急性冠症候群へのPCI、血管内超音波ガイド下vs.血管造影ガイド下/Lancet

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2024/04/24

 

 急性冠症候群患者に対する最新の薬剤溶出性ステントを用いた経皮的冠動脈インターベンション(PCI)において、血管造影ガイド下と比較して血管内超音波ガイド下では、心臓死、標的血管心筋梗塞、臨床所見に基づく標的血管血行再建術の複合アウトカムの1年発生率が有意に良好であることが、中国・南京医科大学のXiaobo Li氏らが実施した「IVUS-ACS試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2024年4月8日号に掲載された。

4ヵ国58施設の無作為化臨床試験

 IVUS-ACS試験は、4ヵ国(中国、イタリア、パキスタン、英国)の58施設で実施した無作為化臨床試験であり、2019年8月~2022年10月に患者の登録を行った(Chinese Society of Cardiologyなどの助成を受けた)。

 年齢18歳以上の急性冠症候群患者3,505例(年齢中央値62歳、男性73.7%、2型糖尿病31.5%)を登録し、血管内超音波ガイド下PCIを受ける群(1,753例)、血管造影ガイド下PCIを受ける群(1,752例)に無作為に割り付けた。1年間の追跡を完了したのは3,504例(>99.9%)であった。

 主要エンドポイントは標的血管不全とし、無作為化から1年時点における心臓死、標的血管心筋梗塞、臨床所見に基づく標的血管血行再建術の複合の発生と定義した。

心臓死には差がない、安全性のエンドポイントは同程度

 主要エンドポイントの発生は、血管造影ガイド群が128例(7.3%)であったのに対し、血管内超音波ガイド群では70例(4.0%)と有意に良好であった(ハザード比[HR]:0.55、95%信頼区間[CI]:0.41~0.74、p=0.0001)。

 心臓死(血管内超音波ガイド群0.5% vs.血管造影ガイド群1.1%、HR:0.56[95%CI:0.24~1.29]、p=0.17)には有意差を認めなかったが、標的血管心筋梗塞(2.5% vs.3.8%、0.63[0.43~0.92]、p=0.018)と標的血管血行再建術(1.4% vs.3.2%、0.44[0.27~0.72]、p=0.0010)は血管内超音波ガイド群で有意に優れた。

 1年の追跡期間中、安全性のエンドポイントの発生率は両群で同程度であった。ステント血栓症(definite、probable)(血管内超音波ガイド群0.6% vs.血管造影ガイド群0.9%、HR:0.82[95%CI:0.35~1.90]、p=0.64)、全死因死亡(0.8% vs.1.5%、0.64[0.32~1.27]、p=0.20)、大出血(0.9% vs.1.5%、0.57[0.30~1.08]、p=0.09)は、いずれも両群間に有意な差を認めなかった。

 著者は、「血管内超音波ガイドは安全であったが、手技の所要時間が長くなり、必要な造影剤がわずかに多かった。これは、早期および晩期における心臓の重大な有害事象のリスクが低いこととのトレードオフとしては許容範囲内であった」としている。

(医学ライター 菅野 守)