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速報レポート よりよい吸入アドヒアランスをサポートする1アクションの新規吸入デバイス「エリプタ」

グラクソ・スミスクライン株式会社は、2013年12月9日、24時間の効果を1日1吸入で維持する新規の吸入ステロイド/長時間作用性β2刺激配合薬「レルベア エリプタ」を発売した。「レルベア エリプタ」は、24時間の呼吸機能改善効果と1日1吸入という利便性を併せ持つという利点だけでなく、1アクションの新規吸入デバイス「エリプタ」を採用している。気管支喘息の治療は、有用性の高い新しい薬剤の開発とともに進歩している。しかしながら、本邦の2011年の大規模研究では、過去1ヵ月間に喘息症状を経験している患者さんの割合は、成人で62%である1)。また、欧米でも良好に管理できていない(Uncontrolled Asthma)喘息患者は約5割との報告もある2)。このように十分な長期管理が実現できていない実態が多数報告されている。これらの問題を解決するには、患者さんの治療アドヒアランスの向上が不可欠であり、そのためには、医療者の吸入指導と共に吸入デバイスの操作性向上が重要な要素だといえよう。しかしながら、従来のドライパウダー製剤では、吸入を行うまでに、デバイスを適切にセットする行程が必要であった。複雑な操作を必要とする場合には、患者さんの理解不足や誤解による吸入不備も少なくなかったという。つまり、簡便で確実な吸入を可能とするデバイスが待ち望まれていたわけである。今回採用された「エリプタ」は、カバーを開けるだけの1アクションという簡便な操作で吸入が可能であり、これまでのドライパウダー製剤が抱えていた課題の解決に大きく近づいたデバイスといえる。ケアネットでは、この新デバイスに注目し、グラクソ・スミスクライン株式会社の協力をいただき、新規吸入デバイス「エリプタ」の吸入指導ムービーを紹介させていただくこととした。動画提供:グラクソ・スミスクライン株式会社参考文献1)足立満ほか.アレルギー・免疫2012;19:1562-1570.2)Demoly P, et al. Eur Respir JRev.2012;21:66-74.

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国際疼痛学会が神経障害性疼痛に対する侵襲的治療について新しい勧告を発表

 神経障害性疼痛は、薬物療法あるいは非侵襲的治療に不応性のことが多い。国際疼痛学会の神経障害性疼痛部会は、神経障害性疼痛の侵襲的治療に関するシステマティックレビュー、臨床試験および既存のガイドラインを評価し、勧告を発表した。同部会を代表し米国・ロチェスター大学のRobert H. Dworkin氏らは、今後の研究の優先事項としてはさまざまな侵襲的および非侵襲的治療の無作為臨床試験、長期研究および直接比較試験が挙げられる、とまとめている。PAIN誌2013年11月(オンライン版2013年6月7日)。 以下の末梢性および中枢性神経障害性疼痛患者における神経ブロック、脊髄電気刺激(SCS)、髄腔内薬物投与および脳神経外科的治療に関するエビデンスがまとめられた。・帯状疱疹および帯状疱疹後神経痛(PHN)・有痛性糖尿病性およびほかの末梢神経障害・脊髄損傷後神経障害性疼痛、脳卒中後の中枢性疼痛・神経根障害および腰椎術後疼痛症候群(FBSS)・複合性局所疼痛症候群(CRPS)・三叉神経痛と末梢神経障害 主な勧告内容は以下のとおり。・質の高い臨床試験が不足しているため、強い推奨を行うことはできない。・有効性と安全性の程度を含むエビデンスの量および一貫性に基づき、以下の4治療を「弱い推奨」とする。 1)帯状疱疹に対する硬膜外注射 2)神経根障害に対するステロイド注射 3)FBSSに対するSCS 4)CRPSタイプ1に対するSCS・PHNに対する交感神経ブロック、神経根障害に対する高周波療法の使用は推奨しない。・これらの侵襲的治療は、可能な限り無作為化臨床試験の一部として行うか、または登録研究に記録するかのどちらかでなければならない。 ~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・知っておいて損はない運動器慢性痛の知識・身体の痛みは心の痛みで増幅される。知っておいて損はない痛みの知識・脊椎疾患にみる慢性疼痛 脊髄障害性疼痛/Pain Drawingを治療に応用する

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軽~中等症アトピー治療にピメクロリムスの選択肢も

 ドイツ・ミュンスター大学のThomas Luger氏らは、アトピー性皮膚炎(AD)に対するピメクロリムス1%クリーム(国内未承認)の公表された臨床データのレビューを行った。その結果、小児および成人の軽症~中等症ADの治療において、とくに敏感肌の部分について、ピメクロリムスは治療選択薬の一つとなりうる可能性があることを報告した。European Journal of Dermatology誌オンライン版2013年11月4日号の掲載報告。 ピメクロリムス1%クリームは、ADに有効な非ステロイド局所抗炎症治療薬だが、研究グループは、AD患者の医療ニーズに、ピメクロリムスはどのように当てはまるのか、レコメンデーションを明らかにすることを目的にレビューを行った。 主な所見は以下のとおり。・臨床試験において、ピメクロリムスを早期に用いることが病状再燃への進行を抑制し、迅速にかゆみを改善し、QOLを有意に高めることが実証されていた。・患者は、塗布が容易な薬剤を求めていた。そしてそのことが治療アドヒアランスを改善することに結びついていた。・局所ステロイド薬とは対照的に、ピメクロリムスは皮膚萎縮や表皮バリア機能障害を引き起こさず、敏感肌のAD治療において高い有効性を示した。・また、ピメクロリムスは局所ステロイド薬と比べて皮膚感染症を抑制し、そのほかのステロイド関連の副作用(皮膚線条、末梢血管拡張、視床下部・下垂体・副腎系抑制など)がなかった。・さらに、ピメクロリムスには、相当量のステロイド用量減量効果があることが、付加的ベネフィットとして示された。・著者は、「これらのデータに基づき、軽症~中等症のAD患者(疾患徴候や症状が軽症ADと確認された患者)の新たな治療アルゴリズムとして、ピメクロリムスは第一選択薬として推奨される」、また「局所ステロイド薬の治療後の軽症~中等症ADに対してもピメクロリムスは推奨される」と提案した。・そのほかにも、病変消退後のピメクロリムスによる維持療法は、病状再燃予防に効果がある可能性も示唆されていた。・以上を踏まえ著者は、「ピメクロリムスの臨床プロファイルは、小児および成人の軽症~中等症AD(とくに敏感肌部分)の第一選択薬となりうる可能性を示唆していた」と結論している。

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中等度~重度の慢性腰痛にトラマドール・アセトアミノフェン配合剤が有用

 トラマドール塩酸塩・アセトアミノフェン配合剤徐放性製剤(TA-ER、商品名:トラムセット配合錠)は、2つの有効成分の相乗作用により迅速かつ長期にわたる鎮痛効果を発揮することが示されている。韓国・ソウル大学ボラメ病院のJae Hyup Lee氏らは、第3相二重盲検プラセボ対照並行群間試験により、同製剤が中等度~重度の慢性腰痛の鎮痛と、機能およびQOLの改善においてプラセボより優れており、忍容性も良好であることを明らかにした。Clinical Therapeutics誌オンライン版2013年11月1日号の掲載報告。 本研究の目的は、慢性腰痛に対するトラマドール塩酸塩75mg/アセトアミノフェン650mg配合剤徐放性製剤(TA-ER)の有効性および安全性を評価することであった。 対象は、従来の非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)またはシクロオキシゲナーゼ-2選択的阻害薬で十分なコントロールが得られなかった、中等度~重度慢性腰痛(10cmの視覚的アナログスケールで4cm以上、3ヵ月以上持続)患者245例で、TE-ER群またはプラセボ群に無作為化しそれぞれ4週間投与した。 有効性の主要評価項目は、ベースラインから最終評価時までの疼痛強度の変化率が30%以上の患者の割合であった。 主な結果は以下のとおり。・疼痛強度の変化率が30%以上の患者の割合は、最大解析対象集団および治験実施計画書に適合した対象集団のいずれの解析においても、TA-ER群がプラセボ群より有意に高かった(p<0.05)。 ・鎮痛成功率は、8日目と15日目においてTA-ER群がプラセボ群より有意に高かった。 ・TA-ER群ではプラセボ群と比較して、韓国版SF-36の身体の日常役割機能、全般的健康および健康状態の変化、韓国版オスウェストリー障害指数の身の回りのことに関する項目で有意な改善を認めた。・疼痛コントロールの患者評価において、「とても良い」と回答した患者の割合は、プラセボ群よりTA-ER群で有意に多かった。・有害事象は、プラセボ群よりTA-ER群で高頻度にみられた。最も多い有害事象は吐き気、めまい、便秘および嘔吐であった。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・知っておいて損はない運動器慢性痛の知識・身体の痛みは心の痛みで増幅される。知っておいて損はない痛みの知識・脊椎疾患にみる慢性疼痛 脊髄障害性疼痛/Pain Drawingを治療に応用する

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エキスパートに聞く!「糖尿病診療」Q&A 2013 Part1

日常診療で抱く疑問に、専門医がわかりやすく、コンパクトに回答するコーナーです。今回は「糖尿病診療」のなかでも「インスリン療法」について、会員医師からの疑問にご回答いただきました。明日の診療から使えるコツをお届けします。早期から基礎インスリン療法を開始すべきかどうか教えてください。2型糖尿病診断初期から基礎インスリンのみならず、強化インスリン療法を用いて血糖値を正常化することが、経口糖尿病薬で治療するよりも、その後インスリン治療を止めて1年後の膵β細胞機能にとって望ましく、無治療でいられる人の割合も高いことが報告されています1)。また、平均推定罹病期間4.5年の2型糖尿病においても、中間型インスリンの2回打ちと超速効型インスリン3回の強化インスリン療法で、4週間血糖値を正常近くまでコントロールすることがインスリンのGIPとGLP-1に対する反応を改善することも報告されています2)。わが国においても、私の前職の順天堂大学にて、1型/2型糖尿病において持効型インスリンが外来で安全に使用でき、非常に有効な手段であることを報告してきました3)。HbA1c7%以上が続いている場合には、基礎インスリンによるBasal-supported Oral Therapy(BOT)でもよいので4)、積極的にインスリンを導入することが大切でしょう。●引用文献1)Weng J, et al. Lancet. 2008; 371: 1753-1760.2)Hojberg PV, et al. Diabetologia. 2009; 52: 199-207.3)Kanazawa Y, et al. Endocr J. 2007; 54: 975-983.4)弘世貴久. 続これなら簡単 今すぐできる外来インスリン導入. メディカルレビュー社; 2009.インスリンを使用したほうがよい患者さん、そうでない患者さんの鑑別をご教示ください。(1) 絶対的適応1型糖尿病が疑われる例、血糖コントロール不良の妊娠希望の女性、急性代謝失調発症者、または発症する危険性が高い患者さん(2) 相対的適応SU薬2次無効、無治療高血糖放置例、肝疾患、腎疾患合併例(3) 一時的なインスリン療法の適応急性感染症などのシックデイ、ステロイド治療時、中程度以上の外科手術時さらに詳しい解説は、以下の文献をご参照ください。●熊代尚記: 治療の目的と適応となる症例. インスリン療法最前線 第2版. 河盛隆造監, 弘世貴久, 綿田裕孝編, 日本医事新報社; 2008.p.21-24.●熊代尚記: インスリン療法開始の適応. 糖尿病薬物療法 BRUSHUP. 河盛隆造監, 綿田裕孝, 弘世貴久編, 日本医事新報社; 2011.p.82-84.インスリン導入を恐れる患者さんを説得するのに、よい言葉やいい回しをご教示ください。初めに血糖コントロール状況と合併症について説明します。自覚症状がなくても、慢性の高血糖が3大合併症や大血管障害の発症に関連していることを説明します。次に、患者を取り巻く家族や社会の状況を一緒に考え、本当に合併症が起きてもよいのか、合併症で身体が不自由な生活になっても困らないか話し合います。独り身で将来に希望がないような状況では、血糖コントロールをよくすることにまったく関心を持っていただけないかもしれません。しかし、糖尿病で通院を続けている患者さんたちは、何とかして欲しいという気持ちを少なからず持っているはずです。大事な家族や仕事、趣味などがあれば、それを守るために何とかしましょうと説得します。入院が望ましくても忙しくて入院ができない患者さんには、外来でも改善できますと安心させます。ここまで話して、インスリンについて話をします。安全性・有効性について、私はよく妊婦の話を出します。妊娠して、赤ちゃんがお腹にいて、糖尿病になる患者さんにわが国で唯一認められている治療薬がインスリンです。最も安全で生理的な薬だと説明します。そして、量を増やすことで確実に血糖値を下げることができると説明します。早ければ早いほど少量のインスリンで済むことが多いとも伝えます。さらに、どうしても不安、不信に思う患者さんには一時的な使用でもまったく構わないと伝えます。このような話に10~20分程度を要しますが、これで受け入れてもらえることが多いです。外来診療という限られた時間内で、どのようにインスリンを導入し、その後のフォローをしていけばよいか教えてください。インスリン注射に同意された後、実際にインスリンを導入する際に重要となるのは、いきなり低血糖を起こさないことです。ごく少量の基礎インスリン4単位くらいから始めると低血糖は問題になりません。受け入れの難しそうな患者さんには、まずはインスリン自己注射のみを指導して、後日、血糖自己測定(SMBG)を導入するほうが、抵抗が少ないです。実は痛みも、インスリン注射ではほとんどありませんが、SMBGでは針が太めでそこそこ痛いのです。また、効果が少ないインスリン量で始めているので、せっかく始めたインスリン療法に幻滅する恐れもあります。したがって、始めはインスリン自己注射のみ指導することが一つの有効な手段です。SMBG導入後、数日でインスリンの効果判定ができますが、診察間隔は予約状況次第です。数日おきに診察できるなら速やかにきめ細かくインスリン調節ができますが、予約の関係で1~数週間おきのフォローになるなら緩徐なインスリン調節が必要でしょう。このようなインスリン導入の際には、それまでの内服薬を一気に中止しないことも、導入後の急激な悪化を防ぐために重要です。そのほか、外来での導入では、看護師やその他のスタッフ教育もしっかり行い、協力していただくことが不可欠です。インスリンとほかの薬剤との安全な組み合わせの方法や、治療中に専門医へ紹介するタイミングなどをご教示ください。持効型インスリンとの併用としては、速効型インスリン分泌促進薬1)やα-グルコシダーゼ阻害薬やDPP-4阻害薬2)がよいでしょう。持効型インスリンは食前の血糖コントロールに適しているので、食後の血糖コントロールに適した内服を組み合わせることが望ましいです。一方、超速効型インスリンとの併用としては、グリメピリド(商品名:アマリール)0.5mgなどのごく少量のSU薬を夕食時に内服するかビグアナイド薬、チアゾリジン薬との併用がよいでしょう。超速効型インスリンは、食後の血糖コントロールに適しており、上述の内服で食前の血糖コントロールにも対応することができます。いずれの場合も注射薬の種類だけでなく病態によっても併用薬の選択肢は変わってきます。最近は高齢化で、患者さんも糖尿病以外にさまざまな合併症を患っていたりするので、併用する前にそれぞれの薬の適応の良否も判断しなければなりません。したがって、病状が複雑になってきた場合には、ご遠慮なく専門医へ紹介いただくのがよろしいかと思われます。●引用文献1)Kumashiro N, et al. Endocr J. 2007; 54: 163-166.2)Barnett AH, et al. Lancet. 2013 Aug 12.[Epub ahead of print].

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ビタミンDは気管支喘息にも効果あり

 中等症から重症の気管支喘息の管理において、ビタミンDは標準治療の補助剤となることがインドのラオトゥーララム記念病院のMadhu Yadav氏らにより報告された。The Indian Journal of Pediatrics誌オンライン版2013年11月6日の掲載報告。 本研究の目的は、中等症から重症の気管支喘息を有する小児に対し、ビタミンDが標準治療の補助剤としてどのような治療的な役割を果たすのかを定義することである。 対象は、呼吸器または喘息のクリニックを受診した小児喘息の男女100例。喘息の診断は既往歴と臨床検査に基づき行い、割り付けは封筒法により無作為に行った。Global Initiative for Asthma(GINA)に基づいた治療に加え、一方のグループでは経口のビタミンD3製剤(コレカルシフェロール)60,000IU/月を6ヵ月間投与し、他方のグループでは、プラセボの粉末をオブラートに包み投与した(二重盲検)。 毎月の受診時に、重症度の変化、管理状況、最大呼気速度、ステロイドの投与量、増悪の回数、救急搬送の回数を調べた。 主な結果は以下のとおり。プラセボ投与群に比べて、ビタミンD投与群では・増悪の回数が有意に低かった(p=0.011)。・最大呼気速度が有意に増加した(p=0.000)。・ステロイドの使用と救急搬送が有意に低かった(それぞれ、p=0.013、p=0.015)。・より早期に症状が安定し、6ヵ月後の喘息重症度が有意に低下していた(p=0.016)。

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気管支喘息の診察中に容態急変し10日後に脳死と判定された高校生のケース

自己免疫疾患最終判決判例時報 1166号116-131頁概要約10年来気管支喘息と診断されて不定期に大学病院などへ通院していた男子高校生の症例。しばらく喘息発作は落ち着いていたが、早朝から喘息発作が出現したため、知人から入手した吸入器を用いて気管支拡張薬を吸入した。ところがあまり改善がみられないため某大学病院小児科を受診。診察時チアノーゼ、肩呼吸がみられたため、酸素投与、サルブタモール(商品名:ベネトリン)の吸入を行った。さらにヒドロコルチゾン(同:ソル・コーテフ)の静注を行おうとした矢先に突然心停止・呼吸停止となり、ただちに救急蘇生を行ったが低酸素脳症となり、約10日後に脳死と判定された。詳細な経過患者情報約10年来気管支喘息と診断されて不定期に大学病院などへ通院していた男子高校生経過1978年(4歳)頃 気管支喘息を発症し、病院を転々として発作が起きるたびに投薬を受けていた。1988年(14歳)8月19日某大学病院小児科受診。8月20日~8月27日ステロイド剤からの離脱と発作軽減の目的で入院。診断は気管支喘息、アトピー性皮膚炎。IgE RAST検査にて、ハウスダスト(3+)、ダニ(3+)、カモガヤ(3+)、小麦(1+)、大豆(1+)であったため、食事指導(小麦・大豆除去食)、アミノフィリン(同:ネオフィリン)静注により発作はみられなくなり、ネオフィリン®、オキサトミド(同:セルテクト(抗アレルギー剤))経口投与にて発作はコントロールされた。なお、経過中に呼吸機能検査は一度も施行せず。また、簡易ピークフローメーターも使用しなかった。10月20日喘息発作のため2日間入院。11月20日喘息発作のため救急外来受診。吸入用クロモグリク(同:インタール)の処方を受ける(途中で中止)。12月14日テオフィリン(同テオドール)の処方開始(ただし患者側のコンプライアンスが悪く不規則な服用)。1989年4月22日喘息発作のため4日間入院。6月6日プロカテロール(同:メプチン)キッドエアーを処方。1990年3月9日メプチン®キッドエアーの使用法に問題があったので中止。4月高校に入学と同時に発作の回数が徐々に少なくなり、同病院への通院回数・投薬回数は減少。母親は別病院で入手した吸入器を用いて発作をコントロールしていた。1991年6月7日同病院を受診し小発作のみであることを申告。ベネトリン®、ネオフィリン®、インタール®点鼻用などを処方された。8月17日07:30「喘息っぽい」といって苦しそうであったため知人から入手していた吸入器を用いて気管支拡張薬を吸入。同時に病院からもらっていた薬がなくなったため、大学病院小児科を受診することにした。09:00小児科外来受付に独歩にて到着。09:10顔色が悪く肩呼吸をしていたため、順番を繰り上げて担当医師が診察。診察時、喘息発作にあえぎながらも意識清明、自発呼吸も十分であったが、肺野には著明なラ音が聴取された。軽度のチアノーゼが認められたため、酸素投与、ベネトリン®の吸入を開始。09:12遅れて到着した母親が「大丈夫でしょうか?」と尋ねたところ、担当医師は「大丈夫、大丈夫」と答えた。09:15突然顔面蒼白、発汗著明となり、呼吸停止・心停止。ただちにベッドに運び、アンビューバック、酸素投与、心臓マッサージなどの蘇生開始。09:20駆けつけた救急部の医師らによって気管内挿管。アドレナリン(同:ボスミン)静注。09:35心拍再開。10:15人工呼吸を続けながら救急部外来へ搬送し、胸部X線写真撮影。10:38左肺緊張性気胸が確認されたため胸腔穿刺を施行したところ、再び心停止。ただちにボスミン®などを投与。11:20ICUに収容したが、低酸素脳症となり意識は回復せず。8月27日心停止から10日後に脳死と判定。10月10日11:19死亡確認。当事者の主張患者側(原告)の主張1.大学病院小児科外来に3年間も通院していたのだから、その間に呼吸機能検査をしたり、簡易ピークフローメーターを使用していれば、気管支喘息の潜在的重症度を知り、呼吸機能を良好に維持して今回のような重症発作は予防できたはずである2.発作当日も自分で歩いて受診し、医師の目前で容態急変して心停止・呼吸停止となったのだから、けっして手遅れの状態で受診したのではない。呼吸停止や心停止を起こしても適切な救急処置が迅速に実施されれば救命できたはずである病院側(被告)の主張1.日常の療養指導が十分であったからこそ、今回事故前の1年半に喘息発作で来院したのは1度だけであった。このようにほとんど喘息発作のない患者に呼吸機能検査をしたり、簡易型ピークフローメーターを使用する必要性は必ずしもなく、また、困難でもある2.小児科外来での治療中に急激に症状が増悪し、来院後わずか5分で心停止を起こしたのは、到底予測不可能な事態の展開である。呼吸停止、心停止に対する救急処置としては時間的にも内容的にも適切であり、また、心拍動が再開するまでに長時間を要したのは心衰弱が原因として考えられる裁判所の判断1.当時喘息発作は軽快状態にあり、ほとんど来院しなくなっていた不定期受診患者に対し呼吸機能検査の必要性を改めて説明したうえで、発作のない良好な時期に受診するよう指導するのは実際上困難である。簡易型ピークフローメーターにしても、不定期に受診したり薬剤コンプライアンスの悪い患者に自己管理を期待し得たかはかなり疑問であるので、慢性期治療・療養指導に過失はない2.小児科外来のカルテ、看護記録をみると、容態急変後の各処置の順序、時刻なども不明かつ雑然とした点が多く、混乱がみられる点は適切とはいえない。しかし、急な心停止・呼吸停止など救急の現場では、まったく無為無能の呆然たる状態で空費されているものではないので、必ずしも血管ルート確保や気道確保の遅延があったとはいえない患者側7,080万円の請求を棄却(病院側無責)考察このケースは結果的には「病院側にはまったく責任がない」という判決となりましたが、いろいろと考えさせられるケースだと思います。そもそも、喘息発作を起こしながらも歩いて診察室まできた高校生が、医師や看護師の目の前で容態急変して救命することができなかったのですから、患者側としては「なぜなんだ」と考えるのは十分に理解できますし、同じ医師として「どうして救えなかったのか、もしやむを得ないケースであったとしても、当時を振り返ってみてどのような対処をしていれば命を助けることができたのか?」と考えざるを得ません。そもそも、外来受診時に喘息重積発作まで至らなかった患者さんが、なぜこのように急激な容態急変となったのでしょうか。その医学的な説明としては、paradoxical bronchoconstrictionという病態を想定すればとりあえずは納得できると思います。これは気管支拡張薬の吸入によって通常は軽減するはずの喘息発作が、かえって死亡または瀕死の状態を招くことがあるという概念です。実際に喘息死に至ったケースを調べた統計では、むしろ重症の喘息とは限らず軽・中等症として経過していた症例に突然発症した大発作を契機として死亡したものが多く、死亡場所についても救急外来を含む病院における死亡例は全体の62.9%にも達しています(喘息死委員会レポート1995 日本小児アレルギー学会)。したがって、初診からわずか5分程度で容態が急変し、結果的に救命できなかったケースに対し「しょうがなかった」という判断に至ったのは、(同じケースを担当した場合に救命できたかどうかはかなり心配であるので)ある意味ではほっと胸をなで下ろすことができると思います。しかし、この症例を振り返ってみて次に述べるような問題点を指摘できると思います。1. 発作が起きた時にだけ来院する喘息患者への指導方針気管支喘息で通院している患者さんのなかには、決まったドクターを主治医とすることなく発作が起きた時だけ(言葉を換えると困った時にだけ)救急外来を受診するケースがあると思います。とくに夜間・深夜に来院し、吸入や点滴でとりあえずよくなってしまう患者さんに対しては、その場限りの対応に終始して昼間の外来受診がなおざりになることがあると思います。本来であればきちんとした治療方針に基づいて、適宜呼吸機能検査(本ケースでは経過中一度も行われず)をしたり、定期的な投薬や生活指導をしつつ発作のコントロールを徹底するべきであると思います。本件では、勝手に吸入器を入手して主治医の知らないところで気管支拡張薬を使用したり、処方した薬をきちんと飲まないで薬剤コンプライアンスがきわめて悪かったなど、割といい加減な受療態度で通院していた患者さんであったことが、医療側無責に至る判断に相当な影響を与えたと思います。しかし、もしきちんと外来受診を行って医師の指導をしっかり守っていた患者さんであったのならば、まったく別の判決に至った可能性も十分に考えられます(往々にして裁判官が患者に同情すると医師側はきわめて不利な状況になります)。したがって、都合が悪くなった時にだけ外来受診するような患者さんに対しては、「きちんと昼間の通常外来を受診し、病態評価目的の検査をするべきである」ことを明言し、かつそのことをカルテに記載するべきであると思います。そうすれば、病院側はきちんと患者の管理を行っていたとみなされて、たとえ結果が悪くとも責任を追及されるリスクは軽減されると思います。2. 喘息患者を診察する時には、常に容態急変を念頭におくべきである本件のように医師の目前で容態急変し、為すすべもなく死の転帰をとるような患者さんが存在することは、大変残念なことだと思います。判決文によれば心肺停止から蘇生に成功するまで、病院側の主張では20~25分程度、患者側主張(カルテの記載をもとに判断)では30~35分と大きな隔たりがありました。このどちらが正しいのか真相はわかりませんが(カルテには患者側主張に沿う記載があるものの、担当医は否定し裁判官も担当医を支持)、少なくとも10分以上は脳血流が停止していたか、もしくは不十分であった可能性が高いと思います。したがってもう少し早く蘇生に成功して心拍が再開していれば、低酸素脳症やその後の脳死状態を回避できた可能性は十分に考えられると思います。病院側が「その間懸命な蘇生努力を行ったが、不可抗力であった。時間を要したのは心衰弱が重篤だったからだ」と主張する気持ちは十分に理解できますが、本件では容態急変時に外来担当医がそばにいて(患者側主張では放置されたとなっていますが)速やかな気管内挿管が行われただけに、やりようによってはもう少し早期の心拍再開は可能であったのではないでしょうか。本件を突き詰めると、心臓停止の間も十分な換気と心臓マッサージによって何とか脳血流が保たれていれば、最悪の結果を免れることができたのではないかと思います。また、判決文のなかには触れられていませんが、本件で2回目の心停止を起こしたのは緊張性気胸に対する穿刺を行った直後でした。そもそも、なぜこのような緊張性気胸が発生したのかという点はとくに問題視されていません。もしかすると来院直後から気胸を起こしていたのかも知れませんし、その後の蘇生処置に伴う医原性の気胸(心臓マッサージによる損傷か、もしくはカテラン針によるボスミン®心腔内投与の際に誤って肺を穿刺したというような可能性)が考えられると思います。当時の担当医師らは、目の前で容態急変した患者さんに対して懸命の蘇生を行っていたこともあって、心拍再開から緊張性気胸に気付くまで約60分も要しています。後方視的にみれば、この緊張性気胸の状態にあった60分間をもう少し短縮することができれば、2回目の心停止は回避できたかもしれませんし、脳死に至るほどの低酸素状態にも陥らなかった可能性があると思います。病院側は最初の心停止から心拍再開まで20~25分要した原因もいったん再開した心拍動が再度停止した原因も「心衰弱の程度が重篤であったからだ」としていますが、それまでたまに喘息発作がみられたもののまったく普通に生活していた高校生にそのような「重篤な心衰弱」が潜在していたとは到底思えませんので、やはり緊張性気胸の影響は相当あったように思われます。3. 医師の発言裁判では病院側と患者側で「言った言わない」というレベルのやりとりが随所にみられました。たとえば、母親(顔色がいつもとまったく違うのに気付いたので担当医師に)「大丈夫でしょうか」医師「大丈夫、大丈夫」(そのわずか3分後に心停止となっている)母親(吸入でも改善しないため)「先生、もう吸入ではだめじゃないですか、点滴をしないと」医師「点滴をしようにも、血管が細くなっているので入りません」母親「先生、この子死んでしまいます。何とかしてください」(その直後に心停止)このような会話はどこまでが本当かはわかりませんが、これに近い内容のやりとりがあったことは否めないと思います。担当医は、患者およびその家族を安心させるために「大丈夫、大丈夫」と答えたといいますが、そのわずか数分後に心停止となっていますので、結果的には不適切な発言といわれても仕方がないと思います。医事紛争に至る過程には、このような医師の発言が相当影響しているケースが多々見受けられますので、普段の言葉使いには十分注意しなければならないと痛感させられるケースだと思います。自己免疫疾患

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気管支内視鏡の生検で動脈性の出血が生じ、開胸肺切除を行ったが死亡したケース

呼吸器最終判決判例時報 1426号94-99頁概要グッドパスチャー症候群の疑いがもたれた52歳女性。確定診断のため経気管支肺生検(TBLB)が行われた。そのとき左舌区入口部に直径2~3mmの円形隆起性病変がみつかり、悪性病変を除外するために生検を行った。ところが、生検直後から多量の動脈性出血が生じ、ただちに止血処置を行ったがまもなくショック状態に陥り、人工呼吸、輸血などを行いながら開胸・左肺全摘手術が施行された。しかし意識は回復することなく、3週間後に死亡した。詳細な経過患者情報昭和42年3月28日生まれ32歳経過1987年3月腎機能障害のため某大学病院に入院し、血漿交換、人工呼吸器による呼吸管理、ステロイドなどの投与が行われた52歳女性。諸検査の結果、グッドパスチャー症候群が疑われた。4月10日精査治療目的で関連病院膠原病内科に転院。胸部X線写真では両肺野のびまん性陰影、心臓拡大、胸水などの所見がみられた。グッドパスチャー症候群に特徴的な症状(肺炎様の症状と血尿・蛋白尿)はみられたが、血中の抗基底膜抗体(抗GBM抗体)は陰性であったため、確定診断のために肺生検が予定された。4月20日経気管支肺生検(TBLB)施行。左下葉から4カ所、左上葉上腹側部から1カ所、合計5カ所から肺生検を行った。そのとき左舌区入口部に直径2~3mmの円形隆起性病変がみつかった。その性状から、良性粘膜下腫瘍、悪性新生物、肉芽腫性病変のうちいずれかであり、粘膜表面はやや赤みを帯び、表面は滑らかで、拍動はなく、やや硬い充実性の印象であったので、血管病変ではないと判断された。悪性病変を除外するために生検を行ったところ、直後から動脈性出血を生じ、気管支粘膜直下の気管支動脈を破ったことが判明した。ただちに気管支ファイバースコープを出血部位に押しつけながら出血を吸引し、アドレナリン(商品名:ボスミン)、トロンビンを局所散布した。しかし止血は得られず危篤状態に陥り、人工呼吸、心臓マッサージ、輸血、薬剤投与などの緊急措置が行われたが、動脈性の出血が持続した。4月21日止血目的の開胸手術、さらには左肺全摘術を施行したが、意識は回復せず。6月9日心不全により死亡。病理組織学的検査の結果、問題の気管支動脈は内腔約1mm以下の血管が、ループ状ないしガンマー字状になって気管支粘膜上皮に突出した病変であり、ゴムホースをねじったような走行異常であった。そして、血管壁がむき出しになっていたわけではなく、粘膜の表面が扁平上皮化生(粘膜の表面が本来その場所にはない普通の皮のようになってしまう現象)を起こしていたと推定された。このような気管支動脈の走行異常は、今まで報告されたことのない特殊な奇形であった。当事者の主張患者側(原告)の主張1.予見可能性左舌区入口部の円形隆起性病変が動脈であることを予見することは可能であり、また、予見する義務があった2.生検の必要性そもそも気管支鏡検査の目的はグッドパスチャー症候群の確定診断をつけることであり、出血の原因となった生検は予定外の検査である。しかも、生検の1ヵ月以上前から血液透析を行っており、出血性素因を有していたのだから、膠原病内科の担当医とあらためて生検の必要性を確認してから検査をするべきであり、この時点で検査をする必要性はなかった3.説明義務違反今回の大出血につながった生検は予定外のものであり、患者に対し何の説明もなく、患者の承諾もなく、さらにただちに生命・健康に重大な危険を及ぼす緊急の事情もなかった以上、TBLB終了後施術内容や危険性につき説明を加え、その承諾を得る義務があったのに怠った病院側(被告)の主張1.予見可能性下行大動脈から分岐する気管支動脈が気管支壁を越えて気管支粘膜内に存在することはきわめてまれであり、観察時には動脈性病変を示唆する所見はみられなかった。実際に本件のように非常に小さく、著明な発赤や拍動を欠いたものについては報告はないため、動脈であることの予見可能性はなかった2.生検の必要性TBLBを行った当時は透析中でもあり、肺出血による呼吸不全の既往もあったため、今後気管支鏡検査を実施できる条件の整う機会を得るのは容易ではなかった。しかも今回の病変が悪性のものであるおそれもあったから、生検を実施しないで様子をみるということは許されなかった3.説明義務違反患者から同意を得たTBLBを行う過程で、新たに緊急で生じた必要性のある検査に対し、とくにあらためて個別の説明を行わないでも説明義務違反には当たらない裁判所の判断予見可能性今回の病変は通常動脈があるとは考えられない場所に存在し、しかも扁平上皮化生によって血管の赤い色を識別することができず、血管性病変であることを予見するのは医学的にまったく不可能とは言い切れないとしても、その位置、形状、態様、色彩そのほかの状況からして、当時の医学水準に照らしても血管性病変であることを予見することは著しく困難であった。生検の必要性今回の病変は正体が不明であり、悪性腫瘍の可能性もあり、後日改めて気管支鏡検査をすることができないかもしれないという状況であった。しかも気管支鏡以外にはその病変を診断する的確な方法がなかったため、むしろそのまま放置した時は医師として怠慢であると非難されるおそれさえあったといえる。説明義務違反検査に当たってはあらゆる事態を想定してあらゆる事柄について事前に説明を施し、そのすべてについて承諾を得なければならないものとはいえない。今回の生検は当初予定していたTBLBの一部ではなく、不可避的な施術であるとはいえないが、新たに緊急に必要性の判明した検査であった。通常この生検が身体に与える影響は著しく軽微であり、TBLBの承諾を得たものであれば生検を拒否するとは到底考えられないため、改めて説明の上その承諾を得なければならないほどのものではなく、医師としての説明義務違反とはいえない。原告側合計4,516万円の請求を棄却考察今回の事案をご覧になって、多くの先生方(とくに内視鏡担当医師)は、複雑な感想をもたれたことと思います。「医療過誤ではない」という司法の判断こそ下りましたが、もし先生方が家族の立場であったのなら、なかなか受け入れがたい判決ではないでしょうか。いくら「不可抗力であった」と主張しても、結果的には気管支動脈を「動脈」とは認識できずに生検してしまい、出血大量となって死亡したのですから、「見立て違い」であったことにはかわりありません。おそらく担当医師にとってはきわめて後味の悪い症例であったと思います。同じようなケースとして、消化器内視鏡検査で食道静脈瘤を誤って生検してしまい、うまく出血をコントロールできずに死亡した事案も散見されます。消化管の内視鏡検査であれば、止血クリップを使うなどしてある程度出血のコントロールは可能ではないかと思いますが、本件のように気管支内視鏡検査で気管支腔に突出した動脈をつまんでしまうと、事態を収拾するのは相当困難であると思います。本件でも最終的には左肺を全摘せざるを得なくなりました。このように、たいへん難しい症例ではありますが、以下の2つの点については強調しておきたいと思います。1. われわれ医師がよかれと思って誠実に行った医療行為の結果が最悪であった場合に、その正当性を証明するには病理学的な裏付けがきわめて重要である本件では気管支動脈からの出血をコントロールするために左肺が全摘されたため、担当医師らが動脈とは認識できなかった「血管走行異常」を病理学的につぶさに検討することができました。その結果、「動脈とは認識できなくてもやむを得なかった」という重要な証拠へとつながり、無責と判断されたのだと思います。もしここで左肺全摘術、もしくは病理解剖が行われなかったとすると、「気管支動脈を誤認した」という事実だけに注目が集まり、まったく異なる判決になっていたかもしれません。ほかの裁判例でも、病理解剖が行われてしっかりと死亡原因が突き止められていれば、医療側無責となったかもしれない事案が数多くみられます。往々にして家族から解剖の承諾を得ることは相当難しいと思われますが、治療の結果が悪いというだけで思わぬ医事紛争に巻き込まれる可能性がある以上、ぜひとも病理学的な裏付けをとっておきたいと思います。2. 侵襲を伴う検査を行う際には細心の注意を払う必要があるという、基本事項の再確認今回の裁判では病院側の主張が全面的に採用されましたが、検査で偶然みつかった病変に対し、はたして本当に生検が必要であったのかどうかは議論のあるところだと思います。そもそも、気管支鏡検査の目的はグッドパスチャー症候群の診断を確定することにありました。そして、検査の直前には腎機能障害のため、血漿交換、人工呼吸器による呼吸管理まで行われていたハイリスク例でしたので、後方視的にみれば「診断をつける」という目的が達成されればそれで十分と考えるべきであったと思います。つまり、今回の生検は「絶対的適応」というよりも、どちらかというと「相対的適応」ではないでしょうか。偶然みつかった正体不明の病変については、「ついでだから生検しておこう、万が一でも悪性であったら、それはそれでがんをみつけてあげたのだから診断に貢献したことになる」と考えるのも同じ医師として理解はできます。しかし、この判決をそのまま受け取ると、「この患者は気管支鏡検査を受けると、ほとんどの医師は気管支内に突出した気管支動脈を動脈とは認識できず、がんの鑑別目的で『誤認』された動脈を生検されてしまい、出血多量で死亡に至る」ということになります。そもそもわれわれ医師の役目は患者さんの病気を治療することにありますので、病気を治す以前の医療行為が直接の原因となって患者さんが死亡したような場合には、いくら不可抗力といえども猛省しなければならないと思います。ぜひとも多くの先生方に本件のような危険なケースがあることを認識していただき、内視鏡検査では「ちょっとおかしいから組織を採取して調べておこう」と気軽に生検する前に、このようなケースがあることを思い出していただきたいと思います。裁判では「気管支鏡以外にはその病変を診断する的確な方法がなかったため、むしろそのまま放置した時は医師として怠慢であると非難されるおそれさえある」という考え方も首肯されはしましたが、もう一度慎重に検討することはけっして怠慢ではないと思います。われわれ医師の責務として、このような残念なケースから多くのことを学び、同じようなことがくり返されることがないよう、細心の注意を払いたいと思います。呼吸器

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NSAIDsにより消化性潰瘍が穿孔し死亡したケース

消化器概要肺気腫、肺がんの既往歴のある67歳男性。呼吸困難、微熱、嘔気などを主訴として入退院をくり返していた。経過中に出現した腰痛および左足痛に対しNSAIDsであるロキソプロフェン ナトリウム(商品名:ロキソニン)、インドメタシン(同:インダシン)が投与され、その後も嘔気などの消化器症状が継続したが精査は行わなかった。ところがNSAIDs投与から12日後に消化性潰瘍の穿孔を生じ、緊急で開腹手術が行われたが、手術から17日後に死亡した。詳細な経過患者情報肺気腫、肺がん(1987年9月左上葉切除術)の既往歴のある67歳男性。慢性呼吸不全の状態であった経過1987年12月3日呼吸困難を主訴とし、「肺がん術後、肺気腫および椎骨脳底動脈循環不全」の診断で入院。1988年1月19日食欲不振、吐き気、上腹部痛が出現(約1ヵ月で軽快)。4月16日体重45.5kg5月14日症状が安定し退院。6月3日呼吸困難、微熱、嘔気を生じ、肺気腫と喘息との診断で再入院。6月6日胃部X線検査:慢性胃炎、「とくに問題はない」と説明。6月7日微熱が継続したため抗菌薬投与(6月17日まで)。6月17日軟便、腹痛がみられたためロペラミド(同:ロペミン)投与。6月20日体重41.5kg、血液検査で白血球数増加。6月24日抗菌薬ドキシサイクリン(同:ビブラマイシン)投与。6月26日胃もたれ、嘔気が出現。6月28日食欲低下も加わり、ビブラマイシン®の副作用と判断し投与中止。6月29日再び嘔気がみられ、びらん性胃炎と診断、胃粘膜保護剤および抗潰瘍薬などテプレノン(同:セルベックス)、ソファルコン(同:ソロン)、トリメブチンマレイン(同:セレキノン)、ガンマオリザノール(同:オルル)を投与。7月4日嘔気、嘔吐に対し抗潰瘍薬ジサイクロミン(同:コランチル)を投与。7月5日嘔気は徐々に軽減した。7月14日便潜血反応(-)7月15日嘔気は消失したが、食欲不振は継続。7月18日体重40.1kg。7月19日退院。7月20日少量の血痰、嘔気を主訴に外来受診。7月22日腰痛および膝の感覚異常を主訴に整形外科を受診、鎮痛薬サリチル酸ナトリウム(同:ネオビタカイン)局注、温湿布モムホット®、理学療法を受け、NSAIDsロキソニン®を1週間分投与。以後同病院整形外科に連日通院。7月25日血尿が出現。7月29日出血性膀胱炎と診断し、抗菌薬エノキサシン(同:フルマーク)を投与。腰痛に対してインダシン®坐薬、セルベックス®などの抗潰瘍薬を投与。7月30日吐物中にうすいコーヒー色の吐血を認めたため外来受診。メトクロプラミド(同:プリンペラン)1A筋注、ファモチジン(同:ガスター)1A静注。7月31日呼吸不全、嘔気、腰と左足の痛みなどが出現したため入院。酸素投与、インダシン®坐薬50mg 2個を使用。入院後も嘔気および食欲不振などが継続。体重40kg。8月1日嘔吐に対し胃薬、吐き気止めの投薬開始、インダシン®坐薬2個使用。8月2日10:00嘔気、嘔吐が持続。15:00自制不可能な心窩部痛、および同部の圧痛。16:40ブチルスコポラミン(同:ブスコパン)1A筋注。17:50ペンタジン®1A筋注、インダシン®坐薬2個投与。19:30痛みは軽快、自制の範囲内となった。8月3日07:00喉が渇いたので、ジュースを飲む。07:30突然の血圧低下(約60mmHg)、嘔吐あり。08:50医師の診察。左下腹部痛および嘔気、嘔吐を訴え、同部に圧痛あり。腹部X線写真でフリーエアーを認めたため、腸閉塞により穿孔が生じたと判断。15:00緊急開腹手術にて、胃体部前壁噴門側に直径約5mmの潰瘍穿孔が認められ、腹腔内に食物残渣および腹水を確認。胃穿孔部を切除して縫合閉鎖し、腹腔内にドレーンを留置。術後腹部膨満感、嘔気は消失。8月10日水分摂取可能。8月11日流動食の経口摂取再開。8月13日自分で酸素マスクをはずしたり、ふらふら歩行するという症状あり。8月15日頭部CTにて脳へのがん転移なし。白血球の異常増加あり。8月16日腹腔内留置ドレーンを抜去したが、急性呼吸不全を起こし、人工呼吸器装着。8月19日胸部X線写真上、両肺に直径0.3mm~1mmの陰影散布を確認。家族に対して肺がんの再発、全身転移のため、同日中にも死亡する可能性があることを説明。8月20日心不全、呼吸不全のため死亡。当事者の主張患者側(原告)の主張慢性閉塞性肺疾患では低酸素血症や高炭酸ガス血症によって胃粘膜血流が低下するため胃潰瘍を併発しやすく、実際に本件では嘔気・嘔吐などの胃部症状が発生していたのに、胃内視鏡検査や胃部X線検査を怠ったため胃潰瘍と診断できなかった。さらに非ステロイド系消炎鎮痛薬はきわめて強い潰瘍発生作用を有するのに、胃穿孔の前日まで漫然とその投与を続けた。病院側(被告)の主張肺気腫による慢性呼吸器障害に再発性肺がんが両肺に転移播種するという悪条件の下で、ストレス性急性胃潰瘍を発症、穿孔性腹膜炎を合併したものである。胃穿孔は直前に飲んだジュースが刺激となって生じた。腹部の術後経過は順調であったが、肺気腫および肺がんのため呼吸不全が継続・悪化し、死亡したのであり、医療過誤には当たらない。ロキソニン®には長期投与で潰瘍形成することはあっても、本件のように短期間の投与で潰瘍形成する可能性は少なく、胃穿孔の副作用の例はない。インダシン®坐薬の能書きには消化性潰瘍の可能性についての記載はあるが、胃潰瘍および胃穿孔の副作用の例はない。たとえ胃潰瘍の可能性があったとしても、余命の少ない患者に対し、腰痛および下肢痛の改善目的で呼吸抑制のないインダシン®坐薬を用いることは不適切ではない。裁判所の判断吐血がみられて来院した時点で出血性胃潰瘍の存在を疑い、緊急内視鏡検査ないし胃部X線撮影検査を行うべき注意義務があった。さらに検査結果が判明するまでは、絶食、輸液、止血剤、抗潰瘍薬の投与などを行うべきであったのに怠り、鎮痛薬などの投与を漫然と続けた結果、胃潰瘍穿孔から汎発性腹膜炎を発症し、開腹手術を施行したが死亡した点に過失あり。原告側合計4,188万円の請求に対し、2,606万円の判決考察今回のケースをご覧になって、「なぜもっと早く消化器内視鏡検査をしなかったのだろうか」という疑問をもたれた先生方が多いことと思います。あとから振り返ってみれば、消化器症状が出現して入院となってから胃潰瘍穿孔に至るまでの約60日間のうち、50日間は入院、残りの10日間もほとんど毎日のように通院していたわけですから、「消化性潰瘍」を疑いさえすればすぐに検査を施行し、しかるべき処置が可能であったと思います。にもかかわらずそのような判断に至らなかった原因として、(1)入院直後に行った胃X線検査(胃穿孔の58日前、NSAIDs投与の45日前)で異常なしと判断したこと(2)複数の医師が関与したこと:とくにNSAIDs(ロキソニン®、インダシン®)は整形外科医師の指示で投与されたことの2点が考えられます(さらに少々考えすぎかも知れませんが、本件の場合には肺がん術後のため予後はあまりよくなかったということもあり、さまざまな症状がみられても対症療法をするのが限度と考えていたのかも知れません)。このうち(1)については、胃部X線写真で異常なしと判断した1ヵ月半後に腰痛に対して整形外科からNSAIDsが処方され、その8日後に嘔吐、吐血までみられたのですから、ここですぐさま上部消化管の検査を行うのが常識的な判断と思われます。しかもこの時に、ガスター®静注、プリンペラン®筋注まで行っているということは、当然消化性潰瘍を念頭に置いていたと思いますが、残念ながら当時患者さんをみたのは普段診察を担当していない消化器内科の医師でした。もしかすると、今回の主治医は「消化器系の病気は消化器内科の医師に任せてあるのでタッチしない」というスタンスであったのかも知れません。つまり(2)で問題提起したように、胃穿孔に至る過程にはもともと患者さんを診ていた内科主治医消化器系を担当した消化器内科医腰痛を診察しNSAIDsを処方した整形外科医という3名の医師が関与したことになります。患者側からみれば、同じ病院に入院しているのだから、たとえ診療科は違っても医者同士が連絡しあい、病気のすべてを診てもらっているのだろうと思うのが普通でしょう。ところが実際には、フリーエアーのある腹部X線写真をみて、主治医は最初に腸閉塞から穿孔に至ったのだろうと考えたり、前日までNSAIDsを投与していたことや消化性潰瘍があるかもしれないという考えには辿り着かなかったようです。同様に整形外科担当医も、「腰痛はみるけれども嘔気などの消化器症状は内科の先生に聞いてください」と考えていたろうし、消化器内科医は、「(吐血がみられたが)とりあえずはガスター®とプリンペラン®を使っておいたので、あとはいつもの主治医に任せよう」と思ったのかも知れません。このように本件の背景として、医師同士のコミュニケーション不足が重大な影響を及ぼしたことを指摘できると思います。ただしそれ以前の問題として、NSAIDsを処方したのであれば、たとえ整形外科であっても副作用のことに配慮するべきだし、もし消化器症状がみられたのならば内科担当医に、「NSAIDsを処方したけれども大丈夫だろうか」と照会するべきであると思います。同様に消化器内科医の立場でも、自分の専門領域のことは責任を持って診断・治療を行うという姿勢で臨まないと、本件のような思わぬ医事紛争に巻き込まれる可能性があると思います。おそらく、各担当医にしてみればきちんと患者さんを診察し、(内視鏡検査を行わなかったことは別として)けっして不真面目であったとか怠慢であったというような事例ではないと思います。しかし裁判官の判断は、賠償額を「67歳男性の平均余命である14年」をもとに算定したことからもわかるように、大変厳しい内容でした。常識的に考えれば、もともと肺気腫による慢性呼吸不全があり、死亡する11ヵ月前に肺がんの手術を行っていてしかも両側の肺に転移している進行がんであったのに、「平均余命14年」としたのはどうみても不適切な内容です(病院側弁護士の主張が不十分であったのかもしれません)。しかし一方で、そう判断せざるを得ないくらい「医師として患者さんにコミットしていないではないか」、という点が厳しく問われたケースではないかと思います。今回のケースから得られる教訓として、自分の得意とする分野について診断・治療を行う場合には、最後まで責任を持って担当するということを忘れないようにしたいと思います。また、たとえ専門外と判断される場合でも、可能な限りほかの医師とのコミュニケーションをとることを心掛けたいと思います。消化器

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B細胞除去療法はANCA関連血管炎のスタンダードな治療となるか?(コメンテーター:杉原 毅彦 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(140)より-

主要臓器障害を伴うAntineutrophil cytoplasmic antibody(ANCA)関連血管炎の治療はステロイド療法とシクロホスファミド(CY)により寛解導入を行い、再発率を減らすためにアザチオプリン(AZA)やメトトレキサートなどの免疫抑制剤で維持療法することが主流であるが、B細胞を標的とする生物学的製剤のリツキシマブとステロイドによる6ヵ月後の寛解導入率はステロイド+CYと同等であること、再発例ではリツキシマブのほうが有効であることが、2010年にランダム化比較試験(RCT)により検討された。本邦でも公知申請が認められ、CY無効例や再発例に対して実臨床で使用することが可能となっている。 今回は2010年に報告されたRCTの、18ヵ月の長期成績と再発に関連する因子が報告された。両群とも寛解を達成するとステロイドは6ヵ月後までに中止され、CY群はAZAで維持療法が継続され、リツキシマブ群はステロイド中止後も追加の免疫抑制療法を施行されず、18ヵ月後の寛解維持率がリツキシマブ 39%, CY-AZA 33%と両群に差を認めなかった。 再発に関連する因子を統計学的に解析すると、MPO-ANCAよりPR-3 ANCA陽性例、顕微鏡的多発血管炎より多発血管炎性肉芽腫症(旧名ウェゲナー肉芽種症)、初発例より再発例で再発しやすい。リツキシマブ投与群の再発例の88%は末梢血B細胞の再増加が認められ、再増加から再発までの期間は平均80日(1~286日)、ANCAの抗体価の増加は再発を予測しないが、ANCAの抗体価陰性かつ末梢血でB細胞が同定できない患者では再発がまれであることが示された。 今後、リツキシマブによる寛解導入後の再発を減らすための維持療法について検討が必要である。

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元パワースポーツ選手の死亡率と自殺率

 身体的トレーニングは健常者の死亡率を減らすことが示されており、アスリートたちは現役引退後も、健常者に比べてより健康的なライフスタイルを過ごしている。一方、1950年代以降、とくにパワースポーツの分野で、蛋白同化男性化ステロイド(AAS)が頻繁に使用された。 サールグレンスカ大学病院(スウェーデン)のA-S. Lindqvist氏らは、1960~1979年に現役で、AAS使用の疑いがある時期に、レスリング、パワーリフティング、ウエイトリフティング、投てき競技でスウェーデンの選抜選手だった男性アスリートにおいて、死因を含め、死亡率を調査した。Scandinavian journal of medicine & science in sports誌2013年9月12日号オンライン版の掲載報告。 主な結果は以下のとおり。・20~50代で45%前後の超過死亡がみられたが、調査期間全体では死亡率は増加していなかった。・自殺による死亡率は、30~50代では元アスリートは男性の一般集団と比較して2~4倍であった。AASの使用は1960~1979年に注目され、1975年まで使用禁止薬物とならなかったため、AAS使用による影響が死亡率と自殺率の増加につながった可能性が考えられる。・悪性腫瘍による死亡率は元アスリートで低かった。元アスリートたちの健康的なライフスタイルがその低さにつながったのかもしれない。

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椎間板ヘルニアに対して椎弓間硬膜外ステロイド注入は有効か

 腰椎椎間板ヘルニアの治療において硬膜外注射は広く使用されているが、その有効性や必要性、適応症などについては今も議論が続いている。米国・ルイビル大学のLaxmaiah Manchikanti氏らは、腰椎椎間板ヘルニアや神経根炎の疼痛管理に対する最新の介入法である蛍光透視下の椎弓間硬膜外注射の有効性を評価するため、無作為化二重盲検比較試験を行い、この方法による局所麻酔薬の注入は有効であることを明らかにした。1年間の追跡では局所麻酔薬単独使用よりステロイド併用のほうが優れている可能性も示唆している。Pain Practice誌2013年9月(オンライン版2012年12月27日)の掲載報告。 研究グループは、腰椎椎間板ヘルニアまたは神経根炎患者120例を対象に、局所麻酔薬(リドカイン0.5%、6mL)単独使用と局所麻酔薬(リドカイン0.5%、5mL)+ステロイド(ベタメタゾン1mL)併用の椎弓間硬膜外注射を比較する無作為化二重盲検比較試験を実施した。 主要評価項目は、疼痛緩和および50%以上の機能改善である。 主な結果は以下のとおり。・2回の治療で3週間以上疼痛が緩和し有意な改善がみられたのは、局所麻酔薬単独使用群80%、ステロイド併用群86%であった。・1年間(52週)の平均治療回数は局所麻酔薬単独使用群3.6回、ステロイド併用群4.1回で、鎮痛が得られていた期間はそれぞれ33.7±18.1週および39.1±12.2週であった。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・身体の痛みは心の痛みで増幅される。知っておいて損はない痛みの知識・脊椎疾患にみる慢性疼痛 脊髄障害性疼痛/Pain Drawingを治療に応用する・無視できない慢性腰痛の心理社会的要因…「BS-POP」とは?

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ドライアイスを飲み込んだらどうなる?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第3回

ドライアイスを飲み込んだらどうなる?まだ早朝にクマゼミがジージーと鳴いている地域もあるでしょうか、残暑が続きますね。まだまだアイスクリームがおいしい季節です。60kcal程度のアイスクリームなら…と毎日のようにアイスクリームをむさぼっている最近です。さて今回は少し涼しくなるような医学論文を2つ紹介します。といっても、テーマはアイスクリームではなくドライアイスですが。ドライアイスはマイナス79℃の二酸化炭素の固体であり、触ると粘膜に熱傷のような表皮剥離を来して痛くなることは、誰しもご存じと思います。氷と違ってドライアイスは固体から気化するため、水分が無いから痛いのだろうと思います。そんなドライアイスを飲み込んでしまったらいったいどうなるのか、想像したことはあるでしょうか。救急医だとドライアイスを飲み込んだ症例を経験したことがあるかもしれませんが、実際に医学論文として報告されている例は多くないようです。検索した限りで、ドライアイスを飲み込んだ症例報告が過去に2例あったのでご紹介します。Shirkey BL, et alFrostbite of the esophagus.J Pediatr Gastroenterol Nutr. 2007 Sep;45:361-2.この論文は15歳の男の子の症例で、高校の化学の実験の最中にドライアイス入りの水を飲んだようです。ドライアイスが溶けきっていなかったため、飲んだ直後に強い咽頭痛を訴えました。H2受容体拮抗薬などが投与され、20時間後に上部消化管内視鏡検査が行われました。その結果、食道には出血を伴う粘膜病変が観察されました。幸いにも胃粘膜には異常はみられませんでした。彼の症状は次第に改善し、ステロイドと抗菌薬を投与された後退院することができたそうです。この病変は食道異所性胃粘膜 (inlet patch)ではないかという指摘もあったようですが、その後の著者の回答によって臨床的にはドライアイスによる消化管の粘膜障害と結論づけられています(J Pediatr Gastroenterol Nutr. 2008 Apr;46:472-3; author reply 473.)。Li WC, et al.Gastric hypothermic injury caused by accidental ingestion of dry ice: endoscopic features.Gastrointest Endosc. 2004 May;59737-8.一方、16歳の女の子が誤ってドライアイスを飲み込んでしまったという症例報告もあります。ドライアイスによって、胃粘膜にはびらんを伴う発赤と線状の多発出血性病変がみられ、多発性の潰瘍も観察されました。この症例報告は、ドライアイスによって胃粘膜に障害を来すことを明らかにしました。そういえば子どものころ、ドライアイスを水に入れて、出てきた煙(二酸化炭素)に手をかざして絵本に登場する“魔法使い”のようなことをして遊んでいた記憶があります。昔のテレビのCMでも、ドライアイスが頻繁に使われていたような気がします。ドライアイスは一見すると氷と間違えそうになるので、子どもは誤って飲み込まないよう注意したいですね。多くの場合、口にひっつくので飲み込むことすらできないと思いますが、小さいものだと今回紹介した症例のように水と一緒に飲み込める可能性もあります。飲料にドライアイスを入れて炭酸水を作っている人を見たことがありますが、そもそもドライアイスは食品として作られることはありませんので、衛生上の観点からも避けた方がよいと思います。最近は、吸水ポリマーが原料の保冷剤が普及してきているため、ドライアイスを見かけることは少なくなりましたね。昔は、魚屋さんの裏手にたくさん転がっていたものですが。

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喘息マネジメントの穴埋めるチオトロピウム(ERS2013)

 2013年9月7~12日、スペインのバルセロナで行われたERS(European Respiratory Society:欧州呼吸器学会)Annual Congressにて、標題テーマが議論された。 簡便な評価ツールや新たな薬剤の登場などにもかかわらず、コントロール不良の喘息(Uncontrolled asthma)の頻度は50%以上といまだ高い1)。デンマークUniversity of Southern DenmarkのSoren Pedersen氏は、「10年前と比較するとわずかに改善しているものの、依然として状況は変わらない。また、これは多くの国で同じ状況である」と述べた。同氏はまた「このようなケースでは、吸入ステロイド(以下ICS)や吸入ステロイド・長時間作用性β2刺激薬合剤(以下ICS/LABA)を吸入していてもコントロール不良であり、これを補う薬物療法として現在の選択肢以外にも有効な手段が望まれる」と述べた。 そのような中、新たな治療選択肢として、COPD治療薬として広く用いられている抗コリン薬チオトロピウム(商品名:スピリーバ2.5μレスピマット)の喘息に対する有効性が注目されている。チオトロピウムの喘息への使用については、重症例のICS/LABAや軽症・中等症例でのICSへのアドオンなど、いくつかの試験でその有効性が示されてきた2)3)。なかでもICS/LABAコントロール不良の重症持続型喘息でのチオトロピウムの有効性を示す大規模二重盲検試験PrimoTinATMの結果が昨年(2012年)発表されているが4)(http://www.carenet.com/news/journal/carenet/31588)、今回のERSでは、中用量のICSでコントロールが得られない中等症持続型喘息に対する第3相試験Mezzo-TinATMの結果が、オランダUniversity of GroningenのHuib Kerstjens氏から発表された。 MezzoTinA-asthma 試験は、チオトロピウムレスピマット5μg群(以下チオトロピウム5μg群)、チオトロピウムレスピマット2.5μg群(以下チオトロピウム2.5μg群)、それにLABAであるサルメテロール(商品名:セレベント)50μg(50μgx2回/日投与)群を合わせた3つのActive treatment群とプラセボ群間で行われた。試験はダブルブラインド、ダブルダミーの並行群間比較で、中用量ICSの維持療法を継続しながら、24週にわたり各群の薬剤を追加投与し、その後3週間フォローアップするというものだ。プライマリエンドポイントは呼吸機能改善評価として24週後のピークFEV1*、同時期のトラフFEV1、そして臨床的評価として同時期のACQ*(asthma controlled questionnaire:喘息管理質問表)スコアの改善で、Trial1および2の2つの試験結果から解析されている。 患者条件は ・中等量ICS(ブデソニド換算400~800mg)単独、またはICS/LABAの使用にもかかわらずコントロール不良の中等症持続型喘息(LABAは試験期間中は中止) ・年齢18歳~75歳の男女 ・非喫煙者または過去に喫煙歴(10pack-years以下)がある非喫煙者 ・サルブタモール(短時間作用性β2刺激薬)400mg投与前の%FEV1*60%~90% ・気道可逆性(サルブタモール400mg投与後のFEV1の改善)12%以上かつ200mL以上など。試験期間中のロイコトリエン受容体拮抗薬、去痰剤、抗アレルギー薬などの使用は許可された。呼吸器疾患、心血管疾患を含む喘息以外の明らかな併存症のあるもの、試験開始前に内服ステロイド治療を受けた患者は除外された。 試験患者数は、Trial1 1,070例、Trial2 1,030例の総計2,100例。4群間の患者バックグラウンドは同様で、平均年齢43.1歳、平均ACQスコア2.18、気道可逆性22.4%、1秒率*(FEV1/FVC)65.8%、罹病期間は21.8年と長期にわたっていた。使用薬剤は、ICS以外ではLABAが60%と最も多く、その他はロイコトリエン受容体拮抗薬が10%、テオフィリンが4%であった。 試験結果は、 ・24週後のピークFEV1:チオトロピウム5μg群247mL、同2.5μg群285mL、サルメテロール群258mL、プラセボ群62mL。プラセボからの増加はそれぞれ、185mL、223mL、196mLで、対プラセボp値はいずれの群とも<0.0001と有意に増加していた。 ・24週後のトラフFEV1:チオトロピウム5μg群119mL、同2.5μg群152mL、サルメテロール群87mL、プラセボ群 -27mL。プラセボからの増加はそれぞれ、146mL、182mL、114mLで、対プラセボp値はいずれの群とも<0.0001と有意に増加していた。 ・ACQスコアの改善:ACQレスポンダー(ACQスコア0.5点以上改善)の割合は、チオトロピウム5μg群64.3%、同2.5μg群64.5%、サルメテロール群66.5%、プラセボ群 57.7%。対プラセボORはそれぞれ1.32、1.33、1.46で、p値はそれぞれ0.035、0.031、0.039といずれの群ともプラセボに比べ有意に改善していた。 ・有害事象発現率は、チオトロピウム5μg群57.3%、同2.5μg群58.2%、サルメテロール群54.3%、プラセボ群59.1%。重篤な有害事象の発現はそれぞれ2.1%、2.3%、2.0%、2.7%と各群ともプラセボと同等であった。 Kerstjens氏は、「チオトロピウムについてのわれわれの疑問は、喘息に対する効果は重症持続型に限られるか?LABAとの効果比較は?などであった。今回の試験で、チオトロピウムレスピマットは、プラセボと比較し、両用量ともピークFEV1、トラフFEV1を有意に増加させ、ACQレスポンダーを有意に増加させていた。この結果から、チオトロピウムレスピマットは、ICS/LABAおよび高用量ICSの適応である重症持続型だけではなく、中等量ICS単独の適応である中等症持続型喘息への追加投与も効果的であることが示された。また、以前の試験結果と同じく、われわれの試験データでもチオトロピウムレスピマットの効果はサルメテロールと同等であることが示された。今回の試験結果は、チオトロピウムの追加投与によって、ガイドラインに則った治療をしても症状が改善しない多くの喘息患者にとって、意義ある結果だといえる」と述べた。※チオトロピウムの効能・効果は、「慢性閉塞性肺疾患(COPD)に基づく諸症状の緩解」であり、気管支喘息は承認外ですのでご注意ください。*FEV1:最大努力呼気の際に呼出開始から最初の1秒で呼出される肺気量。ピークFEV1は薬剤投与後、最も呼吸機能が上がった時点での数値、トラフFEV1は最も呼吸機能の下がった時点での数値。*ACQ:喘息管理質問表スコアasthma control questionnaire。7つの質問から構成され、0~6点の7段階で評価される(0をトータルコントロール、0.75未満をウェルコントロール)。治療後に1.5以上上昇した場合を“著明改善”、1.0以上を“中等度改善”、0.5以上を“やや改善”と定義した。スコアが大きいほど重症となる。*1秒率(FEV1/FVC):FEV1と努力肺活量(FVC)の比率。閉塞性喚気障害の診断指標。FEV1/FVC<70%が閉塞性喚気障害の基準となる。*%FEV:FEV1実測値/FEV1予測値(FEV1予測値=性別、身長、年齢から算出)1) Demoly P et al. Eur Respir Rev. 2012;21:66-74.2) Perters SP et al. N Engl J Med. 2010;363:1715-1725.3) Kerstjens HA et al. J Allergy Clin Immunol. 2011;128:308-314.4) Kerstjens HA et al. N Engl J Med. 2012;367:1198-1207.

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妊娠中のステロイド外用剤、胎児への影響

 イギリスで実施された、妊娠中の副腎皮質ステロイド外用剤塗布の母体曝露について、その影響を調査した後ろ向きコホート研究の結果が、台湾・長庚記念病院のChing-Chi Chi氏らによって報告された。 それによると、副腎皮質ステロイド外用剤塗布と、口唇口蓋裂、早産、胎児死亡、アプガースコア低値、分娩方法との間には相関がみられなかったこと、一方で、低出生体重に関しては、副腎皮質ステロイド外用剤の塗布量が関与することが示された。JAMA Dermatology誌オンライン版2013年9月4日号掲載の報告。 調査はイギリスの国民保健サービスが主導し、参加者は、副腎皮質ステロイド外用剤を塗布している妊婦2,658人と、塗布していない妊婦7,246人であった。 主要アウトカムは、口唇口蓋裂、低出生体重児、早産、胎児死亡、アプガースコア低値、分娩方法であった。 主な結果は以下のとおり。・一次解析において、副腎皮質ステロイド外用剤の塗布と主要アウトカムに相関はみられなかった。[口唇口蓋裂(調整後リスク比:1.85、95%CI:0.22~15.20、p=0.57)、低出生体重(同:0.97、同:0.78~1.19、p=0.75)、早産(同:1.20、同:0.73~1.96、p=0.48)、胎児死亡(1.07、同:0.56~2.05、p=0.84)、アプガースコア低値(同:0.84、同:0.54~1.31、p=0.45)、分娩方法(p=0.76)]・薬剤の力価による層別解析においても、顕著な相関はみられなかった。・予備解析において、potent/ very potentクラス※の副腎皮質ステロイドを、全妊娠期間中に300g超使用した場合、低出生体重が有意に増加した(同:7.74、同:1.49~40.11、p=0.02)。※副腎皮質ステロイド外用剤の強さを、強いものからVery Potent、Potent、Moderate、 Mildの4段階に分類。

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EUコホート試験、重症喘息の個別化治療に道

 9月9日ERS(European Respiratory Society:欧州呼吸器学会)Annual Congressにて、3万件以上のサンプルを集めた2つのコホート試験の結果が発表された。 喘息はcommon diseaseであるにもかかわらず、さまざまなタイプがあることはあまり知られていない。その中で、なぜ特定の患者がより重症な病状を呈するのかは専門医もわかっていない。こうした背景のもと、The EU-funded U-BIOPRED*プロジェクトは、より個別化した治療を開発することを目的に、それぞれの重症喘息患者がどのように異なるのか、将来的に疾患をサブグル-プに分けられるかについて研究している。 一つ目の試験の結果、成人および小児の重症喘息には、それぞれ共通の特徴があることがわかった。この試験から得られた主な知見は下記である。<成人> ・55%の重症喘息患者は定期的に経口ステロイドを服用しているにもかかわらず、軽症~中等症喘息患者に比べ、重度の気道閉塞を有している。 ・重症喘息患者は、高用量のステロイドを使用しているにもかかわらず、今なお増悪などの重度の症状を経験している。<小児> ・気道閉塞のレベルは、重症であっても軽症~中等症と同程度である。 ・重症グループでは、呼気中一酸化窒素濃度(FeNO)レベルが高い。 当試験の筆頭著者であるDavid Gibeon氏は、「この初めての知見が、喘息患者に存在するサブグループの概要を示した。われわれが並行して行っている試験では、なぜより重症になるとより治療に反応しなくなるのかを、多くの異なる分子レベルで調べている。個々の喘息患者の治療と、より個別化したアプローチの開発に役立つであろう」と述べた。 二つ目のU-BIOPRED試験では、エレクトロニックノーズを用いて喘息患者の呼気サンプルを分析している。この調査の目的は従来の臨床的特徴ではなく、呼気の分子パターンで患者を分類することである。この試験では57例の患者の呼気サンプルから、重症患者の4つのサブグループの共通パターンを見つけることができた。 U-BIOPREDプロジェクトのリーダーPeter Sterk氏は、「この両方の試験から得られる知見は、われわれを重症喘息のより深い理解に一つ近づけた。このような条件の患者は増悪と症状を繰り返し、治療にもよく反応しないが、なぜこのようになるのかはわからない。このような方々の生活を改善するために、CTから喀痰、患者の遺伝子解析、気管支鏡の結果まで幅広いサンプルから、膨大な分析を開始して各々の患者の生物学的かつ臨床的な“指紋”を作る必要がある。U-BIOPREDプロジェクトは、このような患者の個別化医療の開発にわれわれを近づけるであろう」と述べている。*U-BIOPRED(Unbiased Biomarkers for the Prediction of Respiratory Disease):ヨーロッパにおける教育機関、製薬企業、患者団体の共同組織

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ERS2013でTIOSPIR試験の全容を発表

 COPD治療の標準薬となっているチオトロピウム(商品名:スピリーバ)はハンディへラー(ドライパウダー製剤)とレスピマット(MDI:定量噴霧型製剤)の2つの吸入製剤を持つ。しかしながら、近年レスピマットにおいて死亡率増加の可能性を指摘するpooled analysisが発表された。そのため、COPD患者を対象としたチオトロピウムレスピマットの安全性および有効性に関する大規模試験TIOSPIR(TIOtropium Safety and Performance In Respimat)が行われた。New England Journal of Medicine誌にて報告されたその結果(http://www.carenet.com/news/head/carenet/36078)について、9月8日、2013年欧州呼吸器学会(ERS)にて、米国ジョンズ・ホプキンス大学のRobert A.Wise氏より発表された。 TIOSPIR試験は無作為二重盲検、スピリーバレスピマット2.5μgおよび5μg vsスピリーバハンディヘラー18μg の3アーム、ダブルダミーで行われた(レスピマット2.5μgは試験用量)。各群とも治療開始後6週目と12週目に評価し、その後は12週ごと2~3年間にわたり評価した。 プライマリエンドポイントは、死亡率(スピリーバレスピマット2.5μgおよび5μgのハンディヘラー18μgに対する非劣性)。および初回COPD増悪リスク(レスピマット5μgのハンディヘラー18μgに対する優越性)であった。患者条件は ・40歳以上の男女 ・10pack-years以上の喫煙歴を有する ・COPDと診断されている ・FEV1/FVC 70%以下 ・予測FEV1 70%以下 ・ハンディヘラー、レスピマットとも吸入可能などであった。また、実臨床に近い状況とするため、抗コリン薬以外のCOPD基礎治療薬は許可された。 一方、COPD以外の肺疾患、4週間以内の増悪、不安定な心臓疾患を有する患者(6ヵ月以内心臓発作、心筋梗塞、1年以内の致死的なうっ血性心不全、不整脈)、不定期なステロイドの使用例などは除外された。 2010年5月から2011年4月までの期間に患者登録され、50ヵ国1,200施設以上の医療機関で実施された。無作為割り付け対象は、17,183例で、治療17,135例であった。3群間の患者背景に差はなかった。治療期間の中央値は835日(約2.3年)と長期にわたった。<結果> 全死亡率はレスピマット2.5μg群 7.7%、レスピマット5μg群 7.4%、ハンディヘラー18μg群 7.7%で、対ハンディヘラー18μg群のHRはレスピマット2.5μg群 1.00(0.87~1.14)、レスピマット5μg群 0.96(0.84~1.09)であった。レスピマットはいずれの用量でもハンディヘラーとの非劣性が認められた(inferiority margin 1.25)。  死亡例のうち心血管系による死亡は、レスピマット2.5μg群 2.1%、レスピマット5μg群 2.0%、ハンディヘラー18μg群 1.8%で、対ハンディヘラー18μg群のHRはレスピマット2.5μg群 1.17(0.90~1.53)、レスピマット5μg群 1.11(0.85~1.45)であった。なお、不整脈の既往のある患者の死亡は、レスピマット2.5μg群 13.1%(HR 1.02)、レスピマット5μg群 10.6%(HR 0.81)、ハンディヘラー18μg群 12.9%で、対ハンディヘラー18μg群のHRはレスピマット2.5μg 1.02(0.74~1.39)レスピマット5μg群 0.81(0.58~1.12)であった。 増悪については、レスピマット2.5μg群49.4%、レスピマット5μg群47.9%、ハンディヘラー8μg群48.9%で、レスピマット5μg群対ハンディヘラー18μg群のHRは 0.98(0.93~1.03)、p=0.42と同等の結果であった(2.5μg群は49.4%、HR 1.02 [0.96~1.07])。 以上の結果から、チオトロピウムレスピマット2.5μgと5μgはチオトロピウムハンディヘラー18μgと同等の安全性と有効性プロファイルを有する事が示されたとWise氏は述べた。 また、テキサス大学のAntonio Anzueto氏は、期間中に開催されたプレスセミナーにて、以下のようにコメントした。「過去のPooled Analysisは期間が長くなく、対象患者数も十分とはいえない。今回の1万7千例を超える患者を2年以上追跡したTIOSPIRの結果は、過去の報告結果とは一線を画すものだといえる。さらに、世界50ヵ国、1,200施設という非常に多様な患者を対象にした点はCOPDの多様性を反映しており、また実臨床の薬剤の使用も許可したという点で、Real Worldを反映している試験だといえよう。レスピマットの簡便性は患者にとっても恩恵であり、今回の試験結果で使用の障壁は下がる可能性がある。ただし、この試験結果がすべての患者をカバーできるわけではない、医師は各々の患者のリスクを評価して薬剤を使用すべきである」。

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チオトロピウムはCOPD増悪や入院のリスクを低下させる

 チオトロピウムはCOPD患者の増悪や入院のリスクを有意に低下させることがテキサス大学健康科学センターのAntonio Anzueto氏らにより報告された。Respiratory Medicine誌オンライン版2013年8月19日号の掲載報告。 増悪はCOPDの転帰を大きく左右する。本研究では、米国の臨床試験に登録されている患者を対象に、COPDの増悪および増悪に関連した入院に対するチオトロピウムの効果を評価した。 データは、COPD患者を対象に行われた6つの無作為化プラセボ対照二重盲検比較試験(試験期間6~12ヵ月)から集めた。増悪の定義は1)2つ以上の呼吸器症状が増加または発症して3日以上続いた場合、2)全身ステロイドや抗菌薬(またはその両方)による治療が必要となった場合とした。これらの患者における初回の増悪、入院、増悪発現率を6ヵ月、1年時点で検討した。 主な結果は以下とおり。・6ヵ月時点の調査対象は4,355例[チオトロピウム2,268例、プラセボ2,087例、平均年齢:66.5歳、1秒量(FEV1)=1.03L(対標準1秒量:35.5%)]であった。・1年時点の調査対象は2,455例[チオトロピウム1,317例、プラセボ1,138例、平均年齢:65.5歳、1秒量(FEV1):1.03L(対標準1秒量:37.0%)]であった。・チオトロピウムはプラセボと比較して、初回増悪までの期間、および増悪による初回入院までの期間をそれぞれ有意に延長させた。 ●6ヵ月時点(ハザード比 [HRs]:0.80、0.65 それぞれp<0.001) ●1年時点(ハザード比 [HRs]:0.73、0.55 それぞれp<0.001)・チオトロピウムはプラセボと比較して、増悪発現率と入院率をそれぞれ有意に低下させた。 ●6ヵ月時点(ハザード比 [HRs]:0.79、0.64 それぞれp<0.01) ●1年時点(ハザード比 [HRs]:0.78、0.56 それぞれp<0.01)・チオトロピウムはベースラインにおける吸入ステロイドの使用の有無に関係なく、増悪リスクを有意に低下させた。・チオトロピウムと心臓系のイベントリスク増加との関連は認められなかった。■「COPD増悪」関連記事COPD増悪抑制、3剤併用と2剤併用を比較/Lancet

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国内初、乾癬治療の配合外用剤を承認申請

 レオ ファーマは23日、乾癬治療剤として、活性型ビタミンD3であるカルシポトリオールと副腎皮質ホルモン剤(以下、ステロイド)であるベタメタゾンジプロピオン酸エステルの配合外用剤の承認申請を行ったと発表した。 今回の申請は、主に日本における安全性試験ならびに尋常性乾癬患者を対象とした第III相試験の結果に基づいて同社が行ったもの。 乾癬は慢性かつ難治性の皮膚疾患で、日本における有病率は1,000人中1~2人と報告がある。乾癬の治療法には活性型ビタミンD3やステロイドなどの外用療法、光線療法、内服療法があり、近年は生物学的製剤による治療法が重症例に提供されるようになった。しかし、患者の大半を占める軽症から中等症に対しては、従来より活性型ビタミンD3やステロイドなどの外用剤による治療が主として行われており、単剤のみならず、多くの両剤併用、混合調製がされており、乾癬治療に用いられる外用剤には、より高い有用性ならびに投与の簡便性が求められているという。 今回申請した配合外用剤は、上記の課題を解決すべく開発したもので、2001年に尋常性乾癬に対する外用剤としてデンマークで上市されて以来、米国を含め世界97ヵ国で承認、販売されている薬剤で、尋常性乾癬治療の第一選択薬として世界的に汎用されているものである。日本では初めての活性型ビタミンD3とステロイドの配合外用剤(1日1回塗布)になる。 詳細はプレスリリースへhttp://www.leo-pharma.jp/ホーム/プレスリリース.aspx

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抗精神病薬による高プロラクチン血症に関するレビュー

 フランス・Etablissement Public De Sante Mentale(EPSM)のI. Besnard氏らは、抗精神病薬の有害事象である高プロラクチン血症に着目し、文献から得られた知見を基にレビューを行った。プロラクチンを増加させる抗精神病薬とプロラクチン増加を起こしにくい抗精神病薬があること、高プロラクチン血症は男性に比べ女性でより高頻度にみられ、性腺機能不全による症状がみられること、必要に応じて抗精神病薬の減量または変更を行う必要性などを報告した。Encephale誌オンライン版2013年8月5日号の掲載報告。 高プロラクチン血症は、抗精神病薬による治療を受けた患者にしばしば認められるが、なおざりにされている有害事象である。Besnard氏らは本レビューにおいて、抗精神病薬による高プロラクチン血症の病因メカニズム、男女の臨床的徴候、および管理方法について概説した。高プロラクチン血症の原因にいずれの抗精神病薬もなりうる 文献から得られた高プロラクチン血症の主な知見として、以下を報告している。・プロラクチンは、下垂体前葉のプロラクチン産生細胞から分泌されるホルモンで、その産生・分泌はペプチド、ステロイドおよび神経伝達物質により制御されている。・プロラクチン産生・分泌の阻害に関与する主な物質はドパミンで、プロラクチン産生細胞膜上のドパミンD2受容体に結合して作用を発揮する。・抗精神病薬はドパミンD2受容体をブロックし、ドパミンのプロラクチン分泌阻害活性を消失させる。すべての抗精神病薬がD2受容体をブロックするため、いずれの抗精神病薬も高プロラクチン血症を惹起しうる。ただし、D2受容体からの解離速度が速い抗精神病薬は、血漿中プロラクチンレベルの増加が少ない。・また、高プロラクチン血症が起こるもう一つの説明として、抗精神病薬は血液脳関門を通過できることも挙げられる。抗精神病薬の代謝物の役割もまた考慮されるべきである。・これらの理由により、プロラクチンを増加させる抗精神病薬(従来の神経遮断薬であるアミスルプリド、リスペリドン)とプロラクチン増加を起こしにくい抗精神病薬(クロザピン、アリピプラゾール、オランザピン)がある。・英国の研究では、重篤な精神疾患に対し抗精神病薬が投与された男性の18%および女性の47%でプロラクチンレベルが正常範囲を超えていることが示された。・高プロラクチン血症は男性に比べ女性でより高頻度にみられる。高プロラクチン血症は時に無症候性であるが、プロラクチンレベルが高いほど臨床的徴候がより多く認められる。いくつかの症状は、プロラクチンによる性腺機能不全に起因するもので、視床下部下垂体機能を障害する。その他は、標的組織に対する直接的な影響による。・結果として、患者は性機能障害、 不妊、無月経、女性化乳房、乳汁漏出などに悩まされる。・これら症状は一般的であるものの、患者が自発的に述べることはなく、臨床医はそれらの発現状況を把握できていないことがデータで示唆されている。・長期的に、性腺機能不全症は男女において早期からの骨量減少を引き起こす。・Klibanski 氏らは、この骨減少は無月経と関連する高プロラクチン血症を呈する女性においてのみ有意であることを示した。これは、プロラクチンがこうした臨床的特徴に直接的に寄与していないことを示唆している。それでもやはり、プロラクチンは乳がんの発症に関連しているようである。しかし、前立腺がんにおける役割は不明である。高プロラクチン血症の原因が抗精神病薬なら減量または変更 また、高プロラクチン血症について得られた知見を受け、次のように考察している。 本レビューから、抗精神病薬による治療開始前にはcheck-up(検査)が重要といえる。第一に、ベースラインのプロラクチンレベルを測定すべきである。また、抗精神病薬投与歴、高プロラクチン血症を示唆する有害事象も評価すべきである。そして問診により抗精神病薬に対する禁忌の有無を最終的に確認すべきである。 高プロラクチン血症の臨床ガイダンスの批評レビューを行った精神医学、内科学、毒性学、薬学の国際的な専門グループにより、抗精神病薬による治療中のモニタリングについて研究が行われた。専門家らは、性欲減退、月経不順、乳汁漏出などの性機能障害の有無を確認することが重要だとしている。用量が安定してから3ヵ月後、または高プロラクチン血症の何らかの徴候が現れた場合、プロラクチンレベルをコントロールすべきである。抗精神病薬を処方された患者においてプロラクチンレベルが正常範囲を超えていることが確認された場合、高プロラクチン血症を惹起しうるその他の原因を除外する必要がある。抗精神病薬がその真の原因である場合には、プロラクチンレベルおよび患者の状況に応じて、抗精神病薬の減量または変更などを行うべきである。妊娠を避ける、あるいは骨量減少および骨粗鬆症を防ぐため、経口避妊薬の追加も可能である。最終的に専門家らは、精神疾患を悪化させうるという理由から、きわめて例外的な状況における抗精神病薬による高プロラクチン血症に対し、ドパミンアゴニストの使用は控えることを勧告した。

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