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激辛!伊賀流心臓塾

第3回「後壁梗塞、疑わしきは罰せよ!?」第4回「これだけは知っておきたい!心不全」第5回「無症状で著明な左室肥大」 ※第1巻は、「激辛!伊賀流心臓塾(第1巻)≪増補改訂版≫」となります。第3回「後壁梗塞、疑わしきは罰せよ!?」【今回の症例】生来健康だったが、生まれて初めての胸痛が出現し、3時間継続。喫煙以外にこれといった危険因子はなく、バイタルサイン安定、肺音・心音異常なし。心電図は一見して異常なさそう。 決して珍しい症例ではなく、コモンに起こるケースだといえる今回の症例。さて、どうしますか?CT、胸部レントゲン、心エコー、トロポニンT、ニトログリセリン点滴、専門医へ転送…。いろいろ選択肢は考えられますが、果たしてどうするのが適切なのでしょうか? もし、あなたが非専門のプライマリ・ケア医なら、あるいは夜間当直中の病院勤務医ならどう対処されますか?達人がズバリお答えします。【今回の症例】生来健康だったが、生まれて初めて胸痛が出現し、冷や汗をともない3時間継続。喫煙以外にこれといった危険因子はなく、バイタルサイン安定、肺音・心音異常なし。心電図は一見して異常なさそう。第4回「これだけは知っておきたい!心不全」心不全の患者さんについて、循環器非専門医として、どこまで知っておかなければならないか、どのようにアプローチしていくのか、ということをお話していきます。【今回の症例】治療抵抗性の心不全を呈する72歳の女性。約1年ほど前から心不全との診断で、近くの病院に3回入院。今回も心不全で同じ病院に入院して、診断は「拡張型心筋症」と説明を受けていたが、いつもと違って利尿剤に対する反応が悪いために、大きな病院で診てもらうことで転入。血圧は90/70、心拍数95でレギュラー。内頚靜脈の怒張を認め、やや頻呼吸を呈している。2/6度の収縮期雑音が前胸部全体に聴取されギャロップリズムだった。両側下肺野でクラックルが聴取される。末梢はやや冷たいが動脈は全て触知した。心電図は洞調律でST,T変化を伴った左室肥大であった。 さて、ここで循環器非専門医として何をどう考え、どのように診断していくべきでしょうか? 2004年現在の医療レベルで改善できる疾患を見逃さないために何を念頭に置いて、どのように検査していくべきでしょうか?第5回「無症状で著明な左室肥大」心電図検診で異状を指摘された患者さんが、セカンドオピニオンを求めて来院されるケースはしばしばあることでしょう。ときには狭心症や肝不全などと診断され、日常生活を大きく制限されたり、すぐに薬物療法を施行されるケースもあるようです。しかし、実際は心電図で狭心症と言われること自体がおかしい、ということはすでに学ばれたとおりです。実は今回のような症例は日本人に多いとのことですが、一体どのように考え、どのようなアプローチをすべきでしょうか?【今回の症例】63歳男性。高血圧など既往歴なく無症状であったが、心電図検診で左室肥大を指摘され、狭心症を疑われた。血圧、心音、胸部X線は正常、心エコー図も正常とのレポートであった。

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(21)〕 心臓MRI(CMR)で無症候のハイリスク患者を見分けることができる!

これまで高齢者、あるいは糖尿病患者で無症候性心筋梗塞の頻度は高く、かつ、その患者群の予後は不良であることが知られていた。しかし、無症候性心筋梗塞患者を検出するスクリーニング法として、最も広く用いられているのが心電図であった。一方、最近の技術の進歩に伴い、微小な心筋梗塞を顕出することが可能となった。1つはトロポニンなどに代表されるバイオマーカーである。しかし、これもある一定の時期しか有用性がない。時間の経過したものを含めて検出するのに最も感度が高いのが、ガドリニウムを用いて心臓MRI(CMR)で梗塞巣を描出する方法である。この方法では、心電図では明らかでない微小梗塞も検出可能である。そこで、本法を用いて高齢者および糖尿病患者で無症候性心筋梗塞の検出頻度とその予後について検討された。 アイスランドに居住する1907~1935年出生の人が参加する地域無作為抽出コホート「AGES Reykjavik Study」(被験者数5,764人)の中から、2004~2007年に登録された936人(67~93歳:平均年齢は76歳、うち52%が女性)を対象に、心筋梗塞発症率と死亡率について、症状があり入院記録や診療録が確認された患者群と、無症状でCMRまたはECGで検出された患者群について、それぞれ比較した。 その結果、(1)CMRを用いることで症状の有無に関係なく心電図より感度よく心筋梗塞を検出できる、(2)無症候性心筋梗塞は症候群より予後が不良である、ことが示された。今後、CMRを活用して検出した無症候性心筋梗塞患者に介入することで予後が改善されるかについて、検討することが必要であろう。

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ACC 2012 速報 CCTAを用いてACS鑑別改善:ROMICAT II

最終日のLate Breaking Clinical Trialsセッションでは、昨日のACRIN PA 4005試験に続き、急性冠症候群(ACS)鑑別におけるマルチスライス冠動脈CT造影(coronary CT angiography : CCTA)の有用性が示された。1,000例登録の無作為化試験 "ROMICAT II" である。CCTAを用いた結果、転帰を増悪させることなく、救急外来受診例の院内滞在時間は有意に短縮した。米国マサチューセッツ総合病院(MGH)のUdo Hoffmann氏が報告した。ROMICAT IIの対象は、ACRIN PA 4005と同じく「救急外来にて胸痛を訴え、ACSを確定も除外もできない」1,000例である。心電図上で虚血が確認された例、血中トロポニンT濃度上昇例、冠動脈疾患既往例などは除外されている。平均年齢は54歳、女性が45%強を占めた。これら1,000例は、501例がCCTA群に、499例が「通常診断」群に無作為化された。CCTA群では64列(以上)CCTAを施行、通常診断群ではストレステストなど、各施設が必要と判断した検査が行われた。ACSの有無は、参加施設が独自に判断する。なお参加9施設に、救急外来でCCTAをACS鑑別に用いた経験はない。CCTA読影者は本試験のために新たに教育を受けた。その結果、一次評価項目である「院内滞在時間」は。CCTA群:23.2時間、通常診断群:30.8時間と、CCTA群で有意(p=0.0002)に短縮していた。内訳を見ると、最終的にACSと診断された75例では両群間の滞在時間に有意差はなく、確定診断でACSが除外された例で著明に低値となっていた(CCTA群:17.2時間、通常診断群:27.2時間、p<0.0001)。背景には、CCTA群の46.7%が救急外来からそのまま帰宅したという事実がある(通常診断群:12.4%)。ちなみに、冠動脈造影を施行された患者は、CCTA群の12.0%、通常診断群の8.0%に過ぎなかった。さらに、CCTAによるACS除外の正確性も示唆された。全例の記録を研究グループが検証したところ、ACS偽陰性例は両群とも1例も認めなかった。また、診断後28日間の「死亡、心筋梗塞、不安定狭心症、緊急血行再建術施行」の発生率は、CCTA群で0.4%、通常診断群で1.0%と、有意差はなかった。本試験は米国国立心肺血液研究所(NHLBI)により実施された。

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入院3時間までのトロポニンI検査の実施、急性心筋梗塞の早期診断に貢献の可能性

急性冠症候群(ACS)の疑いのある人に対し、高感度トロポニンI検査や従来型トロポニンI検査は入院後3時間までに行うことが、急性心筋梗塞の早期のルールアウトを容易なものとする可能性があることが報告された。また、入院時と3時間後までの測定値の変化を見ることで急性心筋梗塞の陽性的中率はいずれの方法でも約96%まで上がり、早期診断が可能となることも報告された。ドイツ・ハンブルグ大学心臓病センターのTill Keller氏らが、1,800人超のACSの疑いのある人について行った前向き試験の結果、明らかにしたもので、JAMA誌2011年12月28日号で発表した。トロポニンI試験を、入院時、3、6時間後に実施研究グループは2007~2008年にかけて、ドイツの3ヵ所の医療機関を通じて、急性冠症候群の疑いで受診した患者1,818人について試験を行った。被験者は、年齢18~85歳(平均61.4歳)で、追跡期間は30日だった。被験者に対し高感度トロポニンI(hsTnI)検査と、従来型のトロポニンI(cTnI)検査を、入院時、3、6時間後に行い、その診断能力を12のバイオマーカーで比較した。その結果、被験者の22.7%にあたる413人が、急性心筋梗塞の診断を受けた。急性心筋梗塞の診断に関する入院時hsTnI検査の受診者動作特性(ROC)曲線下面積は0.96(95%信頼区間:0.95~0.97)、入院時cTnI検査の同面積は0.92(同:0.90~0.94)だった。入院時カットオフ値と3時間の変化値を併せることで陽性適中率は約96%に入院時hsTnI検査の感受性は82.3%、陰性適中率(AMIのルールアウトのための)は94.7%だった。入院時cTnI試験では、それぞれ79.4%、94.0%だった。入院後3時間後の実施では、hsTnI試験、cTnI試験ともに、感受性は98.2%、陰性適中率は99.4%だった。入院時の99パーセンタイル・カットオフ値と、トロポニン値の入院3時間以内の連続的変化を併せることで、陽性適中率は、hsTnI検査では入院時75.1%から3時間後95.8%へ、cTnI検査では入院時80.9%から3時間後96.1%へと、いずれも向上した。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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心血管バイオマーカーは本当に有望視できるのか?

心血管バイオマーカーについて、観察的研究からの結果報告と比べて、無作為化試験からの報告ではしばしば有望視できない結果が報告されることが、ギリシャ・Ioannina大学医学校のIoanna Tzoulaki氏らによるメタ疫学研究の結果、報告された。非常に多くの心血管アウトカム予測因子としてのバイオマーカーが開発されているが、一方で効果サイズやバイアスのつり上げに関する疑念が呈されている。Tzoulaki氏らは、開発報告では予後関連のデータ検証に、主として伝統的な観察疫学研究の母集団が利用されていることに着目。そのエビデンス検証は、無作為化試験の被験者を母集団として利用することも可能であり、その場合に観察疫学研究母集団から得られたものと同様の結果が得られるのかを検証した。BMJ誌2011年12月3日号(オンライン版2011年11月7日号)掲載報告より。観察的研究データセットと無作為化試験データセットをメタ解析手法で比較Tzoulaki氏らは、心血管バイオマーカーの効果サイズについて、観察的研究を母集団とした研究から報告されたものと、無作為化試験から報告されたものとを、メタ解析の手法を用いて比較した。バイオマーカー(フラミンガムスコアの一部としてではない)のメタ解析が、1つ以上の観察的研究データを母集団に含むもの、および1つ以上の無作為化試験データを母集団に含むものを、Medline(最終アップデート2011年1月)から選定。試験特異的リスク比を特定した全メタ解析から抽出し、(a)全試験の場合、また(b)観察試験と無作為化試験で比較集団を分離した場合それぞれについて効果サイズを検証した。予後効果は、観察的研究データセットの場合のほうが有意に高い259件の論文が検索でき、適格となったメタ解析は31件だった。7つのバイオマーカー[CRP、非HDL-C、リポ蛋白(a)、ポスト負荷グルコース、フィブリノゲン、BNP、トロポニン]の予後効果は、無作為化試験データセットの場合よりも観察的研究データセットの場合のほうが有意に高かった。そのうち5つのバイオマーカーの効果は、無作為化試験では半分以下だった。31すべてのメタ解析について、観察的研究からの平均データセット率は、無作為化試験からのそれよりも大きな予後効果を示した。全バイオマーカーの効果サイズの推定平均差は24%(95%信頼区間:7~40)だった。

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新たな胸痛評価法により、低リスク患者の早期退院が可能に

ニュージーランド・クライストチャーチ病院のMartin Than氏らが新たに開発したADPと呼ばれる胸痛評価法は、主要有害心イベントの短期的なリスクが低く、早期退院が相応と考えられる患者を同定可能なことが、同氏らが行ったASPECT試験で示された。胸痛を呈する患者は救急医療部の受診数の増加を招き、在院時間の延長や入院に至る可能性が高い。早期退院を促すには、胸痛患者のうち主要有害心イベントのリスクが短期的には低いと考えられる者を同定する必要があり、そのためには信頼性が高く、再現性のある迅速な評価法の確立が求められている。Lancet誌2011年3月26日号(オンライン版2011年3月23日号)掲載の報告。ADPの有用性を検証する前向き観察試験ASPECT試験の研究グループは、急性冠症候群(ACS)が疑われる胸痛症状を呈し、救急医療部を受診した患者の評価法として「2時間迅速診断プロトコール(accelerated diagnostic protocol:ADP)」を開発し、その有用性を検証するプロスペクティブな観察試験を実施した。アジア太平洋地域の9ヵ国(オーストラリア、中国、インド、インドネシア、ニュージーランド、シンガポール、韓国、台湾、タイ)から14の救急医療施設が参加し、胸痛が5分以上持続する18歳以上の患者が登録された。ADPは、TIMI(Thrombolysis in Myocardial Infarction)リスクスコア、心電図、およびポイント・オブ・ケア検査としてのトロポニン、クレアチンキナーゼ MB(CK-MB)、ミオグロビンのバイオマーカーパネルで構成された。主要評価項目は、初回胸痛発作(初回受診日を含む)から30日以内の主要有害心イベントの発現とした。主要な有害心イベントは、死亡、心停止、緊急血行再建術、心原性ショック、介入を要する心室性不整脈、介入を要する重度の心房ブロック、心筋梗塞(初回胸痛発作の原因となったもの、および30日のフォローアップ期間中に発現したもの)と定義した。感度99.3%、特異度11.0%、陰性予測値99.1%3,582例が登録され30日間のフォローアップが行われた。この間に、421例(11.8%)で主要有害心イベントが発現した。ADPにより352例(9.8%)が低リスクで早期退院が適切と判定された。そのうち3例(0.9%)で主要有害心イベントが発現し、ADPの感度は99.3%(95%信頼区間:97.9~99.8)、陰性予測値は99.1%(同:97.3~99.8)、特異度は11.0%(同:10.0~12.2)であった。著者は、「この新たな胸痛評価法は、主要有害心イベントの短期的なリスクがきわめて低く早期退院が相応と考えられる患者を同定した」と結論し、「ADPを用いれば、全体の観察期間および胸痛による入院期間が短縮すると考えられる。ADPの実行に要する個々のコンポーネントは各地で入手可能であるため、健康サービスの提供に世界規模で貢献する可能性がある。より特異度の高い評価法のほうが退院数を増加させ得るが、安全性重視の観点から感度に重きを置くべきであろう」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

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ACS疑いへの高感度トロポニンI定量法、カットオフ値低下で心筋梗塞再発や死亡リスクが低下

急性冠症候群(ACS)が疑われる人に対し、高感度トロポニンI定量法を行うことは、心筋壊死の診断カットオフ値を引き下げ、心筋梗塞再発や死亡リスクを低下することに結びつくことが示された。スコットランド・Edinburgh大学のNicholas L. Mills氏らが、カットオフ値引き下げ前後で各1,000人超の患者を対象に行った試験で明らかにしたもので、JAMA誌2011年3月23/30日合併号で発表した。血漿トロポニンI濃度のカットオフ値の低下が、臨床アウトカムの改善につながるかどうかについては意見が分かれていた。カットオフ値を0.20ng/mLから0.05ng/mLに低下し1年間の心筋梗塞再発・死亡発生率を比較Mills氏らは、2008年2月1日~7月31日にACSが疑われた1,038人に対し、心筋壊死の診断カットオフ値を血漿トロポニンI濃度0.20ng/mLに設定し、高感度トロポニンI定量法を行った。その後、2009年2月1日~7月31日に、ACS疑いの1,054人について、同カットオフ値を0.05ng/mLに引き下げ、同定量法を行った。2008年群において同濃度が0.20ng/mL以上の人についてのみ、医師に結果が報告された。被験者を血漿トロポニンI濃度によって、0.05ng/mL未満、0.05~0.19ng/mL、0.20ng/mL以上の3群に分け、1年間の心筋梗塞の再発または死亡の発生率を主要評価項目として比較検討された。0.05~0.19ng/mL群、カットオフ値低下で主要転帰発生0.42倍に減少0.05ng/mL未満の人は全体の64%の1,340人、0.05~0.19ng/mLは8%の170人、0.20ng/mL以上は28%の582人だった。このうち0.05~0.19ng/mL群において、2008年に検査を実施した群ではその39%が1年以内に心筋梗塞を再発または死亡していたが、2009年に実施した群では、その割合が21%に減少していた(オッズ比:0.42、95%信頼区間:0.24~0.84、p=0.01)。なお、0.05ng/mL未満の人の主要転帰発生率は2008年において7%(0.05~0.19ng/mL群に対するp

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CABG直後のCK-MBやトロポニン上昇は中・長期死亡率を増大:大規模メタ解析より

冠動脈バイパス術(CABG)後24時間以内のクレアチンキナーゼMB(CK-MB)分画やトロポニン値の上昇は、中・長期死亡率増大の独立予測因子であることが明らかになった。CK-MB分画は最も強力な独立予測因子で、術後30日から1年後の死亡率は、正常値上限を超え5ポイント増加するごとに、死亡リスクは1.17倍程度増大するという。米国マウントサイナイ大学のMichael J. Domanski氏らが、1万9,000人弱対象の大規模メタ解析の結果明らかにしたもので、JAMA誌2011年2月9日号で発表した。30日・1年死亡率、CK-MB分画増加に伴い増大研究グループは、CABGについて行われた無作為化試験やレジストリ試験で、術後24時間以内に心臓マーカーの測定を行った7試験、追跡期間3ヵ月から5年にわたる、被験者合計1万8,908人の分析を行った。結果、死亡率はCK-MB分画増加に伴い単調に増大する傾向が認められた。具体的には、30日死亡率が、CK-MB分画0~1未満の群では、0.63%、1~2未満では0.86%、2~5未満0.95%、5~10未満では2.09%、10~20未満では2.78%、20~40未満・40以上では7.06%だった。CK-MB分画は、30日死亡率に関する最も強力な独立予測因子であり、試験開始時点でのその他のリスク因子について補正後も有意なままだった(x2=143、p<0.001)。正常値上限を超え5ポイント増加ごとのハザード比は1.12(95%信頼区間:1.10~1.14)であった。この傾向は、術後30日死亡率について最も強くみられたが、その後も術後1年まで継続した(x2=24、p

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住民ベースでの高感度定量法は、構造的心疾患や全死因死亡リスクの評価に役立つ?

住民ベースの試験で、新しい高感度定量法では従来の定量法において検出されなかった心筋トロポニンT(cTnT)値の検出率が高いこと、また検出されたcTnT値が高い人ほど左室肥大や左室収縮機能不全、ひいては全死因死亡リスクが大きいことが示された。米国テキサス大学サウスウエスタン医学センターのJames A. de Lemos氏が、ダラスの住民3,500人超を対象に行った「Dallas Heart Study」の結果、明らかにしたもので、JAMA誌2010年12月8日号で発表した。これまで、cTnT値と構造的心疾患や心血管疾患イベントリスク増大との関連が強いことは知られており、それらのリスク評価に役立つ可能性が示されているが、一般住民ベースで用いられている標準定量法では、cTnT値を検出することがほとんどできず同値の活用が限られている。cTnT値0.003ng/mL以上検出率、高感度定量法25.0% vs. 標準定量法0.7%同氏らは、2000~2002年にかけて、30~65歳の3,546人を対象とするコホート試験を開始した。追跡期間の中央値は6.4年(四分位範囲:6.0~6.8年)だった。被験者は、従来の標準定量法と新しい高感度定量法で、cTnT値を測定された。また、MRIで心臓の構造と機能を調べ、死亡率についても追跡された。結果、cTnT値が0.003ng/mL以上で有病であると検出された人は、被験者全体で、高感度定量法群は25.0%(95%信頼区間:22.7~27.4)であった。一方、従来の標準定量法群では0.7%(同:0.3~1.1)に留まった。cTnT値0.003ng/mL以上が検出できた人の有病率は、男性が37.1%と、女性の12.9%に比べ約3倍高かった(p<0.001)。年齢別では、40歳未満は14.0%であったが、60歳以上では57.6%と高かった(p<0.001)。全死因死亡率、0.014ng/mL以上群は0.003ng/mL未満群の2.8倍被験者は、cTnT値に基づき5群に階層化され解析された。左室肥大の有病率は、5群のうち最低群のcTnT値0.003ng/mL未満群では7.5%だったのに対し、最高群の0.014ng/mL以上群では48.1%と大幅に高率だった(p<0.001)。また、左室収縮機能不全や慢性腎臓病(CKD)の有病率についても、cTnT値が高くなるにつれて増大した(p<0.001)。追跡期間中の死亡は151人で、そのうち心血管疾患による死亡は62人だった。全死因死亡率とcTnT値の関係についてみたところ、5群のうち最低群のcTnT値0.003ng/mL未満群では1.9%だったのに対し、最高群の0.014ng/mL以上群では28.4%であり、cTnT値の上昇に伴い増大していた(p<0.001)。この関連は、従来リスク因子やCRP値、CKD、N末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(NT-pro BNP)値で補正を行った後も変わらず、cTnT値が最高群の0.014ng/mL以上の人は、最低群の0.003ng/mL未満の人に比べ、全死因死亡に関する補正後ハザード比が2.8(95%信頼区間:1.4~5.2)と高かった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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周術期スタチン療法は血管手術患者の術後心血管系イベントを有意に減少

非心臓血管手術を受けるアテローム動脈硬化症患者は、心血管系に起因する心筋梗塞や死亡といった術後の心イベントリスクが高い。一方、術後30日のアウトカムにおけるスタチンの効果を評価するプラセボ対照試験は公表されていなかった。DECREASE IIIは、オランダ・エラスムス医療センターのOlaf Schouten氏らの研究グループによる、周術期スタチン療法が待機的血管手術患者で有害な心イベントの術後出現率を低下させるとの仮説を立証することを目的に行われたプラセボ対照試験。その結果が、NEJM誌2009年9月3日号に掲載された。徐放性フルバスタチンとプラセボを二重盲検二重盲検プラセボ対照臨床試験では、これまでスタチンの投与を受けたことのない患者を、ベータ受容体遮断薬に加えて、徐放性フルバスタチン(extended-release fluvastatin)80mgまたはプラセボのどちらかを、血管手術を受ける前に1日1回投与されるようランダムに割り付けた。そして脂質濃度、インターロイキン6濃度、C反応性蛋白(CRP)濃度が、ランダム化の際と手術前に測定された。主要エンドポイントは、術後30日以内の一過性の心電図異常、トロポニンTの放出、またはその両方で定義される心筋虚血の発生とした。副次エンドポイントは、心血管系と心筋梗塞の複合による死亡。計250例の患者がフルバスタチン、247例がプラセボに割り付けられた(中央値で血管手術37日前に投与)。心血管系の有害イベントが有意に減少総コレステロール、低比重リポ蛋白コレステロール、インターロイキン6、CRP濃度はフルバスタチン群で有意に低下したが、プラセボ群では変わらなかった。術後心筋虚血は、フルバスタチン群で27例(10.8%)、プラセボ群は47例(19.0%)で起こった(ハザード比:0.55、95%信頼区間:0.34~0.88、P=0.01)。心血管系に起因する死亡または心筋梗塞は、フルバスタチン群が12例(4.8%)、プラセボ群が25例(10.1%)で起こった(同:0.47、0.24~0.94)、P=0.03)。フルバスタチン治療による有害事象の発生率に有意な増加はみられなかった。これらの結果から研究グループは、血管手術を受ける患者に対する周術期フルバスタチン療法は、術後心疾患転帰改善との関連が確認できたと述べている。(医療ライター:朝田哲明)

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ハイリスク非ST上昇型急性冠症候群への血管形成術実施のタイミング

ハイリスク非ST上昇型の急性冠症候群に対し、血管形成術を行う際、患者が来院してからできるだけ早く実施する場合と、翌日まで待って行う場合とを比較した結果、入院中のトロポニン最大値などのアウトカムに差はないことが明らかにされた。リスクの高い非ST上昇型急性冠症候群(NSTE-ACS)に対しては、早期の侵襲的インターベンションの実施が国際的ガイドラインで勧告されているものの、その適切なタイミングについては明確ではないという。フランスPitie-Salpetriere大学のGilles Montalescot氏らの調べで明らかになったもので、JAMA誌2009年9月2日号で発表されている。NSTE-ACSでTIMIスコア3以上の352人を対象に試験研究グループは2006~2008年にかけて、フランス13ヵ所の医療機関で、NSTE-ACSで、心筋虚血における血栓溶解リスクを示すTIMI(Thrombolysis in Myocardial Infarction)スコアが3以上の患者352人を対象に、試験を行った。被験者を無作為に2群に分け、一方にはできるだけ早く血管形成術を行い、もう一方の群には試験開始後8~60時間後の翌(営業)日まで待って、血管形成術を行った。1次エンドポイントは、入院中の血中トロポニン最大値。また主な2次エンドポイントは、1ヵ月以内の死亡、心筋梗塞、緊急再血管再生術のいずれかの発生だった。来院直後実施も翌日実施も、アウトカムに有意差なし試験開始直後に血管形成術を行った群は、割り付けから手術開始までの経過時間中央値は70分、もう一方の翌日群は同21時間だった。入院中の血中トロポニン最大値の中央値は、直後群が2.1(四分位範囲:0.3~7.1)ng/mLで、翌営業日群は1.7(同:0.3~7.2)ng/mLであり、両群で有意差は認められなかった(p=0.70)。主な2次エンドポイントについても、その発生率は直後群で13.7%(95%信頼区間:8.6~18.8)、翌日群が10.2%(同:5.7~14.6)と、両群で有意差はなかった(p=0.31)。また主な出血や、その他のエンドポイントについても、両群で有意差は見られなかった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

112.

高感度心筋トロポニン検査は心筋梗塞の早期診断を大いに改善できる(1)

急性心筋梗塞は死および身体障害の主要な原因の1つだが、一方で米国やヨーロッパでは毎年約1,500万人の患者が、胸痛など急性心筋梗塞様の症状を呈し救急治療部に搬送されている。そのため、急性心筋梗塞の迅速で信頼性の高い診断が求められるが、こうした臨床上のニーズはまだ十分に満たされていない。バーゼル大学病院(スイス)のTobias Reichlin氏らは、新しい診断法として期待される高感度心筋トロポニン測定法(4つの測定法)の精度について、標準測定法との比較で検討を行った。NEJM誌2009年8月27日号より。718例の血液サンプルで新旧検査法を多施設盲検Reichlin氏らは、急性心筋梗塞が疑われる症状を呈し救急治療部を受診した718例から得られた血液サンプルを用いて、新しい高感度心筋トロポニン測定法を用いた診断の精度を検討する多施設共同治験を行った。心筋トロポニン・レベルは盲検形式で、4つの高感度測定法(アボット-Architect Troponin I、ロシュHigh-Sensitive Troponin T、ロシュTroponin I、シーメンスTroponin I Ultra)と標準測定法(ロシュTroponin T)を用いて判定した。最終診断は施設に所属していない2人の心臓専門医が下した。胸痛発症後間もない急性心筋梗塞の早期診断に有効123例の患者(17%)が急性心筋梗塞の最終診断を下された。ROC曲線解析による下部領域面積(AUC)の定量化によって、4つの高感度心筋トロポニン測定法のほうが標準測定法より、診断精度は有意に高かった。AUC、アボット-Architect Troponin Iは0.96(95%信頼区間:0.94~0.98)、ロシュHigh-Sensitive Troponin Tは0.96(同:0.94~0.98)、ロシュTroponin Iは0.95(同:0.92~0.97)、シーメンスTroponin I Ultraは0.96(同:0.94~0.98)に対し、標準測定法は0.90(同:0.86~0.94)だった。胸痛症状から3時間以内の患者のAUCは、標準測定法の0.76(95%信頼区間:0.64~0.88)と比べて、高感度測定法ではそれぞれ、0.93(同:0.88~0.99)、0.92(同:0.87~0.97)、0.92(同:0.86~0.99)、0.94(同:0.90~0.98)であった。なお高感度トロポニン測定法の医学的管理に及ぼす影響は評価していない。Reichlin氏らは、高感度心筋トロポニン測定法の診断パフォーマンスは優れており、これら測定法は特に胸痛発症後、間もない患者における急性心筋梗塞の早期診断を大いに改善できると結論づけている。(医療ライター:朝田哲明)

113.

高感度心筋トロポニン検査は心筋梗塞の早期診断を大いに改善できる(2)

心筋梗塞の早期診断は迅速な治療を促し、胸痛症状を示した患者のアウトカムを改善する。その意味で、緊急環境下で施行される心筋壊死マーカー検査は診断価値が高く、胸痛患者ケアに一里塚を築いたが、胸痛出現直後の精度は低い。これに代わって心筋トロポニン検査が急性心筋梗塞の診断の中心的役割を果たすようになっているが、ヨハネス・グーテンベルク大学(ドイツ)のTill Keller氏ら研究グループは、急性心筋梗塞の早期診断とリスク層別化について、高感度トロポニンI測定法の評価を行った。NEJM誌2009年8月27日号より。診断精度は高感度トロポニンI測定法が最も高い本試験は多施設治験で、急性心筋梗塞が疑われる一連の1,818例の患者を対象に、入院時、入院後3時間、同6時間について、高感度トロポニンI測定法と、トロポニンT、従来の心筋壊死マーカーの3つで診断精度を比較した。入院時に得られたサンプルによる診断精度は、トロポニンT測定法(受信者動作特性曲線[AUC]:0.85)、従来の心筋壊死マーカーと比較して、高感度トロポニンI測定法が最も高かった(AUC:0.96)。入院時の高感度トロポニンI測定法(カットオフ値:0.04ng/mL)の臨床的感度は90.7%、特異度は90.2%だった。診断精度は、胸痛発症からの時間にかかわらず、ベースライン(入院時)と入院後の連続サンプルで実質的に変わらなかった。トロポニンI濃度0.04ng/mL超は発症後30日のリスク上昇と関連胸痛発症後3時間以内の患者において、1回の高感度トロポニンI測定法の陰性適中率は84.1%、陽性適中率は86.7%だった。これらの所見から、6時間以内にトロポニンIレベルが30%上昇すると予測された。0.04ng/mLを超えるトロポニンI濃度は、発症後30日における有害アウトカムのリスク上昇とそれぞれに関連していた(リスク比:1.96、95%信頼区間:1.27~3.05、P = 0.003)。研究グループは、高感度トロポニンI測定法の利用は、胸痛発症からの経過時間によらず、急性心筋梗塞の早期診断とリスク層別化を向上させると結論づけた。(医療ライター:朝田哲明)

114.

急性心筋梗塞の再灌流障害に関するシクロスポリンの作用

細胞内のミトコンドリア防御作用を有するシクロスポリンが、心筋梗塞の再灌流時に起こる致死的心筋障害を減らすことは、実験的に示されている。フランス・Hopital Arnaud de VilleneuveのChristophe Piot氏らは小規模ながら、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)前にシクロスポリンを投与することで、梗塞範囲を抑えられるかどうかを検証。NEJM誌2008年7月31日号に結果が掲載された。58例を対象に逸脱酵素量測定とMRI画像で比較ST上昇型急性心筋梗塞を発症した患者58例を、PCI直前に体重1kg当たり2.5mgのシクロスポリンを静脈内投与する群と、同量の生理食塩水を投与する対照群に無作為に割り付けた。梗塞範囲は発症後5日目に、全例についてクレアチンキナーゼとトロポニンIの血中放出量を測定し、サブグループ27例はMRI画像で評価した。クレアチンキナーゼ放出量は有意に減少シクロスポリン群と対照群は、虚血時間、危険領域の範囲とPCI前の駆出率では類似していた。クレアチンキナーゼ放出量は、対照群と比べてシクロスポリン群では有意に減少したが(P=0.04)、トロポニンIは有意に減少しなかった(P=0.15)。梗塞発症後5日目に撮ったMRI画像で、梗塞組織を示す高度増強領域の絶対質量は、シクロスポリン群が中央値37g(四分位範囲:21~51)で、対照群の46g(同20~65)と比較して有意に減少した(P=0.04)。シクロスポリン投与の副作用はなかった。Piot氏は「この小規模試験では、再灌流時のシクロスポリン投与によって、プラセボより梗塞範囲が縮小したことを示す評価項目もあった」と結論したが、「これらのデータは予備的なものであり、より大規模な臨床試験で確認する必要がある」としている。(武藤まき:医療ライター)

115.

複数バイオマーカーの使用が心血管系の死亡リスク予測に有用

心血管系に起因する高齢者の死亡リスクを予測するために、スウェーデン・ウプサラ大学のBjorn Zethelius氏らは、確立したリスク因子の他に、異なる疾患経路に複数のバイオマーカーを加えることの有用性を検討。心血管だけでなく腎の異常についてのバイオマーカーも加えると、心血管系の死亡リスクの層別化が改善されると報告している。NEJM誌2008年5月15日号より。高齢男性対象に腎不全と炎症のマーカーも追加高齢男性を対象とした地域ベースのコホート研究である「ウプサラ成人男性縦断研究」(ULSAM)のデータを使い、参加者1,135例(ベースラインの平均年齢71歳)について、追跡調査(中央値10.0年)を行った。心筋細胞傷害、左室機能不全、腎不全および炎症を反映するバイオマーカー(それぞれトロポニンI、N末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド、シスタチンC、C反応性蛋白)の組み合わせが、すでに確立している心血管疾患のリスク因子(年齢、収縮期血圧、降圧剤使用の有無、総コレステロール、高比重リポ蛋白コレステロール、脂質降下剤使用の有無、糖尿病の有無、喫煙状態、肥満度指数)に基づく評価より、個人のリスク層別化を改善するかどうかを検討した。心血管疾患の有無にかかわらずリスク予測を改善追跡調査の間に1,135例中315例が死亡し、うち136例は心血管疾患による死亡だった。確立したリスク因子で補正したコックス比例ハザードモデルでは、すべてのバイオマーカーが、心血管系の原因による死亡リスクを有意に予測した。前記の4バイオマーカーを、確立したリスク因子のモデルに組み込むと、C統計量は、全コホート(バイオマーカー有:0.766対バイオマーカー無:0.664、P

116.

心筋トロポニン陽性は独立した院内死亡の予測変数

心筋トロポニンは急性冠動脈症候群の診断と予後に関する情報を提供するが、急性非代償性心不全での役割はわかっていない。クリーブランド・クリニックのW. Frank Peacock IV氏らの研究グループは、急性非代償性心不全で入院した患者の中で、心筋トロポニン濃度が高い症例を分析し、有害事象との関連を説明するためレトロスペクティブ解析を行った。NEJM誌2008年5月15日号より。急性非代償性心不全患者4240例を解析研究グループは、2001年10月から2004年1月にかけて急性非代償性心不全で入院し、Acute Decompensated Heart Failure National Registry(ADHERE)に登録された患者を対象に分析を行った。登録の基準となるトロポニン濃度は入院時に得られた数値としたが、特にトロポニンTは腎不全患者でも血中濃度が高くなるため、血清クレアチニン濃度が2.0mg/dL未満(177μmol/L)の患者に限って登録した。トロポニン検査陽性は、心筋トロポニンIレベルが1.0μg/L以上、心筋トロポニンTレベルは0.1μg/L以上と定義。急性非代償性心不全で入院した患者105,388例のうち、84,872例(80.5%)で測定が行われた。これらの症例のうち、67,924例がクレアチニン濃度2.0mg/dl未満だった。心筋トロポニンIは61,379例、心筋トロポニンT は7,880例で測定され、両方のトロポニンが測定されたのは1,335例。これらのうち4,240例(6.2%)がトロポニン陽性と判定された。心筋トロポニン陽性は院内死亡率が有意に高いトロポニン陽性例はトロポニン陰性例と比べて、入院時の収縮期血圧および駆出率が低く、院内死亡率も高かった(8.0%対2.7%、P

117.

抗癌剤sunitinibに心毒性か

欧米では進行性腎癌と消化管間質腫瘍(GIST)の治療に用いられるチロシンキナーゼ阻害剤sunitinibに心毒性がある可能性が報告された。Harvard Medical School(アメリカ)のTammy F Chu氏らが75例をレトロスペクティブに解析した結果としてLancet誌12月15日号に掲載された。心筋傷害の確認は取れておらず同氏らはイマチニブ抵抗性の転移性GISTに対するsunitinib第I/II相試験に登録された97例における左室駆出率の変化をレトロスペクティブに調査した。全例、sunitinib開始2週間前までに他の抗癌剤は中止している。全例、左室駆出率(LVEF)は50%以上あり、心不全既往はなかった。4例は冠動脈疾患の既往があったが過去1年間は無症候だった。sunitinibは4週間服用、2週間休薬を1サイクルとし、承認用量の50mg/日ないしそれ以下が用いられた。中央値33.6週間の後、6例(8%)が慢性心不全を発症した。いずれもNYHA分類III度以上の重症心不全だった。また36例(28%)でLVEFが10%以上低下した。うち7例では15%以上のLVEF低下が認められた。また、35例(47%)が高血圧(150/100mmHg超)を発症していた。本試験では心筋傷害のマーカーとして血中トロポニンI濃度を観察しているが、心不全発症患者、あるいはLVEF患者のトロポニンI濃度の推移が示されていないため、sunitinibによる心機能低下の原因は今ひとつ明らかではない。sunitinib使用時には心機能と血圧を注意深くモニターするようChu氏らは注意を喚起している。(宇津貴史:医学レポーター)

118.

J-WIND、待望の論文化

わが国で実施され、2006年には米国心臓協会にて報告された大規模試験J-WINDが、Lancet誌10月27日号に掲載された。心筋梗塞に対する再灌流療法にヒト心房性ナトリウムペプチド(カルペリチド)、あるいはニコランジルを加える有用性を検討した本試験、筆頭著者は国立循環器病センターの北風政史氏である。カルペリチドとニコランジルの有用性を別個に検討J-WINDは2つの別個の試験から成る。いずれも急性心筋梗塞例を対象としているが、J-WIND-ANP試験では再灌流療法時にカルペリチドを3日間持続静注、J-WIND-KATP試験ではニコランジルをボーラス静注し、いずれの試験も梗塞サイズと左室駆出率を対照群と比較した。ANP試験ではカルペリチド群に277例、対照群に292例が、KATP試験ではニコランジル群に276例、対照群に269例がそれぞれ無作為割り付けされ、単盲検にて平均2.7年(ANP試験)、2.5年(KATP試験)追跡された。  カルペリチド群では梗塞サイズが縮小し左室機能も保たれる569例が無作為化されたANP試験では、まず535例(カルペリチド群:255例、対照群:280例)で梗塞サイズが検討された。梗塞巣サイズの評価は、再灌流療法前と再灌流1時間~72時間後の間に少なくとも6回採取した血液サンプルから求めたクレアチニンキナーゼのAUCで行なった。その結果、対照群の77,878.9IU/L時に比べカルペリチド群では66,459.9IU/L時と有意(p=0.016)に低下していた。梗塞サイズに換算すると相対的に14.7%の減少になるという。ただし再灌流後12〜18時間に測定したトロポニンT濃度は減少傾向にとどまった。また398例(各群199例ずつ)で評価できた6~12カ月後の左室駆出率も、カルペリチド群では対照群に比べ相対的に1.05倍、有意(p=0.024)に高値だった。この結果よりJ-WIND研究者らは、「経皮的冠血行再建術を施行される心筋梗塞患者に対し、カルペリチド追加は安全かつ有効な治療だと信じている」と記している。 ニコランジルは用量の問題か対照的だったのがKATP試験である。ニコランジル群で梗塞サイズ、左室駆出率とも対照群と有意差を認めなかった。 しかしJ-WIND-KATP試験については本年度の日本循環器学会のセッション「Late Breaking Clinical Trials in Japan」において、以下が指摘されている。すなわち、これまでに報告された臨床試験で、ニコランジルによる梗塞巣縮小が認められた場合、用量は8~12mg程度が用いられている。特に、プラセボ群に比べ心筋梗塞患者の「心血管系死亡と心不全による予定外入院」を有意に抑制し,Circulation誌に掲載された臨床試験では12mgが用いられていた [Ishii H et al. Circulation 2005; 112: 1284]。しかし今回J-WINDで用いられた「0.067mg/kgボーラス+1.67μg/kg/分×24時間」というレジメンではおよそ4mg程度にしかならないため、「もう少し高用量ならば異なった結果になっていた可能性もある」(コメンテーター)とのことである。(宇津貴史:医学レポーター)

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