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●今回のPoint1)尿管結石らしさを的確に見積もれるようになろう!2)ベッドサイドで診断をつけよう!3)血管病変は常に意識することは忘れないようにしよう!【症例】52歳男性。高血圧、脂肪肝で近医のクリニックに受診している。朝方左側腹部の痛みがあり、目が覚めてしまった。その後、痛みが改善せず救急外来を独歩受診した。待合室で1度嘔吐あり。●受診時のバイタルサイン意識清明血圧152/96mmHg脈拍96回/分(整)呼吸20回/分SpO299%(RA)体温36.4℃瞳孔3/3mm+/+尿管結石はいつ疑うかみなさんは、どんなときに尿管結石を疑いますか?たとえば、中年男性が「身の置き所のない」側腹部痛を訴えていたら、まず疑うでしょう。私自身は経験がありませんが、友人の何人かが本症にかかったことがあり、詳しく話を聞いてみると、みんな口を揃えて「あれは死ぬほど痛い!」と言っていました。救急外来では、尿管結石の症例によく遭遇しますが、本当に患者さんつらそうですよね。冷や汗をかきながら腰に手を当て、何とか楽な姿勢を探そうとするけれども、結局みつからない…そんな様子が典型的です。以前紹介したSTONE score(表1)にもあるように、嘔気や嘔吐、血尿、そして数時間以内に症状がピークに達することが尿管結石らしさを示す特徴です1)。表1 STONE score画像を拡大するただしその際、「尿管結石らしい症状」を示す、見逃してはならない他の疾患も同時に鑑別する必要があります(参考リンク:第19回 侮ってはいけない尿路結石)2)。鑑別すべき疾患については図にまとめましたが、とくに血管病変には注意が必要であることは、ぜひ意識しておきたいポイントです。図 尿管結石の鑑別診断尿検査は施行するかみなさんは、尿管結石を疑った際に尿検査を提出するでしょうか。尿管結石における尿潜血の感度・特異度は、それぞれ84%・48%とされており3)、尿検査のみで診断を確定できる「絶対的な指標」とは言えません。全国の医師を対象にしたあるアンケート調査によると、8,549人の医師の回答者のうち、82%の医師が「尿管結石を疑った際に尿検査を提出する」と回答しています4)。ただし、この設問では「尿管結石を疑った際に尿検査を提出しますか?」とだけ問われており、具体的な臨床状況の設定がなかったため、結果の解釈には注意が必要です。それでも、多くの医師が尿管結石を疑った際に尿検査を施行していることがうかがえます。尿検査は簡便で、かつ迅速に結果が得られるため、診断の補助として行われることが多いでしょう。ただし、重要なのは検査結果そのものよりも、検査前確率(pre-test probability)です。また、尿検査よりも優先して実施すべき、より有用な検査も存在します。腹痛診療における検査腹痛を訴える患者に対して実施すべき検査は何でしょうか。救急外来ではCT検査が多くオーダーされているのが実状ですが、これは決して悪いことではありません。ただし、超音波検査(US)が可能な環境であれば、まずはUSを行うべきでしょう。ベッドサイドで簡便に施行でき、被曝のリスクもありません。2025年に発表された『急性腹症ガイドライン2025第2版』でも、「急性腹症の画像診断で最初に行うべき形態学的検査は何か?」という問いに対して、「非侵襲性、簡便性、機器の普及度などの観点から、スクリーニング目的での超音波検査が第1選択であり、とくに妊婦や小児において推奨される」と記載されています5)。また、急性腹症に対して造影CT検査の適応を判断する上でも、まずUSを実施し、具体的な疾患を想起できるかどうかを評価することが重要です。目的意識なくCT検査を施行しても、その結果を適切に解釈することは困難です。造影剤アナフィラキシーは、以前に問題がなかった造影剤でも起こり得るため、無用な造影剤の使用は避けるべきです。検査は常に明確な目的を持って選択する必要があります。CHOKAI scoreの勧めSTONE scoreよりもお勧めしたいのが、日本発のscoreである「CHOKAI score」です(表2)6)。これはUS所見を含む7項目から構成されており、実臨床に即した評価が可能です。なかでも注目すべきは、US所見に重みが置かれている点であり、その点数配分からもその重要性がうかがえます。表2 CHOKAI score精度の高さも報告されており、実際の診療での有用性は高いと考えられます。ぜひ積極的に活用していただきたいscoreです。水腎症の有無を確認しつつ、大動脈の評価も併せて行えば、血管病変の見逃しも防げて万全でしょう。早期に尿管結石と判断できれば、除痛も迅速に行えるはずです。 1) Moore CL, et al. BMJ. 2014;348:g2191. 2) 坂本壮. 第19回 侮ってはいけない尿路結石【救急診療の基礎知識】 3) Luchs JS, et al. Urology. 2002;59:839-842. 4) 坂本壮. 臨床何でもコントラバシー. 日経メディカル. 2024. 5) 急性腹症診療ガイドライン2025 改訂出版委員会 編集. 急性腹症ガイドライン 2025 第2版. 医学書院.2025. 6) Fukuhara H, et al. Am J Emerg Med. 2017;35:1859-1866.