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便秘からがんを疑うアラームサインを読み取る【Dr.山中の攻める!問診3step】第6回

第6回 便秘からがんを疑うアラームサインを読み取る―Key Point―大腸がんを疑うアラームサインに注意しよう薬剤が便秘の原因となっていることは多い下剤を処方する際、「酸化マグネシウム」は腎機能低下時に高マグネシウム血症を起こすので要注意!症例:76歳男性主訴)排便困難現病歴)12日前から便が突然出なくなった。4日前に近医で浣腸をしてもらったが排便なし。酸化マグネシウムと大腸刺激性下剤の処方を受けたが、やはり排便がないため当院を受診した。嘔吐はあるが腹痛はない。既往歴)老人性難聴薬剤歴)定期内服薬なし生活歴)たばこ:10本/日 x 55年間、酒:1合/日身体所見)意識清明、体温36.7℃、血圧120/50mmHg、心拍数92/分、SpO2:95%[室内気]直腸診を施行したところ、肛門から8cm、12時方向にカリフラワー様の約4×4cmの腫瘤を触知し易出血性であった。結局、直腸癌と診断され人工肛門増設のため緊急手術となった。大腸イレウスは珍しいが、穿孔すれば腹膜炎となるので緊急処置が必要となることも念頭に入れておくべき。◆今回おさえておくべき臨床背景はコチラ!大腸がんを疑うアラームサイン1) ―大腸がんの可能性はないのか鉄欠乏性貧血体重減少便潜血陽性血便便の狭小化高齢者の急性便秘大腸がんの家族歴50歳以上で大腸内視鏡検査を受けたことがない【STEP1】患者の症状に関する理解不足を解消させよう【STEP2】二次性の便秘を考える薬剤は二次性便秘の最大の原因である。薬剤歴の正確な聴取が大切である便秘を起こす薬剤2)3)はこちら降圧薬(カルシウム拮抗薬、利尿薬)、麻薬抗コリン薬(ブチルスコポラミン、抗うつ薬、抗精神病薬、抗パーキンソン病薬)抗ヒスタミン薬、NSAIDs、鉄剤高齢者の鉄欠乏性貧血は消化管の悪性腫瘍をまず考える便の狭小化+腹痛+液状便はS状結腸から直腸にかけての高度狭窄が示唆される症状である。大腸内視鏡の前処置で腸閉塞や腸管穿孔をきたす可能性があるため、腹部レントゲン検査と腹部CT検査を検査前にオーダーする甲状腺機能低下症、自律神経障害を起こす糖尿病やパーキンソン症候群、低カリウム血症、高カルシウム血症、うつ病、妊娠は便秘の原因となる【STEP3】治療1)を検討しよう毎日排便がないのは異常であるというイメージが TVコマーシャルなどによって作られているが、週に3回または1日3回の排便は正常である週3回以上排便があれば、病的ではないことを伝える。水分と食物繊維を十分にとる。朝食後15分間はトイレに座り、力まずに排便するよう指導する。改善がなければ、ポリエチレングリコール(商品名:モビコール)または酸化マグネシウムを処方する。酸化マグネシウムは腎機能低下時に高マグネシウム血症(嘔気・嘔吐、血圧低下、徐脈、筋力低下、意識障害)を起こす。効果が不十分ならルビプロストン(商品名:アミティーザ)を少量から検討する。大腸刺激性薬剤(センノシド、ピコスルファート)は習慣性や依存性が強いので頓用で用いる<参考文献・資料>1)山中 克郎企画. 総合診療 ヤブ化を防ぐ!総合診療基本のき. 医学書院.2019. p.1089-1091.(中野弘康 便秘)2)John P, et al. MKSAP18 Gastroenterology and Hepatology. 2018 .p.35-38.3)日本消化器病学会関連研究会 慢性便秘の診断・治療研究会編. 慢性便秘症診療ガイドライン. 2017.

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認知症発症を抑える食材、新たな候補はビフィズス菌?

 2021年8月27日、認知症に関する正しい情報発信とリスク低減への早期取り組みの重要性を啓発する「40代からの認知症リスク低減機構」は、『「脳寿命を延ばす いまの状態を把握し、対策を考える」~脳と腸からはじめる認知症予防の可能性~』と題するメディアセミナーを開催した。 今まで便秘や下痢、免疫対策として注目されていた“腸”には、“脳”との関係性「脳腸相関」もあると明らかになってきている。このことから、両者の関係が認知症研究においても注目されるようになった。近年、腸内細菌やそれらが作り出す成分による脳の健康状態への影響に関する研究が多数行われている。本セミナーでは、新井 平伊氏(アルツクリニック東京院長、順天堂大学医学部名誉教授)、佐治 直樹氏(国立長寿医療研究センター もの忘れセンター 副センター長)、清水 金忠氏(森永乳業株式会社 研究本部 基礎研究所長)の3人が、認知症と脳腸相関に関する最新の研究と、認知症予防のための食品開発について講演を行った。認知症発症を遅らせるための先制医療としての食事 1人目の登壇者である新井氏は、認知症のリスク低減のための対策について解説した。アルツハイマー型認知症(AD)の進行の原因として考えられているアミロイドβは、40代から徐々に脳に蓄積し、SCD(主観的認知機能低下)やMCI(軽度認知障害)といった未病の段階からADへ進行させると考えられている。ADの発症を止めることはできないことから、未病段階から発症を予測して遅らせるという「先制医療」が注目されてきているという。 脳の老化を予防するには生活習慣病の改善のほか、囲碁や将棋といった対人ゲーム、運動をしながら歌うといった体と脳を同時に使うデュアルタスク、睡眠の質の向上といったことが効果的である。とくに、近年では食事による脳機能への影響が研究されており、脳機能の改善を目指した食品の成分・素材に関する研究、商品化が進んでいる。先制医療の観点からも、認知症を発症する前の段階で、普段の食事に気を使って発症予防に努めることが重要であると考えられる。一方で新井氏は、臨床レベルの十分な信頼性のあるデータがそろっているものは多くなく、商品を選ぶうえで、「再現性があるか」「効果はどのように確立されたものであるか」「副作用や安全性はどうか」の3点について見極めることが重要であるとの考えを示した。腸内細菌や食事内容も認知症に影響? 2人目の登壇者である佐治氏は、腸内細菌が与える脳への影響について解説した。脳と腸が自律神経などを介して互いに影響しあう「脳腸相関」という言葉が最近になって知名度を上げてきたが、近年では腸内細菌叢がADやパーキンソン病などの神経疾患の発症の因子であることが示唆されている。認知症においては、発症している人では発症していない人と比較して、常在菌であるバクテロイデスの数が少なく腸内細菌叢の構成が異なっていることが明らかになっている。さらに、アンモニアや有機酸といった腸内細菌による代謝産物が認知症リスクを高めることも明らかになったという。 また、佐治氏は、食事が認知機能に与える影響を調査した自身の研究についても解説した。認知機能と食事内容の関係を調べた結果、認知機能の高い患者では魚介やキノコ類、大豆類、コーヒーの摂取率が高かったことが明らかになった。この結果から、食事の内容が認知機能に影響を与えることが示唆された。認知症発症の抑制が期待されるビフィズス菌 3人目の登壇者である清水氏は、ビフィズス菌MCC1274の臨床試験の結果について紹介した。MCC1274は、森永乳業が保有するビフィズス菌株の中から、アルツハイマー型認知症の発症を抑制する可能性がある菌株として特定された。 プラセボ対照ランダム化二重盲検並行群間試験では、50歳以上80歳未満でMMSEスコアが22点以上でありMCIの疑いがある80例をMCC1274カプセル(生菌200億/日)群またはプラセボ群に割り付け、16週間摂取後のアーバンス(RBANS)神経心理テストの結果を比較した。その結果、主要評価項目であるRBANSスコア合計の摂取後の実測値、そして前後の変動値とも有意な改善が認められた。また、認知機能の中でも、即時記憶、視空間・構成、遅延記憶に関する項目のスコアが有意に改善した。 本試験の結果は、臨床試験において単一のビフィズス菌生菌体のみで加齢に伴い低下する認知機能を維持することが報告された世界で初めての報告であるという。また本試験の結果を受け、ビフィズス菌MCC1274を用いた商品の機能性表示食品の届出が消費者庁に受理された。機能性表示食品の届出がされた商品のうち認知機能の改善に関連するものは350件以上存在するが、菌体を成分として受理されたものはビフィズス菌MCC1274が初だという。今後は、軽度の認知症に対する効果についても研究を進めていきたい、と清水氏は語った。

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腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン2021、“腰痛の有無”を削除

 『腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン2021 改訂第2版』が5月に発刊された。2011年の初版を踏襲しつつも今版では新たに蓄積された知見を反映し、診断基準や治療・予後に至るまで構成を一新した。そこで、腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン(GL)策定委員長の川上 守氏(和歌山県立医科大学 名誉教授/済生会和歌山病院 院長)に、脊柱管狭窄症の評価方法や難渋例などについて話を聞いた。腰部脊柱管狭窄症診療ガイドラインに“腰痛の有無は問わない”基準 腰部脊柱管狭窄症診療ガイドラインの目的の1つは、これを一読することで今後の臨床研究の課題を見つけてもらい、質の高い臨床研究が多く発表されるようになることだが、脊柱管狭窄症の“定義”自体に未だ完全な合意が得られていない。そのため診断基準も日進月歩で、明らかになった科学的根拠を基に随時更新を続けている。今回は腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン初版の診断基準で提示していた「歩行で増悪する腰痛は単独であれば除外する」を削除し、以下のとおりに「腰痛の有無は問わない」と明記された。<診断基準>(1)殿部から下肢の疼痛やしびれを有する(2)殿部から下肢の症状は、立位や歩行の持続によって出現あるいは増悪し、前屈や座位保持で軽減する(3)腰痛の有無は問わない(4)臨床初見を説明できるMRIなどの画像で変性狭窄所見が存在する その理由は、脊柱管や椎間板の狭小化による神経組織や血流の障害から惹起される腰痛と非特異的腰痛を鑑別する確立された評価法がないためである。さらに、川上氏によると「ガイドライン作成の基本は論文査続だが、腰痛の定義が一致していないことが問題で、臀部の痛みを腰痛に含める場合もある。腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン2021の6ページにあるように、腰痛を明確に鑑別することができないことから『腰痛の有無を問わない』とした。ただし、診断基準の(1)(2)(4)は従来通りで、これが揃えば腰部脊柱管狭窄による症状であると判断できる」と説明した。 一方で、「腰部脊柱管狭窄症患者の腰痛が除圧術で良くなったという報告がある。臀部痛を腰痛に含めた場合には神経障害性の痛みである可能性があり、神経除圧で腰痛が改善する例もある。前任地の和歌山県立医科大学紀北分院では、腰部脊柱管狭窄症患者の腰痛を明確に定義して、他の症状や画像所見との関係を調査した。その結果は投稿中だが、狭窄の程度や有無よりも椎間板や終板の障害と関連することが明らかとなったので、次回の腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン改訂には引用してもらえるのではと考えている」とも話した。腰部脊柱管狭窄症診断ツールの利用とその状況、紹介タイミング 診断に有用な病歴や診察所見は、NASS(North American Spine Society)ガイドラインやISSLS(International Society for the Study of the Lumbar Spine)のタスクフォースによる国際的調査で報告された7つの病歴などに基づいている。また、診断ツールとしては、初版より“腰部脊柱管狭窄症診断サポートツール”(p12.表1)の使用が推奨されており、専門医のみならず、プライマリ・ケア医による診断、患者の自己診断にも有用とされる。 診断ツールの普及率や実際の使用例について、同氏いわく「このツールは広く使われているのではないか。と言うのは、優秀な友人の内科医が、“立位で下肢痛あり、ABI 0.9以上、下肢深部腱反射消失した75歳の女性を、腰部脊柱管狭窄症サポートツール8点と紹介状につけて紹介してくれたことがあった。実際は、変形性膝関節症だったが、地域でプライマリ・ケアを担っている先生が使ってくれているのだなぁと実感したことがあった」とし「しかしながら、腰部脊柱管狭窄症サポートツールは参考にはなるものの、最終的な診断は画像所見を含めて整形外科医、脊椎外科医にお願いしてほしい。7点をカットオフ値に設定した場合の感度は92.8%、特異度は72.0%である」と専門医への紹介理由を補足した。腰部脊柱管狭窄症、非専門医が鑑別できる症例と難しい症例 腰部脊柱管狭窄症と鑑別すべき疾患には“末梢動脈疾患などの血管性間欠跛行”がある。一般的にはABIを使って鑑別するが、非専門医などでABIを導入していない場合は「足背動脈や後脛骨動脈が触知するかどうかでABIの代わりになるだろう。また、糖尿病や高血圧症などの併存疾患があり、上述した動脈に触れない、または触れにくい場合には、専門医に紹介することを推奨している」と専門医への紹介タイミングにも触れた。 一方で、脊柱管狭窄症と鑑別が難しいのは、慢性硬膜下血腫、脳梗塞、パーキンソン病、頚髄症、胸髄症、末梢神経障害、そして末梢動脈疾患(PAD)の存在だ。同氏は「腰部脊柱管狭窄症と紹介された人の中に、実際はほかの疾患であった患者さんが結構いたのは事実。今はMRIが簡単に撮像できるが、画像上の脊柱管狭窄は高齢者であればかなりの頻度である。そこに下肢症状があると腰部脊柱管狭窄症と考えられてしまう傾向にある。そのため、他疾患がないか、他科への対診も含めて十分に検討した上で『腰部脊柱管狭窄症である』と分かった時には安心する。何故ならば、希望があれば最終的には手術で対応できるから」と自身の経験した難渋例と向き合い方を語った。 最後に腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン2021の編集にあたって苦労した点を伺うと、「やはり、“CQ12-2:腰部脊柱管狭窄症に対する椎弓根スクリューを用いた制動術は保存治療、除圧術、除圧固定術よりも有用か”のところ。論文の少ない項目もあったが、比較的質の高そうな論文を見ても最近の動向とかけ離れていることがわかった。併発症の発生率の高さや従来の術式を凌駕する臨床成績ではない点、並びにコストを考えると推奨し難い結果だった」と述べるとともに「今回の改訂で力を入れた1つに文言・文章の統一がある。委員会の先生方は育った大学・医局が違うため、文章の表現も微妙に異なる。文章の言い回しの統一を3人のコアメンバー(井上 玄氏[北里大学 診療教授]、関口 美穂氏[福島県立医科大学 教授]、竹下 克志氏[自治医科大学 教授])にお願いして、一緒に校正を行った。十分読み応えがあり、なおかつ非常に読みやすい文章のガイドライン改訂版になったと自負している」と振り返り、次回の腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン改訂では、「医療者と患者双方に有益で相互理解に役立つか、効率的な治療により人的・経済的負担の軽減が期待できるかを視野に進めたい」と締めくくった。

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認知症による幻覚妄想に何を処方するべきか(解説:岡村毅氏)

 認知症がある方のサイコーシス(幻覚・妄想)は、本人や介護者にとっては過酷な状況である。 本研究は、海外ではパーキンソン病認知症によるサイコーシスに使われているpimavanserinを、アルツハイマー型、前頭側頭型、血管性の認知症によるサイコーシスにも広げる試みだ。この第III相試験で良好な結果が得られたので、将来われわれが手にする可能性も高いと思われる。 認知症がある方のサイコーシスに対する医学的な対応はここ数十年で大きく変貌した。かつては抗精神病薬が安易に処方されることが多かった。これらは、強弱はあるがドパミン遮断薬でもあるのだから、パーキンソン症状のリスクが大きく、誤嚥や転倒につながる。さらにレビー小体病やパーキンソン病認知症といった新たなカテゴリーが出現し、このカテゴリーでは当然ながらドパミン遮断薬は禁忌である。 現在では、抗精神病薬はなるべく使わずに、環境調整(たとえば日中は明るい所で活動してもらう)、非薬物療法(介護スタッフへのケア方法の提案)、心理社会的な解釈の可能性の探求(その幻覚妄想には意味があるのではないか、こうすればよいのではないか)などをまずは行う。それでも改善しない場合は漢方薬を使い(ただし粉の形状が嫌われる場合もある)、最後の手段でリスクベネフィットを熟慮したうえで関係者の総意で少量の抗精神病薬を開始する、効果が得られたらすぐに撤退する、というのが一般的であろう。 とはいえ、処方者はなかなか厳しい立場にいることも自覚せねばならない。進歩的な人々からは「高齢者に抗精神病薬を使うなんて非人道的だ」と言われる。一方で、家族介護者や施設介護者からは、「私たちの生活は破綻しています」という悲鳴と共に使用の希望を頂くことが多い。「すぐに使ってくれ、でなければ入院させてくれ」と言われることもあるし、期待に沿えないとおそらく他の医療機関で処方してくれるところを探し続けるということもあろう。また減薬を提案すると反発されることが多い。臨床とはそういうものだが、柔軟さと大局観が必要だ。 このpimavanserinの強みは、パーキンソン症状がほぼないことであろう。本研究では誤嚥や転倒はみられておらず、これまでの困難を大きく解消するだろう。 以上はあくまで臨床家の経験に基づく語りである。そして以下はそれを受けた研究者としての考察である。 もちろん処方データベース等を用いた疫学研究も重要であるが(私も疫学研究者の端くれである)、現実世界の変化はとても大きく複雑なので、臨床家の生の声が意外に本質に迫っていることもある。 臨床現場は、患者の急激な高齢化(いまや100歳も普通)、一人暮らしの人の急増、地域包括支援センターの支援技術の向上(出来上がったころに比べると雲泥の差だ、そもそも昔は認知症の人は病院だといって拒否していたところもあった)、介護スタッフの技術の向上(たとえば好き嫌いはあるだろうがユマニチュードのおかげで支配的なスタッフはだいぶ減った印象だ)、家族の意識の変化(かつては親の死や弱さを受け入れない人も多かったが、いまでは自然なこととわかってくださる人が増えた)など変わり続ける。おそらく未知の変数もあるだろう。そして正解もまた変わり続ける。かつて私は、ガイドラインや疫学研究が臨床を導く光だと思っていた。いまでもそうした気持ちはあるが、おそらくガイドラインや疫学研究は、現実には臨床を追いかけているに過ぎないのだろうと思っている。 最後におとなしくまとめると、両方大事であって、どちらかだけでは視野狭窄だということだ。

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認知症関連精神症状、pimavanserinで再発リスク低下/NEJM

 治療中止試験において、経口5-HT2A受容体逆作動薬/拮抗薬pimavanserinへの効果が認められた認知症に関連する精神症状を呈する患者について、治療中止群と比べて継続群の再発リスクが低下したことが示された。米国・アリゾナ大学のPierre N. Tariot氏らによる「HARMONY試験」の結果で、著者は「認知症関連精神症状におけるpimavanserinの有効性を確認するため、長期・大規模の試験を行うことが必要である」とまとめている。神経変性疾患に起因する認知症患者は、認知症関連精神症状を有する可能性がある。認知症のさまざまな要因に関連する精神症状への、pimavanserinの有効性は明らかになっていなかった。NEJM誌2021年7月22日号掲載の報告。治療中止試験でpimavanserinの効果を検討 研究グループは、アルツハイマー病、パーキンソン病認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、血管性認知症に関連した精神症状を有する患者を対象に、第III相二重盲検無作為化プラセボ対照治療中止試験を行った。 全患者に非盲検でpimavanserinを12週間投与し、8週および12週時点で、Scale for the Assessment of Positive Symptoms-Hallucinations and Delusions(SAPS-H+D)スコア(高スコアほど精神症状が重症であることを示す)がベースラインから30%以上低下し、臨床全般印象改善度評価尺度(CGI-I)スコアが1(著明改善)または2(中等度改善)の患者を、pimavanserin継続群またはプラセボ群に無作為に1対1の割合で割り付け、26週まで投与した。 主要エンドポイントは、time-to-event解析で評価した精神症状の再発で、SAPS-H+Dスコアが30%以上上昇しCGI-Iスコアが6(中等度悪化)または7(著明悪化)、認知症関連精神症状による入院、有効性の欠如によりレジメン中止または試験中断、あるいは認知症関連精神症状に対する抗精神病薬使用で定義した。継続投与群で再発リスク65%低下 非盲検期に392例が登録され、うち41例が管理上の理由(有効性について試験を中止)で治療を中断、残る351例のうち217例(61.8%)が持続的効果を有し、105例をpimavanserin継続群に、112例をプラセボ群に割り付けた。 再発例は、pimavanserin継続群12/95例(13%)、プラセボ群28/99例(28%)であった(ハザード比:0.35、95%信頼区間[CI]:0.17~0.73、p=0.005)。 二重盲検期間中の有害事象発生は、pimavanserin継続群43/105例(41.0%)、プラセボ群41/112例(36.6%)であった。pimavanserin継続群では、頭痛、便秘、尿路感染症、無症候性QT延長が認められた。

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認知症またはMCIの高齢者に対するVR介入~メタ解析

 バーチャルリアリティ(VR)介入は、脳卒中やパーキンソン病などの神経疾患の患者にとって、革新的かつ効果的なリハビリテーションツールとして期待されている。中国・南京医科大学のShizhe Zhu氏らは、軽度認知障害(MCI)または認知症の高齢者における認知機能や運動機能に対するVR介入の有効性を評価するため、メタ解析を実施した。Frontiers in Aging Neuroscience誌2021年5月5日号の報告。 2020年4月までに公表された関連文献を、7つのデータベースよりシステマティックに検索した。60歳以上のMCIまたは認知症の患者を対象としてVR介入の検討を行ったランダム化比較試験を含めた。主要アウトカムは、全体的な認知機能、包括的な認知機能、注意、実行機能、記憶、視空間認知能力を含む認知機能とした。副次的アウトカムは、全体的な運動機能、バランス、歩行を含む運動能力とした。不均一性の潜在的な因子を特定するため、研究の特徴に基づいてサブグループ解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・分析には、11研究、359例が含まれた。・主要アウトカムの解析では、以下の認知機能に対するVR介入の有意な効果が認められた(エフェクトサイズ:中)。 ●全体的な認知機能:g=0.45、95%信頼区間(CI):0.31~0.59、p<0.001 ●注意/実行機能:g=0.49、95%CI:0.26~0.72、p<0.001 ●記憶:g=0.57、95%CI:0.29~0.85、p<0.001 ●包括的な認知機能:g=0.32、95%CI:0.06~0.58、p=0.02・副次的アウトカムの解析では、全体的な運動機能に対する有意な効果が認められた(エフェクトサイズ:小)。 ●全体的な運動機能:g=0.28、95%CI:0.05~0.51、p=0.018・バランスのエフェクトサイズに対する有意な効果が認められた(エフェクトサイズ:中)。 ●バランス:g=0.43、95%CI:0.06~0.80、p=0.02・視空間認知能力と歩行のエフェクトサイズには、統計学的に有意な影響は認められなかった。・サブグループ解析では、VRのイマージョンタイプと診断名において不均一性が検出された。 著者らは「VR介入は、MCIまたは認知症高齢者の認知機能および運動機能を改善するために有用な非薬理学的アプローチであることが示唆された。とくに、注意/実行機能、記憶、全体的な認知機能、バランスに対する有意な効果が認められた。一方、視空間認知能力や歩行パフォーマンスに対する効果は認められなかった」としている。

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同効薬切り替え時の“痛恨ミス”で禁忌処方カスケードが生じてしまった事例【うまくいく!処方提案プラクティス】第39回

 いつも成功体験を紹介していますが、実際にはすべてのケースがうまくいっているわけではありません。介入が失敗することもあり、事例を振り返っては知識のアップデート不足や提案のタイミングミスなどを反省しています。今回は、その失敗事例を共有いたします。己の過信は禁物です!患者情報80歳、男性(施設入居)基礎疾患慢性心不全、心房細動、腎不全、前立腺がん、パーキンソン症候群介護度要介護1服薬管理施設職員が管理処方内容1.アゾセミド錠30mg 1錠 分1 朝食後2.スピロノラクトン錠25mg 1錠 分1 朝食後3.トリクロルメチアジド錠1mg 1錠 分1 朝食後4.カルベジロール錠2.5mg 3錠 分1 朝食後5.アピキサバン錠2.5mg 2錠 分2 朝夕食後6.ピモベンダン錠2.5mg 2錠 分2 朝夕食後7.酸化マグネシウム錠330mg 2錠 分2 朝夕食後8.エソメプラゾールカプセル20mg 1カプセル 分1 朝食後9.レボドパ・ベンセラジド塩酸錠 2.5錠(1-0.5-1) 分3 朝昼夕食後10.セレギリン塩酸塩口腔内崩壊錠2.5mg 2錠 分1 朝食後本症例のポイントこの患者さんは、前立腺生検と治療調整を目的として入院し、院内採用薬の都合でセレギリンがラサギリンに変更となりました。退院後の処方は訪問診療医が引き継ぎ、変更となっていたラサギリンはセレギリンに戻りました。ここに落とし穴があったのですが、気付かずスルーしてしまいました。【反省ポイント1:MAO阻害薬をスイッチする際の休薬期間】ラサギリンはセレギリンなどのMAO阻害薬とは併用禁忌であり、スイッチの際には少なくとも14日間の休薬期間が必要です。ラサギリンを他のMAO阻害薬と併用した場合、MAO-B選択性が低下し、MAO-A 阻害作用によって脳内のモノアミン濃度が上昇することで、高血圧クリーゼ、セロトニン症候群などの重篤な副作用が発現する恐れがあります。このMAO-B阻害作用は、消失までに14日間2)かかります。同効薬のスイッチだからこそ注意事項をよく確認し、患者さんに最終内服日を確認して医師へ情報提供することが必要でした。直近の新薬であるサフィナミドメシル酸塩も同様の対応が必要です。退院から1週間後に患者さんが転倒し、バイタルは血圧:77/59、脈拍:87で気分不快が出現しました。すぐに医師より昇圧薬のミドドリン塩酸塩4mg/日が処方され、経過観察となりました。私は、低血圧は基礎疾患の心不全や腎不全による循環血漿量の低下などが影響しているのではないかと考え、この時もスイッチの問題点に気付くことはできませんでした。その後の経過ミドドリン塩酸塩4mg/日を開始しても血圧は上がらず、その後8mg/日まで増量となりましたが状態は変わらず、食欲不振なども出現しました。メンタル面を考慮して、医師よりデュロキセチンとスルピリド開始の指示がありました。しかし、服用開始後も食欲不振・気分不快は変わらず、食事摂取もほとんどできなくなったため点滴治療が開始となりました。お気付きでしょうか。なんとここで併用禁忌を見落とすというさらなるミスがありました。【反省ポイント2:併用禁忌】セレギリンとデュロキセチン(SNRI)は併用禁忌です。両剤の併用により、脳内のノルアドレナリンなどのモノアミン濃度が上昇し、高血圧クリーゼやセロトニン症候群など重篤な副作用が発現する恐れがあります3)。SNRIを開始する場合は、ラサギリンのスイッチ時同様に14日間の休薬期間が必要です。今回、セレギリンとラサギリンのスイッチ休薬期間がなかったことから、デュロキセチン併用によるリスクが助長され、おそらくセロトニン症候群やモノアミン濃度上昇による影響が生じた状態になったと考えられます。その翌日、精査加療のため、前立腺生検を行った病院へ入院することになりました。病院薬剤師との引き継ぎ連絡の際に、ラサギリンとセレギリンのスイッチに休薬期間がなかったことが発覚しました。また、状況をお互いに整理していたところ、セレギリンとデュロキセチンは併用禁忌であったことも発覚しました。振り返ってみると、セレギリン→ラサギリン→セレギリンのスイッチがうまくいかなかったことから、セレギリンを一旦中止して状態を確認する必要があったと考えます。なお、スルピリドは原疾患のパーキンソン症候群を悪化させる懸念があるため、食欲不振についても別薬剤の検討をすべきでした。患者さんに苦しい想いをさせてしまい、自身のスキルを過信していたが故の確認不足だったと猛省しています。1)日本医療機能評価機構. 薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業. 共有すべき事例 2020年No.32)アジレクト錠インタビューフォーム3)エフピーOD錠インタビューフォーム

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「セレネース」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第58回

第58回 「セレネース」の名称の由来は?販売名セレネース錠0.75mgセレネース錠1mgセレネース錠1.5mgセレネース錠3mgセレネース細粒1%セレネース内服液0.2%※セレネース注5mgのインタビューフォームは異なるため、今回は情報を割愛しています。ご了承ください一般名(和名[命名法])ハロペリドール(JAN)効能又は効果統合失調症、躁病用法及び用量(セレネース錠0.75mg/錠1mg/錠1.5mg/錠3mg/細粒1%)ハロペリドールとして、通常成人1日0.75~2.25mgから始め、徐々に増量する。維持量として1日3~6mgを経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。(セレネース内服液0.2%)ハロペリドールとして、通常成人1日0.75~2.25mg(0.375~1.125mL)から始め、徐々に増量する。維持量として1日3~6mg(1.5~3mL)を経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。警告内容とその理由該当しない禁忌内容とその理由(原則禁忌を含む)禁忌(次の患者には投与しないこと)1.昏睡状態の患者[昏睡状態が悪化するおそれがある。]2.バルビツール酸誘導体等の中枢神経抑制剤の強い影響下にある患者[中枢神経抑制作用が増強される。]3.重症の心不全患者[心筋に対する障害作用や血圧降下が報告されている。]4.パーキンソン病又はレビー小体型認知症の患者[錐体外路症状が悪化するおそれがある。]5.本剤の成分又はブチロフェノン系化合物に対し過敏症の患者6.アドレナリンを投与中の患者(アドレナリンをアナフィラキシーの救急治療に使用する場合を除く)7.妊婦又は妊娠している可能性のある婦人※本内容は2021年6月30日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2021年5月改訂(第27版)医薬品インタビューフォーム「セレネース®錠0.75mg/錠1mg/錠1.5mg/錠3mg、セレネース®細粒1%、セレネース®内服液0.2%」2)大日本住友製薬:製品基本情報

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COVID-19診断後、3割が半年以内に精神・神経症状発症

 COVID-19の神経学・精神医学的後遺症が報告されているが、英国・オックスフォード大学のMaxime Taquet氏ら研究グループが23万例超のCOVID-19患者のデータを分析したところ、診断後6ヵ月以内に約34%が虚血性脳卒中や不安障害、気分障害などを発症していたことがわかった。集中治療を要する重症例では、推定発生率は約47%にまで上昇していた。Lancet Psychiatry誌2021年5月号掲載の報告。 本研究は、米国の62医療機関の患者8,100万人の電子カルテから匿名データを収集するTriNetX電子健康記録ネットワークを使用し、2020年1月20日~12月13日の期間、COVID-19診断後6ヵ月間における14種の神経学・精神医学的症状の発生率を推定した(頭蓋内出血、虚血性脳卒中、パーキンソン病、ギランバレー症候群、神経・神経根・神経叢障害、神経筋接合部・筋疾患、脳炎、認知症、気分・不安・精神病性障害、精神病性障害、気分障害、不安障害、物質使用障害、不眠症)。対照群として、インフルエンザや呼吸器感染症の患者コホートを設定し、傾向スコアマッチングを用いて発症率を比較した。 主な結果は以下のとおり。・COVID-19と診断された23万6,379例のうち、6ヵ月間以内に神経学・精神医学的診断の推定発生率は33.62%(95%信頼区間[CI]:33.17~34.07)であり、12.84%(12.36~13.33)が初めての診断だった。・集中治療室に入院した患者の場合、診断の推定発生率は46.42%(95%CI:44.78~48.09)となり、初めての診断は25.7%(23.50~28.25)にのぼった。・診断カテゴリーのうち、推定発症率が高かったのは不安障害(17・39%、95%CI:17.04~17.74)、気分障害(13.66%、95%:13.35~13.99)、不眠症(5.42%、95%CI:5.20~5.64)など。・多くの診断カテゴリーにおいて、インフルエンザ患者よりもCOVID-19患者の発症率が高かった(HR:1.44、95%CI:1.40~1.47)。 著者らは、「神経・精神症状の後遺症リスクは、重症COVID-19患者で最も大きかったが、これらに限定されない。これらの知見を裏付け、説明するには、さらなる研究と発症メカニズムの特定が必要だ」と述べている。

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みんなの脳神経内科

“最短距離”で書かれた、“みんなの”ための1冊脳梗塞、認知症、てんかん、パーキンソン病、しびれなど、プライマリケア領域や救急で遭遇する脳神経内科領域の主要疾患について、神経診察や画像診断のポイントなど、実際に現場で使える知識や診断テクニックを中心に、研修医や非専門医に向け著者の豊富な経験を基に平易な言葉でわかりやすく“最短距離”で書かれた、“みんなの”ための1冊。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    みんなの脳神経内科定価3,960円 + 税判型A5判頁数240頁 発行2021年5月著者山本 大介電子版でご購入の場合はこちら

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総合内科専門医試験オールスターレクチャー 神経

第1回 脳卒中 超急性期第2回 脳卒中 急性期~慢性期第3回 免疫性神経疾患(1)第4回 免疫性神経疾患(2)第5回 神経変性疾患第6回 機能性疾患 総合内科専門医試験対策レクチャーの決定版登場!総合内科専門医試験の受験者が一番苦労するのは、自分の専門外の最新トピックス。そこでこのシリーズでは、CareNeTV等で評価の高い内科各領域のトップクラスの専門医を招聘。各科専門医の視点で“出そうなトピック”を抽出し、1講義約20分で丁寧に解説します。キャッチアップが大変な近年のガイドラインの改訂や新規薬剤をしっかりカバー。Up to date問題対策も万全です。神経については、福島県立医科大学脳神経内科の井口正寛先生がレクチャーします。近年ガイドラインの変更が顕著な脳卒中の血栓溶解療法から、免疫系の希少疾患まで詳しく確認します。※「アップデート2022追加収録」はCareNeTVにてご視聴ください。第1回 脳卒中 超急性期神経の第1回のテーマは、超急性期の脳卒中。近年では血栓溶解療法や血管内治療が推奨されています。rt-PA静注血栓溶解療法は有効性のエビデンスが蓄積され、発症から治療可能な時間が延長されています。MRIの画像所見を評価スケールに照らし合わせて適応を判断することが重要です。血管内治療は、ステントリトリーバーの登場によって大幅に進歩しました。第2回 脳卒中 急性期~慢性期神経の第2回は、急性期から慢性期の脳卒中について解説します。急性期の脳卒中には、抗血小板薬による薬物療法を行います。重症度によって薬剤の種類と使用法が変わるので注意しましょう。慢性期の脳卒中には、再発防止のための治療をします。ラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞、心原性脳塞栓症、潜因性脳梗塞といった病型に応じて、適用できる薬剤やデバイスが異なります。第3回 免疫性神経疾患(1)神経の第3回は、免疫性神経疾患のうち、多発性硬化症とその類縁疾患の視神経脊髄炎関連疾患について解説します。多発性硬化症は、時間的、空間的多発性のある、中枢神経系の脱髄を特徴とする炎症疾患です。近年のガイドラインでは、診断基準が変更されました。視神経脊髄炎関連疾患は、多発性硬化症と比較しながら診断基準や治療法を整理し、新規薬剤を確認します。第4回 免疫性神経疾患(2)神経の第4回は、免疫性疾患のうち、骨格筋の筋力低下を起こす重症筋無力症、急性の末梢神経障害であるギランバレー症候群、自己免疫性脳症について解説します。自己免疫性脳症の抗原には、抗NMDA受容体抗体だけでなく、その他多くの抗体が知られています。また、昨今話題の抗がん剤・免疫チェックポイント阻害薬によって、自己免疫性神経疾患が副作用として引き起こされることがあります。その機序や臨床像なども解説します。第5回 神経変性疾患神経の第5回は、神経変性疾患のパーキンソン病、レビー小体型認知症、アルツハイマー病、前頭側頭葉変性症、筋委縮性側索硬化症、クロイツフェルト・ヤコブ病を取り上げます。パーキンソン病は、他疾患を除外して診断する必要があるため、進行性核上性麻痺や多系統萎縮症といった主な鑑別疾患の特徴を確認しましょう。各神経変性疾患の病態や診断基準、治療法を解説します。第6回 機能性疾患神経の第6回は、てんかん、片頭痛、群発頭痛、本態性振戦について解説します。てんかんを診断するための実用的臨床定義では、新しい概念が定義されました。分類に応じた薬剤選択、発作重積時の対応を確認しましょう。片頭痛は、発作時と予防治療に用いる薬剤を確認します。激しい痛みを伴う群発頭痛は、内服薬ではなく皮下注射と酸素吸入による治療を行います。本態性振戦は、パーキンソン病との鑑別が重要です。

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血清尿酸値と認知症リスク~メタ解析

 中国医科大学のZhike Zhou氏らは、血清尿酸値(UA)と認知症およびそのサブタイプのリスクとの関連を調査するため、メタ解析を実施した。Frontiers in Aging Neuroscience誌2021年2月25日号の報告。 Embase、PubMed、Web of Scienceより、2020年7月までに公表された文献を検索した。標準平均差(SMD)および95%信頼区間(CI)を算出するため、変量効果モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・適格基準を満たした研究は23件(5,575例)であった。・全体として、認知症患者のUAレベルは、非認知症患者と比較し、低かった(SMD:-0.32、95%CI:-0.64~-0.01、p=0.04)。・認知症タイプのサブグループ解析では、UAとアルツハイマー病(AD)およびパーキンソン病認知症(PDD)との関連が認められたが、血管性認知症(VaD)との関連は認められなかった。 ●AD(SMD:-0.58、95%CI:-1.02~-0.15、p=0.009) ●PDD(SMD:-0.33、95%CI:-0.52~-0.14、p=0.001)・UAレベルの層別解析では、UA四分位1~2において認知症および神経変性サブタイプと負の相関が認められ(p<0.05)、UA四分位4と認知症に正の相関が認められた(p=0.028)。・交絡因子のメタ回帰分析では、認知症のリスク推定においてUAの影響が認められた因子は、年齢、BMI、糖尿病、高血圧、喫煙ではなく教育であった(p=0.003)。 著者らは「低UAレベル(292μmol/Lまたは4.91mg/dL)は、ADおよびPDDの潜在的なリスク因子である。認知症におけるUAレベルのメカニズムは、さらなる調査により明らかにする必要がある」としている。

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治療が変わる!希少疾病・難病特集 ~パーキンソン病~

今日でも、パーキンソン病治療に対する薬物治療のメインは「ドパミン受容体の活性化」による運動症状の改善である。そのため基本的にドパミン前駆物質(レポドパ製剤)や直接的ドパミン受容体刺激薬、あるいはドパミン分解阻害薬が用いられてきた。これまでドパミン分解酵素であるMAO-Bの阻害薬としてはセレギリンとラサギリンが用いられてきたが、2019年11月、サフィナミド(エクフィナ)が新たに用いうるようになった。サフィナミドの特徴は、「脳内グルタミン酸放出抑制作用」という非ドパミン作用をあわせ持つ点である。このため、レポドパ製剤への併用により"wearing off" 現象の抑制が期待されている。一方、レポドパ製剤の代謝酵素であるCOMTを阻害する薬剤としては、2020年8月、オピカポン(オンジェンティス)が加わった。COMT阻害薬初の長時間作用型であり、1日1回服用を可能にした。ドパミンアゴニストとしては2種の新薬が登場した。一つは非麦角系ドパミンアゴニストである "KDT-3594" である。D 2 /D 3 受容体刺激のバランスを調節し、有効性を損なわず有害事象減少を目指していると思われる [参考] 。現在、第II相試験が走っている [KISSEI’s Company Profile 2020 Feb.] 。もう一つの新たなドパミンアゴニストは、ロピニロールの貼付剤ハルロピである。これまで唯一の貼付剤だったニュープロパッチよりも、作用時間が長い。一方、レポドパ製剤による"wearing off" 現象そのものの抑制を目的とする薬剤の開発も進んでいる。"PF-05251749"はその一つで、レポドパ製剤への併用により、中枢神経系透過性低分子カゼインキナーゼ1(CK1)阻害を介した、概日リズムの維持を目指す。すでに第Ia相試験は、2020年に終了している [Biogen Press Release] 。これら薬剤を用いた介入に加え近年、遺伝子導入による運動症状の改善を目指す試みも進んでいる。2011年3月には、2型アデノ随伴ウイルス(AVV -2)用いた、GAD(GABA合成酵素)の視床下核移植による運動症状改善が、ランダム化二重盲検試験の結果として報告された [Lancet Nerol 2021; 10: 309] 。また2019年には第 I 相試験だが、AADCコードDNAをAVV-2ベクターを用いて被殻に移植した結果、運動機能とQOLの改善が報告されている [Ann Neurol 2019; 85: 704] 。これら遺伝治療には安全性の懸念がつきまとうが、2014年に短期有用性が報告された [Lancet 2014, 383: 1138]、3種のドパミン合成酵素をコードしたProSavinベクター線条体移植は、4年間継続後も安全性と有効性が確認されている [Hum Gene Ther Clin Dev. 2018; 29: 148] 。なお、パーキンソン病に伴う日中の過度の眠気に対しては、モダフィニルとフレカイニド(抗不整脈薬)の配合剤である"THN102"、ヒスタミン3受容体拮抗剤 "Bavisant" を用いた第II相試験がそれぞれ[NCT03624920、NCT03194217]、すでに終了している。これ以外にも、運動症状以外のパーキンソン病随伴症状をターゲットとした創薬は進められている。

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経頭蓋MRガイド下集束超音波視床下核破壊術のパーキンソン病運動症状改善に対する新たなエビデンス(解説:森本悟氏)-1350

 本邦において、2000年に視床下核脳深部刺激療法(STN-DBS)がパーキンソン病症状に対して保険適用となり、薬物療法による症状のコントロールが難しいパーキンソン病患者に対しても、重要な治療選択肢の一つとなっている。ただし、パーキンソン病に対する脳神経外科手術療法の適応に関しては、現在厚生労働省から以下のような基準が定められている。L-dopa製剤による治療効果がある、薬物調整が困難な症状(日内変動やジスキネジア含む)がある、重度の精神症状や認知機能障害がない、全身麻酔等手術に耐えられる全身状態、など。また、脳内に刺激電極装置を埋め込む治療であり、手術による合併症も懸念される。したがって、運動症状が薬物療法でコントロール不良、あるいはDBSが適応とならない患者群において、新たな治療法が望まれている。 そんな中、2016年、2017年に振戦症状に対する集束超音波視床破壊術の有効性が報告され(Elias WJ, et al. N Engl J Med. 2016;375:730-739.、Bond AE, et al. JAMA Neurol. 2017;74:1412-1418.)、2018年にはパーキンソン病の運動症状に対する集束超音波視床下核/淡蒼球破壊術の有効性が示唆された(Martinez-Fernandez R, et al. Lancet Neurol. 2018;17:54-63.、Jung NY, et al. J Neurosurg. 2018;1-9.)。したがって、超音波を用いた比較的侵襲性の少ない本法は、パーキンソン病患者のアンメット・メディカル・ニーズを満たすことができる治療法として期待される。 今回Martinez-Fernandez氏らは、パーキンソン病の運動症状に対して集束超音波視床下核破壊術が有効か否かを検証するために、多施設共同二重盲検無作為化並行群間比較試験を実施した。結果として、優位側の運動症状を評価するMDS-UPDRS III scoreの平均は、4ヵ月の時点において実治療群ではベースラインの19.9から9.9ポイントに低下、対照群では18.7から17.1ポイントに低下、群間差は8.1ポイントであった。 DBSによる治療では、抗パーキンソン病薬非服用下の術前と術後6~12ヵ月の刺激により、運動症状(UPDRS III score)が38~66%程度の改善が認められていることを鑑み(大島秀規ほか. 日大医誌. 2014;73:100-102.)、今回の報告において実治療群で約50%のスコア改善が得られた(4ヵ月間観察)という事実は、期待のもてる結果といえる。 有害事象については、顔面四肢の脱力や構音障害、歩行障害、およびジスキネジア等が認められ、中等度以上の有害事象も少なくはないため、治療法選択時のリスクに対する十分な説明が必要である。また、リクルートされた患者背景として、運動症状を表すMDS-UPDRS III scoreはほぼ同等となっているが、実治療群で罹病期間が短いこと(5.6±2.5年/実治療群、7.3±3.8年/対照群)、レボドパ換算投与量が少ないこと(729.7±328.3mg/実治療群、881.7±407.9mg/対照群)、が治療反応性に影響を与えている可能性には留意する必要がある。

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統合失調症治療の有効性、安全性に対する抗精神病薬の用量依存作用

 統合失調症の薬理学的治療の中心は、抗精神病薬である。慶應義塾大学の吉田 和生氏らは、統合失調症の薬物療法を最適化するために、抗精神病薬の有効性、安全性、死亡率との関連を明らかにするため関連文献のレビューを行った。Behavioural Brain Research誌オンライン版2021年1月5日号の報告。 統合失調症患者における抗精神病薬の用量と有効性、有害事象、死亡率との関連を調査した文献をレビューした。 主な結果は以下のとおり。・急性期統合失調症患者に対する抗精神病薬の有効性は、用量依存性が高く、各抗精神病薬で、特定の用量反応曲線を有している。・用量依存性の有無とその程度は、副作用の種類によって異なる。・用量依存性の高い副作用は、パーキンソン症候群、高プロラクチン血症、体重増加、神経認知障害であると考えられる。・少なからず用量依存性との関連の可能性がある副作用は、アカシジア、遅発性ジスキネジア、骨粗鬆症、性機能障害、糖尿病、心筋梗塞、脳卒中、血栓塞栓症、QT延長、抗コリン性副作用、傾眠、肺炎、大腿骨近位部骨折、悪性症候群であった。・用量依存性との関連の可能性が低い副作用は、脂質異常症、発作、唾液分泌過多症、好中球減少症、無顆粒球症であった。・抗精神病薬の用量と低血圧リスクとの関連は、データが不足しており、不明であった。・抗精神病薬の生涯累積用量が高いと、死亡率に影響を及ぼす可能性が考えられるが、用量依存関係を結論付けることは困難であった。 著者らは「本知見は、統合失調症患者に対する抗精神病薬治療を最適化するために、臨床医が診療におけるリスクとベネフィットのバランスを取るうえで、役立つであろう。今後は、各抗精神病薬に焦点を当てた大規模かつ頑健にデザインされた研究が求められる」としている。

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パーキンソン病の運動症状、集束超音波視床下核破壊術で改善/NEJM

 パーキンソン病による明らかな非対称性が認められ、薬物療法ではコントロール不良の運動徴候が認められるか、脳深部刺激療法が非適応の患者において、片側半球への集束超音波視床下核破壊術は、4ヵ月後の運動症状の改善に結び付いたことが示された。スペイン・CEU San Pablo UniversityのRaul Martinez-Fernandez氏らが、40例を対象に行った無作為化比較試験の結果を報告した。視床下核は、パーキンソン病の主要な運動症状を治療するための脳深部刺激に関して、好ましい神経外科的標的とされる。集束超音波は、視床下核などの脳深部の構造に、治療的病変を作成するための画像ガイド法であり、研究グループは、同技術を活用した手術の有効性を検討した。NEJM誌2020年12月24日号掲載の報告。施術4ヵ月後の運動スコア改善を比較 研究グループは、パーキンソン病による明らかな非対称性が認められ、薬物療法でコントロール不良の運動徴候があるか、脳深部刺激療法が非適応の患者を対象に試験を行った。 被験者を無作為に2対1の2群に分け、一方には運動徴候優位側の対側に集束超音波視床下核破壊術を行い(実治療群)、もう一方には偽処置を行った(対照群)。 有効性に関する主要アウトカムは、休薬状態における優位側の運動障害疾患学会・パーキンソン病統一スケール(MDS-UPDRS)運動スコア(パートIII、0~44:高スコアほどパーキンソン病様症状が重いことを示す)の4ヵ月後までの変化の群間差とした。 安全性に関する主要アウトカムは、手技に関連する合併症で、4ヵ月時点で評価した。MDS-UPDRS-IIIスコア平均、実治療群で9.8ポイント低下 被験者40例のうち、実治療群は27例、対照群は13例だった。 優位側のMDS-UPDRS-IIIスコア平均は、実治療群はベースライン時19.9から4ヵ月後には9.9に低下した(最小二乗平均差:9.8ポイント、95%信頼区間[CI]:8.6~11.1)。対照群は同18.7から17.1への低下で(1.7ポイント、0.0~3.5)、群間差は8.1ポイント(95%CI:6.0~10.3、p<0.001)だった。 実治療群の有害事象としては、ジスキネジアが休薬状態・投薬状態ともに6例発生し、4ヵ月時点で持続していたのはそれぞれ3例と1例だった。また、治療側の脱力が5例(4ヵ月時点で2例持続)、構音障害が15例(同3例)、顔面脱力が3例(同1例)、歩行障害が13例(同2例)で認められた。実治療群の6例について、これらの障害の一部が12ヵ月時点でも認められた。

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1日1回投与の長時間作用型COMT阻害薬「オンジェンティス錠25mg」【下平博士のDIノート】第59回

1日1回投与の長時間作用型COMT阻害薬「オンジェンティス錠25mg」今回は、末梢COMT阻害薬「オピカポン錠(商品名:オンジェンティス錠25mg、製造販売元:小野薬品工業)」を紹介します。本剤は、血漿中レボドパの脳内移行を効率化することで、パーキンソン病の日内変動を改善してOFF時間を短縮することが期待されています。<効能・効果>本剤は、レボドパ・カルビドパまたはレボドパ・ベンセラジド塩酸塩との併用によるパーキンソン病における症状の日内変動(wearing-off現象)改善の適応で、2020年6月29日に承認され、2020年8月26日より発売されています。なお、レボドパ・カルビドパまたはレボドパ・ベンセラジド塩酸塩による治療において、十分な効果の得られない患者に限り使用することができます。<用法・用量>通常、成人にはオピカポンとして25mgを1日1回、レボドパ・カルビドパまたはレボドパ・ベンセラジド塩酸塩の投与前後および食事の前後1時間以上空けて経口投与します。<安全性>国内第II相試験の安全性評価対象428例中、215例(50.2%)に臨床検査値異常を含む副作用が認められました。主な副作用は、ジスキネジア74例(17.3%)、便秘24例(5.6%)、幻覚19例(4.4%)、起立性低血圧18例(4.2%)、体重減少16例(3.7%)、悪心15例(3.5%)、幻視12例(2.8%)、口渇、傾眠各9例(2.1%)でした(承認時)。なお、重大な副作用として、ジスキネジア(17.3%)、幻覚(4.4%)、幻視(2.8%)、幻聴(0.7%)、せん妄(0.5%)、傾眠(2.1%)、前兆のない突発的睡眠(1.2%)があります。<患者さんへの指導例>1.この薬は、レボドパを分解する酵素の働きを抑えることで、脳内で不足しているドパミンを増やし、レボドパ製剤の効果が低下するOFF時間を短くします。2.食事やレボドパ製剤服用の前後1時間を避けて、毎日同じ時間帯に服用する必要があります。服用タイミングが難しい場合はご相談ください。3.体が勝手に動く、耐え難い眠気が突然現れる、ギャンブルや買い物、暴食などの衝動が抑えられない、実際にはないものがあるように感じる、便秘症状が強いなど、気になる症状がある場合はご連絡ください。4.眠気、立ちくらみ、めまいなどが現れることがあるので、自動車の運転、高所での作業など、危険を伴う作業は行わないでください。また、起立性低血圧などを引き起こす可能性があるので、転倒に伴うけがには十分に注意して生活してください。<Shimo's eyes>パーキンソン病の薬物療法では、病状の進行に伴ってレボドパ製剤の作用持続時間が短縮し、症状の日内変動(wearing-off現象)が発現することがあります。そのような場合には、COMT阻害薬、MAO-B阻害薬などのドパミン附随薬の併用が検討されます。本剤は、エンタカポン(商品名:コムタンほか)に続く2番目のCOMT阻害薬です。エンタカポンは、レボドパ製剤と同時に1日数回服用する必要がありますが、本剤は長時間作用型であるため1日1回投与となっています。本剤は血液脳関門(BBB)を通過せず、末梢でのレボドパ分解を抑制して脳内へのレボドパ移行率を高める薬剤です。レボドパ・カルビドパ(同:ネオドパストン、メネシットほか)または、レボドパ・ベンセラジド塩酸塩(同:マドパー、イーシー・ドパールほか)と併用して用いることで効果を発揮します。副作用では、レボドパのドパミン作動性により引き起こされるジスキネジア、幻覚、悪心、嘔吐、起立性低血圧などに注意が必要です。相互作用については、本剤はカテコール基を持つ薬物全般の代謝を阻害するため、COMTにより代謝される薬剤(アドレナリン、ノルアドレナリン、dl-イソプレナリンなど)だけでなく、MAO-B阻害薬(セレギリンなど)、三環系・四環系抗うつ薬、ノルアドレナリン取込み阻害作用あるいは放出促進作用を有する薬剤(SNRI、NaSSAなど)との併用によっても、作用が増強して血圧上昇などを引き起こす恐れがあります。また、本剤は消化管内で鉄とキレートを形成する可能性があり、本剤と鉄剤それぞれの効果が減弱する恐れがあるため、鉄剤とは少なくとも2~3時間以上空けて服用する必要があります。本剤は、1日1回1錠の投与で良好なアドヒアランスが期待できますが、毎日一定の時間帯に服用する必要があり、最適な服用タイミングは患者さんの生活リズムによって変わります。できる限り少ない負担で続けられる時間帯を確認するなど、適切なフォローを心掛けましょう。参考1)PMDA 添付文書 オンジェンティス錠25mg

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