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Onco-Cardiology(腫瘍循環器学)とは【見落とさない!がんの心毒性】第1回

はじめに生活習慣の欧米化や高齢化に伴い本邦の疾病構造は大きく変化し、がんの増加と共にがんに循環器疾患を合併する患者さんが増加しています。世界的にもがん治療の進歩に伴う新しい抗がん剤の登場により循環器合併症(心毒性)の頻度が高くなり、がんと循環器の両者を診療する腫瘍循環器学(Onco-Cardiology)が注目されるようになりました。このような中、2000年に米国MDアンダーソンがんセンター循環器内科にOnco-Cardiology 外来が、本邦では2011年に大阪府立成人病センターにおいて腫瘍循環器外来を開始しました。当時、subspeciality化が進む医療現場においてニッチな学際領域であったOnco-Cardiologyは、がん治療専門施設や大学病院の循環器内科の腫瘍循環器外来として開設されました。それから約10年の歳月を経て、2020年末に日本腫瘍循環器学会の編集により「腫瘍循環器診療ハンドブック」1)が作成され、がん診療の現場での腫瘍循環器診療の標準化が始まろうとしています。しかしながら、すべてのがん診療の現場において対応するには未だ腫瘍循環器医の数は十分ではなく、がん治療の複雑化と長期化に伴う新たな心毒性の出現やがんサバイバーの増加に伴う晩期心毒性の出現など、Onco-Cardiologyにおいて新たな課題が生まれてきています。本連載は、「腫瘍循環器学:Onco-Cardiology」を初めて耳にされる方や、がん診療を行っておられる腫瘍専門医や循環器専門医の皆様で実際に心毒性のコントロールに困っておられる先生を対象に、現在第一線で腫瘍循環器診療を行っているエキスパートらが知っておいていただきたい事項の解説、具体的な症例を提示しながらOnco-Cardiologyの最新情報を紹介します。なお、本企画を連載するメンバーは、それぞれが異なった規模の医療施設において実際にOnco-Cardiologyの診療・研究を行っています。Onco-Cardiologyをできるだけ多くの読者の皆様に知っていただき、理解いただくためにも、それぞれの経験を元に最新情報を交えながらOnco-Cardiologyを紹介してまいります。掲載の都合上、不足部分については「腫瘍循環器診療ハンドブック(日本腫瘍循環器学会編集)」をお手元に置いて連載を読んでいただければ、より理解が深いものになると期待いたしております。腫瘍循環器学(Onco-Cardiology)とは従来、がんと循環器はお互いに離れた関係にあり、1970年代アントラサイクリン系抗がん剤の投与による心筋症が報告されたものの両者が触れ合う機会は決して多くありませんでした。しかしながら、21世紀を迎え分子標的薬が登場しHER2阻害薬(トラスツズマブ)心筋症などの新しい機序の心毒性が登場するようになると、循環器専門医ががん診療に介入する機会は急激に増加するようになります。(図1)に示すように新たな心毒性が出現するごとに腫瘍循環器に関連した論文数は増え、2010年以降には急速な増加を認めています2)3)。とくに血管新生阻害薬や新たな標的に対する薬剤の登場により、心筋毒性が中心であった心毒性は高血圧症や動脈・静脈血栓塞栓症などの血管毒性や不整脈関連毒性(QTc延長、心房細動、心室性頻拍症ほか)など多彩な病態を呈するようになり、循環器専門医による診療が不可欠です。さらに、免疫チェックポイント阻害薬による免疫関連有害事象(irAE)では、腫瘍循環器医のみならず内分泌内科専門医、神経内科専門医など複数の診療科が共同で診療する必要のあるような複雑な合併症を示す症例も多く認められます。(図1)腫瘍循環器学関連の論文数と循環器合併症(心毒性)の推移画像を拡大するがん診療における心血管リスクの変化がん診療は発がん前の時点から始まり、急性期がん治療期、がんの回復・寛解期、そしてがん治療が終了した後と、それぞれのステージに合わせて腫瘍専門医によるがん治療が行われます。その間、(図2)に示すように心血管リスクはがん発症前~がん治療中に出現する急性期心毒性、治療開始後から1年程度で認める慢性期心毒性、そしてがん治療が終了し数年から10年以上が経過し潜在的に進行する晩期心毒性と、各ステージにおいて、がん種のみならず患者の病態や治療内容により大きく変化しています4)。(図2)がん診療における心血管リスクと腫瘍循環器診療画像を拡大する腫瘍循環器医は、腫瘍専門医の依頼によりそれぞれのステージに合わせ診療を行い、がん治療前に患者が有する心血管リスクを層別化することでがん治療による心毒性の発症を予測します。さらに、治療前から有する生活習慣病などのリスク因子を適正化することでがん治療のリスクを軽減し、がん治療が開始した後は心毒性の早期発見、早期治療を行います。従って、急性期心毒性への対応は、腫瘍専門医を中心として外来化学療法室、薬剤師などの多くのメディカルスタッフと連携し、あくまでがん治療の継続を第一の目標としてがん患者の安全性を確保すると共にがん治療の適正化を目指します。その一方で、がん治療が終わったがんサバイバーに出現する晩期心毒性に対する対応は、長期的にわたる循環器疾患モニタリングによる継続的な循環器ケア(continuum of cardiovascular care)が必要となります。本邦ではこのがんサバイバーがすでに500万人以上とされ、現在も急速に増加しているため、腫瘍循環器外来のみならず一般の循環器外来でも診療の機会が増えています。すでにがん治療が終了したがんサバイバーにとって、晩期心毒性への対応は急性期がん治療を専門とする医療機関のみでは困難な場合が多く、腫瘍循環器医、かかりつけ医(総合内科医)、薬剤師などを含めた長期間にわたる医療連携が必要となっています。実際の医療現場では晩期合併症に対する医療リソースは決して十分ではなく、日々進歩するがん診療において今後の大きな課題となっています5)。今後の方向性がんと循環器における関係は、2017年の日本腫瘍循環器学会設立を機に、国や学会レベルでも学際領域の連携が進み、基礎・臨床・疫学研究への支援が加速しています。前述の「腫瘍循環器診療ハンドブック」により腫瘍循環器外来における基本的な治療指針が示されたことで、今まで触れることのなかった多くの医療者にもOnco-Cardiologyがより身近なものとなっています。今後、多くのエビデンスが集積されることで本邦独自の腫瘍循環器関連診療ガイドラインが作成され、がん患者へより良い治療が提供できることが期待されています。1)日本腫瘍循環器学会編集委員会編. 腫瘍循環器診療ハンドブック.メジカルビュー社. 2020.2)Barac A, et al. J Am Coll Cardiol. 2015;65:2739-2746.3)Herrmann J, et al. Nat Rev Cardiol. 2020;17:474-502.4)Okura Y, et al. Cir J 2019;83:2191-2202.5)向井幹夫. 医学のあゆみ 2020; 273:483-488.講師紹介

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食道扁平上皮がん1次治療、ニボルマブ+化学療法とニボルマブ+イピリムマブが生存ベネフィット示す(CheckMate-648)/BMS

 ブリストル マイヤーズ スクイブは、2021年4月8日、切除不能な進行または転移のある食道扁平上皮がん(ESCC)患者を対象に、ニボルマブと化学療法の併用療法およびニボルマブとイピリムマブの併用療法を評価した第III相CheckMate-648試験の肯定的なトップラインの結果を発表した。 同試験の中間解析において、ニボルマブと化学療法の併用療法は、主要評価項目であるPD-L1陽性患者の全生存期間(OS)および副次評価項目である全無作為化患者集団でのOSで統計学的に有意かつ臨床的に意義のあるベネフィットを示した。加えて、PD-L1陽性患者での盲検下独立中央判定(BICR)評価による無増悪生存期間(PFS)で統計学的に有意かつ臨床的に意義ある改善を示した。 ニボルマブとイピリムマブの併用療法も、PD-L1陽性患者でのOSおよび全無作為化患者集団でのOSで統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善を達成した。しかし、PD-L1陽性患者でのBICRの評価によるPFSの改善は達成しなかった。 同社は、CheckMate-648試験のデータの評価を完了させ、今後の学会で結果を発表するとともに、規制当局と共有する予定だとしている。

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オマリズマブ、免疫チェックポイント阻害薬および抗HER2薬のそう痒症を改善/Ann Oncol

 IgE阻害薬オマリズマブ(商品名:ゾレア)はアトピー性皮膚炎、蕁麻疹などのそう痒症に有効である。がん領域におけるそう痒関連皮膚有害事象(paCAE)は、免疫チェックポイント阻害薬や抗HER2薬で多くみられる。これらの薬剤による難治性paCAEを伴うがん患者に対してオマリズマブを評価する多施設後ろ向き研究の結果が発表された。・対象:免疫チェックポイント阻害薬または抗HER2薬によるGrade2〜3の掻痒を有し、局所ステロイドと1つ以上の全身療法に抵抗性の患者・介入:オマリズマブを月1回投与・主要評価項目:paCAEのGrade0〜1への改善 主な結果は以下のとおり。・34例(女性50%、年齢中央値67.5歳)、がん治療関連paCAE(免疫チェックポイント阻害薬71%、抗HER2薬29%)に対するオマリズマブ投与を受けた。・対象は、すべて固形腫瘍(乳房29%、泌尿生殖器29%、肺15%、その他26%)で、64%に蕁麻疹が認められた。 ・オマリズマブの奏効は34例中28例(82%)に認められた。 ・paCAEの支持療法として経口コルチコステロイドを投与された患者の割合は、50%から9%に減少した(P

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化学放射線療法後の食道がん切除例、ニボルマブ術後補助療法は?/NEJM

 導入補助化学放射線療法後に食道がん/食道胃接合部がんを切除した患者において、術後補助療法としてのニボルマブはプラセボと比較して無病生存(DFS)期間を有意に延長した。米国・ベイラー医科大学医療センターのRonan J. Kelly氏らが、第III相の国際共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験「CheckMate 577試験」の結果を報告した。食道がん/食道胃接合部がんに対し術前補助化学放射線療法および手術を行っても、再発リスクが高いままの患者に対する術後補助療法は確立されていなかった。NEJM誌2021年4月1日号掲載の報告。術後補助療法としてのニボルマブの有効性を評価 研究グループは、術前補助化学放射線療法を受け病理学的完全奏効が得られずR0切除を行ったステージII/IIIの食道がん/食道胃接合部がん患者を、ニボルマブ群(240mgを2週ごと16週間、その後480mgを4週ごと投与)またはプラセボ群に2対1の割合で無作為に割り付け、再発または忍容できない毒性が認められるまで、あるいは患者が同意を撤回するまで、最長1年間、投与を継続した。 主要評価項目はDFS期間、副次評価項目は全生存(OS)期間であった。 2016年7月~2019年8月までの期間に、29ヵ国の170施設で794例がニボルマブ群(532例)またはプラセボ群(262例)に割り付けられた。ニボルマブによりDFS期間が有意に延長 追跡調査期間中央値24.4ヵ月(クリニカルカットオフ日2020年5月12日)において、DFS期間中央値はニボルマブ群22.4ヵ月(95%信頼区間[CI]:16.6~34.0)に対し、プラセボ群11.0ヵ月(8.3~14.3)であった(ハザード比:0.69、96.4%CI:0.56~0.86、p<0.001)。事前に規定したDFS期間のサブグループ解析の結果、ニボルマブはすべてのサブグループにおいて一貫して良好な結果であった。 治験責任医師によって治験薬に関連すると判断されたGrade3/4の有害事象は、ニボルマブ群で532例中71例(13%)、プラセボ群で260例中15例(6%)に認められた。治験薬に関連する有害事象により投与中止となったのは、ニボルマブ群9%、プラセボ群3%であった。

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ニボルマブ+イピリムマブの肺がん術前治療、主要評価項目を達成(NEOSTAR)/Nat Med

 手術可能NSCLC患者を対象に、ニボルマブ+イピリムマブによる術前治療の有効性と安全性を評価する第II相NEOSTAR試験の追跡結果がNature Medicine誌に掲載された。・対象:切除可能Stage I~IIIA 非小細胞肺がん(Single N2)・arm A:ニボルマブ3mg/kg+イピリムマブ1mg/kg→ニボルマブ2週ごと3サイクル(NI群)・arm B:ニボルマブ3mg/kg→ニボルマブ2週ごと3サイクル(N群)・評価項目:[主要評価項目]N群とNI群のMPR(Major Pathologic Response、生存しうる腫瘍細胞10%以下)[副次評価項目]毒性、周術期罹患率/死亡率、奏効率(ORR)、無再発生存期間、全生存期間など 主な結果は以下のとおり。・NI群のMPR率は38%(8/21例)で、事前に指定された主要評価項(21例中6例のMPR)を達成した。・NI群のMPR率は22%(5/23例)であった。・切除を行った37例におけるMPR率は、NI群50%(8/16例)、N群24%(5/21例)であった。・NI群ではN群に比較べ、高い病理学的完全奏効率を示し(10%対38%)、生存しうる腫瘍細胞(viable tumor)も少なかった(50%対9%)。・腸内ルミノコッカス属とアッケルマンシア属の増加が併用療法のMPRと関連していた。

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抗LAG-3抗体relatlimab+二ボルマブ、未治療の黒色腫の主要評価項目PFSを達成(RELATIVITY-047)/BMS

 ブリストルマイヤーズスクイブは、2021年3月25日、未治療の切除不能な悪性黒色腫を対象に抗LAG-3抗体relatlimabとニボルマブの固定用量配合剤とニボルマブ単剤を比較した第II/III相RELATIVITY-047(CA224-047)試験の主要結果を発表。relatlimabと二ボルマブの併用療法は、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)を達成した。副次評価項目である全生存期間(OS)の追跡調査は進行中である。固定用量の併用療法の忍容性は良好で、併用療法群およびニボルマブ単剤療法とも新たな安全性シグナルは報告されなかった。これらは、抗LAG-3抗体を評価した試験で報告された初めての第III相データである。 リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)は、エフェクターT細胞および制御性T細胞(Treg)に発現する細胞表面分子である。LAG-3は、T細胞の活性を制限する抑制性免疫チェックポイント経路を制御し、がん細胞を攻撃する能力を低下させる。LAG-3とPD-1は、エフェクターT細胞上で相乗的に作用し、T細胞を疲弊させる可能性がある。抗LAG-3抗体であるrelatlimabは、T細胞上のLAG-3と結合し、疲弊したT細胞のエフェクター機能を回復させる。 ブリストル マイヤーズ スクイブは、今後の学会で本試験の結果を発表するとともに、規制当局と結果について協議する予定。

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既治療NSCLCへのニボルマブ、5年生存率の結果/JCO

 免疫療法は、進行非小細胞肺がん(NSCLC)の治療に革命をもたらした。すでに、既治療の扁平上皮および非扁平上皮NSCLC患者を対象とした2つの第III相試験(CheckMate-017およびCheckMate-057)において、ニボルマブはドセタキセルと比較し、全生存(OS)期間の改善と良好な安全性を示している。米国・Fox Chase Cancer CenterのHossein Borghaei氏らは、両試験の5年間における有効性および安全性に関するプール解析を行い、ニボルマブはドセタキセルと比較して、OS延長効果が持続し、新たな安全性の懸念はなかったことを明らかにした。Journal of Clinical Oncology誌2021年3月1日号掲載の報告。 研究グループは、プラチナ併用化学療法中または化学療法後に進行したECOG PS≦1のNSCLC患者(CheckMate-017:扁平上皮がん、CheckMate-057:非扁平上皮がん、合計854例)を、ニボルマブ群(3mg/kg、2週間ごと)またはドセタキセル群(75mg/m2、3週間ごと)に1対1の割合で無作為に割り付け、進行または許容できない毒性発現まで投与した。 両試験の主要評価項目はOSで、副次評価項目は無増悪生存(PFS)および安全性などであった。探索的ランドマーク解析による評価も行った。 主な結果は以下のとおり。・CheckMate-017試験64.2ヵ月、CheckMate-057試験64.5ヵ月の最小追跡期間において、ニボルマブ群で50例、ドセタキセル群で9例が生存していた。・5年OS率はニボルマブ群13.4%、ドセタキセル群2.6%であり、5年PFS率はそれぞれ8.0%、0%であった。・ランドマーク解析において、2年時および3年時に病勢進行を認めなかったニボルマブ群の患者の5年生存率はそれぞれ82.0%および93.0%、5年無増悪率はそれぞれ59.6%および78.3%であった。・治療関連有害事象(TRAE)は、3~5年の追跡期間中にニボルマブ群で31例中8例(25.8%)に報告され、そのうち7例が新たな事象を経験した。Grade3のTRAEは1例(3.2%)認められた。Grade4のTRAEはなかった。

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ペムブロリズマブ、TMB-High固形がんに国内承認申請/MSD

 MSDは、2021年3月11日、抗PD-1抗体ペムブロリズマブ (商品名:キイトルーダ)について、がん化学療法後に増悪した進行・再発の腫瘍遺伝子変異量高スコア(TMB-High)を有する固形がんに対する製造販売承認事項一部変更承認申請を行った。がん種横断的に共通するバイオマーカーに基づいた承認申請としては、2018年に承認を取得した高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形がんに次いで、2件目の申請となる。 腫瘍遺伝子変異量(TMB)とは、腫瘍細胞に生じた遺伝子変異量で、ゲノムコーディング領域1メガ塩基 (megabase) 当たりの非同義体細胞遺伝子変異数として示され、10変異/megabase以上である状態をTMB-Highと定義している。TMB-Highの腫瘍では、ネオアンチゲンがより多く誘導され、免疫チェックポイント阻害薬に対して良好に反応する可能性があるとされ、悪性黒色腫、非小細胞肺がん、大腸がん、子宮内膜がんなどで比較的多く見られると報告されている。 今回の製造販売承認事項一部変更承認申請は、固形がんに対するペムブロリズマブの有効性を評価する多施設共同非ランダム化非盲検試験であるKEYNOTE-158試験のデータに基づいたもの。

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進行腎がん1次治療、ニボルマブ+カボザンチニブで高い有効性(CheckMate-9ER)/NEJM

 未治療の進行腎細胞がん患者の治療において、ニボルマブとカボザンチニブの併用はスニチニブと比較して、無増悪生存(PFS)期間、全生存(OS)期間、客観的奏効率がいずれも有意に優れ、健康関連QOLも良好であることが、米国・ハーバード大学医学大学院のToni K. Choueiri氏らが実施した「CheckMate 9ER試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2021年3月4日号で報告された。腎細胞がんはVHL遺伝子の欠損を特徴とする腫瘍で、免疫療法薬や血管新生阻害薬、シグナル伝達遮断薬を組み合わせたレジメンの臨床的有益性が確認されており、個々の構成要素を洗練することで、さらに転帰が改善する可能性があると考えられている。カボザンチニブ(低分子チロシンキナーゼ阻害薬)とニボルマブ(プログラム細胞死1[PD-1]の免疫チェックポイント阻害薬)は、いずれも第III相試験において単剤で腎細胞がんのOS期間を改善したと報告されており、カボザンチニブは免疫チェックポイント阻害薬の免疫応答を増強する可能性が示唆されている。18ヵ国125施設の非盲検無作為化第III相試験 本研究は、日本を含む18ヵ国125施設が参加した非盲検無作為化第III相試験であり、2017年9月~2019年5月の期間に患者登録が行われた(Bristol Myers Squibbなどの助成による)。 対象は、未治療の淡明細胞型進行腎細胞がんを有する成人で、Karnofskyの全身状態スコア(0~100点、点数が低いほど機能障害が大きい)が70点以上の患者であった。 被験者は、ニボルマブ(240mg、2週ごと、静脈内投与)とカボザンチニブ(40mg、1日1回、経口投与)を併用投与する群、またはスニチニブ(50mg、1日1回、経口投与)を、6週を1サイクルとして4週投与後2週休薬する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。投与は、病勢進行または許容できない毒性が発現するまで継続された。 主要エンドポイントはPFS期間とした。副次エンドポイントは、OS期間、客観的奏効、安全性であった。PFS期間と客観的奏効は、盲検下に独立中央判定委員会が評価した。探索的エンドポイントとして、健康関連QOLの評価も行った。病勢進行/死亡リスクがほぼ半減、死亡リスク40%低下、PFS期間と奏効率は約2倍に 651例が無作為化の対象となり、ニボルマブ+カボザンチニブ群に323例(年齢中央値62歳[範囲:29~90]、男性77.1%)、スニチニブ群には328例(61歳[28~86]、70.7%)が割り付けられた。腫瘍のPD-L1発現は、1%以上が25.5%、1%未満は74.5%であった。 OS期間のフォローアップ期間中央値18.1ヵ月(範囲:10.6~30.6)の時点で、PFS期間中央値はニボルマブ+カボザンチニブ群が16.6ヵ月(95%信頼区間[CI]:12.5~24.9)と、スニチニブ群の8.3ヵ月(7.0~9.7)に比べ有意に延長した(病勢進行または死亡のハザード比[HR]:0.51、0.41~0.64、p<0.001)。また、1年PFS率は、ニボルマブ+カボザンチニブ群が57.6%(95%CI:51.7~63.1)、スニチニブ群は36.9%(31.1~42.8)であった。 1年OS率は、ニボルマブ+カボザンチニブ群が85.7%(95%CI:81.3~89.1)、スニチニブ群は75.6%(70.5~80.0)であり、併用群で有意に低下した(死亡のHR:0.60、98.89%CI:0.40~0.89、p=0.001)。両群ともOS期間中央値には未到達であった。 客観的奏効率は、ニボルマブ+カボザンチニブ群が55.7%、スニチニブ群は27.1%と有意差が認められ(p<0.001)、このうち完全奏効(CR)はそれぞれ8.0%および4.6%で達成された。また、奏効までの期間中央値は、それぞれ2.8ヵ月および4.2ヵ月、奏効期間中央値は20.2ヵ月および11.5ヵ月だった。 ニボルマブ+カボザンチニブのPFSおよびOSの利益は、サブグループ全体で一貫してみられた。 原因を問わない有害事象は、ニボルマブ+カボザンチニブ群が99.7%、スニチニブ群は99.1%で発現し、Grade3以上の有害事象はそれぞれ75.3%および70.6%に認められた。有害事象により、ニボルマブ+カボザンチニブ群の19.7%が少なくとも1剤を中止し(ニボルマブのみ中止:6.6%、カボザンチニブのみ中止:7.5%)、両薬剤を中止したのは5.6%であった。スニチニブ群では16.9%が投与を中止した。 健康関連QOLは、ニボルマブ+カボザンチニブ群が経時的に維持されていたのに対し、スニチニブ群はベースラインから一貫して悪化していた。 著者は、「ニボルマブ+カボザンチニブでは、病勢進行または死亡のリスクが49%低減し、PFS期間中央値が2倍に延長し、死亡のリスクが40%低下し、客観的奏効率は2倍に増加した」とまとめ、「これらの結果は、カボザンチニブが免疫チェックポイント阻害薬の効果を増強する可能性を示唆した以前のデータと一致する」としている。

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非扁平上皮NSCLC、化学療法+ニボルマブ+ベバシズマブの1次治療、日本人集団の成績(ONO-4538-52/TASUKI-52)/日本臨床腫瘍学会

 非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療において、ニボルマブとプラチナ含有化学療法およびベバシズマブの併用とプラチナ含有化学療法およびベ バシズマブの併用を比較検討する第III相ONO-4538-52/TASUKI-52試験。第18回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO Virtual2021)では、愛知県がんセンターの樋田 豊明氏が日本人のサブ解析結果を発表した。・対象:未治療のStage IIIB/IVの非扁平上皮NSCLC患者(PD-L1発現問わず)・試験群:ニボルマブ(360mg)+カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ(3週間ごと6サイクル)→ニボルマブ+ベバシズマブ(ニボルマブ群)・対象群:プラセボ+カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ→プラセボ+ベバシズマブ(プラセボ群) ニボルマブ/プラセボ+ベバシズマブは、疾患進行または許容できない毒性発現まで継続・評価項目:[主要評価項目]独立放射線審査委員会(IRRC)評価の無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目 ]全生存期間(OS)、全奏効率(ORR)、安全性 主な結果は以下のとおり。・全体集団550例中日本人は371例で、ニボルマブ群188例、プラセボ群183例に無作為に割り付けられた。・日本人集団の患者背景は全集団と同様であった。・日本人集団のPFS中央値はニボルマブ群13.4ヵ月、プラセボ群8.2ヵ月、1年PFS率はニボルマブ群52.9%、プラセボ群33.2%と、ニボルマブ群で良好であった(HR:0.56、95%CI:0.42~0.74)。・PD-L1発現レベル別のPFS HRは、PD-L1<1%では0.53、PD-L1 1~49%では0.75、PD-L1≧50 0.46と、PD-L1発現レベルを問わず、ニボルマブ群で良好であった。・日本人集団のIRRC評価のORRは、ニボルマブ群65.4%、プラセボ群53.0%であった(OR:1.68、95%CI:1.11~25.8)。・日本人集団の奏効期間は、ニボルマブ群12.2ヵ月、プラセボ群7.0ヵ月であった。・日本人集団のOS中央値は未達成であった。・日本人集団の治療関連有害事象はニボルマブ群99.5%(Grade3~4 83.9%)、プラセボ群100%(Grade3~4 84.2%)であった。

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非小細胞肺がんに対するKRASG12C阻害薬sotorasib第II相試験の成績(CodeBreaK 100)/日本臨床腫瘍学会

 KRASG12C阻害薬sotorasibは非小細胞肺がん(NSCLC)の第I相試験で奏効率(ORR)32.2%、疾患コントロール率(DCR)奏効期間(DoR)10.9ヵ月、無増悪生存期間(PFS)6.3ヵ月という成績を示した。第18回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO VIrtual2021)では、初となる第II相試験の結果を静岡県立静岡がんセンターの高橋 利明氏が発表した。対象:KRAS p.G12C変異を有する既治療(3ライン以下)の局所進行または転移のあるNSCLC介入:sotorasib960mg/日、PDとなるまで投与評価項目:[主要評価項目」BICR評価の奏効率「副次評価項目]DoR、DCR、初回奏効までの期間(TTR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、安全性など[探索的研究]バイオマーカー 主な結果は以下のとおり。・11ヵ国から126例が登録され、124例が評価された(年齢中央値63.5歳、PS0~1)・プラチナ含有化学療法と免疫チェックポイント阻害薬の前治療を受けていた患者は81%であった。・追跡期間中央値12.2ヵ月のconfirmed ORRは37.7%、DCRは80.6%であった。・DoRは10.0ヵ月で、奏効者の43%が治療を継続していた。・PFSは6.8ヵ月であった。・全Gradeの治療関連有害事象(TRAE)は69.8% Grade3以上は19.8%、Grade5はなかった。

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がん臨床医は地方でこそ育つ! 長年の思いの転身と1年の成果【Oncologyインタビュー】第29回

2020年4月、肺がん診療を専門とする野上 尚之氏は長く務めた四国がんセンターを辞し、愛媛大学呼吸器内科の教授に着任した。新天地での挑戦を決意した背景には、医師になった時から抱えていた地域医療と後進育成への思いがあったという。エリア画像を拡大する―2020年、四国がんセンターから愛媛大学に移られました。転身の理由は?「地域医療をやらなければ」という長年の思いからです。私の生まれは岡山県の県北で、地方の医療事情の大変さを痛感して育ち、そこに関わりたいと思って医者になりました。しかし、卒業後は都市部の勤務が多く、地域医療への思いはいったん脇に置いてキャリアを積んできました。それが、2003年に愛媛県の四国がんセンターに赴任してから、地域医療の問題をなおさら痛感するようになったのです。そして、今治市医師会と愛媛大学の山口 修教授からのご支援があり、地域胸部疾患治療学講座を開講する機会を頂きました。―地域医療の問題とは、具体的にどんなものなのでしょうか?何より私の専門である呼吸器内科医が、全国的にも、愛媛県下でもあまりにも少ないのです。さらに県庁所在地である松山市に大病院と呼吸器内科専門医が集中し、東予と南予には数名しかいない状況でした。愛媛県は喫煙率が高く、肺気腫や肺がんなどの呼吸器疾患の患者さんが多いのですが、松山市外の患者さんは車で何時間もかけて専門医のいる病院へ通ってくるわけです。若い方は仕事を休み、高齢の方は付き添いも必要となり、あまりに負担が大きいと感じました。この地域に何とか呼吸器内科医を増やし、遠くから通院しなくても地域で呼吸器医療を完結させたい。50歳を超え、退職までの残された10年余りを長年の思いである地域医療と後進育成に使おうと思ったのです。良性呼吸器疾患や専門の胸部悪性腫瘍について、診断から治療・緩和ケアまでをサテライト施設である今治の地で完結するシステムをつくり、それを愛媛県下のほかの地域にも広げていく、という理想を持っています。―なぜ、愛媛県には呼吸器内科医が少ないのでしょうか?地方大学の共通の課題として、そもそも他府県出身の学生が多く、卒業後に地元に帰ってしまうという問題があります。また、地元の卒業生も県内外の都市部の医療機関に初期研修で出て、そのまま帰ってこないこともあります。これに加え、これまで呼吸器という領域が若い先生たちに人気がなかった、という点もあるでしょう。肺がんや重症肺炎、肺線維症など呼吸困難に苦しむ患者さんを診る機会が多かったり、かつての肺がんが非常に予後の悪いがんだったり…。そうした「苦しそうな患者さんを見るに忍びない」「自分がしてあげられることが少ない」「つらい死にたびたび立ち会わねばならない」といったイメージや一種の無力感から、専門として選んでもらいにくい、という面があったと思います。呼吸器内科・外科・腫瘍内科・放射線科による合同カンファレンス―呼吸器内科医を増やすため、具体的にどんなことをされているのでしょうか?私の役割は「“みこし”になること」だと思っています。あの大学にはあの先生がいてあんなことをやっているという、いわば看板・旗の役割です。「愛媛大学呼吸器内科ではこんなことをやっている」ということが目に見えないと興味を持ってもらえません。これまでも、愛媛大学呼吸器内科は、呼吸器内科医、いや内科医であれば皆が知っているだろう間質性肺炎のマーカーの開発など、立派な業績が多々あるのですが、奥ゆかしい性格ゆえ(笑)か、学内外であまりアピールしていませんでした。私は大した医者ではありませんが、機会あって四国がんセンターに長く務め、国際共同治験に関わった経験や全国の大学や施設の先生と共同研究をした経験があるので、そうしたことを発信し、呼吸器診療の可能性を学生や若い医師に伝え、この領域に明るい未来があることを知ってもらいたいのです。大学の授業では、肺がん診療を劇的に変えた免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬の治験の裏話を紹介するなど、呼吸器診療の歴史や現在に興味を持ってもらえるよう工夫しています。もはや呼吸器内科の治療は無力ではないし、皆を待っている愛媛の患者さんがたくさんいる、ということをしっかり伝えようと思っています。―学生や若手医師の反応はいかがですか?今年(2021年)4月には、5人が呼吸器内科を選択し、入局してくれます。例年1~2人でゼロの時もあった、と聞いているので画期的ではないですか? きっとこれまでの呼吸器内科の先生方の熱意や努力がやっと若い先生たちに伝わりだしたのだ、と思います。実習時、肺がん患者さんに新しい薬剤を投与して劇的に症状が改善する経験をし、呼吸器診療に興味を持ってくれた学生もいます。「肺がん診療は嫌いでしたが、こんなに効いてびっくりです」と言われました。呼吸器疾患の半分は肺がんですから、勉強のしがいもあるでしょう。肺がんは治療の進歩が非常に速く、ここ20年ほどで診療方法も治療も、寿命さえも様変わりしました。そうした部分を的確に伝えれば興味を持ってくれる人がいる。まだ私が就任して1年弱ですが、やるべきことの方向は間違っていない、という手応えがあります。5人入局を10年続ければ、50人の呼吸器内科医が生まれます。夢みたいですが、それだけいれば、県内のあちこちに専門医を派遣し、どこでも呼吸器内科診療を完結できるようになるでしょう。それが今の私の大きな夢です。ポリクリ学生向けの座学講座の様子―若手医師が都市部を目指す理由として「地方では専門的な医療が学べない」という点があるのではないでしょうか。実は、呼吸器診療においては、「都会でないと学べない」といった新しい治療法や技術というものはなくなってきています。この点は他科の先生ともよく話をするのですが、呼吸器内科にかかわらず、すべての内科系の領域でそうした傾向です。がん診療に限っても、治験は日本中のどの施設でも参加できますし、本学には内視鏡技術に優れた先生もいます。肺がんは診療ガイドラインがしっかりできてきたので、遺伝子変異を特定してそれに合った薬を処方する、という基本診療の流れは、地方でもまったく問題なく行えます。よほど特殊な専門を目指すのでない限り、地方にいるハンデはないですし、むしろ都市部のがんセンターなどよりも、臨床に即した多様な症例を診られると思います。―若手医師にどんなキャリアパスを勧めているのでしょうか。まずは呼吸器疾患全般を診るスキルを身に付けるため、県内の呼吸器専門医のいる施設で研修をします。その後、希望に応じて専門性の高い施設にも行ってもらっています。気を付けているのは研修医や若い先生を孤立させないことです。必ず1施設に2人以上、指導環境の整った施設に派遣することがポイントだと思います。指導医も満足にいない施設に1人で派遣され、疲弊して辞めてしまう若手医師を今まで多く見てきました。「今困っているんだから、早く人を派遣してくれ!」と言われることもあるのですが(笑)、若手は派遣する施設と人数を集約し、チームで育てる。それも愛媛県全体で大切に育てる意識でいます。「人は城で、人は財産」という強い意識が、指導側の人間が少ない今だからこそ、大切だと思います。研修修了後は、個々人の希望に合わせた施設で専門性を磨いてほしいと思います。免疫学のこの先生、国立がん研究センターのこの先生に学びたい、といった希望があれば、私がつなぐこともできます。かつて大学が医局員を外部施設に出すことを嫌がる風潮もありましたが、もはや今はそんな時代ではないですよ。どんどん外に出てスキルアップし、いずれ学びを大学に還元してもらえればいいと思っています。第二内科に入局した先生たちと(前列左端は山口 修教授)―若手医師を引き付け、育てるポイントは何でしょうか?それがあるなら私が知りたいです(笑)。実際、島根大学の礒部 威教授に若手の勧誘と育成について聞きに行ったことがありますが、「こつなんてないよ」と笑われてしまいました。でも、礒部先生のお人柄と共に、同大には津端 由佳里先生という素晴らしい女性講師の方がいらして女性の入局者も多い。そうした若手の憧れとなるロールモデルの存在・育成がとても大切なのだろうと感じました。若手には目の前の診療技術を身に付けると同時に「3~5年先の未来も一緒に見よう」と言っています。具体的には国際共同治験に参加し、最新の治療や研究に関わる機会をつくっています。新型コロナの影響で勉強会や学会もオンライン化が進み、地方からの発信が容易になった面もあると思います。愛媛大では以前からオンラインで授業やカンファレンスを行っていますし、画像診断なども地域の施設とオンライン相談を行っています。―あらためて、呼吸器内科という専門の魅力とは?今では1年目が1人当直なんてあり得ないでしょうが、私の時代では普通でした。地方の病院で1人当直をしていた時、喘息の患者さんが救急車で来院し、チアノーゼを起こしていて本当に危ない状態でした。今でも普通に行われているステロイド点滴静注をしたところ、瞬く間に症状が改善したのです。「医師として人を助けることができた。1年目のこんな自分でも人の役に立てる」と実感した体験でした。喘息は吸入治療薬が進歩して重症な患者さんは減ってきているので、今であれば肺がん患者さんかもしれません。新しい治療が続々出て、以前なら助けられなかった患者さんを助けられるようになっています。若手もそうした劇的に変わる治療の最前線に立てる、未来の医療を変える一助になると実感できる。それがこの専門の魅力ではないでしょうか。

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NSCLC1次治療、ペムブロリズマブへのイピリムマブ上乗せは効果示せず/JCO

 PD-1阻害薬のニボルマブでは、CTLA-4阻害薬イピリムマブとの併用で非小細胞肺がん(NSCLC)1次治療の有効性の向上を示している。同じくPD-1阻害薬であるペムブロリズマブにおいても、イピリムマブを追加することで有効性が改善するのか。PD-L1(TPS)50%以上のNSCLC集団において、ペンブロリズマブとイピリムマブの併用とペムブロリズマブ単剤を比較した第III相KEYNOTE-598試験の結果が、Journal of Clinical Oncology誌2021年1月29日号で発表された。対象:TPS≧50%の転移のあるNSCLC試験群:ペムブロリズマブ200mg/日 3週ごと̟+イピリムマブ1mg/kg 6週ごと 18サイクルまで(P+I群)対照群:ペムブロリズマブ200mg/日 3週ごと+プラセボ 6週ごと 18サイクルまで(P群)評価項目:無増悪生存期間(PFS) 主な結果は以下のとおり。・各群に284例が無作為に割付けられた・P+I群の0S中央値は21.4カ月、P群は21.9カ月であった(HR:1.08、95%CI:0.85~1.37、p=20.74)。・P+I群のPFS中央値はP+I群8.4ヵ月、P群は8.4ヵ月であった(HR:1.06、95%CI:0.86~1.30. p=0.72)。・ Grade3~5の有害事象発現はP+I群62.4%、P群50.2%であった。 ペムブロリズマブへのイピリムマブの追加は、有効性を改善せず、有害事象はペムブロリズマブ単剤より頻度が高い結果となった。

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cemiplimab単独療法、PD-L1≧50%進行NSCLCのOSとPFSを延長/Lancet

 未治療のプログラム細胞死リガンド1(PD-L1)発現率≧50%の進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者の治療において、cemiplimab単剤療法はプラチナ製剤ベースの2剤併用化学療法と比較して、全生存(OS)期間および無増悪生存(PFS)期間を有意に延長し、1次治療の新たな選択肢となる可能性があることが、トルコ・バシケント大学のAhmet Sezer氏らが行った「EMPOWER-Lung 1試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2021年2月13日号に掲載された。cemiplimabは、PD-1に直接的に作用する強力な完全ヒト・ヒンジ安定化IgG4モノクローナル抗体。根治的手術や根治的放射線治療が適応とならない転移を有する/局所進行皮膚有棘細胞がんの治療薬として米国などで承認されており、進行固形腫瘍では他のPD-1阻害薬と同程度の抗腫瘍活性と安全性プロファイルが確認されている。24ヵ国138施設の無作為化第III相試験 研究グループは、進行NSCLCの1次治療におけるcemiplimabの有用性を評価する目的で、国際的な非盲検無作為化対照比較第III相試験を実施した(Regeneron PharmaceuticalsとSanofiの助成による)。2017年6月~2020年2月の期間に、24ヵ国138施設で患者登録が行われた。 対象は、年齢18歳以上、組織学的または細胞学的にStageIIIB/IIIC/IVのNSCLCと確定され、全身状態(ECOG PS)が0/1の患者であった。生涯非喫煙者は除外された。 被験者は、cemiplimab(350mg、3週ごと)またはプラチナ製剤ベース2剤併用化学療法薬の投与を受ける群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。化学療法群の患者は、病勢進行後にcemiplimabへのクロスオーバーが許容された。 主要エンドポイントは、マスクされた独立審査委員会の評価によるOS期間およびPFS期間とし、intention-to-treat(ITT)集団および米国食品医薬品局(FDA)の要請で事前に規定されたPD-L1発現率≧50%の集団で評価された。有害事象の評価は、少なくとも1回の投与を受けたすべての患者で行われた。死亡リスクが43%低減、2年OS率は50% 710例(ITT集団)が登録され、cemiplimab群に356例(年齢中央値63歳、女性12%)、化学療法群には354例(64歳、17%)が割り付けられた。このうちPD-L1発現率≧50%の患者は563例で、cemiplimab群283例(63歳、12%)、化学療法群280例(64歳、18%)だった。化学療法群の病勢進行例は203例で、このうち150例(74%)がクロスオーバーとしてcemiplimabの投与を受けた。 PD-L1発現率≧50%の集団におけるOS期間中央値は、cemiplimab群が未到達(95%信頼区間[CI]:17.9~評価不能)、化学療法群は14.2ヵ月(11.2~17.5)であり、ハザード比(HR)は0.57(0.42~0.77)と、cemiplimab群で有意に良好であった(p=0.0002)。また、2年OS率は、cemiplimab群50%(36~63)、化学療法群27%(14~43)だった。 同集団のPFS期間中央値は、cemiplimab群が8.2ヵ月(95%CI:6.1~8.8)と、化学療法群の5.7ヵ月(4.5~6.2)に比べ有意に延長した(HR:0.54、95%CI:0.43~0.68、p<0.0001)。また、1年PFS率は、cemiplimab群41%(34~48)、化学療法群7%(4~12)だった。 同集団の客観的奏効率は、cemiplimab群が39%(111/283例、CR:6例[2%]、PR:105例[37%])、化学療法群は20%(57/280例、3例[1%]、54例[19%])であり(オッズ比[OR]:2.53、95%CI:1.74~3.69、p<0.0001)、奏効期間中央値はそれぞれ16.7ヵ月および6.0ヵ月であった。 一方、ITT集団でも、高いクロスオーバー率(74%)にもかかわらず、OS期間中央値(22.1ヵ月[95%CI:17.7~評価不能]vs.14.3ヵ月[11.7~19.2]、HR:0.68[95%CI:0.53~0.87]、p=0.0022)およびPFS期間中央値(6.2ヵ月[4.5~8.3]vs.5.6ヵ月[4.5~6.1]、0.59[0.49~0.72]、p<0.0001)は、いずれもcemiplimab群で有意に良好であった。 治験薬投与中に発現したGrade3/4の有害事象は、cemiplimab群が28%(98/355例)、化学療法群は39%(135/342例)で認められ、cemiplimab群では肺炎(16例[5%])、貧血(12例[3%])、低ナトリウム血症(9例[3%])の頻度が高く、化学療法群では貧血(56例[16%])、好中球減少(35例[10%])、血小板減少(28例[8%])が高頻度にみられた。 著者は、「探索的解析では、PD-L1発現の増加と良好な転帰に相関が認められ、有効性の腫瘍バイオマーカーとしてのPD-L1のエビデンスがもたらされた」としている。

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肺がん2020 Wrap Up【肺がんインタビュー】 第59回

第59回 肺がん2020 Wrap Up出演:兵庫県立がんセンター 副院長(医療連携・医療情報担当) 兼 ゲノム医療・臨床試験センター長 呼吸器内科部長 里内 美弥子氏2020年肺がんの重要トピックを兵庫県立がんセンターの里内 美弥子氏が、一挙に解説。これだけ見ておけば、今年の肺がん研究の要点がわかる。

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ニボルマブ+カボザンチニブの進行腎がん1次治療、持続的な効果示す(CheckMate-9ER)/BMS

 ブリストル マイヤーズ スクイブとExelixisは、2021年2月8日、ピボタルな第III相CheckMate-9ER試験の新たな解析の結果を発表した。同解析では、進行腎細胞がん(RCC)の1次治療において、ニボルマブ(商品名:オプジーボ)とカボザンチニブ(商品名:カボメティクス)の併用療法が、スニチニブと比較して、臨床的に意義のある持続的な有効性ベネフィットおよび生活の質の改善を示した。これらのデータは米国臨床腫瘍学会(ASCO)2021年泌尿器がんシンポジウムにおいて発表された。 中央値2年間(23.5ヵ月)の追跡調査において、ニボルマブとカボザンチニブの併用療法は、スニチニブと比較して引き続き良好な無増悪生存期間(PFS)、奏効率(ORR)および全生存期間(OS)を示し、投与の中止につながる治療に関連する有害事象(TRAE)の発現率は低かった。追跡調査において、新たな安全性シグナルは認められなかった。全患者集団の結果は以下のとおり。・試験の主要評価項目であるPFS中央値は併用療法群17.0ヵ月、スニチニブ群8.3ヵ月であった(HR:0.52、95%I:0.43~0.64)。・ORRは併用療法54.8%、スニチニブ群 28.4%であった。・併用療法はスニチニブと比較し引き続きOSの改善を示した(HR:0.66、95%CI:0.50 ~0.87)。・病勢コントロール率は、併用療法群88.2%、スニチニブ群69.9%であった。・TRAEによる投与中止率は、併用療法群6.6%、ニボルマブのみで9.7%、カボザンチニブのみで7.2%であった。・肉腫様型の患者75例の探索的サブグループ解析において、ニボルマブとカボザンチニブの併用療法は、スニチニブと比較して死亡リスクを64%低減し(HR:0.36、95%CI:0.17~0.79)、良好なPFS(10.3ヵ月 vs.4.2ヵ月)およびORR(55.9% vs.22.0%)を示した。

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ニボルマブの尿路上皮がんアジュバント、DFS改善(CheckMate-274)/BMS

 ブリストル マイヤーズ スクイブは、2021年2月8日、第III相CheckMate-274試験の結果を発表。本試験において、ニボルマブ(商品名:オプジーボ)は、切除後の高リスク筋層浸潤性尿路上皮がんの全無作為化患者およびPD-L1 1%以上の患者のサブグループを対象に、術後補助療法として、有意に無病生存期間(DFS)を改善し、本試験の2つの主要評価項目の両方を達成した。 CheckMate-274試験は、筋層浸潤性尿路上皮がんの術後補助段階において免疫療法薬を評価した初めての肯定的な結果を示した第III相試験。全無作為化患者における無病生存期間中央値は、プラセボ群の10.9カ月に対し、ニボルマブ群で21.0カ月で、再発リスクを30%低減した(ハザード比[HR]0.70、98.31% 信頼区間[CI]:0.54〜0.89、p<0.001)。PD-L1 1%以上の患者におけるDFS中央値はニボルマブ群未達、プラセボ群10.8カ月であった(HR:0.53、98.87% CI:0.34〜0.84、p<0.001)。これらのデータは、バーチャルで開催される米国臨床腫瘍学会泌尿器がんシンポジウムにおいて、発表された。 全無作為化患者における非尿路上皮無再発生存期間(NUTRFS)中央値は、ニボルマブ群で24.6カ月、プラセボ群で13.7カ月であった。(HR 0.72、95% CI:0.58 - 0.89)。PD-L1 1%以上の患者におけるNUTRFS中央値は、ニボルマブ群で未達、プラセボ群で10.9カ月であった(HR 0.54、95% CI:0.38 - 0.77)。 ニボルマブの安全性プロファイルは、これまでに固形がんの試験で報告されたものと一貫していた。治療関連有害事象(TRAE)の発現率は、ニボルマブ群で77.5%、プラセボ群で55.5%であり、Grade3~4のTRAEの発現率は、それぞれ17.9%および7.2%であった。

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ASCO- GI 2021 会員レポート

レポーター紹介2021年1月15日~17日にかけてASCO-GI2021が行われた。例年、サンフランシスコで行われているシンポジウムであったが、今年は新型コロナウイルスの影響でvirtual開催となった。総論的にはPractice changingな発表はなかったものの、ASCO2020やESMO2020で発表された重要データのfollow upがなされ、evidenceがさらに補強されたように感じた。食道がん2020年は食道がんにとってpractice changingなデータが発表された年であった。1つはStage II/IIIに対する術前治療としてのCisplatin+5-FU (CF)+radiation、その後のadjuvantとしてのnivolumabの有効性を証明したCheckMate-577試験である。ASCO-GI 2021 においては、nivolumabによるadjuvantがQoLの低下を招かないことが示された(abstract#167)。Stage II/III食道がんに対する術前治療として欧米ではCF+radiationによる術前化学放射線治療が標準的であるのに対し、本邦においてはCFが標準治療である。しかし奏効率は40%と術前補助化学療法としては物足りない数字であり、すでに先鋭的な施設ではdocetaxelを加えた3剤療法であるDCFを、いわばcommunity standardとして用いている現状がある。Stage II/III食道がんに対する術前治療として果たしてDCFはCFよりも優れた治療なのか、またCF+radiationはどうなのか?という食道がんを診ている医療関係者が持つclinical questionに結論を出すべく行われてきたのが「JCOG 1109(NExT)試験」である。主要評価項目の解析は2023年に予定されているが、今回のASCO-GIでは安全性部分だけが先んじて報告された(abstract#162)。2012年12月~2018年7月に、601例が無作為化された(CF/DCF/CF-RT;199/202/200)。対象患者589例のうち、546例が手術を受けた(185/183/178)。CF-RTを受けた患者のリンパ節摘出数の中央値は、CFを受けた患者よりも有意に低く(49 vs.58、 p<0.0001)、DCFを受けた患者におけるgrade2の周術期合併症の発生率は、CFを受けた患者よりも低いという結果であった(44.8% vs.56.2%、p=0.036)。DCFおよびCF-RTを受けた患者の再手術および院内死亡の発生率はCFを受けた患者と差がなかったものの、CF-RTを受けた患者におけるグレード2の乳糜胸の発生率は、CFを受けた患者よりも高いという結果であった(5.1% vs.1.1%、p=0.032)。上述のようにstage II/III食道がんに対する術前治療として、本邦でstandardと言い切れないCF-RTを行ってnivolumabを投与するCheckMate-577をただちに日常診療に外挿すべきか、はたまたDCFを使用して良いものか、大変に混沌とした状況であり、JCOG1109試験で決着がつくことを期待したい。昨年発表されたもう一つの最重要な試験として、切除不能進行再発食道がんの1次治療としてFPに対するpembrolizumabの上乗せ効果を証明したKEYNOTE-590試験がある。今回のASCO-GIでCF+pembrolizumab群がCF群と比較して差がなかったというQoLデータが報告された(abstract#168)が、前述のabstract#167同様にpembrolizumabによる治療効果や毒性はQoLの違いには反映されなかったという結果であった。本邦における1日も早い1st lineでの承認が待たれる。現在2次治療として使用可能なnivolumabについてはATTRACTION-03試験(abstract#204)や前相試験であるATTRACTION-01試験(abstract#207)のそれぞれ3年、5年のfollow up dataが報告され、過去に報告された胃がん同様に奏効例で長期生存が得られることが示された。またATTRACTION-01試験における5年の無増悪生存割合が6.8%という驚くべき数字が報告され、いわゆるtail plateauが実証された形となった。このラインに対する注目される新たな治療開発としては2次治療におけるcamrelizumab(抗PD-1抗体)/apatinib(VEGFR-2を含むmulti kinase inhibitor)phase II試験を取り上げたい(abstract#215)。1次治療に不応となった食道扁平上皮がん46例に対して主要評価項目をORRとして治験治療が行われた。評価対象となった30例のORRは43.3%、median PFSは 4.07ヵ月(95%CI、3.75-NA)、3、6、9ヵ月時点での生存割合は82.2%、67.6%、61.5%であった。ICI+αが現在のトレンドであるが、1st lineからICIが使用可能な状況となる今後の開発の行方に注目が集まる。胃がん今年のASCO-GIの目玉の一つが、FGFR2bに対する抗体であるbemarituzumabの有効性を探索したphaseII試験(FIGHT)である(abstract#160)。学会前にすでにpositive resultとのプレスリリースがなされておりその結果に注目が集まっていた。FIGHT試験では、FGFR2b陽性の切除不能な局所進行性転移性胃もしくは胃食道接合部がん155例を、bemarituzumab+mFOLFOX6とplacebo+mFOLFOX6に無作為に割り付けた。主要評価項目はPFSであった。結果、bemarituzumab群はplacebo群と比較して、PFSを有意に延長することが示された(9.5ヵ月[ 95%CI:7.3~12.9] vs.7.4ヵ月[95% CI:5.8~8.4]、HR:0.68[95% CI:0.44~1.04、p=0.0727])。副次的評価項目であるORRは47% vs.37%であった。またOSについてはNR (95% CI:13.8~NR)vs. 12.9ヵ月(95% CI:9.1~15.0)であり、 p=0.0268、HR0.58 (95%CI:0.35-0.95)とbemarituzumab群で統計学的に有意に良好であったことは、過去の胃がんのphaseII試験を振り返ってみても特筆すべきである。またFGFR2bの免疫染色での強さ(IHC intensity)とbemarituzumabの治療効果が相関することも示された。注意すべき有害事象としては角膜障害と胃炎が報告された。以上のように期待の持てる結果であるが、ICIが1st lineの標準治療となる今後の開発をどうするか。さらには胃がんにおいてphaseIIで有望であった薬剤の多くがphaseIIIで成功できなかった過去がある。FGFR2bによる患者選択のassayとしてIHCが良さそうに見える結果ではあるが個人的には同じくligandを有する受容体型チロシンキナーゼであるMETに対する開発を思い出してしまう。今後の動向に注目したい。胃がんにとっても2020年は重要なデータ報告が相次いだ1年であった。特に1st lineからのICI使用を決定づけるCheckMate-648試験の結果は重要であり、胃がんに対するICI治療開発は多剤との併用にて加熱していくであろう。こういう状況下、nivolumab単剤での大規模なバイオマーカー探索を行ったJACCRO GC-08(DELIVER)試験の価値は日に日に大きくなっている。今回、本試験の目玉であるmicrobiomeに関するデータの一部が公表された(abstract#161)。training cohortおよびvalidation cohortにでは、それぞれ200例中188例、301例中257例で大規模なメタゲノム解析および臨床データが利用可能であった。nivolumab治療を行いnon-PDであった症例ではPDであった症例と比較して、より多様なmicrobiomeが観察された。今回の解析ではKEGG pathwayにて上皮細胞の細菌浸潤がnivolumabの臨床転帰(初回評価でのPD)と関連していることが示され(training cohort[p=0.057]、validation cohort[p=0.014])、探索的解析により、両コホートにおいて、OdoribacterおよびVeillonellaがNivoに対する腫瘍反応と関連していることが示された。本試験では血液検体の採取も行われており、胃がんに対するnivolumabのバイオマーカーが今後の解析でより詳細に解明されることが期待される。ICIの開発は化学療法との併用から、分子標的薬や他のICI製剤などへの併用へと興味が移っている。LEAP005試験はpembrolizumabとmulti-tyrosine kinase inhibitorであるlenvatinibとの併用を複数のがん種コホートで検討したphase II試験である。胃がんコホートでは少なくとも2種類の前治療歴を有する症例が適格であった。ORRを主要評価項目としてlenvatinib 20mg 1日1回投与とpembrolizumab 200mg Q3W投与を、最大35サイクル(約2年間)投与するスケジュールで行われた。31例が登録され1例のCRを含む奏効例は3例でありORRは10%(95%CI:2~26)でDCRは48%(95%CI:30~67)であった。PFS中央値は2.5ヵ月(95%CI:1.8~4.2)。OS中央値は5.9ヵ月(95%CI:2.6~8.7)であった。28例(90%)に治療関連AEが発生し、そのうち13例(42%)にグレード3~5のAEが発生した。このpembrolizumab-lenvatinibの併用はLEAP試験として胃がんを含めさまざまながん種で展開されていく予定である。今年のASCO-GI2021で最も個人的に物議を醸しているのがstage III胃がんに対する術後補助化学療法としてのdocetaxel+S-1(DS) vs.S-1を検証したJACCRO-GC07試験のupdate報告である(abstract#159)。本試験は中間解析にてdocetaxel+S-1がS-1に対する優越性が証明できたため有効中止となっていた(Yoshida K et al. J Clin Oncol. 2019;37:1296-1304.)。その結果、DSはstage III胃がんに対する標準治療と位置付けられている。今回は試験計画通り最終登録後3年経過した時点でのRFS(relapse free survival)の解析を行ったものである。Stage III全体での解析では3年RFSにおいてDS群の67.7%がS-1群の57.4%を有意に上回った(HR:0.715、95%CI:0.587~0.871、p=0.0008)。3y年OSにおいてもDS群が77.7%、S-1群が71.2%(HR:0.742、95%CI:0.596~0.925、p=0.0076)であった。興味深いのはここからである。Stage IIIA, IIIB, IIICの3年RFSでサブグループ解析を行ったところ、Stage IIIAおよびIIICは全体集団を反映し有意にDSが勝る結果であり無再発生存曲線も一貫して開いていたが、Stage IIIBではDS群とS-1群では3年時点のRFSでこそわずかにDSが高く見えるが(66.14% vs. 61.61%)、見た目の生存曲線がほぼ重なるという現象がみられ(HR:0.881、95%CI:0.629~1.234、p=0.46)、さらにOSでは逆転したかのように見える (3年RFS:73.09% vs.77.23%、HR:0.988、95%CI:0.68~1.434、p=0.95)。サブグループ解析であり、これがDSの優越性を否定するものではないが、現時点でこの現象に対する合理的な説明はなされておらず、さらなる研究が必要である。大腸がん抗VEGF抗体や抗EGFR抗体の登場により、飛躍的に生存期間が延長した大腸がんであるが、これら薬剤の登場から10年が経過し、大きく治療体系が変わるほどの治療法の登場はないものの後方ラインの充実によって少しずつ生存期間を伸ばしてきた。こうした中、2020年大腸がんで発表されたpractice changingなデータといえばKEYNOTE-177であろう(Andre T, et al. N Engl J Med. 2020;383:2207-2218.)。未治療のMSI-H大腸がんに対するpembrolizumabが標準的な化学療法よりも有意にPFSを延長しQoLを維持することが報告され、本邦でも承認を待っている状況である。今年のASCOでは追加解析としてPFS2(無作為化から次の治療ラインでの進行または死因のいずれかに該当するまでの時間)のデータが報告された(abstract#6)。32.4ヵ月(24.0~48.3ヵ月)の追跡期間にてPFS2はpembrolizumabのほうが長い傾向にあることが示された(中央値未到達 vs.23.5ヵ月[HR 0.63;95%CI:0.45~0.88])。本試験は化学療法群のIIT症例のうち59%が後治療としてICIを受けている(crossover)が、ICIを1st lineで使用することの意義が改めて示された。MSI-Hに対するICI治療として注目されるのが、nivolumabと抗CTLA-4抗体ipilimumabの併用療法である。非ランダム化マルチコホートphaseII試験であるCheckMate142の1st line cohortにおいて、nivolumab(3mg/kg)Q2W+low dose ipilimumab(1mg/kg)Q6Wというスケジュールでの高い治療効果(ORR 69%、24ヵ月PFS 74%、24ヵ月OS 79%)が報告されてきた。今回そのupdateとしてさまざまなサブグループでの治療成績が報告された(abstract#58)。KEYNOTE-177試験のサブグループ解析においてpembrolizumabはKRAS mutation、PS-1を苦手とする結果であったが、nivolumab+low dose ipilimumabではそのような傾向は見られなかった。どういった対象で最もこの併用療法のbenefitがあるのかが明らかになれば、今後のICI単剤もしくは併用の使い分けにおいて重要である。胃がんの項でも触れたLEAP005試験の大腸がんコホートのデータも報告された(abstract#94)。2次治療に不応となったMSS大腸がん32例がpembrolizumab-lenvatinibによる治療を受けた(年齢中央値56歳[範囲36~77歳]、男性81%、3L 91%)。初回投与からデータカットオフ(2020年4月10日)までの追跡中央値は10.6ヵ月(範囲5.9~13.1)。主要評価項目であるORRは22%(95%CI:9~40)、DCRは47%(95%CI:29~65)であった。中央値で見るとPFS、OSは2.3ヵ月(95%CI:2.0~5.2)、7.5ヵ月(95%CI:3.9~NR)であったがDuration of responseは中央値未到達であり、いったん奏効すればその効果は長期持続する傾向がうかがえた。これまであまり有望なICI治療がなかったMSS大腸がんであるが、すでにICIが承認されているLEAP005胃がんコホートと比較しても期待の持てるデータに思えた。以上、数ある今年の発表の中から、小生の独断と偏見で選んだ注目演題をレポートした。2020年ASCOやESMOでも感じたが、virtual meetingは日本にいながらにしてon timeで情報が得られるメリットがある一方で、日常診療と並行して参加しなければならないというデメリットがある。こうしたvirtual meetingがnew normalなのかもしれないが、旧人類的な小生は従来のように海外に長期出張して参加するという、日常とは空間的、時間的に隔離された条件で新しい情報に没頭するという環境を懐かしく思うし、そもそも学会とはそういうものであるべきだと考えている。ワクチン摂取によって集団免疫が獲得され、コロナが収束し、皆さんとrealにお会いして自由にdiscussionできるようになる日が1日でも早く来ることを願ってやまない。それまで元気でいましょうね!

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悪性胸膜中皮腫の1次治療、ニボルマブ+イピリムマブがOS改善/Lancet

 未治療の切除不能な悪性胸膜中皮腫(MPM)の治療において、ニボルマブ+イピリムマブ療法は標準的化学療法と比較して、全生存(OS)期間を4ヵ月延長し、安全性プロファイルは同程度であることが、オランダ・ライデン大学医療センターのPaul Baas氏らが行った「CheckMate 743試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2021年1月30日号で報告された。MPMの承認済みの全身化学療法レジメンは、生存に関する有益性は中等度であり、転帰は不良だという。ニボルマブ+イピリムマブ療法は、非小細胞肺がんの1次治療を含む他の腫瘍で臨床的有益性が示されている。日本を含む21ヵ国103施設が参加する無作為化第III相試験 本研究は、ニボルマブ+イピリムマブ療法はMPMのOSを改善するとの仮説の検証を目的とする非盲検無作為化第III相試験であり、2016年11月~2018年4月の期間に、日本を含む21ヵ国103施設で患者登録が実施された(Bristol Myers Squibbの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、未治療の組織学的に確定された切除不能MPMで、全身状態(ECOG PS)が0/1の患者であった。 被験者は、ニボルマブ(3mg/kg、2週ごと、静脈内投与)+イピリムマブ(1mg/kg、6週ごと、静脈内投与)を投与する群(最長2年間)、またはプラチナ製剤(シスプラチン[75mg/m2、静脈内投与]またはカルボプラチン[AUC=5mg/mL/分、静脈内投与])+ペメトレキセド(500mg/m2、静脈内投与)を3週ごとに投与する群(最大6サイクル)(化学療法群)に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要評価項目はOS期間(無作為化から全死因死亡の日まで)とした。副次評価項目は、無増悪生存(PFS)期間、客観的奏効率、奏効期間などであった。安全性の評価は、少なくとも1回の投与を受けた全患者で行った。PFS期間、客観的奏効率は同程度 605例が登録され、ニボルマブ+イピリムマブ群に303例、化学療法群には302例が割り付けられた。全体の年齢中央値は69歳(IQR:64~75)、467例(77%)が男性であった。また、456例(75%)が上皮型MPMだった。 事前に規定された中間解析(データベースロック日:2020年4月3日、フォローアップ期間中央値:29.7ヵ月[IQR:26.7~32.9])では、OS期間中央値は、ニボルマブ+イピリムマブ群が18.1ヵ月(95%信頼区間[CI]:16.8~21.4)と、化学療法群の14.1ヵ月(12.4~16.2)と比較して有意に延長した(ハザード比[HR]:0.74、96.6%CI:0.60~0.91、p=0.0020)。また、1年OS率は、ニボルマブ+イピリムマブ群が68%(95%CI:62.3~72.8)、化学療法群は58%(51.7~63.2)であり、2年OS率はそれぞれ41%(35.1~46.5)および27%(21.9~32.4)だった。 シスプラチン(13.7ヵ月)とカルボプラチン(15.0ヵ月)で、OS期間中央値に差はみられなかった。また、OS期間のHR(化学療法群との比較)は、非上皮型(0.46、95%CI:0.31~0.68)が上皮型(0.86、0.69~1.08)よりも良好であったが、OS期間中央値(非上皮型18.1ヵ月vs.上皮型18.7ヵ月)には組織型の違いによる差はなかった。 PFS期間中央値は両群でほぼ同等であった(ニボルマブ+イピリムマブ群6.8ヵ月、化学療法群7.2ヵ月、HR:1.00、95%CI:0.82~1.21)が、2年PFS率はニボルマブ+イピリムマブ群で高かった(16% vs.7%)。 客観的奏効率は、ニボルマブ+イピリムマブ群が40%、化学療法群は43%であり、ニボルマブ+イピリムマブ群で完全奏効(CR)が5例(2%)に認められた。病勢コントロール率(CR+部分奏効[PR]+安定[SD])は、ニボルマブ+イピリムマブ群が77%、化学療法群は85%で、奏効までの期間中央値はそれぞれ2.7ヵ月および2.5ヵ月であった。また、奏効期間中央値は、それぞれ11.0ヵ月および6.7ヵ月だった。 Grade3/4の有害事象は、ニボルマブ+イピリムマブ群が30%(91/300例)、化学療法群は32%(91/284例)で報告された。治療関連死は、ニボルマブ+イピリムマブ群が3例(1%、肺臓炎、脳炎、心不全)、化学療法群は1例(<1%、骨髄抑制)で発現した。 著者は、「これらの知見は、未治療の切除不能MPMの治療における、画期的医薬品(first-in-class)とされるニボルマブ+イピリムマブ療法の使用を支持するものである」としている。これらの結果に基づき、このレジメンは2020年10月、米国食品医薬品局(FDA)により承認された。

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バーチャル開催のJSMO2021、注目演題を発表/日本臨床腫瘍学会

 2021年2月18日(木)~21日(日)、第18回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2021)が完全バーチャル形式で開催される。これに先立ち、プレスセミナーが開催され、今回のJSMO2021の取り組みや注目演題等が発表された。JSMO2021のテーマは「Evolving Treatment Paradigms for Precision Oncology」 この中で、会長を務める西尾 和人氏(近畿大学医学部ゲノム生物学教室 教授)が学会の概要を説明。昨年夏にいち早く完全バーチャル形式での開催を決めたJSMO2021は、例年より長めの日程となり、海外演者も数多く登壇予定だ。「朝は7時から夜は23時まで多くの演題を用意し、勤務のある方でも参加しやすくした」(西尾氏)。 JSMO2021のテーマは「Evolving Treatment Paradigms for Precision Oncology」で、2019年にがん遺伝子パネル検査が保険収載となってから1年半あまりで、がんの臨床現場を大きく変えたゲノム医療についてリアルワールドデータやアジア各国のとの協働研究の結果が報告される。また、15の学術部会による教育シンポジウムや患者支援企画、国際学会としてASCO(米国腫瘍学会)やESMO(欧州腫瘍学会)とのジョイントセミナーや少人数で各国の腫瘍内科医とディスカッションする「Meet the Experts」も多数設けられた。その他の注力テーマとしては「COVID-19流行下におけるがん診療」と、リキッドバイオプシーや人工知能(AI)の臨床応用といった「新しいテクノロジーにおけるがん医療の変革」が設定され、いずれも複数のセッションが予定されている。 続けて、中川 和彦氏(近畿大学医学部内科学教室 教授)が、JSMO2021における900題にのぼる一般演題の中で、とくに注目される3つのPresidential Sessionについて、詳細を解説した。Presidential Session 12月19日(金) 14:00~15:55 「免疫チェックポイント阻害剤の治療開発」1)進行食道がんに対するペムブロリズマブ+化学療法 KEYNOTE-590:原 浩樹氏(埼玉県立がんセンター)2)MSI-high/dMMR の転移のある大腸がんに対するペムブロリズマブvs.化学療法KEYNOTE-177:吉野 孝之氏(国立がん研究センター東病院)3)進行非扁平上皮非小細胞肺がんに対するニボルマブ+プラチナ化学療法+ベバシズマブ 日本人サブ解析:樋田 豊明氏(愛知県がんセンター)4)肺肉腫に対する2つの抗PD-1抗体(ニボルマブとペムブロリズマブ):板橋 耕太氏(国立がん研究センター中央病院)5)R/R AML患者におけるAMG330:Farhad Ravandi氏(米MDアンダーソンがんセンター)Presidential Session 22月20日(土) 15:30~15:35 「分子標的治療と殺細胞性抗がん剤治療」1)術後ハイリスク頭頸部がんに対する化学療法 :田原 信氏(国立がん研究センター東病院)2)EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんに対するベバシズマブ+エルロチニブ OSとctDNA解析:福原 達朗氏(宮城県立がんセンター)3)HER2陽性進行乳がんへのペルツズマブ再投与:遠山 竜也氏(名古屋市立大学)4)再発または転移のある子宮頸がんに対するtisotumab:Robert L. Coleman氏(米国立がん研究所)5)進行大腸がんにおけるAMG510:久保木 恭利氏(国立がん研究センター東病院)Presidential Session 32月21日(日) 14:50~16:50 「ゲノム医療と希少がん」1)進行胃がんにおけるctDNAによる遺伝子異常 SCRUM-Japan MONSTAR SCREEN:舛石 俊樹氏(愛知県がんセンター)2)泌尿生殖器がんにおけるctDNAによるゲノム解析:野々村 祝夫氏(大阪大学)3)日本におけるがんゲノム医療における初期エキスパートパネルのパフォーマンス:角南 久仁子氏(国立がん研究センター中央病院)4)原発不明がんに対するNGSを用いた遺伝子発現解析と遺伝子変異による原発巣推定に基づくSite-Specific Treatment:新井 誠人氏(千葉大学)5)小児がん患者における抗悪性腫瘍剤投与に伴う悪心・嘔吐予防としてのパロノセトロン:古賀 友紀氏(九州大学) 19~21日には、その日に発表された演題の中から、とくに注目すべきものを識者が解説する「Highlight of the Day」(1時間)も予定されている。◆第18回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2021)ライブ配信:2021年2月18日(木)~21日(日)オンデマンド配信:2021年3月1日(月)~31日(水)

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