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第205回 コロナ感染で自己免疫性リウマチ性疾患が生じ易くなる

コロナ感染で自己免疫性リウマチ性疾患が生じ易くなる日本と韓国のそれぞれ1,200万例強と1,000万例強のデータを使った試験で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と自己免疫性炎症性リウマチ性疾患(AIRD)のリスク上昇が関連しました1,2)。自己抗原の許容が損なわれて生じる慢性の全身性筋骨格系炎症疾患一揃いがAIRDに属します3)。具体的には、関節リウマチ(RA)、強直性脊椎炎(AS)、全身性エリテマトーデス(SLE)、全身性硬化症(SSc)、シェーグレン症候群、特発性炎症性筋炎、全身性血管炎がAIRDに含まれます。COVID-19患者がAIRDに含まれるそれら自己免疫疾患をどうやらより生じ易いことが先立ついくつかの試験で示唆されています。それらの試験はいずれも新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染者と非感染者の比較に限られ、インフルエンザなどの他のウイルス感染ではどうかは調べられていません。また、COVID-19後の長期の合併症の予防に寄与しうるワクチン接種などの影響の検討もなされていません。今回新たに発表された試験では、COVID-19後のAIRD発生率が非感染者に加えてインフルエンザ感染者とも比較されました。COVID-19後のAIRD発生率上昇がもし認められたとして、それがCOVID-19に限ったことなのか呼吸器のウイルス感染症で一般的なことなのかをインフルエンザとの比較により推し量ることができるからです。また、COVID-19ワクチンにSARS-CoV-2感染後のAIRD予防効果があるかどうかも調べられました。試験ではCOVID-19かインフルエンザの患者のそれらの診断から12ヵ月までの経過とそれらのどちらも感染していない人(非感染者)の経過を追いました。その結果、先立つ試験と同様にCOVID-19患者は非感染者に比べてAIRDをより被っていました。また、COVID-19患者のAIRD発生率はインフルエンザ患者より高いことも示されました。韓国と日本のCOVID-19患者のAIRD発生リスクは非感染者をそれぞれ25%と79%上回りました。また、インフルエンザ患者との比較ではCOVID-19患者のAIRD発生率がそれぞれ30%と14%高いという結果となっています。軽症のCOVID-19患者ではワクチン接種とAIRD発生率低下の関連が認められましたが、中等症~重症のCOVID-19患者ではワクチン接種のAIRD抑制効果は認められませんでした。また、より重症のCOVID-19患者ほどAIRDをより被っていました。COVID-19を経た患者、とくに重症だった患者の診察ではAIRDの発生に注意する必要があると著者は言っています。参考1)Kim MS, et al. Ann Intern Med. 2024 Mar 5. [Epub ahead of print]2)COVID-19 associated with increased risk for autoimmune inflammatory rheumatic diseases up to a year after infection / Eurekalert3)Kim H, et al. Semin Arthritis Rheum. 2020;50:526-533.

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【緊急寄稿】働き方改革、スタート目前!米国医師の働き方を変えた「10の仕組み」~第1回・勤務体制編~

2024年4月から、いよいよ日本では「医師の働き方改革」の新制度が施行されます。私は日本で初期研修医、そして新専門医制度下での内科専攻医を経験した後、2021年に渡米し、現在は米国で内科レジデントとして働いています。米国の内科レジデンシーは全部で3年間あり、内科に特化した研修を行います。日本で内科の専攻医を経験した後に米国での内科レジデンシーを経験したことから、日本と米国の内科研修の違いを肌で感じました。その中で最も衝撃を受けたのは「米国の働き方改革とデジタル化は、日本よりもはるかに進んでいる」という点です。この寄稿では、日米の内科研修を両方経験した立場から、どのようなツールやシステムが米国の働き方改革に貢献しているか、1)勤務体制編、2)スマホアプリ編、3)電子カルテ編の3つに分けて、10の仕組みを紹介、解説します。この寄稿が日本での働き方改革を議論するうえで、少しでも参考になればと思います。第1回の今回は、米国医師の働き方を改革した勤務体制の仕組みづくりについて、4つの具体例を挙げて説明します。仕組み1:チーム制・シフト制米国の多くの病院では、入院患者の管理は専門科医ではなく、ホスピタリスト(病院総合診療医)が担当します。専門科医はコンサルタントとして関与する形です。ホスピタリストの指導の下、3~4人の内科レジデントが患者をケアするチームをつくり、看護師同様にシフト制で勤務します。私の勤める病院では、2~3年目の先輩レジデントが1年目の新人レジデントに指導をしながら、チーム全体で約16~20人の患者を受け持ちます。シフトは早番と遅番に分かれ、早番は朝7時~夕方5時、遅番は朝7時~夜8時の勤務です。シフトの終わりには、自分が担当した患者の情報を次の担当者に引き継ぎ、ToDoリストや急変時の対応プランを確認します。シフト終了後は看護師から連絡が入ることはなく、帰宅してリラックスする時間が確保されます。チーム制・シフト制を採用することで仕事とプライベートのオンオフがはっきりします。図1仕組み2:夜勤とsick callレジデントのローテーションの中には、夜勤のみを行う期間があります。夜勤レジデントは、毎晩の当直(夜8時~翌朝7時)を6日間勤務+1日休みのサイクルで2週間勤務するスケジュールで働き、入院患者の管理や救急外来からの新規入院患者の対応を行います。この夜勤システムにより、夜勤レジデントは昼間に休息を取り、夜間に働くという生活リズムを維持できます。これにより、日勤レジデントは当直の必要がなくなり、体内時計の乱れを避けることが可能になります。また、「sick call」と呼ばれる病欠者のカバーをするシフトが存在します。ほかのレジデントが病気やその他の理由で勤務できないときに、そのシフトをカバーする担当のレジデントのことで、呼び出しがなければ自宅待機します。このように、誰かが休んでも業務が特定の人に集中することを防ぎ、全体の負担を軽減するシステムが構築されています。仕組み3:勤務上限時間の設定神戸市の病院で勤務していた若手医師が長時間労働下で自殺し、労災と認定された事件は記憶に新しいですが1)、米国ではACGME(Accreditation Council for Graduate Medical Education、米国卒後医学教育認定評議会)という団体が研修プログラムのレジデントやフェローの労働時間を規制しており、このルールにより若手医師は過剰労働や業務過多から守られています。具体的には、週に80時間までの勤務7日間に1日の割合で休日を設ける連続勤務は24時間まで24時間勤務の後は次の勤務まで14時間空けるといったルールが定められています。このルールをレジデント全員が常に守る必要があるため、綿密なスケジュール調整が必要になります。日本では働き方改革に当たり、教育や研究が「自己研鑽」の扱いになるかどうかが議論され、厚生労働省が「教育・研究に直接関連性のある研鑽は労働時間に該当する」と明示したことが話題になりました2)。米国では教育的なレクチャーは、昼食時や週に半日ある「Academic Half Day」と呼ばれる臨床業務が免除される時間に行われるケースが多く、平日の勤務時間内に組み込まれています。研究に関しては、自由に選択できるローテーションで「研究」を選択することで、臨床業務が免除され学会発表の準備や論文執筆の時間に充てることができます。十分な人員がいるからこそ実現可能なのかもしれませんが、このように自己研鑽が労働時間外にならないよう配慮されています。なお、日本の内科専門医制度では「J-OSLER」と呼ばれる症例登録制度があり、内科専門医を取得するためには160症例の症例登録と29症例の病歴要約の提出が求められています。私自身、休日や時間外を含めて多くの時間を費やすこととなり苦労しました。一方で、米国の内科レジデンシーでは症例登録や病歴要約の提出は一切必要ないものの、一緒に働いた指導医やプログラムの評価を頻繁に提出することが求められます。上記のACGMEが各プログラムや指導医の質を評価することで教育の質を担保する、というシステムです。レジデントの負担を考慮した、合理的かつ効率的な制度だと感じます。仕組み4:ACGMEによる監視システム研修プログラムが勤務時間の規則を順守しているのか、確認するシステムがあります。レジデントはオンラインで勤務時間を報告することが義務付けられており、さらにACGMEによる査察が定期的に行われます。査察はレジデントとの抜き打ちの面接や匿名のアンケートによって行われ、定められた勤務スケジュールとレジデントが報告する勤務時間に乖離がないかを確認します。ACGMEは研修プログラムの評価および認定機関でもあるので、規則に違反したことが明らかになった場合には、さまざまな罰則を科すことができ、最悪の場合には研修施設としての認定の取り消しに至ることもあります。このような監視システムがあることで、ルールの形骸化を防いでいるのです。1)“26歳医師が自殺で遺族会見 ‘極度の長時間労働’で労災認定”. NHK NEWS WEB. 2023-08-18.,(参照2024-03-04).2)“医師等の宿日直許可基準及び医師の研鑽に係る労働時間に関する考え方についての運用に当たっての留意事項について”. 厚生労働省. 2024-01-15.,(参照2024-03-04).

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第87回 「そもそも麻疹を診たことがない」

フタバのフリーイラストより使用世界保健機関(WHO)から「西太平洋諸国は予防接種とサーベイランスのギャップによって麻疹発生のリスクにさらされている」という衝撃的な記事が公開されました1)。輸入リスクが高い国として、日本も麻疹の知識を身に付けておく必要があるでしょう。「西太平洋地域では2023年、世界の他の地域でみられるような大規模な麻疹の流行は発生しなかったが、この地域で360万人の子供たちが2020~22年にかけて定期予防接種を受けられなかった。世界中で麻疹が再流行しており、麻疹の輸入リスクが増大している」定期的に観測される麻疹例2月26日、奈良市保健所が、外国人観光客の20代男性が麻疹に感染していると報告しました。19日に発熱・発疹があり、同感染症と診断されました。保健所は、その行動を細かく報告しています。いつ、どこの観光都市から奈良県にやって来たのか、移動手段は何を使ったのか、など。さらに、3月1日には東大阪市でも20代男性の麻疹感染例が確認されました。なぜここまで詳細なコンタクトトレースをするかというと、麻疹の基本再生産数(R0)は12~18といわれており、1人の発症者から多くの感染者を生み出すことで知られているためです。麻疹のR0はインフルエンザウイルスの約10倍で、免疫がない人が接触すると、ほぼ100%感染するといわれています。しかし、現在はワクチンのおかげで麻疹というものは流行しなくなりました。「なぜこんなに慌てるんですか?」と感じている医療従事者もいるかもしれません。私が子供のときは、麻疹にかかる人はそれなりにいたので、いやほんとジェネレーションギャップを感じます。麻疹が全数届出になった2008年の年間届出数は約1万例で、そのあとは激減の一途をたどっており、2022年はわずか6例でした。ここまで減るかというくらい、本当に減ったのです。もはやレアな疾患ですから、複数例アウトブレイクしようものなら、報道になるのです。ワクチン接種歴の確認を医療従事者に限ったことではありませんが、自身に麻疹ワクチン接種歴があるかどうか、母子手帳がある人はご確認ください。麻疹ワクチンが定期接種になったのは1978年で、当時1回の定期接種でした。1回の接種では十分な免疫がないため、2008年に特例措置によって、追加接種が行われました。そのため、2000年以降に生まれた方は、2回の定期接種を受けている可能性が高いでしょう。私みたいなオッサン世代が一番自分自身のワクチン接種歴を把握していなかったりするので、一度皆さんご確認ください(表)。追加接種は自費ですが、たいがい1万円以内で接種できますし、成人でも接種可能です。画像を拡大する表. 麻疹のワクチン接種歴(筆者作成)麻疹の臨床経過麻疹の症状についておさらいしておきましょう。教科書で知っていても、目の前にやって来ると診断できない可能性があります。まず潜伏期間ですが、10~12日と長いです。接触感染だけでなく、空気感染する点に注意が必要です。そのため、R0がむちゃくちゃ高いのです。初発症状は、発熱、咳、鼻水、のどの痛みなど感冒症状があります。いったん治癒すると思われた矢先、高熱と発疹が同時にやって来ます(図)。この激烈な「2峰性」が麻疹の特徴です。発疹が出てくる1~2日前に口の中の頬の裏側に、やや隆起した小さな白い斑点(Koplik斑)が出現することが特徴的といわれてきましたが、風疹や他のウイルス感染症でも出現することがわかっており、必ずしも特異度が高いとは言えません。画像を拡大する図. 麻疹の典型的経過(筆者作成)成人の場合、中途半端な免疫がある場合(1回接種者など)、軽症で非典型的な「修飾麻疹」になることがあります。そうなるとさらに診断が困難となります。何よりも、いざというときに麻疹の存在を疑えることが重要といえます。参考文献・参考サイト1)WHO:Western Pacific countries at risk of measles outbreaks due to immunization and surveillance gaps. 2024 Mar 1.

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第203回 1ヵ月以上続くコロナ感染は結構多い

1ヵ月以上続くコロナ感染は結構多い英国を代表する9万人強の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)配列を解析した結果によると、少なくとも100人に1人ほどの感染は1ヵ月以上長引くようです1,2)。試験では被験者からおよそ1ヵ月ごとに採取した検体のSARS-CoV-2配列が解析され、3,603人は2回以上の検体の配列解析が可能でした。得られたウイルス配列を照らし合わせたところ、それら3,603人のうち381人に1ヵ月以上の同一ウイルス感染が認められました。381人のうち54人にいたっては2ヵ月以上同じウイルスに感染していました。その結果に基づくと、感染者100人に1~4人弱(0.7~3.5%)のその感染は1ヵ月以上、感染者1,000人に1~5人(0.1~0.5%)の感染は2ヵ月以上続くと推定されました。SARS-CoV-2持続感染者381人のうち3回以上のRT-PCR検査がなされた65人のデータによると、感染し続けているSARS-CoV-2の多くは複製できる力を失っていないようです。それら65人のほとんどのウイルスはいったん減り、その後再び増加するというリバウンドの推移を示しました。研究者によると、そのようなリバウンドは複製できるウイルスが居続けていることを示唆しています。また、SARS-CoV-2の感染持続はやはりただでは済まないようで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患後症状(long COVID)をより招くようです。SARS-CoV-2感染が1ヵ月以上持続した人の感染後12週時点以降でのlong COVID有病率は非持続感染者を55%上回りました。SARS-CoV-2感染持続とlong COVIDの関連を示した先立つ報告や今回の研究によるとSARS-CoV-2感染持続はlong COVIDの発生にどうやら寄与しうるようです。とはいえSARS-CoV-2感染持続で必ずlong COVIDが生じるというわけではありませんし、long COVIDのすべてが感染持続のせいというわけではなさそうです。実際、long COVIDに寄与するとみられる仕組みがこれまでにいくつも示唆されており、引き続き盛んに調べられています。たとえば先月にScience誌に掲載された最近の報告では、免疫機能の一翼である補体系の活性化亢進がlong COVIDで生じる細胞/組織損傷の原因となりうることが示唆されています3,4)。参考1)Ghafari M, et al. Nature. 2024 Feb 21. [Epub ahead of print]2)Study finds high number of persistent COVID-19 infections in the general population / Eurekalert3)Cervia-Hasler C, et al. Science. 2024;383:eadg7942.4)Complement system causes cell damage in Long Covid / Eurekalert

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疲労と日中の過度な眠気、どちらがよりうつ病と関連しているか

 一般集団における疲労と日中の過度な眠気のどちらが、うつ病とより密接に関連しているかを明らかにするため、韓国・蔚山大学校のSoo Hwan Yim氏らは、調査を行った。Sleep & Breathing誌オンライン版2023年12月14日号の報告。 韓国の15の地区で本調査を実施した。日中の過度な眠気、疲労、うつ病の評価には、それぞれエプワース眠気尺度(ESS)、疲労症状の評価尺度(FSS)、こころとからだの質問票(PHQ-9)を用いた。うつ病はPHQ-9スコア10以上と定義し、疲労ありはFSSスコア36以上、日中の過度な眠気ありはESSスコア11以上とした。日中の過度な眠気と疲労との組み合わせにより、4群に分類した。 主な結果は以下のとおり。・調査参加者は2,493人(女性の人数:1,257人)、平均年齢は47.9±0.3歳であった。・うつ病、疲労、日中の過度な眠気の割合は、それぞれ8.4%(210人)、30.8%(767人)、15.3%(382人)であった。・各群におけるうつ病の有病率は、対照群と比較し、以下のとおりであった。【疲労あり、日中の過度な眠気あり】67人、31.9% vs. 7.3%(p<0.001)【疲労あり、日中の過度な眠気なし】71人、33.8% vs. 20.3%(p<0.001)【疲労なし、日中の過度な眠気あり】16人、7.6% vs. 5.8%(p=0.294)【疲労なし、日中の過度な眠気なし】56人、26.7% vs. 66.6%(p<0.001)・共変量で調整した後、疲労なし、日中の過度な眠気なし群を参照としたうつ病のオッズ比は、それぞれ以下のとおりであった。【疲労あり、日中の過度な眠気あり】8.804(95%信頼区間[CI]:5.818~13.132)【疲労あり、日中の過度な眠気なし】3.942(95%CI:2.704~5.747)【疲労なし、日中の過度な眠気あり】2.812(95%CI:1.542~5.131)・2群におけるロジスティック回帰分析では、疲労なし、日中の過度な眠気あり群(参照)と疲労あり、日中の過度な眠気なし群との間におけるうつ病との関連に有意な差は認められなかった(OR:1.399、95%CI:0.760~2.575)。 著者らは「疲労と日中の過度な眠気は、どちらがよりうつ病と密接に関連しているかは不明であったものの、それぞれが独立してうつ病と関連していることが示唆された」としている。

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睡眠で認知症予防、良質な睡眠を誘う音楽とは?【外来で役立つ!認知症Topics】第13回

認知症予防の睡眠で注目される「グリンパティック系」多くの病気の予防因子として共通するのが、運動、栄養、休養である。認知症の場合は、これに知的刺激や社会交流が加わる。具体的な予防法に注目すると、運動なら有酸素運動やデュアルタスク、栄養なら地中海食など具体的な目玉項目がある。しかし休養ではそれがなかった印象がある。「そもそも休養とは何か?」も難しいのだが、これは睡眠のことと考えていいだろう。とはいえ、「認知症予防の睡眠とは?」となるとこれというものはなく、いまひとつであった。そこに現れたのが、「グリンパティック系」である。筆者が学生の頃には、代謝過程の老廃物の処分を担うリンパ系器官が脳にはないと教わった。確かに脳には解剖学的にリンパ系はないが、実は同じ役割を担うものがあると判明した。それがグリンパティック系である1)。これは血管周囲の星状膠細胞により形成されたトンネル様構造で、中枢神経系の廃棄物を脳脊髄液と共に除去する系である。アルツハイマー病等の変性疾患に関連する異常蓄積蛋白もこの系で除去される。そして除去は睡眠中に行われることがわかったことが重要だ。だから睡眠不足は悪者蛋白の除去効率を下げることになる。さて疫学的に睡眠時間と認知症発症の関係は注目され、7時間睡眠が最も発症に防御的だとした大規模メタアナリシスも報告されている。ところが、日本人は世界的にみて最も睡眠時間が短く、平均6時間程度とされる。このこともあってか、近年アルツハイマー病予防に関連して、グリンパティック系を軸にした睡眠に注目が集まりつつある。睡眠関連障害と認知症の関係ところで睡眠障害は不眠ばかりでない。たとえばレム睡眠行動障害、睡眠時無呼吸症候群、レストレスレッグス症候群(RLS)などいくつもの病気がある。こうしたさまざまな睡眠関連障害と認知症発症の関係もまた研究され、すでにメタアナリシスもある2)。そしてこれらの睡眠関連障害の多くが認知症発症に関係することが示されている。認知機能低下に関連する要因として代表的なものが、レム睡眠行動障害(リスク比[RR]=1.90、95%信頼区間[CI]=1.23~2.91、I2=0%)、睡眠時無呼吸症候群(RR=1.29、95%CI=1.12~1.48、I2=40%)、ベッドで長時間過ごすこと(RR=1.15、95%CI=1.02~1.30、I2=22%)である。なおレストレスレッグス症候群とは無関係であった。逆に認知症に防御的と思われるものもある。習慣的昼寝(high trend:RR=0.46、95%CI=0.21~1.01、I2=45%)については、有意に効果的な傾向が報告されている。良質な睡眠を誘う音楽さて認知症者における睡眠障害はありふれたものである。たとえば、睡眠の不連続性(中途覚醒)、日中の眠気、睡眠効率の悪さ(寝ている時間/ベッドにいる時間)がアルツハイマー病でみられやすい睡眠障害だとされる。そして症状の進行とともに睡眠・覚醒リズムが乱れ、昼夜逆転パターンに至る例が多い。それだけに睡眠の質を良くするという課題は、認知症当事者と家族、また医療者、ケアスタッフにとっても大切である。普通いわれるのは、就床に先立つ運動や入浴、寝室温度をいくらか低めに設定、適切な明るさの設定などである。これまであまり知られていないが、音楽によるスムーズな入眠への効果も検討されており、効果的だとしたメタアナリシスもある。ところが、「どのような音楽をどのように聴いたら、スムーズな入眠効果が生まれるのか?」はほとんど検討されておらず、エビデンスが乏しい3)。しかし経験論的には以下がポイントだとされる。耳に心地よい音楽歌詞のない音楽自然の音のヒーリングミュージック長調の音楽である。音楽の内容は、クラシックや歌謡曲などではない。チルアウト系、アンビエント・ミュージックなどが代表だが、波の音、雨音など自然で単調なものがいい人もいる。筆者の場合、炭がぱちぱちと燃える音を聴いていると自然に眠りに落ちやすい。さて就床してから睡眠への移行における自律神経の活動ぶりは、スムーズな入眠にとっておそらく生理学的な鍵だろう。ところが確立された所見は、意外なほど少ない。ただ副交感神経の働きが優位になることが重要なのは確かなようだ。睡眠と自律神経という観点から考えたとき、音楽的な規則性と不規則性の調和を意味する「1/fのゆらぎ」の音楽が注目され、これが心地よさを生み出すといわれる。そしてこの種の音楽が副交感神経活動を優位にするとの報告もある。マインドフルネス瞑想も認知症者の睡眠の質を向上させる一方で、現代社会で、ストレスを軽減する方法として、マインドフルネスなど自律神経に注目したものが有名である。つまり副交感神経の働きを高め、交感神経の働きを低下させることで、心身の安定を得ることが基本になる。マインドフルネスのみならず、ヨガ、瞑想、また座禅にも同様の効果があるとされる。これらに共通するのは、ペースド・ブリージング(paced breathing)と呼ばれる「1分間あたり10回以下」のゆったりとした呼吸方法である。この呼吸法によって、横隔膜に至る迷走神経が刺激を受けて、副交感神経の働きが高まるとされる。知的に正常の人はもとより、軽度認知障害や認知症の人でも、この方法は有効だとの報告がある。睡眠に関しては、マインドフルネス瞑想で睡眠の質が向上すると報告したメタアナリシスもある。こうした知見から、呼吸法、副交感神経という観点から、認知症者の不眠改善につながる音楽を追求するのも、これからの治療法になるかと思われる。参考1)Lohela TJ, et al. The glymphatic system: implications for drugs for central nervous system diseases. Nat Rev Drug Discov. 2022;21:763-779.2)Xu W, et al. Sleep problems and risk of all-cause cognitive decline or dementia: an updated systematic review and meta-analysis. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2020;91:236-244.3)Jespersen KV, et al. Music for insomnia in adults. Cochrane Database Syst Rev. 2015;2015:CD010459.

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不眠症の診断治療に関する最新情報~欧州不眠症ガイドライン2023

 2017年以降の不眠症分野の進歩に伴い、欧州不眠症ガイドラインの更新が必要となった。ドイツ・フライブルク大学のDieter Riemann氏らは、改訂された欧州不眠症ガイドラインのポイントについて、最新情報を報告した。Journal of Sleep Research誌2023年12月号の報告。欧州不眠症ガイドライン2023の主なポイント 改訂された欧州不眠症ガイドラインの主なポイントは以下のとおり。・不眠症とその併存疾患の診断手順に関する推奨事項は、臨床面接(睡眠状態、病歴)、睡眠アンケートおよび睡眠日誌(身体検査、必要に応じ追加検査)【推奨度A】。・アクチグラフ検査は、不眠症の日常的な評価には推奨されないが【推奨度C】、鑑別診断には役立つ可能性がある【推奨度A】。・睡眠ポリグラフ検査は、他の睡眠障害(周期性四肢運動障害、睡眠関連呼吸障害など)が疑われる場合、治療抵抗性不眠症【推奨度A】およびその他の適応【推奨度B】を評価するために使用する必要がある。・不眠症に対する認知行動療法は、年齢を問わず成人(併存疾患を有する患者も含む)の慢性不眠症の第1選択治療として、対面またはデジタルにて実施されることが推奨される【推奨度A】。・不眠症に対する認知行動療法で十分な効果が得られない場合、薬理学的介入を検討する【推奨度A】。・不眠症の短期(4週間以内)治療には、ベンゾジアゼピン系睡眠薬【推奨度A】、ベンゾジアゼピン受容体作動薬【推奨度A】、daridorexant【推奨度A】、低用量の鎮静性抗うつ薬【推奨度B】が使用可能である。利点と欠点を考慮して、場合により、これら薬剤による長期治療を行うこともある【推奨度B】。・いくつかのケースでは、オレキシン受容体拮抗薬を3ヵ月以上使用することができる【推奨度A】。・徐放性メラトニン製剤は、55歳以上の患者に対し最大3ヵ月間使用可能である【推奨度B】。・抗ヒスタミン薬、抗精神病薬、即放性メラトニン製剤、ラメルテオン、フィトセラピーは、不眠症治療に推奨されない【推奨度A】。・光線療法や運動介入は、不眠症に対する認知行動療法の補助療法として役立つ可能性がある【推奨度B】。

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寝溜めの健康リスクへの影響は?

 睡眠不足は心血管疾患(CVD)の発生や認知機能の低下、うつ病などさまざまな疾患のリスクとなる。週末の寝溜め(キャッチアップ睡眠)は、週末に長時間の睡眠をとることで平日の睡眠不足を補うものであるが、この寝溜めがCVD発生のリスク因子である肥満、高血圧などの発生リスクを低下させたことが報告されている。そこで中国・南京医科大学のHong Zhu氏らの研究グループは週末の寝溜めとCVDの関連を検討した。その結果、平日の睡眠時間が6時間未満の集団において、週末の寝溜めが2時間以上であると、CVD発生のリスクが低下した。本研究結果は、Sleep Health誌オンライン版2023年11月23日号で報告された。寝溜めをしている人で心血管疾患の有病率が低下 本研究は、2017~18年に実施された米国の国民健康栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey:NHANES)に参加した20歳以上の3,400例を対象とし、週末の寝溜めとCVDの関連を検討した。週末の寝溜めは、週末の睡眠時間が平日より1時間以上長いことと定義した。 週末の寝溜めとCVDの関連を検討した主な結果は以下のとおり。・対象3,400例(男性:1,650例、女性:1,750例)のうち、333例(9.8%)がCVDを有していた。・CVDを有している参加者は、CVDを有さない参加者と比べて週末の寝溜めが短かった(p<0.01)。・週末の寝溜めがある参加者は、寝溜めのない参加者と比べてCVDの有病率が低かった(p<0.01)。・多変量解析において、週末の寝溜め時間は狭心症(p=0.04)、脳卒中(p<0.01)、冠動脈性心疾患(p=0.01)の有病率と関連していた。・平日の睡眠時間が6時間未満の集団では、週末の寝溜めがCVDの有病率の低下と関連し(p<0.01)、この集団において週末の寝溜めの時間とCVDの有病率の関連を検討した結果、週末の寝溜めの時間が2時間以上であるとCVDの有病率が低下した(p=0.01)。

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妊婦の不眠症に対する認知行動療法の有用性~メタ解析

 妊婦の不眠症を改善するために、第一選択治療として認知行動療法(CBT-I)を用いることは、有用である可能性がある。しかし、フォローアップ時における妊婦に対するCBT-Iのコンポーネント、方法、回数、有効性については、明らかになっていない。中国・香港大学のXingchen Shang氏らは、妊婦に対するCBT-Iの有効性を評価し、効果的な介入のためのコンポーネント、方法、回数を特定するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、妊婦に対するCBT-Iは、短期的な不眠症改善に有効である可能性が示唆されたものの、長期的な有効性は依然として不明なままであり、今後の長期フォローアップを伴う研究が必要であることを報告した。Sleep Medicine誌2023年12月号の報告。 2023年1月10日までに6つの英語データベース(PubMed、Embase、Cochrane Library、Web of Science、PsycINFO、CINAHL)と4つの中国語データベース(CNKI、WanFang Data、SinoMed、CQVIP)より検索を行った。妊婦に対するCBT-Iについて、不眠症重症度指数(ISI)で測定した不眠症重症度またはピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)で測定した睡眠の質を、アウトカムとして評価したランダム化比較試験(RCT)を対象とした。2人の独立した査読者による選定、データ抽出、品質評価を行った。プール分析には、固定効果モデルまたは変量効果モデルを用いた。サブグループ解析は、各提供タイプと介入期間に基づき実施した。エビデンスの確実性の評価には、GRADEアプローチを用いた。メタ解析が適切でない場合には、ナラティブ分析を行った。主要アウトカムは、不眠症重症度および睡眠の質のスコアの95%信頼区間(CI)との平均差(MD)とした(高スコアほど重症度が高い)。 主な結果は以下のとおり。・選択基準を満たした9件のRCT(978例)をメタ解析に含めた。・研究の内訳は、個人ベース介入6件、グループベース介入3件であり、対面介入5件、デジタル介入3件、電話および電子メール介入3件であった。・妊婦に特有の介入コンポーネントについて検証された研究は、6件であった。・介入直後(1ヵ月未満)および短期(1ヵ月以上6ヵ月未満)のフォローアップにおいて、妊婦に対するCBT-Iは、不眠症の重症度と睡眠の質に対する改善を示した。●介入直後【不眠症重症度】MD:-2.69、95%CI:-3.41~-1.96、p<0.001、エビデンスの質:高【睡眠の質】MD:-2.85、95%CI:-4.73~-0.97、p=0.003、エビデンスの質:中程度●短期フォローアップ【不眠症重症度】MD:-3.69、95%CI:-5.91~-1.47、p=0.001、エビデンスの質:高【睡眠の質】MD:-1.88、95%CI:-2.89~-0.88、p<0.001、エビデンスの質:中程度・2件のRCTでは、中期(6ヵ月以上12ヵ月未満)フォローアップにおいて、不眠症重症度に対する有効性が報告されなかった。・長期(12ヵ月以上)のフォローアップにおいて、不眠症の軽減が認められた報告は1件のみであった。・1件のRCTでは、中期フォローアップでの睡眠の質の改善に対する有効性が報告されておらず、長期フォローアップでも有用性は報告されていなかった。

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ネモリズマブ、結節性痒疹のそう痒・皮膚病変を改善/NEJM

 ネモリズマブ単剤療法はプラセボとの比較において、結節性痒疹のそう痒と皮膚病変を有意に改善したことが、海外第III相二重盲検無作為化比較試験「OLYMPIA 2試験」で示された。結節性痒疹は、慢性の神経免疫疾患であり、重度のそう痒を伴い疾病負荷が大きいとされる。ネモリズマブは、インターロイキン(IL)-31受容体αを標的としたモノクローナル抗体で、結節性痒疹の発症に重要な経路を阻害する。第II相試験では、IL-31を介したシグナル伝達を阻害し、そう痒と皮膚病変の改善、Th2細胞(IL-13)とTh17細胞(IL-17)を介した免疫応答を抑制することが示されていた。本結果は、米国・ジョンズ・ホプキンス大学のShawn G. Kwatra氏らによって、NEJM誌2023年10月26日号で報告された。 OLYMPIA 2試験は、9ヵ国68施設において実施され、18歳以上の中等度~重度の結節性痒疹患者が対象となった。登録は2020年9月~2021年11月に行われた。対象患者は、ネモリズマブ群(初回用量60mg、その後は30mgまたは60mg[ベースライン時の体重[90kg未満または90kg以上]に基づく]を4週ごとに16週間皮下注射)、プラセボ群へ無作為に2対1の割合で割り付けられた。 有効性の主要評価項目は、16週目のPeak Pruritus Numerical Rating Scale(PP-NRS、スコア範囲:0~10点、スコアが高いほど重度)に基づくそう痒の改善(PP-NRSスコアが4点以上低下)と、16週目のInvestigator's Global Assessment(IGA、スコア範囲:0~4点)に基づく奏効(IGAスコア0点[消失]または1点[ほとんど消失]かつベースラインから2点以上低下)であった。 主要な副次評価項目は以下の5つ。(1)4週目のPP-NRSスコアがベースラインから4点以上低下(2)4週目の週間平均PP-NRSスコアが2点未満(3)16週目の週間平均PP-NRSスコアが2点未満(4)4週目のsleep disturbance numerical rating scale(SD-NRS、スコア範囲:0~10点、スコアが高いほど重度)スコアがベースラインから4点以上低下(5)16週目のSD-NRSスコアがベースラインから4点以上低下 主な結果は以下のとおり。・合計274例が無作為化された(ネモリズマブ群183例、プラセボ群91例)。・16週目において、2つの主要評価項目に関して治療効果が示された。・16週目においてそう痒の改善を達成した患者の割合は、ネモリズマブ群56.3%、プラセボ群20.9%であり、ネモリズマブ群が有意に改善した(調整群間差:37.4パーセントポイント[95%信頼区間[CI]:26.3~48.5]、p<0.001)。・16週目においてIGAに基づく奏効を達成した患者の割合も、ネモリズマブ群37.7%、プラセボ群11.0%であり、ネモリズマブ群が有意に改善した(調整群間差:28.5パーセントポイント[95%CI:18.8~38.2]、p<0.001)。・5つの主要な副次評価項目について、いずれもネモリズマブ群が有意に改善した(いずれもp<0.001)。(1)4週目のPP-NRSスコアがベースラインから4点以上低下:41.0% vs.7.7%(2)4週目の週間平均PP-NRSスコアが2点未満:19.7% vs.2.2%(3)16週目の週間平均PP-NRSスコアが2点未満:35.0% vs.7.7%(4)4週目のSD-NRSスコアがベースラインから4点以上低下:37.2% vs.9.9%(5)16週目のSD-NRSスコアがベースラインから4点以上低下:51.9% vs.20.9%・主な有害事象(ネモリズマブ群で5%以上に発現)は、頭痛(ネモリズマブ群6.6%、プラセボ群4.4%)、アトピー性皮膚炎(それぞれ5.5%、0%)であった。

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死亡リスクを低下させる睡眠のとり方、睡眠時間よりも〇〇!?

 睡眠は健康と密接な関係があることが知られているが、研究の多くは睡眠時間に焦点が当てられており、睡眠の規則性と死亡リスクの関係は明らかになっていない。そこで、オーストラリア・Monash UniversityのDaniel P. Windred氏らの研究グループは、英国のUKバイオバンクの6万人超のデータを用いて、睡眠時間および睡眠の規則性と死亡リスクとの関連を検討した。その結果、睡眠時間と睡眠の規則性はいずれも全死亡リスクの予測因子であることが示されたが、睡眠の規則性のほうがより強い予測因子であった。Sleep誌オンライン版2023年9月21日号に掲載の報告。 本研究では、UKバイオバンクに登録された40~69歳のうち、手首に加速度センサーを7日間装着し、データが取得できた6万977人が対象となった。睡眠時間と睡眠の規則性は加速度センサーのデータを基に推定した。対象を睡眠時間と睡眠の規則性でそれぞれ五分位に分類し、第1五分位群(0~20パーセンタイル)に対する第2~5五分位群(20~40、40~60、60~80、80~100パーセンタイル)の全死亡、原因別死亡(がん、心代謝性疾患、その他)のリスクを検討した。Cox比例ハザードモデルを用い、最小限の調整をしたモデル(年齢、性別、民族で調整)と完全調整モデル(最小限の調整をしたモデルに身体活動レベルなどの10因子を追加して調整)の2つのモデルで解析した。 主な結果は以下のとおり。・本研究の対象となった6万977人の平均年齢は62.8歳、平均睡眠時間は6.77時間、平均追跡期間は6.30年であった。・追跡期間中の死亡数は1,859人であった(1,000人年当たり4.3人)。・睡眠の規則性の第2~5五分位群は、最小限の調整をしたモデルおよび完全調整モデルのすべての群で全死亡リスクが有意に低下した(20~48%低下)。・同様に、がん死亡リスク(16~39%低下)、心代謝性疾患による死亡リスク(22~57%低下)もすべての群で有意に低下し、その他の原因による死亡リスクも完全調整モデルの第2五分位群を除くすべての群で有意に低下した。・睡眠時間の第2~5五分位群も、同様にすべての群で全死亡リスクが有意に低下したが(18~31%低下)、がん死亡リスクとの関連はいずれの群でも認められなかった。・赤池情報量基準(AIC)に基づくモデル比較において、睡眠の規則性は睡眠時間よりも全死亡リスクの強い予測因子であった。 本研究結果について、著者らは「死亡リスクの予測において、睡眠時間が重要な役割を果たしていることが確認されたが、睡眠の規則性は睡眠時間よりも強い予測因子であることが明らかになった。睡眠の規則性を向上させるためには、睡眠時間を増やすことよりも、毎日の睡眠時間をそろえることのほうが現実的かもしれない」とまとめた。

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第184回 熟睡を促す音刺激で心機能が向上しうる

熟睡を促す音刺激で心機能が向上しうる生きていくのに睡眠は不可欠で、ぐっすりと眠ることは健康を保つのにとりわけ重要です。より深い眠りに落ちていることを示す脳の活動である徐波(slow wave)を音で増やすことで高齢者の記憶を改善しうることが先立つ研究で示されています1)。また、軽度認知障害(MCI)患者の睡眠中にピンクノイズ※というかすかな音を流したところ徐波が増え、44の単語対を覚える記憶検査成績が改善しました2)。※ピンクノイズ:周波数が高いほどよりもの静か(周波数が1オクターブ上がるごとに音圧が3デシベルずつ下がる)という特性がある音(擦れる木の葉、雨、滝、心拍の音など)。そのピンクノイズがどうやら心臓機能の改善効果も有するらしいことがスイスの連邦工科大学やチューリッヒ大学のチームによる新たな試験で示されました3)。試験に参加した健康な男性18人には睡眠研究所で間を置いて3泊してもらい、そのうちの2泊ではピンクノイズを流し、1泊ではそうしませんでした。寝ている間の被験者の脳の活動、血圧、心臓の活動が記録され、深い睡眠に至ったことを示す合図があった時点から10秒間のピンクノイズが10秒間の間を挟んで4時間繰り返しコンピューターから発せられました。その結果、ピンクノイズが発せられている間は徐波が増え、翌朝の心エコー検査で左心室の伸縮機能の向上が示唆されました。今回の試験の被験者は全員男性で、年齢は30~57歳でした。男性に限ったのは女性に比べてより均一だからです。被験者と同年齢層の女性は睡眠に大きな影響を及ぼす月経周期や閉経があり、今回のような取っ掛かりの試験ではせっかくの効果がそれらの影響で検出できない恐れがありました4)。今後の試験では女性を含めた検討が必要なことを研究者は承知しています。睡眠や心血管の調子の明らかな性差が判明しつつあり、そういう性差を考慮した治療の開始が重要視されるようになっています。ピンクノイズやそれに似た脳刺激手段で将来的には心血管疾患の治療を向上させることができるかもしれません。また、心血管分野の治療のみならず運動選手にとっても意義があると研究者は考えています。ピンクノイズのような徐波睡眠の亢進手技で心機能を改善し、きつい練習や競技の後の回復を早めてより好調にできる可能性があります。研究者らはさらに先を見据えており、ピンクノイズよりもっと強力な刺激で心血管系を上向かせる手段も目指しています。今回の試験の筆頭著者であるStephanie Huwiler氏は試験を指揮したCaroline Lustenberger氏らとともに睡眠刺激の事業EARDREAMを立ち上げています。上述したとおり徐波睡眠を底上げすることは認知機能障害患者の記憶改善効果があるかもしれず、EARDREAMはアルツハイマー病患者の早期診断や睡眠不調を回復させる睡眠亢進手段に取り組んでいます5)。また、アルツハイマー病のみならず今回の成果の臨床応用に向けた開発も目指しています4)。参考1)Papalambros NA, et al. Front Hum Neurosci. 2017;11:109.2)Papalambros NA, et al. Ann Clin Transl Neurol. 2019;6:1191-1201.3)Huwiler S, et al. Eur Heart J. 2023 Oct 05. [Epub ahead of print]4)Increased deep sleep benefits your heart / ETH Zurich5)Startups developing tailored sleep interventions for Alzheimer disease, aquafarming using mycellium technology, regeneration through protein engineering, a vital patient data stream, and revolutionizing open source each win CHF 10,000 / Venture Kick

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労働者の不眠症に対し認知行動療法は有効か?~メタ解析

 不眠症に対する認知行動療法(CBT-I)は、第1選択の治療として推奨されているが、労働者の不眠症に対する有効性は、よくわかっていない。東京医科大学の高野 裕太氏らは、労働者の不眠症状のマネジメントにおけるCBT-Iの有効性を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Sleep Medicine Reviews誌2023年10月号の報告。 3つの電子データベース(PubMed、PsycINFO、Embase)より文献検索を行った。 主な結果は以下のとおり。・21件の研究をメタ解析に含めた。・全体としてCBT-Iは、対照群と比較し、不眠症状の有意な改善が認められた。 ●不眠症重症度(g=-0.91) ●入眠潜時不眠症重症度(g=-0.62) ●中途覚醒不眠症重症度(g=-0.60) ●早朝覚醒不眠症重症度(g=-0.58) ●睡眠効率不眠症重症度(g=0.71)・対照群と比較し、総睡眠時間の改善は認められなかった。・CBT-Iは、対照群と比較し、うつ症状(g=-0.37)、不安症状(g=-0.35)、疲労(g=-0.47)の有意な軽減が認められた。 著者らは、「私たちの研究結果は、CBT-Iは、Webベースおよび対面のいずれにおいても日中労働者の不眠症状のマネジメントに効果的な介入であることが示唆しているが、臨床的に意味のある改善が認められたのは対面でのCBT-Iのみであることに注意することが重要である。なお、交代勤務の労働者に対するCBT-Iの有効性は、判断できなかった」としている。

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1型糖尿病リスクの高い小児、コロナ感染で発症しやすいか/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行の時期に、小児で糖尿病の増加が観察されている。ドイツ・ドレスデン工科大学のMarija Lugar氏らは、「GPPAD試験」において、1型糖尿病の遺伝的リスクが高い小児では、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)抗体が検出されなかった場合と比較して、検出された集団は膵島自己抗体の発生率が高く、とくに生後18ヵ月未満でリスクが増大していることを明らかにした。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2023年9月8日号に掲載された。生後4~7ヵ月の幼児を追跡した欧州のコホート研究 GPPADは、欧州の5ヵ国(ドイツ、ポーランド、スウェーデン、ベルギー、英国)の施設が参加した進行中の縦断的コホート研究である(米国・Leona M. and Harry B. Helmsley Charitable Trustなどの助成を受けた)。 この研究では、2018年2月~2021年3月に、1型糖尿病発症の遺伝的リスクが10%以上の生後4~7ヵ月児1,050人(女児517人)を登録したPrimary Oral Insulin Trial(POINT)のデータを用いた。 SARS-CoV-2の感染は、2018年4月~2022年6月に、被験児が2歳になるまでに2~6ヵ月の間隔で行われた追跡調査の受診時にSARS-CoV-2抗体の発現を特定することで確認した。 主要アウトカムは、2つの連続した検体または単一の検体における2つ以上の膵島自己抗体の発現と、1型糖尿病の発症であった。 生後6ヵ月からの抗体測定について、血液検体を保管するバイオバンクの同意が得られた885人(女児441人)を解析の対象とした。膵島自己抗体陽性者の33.3%が1型糖尿病発症 年齢中央値18ヵ月(範囲:6~25)の時点で、170人にSARS-CoV-2抗体の発現を認めた。膵島自己抗体は60人(6.8%)で発現し、このうち6人はSARS-CoV-2抗体陽性と同時に、6人はSARS-CoV-2抗体陽性後の診察時に、膵島自己抗体陽性であった。これら60人の小児は最終受診時まで膵島自己抗体が陽性で、このうち20人(33.3%)が1型糖尿病を発症した。 SARS-CoV-2抗体陽性時の膵島自己抗体発現の、性・年齢・国で補正したハザード比(HR)は3.5(95%信頼区間[CI]:1.6~7.7、p=0.002)であった。また、膵島自己抗体発現の累積リスクは、SARS-CoV-2抗体陰性の場合は2.9%(95%CI:1.8~4.8)であったのに対し、陽性の場合の6ヵ月以内の累積リスクは7.3%(4.2~12.7)だった(p=0.01)。 膵島自己抗体の発生率は、SARS-CoV-2抗体陰性の場合は100人年当たり3.5(95%CI:2.2~5.1)であったのに対し、陽性の場合は同7.8(5.3~19.0)と有意に高かった(p=0.02)。 さらに、SARS-CoV-2抗体陽性の幼児における膵島自己抗体が陽性となるリスクは、生後18~24ヵ月と比較して、生後18ヵ月未満で有意に高かった(HR:5.30、95%CI:1.50~18.30、p=0.009)。 著者は、「膵島自己抗体の発現が、COVID-19の世界的流行の初期における1型糖尿病発症率の急激な上昇の原因とは考えにくいが、将来の1型糖尿病の発症率に関連すると考えられる」とし、「生後12ヵ月ごろに膵島自己抗体の発現がピークに達したが、これは糖尿病原性障害の原因への初期曝露が相対的に多いか、またはこの年齢での膵島自己免疫に対する脆弱性の増加のいずれかを反映すると推測され、本研究はこれらの仮説の評価に道を開くものである」と指摘している。

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認知症を香りで予防? 睡眠中のアロマセラピーが高齢者の記憶を200%超改善

 高齢者が睡眠中にエッセンシャルオイルの香りに曝露することで、記憶力が大幅に改善したという研究結果が報告された。高齢者の認知機能低下は重要な社会問題であり、安価かつ簡便に家庭内で実施可能な対処法が求められていることから、本研究の手法は非常に有用と考えられた。本研究結果は、米国・カリフォルニア大学アーバイン校のCynthia C. Woo氏らによって、Frontiers in Neuroscience誌2023年7月24日号で報告された。香りの違いで記憶機能に226%の有意な改善が認められた 認知機能障害や認知症のない60~85歳の男女43人を対象とした。睡眠時にエッセンシャルオイルの香りに曝露する群(嗅覚刺激群)、微量の匂い物質の香りに曝露する群(対照群)に1対1の割合で無作為に割り付け、6ヵ月間嗅覚刺激を実施した。嗅覚刺激群は、7種類のエッセンシャルオイルを用いて、毎晩1種類ずつ2時間曝露した。対照群は、同様に微量の匂い物質の香りに曝露した。ベースライン時と6ヵ月後において、神経心理学的評価と機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いた脳機能の解析を行った。記憶機能は、Rey Auditory Verbal Learning Test(RAVLT)を用いて評価した。また、Wechsler Adult Intelligence Scale 3rd edition(WAIS-III)を用いた知能検査も実施した。 睡眠時にエッセンシャルオイルの香りに曝露して記憶機能を評価した主な結果は以下のとおり。・6ヵ月後におけるベースライン時からのRAVLTスコア(第5試行)の変化量(標準偏差)は、微量の匂い物質の香りに曝露した対照群が-0.73点(1.74)であったのに対し、エッセンシャルオイルの香りに曝露した嗅覚刺激群は0.92点(1.31)であり、嗅覚刺激群は対照群と比較して226%の有意な改善が認められた(p=0.02)。・知能検査については、両群間に有意差は認められなかった。・嗅覚刺激群は対照群と比較して、左鉤状束※の平均拡散能(mean diffusivity)が有意に増加した(p=0.02)。・ベースライン時の14日間の平均睡眠時間と6ヵ月後における14日間の平均睡眠時間を比較した結果、微量の匂い物質の香りの対照群は3分減少したのに対し、エッセンシャルオイルの香りの嗅覚刺激群は22分増加した。※ 鉤状束はエピソード記憶、言語、社会的感情処理などの機能を担っていることが示唆されており、加齢やアルツハイマー病によって機能が低下するとされている。

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第175回 コロナ後遺症への抗ウイルス薬パキロビッド長期投与の試験開始

コロナ後遺症への抗ウイルス薬パキロビッド長期投与の試験開始新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患後症状(long COVID)を治療しうる手段をいくつかに分類して次々に検討する第II相試験の2つが米国で始まりました1)。それら試験はCOVID-19の長期経過の把握、治療、予防を目指す米国国立衛生研究所(NIH)の取り組みであるResearching COVID to Enhance Recovery(RECOVER)の一環として実施されています。早速始まった2試験の1つはRECOVER-VITAL2)と呼ばれます。ウイルス感染の持続、ウイルスの再活性化、過剰あるいは慢性的な免疫反応や炎症がlong COVIDに寄与し、ウイルスの除去や炎症の抑制をもたらす治療でlong COVIDが改善しうるという仮説の検証を目的としています。RECOVER-VITAL試験でプラセボと対決する治療の先鋒として白羽の矢が立てられたのはファイザーの抗ウイルス薬であるニルマトレルビル・リトナビル(日本での商品名:パキロビッドパック)です。より長期(25日間)の同剤投与によるlong COVID症状改善効果の検討への被験者組み入れはすでに始まっています。RECOVER-VITALとともに始まったRECOVER-NEURO3)という名称のもう1つの試験は遂行機能や注意などのlong COVID絡みの認知機能の低下を改善しうる治療手段の検討を目当てとしています。RECOVER-NEUROで検討される手段はすでに3つが決まっています。1つはインターネットを介した脳トレで、BrainHQと呼ばれます。BrainHQは認知障害の改善手段としてすでに普及しています。もう1つはPASC-Cognitive Recovery(PASC CoRE)と呼ばれ、BrainHQと同様にインターネットを介した脳トレであり、注意や遂行機能を改善する効果があります。3つ目は脳の活動や血流増加を助けることが知られるSoterix Medical社の製品を利用した脳の電気刺激です。同社の経頭蓋直流刺激(tDCS)製品は自宅で簡単にできるように作られています。睡眠や自律神経に注目した2つの試験RECOVER-SLEEPとRECOVER-AUTONOMICも準備段階にあり、間もなく始まります。RECOVER-SLEEPはコロナ感染後に変化した睡眠習慣や寝付きに対処しうる手段を検討します。同試験の一環として過眠や日中の過度の眠気への覚醒促進薬2種の効果がプラセボと比較されます。また、入眠や睡眠の維持の困難などの睡眠障害に睡眠の質を改善する手段が有効かどうかも検討されます。準備段階のもう1つの試験はRECOVER-AUTONOMICと呼ばれ、心拍、呼吸、消化などの生理機能ひとそろいを制御する自律神経系の失調と関連する症状への対処法を調べます。心拍異常、めまい、疲労などの症状を特徴とする体位性頻脈症候群の治療手段いくつかが手始めに検討されます。免疫疾患治療薬とプラセボの比較がその1つで、心拍亢進を伴う慢性心不全の治療薬とプラセボの比較も予定されています。運動できなくなることや疲労への手段を検討する試験も患者や専門家からの意見を取り入れて開発されています。今後次々に始まっていくRECOVER試験はlong COVIDの影響が最も大きい地域を含めて被験者を募っていきます。試験参加施設は自治体と協力してlong COVIDについての理解を促し、RECOVER試験への参加の普及に努めます。効果的な治療や手当てを検討する臨床試験はlong COVIDへの政府の取り組みの肝であり、苦労が絶えない患者やその家族が楽になるように努力していくと米国政府の役員は言っています1)。参考1)NIH launches long COVID clinical trials through RECOVER Initiative, opening enrollment / NIH 2)RECOVER-VITAL試験(ClinivalTrials.gov) 3)RECOVER-NEURO試験(ClinivalTrials.gov)

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ナルコレプシータイプ1、経口OX2受容体作動薬の第II相試験データ/NEJM

 ナルコレプシータイプ1の患者において、経口オレキシン(OX)2受容体選択的作動薬のTAK-994はプラセボと比較して8週間にわたり眠気およびカタプレキシー(情動脱力発作)を大きく改善したが、肝毒性との関連が認められた。フランス・モンペリエ大学のYves Dauvilliers氏らが、北米、欧州およびアジアで実施された第II相無作為化二重盲検プラセボ対照用量設定試験の結果を報告した。ナルコレプシーは、日中の過度の眠気を特徴とするまれで慢性的な中枢神経系の過眠障害で、カタプレキシー、入眠時または出眠時幻覚、睡眠麻痺などを伴うことがある。ナルコレプシーはタイプ1とタイプ2に大別され、タイプ1は視床下部外側野に局在するオレキシン産生ニューロンの著しい欠乏によって引き起こされることが明らかになっていた。NEJM誌2023年7月27日号掲載の報告。平均睡眠潜時をプラセボと比較 研究グループは、睡眠障害国際分類第3版に基づきナルコレプシータイプ1と診断された18~65歳の患者を、TAK-994の30mg群、90mg群、180mg群またはプラセボ群に1対1対1対1の割合に無作為に割り付け、それぞれ1日2回経口投与した。 主要エンドポイントは、覚醒維持検査(Maintenance of Wakefulness Test:MWT)による平均睡眠潜時(入眠に要する時間)(範囲:0~40分、正常:20分以上)のベースラインから8週目までの変化量であった。副次エンドポイントはエプワース眠気尺度(Epworth Sleepiness Scale:ESS)スコア(範囲:0~24、正常:10未満、スコアが高いほど日中の眠気が強いことを示す)の変化量、1週間当たりのカタプレキシー発現頻度、および安全性とした。有効性は認められるも、肝毒性により早期中止 2021年1月16日~2021年9月9日に154例がスクリーニングを受け、うち73例が無作為化され少なくとも1回試験薬を投与された(30mg群17例、90mg群20例、180mg群19例、プラセボ群17例)。 本試験は、後述のように肝毒性が数例に認められたため早期中止となり、主要エンドポイントのデータが入手できたのは41例(56%)であった。 評価可能症例において、MWTによる平均睡眠潜時の8週目までの変化量(最小二乗平均値)は、30mg群23.9分、90mg群27.4分、180mg群32.6分、プラセボ群-2.5分で、プラセボ群との差(最小二乗平均差)はそれぞれ26.4分、29.9分、35.0分であった(すべての比較でp<0.001)。 ESSスコアの8週目までの変化量(最小二乗平均値)は、30mg群-12.2、90mg群-13.5、180mg群-15.1、プラセボ群-2.1で、プラセボ群との差(最小二乗平均差)はそれぞれ-10.1、-11.4、-13.0であった(すべての比較でp<0.001)。8週目のカタプレキシー発現頻度は30mg群0.27、90mg群1.14、180mg群0.88、プラセボ群5.83であった(プラセボに対する発生率比はそれぞれ0.05、0.20、0.15)。 TAK-994投与群56例中44例(79%)に有害事象が認められ、主なものは尿意切迫感または頻尿であった。また、5例でALT値またはAST値の臨床的に重要な上昇を認め、Hy's Law(ALT/ASTの正常値上限の3倍を超える上昇とビリルビンの正常値上限の2倍を超える上昇)の基準を満たす薬物性肝障害が3例認められた。

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急性期うつ病治療における21種の抗うつ薬の睡眠への影響~ネットワークメタ解析

 抗うつ薬による急性期治療中に見られる睡眠関連副作用は、コンプライアンスの低下や寛解を阻害する要因となりうる。中国・北京大学のShuzhe Zhou氏らは、抗うつ薬の睡眠関連副作用の種類、抗うつ薬の用量と睡眠関連副作用との関連を評価するため、本検討を行った。その結果、ほとんどの抗うつ薬において、プラセボと比較し、不眠症または傾眠のリスクが高かった。また、抗うつ薬の用量と睡眠関連副作用との関係は、さまざまであった。結果を踏まえて著者らは、「抗うつ薬による急性期治療中には、睡眠関連副作用の発現に、より注意を払う必要がある」としている。Sleep誌オンライン版2023年7月9日号の報告。 2023年4月までに公表されたうつ病に対する二重盲検ランダム化比較試験をPubMed、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials、Web of Scienceより検索した。短期間の抗うつ薬単剤療法中の睡眠関連副作用を報告した研究を解析に含めた。ネットワークメタ解析により睡眠関連副作用のオッズ比(OR)を算出した。用量反応性を評価するため、ベイジアンアプローチを用いた。研究間の不均一性の評価には、τ2およびI2統計を用いた。感度分析は、バイアスリスクの高い研究を除いて実施した。 主な結果は以下のとおり。・分析対象は、6万4,696例(216試験)であった。・13種類の抗うつ薬において、プラセボと比較し、傾眠の高いORが確認された。最も高いORが認められた薬剤は、フルボキサミンであった(OR:6.32、95%信頼区間[CI]:3.56~11.21)。・11種類の薬剤は、不眠症リスクが高く、最も高かった薬剤は、reboxetineであった(OR:3.47、95%CI:2.77~4.36)。・傾眠または不眠症との用量反応曲線は、直線形、逆U字形、その他が含まれていた。・研究間に有意な不均一性は認められなかった。・ネットワークメタ解析結果のエビデンスの質は、非常に低い~中程度(GRADE)であった。

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スタチン、ゾコーバなど、重大な副作用追加で添付文書改訂/厚労省

 厚生労働省は7月20日、HMG-CoA還元酵素阻害薬を含有する医薬品(スタチン)、エンシトレルビルなどの添付文書について、使用上の注意改訂指示を発出した。HMG-CoA還元酵素阻害薬を含有する医薬品 国内副作用症例において、スタチンと重症筋無力症との因果関係が否定できない症例が認められた。また、公表文献において、スタチンの再投与で重症筋無力症の症状が再発した症例、スタチンの中止で重症筋無力症の症状が消失した症例など、スタチンと重症筋無力症との因果関係が否定できない症例が報告されていることを踏まえ、改訂が適切と判断された。<改訂点>1.「特定の背景を有する患者に関する注意」(新記載要領)または「慎重投与」(旧記載要領)の項に「重症筋無力症又はその既往歴のある患者」を追記2.「重大な副作用」の項に「重症筋無力症」を追記<該当医薬品>(1)アトルバスタチンカルシウム水和物(商品名:リピトール錠 ほか)(2)シンバスタチン(リポバス錠 ほか)(3)ピタバスタチンカルシウム水和物(リバロ錠 ほか)(4)プラバスタチンナトリウム(メバロチン錠 ほか)(5)フルバスタチンナトリウム(ローコール錠 ほか)(6)ロスバスタチンカルシウム(クレストール錠 ほか)(7)アムロジピンベシル酸塩・アトルバスタチンカルシウム水和物(カデュエット配合錠1~4番 ほか)(8)エゼチミブ・アトルバスタチンカルシウム水和物(アトーゼット配合錠LD/HD ほか)(9)エゼチミブ・ロスバスタチンカルシウム(ロスーゼット配合錠LD/HD)(10)ピタバスタチンカルシウム水和物・エゼチミブ(リバゼブ配合錠LD/HD)エンシトレルビル フマル酸(ゾコーバ錠) アナフィラキシー関連の国内症例として3例が報告されており、うち、医薬品と事象との因果関係が否定できない症例は1例(死亡0例)であった。しかし、異物である本剤に対するアナフィラキシーの発現は潜在的リスクとして自明であり、緊急承認品目として遅滞ない安全対策措置が重要と、さらなる症例集積を待たずに改訂が判断された。<改訂点>「重大な副作用」の項に「アナフィラキシー」を追記 このほか、チルゼパチド(マンジャロ皮下注)の重大な副作用の項に「アナフィラキシー、血管性浮腫」が追加。ミノサイクリン(ミノマイシンカプセル ほか)の重大な副作用の項「全身性紅斑性狼瘡(SLE)様症状の増悪」を「ループス様症候群」へ変更し、長期投与例における当該事象の発現に関する注意喚起が追加された。

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第170回 糖尿病の細胞移植治療を米国が承認

死亡した人の膵臓から単離したランゲルハンス島を成分とする1型糖尿病の細胞治療Lantidra(donislecel-jujn)が専門家一堂の承認賛成から約2年の歳月を経て米国FDA承認に漕ぎ着けました1)。Lantidraの開発はさかのぼること20年ほど前の2004年に米国・イリノイ大学で始まり2)、同大学育ちの細胞治療研究会社CellTrans社に2016年に引き継がれ、締めて30例ばかりが参加した第I~III相試験の結果をよりどころにして今から3年前の2020年にFDAに承認申請されました。その申請の翌年2021年4月15日に米国FDAが招集した専門家17人のうち大半の12人がLantidraの効果は害を押して余りあると判断し3)、それから2年後の先週6月28日についに承認されました。Lantidraを使えるのは徹底的な治療や教育にも関わらず重度低血糖を繰り返すがためにHbA1c目標未達成の1型糖尿病患者に限られます。第I~III相試験もそのような1型糖尿病患者を募って実施されました。第I~III相試験では30例にLantidraが1~3回肝門脈に投与されました。残念ながら5例はインスリン不要になった日がありませんでしたが、大半の21例がインスリン要らずで1年以上を過ごしました。また、それら21例の約半数10例は5年を超えてインスリン不要な状態を保っており、移植細胞の10年間体内生存率は60%超と推定されています4)。幹細胞起源の治療の開発も進むFDAはシカゴにあるイリノイ大学病院の一画でLantidraを作ることを認可しています5)。Lantidraは死亡者の膵臓から作るゆえ供給は限定的になりそうです。一方、嚢胞性線維症治療薬で一時代を築いて今や屈指のバイオテクノロジー企業へと成長したVertex Pharmaceuticals社はよりあまねく供給しうる細胞治療を目指しており、先月末の米国糖尿病協会(ADA)年次総会で有望な第I/II相試験途中成績を披露しています。Vertex社の開発品はVX-880と呼ばれ、患者以外の他者の幹細胞(同種幹細胞)から作るインスリン生成島細胞を成分とします。第I/II相試験ではこれまでに1型糖尿病患者7例にVX-880が投与されています。そのうち1例は途中で同意を撤回して試験を離脱しましたが、残りの6例の体内には島細胞が定着してインスリンを生成しました。6例中2例は移植から1年が経過し、両者とも重度低血糖なしでHbA1c低下(7.0%未満に落ち着いているか元から差し引きで少なくとも1%減少)を達成し、さらにはインスリンに頼らず過ごせています6)。有望な成績を上げているVX-880ですがLantidraと同様の欠点もあります。それは免疫に排除されないようにするために免疫抑制薬がずっと必要ということです。そこでVertex社はさらに先を見据え、免疫抑制薬の継続が不要の細胞治療VX-264の開発も進めています。VX-264もVX-880と同様に同種幹細胞から作った島細胞を成分としますが、免疫が手出しできないようにする包みで覆うという一工夫が施されています。VX-264もVX-880と同様に第I/II相試験が進行中で、被験者の組み入れが行われています。およそ17例が組み入れられる予定です。参考1)FDA Approves First Cellular Therapy to Treat Patients with Type 1 Diabetes / PRNewswire2)Piemonti L, et al. Transpl Int. 2021;34:1182-1186. 3)Food and Drug Administration Center for Biologics Evaluation and Research Office of Tissues and Advanced Therapies Cellular, Tissue and Gene Therapies Advisory Committee Meeting April 15, 2021 69th Meeting Summary Minutes OPEN Session / FDA4)Cellular, Tissue, and Gene Therapies Advisory Committee April 15, 2021 Meeting Presentation- Clinical / FDA5)June 28, 2023 Approval Letter - LANTIDRA / FDA6)Vertex Presents Positive VX-880 Results From Ongoing Phase 1/2 Study in Type 1 Diabetes at the American Diabetes Association 83rd Scientific Sessions / BUSINESS WIRE

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