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良い睡眠には就寝環境も関係する/アイスタット

 世界的にみてもわが国の睡眠時間、睡眠の質は低いといわれている。そして、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)禍の中で、私たちの睡眠環境に変化はあったのであろうか。 3月19日の「春の睡眠の日」に合わせ、「睡眠が快適な人とそうでない人は何が違うのか」また「昼間の眠気は、睡眠事情が関係しているものなのか」を知る目的で、株式会社アイスタットは睡眠に関するアンケートの調査を行った。 アンケートは、セルフ型アンケートツール“Freeasy”を運営するアイブリッジ株式会社の全国の会員20~59歳の有職者300人が対象。調査概要形式:WEBアンケート方式期日:2021年3月16日対象:セルフ型アンケートツール“Freeasy”の登録者300人(20~59歳/全国地域/有職者)を対象アンケート結果の概要・最近1ヵ月間の睡眠状況が快適な人は34%。若い世代ほど快適が多い・平日の平均睡眠時間は5~6時間未満(35%)が最多。対象が有職者のため短い傾向・睡眠時間数が満足の割合は約30%で、睡眠時間が長い人ほど満足の人が多くなる傾向・睡眠が快適・そうでない人の違いは、睡眠時間が6時間以上で満足、6時間未満で満足ではない・日中の睡魔、居眠り、昼寝は、「たまにある(50%)」が最多。睡眠時間数が長い人ほど「ほとんどない」が多く、短い人ほど「頻繁にある」傾向・日中の睡魔・居眠り・昼寝が頻繁・たまにある人とほとんどない人の違いは、睡眠時間が6時間以上か未満・調査結果から、健康推進のためにいかに快適な睡眠をとることが大切か示唆された健康のために確保したい7時間の睡眠時間 「最近1ヵ月間の睡眠状況は、快適(ぐっすり眠れている、睡眠で身体の休養がとれるなど)かどうか」を聞いたところ、「非常に」「やや」を足し合わせた「快適」は34.0%、「あまり」「まったく」を足し合わせた「快適でない」は37.0%で「快適」が下回る結果となった。年代別では、「快適」と回答した人は「20・30代」(38.9%)で最も多く、年代が高くなるにつれ、快適の割合が低くなる傾向だった。また、睡眠時間別では、「快適」と回答した人は「7時間以上」(54.2%)が最も多く、睡眠時間が短くなるほど、快適の割合が低くなる傾向だった。 「最近1ヵ月間の平日の平均睡眠時間」について聞いたところ、最近1ヵ月間の平日の平均睡眠時間では、「5~6時間未満」(35.0%)が最も多く、次に「6~7時間未満」(29.0%)と続いた。回答者が有職者対象のため、睡眠時間数が短い傾向がうかがえた。年代別では、「5時間未満」と回答した人は「50代」(24.1%)で最も多く、「5~6時間未満」では「40代」(38.1%)、「6~7時間未満」では「20・30代」(33.3%)、「7時間以上」では「20・30代」(20.4%)で最も多かった。 先の質問と関連し、「睡眠時間数の満足度について」聞いたところ、「非常に満足」「やや満足」を足し合わせた「満足」は29.3%、「やや睡眠不足」「非常に睡眠不足」を足し合わせた「睡眠不足」は43.3%で、「睡眠不足」と回答した人の方が多かった。年代別では、「満足」と回答した人は「20・30代」(35.2%)で最も多く、「睡眠不足」と回答した人は「50代」(47.5%)で最も多い結果だった。また、睡眠時間別でみると、「満足」と回答した人は「7時間以上」(58.3%)だった。 「休日以外の日中で、睡魔に襲われる、居眠り、昼寝をすることがあるか」と聞いたところ、「たまにある」(50%)が最も多く、次に「ほとんどない」(35%)、「頻繁にある」(15%)と続いた。年代別では、「頻繁にある」と回答した人は「50代」(17.0%)で最も多く、「たまにある」と回答した人は「20・30代」(57.4%)で、「ほとんどない」と回答した人は「40代」(37.1%)で最も多い結果となった。睡眠時間別では「頻繁にある」と回答した人の睡眠は「5時間未満」(35%)で最も多く、「ほとんどない」と回答した人の睡眠は「7時間以上」(56.3%)で最も多い結果だった。睡眠時間の長短だけでなく、中年期以降では睡眠時無呼吸症候群などの慢性疾患も併存している可能もあり、必要によっては治療の必要性も示唆される結果となった。 「最近1ヵ月間の起床の仕方について(平均して最も多い起床の仕方なども含む)」を聞いたところ、「自然に目が覚める(体内時計)」が35.7%で最も多く、次に「携帯電話や目覚まし時計などのアラーム1回で起きる」の33.3%が続いた。年代別では「自然に目が覚める」は「50代」(39.7%)で最も多く、「携帯電話アラーム1回」は「20・30代」(35.2%)で最も多い結果だった。 「最近1ヵ月間の睡眠について、11個の選択肢であてはまるもの」を聞いたところ、第1位は「トイレで起きることがある」(47.3%)、第2位は「眠りが浅い」(26.7%)、第3位は「朝起きても眠気を感じる、毎朝スッキリしない」(26.0%)だった。年代別では、睡眠にマイナスと思われる選択肢11個のうち、50代は「トイレで起きることがある」「眠りが浅い」「寝ているのに疲れが残っていてだるい」「寝付きが悪い」「朝早くに目覚めてしまう」「いびきをかいているとよく言われる」「睡眠導入剤や快眠サプリメントを服用している」「寝相が悪い」の8個が最も多かった。 「就寝する部屋の状況」について7個の選択肢からあてはまるものを聞いたところ、「部屋は一人で寝ている」が44.7%で最も多く、次に「ベッドや布団の周りには物があまりなく、整理整頓されている」が33.7%と続いた。年代別では、睡眠にプラス的と思われる選択肢7個のうち、50代は「部屋は一人で寝ている」「外部の騒音など気にならない・静かである」「日当たりが良い部屋である」「部屋は日々、掃除機をかけたり、換気をしてキレイである」「就寝前、就寝中の部屋の温度、湿度は常に快適である」の5個が最も多く、快眠のための工夫がされている傾向がうかがえた。 「最近1ヵ月間の日々の生活状況」について15個の選択肢からあてはまることを聞いたところ、「ストレスがある」(36.7%)が最も多かった。睡眠時間別では、「ストレスがある」「仕事が忙しい」「コロナ禍により、収入面・雇用面・生活面で大きなダメージを受けている」「肥満傾向である」「栄養バランスの良い食事を摂取していない」「規則正しい生活を送っていない」「持病がある」と回答した人の睡眠時間は、「5時間未満」が最も多かった。一方、「どれもあてはまらない」と回答した人は「7時間以上(35.4%)」が最も多い結果だった。睡眠時間の長さが、ストレスの軽減に役立つことが示唆された。

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トリプタンの使用頻度が増えてきた患者にすべきことは?【ママに聞いてみよう(2)】

ママに聞いてみよう(2)トリプタンの使用頻度が増えてきた患者にすべきことは?講師:堀 美智子氏 / 医薬情報研究所 (株)エス・アイ・シー取締役、日本女性薬局経営者の会 会長動画解説受診間隔が短くなってきたトリプタン服用中の患者に対応した紗耶華さんは、どのような対策ができるか悩みます。そこで美智子先生が、薬物乱用頭痛の確認のためのポイントや片頭痛予防に有効な薬やサプリメントについて教えます。

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抗精神病薬誘発性高プロラクチン血症の治療に関するガイダンス

 抗精神病薬誘発性高プロラクチン血症のマネジメントオプションおよび治療における有効性、忍容性、薬物相互作用、禁忌、投与計画などの考慮すべきポイントについて、米国・ミズーリ大学のMatthew M. Rusgis氏らが評価を行った。American Journal of Health-System Pharmacy誌オンライン版2021年2月26日号の報告。 主な内容は以下のとおり。・高プロラクチン血症は、抗精神病薬の使用により発現する副作用の1つである。・高プロラクチン血症のマネジメントにおいて、まずは以下の手段を検討する。 ●高プロラクチン血症と関連してる可能性の高い抗精神病薬の減量 ●高プロラクチン血症と関連してる可能性の高い抗精神病薬の中止 ●高プロラクチン血症リスクの低い抗精神病薬への切り替え・これらのオプションは、必ずしも実用的であるとはいえず、精神症状の再発リスクを考慮する必要がある。・その他のマネジメントオプションとして、以下の薬剤による補助療法が検討可能である。 ●アリピプラゾール ●ドパミン作動薬(カベルゴリン、ブロモクリプチン) ●メトホルミン ●ハーブサプリメント・Embase、PubMed、Google Scholarより、高プロラクチン血症や上記治療薬などのキーワードを用いて検索したところ、入手可能なエビデンスより、次の4点が抽出された。(1)アリピプラゾールは、プロラクチンレベルを正常範囲まで低下させるうえで、安全かつ有用な薬剤である。(2)カベルゴリン、ブロモクリプチンは、プロラクチンレベルを低下させる。しかし、カベルゴリンは、心臓弁膜症などの重篤な副作用と関連している可能性がある。(3)メトホルミンは、プロラクチンレベルの軽度な低下が期待できる。(4)抗精神病薬誘発性高プロラクチン血症に対する漢方薬(カモミール、芍薬甘草湯)の使用に関するデータは限られていた。 著者らは「抗精神病薬誘発性高プロラクチン血症のマネジメントにおいて、抗精神病薬の治療レジメンを変更できない患者でも利用可能な治療方法はいくつかある。抗精神病薬を使用している患者の多くは、慢性疾患であり、長期にわたる薬剤使用が必要であることを考慮すると、高プロラクチン血症に対する治療戦略の有効性、安全性を判断するためには、短期だけでなくより多くの長期的な研究が必要であろう」としている。

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膵がん末期患者の下痢をコデインリン酸塩でコントロール【うまくいく!処方提案プラクティス】第34回

 今回は、末期がんの患者さんの下痢に対して、コデインリン酸塩錠で対処した症例を紹介します。代表的な副作用である便秘を活用することで、最終的には疼痛・排便の両方がコントロールできましたが、もっと早くから介入できていたら…という後悔が残った事例です。患者情報87歳、女性基礎疾患膵体部がん(c Stage4b、本人へは未告知)、左加齢性黄斑変性症既往歴子宮筋腫手術、腰椎圧迫骨折、左大腿部頸部骨折診察間隔毎週訪問処方内容1.トラセミド錠4mg 1錠 分1 朝食後2.スピロノラクトン錠25mg 1錠 分1 朝食後3.ナイキサン錠100mg 2錠 分2 朝食後・就寝前4.酪酸菌配合錠 4錠 分2 朝食後・就寝前5.パンクレリパーゼカプセル150mg 2カプセル 分2 朝食後・就寝前6.乾燥硫酸鉄徐放錠 2錠 分2 朝食後・就寝前7.ポラプレジンク錠75mg 2錠 分2 朝食後・就寝前8.ロペラミドカプセル1mg 2カプセル 分2 朝食後・就寝前9.スボレキサント錠15mg 1錠 分1 就寝前10.ロフラゼプ酸エチル錠1mg 1錠 分1 就寝前本症例のポイントこの患者さんは、膵体部がんの進行による疼痛と頻回の下痢で体力消耗が激しく、その便処理のために同居する長女の介護負担が非常に大きい状態でした。内服薬の管理も本人では難しく、出勤前と帰宅後に内服支援をする長女のために朝食後と就寝前で統一していました。下痢に関しては以前から悩みの種で、過去の治療において半夏瀉心湯やタンニン酸アルブミンで治療をするも抑えることはできず、現在の治療でも整腸薬のみではまったく効果はありませんでした。ロペラミドも追加しましたがコントロールには至らず、本人と長女の精神的・身体的な疲弊が限界に達していました。そのような中、医師より、どうにか今の服薬管理環境で下痢をコントロールできる内服薬はないかという電話相談がありました。この患者さんは、過去に子宮筋腫の手術歴があり、イレウスのリスクもあることから止瀉作用の過剰発現には注意を払う必要があります。しかし、今も疼痛があり、今後も病勢が進行する可能性から、オピオイド導入のタイミングと考えて、腸管内のオピオイド受容体を刺激して腸管蠕動を抑制するコデインリン酸塩錠の投与について検討しました。処方提案と経過医師に、疼痛と排便コントロールの両方を兼ねて、現行のロペラミドに加えて、弱オピオイドのコデインリン酸塩錠の追加を提案しました。用法については、長女より夜間から明け方の便失禁で困っているという話があったため、20mg錠を朝・夕食後(長女帰宅時に服用)・就寝前の分3で服用する方法を伝えました。医師からは、強オピオイドの導入も考えていたが段階を踏んで治療をしよう、と承認を得ることができ、早速当日の夜より服用開始となりました。投与開始3日目にフォローアップのため訪問したところ、夜間の便失禁が減り、本人と長女の心身の負担が軽減できていました。しかしその後、これまでの度重なる便失禁や病状悪化が影響してか、食事がほとんど摂れずに水分摂取がやっとの状態になっていきました。そして、病状悪化から内服も困難な状態となり、フェンタニルクエン酸塩貼付薬とモルヒネ塩酸塩水和物液での緩和医療へ切り替えることになりました。複数の止瀉薬を検討していた段階で提案することができず、医師から相談を受けるまでなかなか知恵を絞りきれなかったことを反省する事例となりました。

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冬はビタミンD不足【空手家心臓外科医、ドイツ武者修行の旅】第27回

「北ドイツの冬は寒いんじゃないの?」とよく聞かれますが、近年は温暖化の影響もあって、そこまで酷い寒さに悩まされることはありません。実はドイツは南にアルプス山脈があるため、どちらかと言うとむしろ南ドイツの方が寒くなりやすい傾向があるそうです。それよりも問題になるのは日照時間です。北ドイツは冬季の間、日照時間が極めて短くなります。冬至のときで大体昼が6時間くらいです。真っ暗なうちに家を出て、真っ暗になってから家に帰ります。ドイツの冬は日中も曇りが多いので、回診中に晴れ間が少しでもみえたら、一時中断して談話室にいってしばらく日光浴をしたりします。私自身は夜型インドア派ですので、さほど困るわけではありませんが、それでも季節がうつろい日照時間が少しずつでも伸びてくれると、多少なりともホッとする感じを受けます。夏も冬も極端に昼夜が長いヨーロッパ北部の気候ドイツに限らずヨーロッパ全体で言えることですが、この時期はどうしてもうつ傾向になっちゃう人がたくさん出てきます。そこで大抵の人はビタミンDのサプリメントを摂取することになります。実際にスーパーにいくと、それは沢山の製品が販売されていて、どれを買えばいいやら…。錠剤タイプや液体タイプ、週に1回飲むだけでいいタイプも販売されています。もちろん逆に夏は日照時間が長くなります。夜の11時ごろでもまだ空がほんのり明るかったりします。ちょうど夏の時期にイスラム教のラマダン(断食)が行われるのですが、たとえドイツであっても、ムスリムの同僚たちは日没まで飲まず食わずで働いています。そのため夕方くらいになると、低血糖でフラフラしています。呼びかけても返事が弱々しい感じです。日没と同時に一気にドカ食いして次の日に備えようとしている姿は本当に大変そうです。日照時間の激しい変化に対応するのは、生物的にも文化的にもいろいろと大変なのです。

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ミオシン活性化薬は駆出率の低下した心不全の予後を若干改善する(解説:佐田政隆氏)-1344

 omecamtiv mecarbilは2011年にScience誌に動物実験の結果が発表されたミオシン活性化薬である。心筋ミオシンに選択的に結合して、ミオシン頭部とアクチン間のATPを消費して生じる滑走力を強め、強心効果が示されている。平滑筋や骨格筋のミオシンには作用しないという。今までの臨床試験でも、短期間の観察で心機能を改善することが示されており、新しい機序の心不全治療薬として期待されていた。そのomecamtiv mecarbilに関する二重盲検の第III相試験の結果である。昨年、米国心臓協会学術集会で発表され、同時にNew England Journal of Medicine誌に公開された。 薬物(ACE阻害薬かARB 約87%、アンジオテンシン受容体・ネプリライシン阻害薬 約19%、β遮断薬 約94%、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬 約77%、SGLT2阻害薬 約2.5%)、デバイス(心臓再同期療法 約14%、植込み型除細動器 約32%)を用いた標準的な治療を受けている左室駆出率35%以下の症候性心不全の8,256例が2群に割り付けされた。主要評価項目は初回心不全イベント(入院もしくは緊急受診)と心血管死であったが、観察期間中央値21.8ヵ月で有意な効果を認めた(37.0% vs.39.1%、ハザード比:0.92)。サブグループ解析では駆出率が28%以下で、正常洞調律で効果が大きかったようである。 過去に各種の経口強心薬が開発されてきたが、数々の大規模臨床研究にて心不全患者の予後を悪化させるという結果が報告されている。今までの強心薬は心筋内カルシウム動態に作用し、心筋虚血や心室性不整脈を誘発するためと考えられているが、今回は両群間で差がなかった。 ただ、主要評価項目で有意差がでた(p=0.03)といっても差はごくわずかである。副次評価項目である心血管死、自己記入式健康状態評価ツールであるKCCQ症状スコアでは両群間で差は認められなかった。NT-proBNP値がomecamtiv mecarbil群で10%低かったというが、試験開始早期である24週時の測定である。長期的な効果は不明である。今までの強心薬のように重篤な副作用が認められなかったのは幸いであるが、広く標準的な心不全治療薬とはならないようである。やはり、「痩せ馬に鞭」は厳しいようである。

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「ω-3多価不飽和脂肪酸、ビタミンD、筋力トレーニング運動による治療は効かない」ってほんと?(解説:島田俊夫氏)-1341

 ω-3多価不飽和脂肪酸の中でもEPA、DHAが、心脳血管障害、がんの予防に効果があるか否かについては、議論の多いところである1)。しかしながら、ちまたではこれらのサプリメントへの嗜好が強くなっている。さらにビタミンDに関しても実臨床の中で、すでに骨粗鬆症の治療にあまねく使用されている2)。また、筋力トレーニングの運動プログラムは健康改善に寄与する3)との考えが生活の中に定着している。 このような状況の中で今回取り上げる2020年JAMA誌324巻18号に掲載されたBischoff-Ferrari HA等による論文は、有効と信じられている3つの因子を考慮した、二重盲検2×2×2要因無作為ランダム化比較試験デザインに基づく臨床研究論文である。研究対象者は、研究開始5年前から大病の既往のない70歳以上の、スイスとドイツからの健康成人2,157例であった。 介入はω-3脂肪酸投与、ビタミンD投与、筋力トレーニング運動プログラム実施のそれぞれの3因子の有/無を考慮した8グループ(コントロールを含む)で行われた。 標的アウトカムとして6項目が取り上げられた。3年間にわたる収縮期および拡張期血圧、運動能力(SPPB)、認知機能(MoCA)、非脊椎骨骨折および感染の発生頻度の6項目について評価された。2,157例(平均年齢74.9歳、女性が61.7%)中1,990例(88%)が研究を完遂した。観察期間の中央値は2.99年で、約3年にわたり、標的6アウトカムに関して個別または組み合わせ介入に対して、いずれのアームでも統計学的に有意な利便性を認めなかった。全体で25例の死亡が確認されたが、全アームにおいてもほぼ同様の結果であった。 大きな合併症のない70歳以上の成人中、ビタミンD、ω-3脂肪酸の補充療法、筋力トレーニング運動プログラムの実施グループでは、収縮期および拡張期血圧、非脊椎骨骨折、身体能力、感染率、認知機能の改善に統計学的有意差は認めなかった。これらの知見は、標的アウトカムに対する3つの介入の有効性を支持する結果と一致しなかった。 しかしながら、上記の結論を必ずしもうのみにすべきではない。 サプリメントを補充する類の研究では、対象者がビタミンD、ω-3脂肪酸欠乏、運動不足が背景にあるか否かで結果が大きく左右される。対象者がいわゆる高齢健常者である場合、欠乏状態は相対的に軽いと考えられる。このため、3つの要因のすべての組み合わせを考慮しても欠乏がわずかであれば研究対象として必ずしも適切ではなく、結果に差がないから有効でないと結論するのは早計である。 研究デザインを考えるときに、補充療法の効果を判定したければ欠乏確認済対象で研究するのが必要であり、今回の研究は3つの要因の臨床的利便性を否定するのに十分なデザインではない。本論文の結論は、欠乏の軽微な対象では効果が出にくいとのメッセージとして受け止めるべきではないか。

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免疫も老化、その予防が新型コロナ対策に重要

 国内初の新型コロナウイルスのワクチン開発に期待が寄せられるアンジェス社。その創業者でありメディカルアドバイザーを務める森下 竜一氏(大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学 寄附講座教授)が、12月15日に開催された第3回日本抗加齢医学会WEBメディアセミナー「感染症と免疫」において、『免疫老化とミトコンドリア』について講演した。風邪と混同してはいけない理由 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策やワクチン開発を進めていく上で世界中が難局に直面している。その最大の問題点について森下氏は、「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のモデルが作れないこと」だという。その理由として、「マウスはSARS-CoV-2に感染しない。ハムスターやネコは感染するものの肺炎症状が出ないため、治療薬に最適なモデルを作り出すことが難しい。つまり、従来の開発方法に当てはめられず、未知な領域が多い」と同氏は言及した。 そんな中、同氏率いるアンジェス社は同社が培ってきたプラスミドDNA製法の技術を活かし、新型コロナのDNAワクチンを開発中である。これは、ウイルスのスパイク部分(感染の足掛かりとなるタンパク質)の遺伝子情報を取り込んだプラスミドDNAをワクチンとして接種することで、スパイク部分のみを体内で発現させて抗体を産生させる仕組みである。12月23日現在、国内で500例を対象としたワクチンの用法・用量に関する安全性や免疫原性評価のための第2/3相臨床試験が行われている。ワクチン完成までは一人ひとりが自然免疫の強化を 国内でのワクチン(海外製含む)接種の開始時期は、2021年2月とも言われているが、実際のところ未だ見通しが立っていない。その間、個人でできる感染対策(手洗い・消毒、マスク着用、うがいなど)だけで感染を凌ぐにはもはや限界にきている。そこで同氏は人間のもともとの免疫力に着目し、「人間の体内で最初に働く自然免疫の強化」を強調した。しかし、自然免疫の機能は18~20歳でピークを迎え低下の一途をたどる。また、免疫機能の中で最も重要なT細胞の分化場所である胸腺は体内で一番老化が早いため、「加齢は自然免疫の低下だけではなく、胸腺の退縮がT細胞の老化につながり、獲得免疫の衰えの原因にもなる」と指摘した。加えて、「睡眠不足、ストレス、肥満、そして腸内細菌叢の構成異常なども免疫力の低下として問題だが、とくに“免疫の老化”が問題」とし、高齢者の重症化の要因の1つに免疫力の老化を挙げた。免疫老化を防ぐにはミトコンドリアをCoQ10で助けよ この免疫老化を食い止めるための方法として、同氏はミトコンドリアの老化を助けることが鍵だと話した。ミトコンドリアは細胞の中のエネルギー生産工場で、中和抗体を作るB細胞などあらゆる細胞の活性化に影響する、いわば“免疫を正常に働かせる司令塔”の役割を司る。そのため主要な自然免疫経路はすべてミトコンドリアに依存している。しかし、ミトコンドリアも加齢とともに減少傾向を示すことから、この働きを助けるコエンザイムQ10(CoQ10)の補充が重要1)だという。また、自然免疫のなかでも口腔内に多く存在し、口腔内に侵入したSARS-CoV-2を速やかに攻撃、粘膜への付着や体内への侵入阻止するIgAもこのCoQ10の摂取により増加傾向が示唆された2)ことを踏まえ、医療用医薬品のユビデカレノン製剤(商品名:ノイキノンほか)をはじめ、サプリメントや機能性食品として販売されているCoQ10(とくに還元型)の摂取が有効であることを説明した。 最後に同氏は「ワクチン導入には時間を要するので、現時点ではまず基本的な感染対策、生活習慣の改善から免疫力UPに注力してほしい。そのなかで免疫を上げる工夫として還元型CoQ10の多い食品(イワシ:約6.4mg、豚肉:約3.3mg[各100g中の含有量])を食べたり、プラスαとしてサプリメントなどを活用したりして、体内のCoQ10量を増やすことを心がけてほしい」とし、医療者に対しては「CoQ10量や唾液内のIgAは検査で測定可能であるため、患者の体質確認には有用」と締めくくった。

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冬の健康管理は3つのキープ(3K)に注目

 2020年11月18日(水)に大塚製薬株式会社より発行された、冬の健康管理についての最新情報に関するニュースレターで、「距離」「衛生」「体内の水分」の3つのキープ(3K)が冬の健康管理の新習慣として重要であること、体内の水分はイオン飲料での補給が効果的であることなどが紹介された。 その中で、東京女子医科大学 呼吸器内科学教授の多賀谷 悦子氏は「線毛輸送機能を維持し、ウイルス感染を防ぐには水分補給が重要となる。乾燥しやすい冬に効率のよい水分補給として、水分保持率の高いイオン飲料が有用である」と述べている。 ウイルスの脅威に立ち向かうため、空気の乾燥、暖房機器使用により湿度が低下した冬の水分摂取は重要である。やみくもな水分摂取ではなく、イオン飲料による効率的な水分摂取で、3つのキープ(3K)を意識した冬の健康管理が浸透することを期待したい。知らず知らずの乾燥 生活するうえで快適な湿度は40~60%といわれているが、冬の湿度は約50%、最小湿度で10~20%まで低下する。空気中の水蒸気量が少なく乾燥しやすいうえに、暖房機器の使用はさらなる乾燥を引き起こす。密閉性の高い近年の住環境も乾燥に拍車を掛けており、乾燥がウイルス活動の活性化の要因の1つとされている。冬のカラダは水分不足 私たちのカラダは1日に約2.5Lの水分を失う。皮膚や粘膜、呼気から失われる不感蒸泄は1日約900mLといわれており、気温が低く乾燥した冬の環境では消失量が増加する。夏と比較して汗をかきにくく、水分摂取の機会も減ることから、冬でも脱水を引き起こす可能性がある。ウイルスからカラダを守る「線毛運動」 線毛には、鼻やノドから入るウイルスの体内への侵入を防ぐ最前線の防御機能があり、気道に侵入したウイルスは粘液で捕らえられ線毛によって運搬・排除される。線毛は乾燥に弱く、湿度が低い環境下では運動能力が低下するため、湿度の維持とカラダの水分量を保つことが重要とされる。イオン飲料による水分補給の効果 低湿度環境下において、鼻腔粘液線毛輸送機能に対するイオン飲料の効果を「サッカリンテスト」にて検討1)したところ、「何も摂らない」「ミネラルウォーターを摂取」「イオン飲料を摂取」の3条件の中で、イオン飲料の摂取が線毛輸送機能の低下を有意に抑えた。また、イオン飲料と水を摂取し2時間後の体内保持率を比較した結果2)でもイオン飲料のほうが高く、イオン飲料は体内の水分量、線毛輸送機能を維持するために重要であると示唆されている。今冬は「3つのキープ(3K)」に注目 冬は気温が低く乾燥しやすい季節であり、ウイルス感染が心配されるため、「3つのキープ(3K)」を意識した健康管理が必要であるとして、下記の対策を大塚製薬は推奨している。・対策(1):KEEP DISTANCE(距離を保とう)・対策(2):KEEP CLEAN(衛生を保とう)・対策(3):KEEP WATER(水分を保とう)まとめ 2020年は新型コロナウイルス感染拡大の影響により、私たちの日常は大きく変化した。引き続きウイルスによる脅威に曝されている環境下にあるため、ソーシャルディスタンス、手洗い・うがいに加えて、イオン飲料による小まめな水分摂取を意識して、ウイルスに負けない健康管理に取り組む必要がある。

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認知機能の改善作用を示したビフィズス菌株とは?

 脳と腸が自律神経などを通じて強く関連し、その状態に影響を及ぼしあう脳腸相関がいわれるようになって久しく、腸内細菌が認知症に関連するとの報告も多いが、因果関係の証明にはいたっていない。今回、2本の二重盲検無作為化比較試験を経て、ビフィズス菌MCC1274摂取による認知機能の維持・改善作用が示唆された。2020年11月24日、「ビフィズス菌MCC1274の認知機能改善作用とその可能性」と題したメディアセミナー(主催:森永乳業)が開催され、佐治 直樹氏(国立長寿医療研究センター もの忘れセンター)、清水 金忠氏(森永乳業株式会社研究本部 基礎研究所)、新井 平伊氏(アルツクリニック東京)が登壇し、試験の概要や関連研究、今後の展望について講演した。認知症の有無で腸内細菌叢の構成は異なる 佐治氏は、認知機能と腸内細菌の関連について調べる国内のレジストリ研究(Gimlet study)から得られた知見をいくつか紹介。腸内細菌叢の構成を調べた結果、認知症の人では、認知症でない人よりもバクテロイデス(常在菌)が減り、その他の不明な細菌の割合が増えていることが明らかになった1)。さらに、その変化は認知症の前段階(軽度認知障害[MCI])からみられることも確認された2)。 なぜ腸内細菌が認知症と関連するかについては、神経反射、循環器系、免疫系という大きく3つの経路における機序が考えられている。加えて、同レジストリ研究からは、腸内細菌の代謝産物が認知症に関連することが示唆された。代謝産物の濃度が1SD上昇した場合のオッズ比をみると、アンモニアで1.60(95%信頼区間:1.04~2.52)と認知症との関連性が高かったが、乳酸では0.28(0.02~0.99)と低かった3)。軽度認知障害の疑いのある50歳以上で有意にスコア改善 清水氏は、ビフィズス菌MCC1274の臨床試験の経緯について紹介。まずはじめに、同社が保有するビフィズス菌株の中からアルツハイマー型認知症の発症を抑制する可能性がある菌株としてMCC1274を特定した。アルツハイマーモデルを用いたプレ臨床試験では、MCC1274投与による認知機能改善作用および脳内炎症抑制作用が観察された4)。 続いて実施された二重盲検プラセボ対照群間比較試験では、物忘れが気になる120人の被験者をMCC1274カプセル(200億/日)群またはプラセボ群に無作為に割り付け、12週間摂取後の認知機能(MMSEおよびRBANSによる評価)を比較した。その結果、全被験者対象の解析では群間有意差がみられなかったが、認知機能が低下したサブグループ(RBANS総合スコア41点未満)解析では、MMSEおよびRBANSで有意な改善が認められた5)。 この結果を受け、認知症ではなく(MMSEスコア22点以上)、かつRBANSスコアが低く軽度認知障害の疑いのある50歳以上80歳未満の80人を対象に、プラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験が実施された。その結果、MCC1274カプセル(200億/日)の16週間の摂取により、主要評価項目であるRBANSスコア合計の摂取後の実測値、そして前後の変動値とも有意な改善がみられ、即時記憶、視空間・構成、遅延記憶を司る認知領域の点数も有意に向上した6)。 今後は、作用機序解析や認知症発症者に対する寄与について研究を続ける見通しだという。アルツハイマー病以外への効果や菌の特異性など、今後の展開にも期待感 新井氏は、今回のビフィズス菌MCC1274の研究報告について、何より研究プロセスが治療薬開発に匹敵するアプローチであると高く評価。「サプリメントとして分類されているものの中で、ここまで徹底して検討し、エビデンスを積み重ねてきているものは他にない」と話し、サプリや特保食品としての展開は十分に準備ができた状態だと期待感を示した。 そのうえで、今後解明が期待される点として、1)抗炎症作用、2)特異性(菌の特異性、疾患特異性)、3)アミロイド仮説を挙げた。1)については、血液(末梢血)だけでなく、脳脊髄液や脳内炎症マーカーで検討できないかと指摘。2)については、今回のMCC1274 vs.乳酸菌や、他のビフィズス菌ではどうなのか、臨床家として大変興味があると話した。また、MCI群はアルツハイマー病だけではない点から、脳画像も含めて診断し、均一性を高めて検討してもらえたらと提案。3)については、経口摂取で腸内に投与されたビフィズス菌が、アミロイドβの沈着にどんな効果が実際にあるのかは大変興味深い、と話した。■参考1)Saji N, et al. Hypertens Res. 2019 Jul;42:1090-1091.2)Saji N, et al. Sci Rep. 2019 Dec 18;9:19227.3)Saji N, et al. Sci Rep. 2020 May 18;10(1):8088.4)Kobayashi Y, et al. Sci Rep. 2017 Oct 18;7:13510.5)Kobayashi Y, et al. Benef Microbes. 2019 May 28;10:511-520.6)Xiao J, et al. J Alzheimers Dis. 2020;77:139-147.

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finerenone、2型糖尿病合併CKD患者で心血管リスクを抑制/NEJM

 2型糖尿病を併発する慢性腎臓病(CKD)患者において、finerenoneの投与はプラセボに比べ、CKDの進行と心血管イベントのリスクを低減させることが、米国・シカゴ大学病院のGeorge L. Bakris氏らが行った「FIDELIO-DKD試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年12月3日号に掲載された。2型糖尿病はCKDの主要な原因であり、2型糖尿病患者のCKD管理ガイドラインでは、高血圧や高血糖の管理とともにさまざまな薬物療法が推奨されているが、CKDの進行のリスクは解消されておらず、新たな治療が求められている。finerenoneは、非ステロイド性選択的ミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬で、CKDと2型糖尿病を併発する患者を対象とする短期試験でアルブミン尿を減少させると報告されている。finerenoneがCKDの進行を抑制するとの仮説を検証 研究グループは、2型糖尿病を合併するCKD進行例において、finerenoneはCKDの進行を抑制し、心血管系の併存疾患や死亡を低下させるとの仮説を検証する目的で、二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験を行った(Bayerの助成による)。2015年9月~2018年6月の期間に、48ヵ国でスクリーニングと無作為化が行われた。 対象は、年齢18歳以上のCKDと2型糖尿病を有する患者であった。尿中アルブミン/クレアチニン比(アルブミンはmg、クレアチニンはg単位で測定)が≧30~<300、推算糸球体濾過量(eGFR)が≧25~<60mL/分/1.73m2体表面積で糖尿病性網膜症を有する患者、または尿中アルブミン/クレアチニン比が300~5,000でeGFRが≧25~<75mL/分/1.73m2の患者が適格例とされた。全例がレニン-アンジオテンシン系(RAS)阻害薬(ACE阻害薬、ARB)による治療を受け、無作為化の前に、投与量を製薬会社の添付文書に記載された忍容できない副作用を起こさない最大用量に調節された。 被験者は、finerenoneを経口投与する群またはプラセボ群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要複合アウトカムは、腎不全、eGFRのベースラインから40%以上の持続的な低下、腎臓死とし、time-to-event解析で評価された。主要な副次複合アウトカムは、心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、心不全による入院であり、time-to-event解析で評価が行われた。finerenone群で主要複合アウトカムのイベントが有意に低下 5,674例が解析に含まれ、2,833例がfinerenone群(平均年齢[SD]65.4±8.9歳、男性68.9%)、2,841例がプラセボ群(65.7±9.2歳、71.5%)に割り付けられた。98.1%がACE阻害薬、98.8%がARBの忍容できない副作用を起こさない最大用量による治療を受けていた。フォローアップ期間中央値は2.6年だった。 主要アウトカムのイベントは、finerenone群が2,833例中504例(17.8%)、プラセボ群は2,841例中600例(21.1%)で発生し、finerenone群で有意に低下した(ハザード比[HR]:0.82、95%信頼区間[CI]:0.73~0.93、p=0.001)。各構成要素の発生は、eGFRのベースラインから40%以上の持続的な低下(0.81、0.72~0.92)と腎不全(0.87、0.72~1.05)はfinerenone群で低い傾向があり、腎臓死は両群とも2例ずつで認められた。 主要な副次アウトカムのイベントは、finerenone群が367例(13.0%)、プラセボ群は420例(14.8%)で発生し、finerenone群で有意に良好だった(HR:0.86、95%CI:0.75~0.99、p=0.03)。各構成要素の発生は、非致死的脳卒中(1.03、0.76~1.38)を除き、心血管死(0.86、0.68~1.08)、非致死的心筋梗塞(0.80、0.58~1.09)、心不全による入院(0.86、0.68~1.08)はいずれもfinerenone群で低い傾向がみられた。 試験期間中に発現した有害事象の頻度は両群で同程度であり(finerenone群87.3% vs.プラセボ群87.5%)、重篤な有害事象はそれぞれ31.9%および34.3%で発生した。高カリウム血症関連の有害事象の頻度は、finerenone群がプラセボ群の約2倍(18.3% vs.9.0%)で、試験レジメン中止の原因となった高カリウム血症の頻度もfinerenone群で高かった(2.3% vs.0.9%)。 著者は、「finerenoneの有益性は、部分的にナトリウム利尿作用の機序を介していることが示唆される」とし、「本試験の参加者は多くがCKD進行例で、アルブミン尿がみられない患者や2型糖尿病に起因しないCKDは除外しており、黒人の参加者は4.7%にすぎないことから、今回の知見の一般化可能性は限定的と考えられる」と指摘している。

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1日1回の経口服用で腎性貧血を治療する「バフセオ錠150mg/300mg」【下平博士のDIノート】第63回

1日1回の経口服用で腎性貧血を治療する「バフセオ錠150mg/300mg」今回は、低酸素誘導因子プロリン水酸化酵素(HIF-PH)阻害薬「バダデュスタット錠(商品名:バフセオ錠150mg/300mg、製造販売元:田辺三菱製薬)」を紹介します。本剤は、保存期・透析期にかかわらず、1日1回の経口服用で腎性貧血を改善し、患者さんのQOLやアドヒアランスの向上が期待されています。<効能・効果>本剤は、腎性貧血の適応で、2020年6月29日に承認され、2020年8月26日より発売されています。<用法・用量>通常、成人にはバダデュスタットとして1回300mgを開始用量とし、1日1回経口投与します。以後は、患者の状態に応じて最高用量1日1回600mgを超えない範囲で適宜増減します。増量する場合は、150mg単位を4週間以上の間隔を空けて行います。休薬した場合は、1段階低い用量で投与を再開します。なお、赤血球造血刺激因子製剤(ESA)で未治療の場合、本剤投与開始の目安は、保存期の慢性腎臓病(CKD)患者および腹膜透析患者ではヘモグロビン濃度で11g/dL未満、血液透析患者ではヘモグロビン濃度で10g/dL未満とされています。<安全性>CKD患者を対象とした国内全臨床試験において、副作用(臨床検査値異常を含む)は、総症例数481例中61例(12.7%)に認められました。主な副作用は、下痢19例(4.0%)、悪心8例(1.7%)、高血圧7例(1.5%)、腹部不快感、嘔吐各4例(0.8%)でした(承認時)。なお、重大な副作用として、血栓塞栓症(4.2%)、肝機能障害(頻度不明)が現れることがあります。本剤の投与開始前に血栓塞栓症のリスクを評価し、本剤投与中も血栓塞栓症が疑われる徴候や症状を確認する必要があります。<相互作用>本剤はOAT1およびOAT3の基質であり、BCRPおよびOAT3に対して阻害作用を有します。したがって、BCRPの基質となる薬剤(ロスバスタチン、シンバスタチン、アトルバスタチン、サラゾスルファピリジンなど)、OAT3の基質となる薬剤(フロセミド、メトトレキサートなど)との相互作用には注意が必要です。また、多価陽イオンを含有する経口薬(カルシウム、鉄、マグネシウム、アルミニウムなどを含む製剤)と併用した場合にキレートを形成し、本剤の作用が減弱する恐れがあるため、併用する場合は本剤の服用前後2時間以上を空けて投与します。<患者さんへの指導例>1.この薬は、赤血球のもとになる細胞を刺激し血液中の赤血球を増やすことで、貧血を改善します。2.吐き気、嘔吐、手足の麻痺、しびれ、脱力、激しい頭痛、胸の痛み、息切れ、呼吸困難などが現れた場合は、すぐに医師に連絡してください。3.この薬には飲み合わせに注意が必要な薬があります。新たに薬やサプリメントを使用する場合は、必ず医師または薬剤師に本剤の服用を伝えてください。<Shimo's eyes>腎性貧血は、腎機能の低下に伴いエリスロポエチン(EPO)の産生が減少することによって生じる貧血です。これまで、腎性貧血の治療にはEPOの補給を行うために、ダルベポエチンアルファ(商品名:ネスプ)やエポエチンベータペゴル(同:ミルセラ)などのESAが投与されてきました。これらの製剤は注射薬ですが、近年は内服薬であるHIF-PH阻害薬が開発され、患者さんの負担を軽減し、QOLが維持されやすくなりました。HIF-PH阻害薬は、低酸素応答機構がEPO産生を調節することを利用した、まったく新しい機序の腎性貧血治療薬であり、その機構解明の功績により、William G. Kaelin Jr.、Sir Peter J. Ratcliffe、Gregg L. Semenzaが2019年ノーベル生理学・医学賞を受賞しています。2020年11月時点でロキサデュスタット錠(同:エベレンゾ)、ダプロデュスタット錠(同:ダーブロック)、エナロデュスタット錠(同:エナロイ)、そして本剤の4種類が発売されています。それぞれ適応、服用回数、腎機能などによる投与量、増量段階の回数や間隔、食事の影響などに違いがあります。本剤は食事の影響が比較的少なく、どのタイミングでも服用できます。また、CKD保存期でも透析期でも同じ投与量であり、腎機能によって投与量が異なることもありません。調節範囲も4段階と比較的少なくなっています。腎性貧血患者は、リン吸着剤などの併用により服用時点が多くなりがちなので、シンプルな服用方法はアドヒアランスの向上に役立つと考えられます。HIF-PH阻害薬の登場によって、腎性貧血治療が薬局薬剤師にとって身近なものになります。日本腎臓学会から「HIF-PH阻害薬適正使用に関するrecommendation」が公表されていますので、一度目を通しておくとよいでしょう。参考1)PMDA 添付文書 バフセオ錠150mg/バフセオ錠300mg2)日本腎臓学会 HIF-PH 阻害薬適正使用に関するrecommendation

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「ミオコールスプレー」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第25回

第25回 「ミオコールスプレー」の名称の由来は?販売名ミオコール®スプレー0.3mg一般名(和名[命名法])ニトログリセリン効能又は効果狭心症発作の寛解用法及び用量通常、成人には、1回1噴霧(ニトログリセリンとして0.3mg)を舌下に投与する。なお、効果不十分の場合は1噴霧を追加投与する。警告内容とその理由該当しない禁忌内容とその理由(原則禁忌を含む)1.重篤な低血圧又は心原性ショックのある患者[血管拡張作用により更に血圧を低下させ、症状を悪化させるおそれがある。]2.閉塞隅角緑内障の患者[眼圧を上昇させるおそれがある。]3.頭部外傷又は脳出血のある患者[頭蓋内圧を上昇させるおそれがある。]4.高度な貧血のある患者[血圧低下により貧血症状(めまい、立ちくらみ等)を悪化させるおそれがある。]5.硝酸・亜硝酸エステル系薬剤に対し過敏症の既往歴のある患者6.ホスホジエステラーゼ5阻害作用を有する薬剤(シルデナフィルクエン酸塩、バルデナフィル塩酸塩水和物、タダラフィル)又はグアニル酸シクラーゼ刺激作用を有する薬剤(リオシグアト)を投与中の患者[本剤とこれらの薬剤との併用により降圧作用が増強され、過度に血圧を低下させることがある。※本内容は2020年11月11日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2014年11月改訂(第10版)医薬品インタビューフォーム「ミオコール®スプレー0.3mg」2)トーアエイヨー:製品情報

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持続的腎代替療法時の抗凝固療法、クエン酸 vs.ヘパリン/JAMA

 急性腎障害を伴う重症患者への持続的腎代替療法施行時の抗凝固療法において、局所クエン酸は全身ヘパリンと比較して、透析フィルター寿命が長く、出血性合併症は少ないが、新規感染症が多いことが、ドイツ・ミュンスター大学病院のAlexander Zarbock氏らが行った「RICH試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌2020年10月27日号で報告された。欧米の現行ガイドラインでは、重症患者への持続的腎代替療法時の抗凝固療法では局所クエン酸が推奨されているが、この推奨のエビデンスとなる臨床試験やメタ解析は少ないという。ドイツの26施設が参加、試験は早期中止に 研究グループは、持続的腎代替療法施行時の局所クエン酸投与が透析フィルター寿命および死亡に及ぼす影響を、全身ヘパリンと比較する目的で、多施設共同無作為化試験を実施した(ドイツ研究振興協会の助成による)。本試験はドイツの26施設が参加し、2016年3月~2018年12月に行われた。 対象は、年齢18~90歳、KDIGOステージ3の急性腎障害または持続的腎代替療法の絶対適応とされ、重症敗血症/敗血症性ショック、昇圧薬の使用、難治性の体液量過剰のうち1つ以上がみられる患者であった。 被験者は、持続的腎代替療法施行時に、局所クエン酸(イオン化カルシウムの目標値1.0~1.40mg/dL)または全身ヘパリン(活性化部分トロンボプラスチン時間の目標値45~60秒)の投与を受ける群に無作為に割り付けられた。 フィルター寿命と90日死亡率を複合主要アウトカムとした。副次エンドポイントには出血性合併症や新規感染症が含まれた。 本試験は、596例が登録された時点で、中間解析の結果がプロトコールで事前に規定された試験終了に達したため、早期中止となった。フィルター寿命が15時間延長、死亡への影響の検出力は低い 638例が無作為化の対象となり、596例(93.4%、平均年齢67.5歳、183例[30.7%]が女性)が試験を終了した。局所クエン酸群が300例、全身ヘパリン群は296例だった。 フィルター寿命中央値は、局所クエン酸群が47時間(IQR:19~70)、全身ヘパリン群は26時間(12~51)であり、有意な差が認められた(群間差:15時間、95%信頼区間[CI]:11~20、p<0.001)。90日の時点での全死因死亡は、局所クエン酸群が300例中150例、全身ヘパリン群は296例中156例でみられ、Kaplan-Meier法による推定死亡率はそれぞれ51.2%および53.6%であり、両群間に有意な差はなかった(補正後群間差:-6.1%、95%CI:-12.6~0.4、ハザード比[HR]:0.79、95%CI:0.63~1.004、p=0.054)。 38項目の副次エンドポイントのうち34項目には有意差がなかった。局所クエン酸群は全身ヘパリン群に比べ、出血性合併症(15/300例[5.1%] vs.49/296例[16.9%]、群間差:-11.8%、95%CI:-16.8~-6.8、p<0.001)が少なく、新規感染症(204/300例[68.0%] vs.164/296例[55.4%]、12.6%、4.9~20.3、p=0.002)が多かった。 局所クエン酸群は、重度アルカローシス(2.4% vs.0.3%)および低リン血症(15.4% vs.6.2%)の頻度が高く、全身ヘパリン群は、高カリウム血症(0.0% vs.1.4%)および消化器合併症(0.7% vs.3.4%)の頻度が高かった。これら以外の有害事象の頻度は両群間に差はなかった。 著者は、「本試験は早期中止となったため、抗凝固療法戦略が死亡に及ぼす影響に関して、結論に至るに十分な検出力はない」としている。

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第30回 医師も知っておきたい、ニューノーマルで生き残りを賭ける製薬企業の活路とは

コロナ禍が始まってから盛んに耳にするようになったキーワード「ニューノーマル」。医療で言えば、感染対策を契機に時限的に始まったオンライン診療の拡大が恒久化へと動きつつあるのも「ニューノーマル」と言える。ただ、今回のコロナ禍に関係なく、本来はもっと変わっていてしかるべきにもかかわらず、変わっていない世界も散見される。医療とその周辺で言うと、私がその筆頭にあげたいのは製薬企業の在り方である。競合戦略SOVはもう古い?製薬企業の基本的なビジネスモデルは研究開発に時間をかけて新薬を市場に送り、MR(医薬情報担当者)が盛んに医師にコールして処方を増やし、売上を獲得するというもの。従来は1つの新薬が世に登場するまでの期間は約10年、コストは約100億円と言われてきた。ちなみにMRから医師へのコールはSOV(Share of Voice:シェア・オブ・ボイス)という概念が重視されてきた。日本語に直訳すれば、「声のシェア」で、ある商品・サービスのシェアは、同一カテゴリーの競合商品・競合サービスの広告・宣伝量との比較で決まるという考え方。平たく言えば競合商品などよりも宣伝量が多ければ多いほどシェアが獲得できるというロジックである。それゆえMRは医師を頻回に訪問し、担当する医薬品のキーメッセージを連呼する。もちろんそれゆえに医師からうんざりされるケースもあるが、総じてみればそうしたMRの行動と売上は比例していたのである。というのも、患者数の多さから、かつてはほとんどの製薬企業が研究開発の軸を置いていた高血圧症、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病領域は、同一作用機序ながら若干有効成分が違う複数の医薬品が競合するのが常で、製品同士の差は「どんぐりの背比べ」の様相。医師にとってはどれを選んでも大差はなく、結果としてMRによるSOVが高い製品ほど医師に選ばれ、売上も高くなりがちだったからだ。ところがこの構図は既に約10年前から変化している。まず、これまで製薬企業の売上を支えてきた生活習慣病領域はもはや創薬ターゲットが枯渇し、継続的に新薬を生み出しにくくなった。この結果、創薬ターゲットはまだまだ薬剤の選択肢が少ないがんや難病などに移行している。もっともその結果として新薬の上市までの難易度は高くなり、現在では期間約20年、コスト約200億円とまで言われるようになった。ビジネスモデルを阻む新薬開発期間とジェネリック普及ここで大きな課題が発生する。製薬企業のビジネスモデルのもう一つの特徴として、一つの製品のライフサイクル終焉期、具体的には物質特許が切れてジェネリック医薬品が出てくるタイミングに後継新薬を市場に送り出し、売上の穴を作らないようにすることが挙げられる。ところが研究開発にかかる時間が以前よりも長くなった今、タイミングよく後継新薬を送り出すことは難しくなった。もっとも、こと日本市場の場合はそれでもどうにかこうにかやりくりは可能だった。それは日本では医師のジェネリック医薬品への忌避傾向が強く、長期収載品と呼ばれる特許失効後の新薬もそれなりに売上を獲得できていたからだ。しかし、国の薬剤費抑制策に伴うジェネリック医薬品の使用推進策でそれも難しくなった。現在では特許失効後の新薬は半年程度でシェアの半分がジェネリック医薬品に置き換わる。しかも、がんや難病といった生命予後に直結する領域へのシフトで、MRを通じたSOV向上は売上に直結しなくなった。製薬企業にとってはことごとく既存のモデルは封じられ、もはや泣きっ面に蜂といってもいい。その結果、製薬企業各社が取り始めた戦略が「選択と集中」である。要は医療用医薬品の研究開発領域を絞り込み、そこに集中的にリソースを投じ、研究開発の成功率上昇を狙うという形である。この結果、医療用医薬品以外の事業や医療用医薬品の中でも特許失効後の長期収載品を各社は整理・売却し始めた。革新のための本気が見える武田薬品と他社の将来性その動きを最も先鋭化させたのは日本の製薬業界のキング・オブ・ザ・キングスの武田薬品である。長期収載品は早々にジェネリック医薬品世界最大手のテバ社との合弁会社に移管させ、新たな製品と研究開発シーズの獲得のため、乾坤一擲の大勝負ともいえる日本史上最大約7兆円の巨額買収でアイルランドのシャイアー社を傘下に収め、武田の代名詞ともいわれたアリナミン・ブランドを有する一般用医薬品事業を売却した。武田以外の国内各社はここまで極端な形ではないものの、長期収載品の切り離しは準大手、中堅でも追随している。ただ、そのように新薬に集中したとしても世界の大波の中で生き残れる国内製薬企業はごくわずかだと言っていい。現在の世界トップ10の製薬企業の年間研究開発費規模は5,000億円以上、絞り込んだとはいっても平均の研究開発重点領域は5領域以上。現在この条件を満している国内製薬企業は武田のみだが、将来にわたって条件を満たしそうな企業もあと1~2社あるかないかという状況だ。ではどうすればよいのか? ここからは完全な私見だが、グローカルな総合ヘルスケアソリューション企業になることが最善の生き残る道だと考えている。グローカルとは、「グローバル+ローカル」の造語である。端的に言えば国内準大手・中堅企業に製薬企業そのものを完全に辞めろと言うのはナンセンスだ。ただ、こうした製薬企業でも製品単位で世界に伍していくことは可能であるが、そのようなグローバル製品を常時5品目以上、切れ目なく上市していくことは難しい。もっとストレートに言えば、通称メガファーマと呼ばれる世界大手の製薬企業とボーダレスな環境で伍していくのは逆立ちしても無理がある。つまるところ、グローバルで通用する1~2製品を有しながら、大きな基盤は日本国内、すなわちローカルに置き、医薬品だけでなくさまざまなソリューションを提供するという企業形態が私の前述した「グローカルな総合ヘルスケア企業」というイメージである。“薬は治療の一手段”と考えた先に見えるもの薬というのは治療の中で重要かつ欠くことができないソリューションではあるものの、そもそも薬は患者の状態を改善するソリューションの1つでしかない。従来からこれらに加え、手術やさまざまな医療機器を使った治療手段が存在するし、最近ではこれに加えITを駆使してアプリで治療するという考えも登場してきている。また、製薬企業は薬による治療を通して対象疾患やその患者を巡る多種多様な情報を有している。それを単に治療だけでなく社会的な課題解決に生かす道も考えられる。今後日本は人口減少社会に突入し、それに伴い労働人口も減少する。こうした中でITを駆使して必要となる労働力を効率化する試みは今後も進行してくだろうが、それでも人としての労働力が不足する状況は避けられない。こうなると解決策は、1)各人が今の2倍働く、2)専業主婦が家事以外の労働を始める、3)高齢者が働く、4)外国人労働者をさらに受け入れる、が主な焦点になってくる。ただ、これ以外に、これまで労働市場の中でやや冷や飯をくらわされている存在が一部の慢性疾患患者である。こうした人たちは一定の配慮があれば、労働市場で活躍できる素地があるにも関わらず、効率性を重んじるフルタイム労働市場では忌避されてきた傾向がある。製薬企業はこうした患者が置かれている状況、配慮しなければならないポイントは治療薬を提供している観点から一般の企業に比べて知識・理解はある。その意味ではこうした人を労働力としてあっせんする、あるいは雇用主側のコンサルティングを行うにはうってつけの存在でもある。また、日本は世界でトップを走る高齢化社会を有するため、そこから他国にも応用できるさまざまなビジネスモデルを考える最適な環境にあるなど、このほかにも製薬企業から派生した業態が考えられる。実際、そうした活動に既に手を付け始めている製薬企業は少数だが存在する。そして、こうした事業に手を染めてない製薬企業、あるいは手を染めている企業の中からも、こうした動きには「それで儲かるの?」という声は根強い。大胆な舵切りをした他業種の成功事例この「儲かるの?」の根底にあるのは、既存の製薬中心の利益構造である。ちなみに営業利益率ベースでみると、現在の国内の主要製薬企業の営業利益率は13~14%前後で、実はこの利益率は過去約20年ほとんど変わっていない。それゆえ、もはや既存のビジネスモデルが多方面で限界に達しつつあるにもかかわらず、頭の中は過去の栄光で満ち満ちているのである。むしろ今求められているのは、既存概念からの転換である。その意味で参考となるモデルが富士フイルムである。ご存じのように、もともと同社は一般向けの写真用フィルムとカメラ、レンズを主力商品としてきた。しかし、デジタルカメラの登場とともに写真用フィルムは市場からほぼ消え去り、その代わりにフィルム製造で持っていた化学合成技術などを軸に、液晶ディスプレイ材料、医療・医薬品、機能性化粧品、サプリメントなどを販売する企業へと転換した。富士フイルムの連結ベースの営業利益率は、1998年3月期は11.5%だったが、2017年3月期には7.9%まで低下している。しかし、この間、連結ベースの売上高は1.4兆円から2.4兆円と拡大している。利益率は低下しても多角的な事業展開で売上高が増加しているため、営業利益の絶対額は増加しているのである。製薬企業の場合、薬というモノがなくなるわけではないので、ここまでの転換を求められることはない。逆に言えば、それだけまだ恵まれているともいえる。にもかかわらず、ビジネスモデルの限界が10年前ぐらいから見え始めているのに最初の一歩が踏み出せないであるのだ。もっとも現在製薬業界の経営層には、旧来型のブロックバスターモデルといわれる巨額の売上を生む新薬が会社の屋台骨を支えるビジネスモデルの中で評価されてきた人たちがまだどっかりと鎮座しているため、それもやむを得ないと言えるかもしれない。しかし、これから5年後にもこの「儲かるの?」議論をやっているようだったら、もはや国内の製薬企業はこびりついたプライドを捨てきれない、流行遅れの一張羅の高級スーツをまとった冴えない紳士のごときものである。

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アンチエイジングのためのHealthy Statement作成が始動/日本抗加齢医学会

 近年、EBM普及推進事業Mindsの掲げるガイドライン作成マニュアルが普及したこともあり、各学会でガイドラインの改訂が活発化している。さまざまな専門分野の医師が集結する抗加齢医学においても同様であるが、病気を防ぐための未病段階の研究が多いこの分野において、ガイドライン作成は非常にハードルが高い。Healthy Statement-ガイドライン作成の第一歩 そこで、日本抗加齢医学会は第20回総会を迎える節目の今年、ワーキング・グループを設立し、今後のガイドライン作成、臨床への活用を目的にコンセンサス・レポートとしてHealthy Statement(以下、ステートメント)の作成を始めた。ステートメントの現況は、9月25日(金)~27日(日)に開催された第20回日本抗加齢医学会の会長特別プログラム1「Healthy Agingのための学会ステートメント(ガイドライン)作成に向けて」にて報告された。 ステートメントは健康寿命の延伸に関して科学的なエビデンスが蓄積されつつある4つの分野(食事、運動、サプリメント、性ホルモン)が検討されており、今回、新村 健氏(兵庫医科大学内科学総合診療科)、宮本 健史氏(熊本大学整形外科学講座)、阿部 康ニ氏(岡山大学脳神経内科学)、堀江 重郎氏(順天堂大学大学院医学研究科泌尿器外科学/日本抗加齢医学会理事長)らが、各部門の作成状況を発表した。各分野、抗加齢に特化したデータ抽出進む 『食事・カロリー制限とアンチエイジング』について講演した新村氏は、「抗加齢医学の領域において、食事療法・カロリー制限に関するエビデンスは十分と言えず、ガイドライン・診療の手引きを作成するだけの材料が揃っていないのが現状」とし、「食事療法の選択としては日本人での実行性と重要性を重視し、健常者または重篤な疾患を持たない者を対象者に想定している」と述べた。さらに今後の方針として「1つの食事療法に対して、複数のアウトカムから評価し、アンチエイジング医学の多様性を意識する」と話した。 『運動・エクササイズとアンチエイジング』については宮本氏がコメント。「運動介入と高齢者の骨密度、認知症や寿命延伸に関するデータをまとめ、CQを作成した。とくに運動介入は高齢者の骨密度の軽度の増加、認知症予防に強く推奨される。また要介護化の予防に中等度、寿命・健康寿命の延伸には弱く推奨される」など話した。 『サプリメント・機能性表示WGからの報告』について阿部氏が講演。「本ワーキング・グループは感覚器、歯科、循環器、消化器/免疫、皮膚科、脳神経の6領域において活動を行っている。サプリメントは分類上では機能性表示食品に該当するが、医薬品のように観察研究や介入研究が多くデータが豊富に揃っていた。評価文、根拠文献、評価上の要点、エビデンスグレードの各案が出揃い、完成近い品目もある」と解説した。このほか、アルツハイマー病治療において、アミロイドβの根本治療が全滅している現在、サプリメント活用のメリットにも言及した。 『テストステロン(男性ホルモン)』については堀江氏が既存のエビデンスとして、テストステロン低値の人の早逝、内蔵脂肪との関連、そのほか低テストステロンが惹起する身体機能の低下や合併症について説明。「テストステロンはメタボリックシンドローム、耐糖能異常、うつ病、フレイルなどの疾患との関連において十分なエビデンスが存在する。これらのデータを踏まえ、テストステロンは未病のための明日の健康指標になる。さらには、社会参画や運動量など人生のハツラツ度に影響するホルモンであることから、今日の健康指標にもつながる」とし、「今後、性ホルモン分野としてエストロゲン、テストステロンの両方について報告していく」と締めくくった。抗加齢医学の目標、ステートメント完成は2021年を目処 講演後、大会長の南野氏は「抗加齢医学は集団も然り、研究疾患もヘテロである。このヘテロジェナイティを認識したうえで、足りないエビデンスをわれわれで補うことが最終目標である」と述べた。これに堀江氏は「われわれは疾患ではなく、疾患に至る前段階を捉えて研究を行っている。診療ガイドラインの疾患アウトカムと異なるエビデンスが必要であり、それゆえ研究対象も従来の研究とは異なる。たとえば、高齢者の認知機能ではなく40歳くらいの若年者の機能探索がその1つである」と補足し、今後の抗加齢医学会の進むべき道について強調した。Healthy Statementは来年6月頃までにまとめられ、2021年の本学術集会にて発表される予定である。 なお、本講演は10月8日(木)~21日(水)の期間限定でケアネットYouTubeにて配信している。

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初回訪問で服用薬の処方経緯を確認し、減薬を提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第28回

 今回は、新しく担当することになった在宅患者さんの処方薬を整理した事例を紹介します。患者さんとの面談で、どのような経緯があって処方された薬剤なのかをよく確認してみると、減薬のヒントを見つけられることが多々あります。漫然処方を解消するためにも、薬剤師がヒアリングして情報収集することは非常に重要です。患者情報90歳、女性(個人在宅)基礎疾患高血圧症介護度要支援2既往歴半年前に血便あり(精査なし)訪問診療の間隔2週間に1回介護サービスの利用週1回、通所介護在宅訪問開始の理由前任の薬局が閉局したため、当薬局で引き継いだ。備考過去に降圧薬を後発医薬品に変更して血圧が上昇したことがあり、降圧薬は先発医薬品がいいというこだわりがある。処方内容1.アムロジピン錠5mg 1錠 分1 朝食後2.カンデサルタン シレキセチル錠8mg 1錠 分1 朝食後3.クエン酸第一鉄ナトリウム錠50mg 1錠 分1 朝食後4.クロチアゼパム錠5mg 1錠 分1 就寝前5.ファモチジン錠20mg 2錠 分2 朝夕食後6.ジフェニドール塩酸塩錠25mg 3錠 分3 毎食後7.ビフィズス菌製剤散 3g 分3 毎食後本症例のポイントこの患者さんは長年訪問診療を利用していましたが、前任の薬局が閉局したため、当薬局で引き継ぐことになりました。ご高齢者の独居ということで、これらの薬剤をしっかりと服用できているかどうか確認が必須だと考えました。初回訪問時に服薬管理状況と残薬を確認したところ、薬剤はピルケースに1週間分をセットしてご自身で管理されていました。しかし、降圧薬は飲み忘れなく服薬しているものの、他の薬剤は自己調節していました。服用理由は曖昧で、効果も評価もされないまま飲み続けていることもわかりました。そこで、患者さんとの面談で、各薬剤が処方された経緯や服薬状況、残薬を確認し、整理してみると下表のようになりました。画像を拡大するこのように、症状や処方の経緯、薬に対する考え方を聴取しました。減らせる薬剤があれば減らしたいという患者さんの想いも確認し、医師に処方整理を提案することにしました。処方提案と経過医師に、トレーシングレポートで残薬の状況と現在の服用状況を報告しました。ファモチジンとジフェニドールについては、服用していなくても症状が出ていないことから中止を提案し、クエン酸第一鉄ナトリウムについては一度血液検査をして貧血項目および血清鉄やフェリチン、総鉄結合能(TIBC)の評価を行うことを提案しました。医師より返事があり、ファモチジンとジフェニドールは中止の承認を得ることができ、クエン酸第一鉄ナトリウムについては採血して評価をするという返答がありました。患者さんからは、薬剤師に相談したことで薬剤数が減り、服薬の煩雑さが軽減されて良かったと喜んでもらえました。現在は降圧薬のみ定期内服しており、クロチアゼパム錠とビフィズス菌製剤散を頓用で継続しています。服薬アドヒアランスは維持できていて、経過も安定しています。

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偶然おもしろいことに出会える、こんな学会ほかにない

2020年9月25~27日の3日間、第20回日本抗加齢医学会総会がWEB開催(一部会場開催)される。今回は新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、初めてのWEB開催となるが、第18、19回総会のプログラム委員長を務め、本大会長としてプログラムの選定に携わった南野 徹氏(順天堂大学大学院医学研究科循環器内科教授)に、本総会をどのように盛り上げていくのか話を聞いた。日本のアンチエイジング、老年・予防医学が主体『抗加齢』という言葉はアンチエイジングと英訳されます。その影響なのか、日本では医学的根拠のない一般向け情報と捉える方が多いようで、この印象を覆すことがわれわれの使命の1つであると考えています。たとえば、本学会の総会が今年で20回目を迎えるにあたり、診療所の医師に患者指導時に活用してもらえるようなステートメントの作成を開始します。これまで、抗加齢医学の分野において高血圧症などのように診療ガイドラインが策定されておらず、研究成果のほとんどが実臨床で活用されていなかった点もアンチエイジングのイメージを印象付けているのかもしれません。この取り組みは世界初ですが、本学会は世界の抗加齢医学の組織と比べ、各分野の枠を越えて医師たちが集い、協力し合える強みが作用しています。海外の場合、大きな美容系集団といくつかの小さな診療科系集団に分かれているため、さまざまな診療科の先生の意見を踏まえた研究を行うことが難しいと言われています。一方、本学会は老年医学と若さを保つ・美を追求する医学の間に位置し、病気や加齢から身体を守る予防医学の概念を持って活動する、世界的にもまれな学会として、この組織力を活かし、抗加齢に関するさまざまな研究を行うことで、成果を発揮しています。Healthy Agingのためのステートメントその成果の1つとして、ガイドラインの前進となるステートメントの作成を行うわけですが、まずは健康寿命の延伸に関して科学的なエビデンスが蓄積されつつある4つの分野(食事、運動、サプリメント、性ホルモン)の内容が検討されています。本総会の会長特別プログラムとして「Healthy Agingのための学会ステートメント(ガイドライン)作成に向けて」を開催し、各分野のステートメント進捗状況や今後の方針について発表する予定です。アカデミア×臨床医、内科医×歯科医…が混じり合える学会また、研究内容がとても彩り豊かな本学会の総会の一番の魅力は、面白いことが学べる機会やアイデアを見つけ出すチャンスに出会えることだと自負しています。研究範囲は基礎から臨床まで、その内容は内科領域のみならず、整形外科、皮膚科、歯科領域などと多岐にわたります。一般的な学術集会は専門医や専門領域に従事する医療者を対象として行われるため、診療科に特化した内容に絞って情報提供される傾向があります。それと比べ、つい自分の興味分野にだけ注目してしまう方でも、本総会に参加することで「興味がなかった」「考えてもみなかった」ようなワクワクする新しい関心事に、偶然遭遇するかもしれません。言うならば、新聞で医療面を読むためにページをめくっていた時にテクノロジーの記事に目が留まり、新しい発見に心が弾んだ-そんな感覚でしょうか。プログラムを選定する上では、プログラム委員長の経験を踏まえて工夫を凝らしました。臨床医とアカデミアの双方が楽しめるよう、1日目にはアカデミアの方を対象とした演題を多く盛り込みました。実地医家の方が参加しやすい3日目の日曜日には、実臨床ですぐ実践できる演題を準備しています。3密回避を確保した会場セッティングや3ハイブリッド会議(ライブ配信、オンタイム配信、オンデマンド配信)形式の導入により、これまでにないくらい多くのプログラムが受講しやすくなっています。多分野の医師、薬剤師や看護師などの医療者が垣根を超えて交流を深められるという本学会ならではの総会作りも目指していますので、ぜひ、第20回日本抗加齢医学会総会のWEB聴講へのご参加、浜松町コンベンションホールへのご来場をお待ちしております。

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うつを予防する方法(解説:岡村毅氏)-1278

 ビタミンDにうつ病を予防する効果はないという残念な結果であった。これを深掘りしてみよう。 まず、前提としてさまざまなビタミン、ミネラル、アミノ酸、脂肪酸等がうつ病を予防するのではないかという小さなエビデンスは集積されている。ビタミンDでも同様である。 ただし、たとえばビタミンDを摂っている健康な人は、運動もするし、友人も多いし、健康情報もよく知っているのでうつになりにくい可能性はあるだろう(これらを交絡因子という)。したがってうつ病の人と、そうでない人を比べるとビタミン摂取量に差がある可能性はある。 要するに「うつではない人はビタミンを摂っている」と「ビタミンを摂るとうつにならない」のとり違いの可能性である。 真実を知りたい。そこで、この研究のように、対象者をランダムにある地点で2つの同じようなグループに分けて、「その時点から」片方にはビタミンDを追加投与、片方には偽薬を与えるという研究をする。本研究は、なんと2万人近い50歳以上の人が対象になっている。もちろんうつ病だけを狙った研究ではなく、本研究はがんや心血管系の疾患を主な対象にしているのだが。 この結果を受けて、ビタミンDは関係ないのかというと、そうとも言い切れない。 これまでの研究で「ビタミンDは関係ある」という結果が出たのには理由がある。前述の「交絡」である。どんなものが考えられるだろうか? 以下は私の勝手な推測だが、ビタミンDを多く摂っている人は、1)健康に気を使っている【情報】、2)自分を大事にしている【自尊心】、3)(1人でカップラーメンを食べたりするのではなく)みんなで食卓を囲む機会が多い【ソーシャルネットワーク】、4)幼少期からきちんとしたご飯を食べる機会が多かったので習慣化している【安定した幼少期】、5)(野菜は高いので)経済的に困窮していない【経済】、といった可能性があるので、うつになりにくいのかもしれない。また、うつ病になると意欲が低下して食生活が乱れるので、ビタミンDも摂らなくなる、という逆の因果もあろう。 さて、臨床的には明らかに生活習慣が乱れていることが精神的不調の原因の人がいる。そういう人にはうつ病と診断して精神科治療を始める「前に」、まずはまともな生活をすることを指導する(獨協医科大学の井原先生のご著書で世間でもこのような考え方は広く知られるようになってきた)。毎日塩辛いものを食べまくっていて血圧が高い人には、まず適度の減塩を指導するのと同じである。 というわけで、本論文を読んで「ビタミンは関係ないのだ、明日からカップラーメンでいいや」というのは間違った解釈である。真実はとても地味だ。つまり、あえてサプリメントを摂ることはないが、健康に気を付けて、自分を大切にして、3食きちんと食べなさい、栄養バランスは考えて野菜も摂るのよ、夜は寝ろ、疲れたら休め、無理はするな、…帰省できなかった若者の皆さんに地元のおじさん(おばさん)みたいなアドバイスを送りたい。

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アドヒアランス不良でアセトアミノフェン分3から変更提案した薬剤は?【うまくいく!処方提案プラクティス】第23回

 今回は、アセトアミノフェンの複数回投与が開始になったものの、アドヒアランス不良のため疼痛コントロールが困難であった症例です。良好な疼痛コントロールとアドヒアランスを得るために提案した代替薬とその根拠を紹介します。患者情報93歳、男性(在宅)基礎疾患:うっ血性心不全、右被殻出血(左麻痺あり)、前立腺肥大症、高尿酸血症訪問診療の間隔:2週間に1回服薬管理:お薬カレンダーで管理し、ヘルパーによる毎日の訪問介護時に服薬処方内容1.タムスロシン塩酸塩錠0.2mg 1錠 分1 夕食後2.ボノプラザン錠10mg 1錠 分1 夕食後3.トリクロルメチアジド錠1mg 1錠 分1 夕食後4.フェブキソスタット錠10mg 1錠 分1 夕食後5.センノシド錠12mg 2錠 分1 夕食後6.クエン酸第一鉄ナトリウム錠50mg 2錠 分1 夕食後7.アセトアミノフェン錠200mg 6錠 分3 朝昼夕食後8.ピコスルファート内用液0.75% 便秘時 就寝前7〜8滴本症例のポイントこの患者さんは、脳出血後の左麻痺によって手先の不自由さがあり、ほぼベッド上で生活していました。そのため、服薬回数をすべて1日1回で統一して一包化し、毎日夕方の訪問介護の時間に服薬していました。ところが先日、トイレへ移動する際に転倒して受傷し、睡眠時や排泄時の疼痛のため、アセトアミノフェン錠200mg 6錠 分3 毎食後が開始となりました。朝・昼のアセトアミノフェンは、ヘルパーさんが夕方の訪問介護時にベッド近くに置いておいて、患者さんご自身で服薬することになりました。しかし、2回分を重複して服用したり服薬を忘れてしまったりと服薬アドヒアランスが維持できず、疼痛が管理できないという問題がありました。同じタイミングでケアマネジャーから、薬をなんとか1回にまとめられないものかと相談があり、アセトアミノフェンの変更提案を検討することにしました。1日1回の服用に適したNSAIDsを検討1日複数回服用することで重複投薬のリスクがあり、飲み忘れによって疼痛コントロールも不十分であるため、ほかの定期薬に合わせて服用できる鎮痛薬を検討しました。ここで候補に挙がったのは長時間作用型NSAIDsのメロキシカムです。長時間作用型という性質上、1日1回で疼痛コントロールできることに加え、服薬回数の負担も軽減できることから当該患者さんの処方薬として妥当だと考えました。半減期が長いため、高齢者や腎・肝機能が低下している場合は注意が必要ですが、この患者さんは心不全の状態が安定していて、直近の検査結果からも腎機能は年齢相応(Scr:0.78mg/dL、eGFR:57.8mL/min/1.73m2)で大きな悪化もないことから薬物有害事象の懸念は少ないと考えました。処方提案と経過医師に上記内容をトレーシングレポートで相談したところ、疼痛コントロールもしっかり行う必要があるが、誤薬のリスクを下げるためにも変更しようと了承いただきました。提案当日に変更対応となり、アセトアミノフェン錠の回収とメロキシカム錠10mgを夕食後投与としてカレンダーにセットしました。そして、患者さんとヘルパーさんへ鎮痛薬の変更があることを説明し、今後は朝・昼の薬はなくなることをお伝えしました。患者さんも複数回の服薬や飲み忘れ、重複投薬のことを気にしていたので、今回の変更を受けて安心していました。その後、患者さんは疼痛コントロールも良好で、疼痛による苦痛も有害事象もなく生活を続けています。

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