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第139回 情報過多でも希少疾病の患者が孤立する理由

私のような仕事をしている者のもとにはさまざまな企業・組織からプレスリリースや記者会見などの案内が届く。一昔前はこうしたリリースなどはメディア各社が所属する記者クラブに一括して届き、それを基に各社の記者が会見などに出席することが一般的な流れだった。このため以前の本連載で私のようなフリーは、この点でかなり不利であると書いた。それでも世の連絡手段が電話中心からインターネットを介したメール中心になったことでかなり改善はしている。そのためほぼ毎日のように、どこからかはメールでリリースが届く。そうした中、医療関係のニュースリリースで最近一番増えているのは、製薬企業が主催する疾患啓発のプレス向けセミナーである。もちろん主催する製薬企業側は啓発対象疾患の治療薬を有し、セミナーの中心は対象疾患のキーオピニオンリーダー(KOL)とされる医師の講演である。ただし、一昔前と比べ、実際のセミナー内容には変化が認められる。まず、2018年に厚生労働省が策定した「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」の影響で、セミナー内で直接的に主催製薬企業の製品名が出てくることはかなり少なくなった。中にはKOLの医師が治療の実際について解説する際も、主催企業の製品も含め一般名すら言及されることなく、「A薬」「B薬」などと伏字にされていることもある。また、かつてはこうしたセミナーが取り扱う疾患は高血圧症や糖尿病などいわゆるコモンディジーズが多かったが、現在は製薬企業の新薬開発トレンドを反映し、がん、神経疾患、希少疾患などのケースが多い。とくに国内での患者数が数百人という希少疾患のプレスセミナーは激増と言ってもいい。しかも、この手のケースでは専門医に加え、実際の患者さんがセミナーに登壇することもある。正直、私のように医療をテーマとして取材する記者も数多くの希少疾患すべてに関して詳細な知識があるわけでもなく、こうした機会にはなるべく出席しようと思って、足しげく通っている。先日も製薬企業が主催したある希少疾患のセミナーに出席した。その希少疾患とは「短腸症候群」である。短腸症候群とは先天的あるいは後天的な事情で小腸が通常より短くなっている状態のこと。具体的な原因には小腸軸捻転症や壊死性腸炎、クローン病などで小腸を切除したなどが挙げられる。私もこの主催企業の開発品一覧でこの疾患名を見たことはあったが、具体的にどのようなものであるかはほとんど知識がなかった。KOL医師の説明によると「実は明確な学術的定義はない」という点がまず驚きだった。ただ、海外などでは小腸の75%以上を切除していることなどを要件とし、日本国内では障害者手帳交付基準の小腸障害として、小腸の長さが成人で1.5m未満、小児で75cm未満という基準もあるという。小腸が短いため、食事による生命維持や成長に不可欠な栄養吸収が不十分になり、頻回な下痢、脱水、体重減少などに悩まされる。経腸栄養剤や中心静脈栄養で不足分の栄養を補うことが治療の中心となる。外科的な腸管延長手術や一部の内科的な治療があるものの、現時点では限界がある。再生医療も検討され始めたばかりだ。そして静脈管理が長期化すると腸管不全関連肝障害やカテーテル関連血流感染症などで命を落とすこともある。セミナーでは患者会「一般社団法人 短腸症候群の会」の代表理事である高橋 正志氏が発言した。高橋氏は中学1年生以降に絞扼性イレウスを繰り返して4回目の入院で小腸壊死が発覚し、小腸切除手術を受け、短腸症候群となった。現在は経腸栄養療法や下痢、低マグネシウム血症の対症療法を受け続けている。就労を目指したものの、非正規で週1~2回のアルバイトをして生活を続けているという。2010年からブログを通じて短腸症候群の情報発信や情報収集を始め、2014年に現在の患者会を立ち上げた。患者会立ち上げのきっかけについて高橋氏は次のように語った。「とにかく情報がなかったというのが一番の理由。自身が住んでいたのは半ば医療過疎のような地域で医師も短腸症候群という名前しか知らなかった状態。これからどうなっていくのか、どんな治療をすれば良くなっていくのか全然わからず、とにかく情報が欲しかった。今から30年前のことでインターネットもそれほど発達しておらず、調べる方法もなかった。そうした中で自分なりに調べてきたが、その後体調が悪化し、学業もあきらめざるを得ず、社会参加のきっかけとも考えてブログを開始した」高橋氏が語ったことは希少疾患では現在でよくありがちなことだろう。もっとも近年はインターネットの発展とともに希少疾患の情報も入手しやすくはなっている。実は今回のセミナーに当たって、予習的に私はGoogle検索をかけていた。そこで1ページ目に出てきた検索結果は、上から順に製薬会社A社(今回のセミナーの主催会社)の一般生活者・患者向け疾患啓発ホームページ、MSD(旧メルク)マニュアル、A社の短腸症候群治療薬ホームページ、栄養療法食品会社B社ホームページ、国立研究開発法人 国立成育医療研究センター・小児慢性特定疾病情報センターホームページ、A社の医療従事者向けホームページである。希少疾患の情報が得やすくなったとは言われているが、この検索結果に「これしかないの?」とやや驚いた。私が過去に検索を試みた希少疾患の中でも極めつけに情報が少ない印象だったからだ。より細かいことを言えば、検索結果1ページ目でほぼ中立的と言えるのはMSDマニュアルと小児慢性特定疾病情報センターのみである。もっとも私はA社やB社のページが偏っているというつもりもない。たとえば、筆頭に出たA社の患者向けホームページは図や平易な表現を使用し、検索結果一覧に出てきたホームページの中では最も患者が読みやすいと言っても過言ではない。だが、ここでの問題は逆にA社やB社のように短腸症候群の患者向けの製品を有する企業がない希少疾患の場合、患者が自分の疾患について知る手段はさらに限定されるということ。そして中立的と言える2つのホームページは専門用語が数多く登場し、お世辞にも患者にわかりやすいとは言えない。結局、治療手段が少なければ少ないほど、情報面からも患者は追い込まれてしまうことになる。高橋氏は患者会を結成した結果、「ほかの患者もかなり孤立しているというか、周りに同じ患者がいないということでかなり悩み、苦労していることがわかった」とも話した。私はセミナーの質疑応答の際に高橋氏に短腸症候群になった当初(90年代前半)はどのようにして情報収集していたのかを尋ねてみた。すると次のような答えが返ってきた。「担当の先生があまり詳しくなかったので、できたこととしては図書館で資料検索して、(自分が在住する)県内の図書館同士の連携貸し出しで、少しでも専門書と思われるものを取り寄せて読んでみるということをしていた。中には『この本なら大丈夫かな』と思って取り寄せたら、先生の単なるエッセーだったということもあった」一方、現在はどうか?「今はインターネットで先生方が利用するような情報を入手できるようになったので、語学の問題が何とかなれば海外の論文まで見ることができるようになったので、その辺はかつてとはまるっきり違う。ただし、インターネットの情報は玉石混交が甚だしいので、その辺を見極める目をきちんと養っておかないと簡単に迷ってしまうのではないかと思う」この変化をどう捉えるかどうかは人によって異なるかもしれない。私個人は少なくとも日常生活ですらさまざまな困難を抱える患者が語学などの努力をしなければ、自分の疾患やその治療の最新情報を得られないというのは必ずしも喜ばしいとばかりは言えないのではないかと考えてしまう。今回のセミナーでは高橋氏を含む3人の短腸症候群の患者さんが登場したが、一様にメディアが短腸症候群の問題を報じることへの期待が高いこともひしひしと感じた。これは今回の短腸症候群のように治療選択肢が限られ、そうした治療を欠かさず続けてもなお、一般人にとってごく当たり前の日常と思われがちな就学・就労、結婚などが思うに任せないことが多い疾患ではなおのことだ。彼らがこうした日常生活を送るためには社会の受容が大きな意味を持つため、情報拡散力のあるメディアへの期待が高いことはよくわかる。しかし、メディア界に身を置くものにとっては、インターネット中心に移行しつつある現在特有の限界も感じている。紙メディア中心の時代と違って今はページビュー(PV)という形で読者の反応がリアルタイムでわかり、それゆえにメディアはPVが取れる、今風で言うバズるテーマに偏りがちな傾向は年々強くなっている。ネットメディアではまさにこのPVが編集者や執筆者の評価に直結してしまう。その結果、かつて以上に希少疾患のように患者数、周囲で身近に感じる関係者が少ないテーマは置き去りにされがちな危険性がある。実際、医療をテーマに一般向けにも執筆する自分が編集者と企画相談をする際、企画採用のカギを握るのは患者数であることも少なくないからだ。その意味で一般にあまり馴染みのない疾患を少しでも取り上げる機会は、実を言うとそうした疾患に著名人が罹患した時やその結果として亡くなった時である。実例を挙げれば、先日亡くなったプロレスラー・アントニオ猪木氏の死因は、国内患者数が2,000人に満たない希少疾患の全身性アミロイドーシスだったが、その際は各メディアがこの疾患のことを取り上げた。もっともそうしたメディアの“手法”には「死の商人」的な批判も存在する。あれやこれやと考えれば考えるほどメディア側も打つ手が限られてくる。かと言って、公的情報の充実を求める声を上げるだけではかなり無責任になる。理想を言えば、ある意味採算を度外視できる公的サイトと、われわれ一般向けの伝え手とがコラボレーションできれば最も望ましい姿なのだが、公的機関と民間が手を携えるというのは思っているより高い壁がある。その意味では希少疾患の患者がメディアに期待したいのと同じくらい、この領域の一般向け報道ではメディア側も誰かの助けが欲しいと思う瞬間は少なくない。希少疾患の報道という重い宿題をどう解決していくべきなのか?実はここ最近、ひたすら悩み続けている。

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生物学的製剤未使用の中等症から重症の活動性を有するクローン病患者における寛解導入および維持療法としてのウステキヌマブとアダリムマブの第III相比較試験(解説:上村直実氏)

 近年、クローン病の治療において5-アミノサリチル酸塩(5-ASA)、免疫調整薬、ステロイドなどを用いた従来の治療法が無効な場合に、抗TNFα阻害薬(インフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリムマブなど)、インターロイキン(IL)阻害薬(ウステキヌマブ)、抗インテグリン抗体薬(ベドリズマブ)といった生物学的薬剤が使用されることが多くなっている。新たに開発された生物学的製剤の有用性と安全性を検証するための臨床試験は薬事承認を目的としたものが多く、既存の治療において有効性に乏しい患者を対象としたプラセボ対照の無作為化比較試験(RCT)が常套手段となっており、実際のクローン病診療現場で治療方針に迷うことのある生物学的製剤同士を直接比較した検討は見当たらなかった。 今回、18ヵ国121施設が参加した国際共同研究として、過去に生物学的製剤が使用されていない中等症〜重症活動期のクローン病患者を対象として、世界市場の売上高が第1位のアダリムマブ(ヒュミラ)と第4位のウステキヌマブ(ステラーラ)の単剤療法の有効性を直接比較した二重盲検RCT(SEAVUE試験)の結果が、2022年6月のLancet誌に報告された。結果として、本試験の主要評価項目である試験開始から52週時の臨床的寛解率(クローン病活動指数:CDAIの低下)および、種々の副次的評価項目(内視鏡的有効性、入院率の低下率、ステロイドフリー率、腸管切除の減少率などクローン病の長期的な予後の改善に強く関連する項目)について、アダリムマブ群とウステキヌマブ群の両群間に有意な差は認められなかった。安全性に関しても既知のプロファイルと変化なく、両群間での差はなかった。 プラセボ抜きの実薬2剤を用いた直接的な比較試験には厳密にいえば積極的な治療を受けているという心理的効果を患者に与えるバイアスが生ずると思われるが、一般診療で頻用されている作用機序の異なる2つの薬剤、それも単剤療法同士の直接対決の結果は、従来治療法が奏効しない場合の第一選択生物学的製剤として使用する薬剤を検証する参考になるものとして有用である。診療の現場では個々の患者に対してどの薬剤が最適なのかに迷う機会が少なくなく、本試験のような高い有用性を有する薬剤同士の比較試験結果は診療現場にとって重要である。今後、日本でも同様の精度の高いガチンコ勝負と共に、患者背景の違いにより薬剤の選択方法を示唆するような臨床研究が期待される。

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中等症~重症クローン病、ウステキヌマブvs.アダリムマブ/Lancet

 生物学的製剤未使用の中等症~重症活動期クローン病患者に対する導入療法および維持療法として、ウステキヌマブ単剤療法とアダリムマブ単剤療法はいずれも高い有効性を示し、主要評価項目に両群で有意差はなかった。米国・マウントサイナイ医科大学のBruce E. Sands氏らが、18ヵ国121施設で実施した無作為化二重盲検並行群間比較第IIIb相試験「SEAVUE試験」の結果を報告した。ヒト型抗ヒトIL-12/23p40モノクローナル抗体ウステキヌマブと、ヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体アダリムマブは、いずれもクローン病の治療薬として承認されているが、どちらもプラセボ対照比較試験の結果に基づいており、患者への説明や医師の治療選択にとっては直接比較する実薬対照試験が必要であった。Lancet誌オンライン版2022年6月11日号掲載の報告。386例をウステキヌマブ群とアダリムマブ群に無作為化 研究グループは、生物学的製剤による治療歴のない18歳以上の中等症~重症活動期クローン病患者を、ウステキヌマブ群またはアダリムマブ群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。適格基準は、クローン病活動指数(CDAI)スコアが220~450点、生物学的製剤未使用で従来の治療が無効または不耐容(あるいは副腎皮質ステロイド依存性)、ベースラインの内視鏡評価で1つ以上の潰瘍を有する患者とした。 ウステキヌマブ群は、約6mg/kgを初日(Day 0)に静脈内投与し、その後56週まで8週に1回90mgを皮下投与した。また、アダリムマブ群は、初日に160mg、2週目に80mg、その後56週まで2週に1回40mgを皮下投与した。いずれも単剤投与とし、投与量は変更しないこととした。 主要評価項目は、無作為割り付けされた全患者(intention-to-treat集団)における52週時の臨床的寛解率(CDAIスコア<150を達成した患者の割合)であった。 2018年6月28日~2019年12月12日の間に、633例が適格性を評価され、386例がウステキヌマブ群(191例)またはアダリムマブ群(195例)に割り付けられた。52週時の臨床的寛解率はウステキヌマブ群65%、アダリムマブ群61% ウステキヌマブ群では191例中29例(15%)、アダリムマブ群では195例中46例(24%)が52週時までに治療を中止した。 52週時の臨床的寛解率は、ウステキヌマブ群65%(124/191例)、アダリムマブ群61%(119/195例)であり、両群間に有意差は認められなかった(群間差4%、95%信頼区間[CI]:-6~14、p=0.42)。 安全性については、両群ともこれまでの報告と一致していた。重篤な感染症は、ウステキヌマブ群で191例中4例(2%)、アダリムマブ群で195例中5例(3%)が報告された。試験開始後52週時までの死亡例はなかった。

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中等症以上のクローン病に対する維持療法におけるリサンキズマブの有用性:第III相試験の結果 (解説:上村直実氏)

 クローン病の治療においては、病気の活動性をコントロールして患者の寛解状態をできるだけ長く保持し、日常生活のQOLに影響する狭窄や瘻孔形成などの合併症の治療や予防が非常に重要である。最近、活動性とくに中等症から重症のクローン病に対しては、生物学的製剤により寛解導入したのち、引き続いて同じ薬剤で寛解維持に対する有用性を検証する臨床試験が多い。 今回、アジアも含めた44ヵ国で行われた国際共同試験でIL-23 p19阻害薬であるリサンキズマブの静脈内投与によりクローン病の寛解導入に有用性を示す結果を得たADVANCE試験とMOTIVATE試験において臨床効果が認められた患者を対象としてリサンキズマブ皮下投与の52週間維持療法の有効性と安全性を検証した第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験(FORTIFY試験)の結果が2022年5月のLancet誌に掲載された。 本研究におけるクローン病の病勢を評価する方法は先行したADVANCE試験と同じく厳密なものである。52週目の内視鏡的改善度を主要評価項目として、従来から使用されているクローン病活動指数(CDAI)と便の回数や腹痛の回数など患者の訴えに加えて炎症性バイオマーカーである高感度CRPと便中カルプロテクチンを用いている。厳密な内視鏡的な評価によって寛解維持における有用性が確認されたことは、クローン病治療で重要な寛解維持の期間をできるだけ長く保ち、生活のQOLを高めることにつながる可能性を示唆する点で重要である。今後、クローン病や潰瘍性大腸炎に対する寛解維持療法の有用性を検証する場合には臨床的寛解に加えて内視鏡検査と生検による組織学的検査および炎症性バイオマーカーが必須となると思われる。 安全性に関して炎症性腸疾患や慢性関節リウマチなど自己免疫性疾患に対する新規薬剤のリスクとして結核やB型肝炎ウイルスの再活性化が周知されつつあるが、同類の薬剤として先行してクローン病の治療に用いられているウステキヌマブの臨床治験の経過中に前立腺などのがんが認められたとの報告もあり、生物学的製剤の長期使用に関しては感染症および悪性疾患の発生には十分に注意する必要がある。

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中等症から重症のクローン病の寛解導入に対するリサンキズマブの有用性:第III相試験の結果(解説:上村直実氏)

 クローン病や潰瘍性大腸炎など炎症性腸疾患の治療は生物学的製剤の出現により大きく変化している。しかし、中等度以上の活動性を有するクローン病症例の中には、生物学的製剤の効果が得られない患者、時間の経過と共に効果が消失する患者、あるいは副作用により治療が中断される患者が少なくなく、いまだに新たな作用機序を有する治療薬の追加が求められているのが現状である。 わが国で乾癬などに対して2019年から承認され使用されている、IL-23p19阻害薬のリサンキズマブのクローン病寛解導入に対する有用性を明らかにした第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験(ADVANCE試験とMOTIVATE試験)の結果が、2022年5月のLancet誌に掲載された。この2つの試験は適格条件の違いがあるものの、従来型の治療ないしは生物学的製剤の効果が不十分であった中等度以上の活動性クローン病患者を対象としたRCTで、12週後のリサンキズマブ群の臨床的寛解率と内視鏡的奏効率がプラセボ群に比して有意に高率であり、一方、有害事象の発生率はプラセボと同等であったと報告されている。この結果は、既存の生物学的製剤を用いても寛解導入に難渋している患者に対する大きな福音と思われる。 最近、クローン病治療に関する臨床研究におけるエンドポイントは、従来のクローン病活動指数(CDAI)に加えて内視鏡的効果を主要評価とするものが主流となりつつある。すなわち、クローン病治療のパラダイムシフトを反映し、再発リスクの低減、入院率の低下、ステロイドフリーの増加、腸管切除の減少など長期的な予後の改善に関連する内視鏡的治癒を治療目標とする試験が増えている。本研究はCDAI、便の回数、腹痛スコア、および全患者の中央判定による内視鏡的評価を網羅しており、今後、評価方法のモデルとなるかもしれない。 一方、リサンキズマブの臨床的寛解率は40%であり、今後、反応性の予測因子に関する分析が重要である。IL-12とIL-23を標的とするデュアル阻害剤であるウステキヌマブと異なり、リサンキズマブはIL-23p19に対する選択的なモノクローナル抗体である。リサンキズマブの有効性と安全性を検証するために、異なる作用機序を有する他の生物学的製剤と比較する試験が必要であり、現在進行中であるリサンキズマブとウステキヌマブの効果を検討する試験(SEQUENCE、NCT04524611)の結果が注目される。

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リサンキズマブ、クローン病の寛解維持療法に有効/Lancet

 インターロイキン(IL)-23のp19サブユニットを標的とするヒト化モノクローナル抗体リサンキズマブの静脈内投与による寛解導入療法で臨床的奏効が得られた中等症~重症の活動期クローン病患者の寛解維持療法において、リサンキズマブ皮下投与はプラセボ(休薬)と比較して、52週の時点での臨床的寛解率および内視鏡的改善率が高く、忍容性も良好で、有害事象の頻度には差がないことが、ベルギー・ルーヴェン大学病院のMarc Ferrante氏らが実施した「FORTIFY substudy 1(SS1)試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2022年5月28日号に掲載された。世界44ヵ国の無作為化プラセボ対照第III相試験 FORTIFY SS1は、活動期クローン病の寛解維持療法における、リサンキズマブ皮下投与の有効性と安全性の評価を目的とする二重盲検無作為化プラセボ(休薬)対照第III相試験であり、2018年4月~2020年4月の期間に、日本を含む44ヵ国273施設で参加者の登録が行われた(AbbVieの助成を受けた)。 対象は、リサンキズマブ静脈内投与による2つの寛解導入試験(ADVANCE試験、MOTIVATE試験)の参加者のうち、12週時に臨床的奏効が得られた患者とされた。2つの寛解導入試験の参加者は、年齢16~80歳で、中等症~重症の活動期クローン病クローン病活動指数[CDAI]:220~450、平均1日排便回数4回以上または腹痛スコア2以上、簡易版クローン病内視鏡スコア[SES-CD]6以上[孤立性回腸病変の場合は4以上])の患者であった。 被験者は、寛解維持療法として、リサンキズマブ180mg(90mg製剤×2回とプラセボ×2回)、同360mg(90mg製剤×4回)、導入療法のリサンキズマブを休薬してプラセボ(休薬群、プラセボ×4回)をそれぞれ皮下投与する群に、1対1対1の割合で無作為に割り付けられ、8週ごと(0、8、16、24、32、40、48週目)の投与が行われた。患者、担当医、試験関係者には、治療割り付け情報が知らされなかった。 主要複合エンドポイントは、52週の維持療法期間に少なくとも1回の投与を受けた患者における臨床的寛解(米国のプロトコルではCDAIが150未満、米国以外のプロトコルでは水様便または超軟便の平均1日排便回数が2.8回以下で、ベースラインより悪化せず、1日の平均腹痛スコアが1以下で、導入療法のベースラインより悪化しない場合)および内視鏡的改善(SES-CDがベースラインに比べ50%超減少[孤立性回腸病変でベースラインのSES-CDが4の患者ではベースラインから2以上減少]した場合)とされた。幅広い患者の新たな治療選択肢となる可能性 2つの寛解導入試験の参加者のうち542例がFORTIFY SS1試験に登録され、有効性の主解析には462例(intention-to-treat集団)が含まれた。リサンキズマブ180mg群が157例(平均[SD]年齢39.1[14.8]歳、女性57%)、同360mg群が141例(37.0[12.8]歳、43%)、休薬群は164例(38.0[13.0]歳、46%)だった。 CDAIに基づく臨床的寛解率(米国)は、リサンキズマブ360mg群が52%(74/141例)と、休薬群の41%(67/164例)に比べ有意に高かった(補正後群間差:15%、95%信頼区間[CI]:5~24、p=0.0054)。排便回数と腹痛スコアに基づく臨床的寛解(米国以外)の割合は、それぞれ52%(73/141例)および40%(65/164例)であり、リサンキズマブ360mg群で有意に優れた(補正後群間差:15%、95%CI:5~25、p=0.0037)。また、内視鏡的改善(米国および米国以外)の割合は、それぞれ47%(66/141例)および22%(36/164例)であり、リサンキズマブ360mg群で有意に良好だった(補正後群間差:28%、95%CI:19~37、p<0.0001)。 一方、リサンキズマブ180mg群と休薬群の比較では、排便回数と腹痛スコアに基づく臨床的寛解率(p=0.124)には差がなかったが、CDAIに基づく臨床的寛解率(55%[87/157例]vs.41%[67/164例]、補正後群間差:15%、95%CI:5~24、p=0.0031)および内視鏡的改善率(47%[74/157例]vs.22%[36/164例]、26%、17~35、p<0.0001)は、リサンキズマブ180mg群で有意に優れた。 より厳格な内視鏡的エンドポイントや複合エンドポイント、炎症性生物マーカーの結果には、リサンキズマブの用量反応関係が認められた。また、2つの用量はいずれも全般に良好な忍容性を示した。 有害事象の頻度は3つの群で同程度(リサンキズマブ180mg群72%、同360mg群72%、休薬群73%)で、重篤な有害事象(12%、13%、13%)や試験薬中止の原因となった有害事象(2%、3%、3%)の発現率もほぼ同じだった。3群で最も頻度の高い有害事象は、クローン病の悪化(11%、12%、17%)、鼻咽頭炎(9%、9%、14%)、関節痛(8%、9%、11%)、頭痛(5%、6%、6%)であった。重篤な感染症は、それぞれ3%、4%、4%で認められた。 著者は、「リサンキズマブ皮下投与による寛解維持療法は、疾患の経過に変化をもたらす可能性のあるエンドポイントを達成し、他の先進的な治療で不耐または効果が不十分であった患者でも有効性が観察されており、今後、幅広い患者にとって新たな治療選択肢となるだろう」としている。

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中等~重症のクローン病、リサンキズマブ導入療法が有効/Lancet

 中等症~重症の活動期クローン病患者において、IL-23 p19阻害薬リサンキズマブは導入療法として有効であり忍容性も良好であることが示された。オランダ・アムステルダム大学医療センターのGreet D'Haens氏らが、第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験「ADVANCE試験」および「MOTIVATE試験」の結果を報告した。Lancet誌2022年5月28日号掲載の報告。1,549例を対象に、リサンキズマブ2用量の有効性と安全性をプラセボと比較 両試験の対象は16~80歳の中等症から重症の活動期クローン病患者で、ADVANCE試験では既存治療または生物学的製剤で効果不十分または不耐容の患者、MOTIVATE試験では生物学的製剤で効果不十分または不耐容の患者を適格とした。適格患者をリサンキズマブ600mg群、1,200mg群、またはプラセボ群(いずれも0、4および8週目に単回静脈内投与)に、ADVANCE試験では2対2対1の割合で、MOTIVATE試験では1対1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目は、12週時の臨床的寛解および内視鏡的改善であった。臨床的寛解は、米国内ではクローン病活動性指数(CDAI)を用いて同スコアが150未満、米国外では患者報告アウトカム(PRO)を用いて平均排便回数が2.8回/日以下、1日の平均腹痛スコアが1以下と定義した。 有効性の解析はITT集団(12週間の導入期間に少なくとも1回治験薬の投与を受けたすべての患者)、安全性の解析は少なくとも1回治験薬の投与を受けたすべての患者を対象とした。 ADVANCE試験では2017年5月10日~2020年8月24日に計931例が無作為化され(リサンキズマブ600mg群373例、1,200mg群372例、プラセボ群186例)、ITT集団は850例(それぞれ336例、339例、175例)であった。MOTIVATE試験では2017年12月18日~2020年9月9日に計618例が無作為化され(206例、205例、207例)、ITT集団は569例(191例、191例、187例)であった。臨床的寛解率はプラセボ19~25% vs.リサンキズマブ35~45% ADVANCE試験では、CDAI臨床的寛解率はプラセボ群25%に対して、リサンキズマブ600mg群45%(補正後群間差:21%、95%信頼区間[CI]:12~29)、1,200mg群42%(補正後群間差:17%、95%CI:8~25)であり、排便回数・腹痛スコアによる臨床的寛解率はそれぞれ22%、43%(補正後群間差:22%、95%CI:14~30)、41%(補正後群間差:19%、95%CI:11~27)であった。また、内視鏡的寛解率はそれぞれ12%、40%(補正後群間差:28%、95%CI:21~35)、32%(補正後群間差:20%、95%CI:14~27)であった。 MOTIVATE試験では、CDAI臨床的寛解率はプラセボ群20%に対して、リサンキズマブ600mg群42%(補正後群間差:22%、95%CI:13~31)、1,200mg群40%(補正後群間差:21%、95%CI:12~29)、排便回数・腹痛スコアによる臨床的寛解率はそれぞれ19%、35%(補正後群間差:15%、95%CI:6~24)、40%(補正後群間差:20%、95%CI:12~29)、内視鏡的寛解率はそれぞれ11%、29%(補正後群間差:18%、95%CI:10~25)、34%(補正後群間差:23%、95%CI:15~31)であった。 治療下で発生した有害事象の発現率は、両試験のすべての治療群で類似していた。導入療法期に、死亡がADVANCE試験のプラセボ群で2例、MOTIVATE試験のリサンキズマブ1,200mg群で1例報告されたが、リサンキズマブとの因果関係は否定された。

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抗TNFα抗体製剤治療中のIBD患者、2回目の新型コロナワクチン接種後の免疫応答が低下

 抗TNFα抗体製剤は、炎症性腸疾患(IBD)などの免疫介在性炎症性疾患の治療に頻繁に用いられる生物学的製剤の1つだ。これまで抗TNFα抗体製剤は、肺炎球菌やインフルエンザワクチン接種後の免疫応答を減弱させ、重篤な呼吸器感染症リスクを増加させることが知られていた。しかし、SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)ワクチンに対するデータは不足していた。英国・Royal Devon and Exeter NHS Foundation TrustのSimeng Lin氏らは、インフリキシマブ(抗TNFα抗体製剤)またはベドリズマブ(腸管選択的抗α4β7インテグリン抗体製剤)で治療中のIBD患者において、2回目の新型コロナウイルスワクチン接種後の抗体濃度やブレークスルー感染の頻度を比較した。Nature Communications誌2022年3月16日号の報告。 研究グループは、2020年9月22日~12月23日の間に、英国の92医療機関に来院したIBD患者7,226例を連続して登録した。そのうち新型コロナウイルス感染歴のないインフリキシマブ治療中の2,279例とベドリズマブ治療中の1,031例を対象とした。被験者はファイザー製BNT162b2ワクチン、アストラゼネカ製ChAdOx1 nCoV-19ワクチンのいずれかを接種し、2回目のワクチン接種から14~70日後に抗体が測定された。 主な結果は以下のとおり。・2回目のBNT162b2ワクチン接種後、インフリキシマブ治療群はベドリズマブ治療群と比べて抗SARS-CoV-2スパイク(S)受容体結合ドメイン(RBD)抗体の幾何平均濃度(SD)が低く、半減期が短かった(566.7 U/mL[6.2]vs.4,555.3 U/mL[5.4]、p<0.0001、26.8日[95%CI:26.2~27.5]vs.47.6日[45.5~49.8]、p<0.0001)。・ChAdOx1 CoV-19ワクチンでも同様に、インフリキシマブ治療群はベドリズマブ治療群と比べて抗S RBD抗体の幾何平均濃度が低く、半減期が短かった(184.7 U/mL[5.0]vs.784.0 U/mL[3.5]、p<0.0001、35.9日[34.9~36.8]vs.58.0日[55.0~61.3]、p<0.0001)。・新型コロナウイルスのブレークスルー感染は、インフリキシマブ治療群はベドリズマブ治療群と比べて頻度が高かった(5.8%[201/3,441]vs.3.9%[66/1,682]、p=0.0039)。・ワクチン接種前に新型コロナウイルス感染歴がある患者では、治療薬にかかわらず、より高く持続した抗体レベルが認められた。 著者らは「抗TNFα抗体製剤で治療中の、リスクを有する患者においては、個々に適したワクチン接種スケジュールの検討が必要な可能性がある」と述べた。

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重症COVID-19入院患者への新たな治療薬検証する臨床試験開始へ/WHO

 WHOは、8月11日付で発表したプレスリリースにおいて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で入院した重症患者に対し、マラリアやがん治療などに使われている既存薬3種の治療効果を検証する臨床試験(Solidarity PLUS trial)を開始することを明らかにした。臨床試験は52ヵ国600超の病院から数千人規模の入院患者を登録し、実施される見通し。 WHOは、既存候補薬のCOVID-19入院患者への有効性を検証するため、オープンラベルのランダム化比較試験(Solidarity trial)を2020年3月から実施。単一のプロトコルを使用して同時に複数の治療法を評価するもので、試験の過程を通じて効果のない薬剤については評価を打ち切る一方、新たな候補薬を逐次追加できるデザインだ。これまでに、レムデシビル、ヒドロキシクロロキン、ロピナビル、インターフェロンβ-1aの4剤について評価が行われ、いずれも有効性が確認されず、すでに試験が打ち切られている。 今回、評価の対象となる1つ目の候補薬は、抗マラリア薬のアルテスネートで、本試験では重症マラリア治療に推奨される標準的な用量で7日間静脈内投与される。2つ目の候補薬は、慢性骨髄性白血病などのがん治療に使用されるイマチニブで、本試験では1日1回、14日間経口投与される。3つ目の候補薬は、クローン病など免疫疾患の治療に使用されるインフリキシマブで、本試験では、単回で静脈内投与される。これらはいずれも独立した専門家パネルによって選択された候補薬だという。 COVID-19を巡っては、感染力の強さと急激な症状悪化が見られるデルタ株のまん延により、人口の多くでワクチン接種が進んだ国においても感染制御に苦慮している。WHOのテドロス事務局長は、「COVID-19患者に対する、より効果的でアクセス可能な治療法を見つけることは依然として重要なニーズだ」とコメントしている。

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超加工食品の高摂取で炎症性腸疾患のリスク大/BMJ

 超加工食品の摂取量増加は、炎症性腸疾患(IBD)のリスク増加と関連していることが、前向きコホート研究「Prospective Urban Rural Epidemiology(PURE)」で明らかとなった。カナダ・マックマスター大学のNeeraj Narula氏らが報告した。IBDは先進国で多くみられ、食事などの環境因子が影響していると考えられている。しかし、添加物や保存料を含む超加工食品の摂取とIBDとの関連性についてのデータは限られていた。著者は、「今後はさらに、超加工食品中の寄与因子を特定するための研究が必要である」とまとめている。BMJ誌2021年7月14日号掲載の報告。35歳以上の約11万6千例で超加工食品摂取とIBD発症の関連を評価 研究グループは、PURE研究のうち欧州・北米、南米、アフリカ、中東、東アジア、東南アジアおよび中国の7地域における、低・中・高所得国を含む21ヵ国のデータを用いて評価した。 解析対象は、2003年1日1日~2016年12月31日に登録され、ベースラインの食物摂取量調査(各国で検証済みの食物摂取頻度調査票を使用)ならびに、3年ごとの前向き追跡調査を少なくとも1サイクル完遂している、35~70歳の成人11万6,087例である。 主要評価項目は、クローン病や潰瘍性大腸炎を含むIBDの発症とした。Cox比例ハザードモデルを用い、超加工食品とIBDリスクとの関連についてハザード比(HR)およびその95%信頼区間(CI)を算出した。超加工食品の摂取量増加で、IBDリスクが約1.7~1.8倍に上昇 追跡期間中央値9.7年(四分位範囲:8.9~11.2)において、解析対象11万6,087例中467例がIBDを発症した(クローン病90例、潰瘍性大腸炎377例)。潜在的な交絡因子で補正後、超加工食品の摂取量が多いほどIBDの発症リスクが高いことが認められた(1日1サービング未満と比較した1日5サービング以上のHR:1.82[95%CI:1.22~2.72]、同1日1~4サービングのHR:1.67[95%CI:1.18~2.37]、傾向のp=0.006)。 清涼飲料水、精製甘味料入り食品、塩分の多いスナック菓子、加工肉などの超加工食品のさまざまなサブグループで、IBDのリスク上昇との関連が認められた。結果はクローン病と潰瘍性大腸炎で一貫しており、異質性は低かった。 一方、白身肉、赤身肉、乳製品、でんぷん、果物、野菜、豆類の摂取量は、IBD発症と関連していなかった。 なお、著者は、参加者の年齢が35~70歳であったためクローン病の発症例が少数であったこと、小児や若年成人でIBDを発症した患者に一般化できるかは不明であること、経時的な食事の変化は考慮されていないこと、観察研究の特性上バイアスが残存している可能性があること、などを研究の限界として挙げている。

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総合内科専門医試験オールスターレクチャー 消化器(消化管)

第1回 ピロリ菌感染症関連第2回 消化管悪性腫瘍第3回 消化管出血 腹部緊急疾患第4回 消化管機能性疾患第5回 感染症 炎症性腸疾患第6回 遺伝性疾患 好酸球性胃腸症 内分泌 総合内科専門医試験対策レクチャーの決定版登場!総合内科専門医試験の受験者が一番苦労するのは、自分の専門外の最新トピックス。そこでこのシリーズでは、CareNeTV等で評価の高い内科各領域のトップクラスの専門医11名を招聘。各科専門医の視点で“出そうなトピック”を抽出し、1講義約20分で丁寧に解説します。キャッチアップが大変な近年のガイドラインの改訂や新規薬剤をしっかりカバー。Up to date問題対策も万全です。消化器の消化管については、公立豊岡病院の宮垣亜紀先生がレクチャー。消化管は内視鏡画像の診断がポイント。豊富な症例画像を使って、頻出の内視鏡検査問題を徹底的にトレーニングします。※「アップデート2022追加収録」はCareNeTVにてご視聴ください。第1回 ピロリ菌感染症関連消化管は、内視鏡画像診断がポイント。非専門医にとっては普段見慣れない内視鏡画像ですが、試験に出題される疾患はある程度絞られているので、それを押さえれば攻略できます。第1回は、胃十二指腸潰瘍や胃がんのリスクとなるヘリコバクター・ピロリ菌。ピロリ菌に起因する疾患は、胃がんや潰瘍だけではありません。ピロリ菌感染関連疾患は、内視鏡で胃炎を証明し、ピロリ菌を証明するための各種検査も覚えておくことが重要です。第2回 消化管悪性腫瘍消化管悪性腫瘍には、胃がん、大腸がん、食道がん、消化管間質腫瘍GISTがありますが、共通して問われやすいのは、リスクファクター、内視鏡所見の診断、疾患に関する知識です。胃がんは内視鏡所見から深達度と組織型を診断し、内視鏡的粘膜下層剥離術の適応を判断。近年のトピックスとして、バレット食道がんの報告が増えています。粘膜下腫瘍の形態をとるGISTは、どの消化管でも起こりえます。超音波内視鏡やCTで診断します。第3回 消化管出血 腹部緊急疾患消化管出血と、試験に出題されやすい腹部緊急疾患について、身体所見、検査、治療を整理します。上部消化管出血の中でも緊急性が高いのは静脈瘤出血。静脈瘤結紮術で治療します。下部消化管出血で最もコモンな疾患は虚血性腸炎と大腸憩室出血。X線・CTで特徴的な画像所見を示すS状結腸軸捻転。腸閉塞とイレウスは概念を混同しないように注意。生の海産物を摂取した後の激烈な腹痛はアニサキス症を疑います。第4回 消化管機能性疾患機能性疾患の中でもよく出題される食道アカラシア。見た目ではっきりわかる腫瘍があるわけではないので、内視鏡検査では見つかりにくく、食道造影やマノメトリーという検査が有用です。新たな治療法として、経口内視鏡的括約筋切開術POEMが注目されています。機能性ディスペプシアと過敏性腸症候群は器質的疾患の除外が重要。胃食道逆流症にはびらん性と非びらん性があり、同じ薬剤でも効果に差があります。第5回 感染症 炎症性腸疾患多岐にわたる腸管感染症から、感染性腸炎、アメーバ性大腸炎、抗菌薬起因性腸炎について解説します。感染性腸炎は、抗菌薬が必要な状況の見極めがポイント。内視鏡的所見が特徴的なアメーバ性大腸炎。潰瘍の周囲にタコいぼ様びらんが見られます。日常臨床でもよくある潰瘍性大腸炎は、重症度に応じて薬剤か手術を選択。非連続性の全層性の肉芽腫性炎症が起きるクローン病は、狭窄を考慮しながら適した画像検査を選択します。第6回 遺伝性疾患 好酸球性胃腸症 内分泌好酸球性消化管疾患は、原因がまだ明らかになっていないアレルギー疾患です。遺伝性疾患では、大腸にポリープが多発する家族性腺腫性ポリポーシスは、放置するとがん化するため、大腸全摘が必要です。Peutz-Jeghers症候群は過誤腫性ポリープで、こちらはほとんどがん化しません。毛細血管拡張の画像所見が特徴的なオスラー病も覚えておきましょう。消化管内分泌のトピックスとして、神経内分泌腫瘍のガストリノーマについて確認します。

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その胸やけ症状、本当に胸焼け?【Dr.山中の攻める!問診3step】第2回

第2回 その胸やけ症状、本当に胸焼け?―Key Point―悪性腫瘍を疑う症状や所見(red flag sign)がないか確認機能性ディスペプシアの診断基準を満たすか検討ピロリ検査が陽性なら除菌。陰性ならプロトンポンプ阻害薬を処方する同僚医師から30代前半の女性の診察を頼まれました。食後の胃もたれと軽い嘔気が1年以上続いているようです。胃カメラでは異常がなく、ヘリコバクター・ピロリ菌感染症もありません。プロトンポンプ阻害薬(PPI)を処方しましたが、あまり効果がありません。「機能性ディスペプシア」と思われました。原因がわからないまま症状が続くことが、とても辛かったようです。2週間に一度、外来に来ていただき訴えに共感しながら傾聴するよう心がけました。この連載では、患者の訴える症状が危険性のある疾患を示唆するかどうかを一緒に考えていきます。◆今回おさえておくべき症状はコチラ!【悪性腫瘍を疑うred flag sign】予期せぬ体重減少、嚥下障害、吐気/嘔吐、黒色便、貧血、血小板増多、胃がんの家族歴、治療に反応しないディスペプシア。日本では胃がんの発生が多いので、症状がなくても1~2年に1度の胃カメラが薦められている。【STEP1】患者の症状に関する勘違いを修正しよう!患者が症状を勘違いしていること、よくありますよね。【STEP2】ディスペプシアを起こす原因を探る1)逆流性食道炎消化性潰瘍ヘリコバクター・ピロリ菌感染症胃がん胃不全麻痺セリアック病クローン病膵炎膵がん胆石心筋梗塞糖尿病副腎不全など原因がわからないものを機能性ディスペプシア(FD:functional dyspepsia)と呼ぶ薬剤内服歴を確認することが重要。とくにNSAIDs、アスピリン、鉄剤、抗菌薬、レボドパ、ピル、ビスフォスフォネート製剤はよくディスペプシアを起こす胃カメラで見つかる疾患の頻度1)>70%は異常なし → 機能性ディスペプシア<10%は消化性潰瘍<1%が上部消化管悪性腫瘍【機能性ディスペプシア の診断基準 RomeIV】下記のいずれかの症状が6ヵ月以上前からあり、最近3ヵ月持続しているつらいと感じる食後のもたれ感つらいと感じる摂食早期の飽満感つらいと感じる心窩部痛つらいと感じる心窩部灼熱感かつ、症状を説明しうる器質的疾患はない。食後愁訴症候群(PDS:postprandial distress syndrome)と心窩部痛症候群 (EPS:epigastric pain syndrome)に分類される機能性ディスペプシアと過敏性腸症候群はよく合併する2)【STEP3】治療とその注意点をおさえる2)red flag signがなければ、胃カメラは行わずピロリ菌検査を行う。陽性だったら除菌する。陰性だったらPPI(プロトンポンプ阻害薬)を4~8週間投与する。無効なら少量の三環系抗うつ薬を考慮する日本人の60歳以上では、50%以上はヘリコバクター・ピロリに感染しているピロリ菌感染症は消化性潰瘍、胃がん、胃リンパ腫と関係がある。PPIの機能性ディスペプシアに対するNNT(number needed to treat、治療必要数)は133)であるPPIの副作用4)で最も多いのは下痢と頭痛。 PPIの種類を変えると下痢は良くなることがある。このほか、市中肺炎、急性の腸管感染症、Clostridium difficile感染症、急性間質性腎炎、顕微鏡的大腸炎、骨粗鬆症、ビタミンB12欠乏症を増加させるので注意。ビスフォスフォネート製剤はよくディスペプシアを起こすばかりか、食道潰瘍や胃潰瘍も起こすので要注意。もし、ビスフォスフォネート製剤を飲んでいるならば中止する禁煙やアルコールの減量を薦める消化管運動機能改善薬であるアコチアミドも臨床試験で有効性が示されている漢方では六君子湯や半夏厚朴湯が効果ありと言われている<参考文献・資料>1)Talley NL, et al. N Engl J Med.2015;373:1853-1863.2)Goldman L, et al. Goldman-Cecil Medicine. 2020;856-8573)Pinto-Sanchez MI, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2017 Nov 21;11:CD011194.4)上田剛士著. 日常診療に潜む クスリのリスク.医学書院.p93-99. 2017.日本消化器学会編.機能性消化管疾患診療ガイドライン.2014―機能性ディスペプシア(FD)

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Dr.須藤の輸液大盤解説

第1回 基礎編1 輸液を理解するための基本的生理学第2回 基礎編2 水・Naの生理学/水と塩の問題第3回 基礎編3 避けて通れないADHの話第4回 大盤解説 症例1 フロセミドが処方されていた78歳男性第5回 大盤解説 症例2 脳梗塞で自宅介護されていた72歳女性第6回 大盤解説 症例3 意識障害で救急搬送された38歳女性第7回 大盤解説 症例4 嘔気と低Na血症で紹介された78歳男性第8回 大盤解説 症例5 ストーマがあり慢性下痢の41歳男性 「Dr.須藤のやりなおし輸液塾」から12年。「輸液の名講義」と言えば須藤先生、「須藤先生」と言えば輸液の名講義、と言っても過言でないくらい、輸液講義のエキスパートであることが知られています。その須藤先生が満を持して輸液の新番組!今シリーズでは“大盤”を使って解説します。大盤解説とは将棋盤などを模した大きなパネルを使って戦況・戦局を解説すること。そしてこの番組は「輸液」大盤解説。大盤には、実際の症例の検査数値が時系列に並べられていきます。その状況を見ながら、どのように輸液をセレクトし、治療を進めているのかを須藤先生自らが実況し、解説していきます。すなわち須藤先生の思考の過程をつぶさに見ることができるのです。前半は、輸液に関する基礎を講義します。後半は、実症例を基に大盤解説を行います。ひふみんよろしく、須藤先生の着物姿も見逃せません。第1回 基礎編1 輸液を理解するための基本的生理学 大盤を使用しての実症例を基にした輸液の臨床推論…の前に、輸液を行ううえで、必ず理解しておかなければならない基本的な生理学を確認しましょう。体液の恒常性の保持とは?体液の組成や区分、役割は?浸透圧を一言で定義すると?張度と浸透圧の違いは?輸液したときに体のどこに分布?ぞれぞれの輸液製剤の違いは?など、なんとなくわかっていたつもりになっていたことも、実ははっきりわかっていなかったことに気づかされるかもしれません。それらをすっきりと整理して解説します。第2回 基礎編2 水・Naの生理学/水と塩の問題水とNaの生理学を考えるにあたっては、まずは2つの体液貯留である「浮腫」と「低Na血症」について理解しておくことが重要です。そう「浮腫」はNaの過剰であり、低Naは水が過剰であるということ。そこで、輸液を必要とする「脱水症」とはいったい何なのでしょうか?水が足りないということでしょうか?実はそこでも、Naの欠乏と水の欠乏と分けて考えていくことになります。欠乏したものを補液することが大まかな意味での輸液であると言えるでしょう。今回は簡単な症例で肩慣らしをしてみましょう。Dr.須藤の実症例を基にした解説付きです。第3回 基礎編3 避けて通れないADHの話水とNa代謝異常について解説します。Na代謝異常とは、「量」の異常でしょうか、それとも「濃度」の異常でしょうか。実は、Naの量の異常が、Naバランスの異常、そして、Naの濃度の異常が水バランスの異常です。水とNa代謝異常は、それぞれ過剰・欠乏の2つの座標軸で考えていきましょう。また、低Na血症を理解するには、「ADH:抗利尿ホルモン」を理解しておくことが重要です。きちんと整理して考えてみましょう。次回よりいよいよ大盤解説に入ります。ネクタイ姿の須藤先生は今回まで。ネクタイをよーく見てみると…。何がが見えてくる…。ヒントは「臨床“推”論」。これもDr.須藤のこだわりです!第4回 大盤解説 症例1 フロセミドが処方されていた78歳男性いよいよ大盤解説がスタート!須藤先生が経験した実症例を基に解説します。大盤に患者の検査数値を時系列に提示していきます。その状況を見ながら、どのように輸液をセレクトし、治療を進めているのかを須藤先生自らが実況します。今の患者の状況はどうなのか?そのために必要な輸液・治療は?1例目は施設入所中の78歳男性の症例です。須藤先生の頭の中を覗いてみましょう!第5回 大盤解説 症例2 脳梗塞で自宅介護されていた72歳女性大盤解説の症例2は、陳旧性脳梗塞で自宅で介護の72歳女性です。1週間前から食事がほとんど取れない状態で反応が鈍くなってきたため救急搬送されました。血圧が低下、皮膚ツルゴールも低下し、明らかに体液量が落ちた状態のようです。さあ、Dr.須藤はどのような治療を進めていくのか。第6回 大盤解説 症例3 意識障害で救急搬送された38歳女性大盤解説の症例3は、もともと健康な38歳女性です。1週間前くらいから感冒症状、全身倦怠感などを訴え、意識レベルが低下してきたため救急搬送されました。搬送されてきた時点で、明らかなショック状態です。入院時の検査データから著明なアシドーシス、高血糖、クレアチニン上昇などが見られ、DKA(糖尿病性ケトアシドーシス)であることが判明しました。さあ、どのように治療していくのか。また、症例のまとめの後には、Dr.須藤がDKAの場合に実際に使用しているDKAフローシートを提示。実際の使用例を基に、解説します。ぜひ、今後の診療に活用してみては?第7回 大盤解説 症例4 嘔気と低Na血症で紹介された78歳男性大盤解説の症例4は糖尿病、高脂血症、高血圧で通院中の78歳男性の症例です。1週間程度前に、膝の痛みを訴え、他院にてデュロキセチンが処方され、服用後から徐々に食欲低下、嘔気を自覚したとのことです。食事もとれなくなり、かかりつけ医が低Na血症を指摘して紹介されました。受診時の検査によって、低Na血症、濃縮尿、細胞外液量の低下が読み取れました。そこから、薬剤性のSIADHも疑われましたが、Dr.須藤はこの判断をある点から否定。さあ、どの数値からこの患者の状態を読み取ったのか。そして、その治療は?一緒に考えていきましょう。また、患者の経過に合わせて、低Na血症の補正「Rule of 6」など、知っておくべきことを補足解説します。第8回 大盤解説 症例5 ストーマがあり慢性下痢の41歳男性大盤解説の症例5はDr.須藤の思い入れの強い症例。クローン病にて、小腸・大腸切除術、人工肛門造設術を受け、慢性下痢の41歳男性です。3週間ほど前から、体調不良、耳下腺炎などで状態が悪化し、受診。受信時のバイタルサインや身体所見から、脱水、アシドーシス、ショックなどが疑われる状態でした。検査データからも腎不全、低Na血症、低K血症、著名なアシドーシスなど、さまざまな状態であることが読み取れました。ここまでの状態で、どう対応できるのか。そもそも輸液で改善できるのか。Dr.須藤の次の一手は!

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サスティナブルな医療の一歩へ~新たな知識を何でものみこもう

『何でものみこむアンチエイジング』をテーマに掲げ、第21回日本抗加齢医学会総会が2021年6月25日(金)~27日(日)に国立京都国際会館で開催される。この一風変わったテーマの真意を大会長である内藤 裕二氏(京都府立医科大学大学院医学研究科消化器内科学 准教授)に聞くとともに、大会長一押しのシンポジウムについてインタビューした。何でも“のみこむ”ことがイノベーションの起爆剤今回の学会テーマを「何でものみこむ」にした理由は、飲食に限らず、多彩な学術情報を嫌わずに何でも受け入れ、その中から科学的基盤に基づいて新たなイノベーションを創造してほしいという意味を込めたからです。私自身の経験として、腸内細菌叢の研究をのみこんで消化してみようと思い立ったのは今から約5年前のこと。その当時、腸内細菌叢に関する遺伝子解析が可能になったり世間で腸内フローラに関する話題が沸騰したりと、“腸内細菌叢”が研究分野として脚光を浴びる大きなチャンスでした。また、消化器科専門医として食事で健康を維持することを大事にしていた私は、腸内環境と疾患の関連性にも惹きつけられていました。たとえば、多発性硬化症とクローン病は病態発症に縁もゆかりもないですが、それらの患者さんにおいて腸内細菌叢が類似していた症例に遭遇し、これは私に大きな影響を与えました。そして、この研究をさらに深く追求したその先に抗加齢医学があり、現在に至っているわけです。“身体にいい”は科学的にも良い?医学の枠を越えたシンポジウム今回、大会長を務めるにあたり、何でも嫌わず自身のものにするという観点で企画立てました。参加者に新たな知見を吸収・消化して各々の研究分野に役立ててほしいという思いを込め、抗加齢医学会に属していない方も演者にお招きしています。企画に注力した会長特別企画では、『機能性食品や機能性を有する農林水産物の今!(仮題)』と題し農業由来のアンチエイジング研究について発表していただきます。たとえば、「身体に良い」と言われる農林水産物は本当に身体に良いのかどうかを科学的に分析した例など、いわゆる“国プロ”(公的研究開発プロジェクト)を多数推進してきた農研機構の山本 万里氏らを招聘し“農林水産物をいかに社会実装していくか”というポイントでお話いただく予定です。抗加齢の意識がSDGsを導く手立てに抗加齢医学の根本は「何を食べるか」から始まり、持続性のある発展を目指すためには食物に関する研究が不可欠であると私は考えています。抗加齢医学は今、エピジェネティクスの影響を受け、人生100年時代を超え“人生120年続く時代”が囁かれているんですが、これは老化の時計を進めない、むしろ逆戻りさせるための老化メカニズム研究が目まぐるしく発展している成果とも言えます。しかし、医学が発展しているからといって「60歳になったから」とか「老化を感じるから」とその時だけ抗加齢を意識するのは見当違いなんです。人間は母体にいる時からさまざまな栄養や環境の変化を受け、生まれてきます。とくに腸内細菌叢は出産時の母体の体調が大きく影響しますし、そこを基盤に未来の食事摂取状態や環境変化にさらされていくのです。そのため、社会的な視点で注目されているSDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)の概念は抗加齢医学にも非常に通じるところがあります。ぜひ、このような視点や感覚を本総会やこの会長特別企画で学んでもらいたいと考えています。このほかにも発がんリスク因子や免疫老化・細胞老化、コロナ関連、食物繊維に関する研究報告など多数の演題をご用意しています。新型コロナ感染対策に配慮し会場とWebを併用したハイブリッド形式で開催いたしますので、多くの皆さまのご参加をお待ちしております。

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化膿性汗腺炎〔HS:Hidradenitis suppurativa〕

1 疾患概要■ 定義化膿性汗腺炎(Hidradenitis suppurativa:HS)は臀部、腋窩、外陰部、乳房下部などに有痛性の皮下結節、穿掘性の皮下瘻孔、瘢痕を形成する慢性の炎症を繰り返す慢性炎症性再発性の毛包の消耗性皮膚疾患で難治性疾患である。アポクリン腺が豊富に存在する部位に好発する。Acne inversa (反転型ざ瘡)とも呼ばれている。集簇性ざ瘡、膿瘍性穿掘性頭部毛包周囲炎とともに毛包閉塞性疾患の1型と考えられている。従来からの臀部慢性膿皮症は化膿性汗腺炎に含まれる。■ 疫学発症頻度は報告者によってさまざまであるが、欧米では0.1~4%で平均約1%程度と考えられている。わが国では大規模調査が行われていないので、明らかではないが、日本皮膚科学会研修施設を対象とした調査で100例1)、300例2)の報告がある。性差については欧米からの報告では男女比が1:3で女性に多く3)、わが国では男女比が3:1で男性に多い1,2)。好発年齢は20~30歳代に発症し、平均年齢は海外で36.8歳、わが国では40.1歳である1)。発症から正しい診断に至るまでの罹病期間は約7年である1,2)。好発部位は臀部、外陰部、腋窩に多い。男性では肛囲、臀部に多く、女性では腋窩、外陰部に多い1,2)。■ 病因明らかな病因は不明であるが、遺伝、毛包の閉塞、嚢腫形成などの病変に炎症が加わって起こる再発性の慢性の自己免疫性炎症性疾患である。遺伝的因子について、海外では家族性の場合が多く、約30~40%に家族歴があるが3,4)、わが国では2~3%と海外に比べて、非常に低い1,2,4)。家族性HSの場合、γ-セクレターゼの欠損が関連していると考えられている3,4)。TNFα、IL-1β、IFN-γ、IL-12、IL-23、IL-36などのTh1細胞とIL-17を産生するTh17細胞が化膿性汗腺炎の病変部で発現し、これらのサイトカインが重要な役割を演じていることが明らかになってきている3,4)。二次的に細菌感染を合併することもある。悪化因子として喫煙、肥満、耐糖能異常、内分泌因子、感染、機械的刺激などが関連している1,2,3,4)。合併する疾患として、毛包閉塞性疾患である集簇性ざ瘡、膿瘍性穿掘性頭部毛包周囲炎、毛巣洞がある1,4)。併存疾患として糖尿病、壊疽性膿皮症、自己炎症症候群、クローン病、外痔瘻、有棘細胞がんがある4)。■ 症状多くは単発性の疼痛を伴う深在性の皮下結節で始まる。皮下結節は増大、多発して、血性の排膿がみられる。皮疹は黒色面皰がかなり高率にみられる。排膿後は皮下瘻孔を形成し、慢性に再発、寛解を繰り返す。隣接する瘻孔は皮下で交通し、穿掘性の皮下瘻孔を形成し,瘻孔の開口部より滲出液、血性膿、粥状物質などを排出し、悪臭を伴う(図1)。排膿後は皮下瘻孔を形成し、慢性に再発、寛解を繰り返す。瘻孔が破裂し、真皮に角層などの異物が流出すると肉芽形成が起こり、肥厚性瘢痕、ケロイドを形成する(図1)。重症では蜂巣炎から敗血症を合併することもある。生活のQOLが著しく低下し、疼痛、うつ、性生活、Dermatology Life Quality Index(DLQI)も低下する。図1 化膿性汗腺炎の臨床所見画像を拡大する腋窩に皮下瘻孔、肥厚性瘢痕がみとめられる■ 分類重症度分類として、Hurleyのステージ分類が重症度の病期分類として最も用いられて3期に分類される。第I期 単発、あるいは多発する皮下膿瘍形成。皮下瘻孔、瘢痕はなし。第II期再発性の皮下膿瘍、皮下瘻孔、瘢痕。 単発あるいは多発性の孤立した複数の病巣。第III期広範なびまん性の交通した皮下瘻孔と皮下膿瘍。とされている。その他、修正Sartorius分類が用いられている。Sartoriusらは(1)罹患している解剖学的部位、(2)病巣の数とスコア、(3)2つの顕著な病巣間の最長距離、(4)すべての病巣は正常の皮膚から明確に離れているか否かという4項目について点数化する方法をHSの重症度として提唱している4)。治療の重症度スコアの評価指標として国際的HS重症度スコアリングシステム(IHS4)とHiSCR(Hidradenitis Suppurativa Clinical Response)がある。IHS4(International Hidradenitis Suppurativa Severity Score System)3)は炎症性結節、膿瘍、瘻孔・瘻管の数で評価される。中等度から重症の症例の鑑別、早期発見を可能にする。また、HiSCRと組み合わせて使いやすい。HiSCRは化膿性汗腺炎の薬物治療に対する“反応性”を数値化して指標で治療前後での12部位の炎症性結節、膿瘍、排膿性瘻孔の総数を比較する。HiSCRが達成されていれば、症状の進行が抑えられていると判定する。治療前の炎症性結節、膿瘍の合計が50%以上減少し、さらに膿瘍、排膿性瘻孔がそれぞれ増加していなければ、HiSCR達成となる。PGA(Physician Global Assessment)(医師総合評価)は薬物療法の臨床試験での効果判定に最も広く用いられている。■ 予後化膿性汗腺炎は慢性に経過し、治療に抵抗する疾患である。まれに有棘細胞がんを合併することもある。頻度は0.5~4.6%で男性に多く、臀部、会陰部の発症が多いとされている4)。化膿性汗腺炎の発症から平均25年を要するとされている4)。2 診断 (検査・鑑別診断を含む)■ 確定診断化膿性汗腺炎の確定診断には以下の3項目を満たす必要がある。1)皮膚深層に生じる有痛性結節、膿瘍、瘻孔、および瘢痕などの典型的皮疹がみとめられる。2)複数の解剖学的部位に1個以上の皮疹がみとめられる。好発部位は腋窩、鼠径、会陰、臀部、乳房下部と乳房間の間擦部である。3)慢性に経過し、再発を繰り返す。再発は半年に2回以上が目安である。病理組織所見病初期は毛包漏斗部の角化異常より角栓形成がみられる。その後、好中球を主体として毛包周囲の炎症性細胞浸潤が起きる。毛包漏斗部の皮下瘻孔は次第に深部に進展し、皮膚面と平行に走り、隣接する皮下瘻孔と交通し、穿掘性の皮下瘻孔を形成する(図2)。炎症細胞浸潤が広範囲に及び、瘻孔壁が破裂すると、角質、細菌などの内容物が真皮に漏出して、異物肉芽腫が形成される。ときに遷延性の皮下瘻孔より有棘細胞がんが生じることがあるので、注意を要する。図2 化膿性汗腺炎の病理組織学的所見画像を拡大する一部、上皮をともなう皮下瘻孔がみとめられる(文献5より引用)。■ 鑑別診断表皮嚢腫:通常、単発で皮下瘻孔を形成しない。せつ:毛包性の膿疱がみられ、周囲の発赤、腫脹をともなう。よう:毛包性の多発性の膿疱がみられ、巨大な発赤をともなう結節を呈する。蜂巣炎、皮下膿瘍:発赤、腫脹、熱感、圧痛、皮下硬結をともなう。毛巣洞: 臀裂部正中に好発し、皮下瘻孔がみられる。皮下血腫:斑状出血をみとめ、穿刺にて凝固塊の排出をみとめる。クローン病による皮膚症状:肛門周囲に皮膚潰瘍をみとめ、皮下瘻孔を形成し、肛門との交通があることがある。■ 問診で聞くべきこと家族歴、喫煙、肥満、糖尿病の有無。■ 必要な検査とその所見採血(赤血球数、白血球数、白血球の分画、CRP、血沈、ASOなど)、尿検査を行う。蜂巣炎の合併の有無に必要である。 皮膚生検  有棘細胞がんの有無の確認に重要である。細菌検査  好気、嫌気培養も行う。蜂巣炎を合併している場合、細菌の感受性を検査して、抗菌剤の投与を行う。超音波エコー病巣の罹患範囲を把握し、手術範囲の確定に有用である。3 治療病初期には外用、内服の薬物療法が試みられる。局所的に再発を繰り返す場合は外科的治療の適応となる。病変部が広範囲に及ぶ場合には薬物療法の単独、あるいは外科的療法との併用が適している。薬物療法としては抗菌剤、レチノイド、生物学的製剤があるが、わが国において生物学的製剤で化膿性汗腺炎に保険適用があるのはアダリムマブだけである4)。■ 具体的な治療法抗菌剤の内服、外用、あるいは外科的治療と併用される。抗菌剤の外用は軽症の場合に有効であることがある。クリンダマイシン、フシジンレオ酸が用いられている4)。抗菌剤の内服は細菌培養で好気性菌と嫌気性菌が検出される場合が多いのでセフェム系、ペネム系、テトラサイクリン系、ニューキノロン系抗薗剤が用いられる。ステロイド局所注射:一時的な急性期の炎症を抑えるのに有効である。デ・ルーフィング(天蓋除去):皮下瘻孔の屋根を取り除くことも有効である。局所の切開、排膿、生理食塩水による洗浄、タンポンガーゼによるドレナージも一時的に有効な処置である。 生物学的製剤としてアダリムマブが有効である。適応として既存の治療が無効なHurley stageII、IIIが対象となる。外科的治療:外科的治療は特に重症例に強く推奨される治療法である。病巣の範囲を正確に把握し,切除範囲を決めることが 重要である。CO2レーザーによる治癒も軽症~中等症に対して有効である。広範囲切除はHurleyの第III期が適応となる。切除範囲は病変部だけの限局した切除は十分でなく、周囲の皮膚を含めた広範囲な切除が必要である。有棘細胞がんが合併した場合は外科的切除が最優先される。■ その他の補助療法1)対症療法疼痛に対して、消炎鎮痛剤などの投与を行う。重複感染の管理を行う。生活指導:喫煙者は悪化因子である喫煙をやめる。肥満については減量、糖尿病があれば、原疾患の治療を行う。深在性の皮下瘻孔があり、入浴で悪化する場合、入浴を避け、シャワーにする。2)その他、治療の詳細については文献(4)を参照されたい。4 今後の展望今後、治験中の薬剤としてインフリキシマブ、IL-17阻害薬, IL-23阻害薬などがある。5 主たる診療科皮膚科、形成外科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)皮膚の遺伝関連性希少 難治性疾患群の網羅的研究班1)Kurokawa I, et al. J Dermatol. 2015;42:747-749. 2)Hayama K, et al. J Dermatol. 2020;47:743-748.3)Zouboulis CC, et al. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2015;29:619-644.4)葉山惟大、ほか. 日皮会誌.2021;131;1-28.5)Plewig G, et al. Plewig and Kligman’s Acne and TRosacea. Springer.2019;pp.473.公開履歴初回2021年2月26日

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HPVワクチン接種と33の重篤な有害事象に関連なし、韓国/BMJ

 韓国のヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種を受けた11~14歳の女子において、コホート分析では33種の重篤な有害事象のうち片頭痛との関連が示唆されたものの、コホート分析と自己対照リスク間隔分析(self-controlled risk interval[SCRI] analysis)の双方でワクチン接種との関連が認められた有害事象はないことが、同国・成均館大学校のDongwon Yoon氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2021年1月29日号に掲載された。HPVワクチン接種後の重篤な有害事象は、このワクチンの接種に対する大きな懸念と障壁の1つとなっている。HPVワクチンの安全性に関する実臨床のエビデンスは、西欧では確立しているが、アジアのエビデンスは十分ではないという。韓国の大規模データベースを用いたコホート研究 研究グループは、韓国の思春期女子におけるHPVワクチン接種と重篤な有害事象の関連を評価する目的で、コホート研究を実施した(韓国Government-wide R&D Fund project for infectious disease research[GFID]などの助成による)。 韓国予防接種登録情報システムと国立保健情報データベースのデータを統合し、2017年に11~14歳だった女子の同年1月~2019年12月の大規模データベースを構築した。 44万1,399人のデータが解析に含まれた。このうち、38万2,020人が42万9,377回のHPVワクチン接種を受け(HPVワクチン接種群)、残りの5万9,379人はHPVワクチン接種を受けず、8万7,099回の日本脳炎ワクチンまたは破傷風・ジフテリア・無細胞性百日咳混合ワクチンの接種を受けた(HPVワクチン非接種群)。 主要アウトカムは、33種の重篤な有害事象とした。重篤な有害事象には、内分泌(グレーブス病、橋本甲状腺炎など)、消化器(クローン病、潰瘍性大腸炎など)、心血管(レイノー病、静脈血栓塞栓症など)、筋骨格・全身性(強直性脊椎炎、ベーチェット症候群など)、血液(特発性血小板減少性紫斑病、ヘノッホ-シェーンライン紫斑病)、皮膚(結節性紅斑、乾癬)、神経系(ベル麻痺、てんかんなど)の疾患が含まれた。 主解析はコホートデザインで行い、SCRI分析を用いて2次解析を実施した。4価ワクチン接種者で片頭痛が増加 ワクチン接種時の平均年齢は、HPVワクチン接種群が12.42(SD 0.82)歳、HPVワクチン非接種群は11.84(0.56)歳であった。接種群のうち38.7%は1回、61.3%は2回のHPVワクチン接種を受け、29万5,365人が4価、8万6,655人は2価ワクチンの接種を受けた。合計51万6,476回のHPVワクチン接種が行われた。 コホート分析では、たとえば橋本甲状腺炎(10万人年当たりの発生率:接種群52.7 vs.非接種群36.3、補正後率比[RR]:1.24、95%信頼区間[CI]:0.78~1.94)や、関節リウマチ(168.1 vs.145.4、0.99、0.79~1.25)などではHPVワクチン接種との関連はみられず、唯一の例外として片頭痛(1,235.0 vs.920.9、1.11、1.02~1.22)で関連が認められた。 SCRI分析による2次解析では、片頭痛(補正後相対リスク:0.67、95%CI:0.58~0.78)を含め、HPVワクチン接種と重篤な有害事象には関連がないことが確かめられた。 フォローアップ期間の違いやHPVワクチンの種類別でも、結果の頑健性は高かった。また、2価ワクチン接種者では、片頭痛の有意な増加はみられなかった(補正後RR:1.07、0.96~1.20)が、4価ワクチン接種者では非接種者に比べ片頭痛が有意に増加していた(1.13、1.03~1.24)。 著者は、「これらの結果は、西欧の集団でHPVワクチン接種の安全性を示した試験と一致する」とまとめ、「片頭痛に関する矛盾した知見については、その病態生理と関心対象の集団を考慮して慎重に解釈すべきである」と指摘している。

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潰瘍性大腸炎、治療の最適解を導くために必要なこと

 国の指定難病・潰瘍性大腸炎は、安倍元首相の辞任理由として注目を集めたことが記憶に新しい。さまざまな憶測が飛び交い、疾患に対する誤った認識も見られるが、これは正しい理解を広めるチャンスでもある。 先日、ヤンセンファーマが開催した潰瘍性大腸炎セミナーでは、鈴木 康夫氏(東邦大学医療センター佐倉病院 IBDセンター センター長)が、潰瘍性大腸炎の患者が直面する実態と最新治療について講演を行った。症状の個人差が大きく理解が得られにくい現状 わが国における潰瘍性大腸炎の患者数は、2016年度の全国疫学調査研究で22万人と推計され、数ある指定難病の中で最も多い。現在も増え続けており、将来的に30万人を超えるのではと危惧されている。 潰瘍性大腸炎の重症度について、2007年に厚労省が調査したデータ(n=4万6,223)によると、日常生活に影響が少ない軽症患者が63%を占める一方で、中等症が28%、重症が3%、劇症が0.3%(不明6%)という内訳だ。重症例では入院治療が必要で、中にはやむを得ず大腸全摘に至る例も存在する。個人差の幅が大きいことが、疾患に対する理解の得にくさにつながっているのかもしれない。ステロイド依存・抵抗性などの難治例、発がんリスクなどが問題に 治療は、5-ASA(メサラジン)製剤とステロイド製剤を基本として、症状を抑え正常状態に近付ける寛解導入療法と、再発を予防する寛解維持療法を組み合わせて継続する。鈴木氏は、「大事なのは、再発時早期に十分な治療をして、病状の悪化・進展を防ぐこと。多くの症例を診ている専門医は、早い段階で再発の徴候をキャッチできる。たとえずっと同じ薬が出ているとしても、主治医には定期的に顔を見せて、病状を伝えてほしい」と、通院の重要性を強調した。 とくにステロイドは中等症以上に著効し、初回治療では84%の寛解導入率が得られたという報告もある。しかし、全身的な副作用などの懸念があり、さらには2年以上経過してもステロイド治療から離脱できない依存例や、効きにくくなる抵抗例が半数近くも存在するなどの問題がある。このような例や頻回に再燃を繰り返す例などは“難治性”と定義付けられ、専門医により適切な治療法が日々検討されている。 また、もう1つの問題として炎症性発がんについて触れた。「一番危険なのは、炎症が治まり切らないまま再燃を繰り返す症例。落ち着いている時期は正常に近付いたように見えるが、トイレが近かったり、食べたいものが食べれなかったり、患者のQOLは著しく低下している。このような症例は、健康な人に比べて大腸がんリスクが8倍以上になる」と注意を呼び掛けた。患者の症状を踏まえ、生活スタイルやニーズに合わせた治療法を 潰瘍性大腸炎に対しては、平成~令和にかけて、新しい治療薬が次々と登場している。今年3月には、クローン病治療薬のヒト型抗ヒトIL-12/23p40モノクローナル抗体製剤「ウステキヌマブ(商品名:ステラーラ)」が、潰瘍性大腸炎の追加適応を取得した。 鈴木氏は、「同じ潰瘍性大腸炎でも、患者ごとに病態は異なる。個々の患者が持つ背景因子と病歴から将来を予測し、各治療法の特性を理解した上で、治療を選択することが大事。また、もう1つ大事なのは、患者さんの生活スタイルやニーズを考えること。治療薬によって、通院頻度や投与法などさまざまなので、患者さんの気持ちを汲み取りながら、治療を進めることも重要」とアドバイスを送った。 潰瘍性大腸炎の患者が少なかった時代は、専門医中心の診療でも成り立ったが、個々の患者はいろんな問題を抱えており、患者数が増え続けている現状に対応しきるのは難しい。同氏は、「これからは、各領域の専門職がチームとして協力し、トータルケアを目指して行くことがまさに大事だろう。また、患者をできるだけ良い状態にして、地元の医療機関に通えるよう支援(逆紹介)できる体制整備も必要だ」と講演をまとめた。

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“肛門疾患”丸わかり-内科医にも役立つガイドライン発刊

 肛門疾患と聞くと、多くの方はまず“痔”を想像されるのではないだろうか。医師に相談しにくい病気の1つだが、非専門医の方々は相談を受けたことがあるだろうか? 2020年1月、日本大腸肛門病学会は『肛門疾患(痔核・痔瘻・裂肛)・直腸脱診療ガイドライン2020年版』を発刊。これは2014年に策定された診療ガイドラインの改訂版で、既存の肛門部の三大疾患(痔核・痔瘻・裂肛)とは別に直腸脱の項が追加された。今回、本ガイドラインの作成委員長を務めた山名 哲郎氏(JCHO 東京山手メディカルセンター副院長)から活用ポイントについて聞いた。非専門医でも使いやすい1冊、専門医には直腸脱診療の理解を 現在、肛門疾患治療は保存治療適応例や高齢化に伴う肛門疾患の増加に伴い、プライマリケア医の協力が必要不可欠である。しかし、日本大腸肛門病学会会員の診療科内訳を見ると、大腸外科70%、肛門科15%、消化器内科15%、その他(病理科、放射線科など)少数と、内科診療を担う医師会員が非常に少ない。 このような現状を踏まえ、ガイドラインを作成するにあたり、山名氏は「CQ(Clinical Question)は専門医向けに設定、総論はプライマリケア医による診断や保存的治療の推進を念頭に置いた」という。スコープ作成は『Minds診療ガイドライン作成マニュアル2017』などを参考に進められ、重要臨床課題をもとに痔核、痔瘻、裂肛、直腸脱においてCQ3~5項目を決定、などを配慮した。また、総論には現時点でガイドライン作成委員会が提唱するフローチャートが図式化されており、どのタイミングでどのCQを確認するべきかがひと目でわかる仕組みになっている。 プライマリケア医、専門医それぞれに注目してもらいたい項目は以下のように分類されている。<プライマリケア医向け>・総論:疫学、病因、臨床所見、診断、治療などがコンパクトにまとめられている。・症例写真:各CQページ掲載。これにより鑑別診断が容易となる。<専門医向け>・CQ:専門医向けの診断アルゴリズムや新たな術式、乳児痔瘻やクローン病の痔瘻への対応方法について記載・直腸脱の項:日本の場合、高齢者の手術リスクを不安視し、経腹手術を避ける傾向がある。しかし、患者側の因子と直腸脱の病態による因子を考慮して術式を決定することが望ましいことから、術式決定のフローチャートの活用を求める。保存治療、まずは2~4週間を目処に 肛門疾患治療において、専門医への紹介や治療変更のタイミングに関する診療アルゴリズムは存在しない。だが、プライマリケア医でも本ガイドラインを活用することで患者の初期診療は可能であり、同氏は「たとえば、痔核や直腸脱の鑑別自体は難しくない。症例写真や臨床所見の項を活用することで診断は可能」とコメントした。保存治療の際の処方薬剤には、内服薬(鎮痛薬、痔核治療剤)や外用薬(坐薬、軟膏など)がある。専門医への紹介のタイミングについてはガイドラインに明記されていないが、「まずは2~4週間継続し、それでも症状が改善しなければ専門医への紹介が望ましい」と述べ、漫然と同じ治療を継続しないよう求めた。 このほか、専門医や専門病院への紹介パターンについて、同氏は患者紹介事例として3つを例示。同氏は独自の見解であると断りながら、1)プライマリケア医からの保存治療無効例の紹介、2)手術を実施しない施設の専門医からの紹介、3)手術実施施設からのハイリスク症例の紹介を挙げた。「とくに3つ目の場合、循環器疾患を併存している患者などでは抗凝固薬の服用が術前の服薬中止や術後出血のリスクとなるため、全身管理が可能な病院での手術が必要」と話した。高齢者にも手術を否定しない 専門医向けに追加された直腸脱については、「高齢者では手術リスクを考慮した結果、手術を推奨しない方針を選んでしまう医師がいる。しかしそれでは患者さんのQOLは改善されないため手術は必要である」と話した。高齢者にも適した術式を選択すれば、リスクを回避できることから、「とくに高齢者の治療を選択する際には、本ガイドラインのフローチャートを参照し、侵襲の少ない腹腔鏡下手術を視野に入れて治療方針を決めて欲しい」と述べた。 最後に同氏は「肛門疾患は、羞恥心ゆえにガイドライン作成に患者さんを取り込むのが難しい。本ガイドラインでは患者さんの声としてはパブリックコメントをもらう形式に留まったが、次の改訂版ではガイドライン作成委員のメンバーとして介入してもらいたい」と、次回改訂時への思いを語った。 なお、日本大腸肛門学会が作成するもう1つのガイドライン、「便失禁診療ガイドライン2017年版」の改訂版は2022年に発刊予定である。

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単一遺伝子異常に伴う炎症性腸疾患、疑うべき臨床所見は?

 小児の炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease:IBD)は発症時期によって特徴が異なり、臨床像が多様だ。とくに早期に発症するケースでは、単一遺伝子異常に伴うIBDの頻度が高く、原発性免疫不全症候群の可能性も考慮する必要がある。しかし、その詳細な有病率は明らかになっていない。今回、カナダ・トロント小児病院のEileen Crowley氏らは、小児IBD患者1,005例のゲノムを解析し、単一遺伝子異常に伴うIBDの有病率を決定するとともに、予測可能な臨床所見を検討した。Gastroenterology誌オンライン版2020年2月18日号掲載の報告。 0〜18歳(診断時年齢の中央値:11.96歳)の小児IBD患者1,005例、およびその家族の血液サンプル(合計2,305サンプル)を用いて、全エクソームシークエンスを実施した。IBDの原因と考えられる遺伝子変異はサンガーシークエンスで確認し、生検は免疫蛍光染色、組織化学分析を実施した。 小児IBD患者1,005例のうち、3%にIBD関連の単一遺伝子変異が確認された。年齢別の割合は、6歳未満で7.8%、6〜18歳で2.3%だった。このうち1%の患者の変異は、同種造血幹細胞移植で治療できる可能性があるものだった。 単一遺伝子異常に伴う小児IBD患者の臨床的特徴は、発症年齢が2歳未満(OR:6.30、p=0.020)、自己免疫疾患の家族歴(OR:5.12、p=0.002)、腸管外症状(OR:15.36、p<0.0001)などだった。 単一遺伝子異常に伴う小児IBD患者のうち17例がクローン病であり、症状は35%に腹痛、24%に軟便、18%に嘔吐、18%に体重減少、5%に断続的な血便がみられた。また、14例は潰瘍性大腸炎もしくは分類不能型のIBDであり、顕著な症状として78%に緩い血便がみられた。 これらの結果から、単一遺伝子異常に伴う小児IBDの予測には、早期発症、自己免疫疾患の家族歴、腸管外症状などの所見が役立つ可能性が示唆された。また、単一遺伝子異常に伴う小児IBDの一部は、同種造血幹細胞移植によって治療可能であることから、積極的に遺伝子検査を検討するべきだ、との見解を示した。

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クローン病治療薬の開発最前線

クローン病治療薬は、抗TNFα抗体製剤の有効性が確立し、現在は抗TNFα抗体製剤に無効、あるいは非忍容な患者に対する薬剤の開発が進められている。リサンキズマブ選択的インターロイキン(IL)23モノクローナル抗体阻害薬であるリサンキズマブ(商標名:スキリージ)は、中等度以上クローン病121例(93%に抗TNF薬使用歴、うち85%が無効例)を対象とした第II相ランダム化試験において、12週間投与後の臨床的寛解率は、プラセボ群に比べ、15.0%の有意高値だった [Feagan BG et al. Lancet. 2017; 389: 1699] 。さらに同コホートで試験終了時、完全寛解に至らなかった102例中101例(当初プラセボ群だった33例を含む)にリサンキズマブを26週間投与したところ、53%で臨床的寛解が得られた。これら臨床的寛解例を含む62例に対しリサンキズマブ維持療法をさらに26週間施行したところ、71%で臨床的寛解が維持されていた(含、完全寛解6例) [Feagan BG et al. Lancet Gastroenterol Hepatol. 2018; 3: 671] 。ウパダシチニブ経口選択的JAK1阻害薬であるウパダシチニブは、16週間の導入療法で臨床的/内視鏡的寛解を得た、免疫調節薬・TNF抗体不応・非忍容の中等症以上クローン病153例において、導入療法開始の52週間後まで、用量依存的に約40~70%超の患者で臨床的/内視鏡的寛解が維持された。本検討において、安全性に関する新たな懸念材料は見つからなかった [Panes J et al. Gastroenterology. 2018; 154: S‐1308] 。この結果を受け現在、生物学的製剤無効例(NCT03345836))、あるいはステロイド・免疫抑制剤無効例(NCT03345849)を対象としたランダム化試験が始まった。いずれも2021年半ばに終了予定である。フィルゴチニブ同じく経口選択的JAK1阻害薬であるフィルゴチニブも、中等症クローン病174例を対象としたランダム化試験において、10週間後47%が臨床的寛解となった(プラセボ群:23%、p=0.0077) [Vermeire S et al. Lancet. 2017; 389: 266] 。20週間の重篤有害事象発現率は、フィルゴチニブ群:9%、プラセボ群:4%であり、安全性は受容可能と考えられた。現在、この結果を受け、中等症以上のクローン病を対象に、導入、維持療法における有用性をプラセボと比較する第III相試験 “Diversity1”(NCT02914561)が、2021年11月終了予定で進行中だ。さらに中等症以上クローン病を対象に、"fistula response" をプラセボと比較する第II相試験 “Divergence2"(NCT03077412)、小腸型クローン病における活性抑制をプラセボと比較する第II相試験(NCT03046056)も進行中である。いずれも本年中ないし、来年早々に終了の予定だ。

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