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ニボルマブ、頭頸部扁平上皮がんにおける患者報告アウトカムを安定化:CheckMate-141

 ブリストル・マイヤーズ スクイブ社(NYSE:BMY)は2016年10月9日、プラチナ製剤による治療歴を有する再発または転移性頭頸部扁平上皮がん患者を対象に、ニボルマブと治験担当医師が選択した治療法(メトトレキサート、ドセタキセルまたはセツキシマブの1つ)を比較評価したピボタル第III相 CheckMate-141 試験の評価項目から、患者報告による生活の質に関する新たなデータを発表した。アウトカムの評価では、ニボルマブによる患者の症状と、異なる3種類の評価方法による身体機能、役割機能および社会的機能を含む機能評価に安定化が認められた。PD-L1 発現および非発現の両患者群において、治験担当医師が選択した治療法群では、ニボルマブ群と比較して、ベースライン時から15週目までの患者報告アウトカムに、統計学的に有意な悪化が認められた。さらに、ニボルマブは、治験担当医師が選択した治療法と比較して、大半の機能評価において悪化までの期間を2倍以上延長し、また、疲労、呼吸困難および不眠症の症状悪化までの期間を有意に遅延させた。これらは、欧州臨床腫瘍学会総会(ESMO2016)にて発表された。また、New England Journal of Medicine誌にも掲載された。 患者報告アウトカム(PRO:Patient Reported Outcome)に関するデータは、欧州がん研究治療機関のクオリティ・オブ・ライフ質問票(EORTC QLQ-C30)、EORTC 頭頸部がん用モジュール(EORTC QLQ-H&N35)および3段階のEQ-5D質問票(EQ-5D)を用いて集計された。質問票による調査は、患者の投与期間中、ベースライン時(1サイクル目の初日)と9週目、それ以降は6週間ごとに実施された。 EORTC QLQ-C30およびEORTC QLQ-H&N35の両方の質問票で、ニボルマブの投与を受けた患者と治験担当医師が選択した治療法群間で、15週時点でPROに有意な差が認められた。 EORTC QLQ-C30では、ニボルマブの投与を受けた患者ではベースライン時と比較してPROが安定していたのに対し、治験担当医師が選択した治療法群では身体機能、役割機能および社会的機能(p<0.001 vs.ニボルマブ群)、疲労(p<0.001 vs.ニボルマブ群)、呼吸困難(p<0.001 vs.ニボルマブ群)および食欲不振(p=0.004 vs.ニボルマブ群)で有意かつ臨床的に意義のある悪化が認められた。ニボルマブは、治験担当医師が選択した治療法と比較して、全般的な健康状態(ニボルマブ群7.7ヵ月 vs.治験担当医師が選択した治療法群3.0ヵ月)、身体機能(同7.8 vs. 3.6ヵ月)、役割機能(同8.6 vs. 3.8ヵ月)、認知機能(同7.8 vs. 3.3ヵ月)、社会的機能(同7.7 vs. 3.0ヵ月)において、悪化までの期間の中央値を2 倍以上延長した。心理的機能において、ニボルマブ群では悪化までの期間の中央値は6.7ヵ月で、治験担当医師が選択した治療法群では4.7ヵ月であった。また、ニボルマブは疲労、不眠症および呼吸困難において臨床的に意義のある悪化を50%低減した(p=0.008)。 QLQ-H&N35質問票への回答では、ニボルマブの投与を受けた患者でベースライン時と比較して安定したPRO が認められたのに対し、治験担当医師が選択した治療法群では、疼痛(p=0.022 vs.ニボルマブ群)、感覚障害(p<0.001 vs.同群)および社会的接触障害(p=0.001 vs.同群)で有意かつ臨床的に意義のある悪化が認められた。ニボルマブは、治験担当医師が選択した治療法と比較して、臨床的に意義のある悪化の割合を、疼痛で74%(p<0.001 vs.治験担当医師が選択した治療法群)、感覚障害では62%(p=0.002 vs.同群)、開口障害では51%(p=0.029 vs.同群)低減した。 EQ-5D VASで測定されたように、ニボルマブ群では健康状態が安定したのに対し、治験担当医師が選択した治療法群では、健康状態が低下し、15週時点で統計的に有意差が認められた(p=0.037)。健康状態の悪化までの期間の中央値は、治験担当医師が選択した治療法群で3.3ヵ月であったのに対し、ニボルマブ群では9.1ヵ月と3倍近くとなった。ブリストル・マイヤーズ スクイブ社のプレスリリースはこちら

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ラムシルマブ非小細胞肺がん2次治療の日本人データ

 ラムシルマブ(商品名:サイラムザ)とドセタキセル(商品名:タキソテール)の併用がプラチナベース化学療法後に増悪した非小細胞肺がん患者の生存期間を延長した。この第II相無作為化プラセボ対照二重盲検比較試験は、日本人の非小細胞肺がんの2次治療におけるラムシルマブの有効性と安全性を評価したもの。Lung Cancer誌2016年9月号の掲載記事。 患者は2012年12月~2015年5月に本邦の28施設で登録された非小細胞肺がんで、プラチナベース化学療法施行にもかかわらず増悪した患者。患者はラムシルマブ10mg/kg+ドセタキセル60mg/m2群とプラセボ+ドセタキセル60mg/m2群(ともに21日サイクル)に無作為に割り付けられた。主要評価項目は、無増悪生存期間(PFS)、副次的評価項目は全生存期間(OS)、奏効率、安全性であった。 主な結果は以下のとおり。・治療を受けた被験者は157例。・PFS中央値はラムシルマブ+ドセタキセル群で5.22ヵ月、プラセボ+ドセタキセル群で4.21ヵ月(HR:0.83、95%CI:0.59~1.16)とラムシルマブ併用群で優れていた。・OS中央値はラムシルマブ+ドセタキセル群で15.15ヵ月、プラセボ+ドセタキセル群で14.65ヵ月(HR:0.86、95%CI:0.56~1.32)とラムシルマブ併用群で優れていた。・奏効率はラムシルマブ+ドセタキセル群で28.9%、プラセボ+ドセタキセル群で18.5%とラムシルマブ併用群で優れていた。・病勢コントロール率はラムシルマブ+ドセタキセル群で78.9%、プラセボ+ドセタキセル群で70.4%とラムシルマブ併用群で優れていた。・有害事象の頻度および重症度は同程度であったが、発熱性好中球減少についてはラムシルマブ+ドセタキセル群で34.2%、プラセボ+ドセタキセル群で19.8%とラムシルマブ併用群で多く認められた。

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抗PD-L1抗体atezolizumabが非小細胞肺がんの生存を有意に延長

 スイスRoche社は 2016年9月1日、第III相試験、OAK研究の結果atezolizumab(商品名:TECENTRIQ)が、プラチナベース化学療法で増悪した局所進行または転移性の非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対し、ドセタキセルと比べ有意に全生存率の改善(OS)を示したと発表した。 米国食品医薬品局(FDA)はatezolizumabに対し、プラチナベース化学療法(またはEGFR変異陽性またはALK陽性腫瘍に対する適切な標的療法)中または後に進行した、PD-L1陽性NSCLC患者の治療のブレークスルーセラピー(画期的治療薬)指定を与えた。 OAK研究は、国際的な多施設オープンラベル無作為化第III相試験で、プラチナベース化学療法による治療後に増悪した局所進行性または転移性NSCLC患者を対象に、atezolizumabの有効性と安全性をドセタキセルと比較検討している。1,225例の患者が、無作為にドセタキセル75mg/m2またはatezolizumab1,200mg(いずれも3週間ごと)投与群に1:1に割り付けられた。主要評価項目は、全患者およびPD-L1で選別されたサブグループ患者の全生存期間、副次的主要評価は客観的奏効率(ORR)、無増悪生存期間(PFS)、および奏効期間(DOR)である。 atezolizumabは、PD-L1(programmed cell death-1 ligand-1)タンパク質に結合する初めてのモノクローナル抗体。 PD-L1に結合し、T細胞の表面上に発現するPD-1およびB7.1の相互作用を遮断することで、T細胞の活性化、効果的な腫瘍細胞の検出、攻撃能力の回復を可能にする。FDAで承認されているatezolizumabの適応はプラチナベース化学療法中または後に増悪した、あるいは術前術後のプラチナベース化学療法実施後12ヵ月以内に悪化した、局所進行性または転移性尿路上皮がん(MUC)患者に対する治療。Roche社のプレスリリースはこちら

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ラムシルマブは肺がん治療に新たな可能性をもたらすか?

 2016年8月4日、イーライリリー主催のプレスセミナー「肺がんに新たな治療選択肢『サイラムザ』登場」が開催された。そのなかで、神奈川県立がんセンター 呼吸器内科医長の加藤 晃史氏は「進行・再発非小細胞肺がん治療におけるサイラムザの位置づけ」と題し、ラムシルマブ(商品名:サイラムザ)の肺がんに対する新たな知見を紹介した。 ラムシルマブは、血管内皮細胞増殖因子受容体2(VEGFR-2)に作用する血管新生阻害薬で、胃がん、結腸・直腸がんに続いて2016年6月に非小細胞肺がんに対する適応を取得した。海外第III相試験であるREVEL試験では、肺がん2次治療におけるラムシルマブとドセタキセルの併用療法とドセタキセル単独(プラセボ+ドセタキセル)療法を比較した。結果、全生存期間(OS)は併用群10.5ヵ月、タキセル単独群9.1ヵ月(HR:0.86、95%CI:0.75~0.99、p=0.024)、無増悪生存期間(PFS)はそれぞれ4.5ヵ月、3.0ヵ月(HR:0.76、95%CI:0.68~0.86、p<0.0001)と、共に併用群で有意に延長した。また、本邦で行われたJVCG試験においてもREVEL試験と同様の結果が認められ、OS中央値はラムシルマブ・ドセタキセル併用群で15.15ヵ月、ドセタキセル単独群で14.65ヵ月(HR:0.86、95%CI:0.56~1.32)、PFS中央値はそれぞれ5.22ヵ月、4.21ヵ月(HR:0.83、95%CI:0.59~1.16)といずれも併用群で優れていた。有害事象については、両試験とも併用群で血液毒性が多く認められたが、それらは管理可能であった。 加藤氏はまた、既存の治療薬を踏まえたラムシルマブの可能性について述べた。扁平上皮がんは非扁平上皮がんに比べて治療選択肢が少ない。そこに扁平上皮がんにも有効性を示す免疫チェックポイント阻害薬「ニボルマブ」が加わった。しかしながら、ニボルマブで有効性が確認できるのは投与患者のうち20~30%である。ラムシルマブの有効性は扁平上皮がんも含めた成績であることから、治療選択肢が少ないこの領域にも新たな可能性をもたらすことになる。 選択肢の広がる非小細胞肺がんの薬物療法において、ラムシルマブはどのような可能性をもたらすのだろうか。今後の動向に注目したい。

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新規候補薬剤neratinibがHER2陽性/HR陰性乳がんに有効な可能性(解説:矢形 寛 氏)-576

 I-SPY2試験は、新規薬剤の有効性をみるために、再発率の高い乳がんに対して、乳がん術前化学療法でpCR率を標準治療との間で比較する無作為化第II相試験である。 少ない症例数、低コスト、短い期間で効率的に候補を選び出す試験として注目を浴びている。 バイオマーカーを使って乳がんのサブタイプ分類を行い、どのサブタイプが新規薬剤に有効でありそうかを調べるのであるが、適応的ランダム化という方法を使って適宜割り付けを調整し、有効である確率が高いサブタイプを抽出して、第III相試験に移行させていこうというものである。 新規薬剤であるneratinibはチロシンキナーゼ阻害薬であるが、有効な乳がんサブタイプを本試験で検討したところ、HER2陽性/HR陰性において有効である可能性が高そうだという結果となった。このような方法論は、今後も普及していく可能性がある。

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未分化大細胞型リンパ腫〔ALCL : anaplastic large cell lymphoma〕

1 疾患概要■ 概念・定義未分化大細胞型リンパ腫(anaplastic large cell lymphoma:ALCL)は、1985年Steinらによって初めて特徴づけられたaggressive lymphomaである。キール大学で開発されたCD30に対するKi-1抗体によって認識される活性化T細胞由来のリンパ腫で、Ki-1リンパ腫との異名ももっていた。以前「悪性組織球症」といわれていた症例の多くがこのリンパ腫であることが判明し、リンパ球の活性化マーカーであるCD30、CD25のほか、上皮性細胞マーカーであるEMAが陽性となる特徴を有する。腫瘍細胞は胞体が豊かなホジキン細胞様で馬蹄様核をもつhallmark cellが特徴的である(図)。画像を拡大するこの多形芽球様細胞の形態を示すリンパ腫には、全身性ALCLのほか、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫のanaplastic variantや病変が皮膚に限局する皮膚ALCLがある。また、豊胸手術後に乳房に発症するALCLも、最近注目されるようになった。ALCLは、あくまで末梢性T細胞リンパ腫の一病型であり、B細胞由来のものは含まれない。ALCLは、インスリン受容体スーパーファミリーの受容体型チロシンキナーゼであるanaplastic lymphoma kinase(ALK)をコードするALK1遺伝子の発現増強を認めるALK陽性ALCLと、発現増強を認めないALK陰性ALCLに分類される。皮膚ALCLや豊胸術後のALCLは共にALK陰性である。■ 疫学ALCLは、わが国で発症する非ホジキンリンパ腫の中で、3%程度を占めるまれな疾患である。ALK陽性ALCLは、ほとんどが50歳以下で発症し、発症のピークは10代の若年者である。一方、ALK陰性ALCLは、加齢とともに発症頻度が増し、50代に多い。両者ともやや男性に多く発症する。皮膚ALCLと豊胸術後のALCLについては、わが国での頻度は不明である。■ 病因ALK陽性ALCLは、t(2;5)(p23;q35)の染色体異常を80%程度に認める。2番染色体2p23に位置するALK1遺伝子が5q35のNPM遺伝子と結合して融合遺伝子を形成し、その発現増強が腫瘍の発症・維持に重要と考えられている。この転座によって生じるNPM-ALKはホモダイマーを形成し、midkineなどのリガンドの結合なしにキナーゼ活性を亢進させ、PI3KからAkt、STAT3やSTAT5などの細胞内シグナル伝達を活性化させる。ALK1遺伝子はNPM遺伝子以外にも1q21/TPM3などの遺伝子と融合するが、このような場合でもALKのホモダイマー形成が生じ、ALKの構造的活性亢進が起きるとされている。NPMは核移行シグナルをもち、NPM-ALKとNPMのヘテロダイマーは核まで移行するため、t(2;5)異常をもつALCLでは、ALKが細胞質のみならず、核も染色される。一方、ALK陰性ALCLの病因はすべて明らかにされているわけではない。アレイCGHやgene expression profilingによる解析では、ALK陰性ALCLは、ゲノム異常や遺伝子発現パターンがALK陽性ALCLとはまったく異なることがわかっている。ALK陰性ALCLの中には、t(6;7)(p25.3;q32.3)の染色体転座をもち、6p25.3に位置するDUSP22遺伝子の切断による脱リン酸化酵素機能異常が確認されている群がある。6p25には転写因子をコードするIRF4遺伝子も存在するが、末梢性T細胞性リンパ腫・非特定型や皮膚ALCLにおいても6p25転座が認められることがあり、それらとの異同も含めてまだ不確定な部分がある。皮膚ALCLはリンパ腫様丘疹症(lymphomatoid papulosis)との異同が問題となる症例があり、これらは皮膚CD30陽性リンパ増殖性疾患という範疇であって、連続性の疾患と捉える向きもある。豊胸術後のALCLについてはまだ不明な点が多い。■ 症状全身性ALCLは、診断時すでに進行期(Ann ArborシステムでIII期以上)のことが多く、B症状(発熱・体重減少・盗汗)を認めることが多い。リンパ節病変は約半数に認められ、節外病変も同時に伴うことが多い。ALK陽性ALCLでは、筋肉などの軟部組織や骨が多く、ALK陰性ALCLでは皮膚・肝臓・肺などが侵されやすい。皮膚ALCLは孤立性または近い部位に複数の皮膚腫瘤を作ることが多いが、所属リンパ節部位以外の深部リンパ節には病変をもたず、その点が全身性ALCLとは異なる。また、豊胸術後のALCLも80%以上の症例が乳房に限局しており、その中で腫瘤を作らずeffusion lymphomaの病態をとるものもある。両者とも発熱などの全身症状は認められないことが多い(表)。画像を拡大する■ 予後ALK陽性ALCLは、末梢性T細胞リンパ腫の中でも予後のよい病型である。5年の全生存割合は80%程度で、ALK陰性ALCLの40%程度と比べて、CHOP療法などのアントラサイクリン系抗生剤を含む初回化学療法によって、効果が期待できる疾患である。ヨーロッパの小児領域における3つの大規模臨床研究の結果から、(1)縦隔リンパ節病変(2)体腔内臓器浸潤(肺、脾、肝)(3)皮膚浸潤が予後不良因子として重要で、これら1項目でも満たすものを高リスク群とみなす。高リスク群は5年の全生存割合が73%と、標準リスク群の94%に比べて有意に下回る結果を示している。小児領域のALCLは、90%がALK陽性例で占められるが、成人領域と比べるとリスクに応じてかなり強度を上げた治療が施行され、高リスク群の治療成績は比較的良好な結果を示していると思われる。一方、成人例に多いALK陰性ALCLは、aggressive lymphomaで共通する国際予後指標(international prognostic index〔IPI〕: 年齢、performance status、LDH値、節外病変数、臨床病期からスコア化する)が参考となるが、(1)骨髄浸潤(2)β2ミクログロブリン高値(3)CD56陽性なども予後不良因子として認識されている。International T-cell lymphoma projectによる検討では、ALK陰性ALCLの60%程度を占めるIPI 3項目以上の患者群における5年の全生存割合は、CHOP療法主体の治療を受けても30%を下回る結果となっている。ただし、ALK陰性であっても皮膚ALCLや豊胸術後のALCLは限局例が多く、生命予後はそれほど悪くない。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)ほかの悪性リンパ腫と同様、ALCLの診断には、(1)組織診断による病型の確定(2)PET-CTなどの画像検査と骨髄検査による正確な臨床病期診断が必須である。また、皮膚に病変がある場合には、全身症状と病変の分布について、しっかりと把握しなければならない。■ 組織診断HE染色による腫瘍の形態観察とhallmark cellの有無を確認する。hallmark cellがあればALK染色によってALK陽性かALK陰性かを明らかにする。まれにsmall-cell variantや反応性の組織球増生が特徴的なlymphohistiocytic variantがあるので注意を要する。これらはALK陽性ALCLのうち、治療反応の乏しい形態学的亜型として注目されている。さらに腫瘍細胞の特定には、CD30、EMA、lineage marker、TIA-1、granzyme Bなどの細胞傷害性分子の発現を免疫染色で評価する。ALK陽性例についてはFISH検査で2p23の転座があるか確認する。■ 臨床病期診断ALCLはFDG-avidな腫瘍であり、FDG-PETを組み込んだPET-CT検査によって臨床病期診断のみならず治療効果の判定が可能である。皮膚に限局しているようにみえても、PETで深部リンパ節病変が指摘された場合には、全身性ALCLとして対応しなければならない。骨髄検査は、リンパ腫細胞の浸潤の有無と造血能の評価を行うことを目的とする。単なる形態診断だけでなく、免疫染色や染色体・FISH検査によって腫瘍の浸潤評価を行う必要がある。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)前述した通り、全身性ALCLは進行期例が多いことから、アントラサイクリン系抗生剤を含む多剤併用化学療法が施行される。ALK陽性ALCLでは、CHOP様レジメンで90%近くに奏効が得られ、再発・再燃の割合もALK陰性ALCLよりも低く、5年の生存割合は70%以上を維持できる。つまり、低リスク群の初回治療はCHOP様レジメンで十分といえる。高リスク群に対し、小児領域では髄腔内抗がん剤投与を含む強度を上げた治療が行われている。成人領域ではなかなか治療強度を上げることが難しいため、自己造血幹細胞移植(autologous hematopoietic stem cell transplantation: ASCT)が考慮される。また、小児領域の治療研究では、ビンブラスチン(商品名:エクザール)が単剤で再燃を延長させる効果をもつことが示されている。高リスク群では、この薬剤をいかに利用して再燃を防ぐことができるのか、今後のレジメン内容を考えるうえでも、さらなる検討が必要である。一方、成人に多いALK陰性ALCLに対しては、現時点で標準化学療法が確立した状況とはいえない。CHOP療法による奏効割合は80%程度期待できるものの、再発・再燃の割合も高く、無増悪生存割合は最終的に20%台まで落ち込んでしまう。成人領域のALCLに対する治療研究は、ほかの末梢性T細胞リンパ腫の病型と同時に含まれて対象とされるため、ALCLに限った治療法が開発されているわけではない。そのため今後も残念ながら、個々の病型に対する標準治療が確立しにくい状況なのである。ALCL患者を対象として多く含む、ドイツの複数の前向き治療研究の解析結果をまとめると、CHOP療法にエトポシド(同:ラステットほか)を加えたほうが完全奏効割合や無イベント生存割合が改善することがわかっている。また、末梢性T細胞リンパ腫全体では、治療強度を上げることが必ずしも全生存割合の向上に寄与しているとは証明されていないが、それは十分な治療効果を生む標準化学療法が確立していないことが背景にあるためと考えられる。全身放射線を前処置として用いないASCTを初回奏効例に施行する、ノルウェーから報告されたNLG-T01試験では、ALK陰性ALCLに対する5年の全生存割合は60%以上を示し、他の病型よりも期待のもてる結果を示している。小児領域のリスクに応じて強度を調節する治療研究の結果も踏まえて考えると、ALK陰性ALCLに対し、治療強度を上げることで生存に有利となる患者群がいることがわかる。こういった問題は、今後も前向き治療研究の場で確定していかなければならない。実地診療において現時点では、CHOPあるいはCHOEP、EPOCHなどのエトポシドを含むCHOP様レジメンが初回治療として選択されることになる。非常にまれな皮膚ALCLや豊胸術後のALCLについての標準治療法は確立されていない。皮膚ALCLは限局性であれば、外科的切除、電子線照射が試みられる。多発性腫瘤の場合には化学療法が行われるが、どのような治療が適切か確固たるエビデンスはない。経験的に少量メトトレキサート、少量エトポシドなどの内服治療が行われている。豊胸術後のALCLも外科的切除で、対応可能な限局期症例の予後は比較的良好であるが、両者とも進行期例に対する治療は全身性ALCLに準ずることになる。4 今後の展望小児領域のヨーロッパ・日本の共同研究で検討された中枢神経浸潤についてみると、全体の2.6%に中枢神経系のイベントが認められ、その半数に脳実質内腫瘤を認めている。ヨーロッパのintergroup(EICNHL)のBFM90試験において、メトトレキサートの投与法が24時間から大量の3時間投与として髄腔内投与を施行しなくとも、中枢神経系のイベントは変わらずに同等の治療効果を生むことが確認されている。Lymphohistiocytic variantでは、比較的中枢神経系イベントが多いとされているが、生命予後の悪い高リスク群患者に対して、いかに毒性を下げて治療効果を生むかという点について、今後も治療法の進歩が期待される。小児領域と成人領域では、治療強度とそれに対する忍容性が異なる。成人領域では治療強度を上げるためには、ASCTを考慮しなければならず、とくに10代後半~20代の患者群に対する治療をどうしていくか、まだまだ解決しなければならない課題は多い。ALK陽性ALCLはALKが分子標的となるため、ALK陽性非小細胞肺がんで効果を示しているALK阻害薬が、今後の治療薬として注目される。クリゾチニブ(同: ザーコリ)は第I相試験が海外で終了しており、今後ALCLに対する有効性の評価がなされていくことになる。わが国ではそれに先立ち、再発・難治性のALK陽性ALCLに対してアレクチニブ (同: アレセンサ) の第II相試験が現在進行中である。また、CD30を標的したマウス・ヒトキメラ抗体のSGN-30は、皮膚ALCLに対する一定の効果は認められたものの、全身性ALCLに対する効果は不十分であったため、SGN-30に微小管阻害薬であるmonomethylauristatin Eを結合させたSGN-35(ブレンツキシマブ ベドチン、同: アドセトリス)が開発された。ブレンツキシマブ ベドチンは再発・難治性のALCL58例に対し、50例(86%)に単剤で奏効を認めており(33例に完全奏効)、再発・難治例に期待できる薬剤である。有害事象として血球減少以外に、ビンカアルカロイドと同様の神経障害が問題となるが、ホジキンリンパ腫でABVD療法と併用した際に肺毒性が問題となっていて、ブレオマイシン(同:ブレオ)との併用は難しいものの、アントラサイクリン系抗生剤やビンブラスチンとの併用が可能であることを考えると、ALCLに対して化学療法との併用の可能性も広がると考えられる。5 主たる診療科血液内科、小児科、皮膚科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報European Intergroup for Childhood NHL(欧州で開催された医療従事者向けのフォーラムの内容)患者会情報グループ・ネクサス・ジャパン(悪性リンパ腫患者とその家族の会)1)Savage KJ, et al. Blood.2008;111:5496-5504.2)Kempf W, et al. Blood.2011;118:4024-4035.3)Ferreri AJ, et al. Crit Rev Oncol Hematol.2012;83:293-302.4)Ferreri AJ, et al. Crit Rev Oncol Hematol.2013;85:206-215.5)Miranda RN, et al. J Clin Oncol.2014;32:114-120.公開履歴初回2014年03月13日更新2016年08月02日

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乳がんのI-SPY試験、neratinibは第II相を卒業し第III相へ/NEJM

 HER2陽性ホルモン受容体陰性乳がんに対する術前化学療法は、標準療法+neratinibの併用が、トラスツズマブを用いた標準療法と比較し病理学的完全奏効率が高くなる可能性が高いことが示された。米国・カリフォルニア大学のJohn W. Park氏らが、I-SPY2試験の結果、報告した。I-SPY2試験は、複数の新薬候補を同時に評価できる適応的無作為化デザインを用い、StageII/IIIの高リスク乳がんに対する標準的な術前化学療法と併用する新薬候補の有効性をバイオマーカーで評価する多施設共同第II相臨床試験。新薬候補としてチロシンキナーゼ阻害薬であるneratinibを含む7種が検討されている。本試験で、neratinibは有効性の閾値に達したことから「卒業」となり、第III相臨床試験(I-SPY3試験)へ進んでいる。NEJM誌オンライン版2016年7月7日号掲載の報告。neratinib併用の病理学的完全奏効率を適応的無作為化デザインにて比較 研究グループは、適応的無作為化デザインにより、パクリタキセル→ドキソルビシン+シクロホスファミド(AC)(対照群)と、neratinib+パクリタキセル→AC(neratinib併用群)を比較した。対照群でHER2陽性例にはトラスツズマブも投与した。 適格基準は、18歳以上、StageII/III、未治療、腫瘍径が臨床検査で2.5cm以上および画像で2cm以上、ECOG PSが0~1、MRIが実施可能、MammaPrint検査で高リスク、MammaPrint検査の結果に関係なくHER2陽性またはHR陰性、である。適格患者をHER2の状態、HRの状態および70遺伝子の発現プロファイル(MammaPrint検査)に基づき8つのサブタイプに分類し、10種類のバイオマーカー特性(あらゆるバイオマーカー、HR陽性、HR陰性、HER2陽性、HER2陰性、MammaPrint検査で高リスクカテゴリー2、HER2陽性/HR陽性、HER2陽性/HR陰性、HER2陰性/HR陽性、HER2陰性/HR陰性)に関して有効性を評価した。 主要評価項目は病理学的完全奏効(pCR)で、対照群に対するneratinib併用群の優越性のベイズ確率に基づき患者を割り付けた。1種類以上のバイオマーカー特性においてあらかじめ規定した有効性の閾値(300人規模の第III相試験で成功のベイズ予測確率が85%以上)を満たした場合に「卒業」(第III相試験へ進む)、すべてのバイオマーカー特性について成功のベイズ予測確率が10%未満の場合は登録中止とした。neratinib併用療法はHER2陽性HR陰性乳がんに対して有効である確率が高い 2010年3月~2013年1月に、計127例がneratinib併用群に、84例が対照群に割り付けられ、このうちpCRの評価可能症例はそれぞれ115例および78例であった。 neratinibは、HER2陽性/HR陰性に関してのみ事前に規定した有効性の閾値に達した。HER2陽性/HR陰性乳がん患者の推定pCR率は、neratinib群56%(95%ベイズ確率区間[PI]:37~73%)、対照群33%(95%PI:11~54%)で、第III相試験における成功予測確率は79%であった。

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ホジキンリンパ腫、中間PET-CT結果による治療変更は有効か?/NEJM

 進行期古典的ホジキンリンパ腫の患者に対し、ABVD(ドキソルビシン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ダカルバジン)療法2サイクル後に中間PET-CTを行い、その結果を基に治療をガイドしていくことは有効なのか。英国・サウサンプトン大学のPeter Johnson氏らが、1,214例の患者を対象に無作為化比較試験にて検討した。中間PET-CTの結果が陰性例について、ブレオマイシンを除いたAVD療法に変更した場合、ABVD療法の継続例と比較して、肺毒性発生率は低下し、有効性に有意な低下は認められなかったという。NEJM誌2016年6月23日号掲載の報告。 ABVD療法2サイクル後に中間PET-CTを実施 検討は、進行期ホジキンリンパ腫患者の治療における化学療法の効果を、中間PET-CTで早期判定することの有用性を調べることが目的だった。新たに進行期古典的ホジキンリンパ腫の診断を受けた患者1,214例を対象に、ベースラインでPET-CTを行い、ABVD療法を2サイクル施行後に再度PET-CTを行い、その画像を5ポイント制で中央評価した。 その結果、陰性と判定した患者を無作為に2群に分け、3~6サイクルの治療施行について、一方の群はABVD療法を継続し、もう一方の群はブレオマイシンを除いたAVD療法とした。また、これら陰性患者には、放射線療法は推奨しなかった。 中間PET-CTの結果が陽性だった患者については、BEACOPP(ブレオマイシン、エトポシド、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、プロカルバジン、プレドニゾン)療法を行った。 主要評価項目は、無作為化群の3年無増悪生存率の群間差とし、5ポイント以上の差を除外する非劣性試験を行った。3年無増悪生存率、ABVD群85.7%、AVD群84.4% 被験者のうち中間PET-CTを行ったのは1,119例で、そのうち937例(83.7%)が陰性だった。935例が無作為化を受けた。 追跡期間中央値41ヵ月時点で、ABVD群(470例)の3年無増悪生存率は85.7%(95%信頼区間[CI]:82.1~88.6)、全生存率は97.2%(同:95.1~98.4)だった。一方AVD群(465例)は、それぞれ84.4%(同:80.7~87.5)、97.6%(同:95.6~98.7)だった。3年無増悪生存率の絶対群間差は、1.6ポイント(同:-3.2~5.3)で、わずかだが非劣性マージンを超えていた。 また中間PET-CTの結果が陽性でBEACOPPを受けた群(172例)の74.4%が、3回目のPET-CTで陰性だった。同群の3年無増悪生存率は67.5%、全生存率は87.8%だった。 全体では、試験期間中の死亡例は62例(うちホジキンリンパ腫による死亡は24例)で、3年無増悪生存率は82.6%、全生存率は95.8%だった。 これらの結果を踏まえて著者は、非劣性マージンに達しなかったものの、AVD群はABVD群に比べ、肺毒性発生率は低下し、有効性は有意に低下しなかったと結論している。

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Vol. 4 No. 4 DAPTを検証した臨床試験の数々、それらが導いた「答え」とは?

中川 義久 氏天理よろづ相談所病院循環器内科はじめに冠動脈疾患の治療においては、冠動脈血行再建を達成することが本質的に重要である。その手段として経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention:PCI)が主流を占めている。冠動脈血行再建においてバルーン拡張によるPCIの有効性が報告されてから30年以上になる。バルーン拡張のみでは再狭窄率や再閉塞率が高いことが問題であり、これを解決するために金属製ステント(baremetal stent:BMS)が導入された。BMSを用いたPCIは通常治療として受け入れられるようになったが、それでも長期的には再狭窄によって再血行再建を要することが多く克服すべき問題であった。薬剤溶出性ステント(drug-eluting stent:DES)は、BMSに比較して再狭窄を減少させることが示されている。第1世代DESであるシロリムス溶出性ステント(sirolimus-eluting stent:SES)とパクリタキセル溶出性ステント(paclitaxel-eluting stent:PES)が2004年8月から本邦で保険償還が認可され、実臨床において使用可能となった。これにより冠動脈ステント留置後1年の再狭窄率を10%以下に低下させた。現在のPCIではDES留置が通常である。DESは再狭窄を強く抑制するものの、これが血管内皮の修復反応の遅延をきたし、血栓性閉塞(ステント血栓症)の可能性が高い時期が長期間にわたってつづくことが問題とされる。ステント血栓症の予防のために抗血小板薬の適切な投与が重要となっている。ステント血栓症の予防のためにアスピリンと、チエノピリジン系抗血小板薬の併用投与(dual anti-platelet therapy:DAPT)が主流となっているが、その継続すべき期間については明確な指針はない。第2世代DESが登場し、臨床成績が向上してステント血栓症は減少している。さらに、2015年末からは第3世代のDESも実臨床の現場に登場する。DAPTの期間を短縮しても安全性が保たれるという方向の報告がある一方で、DAPTの期間を延長したほうがよいとの報告もあり、議論がつづいている。DAPTを継続することは出血性合併症を増す危険性があり、血栓症予防と出血性合併症の両者のトレードオフで比較すべき問題である。ステント血栓症の予防のためにDAPTを継続すべき期間について明確な結論はない。DAPTを長期間継続することによる頭蓋内出血などの重大な出血性合併症は患者の不利益ともなり、DAPTの至適施行期間を明らかにすることは、DES留置後の患者にとって大切である。DAPT導入の背景現在は使用頻度が減少しているが、BMSの臨床試験が日本で始まったのは1990年(平成2年)であった。その当時、筆者は小倉記念病院に在籍し、その現場を体験した。当時はDAPTという概念はなく、抗血小板薬としてアスピリンを投与し、さらにワルファリンによる抗凝固療法を行っていた。そのうえ、PCI術後には数日間のヘパリンの持続点滴も加えていた。しかし3%前後という高いステント血栓症の発生率と出血性合併症に悩まされていた。この経験からも明らかなように、抗凝固療法を強化してもステント血栓症を予防できないことはみな痛感していた。チエノピリジン系薬剤とアスピリンによるDAPTをBMS留置後1か月間施行することでステント血栓症の発生を抑制することが示され、ステント留置後の標準治療となった1)。その当時はチエノピリジン系薬剤としてクロピドグレルは存在せずチクロピジンのみであった。STARS研究の結果1)をみると、アスピリン単独や、アスピリンとワルファリンによる抗血栓療法に比べて、DAPTによってステント植込み手技の安全性が高まることがわかる。このデータをもとに、現在のDES時代においてもステント術後のDAPT療法として継承されている。現在では、チエノピリジン系抗血小板薬としては、チクロピジンよりも副作用が少ないクロピドグレルが最も頻用されている。short DAPTとlong DAPTDAPT継続期間については12か月間を基準として、それよりも短い期間(3か月から6か月間)で十分とする意見をshort DAPT派、1年を超えてDAPTを継続したほうがよいという意見をlong DAPT派と総括され、両派による活発な議論がつづいている。しかし、第2世代のDESが普及しステント血栓症は減少し、DAPTの期間は短縮する方向での知見が増加している。抗凝固薬を必要とする患者における抗血小板療法については、DAPTを含む3剤の抗血栓薬は避けたほうがよいとのコンセンサスは得られつつあるが、明確な指針は未だ存在しない。明確な指針はない状況においても各担当医は実臨床の現場で方針を決定しなければならない。DES留置後のDAPT期間、short DAPTで十分か?日本循環器学会のガイドライン2, 3)では、2次予防における抗血小板療法として、禁忌がない患者に対するアスピリン(81~162mg)の永続的投与(レベルA)、DES留置の場合にはDAPTを少なくとも12か月間継続し、出血リスクが高くない患者やステント血栓症の高リスク患者に対する可能な限りの併用療法の継続(レベルB)が推奨されている。本邦でのデータとしてCREDO-Kyoto PCI/CABG Registry Cohort-2に登録されたDES(主としてシロリムス溶出性ステント)留置患者6,309例における4か月のランドマーク解析がある4)。4か月の時点でのチエノピリジン系抗血小板薬継続例と中止例でその後3年までの死亡、心筋梗塞、脳卒中の発症率に差はなく、出血性合併症の発症はチエノピリジン系抗血小板薬継続例で多いことが報告されている。これは、日本人におけるDES留置後の至適なDAPT施行期間は、現在の第2世代DESよりもステント血栓症の頻度が相対的に高かった第1世代DESの時代においてすら、4か月程度で十分である可能性を示唆しているもので貴重なデータである。第2世代DESが登場し、臨床成績が向上しステント血栓症は減少しており、DAPTの期間を短縮しても安全性が担保されるという方向の報告が多い。この至適DAPT期間を検討するために大規模なメタ解析の結果が報告された5)。無作為化試験を選択し、DAPT投与期間が12か月間である試験を標準として、12か月未満のshort DAPT試験と、12か月超のlong DAPT試験の比較を行っている。アウトカムは、心血管死亡・心筋梗塞・ステント血栓症・重大出血・全死因死亡である。10の無作為化試験から32,287例が解析されている。12か月の標準群と比較してshort DAPT群は、有意に重大出血を減少させた(オッズ比:0.58、95%CI:0.36-0.92、p=0.02)。虚血性または血栓性のアウトカムについて有意差はなかった。long DAPT群は、心筋梗塞とステント血栓症は有意に減少させたが、重大出血は有意な増大がみられた。また、全死亡の有意な増大もみられた(オッズ比:1.30、95%CI:1.02-1.66、p= 0.03)。この結果を要約すれば、short DAPTは、虚血性合併症を増大させることなく出血を減らし、ほとんどの患者においてshort DAPTで十分であることが示されたといえる。さらにDAPT期間についてARCTIC-Interruptionという無作為化比較試験の結果が興味深い6)。DESの留置後1年の間に虚血性または出血性イベントを経験しなかった患者において、1年以降のDAPT継続は1剤のみの抗血小板療法と比較し、虚血性イベントの抑制効果は示されず、重症または軽症出血のリスクの上昇が認められた。つまり、留置後1年間でイベントが起きなかった場合、その後のDAPT継続には有益性はなく、むしろ出血イベントのリスクが増大し有害であることが示されたことになる。この試験だけでなく、PRODIGY7)、DES LATE8)、EXCELLENT9)、RESET10)、OPTIMIZE11)などのshort DAPTとlong DAPTを比較した試験でも、長期間のDAPTは心血管イベントを減らすことはなく、出血性合併症を増加させるという結果が一貫性をもって示されている。本邦におけるshort DAPTを示唆する研究:STOPDAPT研究長期間のDAPT施行が抗血小板薬単独治療に比べて出血性合併症を増加させ、長期のDAPT施行をつづけても心血管イベントの発症抑制効果がないのであれば、DAPT施行期間はできるだけ短いほうが望ましいことは明確である。このためのエビデンス構築をめざして、本邦においてはSTOPDAPT研究が行われた。日本心血管インターベンション治療学会2015年学術集会(CVIT2015)においてNatsuakiらによって結果が発表された。この研究は、ステント血栓症の発生リスクが低い第2世代DESを代表するコバルトクロム合金のエベロリムス溶出ステント(CoCr-EES)が留置された患者において、チエノピリジン投与期間を3か月に短縮可能と担当医が判断した連続症例を登録し、ステント留置後3か月の時点でチエノピリジン投与を中止し、ステント留置後12か月の心血管イベント、出血イベントの発生率を評価する研究である。冠動脈にCoCr-EESの留置を受けた3,580人のうち3か月でDAPT中止が可能と判断された患者1,525人が登録された。チエノピリジン投与は4か月までに94.2%で中止され、1年追跡率は99.6%であった。definiteのステント血栓症の発生は皆無であった。選択された患者においてではあるが、CoCr-EES留置後3か月でのDAPT中止の安全性が示唆されたSTOPDAPT研究の意義は大きい。DAPT期間は延長すべき? DAPT試験2014年の第87回米国心臓協会年次集会(AHA2014)でDAPT試験の結果が発表されるまでは、short DAPTの方向に意見は収束しつつあるように思われていた。つまり、DAPT期間を延長することにより出血性合併症の発症リスクは増加し、虚血性イベントの明確な抑制は認められない、というものである。1年間または6か月間のDAPTで十分であり、むしろ論点は3か月間などいっそう短いDAPT期間を模索する方向に推移していた。この方向性を逆転するような結果が「DAPT試験」として報告されたのである12)。DES後の患者で、DAPT期間12か月と30か月というlong DAPTを比較する無作為割り付け試験である。米国食品医薬品局(FDA)の要請により実施された多施設共同ランダム化比較試験であり、冠動脈ステントを製造・販売する企業など8社が資金を提供した大規模研究である。DES後の患者9,961例を対象に、DAPT期間の長短によるリスクとベネフィットが比較検討された。その結果、30か月のlong DAPT群でステント血栓症および主要有害複合エンドポイント(死亡、心筋梗塞、脳卒中)が有意に低く、出血性合併症はlong DAPT群で有意に高かった。long DAPTのベネフィットが報告されたDAPT試験ではあるが、このDAPT試験に内在する問題点についての指摘も多い。本試験のデザインは、DES植込み直後にDAPT期間12か月と30か月に割り付けたわけではなく、植込み当初の1年間のDAPT期間に出血を含めイベントなく経過した患者のみを対象としている。背景にいるDES植込み患者は22,866人おり、そのうちの44%にすぎない9,961人が無作為化試験に参加している。この44%の患者を選択する過程でバイアスが生じている可能性がある。この除外された半数を超える56%の患者に、本試験の結果を敷衍できるのかは不明である。また、この試験の結果では30か月DAPT施行による主要有害複合エンドポイントの抑制は、心筋梗塞イベントの抑制に依存している。心筋梗塞が増えれば死亡が増えることが自然に思えるが、心臓死・非心臓死ともにlong DAPT群において有意差はないが実数として多く発生している。本試験で報告されている心筋梗塞サイズは不明であるが、心筋梗塞イベントが臨床的にもつ意味合いについても考える必要がある。PEGASUS-TIMI 54研究もlong DAPTを支持する結果であった13)。これは、心筋梗塞後1年以上の長期にわたるDAPTが有用か否かを検証する試験で、アスピリン+チカグレロルとアスピリン単独の長期投与を比較した研究である。その結果、有効性はアスピリン+チカグレロル群で有意に優れていたが、安全性(大出血)は有意に高リスクであることが示された。short DAPTかlong DAPTかの問題について決着をつけるには、さらなる研究が必要と思われる。DAPT試験の結果が発表されたあとに、DAPT期間についてのメタ解析がいくつか報告されている。その代表がPalmeriniらによって報告されたものである14)。その論文の結論は明確にDAPT期間の長短を断じたものではなく、患者個別のベネフィットとリスクを考えることを薦めるものであることに注目したい。全患者に均一のDAPT期間を明示することは現実的には困難であり、リスク層別化を考えることが大切と思われる。出血リスクが低く心血管イベントの発生するリスクが極めて高い患者でDAPT期間の延長を考慮することが現実的であろう。文献1)Leon MB et al. A clinical trial comparing three antithrombotic-drug regimens after coronaryartery stenting. Stent Anticoagulation Restenosis Study Investigators. N Engl J Med 1998; 339: 1665-1671.2)日本循環器学会ほか. 安定冠動脈疾患における待機的PCIのガイドライン(2011年改訂版).3)日本循環器学会ほか. ST上昇型急性心筋梗塞の診療に関するガイドライン(2013年改訂版).4)Tada T et al. Duration of dual antiplatelet therapy and long-term clinical outcome after coronary drug-eluting stent implantation: landmark analyses from the CREDO-Kyoto PCI/CABG Registry Cohort-2. Circ Cardiovasc Interv 2012; 5: 381-391.5)Navarese EP et al. BMJ 2015; 350: h1618.6)Collet JP et al. Dual-antiplatelet treatment beyond 1 year after drug-eluting stent implantation (ARCTICInterruption): a randomised trial. Lancet 2014; 384: 1577-1585.7)Valgimigli M et al. Randomized comparison of 6-versus 24-month clopidogrel therapy after balancing anti-intimal hyperplasia stent potency in all-comer patients undergoing percutaneous coronary intervention. Design and rationale for the PROlonging Dual-antiplatelet treatment after grading stent-induced Intimal hyperplasia study (PRODIGY). Am Heart J 2010; 160: 804-811.8)Lee CW et al. Optimal duration of dual Antiplatelet therapy after drug-eluting stent implantation: a randomized controlled trial. Circulation 2013; 129: 304-312.9)Gwon HC et al. Six-month versus 12-month dual antiplatelet therapy after implantation of drugeluting stents: the efficacy of Xience/Promus versus cypher to reduce late loss after stenting (EXCELLENT) randomized, multicenter study. Circulation 2012; 125: 505-513.10)Kim BK et al. A new strategy for discontinuation of dual antiplatelet therapy: the RESET trial (REal Safety and Efficacy of 3-month dual antiplatelet Therapy following Endeavor zotarolimus-eluting stent implantation). J Am Coll Cardiol 2012; 60: 1340-1348.11)Feres F et al. Three vs twelve months of dual antiplatelet therapy after zotarolimus-eluting stents: the OPTIMIZE randomized trial. JAMA 2013; 310: 2510-2522.12)Mauri L et al. For the DAPT study investigators: Twelve or 30 months of dual antiplatelet therapy after drug-eluting stents. N Engl J Med 2014; 371: 2155-2166.13)Bonaca MP et al. for the PEGASUS-TIMI 54 steering committee and investigators. Long-term use of ticagrelor in patients with prior myocardial infarction. N Engl J Med 2015; 372: 1791-1800.14)Palmerini T et al. Mortality in patients treated with extended duration dual antiplatelet therapy after drug-eluting stent implantation: a pairwise and Bayesian network meta-analysis of randomised trials. Lancet 2015; 385: 2371-2382.

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PCI後1年超のDAPT継続期間を予測するモデル/JAMA

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)実施後1年超の2剤併用抗血小板療法(DAPT)の継続期間を明らかにする予測モデルが開発された。米国、ベスイスラエル・ディーコネス医療センターのRobert W. Yeh氏らが、1万1,648例を対象に行った無作為化試験「DAPT」試験の被験者データから開発した。PCI後のDAPTでは、虚血リスクは減少するが、出血リスクの増大が報告されている。今回開発したモデルは、検証試験の結果、それらを中程度の精度で予測できるものだったという。JAMA誌オンライン版2016年3月29日号掲載の報告より。 PCI後12~30ヵ月の虚血/出血リスク因子を抽出 研究グループは2009年8月~14年5月にかけて、11ヵ国で行われたDAPT試験の被験者1万1,648例のデータを基に、PCI後12ヵ月~30ヵ月の虚血リスクと出血リスクの予測因子を抽出し予測モデルを作成した。DAPT試験では被験者に対し、PCI後12ヵ月間、チエノピリジンとアスピリンによるDAPTを実施した後、被験者を無作為に2群に分け、一方にはチエノピリジンとアスピリンを、もう一方にはプラセボとアスピリンをそれぞれPCI後12~30ヵ月まで投与した。 予測モデルの検証については、ブースストラップ法によるコホート内検証と、2007~14年にかけて行われたPROTECT試験の被験者8,136例を対象にそれぞれ行った。 主要評価項目は、PCI後12~30ヵ月の虚血イベント(心筋梗塞とステント血栓症)と出血イベント(中程度~重度)だった。予測モデルのC統計量、虚血が0.70、出血が0.68 DAPT試験の被験者の平均年齢は61.3歳、女性は25.1%だった。そのうち、虚血イベントが認められたのは348例(3.0%)、出血イベントは215例(1.8%)だった。DAPT試験を基に検証した予測モデルのC統計量は、虚血と出血がそれぞれ0.70と0.68だった。 予測モデルでは、初診時の心筋梗塞、心筋梗歴またはPCI歴、糖尿病、ステント直径3mm未満、喫煙、パクリタキセル溶出ステントに各1ポイント、うっ血性心不全または低駆出分画率の病歴と静脈グラフトインターベンションが各2ポイント、65歳以上75歳未満が-1ポイント、75歳以上が-2ポイントとした。 そのうえで、合計スコアが2以上のグループ(5,917例)については、12~30ヵ月にアスピリンとプラセボを投与した群の虚血イベント発生率が5.7%だったのに対し、チエノピリジンとアスピリンによるDAPT群では、同発生率は2.7%と、有意に低率だった(リスク差:-3.0%、95%信頼区間:-4.1~-2.0、p<0.001)。 一方でスコアが2未満のグループ(5,731例)では、同発生率はプラセボ群が2.3%に対しDAPT群は1.7%と、有意差には至らなかった(p=0.07)。 逆に出血率については、高スコアグループではDAPT群で1.8%に対し、プラセボ群では1.4%と有意差はなく(p=0.26)、低スコアグループではそれぞれ3.0%と1.4%と、DAPT群で高率だった(p<0.001)。 PROTECT試験の被験者による検証では、虚血と出血に関する予測モデルのC統計量は、いずれも0.64だった。虚血イベントについては、高スコアグループが低スコアグループに比べリスクが大きかったが、出血リスクについて有意差はなかった。 これらの結果を踏まえて著者は、同予測モデルの予測精度は中程度であり、今後さらなる試験による検証が必要だとしている。

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生体吸収性ステントBVSに対する期待とエビデンスの持つ意味~メタ解析の結果~(解説:上田 恭敬 氏)-502

 新たに開発された生体吸収性ステント(BVS:bioresorbable vascular scaffold)と、現時点で最も優れた臨床成績を示している金属製薬剤溶出性ステント(DES:metallic drug-eluting stent)の1つであるXienceステントを比較した、4つの無作為化比較試験の1年時成績のメタ解析が報告された。症例数の合計は、BVSが2,164症例、Xienceが1,225症例である。 結果は、患者についての複合エンドポイントもデバイス(ステント)についての複合エンドポイントも、群間で有意差を認めなかったというものであった。 論文内でも述べられているが、大規模な長期の臨床試験の結果によって、この新しく開発されたデバイスであるBVSが、従来のDESに比べて本当に優れているか否かを示すには、まだまだ長い時間が必要である。しかし、それまでの間、この新しいデバイスを使い続けるためには、1年時のエビデンスとして、BVSの使用によって患者の予後を悪化させていないことを示す必要があるとの考えから、この解析が行われている。 しかし、1年時の成績から必ずしも長期の予後を予測できないことは、CypherステントとEndeavorステントの比較試験の結果が、1年時と5年時でまったく逆になったことからも明らかである。そのことをわかっていながらも、形だけでもエビデンスと呼べるものをつくらないといけない、現在の過度なエビデンス依存状態がみえる。1年時のBVSの成績がXienceよりも優れていようが劣っていようが、5年あるいはそれ以上の長期の成績において、どちらが優れた結果を示すことになるのかは神のみぞ知る問題である。もし、少しでも長期成績を予測しようと思うのであれば、このような統計データではなく、病理やイメージングを用いた研究の結果を、もっと詳細に議論するべきではないだろうか。 しかも、主なエンドポイントとして設定される複合エンドポイントは、通常、試験の目的(今回の場合「BVSが劣っていないこと」)を示しやすいように工夫されているものである。その主なエンドポイントに差がなかったことを第1に主張している論文の表現法にも、この目的がにじみ出ていると感じる。しかし結果としては、標的血管関連心筋梗塞の発症頻度が有意差をもってBVSで高くなっていて、有意差には至っていないが、ステント血栓症が高頻度となっていることが指摘されている。BVSで手技時間が有意に長く、手技成功率が有意に低くなっていることも重要である。また、無作為化試験のメタ解析でありながら、背景因子にかなりの偏りが存在することも問題と思われる。 本解析の結果から出るメッセージは、「成績に差がなかったからBVSを使い続けることは問題ないですよ」といったお墨付きではなく、「BVSによる心筋梗塞の発症増加が認められ、手技成功率も低いので、広く使われればXienceを使うよりも患者の予後を悪化させる可能性がある」といった、注意喚起の内容とすべきではないだろうか。もちろん、金属が体内に残らないことから生じるメリットも想定される新しい技術であり、長期成績については長期の大規模試験の結果が出るまでは誰にもわからないので、「BVSを使うべきではない」とまではいうべきではないが、その真逆の「1年時点ではまったく劣っていなかった」というのは、やはり違和感を覚える。この解析もいずれ結果の詳細は忘れ去られて、結論のみが独り歩きしてしまうことになるのであろうから、結論にどの結果を強調するかは、非常に重要であると思われる。逆に、さまざまな大規模試験の結論が独り歩きしている中で、その結論のみを鵜呑みにしない態度も重要である。蛇足かもしれないが、COURAGE試験の結論として指摘される「安定狭心症患者には、十分な薬物療法をすれば、必ずしも冠動脈形成術をしなくてもよい」という考えも、鵜呑みにすべきでないエビデンスの1つと著者は考えている。

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抗PD-L1抗体atezolizumab、既治療NSCLCのOS延長/Lancet

 既治療の非小細胞肺がん(NSCLC)の治療において、新規免疫チェックポイント阻害薬atezolizumabは、ドセタキセル(商品名:タキソテールほか)に比べ予後が良好であることが、米国・カイザーパーマネンテ医療センターのLouis Fehrenbacher氏らが行ったPOPLAR試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2016年3月9日号に掲載された。ニボルマブやペムブロリズマブがT細胞上のPD-1を標的とするのに対し、atezolizumabは腫瘍細胞および腫瘍浸潤免疫細胞上に発現しているPD-L1(PD-1のリガンド)に対するヒト型IgG1モノクローナル抗体で、T細胞上のPD-1だけでなくB7.1(CD80)との結合を阻害する。それゆえ、T細胞活性化阻害作用の抑制効果が抗PD-1抗体よりも高い可能性があり、またPD-L2とPD-1の相互作用には影響しないことから、免疫系の恒常性への影響を回避できると考えられている。ドセタキセルと比較する無作為化第II相試験 POPLAR試験は、既治療のNSCLC患者においてatezolizumabとドセタキセルの有用性を比較し、PD-L1発現レベルを評価する非盲検無作為化第II相試験(F Hoffmann-La Roche/Genentech社の助成による)。 対象は、プラチナ製剤による化学療法後に病勢が進行したNSCLCで、全身状態(ECOG PS)が0/1、測定可能病変(RECIST ver.1.1)を有する患者であった。 被験者は、腫瘍浸潤免疫細胞上のPD-L1の状態、組織型、前治療レジメン数で層別化され、atezolizumab(1,200mg、静脈内投与)またはドセタキセル(75mg/m2、静脈内投与)を3週ごとに投与する群に無作為に割り付けられた。 免疫組織化学(IHC)検査に基づき、腫瘍細胞上のPD-L1(TC3:≧50%、TC2:5~50%、TC1:1~5%、TC0:<1%)および腫瘍浸潤免疫細胞上のPD-L1(IC3:≧10%、IC2:5~10%、IC1:1~5%、IC0:<1%)をスコア化した。 主要評価項目は全生存期間(OS)とし、探索的解析としてバイオマーカーの評価を行った。 2013年8月5日~14年3月31日までに、13ヵ国61施設に287例が登録された。atezolizumab群に144例、ドセタキセル群には143例が割り付けられ、それぞれ142例、135例が1回以上の投与を受けた。OS中央値:約3ヵ月延長、PD-L1発現率が高いほど良好 年齢中央値は両群とも62歳、男性はatezolizumab群が65%、ドセタキセル群は53%であり、喫煙者/元喫煙者がそれぞれ81%、80%、前治療レジメン数は1が65%、67%、2が35%、33%だった。 OS中央値はatezolizumab群が12.6ヵ月であり、ドセタキセル群の9.7ヵ月に比べ有意に延長した(ハザード比[HR]:0.73、95%信頼区間[CI]:0.53~0.99、p=0.04)。 また、OS中央値はPD-L1の発現率が高い患者ほど良好であった(TC3またはIC3=HR:0.49[0.22~1.07]、p=0.068/TC2/3またはIC2/3=HR:0.54[0.33~0.89]、p=0.014/TC1/2/3またはIC1/2/3=HR:0.59[0.40~0.85]、p=0.005/TC0およびIC0=HR:1.04[0.62~1.75]、p=0.871)。 既存免疫(エフェクターT細胞およびインターフェロン-γの関連遺伝子発現≧中央値で定義)を有する患者の探索的解析では、atezolizumab群のOS中央値が有意に改善された(HR:0.43、95%CI:0.24~0.77)。 atezolizumab群で頻度の高い全原因有害事象として、食欲減退、呼吸困難、悪心、下痢、発熱などが認められ、免疫関連有害事象としてAST上昇(4%)、ALT上昇(4%)、肺臓炎(3%)、腸炎(1%)、肝炎(1%)がみられた。 治療関連有害事象の発現率は、atezolizumab群が67%、ドセタキセル群は88%であった。有害事象による治療中止は、atezolizumab群が8%(11例)、ドセタキセル群は22%(30例)、Grade 3/4の治療関連有害事象はそれぞれ11%(16例)、39%(52例)であり、atezolizumab群で少なかった。治療関連死はatezolizumab群が<1%(1例:心不全)、ドセタキセル群は2%(3例:敗血症、急性呼吸窮迫症候群、原因不明)だった。 著者は、「atezolizumabはドセタキセルに比べ既治療のNSCLC患者の予後を改善した」とまとめ、「PD-L1の発現は、atezolizumabのベネフィットを予測するバイオマーカーとなる可能性が示唆される」と指摘している。

533.

卵巣がんへの週1回パクリタキセル、生存期間を延長するか/NEJM

 進行卵巣がんに対するパクリタキセル+カルボプラチン併用療法では、投与間隔を1週ごとに短縮した投与法(dose-dense療法)を行っても、通常の3週ごとの投与法に比べ予後は改善しないことが、米国・Sutterがん研究所のJohn K Chan氏らが行ったGOG-0262試験で示された。研究の成果は、NEJM誌2016年2月25日号に掲載された。投与の間隔を狭めて頻度を高めたdose-dense療法は、血管新生を阻害し、アポトーシスを促進するため、薬剤の抗腫瘍効果を増強する可能性があるという。パクリタキセルの毎週投与法は乳がん患者の生存期間を延長することが示され、卵巣がんでは日本の研究(JGOG 3016試験)でdose-dense療法の有望な結果が報告されている。2つの投与法の効果を無作為化第III相試験で評価 GOG-0262試験は、進行卵巣がんの初回治療におけるパクリタキセル+カルボプラチン併用療法のdose-dense療法と通常治療の有用性を比較する非盲検無作為化第III相試験(米国国立がん研究所[NCI]などの助成による)。 対象は、新規に診断され、完全切除が達成されなかったStage III/IVの上皮性卵巣がん、卵管がん、原発性腹膜がんとした。最大径が1cm以上の遺残病変がみられないStage II/IIIの患者や、術前補助療法を希望する患者も含まれた。 被験者は、ベバシズマブ投与の有無で層別化したのち、パクリタキセル(175mg/m2)+カルボプラチン(AUC=6)を3週に1回(第1日)静脈内投与する群(通常治療群)またはパクリタキセル(80mg/m2)+カルボプラチン(AUC=6)を第1、8、15日に静脈内投与する群(dose-dense療法群)に無作為に割り付けられた。3週を1サイクルとして6サイクルを施行することとした。 主要評価項目は、無増悪生存期間(PFS)であった。 2010年9月~2012年2月の間に、米国、カナダ、韓国の200以上の施設に692例が登録され、両群に346例ずつが割り付けられた。全体では、60歳未満が46%、Stage III/IVが97%、上皮性卵巣がんが79%であり、ベバシズマブの投与は84%が、術前補助療法は13%が受けた。ベバシズマブ非投与例ではPFS中央値が有意に延長 PFS中央値は、dose-dense療法群が14.7ヵ月であり、通常治療群の14.0ヵ月と比較して有意な延長はみられなかった(ハザード比[HR]:0.89、95%信頼区間[CI]:0.74~1.06、p=0.18)。 一方、ベバシズマブの投与を受けなかった患者のPFS中央値は、dose-dense療法群が14.2ヵ月と、通常治療群の10.3ヵ月に比し3.9ヵ月有意に延長した(HR:0.62、95%CI:0.40~0.95、p=0.03)。 これに対し、ベバシズマブの投与を受けた患者では、PFS中央値はそれぞれ14.9ヵ月、14.7ヵ月であり、有意差はみられなかった(HR:0.99、95%CI:0.83~1.20、p=0.60) 治療効果の同質性(homogeneity)について交互作用検定を行ったところ、ベバシズマブ投与例と非投与例に有意な差が認められた(p=0.047)。 全生存期間(OS)中央値は、dose-dense療法群が40.2ヵ月、通常治療群は39.0ヵ月であり、有意差はなかった(HR:0.94、95%CI:0.72~1.23)。 全体で最も頻度の高いGrade 3/4の有害事象は好中球減少(78%)であった。dose-dense療法群の発現率は72%であり、通常治療群の83%よりも有意に低かった(p<0.001)。 Grade 3/4の貧血の頻度は、dose-dense療法群が36%と、通常治療群の16%よりも高く(p<0.001)、Grade 2~4の感覚性ニューロパチーも、dose-dense療法群は26%であり、通常治療群の18%よりも高頻度であった(p=0.01)。 14例が担当医により治療関連死の可能性があると判定され、dose-dense療法群が6例、通常治療群は8例だった。 著者は、「NCIが最近行った卵巣がん患者の人口ベースの研究では、アジア系は白人よりも生存率が高いことが示され、治療への反応や毒性作用に関してゲノム薬理学的な人種差がある可能性も示唆されている。これにより、本試験とJGOG 3016試験の結果の違いが説明できるかもしれない」と指摘している。

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エベロリムス溶出ステント留置後のDAPT延長、主要心・脳血管イベントは減少せず

 薬剤溶出ステント留置後、アスピリン・チエノピリジン系薬剤を併用する抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)を12ヵ月継続することが一般的に推奨されている。ところが、昨年発表されたDAPT試験では、薬剤溶出ステント(DES)留置後、DAPT 12ヵ月群に比べて、30ヵ月継続した群でステント血栓症および主要な心および脳血管イベントが減少し、出血リスクが上昇することが示された。12ヵ月を超えたDAPTによるこれまでの結果と異なり、物議を醸した。DESの安全性と有効性は種類間で異なる。エベロリムス溶出ステントはパクリタキセル溶出ステントに比べて、ステント血栓症が少ないと報告され、使用頻度も高い。 今回の報告では、DAPT試験の患者からエベロリムス溶出ステント留置群のみを抽出し、DAPTの結果がエベロリムスステント留置患者でも当てはまるのかが評価された。結果としては、エベロリムス溶出ステント留置後においてもDAPT 30ヵ月群はステント血栓症と心筋梗塞を減少させたが、DAPT試験と異なり、主要有害心・脳血管イベントにおいて有意差は認められなかった。また、中等度以上の出血を増やすことが示された。JACC Cardiovascular Intervention誌2016年1月25日号の報告。エベロリムス溶出ステント留置後のDAPT投与期間 12ヵ月と30ヵ月で比較。多施設無作為化試験、DAPT試験のPost hoc解析 すべての患者はエベロリムス溶出ステント留置後、オープンラベルでアスピリンとチエノピリジン系薬剤を12ヵ月間投与された。留置後12ヵ月間のDAPTに忍容性を認め、主要有害心・脳血管イベント、再血行再建療法、中等度以上の出血がない患者のみ、アスピリン・プラセボ群とDAPT継続群に無作為化され、18ヵ月後(ステント留置後30ヵ月)のステント血栓症、主要有害心・脳血管イベント(死亡、心筋梗塞、脳卒中)が評価された。安全性の1次エンドポイントはフォローアップ期間中の中等度以上の出血。DAPT試験に登録された25,682例のうち、エベロリムス溶出ステントは11,308例に使用され、4,703例が留置後12ヵ月の時点で無作為化された[DAPT 30ヵ月群:2,345例、プラセボ群(DAPT 12ヵ月):2,358例]。DAPT群でステント血栓症は有意に減少したが、主要な心・脳血管イベントには有意差なし プラセボ群(DAPT 12ヵ月)と比べて、DAPT 30ヵ月群では、ステント血栓症(0.3% vs.0.7%、p=0.04)と心筋梗塞(2.1% vs.3.2%、p=0.01)が有意に減少したが、主要有害心・脳血管イベントには有意差が見られなかった(4.3% vs.4.5%、p=0.42)。また、中等度以上の出血がDAPT 30ヵ月群で有意に増加していた(2.5% vs.1.3%、p=0.01)。出血と関連しない悪性腫瘍による死亡はDAPT 30ヵ月群で増加していた(0.64% vs.0.17%、p=0.01)。 ステント血栓症、心筋梗塞が増加しているにもかかわらず、主要有害心・脳血管イベントに差が認められないということは、心筋梗塞の定義に問題がある可能性がある。心筋酵素の上昇で診断されるような軽微な心筋梗塞の減少は、臨床的な予後の改善に結び付かないとも考えられる。

535.

抗ヒトTリンパ球免疫グロブリン追加でGVHDが半減/NEJM

 急性白血病患者に対する同種末梢血幹細胞移植において、従来の骨髄破壊的前処置レジメンに抗ヒトTリンパ球免疫グロブリン(ATG)を加えると、2年時の慢性移植片対宿主病(GVHD)の発症率が半減することが、ドイツのハンブルク・エッペンドルフ大学医療センターのNicolaus Kroger氏らの検討で示された。慢性GVHDは、同種造血幹細胞移植後の晩期合併症や死亡の主な原因で、QOLを損なう。この20年間で、急性GVHDの予防には改善がみられるが、慢性GVHDの予防は改善されていない。ATGは唯一、非血縁ドナー由来の幹細胞移植時に使用すると慢性GVHDの発症率を低下させるとの報告があり、HLA一致ドナーからの移植に関する小規模の後ろ向き試験で抑制効果が確認されている。NEJM誌2016年1月7日号掲載の報告。AML、ALL患者でのATG追加の有用性を無作為化試験で評価 研究グループは、急性白血病患者に対する骨髄破壊的前処置レジメンにATGを併用すると、HLA一致同胞からの同種末梢血幹細胞移植後2年時の慢性GVHDが大幅に減少するとの仮説を立て、これを検証するための多施設共同非盲検無作為化第III相試験を行った(Neovii Biotech社および欧州血液骨髄移植学会の助成による)。 対象は、年齢18~65歳、初回または2回目の完全寛解が得られた急性骨髄性白血病(AML)または急性リンパ性白血病(ALL)で、同種造血幹細胞移植の適応と判定された患者であった。同胞ドナーは、血清学的にHLA-AとHLA-Bが適合し、高解像度DNAマッチング法でHLA-DRB1とHLA-DQB1のアレルが適合するものとした。 被験者は、HLA一致同胞ドナーからの同種末梢血幹細胞移植前の3日間、骨髄破壊的レジメン(シクロホスファミド+全身照射またはブスルファン±エトポシド)にATGを併用する群または併用しない群に無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、移植後2年時の慢性GVHDの累積発症率とした(改訂シアトル基準およびNIH基準で判定)。副次評価項目は、2年時の生着、急性GVHD、非再発死亡、無再発生存、全生存であった。 2006年12月~12年2月に、27施設に155例が登録され、ATG群に83例、非ATG群には72例が割り付けられた。ベースラインの両群の背景因子は全般にバランスが取れていたが、年齢中央値がATG群39.0歳、非ATG群43.5歳(p=0.04)と有意な差が認められた。2年時慢性GVHD:32.2 vs.68.7%、無再発生存、全生存は同等 フォローアップ期間中央値24ヵ月の時点で、慢性GVHDの累積発生率はATG投与群が32.2%(95%信頼区間[CI]:22.1~46.7)と、非投与群の68.7%(58.4~80.7)に比べ有意に低かった(p<0.001)。 2年無再発生存率は両群でほぼ同程度であり(ATG投与群:59.4%[95%CI:47.8~69.2] vs.非投与群:64.6%[50.9~75.3]、p=0.21)、全生存率にも大きな差はなかった(74.1%[62.7~82.5] vs.77.9%[66.1~86.1]、p=0.46)。 生着不全は非投与群の1例(1.4%)に認められた。移植後100日以内の急性GVHDの発症率はATG投与群が25.3%、非投与群は34.7%(p=0.20)で、そのうちGrade2~4はそれぞれ10.8%、18.1%(p=0.13)、Grade3/4は2.4%、8.3%(p=0.10)であり、いずれも有意な差はみられなかった。 感染性合併症は、ATG投与群が57.8%、非投与群は54.2%にみられ、有意な差はなかった(p=0.65)。サイトメガロウイルスの再活性化(21.7 vs.25.0%、p=0.63)、エプスタイン・バール・ウイルスの再活性化(3.6 vs.1.4%、p=0.38)、真菌感染(3.6 vs.4.2%、p=0.86)にも有意差はみられなかった。移植後リンパ増殖性疾患は両群とも認めなかった。 2年時の非再発死亡率は、ATG投与群が14.0%、非投与群は12.0%であった(p=0.60)。有害事象(Bearmanスコア)の発生率は、消化管毒性(28.9 vs.52.8%、p=0.03)を除き両群間に有意な差はみられず、重症度にも差はなかった。 2年時の慢性GVHDの発現のない生存および無再発生存の複合エンドポイントの発生率は、ATG投与群が非投与群よりも有意に良好だった(36.6 vs.16.8%、p=0.005)。 著者は、「骨髄破壊的前処置レジメンへのATGの追加により、慢性GVHDの発生率が有意に抑制された。無再発生存率と全生存率はほぼ同じであったが、慢性GVHDのない生存および無再発生存の複合エンドポイントはATGを追加した患者が優れた」とまとめている。

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既治療PD-L1陽性NSCLCへのpembrolizumabの有効性を確認/Lancet

 既治療の進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者の治療において、pembrolizumabは標準治療に比べ全生存期間(OS)を延長し、良好なベネフィット・リスク比を有することが、米国・イェール大学医学大学院のRoy S Herbst氏らが行ったKEYNOTE-010試験で示された。免疫療法はNSCLCの新たな治療パラダイムであり、活性化B細胞やT細胞表面のPD-1受容体を標的とする免疫チェックポイント阻害薬が有望視されている。pembrolizumabは、PD-1に対するヒト型IgG4モノクローナル抗体であり、米国では第Ib相試験(KEYNOTE-001試験)のデータに基づき、プラチナ製剤ベースレジメンによる治療中または治療後に病勢が進行した転移性NSCLCの治療薬として迅速承認を取得している。Lancet誌オンライン版2015年12月18日号掲載の報告。2種の用量をドセタキセルと比較する第II/III相試験 KEYNOTE-010試験は、既治療のPD-L1(PD-1のリガンド)陽性NSCLCに対するpembrolizumabの有用性を評価する非盲検無作為化第II/III相試験(Merck & Co助成)。 対象は、年齢18歳以上、プラチナ製剤ベースの2剤併用療法やチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR変異陽性例、ALK転座陽性例)による治療後に病勢が進行し、PD-L1陽性(腫瘍細胞の1%以上にPD-L1が発現)と判定された進行NSCLCとした。 被験者は、pembrolizumab 2mg/kg、同10mg/kg、ドセタキセル75mg/m2をそれぞれ3週ごとに静脈内投与する群に無作為に割り付けられた。治療期間は24ヵ月であった。 主要評価項目は、全例および腫瘍細胞の50%以上にPD-L1の発現がみられる患者におけるOSおよび無増悪生存期間(PFS)とした。有意性の閾値は、OSがp<0.00825(片側検定)、PFSはp<0.001に設定した。 2013年8月28日~2015年2月27日に、日本を含む24ヵ国202施設に1,034例が登録され、pembrolizumab 2mg/kg群に345例、同10mg/kg群に346例、ドセタキセル群には343例が割り付けられた。それぞれ344例、346例、343例がITT解析の対象となり、そのうち139例、151例、152例がPD-L1≧50%であった。PD-L1≧50%ではOS、PFSとも有意に延長、高用量群でも有害事象が少ない 年齢中央値は、pembrolizumab 2mg/kg群と同10mg/kg群が63.0歳、ドセタキセル群は62.0歳であり、男性はそれぞれ62%、62%、61%であった。東アジア人が、19%、18%、18%含まれ、元喫煙者/喫煙者は81%、82%、78%、治療ライン数が3以上の患者は8%、10%、8%だった。 2015年9月30日までに521例が死亡した。OS中央値は、2mg/kg群が10.4ヵ月、10mg/kg群が12.7ヵ月、ドセタキセル群は8.5ヵ月であり、ドセタキセル群と比較して2mg/kg群が29%(ハザード比[HR]:0.71、95%信頼区間[CI]:0.58~0.88、p=0.0008)、10mg/kgは39%(0.61、0.49~0.75、p<0.0001)有意に延長した。 OSのサブグループ解析では、すべてのサブグループでpembrolizumab群(2群を統合)が良好であり、その多くで有意差が認められた。65歳以上、ECOG PS 0、扁平上皮がん、EGFR変異型では有意差がないのに対し、それぞれ65歳未満、ECOG PS 1、腺がん、EGFR野生型では有意差が認められた。 PFS中央値は、それぞれ3.9ヵ月、4.0ヵ月、4.0ヵ月であり、ドセタキセル群との比較で有意な差は認めなかった(2mg/kg群:p=0.07、10mg/kg群:p=0.004)。サブグループ解析では、女性、ECOG PS 0、EGFR変異型では有意差がなかったのに対し、それぞれ男性、ECOG PS 1、EGFR野生型ではpembrolizumab群(2群を統合)で有意に良好であったが、組織型による効果の差はなかった。 PD-L1≧50%の患者では、OS中央値が2mg/kg群で46%(14.9 vs.8.2ヵ月、HR:0.54、95%CI:0.38~0.77、p=0.0002)、10mg/kg群では50%(17.3 vs.8.2ヵ月、0.50、0.36~0.70、p<0.0001)有意に改善した。この集団では、PFS中央値も2mg/kg群で41%(5.0 vs.4.1ヵ月、0.59、0.44~0.78、p=0.0001)、10mg/kg群でも41%(5.2 vs.4.1ヵ月、0.59、0.45~0.78、p<0.0001)有意に改善した。 なお、PD-L1発現が1~49%の患者では、OSがpembrolizumab群(2群を統合)で有意に良好であった(HR:0.76、95%CI:0.60~0.96)が、PFSには差がなかった(1.04、0.85~1.27)。 有害事象の発現率は2mg/kg群が63%(215/339例)、10mg/kg群が66%(226/343例)、ドセタキセル群は81%(251/309例)であった。pembrolizumab群で頻度の高いものとして、食欲不振、疲労、悪心、皮疹が認められた(9~14%)。 pembrolizumabでとくに注意すべき有害事象では、甲状腺機能低下症、肺臓炎、甲状腺機能亢進症の頻度が高かった(4~8%)。 Grade3~5の治療関連有害事象の発現率は、2mg/kg群が13%(43/339例)、10mg/kg群が16%(55/343例)、ドセタキセル群は35%(109/309例)であり、pembrolizumab群で頻度が低かった。 著者は、「pembrolizumabは、プラチナ製剤ベースの治療後に病勢が進行したPD-L1陽性NSCLCの新たな治療選択肢であり、EGFR変異やALK転座のみられる患者にも適切な治療法である。PD-L1は、本薬によるベネフィットを得る可能性が高い患者を同定するバイオマーカーとして妥当と考えられる」としている。

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成人T細胞白血病・リンパ腫〔ATLL : adult T-cell leukemia-lymphoma〕

1 疾患概要■ 概念・定義成人T細胞白血病・リンパ腫(ATLL)は、レトロウイルスであるヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV-1)に感染したT細胞が、腫瘍化して起こる悪性腫瘍である。■ 疫学HTLV-1の推定感染者数は最近の統計では108万人で、以前より減少傾向にあるとされる。しかしながら、1,000人/年ほどのATLLの発症数があるとされている。九州、沖縄のほか、紀伊半島、三陸海岸、北海道などの沿海地域に感染者数の多い地域がある。また、人口の移動に伴い東京・大阪などの大都市圏での感染者も増えている。HTLV-1の感染経路としては母児感染(主に母乳を介する)、輸血(現在はスクリーニングにより新たな感染はない)、性的接触などがある。HTLV-1感染者が生涯にわたって、ATLLを発症するリスクは5%程度と考えられており、通常、40年近い潜伏期間を経て発症するので、発症年齢中央値は70歳前後と高齢である。■ 病因HTLV-1のpX領域にコードされるTax遺伝子やpX領域のマイナス鎖にコードされるHBZなどが、HTLV-1感染T細胞の不死化や細胞増殖に関与していると考えられている。キャリアの状態では、これらの遺伝子の働きによる細胞増殖と宿主の免疫とのバランスがとれているが、新たな遺伝子異常が加わることや宿主免疫に異常を来すことが、腫瘍化に関与していると考えられている。■ 症状(表)画像を拡大する1)血液中異常細胞(フラワー細胞)出現ATLLの典型的な血液腫瘍細胞の形態は、強い分葉のある核をもつフラワー細胞である。多くの場合、CD4+、 CD25+で、CD7発現が消失していることが多い。2)リンパ節腫大・肝脾腫3)皮膚病変紅斑や腫瘤などがみられる。4)高カルシウム血症ATLL細胞が、血清カルシウム値を上昇させる副甲状腺ホルモン関連蛋白(PTHrP)を産生するために起こる。高カルシウム血症のため全身倦怠感、多尿、腎障害、意識障害を来す。5)日和見感染症ATLL患者では、正常T細胞の減少がみられ、その結果として細胞性免疫低下に関連した日和見感染症(帯状疱疹、サイトメガロウイルス感染症、ニューモシスチス感染症、各種真菌症、糞線虫症などの寄生虫感染症など)を起こしやすい。■ 予後急性型・リンパ腫型の予後は、きわめて不良とされている。最近行われた多施設後方視研究では、生存期間中央値7.7ヵ月であった。Ann Arbor分類で病期3以上、身体活動度2以上、年齢・血清アルブミン、可溶性IL-2受容体などの連続変数からなるATL予後指数が報告されており、高・中間・低リスク群での生存期間中央値はそれぞれ3.6、7.3、16.2ヵ月、2年生存割合は4、17、39%であった。しかし、同種造血幹細胞移植施行例では、一定の割合で長期無増悪生存が得られ、治癒が期待できる。慢性型・くすぶり型の患者の予後は、従来良好とされていたが、長崎大学からの報告では生存期間中央値4.1年で5、10、15年生存割合はそれぞれ、47.2、25.4、14.1%と必ずしも予後良好とはいえない結果であった。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)さまざまな症状で医療機関を受診した際に、一般血液検査で白血球増加症、とくに末梢血塗抹標本でフラワー細胞の出現がみられたり(図)、異常T細胞の増加がみられた場合にATLLが疑われる。このほか、リンパ節腫大の鑑別診断も挙げられる。画像を拡大する日本人でリンパ節や節外病変の生検でT細胞リンパ腫と診断された際には、ATLLの可能性を鑑別する必要がある。特徴的な検査値異常として、可溶性IL-2受容体(sIL-2R)高値、血清カルシウム高値などがある。1)HTLV-1抗体まず、粒子凝集(PA)法や化学発光法などによる、スクリーニング検査を行う。ただし、これらの検査は、高感度であるものの偽陽性の可能性があるため、確認検査としてウエスタンブロット(WB)法を行う。2)HTLV-1プロウイルスDNA定量(保険未収載)WB法で判定保留の際に、HTLV-1感染の有無を確認するために用いられる。3)リンパ節生検・皮膚生検他疾患との鑑別のため、腫大リンパ節や皮膚などの節外病変の生検を行い、病理組織検査、フローサイトメトリー、染色体検査、HTLV-1プロウイルスDNAサザンブロットなどを行う。4)骨髄検査骨髄浸潤を確認するために行われる。白血病化している場合でも、骨髄中の腫瘍細胞は目立たないことが多い。5)HTLV-1プロウイルスDNAサザンブロット(保険未収載)HTLV-1感染患者に発症したT細胞腫瘍をATLLとみなすこともあるが、ATLLと正確に診断するためには、腫瘍細胞でHTLV-1が単クローン性に増殖していることをサザンブロットにより確認する。6)フローサイトメトリーATLL細胞は形態的には、正常リンパ球との区別が困難な場合があるため、フローサイトメトリーで異常な免疫形質のT細胞集団の有無を確認する。ATLL細胞の典型的な免疫形質は、CD3+、CD4+、CD7-、CD8-、CD25+、CCR4+である。7)画像検査・内視鏡検査病変の広がりを確認するため、CT、PET-CT、上部消化管内視鏡検査などを行う。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 急性型・リンパ腫型アントラサイクリン系抗腫瘍薬を用いた多剤併用化学療法を行う。初回多剤併用化学療法としては、mLSG15(VCAP-AMP-VECP)療法、CHOP療法、EPOCH療法などが用いられている。また、中枢神経再発予防として抗腫瘍薬の髄注を行う。65~70歳未満の患者では、多剤併用化学療法に引き続いて、同種造血幹細胞移植を行うことが勧められる。このため治療開始とともにドナー検索も進めていく。血縁者にHLA一致同胞ドナーがいる場合には血縁者間同種移植、ドナーがいない場合には非血縁者間骨髄移植や臍帯血移植の可能性を検討する。移植前処置として、50~55歳未満で臓器障害のない患者では骨髄破壊的前処置、50~55歳以上の患者や臓器障害のある患者などでは、強度減弱前処置が用いられることが多い。年齢・臓器障害などのために多剤併用化学療法が行えない場合には、経口抗腫瘍薬を投与する。エトポシド(商品名:ベプシド、ラステット)、ソブゾキサン(同:ペラゾリン)などが用いられることが多い。CCR4陽性の再発・治療抵抗性例に対して、抗CCR4抗体モガムリズマブ(同:ポテリジオ)が治療選択肢となる。なお、CCR4陽性ATLL初発例に対して、モガムリズマブ併用mLSG15療法の臨床試験の結果が報告されており、mLSG15療法単独と比較して完全奏効割合が高くなることが示されている。■ くすぶり型、予後不良因子を伴わない慢性型無治療で経過観察を行い、進行がみられた時点で治療を開始するのが一般的である。しかし、これらの病型の患者の予後が必ずしも良好でないことから、インターフェロンα/ジドブジン(同:レトロビル)併用療法による介入治療の意義をみるため、ランダム化第3相試験が行われている(2015年12月)。皮膚病変を有する患者では、外科的切除、放射線療法、PUVA療法などの局所療法が行われる。■ 予後不良因子のある慢性型慢性型でもLDH>正常値上限、BUN>正常値上限、アルブミン<正常値下限、に該当する場合には予後不良とされるため、急性型・リンパ腫型と同様の治療が行われることが多い。4 今後の展望妊婦健診の導入や献血時のスクリーニングによって、今後、新たなHTLV-1感染は減少することが期待される。しかし、100万人近くいるHTLV-1感染者からのATLLの発症は今後も続くと思われる。同種造血幹細胞移植によって、ATLL患者の一部で治癒が期待できるようになったことは画期的であり、ATLLに対する同種免疫効果が有効であることを強く示唆する。同種移植については、今後も有利な移植片源や前処置を探る研究が引き続き必要だろう。一方、多くのATLL患者は高齢であったり、初回化学療法に対して抵抗性であったりして、同種造血幹細胞の恩恵を得られていない現状もある。抗CCR4抗体モガムリズマブの位置づけの検討や、さらなる新規治療薬の開発が重要な課題であろう。5 主たる診療科血液内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療に関する情報HTLV-1情報サービス(厚生労働省科学研究費補助金 がん臨床研究事業 「HTLV-1キャリア・ATL患者に対する相談機能の強化と正しい知識の普及の促進」)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報グループ・NEXUS(悪性リンパ腫の患者、患者家族の全国団体の情報)1)Shimoyama M, et al. Br J Haematol.1991;79:428-437.2)Tsukasaki K, et al. J Clin Oncol.2009;27:453-459.3)Katsuya H, et al. J Clin Oncol.2012;30:1635-1640.4)Tsukasaki K, et al. J Clin Oncol.2007;25:5458-5464.5)Ishitsuka K, et al. Lancet Oncol.2014;15:e517-526.公開履歴初回2013年07月18日更新2015年12月22日

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転移性膵臓がん、イリノテカン+フルオロウラシル+葉酸で生存延長/Lancet

 ゲムシタビン治療歴のある転移性膵臓がんの患者に対して、ナノリポソーム型イリノテカン+フルオロウラシル+葉酸(NAPOLI-1)の投与が、ナノリポソーム型イリノテカン単独投与やフルオロウラシル/葉酸のみの投与に比べ、生存期間は有意に延長することが示された。米国・ワシントン大学のAndrea Wang-Gillam氏らによる第III相の非盲検無作為化比較試験の結果、報告された。第II相試験で、同患者へのナノリポソーム型イリノテカン単独投与の有効性が示され、研究グループは第III相試験では、単独投与とフルオロウラシル/葉酸を併用した場合を比較した。Lancet誌オンライン版2015年11月20日号掲載の報告。14ヵ国76ヵ所で417例を対象に試験 試験は2012年1月11日~13年9月11日にかけて、14ヵ国76ヵ所の医療機関を通じ、ゲムシタビン治療歴のある転移性膵臓がんの患者417例を対象に行われた。 研究グループは被験者を無作為に3群に分け、1群には、ナノリポソーム型イリノテカン単独投与(151例、3週間ごとに120mg/m2)を、別の群にはフルオロウラシル+葉酸を投与し(149例)、もう1つの群には、ナノリポソーム型イリノテカン(80mg/m2)+フルオロウラシル/葉酸を併用投与した(117例)。いずれも、病勢進行または耐えがたい毒性作用が生じるまで投与を継続した。 主要評価項目は、ITT(intention-to-treat)解析による生存期間だった。イリノテカン+フルオロウラシル+葉酸群の生存期間6.1ヵ月 313例が死亡した時点で、イリノテカン+フルオロウラシル+葉酸群の生存期間中央値は、6.1ヵ月(95%信頼区間:4.8~8.9)だった。 それに対し、フルオロウラシル+葉酸群の同中央値は、4.2ヵ月(同:3.3~5.3)と有意に短かった(ハザード比:0.67、同:0.49~0.92、p=0.012)。また、イリノテカン単独投与群の生存期間は、4.9ヵ月(同:4.2~5.6)で、フルオロウラシル+葉酸群と同等だった(p=0.94)。 イリノテカン+フルオロウラシル+葉酸群で、発現頻度が高かったGrade3/4の有害事象は、好中球減少症が32例(27%)で、下痢15例(13%)、嘔吐13例(11%)、疲労感16例(14%)だった。

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TUXEDO-India試験:糖尿病患者でも第1世代DESは不要(解説:上田 恭敬 氏)-457

 Taxus Element versus Xience Prime in a Diabetic Population(TUXEDO)-India Trialにおいては、1,830例の糖尿病を持つPCI予定冠動脈疾患患者を、第1世代DESであるTaxus Element(paclitaxel-eluting stent)群と、第2世代のDESで最も優れた臨床成績を示しているDESの1つであるXience Prime(everolimus-eluting stent)群に無作為に割り付け、「心臓死」・「標的血管を責任血管とする心筋梗塞発症」・「虚血を理由とする標的血管再血行再建術施行」の複合エンドポイントの発生頻度を比較している。Taxus Elementの非劣性を示そうとした試験であったが、複合エンドポイントの頻度が5.6% vs.2.9%とTaxus Elementで有意に高い結果となり、Xience Primeが有意に優れていることが示された。 次々と新しいDESが開発され、さまざまな比較が行われてきたが、今回の問題は第1世代のDESであるCypherとTaxusの比較において、層別解析の結果から糖尿病患者での有効性に差があるかもしれないとの議論に始まる。その本質が薬剤の違いからくるとの仮説から、リムス系薬剤(sirolimus analogue)であるeverolimusと抗がん剤でもあるpaclitaxelの比較という試験デザインになっている。しかし、DESは薬剤の種類だけでなく、その量や経時的溶出パターン、プラットホーム、ポリマーなどさまざまな要素によって千差万別のものが考えられ、それぞれ臨床成績も異なる可能性がある。 実際、同じzotarolimus-eluting stentであっても、EndeavorとResoluteはまったく別物であることは有名である。Endeavorは、最もBMSに近いDESともいわれており、新生内膜は比較的厚くなることで早期の再狭窄率は高いものの、非動脈硬化性・線維性の膜であるために病変が安定な状態となり、急性冠症候群症例に使われても安全性が高いとされてきた。これに対して、Resoluteは新生内膜が非常に薄いために再狭窄率が非常に低く、Xienceとほぼ同等の臨床成績が示されている。すなわち、薬の違いによる臨床成績の差を調べようとすれば、ほかの条件を同じにする必要があるうえに、同じ薬でも量や溶出パターンが違えば、それぞれ違う結果になる可能性がある。そのため、今回の結果はあくまでTaxus ElementとXience Primeの比較試験であって、薬の比較とはいえない。 また、Taxusについては、EndeavorのようにLate lossでみた内腔の再狭小化は大きいが、Endeavorのような臨床的な安定性は認められなかったことから、厚い新生内膜ができることが必ずしも良いことではないとの議論があった。しかし、血管内視鏡やOCTといった血管内画像診断による検討結果からは、Taxusの新生内膜は非常に不均一で、黄色プラークや血栓も高頻度に認めるのに対して、Endeavorの新生内膜はBMSに近く白色均一で、黄色プラークも血栓もほとんど認めないことが明らかとなっており、臨床成績の違いはこの結果からまったく合理的なものであることがわかる。すなわち、大規模臨床試験によって示されるイベント頻度や冠動脈造影所見のみを重視して、病理や血管内画像診断から得られる情報を参考程度にしか考えない現状の認識には問題があると思う。 第1世代のDESであるCypherやTaxusは、それまでPCIのアキレス腱とまでいわれてきた再狭窄を、1年の時点で劇的に減少させたことから、非常に期待を持ったことは間違っていないが、同時に示された上記のような血管内画像診断所見を真摯に捉え、もっと注意深く症例を限定して使用し、長期の臨床成績が出るのを待つべきであったのではないだろうか。1年の短期臨床成績に反して、血管内画像診断所見がCypherやTaxusよりEndeavorのほうが優れていることを示唆していたが、実際5年の長期臨床成績でEndeavorが逆転勝ちしたことは、教訓とすべき事実であろう。

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扁平上皮NSCLCの1次治療に新たなプラチナ・ダブレット

 扁平上皮がんは肺がんの20~30%にみられる。しかし、進化著しい非扁平上皮がんの治療に比べて、扁平上皮がん治療の進歩は遅れている。こうした中、2015年11月26日から開催された第56回日本肺癌学会プレナリーセッションにおいて、名古屋医療センターの坂 英雄氏が、扁平上皮NSCLC1次治療の新たな選択肢としてネダプラチン併用レジメンの有用性を検討したWJOG5208L試験の結果を報告した。 ネダプラチンは、従来のプラチナ製剤で問題になっていた消化器症状、腎毒性を軽減させた第2世代プラチナ製剤であり、ドセタキセルとの併用による良好な結果が、第II相試験で報告されている。 今回発表されたWJOG5208L試験は、ネダプラチンとドセタキセルの併用群(以下、ND群)とシスプラチンとドセタキセルの併用群(以下、CD群)を比較した第III相試験。西日本がん研究機構(WJOG)所属の全国53施設で実施された。 試験対象は、StageIIIBおよびIVの扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)で、化学療法naiveの355例。被験者は無作為にND群とCD群に1対1で割り付けられた。ND群にはネダプラチン100mg/m2 とドセタキセル60mg/m2 を3週ごと4~6サイクル、CD群にはシスプラチン80mg/m2 とドセタキセル60mg/m2 を3週ごと4~6サイクル投与した。主要評価項目は、全生存期間(OS)、副次的評価項目は無増悪生存期間(PFS)、奏効率、有害事象であった。 結果、主要評価項目のOSはND群13.6ヵ月に対し、CD群では11.6ヵ月とND群が有意に優れていた。1年生存率はND群、CD群でそれぞれ55.9%と43.5%であった(HR 0.81、p=0.037)。副次的評価項目であるPFSは、ND群4.9ヵ月に対し、CD群では4.5ヵ月(HR 0.87、p=0.05)であった。奏効率については、ND群55.8%に対し、CD群では53.0%であった(p=0.663)。安全性については、Grade3以上の有害事象発現率は、ND群の91.5%に対し、CD群では89.7%であった。ND群では血液毒性が、CD群では消化器毒性が多くみられた。 坂氏は最後に、ネダプラチンとドセタキセルの併用は、進行・再発扁平上皮NSCLC1次治療の新たな標準治療と考えられる、と述べた。

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