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うつ病患者の予後に影響する生活習慣病

 肥満、メタボリックシンドローム(Mets)、地中海式ダイエットの低い順守率は、うつ病患者で頻繁にみられ、それぞれが予後と関連している。うつ病のアウトカムに対する、これらの要因の6、12ヵ月の予測力を分析するため、スペイン・バレアレス大学のRachel H B Mitchell氏らは、検討を行った。Journal of child and adolescent psychopharmacology誌オンライン版2016年1月19日号の報告。 273例のうつ病患者から、うつ症状評価のためにベックうつ病評価尺度と14項目の地中海式ダイエット順守スコアを収集した。Metsは、国際糖尿病連合(IDF)の基準に従って診断した。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時の地中海式ダイエット順守は、抑うつ症状と逆相関していた(p=0.007)。・うつ病への反応は、正常体重の患者(p=0.006)、非Mets患者(p=0.013)で高かったが、地中海式ダイエットの順守率との関連は認められなかった(p=0.625)。・Metsである肥満患者は、Metsでない肥満患者よりもうつ症状の改善傾向が低かった。・肥満やMets(ベースライン時における地中海式ダイエットの低い順守率を除く)は、12ヵ月時点でのうつ病の不良転帰を予測した。 結果を踏まえ、著者らは「肥満や食事よりむしろMetsが、うつ病の予後に対し負の影響を与える重要な要因であることが、本研究で示唆された。このことから、臨床医は、肥満うつ病患者(とくに治療成果が十分でない場合)におけるMets診断と治療について認識しておく必要がある」とまとめている。関連医療ニュース 女はビタミンB6、男はビタミンB12でうつリスク低下か MetSリスクの高い抗うつ薬は うつ病から双極性障害へ転換するリスク因子は

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統合失調症発症にビタミンDがどう関与しているのか

 統合失調症とビタミンDとの関連について、米国・マサチューセッツ医科大学のMathew Chiang氏らが臨床レビューを行った。Evidence-based mental health誌2016年2月号の報告。・ビタミンDがカルシウムのホメオスタシスおよび骨の健康において、重要な役割を担っていることは知られている。・ビタミンDは、日光によるUVB照射により皮膚から内因的に生成される。そして、ビタミンDは現在、脳の発達や正常な脳機能に重要な役割を有する強力な神経ステロイドホルモンであると考えられており、その抗炎症特性は、ヒトの健康のさまざまな側面に影響を与えることが知られている。・ビタミンDリガンド受容体(ビタミンDの生理学的作用の多くを仲介する受容体)は、中枢神経系を含む身体全体で見つかっている。・ビタミンD欠乏は、統合失調症など重篤な精神疾患を有する患者で一般的に認められる。・統合失調症のいくつかの環境リスク因子(誕生した季節、緯度、移住)は、ビタミンD欠乏症と関連付けられる。そして、最近の研究では、統合失調症の発症におけるビタミンDの潜在的な役割が示唆されている。たとえば、新生児のビタミンDの状態と、その後の肥満やインスリン抵抗性、糖尿病、脂質異常症および心血管疾患の発症リスクとの関連が、統合失調症患者でよく認められている。ビタミンD欠乏が、これら代謝の問題に関連していることは明らかになっている。・生物学的メカニズムは、炎症の調節や免疫プロセスにおけるビタミンD作用と関連しており、その結果、臨床症状の発現や統合失調症の治療反応に影響する。・ビタミンD補充の潜在的なベネフィットとして、統合失調症症状の改善および統合失調症患者の身体的健康についても、今後の研究で検討されるべきである。関連医療ニュース 統合失調症、ビタミンD補充で寛解は期待できるか 女はビタミンB6、男はビタミンB12でうつリスク低下か EPA、DHA、ビタミンDは脳にどのような影響を及ぼすか

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うつ病既往で感染症リスク増加

 予備的研究では、うつ病とその後の感染症リスク増加との関連が示唆されている。デンマーク・オーフス大学のNiklas W Andersson氏らは、うつ病とさまざまな感染症リスクとの関連を、時間的関係や用量反応関係も含み調査した。International journal of epidemiology誌オンライン版2015年12月26日号の報告。 97万6,398人のプロスペクティブな住民ベースの研究より、1995~2012年にうつ病を経験した14万2,169例を、デンマークレジストリと関連付けて調査した。性別や年齢を調整し、非うつ病者と比較した、うつ病患者における感染症の相対リスクを推定するために生存分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・うつ病は、広範囲の感染症リスク増加と関連していた(罹患率比 [IRR]:1.61、95%CI:1.49~1.74、p=0.000、任意の感染症において)。・特定の時間的影響のエビデンスはなかったが、うつ病発症後の感染症の全般的なリスク増加は、発症後の最初の1年間(IRR:1.67、95%CI:1.25~2.22、p=0.000)からその後11年以上(IRR:1.61、95%CI:1.39~1.85、p=0.000)、上昇したままであった。・用量反応分析は、単一うつ病エピソードで感染症リスクが59%増加し(IRR:1.59、95%CI:1.45~1.75、p=0.000)、4つ以上のうつ病エピソードではさらに増加した(IRR:1.97、95%CI:0.92~4.22、p=0.082)。・しかし、結果は完全な線形的な相関を示すものではなかった。 結果を踏まえ、著者らは「本調査結果より、うつ病の存在が感染症リスクの増加と関連しており、このことはうつ病発症後の特定の期間に限定されるわけではないことが示唆された。用量反応関係も存在すると考えられるが、うつ病と感染症リスクとの関連を確認するためのさらなる検討が必要である」とまとめている。関連医療ニュース うつ病のプラセボ効果、そのメカニズムとは ビタミンDによるうつ症状軽減の可能性は 女はビタミンB6、男はビタミンB12でうつリスク低下か

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女はビタミンB6、男はビタミンB12でうつリスク低下か

 カナダの聖フランシスコ・ザビエル大学のL Gougeon氏らは、地域在住の健康な高齢男女について、葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12の摂取量と3年間のうつ病発症率との関連を調べた。その結果、食物からのビタミンB6摂取量が多い女性とビタミンB12摂取量が多い男性は、うつ病の発症リスクが低いことを報告した。European Journal of Clinical Nutrition誌オンライン版2015年12月9日号の掲載報告。 本検討は、Quebec Longitudinal Study on Nutrition and Aging(NuAge)に参加し、ベースラインでうつ病を認めなかった住民(30項目の高齢者用うつ尺度[GDS]のスコアが11未満)を対象とし、年1回、うつ病の発症(GDSスコア11以上)、または抗うつ薬治療の状況を調べた。ベースラインで実施した3回の「24時間思い出し法」による非連続的調査の平均値から摂取量(食物のみ・食物+サプリメント)の三分位値を求めた。性別で層別化した多変量ロジスティック回帰モデルは、年齢、身体活動度、身体機能、ストレスのかかる出来事、総エネルギー摂取量で調整を行い、うつ病との関連を評価した。 主な結果は以下のとおり。・被験者は1,368人、74±4歳、女性50.5%であった。・3年間に170人がうつ病と診断された。・食物からのビタミンB6摂取量が最高三分位値の女性は、人口動態学的および健康要因を調整後、うつ病を発症する確率が43%低かった(多変量オッズ比[OR]:0.57、95%信頼区間[CI]:0.39~0.96)。ただし、エネルギー摂取量で調整後、影響は減弱した。・食物からのビタミンB12摂取量が最高三分位値の男性では、うつ病リスクが低かった(エネルギー量調整後の多変量OR:0.42、95%CI:0.20~0.90)。・このほかに、関連性を示すデータは得られなかった。・検討により、食物からのビタミンB6摂取量が多い女性においてうつ病リスクの低下を示すエビデンスが示されたが、総エネルギー摂取量に依存するものであった。・一方、食物からのビタミンB12摂取量が多い男性では、エネルギー摂取量にかかわらずうつ病リスクの低下がみられた。(鷹野 敦夫)精神科関連Newsはこちらhttp://www.carenet.com/psychiatry/archive/news 

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中皮腫の初回治療、ベバシズマブ上乗せでOS延長/Lancet

 悪性胸膜中皮腫の初回治療について、標準療法であるシスプラチン+ペメトレキセドの併用療法へのベバシズマブの上乗せは、全生存期間(OS)を有意に改善することが、フランス・カーン大学のGerard Zalcman氏らによる第III相の非盲検無作為化試験の結果、示された。毒性効果として循環器系の有害事象が増えるものの、著者は、「予想の範囲内のものであり、ベバシズマブの上乗せは適切な治療と見なすべきである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2015年12月21日号掲載の報告。標準初回治療への上乗せ効果を無作為化試験で検討 悪性胸膜中皮腫は進行が早く予後は不良で、職業性のアスベスト曝露との関連が知られている。初回治療は、シスプラチン+ペメトレキセドの併用療法とされているが、その適用はシスプラチン単独との比較でOS中央値12.1(ビタミンB12、B9服用群では13.3) vs.9.3ヵ月、無増悪生存(PFS)中央値5.7 vs.3.9ヵ月のデータに基づく。また、進行性悪性中皮腫へのペメトレキセド+カルボプラチン併用療法の第II相の試験で示された結果は、OS中央値12.7ヵ月、PFS中央値6.5ヵ月であった。 こうした中、先行研究で、中皮腫細胞の病態生理において血管内皮増殖因子(VEGF)シグナルが重大な役割を果たすことが示唆されたことから、研究グループは、VEGFをターゲットとする抗血管新生治療薬が効果を示すのではないかと本検討を行った。 試験は、フランスの73病院から被験者を集めて行われた。18~75歳、切除不能の悪性胸膜中皮腫で化学療法未治療、全身状態はEastern Cooperative Oncology Group(ECOG)スコアで0~2、重大な心血管疾患の併存はなく、CTで評価が可能な病変(胸水)または測定可能な病変(胸膜肥厚)が少なくともいずれか1つあり、余命は12週超の患者を対象とした。除外基準は、中枢神経系への転移あり、抗血小板薬(アスピリン325mg/日以上、クロピドグレル、チクロピジン、ジピリダモール)を使用、ビタミンK拮抗薬を有効量使用、低分子量ヘパリンを有効量使用、非ステロイド性抗炎症薬の投与を受けている、であった。 被験者を、ペメトレキセド(500mg/m2)+シスプラチン(75mg/m2)+ベバシズマブ(15mg/kg)の静注投与(PCB)群、またはベバシズマブの代わりにプラセボを投与する(PC)群に1対1の割合で無作為に割り付け、3週間に1回を最大6サイクル、病勢進行または毒性効果が認められるまで行った。なお、無作為化には最小化法を用い、患者を組織学的(上皮型 vs.肉腫型、または混在型)、全身状態(ECOGスコア0~1 vs.2)、試験病院、喫煙状態(非喫煙 vs.喫煙)で層別化した。 主要アウトカムはOS。intention-to-treat解析にて評価した。OSが有意に延長、18.8ヵ月 vs.16.1ヵ月 2008年2月13日~14年1月5日に、計448例の患者を無作為化した(PCB群223例[50%]、PC群225例[50%])。被験者は、男性75%、年齢中央値65.7歳、上皮型81%、ECOGスコア0~1が97%、喫煙者57%などであった。 6サイクルを完遂したのは、PCB群74.9%、PC群76.0%。フォローアップ中央値は39.4ヵ月で両群に差はなかった。 主要アウトカムのOS中央値は、PC群(16.1ヵ月、95%信頼区間[CI]:14.0~17.9)と比べてPCB群(18.8ヵ月、15.9~22.6)で有意に延長した(ハザード比[HR]:0.77、95%CI:0.62~0.95、p=0.0167)。 なお、PFSもPCB群で有意な改善が認められた(9.2ヵ月 vs.7.3ヵ月、HR:0.61、95%CI:0.50~0.71、p<0.0001)。 Grade3/4の有害事象の報告は、全体ではPCB群158/222例(71%)、PC群139/224例(62%)であった。PC群と比べてPCB群では、Grade3以上の高血圧症(51/222例[23%] vs.0例)、血栓イベント(13/222例[6%] vs. 2/224例[1%])の頻度が高かった。

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第26回

第26回:胃食道逆流症~診断に内視鏡検査は必要?~監修:吉本 尚(よしもと ひさし)氏 筑波大学附属病院 総合診療科 日常よく遭遇する胃食道逆流症(gastroesophageal reflux disease;以下GERD)ですが、とくに、少し前から始まったCMの影響もあり、相談に来られる方がいらっしゃいます。今まで私は漫然とプロトンポンプ阻害薬 (Proton Pump Inhibitor;以下PPI)を処方することが多かったのですが、この論文を読んで手術の適応はどうか、バレット食道はどうマネジメントするかなど、深い知識を得ることができました。 以下、American Family Phisician 2015年5月15日号1) より(要約)どのPPIも有効である。びらん性GERDに関しては、esomeprazoleがやや差がある。症状がない場合、内視鏡による診断は必要ないが、50歳以上で5年以上GERDの症状がある患者に対しては、バレット食道のスクリーニングをするために内視鏡を施行すべきである。どのPPIも有効であるが、1つのメタアナリシスによると、esomeprazole(商品名:ネキシウム)が他のPPIに比べびらん性(erosive)GERDに対して有効であった(NNT25)。PPIに反応しない場合は、1日1回を2回にしたり、別のPPIに変更することもある。内服のタイミングは食事の30~60分前に行うことを勧める。GERD自体に内視鏡的な診断は必ずしも必要ない。アラームサイン(体重減少、貧血、出血、閉塞、嚥下障害、内服にもかかわらず症状の持続)がある場合や50歳以上は、内視鏡的な診断を考慮すべきである。アラームサインがなければ、胸やけ、逆流症状のみで診断して良い(もし問診に妥当性を持たせたければGastroesophageal Reflux Disease Questionnaire、Danish prediction scoreがある)。その後、4~8週間のPPIをトライして改善を認めなければ内視鏡を考慮してもよい。慢性の逆流性食道炎を持つ方の10%にバレット食道が存在すると言われている。ただし、それらが食道がんに発展する割合は低い(年率0.12~0.33%)。ある観察研究によると、バレット食道のスクリーニングは生存率の向上に寄与しなかったとされる。バレット食道のリスクファクターとしては、タバコ(オッズ比[OR] 51.4)、肥満(BMI ≧30、OR 34.4)、家族歴、severeな食道炎の既往が挙げられる。PPIが使用できない方、最大量のPPIでも改善しない方に関しては手術が考慮される。3年以上胸やけが続く患者においては、手術のほうが費用対効果が高く、高いQOLが得られる。手術がバレット食道を改善するかはわかっていない。GERDの患者にルーチンにピロリの検査を勧めるのは、十分なエビデンスがない。あるメタアナリシスにおいても、GERD症状の改善はピロリ除菌後も認めなかった。逆に、別のメタアナリシスでは、胃潰瘍の除菌後にびらん性GERDが有意に増加したという報告もある(OR 2.04、CI:1.08~3.85)。PPIの長期連用は、低マグネシウム血症(OR 3.79)、大腿骨頸部骨折、クロストリジウム・ディフィシル感染症、ビタミンB12欠乏症、市中肺炎のリスクになりうる。最近は薬剤起因性腸炎のリスクになりうるとして話題になっている。PPIは適切な診断の下、最小限の期間、最小限の用量で治療を行うべきである。※本内容は、プライマリ・ケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) William D, et al. Am Fam Physician. 2015;91:692-697

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ADHD発症にトリプトファンが関連か

 ノルウェー・ベルゲン大学のTore Ivar Malmei Aarsland氏らは、成人の注意欠如・多動症(ADHD)とトリプトファンおよびその代謝物の血清中濃度との関連を検討した。その結果、トリプトファン、キヌレン酸、キサンツレン酸、3-ヒドロキシアントラニル酸などの血清中濃度低値、およびコチニンの血清中濃度高値がADHDと有意に関連していたことを報告した。必須アミノ酸のトリプトファンは、主にキヌレニン経路によって異化される。一方で、慢性炎症状態およびうつ病や統合失調症などいくつかの神経精神障害において、循環血中キヌレニン濃度に変化が認められるとの報告があり、また候補遺伝子研究により、キヌレニン異化に関連する遺伝子とADHDとの関連が示唆されていた。さらに、ADHD患者はうつ病や不安をしばしば併存していることが報告されており、研究グループは、ノルウェーの成人ADHD患者および成人対照における血清キヌレニン濃度を検討した。Behavioral and Brain Functions誌2015年11月号の掲載報告。 成人ADHD患者133例と成人対照131例(18~40歳)において、トリプトファンおよび7種類のトリプトファン代謝物であるキヌレニン、キヌレン酸、アントラニル酸、3-ヒドロキシキヌレニン、キサンツレン酸、3-ヒドロキシアントラニル酸、キノリン酸の血清中濃度を比較した。リボフラビン(ビタミンB2)、総ビタミンB6およびニコチン代謝物コチニンについても測定した。質量分析法により血清サンプルを分析。患者および対照は、併存疾患と過去(幼少期)および現在のADHD症状について、Wender Utah Rating Scale(WURS)およびAdult ADHD Self-report Scale(ASRS)を用いて報告した。各代謝物の血清濃度別に、ADHD診断に対するオッズ比をロジスティック回帰により算出。さらに、スピアマン相関分析を用いて、トリプトファンおよびキヌレニンの血清中濃度とADHD症状スコアとの関連を検討した。 主な結果は以下のとおり。・トリプトファン(オッズ比:0.61、95%信頼区間:0.45~0.83)、キヌレン酸(0.73、0.53~0.99)、キサンツレン酸(0.65、0.48~0.89)、3-ヒドロキシアントラニル酸(0.63、0.46~0.85)の血清中低濃度、およびコチニン(7.17、4.37~12.58)の血清中高濃度は、いずれもADHDと有意に関連していた。・トリプトファン濃度で補正後、3-ヒドロキシアントラニル酸とコチニンのみ有意な関連がみられた。・喫煙と年齢で補正すると、トリプトファンおよびキヌレニンの低濃度は、総ASRSスコア高値および総WURSスコア高値と関連していた。・以上より、成人ADHD患者と成人対照とでは、トリプトファンおよびキヌレニンの血清中濃度に違いがある可能性が示唆された。・本知見においてADHDにおける慢性免疫活性は示されていないが、ADHDの発症機序および血清中濃度の相違による臨床的意義について、さらに探索を進めるべきと思われた。関連医療ニュース 9割の成人ADHD、小児期の病歴とは無関係 成人ADHDをどう見極める 2つのADHD治療薬、安全性の違いは

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マスコミでも話題のスーパーフルーツ「キウイ」 ~その魅力とチカラ~

11月7日、8日と東京と大阪で開かれた「糖質管理セミナー」の様子をお届けします。マスコミでもスーパーフルーツとしてたびたび取り上げられる「キウイ」。ニュージーランドへ現地視察までしてきた管理栄養士がその本質と魅力を解説します。1:日本人の果物摂取量と課題日本人の果物摂取量は、世界174カ国中129位!世界平均よりも、アジア平均よりもさらに低い状況です。家計調査によると、デザートの中でも果物は特に低い支出になっています。これは食の多様化や個食化の影響が、強く表れていそうです。スライド1を拡大するしかし、果物の摂取が健康維持増進に対してさまざまな良い影響を与えているというのも事実。だからこそ、国では健康日本21、食生活指針、食事バランスガイドを通じて、果物を積極的に食べることを推奨しています。ところが「野菜は350gそのうち緑黄色野菜は120g」と野菜の摂取は具体的に提示しているのに対し、果物は「1日200g」だけ。果物の質は問われていません。超高齢社会の我が国では、「新型栄養失調」と呼ばれる低栄養の問題があります。食事量が減る高齢者の場合は「何を食べるか」という、食事の質が問われている時代。果物の摂取にも、質が重要です。2:スーパーフルーツとしてマスコミでも取り上げられるキウイ下の図は果物の栄養素の凝縮具合を示したものです。スライド2を拡大する栄養素充足率スコアとは、果物の重量100g(可食部)に含まれる17種類の栄養素※1の、「日本人の食事摂取基準 2015年度版」における1日当たりの摂取基準(30~49歳女性での推奨量、目標量、目安量)に対する割合を算出し、その平均値をとったものです。※1 17種類の栄養素:たんぱく質、食物繊維、カルシウム、鉄、マグネシウム、カリウム、亜鉛、ビタミンC、ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、パントテン酸、ビタミンB6、葉酸、ビタミンB12、ビタミンA、ビタミンEこれによると、日本人がよく食べているバナナやミカンよりもキウイの充足率が優れていることがわかります。これが、キウイが「高栄養密度フルーツ」「スーパーフルーツ」と言われてマスコミなどでも多く取り上げられる理由です。緑色の果肉のキウイフルーツ(緑肉種)には日本人に不足しがちな食物繊維が豊富に(可食部100gあたり3g ゼスプリインターナショナル調べ)含まれています。野菜からだけではなく、果物や穀類からも食物繊維を摂取することで、目標摂取量に近づけることができます。またゴールドキウイ(黄肉種)1個にはレモン(果汁換算)8個分のビタミンCが含まれており、果物の中ではトップクラスです。さらにビタミンEも同時に摂取できるなど、キウイはバランスよくさまざまな栄養素を含んでいます。食が細くなり、効率よく栄養素を摂取する必要がある高齢者にも適した果物と言えそうです。スライド3を拡大する◆キウイは、低GI食品キウイのGI値は、グリーンキウイ(緑肉種)が39、ゴールドキウイ(黄肉種)が38※2と一般的に低GIといわれる分類に属しています。※2 Rush & Drummond, 2009 and Chen, Wu, Weng and Liu, 2011 より約15の臨床研究データの平均より算出。ウェイトコントロールが必要な糖尿病患者さんの場合は、カロリーだけを制限すると、食事量の不足から空腹感が強くなりストレスの原因になってしまいます。また、世間で流行している極度の糖質制限では、穀類を減らすことで、ただでさえ不足気味の食物繊維がさらに不足する傾向もあります。そのような時は穀類の適量摂取とあわせてGI値の低い果物がオススメ。果物は水分や食物繊維が多く、お腹の中で満足感を得られる上に、天然の甘味が楽しめます。栄養バランスのとれた果物を食事指導の現場でも活用していきましょう。注記:キウイにはアクチニジンというたんぱく質分解酵素が含まれています。アクチニジンはお肉などのたんぱく質の消化を助ける働きがある一方で食物アレルギーのアレルゲンでもあります。アレルギーが心配な人は、医療機関へご相談ください。◆注目!!日本食品成分表 七訂(2015年版)に「キウイ(黄肉種)」が追加!2015年版に改定される日本標準食品成分表に、「キウイ(黄肉種)」が掲載されることになりました。キウイは、1年を通じて流通している数少ない果物の1つです。緑肉種・黄肉種、それぞれの栄養の特徴をいかして、食事指導や給食の現場でご活用ください。提供:かわるProセミナー事務局関連リンク食品交換表改定ポイントにおける糖質管理と果物の位置づけ

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生命を脅かす疾患 「低ホスファターゼ症」に光明

 アレクシオンファーマ合同会社(以下、アレクシオン)の主催により、「周産期・乳児期で生命を脅かす危険性が高い“低ホスファターゼ症”初の治療薬登場で変わる治療現場」をテーマに、メディアセミナーが2015年9月17日、東京都千代田区で開催された。冒頭で、同社社長ヘルマン・ストレンガー氏より低ホスファターゼ症(Hypophosphatasia:HPP)治療薬、ストレンジックの日本における開発経緯について説明が行われた。日本におけるストレンジックの開発経緯 同社が先月発売したストレンジックの日本における開発は、2012年、日本でHPP患者を持つ母親からアレクシオンに、薬の必要性を切実に願う手紙が届いたことがきっかけであった。これにより、日本人HPP患者の国際共同治験参加が実現し、2015年8月、世界に先駆けて日本で発売されることとなった。HPPとは? 次に、藤原 幾磨氏(東北大学大学院 医学系研究科 環境遺伝医学総合研究センター 小児環境医学分野 教授)より、「低ホスファターゼ症とストレンジック」と題した講演が行われた。 HPPは、アルカリホスファターゼ(以下、ALP)をコードするALPL遺伝子の変異により、ALP活性が低下することが原因のきわめてまれで重篤な、進行性、全身性代謝性疾患である。日本における患者数は100~200人1)で、「小児慢性特定疾病」、「指定難病」に認定されている。HPPの症状と病型 HPPでは、ALPの活性低下に伴い、その基質であるPPiの蓄積による骨石灰化障害、PLPの蓄積によるビタミンB6依存性痙攣など、生命に関わる症状が引き起こされる。HPPは、「周産期型」、「乳児型」、「小児型」、「成人型」、「歯限局型」に加え、「周産期良性型」(周産期型で従来よりも症状が軽度で予後良好な例)を含めた6病型に分類されている。病型によって特徴的かつ多彩な臨床症状(骨石灰化障害に伴う呼吸不全、頭蓋骨早期癒合症、腎石灰化や重度の腎不全、筋肉/関節痛、運動機能障害など)を全身に発現し、最も重篤な周産期重症型では、生存期間の中央値が4ヵ月であったという報告もある2)。HPPの診断 これらの臨床症状を回避し、予防するためには、早期かつ正確にHPPを診断することが重要である。その際、「ALP活性値の低下」を確認することが、HPPの診断、類似疾患との鑑別に不可欠だが、藤原氏は、「患者の年齢や検査施設によってALP基準値が異なるため、配慮が必要だ」と注意を促した。HPP治療薬、ストレンジックとは? ストレンジックは、HPP患者に対する初めての治療薬で、HPPの原因であるALP活性の低下に対する酵素補充療法である。本剤の投与により、HPP患者の生存率(投与168週時)84%、24週という早期にくる病様症状や、胸郭石灰化促進による肺機能の改善、運動能力や身体機能の改善が認められ、身体障害、疼痛の軽減によるADL、QOLの改善が示唆された。 藤原氏は、「当院で実施した治験でも、著明な長管骨彎曲や骨化不全がみられた患者に、ストレンジックを投与したところ、骨病変の著しい改善がみられ、現在では歩くことができるようになっている」、「ストレンジック発売前は、HPP患者を発見しても辛く、悔しい思いをすることが多かったが、心待ちにしていた薬剤の登場と、その効果に喜んでいる」と述べた。HPP患者家族、喜びの声 最後に、原 弘樹氏(低フォスファターゼ症の会 代表)より「患者会の紹介と、ご家族の闘病」についての講演が行われた。 「低フォスファターゼ症の会」は、大阪大学の大薗 恵一氏が会の顧問を務めており、2008年より患者、医師、製薬会社、行政の架け橋として、精力的に活動を続けている。今回、患者家族を代表して、ハウ氏(低フォスファターゼ症の会 副代表)夫妻から闘病の様子が語られた。 ハウ氏の子息は、1997年に生まれた。先天性代謝異常スクリーニングでは、異常が見つからず、翌年、発熱した際に血液検査をしたところカルシウム高値であることが発覚し、その後「低ホスファターゼ症の乳児型」と診断された。首、腰がなかなかすわらないという悩みから始まり、気管支炎や肺炎による入院、乳歯早期脱落による入れ歯、頭蓋骨早期癒合症の手術、歩行困難のため車いす移動など、大変な日々だった、とハウ氏は当時を振り返った。 昨年、治験に参加し、ストレンジックを投与したところ、2ヵ月ほどで運動能力の向上がみられ、腰の痛みも治まってきたという。ハウ氏は、「現在、息子は高校3年生となり、力をつけたいという本人の要望から、親子で筋肉トレーニングを始め、今では家の手伝いができるほど力がついてきた、今後は、持久力をつけて自転車に挑戦するのが目標。頑張る息子の姿を大変うれしく思う」と喜びを語った。 原氏は、「会の結成当時は治療法がなく、自分たちの無力さ、無念さで苦しい思いをたくさんしてきた」、「世界に先駆けて日本で承認、販売されたことに対して、感謝の気持ちでいっぱい。ここまで成し遂げられたのは、“日本人の魂”だと感じた」と述べ、会を締めくくった。 ストレンジックによって、1人でも多くの“幼い命”が救われることを期待したい。参考文献1) 難病情報センター. 低ホスファターゼ症. (参照2015.9.30)2) Taketani T, et al. Arch Dis Child. 2014; 99: 211-215.

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ビタミンB群の白内障予防効果、米国の大規模研究で示唆

 米国・国立眼研究所(National Eye Institute:NEI)のTanya S. Glaser氏による横断的前向きコホート研究AREDS(Age-Related Eye Disease Study:AREDS)の結果、食事由来のビタミンB群の摂取は加齢による水晶体混濁の発症に影響を及ぼす可能性があることが明らかとなった。著者は結果について「先行研究の所見と一致しており、さらなる研究が必要である」とまとめている。Ophthalmology誌2015年7月号(オンライン版2015年5月9日号)の掲載報告。 研究グループは、ルテイン/ゼアキサンチンおよびビタミンB群の食事による摂取量と白内障の有病率および発症率との関連を評価するため、AREDSに登録された55~80歳の3,115例6,129眼を平均9.6年追跡した。 ベースライン時に食物摂取頻度調査を行った。また、ベースライン時および1年ごとに水晶体検査を行い、中央判定にてグレード分類した。 評価項目は、白内障手術、ベースライン時の白内障の状態(病型と重症度)、および白内障の進行などであった。多変量モデルで既知の白内障リスク因子を調整し、報告されている食事摂取と白内障との関連を、最低五分位群を基準として比較検討した。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時において、リボフラビンおよびビタミンB12の食事による高摂取と、核混濁および皮質混濁との間に逆相関の関連が認められた。・白内障の有無による比較において、白内障の発症リスクについて、リボフラビン摂取量の最高群 vs.最低群で評価したところ、次のようなオッズ比(95%信頼区間[CI])が示された。軽度核白内障:0.78(0.63~0.97)、中等度核白内障:0.62(0.43~0.90)、軽度皮質白内障:0.80(0.65~0.99)。・同様にビタミンB12摂取量に関しては、軽度核白内障:0.78(0.63~0.96)、中等度核白内障:0.62(0.43~0.88)、軽度皮質白内障:0.77(0.63~0.95)であった。・ビタミンB6の摂取については、中等度核混濁のリスク減少がみられた(オッズ比:0.67、95%CI:0.45~0.99)。・総合ビタミン剤(Centrum)を服用していない参加者において、ナイアシンおよびビタミンB12の食事による摂取量が最高位群の人で、軽度核白内障または軽度皮質白内障の発症リスク減少が認められた。・追跡期間中に総合ビタミン剤を服用していた参加者において、食事による葉酸摂取量が最高位群の人で、軽度後嚢下混濁の発症リスクの増加が認められた。・ベースライン時における核混濁または皮質混濁の存在あるいはその後の進行と、ルテイン+ゼアキサンチン摂取との間に統計学的に有意な関連は認められなかった。

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葉酸補充で、脳卒中が減る-臨床試験デザインの重要さを、あらためて教えてくれたCSPPT試験(解説:石上 友章 氏)-352

 疫学や遺伝学研究から、MTHFR(メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素)遺伝子多型や高ホモシステイン血症が、心血管疾患の発症リスクになることが知られていたが、葉酸やビタミンB12を使った介入試験によって、予後の改善やnutrientの有効性が証明されることはなかった1)。 探索的(exploratory)・記述的(descriptive)な研究から、あるリスクが、ある疾病に因果関係があるとされたとしても、それは仮説提示にとどまる。検証的(confirmatory)な試験によって、リスクに対する介入による、リスクの修正や是正が予後を改善することで、初めて因果関係が証明される。したがって、これまで高ホモシステイン血症やMTHFR遺伝子多型が、心血管疾患の真のリスクであることには懐疑的な考えが支配的であった。 本研究に先行する、2011年のHolmes氏らの研究2)ならびに、2013年の著者らのメタ解析3)から、高ホモシステイン血症やMTHFR遺伝子多型による脳卒中リスクは、血中葉酸濃度に影響を受けることが明らかになっていた。 本研究は、こうした先行研究を基に、従来の試験になかったデザインでランダム化二重盲検試験を計画し、葉酸摂取による脳卒中抑制効果を証明し、葉酸、高ホモシステイン血症、MTHFR遺伝子多型の関係を明らかにすることに成功した4)。本研究は、研究途中でデータ安全性モニタリング委員会が、介入群と非介入群との間に、統計学上看過することのできない有意差を認めたことから、予定された試験期間の終了を待たずに中止されるほどであった。画像を拡大する このグラフからは、低リスクとされるCC/CT遺伝子型で、血中葉酸濃度に依存した脳卒中リスクがあること、高リスクとされるTT遺伝子型では葉酸濃度の閾値が上昇することが示されている。本試験の結果から、心血管リスクとされたMTHFR遺伝子多型、高ホモシステイン血症は、葉酸欠乏が本態であり、部分的には葉酸補充により解消できるといえる。先天性ホモシステイン尿症と、MTHFR遺伝子多型による高ホモシステイン血症は、必ずしも同一の病態ではなかった。nutrientである葉酸の効果は、葉酸欠乏と遺伝子多型の影響を受けており、ベースラインでの葉酸の血中濃度測定と遺伝子型判定が重要になる。 本研究の限界としては、プロトコル遵守率がやや低いこと(両群とも69%)、脱落例が14%であることが挙げられるが、ITT解析、per-protocol解析でも、有意差の傾向は変わらなかった。平均年齢60歳という、比較的若年集団でありながら、エナラプリル群で年間約1%の脳卒中発生率をどう考えるか、著者らの主張では、脂質異常改善薬、抗血小板薬の併用が少ないことで、この差が出やすくなったとしている点は興味深い。

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温泉療法でうつや睡眠も改善

 12日間の温泉治療プログラムにより、健康な高齢者の疼痛、気分状態、睡眠、抑うつ状態が有意に改善したことが示された。スペイン・ハエン大学のPedro Angel Latorre-Roman氏らが、52例の高齢者を対象に試験を行った結果、報告した。Psychogeriatrics誌オンライン版2014年12月16日号の掲載報告。 検討は、スペイン国内の複数の地域から高齢者52例を集め、政府機関Elderly and Social Services(IMSERSOとして知られる)が作成した水治療(hydrotherapy)プログラムに参加してもらい評価を行った。参加者に、12日間の温泉治療プログラムを提供し、疼痛、気分状態、睡眠、抑うつ状態について評価した。疼痛は視覚的アナログスケールを用いて、気分状態はProfile of Mood Statusを用いて、睡眠はOviedo Sleep Questionnaire、抑うつ状態はGeriatric Depression Scaleを用いて評価した。 温泉治療プログラムは、スペイン・ハエンにある温泉付きホテルBalneario San Andresで行われた。同温泉は、スペインミネラル水ハンドブックによると、低温(20℃以上)に分類され、重炭酸塩、硫酸塩、ナトリウム、マグネシウムを豊富に含む中硬水のアルカリイオン水であった。 主な結果は以下のとおり。・参加者52例の内訳は、男性23例(年齢69.74±5.19歳)、女性29例(同:70.31±6.76歳)であった。・温泉療法は、全被験者のすべての変数(疼痛、気分状態、睡眠、抑うつ状態)を有意に改善した(p<0.05)。・疼痛の改善については性差がみられた。治療後、男性では有意な改善(p<0.01)がみられたが、女性ではみられなかった。・気分状態の改善についても性差がみられた。女性では抑うつ症状と疲労感の両者で有意な改善(p<0.05)がみられたが男性ではみられなかった。・12日間の温泉治療プログラムは、健康高齢者の疼痛、気分、睡眠の質、抑うつ状態にポジティブな効果をもたらすことが示唆された。関連医療ニュース うつ病患者で重要な食事指導のポイント うつになったら、休むべきか働き続けるべきか ビタミンB併用で抗うつ効果は増強するか  担当者へのご意見箱はこちら

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統合失調症、ビタミンD補充で寛解は期待できるか

 ビタミンD欠乏症は、統合失調症の発症に関与する病因の1つである。多くの統合失調症研究において、血清ビタミンD値が低い症例が報告されているが、疾患活動性と血清ビタミンD値との関連性は明らかになっていなかった。トルコ・Ankara Numune Egitim ve Arastirma HastanesiのRabia Nazik Yuksel氏らは、統合失調症とビタミンD欠乏症との関連を明らかにするため、寛解期および急性期の統合失調症患者の血清ビタミンDレベルを健常対照と比較検討した。その結果、急性期統合失調症患者の血清ビタミンD値は、寛解期の患者および健常対照に比べ有意に低いことを報告し、急性期統合失調症とビタミンD欠乏との関連を示唆した。Therapeutic Advances in Psychopharmacology誌2014年12月号の掲載報告。 研究グループは、疾患活動性の異なる2つの統合失調症グループの総ビタミンD量を比較し、血清総ビタミンD値と疾患活動性の関係を調べた。検討は、寛解期、急性期の統合失調症患者、および年齢と性別でマッチした重大な精神症状を認めない対照例を対象に行われた。疾患活動性は、PANSS(陽性・陰性症状評価尺度)およびCGI-S(臨床全般印象・重症度尺度)を用いて評価し、年齢、性別、民族、体重、肌の色、日光曝露時間、栄養評価が網羅された人口統計データを使用した。すべての患者および対照者から血液標本を採取し、総ビタミンD(D2+D3)、カルシウム(Ca)、リン(P)、副甲状腺ホルモン(PTH)値を測定した。 主な結果は以下のとおり。・被験者は、寛解期統合失調症患者41例、急性期統合失調症患者40例、健常対照40例であった。・急性期患者のビタミンD値(中央値7.18)は、寛解期患者(同15.03)および健常対照(同15.02)に比べ、有意に低かった(p<0.001)。・ビタミンD値とCGIスコア(r=-0.624、p<0.001)、ビタミンD値とPANNSスコア(r=-0.508、p<0.001)の間に中等度の逆相関が認められた。・各群間で、血清P値、Ca値、PTH値について有意な差は認められなかった(それぞれp=0.099、p=0.943、p=0.762) 。・1週間当たりの日光曝露時間、肌の色、民族、栄養状態による、総ビタミンD値への有意な影響はみられなかった。・ビタミンD合成に関連する重要な因子に相違は認められなかったが、寛解期の患者と比べて急性期の患者では深刻なビタミンD欠乏症が認められ、寛解期の患者と有意な違いを認めた。・ビタミンD欠乏症は急性期エピソードの結果なのか、あるいは原因なのか? 本研究結果から、経路は不明ながら、ビタミンD欠乏症と統合失調症が相互に影響を及ぼし合っている可能性が示唆された。・現時点のデータでは、ゲノムレベルでの影響の可能性を指摘するにとどまった。・今後、臨床試験による長期フォローアップにより、これらの関係を調べることができると思われた。とくに、長期に治療を継続している統合失調症患者の血清ビタミンD値の状況が期待される。・ビタミンDを豊富に含むサプリメントおよび食事を加味した、適切な治療を考慮すべきと思われた。関連医療ニュース ビタミンD欠乏で統合失調症発症リスクが2倍に 統合失調症の治療目標、急性期と維持期で変更を:京都大学 ビタミンB併用で抗うつ効果は増強するか

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原発性側索硬化症〔PLS : primary lateral sclerosis〕

1 疾患概要■ 概念・定義明らかな特定された原因がなく、緩徐に神経細胞が変性脱落していく神経変性疾患のうち、運動ニューロン特異的に障害が起こる疾患群を運動ニューロン病(motor neuron disease:MND)と呼ぶ。上位運動ニューロン(大脳皮質運動野→脊髄)および下位運動ニューロン(脊髄前角細胞→筋肉)の両方が選択的に侵される筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)がよく知られているが、経過中症状および所見が一貫して上位運動ニューロンのみの障害にとどまるものを原発性側索硬化症(primary lateral sclerosis:PLS)と呼ぶ。病初期にはALSとの鑑別が問題となるが、多くの例で進行が遅く呼吸筋麻痺もまれとされている。病理学的にはALSに特徴的な封入体などを欠き、背景病理上もALSとは別疾患と考えられていた一方で、一部の遺伝性痙性対麻痺などの他の錐体路変性を起こす疾患との鑑別が必要となる。近年、ALSの自然歴や臨床病態が明らかになるにつれ、長期生存例などのさまざまな臨床経過を取るALSの存在がまれでないことがわかり、上位運動ニューロン障害が強いALS (UMN-dominant ALS) との鑑別がますます重要になってきた。常染色体劣性遺伝性家族性筋萎縮性側索硬化症のALS2の原因遺伝子alsin が、若年型 PLS、家族性痙性対麻痺の原因遺伝子であると報告されたが、すべてのPLSがalsin変異によるものではなく、多くの孤発症例の原因は依然不明である。■ 疫学きわめてまれであり世界的には運動ニューロン病全体の1~3%と考えられている。2006年の厚生労働省のPLSの全国調査結果では患者数は144 人、有病率は 10万人当たり 0.1人、ALSの2%であった。■ 病因大多数のPLSの病因は同定されていない。若年型PLSの一部や乳児上行性家族性痙性対麻痺(IAHSP)の症例が、成人発症ALSの1型であるALS2の原因遺伝子alsinの変異を持つことがわかっている。若年型PLSは2歳中に上位運動ニューロン徴候が出現し、歩けなくなる疾患であり、IAHSPは2歳までに下肢の痙性が出現し、7歳で上肢に広がり10代には車いすの使用を余儀なくされる疾患で、いずれも成人期に症状が出現する孤発性のPLSとは病状が異なっている。■ 症状運動ニューロン病一般でみられる、感覚障害などを伴わずに緩徐に進行する運動障害が主症状である。通常50歳以降に発症し、下肢に始まる痙性対麻痺を示す例が多く、ALSと比較して球麻痺型が少ないとされるが、仮性球麻痺や上肢発症の例も報告されている。遺伝性痙性対麻痺に類似した臨床像で下肢の突っ張りと筋力低下により、階段昇降などが初めに障害されることが多い。進行すると上肢の巧緻性低下や構音障害、強制泣き/笑いなどの感情失禁がみられることもある。2006年の厚生労働省のPLSの全国調査結果では、1人で歩くことができる患者は約15%で、約20%は支持歩行、約30%は自力歩行不可能であった。また、経過を通して下位運動ニューロン障害を示唆する高度な筋萎縮や線維束性収縮がみられにくい。■ 分類Gordonらは剖検で確定したPLS、clinically pure PLSに加え、発症後4年未満で上位運動ニューロン障害が優位であるが、診察または筋電図でわずかな脱神経所見を呈し、かつALSの診断基準は満たさないものを“UMN-dominant ALS”としてclinically PLSと厳密に区別し、予後を検討したところ、ALSとPLSの中間であったと報告している。また、上位運動ニューロン障害に加えパーキンソニズム、認知機能障害、感覚障害をPLS plusとして別に分類している。■ 予後経過はALSと比較してきわめて緩徐で、進行しても呼吸筋麻痺を来す可能性は、診断が真のPLSであれば高くないとされている。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)PLSという病態が、ALSと病理学的に異なる疾患として真に存在するかは依然として議論があるところである。TDP-43病理を伴わない臨床的PLSの報告例も存在する一方で、典型的な封入体などは伴わないものの、上位運動ニューロン優位にTDP-43病理が確認される報告例も増加している。また、FTLD-MNDとして捉えたとき病理学的に錐体路が障害されている症例はまれではない。歴史的には1992年に“Brain”誌に報告されたPringleらの診断基準が用いられることが多いが、報告例の一部が遺伝性痙性対麻痺などの他疾患とその後診断されたこと、3年以内に下位運動ニューロン症状が出現しないことの記載があるものの、Gordonらの検討では3~4年に筋電図での脱神経所見が現れる症例が多かったことなどから、必ずしも特異性が高い診断基準とはいえない。現在のところclinically PLSはheterogeneousな疾患概念であるが、典型的ALSに比べ予後がよいことから、臨床的にALSと鑑別することが重要であるとの立場を取ることが妥当と考えられる。表に示した厚生労働省の診断基準は、Pringleらの基準を基にしたものであり、上記の事実を理解したうえで使用することが望ましい。表 原発性側索硬化症 診断基準(厚生労働省)*「確実例」および「ほぼ確実例」を対象とするA:臨床像1緩徐に発症する痙性対麻痺。通常は下肢発症だが、偽性球麻痺や上肢発症もある2成人発症。通常は40歳代以降3孤発性(注:血族婚のある症例は孤発例であっても原発性側索硬化症には含めない)4緩徐進行性の経過53年以上の経過を有する6神経症候はほぼ左右対称性で、錐体路(皮質脊髄路と皮質延髄路)の障害で生じる症候(痙縮、腱反射亢進、バビンスキー徴候、痙性構音障害=偽性球麻痺)のみを呈するB:検査所見(他疾患の除外)1血清生化学(含ビタミンB12)が正常2血清梅毒反応と抗HTLV-1抗体陰性(流行地域では抗ボレリア・ブルグドルフェリ抗体(ライム病)も陰性であること)3髄液所見が正常4針筋電図で脱神経所見がないか、少数の筋で筋線維収縮やinsertional activityが時にみられる程度であること5MRIで頸椎と大後頭孔領域で脊髄の圧迫性病変がみられない6MRIで脳脊髄の高信号病変がみられないC:原発性側索硬化症を示唆する他の所見1膀胱機能が保たれている2末梢神経の複合筋活動電位が正常で、かつ中枢運動伝導時間(CMCT)が測れないか高度に延長している3MRIで中心前回に限局した萎縮がみられる4PETで中心溝近傍でのブドウ糖消費が減少しているD:次の疾患が否定できる(鑑別すべき疾患)筋萎縮性側索硬化症家族性痙性対麻痺脊髄腫瘍HAM多発性硬化症連合性脊髄変性症(ビタミンB12欠乏性脊髄障害)その他(アルコール性ミエロパチー、肝性ミエロパチー、副腎白質ジストロフィー、fronto-temporal dementia with Parkinsonism linked to chromosome 17 (FTDP-17)、Gerstmann-Straussler-Scheinker症候群、遺伝性成人発症アレキサンダー病など)■診断・臨床的にほぼ確実例(probable):A:臨床像の1~6と、B:検査所見の1~6のすべてを満たし、Dの疾患が否定できること・確実例(definite):臨床的に「ほぼ確実例」の条件を満たし、かつ脳の病理学的検査で、中心前回にほぼ限局した変性を示すこと(Betz巨細胞などの中心前回錐体細胞の高度脱落を呈し、下位運動ニューロンに変性を認めない)臨床的には一般的なALSと同様に他の原因によらず、他の系統の異常のない神経原性の進行性筋力低下があり、(1)障害肢には上位運動ニューロン障害のみがみられ、(2)四肢、球筋、頸部、胸部、腰部の傍脊柱筋に、少なくとも発症後4年経っても診察および針筋電図検査で活動性神経原性変化がみられないことを証明することが必要である。わずかな筋電図異常の存在を認めるかどうかは意見が分かれている。また、鑑別診断として頸椎症性脊髄症、多発性硬化症、腫瘍性疾患などを除外するために、頭部および脊髄のMRIは必須である。髄液検査、血清ビタミンB12、血清梅毒反応、HIV抗体価、HTLV-1抗体価、ライム病抗体価などに異常がないことを確認する。また、傍腫瘍神経症候群による痙性対麻痺除外のために悪性腫瘍検索も推奨されている。画像診断技術の進歩により、頭部MRIのvoxel based morphometryでの中心前回特異的な萎縮、FDG-PETでの運動皮質の糖代謝低下、diffusion tensor imagingでの皮質脊髄路などの障害など、次々と特徴的な所見が報告されてきており、診断の補助としても有用である。また、PLSは基本的に孤発性疾患とされているが、家族歴が疑われる場合は、遺伝性痙性対麻痺を除外するために遺伝子診断を考慮すべきである。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)疾患の進行を抑制する治療法は開発されておらず、個々の症状に対する対症療法が主体となる。ALSと比べ下肢の痙縮が主体であるため、歩行障害に対してバクロフェン(商品名:リオレサール、ギャバロン)、チザニジン(同:テルネリンなど)、ダントロレン(同:ダントリウム)などが考慮されるが、筋力低下による膝折れや転倒に注意する必要がある。経過が長く高度な痙縮がADLを阻害している例では、ITB療法(バクロフェン髄注療法)も考慮される。頸部や体幹筋の痙縮に伴う疼痛にはNSAIDsなどの鎮痛剤やジアゼパム(同:セルシンなど)やクロナゼパム(同:ランドセン、リボトリール)などのベンゾジアゼピン系薬剤も使用される。また、痙縮に対して理学療法による筋ストレッチおよび関節可動域訓練が痙縮に伴う疼痛の予防や関節拘縮の抑制に有用であり、専門的な指導による毎日の家庭での訓練が有用である。2015(平成27)年より特定疾患に指定されるため、医療サービスには公的な援助が受けられるようになる。疾患の末期に嚥下障害や呼吸筋麻痺が起こった場合は、ALSと同様に胃瘻造設や人工呼吸器の使用も考慮すべきだが、PLSからALSへの進展を疑うことも重要となる。 患者教育としては、ALSと異なり経過が長いことと、ALSに進展しうることを考え、定期的な経過観察が必要であることを理解させる必要がある。4 今後の展望現在、本疾患に特異的な治験は、検索する限りされていない。5 主たる診療科神経内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)Pringle CE, et al. Brain. 1992; 115: 495-520.2)Gordon PH, et al. Neurology. 2006; 66: 647-653.3)Panzeri C, et al. Brain. 2006; 129: 1710-1719.4)Iwata NK, et al. Brain. 2011; 134: 2642-2655.5)Kosaka T, et al. Neuropathology. 2012; 32: 373-384.

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抗炎症薬の抗うつ効果を検証

 これまでいくつかの試験で、抗炎症薬の抗うつ効果が報告されている。しかしながら、結果には一貫性がなく、使用を禁忌とする有害事象がある可能性もあった。デンマーク・オーフス大学のOle Kohler氏らは、抗炎症薬による治療の抗うつ効果と有害事象の系統的レビューを行った。その結果、抗炎症薬による治療(とくに選択的COX-2阻害薬セレコキシブ)は、有害事象を増大することなく抑うつ症状を低減することが示された。JAMA Psychiatry誌オンライン版2014年10月15日号の掲載報告。 検討は、Cochrane Central Register of Controlled Trials、PubMed、EMBASEなどで2013年12月31日以前に発表された試験を検索。無作為化プラセボ対照試験で、抑うつ症状を有する成人(うつ病基準を満たした人など)について抗炎症薬治療の薬理学的な有効性および有害事象を評価した試験を対象とした。2名の独立レビュワーがデータを抽出してプールし、標準平均差(SMD)、オッズ比(OR)を算出。主要評価項目は、治療後のうつ病スコアと有害事象であった。 主な結果は以下のとおり。・14試験に関する10件の報告(参加者6,262例)を解析に組み込んだ。・10試験(4,258例)は非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の使用の評価を、4試験(2,004例)はサイトカイン阻害薬を調べたものであった。・プール推定効果は、プラセボと比較して抗炎症薬治療は抑うつ症状を低減することを示すものであった(SMD:-0.34、95%信頼区間[CI]:-0.57~-0.11、I2=90%)。・その効果は、うつ病患者を含む試験(SMD:-0.54、95%CI:-1.08~-0.01、I2=68%)、抑うつ症状患者を含む試験(同:-0.27、-0.53~-0.01、I2=68%)で観察された。・試験間の不均一性は、臨床的うつ病vs.抑うつ症状の包含や、NSAIDs使用vs. サイトカイン阻害薬使用といった違いによるものではなかった。・サブ解析により、セレコキシブの抗うつ特性が際立っていた(SMD:-0.29、95%CI:-0.49~-0.08、I2=73%)。寛解に関するORは7.89(95%CI:2.94~21.17、I2=0%)、奏効に関するORは6.59(同:2.24~19.42、0%)であった。・有害事象について報告していた6試験において、抗炎症薬治療6週後または12週後に、プラセボと比較して、胃腸または心血管イベントが増大したとのエビデンスはみつからなかった。・なおすべての試験が、潜在的な内的妥当性の減弱によるバイアスリスクとの関連性があった。 これらの結果より著者は「うつ病治療に抗炎症薬を使用するというコンセプトの根拠の裏づけとなる」と述べ、「ベネフィットが得られたサブグループの特定が根拠となるだろう」とまとめている。関連医療ニュース ビタミンB併用で抗うつ効果は増強するか 効果不十分なうつ病患者、次の一手のタイミングは うつ病患者、SSRI治療開始1年以内に約半数がセカンド治療に  担当者へのご意見箱はこちら

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抗精神病薬の代謝への影響、男性でとくに注意

 統合失調症における一炭素代謝(OCM)の異常は、これまでに繰り返し報告されている。しかし、統合失調症に対する抗精神病薬によるOCMへの選択的な影響を検討した研究は不足しているうえに、得られた結果に一貫性がなかった。ポーランド・ヴロツワフ医科大学のBlazej Misiak氏らは、初回エピソード統合失調症患者を対象とし、第二世代抗精神病薬(SGA)が血清総ホモシステイン(tHcy)、葉酸、ビタミンB12、リポ蛋白および血糖値に及ぼす影響を検討した。その結果、SGA投与後、BMI、血清総コレステロール(TC)、LDLコレステロール(LDL-C)、トリグリセライド(TG)およびtHcy濃度は有意に高値を示し、葉酸とビタミンB12濃度は有意に低値を示すこと、とくに男性において注意が必要であることを報告した。European Journal of Clinical Pharmacology誌オンライン版2014年10月8日号の掲載報告。 本研究では、初回エピソード統合失調症患者39例を登録し、ベースライン時およびオランザピンやリスペリドンを単独で用いたSGA治療12週後の、血清tHcy、葉酸、ビタミンB12、リポ蛋白および血糖値を測定し評価した。 主な結果は以下のとおり。・治療12週後、すべての患者でBMI、血清中TC、LDL-C、TGおよびtHcy濃度は有意に高値を示し、葉酸とビタミンB12値は有意に低値を示した。・SGA間の相違を解析したところ、オランザピン投与患者は全集団と同様の生化学的変動がみられたが、リスペリドン投与患者では血清中葉酸、ビタミンB12およびTG値に統計学的に有意な変化はみられなかった。・オランザピン投与患者はリスペリドン投与患者と比較して、BMI、TCが有意に高値を示した。・オランザピン投与患者はリスペリドン投与患者と比較して、ビタミンB12値が有意に低値を示した。・葉酸、ビタミンB12、tHcyおよびTC値の変動は、Bonferroni調整後、男性においてのみ有意であった。・多変量回帰解析により、tHcy値の変動は性別、ベースライン時の代謝パラメータ(BMI、血糖値、TC、LDLおよびHDL)に関連し、投与したSGAには関連しないことが明らかとなった。・とくに男性の初回エピソード統合失調症では、SGAがOCMに影響を及ぼす可能性があると考えられた。関連医療ニュース ビタミンD欠乏で統合失調症発症リスクが2倍に 日本人統合失調症患者の脂質プロファイルを検証!:新潟大学 どの向精神病薬で有害事象報告が多いのか  担当者へのご意見箱はこちら

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どの向精神病薬で有害事象報告が多いのか

 精神科治療における薬物有害反応(ADR)は患者にとって苦痛であり、公衆衛生に重大な影響を及ぼす。英国・ブリストル大学のThomas KH氏らは、1998~2011年に英国Yellow Card Schemeに自己報告された、抑うつ症状および致死的・非致死的自殺行動の頻度が多かった薬剤を特定した。その結果、バレニクリン、ブプロピオン、パロキセチン、イソトレチノイン、リモナバンにおいて抑うつ症状の報告が多いこと、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、バレニクリンおよびクロザピンでは、致死的および非致死的自殺行動の報告が多いことが判明した。BMC Pharmacology and Toxicology誌オンライン版2014年9月30日号の掲載報告。 本検討では、1964年以降に抑うつ症状および自殺行動の自発報告が最も多かった薬剤を明らかにするため英国医薬品・医療製品規制庁(MHRA)よりYellow Cardのデータ提供を受け、NHS情報センターおよび保健省より入手した処方データに基づき薬剤によるADRの報告頻度を調べた。処方データは1998年以前分を入手できなかったため、1998~2011年に処方されたデータを分母としてADRの頻度を推算した。 主な結果は以下のとおり。・検討期間中、20件以上の抑うつ症状が報告された薬剤は110種類、10件以上の非致死的自殺行動が報告された薬剤は58種類、5件以上の致死的自殺行動が報告された薬剤は33種類であった。・抑うつ症状の報告が多かった薬剤のトップ5は、禁煙治療薬のバレニクリンおよびブプロピオン、次いでパロキセチン(SSRI)、イソトレチノイン(にきび治療に使用)およびリモナバン(体重減少薬)であった。・致死的および非致死的自殺行動の報告が多かった薬剤のトップ5の中に、SSRI、バレニクリンおよび抗精神病薬のクロザピンが含まれていた。・地域で抗精神病薬100万件処方当たりのADR頻度が高かった薬剤はリモナバン、イソトレチノイン、メフロキン(抗マラリア薬)、バレニクリンおよびブプロピオンであった。・5件以上の自殺の報告があったエファビレンツ(抗レトロウイルス薬)とクロザピンの2剤については、地域における処方数は多くなかった。・以上のように、多くの神経系および非神経系薬について、抑うつ症状と自殺に関連するADRが報告されていた。 結果を踏まえて、著者らは「薬剤とADRの因果関係を明らかにする際に、自己報告データは使用できない。それゆえ、重大な警鐘が鳴らされる可能性がある精神的ADRについては、すべての無作為化対照試験において特別に評価、報告がなされるべきである」と述べている。関連医療ニュース 入院から地域へ、精神疾患患者の自殺は増加するのか SSRI依存による悪影響を検証 ビタミンB併用で抗うつ効果は増強するか  担当者へのご意見箱はこちら

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新規抗うつ薬の実力、他剤比較で検証

 新規抗うつ薬であるボルチオキセチン(国内未承認)は多様な作用を有しており、大うつ病性障害(MDD)患者に有効であることが、10件の短期無作為化プラセボ対照試験(2012年に終了)のうち6件で示されている。フランス・Centre Hospitalier UniversitaireのPierre-Michel Llorca氏らは、メタ回帰分析にて、ボルチオキセチンと7種の異なる活性作用を有する抗うつ薬の間接的な比較を行った。結果、ボルチオキセチンは、他の抗うつ薬と類似もしくはより良好な有効性および忍容性をもたらすことが示された。 研究グループは試験比較を確実なものとするために、プラセボ対照登録試験から試験薬アームとプラセボアームのみを包含して主要解析を行った。主要アウトカムは、有効性(主要エンドポイント[MADRS/HAM-D]のベースライン時から2ヵ月時点までの標準化平均差)、忍容性(有害事象発生による投与中断率)であった。 主な結果は以下のとおり。・有効性について、推定治療効果(マイナス値はボルチオキセチンを支持する)は次のとおりであった。アゴメラチン:-0.16(p=0.11)、デスベンラファキシン:0.03(p=0.80)、デュロキセチン:0.09(p=0.42)、エスシタロプラム:-0.05(p=0.70)、セルトラリン:-0.04(p=0.83)、ベンラファキシンIR/XR:0.12(p=0.33)、ビラゾドン:-0.25(p=0.11)。・忍容性については、1種を除きボルチオキセチンを支持するもの(オッズ比が1未満)であった。ただし、すべてで統計的な有意差は認められなかった。アゴメラチン:1.77(p=0.03)、デスベンラファキシン:0.58(p=0.04)、デュロキセチン:0.75(p=0.26)、エスシタロプラム:0.67(p=0.28)、セルトラリン:0.30(p=0.01)、ベンラファキシン:0.47(p=0.01)、ビラゾドン:0.64(p=0.18)。・感度分析でも、推定治療効果や相対ランキングの有意な変化は認められなかった。関連医療ニュース ビタミンB併用で抗うつ効果は増強するか 日本人うつ病患者に対するアリピプラゾール補助療法:名古屋大学 パロキセチンは他の抗うつ薬よりも優れているのか  担当者へのご意見箱はこちら

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うつ病治療の新展開、ミトコンドリア生体エネルギー

 大うつ病性障害(MDD)の新たなエビデンスが発表された。米国のメリーランド・スクール・オブ・ナーシング大学N. Jennifer Klinedinst氏らは、MDDとミトコンドリア生体エネルギー機能障害との関連についてレビューを行った。その結果、ミトコンドリア生体エネルギーとMDDとの関連を示す証拠はあったものの、治療には応用されていない現状を指摘し、さらなる研究の必要性を指摘した。Journal of Bioenergetics and Biomembranes誌オンライン版2014年9月28日号の掲載報告。 MDDは重大な公衆衛生問題であり、世界中で約3億5,000万人が影響を受けている。数十年にわたり研究が行われているが、MDDの病態生理は未確認のままであり、治療の効果は30~60%に限られている。研究グループは、MDDとミトコンドリア生体エネルギー機能障害との関連をレビューした。 主な内容は以下のとおり。・MDDの病態生理学に関与するミトコンドリア生体エネルギー機能障害として、いくつかの経路の関与が示唆された。すなわち、遺伝的性質/ゲノム、炎症、酸化ストレス、神経可塑性の変化などである。・ミトコンドリア生体エネルギー経路とMDDに関する議論は、散見されている。・エビデンスは、現在使用されているさまざまな抗うつ薬のmito-toxicまたはmito-protectiveな影響に関してレビューされていた。・一方で、単独または補助的なうつ軽減治療としてのミトコンドリア・モジュレーターなどについて、さらなる治療アプローチについて研究することへの示唆もみられた。・ミトコンドリア生体エネルギー機能とMDDを結び付けるエビデンスは確実に存在するが、現状では、MDDをターゲットとした治療ガイドとして用いるための表現型またはバイオマーカーとしての研究は行われていない。また、MDD集団に関するミトコンドリア生体エネルギー機能の障害も判明していないことが明らかになった。関連医療ニュース ビタミンB併用で抗うつ効果は増強するか うつ病と殺虫剤、その関連が明らかに うつ寛解のポイントは疲労感  担当者へのご意見箱はこちら

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ビタミンB併用で抗うつ効果は増強するか

 うつ病に対する抗うつ薬の有効性は、準至適(suboptimal)である。うつ病では一貫して血漿中ホモシステイン高値が認められ、ある種のビタミンBによる治療は明らかにその値を低下させることは知られていた。西オーストラリア大学のOsvaldo P. Almeida氏らは、大うつ病患者において、ビタミン剤が抗うつ薬の効果増強に有用であるか否かを検討した。その結果、ビタミンB6、B12および葉酸をシタロプラムに併用することにより、1年間(52週間)にわたりシタロプラムの効果が増強、維持され、ビタミンB追加の有用性が示唆された。結果を踏まえて著者は、「今回の所見は、中高年の大うつ病に対して安全かつ安価な追加選択肢として、治療ガイドラインへの適用を促すものであった」とまとめている。British Journal of Psychiatry誌オンライン版2014年9月25日号の掲載報告。ビタミンBは1年間にわたり抗うつ薬の効果を増強 本研究では、ビタミンB6、B12および葉酸が、52週間の抗うつ薬治療の効果を増強するか否かを検討するため、無作為化二重盲検プラセボ対照試験を実施した。シタロプラム(20~40g)とビタミンB12 0.5mg、葉酸2mgおよびビタミンB6 25mgを52週間併用。対象は、50歳以上の地域住民で、DSM-IV-TRにて大うつ病と診断された患者とし、モンゴメリ・アスベルグうつ病評価尺度(MADRS)を用いて症状の重症度を評価した。主要アウトカムは、12、26、52週後のうつエピソードの寛解。副次アウトカムは、12週時のMADRSスコアの低下、回復後の大うつ病再発であった。 ビタミンB6、B12および葉酸が抗うつ薬治療の効果を増強するか否かの主な結果は以下のとおり。・合計153例をプラセボ群76例、ビタミン剤群77例に無作為化した。・12週時の症状寛解率はプラセボ群78.1%、ビタミン剤併用群79.4%(p=0.840)であった。・26週時はそれぞれ76.5%、85.3%、52週時は75.8%、85.5%であった(52週間介入の効果: オッズ比[OR]:2.49、95%信頼区間[CI]:1.12~5.51)。・MADRSスコアにおいて、群間の有意差は認められなかった(p=0.739)。・12週時に寛解を達成した患者の再発リスクは、プラセボ群に比べ、ビタミン剤併用群で低かった(OR:0.33、95%CI:0.12~0.94)。・ビタミンBは、12週時においては抗うつ薬の効果を増加させなかったが、1年間にわたり抗うつ薬の効果を増強、維持した。

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