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スタチンガイドラインで、より多くの患者のリスクを回避できる?(解説:平山 篤志 氏)-396

 疾患やリスク因子とLDL-コレステロール値(LDL-C)からLDL-Cの治療目標値を設定し、治療する指針を示したATP IIIのガイドラインが、2013年に発表されたACC/AHAガイドラインによって大きく変えられた。 新しいガイドラインの内容は、すでに知られているようにAtherosclerotic Cardiovascular Disease(ASCVD)の2次予防、およびASCVDハイリスク患者の1次予防には、LDL-Cの値に関係なくスタチンを投与すべきであり、かつ、目標のLDL-C値は定めないという“Fire and Forget”の考えを示したものであった。心血管イベントの抑制効果が、すべてスタチンのエビデンスに基づくものであることから、スタチンがどの患者に適応するかという”スタチンガイドライン”ともいえる。 このガイドラインに沿ってスタチンを投与される患者数は、米国では4,300万例から5,600万例に増加する。では、本当にベネフィットがあるのか? このClinical Questionに答えを出すには時間がかかるが、現時点でフラミンガム研究に当てはめたとき、治療対象者をATP IIIから変更することで、どのようなベネフィットがあるかを推測した結果が発表された。ATP IIIとACC/AHA ガイドライン2013の治療対象群と非対象群を比較した場合、ACC/AHAガイドライン2013のほうで、より高率でイベントが発生していた。新しいガイドラインを用いることで、これまで治療対象でなかった患者群、とくに中程度から軽度のリスクのある患者で効果的にイベントを減少させることにつながる可能性が示された。 今後、これが臨床的に証明されれば、LDL-C低下効果に加え、Pleiotropic効果を持つスタチンの有用性が、さらに認知されることになるであろう。しかし、米国ほどイベントが多くないわが国で、このガイドラインを適応して効果があるか? わが国のガイドラインは、これまでの疫学データを基に絶対リスクの考えで治療を決定している。2次予防においては、スタチンガイドラインは必須であるが、1次予防にまで拡大するかは今後のわが国におけるエビデンスの集積の結果、判断されるべきである。また、ガイドライン後に“The Lower the better”を示すIMPROVE-ITの結果が発表されたこともあり、しばらくはわが国の動脈硬化治療ガイドラインに沿って、治療を確実に実践することが重要であろう。

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CVD予防のためのスタチン開始基準、費用対効果を検証/JAMA

 2013年11月、米国心臓病学会(ACC)と米国心臓協会(AHA)は、脂質異常症におけるスタチン治療の新ガイドラインを発表した。米国・ハーバード公衆衛生大学院のAnkur Pandya氏らは、心血管疾患(CVD)の1次予防における本ガイドラインの費用対効果プロフィールの検証を行った。新ガイドラインでは、LDLコレステロールの目標値を設定せず、動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の10年リスク(≧7.5%)をスタチン治療導入の指標としているが、リスク判定に使用されるPooled Cohort Equationsは過大評価を引き起こす可能性があるため、実臨床で閾値の幅を広げた場合などに、不要な治療による甚大なコスト増大やスタチン誘発性糖尿病のリスク上昇の懸念があるという。JAMA誌2015年7月14日号掲載の報告。マイクロシミュレーション・モデルでQALYの増分コストを評価 研究グループは、米国人における10年ASCVDリスクの至適な閾値を確立するために、ACC/AHAガイドラインの費用対効果分析を行った(米国国立心肺血液研究所[NHLBI]の助成による)。ガイドラインの他の要素は、一切変更しないこととした。 仮想的な100万人の成人(40~75歳)の生涯健康アウトカムおよびCVD関連コストを予測するマイクロシミュレーション・モデルを開発した。モデルのパラメータのデータソースには、国民健康栄養調査(NHANES)、スタチンのベネフィットや治療に関する臨床試験およびメタ解析などが含まれた。 これらを用いて、ASCVDイベント(致死的/非致死的な心筋梗塞、狭心症、心停止、脳卒中)の予防効果および質調整生存年(QALY)の増分コストを算出した。費用対効果は許容範囲内、リスク閾値を広げても基準満たす ACC/AHAガイドラインの推奨閾値である10年ASCVDリスク≧7.5%では、成人の48%でスタチン治療が適切と判定され、10年ASCVDリスク≧10%と比較した1QALY当たりの増分費用対効果比(ICER)は3万7,000ドルであった。これは、一般に使用される費用対効果の閾値である5~10万ドル/QALYを下回っていた。 リスクの閾値をさらに緩めると、10年ASCVDリスク≧4.0%(成人の61%でスタチン治療が適切と判定)のICERは8万1,000ドル/QALY、≧3.0%(同67%)のICERは14万ドル/QALYであり、それぞれの費用対効果の閾値である10万ドル/QALYおよび15万ドル/QALYを満たしていた。 40~75歳の成人1億1,540万人において、10年ASCVDリスクの閾値を≧7.5%から≧3.0%へ転換すると、さらに16万1,560件のCVDイベントが回避されると推算された。また、これらの費用対効果の結果は、スタチンの毎日の服薬、価格、スタチン誘発性糖尿病のリスクに関連した効用値の損失(disutility)の変化に対し感受性を示した。 確率論的感度分析では、10年ASCVDリスクの至適な閾値が≦7.5%となる確率は、費用対効果の閾値が一般的に使用される10万ドル/QALYの場合は99%以上であり、5万ドル/QALYでは86%以上であった。また、費用対効果の閾値が10万ドル/QALYの場合に、10年ASCVDリスクの至適な閾値が≦5.0%となる確率は93%以上であった。 著者は、「ACC/AHAコレステロール治療ガイドラインで推奨されているスタチン治療導入の閾値である10年ASCVDリスク≧7.5%の費用対効果プロフィール(ICER:3万7,000ドル/QALY)は許容範囲内であったが、これを≧4.0%、≧3.0%に緩めても、費用対効果の閾値はそれぞれの基準値である10万ドル/QALYおよび15万ドル/QALYを満たし、毎日の服薬に関する患者の好みや価格の変動、糖尿病のリスクに感受性を示した」とまとめている。

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欧州委員会、新コレステロール低下薬evolocumab(PCSK9阻害剤)承認

 アムジェン社は2015年7月21日、欧州委員会(EC)が、低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)の低下を必要とするコレステロールコントロール不良患者の治療薬として、プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)阻害剤、evolocumabの販売を承認したと発表した。 ECが承認した、evolocumabの治療対象は以下。■成人の原発性高コレステロール血症(家族性高コレステロール血症ヘテロ接合体[HeFH]と非家族性高コレステロール血症)または混合型脂質異常症患者に対して行う治療として、食事療法に加え: ●スタチンの最大内服可能用量を投与してもLDL-C管理目標値に到達しない患者に対し、スタチン、もしくはその他の脂質低下療法と併用 ●スタチンに対する忍容性不良、もしくはスタチンが禁忌の患者に対し、単独、もしくは他の脂質低下療法と併用■成人あるいは12歳以上の家族性高コレステロール血症ホモ接合体(HoFH)患者に対し、他の脂質低下療法と併せて行う治療 欧州ではハイリスク患者の60%以上が、スタチンをはじめ現在承認されている脂質低下薬を用いても、依然としてLDL-C値を十分に低下できていない状況である。とくに、リスクが高い患者においては、その比率は80%以上にまで上昇する。 evolocumabは、プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)を阻害するヒトモノクローナル抗体。PCSK9は、LDL-Cを血中から取り除く肝臓の働きを低下させる。evolocumabは、PCSK9が肝細胞表面のLDL受容体と結合することを阻害することで効果を発揮する。10件の第III相試験のデータから、高コレステロール患者4,500人以上を含む約6,000人の原発性脂質異常症患者および混合型脂質異常症患者において、evolocumabにより一貫したLDL-C値の低下が示された。各試験では、evolocumab投与によりLDL-Cはプラセボと比較して約55~75%の有意に低下が認められている。FHホモ接合体患者では、evolocumabの投与によりプラセボと比較してLDL-Cに約15~30%の有意な低下が認められた。有害事象プロファイルは、全体的に対照群と同等であったが、evolocumab群の2%以上に発現、もしくは対照群と比較して発現頻度の高かった有害事象は、鼻咽頭炎、上気道感染症、背部痛、関節痛、インフルエンザおよび悪心であった。アムジェン社のプレスリリースはこちら。

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ACC/AHA2013のスタチン適格基準は適切か/JAMA

 ACC/AHAガイドライン2013では、脂質管理のスタチン治療対象について新たな適格基準が定められた。同基準について米国・マサチューセッツ総合病院のAmit Pursnani氏らは、コミュニティベースの1次予防コホート(フラミンガム心臓研究被験者)を対象に、既存のATP IIIガイドラインと比較して適切なスタチン使用をもたらしているかを検証した。その結果、新ガイドライン適用で、心血管疾患(CVD)や不顕性冠動脈疾患(CAD)のイベントリスク増大を、とくに中等度リスク者について、より正確かつ効果的に特定するようになったことを報告した。JAMA誌2015年7月14日号掲載の報告より。フラミンガム心臓研究の被験者2,435例を対象にATP IIIと比較検証 検討は、フラミンガム心臓研究の第2および第3世代コホートから被験者を抽出して行われた。スタチン治療未治療で、2002~2005年に冠動脈石灰化(CAC)について多列検出器CT(MDCT)検査を受け、CVD発症について中央値9.4年間追跡を受けた2,435例を対象とした。 スタチン治療の適格性について、フラミンガムリスク因子とATP IIIのLDL値に基づき定義する一方、プールコホート解析においてはACC/AHAガイドライン2013に準拠した。 主要アウトカムは、CVD(心筋梗塞、冠状動脈性心疾患[CHD]による死亡、虚血性脳卒中)の発症とし、副次アウトカムは、CHD、CAC(Agatstonスコアで評価)であった。治療適格者14%から39%に、CVDイベントリスク者3.1倍から6.8倍に 2,435例(平均年齢51.3[SD 8.6]歳、女性56%)において、ATP IIIによるスタチン治療適格者は14%(348/2,435例)であったのに対し、ACC/AHAガイドライン2013規定では39%(941/2,435例)であった(p<0.001)。 これら被験者のCVDイベント発生は74例(非致死的心筋梗塞40例、非致死的虚血性脳卒中31例、致死的CHDイベント3例)であった。 スタチン治療適格者の非適格者と比較したCVDイベント発生に関するハザード比は、ATP IIIを適用した場合(3.1、95%信頼区間[CI]:1.9~5.0、p<0.001)も、ACC/AHAガイドライン2013を適用した場合(6.8、同:3.8~11.9、p<0.001)もそれぞれ有意に高値であったが、ACC/AHAガイドライン2013を適用した場合のほうが有意に高値であった(p<0.001)。 同様の結果は、CHDに関する中等度のフラミンガムリスクスコアを有する被験者を対象とした、CVDイベント発生のハザード比に関する検討においてみられた。 ACC/AHAガイドライン2013ガイドライン適用による新たなスタチン治療適格者(593例[24%])のCVDイベント発生率は5.7%、治療必要数(NTT)は39~58例であった。 なお、CACを有する被験者において、ATP IIIよりもACC/AHAガイドライン2013を適用した場合にスタチン治療適格者となる傾向がみられた。CACスコア0超(1,015例)では63% vs.23%であったのに対し、100超(376例)では80% vs.32%、300超(186例)では85% vs.34%であった(すべてのp<0.001)。ACC/AHAガイドライン2013によるスタチン治療適格者でCACスコア0の低リスク群(306/941例[33%])のCVD発生率は1.6%であった。

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TECOS試験:DPP-4阻害薬は心血管イベントを抑止しうるか(解説:吉岡 成人 氏)-375

血糖管理と心血管イベント 2型糖尿病患者において、病初期から厳格な血糖管理を目指すことで心血管イベントや死亡のリスクを有意に低減できる可能性を示したUKPDS(United Kingdom Prospective Diabetes Study)80試験は、legacy effectという言葉を生み出した1)。しかし、糖尿病の罹病期間が長く大血管障害のリスクが高い患者や、すでに大血管障害を引き起こした患者に厳格な血糖管理を試みた大規模臨床試験であるACCORD試験(Action to control Cardiovascular Risk in Diabetes)、ADVANCE試験(Action in Diabetes and Vascular Disease:Preterax and diamicron Modified Release Controlled Evaluation)、VADT試験(Veterans Affairs Diabetes Trial)では、厳格な血糖管理を目指すことの有用性は確認できず、とくに、ACCORD試験では低血糖による死亡率の上昇が大きな懸念として取り上げられた。メタアナリシスと臨床試験の乖離 このような背景の下、低血糖を引き起こさずに、良好な血糖管理を得ることができる薬剤としてDPP-4阻害薬が広く用いられるようになり、ランダム化比較試験(RCT)のメタアナリシスからは心血管イベントを抑止する可能性が示唆された2)。しかし、DPP-4阻害薬であるサキサグリプチン、アログリプチンを使用した大規模臨床試験であるSAVOR(Saxagliptin Assessment of Vascular Outcomes Recorded in Patients with Diabetes Mellitus) TIMI 53試験、EXAMINE試験(Examination of Cardiovascular Outcomes with Alogliptin versus Standard of Care in Patients with Type 2 Diabetes Mellitus and Acute Coronary Syndrome)では、心血管イベントに対する薬剤の安全性(非劣性)を確認することができたが、HbA1cがプラセボ群に比較して0.2~0.3%低下したことのメリットは証明されず、SAVOR-TIMI53試験では心不全による入院のリスクが27%ほど高まったという、理解に悩む結果のみが残された。2015年3月に発表されたEXAMINE試験の事後解析の結果では、複合評価項目(全死亡+非致死性心筋梗塞+非致死性脳卒中+不安定狭心症による緊急血行再建術+心不全による入院)において、アログリプチン群とプラセボ群で差はなく、心不全による入院の発生率もアログリプチン群3.0%、プラセボ群2.9%(ハザード比[HR]1.07、95%信頼区間[CI]0.79~1.46、p=0.657)で差はなかったと報告されている。しかし、心不全の既往がない患者では、アログリプチン群で心不全による入院が有意に多かった(2.2% vs.1.3% p=0.026)ことが確認されている。期待されていたTECOS試験 このような背景を受けて、2015年6月8日、米国糖尿病学会でシタグリプチンを使用した臨床試験であるTECOS試験(The Trial to Evaluate Cardiovascular Outcomes after Treatment with Sitagliptin)のデータが公表され、即日、New England Journal of Medicine誌にオンライン版で掲載された。1万4,671例(シタグリプチン群7,332例、プラセボ群7,339例)の患者を対象とした、中央値で3.0年の観察期間に及ぶRCTであり、SAVOR-TIMI53試験、EXAMINE試験よりも観察期間が長く、多くの患者を対象とした試験であり、大きな期待を持って発表が待たれた試験である。 主要アウトカムは複合心血管イベントであり、心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、不安定狭心症による入院のいずれかの発症と定義され、2次アウトカムとして主要アウトカムの構成要素、そのほかに急性膵炎、がんの発症などが包括された。血糖管理は試験開始後4ヵ月の時点で、シタグリプチン群においてHbA1cが0.4%低下しており、試験期間中に差は小さくなったものの有意な差が確認された。しかし、主要エンドポイント、心不全による入院、死亡についてはシタグリプチン群においてもプラセボ群においても差はなく、感染症、重症低血糖にも差はなかった。急性膵炎はシタグリプチン群で多い傾向を示したものの有意な差はなかった(p=0.07)。 HbA1cを0.2~0.4%低下させ、DPP-4阻害薬によって期待された心血管イベントの抑止効果は確認されなかった。3年という研究期間が短すぎるという考えもあるかもしれない。糖尿病患者において心血管イベントを抑止するために 血糖値の管理によって心血管イベントを抑制できるパワーと、スタチンによって脂質管理を向上させることで得られる心血管イベントの抑制には大きな差がある。「食後高血糖の管理によって血管イベントを抑止する」、「DPP-4阻害薬の使用によって心血管イベントを抑えることができる可能性がある」というのは、「商業主義に基づく医療」(commercial based medicine:CBM )の世界でのキャッチコピーである。糖尿病患者において心血管イベントを抑止するうえで重要なのは、血糖の厳格な管理ではなく、脂質や血圧などの標準的な心血管リスクの管理である3)という意見は傾聴に値するのではないかと思われる。

406.

精神疾患患者の作業記憶低下機序が解明か

 米国・ピッツバーグ大学/奈良県立医科大学の紀本 創兵氏らは、統合失調症患者における作業記憶低下の分子メカニズムを明らかにするため、グルタミン酸シナプスによる神経伝達制御に関わる初期遺伝子の定量化を試みた。その結果、NARPのメッセンジャーRNA(mRNA)発現量が低下しており、これがパルブアルブミン介在ニューロンへの興奮性入力を低下させ、ガンマアミノ酪酸の合成低下を通して作業記憶低下につながっている可能性を示唆した。JAMA Psychiatry誌オンライン版2015年6月3日号の掲載報告。 統合失調症において、作業記憶の欠損が背外側前頭前皮質におけるガンマ振動の発生異常を反映しているようである。ガンマ振動の発生には抑制性パルブアルブミン陽性介在ニューロンの興奮相を要する。このようにガンマ振動は、1つにはパルブアルブミン介在ニューロン上のグルタミン酸受容体シナプスの数に影響されるが、統合失調症におけるグルタミン酸受容体を介したパルブアルブミン介在ニューロンの興奮を制御する分子的要因に関しては、ほとんど知られていなかった。 研究グループは、統合失調症患者において、グルタミン酸シナプスによる神経伝達制御を担う初期遺伝子(NARP、ARC、SGK1)の定量化を行った。統合失調症、双極性障害、うつ病患者、そして十分にマッチさせた健常者(対照)より剖検脳標本(206例)を入手。定量PCR、in situハイブリダイゼーションまたはマイクロアレイ解析を用いて脳組織を検討し、灰白質と層の背外側前頭前皮質における転写レベル、および細胞分解レベルを測定した。検討は、2013年1月1日から2014年11月30日の期間に実施された。NARP、ARC、SGK1のmRNA発現量を統合失調症患者と対照者の標本において比較し、診断特異性は気分障害患者の標本におけるNARP mRNAレベルにより評価した。 主な結果は以下のとおり。 ・定量PCRにより、対照群と比べて統合失調症患者の標本における。NARP mRNA発現量は25.6%と有意に低値であった(平均[SD]:0.036[0.018] vs 0.049[0.015]、F1,114=21.0、p<0.001)。・一方、ARC値(F1,112=0.93、p=0.34)およびSGK1値(F1,110=2.52、p=0.12)では、対照と統合失調症患者の間で有意な差はみられなかった。・これらの結果はin situハイブリダイゼーション(NARP;統合失調症患者vs.対照者:40.1%の低下、p=0.003)、およびマイクロアレイ解析(NARP;統合失調症患者vs.対照者:3層錐体細胞で12.2%の低下[p=0.11]、5層錐体細胞で14.6%の低下[p=0.001])により裏付けられた。・統合失調症患者の標本において、NARPとGAD67のmRNA値間に正の相関が認められ (r=0.55、p<0.001)、パルブアルブミン介在ニューロンにおけるGAD67 mRNA発現は活動性依存的であった。・またNARP mRNA値も、双極性障害患者の標本(-18.2%、F1,60 =11.39、p=0.001)、うつ病患者の標本(-21.7%;F1,30 = 5.36、p=0.03)において健常対照者に比べ低下しており、精神疾患患者の標本で顕著であった。・3つの診断群において、NARP mRNA値はソマトスタチンmRNAと正の相関を示し(すべてのr≧0.53、すべてのp≦0.02)、その発現は活動依存的であった。関連医療ニュース 統合失調症患者の認知機能に対するアリピプラゾール vs リスペリドン 統合失調症の認知機能改善に抗認知症薬は有用か 精神疾患患者の認知機能と炎症マーカーとの関連が明らかに  担当者へのご意見箱はこちら

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IMPROVE-IT試験:LDL-コレステロールは低ければ低いほど良い!(解説:平山 篤志 氏)-371

 2014年の米国心臓協会(AHA)学術集会で発表され話題となったIMPROVE-IT試験がようやく論文化された。 スタチン以外の薬剤、すなわちコレステロール吸収阻害薬であるエゼチミブで、LDLコレステロールを低下させることが心血管イベントを減少させるかという臨床的疑問に、YESと答えた研究である。つまり、本試験がこれまでの臨床試験でのLDLコレステロール値の低下と心血管イベント低下効果の直線上に乗ったことで、LDLコレステロールの“The Lower, the better”が証明されたのである。 2013年のAHA/ACCガイドラインで、脂質管理はLDLコレステロール値に関係なく、動脈硬化性心血管患者では、ストロングスタチンを投与するだけの“Fire and forget”であったが、この試験によりLDLコレステロールを低下させることの有用性が示され、今後のハイリスク患者についてのガイドラインが変更される可能性もある。しかし、LDLコレステロールがエゼチミブ併用群で54mg/dL、スタチン単独群で70mg/dLの差があったものの、イベントでは平均7年間の追跡でわずか6.4%の低減効果に留まった。また、非致死的心筋梗塞と虚血性脳卒中でのイベント低下が認められたものの、心血管死には差がなかった。 実臨床で死亡に差がないということが意義を持つのか? NNT50という数字が高いのか低いのか? この試験では、スタチンがもたらした効果ほどのインパクトはエゼチミブにはなかった。臨床的な有用性の限界かもしれない。ただ、サブ解析で65歳以上、すでに脂質低下薬を服用中の患者、LDLコレステロール値が95mg/dL以下の患者で併用群に効果が認められ、さらに糖尿病患者で有意に併用効果が認められたことから、スタチンで治療されていてもハイリスクな患者には、エゼチミブの追加投与によるLDLコレステロール低下が重要であることが示された。 今後、ハイリスク患者にはストロングスタチンの投与だけでなくLDLコレステロール値を考慮した治療が必要となるであろう。

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新規CETP阻害薬TA-8995、軽度脂質異常症に有効/Lancet

 新規開発中のコレステロールエステラーゼ転送蛋白(CETP)阻害薬TA-8995は、軽度脂質異常症患者への投与において忍容性は良好で、脂質やアポリポ蛋白に有益な効果をもたらすことが、G Kees Hovingh氏らによる第II相無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果、報告された。12週時点でLDLコレステロール値は、5mgおよび10mg用量の単独投与で45.3%低下、10mg用量+スタチン薬との併用投与では63.3~68.2%低下し、HDLコレステロール値は10mg用量単独で179.0%上昇、10mg用量+スタチン薬併用投与では152.1~157.5%上昇が認められたという。著者は、「示された所見が心血管疾患イベントの抑制をもたらすのか、心血管疾患をアウトカムとした試験を行う必要がある」と述べている。Lancet誌オンライン版2015年6月2日号掲載の報告より。364例を用量別、スタチン薬併用の9群に無作為化し検討 新たなCETP阻害薬TA-8995の安全性、忍容性、有効性を評価した試験は、オランダ、デンマークの病院および臨床研究組織の計17ヵ所で、2013年8月15日~2014年1月10日の間に患者を登録して行われた。被験者は年齢18~75歳で、既往の脂質降下薬をウォッシュアウト後、空腹時LDLコレステロール(LDL-C)値が2.5~4.5mmol/L、HDLコレステロール(HDL-C)値が0.8~1.8mmol/L、トリグリセライド値4.5mmol/L以下の患者364例であった。 コンピュータ無作為化法を用いて、1対1の割合で次の9つの治療群のうち1つを受けるよう割り付けた。プラセボ群(40例)、TA-8995 1日用量1mg群(41例)、同2.5mg群(41例)、同5mg群(40例)、同10mg群(41例)、10mg TA-8995+20mgアトルバスタチン(40例)、プラセボ+20mgアトルバスタチン(40例)、10mg TA-8995+10mgロスバスタチン(41例)、プラセボ+10mgロスバスタチン(41例)。スタチン薬はオーバーカプセル化してマスキングに努めた。 主要アウトカムは、ベースラインから12週時点までの、LDL-C値とHDL-C値の変化の割合(%)とした。LDL-C値は27.4~45.3%低下、HDL-C値は大きく上昇 12週時点でLDL-C値は、TA-8995 1日用量1mg群では27.4%低下、2.5mg用量群で32.7%低下、5mg用量群45.3%低下、10mg用量群45.3%の低下がみられた(対プラセボのp

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急性冠症候群へのスタチン+エゼチミブの有用性/NEJM

 急性冠症候群(ACS)の治療において、スタチンにエゼチミブを併用すると、LDLコレステロール(LDL-C)値のさらなる低下とともに心血管アウトカムが改善することが、米国・ハーバード大学医学大学院のChristopher P Cannon氏らが実施したIMPROVE-IT試験で示された。スタチンは、心血管疾患の有無にかかわらず、LDL-C値と心血管イベントのリスクの双方を低減するが、残存する再発リスクと高用量の安全性に鑑み、他の脂質降下薬との併用が検討されている。エゼチミブは、スタチンとの併用で、スタチン単独に比べLDL-C値をさらに23~24%低下させることが報告されていた。NEJM誌オンライン版2015年6月3日号掲載の報告。上乗せ効果をプラセボ対照無作為化試験で評価 IMPROVE-IT試験は、ACSに対するシンバスタチン+エゼチミブ併用療法の有用性を評価する二重盲検無作為化試験(Merck社の助成による)。対象は、年齢50歳以上、入院後10日以内のACS(ST上昇および非上昇心筋梗塞、高リスク不安定狭心症)で、脂質降下療法を受けている場合はLDL-C値が50~100mg/dL、受けていない場合は50~125mg/dLの患者であった。 被験者は、シンバスタチン(40mg/日)+エゼチミブ(10mg/日)またはシンバスタチン(40mg/日)+プラセボを投与する群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。主要評価項目は、心血管死、非致死的心筋梗塞、再入院を要する不安定狭心症、冠動脈血行再建術(割り付け後30日以降)、非致死的脳卒中の複合エンドポイントとした。フォローアップ期間中央値は6年だった。 2005年10月26日~2010年7月8日までに、39ヵ国1,147施設に1万8,144例が登録され、併用群に9,077例、単剤群には9,067例が割り付けられた。全体の平均年齢は64歳、女性が24%で、糖尿病が27%にみられ、入院中に冠動脈造影が88%、PCIが70%に施行された。入院時の平均LDL-C値は、両群とも93.8mg/dLだった。LDL-C値が24%低下、心血管イベントのリスクが2.0%減少 治療1年時の平均LDL-C値は、併用群が53.2mg/dLであり、単剤群の69.9mg/dLに比べ有意に低下していた(p<0.001)。16.7mg/dLという両群の差は、エゼチミブの追加により、スタチン単剤に比べLDL-C値がさらに24%低下したことを示す。 治療1年時の総コレステロール、トリグリセライド、非HDLコレステロール、アポリポ蛋白B、高感度CRPの値はいずれも、単剤群に比べ併用群で有意に低かった。 治療7年時の主要評価項目のイベント発生率(Kaplan–Meier法)は、併用群が32.7%と、単剤群の34.7%に比べ有意に改善した(絶対リスク差:2.0%、ハザード比[HR]:0.936、95%信頼区間[CI]:0.89~0.99、p=0.016)。併用によるベネフィットは治療1年時には認められた。 3つの副次評価項目も併用群で有意に優れた(全死因死亡/重症冠動脈イベント/非致死的脳卒中:p=0.03、冠動脈心疾患死/非致死的心筋梗塞/30日以降の緊急冠動脈血行再建術:p=0.02、心血管死/非致死的心筋梗塞/不安定狭心症による入院/30日以降の全血行再建術/非致死的脳卒中:p=0.04)。 全死因死亡(p=0.78)、心血管死(p=1.00)には差がなかったが、心筋梗塞(p=0.002)、虚血性脳卒中(p=0.008)の発症率は併用群で有意に低かった。併用のベネフィットは、ほぼすべてのサブグループに一致して認められ、糖尿病および75歳以上の高齢患者でとくに顕著だった。 両群間(併用群 vs.単剤群)で、筋疾患(0.2 vs.0.1%)、胆嚢関連有害事象(3.1 vs.3.5%)、胆嚢摘出術(1.5 vs.1.5%)、ALT/AST正常上限値の3倍以上(2.5 vs.2.3%)、がんの新規発症/再発/増悪(10.2 vs.10.2%)、がん死(3.8 vs.3.6%)の頻度に差はなかった。有害事象による治療中止は、併用群が10.6%、単剤群は10.1%に認められた。 著者は、「LDL-C値を以前の目標値よりも低下させることで、さらなるベネフィットがもたらされると考えられる」としている。(菅野守:医学ライター)関連記事 IMPROVE-IT:ACS患者でのezetimibeによるLDL低下の有益性が示される

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高齢者への脂質降下薬、脳卒中リスク3割減/BMJ

 血管イベント歴のない高齢者(平均年齢74歳)について、脂質降下薬(スタチンまたはフィブラート系薬)の使用有無別に平均9年間フォローアップした検討において、非使用群と比べて使用群の脳卒中リスクが約30%低下したことが報告された。フランス・ボルドー大学のAnnick Alperovitch氏らが、7,484例の大規模集団を対象に行った住民ベースのコホート試験の結果、示された。また、リスク低下についてスタチンとフィブラート系薬の服用者別にみた場合、同等であったという。著者は「今回の試験データは、高齢者の1次予防として脂質降下薬を長期に用いることは脳卒中の予防に結び付くという仮説を提起するものであった」と述べている。BMJ誌オンライン版2015年5月19日号掲載の報告より。7,484例対象、使用群vs. 非使用群を平均9.1年追跡 研究グループは、血管イベント歴のない高齢者における脂質降下薬(スタチンまたはフィブラート系薬)の使用と、冠動脈性心疾患および脳卒中の長期リスクの関連を調べる前向き住民ベースコホート試験をデザインした。試験は1999~2000年に被験者の募集が行われ現在も継続中で、5回の対面調査が完了している。 被験者は、フランスの3都市(ボルドー、ディジョン、モンペリエ)居住の65歳以上の高齢住民から無作為にサンプリングされ、登録時に血管イベント歴のなかった7,484例(女性63%、平均年齢73.9歳)で、平均追跡期間は9.1年であった。 主要評価項目は、ベースラインでの脂質降下薬使用者vs. 非使用者の冠動脈性心疾患および脳卒中の補正後ハザード比で、複数の潜在的交絡因子を補正後の多変量Cox比例ハザードモデルを用いて評価した。ハザード比は、すべての脂質降下薬使用について、またスタチン、フィブラート系薬別に推算して検討した。使用群の脳卒中ハザード比0.66、冠動脈性心疾患との関連はみられず 脂質降下薬の使用者は、非使用者と比較して、脳卒中リスクの低下が認められた(ハザード比:0.66、95%信頼区間[CI]:0.49~0.90)。脳卒中ハザード比は、スタチン使用群(0.68、0.45~1.01)とフィブラート系薬使用群(0.66、0.44~0.98)で同等であった。  一方、脂質降下薬使用と冠動脈性心疾患の関連はみられなかった(ハザード比: 1.12、0.90~1.40)。 年齢、性、BMI、高血圧症、収縮期血圧、トリグリセリド値での層別化分析、および傾向スコア分析において、脳卒中または冠動脈性心疾患のいずれについても、これらの変数によるリスクへの影響はみられなかった。

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LDL-コレステロール低下で心血管イベントをどこまで減少させられるか?(解説:平山 篤志 氏)-350

 2013年のAHA/ACCから発表された脂質異常症に関する治療ガイドラインで、LDL-コレステロールの値ではなく、Atherosclerotic Cardiovascular Disease(ASCVD)のリスクのある患者には強力なスタチンを投与せよという、Fire and Forgetの概念が提唱され大きな話題となった。 背景には、エビデンスがすべてスタチンの用量によってランダム化された試験に基づき確立されたもので、LDL-コレステロール値を目標と設定したものではなかったことがある。 昨年発表されたIMPROVE-ITはこれに対して、スタチン以外の薬剤でコレステロール値を低下させれば、イベントを減少させられるというものであったが、その有意差がわずかであったためにスタチンの減少効果からはインパクトが薄かった。その点で、PCSK9に対する抗体であるエボロクマブ(承認申請中)とアリロクマブ(Alirocumab、国内未承認)はスタチンの治療に加えて、さらに強力にLDL-コレステロールを低下させる効果のあることから、イベントを減少させる効果に大きな期待が寄せられている薬剤である。 Open Labelでの試験であったが、スタチンで治療されている患者にこの薬剤を投与することにより、LDL-コレステロール値の減少と共に1年間における心血管イベントの有意な減少が、エボロクマブおよびアリロクマブに認められたことが報告され、大きな話題となった。ただ、対照群のLDL-コレステロール値が平均120mg/dLと両試験で高値であったこと、一方、PCSK9抗体群では平均60~70mg/dL程度であったことから、スタチンの種類や用量が十分に管理された試験であったのか、あるいはオープン試験であることでバイアスがなかったかなどの疑問点が残る試験ではある。 ただ、イベント低下効果のインパクトは、スタチンのみに依存するしかなかった現状を大きく変える可能性を示す試験であり、現在進行形の二重盲検のイベント試験の結果が待たれる。スタチンで成し遂げられなかった、LDL-コレステロール値の平均70mg/dLの壁を、この薬剤が超えてさらなるイベント低下になるのか、大いに期待と興味をかき立てる結果であった。

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アリロクマブ併用による長期のLDL-C改善効果/NEJM

 米国・アイオワ大学のJennifer G Robinson氏らODYSSEY LONG TERM試験の研究グループは、心血管リスクの高い患者の治療において、新規LDLコレステロール(LDL-C)低下薬アリロクマブ(alirocumab、国内未承認)を最大耐用量のスタチンと併用すると、長期にわたりLDL-C値が有意に減少し、心血管イベントが抑制されることを確認した。アリロクマブは、前駆蛋白転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)に対するモノクローナル抗体であり、第II相試験では短期的投与(8~12週)により、スタチン治療を受けている患者のLDL-C値を40~70%減少させることが示されている。NEJM誌オンライン版2015年3月15日号掲載の報告より。長期の上乗せ効果をプラセボ対照無作為化試験で評価 ODYSSEY LONG TERM試験は、スタチン治療を受けている高リスク例に対するアリロクマブ追加の長期的な有用性を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験(Sanofi社などの助成による)。対象は、年齢18歳以上、ヘテロ型家族性高コレステロール血症(FH)または冠動脈心疾患(CHD)、あるいはCHD相当のリスクを有し、LDL-C値≧70mg/dLであり、高用量または最大耐用量のスタチン治療を受けている患者であった。 被験者は、アリロクマブ(150mg含有1mLシリンジで皮下投与)またはプラセボを2週ごとに投与する群に2対1の割合で無作為に割り付けられ、78週の治療が行われた。主要有効性評価項目は、ベースラインから24週までのLDL-C値の変化率であった。 27ヵ国320施設に2,341例が登録された。アリロクマブ群に1,553例、プラセボ群には788例が割り付けられ、それぞれ1,530例、780例が解析の対象となった。LDL-C値が62%減少、重度の心血管有害事象は48%抑制 全体の平均年齢は60歳、女性が37.8%で、CHDの既往歴は68.9%にみられ、ヘテロ型FHが17.7%含まれた。46.8%が高用量スタチンの投与を受け、28.1%はエゼチミブなどの他の脂質降下薬を併用していた。ベースラインの平均LDL-C値は122mg/dLであった。 24週時のベースラインからのLDL-C値の平均変化率の両群間の差は-62%であり、アリロクマブ群で有意に減少した(48.3 vs. 118.9mg/dL、p<0.001)。ヘテロ型FHとそれ以外の患者の間に差はみられなかった。また、この治療効果は4週時には達成され、78週時(57.9 vs. 122.6mg/dL)も維持されていた。 24週時のLDL-C<70mg/dLの達成率は、アリロクマブ群が79.3%、プラセボ群は8.0%であった(p<0.001)。また、LDL-C以外の脂質の24週時の変化率の差は、非HDL-Cが-52.3%、アポリポ蛋白Bが-54.0%、総コレステロールが-37.5%、リポ蛋白(a)が-25.6%、空腹時トリグリセライドが-17.3%とアリロクマブ群で有意に減少し、HDL-Cは4.6%、アポリポ蛋白A1は2.9%と有意に増加した(いずれもp<0.001)。 重篤な有害事象は、アリロクマブ群が18.7%、プラセボ群は19.5%に発現し、有害事象による試験薬の中止はそれぞれ7.2%、5.8%に認められた。アリロクマブ群で頻度の高い有害事象として、注射部位反応(5.9 vs. 4.2%)、筋肉痛(5.4 vs. 2.9%、p=0.006)、神経認知障害(譫妄、認知/注意障害、認知症、健忘症など、1.2 vs. 0.5%)、眼イベント(視神経/網膜/角膜の障害、2.9 vs. 1.9%)がみられた。 事後解析では、重度の心血管有害事象(CHDによる死亡、非致死的心筋梗塞、致死的/非致死的虚血性脳卒中、入院を要する不安定狭心症)の発現率はアリロクマブ群で有意に低かった(1.7 vs. 3.3%、ハザード比:0.52、95%信頼区間:0.31~0.90、p=0.02)。 著者は、「これらの知見は、既報の他のPCSK9阻害薬(エボロクマブ)の臨床試験(N Engl J Med. 2014;370:1809-1819、Circulation. 2014;129:234-243)の結果と類似する」と指摘している。

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エボロクマブ追加でLDL-Cが長期に減少/NEJM

 脂質異常症の標準治療に新規のLDLコレステロール(LDL-C)低下薬であるエボロクマブ(承認申請中)を追加し約1年の治療を行うと、標準治療単独に比べLDL-C値が有意に減少し、心血管イベントが抑制されることが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のMarc S Sabatine氏らOSLER試験の研究グループの検討で明らかとなった。エボロクマブは、前駆蛋白転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)を阻害する完全ヒト型モノクローナル抗体であり、短期的な臨床試験でLDL-C値を約60%減少させることが確認されていた。NEJM誌オンライン版2015年3月15日号掲載の報告より。12件の親試験の第II、III相別の延長試験を統合解析 OSLER試験は、エボロクマブに関する12の親試験(parent study、第II相:5件[日本のYUKAWA-1試験を含む]、第III相:7件)を完遂した患者を対象とする延長試験であり、本薬の長期的な有用性の評価を目的に、OSLER-1試験(第II相試験)とOSLER-2試験(第III相試験)に分けて検討が行われた(Amgen社の助成による)。親試験には、脂質異常症治療薬未使用例、スタチン±エゼチミブ投与例、スタチン不耐容例、ヘテロ型家族性高コレステロール血症例などが含まれた。 被験者は、親試験での割り付けとは別に、標準治療+エボロクマブまたは標準治療のみを施行する群に2対1の割合で無作為に割り付けられた。エボロクマブは、OSLER-1試験では2週ごとに140mgが皮下投与され、OSLER-2試験では2週ごと140mgと月1回420mgのいずれかを患者が選択した。 脂質値、安全性および事前に規定された探索的解析として心血管イベント(死亡、心筋梗塞、不安定狭心症、冠動脈血行再建術、脳卒中、一過性脳虚血発作、心不全)の評価を行い、2つの試験の統合解析を実施した。 2011年10月~2014年6月までに4,465例(OSLER-1試験:1,324例、OSLER-2試験:3,141例)が登録され、エボロクマブ群に2,976例(平均年齢57.8歳、男性50.1%、LDL-C中央値120mg/dL)、標準治療単独群には1,489例(58.2歳、51.4%、121mg/dL)が割り付けられた。フォローアップ期間中央値は11.1ヵ月であった。LDL-C値が61%減少、心血管イベントは53%減少 12週時のLDL-C値は、エボロクマブ群が48mg/dLであり、標準治療単独群の120mg/dLと比較した減少率は61%であった(p<0.001)。OSLER-1とOSLER-2試験の間に減少率の差はなかった。また、このエボロクマブ群のLDL-C値の減少は48週まで持続した(24週の減少率:59%、36週:54%、48週:58%、いずれもp<0.001)。 12週時に、エボロクマブ群の90.2%がLDL-C値≦100mg/dLとなり、73.6%が≦70mg/dLを達成した。標準治療単独群はそれぞれ26.0%、3.8%だった。 12週時の非HDL-C、アポリポ蛋白B、総コレステロール、トリグリセライド、リポ蛋白(a)は、LDL-Cと同様にエボロクマブ群で有意に減少した(いずれもp<0.001)。また、HDL-Cとアポリポ蛋白A1は有意に増加した(いずれもp<0.001)。 有害事象はエボロクマブ群の69.2%、標準治療単独群の64.8%に認められ、重篤な有害事象はそれぞれ7.5%、7.5%に発現した。神経認知障害(せん妄、認知/注意障害、認知症、健忘症など)はエボロクマブ群で多くみられた(0.9 vs. 0.3%)が、治療期間中のLDL-C値とは関連がなかった。 エボロクマブによる治療中止は2.4%、注射部位反応は4.3%に認められ、そのほか関節痛や頭痛、四肢痛、疲労感が標準治療単独群よりも多くみられた。 1年時の心血管イベントの発症率は、エボロクマブ群が0.95%であり、標準治療単独群の2.18%に比し有意に低かった(ハザード比[HR]:0.47、95%信頼区間[CI]:0.28~0.78、p=0.003)。 著者は、「61%というLDL-C値の減少率は、既報の短期的な試験と一致しており、48週にわたる効果の持続はより小規模な試験(DESCARTES試験)の結果と一致した。他の脂質に対する効果にも既報との一貫性が認められた」としている。

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ピタバスタチンの糖尿病への影響は?:メタ解析結果発表

 興和株式会社は4月8日、3月22日~25日にイギリス・グラスゴーで開催された「第83回 欧州動脈硬化学会」のポスターセッションにおいて、高コレステロール血症治療剤「ピタバスタチン」(商品名:リバロ錠/リバロOD錠)の糖代謝に対するメタ解析の結果が発表されたことを報告した。ピタバスタチンは糖尿病の新規発症を増加させなかった 今回の発表は、国内外の非糖尿病患者におけるピタバスタチンのランダム化比較試験をメタ解析することにより、ピタバスタチンの空腹時血糖、HbA1c、糖尿病新規発症への影響を検討したもの。その結果、対照群(プラセボ、または他のスタチン系薬剤投与)と比較して、ピタバスタチンは、空腹時血糖およびHbA1cに悪影響を与えることはなく、糖尿病の新規発症を増加させることもなかったという。 詳細は興和のプレスリリース(PDF)へ

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家族性高コレステロール患者は糖尿病になりにくい…?!(解説:吉岡 成人 氏)-341

スタチン薬による糖尿病の発症増加 スタチン薬の投与により、糖尿病の新規発症が約1.1倍(オッズ比[OR]:1.09、95%信頼区間[CI]:1.02~1.17)増加する1)。アトルバスタチンやシンバスタチンなどの疎水性のスタチン薬は、親水性のプラバスタチンと異なり、インスリンの作用を低下させることが報告されている。その機序として、アトルバスタチンが脂肪細胞における糖輸送担体(GLUT4)の発現を抑制することにより、糖の取り込みを減少させ、シンバスタチンでは、Caチャネルを阻害し血糖依存性のインスリン分泌を低下させることで、耐糖能が悪化する。また、スタチン薬のLDL受容体発現を亢進させる作用が、膵β細胞へのコレステロールの取り込みを促進して、インスリン分泌機能の障害に結び付く可能性についても検討されている。一方、LDL-コレステロールが著しく上昇する家族性高コレステロール血症(FH:familial hypercholesterolemia)の患者では、糖尿病の発症が少ないことが知られている。その理由として、LDL受容体の機能低下によりLDLの膜輸送障害を生じていることが、膵β細胞へのLDL輸送の低下と結び付き、アポトーシスを緩和するために糖尿病を引き起こしにくいのではないかと考えられている。家族性高コレステロールでは糖尿病の罹患率が低い オランダ、アムステルダムのAcademic Medical CenterのKastelein氏らは、1994年から2014年にオランダにおける国民検診プログラムに登録し、FHについてのDNA検査を受けた6万3,320例を対象として、FH患者における糖尿病の罹患率をFHに罹患していない親族での糖尿病の罹患率と比較検討している。糖尿病の診断は、患者の申告(self-reported diagnosis)によって行われている。 2型糖尿病の罹患率は、FH患者では440/2万5,137例(1.75%)、対照群(FHではない親族)では1,119/3万8,183例(2.93%)であり、FH患者で有意に少ない(OR:0.62、95%CI:0.55~0.69)ことが確認された。年齢、BMI、HDL-C、トリグリセリド・スタチン使用の有無、心血管疾患、家族歴で調整した後の多変量解析では、FH患者の2型糖尿病罹患率は1.44%、対照群では3.26%(OR:0.49、95%CI:0.42~0.58)であった。FHの遺伝子異常にはいくつもの変異があるが、APOB(アポリポ蛋白)遺伝子の異常とLDL受容体の異常を持つ場合の糖尿病の罹患率は、前者で1.91%(OR:0.65、95%CI:0.48~0.87)、後者で1.33%(OR:0.45、95%CI:0.38~0.54)であり、LDL受容体異常の患者における糖尿病の罹患が少ないことが確認された。また、LDL受容体が減少している場合と欠損している場合では、それぞれの糖尿病の罹患率は1.44%(OR:0.49、95%CI:0.40~0.60)、1.12%(OR:0.38、95%CI:0.29~0.49)と報告されている。今後の展望 今回の検討における糖尿病の診断は患者の申告によるものであり、血糖値やHbA1cを測定しているのではなく、ましてや経口ブドウ糖負荷試験を実施しているわけではない。おそらく、2型糖尿病の頻度は報告されている以上に多いのではないかと考えられる。とはいえ、FH患者、とくにFH受容体欠損患者では糖尿病の発症が少ないことが確認され、細胞内のコレステロール代謝が膵β細胞機能に影響を及ぼしていることが示唆される。今後、2型糖尿病患者においてみられる、アポトーシスによる継時的な膵β細胞機能低下を引き起こすメカニズムに、新たな視点からの検討が加えられる契機となる臨床的な知見かもしれない。

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Vol. 3 No. 3 大動脈弁狭窄症患者の特徴

有田 武史 氏九州大学病院ハートセンター内科はじめに大動脈弁狭窄症(AS)患者が増えている。大動脈弁狭窄はリウマチ性のものと加齢変性によるものの2つの原因によるものがほとんどである。リウマチ性弁膜症の新規発症症例は激減しており、大部分は加齢変性によるものである。加えて近年の診断技術の評価、ならびに診断基準の変化(進化)が新規ASの診断数を増やしている。本稿では近年の日本におけるAS患者の特徴につき概説を行う。AS患者の背景ASは加齢とともに増加し、平均年齢は明らかに他の弁膜症よりも高齢である。75歳以上の患者9,723人をメタ解析した報告によれば、75歳以上の3.4%に重症ASが認められた1)。また解析数は少ないが、日本からの報告では、重症ASの平均年齢は78.4歳であり、85 歳以上が10%に認められた2)。大動脈弁閉鎖不全や僧房弁閉鎖不全は弁尖の逸脱や弁尖変性などが原因のほとんどであるのに対して、加齢変性によるASは弁の基部から石灰化を中心とした弁変性が進行し弁全体の硬化につながるのが特徴的である。弁交連部が癒合しあたかも二尖弁のように見えることもあるが、基本的には先天性二尖弁のrapheと異なり交連癒合そのものはそれほど強くない。弁の硬化のメカニズムについては、従来より骨代謝の観点、動脈硬化の観点、炎症の観点などから研究されてきた。確かに大動脈弁の大動脈側は血管内皮に被覆されており、高齢者に多く認められる病態であることから、大動脈弁狭窄は動脈硬化または血行動態的に負荷を受け続けた“なれの果て”のようにいわれることもある。しかしながら近年の報告では、大動脈弁硬化症から狭窄症への進展には石灰化と骨化のメカニズムが深く関与しており、能動的な炎症のプロセスが関与していることがわかってきている3)。骨粗鬆症、大動脈弁狭窄、動脈硬化は、脂肪沈着をはじめ多くの共通のプロセスをもつ(本誌p.9図1を参照)4)。しかしながら、動脈硬化を進展抑制または退行させることが証明されているスタチン製剤やアンギオテンシン阻害薬は、大動脈弁狭窄の進行を抑制することはできなかったことがいくつかの研究より明らかになっている。同様に、骨粗鬆症の薬もASの進行を抑制するまでには至らなかった。近年、骨化のメカニズムに炎症が関与しているとの研究が多くなされ、抗炎症薬(例えば低用量メトトレキサート)のASの進行抑制に対する効果を検証する研究も行われている5)。透析患者においてASは高率に認められる。透析患者においては副甲状腺機能亢進症を続発的に認めることが多く、カルシウムおよびリンの代謝の変調が弁硬化/弁狭窄をもたらすことは容易に理解できる。しかしながら、続発性副甲状腺機能亢進症の治療薬で透析患者におけるASの進展を抑制したというエビデンスはない。このように硬化性ASの病態は炎症・動脈硬化・石灰化・骨化のメカニズムが複合的に関与している。単純に“動脈硬化のなれの果て”ではないことをよく理解し、診療にあたることが肝要である。心エコーによる診断ASの診断は、いまではもっぱらドプラーエコーを用いた連続の式により弁口面積ならびに弁前後の圧較差を求めることで診断する。面積では弁口面積1.0cm2以下または体表面積補正弁口面積0.6cm/m2以下を重症とし、圧較差では平均圧較差で40mmHg以上を重症とする。重症度という意味ではこの二変数のみで評価することは可能であるが、弁の形態・機能、左室の形態・機能という観点からはいくらかの多様性がある。1. 弁硬化のパターン通常、硬化性ASの大動脈弁の病変は交連部ではなく弁尖の基部または底部から始まる。NCCには冠動脈開口部がなく、そのためNCCにはよりずり応力がかかることから石灰化が進みやすいとされる4)。一般的にはリウマチ性ASでは交連部癒着が高度であり、硬化性ASでは交連部は変性がみられるのみで癒合に乏しい(本誌p.10図2を参照)6)。後天性二尖弁と俗に呼ばれる交連部が癒着した三尖大動脈弁狭窄も散見されるが、rapheの高さによって先天性二尖弁とは区別される(先天性は弁尖縁の高さよりもrapheが低い)7)。後天性二尖弁の原因は以前はリウマチ性が多いとされてきたが、硬化性ASにおいても可動性がほとんどないために癒合しているように見えるものもあり注意が必要である。2. 左室の形態・機能大動脈弁位で圧較差があるため、左室にとっての後負荷は甚大なものとなり、通常左室は求心性左室肥大を呈することが多い。しかしながらMRIを用いたDweckらの報告によれば、ASを有する左室では左室肥大を呈さないまま左室内腔の狭小化した、いわゆる求心性リモデリングした左室もしばしば認められる。Dweckらによれば、左室肥大の程度は大動脈弁弁口面積とは関係なく、求心性肥大のほかにも正常形態(12%)、求心性リモデリング(12%)、非代償化(11%)などが認められたという(本誌p.11図3を参照)8)。重症ASでなぜ左室肥大が起こらないのか、機序についてはまだ確立したものはないが、左室重量は大動脈弁狭窄の重症度とは関係がなく、むしろ性別や高血圧の程度、その他の弁機能異常などと関係が強く、また症状との関係が強いことが他の研究でも示唆されている。正常の重症ASに関しては、左室重量が治療法選択の面でも注意が必要である。low gradient ASはASなのか?Doppler法による弁口面積測定が一般的になるにつれ面積としては十分に狭いが圧較差がそれほどでもないという症例をしばしば経験するようになった。近年では重症AS(AVAi<0.6cm2/m2)をflowとpressure gradientの2変数によって4群に分けることで層別化を図ろうとする考えがある。Lance-llottiらは、無症候性重症ASを4群に分けてフォローし、low flow, low gradient ASが最も予後が悪く、次にいずれかのhigh gradient ASがつづき、normal flow, low gradient ASは比較的予後がよいという報告を行った(本誌p.12 図4を参照)9)。Flowはvelocity x areaであり、gradientとvelocityは二乗比例の関係にある。よってflowとgradientが乖離するような症例はareaが小さい、すなわち左室流出路が小さい症例ということになる。おそらくはそのような症例はS字状中隔の症例が多く、体格が小さく、弁輪部の石灰化も高度で測定の誤差もあるのかもしれないが、現象論としてnormal flow, low gradientのASは全例が予後不良ではないかもしれない、という認識をもつことが重要である。超高齢者のASの問題点:Frailtyの評価と老年医学的評価の重要性近年、TAVIを治療法の1つとして日常的に検討するようになり、超高齢者(85歳以上)を診察治療することが多くなってきた。上述のように弁口面積や左室機能形態を評価することはもちろん重要であるが高齢者はさまざまな身体的問題を抱えているのが普通である。認知機能障害、ふらつき、運動機能障害、栄養障害など、それらを総称して老年症候群と呼ぶが、老年症候群の1つとしてfrailty(虚弱、フレイル)が年齢とは独立した予後規定因子として近年広く認識されるようになった。Frailtyの特徴は(1)力が弱くなること、(2)倦怠感や日常動作がおっくうになること、(3)活動性が低下すること、(4)歩くのが遅くなること、(5)体重が減少すること、の5つに集約され、このうち3つ以上該当すればfrailtyありと考える10)。日本の介護保険制度との関連で考えると、frailtyありの状態(“フレイルの状態”)は要介護の前段階であり、この兆候を早期に診断し、介入することは極めて重要であると思われる。残念ながら、多くの病院勤務循環器内科医は専門医に過ぎず、治療適応外と判断された多くの高齢者に対して、人生の終わりまで寄り添うような診療はできていないのが実情であると思われる。または、外科手術の適応と判断したときから心臓外科にすべてを委ねてはいなかったか。今後TAVIが日常的な医療行為になるにつれ、循環器病棟は高齢者で溢れてくることが容易に予想される。平均寿命を優に超えてしまった患者に対して行う医療は、何を目的とすべきだろうか。予後の改善であろうか、QOLの改善であろうか。大動脈弁狭窄を解除することだけが治療の目的でないことは明白である。TAVIを施行するにあたっては、弁の状態、心血管機能の評価、他臓器の評価、老年医学的全身評価の4段階にわたる評価が重要である。そのうえで、TAVIの目的をどこに置くかということに関しては個々の症例により判断が異なるため、多職種から構成されるハートチームでの議論が必要不可欠である。文献1)Osnabrugge RL et al. Aortic stenosis in the elderly: disease prevalence and number of candidates for transcatheter aortic valve replacement: a meta-analysis and modeling study. J Am Coll Cardiol 2013; 62: 1002-1012.2)Ohno M et al. Current state of symptomatic aortic valve stenosis in the Japanese elderly. Circ J 2011; 75: 2474-2481.3)Lindman BR et al. Current management of calcific aortic stenosis. Circ Res 2013; 113: 223-237.4)Dweck MR et al. Calcific aortic stenosis: a disease of the valve and the myocardium. J Am Coll Cardiol 2012; 60: 1854-1863.5)Everett BM et al. Rationale and design of the Cardiovascular Inflammation Reduction Trial: a test of the inflammatory hypothesis of atherothrombosis. Am Heart J 2013; 166: 199-207 e15.6)Baumgartner H et al. Echocardiographic assessment of valve stenosis: EAE/ASE recommendations for clinical practice. J Am Soc Echocardiogr 2009; 22: 1-23; quiz 101-102.7)Cardella JF et al. Association of the acquired bicuspid aortic valve with rheumatic disease of atrioventricular valves. Am J Cardiol 1989; 63: 876-877.8)Dweck MR et al. Left ventricular remodeling and hypertrophy in patients with aortic stenosis: insights from cardiovascular magnetic resonance. J Cardiovasc Magn Reson 2012; 14: 50.9)Lancellotti P et al. Clinical outcome in asymptomatic severe aortic stenosis: insights from the new proposed aortic stenosis grading classification. J Am Coll Cardiol 2012; 59: 235-243.10)Fried LP et al. Frailty in older adults: evidence for a phenotype. J Gerontol A Biol Sci Med Sci 2001; 56: M146-156.

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PROMISE試験:冠動脈疾患に対する解剖的評価と機能評価検査の予後比較(解説:近森 大志郎 氏)-328

 安定した胸部症状を主訴とする患者に対する診断アプローチとして、まず非侵襲的検査によって冠動脈疾患を鑑別することが重要である。従来は運動負荷心電図が日常診療で用いられてきたが、その後、負荷心筋シンチグラフィ(SPECT)検査、負荷心エコー図検査が臨床に応用され、近年では冠動脈CT(CTCA)も広く実施されるようになっている。しかしながら、これらの検査の中でいずれを用いればよいか、という検査アプローチを実証する大規模臨床試験は実施されてはいなかった。 今回、San Diegoで開催された米国心臓病学会(ACC.15)のLate-Breaking Clinical Trialsの先頭を切って、上記に関するPROMISE試験が報告され、同時にNew England Journal of Medicine誌の電子版に掲載された。なお、ACCで発表される大規模臨床試験の質の高さには定評があり、NEJM誌に掲載される比率では同じ循環器分野のAHA、ESCを凌いでいる。 Duke大学のPamela Douglas氏らは、従来の生理機能を評価する運動負荷心電図・負荷心筋SPECT・負荷心エコー図に対して、冠動脈の解剖学的評価法であるCTCAの有効性を比較するために、有症状で冠動脈疾患が疑われる10,003例を無作為に2群(CTCA群対機能評価群)に割り付けた。試験のエンドポイントは従来のほとんどの研究で用いられた冠動脈疾患の診断精度ではなく、全死亡・心筋梗塞・不安定狭心症による入院・検査による重大合併症からなる、複合エンドポイントとしての心血管事故が設定されている。対象症例の平均年齢は61歳で、女性が52~53%と多く、高血圧65%、糖尿病21%、脂質異常症67%という冠危険因子の頻度であった。なお、症状として胸痛を訴えてはいるが、狭心症としては非典型的胸痛が78%と高率であることは銘記すべきであろう。 実際に機能評価群で実施された非侵襲的検査については、負荷心筋SPECT検査67.5%、負荷心エコー図22.4%、運動負荷心電図10.2%、と核医学検査の比率が高かった。また、負荷心電図以外での負荷方法については、薬剤負荷が29.4%と低率であった。そして、これらの検査法に基づいて冠動脈疾患が陽性と診断されたのは、CTCA群で10.7%、生理機能評価群では11.7%であった。3ヵ月以内に侵襲的心臓カテーテル検査が実施されたのはCTCA群で12.2%、生理機能検査群では8.1%であった。この中で、有意狭窄病変を認めなかったのはCTCA群で27.9%、生理機能検査群で52.5%であったため、全体からの比率では3.4%対4.3%となりCTCA群で偽陽性率が低いといえる(p=0.02)。なお、3ヵ月以内に冠血行再建術が実施されたのはCTCA群で6.2%と、生理機能検査群の3.2%よりも有意に高率であった(p<0.001)。 1次エンドポイントである予後に影響する内科的治療ついては、β遮断薬が25%の症例で使用されており、RAS系阻害薬・スタチン・アスピリンについても各々約45%の症例で投与されていた。そして、中央値25ヵ月の経過観察中の心血管事故発生率についてはCTCA群で3.3%、生理機能評価群では3.0%と有意差を認めなかった。 本研究は循環器疾患の治療法ではなく、冠動脈疾患に対する検査アプローチが予後に及ぼす影響から検査法の妥当性を評価するという、従来の臨床試験ではあまり用いられていない斬新な研究デザインを用いている。そして、1万例に及ぶ大規模な臨床試験データを収集することによって、日常臨床に直結する重要な結果を示したという意味で特筆に値する。 しかしながら、基本的にはnegative dataである研究結果の受け止め方については、同じDuke大学の研究チームでも異なっていた。ACCの発表に際してDouglas氏は、PROMISE試験の結果に基づき、狭心症が疑われる患者に対して、CTCAはクラスIの適応となるようにガイドラインが修正されるエビデンスであることを主張していた。これに対して、PROMISE試験の経済的評価を発表したDaniel Mark氏は、イギリスの伝説である「アーサー王物語」を引き合いに出して、CTCAは長年探し求めていたHoly Grail(聖杯)ではなかった、と落胆を隠さなかった。 循環器の臨床において、対象とする患者の冠動脈病変の情報があれば、最適な医療が実施できるという考え方は根強い。しかし、PROMISE試験が準備された時期には、狭心症の生理機能として重要な心筋虚血が、予後改善の指標として重要であることを実証したFAME試験が報告されている。その後、FAME 2試験においても同様の結果が報告されている。さらに、重症心筋虚血患者に対する介入治療の有無により予後の改善が実証されるか否かについて、ISCHEMIA試験という大規模試験が進行中である。今後はこれらの大規模試験の結果を評価することによって、冠動脈疾患の治療目標は「解剖か、虚血か」という議論に決着がつくかもしれない。それまでは、日常臨床において狭心症が疑われる患者に対しては、まず本試験の対象群の特徴を十分に把握したうえで、CTCAあるいは生理機能検査を実施する必要があると思われる。

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家族性高コレステロール血症患者は2型糖尿病の有病率が低い/JAMA

 家族性高コレステロール血症を有する患者のほうが、有さない患者よりも2型糖尿病の有病率が有意に低いことが、オランダ・アムステルダム大学メディカルセンター(AMC)のJoost Besseling氏らによる検討の結果、明らかにされた。同国6万3,320例を対象とした横断研究による結果で、遺伝子変異のタイプによっても有意に異なることが判明し、著者は、「今回の知見が縦断研究でも確認されれば、2型糖尿病発症の原因として、LDL受容体を介する膜内外コレステロール輸送が関連している可能性が高まるだろう」と指摘している。JAMA誌2015年3月10日号掲載の報告より。家族性高コレステロール血症と2型糖尿病発症の関連を断面研究 本検討は、家族性高コレステロール血症は、肝臓や膵臓など末梢細胞でのコレステロール取り込み障害によって特徴付けられること、対照的に、スタチン治療は細胞コレステロール取り込みを増大し、2型糖尿病発症リスクの増大と関連している知見が示されていたことを踏まえて行われた。これらの知見から研究グループは、膜内外コレステロール輸送が、2型糖尿病の発症に結び付くとの仮説を立て、2型糖尿病と家族性高コレステロール血症の関連を調べた。 検討は、断面研究にて、1994~2014年のオランダ全国スクリーニングプログラムに参加し、家族性高コレステロールのDNA検査を受けた6万3,320例を対象に行われた。 家族性高コレステロール血症遺伝子変異の有害性および非有害性は、文献や検査室機能検査に基づき評価した。また、LDL受容体(LDLR)遺伝子変異はアポリポ蛋白B(APOB)遺伝子変異よりも重大であるとみなし、LDLR変異型のうち受容体陰性タイプが受容体欠損タイプよりも重大であるとみなし、2型糖尿病の有病率を主要評価項目として各関連を評価した。家族性高コレステロール血症患者で2型糖尿病有病率が有意に低い 結果、2型糖尿病有病率は、家族性高コレステロール血症(FH)患者群は1.75%(440/2万5,137例)に対し、非FH患者群は2.93%(1,119/3万8,183例)で、FH患者群のほうが有意に低かった(オッズ比[OR]:0.62、95%信頼区間[CI]:0.55~0.69、p<0.001)。多変量回帰モデルを用いたFH群の補正後2型糖尿病有病率は1.44%で、両群差は1.49%、ORは0.49(95%CI:0.41~0.58)であった(p<0.001)。 また、APOB遺伝子変異群、LDLR遺伝子変異群の補正後2型糖尿病はそれぞれ1.91%、1.33%で、非FH群と比較したORは、それぞれ0.65、0.45(いずれもp<0.001)であった。 さらにLDLR変異型別にみた2型糖尿病有病率は、受容体欠損タイプ群1.44%、受容体陰性タイプ群1.12%で、非FH群と比較したORは、それぞれ0.49、0.38(いずれもp<0.001)であった。

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生データによるメタアナリシスの診療ガイドラインへの引用割合(解説:折笠 秀樹 氏)-325

 診療ガイドライン策定に当たり、系統的レビューやメタアナリシスがよく引用されるのは周知のとおりである。メタアナリシスとは複数の研究結果を統合する解析法のことであるが、通常は研究論文中に掲載されている数値を基にして結果を併合する。一方、生データを取り寄せ、それらに基づき統合するメタアナリシスも存在する。この方法をIPDメタアナリシス(今後、IPD-MAと略す)と呼んでいる。ちなみに、IPDはIndividual Participant Dataの頭文字を取った。本論文では、診療ガイドラインにIPD-MAがどれくらい引用されているかを調査した。 精選された医療情報を収集し、それらをメタアナリシスで統合し、世の中へ提供しているグループがある。それはコクラン共同計画(Cochrane Collaboration)という団体である。このコクラン共同計画の中に、IPD-MA Methods Groupという専門部会がある。そこが所有するIPD-MAデータベースから33件のIPD-MAが調査された。ちなみに、本論文の著者はこの専門部会のメンバーである。これら33件のIPD-MAの内容に合致した診療ガイドラインとして177件が選ばれた。そして、診療ガイドラインでの引用率をIPD-MAごとに算出した。まったく引用されていないIPD-MAが8件(8/33=24%)もあった。その一方で、88%(14/16)も引用されたIPD-MAがあった。それはATT(Antithrombotic Trialists’ Collaboration)である。コクラン共同計画が主導したIPD-MAであり、アスピリンなどの抗血栓薬の有効性を示した。また、スタチンなどの脂質改善薬に関するIPD-MAであるCTT (Cholesterol Treatment Trialists’ Collaboration)でも43%(6/14)引用されていた。平均的には37%の引用率のようであった。 IPD-MAにもピンキリがあり、コクラン共同計画や主要学会が主導する立派なものから、一部の研究者が主導する低質のものまで存在する。前者は診療ガイドラインにかなり引用されているので、一概にIPD-MAが診療ガイドラインへ引用されないともいい切れないだろう。それよりも、質の高いIPD-MAをもっと行うべきではないかと思う。IPD-MAでは生データが必要となるが、昨今の研究データの公開化が進めばやりやすくなることだろう。

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