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イベニティ:骨吸収抑制作用と骨形成促進作用を併せ持つ骨粗鬆症治療薬

世界初の製造販売承認を取得イベニティは、骨形成促進作用を持つヒト化抗スクレロスチンモノクローナル抗体製剤であり、2019年1月、骨折の危険性の高い骨粗鬆症の治療薬として、世界に先駆けて日本で製造販売の承認を取得した。骨粗鬆症治療における課題骨粗鬆症による脆弱性骨折は、世界的に増加しており、高齢化の進展にともない今後も増え続けると予測されるが、骨粗鬆症の診断や治療は十分に普及していない。とくに骨折を起こした患者の多くが、診断や治療を受けていないと推測されている。適切な治療を受けなければ、これらの患者は将来、痛みをともない日常生活に支障を来す骨折のリスクが残る。イベニティのdual effectと簡便性スクレロスチンは骨細胞から分泌され、骨芽細胞による骨形成を抑制するとともに、破骨細胞による骨吸収を刺激する。イベニティは、スクレロスチンに結合してこれを阻害することで、骨形成促進と骨吸収抑制の両方の作用を発揮する(dual effect)。これにより、海綿骨と皮質骨の骨量が急速に増加して骨密度(BMD)が増加し、骨の構造と強度が向上して骨折リスクが低下すると考えられている。また、本薬の用法用量は、1ヵ月に1回210mg(シリンジ2本)、12ヵ月間皮下注と従来の骨形成促進薬と比較して簡便な点も特徴である。テリパラチドと比較して新規椎体骨折を有意に抑制イベニティの重要な第 III 相臨床試験として、FRAME試験、STRUCTURE試験、ARCH試験などが挙げられる。FRAME試験は、閉経後骨粗鬆症女性患者7,180例を対象にイベニティを12ヵ月間投与した後デノスマブを12ヵ月投与する群と、プラセボを12ヵ月投与した後デノスマブを12ヵ月投与する群を比較した。その結果、新規椎体骨折の発生率は、12ヵ月時(イベニティ群0.5% vs. プラセボ群の1.8%、p<0.001)および24ヵ月時(0.6% vs. 2.5%、p<0.001)のいずれにおいても、イベニティ群が有意に低かった。STRUCTURE試験は、ビスホスホネート薬による治療経験のある閉経後骨粗鬆症女性患者436例を対象に、イベニティを月1回投与する群と、テリパラチド1日1回12ヵ月間投与する群を比較した。その結果、大腿骨近位部の骨密度は、6ヵ月時(イベニティ群2.3% vs. テリパラチド群 -0.8%、p<0.001)および12ヵ月時(2.9% vs. -0.5%、p<0.001)のいずれにおいても、イベニティ群が有意に高かった。なお、骨折の危険性の高い閉経後骨粗鬆症患者を対象に、イベニティもしくはアレンドロネートを12ヵ月間投与した後、両群ともにアレンドロネートによる継続治療を行ったARCH試験では、12ヵ月時点の「重篤な心血管系有害事象」の発現率が、アレンドロネート単独群で1.9%、イベニティ群で2.5%と不均衡が認められている。そのため、イベニティの使用にあたっては、ベネフィットとリスクを十分に理解した上で、適応患者の選択が重要と考えられている。今後の骨粗鬆症診療への期待骨形成促進作用と骨吸収抑制作用のdual effectを特徴とする本薬の登場により、骨粗鬆症の治療は大きく変化することが予想されている。とくに骨折の既往のある骨粗鬆症の患者において、次の骨折を起こすリスクを軽減する可能性があり、期待を集めている。今後は、骨粗鬆症の最適な治療戦略を確立するために、イベニティ+デノスマブ維持療法など、さまざまなアプローチの検討が進められると考えられる。

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乾癬患者は甲状腺疾患のリスクが高い

 これまで、乾癬と甲状腺疾患との関連はよくわかっていなかった。乾癬患者では、甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症、甲状腺炎、バセドウ病および橋本病などの甲状腺疾患リスクの増加が認められると、台湾・輔仁大学のShu-Hui Wang氏らによるコホート研究で明らかになった。著者は、「乾癬患者が甲状腺疾患の症状を呈した場合は、内分泌科への紹介を考慮したほうがいいだろう」とまとめている。なお、研究の限界として乾癬患者の重症度のデータが不足していた点を挙げている。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2018年12月5日号掲載の報告。 研究グループは、乾癬患者における甲状腺疾患のリスクを検討する目的で、台湾の全民健康保険データベースを用い、乾癬および乾癬性関節炎に関連する甲状腺疾患発症のハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・乾癬性関節炎患者1万3,266例(乾癬性関節炎群)、乾癬のみの患者14万9,576例(乾癬群)、非乾癬患者16万2,842例(対照群)が解析に組み込まれた。・対照群と比較した、乾癬性関節炎群および乾癬群の甲状腺機能亢進症発症に関する補正後ハザード比は、1.32(95%CI:1.07~1.65)、1.22(95%CI:1.11~1.33)。バセドウ病では、1.38(1.07~1.79)、1.26(1.13~1.41)と、それぞれで発症リスクは高かった。・同様に両群では、甲状腺機能低下症(補正後HR:1.74[95%CI:1.34~2.27]、同:1.38[95%CI:1.23~1.56])、橋本病(2.09[1.34~3.24]、1.47[1.18~1.82])のリスクも高かった。

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潜在性甲状腺機能低下症への対応はいかにあるべきか(解説:吉岡成人氏)-943

高齢者における潜在性甲状腺機能低下症 血中サイロキシン(T4)あるいは遊離サイロキシン(FT4)値が基準範囲にありながらも、血中TSHのみが基準値上限を超えて高値を示している場合が潜在性甲状腺機能低下症である。 潜在性甲状腺機能低下症では、倦怠感などの自覚症状のほかにも、脂質代謝への悪影響、動脈硬化の進展、心機能の低下、妊婦においては流・早産の増加、児の精神発育遅延などがあるため、TSHが10μU/mLを超える場合には甲状腺ホルモンを補充することが多い。65歳以上の高齢潜在性甲状腺機能低下症患者を対象とした無作為化二重盲検プラセボ対照試験では、平均年齢74.4歳の潜在性甲状腺機能低下症患者に甲状腺ホルモンを投与しても、甲状腺機能低下症の症状や甲状腺関連QOLに関した質問票の疲労感のスコアには差を認めないという結論が示されている(Stott DJ, et al. N Engl J Med 2017;376:2534-2544.)。最新のメタアナリシスでは JAMA誌2018年10月2日号に掲載されたメタアナリシスでは、妊娠をしていない成人の潜在性甲状腺機能低下症患者を対象としたランダム化臨床試験を抽出し、21試験の対象患者2,192例を解析している。 解析対象となった患者は各試験の平均で、年齢は32~74歳、女性の割合は46~100%、ベースラインのTSH値は4.4~12.8μU/mLであった。甲状腺ホルモンの補充によりTSH値は基準値の範囲内となったが、QOLについては治療群とプラセボ群で変化はなく、疲労感や倦怠感、抑うつ症状、認知機能、収縮期血圧、BMIのいずれも治療群とプラセボ群で差異はなかった。著者らは妊婦を除く、成人の潜在性甲状腺機能低下症患者への甲状腺ホルモンの補充はルーチンに行うべきではないとしている。潜在性甲状腺機能低下症患者への対応 今のところ、潜在性甲状腺機能低下症を治療することに対しての十分なエビデンスは確立しておらず、一般的には、TSHが10μU/mLの場合に甲状腺ホルモンを補充することが多いものの、TSHが10μU/mL未満の「軽症」患者にどのように対応するかについては意見の一致をみていない。日本甲状腺学会の「Subclinical hypothyroidism潜在性甲状腺機能低下症:診断と治療の手引き」にも、甲状腺ホルモンを補充することの有用性と危険性を勘案し、個々の患者の状況を総合的に判断して補充の適応を考慮すべきとしている。 臨床検査が基準値をはずれているからといって一喜一憂せず、十分な経過観察を行い、治療の必要性についても慎重に考えて良いといえる。

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抗肥満薬であるlorcaserinは日本でも使用できるのだろうか(解説:吉岡成人氏)-942

抗肥満薬は臨床の現場に出てこない 肥満治療の基本は、食事療法と運動療法であり、非薬物療法を3ヵ月をめどに行ったうえでも、改善が認められない場合に薬物治療が考慮される。しかし、日本で使用が可能な薬剤はマジンドールしかない。米国では、膵リパーゼ阻害薬で腸管からの脂肪吸収を抑制する作用を持ったorlistatも発売されているが、日本での発売の予定はない。脳内で摂食亢進や快楽・報酬系に作動するカンナビノイド受容体の拮抗薬であるrimonabantは、自殺企図を含む重篤な精神疾患を引き起こすことから2008年に開発が中止となっている。また、ノルアドレナリンとセロトニンの再吸収取り込み阻害薬であるsibutramineは、血圧の上昇や心筋梗塞、脳卒中のリスク増加のため2010年に欧米の市場から撤退している。このように、抗肥満薬は開発・中断を繰り返しており、臨床の現場で応用されることがきわめて難しい薬剤となっている。lorcaserin 今回、抗肥満薬として期待されていたlorcaserinが、肥満2型糖尿病患者に対して有用である可能性を示す論文がLancet誌に報告された(Bohula EA, et al. Lancet. 2018 Oct 3. [Epub ahead of print])。lorcaserinはセロトニン5-HT(5-hydroxy-triptamine)2c受容体のアゴニストである。セロトニンは脳内に存在するモノアミンで、5-HT受容体を介して摂食抑制、睡眠、鎮静、疼痛閾値の調整、母性行動などに関与している。5-HT2c受容体は視床下部に発現し、食欲抑制に関与しており、そのノックアウトマウスでは過食や肥満をもたらすことが知られている。5-HT2c受容体への選択性が強いlorcaserinは、2010年に前臨床試験段階で乳腺腫瘍と星細胞腫の発生を増加させるリスクが懸念され、米国食品医薬品局(FDA)で認可されなかった。しかし、その後の第III相試験で腫瘍発生の増加がなかったため、2012年にFDAが認可した薬剤である。lorcaserinの心血管安全性 lorcaserinの心血管系に対する安全性を評価した二重盲検試験であるCAMELLIA(Cardiovascular and metabolic effects of lorcaserin in overweight and obese patients)-TIMI 61試験の結果が、2018年8月26日にNEJM誌電子版に掲載されている(Bohula EA, et al. N Engl J Med. 2018;379:1107-1117.)。 心血管死亡、心筋梗塞、脳卒中を合わせた複合イベントを主要評価項目とし、有効性については主要評価項目に不安定狭心症、心不全、冠動脈血行再建術を追加した複合イベントについて評価している。中央値3.3年間の追跡で、主要評価項目についてはlorcaserin群6.1%、プラセボ群6.2%(ハザード比:0.99、99%信頼区間:0.85~1.14)であり、安全性が確認された。有効性については、lorcaserin群11.8%、プラセボ群12.1%(ハザード比:0.97、99%信頼区間:0.87~1.9714)でプラセボに勝る心血管イベントの減少は示されなかった。lorcaserinは糖尿病治療にも有用 CAMELLIA-TIMI 61試験の副次評価項目である、2型糖尿病患者における血糖コントロール、糖尿病発症前から2型糖尿病への移行の遅延、糖尿病発症阻止の可能性を検討した詳細な結果が、今回Lancet誌に掲載された論文である。 アテローム動脈硬化性心疾患、または複数の心血管リスクを保有するBMI 27以上の肥満者を対象として、lorcaserinを投与した群では、1年時において糖尿病患者で平均107.6kgの体重がプラセボ群に比較して2.6kg(95%信頼区間:2.3~2.9)減少し、HbA1c 5.7~6.5%未満、空腹時血糖値100~125mg/dL未満の「前糖尿病」状態の対象者が糖尿病に移行するリスクも19%減少(8.5% vs.10.3%、ハザード比:0.81、95%信頼区間:0.66~0.99)し、糖尿病の発症予防に対するNNTは3年で56であると報告している。糖尿病患者においては、細小血管障害(網膜症、持続アルブミン尿、末梢神経障害)の発症も抑止された(10.1% vs.12.4%、ハザード比:0.79、95%信頼区間:0.69~0.92)という。代謝の改善と心血管イベント lorcaserinは従来の抗肥満薬と同様に、体重の減少と糖尿病の発症予防、糖尿病の病態の改善に有用であり、かつ、心血管安全性も確認されたといえる。しかし、減量に成功し、血糖コントロールが改善しても、3.3年の期間では心血管イベントの発症に好影響をもたらさなかった。 はたして日本でも市場に登場する薬剤となるのかどうか、今後の展開が注目される。

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潜在性甲状腺機能低下症へのホルモン療法、最新メタ解析結果/JAMA

 潜在性甲状腺機能低下症患者への甲状腺ホルモン療法の便益は不明とされる。スイス・ベルン大学病院のMartin Feller氏らは、成人患者において甲状腺ホルモン療法の有効性を検討し、一般的なQOLや甲状腺関連症状の改善効果はみられないことを示した。研究の成果は、JAMA誌2018年10月2日号に掲載された。潜在性甲状腺機能低下症は、甲状腺刺激ホルモン(TSH)高値と遊離サイロキシン(FT4)正常範囲内で定義され、とくに甲状腺機能低下症に起因する可能性がある症状(疲労感、便秘、原因不明の体重増加など)を伴う場合は、甲状腺ホルモン(レボチロキシン)による治療が行われることが多い。最近、2つの大規模臨床試験の結果が報告されたことから、これらを含めたメタ解析のアップデートが求められていた。プラセボ/無治療と比較した無作為化試験が対象 研究グループは、潜在性甲状腺機能低下症の成人患者において、甲状腺ホルモン療法とQOLおよび甲状腺関連症状との関連を評価するメタ解析を行った(スイス国立科学財団[SNSF]の助成による)。 2018年7月4日までに医学関連データベースに登録された文献を検索した。潜在性甲状腺機能低下症の妊娠していない成人患者において、甲状腺ホルモン療法をプラセボまたは無治療と比較した無作為化臨床試験の論文を対象とした。 主要アウトカムは、フォローアップ期間3ヵ月以上における一般的なQOLおよび甲状腺関連症状であった。各評価項目の臨床スコアの差を標準化平均差(SMD)に変換。SMDが正数の場合に、甲状腺ホルモン療法が便益をもたらしたことを示し、0.2を小さな効果、0.5を中等度の効果、0.8を大きな効果の基準とした。 日本の1件を含む21件の試験の論文(2,192例)が解析の対象となった。甲状腺ホルモン療法は、レボチロキシンが17件、サイロキシンが4件で使用され、対照群は、プラセボが18件、無治療が3件だった。倦怠感/疲労感、うつ症状、認知機能、血圧、BMIにも差はない 各試験の参加者数には20~737例の幅があり、平均年齢は32~74歳、女性の割合は46~100%、ベースラインの甲状腺刺激ホルモンの平均値は4.4~12.8mIU/Lの範囲であった。平均治療期間は3~18ヵ月だった。 甲状腺ホルモン療法群では、フォローアップ終了時の甲状腺刺激ホルモンの平均値は0.5~3.7mIU/Lであり、治療により正常化したのに対し、プラセボ/無治療群では、4.6~14.7mIU/Lと、高値の状態が続いていた。 これに対し、一般的QOLの評価(4試験、796例)では、甲状腺ホルモン療法群はプラセボ/無治療群に比べ便益を認めなかった(SMD:-0.11、95%信頼区間[CI]:-0.25~0.03、I2=66.7%)。また、甲状腺関連症状(4試験、858例)についても、甲状腺ホルモン療法群に統計学的に有意な便益はみられなかった(0.01、-0.12~0.14、0.0%)。 倦怠感/疲労感(1試験、638例、SMD:−0.01、95%CI:−0.16~0.15)、うつ症状(4試験、278例、-0.10、-0.34~0.13、I2=0.0%)、認知機能(4試験、859例、0.09、-0.05~0.22、14.7%)、収縮期血圧(8試験、1,372例、-0.7、-2.6~1.2、0.0%)、BMI(15試験、1,633例、0.2、-0.4~0.8、45.5%)のいずれにおいても、両群間に有意な差はなかった。 全般的に、試験のバイアスのリスクは低く、GRADE toolで評価した評価項目のエビデンスの質は中等度~高度と判定された。 著者は、「これらの知見は、潜在性甲状腺機能低下症の成人患者への甲状腺ホルモン療法のルーチンの使用を支持しない」としている。

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第9回 レボチロキシンは朝食後投与では吸収が低い?【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 レボチロキシンは甲状腺機能低下症、甲状腺腫や甲状腺がん術後療法などで、長期間ないし一生涯服用する患者さんも少なくありません。経験上、用法や相互作用についての質問を受けることが多い薬でもあります。相互作用については、カルシウム製剤、スクラルファート、水酸化アルミニウム、鉄剤、コレスチラミン、酸化マグネシウムなどの制酸剤やコーヒー1)などレボチロキシンの吸収を低下させるものから、ビタミンC2)などの吸収を亢進させるものまで多くの変動要因が知られており、注意を払っている薬剤師も多いかと思います。用法については、添付文書には1日1回の服用とだけ記載があり、インタビューフォームを見ても食事・併用薬の影響について該当資料なしとの記載になっていて、判断に迷うシーンもあります。本邦の添付文書に用法記載がなければ海外(米国やカナダ)の添付文書を見るのも一案なので、総合医薬品データベースのLexicomp Onlineで調べてみると、「朝空腹時少なくとも朝食の30~60分前もしくは夜最後の食事の3~4時間後服用」の記載があり、日本と異なっています。そこで今回は、レボチロキシンの用法について検討した論文を紹介しましょう。Timing of levothyroxine administration affects serum thyrotropin concentration.Bach-Huynh TG, et al. J Clin Endocrinol Metab. 2009;94:3905-3912.1つ目は、レボチロキシンの用法や食事の有無が血清甲状腺刺激ホルモン(TSH)濃度に及ぼす影響を調査した研究です。レボチロキシンを75μg以上服用している18~75歳の患者が組み入れられ、甲状腺機能低下症42例、甲状腺がん23例の計65例(女性50例、男性15例)が試験を完遂しています。患者は、(1)夜間絶食かつ朝食の1時間以上前の起床時、(2)その日の最後の食事より2時間以上後の就寝前、(3)朝食後20分以内、という3つの用法をくまなく組み合わせた6パターンのうち1つに割り当てられ、1~8週目、9~16週目、17~24週目の8週間ずつクロスオーバーしました。プライマリアウトカムは8週間レジメンにおける絶食時の血清TSH濃度とその他2つの用法時の血清TSH濃度の差です。結果、絶食時服用のTSHの血中濃度はもっとも低く1.06±1.23mIU/Lであり、就寝前服用では2.19±2.66mIU/L、朝食後服用では2.93±3.29mIU/Lと有意に高くなっていました。TSHの血中濃度が低いほど甲状腺ホルモンが多いということなので、空腹時服用のほうがレボチロキシンの吸収がよいことがわかります。論文でも、食後服用では血清TSH濃度がより高く、変動しやすいため、ターゲットレンジに入れたい場合は絶食時が勧められることが示唆されています。夜間かつ空腹でレボチロキシンは効果最大それでは、同じ空腹時であれば朝と夜ではどちらがよいのでしょうか。それを比較した研究もあります。Effects of evening vs morning levothyroxine intake: a randomized double-blind crossover trial.Bolk N, et al. Arch Intern Med. 2010;170:1996-2003.この文献のBackgroundには、レボチロキシンは約70~80%が小腸で吸収されるので、食物や他の薬剤による腸内吸収阻害を防ぐために、朝食前に服用するのがよいというコンセンサスが得られている、と書かれています。ただ、筆者の少ない経験則では朝食後処方を見掛ける機会が多く、起床時処方は少数であると感じています。朝食後は飲み忘れにくいですし、処方オーダー上の用法選択で選びやすいためかもしれません。本試験の目的は、就寝前服用では朝服用よりも甲状腺ホルモン値が改善するかどうかという検証です。18歳以上で、レボチロキシン治療を少なくとも6ヵ月以上受けている原発性甲状腺機能低下のある105例の被験者を対象に、ダブルブラインドのクロスオーバー試験を行っています。患者はレボチロキシンまたはプラセボを入れたカプセルを朝と就寝前に1カプセルずつ12週間服用し、朝夜のカプセルを入れ替えてさらに12週間服用しました。プライマリアウトカムとして、それぞれ12週間服用時における甲状腺ホルモンの数値の変化、セカンダリアウトカムとしてクレアチニン、脂質、BMI、脈拍、QOL(生活の質)が設定されています。90例が試験を完遂し、解析に組み入れられました。平均TSH濃度は、最初に朝にレボチロキシンを服用した群では12週時点の2.66(標準偏差:2.53)mIU/Lから24週時点の1.74(同:2.43)mIU/Lに減少している一方で、最初に就寝前にレボチロキシンを服用した群では12週時点の2.36(同:2.55)mIU/Lから24週時点の3.86(同:4.02)mIU/Lに増加しています。また、平均FT4(遊離サイロキシン)値は、最初に朝にレボチロキシンを服用した群では12週時点の1.48(同:0.24)ng/dLから24週時点の1.59(同:0.33)ng/dLに増加していて、最初に就寝前にレボチロキシンを服用した群では、12週時点の1.54(同:0.28)ng/dLから24週時点の1.51(同:0.20)ng/dLに減少しています。つまり、就寝前のレボチロキシン服用でFT4の増加という直接的な治療効果とTSHの低下に寄与していると考えられます。総T3(トリヨードサイロニン)値の変化は、FT4の変化と同じ傾向でした。なお、セカンダリエンドポイントとして解析されたクレアチニン、脂質、BMI、脈拍、QOLに関しては有意な差がありませんでした。甲状腺機能の検査値基準と意味を理解していないとややわかりづらい部分もありますが、以上の研究を踏まえレボチロキシンについてのポイントを抽出すると、下記のことがいえそうです。・レボチロキシンは食事により吸収が低下するため、空腹時服用が有利・活性の低いT4から活性の高いT3への変換は夜間に亢進する・夜間は腸の運動が緩やかで腸壁にレボチロキシンがさらされる時間が延長し、吸収がよくなる・夜間に胃酸分泌が亢進し、酸性環境により吸収が促されるこれらのことから、就寝前も選択肢としてよいものと思われます。就寝前にすれば朝食を遅らせる必要がないため、都合がいい患者さんもいるでしょう。セカンダリアウトカムに差がなく、半減期も長いことから臨床上食後が明確にいけないといえるほどのエビデンスではありませんが、効果や生活リズムなどに不満がある場合は、医師に確認のうえ、用法の選択肢を提示してみるのもよいかもしれません。1)Almandoz JP, et al. Med Clin North Am. 2012;96:203-221.2)Jubiz W, et al. J Clin Endocrinol Metab. 2014;99:E1031-E1034.3)チラーヂンS錠 添付文書(2015年1月改訂 第12版)4)チラーヂンS錠 インタビューフォーム(2015年10月改訂 第10版)5)Bach-Huynh TG, et al. J Clin Endocrinol Metab. 2009;94:3905-3912.6)Bolk N, et al. Arch Intern Med. 2010;170:1996-2003.

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リジン尿性蛋白不耐症〔LPI:lysinuric protein intolerance〕

1 疾患概要■ 定義二塩基性アミノ酸(リジン、アルギニン、オルニチン)の輸送蛋白の1つである y+LAT-1(y+L amino acid transporter-1)の機能異常によって、これらのアミノ酸の小腸での吸収障害、腎での再吸収障害を生じるために、アミノ酸バランスの破綻から、高アンモニア血症をはじめとした多彩な症状を来す疾患である。本疾患は常染色体劣性遺伝を呈し、責任遺伝子SLC7A7の病因変異が認められる。現在は指定難病となっている。■ 疫学わが国での患者数は30~40人と推定されている。■ 病因y+LAT-1 は主に腎、小腸などの上皮細胞基底膜側に存在する(図)。12の膜貫通領域をもった蛋白構造をとり、分子量は約40kDaである。調節ユニットである 4F2hc(the heavy chain of the cell-surface antigen 4F2)とジスルフィド結合を介してヘテロダイマーを形成することで、機能発現する。本蛋白の異常により二塩基性アミノ酸の吸収障害、腎尿細管上皮での再吸収障害を来す結果、これらの体内プールの減少、アミノ酸バランスの破綻を招き、諸症状を来す。所見の1つである高アンモニア血症は、尿素回路基質であるアルギニンとオルニチンの欠乏に基づくと推定されるが、詳細は不明である。また、SLC7A7 mRNAは全身の諸臓器(白血球、肺、肝、脾など)でも発現が確認されており、本疾患の多彩な症状は各々の膜輸送障害に基づく。上述の病態に加え、細胞内から細胞外への輸送障害に起因する細胞内アルギニンの増加、一酸化窒素(NO)産生の過剰なども関与していることが推定されている。画像を拡大する■ 症状離乳期以降、低身長(四肢・体幹均衡型)、低体重が認められるようになる。肝腫大も受診の契機となる。蛋白過剰摂取後には約半数で高アンモニア血症による神経症状を呈する。加えて飢餓、感染、ストレスなども高アンモニア血症の誘因となる。多くの症例においては1歳前後から、牛乳、肉、魚、卵などの高蛋白食品を摂取すると嘔気・嘔吐、腹痛、めまい、下痢などを呈するため、自然にこれらの食品を嫌うようになる。この「蛋白嫌い」は、本疾患の特徴の1つでもある。そのほか患者の2割に骨折の既往を、半数近くに骨粗鬆症を認める。さらにまばらな毛髪、皮膚や関節の過伸展がみられることもある。一方、本疾患では、約1/3の症例に何らかの血液免疫学的異常所見を有する。水痘の重症化、EBウイルスDNA持続高値、麻疹脳炎合併などのウイルス感染の重症化や感染防御能の低下が報告されている。さらに血球貪食症候群、自己免疫疾患(全身性エリテマトーデス、抗リン脂質抗体症候群、自己免疫性肝炎、関節リウマチ)合併の報告がある。成人期以降には肺合併症として、間質性肺炎、肺胞蛋白症などが増える傾向にある。無症状でも画像上の肺の線維化がたびたび認められる。また、腎尿細管病変や糸球体腎炎も比較的多い。循環器症状は少ないが、運動負荷後の心筋虚血性変化や脳梗塞を来した症例もあり、注意が必要である。■ 分類本疾患の臨床症状と重症度は多彩である。一般には出生時には症状を認めず、蛋白摂取量が増える離乳期以後に症状を認める例が多い。1)発症前型同胞が診断されたことを契機に、診断に至る例がある。この場合も軽度の低身長などを認めることが多い。2)急性発症型小児期の発症形態としては、高アンモニア血症に伴う意識障害や痙攣、嘔吐、精神運動発達遅滞などが多い。しかし、一部では間質性肺炎、易感染、血球貪食症候群、自己免疫疾患、血球減少などが初発症状となる例もある。3)慢性進行型軽症例は成人まで気付かれず、てんかんなどの神経疾患の精査から診断されることがある。■ 予後早期診断例が増え、精神運動発達遅延を呈する割合は減少傾向にある。しかし、肺合併症や腎病変は、アミノ酸補充にもかかわらず進行を抑えられないため、生命予後に大きく影響する。水痘や一般的な細菌感染は、腎臓・肺病変の重症化を招きうる。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)高アンモニア血症を来す尿素サイクル異常症の各疾患の鑑別のため血中・尿中アミノ酸分析を提出する。加えてLDHやフェリチンが上昇していれば本疾患の可能性が高まる。確定診断には遺伝子解析を検討する。■ 一般血液検査所見1)血清LDH上昇:600~1,000IU/L程度が多い。2)血清フェリチン上昇:程度は症例によって異なる。3)高アンモニア血症:血中アンモニア高値の既往はほとんどの例でみられる。最高値は180~240μmol/L(300~400μg/dL)の範囲であることが多いが、時に600μmol/L (1,000μg/dL)程度まで上昇する例もある。また、食後に採血することで蛋白摂取後の一過性高アンモニア血症が判明し、診断に至ることがある。4)末梢白血球減少・血小板減少・貧血上記検査所見のほか、AST/ALTの軽度上昇(AST>ALT)、TG/TC上昇、貧血、甲状腺結合蛋白(TBG)増加、IgGサブクラスの異常、白血球貪食能や殺菌能の低下、NK細胞活性低下、補体低下、CD4/CD8比の低下などがみられることがある。■ 血中・尿中アミノ酸分析1)血中二塩基性アミノ酸値(リジン、アルギニン、オルニチン)正常下限の1/3程度から正常域まで分布する。また、二次的変化として、血中グルタミン、アラニン、グリシン、セリン、プロリンなどの上昇を認めることがある。2)尿の二塩基性アミノ酸濃度は通常増加(リジンは多量、アルギニン、オルニチンは中等度、シスチンは軽度)なかでもリジンの増加はほぼ全例にみられる。まれに(血中リジン量が極端に低い場合など)、これらのアミノ酸の腎クリアランスの計算が必要となる場合がある。(参考所見)尿中有機酸分析における尿中オロト酸測定:高アンモニア血症に付随して尿中オロト酸の増加を認める。■ 診断の根拠となる特殊検査1)遺伝子解析SLC7A7(y+LAT-1をコードする遺伝子)に病因変異を認める。遺伝子変異は今まで50種以上の報告がある。ただし本疾患の5%程度では遺伝子変異が同定されていない。■ 鑑別診断初発症状や病型の違いによって、鑑別疾患も多岐にわたる。1)尿素サイクル異常症の各疾患2)ライソゾーム病3)周期性嘔吐症、食物アレルギー、慢性腹痛、吸収不良症候群などの消化器疾患 4)てんかん、精神運動発達遅滞5)免疫不全症、血球貪食症候群、間質性肺炎初発症状や病型の違いによって、鑑別疾患も多岐にわたる。<診断に関して留意する点>低栄養状態では血中アミノ酸値が全体に低値となり、尿中排泄も低下していることがある。また、新生児や未熟児では尿のアミノ酸排泄が多く、新生児尿中アミノ酸の評価においては注意が必要である。逆にアミノ酸製剤投与下、ファンコーニ症候群などでは尿アミノ酸排泄過多を呈するので慎重に評価する。3 急性発作で発症した場合の診療高アンモニア血症の急性期で種々の臨床症状を認める場合は、速やかに窒素負荷となる蛋白を一旦除去するとともに、中心静脈栄養などにより十分なカロリーを補充することで蛋白異化の抑制を図る。さらに薬物療法として、L-アルギニン(商品名:アルギU)、フェニル酪酸ナトリウム(同:ブフェニール)、安息香酸ナトリウムなどが投与される。ほとんどの場合は、前述の薬物療法によって血中アンモニア値の低下が得られるが、無効な場合は持続的血液透析(CHD)の導入を図る。■ 慢性期の管理1)食事療法十分なカロリー摂取と蛋白制限が主体となる。小児では摂取蛋白0.8~1.5g/kg/日、成人では0.5~0.8g/kg/日が推奨される。一方、カロリーおよびCa、Fe、ZnやビタミンDなどは不足しやすく、特殊ミルクである蛋白除去粉乳(S-23)の併用も考慮する。2)薬物療法(1)L-シトルリン(日本では医薬品として認可されていない)中性アミノ酸であるため吸収障害はなく、肝でアルギニン、オルニチンに変換されるため、本疾患に有効である。投与により血中アンモニア値の低下や嘔気減少、食事摂取量の増加、活動性の増加、肝腫大の軽減などが認められている。(2)L-アルギニン(同:アルギU)有効だが、吸収障害のため効果が限られ、また浸透圧性下痢を来しうるため注意して使用する。なおL-アルギニンは、急性期の高アンモニア血症の治療としては有効であるが、本症における細胞内でのアルギニンの増加、NO産生過剰の観点からは、議論の余地があると思われる。(3)L-カルニチン2次性の低カルニチン血症を来している場合に併用する。(4)フェニル酪酸ナトリウム(同:ブフェニール)、安息香酸ナトリウム血中アンモニア値が不安定な例ではこれらの定期内服を検討する。その他対症療法として、免疫能改善のためのγグロブリン投与、肺・腎合併症に対するステロイド投与、骨粗鬆症へのビタミンD製剤やビスホスホネート薬の投与、成長ホルモン分泌不全性低身長への成長ホルモンの投与、重炭酸ナトリウム、抗痙攣薬、レボチロキシン(同:チラーヂンS)の投与などが試みられている。4 今後の展望小児期の発達予後に関する最重要課題は、高アンモニア血症をいかに防ぐかである。近年では、早期診断例が徐々に増えることによって正常発達例も増えてきた。その一方で、早期から食事・薬物療法を継続したとしても、成人期の肺・腎合併症は予防しきれていない。その病因として、尿素サイクルに起因する病態のみならず、各組織におけるアミノ酸の輸送障害やNO代謝の変化が想定されており、これらの病態解明と治療の開発が望まれる。5 主たる診療科小児科、神経内科。症状により精神科、腎臓内科、泌尿器科、呼吸器内科への受診も適宜行われている。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター リジン尿性蛋白不耐症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)Sperandeo MP, et al. Hum Mutat. 2008;29:14-21.2)Torrents D, et al. Nat Genet. 1999;21:293-296.3)高橋勉. 厚労省研究班「リジン尿性蛋白不耐症における最終診断への診断プロトコールと治療指針の作成に関する研究」厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業 平成22年度総括分担研究報告書;2011.p.1-27.4)Charles Scriver, et al(editor). The Metabolic and Molecular Bases of Inherited Disease, 8th ed. New York City:McGraw-Hill;2001:pp.4933-4956.5)Sebastio G, et al. Am J Med Genet C Semin Med Genet. 2011;157:54-62.公開履歴初回2018年8月14日

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骨粗鬆症のBP治療後、新規抗体製剤vs.テリパラチド/Lancet

 経口ビスホスホネート系薬で治療を受ける、閉経後の骨粗鬆症女性の治療薬移行について、開発中のヒト抗スクレロスチンモノクローナル抗体製剤romosozumab(AMG 785、承認申請中)が既存薬のテリパラチド(フォルテオ)との比較において、股関節部の骨密度(BMD)を上昇させたことが報告された。デンマーク・オーフス大学病院のBente L. Langdahl氏らによる第III相の非盲検無作為化実薬対照試験の結果で、Lancet誌オンライン版2017年7月26日号で発表された。ビスホスホネート系薬の既治療は、テリパラチドの骨形成作用を減弱することが確認されている。著者は、「今回示されたデータを、骨折リスクの高い患者の臨床的意思決定のために周知すべきである」と述べている。ビスホスホネート系薬既治療患者を対象に無作為化試験 試験は、北米、中南米、欧州の46施設で行われた。閉経後の骨粗鬆症女性(55歳以上90歳以下)で、スクリーニング以前に3年以上ビスホスホネート系薬を服用、およびスクリーニングの前年にアレンドロネート(アレンドロン酸ナトリウム錠)を服用しており、BMD Tスコアが、total hip、大腿骨頸部、腰椎で-2.5以下、さらに骨折歴がある患者を登録した。 研究グループは適格患者を、romosozumab皮下投与群(月1回210mg)またはテリパラチド皮下投与群(1日1回20μg)に無作為に割り付けて追跡した。 主要エンドポイントは、ベースラインから12ヵ月時点(6~12ヵ月の平均)のDEXA法で測定したBMDの%変化とし、線形ミックス効果モデルを用いて反復測定を行い、6~12ヵ月時点の平均治療効果を表した。 無作為化を受けた患者は全員、ベースラインで測定を受けた。有効性の解析には、その後少なくとも1回測定を受けた患者を包含した。12ヵ月間のtotal hip BMDの平均%変化、2.6% vs.-0.6% 2013年1月31日~2014年4月29日に、436例がromosozumab群(218例)またはテリパラチド群(218例)に無作為に割り付けられた。有効性解析には、romosozumab群206例、テリパラチド群209例が包含された。 ベースラインからの12ヵ月間で、total hip BMDの平均%変化は、romosozumab群2.6%(95%信頼区間[CI]:2.2~3.0)に対し、テリパラチド群は-0.6%(-1.0~-0.2)で、群間差は3.2%(95%CI:2.7~3.8、p<0.0001)であった。 有害事象の頻度は、概して両群間で一致していた。報告の頻度が高かった有害事象は、鼻咽頭炎(romosozumab群28/218例[13%]、テリパラチド群22/214例[10%])、高カルシウム血症(romosozumab群2/218例[<1%]、テリパラチド群22/214例[10%])、関節痛(romosozumab群22/218例[10%]、テリパラチド群13/214例[6%])であった。重篤有害事象は、romosozumab群で17例(8%)、テリパラチド群は23例[11%]報告されたが、いずれも治療に関連した事象とは判定されなかった。なお、有害事象により試験薬投与が中断されたのは、romosozumab群は6例(3%)、テリパラチド群は12例(6%)であった。

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2017年度認定内科医試験、直前対策ダイジェスト(前編)

【第1回 膠原病/アレルギー】 全13問膠原病/アレルギー領域は、アップデートが頻繁な分野でキャッチアップしていくのが大変だが、それだけに基本的なところで確実に得点することが重要となってくる。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)これらの疾患とCoombsとGell分類の組み合わせで正しいものはどれか?1つ選べ(a)血清病 ― I型(b)クリオグロブリン血症 ― II型(c)特発性血小板減少性紫斑病 ― III型(d)アレルギー性接触皮膚炎 ― IV型(e)過敏性肺臓炎 ― I+IV型例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第2回 感染症】 全9問感染症領域については、時事問題や感染対策、予防に関する問題がよく出題される傾向がある。代表的な感染症に加え、新興・再興感染症の感染対策についてもしっかり押さえておきたい。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)感染症について正しいものは次のうちどれか?1つ選べ(a)中東呼吸器症候群(MERS)は2類感染症であり、致死率は50%を超えるとされている(b)重症熱性血小板減少症候群(SFTS)は4類感染症に指定されており、マダニを媒介としヒト-ヒト感染の報告はない(c)デング熱は4類感染症に指定されており、前回と異なる血清型のデングウイルスに感染した場合、交差免疫により不顕性感染となることが多いと報告されている(d)ジカ熱は4類感染症に指定されており、デングウイルス同様ネッタイシマカやヒトスジシマカを媒介とし、ギラン・バレー症候群のリスクとなる(e)カルバぺネム耐性腸内細菌科細菌は5類全数把握疾患に指定されており、保菌者も届出が必要とされる例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第3回 呼吸器】 全10問呼吸器の分野については、レントゲンやCTなどの画像から診断を回答させる問題が増えている。アトラス等で疾患別の画像所見をしっかりと確認しておきたい。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)次の記載で正しいものはどれか?1つ選べ(a)成人の急性上気道炎の原因として最も多いものはRSウイルスである(b)Centor criteriaは次の通りである1)38℃以上の発熱、2)基礎疾患なし、3)圧痛を伴う前頸部リンパ節腫脹、4)白苔を伴う扁桃腫脹で行う溶連菌感染スコアリング(c)Ludwig’s anginaは菌血症による感染性血栓性頸静脈炎のことである(d)レミエール症候群は、Fusobacterium necrophorumなど嫌気性菌によるものが多い(e)初診外来で白苔を認める急性化膿性扁桃腺炎患者にアモキシシリンで治療した例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第4回 腎臓】 全7問腎臓領域については、ネフローゼ症候群に関する出題が多く、細部まで問われる傾向がある。とくにネフローゼ症候群に関してはしっかりと押さえておきたいところである。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)急性腎不全(ARF)と急性腎障害(AKI)について正しいものはどれか?1つ選べ(a)「急性腎障害のためのKDIGO診療ガイドライン」ではAKIの定義として、24時間以内に血清Cr値が0.3mg/dL以上上昇、尿量<0.5mL/kg/時の状態が12時間以上持続する、という項目がある(b)FENa(Na排泄率)2.0%は腎前性腎不全を考える(c)急性尿細管壊死では、多尿が1~2週間持続し、尿中Naは20mEq/L以下であることが多い(d)急性尿細管壊死は消化管出血を合併することが多く、貧血になりやすい(e)尿中好酸球は、薬剤性急性尿細管間質性腎炎で検出され、その診断に有用なバイオマーカーである例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第5回 内分泌】 全10問内分泌領域については、診断のための検査についての出題が多い。とくに甲状腺と副腎について問われることが多く、知識の整理が必要である。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)グレーブス病(バセドウ病)について正しいものはどれか?1つ選べ(a)バセドウ病に認めるMerseburg3徴は、甲状腺腫・眼球突出・限局性粘液水腫である(b)アミオダロン、インターフェロン製剤は、誘発因子として報告されている(c)甲状腺眼症を合併している患者の治療の第1選択は131I内用療法である(d)抗甲状腺薬にはチアマゾール(MMI)とプロピルチオウラシル(PTU)があり、妊娠・授乳中の患者はMMIの使用が推奨されている(e)131I内用療法の効果は早く、開始後1週間以内に治療効果を認める例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【第6回 代謝】 全10問代謝領域については、治療薬について細部まで聞かれる傾向がある。メタボリックシンドロームとアディポカインは毎年出題されるので、しっかり押さえておきたい。例題(解答は本ページの最後に掲載しています)1型糖尿病について正しいものはどれか?1つ選べ(a)家族歴は2型糖尿病より1型糖尿病に多く認める(b)1型糖尿病の死因で最多は感染症によるものである(c)緩徐進行1型糖尿病は、できるかぎり経口糖尿病薬で治療を行い、インスリン導入を遅らせるべきである(d)劇症1型糖尿病は、膵島関連自己抗体陽性の小児に発症することが多い(e)劇症1型糖尿病は、血中膵外分泌酵素(アミラーゼ、リパーゼなど)の上昇を認めることが多い例題の解説とその他の予想問題はこちらへ【例題の解答】第1回:(d)、第2回:(d)、第3回:(d)、第4回:(d)、第5回:(b)、第6回:(e)

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高齢者の潜在性甲状腺機能低下症にホルモン療法は有効か?/NEJM

 潜在性甲状腺機能低下症の治療において、これまでレボチロキシンの使用は議論の的であったが、無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験(TRUST試験)の結果、高齢患者に対するレボチロキシンの有効性は認められなかった。英国・グラスゴー王立診療所のDavid J Stott氏らが報告した。潜在性甲状腺機能低下症に対するレボチロキシン補充療法については、小規模な無作為化比較試験しかなく、治療のリスクや有効性に関するエビデンスは限られていた。NEJM誌オンライン版2017年4月3日号掲載の報告。潜在性甲状腺機能低下症の高齢患者約700例で、プラセボ vs.レボチロキシン 研究グループは、65歳以上で潜在性甲状腺機能低下(TSH:甲状腺刺激ホルモン[サイロトロピン]値4.60~19.99mIU/L、遊離サイロキシン値は正常範囲内)が持続している患者737例を、レボチロキシン群368例(50μg/日[または体重50kg未満か冠動脈疾患既往歴がある場合は25μg/日から開始]、TSH値によって投与量を調整)、またはプラセボ群(369例)に、二重盲検法により無作為に割り付けた。 主要評価項目は、甲状腺機能低下症の症状スコアならびに甲状腺関連QOLに関する質問票の疲労度スコアの変化であった(両スコアとも範囲0~100、スコアが高いほど症状または疲労感が強い、臨床的に意義のある有意な差は最低9点)。潜在性甲状腺機能低下症群とプラセボ群で、症状、疲労度の改善に有意差なし 潜在性甲状腺機能低下症の被験者は、平均年齢74.4歳、53.7%(396例)が女性であった。 平均(±SD)TSH値は、ベースライン6.40±2.01mIU/Lから、1年後にはプラセボ群で5.48mIU/Lに、レボチロキシン群(平均投与量50μg)で3.63mIU/Lに低下した(p<0.001)。1年後における甲状腺機能低下症症状スコアのベースラインからの変化は、プラセボ群0.2±15.3、レボチロキシン群0.2±14.4(群間差:0.0、95%信頼区間[CI]:-2.0~2.1)、同様に疲労度スコアの変化はそれぞれ3.2±17.7および3.8±18.4(群間差:0.4、95%CI:-2.1~2.9)であり、いずれも両群間で有意差は認められなかった。 副次評価項目についても、レボチロキシンの有効性は示されなかった。とくに注目すべき有害事象としてあらかじめ規定された重篤な有害事象(心房細動、心不全、骨折、新規骨粗鬆症)について、有意な増加は認められなかった。 なお、心血管イベントの発生や死亡率に関するレボチロキシンの影響については、検出力不足であった。

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白斑と甲状腺がんは有意に関連:韓国の住民ベース研究

 白斑は、自己免疫性甲状腺疾患および甲状腺がんと有意に関連していることが、韓国・カトリック大学校のJung Min Bae氏らによる、国民健康保険支払データベースを用いた調査研究の結果、報告された。これまでにも繰り返し白斑と甲状腺疾患の関連については報告があるが、今回研究グループは、全国的な住民ベース研究にて両者の関連について調査を行った。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2017年2月23日号掲載の報告。 調査はデータベースにおいて2009~13年に、主病名診断が白斑で4人以上の医師の受診記録がある患者を白斑患者と定義し、年齢および性別で適合した非白斑患者を対照患者(白斑患者1例に対し対照2例)として、バセドウ病と橋本病の併発(対象患者は至適薬物による治療中)、甲状腺がんについて評価した。 主な結果は以下のとおり。・本研究には、白斑患者7万3,336例、対照患者14万6,672例が登録された。・白斑患者は対照患者と比較して、バセドウ病(オッズ比[OR]:2.610、95%信頼区間[CI]:2.319~2.938)、橋本病(OR:1.609、95%CI:1.437~1.802)、甲状腺がん(OR:1.127、95%CI:1.022~1.242)のいずれの評価項目についてもリスク増加が認められた。・関連性は、男性、若年患者で、一貫してより強かった。・今回の研究では個々の患者の臨床的情報を入手しておらず、また均一性集団という点で、結果の一般化可能性は限定的なものである。

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妊娠中の潜在性甲状腺疾患治療は児のIQを改善するか/NEJM

 妊娠8~20週の妊婦の潜在性甲状腺機能低下症または低サイロキシン血症に、甲状腺ホルモン補充療法を行っても、児の5歳までの認知アウトカムは改善しないことが、米国・テキサス大学サウスウェスタン医療センターのBrian M Casey氏らの検討で示された。妊娠中の潜在性甲状腺疾患は、児のIQが正常値より低いなどの有害なアウトカムに関連する可能性が指摘されている。レボチロキシンは、3歳児の認知機能を改善しないとのエビデンス(CATS試験)があるにもかかわらず、欧米のいくつかのガイドラインではいまだに推奨されているという。NEJM誌2017年3月2日号掲載の報告。約1,200例の妊婦を疾患別の2つの試験で評価 研究グループは、児のIQに及ぼす妊娠中の潜在性甲状腺機能低下症と低サイロキシン血症のスクリーニング、およびサイロキシン補充療法の有効性を評価するために、2つの多施設共同プラセボ対照無作為化試験を実施した(Eunice Kennedy Shriver National Institute of Child Health and Human Developmentなどの助成による)。 妊娠8~20週の単胎妊娠女性において、潜在性甲状腺機能低下症および低サイロキシン血症のスクリーニングを行った。潜在性甲状腺機能低下症は、甲状腺刺激ホルモンが≧4.00mU/L、遊離サイロキシン(T4)が正常値(0.86~1.90ng/dL[11~24pmol/L])と定義し、低サイロキシン血症は、甲状腺刺激ホルモンが正常値(0.08~3.99mU/L)、遊離T4が低値(<0.86ng/dL)と定義した。 試験は2つの疾患別に行い、被験者はレボチロキシンを投与する群またはプラセボ群にランダムに割り付けられた。甲状腺機能は毎月評価し、甲状腺刺激ホルモン(サイロトロピン)または遊離T4の正常値を達成するためにレボチロキシンの用量を調整し、プラセボは偽調整を行った。児には、発達および行動の評価が年1回、5年間行われた。 主要評価項目は、5歳時のIQスコア(検査データがない場合は3歳時)または3歳未満での死亡とした。IQの評価には、幼児版ウェクスラー知能検査(Wechsler Preschool and Primary Scale of Intelligence III[WPPSI-III])を用いた。 2006年10月~2009年10月に、潜在性甲状腺機能低下症677例(レボチロキシン群:339例、プラセボ群:338例)と、低サイロキシン血症526例(265例、261例)が登録された。割り付け時の平均妊娠週数は、それぞれ16.7週、17.8週であった。児のIQ、母子のアウトカムに差はない ベースラインの平均年齢は、潜在性甲状腺機能低下症のレボチロキシン群が27.7±5.7歳、プラセボ群は27.3±5.7歳、低サイロキシン血症はそれぞれ27.8±5.7歳、28.0±5.8歳であった。また、平均妊娠期間は、潜在性甲状腺機能低下症のレボチロキシン群が39.1±2.5週、プラセボ群は38.9±3.1週(p=0.57)、低サイロキシン血症はそれぞれ39.0±2.4週、38.8±3.1週(p=0.46)であった。 児の4%(47例、潜在性甲状腺機能低下症:28例、低サイロキシン血症:19例)で、IQのデータが得られなかった。妊婦および新生児の有害なアウトカムの頻度は低く、2つの試験とも2つの群に差はみられなかった。 潜在性甲状腺機能低下症の試験では、児のIQスコア中央値はレボチロキシン群が97(95%信頼区間[CI]:94~99)、プラセボ群は94(92~96)であり(差:0、95%CI:-3~2、p=0.71)、有意な差は認めなかった。また、低サイロキシン血症の試験では、レボチロキシン群が94(91~95)、プラセボ群は91(89~93)であり(-1、-4~1、p=0.30)、やはり有意差はなかった。 12、24ヵ月時のBayley乳幼児発達検査第3版(Bayley-III)の認知、運動、言語の各項目などを含む副次評価項目は、いずれも2つの試験の2つの群に差はみられなかった。 著者は、「本研究の結果は、英国とイタリアで2万1,846例の妊婦を対象に実施されたCATS試験と一致する」としている。

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妊娠中の甲状腺ホルモン治療、流産・死産への影響は?/BMJ

 潜在性甲状腺機能低下症の妊婦では、甲状腺ホルモン薬の投与により妊娠喪失のリスクが低減するが、早産などのリスクは増加することが、米国・アーカンソー大学のSpyridoula Maraka氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2017年1月25日号に掲載された。潜在性甲状腺機能低下症は妊婦に有害な転帰をもたらすことが、観察研究で示唆されている。甲状腺ホルモン薬のベネフィットを支持するエビデンスは十分でないにもかかわらず、米国の現行ガイドラインではレボチロキシンが推奨されているという。甲状腺ホルモン薬は5年間で約16%に投与 研究グループは、潜在性甲状腺機能低下症の妊婦における甲状腺ホルモン薬(レボチロキシン、リオチロニン、甲状腺抽出物製剤)の有効性と安全性を評価するレトロスペクティブなコホート試験を実施した(Mayo Clinic Robert D. and Patricia E. Kern Center for the Science of Health Care Deliveryの助成による)。 米国の全国的なデータベース(Optum-Labs Data Warehouse)を検索し、2010年1月1日~2014年12月31日に登録された潜在性甲状腺機能低下症(甲状腺刺激ホルモン[TSH]:2.5~10mIU/L)の妊婦のデータを抽出した。 主要評価項目は妊娠喪失(流産、死産)とし、副次評価項目には早産、早期破水、胎盤早期剥離、妊娠糖尿病、妊娠高血圧、妊娠高血圧腎症、胎児の発育不全などが含まれた。 解析の対象となった5,405例の妊婦のうち、843例(15.6%)が甲状腺ホルモン薬の投与を受け、4,562(84.4%)例は受けていなかった。832例(98.7%)がレボチロキシン、7例(0.8%)が甲状腺抽出物製剤、4例(0.5%)はレボチロキシン+リオチロニンを投与されていた。ベネフィットは治療前TSH 4.1~10.0mIU/Lに限定 甲状腺ホルモン薬の投与を受けた妊婦の割合は経時的に増加し(2010年:12%~2014年:19%)、地域差(北東部/西部>中西部/南部、p<0.01)がみられた。TSH検査から投与開始までの期間中央値は11日(IQR:4~15)、出産までの期間中央値は30.3週(IQR:25.4~32.7)だった。 ベースラインの平均年齢は、治療群が31.7(SD 4.7)歳、非治療群は31.3(SD 5.2)歳と差はなかったが、18~24歳が非治療群で多かった(5.8% vs.9.5%)。平均TSHは治療群が4.8(SD 1.7)mIU/Lと、非治療群の3.3(SD 0.9)mIU/Lに比べ高値であった(p<0.01)。また、治療群は妊娠喪失の既往(2.7% vs.1.1%、p<0.01)、甲状腺疾患の既往(6.2% vs.3.4%、p<0.01)のある妊婦が多かった。 解析の結果、妊娠喪失の発生率は治療群が10.6%と、非治療群の13.5%に比べ有意に低かった(補正オッズ比:0.62、95%信頼区間[CI]:0.48~0.82、p<0.01)。 一方、治療群では、早産(7.1% vs.5.2%、補正オッズ比:1.60、95%CI:1.14~2.24、p=0.01)、妊娠糖尿病(12.0% vs.8.8%、1.37、1.05~1.79、p=0.02)、妊娠高血圧腎症(5.5% vs.3.9%、1.61、1.10~2.37、p=0.01)の頻度が非治療群に比し高かった。その他の妊娠関連の有害な転帰の頻度は両群でほぼ同等であった。 さらに、妊娠喪失は、ベースラインのTSHが4.1~10.0mIU/Lの妊婦では、治療群が非治療群よりも有意に抑制された(補正オッズ比:0.45、95%CI:0.30~0.65)のに対し、2.5~4.0mIU/Lの妊婦では治療の有無で差はなく(0.91、0.65~1.23)、これらのサブグループの間に有意な差が認められた(p<0.01)。 逆に、妊娠高血圧は、TSH 4.1~10.0mIU/Lの妊婦では治療群と非治療群に有意な差はなかった(補正オッズ比:0.86、0.51~1.45)が、2.5~4.0mIU/Lの妊婦では治療群のほうが有意に多くみられ(1.76、1.13~2.74)、サブグループ間に有意差を認めた(p=0.04)。 著者は、「甲状腺ホルモン薬による妊娠喪失の抑制効果は、治療前のTSHが4.1~10.0mIU/Lの妊婦に限られ、早産、妊娠糖尿病、妊娠高血圧腎症はむしろ増加した」とまとめ、「甲状腺ホルモン薬の安全性を評価するために、さらなる検討を要する」と指摘している。

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閉経後の骨粗鬆症性骨折、開発中のabaloparatideが有用/JAMA

 骨粗鬆症を有する閉経後女性に対し、abaloparatideはプラセボと比較して新規椎体および非椎体の骨折を低下することが、米国・Colorado Center for Bone ResearchのPaul D. Miller氏らによる第III相二重盲検無作為化試験ACTIVE(Abaloparatide Comparator Trial In Vertebral Endpoints)の結果、示された。abaloparatideは、開発中の副甲状腺ホルモン1型受容体選択的活性薬。18ヵ月間の試験期間中、新規椎体骨折を有意に抑制、非椎体骨折は有意差は示されなかったが減少が認められた。結果を踏まえて著者は、「さらなる検討を行い、リスク差の臨床的意義、abaloparatide治療のリスク・ベネフィット、その他の骨粗鬆薬との有効性の比較などを行う必要がある」とまとめている。JAMA誌2016年8月16日号掲載の報告。対プラセボ、テリパラチドで18ヵ月間の無作為化試験 骨粗鬆症性骨折の予防には付加的治療が必要とされる。研究グループは、abaloparatideの有効性と安全性を確認するため、骨粗鬆症性骨折のリスクがある閉経後女性の新規脊椎骨折予防について、同薬80μg対プラセボの試験を行った。ACTIVE試験は、10ヵ国28地点で2011年3月~2014年10月に行われた。 閉経後女性で、骨密度(BMD)Tスコアが腰椎または大腿骨頚部で-2.5以下-5.0超、放射線学的エビデンスで≧2の軽度または≧1の中等度の腰部または胸部の椎体骨折、または過去5年以内に低度の外傷性非椎体骨折歴を有するものを適格とした。 試験には、閉経後女性(65歳超)で、骨折基準を満たすTスコア-2.0以下-5.0未満、または骨折基準を満たさないTスコア-3.0以下-5.0未満が登録された。 被験者は、abaloparatide 80μg群、テリパラチド20μg群、プラセボ群の3群に無作為に割り付けられ、abaloparatide群とプラセボ群は盲検下で、テリパラチドには非盲検下でそれぞれ1日1回皮下注投与が18ヵ月間行われた。 主要エンドポイントは、abaloparatide vs.プラセボの新規椎体骨折患者の割合であった。サンプルサイズは、両群間で4%の差(57%リスク低下)を検出するようセットされた。副次エンドポイントは、abaloparatide vs.プラセボの総大腿骨、大腿骨頚部、腰椎それぞれのBMDの変化、新規椎体骨折発生までの期間などであった。また、事前規定の安全性エンドポイントとして、abaloparatide vs.テリパラチドの高カルシウム血症を評価した。対プラセボで新規椎体骨折について有意に減少 2,463例(平均年齢69歳[範囲:49~86])が無作為化を受け、abaloparatide群(824例)、プラセボ群(821例)、テリパラチド群(818例)に割り付けられた。試験を完了したのは1,901例(606例、637例、658例)であった。 骨折(新規椎体骨折、非椎体骨折)の発生は、abaloparatide群は4例(0.6%)、18例(2.7%)、プラセボ群30例(4.2%)、33例(4.7%)、テリパラチド群6例(0.8%)、24例(3.3%)であった。 主要アウトカムについてabaloparatide vs.プラセボの新規椎体骨折のリスク差は-3.64(95%信頼区間[CI]:-5.42~-2.10)、リスク比(RR)は0.14(95%CI:0.05~0.39、p<0.001)であった。なお、テリパラチド vs.プラセボでも同様の結果がみられている(リスク差:-3.38[95%CI:-5.18~-1.80]、RR:0.20[95%CI:0.08~0.47、p<0.001])。 また、副次エンドポイントとしてKaplan-Meier法で評価した非椎体骨折の発生について、abaloparatide群のほうがプラセボ群と比べて減少が認められた。リスク差は-2.01(95%CI:-4.02~-0.00)、ハザード比(HR)は0.57(95%CI:0.32~1.00、p=0.49)であった。 BMD変化は、いずれの部位でもプラセボ群よりabaloparatide群で有意に上昇した(すべてp<0.001)。 高カルシウム血症の発生は、abaloparatide群3.4%、テリパラチド群6.4%でリスク差は-2.96(95%CI:-5.12~-0.87、p=0.006)であった。

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テリパラチド連日投与の市販後調査中間解析結果

 近畿大学医学部 奈良病院 整形外科・リウマチ科の宗圓 聰氏らは、骨折リスクが高い日本人骨粗鬆症患者における、テリパラチド連日投与の有効性および安全性を検討する観察研究Japan fracture observational study(JFOS)について、試験デザイン、患者背景および中間解析結果を報告した。その中で、日常診察下におけるテリパラチドの有効性プロファイルは臨床試験ならびに欧州・米国で行われた観察研究の結果と類似していることを提示した。Current Medical Research & Opinion誌オンライン版2015年7月20日号の掲載報告。 研究グループは、骨折の危険が高い骨粗鬆症患者(男性/女性)に1日1回テリパラチドを投与し、3、6および12ヵ月後に評価した。 本中間解析は、臨床骨折、骨密度(BMD)、I型プロコラーゲン-N-プロペプチド(P1NP)、腰背部痛、健康関連QOL(HRQOL)および有害事象についての予備的報告である。 主な結果は以下のとおり。・1,810例(女性90.1%)が登録された。・本研究の対象は、他の観察研究でテリパラチドが投与された骨粗鬆症患者と比較し、年齢は高いが骨粗鬆症のリスク因子は少なかった。・臨床骨折の発生率は、6ヵ月後2.9%、12ヵ月後3.7%であった。・12ヵ月後の平均BMDは、ベースラインと比較して腰椎で8.9%、大腿骨近位部で0.8%増加した。・6ヵ月後の血清P1NP濃度中央値は、ベースラインと比較して187.7%高値であった。・12ヵ月後の疼痛スコア(視覚アナログスケールによる評価)はベースラインより低下し、HRQOLスコアは上昇した。・新しい有害事象は観察されなかった。

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骨粗鬆症薬2剤、投与順序で効果に差/Lancet

 閉経後骨粗鬆症の女性に対し、骨粗鬆症治療薬テリパラチド(商品名:フォルテオ)2年投与後にデノスマブ(同:プラリア)を2年投与した場合は、股関節部や大腿骨頚部の骨密度は継続的に増加するのに対し、デノスマブ2年投与後にテリパラチドを2年投与した場合の増加率は低下することが報告された。米国・マサチューセッツ総合病院のBenjamin Z. Leder氏らが、すでに実施したデノスマブとテリパラチドに関する無作為化試験「DATA」試験の、予定されていた延長試験として行った「DATA-Switch」の結果、明らかにした。Lancet誌オンライン版2015年7月2日号掲載の報告。2年投与後に切り替えを行い4年時点の前・後脊椎骨の骨密度の変化率を評価 DATA試験では、閉経後骨粗鬆症の女性94例を無作為に3群に分け、1群にはテリパラチド(1日1回20mg)を、別の群にはデノスマブ(6ヵ月に1回60mg)を、もう1つの群にはその両者を、それぞれ24ヵ月間投与した。DATA試験の結果、テリパラチドとデノスマブの併用は、いずれか一方の単独投与に比べ、骨密度が有意に増大することを示した。 同グループは2011年9月27日~2013年1月28日にかけて、DATA-Switch試験を開始した。DATA試験でテリパラチド群だった被験者はデノスマブを、デノスマブ群はテリパラチドを、併用群にはデノスマブを、それぞれ投与した。 主要評価項目は、4年時点の前・後脊椎骨の骨密度の変化率で、修正intention-to-treat解析で評価した。脊椎骨密度変化率に群間差はみられなかったが… その結果、48ヵ月時点の脊椎骨密度の平均変化率は、テリパラチド→デノスマブ群(27例)が18.3%(95%信頼区間:14.9~21.8)、デノスマブ→テリパラチド群(27例)が14.0%(同:10.9~17.2)、併用→デノスマブ群(23例)が16.0%(同:14.0~18.0)と、各群間で有意差はみられなかった(テリパラチド→デノスマブ群 vs.デノスマブ→テリパラチド群のp=0.13、テリパラチド→デノスマブ群 vs.併用群のp=0.30、デノスマブ→テリパラチド群 vs.併用群のp=0.41)。 副次アウトカムの股関節部骨密度変化率は、テリパラチド→デノスマブ群が6.6%、併用→デノスマブ群が8.6%と、デノスマブ→テリパラチド群の2.8%より高率だった(それぞれp=0.0002、p<0.0001、併用→デノスマブ群 vs.テリパラチド→デノスマブ群のp=0.0446)。 同様に大腿骨頚部骨密度変化率についても、テリパラチド→デノスマブ群が8.3%、併用→デノスマブ群が9.1%と、デノスマブ→テリパラチド群の4.9%より高率だった(それぞれp=0.0447、p=0.0336)。なお併用→デノスマブ群 vs.テリパラチド→デノスマブ群の有意差はみられなかった(p=0.67)。 橈骨密度変化率は、テリパラチド→デノスマブ群は0.0%と変わらなかった。デノスマブ→テリパラチド群が-1.8%と減少し、併用→デノスマブ群は2.8%と増加した(テリパラチド→デノスマブ群 vs.併用→デノスマブ群のp=0.0075、デノスマブ→テリパラチド群 vs.併用→デノスマブ群のp=0.0099)。 デノスマブ→テリパラチド群の1例で、治療に関連すると思われた腎結石が認められた。 以上の結果を踏まえて著者は、「閉経後骨粗鬆症患者の導入および継続治療について、これらの結果を考慮するべきだろう」と指摘している。

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第22回

第22回:成人の頸部リンパ節腫脹について監修:吉本 尚(よしもと ひさし)氏 筑波大学附属病院 総合診療科 プライマリケアの現場で、頸部リンパ節腫脹はそれ自体を主訴に受診する場合のほか、急性疾患に罹患して受診した際に気付かれる、時に見られる症候の一つです。 生理的な範疇なのか、反応性なのか、それとも悪性なのかの区別をつけることが、臨床的には重要になります。 以下、American Family Physician 2015年5月15日号1)より原則として、経過が急性・亜急性・慢性かで鑑別を考える。急性【外傷性】外傷性の場合、組織や血管系の損傷による。少量であれば自然軽快するが、大きく、急性に増大する場合はすぐに処置や外科的精査を要する。剪断力が追加されると偽性動脈瘤の形成・動静脈瘻の形成につながる。その場合はスリルや雑音を伴った柔らかい、拍動性腫瘤として触れる。【感染・炎症性】最も多い原因である。歯や唾液腺のウイルス・細菌によるものが代表的である。性状は腫脹、圧痛、発赤や熱感を伴う。可動性がある。ウイルス性の上気道症状は1~2週続くことが一般的だが、リンパ節腫脹は上気道症状改善後3~6週以内に治まってくることが多い。そのため、上気道症状改善後にも頸部腫脹が続くことで心配して受診する患者さんもいる。病原ウイルスはライノウイルス、コロナウイルス、インフルエンザが多い。生検が適応になるのは、4~6週経っても改善しなかったり、夜間の寝汗・発熱・体重減少・急速な腫瘤増大といった悪性を示唆する所見があったりする場合である。よって、この点について病状説明を行うべきと考える。細菌性感染では、頭部・頸部がフォーカスの場合に主に頸部リンパ節腫脹を来す。肺外結核も頸部リンパ節腫脹を起こす。びまん性、かつ両側性にリンパ節腫脹があり、多発し、可動性もなく、硬く圧痛もなく、胸鎖乳突筋より後ろの後頸三角地帯に存在していることが特徴である。疑えば、ツベルクリン反応を行うべきだが、結果が陰性だからといって否定はできない。亜急性週~月単位の経過で気付かれる。ある程度は急速に増大しうるが、無症候性に増大するため発症スタートの段階では気付かれない。成人で持続する無症候性の頸部腫瘤は、他の疾患が否定されるまでは悪性を考えるべきである。喉頭がんなどでは診断が遅れる事で生存率が下がるため、家庭医にとって頭頸部がんの一般的な症状については認識しておくことが最重要である。【悪性腫瘍】頭頸部の原発性悪性腫瘍で最も多いのは上気道消化管の扁平上皮がんである。よくある症状としては、改善しない潰瘍・構音障害・嚥下障害・嚥下時痛・緩いもしくは並びの悪い歯・咽頭喉頭違和感・嗄声・血痰・口腔咽頭の感覚異常がある。悪性疾患を示唆するリンパ節の性状は、硬い・可動性がない・表面不整であることが多い。上気道消化管がんのリスクファクターとしては、男性・アルコール・タバコ・ビンロウの実(betel nut:東南アジアではガムを噛むようによく使用されている)である。口腔咽頭がんのリスクファクターは頭頸部扁平上皮がんの家族歴・口腔衛生不良である。扁平上皮がんの一部はヒトパピローマウイルス感染との関連も指摘されている(とくにHPV-16がハイリスク)。病変は急速に腫大し、嚢胞性リンパ節(持続性頸部リンパ節過形成)、口蓋・舌扁桃の非対称性、嚥下障害、声の変化、咽頭からの出血といった症状を来す。集団としてリスクが高いのは、35歳~55歳の白人男性で喫煙歴・重度のアルコール常用者・多数の性交渉相手(とくにオーラルセックスを行っている場合)の存在である。唾液腺腫瘍の80%近くが良性であり、耳下腺由来である。これらの腫瘍は一側性で無症候性、緩徐に増大し可動性のある腫瘤である。一方、悪性腫瘍では、急速増大、可動性がなく、痛みを伴い、脳神経(とくにVII)も巻き込むという違いがある。黒色腫のような皮膚がんもまた局所のリンパ節に転移する。局所のリンパ節腫脹を説明しうる原発の頭頸部がんが存在しない場合、臨床医は粘膜に関わる部位(鼻・副鼻腔・口腔・鼻咽頭)の黒色腫を検索するべきである。まれに基底細胞がんや扁平上皮がんからの転移でリンパ節腫脹を来すこともある。発熱、悪寒、夜間寝汗、体重減少といった全身症状は遠隔転移を示唆しうる。頸部リンパ節腫脹を来す悪性腫瘍の原発部位は肺がん、乳がん、リンパ腫、子宮頸がん、胃食道がん、卵巣がん、膵がんが含まれる。頸部はリンパ腫の好発部位であり、無痛性のリンパ節腫脹で出現して急速に進行し、その後有痛性へと変わる。びまん性のリンパ節腫脹や脾腫よりも先に全身症状が出現することが多い。転移によるリンパ節腫脹と比べ、リンパ腫の性状は弾性軟で可動性がある。Hodgkinリンパ腫では二峰性の年齢分布(15~34歳、55歳以上)があり、節外に症状が出る事はまれである。Non-Hodgkinリンパ腫では高齢者で多く、咽頭部の扁桃輪のようにリンパ節外にも症状が出る。リウマチ性疾患では唾液腺腫大を来すのは3%、頸部リンパ節腫脹を来すのは4%存在する。唾液腺腫大や頸部リンパ節腫大を来すリウマチ性疾患にはシェーグレン症候群やサルコイドーシスがある。慢性小児期から存在する先天性腫瘤がほとんどで、緩徐に進行し成人になっても持続している。慢性の前頸部腫瘤の原因として最も多いのは甲状腺疾患であるが、進行が緩徐であることがほとんどである。びまん性に甲状腺腫大がみられた場合、バセドウ病・橋本病・ヨード欠乏による可能性があるが、甲状腺腫を誘発するリチウムのような物質曝露によるものも考える。傍神経節腫は神経内分泌腫瘍で、側頸部の頸動脈小体の化学受容体・頸静脈・迷走神経を巻き込む。通常無症候性だが、機能性になる時はカテコラミン放出の結果として顔面紅潮・動悸・高血圧を起こす。診断的検査は血漿もしくは24時間蓄尿でカテコラミン・メタネフリンを測定する事である。診断手段成人の持続する頸部腫瘤に対しては、まず造影CTを選択する。大きさ・広がり・位置・内容などに関して評価しうる初期情報が得られるためである。加えて、造影剤は腫大していない悪性リンパ節を同定する助けにもなり、血管とリンパ節の区別の一助になりうる。造影CTでの精査は頸部腫瘤の評価に対しては第1選択として推奨される。しかし、ヨードを用いた造影剤検査は甲状腺疾患の病歴のある、もしくは転移性甲状腺がんの心配のある患者へは避けるべきである。PET-CTは予備的診断として使用するには効果的でなく、悪性腫瘍の最終的な評価目的で使用すべきである。超音波検査はCTの代わり、もしくは追加で行われるとき、嚢胞性疾患と充実性疾患との区別に有用であり、結節の大きさや血流の評価にも有用である。CTと超音波の使い分けとして、より若年で放射線被曝を減らしたい場合に超音波を選択する。また、造影剤腎症を避けるために腎疾患が基礎疾患にある方へは造影剤使用を控える。FNAB(fine needle aspiration biopsy:穿刺吸引生検)については、施行に当たり重要な構造物を含んでいないことが確認できていれば進めていく。FNABでは、細胞診、グラム染色、細菌培養、抗酸菌培養を通じて得られる情報が多い。FNABでの悪性腫瘍診断については、感度77~97%、特異度93~100%である。※本内容は、プライマリケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) James Haynes, et al. Am Fam Physician. 2015; 91: 698-706.

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テリパラチドは椎体圧潰を予防する?

 椎体骨折はしばしば骨粗鬆症患者に認められる。骨粗鬆症薬テリパラチド(商品名:フォルテオほか)は骨癒合促進作用も期待されていることから、中通総合病院(秋田県秋田市)の土江 博幸氏らは、骨粗鬆症性新鮮椎体骨折に対するテリパラチドの椎体圧潰予防効果について検討した。その結果、テリパラチド20μg/日連日投与はリセドロネート(商品名:アクトネルほか)17.5mg/週投与に比べ、腰痛、椎体圧潰率、局所後弯角ならびにクレフト発生率が有意に低かった。結果を踏まえて著者は「テリパラチドは、脊椎骨折の後弯脊椎圧潰進行予防効果が示唆される」と述べている。Journal of Bone and Mineral Metabolism誌オンライン版2015年3月14日号の掲載報告。  検討は、骨粗鬆症性新鮮椎体骨折34例48椎体を対象に行われた。 テリパラチド20μg/日(連日投与群)、テリパラチド56.5μg/週(週1回投与群)またはリセドロネート17.5mg/週(RIS群)を投与した(それぞれ10例20椎体、11例15椎体および13例14椎体)。 評価項目は、腰痛(視覚アナログスケール[VAS])、骨折椎体圧潰率、局所後弯角および骨折椎体内のクレフト発生率で、骨粗鬆症治療薬を服用していない22例の椎体骨折患者を対照として評価した。 主な結果は以下のとおり。・治療開始時は、あらゆる評価項目について、有意差はみられなかった。・初回受診後8週後および12週後において、VASが、テリパラチド連日投与群ならびに週1回群がRIS群より有意に低かった(p<0.05)。・圧潰率および局所後弯角は、8週後および12週後において、テリパラチド連日投与群が、RIS群ならびに対照群より有意に低く(それぞれp<0.01およびp<0.05)、またテリパラチド週1回群は対照群より有意に低かった(p<0.05)。・クレフト発生率について、テリパラチド連日投与群はRIS群より有意に低かった(p<0.05)。

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甲状腺がん〔thyroid cancer〕

1 疾患概要■ 概念・定義甲状腺がんは甲状腺腫に発生する悪性腫瘍である。そのほとんどは甲状腺濾胞上皮に由来する分化がん(乳頭がん、濾胞がん)である。まれに甲状腺内に存在する傍濾胞細胞(C細胞)から髄様がんが生じる。■ 疫学わが国における甲状腺がん罹患率は、緩やかながら上昇傾向にある。2003年における推定罹患数は8,069人とされ、年齢調整罹患率は男性 2.56、女性 7.17(人口10万対)であった。一方、2007年における甲状腺がん死亡者数は1,558人で徐々に増加傾向ではあるが、年齢調整死亡率は男性 0.84、女性 1.61(人口10万対)と上昇傾向にはない。■ 病因甲状腺がんの発生には多くの要因が関与していると思われるが、その大半は明らかになっていない。ただし、わが国の原爆被爆や海外での原子炉事故などの経過から、とくに若年者において、放射線による外部被曝や内部被曝が甲状腺がん発生を増加させることが観察されている。また、甲状腺髄様がんの一部は遺伝子変異によって家族性に発症する。■ 症状自覚症状を呈さないことが多い。最近では頸動脈エコー検査で偶発的に発見される機会も増えている。腫瘍が大きくなれば頸部腫瘤やそれによる違和感を訴えることがある。甲状腺がんの進行に伴って大きな転移リンパ節を形成する、あるいは局所浸潤によって嗄声(反回神経麻痺)や血痰(気管浸潤)などの症状を呈することもある。■ 分類甲状腺に発生する悪性腫瘍のおおよその内訳は90%が乳頭がん、5%が濾胞がん、残りの5%が髄様がん・未分化がん・悪性リンパ腫である。甲状腺がんは、これらの病理組織学的診断によって臨床像が異なることが特徴である。■ 予後乳頭がん、濾胞がん、髄様がんでは長期の生命予後を期待できる。ただし、一部には再発を繰り返してがん死に至る症例もあり、初回治療の段階でそうした危険を見極めることが大切である。一方、未分化がんはきわめて予後不良の甲状腺がんである。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 身体診察触診は甲状腺がん診断の基本である。正常甲状腺は触れない。したがって触診で甲状腺を触れたら、何らかの理由があると考えるべきである。とくに乳頭がんの触診所見は特徴的である。腫瘤は硬く、辺縁が不整で表面は不平滑、可動性に乏しいことが多い。気管などの周囲臓器や組織へ浸潤すれば腫瘍は固定し、嗄声を呈することがある。転移リンパ節が腫大して触知できる場合もある。髄様がんも似た所見を呈する。一方、濾胞がんでは良性腫瘍との鑑別が難しい。未分化がんは日一日と増大する。大きな腫瘤を形成し、嚥下障害や嗄声などの症状を呈する。腫瘤の圧迫によって、あるいは気管内への浸潤によって、時に気道狭窄(呼吸困難)を来す。しばしば疼痛を伴い、発熱をみることもある。■ 血液検査橋本病あるいはバセドウ病を合併しない限り、甲状腺機能には異常がない。髄様がんではカルシトニンとCEAが高値を示す。■ 画像検査頸部超音波検査が最もよく使われる。簡便で検査費用も高額ではなく、熟練した検者が施行すれば短時間で済み、診断能も高い。CT検査は甲状腺がんと診断がついたあとで、その進行度合いを診断するのに適している。MRI検査の有用性は限定的であり、PET検査は有用ではない。■ 細胞診断穿刺吸引細胞診を行って病理組織診断を推定する。細胞診断は甲状腺悪性腫瘍全体の90%、良性腫瘍の95%で的確に診断できるが10%の偽陰性(悪性の見逃し)、5%の偽陽性(過大診断)がある。ただし細胞診で濾胞がんの診断を推定することは困難である。現状では濾胞腺腫の可能性を含めて「濾胞性腫瘍」と診断されることが多い。針生検は甲状腺腫瘍においても、より正確な診断を可能とする診断法ではあるが、解剖学的理由から検査に伴う危険性を考慮し、一般的には推奨されない。大きな腫瘍で未分化がんや悪性リンパ腫を疑うときには適応がある。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 乳頭がん外科治療は進行度に応じて甲状腺切除とリンパ節郭清の範囲を決定する。わが国の『甲状腺腫瘍診療ガイドライン2010年版』では、再発の危険が低いと考えられる症例(腫瘍径2cm以下、リンパ節転移なし、遠隔転移なし)には、腫瘍側の甲状腺葉のみを切除して甲状腺機能の温存を図る術式を推奨している。一方、進行がんでは甲状腺を全摘し、術後に放射性ヨウ素内用療法と甲状腺刺激ホルモン(TSH)抑制療法を実施する方針を勧めている。リンパ節の切除(郭清)範囲は転移の状況によって異なる。明らかな転移を認めない症例に対する予防的郭清は、気管周囲リンパ節領域のみにとどめるか、あるいは患側の内深頸リンパ節領域までとする。■ 濾胞がん手術時にすでに血行転移などを認めて濾胞がんの診断が明らかであれば、甲状腺全摘を行う。そうでなければ患側葉切除を行い、病理組織診断で広汎浸潤型と判明すれば、追加で対側葉を切除する(補完甲状腺全摘)。広汎浸潤型では血行転移の懸念があるので、術後に放射性ヨウ素内用療法とTSH抑制療法を行う。■ 髄様がん発生様式には家族性と散発性とがある。前者は多発性内分泌腺腫瘍症2型(multiple endocrine neoplasia type 2: MEN2)であり、がん原遺伝子であるRETに点突然変異が生じて発症する。他の構成病変として褐色細胞腫や副甲状腺機能亢進症を合併することがある。甲状腺の手術前にまず褐色細胞腫発症の有無を確認し、あれば髄様がんの手術に先んじてその治療を行う。MEN2の髄様がんは、両側葉に発症するので甲状腺全摘と進行度に応じたリンパ節郭清を行う。副甲状腺機能亢進症を合併していれば、4腺すべてを摘出して一部を前腕の筋肉内に移植する(全摘+自家移植)か、または腫大の最も少ない1腺の一部を温存して他をすべて摘出する(亜全摘)。散発性では乳頭がんに準じた手術を行う。放射性ヨウ素内用療法やTSH抑制療法の適応はない。■ 未分化がん診断と治療に準緊急の対応を必要とする。腫瘍の急速な増大を特徴とし、気道狭窄もまれではない。甲状腺分化がん、とくに乳頭がんを発生母地とすることが多い。年余にわたって分化がんが診断されず、高齢者になって悪性度のきわめて高い未分化がんに転化するものと考えられている。外科治療は困難であることが多い。腫瘍を摘出できても遠隔転移が高率で起き、予後はきわめて不良である。化学療法や放射線外照射治療を併用することが治療効果を高めると期待されるが、効果は限定的である。一方で症状緩和の対応は、診断の早期から行う必要がある。4 今後の展望■ 放射性ヨウ素内用療法分化がん血行転移症例に対する放射性ヨウ素(I-131)100mCi治療が可能な入院施設は非常に限られており、治療までの待ち時間が今後の課題となっている。一方、補助療法としての30mCi外来内用療法(アブレーション)が2011年から実施可能となった。高危険群に対するアブレーションの評価は今後待たれる。■ 分子標的薬分化がんおよび髄様がんの再発進行例に対する分子標的薬の有効性が、海外から報告されている。わが国での使用はいまだ承認されていないが、有効な手立ての少ない甲状腺がんの治療に役立つことが期待される。5 主たる診療科内分泌外科、耳鼻咽喉科、頭頸部外科6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報日本癌治療学会(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報: 甲状腺腫瘍診療ガイドライン 2010年版の閲覧ができる)1)日本内分泌外科学会、日本甲状腺外科学会編. 甲状腺腫瘍診療ガイドライン2010年版. 金原出版; 2010.

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