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統合失調症患者は血栓症リスク大

 オーストラリア・シドニー大学のVincent Chow氏らによる検討の結果、統合失調症患者について、静脈血栓塞栓症のリスク増大に寄与する可能性がある、複数要因から成る凝固亢進状態および線溶低下状態を有するとのエビデンスが示された。これまで、同患者では静脈血栓塞栓症のリスク増大がみられていたが、その機序についてはほとんどわかっていなかった。Schizophrenia Research誌オンライン版2015年1月26日号の掲載報告。 研究グループは、統合失調症患者において、血液凝固能が亢進状態にあるのか否かを調べるため、総合的止血能(OHP)アッセイを用いて、総合的凝固能(OCP)、総合的止血能(OHP)、総合的線溶能(OFP)を評価した。アッセイは、抗精神病薬治療を長期間受けている統合失調症患者からクエン酸添加血漿を採取し、血漿に組織因子および組織プラスミノーゲンアクチベータを添加した後、フィブリン形成および分解の時間的経過を分光分析法(405nmの吸光)により測定し、年齢、性別をマッチさせた健常対照と比較した。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者90例(抗精神病薬治療期間15.9±9.7年)と、対照30例が登録された。・統合失調症患者では、喫煙率と炎症マーカーの値が健常対照と比較して高かった(高感度CRP、好中球/リンパ球比)。・D-ダイマー、フィブリノゲン、血小板数については、統合失調症患者と健常対照の間に差はなかった。・しかし、統合失調症患者において、OCP(54.0±12.6 vs 45.9±9.1、p=0.002)およびOHP(12.6±5.8 vs 7.2±3.7、p<0.001)が高く、OFP(76.6±9.8% vs 84.9±6.4%、p<0.001)は低いことが示された。これらの結果から、統合失調症患者において凝固亢進状態と線溶低下状態の両方が存在することが示唆された。・さらに、総合的な凝固異常が、プラスミノーゲンアクチベータ‐1、フィブリノゲン、血小板数、炎症マーカー、血漿トリグリセリドの各数値により独立して予測された点は重要な知見であった。すなわち原因となる因子は複数あることが示唆された。関連医療ニュース 統合失調症患者の突然死、その主な原因は 統合失調症の心血管リスク、その出現時期は 抗精神病薬の高用量投与で心血管イベントリスク上昇:横浜市立大

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温泉療法でうつや睡眠も改善

 12日間の温泉治療プログラムにより、健康な高齢者の疼痛、気分状態、睡眠、抑うつ状態が有意に改善したことが示された。スペイン・ハエン大学のPedro Angel Latorre-Roman氏らが、52例の高齢者を対象に試験を行った結果、報告した。Psychogeriatrics誌オンライン版2014年12月16日号の掲載報告。 検討は、スペイン国内の複数の地域から高齢者52例を集め、政府機関Elderly and Social Services(IMSERSOとして知られる)が作成した水治療(hydrotherapy)プログラムに参加してもらい評価を行った。参加者に、12日間の温泉治療プログラムを提供し、疼痛、気分状態、睡眠、抑うつ状態について評価した。疼痛は視覚的アナログスケールを用いて、気分状態はProfile of Mood Statusを用いて、睡眠はOviedo Sleep Questionnaire、抑うつ状態はGeriatric Depression Scaleを用いて評価した。 温泉治療プログラムは、スペイン・ハエンにある温泉付きホテルBalneario San Andresで行われた。同温泉は、スペインミネラル水ハンドブックによると、低温(20℃以上)に分類され、重炭酸塩、硫酸塩、ナトリウム、マグネシウムを豊富に含む中硬水のアルカリイオン水であった。 主な結果は以下のとおり。・参加者52例の内訳は、男性23例(年齢69.74±5.19歳)、女性29例(同:70.31±6.76歳)であった。・温泉療法は、全被験者のすべての変数(疼痛、気分状態、睡眠、抑うつ状態)を有意に改善した(p<0.05)。・疼痛の改善については性差がみられた。治療後、男性では有意な改善(p<0.01)がみられたが、女性ではみられなかった。・気分状態の改善についても性差がみられた。女性では抑うつ症状と疲労感の両者で有意な改善(p<0.05)がみられたが男性ではみられなかった。・12日間の温泉治療プログラムは、健康高齢者の疼痛、気分、睡眠の質、抑うつ状態にポジティブな効果をもたらすことが示唆された。関連医療ニュース うつ病患者で重要な食事指導のポイント うつになったら、休むべきか働き続けるべきか ビタミンB併用で抗うつ効果は増強するか  担当者へのご意見箱はこちら

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統合失調症、ビタミンD補充で寛解は期待できるか

 ビタミンD欠乏症は、統合失調症の発症に関与する病因の1つである。多くの統合失調症研究において、血清ビタミンD値が低い症例が報告されているが、疾患活動性と血清ビタミンD値との関連性は明らかになっていなかった。トルコ・Ankara Numune Egitim ve Arastirma HastanesiのRabia Nazik Yuksel氏らは、統合失調症とビタミンD欠乏症との関連を明らかにするため、寛解期および急性期の統合失調症患者の血清ビタミンDレベルを健常対照と比較検討した。その結果、急性期統合失調症患者の血清ビタミンD値は、寛解期の患者および健常対照に比べ有意に低いことを報告し、急性期統合失調症とビタミンD欠乏との関連を示唆した。Therapeutic Advances in Psychopharmacology誌2014年12月号の掲載報告。 研究グループは、疾患活動性の異なる2つの統合失調症グループの総ビタミンD量を比較し、血清総ビタミンD値と疾患活動性の関係を調べた。検討は、寛解期、急性期の統合失調症患者、および年齢と性別でマッチした重大な精神症状を認めない対照例を対象に行われた。疾患活動性は、PANSS(陽性・陰性症状評価尺度)およびCGI-S(臨床全般印象・重症度尺度)を用いて評価し、年齢、性別、民族、体重、肌の色、日光曝露時間、栄養評価が網羅された人口統計データを使用した。すべての患者および対照者から血液標本を採取し、総ビタミンD(D2+D3)、カルシウム(Ca)、リン(P)、副甲状腺ホルモン(PTH)値を測定した。 主な結果は以下のとおり。・被験者は、寛解期統合失調症患者41例、急性期統合失調症患者40例、健常対照40例であった。・急性期患者のビタミンD値(中央値7.18)は、寛解期患者(同15.03)および健常対照(同15.02)に比べ、有意に低かった(p<0.001)。・ビタミンD値とCGIスコア(r=-0.624、p<0.001)、ビタミンD値とPANNSスコア(r=-0.508、p<0.001)の間に中等度の逆相関が認められた。・各群間で、血清P値、Ca値、PTH値について有意な差は認められなかった(それぞれp=0.099、p=0.943、p=0.762) 。・1週間当たりの日光曝露時間、肌の色、民族、栄養状態による、総ビタミンD値への有意な影響はみられなかった。・ビタミンD合成に関連する重要な因子に相違は認められなかったが、寛解期の患者と比べて急性期の患者では深刻なビタミンD欠乏症が認められ、寛解期の患者と有意な違いを認めた。・ビタミンD欠乏症は急性期エピソードの結果なのか、あるいは原因なのか? 本研究結果から、経路は不明ながら、ビタミンD欠乏症と統合失調症が相互に影響を及ぼし合っている可能性が示唆された。・現時点のデータでは、ゲノムレベルでの影響の可能性を指摘するにとどまった。・今後、臨床試験による長期フォローアップにより、これらの関係を調べることができると思われた。とくに、長期に治療を継続している統合失調症患者の血清ビタミンD値の状況が期待される。・ビタミンDを豊富に含むサプリメントおよび食事を加味した、適切な治療を考慮すべきと思われた。関連医療ニュース ビタミンD欠乏で統合失調症発症リスクが2倍に 統合失調症の治療目標、急性期と維持期で変更を:京都大学 ビタミンB併用で抗うつ効果は増強するか

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皮膚科医が知っておくべき抗凝固薬と抗血小板薬の特性

 米国・ケース・ウェスタン・リザーブ大学のDeanna G. Brown氏らは、皮膚科臨床で新規の抗凝固薬や抗血小板薬を服用する患者と遭遇する機会が増えているとして、皮膚科医および皮膚科形成外科医が知っておくべき、従来および新規の抗凝固療法および抗血小板療法についてレビューを行った。Journal of American Academy of Dermatology誌オンライン版2014年12月6日号の掲載報告。 レビューでは、抗凝固薬や抗血小板薬をサプリメントとともに服用している従来および新規の抗凝固療法および抗血小板療法の、薬物動態、薬効、副作用を概説することを目的とした。 「アスピリン」「ワルファリン」「クロピドグレル」「ダビガトラン」「リバーロキサバン」「アピキサバン」「プラスグレル」「チカグレロル」をキーワードにPubMed検索を行い、経口抗凝固薬または抗血小板薬の周術期投与が強調されている最近のレビュー論文または出版物を選択した。さらに「皮膚科(dermatology)」「皮膚科手術(dermatologic surgery)」「皮膚手術(cutaneous surgery)」と「出血(hemorrhage)(bleeding)」「血栓症(thrombosis)」を関連させた検索も行った。 主な知見は以下のとおり。・アスピリン、クロピドグレル、ワルファリンは、投与量、モニタリング、有効性に関する情報が不十分である。・複数の試験で、ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバンは、ワルファリンと比較して有効性は優っており、出血リスクは同等あるいは抑制することが示されている。・プラスグレルとチカグレロルは、出血リスクの増大と関係している可能性がある。・多くの店頭で販売されている薬物にも、出血リスクと関連する無視することができない抗凝固特性がある。・本検討は、デイサージャリー患者に対する新規の経口抗凝固薬の効果を評価している出版物がほとんどない点で限定的である。・これらの所見を踏まえて著者は、「新規の抗凝固薬、抗血小板薬は、心血管疾患の治療に革命をもたらしている。これらの薬物使用がより一般的になるにつれて、皮膚科医と皮膚科形成外科医は、日常診療において出血リスクが常に存在することを心に留めておかなければならない」とまとめている。

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過食性障害薬物治療の新たな可能性とは

 過食性障害に対する薬理学的アプローチについて、米国・ノースカロライナ大学のKimberly A. Brownley氏らが現状を紹介している。これまでに、食欲過剰、気分調節、衝動制御に関連する神経伝達物質を標的とした検討が行われており、なかでもグルタミン酸シグナル伝達回路に着目した研究に新たな可能性があることを示唆している。Drugs誌オンライン版2014年11月27日号の掲載報告。 Brownley氏らによれば、米国において、過食性障害は最も頻度の高い摂食障害で、生涯有病率は成人女性で最大で3.5%、成人男性で2.0%、思春期で1.6%と報告されているという。過食性障害は、過食を制御できないという感覚を伴う頻繁な暴食症状を特徴とし、その結果として著しい心理的苦痛を患者に与える。また、過食性障害は肥満そしてうつ病などの精神医学的症状を高頻度に併発し、実質的な役割障害と関連する。 現在、米国FDAにより認可された過食性障害治療薬はない。一方で、動物およびヒトを対象とした研究により、脳の報酬系領域内のドパミン、オピオイド、アセチルコリン、セロトニンが神経回路において調節異常を来している可能性が示唆されており、今日に至るまで、食欲過剰、気分調節、衝動制御に関連する複数の神経伝達物質を標的としたさまざまな薬剤の有効性が、過食性障害治療の分野で研究されてきているという。 これまでに得られている主な知見は以下のとおり。・抗うつ薬、抗けいれん薬の中に、過食症状の発生抑制に有効なものがあったが、治療の主要目的である食欲抑制を達成できた患者は限られていた。・臨床的に意味のある体重減少、あるいはプラセボに比べ有意な体重減少の達成に関しても、効果の高いもの(トピラマート)から低いもの(フルボキサミン)まで、ばらつきがあった。・全体的にみて、過食性障害に対する薬理学的アプローチに関する文献は限られており、適切なフォローアップによる多面的検証試験(multiple confirmatory trials)が実施された薬剤は非常に少なく、年齢、性別、多人種の患者集団からなる大規模サンプルを用いて評価された薬剤はほとんどない。・さらに、これまでの研究は、試験デザインや本疾患の患者集団に共通して認められるプラセボに対する高い反応性により、適切に実施されてこなかった。・いくつかの新しい薬剤がさまざな研究段階にあるが、扁桃体と外側視床下部をつなぐグルタミン酸シグナル伝達回路に着目した最近の動物実験により、新しい研究や薬剤開発の可能性が示唆されている。・新しくFDAに認可された長期肥満治療薬の研究、食欲や気分に影響を与える成分を含有するサプリメントや栄養食補助食品のさらなる開発も、有意義な取り組みになると思われる。関連医療ニュース 抗精神病薬による体重増加や代謝異常への有用な対処法は:慶應義塾大学 統合失調症患者の体重増加、遺伝子との関連を検証 情動障害患者よりも統合失調症患者で有意に体重を増加:オランザピンのメタ解析  担当者へのご意見箱はこちら

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認知症によいサプリメント、その効果は

 大豆レシチンより生成したホスファチジルセリン(PS)とホスファチジン酸(PA)を配合したサプリメントは、高齢者において記憶、気分、認知機能を改善すること、アルツハイマー病(AD)患者の日常機能や感情に対して有益な影響を及ぼすことが明らかにされた。ドイツ・Analyze & realize GmbHのMargret I. More氏らによる検討の結果、示された。Advances in Therapy誌オンライン版2014年11月21日号の掲載報告。 研究グループは、大豆レシチンより生成したPS 100mgとPA 80mgを配合した脳の健康を保つための食物サプリメントの有用性を検討するため、早期パイロットスタディを実施した。同様の検討はこれまで行われていない。 はじめに、健常ボランティアにおいてPS+PA単回摂取後の血清分析を実施。次に、機能障害や抑うつを認めないが記憶に問題のある高齢者(記憶および気分に及ぼす影響をウエクスラー記憶検査とうつ症状リストを用いて評価)を対象とし、3ヵ月間の二重盲検プラセボ対照試験にて、PS+PA 3カプセル/日(300mg PS+240mg PA/日)とプラセボの有用性を比較評価した。さらに、AD患者を対象とした2ヵ月間の無作為化二重盲検プラセボ対照試験において、PS+PA 3カプセル/日(300mg PS+240mg PA/日)とプラセボの、日常機能、メンタルヘルス、感情、自己報告による全身状態に及ぼす影響を比較評価した。 主な結果は以下のとおり。・血清中PS濃度は、摂取後90分でピークに達し、180分後にベースライン値に回復した。・高齢者において、PS+PA群(per protocol[PP]のn=31)ではプラセボ群(PPのn=26)と比べて記憶力の有意な改善が認められ、摂取前後の比較において冬季うつ病(ウインターブルー)の抑制が認められた。・AD患者において、PS+PA群(PPのn=53)では日常生活機能(日常生活における7つの活動)が維持されていたが、プラセボ群(PPのn=39)では5.62から4.90へと低下し(p=0.035)、有意な群間差を認めた(p=0.021)。・日常生活機能について、PS+PA群では悪化が3.8%、安定が90.6%であったのに対し、プラセボ群ではそれぞれ17.9%、79.5%であった(p=0.066)。・PS+PA群では、自己報告による全身状態の改善を認めた患者は49%であったが、プラセボ群では26.3%にとどまった(p=0.084)。・PS+PA群では、試験後もサプリメント摂取(二重盲検期間中)を継続した患者が約43%いたが、プラセボを受けた患者はいなかった。ネガティブな副作用は認められなかった。・以上のことから、PSは、経口摂取により効果的に吸収されることが示された。また、高齢者を対象とした試験により、PS+PAの記憶、気分、認知機能に対する有益な効果が示された。AD患者に対する短期間のPS+PA摂取は、日常機能、感情、自己報告による全身状態に対し、安定した効果を示した。・本パイロット研究の結果は、AD患者そして記憶や認知機能に問題のある高齢者に対するPS+PAの長期試験の実施を促すものであった。関連医療ニュース 認知症にイチョウ葉エキス、本当に有効なのか アルツハイマーに有用な生薬はコレ 認知症タイプ別、各認知機能の経過を比較  担当者へのご意見箱はこちら

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推奨される食事

【関節リウマチ】食事では、筋肉をつくるタンパク質 を積極的にとろう!メモ関節リウマチでは、全⾝の筋肉量が落ちやすいので、良質なタンパク質(肉、⿂、卵、⼤⾖製品など)をとる。・動物性タンパク質は貧血予防にも効果的。・タンパク質を中心に、ビタミン、ミネラルをバランスよく。監修:慶應義塾大学医学部リウマチ内科 ⾦⼦祐⼦⽒Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.

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肺がん患者と医療者の乖離を埋める―WJOG

 「患者さんのためのガイドブック よくわかる肺がんQ&A(第4版)」(編集:NPO法人西日本がん研究機構、以下WJOG)の発行を記念して、「肺がんの最新治療に関するセミナー~分子標的薬の登場で肺癌治療は大きく変わった~」が2014年11月28日、都内にて行われた。当日は、中川和彦氏(近畿大学医学部内科学腫瘍内科部門 教授)、本書の編集を行った澤 祥幸氏(岐阜市民病院 がん診療局長)が講演した。 中川氏の講演では、肺がん診療の最新情報が紹介された。講演の中で、中川氏は次のように述べた。肺がんの治療は最近の20~30年で大きく進歩している。とくに2002年のEGFR–TKIゲフィチニブの登場以降、ALK阻害薬、第2世代EGFR-TKIが次々に登場している。今後も第3世代EGFR-TKI、PD-1やPD-L1など新たな免疫療法なども治療選択肢として加わってくると考えられ、肺がん治療は大きく変化していくことが予想される、と述べた。また、このように新たな臨床試験が数多く出てくる中、EBMや診療ガイドラインを踏まえ、肺がんについての正しい情報を研究者から一般社会に伝えることが重要であるとも述べた。 続いて、澤 祥幸氏が、肺がん患者の疑問とその対応に関して次のように述べた。がん患者は告知の際、医療者に対し自分自身の不安を解決するため希望的回答を期待している。しかし、がんであるという事実は最悪の知らせである。将来への見通しを根底から否定的に変えてしまうため、冷静な状態ではいられない。担当医にしてみれば、しっかり説明したのに理解してもらえない。一方、患者も家族も真剣に説明を聞いていたはずなのに覚えていないという事態に陥る。また、希望的回答への期待を裏切られたことが医療者への不信を招き、診療への否認行動をとるなど、その後のトラブルにつながることもある。さらに、悪い知らせを聞いた後、一部の患者は適応障害やうつ病に陥る。がん患者の自殺率は健康人の4倍との報告もあり、これも大きな問題である。 がんと診断された後、がん患者・家族はどのような情報を求めているのか? 肺がんの種類・進行度、標準治療といった情報を伝えようとする医療者とは乖離があるようだ。WJOGはその乖離を明らかにするため、各地で開催する市民講座の際、患者・家族の疑問や質問を収集した。その結果、患者の疑問・質問の上位は、「もっといい病院・医者は?」「抗がん剤治療が不安」「補完代替医療、免疫療法」「術後の痛み」「がん告知の問題」などであった。実際にサプリメントや高額な民間療法に頼る患者、治療拒否により手遅れになる患者、医療費控除制度を知らず経済的不安から治療を拒否するケースも少なくないと、澤氏は言う。 「よくわかる肺がんQ&A(第4版)」は、このように収集した疑問・質問をまとめる形で、本年(2014年)11月7日に発行された。Q&A は119項目からなり、医師向けのガイドラインにはない、補完代替医療の説明、不安・衝撃へのアドバイス、医療費といった項目も含まれる。今版は市民の要望に応え、書店でも購入可能である。価格帯も市民が気軽に買えるよう2,200円(+税)に設定。今後はwebフリーダウンロードの予定もある。amazon リンク:「患者さんのためのガイドブック-よくわかる肺がんQ&A(編集;西日本がん研究機構-WJOG)」はこちら。

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「便秘」は病気という自覚が大事

 2014年11月11日、アボットジャパン株式会社は「働く女性の活躍と腸内トラブル~慢性便秘症の治療でQOLの向上を~」をテーマに、都内でプレスセミナーを開催した。 便秘症は女性を悩ます身近な病気の一つであり、日常でありふれているが故に、なかなか診療に結び付かない疾患である。 セミナーでは便秘症に関し、同社が行ったWEBアンケートの結果報告や便秘に悩む女性の声と生活実態が報告されたほか、便秘症の概要とその治療法についてコンパクトにレクチャーが行われた。 「便秘症とその治療方法、労働生産性とQOLの低下」をテーマに、本郷 道夫氏(東北大学名誉教授/公立黒川病院管理者)が、現在便秘症に行われている診療と治療について解説した。 便秘症は規定することが難しく、排便回数やブリストール便形状スケールによる便の状態、患者の主訴(排便がつらいかどうか)などを総合して診断されている。便秘症の患者分布としては、20~40代の女性と70代以上の高齢者に多い。また、便秘症患者は傾向的に市販薬を常用して、胃腸薬や便秘薬の服用の結果、下痢を起こし、さらに下痢止めを服用するといった負のスパイラルを繰り返しているケースも多いと指摘した。また、便秘症により身体的、精神的にQOLが低下し、日常活動や労働生産性も低下しているという海外論文のデータ※も紹介された。 では、なぜ便秘症患者が医師の診療を受けないのかについて、患者アンケート(n=170)では「便秘症を病気とは考えていない」(50%)、「受診するのが億劫/面倒」(46%)という回答が多くを占めた。また、患者が行っている便秘症状への対応の調査(n=2万9,161)では、「水分摂取」(50%)、「市販薬」(31%)、「健康食品/サプリメント」(33%)、「食生活改善」(33%)という回答が多く、「医師への受診」(15%)はわずかであったことが報告された。 便秘症による医師への受診の目安として、市販薬を使用して排便がつらいときには診療を受けたほうがよく、診療の際にはっきりと医師に便秘について治療の意向を伝えるべきであるとアドバイスした。また、便秘症の患者の中には、拒食症やうつ傾向を持つ患者も散見されるため、診療時に注意が必要とのことであった。 さらに、本郷氏は治療法について言及した。わが国で保険適用のあるエビデンスグレードAの治療としては「排便障害時のバイオフィードバック療法」と「ルビプロストン(商品名:アミティーザ)」の2つがあり、前者はモニタリングができる施設が必要となる一方で、後者は1日2回摂取の経口治療薬であると説明した。とくにルビプロストンは、小腸粘膜上皮細胞にあるクロライドチャネルを活性化することで、腸管内への水分分泌を促し、排便を促進する。慢性便秘症患者への臨床試験では、1日48μg/日でほぼ1日1回の排便を促し、便の形状もブリストール便形状で3~5の形状に改善するとされている。 これから冬にかけて、運動不足による便秘が増加すると予想されるなかで、本郷氏は「ひとりで便秘に悩まず、病気と認識して医師に相談し、便秘症は“治療で改善できる”ことを広く知ってもらいたい」とまとめた。※Sun SX, et al. Dig Dis Sci. 2011; 56: 2688-2695.

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てんかんに効くサプリメント、低用量EPA+DHAが発作を抑制

 低用量の魚油(EPA+DHA 1,080mg[3カプセル/日])は、てんかん発作を抑制し、その改善効果は薬剤抵抗性てんかん(DRE)における抗てんかん薬に関する最近の試験結果と同程度であったことが示された。米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のChristopher M DeGiorgio氏らによる低用量と高用量をプラセボと比較した第II相無作為化クロスオーバー試験の結果、報告された。高用量魚油に関する試験はこれまでにも行われているが、その効果は示されていなかった。今回の結果を踏まえて著者は、「低用量魚油はてんかん発作を抑制し、てんかん患者の健康を改善することが示された」と述べ、「DREにおける低用量魚油(1,080mg/日未満)の大規模な無作為化試験の実施が正当化された」とまとめている。Journal of Neurol Neurosurg Psychiatry誌オンライン版2014年9月8日号の掲載報告。低用量魚油でてんかん発作頻度が33.6%低下 n-3脂肪酸は、神経興奮性を抑制し、てんかん発作を抑制することが動物モデルにおいて示されている。これまで、高用量魚油投与について、DREにおける2件の無作為化試験が行われたが、いずれもネガティブな結果が示されていた。 本検討で研究グループは、低用量と高用量の魚油の第II相無作為化クロスオーバー試験を行い、低用量または高用量魚油、てんかん発作を抑制もしくは心血管系を改善するかどうかを調べた。 試験は、24例のDRE患者を対象とし、低用量または高用量の魚油vs. プラセボ(コーン油、リノール酸)で検討。クロスオーバー期間は3期を設定し、試験は投与期間3期(各10週間)とウォッシュアウト期間2期(各6週間)の計42週間にわたって行われた。全被験者は、二重盲検下で無作為化され、異なるシーケンスでプラセボ、高用量、低用量の投与を受けた。主要アウトカムは、全てんかん発作頻度の割合変化であった。 低用量または高用量魚油がてんかん発作を抑制するかどうかを調べた主な結果は以下のとおり。・低用量魚油は、プラセボと比較して、てんかん発作頻度を33.6%低下した。・また、低用量魚油は、血圧を緩やかだが有意に低下した。・高用量魚油は、てんかん発作の抑制についてプラセボとの差がみられなかった。心血管リスク因子の改善も認められなかった。関連医療ニュース どの尺度が最適か、てんかん患者のうつ病検出 うつ病補助療法に有効なのは?「EPA vs DHA」 統合失調症の再発予防、ω-3脂肪酸+α-LAは有用か

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慢性心不全治療のパラダイムシフト:ACE阻害薬はもはや標準薬ではない!(解説:平山 篤志 氏)-236

慢性心不全患者では、代償機転としてレニン・アンジオテンシン(RA)系が活性化され血管収縮による後負荷や水分貯留による前負荷が増加している。一方で、Na利尿ペプチド、アドレノメジュリンなどのペプチドがネプリライシンにより分解され、その血管拡張作用が減弱し、後負荷増加となる。このような代償機転の持続が慢性心不全の悪化につながることから、RA系阻害に加え、ネプリライシン阻害が心不全の予後改善につながると期待された。 しかし、動物実験では有効性が示されたものの、臨床試験では、ネプリライシン阻害薬とACE阻害薬との併用で重篤な血管性浮腫が多発したため、開発が中止された。この欠点をなくした薬剤が、ARB(今、話題となっているバルサルタン)とネプリライシン阻害薬との合剤であるLCZ696であり、少数例の臨床試験ではあったが、高血圧と心不全の治療薬としての有効性が確認された。 今回の欧州心臓病学会で、このLCZ696とエナラプリルを、収縮機能の低下した慢性心不全患者を対象として予後改善効果を比較したPARADIGM-HFが発表された。 結果は驚くべきものであった。LCZ696が心不全による入院を有意に抑制しただけでなく、心血管死亡をも有意に減少させた。β遮断薬が90%以上、ミネラルコルチコイド受容体阻害薬が50%以上という、標準治療が行われている対象で、基本薬であるACE阻害薬よりLCZ696が有意に死亡率を低下させたのである。副作用としても、LCZ696は血管性浮腫の発生もエナラプリルと同等で、血清K値の上昇、腎機能の悪化も少なかった。低血圧の頻度は多かったものの、中止に至る症例はエナラプリルと同等であった。これまで標準薬であったACE阻害薬は、過去になりつつあることを示したのである。 これまでの臨床試験の結果として確立した標準治療が行われるようになった時代に、多くの新薬での臨床試験が期待外れの結果であることから、これ以上の予後改善は困難と、医療関係者は無気力になりつつある。しかし、この試験は標準薬のパラダイムシフトを示しただけでなく、無気力になりつつあるわれわれに、予後改善に努めるべきであるという勇気を与えた試験でもあった。

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大腸がん診断後のカルシウム・牛乳摂取量が生存率に関連

 カルシウム、ビタミンD、乳製品の高い摂取量は大腸がん発生率の低下と関連しているが、大腸がんの生存率に及ぼす影響は不明である。米国がん協会(ACS)のBaiyu Yang氏らは、大腸がん患者において、がん診断前後のカルシウム(全体、食事由来、サプリメント)、ビタミンD(全体、食事由来)、乳製品(全体、牛乳のみ)の摂取量と、全死因死亡率および大腸がん特異的死亡率との関連を評価した。その結果、非転移性大腸がん患者では、がん診断後における総カルシウムと牛乳の高い摂取量が死亡リスクの低下に関連する可能性が示唆された。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2014年6月23日号に掲載。 がん予防研究II栄養コホートのうち、本研究の開始(1992年または1993年)から2009年までの間に侵襲性の非転移性大腸がんと診断された2,284例を前向きに調査した。死亡の追跡は2010年まで行った。参加者の平均年齢は開始時64歳、診断時73歳で、女性が56%であった。診断前の危険因子情報は開始時のアンケートで収集した。また、診断後の情報は1999年と2003年にアンケートで収集し、1,111人から回収した。 主な結果は以下のとおり。・参加者中949人が追跡期間中に死亡し、うち大腸がんによる死亡が408人であった。・多変量補正Cox比例ハザード回帰モデルにおいて、診断後の総カルシウム摂取量は、全死因死亡率と逆相関し(最低四分位と比べた最高四分位の相対リスク[RR] 0.72、95%CI:0.53~0.98、傾向のp=0.02)、大腸がん特異的死亡率の減少との間に有意傾向が認められた(RR 0.59、95%CI:0.33~1.05、傾向のp=0.01)。・全死因死亡率との逆相関は、診断後の牛乳摂取量でも認められた(RR 0.72、95%CI:0.55~0.94、傾向のp=0.02)。しかし、ビタミンD摂取量では認められなかった。・診断前のカルシウム、ビタミンD、乳製品の摂取量は、いずれの死亡率とも関連していなかった。

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抗精神病薬服用が骨密度低下を引き起こすのか:千葉大学

 これまでに、統合失調症患者において長期の抗精神病薬服用により骨粗鬆症/骨減少症の高リスクが引き起こされる可能性を示唆するエビデンスが蓄積されてきた。しかし、抗精神病薬服用がどの程度、骨密度(BMD)低下を引き起こすのかについては明らかになっていなかった。千葉大学の沖田 恭治氏らは、統合失調症患者における第二世代抗精神病薬と骨代謝との関連について検討した。その結果、統合失調症患者のBMD低下について複雑な原因を示唆する知見が得られたことを報告した。Schizophrenia Research誌オンライン版2014年5月30日号掲載の報告。 研究グループは、精神疾患患者を対象として、骨状態の進行を正確に予測できる骨代謝マーカーを用いて試験を行った。被験者(統合失調症患者167例、健常対照60例)のプロラクチン、エストラジオール、テストステロン、骨吸収マーカー(TRACP-5b)を測定し評価した。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者は健常対照と比較して、プロラクチン値が有意に高値であり、TRACP-5b値は有意に低値であった。・さらに、すべての男性被験者群および男性患者において、プロラクチンとエストラジオールおよびテストステロンとの間に、負の関連性が認められた。・TRACP-5bは、女性患者ではプロラクチンと正の関連性が、すべての女性被験者群ではエストラジオールと負の関連性が認められた。・骨吸収率は、健常対照と比べて患者のほうでかなり低かったことが示され、統合失調症患者におけるBMD低下の原因は複雑であることが示唆された。・本研究によりキーとなる因子間でいくつかの意味がある関連が確認された。すなわち高プロラクチン血症が性ホルモンの抑制を誘発し、高骨代謝に結びついている可能性が示された。・これらの結果を踏まえて著者は、「骨吸収マーカーであるTRACP-5b測定が、BMD低下の病理を明らかにするのに役立つ可能性があることが示唆された」とまとめている。関連医療ニュース 統合失調症患者は“骨折”しやすいって本当? 抗てんかん薬の長期服用者、80%が骨ミネラル障害 抗精神病薬誘発性持続勃起症への対処は  担当者へのご意見箱はこちら

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小児ADHD、食事パターンで予防可能か

 これまで子供の行動における食事の役割は議論されてきたが、小児期の行動障害と複数の栄養因子との関連が絶えず示唆されている。韓国・国立がんセンターのHae Dong Woo氏らは、注意欠陥・多動性障害(ADHD)に関連する食事パターンを明らかにするため、症例対照研究を行った。その結果、伝統的かつ健康的な食事を摂取することで、ADHDリスクが低下する可能性があることが示唆された。Nutrients誌オンライン版2014年4月14日号の報告。 対象は7~12歳の小学生192人。食事摂取量を評価するために、3回の非連続的な24時間回想(HR)インタビューを実施し、事前に定義された32の食品群は主成分分析(PCA)で抽出した。 主な結果は以下のとおり。・PCAにより、「伝統的」「海藻-卵」「伝統的-健康的」「軽食」の四大食事パターンを特定した。・「伝統的-健康的」パターンは低脂肪、高炭水化物なだけでなく、脂肪酸やミネラルを多く摂取していた。・「伝統的-健康的」パターンを三分位に分け最高位を最低位と比較すると、多変量調整後のADHDのオッズ比(OR)は、0.31(95%CI:0.12~0.79)であった。・「軽食」パターンのスコアは、明確にADHDリスクと関連していた。しかし、有意な関連は第2三分位のみで観察された。・その他の食事パターンでは、ADHDとスコアの間に有意な関連は認められなかった。関連医療ニュース 小児ADHDの薬物治療、不整脈リスクに注意を 子供はよく遊ばせておいたほうがよい 小児の自殺企図リスク、SSRI/SNRI間で差はあるか

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第55回米国血液学会(ASH 2013)トレンドビュー 血液腫瘍治療の最新知見

第55回米国血液学会(American Society of Hematology 2013)が2013年12月7~10日、米国ルイジアナ州ニューオリンズにて開催された。同学会の内容から血液腫瘍治療の最新のトレンドを、がん研究会有明病院 血液腫瘍科部長/がん化学療法センター臨床部部長の畠 清彦氏に聞いた。iPS細胞研究と次世代シーケンス導入今回のASHでは、まずiPS細胞の基礎研究の広がりが印象的であった。iPS細胞の臨床応用にはまだ時間を要するが、血液系の分化・増殖という方向への展開が明確にみられた。また、次世代シーケンスの導入の活発化も最近の特徴であろう。治療の前後や治療抵抗性時における遺伝子の発現状況の比較や、急性骨髄性白血病(AML)や骨髄異形成症候群(MDS)などにおける遺伝子異常の解析が盛んに進められている。この流れはしばらく続くと予測される。急性骨髄性白血病(AML)AMLについては、有望な新規薬剤のエビデンスの報告はほとんどなかった。印象的だったのは、米国で2010年に販売中止となったゲムツズマブオゾガマイシンの自主研究が着実に進められており、投与スケジュールの変更や減量、他剤との併用により、予想以上に良好な成績が得られていることであった。販売が継続している日本でも、使用機会は減少しているが、工夫の余地は残されていると考えられる。急性リンパ性白血病(ALL)ALLに関しては、フィラデルフィア染色体(Ph)陽性例(ABL-positive)に対するニロチニブと多剤併用化学療法(hyper-CVAD:シクロホスファミド+ビンクリスチン+ドキソルビシン+デキサメタゾン)の第II相試験で良好な成績が報告された。一方、Ph陰性例では有望な新薬は見当たらないが、B細胞性ALLに対するCD19抗体などの検討が進められている。慢性骨髄性白血病(CML)BCR-ABL遺伝子T315I変異陽性CMLの治療において、第3世代ABLキナーゼ阻害薬であるポナチニブの有効性が確認されている。米国では2012年に承認され、日本では現在申請中であるが、2次または3次治療薬として承認される見通しである。ただし、現在、T315I変異の検査が可能な施設は限られており、全国的な検査体制の構築が課題となる。慢性リンパ球性白血病(CLL)CLL領域では、プレナリー・セッションでオビヌツズマブ(GA101)+クロラムブシル(GClb)とリツキシマブ+クロラムブシル(RCbl)のhead-to-headの第III相試験(CLL11試験)の結果が報告された。GA101は糖鎖改変型タイプⅡ抗CD20モノクローナル抗体であり、B細胞上のCD20に選択的に結合し、リツキシマブに比べ抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性が強く、直接的な細胞死の誘導能も高いとされる。結果は、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値が、GClb群で26.7ヵ月と、RCbl群の15.2ヵ月よりも1年近く延長し(p<0.0001)、全生存期間(OS)中央値も良好な傾向がみられた(p=0.0849)。また、経口投与が可能なBurtonチロシンキナーゼ(BTK)阻害薬であるイブルチニブとリツキシマブ+ベンダムスチン(RB)との併用に関する第Ib相試験では、良好な安全性プロフィールが確認されるとともに、奏効率が90%を超え、推定1年PFSも90%に達しており、注目を集めた。現在、イブルチニブ+RBとプラセボ+RBを比較する無作為化第III相試験が進行中である。ONO-4059は、CLLの第I相試験で有望な結果が示されており、これから第II相試験が開始される。そのほか、イデラリシブ、BAY806946、IPI-145などのPI3キナーゼ阻害薬の開発が、今後、どのように展開するかに関心が集まっている。リンパ腫前述のCLLへの有効性が確認された薬剤の多くがリンパ腫にも効果がある可能性が示唆されている。活性化B細胞(ABC)型のびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)に対するR-CHOPへのイブルチニブの上乗せ効果を評価する第III相試験が開始されている。また、イブルチニブは単剤で再発マントル細胞リンパ腫にも有効なことが示されている。前述の経口BTK阻害薬であるONO-4059は、CLLだけでなく、リンパ腫に対する有用性も示唆されている。また、リンパ腫に対するGA101の検討も進められている。ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害薬では、RAD001やパノビノスタットの検討が進められている。DLBCLについては、胚細胞B細胞(GCB)型に有効な薬剤の開発が課題である。T細胞性リンパ腫では、CD30抗体薬であるブレンツキシマブベドチンの有効性が第II相試験で示され、日本でもまもなく承認が得られる予定である。また、ブレンツキシマブベドチンは未分化大細胞型リンパ腫やホジキンリンパ腫の治療として、多剤併用化学療法への上乗せ効果の検討が進められている。一方、BCL-2拮抗薬であるABT-199(GDC-0199)は、CLLのほか小リンパ球性リンパ腫(SLL)に有効な可能性が第I相試験で示された。骨髄異形成症候群(MDS)MDSの治療では、オーロラキナーゼ阻害薬の進歩がみられたが、その有用性を見極めるにはもう少し時間を要する状況である。多発性骨髄腫多発性骨髄腫の領域では、第2世代プロテアソーム阻害薬であるカーフィルゾミブを中心とする臨床試験が数多く行われている。カーフィルゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン(CRd)療法や、カーフィルゾミブ+ポマリドマイド+デキサメサゾン(CPd)療法の第II相試験で良好な成績が報告されていた。また、ダラツムマブなどいくつかの抗CD38抗体薬の開発が進められており、第I相試験で有望な成績が報告されている。さらに、経口プロテアソーム阻害薬であるMLN9708(クエン酸イクサゾミブ)とレナリドミド+デキサメタゾン(Rd)の併用療法は第I/II相試験で良好な成績が示され、現在、MLN9708+RdとRdを比較する第III相試験が進行中である。本試験は開始されたばかりであり、結果を得るには時間を要するが、有望視されている試験の1つである。最後に全体としては、BTK阻害薬のように、対象患者は限られるが有害事象が少ない薬剤を長期的に投与すると、QOLを良好に維持しつつ、徐々にCR例が増加するという状況がみられる。CML治療におけるイマチニブやダサチニブ、ニロチニブに相当する薬剤が、CLLやリンパ腫、マントル細胞リンパ腫の治療においても確立されつつあるという印象である。ただし、単剤で十分か、他剤との併用が必要となるかは、今後の検討課題である。

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禁煙補助薬として抗うつ薬は有用なのか

 抗うつ薬は禁煙を助ける可能性があるといわれている。米国・バーモント大学のJohn R Hughes氏らは、抗うつ薬が禁煙を補助するかどうかを検討するため、Cochrane Tobacco Addiction Group Specialised Registerを用いてレビューを行った。その結果、ブプロピオン(国内未承認)とノルトリプチリンは長期的に禁煙を補助する可能性があること、一方でSSRIやモノアミン酸化酵素(MAO)阻害薬は禁煙を助けないことを報告した。Cochrane Database Systematic Reviewsオンライン版2014年1月8日号の掲載報告。ブプロピオンほか抗うつ薬治療による長期禁煙を助ける効果の安全性を評価 抗うつ薬が禁煙を助ける可能性があるとされる背景には、少なくとも3つの理由がある。第1に、ニコチン離脱によりうつ症状が引き起こされる、あるいは大うつ病エピソードが促される可能性があるため、抗うつ薬がこれらを軽減する可能性がある。第2に、ニコチンは抗うつ作用を有している可能性があり、それが喫煙の継続につながっていると考えられる。このため、抗うつ薬がニコチンの作用を代替しうるという理由である。3つ目の理由として、いくつかの抗うつ薬は、ニコチン依存の背景に存在する神経経路に対するMAO阻害や、受容体に対するニコチン性アセチルコリン受容体阻害など、特異的な作用を示す可能性が挙げられる。 本レビューでは、長期禁煙を助けるための抗うつ薬治療の効果と安全性を評価した。Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)、MEDLINE、EMBASE、PsycINFOにおける試験の報告、および2013年7月におけるその他のレビュー、会議録を含むCochrane Tobacco Addiction Group Specialised Registerを検索した。禁煙について抗うつ薬とプラセボまたは代替の薬物療法を比較した無作為化試験を適格とし、再発予防、禁煙再開または喫煙量の軽減を図る薬物療法の用量比較試験も含めた。追跡期間が6ヵ月未満の試験は除外した。検討した抗うつ薬はブプロピオン、イミプラミン、ノルトリプチリン、パロキセチン、セレギリン、セルトラリン、ドキセピン(以下、国内未承認)、フルオキセチン、ラザベミド、モクロベミド、S-アデノシル-L-メチオニン [SAMe]、セントジョーンズワート、トリプトファン、ベンラファキシン、ジメリジンであった。データを抽出し、Cochrane Collaborationによる標準的手法でバイアスを評価した。主要アウトカムは、ベースライン時における喫煙者の追跡6ヵ月以降の禁煙とし、リスク比(RR)を算出した。禁煙については各試験で適用可能な最も厳格な定義を用い、可能であれば生化学的妥当性の割合を算出した。適切と考えられる場合は固定効果モデルを用いてメタ解析を行った。ブプロピオンとノルトリプチリンの作用機序はニコチン置換において有効 ブプロピオンほか抗うつ薬治療による長期禁煙を助ける効果の主な評価結果は以下のとおり。・2009年以降にアップデートされた24件の新しい試験が特定され、計90件の試験を検索した。このうちブプロピオンに関する試験が65件、ノルトリプチリンに関する試験が10件あり、大半はバイアスリスクが低いか不明であった。・単剤療法で質の高いエビデンスが認められた。ブプロピオンは長期禁煙を有意に延長させた(44試験、1万3,728例、RR:1.62、95%信頼区間[CI]:1.49~1.76)。・試験の数と被験者数が少ないため、中等度の質のエビデンスは限られていた。ノルトリプチリンは単剤療法において、長期禁煙を有意に延長した(6試験、975例、RR:2.03、95%CI:1.48~2.78)。・ニコチン置換療法(NRT)へのブプロピオン追加(12試験、3,487例、RR:1.9、95%CI:0.94~1.51)またはノルトリプチリン追加(4試験、1,644例、RR:1.21、95%CI:0.94~1.55)による長期的ベネフィットの追加について、十分なエビデンスは示されなかった。・直接比較のデータは限られていたが、ブプロピオンとノルトリプチリンの効果は同等で、NRTへの影響は同程度であった(ブプロピオン対ノルトリプチリン 3試験、417例、RR:1.30、95%CI:0.93~1.82/ ブプロピオン対NRT 8試験、4,096例、RR:0.96、95%CI:0.85~1.09/ ノルトリプチリンとNRTの直接比較試験はなし)。・ブプロピオンとバレニクリンを比較した4試験のプール分析から、ブプロピオンはバレニクリンと比較して有意に中断が少なかった(1,810例、RR:0.68、95%CI:0.56~0.83)。・メタ解析により、ブプロピオン服用者における重篤な有害事象の発現率について、有意な増加は検出されなかった。信頼区間が狭く有意差は出ていなかった(33試験、9,631例、RR:1.30、95%CI:1.00~1.69)。・ブプロピオン使用に際し、約1,000人に1人で痙攣のリスクがあることが示唆されていた。また、ブプロピオンには自殺のリスクもあるが、因果関係は明らかではない。・ノルトリプチリンは重篤な副作用を示す可能性があるが、禁煙に関する少数の小規模試験では重篤な副作用はみられなかった。・SSRIそのものによる有意な影響はみられなかった[RR:0.93、95%CI:0.71~1.22、1,594例、2試験はフルオキセチン、1試験はパロキセチン、1試験はセルトラリン]。また、NRTへの追加に関しても有意な影響はみられなかった (3試験フルオキセチン、466例、RR:0.70、95%CI:0.64~1.82)。・MAO阻害薬[RR:1.29、95%CI:0.93~1.79、827例、1試験はモクロベミド、5試験はセレギリン]、非定型抗うつ薬ベンラファキシン(1試験、147例、RR:1.22、95%CI:0.64~2.32)、セントジョーンズワートによるハーブ療法(ヒペリカム)(2試験、261例、RR:0.81、95%CI:0.26~2.53)、または栄養サプリメントSAMe(1試験、120例、RR:0.70、95%CI:0.24~2.07)において、有意な影響はみられなかった。・以上のように、抗うつ薬のブプロピオンとノルトリプチリンは長期禁煙を助け、両薬剤とも治療中断に至る重篤な有害事象はほとんどないことが判明した。ブプロピオンとノルトリプチリンの作用機序はその抗うつ作用に依存せず、ニコチン置換において同程度の有効性を示すことが示唆された。なお、ブプロピオンはバレニクリンと比較して有効性が低かったが、この知見を確認するためにはさらなる研究が求められる。

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ピーナッツを食べると長生き(コメンテーター:桑島 巌 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(162)より-

アーモンド、ピーナッツ、栗、クルミ、落花生などのナッツ類は、不飽和脂肪が豊富で、かつカリウム、マグネシウム、カルシウムといったミネラル、それにビタミンも多く含まれる栄養価の高い食べ物であることが知られている。 事実、内皮機能の改善やインスリン抵抗性を改善するという報告もある。本論文はナースヘルス追跡研究という約7万6,000人の女性を対象とした追跡調査と、ヘルスプロフェッショナル研究という約4万2,000人の男性を対象とした追跡研究という2つの大規模な疫学研究をまとめた結果で、ナッツ消費量多いほど死亡率が少ないという結論を示した。 ナッツを多く食べる人は、摂取量が少ない人にくらべて、ビタミン剤や果物、野菜の摂取が多く、かつ肥満が少なく、活動量も多いなどの交絡因子が数多くあるが、これらの因子で補正してもなお、死亡率は少ないという結果であった。また不健康な人、慢性疾患のある人はナッツなどは食べることができないといった因果の逆転もありうるが、本試験では悪性腫瘍や心疾患を有する例は試験参入から除外しているという。 ナッツはカロリー価が高いために、肥満を恐れて避ける人もいるが、本研究での結果は意外にも、ナッツ消費量の多い人ではむしろ体重は減少していたという。 DASH食はカリウム、マグネシウム、カルシウムなどのミネラルを多く摂り、飽和脂肪酸接収を減らすことで高血圧を予防することが知られているが、ナッツはそれと類似の効果があると考えられる。ただし今回の試験では塩分の摂取量は調査されておらず、テレビをみながら塩ピーナッツにビールの効果には言及していない。

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妊娠中の魚油サプリ摂取は、子のアレルギー発症を抑制するか

 オーストラリア・ウィメンズ & チルドレンズ病院のD. J. Palmer氏らは、妊娠中の魚油サプリメント摂取と出産児のアレルギー発症との関連を無作為化試験にて検討した。その結果、総じて、3歳までにIgE関連アレルギー疾患を有意に減少することは認められなかったことを報告した。n-3長鎖多価不飽和脂肪酸(LCPUFA)の高摂取は、IgEアレルギー疾患の発症を和らげる可能性があり、アレルギー予防戦略として提案される可能性があったが、結果を踏まえて著者は、「今回の結果が、臨床および公衆衛生においてどれほど重要な意味をもつのか、さらに検討する必要がある」と提言している。Allergy誌2013年11月号(オンライン版2013年9月21日号)の掲載報告。 研究グループは、妊婦がn-3 LCPUFAサプリメントを摂取することで、出産児のIgEアレルギー疾患が減少するかどうかを検討した。 対象は無作為化比較試験Docosahexaenoic Acid to Optimise Mother Infant Outcomeの参加者で、アレルギー疾患の遺伝的リスクがあった小児706例を誕生後に追跡して評価した。 被験者(被験児の母親)のうち、介入群(368例)は妊娠21週から出産時まで魚油カプセルを摂取する群に割り付けられた。一方、対照群(338例)は、n-3 LCPUFAを含まない植物性油脂カプセルを摂取した。 アレルギー疾患の診断は、1、3歳時に医学的評価により行われた。 主な結果は以下のとおり。・3歳までにIgEアレルギー疾患を呈した患児の割合は、n-3 LCPUFA摂取群(64/368例・17.3%)と対照群(76/338例・22.6%)で有意差はみられなかった(補正後相対リスク:0.78、95%信頼区間[CI]:0.58~1.06、p=0.11)。・最も頻度の高いアレルギー疾患は湿疹であった。n-3 LCPUFA摂取群は13.8%で湿疹感作がみられ、対照群は19.0%で有意差はなかった(補正後相対リスク:0.75、95%CI:0.53~1.05、p=0.10)。

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慢性腎臓病における2つのエンドポイントを予防するために

 わが国の慢性腎臓病(CKD)患者数は2005年に1,330万人に達し、成人の8人に1人がCKDといわれている。CKDは、腎機能が悪化すると透析が必要な末期腎不全に進行するだけではなく、心血管疾患の発症リスクが高まる。そのリスク因子であるリンの管理について、2013年11月19日に都内にてプレスセミナーが開催された(主催・バイエル薬品株式会社)。そのなかで、東京大学医学部附属病院 腎疾患総合医療学講座 特任准教授の花房 規男氏は、CKDという概念が提唱された経緯やCKD治療の目的、リンコントロールを介したCKD-MBD(CKDに伴う骨・ミネラル代謝異常)対策について講演した。CKDの概念とは CKDには糖尿病性腎症、慢性糸球体腎炎、腎硬化症などさまざまな疾患があるが、どの疾患においても、腎機能の低下は最終的に共通の経路をとる。そのため、CKDとして共通の対策がとられることになる。また、CKDは末期腎不全や心血管合併症という予後に関連する疾患である。CKDの治療目的はこれら2つのエンドポイントの予防であり、早期の対策が望まれる。 CKDは「わかりやすく」をモットーに提唱された概念であり、大きく分けて3つの条件(尿所見をはじめとする腎疾患に関連する異常、eGFR 60mL/min/1.73m2未満、3ヵ月以上継続)を満たす場合に診断される。従来明らかになっていなかった数多くのCKD患者が存在するため、花房氏は「診療は腎臓専門医だけでは難しく、かかりつけ医による診療が重要」と訴えた。CKD対策には生活習慣関連が多い CKDに対する治療介入のなかには、「生活習慣の改善」「食事指導」「高血圧治療」「糖尿病の治療」「脂質異常症の治療」「骨・ミネラル代謝異常に対する治療」「高尿酸血症に対する治療」といった生活習慣に関連する項目が多い。 近年、生活習慣に起因する腎疾患が増加しており、透析患者の原疾患も糖尿病性腎症が増加している。また、BMIが高い患者は末期腎不全に移行しやすいなど、生活習慣とCKDは深く関わっている。そのため、「生活習慣を最初の段階で改善することがポイントである」と花房氏は指摘した。CKD-MBD(CKDに伴う骨・ミネラル代謝異常)という新たな概念が提唱される 骨・ミネラルについても腎臓と深く関連している。CKDで生じるミネラル代謝異常は、骨や副甲状腺の異常のみならず、血管の石灰化を介して、生命予後に大きな影響を与えることが認識され、CKD-Mineral and Bone Disorder(CKD-MBD:CKDに伴う骨・ミネラル代謝異常)という新しい概念が提唱されている。リンの高値が血管の石灰化をもたらし心血管合併症の原因となるため、CKD-MBD対策として、リンをコントロールし、生命予後の改善および末期腎不全への進行を予防することが重要である。リンをコントロールするには CKD患者のリンをコントロールするには、食事中のリンを減らしたり、リン吸着薬で腸からの吸収を減らすことにより、体の中に入ってくるリンを減らすことが重要である。リンはタンパク質を多く含む食物に多いため、タンパク質を制限すればリンも制限されるはずである。しかし、実際には食事制限だけでは十分ではなく、また食事量低下による低栄養のリスクもあるため、必要に応じてリン吸着薬を使用することが有効である。リン吸着薬には、カルシウム含有リン吸着薬(炭酸カルシウム)とカルシウム非含有吸着薬(炭酸ランタン、セベラマー、ビキサロマー)がある。このうち、炭酸カルシウムが以前より使用されているが、花房氏は「持続的なカルシウム負荷は異所性石灰化を生じ、心血管合併症が発症する可能性がある」と指摘し、「保存期の長い過程においては、カルシウム非含有吸着薬が有効なのかもしれない」と述べた。

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栄養補助食品は産後のうつ病予防に有用か

産後の抑うつ症状を予防するとされる代表的な栄養補助食品として、ω-3脂肪酸、鉄、葉酸、s-アデノシル -L-メチオニン、コバラミン、ピリドキシン、リボフラビン、ビタミンD、カルシウムなどが挙げられる。オーストラリア・Flinders Medical CentreのBrendan J Miller氏らは、産前・産後における抑うつ症状の予防に有益な栄養補助食品を探索するため、Cochrane Pregnancy and Childbirth Group's Trials Registerから抽出した2件の無作為化対照試験のデータをレビューした。その結果、セレニウム、DHAあるいはEPAに関する産後抑うつ予防におけるベネフィットは示されず、現時点において、推奨されるエビデンスのある栄養補助食品はないと報告した。Cochrane Database Systematic Reviewsオンライン版2013年10月24日号の掲載報告。 2013年4月30日時点のCochrane Pregnancy and Childbirth Group's Trials Registerを用い、妊娠中の女性または出産後6週以内の女性で、試験開始時に抑うつ症状なし、または抗うつ薬を服用していない者を対象とした無作為化対照試験を検索した。栄養補助食品の単独使用、またはその他の治療と併用して介入した場合の成績を、その他の予防治療、プラセボ、標準的なケアと比較した。主な結果は以下のとおり。・2件の無作為化対照試験が抽出された。【試験1の概要】・酵母由来セレニウム錠100µgとプラセボを、妊娠初期3ヵ月から出産まで経口投与した際の有用性を検討した比較試験。・179人が登録され、セレニウム群とプラセボ群にそれぞれ83人が無作為化された。アウトカムデータが得られたのは85人にとどまった。 ・セレニウム群では61人が試験を完了し、44人でエジンバラ産後うつ病質問票(EPDS)による評価が得られた。プラセボ群では64人が試験を完了し、41人でEPDSによる評価が得られた。・セレニウム群ではEPDSスコアに影響がみられたが、統計学的に有意ではなかった(p=0.07)。・産後8週間以内の自己報告EPDSにおける平均差(MD)は、-1.90(95%信頼区間[CI]:-3.92~0.12)であった。・脱落例が多かったこと、EPDSを完了しなかった者が多数であったため、大きなバイアスが確認された。・副次アウトカムに関する報告はなかった。 【試験2の概要】・EPA、DHA、プラセボの比較試験。・産後抑うつのリスクにさらされている126人を、EPA群42人、DHA群42人、プラセボ群42人の3群に無作為化した。・EPA群の3人、DHA群の4人、プラセボ群の1人は追跡不能であった。登録時に大うつ病性障害、双極性障害、薬物乱用または依存、自殺企図または統合失調症を有する女性は除外された。ただし、介入中止例(EPA群5人、DHA群4人、プラセボ群7人)は、追跡可能であったためintention-to-treat解析に含めた。・服用期間(栄養補助食品またはプラセボ)は、妊娠12~20週から最後の評価時である出産後6~8週までであった。主要アウトカムは、5回目(出産後6~8週)の受診時におけるベックうつ病評価尺度(BDI)スコアであった。・産後抑うつの予防について、EPA-リッチ魚油サプリメント(MD:0.70、95%CI:-1.78~3.18)、DHA-リッチ魚油サプリメント(同:0.90、-1.33~3.13)のベネフィットは認められなかった。・産後抑うつへの影響について、EPAとDHAの間で差はみられなかった(同:-0.20、-2.61~2.21)。・副次アウトカムは「出産後6~8週時における大うつ病障害の発症」、「抗うつ薬を開始した女性の人数」、「分娩時における母親の出血」、または「新生児特定集中治療室(NICU)への入室」としたが、いずれにおいてもベネフィットはみられず、有意な影響も認められなかった。【結論】・セレニウム、DHAあるいはEPAが産後抑うつを防ぐというエビデンスは不十分である。・現時点において、産後抑うつの予防に推奨されるエビデンスのある栄養補助食品はない。関連医療ニュース 1日1杯のワインがうつ病を予防 日本人のうつ病予防に期待?葉酸の摂取量を増やすべき 日本語版・産後うつ病予測尺度「PDPI-R-J」を開発

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