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呼吸器外科医からみたCOPD ~肺がん治療の重大なリスクファクターCOPD~

COPD罹患頻度COPDと肺がんは、双方とも喫煙との関連が高く、併存例も多くみられます。呼吸器外科では手術前のスパイロメトリーは必須検査であるため、実際の両者の併存状況もわかります。当施設は他施設に比べCOPD患者さんの比率が若干多いかも知れませんが、肺がん手術対象の患者の30%がCOPDを合併していることがわかりました。合併するCOPDの重症度はGOLD分類1(軽症)が半数、GOLD分類2(中等症)以上が半数というものでした。COPD患者の肺の状態COPD患者さんの肺は、そうでない方とは圧倒的な違いがあります。正常な肺は上葉、中葉、下葉とも同じ柔らかさ(コンプライアンス)を持ち、肺は均等に広がります。しかし、COPDの肺は、気腫状になり破壊された部分が極端に膨らんで正常な肺が潰されてしまうのです。正常な肺の気腔が狭くなってしまうと、換気不足により静脈血が動脈にそのまま還ってしまう肺内シャントに近い状態となり、VQミスマッチ(換気血流不均等)から低酸素血症にいたることもあります。手術の際も違いがわかります。COPD肺は破壊されているため、ステープラーで切っているときに針穴から空気漏れが起こることがあります。肺は弾力性のある臓器ですが、COPDでは肺の弾力性がなくなっているためステープラー操作によって組織が裂けてしまうわけです。こういう現象は、COPDを併存したほとんどの例でみられます。また手術時、肺を虚脱させる際にも違いがでます。CODPでは、吸気時は気道が広がり空気が入っていくものの、気道が狭窄しているため呼気時に気道が細くなると空気が出ていかないチェックバルブ現象が起きます。そのため、COPD肺では虚脱しようとしても気道が塞がって肺胞に残った空気がでていかず、潰れにくいのです。気管支のチェックバルブ現象画像を拡大するCOPD併存による弊害COPDの肺は喫煙により、組織の破壊と再生が繰り返されています。つまり、細胞分裂が非常に活発に行われているわけです。がんはDNAのミスマッチコピーですので、細胞分裂が多いほどがんが発生する率が高くなるため、COPD患者では肺がんの発症が多くなるのです。しかも、COPDに発生する肺がんはきわめてアグレッシブな低分化がんです。COPDと肺がん発症率Mannino DM, et al. Arch Intern Med. 2003;163:1475-1480.画像を拡大するCOPD患者では経年的に肺がんの発症数が上昇。この傾向は中等症から重症で顕著である呼吸器外科にとって手術のリスクファクターとしてCOPDほど重要なものはありません。COPDでダメージを受けた肺を切り取るという操作を加えること自体きわめて大きなリスクファクターですが、COPDの患者さんは術後合併症の発生率も非常に高いのです。たとえば、術後の難治性肺瘻(肺からの空気漏れ)の発生率はCOPD併存例で12%に対し非併存例では4%と4倍、肺炎発生率はCOPD併存例で6%に対し非併存例では1%と6倍も高くなります。また、術後QOLが悪くなり、これも大きな問題だといえます。また、前述の通り低分化がんで進行が速いため、通常であれば肺葉切除で済むケースでも、COPD併存例ではリンパ節への転移が進んで手術範囲が大きくなることも少なくありません。COPDと肺がん死亡率画像を拡大するCOPDでは手術の可否の判断も複雑です。肺がんの手術適応基準は術後残存呼吸機能FEV1が800cc以上というものですが、COPDでは術後の呼吸機能が想定以上に悪くなることがあります。たとえば、肺がん切除後にCOPD病変部分が残る場合、正常の肺部分が少なくなるため、術後呼吸機能は想定以上に悪くなり、患者さんによっては手術ができないということが起こります。逆にCOPD病変と肺がんが同部位だと、肺の良い部分を残して悪い部分をとることになるため呼吸機能が劇的に良くなります。このように、COPDでは呼吸機能だけでなく手術部位を考慮してから、手術の可否を判断しないと危険です。呼吸機能の悪さ、耐術性の乏しさ、アグレッシブな低分化がん、と肺がん治療にとってCOPDは三重の障害をもたらすのです。COPDでは、がん以外の併存症にも重要なものがあります。COPDの死因の第1位は呼吸不全ですが、第2位は循環器疾患です。つまり、重症化して呼吸不全になる前に心臓の合併症が問題になるわけです。肺が悪ければ心臓とくに右心系に負荷がかかるため、心筋梗塞や心不全が起こりやすくなります。そのため、COPDの治療をすることで、心臓合併症死を減らさなければいけないわけです。最悪のオーバーラップ…CPFECOPDと間質性肺炎は双方とも喫煙が原因であるためオーバーラップすることがあります。この病態は気腫合併肺線維症CPFE(Combined Pulmonary Fibrosis and Emphysema)とよばれ、近年注目されています。COPDの一部に存在し、典型的には上葉に気腫、下葉に間質性肺炎がある新しい疾患概念です。このポピュレーションは、低酸素血症が著明に起こり、非常に予後も悪く術後の合併症も多いのが特徴です。さらに厄介な事に、呼吸機能が正常であることが多いのです。気腫と線維化が相殺して呼吸機能(1秒率)が見かけ上、正常なのです。呼吸機能だけを指標に手術に踏み切ると、落とし穴にはまる事もあります。今後、この病態の研究は盛んに行われるでしょう。COPD患者180例における各表現型の比率画像を拡大するCPEEの死亡率画像を拡大するCOPD併存肺がん症例での臨床試験COPDは未診断の患者が多い疾患ですが、呼吸器外科では必ずスパイロメトリーを行うため潜在的なCOPD患者を把握できる確率は高いのです。それも手術可能な症例なので、内科でのCOPDよりも軽症の患者さんが多くおられます。COPDには、チオトロピウム(商品名:スピリーバ)のUPLIFTなど大規模な研究が数多くあるものの、外科が主体となった研究はなく、呼吸器外科医が診る軽症例における、有用性や予後改善効果はわかっていません。さらに、手術適応ボーダーライン上の患者にチオトロピウムを投与することでFEV1が改善し手術可能となるか? また、それに長期的な意義があるのか? といったことも明らかにはなっていません。そのため、現在は当施設だけの小規模な試験ですが、多施設共同で300例を目標に術後合併症発生率をエンドポイントとした第3相試験を始めています。がんとCOPDのフォローアップを両輪で行う呼吸器外科の手術後、がん再発のフォローアップは通常10年程度ですが、COPD合併患者さんは術後もCOPDの状態であるため、生涯フォローアップが必要です。また、手術前はモチベーションがあるので治療薬を使ってくれるものの、症状がないため手術後薬物治療をやめてしまう患者さんも数多くいます。そのため、内科と連携を図り、がんとCOPDのフォローアップを両輪で行えるようなシステムが実現できると良いと思います。COPDもがんも世界的に増えていく疾患です。知識豊富な呼吸器内科の力をお借りし、今後は診療科を超えた連携対策を実施していく必要があると思います。

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エキスパートに聞く!「COPD」Q&A

認知症や寝たきり患者さんのCOPD診断の方法は?この場合、呼吸機能検査や胸部所見もとれませんので厳しい状態ではありますが、換気不全については呼気CO2アナライザーを用いて確認可能です。換気不全があると呼気中CO2濃度は上昇します。間質性肺疾患など拘束性換気障害ではこのような現象はみられませんので、呼気中CO2濃度の上昇は閉塞性障害がベースにあるという根拠になります。長い喫煙歴がありCOPDの肺所見もあるが、スパイロメトリーは正常な患者に対する対応法は?横隔膜の平低化などの画像所見がある方で、スパイロメトリーが正常だということはまずなく、何か異常があるものです。しかし、閉塞性換気障害が確認できない場合でも、咳や痰などの症状がある場合、旧分類ではステージ0とされ、将来COPDになる可能性が高いため、禁煙が推奨されています。また、こういった方たちの進行をいかにして防ぐかというのは今後の課題でもあります。呼吸器・循環器疾患の既往がなく非喫煙者であるものの、スパイロメトリーが異常な患者に対する対応法は?このケースではさまざまな要素が考えられます。閉塞性換気障害があることを想定すると、まず喘息の鑑別が必要です。また、非喫煙者であっても受動性喫煙についての情報をとることも重要です。さらに、胸郭の変形の確認や、日本人にはほとんどいませんがαアンチトリプシン欠損の除外も必要です。それから、もう1つ重要なことは、再検査によるデータの確認です。患者さんの努力依存性の検査ですから、適切に測定されて得られる結果かどうかの確認はぜひとも必要です。COPDと心不全合併症例における治療方針は?原則としてCOPDについてはCOPDの治療を行いますが、薬物療法とともに低酸素血症への酸素投与が重要です。COPDにより誘導される心不全は、基本的には右心不全であり、利尿薬が選択されます。拡張性心不全に準じて、利尿薬とともに利尿薬によるレニン-アンジオテンシン系の刺激作用を抑制するためにACE阻害薬やARBの併用が勧められています。不整脈などの症状が出たら、それに合わせた対応が必要となります。吸入ステロイドを導入するケースは?吸入ステロイド(以下:ICS)はCOPDそのものに対する有効性はあまり認められていません。しかし、急性増悪の頻度を減らすことが認められています。そのため、ICSは増悪を繰り返す際に安定を得るために投与するのが良いと考えられます。また、現在は長時間作用性β2刺激薬(以下:LABA)との配合剤もあり、選択肢が広がっています。LAMA、LABA/ LAMA配合薬、ICS/LABA配合薬の使い分けについて教えてくださいLAMAおよびLABA/LAMAについては、さまざまな有効性が証明されており、COPDの薬物療法のベースとして考えていただくべきだと思います。ICS/LABA配合薬 については、上記ICSの適応症例に準じて、適用を判断していくべきだと思います。また、テオフィリンのアドオンも良好な効果を示し、ガイドラインで推奨されているオーソドックスな方法であることを忘れてはいけないと思います。*ICS:吸入ステロイド、LABA:長時間作用性β2刺激薬、LAMA:長時間作用性抗コリン薬

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聖路加GENERAL 【Dr.仁多の呼吸器内科】

第1回「息が苦しいのはどういう時ですか?」第2回「胸が痛いのは、心臓のせいだけではありません」第3回「慢性の咳にはまずCXRから」第4回「先生、痰に血が混じっているのですが・・・」 第1回「息が苦しいのはどういう時ですか?」鑑別の難しい呼吸器疾患へのアプローチのポイントについて、役立つ情報が満載です。【CASE1:軽い咳と白色痰が続くために来院した65歳の男性】身体所見は特に問題ありません。しかし、よくよく聞いてみると、数年前から駅の階段を昇る時に息苦しさがあり、最近強くなってきたことがわかりました。また、この患者は40本/日の喫煙を45年間続けていました。労作時呼吸困難は、医師から尋ねないとわからないことが多いため、詳細な問診が重要なポイントになります。検査の結果、労作時呼吸困難の原因は重度のCOPDでした。他に考えられる労作時呼吸困難を引き起こす症例としては間質性肺炎があります。その診断方法、病期分類、治療について詳しく解説します。【CASE2:3ヶ月前から駅の階段を昇るときに息苦しさを感じ始め、増悪傾向の60歳女性】この方は、ペットとしてチンチラを飼っています。肺疾患の場合、ペット飼育歴や住環境を必ず確認します。診察の結果、聴診で両下肺野でfine cracklesを聴取しました。呼吸副雑音を聴取したときは、その音の性質とフェーズを確認することで、その原因をある程度絞り込むことができます。その方法について、詳しく解説します。そして、びまん性肺疾患の場合、症状がない場合でも専門医に送ることが勧められています。必要な検査を実施し、治療方針を立てて、協力しながら治療を進めることが重要です。この患者の場合も、検査の結果、意外なところに原因がありました !第2回「胸が痛いのは、心臓のせいだけではありません」気胸の鑑別、画像による診断、治療などについて詳しく解説します。【CASE1:突然刺されるような胸痛を訴えた42歳の男性】胸痛といえば、循環器疾患を思い浮かべますが、今回は呼吸器による胸痛の症例です。労作時に呼吸困難があったことから、胸部X線写真を撮った結果、気胸であることがわかりました。気胸は、つい見逃しがちな疾患といえますが、まずは、「胸痛の鑑別診断に必ず含める」ということを気を付けたいところです。若年に多いとされる自然気胸ですが、40代でも発症する例はあります。気胸には緊急性を要するものがあるため、この患者のように突然発症した場合は、まず救急車で搬送するのが原則です。【CASE2:3ヵ月前から慢性的に右胸痛を訴える58歳の女性】労作時呼吸困難を伴うため、胸膜炎などによる胸水が疑われます。単純エックス線写真を撮影したところ、右肺にかなりの胸水が貯留していることが確認されました。CTも撮影してよく確認してみると、胸水の貯留している右肺ではなく、比較的健康に見えた左肺にその原因につながる影が確認されました。胸痛の診断のポイントは、ずばり問診です。痛みの性状にくわえて、突然発症したか、持続するか断続的かなどの時相的な要素も重要なポイントになります。胸痛には、解離性大動脈瘤など、緊急性の高い疾患も含まれますので、しっかり問診をして鑑別することが重要です。これらのポイントについて、具体的にわかりやすく解説します。第3回「慢性の咳にはまずCXRから」慢性咳嗽についてポイントを詳しく解説します。【CASE1:15本/日の喫煙を40年間続けてきた62歳男性】咳嗽の出現をきっかけに救急室を受診し、気管支炎の疑いで抗菌薬を処方されましたが、改善しませんでした。その後、抗菌薬を変えたところ効果があったかにみえましたが、またすぐに咳嗽が再燃してしまいました。このように、長引く咳をみたときには、まず胸部単純写真(CXR)を撮ることが、診断のポイントになります。本症例では、CXRから結核を疑い、検査の結果結核と診断されました。初動が遅れることで結果的に治療が遅れ、感染の可能性が高まってしまいました。このような事例を防ぐためには、常に疑いをもち、問診の時点から結核を発症しやすい患者を見ぬくことがコツです。また、多剤併用が原則の治療についても、詳しく解説します。【CASE2:乳がん術後、化学療法中の65歳女性】数カ月前から乾性の咳が続くため、咳喘息の疑いで吸入ステロイド治療を開始しましたが、改善はあるものの軽快しません。胸部単純写真を撮影したところ、正面では問題がないように見えましたが、側面では、ちょうど心臓の裏側に隠れるように浸潤影が確認されました。咳の鑑別において重要なことは、まず腫瘍、結核などの器質的疾患を除外することです。そのためには、胸部単純写真は正面だけでなく、側面も撮ること、必要があればCTを撮って確認することが重要です。どのような場合にCTを撮ればよいのか、ポイントをお伝えします。また、遷延する咳の鑑別について詳しく解説します。第4回「先生、痰に血が混じっているのですが・・・」血痰の鑑別について、詳しく解説します。【CASE1:半年ほど前から、週に2〜3回、断続的に痰に血が混じるようになった77歳の女性】60歳ごろから検診などで胸部異常陰影を指摘されていましたが、経過観察となっていました。血痰をみると、まず結核、肺がん、気管支拡張症などを疑いますが、最初に考えなくてはいけないことは、「本当に血痰なのかどうか」です。もしかすると、口腔内の出血や、吐血の可能性もあります。この患者の場合は、以前より胸部異常陰影があることと、喫煙歴などから肺病変の疑いが強いと考え、検査をしたところ、非結核性抗酸菌症であることがわかりました。非結核性抗酸菌症においては、最終的な診断が出るまで、必ず結核の疑いを持つことが重要です。【CASE2:若い頃から気管支拡張症を指摘されていた66歳の女性】3日前から発熱、喀痰が増加し、近医で肺炎と診断されて、抗菌薬治療を開始していました。ところが、入院当日に持続する喀血があり、救急車で搬送。画像検査では、気管支拡張症と肺の病変が認められました。喀血において、最も重要なことは、その量です。出血の原因より、喀血による窒息のほうが重要な問題を引き起こすためです。本症例においても、大量の喀血とされる600ml/24hrを超えると思われる出血がありました。このような場合、まず気道確保が重要です。気管支鏡検査をしたところ、出血部位を下方にしても両側に血液が流れこむほどの出血があったため、気管支ブロッカーを使用して気道を確保しました。その後、原因とみられる気管支動脈をBAEによって塞栓しました。このように、大量喀血は緊急性の高い場合が多く、その検査の流れなどを詳しく解説します。

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Dr.岡田のアレルギー疾患大原則

第8回「喘息(前編)」第9回「喘息(後編)」第10回「アトピー性皮膚炎」第11回「じん麻疹・血管性浮腫・接触性皮膚炎」 第8回「喘息(前編)」喘息の基本は、慢性の気道炎症→気道過敏症→気道狭窄→喘息発作。長期コントロールは気道炎症を抑える抗炎症剤、発作が起こってしまったら炎症がおさまるまでとりあえず気管支拡張剤で呼吸を維持するのは常識ですが、炎症を抑えるためにステップアップすることばかりでなく、副作用も無視できません。そこで、もう一歩奥に踏み込んで、アレルギー、鼻炎、GERDなどを含めた慢性炎症の原因について考えていきます。 前編では、いつもの外来ですぐに役立つ、毎回聞く6つの質問、ピークフローがどうして必須なのか、GINA2006、JGL2006の具体的な利用法、ロイコトリエン抑制剤の効果が得られやすい患者群と吸入性ステロイドを使うべき患者の特徴などを解説します。第9回「喘息(後編)」喘息の長期コントロールには気道炎症を抑える抗炎症剤を用います。しかし、患者さんから「ステロイドはちょっと…」と言われたときはどうしていますか? また折角処方しても実際使ってもらえないのでは意味がありません。後編では、吸入ステロイドの副作用に関してデータを一つひとつ示しながら、医師も患者も納得して使えるように詳しく説明していきます。 さらに、抗ロイコトリエン剤が有効な症例の選び方、アスピリン喘息の解説、喘息治療の落とし穴=Vocal Cord Dysfunctionの症例呈示に加えて、ヨーロッパで常識になってきているシングルインヘーラー療法まで紹介します。第10回「アトピー性皮膚炎」ステロイドクリームの強さの分類が、アメリカと日本とフランスでは全く違うことをご存じでしょうか。日本では5段階中2番目のベリーストロングに分類されている「フルメタ」が、アメリカでは7段階中4番目と、真ん中より下になります。このような例からも分類に固執して部位ごとに外用薬を何種類も処方したり、症状によって毎回種類を変えるのではなく、塗り方と回数を調節してみる方が効果があることがわかります。 今回は簡単なステロイドの使い方はもちろん、ワセリンが加湿剤ではなく保湿剤であることを認識した上での使い方、また、注意が必要な感染症であるとびひ、ヘルペス、真菌症などについて解説します。 できてしまったアトピーは、先ずシンプルに一度治してしまいましょう!第11回「じん麻疹・血管性浮腫・接触性皮膚炎」大人の慢性じん麻疹は、食物アレルギーに因る確率はわずか1%未満で、原因としては自己免疫、ストレス、感染症など様々な因子に関連していることが多いです。しかし、いつ、どこまで検索すればよいのか迷うことはないでしょうか。今回は、すべての原因を一つの図にして、患者さんが納得できる説明方法と実践的な治療法を紹介します。また、複雑な病態を診断する上で無意識に行っているパターン認識、Aphorism(定石集)、分析の考え方も整理します。 接触性皮膚炎は、アレルギー性と刺激性の区別を発症時間、症状、病態でひとつの表にすると鑑別が容易になります。数少ない実地臨床で高頻度に出会う「非I型(IV型)アレルギー=接触性皮膚炎」をマスターすれば、大原則の総仕上げです!

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乙葉さんをナビゲーターに起用し、喘息患者の啓発を開始

喘息疾患啓発活動 チェンジ喘息! 乙葉さん啓発キャンペーン・ナビゲーター 就任記者会見 9月26日東京ソラマチ(東京都墨田区)にて、記者会見が行われた。 冒頭、主催者であるアストラゼネカ株式会社およびアステラス製薬株式会社から、今回のキャンペーンの内容、趣旨が発表された。今回のキャンペーンでは、タレントの乙葉さんをナビゲーターに迎え、テレビCMを中心として、患者さん向けにWEBサイトの開設や患者向けパンフレットの医療機関への配布などが行われる予定だという。  足立満氏(国際医療福祉大学山王病院 教授)と乙葉さんが登壇し、二人によるトークセッションが行われた。足立氏は、喘息発症率や喘息治療法、吸入ステロイドの使用率増加等を解説し、乙葉さんは、自身が喘息患者であることを公表したうえで、自身の経験を述べた。  乙葉さんは、8歳から喘息で苦しみ、大人になってからも発作は続いていたという。テレビ収録においても、とくに生放送では、いつ咳き込むかわからない不安な気持ちで収録に臨み、頓服の治療薬も常に持ち歩いていた。それは、乙葉さんのマネージャーがみても、痛々しいものであった。それが、最近の喘息治療薬の登場により、収録時の不安も解消し、健康な人と同様に外を走り回れるようになった。 乙葉さんは、「このキャンペーンを通じて、自分と同じように喘息に苦しむ喘息患者が、一人でも多く、健常人と同じように元気な毎日を送れるよう、喘息治療の啓発をしていきたい。」と抱負を語った。 これから、秋になると喘息患者が増えるという。これからTV CMを中心とした患者啓発を受け、治療意欲を持った患者が、医療機関を訪問することが増えることが期待される。

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小児期の吸入グルココルチコイド服薬と発育との関連/NEJM

 思春期前の小児における吸入グルココルチコイドの使用は、服薬開始後数年間の発育を低下し、大人になった時の身長は低くなるが、発育の低下は進行も累積もしないことが明らかにされた。米国・ニューメキシコ大学のH. William Kelly氏ら小児喘息マネジメントプログラム(CAMP)研究グループが、「服薬開始後1~4年の発育の低下が、成人でも発育を低下するとは考えられない」として、同プログラム参加者を対象に調査した結果で、NEJM誌2012年9月6日号(オンライン版2012年9月3日号)にて発表した。試験開始時にブデソニド、ネドクロミル、プラセボ投与群に無作為化 研究グループは、CAMP(Childhood Asthma Management Program)の参加者1,041人のうち943人(90.6%)について、平均24.9±2.7歳時の成人身長を測定・評価した。被験者は5~13歳時の試験開始時に、ブデソニド(商品名:パルミコート)400μg/日投与群、ネドクロミル(国内未承認)16mg/日投与群、プラセボ投与群の、いずれかに無作為に割り付けられ4~6年の間投与を受けた。人口統計学的特性、喘息の特性、試験登録時の身長を調整した多重線形回帰分析を用いて、各治療群の成人身長を算出し、プラセボ群と比較した。身長格差は吸入服薬開始後2年間、1日投与量が増すほど大きく結果、平均成人身長は、プラセボ群と比較してブデソニド群は1.2cm低く(95%信頼区間:-1.9~-0.5、p=0.001)、ネドクロミル群は0.2cm低かった(同:-0.9~0.5、p=0.61)。最初の2年間、吸入グルココルチコイドの1日投与量が多いほど成人身長は低くなる関連(1μg/kg体重につき-0.1cm)が認められた(p=0.007)。ブデソニド群のプラセボ群に対する成人身長の格差は、治療2年後時点で認められた格差(-1.3cm:95%信頼区間:-1.7~-0.9)と同等であった。ブデソニド群の最初の2年間の発育速度の低下は、主に思春期前の被験者で認められた。

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ドライパウダー式吸入剤「シムビコートタービュヘイラー」に、COPDの効能追加

アステラス製薬株式会社とアストラゼネカ株式会社は10日、ドライパウダー式吸入剤「シムビコートタービュヘイラー」について慢性閉塞性肺疾患(以下、COPD:Chronic Obstructive Pulmonary Disease)が効能追加として承認取得されたと発表した。シムビコートタービュヘイラーは、COPDの薬物療法の中心である気管支拡張薬の一つである長時間作用性β2刺激薬(LABA)と、COPDの増悪を減少させる吸入ステロイド(ICS)の配合剤。COPD患者の場合、吸入回数は4吸入(朝2吸入、夜2吸入)で吸入器具(タービュヘイラー)より吸入する。1日の薬剤吸入量は、ブデソニド640μgとホルモテロールフマル酸塩水和物18μg。 シムビコートタービュヘイラーは、日本では2010年1月に1日2回投与のドライパウダー吸入式の喘息治療配合剤として発売された。2012年4月現在で、喘息の治療薬として114ヵ国、COPDの治療薬として106ヵ国で承認されている。 詳細はプレスリリースへhttp://www.astrazeneca.co.jp/activity/press/2012/12_8_10.html

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小児喘息患者に対するPPI投与の効果は?

小児喘息患者に対するランソプラゾール(商品名:タケプロンなど)の投与は、喘息症状の改善にはつながらないことが報告された。肺機能や喘息関連のQOL(生活の質)についても有意な効果は認められず、一方で呼吸器への感染リスクについては有意な増大が報告された。米国・ジョンズホプキンス大学のJanet T. Holbrook氏らが、300人超の小児喘息患者について行った無作為化プラセボ対照二重盲検試験の結果明らかにしたもので、JAMA誌2012年1月25日号で発表した。小児喘息患者では、一般によく無症候性胃食道逆流疾患が認められる。胃食道逆流疾患が喘息コントロール不良の原因の一つではないかと考えられているが、プロトンポンプ阻害薬(PPI)投与によって喘息コントロールが改善するかどうかについては、これまで明らかにされていなかった。24週間追跡し、ACQスコアや肺機能の変化を測定研究グループは、2007年4月~2010年9月にかけて19ヵ所の大学病院を通じ、胃食道逆流症状が明らかには認められていない小児喘息患者で吸入ステロイド治療ではコントロール不良の306例について試験を行った。被験者の年齢は6~17歳で、平均年齢は11歳(SD 3歳)だった。研究グループは被験者を無作為に二群に分け、一方の群にはランソプラゾール(体重30kg未満は15mg/日、30kg以上は30mg/日)を、もう一方の群にはプラセボを投与した。追跡期間は24週間だった。主要アウトカムは、喘息コントロール質問票(ACQ)スコアの変化だった。副次アウトカムは、肺機能や喘息関連QOLの変化や、緊急受診といった喘息コントロール不良に関するイベント件数とされた。ACQスコア、肺機能、喘息関連QOL、いずれも両群で変化に有意差なし結果、両群のACQスコア変化平均値の格差(ランソプラゾール群-プラセボ群)は、0.2ユニット(95%信頼区間:0.0~0.3)と有意差は認められなかった。また、1秒間努力呼気量の平均値の変化についても両群の格差は0.0L(同:-0.1~0.1)で、喘息関連QOLスコアの平均値の変化も両群の格差は-0.1(同:-0.3~0.1)と、いずれも有意差は認められなかった。ランソプラゾール群のプラセボ群に対する、喘息コントロール不良に関するイベント発生の相対リスクは1.2(同:0.9~1.5)で、有意差はなかった。一方で、ランソプラゾール群はプラセボ群に比べ、呼吸器感染リスクが高く、相対リスクは1.3(同:1.1~1.6)だった。また、食道pH測定を受けた115例の胃食道逆流症有病率は43%だった。これらサブグループについても、ランソプラゾール群とプラセボ群でアウトカムに有意差はなかった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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喘息リスク幼児へのグルココルチコイド、低用量連日 vs. 高用量間欠

前年に修正版喘息予測指標(API)陽性または喘息増悪を示した喘息リスクを有する幼児には、グルココルチコイドの連日吸入が推奨されている。米国・カイザーパーマネント南カリフォルニアのRobert S. Zeiger氏ら全米心臓・肺・血液治療ネットワークは、連日吸入に対して懸念される発育への影響について検討するため、12~53ヵ月児278例を対象に、低用量連日投与と高用量間欠投与とを比較する、1年間の無作為化二重盲検パラレル比較試験を行った。結果、増悪に関して、低用量連日投与の高用量間欠投与に対する優位性は示されず、低用量連日投与のほうが1年時点の薬剤曝露量が多かったことが報告された。NEJM誌2011年11月24日号掲載報告より。278例を対象に1年間の無作為化二重盲検パラレル比較試験試験は2008年8月~2009年7月に、全米7施設から278例の12~53ヵ月児を登録して行われた。被検児は前年に、修正版API陽性、喘鳴エピソードを有し(4回以上、あるいは3回以上で3ヵ月以上吸入薬を服用)、1回以上の増悪を呈した、障害の程度は低い幼児だった。被検児は無作為に、ブデソニド吸入用懸濁液(商品名:パルミコート)を1年間、高用量間欠レジメン(1mgを1日2回7日間投与を事前定義の気道疾患時に早期開始で行う)か、低用量連日レジメン(毎晩0.5mg投与)にて投与する群に割り付け検討した。両群投与はプラセボを用いて調整され、高用量間欠レジメン群は、疾患発症時以外はプラセボを毎晩投与され、低用量連日レジメン群は、疾患発症時の1日2回投与をプラセボ1回と0.5mg投与1回で受けた。主要アウトカムは、経口グルココルチコイド投与を要する増悪の頻度とされた。両レジメン群の増悪頻度に有意差認められず、低用量レジメンのほうが平均曝露量大結果、両レジメン群の増悪頻度に関して有意な差は認められなかった。低用量連日レジメン群の患者・年当たりの増悪発生率は0.97(95%信頼区間:0.76~1.22)、高用量間欠レジメン群は同0.95(同0.75~1.20)で、間欠レジメン群の相対発生比率は0.99(95%信頼区間:0.71~1.35、p=0.60)だった。初回重症度までの時間など喘息重症度やや有害事象など、その他の指標についても有意差は認められなかった。ブデソニド曝露については、連日レジメン群よりも間欠レジメン群のほうが平均値で104mg少なかった。(武藤まき:医療ライター)

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COPD患者への増悪予防としてのアジスロマイシン

慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者への増悪予防を目的としたアジスロマイシン(AZM)投与は、急性増悪の頻度を減らしQOLを改善することが、プラセボ対照無作為化試験の結果、報告された。米国・コロラド大学デンバー健康科学センターのRichard K. Albert氏らCOPD Clinical Research Networkが、増悪リスクの高い特定の患者1,557例を対象に、標準治療に加えアジスロマイシン250mg/日を1年間投与した結果による。ただし、被験者の一部で聴覚障害が認められたという。NEJM誌2011年8月25日号掲載報告より。250mg/日を1年間投与COPDの急性増悪は、死亡リスクの上昇や肺機能の急速な低下はもとより、本人の労働機会を奪い、開業医やER受診、入院機会の頻度を増し治療コストを上昇させる。標準治療〔吸入ステロイド薬、長時間作用性β2刺激薬(LABA)、長時間作用性抗コリン薬〕も頻度は減らすものの、なお年平均1.4回の急性増悪が認められることから、Albert氏らは、種々の炎症性気道疾患に有効なマクロライド系抗菌薬の予防的投与について検討した。試験対象となったのは、40歳以上のCOPDの増悪リスクは高いが、聴覚障害、安静時頻脈または補正QT間隔延長の著明なリスクはない患者であった。合計1,577例がスクリーニングを受け、うち1,142例(72%)が、標準治療に加えてアジスロマイシン250mg/日を1年間受ける群(570例)、または同プラセボを受ける群(572例)に無作為に割り付けられた。試験登録は2006年3月から始まり、1年間投与後2010年6月末まで追跡評価された。主要アウトカムは、初回急性増悪までの期間。副次アウトカムには、QOL、黄色ブドウ球菌や肺炎レンサ球菌などの鼻咽頭細菌コロニー形成、服薬アドヒアランスが含まれた。急性増悪の頻度減少、QOL改善も、一部患者で聴覚障害、耐性菌出現の影響は不明1年間の追跡調査を完了した患者は、アジスロマイシン群89%、プラセボ群90%であった。初回増悪までの期間の中央値は、アジスロマイシン群266日(95%信頼区間:227~313)に対して、プラセボ投与群は174日(同:143~215)で有意な延長が認められた(P

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COPDの標準治療へのβ遮断薬追加の有用性が明らかに

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療において、β遮断薬を標準的な段階的吸入薬治療に追加すると、全死因死亡、急性増悪、入院のリスクが改善されることが、イギリス・Dundee大学のPhilip M Short氏らの検討で示された。β遮断薬は、心血管疾患に対する明確なベネフィットが確立されているが、COPDを併発する患者では、気管支攣縮の誘導や吸入β2刺激薬の気管支拡張作用の阻害を理由に使用されていない。一方、β遮断薬がCOPD患者の死亡や増悪を抑制する可能性を示唆する報告があるが、標準的なCOPD治療薬との併用効果を検討した研究はないという。BMJ誌2011年5月14日号(オンライン版2011年5月10日号)掲載の報告。β遮断薬の上乗せ効果を評価する後ろ向きコホート試験研究グループは、COPD管理におけるβ遮断薬の意義を評価するために、標準治療+β遮断薬の効果を検討する後ろ向きコホート試験を実施した。スコットランド、テーサイド州の呼吸器疾患データベースであるTayside Respiratory Disease Information System(TARDIS)を検索して、2001年1月~2010年1月までにCOPDと診断された50歳以上の患者5,977例を抽出した。Cox比例ハザード回帰分析にて、全死因死亡、経口副腎皮質ステロイド薬の緊急投与、呼吸器関連入院のハザード比を算出した。全死因死亡率が有意に22%低下平均フォローアップ期間は4.35年、男性3,048例/女性2,929例、診断時の平均年齢は69.1歳、使用されたβ遮断薬の88%が心臓選択性であった。β遮断薬の追加によって全死因死亡率が22%低下した(ハザード比:0.78、95%信頼区間:0.67~0.92)。β遮断薬追加が全死因死亡にもたらすベネフィットは、治療の全段階で認められた。対照群(1,180例、短時間作用性吸入β2刺激薬、短時間作用性吸入抗コリン薬のいずれか一方のみで治療)との比較における全死因死亡率の調整ハザード比は、吸入ステロイド薬(ICS)+長時間作用性β2刺激薬(LABA)+長時間作用性抗コリン薬チオトロピウム(Tio)併用治療では0.43(95%信頼区間:0.38~0.48)、これにβ遮断薬を追加した場合は0.28(同:0.21~0.39)であり、いずれも有意に改善されたが、ICS+LABA+Tio+β遮断薬併用治療のほうがより良好であった。急性増悪時の経口ステロイド薬の緊急投与および呼吸器関連入院の低減効果についても、全死因死亡と同様の傾向がみられ、β遮断薬追加のベネフィットが示された。長時間作用性気管支拡張薬や吸入ステロイド薬にβ遮断薬を併用しても、肺機能に対する有害な影響は認めなかった。著者は、「β遮断薬は、COPDの確立された段階的吸入薬治療と併用することで、併存する心血管疾患や心臓病薬との相互作用を起こさずに、かつ肺機能へ有害な影響を及ぼすことなく、死亡や増悪を低下させる可能性がある」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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都市部の小児喘息コントロール、抗IgE抗体omalizumab追加で改善

都市部に住む小児、青年、若年成人の喘息患者に対して、ガイドラインベースの治療に加えてヒト化抗ヒトIgEモノクローナル抗体omalizumabを投与することで、喘息コントロールを改善し、増悪の季節性ピークはほとんどなくなり、喘息コントロールのためのその他薬剤の必要性が低下したことが示された。米国・ウィスコンシン大学マディソン校医学・公衆衛生部のWilliam W. Busse氏らによるプラセボ対照無作為化試験の結果による。これまでに行われた都市部に住む小児の喘息患者の調査研究で、アレルゲンへの曝露やガイドラインベースの治療の徹底で増悪を減らせることは示されているが、重症例における疾患コントロールには限界があることが示されていた。NEJM誌2011年3月17日号掲載より。ガイドラインベースの治療にomalizumabを追加した場合の有効性を検討抗IgE抗体omalizumabは、最新の全米喘息教育・予防プログラム(NAEPP)ガイドラインで、より高次の治療ステップでもコントロールできない喘息患者への治療として推奨されており、投与した患者の一部で増悪や症状発現、疾患コントロール維持のための吸入ステロイド薬の投与量を減らすことが示されている。一方で、都市部住民における罹患率増加の背景には、アレルギー体質の人が多いことや、大量のアレルゲンに曝露されていることがあり、Busse氏らは、omalizumabが特にこれら住民にベネフィットをもたらすのではないかと考え試験を行った。2006年11月~2008年4月に、8施設から、都市部に住む持続性喘息を有する小児、青年、若年成人を登録し、無作為化二重盲検プラセボ対照パラレルグループ試験を行った。ガイドラインベースの治療に加えてomalizumabによる治療を行うことの有効性について検討した。試験は60週間行われ、主要アウトカムは喘息症状とされた。omalizumab 群では、症状発現、増悪が有意に低下、吸入ステロイド薬とLABAの使用も減少スクリーニング後無作為化されたのは419例(omalizumab群208例、プラセボ群211例)、平均年齢は10.8歳、58%が男子、60%が黒人、37%がヒスパニック系だった。また73%が、疾患分類が中等度または重度だった。結果、omalizumab群がプラセボ群と比べて、喘息症状発現日数が2週間で1.96日から1.48日へと有意に24.5%減少したことが認められた(P<0.001)。同様に1回以上の増悪を有した被験者の割合についても、omalizumab群では48.8%から30.3%へと有意な低下が認められた(P<0.001)。またomalizumab群では、吸入ステロイド薬およびLABA(長時間作用性β2刺激薬)の使用が減少した。しかしそれにもかかわらず改善が認められた。(武藤まき:医療ライター)

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コントロール不良の成人喘息患者へのチオトロピウム追加投与

吸入用ステロイド(グルココルチコイド)単独療法でコントロール不良の成人喘息患者の代替治療に関して、COPD治療薬として開発された長時間作用性抗コリン薬の臭化チオトロピウム水和物(商品名:スピリーバ、日米とも喘息は未適応)の追加投与が、喘息症状および肺機能を改善することが報告された。米国ウェイクフォレスト大学のStephen P. Peters氏らNHLBI喘息臨床研究ネットワークによる。その効果は、すでに改善効果が認められている長時間作用性β2刺激薬(LABA)のサルメテロール(商品名:セレベント)を追加投与した場合と、同等のようだと結論している。NEJM誌2010年10月28日号(オンライン版2010年9月19日号)掲載より。チオトロピウム追加投与を、ステロイド倍量、サルメテロール追加投与とそれぞれ比較Peters氏らは、18歳以上喘息患者210例を対象に、チオトロピウム追加投与(毎朝18μg)、吸入用ステロイド倍量投与(160μg〈2パフ・80μg〉を1日2回)、サルメテロール(50μgを1日2回)追加投与を段階的に受ける二重盲検トリプルダミー交差試験を行った。試験目的は、吸入用ステロイド単独療法へのチオトロピウム追加投与に関する評価を、吸入ステロイド用倍量投与と比較(主要評価項目、優越性を評価)およびサルメテロール追加投与の場合と比較(副次評価項目、非劣性を評価)することだった。ステロイド倍量投与に優越、サルメテロール追加投与に非劣性優越性を検討した吸入用ステロイド倍量投与との比較では、朝の最大呼気流量(PEF)とした主要転帰が、チオトロピウム追加投与の方が優れていることが認められた。PEF平均差は25.8 L/分(P<0.001)だった。また、大半の副次転帰についても優れていた。たとえば、夕方のPEF平均差は35.3 L/分(P<0.001)、喘息コントロール日数の差は0.079(P=0.01)、気管支拡張薬投与前1秒量(FEV1)の差は0.10 L(P=0.004)、1日症状スコアの差は-0.11ポイント(P<0.001)などだった。一方、サルメテロール追加投与との比較では、すべての評価項目で非劣性であることも認められた。なかでも、気管支拡張薬投与前FEV1はチオトロピウム追加投与の方がより大きな増大が認められ、その差は0.11 L(P=0.003)だった。(武藤まき:医療ライター)

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喘息治療・理想と現実のギャップ ―25,000人の喘息患者と5,000人の医師に対する実態調査―

2010年4月20日、東京大手町サンケイプラザにてアステラス製薬株式会社/アストラゼネカ株式会社による喘息プレスセミナーが開催された。セミナーでは、帝京大学医学部内科学講座呼吸器・アレルギー学教授の大田 健氏が「喘息治療・理想と現実のギャップ」と題して講演を行った。大田氏は、気管支喘息の治療と管理のあり方に対する理想と現実のギャップについて、「ACTUAL II」という実態調査の結果を紹介した。本調査は、医師5,000名とその医師が診療している患者25,000名を対象に、調査票記入郵送法により2009年7月~10月に行われた。有効回答数は、患者24,150名、医師4,766名であった。回答した医師のうち、診療所・医院・クリニックに所属する医師は91.3%を占め、「喘息の治療実態を如実に反映している」と大田氏は話した。調査の結果から、およそ9割の対象患者が配合剤を含む吸入ステロイド剤を処方されていたが、52%の患者は、喘息のコントロールが不十分であることがわかった。また、53%の患者は服薬を遵守できていなかった。服薬遵守率は低いほど、コントロール不十分の割合が上昇することも明らかになった。この原因として大田氏は「喘息の病態ついて、医師と患者の理解・認識にギャップがあること」を挙げている。喘息の基本的かつ重要な病態である「気道の炎症が原因である」という点について、90%の医師が「説明している」と認識している一方で、「説明を受けた」とする患者は44.3%にとどまっていた。一方、現治療に対する満足度に関しては、患者はおおむね満足していることがわかった(10点満点中7.7点が平均)。しかし、満足度が高い患者群においても、コントロール不十分の割合は3割を超えることが明らかになった。患者の治療満足度に対する影響度を重回帰分析で調べたところ、最も影響した因子は、「長期にわたって発作のない安定した生活が送れる」と「数分で症状が消失し、長時間安定した状態が続く」であった。このことから、喘息患者では、ある程度の症状が起こるのは、仕方がないことと諦めてしまっている可能性が示唆された。最後に、大田氏は「喘息の治療目標は、健常人と変わらない生活を送ることです。喘息の病態に対する理解を深め、医師・患者ともに、このゴールを目指していけるようにしたい」と講演を締めくくった。(ケアネット 呉 晨/吉田 直子)

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小児喘息、低用量吸入ステロイド療法でコントロール不良の場合の次なる選択肢は?

低用量吸入ステロイド療法(ICS)を受けていても、多くの子どもでコントロール不良の喘息が起きる。米国ウィスコンシン大学医学公衆衛生校Robert F. Lemanske氏らは、コントロール不良が起きた場合の次なる治療法に関して模索する試験「BADGER(Best Add-on Therapy Giving Effective Responses)」を実施した。これまでステップアップ療法に関するエビデンスはない。検討されたのは、「ICS増量」「LABA追加」「LTRA追加」の3つのステップアップ療法で、基線特性によって次なる選択肢としてどれが最適かが評価された。NEJM誌2010年3月18日号(オンライン版2010年3月3日号)掲載より。3つのステップアップ療法に対する反応差を検証試験は、fluticasone 100μgを1日2回投与ではコントロール不良だった、6~17歳児182例。対象児は、3つの盲検化されたステップアップ療法、すなわち「ICS増量」(fluticasone 250μgを1日2回)、「LABA追加」(fluticasone 100μg+長期作用型β作動薬50 μgを1日2回)、「LTRA追加」(fluticasone 100μgを1日2回+ロイコトリエン受容体遮断薬5mg/日もしくは10mg/日)を、無作為にオーダーされた順番で16週間ずつ計48週間受けた。使用された薬剤商品名はそれぞれ、fluticasoneは「Flovent Diskus」、長期作用型β作動薬は「Advair Diskus」、ロイコトリエン受容体遮断薬は「Singulair」である。評価は、複合転帰[増悪、コントロールできた日数、1秒量(FEV1)]を指標に、それぞれのステップアップ療法間の反応差が25%以上となるかどうかが判定された。「LABA追加」への反応が最も良さそうだったが……反応差が確認されたのは、165例の患児のうち161例(P<0.001)だった。反応が最も良かったのは「LABA追加」で、「LTRA追加」と比べて相対確率は1.6倍(P=0.004)、「ICS増量」とでは同1.7倍(P=0.002)だった。また「LABA追加」への反応は、無作為化前の喘息コントロールスコア(基線でのコントロール良好)が高い患児ほど、反応が良さそうだった。人種別の特性としては、白人の子の「LABA追加」への反応が最も良さそうだったこと、黒人の子の「LTRA追加」への反応が最も悪そうだったことが挙げられている。しかし結論としてLemanske氏は、「「LABA追加」への反応が他の2療法よりも有意に高いようだったが、他の2療法の方が最良の反応だった患児も多かった。したがって、定期的モニタリングを欠かさず、患児に応じた最適なステップアップ療法を選択していく必要があることが強調されたと言える」とまとめている。(医療ライター:武藤まき)

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喘息配合剤トップシェアを目指す~国内2剤目のシムビコート発売会見~

2010年1月14日、国内2番目の配合喘息治療薬、シムビコートに関して、アステラス製薬株式会社/アストラゼネカ株式会社両社の営業責任者による発売会見が開催された。シムビコートは、吸入ステロイド薬のブデソニドと即効性・長時間作用性吸入β2刺激薬のホルモテロールからなる配合剤である。国内ではグラクソ・スミスクラインのアドエアについで2番目の発売となる。シムビコートは平均粒子径が2.4~2.5μmであり、他剤と比較して小さい。そのため末梢気道まで到達しやすく、肺全体に薬剤が広がるので、強力かつ速やかな効果の出現が期待できる。昨年改訂された『喘息予防・管理ガイドライン2009』では、治療ステップ2から、配合剤の使用が認められている。会見の中で、アストラゼネカ プライマリーケア事業本部長の金子潔氏は、喘息患者530万人のうち、およそ6割の患者がガイドラインの治療ステップ2から4にあたるとし、「対象患者さんに少しでも早く使っていただければ」と語った。また、アステラス製薬 営業本部長の山田活郎氏は、この薬剤が日本の喘息治療に大きく貢献できると確信し、「早い段階での国内シェアナンバーワンを実現したい」とコメントした。シムビコートは2009年10月に承認、2010年1月13日に発売された。アストラゼネカが製造・開発を、アステラス製薬が流通・販売を担当し、両社合わせて2,700名のMRがプロモーション活動にあたる。(ケアネット 吉田 直子)

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喘息治療の新展開 ―2剤目の配合剤が登場―

2009年12月4日、日本記者クラブにて開催された喘息プレスセミナー(主催:アステラス製薬株式会社/アストラゼネカ株式会社)で、昭和大学医学部内科学講座呼吸器・アレルギー内科部門教授の足立満氏が「日本の喘息治療の現状と新展開」について講演を行った。近年、わが国の喘息の死亡率は、吸入ステロイド薬の普及に伴い、大きく低下し続けている。その減少率は主要疾患の中でもひと際目立つといえる。しかし、人口10万人あたりの喘息死亡率は1.9人(2008年)と、フィンランドの0.3人(2003年)、米国の1.3人(2004年)に比べ、先進国中では、依然高いのが現状である。その理由としては、喘息治療が進んでいる北欧に比べ、わが国の吸入ステロイド薬の使用率が低いことがあげられている1)。吸入ステロイド薬使用率の低さの原因としては、吸入手技の指導やステロイド薬に対する不安があるものの、足立氏は別の視点で見る必要があると話した。今年3月に行ったインターネットの調査によると、喘息治療に用いる吸入薬に期待する特性としては、医師は「効き目の速さ」と、発作・増悪の抑制といった「効果の持続」を同程度に重要視している一方で、患者さんのおよそ8割は「効き目の速さ」を期待している。つまり、「症状消失に対する患者ニーズが高い」現状に対して、吸入ステロイド薬は、速やかな症状消失効果はないため、治療の実感が得られないというギャップがあると考えられる。2009年10月に承認されたシムビコートは、吸入ステロイド薬のブデソニドと即効性・長時間作用性吸入β2刺激薬のホルモテロールからなる配合剤である。本剤1剤で気管支喘息の病態である気道炎症・気道狭窄両方に対して優れた効果を示す。また、本剤に含まれるホルモテロールは、吸入3分後にも呼吸機能を大きく改善し、強い気管支拡張効果を持続的に発揮することから、患者さんは治療効果を実感しやすく、アドヒアランスの向上が期待される。喘息予防・管理ガイドライン2009では、治療ステップ2から、配合剤の使用が認めてられている。今後、配合剤の普及が期待される。最後に、足立氏は、喘息の治療における配合剤の有用性は明らかであり、長期にわたる優れた喘息コントロールと速やかな効果発現を示すシムビコートは、今後日本の喘息治療に変化をもたらす薬剤ではないかと講演を締めくくった。(ケアネット 呉 晨/吉田 直子) 出典:1) 足立満ほか:アレルギー 51: 411-420, 2002.2) 足立満ほか:アレルギー 57: 107-120, 2008.3) K.F. Rabe et al.: Eur Respir J 16: 802-807, 2000.4) 大田健ほか:アレルギー・免疫 16: 1430-1440, 2009.

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