SLEへのバリシチニブ、SLE-BRAVE-II試験での有効性は?/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2023/03/13

 

 全身性エリテマトーデス(SLE)の治療において、選択的ヤヌスキナーゼ(JAK)1/2阻害薬バリシチニブはプラセボと比較して、疾患活動性を改善せず、グルココルチコイド漸減の達成や初回の重度フレア発現までの時間の延長をもたらさないことが、米国・ジョンズホプキンズ大学のMichelle Petri氏らが実施した「SLE-BRAVE-II試験」で示された。Lancet誌オンライン版2023年2月24日号掲載の報告。

15ヵ国の無作為化プラセボ対照第III相試験

 SLE-BRAVE-II試験は、日本を含む15ヵ国162施設で実施された二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2018年8月~2020年8月の期間に参加者のスクリーニングが行われた(Eli Lilly and Companyの助成を受けた)。

 年齢18歳以上で、スクリーニングの少なくとも24週前に臨床的にSLEと診断された患者が、標準治療に加え、バリシチニブ4mg、同2mg、プラセボを1日1回、52週間、経口投与する群に、1対1対1の割合で無作為に割り付けられた。

 主要エンドポイントは、52週の時点における、プラセボ群と比較したバリシチニブ4mg群のSLE Responder Index 4(SRI-4)レスポンダーの割合とされた。

安全性プロファイルは既知のものと一致

 775例が登録され、バリシチニブ4mg群に258例、同2mg群に261例、プラセボ群に256例が割り付けられた。全体の94%が女性で、ベースラインの平均年齢は42.8(SD 12.9)歳であり、平均SLE罹患期間は8.72(SD 7.9)年だった。

 52週時のSRI-4レスポンダーの割合は、バリシチニブ4mg群が47%(121/258例)、同2mg群が46%(120/261例)、プラセボ群は46%(116/256例)であった。プラセボ群と比較したバリシチニブ4mg群のSRI-4レスポンダーの割合のオッズ比(OR)は1.07(95%信頼区間[CI]:0.75~1.53)であり、両群間に有意な差は認められなかった(群間差:1.5、95%CI:-7.1~10.2、p=0.71)。また、プラセボ群と比較したバリシチニブ2mg群のORは1.05(95%CI:0.73~1.50)であった(群間差:0.8、95%CI:-7.9~9.4、p=0.79)。

 24週時のSRI-4レスポンダーの割合やグルココルチコイド漸減の達成、初回の重度フレア発現までの時間の延長などの主要な副次エンドポイントでも、プラセボ群に比べてバリシチニブの2つの用量群で改善はみられなかった。

 少なくとも1件の有害事象が発現した患者の割合は、バリシチニブ4mg群が78%(200例)、同2mg群が76%(199例)、プラセボ群は77%(198例)であり、多くは軽度または中等度であった。重篤な有害事象は、それぞれ11%(29例)、13%(35例)、9%(22例)で認められた。SLE患者におけるバリシチニブの安全性プロファイルは、既知のものと一致しており、新たな安全性シグナルは観察されなかった。

 著者は、「第II相試験および第III相SLE-BRAVE-I試験で示されたバリシチニブの有効性は、本試験では再現されなかったことから、SLEにおける本薬の有効性のエビデンスについては結論が出ていない。事後解析により、本試験の失敗の原因が解明され、今後の臨床試験のデザインに有益な情報をもたらす可能性がある」としている。

(医学ライター 菅野 守)