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ペムブロリズマブの腎細胞がん術後アジュバントが予後を改善(KEYNOTE-564)/ASCO2021

 淡明細胞型腎細胞がん(RCC)に対する腎摘除手術後の術後療法としてのペムブロリズマブの単剤治療が、生存の延長に寄与するという発表が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)において、米国・Dana-Farber Cancer InstituteのToni K. Choueiri氏より発表された。 本試験(KEYNOTE-564)は、国際共同の無作為化二重盲検比較の第III相試験であり、今回が初めての中間解析結果報告である。・対象:腎摘除術を12週間以内に受け、再発リスク分類で中程度以上と判定された淡明細胞型RCC・試験群:ペムブロリズマブ200mg/日 3週間ごと最長1年間投与(Pembro群)・対照群:プラセボ 3週間ごと最長1年間投与(Pla群)・評価項目:[主要評価項目]主治医判定による無病生存期間(DFS)[副次評価項目]全生存期間(OS)、安全性 主な結果は以下のとおり。・2017年6月~2019年9月に、994例(Pembro群:496例/Pla群:498例)が登録された。・リスクカテゴリー中等度~高度の症例(N0/M0/核異形度4のpT2またはpT3)が、約86%を占め、PD-L1発現は、CPSスコア1以上が74%~77%、1未満が23~25%であった。・観察期間中央値が24.1ヵ月時点(データカットオフ2020年12月)でのDFS中央値は両群ともに未到達で、Pembro群のPla群に対するハザード比(HR)は0.68、95%信頼区間(CI)は0.53~0.87、p=0.0010と有意にPembro群で良好であった。・1年DFS率は、Pembro群85.7%、Pla群76.2%、2年DFS率は、Pembro群77.3%、Pla群68.1%で、両群のカプランマイヤー曲線は早期から離れる傾向を示していた。各サブグループでのDFS解析では、全体と齟齬のある因子は無かった。・OS中央値も両群未到達で、HRは0.54(95%CI:0.30~0.96)、p=0.0164であったが事前設定のp値の有意水準は超えていなかった。1年OS率は、Pembro群98.6%、Pla群98.0%、2年OS率はおのおの96.6%と93.5%であり、今後の追跡が期待される結果であった。・安全性については既報と同様、全身倦怠感、甲状腺機能異常、皮膚障害などがPembro群で多く報告された。治療関連有害事象による投薬中止はPembro群で17.6%(中止中央値7サイクル)であったが、両群とも治療関連死はなかった。免疫関連有害事象でステロイド剤の投薬が必要となったのはPembro群で7.4%であった。 発表者は、「KEYNOTE-564は、RCCの術後療法として、臨床的に意味のあるDFSの延長を示した初めての試験であり、今後の新しい標準療法としての可能性を示した」と結んだ。

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長期使用中の外用ステロイドの塗布部位を確認して中止提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第38回

 外用ステロイドは皮膚の炎症性病変において汎用性が高い薬ですが、その使いやすさゆえに治療期限なく使用されるケースも散見されます。今回は、使用意図が明確でないまま、漫然と介護士や看護師から処方依頼が続いていた症例を紹介します。患者情報80歳、女性(施設入居)基礎疾患混合型認知症介護度要介護4服薬管理施設職員が管理障害自立度C認知症自立度IIIa処方内容1.ドネペジル錠5mg 1錠 分1 朝食後2.フロセミド錠10mg 1錠 分1 朝食後3.酸化マグネシウム原末1g 分2 朝夕食後4.ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル軟膏 50g Rp5と混合 1日2回 体に塗布5.ヘパリン類似物質油性クリーム 50g Rp4と混合 1日2回 体に塗布本症例のポイントこの患者さんは、背部と腹部の皮膚炎のため、ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル軟膏とヘパリン類似物質油性クリームの混合軟膏を使用していました。訪問時に薬歴を確認したところ、処方が1年以上継続しており、ステロイドのランクダウンや塗布部位の変更もなく長期的に使用していることに疑問を持ちました。そこで患者さんの病状を確認すると、発赤や隆起した皮膚の様子もなく、治療内容と現状がマッチしていない印象を受けました。施設の介護スタッフに状況を確認すると、時折背中や腹部をかいている様子があるため、現行の軟膏の塗布を継続しているとのことでした。また、軟膏が少なくなったら医師の訪問診療前に連絡して処方を依頼しており、医師はその依頼どおりに処方していることも判明しました。処方提案と経過訪問診療に同行し、医師に患者さんの軟膏塗布部位を直接診察してもらうことにしました。その際に、長期的に外用ステロイドを使用しているものの皮膚の状態は安定しており、むしろ長期使用に伴う細菌・真菌感染の誘発やざ瘡・毛細血管の拡張、皮膚萎縮などの副作用の懸念があることを伝えました。また、病状が安定しているのであれば、ステロイドを中止あるいはランクダウンしてから中止し、皮膚の保湿のみでコントロールできないか相談しました。医師より、病状は安定しているため、もはやステロイド適応ではなく、皮膚乾燥部位の保湿剤の塗布と保湿ケアを介護士に指示すると回答を頂きました。外用ステロイドを中止して保湿剤のみのコントロールに変更しても皮膚炎の再燃はなく経過しています。薬物治療の効果や副作用判定をする際は施設の介護士や看護師から情報を収集することも重要ですが、実際に自分の目で患者さんの症状を確認したことで、医師への処方提案に深みが増した症例でした。

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慢性掻痒でピンッとくるべき疾患は?【Dr.山中の攻める!問診3step】第3回

第3回 慢性掻痒でピンッとくるべき疾患は?―Key Point―皮膚に炎症がある場合は皮膚疾患である可能性が高い82歳男性。2ヵ月前から出現した痒みを訴えて来院されました。薬の副作用を疑い内服薬をすべて中止しましたが、改善がありません。抗ヒスタミン薬を中止すると痒みがひどくなります。一部の皮膚に紅斑を認めますが、皮疹のない部位もひどく痒いようです。手が届かない背中以外の場所には皮膚をかきむしった跡がありました。皮膚生検により菌状息肉腫(皮膚リンパ腫)と診断されました。この連載では、患者の訴える症状が危険性のある疾患を示唆するかどうかを一緒に考えていきます。シャーロックホームズのような鋭い推理ができればカッコいいですよね。◆今回おさえておくべき疾患はコチラ!【慢性掻痒を起こす疾患】(皮膚に炎症あり)アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、乾皮症、虫刺され、乾癬、疥癬、表在性真菌感染(皮膚に炎症なし)胆汁うっ滞、尿毒症、菌状息肉腫、ホジキン病、甲状腺機能亢進症、真性多血症、HIV感染症、薬剤心因性かゆみ(強迫神経症)、神経原性掻痒(背部錯感覚症、brachioradial pruritus)【STEP1】患者の症状に関する理解不足を解消させよう【STEP2】慢性掻痒の原因を見極める、診断へのアプローチ■鑑別診断その1皮膚に目立った炎症があるアトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、乾皮症、虫刺され、乾癬、疥癬、表在性真菌感染家族や施設内に同様の掻痒患者がいる場合には疥癬を疑う。皮疹の部位が非常に重要である。陰部、指の間、腋窩、大腿、前腕は疥癬の好発部位である。皮膚に問題がない場合でも、慢性的にかきむしると苔癬化、結節性そう痒、表皮剥脱、色素沈着が起きることがある。■鑑別診断その2正常に近い皮膚なら全身性疾患によるそう痒を考え、以下を考慮する胆汁うっ滞、尿毒症、菌状息肉腫、ホジキン病、甲状腺機能亢進症、真性多血症、HIV感染症、薬剤薬剤が慢性掻痒の原因となることがあるかゆみを起こす薬剤:降圧薬(カルシウム拮抗薬、ACE阻害薬、サイアザイド)、NSAIDs、抗菌薬、抗凝固薬、SSRI、麻薬上記の鑑別疾患時に必要な検査と問診検査:CBC+白血球分画、クレアチニン、肝機能、甲状腺機能、血沈、HIV抗体、胸部レントゲン写真問診:薬剤歴■鑑別診断その3慢性的なひっかき傷がある時は、以下の疾患を想起すること心因性かゆみ(強迫神経症)、神経原性掻痒(背部錯感覚症、brachioradial pruritus)背部錯感覚症は背中(Th2~Th6領域)に、brachioradial pruritusは前腕部に激烈なかゆみを起こす。原因は不明。【STEP3】治療や対策を検討する薬が原因の可能性であれば中止する。以下3点を日常生活の注意事項として指導する。1)軽くてゆったりした服を身に着ける2)高齢者の乾皮症(皮脂欠乏症)は非常に多い。皮膚を傷つけるので、ナイロンタオルを使ってゴシゴシと体を洗うことを止める3)熱い風呂やシャワーは痒みを引き起こすので避ける入浴後は3分以内に皮膚軟化剤(ワセリン、ヒルドイド、ケラチナミン、亜鉛華軟膏)や保湿剤を塗る。皮膚の防御機能を高め、乾皮症やアトピー性皮膚炎に有効である。アトピー性皮膚炎にはステロイド薬と皮膚軟化剤の併用が有効である。副作用(皮膚萎縮、毛細血管拡張、ステロイドざ瘡、ステロイド紫斑)に注意する。Wet pajama療法はひどい皮膚のかゆみに有効である。皮膚軟化剤または弱ステロイド軟膏を体に塗布した後に、水に浸して絞った濡れたパジャマを着て、その上に乾いたパジャマを着用して寝る。ステロイドが皮膚から過剰に吸収される可能性があるので1週間以上は行わない。夜間のかゆみには、抗ヒスタミン作用があるミルタザピン(商品名:リフレックス、レメロン)が有効ガバペンチン(同:ガバペン)、プレガバリン(同:リリカ)は神経因性のそう痒に有効である。少量のガバペンチンは透析後の痒みに効果がある。<参考文献・資料>1)Yosipovitch G, et al. N Engl J Med. 2013;368:1625-1634.2)Moses S, et al. Am Fam Physician. 2003;68:1135-1142.

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第64回 COVID-19のmRNAワクチン接種後の心筋炎~主に若い男性の2回目接種後に発生

米国で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)mRNAワクチン2回目接種後の心筋炎/心膜炎が16~24歳の若者に想定より多く認められており、その検討を含む米国疾病予防管理センター(CDC)専門家会議が今週18日に急遽開催されます。その開催を報じた先週10日の米国小児科学会(AAP)ニュース1)によると30歳以下の若者のPfizer/BioNTechかModernaのCOVID-19 mRNAワクチン接種後の心筋炎/心膜炎は有害事象記録VAERS(Vaccine Adverse Event Reporting System)に475例報告されており、それらのうち転帰がわかっている285人中270人は退院し、ほとんど(およそ81%)は完全に回復しています。15人は依然として入院していて3人は集中治療室(ICU)にいます。2回目接種後の16~17歳の心筋炎/心膜炎の報告数は79例で、その数は想定数2~19例を上回っています。18~24歳での報告数は196例で、やはり想定数8~83例を上回っていました。500万人超がPfizer/BioNTechのワクチン接種済みのイスラエルでは去年2020年12月から2021年5月に心筋炎の報告が275例あり2)、それらのうち148例はワクチン接種のころに生じたものであり、米国と同様に多くは2回目の接種後で、主に16~19歳の若い男性に認められました。イスラエルはワクチンと心筋炎の関連を調査中ですが、2回目のワクチン接種と16~30歳の若い男性の心筋炎発症は関連するかもしれないと現時点では判断されています。CDCによると幸い経過はおおむね良好なようで、mRNAワクチン接種後に心筋炎/心膜炎を呈して手当を受けた患者のほとんどは薬の投与や休息で良くなっており、速やかに回復しています3)。心筋炎/心膜炎の同定の主な手がかりは胸痛です。Pfizer/BioNTechワクチン接種後に心筋炎や心筋心膜炎を生じた14~19歳の男児7人の詳細を記したPediatrics誌の報告4)によると全員が2回目接種後4日以内の胸痛により受診しました。また、5人は発熱があり、他に息切れ、疲労感、両腕の痛み、吐き気、嘔吐、頭痛、食欲不振、脱力感が1人以上に認められました5)。7人とも多臓器炎症症候群(MIS-C)ではなく、2~6日間の入院で全員回復しました。7人のうち6人は非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)治療を受け、それらの3人の治療はNSAIDだけで済みました。4人は免疫グロブリン静注とコルチコステロイドで治療されました。MIS-Cではない一過性のCOVID-19ワクチン接種後心筋炎に静注免疫グロブリンやコルチコステロイドをきまって投与すべきかどうかは定かではありません。ワクチン接種後7日以内に胸痛、息切れ、動悸が認められたら受診することをCDCは要請しています3)。医療従事者は小児や若い成人がそれらの症状を呈して来院したら心筋炎/心膜炎を疑い、まずは心電図、トロポニン、C反応性タンパク質(CRP)や赤血球沈降速度などの炎症マーカーの検査を試みる必要があります。それらが正常ならおそらく心筋炎/心膜炎ではないでしょう6)。心筋炎はCOVID-19に伴って生じうることも知られています。たとえば大学の感染運動選手1,597人を調べた最近の報告では心臓MRIを含む検査で2.3%に心筋炎が認められています7,8)。参考1)CDC confirms 226 cases of myocarditis after COVID-19 vaccination in people 30 and under/AAP2)Surveillance of Myocarditis (Inflammation of the Heart Muscle) Cases Between December 2020 and May 2021 (Including) / Israel Ministry of Health3)Myocarditis and Pericarditis Following mRNA COVID-19 Vaccination/CDC4)Marshall M,et al,. Pediatrics. 2021 Jun 4:e2021052478.5)Report details 7 cases of myocarditis after COVID-19 vaccination/AAP6)Clinical Considerations: Myocarditis and Pericarditis after Receipt of mRNA COVID-19 Vaccines Among Adolescents and Young Adults/CDC7)Daniels CJ, et al,JAMA Cardiol. 2021 May 27. [Epub ahead of print]8)Study: Cardiac MRI Effective in Detecting Asymptomatic, Symptomatic Myocarditis in Athletes / Ohio State University

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妊娠中の局所ステロイド使用、胎児への影響は?

 妊娠中の局所コルチコステロイド使用は安全なのか。デンマーク国立血清研究所(Statens Serum Institut:SSI)のNiklas Worm Andersson氏らによる大規模コホート研究の結果、妊娠中の局所コルチコステロイド使用は在胎不当過小児(SGA)や低出生体重児のリスク増大とは関連しないことが示された。 妊娠中の局所コルチコステロイド使用頻度は高く、新生児へのリスクに関する懸念は高いが、そのエビデンスを示すデータは限定的であった。妊娠中の局所コルチコステロイド使用についてはとくに、強力~非常に強力な薬剤の使用への懸念が高かったが、著者は「今回の結果は、妊娠中に強力な局所コルチコステロイドを大量に使用した場合でも、リスクが中程度~大幅に増大する可能性は低いことを示唆するものであった」と述べている。JAMA Dermatology誌オンライン版2021年5月5日号掲載の報告。妊娠中の局所コルチコステロイド使用での顕著なリスク増大は認められず 研究グループは、妊娠中の局所コルチコステロイド使用とSGAおよび低出生体重児のリスク増大と関連するかを調べるため、さまざまなレジストリから集めた個人レベルの情報がある110万件の妊娠データを分析した。 1997年1月1日~2016年12月31日に、デンマークで局所コルチコステロイドに曝露された妊娠例を特定し、広範囲にわたるベースライン特性など傾向スコアに基づき非曝露例をマッチングし比較した。データ解析は2020年9月8日~2021年2月23日に行われた。主要アウトカムはSGAおよび低出生体重児で、アウトカムと曝露の関連を、相対リスク比(RR)および絶対リスク差(ARD)で評価した。 妊娠中の局所コルチコステロイド使用とSGAおよび低出生体重児のリスク増大と関連するかを調べた主な結果は以下のとおり。・対象期間中の曝露例6万497例と、適合対照群24万1,986例について解析が行われた。・SGA出生は、曝露群5,678例(9.4%)、非曝露群2万2,634例(9.4%)であった(RR:1.00[95%信頼区間[CI]:0.98~1.03]、1,000妊娠当たりのARD:0.3[95%CI:-2.3~2.9])。・妊娠中のあらゆる用量の強力~非常に強力な局所コルチコステロイド使用と、SGA(RR:1.03、95%CI:0.99~1.07)または低出生体重児(0.94、0.88~1.00)のリスク増大との関連は認められなかった。・事後解析において、非曝露の妊婦との比較において、妊娠中に強力~非常に強力な局所コルチコステロイドを大量使用(200g以上)した妊婦における顕著なリスク増大は認められなかった。RR(95%CI)は、SGAが1.17(0.95~1.46)、低出生体重児が1.14(0.81~1.60)であった。

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第63回 変な抗体や抗原によるCOVID-19重症化を止めうる薬を同定

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)重症化に寄与しているらしい非フコシル化抗体が悪さをしないようにする薬剤が見つかりました。また、COVID-19小児の重病MIS-Cに寄与しているとおぼしき過剰な抗原を食い止めうる薬剤が別の研究で見つかっています。重症COVID-19患者の過度の炎症反応をSyk阻害剤ホスタマチニブで防ぎうる新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)スパイクタンパク質(S)への非フコシル化抗体の過剰がどうやら重症化に寄与していることをこの2月に発表1)したチームのさらなる研究でその重症化を食い止めうる薬剤が同定されました2,3)。抗SARS-CoV-2抗体が炎症を誘発してしまうことはそれら抗体への糖の一種フコシルの付加が少なくて抗S抗体が大量なことを条件とし、マクロファージで発現するFcγ受容体(FcγR)の一つFcγRIII過剰活性化をおそらく介します。FcγRからの信号伝達にキナーゼSykを必要とします。ということは抗S抗体による免疫活性化をSyk阻害剤で防げるかもしれません。その予想はどうやら間違っておらず、Syk阻害化合物R406は重症COVID-19患者の抗S抗体による炎症促進サイトカイン生成を有意に減らしました。R406は免疫性血小板減少症(ITP)の治療として欧米で承認されているfostamatinib(ホスタマチニブ)の有効成分であり、重症COVID-19患者の抗S抗体による過度の炎症反応をfostamatinibで食い止めうると著者は言っています。ちなみに別のエンベロープウイルス・デングウイルス(DENV)感染の重症化と非フコシル化抗体が多いことの関連も示されており4)、抗体Fc領域への糖鎖付加はウイルスへの免疫反応を左右するようです5)。腸から漏れる新型コロナウイルス抗原が多臓器炎症症候群の引き金かもしれないSARS-CoV-2感染小児の多くは無症状かせいぜい軽い上気道症状で事なきを得ますが、感染がおさまってから数日か数週間後に川崎病に似てはいるものの異なる酷な免疫活性化症候群・多臓器炎症症候群(MIS-C)を時に発症します。そのMIS-Cに腸の防御機能の欠損が寄与しているらしいことが新たな研究で示唆されました6)。SARS-CoV-2が腸を住処とすることは成人の研究で知られるようになっており7)、重度のCOVID-19に陥ると共生微生物の混乱や胃腸の遮断機能の故障によって炎症が悪化します。腸粘膜の遮断機能は腸から血中に抗原が移行するのを防いでおり、細胞間密着結合(タイトジャンクション)を調節しているタンパク質ゾヌリンが多いことと腸の透過性亢進の関連がセリアック病、炎症性腸疾患(IBD)、川崎病などの自己免疫/炎症疾患の研究で知られています。そのゾヌリンが、胃腸症状を伴うことが多いMIS-Cでも上昇を呈することが今回の新たな研究で示されました。ゾヌリンは腸から血液中にSARS-CoV-2抗原がより漏れ出るようにして過剰な炎症反応を引き起こしているようです。新たな研究ではMIS-C小児19人、SARS-CoV-2感染小児26人、非COVID-19小児55人の計100人が調べられました6)。感染から数週間が過ぎてもSARS-CoV-2のRNAは胃腸から検出され、MIS-C小児はゾヌリンを他の小児より多く有していました。MIS-C小児の血漿にはSARS-CoV-2のスパイクタンパク質やそのサブユニットS1も多く、SARS-CoV-2のそれら抗原はゾヌリン上昇で腸の隙間がふえて漏れ出たものと考えらえました。腸の透過性亢進がMIS-Cの引き金かどうかはまだはっきりせずさらなる研究が必要です。しかしもしそうであるならゾヌリンを阻害して腸の透過性を正常化することはMIS-Cの治療法となりえます。そこで研究者は米国FDAの許可を得て生後17ヵ月のMIS-C小児にゾヌリン遮断薬larazotide(ララゾチド)を試してみました。larazotideはセリアック病を対象にした第III相試験段階にあり、これまでの試験でその安全性が確認されています。生後17ヵ月のMIS-C小児はステロイドや抗体静注などのいつもの治療では良くなりませんでした。しかしlarazotide治療で血漿のスパイク抗原が減り、症状が収まりました。MIS-C患者は何がともあれ最終的には回復することが多く、今回の一例だけではなんとも言えません。研究者はプラセボ対照試験が必要とわかっており、この秋には始めたいと考えています8)。参考1)Larsen MD, et al. Science. 2021 Feb 26;371:eabc8378.2)Why corona patients become critically ill / Universiteit van Amsterdam (UVA)3)Hoepel W, et al. Sci Transl Med. 2021 Jun 2;13:eabf8654.4)Bournazos S, et al. Science2021 Jun 4;372:1102-1105.5)de Alwis R, et al. Science. 2021 Jun 4;372:1041-1042.6)Yonker LM, et al. J Clin Invest. 2021 May 25:149633.7)Gaebler C, et al. Nature. 2021 Mar;591:639-644.8)SARS-CoV-2 Antigens Leaking from Gut to Blood Might Trigger MIS-C / TheScientist

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コロナワクチン後の抗体価、上がりやすい因子と上がりにくい因子/千葉大

 千葉大学病院は6月3日、ファイザー社の新型コロナワクチンを2回接種した同病院の職員1,774人の抗体価を調べたところ、ほぼ全員で抗体価の上昇が見られ、同ワクチンの有効性が確認されたと発表した。千葉大によると、ワクチンへの抗体反応を調べる研究としては現時点で最大規模と見られるという。 本研究は、千葉大学医学部附属病院と千葉大学医学研究院が連携して設置した「コロナワクチンセンター」で実施された。ファイザー社の新型コロナワクチン「コミナティ筋注」を接種した同院職員を対象とし、1回目接種前および2回目接種後に各々採取した血液から抗体価を測定した。 主な結果は以下のとおり。・1回目接種前は2,015例(男性:719例、女性:1,296例、21~72歳)、2回目接種後には、1,774例(男性:606例、女性:1,168例、21~72歳)から血液が採取された。このうち、接種前の段階で抗体が陽性だったのは、21例(1.1%)だった。・2回目接種後、抗体が陽性となったのは1,774例中1,773例(99.9%)だった。・抗体価は、接種前の中央値が<0.4U/mLだったが、接種後は2,060U/mLに上昇していた。・ワクチン接種後の抗体価が上がりにくい因子として、(1)免疫抑制剤を服用(2)高年齢(3)副腎皮質ステロイド薬を服用(4)飲酒頻度が高い、といった事項との関連性が見られた。・一方、ワクチン接種後の抗体価が上がりやすい因子として、(1)COVID-19既往歴あり(2)女性(3)1回目と2回目の接種間隔が長い(18〜25日)(4)抗アレルギー薬を服用(花粉症薬など)、といった事項との関連性が見られた。 本研究結果の詳細は、プレプリントサーバーのmedRxiv1)に6月4日付で掲載されている(今後、審査によっては論文内容が修正される場合あり)。(ケアネット 鄭 優子)1)Antibody responses to BNT162b2 mRNA COVID-19 vaccine in 2,015 healthcare workers in a single tertiary referral hospital in Japan(medRxiv)

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ウパダシチニブ、ステロイド併用でアトピー性皮膚炎を改善/Lancet

 中等症~重症のアトピー性皮膚炎の治療において、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬ウパダシチニブと副腎皮質ステロイド外用薬の併用は、プラセボと同外用薬の併用と比較して忍容性および有効性が優れ、ベネフィット・リスクのプロファイルが良好であることが、ドイツ・ハンブルク・エッペンドルフ大学医療センターのKristian Reich氏らが実施した「AD Up試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2021年5月20日号で報告された。22ヵ国171施設のプラセボ対照無作為化試験 本研究は、日本を含む22ヵ国171施設が参加した二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験であり、2018年8月~2019年12月の期間に参加者の無作為化が行われた(米国・AbbVieの助成による)。 対象は、発症から3年以上が経過し、Hanifin/Rajka基準で診断された中等症~重症の慢性アトピー性皮膚炎の成人(18~75歳)および青少年(12~17歳)であった。中等症~重症は、アトピー性皮膚炎が体表面積の≧10%、湿疹面積・重症度指数(EASI)のスコアが≧16点、担当医によるアトピー性皮膚炎の全般的な重症度の総合評価(vIGA-AD)のスコアが≧3点、最悪のかゆみの数値評価尺度(WP-NRS)のスコアが週平均値で≧4点と定義された。 被験者は、ウパダシチニブ15mg、同30mgまたはプラセボを1日1回経口投与する群に1対1対1の割合で無作為に割り付けられた。全例が、副腎皮質ステロイド外用薬を使用した。投与期間は16週であった。担当医、試験施設職員、患者には、試験薬の割り付け情報が知らされなかった。 主要複合エンドポイントは、16週の時点におけるEASIスコアのベースラインから75%以上の低下(EASI-75)を達成した患者の割合と、vIGA-ADの奏効(スコア0[消失]または1[ほぼ消失]かつベースラインから2点以上の改善)を達成した患者の割合とされた。EASI-75達成:65%、77%、26%、vIGA-AD奏効達成:40%、59%、11% 901例(成人785例、青少年116例)が登録され、ウパダシチニブ15mg群に300例(平均年齢32.5歳[範囲13~74]、18歳未満13%、男性60%)、同30mg群に297例(35.5歳[12~72]、12%、64%)、プラセボ群には304例(34.3歳[12~75]、13%、59%)が割り付けられた。 16週時に、EASI-75を達成した患者の割合は、15mg群が65%(194/300例)、30mg群は77%(229/297例)であり、プラセボ群の26%(80/304例)との補正済み群間差は、15mg群で38.1%(95%信頼区間[CI]:30.8~45.4)、30mg群では50.6%(43.8~57.4)と、双方の用量とも有意に改善した(いずれもp<0.0001)。 また、16週時に、vIGA-AD奏効を達成した患者の割合は、15mg群が40%(119例)、30mg群は59%(174例)であり、プラセボ群の11%(33例)との補正済み群間差は、それぞれ28.5%(95%CI:22.1~34.9)および47.6%(41.1~54.0)と、2つの用量とも有意な改善が認められた(いずれもp<0.0001)。 青少年の集団における有効性は、全集団で観察されたものと一致していた。 二重盲検期におけるウパダシチニブの2つの用量と副腎皮質ステロイド外用薬との併用は、いずれも良好な忍容性を示した。全体で最も頻度の高い治療関連有害事象は、ざ瘡、鼻咽頭炎、上気道感染症、口唇ヘルペス、血中クレアチンホスホキナーゼ値上昇、頭痛、アトピー性皮膚炎であった。 ざ瘡は、15mg群(10%)および30mg群(14%)が、プラセボ群(2%)に比べて多かった。また、試験薬の投与中止の原因となった有害事象(15mg群:1%、30mg群:1%、プラセボ群:2%)および重篤な有害事象(2%、1%、3%)の発生は、3群で同程度であった。死亡例の報告はなかった。 著者は、「これらのデータは、15mgと30mgの双方とも、ベネフィット・リスクのプロファイルが良好であることを示している。2つの用量で統計学的な比較は行われなかったが、すべての重要なエンドポイントについて、30mgは15mgよりも、奏効例の数が一貫して上回っていた」としている。

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痒みの悩みは軽そうでじつは重い問題/マルホ

 マルホ株式会社は、同社の実施した「頭皮トラブルを抱える生活者実態調査の結果」がまとまったことから「頭部の皮膚炎特有の悩みがもたらすQOL への影響と治療法の広がり」をテーマにWEB上でメディアセミナーを開催した。 セミナーでは、調査結果の概要とともに最新の頭部皮膚炎の治療法などの説明が行われた。頭皮トラブルで通院が必要とだと考えていない人が47% はじめに「頭皮トラブルを抱える患者の実態とQOLへの影響」をテーマに江藤 隆史氏(あたご皮フ科 副院長)が講演を行った。 頭皮のトラブルの原因となる疾患では、「アトピー性皮膚炎」、「脂漏性皮膚炎」、「接触皮膚炎」などが挙げられる。とくにアトピー性皮膚炎では、42%の患者が頭部・顔面・頸部に病変を有し、34%は頭部湿疹を有するとの報告もある。 今回の「頭皮トラブルを抱える生活者実態調査」は、全国の頭皮トラブルを抱える16~69歳の男女1,200名を対象にインターネットで行われた。 調査結果によると「頭皮トラブルを抱える人の割合」は20.7%で、人口割合に換算すると約1,700万人が同様の悩みを抱えていると推定される。 主な頭皮トラブルの症状は、「痒みのみ」(29.4%)が一番多く、つぎに「痒みとフケ」(15.8%)、「痒みとフケとぶつぶつ・炎症・赤み」(15.0%)が上位を占めた。 「悩んでいる期間」に注目してみると、たとえば回答数が1番多い「痒み」について回答者の59.6%が1年以上前から悩んでおり、解決策を見出せないという。 この「痒みの影響」について、とくに頭皮の痒みについての回答では、「気が付くとずっとかいている」と回答した人が36.9%、「眠れない、または眠りが浅い」と「じっとしていられない」が同数で22.6%の順で多く、日常生活で不便な生活をもたらす結果となっていることがわかった。また、関連として「フケ」について聞いたところ、「いつも洋服の肩口にフケが積もっている」が37.5%、「かみの毛に白く浮いているのが目立つ」が35.3%、「フケのために掃除が必要」が22.7%の順で多く、「頭皮の悩み」が「どのような精神的影響を与えているか」を聞いたところ「周囲の目が気になる」(24.0%)、「頭皮が気になり、集中できない」(21.4%)、「すべてに消極的になる」(15.8%)の順で回答が多かった。 こうした頭皮のトラブルへの対処について現在行っていることは「市販のシャンプーやコンディショナーをしっかり洗い流す」(41.8%)、「市販のシャンプーを変える」(33.9%)、「髪、頭皮の洗い方を変える」(27.8%)の順で多く、「病院に通う」は12.7%と医療機関に通院する人は少なく、また、「何も行っていない」という人も27.6%と多かった。「医療機関に通ったことがない」その理由としては、「通院するほどの症状ではないから」(47.0%)、「お金がかかってしまいそうだから」(34.6%)、「病気だと思っていないから」(30.4%)の順で多かった。 これらの調査から頭皮トラブルがある人は長期間悩みを抱えながらも、諦めている人が多く、そのトラブルゆえにQOLが低下している人が多いことが判明した。 江藤氏は、頭皮などのトラブルを放置したときの問題点として「症状の悪化」、「治療経過の悪化」、「脱毛や難治化」などを挙げ、「気になる症状があれば早めに皮膚科を受診して、正しい診断と治療を受けてほしい」と語り、説明を終えた。頭皮トラブルをシャンプーで治療する 次に五十嵐 敦之氏(NTT東日本関東病院 皮膚科部長)が、「頭部の痒み/湿疹・皮膚炎の治療法の広がり ~実臨床における最新トピックス~」をテーマに頭皮トラブルの診療について説明した。 頭部の痒み、フケなどを有する主な皮膚疾患としては、乾癬、湿疹・皮膚炎が代表であり、とくに皮膚炎では刺激物質との対応が明確な接触皮膚炎、光接触皮膚炎と刺激物質との対応が不明確なアトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、貨幣状湿疹などがある。 たとえばアトピー性皮膚炎では、成長するにつれて軽快傾向を示すが最近では成人でも症状が残る例も増えている。一般的に痒みが強く、屈曲部、上肢、頭部、頸部、顔面などに多く発症する。そして、頭皮に長期にわたり持続すると、炎症性障害が毛球部にまで波及し、まれに休止期性脱毛に進展する。 こうした皮膚疾患には、ステロイド外用薬や抗ヒスタミンなどの内服薬が治療で使われ、アトピー性皮膚炎では免疫抑制剤や保湿剤が、脂漏性皮膚炎では抗真菌剤、非ステロイド性抗炎症剤外用薬、尿素外用薬、ビタミン剤なども治療で使用されている。同時にアトピー性皮膚炎では服や洗濯への配慮が、脂漏性皮膚炎ではストレス軽減、食事、嗜好品など日常生活での注意も必要とされている。 外用薬では、患者アンケートなどから「べたつき」「塗りにくさ」「垂れる」などの不満の声も聞かれ、患者の希望やライフスタイルの合わせた薬剤や剤形を選択しての治療が望まれている。 こうした声に対応するかたちで最近では、シャンプー剤による頭部の疾患(尋常性乾癬、湿疹・皮膚炎)に有用な治療法としてステロイドシャンプーによる“Short contact therapy”が保険適用となり、治療の幅は拡大している。 五十嵐氏も最後に「頭皮のトラブルはQOLに影響するため、気になる症状があれば、早めの皮膚科受診をしてほしい」と専門医への診療を促し、説明を終えた。

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中等症~重症喘息、3剤併用vs.2剤併用/JAMA

 中等症~重症の小児(6~18歳)および成人喘息患者において、吸入ステロイド薬(ICS)と長時間作用型β2刺激薬(LABA)に長時間作用型抗コリン薬(LAMA)を併用する3剤併用療法は、2剤併用療法(ICS+LABA)と比較して重度増悪の減少ならびに喘息コントロールの中等度改善と有意に関連し、QOLや死亡に差は認められなかった。カナダ・マックマスター大学のLisa H. Y. Kim氏らが、システマティックレビューとメタ解析の結果を報告した。中等症~重症の喘息患者に対する3剤併用療法の有益性と有害性は、これまで不明であった。JAMA誌オンライン版2021年5月19日号掲載の報告。無作為化試験20件、合計約1万2,000例について解析 研究グループは、MEDLINE、Embase、CENTRAL、ICTRP、FDA、EMAの2017年11月~2020年12月8日のデータベースから、中等症~重症喘息患者を対象に3剤併用療法(ICS、LABA、LAMA)と2剤併用療法(ICS、LABA)を比較した無作為化臨床試験を、言語を問わず検索した。 2人の研究者が独立して選択し、2人の評価者が独立してデータを抽出しバイアスリスクを評価した。メタ解析には、患者個々の増悪データを含むランダム効果モデルを用い、GRADEに従ってエビデンスの質を評価した。 主要評価項目は、重度増悪、喘息コントロール(7項目の喘息コントロール質問票[ACQ-7]で評価、各項目スコアは0[完全にコントロール]~6[重度のコントロール不良]、最小重要差は0.5)、生活の質(喘息関連QOL質問票[AQLQ]で評価、スコアは1[重度の障害]~7[障害なし]、最小重要差は0.5)、死亡率および有害事象とした。 3種類のLAMAを使用した20件の無作為化臨床試験が解析に組み込まれた。解析対象は、小児および成人喘息患者計1万1,894例(平均年齢52歳、範囲9~71歳、女性57.7%)であった。3剤併用療法により、重度増悪が減少し喘息コントロールが中等度改善 エビデンスの質が高い臨床試験による3剤併用療法vs.2剤併用療法の比較において、重度増悪リスクの減少(9試験[9,932例]、22.7% vs.27.4%、リスク比:0.83[95%信頼区間[CI]:0.77~0.90])、および喘息コントロールの改善(14試験[1万1,230例]、標準平均差[SMD]:-0.06[95%CI:-0.10~-0.02]、ACQ-7の平均差:-0.04[95%CI:-0.07.~-0.01])が有意であることが示された。 一方、喘息関連QOL(7試験[5,247例]、SMD:0.05[95%CI:-0.03~0.13]、AQLQ平均差:0.05[95%CI:-0.03~0.13]、エビデンスの質:中)、ならびに死亡(17試験[1万1,595例]、0.12% vs.0.12%、リスク比:0.96[95%CI:0.33~2.75]、エビデンスの質:高)については、有意差はなかった。 3剤併用療法は、口喝および発声障害の増加と有意に関連していたが(10試験[7,395例]、3.0% vs.1.8%、リスク比:1.65[95%CI:1.14~2.38]、エビデンスの質:高)、治療関連および重篤な有害事象は両群で有意差はなかった(エビデンスの質:中)。

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新型コロナ変異株感染者の特徴は?/国立国際医療研究センター

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の変異株の勢いが止まらない。日々の報道でも変異株の置き換わりについて耳にしない日はなく、早急な対応がなされつつある。そんな状況の中で、臨床の場で疫学的にはどのような動きがあるのだろうか。 国立国際医療研究センターは、国立感染症研究所と共同調査した「新型コロナウイルス感染症(新規変異株)の積極的疫学調査(第1報)」を4月27日開催のメディアセミナーで報告を行った。 セミナーでは、COVID-19の届出がされた24万2,373例のうちゲノム解析で変異株と同定された380例から協力が得られた110例の結果が、大曲 貴夫氏(国立国際医療研究センター 国際感染症センター長)により報告された。置き換わりの変異株の大多数がVOC-202012/01 本調査は、厚生労働省の協力依頼として行われ、2021年4月15日時点の状況を報告している。調査対象は、「COVID-19の患者」「ゲノム検査で変異株確定者」「COVID-19等情報把握・管理支援システムで報告された患者」「国内の医療機関に入院した患者」の4つの条件をすべて満たす患者で、110例について検討が行われた。 その結果、男性は52例、女性は58例だった。年齢の中央値は42(27-63)歳、年齢分布では10歳未満(18.2%)、30代(16.4%)、40代(15.5%)の順で多かった。 確定したウイルス株の内訳としては、VOC-202012/01(いわゆる英国株)が105例、501Y.V2(いわゆる南アフリカ株)で4例、501Y.V3(いわゆるブラジル株)で1例だった。 BMIの中央値は21.5、曝露歴では家族が47例、職場と保育・教育関連施設がともに14例だった。 発症から初診までの期間の中央値は1(0-3)日、発症から診断までの期間も中央値は2(1-4)日、発症から入院までの期間の中央値は3(2-6)日であり、基礎疾患(高血圧、脂質異常症、肥満など)を有した症例は31症例だった。 入院時の有症状者は91例、主な症状では発熱(44例)、咳嗽(42例)、倦怠感(27例)などがみられ、入院時の画像検査では胸部X線検査所見ありが28例、胸部CT検査所見ありが49例だった。変異株重症化割合は5.5% 治療では、COVID-19への直接治療が40例で行われ、内訳としてステロイド24例、レムデシビル21例、ファビピラビル10例の順で多かった。また、抗血栓・抗凝固療法としては予防目的で13例、治療目的で2例が行われた。酸素投与などでは、鼻カニューレまたはマスクが一番多く21例、ネーザルハイフローが8例、人工呼吸器管理が3例、体外式膜型人工肺(ECMO)装着が1例だった。 ICU治療は5例で、滞在期間中央値は12(8-13)日、予後では自宅退院が98例、死亡が1例だった。 以上から調査対象の大多数がVOC-202012/01であり、年齢層の中心が比較的若年層であったこと、ICUでの治療や人工呼吸器などによる治療を行った重症例6例は、全例がVOC-202012/01であり、重症化割合は約5.5%だったことが説明された。 大曲氏は、今回の調査につき「調査対象が限定的であり、重症化割合に与える影響因子の調整を行っていないなどの理由から、重症化割合が従来株の症例より高いかどうかの結論付けは困難」と考察を述べ、説明を終えた。

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片頭痛予防に対する抗CGRPモノクローナル抗体の付加価値

 35年間のトランスレーショナルリサーチにより、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)の伝達を阻害することによる片頭痛治療への新しい道が開かれた。短時間作用型のgepant系CGRP受容体スモールアンタゴニストの後に開発された、CGRPまたはCGRP受容体をブロックするモノクローナル抗体(CGRP/rec mAbs)は、片頭痛治療のパラダイムシフトを起こした。トリプタンや非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)のような一過性の効果を有する古典的な急性期治療薬とは異なり、CGRP/rec mAbsは、三叉神経血管系の末梢部分でのみ長期間作用するため、持続性のある治療を行うことができる。これは、主に片頭痛の病態生理における上流で作用する古典的な予防薬とは異なる。CGRP/rec mAbsであるeptinezumab、erenumab、fremanezumab、ガルカネズマブのランダム化比較試験(RCT)では、数千人の患者を対象としており、最も広く研究されている片頭痛予防薬となっている。これらの結果によると、CGRP/rec mAbsは、プラセボよりも有意に優れていることが認められており、Dodick氏により包括的なレビューが行われている。ベルギー・リエージュ大学のJ. Schoenen氏らは、これらのRCTよりプラセボ減算アウトカムおよび治療必要数(NNT)について要約し、エフェクトサイズ、効果発現、持続性、患者サブグループにおける治療反応、安全性、忍容性、費用対効果に焦点を当て、その後公表された新たな事後研究について分析を行った。また、CGRP/rec mAbsの1つを用いた限定的な実臨床経験について要約した。Revue Neurologique誌2020年12月号の報告。 主な結果は以下のとおり。・方法論的違いや直接比較試験が欠如しているため、比較における信頼性は低いものの、4剤のCGRP/rec mAbsは、全体として有効性および忍容性プロファイルの違いは少ないと考えられる。・片頭痛の軽減に対するプラセボ減算50%治療反応率の平均値は、反復性片頭痛(NNT:4~5)で21.4%、慢性片頭痛(NNT:4~8)で17.4%であった。・改善率が50%超の患者はまれであり、持続的な頭痛を伴う慢性片頭痛患者では治療反応患者が少なく、片頭痛の予兆の改善は認められなかった。・効果発現は、投与後1週間以内に認められ、1ヵ月でほぼ最大となった。・その効果は、長期間持続し、治療終了後数ヵ月間継続する場合もあった。・CGRP/rec mAbsは、過去に予防的治療で奏効しなかった患者や薬物乱用患者に対しても有効であったが、そのエフェクトサイズは小さい可能性が示唆された。・CGRP/rec mAbsは、片頭痛による問題や医療資源の利用を有意に減少させる。・CGRP/rec mAbsの副作用プロファイルは、いくつかのまれな例外を除き、プラセボの副作用プロファイルと同様であり、虚血におけるCGRPの保護的作用に関連するにもかかわらず、現在までに治療に関連する血管系の有害事象は報告されていない。・利用可能な片頭痛の予防的治療の観点からみると、CGRP/rec mAbsの主な利点は、優れた有効性よりも、有害事象の少なさであると考えられる。・費用対効果に関しては、erenumabの予備的な薬理経済分析において、未治療またはonabotulinumtoxinAによる治療と比較し、慢性頭痛に対する費用効果の高さが認められている。しかし、発作の頻度が少ない反復性片頭痛では、費用効果が低い可能性がある。

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monarchE試験で報告されたアベマシクリブの3つの重要なAE、その特徴と転帰/ESMO BREAST 2021

 monarchE試験において、ホルモン受容体(HR)陽性HER2陰性の高リスク早期乳がんに対する術後内分泌療法(ET)とアベマシクリブの併用は、無浸潤疾患生存期間(iDFS)の有意な改善を示した。同試験では、ET単独群と比較してアベマシクリブ併用群で静脈血栓塞栓症(VTE)、アミノトランスフェラーゼ上昇(EAT)、間質性肺疾患(ILD)が頻繁に報告されており、その特徴と転帰についての詳細解析結果を、京都大学の戸井 雅和氏が、欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer Virtual Congress 2021、2021年5月5~8日)で報告した。monarchE試験のアベマシクリブによるAEの詳細 安全性解析の対象は、少なくとも1回の投薬を受けた5,591例(アベマシクリブ併用群2,791例、ET単独2,800例)で、VTEの病歴のある患者は除外された。アベマシクリブによる治療期間中央値は19.1ヵ月(データカットオフは2020年7月8日)。試験プロトコルにはあらかじめ有害事象(AE)の管理ガイダンスが含まれていた。 monarchE試験でアベマシクリブによるAEの特徴と転帰について解析した主な結果は以下のとおり。[VTE]・ET群16例(0.6%)に対しアベマシクリブ群67例(2.4%)でVTE が報告され、37例(1.3%)がGrade3以上、主に肺塞栓症(0.9%)であった。・肺塞栓症発症者の約1/3が重篤ではなく、入院の必要はなかった。死亡例も報告されていない。・VTEイベントはほとんどが単回の発生であった(88.1%)。・多くの患者でVTE発生後もアベマシクリブ投与が継続され、57%が用量変更なしだったが、19.4%で主にGrade3以上であったことを理由に投与が中止された。・94%の患者に抗凝固薬が投与され、管理は良好であった。・最初のETでタモキシフェンが投与された患者では、アロマターゼ阻害薬が投与された患者と比較してVTE発症が多かった(4.1% vs.1.7%)。・Grade3以上のVTEは、BMI≧25の患者でBMI<25の患者と比較して多く発生する傾向がみられた(1.8% vs.0.6%)。・最初のVTEイベント発生までの期間中央値は両群とも6ヵ月以内であった。[EAT]・ET群181例(6.5%)に対しアベマシクリブ群356例(12.8%)でEATが報告され、87例(3.1%)がGrade3以上、85%が単回の発生であった。・多くの患者でEAT発生後も投与が継続され、Grade3以上の患者の71%が用量変更なし/減量で継続、16%で投与が中止された。・Grade3以上の患者は全員、用量変更あるいは投与中止により回復し、薬物性肝障害を起こした患者はいなかった。・Grade3以上のEAT発生までの期間中央値はアベマシクリブ群3ヵ月以内、ET群4ヵ月以内であった。・アベマシクリブ群でのGrade3以上のALT/AST上昇は、安全性解析集団全体と比較してアジア人集団で多い傾向がみられた(2.4%/1.8% vs. 4.2%/3.1%)。[ILD]・ET群34例(1.2%)に対しアベマシクリブ群82例(2.9%)でILDが報告されたが、多くが無症候性で軽度であった。重篤なILDイベントはアベマシクリブ群で14例(0.5%)発生し、1例が死亡した。・両群でほとんどのILDが単回の発生であった(>97%)。・多くの患者でILD発生後もアベマシクリブ投与が継続されたが、23%で主にGrade2以上であったことを理由に投与が中止された。・アベマシクリブ群のILD発症者の52%でステロイド/抗生物質が投与された。・アベマシクリブ群で、Grade2以上のILDは47%が最初の180日間に発現していた。・アベマシクリブ群でのILDは、安全性解析集団全体と比較してアジア人集団で多い傾向がみられたが、無症候性が多く、Grade2以上やSAE、治療中断の発生率は全体と同程度であった。 VTE、EAT、ILDの多くは最初の6ヵ月間に発生しており、アベマシクリブによる長期的な治療の累積影響やリスク増加は認められず、用量調整と標準的な薬物治療により管理可能と結論づけられている。

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大阪コロナ風景【Dr. 中島の 新・徒然草】(374)

三百七十四の段 大阪コロナ風景大阪ではコロナの新規感染者数が増えたり減ったり。でも、体感的にはどんどん状況が悪化しています。医療者の悲壮感と外来患者さんの悠長さとのギャップが悲しい!大阪の今の状態をランダムに報告いたします。(いろいろ差し障りのないよう、多少の設定変更あり)その1:老健施設長のA先生A先生「昨日の発熱外来なんか、10人中7人がPCR陽性でした」中島「えっ。先生のところは老健じゃなかったですか?」A先生「併設しているクリニックで発熱外来もやっているんですよ」中島「そりゃ大変ですね」A先生「以前はほとんど陽性が出なかったんでPPEも適当でしたけどね」中島「ウチも以前は滅多に陽性がありませんでした」A先生「今はもう完全武装で診察しています。危ないですから」10人中7人とは、あんまりですね。とはいえ、道を歩いている人の7割が陽性だというわけではなく、発熱や何らかの症状があって受診した人の7割が陽性だったという話です。その2:クリニックのB先生との世間話B先生「ウチの患者さん、もう中等症でも入院待ちの人が多いです」中島「先生は在宅もやっているんですか」B先生「ええ。重症化させないことが大事なんでね」中島「在宅の段階で介入するわけですね」B先生「酸素の手配をしつつ、コルヒチンとステロイド投与をしています」中島「コルヒチンって効くんですか?」B先生「エビデンスが固まるまで待つわけにいかないでしょう」中島「確かにそうですね」B先生「フサンを使っている先生もいるそうですよ」中島「フサン……って、家で点滴を?」B先生「経口の類似薬があるそうなんです」中島「皆さんいろいろ考えるもんですねえ」入院待機の間にもそれぞれに工夫しているのは立派です。その3:道でバッタリ出くわした某病院の看護師さん看護師「あら、中島先生!」中島「ありゃりゃ、何年ぶりかなあ」看護師「私、4月から兵庫県の〇〇病院勤務なんです」中島「コロナ対応はしているわけ?」看護師「中等症対応だったんですけど」中島「皆まで言うな! 重症化しても転送先がないので、なし崩し的に重症コロナ病棟ができてしまったんでしょ」看護師「そうなんですよ」中島「逆のパターンもあるそうよ。重症を治療して中等症に持っていっても転送先がないので、自分ところで中等症病棟を作ったという話」看護師「やっぱり!」中島「コロナ対応のお医者さんも、もう専門は関係なしよね」看護師「でも経営的にはコロナ対応のほうがいいと聞きましたけど」中島「兵庫県も?実は大阪府でもコロナ対応すると一気に黒字化するみたい」看護師「そうだったんですか」中島「あんまり長話するわけにもいかないのでこの辺で。じゃあ気をつけてね」看護師「先生も」地域によるのかもしれませんが、コロナ診療には少なからぬ加算が付きます。その4:同僚のC先生とのヒソヒソ話C先生「〇〇病院でクラスターが出たそうですよ」中島「あそこはコロナ対応していなかったんじゃ?」C先生「最近コロナ病棟を作ったんですけどね、今回の院内クラスターで一気に埋まってしまったようです」中島「あらま」C先生「スタッフにも陽性者が複数出たんですけど、全員ワクチン未接種だったそうです」中島「接種が間に合わなかったのかなあ」C先生「悲しいですね」はからずもワクチンの効果が証明されてしまいました。その5:開業医のD先生との久しぶりの会話D先生「この前、先生に相談させていただいたE先生のことですけど」中島「『僕、死ぬんですかね』って言っておられた先生ですよね。入院先が見つかったってところまでは聞きましたけど」D先生「そのあと重症化して挿管されたんですよ」中島「えええ!ダメじゃん、それ」(泣)D先生「でも、ついに抜管されたそうなんです。昨日メールが来ました」中島「よかったあ。もう他人事とは思えません、僕には!」D先生「明日は我が身です。お互い、気をつけましょう」中島「そうですね」話の流れからバッド・エンドかと心配しましたが、回復できて良かったですね。読者の皆様に私の経験談が少しでもお役に立てば幸いです。それはそうと、前々回に「動物園からヒョウが逃げ出した」というフェイクニュースを流したら人流が減るんじゃないかという提案をしたら、中国では本当に子供のヒョウが3頭、サファリパークから逃げ出したそうです。2頭は捕獲されましたが、1頭がまだ逃げたままなのだとか。パニックが起こることを心配してサファリパークはこのことを公表していませんでした。ひどい話ですね。子供とはいえ映像では結構大きなヒョウでした。一方、日本では横浜市のアパートから全長3.5メートルのアミメニシキヘビが逃走したというニュースが話題になっています。「怖くて外を歩けないじゃないか!」と、飼い主が近所の人に怒られていました。逃げたのは飼育している中で2番目に大きなヘビだそうです。ということは、もっとデカいのが家にいるということですかね。最後に1句ヒョウ逃げて フェイクが ホンマになってもた

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トシリズマブ、重症COVID-19肺炎患者の生存率改善/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による重症肺炎で入院した患者の治療において、IL-6受容体モノクローナル抗体のトシリズマブ(商品名:アテムクラ)を投与することで臨床状態が改善し、28日以内の退院率が向上する、という結果が報告された。無作為化非盲検対照プラットフォーム試験「RECOVERY」によるもので、Lancet誌2021年5月1日号に掲載された。ただし、別の研究においては、トシリズマブは臨床状態改善や死亡率低下に寄与しないとの結果も報告されており、今後の詳細な分析とさらなる試験結果が待たれる。 2020年4月23日~2021年1月24日の間に、RECOVERY試験に登録された2万1,550例のCOVID-19患者のうち、低酸素状態(空気中の酸素飽和度が92%未満、または要酸素療法)かつ全身性炎症(C反応性タンパク質[CRP]が75mg/L以上)が認められた成人患者4,116例を対象とし、トシリズマブ群と標準治療群に1対1で無作為に割り付けた。 ベースライン時点で、4,116例中562例(14%)が侵襲的人工呼吸器を装着し、1,686例(41%)が非侵襲的呼吸サポート(高流量経鼻酸素、CPAP、非侵襲的換気を含む)を受けており、1,868例(45%)が単純酸素吸入だけを受けていた。 CRPの中央値は143(IQR:107~204)mg/Lで、3,385例(82%)の患者が全身性コルチコステロイドを投与されていた。主要評価項目は28日後の全死亡率、 副次評価項目は退院日数、およびベースライン時点で侵襲的人工呼吸器未装着だった患者の人工呼吸器装着または死亡だった。 主な結果は以下のとおり。・参加者の平均年齢は63.6(SD:13.6)歳であった。・無作為化後28日以内に死亡したのはトシリズマブ群2,022例中621例(31%)、標準治療群2,094例中729例(35%)だった。(発生率比:0.85、95%CI:0.76~0.94、p=0.0028)。・トシリズマブ群は、標準治療群に比べて28日以内の退院率が高かった(57%対50%、発生率比:1.22、95%CI:1.12~1.33、p<0.0001)。・ベースライン時点で侵襲的人工呼吸器未装着の患者において、トシリズマブ群では人工呼吸器装着または死亡という複合エンドポイントに到達する可能性が低かった(35%対42%、リスク比:0.84、95%CI:0.77~0.92、p<0.0001)。・全身性コルチコステロイド投与患者を含む、事前に規定されたすべてのサブグループで一貫した結果が得られた。

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HER2+進行乳がんへのT-DXdによるILDの特徴/ESMO BREAST 2021

 既治療のHER2陽性進行乳がんに高い有効性を示すトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)のリスクとして間質性肺疾患(ILD)がある。本剤の第I/II相試験で発現したILDの特徴を解析したところ、承認用量ではほとんどの場合、低Gradeで、治療開始から12ヵ月以内に発現し、12ヵ月を超えるとリスクが低下することがわかった。米国・マウントサイナイ医科大学のCharles A. Powell氏が、欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer Virtual Congress 2021、2021年5月5~8日)で報告した。 本研究では、2015~18年に登録された2つの第I相試験(DS8201-A-J101、DS8201-A-A104)および第II相DESTINY-Breast01試験において、承認用法・用量でのT-DXd単剤療法(5.4mg/kg、3週間ごと)を受けたHER2陽性進行乳がん患者の胸部画像と臨床データを独立判定委員会が後ろ向きにレビューし、薬物関連と判定したILDを報告した(データカットオフ:2020年6月8日)。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は245例(第I相:61例、第II相:184例)、T-DXd治療期間中央値は9.7ヵ月(範囲:0.7〜40.3)だった。・38例(15.5%)に薬物関連ILDが発現し、ほとんどがGrade1または2(30例、12.2%)だった。Grade3および4が1例(0.4%)ずつ、Grade5が6例(2.4%)だった。・最初にILDが発現するまでの期間の中央値は5.6ヵ月(範囲:1.1〜20.8)で、38例中37例(97%)が12ヵ月以内に発現した。・患者の42%が12ヵ月以上治療されたが、12ヵ月以降にILDを新規に発現するリスクは低かった。・独立判定委員会の評価では、44件中27件(61%)のILDの発現時期は、治験医師による報告よりも早かった(中央値の差:52日、範囲:1〜288)。・Grade2~4の24件中14件(58.3%)、Grade5の6件中3件(50%)で全身性ステロイドを投与された。ILD発現から全身性ステロイドの投与開始までの期間の中央値は25.0日(範囲:1~87)だった。・44件中43件は、改訂された毒性管理ガイドラインを臨床試験で使用した2019年12月15日より前に発現していた。 これらの結果から、高GradeのILDを防ぐには、早期発見および最新のガイドラインによる適切な管理が重要であると結論した。

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新型コロナ感染症に対する回復期血漿療法は無効(解説:山口佳寿博氏)-1384

 2021年2月11日の本サイト論評で新型コロナ感染症に対する回復期血漿療法の意義・有効性を2021年1月までに発表された論文をもとに中間報告した。しかしながら、2月から3月にかけて回復期血漿療法に関する重要な論文が相次いで発表され、本療法に対する世界的評価が定まった感がある。それ故、本論評では、回復期血漿療法を再度とり上げ、本療法が新型コロナ感染症におけるウイルス増殖の抑制、感染後の重症化阻止に対して有用であるか否かを再度議論するものとする。 本論評でとり上げたJaniaudらの論文(Janiaud P,et al. JAMA. 2021 Mar 23;325:1185-1195.)は、回復期血漿療法に関するメタ解析の結果を報告したもので、2021年1月29日までに報告された10個のランダム化対照試験(RCT)を解析対象とし、観察研究は除外された。RCTは、インド、アルゼンチン、バ-レ-ン、中国、オランダ、スペイン、英国で施行されたものを含む。これらの対象論文には4個の査読終了後の正式論文に加えPress releaseを含む6個の非査読論文が含まれる。4個の正式論文における総対象者数は1,060例(回復期血漿群:595例、対照群:465例)であった。非査読論文にあって最大のものは英国のRECOVERY Trial(Randomized Evaluation of COVID-19 therapy)で総対象者数は11,558例(回復期血漿群:5,795例、対照群:5,763例)であり、他の5個の非査読論文の総対象者数は316例(回復期血漿群:155例、対照群:161例)であった。すなわち、Janiaudらのメタ解析の対象者の89%はRECOVERY Trialに登録された症例であり、その解析結果はRECOVERY Trialの結果によって決定されたものと考えなければならない。それ故、本論評では、2021年3月10日に非査読論文としてmedRxivに掲載されたRECOVERY Trialの結果について解説する(The RECOVERY Collaborative Group. medRxiv.)。 RECOVERY Trialは、英国177の医療施設で施行されている非盲検RCTであり、現在までに、デキサメタゾン、ヒドロキシクロロキン、ロピナビル/リトナビル、アジスロマイシン、トシリズマブに関する治験結果を報告している。RECOVERY Trialで使用された回復期血漿は、ELISA法によりS蛋白特異抗体が高くウイルスに対する中和抗体価が100倍以上の高力価のものであり、ランダム化から出来る限り早期に投与された(初回:137.5mL、2回目:初回より少なくとも12時間あけて翌日に137.5mLを投与)。対象者の8%で酸素投与なし、87%で酸素投与のみ、5%で侵襲的人工呼吸管理が導入されていた。すなわち、対象者の大部分はWHO分類による非重篤患者であった(WHO COVID-19 Clinical management (Ver.1.4) , 2021年1月25日)。Primary outcomeとして、ランダム化から28日目までの死亡率、Secondary outcomesとして、入院期間、ランダム化以降にECMOを含む侵襲的補助呼吸管理あるいは腎/腹膜透析が導入された症例の割合が評価された。興味深いPost-hoc analysisとして、従来株(D614G株)と英国変異株(B.1.1.7)に対する回復期血漿の効果が検討された。従来株感染者は、2020年12月1日までにランダム化された症例、英国株感染者は、それ以降にランダム化された症例と仮定された。 ランダム化から28日目における死亡率は、回復期血漿群、対照群で共に24%であり全く同一であった(Primary outcome)。従来株感染者と英国変異株感染者の死亡率も回復期血漿群と対照群で有意差を認めなかった(Post-hoc analysis)。すなわち、ウイルスの種類によらず回復期血漿療法は無効で新型コロナ感染症患者の死亡を抑制しなかった。Secondary outcomesの評価項目でも両群間で有意差を認めた指標は存在しなかった。以上の結果は、年齢、性、症状持続期間、対象患者のランダム化時のS蛋白に対するIgG抗体価、基礎治療としてのステロイド投与の有無、ランダム化時の呼吸管理の差異などの背景因子を補正しても変化せず、回復期血漿療法の臨床的有効性を全面的に否定するものであった。RECOVERY Trial以上の大規模試験を施行することは不可能、かつ、無意味であり、回復期血漿療法に関する最終結論として、本療法は無効と判断すべきである。 この大規模RECOVERY Trialの結果を受け、世界各国での回復期血漿療法に関する多くの治験は中止されつつある。RECOVERY TrialのPress releaseを受け、2021年2月4日、米国FDAは回復期血漿療法の適用を厳密化し、それを施行するにあたり以下の点を遵守することを臨床現場に要請した(New York Times, 2021年3月22日);(1) S蛋白に対する高力価の抗体を有する血漿のみを使用すること、(2) 主たる対象は免疫不全を有する感染者に限定すること、(3) 免疫不全を認めない感染者に対しては感染早期の投与のみに限定すること。本邦にあっては、回復期血漿療法は保険適用外治療として去年の早い段階で承認されているが、RECOVERY Trialを中心とした世界の趨勢を鑑み、その適用に関し早急に見直す必要がある。2021年4月2日、武田薬品工業は、新型コロナ感染症患者血漿から精製した高濃度免疫グロブリン製剤(CoVIg-19 Plasma Alliance)の第III相ITAC試験(二重盲検化RCT)の結果をPress releaseで公表した(ミクスonline, 2021年4月5日)。ITAC試験は、世界10ヵ国、63施設が参加して施行されたものであり、発症12日以内の新型コロナ感染症患者600例が対象として登録された。治験計画として、抗ウイルス薬レムデシビルにCoVIg-19 Plasma Allianceを追加したレジメンが新型コロナ感染症の制御に有効であるかどうかが解析された。残念なことに、上記のレジメンの有効性は証明されず、ITAC試験の結果はRECOVERY Trialの結論を支持するものであった。 最後に、回復期血漿療法がまったく無意味な治療法であるかどうかについて考察してみたい。この考察のために、S蛋白に対するIgG monoclonal抗体であるCasirivimabとImdevimabの抗体カクテル(REGN-COV)に関する最新の第III相治験結果(REGN-2069 Trial)を紹介したい(Roche. Media & Investor Release, 2021年4月12日)。REGN-2069 Trialは、IgG monoclonal抗体カクテルREGN-COVの皮下投与が新型コロナ感染症患者との濃厚接触に起因する家族内感染リスクを81%、無症候性感染から有症候性感染への移行リスクを31%軽減させることを示した。回復期血漿療法はS蛋白を標的としたPolyclonal抗体治療と考えることができるので、家族内感染に関してREGN-COVカクテルと同様の効果を発揮する可能性がある。その意味で、新たな治験が必要ではあるが、回復期血漿療法を家族内感染に対する予防法の1つとして位置付けることが可能ではないかと論評者は考えている。しかしながら、REGN-COVカクテルは皮下投与で外来治療ができる簡便な方法であるのに対し、回復期血漿は入院で点滴投与が必要であり実際面で非常に制限が多く、REGN-COVカクテル療法を凌駕する方法ではないことを忘れてはならない。

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IL-6受容体拮抗薬の新型コロナ重症化阻止には低用量ステロイドの併用が必要?(解説:山口佳寿博氏)-1383

 新型コロナ感染症の重症化は生体の過剰免疫反応に誘発されたサイトカイン・スト-ムに起因する。サイトカイン・スト-ムの形成にはIL-6関連細胞内シグナル伝達系の賦活が重要な役割を担うと考えられており、IL-6受容体拮抗薬の効果を検証するために多数の試験が施行されてきた。しかしながら、期待とは裏腹に新型コロナ感染症の重症化に対するIL-6受容体拮抗薬の効果を肯定する論文と否定する論文が混在し、IL-6受容体拮抗薬の効果が確実だと断定できないのが現状である。本論評では、2021年2月下旬にNEJM に同時に掲載されたIL-6受容体拮抗薬の効果を肯定する論文(REMAP-CAP Investigators. N Engl J Med. 2021 Feb 25. [Epub ahead of print])と否定する論文(Rosas IO,et al. N Engl J Med. 2021 Apr 22;384:1503-1516.)をとり上げ、なぜこのような正反対の結果が得られたのか、その原因について考察する。 新型コロナ重症肺炎に対するIL-6受容体拮抗薬(トシリズマブ、商品名:アクテムラ)の効果を肯定した最初の論文は、イタリアにおける後ろ向き観察研究TESEO Trialであった(Guaraldi G,et al. Lancet Rheumatol. 2020 Aug;2:e474-e484.)。この解析では、静注、皮下注の別なくトシリズマブ投与は、重症肺炎患者における入院2週間以内の累積死亡率を62%低下させることが示された。中等症以上の肺炎患者を対象としたフランスの多施設ランダム化非盲検対照試験CORIMUNO-19 Trialでは入院後4週までの死亡率に有意差を認めなかったものの2週までの死亡率はトシリズマブ群で有意に低かった(Hermine O,et al. JAMA Intern Med. 2021 Jan 1;181:32-40.)。米国の多施設観察研究STOP-COVID Trialは、ICU入院の重症~重篤肺炎患者を対象としたものである(Gupta S,et al. JAMA Intern Med. 2021;181:41-51.)。この解析では、ICU入院2日以内の早期にトシリズマブを投与すると4週後の死亡リスクが29%低下すると報告された。英国での多施設ランダム化非盲検対照試験REMAP-CAP Trialは、ICU入院の重篤肺炎患者を対象として2種類のIL-6受容体拮抗薬(トシリズマブ群: 353例、サリルマブ[商品名:ケブザラ]群: 48例)の効果を解析したものであり、対照群として402例が登録された(REMAP-CAP Investigators. N Engl J Med. 2021 Apr 22;384:1491-1502.)。本試験では、全対象の93%で何らかのステロイドが基礎治療として導入されていた。IL-6受容体拮抗薬はICU入院1日以内に静脈投与されており、その結果として、IL-6受容体拮抗薬は、ICU入院3週目までの心肺機能支持療法の必要日数、病院内死亡率、3ヵ月後の死亡率において有意な改善効果を示した。4月29日現在、正式論文として出版されていないが英国の大規模RECOVERY Trial(多施設ランダム化非盲検対照試験、トシリズマブ群: 2,022例、対照群: 2,094例)でもIL-6受容体拮抗薬によって4週間以内の死亡率が有意に低下すると報告された(RECOVERY Collaborative Group. medRxiv.)。RECOVERY Trialにおいては、基礎治療としてのステロイドが全対象の82%に投与されていた。 トシリズマブの効果を否定した最初の論文は、イタリアから報告された(Salvarani et al. JAMA Intern Med. 2021;181:24-31.)。この試験は、前向き多施設ランダム化非盲検対照試験で中等症の急性呼吸不全/ARDSを呈した肺炎患者を対象としたものであり、ランダム化は症状発現から8日以内に行われ、トシリズマブはランダム化から8時間以内に投与された。本試験では、トシリズマブの効果を認めず、2週、4週以内の死亡率はトシリズマブ群と対照群でほぼ同一であった。米国における多施設ランダム化二重盲検対照試験BACC Bay Tocilizumab Trialでは、中等症~重症の肺炎患者を対象としてインフォ-ムド・コンセント取得3時間以内にトシリズマブが投与された。4週目までに挿管に至った、あるいは、死亡した患者の割合は、トシリズマブ群と対照群で有意差を認めなかった。英国、米国など世界9ヵ国62施設が参加して施行された国際的多施設ランダム化二重盲検対照試験COVACTA Trialでは、重症肺炎患者を対象とし、トシリズマブ群:294例、対照群:144例が登録された(Rosas IO,et al. N Engl J Med.2021 Apr 22;384:1503-1516.)。本試験では、退院までの日数はトシリズマブ群で有意に短かったが、4週目までの死亡率には両群間で有意差を認めなかった。本試験における基礎治療としてのステロイドは全対象の24%のみにしか投与されておらず、REMAP-CAP Trial、RECOVERY Trialに比べ明らかに少なかった。 REMAP-CAP Trial(IL-6受容体拮抗薬の効果を肯定)とCOVACTA Trial(IL-6受容体拮抗薬の効果を否定)における試験計画には種々の差が存在する。たとえば、対象患者のエントリ-基準(対象患者の重症度など)、IL-6受容体拮抗薬の投与時期、Primary endpointの内容ならびに判定時期、試験の盲検性(二重盲検か非盲検か)などが異なっている(Angriman F,et al. Lancet Respir Med. 2021 Apr 27. [Epub ahead of print])。しかしながら、論評者は、両試験の差の中で最も重要なものは基礎治療としてのステロイドの導入頻度だと考えている(REMAP-CAP Trial: 93%、COVACTA Trial: 24%)。 新型コロナ感染症における重症化の最も重要な機序であるサイトカイン・スト-ムの発生にはIL-6関連シグナル伝達経路の賦活化が重要である。コロナウイルスが生体細胞に感染し細胞のACE2を占有すると、ACE2のリガンドであるアンギオテンシンII(AT)はACE2ではなくType 1アンギオテンシン受容体(AT1R)と結合する経路に流入する(AT-AT1R複合物の形成)。AT-AT1R複合物は、細胞膜に存在するタンパク分解酵素ADAM-17を賦活化し、細胞膜に付着しているTNFα、IL-6受容体α(IL-6Rα)を膜から切断、可溶性TNFα、可溶性IL-6Rα(sIL-6Rα)を産生する。可溶性TNFαは転写因子NF-кBを活性化し、TNFα、IL-1、IL-6、IL-8など多様な炎症性サイトカインを産生する。すなわち、可溶性TNFαは、NF-кBを活性化、活性化されたNF-кBはTNFαを再度産生するという“positive feed back回路”を形成する。本論評では、この回路をTNFαル-プと定義する。一方、sIL-6RαはIL-6と結合し、種々の細胞において転写因子STAT3を活性化する。STAT3はNF-кBとの物理的結合などの機序を介してNF-кBの活性を上昇させる(STAT3とNF-кBのcross talk)。このようなSTAT3を介するNF-кBの活性化はIL-6 amplifier(IL-6アンプ)と呼称される(Hirano T, et al. Immunity. 2020 May 19;52:731-733.)。IL-6アンプは、NF-кBの活性化によって細胞遊走因子(ケモカイン)を含む多様な炎症性サイトカイン(TNFα、IL-1、IL-6、IL-8など)の持続的過剰産生を惹起する。それ故、IL-6アンプはNF-кBの活性化を持続させる“positive feed back回路”の1つと考えることができる。以上のTNFαル-プとIL-6アンプは互いに連携しており、サイトカイン・スト-ムの主たる発生機序として重要である。IL-6アンプを阻止するためには、可溶性IL-6Rαの効果を抑制すればよく、IL-6受容体拮抗薬が最もシンプルかつ有効な手段である。しかしながら、IL-6受容体拮抗薬はTNFαル-プの一部を抑制するもののすべてを抑制する訳ではなく、TNFαル-プの確実な抑制のためにはTNFα阻害薬の投与が必要である(Feldmann MJ,et al. Lancet. 2020 May 2;395:1407-1409.)。TNFαル-プとIL-6アンプの同時抑制には、これら2つの経路に対して“扇の要”として作用するNF-кBの活性を、たとえば、低用量ステロイドなどによって阻害すればよい。 以上の分子生物学的機序を基礎として、IL-6受容体拮抗薬が新型コロナ感染症の重症化阻止に有効であると報告したREMAP-CAP Trial、RECOVERY Trialとそれらとは逆に無効と報告したCOVACTA Trialの意味する内容について考察する。有効と報告した前2つの試験では、対象の82~93%に基礎治療としてステロイドが投与されていた。すなわち、REMAP-CAP Trial、RECOVERY Trialは、IL-6アンプとTNFαル-プに対して“扇の要”として作用するNF-кB活性をステロイドによる基礎治療によって抑制したものであり、IL-6ル-プ単独の効果を見たものではない。言い換えれば、REMAP-CAP Trial、RECOVERY TrialからはIL-6受容体拮抗薬が単独で新型コロナ感染症の重症化阻止に真に有効であるとは結論できない。一方、無効と報告したCOVACTA Trialでは基礎治療としてステロイドが投与されていた対象の割合は24%と低いものであった。すなわち、COVACTA Trial は、ほぼ純粋にIL-6アンプの効果を観察したものであり、COVACTA Trialの結果は、IL-6受容体拮抗薬の単独投与が新型コロナ感染症におけるサイトカイン・スト-ムに起因する病態の重症化を有意に抑制するものではないことを示唆する。以上の考察より、現時点では、IL-6受容体拮抗薬自体の新型コロナ感染症重症化阻止作用は否定的と考えなければならず、IL-6受容体拮抗薬の臨床的効果発現のためには、ステロイド(低用量)の併用が必要であるものと推察される。これに関する明確な機序は不明であるが、IL-6受容体拮抗薬の効果発現には、IL-6アンプに加えTNFαル-プの同時抑制が必要、あるいは、IL-6受容体拮抗薬とステロイドとの間に本論評で考察した機序以外の相加/相乗効果が存在するのかもしれない。今後、IL-6アンプの抑制、TNFαル-プの抑制、あるいは、両者の同時抑制を意識した確実な臨床試験を期待するものである。

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新型コロナワクチン接種で注目の副反応、SIRVAとは?

新型コロナワクチン接種による副反応疑いとして「ワクチン投与関連肩損傷(ワクチン投与関連肩損傷)」「ワクチン接種部位疼痛」などが報告されている。しかし、これはワクチン成分自体による副反応ではなく、接種手技により避けられる可能性がある。これらの発症予防のための必要な知識について、プライマリ・ケア連合学会の動画監修にも関わった仲西 康顕氏(奈良県立医科大学整形外科・臨床研修センター 講師)を取材し、末梢神経を損傷してしまう原因や実際の症状、注意点について伺った。末梢神経障害やSIRVAとは、その症例数や日本での認知度はどのくらいでしょうか?筋肉注射の手技が原因で生じる問題には、不適切な部位への接種による腋窩神経や橈骨神経などの末梢神経損傷とSIRVA(Shoulder Injury Related to Vaccine Administration)があります。三角筋への筋肉注射によるワクチン接種が一般的ではない日本においては、医原性末梢神経障害を専門とする私でも、筋肉注射に関わる症例には数例しか関わったことがありません。近年、整形外科医のなかで問題視されているSIRVAは、「ワクチン接種に関連した肩関節障害」と訳され、三角筋下滑液包内への不適切な薬剤注入が原因で生じる肩の急性炎症(肩関節周囲炎、滑液包炎、腱板炎など)のことです。米国で2010年頃に報告されたのをきっかけに徐々に報告数も増えていますが、2016年時点での米国での年間報告数はわずか200例超1)と世界的にもまだまだ稀な疾患です。そのため、整形外科医以外には聞き慣れない病名だと思います。しかし、これらの合併症はワクチン接種後の患者さんのQOLを損なう恐れがあり、新型コロナワクチンの安全な投与のための手技マニュアル作成には重要だと考え、プライマリ・ケア連合学会の動画「新型コロナワクチン より安全な新しい筋注の方法 2021年3月版」の監修にも携わらせてもらいました。また、マニュアルと同時に作成した、われわれの筋肉注射手技の根拠に関する論文2)は、現在、オンラインで一般公開されています。私たちが提示した安全な手技に従って注射した場合、神経損傷やSIRVAについて避けることが可能です。ただし、ワクチン接種現場でこれらの合併症の診断方法や治療方法まで医療関係者の一人一人が“深く理解しておく必要性はない”というのが個人的な意見です。今回は従来の手技によって生じる可能性のある副反応について解説しますが、神経損傷とは関係なくワクチン接種後に生じる手の違和感などへの実際の対応については別稿で述べたいと思います。末梢神経障害やSIRVAを予防するための対策を教えてください筋肉注射に関する多くの手技解説には、穿刺部位について「肩峰から3横指下(5cm)」と書かれていますが、その部位には三角筋を支配し肩関節の外転を司る腋窩神経が走行しています。また、橈骨神経は上腕骨に螺旋状に巻き付くように走行しているため、腕の肢位によっては神経の走行を推測しにくく誤った穿刺を起こしかねないんです。さらに、前述のSIRVAは三角筋下滑液包へのワクチンの注入が原因と考えられますが、高齢者では症状がなくても腱板の広範囲断裂や滑液包内の液体貯留は珍しいことではなく3)、滑液包の形状が変化するこれらの疾患では肩峰より5cm以内の接種は滑液包内への誤注入のリスクがより高くなると推測されます(図1)。(図1) 正常の肩関節と腱板断裂、滑液包水腫画像を拡大する広範囲腱板断裂では、正常よりも末梢まで三角筋下滑液包が拡張することがある。さらに水腫がある場合、滑液包内への誤注入の可能性は高くなる。高齢者ではこれらの変化は症状を伴っていないことも稀ではない。われわれ整形外科医はこれらの神経損傷に必ず注意を払って手術に臨むわけですが、ワクチン接種現場の報道映像では “腰に手を当てて上腕後方を差し出す姿勢”のように神経損傷を招く可能性のある手技が多く見受けられました。これらの神経損傷を避けるために、整形外科では髄内釘のスクリューや創外固定のピンを安全に上腕骨に刺入することのできる部位について、永年蓄積されてきたノウハウがあります。当院では過去の複数の文献報告なども踏まえて、新しく筋肉注射を行うためのマニュアルを作成しました。ですが、“従来の手技での合併症の発生頻度”も“新たな接種方法による予防効果“も高いエビデンスを示すことのできる臨床研究はこれまで行われておらず、まだまだ議論の余地は残っています。<現時点で仲西氏らが提案する新たな接種方法>上腕が内旋しないように力を抜き、肘は自然に伸ばして腕をおろしてもらう肩峰から下ろした垂線と前腋窩線の頂点・後腋窩線の頂点を結ぶ線の2つの線が交わる点に穿刺する接種者、被接種者が共に腰掛けた状態で接種する末梢神経損傷やSIRVAを生じた患者が訴える症状、その対処法を教えてください腋窩神経損傷では穿刺時も含めて痛みや痺れもなく、数日後に肩を挙上しにくいと気付いたとの症例報告があります。診断するには、両肩を十分に露出した上で部分的な三角筋の収縮力の低下がないか観察する必要があるでしょう。しかし、腋窩神経損傷は比較的自然に治りやすく、おそらく医療従事者に十分認識されないまま治ってしまうことも多々あると思われます。一方、橈骨神経損傷は受傷後の比較的早期に手の甲から親指や人差し指にかけての痺れ、手首や指の動かしにくさを訴えることが多いようです。一言で神経損傷と言ってもその度合いにより、自然回復が見込めるか、あるいは何らかの外科的な治療を検討すべきかで治療方針は異なります。筋肉注射によって生じた重度の橈骨神経麻痺症例を経験したことがありますが、日常生活や就労に大きく影響する後遺症が残りました。もし橈骨神経損傷を疑った場合は、自然回復を待つのではなく早期に手の外科を専門に行っている整形外科あるいは形成外科医に相談すべきと考えます。正確な神経学的評価に加えて、近年では末梢神経の超音波による観察が診断に有用です。SIRVAに関しては、まだまだ日本では報告されている症例は多くありません。海外の報告を見ると、ワクチン接種後数時間から2日程度の間に肩関節の強い自発痛を生じ、自然に改善しないことが多いようです。新型コロナワクチンの2回目の接種では、三角筋の強い痛みを生じることがしばしばあるようなので、発症早期に診断することは難しいかもしれません。ワクチン接種から数日経っても安静時に軽減することのない強い肩の痛みが続く場合は、肩関節の単純MRIが有用と考えます。接種された三角筋ではなく、肩関節の滑液包を中心として広範囲に炎症を示す所見があれば、より積極的にSIRVAを疑うことができます。治療としては、初期には滑液包内へのコルチコステロイド投与が検討されますが、早めに整形外科へ紹介することをお勧めします。ワクチン接種部位に関する問題の背景を踏まえ、今後の手技の標準化についてはどのように考えますか?実は整形外科医の中でも、前医とのトラブルをしばしば抱えて受診される「医原性末梢神経損傷」の患者さんを積極的に診ようという医師は多くありません。また、筋肉注射の手技自体が全体的に少なく、さらには医療トラブルへの対応に慎重になるあまり、まとまった症例の検討や論文による知識の共有が行われにくかった背景があるのではと思います。そのために厚生労働省を含めて安全なワクチンの接種方法を検討する内科、小児科の医師の間には神経損傷が現実的な問題として認識されてこなかったのではないでしょうか。今回、当院のパンフレット公開後に日本プライマリ・ケア連合学会の中山 久仁子先生、守屋 章成先生から連絡があり、専門性を越えて議論した結果、整形外科医の声に耳を傾けていただき、一旦公開した筋肉注射手技の動画を再度撮影し公開するという決断まで下されました。おそらく、この動画で新しい手技を知った方がとても多いのではと思います。神経損傷やSIRVAといった問題が発生した際、実際に治療にあたるのは整形外科医ですが、コロナ禍で筋肉注射についての問題が注目を集めています。整形外科医の中にも、私が尊敬する名古屋大学の平田 仁教授をはじめとして、真剣に医原性末梢神経損傷の問題に取り組んでいる医師がおります。今後、筋肉注射の手技について検討する際には、ぜひ整形外科医の持つ知識も参考に、さらに安全性を高めるための建設的な議論に結びつくことを期待しています。現時点では筋肉注射の推奨接種部位について、各団体間で統一されていません。しかし、これからもワクチン接種に関わる医療者にも、接種を受ける多くの人にも安心してもらえるように取り組み、新型コロナウイルス感染症対策に貢献していきたいと思っています。次回「ワクチン接種後の手のしびれ、痛みをどう診るか」に続く。(インタビュー:2021年4月20日、聞き手・構成:ケアネット 土井 舞子)参考1)Hesse EM, et al. Vaccine. 2020;38:1076-1083.2)仲西 康顕ほか. 中部整災誌. 2021;64:1-9.3)Minagawa H, et al. J Orthop. 2013;10:8-12.*奈良県立医科大学附属病院臨床研修センターのサイトに「Q&A」などを掲載中厚生労働省予防接種法に基づく医療機関からの副反応疑い報告状況について(令和3年2月17日から令和3年4月4日報告分まで)

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アトピー性皮膚炎に正しい理解を―患者1,000人への意識調査

 アトピー性皮膚炎は、罹患率だけでなく認知度も高い疾患でありながら、その疾患特性、患者に及ぼす影響、治療法などについての理解は十分ではない。 4月16日、アッヴィ合同会社は、『アトピー性皮膚炎による患者さんの生活や対人関係への影響~患者さん1,000人を対象にした疾病負荷 調査結果を発表~』と題したセミナーを開催した。 本セミナーでは、片岡 葉子氏(地方独立行政法人 大阪府立病院機構 大阪はびきの医療センター 副院長兼主任部長 アトピー・アレルギーセンター長)と江藤 隆史氏(東京逓信病院皮膚科客員部長、あたご皮フ科副院長)が、アトピー性皮膚炎の正しい理解をテーマに講演を行った。単純なアレルギー反応? 薬は塗り続ける? 疾患への誤解 片岡氏は「成人アトピー性皮膚炎 疾患の理解・社会の理解」と題して講演を行った。同氏は、疾患に関するさまざまな誤解が、アトピー性皮膚炎を治りにくくする可能性があることを語り、病態、病気、患者の全体像についてポイントを解説した。1)病態:アトピー性皮膚炎は、単純なアレルゲン除去で治る疾患ではなく、患者の遺伝的因子に環境因子が刺激を与えて引き起こされる疾患である。遺伝的因子としては、皮膚のバリア機能障害や免疫学的素因などがあり、とくにTh2型リンパ球の増殖とそれに伴うIgE抗体産生の促進が、炎症の悪循環を引き起こすポイントとなる。2)病気:抗炎症外用薬の使用で、見た目には炎症が抑えられても、Th2型リンパ球は増殖した状態であることが多い。そのため、薬を早期に中止することで再び炎症が現れ、症状を繰り返す患者が多い。3)患者の全体像:成長とともに寛解する小児患者もいるが、全例が寛解するわけではない。また、セルフケアが適切に出来ていないために、寛解に至らない患者も多い。 アトピー性皮膚炎は増悪・軽快を繰り返す慢性の疾患だが、疾患の特性を正しく理解し、適切に治療することで症状のない状態を長く保つことが期待できる。片岡氏は「(適切な治療で症状を抑えることで)患者の疾病負荷を減らし、今まで理解されていなかった患者を救い出すことが可能になる」と語った。アトピー性皮膚炎の「疾病負荷」 日常生活へのさまざまな影響 アッヴィ合同会社が実施した『アトピー性皮膚炎が生活に与えている影響に関する意識調査』の結果について、片岡氏が紹介した。この結果から、疾病が患者の生活に大きな負荷をかけており、社会の正しい理解が求められることが明らかになった。・7割以上の患者が「症状が繰り返されること」に対して不安や悩みを抱えており、「治らないと諦めている」患者が約5割であった。・3割以上の患者が「アトピー性皮膚炎に由来する、日常生活での負担やストレス」について周囲の理解が十分ではないと感じると回答した。・患者の約10人に1人が「アトピー性皮膚炎が原因で学業や仕事を中断、断念せざるを得なかった経験」があると回答した。・5割以上の患者が「周囲から掛けられた言葉に傷ついた、または嫌な思いをした経験」があると回答した。その時期については「社会人時代」(53.5%)が最も多かった。・6割以上の患者が「アトピー性皮膚炎が原因で、恋愛・結婚・子供を持つことに対し不安・悩みを感じる、または感じたこと」があると回答した。ステロイドは怖い薬? 治療への誤解 江藤氏は「患者さんの苦しみや患者さんとの関わり方を体験談から学ぶ」と題して講演を行った。同氏は、自身が顧問を務めるNPO法人 日本アレルギー友の会に寄せられた患者の体験談を通して、眼合併症やカポジ水痘様発疹症などを解説した。 これらの合併症の背景には、誤った治療の選択、とくにステロイドに対する誤解があるという。「ステロイドはなるべく使わないほうがいい」「ステロイドは効かない」と考える患者は少なくない。治療を続けてもらうためには、患者会など、正しい知識を持ち、相談できる人が周囲にいることも重要となる。江藤氏は「患者さんにとっては適切な治療にたどり着くこと、周囲の人にとっては正しい疾患の知識を持つことが、引き続き課題である」と締めくくった。

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