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実臨床のスタチン、ロスバスタチンvs.アトルバスタチン

 ストロングスタチンに分類されるロスバスタチンとアトルバスタチンは、実臨床で広く用いられているが、実臨床におけるエビデンスは限られている。そこで、中国・南方医科大学のShiyu Zhou氏らの研究グループは、中国および英国のデータベースを用いて、両薬剤の有効性・安全性を比較した。その結果、ロスバスタチンはアトルバスタチンと比較して全死亡、主要心血管イベント(MACE)、肝重症有害事象(MALO)のリスクをわずかに低下させることが示唆された。本研究結果は、Annals of Internal Medicine誌オンライン版2024年10月29日号に掲載された。 本研究では、China Renal Data System(CRDS)およびUKバイオバンクのデータベースを用いて、心血管疾患予防を目的としてロスバスタチンまたはアトルバスタチンが処方された成人患者28万5,680例を抽出した。両薬剤の比較にはtarget trial emulationの手法を用い、1対1の割合で傾向スコアマッチングを行った。主要評価項目は全死亡とした。 主な結果は以下のとおり。・6年間の全死亡率(100人年当たり)は、ロスバスタチン群がアトルバスタチン群よりも低かった(CRDS:2.57 vs.2.83、UKバイオバンク:0.66 vs.0.90)。・累積全死亡率の群間差(ロスバスタチン群-アトルバスタチン群)はCRDSでは-1.03%(95%信頼区間[CI]:-1.44~0.46)、UKバイオバンクでは-1.38%(同:-2.50~-0.21)であり、ロスバスタチン群が低かった。・両データベースの対象患者において、ロスバスタチン群はアトルバスタチン群と比較して、MACEとMALOのリスクが低かった。・UKバイオバンクの対象患者において、ロスバスタチン群はアトルバスタチン群と比較して、2型糖尿病発症リスクが高かった。慢性腎臓病発症リスクや、その他のスタチンに関連する有害作用のリスクは同程度であった。 本研究結果について、著者らは「複数の評価項目において、ロスバスタチンとアトルバスタチンでリスクの差がみられたが、その差は比較的小さく、これらの知見を臨床現場で確信をもって活用するには、さらなる研究が必要である」とまとめた。

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スタチンが必要、でも継続できない患者の対処法【脂質異常症診療Q&A】第22回

スタチンが必要、でも継続できない患者の対処法Q22LDL-C 220mg/dLなのでスタチンでの治療を試みていますが、どのスタチンを投与してもLDL-Cはあまり下がりませんし、さらにどのスタチンでもCKが800~1,200U/Lに上昇するので、スタチンを継続できません。どのように対応すればよいでしょうか?

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第235回 第III相試験の壁高し~スタチンの多発性硬化症治療効果示せず

第III相試験の壁高し~スタチンの多発性硬化症治療効果示せず第III相試験の壁は高く、第II相試験結果から期待されたスタチンの多発性硬化症(MS)治療効果が認められませんでした1,2)。スタチンは脂質異常症を治療し、心血管や脳の虚血疾患を予防するのに広く使われています。それらの効果にはコレステロール低下に加えて、コレステロールとは独立した働きもどうやら寄与しているようです。免疫調節作用がその1つで、スタチンは炎症性細胞が血液脳関門(BBB)を通れるようにするタンパク質ICAMのリガンドであるLFA-1を阻害します。また、自己攻撃性T細胞が作るサイトカインを炎症促進から抗炎症のものに変えることも示されています。スタチンは細胞保護作用や脳血管の血行改善作用などもあり、MSの初期の炎症のみならず脳実質細胞や血管を障害するより進行した段階の患者にも有効と目されました。そのような期待を背景にして、スタチンの1つであるシンバスタチンの二次性進行型MS(secondary progressive MS)治療効果を調べた第II相MS-STAT試験は2008年に始まりました。試験には二次性進行型MS患者140例が参加し、半数(70例)ずつ高用量(80mg)のシンバスタチンかプラセボを投与する群に割り振られました。結果は遡ること10年前の2014年にLancet誌に掲載され、本サイトの同年の記事でも紹介されているとおり、脳萎縮を遅らせるシンバスタチンの有望な効果が認められました3)。また、体の不自由さの進行を抑制する効果も示唆されました。検査2つ(EDSSとMSIS-29)の2年時点での比較でシンバスタチン投与群がプラセボに有意に勝りました。ただし、別の身体機能検査MSFCはプラセボと有意差がつきませんでした。また、新規/拡大脳病変の発生率や再発率もプラセボと有意差がありませんでした。とにかく主な目的であった脳萎縮の抑制効果が認められたことを受け、著者のロンドン大学のJeremy Chataway氏らは第III相試験での検討が必要と結論しています。Chataway氏らが引き続き率いた第III相MS-STAT2試験は第II相試験結果のLancet誌掲載から4年後の2018年3月末に英国の患者団体MS Societyなどの協力の下で始まりました4)。その翌々月5月から2021年9月までの2年半弱に英国の31の病院から被験者が集められ、二次性進行型MS患者964例がシンバスタチンかプラセボ投与群に1対1の割合で割り振られました5)。主要アウトカムは第II相試験でも使われたEDSSに基づく身体障害の進行率でした。ベースラインのEDSSが6点未満だった患者はEDSSの1点以上の上昇、ベースラインのEDSSが6点以上だった患者はEDSSの0.5点以上の上昇が身体障害の進行と判定されました。その結果は上述したとおりで、シンバスタチンは二次性進行型MS患者の身体障害の悪化を遅らせることはできませんでした1)。残念な結果ではありますが、英国のMSコミュニティーが大規模で高品質の臨床試験を担えることをMS-STAT2試験は知らしめました。30年前は皆無だったMS治療は今や幸い増えているもののまだ不十分です。進行性MSに効きそうな薬一揃いを検討しているOctopus6)のような高品質の臨床試験に引き続き投資する、とMS Societyの臨床試験部門リーダーEmma Gray氏は言っています7)。参考1)Cholesterol drug found to be ineffective for treatment of multiple sclerosis / UCL 2)Simvastatin Fails to Reduce Disease Progression in Phase 3 MS-STAT2 Trial of Secondary Progressive Multiple Sclerosis / NeurologyLive3)Chataway J, et al. Lancet. 2014;383:2213-2221.4)Multiple Sclerosis-Simvastatin Trial 2(MS-STAT2)5)Evaluating the effectiveness of simvastatin in slowing the progression of disability in secondary progressive multiple sclerosis(MS-STAT2 trial):a multicentre, randomised, placebo-controlled, double-blind phase 3 clinical trial / ECTRIMS 2024 6)Octopus: Optimal Clinical Trials Platform for Multiple Sclerosis7)MS-STAT2 trial shows that simvastatin is not an effective treatment for secondary progressive MS / Multiple Sclerosis Society.

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ダプトマイシン、5つの重要事項【1分間で学べる感染症】第12回

画像を拡大するTake home messageダプトマイシンは肺炎と中枢神経感染症には使用しにくい。ダプトマイシンを使用する際にはミオパチー/横紋筋融解に注意しよう。今回は、抗MRSA薬の1つであるダプトマイシンについて学んでいきましょう。バンコマイシンに続き、多くの施設でダプトマイシンを使用する場面が増加しています。それでは、ダプトマイシンを使用する際にはどのようなことに注意すればよいのでしょうか。まずは、使用が推奨されないケースを覚えることが重要です。肺炎…ダプトマイシンが肺胞の2型サーファクタントにより不活化されるため、肺の炎症に対して効果を発揮しないことが知られています。中枢神経感染症…データは不十分ですが、脳脊髄液への通過性が不良とされています。次に、ダプトマイシンを使用する際に注意すべき副作用を知りましょう。ミオパチー/横紋筋融解…腎障害・スタチン併用・肥満などがリスクとされます。ダプトマイシンを使用する際にはスタチンを一旦中断し、CK(クレアチンキナーゼ)値を週に1回はチェックするようにしましょう。好酸球性肺炎…男性・高齢・腎障害などがリスクとされますが、ダプトマイシン使用中に咳嗽や呼吸困難を来した場合は本症を疑い、速やかに中止を検討します。胸部CTで両側のすりガラス影を来すことが特徴です。中等症から重症の場合にはステロイドによる治療も検討されます。末梢血の好酸球は増加しないこともあり、一般的には気管支肺胞洗浄液による精査が推奨されます。実施が難しい場合にはダプトマイシンの中止後に改善するかどうかをみて、臨床的に本症を疑うこともあります。最後に、ダプトマイシンはバイオフィルムへの透過性がよいとされます。したがって、中心静脈カテーテル感染症やその他の人工物関連感染などにも注意が必要です。ダプトマイシンを使用する際には、適応と主な副作用に関する上記のポイントを理解しておきましょう。1)Dare RK, et al. Clin Infect Dis. 2018;67:1356-1363.2)Haste NM, et al. Antimicrob Agents Chemother. 2011;55:3305-3312.3)Hirai J, et al. J Infect Chemother. 2017;23:245-249.4)Uppa P, et al. Antimicrob Resist Infect Control. 2016;5:55.5)Raad I, et al. Antimicrob Agents Chemother. 2007;51:1656-1660.

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15の診断名・11の内服薬―この薬は本当に必要?【こんなときどうする?高齢者診療】第5回

CareNeTVスクール「Dr.樋口の老年医学オンラインサロン」で2024年8月に扱ったテーマ「高齢者への使用を避けたい薬」から、高齢者診療に役立つトピックをお届けします。老年医学の型「5つのM」の3つめにあたるのが「薬」です。患者の主訴を聞くときは、必ず薬の影響を念頭に置くのが老年医学のスタンダード。どのように診療・ケアに役立つのか、症例から考えてみましょう。90歳男性。初診外来に15種類の診断名と、内服薬11種類を伴って来院。【診断名】2型糖尿病、心不全、高血圧、冠動脈疾患、高脂血症、心房細動、COPD、白内障、逆流性食道炎、難聴、骨粗鬆症、変形性膝関節症、爪白癬、認知症、抑うつ【服用中の薬剤】処方薬(スタチン、アムロジピン、リシノプリル、ラシックス、グリメピリド、メトホルミン、アルプラゾラム、オメプラゾール)市販薬(抗ヒスタミン薬、鎮痛薬、便秘薬)病気のデパートのような診断名の多さです。薬の数は、5剤以上で多剤併用とするポリファーマシーの基準1)をはるかに超えています。この症例を「これらの診断名は正しいのか?」、「処方されている薬は必要だったのか?」このふたつの点から整理していきましょう。初診の高齢者には、必ず薬の副作用を疑った診察を!私は高齢者の診療で、コモンな老年症候群と同時に、さまざまな訴えや症状が薬の副作用である可能性を考慮にいれて診察しています。なぜなら、老年症候群と薬の副作用で生じる症状はとても似ているからです。たとえば、認知機能低下、抑うつ、起立性低血圧、転倒、高血圧、排尿障害、便秘、パーキンソン症状など2)があります。症状が多くて覚えられないという方にもおすすめのアセスメント方法は、第2回で解説したDEEP-INを使うことです。これに沿って問診する際、とくにD(認知機能)、P(身体機能)、I(失禁)、N(栄養状態)の機能低下や症状が服用している薬と関連していないか意識的に問診することで診療が効率的になります。処方カスケードを見つけ、不要な薬を特定するさて、はっきりしない既往歴や薬があまりに多いときは処方カスケードの可能性も考えます。薬剤による副作用で出現した症状に新しく診断名がついて、対処するための処方が追加されつづける流れを処方カスケードといいます。この患者では、変形性膝関節症に対する鎮痛薬(NSAIDs)→NSAIDsによる逆流性食道炎→制酸薬といったカスケードや、NSAIDs→血圧上昇→高血圧症の診断→降圧薬(アムロジピン)→下肢のむくみ→心不全疑い→利尿薬→血中尿酸値上昇→痛風発作→痛風薬→急性腎不全という流れが考えられます。このような流れで診断名や処方薬が増えたと想定すると、カスケードが起こる前は以下の診断名で、必要だったのはこれらの処方薬ではと考えることができます。90歳男性。初診外来に15種類の診断名と、内服薬11種類を伴って来院。【診断名】2型糖尿病、心不全、高血圧、冠動脈疾患、高脂血症、心房細動、COPD、白内障、逆流性食道炎、難聴、骨粗鬆症、変形性膝関節症、爪白癬、認知症、抑うつ【服用中の薬剤】処方薬(スタチン、アムロジピン、リシノプリル、ラシックス、グリメピリド、メトホルミン、アルプラゾラム、オメプラゾール)市販薬(抗ヒスタミン薬、鎮痛薬、便秘薬)減薬の5ステップ減らせそうな薬の検討がついたら以下の5つをもとに減薬するかどうかを考えましょう。(1)中止/減量することを検討できそうな薬に注目する(2)利益と不利益を洗い出す(3)減薬が可能な状況か、できないとするとなぜか、を確認する(4)病状や併存疾患、認知・身体機能本人の大切にしていることや周辺環境をもとに優先順位を決める(第1回・5つのMを参照)(5)減薬後のフォローアップ方法を考え、調整する患者に利益をもたらす介入にするために(2)~(4)のステップはとても重要です。効果が見込めない薬でも本人の思い入れが強く、中止・減量が難しい場合もあります。またフォローアップが行える環境でないと、本当は必要な薬を中断してしまって健康を害する状況を見過ごしてしまうかもしれません。フォローアップのない介入は患者の不利益につながりかねません。どのような薬であっても、これらのプロセスを踏むことを減薬成功の鍵としてぜひ覚えておいてください! 高齢者への処方・減量の原則実際に高齢者へ処方を開始したり、減量・中止したりする際には、「Stand by, Start low, Go slow」3)に沿って進めます。Stand byまず様子をみる。不要な薬を開始しない。効果が見込めない薬を使い始めない。効果はあるが発現まで時間のかかる薬を使い始めない。Start lowより安全性が高い薬を少量、効果が期待できる最小量から使う。副作用が起こる確率が高い場合は、代替薬がないか確認する。Go slow増量する場合は、少しづつ、ゆっくりと。(*例外はあり)複数の薬を同時に開始/中止しない現場での実感として、1度に変更・増量・減量する薬は基本的に2剤以下に留めると介入の効果をモニタリングしやすく、安全に減量・中止または必要な調整が行えます。開始や増量、または中止を数日も待てない状況は意外に多くありませんから、焦らず時間をかけることもまたポイントです。つまり3つの原則は、薬を開始・増量するときにも有用です。ぜひ皆さんの診療に役立ててみてください! よりリアルな減薬のポイントはオンラインサロンでサロンでは、ふらつき・転倒・記憶力低下を主訴に来院した8剤併用中の78歳女性のケースを例に、クイズ形式で介入のポイントをディスカッションしています。高齢者によく処方される薬剤の副作用・副効果の解説に加えて、転倒につながりやすい処方の組み合わせや、アセトアミノフェンが効かないときに何を処方するのか?アメリカでの最先端をお話いただいています。参考1)Danijela Gnjidic,et al. J Clin Epidemiol. 2012;65(9):989-95.2)樋口雅也ほか.あめいろぐ高齢者診療. 33. 2020. 丸善出版3)The 4Ms of Age Friendly Healthcare Delivery: Medications#104/Geriatric Fast Fact.上記サイトはstart low, go slow を含めた老年医学のまとめサイトです。翻訳ソフトなど用いてぜひ参照してみてください。実はオリジナルは「start low, go slow」だけなのですが、どうしても「診断して治療する」=検査・処方に走ってしまいがちな医師としての自分への自戒を込めて、stand by を追加して、反射的に処方しないことを忘れないようにしています。

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イモガイの毒が糖尿病治療につながる可能性

 巻貝の一種で、地球上で最も有毒な生物の一つである「イモガイ」の毒素が、糖尿病や内分泌疾患の治療に役立つ可能性のあることが新たな研究で示された。イモガイの毒素である「コンソマチン」が、血糖値やホルモンの分泌を調節するヒトのホルモンである「ソマトスタチン」に似た働きをするのだという。米ユタ大学のHo Yan Yeung氏らの研究によるもので、詳細は「Nature Communications」に8月20日掲載された。論文の筆頭著者であるYeung氏は、「イモガイはまるで優れた化学者のようだ」と、冗談交じりに語っている。 著者らの過去の研究によると、コンソマチンはイモガイの毒液に含まれる別のインスリン様の毒素と互いに作用し合い、血糖値を急速に低下させるという。それによって獲物は昏睡状態になり、イモガイに捕食される。論文の上席著者である同大学のHelena Safavi氏は、「毒を持つ生物は進化の過程で、標的とする獲物を仕留めるために毒の成分を微調整してきた」と説明する。そして、「毒液の成分を一つずつ取り出して、どのように正常な生理機能を破綻させるかを観察すると、明らかになったメカニズムがしばしば疾患の病態とよく似ていることがある」のだそうだ。同氏は、「医薬品の研究者にとって、このような研究手法はある種の抜け道のようなものだ」と話す。 ソマトスタチンは、人体内の多くの生理的プロセスにおいて、ブレーキのような働きをしている。例えば、血糖値が危険なほど高くなるのを防ぐように作用する。研究によると、イモガイのコンソマチンは、ソマトスタチンと同じような役割を演じて血糖値の上昇を防ぐという。また、ソマトスタチンはヒトのさまざまなホルモンに作用するが、コンソマチンを利用すれば標的を絞り込んで、ホルモン分泌をより精緻に調整できる可能性があるとのことだ。さらにコンソマチンは、分解されにくい希少なアミノ酸を含んでいるために、ソマトスタチンよりもヒトの体内で長時間作用する可能性も示されている。 とはいえコンソマチン自体は、単独で薬として使用するには危険すぎる。しかし研究者らは、コンソマチンの構造を詳しく調べることで、ヒトのホルモンレベルに影響を与え得る新薬の開発の手がかりとなる可能性があるとしている。またコンソマチン以外にも、糖尿病治療に有用な成分が、イモガイの毒液に含まれている可能性もあるという。Yeung氏も、「毒液にはインスリンやソマトスタチンに類似した毒素だけが含まれているのではなく、血糖値を調整する性質を持つほかの毒素も含まれているのではないか」と話している。

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スタチン系脂質低下薬も肝臓がんリスクを低下させる?

 スタチン系薬剤が肝臓がんリスクを低下させることは過去の研究で判明しているが、新たな研究で、少なくとも1つの非スタチン系脂質低下薬にも肝臓がんリスクを低下させる効果がある可能性が示唆された。米国立がん研究所のKatherine McGlynn氏らによるこの研究結果は、「Cancer」に7月29日掲載された。 McGlynn氏らは、英国のClinical Practice Research Datalink(CPRD)から抽出した、原発性肝臓がん患者3,719人と、これと年齢、性別、診療歴、CPRD参加歴に加えて、糖尿病または慢性肝疾患の有無を一致させた対照1万4,876人を対象に、非スタチン系脂質低下薬と肝臓がんリスクとの関連を検討した。対象とした非スタチン系脂質低下薬は、コレステロール吸収抑制薬、胆汁酸再吸収抑制薬、フィブラート系薬、ナイアシン、オメガ3脂肪酸であった。 その結果、コレステロール吸収抑制薬の使用歴は肝臓がんリスクの低下と有意に関連することが示された(オッズ比0.69、95%信頼区間0.50〜0.96)。コレステロール吸収抑制薬の使用時期で分けて検討したところ、過去の使用者では有意なリスク低下が認められたが(同0.52、0.33〜0.83)、現在の使用者でのリスク低下は有意ではなかった(同0.92、0.59〜1.42)。2型糖尿病や慢性肝疾患の有無に基づく解析でも同様の結果が得られた(2型糖尿病:同0.46、0.22〜0.97、慢性肝疾患:同0.53、0.30〜0.96)。また、予期された通り、スタチン系薬剤の使用歴も肝臓がんリスクの有意な低下と関連していた(同0.65、0.58〜0.74)。 その一方で、胆汁酸再吸収抑制薬については、全体的な解析では肝臓がんリスクの増加との関連が認められたが(同5.31、3.534〜7.97)、2型糖尿病と慢性肝疾患の有無に基づく解析では一貫した結果が得られなかった。また、フィブラート系薬、ナイアシン、オメガ3脂肪酸と肝臓がんリスクとの間に有意な関連は認められなかった。 McGlynn氏は、「非スタチン系脂質低下薬が肝臓がんリスクに及ぼす影響を検討した研究はほとんどないため、本研究結果が他の集団においても再現されるのかを確かめる必要がある。もし他の研究でも確認されれば、われわれが得た知見は、肝臓がん予防に関する研究で役立つ可能性がある」と「Cancer」誌のニュースリリースで述べている。

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AHA開発のPREVENT計算式は、ASCVDの1次予防に影響するか/JAMA

 米国心臓病学会(ACC)と米国心臓協会(AHA)の現行の診療ガイドラインは、pooled cohort equation(PCE)を用いて算出されたアテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の10年リスクに基づき、ASCVDの1次予防では降圧薬と高強度スタチンを推奨しているが、PCEは潜在的なリスクの過大評価や重要な腎臓および代謝因子を考慮していないなどの問題点が指摘されている。米国・ハーバード大学医学大学院のJames A. Diao氏らは、2023年にAHAの科学諮問委員会が開発したPredicting Risk of cardiovascular disease EVENTs(PREVENT)計算式(推算糸球体濾過量[eGFR]を導入、対象年齢を若年成人に拡大、人種の記載が不要)を現行ガイドラインに適用した場合の、スタチンや降圧薬による治療の適用、その結果としての臨床アウトカムに及ぼす影響について検討した。研究の詳細は、JAMA誌オンライン版2024年7月29日号に掲載された。米国の30~79歳の7,765例を解析 研究グループは、現行のACC/AHAの診療ガイドラインの治療基準を変更せずに、ASCVDリスクの計算式をPCEの代わりにPREVENTを適用した場合に、リスク分類、治療の適格性、臨床アウトカムに変化が生じる可能性のある米国の成人の数を推定する目的で、横断研究を行った(米国国立心肺血液研究所[NHLBI]の助成を受けた)。 2011~20年にNational Health and Nutrition Examination Surveys(NHANES)に参加した30~79歳の7,765例(年齢中央値53歳、女性51.3%)のデータを解析した。 主要アウトカムは、予測される10年ASCVDリスク、ACC/AHAリスク分類、スタチンまたは降圧薬による治療の適格性、予測される心筋梗塞または脳卒中の発症とし、PCEを用いた場合とPREVENTを用いた場合の差を評価した。10年ASCVDリスクは、PREVENTで低下する PCEとPREVENTの双方から有効なリスク推定値が得られた参加者は、心筋梗塞、脳卒中、心不全の既往歴のない40~79歳の集団であった。この集団では、PREVENTを用いて算出した10年ASCVDリスク推定値は、年齢、性別、人種/民族のすべてのサブグループにおいてPCEで算出した値よりも低く、この予測リスクの差は低リスク群で小さく、高リスク群で大きかった。 PREVENT計算式を用いると、この集団の約半数がACC/AHAリスク分類の低リスク群(53.0%、95%信頼区間[CI]:51.2~54.8)に分類され、高リスク群(0.41%、0.25~0.62)に分類されるのは、きわめて少数と推定された。スタチン、降圧薬とも減少、心筋梗塞、脳卒中が10万件以上増加 スタチン治療を受けているか、あるいは推奨されるのは、PCEを用いた場合は818万例であるのに対し、PREVENTを用いると675万例に減少した(群間差:-143万例、95%CI:-159万~-126万)。また、降圧薬治療を受けているか、あるいは推奨されるのは、PCEでは7,530万例であるのに比べ、PREVENTでは7,270万例に低下した(-262万例、-321万~-202万)。 PREVENTにより、スタチンまたは降圧薬治療のいずれかの推奨の適格性を失うのは、1,580万例(95%CI:1,420万~1,760万)と推定される一方、10年間で心筋梗塞と脳卒中を10万7,000件増加させると推定された。この適格性の変動の影響は、女性に比べ男性で約2倍に達し(0.077% vs.0.039%)、また、黒人は白人より高率であるものの大きな差を認めなかった(0.062% vs0.065%)。 著者は、「PREVENTは、より正確で精度の高い心血管リスク予測という重要な目標に進展をもたらすが、推定される変化の大きさを考慮すると、意思決定分析または費用対効果の枠組みを用いて、現在の治療閾値を慎重に見直す必要がある」としている。

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スタチンの使用はパーキンソン病リスクの低下と関連

 日本人高齢者を対象とした大規模研究により、スタチンの使用はパーキンソン病リスクの低下と有意に関連することが明らかとなった。LIFE Study(研究代表者:九州大学大学院医学研究院の福田治久氏)のデータを用いて、大阪大学大学院医学系研究科環境医学教室の北村哲久氏、戈三玉氏らが行った研究の結果であり、「Brain Communications」に6月4日掲載された。 パーキンソン病は年齢とともに罹患率が上昇し、遺伝的要因や環境要因などとの関連が指摘されている。また、脂質異常症治療薬であるスタチンとパーキンソン病との関連を示唆する研究もいくつか報告されているものの、それらの結果は一貫していない。血液脳関門を通過しやすい脂溶性スタチンと、水溶性スタチンの違いについても、十分には調査されていない。 そこで著者らは、LIFE Studyの2014年~2020年の健康関連データを用いて、コホート内症例対照研究を行った。65歳以上の高齢者で、追跡中にパーキンソン病を発症した人を症例、症例1人に対してコホート参加時の年齢、性別、市町村、参加年をマッチさせた対照5人を選択し、解析対象は症例9,397人と対照4万6,789人とした(女性53.6%)。スタチンは脂溶性(アトルバスタチン、フルバスタチン、ピタバスタチン、シンバスタチン)と水溶性(プラバスタチン、ロスバスタチン)に分類し、コホート参加時からの累積投与量の指標として、標準化1日投与量の合計(total standardized daily dose;TSDD)を算出した。 条件付きロジスティック回帰を用い、先行研究に基づいて併存疾患の有無を調整して解析した結果、スタチン使用は非使用と比較して、パーキンソン病リスクの低下(オッズ比0.61、95%信頼区間0.56~0.66)と有意に関連していることが明らかとなった。この関連は性別にかかわらず、男性(同0.62、0.54~0.70)と女性(同0.60、0.54~0.68)ともに認められた(交互作用P=0.71)。また、年齢層ごとに検討した場合も、65~74歳(同0.57、0.49~0.66)、75~84歳(同0.60、0.53~0.68)、85歳以上(同0.73、0.59~0.92)のいずれも同様の関連が認められた(交互作用P=0.17)。 全体として、スタチンの累積投与量が多いほどパーキンソン病リスクが低いことも明らかとなった。具体的には、TSDD 0(投与なし)の人と比較して、TSDD 1~30ではリスク上昇(同1.30、1.12~1.52)と関連していた一方で、TSDD 31~90(同0.77、0.64~0.92)、TSDD 91~180(同0.62、0.52~0.75)、TSDD 181以上(同0.30、0.25~0.35)ではリスク低下と関連していた。また、脂溶性スタチン(同0.62、0.54~0.71)と水溶性スタチン(同0.62、0.55~0.70)のどちらも、パーキンソン病リスク低下と関連していることが示された。 以上から著者らは、「日本人高齢者において、スタチン使用とパーキンソン病リスク低下との間に有意な関連が認められた。スタチンの累積投与量が多いほど、パーキンソン病の発症に対して予防効果を示した」と述べている。スタチンによる予防効果のメカニズムについては、脳動脈硬化の低下やドーパミン作動性神経細胞の生存などによる可能性が考えられるとして、この予防効果をより正確に評価するため、さらなる研究の必要性を指摘している。

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日本人高齢者におけるスタチン投与量と認知症リスク

 これまでの研究では、スタチンの使用と認知症リスク低下との関連が示唆されているが、とくに超高齢社会である日本においては、この関連性は十分に検討されていない。大阪大学の戈 三玉氏らは、65歳以上の日本人高齢者を対象にスタチン使用と認知症リスクとの関連を調査した。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2024年7月1日号の報告。 2014年4月~2020年12月の17自治体におけるレセプトデータを含むLIFE研究(Longevity Improvement & Fair Evidence Study)のデータを用いて、ネステッドケースコントロール研究を実施した。年齢、性別、自治体、コホート参加年のデータに基づき、1症例を5対照群とマッチさせた。オッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)の算出には、条件付きロジスティック回帰モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・対象は、症例群5万7,302例および対照群28万3,525例。女性の割合は、59.7%であった。・潜在的な交絡因子で調整したのち、スタチン使用は認知症(OR:0.70、95%CI:0.68〜0.73)およびアルツハイマー病(OR:0.66、95%CI:0.63〜0.69)のリスク低下との関連が認められた。・スタチン未使用者と比較した用量分析における認知症のORは、次のとおりであった。【1日当たりの総標準投与量(TSDD):1〜30】OR:1.42、95%CI:1.34〜1.50【TSDD:31〜90】OR:0.91、95%CI:0.85〜0.98【TSDD:91〜180】OR:0.63、95%CI:0.58〜0.69【TSDD:180超】OR:0.33、95%CI:0.31〜0.36 著者らは「日本人高齢者に対するスタチン使用は、認知症およびアルツハイマー病のリスク低下と関連しており、スタチンの累積投与量が少ない場合には、認知症リスクが高まるが、多い場合には認知症の保護因子となりうることが示唆された」としている。

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tisotumab vedotin、再発子宮頸がんの2次・3次治療に有効/NEJM

 再発子宮頸がんの2次または3次治療において、化学療法と比較してtisotumab vedotin(組織因子を標的とするモノクローナル抗体と微小管阻害薬モノメチルアウリスタチンEの抗体薬物複合体)は、全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)が有意に延長し、新たな安全性シグナルの発現はないことが、ベルギー・Universitaire Ziekenhuizen LeuvenのIgnace Vergote氏らが実施した「innovaTV 301/ENGOT-cx12/GOG-3057試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2024年7月4日号で報告された。27ヵ国168施設の無作為化第III相試験 本研究は、日本を含む27ヵ国168施設が参加した非盲検無作為化第III相試験であり、前治療後に病勢が進行した再発子宮頸がん患者におけるtisotumab vedotinの有効性と安全性の評価を目的に行われた(GenmabとSeagenの助成を受けた)。 再発または転移を有する子宮頸がんと診断され、全身状態の指標であるEastern Cooperative Oncology Group(ECOG)performance-statusのスコアが0または1の患者502例(年齢中央値50歳[範囲:26~80]、前治療ライン数は1が61.4%、2が38.4%)を登録した。 tisotumab vedotin単剤(2.0mg/kg体重、3週ごと)の静脈内投与を受ける群に253例、担当医が選択した化学療法(トポテカン、ビノレルビン、ゲムシタビン、イリノテカン、ペメトレキセドのいずれか)を受ける群に249例を無作為に割り付けた。奏効率も有意に優れる 前治療薬として、全体の63.9%がベバシズマブの投与を、27.5%が抗PD-1または抗PD-L1抗体製剤の投与を受けていた。 主要評価項目であるOS中央値は、化学療法群が9.5ヵ月(95%信頼区間[CI]:7.9~10.7)であったのに対し、tisotumab vedotin群は11.5ヵ月(9.8~14.9)と有意に良好であった(ハザード比[HR]:0.70、95%CI:0.54~0.89、両側p=0.004)。 12ヵ月時のOS率は、tisotumab vedotin群が48.7%(95%CI:41.0~55.8)、化学療法群は35.3%(28.0~42.7)であった。 PFS中央値は、化学療法群が2.9ヵ月(95%CI:2.6~3.1)であったのに比べ、tisotumab vedotin群は4.2ヵ月(4.0~4.4)と有意に優れた(HR:0.67、95%CI:0.54~0.82、両側p<0.001)。 また、確定された奏効の割合は、化学療法群の5.2%と比較して、tisotumab vedotin群は17.8%と有意に高率だった(オッズ比:4.0、95%CI:2.1~7.6、両側p<0.001)。毒性による投与中止は14.8% 初回投与の1日目から最終投与後30日までに有害事象が1件以上発現した患者の割合は、tisotumab vedotin群が98.4%、化学療法群は99.2%であり、Grade3以上の有害事象は、それぞれ52.0%および62.3%で発現した。tisotumab vedotin群では、14.8%の患者が毒性により投与を中止した。 とくに注目すべき有害事象では、眼イベントがtisotumab vedotin群で52.8%、化学療法群で6.3%に発現し、このうちGrade3以上はそれぞれ4.0%および0%であった。また、末梢神経障害イベントはそれぞれ38.4%および4.2%、Grade3以上は5.6%および0.4%に、出血イベントは42.0%および14.2%、Grade3以上は2.4%および2.9%に発現した。 著者は、「これらのデータを総合すると、tisotumab vedotinは、再発子宮頸がん患者の治療において化学療法よりも優先される2次または3次治療の選択肢となる可能性が示唆される」としている。

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診療科別2024年上半期注目論文5選(循環器内科編)

Microaxial flow pump or standard care in infarct-related cardiogenic shockMøller JE, et al. N Engl J Med 2024;390:1382-1393.<DanGer Shock>:心原性ショックのSTEMI患者で、Impellaは死亡を減らすが合併症を増やす経皮的左室補助装置であるImpellaにより、標準治療に比して全死亡を18%減らすことが示されました。心原性ショックのSTEMI患者は、虚血性心疾患治療に残された課題であっただけに、この肯定的なデータは意義深いと思われます。一方で、重度の出血、四肢虚血、溶血、機器故障、または大動脈弁逆流の悪化などの安全性評価のイベントは4倍に増加しており、この合併症低減がいっそうの普及の鍵となるでしょう。RNA Interference With Zilebesiran for Mild to Moderate Hypertension: The KARDIA-1 Randomized Clinical TrialBakris GL, et al. JAMA. 2024;331:740-749.<KARDIA-1>:zilebesiranをシランと!高血圧治療のゲームチェンジャーとなるか血圧調節の重要な経路であるレニン-アンジオテンシン系の最上流の前駆体であるアンジオテンシノーゲンの肝臓での合成を標的とするRNA干渉治療薬がzilebesiranです。RNA干渉治療薬は「~シラン」と呼称され各領域で開発が進展しており、2023年以降zilebesiranの有効性と安全性が実証する試験結果が続いています。降圧治療のゲームチェンジャーとして心臓病や腎臓病の治療に役立つ可能性が示されました。Long-term outcomes of resynchronization-defibrillation for heart failureSapp JL, et al. N Engl J Med. 2024;390:212-220.<RAFT Long-Term>:心不全患者に対するCRT-DはICDのみに比して心不全患者予後を長期的に改善するNYHAクラスIIまたはIIIのEF<30%でQRS幅広の心不全患者で、CRT-Dによる心臓再同期療法はICD単独よりも中央期間14年にわたる長期追跡においても予後改善を持続することが報告されました。一方で、デバイスまたは手技に関連した合併症発生率が高いことや、CRT-DはICDに対する費用対効果などの課題もあります。Intravascular imaging-guided coronary drug-eluting stent implantation: an updated network meta-analysisStone GW, et al. Lancet. 2024;403:824-837.<Intravascular imaging-guided PCI, メタ解析>:血管内イメージングを用いたPCIの有効性がメタ解析で示されたIVUSやOCTなどの血管内イメージングをガイドにすることで、血管造影のみをガイドにするよりもPCIの安全性と有効性を改善することが報告されました。このメタ解析の素材の各研究は、日本に加えて中国や韓国などアジア諸国からのデータも多く含まれています。血管内イメージングガイド下のPCIは日常臨床で定着し、日本のお家芸ともいえるものです。その領域のエビデンス構築においては日本のイニシアチブを期待します。Randomized Trial for Evaluation in Secondary Prevention Efficacy of Combination Therapy-Statin and Eicosapentaenoic Acid (RESPECT-EPA)Miyauchi K, et al. Circulation. 2024 Jun 14. [Epub ahead of print]<RESPECT-EPA>:日本発のエビデンス、スタチン上乗せのEPA製剤は心血管イベントを減少させるも有意差なし慢性冠動脈疾患でEPA/AA比の低い日本人患者で、スタチンに追加投与の高純度EPAによる心血管イベント再発予防の可能性を検討した試験です。心血管イベントは減少したものの、統計学的に有意に至る差異はありませんでした(HR:0.79、95%CI:0.62~1.00、p=0.055)。冠動脈イベントの複合は、EPA群で有意に少なかったものの、心房細動の新規発症は有意に増加していました。今後の詳細なサブ解析に注目したいところです。

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抗菌薬持続間欠の比較(解説:栗原宏氏)

特長・6つの最新試験を含む大規模なメタアナリシスを使用しているため、最新かつ信頼性の高い結果である・ベイズ解析と頻度主義分析を併用し、治療効果の包括的評価と信頼性を高めている・持続投与は間欠投与に対し、90日間の死亡リスクを14%減少させる効果が確認されている。NNTは26であり、持続投与の高い有効性が示唆される。また、ICU死亡率の低下と臨床的治癒率の向上にも寄与している研究上の制約・敗血症および敗血症性ショックの定義が一定していないため、結果の比較にばらつきがある・試験ごとに治癒の定義が異なり、治癒判断が主観的である可能性がある βラクタム系抗菌薬は、最小発育阻止濃度以上の時間(time above MIC)が長いほど効果がある時間依存性であり、頻回投与、長時間投与が望ましいとされている。そのため、究極的に持続投与ならばMIC以上の最適な状態が維持され、より高い治療効果が得られるのではないかと推論される。 この推論に基づき、これまで多数の間欠投与と持続投与の比較試験が行われてきた。最近発表されたものとしては、重症患者におけるメロペネムの持続投与と間欠投与を比較した多国間ランダム化臨床試験であるMERCY試験、BLING III試験が知られている。持続投与は理論上間欠投与より有効であるが、実際に患者の転帰を改善するかどうかについては、有効であったとする研究と差がなかったとする研究があり、結果が分かれている。 本調査では持続投与と間欠投与の比較に関して、敗血症、敗血症性ショックを患う成人患者を対象に、90日間での全死亡率をメインアウトカム、ICU死亡率、臨床的治癒率、微生物学的治癒率、有害事象、ICU滞在期間を2次アウトカムとして検討を行っている。 参考までに使用された抗菌薬は、メロペネム8件、セフェピム3件、チカルシリン-クラブラン酸2件、アンピシリン-スルバクタム、セフトリアアキソン、イミペネム-シラスタチン各1件であった。 サブグループ分析は7項目で行われているが、いずれも差がなかった。1)メロペネム対ピペラシリン・タゾバクタム(相対リスク比 [RRR], 1.00; 95%信用区間 [CrI], 0.75-1.29)2)培養陽性対培養陰性感染(RRR, 1.13; 95%CrI, 0.91-1.72)3)グラム陰性対グラム陽性感染(RRR, 1.13; 95%CrI, 0.85-1.79)4)腎置換療法対非腎置換療法(RRR, 1.08; 95%CrI, 0.82-1.53)5)肺感染対その他の感染(RRR, 0.90; 95%CrI, 0.64-1.15)6)敗血症対敗血症性ショック(RRR, 0.97; 95%CrI, 0.75-1.23)7)男性対女性(RRR, 0.91; 95%CrI, 0.71-1.12) 敗血症、敗血症性ショックという重篤な状態の患者を対象とし、90日間の全死亡をメインアウトカムとしている本調査は臨床的に現実的な調査である。敗血症治療に抗菌薬は不可欠であるが、信頼性の高い調査で投与方法の選択次第で死亡リスクを減少できることが示された意義は大きい。二次アウトカムとしてICU死亡率の減少と臨床的治癒率向上に関連していることが示されたことも臨床的に有益な情報である。 NNT(1人の死亡を防ぐために必要な治療人数)が26と治療効果は高く、サブグループ分析の結果を踏まえても、敗血症治療にβラクタム系抗菌薬を使用する際は持続投与を選択するのがよいと思われる。

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スタチンにEPA併用、日本人の心血管イベント再発予防効果は?/Circulation

 スタチン治療を受けている慢性冠動脈疾患の日本人患者で、エイコサペンタエン酸/アラキドン酸(EPA/AA)比の低い患者において、高純度EPAのイコサペント酸エチルによる心血管イベント再発予防の可能性を検討したRESPECT-EPA試験で、心血管イベントリスクは数値的には減少したが統計学的有意差は認められなかった。一方、冠動脈イベントの複合は有意に減少した。順天堂大学の宮内 克己氏らがCirculation誌オンライン版2024年6月14日号で報告。 本試験はわが国の前向き多施設共同無作為化非盲検試験である。スタチン投与中の慢性冠動脈疾患でEPA/AA比が低い(0.4未満)患者を、通常治療による対照群とイコサペント酸エチル(1,800mg/日)を併用するEPA群に割り付けた。主要エンドポイントは、心血管死・非致死性心筋梗塞・非致死性脳梗塞・不安定狭心症・冠血行再建術の複合とした。冠動脈イベントの副次複合エンドポイントは、心臓突然死・致死性および非致死性心筋梗塞・緊急入院を要し冠血行再建術を必要とした不安定狭心症・臨床所見に基づく冠血行再建術の複合とした。 主な結果は以下のとおり。・国内95施設で3,884例が登録され、うち2,506例がEPA/AA比が低く、1,249例がEPA群、1,257例が対照群に無作為に割り付けられた。・追跡期間中央値5年で、主要エンドポイントはEPA群では1,225例中112例(9.1%)、対照群では1,235例中155例(12.6%)に発生した(ハザード比[HR]:0.79、95%信頼区間[CI]:0.62~1.00、p=0.055)。・冠動脈イベントの複合は、EPA群で有意に少なかった(6.6% vs.9.7%、HR:0.73、95%CI:0.55~0.97)。・有害事象に差はなかったが、心房細動の新規発症がEPA群で有意に高かった(3.1% vs.1.6%、p=0.017)。 著者らは「これらの結果を総合すると、スタチン治療を受けている慢性冠動脈疾患でEPA/AA比の低い患者において、イコサペント酸エチルが将来のイベントを軽減するという臨床的意義を有する可能性が示唆される」としている。

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くも膜下出血の発症リスクが上がる/下がる薬は?

 オランダ・ユトレヒト大学医療センターのJos P. Kanning氏らは、動脈瘤によるくも膜下出血(aSAH:aneurysmal subarachnoid hemorrhage)の発症リスクを下げるとされる処方薬として、5剤(リシノプリル[商品名:ロンゲスほか]、アムロジピン[同:アムロジンほか]、シンバスタチン[同:リポバスほか]、メトホルミン[同:メトグルコほか]、タムスロシン[同:ハルナールほか])を明らかにした。一方で、aSAHの発症に関連している可能性がある薬剤についても示唆した。Neurology誌オンライン版2024年6月25日号掲載の報告。 研究者らは、処方薬とaSAH発症リスクとの関連性を体系的に調査するため、drug-wide association study(DWAS)を実施。Secure Anonymised Information Linkage(SAIL)データバンクの1982年1月1日以前に生まれた患者を研究対象とし、ICD-9およびICD-10を用いて2000~20年までの全aSAH症例を抽出した。さらに、各症例を年齢、性別で9つの対照群と無作為にマッチングさせ、さらに症例と対照の観察期間を比較できるようデータベースへの登録年を基にマッチングさせた。本研究集団の2%超に処方された薬剤を調査し、インデックス日(aSAH発生)前で、処方に関連する曝露期間を重複しないように3つ定義付けした(現在:インデックス日から3ヵ月以内、最近:インデックス日から3〜12ヵ月、過去:インデックス日から12ヵ月より前)。また、年齢、性別のほか、交絡因子の調整のためaSAHと薬物曝露に関連するであろう変数として、既知のaSAHリスク因子(喫煙状況、高血圧の有無、飲酒、BMI)についてコントロールし、インデックス日以前の1年間のヘルスケアの利用(かかりつけ医への来院数など)も評価した。 主な結果は以下のとおり。・aSAH群4,879例(平均年齢±SD:61.4±15.4歳、女性:61.2%)と対照群4万3,911例を照合した。・aSAH症例群は対照群よりもかかりつけ医の受診回数が多く(平均受診回数:23回vs.19回)、インデックス日以前の喫煙率(37% vs.21%)や高血圧症の既往(42% vs.37%)も高かった。・本研究中に特定された2,023種類の薬剤のうち、205種類(10.1%)が共通して処方されていた。・二項ロジスティック回帰分析でボンフェローニ補正を用いたところ、現在服用中でaSAH発症リスクが低下した薬剤は、リシノプリル(オッズ比[OR]:0.63、95%信頼区間[CI]:0.44~0.90)、アムロジピン(OR:0.82、95%CI:0.65~1.04)であった。ただし、両者とも服用が「最近」の場合には、aSAH発症リスクが上昇(リシノプリルのOR:1.30[95%CI:0.61~2.78]、アムロジピンのOR:1.61[95%CI:1.04~2.48])し、リシノプリルとアムロジピンで同様の傾向が見られた。・シンバスタチン(OR:0.78、95%CI:0.64~0.96)、メトホルミン(OR:0.58、95%CI:0.43~0.78)、タムスロシン(OR:0.55、95%CI:0.32~0.93)を現在服用中の場合でも、aSAH発症リスクの低下が認められた。・対照的に、ワルファリン(商品名:ワーファリンほか、OR:1.35、95%CI:1.02~1.79)、ベンラファキシン(同:イフェクサー、OR:1.67、95%CI:1.01~2.75)、プロクロルペラジン(同:ノバミン、OR:2.15、95%CI:1.45~3.18)、Co-codamol*(OR:1.31、95%CI:1.10~1.56)を現在服用中の場合、aSAH発症リスクの増加が認められた。*アセトアミノフェン・コデインリン酸塩、国内未承認

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