!使い分け★英単語】第52回

医学用語紹介:間欠性跛行 claudication今回は「間欠性跛行」について説明します。医療現場ではclaudication(もしくはintermittent claudication)という専門用語が使われますが、患者さんとの会話では、どのような英語表現を使って伝えるのでしょうか?講師紹介

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