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出生前母体ステロイド投与、在胎23~25週の早産児の死亡・神経発達障害リスクを低減

 在胎23~25週の早産児について、出生前副腎皮質ステロイド投与により、生後18~22ヵ月の死亡または神経発達障害の発生リスクを低下することが明らかにされた。1995年に発表された最新ガイドラインでは、在胎24~34週での早期分娩に関して母体への出産前ステロイド投与が推奨されているが、24週以前の早産についてはデータが不足していた。一方でそれら早産児の多くが集中治療を受けていた。米国・アラバマ大学のWaldemar A. Carlo氏らが、早産児約1万児について追跡し明らかにしたもので、JAMA誌2011年12月7日号で発表した。6年間、全米23ヵ所から被験児を登録し検討 研究グループは、出生前ステロイド投与の効果について、在胎22~23週出生児について検討することを目的とした。1993年1月1日~2009年12月31日にかけて、全米23ヵ所の大学付属周産期医療センターで、在胎22~25週で生まれ、出生時体重が401~1000gだった1万541児について、前向きコホート試験を行った。 出生前の母体副腎皮質ステロイド投与と、生後18~22ヵ月の死亡率や神経発達障害との関連について調べた。 神経発達障害に関する評価は、1993~2008年に生まれ、生後18~22ヵ月時点まで生存した5,691児のうち4,924児(86.5%)について行われた。なお評価者には、被験者の母体副腎皮質ステロイド投与の有無に関する情報は知らされなかった。在胎22週では、死亡・神経発達障害発生の有意な低下は認められず その結果、生後18~22ヵ月時点における、死亡または神経発達障害の発生率は、在胎23週児でステロイド群が83.4%、非ステロイド群が90.5%と、ステロイド群で低かった(補正後オッズ比:0.58)。在胎24週児でもステロイド群68.4%、非ステロイド群80.3%(補正後オッズ比:0.62)、在胎25週児でも同52.7%、67.9%(補正後オッズ比:0.61)と、いずれもステロイド群で低かった。 しかし、在胎22週児では、両群で有意差は認められなかった。 在胎23~25週児では、母体への副腎皮質ステロイド投与によって、生後18~22ヵ月までの死亡や、院内死亡、死亡・脳室内出血・脳室周囲白質軟化症、死亡または壊死性全腸炎、のいずれの発生リスクも有意に低下した。 一方で在胎22週児では、母体への副腎皮質ステロイド投与により、死亡または壊死性全腸炎リスクについてのみステロイド群での有意な低下が認められた(ステロイド群73.5%対非ステロイド群84.5%、補正後オッズ比:0.54、95%信頼区間:0.30~0.97)。

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重症型急性アルコール性肝炎に対するプレドニゾロン+N-アセチルシステイン併用療法

 死亡率が高い重症型急性アルコール性肝炎について、プレドニゾロン+N-アセチルシステイン併用療法が生存率を改善するかについて検討した試験が行われた。結果、1ヵ月生存率は上昇したが、主要転帰とした6ヵ月生存率は改善されなかったという。フランス・Picardy大学のEric Nguyen-Khac氏らが、174例を対象とした無作為化試験の結果、報告した。同疾患患者の死亡率は、グルココルチコイド治療を行っても6ヵ月以内の死亡率が35%と高い。NEJM誌2011年11月10日号掲載報告より。プレドニゾロン単独療法と、+N-アセチルシステイン併用療法とを比較 Nguyen-Khac氏らAAH-NAC(Acute Alcoholic Hepatitis–N-Acetylcysteine)研究グループは、2004~2009年にフランスの11大学病院に重症型急性アルコール性肝炎で入院した患者174例を対象に試験を行った。 被験者は無作為に、プレドニゾロン+N-アセチルシステイン併用療法を受ける群(85例)とプレドニゾロン単独療法を受ける群(89例)に無作為に割り付けられた。被験者は全員4週間にわたってプレドニゾロン40mg/日の経口投与を受け、そのうち併用群は最初の5日間にN-アセチルシステイン静注を受けた。同投与量は、1日目は150mg/kg体重を5%ブドウ糖液250mLに溶解したものを30分間、50mg/kgを同500mLに溶解したものを4時間、100mg/kgを同1,000mLに溶解したものを16時間かけて投与。2~5日目は、1日当たり100mg/kgを同1,000mLに溶解したものを投与した。 単独群はその間、5%ブドウ糖液1,000mLのみが投与された。試験中、腹水治療のための利尿薬投与などや門脈圧亢進症のためのβ遮断薬の使用は認められた。飲酒癖は本人任せであった。アセトアミノフェン、ペントキシフィリン、抗TNF-αの使用は禁止された。全患者は標準病院食(1日1,800~2,000kcal)を受けた。主要転帰6ヵ月生存、併用群のほうが低かったが有意差は認められず 主要転帰は6ヵ月での生存とした。結果、併用群(27%)のほうが単独群(38%)よりも低かったが有意ではなかった(P=0.07)。 副次転帰は、1ヵ月、3ヵ月の生存、肝炎の合併症、N-アセチルシステイン使用による有害事象、7~14日のビリルビン値の変化などであった。結果、1ヵ月時点の死亡率は併用群(8%)のほうが単独群(24%)よりも有意に低かったが(P=0.006)、3ヵ月時点では有意差は認められなくなっていた(22%対34%、P=0.06)。6ヵ月時点の肝腎症候群による死亡は、併用群(9%)のほうが単独群(22%)よりも低かった(P=0.02)。 多変量解析の結果、6ヵ月生存に関連する因子は、「年齢がより若いこと」「プロトロンビン時間がより短いこと」「基線のビリルビン値がより低いこと」「14日時点でのビリルビン値低下」であった(いずれもP<0.001)。 感染症は、単独群よりも併用群で頻度が高かった(P=0.001)。その他副作用は両群で同等であった。

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田中良哉教授が語る関節リウマチ治療の展望

2011年10月27日、東京で開催された関節リウマチ治療に関するプレスセミナー(主催:アボット ジャパン株式会社/エーザイ株式会社)において、産業医科大学医学部第1内科学講座教授 田中良哉氏=写真=による講演が行われた。講演では、2010年に発表された関節リウマチ治療における新分類基準および寛解基準、治療のあり方を示す「Treat to Target(T2T)」などについて解説したが、田中氏は、新分類基準を治療の「入り口」、新寛解基準を「ゴール」、そしてT2Tを「入り口」から「ゴール」へ至る「道筋」に例え、関節リウマチ診療における意義を強調した。また、最新関節リウマチ治療研究の1つとして、国内4施設(慶應義塾大学医学部内科、埼玉医科大学総合医療センター リウマチ・膠原病内科、産業医科大学医学部第1内科学、東京女子医科大学 膠原病リウマチ痛風センター)が共同で行った「HARMONY Study」を取り上げた。本試験は、平均罹患年数9年の関節リウマチ患者に生物学的製剤「アダリムマブ」(商品名:ヒュミラ)を投与、その治療効果を検証したレトロスペクティブ試験で、検証の結果、投与1年後には約4割の患者が臨床的寛解に入り、約6割の患者で関節破壊進行が止まったことが明らかになっている 1)。講演の最後、田中氏は「関節破壊を進行させないためには、まず臨床的寛解を達成すべきであり、その寛解を維持することが重要である」と強調した。また、寛解に向けた治療について、「ステロイド薬などによる対症療法は最小限にとどめ、MTXや生物学的製剤などによる根本療法を徹底的に行うべき」と述べ、本講演を締めくくった。 参考文献:1)T Takeuchi, Y Tanaka et al. Mod Rheumatol. 2011 Sep 7.(ケアネット 呉 晨)

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COPD患者への増悪予防としてのアジスロマイシン

慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者への増悪予防を目的としたアジスロマイシン(AZM)投与は、急性増悪の頻度を減らしQOLを改善することが、プラセボ対照無作為化試験の結果、報告された。米国・コロラド大学デンバー健康科学センターのRichard K. Albert氏らCOPD Clinical Research Networkが、増悪リスクの高い特定の患者1,557例を対象に、標準治療に加えアジスロマイシン250mg/日を1年間投与した結果による。ただし、被験者の一部で聴覚障害が認められたという。NEJM誌2011年8月25日号掲載報告より。250mg/日を1年間投与COPDの急性増悪は、死亡リスクの上昇や肺機能の急速な低下はもとより、本人の労働機会を奪い、開業医やER受診、入院機会の頻度を増し治療コストを上昇させる。標準治療〔吸入ステロイド薬、長時間作用性β2刺激薬(LABA)、長時間作用性抗コリン薬〕も頻度は減らすものの、なお年平均1.4回の急性増悪が認められることから、Albert氏らは、種々の炎症性気道疾患に有効なマクロライド系抗菌薬の予防的投与について検討した。試験対象となったのは、40歳以上のCOPDの増悪リスクは高いが、聴覚障害、安静時頻脈または補正QT間隔延長の著明なリスクはない患者であった。合計1,577例がスクリーニングを受け、うち1,142例(72%)が、標準治療に加えてアジスロマイシン250mg/日を1年間受ける群(570例)、または同プラセボを受ける群(572例)に無作為に割り付けられた。試験登録は2006年3月から始まり、1年間投与後2010年6月末まで追跡評価された。主要アウトカムは、初回急性増悪までの期間。副次アウトカムには、QOL、黄色ブドウ球菌や肺炎レンサ球菌などの鼻咽頭細菌コロニー形成、服薬アドヒアランスが含まれた。急性増悪の頻度減少、QOL改善も、一部患者で聴覚障害、耐性菌出現の影響は不明1年間の追跡調査を完了した患者は、アジスロマイシン群89%、プラセボ群90%であった。初回増悪までの期間の中央値は、アジスロマイシン群266日(95%信頼区間:227~313)に対して、プラセボ投与群は174日(同:143~215)で有意な延長が認められた(P

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市中肺炎に対するデキサメサゾン補助療法で入院期間が短縮

免疫不全状態にない市中肺炎患者の治療では、抗菌薬に補助療法としてデキサメサゾンを追加すると、入院日数が短縮する可能性があることが、オランダ・St Antonius病院(ニューウェハイン)のSabine C A Meijvis氏らの検討で示された。追加に伴い高血糖の頻度が上昇したものの、重篤な有害事象はまれだった。市中肺炎治療の中心は早期診断に基づく適切な抗菌薬療法だが、ワクチンによる予防治療の導入や抗菌薬の進歩にもかかわらず罹患率、死亡率は高いままで、医療コストを押し上げている。補助療法の有効性が示唆されており、デキサメサゾン追加は全身性の炎症を抑制することで肺炎の早期消退をもたらす可能性があるが、抗菌薬への追加のベネフィットは不明だという。Lancet誌2011年6月11日号(オンライン版2011年6月1日号)掲載の報告。デキサメサゾン追加の入院期間短縮効果を評価するプラセボ対照無作為化試験研究グループは、市中肺炎患者の入院期間に及ぼすデキサメサゾン追加の効果を評価するプラセボ対照無作為化試験を実施した。オランダの2つの教育病院の救急外来を受診し、市中肺炎と診断された18歳以上の患者が、デキサメサゾン(5mg/日)あるいはプラセボを入院後4日間静注する群に無作為に割り付けられた。免疫不全状態の患者、迅速なICUへの搬送を要する患者、すでに副腎皮質ステロイドや免疫抑制薬の投与を受けている患者は除外した。主要評価項目は入院期間であった。入院期間中央値が1日短縮、高血糖が高頻度に発現2007年11月~2010年9月までに304例が登録され、デキサメサゾン群に151例(男性56%、平均年齢64.5歳)が、プラセボ群には153例(同:57%、62.8歳)が割り付けられた。304例中143例(47%)は肺炎重症度指数(pneumonia severity index:PSI)でクラス4~5の患者であった(デキサメサゾン群79例、プラセボ群64例)。入院期間中央値は、デキサメサゾン群が6.5日(IQR:5.0~9.0)と、プラセボ群の7.5日(同:5.3~11.5)に比べ有意に短縮した(p=0.0480)。院内死亡や重篤な有害事象はまれで、両群間に差は認めなかった。重複感染がデキサメサゾン群の7例(5%)、プラセボ群の5例(3%)にみられた(p=0.54)。デキサメサゾンによると考えられる胃穿孔が1例(第3日目)に認められた。高血糖が、デキサメサゾン群で44%(67/151例)と、プラセボ群の23%(35/153例)に比べ有意に高頻度にみられた(p<0.0001)。著者は、「免疫不全状態にない市中肺炎患者の治療では、抗菌薬にデキサメサゾンを追加することで、入院期間を短縮できる可能性がある」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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COPDの標準治療へのβ遮断薬追加の有用性が明らかに

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療において、β遮断薬を標準的な段階的吸入薬治療に追加すると、全死因死亡、急性増悪、入院のリスクが改善されることが、イギリス・Dundee大学のPhilip M Short氏らの検討で示された。β遮断薬は、心血管疾患に対する明確なベネフィットが確立されているが、COPDを併発する患者では、気管支攣縮の誘導や吸入β2刺激薬の気管支拡張作用の阻害を理由に使用されていない。一方、β遮断薬がCOPD患者の死亡や増悪を抑制する可能性を示唆する報告があるが、標準的なCOPD治療薬との併用効果を検討した研究はないという。BMJ誌2011年5月14日号(オンライン版2011年5月10日号)掲載の報告。β遮断薬の上乗せ効果を評価する後ろ向きコホート試験研究グループは、COPD管理におけるβ遮断薬の意義を評価するために、標準治療+β遮断薬の効果を検討する後ろ向きコホート試験を実施した。スコットランド、テーサイド州の呼吸器疾患データベースであるTayside Respiratory Disease Information System(TARDIS)を検索して、2001年1月~2010年1月までにCOPDと診断された50歳以上の患者5,977例を抽出した。Cox比例ハザード回帰分析にて、全死因死亡、経口副腎皮質ステロイド薬の緊急投与、呼吸器関連入院のハザード比を算出した。全死因死亡率が有意に22%低下平均フォローアップ期間は4.35年、男性3,048例/女性2,929例、診断時の平均年齢は69.1歳、使用されたβ遮断薬の88%が心臓選択性であった。β遮断薬の追加によって全死因死亡率が22%低下した(ハザード比:0.78、95%信頼区間:0.67~0.92)。β遮断薬追加が全死因死亡にもたらすベネフィットは、治療の全段階で認められた。対照群(1,180例、短時間作用性吸入β2刺激薬、短時間作用性吸入抗コリン薬のいずれか一方のみで治療)との比較における全死因死亡率の調整ハザード比は、吸入ステロイド薬(ICS)+長時間作用性β2刺激薬(LABA)+長時間作用性抗コリン薬チオトロピウム(Tio)併用治療では0.43(95%信頼区間:0.38~0.48)、これにβ遮断薬を追加した場合は0.28(同:0.21~0.39)であり、いずれも有意に改善されたが、ICS+LABA+Tio+β遮断薬併用治療のほうがより良好であった。急性増悪時の経口ステロイド薬の緊急投与および呼吸器関連入院の低減効果についても、全死因死亡と同様の傾向がみられ、β遮断薬追加のベネフィットが示された。長時間作用性気管支拡張薬や吸入ステロイド薬にβ遮断薬を併用しても、肺機能に対する有害な影響は認めなかった。著者は、「β遮断薬は、COPDの確立された段階的吸入薬治療と併用することで、併存する心血管疾患や心臓病薬との相互作用を起こさずに、かつ肺機能へ有害な影響を及ぼすことなく、死亡や増悪を低下させる可能性がある」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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妊婦へのベタメタゾン投与、早産児の呼吸器障害を低減せず:ブラジルの調査

妊娠期間34~36週の妊婦に対する出産前のコルチコステロイド投与は、新生児の呼吸器障害の発生を抑制しないことが、ブラジルInstituto de Medicina Integral Professor Fernando FigueiraのAna Maria Feitosa Porto氏らの調査で示された。妊娠後期の早産児は呼吸器障害の頻度が満期出産児に比べて高く、酸素吸入や換気補助、集中治療のための入院を要するリスクが高い。そこで、特に妊娠期間34週以前の新生児肺の成熟促進を目的に、妊婦に対する出産前コルチコステロイド投与が行われてきたが、妊娠期間34~36週の早産児でも、特に一過性多呼吸の発生リスクが高いという。BMJ誌2011年4月16日号(オンライン版2011年4月12日号)掲載の報告。早産児呼吸器障害の予防効果を無作為化試験で評価研究グループは、妊娠期間34~36週で出生した早産児の呼吸器障害の予防における、出産前の妊婦に対するコルチコステロイド投与の有効性を検討する三重盲検無作為化試験を実施した。2008年4月~2010年6月までに、ブラジル北東部の大規模3次教育病院(Instituto de Medicina Integral Professor Fernando Figueira)を受診した切迫早産のリスクを有する妊娠34~36週の女性が登録された。これらの妊婦が、プラセボ群あるいはベタメタゾン(商品名:リンデロン)12mgを2日連続で筋注する群に無作為に割り付けられた。主要評価項目は新生児の呼吸器障害(呼吸窮迫症候群、一過性多呼吸)の発生率とし、副次的評価項目は換気補助、新生児罹病率、在院期間とした。いずれの評価項目も両群で同等320人の妊婦が登録され、ベタメタゾン群に163人が、プラセボ群には157例が無作為に割り付けられた。最終解析の対象となった新生児は、それぞれ143人、130人であった。呼吸窮迫症候群の頻度は両群ともに低く[ベタメタゾン群:1.4%(2/143人) vs. プラセボ群:0.8%(1/130人)、p=0.54]、一過性多呼吸は両群ともに高頻度であった[24%(34/143人) vs. 22%(29/130人)、p=0.77]が、いずれも有意差は認めなかった。妊娠期間の長さのサブグループで調整後も、ベタメタゾンの使用は呼吸器障害罹病率のリスクを低減しなかった(調整後リスク:1.12、95%信頼区間:0.74~1.70)。換気補助の施行率はベタメタゾン群が20%(28/143人)、プラセボ群は19%(24/130人)であり、両群で同等であった(p=0.81)。新生児罹病率はそれぞれ62%(88/143人)、72%(93/130人)であり(p=0.08)、在院期間は5.12日、5.22日(p=0.87)と、いずれも両群間に有意な差はみられなかった。光線療法を要する新生児黄疸の頻度は、ベタメタゾンの投与を受けた妊婦の子どものほうが有意に低かった(リスク比:0.63、95%信頼区間:0.44~0.91、p=0.01)。著者は、「妊娠期間34~36週の妊婦に対する出産前コルチコステロイド投与は、早産児の呼吸器障害の発生率を低減しない」と結論し、「現在、US National Institute of Child Health and Human Development (NICHD)により、2,800人の早産リスクのある妊婦を対象に出産前ステロイド投与の臨床試験が進行中で、2013年に最終解析が予定されており、この結果が報告されるまでは、早産児の呼吸器障害の予防を目的としたコルチコステロイドのルーチンな使用は正当化されない」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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乳幼児の急性細気管支炎、アドレナリン単剤の有効性示すエビデンス

2歳以下の乳幼児の急性細気管支炎に救急部外来で対処する場合、第1日の入院リスクを最も低減する治療法はアドレナリン(エピネフリン)単剤であることが、カナダAlberta大学小児科のLisa Hartling氏らの検討で示された。急性細気管支炎の治療法は世界中で大きなばらつきがみられ、それぞれの事情に基づいて異なる気管支拡張薬やステロイド薬が使用されている。系統的なレビューがいくつか実施されているが、個々の治療選択肢に関する信頼性の高いエビデンスはいまだに確立されていないという。BMJ誌2011年4月9日号(オンライン版2011年4月6日号)掲載の報告。乳幼児の急性細気管支炎の至適治療法に関するメタ解析研究グループは、2歳以下の乳幼児の細気管支炎の急性期管理における気管支拡張薬とステロイド薬の単剤あるいは併用療法の有効性と安全性について系統的にレビューし、メタ解析を行った。データベース(Medline、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials、Scopus、PubMed、LILACS、IranMedEx)、関連学会プロシーディング、臨床試験登録を検索して、喘鳴を伴う細気管支炎を初めて発症した生後24ヵ月以下の乳幼児を対象に、気管支拡張薬とステロイド薬の単剤あるいは併用療法を、プラセボあるいは他の介入法(別の気管支拡張薬やステロイド薬、標準治療)と比較した無作為化対照比較試験を抽出した。2名のレビューワーが、患者選択基準やバイアスのリスクなどに関して各試験の評価を行った。主要評価項目は、外来患者の入院(第1日、第7日まで)および入院患者の入院期間であった。メタ解析には変量効果モデル(random effects model)を用い、全介入法を同時に比較するためにベイジアン・ネットワーク・モデル(Bayesian network model)による混合治療比較法(mixed treatment comparison)を使用した。1週間までの入院リスクの低減にはアドレナリン+デキサメタゾン併用療法が有用48試験(4,897例)が解析の対象となった。バイアスのリスクは、「低い」が17%(8試験)、「高い」が31%(15試験)、「不明」が52%(25試験)であった。プラセボとの比較において第1日の入院を有意に低減したのはアドレナリン単剤のみであった[920例のプール解析によるリスク比:0.67、95%信頼区間(CI):0.50~0.89、ベースラインの入院リスクが20%の場合に1例の入院を回避するのに要する治療例数(NNT):15、95%CI:10~45]。第7日までの入院の有意な低減効果を認めたのは、バイアスのリスクが低いと判定された1つの大規模試験(400例)で示されたアドレナリン+デキサメタゾン併用療法であった(リスク比:0.65、95%CI:0.44~0.95、ベースラインの入院リスクが26%の場合のNNT:11、95%CI:7~76)。混合治療比較法による解析では、外来患者に対する好ましい治療法としてアドレナリン単剤(第1日の入院を基準とした場合に最良の治療法である確率:45%)およびアドレナリン+ステロイド薬併用療法(同:39%)が示された。有害事象の報告に治療法による差は認めなかった。入院患者の入院期間については、明確な効果を示した介入法は確認されなかった。著者は、「急性細気管支炎の乳幼児に救急部外来で対処する場合、第1日の入院リスクを最も低減する治療法はアドレナリン単剤であり、アドレナリン+デキサメタゾン併用療法は第7日までの入院リスク低減に有用であることを示すエビデンスが得られた」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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都市部の小児喘息コントロール、抗IgE抗体omalizumab追加で改善

都市部に住む小児、青年、若年成人の喘息患者に対して、ガイドラインベースの治療に加えてヒト化抗ヒトIgEモノクローナル抗体omalizumabを投与することで、喘息コントロールを改善し、増悪の季節性ピークはほとんどなくなり、喘息コントロールのためのその他薬剤の必要性が低下したことが示された。米国・ウィスコンシン大学マディソン校医学・公衆衛生部のWilliam W. Busse氏らによるプラセボ対照無作為化試験の結果による。これまでに行われた都市部に住む小児の喘息患者の調査研究で、アレルゲンへの曝露やガイドラインベースの治療の徹底で増悪を減らせることは示されているが、重症例における疾患コントロールには限界があることが示されていた。NEJM誌2011年3月17日号掲載より。ガイドラインベースの治療にomalizumabを追加した場合の有効性を検討抗IgE抗体omalizumabは、最新の全米喘息教育・予防プログラム(NAEPP)ガイドラインで、より高次の治療ステップでもコントロールできない喘息患者への治療として推奨されており、投与した患者の一部で増悪や症状発現、疾患コントロール維持のための吸入ステロイド薬の投与量を減らすことが示されている。一方で、都市部住民における罹患率増加の背景には、アレルギー体質の人が多いことや、大量のアレルゲンに曝露されていることがあり、Busse氏らは、omalizumabが特にこれら住民にベネフィットをもたらすのではないかと考え試験を行った。2006年11月~2008年4月に、8施設から、都市部に住む持続性喘息を有する小児、青年、若年成人を登録し、無作為化二重盲検プラセボ対照パラレルグループ試験を行った。ガイドラインベースの治療に加えてomalizumabによる治療を行うことの有効性について検討した。試験は60週間行われ、主要アウトカムは喘息症状とされた。omalizumab 群では、症状発現、増悪が有意に低下、吸入ステロイド薬とLABAの使用も減少スクリーニング後無作為化されたのは419例(omalizumab群208例、プラセボ群211例)、平均年齢は10.8歳、58%が男子、60%が黒人、37%がヒスパニック系だった。また73%が、疾患分類が中等度または重度だった。結果、omalizumab群がプラセボ群と比べて、喘息症状発現日数が2週間で1.96日から1.48日へと有意に24.5%減少したことが認められた(P<0.001)。同様に1回以上の増悪を有した被験者の割合についても、omalizumab群では48.8%から30.3%へと有意な低下が認められた(P<0.001)。またomalizumab群では、吸入ステロイド薬およびLABA(長時間作用性β2刺激薬)の使用が減少した。しかしそれにもかかわらず改善が認められた。(武藤まき:医療ライター)

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吸入コルチコステロイド連日投与、小児の軽症持続型喘息に有効:TREXA試験

小児の軽症持続型喘息の治療では、増悪の抑制効果は吸入コルチコステロイド(ICS)の連日投与が優れることが、米国・アリゾナ大学のFernando D Martinez氏らが実施したTREXA試験で示された。軽症持続型喘息の小児における症状のコントロールや増悪の抑制に望ましい治療法として、低用量ICS連用が推奨されているが、コントロール良好でも増悪する例が存在し、無症状の期間が長期に持続すれば服薬の遵守が極めて困難となる。1)コントロール良好例におけるICS連用の中止は増悪のリスクを増大させるか、2)レスキュー治療としてのICS/アルブテロール(別名サルブタモール:β2アドレナリン受容体刺激薬)併用とアルブテロール単独の増悪抑制効果が、ICS連用の有無で異なるかという課題は未解決だという。Lancet誌2011年2月19日号(オンライン版2011年2月15日号)掲載の報告。4つの治療群を比較する2×2ファクトリアル・デザインのプラセボ対照無作為化試験TREXA試験の研究グループは、小児の軽症持続型喘息に対するレスキュー治療としてのICS(ジプロピオン酸ベクロメタゾン)の有用性を評価する2×2ファクトリアル・デザインの二重盲検プラセボ対照無作為化試験を行った。2007年1月~2009年5月までにアメリカの5施設から5~18歳の軽症持続型喘息の症例が登録され、4週間の導入期間の後、以下の4つの治療群に無作為に割り付けられ、44週間の治療が行われた。1)併用群:ベクロメタゾン1日2回+ベクロメタゾン/アルブテロールによるレスキュー治療、2)ベクロメタゾン連用群:ベクロメタゾン1日2回+プラセボ/アルブテロールによるレスキュー治療、3)レスキューベクロメタゾン群:プラセボ1日2回+ベクロメタゾン/アルブテロールによるレスキュー治療、4)プラセボ群:プラセボ1日2回+プラセボ/アルブテロールによるレスキュー治療。ベクロメタゾン治療は1パフ(40μg)を朝夕2回吸入し、レスキュー治療は症状が軽減するまでアルブテロール(180μg)2パフ当たりベクロメタゾン2パフとした。主要評価項目は経口ステロイド薬を要する初回増悪までの期間、副次的評価項目はICSの副作用である成長障害の指標としての線形成長とし、intention-to-treat解析を行った。増悪率、治療失敗率は連用群が最も低い843例が登録され、事前に規定された判定基準に従って導入期間中に555例が除外された。残りの288例のうち、71例が併用群に、72例がベクロメタゾン連用群に、71例がレスキューベクロメタゾン群に、74例がプラセボ群に無作為に割り付けられた。増悪率は、プラセボ群の49%(95%信頼区間:37~61)に比し、ベクロメタゾン連用群が28%(同:18~40、p=0.03)、併用群が31%(同:21~43、p=0.07)、レスキュー群は35%(同:24~47、p=0.07)といずれも低下しており、連用群では有意差を認めた。治療失敗率は、プラセボ群の23%(95%信頼区間:14~43)に比べ、併用群は5.6%(同:1.6~14、p=0.012)、連用群は2.8%(同:0~10、p=0.009)、レスキュー群が8.5%(同:2~15、p=0.024)であり、いずれも有意に良好であった。線形成長の平均値は、ベクロメタゾンを連用した併用群と連用群はプラセボ群に比べて1.1cm(SD 0.3)有意に低下した(p<0.0001)が、連用していないレスキュー群は0.3cm(SD 0.2)の低下でありプラセボ群と同等であった(p=0.26)。重篤な有害事象は2例(連用群の1例でウイルス性髄膜炎、併用群の1例で気管支炎)にのみ認められた。著者は、「軽症持続型喘息の小児にはアルブテロール単独によるレスキュー治療は行うべきではなく、増悪の予防に最も効果的な治療はICS連日投与である」と結論し、「レスキューとしてのICSをアルブテロールと併用する治療は、アルブテロール単独によるレスキュー治療に比べ増悪率が低い点で有効性が高く、コントロール良好な患児に対するステップダウン治療として有効な可能性がある。それゆえ、ICS連用は回避可能であり、それによる成長障害などの副作用も避けられると考えられる」と考察している。(菅野守:医学ライター)

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教授 川合眞一先生の答え

関節リウマチの診断基準現場では忠実に7項目のうち4項目以上の診断基準を満たせば診断されているのでしょうか?だとしたら3項目、2項目が陽性の患者にはどのように対応しておられるのでしょう?たとえばリウマトイド因子のみが高値の患者が診断されないとしたら、本来の早期発見の意味から解離してはいきませんか?Webでも紹介させていただいたように、関節リウマチ(RA)のお馴染の7項目の1987年の分類基準は、23年ぶりに改訂されました[Arthritis Rheum. 2010;62:2569-81、「今日の治療薬2011」(南江堂)の抗リウマチ薬の解説部分(p.298)に私が紹介しています]。その新分類基準の目的は、より早期の患者をRAと診断しようとするものですが、それでもご指摘のように点数が足りずにRAに分類できないということはあり得ます。しかし、ご理解いただきたいのは、これらは分類基準であって診断基準ではないことです。即ち、臨床研究を前提として一定の所見を持つ患者群を選び出すのが分類基準の本来の目的ですので、ある専門家が分類基準に当てはまらない例をRAと診断することを否定するものでは決してありません。ということで、実際にはかなり稀なことではありますが、私も分類基準を満足しない例をRAと診断することもございます。分類基準を満たさない患者にRA治療を行うか行わないかは患者によって異なりますが、一方でRAと診断しても治療を要さない例もある訳で、診断と治療とは別の問題です。なお、ご指摘のようなリウマトイド因子(RF)のみが高力価陽性という所見だけでしたら、私はRAと診断することはありません。RFは元々特異性が低い検査ですので、関節症状が全くなければ、むしろ他の自己免疫疾患や肝疾患などを考えた方が良いかもしれません。もちろん、健常者でもRF陽性の患者は将来的にRAなどの自己免疫疾患を発症する確率は若干高いという報告はありますので、他疾患も否定できるようなら、将来RAなどを発症する可能性はRF陰性の方よりは若干高いというご説明だけはしています。避難所での関節痛対処(関節リウマチの見分け方)について避難所を回っています。避難所では高齢者は座りっぱなしなので、関節痛を起こしています。単なる関節痛の方が多いとは思いますが、念のため、関節リウマチも念頭にいれて疑ってかかりたいです。自分で調べればよい話ですが、少し余裕がありません。なんかしらのチェックリストがあるとありがたいです。ご教示宜しくお願いします。高齢者に最も多い関節疾患は変形性関節症ですが、もちろん関節症状を訴える患者に関節リウマチ(RA)が含まれているかもしれません。しかしそういった場合には、通常、既にRAと診断された方が多いと思いますので、患者の訴え(既往歴)を聞くのが最も良い方法と思います。避難所で初発例に遭遇する可能性もないとは言えませんが、その場合は極めて早期の発症例ですので、診断はしばしば困難なことがあります。その場合は、チェックリストというよりは、前のご質問にお応えしたようにRA分類基準などを参考に診断することになります。前述しましたように「今日の治療薬2011」(南江堂)のp.298に紹介しております。薬がない関節リウマチ患者の応急対応について現在、薬剤を取り寄せてはいますが、薬が不足しています。薬がないからあきらめろとは言えません。薬がくるまでの間にできることはあるのでしょうか?私はリウマチ専門外です。アドバイスいただけると幸いです。関節症状が非常に強いときには原則として関節局所の安静を取る必要があります。ただし、あまり長く(数日間でも)極端な安静が続きますと筋力が低下し、動きが悪くなります。当然、長期的には関節可動域が減少してしまいます。そのため、痛い中でも若干は動かして関節可動域を保つことが必要ですが、その場合は「翌日痛みが増すようなら動かし過ぎ」という判断が宜しいように思います。なお、最近のRA治療は抗リウマチ薬が中心ではありますが、適切な効果・副作用モニタリングができる環境がなければ、投与はし難い薬です。薬がなければ仕方がないですが、ステロイドやNSAIDが手に入るようになりましたら、低用量のステロイド(プレドニゾロンでなるべく5 mg/日以下が望ましい)やNSAID(消化管潰瘍の既往がある方や高齢者ではプロトンポンプ阻害薬などを併用)で当面の痛みのコントロールをする方が安全かもしれません。もちろん、その後十分な環境が整えば、抗リウマチ薬を併用してステロイドとNSAIDは減量・中止を目指すことになります。皮膚科との連携私は大学病院で皮膚科医をしています。皮膚科でも膠原病の患者さんを診察することが多いです。膠原病は全身症状を合併することが多いため、治療はほぼ膠原病内科医にお任せしているのが現状です。皮膚科医として治療に参画できないのが非常にジレンマで、膠原病内科を勉強するために国内留学も考えたぐらいでした。膠原病内科医が皮膚科医に求める要素を教えてください。同じ疾患を違う専門家が診るのは非常に大事で、内科医の視点と皮膚科医の視点とは違うことがあります。例えば、臓器障害があるような例ではご指摘のように治療は内科が担当するかもしれませんが、皮膚科医の視点は内科医にとって非常に参考になりますので、病理所見も含めた皮膚所見のプロの視点を内科医にご教示いただければと存じます。もちろん、皮膚科の先生の内科での研修は膠原病内科の立場からは大歓迎です。併用についてメトトレキサート 使用時のステロイド NSAIDの併用について教えてください。メトトレキサート(MTX)は関節リウマチ(RA)の基本的な治療薬ですので、ステロイドやNSAIDと併用される可能性は高いと思います。まず、ステロイドとは直接の薬物相互作用は知られていませんが、共に免疫抑制作用がありますので、両者の併用は単独よりは感染症が増加する可能性が考えられます。ただ、実際には大きな問題は生じません。一方、NSAIDとMTXの併用は、特にMTXの高用量を使用する癌治療では相互作用が指摘されています。NSAIDは腎血流量を減少させますので、両者の併用によりMTXの腎排泄が遅れ、血中濃度が高くなって骨髄抑制などの副作用を合併しやすくなるからです。ただ、RAにおけるMTX療法は週1-2日だけ、しかも少量投与です。その用法・用量範囲内では、仮にNSAID常用量を連日投与したとしても、明らかなMTXの副作用増加はみられないとされています。そうではありますが、NSAIDは既にRA治療に必須の治療薬ではなく、症状の緩和にのみ使われる対症療法薬という概念になっています。仮にMTXで十分な効果が得られた場合、最初に減量・中止すべきはNSAIDであると考えて治療に当たるべきと思います。若年性関節リウマチと成長痛との見分け方について町医者をやっている者です。専門は内科医ですが、小さな町なので幅広い症状をみています。特に中学生ですが、「成長痛」を訴えてくることが多々あります。昨年、少し様子がおかしい子がいたので、県立病院のリウマチ専門医を紹介して診てもらったところ、若年性関節リウマチと診断されました。それ以来、関節痛を訴えてくる中学生には、念のため、朝のこわばりはないか?聞くようにはしていますが、他に診察時に気をつけてみておいた方が良いことはありますでしょうか?ご教示お願いします。若年性関節リウマチ(JRA)は、最近ではより広い概念である若年性特発性関節炎(JIA)と呼ばれるようになりました。JIAは臨床所見でいくつかの群に分類され、治療法や予後などが異なっています。成長痛などと異なる診察時の特徴は、やはり明らかな関節腫脹が数週間持続することでしょう。中には発熱などの全身症状の強く出る患児もいます。血液検査をすれば、赤沈値や血清CRP濃度の増加などの全身性炎症所見がみられます。それらの所見からJIAが疑われたら、早い時期に先生がされたようにご専門の小児科医に紹介されるのが宜しいかと存じます。なお、リウマトイド因子は陰性であることが多いのですが、陽性の患児もいますので、JIAか否かの診断には役立ちません。関節リウマチの治療とリハビリについて関節リウマチの治療とリハビリについて教えてください。症状によって個人差はあるかと思いますが、一般的に「週に何回くらい診察があるのか?」「週に何回くらいリハビリを行うのか?」を知りたいと思っております。基本的な質問で恐縮ですが、最近田舎でクリニックを始めたばかりなので……。患者に聞かれて困っています。(ずっと大学にいました。一歩外に出ると専門外は何も分からないことに今更気づきました。。お恥ずかしい限りです。)メトトレキサート(MTX)などの抗リウマチ薬を開始する場合は、私はまず2~4週毎の受診を患者に勧めます。もちろん、次の診察日前に何か副作用が疑われる症状を自覚したら、必ず予約外でも受診するようにも説明しています。その後症状が安定し、治療薬も変える必要がなくなったら、症状や薬によって若干違いますが1~3か月毎に診察しています。来院時には必ず採血や検尿で副作用や効果をモニタリングすることが重要で、我々の病院では診察前の採血および検尿結果をチェックしながら診察し、診察所見と検査結果に問題ないようなら治療を継続するようにしています。クリニックなどで当日の検査結果が得られない場合は診察のみで方針を決定するしかありませんが、その場合でも検査会社から例えば翌日検査結果が送られてきたら、なるべく早く内容をチェックし、好中球減少や肝機能障害などを調べる必要があります。心配な結果があれば患者に電話などで連絡し、臨時の受診をお勧めするなどの対策を取った方が安全です。リハビリについては決まった方法はありません。一般には自宅でのリウマチ体操をお勧めしていますが、Webなどで参照できますのでご確認ください。ここでは、公益財団法人日本リウマチ財団のホームページ (http://www.rheuma-net.or.jp/rheuma/taisou/taisou.html) を紹介いたします。もちろん専用のリハビリ施設をお持ちでリハビリ指導を積極的にされている施設もあり、そこでは症状に応じて週1~5回の外来指導が行われていることが多いと思います。さらに、入院でリハビリ治療を積極的に行っている病院もございます。 早期リウマチのMMP-3抗CCP抗体、CARF高値でMMP-3正常の早期リウマチではまだ関節滑膜の変化が少ない時期と考えてよろしいでしょうか。血液検査値だけでは関節滑膜の状態を判断することはできません。まずは、早期でも変化があることがあるのでレントゲン検査で骨・軟骨変化を診るのが基本と思います。さらに最近では超音波、ときにMRIなどで形態的な変化を診ることにより、総合して滑膜や骨・軟骨の変化を診断すべきと思います。早期リウマチの治療若い女性(22歳)、朝のこわばり(これは1時間以上)、両手指の第2,3PIPに痛みあります。検査は抗CCP抗体陽性、MMP-3やCRPは軽度上昇。最初に行う治療を教えてください。まず関節症状が痛みだけではなく腫れがあるかどうかを診察で確認します。ご質問には罹病期間の記載がありませんが、症状が1週間以内でしたら、私ならNSAIDを投与して経過をみます。明らかな腫れが2週間以上続いているようでしたら、重症度にもよりますが、サラゾスルファピリジン(SASP)を試みることもあります。関節腫脹や疼痛がかなり強いようでしたら最初からメトトレキサート(MTX)を始めることもありますが、妊娠を希望されている方には使えませんので、特に22歳という若い患者ではその点は十分に聞く必要があります。なお、MTXの胎児毒性は妊娠前に3か月の休薬をすることで回避できると言われています。仮に、MTX治療を開始後に患者が妊娠を希望されたら、MTXを中止してもその後3か月は避妊するように指導します。総括RA治療薬は最近の進歩が著しいので、治療に困ったらなるべく早く専門医に相談された方が良いように思います。また、RAと鑑別すべき類縁疾患は少なくありません。その意味では、診断に迷う患者についても、早い時期に専門医に相談されることをお勧めします。教授 川合眞一先生「関節リウマチ治療にパラダイムシフトをもたらした生物学的製剤」

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免疫性血小板減少症へのromiplostim治療、治療失敗および摘脾を低下

免疫性血小板減少症に対する治療薬として米国で上市されているromiplostimの、標準治療との比較による、有効性と安全性に関する52週の非盲検無作為化試験の結果が、NEJM誌2010年11月11日号で発表された。試験・報告は米国マサチューセッツ総合病院のDavid J. Kuter氏らによる。romiplostimは、血小板産生に関与するトロンボポエチン受容体に結合し作用を発揮する。これまでの試験で、有害事象がほとんどなく、成人患者に対する持続的投与で最大5年間、血小板増加作用があることが認められていた。標準治療との比較で52週追跡免疫性血小板減少症の米国における標準治療は、副腎皮質ステロイド、免疫グロブリン、抗D免疫グロブリンをファーストラインとし、アザチオプリン(商品名:イムランなど)、リツキシマブ(同:リツキサン)などの薬物療法、摘脾をセカンドラインとする。成人患者の多くがセカンドラインを要し、摘脾となった患者の3分の2は5年間は付加的治療を必要としないが、一方で感染症や血栓症などの周術期・術後合併症で死亡する例も少なくない。また、併存症により摘脾が禁忌の患者もいる。そこでKuter氏らは、romiplostimのこれまでの知見から、romiplostim投与が、摘脾の回避や実施延期を望む患者、摘脾禁忌の患者にとって、長期にわたる効果をもたらす治療となり得るのか検討を行った。試験は、2006年12月~2007年9月に北米、ヨーロッパ、オーストラリアの85施設で登録された、摘脾を受けていない免疫性血小板減少症成人患者234例を対象とし、標準治療を受ける群(77例)か、週1回romiplostim皮下注を受ける群(157例)に割り付け、52週にわたって追跡した。被験者は、一つ以上の免疫性血小板減少症治療を受けており、試験前血小板数50×10(9)/L未満、平均年齢57歳だった。主要エンドポイントは、治療失敗および摘脾となった割合。副次エンドポイントは、血小板反応[定期受診時に50×10(9)/L超]、安全性アウトカム、QOLなどだった。標準治療とのオッズ比、治療失敗0.31、摘脾割合0.17結果、romiplostim治療群の血小板反応は、標準治療群の2.3倍を示し(95%信頼区間:2.0~2.6、P<0.001)、治療失敗率はromiplostim治療群11%(18/157)、標準治療群30%(23/77)で、romiplostim治療群が有意に低かった(オッズ比:0.31、95%信頼区間:0.15~0.61、P<0.001)。摘脾の実行頻度も、各群9%(14/157)、36%(28/77)で、romiplostim治療群が有意に低かった(オッズ比:0.17、95%信頼区間:0.08~0.35、P<0.001)。また、romiplostim治療群は、出血イベントの発生率も低く、輸血量も少なく、QOLが大きく改善されていた。重度有害事象の発生は、romiplostim治療群23%(35/154)、標準治療群37%(28/75)だった。Kuter氏は、「romiplostim治療は標準治療よりも、血小板反応を高め、治療失敗や摘脾の割合を低下し、出血や輸血も減少させ、QOLを高めることが認められた」と結論している。(武藤まき:医療ライター)

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教授 向井秀樹先生の答え

アトピー性皮膚炎30年間悩まされています。昨年近医にてネオーラル処方され、症状改善し漸減中止しました。が、症状悪化しネオーラル再開(一回50mg一日2回)しました。この量でないと有効でないようで…飲み続けてもいいのでしょうか?皮膚の良い状態がこんなに楽なのもかと思い知り、ステロイドだろうが免疫抑制剤だろうが(副作用が多少あっても)なんでも使いたい!という思いです。 シクロスポリンは使用ガイドラインが出来ており、体重当たり3mg換算とされています。効果があれば12週間を1クールにして、最低2週間以上の休薬とあります。スタンダードな治療法として有用だと思います。但し、極めて重症度の高い方には中止が出来ない、再度内服するという方も少なくありません。さらに高価なお薬のため経済的にも再燃時のショックは大きいのは理解できます。文章からは十分に理解しているとは言えないかも知れませんが、ダラダラと服用しているより、2クール目&3クール目と繰り返すうちに症状が安定する場合も経験します。焦らず頑張って下さい。そして併用している外用剤ですが、内服していると痒くないからといって使用していない、使用量が大幅に減っていないことはありませんか? こんな高級品を使っているのです、今こそ徹底的に改善して寛解状態を得て元を取るぞ!という覚悟で頑張って下さい。そして、悪化時の原因を考え悪化要因の対処法などの工夫、アドバイスを貰うなどの積極性を出すこと!綺麗な肌を取り戻して下さい!発汗異常について手汗がひどく悩んでいる方がいます。来年4月から社会人になりますが事務関係で書類を触るのに用紙がくしゃくしゃになってしまい、仕事に支障がでてしまうのではないかと・・手術以外になにか方法がありませんか?漢方 刑芥蓮ぎょう湯を服用して様子を見ています。程度は個人差がありますが、お悩みのことと推察いたします。大学時代の友人がひどい汗かきで、いつもタオル持参で授業内容を記載していました。現在会って話をすると昔より良くなっているそうですが完治はしていないとのことです。一般的に自律神経を安定させる内服薬を飲み続け、汗を抑える塩化アルミニウム溶液を外用します。漢方薬を試されているようですが、防己黄耆湯や補中益気湯はお飲みになりましたでしょうか?漢方薬は一般的にすぐに効果がでる訳ではありません、最低1~2ヶ月間は内服してみて下さい。手術に関しては現在しない方向です。脇の下の交感神経を切断するは一時流行りました。確かに手の効果はありますが、背中や胸などが代償性に発汗するようになり患者さんの生活の質が低下するので行わない方が良いようと思います。専門に手術する施設が増えましたが、医療問題にまで発展し陰が薄くなりました。発汗を専門とする施設は少ないですが、東京医科歯科大学皮膚科には専門外来があります。塩化アルミニウム溶液を器械で皮膚に導入するイオントフォレーシス法を行っており、それなりの有用性を報告しています。機会があれば受診してみて下さい。まずは、一般初診を受診して専門外来にまわしてくれるそうです。研究分野について東邦大学大橋病院での研究分野について教えてください。どのような研究をされているのでしょうか?ホームページを拝見しましたが、「研究について」のページを見ても、「爪白癬動物モデルを用いた病理組織学的検討」しかなかったので、もう少し情報を頂きたく思います。(後期研修先を探している研修医です)大橋皮膚科はアトピー性皮膚炎の治療を専門にしております。1~2週間の入院療法は、短期間で急速&確実に改善する方法を言えます。しかし、入院期間に多量に使用する極めて強いステロイド外用剤の副腎機能に関する影響に関して、明らかな文献は見当たりません。そこで、入院前後の血中コルチゾール値を測定してみました。その結果は予想に反して、重症例では入院前のステロイド外用量と関係がなく血中コルチゾール値は大幅に低下。この変化は不可逆性で退院時には上昇して正常値に戻るという結果が得られました。そこで次に、血中ACTHや1日尿中コルチゾール値を測定しました。両者とも同様の推移を呈することより、皮疹の重症度に相関して不可逆性の副腎機能抑制状態が生じていることを昨年11月の日本皮膚科学会誌に報告いたしました。これから入院する患者さんにもその結果をお話して、入院で使用するステロイドの安全性を強調する共に検査し確認を取る旨を了承して頂いております。なお、このデータは昨年の第26回日本臨床皮膚科学会で金賞そして学内の柴田奨学助成金をめでたく選考授賞&授与することが出来ました。次に、この入院期間の前後で治療効果を判定できる"短期的な治療マーカー検査"を検討し、昨年日本アレルギー学会で発表しました。皮膚の改善やかゆみの程度で患者さんは退院を希望されます。明らかな検査データを示し改善度を示すことは疾患の理解を更に深めると思います。大橋皮膚科で行っている入院療法の有用性を評価するために、患者さんを対象にしたアンケート調査を行いこの2月に行なわれる東京支部学術大会で発表します。今年度からは重症例に多くみられる睡眠障害に関して研究を始めます。激しい痒みに伴うものと基礎にある心因反応に伴うものに大別できます。そこで、入院前後の睡眠障害を詳細に分析しその違いを見つけ、後者の人に関しては早期に入眠剤や心療内科的アプローチを検討します。さらに、外来患者にも行い重症度の違い、罹患率など調査していく予定です。ホームページにある"爪白癬動物モデルを用いた病理組織学的検討"は、日本真菌学会および国際学会で報告したので掲載したものです。動物モデルを使って、爪に感染後の経過を臨床面と爪の病理組織像を同時に立体的に観察した興味あるデータです。近く真菌専門の英文誌に掲載されますので、機会があればご一読下さい。この他に、帯状疱疹後の神経痛に関する薬剤間の比較、各種皮膚良性腫瘍におけるダーモスコープ所見の検討、炭酸ガスレーザーを用いた難治性皮膚疾患の治療の試みなどいろいろと考えて行っています。化粧品会社や製薬会社の研究所とも連携して研究し、その成果を順次発表しております。大橋皮膚科では目の前にいる患者さんの疾患をみて、その病態を考えどのようなアプローチをすべきか、解明のための臨床研究を積極的に行っています。珍しい疾患の解明ばかりでなく、ありふれた疾患の新しい考え方や治療法なども発信できればと思っています。やる気のある方は大歓迎です、是非とも来て下さい。アトピー性皮膚炎、診断のコツ研修中なので基本的な質問ですみません。アトピー性皮膚炎の診断について、治療ガイドラインの診断基準を見ながら勉強しているのですが、確信を持って診断を下すことができません。診断間違ってステロイドを処方すると悪化する症例もあるので、少し怖くなっています。今は当然ながら自分一人で診察をして診断を下すわけではないのですが、皮膚科を目指しているので、どうにかしたいです。診断のコツや、先生がどのように勉強されてきたか?などアドバイスいただけると幸いです。難しい問題だと思います。でも専門とする私でも治療&診断ガイドラインは講演のときに使う程度で診療の際に見ることはありません。患者さんを見れば検査をしなくとも100%診断が付きます。皮膚科の醍醐味とはそういうもので、見たことがある、本で読んだ、学会で聞いたなどで診断が出来るのです。要するに、長年たくさんの患者さんを見ることで感じ覚えていくのだと思います。とくにアトピーの難しさは年齢によって皮膚症状の好発部位や臨床像も変化します。時期ごとに出やすい部位、臨床像を整理して覚え、鑑別疾患を挙げその違いを頭の中で除外していく必要性があります。アトピー素因の有無は必要です、そして皮膚所見が有用で湿疹病変と分かってもかぶれもありますし,自家感作性皮膚炎や皮脂減少性皮膚炎もあります。年齢や部位などが役立ちます。血清IgEや各種アレルゲン特異抗体価も診断に有用です。症例をたくさん見て、いろいろな鑑別疾患を整理して頭の中に入れることが重要です。疑問があれば上級医を呼んで,診断の決め手や考え方を教えてもらうのも良いと思います。重症のアトピーとして治療していたら皮膚リンフォーマという事例もあります、皮膚生検も時として有用です。よく見てよく考え疾患の特性を理解して下さい。患者さんを診て、患者さんから教えられる、学ぶものです。民間療法との戦いについて皮膚の疾患、特にアトピーなどは民間療法が多くて困っています。全てを否定するわけではないですが、処方した薬を使わなくなったり、通院しなくなったりするので(大体症状が悪化して戻ってきますが…)かなり厄介です。先生も当然同じような状況かと思います。先生のこれまでのご経験から「このように民間療法と戦っている!」「こんな説明をすると有効だ!」というものがあれば是非ご伝授いただきたく思っております。宜しくお願いします。日本皮膚科学会の努力もあり民間療法は20年前に比べるとかなり淘汰された感はあります。随分日常診療でその対策と説明に苦労させられて来ましたし、重症で入院を要する患者さんの半数以上が民間療法経験者でした。皮膚科医以外の医師や医療関係者が行っている場合が多いようです。患者自身が現在の治療法に不満を抱いているのは事実だと思います。頭ごなしに否定することなく、ゆっくり時間を掛けて話をする・聞くことを心掛けています。どうしてもしたいと言ってくるものに関しては、現在の治療を中止せず併用することや部分使用を認めています。専門家の私が冷静に判断してその効果を認めるなら、継続すべきだし、効果が見えない場合にこだわって皮膚が悪化することは避けたいと話します。ただ、使用しているステロイド剤の副作用を強調して中止を強要し高額な治療費を請求するものは絶対的に反対します。ステロイド治療に不満や不安が強い人が多いので、ステロイドの使用法や安全性を十分説明する必要はあると思います。いずれにせよ、本人は悩んでの事ですから、頭ごなしに叱らない、救済方法を残すやり方で指導しております。 電子付加治療は効きますか?患者より、アトピー性疾患治療として電子付加治療というものがあると聞きました。私も調べてみたのですが、日本アトピー治療学会という聞きなれない学会が推奨しているようです。一見理にかなっているようには見えるのですが、実際のところ如何なものでしょうか?もし電子付加治療について何かご存知でしたらご教示お願いします。残念ながら実態は良く分かりません。私の外来では慢性かつ難治性の重症例が多く受診されますが、受診前の治療法としても電子付加治療は初耳です。アトピー性皮膚炎の治療&診断ガイドラインにも電子付加治療などは記載されていません。日本アトピー治療学会と実にもっともそうなネーミングですが、所属会員がどれほどいるのか?我々のような皮膚科専門医、アレルギー専門医や指導医がいるのか疑問です。これでは質問のお返事とはなりません。丁度インフルエンザAに罹患して自宅待機の身ですので、ホームページをしっかりと拝見しました。基本的におかしいのがアトピーの原因を酸化アレルゲンとして一つに括っていることだと思います。この論理はアトピー性皮膚炎診療&治療ガイドラインをご一読されればすぐ分かります。どこにも記載されている言葉ではありません。アトピーの発生機序は、最近北大皮膚科が皮膚の角層に日本特有のフィラグリン遺伝子多型を30%の症例に発見以来、バリア機能の破綻が発症の第一要因とされました。これに伴い、環境にいるダニやハウスダストが経皮的に侵入してアレルギー炎症が生じるのです。但し乳児は卵など食事の関与が強い時期ですし、年齢的&季節的にアレルゲンや増悪因子は変化します。また最近ではフィラグリン遺伝子多型がなく血清IgE値が正常&主に金属アレルギー関与が示唆される内因性という概念も出ていますし、現代人が抱える心理的なストレスも大きな要因の一つです。またいくつかの要因が複雑に絡み合い病態を複雑にしています。酸化が皮膚の老化以外に種々の炎症を起こすことは知られています。同じ論理で四国の方では活性酸素の除去を目的とした外用剤や内服を行っています。理論は同じで酸素の毒を取り除くというもので、当初大した効果はありませんでした。そこでステロイドを外用剤に混ぜるようになりました。アトピーの機序はすでにお話したように実に複雑で、単に酸素の毒を抑えられても寛解できるか疑問です。理論とシェーマと治療前後の臨床写真だけで基礎的な実験データがありません。ところで、以前中国で何にもよく効く漢方薬がネット上で評判になり日本のアトピー患者も購入者が続発しました。とにかくステロイド張りのすごい臨床効果なのです。そこで成分を調査したところ、何と最強のステロイドが入っていたのです。われわれ専門家でも滅多に使用しない最強のステロイド入りとは驚きです。本当に良い薬は正式に承認され薬価が付きます、新薬の欲しい薬品会社がほっとくわけはありません。入院療法の期間アトピー性皮膚炎に対する治療として「入院療法」が紹介されていましたが、入院期間はどの程度必要なのでしょうか?全国で少数ですが入院療法を当科のように展開しているところはあります。ばらばらで決まり残念ながらありません。治療ガイドラインをみても、マニュアル通りの治療で効果のない場合は入院とありますが期間に関する記載はありません。以前私のいた横浜労災病院では徹底的に良くなるまで入院させました。全国から多数の患者さんが来られたので皮膚症状や検査所見の改善、試験外泊で悪化症状のなしを目安にしたところ平均26.5日という入院期間でした。入院後のアンケート結果をみると、退院時の皮膚症状は改善以上の有効率は93.3%で極めて高く、不変や悪化例はいません。また、調査時の皮膚症状に関しても88.1%と高率に症状が改善維持できていることが判明しました。一方で10%の患者さんが入院期間の長さを指摘、33.3%の方が悪化時の再入院を"出来れば外来で頑張りたい"と答えています。確かに仕事を持つ社会人が1ヶ月近く休むということは問題ですし、家庭を任された主婦そして通学、受験や試験などの問題を抱えた学生にとって長すぎます。そこで、東邦大学に来てからは2週間を原則に致しました。1週間で徹底的に皮膚症状を抑え、残りの1週間で安定化を図る。退院後しばらく頑張ればコントロールできると考えたからです。その結果は2月の東京支部学術大会で発表します。退院時の皮膚症状は改善以上の有効率は92%で極めて高く、調査時の皮膚症状に関しても76%の方が改善維持できていました。一方で9%の患者さんが入院期間の長さを指摘、43%の方が悪化時の再入院を"出来れば外来で頑張りたい"と答えています。重症度や対象患者の遠距離度が異なるかも知れませんが、平均年齢は30歳代と同様でした。やはり2週間でも患者さんにとって長すぎるのかもしれません。そこで次の裏付けデータをもとに1週間に減らしています。そのデータとは、質問3でお答えした入院前後で血中のコルチゾール値を測定した結果を参考にしました。重症度と血中コルチゾール値が相関するなら、入院時に正常値以下まで低下したものが何日入院すると正常値に戻るのか?入院期間と血中のコルチゾール値の推移で計算すると4.8日という値が出ました。そこで、約1週間の入院期間で一過性の副腎機能低下状態は改善できると判断しました。現在、極めて治しにくい重症度の極めて高い皮膚症状を有する例を除き、1週間の入院を基本として初診患者に説明しております。TNF-α阻害薬について乾癬の患者さんがTNF-α阻害薬での治療に興味をもっております。乾癬であれば全て有効なのでしょうか?また、感染症の発現が危惧されると聞きましたが、大橋病院さんではどのような体制で望んでいるのでしょうか?差し支えなければ、これまでの成績も含めて教えていただけると大変参考になります。この治療はどこの施設でも自由に行える訳ではありません。副作用として重要な感染症に対して、診療体制のとれる呼吸器内科医や放射線医の常勤が必要で、皮膚科学会に正式に申請してTNF-α阻害薬使用施設として認定される必要があります。TNF-α阻害薬は2種類あり、多少適応疾患が異なります。詳細は大橋病院皮膚科のホームページを参考にして頂くと役立ちます。本剤の副作用の最も多いのが感染症です。潜在的に持っている、感染しやすいものを発症させます。日本は結核が多く、治験段階で最も危惧されたところです。ところが、しっかりとした体制が奏功したのか肺結核はおらず、細菌性肺炎が見られています。致死的な副作用は今のところありません。勿論、私どもの症例も毎回診察していますが副作用はありません。対象は、重症、難治性&治療抵抗性の乾癬および関節症性乾癬の患者さんです。罹患部位が全身で外用剤のみでコントロール不良な症例、ネオーラルやチガソンの内服でも不安定ないしその薬剤の副作用で中止した例、関節症状のコントロール不良例、さらにステロイド外用剤による局所の副作用が生じている例などです。今後あちこちの施設から有用性のデータが報告されると思いますが、有用率90%は全国の諸施設で行った治験結果の驚異的な数字です。私の経験でとくに驚いたのが、関節症性乾癬の患者さん達です。その効果は患者さんのQOL向上に素晴らしいものです。但し、最大の難点が支払い額の高さです。高額療養費制度を用いて医療費が還付されますが、それでも負担金は極めて高く、投与前に概算を示し了解を得ないと継続した治療が受けられなくなります。また、今後判明してくると思いますが予後が問題です。投与中は良いのですが、中止できるのか再燃しやすいのか、検討課題だと思います。また新薬も開発中で楽しみです。ステロイドの安全塗布量、参考文献先生の記事を拝見して「ステロイドのガイドラインとして現在も使用されている安全塗布量は、40年以上前に海外でステロイドを使う必要のない正常な人を対象にして行われたデータで、その後の追試はありません。」ということを初めて知りました。大変びっくりしています。ステロイドの安全塗布量について他に参考になる文献等がありましたらご教示お願いします。本においてステロイド(ス)外用剤は1953年から登場し、現在までに30種類以上の外用剤が開発。薬効の強さから上位からI~V群の5つに分類され使用されています。幅広い皮膚疾患に有効で、従来まで治療法のなかった疾病の治療薬として大いに役立ったことは事実です。全身皮膚が障害し多量の外用を必要とする症例の中で、Cushing様症状、骨粗しょう症や小児の発育遅延など極めて少ない確率ですが起こることが判明。多量にス外用剤を使用例が突然中止すると、皮疹悪化以外に発熱、悪寒、悪心、嘔吐などの全身症状を呈するものを離脱反応、これは一種の副腎クリーゼの状態です。質問5でお答えした民間療法が横行した時期に、ス外用剤を中止してこの反応を起こしQOLが大幅に悪化、私どもの病院に入院した症例を数多く経験しました。外用を再開し症状を改善させました。全身的な副作用を知るには、主に視床下部-下垂体-副腎皮質機能がどの程度抑制されるのかをチェックします。日常で処方される外用量、成人で10~30g/週程度では抑制は起こりません。この全身的な副作用に関しては1960~1970年代に精力的に研究されたのですが、それ以降はほとんど行われていません。薬効ランクⅢ群(リンデロン)を成人入院に1日30g、幼小児に1日13gと大量塗布した結果。1.副腎皮疹機能は一過性に生じるが、中止後1~2日で回復。2.症例によっては継続中でも抑制が回復。その理由は、皮膚が改善して経皮吸収率が低下する。3.密封療法を行うと経皮吸収率が高まり、臨床効果も上がるが抑制は顕著となる。4.小児では成人より抑制は起こりやすいので強い薬効ランクのものは控える。また、外用方法として1日5~10gで開始し、症状に合わせて漸減し3ヶ月間使用しても、一過性&可逆性の抑制は生じても不可逆性の抑制は生じないとされています。私どもの入院を要する重症例では1日12gも投与しましたが、抑制例は2例と少なくしかも正常範囲内で何ら身体的にも問題は起きませんでした。それどころが、正常値以下に抑制された症例の多くが逆に正常に復したという事実は大きな驚きでした。十分な診察もせず漫然と使い続けるのではなく、メリとハリの要領で使用量や部位別に上手に使うことが大切です。最近外来で勧めているのがプロアクティブ治療です。適切な薬剤で十分量の使用で寛解状態を作り、その後すぐに休薬するのではなく、週2回は外用することで再燃効果を大幅に減少することが出来ます。何も全身同時に開始することはありません。顔からでも、腕からでも良くなった場所はスタートO.K !眼に見えない副作用に怯えることなく、上手に使うことが重要なのです。尋常性ざ瘡(にきび)の食事療法について最近、20~30代の女性の患者様から肌に関するちょっとした質問を受けます。医者なので、ある程度はアドバイスしてあげたいのですが、尋常性ざ瘡の方の食事に気をつけることや最近の新しい治療の動向を、他科医師として知っておくべき事はありますでしょうか?御教示よろしくお願いします。一般的によく言われていることですが、甘いものや脂っこいものは避けるべきです。スナック菓子も同様です。ただ、肌に良くないからといって全部やめようと話しても難しいと思います。食べる回数や量を減らすことが大切です。また女性には生理があります。ホルモンバランスの変化する生理前に悪化する例が多く、イライラする精神的なストレス以外にヤケ食いや飲酒など食生活が悪化要因の場合があります。ディフェリンと言う新しいにきび用の外用薬が発売されています。効果は従来品のアクアチムクリームやダラシンゲルより期待出来ます。但し、皮膚のカサツキがでる場合がありますので注意して下さい。基本的なこととして、入浴時の洗顔が大切です。オイリー肌用の石鹸で十分に洗うこと、とくにベタツク&症状の強い部位は2度洗いを勧めます。入浴後、ご自身の肌にあった化粧水を塗るとかさつきは予防できますが、べたつくクリームやローションは毛穴をつぶしてしまうので禁止です。難治性の症例には、このほかピーリングが行なわれています。毛穴が詰まって角質の溜まった白ニキビや炎症の強い赤ニキビに有効です。自費診療になりますが、皮膚科専門医で行なっている施設は少なくありません。総括いろいろとご質問を頂き感謝しております。話すのは自信が多少あるのですが、文章では相手の理解度が伝わりません。また質問があれば聞いて下さい。実は私が大橋病院ホームページ委員会の責任者なのですが、機械音痴と雑用が多く皮膚科ホームページの更新が遅れ気味なのです。時間があるときに更新いたしますので、時々見て下さい。研修希望者に:どんどん大橋皮膚科を見学に来て下さい。大橋病院は歴史的な作りで驚くかもしれませんが、アットホームな環境で仲良く頑張っています。教える体制はしっかりしています。何をしたいのかをはっきり明示してそれが努力に値する仕事なら全面的にサポートします。ただ、まず皮膚科医としての基本を覚えなければいけません。皮膚科は奥が深く、自己完結型の科と言えます。ある程度オールラウンドの皮膚科医を目指し、その上で疑問、難問の解決を同時進行で行うと臨床が100倍楽しくなります。教授 向井秀樹先生「患者さんと真摯に向き合う中から病態は解明される」

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高頻度振動換気法は、早産児の予後を改善するか?

早産児に対する人工換気法として高頻度振動換気法(HFOV)を選択的に施行しても、気管支肺異形成症のリスクの抑制効果は従来の人工換気法と同等であることが、ベルギーVrije Universiteit Brussel NICU科のFilip Cools氏らPreVILIG collaborationによるメタ解析で示された。新生児ケアの進歩にもかかわらず、早産児では気管支肺異形成症のリスクが依然として高く、長期的には神経発達の遅滞や肺障害が起きる。動物実験では、HFOVは換気法関連の肺疾患が少ない有望な人工換気法であることが示されており、呼吸窮迫症候群を呈する早産児の死亡/気管支肺異形成症のリスクを低減する可能性が示唆されているという。Lancet誌2010年6月12日号(オンライン版2010年6月1日号)掲載の報告。10試験に登録された3,229例の個々の患者データを解析PreVILIG collaborationの研究グループは、早産児における選択的HFOVと従来の人工換気法の効果を比較する系統的なレビューとメタ解析を行った。解析の対象は、主要評価項目を妊娠週数36週における早産児の死亡/気管支肺異形成症、あるいは死亡/重症神経障害などとする試験とした。10の無作為化対照比較試験が抽出され、これらの試験に登録された3,229例の個々の患者データについて解析を行った。従来法に比べ、相対リスクに有意差なしHFOVを受けた早産児の妊娠週数36週における死亡/気管支肺異形成症の相対リスクは0.95(95%信頼区間:0.88~1.03)、死亡/重篤な神経障害の相対リスクは1.00(同:0.88~1.13)、これらのいずれかが発症する相対リスクは0.98(同:0.91~1.05)であり、いずれも有意な差は認めなかった。HFOVにより多少なりともベネフィットが得られた早産児のサブグループ(在胎週数、出生児体重、肺疾患の重症度、出生前の副腎皮質ステロイド曝露など)はなかった。換気法のタイプや戦略によって全体の治療効果が変化することはなかった。著者は、「HFOVは早産児に対し従来の換気法と同等の効果しかもたらさない」と結論し、「在胎週数、出生児体重、肺疾患の重症度などに基づいて選択的にHFOVを施行する治療戦略は支持されない」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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早産児に、早期CPAPも選択の余地あり

早産児に、生後2時間以内にサーファクタントを投与することで死亡や気管支肺異形成症を低減できることが示されていることから、予防的治療として早期サーファクタント療法が行われるようになっている。しかし超早産児では挿管を必要とする場合もあってCPAP(持続陽圧呼吸療法)が検討されたり、また、より早期のサーファクタント療法群では筋緊張が高頻度にみられたり寝返り動作がなかなかできるようにならないといった報告もある。そこで米国のSUPPORT Study Group of the Eunice Kennedy Shriver NICHD Neonatal Research Networkが、超早産児1,316例を対象に、早期CPAPと早期サーファクタント治療とを比較する多施設共同無作為化試験を行った。NEJM誌2010年5月27日号(オンライン版2010年5月16日号)掲載より。1,316例を、「早期CPAP」群、「挿管+早期サーファクタント」群に無作為化し転帰を比較研究グループは、2005年2月~2009年2月の間に、在胎24週0日~27週6日で生まれた超早産児1,316例を対象に、2×2多施設共同無作為化試験を行った。対象児は無作為に、挿管後サーファクタント療法(生後1時間以内)を受ける群(早期サーファクタント群:653例)か、CPAPを分娩室で開始し換気治療戦略のプロトコールに従い実行された群(早期CPAP群:663例)に割り付けられた。またその後、両群児は、酸素飽和度目標範囲「85~89%」群(在胎24週0日~25週6日:565例)か、「91~95%」群(在胎26週0日~27週6日:751例)にも割り付けられた。主要転帰は、36週までの死亡もしくは気管支肺異形成症の複合転帰とした。気管支肺異形成症は、酸素補充を必要とした児(酸素補充30%未満で酸素補充離脱を試みた児も含む)と定義された。死亡、気管支肺異形成症発症に、両群で有意差はない主要複合転帰は、在胎期間、施設、家族内集積で補正後も、両群間で有意差は認められなかった。「早期CPAP」群47.8%、「早期サーファクタント」群51.0%、相対リスクは0.95(95%信頼区間:0.85~1.05)だった。気管支肺異形成症の発症についても両群で同様だった。発症率は同48.7%、54.1%、相対リスクは0.91(同:0.83~1.01)だった。早期CPAPを受けた早産児の方が、挿管や気管支肺異形成症のための副腎皮質ステロイド投与の頻度が少なく(P

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関節リウマチにおける抗TNF製剤3剤の直接比較サーベイ

関節リウマチにおける抗TNF製剤、アダリムマブ、エタネルセプト、インフリキシマブ3剤の治療反応性、寛解率、およびアドヒアランスのhead to head比較サーベイが報告された。「Arthritis & Rheumatism」誌(2010年1月号)掲載より。本研究は、デンマーク全域における生物学的製剤使用患者のレジストリー、DANBIO(患者登録期間:2000年10月~2007年12月)から、生物学的製剤新規使用患者2,326名を対象とした。投与された生物学的製剤の割合は、アダリムマブ29%、エタネルセプト22%、インフリキシマブ49%であった。患者背景において、性別、年齢、IgM-RF Positive、罹病期間に差はみられなかった。一方、MTXの併用率と用量、プレドニゾロンの併用率と用量は特に差が認められた。MTXの併用率は、アダリムマブ70%、エタネルセプト61%、インフリキシマブ87%であった。MTXの併用量は、アダリムマブ20(12.5-25)mg/週、エタネルセプト15 (12.5-20)mg/週、インフリキシマブ15 (10-20) mg/週であった。プレドニゾロンの併用率は、アダリムマブ40%、エタネルセプト43%、インフリキシマブ50%であった。プレドニゾロンの併用量は、アダリムマブ7.5(5-10)mg/日、エタネルセプト7.5(5-10)mg/日、インフリキシマブ7.5(5-10)mg/日であった。主な結果は以下の通り。 26週後の治療効果達成確率 Odds ratios(95%信頼区間)・アダリムマブvs.インフリキシマブ:ACR70%反応率2.05(1.52-2.76)、ACR50%反応率1.92(1.51-2.44)、Good EULAR反応率2.10(1.66-2.66)、Good/moderate EULAR反応率2.76(2.04-3.74)、DAS寛解1.78(1.37-2.31)、CDAI(Clinical Disease Activity Index)寛解1.83(1.32-2.55)・エタネルセプトvs.インフリキシマブ:ACR70%反応率1.78(1.28-2.50)、ACR50%反応率1.50(1.14-1.96)、Good EULAR反応率1.41(1.09-1.84)、Good/moderate EULAR反応率1.99(1.45-2.72)、DAS寛解1.31(0.97-1.77)、CDAI寛解1.16(0.78-1.72)・アダリムマブvs. エタネルセプト:ACR70%反応率1.15(0.82-1.60)、ACR50%反応率1.28(0.97-1.69)、Good EULAR反応率1.49(1.13-1.96)、Good/moderate EULAR反応率1.39(0.97-2.00)、DAS寛解1.36(1.00-1.84)、CDAI寛解1.58(1.07-2.34) 全投与中止例 Hazard ratios(95%信頼区間)インフリキシマブvs. アダリムマブ: 1.35(1.15-1.58)、インフリキシマブvs. エタネルセプト: 1.98(1.63-2.40)、アダリムマブvs.エタネルセプト:1.47(1.20-1.80)結論としてHetland氏は、「インフリキシマブは最も低い治療反応率、寛解率、アドヒアランスを示し、アダリムマブは最も高い治療反応率と寛解率を示した。また、エタネルセプトは最も長い投与継続率を示した」とまとめている。(ケアネット 呉 晨)

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親が主導する急性喘息発作時のステロイド投与戦略は有益なのか?

急性の喘息発作は世界的に、救急部門と入院の主因の一つであり、発作時の負担軽減および医療費削減のための戦略が必要不可欠とされる。オーストラリアのビクトリア州BarwonにあるGeelong病院のP J Vuillermin氏らは、入院下の医師投与による有効性が確立している経口ステロイド投与について、学童期児童(5~12歳)の急性喘息発作時に、親が開始を決める経口ステロイド投与を短期間行うことの有効性について、無作為化試験を行った。BMJ誌2010年3月6日号(オンライン版2010年3月1日号)より。プラセボ投与対照で、症状、医療資源利用、学校欠席状況を比較試験は、二重盲検無作為化プラセボ対照クロスオーバーの手法で行われた。被験者は、ビクトリア州Barwonに住む5~12歳児で、過去に急性喘息発作のエピソードを有する230例が登録された。親によって開始される短期の経口プレドニゾロン投与(1mg/kg体重/日)もしくはプラセボを投与する群に無作為化された。主要評価項目は、7日間の日中の平均症状スコア。副次評価項目は、7日間の夜間症状の平均スコア、利用した医療サービス、学校を欠席状況とした。繰り返し投与による副作用とをはかりにかけて検討すべき試験登録児童のうち131例(57%)から、3年間(2005年3月~2008年5月)で計308回の急性喘息発作のエピソードおよび親によるプレドニゾロン投与(うち153回はプラセボ)が報告された。プレドニゾロン投与群の7日間の日中の平均症状スコアは、プラセボ群よりも15%低かった(平均比:0.84、95%信頼区間:0.74~0.98、P=0.023)。夜間症状の平均スコアも、16%低かった(同:0.84、0.70~1.00、P=0.050)。医療サービス利用も(オッズ比:0.54)、学校の欠席日数も(平均差:-0.4日)プレドニゾロン投与群の方が低かった。Vuillermin氏らは、「子どもが急性喘息発作時、親による短期の経口プレドニゾロン投与は、症状軽減、医療資源利用の低減、学校欠席の低減をもたらすことができるようだ」とまとめつつ、「この戦略のささやかなベネフィットと、経口ステロイドの繰り返し投与による副作用とをはかりにかけて検討しなくてはならない」と結論している。

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mTOR阻害剤が腎細胞がんにもたらす可能性

2010年1月、mTOR阻害による抗悪性腫瘍剤としては日本初となる「エベロリムス(商品名:アフィニトール)」が承認を得た。ここでは、2月22日、アーバンネット大手町ビルにて開催された「mTOR阻害剤『アフィニトール』が腎細胞がん治療にもたらす可能性」と題するプレスセミナーをお届けする。帝京大学医学部泌尿器科学教室 主任教授 堀江重郎氏は、mTOR阻害剤の基礎から臨床治験まで広範にわたり講演した。<ノバルティス ファーマ株式会社主催> がん治療における新しい戦略無秩序な細胞増殖を繰り返すがんにおいて、その制御を失った細胞周期を停止させるのが従来の抗がん剤の作用機序であるが、さらに近年、がんそのものが自らを養う血管を新生させることから、そこをターゲットとする分子標的薬による治療が進んできている。そして新たにmTOR阻害剤など、無制限な細胞内の代謝もがん進行の要因となっている点に着目した治療戦略が、難治性がんへの福音となる可能性が強まってきた。mTORとは堀江氏はまず、mTORとその阻害剤について概説した。mTORとはマクロライド系抗生物質ラパマイシンの標的分子として同定されたセリン・スレオニンキナーゼであり、細胞の分裂や成長、生存における調節因子である。その重要性を示唆する事実として、酵母からヒトにいたるまで95%以上相同な蛋白であるため、mammalian Target Of Rapamycin(=mTOR)と総称される。正常細胞においては、栄養素や成長因子、エネルギーといった「エサ」があると活性化し、エサのない状況ではいわば冬眠状態となっている。栄養素やその他増殖促進経路からのシグナル伝達を制御する役割から、糖尿病や生活習慣病への関与も報告されている。一方、mTOR阻害剤のアフィニトールやラパマイシンは、タクロリムスと同様の機序で免疫抑制効果を持つ。分子生物学的には、細胞周期をG1期で停止させることや、低酸素誘導因子(HIF※)の安定化および転写活性を抑制することが示されている。多くのがんでmTORシグナル伝達経路が調節不全を起こして常に活性化しており、mTOR阻害剤の抗腫瘍効果が臨床レベルでも検討されている。(※HIF:mTOR活性化や低酸素によって細胞内に蓄積し、血管新生や解糖系代謝を亢進させる。)昨年Natureで発表され話題となった、興味深い知見がある。ラパマイシン適量をマウスに投与したところ、加齢期であっても寿命延長効果が見られた。これはカロリー制限したサルの方が長寿命であったデータと同等と考えられる、と堀江氏は語った。また、がん患者を高カロリー摂取群とカロリー制限群に分けたところ、制限群の方が長生きしたという結果が複数出ており、これまでは切り離して考えられていた「がん」と「体内環境」の密接な関連に関心が寄せられている。がん細胞の代謝にも影響するmTOR阻害剤は、この流れに合致する薬剤といえる。 腎細胞がんわが国における腎がんの9割は腎細胞がんであり、好発年齢は50歳以降、男女比は約2:1である。年間で発症数は1万人を超えて増加傾向にあるとされ、約7千人が死亡する。寒冷地方に多く発症し、ビタミンD欠乏との関連が指摘されている。遺伝性にフォン・ヒッペル・リンダウ(VHL)遺伝子が変異または欠失しているVHL症候群は120家系あり、遺伝性腎細胞がんを発症する割合は50%程度。根治的治療は手術で、StageⅣであってもなるべく切除した方が予後良好である。分子標的薬登場以前はサイトカイン療法しか薬物治療がなく、治療抵抗性のがんの一つである。 腎細胞がんとmTOR阻害剤堀江氏によると、腎細胞がん患者においてはmTORの上流蛋白Aktの過剰な活性化や、血中血管内皮増殖因子(VEGF)濃度の上昇が認められ、増殖シグナルが亢進している。加えて、mTORに至るシグナル経路を抑制する因子の変異・機能低下や、VHL遺伝子変異によるHIFの過剰産生が見られ、抑制シグナルの低下もある。正常ではVHLはがん抑制因子であってHIFを抑制しているが、腎がんの多くでは変異による不活化が起こっている。もともと腎臓は血管に富み、VHL変異で異常な血管が作られやすい。mTOR阻害剤は、このようにVHLが機能しない状況でもHIF合成を阻止する。また、VEGF-Aの産生も阻害し、結果として腫瘍細胞での血管新生を抑制する。このように、がん細胞の増殖抑制と血管新生阻害の抗腫瘍効果を併せ持つmTOR阻害剤のアフィニトールの、VEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤(スニチニブまたはソラフェニブ)が無効となった進行性腎細胞がんを対象として有効性および安全性について検討した臨床試験がRECORD-1である。患者をBSC+アフィニトール群とBSC群に無作為割付した結果、アフィニトール群で無増悪生存期間が有意に延長し、抗腫瘍効果も示された。副作用発現は、対象患者が比較的PSが良好というバイアスはあるが、高グレードがあまり多くない印象があるとのことである。注意すべきものとして、アジア人に多い間質性肺疾患、免疫抑制による感染症、インシュリン抵抗性となるための高血糖、糖尿病の発症・増悪などが挙げられた。mTOR阻害剤の間質性肺疾患については、副腎皮質ホルモン剤への反応性が高いことが報告されている。堀江氏は、がんへの本質的なアプローチといえるmTOR阻害剤、アフィニトールが承認され、VEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤投与後の進行性腎細胞がんの治療における期待が寄せられるとした。なおわが国では現在、乳がん、胃がん、悪性リンパ腫、膵内分泌腫瘍を対象とした、第Ⅲ相の国際共同治験に参加している。(ケアネット 板坂倫子)

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喘息配合剤トップシェアを目指す~国内2剤目のシムビコート発売会見~

2010年1月14日、国内2番目の配合喘息治療薬、シムビコートに関して、アステラス製薬株式会社/アストラゼネカ株式会社両社の営業責任者による発売会見が開催された。シムビコートは、吸入ステロイド薬のブデソニドと即効性・長時間作用性吸入β2刺激薬のホルモテロールからなる配合剤である。国内ではグラクソ・スミスクラインのアドエアについで2番目の発売となる。シムビコートは平均粒子径が2.4~2.5μmであり、他剤と比較して小さい。そのため末梢気道まで到達しやすく、肺全体に薬剤が広がるので、強力かつ速やかな効果の出現が期待できる。昨年改訂された『喘息予防・管理ガイドライン2009』では、治療ステップ2から、配合剤の使用が認められている。会見の中で、アストラゼネカ プライマリーケア事業本部長の金子潔氏は、喘息患者530万人のうち、およそ6割の患者がガイドラインの治療ステップ2から4にあたるとし、「対象患者さんに少しでも早く使っていただければ」と語った。また、アステラス製薬 営業本部長の山田活郎氏は、この薬剤が日本の喘息治療に大きく貢献できると確信し、「早い段階での国内シェアナンバーワンを実現したい」とコメントした。シムビコートは2009年10月に承認、2010年1月13日に発売された。アストラゼネカが製造・開発を、アステラス製薬が流通・販売を担当し、両社合わせて2,700名のMRがプロモーション活動にあたる。(ケアネット 吉田 直子)

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喘息治療の新展開 ―2剤目の配合剤が登場―

2009年12月4日、日本記者クラブにて開催された喘息プレスセミナー(主催:アステラス製薬株式会社/アストラゼネカ株式会社)で、昭和大学医学部内科学講座呼吸器・アレルギー内科部門教授の足立満氏が「日本の喘息治療の現状と新展開」について講演を行った。近年、わが国の喘息の死亡率は、吸入ステロイド薬の普及に伴い、大きく低下し続けている。その減少率は主要疾患の中でもひと際目立つといえる。しかし、人口10万人あたりの喘息死亡率は1.9人(2008年)と、フィンランドの0.3人(2003年)、米国の1.3人(2004年)に比べ、先進国中では、依然高いのが現状である。その理由としては、喘息治療が進んでいる北欧に比べ、わが国の吸入ステロイド薬の使用率が低いことがあげられている1)。吸入ステロイド薬使用率の低さの原因としては、吸入手技の指導やステロイド薬に対する不安があるものの、足立氏は別の視点で見る必要があると話した。今年3月に行ったインターネットの調査によると、喘息治療に用いる吸入薬に期待する特性としては、医師は「効き目の速さ」と、発作・増悪の抑制といった「効果の持続」を同程度に重要視している一方で、患者さんのおよそ8割は「効き目の速さ」を期待している。つまり、「症状消失に対する患者ニーズが高い」現状に対して、吸入ステロイド薬は、速やかな症状消失効果はないため、治療の実感が得られないというギャップがあると考えられる。2009年10月に承認されたシムビコートは、吸入ステロイド薬のブデソニドと即効性・長時間作用性吸入β2刺激薬のホルモテロールからなる配合剤である。本剤1剤で気管支喘息の病態である気道炎症・気道狭窄両方に対して優れた効果を示す。また、本剤に含まれるホルモテロールは、吸入3分後にも呼吸機能を大きく改善し、強い気管支拡張効果を持続的に発揮することから、患者さんは治療効果を実感しやすく、アドヒアランスの向上が期待される。喘息予防・管理ガイドライン2009では、治療ステップ2から、配合剤の使用が認めてられている。今後、配合剤の普及が期待される。最後に、足立氏は、喘息の治療における配合剤の有用性は明らかであり、長期にわたる優れた喘息コントロールと速やかな効果発現を示すシムビコートは、今後日本の喘息治療に変化をもたらす薬剤ではないかと講演を締めくくった。(ケアネット 呉 晨/吉田 直子) 出典:1) 足立満ほか:アレルギー 51: 411-420, 2002.2) 足立満ほか:アレルギー 57: 107-120, 2008.3) K.F. Rabe et al.: Eur Respir J 16: 802-807, 2000.4) 大田健ほか:アレルギー・免疫 16: 1430-1440, 2009.

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