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うつ病患者の睡眠に対する運動の影響~メタ解析

 不眠症は、うつ病の発症、経過、再発を予測する因子である。しかし、うつ病における不眠症治療オプションに関するシステマティックレビューは十分に行われていなかった。スイス・バーゼル大学のGavin Brupbacher氏らは、うつ病患者の睡眠に対する運動療法の影響を調査するため、メタ解析を実施した。Sleep Medicine Reviews誌オンライン版2021年1月23日号の報告。 7,725件をスクリーニングし、13種類の治療にランダム化された17研究(1,645例)を定量的合成に含めた。 主な結果は以下のとおり。・ネットワークメタ解析では、受動的なコントロール条件と比較し、中程度の有酸素運動を除くすべての運動介入は、有意に良好な睡眠アウトカムをもたらした。・通常治療と比較し、有意に良好な効果が認められた運動介入は以下のとおりであった。 ●通常治療と心身運動介入の併用(SMD:-0.46、95%CI:-0.80~-0.12) ●激しい筋力運動介入(SMD:-0.61、95%CI:-1.12~-0.10)・ペアワイズメタ解析では、受動的なコントロール条件と比較し、心身運動介入が有益な効果を持っていることが示唆された(SMD:-0.54、95%CI:-0.85~-0.23)。・ネットワークメタ解析は、統計学的に強い頑健性が認められ、不均一性、一貫性の欠如、間接性は低かった。・主に研究内バイアスの影響により、調査結果の信頼度は、中程度~非常に低いであった。 著者らは「本研究は、うつ病患者の睡眠の質を改善するための運動介入の有効性を評価した最初のネットワークメタ解析である。うつ病治療において、運動療法の併用は有用であることが確認された。この結果は、臨床医がエビデンスに基づいた治療を決定するうえで役立つであろう」としている。

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成人不眠症に対するレンボレキサントの長期有効性、安全性~第III相臨床試験

 レンボレキサント(LEM)は、成人の不眠症治療薬として日本、米国、カナダで承認されているデュアルオレキシン受容体拮抗薬である。LEMを最大12ヵ月間継続使用した際の有効性および安全性を評価したE2006-G000-303研究(Study 303;SUNRISE-2)の結果を、英国・エーザイのJane Yardley氏らが報告した。Sleep Medicine誌オンライン版2021年2月1日号の報告。 Study 303は、2つの治療期間における12ヵ月間グローバル多施設共同ランダム化二重盲検並行群間第III相臨床試験として実施された。治療期間1(前半6ヵ月間)では、成人不眠症患者949例(完全分析セット)を対象に、プラセボ群、LEM 5mg群、LEM 10mg群にランダムに割り付けた。治療期間2(後半6ヵ月間)では、プラセボ群を再びLEM 5mg群とLEM 10mg群にランダムに割り付け、治療期間1のLEM 5mg群およびLEM 10mg群は、そのまま治療を継続した(LEM 5mg群:251例、LEM 10mg群:226例)。エンドポイントである入眠および睡眠維持は、毎日の電子睡眠日誌のデータより分析した。治療に起因する有害事象(TEAE)のモニタリングを行った。 主な結果は以下のとおり。・LEM 5mg群およびLEM 10mg群は、プラセボ群と比較し、すべての睡眠パラメータにおける有意な効果が観察され、その効果は12ヵ月間維持された。・LEM治療中止後、両群ともに不眠症状のリバウンドまたは離脱症状を示す根拠は見当たらなかった。・12ヵ月以上のLEM治療におけるTEAEは、ほとんどが軽度または中等度であった。・主なTEAEは、鼻咽頭炎、傾眠、頭痛であった。 著者らは「LEM 5mgおよび10mgによる治療は、プラセボと比較し、入眠および睡眠維持に有意な効果をもたらし、その効果は12ヵ月間維持された。成人不眠症患者に対するLEM治療は、長期的なベネフィットをもたらす可能性があることが示唆された」としている。

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境界性パーソナリティ障害患者の不眠

 睡眠障害と境界性パーソナリティ障害(BPD)は、それぞれの疾患を併発することが少なくない。チェコ・パラツキー大学のJakub Vanek氏らは、BPD患者における睡眠障害関連の知識、睡眠マネジメント、研究の今後の方向性を明らかにするため、ナラティブレビューを実施した。Nature and Science of Sleep誌2021年2月22日号の報告。 PubMedおよびWeb of Scienceより、1980年1月~2020年10月に公表された論文をキーワード(睡眠障害、不眠症、悪夢、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、BPD)を使用して抽出した。選択基準は、査読付きジャーナルへの掲載、ヒトを対象とした研究、関連トピックのレビュー、英語での報告とした。除外基準は、会議録、解説論文、18歳未満を対象とした試験とした。101件のフルテキストを精査し、選択された42件の論文のリファレンスリストを検索し、合計71件の論文をレビューに含めた。 主な結果は以下のとおり。・BPD患者では、睡眠障害が高頻度で認められたが、調査数は限定的であり、有病率も5~45%と研究により異なっていた。・BPDにおける睡眠の客観的な変化を評価した研究結果に一貫性は認められなかった。・いくつかの研究において、レム睡眠の変化や徐波睡眠の減少が認められた。・BPD患者では、悪夢の有病率が高かった。・不眠症を治療しないことにより、情動調節を介して、BPD症状を悪化させる可能性が示唆された。・BPDの病態が、睡眠の主観的な質に影響していると考えられる。・BPD患者における睡眠障害の適切な診断および治療は、BPD治療により良い結果をもたらす可能性がある。・心理療法は、睡眠障害とBPD症状の両方を改善することが期待できる。 著者らは「BPD患者の睡眠障害を把握し、適切にマネジメントすることは、症状緩和に役立つ可能性がある。BPD患者の治療計画に睡眠関連の問題への対処を含めることは、より効果的な治療につながるであろう。さらなる研究により、信頼できる結論に至ることが望まれる」としている。

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第54回 AZ社COVID-19ワクチン後の普通じゃない血栓症はヘパリン起因性血小板減少症に類似

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のスパイクタンパク質抗原を作るアデノウイルスを下地とするAstraZenecaのワクチンAZD1222を今年2月中頃に欧州で接種した49歳の健康な女性看護師が内臓・大動脈・脳静脈の血栓症や血小板減少を呈し、残念ながら治療の甲斐なく死亡しました。女性の治療にあたった医師らの病院で3月中旬までにさらに8人に同様の症状が認められ、AZD1222接種4~16日後に血栓症を呈し始めたそれらの9人の病態は血小板活性化抗体を原因とするヘパリン起因性血小板減少症(HIT)にはっきり似通っていました1)。HITは血小板第4因子(PF4)とヘパリンの複合体を認識する血小板活性化抗体によって生じる血栓促進性の血小板減少疾患です。9人のうち1人を除く8人は女性で、年齢は比較的若く22~49歳(中央値36歳)でした。7人は脳静脈血栓症、1人は肺塞栓症、最初の検出例である1人は上述の通り内臓や脳などの複数の組織に血栓症を呈し、9人中4人が亡くなりました。9人のうち4人の血清を調べたところどの人の血清もPF4存在下でヘパリンがなくとも血小板を強く活性化しました。誰も発症前にヘパリンを使っておらず、AZD1222接種者の血小板活性化抗体は複合体を形成していない単独のPF4にどうやら結合するようです。欧州医薬品庁(EMA)や世界保健機関(WHO)はAZD1222使用継続を支持していますが2,3)、欧州のいくつかの国やカナダでは血栓症の懸念を受けてその使用を控えています4,5)。9例の検討結果を今回報告した著者は、特に脳や腹部などでの“普通じゃない(unusual)”血栓症や血小板減少がワクチン接種からおよそ5~14日後に稀に生じることを知っておく必要があると言っています。また、その病態をvaccine induced prothrombotic immune thrombocytopenia(VIPIT) と呼ぶことを提案しています。いまのところAstraZenecaワクチンAZD1222でのみ認められているVIPITが生じたならリバーロキサバンやアピキサバンなどのヘパリン以外の抗凝固薬をまずは使ったらよさそうです1)。脳静脈洞血栓症(CVST)などの致死リスクがある血栓症に陥ったワクチン接種者には高用量免疫グロブリン静注が助けになりそうです。インフルエンザワクチンとナルコレプシーワクチンの稀な深刻な有害事象といえば10年以上前のH1N1(ブタ)インフルエンザワクチンPandemrix(AS03アジュバント添加)接種小児の慢性睡眠疾患・ナルコレプシー発現率上昇が思い出されます。発現率は投与1万8,400回あたり約1例と稀ですが、小児の発現がワクチン接種後にとくに増えました6)。AS03アジュバントとナルコレプシー発現率上昇の関連は否定されているものの7)10年以上経た今となってもPandemrixとナルコレプシーの関連性はいまだに結論がでていません8)。しかし疫学やワクチンの研究者などが集まってベルギーで3年前の2018年3月末に開催された検討会ではPandemrix接種後の一貫したナルコレプシーリスク上昇が認められていると結論され9)、同ワクチンとH1N1インフルエンザウイルスの相互作用に帰するナルコレプシーは恐らくあるようだと参加者は考えています8)。参考1)A Prothrombotic Thrombocytopenic Disorder Resembling Heparin-Induced Thrombocytopenia Following Coronavirus-19 Vaccination. Research Square. Posted 28 Mar, 20212)Statement of the WHO Global Advisory Committee on Vaccine Safety (GACVS) COVID-19 subcommittee on safety signals related to the AstraZeneca COVID-19 vaccine / WHO3)AstraZeneca COVID-19 vaccine: review of very rare cases of unusual blood clots continues / EMA4)AstraZeneca COVID Vaccine: Clotting Disorder Mechanism Revealed? / Medscape5)Germany suspends use of AstraZeneca’s Covid shot for the under-60s, dealing another blow to drugmaker / CNBC 6)Sarkanen TO, et al. Sleep Med Rev. 2018 Apr;38:177-186. 7)Weibel D, et al.Vaccine. 2018 Oct 1;36:6202-6211. 8)Why is it so hard to investigate the rare side effects of COVID vaccines? / Nature9)Edwards K, et al. Biologicals. 2019 Jul;60:1-7.

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関節機能改善剤のジョイクル関節注、国内製造販売承認取得

 小野薬品工業株式会社と生化学工業株式会社は、3月23日、関節機能改善剤「ジョイクル®関節注 30mg」(一般名:ジクロフェナクエタルヒアルロン酸ナトリウム)について、「変形性関節症(膝関節、股関節)」の効能又は効果で国内製造販売承認を厚生労働省より取得したことを発表した。 ジョイクルは関節機能改善剤において、変形性股関節症の適応を持つ国内初の医薬品。生化学工業独自の薬剤結合技術を用いヒアルロン酸にジクロフェナク(抗炎症薬)を化学結合した薬剤で、加水分解によってジクロフェナクを遊離する。関節腔内への4週間に1回の投与により、変形性関節症(膝関節、股関節)の症状を改善することが期待される。また、注射剤として関節腔内に直接投与するため、ジクロフェナクの全身曝露量が少なく、全身性の副作用のリスクが低いと考えられている。<製品概要>・製品名:ジョイクル®関節注 30mg・一般名:ジクロフェナクエタルヒアルロン酸ナトリウム・効能又は効果:変形性関節症(膝関節、股関節)・用法及び用量:通常、成人1回1シリンジ(ジクロフェナクエタルヒアルロン酸ナトリウムとして1回30mg)を4週間ごとに関節腔内に投与する・製造販売元:生化学工業株式会社・販売元:小野薬品工業株式会社・製造販売承認日:2021年3月23日 変形性膝関節症は加齢などの要因により、また変形性股関節症は先天的な要因などにより、関節の軟骨が傷つき炎症を起こすことで痛みが生じる疾患であり、いずれも罹患すると生活の質の低下につながる。国内での有症状患者数は変形性膝関節症が約780万人と推計されており、とくに女性に多く、70代女性の約70%が罹患していると言われている。また、変形性股関節症について、X線診断上の有病率は1.0~4.3%(男性は0~2.0%、女性は2.0~7.5%)と報告されている。

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「腫瘍内科専門医」は新専門医制度で何が変わる?/日本臨床腫瘍学会

 日本臨床腫瘍学会の専門医制度は、新専門医制度の中で主に内科を基本領域とする「サブスペシャルティ領域専門医」として日本専門医機構より認定された。名称は「腫瘍内科専門医」とされ、今秋・遅くとも来春からの研修開始を目指して最終調整が進められている。第18回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO Virtual2021)ではこの新専門医制度についてシンポジウムが開催された。本稿では、その概要について解説した田村 研治氏(島根大学医学部附属病院先端がん治療センター)の講演内容を紹介する。「腫瘍内科専門医」への名称変更に紆余曲折 2018年、日本専門医機構は「がん薬物療法専門医」を新専門医制度における「サブスペシャリティ領域専門医」として承認した。しかし2019年に厚生労働省・医道審議会医師分科会・医師研修部会が発足し、同新制度の問題点を指摘。サブスペシャリティ領域の承認基準や整備指針に不十分な点があるのではないかということで、見直しが図られた。 その結果、最終的に「がん薬物療法専門医」は「腫瘍内科専門医」に名称が変更され、内科のサブスペシャリティ領域の1つとして承認された。腫瘍内科と呼吸器内科で異なるサブスぺ領域の類型とは? サブスペシャリティ領域は、研修実施の時期や考え方に応じて以下の3類型が設けられている。1)連動研修を行い得る領域:内科(ほか基本領域)の3年間の研修中に、いくつかの症例について連動して研修可能(消化器内科、呼吸器内科、血液内科など)2)連動研修を行わない領域:内科(ほか基本領域)の3年間の研修後に開始(腫瘍内科、アレルギー、感染症など)3)少なくとも1つのサブスペシャリティ領域を修得した後に研修を行う領域:(消化器内科→肝臓内科、消化器内視鏡など) このうち、腫瘍内科は2)連動研修を行わない領域に位置づけられ、3年間の基本領域研修中にがんの症例を経験したとしても、研修経験は共有できない。また、複数のサブスペシャリティ領域の同時登録はできないため、例えば連動研修として呼吸器内科の研修を開始していた場合に、同時期に腫瘍内科での研修を開始することはできない。 しかし、サブスペシャリティ領域どうしの症例のオーバーラップは可能であり、田村氏は「例えば呼吸器内科領域で肺がんの症例を診ていて、2つめのサブスぺ領域として腫瘍内科を選択した場合には、双方の学会の同意のもと、腫瘍内科での症例としても認められることとなっている」と説明した。また、新専門医制度は5年をめどに制度が見直されることとされており、「将来的には、腫瘍内科についても連動研修が可能となるよう目指して体制の整備含め動いていきたい」と展望を示した。腫瘍内科専門医は日本内科学会を基本領域とする 旧専門医制度での「がん薬物療法専門医」取得にあたっては、内科のほか外科、産婦人科、泌尿器科など14学会の専門医資格を基本資格としている。しかし、新専門医制度では、「腫瘍内科専門医」は日本内科学会を基本領域とする。この背景には、新制度では多くのサブスペシャリティ領域専門医の取得が実質的に難しいこと(原則として2領域)、「がん薬物療法専門医」取得者の基本領域は86%を日本内科学会が占めることがある。ただし、日本外科学会を基本領域としている医師も10%ほどおり、田村氏は「とくに乳がん領域で多く、今後日本外科学会については基本領域としての追加を検討していきたい」と話した。 なお、この変更は旧専門医制度「がん薬物療法専門医」取得者の更新には影響せず、例えば皮膚科を基本領域として「がん薬物療法専門医」を取得している医師の資格は失われない。腫瘍内科専門医が2024年度頃に誕生の見通し 新専門医制度における内科専門研修1期生は、2018年から3年間の基本領域プログラムを受けており、本来であれば、2021年4月から腫瘍内科等のサブスペシャリティ領域の研修がスタート予定であった。しかし、新型コロナウイルス感染症等の影響で遅れが出ており、基本領域の試験は2021年7月4日に予定されている。「腫瘍内科専門医のモデルカリキュラムは9月頃にはホームページ上で公開予定となっており、J-OSLERの開始も遅くとも来春までには整えたい」と田村氏は説明した。なお、2021年4月からの症例については、さかのぼって実績に含めることができる。 今後数年は旧制度と新制度が並行する形となるが、2024年度頃におそらく最初の腫瘍内科専門医が誕生し、その後最終的には、旧制度は終了する予定との見通しを同氏は示した。参加者からは、「外科などの内科以外を基本領域とするがん薬物療法専門医は腫瘍内科専門医へ移行可能か?」という質問が寄せられた。同氏は、旧制度のがん薬物療法専門医は順次更新が行われるので、新専門医制度による影響は受けないことを説明。名称については今後更新の際に「がん薬物療法専門医」→「腫瘍内科専門医」と変更される可能性はあるが、資格としては変わらず更新が可能とした。

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DPP-4阻害薬は新たな免疫抑制薬となり得るか?(解説:住谷哲氏)-1362

 筆者は内分泌代謝疾患を専門としているので、骨髄破壊的同種骨髄幹細胞移植(allo-HSCT)に伴う急性移植片体宿主病(GVHD)に関する知識は少ない。したがって本論文の結果の重要性を評価するのは適任ではないが、36例を対象とした第II相非ランダム化試験でNEJMに掲載されたことから、その結果が臨床的に大きなインパクトを有することは理解できる。 シタグリプチンをはじめとしたDPP-4阻害薬の適応は全世界的に2型糖尿病のみである。したがって本試験はdrug repositioning(drug repurposingとも呼ばれる)の1つと考えられる。ペプチド分解酵素であるDPP-4はT細胞表面に発現するCD26と同一分子であり、インクレチンであるGLP-1は生体内に多数存在するDPP-4の基質の1つに過ぎない。CD26はT細胞活性化における共刺激分子costimulatory moleculeである。動物実験でCD26の発現低下によりGVHDの抑制が可能であることが知られており、それに基づいて著者らは今回の試験を計画した。免疫抑制薬であるタクロリムスとシロリムスの併用に加えて、移植前日から移植後14日にわたってシタグリプチン1,200mg/日を投与した。その結果は、主要評価項目である移植後100日までのGrade II~IVのGVHDの発生率は5%であり、これまで報告されている発生率26~47%と比較して大きく低下していた。しかし本試験はいわばproof of conceptの段階であり、その有効性は今後実施される第III相ランダム化比較試験の結果を待つ必要がある。 血糖降下薬の観点から、本試験の結果をどう考えればよいだろうか? 1つは1,200mg(血糖降下薬としての最大投与量の12倍)2週間投与しても低血糖の発症はなかったと記載があることから、シタグリプチン(おそらく他のDPP-4阻害薬も)が単剤で低血糖を発症するリスクはほとんどないこと再確認されたことだろう。しかし筆者が重要と考えるのは、投与量の問題もあるが、DPP-4阻害薬に免疫抑制作用のあることが示された点である。DPP-4阻害薬の投与が水疱性類天疱瘡の発症と関連することが報告されているが、RS3PE、関節リウマチ、SLEなどの自己免疫疾患が増加するかについては種々の報告があり一定しない。一方で、台湾のナショナルデータベースを用いた研究ではDPP-4阻害薬の投与により自己免疫疾患の発症頻度がむしろ低下することが報告されている1)。2型糖尿病の病態、さらに合併症とされる動脈硬化性心血管病、がん、認知症、心不全の発症にも慢性炎症が関与していることが次第に明らかになりつつある。遠くない将来に、糖尿病治療における免疫抑制薬としてDPP-4阻害薬が注目される日が来るかもしれない。

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『NAFLD/NASH診療ガイドライン2020』発刊―肝線維化の早期発見へ

 日本消化器病学会と日本肝臓学会が合同制作した『NAFLD/NASH診療ガイドライン2020』が2020年11月に発刊された。今回5年ぶりの改訂を迎えたNAFLD/NASH診療ガイドラインには、非ウイルス性肝疾患、とくに非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の増加を背景とした診療の進歩が取り入れられている。そこで今回、作成委員長を務めた徳重 克年氏(東京女子医科大学消化器病センター消化器内科 教授・講座主任)にNAFLD/NASH診療ガイドラインの改訂ポイントや活用方法を伺った。NAFLD/NASH診療ガイドライン2020、非専門医にも活用意義あり 今回のNAFLD/NASH診療ガイドライン改訂における注目ポイントは、NAFLDの進展に深く関わっている『肝線維化進展例の絞り込み』『脳・心血管系疾患リスクの絞り込み』に関するフローチャートやClinical Question(CQ)が追加された点である。 NAFLD/NASHの予後や肝硬変への病態進展に影響を及ぼす肝線維化は、診断時に肝生検を要するなど非専門医による診断が難しく取りこぼしの多い病態であった。しかし、肝線維化の有病率は日本でもNAFLDの増加に比例し、線維化ステージ3以上のNAFLDは2016年時点で66万人、2030年では99万人に達すると予測されているくらい深刻な状況である(BQ1-2:NAFLD/NASHの有病率は増加しているか?)。また、脂質異常症や糖尿病などの生活習慣病、高齢化が線維化進展のリスクであることから、このような患者を診察する非専門医にも「NAFLD/NASH診療ガイドラインを役立ててほしい」と徳重氏は話した。 そこで、今回のNAFLD/NASH診療ガイドライン2020より肝線維化進展例の絞り込みフローチャートを非専門医向け(1)と専門医向け(2)の2種類設けることで、それぞれの視点で線維化を評価できるようになっている。今回のフローチャート作りでは「肝線維化を拾い上げ、早期治療に介入できることで肝硬変や肝がんへの進展を抑え込む」ことを目的としているため、非専門医と専門医の評価方法を分けることで評価時の負担軽減につながる工夫もなされている。たとえば、評価時のネックになっていたエラストグラフィや肝生検を、かかりつけ医らによる1次スクリーニングではFIB-4 indexや線維化マーカー(ヒアルロン酸、IV型コラーゲン7S…)に留めている。これについて、「FIB-4 indexは血液検査の4項目(AST、ALT、血小板数、年齢)から算出されたデータを基に線維化の進展を評価する方法。肝線維化の進展を調べるのに肝生検を全例に実施するのは現実的ではないが、このスコアリングシステムを用いれば、おおよその予後をステージ区分できたり、肝生検実施の絞り込みを行ったりするのに役立つ。さらには非専門医が専門医へコンサルテーションする手立てにも有用」と同氏はこの評価基準に期待を示した。一方で、「80歳以上の高齢者やアルコール性肝疾患はスコアの整合性がとれないためFIB-4 indexの使用は控えたほうが良い」とデメリットも挙げた(CQ3-3:NAFLD/NASH患者の肝線維化進行度の評価に血液学的バイオマーカーおよびスコアリングシステムは有用か?)。NAFLD/NASH診療ガイドライン2020では心血管リスク考慮のフローチャートが追加 NAFLD/NASH診療ガイドライン2020の第5章『予後、発癌、follow up』のBackground Question(BQ)で述べられているように、NAFLDでは心血管イベントのリスクが増加すると多数報告されている。これを踏まえ、肝線維化の程度に応じ、肝関連疾患(肝硬変・肝がん)だけではなく心血管イベントなどを考慮したフォローが必要であることが明記、フローチャートが追加された(CQ5-1 NAFLD/NASHのfollow upは、どのように行うのが適当か?)。これについては、「心血管リスクが現段階でなかったとしても、前述のFIB-4 indexを活用して2~3年ごとに確認を行ってほしい」と説明した。SGLT2阻害薬やGLP-1アナログほか、将来に期待する薬剤多数 NASH症例は患者の約50%以上が肥満である。それを逆手にとり、現在では体重減少作用のあるSGLT2阻害薬や糖尿病治療薬GLP-1アナログを使用したNAFLDに対する治験が進行中である。SGLT2阻害薬は血液生化学検査での改善や脂肪肝の減少が見られることからNAFLD/NASH患者に対し弱い推奨(CQ4-5 SGLT2阻害薬はNAFLD/NASHに有用か?)、GLP-1アナログは血液生化学検査や肝組織検査でも有用性が示されているもののデータ不十分なため、現時点では糖尿病を有するNASH患者において、弱い推奨となっている(CQ4-6 GLP-1アナログ、DPP-4阻害薬などのインクレチン関連薬はNAFLD/NASHに有用か?)。今後、多数例での検討結果が期待される。 このほか、将来性のある薬剤として、高脂血症治療剤ペマフィブラート(商品名:パルモディア)をはじめ14品目の臨床研究が進行中である。同氏は「ペマフィブラートは国内治験のサブ解析でも肝機能改善効果が得られているので、脂質異常症を併存する患者に使用するのは有用ではないか」とコメントした。NAFLD/NASHの線維化が進行した肝がんスクリーニングに課題 NAFLD/NASHの線維化が進行すれば肝がんを発症しかねないが、その発症率の少なさや医療経済的な側面が壁となり全症例への肝がんスクリーニングはそぐわないという。それゆえ、これまで同氏が述べてきたような線維化の早期発見や線維化進展抑制のための治療が功を奏する。“沈黙の臓器”の所以ともいえる自覚症状なき肝臓の線維化。その進展食い止めの重要性を強調してきた同氏は、「ぜひ、肝線維化の理解を深めてもらいたい」と述べるとともに「より簡便な肝がんスクリーニング方法の確立を目指したい」と締めくくった。

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日本人双極性障害患者とうつ病患者の認知機能の比較

 国立精神・神経医療研究センターの松尾 淳子氏らは、双極性障害(BD)患者における病期別の認知機能を調査し、うつ病患者や健康対照者の認知機能との比較を行った。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2020年12月27日号の報告。 BD患者139例(寛解期:55例、非寛解期:84例)、うつ病患者311例(寛解期:88例、非寛解期:223例)、健康対照者386例を対象に、ウェクスラー成人知能検査(Wechsler Adult Intelligence Scale-RevisedまたはWAIS-III)を実施した。対象は、日本人の非高齢者で通常推定病前知能指数(IQ)が90超であり、年齢、性別、病前IQは、グループ間で一致していた。 主な結果は以下のとおり。・非寛解期BD患者は、健康対照者と比較し、言語IQ、パフォーマンスIQ、フルスケールIQ、知覚の体制化、ワーキングメモリ、処理速度のスコアが有意に低かった(すべて、p<0.001)。・同様に、非寛解期うつ病患者と比較し、言語IQ、パフォーマンスIQ、フルスケールIQ、ワーキングメモリのスコアが有意に低かった。・非寛解期うつ病患者は、健康対照者と比較し、パフォーマンスIQ(p<0.001)、フルスケールIQ、処理速度(p<0.001)のスコアが有意に低かった。・寛解期BD患者は、健康対照者と比較し、パフォーマンスIQのスコアが有意に低かった(p=0.004)。・寛解期うつ病患者は、健康対照者と比較し、処理速度のスコアが有意に低かった(p=0.030)。 著者らは「うつ病患者では、処理速度のみが明らかな問題であると思われる点と比較し、BD患者では、非寛解状態で全体的かつより重度の認知機能障害が出現している。双極性障害、うつ病患者ともに、寛解期であっても認知機能低下が認められるようである」としている。

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COVID-19の論文が量産され過ぎな件【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第179回

COVID-19の論文が量産され過ぎな件pixabayより使用私は普段から医学論文を読んでいるのですが、テーマやジャーナルのレベルを絞りながら読むように心掛けています。最近、COVID-19の論文が多過ぎて、オイオイそれはおかしいやろと驚いたので、せっかくだからこの連載でちょっと考察してみたいと思います。中世から近現代にかけてよくわからない論文が流行した時期もあるので、PubMedで検索可能な1900年以降の医学論文について「タイトル検索」を実施してみました。検索時に、PubMedに[title]というタグを入れることで、医学論文のタイトルにその語句が含まれたものだけを抽出する方法があるのです。たとえば、伝統的な感染症である、「結核(tuberculosis)」をタイトル検索すると、1950年代に論文数の第1ピークを起こし、その後現代にいたるまで数多くの論文が刊行されています。その数、14万を超えます。さすがですね、結核。画像を拡大するマラリア(malaria)は4.7万件、梅毒(syphilis)は1.7万件、麻疹は「measles」で1.5万件、「rubeola」で200件です。世界的に有名な感染症なのに、ここらへんは、思ったより少ないですね。そ、そ、そ、そしてCOVID-19は途中で病名が変わったにもかかわらず、なんと6.1万件です。1年足らずで、なんとマラリアの総件数超え!!!いやいや、おかしいでしょうと。PubMedユーザーに困った現象も起こしていまして、たとえば「肺炎(pneumonia)」で、やたらCOVID-19が引っかかるようになったのです。現在、約5万件がヒットしますが、2020年にいきなり3倍に増えているのです。グラフがビューン。細かくみると、この多くがCOVID-19 pneumoniaによる増加だとわかります(矢印)。画像を拡大する…というわけで、COVID-19の論文が量産され過ぎている現状が透けて見えるわけです。アクセプトの閾値が下がっているため、査読リテラシーが問われる案件であると危惧しております。ひどいものでは、「COVID-19時代の原因不明の肺炎」(中身を見てみるとPCR陰性で病原微生物がよくわからなかったというヒドイもの)という論文もあって、よくこんな論文をアクセプトしたなぁと感心するものもありました。

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慢性不眠症に対する処方デジタル治療「Somryst」について

 処方デジタル治療(PDT)は、米国食品医薬品局(FDA)に承認された新たなソフトウエアベースの医療機器であり、疾患の治療に用いられる。Somrystは、慢性不眠症治療に対しFDAにより承認された最初のPDTであり、不眠症の認知行動療法(CBT-I)を、モバイルアプリケーションを通じて提供するものである。CBT-Iは、慢性不眠症のガイドラインで推奨される第1選択治療であるが、CBT-Iのセラピストには限りがあり、より多くの患者へCBT-Iを提供するニーズにSomrystは合致する。カナダ・ラバル大学のCharles M. Morin氏は、Somrystについてのレビューを報告した。Expert Review of Medical Devices誌オンライン版2020年11月23日号の報告。 本レビューでは、Somrystの作用機序や技術的特徴、FDA承認時のランダム化試験の安全性および有効性のデータを解説した。 主な結果は以下のとおり。・Somrystは、成人慢性不眠症患者の治療において優れた臨床効果が認められており、リスクを上回るベネフィットをもたらす。・FDA承認時のランダム化試験では、第1世代のCBT-IプラットフォームであるSleep Healthy Using the Internet(SHUTi)の2つの臨床試験に基づき、評価された。・Somrystや一般的なPDTは、効果的な治療へのアクセスを向上させるために、有望なデバイスである。・非接触型であるSomrystは、COVID-19パンデミックなどの安全上の理由により対面診療が利用できないまたは推奨されない場合においても、理想的な治療オプションといえる。

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1日1回の経口服用で腎性貧血を治療する「バフセオ錠150mg/300mg」【下平博士のDIノート】第63回

1日1回の経口服用で腎性貧血を治療する「バフセオ錠150mg/300mg」今回は、低酸素誘導因子プロリン水酸化酵素(HIF-PH)阻害薬「バダデュスタット錠(商品名:バフセオ錠150mg/300mg、製造販売元:田辺三菱製薬)」を紹介します。本剤は、保存期・透析期にかかわらず、1日1回の経口服用で腎性貧血を改善し、患者さんのQOLやアドヒアランスの向上が期待されています。<効能・効果>本剤は、腎性貧血の適応で、2020年6月29日に承認され、2020年8月26日より発売されています。<用法・用量>通常、成人にはバダデュスタットとして1回300mgを開始用量とし、1日1回経口投与します。以後は、患者の状態に応じて最高用量1日1回600mgを超えない範囲で適宜増減します。増量する場合は、150mg単位を4週間以上の間隔を空けて行います。休薬した場合は、1段階低い用量で投与を再開します。なお、赤血球造血刺激因子製剤(ESA)で未治療の場合、本剤投与開始の目安は、保存期の慢性腎臓病(CKD)患者および腹膜透析患者ではヘモグロビン濃度で11g/dL未満、血液透析患者ではヘモグロビン濃度で10g/dL未満とされています。<安全性>CKD患者を対象とした国内全臨床試験において、副作用(臨床検査値異常を含む)は、総症例数481例中61例(12.7%)に認められました。主な副作用は、下痢19例(4.0%)、悪心8例(1.7%)、高血圧7例(1.5%)、腹部不快感、嘔吐各4例(0.8%)でした(承認時)。なお、重大な副作用として、血栓塞栓症(4.2%)、肝機能障害(頻度不明)が現れることがあります。本剤の投与開始前に血栓塞栓症のリスクを評価し、本剤投与中も血栓塞栓症が疑われる徴候や症状を確認する必要があります。<相互作用>本剤はOAT1およびOAT3の基質であり、BCRPおよびOAT3に対して阻害作用を有します。したがって、BCRPの基質となる薬剤(ロスバスタチン、シンバスタチン、アトルバスタチン、サラゾスルファピリジンなど)、OAT3の基質となる薬剤(フロセミド、メトトレキサートなど)との相互作用には注意が必要です。また、多価陽イオンを含有する経口薬(カルシウム、鉄、マグネシウム、アルミニウムなどを含む製剤)と併用した場合にキレートを形成し、本剤の作用が減弱する恐れがあるため、併用する場合は本剤の服用前後2時間以上を空けて投与します。<患者さんへの指導例>1.この薬は、赤血球のもとになる細胞を刺激し血液中の赤血球を増やすことで、貧血を改善します。2.吐き気、嘔吐、手足の麻痺、しびれ、脱力、激しい頭痛、胸の痛み、息切れ、呼吸困難などが現れた場合は、すぐに医師に連絡してください。3.この薬には飲み合わせに注意が必要な薬があります。新たに薬やサプリメントを使用する場合は、必ず医師または薬剤師に本剤の服用を伝えてください。<Shimo's eyes>腎性貧血は、腎機能の低下に伴いエリスロポエチン(EPO)の産生が減少することによって生じる貧血です。これまで、腎性貧血の治療にはEPOの補給を行うために、ダルベポエチンアルファ(商品名:ネスプ)やエポエチンベータペゴル(同:ミルセラ)などのESAが投与されてきました。これらの製剤は注射薬ですが、近年は内服薬であるHIF-PH阻害薬が開発され、患者さんの負担を軽減し、QOLが維持されやすくなりました。HIF-PH阻害薬は、低酸素応答機構がEPO産生を調節することを利用した、まったく新しい機序の腎性貧血治療薬であり、その機構解明の功績により、William G. Kaelin Jr.、Sir Peter J. Ratcliffe、Gregg L. Semenzaが2019年ノーベル生理学・医学賞を受賞しています。2020年11月時点でロキサデュスタット錠(同:エベレンゾ)、ダプロデュスタット錠(同:ダーブロック)、エナロデュスタット錠(同:エナロイ)、そして本剤の4種類が発売されています。それぞれ適応、服用回数、腎機能などによる投与量、増量段階の回数や間隔、食事の影響などに違いがあります。本剤は食事の影響が比較的少なく、どのタイミングでも服用できます。また、CKD保存期でも透析期でも同じ投与量であり、腎機能によって投与量が異なることもありません。調節範囲も4段階と比較的少なくなっています。腎性貧血患者は、リン吸着剤などの併用により服用時点が多くなりがちなので、シンプルな服用方法はアドヒアランスの向上に役立つと考えられます。HIF-PH阻害薬の登場によって、腎性貧血治療が薬局薬剤師にとって身近なものになります。日本腎臓学会から「HIF-PH阻害薬適正使用に関するrecommendation」が公表されていますので、一度目を通しておくとよいでしょう。参考1)PMDA 添付文書 バフセオ錠150mg/バフセオ錠300mg2)日本腎臓学会 HIF-PH 阻害薬適正使用に関するrecommendation

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睡眠の質に栄養バランスは関係あるか?

 日本人の成人男性において、不眠症の症状が栄養不足に関連していることが、お茶の水女子大学の松浦 希実氏らの研究によって明らかとなった。Sleep Health誌2020年4月号の報告。 睡眠と食事は健康維持のために欠かせないライフスタイル要因である。睡眠の質が特定の栄養素と食物摂取に関連していることは過去の研究で示唆されているが、栄養の適切性と睡眠の質との関係についてはわかっていない。そこで、日本人成人の睡眠の質(不眠症の症状)と適切な栄養素摂取量の関係について調査した。 2013年に実施された全国人口調査を基に18~69歳の1,997人を対象とした。 不眠症の症状は、アテネ不眠尺度(AIS)を使用して評価され、3つのグループ(なし、軽度、中等度~重度)に分類した。アンケートから食事摂取量を推定し、自己申告による摂取量を「日本人の食事摂取基準(2015年版)」の2つの指標である推定平均必要量(EAR)およびライフスタイル関連を防ぐための暫定的な食事目標量と比較し、栄養素摂取量の妥当性を評価した。 不眠症の症状と栄養摂取の関係については以下のとおりである。・中等度~重度の不眠症は、男性21.8%、女性25.2%であった。・男性では、総食物繊維、ビタミンC、亜鉛などの不十分な摂取が不眠症の有病率と関連しており、不十分な栄養素の数も不眠症の症状に関連性があることが確認された。

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COVID-19へのヒドロキシクロロキン投与、効果を認めず/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による呼吸器症状を伴う入院患者において、ヒドロキシクロロキンを用いた治療はプラセボと比較して、14日時点の臨床状態を有意に改善しなかった。米国・ヴァンダービルト大学医療センターのWesley H. Self氏らが、米国内34病院で行った多施設共同プラセボ対照無作為化盲検試験の結果を報告した。ヒドロキシクロロキンはCOVID-19治療に効果的なのか、そのデータが求められている中で示された今回の結果について著者は、「COVID-19入院成人患者の治療について、ヒドロキシクロロキンの使用を支持しないものであった」とまとめている。JAMA誌2020年11月9日号掲載の報告。新型コロナへのヒドロキシクロロキンの有効性を14日時点で評価 研究グループは、米国内34ヵ所の医療機関で、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染による呼吸器症状が確認された成人入院患者を対象に試験を行い、ヒドロキシクロロキンの有効性を検証した。 被験者を無作為に2群に分け、一方にはヒドロキシクロロキン400mgを初日は1日2回、その後4日間は200mgを1日2回、それぞれ投与した。もう一方にはプラセボを投与した。 計画では被験者数を新型コロナ患者510例とすること、ヒドロキシクロロキンとプラセボの各群102例の登録後に中間解析の実施が予定されたが、4回目の中間解析でヒドロキシクロロキンの無益性が確認され、被験者数479例の時点で試験は中止となった。 主要アウトカムは、7段階の臨床的重症度を分類する順序尺度(1[死亡]~7[退院し通常の活動が可能])による14日時点での評価だった。評価については、多変量比例オッズモデルで解析し、補正後オッズ比(aOR)を算出して1.0超の場合に、ヒドロキシクロロキンはプラセボよりもアウトカムが良好であると定義した。副次アウトカムは、28日死亡率など12項目について評価した。ヒドロキシクロロキン群は14日時点の臨床状態、28日死亡率も改善せず 被験者登録は2020年4月2日~6月19日に行われ、最終アウトカムの評価は2020年7月17日に行われた。 被験者479例(ヒドロキシクロロキン群242例、プラセボ群237例)の平均年齢は57歳、女性は44.3%、ヒスパニック/中南米系37.2%、黒人23.4%であり、また集中治療室での治療を要したのは20.1%で、46.8%が陽圧なしの補助酸素投与を受け、11.5%が非侵襲的換気または高流量鼻カニュラ酸素療法を、6.7%が侵襲的換気または体外式膜型人工肺(ECMO)による治療を受けた。 433例(90.4%)が14日時点の主要アウトカム評価を完了した(残りは評価前に[退院]のカテゴリーに帰属)。無作為化前に症状を呈していた期間の中央値は5日(四分位範囲[IQR]:3~7)だった。 14日時点の評価スコアに基づく臨床状態は、ヒドロキシクロロキン群とプラセボ群で有意な差はみられなかった。スコア中央値(IQR)は両群ともに6(4~7)で、aORは1.02(95%信頼区間[CI]:0.73~1.42)だった。 副次アウトカム12項目についても、両群で有意差はなかった。無作為化後28日時点で報告された死亡は、ヒドロキシクロロキン群25/241例(10.4%)、プラセボ群25/236例(10.6%)だった(絶対差:-0.2%[95%CI:-5.7~5.3]、aOR:1.07[95%CI:0.54~2.09])。

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睡眠時間がうつ病やQOLに及ぼす影響~日本におけるインターネット調査

 日中の眠気や睡眠障害の有無で調整後の一般集団における睡眠時間とQOLまたはうつ病との関連を評価した研究は、これまでなかった。国立精神・神経医療研究センターの松井 健太郎氏らは、これらの関連を調査するため、Webベースの横断調査を実施した。Sleep Medicine誌オンライン版2020年10月15日号の報告。 対象は、20~69歳の8,698人。平日の睡眠時間、日中の眠気、睡眠障害、QOL、うつ病との関連を調査した。エプワース眠気尺度、ピッツバーグ睡眠質問票(睡眠時間の項なし)、健康関連QOL評価尺度SF-8、CES-Dうつ病自己評価尺度を用いて評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・日中の眠気は、平日の睡眠時間が短くなるにつれ、増加傾向が認められた。・睡眠時間が7~8時間の人と比較し、睡眠時間が短い人および長い人では、睡眠障害、身体的および精神的QOL、CES-Dスコアの悪化が認められた。・階層的ロジスティック回帰分析では、日中の眠気と睡眠障害の有無で調整した後でも、睡眠時間が短い人では、身体的および精神的QOLの低下と有意な関連が認められた。・日中の眠気で調整した後、睡眠時間が短い人および長い人では、独立してうつ病との有意な関連が認められた。しかし、睡眠障害で調整した後では、統計学的に有意な関連は認められなかった。 著者らは「睡眠時間の短さは、身体的および精神的QOLの低下との関連が認められた。また、うつ病に及ぼす影響は、睡眠時間の短さよりも、特定の睡眠障害と関連している可能性が示唆された」としている。

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第33回 悪夢払いアプリを米国FDAが承認

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行食い止めのためのロックダウン6週目に4,275人を調べたところ睡眠時間は多くなっていたものの目が覚めてしまうことが増え、4人に1人以上(26%)は悪夢を見ることが多くなっていました1)。コロナ禍の矢面に立って負担を強いられている医療従事者はとくにそうなりがちらしく、スペインでの別の研究によると100人中38人(38%)が悪夢を報告しており、非医療従事者のその割合約21%を有意に上回りました(p=0.02)2)。先週金曜日、そんな安眠さえままならない医療従事者の苦悩を軽減してくれるかもしれないApple Watch(アップルウォッチ)/iPhone(アイフォン)アプリが米国FDAに承認されました3)。Nightwareという商品名のそのアプリは募る負担の現れである悪夢を遮って夜間の休息が続くようにします。NightwareはApple Watchのセンサーを使って睡眠中の体の動きや心拍数を把握し、サーバーにそれらの情報を送ります。サーバーは独自のアルゴリズムを使って患者の睡眠パターンを把握し、おそらく悪夢を見ていると判断したら目を覚まさせない程度にApple Watchを震わせて気を引いて悪夢の解消を目指します。アプリは賢くて学習機能があり、もし振動で目が覚めてしまった場合、次からはそうならないようにより弱く振動させます4)。70人が参加した無作為化比較試験の結果、振動する製品は振動しない模造品に比べて睡眠の質の自己評価指標Pittsburgh Sleep Quality Indexをより改善しました。Nightwareは悪夢障害や心的外傷後ストレス障害(PTSD)による悪夢に苦しむ22歳以上の患者に使うことができます。ただし、PTSD患者には他の治療と一緒に使う必要があり、NightwareだけでPTSDを治療することはできません。また、悪夢の際に眠ったまま歩いたり(sleepwalking)乱暴する人は使うことはできません。参考1)Pesonen AK, et al. Front Psychol. 2020 Oct 1;11:573961. 2)Herrero San Martin A, et al. Sleep Med. 2020 Aug 17;75:388-394.3)FDA Permits Marketing of New Device Designed to Reduce Sleep Disturbance Related to Nightmares in Certain Adults/PR Newswire4)NightWare製品説明

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非小細胞肺がん、デュルバルマブ術前補助療法の成績/ESMO2020

 早期非小細胞肺がん(NSCLC)における免疫チェックポイント阻害薬の術前補助療法は、すでに幾つかの試験で検討され、有望な結果が得られている。欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress 2020)では、デュルバルマブの術前補助療法を評価する第II相多施設共同試験(IFCT-1601 IONESCO)の中間解析の結果を、フランス・Cochin病院のMarie Wislez氏が発表した。・対象:Stage1B(4cm以上)、2、3A(N2除く)の切除可能NSCLC・介入:デュルバルマブ750mg 2週ごと3サイクル投与後2〜14日目に手術・評価項目:[主要評価項目]完全(R0)切除の割合[副次評価項目]術後90日死亡率、安全性、全生存期間(OS)、無病生存期間(DFS)、奏効率、MPR(Major Pathologic Response、生存腫瘍細胞10%以下)、初回投与から手術までの期間 主な結果は以下のとおり。・2017年4月〜2019年8月に50例が登録され、46例がデュルバルマブ投与対象となった。・患者の年齢中央値61.0歳、 男性70%、喫煙者は94%であった。・R0切除割合は89.1%(46例中41例)と、仮説割合の85%を超え、主要評価項目を達成した。・46例中4例はPR、36例がSD、6例がPDで、MPRは43例中8例の18.6%であった。・術後90日の死亡率は9%(4例)。そのため、登録は中止となった。死亡した4例中3例は、心血管系などの併存疾患を有しており、デュルバルマブとの直接の関連はみられなかった。・全Gradeの有害事象(AE)は33.3%、すべてGrade2以下であった。 ・追跡期間23ヵ月におけるOSとDFSの中央値は未達、 1年OS率は89.7%、12ヵ月DFS率は78.2.%であった。

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胃バイパス術による2型糖尿病改善効果はほとんどすべてが体重減少で説明できる(解説:住谷哲氏)-1291

 肥満外科手術bariatric surgeryが肥満合併2型糖尿病患者の糖代謝異常を大幅に改善することが明らかとなっている。肥満外科手術の術式には、本試験で用いられた胃バイパス術(Roux-en-Y gastric bypass surgery)、スリーブ状胃切除術(sleeve gastrectomy)が代表的であるが、わが国で保険適用となっているのは後者のみであり、主としてこちらの術式が用いられている。これまでの報告で、腸管の連続性intestinal continuityを解除する胃バイパス術が他の術式に比べて糖代謝異常改善効果が高いことが示唆されていたが、統計解析上交絡因子が十分に調整されていないとの批判があり疑問が持たれていた。本試験はその点を明らかにするため、胃バイパス術群と食事療法群との2群において、体重減少の程度(約18%)をマッチさせたうえで、前後における種々の糖代謝パラメータを詳細に比較検討した非ランダム化前向きコホート試験である。 試験に組み込まれたのは体重120kg、BMI 42kg/m2の著明な肥満合併2型糖尿病患者である。そもそもこのような患者において食事療法のみで20%近い体重減少が可能であるのか筆者には疑問であった。論文の方法には、「食事療法についての週1回の教育セッションを実施し、すべての食事はliquid shakes and prepackaged entreesで試験期間中提供された」と記載されていた。これでは摂取カロリーが不明であるが、Supplementを見ると、提供されたのは毎食OPTIFAST HP Shake Mix(160kcal)およびprepackaged entrees (200kcal)であり、1日1,080kcalであった。食事療法群が目標体重を達成したのは平均23週後であった。 主要評価項目は肝インスリン感受性の変化とされた。体重減少の前後で、オクトレオチド併用高インスリン正常血糖クランプ法を用いた詳細な肝、骨格筋でのインスリン感受性評価ならびに膵β細胞機能が評価された。結果は、体重減少量をマッチさせた両群において、評価したすべての項目に有意差を認めなかった。胃バイパス術における、体重減少とは独立した糖代謝改善メカニズムとして、これまで血漿分枝鎖アミノ酸濃度の減少、血中胆汁酸の上昇、腸内細菌叢の変化が提唱されている。本試験においてもこれらの3項目はすべて既報と同様の変化を示したが、両群での糖代謝改善の程度に差は認めなかった。以上から著者らは、胃バイパス術による糖代謝改善効果はほとんどすべて体重減少によるものであると結論している。 筆者の外来でもbariatric surgeryを受けた患者さんが増えてきている。ほとんどは著明な体重減少と2型糖尿病の改善を認めており、その威力を実感している。しかしこれまでにも指摘されていることであるが、手術を受けるまでには厳格な食事療法および心理的サポートが必須であり、手術にたどり着けない患者さんも少なくない。本試験で示された、BMI 42kg/m2の患者さんでも、摂取カロリーを制限することで体重が20%近く減量可能であった結果を肝に銘じておきたい。

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