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局所進行頭頸部がん、周術期ペムブロリズマブ上乗せが有効(KEYNOTE-689)/NEJM

 未治療の局所進行頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)に対し、標準治療へのペムブロリズマブ術前および術後補助療法の追加は、標準治療のみと比較し無イベント生存期間(EFS)を有意に改善した。ペムブロリズマブの術前補助療法は、手術施行に影響を与えず、新たな安全性に関する懸念は認められなかった。米国・ハーバード大学医学大学院のRavindra Uppaluri氏らKEYNOTE-689 Investigatorsが、日本を含むアジア、北米、欧州などの192施設で実施した第III相無作為化非盲検比較試験「KEYNOTE-689試験」の結果を報告した。局所進行HNSCC患者に対する手術と術後補助療法の標準治療に対し、周術期のペムブロリズマブ追加の有用性は不明であった。NEJM誌オンライン版2025年6月18日号掲載の報告。ペムブロリズマブの術前・術後補助療法追加の有効性および安全性を標準治療と比較 研究グループは、新たに診断された転移のない切除可能なIII期またはIV期の局所進行HNSCC(咽頭、下咽頭、口腔内)で、ECOG PSが0~1の18歳以上の患者を、標準治療+ペムブロリズマブ術前療法(2サイクル)+ペムブロリズマブ術後療法(15サイクル)(いずれも3週間ごとに200mg投与)群(ペムブロリズマブ群)と、標準治療群(対照群)に、1対1の割合で無作為に割り付けた。標準治療は、手術+術後補助放射線療法±シスプラチンとした。 主要評価項目は、PD-L1陽性でCPS≧10集団、PD-L1陽性でCPS≧1集団、および全患者集団における、RECIST v1.1に基づく盲検下独立中央判定によるEFSであった。ペムブロリズマブ追加でEFSが有意に改善 2018年12月~2023年10月に計1,044例がスクリーニングを受け、714例が無作為化された(ペムブロリズマブ群363例[CPS≧10集団234例、CPS≧1集団347例]、対照群351例[CPS≧10集団231例、CPS≧1集団335例])。ペムブロリズマブ群では321例(88.4%)、対照群では308例(87.7%)が手術を完了した。 初回中間解析時点(追跡期間中央値38.3ヵ月)で、CPS≧10集団におけるEFS中央値はペムブロリズマブ群59.7ヵ月(95%信頼区間[CI]:41.1~未到達)、対照群26.9ヵ月(18.3~51.5)、進行・再発・死亡のハザード比(HR)は0.66(95%CI:0.49~0.88、両側p=0.004)、3年EFS率はペムブロリズマブ群59.8%(95%CI:52.3~66.5)、対照群45.9%(38.0~53.4)であった。 CPS≧1集団でも同様に、EFS中央値はペムブロリズマブ群59.7ヵ月(95%CI:37.9~未到達)、対照群29.6ヵ月(19.5~41.9)、HRは0.70(95%CI:0.55~0.89、両側p=0.003)、3年EFS率はそれぞれ58.2%、44.9%であった。全集団ではそれぞれ51.8ヵ月(95%CI:37.5~未到達)、30.4ヵ月(21.8~50.1)、HRは0.73(95%CI:0.58~0.92、両側p=0.008)、3年EFS率は57.6%、46.4%であった。 Grade3以上の治療関連有害事象は、ペムブロリズマブ群で44.6%(161/361例)、対照群で42.9%(135/315例)に発現し、死亡はそれぞれ4例(1.1%)と1例(0.3%)であった。Grade3以上の免疫関連有害事象はペムブロリズマブ群で10.0%に認められた。

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ASCO2025 レポート 肺がん

レポーター紹介ASCO Lung、Lung ASCOと呼ばれるほど、肺がんに関しては当たり年であった2024年のASCOとは異なり、2025年のASCOは肺がんのPlenary演題もないなど、やや小ぶりな前評判であった。ただ、実際に演題が発表されてみると、DeLLphi-304試験では小細胞肺がん(SCLC)の二次治療において初めて全生存期間(OS)を延長したタルラタマブの成績が報告され、肺がんのコミュニティとしてはPlenaryセッションでもよかったのではとの声も聞こえてきた。さらに日本では未承認であるが、進展型SCLC(ES-SCLC)の維持療法として、lurbinectedinが、無増悪生存期間(PFS)、OSともに延長を示したIMforte試験にも注目が集まった。IMforte試験の演者はスペインのLuis Paz-Ares先生で、くしくもPARAMOUNT試験において非小細胞肺がん(NSCLC)におけるペメトレキセドの維持療法をASCOで発表したのもPaz-Ares先生であり、印象的であった。これらの日常診療を変えうる発表に加え、将来につながる発表が、周術期領域、抗体医薬品の開発に関連して複数発表されている。周術期領域においては、EGFR遺伝子変異陽性肺がんに対してNeoADAURA試験の結果が、ALK遺伝子転座陽性肺がんに対してALNEO試験の結果が報告された。抗体医薬品の開発は引き続き盛んであり、抗体薬物複合体(ADC)、T-cell Engager(TCE)、さらにはCAR-T療法など、今後に期待が持たれる発表が、とくに中国から続いた。そんななか、新薬を使うのでも、手術をするのでもなく、免疫チェックポイント阻害薬の投与タイミングにより、治療効果に大きな違いをもたらした臨床試験の結果が中国から発表された。免疫チェックポイント阻害薬の奥の深さを感じるとともに、このようなタイムリーな研究成果が中国から報告されることに、新規薬剤の開発だけでなく、臨床試験の実施体制としても中国の成熟が感じられた。[目次]DeLLphi-304試験IMforte試験NeoADAURA試験ALNEO試験CheckMate 816試験HERTHENA-Lung02試験抗体医薬品の展開Time-of-Day試験最後にDeLLphi-304試験再発SCLCに対する治療選択肢の1つとして期待されているDLL3とCD3を標的としたTCEであるタルラタマブの有効性と安全性を評価した第III相試験がDeLLphi-304試験である。本試験は、プラチナ製剤ベースの初回化学療法を終了後、病勢進行を経験した再発SCLC患者を対象に、タルラタマブ(0.3mgで開始後、10mgを2週ごと投与)と化学療法(トポテカン、lurbinectedin、アムルビシン)を比較する国際共同多施設無作為化比較試験で、全体で509例が登録された。主要評価項目はOS、副次評価項目にはPFSや奏効割合(ORR)、安全性が設定された。主要評価項目であるOSにおいて、タルラタマブ群は化学療法群と比較して有意な生存期間延長を示し、OSの中央値はタルラタマブ群で13.6ヵ月、化学療法群で8.3ヵ月であり、ハザード比は0.60(95%CI:0.47~0.77)、p<0.001と統計学的に有意であった。PFSについても良好な傾向が認められ、中央値は4.2ヵ月と3.7ヵ月、ハザード比は0.71(95%CI:0.59~0.86)であった。ORRについても40%と17%とタルラタマブ群で良好であった。安全性の観点では、タルラタマブ群に特徴的なサイトカイン放出症候群(CRS)は56%にみられたが、大半はGrade1~2で管理可能であり、免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)などの神経学的有害事象も既知のプロファイルと一致した。治療関連死亡はなかった。今回のDeLLphi-304試験の成功により、20年以上にわたって進展のなかった再発SCLC治療において、新たな標準治療の登場が視野に入った意義深い試験結果である。DLL3はSCLCに特異的かつ高発現する治療標的として注目されており、新たなモダリティとしてTCEが治療の基軸になる状況が現実となった。今後、初回治療や限局型への展開、あるいは他がん腫への応用など、免疫系を活用した治療開発の広がりが期待される。IMforte試験ES-SCLCでは一次治療後の病勢進行率が高く課題とされてきた。lurbinectedinはアルキル化作用を持つ転写阻害剤であり、プラチナ製剤ベース化学療法後に病勢進行したSCLC患者において抗腫瘍活性が示されてきた。IMforte試験は、ES-SCLC患者において一次導入化学療法(アテゾリズマブ+カルボプラチン+エトポシド)後に病勢進行しなかった患者を対象として、アテゾリズマブによる維持療法にlurbinectedinを上乗せすることの意義を検証する国際共同多施設無作為化非盲検第III相試験である。患者はlurbinectedin(3.2mg/m2)とアテゾリズマブ(1,200mg)を3週ごとに併用投与する試験治療群、またはアテゾリズマブ(1,200mg)を3週ごとに単独投与する標準治療群に1:1の割合で無作為に割り付けられた。主要評価項目はIRF-PFS(独立画像判定によるPFS)およびOSとされた。試験治療群には242例、標準治療群には241例が登録された。試験治療群はIRF-PFSにおいて標準治療群に対して、PFS中央値5.4ヵ月と2.1ヵ月、ハザード比0.54(95%CI:0.43~0.67)、pNeoADAURA試験EGFR遺伝子変異陽性の切除可能なNSCLCに対する術前治療として、オシメルチニブ単剤または化学療法併用の有効性と安全性を検証する第III相試験がNeoADAURA試験である。本試験は、StageII~IIIB(N2)に相当する切除可能EGFR遺伝子変異陽性(Exon19delまたはL858R)NSCLCを対象に、術前オシメルチニブ単剤群、オシメルチニブ+化学療法併用群、化学療法単独群を比較する国際共同無作為化試験で、全体で358例が登録された。主要評価項目はmajor pathologic response(MPR)であり、副次評価項目には無イベント生存期間(event-free survival;EFS)、病理学的完全奏効割合(pCR)、ORR、手術実施率、R0切除率、安全性などが含まれた。MPRにおいては、化学療法群で2%であったのに対して、オシメルチニブ単剤、併用群では25%、26%であり、オシメルチニブ併用による統計学的な優越性が確認された。pCRにおいては、化学療法群が2%であったのに対して、併用群で4%、オシメルチニブ単剤群で9%という結果であった。R0切除率はいずれの群でも90%以上と高率であり、手術遅延や手術不能例も少なく、安全に根治切除に導ける治療であることが示唆された。まだイベント数が少ない状態ではあるがEFSについても報告され、化学療法群に対して、ハザード比は併用療法群で0.50、オシメルチニブ単剤群で0.73であった。術後治療としては全例にオシメルチニブによる補助療法が予定されており、長期予後の追跡が期待される。ADAURA試験で術後オシメルチニブの有効性が示されて以来、EGFR遺伝子変異陽性NSCLCの治療パラダイムは大きく変化したが、本試験は術前段階からEGFR-TKIを導入することの意義を検討している。免疫チェックポイント阻害薬において病理学的奏効割合は高めだが画像上の奏効は50%程度にとどまっているという課題を有しており、画像上の高い奏効割合が期待できるEGFR-TKIの立ち位置については、今後さまざまな議論が展開されることになる。ALNEO試験ALNEO試験では、アレクチニブ600mgを1日2回術前に投与し、手術後も術後療法として継続することの有効性と安全性を検討する第II相試験である。主要評価項目はBICRによるMPRとされた。本試験にはイタリアの20施設が参加し、2021年5月から2024年7月にかけて患者が登録された。33例が登録され、全例が術前治療を完了し、28例が手術を受け、26例が術後療法を開始した。手術を受けなかった5例のうち、2例は患者の拒否、2例は臨床的判断、1例は臨床的進行のためであった。術後療法を受けなかった2例は、いずれもR0切除が得られなかったことがその理由であった。主要評価項目であるBICRによるMPRは42%(95%CI:28~58)であり、信頼区間の下限が事前に設定された閾値の20%を超えたことから、統計学的にも有意な結果であった。pCRは12%であった。副次評価項目として、ORRは67%であった。特筆すべきは、同時に報告されたNeoADAURA試験やこれまでのオシメルチニブによる術前治療において、pCRが0~10%未満にとどまっているのに対して、アレクチニブにおいては若干高めのMPRやpCRが報告されており、同じドライバー陽性肺がんにおいても標的や薬剤によって病理学的奏効に違いがあることが示唆されている点にある。今後、術前治療にドライバー遺伝子変異に伴うTKIを中心とした治療が導入されていくことが期待されているが、他の標的、他の薬剤による病理学的効果を含む効果についても注目したい。CheckMate 816試験すでに実臨床に導入されているCheckMate 816試験は、切除可能なStageIB(腫瘍径4cm以上)~IIIAのNSCLC患者(TNM分類第7版による)を対象とした第III相試験で、既知のEGFR遺伝子変異またはALK転座がない患者が登録された。患者はニボルマブ360mgと化学療法を3週間ごとに3サイクル併用するニボルマブ群、または化学療法単独を3週間ごとに3サイクル行う化学療法群に1:1の割合で割り付けられた。主要評価項目は、独立中央病理審査(BIPR)によるpCRおよびEFSで、OSは有意水準αも割り付けられた主要な副次評価項目として設定され、今回、最低5年間の追跡期間で最終解析が行われた。ニボルマブ群は化学療法群に対して、ハザード比0.72(95%CI:0.523~0.998)、p=0.0479と統計学的に有意なOSの改善を示し、5年OS割合も65%と55%であり、10%の上乗せを示した。ニボルマブと化学療法の併用は、肺がん特異的生存期間においても化学療法単独と比較して継続的な効果を示した。安全性プロファイルはこれまでの報告と一貫していた。CheckMate 816試験は、切除可能な固形がんにおいて、術前化学免疫療法のみ(3サイクル)が統計学的に有意なOSのベネフィットを示すことを検証した唯一の第III相試験であり、術前+術後化学免疫療法によるKEYNOTE-671試験に続いて、周術期免疫チェックポイント阻害薬においてOSの延長を示した重要な試験となった。術前のみ、術前+術後いずれの免疫チェックポイント阻害薬による補助療法においてもOSの延長が示された状況は肺がんにおいてのみであり、術前+術後の治療方法しか存在しない他のがん腫との明らかな違いが生じている。今後その違いに基づき、さらなる議論が展開されることは間違いないと考えられる。HERTHENA-Lung02試験HERTHENA-Lung02試験は、第3世代EGFR-TKI後に病勢進行した局所進行または転移を有するEGFR変異陽性NSCLC患者を対象とした国際共同多施設無作為化非盲検第III相試験である。患者は、HER3-DXd(5.6mg/kg、3週ごと)群または標準治療(シスプラチンまたはカルボプラチンを3週ごとに4サイクル投与後、ペメトレキセド維持療法実施)群に1:1の割合で割り付けられた。主要評価項目は、BICRによるPFSとされ、主要な副次評価項目はOS、それ以外の副次評価項目として安全性、頭蓋内PFS、HER3タンパク発現と有効性の関連性評価とされた。本試験には586例の患者が登録され、HER3-DXd群に293例、標準治療群に293例が割り付けられた。HER3-DXd群のPFS中央値は5.8ヵ月であったのに対し、標準治療群は5.4ヵ月であり、ハザード比は0.77(95%CI:0.63~0.94)、p=0.011で、統計学的に有意な結果であった。ただ、中央値での差異は0.4ヵ月にとどまっていた。さらに、今回OSの解析結果として、OSの中央値がHER3-DXd群、標準治療群それぞれで16.0ヵ月、15.9ヵ月、ハザード比0.98(95%CI:0.79~1.22)であり、OSについてはNegative trialであることが明らかになった。ポジティブな結果が多かった今年のASCOにおいて、期待されていたADCについてNegativeな結果が報告されたことのインパクトは大きかった。DXd(デルクステカン)ベースのADCとしては、昨年TROP2-ADCであるDato-DXdが、同様の肺がん二次治療において、全体集団でのOSでNegativeであったことが報告されている。Dato-DXdについてはTROP2の発現についてAIも用いたタンパク発現の評価方法TROP2 QCS-NMR(Normalized Membrane Ratio of TROP2 by Quantitative Continuous Scoring)が効果予測になりうることが報告されている。そのため、HER3-DXdにおいても、HER3の発現について今後同様の試みがされることに期待したい。抗体医薬品の展開BL-B01D1(iza-bren)は、EGFRとHER3の二重特異性ADCであり、新規のトポイソメラーゼI阻害薬(Ed-04)をペイロードとしている。EGFR遺伝子変異陽性NSCLCに対しては、63.2%のORRを示したことがすでに報告されている。今回は、上記以外のドライバー遺伝子変異を持つNSCLC患者83例が登録され、EGFR exon20挿入変異・Uncommon mutation(14例)、HER2変異(19例)、ALK/ROS1/RET融合(24例)、KRAS/BRAF/MET変異(26例)を有する患者が登録された。全患者のORRは46.2%、PFS中央値は7.0ヵ月であった。ORRはそれぞれ、EGFR exon20挿入変異・Uncommon mutation 69.2%、HER2変異52.9%、KRAS/BRAF/MET変異40%、KRAS G12C変異44.4%、ALK/ROS1/RET融合34.8%であった。ABBV-400(Telisotuzumab Adizutecan、Temab-A)はc-Met標的抗体(Telisotuzumab)とトポイソメラーゼIペイロードを組み合わせたものである。今回、プラチナベース化学療法およびTKIによる治療を受けた進行固形がん患者を対象とし、3ライン以上の治療歴のあるEGFR変異非扁平上皮NSCLCコホートのデータが報告された。その結果、ORRは63%であり、耐性変異の有無にかかわらず幅広い効果が確認された。ABBV-706は、高悪性度神経内分泌腫瘍(NENs)に発現しているSEZ6(Seizure-Related Homolog Protein 6)を標的としたTop1阻害薬をペイロードとしたADCである。NEN全体を対象としたコホートでは、ORRが36.9%、PFS中央値が7.62ヵ月であり、LCNECに限定した解析結果では、ORRが33.3%、PFS中央値が5.78ヵ月であることが報告された。低酸素応答性CEA CAR-T細胞療法の再発NSCLCに対する第I相試験についても報告された。ORRは47%、DCRは87%であり、一定の効果が示されたが、奏効期間(DoR)中央値は2ヵ月であり、この点についてはまだまだ改善の余地があることが示された。PRを達成した患者では、ベースライン血清CEAレベルが有意に高いなどのサブグループ解析も報告された。Time-of-Day試験Time-of-Day(ToD)試験は、進行NSCLC患者における化学免疫療法を、早めの時間(15:00より前)と遅い時間(15:00以降)で投与した場合の比較を行った無作為化第III相試験である。概日リズムは睡眠、疾患、治療に影響を与えることが知られており、前臨床試験では概日リズムと免疫細胞機能・分布の関連性、および免疫療法の有効性への影響が示唆されていた。また、20報以上の後ろ向き研究のメタ解析では、免疫チェックポイント阻害薬の投与が「遅い時間」よりも「早い時間」に行われた場合に効果の改善が示されている。StageIIIC~IV期のNSCLC患者210例が、標準化学療法と免疫チェックポイント阻害薬(ペムブロリズマブまたはsintilimab)の初回4サイクルについて、早めの時間(15:00より前)または遅い時間(15:00以降開始)に無作為に割り付けられた。主要評価項目はBICRによるPFS、副次評価項目はOS、BICRによるORR、全血リンパ球サブセット解析であった。早い時間に投与した場合のPFS中央値は11.3ヵ月であったのに対し、遅い時間では5.7ヵ月であり、ハザード比は0.42(95%CI:0.31~0.58)、p<0.0001で、統計学的に有意に早い時間に投与することの優越性が示された。OSにおいても、中央値がNot reachedと16.4ヵ月、ハザード比は0.45(95%CI:0.30~0.68)、p<0.0001であり、明らかに早い時間の投与で延長することが示された。有害事象発現割合については、若干の違いは認めるものの大きな違いは認められなかった。循環T細胞の解析では、早い時間群でCD8+T細胞とCD4+T細胞の有意な増加が示された一方で、遅い時間群では減少傾向がみられ、今回の試験結果を裏打ちする情報として示された。高額の薬剤を用いて新たな治療方法が模索されるなかで、投与時間の調整のみで大きなPFS、OSの違いをもたらした結果が、中国で実施された臨床試験から得られたことを会場の参加者は驚きをもって受け止めた。今後おそらくいくつかの追試が実施されるとともに、最適な投与時間のカットオフ(15時が最適か)についても検討が進められる見込みである。最後に今年のASCOは、肺がんによるPlenary演題はなかったものの、Plenaryであってもおかしくないインパクトを有する演題は複数発表された。注目すべきは、抗体医薬品を中心とした新たな薬剤の発表が続いたことだけでなく、周術期や免疫チェックポイント阻害薬の投与タイミングなど、肺がんの治療開発が実に幅広い領域で展開していることである。引き続き目が離せない状態が続くと考えられる。

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ASCO2025 レポート 消化器がん

レポーター紹介2025年5月30日~6月3日に、米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)が米国・シカゴで開催され、後の実臨床を変えうる注目演題が複数報告された。高知大学の佐竹 悠良氏が消化器がん領域における重要演題をピックアップし、結果を解説する。胃がんMATTERHORN試験:周術期FLOTにおけるデュルバルマブ追加の意義(LBA5)切除可能II~IVA期の胃がん・食道胃接合部腺がんを対象に、欧米における標準治療である周術期FLOT(フルオロウラシル、ロイコボリン、オキサリプラチン、ドセタキセル)療法に対する抗PD-L1抗体であるデュルバルマブ追加(D-FLOT療法)の有用性を検証したMATTERHORN試験。D-FLOT療法により病理学的完全奏効の改善がすでにESMO2023で報告され(19%vs.7%、オッズ比:3.08、p<0.00001)、主要評価項目である無イベント生存期間(EFS)における統計学的優越性もプレスリリースされていたが、今回学会にて正式に報告され、同時にNEJM誌でpublishされた。患者は術前・術後に2サイクルずつFLOT療法+プラセボもしくはD-FLOT療法を受け、その後プラセボもしくはデュルバルマブを10サイクル(術後補助化学療法として1年間)受けた。主要評価項目のEFS中央値はD-FLOT群未到達vs.プラセボ群32.8ヵ月であり、統計学的優越性を示した(ハザード比[HR]:0.71、95%信頼区間[CI]:0.58~0.86、p<0.001)。24ヵ月EFS率はD-FLOT群67%vs.プラセボ群59%であった(観察期間中央値:D-FLOT群31.6ヵ月vs.プラセボ群31.4ヵ月)。副次評価項目である全生存期間(OS)においても改善傾向(HR:0.78、95%CI:0.62~0.97、p=0.025)がみられたが、現時点では統計学的有意差には至っていない(観察期間中央値:D-FLOT群34.6ヵ月vs.プラセボ群34.6ヵ月)。免疫介在性有害事象はGrade3/4をD-FLOT群7%vs.プラセボ群4%に認めた。胃がん周術期治療における免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は、KEYNOTE-585試験およびATTRACTION-5試験において有意な結果を示すことができなかったが、本試験において主要評価項目であるEFSでの有意な改善を認め、今後の標準治療となることが見込まれる。一方、本邦では周術期FLOT療法の経験は十分とは言えず、大型3/4型胃がんに対する術前FLOT療法およびDOS(ドセタキセル+オキサリプラチン+S-1)療法を検討する第II相試験であるJCOG2204が進行中であり、結果が期待される。DESTINY-Gastric04試験:HER2陽性胃がんの2次治療におけるT-DXdの有効性を確立(LBA4002)HER2陽性(IHC3+またはIHC2+/ISH+)の進行・再発胃がんまたは食道胃接合部腺がんに対し、抗HER2抗体薬物複合体(ADC)であるトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd、6.4mg/kgを3週ごと)が、現在の標準2次治療であるラムシルマブ+パクリタキセル併用(RAM+PTX)療法と比較してOSを有意に延長することが国立がん研究センター東病院の設楽 紘平氏から報告され、こちらも同時にNEJM誌でpublishされた。本試験は前治療のトラスツズマブ不応後の生検によるHER2陽性例が対象であり、1,088例に腫瘍組織検体スクリーニングが実施され、450例(41%)は組織スクリーニングで脱落し、最終的に494例が1:1に割り付けされた。前治療としてICIの投与歴がある患者は両群ともに15%程度であり、後治療として抗HER2治療を受けた割合はT-DXd群3.2%vs.RAM+PTX療法群25.8%であった。主要評価項目のOS中央値は、T-DXd群14.7ヵ月vs.RAM+PTX療法群11.4ヵ月であり、統計学的優越性を示した(HR:0.70、p=0.0044)。副次評価項目の無増悪生存期間(PFS)および奏効率(ORR)においてもT-DXd群で有意に改善を示した(PFS中央値:6.7ヵ月vs.5.6ヵ月、HR:0.74、p=0.0074、ORR:44.3%vs.9.1%、p=0.0006)。Grade3以上の薬剤関連有害事象の割合も両群で同等であった(T-DXd群50.0%vs.RAM+PTX療法群54.1%)。ただし、間質性肺疾患はT-DXd群で13.9%(Grade3は1例のみ、0.4%)と、重篤例は多くないものの注意が必要である。今後、HER2陽性かつCPS陽性の進行・再発胃がんに対しては、KEYNOTE-811試験の結果から初回治療よりペムブロリズマブ併用が見込まれるが、本試験のサブグループ解析においては前治療ICI投与の有無にかかわらず、一貫してT-DXdによる生存改善傾向を認めており、HER2陽性胃がんにおける2次治療としてT-DXdが今後の標準治療の位置付けとされた。一方、本結果は試験組み入れ時のHER2再確認(再生検)により結果が導かれているが、40%前後は前治療不応時にHER2 lossが生じている可能性が示唆された。大腸がんATOMIC試験:StageIII dMMR大腸がん術後補助療法におけるアテゾリズマブ追加の意義(LBA1)StageIIIのdMMR結腸がんに対する術後補助療法として、mFOLFOX6化学療法にPD-L1阻害薬であるアテゾリズマブを追加することで、無病生存期間(DFS)を有意に延長することが国際第III相試験ATOMIC試験により示された。試験治療群は術後補助化学療法としてmFOLFOX6+アテゾリズマブ併用療法を6ヵ月受けた後にアテゾリズマブ単剤を6ヵ月(計12ヵ月)投与され、対照群はmFOLFOX6療法を6ヵ月投与された。主要評価項目である3年DFS率はアテゾリズマブ併用群86.4%vs.対照群76.6%(HR:0.50、95%CI:0.34~0.72、p<0.0001)であり、統計学的有意差を認めた。Grade3/4の治療関連有害事象(TRAE)は併用群72.3%vs.対照群59.2%とアテゾリズマブ併用群でやや多く、免疫関連有害事象として高血糖や甲状腺機能低下、大腸炎に伴う下痢や皮膚炎を認めたが、重篤なものは少なかった。本試験により、StageIIIのdMMR結腸がんにおいて術後免疫療法導入が長期予後を改善することが明らかとなり、補助療法の新たな標準となる可能性を示した。現在、本邦を含め切除可能なStage IIIまたはT4N0のdMMR/MSI‑High陽性結腸がん患者に対する周術期dostarlimabの有効性を検証する第III相試験であるAZUR-2試験が進行中である。同薬剤はすでに直腸がん領域で良好な有効性が確認されており、新しい治療ストラテジー確立が期待される。BREAKWATER試験:BRAF V600E変異陽性大腸がんに対する1次治療としてのEC+mFOLFOX6併用療法(#3500)進行・未治療のBRAF V600E変異陽性大腸がん患者を対象に、BRAF阻害薬エンコラフェニブ(E)+抗EGFR抗体セツキシマブ(C)に化学療法(mFOLFOX6)を加えた3剤併用療法(EC+mFOLFOX6)の標準治療(FOLFOX/FOLFOXIRI/CAPOX±BEV)に対するORRおよびOS(初回中間解析)における良好な結果は、一足先にASCO-GI 2025で発表されていたが、今回主要評価項目の1つであるPFSの結果が報告され、PFS、ORR、OSにおける改善が明らかとなり、同時にNEJM誌でpublishされた。主要評価項目であるPFS中央値はEC+mFOLFOX6群12.8ヵ月vs.標準治療群7.1ヵ月であり、統計学的優越性を示した(HR:0.53、95%CI:0.407~0.677、p<0.0001)。OS中央値(2回目の中間解析)はEC+mFOLFOX6群30.3ヵ月vs.標準治療群15.1ヵ月(HR:0.49、p<0.0001)だった。もう1つの主要評価項目であるORRの追加報告もあり、EC+mFOLFOX6群65.7%vs.EC群45.6%vs.標準治療群37.4%と良好であった。TRAE(Grade3/4)はEC+mFOLFOX6群76.3%vs.EC群15.7%vs.標準治療群58.5%であり、関節痛(29%)、皮疹(29%)に注意が必要である。本試験により、BRAF V600E変異大腸がんの1次治療として、EC+mFOLFOX6が新たな標準と位置付けられた。また、EC療法はmFOLFOX6療法などの抗がん剤治療が適応とならないフレイル症例に対する治療選択肢となる可能性が示唆された。AGITG DYNAMIC-III試験:術後ctDNA陽性は高リスク再発マーカー(#3503)術後StageIII結腸がん患者を対象に、circulating tumor DNA(ctDNA)の有無による再発リスクを評価した第II/III相試験であるDYNAMIC-III試験において、ctDNA陽性が強力な再発予測因子であることが示された。StageIII結腸がん患者を対象に術後4週時点でctDNAを評価し、ctDNA結果に基づいたマネジメント群(ctDNA-informed群、ctDNA陰性例ではde-escalation、ctDNA陽性はescalation[より強力な術後補助療法]を実施)と標準マネジメント群(主治医選択によるマネジメント、ctDNA結果は盲検)に無作為化して割り付けされた。全体で1,002例が登録され、それぞれctDNA-informed群502例vs.標準マネジメント群500例に割り付けられ、ctDNA陽性は各群129例(27%)vs.130例(27%)であった。ctDNA陽性例のうち、ctDNA-informed escalation群では3ヵ月以上のFOLFOXIRI実施が50%、6ヵ月のオキサリプラチンダブレット(FOLFOX/CAPOX)が44%に実施され、一方の標準マネジメント群では3ヵ月FOLFOX/CAPOXが45%、6ヵ月FOLFOX/CAPOXが41%に術後補助療法として実施された。3年無再発生存期間はctDNA-informed escalation群48%vs.標準マネジメント群52%であり、ctDNA結果に基づいた術後補助化学療法強化による再発抑制改善は認めなかった(HR:1.11、p=0.57)。後解析としてFOLFOXIRIとFOLFOX/CAPOXの無再発生存比較がなされたが、差を認めず(HR:1.09、p=0.662)、ctDNAクリアランス割合も同等であった(60%vs.62%)。術後補助化学療法終了時点におけるctDNAクリアランスの有無(HR:11.1)および術後ctDNA測定時のctDNA量が再発と相関することが示唆された(p<0.001)。既報と同様に、術後ctDNA検査のバイオマーカーとしての有用性および術後ctDNA量と再発リスクとの相関やctDNA陽性例に対する術後補助化学療法によるctDNAクリアランスの重要性が報告された。一方で、 ctDNA陽性例に対してはオキサリプラチン併用レジメンからFOLFOXIRIへの治療強化では不十分である可能性も示唆され、今後さらなる治療開発の必要性が示唆された。本邦における臨床実装が待たれる。NCCTG N0147後方解析:ctDNAによるMRD評価が術後再発リスクを鋭敏に予測(#3504)術後StageIII結腸がんに対する術後補助FOLFOX±セツキシマブを検証した第III相試験であるNCCTG N0147試験におけるctDNAの後解析により、ctDNA評価は再発リスクを高精度に層別化できることが明らかとなった。術後補助療法開始前10週以内に血漿ctDNAをGuardant Reveal/Guardant360で測定(中央値42日)。 ctDNAは20.4%で検出可能であり、より進行例(T/Nステージ)やBRAF変異例、閉塞例や穿孔例などの術後再発高リスク例において検出されることが示唆された。ctDNA陽性例は陰性例に比し、DFS、OSともに大きく劣っていた(DFS-HR:3.74、p<0.0001、OS-HR:3.17、p<0.001)。一般的に術後予後良好とされているdMMR症例においても、ctDNA陽性例はpMMR例と比較してもDFSおよびOSが不良であった(DFS-HR:1.54、p=0.0114、OS-HR:1.77、p=0.0026)。術後病理評価による再発リスクとctDNA検出の有無による層別化ならびにctDNA検出量とDFSの相関性も示唆された。既報と同様に、術後ctDNA MRD評価の有用性が再確認され、早期の再発予測や治療強度決定に活用できる可能性を示した。TRIPLETE試験:初回治療でのmFOLFOXIRI+パニツムマブがOSを有意に延長(#3512)切除不能なRAS/BRAF野生型転移を有する大腸がん(mCRC)初回治療において、mFOLFOX+パニツムマブに対しmFOLFOXIRI+パニツムマブは、主要評価項目のORRおよびPFSは改善を認めないことがすでに報告されていた。一方、本邦で実施されたJACCRO CC-13(DEEPER試験)においては、RAS/BRAF野生型かつ左側原発例においてmFOLFOXIRI+セツキシマブ療法のmFOLFOXIRI+BEVに対する治療成績改善が示唆されていた。今回TRIPLETE試験におけるOSが報告され、mFOLFOXIRI+パニツムマブによる有意な生存期間延長が報告された(観察期間中央値:60.2ヵ月)。OS中央値はmFOLFOXIRI+パニツムマブ群41.1ヵ月vs.mFOLFOX6+パニツムマブ群33.3ヵ月であり、有意に改善を認めた(HR:0.79、95%CI:0.63~0.99、p=0.049)。一方で、アップデートされたORRやPFS、奏効期間(DoR)、早期腫瘍縮小(ETS)およびR0切除割合は群間差を認めなかった。PPS(病勢進行後生存)はmFOLFOXIRI群で有意に延長(HR:0.73、p=0.012)しており、OS延長の主因と考えられた。トリプレット+抗EGFR抗体はDEEPER試験と同様にTRIPLETE試験でも、標準治療に対する良好な生存延長効果が示唆され、RAS/BRAF野生型mCRCの治療戦略においてトリプレット療法を選択肢の1つとして再評価する根拠と考えられる。ただし、PFSやORRに差がなかったことから、有効性の本質はPPSの改善に依存している可能性があり、治療強度と毒性のバランスに配慮した個別化治療が求められる。胆道がんGAIN試験:胆道がんに対する周術期GC療法の有効性が示唆(#4008)切除可能局所進行胆道がんに対して、本邦ではASCOT試験により切除後のS-1補助化学療法が標準治療とされているが、今回ドイツより術前・術後にゲムシタビン+シスプラチン(GC)を用いた周術期治療が、標準治療(手術+術後補助療法)と比較してOSおよびEFS、R0切除率を大きく改善する可能性が報告された。ドイツの21施設による第III相試験であり、登録数不足により68例の登録時点で早期終了となった。NEO群(周術期GC群)は術前GC 3サイクル後に切除がなされ、その後3サイクルの術後補助GC療法がプロトコール治療として規定されており、標準治療群は切除後に術後補助化学療法24週(主治医選択)が規定されていた。早期中止のためNEO群(32例)、標準治療群(30例)での報告。NEO群の術前GC療法平均投与コース数は2.8サイクルだが、術後補助療法の平均投与コース数は1.4サイクルであった。一方の標準治療群における術後補助療法はカペシタビン20%、ゲムシタビン3.3%、GC療法3.3%であった。OS中央値はNEO群(周術期GC群)27.8ヵ月vs.標準治療群14.6ヵ月と周術期GC療法による良好な結果が示唆された(HR:0.463、95%CI:0.222~0.964、p=0.0395)。 EFS(HR:0.351、p=0.0047)や R0切除率(NEO群83.3%vs.標準治療群40.0%)も大きな差を認めた。本試験は登録数の制限から統計的限界があるものの、術前GC療法が切除率や生存期間の向上に寄与しうる可能性を示した点で意義深く、今後の大規模前向き試験の展開が強く期待される。一方で現在、本邦では進行・再発胆道がんに対してGC+S-1(GCS)療法とGC+ICI併用療法の治療効果を検討するKHBO2201-YOTSUBA試験が進行中であり、周術期治療への応用が期待される。膵がんPANOVA-3試験:切除不能局所進行膵がんにおける腫瘍治療電場(TTFields)の有効性と安全性(LBA4005)切除不能局所進行膵腺がん(LA-PAC)に対する新たな治療戦略として、腫瘍治療電場(Tumor Treating Fields:TTFields)の有効性が注目を集めた。PANOVA-3試験は、TTFieldsをGEM+nab-PTX(GnP)に追加することで、標準治療単独(GnP)と比較し全生存期間(OS)を有意に延長することを示した初の第III相試験である。本試験は本邦を含む20ヵ国198施設、571例を対象に1対1に割り付けて実施。主要評価項目であるOS中央値はTTFields群16.2ヵ月vs.GnP群14.2ヵ月であり、優越性を示した(HR:0.82、95%CI:0.68~0.99、p=0.039)。副次評価項目では、無痛生存期間(HR:0.74)、遠隔転移PFS(HR:0.74)、QOLにおいてもTTFields群が有意に良好な結果を示した。安全性に関しては、TTFields群で局所の皮膚関連有害事象が多くみられたが、主にGrade1/2で管理可能であり、有害事象でTTFieldsが中止となったのは8.4%であった。TTFieldsは非侵襲的かつ局所的な電場療法であり、がん細胞の分裂阻害効果や抗腫瘍免疫増強効果が報告されている。膠芽腫や悪性胸膜中皮腫・非小細胞肺がんに続く膵がんへの応用が今回初めて本格的に示され、遠隔転移制御効果も示唆された。今後の膵がん治療における集学的治療の一環として、TTFieldsの位置付けが期待される。

4.

EGFR陽性NSCLC、術前オシメルチニブの有用性は?(NeoADAURA)/ASCO2025

 切除可能非小細胞肺がん(NSCLC)において、術前補助療法が治療選択肢となっているが、EGFR遺伝子変異陽性例では病理学的奏効(MPR)がみられる割合が低いと報告されている。そこで、術前補助療法としてのオシメルチニブ±化学療法の有用性を検討する国際共同第III相試験「NeoADAURA試験」が実施されている。米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)において、Jamie E. Chaft氏(米国・メモリアルスローンケタリングがんセンター)が、本試験のMPRの最終解析結果と無イベント生存期間(EFS)の中間解析結果を報告した。本試験において、オシメルチニブ+化学療法、オシメルチニブ単剤は化学療法と比べてMPRを改善したことが示された。本結果はJournal of Clinical Oncology誌オンライン版2025年6月2日号に同時掲載された1)。・試験デザイン:国際共同第III相無作為化比較試験・対象:EGFR遺伝子変異(exon19欠失変異またはL858R変異)陽性の切除可能なStageII~IIIB(AJCC第8版)のNSCLC患者・試験群1(オシメルチニブ+化学療法群):オシメルチニブ(80mg、1日1回、9週以上)+カルボプラチン(AUC5、3週ごと3サイクル)またはシスプラチン(75mg/m2、3週ごと3サイクル)+ペメトレキセド(500mg/m2、3週ごと3サイクル)→手術→医師選択治療 121例・試験群2(オシメルチニブ単剤群):オシメルチニブ(同上)→手術→医師選択治療 117例・対照群(化学療法群):カルボプラチンまたはシスプラチン+ペメトレキセド(いずれの薬剤も同上)→手術→医師選択治療 120例・評価項目:[主要評価項目]MPR[副次評価項目]EFS、病理学的完全奏効(pCR)、N因子のダウンステージング、安全性など 主な結果は以下のとおり。・全体として女性の割合が高く、オシメルチニブ+化学療法群60%、オシメルチニブ単剤群65%、化学療法群75%であった。EGFR遺伝子変異の内訳は、exon19欠失変異/L858R変異が、それぞれ50%/50%、/51%/49%、51%/49%であった。StageII/IIIの割合は、それぞれ49%/51%、50%/50%、51%/49%であり、N因子がN2の割合は、それぞれ39%、35%、34%であった。・手術施行割合は、オシメルチニブ+化学療法群92%、オシメルチニブ単剤群97%、化学療法群93%であり、R0切除は、それぞれ91%、95%、93%であった。いずれの群でも完全切除に至った患者の91%が、術後補助療法でオシメルチニブの投与を受けた。・主要評価項目のMPR割合は、オシメルチニブ+化学療法群26%、オシメルチニブ単剤群25%、化学療法群2%であり、化学療法群と比較してオシメルチニブ+化学療法群(オッズ比:19.8、95%信頼区間[CI]:4.6~85.3、p<0.0001)、オシメルチニブ単剤群(同:19.3、1.7~217.4、p<0.0001)が有意に良好であった。いずれのサブグループにおいても、オシメルチニブ使用群が良好な傾向にあった。・pCR割合は、オシメルチニブ+化学療法群4%、オシメルチニブ単剤群9%、化学療法群0%であった。・ベースライン時にN2であった患者集団において、ダウンステージングが認められた割合は、オシメルチニブ+化学療法群53%、オシメルチニブ単剤群53%、化学療法群21%であった。・12ヵ月EFS率は、オシメルチニブ+化学療法群93%、オシメルチニブ単剤群95%、化学療法群83%であり、化学療法群と比較してオシメルチニブ+化学療法群(ハザード比[HR]:0.50、99.8%CI:0.17~1.41、p=0.0382)、オシメルチニブ単剤群(HR:0.73、95%CI:0.40~1.35)が良好な傾向にあった。しかし、中間解析時の有意水準は0.002であり、統計学的に有意な差ではなかった。本解析時点の成熟度は15%であり、今後も解析が継続される。・術前補助療法において、Grade3以上の有害事象の発現割合は、オシメルチニブ+化学療法群36%、オシメルチニブ単剤群13%、化学療法群33%であった。治療中止に至った有害事象は、それぞれ9%、3%、5%に発現した。 本結果について、Chaft氏は「EGFR遺伝子変異陽性の切除可能なStageII~IIIBのNSCLC患者の治療戦略に、オシメルチニブ±化学療法を組み込むことを検討すべきであることが示された」とまとめた。

5.

子宮頸がん治療の新たな選択肢:チソツマブ ベドチンの臨床的意義/ジェンマブ

 進行・再発子宮頸がん2次治療の新たな選択肢として、ファースト・イン・クラスの抗体薬物複合体(ADC)チソツマブ ベドチン(商品名:テブダック)が注目される。 2025年6月、ジェンマブのプレスセミナーにて、国立がん研究センター中央病院 腫瘍内科の米盛 勧氏が進行・再発子宮頸がんのアンメットニーズと治療戦略について講演した。進行期の子宮頸がんは予後不良 日本において新規に診断される子宮頸がん患者は年間約1万例、近年でも罹患数は微増している。子宮頸がんは早期では比較的予後良好である。5年生存率はI期で9割超、II期でも7割を超える。その一方、進行期では予後不良でStageIIIの5年生存率は5割強、遠隔転移のあるStgeIVBでは3割を切る。選択肢が少ない転移症例の治療 薬物療法が適応となる遠隔転移症例の1次治療には以前からプラチナ(シスプラチンまたはカルボプラチン)+パクリタキセルが用いられる。2014年にベバシズマブの上乗せによる生存成績の改善が認められ、2021年にはPD-1阻害薬ペムブロリズマブが選択肢に加わった。 一方、2次治療はキードラッグとしてイリノテカンが以前から用いられていた。当時の2次治療以降の奏効割合(ORR)は1〜2割、無増悪生存期間(PFS)中央値は2〜3ヵ月(イリノテカンは4.5ヵ月)、全生存期間(OS)中央値は6〜8ヵ月程度だった。その後、2022年に新たなPD-1阻害薬セミプリマブが登場し、12.0ヵ月のOSを示す。とはいえ、2次治療以降はまだ選択肢は少ない。 早期の診断が増えているものの、子宮頸がんはいまだに進行期での初診が多い。予後の悪さと、治療選択肢の少なさは、進行期子宮頸がん治療の大きな課題と言えるだろう。新たな治療選択肢チソツマブ ベドチンの登場 そのような中、本年(2025年)に2次治療の新たな選択肢としてチソツマブ ベドチンが登場した。チソツマブ ベドチンは抗組織因子(TF)を標的とするモノクローナル抗体チソツマブと抗がん剤MMAE(モノメチルアウリスタンE)のADCである。がん細胞表面に発現したTFに結合してMMAEを放出することで抗腫瘍効果を発揮する。 チソツマブ ベドチンの有用性は国際共同第III相innovaTV 301試験で検証されている。同試験では、再発または遠隔転移を有する子宮頸がん患者を対象にチソツマブ ベドチンと化学療法を比較している。その結果、チソツマブ ベドチンのOS中央値は11.5ヵ月と、9.5ヵ月の化学療法群に比べ有意に延長した(ハザード比[HR]:0.70、95%信頼区間[CI]:0.54〜0.89、p=0.0038)。PFS中央値も4.2ヵ月と、化学療法群の2.9ヵ月に比べ有意に延長した(HR:0.67、95%CI:0.54〜0.82、p<0.0001)。ORRについても17.8%と、化学療法群の5.2%に比べ有意な腫瘍縮小を示した(p<0.0001)。注意すべき副作用とその管理 チソツマブ ベドチンはその薬理作用から、従来の薬剤とは異なる副作用プロファイルを示す。「特に注意すべき有害事象」として挙げられるのは眼障害(全Gradeで52.8%)、末梢神経障害(全Gradeで38.4%)、出血(42.0%)である。 眼障害の主なものは結膜炎、角膜炎、ドライアイなど。同剤の眼障害については、投与開始前の眼科医による診察の実施および眼科医との連携の下で使用するよう日本眼科学会も注意喚起している。 従来と異なる新たな作用機序の薬剤を選択できることは、治療戦略を組む中でとても重要なポイントだと米盛氏は述べる。チソツマブ ベドチンという新しい治療選択肢を有効に活用するには、施設内および施設を超えた連携が課題となるであろう。

6.

非小細胞肺がん、術後アテゾリズマブの5年成績(IMpower010)/JCO

 切除後の非小細胞肺がん(NSCLC)患者における化学療法+アテゾリズマブ術後補助療法の5年追跡結果が発表され、ベストサポーティブケア(BSC)に対する無病生存期間(DFS)と全生存期間(OS)の改善が示された。DFSは最終解析、OSは2回目の中間解析の結果で、Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2025年5月30日号での報告。・対象:StageIB~IIIA(AJCC7)で手術後にシスプラチンベースの補助化学療法(最大4サイクル)を受けたNSCLC・試験群:アテゾリズマブ1,200mgを3週ごと16サイクルまたは1年 (507例)・対照群:BSC(498例)・評価項目[主要評価項目]治験医師評価による階層的DFS:(1)PD-L1≧1% StageII~IIIA集団、(2)StageII~IIIA全集団、(3)ITT(StageIB~IIIA全無作為化)集団[副次評価項目]ITT集団のOS、PD-L1≧50% StageII~IIIA集団のDFS、全集団の3年・5年DFS 主な結果は以下のとおり。[DFS]・ITT集団のDFS中央値はアテゾリズマブ群65.6ヵ月、BSC群47.8ヵ月と、有意差は認められなかったもののアテゾリズマブ群で良好な傾向であった(ハザード比[HR]:0.85、95%信頼区間[CI]:0.71~1.01、p=0.07)。・StageII~IIIA全集団のDFS中央値はアテゾリズマブ群57.4ヵ月、BSC群40.8ヵ月であった(HR:0.83、95%CI:0.69~1.00)。・StageII~IIIAでPD-L1≧1%集団のDFS中央値はアテゾリズマブ群68.5ヵ月、BSC群37.3ヵ月とアテゾリズマブ群で良好であった(HR:0.70、95%CI:0.55~0.91)。・StageII~IIIAでPD-L1≧50%集団のDFS中央値はアテゾリズマブ群未到達、BSC群42.9ヵ月とアテゾリズマブ群で良好であった(非層別HR:0.48、95%CI:0.32~0.72)。[OS]・ITT集団でのDFSが有意な差に至らなかったため、OS検証は公式とはならなかった。・ITT集団のOS中央値はアテゾリズマブ群、BSC群とも未到達でHRは0.97(95%CI:0.78~1.22)、StageII~IIIA全集団のOS中央値はアテゾリズマブ群、BSC群とも未到達でHRは0.94(95%CI:0.75~1.19)、StageII~IIIAでPD-L1≧1%集団のOS中央値はアテゾリズマブ群未到達、BSC群87.1ヵ月でHRは0.77(95%CI:0.56~1.06)、StageII~IIIAでPD-L1≧50%集団のOS中央値はアテゾリズマブ群未到達、BSC群87.1ヵ月で非層別HRは0.47(95%CI:0.28~0.77)であった。・5年以上の長期追跡調査においても新たな安全性シグナルは報告されなかった。 これらの結果から、アテゾリズマブを加えた術後補助療法は化学療法のみに比べ、PD-L1陽性のStageII~IIIAの切除後NSCLCに持続的な臨床的ベネフィットをもたらすことが示された。

7.

高リスク頭頸部がん、CRT+ニボルマブの術後補助療法が20年振りの新たな標準治療に(NIVOPOSTOP)/ASCO2025

 高リスクの局所進行(LA)頭頸部扁平上皮がん(SCCHN)に対する術後の標準治療は、長らく補助療法としての化学放射線療法(CRT)であった。しかし、これらの治療にもかかわらず40%以上の患者で再発が認められ、より効果的な治療法が必要とされている。NIVOPOSTOP試験は、術後CRTにニボルマブを追加した群とCRT単独群を比較した試験である。米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)のプレナリーセッションにおいて、Le Centre hospitalier universitaire vaudois(スイス)のJean Bourhis氏が本試験の結果を発表した。・試験:多施設共同無作為化第III相試験・対象:75歳未満、切除後の再発高リスク(術後のリンパ節被膜外浸潤、多発リンパ節転移、多発神経周囲浸潤および/または腫瘍断端陽性)のLA-SCCHN患者・試験群(NIVO群):ニボルマブ240mg→CRT(66Gy 放射線治療+シスプラチン100mg/m2)+ニボルマブ360mg(3週ごと3サイクル)→ニボルマブ480mg(4週ごと6サイクル)332例・対照群(標準治療群):CRT(3週ごと3サイクル)334例・評価項目:[主要評価項目]無病生存期間(DFS)[副次評価項目]全生存期間(OS)、QOL、安全性・データカットオフ:2024年4月30日 主な結果は以下のとおり。・計680例がランダム化され、対象となった666例がNIVO群332例、標準治療群334例に1対1で割り付けられた。追跡期間中央値は30.3ヵ月だった。・3年DFS率は、NIVO群で63.1%(95%信頼区間[CI]:57~68.7)、標準治療群で52.5%(95%CI:46.2~58.4%)だった。・PD-L1陽性患者全体において、NIVO群は標準治療群に比べてDFSが有意に改善されたものの、CPSはDFSと強い相関は示さなかった。・OSは未到達だったものの、NIVO群で改善傾向が認められた。・CRTの遵守率は両群で類似していた。Grade3の有害事象はNIVO群の63.1%、標準治療群の62.4%、Grade4は9.3%と5.2%に発現した。多かった有害事象は両群で類似しており、口内炎、放射線皮膚障害、嚥下障害などであった。 Bourhis氏は「術後CRTにニボルマブを追加した治療は、統計的および臨床的に有意なDFSの改善をもたらした。これは、切除後の再発高リスクLA-SCCHN患者に対し、過去20年間ではじめての新たな標準治療となる可能性があるものだ」とした。

8.

進行尿路上皮がん1次治療、EV+ペムブロリズマブによるCR・PR症例の探索的解析結果(EV-302/KEYNOTE-A39)/ASCO2025

 局所進行または転移を有する尿路上皮がん患者の1次治療において、エンホルツマブ ベドチン(EV)+ペムブロリズマブ併用療法と化学療法の有効性を比較したEV-302/KEYNOTE-A39試験の探索的解析の結果、EV+ペムブロリズマブ群で完全奏功(CR)を達成した患者の割合は化学療法群の約2倍であり、レスポンダー(CR+部分奏功[PR]症例)では適切な用量調整のもとで長期間治療を継続していることが明らかとなった。米国・Cleveland Clinic Taussig Cancer InstituteのShilpa Gupta氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)で発表した。 EV-302/KEYNOTE-A39試験では、EV+ペムブロリズマブ併用療法が化学療法と比較して、無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)を有意に延長したことが報告されている。・対象:未治療の局所進行/転移を有する尿路上皮がん患者(GFR≧30mL/分、ECOG PS≦2)・試験群:EV(1.25mg/kg、3週ごと1・8日目に静脈内投与)+ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと1日目に静脈内投与) 437例・対照群:ゲムシタビン+シスプラチンシスプラチン不適格例ではゲムシタビン+カルボプラチン) 441例・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS、OS[副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性など・層別因子:シスプラチン適格性、PD-L1発現状況、肝転移の有無 主な結果は以下のとおり。・本探索的解析のデータカットオフは2024年8月8日、追跡期間中央値は29.1ヵ月であった。・confirmed ORRは試験群67.5%(295例)vs.対照群44.2%(195例)、confirmed CRは30.4%(133例)vs.14.5%(64例)であった。・試験群のCR+PR症例のベースライン特性はITT集団とおおむね一致しており、年齢中央値が69(37~87)歳、ECOG PS1/2が43.7%/2.0%、肝転移ありが20%、シスプラチン不適格が41.7%であった。・CR+PR症例におけるDOR中央値は、試験群23.3ヵ月(95%信頼区間[CI]:17.8~NE)vs.対照群7.0ヵ月(95%CI:6.2~9.0)であった。・CR+PR症例におけるDOR中央値をシスプラチン適格性ごとにみると、シスプラチン適格患者では試験群24.4ヵ月(95%CI:17.8~NE)vs.対照群8.3ヵ月(95%CI:5.9~10.8)、シスプラチン不適格患者では21.9ヵ月(95%CI:15.7~NE)vs.6.6ヵ月(95%CI:5.5~9.3)であった。・CR+PR症例におけるOS中央値は、試験群39.3ヵ月(95%CI:36.5~NE)vs.対照群32.1ヵ月(95%CI:26.8~NE)で(層別ハザード比[HR]:0.59、95%CI:0.44~0.79)、24ヵ月時点での試験群のCR+PR症例の生存率は76.3%であった。・試験群における治療サイクル中央値は、EVが全体集団:9(1~54)サイクル/CR+PR症例:12(1~54)サイクル/CR症例:13(1~50)サイクル、ペムブロリズマブが全体集団:11(1~35)サイクル/CR+PR症例:17(1~35)サイクル/CR症例:27(1~35)サイクルであった。・試験群におけるGrade3以上の治療関連有害事象(TRAE)発生率は、全体集団:57.3%、CR+PR症例:61.4%、CR症例:61.7%であった。・EVの安全性プロファイルは、全体集団とCR+PR症例でおおむね一致しており、Grade3以上のTRAEとして多くみられたのは、皮疹(全体集団:15.2%、CR+PR症例:17.3%)、高血糖(6.4%、7.5%)、末梢性感覚ニューロパチー(4.8%、6.4%)などであった。・ペムブロリズマブの安全性プロファイルは、全体集団とCR+PR症例でおおむね一致しており、Grade3以上のTRAEとして多くみられたのは、重度の皮膚障害(全体集団:12.3%、CR+PR症例:12.9%)、肺臓炎(3.9%、4.1%)、肝炎(2.0%、2.4%)などであった。・用量調整は全体集団と比較してCR+PR症例でより多く実施されており、CR+PR症例では休薬がEV:69.2%/ペムブロリズマブ:62.4%、EVの減量が53.9%で行われていた。 Gupta氏は「今回のデータは、局所進行または転移を有する尿路上皮がん患者の1次治療として、シスプラチン適格性を含むベースライン特性によらずEV+ペムブロリズマブ併用療法が標準治療であることを支持するものである」とまとめている。

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EGFR-TKI既治療のNSCLC、HER3-DXdの第III相試験結果(HERTHENA-Lung02)/ASCO2025

 EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)による治療歴を有するEGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、patritumab deruxtecan(HER3-DXd)は、無増悪生存期間(PFS)を改善したものの、全生存期間(OS)を改善することはできなかった。米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)において、Tony S. K. Mok氏(中国・香港中文大学)が、国際共同第III相試験「HERTHENA-Lung02試験」の結果を報告した。すでに主要評価項目のPFSが改善したことが報告されており、OSの結果が期待されていた。・試験デザイン:国際共同第III相無作為化比較試験・対象:第3世代EGFR-TKIによる治療歴を有するEGFR遺伝子変異(exon19欠失変異またはL858R変異)陽性の進行NSCLC患者・試験群(HER3-DXd群):HER3-DXd(5.6mg/kg、3週ごと) 293例・対照群(化学療法群):プラチナ製剤を含む化学療法(シスプラチン[75mg/m2、3週ごと4サイクル]またはカルボプラチン[AUC5、3週ごと4サイクル]+ペメトレキセド[500mg/m2、3週ごと])※ 293例・評価項目:[主要評価項目]RECIST v1.1に基づく盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS[主要な副次評価項目]OS[副次評価項目]頭蓋内PFS、安全性、HER3発現状況と有効性の関係など※:クロスオーバーは許容されなかった。 主な結果は以下のとおり。・患者背景は両群でバランスがとれており、脳転移を有する割合はHER3-DXd群43.3%、化学療法群45.1%であった。また、第3世代EGFR-TKIを1次治療で使用した割合は、それぞれ77.1%、77.5%であった。第3世代EGFR-TKIの内訳は、オシメルチニブがそれぞれ90.8%、89.8%を占めた。・主要評価項目のBICRによるPFS中央値は、HER3-DXd群5.8ヵ月、化学療法群5.4ヵ月であり、HER3-DXd群が有意に改善した(ハザード比[HR]:0.77、95%信頼区間[CI]:0.63~0.94、p=0.011)。9ヵ月PFS率は、それぞれ29%、19%であった。・PFSのサブグループ解析では、おおよそ一貫した傾向がみられたが、EGFR遺伝子変異の種類によって治療効果が異なる傾向もみられた。HER3-DXd群の化学療法群に対するHRは、exon19欠失変異を有する集団では0.69であったのに対し、L858R変異を有する集団では0.94であった。・主要な副次評価項目のOS中央値は、HER3-DXd群16.0ヵ月、化学療法群15.9ヵ月であり、両群間に有意差は認められなかった(HR:0.98、95%CI:0.79~1.22)。・奏効率は、HER3-DXd群35.2%、化学療法群25.3%であった。・BICRによる頭蓋内PFS中央値は、HER3-DXd群5.4ヵ月、化学療法群4.2ヵ月であった(HR:0.75、95%CI:0.53~1.06)。・Grade3以上の治療関連有害事象は、HER3-DXd群57.9%、化学療法群46.1%に発現した。治療中断に至った有害事象は、それぞれ11.4%、9.6%に発現し、減量に至った有害事象は、それぞれ32.4%、21.1%に発現した。・独立判定委員会により判定された治療に関連した間質性肺疾患は、HER3-DXd群の4.8%(14例)に発現した(化学療法群は0例)。 本試験のOSの結果に基づき、第一三共は米国におけるHER3-DXdのEGFR遺伝子変異陽性NSCLCに関する承認申請を取り下げたことを発表している。なお、Mok氏は「HER3発現状況などのバイオマーカーと有効性の関係に関する解析は引き続き実施する」と述べた。

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進行尿路上皮がん維持療法、アベルマブ+SGがPFS改善(JAVELIN Bladder Medley)/ASCO2025

 1次化学療法後に病勢進行のない切除不能の局所進行または転移を有する尿路上皮がん患者の維持療法として、アベルマブ+サシツズマブ ゴビテカン(SG)併用療法はアベルマブ単剤療法と比較して無増悪生存期間(PFS)を改善した。米国・Johns Hopkins Greenberg Bladder Cancer InstituteのJeannie Hoffman-Censits氏が、第II相国際共同無作為化非盲検比較試験(JAVELIN Bladder Medley試験)の中間解析結果を米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)で発表した。なお、この内容はAnnals of oncology誌オンライン版5月30日号に同時掲載された。・対象:切除不能の局所進行/転移を有する尿路上皮がん患者(≧18歳、プラチナペースの1次化学療法4~6サイクル後に病勢進行[PD]なし、ECOG PS0/1)・試験群:アベルマブ(800mg、2週ごと)+SG(21日サイクルで1・8日目に10mg/kg) 74例・対照群:アベルマブ単剤 37例・評価項目:[主要評価項目]RECIST 1.1による治験担当医師評価に基づくPFS※、安全性※有効性の境界値はHR≦0.60[副次評価項目]全生存期間(OS)、奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)など・層別因子:1次化学療法開始時の内臓転移の有無 主な結果は以下のとおり。・ベースラインにおける患者特性は、年齢中央値が試験群70(42~85)歳vs.対照群67(53~89)歳、男性が82.4%vs.75.7%、アジア(台湾・韓国)からの参加がともに27.0%、ECOG PS1が31.1%vs.54.1%、PD-L1陽性が27.0%vs.35.1%、1次化学療法開始時の転移部位は内臓転移が50.0%vs.51.4%、1次化学療法レジメンはシスプラチン+ゲムシタビンが55.4%vs.67.6%(そのほかはカルボプラチン+ゲムシタビン)であった。・データカットオフ時点(2024年9月16日)において、試験群では51.4%、対照群では27.0%が試験治療を継続中であった。・治験担当医師評価に基づくPFS中央値は、試験群11.17ヵ月(95%信頼区間[CI]:7.43~NE)vs.対照群3.75ヵ月(95%CI:3.32~6.77)であった(層別ハザード比[HR]:0.49、95%CI:0.31~0.76)。・OS中央値は未成熟なデータであるが、試験群NR(95%CI:15.51~NE)vs.対照群23.75ヵ月(95%CI:18.79~30.82)であった(層別HR:0.79、95%CI:0.42~1.50)。・ORRは試験群24.3%(CR:6.8%、PR:17.6%) vs.対照群2.7%(CR:2.7%、PR:0%)、DORは11.9ヵ月vs.NEであった。・Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)の発生は、試験群69.9%vs.対照群0%であった。試験群におけるGrade3以上のTRAEで多くみられたのは、アベルマブ関連が疲労(4.1%)、下痢(2.7%)、SG関連が好中球減少症(39.7%)、好中球数減少(23.3%)、下痢(12.3%)などであった。試験群において、SG関連AE(敗血症および汎血球減少によるくも膜下出血)による死亡が1例確認された。 Hoffman-Censits氏は今回の結果から、「アベルマブと抗Trop-2抗体薬物複合体の組み合わせは、進行尿路上皮がんの転帰を改善する有望な戦略となる可能性がある」としている。

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局所進行上咽頭がんの1次治療、補助化学療法+CCRT vs.CCRT/BMJ

 N2~3期の上咽頭がん患者において、同時併用化学放射線療法(CCRT)の前にドセタキセル+シスプラチンによる補助化学療法(NACT)を4サイクル行うことにより、CCRTのみ行った場合と比較し、遠隔転移のリスクが低下するとともに全生存期間が改善し、毒性は管理可能であることが示された。中国・中山大学がんセンターのWei-Hao Xie氏らが、中国の3次医療機関6施設で実施した第III相無作為化比較試験の結果を報告した。局所進行上咽頭がんに対する補助化学療法+同時併用化学放射線療法の有効性は確立されていなかった。BMJ誌2025年4月15日号掲載の報告。主要評価項目は、5年DMFS率とOS率 研究グループは、未治療のT1~4/N2~3/M0上咽頭がんと病理診断された70歳以下の患者を、CCRT群またはNACT+CCRT群に、N病期で層別化して1対1の割合で無作為に割り付けた。 NACT+CCRT群では、1サイクル3週間としてドセタキセル75mg/m2を1日目に、シスプラチン37.5mg/m2を2~3日目に、最大4サイクル投与することとし、最初の2サイクルで完全奏効または部分奏効が得られた患者はさらに2サイクル投与した後、CCRTを行った。CCRTは、強度変調放射線治療(IMRT)とシスプラチン40mg/m2の週1回静脈内投与とした。 主要評価項目は、中央判定による5年間の無遠隔転移生存(DMFS)率および全生存(OS)率とし、ITT解析を行った。安全性については、NACT、CCRT、および全期間中のGrade3以上の急性毒性の発現、ならびに登録から5年後の晩期毒性を評価した。5年DMFS率は91.3%vs.78.2%、5年OS率は90.3%vs.82.6% 2016年2月23日~2019年2月18日に192例が登録され、同意を撤回した6例を除く186例が無作為化された(NACT+CCRT群93例、CCRT群93例)。 追跡期間中央値76.9ヵ月(四分位範囲:65.4~85.9)において、遠隔転移はNACT+CCRT群で9例(10%)、CCRT群で20例(22%)に認められ、5年DMFS率はそれぞれ91.3%(95%CI:85.4~97.2)、78.2%(95%CI:69.8~86.6)であり、NACT+CCRT群が有意に高かった(ハザード比[HR]:0.41、95%信頼区間[CI]:0.19~0.87、p=0.02)。 また、死亡はNACT+CCRT群9例(10%)、CCRT群22例(24%)に認められ、5年OS率はそれぞれ90.3%(95%CI:84.2~96.4)、82.6%(75.0~90.2)であった(HR:0.38、95%CI:0.18~0.82、p=0.01)。 Grade3/4の急性毒性は、NACT+CCRT群で60例(65%)とCCRT群で46例(51%)に観察された(p=0.05)。主なGrade3/4の急性毒性は、白血球減少症(NACT+CCRT群46例[50%]vs.CCRT群26例[29%]、p=0.004)、好中球減少症(43例[47%]vs.10例[11%]、p<0.001)であった。晩期毒性はいずれも両群間で有意差は認められなかった。

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間質性肺炎合併肺がん、薬物療法のポイント~ステートメント改訂/日本呼吸器学会

 2017年10月に初版が発行された『間質性肺炎合併肺癌に関するステートメント』について、2025年4月に改訂第2版が発行された。肺がんの薬物療法は、数多くの分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬(ICI)、抗体薬物複合体(ADC)が登場するなど、目覚ましい進歩を遂げている。そのなかで、間質性肺炎(IP)を合併する肺がんの治療では、IPの急性増悪が問題となる。そこで、近年はIP合併肺がんに関する研究も実施され、エビデンスが蓄積されつつある。これらのエビデンスを含めて、本ステートメントの薬物療法のポイントについて、池田 慧氏(神奈川県立循環器呼吸器病センター)が第65回日本呼吸器学会学術講演会で解説した。NSCLCへの細胞傷害性抗がん薬 細胞傷害性抗がん薬によるIP合併非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療の中心は、カルボプラチンに(nab-)パクリタキセルまたはS-1を併用するレジメンである。これは、本邦で実施された複数の前向き研究や後ろ向き研究の多数例の報告に基づき、比較的安全に投与可能と判断されることによるものである。一方で2次治療以降の検討は少なく、標準治療は確立していない。これについて、池田氏は「後ろ向きの報告から、S-1が比較的安全に投与可能と判断され、用いられているのではないか」と述べた。 IP合併肺がん患者への細胞傷害性抗がん薬の使用について、『特発性肺線維症の治療ガイドライン2023(改訂第2版)』では投与を提案しているが(推奨の強さ:2、エビデンスの強さ:C[低])、「一部の患者には合理的な選択肢でない可能性がある」ことも記載されている。そのため、池田氏は急性増悪のリスク評価が重要であると述べる。リスク評価については、後ろ向き研究においてHRCTでの線維化範囲の広さ、UIP(通常型間質性肺炎)パターン、%FVC(努力肺活量の予測値に対する実測値の割合)低値、%DLco≦50%などが急性増悪のリスク因子として挙げられている。また、ILD-NSCLC-GAPスコア/modified GAPスコア、Glasgow Prognostic Scaleが急性増悪のリスク評価に有用である可能性も報告されている。ただし、確立されたリスク評価方法は存在せず、本ステートメントでは「治療前に急性増悪発症リスクを評価する方法は複数提案されているが確立していない」としている。SCLCへの細胞傷害性抗がん薬 IP合併小細胞肺がん(SCLC)について、本ステートメントの作成にあたり検索に含まれた介入研究は、国内の17例を対象としたカルボプラチン+エトポシドのパイロット試験のみである。本試験では、急性増悪の発現割合は5.9%と比較的低かったことが報告されている。また「びまん性肺疾患に関する調査研究」班(びまん班)の調査では、急性増悪の発現割合がカルボプラチン+エトポシドで3.7%、シスプラチン+エトポシドで11.0%であったことも報告されている。以上から、本ステートメントでは「プラチナ製剤とエトポシド併用療法がIP合併症例においても標準的治療とするコンセンサスが得られている」としている。分子標的薬 EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)のゲフィチニブ、エルロチニブ、オシメルチニブは、既存肺のIPが肺臓炎発現のリスク因子となることが報告されている。これらのことから、『特発性肺線維症の治療ガイドライン2023(改訂第2版)』では、IP合併肺がんに対して分子標的薬を投与しないことを推奨または提案するとされている。ただし、池田氏は「実際のところ、EGFR-TKI以外の分子標的薬については、既存肺のIPと肺臓炎リスクの関連は十分に検討されていない」と指摘する。近年では、KRAS、BRAF、METなどを標的とする分子標的薬が登場しており、これらの分子の遺伝子異常を有する患者には喫煙者が多いことから、肺気腫や間質性肺炎の合併が多い可能性も考えられる。そこで、びまん班が「間質性肺炎合併非小細胞肺癌におけるドライバー遺伝子変異/転座検索の実態と分子標的治療薬の安全性・有効性に関する多施設共同後方視的研究」を実施しており、すでに1,250例を超える症例が集積されているとのことである。池田氏は「かなり興味深い結果になっていることが期待され、近いうちに学会でデータを示し、IP合併肺がん患者でもドライバー遺伝子変異を調べることの意義を共有したい」と述べた。抗線維化薬 特発性肺線維症(IPF)合併NSCLC患者を対象に、カルボプラチン+nab-パクリタキセルへのニンテダニブの上乗せ効果を検討した国内第III相無作為化比較試験「J SONIC試験」では、主要評価項目であるIPF無増悪生存期間(PFS)の優越性は示せなかったものの、非扁平上皮がんに限定するとPFSとOSの延長傾向がみられた。また、IPF合併SCLC患者を対象とした国内第II相試験「NEXT SHIP試験」では、カルボプラチン+エトポシドにニンテダニブを上乗せすることで、間質性肺炎の急性増悪の発現割合を3.0%に抑制したことが報告されている。以上から、ニンテダニブはIP合併の非扁平上皮NSCLC、SCLCにおいて抗線維化作用と抗腫瘍作用の双方を期待でき、1次治療の選択肢の1つになる可能性がある。ADC、モノクローナル抗体 HER2を標的とするADCのトラスツズマブ デルクステカンは肺臓炎の発現が多く、胃がんの市販後調査では既存肺のIPが肺臓炎リスク因子となることが報告されている。そのため、本ステートメントではIP合併肺がんでの使用に際して注意が必要であることが記載されている。ICI ICIは、予後不良なIP合併進行肺がん患者に長期生存をもたらしうる現状で唯一の治療選択肢である。しかし、複数の観察研究において、既存肺に間質性肺疾患を有する場合は免疫関連有害事象(irAE)としての肺臓炎の発現割合が高いことが報告されている。そのため、IP合併肺がん患者へICIを投与する場合は肺臓炎リスクの低い患者の絞り込みが重要となる。 そこで、本邦では複数の介入研究が実施されている。HAVクライテリア(蜂巣肺なし、自己抗体なし、%VC[肺活量の予測値に対する実測値の割合]≧80%)を満たす軽症のIPを合併した肺がん患者に対してICIを投与することで、肺臓炎の発現が抑制されることが示唆されている。一方、HAVクライテリアより緩い基準(蜂巣肺を許容、%FVC≧70%など)で実施した試験では、Grade3以上の肺臓炎が23.5%に認められている。これらの結果を受け、本ステートメントでは「既存肺に蜂巣肺を有すると判断された症例に関しては、とくに肺臓炎のリスクが高いものとして慎重な姿勢で臨むべきである」ことが記載されている。また、これらの結果について、池田氏は「軽症のIPであれば比較的安全な可能性があるが、蜂巣肺を有している場合は、現状の介入研究のデータをみると肺臓炎リスクが高い可能性が示唆されている。ただし、有効性に関する良好なデータも示されており、細胞傷害性抗がん薬では長期生存が見込めない予後不良な集団であることも考慮すると、現状ではICIはIP合併肺がんに対して長期生存をもたらしうる唯一の選択肢であるため、リスクベネフィットを患者に共有し、一緒に考えながら治療を選択していく必要がある」と述べた。

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局所進行上咽頭がん、化学放射線療法後のcamrelizumabが有効/JAMA

 局所進行上咽頭がん(NPC)の化学放射線療法後の補助療法として、camrelizumabの投与は無イベント生存(EFS)を有意に改善し毒性も管理可能であり、有用性が確認されたことを、中国・中山大学がんセンターのYe-Lin Liang氏らが中国の11施設で実施した第III相無作為化非盲検試験「DIPPER試験」の結果として報告した。NPC患者の約20~30%は、根治的化学放射線療法の施行にもかかわらず再発する。抗PD-1抗体のcamrelizumabは、再発または転移のあるNPCに対する有用性は示されているが、局所進行NPCにおける有用性は不明であった。JAMA誌オンライン版2025年3月13日号掲載の報告。化学放射線療法が完了した局所進行NPC患者が対象、camrelizumabと標準治療を比較 研究グループは、2018年8月~2021年11月に、ゲムシタビン+シスプラチンによる導入化学療法、続いてシスプラチン併用放射線療法を完了したT4/N1/M0またはT1~4/N2~3/M0の局所進行NPCで、18~65歳、ECOG PS 0~1の患者を対象とした。 被験者450例を、補助療法としてcamrelizumabを投与する群(200mg静脈内投与を3週ごと1回で12サイクル、226例)または経過観察群(標準治療群、224例)に1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目は、EFS(遠隔転移、局所再発、または全死因死亡が発生するまでの期間)で、副次評価項目は無遠隔転移生存、無局所再発生存、全生存期間、安全性、および健康関連QOLなどとした。 追跡調査終了日は2024年3月20日であった。camrelizumab群で疾患再発または死亡リスクが44%減少 無作為化された450例の患者背景は、平均年齢45(SD 10)歳、女性24%、207例(46.0%)がT4期、142例(31.6%)がN3期、311例(69.1%)がIVA期などであった。 追跡期間中央値39ヵ月(四分位範囲:33~50)において、3年EFS率はcamrelizumab群86.9%に対し、標準治療群は77.3%であり、camrelizumab群で有意な延長が認められた(層別ハザード比:0.56、95%信頼区間:0.36~0.89、p=0.01)。 Grade3/4の有害事象は、camrelizumab群で23例(11.2%)、標準治療群で7例(3.2%)が報告された。camrelizumab群の主な有害事象は反応性毛細血管内皮増殖で、発現割合はGrade1/2が85.8%、Grade3/4が2%であった。camrelizumab群で治療に関連したQOLの有意な低下は認められなかった。

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切除不能進行胃がんに対するPD-L1抗体sugemalimab+化学療法の有用性(解説:上村直実氏)

 食道胃接合部腺がんを含む手術不能な進行胃がんに対する第1選択の薬物療法とは、従来、5-FUを代表とするフッ化ピリミジン系薬剤とシスプラチンなどのプラチナ系薬剤の併用療法が標準化学治療となっていた。最近、細胞増殖に関わるHER2遺伝子の有無により、HER2陽性胃がんに対しては抗HER2抗体であるトラスツズマブ(商品名:ハーセプチン)を追加した3剤併用レジメンが第1選択の標準治療として推奨されており、さらに免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を追加した4剤併用療法の有用性も報告されている。一方、胃がんの80%を占めるHER2陰性胃がんに対しては、標準化学療法にICIであるPD-1(programmed cell death-1)抗体薬であるニボルマブ(同:オプジーボ)やペムブロリズマブ(同:キイトルーダ)を加えた3剤併用療法が第1選択の標準治療レジメンとして確立し、さらにHER2陰性かつClaudin(CLDN)18.2陽性胃がんに対してはCLDN18.2を標的とした抗体薬(ゾルベツキシマブ)も承認されている。このように、手術不能進行胃がんに対する薬物療法が劇的に変化している。 未治療の切除不能な局所進行または転移を有する胃・食道胃接合部腺がんの治療に対して、PD-L1の複合発現スコア(CPS)が5以上の高値を示すアジア人の患者を対象として、標準化学療法単独とPD-L1抗体薬であるsugemalimabの併用を比較した海外無作為化試験が施行された結果、sugemalimab併用の全生存率(OS)中央値15.6ヵ月がプラセボ群の12.6ヵ月に比べて有意に延長していた。とくにCPSが10以上の高値を示す症例のOSはさらに延長していた(2025年2月のJAMAオンライン)。 ICIに関しては、2018年にノーベル賞を受賞した京都大学の本庶 佑博士と米国テキサス大学のジェームズ・P・アリソン博士がそれぞれに発見したPD-1遺伝子とCTLA-4(細胞殺傷性Tリンパ球抗原4)に対する抗体に続いて今回報告されたPD-L1の抗体薬が開発されている。それぞれのICIは異なる機序を有しており、ほかにも新たなICIが次々と開発されつつあるのが現状である。 ICIに関する課題も判明しつつある。すなわちICIが有効性を示す患者もいる一方、効果のない患者もあり、さらに重篤な副作用の出現を認める症例も報告されていることから、今回使用された腫瘍細胞のPD-L1の発現量を示すCPSなど、実際の治療に対する反応性を予測するバイオマーカーの確立が急務であろう。なお、2024年に日本胃癌学会はバイオマーカーとしてHER2、PD-L1、MSI/MMR、CLDN18の4検査を同時に実施することを推奨している。 今後、切除不能胃がんに対する1次治療にICIを含むレジメンが一般的になるものと思われる。わが国において胃がんに対して使用されるICIはニボルマブやペムブロリズマブなどのPD-1抗体が主流であるが、今回の報告から近いうちにPD-L1抗体も臨床の現場に現れると思われる。

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進行食道がんへのニボルマブ+イピリムマブ、ニボルマブ+化学療法の日本人長期追跡データ(CheckMate 648)/日本臨床腫瘍学会

 CheckMate 648試験は、未治療の根治切除不能・進行再発食道扁平上皮がんを対象に、シスプラチン+5-FUの化学療法を対照として、ニボルマブ+化学療法、ニボルマブ+イピリムマブの優越性を報告した試験である。この試験の結果をもって両レジメンは「食道癌診療ガイドライン 2022年版」においてエビデンスレベルAで推奨されている。第22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)のPresidential Sessionでは、虎の門病院の上野 正紀氏が、本試験の日本人サブグループにおける45ヵ月の長期フォローアップデータを報告した。・試験デザイン:国際共同ランダム化第III相試験・対象:未治療の進行再発または転移食道扁平上皮がん(ESCC)、ECOG PS 0~1・試験群:1)ニボ+イピ群:ニボルマブ(3mg/kg)+イピリムマブ(1mg/kg)2)ニボ+ケモ群:ニボルマブ(240mg)+化学療法(シスプラチン+5-FU)ニボルマブおよびイピリムマブは最長2年間投与3)ケモ群:化学療法単独(シスプラチン+5-FU)[主要評価項目]PD-L1(TPS)≧1%の患者における全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]全体集団のOS・PFS、奏効率(ORR) 主な結果は以下のとおり。・ITT集団970例中日本人は394例で、ニボ+イピ群に131例、ニボ+ケモ群に126例、ケモ群に137例が割り当てられた。いずれの群でもTPS≧1の患者はほぼ半数だった。データカットオフ(2023年10月27日)時点における追跡期間中央値は45.1ヵ月だった。・日本人のTPS≧1集団におけるOS中央値は、ニボ+イピ群20.2ヵ月(95%信頼区間[CI]:14.6~26.6)、ニボ+ケモ群17.9ヵ月(95%CI:12.1~26.6)と、ケモ群9.0ヵ月(95%CI:7.5~11.1)に対し、いずれも統計学的有意に上回った(ニボ+イピ群のケモ群に対するハザード比[HR]:0.46、ニボ+ケモ群のHR:0.58)。TPS≧1集団における48ヵ月時点の全生存率はニボ+イピ群30%、ニボ+ケモ群18%、ケモ群9%だった。・日本人の全集団におけるOS中央値は、ニボ+イピ群17.6ヵ月(95%CI:12.7~22.8)、ニボ+ケモ群15.5ヵ月(95%CI:12.1~19.3)と、ケモ群の11ヵ月(95%CI:9.1~14.0)に対し、いずれも有意に上回った(ニボ+イピ群のケモ群に対するHR:0.67、ニボ+ケモ群のHR:0.81)。・治療開始から18週時点におけるORRが高いレスポンダー群とそれ以外の群に分けた解析では、レスポンダー群はフォローアップ期間を通じて長期に予後が改善する傾向が示された。この傾向はニボ+イピ群、ニボ+ケモ群に共通していた。・Grade3~4の治療関連有害事象はニボ+イピ群37%、ニボ+ケモ群49%、ケモ群36%で発生した。 上野氏は「日本人集団はPD-L1発現にかかわらず、ニボ+イピ群・ニボ+ケモ群共に、ITT集団と同様、一部はそれを上回る改善を示した。有害事象も既報のものと一致していた。この解析結果は進行再発ESCCの1次治療としてニボ+イピ、ニボ+ケモの両レジメンが日本人においても標準治療であることを裏付けるものだ」とまとめた。 現在のガイドラインにおいては、進行再発ESCCの1次治療にはニボルマブ+イピリムマブ、ニボルマブ+化学療法に加え、ペムブロリズマブ+化学療法の3レジメンが同等の推奨とされている。これらの使い分けについて上野氏は「ニボ+ケモは腫瘍縮小効果が出るまでが速い一方で、ニボ+イピは奏効すれば長期に予後を改善できる可能性がある。患者さんの年齢や全身状態によって『少し待てる』場合であればニボ+イピ、そうでない場合はニボ+ケモを選択するのが1つの考え方だ。またニボ+ケモは入院加療となる一方、ニボ+イピは外来対応が可能だ。そうした点も踏まえ、患者さんごとに判断している」とした。

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ALK陽性NSCLCへの術後アレクチニブ、日本人サブグループ解析(ALINA)/日本臨床腫瘍学会

 ALK阻害薬アレクチニブは、2024年8月28日に「ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺癌における術後補助療法」に対する適応追加承認を取得している。本承認は、ALK融合遺伝子陽性完全切除非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象に実施された国際共同第III相試験「ALINA試験」1)の結果に基づくものである。本試験の用量は、切除不能な進行・再発ALK融合遺伝子陽性NSCLCに対する承認用量(1回300mg、1日2回)の2倍量となる1回600mg、1日2回であり、日本人集団における安全性や薬物動態に関する解析が求められていた。そこで、ALINA試験の日本人集団の有効性、安全性、薬物動態について解析が行われ、堀之内 秀仁氏(国立がん研究センター中央病院)が第22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)で結果を報告した。・試験デザイン:国際共同第III相非盲検無作為化比較試験・対象:未治療の切除可能なStageIB〜IIIA(UICC/AJCC第7版)のALK融合遺伝子陽性NSCLC患者・試験群(アレクチニブ群):アレクチニブ(1回600mg、1日2回、2年間または再発まで) 130例(日本人15例)・対照群(化学療法群):シスプラチン(不耐の場合はカルボプラチンに変更可能)+ペメトレキセドまたはビノレルビンまたはゲムシタビン(3週ごと4サイクルまたは再発まで) 127例(日本人20例)・評価項目:[主要評価項目]無病生存期間(DFS)[その他の評価項目]中枢神経系再発に対するDFS、全生存期間、安全性など[薬物動態解析]アレクチニブとその主要代謝物の血漿中薬物濃度 今回は日本人集団の結果が報告された。主な結果は以下のとおり。・日本人集団の患者背景は全体集団と同様であったが、病期についてStageIBの患者は含まれなかった。StageIB/II/IIIAの割合は、アレクチニブ群0%/13%/87%(全体集団:11%/36%/53%)、化学療法群0%/35%/65%(同:9%/35%/55%)であった。・DFSイベントはアレクチニブ群27%(4例)、化学療法群35%(7例)に認められた(ハザード比:0.47、95%信頼区間:0.13~1.67[全体集団では、同:0.24、0.13~0.43])。・アレクチニブとその主要代謝物の薬物動態パラメータ(Tmax、Cmax、AUC0-8h)について、ALINA試験の日本人集団とALEX試験(切除不能な進行・再発ALK融合遺伝子陽性NSCLC患者を対象とした海外第III相試験)の非日本人集団を比較した結果、いずれも両集団に有意差はみられなかった。・アレクチニブとその主要代謝物のトラフ濃度について、ALINA試験の日本人集団と非日本人集団を比較した結果、両集団に有意差はみられなかった。・日本人集団の安全性の結果は、全体集団と同様であった。日本人集団の全例に少なくとも1件の有害事象が認められたが、その多くはGrade1~2であった。Grade3~4の有害事象はアレクチニブ群33%(5/15例)、化学療法群40%(8/20例)に認められた。・投与中止に至った有害事象は、化学療法群が10%(2/20例)に発現したが、アレクチニブ群は0例であった。ただし、日本人集団ではアレクチニブ群の有害事象による減量が53%(8/15例)と高率であり(全体集団は26%[33/128例])、用量強度(dose intensity)中央値は日本人集団では75%であった(全体集団は99%)。減量に至った有害事象の内訳はCPK増加(2例)、ALT増加、AST増加、血中ビリルビン増加、便秘、湿疹、倦怠感、筋骨格硬直、斑状丘疹状皮疹(各1例)であった。 本結果について、堀之内氏は「日本人患者に対してアレクチニブを1回600mg、1日2回投与した結果、薬物動態パラメータは非日本人集団と同様であった。DFSについて、全体集団と同様に日本人集団でもアレクチニブ群が良好な傾向にあった。日本人患者に対するアレクチニブ1回600mg、1日2回投与は忍容性が良好であり、新たな安全性に関する懸念は認められなかった。日本人集団の安全性のデータは、全体集団と同様であった」とまとめた。本試験の日本人集団でアレクチニブの減量が多かったことについて、「日本では1回300mg、1日2回の用量での使用に慣れていることから、有害事象が発現した際に減量に至りやすかったのではないかと考えている」と考察した。 本発表後に実施されたプレスリリースセッションでは、有害事象発現時の対応について、堀之内氏は「海外では減量ではなく中断して再開することで、有害事象の管理が可能である場合も存在することが知られており、本試験でも全体集団では減量の前にまず中断して経過をみられている事例が報告されている。有害事象発現時には、まずは中断し、それでも管理が難しい場合に減量とするのが良いのではないか」と考えを述べた。

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ASCO-GI 2025会員レポート

レポーター紹介2025年1月23~25日に米国臨床腫瘍学会消化器がんシンポジウム(ASCO-GI 2025)が米国・サンフランシスコで開催された。東北大学・腫瘍内科の笠原 佑記氏(上部消化器がん担当)と大内 康太氏(下部消化器がん担当)が重要演題をピックアップし、結果を解説する。食道がんPhase II study of neoadjuvant chemotherapy with fluorouracil, leucovorin, oxaliplatin and docetaxel for resectable esophageal squamous cell carcinoma.(abstract#418)切除可能な局所進行食道扁平上皮がんに対する、フルオロウラシル、ロイコボリン、オキサリプラチン、ドセタキセル(FLOT療法)による術前化学療法の安全性と有効性を評価した、日本発の第II相多施設共同試験の結果が報告された。病理学的奏効率(pRR)は43.4%(95%信頼区間[CI]:29.8~57.7、p=0.00002)であり、主要評価項目を達成した。また、R0切除率は83.0%、病理学的完全奏効率(pCR)は13.2%と良好な結果が得られた。とくに注目すべき点として、DCF(ドセタキセル+シスプラチン+5-FU)療法で課題とされる発熱性好中球減少症の発生率が1.9%と相対的に低かったことが挙げられる。これにより、FLOT療法は効果と安全性のバランスに優れた新たな治療選択肢となりうる可能性が示された。胃がんNivolumab (NIVO) + chemotherapy (chemo) vs chemo as first-line (1L) treatment for advanced gastric cancer/gastroesophageal junction cancer/esophageal adenocarcinoma (GC/GEJC/EAC): 5-year (y) follow-up results from CheckMate 649.(abstract#398)ニボルマブ+化学療法の有効性と安全性について、CheckMate 649試験の5年フォローアップデータが報告された。PD-L1 CPS≧5の患者群における全生存期間(OS)中央値は、ニボルマブ+化学療法群で14.4ヵ月(95%CI:13.1~16.2)、化学療法単独群で11.1ヵ月(95%CI:10.1~12.1)であり、ハザード比(HR)は0.71(95%CI:0.61~0.82)であった。60ヵ月時点の生存割合は、ニボルマブ+化学療法群で16%、化学療法単独群で6%であった。昨年のASCO-GI 2024で報告された48ヵ月時点での生存割合(それぞれ17%、8%)と比較すると、ニボルマブ併用により生存率の改善と長期奏効がもたらされていることが示唆される。本試験の結果は、CheckMate 649試験が胃がんの1次治療の標準を大きく変えた重要な試験であることをあらためて認識させるものであった。Final analysis of the randomized phase 2 part of the ASPEN-06 study: A phase 2/3 study of evorpacept (ALX148), a CD47 myeloid checkpoint inhibitor, in patients with HER2-overexpressing gastric/gastroesophageal cancer (GC).(abstract#332)HER2陽性胃・食道胃接合部がんの2次・3次治療における、抗CD47抗体evorpacept併用療法の有効性と安全性を評価した第II相無作為化比較試験(ASPEN-06)の結果が報告された。evorpaceptは、CD47に対する高い親和性を持ちつつ、不活性化されたFc領域を有することで、従来のCD47阻害による課題の1つであった赤血球減少を回避しながら、抗体依存性細胞貪食(ADCP)を増強することが可能な薬剤である。本試験では、トラスツズマブ+ラムシルマブ+パクリタキセル(TRP群)と、これにevorpaceptを併用した群(Evo-TRP群)に患者を無作為に割り付けた。奏効率(ORR)は、Evo-TRP群で40.3%、TRP群で26.6%であり、主要評価項目であるヒストリカルコントロール(ラムシルマブ+パクリタキセル療法、想定奏効率30%)との比較では統計学的有意差を示すことはできなかった(p=0.095)。しかしながら、治療前の生検にてHER2陽性が確認された患者に限定すると、Evo-TRP群の奏効率は54.8%と高く、evorpaceptが抗HER2療法の効果を高める可能性が示唆された。evorpaceptは、その作用機序からトラスツズマブ以外の抗体薬との併用においても抗腫瘍効果の増強が期待できる薬剤であり、今後のさらなる臨床応用の発展が期待される。大腸がんASCO-GI 2025では、切除不能大腸がんにおけるTargeted TherapyとImmunotherapyの双方においてPractice changingな発表が行われた。本稿では3つの注目演題を中心に報告する。BREAKWATER: Analysis of first-line encorafenib + cetuximab + chemotherapy in BRAF V600E-mutant metastatic colorectal cancer.(abstract#16)1つ目の注目演題は、BRAF V600E変異を有する未治療の切除不能大腸がん患者を対象に実施されたBREAKWATER試験である。 BRAF V600E変異陽性大腸がんに対しては、BEACON試験(Kopetz S, et al. N Engl J Med. 2019;381:1632-1643.)の結果から、現在は2次治療あるいは3次治療でエンコラフェニブ+セツキシマブ(EC)の2剤併用療法もしくはエンコラフェニブ+セツキシマブ+ビニメチニブの3剤併用療法が標準治療として用いられている。2剤併用療法と3剤併用療法の使い分けについては、BEETS試験(abstract#164)の結果から2剤併用療法の有用性が示されたが、3ヵ所以上の遠隔転移など予後不良因子を有する群においては3剤併用療法が有用である可能性が示唆された。今回報告されたBREAKWATER試験は、 BRAF V600E変異陽性の切除不能大腸がんに対する1次治療として、EC±化学療法と標準治療を比較した非盲検多施設共同第III相試験である。本試験は当初、EC群、EC+mFOLFOX6併用療法群もしくは標準治療群の3群に割り付けを行う試験デザインで開始されたが、その後EC+mFOLFOX6併用療法群もしくは標準治療群の2群に1対1で割り付ける試験デザインに変更された。2022年の欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2022)では、Safety Lead-inパートにおける忍容性とPK(薬物動態)の解析結果に加え、少数例での予備的なデータではあるが有望な抗腫瘍効果が示され、注目を集めていた。ASCO-GI 2025では、主要評価項目の1つであるEC+mFOLFOX6併用療法群および標準治療群における盲検下独立中央判定(BICR)による奏効率の主解析結果、OSの中間解析結果および安全性に関する報告が行われた。EC+mFOLFOX6併用療法群に236例が、標準治療群に243例が無作為に割り付けられ、原発巣占居部位を含む患者背景に有意な偏りは認めなかった。データカットオフ時点での確定奏効率は、EC+mFOLFOX6併用療法群が標準治療群に比べて有意に高い結果であった(60.9%vs. 40.0%、オッズ比:2.443[95%CI:1.403~4.253]、p=0.0008)。中間解析時点でのOSの中央値は、EC+mFOLFOX6併用療法群で未到達(95%CI:19.8~NE)、標準治療群で14.6ヵ月(95%CI:13.4~NE)であり、immatureではあるがHR:0.47(95%CI:0.318~0.691)という驚くべき数値をもってEC+mFOLFOX6併用療法群で有意に延長していた(p=0.0000454)。Grade3/4の治療関連有害事象(TRAE)発現割合は、EC+mFOLFOX6併用療法群で69.7%、標準治療群で53.9%であり、安全性のプロファイルはこれまで報告されているものと一致していた。以上の結果を受け、FDA(米国食品医薬品局)は2024年12月に BRAF V600E変異陽性の切除不能大腸がんの1次治療としてエンコラフェニブ+セツキシマブ+mFOLFOX6併用療法を迅速承認しており、本邦においても承認が待たれる。また、今後は BRAF阻害薬がfrontlineで投与される可能性が高いことから、 BRAF阻害薬を含む治療に耐性となった BRAF V600E変異陽性切除不能大腸がんに対する2次治療以降の治療戦略の開発にも注目していきたい。First results of nivolumab (NIVO) plus ipilimumab (IPI) vs NIVO monotherapy for microsatellite instability-high/mismatch repair-deficient (MSI-H/dMMR) metastatic colorectal cancer (mCRC) from CheckMate 8HW.(abstract#LBA 143)2つ目の注目演題は、CheckMate-8HW試験である。MSI-HまたはdMMRの切除不能大腸がんに対する免疫チェックポイント阻害薬(ICI)として、現行のガイドライン(『大腸癌治療ガイドライン医師用 2024年版』大腸癌研究会編)では、第III相試験(KEYNOTE-177試験)の結果から1次治療においてはペムブロリズマブ単剤療法が、第II相試験(KEYNOTE-164試験、CheckMate 142試験)の結果からICI未投与の既治療例においてはペムブロリズマブ単剤療法、ニボルマブ(Nivo)単剤療法もしくはイピリムマブ+ニボルマブ(Ipi+Nivo)併用療法がそれぞれ強く推奨されている。しかし、Nivo単剤療法とIpi+Nivo併用療法とを直接比較した試験はこれまでに行われていなかった。CheckMate-8HW試験は、ICI未投与のMSI-H/dMMR切除不能大腸がんを対象として、Ipi+Nivo併用療法の有効性と安全性をNivo単剤療法または医師選択化学療法と比較検討した多施設共同非盲検第III相試験である。昨年開催されたASCO-GI 2024では、本試験の主要評価項目の1つである1次治療におけるIpi+Nivo併用群と医師選択化学療法群とを比較したBICRの評価による無増悪生存期間(PFS)の解析結果が報告され、HR:0.21(95%CI:0.13~0.35)と大きなインパクトを伴ってIpi+Nivo併用群で有意にPFSが延長していた。ASCO-GI 2025では、もう1つの主要評価項目である、全治療ラインにおけるIpi+Nivo併用群とNivo単剤群とを比較したBICRの評価によるPFSの解析結果、および安全性に関する報告が行われた。Ipi+Nivo併用群に354例が、Nivo単剤群に353例が無作為に割り付けられ、PD-L1発現状態や遺伝子異常を含む患者背景に有意な偏りは認めなかった。データカットオフ時点でのPFSの中央値は、Ipi+Nivo併用群で未到達(53.8~NE)、Nivo単剤群で39.3ヵ月(22.1~NE)であり、Ipi+Nivo併用群で有意に延長していた(HR:0.62、95%CI:0.48~0.81、p=0.0003)。BICRに基づく確定奏効率は、Ipi+Nivo併用群で71%(95%CI:65~76)、Nivo単剤群で58%(95%CI:52~64)であり、有意にIpi+Nivo併用群で高かった(p=0.0011)。Grade3/4のTRAE発現割合は、Ipi+Nivo併用群で22%、Nivo単剤群で14%であり、安全性のプロファイルはこれまで報告されているものと一致していた。CheckMate-8HW試験の結果から、主要評価項目であるPFSの比較において、ASCO-GI 2024では標準化学療法に対する優越性が、今回のASCO-GI 2025ではNivo単剤療法に対する優越性が検証されたことから、Ipi+Nivo併用療法はMSI-H/dMMRの切除不能大腸がんに対する標準治療として確立されていくものと予想される。今後の課題としては、2剤併用療法を用いることで想定される免疫関連有害事象のリスクマネジメントが挙げられ、また本試験ではニボルマブの最長投与期間が2年に設定されていたため、長期病勢制御が得られた場合の適切な治療期間についてはさらなる検討が必要と考えられる。Final analysis of modified (m)-FOLFOXIRI plus cetuximab versus bevacizumab for RAS wild-type and left-sided metastatic colorectal cancer: The DEEPER trial (JACCRO CC-13). (abstract#17)3つ目の注目演題は、DEEPER試験である。本試験はRAS野生型切除不能大腸がんの1次治療において、3剤併用化学療法(mFOLFOXIRI)のパートナーとして、抗EGFR抗体薬(セツキシマブ)と抗VEGF抗体薬(ベバシズマブ)のいずれがより適しているかを比較検討した無作為化第II相試験である(Shiozawa M, et al. Nat Commun. 2024;15:10217.)。主要評価項目は最大腫瘍縮小率(DpR)に設定され、2021年の米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)では、セツキシマブ(CET)併用群ではベバシズマブ(BEV)併用群に比べて有意にDpRが高いことが報告された。ASCO-GI 2025では、副次評価項目である生存期間(PFSおよびOS)に関する最終解析の結果が報告された。本試験ではCET併用群に179例、BEV併用群に180例が無作為に割り付けられ、それぞれ159例、162例がper protocol setとして解析対象となった。データカットオフ時点での左側症例におけるPFSの中央値はCET併用群で13.9ヵ月(95%CI:12.2~17.5)、BEV併用群で12.1ヵ月(95%CI:10.9~14.1)であり、両群間で有意な差は認めなかった(HR:0.81[95%CI:0.63~1.05]、p=0.11)。左側症例におけるOSの中央値はCET併用群で45.3ヵ月(95%CI:37.6~53.1)、BEV併用群で41.9ヵ月(95%CI:34.1~48.7)であり、両群間で有意な差は認めなかった(HR:0.85[95%CI:0.64~1.12]、p=0.25)。一方で、RAS/BRAF遺伝子野生型の左側症例(178例)に対象を限定して行われた探索的な解析では、PFSの中央値はCET併用群で14.8ヵ月(95%CI:12.6~19.4)、BEV併用群で11.9ヵ月(95%CI:10.8~14.6)であり、CET併用群で有意にPFSが延長していた(HR:0.71[95%CI:0.52~0.97]、p=0.029)。OSの中央値はCET併用群で50.2ヵ月(95%CI:39.9~56.0)、BEV併用群で40.2ヵ月(95%CI:33.5~48.8)であり、CET併用群では50ヵ月を超えるOS中央値が示されたものの、統計学的有意差は認めなかった(HR:0.74[95%CI:0.53~1.05]、p=0.091)。さらに、RAS/BRAF遺伝子野生型の左側症例から肝限局転移症例を除外して行われた探索的な解析(125例)では、OSの中央値はCET併用群で50.2ヵ月(95%CI:39.6~60.1)、BEV併用群で38.6ヵ月(95%CI:30.5~45.2)であり、CET併用群で有意にOSが延長していた(HR:0.60[95%CI:0.40~0.90]、p=0.014)。これらの結果から、RAS/BRAF遺伝子野生型の左側症例、なかでも非肝限局転移症例においてはmFOLFOXIRI+セツキシマブ併用療法が有望な治療オプションとなる可能性が示されたが、皮疹や下痢などの有害事象発現のリスクや、あくまで探索的な解析結果である点には十分留意してdecision makingに反映する必要がある。なお、未治療のRAS/BRAF遺伝子野生型の左側症例を対象とした非盲検多施設共同第III相試験(TRIPLETE試験、Rossini D, et al. J Clin Oncol. 2022;40:2878-2888.)では、抗EGFR抗体薬(パニツムマブ)に併用する化学療法として3剤併用療法(mFOLFOXIRI)の2剤併用療法(mFOLFOX)に対する優越性が検討されたが、積極的に3剤併用療法を選択するエビデンスは示されなかった。したがって、RAS/BRAF遺伝子野生型の左側症例に対する1次治療において、抗EGFR抗体薬に2剤併用療法を選択するのか、3剤併用療法を選択するのかという点についても引き続き議論が必要であるが、DEEPER試験で示された転移臓器との関連がキーポイントとなるかもしれない。今回紹介した注目演題で検討された試験治療は、いずれも有望な抗腫瘍効果を示した一方で、従来の標準治療に比べて相応の有害事象発現リスクの上昇を伴うものである。今後のトランスレーショナルリサーチ(TR)研究によって、真にベネフィットが期待される患者集団の絞り込みや、耐性克服につながる治療戦略が開発されることを期待したい。

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EGFR陽性NSCLCの1次治療、オシメルチニブ+化学療法のアジア人データ(FLAURA2)/ESMO Asia2024

 2024年6月にオシメルチニブの添付文書が改訂され、EGFR遺伝子変異陽性の進行・再発非小細胞肺がん(NSCLC)に対する1次治療として、オシメルチニブと化学療法の併用療法が使用可能となった。本改訂は、オシメルチニブと化学療法の併用療法とオシメルチニブ単剤を比較する国際共同第III相無作為化比較試験「FLAURA2試験」1)の結果に基づくものである。欧州臨床腫瘍学会アジア大会(ESMO Asia2024)において、アジア人集団の治療成績が、国立台湾大学病院のJames Chih-Hsin Yang氏により報告された。試験デザイン:国際共同第III相非盲検無作為化比較試験対象:EGFR遺伝子変異陽性(exon19欠失/L858R)でStageIIIB、IIIC、IVの未治療の非扁平上皮NSCLC成人患者557例(アジア人333例)試験群:オシメルチニブ(80mg/日)+化学療法(ペメトレキセド[500mg/m2]+シスプラチン[75mg/m2]またはカルボプラチン[AUC 5]を3週ごと4サイクル)→オシメルチニブ(80mg/日)+ペメトレキセド(500mg/m2を3週ごと)(併用群、279例[アジア人169例])対照群:オシメルチニブ(80mg/日)(単独群、278例[アジア人164例])評価項目:[主要評価項目]RECIST 1.1による治験担当医師評価に基づく無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]全生存期間(OS)、奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)など アジア人集団における主な結果は以下のとおり。・併用群、単独群の年齢中央値はいずれの群も61歳で、女性の割合はそれぞれ62%、57%であった。EGFR遺伝子変異の内訳は、exon19欠失変異がそれぞれ53%、61%で、L858R変異がそれぞれ46%、38%であった。中枢神経系(CNS)転移はそれぞれ47%、42%に認められた。・治験担当医師評価に基づくPFS中央値(データカットオフ:2023年4月3日)は、併用群25.5ヵ月(全体集団:25.5ヵ月)、単独群19.4ヵ月(同:16.7ヵ月)であった(ハザード比[HR]:0.69、95%信頼区間[CI]:0.51~0.94)。・盲検下独立中央判定によるPFS中央値(データカットオフ:2023年4月3日)は、併用群33.2ヵ月(全体集団:29.4ヵ月)、単独群24.7ヵ月(同:19.9ヵ月)であった(HR:0.72、95%CI:0.52~1.01)。・OS中央値(データカットオフ:2024年1月8日)は、併用群40.5ヵ月(全体集団:未到達)、単独群38.3ヵ月(同:36.7ヵ月)であった(HR:0.80、95%CI:0.57~1.12)。・治験担当医師評価に基づくORRは併用群84%(全体集団:83%)、単独群76%(同:75%)であった。・DOR中央値は併用群24.0ヵ月(全体集団24.0ヵ月)、単独群18.0ヵ月(同:15.3ヵ月)であった。・Grade3以上の有害事象は併用群67%、単独群24%に発現した(いずれの群でもGrade4/5の間質性肺疾患/肺臓炎は発現なし)。・オシメルチニブの中止に至った有害事象は、併用群10%、単独群7%に発現した。・アジア人集団において、併用群で最も多くみられた有害事象は貧血であった(アジア人集団:50%、全体集団:12%)・併用群の間質性肺疾患/肺臓炎の発現率は、アジア人集団(4%)と全体集団(3%)で同様であった。 本結果について、Yang氏は「オシメルチニブと化学療法の併用療法は、アジア人においてもEGFR遺伝子変異陽性の進行NSCLCに対する1次治療の選択肢の1つとなることが支持される」とまとめた。

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シスプラチン不耐の頭頸部がん患者に最善の治療選択肢は?

 シスプラチンは頭頸部がん患者にとって頼りになる化学療法であるが、ほぼ3分の1の患者はその副作用に耐えられず、治療を中止してしまう。こうした患者に対する最善のセカンドライン治療薬に関して、新たな臨床試験で驚くべき結果が示された。それは、頭頸部がんの治療において、モノクローナル抗体のセツキシマブ(商品名アービタックス)が、より新しい薬である免疫チェックポイント阻害薬のデュルバルマブ(商品名イミフィンジ)よりも有効性が高いというものだ。米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)クリニカル・トランスレーショナルリサーチ分野のLoren Mell氏らが実施したこの臨床試験の結果は、「The Lancet Oncology」に11月14日掲載された。 Mell氏らの説明によると、頭頸部がんは比較的発生頻度の高いがんで、患者数は世界の全てのがんの中で7番目に多いという。頭頸部がんのリスク因子は、喫煙や飲酒、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染などで、口や鼻、副鼻腔、唾液腺、喉、声帯の組織に発生する可能性がある。長年にわたって頭頸部がんの最も良い治療薬はシスプラチンであると考えられてきた。しかし、30%程度の患者では、副作用の厳しさから化学療法が中止に至る。 セツキシマブはこれまで長い間、シスプラチン不耐の患者に使用できる優れたセカンドライン治療薬と見なされてきたが、近年、別の治療選択肢としてデュルバルマブが浮上してきた。多くのがん専門医は、セツキシマブよりもデュルバルマブの方が安全性も有効性も高いのではないかと考えている。そのような考えを検証するため、Mell氏らは今回、北米の89の大学病院や地域医療センターで第2/3相多施設共同ランダム化非盲検並行群間比較試験を行った。対象とされた、186人のシスプラチン不耐の進行頭頸部扁平上皮がん患者(年齢中央値72歳、男性84%)は、放射線治療開始の2週間前と、放射線治療開始から2週目以降は4週間ごとにデュルバルマブ1,500mgを投与する群(7サイクル)、または放射線治療開始の1週間前にセツキシマブ400mg/m2、放射線治療開始から1週間目以降は毎週250mg/m2を投与する群(8サイクル)に2対1の割合で割り付けられた。 その結果、2年無増悪生存率は、デュルバルマブ投与群(123人)での50.6%に対してセツキシマブ投与群(63人)では63.7%だった。有害事象の発生については、両群で同様であった。セツキシマブ投与群とデュルバルマブ投与群のアウトカムの差があまりにも大きかったため、Mell氏らは試験を早期に中止し、全ての患者でセツキシマブの投与に切り替えたという。 Mell氏は「デュルバルマブに対しては、数多くの理由から楽観視する見方があったが、標準を下回る可能性もあるという結果になった」とUCSDのニュースリリースの中で話している。その上で、「標準的なシスプラチンの併用ができない患者にとって、放射線治療にセツキシマブを併用する治療が極めて良い選択肢となることが、われわれの試験で改めて示された」と述べている。 ただ、一部のわずかな患者にとってはデュルバルマブがより良い選択肢になる可能性はある。Mell氏らによると、デュルバルマブとセツキシマブの作用の仕方にはかなり大きな違いがあり、セツキシマブはがん細胞表面のタンパク質と結合し、がん細胞の増殖を抑制するのに対し、デュルバルマブはがん細胞表面の別のタンパク質をブロックし、がん細胞が免疫系による攻撃を受けやすい状態にするという。このことを踏まえてMell氏は、「腫瘍の免疫反応性が極めて高い患者に対しては、デュルバルマブによる治療の方が有効な可能性があるとのエビデンスは残っている」とUCSDのニュースリリースの中で述べている。

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局所進行子宮頸がんに対するペムブロリズマブ+同時化学放射線療法が承認/MSD

 MSDは、2024年11月21日、抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)が、局所進行子宮頸癌に対する同時化学放射線療法(CCRT)との併用について、国内製造販売承認事項一部変更の承認取得を発表した。 今回の承認は、未治療の国際産婦人科連合(FIGO)2014進行期分類のIB2~IIB期またはIII~IVA期の局所進行子宮頸がん患者1,060例(日本人90例を含む)を対象とした国際共同第III相試験KEYNOTE-A18試験のデータに基づいたもの。 同試験において、ペムブロリズマブとCCRT(シスプラチン同時併用下での外部照射、およびその後の小線源治療)との併用療法は、プラセボとCCRTとの併用療法と比較して、主要評価項目である全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)を有意に延長した(OS HR:0.67、95%CI:0.50~0.90、p=0.0040、PFS HR:0.70、95%CI:0.55~0.89、p=0.0020)。 安全性については、安全性解析対象例528例中512例(97.0%)(日本人41例中41例を含む)に副作用が認められた。主な副作用(20%以上)は、貧血317例(60.0%)、悪心304例(57.6%)、下痢268例(50.8%)、白血球数減少173例(32.8%)、好中球数減少156例(29.5%)、嘔吐135例(25.6%)、白血球減少症125例(23.7%)、血小板数減少116例(22.0%)、好中球減少症114例(21.6%)および甲状腺機能低下症112例(21.2%)であった。

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